○
田中(昭)
委員 私は、時間を二十分いただきましたから、ミクロの問題についての
質問はできないと
思いますが、水俣病の問題に限りまして若干、
政府としての基本的なお
考え方をお聞きしたい、こう
思います。
水俣病が発見されまして四十年、いろいろな闘いが仕組まれまして、裁判闘争、特に第三次訴訟が始まって十五年間、厳しい闘いが続いたわけです。そして、福岡高等裁判所が和解案を提示して既に五年を経過をいたしております。その間、被害者の
皆さん方は、まさに人間の尊厳を訴えて、私
たちはにせ
患者ではない、我々は犠牲者である、何とか
救済をしてほしい、こういう訴えがずっと続けられてきたと
思います。
今回、
与党三党、そして
政府の
皆さん方の協力もいただきまして、この水俣病問題について一定の
解決をするに至っております。私は、日本の公害
環境史上画期的なことであろう、こう思っております。そういう
意味では、長い間病魔に侵されて苦しみながら
救済を求めてきた、人間の尊厳を訴えてきた
患者の
皆さん方の闘いの結果である、こう私は思っております。
同時に、公害の、
環境の先進国として
環境基本法制定をして、
世界のリーダーとなろうとする日本国
政府も、この問題について放置をすることはできない、こういう観点から、今回何とか
解決をしたい、こういう形で努力をした
関係者の
皆さん方に私は心から敬意を表したい、こう思っております。
特に、私は褒めるわけではございませんけれ
ども、
行政はこの問題については長い間の経過がございます、いい、悪いはきょうは論じませんけれ
ども。そういう引きずってきた経過の中で、大変苦しい立場におる
大島環境庁長官が、今回、この問題の
解決のために政治家として情熱とそして決断をしていただいたことについて、私は心から敬意を表したい、こう思っております。今後の政治の問題は、平和や人権や
環境の問題が極めて重要であります。今回の問題を政治的な
課題として、重要な問題として取り上げて
解決に努力をされた
長官を初め、
皆さん方に心から敬意を表したい、こう思っております。
時間がございませんから、基本的な問題について私は四点
質問をさせていただきたい、こう思っております。
今回のこの
解決に至った問題は、私はまだ六○%までしか至っていないのではないか、あと四○%ぐらいの努力が必要である、こう思っております。
その第一は、この問題が長い間
解決づかなかった中には、病像論とあわせて
責任論の問題がございます。
与党三党の中でもこの問題はいろいろ議論いたしましたけれ
ども、最終的に国、県の、
行政の国家賠償法上の
責任の問題については残念ながら
解決をすることができていません。
しかし、七月十六日、
村山総理が福岡で、この水俣病の問題の
取り組みについては
政府としても反省をするところがある、長い間
救済ができなかった
患者の
皆さん方に迷惑をかけたと遺憾の意の表明を行いました。そしてまた、
環境庁長官は、この問題の収拾が図られた九月三十日、現地水俣において、
皆さん方はにせ
患者ではない、いわれなきにせ
患者と言われることはない、こういうことを明言したわけであります。私は、長い間の被害者の
皆さん方の心というものがどういうものであったのか、当日涙をし、この
長官などの発言をお聞きしたと
思います。
しかし私は、四十年間の長きにわたって苦しんできた
患者の
皆さん方に対しては、この七月十六日の総理発言、九月三十日の
環境庁長官発言、これらを総括的に踏まえて、この収拾に当たって
政府としてこの問題について一定のきちんとした見解を公式に明らかにすることが極めて必要である、こう思っております。そういう点について、今後どういう道筋でどういう機会にそういう
政府の統一見解というものを明確にするのか、この点を第一点として明らかにしていただきたい、こう
思います。
それから、第二点の問題は、この水俣病の問題が長きにわたって紛争の状態が続いたのは、御承知のとおり、五十二年の
環境庁の保健部長通知、五十三年の
環境庁事務次官通知によって、
公健法上の
判断条件というものを、一方的に組み合わせ論を導入して変更したことがスタートであると私は思っております。そこから
患者の切り捨てが始まった、紛争のスタートになった、こう思っております。
今回、
総合対策医療事業対象者については
救済の対象になります。しかし、それ以外の方については、
判定検討会の中で今後
審査会資料と個人の主治医の診断書に基づいて総合的に
判断をして、
救済をするか否かについて
決定をする、こういう仕組みになっております。私は、この
判定検討会でまた再び
救済者が少なくて切り捨てが多いという状態が出てきたとするならば、再びまた同じ過ちを繰り返すことになるのではないかな、こう思っております。今回の
救済の目的というのは、幅広く
救済を図っていく、そして長い間の紛争の状態を収拾をする、こういうことが目的でありますから、そういう趣旨からすると、この
判定検討会の今後の運用いかんによってこの問題がどういう形で最終的なことになるのか、そういう
状況だと私は思っております。
そういう
意味では、今後の
判定検討会の運用についてどういう見解で
環境庁は指導をなさろうとしているのか。ここは極めて重要な
ポイントである、こう思っておりますから、この点についての御見解をもう少しきちんと明らかにしてほしい、こう思っております。
それから、第三点の問題ですけれ
ども、今回、このチッソにかかわる水俣病の問題について
行政なりあるいは政治としていろいろと議論をして
解決を図らなければならなかった最大の理由は、加害
企業であるチッソに支払い能力が欠如していることにあると思っております。そういう
意味で
は、昭和電工である
新潟水俣病とは違う点がそこにある、こう思っております。
今回の結論が、いわゆるPPPの原則に基づいてチッソから支払われるということを
考える場合、それに対する
政府の金融支援なり金融措置のあり方いかんによっては、決まったけれ
ども実行ができなかった、こういう結果になるおそれがあると思っています。ここのところが今回の
解決をするに当たっての極めて重要な
ポイントであった、こう実は思っております。
今まで
公健法上の
認定患者の皆様に対する支払いについても、熊本県が多額の県債を発行して、これを大蔵資金運用部が引き受けて、そういう段取りをとってきておりますが、今日の熊本県、自治体の
状況からすれば、それも簡単にはできない、こういう
状況もございます。
関係閣僚会議でも、この水俣病の
救済についてはやはり国が
責任を持つ、こういうことが明確になっておるわけでありまして、そういう
意味では、今後の金融支援のあり方いかんによってこの問題がどういう方向に決着をしていくのか、これも極めて重要だと思っておりまして、この点についての基本的見解をお伺いしたいと
思います。
時間がございませんから、四点目は、
先ほど矢上先生からも御
指摘ございましたように、地域振興、地域の発展の問題がございます。
御承知のとおり、水俣はチッソの城下町であります。あそこには有名な温泉もございますけれ
ども、水俣病という
状況の中で町の発展というものは著しく阻害をされてきた、こういう経過がございます。今回、水俣病の
解決と同時に、これらの問題についても地域全体の問題として
解決を図ることが私
たちの責務である、こう思っておりまして、この点についても、今後の対応策について基本的な
考え方をお聞かせをいただきたいと
思います。
以上四点につきまして、
長官からの御見解をいただきたいと
思います。