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1995-12-06 第134回国会 衆議院 消費者問題等に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十二月六日(水曜日)     午後一時一分開議 出席委員   委員長 大石 正光君    理事 小野 晋也君 理事 岸田 文雄君    理事 佐藤 剛男君 理事 青山 二三君    理事 鮫島 宗明君 理事 実川 幸夫君    理事 田中 秀征君       赤城 徳彦君    小川  元君       小此木八郎君    穂積 良行君       赤松 正雄君    伊藤 達也君       上田 晃弘君    大口 善徳君       須藤  浩君    岡崎トミ子君       竹内  猛君    矢島 恒夫君  委員外出席者         参  考  人         (国民生活セン         ター理事)   青山三千子君         参  考  人         (東京経済大学         経済学部教授)         (東京消費生         活対策審議会委         員)      島田 和夫君         参  考  人         (東北大学法学         部教授)    河上 正二君         参  考  人         (北海道大学文         学部教授)   金子  勇君         特別委員会第二         調査室長    田中 宗孝君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月六日  辞任         補欠選任   中村 時広君     須藤  浩君 同日  辞任         補欠選任   須藤  浩君     中村 時広君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等国民消費生活に関する件      ――――◇―――――
  2. 大石正光

    大石委員長 これより会議を開きます。  物価問題等国民消費生活に関する件について調査を進めます。  本日は、特に高齢者消費生活について、参考人として国民生活センター理事青山三千子君、東京経済大学経済学部教授東京消費生活対策審議会委員島田和夫君、東北大学法学部教授河上正二君、北海道大学文学部教授金子勇君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見は、青山参考人島田参考人河上参考人金子参考人順序で、お一人十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきを願いたいと存じます。  それでは、まず青山参考人にお願いいたします。
  3. 青山三千子

    青山参考人 国民生活センター青山三千子でございます。よろしくお願い申し上げます。  最初に、本委員会におかれましては、日ごろ国民生活安定向上を図るために消費者対策を数々お進めいただきまして、まことにありがとうございます。御礼申し上げたいと思います。  私は、本日、国民生活センターの業務から見た高齢者をめぐる消費者トラブルという問題について御説明を申し上げたいと思います。  国民生活センターが二十五周年の折、ことしの十月でございますが、そのときにつくりましたリーフレットをお手元に配付してございますのでごらんいただきたいと思います。  この表紙のグラフでございますけれども、これは全国消費生活情報オンラインシステム通称バイオネットと言っておりますが、その相談件数年度別推移でございます。八七年度のところが急速に立ち上がっておりますが、この時期、このオンラインシステムが完成した年でございます。この八七年度以降、年々二〇%程度ずつ増加し続けまして、九四年度には百七十一万六千四百九十四件、約百八十万件を蓄積するに至っております。私どもは、このオンラインシステムで監視しながら、東に悪徳商法あらば全国警戒警報を発令し、西に欠陥商品被害があればすぐ必要な情報を提供するということができるようになってまいりました。本日は、このバイオネットに蓄積された情報に基づいて、高齢者被害実態を御説明申し上げます。  最初に、その概要でございますけれども、お手元に「高齢者消費生活をめぐる相談トラブル等実態」というぺーパーがございますので、ごらんくださいませ。  この表一、「消費生活相談年度別推移」でございますけれども、この中から「総件数」を見ますと、平成元年に当たる一九八九年度から九四年度までの五年間に、十六万五千五百四十二件から二十三万三千七百五十六件へと一四一・二%、約四割増加していることがわかります。九〇年度の対前年度比だけが〇・七%とわずかに減少していますが、これは八八年に訪問販売等に関する法律が大幅に改正されたいい影響が出たものであります。また、九四年度の対前年度比は七・五%増でありまして、それまでの九二年度一一・九%増、九三年度一二・九%増とふえてきた相談増加率が少し低くなっておりますけれども、これは、九四年度第四・四半期に発生しました阪神・淡路大震災や、その後のオウム事件などの社会的な影響もあろうかと推測しております。  ところが、この相談傾向高齢者に限って見てみますと、トラブル当事者年齢六十歳以上の相談は九四年度も一六・八%増加しており、六十歳未満層増加率五・五%を大きく上回っています。高齢者は六十五歳以上というふうに統計で考えておりますけれどもバイオネット、残念ながら十年、十歳ずつで刻んでおりまして、六十歳以上というような観点から御説明を申し上げたいと思っております。六十歳未満層増加率は五・五%でございますけれども高齢者相談は、九二年度一二・〇%増、九三年度一七・九%増に引き続いて、九四年度も二けたの増加を示したことになります。高齢者消費生活相談は、この五年間に一五二・六%と五割増ししていることがわかります。  次に、表二、「九四年度消費生活相談相談内容別件数」をごらんいただきますと、前年度に比べて相談件数の減少した相談内容に黒三角印をつけてございますが、相談の「総件数」で見ますと、「安全・衛生。「品質・機能」など相談内容を十四項目に区分したうちの「計量・量目」など、四項目が前年度より減少しております。しかし、これを六十歳以上と六十歳未満とに分けてみますと、高齢者消費生活相談は十四項目中三項目しか減少していませんが、六十歳未満層では七項目も減っております。高齢者相談で前年より減った三項目は、しかも相談総数に占めるシェア、比率が大変少のうございまして、高齢者相談全体への影響は小さいものであります。これらのことを考えますと、高齢者消費生活トラブルは広範囲に、多様な問題領域にわたって増加していると言うことができるかと思います。  表二はまた、高齢者トラブルが、「契約解約」、構成比が六四・四%でございますが、それから「販売方法」、四二・四%の構成比がございますが、この二つ問題領域に集中していることをも示しています。「契約解約」に関するトラブルは、六十歳未満相談でも六六・二%を占めていますから、高齢者相談だけが契約解約相談が多いわけではありません。しかし「販売方法」については、高齢者が四ポイント多くなっています。販売方法に関連するトラブル高齢者相談の一つの特色であります。  特に増加率で見ますと、「販売方法」のトラブル増加率は、高齢者で一三・九%ふえていますが、六十歳未満は四%の伸びにとどまっています。また、構成比には大差がないと先ほど申し上げました「契約解約トラブルにつきましても、対前年度比を見てみますと、高齢者が一八・七%増加しているのに対して六十歳未満は四・八%増にとどまっていまして、高齢者契約解約トラブルの増勢がやはり極めて著しいということがわかります。  これらのことをまとめますと、高齢者消費生活トラブルには三つポイントがあります。第一は相談が目立ってふえ始めたことであり、第二はトラブルが広範囲に及んでいることであり、第三に「契約解約」「販売方法」が特に増加しているということであります。  次に、相談の中から被害消費者身体、生命にかかわるものを、表三に危害情報としてまとめてございます。危害情報にも高齢者には三つポイントがあるかと思います。高齢者商品関連人身事故の第一のポイントは、これも目立って増加しているということであります。高齢者危害情報の対前年増加率は、九三年度に四一・六%もふえています。九四年度は二九・四%増ですが、六十歳未満の前年度比一三・〇%増、五・五%増と比べますと、高齢者商品関連事故は非常にふえているということがおわかりいただけるのではないかと思います。  危害情報の第二のポイントは、高齢者商品関連被害は健康に関連した事故が多いということであります。表三の下に「九四年度危害情報件数上位項目」がリストアップしてございます。これは、表三の括弧書きに「消費生活センターの「危害」」とございますように、危害情報を私ども消費生活センターからの危害と、それから協力病院二十病院からの危害と、両方のシステムを持っております。統計的に言いますとこの二つはダブるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、バイオネットの中から、消費生活センターから集まった危害を調べたものでございます。  このリストを見ますと、危害情報原因となった商品サービスは、全体では化粧品、美容、健康食品などとなっていますが、六十歳代になりますと、第一位クロレラ、第二位医療器具。七十歳代になりますと、これに布団高麗ニンジン殺虫防虫剤、果物、大豆大豆健康食品としてとられたものでございますが、それから敷物など、思いがけない商品上位を占めて登場してまいります。高齢者は、健康を求めて買い求めた商品によってかえって健康に被害を受け、かけがえのない残りの人生を危うくしていると言っていいのではないでしょうか。  高齢者商品事故の第三のポイントは、まことに思いがけない事故であることであります。事故年齢に関係なく思いがけないものではありますが、リストアップされた事故原因商品事故発生機序などを見ますと、高齢者商品事故は若い層以上に思いがけないものであります。  リスト商品に、六十歳代第十位として自動車が挙げられておりますが、これは急発進、急加速、暴走、追突、衝突によるもので、若い年代層と違って、これらの事故身体被害に直接結びついて上位に来ているということがわかります。また高齢者はカーペットでもつまずいて骨折をいたします。おふろでも滑って重傷を負います。衣服に火が燃え移って大やけどをするなど、思いがけない事故身体的な被害は深刻なものであります。  これら消費生活相談危害情報概要を申し上げましたが、相談でも危害でも、高齢者は深刻な痛手をこうむっています。  次に、その具体的な内容について申し上げたいと思います。  まず、高齢者消費生活相談特色であります販売勧誘トラブルの問題でございますけれども、これにつきましては、ことしの敬老の日に出しました「消費者被害注意情報No.1 こんな勧誘にご注意! 高齢者販売勧誘トラブル」という情報をお手元にお配りしてございます。これは少し分厚うございますので、まとめて申し上げますと、高齢者消費生活相談特色である販売勧誘トラブルには八つのポイントがあるかと思います。  第一の特色は、高齢者販売勧誘の手口に巻き込まれやすくなったということであります。「注意情報」のグラフのとおり、訪販法改正で一時減少した被害が、この二、三年、再び増大しつつあります。  第二の特色は、「注意情報」の二ページ目の上段に書いてございますように、契約当事者の属性でございますけれども高齢者相談の三分の二が女性トラブルであるということであります。  契約当事者高齢者女性が六五・七%、男性三四・三%でございますが、相談全体でその傾向を見ますと、女性は五九・九%、男性三八・七%でございますから、高齢者女性被害は多いと言っていいかと思います。もちろん、御存じのとおり高齢者層女性人口比率が多うございますけれども、それでもやはり女性被害という点に注目していいのではないかと思っております。  第三の特色は、高齢者被害無職の人の被害であるということでありまして、その影響は当然ながら深刻なものであります。高齢者トラブル被害者の五八・二%が無職ですが、相談全体では無職は九%にすぎません。  第四の特色は、高齢者トラブル契約金額が極めて大きいことであります。  高齢者被害契約金額は一件当たり平均百一万円ということでございまして、「注意情報」にございますように、約六百五十六億九千万円という数字が出ております。ちなみに、私どもバイオネットが集めております相談社会全体にある苦情の一%程度であろうというふうに推測されますので、この被害額社会全体として極めて大きいと言わなければならないかと思います。  この高齢者被害金額一件当たり百一万円に比べますと、六十歳未満平均は七十六万六千円ということで、大差があると言っていいかと思います。  販売勧誘に関する第五の特色は、高齢者被害現金払いが多いということであります。高齢者トラブルの五〇・二%と半数以上が現金払いでありまして、クレジットは四九・八%ありますけれども、これを六十歳未満現金払い三四・一%、クレジット六五・九%と比べますと、現金払い高齢者被害特色であると言えます。  六番目の特色は、高齢者トラブルの九割は無店舗販売店舗によらない買い物であることであります。  訪問販売によるものは六十歳以上のトラブルの四五・三%ありますが、六十歳未満では三一・二%。SF商法催眠商法でございますけれども、このSF商法では、高齢者被害の二四・八%ですが、六十歳未満被害の一・九%と大差があります。高齢者が一人寂しく家庭や地域に置き去りにされている様子が目に浮かぶような感じがいたします。  第その特色は、高齢者の健康不安、経済不安、そして心の不安という、いわば三K不安につけ込んだトラブルが多いということであります。「注意情報」の三ページ以降に主な事例を示してございますけれども布団健康食品治療器などの被害は、高齢者が健康の不安を解消しようとして悪徳商法にだまされていることを示しています。全国事例には、経済不安につけ込まれた利殖商法で何千万円もの大金を失った例が珍しくありません。  第八の特色は、高齢者契約能力判断能力意思決定能力に問題がある事例が少なくないということであります。国民生活センターには次のような事例がございます。  アルツハイマー状態になった父が訪問販売で金の先物取引をしたことがわかった。しかし、父は契約したことすら覚えていないし、わからない。これは娘さんからの相談で、七十一歳の被害者でありました。  次に、七十四歳の女性被害として、砂糖、コーヒー、コットンなどの取引で老後のために用意したお金がなくなりそうだ。セールスが、値崩れをする、すぐ乗りかえようと電話で言うので、言いなりになるより仕方がなかった。  もう一つありまして、これはもう少し若い六十二歳でございますけれども、株の信用取引で、今決めてくれと言われて、とっさ判断ができず、二千七百万円以上損をした。  とっさ判断ができるかどうかということが、やはり若い世代に比べますと、かなり差のあるところでございます。  悪質商法で大変な被害を受けていながら、あのセールスマンだけはいい人だと被害を受けた高齢者が言うことも、豊田商事事件以来、別に珍しいことではありません。  最後に、高齢者危害情報について三つ資料をお手元にお配りしてございます。「くらしの危険」百七十九号「転倒事故」と百四十六号「高齢者骨折」と百七十二号「大人のやけど」でございます。  転倒事故は、病院からの危害情報の一四%を占めて交通事故に次ぐ被害となっていますが、その約三割は六十歳以上の高齢者であります。そのことがきっかけで、一番後ろのページに書いてございますように、寝たきりや痴呆症状になったりすることが問題であります。  「くらしの危険」の「高齢者骨折」も、高齢者事故重傷になりやすく、機能回復が難しいということを示しています。  やけどについての「くらしの危険」では、高齢者とっさ運動神経反射神経が衰えて、ふとしたはずみで大やけどをします。しかも、死亡率が大変高い。見開きますと、ページ右下に、高齢者に危険な被服の火災についての事例がございます。仏壇のろうそくの火が衣服に燃え移って全身やけどを負った八十歳の例でございますが、何年か前になりますが、渋い演技が忘れられない名女優であった浦辺粂子さんが台所でひとりで、ひとりでというところも問題ですが、ひとりで食事をつくっておられて、こんろの火が着衣に燃え移って亡くなられたという事件もございました。懐炉とか湯たんぽとか電気敷布などの低温でもひどいやけどをしています。  これらのことを見ますと、商品や設備や生活環境は、もっと高齢者に配慮した設計が必要であります。  時間が過ぎました。最後一言だけお願いを申し上げたいと思います。  現在の高齢者トラブルは、我が国社会高齢化への対応のおくれによるものがかなりあると思いますが、今後の高齢者の増大は、六十歳以上は二十一世紀には三三%を超えるという形になります。そのスピード、その率の高さを考えますと、今後の対応によって国民生活には大きな影響が及ぼされると思います。高齢者は、加齢とともに能力障害機能障害社会的な不利、すなわちハンディキャップを負うものであります。これらに対応する高齢者のための特別な新しい消費者対策が、ハンディキャップをカバーするためにぜひとも必要であります。どうぞよろしく御審議、御検討くださいますようにお願い申し上げます。  少し長くなりまして失礼いたしました。以上で終わります。(拍手)
  4. 大石正光

