○佐々木(秀)
委員 私は、自由民主党・自由連合、日本社会党・護憲民主連合及び新党さきがけ、以上三党を代表して、本案に
賛成の立場から討論を行います。
宗教法人法は昭和二十六年に制定され、
憲法にうたわれた
信教の自由と
政教分離の
原則を
基本とし、
宗教法人の
責任を明確にするとともに、その
公共性に配慮するという
趣旨のもとにその体系が組み立てられております。制定以来、本法は、多くの
宗教団体に法人格を与え、その物的基礎を確保することによって、
宗教団体の自由かつ自主的な活動を支えてまいりました。
しかしながら、その後我が国においては、都市化、情報化の進展、核家族の急増、交通手段の発達など、私どもを取り巻く社会環境には大きな変化が生じてきております。そして、こうした変化は
宗教界にもさまざまな影響をもたらしています。
すなわち、一つには、広域的な活動を展開する
宗教法人の増加であり、また、多岐にわたる収益事業を行う
宗教法人の増加であります。このように
宗教法人の活動が多様化し、複雑化している状況にもかかわらず、
宗教法人法は、制定後四十数年の間、そのままで今日に至っているのであります。
そして、まことに遺憾なことは、近時、
宗教法人を隠れみのに専ら収益事業を行う
団体や、
宗教に名をかりた詐欺的商法の横行、さらには終末思想に基づいた反社会的なカルト
教団の出現など、本法の制定時にはおよそ予想し得なかったさまざまな問題が発生し、これに対して国民の求める最小限の対応さえ困難なまま推移してきたのが現状であります。
このような中で生じたのが一連の
オウム真理教の事件であります。二度と
オウムのような事件を許してはならない。このような事件の
再発防止に資するためにも
宗教法人法の最低限の改正を行うべきであるというのが、まさに今日の世論であります。こうした国民の声を、私ども立法府にある者は真摯に受けとめなければなりません。(拍手)
今回の改正は、今申し上げた
趣旨を実現するため、
信教の自由と
政教分離の
原則という
憲法に基づく現行法の精神をいささかも変更することなく、
宗教法人が自治と自浄の能力の向上を図り、その
公共性を高めるため、
宗教法人の管理運営面等について最小限度の改正を行おうとするものであります。
その内容は、まず第一に、
宗教法人の所轄庁に関し、二つ以上の都道府県にまたがり活動する
宗教法人について、所轄庁がより適切に対応できるようにするため、所轄を都道府県知事から
文部大臣に移すことであります。
そもそも、所轄庁が国か都道府県かによって法の適用が変わることはないのであります。現に、国の所管となっている
宗教法人から、
信教の自由が侵されたなどという苦情は一切これまでありません。
これについては、戦前の
宗教に対する
国家権力による忌まわしい弾圧の歴史を想起し、
権力の介入に再び道を開くというような意見もありますけれども、現
憲法下においてこのような
議論は全くの誤りであるということを、この際はっきりと
指摘しておきます。(拍手)
第二に、収支計算書等の作成と所轄庁への提出を求めることにしたこと、またこれらの書類について信者等に閲覧を認めることにしたことであります。
そもそも、財務関係の書類のうち最も基幹的なものである収支計算書の作成すら義務づけられていないという法人がほかにあるでしょうか。いかに
宗教団体であるといえども、法人格を取得した以上、そこには法的、社会的
責任が発生するのであります。また、税制上の特典を受けながら、なお
宗教法人の脱税行為その他の違法行為は後を絶たないというのが現実であります。
宗教法人の
公共性、公益性に対応した、より一層の公正な運営の確保が今最も求められていると我々は
考えるのであります。
財産目録とあわせ、収支計算書その他の書類を作成し、その写しを所轄庁に提出し、また信者その他の利害関係人に閲覧させるということは、所轄庁が
認証した
宗教法人のその後の状況を知る上で不可欠であるとともに、
宗教法人側の適正適切な事務処理についての認識を促し、法人の自治能力、管理運営能力の向上にもつながるものであります。
第三に、収益事業の停止命令、
宗教法人の
解散命令等に関する
報告徴収・
質問の制度を設けることとしたことであります。
これは、
解散命令等の前提となる事実を所轄庁が把握することが不可欠であるとともに、
宗教法人について
一般的に
質問ができるとしたものではなく、
解散命令等に該当する疑いがある場合に限って、それも事前に
宗教法人審議会の意見を聴取した上で行われるのであります。さらには、
質問に際して
宗教法人の
施設に立ち入るには、法人の関係者の同意を必要とするなど、
宗教法人に対して二重三重の配慮がなされているのであります。これをも
信教の自由を侵すとする主張は、全く
理解できないところであります。
以上、主な三点について、今回の改正が妥当なものであることを申し述べてまいりました。
最後に、私は、本改正案提出に先立ち、
報告の取りまとめに当たられた
宗教法人審議会の
委員諸公、また本案審議に取り組まれた本
委員会の
委員各位が真摯な
議論を展開されたことに対して、心からの敬意を表するものであります。
顧みて、本
委員会での
議論は、
信教の自由と
政教分離の
原則という根源的なものから、破壊的カルト
教団対策の検討、さらには
公益法人に対する課税のあり方などなど、実に多岐にわたってなされました。
私たちは、こうした
議論を大切に、今後新たな法整備が必要とあらば、さらに
議論を
積み重ね、よりよい結論を導き出していくことこそが、真に国民の負託にこたえる道であることを
委員各位にお訴えをして、私の
賛成討論を終わります。
ありがとうございました。(拍手)