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1995-11-06 第134回国会 衆議院 宗教法人に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十一月六日(月曜日)     午後一時開議 出席委員   委員長 越智 伊平君    理事 小里 貞利君 理事 片岡 武司君    理書 鈴木 宗男君 理事 草川 昭三君    理事 月原 茂皓君 理事 吹田  愰君    理事 佐々木秀典君 理事 井出 正一君       石橋 一弥君    小川  元君       加藤 紘一君    狩野  勝君       亀井 静香君    久野統一郎君       熊代 昭彦君    栗原 裕康君       七条  明君    白川 勝彦君       野田 聖子君    萩山 教嚴君       穂積 良行君    松永  光君       御法川英文君    村岡 兼造君       森  英介君    与謝野 馨君       愛知 和男君    青山 二三君       石田 勝之君    北側 一雄君       北橋 健治君    富田 茂之君       西岡 武夫君    鳩山 邦夫君       船田  元君    冬柴 鐵三君       山口那津男君    輿石  東君       濱田 健一君    細谷 治通君       山口 鶴男君    山下洲夫君       中島 章夫君    正森 成二君       土肥 隆一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  村山 富市君         法 務 大 臣 宮澤  弘君         大 蔵 大 臣 武村 正義君         文 部 大 臣 島村 宜伸君         厚 生 大 臣 森井 忠良君         農林水産大臣  野呂田芳成君         通商産業大臣  橋本龍太郎君         運 輸 大 臣 平沼 赳夫君         郵 政 大 臣 井上 一成君         労 働 大 臣 青木 薪次君         建 設 大 臣 森  喜朗君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     深谷 隆司君         国 務 大 臣         (内閣官房長官         )       野坂 浩賢君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 江藤 隆美君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      高木 正明君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 衛藤征士郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      宮崎  勇君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      浦野 烋興君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大島 理森君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 池端 清一君  出席政府委員         内閣官房内閣内         政審議室長   藤井  威君         内閣法制局長官 大出 峻郎君         内閣法制局第二         部長      秋山  收君         行政改革委員会         事務局長    田中 一昭君         警察庁長官官房         総務審議官   山本 博一君         警察庁刑事局長 野田  健君         警察庁警備局長 杉田 和博君         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         防衛庁参事官  澤  宏紀君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛施設庁建設         部長      田中 幹雄君         法務大臣官房長 原田 明夫君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 則定  衛君         公安調査庁長官 杉原 弘泰君         外務省北米局長 折田 正樹君         外務省条約局長 林   暘君         大蔵省主税局長 薄井 信明君         国税庁次長   若林 勝三君         文部大臣官房長 佐藤 禎一君         文部大臣官房総         務審議官    辻村 哲夫君         文部省初等中等         教育局長    井上 孝美君         文部省高等教育         局長      吉田  茂君         文化庁次長   小野 元之君         農林水産大臣官         房長      高木 勇樹君         郵政大臣官房審         議官      品川 萬里君         労働大臣官房長 渡邊  信君         建設大臣官房長 伴   襄君         自治大臣官房長 二橋 正弘君         自治大臣官房総         務審議官    湊  和夫君         自治省行政局公         務員部長    鈴木 正明君         自治省行政局選         挙部長     谷合 靖夫君         自治省財政局長 遠藤 安彦君         自治省税務局長 佐野 徹治君 委員外出席者         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         宗教法人に関す         る特別委員会調         査室長     岡村  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 十一月六日  辞任         補欠選任   石橋 一弥君     狩野  勝君   衛藤 晟一君     野田 聖子君   加藤 紘一君     御法川英文君   亀井 静香君     久野統一郎君   栗原 裕康君     森  英介君   与謝野 馨君     萩山 教嚴君   江田 五月君     富田 茂之君   加藤 六月君     青山 二三君   山下洲夫君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   狩野  勝君     石橋 一弥君   久野統一郎君     亀井 静香君   野田 聖子君     衛藤 晟一君   萩山 教嚴君     与謝野 馨君   御法川英文君     加藤 紘一君   森  英介君     栗原 裕康君   青山 二三君     加藤 六月君   富田 茂之君     江田 五月君   濱田 健一君     山下洲夫君     ――――――――――――― 十一月六日  宗教法人法早期改正に関する請願(東家嘉幸  君紹介)(第一五七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  宗教法人法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七号)      ――――◇―――――
  2. 越智伊平

    越智委員長 これより会議を開きます。  内閣提出宗教法人法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。  この際、鳩山邦夫君から関連質疑申し出があります。前回に引き続き、愛知和男君の持ち時間の範囲内でこれを許します。鳩山邦夫君。
  3. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 私は、先週の火曜日だったかと思いますが、本会議総理中心宗教法人法改正について基本的なところは全部お伺いをいたしたわけでございます。ただ、十分にお答えをいただけなかったことが非常に多くて残念でありましたから、きょうは、繰り返しになろうかと思いますが、法律の具体的な中身についてはむしろ同僚議員が細かくお伺いをすると思いますから、私は、大きな、重要な問題のあらましだけお話をしたいと思うのです。  本会議でもお話をいたしましたように、私は、世の中に完全無欠法律などというものは一つもない、だから、時代に合わないとか状況が変われば、あるいはもっといい法律を考えることができるというのであればこれは改正をすべきだと思っていますし、この宗教法人法だって、全部読んでみますと、これはやはり将来に向けていろいろ変えていく点はあるのかなと正直思うわけであります。  ただ、なぜ我々がこの宗教法人法改正に相当強い文句を言っているかといえば、これがオウム真理教事件とインテンショナルに、意図的に結びつけられて、ほとんど関係がない、全く関係がないと言っても言い過ぎではないのに、宗教法人法が甘かったからオウム真理教事件が起きた、あるいは宗教法人というものが、オウムのようなものが出てくる、そういう土壌をつくり上げたというような巧みな宣伝がなされてきて、それがこの宗教法人法改正と。  これは正直言って、憲法の保障する信教の自由とかあるいは政教分離とか 一番大事なものに直接及ぶ可能性のある宗教法人法改正というのを持ち出してきた。そうすると、全国の宗教団体は、あるいは宗教法人は基本的には大きな問題意識を感じる。もちろん創価学会皆様方だって、あるいは宗教法人審議会で七名の方がやり直しを要求しているけれども、そういう方々もこの法改正内容には反対である。  そうなると、巧みな宣伝をしておいて、この宗教法人法というものがオウムを守った、オウムの温床になってきたような全くのデマ宣伝をやる。そうすると、何か宗教法人法改正を、これは望ましくない改正ではないかと言うと、まるでオウムを守っているような、そういうような印象を与えようとするような悪宣伝が相当なされているわけですね。例えば、今行われている参議院の補欠選挙の中で、加藤幹事長ですか、今回の選挙オウムに厳しい勢力が勝つか、オウムに甘い勢力が勝つかなんというようなとんでもない悪宣伝、全く想像できない。  だから私は、私も警察ではありませんから、例えば松本サリン事件というのが起きたときにオウムだとはわからなかった。ただ、上九一色村のいろいろな異臭事件とか物質が出てきた、あるいはそれがついに地下鉄サリン事件というのにつながっていった、それでオウム真理教という大変な殺人集団が登場したわけです。  このことにとにかくオウム根絶ということで国会が取り組まなくちゃいけないのに、他方そうでなくて、オウム根絶というのが国会の、我々が法律上の問題もやる、警察法二十四条とかそういう、これは深谷先生国家公安委員長として警察法が変わっていればもっと捜査がやりやすかったという部分もあるはずだから、警察法改正と、あるいはサリン物質については新規立法をやりましたけれども、毒物とか劇物の話とかいろいろやらなければいけないことはいっぱいある。そうやってオウム根絶させる、破防法のことは後で申し上げるけれども、あるいはオウム類似事件が絶対に起きないようにみんなで努力すべきときなんだ。  ところが、あの凶悪な事件を政治的に利用して、これは新進党対策だ、創価学会対策だ、選挙運動にこのオウム事件を使って、その手段として宗教法人法が持ち出されてきているような疑いをどうしても禁じ得ない。私は、そこにすごく大きな不幸があるように思えるわけでございます。  この委員会で私が明らかにしなければいけないことは、この宗教法人法改正というものがオウム根絶オウム類似犯罪オウム類似事件のこれから起きることには何の役にも立たないということを私はここで明らかにしたい、そういうふうに思うわけでございます。  総理は、既に御答弁の中で、宗教法人法改正オウム対策ではない、これは断言できます、こうおっしゃいましたが、もう一度同じことをおっしゃってください。
  4. 村山富市

    村山内閣総理大臣 オウムが引き起こしたこの一連の凶悪な犯罪事件と今度の宗教法改正とは、私は直接的には結びつかないものだというふうに思いますね。ただ、この宗教法人法改正がこれだけ政治の俎上に上ってきたきっかけになったことは間違いないと思います。それで宗教法人法というものに非常に関心を持たれた。  このオウム事件きっかけにして、今の宗教法人法の問題に全然改めるべき点がないのか、こういう話になってまいりますと、例えば、この委員会でもたびたびお話がございましたけれども東京都がオウム真理教所轄庁になっておる、ところが実際には山梨県や熊本県やいろんなところでやはりオウム真理教活動がなされておる。そして山梨県で問題が起これは、それは東京都の問題だから、東京都に行けば、それは山梨で起こったことだから東京都の管轄ではない、こういう話になって、いろいろ始末に困る。こういうようなことがあって、少なくとも二つの県以上にまたがるような宗教団体活動については所轄庁は、やはり文部省責任を持つということでなければ行政的に責任を持てないんではないか、こういう話になって宗教法改正案見直しが出されたと思うのです。  私は、信教の自由と政教分離を本当の意味で大事に守っていくためには、やはり世間から認められるような、そういう最低のものはお互いにしっかり確立していく必要があるのではないか。だから、常識的に考えてそれは当然じゃないかと思うようなことは、やはりそれは当然らしくした方がいいのではないか、こういう意味で今度の改正案が出されておる、私はそういうふうに理解をいたしております。
  5. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 総理大臣がおっしゃっている内容、全くわからないわけではありませんが、ただ、これは問題のすりかえだと思うのですね。  だから、私はこの間本会議で申し上げましたように、これはちょっとテレビ中継のない本会議でしたから読ませていただきましたが、私はこういうことを言ったのです。宗教法人法の不備がオウム犯罪を可能にしたとかオウム犯罪をここまで野放しにしてしまったのは宗教法人法が甘かったからだとかそういった、宗教法人法の本質を全く知らないで理解できないで、そんな議論が横行いたしております。オウム野放しは、宗教法人法に原因があるのではなく、政府刑法取り締まり法規を正しく適用しなかった、つまり犯罪事実を放置したことに問題があります。私はそう申し上げた。  宗教法人法には、宗教法人であるからといって何ら特別な保護を与えるような規定は一つもありません、犯罪を犯せば、個人であれ宗教法人であれ、刑法やその他の法律によって規制される点では、個人宗教法人も何の区別もありません。国家公安委員長、そうですね。同じですね、個人法人も。
  6. 深谷隆司

    深谷国務大臣 宗教団体であろうとどういう団体であろうと、犯罪の事実というものが出された場合には、それは徹底して捜査する、その点について区別をするものではございません。  ただ、今委員発言の中に、犯罪事実を放置したことに問題があったとおっしゃったのですが、我が日本の警察全力を挙げて今日まで努力しでそれなりの成果を上げ、今後のためにも一層頑張っていることを御理解いただきたいと思います。
  7. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 全力を挙げているという答弁は、そうしか言いようがないので仕方がないことと思いますが、それは、要するに警察のいろいろな問題があったことは事実でございます。  「宗教法人法任務は、信教の自由を保障することであって、犯罪取り締まりとは何の関係もありません。オウム犯罪は、刑法任務がなかなか発動されなかったゆえの問題であり、オウム事件宗教法人法の問題にすりかえることは決して認めるわけにはまいりません。(拍手)」というのが、私が本会議で読んだ中身でございます。  私は、基本的にそのことを非常に重視しているわけでございまして、国家公安委員長、私の記憶が確かならば、国家公安委員長は、衆議院の予算委員会で一度、それからこの間のこの特別委員会で一度、今のような私ども質問に対して、個人団体では犯罪捜査のときに、個人は一人だからやりやすいが、団体だと隠ぺい工作とか、お互いをかばう、隠すということがあるのでやりにくい面があるので、そこのところはちょっと、こういう答弁をされたと思うのですが、そのとおりですか。
  8. 深谷隆司

    深谷国務大臣 前に新進党さんの質問の中に、今度の捜査についてのそういう意味質問があったものでありますから、私は、事実の問題として、あるいは一般的な事例も含めて、個人集団捜査に関しては集団の方が個人より難しいということを申し上げました。  あわせて、宗教団体の場合には、例えば、いまだに尊師を尊敬して、その命令、そのコントロールの中に生きている信者が非常に多い。したがって、そういう隠ぺい工作その他も極めて集団的に行われた。そのことが捜査の難しさにつながったということは事実だと思っております。
  9. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 国家公安委員長は私は偉いと思います。言葉を正確に使っておられる。それは、集団という言葉宗教団体という言葉を今も使われた。前もそうであった。私は敬意を表します。  というのは、宗教法人だから捜査がしにくいではない。宗教団体だから、あるいは宗教団体ではなくて一般に集団とか団体、人のマス、固まりだとやりにくいということをおっしゃったわけで、これは実態だろうと思うのです。だから、宗教法人法上、宗教法人になれないとか取り消されたとか解散させたからといって捜査がしやすくなるというものではない。だから、ここにも宗教法人法改正といわばオウム取り締まりのような、あるいは類似事件未然防止というような意味での関係が極めて薄いということが、私は今の正確な御発言でよくわかると思うわけでございます。  そこで、いろいろお尋ねをしたいのですが、総理が私の本会議での質問に対する答弁で、宗教法人法オウム捜査等一連の事実関係の中で邪魔になった、障害になった点がありましたかという私の質問に対して、総理はこう答えておられるのですよ。現行宗教法人法障害となった点があったのかとのお尋ねでございますが、警察においては、捜査対象がいかなる団体であろうとも、法に触れる事案を認知すれば厳正に対処してまいりましたし、今後もその姿勢を堅持していくものと承知いたしておりますと、全く私の質問にいわば答えていない。  少なくとも宗教法人制度あるいは今の法があるので、オウム一連捜査等の事実経過の中で、やりにくいというような部分は全く触れていない、認めていないと思うわけでございます。ですから、この宗教法人法をおっしゃるような形に改正をしたとしても、オウムは防ぐことはできなかった、あるいは類似事件の発生を防ぐことは私はできないと思うのです。  これは破防法の問題なんだ、これは破防法の問題でこれからは対処すべきだというのが私たちの考え方なんですが、例えば、こういう仮定、空想の質問というのはよくないのかもしれないが、十年前に何らかのきっかけ宗教法人法見直しましょうということで、今政府がお出しになっているとおりの、文部大臣所轄になるとか、収支計算を出すとか、信者が備えつけ書類を見られるとか見られないとか、質問権があるとか、この法律宗教法人法の今の改正案が十年前に通っておったら、オウム事件は発生しなかったとお思いですか、総理
  10. 村山富市

    村山内閣総理大臣 なかなか判断が難しい問題だと思いますけれども、私は、少なくとも今の宗教法人法改正が今回提案されているような形でなされて、宗教活動宗教団体のやっていることがある程度透明度を高めて、信者も知ることができるし、また世間もやっていることを、ああ、あの宗教団体はこんな活動をしているんだなということがわかるような状況になっていることは、ある意味では未然にやはり防ぐことができる要素には若干なり得たのではないかというふうに思いますね。それはそう思います。私は正直にそう思います。  これは刑法の扱いとして私どもは考えているわけじゃないんですよ。あくまでも信教の自由と政教分離というものを守っていくという前提に立って、ごく常識的に世間の皆さんもそう思うだろうなと思う程度最小限度改正はした方が宗教団体のためにもいいのではないか、こう私どもは考えていますから、ぜひ御理解をいただきたいと思うのです。
  11. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 そうすると、この宗教法人法改正オウム対策ではない、これは断言しますとおっしゃったが、そのことと若干矛盾しませんか。
  12. 村山富市

    村山内閣総理大臣 オウムのやった一連の凶悪な犯罪行為については、これは刑法中心とした法律に基づいて今徹底的に取り締まりがやられているわけですよ、捜査がなされているわけです。したがって、それはその部面で解明されていくでありましょう。  しかし、そうした一連経過から見て、このオウムの問題がきっかけになって宗教法人法というものに対する関心が高まってきた。どこかにやはり問題があるのじゃないかというようなことがいろいろ指摘をされて、そして先ほど来申し上げておりますように、仮にオウム団体をおっしゃるように宗教法人として解散命令請求をやりたいといって東京都が考えてみても、東京都は何らオウムの行動について把握していない、だから解散請求のしょうがないというので、検察庁の手をかりて、そして解散請求を出された。  こういう経過を考えた場合に、やはり行政責任として最低のことは知っておく必要があるのではないかという程度のものを、これは信教の自由と政教分離の原則というものをしっかり守ることを前提にした上で、最小限やはり行政責任というものは果たせるようにする必要があるのではないかということで御提案を申し上げているわけです。
  13. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 まあ一〇〇%は否定しません。一%ぐらいは認めますが、九九%は今の御答弁は認めるわけにはまいりません。  だから、国民は今だまされている。極端に言えば、相当な宣伝がなされておって、例えば、きょうもある週刊誌を何げなく開いたら、僕はびっくりした。ある週刊誌を開いたら、オウム事件出発点宗教法人法による認証であると書いてある。宗教法人法による認証オウム事件出発点だと書いてあるのです、ある週刊誌に。  というのは、それは宗教法人になったことによって何らかの信用を獲得したとか、そういう部分はあるだろうが、オウム事件出発点というのは宗教法人になったことじゃないんだ。それは、ハルマケドンだか何かわからないけれども、そういう邪悪な気持ちを持って、人類を滅ぼすというような気持ちをみんなで固めていったことが、それは教祖一人なのかみんななのかわからないけれども、そこにオウム事件出発点があるのだが、まるで宗教法人法によって宗教法人として認められたことがオウム事件出発点であるかのような週刊誌の書き方を見て、びっくりした。  私は、こういう国民の完全な誤りを何としてでも取り除かなければいけないという気持ちで今質問をしているので、国民が望んでいるのは、これはオウムのような宗教団体が出てこないこと、そして、この類似事件が今後発生しないことだろう。それは、安全、安心を求める国民気持ちは非常に真剣なものがあるんだろう、そう思うと、それは私も、オウムきっかけになって、宗教法人とはどんなものだろうというふうに見直しを始めたという経緯は多少は理解はするけれども、この宗教法人法がまるでこの国会対決法案のような形になって、いろいろなやり合いをして、そして、まあ改正ができるのかできないのかわからないが、結果はどっちにしたって、これはオウムの再発、根絶に何にもつながらないんだったらこんなばかなことはないので、そうではなくて、だからオウム根絶のための特別委員会をつくるべきだということで我々はこの特別委員会には反対をしたのです。  これは、オウム根絶委員会というのは、この国会委員会なんですよ。行政上の政府委員会のことではありません。この間、愛知先生質問の中で若干の混乱があったかと思うのですが、受け取り方で。  私たちが言っているのは、国民が求めているのはこのオウム根絶類似事件をもう発生させないことだから、そのためには、ありとあらゆる国会議員の責任を果たすために、我々はそのオウム根絶・再発防止特別委員会をつくって審議をしたかった。だけれども、これは、社会党のトップがおられ、自民党の総裁、トップがおられて、それで武村さんがさきがけのトップだから、その三人の皆様方気持ちを固めれば、これはこの特別委員会ではなくて、そのオウム根絶特別委員会をつくることができたはずだ。我々は一生懸命やったけれども、まだ新進党は数が少ないから特別委員会をつくることはできなくて、この宗教法人特別委員会になってしまった。  だから、そういう考え方で、本当はオウム根絶特別委員会でもよかったなという反省はありませんか。
  14. 村山富市

    村山内閣総理大臣 オウムの、たびたび申し上げますけれども、今度の犯した凶悪な、全く許すことのできない犯罪行為というものについては、今刑法中心にして日本の検察と警察が徹底的な捜査を続けているわけですね。これから公判も行われてまいりますから、したがって、やがて全貌は明らかにされてくると思います。私どもは、絶対に再発を防止するために、これは閣内一体となって全力を挙げて取り組んで、そして、国民の皆さんに安心してもらえるようにしなければならぬというのはもう申し上げるまでもないことなんです。  それと宗教法人法改正とは直接的に関連がないということは、たびたび申し上げているとおりですね。私は、対決法案になるなんということ自体を想定していませんよ。これは、これだけ国民の世論調査を見ても、やはり宗教法人法見直しはすべきだという世論が高い。そして、まともに考えてみれば、なるほど行政としてその程度最低責任は持てるようにせにゃいかぬなと。また、宗教団体の皆さん方にも、信者宗教活動をやっているその実態というものをある程度知ることも必要でしょうし、世間の皆さんもやはり認められるような形でやることも必要ではないかというふうに考えていますから、私は、頭からこれが国会対決法案になるなんということを想定して出しておるわけではありません。  ですから、ごく常識的にまともな御議論をしていただければ結論が出るものだというふうに私は考えています。
  15. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 だから、総理は確かに一貫してそうおっしゃっている。ところが総理以外の方はそうおっしゃっていないから、非常に大きな問題だ。確かに文部大臣もそういうふうにはおっしゃっていない。だけれども、こっちの側からはそういう声が出ているわけですから、そこのところはきちんとしていかなくちゃならない。  その前に、ちょっとお伺いをいたしますが、これは文部大臣というか、政府委員でも結構です。  宗教団体というのは日本に幾つありますか。
  16. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 宗教法人ですか。
  17. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 団体です。
  18. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 宗教法人が十八万四千、その他が約十万、合計で二十三万、そうですね、二十二万。
  19. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 二十二万ということは、十八万三千幾つですかと、足す、約四万七千とか、そういうので二十三万というようなことを文部省は言うかと思うのですが、でも考えてみれば、宗教団体が幾つあるかというのが、文部省、文化庁が完全に把握できる方が本当はおかしいので、宗教団体というのは自由につくることができるわけです。ただ、およそ十万ではないかと専門家は言っていますね。  だから、宗教法人というと世の中の方には、宗教団体というのはほとんど全部宗教法人で、みんなその宗教法人法のもとにあると勘違いするのですが、そうじゃない。宗教法人が十八万三千幾つで、宗教法人でない宗教団体が十万あるとすれば、少なくとも三分の一は非法人宗教団体ということになる。  それで、オウム真理教解散命令が出ましたね。これが実際に実施されて、オウム真理教宗教法人としては解散をさせられる。そうすると、確かに財産清算の問題というのは起きてくる。しかし、オウム真理教の立場とすれば、約十八万四千の宗教法人の中の一団体が、これがいわゆる残りの十万の任意の宗教団体に移行してくる。そうしますと、破防法が適用される気配が今のところないとするならば、それは何をしても自由とまでは言わないが、法人ではなくても宗教活動はできるのだから、宗教活動をしている中でまたサリンをつくるということは十二分にあり得ると思うのですが、これはどなたに例えばいいのですかね。
  20. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 宗教法人解散命令が確定いたしますと、宗教法人としての法人格は失うわけでございます。その後も宗教団体としての活動ができなくなるというわけではないわけでございます。
  21. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 それはもう答弁を求めるまでもないので、宗教法人法宗教法人法と言うが、例えばオウム真理教宗教法人でなくなればただの任意の宗教団体になるだけです。もちろんそれは警察はきちんとこれを追うでありましょうが、破防法のような網をかぶせてこれを根絶させるわけにはいかぬでしょうから、破防法のことはまた後でお伺いをいたしますが、結局宗教法人法というのは、オウムに関していえばせいぜいそんなものだというふうにしか残念ながら考えられない、そういうふうに私は思っています。  これは総理にお伺いをしたいのですが、私が先ほど申し上げたように、宗教法人法だって不備な点があれば、これはもう本当に慎重審議して、慌てることはないので、これは時間をかけて、ここは変えようというようなことは考えていってもいいと私個人は思っていますよ。全部だめだという方もいるかもしれないけれども、私はそう思っていますがね。こういうふうに急ぐからおかしなことになる。  結局、憲法の中で一番重要なのは、裁判所がどうの、衆議院がどうの、参議院がどうのと日本国憲法に書いてあるが、憲法が定めているのは統治の機構と国民の基本的な人権でしょう。重要なのは国民の基本的人権の方が重要で、これが本質で、衆議院と参議院で二つありますとか最高裁がありますというのは、これは司法はこういうふうにやりますというのは統治の機構で、基本的な人権をいわば保障するための手段として憲法は規定していますね。その最も重要な基本的人権すらいろいろなものがあるが、それはまあ集会、結社の自由から表現の自由からあるが、そういう中で信教の自由、政教分離ということに結局触れるおそれがあるようなものをなぜ今急いで出してきたかということで我々は問題にしている。  戦前のやはり宗教弾圧の歴史、宗教団体法、国家が、いわばその時代、国家神道が国教のような意味があって、ほかの宗教を弾圧したり誘導したりしたような悲しい歴史があったことは、私は戦後生まれだからわかりませんが、総理は戦前にも生きておられたわけですから御理解いただけますか。
  22. 村山富市