    大石委員長 ありがとうございました。  次に、島田参考人にお願いいたします。
  5. 島田和夫

    島田参考人 御紹介いただきました東京経済大学島田和夫でございます。本日は、お手元資料レジュメがあると思いますが、「高齢化社会における消費者問題の重要性について」という、やや基本的なお話をさせていただきたいと思います。  私の専攻は消費者法でございますが、ここ九年ほど東京都の消費者行政審議会消費生活対策審議会委員あるいは専門員をいたしております。この審議会ではこれまで、高齢化情報化サービス化など、社会経済環境変化に即応した消費者政策あるいは消費者行政あり方審議してまいりました。高齢化に関しましては、一九八七年の「情報化高齢化社会進展に即応した消費者行政あり方に関する答申」と一九九四年の「有料老人ホーム及び類似施設に関する表示の適正化についての答申」が出されております。私は、いずれの答申につきましても、審議及び答申書きに加わっております。本日は、これらの経験の中で私が考えてきましたことを述べさせていただくことにいたします。  時間の制約もございますので、本日は、「高齢化社会における消費者問題の重要性」、換言いたしますれば、我々がこの問題に取り組まなければならない理由について、やや基本的な事柄に属すると思いますが、お手元レジュメに従って述べさせていただきます。高齢消費者問題の対応策を考える場合、このような基本的な事柄を押さえておくことも重要と思われるからでございます。  高齢消費者問題が本格的に議論されるようになりましたのは、一九八〇年代中ごろに大きな社会問題となりました豊田商事事件、すなわち金の現物まがい商法以降と考えられます。その後も高齢者消費者被害あるいは苦情の例が各所で報告されております。先ほどの国民生活センター統計でもそうでありますし、さらに、東京都が発行しております月刊誌「今月の消費者相談」、これは毎年八月号に「高齢者消費者トラブル」という特集を行っております。  そのことしの八月号を見ますと、高齢者、ここでは六十歳以上でございますけれども相談件数は年々増加傾向にあり、一九九四年度、平成六年度の相談件数は前年と比べて二〇・六%の増加相談件数全体に占める割合は八・一%であったと報告されております。このような高齢消費者相談苦情被害増加が、私たちが高齢化社会における消費者問題に取り組まなければならない理由ということにもなりましょう。  ただ、このことは余りにも一般論でありまして、高齢化社会における消費者問題を考察する場合には、もう少し立ち入って問題の所在を分析してみる必要があろうかと思われます。ここでは、高齢化社会における消費者問題を考察する際有用と思われる基本的な事柄を五点指摘しておくことにいたします。すなわち、一、高齢者市場形成、二、高齢者消費者取引当事者化、三、被害要因複合性、四、被害回復困難性、五、問題の普遍性であります。  第一に、高齢者市場形成という点を指摘しておきます。  総務庁の「長寿社会対策フォローアップ報告平成七年版によりますと、高齢者のみの世帯に注目し、他の世帯と比較してみると、消費水準の目安となる世帯人員一人当たり消費支出額については、高齢者のみの世帯は他の世帯よりも高くなっているとし、教育費と土地、住宅のローン返済二つの大きな負担がほぼなくなることが、高齢期では収入が少なくなる割に生活にゆとりができる大きな要因となっていると報告しております。  六十五歳以上の高齢者は、一九九四年現在総人口の一四・一%と報告されております。さらに、二〇二〇年には国民の四人に一人以上の割合が六十五歳以上になることが予測されております。このように、一定の購買力のある高齢者が量的に増大し、今後も増大することが予測されているのですから、いわば高齢者市場あるいはシルバー市場形成され、その発展も見込まれていると言えましょう。実際、高齢者を対象にしたシルバービジネスとかシルバーサービスと言われる、例えば有料老人ホーム事業などの展開が見られます。これが第一点でございます、  第二は、高齢者消費者取引当事者化という点でございます。ややわかりにくい表現でございますけれども、次のような意味でございます。  かつて高齢者の多くは、第一線職業活動から退いた引退後には子供などと同居して、家族に扶養される存在であったと一般的に言えます。そこでは、高齢者取引当事者として事業者と相対することはまれであったと言えましょう。しかし、核家族化進展子供との同居を好まない高齢者個人志向の意識の拡大などによって、近年、高齢者夫婦のみの世帯ひとり暮らし高齢者世帯がふえていることが指摘されております。また、子世代と同居している場合でも、子世代の妻の仕事を持つケースがふえていることから、この場合にも高齢者消費生活に関する取引当事者として登場せざるを得なくなっている場合がふえていると言うことができるかと思います。  第三は、被害要因複合性という点でございます。  さきにも述べましたように、高齢者消費者被害をこうむる例がふえていますが、その要因をさらに細かく見てみますと五点ほど挙げることができるであろうと思われます。  まずは、社会の中の孤立という点でありまして、社会第一線を退いた高齢者はいざというときに相談相手がいないという場合が多く、社会に一人残されたような孤独感をつかれ被害をこうむることになります。また、伝統的で変化の少ない社会では、高齢者は若いときから習得してきた知識や情報を多く持っていて、購買決定する際に何らの支障もなかったと言えますが、現代のように変化の激しい社会では、過去の知識や情報が余り役立たず、次々に開発される新製品やニューサービス、さらにはクレジット取引などの新しい取引形態について、商品を適切に選択したり取引内容を的確に理解することが困難になっております。  次に、高齢者には心身機能の低下や健康への不安があるという点を指摘できます。  高齢者というと直ちに心身機能が低下していると考えやすいのですが、専門家の意見等を聞きますと、個人差が激しく、寝たきり老人の増加も予想されてはおりますけれども、一般的には多くの高齢者はふだんからの健康管理に注意すれば日常生活を送るには支障がなく、おおむね健康状態は良好であると言われております。ただ、ほとんどの高齢者が心身機能が低下することの不安や健康に対する不安を持っていることは確かであります。このような不安につけ込まれて無用なあるいは効用のない商品を購入してしまうということが起こると言えましょう。  次に、高齢者には経済生活の不安があるという点を指摘できます。  人生八十年時代と言われますように、平均寿命が伸びている現代日本社会では高齢期間がかなり長期化しております。長期にわたる高齢期高齢者が充実した消費生活を送るには相当の資産あるいは収入を必要とするということになります。その結果、手持ちの資産ではその後の生計を無事に維持できるのか不安になり、資産運用に関するもうけ話に乗せられやすいということになります。豊田商事事件がその典型でありました。  最後に、高齢者の攻められやすさを指摘できます。  高齢者は、これまで述べてきましたようないわば弱点を持っていますので、事業者がこの弱点を利用しょうと思えば高齢者は攻めやすい対象であると言えます。これを高齢者側からいえば攻められやすさということになります。このような、人の弱点を利用する悪質な事業者に対しては強い取り締まりが必要なのではないでしょうか。  以上が被害要因複合性です。  次に、基本的な事柄の第四点目として被害回復困難性という点を指摘しておきます。  高齢期はいわば後のない人生でありまして、高齢者は収入増や将来における発展性を期待できないのが一般的であります。このような状況に置かれた高齢者取引上の被害をこうむって多額の債務を負担してしまった場合や、多額の出資をした事業者の倒産などの理由で出資金が返還されなくなった場合には、残された人生で生活を立て直すことは極めて困難であります。この点、高齢消費者については青壮年期の消費者問題以上に強度の被害発生の予防策や保護策が講じられる必要性があるということになりましょう。  最後になりますが、第五は問題の普遍性という点を指摘しておきます。  高齢化社会におきましては、人の一生に占める高齢期間の割合が高くなることを意味しています。したがいまして、高齢期間のかなり長きにわたる消費生活を充実したものにするためには、高齢期を迎える前に備えが必要です。それも経済的な意味での備えということだけではなく、余暇の過ごし方や消費生活の知恵などについての備えをも含めてです。つまり、すべての人が早い時期から人生の生活設計において長期にわたる高齢期間があることを視野に入れておかなければならないということになろうかと思います。  また、高齢者消費者問題を解決するには家族や近隣の者の協力や支援が必要であります。したがって、高齢化社会における消費者問題は単に高齢者の問題であるばかりではなく、いずれは高齢者となる青壮年の問題でもあり、より広く言いますと全世代の問題でもあると言うことができます。  以上が、高齢化社会における消費者問題の重要性社会全体がこの問題に取り組まなければならない理由についての私の陳述でございます。  最後に、以上述べてきましたように、高齢化社会における消費者問題は最重要課題の一つと思われます。問題解決のための立法の整備を、本日、立法府の皆様にぜひお願い申し上げて、私の陳述を終えたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  6. 大石正光

    大石委員長 ありがとうございました。  次に、河上参考人にお願いいたします。
  7. 河上正二

    河上参考人 東北大学の河上でございます。私の方からは、自分め専門が民法であるということもございますので、どちらかと申しますと高齢者消費生活における特に取引あるいは財産管理をめぐる法的な問題の一端に焦点を合わせてお話をさせていただこうというふうに思います。  お手元の方にレジュメとそれから無能力者制度についての以前に書きましたものを資料として配らせていただいております。レジュメは細かくいろいろ書いておりまして、これは二時間、三時間とかかる話でございますが、簡単にはしょりながら要点を述べさせていただきます。  我が国の高齢化の現状あるいはその背景についてはもう多言を要しないところでありまして、むしろどうしてこういう高齢化における消費者問題というのが生ずるのか、そのあらわれ方の特質についてまずお話しすることから始めたいと思います。  レジュメの積数字の二からですけれども高齢者というふうに申しましても何もそれは特別な存在ではございませんで、だれもが年をとって老人になっていくというわけでして、高齢者の特質と言われているものの多くは実は消費者の特質というものと変わりません。  つまり、情報と交渉力の恒常的な不足という状態の中で有形、無形の危険にさらされて、望まない取引や思いがけない不利益な条件に拘束されたり、あるいは一方的に損害をこうむるという可能性を秘めたひ弱な存在ということであります。しかも、これは自然人、つまり生身の人間ということが前提でありますから、被害がしばしば人身損害に結びっくということも多いわけですし、一たび損害が生じますとほかに負担を転嫁するということもできない、かといって独力で紛争を解決するという力にも乏しい、こういうわけであります。  注意すべきは、こうした一般消費者の特質に伴うリスクが高齢化ということによって増幅されていくというところにあるわけであります。  心身の活動機能、先ほど必ずしも皆さんが低下するというわけではないとおっしゃいましたけれども、やはり全体としては低下していくということでありまして、高齢者というのはそうするうちに社会的にも孤立しがちである。そして、これまで身につけてきた知識が陳腐化していったり、あるいは健康、将来の経済生活に対する不安感といったようなものがあって、問題に必ずしも適切に対処することが一般消費者以上に期待できないという状況にあります。  そして、経済的にも身体的にも被害の回復力が低下しているというために、一たび事故や損害が発生いたしますと、原状復帰、つまりもとに戻るということが非常に困難である、ひどいときにはそのまま寝たきりになって死んでしまうというようなぐあいであります。  第二は、高齢者がこれまでの労働によってしばしばかなりのまとまった可処分財産を保有しているということであります。もちろんこれは二極分化していると言った方がいいのかもしれませんが、相当な財産を持っている高齢者がいる。特に不動産が異常に値上がりしたというようなこともあって、高齢者がそのような形で財産を持っているというような場合も少なくありません。これは老後の余金というふうにも呼ばれているものでありますけれども高齢者のこうした資産をねらった悪質な業者がその高齢者の心身の不安につけ込んだり、あるいは強引な、かつ巧みな販売攻勢をしかけますと、高齢者の防衛能力というのはもうほとんどないに等しいということで、たやすく食い物にされてしまうというわけであります。そして、悪質業者というのは弱いところから集中的に攻撃をかけるというわけでありまして、先ほど来お話のありましたように、宗教関連商品でありますとか、投資関連商品あるいはSF商法といったような形で、高齢消費者被害が多発しているということであります。  こういう場合に、自己責任原則というのを強調いたしまして、高齢者にもっと賢くなるように、強くなるようにというふうに要求することも大切なわけですけれども、しかし、そこにはおのずと限界があるわけでして、やはり何らかの形で社会的な支援策を講ずることが必要となります。  ただ、未成年者などのような場合と違いまして、高齢者の場合は、老い方の程度あるいは老いの進行が人さまざまでありまして、その保護の必要性というのも一様ではないということであります。したがって、高齢者問題の処理の難しさというのは、その著しい個体差に合わせてどういうふうに柔軟に対処していくかということにあるわけであります。  ごく一般的に、私としては、次のような基本的なスタンスで臨むべきであろうと考えております。  すなわち、個人の主体性あるいは自律性、そして残存能力を尊重しながら、これまで、弱い人間だから保護しようというのではなくて、足りないところを支援しようというふうに発想を切りかえていって、できるだけ本人の自己決定権を尊重する。そして、衰退しつつある能力への必要な支援を考えるということであります。その結果、社会から老人を隔離するというよりは、むしろ社会にうまく組み込んでいく、ノーマライゼーションということが重要な課題となっていくというわけであります。  短い時間ですが、若干具体的な意見を申し上げます。  まず、物に関してでありますけれども、物については、これは高齢者の場合、利用可能なオプションというものをそろえる。そして、その情報がきれいに調整された形で高齢者のもとに伝わるというふうに考えていくことが必要であります。  したがって、高齢者のニーズに合った使いよさとか安全確保というものを設計思想とした商品が、現在の高度な技術によって支えられるということが望ましいわけでありまして、しかも、そのような商品についての情報提供というものを組み合わせていくということが重要になります。  高齢者向けの商品の安全性というのは、恐らく、通常の合理的な人間の考えている安全性とは違うというふうに思われます。昨今施行されましたPL法における欠陥概念というものを考える上でも、高齢者向けの商品の場合はそういう点に注意していかないといけないというふうに思われますし、商品については、シルバーマーク制度のようなものも考えていっていいんじゃないかというふうに思っております。  第二は、取引の局面についての具体的な意見であります。  取引に関しましては、現行の民法典では、いわゆる行為無能力者制度というものを用意して、判断能力に問題のある方を支援する制度を設けているわけでありますけれども、御承知のように、禁治産者、準禁治産者といったような制度というのはかなり画一的で硬直な制度でありまして、高齢者の多様な判断能力の劣化というものに対応するには、必ずしも適合的でないというふうに思われます。  その問題点については、資料の方で述べさせていただきましたので省略いたしますけれども、こうした無能力者制度というものを、何らかの形でもう少し使い勝手のいいものに変えていくということが必要になろうかと思います。特別法の領域では、訪問販売法などで若干の高齢化による判断能力の低下というのも考慮されているわけですが、まだまだ一般的な対処は不十分ということであります。  そこで、一つの立法的な課題としては、いわゆる成年後見制度というのを速やかに導入して、当事者の能力の剥奪を必要最小限に抑えながら、必要な範囲で柔軟に後見制度が利用できるようにする。そして、あわせて財産の管理への責任ある助言とか相談を充実させるということが必要になります。もちろん、ふさわしい後見人がいつも得られるとは限りませんから、一定の公的な機関あるいは公益法人など、自然人以外にも後見人となる道を開くということも重要な課題になってまいります。  さらに、技術的な問題ですけれども、現行制度では戸籍に無能力者となることが公示されるわけでありますけれども、そのような点にかなりの心理的な問題もあると言われておりまして、これもまた工夫が必要であります。  もう一つは、契約の確定的な成立までの時間を稼ぐことでありまして、ゆっくり冷静に高齢者が考えるチャンスを高齢者に保証するという制度設計が必要となります。顧客が高齢者であるということによる事業者からの説明義務の開示ということに加えまして、私としては、現在あるクーリングオフ制度のようなものをもう少し高齢者に関して延期する、長期化するというようなことが考えられてはどうかということであります。  次に、成年後見制度との関係で、高齢者の財産管理あるいは資産の運用というような問題にちょっと触れさせていただきます。  要するに、本人の通常の判断能力が期待できないときに不法な商法からガードをする、あるいは、預貯金を通常の場合なかなか管理できなくなった人に対して、適切な形で管理するということが必要となった場合、しかるべき人が後見人となってその役割を遂行できるようにというふうに考えていく必要がありますが、その場合には、本人の能力を客観的に判定できるような公正な機関というのが必要になってまいります。最終的には、これは何らかの形で家庭裁判所などが関与せざるを得ない制度でありますけれども、そうした社会的なインフラの整備というのは必ずしも十分ではない。  それから、もう一つ重要なのは、身上監護の問題であります。  これも、実は後見人に期待されてもなかなかできないところがあるわけでして、現在の成年後見制度で身上監護を財産管理と結びつけようという意見が随分強いわけですけれども、やはりここは、大事なところは、むしろ社会的なそうしたインフラの整備をして、きちんと老人の医療体制あるいは看護体制を物理的に整えていく、マンパワーをいろいろきちんとそろえるというところが実は一番大事な前提問題であります。これは実はお金のかかる問題でありますけれども、しかし、ぜひともこれは早急に推進していただきたいというふうに思うところであります。  ただ、法律的には、身上の監護を担う法的な仕組みあるいは権限というものがはっきりしませんので、この点は、成年後見制度などを考える上で、きちんと明確にしていく必要があろうかというふうに思っております。  あと、実は有料老人ホームの問題についてもいろいろお話ししたいことがございましたけれども、またもし御質問があればということで、ここは省略させていただきます。  以上、駆け足で申しましたけれども、規制緩和ということが叫ばれる中で、高齢者の問題というのは、実はそのまま市場原理にゆだねて解決ができるような問題ではないと私は考えております。仮に高齢者の自己責任を論ずるといたしましても、そうした形での公的なバックアップ、そして市場の環境整備というものが並行して行われない限りは、やはり高齢者は結局は食い物にされてしまうという存在になろうかと思います。  したがって、自律と支援、そして必要な保護の見きわめということが重要でありまして、こうした社会的なインフラの整備というものの重要性ということを強調させていただきまして、陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  8. 大石正光

