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山下(八)
委員 ことしは戦後五十年という重要な年の節目でもございますが、国会にとりましても、また、
国民の
皆さん方にとりましても、大変な年であったと思うわけでございます。今さら改めて申し上げるまでもないわけでございますが、一月の阪神・淡路の大震災、あるいは三月の地下鉄サリン事件、あるいはオウムだ、あるいはハイジャックだ、いろいろとこのような事件が起きました。また、もう一方では、それこそ金融機関をめぐる問題等々あったわけでございますが、このような問題といいますのは、見ていますと、テレビで大変華々しく報道されたり、あるいはまた新聞も同じでございますが、華々しく報道されるわけでございます。
このようなマスコミの報道の陰で、それこそ毎日、全国津々浦々におきまして、交通事故で亡くなったり、あるいはけがをして後遺症等によります身体的あるいは精神的にも苦しんでいる人が大勢いらっしゃるわけです。まことに悲惨な
状況が今日も続いているのではないか。おおよその見当で申し上げますと、四十九分にお一人ぐらいは亡くなられる、あるいはまた三十六秒にお一人は負傷者になっている、このような
状況が続いているわけでございます。
その中で、我が国における戦後の交通事故による死者数、つまり昭和二十一年から昨年の死者数の累計は四十八万五千百四十二人になっているわけですね。ことしもまた一万人を超えるのではないか。そうしますと、場合によりますともう来年あたりは五十万人を超えてしまう。私は岐阜県でございますけれ
ども、岐阜県で一番大きい県都は岐阜市で四十一万人なのです。そうしますと、岐阜市はもうなくなってしまっているのですね。これぐらい大変な方が犠牲に遣われている。また、負傷者につきましても、累計で申し上げますと二千四百二十九万人にも達しておりまして、人口が一億二千五百万人でございますから、大ざっぱに五人に一人の方は交通事故に遭っているというような
状況になっているわけです。
このような
状況の中で、年間の交通事故によります経済的損失額の合計は、粗っぽい試算ではございますけれ
ども、九一年度で約五兆円ぐらいに達している、こういう
状況になります。これは我が国のGNPの約一%に達していることでありますし、大変な
状況になっているというふうに思うわけでございます。
現在、少子・
高齢化社会でございますし、このように交通事故は直接人の生命にかかわる問題でありますし、また、阪神・淡路大震災でお亡くなりになられた方々には大変気の毒なわけでございますが、それの二倍という数字にもかかわらず、いつの間にか一万人という交通事故で亡くなる数字に
国民全体はなれっこになっているのではないか、驚きを感じていないのではないか、このような気がして、私は大きな懸念をしているわけでございます。きょうも、残念ながら、後ろを見ましてもマスコミの方は一人も
見えていないと思うわけですが、なぜマスコミも、あるいは
社会も、あるいは
国民も、もう少しこの問題につきまして関心を持たないのだろうかなというふうに思うわけです。
車を運転しますと、事故は絶対ないということは言えないわけでございますけれ
ども、このような
状況で事故が発生していきますと、これからますます少子
社会、また出生率も一・五〇ですか、そういう
状況に来ておりますが、それこそ日本はつぶれてしまうのではないかというような危機すら私は思うわけでございます。
昭和三十六年の交通事故者数が一万二千八百六十五人でございますし、これは日清戦争の二年間の死者数と人的損害を上回ったわけでございますから、そのときに交通戦争と呼ばれたのは第一次交通戦争であったと思うのです。その後、四十五年に死者数が一万六千七百六十五人、戦後最悪の記録に達しまして、
政府を初め
国民が
一体になって事故防止対策に努めて、その後順調に減少していったわけでございますけれ
ども、昭和五十四年が八千四百六十六人ということで、戦後のボトムを迎えたわけでございます。それからまた交通事故が再び増加に入りまして、昭和六十三年には一万三百四十四人になり、またここで第二次交通戦争と呼ばれるようになりまして、今日また、七年連続、先ほ
どもお話ございましたけれ
ども、一万人を超えているわけです。場合によればことしも、先ほ
ども申し上げましたとおり、一万人を突破するのではないか、このような危機感すら持っているわけでございます。
今や交通戦争は、私は、百年戦争、そう呼んでもいい
状況ではないか。目先の短期の対策だけではなかなか、私は、この交通事故あるいは死亡事故を減少させることは大変難しいのではないか。そうしますと、今から、もう二十一世紀は目の前でございますし、百年先を見据えた長期展望に立ったいろいろな諸対策を講じるべき時期に来ているのではないかな、そのように思っているわけです。
そういう中で、車につきましても、あるいは
道路につきましても地域差はあると思うわけでございますし、また、機能の向上や整備等
道路環境の
改善、いろいろな問題もあると思うわけでございますが、一万人を割らない
状況になっていることは事実であるわけです。
そういう中で、交通事故の原因の大半は人的な要因であるということは、私自身も十分認識はいたしております。だが、やはり
交通安全対策の行き着くところは、歩行者や、あるいは
自動車の運転者の交通安全意識の問題もあると思うわけです。
私は、また後ほど触れたいと思うわけでございますが、今回、ドイツに私的に五日間ばかりちょっと遊びに行ってきました。ちょうど私がお邪魔しましたら、その直前に当
委員会の交通事情
調査団がいらっしゃったようでございます。ドイツで、いろいろなところでいろいろなお話を私もお聞きしたのですが、あそこはとにかく
法律第一主義と申しますか、交通ルールにしましても、人も、それから運転者も、きちっと守れ。例えば、赤信号を渡っていてはねられたら、逆にはねられた歩行者の方が悪いんだ、これぐらい厳格なようでもございます。そういうことはお国柄の違いは一方ではございますけれ
ども、せっかく今申し上げましたように、このような
状況の中で来年度から始まる第六次交通安全基本
計画や、あるいは
交通安全施設等整備事業五箇年
計画の策定に努められてもらいたいわけでございます。
そこで、お尋ね申し上げたいわけでございますが、昨今の交通事故の
状況を見てまいりますと、各方面、警察にしましても、建設省にしましても、
総務庁にしましても、あるいは
運輸省にしましても、きっとそうだと思うのですが、それぞれの分野で懸命に努力をしていると私も理解をします。
だが、先ほどから言っておりますように、平成七年の死亡者も、一万人以下にする、多分難しいんじゃないかと思うわけでございますが、第五次交通安全基本
計画の目標達成は、このままでは本当に、ほとんど困難な
状況ではないかな。このような
状況をどう考えているか、本当は各省庁にお尋ねしたいわけですが、時間がございませんので、
総務庁が右代表してお答えいただきたいと思うわけです。
また、過去というよりも将来に向けた方がいいと思うわけでございますが、
交通安全対策はどのようにしていったらいいかということも、ぜひあわせてお答えいただきたいと思うわけです。
私も思うわけでございますが、
道路もよくなった、あるいは車もよくなった、毎年毎年交通安全施設もよくなっていく。それにもかかわらず、やはり事故も多くふえていく、あるいは死亡者もなかなか減らない。きっと、そういうことを申し上げますと、
皆さん方は、今度は車もふえた、免許証保有者もふえた、あるいは走行距離もふえたとおっしゃいますけれ
ども、それ以外に私は原因があるのではないか。どこをどう対策すればいいんだということは、ある
程度専門家でございますから、もう理解しているんではないかというふうにも思いますので、ぜひ御
答弁をお願いしたいと思います。