    村山内閣総理大臣 戦争中は一つの国策というものがあって、その国策に反するようなものについてはもうすべて取り締まりの対象になるというので、治安維持法がつくられて、その治安維持法のもと、あるいは国家総動員法に基づいて全部が罰せられた、あるいは捕らえられた、こういう暗い時代があったことは私もよく記憶をいたしております。  私は、そういう歴史の経験を踏まえて今の日本め平和憲法というものはつくられておる、その基本的な問題として、基本的人権を尊重するとか、あるいは戦争中に宗教団体が弾圧された、そんなことはやはり繰り返してはいかぬというので、信教の自由というものも保障されたと思うんですね。  今度の法律改正案が基本的人権を侵害するとかあるいは信教の自由を侵害するとか、そういうものがあるのなら、私はやはりあると言ってはっきり指摘をしてもらいたいと思うんですよ。そんなことは全然考えていません。  むしろ、たびたび言いますように、信教の自由を保障し、政教分離を守って、正しい意味における宗教活動お互いにやれるような社会的条件というものをつくっていかなきゃならぬ。そのためには、この程度最小限改正をやることによって保障されていくんじゃないか。私は、逆の意味でこれをいいことだというふうに思っていますから、あなたとは全然前提が違うように受けるんですけれども、ぜひそういうふうに御理解を賜りたいと思うんです。
  23. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 細かいことは私は苦手だから余り言いませんが、この間のこの委員会質問権質問権といっても税務調査の質問検査権とは違うとは思うんですけれども、ただ、たしか小野さん、あなたの答弁の中だったかと思うが、要するに宗教の中身に立ち入ることもある、いわゆる公益を害するようなことが続いて起きてきた場合には宗教の中身にも立ち入って質問をすることがあります、こういうことを言っている。  だから、私は総理を信じたいと思うし、それは総理がおっしゃっていることはよくわかるんですよ、私は。わかるけれども、しかし、これはやはり憲法の保障する信教の自由とか政教分離に運用の仕方では幾らでも触れていく、侵害していく可能性のある法律だから問題だということを言っているので、それは、総理が私はそういうことをしないと言ったって、総理だってまた百年も総理を続けるわけじゃないんだから、ことしか来年かかわっていけば、また妙な総理が出てきて、この法律をてこにというのが出てくるかもしれないからその辺は怖いな、こういうことであります。  実は、私は、こちらにおられるかな、亀井先生もおられますか、加藤先生もおられますか、自民党のいわゆる幹部の方々がいろんな発言を続けておられる。  私は、例えば山崎政調会長が、この宗教法人法改正は、これは何とおっしゃったんだかな、オウム対策というようなことをおっしゃったんだったか……(発言する者あり)オウムの再発防止だということをおっしゃっているし、加藤幹事長におかれては、宗教団体が政治に関心を持つことは許されるが政治の中心に迫ることは許せないなどという、これはもう全く政教分離という言葉をもう一回どこかの大学の法学部で勉強してきてもらいたいと思われるような大変な間違いを犯しているわけですね。  その元気な亀井先生のテレビでの、創価学会のお金で、丸抱えで選挙新進党がやっているとかいうような話については、これは告訴という手はずを整えましたが、そのことについて私は本会議で、総裁として、これは残念だけれどもこういう聞き方しかないので、通産省の行政について聞くわけではないので申しわけなかったんですが、やはり党の総裁、党のトップなんですから、その辺はどのようにお考えですかと、こう申し上げたら、橋本総裁は、亀井議員は宗教法人法改正の必要性や政教分離の問題について、亀井議員としてのみずからの信念に基づき御自分の議論を展開されたということなんですね。  これはオウムと同じで野放しということですか。
  24. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 かつて委員も自由民主党に在籍をされて、我が党でそうした論議に対し党が枠をはめて規制をするといったことをしていなかったことは御承知のとおりであります。  私は、今亀井議員を例に引かれましたが、社会的な公器であるテレビという場で議員自身の信念を語られたもの、そう思っておりますし、本会議でもそのように御答弁を申し上げました。  私どもの党は、これから後も、個々の議員がそれぞれの責任において発言をすることに制約を加えるつもりはございません。
  25. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 私は、自民党におりましたころは、橋本総裁、橋本総理が一番いいとずっと願って、心から御尊敬申し上げてきた方ですから……(発言する者あり)いや、本当だって。これは本当ですよ。これは総裁が一番よく知っておられる、派閥が一緒だったんだから。  それはいいんですが、ただ、私は今、尊敬する橋本先生なんですが、例えば、私も売上税に反対をして、こちらの方も御一緒でしたが、ともに懲罰人事で部会長になれないとかいろいろありましたよ。でも、私は、そういう問題どこれはちょっと違うと思うのですね。むしろこれは、我々告訴しましたように、デマであっても何であっても、例えば創価学会の金で参議院選挙をこの間やったとか、そういう事実は一〇〇%、一二〇%、二〇〇%全くないのです。そういうものを、言ってしまえばそれはデマでも何でも言った方が勝ちだというのは、私は民主的な世界ではないと思う。  昔、いわゆる腹切り問答というのがあったのかもしれない。そういう議論をするのだったら、例えば、新進党創価学会の金丸抱えでこの間参議院選挙をやって、新進党はそれで勝ったんだというふうに言う。そうしたらその証拠は全部示す。それで、その事実を示すことができなかったら私は国会議員をやめるぐらいのことを言って亀井さんが発言したら、私どもは聞く耳を持つけれども、デマでも何でも、中傷でも悪口でも、言ってしまって垂れ流した方が有利だと。  しかも、その党の役職にあられた方々がそういうことをする。しかも、幹事長がこの参議院の選挙で、オウムに甘い方とオウムに厳しい方との戦いだなんて言っているのは、先ほどの質疑からも明らかなように、全くこれは新進党に対するデマ、中傷としか言えない。  それで、こうした問題、立場のある、大変大きな役職を持った方々がそういう言葉でおっしゃるのを、総裁である橋本龍太郎先生が、それは個人の信念だから、そういうものは売上税の反対と同じで制約できませんというのでは通用しないと私は思うのですが、再答弁をお願いできますか。
  26. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 これは、尊敬をしていただいたということを改めて聞きまして、大変ありがとうございます。  その上で、私は売上税の例を引いたわけではありません。私は売上税の例を引いて何ら申し上げておりません。むしろ、告訴という方法を既に新進党としておとりになり、その内容は、その結果として、これから別な場で調査が行われるでありましょうから、私はその内容に入って議論をするつもりもありません。  しかし、先ほども申し上げましたように、私どもの党は、問題によって党議決定という方法をとることはあります。しかし、今回、改めて党議決定ということではなく、淡々と議論が進んでいく中で、それぞれの議員がみずからの信念を語ることを拘束するつもりはない。それは申し上げたとおりであります。  亀井議員も、社会的な公器であるテレビという場でお話しになる、それだけの信念を持って行われたことであると私は思いますし、委員にお言葉を返して恐縮でありますけれども、私はやはり、所属する議員あるいは党員それぞれがみずからの良心で語ることを拘束する党風をつくろうとは思っておらないということであります。
  27. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 これはもう一回だけ質問しなくちゃならないのですが、橋本総裁は政教分離ということについてはどのように定義づけてお考えでございましょうか。これは、政教分離という言葉が都合で、勝手に解釈して使われているおそれが非常に多いものですから。しかも通産大臣、総裁は私への答弁で、亀井議員が政教分離の問題について信念を述べておるんだ、こう言っているのですね。政教分離、どういう意味でしょうか。
  28. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 私は、亀井議員が宗教法人法改正の必要性、政教分離の原則について亀井議員としての意見を述べられたものであると思うということを申し上げました。そういうふうに申し上げました。  そして、その上で公式的な政教分離の原則というお尋ねでありますならば、政教分離の原則というものは、信教の自由を実質的に保障するため、国またはその他の公の機関が国権行使の場面において宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨のものであるという公式の御答弁を申し上げることになります。  そして、それが生まれてきたゆえんというものは、まさに先ほど委員総理との間で議論を交わされましたような、かつて我が国が近代日本になりましてから第二次世界大戦敗戦までの間において、神道を国家の基本と定めた中で新たに生まれてくる宗教団体に対する圧迫の歴史をつくり、そしてその中で犠牲者をも出したという過去の反省に立ってこうした規定が考えられたもの、そのように考えております。
  29. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 政教分離という言葉が間違って使われているケースが非常に多いわけで、要するに、国家が特別の宗教と癒着したり、くっついたりすること、これが政教分離の原則に反することで、例えば、あるいは有名な事件としては、まだ民営化されておられなかった国鉄が駅にクリスマスツリーを飾ったときに問題になっていますね。有名なのは三重県の津の地鎮祭の訴訟であったか、大学の時代に学んだのはそんなところだったろうと思うわけで、政教分離というのは、信教の自由を保障するために国と宗教が直接の関係を持ってはいけない、国家権力、公権力が一つの宗教を使うとか、特別にかわいがるとか、利用するということをしてはいけないというのが政教分離の原則だろうと思うのであります。  それは例えば、この間もこういう方がいた。旧公明党の方々は創価学会との関係政教分離ではないじゃないか、おたくは政教一致ではないかこう言われる人が多くて、何か勘違いして、創価学会と公明党が一定以上親しくなったら政教分離に反するのかなとと誤解をしてびびったことがあるなんということを論文で書いている方もいたわけで、こんなのは全然何も心配することはない。一つ宗教団体が政治家を応援をする、その政治家が当選をする、大臣になる、内閣をつくる。何ら政教分離に反するものではないということは大出さんだってはっきり答弁しているわけでしょう。  だから、例えばこの間の選挙でも、この間の参議院選挙創価学会の方がいかに選挙運動熱心であったか、それは私も知っていることと知らないところとありますが、熱心になさった。それは宗教団体が政治活動をやるのは正当な権利なんじゃないですか。正当な権利を行使して、そして参議院選挙新進党が勝ったとしても、これは何ら政教分離の原則に反することにはならないと私は思いますが、総理、いかがですか。
  30. 村山富市

    村山内閣総理大臣 先ほど橋本通産大臣からも答弁がありましたように、政教分離というのは、宗教活動に対して政治権力行使に当たって関与してはならない、ですから特別な助成をするとかなんとかいうようなことをしてはならない、こういう仕組みになっておりますから、したがって個人であろうと宗教団体であろうと、いかなる政党支持をし、いかなる候補者を推薦しようとそれは自由で保障されておる、私はそういうように思います。  ただ、宗教団体というのは、主たる業務というのはやはり宗教活動が主たる業務であるということについてはこれは間違いないと思いますから。ただ、政教分離というのは、そういう今申し上げたようなことが政教分離の原則だと、私はそのように理解をいたしております。
  31. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 時間がありませんので、山口議員は私よりもはるかに精緻な、厳しい質問をされると思いますから、私はもうそろそろやめますが、最後に武村大蔵大臣にお聞きしたいのです。  大蔵大臣は、宗教法人と他の公益法人を切り離して、宗教法人だけは課税を強化するべきではないかということをおっしゃったように聞いておりますが、そういうお考えをお持ちですか。
  32. 武村正義

    ○武村国務大臣 私が記者会見で質問があって申し上げたのは、今回のオウム事件を振り返ってみて、いわゆる非課税の宗教法人のお金がこういう反社会的な、あるいは犯罪行為に使われている、こういうことに矛盾を感じているということを申し上げたわけであります。これは、国民の常識にも合った疑問を大蔵大臣として感じているということを申し上げたわけであります。  御承知のように、民法法人、財団や社団と同じように宗教法人も公益法人等という形で今は扱っておりまして、そういう意味では、民法の基本に沿って対応している限りは、宗教法人だけを別に扱う考えは今までとっていないわけでございますが、率直に言って、そういう感想を持ったということであります。
  33. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 オウム真理教という、これはたぐいまれな凶悪犯罪というか、まさに集団によって引き起こされた事件であるから、私は、これは破防法を適用すべきだ。  本会議でも御質問申し上げましたように、総理発言はいろいろ揺れてきた。でも、この間は総理はある意味ではまとめておっしゃったから、揺れてきたけれども総理を信じるので、要するに総理は、自分だって行政の長なんだから相談してもらわなくちゃ困る、私だって意見を言う、こういうことをおっしゃっているのだから、いわゆる団体規制の手続開始に当たっては、それは総理の政治決断というものを堂々とやっていただいて、その後は準司法的な手続として進んでいくだろうから、これはたとえ総理といえども口を挟むことはないかもしれないが、総理がきちんと決断をして、破壊活動防止法を適用することによってオウム根絶を図っていただきたいというのが私の最後のお願いのような基本的な考え方でございます。  ただ、武村大蔵大臣のおっしゃっていることは、国民の常識に合う、つまり、宗教法人であるから税金がかからなかったお金で武器がつくられたりサリンがつくられるのは、これは問題意識を感じますなというのは、それは何となくわかるよ。わかりますが、しかし、それでは税金がかかっているお金だったら、サリンをつくっても武器をつくってもいいのかと……(発言する者あり)いやいや、世の中にはそういう宗教法人でない宗教団体だっていっぱいあるから、オウム宗教法人でない宗教団体になって、今度は税金がかかった金でサリンをつくろうということをやる可能性だってあるわけだから。  その辺は、基本的な認識として、諸悪の根源がどこにあるかというのは、それはオウムのような人たちが諸悪の根源なのであって、たまたまオウムのようなとんでもない宗教法人が無税のお金を確かに使ったかもしれない、それでサリンをつくったからといって、それを十八万数千の宗教法人、いわば――中には幾つかあるかもしれませんよ。それは厳しく見るべきだと思うが、善良な、一生懸命やっている宗教法人まで巻き添えにするというような考え方は、これは絶対いけないと思います。  なお、私は、予算委員会から、この間の委員会からずっと見ておりまして、つくづく思ったことがある。  というのは、これはもう質問しませんけれども、小野文化庁次長、これは大変立派な、文部省の希望の星のような方ですよ。私の文部大臣のときの生涯学習振興課長だ。当時は、生涯学習を真っ先にやろうというので、彼が生涯学習振興課長だった。その彼が、ああやって審議会に行って伏してお願いしますなどと言うのは、きょうじゅうにまとめてくださいと頭を下げている姿とか、ここで強弁している姿を見ると、私は悲しくなる。彼ぐらい優秀な人間がああ振る舞わなくちゃいけないというのは、よほどの政治的な圧力がかかっているのだ。物すごい政治的な圧力の中で、それは文化庁も苦しんでいる、私だって四百四日間文部省、文化庁にいたから彼らの苦しみはよくわかるので、その辺も考えてきちんともう一回考え直してやっていただくことをお願いをして、答弁は求めません。山口那津男委員にかわります。いや、答弁は要らない。
  34. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 鳩山議員も国会議員です。私は、あなた御自身が政治的圧力とおっしゃったならば、どういう圧力がかかったのか教えていただきたい。  私は現在文部大臣。私はこういう機会にも再三申し上げたのですが、審議会の委員のメンバーの表を私はわざわざ見ませんでした。見て知った方がおられれば何となく自分の意思は伝えたくなることも含めて、あくまで審議会の皆さんのいわば慎重な御審議を待って、その結論に基づいて皆さんに今お諮りしているということなのですから、政治的圧力がもしあったと言うなら、具体的にお示ししていただきたい。
  35. 鳩山邦夫

    鳩山(邦)委員 私は、自分の古巣のところでもあり余りこういうことは申し上げたくないが、そこまでおっしゃるなら申し上げますが、それは要するに法改正を急げということでやったのだとは思いますが、現に、恐ろしいことに、それは文化庁幹部のところにほかの若手の優秀な、全然別の仕事、教職員の仕事をしていたり、いろいろな官房の仕事をしているその若い役人を、夜じゃないですよ、昼間から引っ張ってきて特別な勉強会をやっているじゃないですか。私だってそれはみんな知っていますよ。それは困っていますよ。例えば、教職員課で一生懸命仕事をさせようと思ったけれども今は文化庁の方へとられちゃっているんだ。そんなことまでやって急いで物事をやろうというのは、これは文部省、文化庁のほかの仕事を明らかに阻害しているんだよ。そんな秘密の勉強会までやって、そんなようなやり方を、政治的圧力がなければやるわけない。  はい、かわります。
  36. 越智伊平

    越智委員長 この際、山口那津男君から関連質疑申し出があります。愛知君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山口君。
  37. 山口那津男

    山口(那)委員 今、鳩山委員から種々質問があったところでありますけれども総理が、この宗教法人法改正オウム対策ではないと断言する、こう言われたわけですね。今ちょっと答弁が変わりまして、若干の影響はあるかのようなお話もあったようでありますけれども、しかしこの宗教法人法改正国民の皆さんはどうとらえているか。これは世論が圧倒的な支持をしている、こういうことをよく答弁されるわけでありますけれども、しかしこの世論というものが果たしてどういう認識でそういう答えが出てきているかというところは、よく吟味をしなければならないのだろうと思います。  例えば、この世論の調査の問い方。オウム事件について種々質問を発したところで、そこに並べて、宗教法人法改正については賛成ですか反対ですか、こういう問い方をすれば、これはやはりオウム事件との関連において国民の皆さんは回答されるわけですね。ですから、この世論というものは、改正に賛成の人の中には、これはオウム事件の解決のために、あるいは類似の再発防止のために役立つであろう、こういう期待を持って回答しているという方がかなりいられるだろうと思うのですね。もし、総理がお述べになったように、再発防止策ではない、こういうことを前提にしてもし問いを発したら、本当に改正が必要だ、こういう答えが返ってくるかどうか、これは極めて疑わしいところだろうと思います。  そして、アメリカの上院においては、このオウム事件について調査の報告書が提出されまして、ここで公聴会が開かれたわけであります。この報告書によりますと、これはかなり詳細に世界各国にわたって関連の事項を調べているわけでありますけれども、この基本的なとらえ方は、オウム教団は、これは犯罪組織である、テロ組織である。そして、それに対する国家の備え、社会の備えというのが十分ではなかった、こういう認識でこの犯罪をどう防止するか、組織的な犯罪をどう防止するかという観点で報告もまとめられ、議論も展開されているわけですよ。  ところが、今の政府・与党においては、このオウム事件の総括として必要なことは答えが出ていないわけですね。宗教法人法改正は、これはオウム対策ではない、こういう総理の御答弁ですから、じゃ何なんだということになるわけであります。  そして、こうした国民関心から見れば、私は、やはりオウムの再発防止策というのはどうするのかということを、組織の犯罪にどう取り組むのかということを真剣に考えなければならない、こう思うわけですね。特にこの調査の報告書、宗教法人として認証を受けた、その後のいろいろな事件を時系列的に並べてみると、もう認証の当初から犯罪の組織であった、こういうことを、調査報告書はそういう認識を述べているわけです。でありますから、そうした意味でも、組織犯罪にどう対応するかというのがオウム問題に対する本当の取り組み方、正しい筋だと私は思うわけですね。  こういう議論を踏まえて、このアメリカでの議論も踏まえて、関係各国とのいろいろ協力関係、調整が必要だ、こういう議論が各国で起こってきているだろうと思います。カナダのオタワでその関係会議が近く行われるのではないか、こういうことも報道されているわけでありますが、まず国家公安委員長にその点についてお伺いします。
  38. 深谷隆司

    深谷国務大臣 アメリカの委員会において、オウム真理教に対する恐怖とか、あるいは今後の問題について提起されて、議論なされておることは承知しております。  私どもも今日までオウム真理教の徹底捜査をやってまいりました。これで大丈夫などという安閑の思いを片時も持ったことはありません。今でもあらゆる角度から日本の警察官は血みどろの戦いをしながら努力を続けているところであります。特別手配の被疑者十七名中、十二名を逮捕いたしました。まだ五人おります。一日も早くこの逮捕にこぎっけたいと思っています。また、一般の指名手配は八十七名ですが、八十五名まで逮捕しているのであります。これは、警察官の日夜を分かたぬ努力の結果だと私どもは思っている。  だから、これからもこれらの問題については徹底して、二度と起きないような努力を続けることが必要だと考えて、今毎日緊張しながら努力しているところでありまして、そういう警察官並びに警察当局の努力というものについては御理解と御協力を仰ぎたいとお願い申し上げる次第です。  なお、テロ対策につきましては、お説のとおり、国際的な関係が非常に重要でございます。私どもの方からの意見も含めて、十二月の十二日にカナダでテロ対策の閣僚会議を開くことに相なり、私も、国会の皆様の時間の許しを得て現地に参りまして、このオウム真理教の問題、さらには世界のあらゆるテロ対策についての勉強も含めて会議を持ちたいと思っているところであります。
  39. 山口那津男

    山口(那)委員 まだ未解決の分野があって、警察の皆さんは大変努力されている、これは敬意を表するところであります。  ですから、このオウム事件についての総括というものはまだ終わっていない。これからもっとやらなければいけない。そして、テロ対策あるいは犯罪組織に対する対応というものをきちんと議論していかなければならない。こういうことを今やらなければいけないわけですし、国民もそれを望んでいるわけです。決して、宗教法人法改正のみを望んでいるかどうか、これは定かではありません。  さらに、今国民の世論の最も関心のあるところは、もっとほかの重要な問題にもあるわけであります。例えば、景気の低迷が長く続いている、これをどうするか。あるいは最近起こった大和銀行の関係につきまして、国際金融不安というのが起こっているわけですよ。しかも、それは我が国の銀行が世界にそういう不安というものを振りまいているわけであります。そしてまた、アメリカではこの大和銀行の活動ができなくなるような、そういう措置もとられようとしているわけですね。ですから、この国際金融不安についてどう我が国として国際社会に責任を示すか、対応を示すか、こういうことが国民の強い関心になっているわけであります。  また一方で、沖縄について不幸な事件もありました。これで駐留軍の地位がどうなるか、あるいは基地の提供が継続してできるかどうか、そしてひいては、日米関係が外交的にあるいは安全保障の関係でどうなるかこういうところも非常に重要な関心事項なんですね。  ですから、この宗教法人法改正というのは今慌ててやる必要はないわけでありまして、まさに今大事な問題、国民の皆さんが望んでいる問題を真っ先に時間をかけて議論をしなければならない、こう思うわけであります。総理の御意見を伺いたいと思います。
  40. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今、国政が抱えている重要な課題というのは、あらゆる分野で今御指摘のあったようなことがあるわけです。それらをないがしろにしてこれだけやっているというなら、それは私は問題があると思いますよ。しかし、景気対策も、先般補正予算も通していただきまして、そして万全を期して景気の浮揚のためにあらゆる手を打ってやっているわけです。それぞれの問題については、それなりの取り組みをして、そして対策をとっているわけですから、それがあるからこれはいいじゃないかというその論理は、私はお聞きするわけにはいかぬと思いますね。  これは、今度のオウム事件に関連をして、きっかけになって、それは宗教法人法というものに対する関心も高まるし、我々も勉強させていただいて、なるほど、最低この程度のことはやはりしておいた方が信教の自由と政教分離の原則を守るためにも必要なことだなというふうに思いますから御提案を申し上げているのですね。これはこれで十分御審議をいただきたいというふうに思います。
  41. 山口那津男

    山口(那)委員 この宗教法人法改正については、審議会のあり方について種々これまで国会でも議論がありました。これは、審議会の委員というのは文部大臣が任命をされるわけですよね。そして、議論の結果、報告というものが一応出たにもかかわらず、その後に、この委員のほぼ半分に当たる七名の委員の方がいろいろ異論を述べている。そして反対論、慎重論を述べて、そして審議の開催というものを主張している。文部大臣は、極めて適正、妥当な議論をしていただいた、こういうことを言っているのですが、それだったらなおのこと、この七人の委員の皆さんがこの期に及んでこれだけのことをおっしゃるというのは、これはよくよくのことですよ。それを軽視してそのまま法改正をなし遂げようとするのは、余りにも手続というものを大事にしない、そういう考え方だと思います。  さらに、各宗教団体においても、いろいろな議論の結果、反対論ですとか反対の声明ですとか、こういうものが数多く出ています。それは、例えば日本キリスト教協議会あるいは日本カトリック正義と平和協議会あるいは新宗連、さらには立正佼成会あるいは日本宗教連盟の地域組織である近畿宗教連盟、その他さまざまな団体、連合体からこういう反対の意見が、慎重論が述べられているわけですね。  これらの中身としては、まずこの宗教法人法改正について、反対である、あるいは慎重に議論をすべきである、改正を急ぐ必要がない、こういう議論が一つあります。それからもう一つの要望としては、これは本来宗教界が自分で努力すべき課題がある、みずから自主的にいろいろ協議機関を設けて検討しようとか、そういう自主的な努力をするからそれを見てほしい、国民の皆さんに考えてほしい、そういうことを提案している。この二種類に分かれているわけですね。  ですから、これらの宗教界の意見というものがこれだけありながら、なおかつ耳をかさないでこの改正に突っ走るのかどうか。私は、これは政治のあり方として好ましくないだろうと思うわけですね。その点についても総理のお考えを伺いたいと思います。
  42. 村山富市

    村山内閣総理大臣 それぞれの立場からするいろんな意見は私はあると思いますよ。あると思いますけれども宗教法人審議会で、会長がその審議会は取りまとめをしているわけですけれども、その会長が取りまとめを一任をされた、それに対して異議があったという話は聞いております。聞いておりますけれども、大方の意見として取りまとめには賛同された、そしてその報告が文部大臣になされた、こう聞いております。  これは報告ですから、したがって、その報告はもちろん尊重して我々は取り組んでいかなきゃならぬと思いますけれども、報告を受けた、こういう経過を聞いておりますから、その審議会の運営が適正であったかどうかというようなことについて今ここでおっしゃられても、私どもはその審議会を尊重する以外にないので、それは、審議会自体が、後に起こっている問題についてはどういうふうに判断をされるかということについては、審議会の会長を含め審議委員の皆さん方が判断されることだ、私はそういうふうに思っています。  それから、やはり自主的に宗教団体が正すところは正すということが建前ではないか、私はそう思いますよ、本当に。自主的に正すところは正してもらうというのは当然の話ですけれども、しかし、今の宗教法人法を客観的に見た場合に、その宗教法人法が、何度も申し上げますけれども、本当の意味信教の自由を保障し、政教分離前提として守っていくためには、最低この程度のことはやっていただかないと行政としての責任が持てないのではないか、世間に対して持てないんではないかというふうに思いますから、この程度改正は当然ではないか、私はそういうふうに思っています。
  43. 山口那津男

    山口(那)委員 総理が審議会の内容について報告を受けていることと、それから審議会の委員がその後に異論、反論を述べていることと食い違っているわけですよ。今の総理の御答弁だと、結局は、審議会の委員のそういう異論、反論について耳をかす気はありません、こうお答えになっているのと同じことなんですね。これは納得がいかないと私は思います。  さて次に、宗教法人法改正内容についてお尋ねいたしますが、宗教法人法、これはたまたま私の手元にあった六法全書、平成四年版、有斐閣の発行のものでありますが、宗教法人法が一体この六法全書の中のどこにつづられているか。例えば憲法のつづりとか行政法のつづりとかあるいは民法、刑法、商法など、それぞれの編があるわけでありますが、そのどこにっづられているか御存じですか。まず総理伺いましょう。法制局長官に聞いているんじゃないんですよ。
  44. 大出峻郎

