○矢上
委員 地元におきまして、異議申し立てに対する対応は、最初の対応は少しおくれたことがございますが、その後におきましては三回もやっていただくなど、結構評価が上がっております。
ただ、私なりに地元側の異議申し立て者の要望を集約しますと、まずは土地改良事業についてでございますが、土地改良事業の有効性は認めておられるようです。やはり
農業、
農村の近代化、機構・規模拡大に貢献しているということで、この土地改良事業に対する有効性について疑う人はまずいなかったということを、農水省の名誉にあれしまして御報告いたします。
ただ、その後二点ございます。やはり将来の展望が見えない。よくこの
国会でも言われることでございますが、後継者がいない。あとは、
合意形成等手続面に納得がいかない。今まで農政というものは
農業者団体とか地元の顔役さんを通して円滑に行われておったわけでございますが、これだけ情報化が進んできますと、一人の人間が一まとめに全部おさめてしまうということは非常に難しい
状況になっておりまして、やはり説明不足があったり、また農家の側の説明を真剣に聞き入れなかったという反省もあるようでございます。農家
自身の反省としては、あのとき説明会に出てきちんと討論しておけばよかったという反省と、あともう一つは、やはり市町村の役場の皆さん方とかいろいろな多くの人手がかかりますから、中には説明が上手な人もおれば下手な人もございます。そういう中で、水かけ論になるかもしれませんが、よほど何とかこれからやっていかないと、しこりが相当残っております。そういうところでございます。
実はここに口頭審理の調書がございますので、プライバシーの問題もありますので名前を言いませんが、的確に農民の気持ちを述べておる部分がございます。ちょっと時間をいただければと思います。
御存じのとおり、ガットの
農業交渉合意をしましたので、
日本に農産物が自由に入ってくるようになりまして、本当にこう丸裸でございまして、関税も下がってくるだろうし、農産物の
価格も絶対上がっていかないというようなことになるようでございます、米を初めとして。そういったことで、果たして何をつくってよいのか今はわからない
状況でございます。
昭和六十年に、私はさっきメロンの話をしましたけれ
ども、以前は養蚕をやっておりました。父の時代からやっておったが、養蚕がだめになった。何をしようか。ちょうどそのとき、球磨にはメロンが取り入れられておったわけですけれ
ども、メロンに切りかえて。まず、その当時反当たり百二十万円ぐらい上がっておりまして、これはよかったなというふうに本当に喜んでおったわけでございます。現在、メロンをつくっておりますが、十年前の
価格と変わらないんですよ。全く変わらない。そして、十年もつくっておりますと連作障害というものが出てまいります。そうしますと、ガス薫蒸なり、
農業なりを散布しなければできなくなってきます。生産コストが反当たり五十万円ぐらいであったのが、今は六十万円ぐらいかけなければ物ができない、そういうぐあいになっております。
また、台風災害が三年連続して来たおかげで、果樹園は台風に物すごく弱く、収入がないという
状況にもなっております。そういう中で、メロンの転作としてレタスをやったわけでございますが、東京や大阪で小売で二百五十円ぐらいするものが、一玉競り値が五十円でございます。しかし、その後、端境期をねらってハウスをかけてやった。
頑張っておるのですが、露地物でやっている方々にお聞きしますと、一玉五円になった、こういう畑作物の厳しい
状況を申されております。
そして、去年は里芋もやりました。これも水をかけてやったんです。物はそんなに悪くはなかったんですが、
中国から物すごい安いのが、三分の一ぐらいの値段で入ってくるということで、商売をする人はそれをレッテルを張りかえてそのまま市場に出す。見ましたら、現実に私のつくったものよりよいものができておるわけでございます。
野菜もそういうわけで、確かに畑地に水を引いて多様な作物に対応できるという理屈はわかりますが、現実にその畑地に水を引いて、現在国内で生産できるもので採算ベースに合うものが果たしてあるのだろうかという疑問が一つ出ております。
それともう一つ。
現状はもう後継者がいないんですよ。どこでもそうですけれ
ども、市町村長さん、議会の
皆様方、いろいろ
農業の後継者育成や
農業の
振興という大会に出てもおられますし、あるいは人の前で
あいさつもされますが、ところがJAの組合長さん方も、その方々、果たして自分の息子さんを後継者として
農業をさせておる方々がどれだけおられるでしょうか。いないんですよ。農協の組合長さん方全部、自分の息子さん、子弟の方は、学校を出して公務員なり団体の職員なりにしているわけですよ。
農業がいかにだめだということはトップの方がよく知っておられるわけです。
そういうような現状になっておるわけで、今、私のところの
農業者の平均年齢が六十歳を超えております。この事業が完成しますと七十歳を超えるわけです。息子さんは働きに行っており、その負担金をだれが払うのかなあと。神経痛で入院したつ糖尿病になったり、入院した人が払うということに相なるわけでございます。そういうことになりはしませんかというふうに心配をするわけでございます。
これは、その日その日生活する
農業者の意見でございますので、国家百年の大計を担う農水省のプランというものもございます。ですから、どちらがいいというわけでもございませんが、やはり両方あるわけでございます。
ですから、土地改良事業というものの有効性は当然私も認めておりますが、こういう日々生活する人々の、
農業者のあすの生活ということもかかっておりますので、やはりそこで一番大事なのは
合意形成をどうしていくか。これは済んでしまったことですので、しょうがないと思います。今さらだれがこうしたああしたなんて言ってもしょうがないことですし、それが事実かどうかもわかりませんので。
ですから、これからの農政のあり方として、規模拡大というか、規模拡大までいかなくても、だれかに土地を貸したいとか、また借りる側にしても使いやすい農地というものは非常に有用なものですので、土地改良事業というものはぜひ国策として進めていってもらいたいのですが、人々の心というものはこれほど食い違いが出てきておりますので。
特に土地改良事業組合の事務
局長さんも、私のおじになります、その方が一生懸命推進されております。それで、私の地元の相良村の高岡村長という方は、やはり私の応援をしてくださっている方の一人でございます。そして、反対派に回っておるリーダーの方々にも私の本当に昔からの知り合いもいっぱいおって、狭い地元でもやり合っているような
状況でございます。水が欲しい人、欲しくない人、また、その
合意形成をあれしまして。
ですから、これは一概に私がきょう要望して解決する問題ではございませんが、これはできれば今後の農政のあり方として御配慮をいただければ、そういうことでございます。だらだらと述べてしまいました。
これは、
大臣も政治家を長くしておられるので、私と同じような経験をずっとされてきたかと思います。それでぜひ、今後農政、特に構造改善におきまして
地域住民の感情に配慮した運営等を行っていただければと
大臣に要望いたしたいと思います。