    大石委員長 ありがとうございました。  午後二時より本会議が開会されますので、この際、暫時休憩いたします。     午後一時四十九分休憩      ――――◇―――――     午後二時十六分開議
  9. 大石正光

    大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  それでは、金子参考人に御意見をお伺いいたします。
  10. 金子勇

    金子参考人 御紹介をいただきました北海道大学の金子でございます。  私は、高齢社会論という形で、社会学の立場からこれまで高齢者と高齢社会あり方について研究をしてきたものでございまして、今お手元に一枚の資料を配付していただいておりますので、これに基づきましてお話をさせていただきたいと思います。  まず、この特別委員会でもお使いになっている高齢社会高齢化ということでありますが、ここに書いておきましたように、基本的には割り算でありますから、高齢化率が高くなるということは、俗に言う長寿化とそれから少子化が同時進行することによってはね上がる。したがいまして、高齢社会というのは、一方では長寿化、他方では少子化、この両方を目配りして考えておかないと非常にわかりにくい社会でもあるということでございます。  当然ながら、高齢者の消費行動、本日は消費問題という形よりは、高齢者あるいは高齢社会の消費の特徴というような観点から私は申し上げたいと思います。  六十五歳という形で年齢は切るわけでございますが、私たちの社会学という学問では、資料の右の枠で囲んでおりますように、年齢とともに役割が縮小する存在として高齢者を位置づける。したがいまして、高齢化対策の筆頭は、その縮小させられる役割を創造、維持、拡大、回復するという、そういう方向で考えていくというような物のとらえ方をしているわけでございます。  AとBというふうに二つに分けましたのは、左側のAというのは、はっきり言うならばこれまでの二十世紀の高齢化社会、Bの方はこれからの二十一世紀の高齢社会、私はその両方についてこれまで仕事をしてきたものでございますが、そのAとB、共通点とそれからこれからのBの特徴について、以下申し上げたいと思います。  左側の、これまでの高齢化社会におきましては、高齢者の位置づけが、老いというものをかなり否定的にとらえ、例えばそれは、大きな問題としては痴呆の問題でありますとか、寝たきりの問題でありますとかいうようなとらえ方が多かったのでございますが、今後の高齢社会におきましては、老いは考なり、考は老いなりという、これはもともと同じ意味でございまして、こういうような観点から高齢者をとらえることができるし、そして高齢者自身がそういう物事の判断力を非常に持ち続けられる方が多くなるのではないか。  具体的な特徴を申し上げますと、これまで私がインタビューなどで七十、八十の方にお会いしたときでは、教育期間が短い方が多い。それから、自分で自動車の運転ができない方が非常に多い。これからの高齢社会では徐々に、教育期間が長い方、そして自分で車の運転ができる方が非常に多くなる。そのことが実は消費行動をかなり変えていくのではないかというふうに私は予想をしているわけでございます。  それは結局のところ、高齢者のライフスタイルというような観点から考えますと、AとBにこれはかなり際立った特徴が出るような形で書いているのではございますけれども、今六十五歳以上が千八百五十万人。私がその年代に差しかかりますと三千三百万人。もうとても別枠の存在ではないし、痴呆、寝たきりだけの問題ではなくて、社会全体が高齢者で充満するわけでございます。  例えば、Aの「ライフスタイル」の六行目のところに書きましたような余生の感覚ということではどうしようもなくて、これからは余生ではなくて、Bに書いておきましたように本当の人生、これからが人生である。これを本生、言葉としてはまだこなれてはおりませんが、そういう形で考える。  そして、別枠ではないというのは、つまり社会システムの動きの一部を担う存在である、それから生活行動の範囲が広がる、これは先ほど申し上げた自動車の運転免許を持つ人が非常に多くなるということからも考えられるわけです。この本生の感覚、それから社会システムの一部を担う生涯現役の意向が非常に強い、そして生活行動の範囲が広いという三つのことによって高齢者の消費行動はかなり拡大するものと思われます。  それから、少子化、子供が少ないことを受けまして、おじいさん、おばあさんが孫に対してできるだけのことをやりたい、してあげたいということで、少子化を受けて子供のマーケットが高級化をする。今まで以上におじいさん、おばあさんたちが孫に対して多額の出費をしていくような社会になるだろう、こういうことがライフスタイルの点からは予想することができます。  次に、そのライフスタイル、積極的であるとか合理的であるとか、あるいは介護の受益者ではなくて介護の提供者であるというような、さまざまな新しいライフスタイルが予想されておりますので、そういうものを踏まえまして、下の方のAとB、「消費行動の特徴」をかいつまんで申し上げますと、まずこれまでの、つまり二十世紀の高齢化社会の中での高齢者の消費行動と、これから二十一世紀の高齢社会に向けての消費行動で共通点が四つぐらいあります。  それはいずれも近隣の商店での購入に際してはアフターサービスを非常に重視をする、そういう判断基準で物を買うということがあります。それから、通常の量販店ではなくてアフターサービスを求めるわけでございますから、接客態度や商品説明についてもかなり重視をする、そういう判断基準でお金を出す。それから交際費、これは冠婚葬祭、それから孫とのつき合いでかなりの出費を実は余儀なくさせられるわけでございますが、先ほどからの御意見にもありましたように、六十歳以上が相対的には豊かな世代になっておりますので、これにたえ得る方が非常に多いだろうというふうに思われます。そして消費相談、これは最初青山参考人から出ましたように、契約解約販売方法についての相談事が急増してきている。これはこれまでの高齢化社会、それからこれからの高齢社会、共通に見られる消費行動でございます。  次に、教育期間が長くなった高齢者か多くなる。自動車の運転免許を持つ高齢者が多くなる。これからの二十一世紀に向けての高齢社会でその高齢者の消費行動の特徴といいますのは、Bの右下の方に書いておきましたように、今まで以上に相対的に豊かな人が出てくる。そのために、下から二行目に書きましたように、よいものであれば少々高くても購入する、このようなライフスタイルに伴う消費行動が出てくるのではないか。  そして、実は年齢規範というのは、年寄りは年寄りらしくという規範が徐々に弱くなってきて、自分の生き方の中で物を買ったりサービスを買ったり、あるいは福祉についての、あるいは医療についての一定の判断をする人か多くなるので、年寄りらしくということは当てはまらなくなって、いわば自己表現を優先する、そのようなライフスタイルの中での消費行動が多くなるのではないか、こういうふうに予想できます。  従来は流行や新製品には高齢者の場合は余り自分からは関心を示さない方が多かったのでございますが、これもまた少しずつ変わっていくのではないか。例えば旅行についても、従来はパック旅行を中心としておりましたけれども、ますます個人化して、あるいは夫婦のみの高齢者世帯が大変多うございますので、そういう形でのいわば小家族化を受けた形での消費行動が一方では盛んになる、このように考えることができるのではないかというふうに思っております。  それで、上の方のAとBのところで書きました四行目、五行目。これまでの高齢化社会では三世代同居の高齢者が中心、そういう家族の組み立て方でありましたが、これからはひとり暮らし高齢者夫婦のみが徐々にふえてきて、最大の課題であります保健と医療と福祉についても、私のこれまでの経験でいいますと、日本人の場合は病気好きの福祉嫌いという一定の判断が今のところ残っておりますので、いきなり横並びというのはなかなか難しいのではないか。 つまり、病気に対してはたくさんのお金を出すけれども、福祉に対しては余り出さない。病気であるということは他人から指を指されないのでありますが、福祉のお世話になるというのはまだ一定の心理的なバリアがあって、それに対してこれから保健、医療、福祉の連携を考えていく場合でも、あわせてそのバリアを取り除くような方向で高齢化対策あるいは長寿対策ということが必要なのではないかというふうに思います。  最後に、ひとり暮らし高齢者夫婦のみを中心とする高齢者の住みか、住宅でありますが、徐々にマンションに切りかわっておりますが、このマンションが二十年後には修理の必要がある。その修理に伴う費用を今後どこまで充当できるか、積み立てる能力があるかということもあわせて考えておきたいということで、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  11. 大石正光

    大石委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  12. 大石正光

    大石委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
  13. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員 ありがとうございます。  本日は、四人の参考人の方々から有益な、また示唆に富むお話を承りました。  青山参考人は、長い間消費者問題に取り組まれて、センターの理事としまして、私も通産省の消費経済課長というようなことで、よきライバルといたしましてやらせていただいたことを思い出すのでありますが、本日はポイントを本当につかれましたお話を聞かせていただきました。またいろいろこれを契機に立法への一つの研究課題か出たのではないかと思われます。  また、島田参考人から、すべて青壮年はいずれ年をとる話なんだから、そういうことを重視して考えてほしいという、まさしくそういうことだろうと思います。  ただいま金子参考人から、ちょうど金子参考人が、昭和二十四年といいますと団塊の世代でございますが、二十二年から二十三年、二十四年に生まれた方々というのは八百万人おるという。今一年に百二十万人前後でございますから、三年合わせても三百六十万人。八百万人と三百六十万人の時代が、昭和二十二年に生まれた方がちょうど今四十八歳ぐらい。二十四年で四十六歳。四十六、七、八。会社に行けば部長一歩手前とか部長とかいうところでございまして、おっしゃるように、世界はむしろ団塊の世代の方々が、金子参考人の時代に三千三百万人とおっしゃられましたが、アメリカもそうなんですね。アメリカも人口が倍で六千数百万人の世代が、太平洋を挟んて世界史上かつてない一つの大きな、実験と言ってはいかぬのですが、世界史にない状況が出てくる。そこに、今回の高齢社会における、そういういろいろな既存の法律がいいのかどうなのかという問題を含めて、課題を提起しているのじゃないかということをつくづく感ずるわけであります。  また、河上参考人は、特に法律の面から非常に、私も、そういう成人関係での今の民法の無能力者問題の裏腹の問題として、果たして今の民法体系の禁治産制度、準禁治産制度、あるいは無能力者の問題、未成年者の問題にかかわって、逆の問題は高齢者の問題でありますから、それを、いかに法律の取り組みをしなきゃいけないのかな。少なくとも研究課題に、幾つもの今までの先生方の論文というのはございますけれども、政府として取り組まなければならない問題ではないか。単に年金とか介護だけの問題ではない、そういう環境整備の問題か根底にあるのじゃないか。相続の問題もしかりであります。  そんなことを感じながら、四参考人の方々に感謝を込めつつ、また、これに伴いまして、各参考人に対しましてお聞きいたしたいと思っているわけでございます。  特に金子参考人からお話がありましたが、私も今ちょっと申し上げましたが、二十二年から二十四年に生まれた今四十六歳から四十八歳の人たちが六十歳になるのは、あと十二年から十四年なんですね。その世代というのはすごい固まった世代ですから、私は相当大きな、青山参考人国民生活センターのところにも苦情も来るだろうし、こうこうこうだというのが出るだろう。  というのは、この団塊の世代という名前をつけられた私の一年上の先輩がまさしく言っていた問題が今ここに来ているのですが、高校三年のときに舟木一夫さんの「高校三年生」というのが出たのですね。それから大学では全共闘問題が出た。そして若いときに、いわゆるパイオニアとかトリオとか、そういうステレオブームがありました。自動車を買って、サニーが大ブームになって、結婚して、持ち家志向が非常に高まりました。先ほどその人たちが一体修理をどうするのかという話がありましたが、そういうライフサイクルというのが今来つつある。特に若いときに持ち家を持った人たちが今の団塊の世代の方々であります。  そして子供が生まれて、ベビーブームになって、現在その第二ベビーブームの人たちが、高校三年、予備校に入っているか大学一、二年。人口にしますと二百五万人ぐらいのピークであります。ところが私の娘は、孫じゃないのです、娘なのですが、十三歳の子がいるのです。その世代は百五十万人なんですね、人口が。そうしますと、五年後には、今の二百五万人の人たちが百五十万人、全体として五十五万人減るのですね。すごい大きないわゆる消費者関係での、小売にも影響するでしょうし、いろいろな問題に大きなものがある。逆にまたいくと、シルバービジネスの方が盛んになってくるのではないかなという気がいたすわけであります。  そこで、一つの課題は、かなり行政で処理できる問題というのはあるのです。行政といいますか、行政立法で。  例えば訪問販売法なんというのは、よくクーリングオフなどという制度をつくって、クーリングオフというのは、契約をしたけれども、これは十分考えないでおっちょこちょいにやりましたというので、契約を取り消す。これは民法の特例でありますけれども訪問販売法に入れ込んでやった。しかし、いろいろな時代の要請に応じて訪問販売法を幾ら直しても、無店舗関係の部分についてなかなかついていけないという問題もあります。  しかし、そういう行政立法とは別に、シビルローといいますか、民法の考え方というのを、特に私は河上先生にお聞きいたしたいのですが、いい問題点を指摘されたと思います。そして、今後は特にこういう問題が起きるのではないかと思うのです。  今、個人資産は一千兆円というのです。日本は一番金持ちだ、一千兆円あり、こういうわけですね。今の経常黒字が、一ドル百円にして十五兆円くらいですから、大変なるものを持っているのですが、私は、持っている大半は高齢者だと思うのです。その分析した方々はおらないようですから、いつしか企画庁あたりでやってもらいたいと思うのですけれども。そういうふうに土地を持ったり、何を持っている、老後のために備えたというのは、戦後五十年、よく働き続けた方々。そういう資産が、私は今日の日本を世界の中で、面積が〇・三%で、人口が二%で、世界の富の一八%を押さえているわけですから、これは大変なる国に日本というのはなった。なったけれども、今一番大きなこれからの課題というのは、そういう高齢社会の問題も一つでありますし、これをいかに制度で、法律制度といえば民法ですよ、その問題をいかにやっていくか。  例えば、銀行は金を貸しています。例えば佐藤剛男に三菱銀行が金を貸しました。私は、そのときには能力者であります。ところが、いつ頭がパアになるかわからないのですね、もうろくするかわからない。そうすると、本当に、事後に無能力になってきたときにどういうふうな問題を起こすかというのは、これは人ごとではないのでしょうね、銀行サイドにおいては。  そういうふうな問題も抱えている問題でして、やはり先陣のところというのはヨーロッパの、ヨーロッパがこういう――今参考人が御指摘されましたけれども、特に痴呆老人の財産管理の問題、それに対する成年後見制度の立法化問題、こういう問題がどうしても考えていかないといかぬ問題なのではないか。これは、詰めていけばいくほど難しくなるのですね。頭の優秀な学校の先生あたりが年をとると今度は痴呆の方になりやすい、こういうわけですから、未成年者の無能力の問題、意思能力の問題とちょっと違ってしまう部面が出る。そしてそれを、その人たちとの取引というのを公示制度だ何だで知らしめる。参考人、戸籍にちょっとやったらどうか、あるいはプライベートカードなどという話がありましたけれども、私は、それだけでは十分ではないのではないかという感じも持ったりしております。どうしてもその問題というのは避けて通れない問題なのじゃないか。  もう少しその成年後見人問題について、ヨーロッパの一つのどこかの例でいいのですけれども、こういうふうな場合には後見人を置いて、ちょうど未成年者の代理人であるとか準禁治産者の保佐人制度に該当するようなものがあるというようなことの実例なりをお伺いできたらということで、まず最初に私は河上参考人に法律論から、すばらしいお話を聞かせていただいたもので、その点についての御意見で結構でございますが、お伺いできたらと思うわけであります。
  14. 河上正二