    ○大出政府委員 有斐閣の六法全書の場合ですというと、最初の方に憲法の規定があるわけでありますが、そのちょっと後の方のところに載っていたと思います。ただ、これは年によりましてちょっと違いまして、教育の方に、つまり第一巻の後ろの方に載っていた、そういう年もあったと思います。
  45. 山口那津男

    山口(那)委員 総理は知らなかったからお答えにならなかった。これは別に知らなくてもいいことなんですよ。答えは今法制局長官がおっしゃったことです。  それで、平成四年版のものには憲法編につづられているわけであります。憲法編のところにつづられている。つまり、戦前の暗い歴史の反省に立って、信教の自由がこの宗教法人法の中において遺憾なく保障されている、こういうことを示す意味があって編者は多分この憲法編につづったんだろうと私は思っているわけですね。  さてそこで、宗教団体法というのが戦前ありました。与謝野委員質疑の中で、宗教弾圧に使われたのは治安維持法なんだ、これで弾圧をしたんだ、こういう言い方がありましたけれども、これだけではない。宗教団体法もそれと相まってその道具に使われた、こういう歴史があるんですね。  例えば、これは指導監督という考え方でずっと貫かれておりますので、この法律によって、教義の変更を勧告されたりとか、あるいは団体の統合を勧告されたり、それに従わなければ治安維持法違反で捕まるおそれがある、こういう強制があって、これは弾圧の道具になったということなんであります。  そんな歴史を踏まえてこの宗教団体法が戦後廃止をされたわけでありますけれども、この廃止をされた理由についてまずお伺いしたいと思います。文部大臣、どうですか。
  46. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 宗教団体法は昭和十四年に成立した法律でございます。この法律では、先ほど先生御指摘もございましたように、いろんな宗教活動について主務大臣が制限をするというようなこともあったわけでございます。そういったことが戦後の新しい憲法の理念にそぐわないということで廃止になったというふうに私は理解をいたしております。
  47. 山口那津男

    山口(那)委員 今の憲法の制定議会に当たる第九十回の帝国議会、ここにおいて文部大臣が、なぜ宗教団体法を廃止したかということについて述べております。ちょっとそのくだりを引用させていただきますけれども、当時の田中耕太郎文部大臣、「宗教団体法ガ宗教ニ対スル監督、取締ト云フヤウナ精神ニ出テ居ルコトハ、是ハ認メラレ得ルト存ジマス、此ノ監督ナリ取締ノ精神其ノモノガ、詰リ宗教ノ自由、信仰ノ自由ノ民主主義的精神ト相容レナイモノガアル」というのが廃止をした根幹であります、こう述べているわけですね。  ですから、この反省に立って今の宗教法人法というものが宗教団体法とは全く違った形でつくられてきているということになっているわけであります。この当時の田中耕太郎文部大臣のお考え方について、島村文部大臣、どうですか。
  48. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 なるほど、監督、取り締まりということは、信教の自由あるいは政教分離の原則。に反すると私は思います。  しかし、あなたも御専門の方でいらっしゃいますから、宗教法人法をよくごらんになって、これが果たして監督とか取り締まりとかいうくだりがあるのかどうか、今回の改正の案の中にそういうものがあるのかどうか、まず御判断をいただきたい。
  49. 山口那津男

    山口(那)委員 島村文部大臣は、ことしの文芸春秋の七月号の論文におきまして、この宗教法人制度について、今の宗教法人法について、指導監督という言葉はたくさん出されておられるわけですね。これはよもや、その宗教団体法に言うところの指導監督とは違うという意味だろうと思いますが、その点、念のため確認をいたします。
  50. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 私はあれはちょっと急に頼まれまして、急に書きまして、なるほど後で読んでみると、必ずしも専門家じゃありませんから適切でない表現があったかもしれませんが、私は、所管庁として責任あるいわば所轄をする、そういう意味で申したところであります。
  51. 山口那津男

    山口(那)委員 確かに、大臣がおっしゃるように適切でない表現だったわけですね。  さてそこで、今回の改正案は、現行法の八十一条で解散の命令、何か公共の福祉を著しく害した、大事件を起こして社会に迷惑をかけた、こういう場合は解散を裁判所に請求できる、こういう規定があります。そういう理由が、解散を請求できる理由がありそうだな、こういう場合に、報告徴収権とか質問権とか、あるいは同意を得られれば立ち入ることができるとか、こういう制度を今度つくったわけですね。  それでこれが、そっくりの制度が宗教団体法にあったんですよ。十八条ですね。十八条の中に「主務大臣八宗教団体ニ対シ監督上必要アル場合ニ於テハ報告ヲ徴シ又ハ実況ヲ調査スルコトヲ得」と。多少文言は違いますが、これは、宗教関係者からいうと真っ先にこの団体法のこの規定を思い浮かべる、そういう懸念を皆さんは持っていらっしゃるわけですよ。ですから、宗教団体法のこの規定というのは、これは監督権の行使の手段として非常に強力な規定で調査権が使われていた、こういうことを思い起こして心配をしているわけであります。  さて、それで、この報告徴収とか質問権とかあるいは同意を得て立ち入るとか、こういう制度がないと本当に解散命令請求ができないのかどうか、これは極めて疑わしいところなんですね。宗教法人の人たちもその点は疑義をたくさん持たれていると思います。  例えば、八十条で認証の取り消しという制度がありますね。これは先ほど来の質問でも確認されましたが、これは、認証のとき、もともと宗教団体としてのふさわしい要件というものが存在しなかったのに何らかの事情でそれを認証してしまった、後でそれがわかった場合に取り消す、こういう制度であります。宗教団体の要件がちゃんと満たされてきちんと認証された、成立した、その後に団体の要件がなくなったという場合ではないんですね。  ですから、この取り消しの制度というものは、これはほとんどまれな形でありまして、文部省認証をきちんとやっておられますから、こういうことは起きることは余り考えにくいわけですね。現にこの取り消しの事例は一件もありません。これは解散命令請求についても、一年を経過した後にこの制度の延長として解散を請求した事例も一件もありません。  さて、今度は八十一条の一項一号。ここでは、著しく公共の福祉を害した場合、公共の秩序を害した場合、法令に違反してこういうことをやった場合は解散命令請求ができる、こうなっているんですね。まさにこれは今回のオウム事件で適用した規定でありますけれども、法令に違反して著しく公共の秩序を乱すというような場合というのは、これはほとんどが犯罪行為にかかわる場合だと私は思います。  ですから、犯罪行為であれば、その資料というのは検察庁が最もよく集められるところでありまして、現に検察官にもこの解散命令請求権があるわけですから、これはもう検察庁にお任せすればいいわけでありまして、その資料の収集に適当な立場にない文部省が、あるいは所轄庁がこれをわざわざ集める制度をつくって、そうでなければ請求ができませんと、そこまで言う必要はないのです。これは、よしんばこの法令違反に基づいて、犯罪行為じゃない場合で、つまり検察庁が絡まない場合で、この一号に当たるような事例というのは考えられるのですか。
  52. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘の七十九条、八十条、八十一条についての質問権と報告徴収権の問題でございますが、実は、御指摘もございましたように、これは非常にレアケースといいますか、本当に宗教法人が問題を起こしている場合の規定でございます。そういったものに対して、現在は、収益事業の停止命令あるいは認証の取り消しあるいは解散命令請求、こういった権限を発動することができるわけでございますけれども、それらの事態に立ち至ったかどうかを現在の規定、現在の法令では確認することができないということでございまして、これに対する明確な手続規定を整備するという意味もあるというふうに理解をいたしております。  御指摘の八十一条の一号、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる」という例というのは、今回、オウムはこの事例に当たる場合があり得ると思いますけれども、それ以外については、そんなにたくさんこれに該当する例というのは考えられないところでございます。     〔委員長退席、片岡委員長代理着席〕
  53. 山口那津男

    山口(那)委員 考えられないと今御答弁になりました。つまり、犯罪行為の場合がほとんどなんですよ、あり得るとしても。仮に大きな脱税をしたとしても、これは犯罪として告発されますので刑事事件になるわけですね。ですから、これが刑事事件犯罪以外でこの一号という理由つまり著しく公共の福祉に反したという場合はほとんど考えられない、今御答弁のとおりであります。  それでは、今度は二号から四号、二号後段から四号までですね。これは、それそれがきちんと認証を受けて成立した後に宗教団体としての中身がなくなった、こういう事例の場合に解散請求ができる。世で言ういわゆる休眠法人、こういうものですね。  これは、今までこれによって解散命令請求した事例がないかというと、実はかなりあるのですね。文部省からいただいた資料によりますと、昭和五十九年から平成六年まで累計で七十八件あります。去年だけとりましても二十八件あるわけですね。これは都道府県も含めて所轄庁が一生懸命努力されて、独自の工夫を凝らして、そして資料を集めて請求をした、こういう実例なんです。これだけあるのですよ。現行制度でもこれだけのことができるのですよ。  ある新聞報道によりますと、これは所轄庁の職員の数が宗教法人の数とつり合っていなくて、つまり、余りにも職員が少なくて、まあ休眠法人とおぼしきところはいろいろ目星がついても、これを調べ切れないというのが実態なんです。ですから、これはマンパワーといいますか、職員の数、能力、こういう問題でありまして、制度が不備だから解散請求ができない、こういうことじゃないのですね。  そうしますと、これは八十条にしても八十一条にしても、取り消しや解散請求をするために、何が何でもこの報告徴収や、あるいは質問権や、あるいは同意を得て立ち入る、こういう規定は必要ないのですよ。それは皆さんは、それをオウム事件きっかけに気がついた、こうおっしゃいますが、オウム事件は検察官の請求で十分解決できた。そのほかの場合は現にやっている。休眠かどうかというのはいろいろ調べる方法がある。こういう規定を設ける必要はさらさらないのですよ。  そういう意味において、私は、戦前の宗教団体法の監督権を想起させるような、調査権を想起させるような、このような行き過ぎた規定というのは全く必要ないし、場合によってはこの運用で憲法違反の疑いも生ずる、こういうことになると思いますが、文部大臣の御答弁伺います。
  54. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 戦前の宗教団体法でございますが、御指摘のように、第十八条にその規定があるわけでございますが、これは「監督上必要アル場合」という規定でございまして、一般的な監督権がある場合の規定でございます。  今回お願いしております七十九条、八十条、八十一条でございますけれども、御指摘のように、こういったケースは非常に少ないわけでございます。ただし、少ないわけでございますが、万一問題になったときには、これらの規定はきちんと適用していかなければいけないものでございまして、そういう意味におきまして、手続規定をきちっと整備するということは、私どもとしては非常に大切なことだというふうに考えるものでございます。
  55. 山口那津男

    山口(那)委員 納得の得られる答弁ではありません。  それで、与謝野委員質問の中で、この質問権等を行使する場合、宗教法人審議会の意見を聞く、こういう規定に触れまして、もし審議会が、だめだ、質問権を行使しちゃだめだ、こう言った場合どうなるのですかという質問に対して、文部省のお答えは極めてあいまいでした。どうしてもだめだと言った場合には端的にどうなるのですか。この報告徴収や質問権は行使できるのですか。
  56. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 この質問と報告徴収につきまして、審議会にお諮りして、その時点でそういう必要がないということであれば、これはそういった規定でもって、宗教法人から質問したり報告を求めるということは法律の権限としてはできません。  ただ、所轄庁といたしまして、宗教法人の協力を得るということはできるわけでございますから、お願いをして、それでもうちは資料を出しますよということであれば、その点については資料をいただくなり質問をするということはできるというふうに解釈をいたしております。
  57. 山口那津男

    山口(那)委員 今回の改正案の審議会の議論の中で、後に異論がたくさん出まして、それを無視して強行して改正案を進めているわけですから、審議会に対する信頼というのが、委員の中からも、また国民の皆さんからも大きく傷ついている、揺らいでいるわけですよ。ですから、こういう制度を幾ら審議会のチェック機能を期待して制度化しても、この信頼というものが回復されない限りこの制度は生きませんよ。こんなことをやったってだめなんですよ。よくその点を考えていただきたいと思います。  さてそこで、報告義務、つまり、書類の作成を義務づけてこれを提出させる、こういう制度をつくりましたね。これについて、まず前提の問題として、個人に対して、あなたはどういう信仰を持っていますか、あるいはあなたはどういう宗教活動をしていますか、こういうことを文部省に報告してください、しかもこれを罰則つきで報告してください、もしこういう制度をつくったとしたら、これは憲法に違反しますね。法制局長官、いかがですか。
  58. 大出峻郎

    ○大出政府委員 お尋ねの点につきましては、その報告を求める具体的な目的だとか内容だとかあるいは態様に即して、信教の自由との関係を慎重に個別に判断すべき問題であろうと思います。そういう意味で、ただいまの質問に関して一概に論ずることは困難であろうというふうに思います。
  59. 山口那津男

    山口(那)委員 一概に答えるのは困難だ、極めてあいまいな答弁ですが、しかし本当に、信仰の対象やその活動内容個人に対して、ある目的があれば許される場合があると考えているんですか。もう一度御答弁ください。明確に言ってください。
  60. 大出峻郎

    ○大出政府委員 ただいまの報告を求めるということの関係でありますけれども、今回の改正案の中にどういう書き方になっているかということでありますが、まず、ただいまのは七十八条の二に関連をしてのことかと思います。これにつきましては、報告を求める権限の条項がある。条文にも書いておりますように、いわゆる管理運営事項に関して質問することができる、あるいは報告を求めることができるというようなことになっておりまして、そういう意味で、宗教上の事項というようなことについて、質問をする権限の範囲としてそういうことは規定をいたしておらないわけであります。  ですから、この規定を前提といたしまして、先ほどおっしゃられましたような、何教を信じておるかというような個別の方々に対しての質問ということは想定されていないというふうに考えております。     〔片岡委員長代理退席、委員長着席〕
  61. 山口那津男

    山口(那)委員 なぜ私がこういう質問をしたかといいますと、宗教法人というのはそういう信仰の自由を持った個人の集まりなんです。ですから、宗教法人に対して、団体に対してそういう宗教活動や信仰の対象の報告を求める、強制的に聞くということも、これも個人の信仰の自由と同様の考え方はとれるわけですよ。  そして、今回提出を求める書類の中には、先日の北側委員質問にもありましたように、単に数字で表現される客観的なというこういうごまかし答弁ではなくて、財産目録の中には信仰の対象が何か、こういうことを書く場合があるわけです。あるいは収支計算書の支出の項目の中には、宗教活動として使った費用をそれぞれ項目を別にして書く場合があるわけですよ。こういうことを詳細に書けば書くほど、具体的な宗教活動中身というものがわかってくるわけですね。  この書類の提出というのは、これは財産目録については少なくとも全宗教法人に義務づけられるんですよ。ですから、これは中身について、その信仰の対象とかあるいは宗教活動が必然的にわかってしまう。また、それがわからないような書類だったら、これは財務諸表としての意味がなくなっちゃうわけですよ。ですから、この限界が極めてあいまいだ。この情報の取り扱いやあるいは解釈によっては憲法違反の疑いが出てくるわけです。だから私は法制局長官に聞いているわけですよ。今のお答えは明快なお答えになっていないんですよ。これについてもう一度お答えを求めます。
  62. 大出峻郎

    ○大出政府委員 改正法案の二十五条の方の関係でのお話かと思いますが、今回の法改正におきましては、一定の備えつけ書類を定期的に所轄庁に提出させることといたしておるわけでありますが、その提出書類というのは、役員名簿だとか、財産目録とか、収支計算書だとか、貸借対照表等でありまして、宗教法人のいわゆる財務会計、法人組織の管理運営に関する事項を客観的に記載したもの、そういうものをお願いをするということになっておりまして、信仰の対象となるものそれ自体について所轄庁に報告をさせるということは、この改正内容ではないということであります。  ところで、所轄庁に財産目録を提出させる場合に、その中に宝物が、信仰の対象となるようなもの、そういうものが書かれている場合があるではないか、こういうお話かと思います。  宗教法人の財産目録には、場合によりましては御指摘のようにいわゆる信仰の対象となるもの、いわゆる宝物というようなもの、それが含まれることがあるようでございますけれども所轄庁が財産目録の提出を受ける目的というのは、したがってこの場合においても、宝物がどのようなものであるかどうかというのを知るためではなくて、宗教法人の財産の状況を把握するということにとどまるわけであります。そういう意味合いにおきまして、信仰の対象となる宝物そのものを提出させるというようなことは、この制度としては予定をいたしていないということであります。
  63. 山口那津男

    山口(那)委員 今の答弁は到底納得できませんよ。本尊というか信仰の対象を知るために報告させるのではないから何を書いてあってもいいんだ、それが、当然情報が役所に入ってきてしまってもいいんだなんという、そんな答弁ではおかしいでしょう。必然的に信仰の対象や宗教活動というのがこの書類に載っかって出てくるわけですよ。それを罰則をもって強制するわけです。それがいいのかどうかというのは重要な疑義がありますよ。これについてはもう到底納得できません。もっと明快な統一見解を出してもらいたい。  これは委員長、きちんともっと明快な答弁を書面で求めたい。お願いいたします。
  64. 越智伊平

    越智委員長 理事会で協議いたします。
  65. 山口那津男

    山口(那)委員 閲覧請求権について伺います。  この閲覧請求権というのが果たして他の公益法人に認められているかというと、これはほとんど規定をされておりません。つまり、宗教法人法において突如として改正案に出てきたわけですね。そういう意味で、基本的人権にかかわることでありますから、こういう規定を設けて宗教法人の信仰の自由に影響を与える場合には、本当にこれが必要なのかどうか、最小限のものなのかどうか、これを吟味しなければ、法のもとの平等や信教の自由に違反すると言わざるを得ません。  そこで、この閲覧請求権について、例えば商法、会社法の規定にも制度があります。しかし、これはいわゆる総会屋等を防ぐ目的から制度が工夫されているわけですね。まず簡潔にこの制度について御答弁願います。
  66. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 商法上の株式会社の帳簿閲覧請求権につきましては、発行済み株式総数の百分の三以上に当たる株式を有する株主がその閲覧または謄写を請求することができるということになっております。  今御指摘の総会屋等のチェックとの関係では、百分の三という要件がございますし、また会社が一定の不正な目的のために閲覧請求する場合にはこれを拒絶できるというような規定もあり、またさらに、株主の権利の行使に関して会社が財産を供与するということは、刑罰をもって処罰されるという規定も用意しております。  なお、会計帳簿とは別に、会社が毎決算期につくります貸借対照表とか損益計算書といった計算書類につきましては、これは五年間本店に備え置いて、株主及び会社の債権者がいつでもこれを閲覧できるという制度が、また帳簿閲覧権とは別個にございます。
  67. 山口那津男

    山口(那)委員 今のように、会社法においては、総会屋を防ぐためのさまざまな手だてというのは講じられているわけですね。特に、株主であっても一株じゃだめなのです。百分の三という明確な基準によって、しかもある程度の量を持っていないと、これは請求権がないということなのですね。これだけ工夫しておきながら、しかし実際には事件が起きているわけであります。  警察庁に伺いますが、これは本年、この株式会社の閲覧請求権をめぐってトラブルが起きて、検挙された事例があるのだろうと思いますが、さらにそのほかの事例も含めて、この総会屋に絡むトラブルの事例を御報告いただきたいと思います。
  68. 野田健

    野田(健)政府委員 本年九月末現在における総会屋の検挙件数及び検挙人員は二十九件三十九名でありまして、うち株主権行使をめぐるトラブルに伴うものは六件十二名でございます。  また、商法第二百九十三条ノ六に規定する株主の帳簿閲覧権等をめぐる総会屋等による事件といたしましては、総会屋らが都内所在の株式会社の社長に対して、三%以上の株主になれば臨時総会の開催や役員の選任要求、営業帳簿の閲覧もできるのだなどと脅迫しまして、所持している株を高価に買い取るよう要求し、一億数千万円を喝取しようとした事案について、本年六月に警視庁が恐喝容疑で三人検挙しております。
  69. 山口那津男

    山口(那)委員 今御報告ありましたように、私も弁護士をかつてやっておりました。その仕事の中でも、やはりいろいろな制度はありながら、それをかいくぐっていろいろな事件を起こすという人は必ずいるわけです。相当な苦労をいたしました。今もそういう事例があるわけですね。  そうすると、この宗教法人に対して、信者であればあるいは利害関係人であれば閲覧請求ができる、これは正しく行使されるかどうかはわからないわけですね。不当な目的があるかどうか、これも宗教法人側はよくわかりません。一見明らかに知ることはできません。しかも、これを宗教法人側が拒絶して、そして裁判になれば、最終的には国家権力の一つである裁判所がこれを判断するということになるわけですよ。ですから、そこで証明できなければ、これは宗教法人側は負けるわけですね。  ですから、こういう閲覧請求権というものを種にして、そして、与謝野委員も指摘されましたように、いわゆるにせ信者とかあるいは総会屋まがいとか、あるいは債権者であっても、これは債権回収のためにこの閲覧請求権を行使できるというわけでありますから、これは宗教法人側において、いわばこういうトラブルというものを防ぐということは到底不可能だと思います。株式会社においてすら、警察庁はいろいろ努力をされて、そして企業やその他にも研修、講習等をさんざんやって、にもかかわらず事件は起きているわけですね。それだけのことをお考えになってこの閲覧請求権というものをつくったのかどうか、これは極めて疑わしいところであります。この点についての認識を文部大臣伺います。
  70. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 この席で何遍も御答弁申し上げましたように、これは本当に宗教法人関係者十一名も委員に選ばれて、学識経験者四名と十五名でこの御審議を願っている。しかも、特別委員会を八名に絞ってまた集中的に御審議いただいたときも、五名は宗教法人関係者です。皆さん十分御審議いただく過程におきましては、その都度いわばその内容については記者ブリーフ等を行ってきたところでありますが、その間もトラブったり、何か審議が暗礁に乗り上げるというようなことは全くなかったということなのです。そういう経過で決まったことについて、我々が何か疑義を持つこと自体がおかしいと私は判断します。
  71. 山口那津男

    山口(那)委員 大臣は、私の質問に対して全く自分の考えてお答えになろうとせずに、審議会のせいにしているようなそんな答弁をしていますね。そうじゃないのですよ。  この閲覧請求権を認めることによっていろいろなトラブルの発生、宗教法人がそれに巻き込まれる、そういうことに対する対応というのは、これは警察力も含めて膨大な備えが要る。こういうことで無用の混乱を巻き起こす。にもかかわらず、この制度をつくったからといってどれだけの効果が上がるか疑問なのですよ。会社の債権者も閲覧請求できるといったら、これはどんな法人だって会社の債権者はいるのですよ。しかし、ほかの法人には閲覧請求権、公益法人には認めていないじゃありませんか。何で宗教法人だけこれを認めるのですか。全くおかしな話だ。しかも、信者かどうか、正当な利益があるかどうか、不当な目的を持つかどうかなんということは、なかなかこれははっきりわからない、あいまいな概念であります。  ですから、この閲覧請求権を認めることについても、本来的にはこれは宗教団体の自主性に任せて、信者とあるいは会員と、そして宗教法人と信頼関係の中で制度化を図ることを、そういう自主的努力を見るべきなのですよ。これを無理やりこういう制度をつくってやるということは、到底これは関係者の理解を得られるところではないと私は確信いたします。  それから、最後に所轄庁について一つ伺いますけれども、この議論の中でも、山梨県で起こったことを東京都は知ることができないだとかいろいろ言われておりますが、現実に私ども新進党で調査に行った結果、山梨県の所轄庁としては、これは東京都の所轄庁に聞かなければわからないとか、山梨でこのオウム法人について知らないのかとか、こういう細かい問い合わせを受けたことは一回もないというのですよ。  それからまた、現実に東京都が所轄であったわけでありますが、東京都が亀戸でいろいろな事件、異臭騒ぎ等が起きたところを実際に調べたとか、あるいは住民の苦情によって何らかの対応をしたということ、これもないのじゃないですか。  これは、もともとは所轄庁がそういう権限、つまり、宗教法人のいろいろトラブルを起こす原因を知って、それに対して何らかの対応をするという権限がそもそもないわけでありますから、これは所轄庁に求めても無理な話なのですよ。異臭騒ぎがあったとか、あるいはおかしな建物があって危険だとか、こういうものはそれぞれの、建設関係とか消防関係とか、そういうところが対応すべき話なのですよ。そこに聞けばいいだけの話なのですよ。ですから、何でもかんでも所轄庁が全部情報を把握しなければならない、その必要性があるなんというのは、これも全く前提がない話だということを一言申し上げておきたいと思います。  いずれにしても、質問の時間が参りましたので、まだまだ疑義がたくさんありますけれども、一応ここで終了させていただきます。
  72. 越智伊平

