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1995-11-09 第134回国会 衆議院 安全保障委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年十一月九日(木曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 神田  厚君    理事 瓦   力君 理事 町村 信孝君    理事 愛知 和男君 理事 赤松 正雄君    理事 岡田 克也君 理事 田口 健二君    理事 菅  直人君       熊代 昭彦君    鈴木 俊一君       中川 秀直君    中山 利生君       中山 正暉君    野田 聖子君       浜田 靖一君    平泉  渉君       渡瀬 憲明君    佐藤 茂樹君       西村 眞悟君    東  順治君       二見 伸明君    堀込 征雄君       山口那津男君    米沢  隆君       渡辺浩一郎君    大出  俊君       早川  勝君    東中 光雄君       山花 貞夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 衛藤征士郎君  出席政府委員         防衛庁参事官  小池 寛治君         防衛庁長官官房         長       江間 清二君         防衛庁防衛局長 秋山 昌廣君         防衛庁人事局長 萩  次郎君         防衛庁装備局長 荒井 寿光君         防衛施設庁長官 諸冨 増夫君         防衛施設庁総務         部長      大野 琢也君         防衛施設庁施設         部長      小澤  毅君  委員外出席者         安全保障委員会         調査室長    下尾 晃正君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二十六日  辞任         補欠選任   熊代 昭彦君     中尾 栄一君   高橋 辰夫君     村山 達雄君   西村 眞悟君     月原 茂皓君   東中 光雄君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   中尾 栄一君     熊代 昭彦君   村山 達雄君     高橋 辰夫君   月原 茂皓君     西村 眞悟君   不破 哲三君     東中 光雄君 十一月九日  辞任         補欠選任   麻生 太郎君     鈴木 俊一君 同日  辞任         補欠選任   鈴木 俊一君     麻生 太郎君     ――――――――――――― 十月二十七日  米軍基地総合対策に関する陳情書  (第一  七六号)  百里飛行場民間共用化実現に関する陳情書  (第一七七号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  国の安全保障に関する件      ――――◇―――――
  2. 神田厚

