○正森
委員 今二つの論点を言われましたが、私が承知しているところでは、その中で特に緊急の問題は、後の方の問題である。つまり、七百名余り、それを二年間ですから、千四百名くらいを実務庁に配属してマンツーマンに近い指導もしなければならぬ。それには庁舎も不足であり、特に指導する
裁判官、
検察官の側で非常に過大負担になり、困難を来すということが言われているようであります。
しかし、
最高裁判所あるいは法務省に申し上げたいのですが、それは本末転倒じゃないのですか。もし、そうしなければ千名の増員あるいはいわんや千五百名の増員ができないということは、現在の
裁判所や
検察官の人員やあるいは設備では受け入れ不可能なように人員を拡大するということにほかならないので、それは、いかに千五百名に増員するなどということが、現状の
裁判所の施設やあるいは人員では無理な要求を一挙に実現しようということかをみずから証明しているものじゃないのですか。
四十年も続いた
司法修習
制度で、
裁判官、
検察官、弁護士を含む法曹の能力や資格を維持しながらバランスをとって増員する。私たちは増員は必要だと思っております。しかし、その増員を行うためには、やはり
裁判官を増員し、そして
検察官も増員し、庁舎の不十分な部分はこれを建てるということで、受け入れ体制を整備しながら修習の質を落とさないように拡大していくというのが本筋であって、一挙にふやそうと思えば現在の庁舎や
裁判官では対応できないから修習期間を半分にばっさりと縮めるなんというようなことは、大学の数が少ないから、大学は四年制だけれ
どもこれを二年にばっさり縮めるとか、あるいは、お医者さんについては特にそれに二年ないし三年をつけ加えるのだけれ
ども、医学部の施設が少ないから、少々
国民の人命には危険があってもいいから、医学の修習期間を半分の三年半にするとか、そういう乱暴な議論なんです。そんなことを良識の府である
最高裁が、法務省に追随したのか独自の議論なのか知りませんが、そういうことを言うなどというのは、
考え方を根本から改めなければならないんじゃないですか。
それから、さらに言いますが、この今言いました法曹養成
制度等改革協議会には、法曹以外の
委員も入っているようであります。また、その
人たちの中には、規制緩和小
委員会の専門
委員なんかをやっておられる方もおられるようであります。その中には、極めて勇ましい意見を言っておられる方がおられます。
ここで私はあえて申し上げたいと思うのですが、堂々と言っておられますから名前を申し上げますが、規制緩和小
委員会にも入り、それから法曹養成
制度等改革協議会外部
委員にもなっておられる鈴木良男氏であります。これは、旭化成工業に入社されて取締役をされたきっすいの経営マンであります。
この人がどういうことを言っているかというと、こう言っているのですね。
裁判所は工場、弁護士は営業マンだ。人数を千五百人ふやして、増えた法曹が、仮に全部弁護士のところへ行ったとしましょう。しかし、それから新たな需要が出てくることによって、弁護士は
裁判所へ
仕事を持ち込むでしょう。それで持ち込んだものが、今よりももっと酷い解決状態になるということだったら、これはもう
国民が許さないという問題になってきて、
裁判所は、需要が出てきたときには、直ちにそれに合うように
裁判官を増やす。
検事も同じ。これが私の
裁判所工場・弁護士営業マン論です。こう言っているのです。ですから、弁護士法の第一条にある、弁護士というのは、基本的人権を擁護し、
社会正義の実現を図るなんというようなことは、全く頭の中にこの人はなくて、弁護士は営業マンで、規制緩和すれば今まで行政で解決したのが当事者で解決しなければならないようになるだろう、そうすると紛争が多くなる、だからその紛争を弁護士に任せてやらせろということで、弁護士は営業マンだ、こんな企業の代弁みたいなことで
司法の問題を論ずるなんということは極めて不道切じゃないですか。
この人はまた、弁護士法七十二条で、基本的人権を守る弁護士業務というのは法曹資格のある者でなければならないということについて、これを
改正すべきだと思います。
司法書士、あるいはまた税理士を入れても結構ですよ、そういうのを入れていくと、弁護士が、例えば
国民千五百人あたり一人という
状況に近付いていくでしょう。
司法書士も正々堂々と
報酬を得て、オールオーバーにカバーするのか、それともある一定の範囲をカバーするのかという議論はあるけれ
ども、ある一定の範囲に限定してもいいでしょう。しかし
司法書士にも訴訟代理権を認める。こういうことを言っております。
司法書士の試験
制度はどうなっていますか。厳密に
国民の
権利を守ることができるのですか。あるいは税理士の監督権はどうなっていますか。相手方である税務署長が監督するようになっているじゃないですか。もし弁護士が、戦前のように
検事局が監督するというようなことになったら、
国民の立場に立って
司法の独立を守ることができますか。こういうむちゃくちゃな議論をやる人が大きな顔をして専門
委員だとか、あるいは協議会の
委員になっている、これは実に問題じゃないですか。
この人はさらにこう言っていますよ。
仕事がなくて困るというのなら、弁護士は
司法書士
事務所に行って
仕事をすればいいというようなことを言って、弁護士は
司法書士に雇ってもらえというようなことまで言っているのです。それで、例えば法廷についてもあまり形式主義的なことをおっしゃるなと。晴海あたりに行ったら、空き
事務所がいっぱいあるでしょう。法廷というのは、そういうところで、ここが法廷だと宣言すれば、それでいいんですよ。
司法研修所も、和光みたいな大きなものをつくるのではなく、どこにでも
研修センターなんてのは幾らでもあるんだから、その一番安いのを借りてやればいいんですよ。いいですか、
東京の副都心計画その他で空きビルがあるからそこへ
裁判所を持っていけ、安いところを借りろ、こういう議論を堂々と言っているのです。
あげくの果てにどう言っているか。「私は、もう四年間付き合った以上、絶対諦めないぞ」、こう言っている。これからも大いにやると言っているのです。四年間もやってこの
程度の議論しか言えない人は、そろそろこういう
関係委員をやめてもらったらどうですか。
司法の独立に全く理解のない人が、規制緩和小
委員会に行ったり、弁護士人口や
司法の独立に
関係のあることについて大きな顔をしてこういう議論をする。
司法の独立の何たるかも知らない、そんな人を野放しにしておいていいのですか。