    越智委員長 次に、佐々木秀典君。
  73. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 社会党の佐々木です。  今回の宗教法人法の一部改正が、ただいまの山口委員質問にもあらわれておりましたし、また他からもそういう御意見があるわけですけれども、現行法の基本構造を改変するものだ、あるいはこれらの改正が国の宗教法人に対する指導だとか監督を強化することになる、信教の自由が侵されかねないというような御批判があることは御承知のとおりだと思います。  こうした危機意識の背景には、先ほど総理も述べられたような、戦前の我が国における忌まわしいというか悲劇的な、あるいは誤った宗教弾圧の歴史というものがあった、このことは否めない事実であろうと思います。  明治政府になりましてから、明治憲法の上でも信教の自由は一応保障はされていた。しかし、これには、公共の安寧秩序のためその活動を制限できるというような大きな制約条項がついていたのですね。これが一つ大きな問題でありましたし、それから、先ほど来お話がありましたような、国策、国家の目的というかそれに反するような宗教活動に対しては、秩序を紊乱するものだというようなことから、これに対する摘発なり糾弾が行われたというのは、事実幾つも幾つもあったわけですね。  具体的な例としては、例えば、有名な一九三五年の大本教の弾圧事件、これは教祖出口王仁三郎氏を初めとして信者九百八十七人が検挙される。これは天皇制を否定するものだという一方的な言いがかりですね。それからまた一九四三年には、現在の創価学会の前身と言われます創価教育学会、この事件があって、初代会長の牧口常三郎氏らが不敬罪だとか治安維持法違反で逮捕されて、しかも、牧口氏が翌年に獄死をするというようなことがあった。そしてまた、各地でキリスト教関係者の検挙だとか、あるいは天理教にまでそういうことが及んだということは、これはもう否めないことで、そうしたことを知る方々あるいはその教団に関係する方々が大変な危機意識を持っておられるということは、これは確かに一面理解ができることではあろうと思います。  しかし、先ほどお話がありましたように、そうした反省の上に立って日本国憲法は、例えば十九条では思想、良心の自由を保障する、二十一条では表現、結社の自由を保障するほかに、特にこの二十条を設けて信教の自由をきちんと保障する、そしてまた八十九条では政教の分離ということをうたうというように、何重にも手厚くこの信教の自由というものを基本的人権として大事にする、国家権力が侵してはならないということを保障しているわけですね。  ですから私は、そういう御心配は、一つは、体制が違うということ、そして、こうした憲法を持っていることによって、明らかに違っているのではないかと思われるのですね。そしてまた、今度の改正というのは、もうここまで論議されているように、全体的な改正ではなくて、あくまでも一部の、最小限必要なものに限っての改正だ。このことについては確かにいろいろ御批判もあるけれども、逆に宗教者の中からも、このくらいの改善というのは当然のことで、あるいはもっときちんとした法人法の改正というのは必要だという議論だってあるわけですね。  例えば、きょうお持ちしましたのは、これは「世界」という雑誌の十一月号ですけれども、これには、浄土宗の宗務総長をなさっておられて、しかも直木賞の作家として著名な寺内大吉さんがインタビューに答えておられる。これは大変私は傾聴に値すると思うのですけれども、今の宗教法人法には非常に不備が多い、むしろ、見出してはざる法だということまで言われて、片方では、宗教法人が自浄努力といいますか、きちんとした自律的な努力をしなければならないけれども、同時に、やはり宗教法人法の中に監査の組織だとか自浄組織のことを明記すべきなんだ、そういうことがあってこそ優遇税制が認められるのだ、宗教法人の目的以外に使った金にまで優遇税制を適用するなんというのはおかしいと思わないかとさえ言っておられる。  このことすべてを私は肯定するわけではありませんけれども、しかし、宗教法人の中にでも、こうしてまじめに今度の改正についてとらえておられる、むしろ積極的にもっと考えなければならないと言っておられる方もあるということは、私はやはり考えていかなければならないことだろう、こんなふうに思っておるわけであります。  そこで、ここで確認したいのですけれども、やはりそこでも、なぜ今なのかということ、あるいは、もっと根本的な点にまで見直していくことが必要なところがあるのじゃないかという議論もあるわけですけれども、なぜ今この時期にこの程度改正をしなければならないのかということについて、そしてまた、信教の自由について権力が介入するものではないということについて、総理大臣と主管の文部大臣からもう一度、簡単で結構ですから、はっきりしたお答えをお聞きしたいと思います。
  74. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 先生御存じのとおり、これは昭和二十六年制定のものでございまして、当時とは大きく社会も変化いたしましたし、宗教法人の実態も大きくまた変化したところでございまして、全く実態にそぐわない。しかも、宗教法人法には、七十九条でいわば収益事業の停止命令、八十条で認証の取り消し、そして八十一条で解散命令請求と厳しい規定を設けておりますものの、実態は、一たび認証したら全く実態が把握できない、いわば野放しの状態にあるというのが現実であります。  したがって、これを四月二十五日に与謝野文部大臣から宗教法人審議会に御検討を願って、そして、特に今緊急を要する改正点がいわば結果において示された、我々はそう受け取っております。
  75. 村山富市

    村山内閣総理大臣 もうたびたび御答弁申し上げておりますが、信教の自由と政教分離というのは、これは長い戦前の反省に立って、平和憲法がつくられて、今御指摘のような観点から制定されたものだというように思っておりますから、信教の自由と政教分離というのは絶対に侵すことはできない、これは守るべきだということを前提にして、宗教法人法というのは、監督し、取り調べをするためにつくられているものじゃないのですよ。それを保障するためにつくられているわけです。それを保障することを前提にして、今の事態に適用できるように適正化するためには最低この程度法改正は必要ではないかという意味で提案をしておるのであって、私はむしろ、まともに本当の意味で、一般の社会にも認められるような正しい宗教活動をするためには逆にこの程度のことはやはりやっておいた方がいいのではないかというふうに思うぐらいでありまして、決してこの改正案が、取り締まったり、戦前の宗教弾圧に結びついたりするものではないということだけは明確に申し上げることができると思います。
  76. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今回の宗教法人法改正を必要とする意見についてはさまざまあるわけです。  例えば私のよく知る弁護士で、長くいわゆる霊感商法事件ということで被害に遭った方々の救済、弁護をしている山口広君という弁護士がおります。それこそ身銭を切って仲間と一緒にそういう救済活動に当たってきたわけですけれども、最近ではまた、いわゆる霊感商法事件のほかに霊視商法事件なんというのもできておりまして、ごくこの二、三日でもテレビで放映されております。ある寺派に属すると称する寺が、実際の宗教活動の本拠すら持たないままに、相談活動などと称して一人五分ぐらいの相談で五十万円などという大変なお金を取っている。弁護士でも有料相談というのは一時間聞いたって、相談しつつやったって一万円ぐらいしか取れないのですからね。これは大変なものだと思うのですけれども、こういうことまではびこっているわけですね。  ところが、こうしたことについても、いわゆる宗教目的以外の活動や支出を宗教法人が行っても、あるいは宗教団体が行っても、これが、所轄庁はもちろんのこと、国民だとか一般信者にちっとも見えていない、そういうことをつくづくこの活動を通じながら痛感しておる。そういうところから見ても、オウムだけではなしに、宗教法人あるいは法人でない宗教団体宗教活動に関連するとして行われたものの中に非常に違法的な行為が多い。こういうことについて、認証した主管庁が全く知らないというのは全く困るということを言って、今度の改正ぐらいのことはどうしても必要だということまで言っておられる。このことをぜひ皆さんに御理解もいただきたい、こんなふうに思っているわけです。  そしてまた、先ほどの山口委員からの御指摘では、戦前の宗教弾圧の根拠が、どちらかというと、治安維持法ですとかこういうものを使って行われたというだけではないのだ、昭和十四年の旧宗教団体法、これに基づいても弾圧が行われたのだという御指摘がありましたけれども、これは確かにそうなんですね。  というのは、この旧宗教団体法を見ますと、いろいろな手続だとか報告だとか届け出が義務づけられておるわけですけれども、これに対する違反として罰則が、刑事罰が予定されていたわけですよ。一番重いのは懲役だとか、それから禁錮、それから罰金、こういう刑罰が予定されていたから、この違反に対して、これが例えば軽微な違反であっても、警察だとか検察が捜査に踏み込めたのですね。逮捕だとか家宅捜索だとか、そういうこともできたわけですよ。  ところが、現在の宗教法人法の罰則、これは八十八条と八十九条にあるのですけれども、これには刑事罰はないのですね。一万円の過料ということになっているのですね、違反に対しては。これは昭和二十六年のとき以来ずっと改正されていないで、過料一万円、そのままなんですね。今回も、この改正の中にはこれをいじろうということが出てないのですね。  私ども理解するところでは、「カリョウ」といっても科料と過料という二つがあるのですが、科料の方はこれは刑事罰、しかし過料の方は行政罰、したがって、これに違反しても警察だとかそれから検察が強制力で捜査できない、逮捕もできなければ強制捜査もできない、こういうものだと私どもは習ってまいりました。  ということになりますと、この現在の宗教法人法に基づいて違反を摘発をするなんということは強制的にはできないのですね。もちろん、オウムのように刑事事件を犯して刑法に違反するなんというのだったら別ですよ。  そういうことから考えても、私は、今回の改正というのはまさに必要最小限のものであろう、これを弾圧に使うなんということはもうとてもとてもできない、むしろ、そういうことがないためにこそ私たちは今の憲法というものをしっかり擁護していく、あるいはみんなで大事にしていくということがなければいけない、こんなふうに思っているのですね。  そこで、法務省にお聞きしますが、いらっしゃいますか、刑事局長は。私が今申し上げましたようなことで間違いがないかどうか、この辺をひとつ確かめたいと思うのですが、いかがですか。
  77. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 今お話しになりましたのは、過料と刑事罰の罰金とを取り出して、その性格はどう違うかというような観点からの御質問であろうと御理解いたしましたけれども、これはもう委員御案内のとおりでございまして、簡単に申し上げますと、過料といいますのは、講学上三つの種類のものがあると言われておりますが、その多くは、この宗教法人法上の過料もそうであると理解いたしておりますが、一定の法律秩序を維持するために法令に違反したものに対する制裁的処分として科されるものであります。  一方、罰金と申しますのは、これは過料の対象となる行為と比較いたしますと、一般的に申し上げれば、より違法性の高い行為を犯罪行為としてとらえて、これに対して刑罰として科せられるものでございます。  したがいまして、過料につきましては刑罰法規であります刑法の適用はございませんし、また、過料に処し、あるいはこれを執行する手続につきましては非訟事件手続法という規定で対処することにされておりまして、刑事訴訟法等の適用がないということになります。
  78. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 今のようなことだと思うのですね。  過料一万円というのも、現代の社会世相からいうといかにも安い。これは抑止的な効果がないのじゃないかと先ほどの山口弁護士なんかは言っているのですね。これは、制定当時の昭和二十六年の一万円というと高かったのじゃないのでしょうか。当時一万円の給料をもらう人なんというのはなかなかなかったのじゃないですか。何千円かだったでしょうね。  そういうことから考えますと、随分ここのところも、いいかげんなと言うと語弊がありますけれども、そのままでいいのかなという気持ちがあるのです。そういうことには手をつけないというところを見ても、私は、立法者の意図というものをここで考えなければいけない、決して権力が介入してどうこうしようなんという思いかないということを国民の皆様におわかりいただけるのじゃないかな、こんなふうに思っている次第でございます。  ただ、今度の改正で私は残念だったなと思うのは、御案内のように、オウム真理教に対して東京地方裁判所が十月三十日に解散命令を出しましたね。申し立てがあったのが六月三十日ですから、ちょうど四カ月で出たわけです。これは一般の方からいったら遅いという話もありますけれども、私たち弁護士としての経験を持つ者からいうと、実に東京地裁のこの決定は早かった。もちろん、これについては、それまでにあの刑事事件の摘発について警察、検察が一生懸命やって、証拠もたくさんっかんで、そして次から次と起訴をしていったということがあり、そのはっきりした資料があったから東京地方裁判所としても自信を持ってあの決定をあの時期にできたのだろうと思うのですね。なかなか今まではそうはいかなかったわけですよ。  しかし、それにしても、解散命令の申し立てがあってから、あるいはある以前から、そのことを察知しながらオウムの方は財産隠しをやってきた、そしてまた、この決定があってからでもなお財産隠しをやろうとしているという話があるのですね。  そこで、本来ならば、この解散命令の申し立てが行われると同時に、その申し立てがいいかげんなものであったらだめですけれども、一定程度のはっきりした解散事由に当たるのだというような疎明資料がつけられて裁判所に出された場合に、裁判所として何らかの保全処置、はっきりするまでの間の財産の移動を凍結するような処置ができないものかというのが広く国民皆さんの考えであったと私は思うのですね。  こういうことについては、実は今度の法改正でも入ってこなかった。もちろん、これは大きな問題ですから、ほかの法律との絡みがあってなかなか大変だろうとは思うけれども、もしもこれができなかったとすれば、今後やはり考えていかなければならないのではないかと思うのですが、文部大臣、この辺について御検討の余地はありますか。
  79. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 今回の改正は、今までは所轄庁といえども認証したらそれっきり、無責任のそしりを免れない。このことは何も最近に始まったことでなくて、昭和二十六年以降これだけ大きく世の中が変化しているわけですから、当然もっと早く改正が検討されてよかったと思うわけであります。しかし、オウム事件きっかけといたしまして法改正の必要が出て、とりあえずすぐやらなきゃいけないものは何かということから今回の三点に絞られたということだろうと思います。  しかし、今先生御指摘になったことは、私個人としてもそれは当然だと思いますので、これからどういう形になるのか、それぞれまた審議会その他の御意向を伺っていく、こういうことになろうかと思います。
  80. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 いろいろな観点から、私は、宗教法人のあるべき姿などについては国民全体の問題として考えていくべきことがたくさんあるだろうと思います。  先ほど御紹介いたしました寺内大吉さんも言っておられるのですけれども、日本の宗教法人には包括・被包括法人と単立法人がある、そして、両者の立場は大きく異なる、被包括法人はある宗派に属する団体で、これに対しては包括法人である教団自身が監督権、監査権を持っていも、だから端末の寺まで財務問題など調査できると。そして、この包括法人は直接文部省の所管になっている。ところが単立法人では金の流れはちゃんと報告していないし、自浄作用などもほとんどない、ここが問題だと。  実は、私も地元で、ある宗派の末寺の檀家総代をやっておるのです。なかなか出ませんけれども、たまに檀家総代会に出ますと、ここでもきちんと財務状況について檀家総代に御審議があるのですよ。それに対して私ども点検をしてやっておるのですよ。まじめなところはちゃんとやっているし、今度の改正でも、そういうまじめにやっておるところは私はちっとも痛痒には感じないと思うのですね。どうかそういうことも宗教法人の皆さんにも、宗教活動をやっていみ皆さんにもお考えをいただいて、そして自浄・自律のきちんとした姿勢をとっていただくということにしていただきたいものだ。権力の介入なんというのは、その気持ちもない、また不要なのですし、きちんとしていただくことが何よりだと思っております。  その他の問題については同僚の委員にお譲りをいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  81. 越智伊平

    越智委員長 この際、輿石東君から関連質疑申し出があります。佐々木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。輿石君。
  82. 輿石東

    ○輿石委員 社会党の輿石ですが、佐々木委員の関連質問をさせていただきたいと思うわけです。  最初に私は、この十月三十日に東京地裁からオウムに対して解散命令が出たその日、NHKは地元関係者の皆さんの声を放映をしていたわけですけれども、その中に、私の地元であります山梨の上九一色村の人たちの訴えもあったわけであります。  その声というのは、やっとここまで来たか、そんな心境だ。続けて、この上九一色村を信者一人、サティアンという施設一つない更地にしていただいて、そして十年前の平和で美しい静かな上九一色村を取り戻してほしい、そう訴えているわけですけれども、まさに私は、上九一色村村民のすべての人たちの声を代表していみ、そう思うわけでありますね。  オウムが昭和六十三年八月に富士宮市に富士山総本部道場をつくってからもう七年という年月がたっわけですけれどもオウムをめぐる一連事件は、我が国犯罪史上類例を見ない凶悪犯罪だということで驚いてもいるわけですが、わけても、この犯罪集団宗教法人であったということに驚きとショックを隠せなかったというのが本当のところだろう、こう思うわけであります。  特に、この教団は今なお私の地元であります上九一色村で活動を続け、大変なトラブルや精神的な負担を抱えながら上九一色村の方々は頑張ってくれているわけですけれども、そのほかり知れない生活を思うときに、私が県内に入りますと、どこでも言われるのは、なぜこのような犯罪行為を起こす団体宗教法人として認めてしまったのか、こういう質問が大変多いわけであります。これに対して、私どもこの特別委員会も、総理の言われるように、国民の声に謙虚に耳を傾け、その声にこたえるのが政治の使命であるとも言われたわけですから、それにこたえるような論議をしていかなければならないだろう、こう思うわけであります。  そこで、オウム真理教のような残虐かつ凶悪犯罪について、なぜ宗教法人としてこの集団認証を受けることができたのかまたは認証をしてしまったのか、そのことについて文部大臣はどう考えているか。まあこれは、お話しのように、東京都に所轄があったわけですから、認証したわけですから、大臣も東京に居住をしていられるということから、東京都で認証したものは大臣がすべてを答えていただけるというわけにはいかないでしょうけれども、その経緯も含めて一言お尋ねをしたいというふうに思います。
  83. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 正確にお答えを申し上げます。  宗教法人の設立に当たっての規則の認証についてでございますが、この認証は、宗教法人法第十四条一項で、所轄庁は申請に係る事案について三つの点から検討するようになっております。第一点は、当該団体宗教団体であること、第二点は、当該規則が宗教法人法その他の法令の規定に適合していること、第三点は、当該設立の手続が宗教法人法第十二条の規定に従ってなされていること、この要件をすべて備えていると認めたときはその規則を認証する旨の決定をしなければならないと定められているところであります。  実は、オウム真理教は平成元年三月一日、東京都知事に対して、この規則の認証申請書を提出したわけでございますが、率直に申し上げて、これは当時、ただすんなりと要件を備えているから認めたということでなくて、少しくいろいろトラブルがあったように聞いております。しかしながら、最終的には、この要件を満たしているということから、いわば認証をしたというのが経過でございまして、約五カ月余後の平成元年八月二十五日に認証したものであります。  なお、先生はお地元で大変な思いをなさったわけでありますから、もう少しく詳しく細部について政府委員から御説明させたいと思います。
  84. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 若干補足させていただきますが、東京都が五月に受理をしたわけでございますけれども、その時点ではああいった犯罪行為といったものはわかっていなかったわけでございます。ただ、家族がオウム真理教に入信したまま帰ってこない、会いに行ったけれども会えない、あるいは高額のお布施を納めさせられたといったような苦情が寄せられていたことは事実でございます。  そういったこともございまして、東京都としてもいろいろ慎重に検討されたわけでございますけれども、最終的には、法令違反等の事実が確認できないということで、規則認証の要件を満たしておるということで八月二十五日に規則を認証したというふうに聞いているところでございます。
  85. 輿石東

    ○輿石委員 八九年に、平成元年の三月に一応申請というかそういうものがあって、八月二十五日に最終的には認証された。こういう経過があって、その間については、トラブルもあった、信者からの、また家族からの苦情もあった。にもかかわらず、この宗教団体宗教法人として認めなければならなかった。それは、法律に示された、今文部大臣が言われた幾つかの条件を満たしていれば認証をしなければならないということで認めるわけですね。  この間、私が把握しているところですと、文化庁にも、白衣をまとって麻原を先頭にバスで宗務課へ駆けつけて、しかも早くしろということで庁舎内で瞑想までやり出したという、そういう事実も聞いておるわけですけれども、その辺の事実関係はいかがですか。
  86. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 そのような事実があったということを私は聞いております。
  87. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、問題は、現行法での認証の際に、所轄庁である東京都がどこまでそういう責任を持って宗教団体を把握しているのか。そして、これはおかしい団体だなと思ったときには、認証をしない、保留をするという手続なり手だてはとれないわけですか。
  88. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 認証でございますが、現在の考え方は、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、そういった規則が宗教法人法に定める要件に合っているかどうかということで認証せざるを得ないという考え方に立っておるわけでございます。  ただ、私どもとしては、今回のオウム事件というのは一つの大変な事件でございまして、反省すべき点は反省しなければいけないというふうに思っているわけでございますけれども認証につきまして、例えば現在オウムで明らかになっているようなことがもしその時点でわかっておれば、それは明らかに公共の福祉を害する行為を行っているわけでございますから、そのようなことが明確になっていれば断じて認証すべきではないというふうに思うわけでございます。  ただ、当時の時点におきましては、いろいろと、信者が帰ってこないといったようなことはあったようでございますけれども、そこまで明確に法令違反といいますか、公共の福祉に違反しておるということがわからなかったわけでございます。もしそういうことがわかっておれば、法律に条件があるわけでございますけれども、当然認証しないということを考えるべきだったというふうに思うところでございます。
  89. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、認証時における、その申請をした宗教団体がどのような団体であるかどうかをどうやって把握するのか。そして、これは信教の自由ともかかわる問題ですから、これは怪しい教団なり宗教団体だ、こう認めるための基準というか判断基準というような問題が大変重要になってくる、こう思うわけですけれども、それは後ほどお尋ねすることにいたしまして、現行の包括宗教法人認証の決定のあり方についてどのように行われているのか、これは文部省が所管をしているわけですから聞いておきたいというふうに思います。
  90. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私ども、包括宗教法人を所管しているわけでございますけれども、この認証につきましては、宗教法人法第十四条第一項で、所轄庁といたしましては、申請に係る事案につきまして、当該団体宗教団体である、この宗教団体性の確認につきましてもいろいろ書類をお願いして、当該宗教団体の概要がわかる、由来でございますとか沿革、信者の方々あるいは礼拝施設、境内地がどのようなものがあるのか、そういった実態について、宗教団体としての実体を備えているかどうか等を審査させていただきまして、さらには、当該規則が宗教法人法その他の法令の規則に適合しているかどうか、それから、当該設立の手続が法にのっとった手続に従っているかどうかといったことを審査して、宗教法人としての認証を行っておるところでございます。
  91. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、ただ法律に照らして、その条件に合っているかどうかという物差ししか現行法にはないわけですから、おかしいなと思っても、オウムのように東京都庁へ押しかけたり、その間に信者からの、家族からの苦情があっても、そしてその間、オウム真理教の場合は幾つかの訴訟や、知事に対して早く認証を下せということで陳情書を出したり、そういうことをやっているわけですね。そうすると、それは一つの圧力をかけて認証をさせる。  先ほど出ましたように、三月に申請が出て八月の二十五日に最終的には認証されたわけですから、そこに足かけ六カ月間期間があるわけですね。そして、現行法の十四条の「規則の認証」のところでは、申請を受けてから三カ月以内に結論を出さなければならないというふうに、こううたってあるわけです。これが六カ月期間がかかったというところにも、既に認証の条件に合うかどうか、どうもこれはおかしな集団だぞということが、ある面で逆を言えばわかっている、こう判断してもよろしいのではないかにもかかわらず、結果的に認証をしてしまったということになるわけですけれども、その点はいかがですか。
  92. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 オウム真理教につきましては、御指摘のように、平成元年の三月一日付で申請書を出されたわけでございます。都としては、これは仮に預かったわけでございますけれども、この宗教団体につきましては、申請時にもいろいろな苦情等もございましたので、実は受理をすぐにはいたさなかったわけでございます。書類上の不備等がないかどうかを確認した上で、そしてまず書類の受理を五月二十五日にいたしたわけでございます。  書類を受理いたしますと、先生御指摘ございましたように、三カ月以内に認証するかどうかということを決定をしなければいけないわけでございます。そういった中で、法令違反等の事実がないかどうかいろいろ調べたり聞いたりしたわけでございますけれども、その時点では法令違反等の事実が確認できなかった。したがいまして、規則認証の要件を満たしているというふうに判断せざるを得ないということで、八月二十五日に規則を認証したところでございます。
  93. 輿石東

    ○輿石委員 そうしますと、私は、やはりここでみんなできちんと真剣に考えなければならない問題として、一体認証というものの性格はどういうものだろうか。そして、先ほどからも、昭和十四年ですか宗教団体法から戦後宗教法人今、そして昭和二十六年に現行の宗教法人法が成立をしてくる、この歴史もたびたび出ているわけですけれども、やはりこの認証制度に変わった、それは、宗教団体法の反省を踏まえて、憲法に保障されている信教の自由というのを最大限尊重をするというその精神がこの法律には流れている、こう思うわけであります。  そこで、認証の性格というものをもう一度考え直す必要もあるだろうし、その認証というものの性格を文部省としてはどうとらえられているのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  94. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘の規則の認証でございますけれども、これは法律で定めている要件を備えているかどうか、そういったことを審査いたしまして、所定の要件を備えていると認めたときに行うその旨の判断の表示、いわゆる確認行為というふうに言われているものでございます。  例えば、講学上の概念として認可とか許可といったものがございます。許可については、一般的な禁止を特定の場合に解除するということでございますし、認可については、第三者の法律行為を補充してその効力を完成させるということで認可という行為があるわけでございますけれども認証については、こういった許可や認可とは違いまして、法律で定める要件を備えているかどうかを審査する、そして所定の要件を備えていればその旨判断の表示を行う、確認行為を行わなければいけないということでございます。  ただ、私どもといたしましても、宗教法人審議会におきましても、実は認証のあり方についても議論すべきだという意見はあったわけでございますけれども、今回、所轄庁のあり方、情報開示のあり方、認証後の情報の把握のあり方、この三点に絞ったということもございまして、認証自体についての検討はお願いしなかったところでございます。  ただ、宗教法人審議会の報告の中にも、現行規定を適正に解釈してきちんと対応していくということについては、そうすべきだという御意見もございました。今回の件に私ども反省をいたしておりまして、著しく公共の福祉を害する行為を行っていることがもしその時点で蓋然性がある、あるいはある程度わかっておるということであれば、認証ということは行わないということを基本的に考えていかなければいけないというふうに思っておるところでございます。
  95. 輿石東

    ○輿石委員 そこで、今お話がありましたように、現行の宗教法人法の場合は、所轄庁が法的要件を充足している、満たしていれば認証する、こういうことだということがはっきりしてきたわけですけれども、これは今小野次長が言われましたように、事実確認だ、こういうお話もあったわけです。  これは事実確認であって、そうしますと、公共性の判断ということにはならないわけですね、この認証の時点では。宗教法人宗教団体がなるということは、単に条件を整備していればいいということだけではなくて、宗教法人法の骨格にもなります、総理も本会議の中で、宗教団体の自由と自主性、責任と公共性という二つの精神が流れた法体系である、こう宗教法人法の位置づけをされているわけですから、単に事実の確認だけではなくて、宗教団体が公共性、公益性というものをきちんと備えているかどうかの判断も当然ながら必要になろうと思うわけであります。  そのことともう一つ、先ほど論議がありましたように、宗教団体というのが日本に一体幾つあるのか。現行の宗教法人法の範疇の中には二十五万とも言われ、そして宗教法人に認められているものは十八万四千弱、こういうお話もあったわけでありますね。その限りにおいても、二十五万と十八万、こういう宗教法人法になだれ込むような現象もあるわけですけれども、これは一体、二十五万のうち十八万までも宗教法人になっていくというこの現象を、文部大臣はどこにその原因があるととらえられていますか。
  96. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 最後のところがちょっと聞き取れなかったのですが、二十五万の宗教団体と俗に言われます、二十三万とも言われますが、うち十八万四千が法人である、この件についてどういう……。
  97. 輿石東