    河上参考人 諸外国で行われている成年後見制度というものについての紹介は随分なされておりますので、余り私の方でここで不正確な説明をしない方がいいかと思いますが、基本的には、これまでのように能力を奪ってしまうというふうな形で保護者をつけるという発想はだんだん引いてまいりまして、むしろ当事者の能力というか、以前に意思能力がはっきりしているときに判断した結果を、能力が落ちた後でそれにかわって後見人が立ってやるというふうなことでありますとか、あるいはこれはできるがこれはできないというふうに、部分的にできるものできないものを裁判官が判断して、できないところに限って後見人が必要な範囲で補助をするというようなやり方、これはドイツの成年後見法なんかがとっているやり方でありまして、従来、日本のような無能力者制度をとっておったのですが、無能力者にしてしまうと例えば選挙権までなくなってしまうとか、そういう必要のないところまで制限してしまうようなことのないように、補助的にしか介入していかないようなやり方をとっている国がかなりふえております。  ただ、先生おっしゃいますように、判断能力が非常に落ちてきた場合に、自分の財産の処分権というのかどこまで保護されるのかというのは、本当に望んでやっていることなのか、それとも少々おかしくなってやっていることなのかという、その見きわめが非常に難しくて、ドイツなんかでも、裁判官とか鑑定人というものが非常に重要な役割を果たしているということで、日本でもそういうことが重要になるだろうという気かいたします。
  15. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員 青山参考人に、青山参考人は、国民生活センター苦情等の問題をいろいろやっていきますと、女性トラブルが多い、あるいは金額が大きい、それからいわゆる三Kといいますか、健康等の問題ですね、健康、お金、心、こういう不安につけ込まれる例が多い、さらに高齢者契約能力に問題があるのではないかというお話がございました。私もそういうところなんだろうと思うのですね。  消費者問題をつっついていきますと、最後はやはりそういうお年寄りの行動に対してつけ込む商法という、悪徳商法といってはいかぬ、いい商法もあるわけですけれども、そういう悪徳商法的につけ込まれた人たちをどういうふうに救済するかは、これは一々裁判に任せていたら切りがないから、これは行政立法でやるしかないし、これは消費者行政の枠内だ。そこに一つの先ほど申し上げましたクーリングオフみたいな制度というのが民法の例外としまして導入されて、訪問販売等に関する法律にはなっているわけです。  それで、河上参考人もおっしゃっているクーリングオフの高齢者向けについての期間延長というのは、想定としては考えられるのですよね、これは。年をとった人に対してなぜクーリングオフ期間を、クーリングオフ期間、例えば三日だったものを今度十日にするとか二週間にするというのがいいのかどうなのかというと、これまた大変な議論を呼んでしまうのだろうと思うのですけれども、将来の問題としては私は立法政策としては考え得る、行政として。これは苦情だの何だのが多くなる。  あるいは、金子参考人の御世代の人たちが、高齢社会になって、子供の還暦、親も立ち会う長寿国と、子の還暦に親も四人くらいおるような時代が私はやってくるのだろうと思いますし、今見ていると、過労死というのがありますけれども、介護疲れで介護死なんというのもありますし、四人、だんなの方とそれから奥さんの方のお年寄り、どうしてもその看護をやっていますと介護疲れになってしまいまして、これで、では介護離婚しましょうというようなことで片っ方で別れてしまって、あなたはあなたの親を見なさい、私は私の親を見ますというような話だって出るわけですね。  それで、そういう問題というのはまだ余り深刻な話になっていないですけれども、そういうような問題にも絡めて、民法における相続が、分割相続というのが果たしていいのかどうなのか。やはり面倒を見てくれた人に対して相続権を与えるとかいう、何か儒教的な哲学みたいになってしまうのですけれども、そういうふうなことも考えないとこれだけの、決して暗い社会じゃないですよ、世界で初めての社会ですから、私は非常にいい社会であると思います。そういう長寿社会になるときの環境整備というようなところの、特に相続面あたりでも直さなければいけないような問題があるかと思いますが、青山参考人には、クーリングオフの延長問題について、何かそういう必要性というのが感ぜられるかどうなのか、そこら辺をちょっとお聞きいたしたいと思います。
  16. 青山三千子

    青山参考人 元通産省の消費経済課長でいらっしゃいました佐藤先生の御質問でございますから、大変方向性の指示に富んだ御質問をいただいたかと思っております。  私も、先ほど十分に申し上げませんでしたけれども契約取り消し権といったようなものが、クーリングオフの範囲を少し対象領域も広げ、また先生おっしゃいますように期間も延長するなどの高齢者のための特別な措置というものが必要だというふうに思っております。そして、先ほど来論議がありましたような介護人、介助今後見人制度、そういうものがもう既にいろいろな国にありますから、やはり日本にも早くつくられなければいけないのではないかというふうに思っております。  それから関連して、払いつかアメリカに、FTCに参りましたときに、現在のアメリカの消費者団体はどこが一番強いかと聞きました。多分ラルフ・ネーダーのグループだという答えが返ってくるのではないかと期待して聞きましたところ、思いがけず、定年退職者協会である、アメリカ定年退職者協会が最も強い消費者団体である、こういうような話をしておりました。  先ほど申し上げましたもろもろの消費者被害のことを考えますと、私は、何らかの支援対策、法的な措置というものがぜひとも必要だと思っておりますけれども、他の消費者問題と同じように保護する領域というのはかなり限られていて、むしろアメリカの定年退職者のように自立した消費者グループというものになるように支援をする必要もあるかと思います。そういう点で、高齢者に対する消費者問題の情報提供活動というものが、これから一つの具体的な行政的な対応として重要になってくるのではないかと思います。  取り消し権につきましては、全く先生の御意見と同じでございます。  よろしくお願いいたします。
  17. 佐藤剛男

    ○佐藤(剛)委員 やはり当委員会の一つの大きな課題なんだろうと思うのです。  人間、必ずこれから年をとるわけですね。年をとって、最近のベストセラーの春山先生の「脳内革命」という本があるのですが、それによりますと、人間の脳が成長しているのが二十五歳までだ。人間の寿命というのは二十五掛ける五あるそうです。百二十五歳まで生きられる。今百歳以上の人は五千人台いるのだそうですね、日本に。私の身内も二人ぐらいおりまして、私は百十歳ぐらいまで生きようかなと思っておりますけれども、例えば百歳ぐらいになって、じゃ車いすになるという時代というようなものが、みんなやはり長生きしますと車いすをみんな使う時代になってしまうのですね。ですから、福祉という問題が特定の障害がある人とか金がないという人の時代じゃなくなってしまって、もうすべての、簡単に言いますと日本国民全体が福祉問題なのです。すべて年金問題もそう、医療問題もそう、介護問題もそうなのです。ですから、そういうふうな観点で私はすべてを見直さなければいかぬと思っております。  その意味において、私は民法について、民法あたりも少し法務省あたりでじっくりと、大体わかり切っているわけですから、高齢社会というのがいつ来、金子参考人がおっしゃったように、金子参考人の時代には今千八百万人おられる人たちが三千三百万人になる。そういうのは現実として出てくるわけですから、そうなったときの日本の相続を含む民法の基本問題について、本日、法律学者の島田先生初め河上先生、金子先生、そういう面がございますので、私は大いに大きな声で出していただきたいと思います。  また、いろいろな機会に国会議員としてもそういう問題に取り組まなければならない問題であろうと思っておりますし、そういう面をテーマにしました観点で、いろいろな経済分析につきましても、先ほどの例えは個人貯蓄は一千兆円ある、日本は世界一だというけれども、一千兆円はどこにあるのか。私は金を持っている方ではありませんからよくわかりませんが、そういう層的な分析というようなものもいろいろな観点でこれから必要な時代になってくるのではないかなと思いながら、きょうはいろいろ示唆に富むお話を聞かせていただきましたので、私どももしっかり立法機関の一員としまして取り組ませていただきます。  本日はもうこれで私の質問は終わらせていただきまして、青山参考人島田参考人河上参考人金子参考人に対しまして、有益なる示唆に富むお話、重ねまして御礼を申し上げまして、これをもちまして私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  18. 大石正光

    大石委員長 岸田文雄君。
  19. 岸田文雄

    ○岸田委員 自由民主党の岸田文雄でございます。  本日は、四人の参考人の皆様方、大変お忙しい時間当委員会に御出席いただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきますことを心から感謝申し上げます。私もぜひ参考人の皆様方にお話を聞かせていただき、しっかり勉強させていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。  先ほど来参考人の皆様方にお話を聞かせていただきましていろいろなことを考えさせられたわけでありますが、強く思いましたこととしましては、消費活動におきまして高齢者事件トラブルに巻き込まれることが非常に多い。そのわけということでありますが、核家族化あるいはひとり暮らしあるいは高齢者夫婦がふえているとか、こういったさまざまな理由によりまして、高齢者を保護する言ってみればシェルターみたいな役割をしている親族のシステムが日本の国においてだんだん機能しなくなってきているのではないか。そのことによって、それにかわり得る何か保護するシステムが今日本の社会において必要とされているのではないかというようなことを感じるわけであります。従来、その親族が高齢者を保護していた、その役割をかわって担うようなシステムを社会が、国がつくっていかなければいけない、そういった必要性を感じるわけであります。そして、その一つとして、先ほど来お話も出ておりました法律の保護ということが挙げられるわけであります。  そこで、その法律の保護ということでひとつ思うところを聞かせていただきたいと思うのですが、例えば河上先生は、高齢者クーリングオフ制度ですかクーリングオフ権ですか、こういったことを考えたらどうかというようなこともおっしゃっておられました。しかし、そういった高齢者を保護するための法律をつくろうとした場合、そもそも高齢者の定義というもの、参考人の皆さん方のお話の中にも何回も出てまいりましたが、そもそも高齢者というものは非常に個体差が大きい。人によって随分と差がある。一律に線を引くということは非常に難しいということだと思うわけなんですが、法律においてある程度保護しなければいけないということになると、第三者側から取引の安全等も考えた場合、ある程度わかりやすく一律であるということも考えなければいけない。その辺のバランスをどう考えたらいいのか。  要は、そういった法律の保護を行う場合に、その法律を適用する高齢者の定義というもの、これをどの程度厳密に考えることができるのだろうかというようなことを私自身思ったわけなんです。  その点につきまして、とりあえず、河上先生いかがでございましょうか。法律のお立場から何か参考になる御指示をいただければと思うのですが、よろしくお願いいたします。
  20. 河上正二

    河上参考人 高齢者の概念というのは、国連などで統計をとる場合などに大体一律に六十五歳というような相場ができております。ですから、普通社会学とか、これは私の専門ではありませんが、いろいろなところで高齢者というふうに言ったときには六十五歳あたりが一つのめどになっている。それから七十歳を超えると後期高齢者などという言われ方をしているというふうに理解しております。  ただ、法制度の中で、六十歳とか六十五歳とか七十歳という線が果たしていいのかどうかということはまた別問題でありまして、一般的なところで六十五という線を引くことは構わないと思うのですが、例えばこういう取引に関して言うと、七十ぐらいでいいのじゃないかとか、そういう政策的な判断があり得ると思うのです。ですから、それは高齢者という概念を使わなくても、七十歳を超えてある者はという形でその必要なところに制度を置いていって、それは全体として高齢者保護のための制度として機能している、そういうふうなイメージで考えてはどうかというのが私の考えてあります。
  21. 岸田文雄

    ○岸田委員 ありがとうございました。  先生、今のことでもう一つお伺いしたいのですが、そういうふうに線を引くということになると、例えば同じ年齢でも、物すごく元気で本当に聡明で、ばりばり働いている方、そういった方がたまたまその範囲に入ってしまうと、そのことによって取引上不利益を逆にこうむってしまうということもあると思うのですね。その点については何か心配すること、注意するようなことはありませんでしょうか。
  22. 河上正二

    河上参考人 おっしゃるとおりでありまして、私は実は前に論文を書かせていただいたときは、高齢者取り消し権というのは、一般的な形で未成年者取り消しのようなものを考えられないかというようなことをちょっと思ったことがあったのです。  しかし、よくよく考えてみますと、一正の年齢から超えてしまった人が取引から阻害されてしまう、この人は取り消し権があるのだから余りまじめに相手にしていてはまずいということで、取引社会からそっぽを向かれるというようなことで重要な取引ができなくなるというのでは、これは大変なことですし、しかも取引ごとに自分の生年月日は何年何月ですと立証しないと困るというのはプライバシーの問題にもかかわるということがありますので、一般的な高齢者取り消し権というのはやはり危険だというふうに思います。  ただ、特別のこういう領域においてというふうに、例えば訪問販売法とか特定商品に関してというふうにして明確な範囲の中で、六十五歳なら六十五歳という人についてこういう保護を一律に与えますというふうに制度を設計してしまう、それはそれで今も似たようなことをやっているわけでして、できないことではないのじゃないかというふうに思います。
  23. 岸田文雄

    ○岸田委員 どうもありがとうございました。  そして、次に一つお伺いしたいのは、高齢者の消費ということで、やはりきょう御出席参考人の皆様方の論文、事前にそれぞれ読ませていただいたのですが、その中に何度となく出てきた問題としまして、有料老人ホームの問題があるかと思うわけであります。人生最後の高価な買い物というようなことが言われてみたり、その内容につきましても、本当に長期化するものでありますし、また不確定な要素も大変多いですし、また、途中で解消するようなことがあればまさに死活問題になりかねないというような大変大きな買い物でもあります。また、入居した後に年齢を加えるに従って本人の判断能力や活動能力が低下するというような特殊な事情があったり、なかなか難しい問題を含んでおるのかなということを感じております。  そこで、高齢者消費者を保護する法律としまして老人福祉法という法律があるわけでありまして、例えば、社団法人の全国有料老人ホーム協会、こういった団体を法律上認めてみたり、また、有料老人ホーム入居者基金というような基金をつくってみたり、有料老人ホームの問題の大きさを勘案してさまざまな対応がされておられるわけであります。  有料老人ホームに対する法律上の保護ですとか、高齢者社会の中においてどう保護していくのか、有料老人ホーム問題において現在の状況をどう判断されるか、どのように評価されるか、この辺の御意見を聞かせていただきたいと思うのです。  青山参考人、それから島田参考人お二人から、有料老人ホームをめぐる現状についてどのようにお感じになっておられるか、どの点が問題だとお思いになっておられるか、その辺をお聞かせいただけますでしょうか。
  24. 青山三千子