    神田委員長 これより会議を開きます。  国の安全保障に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡瀬憲明君。
  3. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 渡瀬憲明であります。きょうは、新しい防衛大綱策定中心に、長官初め関係担当者から意見を承りたいと思います。  実は私、御案内のとおりこの間まで防衛庁の政務次官を務めておりましたものですから、気持ちの上では若干、二重のと申しますか、そういう感覚も残っておるわけでありますが、きょうは、自民党議員として自民党の立場から意見を申し上げ、そして防衛庁当局の見解もただしたいと思うようなわけであります。  目下沖縄問題等いろいろ緊急の課題もありますけれども、きょうは私は、申し上げましたように、新しい防衛大綱策定、そのことについて意見を申し上げ、当局意見も聞いてみたいと思うわけであります。と申しますのも、戦後の大半の日本安全保障日米安保条約を抜きには語れない、そういう考えを持っております。これまでの経緯を振り返りながら、今、新しい日米安保位置づけをどう考えたらいいのか、防衛庁はどういうふうにそれを把握しておられるのか、そのことを申し上げたいのでございます。  私ごとで恐縮ですが、私は、昭和二十五年に学校を出ると同時に議員秘書になりました。ちょうどそのころ朝鮮動乱が勃発をいたしまして、それを機に、急に警察予備隊の設置とか、それが保安隊になる、その後、昭和二十七年安保条約締結後は、これがまた自衛隊に変わっていく、そういう過程も身をもって体験した一人であります。  当時の気持ちを率直に申し上げますと、新しい憲法のもとで日本はもう永世中立的なことを国是としてこれからやっていくんだということを、一生懸命勉強もし、たたき込まれたわけでありますが、急にまた武装をするんだということになりまして、アメリカもいいかげんなものだなという率直な感じを持ったことを実は思い出しておるわけであります。  同時に、でき上がっていくものをずっと勉強してみますと、どうも日本防衛を全うするためには、半端といいますか、これでいいのかなという気がしてなりませんでした。今振り返ってみますと、当時の日米安保、これも後ほど当時の文献からあれして内容を申し上げたいと思いますが、実は何か半端な感じがしてなりませんでした。そういうことを今思い出しているようなわけであります。  きょうの質問に備えて当時のことをいろいろ思い出しているうちに、エピソードをいろいろ思い出しました。  その一つは、昭和二十七年、単独講和日本の占領が終わるわけでありますが、同時に日米安保が締結された。それをめぐって、衆議院の予算委員会吉田総理芦田総理がホットな論争をされました。そのとき傍聴しておった一人でありますけれども、非常に強烈な印象を持ったことを覚えております。そのとき論争になりました自衛権の問題とかあるいは再軍備の問題とかその問題が今でも大体基軸になって論争が引きずっておることを、今思い出しておるようなわけであります。  当時のことを少し思い出して、ゆうべ本を引っ張り出してみたので、ちょっと御参考までに申し上げたいと思いますが、その両雄のやりとりが、本当に、聞きごたえがあったといいますか印象が深かったわけであります。  当時の新聞にも、「両雄相譲らず、その内容といい貫禄といい、国会の論戦としては近ごろ見られぬもので、正に圧巻だった。芦田氏は再軍備論中心として論陣を張り、皮肉と諧謔(かいぎゃく)を混えながらも、緻密極まる理論を展開すれば、首相また笑みをたたえながらも、現首相として譲れない線は厳として守り、しかもツボをはずさぬ老練な答弁であった」ということがここに載っておりますが、まさに本当にそういう感じが、傍聴しておって私自身もしたようなわけでありました。  当時問題になりましたのは、吉田総理が、新憲法を審議するときに共産党の野坂参三さんに答弁された、自衛権も本当はないんだというような踏み込んだ答弁をしておられますが、そこを芦田さんが突かれたわけであります。  聞いておりますと、国として自衛権がないなどというそんな不見識な話があるかという論旨でずっと押していかれる。ああ、これは総理答弁に図られるなと思って聞いておりますと、のらりくらりと逃げられるわけであります。事国益に関する領域に入ったなという印象を与えると、今度は攻める芦田総理の方がその辺でぽっと論争を打ち切って次へ移っていかれる。そこの、何と申しますかステーツマンと申しますか国益のぎりぎりのところでは論争をとめるんだという、そういう配慮がありありとわかってきまして、非常にその点も感銘を受けたわけであります。  もう一つテーマは、その安保条約を結んだ直後でありまして、吉田さんがダレスさんに再軍備を約束したんだということ、いろいろ報道されておったことを芦田総理が取り上げられて、そこをずっと攻めていかれるくだりでありますが、そのこともこういう表現になっております。「日米安全保障条約前文の末尾に、米国日本が直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸進的に自ら責任をとることを期待する、と書いてある。防衛のため自ら責任をとるというのは具体的にいえば、どういうこと」かということを芦田さんが攻めていかれるわけであります。それに対して吉田さんは、そういう約束はしたことはないと言いながらも、そこをのらりくらりいろいろな論争があるわけであります。  これは、後で吉田総理がごく内輪の人たちに言われたことが吉田総理自身の「回想十年」という本に出てきますが、それも夕べ引っ張り出して見ましたけれども、「独立国である以上、将来は軍隊が絶対に必要だ」ということを口にされた、そして「今、幸い芦田がそういうことを一生懸命いっとるから、それはあいつに言わせておけばよい。」おれの口からは今言うわけにはいかないのだ、「しかし必要ですよ。当然ですよ」ということを周囲の人に語ったということを、聞いた人がそういうことを本に書いておられるわけであります。  そういうわけで、今問題になっているようなテーマも、当時から非常に国会の場で議論されておったということ、そういうことを合しみじみと思い出しておるようなわけであります。  なお、吉田総理が、再武装といいますか再軍備といいますか、そういうことを気持ちの中では考えておられたなという、これもまたおもしろいエピソード一つ思い出しました。これは、先年亡くなられた吉田総理秘書官をしておられた依岡さんという人から聞いた話でありますが、これも吉田総理らしい非常にユーモラスなおもしろい話ですからちょっと御披露申し上げます。  あるとき、吉田総理のところにどなたからかスズキという大きな魚が届いたんです。で、吉田総理秘書官連中を集めて、このスズキという魚は出世魚と言うがその意味を知っておるかいということを聞かれた。秘書官連中、非常に秀才の人たちばかりでありますから、それは小さいときから名前がどんどん変わっていく、大きくなるに従って名前が変わっていく、そういうことから出世魚と言うんじゃないですかと。私の田舎では、子供のときはこれはセイゴと言います、少し大きくなるとフッコと言います、そして大きくなった魚のことを実はスズキと言うんですということを解説を総理にしたそうであります。  ところが、総理がにやにや笑いながら、それじゃ君たち、タイは大きくなるかねということを反間されたそうでありますが、それには、がやがや秘書官連中答弁に詰まったそうであります。吉田総理は、タイも大きくなると名前が変わるんだよと。警察予備タイ保安タイ、これで自衛タイになったけれども、将来は軍タイになるかもしらぬよということを言って秘書官連中をからかわれたということを実は思い出しておるわけであります。当時からそういうことで、自衛権の問題、再武装の問題、そういうことが非常に真剣に議論されてきたなということを今思い出しておるようなわけであります。  ところで、くどくどとわき道を申し上げましたけれども、旧安保条約、これの内容をちょっと今さらってみますと、四、五点あります。  第一には、日本米軍駐留を希望した、米軍がその希望を受け入れる形でこの安保条約をこしらえたということが書いてあります。それから、米国日本防衛力整備を期待するということが前文に書かれてありました。それから二番目は、米軍日本における施設区域使用権を第一条に明記をしてありました。それから、米軍日本駐留目的日本の安全への寄与ということと、これは内乱条項も実は含んでおるような書き方でありました。それから、有名な極東条項極東における国際平和及び安全維持への寄与、それが書いてあります。それから、米国日本防衛義務は規定されていない。これが後でいろいろ問題になったわけでありますが、そういうことが書いてありまして、何か六〇年安保に比べますと非常に偏ったといいますか、そういう印象が強い第一次の安保であったわけであります。  それが、六〇年安保になりますと、いろいろこれが変わってまいります。旧条約からそのまま継承した点は、米軍日本国内施設区域使用を認めたということ、米軍日本に常時駐留できるということ、それから、米軍は、日本の安全のためには言うまでもなく、極東の安全のためにも日本施設区域使用できるということ、それから、駐留目的は、これは前と同じで、日本の安全のため及び極東の安全のためであるということ。  ここからが問題でありますが、旧条約を手直しした点は、国連憲章との関係を明確にしたということ、それから米国日本防衛義務をはっきり書きあらわしたということ、これが一番大きな特徴であります。それから、日本施政下にある領域においては米国を守る日本義務を明確にしたということであります。  それから、一番特徴的なもの、旧条約にはなくて新しく規定された点、これが四、五点ありますが、一つ政治的、経済的協力を定めたということ。単なる軍事的な問題じゃなくて、もっと高い次元の、いわば日米同盟じゃないかという批判があったそのことがこれにあらわれておるわけでありますが、政治的、経済的協力を新しく定めたということ。それから、条約期間を設けた。十年の期間をつくって、十年後は一方的にどちらからか廃棄の通告ができるというようにしたこと。それから、事前協議制を新設したこと。それから、沖縄小笠原条約関係を明示したということ。これがもとになって小笠原返還沖縄返還につながっていったという事実があるわけであります。  そういうわけで、六〇年安保と旧安保を比べますと、非常に日本に、何と申しますか有利なといいますか非常に変わったことがこうやって改めてわかるわけであります。  こういうことを経ながら、申し上げましたように長年推移してきたわけでありますが、最近冷戦が終わった。それを機に、安保の再定義論がいろいろ起こってきております。きょうの主題はここにあるわけであります。冷戦時代ソ連意識をしてこれを運用されてきたことは、これはもう歴史的な事実でありますが、ソ連がなくなった今なぜ安保が必要かということ、これを今明確な問題意識として提示する必要があるのではないかと思うわけであります。  アメリカでももう御案内のとおりに、肯定論否定論、いろいろ論議が起こっております。過激な意見も出ておりますが、これは最近発表になりましたCATO研究所報告でありますけれども、さまざまな議論が出ております。我が国でも、それなりの解釈といいますか対応といいますか、それが求められておるんじゃないかと思うようなわけであります。  このことも少し文献を引っ張り出して調べてみましたら、防衛白書平成六年度版、これに明快に書いてありました。これは外務省の外交青書も読み比べてみましたけれども防衛白書の方が非常に具体的に書いてあります。  日米安保体制日本の安全に直接的な貢献をしているという評価、二番目は、極東の平和と安全の維持にも寄与しているということ、三番目は、日本にとって一番重要な二国間関係である日米関係の中核をこれがなしておるんだという評価、それから日本外交基盤となっておるというこの四点を防衛白書指摘しております。この一番目と二番目はもちろんこれは軍事的な機能と申しますか側面でありまして、三番目、四番目は政治的な機能をそれぞれ評価したと整理することができると思うわけであります。  日米関係重要性を語るときには、政治軍事だけではなくて、経済、文化などを含めた総合的な関係の深さ、相互依存度の高さに触れなければなりませんし、何よりも大事なのは、それが壊れたときに両国のみならず世界が受ける打撃、影響、それがどういうふうになっていくかということも考えざるを得ないのであります。  そういうように考えますと、日米安保を継続していく意味を説得のある論理でこの際説明する必要があるのではないか、そういうことを考えるわけでありまして、この点、長官の御意見を承りたいのであります。こういう日米安保の再定義を新しい防衛計画大綱にどう取り入れていこうとしておられるのか、長官の御意見をまず承りたいと思うわけであります。これから、冷戦後の新しい東アジア軍事情勢、それに我が国が対応していくためには、ここのきちんとした位置づけと申しますか、それがないといけない、そういう認識のもとでそういうことをまずお伺いしてみたいと思うわけであります。
  4. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。  昭和五十一年に、坂田防衛庁長官のときにつくられました防衛大綱、これが二十年たちまして、このたび、私どものときに新防衛大綱をつくる、こういうことになったわけでございます。  ただいま渡瀬議員からいろいろと御高説がございました。まさしくそのとおりであろうかと思いますが、私ども、新大綱におきましては、御案内のとおり、安全保障会議を逐次行ってまいりまして、十一月末をめどに新防衛大綱の取り扱いについて結論を得たい、このように考えておるわけでございます。  ただいまの御指摘のように、ポスト冷戦我が国周辺国際情勢軍事情勢等が極めて不透明、不確実、不安定でございまして、こういうものをしっかり視野に入れた中に、我が国防衛力と、また結果としての抑止力、そういうものをしっかり整備する。それから、言うまでもなく、御指摘日米安保体制によってしっかりと我が国防衛を補完する、そしてさらには、新しい国際平和環境あるいは平和秩序、そういうものを構築するに当たり日米安保体制が積極的な役割貢献を果たす、そういうような認識に立ちまして、私どもは新大綱というものをとらえておる次第でございます。当然、日米安保条約の第二条の条項、あるいは御指摘をいただきました第五条、第六条の条項、こういうものをしっかりと踏まえまして、日米安保体制必要性、そういうものをこの新大綱の中に位置づけをした、こういうことでございます。  とりわけ、戦後五十年、我が国周辺におきましては大きな戦争も、朝鮮動乱等々、そういうものはございましたけれども我が国にとりましては平和なこの五十年間でございました。それだけに、日米安保体制が果たしてきた積極的な役割というものが、当然存在する空気のような、そういうような当たり前の存在に受けとめられてきた感も否めないわけでありまして、私どもは、冷徹な国際軍事情勢国際政治情勢、そういうものをしっかりと踏まえまして、危機管理を念頭に置いて、我が国の確かな安全を確保するためにも、日米安保体制必要性役割、新たなる貢献、そういうことにつきまして積極的な位置づけもしてまいりたい、このように考えております。  なお、十一月にクリントン大統領が訪日されますので、クリントン村山会談におきまして、日米安保体制の再定義、再確認、そういうことをしっかりと共同文書発表をいただきたい、かように考えておる次第でございます。  以上であります。
  5. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 衛藤長官の御説明を聞いておりまして、非常に心強く感じたわけであります。まさに日米安保は、日米間の平和と友好関係発展経済協力の推進も含めて日米間の関係を緊密にすることは言うまでもありませんけれども、これがアジアの安定にとっても不可欠の要件になってきたという認識を私も持っておるわけでありまして、そういうことを前提にこれからも、今度の防衛計画大綱にもぜひひとつきちんとした位置づけをしていっていただきたいと思うわけであります。  アメリカでも、ことしの二月、ポスト冷戦時代地域戦略見通しとして「東アジア戦略報告」が発表されたのは御承知のとおりでありますが、安全保障酸素のようなもので、なくなり始めて初めてそれに気づくのだという一節があったことを非常に印象深く思い出しております。その酸素供給のためにアメリカは十万人の兵力をこのアジア地域維持するのだということをはっきり書いておりますし、日米安保がそのかなめだということもはっきり書いてあるわけであります。安保存在意義は、これからますますアジアの安定と経済発展のために大きな役割を果たしてくると思います。  アジアは今、特に経済発展が非常に進んでおりますけれども、これも、専門家意見等を拝聴してみますと、二十一世紀になるとエネルギーも食糧もだんだん不足してくるのではないかという見通し。そのほか、朝鮮半島の問題、中国と台湾の問題、南沙群島の問題、それから、ロシアの政局も非常に不安定でありますし、周辺諸国世代交代の問題もありますし、権力交代の問題もあります。そういうことをいろいろ考えますと、非常に不確実で不安定な状況がまだしばらく続く。そういうときに、今申し上げました安保に対するアメリカのコミットメントは、アジア諸国に非常に歓迎され、安心感を与えているような気がいたします。  我が国でも、村山総理連立政権発足時に安保を承認するのだということをおっしゃいましたけれども、その後、堅持する、それから維持強化するという表現に変わっております。この実現のためには、今長官おっしゃいましたように、条約の性格や必要性相互協力によって双務性を高めていくこと、これに尽きるのではないかという気がするわけでありまして、ますます今の御趣旨でお進めいただきますようにお願いを申し上げるようなわけでございます。  それから、二番目のお尋ねとして、新しく新防衛計画大綱、今盛んにその審議が進んでおるようでありますが、このことに関しまして、これは私の認識不足かもしれませんけれども、何となく、防衛構想といいますか哲学といいますか、そういうものが見えてこない、そういう感じがしてなりません。  昭和五十一年に策定され、ことしまで続いております基盤的防衛力構想、当時は、自衛隊を承認するという国民世論もまだ六〇%ぐらいでしたし、日米安保はあった方がいいんだという世論もまだ四〇%ぐらいでありました。サイゴン陥落を機に安保の問題に関心が非常に高まってきた、そういうときでありましたから、国民安全保障の政策を認識してもらうのが非常に難しい、前提条件が今のようにはっきりしていなかった、そういう時期であったものですから、いろいろ考えてこれは策定されたわけであります。  第一には、防衛計画をつくる前提として、もう少し国民皆さん世論を高めよう、日本安全保障について認識を深めてもらおうということで、防衛を考える会、長官の私的な諮問機関と申しますかそういう位置づけで、防衛を考える会というものをつくっていただいた。そこに言論界産業界、いろいろな代表的な人にお寄りいただいて、日本防衛をこれからどうしたらいいかということで、世論の喚起から実は始めたわけであります、今はもうその必要はありませんけれども。  そのとき結局出てきた答申、日本防衛は非常に大事であるということを国民みんなが自覚せにゃいかぬということを皆さんが言っていただいた。そして、防衛の規模も、国の予算の一%程度は、これは程度という表現でしたが、一%程度はやむを得ないのではないか、またそれくらいのことは頑張れという趣旨でもあったようなわけであります。  具体的に防衛計画をつくるについては、これもいろいろ議論がありましたけれども、庁内で決まったものは、これもよく言われておりますように、限定的な侵略に対してあるいは小規模な侵略に対して、これは独力で対処するのだ、排除するのだということ、そしてそれ以上のこと、例えば核の問題等はこれはアメリカに依存せざるを得ないと。そういう極めてわかりやすい、ある意味ではわかりやすい前提条件をつけて、それのための陸海空の戦力をどうやって整備するかという各論に入っていった、そういう経過を実は思い出しておるようなわけであります。  当時、中におりまして、ユニホームの人たちから随分怒られた記憶もあります。  例えば、限定的な侵略とは何事かということ。よその国に攻めていくときは一カ所に行くばかがおるかい、必ず三カ所か四カ所分散して行くんじゃということ、それをあえて限定するという意味は何かということ。それから小規模、これも当時のことを思い出しますと、小規模とは何ぞやという議論のときは、まあ十個師団ぐらいのなにが来るのを小規模と言いますというぐらいのあれだったのですが、これも、軍事常識からいきますとあり得ないことでありました。しかしながら、一応限定しないとこちらの計画が立てられない、いわゆる脅威対応論になってしまうわけでありますから。そういう前提条件のもとでいろいろ議論された結果、あの基盤的防衛力構想、それに基づく防衛計画大綱が実はできたわけであります。  今度のいろいろな防衛庁の説明、新聞報道等拝見しておりますと、それに相当するものが何かもうひとつ見えてこないなという感じがしてなりません。書いてありますのは、冷戦は終わって世界的な規模の紛争がなくなったということ、しかし東アジア地域はそうでもない、依然として不確定、不安定だということは書いてありますけれども、いきなり人員削減が出てきます。そして、新しいいろいろな装備の話。つまり、コンパクトなものにはするけれども装備の充実でそれをカバーするんだということが、唯一の今度の防衛の哲学のような感じがするわけであります。何か、初めに人員削減ありきというような感じがしてなりません。  新しい装備をどんどん入れますと、それに伴う人間も要るはずですし、それから、これも別な項目で出てきます近隣諸国への信頼醸成に努めなければいかぬという問題もありますが、それにも人手は要るわけであります。人員と装備、それから新しい仕事、これはPKOでもそうですし、災害出動でもそうですけれども、そういう相関関係も何かもう少し説明が足りない、見えてこない、そういう感じがしておるようなわけであります。  この辺のことで、長官、率直にその辺の哲学をひとつ御開陳願いたいのであります。これだけこうすれば自衛隊としてはきちんと任務が果たせます、そういう確信がおありなのかどうなのか、何かもやもやした気持ちのままでおるものですから、そういうことを、ぜひこの際はっきりひとつ御答弁願いたいと思うわけであります。
  6. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 お答えを申し上げます。  今渡瀬議員指摘のように、我が国の専守防衛力防衛基盤の確立というものは、確かに一面におきましては、各論を明確に位置づけをいたしまして、そして総論がその後についてきた、こういうような位置づけをした面も否定できないと思います。  しかし、新防衛大綱におきましては、まずグローバルな国際環境あるいは軍事情勢、そういうものをしっかりと位置づけをして、まずいわゆる安全保障とかあるいは防衛とか、そういうものの相対的な位置づけをしっかりいたしまして、そして、憲法の範囲内にあって、我が国の専守防衛力、ある意味ではそれに伴う抑止力、そしてそれをしっかり補完する日米安保体制の堅持、さらにそれだけではなく、日米安保体制を、二国間の関係を基礎としつつ、新しい国際平和環境に向けての構築の努力、あるいは新しい平和秩序に向けての私どもがなし得ることは何かそういうものをしっかり視野に置いて、そして我が国基盤的な防衛力というものをこの新大綱の中において位置づけた、こういうことになっております。  当然、御案内のとおり、特定の脅威に対抗するということよりも、みずからが力の空白となって不安定要因になることのないように、私どもとしては、我が国の置かれている戦略環境とかあるいは地理的特性を踏まえまして、いわば平時から保有しておかなければならない必要最小限の基盤防衛力を示したというのが今回の考え方でございます。