    ○輿石委員 質問の、二十五万のうち十八万も宗教法人になってくるというこの現象をどうとらえられているかその原因はどういうものであるというふうに分析をされるか、そういう意味であります。
  98. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  一つには、やはり法人格を得るということで社会的に認知された団体である、いわば宗教法人としてこれはある意味の権威を持つことになると思います。いま一つは、やはり税法上のいわば優遇措置といいましょうか、このことも大きい理由になるだろうと思います。
  99. 輿石東

    ○輿石委員 宗教法人に多くがなりたい、またはなってくるというその一つの原因として優遇税制の問題があるだろう、今文部大臣はこう指摘をされたわけですけれども、それでは、その宗教法人に優遇税制があるというのは、法人だからではなくて、宗教法人が公益的な団体、公共性という性格があるから優遇税制もするということになろうと思うわけであります。とすれば、その団体の実態も公共的でなければならないし、公益的なものでなければならないということをきちんと認証をした所轄庁は把握をしておく必要があるだろう、こう思うわけであります。  したがって、今回の改正案は、今までその事実関係を確認するための法的手段もなければ、まさに認証をしただけで後は先ほど大臣言われた野放しだ、こういう状態を何とかしなければいけないということでの必要最小限法改正だと理解をするわけですけれども、そういう理解をしてよろしいかどうかということであります。
  100. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 大変いい御質問だと思います。  まさにきょうの御質疑内容国民の皆さんもよく御理解いただいているところで、私はあえてそういう方々にもお聞き取りをいただきたいのですが、今回の法改正というのはまさに必要最小限のものでありまして、現実は認証をしたらそれっきりと。なるほど、いわば収益事業の停止命令とか、あるいは認証の取り消しとか、あるいは解散命令請求とか、いろいろ厳しい規定はありますものの、実態は何もわからないということは現実には責任ある所轄ができない。だから、結果においてオウム真理教のような事件類似の行為がこれからも野放しになっていいのかという反省も私は含まれている、こう思います。
  101. 輿石東

    ○輿石委員 したがいまして、今回の法改正反対をされる皆さん、心配をされている国民の皆さん、私は先日も甲府へ参りまして、こう言われたのであります。なぜあんな凶悪な犯罪行為をする宗教団体宗教法人として認めてしまったのかと。  こういうことと同時に、先日のこの特別委員会の論議を聞いていて、まるで現行の法律法律の体をなしていないのではないか。今所轄庁が持っている権限というのは、認証の時点の手続と、そして先ほどからもありました七十九条から八十一条までの取り消しや解散命令、収益事業の停止、この三つしかない。この三つが法律としては掲げてあっても、何らそれが執行できる法的手段もなければ何もないということでは、参議院の本会議でも論議があったようですけれども、まるで戸籍法と同じようなものだ、生まれたときと死ぬときだけかかわるよ、それ以外は何もかかわれない法律ではないか。こんな法律が一体今まで四十四年も放置されていたことの方がおかしい、こういうお話もあるわけですけれども、これに私どもはきちんと答えなければならないと思いますし、過去四十四年間、所轄庁であります文部省も、ただ手をこまねいていただけではないというふうに思います。  例えば、昭和三十三年に宗教法人審議会で答申もなされました。しかし、これはいろいろな時代背景もあって論議までいかなかったということもお聞きしているわけですけれども、私はこの際、真に宗教団体の公益性、公共性の存在を確認するためには、むしろもう少しこの改正案を強めるべきだ、きちんとやるべきだ、また幾年かたつと同じ歴史を繰り返すよ。  総理は先ほど、歴史の教訓に学びたい、こういうお話もあったわけでして、また十年たったら、この宗教法人法改正をされたものでも不十分だということは出てきやしないかそんな心配もあるわけですけれども、その点についてどのような見解があるのか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
  102. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 今回の法改正オウム真理教事件対策ではございません。また、この法改正が行われれば二度とオウム真理教のような事件は起こさないということも申し上げられません。しかしながら、今までのように全く内容がわからないままに放置しているということは、仮にいろいろなうわさ等、あるいはいろいろな具体的に何かの予測できるような事実がありましても、全くそのまま放置せざるを得ないという環境に置かれるわけであります。  私はそういう意味で、今後いわば所轄のあり方を改めていただければ、例えば二つ以上の県にまたがる場合、これは国がいろいろな自治体にもお願いをしてそれなりの責任ある対応もできましょうし、また、いわば情報の開示があれば、いろいろな内容等も、これもある程度把握ができますし、また同時に、活動の報告の把握についてもこれからは少しくできます。  そして同時に、先生のお地元でもいろいろあったように私は承知しておりますけれども、例えば異臭を放つとか何か危険なものを感じるというようなときに、これを報告を徴収したり、あるいは質問を審議会に諮ってすることによってある意味で実態が把握できる、そういう意味で、かなり今までとは違った対応ができるということは申し上げられる、こういうことでございます。
  103. 輿石東

    ○輿石委員 この問題はやってみなければわからないという側面もありますから、当面、これをきちんと法改正をして、そういう疑義や国民の皆さんの期待にこたえるというのが私たち政治家の、政治の使命である、こう考えておるわけです。  しかしもう一つ、私は、先ほど新進党山口委員さんの方から、今回の改正の最大のポイントとも思われます質問権の問題、七十九条から八十一条にかかわってそれを担保するための質問権、ここの問題について、昭和四十一年に、現行法でもこれは可能ではないかという意味の秋田県からの問い合わせもあったように聞いているわけですけれども、その中身と、そしてまたどういう回答をされているのか、お聞きをしたいというふうに思います。
  104. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 昭和四十一年に秋田県から、宗教法人認証時におきます所轄庁の指導監督の責任等について照会がございました。  これは当時の秋田県総務部長からの照会でございますが、一つは、所轄庁は規則の適正な運用について指導監督の責任があるかどうか。第二点は、所轄庁は、法七十九条、八十条、八十一条、こういった規定から見て、宗教法人の運営の実態を調査する権限があるかどうか、調査権があるかどうかなどについての御照会でございました。  これに対して当時の宗務課長からは、一つは、所轄庁は、宗教法人の規則に反する運営がなされているということを知ったときには、所轄法人に対して、規則に沿った運営をするようにという指導をすることは差し支えがないというのが一点でございます。  それから二点目の実態調査の部分でございますけれども、現行法では明文の規定がないので、当該宗教法人の了承が得られれば、報告を徴したりあるいは事情を聴取するということはできますけれども、了承が得られない場合には直接調査することはできないといった旨の回答をいたしているところでございます。
  105. 輿石東

    ○輿石委員 今あえてそういう質問をし、お答えをいただいたのは、宗教団体側の了承が得られれば現行法でも可能ですよ、それは法律に明文規定がないからだと。そういう経過があって今回はそういうところを明文化し、ある程度七十九条から八十一条の法の精神によって施行できるようなことを担保する、その目的だ、こう思うわけですけれども、そう理解してよろしいですか。
  106. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘のとおりでございます。
  107. 輿石東

    ○輿石委員 与えられた時間も大変少なくなりましたので、私はどうしても、宗教法人として届け出があった場合、その時点で何を基準に認証ができるのかそうした判断基準というものが一番大事だろう。認証してしまって、ああでもないこうでもないという論議をするよりも、認証する時点で、どういう団体であるかというきちっとしたチェック機能が果たせるような何か裏づけを持ちたいと思うわけであります。  ヨーロッパでも、七〇年代からカルト集団のいろいろな問題が起きまして、それにどう対応していくかということで、ECでは議会で八十三項目ですか、それに対する判断基準なるものも各国へ示した、こう言われるわけですけれども、そうした意味も含めまして、その中身、十二の判断基準について議論をする時間は私には与えられておりませんので、次回に回させていただきます。  こういうもろもろの問題の中で、最後に総理お尋ねをしたいわけですけれどもオウム真理教解散命令が出てほっとした。その反面、四月十四日ですか、児童福祉法違反で五十三名のあの子供たちが甲府の児童相談所へ移された。ヘッドギアをつけたあの姿を見たときに、あの子たちオウム七年、八年という歴史の中で、あの教団の中で生まれ育ち、外部から一切遮断をされ、食べることもふろに入ることさえも、その基本的な行動様式さえも、人間として最低必要なそういうものさえも失ってしまった。そしてその家族や信者の苦悩は解散命令が出てこれから始まる、こう言っても過言ではないというふうに思うわけであります。  この信者に対する心のケアや対応、そして世界的に二十一世紀は宗教の時代などという言葉も出てきているわけであります。混迷をきわめるそういう時代に宗教へ心の安らぎを求める、これも一つの現象でありましょう。だからこそ政府として、そうした宗教全体にかかわる研究や、そして国民の心配される相談、指導というようなものを含めた対応できる組織というものを今後考えていかなければならないと私は強く思うわけですけれども、その点について総理はどうお考えになっているか最後にお聞きをし、私の質問を終わらせていただきます。
  108. 村山富市

    村山内閣総理大臣 山梨県の上九一色村の村民、地元の人たちがどう考えておるか、どういう思いでおるか、そういう立場に立って、地元の議員として取り組んでこられたその立場からする切実なお話を今承りました。私は、お話を聞きながらひしひしと、なるほど宗教法人法改正は必要だなということを痛感をさせられました。  これは先ほど来お話がありますように、戦争中の宗教団体法というのは、国策に沿うか沿わないかということを基準にして、監督、取り締まることを前提にしてつくられた法律なんですよ。これは全然前提が違うわけですからね。むしろ信教の自由と政教分離の原則をしっかり保障していこうということを前提にしてつくっている法律ですから、その前提は崩さないということを守りながら、最低行政として責任が持てる範囲、最低信者が信頼できるものにする必要がある、世間も常識として認められるものにする必要があるではないかというごく当たり前のことを私はやられておるというふうに思いますので、そのことは御理解願いたいと思うのであります。  同時に、今お話もございましたように、あとオウムが仮に解散になった場合に清算をどうするかとか、あるいは今お話のあったような、児童をどのようにアフターケアをして正常な姿に戻していくかとか、いろんな問題があると思います。今オウムに対する関係省庁連絡会議というものをつくって、そうした事後の対策についても疎漏のないようにきちっとやっていこうという取り組みをいたしておりますが、今大変高度なお話もございましたので、そうした宗教問題の扱い等についてもこれからさらに検討を深めていきたいというふうに思います。
  109. 輿石東

    ○輿石委員 どうもありがとうございました。
  110. 越智伊平

    越智委員長 この際、細谷治通君から関連質疑申し出があります。佐々木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。細谷君。
  111. 細谷治通

    ○細谷委員 社会党の細谷でございます。私は、宗教法人税制に絞って御質問をさせていただきたいと思います。  昨今、宗教法人に対する優遇税制については、国民の間では行き過ぎではないかという批判が強いわけでございます。特に最近はそういう声を頻繁に聞くわけでございます。私どもの本問題に対する基本的な考え方といたしましては、当然、宗教法人の公益性にかんがみまして一定の優遇税制を認めることはやぶさかではない。しかし、それには前提がありまして、やはり財務、会計の公開性、透明性というものが前提でなければならない、こう考えております。そうしない限り国民理解は得られないというふうに考えております。  私どもは平成六年度の税制改正の中で、特に宗教法人の収益事業に関しましてみなし寄附金というのがございました。宗教法人の場合、それまで三〇%はそっくり寄附金とみなされて経費扱いになるという制度がございましたけれども国民の皆さん方の厳しい批判にこたえるためにもこれを二七に圧縮する、不十分ではございましたけれどもそういう改善をやってまいりました。引き続き努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  ところで、まず大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。  大蔵大臣は、先般公益法人税制の見直しに前向きの発言をされたというマスコミ報道がございました。宗教法人に対する法人税の軽減税率の適用を見直すことに真剣に対応すると具体的に言及をされております。また、そもそも宗教法人をほかの公益法人と一体で扱っていいのかという議論もある、こうおっしゃっております。また、オウム真理教のようにサリンや武器製造という社会転覆の目的に非課税の金が使われることに矛盾を感ずるという発言もなさっているようでございます。  この発言の一々を確認しようという気持ちはございませんけれども、こうした発言を踏まえまして、財政当局、財政の責任者という立場で改めて発言の真意をお尋ねをしたいと思います。  あわせて、もしこの宗教法人税制問題について改善の要があるとするならば、来年度税制改正、もう今作業が始まっておりますけれども、来年度税制改正の中でどういう取り組みをなさろうとしておられるのか、その辺の認識と決意をお尋ねいたします。
  112. 武村正義

    ○武村国務大臣 たびたび御議論がございましたように、宗教法人は民法のいわゆる公益法人の中に含まれて今日まで扱われてまいりました。税制も、そういう意味では民法を中心とした法制の中で、他の財団、社団あるいは学校法人、福祉法人等と共通の扱いをしてきたところでございます。  細谷議員御承知のように、いわゆる収益事業には課税をする、これも二七%という軽減税率を適用しているところでございます。したがって、収益事業でない事業、いわゆる公益事業、あるいは宗教法人に限って言えば宗教活動にかかわる分野については非課税という扱いになって今日に至っております。  しかしまた、そういう分野におきましても、間接税、特に消費税は当然課税の対象になるわけでありますし、宗教法人がどんどん物を買ったりした場合には当然三%の消費税は払ってもらっている。また、宗教法人の中で活躍する個人の所得に対してはそれぞれ所得税を納める。こういう仕組みになっておりますが、宗教法人のいわゆる公益活動宗教活動には税はかかっていないという、こういう形であります。  先ほど鳩山委員質問にも申し上げましたが、結果として、収益事業以外の宗教法人活動であれば非課税という枠の中に入ってしまいますために、今回のオウム真理教の、サリンをつくるためにさまざまな資材を買ったり機材を買ったりした経費や、あるいは武器等を製造するために費やした金については課税がされていないという矛盾を私どもは経験をしたわけでありまして、そのことは、率直に言って私ならずともおかしいじゃないかとだれしも疑問を感ずるところであります。  もっとも、それじゃ今の税法でそういうものに直ちに課税ができるかといいますと、なかなかこれは、申し上げたような法の体系になっておりますために難しゅうございます。また、これを改正するにしましても、反社会的な行為とは一体何なのか、それを税務当局が税の立場から決めてかかっていいのかどうか、そういう大きい問題がございますために、これはかなり根の深い問題として真剣な議論を必要とするという認識でございます。  来年度の税制改正というお尋ねでございますが、私どもはそういう矛盾は少しでも早く正したいとは思っておりますが、そういう問題がありますために、政府税調も与党税調も真剣に御論議をいただくことをお願いしながら、最終の結論を見出していきたいという思いでございます。
  113. 細谷治通

    ○細谷委員 通産大臣、自民党総裁としてどのような感想と認識をお持ちか、お尋ねいたしたいと思います。
  114. 橋本龍太郎

    ○橋本国務大臣 先般来ここの御議論を伺っておりましても、宗教法人課税というものにつきましてはさまざまな御論議があります。そして、なかなか難しい問題点をはらんでおることはもう委員よく御承知のとおりであります。  これは党という立場でお尋ねをいただきましたが、我が党としても、宗教法人に対する課税のあり方というものにつきまして、国民各層の御意見に耳を傾けながら検討していかなければならないテーマであると思っております。  しかし同時に、宗教法人が、我が国の現行の法制上、数多くの社団、財団法人等と同様に公益に関する団体として位置づけられているということは委員御承知のとおりでありまして、宗教法人だけを取り出して課税強化などの策を講じる、これは私は適切なやり方ではないと思います。むしろ、公益法人課税のあり方の問題として検討していくことが適当な考え方だ、そのように考えております。
  115. 細谷治通

    ○細谷委員 この点については、同種公益法人の中における課税のあり方について、後ほどまた申し述べてみたいと思います。  最後に、総理政府の最高責任者の立場でどういう御認識とお考えをお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  116. 村山富市

    村山内閣総理大臣 今それぞれ御議論もありましたように、この宗教法人を含む公共法人としての課税のあり方については、いろいろ意見があることも十分承知をいたしております。難しい問題もあると思いますけれども、これはやはりそうした声にこたえて検討するに値する、検討しなければならぬ課題だというふうに思っております。
  117. 細谷治通

    ○細谷委員 この問題は多分与党の中でもいろいろの温度差があるのではないかというふうに思います。私ども与党の税調の立場で、この議論を深めて、国民皆様方の期待にこたえていかなければならぬというふうに思っております。  次に、文部大臣お尋ねをいたします。  もちろん信教の自由、政教分離というのはもう基本でございます。しかしながら、今同僚議員からお話がございましたけれども認証という非常に甘い取り扱いで法人格を取得いたしますと、税制上に非常な恩典が与えられる。しかも、その非課税の金は何に使ってもチェックされない、チェックしょうがない。オウム真理教のように反社会的にこういうふうに使ったり、政治家に二億円の大金を無利子で貸し付けても、そして湯水のごとく選挙活動に使ってみても全くチェックされない。脱税、ごまかし、私的流用等、不正行為を毎年のように税務当局から指摘されている。  このように、多くの税制上の優遇措置を受けながら財務内容については全く非公開、不透明では、国民の納得を得ることは到底できないと考えます。財務内容の公開というのは、特権を与えられている者の、言ってみれば与える前提最低限の条件だと考えます。今回の法改正というのは、こうした実態にかんがみ、最低限の措置であるというふうに思っております。  ところで、宗教法人の中には今の法体系の中でも、例えば文部省に、所轄庁に自主的にその財務内容を届け出たり、信者に公開しているというそういう法人も実はあるのです。片一方では、一切非公開の法人もあります。  文部省はこの辺の実態について把握されておるかどうか。もし把握されておるようでしたら、お答えいただきたいと思います。
  118. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  現在、文部省所轄宗教法人は三百七十二ございます。うち、財務内容等について御報告をいただいているのは約三分の一でございます。  なお、都道府県につきましては、私たちは把握できておりません。
  119. 細谷治通

    ○細谷委員 今、文部省所轄法人については三分の一ぐらい把握できているということですけれども、特に都道府県所轄法人に大変この非公開の法人が多いということを伺っております。この辺についても、一度後から、当委員会において一般質疑の中でまたいろいろとお尋ねをいたしたいと存じております。  さて次に、宗教法人に対する税務調査というのは一体的確に行われているかどうかについてお尋ねをいたしたいと思います。  実は、これは国税庁の発表の資料でも出ておりますが、宗教法人に対する実調率、すなわち税務調査の率は極めて低いということになっております。宗教法人に対する税務調査の実施状況を見ますと、源泉所得税の調査、宗教法人に属する職員、構成員に対する給与の源泉所得税の調査の実調率というのはまあまあ八・一%、平成五年でございますが、八・一%ということで、そこそこでございます。ところが、収益事業の法人税にかかわる実調率というのは三・三%、これはあくまで平均ですけれども、三十年に一回、こういうことになるのですね。極めて低いという実態になっております。どうしてこう極端に低いのか。  先ほど言いましたけれども、毎年の税務調査で悪質な脱税、ごまかしが指摘されている。平成六年の税務調査では、調査を受けたもののうち実に八四%の法人で申告漏れが発見されている、こういう状況でございます。  一体どうしてこんなに宗教法人に対する税務調査というものの実調率が低いのか。これは単に、徴税効率ですね、効率の問題なのか、それとも何か実態として、信教の自由というものが片一方であって、税務調査がやりにくい、こういうことになる、結果として税務当局の腰が引けているのかどうか、この辺について国民の皆さん方の前に明らかにしていただきたいというふうに思います。
  120. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答えいたします。  宗教法人に対しましては、各種資料、情報の収集等に努めておりまして、課税上問題があるというふうに認められる場合には、実地調査を行うというようなことなどによりましてその適正化に努めておるところでございまして、平成六事務年度の法人税の調査件数は三百八十一件ということになっておるわけであります。  それで、先ほど先生御指摘のございましたように、実調率ということで見ますと、これは三・五%ということになっております。これは、全法人の実地調査割合が六・五%であることに比べますと、確かに低いものになっておるわけでございます。  しかしこのことは、宗教法人につきましては、収益事業を営んでおりましても、その場合でも、その事業規模がかなり小さいものが多いというようなこと、また、一般の法人に比べて調査の必要度が高い法人が必ずしも多くないというようなことの結果としてそういう実調率になっておるわけでございまして、調査が必要な法人に対しましては適切な調査を行うということでございます。  先ほど御指摘もございましたように、収益事業についての法人税の観点からの調査とは別に、また源泉徴収、源泉所得税の観点からも調査を行って、その適正化を期しておるところでございます。
  121. 細谷治通

    ○細谷委員 次に、宗教法人と他の公益法人の課税ということで、その関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  公益法人に対する優遇税制、課税上の優遇措置としては、私は大体主要なものとしては四つぐらいのものを挙げることができるんじゃないかと思います。  一つは、収益事業に対して軽減税率が適用されているということですね。一般の企業よりも低い税率が適用されている。二つ目は、収益事業のあり方とその範囲が極めて限定されたものになっているということ。それからもう一つは、金融資産収益、例えば預貯金や株、債券とか、そういうものに対する、利子配当所得に対する課税がなされてないということ。四番目は、先ほどちょっと触れましたけれども、みなし寄附金の限度額。事実上二七%、学校法人でいえば五〇%、これが頭から経費として、コストとして控除されている。この四つが私は検討すべき主要なテーマだというふうに思っております。  ところが、宗教法人は公益法人なんだから公益法人として同じ税制上の扱いをすべきだ、こういう議論が一般に行われております。ところが、やはり公益法人といいましても、実は現在も税制上の扱いで違うところがあるんです。それは先ほど言いましたが、みなし寄附金が宗教法人の場合は二七、学校、社会福祉法人については五〇ということで、学校、社会福祉法人の方が優遇されている、こういうことになっている。現実にここに格差があるわけですね。それは、同じ公益法人というけれども、その法人の設立目的とか役割、任務によってやはりこういうような差があるというふうに私は考えるわけであります。  したがって、私は、これは公益法人だから宗教法人も学校法人も社会福祉法人も一緒だということじゃなくて、十把一からげじゃなくて、やはりこれは、先ほど言いましたが、法人の設立目的、役割等からおのずと差異があっていいし、それはまさに立法政策の問題ではないか、政治が判断すべき問題ではないかというふうに考えております。その辺についてどういうお考えをお持ちでしょうか、大蔵大臣にお尋ねしたいと思います。
  122. 薄井信明

    ○薄井政府委員 みなし寄附金制度について一言触れさせていただきます。  御指摘のように、四つ優遇面があるという中で、みなし寄附金制度、これがいわゆる公益事業の方に収益事業の方から移しても、二七%であれば寄附金扱いをするという制度に基本的には公益法人等はなっておるわけですが、この中で、学校法人と社会福祉法人につきましては、御指摘のように、細かい点は省略しますが、五〇%まで結構ですとなっております。そのように差はあるんですが、私どもは、公益法人等、すべての基本原則として二七はいい、ただし、学校法人と社会福祉法人は、教育や社会福祉の性格にかんがみてまさに政策的に優遇しているというふうに理解しております。  したがいまして、宗教法人については他の公益法人と同じ取り扱いになっている、社会福祉法人と学校法人は特に優遇している、こういう位置づけになっているという点だけ申し上げます。
  123. 細谷治通

    ○細谷委員 そうですけれども、要するに宗教法人と学校、社会福祉法人との間において税制上の違いがあるということは、現実に存在するということはお認めになりますね。そして、それはまさに立法政策上の問題である、そういうことでよろしいですね。
  124. 薄井信明

    ○薄井政府委員 現実に差があることはそのとおりでございます。ただ、公益法人等の中には、例えば健保組合だとか社団だとか財団、数多くの法人がございます。そういう法人宗教法人が一緒になっておって、そこが原則になっている、その中から二つが抜き出されているという位置づけにあるということだけ申し上げておきます。
  125. 細谷治通

    ○細谷委員 これは自治大臣にお伺いしますけれども、地方税でもあるわけですね。みなし寄附金というのは、同じ公益法人でありましてもさらに国税以上に学校法人そして社会福祉法人については優遇されているという形になって、それはそれとして私は意味があることだと思っておりますけれども、要するに、現実にそういう取り扱いがある、課税上の差異があるんだということはお認めいただけますね。
  126. 佐野徹治

    ○佐野政府委員 地方税におきましても、現実の取り扱いの差はございます。社会福祉法人なり学校法人なり、これらにつきましては、宗教法人等値の公益法人と異なりまして、これらの法人が社会福祉なりまた国民の教育等の向上に資する面が非常に大でございまして、地方公共団体の行っている事業を補完する役割を果たしている、こういう点から地方税としての特例を設けておるものでございます。
  127. 細谷治通

    ○細谷委員 この辺の議論は、大変これからの税制論議をするときにポイントになるところでございますから、お尋ねをしているわけでございます。  地方税の場合は、みなし寄附金の場合でございますが、学校法人や社会福祉法人等の公益法人では、収益事業で上がった上がりのうち九〇%以上を法人本来の目的の用に供した場合には収益事業に含まない、すなわち課税は発生しない。九〇%以上本来の事業目的に使えば発生しない、こうなっているわけです。国税は御承知のように五〇%または二百万どちらか多い方、こういうことになっております。御承知のとおりです。  そこで、これは、こうした措置というのが昭和三十六年に創設されたと聞いておりますけれども、一体その当時どんな議論がなされたか、これは大変重要なところだと思いますけれども宗教法人はそのまま据え置き、しかし学校法人、社会福祉法人についてはそれをさらに優遇するという、そうした措置というのがなされておるわけですけれども、当時どういう議論があったのか、お知らせをいただきたいと思います。
  128. 薄井信明