    青山参考人 きょうの苦情の話の中では有料老人ホームについて申し上げませんでしたけれども、九四年度の国民生活センターの取り扱いました苦情の中で、有料老人ホームは二十七件ございます。これは国民生活センター独自の直接的な相談処理でございますので、母数としては約二十万件のレベルでございますけれども、相変わらず多い。もう十年来、昔から同じような苦情が来ている、こういうことでございます。  たまたま手元にそれをアウトプットしておりますので、その中から三件だけ御紹介したいと思います。  解約したが返金されない、経営状態が悪いのを隠して勧誘された有料老人ホームの入居金を何とかして返してほしい、契約金を急がされ千二百万円を払ったというような苦情が神奈川県の六十八歳無職女性から来ております。有料老人ホームの終身入居金というようなトラブルでございます。  もう一つは、これも神奈川県の六十歳の女性から有料老人ホーム苦情がございます。有料老人ホームへ両親が入居しているが母が骨折して以来人間らしい扱いを受けていない、改善してほしい、厚生省にも問い合わせたが苦情相談の窓口もない、どうしたら改善してもらえるかという心情的な問題、サービスの質の問題がございます。  もう一つは、これは東京の六十歳の女性、主婦からの苦情でございますが、売り家のお金で、つまり家を売って老人ホームに入ることにしたが家が売れない。手付金のほかに六百万円払ったが返金されない。解約のときに手付金は放棄すればいいということになっていた。しかし、そのほかに六百万円を業者に貸した形で借用書があり、これは解約のとき戻ると聞いていた。解約属を書き、返金についてどうしたらいいのかということについて業者ともう一度話し合うつもりだというような話などがございます。  もう一件だけ申し上げますと、広島の八十一歳の無職女性当事者でありまして、相談者は同じく八十一歳の男性であります。姉が有料老人ホームに入居したが、月々の支払いが大変なので退去を申し出たところ、違約金を請求された。二千万円を預託して入居したが、病気をしたところ、月々の会費十三万円のほかに看護料十八万円と付添婦さんの費用八万円等、約四十万円を請求された。支払いが大変なので退去を申し出たところ、六カ月前に告知することになっているので、違反したから預託金からいろいろな経費を差し引かなければならないというふうに言われた。約款に定めてあると言われたけれども約款については十分知っていないというようなことでございます。  大ざっぱにピックアップしました問題を見ましても、やはり苦情が十年来ございますので、十年前有料老人ホームが登場いたしましたころから、この巨額な、生涯の最終段階での買い物について消費者苦情がありまして、それを中心にして、先生さっきおっしゃいましたような対策が業界団体でつくられてきたわけでございますけれども、私の感じでは少しも改善されていないという感じがいたしまして、このまま放置するような内容ではないのではないか。  何しろ高いものでございまして、最近私も関心がありますので見ておりますけれども、夫婦二人で入居しようとすれば一億円が要る、そして月々二十万円、つまり厚生年金分ぐらいですけれども、二十万円の管理費が要る、それから、食費は別に要るというような形で、しかもケアつきであるけれどもそのケアするべき医師はどういう形になっているのか保証の限りでない、こんなような形がございまして、契約条項がめちゃくちゃであると言っていいのではないかと思っております。  そういう点で、この高額な買い物である老人ホームにつきましては、一度もっと抜本的にこれでいいのかという洗い直しをする必要があるのではないかと考えております。  以上でございます。
  25. 島田和夫

    島田参考人 有料老人ホームにつきましては、実は先ほど時間の関係でお手元資料の一番最後のものについて御説明しなかったのですが、東京都におきまして、ここは国政でございますけれども御参考までに申し上げますと、有料老人ホーム及びその類似施設について、消費生活条例に基づいて事業者に必要な事項を文書にして入居希望者に配布しなさい、こういうことを定めたわけでございます。実際に事業者から入居希望者に配布される書面が、見本ですけれども、この資料の⑦の真ん中に載っているようなものです。さらに、こういう書面を受け取っただけでは通常の一般消費者は理解できないだろうということがありまして、いわば手引書と申しますか、読み取り能力をつけるために、「有料老人ホームさがし」という小冊子を都がつくりましてそれを消費者に配布しております。現物はここにございません。  こういうようなことに私携わってまいりましたけれども、その間、各種調査等をもいたしました。問題点と国政レベルの話について、多少私が考えていることを述べさせていただきますと、先ほどございましたように現在は、老人福祉法は改正されまして、従来と比べれば入居者や消費者の保護に厚くはなっているわけですが、よく見ますと、消費者保護施策は、法律本体ではなくて設置運営指導指針という中に「入居者あるいは消費者保護施策」が書かれているわけですね。先ほど申しましたように従来よりは消費者保護施策が進んでいるというふうに考えられますが、大きく分けますと、まず、先ほど青山参考人のお話にありましたように契約内容自体が適切か否かという問題がございます。  もう一つ、取引に関係ありますけれども、事前にその有料老人ホーム契約内容消費者によく知らされているか、いわゆる開示と申しますか表示規制の問題があります。とりわけ、表示規制について発言させていただきますと、有料老人ホームは御存じのように民間の事業でございまして、ホームによって非常に内容が多様なのですね。同じ有料老人ホームといいましても、かなり内容が異なります。  そこで、我々の調査しましたところでも、幾つかの言葉が正確に理解されていない。新しい商品だということもあるのでしょうけれども、例えば、終身利用という言葉がございますね。やはり、国語的な意味ですと終身利用というのは死ぬまで利用できることだということですけれども、当然これは民間事業者契約ですから、正確に言うと契約を守った場合には終身利用できるということですね。それはもちろん、契約を読めばわかるじゃないかというのですけれども、もちろん法律知識なり契約書等をよく読まないで入居する人もいるわけです。  それから、それ以外に、我々の調査でも、やはり有料老人ホームの利用希望者は、もう既に要介護状態になっている消費者もおりますけれども、多くは、今は元気だけれども将来要介護状態になったときに介護サービスを得られるだろう、そういうことを理由にして入る方が多いようなのですね。ただ、よく見ますと、介護状態になった場合には退去しなければいけないホームもございますし、それから介護状態になったときにそのホームの同じ部屋で介護されるのか別室に移されるのか、さらには提携施設に移されるのか。先ほど申しましたように、民間事業ですから多種多様なのですね。別にこれは違法とかそういう問題ではないわけです。  そこで、やはり文字どおり有料老人ホームは民間事業、シルバービジネスですから、入居する前に内容を納得して入る、こういうような必要性があるわけですけれども、先ほど申しましたように、現在老人福祉法の運営指導指針によりますと、契約前に重要事項説明書というのを交付しなさい、こういうふうになっているわけですね。ところが、御承知のように、平成六年の総務庁の行政監察報告を見ましても、重要事項説明書を交付していないところが多いと報告されています。それから、運営指導指針では、重要事項説明書をいつ交付しろとは書いていないのですね。一般的に契約締結前に交付すればよいとされているのです。  そういうことがございまして、東京都の方は、これはまあ法律のところを補うということでありまして、もうかなり早い時期に、具体的に有料老人ホームの選択が始まった時点で、契約内容等を、取引内容を理解できるような情報を提供しなさい、こういうものを条例に基づいてしたわけでございます。これも、できましたら、全国有料老人ホームもございますし、東京都のいわゆる地域特性に注目して東京都は実施したわけですけれども、その問題は東京都に限られるわけではないわけですね。やはり国政レベルで、国の法律で、入居者保護のための法律、場合によっては有料老人ホーム法というような法律を別個つくるということも検討していいのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  26. 岸田文雄

    ○岸田委員 ありがとうございました。  それでは、質問時間がなくなってしまいましたので、最後に一つだけお伺いさせていただきたいと思います。  金子参考人に一つお伺いさせていただきます。  金子参考人の書かれたものをちょっと読ませていただいて、大変興味深い部分としまして、要は、時代とともに高齢人口、年少人口という形で世代を分類してその割合をとってみると、非生産年齢と生産年齢、これは余り変わりがないんだ、時代が変わってもこの割合というのは余り変わりがないんだという話を聞きまして、大変興味深く読ませていただきました。  そこで、要は、高齢者が生き生きとした消費活動をするためにも、日本の雇用のあり方、これをしっかり考える必要があるのかなと思うのです。現在の日本の雇用のあり方、終身雇用制とか、それから定年制も現状のような状況にあるわけですけれども、こういった定年制のあり方、このあたりについてどのようにお考えになっておられるか。高齢化社会、それから高齢者の消費ということを考えた場合に、現状のままでいいのかどうか、何か少し考える必要のある部分があるのかどうか、そういったところについて御意見等あれば、ひとつ最後に聞かせていただけますか。
  27. 金子勇

    金子参考人 定年の延長だけではございませんで、企業の体質、体力によってはもうこれが限界というところもございますので、できるところは定年の延長を一年でも長くしていただくと同時に、企業以外のところで社会参加ができるような、例えば我々がよく知っているのは、シルバー人材センターというようなそういう多くの方々が登録をして仕事をする、それはお金をもらうもらわないではなくて、社会の動きの一部を担うというような意味で働く、そういう場をたくさんつくるということが一番大事なのではないかと思います。  それから、労働省を初めとして、継続雇用制度導入奨励金など、中高年の雇用に関しての各種の制度がございますので、これをもう少し使いやすくしていただくということも大事なのではないか。  したがいまして、企業の側の努力だけをこれからの高齢社会で求めるのではなくて、自治体やあるいはもっと広げれば地域の団体での活躍、そういうことまで、それは必ずしも報酬を前提にはしないかもしれませんが、働ける場、動ける場、社会参加ができる場として各種方面の機会をふやしていくということが非常に大事なのではないかというふうに思います。
  28. 岸田文雄

    ○岸田委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきます。参考人の皆様方に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
  29. 大石正光

    大石委員長 鮫島宗明君。
  30. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 新進党の鮫島宗明と申します。  本日は、先生方、大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。特に、河上先生と金子先生は、遠方からわざわざきょうのためにお越しいただいて、ありがとうございました。  それぞれの先生方のお立場によってやや視点が違うといいますか、取り上げた問題の角度がやや違うような印象を受けました。青山先生、島田先生は、主に今の消費生活トラブルといいますか、高齢者の消費活動に伴うトラブルの問題に焦点をお当てになってお話しいただきましたし、河上正二先生は、より包括的にといいますか、全体的な、消費者としての高齢者の抱えている今日的な問題あるいは将来的な社会の枠組みづくりについて、やや時間がなくて申しわけありませんでしたけれども、包括的な問題提起をしていただきましたし、また金子先生からは、AパターンとBパターンの今日の高齢者の意識、姿と、それから金子先生が高齢者におなりになったときの意識、姿との対比を使いながら、やや中長期的な問題提起をしていただいたものというふうに考えております。  私も、今政治の世界も、新進党だからこうだとか自民党だからこうだとかということがそれほどこういう問題についてはきちっと決まっておりませんで、ある程度個人の考えが前面に出るような形になるかもしれませんけれども、やはり来るべき高齢化社会を考えるとき、あるいは今日の問題を考えるときもそうだと思いますけれども、時代状況をどう読むか、あるいはトレンドをどう読むかということによって随分違ってくるのかなという気がしています。非常に将来に対して不安が強い、あるいは先が読めないという状況の中では、恐らく高齢者の方もそういう心理的な状況の中で物事の判断をされるのでしょうし、あるいは一九六〇年代から七〇年代のように非常にはっきりとした成長路線を確固として歩んでいるときには、恐らくそれはそういう見通しの中での御判断をされるのだろうというふうに思います。  その意味では今は大変難しい時代でして、別に高齢者に限らず頭がしっかりしている人でも一体どうなるのかわからないという状態ですし、特に私は、うちの党内でもかなりペシミスチックな時代認識を持っていまして、成長はおろか下手したら国が破綻するんじゃないかというような危機感もややあるものですから、今後長期的に見通していくときにもその低成長が大前提、金利も一時的に少しは動くかもしれませんけれども、やはり基調としては低金利、株価もそれほど持ち上がることはない、いわば今の、先ほどの佐藤先生のお話ですと、世界全体の富の一八%を日本が生み出していると言いましたけれども、そのシェアを確保するのが精いっぱいという状況がかなり続くんじゃないかというふうに私は考えております。  今のちょうど六十五歳ぐらいの方は、戦後の復興から日本の産業構造の骨格をつくり上げて、経済成長の路線をしっかりと歩ませて、やっとここで骨身を惜しまずに働いてきた成果が享受できる、安定した老後が迎えられるのかと思ったら、バブルがはじけて全く見通しがきかない。少しは老後の足しにと思ってためておいた資産も、ほとんど金利がつくのかっかないのかわからないような状態になってしまった。  堺屋さんに言わせればうつむきかげんの時代といいますか、こういう先が見通せない状況の中で、先ほど青山先生や島田先生から消費者トラブルの問題についてのいろいろな報告がなされましたけれども、やはりバブル崩壊の影響あるいはこの非常に不安な時代ということが、高齢者が詐欺的な商法にかかりやすいということに関係があるのかどうか、どんなふうにその辺をお感じになっておられるのか。  なかなか直接的には難しいと思いますけれども、バブルがはじけて非常に低成長、低金利あるいは株価も低迷ということがどんなふうにこの問題の発生に影響を及ぼしているのか、先生方のお感じになっている範囲でお教えいただければありがたいと思います。全員の先生にお願いいたします。
  31. 大石正光

    大石委員長 お伺いしますが、参考人意見を言われた順番でよろしゅうございますか。
  32. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 はい。その順番でお願いいたします。
  33. 青山三千子

    青山参考人 私も今の金利の問題などを考えますと、かつて高度成長期にはやりました生活設計論が崩壊してしまった、それから年金生活者がどのくらい打撃を受けているかといったようなことは、今老後に入っていない人たちには実際問題としてわからないのではないかと思うくらい不安が高まっているというふうに思います。  先生の御指摘のとおり、その先行き見通し困難といったようなことが今の悪徳商法につけ込まれる一つの理由になっていると思います。しかし、生活設計論が破綻したと申し上げましたけれども、立ち直るためにはやはり一人一人が新しいライフスタイルを、独自のライフスタイルを、先ほど定年後も働くかどうかというお話がございましたけれども、定年後も収入のある就職口が必要なのかどうかということも含めて極めて多様な暮らし方がこれからの高齢者には必要になってくるのではないかと思います。そういう点で、対策は一筋縄ではいかない。高齢者も多様であり、問題も多様でありますが、対策も非常に多様、多角的な、柔軟なものでなければならないのではないかというふうに思っております。  繰り返しになりますけれども、先ほども有料老人ホームのときにケーススタディーで申し上げましたように、家を売ろうとしても思ったとおりの値段では売れないというようなことが有料老人ホームトラブルになって返ってきたりしておりますが、同じようなことはあちこちで起こっているというふうに考えていいかと思います。そのことが消費生活に大きな影響を与えているかと思います。余りお答えにならなかったかもしれませんけれども、以上です。
  34. 島田和夫

    島田参考人 有料老人ホームにかかわりますが、一点、私が具体的にやや心配していることだけを申し上げますと、有料老人ホームの場合というのは、一定の入居者数がいて初めて成り立つ事業でございますわ。ところが、今青山参考人もおっしゃられましたように、従来ですと、それまで住んでいた住居を売却してその資金で入居する、こういう人たちが多かったわけですけれども、今はそれまで住んでいたところを売りたくても売れないとかいうことがございます。正確なデータを持っておりませんけれども、やはり入居率が相当落ちているのではないかという感じがするのですね。そういたしますと、有料老人ホームというビジネス自体が成り立つのか否かというようなこと、具体的には調査しているわけではございませんが、懸念されるということだけ申し上げたいと思います。
  35. 河上正二