  7. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 長官の御答弁、非常によくわかるわけでありますが、何か感じとして、もう冷戦は終わったんだ、それ軍縮だというムーディーなものが先行しているような気がしてならぬものですから、もう少し具体的に、これだけのことはぜひ要るのだということを、自信を持ってひとつ国民にアピールしていただきたいと思うわけであります。  軍縮、軍縮という論議が高いわけでありますが、私考えますのは、戦後、アメリカソ連が不必要な軍拡競争をやっておった、それが限界が来てもとに戻ったのだ、私はそういう感じがしております。  ただ、それと日本の場合とを同じように考えはしないわけであります。日本の場合は、今長官のお話にもありましたように、平和時に必要最小限度な、空白をつくらない、日本から外国に出ていくことはないけれども日本侵略する意図があったらそのときはひどい目に遭わせますぞ、その力は我々は持っているんですぞということを内外に示す、そういうのが日本軍備の一番の基本的な考え方でありますから、冷戦が終わった、ロシアも軍縮をやっておる、アメリカもこうだ、日本もこうだというふうにはつながらない、そう思うわけであります。  そこは長官、ぜひひとつ、これだけはぜひ欲しいんだということ、要るんだということ、これだけないと日本防衛義務は果たせないんだということ、そういうことをもう少し表に出していただいて、国民の賛同を得るように、ひとつ頑張っていただきたいと思うようなわけであります。  新しい防衛計画をつくるについていろいろ必要な前提条件、それが日米安保であるし、今のような、哲学といいますか、防衛構想であるわけでありますが、時間のこともありまして、それから先に移らせていただきます。  三番目にお伺いしたいのは、日本を取り巻く国際情勢、特に東アジア軍事情勢、これを長官はどういうふうに認識しておられるかを改めてお伺いしたいのであります。  具体的には中国、北朝鮮の問題がありますが、日米安保締結当時は、懸念される場所として想定されておりましたのは朝鮮半島と台湾海峡だったことを記憶しております。  朝鮮半島といいますのは、まだあれは動乱の完全に終わっていないころだったものですから当然なことでありまして、中国の場合も、台湾海峡は、新中国が建設された直後で台湾の独立とか侵攻とかいろいろな問題があった、紛争が起こるとするとその辺じゃないかなという意味で、旧安保のときは朝鮮半島と台湾海峡が想定されておったというふうに記憶をしております。  いわゆる極東条項極東の範囲論争が強かったのはそのためであったわけでありますが、その後の世界情勢の推移で、ソ連の脅威だけが非常に強調されて長年経過してきたわけでありますが、今、冷戦が終わり、と同時に安保の用済み論が実は出てきた、これは先ほど申し上げたとおりであります。  ところが、これは、よく考えてみますと雲がなくなっただけの話であって、やはり日米安保、これは、対象がもとに戻ってまた表に出てきた、そういうだけではないかという感じがしております。中国は、経済の拡大に伴って軍事も非常に増強しておると聞きますし、台湾問題など外向きに強い態度を見せてきておる、そういうことは否めないと思います。したがって、北朝鮮を含め、状況は以前よりかえって悪くなってきておるのではないかという気がしてなりません。  中国も、日中復交の当時は、過去のことはもう忘れましょうということで非常に友好ムードが強かったわけでありますけれども、どうしたわけか、特に細川総理侵略だ、侵略戦争だったんだという大胆な発言をされて以来、何か今度は償いを求めてき出したなという気もして実はならないわけでありまして、中国側からの日本への対応、これも非常に変わってきた感じがいたします。  そういうことも含めまして、中国の様子をどう見ておられるのか。核実験全面禁止への国際世論の高まりの中で相変わらず核実験を強行しておりますし、南沙群島におきましても活動拠点の強化を図っておるわけでありまして、このような中国の軍事情勢、これに対する認識をひとつこの際御開陳いただけたらと思います。  また同時に、北朝鮮につきましても、核兵器開発への意図といいますか疑惑といいますか、そういうことが非常に懸念されるわけでありますし、ミサイルも開発したということもあります。軍事力の近代化、強化を図っておる、そういう認識も非常に日本に強いわけであります。  防衛庁として、中国、北朝鮮、この二国についての軍事情勢の様子をどういうふうに把握しておられるのか、この際承っておきたいと思うわけであります。
  8. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 まず中国に対する認識でございますが、御指摘のとおり、中国は近年国防費を大幅に増額をしておりますし、また、国防力につきましては、量から質への転換を図っております。一九九四年、一九九五年度は、対前年度比で国防費は二〇%以上の増加を見ておりまして、海空軍力の近代化は目覚ましいものがある、このように思っておりますし、さらに、核戦力の近代化、多様化に向けての努力がなされております。本年五月、八月には核実験をしたわけでございますが、このことはもう御案内のとおりかと思います。  しかし、中国は、経済建設を当面の最重要課題としていること、そしてインフレ基調、財政赤字という困難に直面していることなどから、国防力の近代化というものは漸進的に進むのではないか、このように見ておるわけであります。  また一方、御案内のとおり、南沙群島等を含め、海洋におきます活動範囲を拡大する動きを見せております。中国のこのような動きが中長期的にアジア軍事バランスにどのような影響を与えるか、十分に注意していく必要がある、このように考えておるわけでございます。  また、御案内のとおり、中国の政治におきましては、遅浩出国防相初め軍関係の方が国家副主席に二人おつきになるというような、そういう背景もあるということも私ども十分に認識をしておる次第でございます。  なお、北朝鮮のことでございますが、まず第一は、御案内のとおり核兵器開発疑惑が存在するわけでございまして、このことにつきましては、弾道ミサイル・ノドン一号等々の問題につきまして重大関心を持っておりますし、また懸念をしておるわけでございます。  また、KEDOを通じての原子炉の供与等につきましても、しっかりとした受領についての道筋が示されていないような感じがするわけでありまして、このことにつきましては、米朝間で取り決めが行われましたいわゆるアクションプログラム、これを北朝鮮が確実に担保してほしい、こういうことを強く願っておる次第でございます。  また、私どもといたしましては、長い間北朝鮮がいわゆる孤立政策をとってまいったところでございますが、世界からの国連を通じた食糧の援助、KEDOを通じましての国際協力等々、そういうことについての道を開きつつあります。こういうことが北朝鮮の政治あるいは社会情勢にどういう影響を与えていくのか、そのときにおける、今申し上げました核兵器開発疑惑、懸念、そういうものがどういうふうにこれから前に出てくるか、そういうこともしっかり注目をしておく必要がある、このように考えておる次第でございます。  以上であります。
  9. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 北朝鮮あるいは中国の軍事情勢の見方は、大体言われておりますとおりでありまして、どうかひとつ、そういうことにきちんと対応できるような、新しい防衛計画にそれを反映してやっていただきたいと思うわけであります。  TMDの問題等も、まさにその延長線上で判断できるのではないかと思うわけであります。  次へ移りたいと思いますが、今度はPKOの見直しの問題であります。これは御案内のとおりに、制定当時、三年後に見直すという規定がありまして、この八月の初めに、外務省、防衛庁、内閣で見直し作業を開始されたと実は聞いておるわけでありますが、その後どうなっておるか、承りたいと思います。  この問題について意見を言わせていただきますと、PKFの凍結の解除、これと、今は個人の判断に任せてあります武器使用の問題、正当防衛と緊急避難しか使えないという武器使用基準の制限、これをぜひひとつこの際解除していただきたい、このように思うわけであります。  いろいろ私なりに聞いてみますと、我が自民党は、もうこの問題では大体そういう方向でいくべきだという意見の整合性を持っておりますが、新進党もそうであろうというふうに聞いております。外務省も大体そういう意見のように聞いておりますが、社会党については、まだ議論が進行中ということで結論が出ておらぬという話で、どちらかというと非常に消極的な御意見のようであります。  肝心の防衛庁にも、まだいろいろな議論がある。経験不足だからまた時期尚早だという意見も聞いたことがありますし、PKFの解除にしても、武器使用問題の解決が前提にないと責任が持てないというような話も防衛庁筋から聞いてまいっておりますが、この辺のことについて、長官の率直な御意見もひとつ聞いてみたいと思うわけであります。  私は去年、ザイールのゴマ、あそこへルワンダ難民の人道救援のために自衛隊から将兵が派遣されておりまして、それの御慰労と、それから撤収の交渉に実は行ってきたわけでありますが、現場では非常に戸惑いが多いな、余計な苦労をかけておるなという感じが非常に強くいたしました。  例えば、その前のカンボジアのときも、警護という任務は今のPKOにはないわけであります、これもぜひ追加してほしいという気持ちが強いわけでありますが、カンボジアでは、NGOの人の活動を警護することを言えないものですから、何か情報収集だという名目で自衛隊が動いたということ、それ自体非常に——無事に済んだわけでありますけれども、やむにやまれずといいますか、何かそういう動きが現場ではなされたということ、これはやはり防衛庁としても現場の隊員が安心して業務遂行ができるようにしてやらなければ、本当にかわいそうだという気がいたしました。  それから、ちょうどゴマに行っておりますときにも、NGOの人たちが何か、ザイールの軍隊でしたか、取り囲まれて大変だということですぐ救出に出動したわけでありますが、このときも救出とか警護とかという名目は使えないですから、ただ何か輸送だ、そういう名目をくっつけて、隊長が率先して現場へ飛んでいって助け出してきた、そういう局面もありました。そういうことで非常に、何といいますか、政治が解決してやらないと現場へ行った人は余計な苦労をするということを、現場に行きますとしみじみとそういう感じがするわけであります。  今申し上げましたようなことだけではなくて、背景にもう少し外交的な配慮、外交で自衛隊が安心して職務遂行ができるような配慮がもう少し足りないなという感じがいたします。  それから、これは細かい話になりますけれども自衛隊がモザンビークあるいはザイールに行って宿営をする。長期間宿営をするわけでありますが、持っていく天幕なんかも、日本の国内で使っていたものをそのまま持っていっている。気象条件、環境条件が全然違うところにそういうものを持っていっても、非常に隊員が苦労するだけでありますし、それからもう一つ感じましたのは、食事の問題とか宿舎の問題とかそういうこと。これは自衛隊内部の問題でありますが、自衛隊で、現地の状況に合うようにその装備あるいは居住条件、それをもう少し整えてやる、そういうことも非常に大事になってきたなという感じがしております。  要するに、PKFの問題、武器使用基準の問題あるいは警護の任務を追加する問題、そういうことは国内での議論をそのまま外国に持っていっても通用しない、不都合さがどんどん出てくる、そういうことでありますので、この辺のことも十分ひとつ、今度PKO見直しのことにつきましては御配慮をいただきたいと思うわけであります。  主任務にこれを取り上げて、そして例えば予算措置、去年はたしかいろいろな予算技術上の問題があってのことだったと思いますが、防衛庁予算自体を絞って、防衛庁予算の中から絞り出して六十億近くのPKO派遣の予算を使ったというようなこと、これなんかはもう、国としての大きな仕事ですから予備費からどんどん出せるようにしなければいかぬなという感じも持っておりますし、そのためにも主たる任務にこれを位置づけし直す、そういう配慮も必要ではないかと思うわけであります。  いろいろな細かいこともつけ加えて申し上げましたけれども、要するに、ちょうど三年たった今、見直しの機会でありますから、そういう考え方で、現場へ行った自衛隊がよりよく安全に、そして円滑に任務遂行ができるように防衛庁としてもひとつ配慮をしていただきたい。  今度の大綱の見直しにも、そのPKOの問題は国際協力の一環として大きな柱として出てくるそうでありますが、それに関連して以上のことをひとつ意見を申し上げて、長官の御見解を承っておきたいと思うわけであります。
  10. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御案内のとおり、国際平和協力法の見直しにつきましては、八月十日で施行後三年が経過したわけでありまして、政府といたしましては、見直し時期を迎えたということから検討を開始したところでございます。今後、見直しに当たりましては、既に終了いたしましたカンボジア、モザンビーク、ザイール等への派遣といったさまざまな貴重な経験を踏まえた上で、国会等における議論に十分耳を傾けて検討する必要がある、このように考えておるわけであります。  先般、私もハワイにおきます太平洋戦争終結五十周年の記念式典に出席した折、カンボジアの国防大臣から日本のPKOについてのお社もありましたし、また、いかに日本のPKOが優秀であったかという、そういう評価も受けたわけでありまして、大変心強く思った次第でございます。  今御指摘の武器の使用問題でございますが、私も、八月八日防衛庁長官に就任いたしましてから、直ちに、このカンボジア、モザンビーク、ザイール等でPKOとして国際平和業務に従事した幹部クラスの皆様方十数名にお集まりをいただきまして、いろいろの反省事項、問題点、そういうことについての生の声を聞かせていただきました。その中に、御指摘のとおり、この教訓、反省事項として、武器の使用、これが個々の隊員の判断によるとされているために隊員の心理的負担が非常に大きかった、こういうことが強く指摘されたところでございます。私どもといたしましては、これらの貴重な提言、それから国会での議論、こういうものを今後の活動に生かすべく、総理府国際平和協力本部事務局などとも調整をしながら検討を進めてまいりたい、このように考えておる次第でございます。  なお、この問題につきましては、現行法のもとでの運用の問題として措置ができるのが御指摘のように現行法を見直す必要があるのか等々につきまして、これからも検討あるいは慎重に研究も行っていく必要がある、このように考えておる次第でございます。  いずれにいたしましても、派遣する部隊の責任者といたしまして、隊員一人一人の生命、そういうことに私の最大の関心事もあるわけでありまして、たとえPKO参加五原則がしっかり守られておる環境の中に派遣する部隊といたしましても、防衛庁長官としては、隊員一人一人の命ということを大変重くとらえてこの問題についての対処をしてまいりたい、かように考えております。
  11. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 これからの自衛隊の大きな仕事として、もう言うまでもなく国際協力ということが非常に大きなテーマとなって出てくるわけであります。そのためには、先ほどから申し上げますように、自衛隊の隊員諸公が現場へ行って、安心して、しかも安全に職務遂行ができるように、いろいろな経験を積んでおりますから、そういう意見をぜひ酌み上げていただいて、そういう細かい配慮をぜひこれからお願いしたいと思うわけであります。  それから、どんどん各論に入っていきますが、大規模災害等の各種の事態への自衛隊の対応に国民の期待が非常に高まっておりますが、そのことについてお伺いしたいと思います。  この間の阪神大震災、このときの自衛隊の活躍は本当に、現場に私も泊まり込みで参りまして、自衛隊の活躍を目の当たりに見て、非常に力強い感じを持ったわけでありますが、ああいう災害がいつ何ときまた起こらぬとも限りません。  それから、近ごろ非常に物騒な本が出回っております。韓国の何とかという人が書いた本で、南北が一緒になって日本に戦争をしかける話であります。ああいうことは恐らく起こり得ない話だと思いますけれども、あるいはいつ何ときそういう事件が起きて大量の難民が日本に押しかけてくる、避難してくる、そういうこともこれは全く否定はできないわけでありますから、そういうことも災害対策と同時に含めて、これからどうされるのか、その辺の防衛庁の基本的な考え方なり、何か具体的な対応をやっておられることがあれば、ひとつお願いを申し上げたいと思います。  特に、一昨日ですか、災害基本法を一応改正していただきましたけれども、今の法律の考え方が、ちょうど六〇年安保の後ですし、それから、きっかけが伊勢湾台風、鍋田干拓でたくさんの犠牲者が出た後の立法だったものですから、自衛隊は後ろに引っ込んでいろということが非常に目立つ法律になっております。あくまでも主役は地方自治体の首長、そして活動するのは警察と消防という大前提に立っております。  そこからくるいろいろな現場での自衛隊に対する制約が多いのは、これはもうここ半年我々経験してしみじみと思っておるわけでありますが、もっと災害基本法を抜本的に改正をして、もう少し自衛隊が地方の首長と一緒になって、少なくとも警察や消防と同列ぐらいの位置で災害救助できないか、そういうことすら考えておるわけでありますが、その辺のことも含めて、ひとつ御説明、御答弁願えたらと思います。     〔委員長退席、赤松(正)委員長代理着席〕
  12. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ただいま渡瀬委員から御指摘のありました大規模災害等への対応、こういうようなことでございますが、防衛庁といたしましては、大規模な災害等につきましては、言うまでもなく人命または財産の保護を必要とする各種の事態に際して、関係機関から自衛隊による対応が要請される場合などにおきまして、関係機関と緊密な協力のもとに、適時適切に災害救援等の所要の行動をとってまいりたい、このように考えております。  また、特にこれから懸念されるところの、我が国への難民に対する問題あるいは緊急時における海外の邦人の救出の問題等々、いろいろの問題が出てくるわけでございまして、こういうことにつきましても、協力要請に基づき迅速に対応ができるようなことでなければならない、そういうこともしっかり位置づけとして考えていかねばならぬ、かように考えております。
  13. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 その次のテーマでありますが、自衛隊の装備品を開発、そして生産していく防衛産業、これをポテンシャルとして確保しておくことは、日本防衛上非常に大事な要素を占める面であろうかとも思います。防衛生産、防衛技術基盤維持していくために、どういうふうに防衛庁は考えておられるのか。予算の制約等が云々されておりますが、一遍技術をなくしたりしますと、その回復にはもう本当に時間もかかるし、また何倍もの努力が必要なわけであります。その基本的な考え方、これは今だからこそ本当に大事な問題ではないかと思うわけであります。  同時に、防衛庁自身の研究体制と申しますか、そのことにも、こういうときであればこそなおさら力を入れて、その研究体制をもっと強固なものにし、予算もふやしてやっていくということが必要ではないかと思うわけであります。  この開発、生産、研究、そういうことについての長官の御意見を承っておきたいと思います。
  14. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御指摘のとおり、我が国防衛産業というのは、ある意味では我が国防衛基盤の一環をなすものである、私はそういう認識に立っております。御指摘のようなことが大変心配をされておるわけでございまして、装備面から見ました防衛力は、工業力を中心とする国の産業力、基盤でありますから、防衛産業の存在というのは適切な防衛力を確保する上で重要な前提である、このように考えておるところでございます。  また、御懸念のように、国内防衛産業をめぐる環境は、この数年の装備調達のための予算の減少傾向と長引く不況下にありまして大きく変化しつつあり、厳しい状況にございます。防衛庁といたしましては、健全な防衛産業の維持、確保が、装備のハイテク化、近代化への対応、装備の取得、維持、補給、あるいは緊急時の急速な取得等々、適切な防衛力の整備を図る上で重要であると考えておりまして、こういう観点から、中長期的な観点に立ちまして、効率的な調達の推進、技術研究開発の推進等を通じて十分にその点について配慮してまいりたい、このように考えております。
  15. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 これも、経験したことを申し上げて認識を深めていただきたいのでありますが、US1という飛行機があります。あれも本当に何か、世界でも日本だけしかない飛行艇技術だという話を聞いて、現場を拝見に参りました。あれに長年携わっておられる、年とった熟練工の人たちと会談をしましてお話も聞く機会がありましたけれども、本当にそれに打ち込んでおられる、飛行機そのものを我が子のように手でさすりながら考えておられる、その熱心さに実は打たれたわけであります。  それからもう一つは、イージス艦の進水に派遣されて参りました。あのときも、四、五年かかってつくられたのですか、現場の職工長的な人たち中心に、もう直前まで手でさするようにしてやっておられた。そして、そのでき上がったイージス艦というのが何か非常に性能がいいそうでありまして、アメリカよりいいんじゃということをえらい自慢しておられましたけれども、あの年とった熟練工の人たちの姿を思い浮かべるだけでも、何とかしてやらなければいかぬなという感じがしてなりません。細かい配慮をひとつこれからもお願いしたいと思うようなわけであります。  それから、最後になりましたが、優秀な自衛隊員の確保の問題、このことについて意見を申し上げ、御意見をいただきたいと思います。  これからは、計画そのものが非常にコンパクトになって技術をたくさん必要とする隊員が要るようになる、これはもう避けられない傾向だと思いますが、そのためにも、どうしてそういう教育訓練をやるか。今までのような延長線上では済まないと思います。練度を高めるためには、これから教育訓練ということが非常に大きなウエートを占めできますし、そのための隊員の確保ということが非常に大事になってまいります。  それから、そのほかにも、自衛隊自身の任務の国際化の問題、これも必然性が非常に高いわけであります。それから近隣諸国との信頼醸成を高めていくという仕事もどんどんこれからふえていきますし、いろいろな意味で優秀な隊員を確保することがこれから自衛隊に求められてくるわけでありますが、何か具体的なことを考えておられるかどうか、率直な御意見を承りたいと思います。  一つ、私はこのことに関連しまして、提案といったらおこがましいわけでありますが、ぜひ御配慮を願いたいことがあります。それは、地連の存在であります。これは、ひところ地連は隊員募集に、それこそ浮浪者の中にも潜り込んでいって集めてきた時代の名残がまだ実は残っておりまして、いつまでもそのレベルでうろうろしていてはいかぬと思います。  ただ、地連の現場を見てみますと、大体おんぼろの事務所、人間も少ない、そういうところで頑張っておるような気がしてなりませんが、地連というのが一般国民との一番の接点でありますから、もう少し地連の事務所そのもののありよう、場所もあるいは建物も、あるいは機能的な問題も、そういうことを今考え直すいい時期じゃないかなと思います、先ほどの優秀な隊員を確保するという観点からも。  よく話を聞きますが、自衛隊に入りたいと思って、地連に行けと言われて行きましたと。そしたら、おんぼろの傾いたところにおってみんなが小さくなって仕事をしているから、こんなところじゃ大変だといってUターンしてきたという話も実はよく聞くわけであります。自衛隊の第一線は地連であるという認識にこの際考え直すこと、そして優秀な隊員、そして自衛隊に子供や家族を預けておる父兄の人たちのよりどころにもできる、そういう配慮もこれから要るのじゃないかなと思いますが、長官の率直な御意見を承りたいと思うわけであります。
  16. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 長い間、自衛隊存在とかあるいは日米安保体制とかこういうことにつきまして我が国の主要な政党の中でもいろいろと議論がありまして、むしろ否定的に見ておる政党もありました。しかし、ここ数年の間に環境が随分変わってきたわけでございまして、大きな全国市町村の組合、自治労とか、あるいは学校の先生方の現場の組合である日教組、高教祖、こういう教育現場におきましても自衛隊等に対する認識も変わってきた、これは事実だと思います。私は、そういうことが地連のいわゆるマクロ的な環境を非常によくしてきた、よくする、しかしこのいいときを逃してはならない、まさに私はチャンスが来たと思っているんです。  そういう意味では、極めて優秀な人材もここで確保できる、そういうチャンスが来た。それだけに、地連はどちらかというと萎縮していた面がありますが、これからはそうではなくしてもっと積極的に、地連としての政策的な、幅を持った活動をしてもらわなければならない、私はこのように思っておるわけです。そのためには、県庁との関係あるいは全国約三千三百の市町村との関係、そういうような面におきましてももっともっと積極的に、むしろ行政の側からも地連との連絡、アプローチというものをとってもらうような、そういう我々の努力もせねばならぬ、このように思っておるわけでございます。  そして、議員指摘のとおり、これからは国際平和協力業務、PKO等も積極的に行うわけでありますから、語学等の面におきましても優秀な隊員を確保しなければなりませんし、また一方、私どもといたしましても、隊員が誇りとゆとりを持って任務に従事し得るような環境をつくってやらねばならぬ、このように思っております。  具体的には、隊舎とか宿舎等の生活関連施設の整備とかあるいは給与改定、諸手当の改善、そして早く定年退職を迎える者の退職後の生活の安定とか、こういうことについても十分私どもとしては配慮をしてさしあげねばならぬ、このように思っておるわけであります。  いずれにいたしましても、地連の地位をもっともっとしっかりと、そして地連が広範な活動ができるような、そういうような環境整備に向けた我々みずからの努力をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
  17. 渡瀬憲明