    ○薄井政府委員 当時の議論につきましてつまびらかではございませんが、制度の沿革を私ども認識している点から説明いたしますと、公益法人等というのはその淵源が民法の三十四条のグループの中から出てきております。したがって、その中での宗教法人、財団、社団あるいは学校法人、社会福祉法人、その全体の関係が同等であることが本来当然の姿であろうかと思います。特に宗教法人に関しましては、憲法上の、特に有利にしてはいけない、あるいは特にきつくしてはいけないということが要請されておりますので、他の公益法人等と一緒であるべきだという世界にある。一方、学校それから社会福祉法人につきましては、社会政策的な観点からこれを特に誘導的に措置することについては弊害がないということからこのような仕組みになったと私は認識しております。
  129. 佐野徹治

    ○佐野政府委員 地方税の経緯を御説明をいたしますと、これは昭和三十六年度の地方税法の改正におきまして、当時住民税につきまして、法人税が課税されている法人につきまして非課税とされていたものがございました。考え方といたしまして、およそ法人税が課税されている法人につきましては住民税も課税すべきである、こういった見地から、社会福祉法人なり学校法人なり宗教法人だとか共済組合だとか、その当時住民税が非課税とされておりましたものにつきまして、これらの法人が収益事業を行います場合には法人住民税を課する、これが昭和三十六年度の改正でございました。  この際に、社会福祉法人だとか学校法人につきましては、宗教法人等値の公益法人と異なりまして、先ほど御説明申し上げましたけれども、これらの法人が社会福祉だとかそれから国民の教育等の向上に資する面が非常に大きい、それからまた、地方公共団体が行っております事業を補完する役割も果たしている、こういった点を配慮いたしまして特例措置を設けたものでございます。
  130. 細谷治通

    ○細谷委員 今御質問いたしましたけれども、いずれにいたしましても、公益法人はすべて同一の税制上の扱いにはなっていないということが確認をできたと思います。それを踏まえてどうしたらいいのか、その辺の議論を与党税調の中で今後深めていく必要があるんではないかというふうに認識をするところでございます。  さて次に、宗教法人の行う収益事業に対する課税の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  ある調査によりますと、日本で最大の宗教法人一つであるS法人の平成六年度の申告所得は百二十二億でございます。全申告法人中の二百八十四位にランクされている、こういうことでございます。これは先ほど来出ておりますみなし寄附金を適用するとか軽減税率を適用するというようなことで、本来、これは私の試算でございますけれども、合計で約三十億ぐらいの法人税が優遇されて節税になっているということだというふうに思います。  私は、収益事業というのは、民間企業と競合する事業であるということだと思います。そこで、宗教法人といえども課税するというのが原則とされていると考えます。そこで、民間でも同じようにやっている事業なんですから、まず民間事業者並みの税率で課税したらいいんじゃないかというふうに思うのです。  民間事業は、高い法人税を払って、そして今度はさらにその株主に対して配当をする、そうするとその配当に対してもまた税金がかかる、こういう仕組みになっている。ところが、この収益事業の上がりについては、法人税は税率は安いわ、みなし寄附金制度はあるわ、そして宗教会計に入ったら一切税金はかからないわ、こうなっているのですね。私は、やはり課税後の上がりで、収益で宗教会計を賄っていくということがやはり国民の皆さん方の、何といいますか、納税意識とか常識に合致するんではないかというふうに考えます。  そこで、その辺の収益事業に対する課税のあり方について、大蔵大臣はどんなふうにお感じになっておりますか聞かせていただきたいと思います。
  131. 薄井信明

    ○薄井政府委員 委員御指摘のように、四つの項目にわたって他の一般法人よりも優遇されているという事実がございます。これは公益法人等についてすべて同じような取り扱いになっております。そういう意味では公益法人等に対する課税を、例えば二七%の特例税率を一般法人に近づけていくということは、これまでも政府税調等で議論すべきだということで議論を積み重ねてきているところでございます。また、収益事業は今三十三指定しておりますが、ほかにもあるのではないかということであれば、これを拡大することも一つの方向だと思います。  つまり、公益法人等に対する課税の問題については、課税の適正化の方向は政府税調でも議論を積み重ねてきているところでございます。
  132. 細谷治通

    ○細谷委員 大教団と言われるところでは、収益部門を株式会社にして一般企業並みに税を納めているというのが多いんです。そういうところもあるんです。だから私はこの宗教法人だって、収益事業ですよ、本来事業に、宗教会計の本来のところに税金をかけると言っているんじゃないんです。だから私は、この辺については検討をなさるべきだというふうに思います。  時間がなくなりましたので、もう一点。  金融資産収益に対する非課税、これは案外国民の皆さんは御存じない。私たちが預貯金をします。利子が来ます。これは銀行で源泉徴収を根っこから二〇%取られます。宗教法人が莫大な資産を持っていて、莫大な預貯金を持っている、株式を持っている。それを運用します、運用益が出ます、利子所得が出ます。それに対しては全く非課税です。これは源泉徴収すらされないんですね。銀行の窓口に宗教法人の登記の写しを持ってまいりますと、もうその段階で源泉徴収されない。源泉徴収されないというのは、マル老でしょうか、老人マル優とマル特ぐらいでしょうかね、あとはほとんどもうないですね。私は国民の皆さん方は、何これ、利子に対する税金も払ってないのかという、これは案外御存じないんですよ。これほどにやはり優遇されている。  この金融資産収益に対する利子の扱いについて、大変私は不公平だと思っております。これについて税務当局、どうお考えになっていますか。
  133. 武村正義

    ○武村国務大臣 おっしゃるとおり、この宗教法人の金融収益に対する課税の論議はかなり前からございまして、政府税調も含めて真剣に論議が行われてきているところでございます。もちろん宗教法人によって実態は随分違うと思うんでありますが、大方は将来の宗教活動のためにこういう形で資産保有をしているということでありますけれども、本当にそうなのかどうか。それにしても、実態をさらに調査をしながら、この問題についてはもう一度真剣な論議の目を向けていくべきだというふうに私どもは思っております。
  134. 細谷治通

    ○細谷委員 時間が参りましたから、これで終わりますけれども、今短い時間の中で指摘いたしましたけれども、課税上、税制上の問題が大変多いということでございまして、後ほど、一般質疑の中でさらに具体的に、詳細に御質問をさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  135. 越智伊平

    越智委員長 次に、井出正一君。     〔委員長退席、鈴木(宗)委員長代理着席〕
  136. 井出正一

    ○井出委員 新党さきがけの井出正一であります。  橋本通産大臣、お聞きしますと、カナダの貿易大臣との御会談がおありのようで、私はきょう御質問は申し上げる予定がございませんから、APEC前に大変大事な会合だと思います。どうぞ。  新党さきがけでは、オウム真理教の史上まれに見る凶悪な組織犯罪事件を契機に、宗教法人法の不備が指摘され、その改正宗教法人審議会で検討が開始されて以来、我が党内におきましても、文化庁はもとより、仏教界あるいは神社関係あるいはキリスト教関係あるいは新宗連の皆さん等の宗教団体、さらにオウム真理教や霊感商法による被害者救済の任に当たっていらっしゃる弁護士の皆さん、さらに宗教学者等の学識経験者の御意見を拝聴しつつ、論議を重ねてまいりました。  その結果は、連立与党宗教法人問題プロジェクトチームが、先月の二十六日でしたか、再度確認した宗教法人法改正に関するスタンスであります。きょうはテレビも入っております。国民の皆さんに御理解いただくために、ここで改めて、四点から成っておりますが、公にしておきたいと思います。  まず一点。  オウム真理教という宗教法人が前代来聞の組織的凶悪犯罪を犯すまで、国民行政当局はその実態を把握できなかった。また、一部の宗教団体宗教活動の名の下に強引な資金集めや人権侵害を繰り返してきた。こうした事実を契機に宗教法人のあり方が議論の的となり、現行法制の見直しを求める世論は急速に高まっている。われわれは宗教法人問題を国民的課題と認識し、政治的思惑に惑わされることなく、正確な事実認識の下に、信教の自由、政教分離の原則を遵守しつつ、現行宗教法人法制の不備を是正するため、必要最小限法改正を行う必要があると考える。二番目。  宗教は個々人の人生、社会にとって重要な意味を持つもので、信教の自由は最大限に尊重されるべきであり、宗教団体活動、運営に行政が介入することは許されない。しかし、現行法上、宗教団体法人格を取得し宗教法人となった場合、自動的に他の公益法人と同様の税制上の優遇その他の処遇を受ける以上、教義や活動等にわならない会計や財務状況などの世俗的側面については一定の社会的責任を果たすべきである。三番目。  現行法では、宗教法人は一度認証されれば、その後の活動状況は外部から全く把握できない。今回の改正により所轄庁への財務等の報告、信者等への情報開示制度が導入されるが、このようなディスクロージャーの制度を通じ、宗教法人の会計、財務状況等の透明化を図ることが必要である。なお、宗教法人の大部分を占める小規模法人については過度な事務負担を避けるため一定の配慮を行う必要がある。四番目。  オウム真理教により引き起こされた一連事件に対しては、刑法その他の法令を活用し厳正に対処すべきはもとより当然である。宗教法人法改正どこうした組織犯罪への対策は明確に区別し、冷静に議論を行う必要がある。  但し、今回の改正により宗教法人の財務面の透明性が高まることで、将来の組織的犯罪を一定程度抑止する効果は期待できると考える。以上であります。  その意味で、本院にこの特別委員会が設置されたことは大変大きな意義があると考えますし、国民の皆さんの関心も非常に高いと認識をしておるわけであります。  我が国は、かつて、国家権力が宗教に介入し、弾圧した反省すべき経験、経緯があります。今回の法改正について、宗教界の一部に、そのことを心配、危惧なさっている状況も我々は承知しております。したがいまして、本委員会におきましては、そのような心配や危惧を払拭する意味からも、問題を起こしている宗教法人の実態をできるだけ正確に把握しつつ、政治と宗教のかかわり合いのあり方について、歴史的に、あるいは諸外国の仕方も踏まえながら、冷静かつ慎重に審議がなされることが必要であることを強調しておきたいと思います。  そこで、質問に入らせていただきますが、私は、導入部分としての、政治と宗教はそもそもどうかかわるべきかという基本的テーマについて若干触れさせていただいて、具体的な問題につきましては、我が党のこの問題のプロジェクトチームの責任者であり、連立与党プロジェクトチームの一員でもあります中島章夫議員が質問をさせていただきます。  さて、憲法第二十条の第一項は、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」とありますが、信教の自由は国政の上で最大限尊重されなければならない基本的人権であります。今回の法改正信教の自由を侵害するというようなおそれは全くないと私は思いますが、特に、将来の運用においてもそうした懸念がないのか、ないということを総理にまず確認しておきたいと思います。
  137. 村山富市

    村山内閣総理大臣 本委員会でもたびたび御答弁を申し上げておりますように、今委員からもお話がございました戦前の暗い歴史の反省に立って、信教の自由、政教分離の原則というものは基本的人権として憲法が保障しておる。その保障することを前提にして、さらにそれを社会的にもっと適正なものにしていく必要があるという意味で、これは最小限のやはり法律改正は必要ではないかということでやっているのであって、この法律改正をすることによってむしろ信教の自由と政教分離というものは一層進められていくのではないか、確立されていくのではないか、こう考えておりますから、今委員からお話がございましたように、信教の自由とかあるいは政教分離の原則を侵すというようなことは絶対にあり得ないというふうに私は思っております。
  138. 井出正一

    ○井出委員 次に、政教分離についてでありますが、「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」わけてありますが、「国から特権を受けこという部分につきましては、先週の本委員会において与謝野議員から、少数意見ではあるが税制上の優遇措置はそれに当たるのじゃないかという議論もあるよという御指摘がございましたが、私はきょうは「政治上の権力を行使してはならない。」という部分の「政治上の権力」についてただしたいと思います。  歴史的には、ほとんどの国において、寺院や教会が政治上の権力を握り、行使したことがありますが、現在では、少なくとも近代国家ではそのような例は見られなくなりました。したがって、現在における政治上の権力とは、国または地方自治体、地方公共団体に独占されている統治的権力、例えば立法権とかあるいは課税権あるいは公務員の任命権、さらには裁判権等々が考えられますが、こういったものをいうのであって、すなわち国家の宗教への介入の排除に力点があり、宗教団体の政治的活動を規制したものではないという見解が憲法学者の間でも多数になっておりますし、政府の見解も、例えば先日の本会議における総理の御答弁、あるいは昨年の暮れでしたか、衆議院の予算委員会における大出内閣法制局長官の御答弁などからして、ほぼ同様だと理解いたしますが、間違いないでしょうか。
  139. 大出峻郎

    ○大出政府委員 憲法二十条一項後段は、「いかなる宗教団体も、」途中を省略いたしますが、「政治上の権力を行使してはならない。」というふうに定めているわけでありますが、ここに言う「政治上の権力」というのは、 一般的には国または地方公共団体に独占されている統治的権力をいうというふうに考えられております。宗教団体がこのような統治的権力を行使することを禁止しているものでありまして、宗教団体が政治活動をすることを排除しているという趣旨であるとは考えていないということであります。  したがいまして、政治資金規正法だとかあるいは宗教法人法等のいろいろな制約がある場合は別といたしまして、宗教団体が特定政党を支援するなどの政治活動を行うということは認められているものというふうに理解をいたしております。
  140. 井出正一

    ○井出委員 我が国の歴史的経緯から考えて、私も従来政府がとってこられた解釈が妥当だとは思いますが、戦後五十年、時代も社会も変わり、宗教団体活動も多様化してきております。  従来、少数説と言われてきている学説、例えばこれは佐藤功先生の説だったと思いますが、過去において国家神道が政治と結びつき、軍国主義的政策の宗教的基礎づけ等の機能を営んだように、宗教団体が政治的権威の機能を営んではならないという趣旨だとする御見解や、宗教団体が積極的な政治活動によって政治に強い影響を与えることを禁じたものと解すべきであって、したがって国家が宗教活動をすることと同様に、宗教団体が政治活動をすることも政教分離原則に違反するという考え方もあるわけであります。  注目すべきは、過月、読売新聞社でしたか、の行った宗教法人アンケート調査で、政教分離の規定は「国家の宗教的中立性を明示したもの」と答えたのが二十四教団。これに対して、国の中立性と同時に、「宗教団体が積極的な政治活動によって政治に強い影響を与えることも禁じている」とした教団が十五に上っていることであります。  私どもさきがけに寄せられた新宗連のある有力団体の意見書には、「本会は、」「政教分離の原則が侵されて、国家権力による宗教団体への介入が不当に行われることのないよう、また、宗教団体自身が国家権力を利用したりすることのないよう、十分な監視を行っていく必要があると考えています。」と、こう述べておられます。  宗教団体が政治活動を行う自由は、憲法第二十一条により、集会、結社、言論、出版その他の表現の自由として保障されております。宗教団体宗教法人法に基づき宗教法人になった場合においても、政治活動を行うことを禁じられてはおりません。といたしますと、宗教団体の政治活動は一体どの程度まで営為することが許されるのかが問題となってくるのではないかと思うのでありますが、これは文部大臣、いかがでしょう。御見解を承りたいと思うのです。
  141. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  憲法に定める政教分離の原則は、信教の自由を実質的なものにするため、国その他の公の機関が国権行使の場面において宗教に介入し、または関与することを排除する趣旨でありまして、それを超えて宗教団体が政治的活動をすることを排除している趣旨であるとは考えられませんというのが政府の従来からの統一見解であります。  なお、宗教法人につきましては、宗教活動を行うことを主たる目的とすることを要件として法人格を取得しているわけでありますから、宗教法人選挙活動を行うことを主たる目的とするようなことは宗教法人法上予定されていない、こう考えます。
  142. 井出正一

    ○井出委員 なかなか難しいところだと思いますが、きょうは私、この辺で質問を終わり、同僚の中島議員にバトンをタッチいたします。  どうもありがとうございました。
  143. 鈴木宗男

    鈴木(宗)委員長代理 この際、中島章夫君から関連質疑申し出があります。井出正一君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中島章夫君。
  144. 中島章夫

    ○中島(章)委員 ただいまの井出議員の質問に関連をいたしまして、私は国家と宗教の歴史の確認をさせていただいて、今回の宗教法人法改正というのがいかに戦前あるいは戦中の反省に基づいた法制であるかということについて、まず確認をさせていただきたいと存じます。  今回の改正につきまして、歴史にこれは逆行して信教の自由、政教分離の原則を侵犯するおそれがあるということを宗教団体関係者あるいは一部の政党の方がおっしゃっております。これは、戦前あるいは戦中の厳しい宗教に対します弾圧があったということから、ある意味で当然のことかと考えておりますが、まずそれに関連をいたしまして御質問をいたしたいのであります。  例の昭和十四年の宗教団体法、それから関連をいたしまして、治安維持法というのはどういう時代背景のもとに成立した法律であったのか。また、その治安維持法については、宗教その他についてどのような影響を持ったのかというようなことにつきまして、まず御質問をさせていただきたいと思います。
  145. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 宗教団体法でございますけれども、昭和十四年に成立しているわけでございます。戦前の大日本帝国憲法のもとにおきましては、臣民の義務に反しない限りという前提のもとで信教の自由が認められておったわけでございます。  そういう中で宗教団体法が成立したわけでございますけれども、当時の荒木文部大臣の提案理由の中におきましても、現下の非常時局においては、人心の感化、社会の教化に大きな影響を及ぼす宗教の健全な発達が肝要である、そのような見地に立って、宗教団体の発達並びにその教化機能の増進を図るということを目的として宗教法規を整備するということは、目下急務であると信ずるというふうに述べられているところでございます。
  146. 中島章夫

    ○中島(章)委員 治安維持法については、どなたかありますか。
  147. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 私どもの所管の法律ではないわけでございますけれども、戦前、たまたま、いわゆる宗教弾圧があったときに、こういった治安維持法でございますとかあるいは不敬罪、そういったもので検挙された事例がかなりあったということを聞いておるところでございます。
  148. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今お答えがありましたように、実は、明治憲法の二十八条には、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス」という、今日の宗教法人法に似た規定があったわけでございますが、今申し上げましたように、また先ほどのお答えにもあったように、「日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス」また「臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ」という、こういう制限がついておりました。  そういうことから、実はこれは、この明治憲法の二十八条で決められた内容には、政府のある種の判断が働き得る余地があったわけであります。特に、実は明治政府というのは、神社は宗教にあらず、こういうことを一貫して主張をしてまいりました。実はこのために、宗教法人に関連をしましては、宗教法人そのものは文部省の管轄でございますが、神社につきましては、内務省の神社局というところがこれを管轄をしてきたのは御承知のとおりであります。  それで、こういう帝国議会でのやりとりがございます。現行制度のもとにおいては、神社は国家の公の施設たり、神職は国家の公務に当たる公の職員である、こういう答えがございますし、神社は宗教の施設にあらざる結果、憲法第二十八条、信教の自由に関する条項、規定は神社と関係なきものと思考すというような答弁も実はあるわけでございます。こういうことが明治憲法のもとで言われてまいりまして、いわゆる支那事変から満州事変に至ります昭和の六、七年ごろからこの宗教団体法が生まれます昭和十四年のころに至りまして、この国家主義的な考え方が非常に前面に出てきた、こういうことであろうかと思います。  そこで、先ほどお答えをいただいた宗教団体法の目的、監督規定など、その概要につきまして教えていただきたいと思います。
  149. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 宗教団体法の目的、監督規定等でございますが、宗教団体法は昭和十四年に成立した法律でございますけれども宗教団体の地位及びこれに対する保護監督の関係を明確にする、そしてその健全な発達並びに教化機能の増進を図るといったような目的で成立した法律でございます。  この法律におきましては、宗教団体の設立については主務大臣または地方長官の認可が必要ということにされていたわけでございます。また、この法律では、主務大臣は宗教活動につきまして制限をしたり、あるいは宗教団体の設立認可を取り消したりすることができるなどの権限を持っておったところでございます。
  150. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今お答えがありましたように、この宗教団体法というのは、さっき申しましたような時代背景がございまして、宗教の取り締まりを目的としたということが言えるわけであります。主務大臣の認可にかからしめるということで、今回の宗教法人法、昭和二十六年にできましたものとは、認証ということとはもちろん違う上に、内容的には、きょうの午後の討議にもございましたように、教義の態様とかあるいは教義の宣布をどのようにしてやるのかとか、あるいは儀式の執行についてとか、細かい点についてこれは認可の対象になっていたということであります。  こういう時代背景のもとに大東亜戦争というのにも突入をしていったわけでありますが、さて、このようなものから戦後の宗教法人法改正、まあ宗教法人法の成立に至りますまでの経緯につきまして、概略どういうことが起こったかということについて、政府委員で結構ですからお答えをいただきたいと思います。     〔鈴木(宗)委員長代理退席、委員長着席〕
  151. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 お答えを申し上げます。  戦後、昭和二十年の十月に、連合国軍最高司令部が我が国政府に対しまして、「政治的、社会的、宗教的自由ニ対スル制限除去ノ作」という覚書を発しまして、宗教団体法を含む法令の廃止を命じたところでございます。  しかし、単に宗教団体法を廃止してしまうということでございますと、既存の宗教団体法による宗教団体の存立の根拠がなくなってしまう、混乱も予想されるということもございました。それから、新たに宗教法人になろうというところもあったわけでございまして、そういった宗教団体にそのための道を開くという必要もあるということもございまして、同年の十二月に、宗教団体法の廃止と同時にいわゆるポツダム政令で宗教法人令が施行されたところでございます。  この宗教法人令は、平和条約の発効とともに原則として廃止されるポツダム勅令であったこと、それから、この法人令のもとにおきますれば、登記をすれば宗教法人として成立する、いわゆる準則主義をとっておったわけでございます。したがって、宗教団体でないものまでが宗教法人となるといったような弊害等もあったことから、昭和二十六年に至りまして、これにかわる現行の宗教法人法が制定されるということになったわけでございます。
  152. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今お話がありましたように、昭和二十年の連合軍最高司令部の覚書、それから同じ二十年の十二月十五日の、国家神道に対する政府の保護、支援、監督及び弘布の廃止に関する件、こういう二つのものによりまして、宗教団体法の廃止と、それから国家神道を国家から分離をする、あらゆる特権的地位を剥奪をするというとりあえずの措置がなされまして、そして、ポツダム勅令によりまして宗教法人令というものが生まれたわけであります。  この宗教法人令というのは、前の宗教団体法と全く異なりまして、実は我々も戦後、いわゆる民主教育ということを受けたわけでありますが、これは戦前の国家主義、民族主義、国粋主義というものに対する徹底的な反省のもとに生まれているのは皆さん御承知のとおりであります。この宗教法人令というのも、宗教団体取り締まりの意図というのは私は全くないというふうに考えております。これが、今お話がありましたように、ポツダム勅令ということで、期限つきのものでありました。また、その運営上のいろいろな問題等もありまして、昭和二十六年、講和条約が成立をしましたところで宗教法人法ということに変わっていったわけであります。  これは、もう既に何度もここで、あるいは本会議あるいは予算委員会等において議論がなされましたように、憲法の信教の自由、これは憲法の十九条及び二十条、まあより本質的には十九条であろうと私は思っておりますが、この憲法の条項に従いまして、宗教法人法というのは信教の自由と政教分離の原則というものを基本的に押さえたものであります。  言うまでもなく、何度も議論に出ておりますように、今回の宗教法人法改正というのは、この戦後の反省に基づいて宗教法人令というものの考え方をより具体的にした法律であるということでありまして、自治の尊重それから自律性に対する期待というものを前提にしているわけでありまして、その中では、宗教法人の設立というものを認証にかからしめる。あと管理、規則の変更、合併、解散というような、まさにこれは世俗的な側面のみを規定をして、自律的な運営がなされることが期待された法律であるということは、今申し上げましたような歴史的な経緯というものを押さえてみても私は間違いのないことだと思いますし、戦後この宗教法人法が成立をいたしまして約四十五年の間にこの基本的な原則が破られたということはないはずでございます。今回、不幸なオウム真理教のような問題が起こってまいりまして、長い年月の間に問題になってまいりましたことが今回最小限改正の案として出ているのはもう既に何度も議論されたことでございます。  さて次に、先ほど細谷議員からも御質問があったことでありますが、宗教法人と税制の問題、特に宗教と国家ということを前提といたしまして、その問題について若干触れさせていただきたいと思います。  きょうの御議論の中にも出てまいりました田中耕太郎氏は前に「教育基本法の理論」というのを書いておられますが、その中でも宗教と国家との関係については三つに分類をしておられる。  一つは統一主義ということでありまして、国家が宗教を兼ねる、あるいは教会が国家を併合するというような形のものでございます。これはどちらかというと、原始社会等におきましてはこういう形が非常に多かった。近代でもこういう形のものがあって、宗教に関する戦争等が起こったことは御承知のとおりであります。  それから、日本の宗教法人法、これは必ずしも細かいところでは全く同じではございませんけれども、アメリカやフランス、こういったところと似ておりまして、政教、完全に分離主義であります。  もう一つ、折衷主義というのがこの間にありまして、ドイツ、ベルギー等において見られるというふうに分類をされておりますが、この近代国家で中心的であります分離主義あるいは折衷主義の中では、この宗教法人、特にアメリカにおきましては、宗教法人につきましては、宗教団体に対して一般私法の社団法の基礎の上に一様に結社の自由を認めている。つまり宗教法人になることはできるわけでありますけれども、これを税制上の優遇その他の問題に関連をしてはきちんとその基本的な報告を求めるとか、問題が起こったらそれに対して調査に入れるとかという別の取り決めをしているかと思うわけであります。  そこで、税制上の問題でありますが、公益法人のすべてを、先ほど議論もあったわけですが、税制上一律に優遇するのではなく、活動の実態に応じて税制上の取り扱いを異にするやり方というのもアメリカのようにあるのではないかという気がいたしますが、改めてこの問題についてお答えをいただきたいと存じます。
  153. 薄井信明

    ○薄井政府委員 アメリカの制度について必ずしも十分承知はしておりませんが、アメリカにおきましても、宗教法人だけを特別に扱っているとは制度上なっていないようでございます。慈善団体その他も一緒に同じような取り扱いをしている。かつ、その前提としましては、アメリカは連邦制をとっておりまして、例えば宗教法人法人格を与えるのは州のレベルで行っているようでございます。それと連邦税との関係、日本とは違う風土といいますか成り立ちの中でアメリカ的なやり方ができてきているのかなと思っております。
  154. 中島章夫