    河上参考人 単純に関係していると言える部分と、それからそうではない部分というのが恐らくあるのだろうと思います。  関係している部分について申しますと、やはりこれは収入が減ってまいりますので、利殖などで食っている人は、もう少しいいもうけ話はないかということになりますからそういう話に乗りやすいというようなことで、いわゆる先物なんかの利殖商法に対しては非常に弱いということで被害が出てくるという点では関係してまいります。  それから有料老人ホームの話もそうなんですけれども、何らかの含み資産を当てにしながらやっているというような事業に関しては、これは運転が非常に困難になってくるということで、トラブルが出てくるということがあります。  それから資産活用などをしているときでも、その自分の持っている資産を担保に入れて、そしてお金を借りて生活資金にしているというようなやり方をしているところがあるわけですけれども、これは元本割れの危険まで出てくる。自分の生活はまだ続かないといけないのに元本が割れてしまうというような形で問題が出てくる。こういった話は、すべてやはりバブル崩壊後の一つの悪影響として出てくるだろうと思います。  しかしながら、それとは関係なく、単純に高齢者増加してしまって、そして高齢者を支える人口が少ない、あるいは女子が社会へ出ていくというようなことによって介護のキャパシティーが小さくなるというようなことで出てくる問題もあるというようなことで、必ずしも両者がうまくこう、相関的な問題ではないんだろうと思いますが、御指摘のとおり、関係している部分は少なくないと私も思います。
  36. 金子勇

    金子参考人 先行きが見えなくて不安な時代というのはそのとおりでございますが、ただ一つだけ、人口のトレンドだけは読めるわけでございまして、高齢社会対応するということの中には、長寿絡みのものと少子絡みのものと二つあります。  私は根が楽観的なものですから、できるだけ明るい社会像をつくりたいと思うので、まずその長寿社会絡みで申し上げますと、これにかかわるインフラを全面的に洗い上げて、それについてこの十五年間ぐらい、つまり私がそういう年齢になる前に社会全体の高齢社会対応のインフラ整備をするということは、恐らく経済的な、俗に言う内需拡大に大変貢献するのではないかというふうに思います、  そしてもう一つの少子化、子供が少ないということについては、子供が一家族の資産ということではなくて、社会的な資産というような位置づけをすることによって、育てやすく、産みやすくするような仕組みをぜひ考えていけば、人口のトレンドだけはほとんどこれから読めますので、そういう物事の切り口を新しくつくり直して、そして今先生おっしゃった、時代のトレンドは高齢化だけではございませんので、例えば私たちの仕事の中では、同じく同時進行しているトレンドとして情報化がございます。  この情報化を福祉に組み込むことによってたくさんのビジネス、シルバービジネスが可能であるというようなことがございますので、同時進行しているトレンドを組み合わせると新しいものが見えるし、時代の対応もより具体的に可能になってくる面があるのではないかというようなこと。  それから、今の将来的に不安な時代の中で、恐らく政治の柱が徐々に、国際貢献というよりは国内貢献の方に比重を向けないといけなくなる時代がやってくるのではないかということを、私は個人的には、高齢化の問題を取り上げる場合に感じているものでございます。  以上でございます。
  37. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ありがとうございました。  私も、少し中長期的な視点から、新しい高齢化社会をどうつくっていくのか、そして、その中でお年寄りが不安のないように、あるいは、余生ではなくて本生として生きられるようなフレームをどうつくっていったらいいのかということをともに考えたいというふうに思います。その意味では、金子先生が、高齢者とは役割縮小過程の存在で、対策の柱は役割創造、維持、拡大、回復というふうに定義づけておられるのは、まことにそのとおりだろうというふうに、私も同感いたします。  ただ、右肩上がりの経済が一応終止符を打って、土地神話も崩壊という構造の中では、今までのような経済運営と違った、あるいは全く違った経済環境の中でのインフラの整備なり、あるいは、今金子先生がおっしゃった、新しい情報化の波を前向きにとらえて、どうやって安上がりでしなやかなフレームづくりをしていくかというのが要請だろうというふうに思います。  その金子先生がおっしゃる役割縮小過程への対策としての役割回復、役割増大に関して、金子先生からいただいた論文の中に、富永先生の御提案ということで引用されている点が四点ございます。(a)、(b)、(c)、(d)というふうに書かれていますけれども高齢者の役割をふやしていくための考え方として四種類あるのではないか。  一つは、近代産業社会の基本構造とは異質な職業、役割、例えば自営業や単独業主など。あるいは、多分芸術家とか文化活動というようなものもその中に入ってくるのかもしれません。そういう、ある種の個で経営できるような業種をつくり出していくこと、それが一番目。  それから二番目は、家族あるいは親族関係全体を一つの組織体として考えて、その中での、これは多分資産運用も含んでだと思いますけれども、新しい高齢者の役割を再発見していくこと。  それから三番目が、家と職場を往復していたときには関与していなかった地域社会に復帰して、そのコミュニティーの一員として生きていく役割、これが三番目。  それから四番目が、余暇活動あるいは趣味でも遊びでもスポーツでも、そういう非職業的役割を目的とする組織での自分の役割を発見していくこと。  この四つに分類されていますけれども、そのうちの前二者、(a)と(b)、つまり、近代産業社会の基本構造とは異なるいわば個で経営するような事業、これはなかなか難しいのではないか。それから二番目の、中国の客家とかあるいは華人の家族のように、一つの家族が運命共同体として自己実現なり資産の保全を図っていく、あるいは資産運用を図っていく、このパターンもそう簡単ではない。  むしろ終わりの二つ、コミュニティーの中での役割の発見、あるいは、余暇とか遊びとか、遊域といいますか遊ぶ域、そういう仕事とは違った中での役割を発見していくこと、コミュニティーの中でのメンバーシップの獲得、アソシエーションの中でのメンバーシップの獲得というふうにあるいは集約できるのかもしれませんが、この二つが大事ではないかという御指摘がありますけれども、この前二者についても、もう少し前向きに考えられるのではないかという気がいたします。その点について、金子先生に御意見を伺いたいと思います。  例えば個で経営する活動、これは中心としては、産業全体のサービス化という流れの中での新たな消費型の産業ということになると思います。断じい芸術とか技術とか文化活動に伴う新たな消費の創造、あるいは健康増進運動に伴う新しい消費の創造、あるいはボランティア、奉仕活動、メセナ活動に伴う新しい消費活動、それから地域特性を生かした意匠、工芸の奥深さを備えた特産品の開発なり、それほど派手ではないけれども、お年寄りがそれまでの経験なり技量なりを生かした形の産業の創出というのも、これに情報化がうまく乗っかって相互に補完し合って展開していくともっといいと思いますけれども、そういう形。  あるいは二番目の、家族あるいは親族含めた形、特にこれが資産防衛的な見地から私は割合有効だと思っていまして、先ほど佐藤先生からちょっと相続税の問題も民法の問題と絡めて御指摘がありました。  今の政府がというとちょっと問題があるかもしれませんが、非常に今赤字財政で、次世代にその赤字を負担させる財政政策、これが今日本の基本になっているわけですけれども、こういう流れの中で、ぼやぽやしていると、国はちょっとでもすきを見せれば税金という形で抜いていく。金利が一%低下すれば国民の懐から十兆円が銀行の金庫に移ると言われていますし、先ほどの話にもありましたように、せっかく保全していた資産もどんどん目減りしていくというような中では、相続税を取られてたまるかということも多分将来のことを考えればあるでしょうし、こういう資産防衛的な仕組みとしてのある種の血縁的コミュニケーションの役割、血縁的コミュニティーといいますか、そういう役割というのも考えられるのではないか。  この二点について、つまり、近代産業社会型の産業創出にかわる、むしろ高齢化社会に適した、小ぢんまりとした個性ある、しかし高齢者の特性を生かせるような産業の創出、それから二番目は、親族関係をオーガナイズすることによる資産の保全の機能というこの二点について、金子先生がどうお考えか、ちょっとお伺いしたいのです。
  38. 金子勇

    金子参考人 第二点の、家族と親族を資産のいわば防衛の体系にするということについては、大変貴重な御意見だと思いますが、私、法律的なことをよくわからないものですから、基本的な方向はそういうことで結構なのではないかと思います けれども、具体的には少し意見を出せる状態ではないということでございます。  第一点につきましては、時代の大きな動きの中では組織の中で働くということが主流でございまして、これを今御指摘の個人的な中で新しく高齢者が仕事を始めるということをより具体的に考えていった場合には、中高年労働者、つまり四十五歳から六十歳前までのうちに一つは資格を取るように企業で応援してあげる。資格がないと、恐らく組織で働いた方は組織からリタイアをした場合に非常に不安になることが多うございますので、その十五年間を実はその資格獲得の援助に当てる、資格獲得の期間にする。そういうことで、今御指摘のような、小ぢんまりしているけれども高齢者に合ったふさわしいものが見えてくるかもしれないということはあろうかと思います。  ただし、そのバックグラウンドはやはり地域社会ではないか。地域社会の中でその応援が十分できないと、恐らくそれで通常のビジネス活動をするのは非常に難しい面があるのではないかというふうな不安があります。  私は札幌市で、今の御指摘とちょっと違いますけれども、ある区で「知恵袋名鑑」、地域の名人年鑑というのをつくりまして、これは御指摘の、個人営業であるけれども、お金をもらう場合もあるしボランティア活動で行く場合もある。より具体的に言いますと、お茶を教えるとか大工仕事を手伝ってあげるとかあるいは町内会の会計の応援をするとか、そういう個人的な能力の一部を社会活動の中に積極的に織り込んでもらいたいので、まずそこの情報源をつくろうと。これは税金で、札幌市のお金で「知恵袋名鑑」というのをつくりまして、かなり重宝がられております。  そういう意味で、やはり組織で働くことに四十年間なれた方が六十あるいは六十五ぐらいでリタイアをされますと、頼るべきものが自分しかありませんので、自分が一番できるものを客観的に証明してくれるものとしての資格、これを中高年の組織の中で働いている時代にぜひ取りやすいようなそういう仕組みをあわせて考えていただくと、御指摘の点はかなり具体的に生きるのではないかと思います。
  39. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 どうもありがとうございました。  私どもも、きょうここに集まっておられる方々も、確実に十五年なり二十年後には高齢者の一員になるわけでして、まさにみずからの問題としてそういう意識を持っているわけですけれども、ちょうどきょう先生方がお見えになったのとまさにタイミングを合わせたように、実は来週の最後の国会の審議の中でNPO法案が初めて上程されることになりました。これは日本の歴史にとってかなり画期的なことだと私は思います。市民の公益活動に法人格を与え、そして税制上の特典もその活動の内容に応じて与えていこうというのが基本的な考えですけれども、残念ながらまだ日本のこの政治の世界の中ではごく一部の方々からしか御理解がいただけていない。残念ながら廃案になることが今から見通せているというのもおかしな話なんですけれども。  それから、社会的にも特に行政が非常にこの点については後ろ向きの判断をしまして、公益性の判定については市民がみずからやることはまかりならぬ、公益性の判定というのはすべて明治以来行政が行ってきたもので、ある種の法人格を取るためには、それからその公益法人としての特典を受けるためには、必ずこれまでと同じような役所の許認可の枠内で、場合によったら一人二人、本当に公益性を維持するためには役所で働いた経験がある人がいないと保証の限りではないということで、例によって天下りを入れようというのが一般的な感覚です。  どうも、お年寄りも含めて市民が、自由に世のため人のために自分が持っている知恵なり技量を提供しよう、そしてそれが社会的な認知を受けるように法人格を得やすいようにという考えが残念ながらまだ十分普及しておりませんけれども、一応初めて日本の国会でこのNPO法案が上程されるということを御報告しておきたいと思います。名前も、ちょっとこのNPO法案なんていいますとPKOと間違える方もいらっしゃったりして、なかなか問題があるなと思って、むしろ口語的に言えば、頑張れ市民法案とでもいった内容かもしれません。  こういう面で、公益活動と営利活動の間の領域、準公益活動を振興していくことが活力ある高齢社会の構築にとって大変重要なことでして、アメリカでは既にこのNPOが、ボランティアも含めてですけれども雇用の一一%をカバーし、GNPの六%をカバーしていると言われていますし、イギリスでは古くからトラストの伝統があって、ついこの一番新しいトラスト運動としては、グラウンドワークトラストというのがちょうど今から十五年ぐらい前に創設されました。  これは、カントリーサイドをドアサイドに持っていきましょう、都市内の荒れた環境を市民が参加してカントリーサイド的な機能を持った空間につくり変えて、そして、憩いの場でもあると同時に教育の場としての機能も持てるようにというグラウンドワークトラスト運動というのが今イギリスの都市の中で大変盛んでございます。幾つかのどぶ川なんかがそのことによってせせらぎによみがえったり、ボタ山の跡が雑木林によみがえったりしております。  こういうことがどうも日本では、この市民参加型の公益的活動というとただ働きというイメージが大変強いのですけれども、このNPOというのは、別に営利目的でなければ必要な経費なり日当というのはもらっても構わないというのが世界の常識ですので、そういっただ働きではなくて、汗を流した分については必要な経費が得られる、利益を出さない範囲での事業展開は構わないということが許されるような新しいセクターがぜひ日本の中で定着することが、この高齢化社会の実現にとって不可欠な要素だろうというふうに私は思っています。  このことの評価も含めて、私はずっと一貫して初めから、背景にはいわば公共部門の役割の限定というのを少し念頭に置きながらしゃべっているつもりなんです。現在に比べて今後来るべき本格的な高齢化社会、これは必ずしもマイナス的にとらえるわけではなくて、金子先生がおっしゃっているように、それだけ逆に少子の方の負担も少なくなるので、全体の生産人口と非生産人口比率がそれほど大きく変わるわけではない、全体の比率がシフトするだけなんだから、余りペシミスティックに、お金がかかって大変だ、二・五人で一人の老人を養わなければいかぬと、そっち側だけ見る必要もありませんよという指摘もまことにそのとおりだと思います。  公共部門の役割は、今のようなNPO活動の自由濶達な活動の保証ということを念頭に置いて考えれば、規制とか許認可とか資格、試験、検定などで余り市民活動を制圧しないこと。それから特に課税の問題で市民に過剰な不安を与えたり、国家財政が逼迫しているからといって、すきを見せたらすぐ税金で取るというような汚い課税はしないこと。随分いろいろなところで二重課税が行われているのが大変問題ですし、世界から見れば、一体日本は法治国家なのかというような金融の運営も行われている中で、なるべく余計な課税はしないというのも原則ではないか。  それから、公共の施設が、まだ市民への開放度が大変少ない。公共施設の経済効率、使用効率を高めることも大きなポイントだと思います。こういう公共が持っているいろいろな空間なり機能なり、多分これからは情報のネットワークというのも公共のセクターが持つことになると思いますけれども、こういうのが十分に開放されているのかどうか、あるいはそのための収支がどうなっているのか、公共施設あるいは公共部門の活動が市民活動なり高齢者の活動にプラスに機能しているのかどうか、そういうチェックをする機関の設置というのもこれからは必要になってくるのではないかと思います。  やや質問が総括的で申しわけありませんけれども、NPO法案といいますか、こういう市民の準公益活動を推進していくことが新しい高齢化社会の構築にとって、先生方はどのように評価されるのか、それから公的部門の役割について、その方向性、どういう方向に考えていったらいいのか、ちょっと時間もありませんので、金子先生ばかりで恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。
  40. 金子勇

    金子参考人 大変大事な問題でありますが、私どもは、公というものとそれから私的な私というものの間に、ともに、共的という、だから、公共というふうに普通は私どもは使わずに、公的なものと共的なものと私的なもの、三つに分けてこれを考えるわけでございますが、その場合に、今御指摘のありました準公益的なものが実は共的なものに該当するわけでございます。  この問題は恐らく、だれが担うかという主体の問題と、それからそれをいつやるのかという時間の問題が十分まだ国民的なレベルで広がっていないというような印象を私は持っております。  多くの場合、私たちの世代は職場にがんじがらめというような意味では、つまり公的なところに空間も時間もたくさんとられていて、そして残されたのは共的な空間というよりは私的なもの、家族、家庭の中での役割が次にある。したがいまして、恐らく準公益的な活動を今後日本の中で拡大して浸透させるためには、我々の世代、働いている世代がどこまでこの問題にかかわれるか、つまり時間的な余裕を働くということのスタイルから見直さないとなかなか広がらなくて、結局女性高齢者がその主力で一部が高校生という、そういうようなNPOの通常の主力で終わってしまう。  しかし、社会的な力を持てるのは、恐らく今申し上げました主体に加えまして、働いている人間がどこまで準公益的な問題に、部分的でも、つまり土曜日なら土曜日だけでも関与できるかという、そういう仕組みを見直す。だから、働くこととそれ以外のことをあわせて同時に考えていくということが非常に大事ではなかろうかというふうに思います。  それから、公共施設の空間の開放につきましては御指摘のとおりでありまして、もっともっとやらなければいけないわけですが、これは勤務の時間も含めて公共の側の、公的な側の体制をやはり時間の問題とあわせて再度チェックし直すということが必要ではなかろうかというふうに思います。
  41. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 ほかの先生で、もし今のNPOなり公共施設の利用の仕方について御意見があれば。
  42. 河上正二