    渡瀬委員 以上で私の質問を終わりますが、るる申し上げましたように、ちょうど安保の見直しを初め日本周辺諸国軍事情勢の変化等を踏まえて、今、防衛庁が新しい発想と新しい哲学で出直す機会だと思います。  今の優秀隊員の確保の問題もそれと連動するわけであります。隊員を減らすかわりに質で高めるんだということ、あるいは本来の自衛隊の仕事、侵略を排除するのが第一目的ですけれども、平和時には国際協力も必要ですし、災害出動も必要ですし、あるいは近隣諸国との信頼醸成、このためにも、これは人間の問題ですから、隊員の量のみならず質の問題にもこの際頭を向けて、そして遺漏のないように頑張っていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  18. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員長代理 次に、浜田靖一君。
  19. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 自由民主党の浜田靖一であります。当安全保障委員会神田委員長理事の諸先輩の皆様に、質問する機会をお与えいただきまして、心から感謝を申し上げる次第でございます。  長官、よろしくお願いいたします。  せっかくの機会でありますので、我が国を取り巻く諸情勢に対する認識、また防衛力のあり方検討及び防衛力整備の考え方等について御質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  まず、先ほども渡瀬委員からも御質問があったと思うわけでありますが、我が国の周辺において、朝鮮半島、北方領土、中台問題、南沙問題等冷戦間から継続されてきた未解決の問題が残存しておって、かつ大半の国々とも軍事力の近代化を図っておるようでございまして、依然として不透明かつ不安定な状況が継続していると私自身も考えておるところでありますけれども冷戦終結後の我が国に対する脅威をどのように認識をされているのか御所見をお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  20. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 浜田議員にお答えを申し上げます。  脅威の問題でございますが、脅威は、侵略し得る能力と侵略しようとする意図が結びついて顕在化するものでありますが、意図というものは変化いたしますし、また、我が国防衛を考える場合には、我が国周辺における軍事能力について配慮する必要もあると考えております。このような考え方のもとに、従来、防衛庁といたしましては、侵略し得る軍事能力に着目いたしまして、そのときどきの国際情勢等も踏まえまして総合的に判断して、潜在的脅威という表現をしてきたところでございます。  他方、我が国周辺地域におきましては、今御指摘いただきましたように、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在している中で、多数の国が経済発展等を背景に軍事力の近代化に力を注いでいるのも現実の姿であります。また、朝鮮半島における緊張が継続するなど、不透明、不確実な要素が残されておりまして、安定的な安全保障環境が確立されるには至っていない、こういう認識に立っております。
  21. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ありがとうございました。確かにそういう意味では大変不安定だと思うわけであります。  そこで、冷戦間には発生が大変抑制をされていた民族または宗教、領土問題等に起因する地域紛争は、むしろ冷戦後の現在の方が発生の蓋然性が高まっておるように思うわけであります。その意味で、我が国周辺の戦略環境は決して楽観視ができないというふうに私も認識しておるわけでありますけれども、その点に関しては、長官はどのようにお考えでございましょうか。     〔赤松(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  22. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 基本的には浜田議員と全く同じ認識に立っております。  御案内のとおり、冷戦下におきましては、地域の紛争諸問題解決のために関係国が主体的な立場に立って積極的にその紛争を解決する、そういう行動をしておりますために、結果的には不透明感とか不安定とか不確実性が増してきている。そして、ただいま申し上げましたとおり、朝鮮半島の情勢等を踏まえましても、あるいはアジア諸国等のいろいろな問題を視野に入れて見ましても、極めて不安定だ、私はこういう認識に立っております。
  23. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 まさに楽観視はできないということでありますけれども、今月の五日に、世界じゅうにショッキングなニュースが入ってきたわけでございます。それは、皆さん御存じのように、イスラエルのラビン首相が暗殺をされたわけでございます。中東和平にとっては欠かすことのできない、またノーベル平和賞も受賞されたラビン首相でありますので、大変我々も残念に思いますし、心から哀悼の意を表したいと思うわけでありますけれども、ラビン首相が亡くなったことによって、今後の中東情勢に及ぼす影響というのはどのように認識をされているのかお聞かせを願いたいと思います。
  24. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 中東和平実現に向けまして一貫して努力してこられましたラビン首相がテロの凶弾に倒れたことは、まことに残念であります。私も、先日駐日イスラエル大使館に弔問にお伺いをいたしまして、駐日大使に哀悼の意を表した次第であります。  首相代行にペレス外相がおつきになりましたけれども、ラビン首相の遺志をしっかり受け継ぎ、これまで以上に和平交渉の進展に努力するという決意を披瀝されておりますので、そのことに強い期待をしておるところでございます。今回の事件にもかかわらず、和平交渉自体は当面とんざすることなく進展していくもの、このような認識に立っております。
  25. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 まさに私、このニュースを聞いたときに、本当にテロという行為に対して心から怒りを感じたわけでございますし、我々のこの日本においても、APECの開催も予定をされておるわけでございまして、大変憂慮すべき問題だと思いますし、テロという風潮に対してやはり我々も厳しい目を持って向かっていかなければならないと思った次第であります。  なぜ今回のラビン首相の暗殺についてお聞きしたかと申しますと、その点についてはもう一つ理由がございます。というのは、来年の二月にもゴラン高原、UNDOFにPKO部隊として自衛隊を派遣することになっておるわけでございます。今回の事件が何らかの影響を及ぼすことはないのか、その点についてもお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  26. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御案内のとおり、UNDOFと中東和平というのは二つのものでありまして、もっとはっきり言えば、ポストUNDOFですね、UNDOFの後に中東和平がこれから進められるわけでありますから、私どももそういう認識に立って、引き続きこれからも中東和平のしっかりとした足取りがここにしるされるように見守っておりますし、また、私どものUNDOFというものがしっかりとした貢献をすることを我々としては強く願っておるわけであります。
  27. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 そして、先ほど渡瀬委員の方からもお話がありましたけれども、PKOの見直し問題であります。  特に、今長官がおっしゃられたように、UNDOFと和平はまた別で、順番としてUNDOFが済んでからそれがうまく並行移動することが必要であるというふうに私は思ったわけでありますが、そうしますと、必然的に現在のUNDOF——私が言いたかったのは、ラビン首相の暗殺によって政情不安になって、またいろいろな過激テロ集団とかそういうところがUNDOFに対して何らかの活動をするのではないかというような不安感もあったわけでございます。  そこで、PKOの活動、先ほど渡瀬委員からも御指摘がありましたように、やはり見直しをした方がいいのではないか。特に武器使用に関しては、しっかりとした安全確保をするためにも、せめて現在駐屯されておるカナダの部隊と同じぐらいの武器の携行を許してもいいのではないかというような気がしたわけでございます。その辺の点に関しても、長官先ほど検討作業中ということでお話があったわけでありますが、いま一度お答えをいただきたいなと思うわけであります。
  28. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 UNDOFに携行する武器の問題でございますが、確かにゴラン高原におきましては二十年間一発の銃声も響いていないというような、そういう比較的平和な環境にあることも十分承知はしております。私は防衛庁長官といたしまして、カナダ部隊が担当するUNDOFをそのまま日本が引き継ぐわけでありますから、カナダ部隊がやってきたその業務をそのまま引き継ぐわけですから、それをしっかりと担保する同じような措置というものは考えておかねばならぬのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、先般与党の視察調査団、また政府の調査団、それぞれお帰りになりまして、その報告がなされております。そういったものを十分踏まえまして最終的な決定がなされねばならぬ、このように思っております。
  29. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ぜひとも現場に即応した形での見直しをお願いをしたいと思うわけであります。やはり我が国を代表していく、まさに安定しているとは言われても危険性というのはどこにでもあるわけでございますので、その意味においても、自衛隊の安全確保というものも含めた中で御検討を願いたいと思うわけでございます。  それでは先に進めさせていただきたいと思いますが、先ほど渡瀬委員からもお話がありました大綱について、私の方は少し細かくお聞きをしていきたいというふうに思うわけでございます。  我が自由民主党において、国防三部会において、やはり同じように防衛のあり方検討を取りまとめをして発表させていただいておるわけでございまして、その内容については、また後ほどそれに関しでもお話を伺いたいと思うわけでありますが、現在、案をこの間新聞等でも見させていただいたわけでありますが、改めてここでお伺いしたいのは、この新たな大綱に関して、現在の大綱を見直す理由と見直しの視点をいま一度お聞かせを願いたいなと思います。
  30. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 冷戦の終結等によりまして、国際情勢が大きく変化しているというのが一つのやはり大きな要因であることは間違いございません。それと同時に、防衛庁自衛隊として、もちろんのこと我が国防衛という任務が基本であることは言うをまたないわけでございますけれども、同時に、大規模な災害その他各種の事態、多様な危険といったようなものに対する自衛隊の対応とか、あるいは国際平和協力業務の実施等によりまして安定した安全保障環境の構築への自衛隊貢献といったような、新たな役割に対する期待が高まっているということにかんがみまして、そしてかつ、冷戦後の日米安全保障体制のあり方等も踏まえた上での新たな指針を出す必要があるのではないかということから、現在の大綱の見直しを検討しているということでございます。  なお、大綱の見直しのことにつきましては、現在まだ最終年度に入っておりますところの中期防衛力整備計画、これは閣議決定されているわけでございますが、その中におきましても、防衛力のあり方について検討すべきということが書かれているところでございます。
  31. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 まさにおっしゃるとおりでありまして、時代の流れとともに自衛隊役割が大きくなっていることはまさに事実だと思うわけでございます。今般の阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件等に見られるように、自衛隊の果たすべき役割というのが本当に変化をしておるわけであります。政府としても、今のお話を聞けば、確かにそれに基づいて今回の大綱を検討されておるということでございますので、私自身もその点に関しては大変安心をしておるわけでございますけれども、いま一度、長官、確かにそういうような方向性を示しても、絶対やるぞという、やはり実行していくということが必要になろうかと思いますので、そのお気持ちだけ、質問の中には要請しておりませんけれども、決意を一言言っていただければと思うわけでございます。
  32. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 今防衛局長も答弁いたしましたが、大きな見直しの視点の三つの中の一つに災害対策等に対する派遣出動というものがあるわけでありまして、これは極めて大きな要素を占めている、このように思います。  ですから、しっかりとした災害派遣、そういうものがなされるように、御案内のとおり、阪神・淡路のあの経験を踏まえましていろいろと法整備も行ったところでございますし、また、防衛庁といたしましてもしっかりとしたその体制の立て直しをした、この立て直しをされた新しい機構に基づいて長官として第一線で頑張ります。  私も、先般の台風等の襲来の予報につきましても事前からよくキャッチしておりましたし、日曜日ではありましたけれども、私も防衛庁に出向きまして幹部の諸君とともにこの台風の推移を見守った、こういうようなことでありまして、まさに私どもは二十四時間体制でこういうことについてもしっかり対応してまいる所存であります。よろしくお願いいたしたいと思います。
  33. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ありがとうございました。  先ほど長官の方から、渡瀬委員の質問に対する答えの中で基盤的防衛力構想についてのお話もあったわけでございますが、確かにこの地域が力の空白になってはいかぬということをおっしゃっておりましたし、これが不安定要因とならないように、今後も独立国としての必要最小限の防衛力を保有するというお考えを示されたわけでございます。これは私自身もまさに同意をするわけでございますし、今後これを継承していく上で、引き続きやはり防衛力の水準というかそれを維持していくことが大変重要だと思うわけでございます。その点に関しては、長官は無論そのことは否定するものではないと思いますので、今後もそれに基づいてお考えになっていただきたいと思うわけであります。  そして、今回の新大綱においては、防衛力の規模を削減するとのお話もあるわけでございます。削減の及ぼす影響をいかに認識しているのかそしてまた、規模を縮小するのであれば、装備の近代化等により防衛力の低下を防止するとの考え方をとっていると認識してよろしいのでしょうか。その辺もちょっとお話しいただきたい。
  34. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 基本的には、量がコンパクトになる、質的にはレベルアップする、こういうことでございまして、その辺のところは、装備面を含め、あるいは人的なそういう面の手当ても含めまして、しっかり対処をしておる次第であります。  なお、子細について、ちょっと防衛局長の方から答弁させたいと思います。
  35. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 今回の、防衛あるいは防衛力のあり方の見直しに当たりまして、我々といたしまして、自衛隊防衛力の合理化あるいは効率化を進めると同時に、必要な機能の充実と防衛力の質的な向上を図りたい、さらに申し上げれば、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備して適切な弾力性を確保したい、そういったようなことを考えて、新たな防衛力整備あるいは防衛大綱の見直しというものをやるべきであると考えているところであります。  その背景となりますところは、先ほど申し上げました軍事情勢の変化も当然ございます。と同時に、先ほどやはり申し上げました、新たに自衛隊役割に期待する声が高まっているというところもございます。そういう要素を勘案しつつ、他方で、近年における科学技術の進歩ですとか、あるいは我が国における若年人口の減少傾向、さらに言いますと、現時点で見ましても非常に厳しい情勢になっております財政事情、そういったようなものを考えまして、今申し上げましたコンパクト化と同時に質的な水準のレベルアップ、あるいは弾力性の保持といったような形で総合的に新しい防衛力を形成していきたい、かように考えているところでございます。
  36. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 特に大切な視点といたしまして、情報機能の強化ということをこの新大綱の中で、ただいま浜田委員指摘された面を補完する意味で、情報の収集、解析、伝達、そうした機能強化をしっかりと図る所存であります。
  37. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ありがとうございました。力強い御意見であったわけでございますし、大変決意を感じたような気がするわけであります。  次に、今、規模縮小というお話があるわけでありますが、特に人員の削減を新聞等でもかなり書いておられるわけでありますが、その削減をするという中で万一隊員を解雇するようなことになると、これは自衛官の基本的人権を侵害することとなって、私はこのような事態は絶対に回避すべきと思うわけでありますけれども、序としての見解はどのようにお考えなのか、ぜひ教えていただきたいと思うわけでございます。
  38. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 防衛庁といたしましては、新たな大綱ができました場合には、その大綱に示される自衛隊の将来体制への移行につきまして、種々の点を考慮しつつ、中期的な防衛力整備計画や年度ごとの業務計画に基づきまして、段階的に行ってまいりたいと考えております。  その際、御指摘がありました点でございますけれども、個々の隊員の生活や、隊員の士気に与える影響を考慮しながら、十分慎重にやってまいりたい。特に、自衛隊員の場合、一つの定年制もございます。それから、任期制自衛官、こういう制度もございます。そういう人事上の現在の仕組みの範囲内でこれをやってまいりたいということで、御心配のような点については十分慎重に対応してまいるつもりでございます。
  39. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 まさに、この問題に関しては、いろいろな自衛隊の特殊性もあるわけでございますし、私は、ぜひともそれは慎重に対応をしていただきたいなと思うわけでございます。  そして今度は、また同じく規模を縮小する場合でございますけれども自衛隊の基地、そしてまた駐屯地の大幅削減を伴うのであれば、我が国防衛体制に欠落を生じさせるだけでなくて、平時の災害派遣等にも重大な影響を与えることになると思われるのでありますけれども、私自身は、その部分には慎重に検討すべきものがあると思いますけれども、その点についてはどのようにお考えでありましょうか。
  40. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 基地の規模縮小等々、こういう問題についての御懸念でございますが、これにつきましては、合理化とか効率化を進める一方におきまして、必要な機能の充実、そして防衛力の質的な充実を図るということを基盤といたしまして、結果的にはそういう事態が起こらないようにいたします。  なお、具体的にどういうふうにそれを補完するかということについては、防衛局長から答弁させます。
  41. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 新たな防衛大綱の中で現在我々が考えておりますことを、まず二点申し上げさせていただきたいと思います。  特に、御質問の件は陸上自衛隊中心であろうかと思います。陸上自衛隊の場合、一つの大きな役割侵略の防止ということになるわけでございますけれども我が国領域のどの方面におきましても侵略の当初から組織的な防衛行動を迅速かつ効果的に実施し得るよう、我が国の地理的特性等に従って均衡をとって配置された師団ですとか、現在、旅団ということも考えておりますけれども、そういう組織を保有したいと考えております。  そしてこのことは、災害救援等の態勢におきましても、国内のどの地域におきましても、大規模な災害等、人命または財産の保護を必要とする各種の事態に対して適時適切に行動を実施し得るという形にしたいと考えておりますので、全体の組織体制につきましては、大小今後変化が出てまいりますけれども、今の組織体制を念頭に置いているところでございます。  そして、合理化、効率化を進めていくという中で、これは段階的、計画的に長期間かけてやっていくわけでございますけれども、駐屯地等の具体的なあり方につきましては、十分地元への影響その他を考慮しながら、また地元とも相談しながら、我々は慎重に対処してまいるつもりでございます。
  42. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ぜひともカバーを、どこかが抜けるようなことがあっては困るわけでございますので、全域をカバーできるだけのしっかりとした体制を考えていただきたいと思うわけでございます。  そしてまた、ちょっと進めさせていただきますけれども、さきの阪神・淡路大震災等で指摘されたように、我が国の国家としての危機管理のあり方が問われていると思うわけでございますが、新大綱においては、有事法制、統合運用、そして関係各機関の協力体制等を含めた危機管理体制はどのように整理されようとしているのか、その点についてお聞かせ願いたいと思います。
  43. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 新しい防衛計画大綱の中で現在我々が考えております幾つかのポイントについて、御説明させていただきたいと思います。  第一点は、まさに危機管理という観点からいいますと、ただいま衛藤長官の方から答弁ありましたように、情勢の変化を早期に察知して機敏な意思決定に資するための常時継続的な警戒監視機能、これが非常に重要であると考えております。そして、高度の指揮・通信機能の保持、あるいは今御指摘がございました統合的な観点を踏まえた防衛力の有機的運用、こういった運用を迅速かつ適切になし得るような、いわば警戒情報及び指揮・通信の体制を保持したいというのが第一点でございます。  それから、直接侵略事態が発生した場合でございますが、各種の防衛機能を有機的に組み合わせることによりまして、その態様に即応して行動し、有効な能力を発揮し得るような侵略事態に対応する態勢を保持するということでございます。  また、各自衛隊がこのような態勢を保持する際には、自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するため、統合幕僚会議機能の充実等による各自衛隊の統合的かつ有機的な運用、統合幕僚会議機能の充実というのは、我々今考えております一つの新しい課題でございます。そういうことによりまして、また関係各機関との有機的な協力関係維持に、特に配慮いたしたいと考えております。  それから、御指摘の有事法制についてでございますけれども、当然のことながら、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと防衛庁としては考えております。  そういうふうに考えているところでございますが、法制化するか否かという問題は、これは国会における御審議ですとか国民世論の動向等を踏まえて検討されるべきものであると考えております。
  44. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 ありがとうございます。  私は、今回の阪神・淡路大震災もそうでありますけれども、すべての有事、有事というか事が起こったときに、やはり危機管理というのは、ふだんないときはいいわけでありますけれども、もしもあった場合にだれが責任をとるのかということでありまして、もしそのときに、ごめんなさいで謝って済むことならいいわけでありますが、まさに国の安全保障に関することでもあるわけでありますので、ぜひともその辺については今後も御検討いただきたいと思いますし、また、我々も考えていかなければならないと思っておるところでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、自由民主党としても、今回のあり方検討において、「今後の防衛力のあり方」ということで国防三部会において取りまとめをしておるわけでございます。そして、その「まとめ」の部分、この部分は読ませていただきたいと思うわけであります。ちょっとお時間いただきたいと思います。   平和と安全は国民すべての願いである。しか  し、それはただ願い求めるだけでは得られな  い。国民の国を守るという気概が重要であり、  それを裏付けているのは自衛隊存在である。  言うまでもなく防衛力の整備や隊員の養成には  長い時間と大きな努力が必要である。このた  め、防衛力整備は、中長期的な視野にたって計  画的に進めるべきである。財政事情などを単な  る理由として、かかる継続的な努力を無にして  はならない。   わが党は、責任政党として自らの責任を深く  自覚し、国家百年の計という長期的観点から、  二十一世紀に向けて相応しい外交と国防とりわ  け自衛隊を確固たるものとすべきであると考え  る。これが自由民主党の「今後の防衛力のあり方」の最後の「まとめ」で、その後半部分を今読まさせていただいたわけであります。  この点について長官に御質問したいと思いますが、防衛力は国家存立上最も重要な要素であり、短期的な情勢の変化等に惑わされたり、当面の財政事情などを理由として云々されるべき問題ではないと私は思うのであります。すなわち、ここにもうたってございますが、国家百年の計という長期的視点に立脚して、周到な計画に基づいて着実、段階的に整備されるべきものと考えておりますが、政府としての今後の防衛力整備に関しての見解をお聞かせ願いたいと思います。
  45. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 浜田議員が御指摘されました自民党の「今後の防衛力のあり方」の提案、防衛庁としては大変重く受けとめております。  また、御指摘をいただきました点につきましては、御案内のとおり、国の防衛とかあるいは一国の安全保障というものは、単に一国のひとりの力で達成できるものではありません。当然、外交の力あるいは総合的な我が国政治のリーダーシップ、いろいろなものが一体とならなければなりませんし、また、これについてはとりわけ国民の民生の安定、そういうことも重要な柱にもなりましょう。そういうことでありますから、二十省庁ございます我が政府、内閣にありまして、防衛庁だけで国の守りというものは達成できるものではありません。  ですから、十分その辺のところも考慮しながら、防衛庁として、専守防衛、そして日米安保体制を視野に入れ、なおかつ国際貢献あるいは国内における災害等への派遣、そういうものを視野に入れた、正面装備を含めましての基盤防衛力の整備を行っていく、そういう立場に立っているということを御理解をいただきたいと思います。
  46. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 本当に、私思うのでありますけれども、とかくこのごろの防衛論議、安全保障に対する論議というのが大変、言ってみれば数字のマジックのような、数字合わせの防衛力整備をしているような感にどうしても受けとめられてしまうのです。  ですから、私はあえてここで申し上げたいのは、そういうことではなくて、本来、世界の中の日本がどのように今後生存していくか、そのためには日本の国がみずからの役目をしっかりと認識をして、世界に対してもしっかりと意見が言える国を目指すというのがやはり必要だろうと思うわけでございます。そして、日本の常識は世界の非常識というようなことも言われるわけでありまして、一つの国と国が話し合う場合には、やはりお互いに役目を確認をし合った中で話し合いを進めていくのが基本だと思うわけであります。  国を守るというのは、私は本当に国民としての最低限の義務であろうと思うわけでございますし、また、それを我々自身がしっかりと国民に対して問いかけていくことも必要なことだろうと思うわけでございます。ぜひとも、自衛隊の長として長官いらっしゃるわけでございますので、今、目先のことでいろいろな動きがあるわけでありますけれども、そうではなくて、やはり必要なことははっきりとおっしゃっていただいて、今後の自衛隊、ましてや日本安全保障というものを広く国民に理解されるような御努力をお願いをしたいと思いますし、我々もまた長官を支えて今後もその活動をしていきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いをする次第でございます。  時間の方が大分なくなってまいりまして、私の質問も今の質問で大方私が考えていたところまでは終わったわけでありますけれども、最後に私は、先ほど渡瀬先生が日米関係をずっとおっしゃられましたので、私自身はこの点については少しだけ触れさせていただきたいと思うわけであります。  長官、何回も御答弁になられておるわけであります、ほかの委員会でも参議院でもお答えになっておるわけでございますけれども、今回の沖縄における問題に端を発して日米安保体制に関する議論が巻き起こっておるわけであります。確かに沖縄の事件は許しがたい行為でありますし、法的にも道義的にも厳しく対処されるべきものと考えますが、他方、かかる事件を反映した国民感情によって日米安保体制全体に影響を及ぼすことは問題であるように私は思うわけでございます。  日米安保体制我が国の平和と繁栄の前提であると認識した上で、沖縄問題と日米安保体制の堅持とは明確に区分するべきではないかと私は思うのでありますが、どのようにお考えでございましょう。
  47. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 今回、沖縄で起きました不幸な事件、極めて遺憾でありまして、残念に思っております。再発の防止あるいは在日米軍の綱紀粛正、そういうことにつきましても訓練面につきましても再考を促したい、このように思っております。  なお、御指摘の点でありますが、沖縄の基地問題、これはまさにローカル、沖縄県の問題でもあります。しかし、中央、東京の、政府の問題でもあります。一方、これはグローバルな問題でもあります。まさにそういうような観点におきまして私どもはとらえていかねばならぬ。  ただ、基地の安定的使用、こういう問題につきましては、言うまでもなく、周辺市町村あるいは市民の皆様との十分な連携、御協力がなければ成り立たないわけでありますから、その視点を大切にせねばならぬ。そして、そういう立場に立って、とりわけ沖縄県が置かれてきました戦後五十年の歩みをしっかりなぞらえまして、私どもとしては基地問題の解決に向けたあらゆる努力をしたい。それは、日本政府ひとりのみならず、米国政府の御協力もいただきましょう、また、防衛庁ひとりのみならず、村山総理の御指摘のとおり内閣を挙げて、一体となってこの問題に当たらなければならない、そういう基本的なスタンスでこの解決を図っていきたい、そういう位置づけ沖縄の問題をとらえているということを申し上げたいと思います。
  48. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 本当にそういう意味では大変デリケートな問題でもありますし、慎重にまた対処をしていただきたいと思うわけでございます。  そして、二、三質問があったわけでありますが、時間の方があと五分少々になってまいりましたので、最後に一つだけお伺いをしたいと思います。  いわゆるACSA、物品役務融通協定については、日米間の信頼性向上のためには非常に重要な施策と私も認識をしておりますが、現段階における作業の進捗状況と、そしてまた、次期通常国会に上程するとのお話もあるわけでありますが、政府としての準備は順調に進展されておるのかをお聞きしておきたいと思います。
  49. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 お答えを申し上げます。  物品役務融通協定、つまりACSAでございますが、これは、昭和六十三年の第十八回日米安保事務レベル協議、SSCにおける日米間の話し合いを受けまして、現在、この仕組みの導入にかかわる法的な側面等について検討しておるわけでありまして、また在日米軍等とも適時意見交換を行っております。  この問題につきましては、先般ペリー長官との会談におきましてもその重要性につきまして認識の一致を見たところでございまして、御指摘の問題につきまして私どもも、極めてこのACSAが肝要である、そういうような認識に立って取り組みをしておるということを申し上げたいと思います。
  50. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員 この協定についてはいろいろと現場の方での不自由さというものをお聞きしておるところでございますので、ぜひとも政府としても積極的に取り組んでいただいて、早期の協定の批准というか締結をお願いをしたいと思います。  大変乱雑な質問で長官には申しわけなかったと思いますけれども、ぜひとも今後とも、日本安全保障上重要な役割を担っておられるわけでございます、長官のさらなる御検討を心からお祈りいたしまして、私からの質問にかえさせていただきます。  本日はありがとうございました。
  51. 神田厚