    ○中島(章)委員 次は、宗教法人の課税問題に対する取り組み方針ということでありますが、宗教法人につきましても、各省令の適用に当たっては聖域をつくることなく厳正に対処していくということが求められていると考えるわけでありますが、この点、税の執行におきまして、宗教法人の課税問題にどのように取り組んでおられるのか、お答えをいただきたいと思います。
  155. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答えいたします。  宗教法人の課税問題の取り組みについてでございますけれども宗教法人につきましては、税法上収益事業を営む場合には法人税の納税義務がございます。また、国内において課税資産の譲渡等を行うという場合には消費税の納税義務がございますし、さらに給与等を支払う場合には所得税の源泉徴収義務があるわけでございます。  したがいまして、宗教法人に対しましては、各種資料、情報の収集に日ごろから努めておりまして、法人税、消費税の納税義務とか、またさらには源泉徴収義務のある宗教法人を的確に把握いたすよう努力いたしておりまして、課税上問題があると認められる場合には実地に調査を行うというふうにして、聖域にすることなく課税の適正化に努めているところでございます。  宗教法人につきましては、執行面での適切かつ厳正な対応が要請されておるということも踏まえまして、今後ともなお一層の適正化に努めてまいりたいと思っております。
  156. 中島章夫

    ○中島(章)委員 宗教法人にも執行上厳正に対処しているとのことでありますけれども、その中身がよくわかるように少し具体的に説明をしていただきたい。  例えば、宗教法人を買収してこれを隠れみのにすることが取りざたされておるわけでありますが、課税上どのような問題があるのか、またこれにどう対応しているのかをお答えいただきたいと思います。
  157. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答えいたします。  宗教法人には、法人税法に特掲された三十三の事業からの収入以外は課税所得とならないということになっておりまして、そのため、宗教法人を買収し、本来一般法人とか個人に帰属すべき所得を宗教法人に帰属させるというようなことで税負担の回避または軽減を図る事例も事実見られるわけでございます。  個別事案について申し上げるわけにはまいりませんが、租税回避の態様の例として少し申し上げさせていただきますと、ある法人は、通常の株式会社として事業を行っておりましたけれども宗教法人を買収した上で、事業の一部を宗教法人の所得と仮装いたしまして、これが非収益事業に当たるものとして申告をしていなかったという例がございます。  しかし、税務調査をいたしましたところ、まず、宗教法人の余剰金というのが株式会社の支出に充てられておったということなどで、両者は帳簿上は一応区分されておりましたけれども、実質的には同一であると認められました。また、宗教法人の本部として登記されている建物が、実は廃屋同然であったというようなこと。さらに、取引をしておりました相手方は、従来と同様の株式会社と取引をしておったという認識があったということが明らかになったわけでございます。そういうことで、この場合については、当該事業からの収入は従来と同じ株式会社に帰属するものということで扱った例がございました。  こうした行為に対しましては、取引の内容について十分検討いたしまして、宗教法人としての活動の実態がない場合など、所得が現実には一般法人とか個人に帰属すると認められる、そんな場合があれば実態に即して厳正に対応しているところでございます。
  158. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今隠れみのの問題について御説明をいただいたわけでありますが、宗教法人活動であっても課税上の非違というのが見られる例も多いと聞いているわけであります。これにつきましても、過去例えばどんな非違があったのか、実態がわかるように具体的に説明をいただきたいと思います。
  159. 若林勝三

    ○若林政府委員 お答えいたします。  収益事業に関する宗教法人の非違といたしましては、本来収益事業からの収入であるにもかかわらず、これを非収益事業であるということで申告しておりましたり、収益事業と非収益事業との間の収入や経費の配分を誤って申告するという事例が見られるわけでございます。  個別の事案につきましては先ほど申し上げましたように申し上げられませんが、非違の態様の一つの例ということで申し上げさせていただきますと、ある宗教法人の場合、色紙などへの揮毫を行って収入を得ておりましたけれども、これは教義を広めるための活動であるということで申告をしていなかった例がございました。しかし、税務調査をいたしましたところ、その態様は、実態といたしましては、一般への販売を目的にいたしまして、仲介業者からの注文に応じてあらかじめ定められた代金により色紙等に揮毫するということが明らかになったわけでございます。これは収益事業の一つでございます請負事業に該当するというふうに判断をいたしたわけでございます。  また、非収益事業部分も含めまして、源泉所得税や消費税の観点からの調査も行っているわけでございますけれども宗教法人の代表者の源泉所得税の課税漏れというようなことでは次のような事例があったわけでございます。  これは、ある宗教法人の代表者についてでございますけれども、生活態度が非常に派手だというような情報がございました。それに基づき調査をいたしましたところ、祈祷料の収入の一部を宗教法人の収入として計上するのではなくて代表者自身の遊興費や個人的蓄財に充てるというようなことがわかりました。したがって、これを給与と認定いたしたわけでございます。  以上のように、宗教法人の調査に当たりましては、収益事業の所得が適正に申告されておるか、また、代表者の個人所得が課税漏れとなっていないかなどを厳正に検討して適正な対応に努めておるところでございます。
  160. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今お話が一部ございましたようなことについては、国民がいろいろな機会に耳に挟んでいるわけでありまして、こういう課税問題、それから特にこれから年末にかけまして政府・与党双方でこの税制問題が議論をされていくわけであります。  そういう中で、税制問題全体の中から宗教法人への課税の問題が話題になってまいりますが、さらに、その課税上の執行の面において国民から疑惑の起こらないようにきちんとした課税態度で臨んでいただきたいと思いますが、大蔵大臣からお答えをいただきたいと思います。
  161. 武村正義

    ○武村国務大臣 宗教法人と税の関係につきましても、改めて国民関心が高まってきているところでございます。  今回の宗教法人法改正は、直接に法人に対する課税を焦点にしたものではないわけでありますが、それにしましても、宗教法人の財務状況等がより明らかになることは一歩前進であると認識をいたします。  また、先ほど来議論がございますように、収益事業の軽減税率は妥当であるかどうか、その対象は、三十三という政令で限定をいたしておりますが、この範囲でいいのかどうか、あるいはみなし寄附金の制度、あるいはこの率はこれでいいのかどうか、そしてまた、先ほど御答弁申し上げた金融収益に対する課税は現行でいいのかどうかというふうなさまざまな問題を抱えておりますし、さらには、私が答弁申し上げておりますように、公益事業の中に反社会的な活動に非課税資金が使われている。もっ生言えば、宗教活動でない活動に資金が使われている。こういうところをどう詰めていくのか、諸外国の例も十分勉強しながら議論をしていかなければならないというふうに思っております。
  162. 中島章夫

    ○中島(章)委員 残された時間、私は、宗教と教育の問題について御質問をいたしたいと思います。  結局、オウム真理教、こういう問題が起こってくるその原因に教育の問題が横たわっているのは、何度も既に議論にも出たところでありますが、最近、哲学者の梅原猛さんが、「心の危機を救え」という小さなカッパブックスを書かれました。この中で梅原さんは、オウム真理教を見過ごすことは哲学者としての怠慢である、こういう書き出しによりまして、幅広く論議を展開しているわけでありますが、その根本的な問いは、自然科学においてあれほど精密な思弁を展開できるエリートが、たくさん殺人集団に加わり、今逮捕されている、あるいは今逃走している中にもそういう人間が多いわけでありますが、宗教についてあれほど幼稚な理論にひっかかったということ、これは結局、心の教育というものを忘れた戦後教育がサリン事件を引き起こしたんだ、こういう理論の展開をしております。私もこれは同感であります。  戦前の伝統的な神道におきましては、最も大切なことでありましたのが清明心、清い正しい心でありますし、仏教におきましても大切な徳でありましたのは自利利他の精神で、こういう宗教的な価値というものが、実は戦前は修身というのが先ほど申しましたように国家神道とのかかわりで国家主義的な道徳と結びついてしまったということで、これが戦後全部否定をされて、心の教育の部分というのがなおざりにされたということであろうかと思います。  私は、この心の教育というのは、単に道徳教育の問題だけではないと思っております。これは大体心性が発達をしてきます十歳前後、大体中等教育のころから、実は歴史と地理、人間が過去どういう歴史で今日までたどってきたのかという縦の系列と、地理という、今日非常に狭くなりましたが、世界の広がりという横の軸を教える。さらに中学校では公民という教科があるわけでありますが、公民という人間社会の約束事というものを学習をしていくわけであります。これは、私は広い意味での文化の学習であると思いますし、彼ほどの心の教育、このころから大事なんでありますが、心の教育の基礎になってくると思っております。  高等学校の時代には、実は大体十四、五歳のころから心性が内面化してまいります。昭和四十六年の中教審の答申の中にも、この中等教育の段階で内面的な成熟ということが非常に重視をされております。  このような高等学校時代というのは、人間が自分の弱いところを徹底して掘り下げていく、そして自分を次々と否定をしていくという中の一番底には、先哲やあるいは友人や、そういう人たちがたどり着いた同じ脈絡にたどり着くという、回りくどいことでありますが、こういう自己を内面化をしていくという大切な時期があるわけでありますが、今日の戦後の教育の中で、特に受験戦争の中で、かなり早い時期に、よりよい有利な大学へ入りたい、あるいは高校へ入りたいということから、この自分の内面化ということをなおざりにして人との競争に走ってしまう、友人よりも一点でもたくさん点を取るという競争に走ってしまう、こういうことから、先ほど梅原猛さんの問い、つまり、オウム真理教にはあれだけエリートと言われる人間がいながらそういう判断力に欠けていたという反省があるわけであります。  私は、この中等教育において非常に大事な心の教育というのは、先ほども言いましたように、単に道徳教育だけではなくてもう少し、いわゆる社会科系統の教科、あるいは国語でさまざまな教材をやはり学習をしますし、特別活動ということでいろいろな体験もいたしますし、こういうものが総合されてやはり目標のところからそういうものを大事にしていくということが必要になってくると思うわけであります。  さて、そこで、教育基本法には、実は第九条第一項に宗教教育のことが書かれております。この内容について、政府委員の方からでも結構ですから教えていただきたいと思います。
  163. 井上孝美

    井上政府委員 お答え申し上げます。  教育基本法第九条第一項には、先生も御存じのとおり、「宗教に関する寛容の態度及び宗教の社会生活における地位は、教育上これを尊重しなければならない。」と規定されているところでございます。  その意義は、昔の哲学者や思想家の基本的な考え方を手がかりといたしまして、人間の存在や価値について思索を深めて、人間としてのあり方、生き方を考えさせることなどにあると考えているところでございます。  具体的に、学習指導要領におきましては、宗教的情操教育に関連いたしまして、小学校の道徳では、「美しいものに感動する心や人間の力を超えたものに対する畏敬の念をもつ。」また、中学校の道徳では、「自然を愛し、美しいものに感動する豊かな心をもち、人間の力を超えたものに対する畏敬の念を深めるようにする。」また、高等学校の倫理におきましては、「人生における哲学、宗教、芸術のもつ意義などについて理解させ、人間としての在り方生き方を考えさせる。」あるいは、昔の哲学者や思想家の「基本的な考え方を手掛かりとして、人間の存在や価値について思索を深めさせる。」などと定めているところでございます。  そこで具体的に、小中学校の道徳では、それらにつきまして、「人は人間関係の中だけではなく、自然とのかかわりの中でも生きていること、さらに、人は自らの有限性を自覚するとき、人間の力を超えたものへの思いが深まるものであること」を指導するために、文部省が指導資料として作成した読み物資料などを活用して指導が行われているところでございます。  また、高等学校の公民科の倫理の教科書におい        ここんでは、例えば、「古今を問わず、私たちは知的理解や努力の限界をこえたものに直面したとき、その「人間をこえた存在」に対して畏敬の念をもつことがある。」「わたしたちは、一般に、自分が死すべき無力な存在にすぎないことをはっきりと自覚するとき、またつぎのようなことを心のうちで願うものである。すなわち、この世界をこえたところに永遠なるもの」として、例えば神や仏などが「存在し、それと自分が結びついているということ、一見無意味にみえる自分の存在もそれによって意味を与えられているということである。」などの記述が行われているところでございまして、このような教材を通じて、人間としてのあり方、生き方について考えさせる指導が行われているものと承知しております。
  164. 中島章夫

    ○中島(章)委員 今の御答弁にありましたように、一昨年から小学校で、昨年から中学校で、ことしから学年進行で高等学校で実施をされております新しい学習指導要領、この中では、今問題になりますこの心の教育ということについて極めて重視をしております。  今の答弁の中にもありましたように、人間としての生き方、あり方の教育というのは、高等学校、特に中学校以降の中等教育で重視をされているわけでありますが、今のように、答弁にありましたように、いろいろな資料をつくる、教材をつくる、それを読んでいくということ、これもまあ大事なことでありますが、私は、これをもっと体験をさせる。大体中学校時代には、かなり世界の動きあるいは歴史、こういうものについて学習をするわけであります。そういうものがやはり定着をしていくということのためには、今盛んに行われようとしておりますボランティア教育等を初めとして、それを実社会の中で体験をする、こういうことがもっと強調される必要がある、こういうように考えるわけでありますが、この点に関して、文部大臣のお考えを伺わせていただきたいと思います。
  165. 井上孝美

    井上政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生御指摘のとおり、現在、学校におきましては、道徳の時間のみではなくて社会科等各教科や特別活動におきまして、それぞれの特質に応じて指導方法の工夫、改善を図っているところでございまして、そういうものを通じて、豊かな体験を通して児童生徒の内面に根差した道徳性の育成が図られるように配慮しているところでございます。そして、先生御指摘のとおり、ボランティア活動を初めとする体験活動を踏まえまして、その意義やみずからの体験につきまして生徒が話し合ったり討議したりすることなどによりまして、より教育の実効性があるような道徳性の育成を図っていると承知しているところでございます。  文部省としても、今後とも、心豊かな人間の育成が十分に図られるよう指導の一層の充実について努力してまいりたい、このように考えているところでございます。
  166. 中島章夫

    ○中島(章)委員 もう時間もそう残されておりませんので、今私が論じようとしておりますこの問題、実はこれから二十一世紀にかけまして、学校は今は月に二回が土曜日が休みになっておりますが、やがて完全学校五日制というふうに変わっていくだろうと思っています。  現在、第十五期の中央教育審議会が開かれておりまして、ここで二十一世紀を展望した教育のあり方ということが議論をされていると聞いております。このことに関連をいたしまして、二十一世紀、そういう新しい世紀に入っていきますときに、学校の時間数というのは極めて減ってくる、そういう中で家庭やあるいは地域の役割もふえてくるわけでありますし、私自身は、次にもう一つ質問をしたいと思っておりますが、今までやってまいりました非常にバランスのとれた教科構造というものをもう一度根本的に見直す必要があると思っております。  この辺につきまして、現在中教審で行われております審議の状況、それからいつごろぐらいにその答申が得られるのかこういったことについて大臣からお答えをいただきたいと思います。
  167. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 今日の我が国の教育につきましては、御承知のように、過度の受験競争やいじめや登校拒否などの問題、さまざまな問題点が指摘されているところでありまして、二十一世紀に向けて我が国の社会の変化を踏まえた新しい時代の教育のあり方について、現在、本年四月から中央教育審議会において御検討いただいているところでございます。  その中でも、特に第一点としては、今後の教育のあり方及び学校、家庭あるいは地域社会の役割と連携のあり方について、第二点は、一人一人の能力、適性に応じた教育と学校間の接続の改善、第三点は、国際化、情報化あるいは科学技術の発展等社会の変化に対応する教育のあり方を主な検討事項として御審議を願っているところであります。  御高承のことと思いますが、中央教育審議会は本年四月から向こう二年間にわたって御審議を願うわけでありますが、今、二十一世紀を展望した我が国の教育のあり方について大所高所から積極的な審議を行っておられ、その結果を期待しているところであります。  なお、具体的に内容を聞いてみましたら、来年春を目途に学校五日制の問題について中間の御報告がいただけるということでございますし、続いて中高一貫教育を含む学校間の接続について御検討いただく、こういうふうに承知をいたしております。  文部省といたしましては、国際化、情報化に対応した教育のあり方、そういう意味ではいろいろ御審議を踏まえてこれに対応するつもりではおりますが、我々としても手をこまぬいて待っているわけではございませんで、私は就任早々に、例えば国際化の問題をとらえて、どうも日本人は外国人と会うと、英語を十分勉強していながら会話となると全くだめで、それがどうも外人コンプレックスにつながっていはしないか、だとすれば、現在外国からも外人教師を受け入れてほしいという御要望も強いところでございますから、四十七都道府県にモデル校を設けて、そして小学校の高学年、すなわち四年生から英会話の教育をしてもらうという、いわば一つのテストケースとしての勉強を始めてもらうことで、これは来年度から実施の予定でございます。  こういうことにつきましても、中教審の皆さんにこれを全国化することの是非について等もこれから御審議をお願いしたい、こう考えております。
  168. 越智伊平

    越智委員長 中島君。  短くお願いします、後の方の時間の関係で。六時までですから。
  169. 中島章夫

    ○中島(章)委員 大変いいお話をいただきました。実はこの心の教育というのは、戦後我々がたどってまいりました教育に対する基本的反省、これが必要だと思っております。これは、私自身が別途参加をしております行政改革、これも同じことであります。ちょうどこういう問題が起こってまいりまして、心の教育、つまり教育を目標から考え直すということは極めて大事なことでございます。  教育課程の改定というのもやがて起こってくると思いますが、私は、今お話がありましたように、外国語を話せない、これを小学校からやったらどうなんだろうか、あるいは社会科の世界認識についても今とは違った順序と教科構成を考えられないか。かなり基本的な検討が必要でありますし、これには、多くの父兄やあるいは教師、そういった人たちが加わらなければいけませんし、こういう問題はやはり科学性、実証性ということが大事でありますので、従来型の各教科の代表が集まってやるような教育課程審議会でそのままやっていってしまうということの決してないように、ひとつぜひお願いをいたしたいと思いますし……
  170. 越智伊平

    越智委員長 短くお願いします。あとの方の、六時がおしまいですからね。
  171. 中島章夫

    ○中島(章)委員 最後にもう一つ、この教育制度の弾力化ということについても思い切った実験をやっていけるように、こういうことを特に希望をいたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。     ―――――――――――――
  172. 越智伊平

    越智委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  173. 越智伊平

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     ―――――――――――――
  174. 越智伊平

    越智委員長 質疑を続行いたします。正森成二君。
  175. 正森成二

    ○正森委員 私は、日本共産党を代表して、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  日本共産党は、信教の自由を擁護し、政教分離の原則の徹底を目指すことを、現在も将来も、いかなる体制のもとでも一貫して堅持し、このことを綱領、大会決定に明記している政党です。  また、私たちは、神を信ずる者も信じない者も、仏を信ずる者も信じない者も、核兵器のない平和な世界をつくること、民主主義と地上の問題について協力することを心から願っています。この立場をまず最初に申し上げておきます。  オウム真理教による未曾有の残虐かつ極悪非道の犯罪に対し国民の間に怒りが極点に達し、同時に、宗教に対し不安と疑念も生じています。  十月三十日、オウム真理教に対し、東京地裁が宗教法人解散命令を決定しましたが、当然のことであります。日本共産党は、既に十月三十一日衆議院本会議において、山原健二郎議員が宗教法人法改正部分についての主要な問題点について質問をいたしました。  そこで、簡潔に二点だけ伺いたいと思います。  一部の宗教団体や政党の中に、宗教法人法は宗教に対しノーサポート・ノーコントロールを定めた法律だなどと繰り返し主張する議論があります。この点についての質問に対して、村山総理は、この間の本会議で、宗教法人法宗教団体の目的達成に資するため宗教団体法人格を与えることを目的とする、法人格を与えられたことに伴い、宗教法人の側としても、宗教法人の公共性に対応した公正な管理運営を確保する責務がある、そのため宗教法人の管理運営について法律に所要の規定を置きその適正を図ることにしている、ノーコントロール・ノーサポートがどのような趣旨か必ずしも明確でないが、国として宗教法人に対して全く関与しないという趣旨なら宗教法人はそのようなものではないと答弁し、この点についての我が党の主張を基本的に認められたように私どもは承知しております。  総理、そう理解してもよろしゅうございますか。
  176. 村山富市

    村山内閣総理大臣 本会議答弁をしたとおりであります。
  177. 正森成二

    ○正森委員 文部大臣伺いたいと思います。  宗教法人所轄庁の変更についての同じく山原議員の質問に対して、宗教法人法宗教法人を所管している文相と都道府県知事との権限に違いはない、したがって文相の所管する宗教法人が文相所管のゆえに国家統制を受け、信教の自由を侵害されたという苦情は聞いたことがない、こういうように答弁されたと承知しております。文部大臣、国が所管しているがゆえに国家統制を受け、信教の自由が侵された事実はない、こういう趣旨ですね。そのとおり間違いありませんか。  また、今後ともこの態度を貫くかどうか、国民の前で明言していただきたいと思います。
  178. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 先般御答弁申し上げたとおりであります。
  179. 正森成二

    ○正森委員 私の申し上げた指摘を総理並びに所管の文部大臣、いずれも認められたと思います。  そこで伺います。宗教法人となることにより享受するサポート、非課税や税の軽減措置などについて、主として大蔵省、大蔵大臣に伺います。  宗教と課税については、各国で法制が異なりますが、いかなる国も、野放しで、宗教団体が何をしても非課税や免税にしている国はありません。それは、宗教に特権を与え、逆に政教の癒着、国民全体の信教の自由を侵すことにもつながりかねないからであります。特に宗教団体の政党支持活動選挙活動については、免税との関係で一定の厳格さを持っております。  そこで、アメリカの法制について大蔵大臣に伺います。  この免税取り扱いを受けるためには、教会を含む宗教団体は、アメリカの内国歳入法典五百一条同3に規定されるものでなければならないことになっています。そして、適格宗教団体であっても、一般に「行動」団体といわれているように、当該団体活動の「実質的」部分が、法律制定に影響を及ぼすために宣伝活動若しくはそれを試みようとすること、又は公職への候補者のために政治運動への参加若しくは介入することにある場合には、免税団体としての地位を喪失する。ことになっておる、こう承知しております。アメリカの法制でそうなっておることは間違いありませんか。
  180. 薄井信明

    ○薄井政府委員 御指摘のように、アメリカの内国歳入法典五百一条は、かなり長い条文ですけれども、大略御趣旨のとおりになっておりますが、ただ、日本の場合は、宗教法人を含む公益法人……
  181. 正森成二

    ○正森委員 まだ聞いていない、日本のことは。  同じく、ドイツでも租税通則法五十五条で、教会と宗教団体について、「当該団体は、その財産を政党の直接にも、間接にも、援助、又は促進のために使用することはできない。」と規定しております。  同時に、政党法二十五条一項でも、「政党は、寄附を受けることができる。以下のものは、これから除外される。」こうなっておりまして、「その定款、寄附行為若しくはその他の規則により、及び事実上の業務の執行により、もっぱら、かつ、直接に、公益、慈善又は教会の目的に奉仕する団体、社団及び財団による寄附。」こういうことで、宗教団体による寄附は明確に除外されております。  ドイツでこういう法制になっていることは間違いありませんか。
  182. 薄井信明

    ○薄井政府委員 ドイツは、政党法との関係、それの反映もありまして、税制上、趣旨としてはおっしゃるようになっております。
  183. 正森成二

    ○正森委員 今私が言いましたアメリカやドイツの法制定の状況については、大蔵省も明確にこれを認めました。  アメリカやドイツのこれらの規定は、政教分離を厳格に守るため、宗教団体が政党支持活動選挙活動に関与する場合には、宗教団体としての公益性を認めず、課税上は一般法人と同様に扱うことにしている趣旨であります。また、宗教法人が政党に献金等財政的支援を行うことを禁止したものであります。  そこで総理伺いたいと思います。  総理は、本会議での我が堂山原議員の質問に対して、特定政党と宗教法人とがお互いに協力する事態があったとしても、そのことだけで政教分離の原則に反するものではない、宗教法人宗教活動を行うことを主たる目的とすることを要件として法人格を取得しており、宗教法人選挙活動を行うことを主たる目的とすることは宗教法人法上予定されていないと考えている、こう答弁されております。御記憶にあると思います。  いかなる宗教法人も、しかし法に基づき法人格取得の届け出をするとき、その目的や規則で選挙活動を行うことを主たる目的とするなどと書くはずがないことは明らかであります。こんなことを書けば、それが都道府県知事であっても文部大臣であっても、認証することなどはありません。  ところが実際において、実態上、総理の言う宗教法人法上予定されていない選挙活動を行うことを主たる目的とするととられても仕方のない活動をする宗教団体があらわれたときはどうするのですか。
  184. 村山富市

    村山内閣総理大臣 そのけじめのつけるところというのはなかなか私は難しいところだと思いますね。憲法で保障されておりまする政教分離というのは、前提として、国家権力を行使する場合に宗教に介入をしてはならないとか、干渉してはならぬとかいうことだと思うのですね。個人であれ宗教団体であれ、政治活動をすることの自由というものはある意味では保障されておる。  したがって、公益法人としての宗教団体と政治、選挙運動とのかかわり合いはどうあるべきなのかというところは、なかなか具体的な事例に照らして判断をしなければならぬ問題もあると思いますし、抽象的に一般論としては、憲法上の解釈というのは先ほど申し上げたようなものだ、私はそういうふうに理解をいたしております。
  185. 正森成二