    河上参考人 目が合ってしまいましたので手を挙げてしまいましたけれども、恐らく先生の関心の大きいところというのは、公共部門とそれからそれ以外の部門とでの役割分担をどういうふうにこれからやっていったらいいのかというようなところなのだろうというふうに思います。  特に、私の方で一つ申し上げたいことは、家族とか親族というものの役割分担というものが、果たしてこれから古きよき時代のような形でそのまま維持していっていいものかどうかという点は、私はむしろ逆に、個人のレベルにもう戻っていく、そしてその上で、実際に養った人が養った費用を、その限りで相続財産から取っていく。みんなが守るという、家産を守るという発想ではなくて、やはりそれぞれがその人のために財産を使って、働いた人は働いた人としてその費用を受け取るというような形で清算をしていくような、むしろ個人化の方向を基調にしながら、ただそれだけで終わるのではなくて、やはりお互いに連絡をし合うというような、そういう少し冷めた関係の方がこれからの方向ではないか。  それから、公共部門に関しては、やはり必要な範囲で出ていく必要があって、すべてを離していくというのは無理だろうという感じがいたします。  それから、NPOの件は、非常に私も先生の御意見に感じるところが多いのですけれども、ただ、これはまた、民法で権利能力なき社団という、別個穴のあいてある部分についてどう対処するかという大問題がございます。それとの関係で、私自身はもう少し考えさせていただきたいということでございます。
  43. 鮫島宗明

    ○鮫島委員 どうもいろいろ貴重な御意見、ありがとうございました。  私も実は、友人で藤沢に住んでいる人が、もう三年ほど前に定年になって、まだ元気なのに、突然、暇だ、もう一度、名刺を捨てた男たちの会、やや照れもあって、じやおの会、おやじをひっくり返した会をつくっていまして、ぬれ落ち葉からの復権とかいうスローガンで割合楽しく過ごしているようですけれども、大変な社会的な変革を迎えるわけですから、私どもも政官業の癒着を脱却して、むしろ先生方と政学の連携でこの新しい時代を切り開いていきたいというふうに思いますので、先生方も、学界の場であるいは言論界の場で、次々と斬新な問題提起をしていただければありがたいと思います。きょうはどうもありがとうございました。
  44. 大石正光

  45. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 本日は、四人の参考人の方々から、それぞれ専門的なお立場で貴重な御意見を伺わせていただきました。感謝を申し上げます。  私もかつて物価問題等特別委員会におきましても質問をさせていただきましたけれども、その五、六年前のときでも、やはり悪徳商法の業者のターゲットは高齢者と未成年であると言われまして、その被害は年々増加をしております。  未成年者の場合には、未成年者単独の契約行為自体を民法で無効としておりますから取り消しができます。しかし、高齢者に対しては、なかなか対抗手段を行使できないというのが現状ではないかと思います。お年寄りの行動力や判断力の低下、また退職などによって社会とのアクセスが減少してくる、情報収集能力がないこと、これに加えて老後の生活や健康の不安といった問題、こうしたことにつけ込んだ巧妙な手口でだます、また強引に契約をさせてしまう、こういったことからトラブルが後を絶たない状況だと思います。  一方で、このようなトラブルに巻き込まれたときの相談先や対処の仕方がわからないことから、結局泣き寝入りをせざるを得なくなる。それが老後の蓄えにとっておいた財産だった場合には、まさにあすの生活をどうするのかということになる深刻な問題だというふうに考えます。このような被害は、一刻も早く救済をする、また決して出してはならないという決意で対処をしない限り解決は難しく、これからもふえていくのではないかというふうに思います。  そこで、まず河上参考人に伺います。  救済という観点から提言をなさってくださったと思いますけれども、そのうち、もう少し御説明をいただきたいと思います。  一つは、無能力者制度への柔軟化ということなんですが、実際の場面を考えますと、かなりの問題が残るのではないかと思います。無能力者制度は、判断能力の不十分な人が不利益な行為によって損失を受けないように保護するとともに、相手方に注意をさせる、取引の安全を害さないようにするという目的があると思います。しかし、高齢者にこの制度を部分的にしろ拡充していくとなりますと、判断能力の基準をどこに求めていくのか、その判断をどうするのか、また、無能力者の範囲に含めたことで、自分の築き上げた財産を侵害される、あるいは処分行為が制限されるということで、先ほど裁判の問題とか管財人の問題ですか出てきておりましたけれども、後見人、保佐人が悪用するなどいろいろ考えられます。この点について、成年後見制度について具体的にお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  46. 河上正二

    河上参考人 成年後見制度はまだ私も考えるところがたくさんある段階で、定見を持っていないわけですけれども判断能力が落ちてきたということについて最終的にだれがその客観性を担保するかというのは大問題でありまして、やはり現在のように何カ月もかかって鑑定人がやっているというようなやり方自身も問題でありますし、かといって、ちょいちょいとやってしまうようなものでもないということですから、的を絞って、この取引に関しては果たしてできるだろうかというふうな形で、ワンポイントでその人の能力判断をしてもらうような鑑定の仕方というのは、やはり考えていかないといけないのだろうと思います。客観性は、やはり資格のある鑑定人ないしは家庭裁判所あたりが担保していかないと、私的なレベルでは客観性は保てないのじゃないかということであります。  それから、その本人が判断能力がなくなったのをいいことに後見人が勝手なことをしてしまうというような事態というのは、これは現在でもあり得ることでありますが、現在の制度は、後見監督人という制度によってそれを監督していこうということですが、それでもだめだった場合、これはやはり家庭裁判所が最終的には後見人に対する解任の手続などをしていくというような形で、これもどこかで最後は家庭裁判所が手綱を締めておかないといけないのだろうということであります。  もう少し具体的なお話ができればよろしいのですけれども、なかなか煮詰まっておりませんので、お許しくださいませ。
  47. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 はい、わかりました。ありがとうございます。  次に、どうしたらこのような悪徳商法をなくして、また、消費者被害に遭わないような防止策が考えられるかについて、青山参考人島田参考人に伺いたいと思います。  私のところにも消費者被害ということについてお話が参ります。典型的なものでは、先ほどもちょっと触れられましたけれども布団販売のような催眠商法ですね。いろいろな景品を毎日のように配って、そしていわば見せかけの信頼関係をつくっていく。これはマインドコントロールというふうに言ってよろしいのでしょうか、得をした気持ちにさせてしまう。ついには、何十万もする健康布団と称したもので、通常の十倍以上の金額を払うことになってしまった。また、NTTの社員を装って電話機の販売に来る。今まではNTTが貸した電話機だったのですか、これからは買っていただくことになりましたと言って、やはり何十万もする電話機を売りつけたりと。また、消防署員を装った消火器の販売も後を絶たないということなんですね。  このような悪質な業者は厳しく摘発をしなければなりませんけれども、現実には、所在を転々としている、実態がわからないということも非常に多くて、何ともならないというのが現状なのじゃないでしょうか。ビラを配布しましても、これはお年寄りの場合には読まないことが多いのじゃないでしょうか。また、情報提供の手段ともなりにくいという問題もございます。このような点も踏まえまして、具体的に効果の上がる防止策についてどのようにお考えでしょうか。  そこで、島田参考人には、高齢者のこうした被害原因について、また青山参考人には、個別の被害例から原因の分析をどのようにとらえていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。また、お二人に、そのことを踏まえまして、具体的に効果の上がる防止策についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。  私は、消費者の自衛策として、例えば自治体と協力をして、敬老会など、お年寄りの皆さんが集まっているところで、必要な情報消費生活センターなどがわかりやすく編集したビデオをつくって上映するなど、積極的な取り組みを行政側に指導していただくということも必要だというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。お願いいたします。
  48. 青山三千子

    青山参考人 悪徳商法が蔓延している理由は、一にも二にも、老人が地域で孤立している、孤老状態にあるからだというふうに思います。孤立しているというのは、家族関係から孤立しているだけではなくて、社会的に必要な情報から離れている、こういうことであろうというふうに思います。  先ほどNPOの話もございましたけれども、やはりこれからはネットワーキングの時代でございまして、血縁とか地縁とか社縁とか、そういう従来のえにしを振り切って、一人一人自由になった老人たちが、独自の理念、独自の生活設計、独自の哲学、独自の心のもとに、それぞれ改めて結び合うというようなことが、少し縁遠いような話ではございますけれども、ぜひ必要なことで、そして、日本ではまだなかなかでございますけれども、各国ともそれが非常に進んでいるというふうに思っております。  それからもう一つは、先ほど佐藤先生のお話の中にもありましたけれども、特に今の高齢者たちは、戦後の日本の高度成長を支えてきた企業戦士でありまして、この企業戦士たちは消費者教育を受ける機会がなかったと言っていいのかと思います。公的な機関の役割として、消費者教育を今の高齢者たちにどういう形で伝えていくのか、あらゆる手段、あらゆるメディアを通じて行っていくということが必要なのではないかというふうに思っております。  最後に、もう一つだけ申し上げますと、御存じのとおり、政府は、昭和六十一年に、もう十年も前でございますけれども、本格的な高齢社会に向けての基本的な要綱を策定し、方向づけています。それで福祉関係などは非常に進んできたことは御承知のとおりでございますけれども、その要綱の内容を見ますと、消費者被害という点についての対策はほとんどないと言ってもいいくらいで、一つだけ、警察の生活事犯の悪質商法取り締まりの充実を図って、老人の悪質商法の窓口を整備するという項目があったにとどまっております。  私は、やはり、高齢者問題というとマクロな点でどうするかということが先になりますけれども消費者問題をミクロだとは必ずしも思いませんけれども、さっき先生がおっしゃいましたような、一つ一つの、何でもないような、意味のないような、つまらないような、その事例をどういうふうに重要に取り上げていくかという、高齢者に対する消費者対策がぜひともこれからの政策の中には盛り込まれなければいけないというふうに思っています。  昨年は参議院で高齢者問題の検討が行われて、その結果も要綱としてまとめられているわけでございますけれども、やはりその中にも、老人ホームの関連の事項はございましたけれども、私どもが日ごろ扱っておりますような細かい日常のトラブルについては十分な対応が盛り込まれていない。そういうことを考えますと、まあ言ってみれば、高齢者基本法とでもいうべき新しい方向づけが消費者問題について必要なのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  49. 島田和夫

    島田参考人 もう御質問の中にある程度私の回答が含まれているようなところがあるのでございますけれども。一方では、国政レベルでいいますと、繰り返しになるかもしれませんが、悪質事業者に対する厳しい規制、それから契約内容消費者に不利益にならないように適正化する、そういうことが一般的に必要であると言えるかと思います。さらに、高齢者の場合には、立法ももちろん必要ですけれども、それだけでは被害は防げないのではないか。  先ほど御質問の中に自治体との関係ということがございましたが、自治体とか地域社会との関係というのは大変重要であろうかと思います。私自身、高齢者の皆様方にお話をする機会があり、そういう経験から申し上げますと、大きな被害が発生する原因、先ほど何点か申し上げましたけれども、かなり大きな問題は、やはり社会の中での孤立てはないかと思われます。ひとり暮らし高齢者が多くなっているということもございますし、私ども調査でも、やはり相談者がほとんどいない、家族もいないし近隣の者もいない高齢者が少なくない。こういう状況のもとでかなり複雑な取引について判断せざるを得ないということが基本的にあろうかと思います。  そういたしますと、対応策としては、これは消費者政策そのものではなくて、より広い観点から対応を迫られるということになるかと思います。やはり地域社会での活動、先ほどの公益活動等にもかかわってまいります。  実は私自身、これは数年前でございますけれども、通産省の関係ですが、二十一世紀を高齢化情報化、両方のトレンドで構想するという、メロウ・ソサエティー構想というのがあるわけですが、その議論に参画したのでございます。これは円熟社会というのでしょうか、この構想のキーワードが高齢者社会的参画、要するに、従来どちらかと申しますと、高齢者の問題は弱さとかそういう面が強調されて政策が考えられておりますけれども、そうではないのだ、高齢者は元気なのだと。仕事を持って、収入を得ることもそうだけれども、ボランティアでもいい、広い意味で社会の運営に寄与するのだ、こういうことを死ぬまでやりましょう、こういうコンセプトで社会を構想したらどうなるかということなのです。  一つは、現在の我々が高齢者になった場合に、パソコン通信ぐらいはどうにか使いこなせるということがございますので、足腰が多少弱くなった場合でもパソコン通信等を使えば十分にネットワークに参加できます。かなり大ざっぱな言い方でございますけれども、そういうような構想をしたことがあるわけでありまして、高齢者消費者被害を防ぐには、まず消費者社会参加していく。それで、地域でともかく仲間をつくる。そういたしますと、もし仮にどこかで被害が発生しても、被害の拡大は防げるわけですね。これが恐らく最大の対応策ではないかという感じがするのです。  それから、具体的に申しますと、高齢者の方というのは、家族以外で相談する方というのはやはり特定されているようなところかございます。そこで、東京の多摩のある市では、民生委員さん自体に啓発するのです。民生委員さんに対して問題の所在を教えておいて、何かがあったときには民生委員さんを通じて対応する、こういうことを考えているようで、これは一つの有効な方策ではないかと思います。  それから、御指摘にございましたように、東京都などでは落語を使って啓発事業をしています。それも大学の落語研究会の学生を使って直接ホーム等へ行って落語をやってもらう。そういうような工夫がいろいろなされているようですが、先ほど申しましたように、基本は消費者行政消費者政策というよりも、やはり地域社会への参加、高齢者自体も、社会の運営に自分たちも寄与しているのだというようにする。こういうことが基本的に高齢者被害の発生防止のためには最も有効ではないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  50. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ありがとうございます。  何しろ、百歳を超したきんさん、ぎんさんは通販のコマーシャルなどに出ておりますけれども、そうした報酬なども含めて、ぎんざん、ぎんさんに、一体あとは何にお使いになりますか、そのお金は、と聞いたら、老後にということで、そういう元気なお年寄りがいるという一方で、私どもの地元宮城県で老人ホームの園長をされている方が、六十五歳から七十五歳をヤングオールド、七十五歳以上のところをオールドオールド、そして八十五歳以上をスーパーオールドというふうに決めて、ヤングオールドがスーパーオールドの面倒を見る時代なのだということをいつもいつもお話をされているのです。  つまり、もう六十歳で定年で終わったという感覚はだめなのだ、八十年時代は、そうして元気にというときに社会参加、地域の中でみんな仲間がいる、こういうことがすごく大事なのだと今の先生のお話からも思いまして、そういう方々だけではなく、元気じゃない人たちに対してもいろいろな、あの手この手で自治体も、そして民生委員の方も、地域の仲間も協力してという体制がやはり大事なのですね。ありがとうございます。  続きまして、島田参考人河上参考人に、特殊販売の規制についてお話を伺いたいと思います。  ここに「消費者被害の現状と対策-事業者責任の強化について-」と題した、一九七四年に国民生活審議会消費者保護部会と消費者救済特別研究委員会で出されました中間覚書がございます。その内容は、  訪問販売、通信販売、移動販売、マルチレベル販売SF商法など店舗を利用しない「特殊販売」といわれる販売方法は、近年とみに盛んになってきている。これらのうち、訪問販売、通信販売は、一方では消費者の便にもなるが、他方、店舗という信頼の基礎が欠けているために悪質な行為も横行しやすい。マルチレベル販売SF商法は必然的に消費者被害を生ぜしめる。現在では、割賦販売は別として、これらの特殊販売に対する法的規制は極めて不十分である。このため、この分野での消費者被害も激増しており、早急に予防的な規制が必要とされる。  特殊販売は、分類すると十数種類にのぼるといわれ、今後さらに増加すると予想されるから、規制の方法も単純ではない。しかし、問題となる点を例示すると、第一に考慮すべきは、その社会機能である。消費者利益を必然的に害することになる販売方法、すなわち、マルチレベル販売SF商法などは社会的に無価値であり直ちに禁止すべきであり、通信販売訪問販売などについては、その適正化のための規制を進めるべきである。こう述べられておりますけれども、二十年以上経過した現在でも、多少の規制はありましても、禁止はされていないという状況ですね。  最近問題になっております宗教団体などの霊感商法も含めまして、高齢者被害増加の状況を考えましても、答申を受けとめて禁止の検討をすべきと思いますが、どのようにお考えでしょうか。
  51. 島田和夫