    神田委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時十九分開議
  52. 神田厚

    神田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件についてお諮りいたします。  外務委員会において調査中の国際情勢に関する件につきまして、外務委員会に連合審査会開会の申し入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 神田厚

    神田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会の開会日時等につきましては、関係委員長と協議の上、追って公報をもってお知らせいたします。      ————◇—————
  54. 神田厚

    神田委員長 午前中に引き続き質疑を続行いたします。愛知和男君。
  55. 愛知和男

    ○愛知委員 新進党の愛知和男でございます。  二年ほど前には防衛庁長官をいたしていた関係もありましてちょっとやりにくい面もあるのでありますが、またそのときと立場ががらっと変わって、今野党の立場でございますが、国の安全保障というのは大変大事なテーマでございまして、その立場を離れてからも、個人的に私は国の安全保障のために微力ながら努力をしてきたつもりでございます。私の今の立場から、長官にあるいは当局に幾つかの質疑をさせていただきたいと思います。     〔委員長退席、赤松(正)委員長代理着席〕  それはそれとして、最初に、いささかおくればせでございますが、長官、御就任おめでとうございました。先輩で、防衛庁長官を拝命したときに男子の本懐と言った有名な人がおりますが、国政に携わる者としていろいろとやりがいのある仕事はいっぱいございますが、防衛庁長官などというのは最もやりがいのある仕事ではないか、このように私は思うのでございます。今いろいろ状況は難しい面がございましてなかなか御苦労が多いと思いますが、ぜひ頑張っていただきたい、まずもって御激励を申し上げたいと思います。  また同時に、防衛庁の諸君、また第一線で任務に当たっております自衛隊の諸君、それぞれ今なかなか厳しい状況でございますから御苦労も多いと思いますが、私は、長官の任を離れましてからも機会をとらえて部隊視察などを続けておりまして、第一線の人たちを激励したり、あるいは生の声を聞かせていただいたりしてまいりましたが、皆本当に一生懸命頑張っておられます。日ごろの御努力に心から敬意を表すと同時に、ぜひ今後とも頑張っていただきたい、この機会をかりて御激励を申し上げておきたいと思います。  さて、午前中も自民党の方から新防衛計画大綱につきましていろいろ御質疑がございました。この防衛計画大綱の問題について、私もいろいろと質疑をさせていただきたいと思います。  たまたま私の手元に、十一月七日に社会党がお出しになりました「今後の防衛力の在り方について 新防衛計画大綱策定作業に対するわが党の提案」というぺーパーと、それから同じく十一月の初めだと思いますが、自民党の政務調査会の国防部会と安全保障調査会、基地対策特別委員会、この三つの部会、調査会でおつくりになりました「今後の防衛力のあり方」、二つのペーパーがございます。  それから、私ども新進党では、党としてのこのようなものはまだまとまっておりませんが、新進党の中に安全保障議員連盟という有志の会がございまして、私がその会長を務めております。この場におきまして八月の末からいろいろと防衛力のあり方の問題について議論を続けておりまして、まだ途中でございますが、途中の段階でまとめたペーパーがございます。  この三つをもとにして、長官なりあるいは当局の考え方などをただしてまいりたい、このように思います。  まず社会党の出されましたものと自民党の出されましたものを見ますと、強烈な印象をまず受けるわけでございます。その印象というのは、余りに大きな違いがある、こういうことでございまして、この二つの政党が連立政権、一つの政府をつくっているかと思うと、まずびっくりするような話でございます。どうしてこれで連立政権ができるのだろうか、不思議でならないのがまず強烈な印象でございます。  この安全保障の問題などというのは、ほかの政策課題と違いまして足して二で割るというわけにはいかないわけで、国の根幹にかかわる話です。哲学が違うわけですから、これは一体どうされるのか。これで一体連立政権ができるのか、これから維持できるのかどうか非常に不思議でならないわけでございますが、具体的に幾つか聞いていきたいと思うのでございます。  まず、国際情勢の基本的な認識でございますが、社会党のペーパーでは、「わが国をとりまく国際情勢が不安定・不確実な要素を含んでいるとしても、」「わが国の積極的な働きかけによって、より平和で安定的な安全保障環境を創造していく可能性があることを意味している。」こういう記述があるわけでございます。一方、自民党のぺーパーは、基本認識として「わが国を取りまく国際軍事情勢については、冷戦終結後、不透明性・不確実性を増している面があることは否定できない。」これは基本認識が全然違うと思うのですが、いかがでしょうか。
  56. 小池寛治

    ○小池政府委員 我が国周辺地域の軍事情勢についての見方について御質問だと受けとめましたけれども、先生が読み上げられました考え方というのは、基本的な認識としては一致しているかと思います。  すなわち、アジア・太平洋地域というのは、先生もよくおっしゃっておられることですけれども、地理的、歴史的に極めて多様性に富んで、各国の安全保障観がさまざまである。極めて複雑な軍事情勢となっている。冷戦終結後も、ASEANリージョナルフォーラムに見られるように、地域の安全保障問題に関する対話というのはようやく端緒についたところである。そういう努力というのは見られますけれども、朝鮮半島、南沙群島あるいは我が国の北方領土などの諸問題が未解決のまま存在しているという基本認識については一致しているかと思います。
  57. 愛知和男

    ○愛知委員 冷戦後の国際情勢をどう見るか、非常にプラスの好ましい状況と、逆に好ましからざる状況と、両方起きているわけでございまして、その両方をどういうふうに位置づけるかというところが大事な点なんであります。好ましい状況だというところに重点を置くのか、好ましからざる状況が起きているというところに重点を置くのかによって大分違うわけですね。  社会党の方は好ましい状況というところに重点を置いている、自民党の方は好ましからざる状況というところに重点を置いている、重点の置き方が違うと思いますね。いかがでしょうか。
  58. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 どちらに重点を置くかということでございますが、先生御指摘のとおりでありまして、私どもは、我が国を取り巻く国際情勢軍事情勢は極めて不透明、不確実、不安定なものである、そういうところにアクセントを置いておるということでございます。
  59. 愛知和男

    ○愛知委員 そうなりますと、社会党の認識とは違う、こういうことですね。
  60. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 社会党の認識よりももっと厳しく現実を踏まえておる、こういうことであります。
  61. 愛知和男

    ○愛知委員 社会党のペーパーは、むしろ好ましい状況が起きている、そういう基本認識のもとに、その次にどういうことが書いてあるかといいますと、「積極的に自国の軍縮をすすめ」る、こういうところにつながっているわけでございます。自民党のペーパーはどうかというと、「冷戦の終結という事態をうけて短絡的にわが国も軍縮をすべきであるという考え方はとるべきではない。」これは全然違いますね。どっちをとるのですか。
  62. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 国際的なトレンドとして軍縮・軍備管理があることも事実であります。  しかし、今議員指摘のような我が国周辺軍事情勢、そういった問題をとらえてみますと、私ども政府として新防衛大綱に示したそういう基本認識をとることがいいのではないか、このように思っております。
  63. 愛知和男

    ○愛知委員 確認をいたしますと、長官認識としては、長官自民党所属ですから自民党の考え方のように、「冷戦の終結という事態をうけて短絡的にわが国も軍縮をすべきであるという考え方はとるべきではない。」こういう考え方を基本にしているということでよろしいのですか。
  64. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 一国のみで国の確かな安全を確保することはできません。当然その前提となるものは、日米安保体制というものをしっかり踏まえた我が国防衛力のあり方、こういうものが検討されましたし、またさらには、単に安全保障防衛力という面のみならず、外交あるいは政治あるいは経済の安定、そういうような諸要素もしっかり視野に入れた中での我が国防衛のあり方を規定した、こういうことでございます。
  65. 愛知和男

    ○愛知委員 とにかく社会党のペーパーには至るところに軍縮、軍縮と出てくるわけですね。これはやはり社会党らしさを出そうということなのかもしれませんけれども自民党の考えられていることと社会党の考えられていることは基本的に違う、このように私は言わざるを得ない。今の長官の御答弁でもその違いがはっきりしていると思いますが、少し先に進ませていただきたいと思います。  社会党のペーパーによりますと、「アジア太平洋においては、地域的安全保障機構の確立をめざす。」こういう記述があるのでございますが、自民党のペーパーによりますと、「アジア・太平洋地域における多国間の安全保障の枠組みが早急にできるとは考えにくい。」これまた正反対なことが書いてある。この点についてはどうですか。
  66. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御案内のとおり、ヨーロッパと違いまして、アジア・太平洋地域におきましては、その国々のよって成り立つ政治とかあるいは経済とか、そういうような発展過程も違いますし、また、NATOのような一つの信頼関係でもって構成された地域集団安全保障体制というものはアジアでは急にはなかなか構築されにくいのではないか、このように思っておるわけでございます。  しかるに防衛庁といたしましては、日米安保体制、バイラテラルのこの関係をしっかり堅持し、そして強化する、そしてその中に太平洋・アジア地域の国々とのマルチラテラルの安全保障というものを位置づけていきたい、このように考えております。
  67. 愛知和男

    ○愛知委員 アジア・太平洋の地域安全保障の問題についても、社会党の考え方と自民党の考え方は全く違うわけでございます。  その先に、具体的にどういうところに出てくるかといいますと、社会党のぺーパーによりますと、「アジア太平洋地域における軍縮の推進、緊張要因の除去と地域的安全保障機構の確立に努めることによって、」「東アジアにおける米軍十万人体制の見直しを検討する。」こうなっているわけです。一方、自民党のペーパーは、「わが国としては、かかる米国存在役割を十分に認識し、米国アジア・太平洋地域への関与を引き続き確保すべきである。」全然違いますね、これは。この点について、どうですか。
  68. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ポスト冷戦のいわゆる九五新防衛大綱、その前提となっておりますものは、まず日米安保体制、そして我が国の専守防衛基盤防衛力整備、こういうことになっておるわけでございます。  結論といたしまして、ナイ・イニシアチブ、すなわちナイ報告に見られますように、十万人の前方展開、そして日本における四万七千人の前方展開、プレゼンス、米軍のコミットメント、そういったものを前提にして、私どもは新大綱というものをこれからお示しするわけでございます。
  69. 愛知和男

    ○愛知委員 つまりそうすると、社会党のこの基本的なアジア・太平洋地域に対する認識、あるいはそれに基づく米軍のプレゼンスの問題、これは全く考え方が違う。長官あるいは防衛庁と考え方が違う、こういうことでいいのですか。
  70. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 連立政権ではございますが、各党それぞれの立場がございまして、各党の立場について防衛庁長官として論評することはいささか避けたいとは思いますが、あくまでもそういうことも視野に入れて、政府、防衛庁としての考え方をここで申し述べておるつもりでございます。
  71. 愛知和男

    ○愛知委員 各党の、他党の意見、考え方に論評するわけにはいかないというような話ですが、連立政権を組んでいるのでしょう、自民党と社会党は。しかも、冒頭に申し上げましたとおり、安全保障の問題というのは基本的な哲学の話なのですから。ほかの課題とは違いまして、足して二で割るとかどこかで妥協するとかそういう課題ではないわけです。ですから、今のお答えにはちょっと不満ですね。これだけ基本的に認識が違うのに、どうして一つの政権でいられるのですか。
  72. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御案内のとおり、昭和五十一年にできました防衛大綱、それが二十年たちました。そして冷戦が終えんし、ポスト冷戦の新大綱というものを私ども政府としてお示しし、そしてこれから連立与党のそれぞれの政策調整機関で盛んな真剣なこれについての議論が行われるものと。私どもは、政府としての九五新防衛大綱をお示しした、こういうことでございます。     〔赤松(正)委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 愛知和男

    ○愛知委員 もう少し、細かいことになりますが、まだ幾つか大事な違いがございまして、例えば物品役務融通協定いわゆるACSA、「(ACSA)の締結の是非については、集団的自衛権との関係等を十分に整理する。」これは社会党のペーパーに書いてあることですが、一方自民党の方は、「(ACSA)をはじめとする相互後方支援及び運用面における協力体制の充実や米軍駐留が円滑かつ効果的に行われるよう各種支援を推進すべきである。」このACSAの問題についても姿勢が大分違う、このように思いますが、いかがですか。
  74. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在我々は、ACSAの問題につきまして関係省庁それから米側とも協議しながら検討を進めておりますけれども、当然のこととして、そのACSAの協定ですとか法令の検討の中で我々は、現在の憲法の枠内、すなわち集団的自衛権を行使しないという枠内で検討しているものでございます。
  75. 愛知和男

    ○愛知委員 それはいいのですけれども、要するに姿勢ですね、ACSAの。推進するのか、それともできるだけやらないようにしようか、消極的だ。姿勢が大分違うと思うのですが、まあいいです。  そのほかに、「有事法制の整備には慎重に対応する。」これは社会党のペーパー。自民党は、「法制面の措置を含め、危機管理体制を早急に確立すべきである。」この点についても随分違いますね。いかがですか。
  76. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 有事法制につきましては、これまでも研究を進めているところでございまして、研究を早く終えて法制化すべきであるというのが防衛庁の立場でございます。  しかし、この有事法制そのものにつきましてはいろいろと議論のあるところでございますので、国会での御審議あるいは国民の中での議論を踏まえて対応してまいりたいという意味におきましては、現時点で我々も慎重に対応しているというのが現状でございます。
  77. 愛知和男

    ○愛知委員 さすがになかなか上手な御答弁でございます。  もう一つ別なテーマですが、PKOですね。社会党のペーパー、「PKF本体業務の凍結解除、武器使用原則の見直しは行わない。」これはきっちり言い切っておりますが、自民党の方は、「自衛隊のPKO活動については、その任務を効果的に実施するために、いわゆるPKF本体業務の凍結解除及び武器使用の原則の見直しなどについて、十分な議論を行い、早急に結論を得るべきである。」この自民党表現は、社会党にいろいろ配慮してこういう表現になっているのかもしれませんが、言わんとするところは、早く凍結解除をすべきだ、武器使用の原則についても見直すべきだ、こういうことだと思いますが、これも大分違う。いかがでしょうか。
  78. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 武器使用の点につきましては、これまでの自衛隊のPKO活動等への参加を通じましていろいろと我々問題意識を持っているのは、御案内のとおりでございます。そして、現在の国際平和協力業務法の規定によりましてその法律の施行のことにつきまして見直しをするということに基づいて、この秋以降検討が始まっているところでございます。  当然、この武器使用の問題につきましてもその検討対象の一つになることは我々考えているところでございますが、それを法律改正で対応すべきかあるいは現行の法令の中で対応すべきか、あるいはどのように対応すべきか、これから検討するところでございます。
  79. 愛知和男

    ○愛知委員 もう一つ、社会党のペーパーでは、「「集団的自衛権」は行使しない。」はっきり言い切っておりますが、自民党の方は、「国連における集団安全保障と集団的自衛権に関する論議を深めるべきである。」これも基本的な姿勢に大分違いがあるように思いますが、いかがですか。
  80. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 集団的自衛権の行使、これは国際法上認められておりますが、我が国憲法上これを、この範囲は許されない範囲である、そういう認識に立っておるわけでございます。
  81. 愛知和男

    ○愛知委員 この集団的自衛権の問題については、後ほど、私のあるいは私どもが有志で議論してきましたことをちょっと申し上げたいと思いますが、社会党と自民党の考え方はこの点についても十分違う、こう思います。  まあ、今まで国際情勢の基本的認識とか、それに基づく安全保障の基本的な考え方について違いを幾つか指摘をしたわけですが、具体的に、それぞれ自衛隊がどういう防衛力を持つべきかということについてもこの社会党のペーパーは随分思い切っていろいろなことが書いてあります。例えば陸上自衛隊ですと、陸上自衛官の数は十五万以下の十四万程度にする。二〇%の削減。「戦車は三〇%、主要特科火力は二〇%程度減らす。」ずばりこう書いてありますが、いかがですか。
  82. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 私たちもつい先日社会党のこの案を知ったわけでございまして、これから、その与党である社会党ともよく意見交換させていただきたいと思っております。  例えばその定員の問題につきまして、今御指摘になったようなことが提言されておりますけれども、陸上自衛隊について申し上げますれば、やはり部隊の再編なりあるいは仕組みなりどうするのかという議論をした上で、結果として定員がどうなるのかということになるわけでございます。したがいまして、その部隊の再編なり再構成なり、そこの議論をよくやらせていただいて、十分意見交換をした上で、我々としては理解を深めていただきたいと思っておりますけれども、まだ具体的な議論をしている段階ではございません。
  83. 愛知和男

    ○愛知委員 さっき陸上自衛隊のことを申しましたが、その中で、若干細かいといえば細かいことになりますが、「即応予備自衛官制度は導入せず、現行の予備自衛官制度で対応する。」これは社会党のペーパーです。自民党の方は、「即応性の高い予備自衛官制度を導入すべきである。」正反対のことが書いてあります。いかがですか。
  84. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 ただいま政府としては防衛力のあり方の検討をしておりまして、安全保障会議で、新しい防衛大綱策定についてかなり最後の段階に審議も入ってきております。これまでのところの私の理解では、その防衛力のあり方の見直しの中で、陸上自衛隊の定員の削減と同時に、この即応予備自衛官制度の導入ということは一つのワンパッケージとして御提案をし、御理解を得られつつあるというふうに認識しているところでございます。
  85. 愛知和男

    ○愛知委員 海上自衛隊に関しましては、冒頭に「シーレーン防衛構想を取りやめ、」云々、こうなっています。これはもう基本的に海上自衛隊役割を変えるということ、これは社会党のペーパーですが、そういう基本的な役割を変えるということで、その後何々は何ぼ減らすというのがずっと出ているわけですが、この点についてはどうですか。
  86. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 我が国経済ですとか貿易ですとか、そういう実態面からいたしまして、かなりの輸出入を前提にした実態を考えますと、いわゆるシーレーン防衛という形での海上防衛力は、これは基本的なものという認識を我々はしております。  したがいまして、社会党から意見が出ておりますこの点につきましては、十分これから意見交換をしてまいりたいと考えております。
  87. 愛知和男

    ○愛知委員 航空自衛隊、これについては、「洋上防空構想を取りやめ、領空防衛に集中する。」こういうことが冒頭に書いてありますが、これまた何々を何ぼ削る、こうずっと書いてありまして、例えば空中給油機は導入を見送る、こういう ことが書いてありますが、この点についてはいかがですか。
  88. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 我が国は従来から、航空警戒管制部隊、要撃戦闘機部隊、地対空誘導弾部隊等を保有することによりまして、必要となる防空機能の充実に努めてきているところでございます。  今御指摘になりました洋上防空でございますけれども、これは、こうした防空機能の一部として航空機やミサイルによる空からの攻撃を洋上において撃破したり阻止する、いわゆる洋上における防空機能のことをいうものと理解しておりますが、このような機能については引き続き必要であるというふうに我々は考えております。  与党である社会党ともこれからよく意見交換をさせていただきたいと思っております。
  89. 愛知和男

