○佐々木(秀)
委員 社会党の佐々木です。
今回の
宗教法人法の一部
改正が、ただいまの
山口委員の
質問にもあらわれておりましたし、また他からもそういう御意見があるわけですけれ
ども、現行法の基本構造を改変するものだ、あるいはこれらの
改正が国の
宗教法人に対する指導だとか監督を強化することになる、
信教の自由が侵されかねないというような御批判があることは御承知のとおりだと思います。
こうした危機意識の背景には、先ほど
総理も述べられたような、戦前の我が国における忌まわしいというか悲劇的な、あるいは誤った宗教弾圧の歴史というものがあった、このことは否めない事実であろうと思います。
明治
政府になりましてから、明治憲法の上でも
信教の自由は一応保障はされていた。しかし、これには、公共の安寧秩序のためその
活動を制限できるというような大きな制約条項がついていたのですね。これが
一つ大きな問題でありましたし、それから、先ほど来
お話がありましたような、国策、国家の目的というかそれに反するような
宗教活動に対しては、秩序を紊乱するものだというようなことから、これに対する摘発なり糾弾が行われたというのは、事実幾つも幾つもあったわけですね。
具体的な例としては、例えば、有名な一九三五年の大本教の弾圧
事件、これは教祖出口王仁三郎氏を初めとして
信者九百八十七人が検挙される。これは天皇制を否定するものだという一方的な言いがかりですね。それからまた一九四三年には、現在の
創価学会の前身と言われます創価教育学会、この
事件があって、初代会長の牧口常三郎氏らが不敬罪だとか治安維持法違反で逮捕されて、しかも、牧口氏が翌年に獄死をするというようなことがあった。そしてまた、各地でキリスト教
関係者の検挙だとか、あるいは天理教にまでそういうことが及んだということは、これはもう否めないことで、そうしたことを知る方々あるいはその教団に
関係する方々が大変な危機意識を持っておられるということは、これは確かに一面
理解ができることではあろうと思います。
しかし、先ほど
お話がありましたように、そうした反省の上に立って日本国憲法は、例えば十九条では思想、良心の自由を保障する、二十一条では表現、結社の自由を保障するほかに、特にこの二十条を設けて
信教の自由をきちんと保障する、そしてまた八十九条では政教の分離ということをうたうというように、何重にも手厚くこの
信教の自由というものを基本的人権として大事にする、国家権力が侵してはならないということを保障しているわけですね。
ですから私は、そういう御心配は、
一つは、体制が違うということ、そして、こうした憲法を持っていることによって、明らかに違っているのではないかと思われるのですね。そしてまた、今度の
改正というのは、もうここまで論議されているように、全体的な
改正ではなくて、あくまでも一部の、
最小限必要なものに限っての
改正だ。このことについては確かにいろいろ御批判もあるけれ
ども、逆に宗教者の中からも、このくらいの改善というのは当然のことで、あるいはもっときちんとした
法人法の
改正というのは必要だという議論だってあるわけですね。
例えば、きょうお持ちしましたのは、これは「世界」という雑誌の十一月号ですけれ
ども、これには、浄土宗の宗務総長をなさっておられて、しかも直木賞の作家として著名な寺内大吉さんがインタビューに答えておられる。これは大変私は傾聴に値すると思うのですけれ
ども、今の
宗教法人法には非常に不備が多い、むしろ、見出してはざる法だということまで言われて、片方では、
宗教法人が自浄努力といいますか、きちんとした自律的な努力をしなければならないけれ
ども、同時に、やはり
宗教法人法の中に監査の組織だとか自浄組織のことを明記すべきなんだ、そういうことがあってこそ優遇税制が認められるのだ、
宗教法人の目的以外に使った金にまで優遇税制を適用するなんというのはおかしいと思わないかとさえ言っておられる。
このことすべてを私は肯定するわけではありませんけれ
ども、しかし、
宗教法人の中にでも、こうしてまじめに今度の
改正についてとらえておられる、むしろ積極的にもっと考えなければならないと言っておられる方もあるということは、私はやはり考えていかなければならないことだろう、こんなふうに思っておるわけであります。
そこで、ここで確認したいのですけれ
ども、やはりそこでも、なぜ今なのかということ、あるいは、もっと根本的な点にまで
見直していくことが必要なところがあるのじゃないかという議論もあるわけですけれ
ども、なぜ今この時期にこの
程度の
改正をしなければならないのかということについて、そしてまた、
信教の自由について権力が介入するものではないということについて、
総理大臣と主管の
文部大臣からもう一度、簡単で結構ですから、はっきりしたお答えをお聞きしたいと思います。