    島田参考人 一般的には禁止しようということも考えられるかと思いますが、一つは、高齢者との関係で申しますと、先ほどからの議論ですと、高齢者が弱いとか心身機能が低下しているとか、青壮年よりは相対的には低下はしているのだろうと思いますが、それ以上に、私が先ほど指摘しましたように、これだけ変化の激しい社会ですと若いときに身につけた知識とか知恵が陳腐化というか、役に立たないという側面は大きいと思うのですね、心身機能とか判断能力が低下していなくても。そういうような、いわば人の弱点、無知に乗じて行う勧誘というものをやはり特別に罰する必要性があるのかな、一般ではなくてです。  私きょう手元資料がないのでございますけれども、私の知るところでは、フランスが一九七二年に訪問販売法で規制しておりまして、そこには特別に人の弱みにつけ込んだ訪問勧誘の場合の強い禁止規定があるのですね。罰則が科されるというのがあるのです。もちろん、それにつきましては、先ほど御指摘がありましたように、実際にそれを適用されるケースが少ないとかいろいろございますけれども、威嚇的効果と申しますか、そういうものに対してはこうあるんだぞ、そういうものがあるというふうにもフランスでは言われているようでございますから、やはり全部ではなくて、特に悪いところの罰則強化とか規制強化とか、きめ細かく対応すべきかなという気はしております。  済みません、お答えになったかどうかわかりませんが。
  52. 河上正二

    河上参考人 お答えいたします。  訪問販売法の適正化がまだまだ十分ではないという御指摘は、そのとおりだと思いますし、さらに広げないといけない。  訪問販売法で対象にしておりますのは特定商品だけですので、ちょっと商品が違ってしまいますと対象にならないというようなことで、すき間をねらったそういう悪徳商法というのは後を絶たないわけですね。そういうことを考えますと、やはり包括的に対処するためには、訪問販売法というよりもむしろ民法一般のレベルで受け皿を少し考える必要はないかというようなことも考えております。  それからあと、マルチとかSFの話ですけれども、マルチの一部はもちろん禁止されている部分もあります。無限連鎖講になってしまえば禁止されておりますが、マルチの中では、何というか、販売網をつくるために通常の営業販売網もマルチ的な販売網のつくり方をしておるものもあります。ですから、そこで契約条件いかんによって非常に悪質なものになっていくというようなことで、グレーなものと黒いものとが段階的に存在しますので、それを一概に全部禁止できるかというと、通常の販売網をつくること自体にも規制をかけることになりますので、なかなか難しいのじゃないかなというのが私の印象です。  しかし、現在でもマルチ商法に関しての規制というのは必ずしも十分ではないので、その要件をきちっとそろえて、こういう場合には不当なマルチであるということをはっきりさせていくことが必要だろうと思います。
  53. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 ありがとうございました。  一言、もう一つ質問できますでしょうか。最後になりましたが、国民生活センターの御報告によりますと、九三年をピークとして六十歳以上の危害情報件数増加の一途をたどっているということです。また、件数全体に占める高齢者被害割合も年々増加しているということです。  指定商品増加し規制を強化する、自衛のための消費者教育なども大切なわけですけれども、今早急に取り組まなければならないこととして、高齢者専用の相談窓口の設置と、救済を目的とした何らかの調停機関を検討すべきだというふうに考えますけれども、もちろん国民生活センター消費生活センターも頑張っておられることは承知をいたしております。これをもっと踏み込んで、専門の調停機関のようなものをつくることについてどんなふうにお考えになっていらっしゃるか、青山参考人に、日々の相談被害報告を受けて現状の国民生活センターがそのように機能できるかも含めてぜひお伺いしたいと思います。
  54. 青山三千子

    青山参考人 先生御承知のとおり、PL法ができまして、裁判外紛争処理機関としての能力を自治体の消費生活の窓口は持つようになっております。国民生活センターもテスト施設をおかげさまで充実いたしまして、原因究明機関としての役割を担うことになっております。先生がおっしゃいました最初危害情報商品関連人身事故情報につきましては、国民生活センター消費生活センターも十分対応できる能力を持つものだと考えております。  ただ、悪徳商法につきましては、私ども手いっぱいという面がございまして、先ほど特殊販売の中でお話に出てまいりませんでした電話勧誘などにつきましては、高齢者の特別の被害ではございませんけれども、先ほど申し上げましたように、電話でやいのやいのと言われて、すぐ返事と言われて利殖商法で代金を巻き上げられるというようなこともございますので、私は、訪販法の中の通販の規定も受けない今の電話勧誘の規制ということについては、高齢者問題も含めてぜひとも早急にやっていただかなければならないのではないかと考えております。  以上でございます。
  55. 岡崎トミ子

    ○岡崎(ト)委員 どうもありがとうございました。
  56. 大石正光

    大石委員長 矢島恒夫君。
  57. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  本当に参考人の皆さん方、いろいろとありがとうございました。私の持ち時間、非常に短いものですから、早速端的な質問をさせていただきたいと思います。  最初に、金子先生にお伺いしたいのですが、先ほど高齢化率の基本公式というので、比率の公式を御説明いただきました。実はもう一つ、この間、政府もそうですけれども、消費税導入時あるいは税率アップ時に論議されておりますのが、今は五人で一人を養っている、二〇二〇年になったら二人で一人だぞ、こういう論議が盛んになされているわけですね。私、どうもこれにはごまかしがあるのじゃないかなと常々考えているわけなんですけれども、その辺について先生の御見解、お伺いできればと思います。
  58. 金子勇

    金子参考人 先生のおっしゃるとおりでございまして、かなり意図的に情報のみがひとり歩きするということを私はかねがね思っておりまして、いまだかつて、公式に生産年齢人口というのは十五歳以上でございます。しかし、九六%が高校生になりますので、十五歳から十八歳を生産年齢人口に入れるということはだれが考えても非常におかしいのではないか。それで、大学に行きますのを、短大あるいは専修学校を含めますと、二十歳では約半分近くがまだ具体的に物やサービスの生産をしないのでございますから、まず生産年齢人口の数え方を政策絡みでいえば変えた方がよろしかろうということが、私がかねてから主張していることでございます。  もう一つは、社会的に退職をする年齢も、実は五十五歳を中心にしていた一九七九年までと、一九八〇年以降が六十歳の定年、これが日本の社会の主流でございますから、そうしますと、ある時代の一つの線引きは五十五歳であったけれども、別の時代では六十歳であり、これからは六十五歳であるというようなことまで考え合わせますと、先生がおっしゃるとおり、大体私の計算で申し上げるとこの五十年、それからこれからの二十年くらいは、働く人が五五でそれによって支えられる人が四五ぐらい、このパターンは変わらないということでございます。
  59. 矢島恒夫

    ○矢島委員 島田先生にお伺いしたいと思うのですが、実は私、地元は埼玉県でございまして、埼玉県で有料老人ホームの設置運営指導基準というのを、九一年のときだったと思いますが、つくりました。当時の新聞等で、なかなか創意工夫されたものだ、こういうのが載っておりましたけれども、確かに、終身介護の問題だとか、あるいは介護担当の職員の増員の問題だとかその他いろいろあるわけですけれども、この埼玉県の指導基準というものの最も特徴的なものを幾つか挙げていただければと思うのです。  それから、先生の御研究の範囲内で結構なんですが、東京都のことにつきましては先ほど来お話をお聞きしていたのですけれども、ほかで何か参考にしたらいいぞと思われるような基準等が出されていたら教えていただければと思います。
  60. 島田和夫

    島田参考人 さきの点の埼玉県のもの具体的にという、これは一般的に私は、たしか介護サービスに関する基準が国等よりもはるかにきついというふうに思っておりますが、それほど詳しくは存じ上げておりません。  これは私の見解ですが、最近の新しい有料老人ホームの本を見ますと、自治体は埼玉方式と東京都方式があるなどと説明しているところがあるのですが、あれは誤解を生みやすい表現でございまして、いわば福祉部局としては埼玉の場合が恐らく一番入居者に手厚いんだと思うのですね。東京都の場合は、消費者行政部局が可能なことをやろうということで表示のところをやった。やはり入居者から考えると、埼玉方式と東京都方式を合わせると最も消費者、入居者保護に厚いということになるのであって、最近の本などを見ますと、どちらかという二者択一方式で書かれているのはちょっと誤解を生ずるのではないかなというふうに私は個人的には思っております。  それから、ほかですか。ほかにはちょっと聞いてはございませんけれども、あともう一言申し上げると、やはり埼玉方式の場合には確かに全国で注目されておりますけれども、埼玉だけやりますと、要するに埼玉にはホームを建てないというような形になりますので、せっかくいい基準をつくられてもうまく機能しないという側面があるので、このあたりもやはり国政レベルで取り組む必要があるのではないかと思います。
  61. 矢島恒夫

    ○矢島委員 どうもありがとうございます。  また、金子先生にちょっとお聞きしたいのです。  これは平成六年度国民生活白書でありまして、経企庁です。「実りある長寿社会に向けて」というところのまとめの部分、「むすび」の部分にこういう文章があるのです。「自分の裁量可能な時間を若い時代にもっと多く配分することにより、生活を豊かで多様なものにする能力を開発できるように、労働時間の短縮や勤務時間の弾力化等が一層重要となろう。」  これは国民生活白書の中の文章なんですが、先ほどボランティアの問題で先生からちょっとお答えいただいたと思うのですけれども、労働時間の短縮というのは高齢化社会に向けてもいろいろな効果があるのじゃないか。ここに書かれている本人の問題だけじゃなくてあるのじゃないかと思うのですが、先生はどんな効果をお考えか教えていただければと思います。
  62. 金子勇

    金子参考人 労働時間の短縮には二通りの方法がございまして、一つは休日をふやすということでございます。それからもう一つは、毎日の労働時間を短くするということでございますが、消費活動も含めて、今御指摘の準公益あるいはボランティア型の社会をつくるには休日をもうふやさない方がよろしかろう、むしろこれからの労働時間の短縮にとっては、毎日の労働時間を少し短くするということと、ぜひそれに加えて、小学生、中学生の休日の問題を連動させるということが大事だと思います。  より具体的に申し上げますと、休める権利、私たちで言うと年休みたいなものを小学生、中学生クラスにも一年に五日ぐらい与えることによって、親の年休と合わせて一緒に家族旅行ができたり、混雑をしないときにゆとりを持って家族が動けるということがございますので、ソフトの方面をより具体的に開発していくことが肝要かと存じております。
  63. 矢島恒夫

    ○矢島委員 青山参考人にお聞きしたいのです。  お年寄りのいろいろな相談事というのは、やはり一般の人たちの相談と違っていろいろな面で配慮しなければならない問題が、あるいはまた対応の仕方とかそういうことで御苦労されていると思うのです。そういう意味では、お年寄りに対応する専門的な人といいますか、配置といいますか、そういうものが必要になってくるのじゃないかと思うのです。  そういう点では、国民生活センターの状況と、それから、各県の消費生活センターなどでどういう形でどれぐらい配置されているのか、その辺、おわかりの範囲内で結構です。
  64. 青山三千子

    青山参考人 消費生活相談に携わる者の資格、資質につきましては、消費者側からも強い要望がございまして、国民生活センターでは消費生活専門相談員という資格を付与する形になっておりまして、その消費生活専門相談員のカリキュラムの中などで高齢者に対する対応の仕方、接遇の仕方ということについては十分にやっているつもりでございます。  今消費生活専門相談員は、全国に資格を持っている人が千人ほどございます。このほかに通産省が早くからやっておられました消費生活アドバイザーという認定資格もございます。この消費生活アドバイザーの資格を持った人たちは、これは主として企業で働いておりますけれども、もう数千名に達しております。この数千名の通産省認定のアドバイザーたちが各自治体の消費生活相談の窓口でも働いておりまして、この両者の資格をあわせ持っている人たちがだんだんふえてまいっております。  また、最も早く資質の向上を図りましたのは、財団法人日本消費者協会でございまして、日本消費者協会は公的な資格の付与ということはしておりませんけれども、協会認定の消費生活コンサルタントという、コンサルタントという言葉を正式に使っておりまして、このコンサルタントの人たちは、私の個人的な見解でございますけれども国民生活センターの専門相談員や通産省のアドバイザーよりもはるかに老人に優しい接遇のノウハウを持っているように考えております。  しかし、先生おっしゃいますように、やはり高齢者問題というのは、六十歳未満相談者の接遇とは全く違いまして、聞き取りも難しいですし、論理的に筋道を立てるにも時間がかかります。そういう点で、やはりもう少しカウンセリングの資質を備えた高齢者専門の相談分野というのが開拓されてしかるべきだと私も思っております。  以上です。
  65. 矢島恒夫

    ○矢島委員 この問題は河上先生にお尋ねすることになるかと思うのです。  今、有料老人ホームの問題では、種々の問題点あるいは今後考えていかなければならない点等をお話しいただいて、ある程度理解することはできたわけです。  これからそういう状況が続いていきますといろいろな問題が今後出てくるわけですけれども、いわゆる私的経営の状況だけではどうしても解決できない問題が多々あるということはもうわかっております。ある段階において、社会保障だとかあるいは福祉行政というものとの連携といいますか、そういうものが必要になってくるのじゃないかと思うのです。そういう面で、国として、行政として、こういうところを今から注意していった方がいいよというあたりのアドバイスをいただければありがたいと思います。
  66. 河上正二

    河上参考人 全く御指摘のとおりでありまして、やはりもうかるというのはどういう状態がというと、どんどん人が早く死んでいって入居者が入って一時金が入ってくる、そういう状態でありますから、本当に手厚い福祉をやっていこうと思えば有料老人ホームというのは赤字にならざるを得ない、そういう仕組みであります。  したがって、実際に医療とうまく連結がとれるという保証もございませんので、どういう段階になったら営利の事業体としてはもう手が出せないという段階をはっきりさせて、その段階でもう国がきちんと後始末をするということと、それから、それまでにぽったくりがあっては困りますので、やはり契約内容適正化するための仕組みを考えておくということだろうと思います。  それから、余り直接のお答えにならないかもしれませんが、やはり事業体そのものも少しセレクトしていいのじゃないか。つまり、個人に任せておいたら、その人が死んでしまったら相続人が果たしてその後を継ぐかというと継がないとか、そういうことがありますから、法人でないと絶対にいけないというようないろいろな制約があります。ですから、そうした事業体としての適格性をチェックするような、全体としては有料老人ホーム法のようなものを考えて、その中で社会保障法と連結させるというような制度設計があっていいのじゃないかというのが私の考えでございます。
  67. 矢島恒夫

    ○矢島委員 長時間にわたりまして、参考人の皆さん、本当にありがとうございました。私の持ち時間が終わりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  68. 大石正光

    大石委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十九分散会