    ○愛知委員 社会党と自民党の基本的な考え方あるいはそれに基づく具体的な両党の違いを幾つか申し上げてまいりました。何回か申し上げましたけれども、これだけ基本的な安全保障に関する哲学が違う二つの党が連立政権、一つの政権を構成している。こういうことで果たしていいんだろうか、日本の国はとんでもないことにならないだろうかと心配でならないわけでございます。しかも、タイミングがいかにも悪い。  今、これからおよそ十年ぐらいの期間を視野に入れた防衛計画の基本的な構想をつくろうという時期ですね。現行の大綱は二十年。しかし、これからつくるのは、これから二十年というのは幾らなんでも長過ぎると思いますが、しかし大綱と名のつくようなものをつくるとすると、まあまあ十年ぐらいは視野に入れなきゃならないんじゃないかと思います。その大事なものをつくるときに、これだけ基本的な考え方が違う二つの政党がつくっている連立政権で果たしてちゃんとしたものができるんだろうかと、非常に心配でなりませんね、正直言いまして。私は、今この時期に防衛計画大綱をつくるということ自体やめるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  90. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ポスト冷戦、この時期にありまして、確かに、愛知議員指摘のとおり、これから国際環境、軍事情勢、いろいろと激しく動くだろうと思います。とりわけ、これから年末にありますロシアの下院選挙、またロシアの来年六月の大統領選挙、さらには来年十一月の米大統領選挙、そういうものも非常に大きなインパクトを与えてくる、このように思っております。そういう意味から、私ども日米安保体制を堅持する、そして米国も太平洋・アジア地域の十万人のプレゼンス、そしてはっきりと在日米軍四万七千人を堅持するということ、逆にそういったことを見越してお示ししたもの、私はこのように思っております。  ですから、そういう意味では、この防衛大綱の一本の柱である日米安保体制というもの、そういうものを逆に先取りして、見越して、しっかり位置づけをした大綱を我々もお示しをした、こういうことでございます。そして、それに伴うところの、今いろいろと御意見のありました我が国基盤防衛力のあり方、整備、そういうものもワンセットでお示しをしておるわけでございます。  御懸念のこともよくわかりますが、そういうこともしっかり視野に入れた今回の大綱であるということも申し上げたいと思います。
  91. 愛知和男

    ○愛知委員 今この時期にどうしても大綱を、新しい大綱をつくらなければいけないんですか。
  92. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 一つは若干手続的なことを申し上げるわけでございますけれども、既に閣議決定をされました現行の中期防衛力整備計画の中で、この現行の中期防衛力整備計画が終了するまでの間に防衛力のあり方について検討をすべきということが決定されているわけでございます。それで、数年前から検討を始め、正式にはこの六月から安全保障会議を開催して御審議をお願いしているということでございます。  現在の中期防の期間中ということは、厳格に言いますと来年の三月まであるわけでございますけれども、当然、この防衛大綱は例えば次の新しい次期中期防にも関連いたしますし、新しい次期中期防がもしできますとすれば、当然八年度予算にかかわることでもございます。  いずれにいたしましても、現在、総理大臣から正式に安全保障会議に八年度以降の防衛計画大綱についての諮問が出されておりますので、早急にその答申を出さなければならないという状況にある、これは手続的なことでございます。  他方で、冷戦の終結等によりまして、御案内のとおり国際情勢が大きく変化しております。と同時に、防衛庁自衛隊の主たる任務が我が国防衛であるということは、これは当然であるといたしましても、大規模災害とかあるいはいろいろな各種の事態、多様な危険といったものに対する対応、それから、例えば国際平和協力業務といったような、より安定した安全保障環境の構築への貢献といった分野で自衛隊役割に対する国内外からの期待が高まっているという状況を踏まえますと、そして、かつ冷戦後の日米安全保障体制について新しい観点からの再確認といったような状況を踏まえますと、ここで防衛大綱の見直しをするということは、タイミングとして適当な時期ではないかというふうに考えております。
  93. 愛知和男

    ○愛知委員 手続的な話はわからなくはありませんけれども、しかし、手続を決めたからそれに沿ってやらなければならないということではなくて、やはり国の情勢、国際情勢がいろいろ激動しているときでございますから、それに応じて柔軟に対応したっていいわけであります。  来年度の予算というのは、確かに新しい中期防をつくった中でその初年度、そういう位置づけにしたいという気持ちはわかりますけれども、何もそうしなくたっていいわけで、予算というのは単年度なんですから、とりあえず来年だけ、一年だけ予算を組んでおくということだってできるわけですから、私は、手続的にもどうしても今この時点で大綱を決めなければならないということにはならない。  また、いろいろ国際情勢が変化をしている中で新しいものをつくらなければいけないという今の話は、また逆に言えば、まだいろいろな議論があるわけですから、その議論を十分に踏まえて日本の将来を誤りないものにする慎重な対応というものが必要だということも言えるわけでございまして、私は再度、この時期にどうしても新しい大綱をつくらなきゃならないということで無理無理つくるというのは、反対でございます。  そのことを申し上げ、さらに、先ほど何回も申し上げましたけれども安全保障という国の基本、根幹にかかわる話というのは、それぞれの政党の、いわばよって立つところといいましょうか、足して二で割るような話ではない。そのことをよく踏まえて、連立政権をまず維持しなきゃならないということを大前提にしてそれでどうするかというと、どこかで妥協するわけですよ。これはだめだと。相入れないのだったら、連立政権を解消したらいいじゃないですか。それくらいのイシューだと私は思うのですね、安全保障の話というのは。どうでしょうか。
  94. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御指摘のとおり、安全保障というものは国の存立の根幹にかかわる問題でございますし、全く御指摘のとおりだと私も思っております。  また、こういった新大綱をお示しするその国内の政治環境、こういうことも今御指摘がありましたが、私は、自衛隊の問題あるいは日米安保体制、こういうことにつきまして長い間反対の立場をとってきた社会党が、政権に参画をする。そして、自由民主党の単独政権ではなく、社会党そしてさきがけという、きわめて広範な、国民各界各層の意見を代表する政党が政権をつくり、国の存立の根幹にかかわる安全保障の問題についてもかんかんがくがく議論をして、そしてそこに集約された一つ安全保障政策が構築される、こういうことも私は大変意味のあることだ、このように思っておる次第でございます。  その前提というものは、連立を維持するためにということではございませんでして、国の安全保障というものは当然、愛知議員の御指摘のとおり国の存立にかかわる根幹であるという大前提に立って、こういった新大綱がつくられ、そしてお示しをされる、このように思っております。
  95. 愛知和男

    ○愛知委員 いろいろ厳しく指摘をしてまいりましたけれども、国の将来を誤りないようにしていかなきゃならないという思いからでございますから、ぜひひとつ御理解をいただきたい。  こういう非常に難しいときに長官をお務めになり、あるいは当局の諸君も大変御苦労が多いということは察するに余りあるところでございますが、重ねて、将来誤りのないようにぜひ正しい対応をしていただきたい。私どもも、積極的にこれからも発言をしていきたい、このように思います。  時間がなくなってしまいました。本来、私どもが用意をしましたペーパーについて、これを申し上げてその感想なり何なりをお聞きしていこうと思ったのでございますが、時間が足りなくなりましたが幾つか申し上げます。  私どものペーパーでは、「日米安全保障体制の堅持」ということを非常に強く重点を置いて述べておりまして、日米安保体制意味などを、例えば安保体制は東アジアの安定を維持するために非常に意味のあるものだというようなこととか日米安保体制というのは日米関係そのものの基盤をつくっているものだ、あるいは日本防衛という点にとってももちろん日米安保体制は大事だというような幾つかの指摘をしまして、日米安全保障体制に基づく日米同盟関係をこれからもより一層確固としたものにしなければならないと。  ところが、  この日米同盟に対して日米両国の社会からいろ  いろなさざ波が押し寄せつつある。特に、米国  からは、日本日米同盟に依存しすぎて、やる  べきことをやらない不満が出始めている。そし  て日本からは、日米同盟のもつ役割がはっきり  せずに、日米同盟はなくてもやっていけるとい  う意識の高まりが出ている。こういう認識を書いてございますが、いかがですか。
  96. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 日米安保体制に対する定義あるいは評価が、若干そのような意見の分かれるところであるということも認識をしております。  それは、我が国にありましては長い間いわゆる第二の政党でありました社会党が、自衛隊を認めず、また日米安保体制に反対する、そういう立場でこの問題が議論をされてきた、そういう経緯もこれあろうかと思いますし、また、日米安保体制につきましての評価について、それが、このハウス、国会の場、あるいは政府、あるいは政党、そういうような場で限定されて議論をするような、そういう感が否めない面もあったと思います。  問題点は問題点として、世論の場、メディアの場、そしてまた今回起こった沖縄県のような問題を踏まえまして、地方の問題といたしましても、こういったことがもっともっと議論をされるべきであったと思います。これからはそういうところに留意をいたしまして、日米安保の積極的な評価、そういうものもしていかなければならない、このように思っております。  とりわけ、日米安保が、バランス・オブ・パワーの、いわゆる抑止的な側面というものが非常に評価されておった。これからは、議員指摘のとおり、新しい国際環境を構築あるいはそれに向けての貢献をするアジア・太平洋地域の新しい国際環境あるいは平和秩序、そういうものをつくるに当たっての創造的な立場、そういう面も日米安保体制は備えているということを、もっともっと私は広く国民に御理解を求める必要性があるのではないかこのように考えておる次第であります。
  97. 愛知和男

    ○愛知委員   日本日米安全保障体制を堅持し強化するため  に、国内においていかなる体制を整えるべきか  について、前向きにとらえていく必要がある。具体的には、   日本が集団的自衛権を行使し、あるいは、米  国に対する後方支援活動を広げることによっ  て、日米共同行動を進展させることは当面の重  要課題である。   さらに、日米地位協定を将来、日米安全保障  体制の信頼性を向上するよう改正する必要があ  る。これらの中には、日本の諸施設米国が一  層柔軟に使用できるようにし、また、日本がそ  の経費分担を増やすことのできるよう所要の改  正を行うことが含まれるべきである。   在日米軍がより良好な環境のもとで駐留でき  るよう、日米間の協力が必要である。ACSA  や日米防衛協力をすすめることも重要であり、  特に、北東アジアの緊急時を想定した防衛協力  のあり方について検討することは、当面の緊急  課題である。  以上の点についてはどうお考えになりますか。
  98. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 例えば地位協定の見直し等の問題については、御案内のとおり、地位協定につきましては見直しをせず運用の面において対処するという日米の合意ができたばかりでございます。  それ以外の問題点につきましては、ACSAの問題等いろいろと御指摘されましたが、防衛庁といたしましても大変重大な関心事項であるということを申し上げたいと思います。
  99. 愛知和男

    ○愛知委員 集団的自衛権の問題についてはお触れになりませんでしたが、いかがですか。
  100. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 この問題につきましては、先ほど防衛局長にも答弁させましたし、私も触れたところでありますが、我が国が国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然でございますが、憲法第九条のもとにおいて許容されている自衛権の行使というものは、我が国防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきものでありまして、集団的自衛権を行使することはその範囲を超えるものである、この認識に立って、憲法上は許されないものと考えておるところでもございます。
  101. 愛知和男

    ○愛知委員   わが国政府は、わが国は国際法上は集団的自衛  権を有しているが憲法上その行使は認められな  いという解釈をとってきた。しかしながら、国  連憲章及び日米安保条約前提としている集団  的自衛権を行使しないという政策は、それが国  家存立に関わる基本的な問題であるだけに妥当  なものとは認め難い。さらに、日米両国は、将  来におけるわが国を含むアジア、太平洋地域の  平和と安定のために、真の同盟国として共通の  目標に向けて努力すべき時期を迎えている。こ  のような情勢の下で、わが国が従来のようにす  べての事態に対して、集団的自衛権の制約を理  由に米国との共同行動を拒否する政策を継続す  るならば、わが国の国際社会における孤立及び  日米安保体制の崩壊を招き、国家としての存立  を危うくする恐れが大きい。   したがって、わが国としても必要な範囲で集  団的自衛権を行使するという政策への転換を決  断すべきである。  このことについてはどうお考えですか。
  102. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 新大綱におきましても、憲法上許される最大限のところを私どもお示ししたつもりでございまして、その辺のところについては御理解をいただきたいと思います。
  103. 愛知和男

    ○愛知委員 この集団的自衛権の行使ということについては、私どもの党でも実は議論があるところでございまして、ここのペーパーに書きましたものは私あるいはその同志、有志でつくりましたもので、大変議論のあるところでございます。しかし、これは大いに議論をすべきことだ。集団的自衛権は、従来から御承知のとおり、これは日本は固有の権利として持っている。しかしながら、憲法の解釈としてこれを行使しないということでやってきた。だから、解釈を変えればいいのですよ、極端に言えば。そうじゃないですか。したがいまして、これは憲法を変えるかどうかの話じゃなくて、憲法の解釈を変えればいいのですから。したがって、これは決断さえすればできる、こう いうことだと私どもは基本的に認識をしておりまして、その決断をすべきときではないだろうかということでございます。  しかしながら、この問題についてはいろいろな議論があるところでございますから、これからも折に触れ議論をしていきたい、このように思います。  時間がなくなってまいりましたが、一つ、「健全なシビリアンコントロールの確立」という項を立てましてこういうことを述べているわけです。  冷戦構造が消滅しわが国においてもイデオロ  ギーに基づく基本的対立がほぼ解消された情勢  の下では、より建設的、具体的な論議が軍事に  関する優れた見識に基づいて実現されるべきで  ある。   また、安全保障及び防衛政策が誤りなく遂行  されるためには、内閣総理大臣をはじめ政策決  定に携わるポストに、軍事専門的立場の意見が  必要に応じて適時適切に伝えられる事が不可欠  である。   さらに、従来自衛官の活動の場を局限しよう  とする傾向があったが、幅広い判断と政策決定  のためには、このような在り方は改めるべきで  ある。同様な見地に立って、防衛庁内における  文官と自衛官との任務分担、すなわち防衛行政  事務と部隊運用・訓練任務の所掌の見直しも行  われる必要がある。  この点についてはどうでしょう。
  104. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御指摘のとおり、国の守り、安全保障というものはまさに総合的な安全保障政策が確立されるべきである、こういう認識に立っておりまして、私ども防衛庁といたしましても、いわゆる政策官庁としてのしっかりとした位置づけもこれから必要になるであろう、このように考えております。
  105. 愛知和男

    ○愛知委員 私の少ない経験によりましても、自衛官の諸君というのはいわば専門家ですよね、その専門的な立場からの知識経験は実に豊富なものがある。特に私が印象として強く感じておりますのは、アメリカとの関係です。制服同士の交流というのは目立たないところで実に大きな交流が続いておりまして、その人間関係というのは日本にとって大変大事な財産だと私は思います。この自衛官の専門家としての知識経験というものが十分政策決定に生かされていないのではないかというのが印象でございます。  その一つの理由は、制服の人が総理大臣なり政策決定に当たる人に対して直接意見を述べる機会がない、あるいは、例えばこの国会に制服の人を呼んできて、そして直接我々議員がこういう場で意見を聞くということはできないのです。ですから、こういう体制を僕は改めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  106. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 あくまでもシビリアンコントロールでありますから、その基本原則にのっとりまして、今愛知議員指摘の点につきましても十分対応してまいりたい、このように考えております。
  107. 愛知和男

    ○愛知委員 時間がなくなりましてちょっと中途半端になるかもしれませんが、一つ、部隊の統合共国運用体制というものを確立すべきではないかという提言をいたしております。   統幕会議及び統幕議長の権限と責任を強化し  て、平時から有事に至る各事態における統合共  国運用体制を確立する。   このため、三自衛隊の統合運用及び米軍との  共国運用に関する基本計画の策定、並びに各事  態における統合運用の命令執行の権限を統幕議  長に付与するとともに、戦略情報組織及び中央  指揮・通信組織を統幕会議の下に設置する。  こういう提案をしているわけでございますが、このことについてはどうお考えになりますか。
  108. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 新しい防衛力のあり方の検討の中で、特に自衛隊の体制の検討の中で、我々も、統合幕僚会議機能の充実といったものについて一つの大きな課題として検討しているところでございます。  実態面として、今御指摘がありましたように、米軍との関係、特に米軍につきましては、例えば米国太平洋軍というのは統合軍でございますから、そういう意味では、米国とのいろいろな情報交換なり協議というものの統合幕僚会議というのは大変大きなパイプであるというのは御指摘のとおりでございまして、現在そういうことで統合幕僚会議が大きな役割を占めているのは事実でございます。  さらに、情報面におきまして、例えば、現在防衛庁として組織改正の要求を出しております情報本部の設置も、統合幕僚会議に設置したいということで考えておりますほか、今後の問題といたしまして、これはまだ具体案を得ているわけではございませんけれども、PKO活動等における統合幕僚会議の統合機能というものを重視した形で、これは法令改正にもかかわってくるかとは思いますけれども、検討しているということでございます。  ただ、我が国の国土の防衛に当たりましての統合調整機能というものはあくまでも統合調整機能でございまして、自衛隊法上で言うところの統合軍というものができた場合に限り統合幕僚会議の議長がその指揮命令系統に入ってくるというのが、現行の法令のところでございます。その点につきましては、陸海空の幕僚長を通じてその指揮命令系統をつくっているという現在の体制について、我々は現在のところ変えるということは検討しておりません。
  109. 愛知和男

    ○愛知委員 限られた時間でございましたので、十分意見交換をできなかった部分もございますが、いずれにいたしましても、いろいろと今の政権のあり方とかあるいは国の予算の状況とか、いろいろな面で大変やりにくい、厳しい立場の中で頑張っておられる長官あるいは当局、また自衛隊の諸君、ぜひひとつ、そういう状況の中ではございますけれども、頑張っていただきたい。  私どもも、野党の立場ではございますが、国の安全を守る、あるいは将来を誤りないようにする、こういう思いについては勝るとも劣らない、こういう思いでございまして、私どもの立場からも今後協力すべきところはぜひ協力していきたいし、一緒にやっていきたいという面は大いにございますので、とにかく頑張っていただきたい。御激励を申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
  110. 神田厚

    神田委員長 岡田克也君。
  111. 岡田克也

    ○岡田委員 新進党の岡田克也でございます。  六十分というお時間をいただきまして、主として大綱についていろいろ議論させていただきたいと思います。  議論に入ります前に、先ほどの愛知委員の質問に対する議論の中で、つまり与党の中で大分意見の差があるじゃないか、こういう問いに対しまして、先ほど長官は、安全保障の問題というのは国の存立の根幹にかかわることである、だからこそ今のこの幅広い与党の中でけんけんがくがく議論をして、そして安全保障政策について合意が得られていくということは非常に価値があるんだ、こういうふうに言われたと承知をしておりますが、それはまさしくおっしゃるとおりである、ぜひ与党の中で大いに議論をしていただきたい、こういうふうに思っております。  しかし、社会党の出しております大綱に関する案を見ておりますと、議論を尽くして本当に合意が得られるのだろうか、そういう気すらするわけであります。当然この大綱は最終的には閣議決定を経なければいけないわけでありますが、もし意見の合意が得られない、こういうことになった場合には、長官はどういうふうになされるおつもりでございましょうか。
  112. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 連立三党の政府でありますから、当然それぞれ各党の防衛政策についての意見があることも、よく承知をしております。また、岡田議員指摘の根幹の問題につきましても、いろいろの御意見もありましょう。私ども政府といたしましては、与党の各党の考え方を十分にお聞かせいただきまして、さらに言うならば、粘り強 く御意見を拝聴させていただきたい。そして、できる限り連立三党のそうした防衛政策に集約されるものが反映されるような形で防衛大綱、そういうものをこれからつくっていくようにいたしたい、このように考えておるわけであります。
  113. 岡田克也