    ○正森委員 今総理が憲法上の問題ということでお話しになりましたが、それは憲法二十条、「信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」こう定めのある政治上の権力とは何をいうのかということについての御意見であろうと思います。  これについては、甚だ失礼ですが、我が国の学説には三説あります。統治権行為論と権威論と、もう少し幅広く政治活動というように考える議論であります。きょうはしかし、ここは憲法の講義をする場所ではありませんから私の乏しい知識を申し上げようとは思いません。総理がお示しになりました案は、我が国の多くの学者がとっている最も狭いといいますか、統治権行為論という立場からの御答弁であろうと思います。  しかし、我々が考えてみなければならないのは、憲法も予想もしていないような政治活動を行う宗教団体に課税上の優遇措置を与え続けてもいいのか。つまり、政治活動をしてもいいのかどうかということよりももっと、課税上の優遇措置を与え続けてもいいのかというのが今まさに問われていると思うのですね。  オウム真理教の場合には、一千億円と言われるような財産で第七サティアンでサリンをつくり、あるいは武器を製造するということをやり、ソ連からヘリコプターを買うとか、いろいろなことをやりました。これは全部非課税のお金なんですね。そして、それを集めるためには監禁とか拉致だとか、そういう犯罪行為までも犯しております。  ところが、それが全部非課税だということについて国民の怒りが高まり、これでいいのかということが起こっているわけであります。今国民が問題にしているのは、いわゆる政治上の権力について統治権行為論が正しいかどうかということだけではありません。そういうところに限定するならば、本委員会での質疑というのは極めて限られたものになってしまいます。そこで私は、課税上の問題について今伺っているわけであります。この点では我が国が余りにもルーズ、野放してはないかというのが私の意見であります。  例えば、本院議員であった大橋敏雄君がおります。この方がどの政党に属していたかというようなことは今申しません。しかし、昭和六十二年九月五日提出の質問主意書というのをこの方は出しておられます。その中で、創価学会について「本来、宗教目的に使用さるべき全国各地に数百箇所も存在する会館、研修所等の諸施設は、選挙戦が込まれば公明党候補者の挨拶や演説、あるいは支援徹底のための会場と化し、学会組織を挙げての選挙戦に突入していくのである」、こう述べております。非常に臨場感があります、この人が言っているのですから。かつ、これらの施設につき、こう言っています。「学会は、全国の温泉地、保養地、観光地さらには国立公園内等に広大な土地を所有し、会館、研修所など各種の施設を建設し、所有している。これらの施設の中には、ホテルやレジャー施設を買収し、従来の遊興や保養目的と同様の使用に供しているとみられるものもある。」「昨年、東伊豆の温泉地に設けられた研修所は、高級別荘地におよそ一万坪を有するもの」、こういうぐあいに言っております。そして、こういう多くの事実を指摘して、課税の有無、実情についてただしております。  これに対し、答弁書の中で政府は、個別・具体的な事柄として、答弁を差し控えたい。わずか三行ほど、そう書いているだけであります。  私は、個別・具体的な問題について、ここで国税庁あるいは大蔵省に答弁を求めることを今しようと思っているのではありません。そうではなくて、アメリカやドイツなどの法制度との比較からも、このような政党支持活動選挙活動宗教団体野放しに行われ、しかもそれが区分されずに非課税になっているということは、我が国の憲法二十条あるいは八十九条の原則から深く考える必要があるのではないか、こういう問題提起をしているわけであります。それは、国民が今度のオウム事件を初め宗教問題について、あるいはその課税について不安や疑念を抱いているとき、国会が当然ただすべきことであります。  大蔵大臣、答弁を求めます。
  186. 武村正義

    ○武村国務大臣 正森委員発言の御趣旨には、いわゆる国家の宗教に対する関与の側面から非課税という現在の仕組みに対する問題意識と、あわせて、宗教団体が政治上の権力を行使している、いないという視点から、非課税措置を受けている宗教団体なるものの選挙や政治に対する関与の問題提起と、両面あるわけでございます。  率直に言って、私個人としては両方とも問題意識を持っているわけでありますが、大変これは憲法の論議にもかかわる根の深いといいますか、かなり学問的にもいろいろな論議が行われてきた経緯もございます。法制局長官が先ほど来御答弁を申し上げておりますように、政府としての公式見解が出されているわけでもございまして、私がここでこの問題について税当局として明快にお答えできるだけの用意はまだありません。しかし、少なくとも非課税問題についても、あるいは非課税措置を受けている宗教団体の資金の流れ、そこから来る政治への関与のあり方については十分問題意識を持ってまいりたいと思っております。
  187. 正森成二

    ○正森委員 私は、念のために申しておきますが、大多数の宗教団体、信仰の自由を尊重し、宗教活動に専念している宗教法人が、その境内敷地、お寺や教会とその敷地、また財政収入である信者の寄附やお布施等が非課税となっているのは、公益性があり、税法上一定の優遇を行っても、国民すべてが認め得るもので、憲法の定める合理的理由があるというように思っております。このことを申し上げておきたいと思います。  しかし、政党と見まがう選挙活動を行い、当然のこととその正当を主張する宗教団体があらわれ、政権の争奪にも関与、影響することは、昭和二十六年制定の宗教法人法が全く予定しなかったところであります。  私は、ここに聖教新聞の本年七月十三日付を持ってまいりました。あるいはまた七月十四日付の聖教新聞を持ってまいりました。そこで、この点について伺いたいと思います。  この七月十三日付の聖教新聞を見ますと、その一面は、「誉れの大東京が支部長会」という大見出しと、「名誉会長が和歌を贈り祝福 ゛正義と民主の旗高く゛」と七段抜きで報じ、「大東京正義と民主の旗高く名誉と勇気で万歳勝ちとれ」などと池田名誉会長の和歌をたたえております。もっとも、この歌が和歌であるかどうかということについては、和歌の造詣の深い方からは異論があるようで、和歌というよりは、どちらかといえば戦時中の軍歌に近いのではないかというように言われる方もおられます。  しかし、七月十三日といえば参議院選挙の真っ最中であります。また、翌日の聖教新聞でも、九面で左肩に、新進党公認、公明推薦の魚住裕一郎候補のたすき入りの写真が載っており、「名前の浸透図り支持の拡大を」という大活字が載っており、記事の中では、「混戦を抜け出すには、全東京の各地域で、゛攻め゛に徹し、「魚住」の名前を徹底して浸透させ、無党派層にも食い込んで、加速度を増して支援を拡大していくことが緊要だ。」こう言って、戦術の指導まで宗教新聞である聖教新聞がやっているわけであります。そして、ここでも、同じ紙面の右肩には……(発言する者あり)黙って聞け。池田名誉会長の激励の和歌が載っております。どういうのかというと、「堂々と創価の勝利を満天下示さむ浅さむ板橋ありせば」これは「板橋の左へ」というのに贈った歌であります。次に、「大田の左へ」はどう言っているか。「万歳と怒濤の如く叫ばなむ全勝大田の歴史は厳たり」こう言っております。  総理、なぜ全勝大田というか御存じでしょうか。それは、昭和三十八年にまだ公明政治連盟と言っていたときから平成五年まで九回、都議選において二名ずつ全員当選していまだ一度も落ちたことがない。これが大田区の誇りなのです。だから、「全勝大田の歴史は厳たり」こう言っているのです。こう言えば創価学会の会員にとっては、選挙勝利などと事々しく言わなくても、池田名誉会長様は魚住候補や新進党の勝利が得られるよう激励していると全員すべてにわかるわけだ。まさに、政教一致そのものであります。  ですから、この右肩にはこう言っているのです。「冒頭、原田東京総合長は、この日の集いを視し、池田名誉会長が東京の全同志に詠み贈った三首の和歌を紹介。参加者は、込み上げる喜びのなか、一段の前進を誓い合った。」こう聖教新聞に書いてあるのですよ。  自治大臣に伺います。  公選法二百一条の十四、これでは非常に選挙運動は政党でさえ制限されて、各政党は一紙だけ届け出をして、その中でいろいろなことができるようになっております。新進党は、その一紙というのでどういう新聞を届けましたか。また、聖教新聞は二百一条十四の届け出をしておりますか。
  188. 深谷隆司

    深谷国務大臣 ただいまの御指摘は、新進党の確認団体としての届け出機関紙はどういう名前かということでございますが、それは平成七年七月二十三日執行の参議院議員選挙の通常選挙における新進党の届け出機関紙としては、「新進」という形になっております。  また、本年行われた参議院通常選挙における確認団体は三十一団体ございましたが、御指摘の聖教新聞についてはいずれの確認団体からも届け出は出されておりません。
  189. 正森成二

    ○正森委員 御承知のとおりであります。  そこで、公選法上はどうなっているかといえば、百四十八条で、普通の新聞はもちろん、選挙の報道、評論の自由を持っております。けれども、それは公正さを期するために、得票を得、もしくは得しめないために報道してはならない。その罰則については、禁錮二年、処罰をされることになっております。自由だとかなんとかと言ったけれども、あなた方は法律を破ることを平気だと思っているのですか。公選法ではそういうようになっているのです。ところが、そういうものはどこ吹く風と、こういうことをやっている。  私は、また別の機会があれば、警察庁や、あるいは検察庁にこの問題について伺いたいと思いますが、きょうはそのことで聞いているのではありません。こういう団体に税制上の非課税措置が、一般の民法上の法人やらまじめにやっている宗教法人と同じように与えられていいのか、その非課税のお金でこういうことをやって、それでいいのか、こういう問題点を提起しているわけであります。私は、そういうことは許されないのではないかというように思います。  ここに創価学会のある支部の日程表があります。行動日程表です。それを見ますと、七月というのは選挙の月であります。ここに写しがございますが、七月二十三日には参議院選挙の投票日ということになっており、この月の土曜日と日曜日は全部F取り推進デーになっております。Fというのはフレンドのことで、学会員以外の票をとることであります。そして、ふだんの曜日には時局講演会とか地区活動者会とか婦人部G懇談会、婦人部グループということでしょう、そういうのがびったり入って、その土曜日、日曜日のF取り推進デーにつながるようになっております。つまり、宗教団体である学会の組織がまさに選挙運動の組織になっているということを明白に示しているのです。  自治大臣に伺いたいと思います。このように上から下まで選挙一色の政教一致ぶりを示している宗教団体がございますか。
  190. 深谷隆司

    深谷国務大臣 具体的な質問でありますので、選挙部長から答弁させます。
  191. 谷合靖夫

    ○谷合政府委員 個々具体のお話でございますので、私ども、そうした宗教団体があるかないかという事実関係は承知いたしておりません。
  192. 正森成二

    ○正森委員 事実関係は承知していませんということですが、我々はほかにも事実を持っております。こういう活動をする宗教団体は、恐らくほかの比較的政治に熱心な団体でもないのではないかと私は思います。そして、このような活動を行うのは、総理、実は指導的な最高幹部の考え方がこれを事実上是認しているからであります。  ここに十月十八日の朝日新聞の記事があります。その中で朝日新聞は、加藤紘一氏からも聞いておりますが、市川雄一氏に対して、新進党幹事長代理、公明党のさきの書記長でありますが、この人に一問一答で聞いております。その中でこう言っているのですね。「学会が組織ぐるみで特定の政党、候補を推すことに問題はないですか。」こういう朝日新聞の問いに対して、法律面からは何ら問題はない。「ただ、学会も会員の価値観が多様化した。当面は新進党を応援するが、二大政党時代に一方を固定的に支持するのがいいのかを検討している。また、信者が教団としての政党、候補の支持決定に従わなくても、宗教的信条とは別だから排除はしません。「出て行く」という人がいても「出入り自由」だから問題ない」。これは多くの国民が読んでいる一流の一般紙の中に堂々と出たことであります。  そこで、私は申し上げたいのですが、つまり、信者が教団としての政党、候補者の支持決定に従わず、納得できないので出ていく、つまり学会から出ていくことになっても、出入り自由だから問題はないという見解ですが、これは宗教団体としてはあり得べからざる見解ではないでしょうか。宗教は、信仰を何より大切にし、そのため命を賭することさえいとわなかった歴史があります。例えば、徳川幕府三代将軍家光の大軍に対して、天草四郎は死を賭して宗教を守ったのですよ。信仰を守ったのです。ところが、この市川雄一氏の見解は、信仰の自由、その大切さを語るのではなく、信仰の上に政治を置き、教団の政党支持決定を上に置いて、そのために教団を去っても問題はない、こういう見解です。堂々とこう言っておる。  総理伺いたい。これこそあなたの言う選挙活動を行うことを主たる目的とする宗教法人の典型ではないでしょうか。
  193. 村山富市

    村山内閣総理大臣 仮に、その宗教団体が特定の政党を支持をし、特定の候補者の推薦を決めた、その決めたことに従えない者が、私はもうついていけないからこの団体から出ていく、その宗教団体からも出る、こういうことになった場合に、その人の政治活動の自由、信教の自由とどう矛盾をするのかというようなことが私は問題になると思いますがね。  しかし、これはやはり団体であれ個人であれ信教の自由と政治活動の自由というのは当然保障されるべきものだということで、私は問題意識を持っております。
  194. 正森成二

    ○正森委員 総理が今御答弁になりましたが、しかしこの発言は、まあ口幅ったい言い方をしますが、宗教哲学的には非常に問題じゃないでしょうか。宗教というのは、自分の信仰を何よりも大切に置いて、それで政治権力から侵害をされた場合は、隠れキリシタンであろうと何であろうと信仰を守り、そして弾圧された場合には命をかけて闘うというのが、信仰者の、あるいは教団の真骨頂だったのですよ。  ところが、新進党を支持する。前は公明党だった。今度は新進党だ。この発言によると、今度はどこの党になるかもわからないが、その決定が気に入らなければ、これは出ていってもいいんだから、それは自由にしているんだから、出入り自由だというのは、これは政党の方を、政党の支持決定の方を信仰よりも上に置くという態度で、信仰者たる者は何よりも信仰を大切にする、そして政党支持の自由は保障して、その点については過度の介入をしないというのが当然ではないでしょうかね。  そして、このことは宗教団体の側からも……(発言する者あり)事実だから仕方がないじゃないですか。  この点については、創価学会の、今は名誉会長ですが、事実上の指導者である池田名誉会長も昨年これを認めているのですね。  九月十四日夜に、池田名誉会長とマスコミ各社の懇談がありました。秋谷会長、野崎副会長ら創価学会最高幹部らもずらり並んだその席で池田氏は、「学会は政治にかかわることはやめません」「教義を実現するためには政治の力が必要なんです。そういう目的で公明党をつくったんですから、それは変わらないですよ」、堂々とこう言っているのです。  この党は、かつて昭和四十五年に言論弾圧事件を起こしたときに、政教分離だ、こういうことで、王仏冥合などというのはやめるんだ、国立戒壇、つまり国会の議決で戒壇をつくって全国民に日蓮正宗を信仰させるというようなことはもう言わないんだ、大事にも介入しないんだ、こう言ったはずじゃないですか。  ところが、そんなことはけろりと忘れて、参議院選挙では、今私が指摘したようなことを聖教新聞でやり、軍歌まがいの和歌で全員を鼓舞する。そして九月十四日、昨年ですね、堂々と、政治にかかわることはやめない、「教義を実現するためには政治の力が必要なんです。そういう目的で公明党をつくったんですから、それは変わらないですよ」。まさにこれは憲法二十条の精神を真っ向からじゅうりんするものじゃないですか。  これに対して非課税措置をあるいは課税上の特権を与え続けるなどということは、もうそろそろ考えてもいいことではないでしょうか。総理答弁を求めます。
  195. 村山富市

    村山内閣総理大臣 宗教法人を含む公益法人に対して現行の課税が適正であるかどうかというようなことについては、いろんな意見があることはもう御承知のとおりです。今正森委員からも御指摘のあったような意見もあります。これは一つの問題点として、これから引き続き検討をしなきゃならぬ課題であるという問題認識を持っておることだけは申し上げておきます。
  196. 正森成二

    ○正森委員 今前向きの御答弁がありました。  そこで、大蔵大臣に伺います。  先ほど同僚委員質問に対して、オウム真理教が非課税の金や物を利用してサリンを製造したことについて、このままでよいかという感想を言われたと私は聞いております。また別の委員に対しても、オウム以外についてもいろいろ考えがあるということは言われました。  今私が指摘しましたような、宗教団体のすべての施設、括弧づきの宗教活動にまで非課税の特権を与えることは、アメリカ、ドイツの法制度の考え方をまつまでもなく是正をすべきではないですか。少なくとも是正のための論議、研究をすべきではないですか。このことを私は大蔵大臣に明確に答弁してほしいと思います。
  197. 武村正義

    ○武村国務大臣 民法の三十四条の公益法人として、いわゆる財団法人、社団法人そして学校法人やあるいは福祉法人等々と並んで宗教法人も公益法人の中に入れて今日まで対応をしてきたわけであります。そういう意味では、税の議論も私ども答弁も終始一貫して公益法人の中で考えていく、こういうお答えをしてまいりました。  しかし、収益事業は一体何なのか、この範囲をどうするかという議論だけでは、先ほど申し上げておりますようなサリンとか武器の製造等にかかわる矛盾を超えることができない。反社会的あるいは犯罪行為だからということもありますが、これもある意味ではむしろ刑法の適用によって対応が可能なわけですが、宗教活動でない活動に使われているケースがあるのかどうかという問題も一つの論議になるわけでございまして、そういう意味で、宗教活動そのものが非課税になっていることについては私ども余り疑問を感じませんが、非課税の中で宗教活動でない使い方がされているならば、この矛盾をどうするかということは、大変奥の深いテーマではありますが、真剣に見詰めなければならないというふうに思っております。
  198. 正森成二

    ○正森委員 大蔵大臣も、真剣に見詰めなければならないことであると言われました。  自治大臣、実は地方団体の課税についても、固定資産税からあるいは都市計画税から、いろんな問題の非課税がいっぱいあります。本来は伺うつもりで用意いたしましたが、時間が迫ってまいりましたので、私から質問を省略することをお許し願いたいと思います。  そこで、最高裁判所、来ておられますか。最高裁判所に伺いたいと思います。  この創価学会はまた、昭和四十五年、公党である日本共産党の最高幹部、宮本顕治議長、当時書記長宅に対し、盗聴器を設置し電話を盗聴するという悪質な犯罪行為を行っております。  最高裁に伺いたいと思います。この事件は、刑事事件としては時効だったので民事裁判となったが、創価学会員の実行行為者、数名おりますが、当時の北条副会長の関与と了解のもと、盗聴を行ったことは、判決は認めているはずであります。それは間違いありませんか。また、この判決は確定しておりますか。
  199. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 御指摘のような判決があり、確定しております。
  200. 正森成二

    ○正森委員 最高裁は明白に私の主張を認めました。  北条氏というのは当時現職の参議院議員であり、公明政治連盟の書記長までした人であります。判決は明白にこの人の関与と了解のもとに我が党の宮本議長宅に対する盗聴行為が行われたことを認めております。しかも、それで上告もせずに確定したのに、日本共産党に対してただの一度も謝罪をしておりません。宗教者、宗教団体としてあるまじき態度であると言わなければなりません。  このような盗聴活動や態度が公益性と何の関係もないことは明白であります。アメリカの判例でもドイツの最高裁の判例でも、政党支持、選挙活動に向けられた支出につき、合理的理由のない財政、税制上の差別は違憲であり、国民の平等な参政権の侵害になる、こういう判例が出ております。ここに判例を持ってまいりました。残念ながら時間ですから、それがどういう内容であるかどの判例であるかは申しません。  しかし、事は民主主義、国民の参政権の平等に関する問題であります。この点を強く主張して、私の時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。
  201. 越智伊平

    越智委員長 次に、土肥隆一君。
  202. 土肥隆一

    ○土肥委員 今回の宗教法人法改正に当たりまして、一貫して、これはオウム問題から出発しているのではない、そしてまた、特定宗教法人を云々するものではない、そういうふうなスタートで、総理もそうおっしゃっています。しかし、結局オウムを契機にして宗教法人法の問題が取り上げられ、今や、今の正森議員の話によれば、創価学会で終わる、こういうふうな委員会は、私はやはり異常だと思います。  その理由は、この宗教法人というのは、いわば世界の三大宗教、あるいはこの法人の数からしましても、二十二万一千に及ぶ宗教法人を取り扱おうというんです。こういう雰囲気の中では、本当の意味宗教法人法改正についてまともな論議はできないというふうに思っております。(二部改正だよ」と呼ぶ者あり)一部でもそうであります。  したがいまして、総理質問を申し上げます。  結局……(発言する者あり)ちょっと、静かにしてください、静かに。
  203. 越智伊平

    越智委員長 お静かに願います。
  204. 土肥隆一

    ○土肥委員 きょうあたりの質問を聞いておりますと、宗教法人がいろいろな悪さをする、こんな野放していいのか、あるいは国民理解を得られるのかというふうな質問でございますけれども、日本の人口の一億二千五百万に対して、宗教人口は二億一千九百万人いるんです、二億一千九百万。そうすると、まあ単純に平均しても一・七の宗教を持つ。まあ大人だけ挙げれば、二つないし三つの宗教を平気で持つ。赤ちゃんが生まれれば七五三でお宮に行って、結婚式は教会でして、お葬式は仏教でやる。こういう宗教状況というもの、宗教文化があるということを、我々国会議員もしっかりと押さえて、そしてこの論議をしなきゃならない。  特定の団体がどうであるかこうであるかということも、それは議論して構いませんけれども、こういう宗教状況の中で宗教法人法をどう取り扱うかというときに、一人一人の議員や、そして特に今回法案を提出していらっしゃる内閣の皆さんの、特に総理大臣の宗教観といったもの、こういう日本の宗教状況を一体どう理解していらっしゃるか、お答えいただきたいと思います。
  205. 村山富市

    村山内閣総理大臣 私は、日本人というのは、宗教に対しては極めて寛容であると思うのです。これは今委員からもお話がありましたように、それは私もお盆にはお墓参りをしますし、それから七五三にはお宮にお参りしますし、それからまたお祭りがあれば氏神様にお参りをしますし、これは神様も仏様も両方大事にする、こういう習性になっていますね。ですから、今御指摘のあったような数になるんじゃないかと私は思うのですよ。まあある意味では、日本人というのは本当に、先ほども申し上げましたように、宗教に対しては寛容であるというふうに私は思います。  それだけに、宗教団体なり宗教法人というのは、公益的な責任といいますか、そういうものもやはりきちっと持っていただく必要があるんではないかというふうに思っています。
  206. 土肥隆一

    ○土肥委員 そうすると、村山総理も大変宗教に対しては寛容な、幅広い宗教観を持っていらっしゃる、これは日本の一国の総理大臣の宗教観としてお聞きしておきます。  さて、やはり一連の議論を聞いておりますと、オウム発生以来、宗教というのは何かうさん臭い、宗教というのはいつか、ほっておくと何か悪さをする、だからそれを監視しておかなければならない、そういうふうに聞こえるのです。  文部大臣にお聞きしますけれども宗教法人は、あるいは宗教は性善説というふうに言われております。性善説を前提にしている、こう言っていますが、宗教というのは性善説なのですか。総じて、いいものでなければいけないのですか。
  207. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 私自身もそう受けとめておりますし、宗教法人法も性善説に立って制定されております。
  208. 土肥隆一

    ○土肥委員 ところが、宗教というのは、ただ常識の範囲で、そして平均的に、日常的によきものであればそれで済むということではないのであります。宗教というのは、ある意味で創造的な力を持つと同時に破壊的な力も持つ。そして、宗教は極めて多様であります。私どもがこの世を去るときに、日本の為政者の皆さんありがとうと言っては死なないわけでありまして、死ぬときには、自分の宗教に従って死んでいくわけです。生死ともに宗教というのは深くかかわりを持っているのです。  そういう宗教の持っダイナミックな活動をどう見ていくかというときに、今回の宗教法人法では、まず収支計算書を出しなさい、それから、境内建物がふえたら報告しなさい、そして、役員会ないしは理事会の議事録を出しなさい、そしてそれから、それを閲覧しなさい、そしてそれから、いろんな質問や立ち入りや、疑いがある場合には報告を聞いてその宗教団体に調査をしなさいというのが一貫した言い方だと思いますけれども、しかし大事なことは、宗教法人法あるいは宗教法人に対して国家がどこで自己抑制をするかということが非常に大事なのです。  国家はいつも国民生活のすべてにわたって管理しているわけじゃございません。したがいまして、宗教という極めて人間の生死にかかわる問題、そしてその人の人生のすべてを拘束するような問題にかかわっているときに、単に管理監督というような視点では、到底その本質に及ぶことはできません。  そういう意味で、国家として宗教に対して自己抑制をどこでするかというときに、やはりわからないところ、知りたいところを知らないでおくというのも重要な自己抑制だと思うのであります。それをあたかもわかり切ったように、声を大にしてやるべき内容ではないのです。  こういうふうな流れの中で宗教法人法がもし可決されるとすれば、私は非常に問題を残す。だから、これは特定の宗教や、オウムや、あるいは創価学会の問題ではなくて、全体の日本の宗教をどう育てていくのか。そして、宗教が持っている役割は何なのかということを、十分役割を把握した上で厳密な議論をしていただきたい、このように思いますが、総理大臣の意見をどうぞ。
  209. 村山富市

    村山内閣総理大臣 委員は冒頭に、まともな議論ができないというお話がございましたけれども、今までやってきたことはまともな議論じゃないのでしょうか。私は、やはり今の置かれておる状況から考えてみて、それは、世論調査なんかもこれはそのとおりでありますけれども、まあオウム事件きっかけにして宗教に対する関心が非常に高まっておるし、宗教法人法というものも、初めて国民見直しをした、こういう観点から、この宗教法人法改正は必要ではないか。こういう世論が高まっておる時期に、国会がその国民の声にこたえてまともな議論をして、そして、必要があれば法律改正をするというのは当然じゃないでしょうか。私はそういう意味で、まともな議論が行われないという委員の言い方については、どうも是認ができません。  そして、これはもう本当に、今までの議論を通じても、今の宗教法人法が二十六年に制定をされて、宗教団体のあり方も変わってきておりますし、それから社会の情勢も変わってきておる。そういう変わった情勢に十分対応できて、信教の自由が守られ、政教分離が保障される、そういう前提をしっかり守っていくためにもこの程度法律改正は必要ではないかというので議論をしていただいておるのであって、私はまともに御理解をいただきたいというふうに思います。
  210. 越智伊平

    越智委員長 土肥君、時間ですから短く願います。短く。
  211. 土肥隆一

    ○土肥委員 二億一千九百万人の国民が宗教を持ち、そして皆さんもみんな宗教を持っている人から選ばれているんです。そして国会に来ている。みんな、みんな選ばれているんです。ですから、ぜひともこれは時間をかけてやってください。それを切にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  212. 越智伊平

    越智委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時一分散会