    ○岡田委員 ぜひ立派な大綱ができるように議論を尽くしていただきたい、こういうふうに思いますが、もしその集約ができないということになれば、国の根幹にかかわる安全保障の問題でありますから、内閣総辞職に値することである、こういうふうに私は思うわけでございます。この点についてはこの場でこれ以上申し上げることではございませんが、ぜひしっかり議論していただきたい、こういうふうに要望しておきます。  さて、大綱についてでございます。  まず、現在の大綱について少し質問したいと思いますが、現在の大綱は約二十年前、昭和五十一年に閣議決定ということになっておりますけれども、このときの大綱前提となる我が国を取り巻く国際情勢はどういう状況にあったのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  114. 小池寛治

    ○小池政府委員 現在の大綱は約二十年前の一九七六年に策定されたわけですけれども、そのときの国際軍事情勢認識は、同じく大綱の中に書かれておりますが、世界的に見れば、米ソ両国を中心とする東西関係において対立要因は依然として根深く残っている、しかしながら、核戦争を回避し相互関係の改善を図るための対話が継続されている、それで、当時デタントとも称されたのですけれども、東西間に大規模な武力紛争が生起する可能性は低下していると見られた時期でございました。  我が国の周辺におきましては、当時中ソ対立というのは継続しておりましたし、それから、米中関係が改善された数年後のことでございます。それで米国、中国、ソ連三国間の均衡が成立している、他方、朝鮮半島の緊張というのは依然として極めて厳しいものがあった、我が国周辺諸国の軍事力も増強が続いていた、そういう国際軍事情勢認識のもとに大綱策定されたものでございます。
  115. 岡田克也

    ○岡田委員 今御説明いただきましたように、基本的には米ソのデタント、そして米中関係の改善、それから中ソの対立、そういう状況の中でこの大綱ができ上がっているという御説明であったと思いますが、その後、そういったどちらかというと緊張緩和の時代からまた逆戻りといいますか、アフガン侵攻もありましたし、いろいろな意味で米ソの対立が厳しい事態になった、そういう状況もあったと思います。  そういう波を乗り越えて二十年間この大綱が継続をしたというのは、どういう理由に基づくものなのでしょうか。
  116. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 御指摘のとおり、世界情勢、特に我が国を取り巻く安全保障の環境は、昭和五十一年に大綱が制定された後変化がございました。ただ、数年前の冷戦が終えんするという激変以前の変化というのは、一応、五十一年の当時想定した大綱国際情勢の範囲内という観点でこれまで大綱を運営してきたところでございます。
  117. 岡田克也

    ○岡田委員 二十年間、これだけ国際情勢が変化をする中で今の大綱が続いてきたというのはやや不思議な感じもいたしますが、いずれにしても、現在この大綱があるわけでございます。  この大綱の中で、本当にこの大網が前提としているかどうかは私もよくわからないのですが、基盤防衛力という考え方がございます。これについての基本的な中身といいますか、内容といいますか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  118. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 基盤的防衛力構想とは、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するというよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する、そういう考え方でございます。  そして、この考え方に基づく防衛力の中身でございますけれども、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼」としたものでございまして、我が国の置かれている戦略環境、地理的特性等を踏まえて導き出されたものであるということでございます。
  119. 岡田克也

    ○岡田委員 今の防衛計画大綱ですが、これを全体目を通しても、今局長がおっしゃった中の後半の部分、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有する」こういう表現は出てくるわけでありますが、前段の部分あるいは基盤的防衛力構想という単語、これは出てこないわけであります。本当に今のこの防衛計画大綱というのは基盤防衛力というものを前提にして、それを基本にしてできているものなんでしょうか。
  120. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 五十一年に閣議決定されました「防衛計画大綱について」の四の「防衛の態勢」というところに次のような記述がございます。「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配慮された基盤的なものとする。」この「基盤的なものとする。」という考え方をとりまして、これまで通称基盤的防衛力構想と申し述べてきたところでございます。
  121. 岡田克也

    ○岡田委員 私の知るところによりますと、間違っていたら御指摘いただきたいと思いますが、基盤防衛力という考え方はこの大綱以前からあったんではないか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか。
  122. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在の防衛大綱ができる以前は実は、直前は四次防、第四次防衛力整備計画、四次防、三次防、二次防、そういう五カ年計画がございました。その五カ年計画は、もちろんその金額とかあるいは装備品の調達とかそういったものが入っておりますが、同時に、現在の防衛大綱に相当するような、国際情勢ですとかあるいは防衛力役割あるいは体制といったものも含んだまさに五年間の、いわば現在でいうところの防衛大綱と次期防といったようなものを合体したような形で、その四次防ですとか三次防ですとかそういったものがつくられていたわけであります。  そして、その四次防、三次防といった時代におきましては、基盤防衛力整備ということではございませんで、当時の考え方は、通常兵力による、通常戦力による、局地戦以下の侵攻に対していかに我が国を守るかということで、実は、二次防、三次防、四次防と防衛力整備計画を累次やってまいりましても、通常戦力による局地戦以下という侵攻に対して我が国を守るような水準にまでなかなか防衛力の整備が上がらないということと、一体どこまで我が国防衛力が積み上がらないと我が国は守れないのかといったような、そういう国民からの声もございました。  そして、五十一年の一、二年前から新しい防衛力の方針を示す必要があるんじゃないか。そういう観点からつくられたのが今の防衛大綱でございまして、それまでの局地戦以下の侵攻に対する防衛計画というところから変わりまして、この基盤防衛力整備計画というものがつくられたというふうに私は認識しております。
  123. 岡田克也

    ○岡田委員 今の大綱の中にもう一つ概念が出てまいります。つまり「限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得る」いわゆる限定的かつ小規模侵略事態、こういうことであろうと思います。この概念と基盤防衛力というのはどういう関係にあるんでしょう。
  124. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 「限定的かつ小規模な侵略」と申しますのは、全面戦争や大規模な武力紛争に至らない規模の侵略のうち小規模なものをいうという考え方でございます。  その規模、態様等を具体的に示すことは、これは実はなかなか困難でございますけれども、一般的に申し上げますと、事前に侵略の意図が察知されないよう侵略のための大がかりな準備を行うことなしにこの行動が行われ、かつ短期間のうちに既成事実をつくってしまうことなどをねらいとしたといったようなことを我々考えたところでございます。  防衛庁といたしましては、別に特定の国を想定したわけではございませんけれども、今申し上げましたような我が国周辺の地域の軍備の配備状況を考えまして、今申し上げたような形でその限定的な小規模の侵略というものを想定したところでございます。
  125. 岡田克也

    ○岡田委員 私がお聞きしておりますのは、今のこの大網に定める防衛力の装備水準、これは先ほど述べられた基盤防衛力ということでできているのか、あるいは限定的かつ小規模侵略事態ということを想定してできているのか、どちらなのかということをお聞きしているわけでございます。
  126. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在の大綱におきまして我が国が保有する防衛力について冒頭申し上げましたけれども防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡の取れた態勢を保有することを主眼といたしまして、そして、我が国の置かれている戦略環境それから地理的特性等を踏まえてその具体的な規模を導き出すとともに、これが侵略事態に対して有効なものでなければならないという観点から、周辺諸国軍備を考慮いたしまして、限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものを目標とすることが適当であるとしたものでございます。言葉をかえて申し上げますと、基盤的防衛力構想あるいは基盤防衛力の整備そのものが、結果として限定的小規模侵略に独力で対処するということとイコールであるというふうに考えております。
  127. 岡田克也

    ○岡田委員 非常に分かりにくいわけで、聞いていてもほとんどわからないわけです。私の理解では、基盤防衛力というのはいわば絶対的な概念である。周囲の環境とか特定の国を想定せずに、我が国自身がそれ自身必要なものとして持っているものである。それに対して限定的小規模侵略というのは、特定の国を、それを具体的に言うかどうかは別にして、私はこれは極東ソ連軍だと思っておりますが、特定の国を念頭に置いてそれに対して対処し得るようというそういう相対的な概念である、こういうふうに理解をしておりますが、こういう理解は誤りでありましょうか。
  128. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 基盤的防衛力構想は、我々としては、絶対的なものである、水準がある水準から動かないというようなものであるというふうには考えておりません。我が国の周辺地域における軍備の配備状況あるいは軍事能力といったものについて当然その影響を受けるという認識でございます。  ただし、誤解のないように申し上げておきますけれども、例えば欧米の諸国の国防力の整備といいますのは、ある特定の国あるいは特定の勢力あるいは特定の脅威を具体的に積み上げまして、それを積算し、そしてそれに対応する国防力を整備する、そういう考え方でございます。  それに対しまして、我々の方は、特定の具体的な脅威というものを見積もって、そしてそれに対して我が国防衛力を考えるということではございませんで、先ほど申し上げましたように、「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有することを主眼としこそして、我が国が置かれている戦略環境あるいは地理的特性、これは特に我が国日本という地理的特性等を考慮して規模を導き出したもの、これはかなり固定的なものと考えておりますけれども我が国周囲の軍備状況、配備状況というものに影響されるというふうに考えております。
  129. 岡田克也

    ○岡田委員 安保論争防衛論争というのは神学論争だというふうによく言われますが、今の議論を聞いていて恐らく、私も理解ができませんし、多くの国民は全く理解できないだろう、こういうふうに思うわけであります。  私がここでこういう議論をわざわざしておりますのは、今までは社会党という存在があって、まことに失礼なことながらいろいろ意見があった。ですから、なるべくしっぽをつかまれないように非常に抽象的な概念で逃げてきた。この防衛計画大綱についてもそうでありますし、今までのいろいろな国会答弁についてもそういうところがあったんではないかこういうふうに思うわけであります。今回、社会党が与党になられて、新しい事態の中で、もっときちんと国民に理解をされる議論をしなければ大綱をつくり直す意味がないんじゃないか、そういう問題意識で聞かせていただいているわけでございます。  「防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有する」、これで具体的な防衛水準が果たして出てくるのでありましょうか。私はそこがどうしても納得できないわけであります。一体何を言っているのかさっぱりわからない、こういう気がいたします。  今の大綱のことを言っても仕方がありませんので、新しい大綱について、この基盤的防衛力構想というものを引き継がれるというふうに聞いておりますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  130. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在の大綱は、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、みずからが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという基盤的防衛力構想を取り入れたものでございますが、今回新しい防衛大綱を検討するに当たりまして、この基本的な考え方は踏襲していくという考えでございます。
  131. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明の中でも幾つかわからない点がございます。例えば、みずからが力の空白とならないように、こういうことでありますが、既に日米安保条約存在する中で、日本のみの防衛力の装備の水準が空白を呼ぶということは非常に考えにくいのではないかと思いますが、この点についてはどう考えておられるのでしょうか。
  132. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 我が国防衛につきましては、日米安保体制というものを一つの柱としながら、独立国として必要最小限度の防衛力を保有するということでございますが、その防衛力が例えば極めて小さいということになりますと、力の空白が生じ、むしろアジア・太平洋地域における不安定要因になる、そういうことを懸念いたしまして、この力の空白にならないよう最小限度の防衛力は保有したい、こういう考え方でございます。
  133. 岡田克也

    ○岡田委員 もちろん米軍は万能ではございません。特定の機能に偏っておりますから、米軍だけで力の空白が埋まるということにはならないと思いますけれども、しかし、もし基盤防衛力の具体的水準をこの空白論で行うとしたときに、本当に有効な基準となり得るのかどうかというのは私は大変疑問に思うわけでございます。  それと同時に、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力、ほとんどトートロジーというか、基盤防衛力とは独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力であると言うのは、何も説明していないのではないかという気がいたしますが、この点はいかがでしょうか。
  134. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 現在の防衛大綱の四、これは「防衛の態勢」ということが書いてあるわけでございますが、五に陸海空自衛隊の体制、これは陸上自衛隊、海上自衛隊あるいは航空自衛隊が実際どういう体制をとるべきか、そして、その具体的な規模は御案内の別表に出ているわけでございますが、この陸海空自衛隊の体制の中で、まさに力の空白とならない、そして独立国としての最小限度の防衛力とはどういうものかということを明示しているわけでございます。  例えば、全部説明をすると長くなりますので一部申し上げますと、陸上自衛隊につきましては、まず第一番目に、「わが国の領域のどの方面においても、侵略の当初から組織的な防衛行動を迅速かつ効果的に実施し得るよう、わが国の地理的特性等に従って均衡をとって配置された師団等を有していること。」この考え方によりまして、我が国の地理的特性、海峡ですとかそれから山脈ですとか川ですとかあるいは当然のことながら行政区画ですとか、そういったものを考慮しながら、そして通常国際的にも考えられます陸上兵力の一つの戦闘組織の規模というもの、例えば師団ですと、いろいろありますけれども、一万人前後といったようなものを考えて、そして今申し上げましたような考え方でどういうふうに配備したらいいかということを検討した結果、現在十二個の師団と二個の混成団というものを日本に区画して配備しているところでございます。  正確に申し上げますと、機甲師団として、機動的な師団としてもう一師団戦車の師団がございますけれども、通常の兵力について申し上げますと、今言ったような考え方で十二の師団と二つの混成団というものがあるわけでございます。  それから、例えば海上自衛隊について申し上げますと、「海上における侵略等の事態に対応し得るよう機動的に運用する艦艇部隊として、常時少なくとも一個護衛隊群」これは八・八艦隊と通称言っておりますけれども、「一個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る」そういう一個の護衛艦隊を有していることということで、現在四個の護衛隊群で構成する一個の護衛艦隊があるわけでございまして、これも、考え方はそこに明示しているところでございます。  航空自衛隊についても一点だけ申し上げますと、我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に「警戒監視できる航空警戒管制部隊を有していること。」ということで、現在固定レーダーサイトが全国に二十八ございます。高空域、低空域、そのカバーできるところは違いますけれども、現在そういう形で我が国の周辺のほぼ全空域を常時継続的に監視できるといったような体制を有しているところでございます。  その他の点についても、陸海空自衛隊ごとにそれぞれ説明がされておりまして、そして、その部隊の数その他につきましては別表に明示しているところでございます。
  135. 岡田克也

    ○岡田委員 今局長の方から、大綱の五の「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」のところの御説明をいただいたと思うのですが、私が質問しておりますのは、ではなぜこれだけ、ここに書いてあるようなことが独立国として最小限必要な装備なのかというところの説明がないではないかということであります。  それはどういうことかといいますと、結局相手方というものを念頭に置かないと議論ができないことだと思うのですね。どういう具体的な脅威が想定をされるのか、それに対して我が国としてどういう装備水準にしなければいけないのか、こういう議論でありまして、独立国としての必要最小限と言われても、それは相手方によって違うわけであります。  最初に私が絶対的な概念というふうに申し上げたのはまさしく今の局長の答弁のようなことでありまして、そういう相手方を想定しない、これだけ持っていれば独立国として十分なんですよ、そういう概念というのは実際上は存在し得ないんじゃないか、少なくとも装備の基準としては機能しないんじゃないか、こういうふうに思うわけでございますが、長官、いかがでございましょうか。
  136. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 我が国防衛基盤、これはある意味では独立国家の基本にかかわる問題ですから、絶対的な概念というものがあります。と同時に、周辺諸国の相対的な国際環境とか相対的な軍事情勢とか、そういうものの中で対比される中でそれぞれ基盤防衛力を整備していく、こういうふうに私は考えております。
  137. 岡田克也

    ○岡田委員 私が何度も繰り返して申し上げるのは、せっかくこの大綱をおつくりいただいて、そして国民が、確かに我が国防衛するためにはこれだけの装備が必要である、こうしっかり認識をしていただくためには、わかる大綱でなければ、読んで理解できる、聞いてわかる大綱でなければ意味がない、そういうふうに思うわけでございます。そういう意味で、基盤防衛力という考え方は極めてわかりにくい概念である、そういうふうな問題意識で先ほどから発言をさせていただいているわけでございます。  例えばアメリカの、やや昔のことになりますが、一九九三年、当時のアスピン国防長官発表されたボトムアップ・レビューというレポートがあります。その中では米軍の規模を規定しているわけであります。  一つの主要地域紛争が起きた場合に必要とされる規模として、陸軍でいえば四から五個師団、空軍であれば十個戦闘航空団、それから百機の爆撃機、海軍であれば四から五個の空母戦闘群、海兵隊であれば四から五個の遠征旅団、こういうものが必要であるということを述べ、その上で、アメリカ国益を守るためには、世界で一つの主要地域紛争が起きたときにそれに対応できるというだけではいま一つの地域紛争を誘発してしまいかねないので、二つの主要地域紛争に同時に対応できるような能力の維持が必要である、そう考えて、今述べました一つの主要地域紛争に対応できるだけのほぼ二倍の戦力、陸軍であれば十個師団、海軍であれば空母十二隻、そして空軍であれば二十個戦闘航空団、爆撃機百八十四機、海兵隊は三個海兵遠征団、そういうものが必要である、こういう説明になっております。  これは素人である私どもにも、本当のところはわかっていないかもしれませんが、非常にわかりやすい、頭に入りやすい説明であります。どうしてこういうことがこの大綱において書けないのでありましょうか。お聞かせをいただきたいと思います。
  138. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたけれども、欧米の諸国における国防力の積み上げ方式と我が国防衛力の整備の仕方の違いということを申し上げたわけでございますが、これは世界的に見ましても、要するにベースフオースといいますか基礎的な防衛力ないし国防力を整備する国と、それから、その相手の特別な、特定の具体的な脅威を算定いたしまして、そしてその脅威に対して国防力を積み上げるやり方と両方ございます。  日本の場合には、今申し上げた前者のタイプ、つまり特定の脅威を積み上げて、具体的にそれに対抗するといったような防衛力の積み上げではございませんで、まさに独立国としての必要最小限度の防衛力というのはどんなものかといったようなことを、もちろん周囲の戦略環境あるいは我が国の地理的特性等々を考慮してっくるわけでございます。したがって、全くその周囲の戦略状況に影響されないわけではございませんが、しかし、ある特定の具体的な侵攻の脅威というものを見積もりまして、それに対して国防力、防衛力を積み上げるという形ではない、それはそういうタイプの防衛力の積み上げではないということでございます。
  139. 岡田克也

    ○岡田委員 もちろん、特定の脅威を積み上げるということになりますと特定の国を前提にするわけでありますから、外交上いろいろ新しい摩擦も起こるかもしれない、そういう御配慮はよくわかるわけであります。  では、今局長のおっしゃった、特定の脅威を積み上げる方式でない、我が国のような基盤防衛力という考え方で必要な防衛水準を計算をしている、そういう国としてどういう国があるのでしょうか。それは一般的なものなのでしょうか。
  140. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 済みません、今ちょっと手元に資料がございませんが、まずアメリカとかNATO諸国あるいは当時のワルシャワ機構諸国は、先ほど申し上げましたようにお互いに脅威を積み上げて国防力を整備してきたという国でございます。  それ以外の国では、ちょっと記憶にはございませんので、正確に調べまして別途御答弁申し上げたいと思います。
  141. 岡田克也

    ○岡田委員 それではちょっと話題を変えまして、我が国を取り巻く軍事情勢ということですが、基本的にまずロシアが重要であると思いますが、ロシアの現時点における我が国に対する軍事的な脅威についてどのように認識しておられるのかあるいは将来的にどのような可能性があると見ておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  142. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 極東ロシア軍につきましては、近年量的には縮小傾向にございまして、軍の活動も全般的には低調になっております。しかしながら、大規模な戦力が蓄積されている状態は相変わらずであるという認識でございますし、ペースは大分緩やかにはなっておりますけれども、近代化が進められているという認識をしております。それから、流動的な国内情勢、そしてロシア軍の建設の先行きが不透明であるといったようなことも相まって、極東ロシア軍の存在は依然として我が国周辺地域の安全に対する不安定要因になっていると認識しております。  このように極東ロシア軍の将来につきましては不透明でございまして、確たることを申し上げることは困難でございますが、いずれにせよ、防衛庁といたしましては今後ともその動向に注目してまいりたいと考えております。
  143. 岡田克也

    ○岡田委員 よく、東西冷戦が終わった、こう言われるわけであります。東西冷戦が終わったということの意味でありますけれども、欧州における東西冷戦終結の意味とそれから極東における意味というのは大分違うのじゃないか、こういうふうに私は思っておりますが、この点についてどういうふうにお考えでしょうか。
  144. 小池寛治

    ○小池政府委員 先生御指摘のとおり、欧州の東西冷戦後の状況とそれからアジア地域における状況というのは大いに異なっていると、同じような認識でございます。  すなわち、アジア・太平洋地域におきましては、冷戦の間でも、欧州のようなNATO対ワルシャワ条約機構という東西の二極化した対立、そういう構造は存在しなかった。それから、冷戦が終わった後も、現在、朝鮮半島、南沙群島あるいは我が国の北方領土などの未解決の問題が依然として存在している。欧州においては、冷戦終結後安全保障体制の構築に向けた動きが見られますけれどもアジアにおいてはそのような状況はない。しかしながら、東西冷戦が終結したことによりまして、この地域におきましては、一つは、極東ロシア軍が量的に縮小傾向を示して軍の活動も全般的に低調になっているという変化があることも事実でありますし、また、ソ連アジアの共産主義政権国家に対しての軍事援助活動を大幅に削減ないし停止したこと、あるいはソ連と韓国との国交樹立という大きな変化があったということもまた事実がと思います。
  145. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明に加えて、私は、ヨーロッパにおいては広大な緩衝地帯ができたということは非常に大きいのではないかと思っております。今までは、東西ドイツのところで、前線といいますか、そういうものがあったと思うのですが、ドイツも統一された、あるいは東ヨーロッパ諸国もそれぞれ民主化した、ソ連自身も幾つかの国に分かれた、そういう中でロシアの隣にはウクライナという国がある。つまり、従来の西ヨーロッパとロシアの間には幾重もの緩衝地帯ができている。それに対して日本の場合には、極東でありますから、ロシアと向かい合っているという現実は変わらない。そのことも非常に大きな要素ではないかと私は思っております。  いずれにいたしましても、ロシアについての御認識を今伺ったわけでありますが、それでは、この大綱前提として中国というものをどういうふうに、いろいろ御議論はあったと思いますが、中国について今の軍事力をどのように評価しておられますか。あるいは、将来十年、二十年先に可能性として、我が国にどのような脅威を及ぼす可能性があるというふうに見ておられますか。
  146. 小池寛治

    ○小池政府委員 中国の軍事力の現状及び将来についての御質問ですけれども、中国は近年、国防費を大幅に増加させております。昨年、ことしと二〇%以上、対前年比国防費を増加させる、あるいは核戦力、それから海軍、空軍力の近代化を進めている。一言で申し上げれば、いわばかっての量から質の向上を図っているというふうに言えるかと思います。  しかしながら、総体的に見ますと、中国の当面の最重要課題というのは改革・開放政策による経済建設というのを大きな課題としており、また、経済が全般的にインフレ基調であったり、それから財政赤字という困難な問題も抱えているということもまた事実でございます。したがって、国防力の近代化は進むけれども、現在の装備の大宗というのはかなり旧式な装備を保有しているということも考えますと、近代化は漸進的に進むのではないかというふうに見られます。また、中国は近年、南沙群島を含めて海洋における活動範囲を拡大するという動きを見せております。  それで、このような中国の動きというものが中長期的にアジア軍事バランスにどのように影響を与えるかというのを、我々としても十分注目していく必要があるというふうに考えております。
  147. 岡田克也

    ○岡田委員 今の御説明でありますが、そういうものを踏まえて、しかし、安全保障という問題は常に最悪の事態を考えて備えておかなければいけない。別に中国が我が国にとって具体的な脅威になるとかそういうことではなくて、可能性の問題として、最悪の事態としてそういうこともあり得るんだということを念頭に置いて、当然我が国安全保障政策あるいは防衛力の水準というものは、これは中国に限りません、中国は一例でありますけれども、考えていかなければいけない、そういうことだろうと思うのです。  そういった点についてのきちんとした説明、そして、そのために我が国としては国民の税金をこれだけ使っでこれだけの装備水準が必要である、そういったわかりやすい説明が大綱にはぜひ必要ではないか。  別に、特定の脅威として特定の国を決めつける必要はもちろんないわけであります。しかし、可能性の問題として幾つかのこういう最悪の事態があり得るので、我が国としてはこういう装備水準が必要なのである、そういう考え方がなければ、私はなかなか国民に、今これだけ一般的には東西冷戦が終わって緊張緩和が進み、アメリカを初めいろいろな国が軍備の削減をしているときに、なぜ日本が、多少のコンパクト化はやるとしてもこれだけの水準のものが要るのか、そういう説明にならないのではないか、少なくとも国民に理解されないのではないか、そういう気がするわけでありますが、この点について長官の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  148. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 確かに脅威対象型の安全保障論というものは非常にわかりやすいと思います。しかし、そうではなくして、地域の危機問題に対していかに我が国の安全を確かなものにするか、こういうことについては、大変説明のしにくい、わかりにくい問題ではあります。しかし、私どもといたしましては、冷戦後の新しい国際環境、軍事情勢、そういうものをしっかり国民皆さんにも御説明を申し上げまして、新防衛大綱の中にお示しをし、そして国民皆さんにPRをして御理解をいただく、そういう努力を、積極的な努力をしてまいりたい、このように考えております。
  149. 岡田克也

    ○岡田委員 今の大綱は、先ほど言いましたように小規模限定侵略という概念が入っておりまして、これが消えたことは、かえって今の大綱よりもさらにわかりにくくなっているのではないか、そんな気がするわけでございます。  いずれにいたしましても、ぜひ長官初め皆様の御努力で、大綱国民にわかりやすい、理解しゃすい、そういう形になることが私は防衛問題に対する国民の理解の第一歩だと思いますので、ぜひいろいろな表現その他で御工夫をいただければ幸いだと思っております。  それでは次に移りたいと思いますが、冷戦終了に伴っていろいろな多様な危険が発生するんだ、こういうふうに述べられております。大規模災害とか無差別テロなどの事態に備えなければいかぬ、こういうことでありますが、具体的にそれでは、大綱の装備水準のところでこういった事態に備えるためにどういった装備を考えておられるのか御説明いただきたいと思います。
  150. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 阪神・淡路大震災ですとか地下鉄サリン事件等に見られたとおり、こういった各種の事態あるいは多様な危険への自衛隊役割に対する国民の期待が高まっているということで、これらの事態に対して十分備えておくことが重要であると考えております。これまでも、自衛隊はこういった各種の事態において活用し得る各種の装備を整備してきたところでございます。  そしてまた、こういった事態に有効に対応するための具体的な装備の内容につきましては、新たな大綱のもと、引き続き検討して所要の措置を構じたいと考えておりますが、御案内のとおり、大綱における別表は、主要な部隊あるいは主要な装備品を明示するということでございまして、その他の装備品等につきましては、毎年度の予算等で明らかにしてまいりたいと考えておるところでございます。
  151. 岡田克也

    ○岡田委員 具体的装備についてはそういうことかもしれませんが、もう少しこの辺は敷衍して、大綱の中に基本的な考え方だけでも書いておいていただいた方がいいのではないか、そういう気がいたします。  それから、今局長御答弁の、例を挙げて大規模災害や無差別テロについて御説明があったわけでありますが、その前提となる国際情勢のところで、冷戦は終結したけれども、宗教上の対立、民族問題等に根差す対立の顕在化、地域紛争の発生、大量破壊兵器の拡散等の新たな危険が増大している、こう書いてあります。この点については大綱の中で具体的にどういうふうに織り込まれているのでしょうか。
  152. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 まさに現在、安全保障会議で検討している最中でございますけれども、我々防衛庁として認識しております国際情勢として、まず冷戦の終結に伴い、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいた。しかし、他方で各種の領土問題は依然存続しておりますし、特に宗教上の対立とか、あるいは民族問題等に根差す対立が顕在化している。それに加えまして、大量破壊兵器等の拡散といった新たな危険が増大するなど、国際情勢は依然として不透明、不確実な要素に包まれている。そういったような認識をしているところでございます。
  153. 岡田克也

    ○岡田委員 余り具体的な御説明ではなかったように思いますが、時間も限られておりますので、最後に有事法制の問題についてお尋ねをしたいと思います。  先ほど来いろいろ議論が出ておりますが、先ほどの局長の御答弁だったと思いますが、法制整備が望ましいけれども国会国民世論の動向を踏まえながらやっていかなければいけないのだ、こういう御説明だったと思いますが、もう少し具体的に、どういうことなんでしょうか。何が障害になっているのでしょうか。
  154. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 有事法制につきましては、既にいろいろな形で研究が進んでおりまして、例えば防衛庁について言いますと、自衛隊法の、例えば防衛出動ですとか、そういったいろいろな条文の規定がありますが、その条文の規定を動かすために、例えば政令ですとか省令ですとかそういった形でまだ十分手当てされていないようなところがございます。  そういう意味におきまして、防衛庁で行わなければならない有事法制の研究は一応区切りがついておりますが、当然のことながら各省庁にかかわる問題があるわけでございます。各省庁の所管の法律で、有事にどうするべきかといったような研究があるほか実は、妙な言い方で恐縮でございますけれども、どこの省庁に属するのか必ずしも明確ではないといったような問題もあります。その辺についての研究が一応前者については済んでいるものの、後者につきましてまだ済んでいない。そして、かつ法制化というところまではいっていないというのが現状でございます。
  155. 岡田克也

    ○岡田委員 防衛庁の方でこの有事法制についての研究の結果を取りまとめになっておられると思いますが、一つは、昭和五十三年九月二十一日、防衛庁の見解として「防衛庁における有事法制の研究について」というものが発表されております。それから、昭和五十六年四月二十二日にもその追加的なものが同じ表題で発表されている。その後十年たちますが、十年間、一体防衛庁は何をしておられたのでしょうか。
  156. 江間清二

    ○江間政府委員 有事法制の関係について御説明をさせていただきます。  ただいま先生おっしゃいましたように、この有事法制の研究は、昭和五十二年の八月に内閣総理大臣の御了承のもとに、防衛庁長官の指示によって始められたものでございます。その有事法制として考えられる法制としましては、自衛隊の行動にかかわる法制でありますとか、あるいは米軍の行動にかかわる法制、さらには、自衛隊米軍の行動に直接にはかかわりませんけれども国民の生命財産等の保護等のために必要になる法制という三つのことが考えられるわけであります。  五十二年から開始をしましたのは、このうち、自衛隊の行動にかかわる法制ということを研究をしたわけでございます。この研究は、近い将来に国会提出を予定した立法準備というようなことではございませんで、あくまでも、自衛隊がその任務を有効かつ円滑に遂行する上での法制上の諸問題を検討するということで進めてまいったわけであります。  それで、先ほど先生御案内のとおりに、第一分類さらには第二分類という点につきましては、一応のそれまでの研究の成果というものを御報告をいたしました。現在、その所管官庁が明確でない事項に関する法律、法令といいますか例えば有事におきます住民の保護、避難または誘導を適切に行う措置でありますとか、有事における民間船舶及び民間航空機の航行の安全を確保するための措置でありますとかそういう幾つかの問題がございますけれども、これは政府全体として取り組むべき性格のものであるということで、現在、内閣安全保障調査室の方で種々の調整が行われているところと承知をいたしております。
  157. 岡田克也

    ○岡田委員 この問題で余り事務当局にいろいろ言っても気の毒な面があるのだと思います。むしろ国会責任、あるいは政治責任だと思うのです。  例えば、今度の大綱では予備自衛官というものが非常に重視されています。しかし、予備自衛官についてこの防衛庁がおまとめになった五十六年四月二十二日の研究の結果によれば、「自衛隊法第七十条の規定による予備自衛官の招集に関しては、招集に相当の期間を要し、防衛出動命令下今後から行うのでは間に合わないことがあるので、例えば、防衛出動待機命令下令時から、これを行いうるようにすることが必要であると考えられる。」こう書いてあります。  つまり、予備自衛官をこの大綱に基づいて予算も使って十分準備したとしても、今のままでは実際には間に合わないんだ、こういうことになっているわけでありますが、こういう事態について、長官、一体どういうふうにお考えでしょうか。そういう事態のもとで予備自衛官を充実する意味があるのでしょうか。
  158. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 このたびお示しをいたしました新防衛大綱の中におきまして、御案内のとおり、即応態勢ということをうたっておるわけでありますが、予備自衛官とともに即応自衛官といいますか、そういうものを体制整備をしていきたい、そして予備自衛官の、今御指摘ありました問題点をそういう面で補完をしてまいりたい、かように考えております。
  159. 岡田克也

    ○岡田委員 私が申し上げたのは、そういう形で予備自衛官を大綱の中で位置づけられるのは結構だけれども、規定が不備で、そういう自衛官を置いておいたとしても実際には間に合わない、今のままでは。いざ防衛出動のときには使えないんだということを、防衛庁の研究そのものも認めてお られる。そういう事態について長官はどう考えられるかという問いであったわけです。
  160. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ソフト面において、運用面において支障を来しておるというのであれば、しっかりそれを検証いたしまして、フォローアップしてその埋め合わせをする、しっかりとしたシステムをつくり上げたいと思います。
  161. 岡田克也

    ○岡田委員 そのシステムの問題というのは、つまりそれは法律を、有事法制等、言葉は何でもいいのですけれども、そういう法律をきちんと整備しなければだめだということなんですね。  これは一例であります。ほかにも防衛庁の方でいろいろ御研究になって、どういう問題があるかということはあらかたはっきりしているわけであります。いわばそれがたなざらしの状態になって十年ぐらい、防衛庁がおまとめになってからほったらかしになっているわけであります。これはやはり政治責任だと思います。  先ほど、国会での動向も踏まえて、こういう御説明があったのですが、国会にきちんとお出しいただければ、我々は議論する用意はいつでもあると思うのです。ですから、まず与党の中できちっとまとめて早く出していただきたい、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。長官にお願いします。
  162. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 これは、一つは法の整備の問題でありますから挙げて国会の問題でもあると思いますが、防衛庁といたしましては、有事法制については当然のことながら研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいと考えておりまして、法制化をするか否かという問題は高度の政治判断にかかわるものでありまして、国会における審議あるいは国民世論の動向等を踏まえて検討すべきものである、このように考えておるところであります。
  163. 岡田克也

    ○岡田委員 高度の政治判断とおっしゃいますが、国会に出すことは政治判断でも何でもなくて、その結果国会でそれを審議するのは、それは政治判断かもしれません。しかし、出てこないと審議もできないわけであります。  それで、毎年五兆円程度防衛費を使って、新しい大綱に基づいてこれからもいろいろな装備がされていくのだと思うのですが、それがいざとなれば使えない、いざ緊急事態が起こったらそれの根拠の法律がないということが今わかっているのに、そのことを放置しておくということは、政治家としてこれはまことに恥ずかしい事態ではないか私はこういうふうに思います。  私どもは今、野党であります。新進党は、この議論にいつでも応ずる用意がございます。ぜひ与党の方でおまとめいただいて、早期にこれを出していただきたい、こういうふうに思うわけであります。  でなければ、こんな立派な大綱をつくっても意味がありません。立派な装備をお金を出して買っても意味がありません。そのことをぜひ御認識をいただきたいと思うわけであります。そういう意味でも、この大綱の中に有事法制の早期整備という一言はぜひ入れていただきたい、こういうふうに思いますが、長官の決意を聞かせていただきたいと思います。
  164. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 その問題は重ねて、国会の論議にまちたい。また与党三党の、今御指摘のありました有事法制についてのお考え、そういうものもしっかり踏まえて政府として対処してまいりたい、このように考えております。
  165. 岡田克也

    ○岡田委員 もう時間も参りましたのでこれで終わりますが、いろいろ難しい問題もあると思うのですけれども、ぜひ長官中心になっていただいて閣内でもきちんと御議論いただきたい。これはまじめに議論したら、このことについて、有事法制について、だれも後ろ向きになるはずはないと思うのです。いろいろな過去の有事法制という言葉についてのイメージがありまして、なかなか難しいことをおっしゃる方もいらっしゃるのかもしれませんが、そこはぜひそういう誤解も解きながら、早期にこの問題を解決をしていただきたい、そのことを最後にお願いを申し上げまして、私の質問にかえさせていただきます。  ありがとうございました。
  166. 神田厚

    神田委員長 大出俊君。
  167. 大出俊

    ○大出委員 実は、通告いたしておりますのは防衛計画大綱並びに別表、これが一になっているのですけれども、これはいろいろ困ったことに、困ったことにという言いぐさはないかもしらぬが、与党なものですからいろいろなお話がありまして、と言ってみても、まだ防衛計画大綱の別表にかかわる数字は最終的に決めて出しているわけではない、言われてみればそのとおりでございます。ならばそこのところは、私の考え方も十分入って私どもの、世の中に記者会見などで明らかにしております新しい防衛計画がございまして、これは差し上げてあるわけでございますから、そこのところはいずれ、どういう形かわかりませんが議論をさせていただこう。したがって、きょうのところは、与党であるにもかかわらず、幾つか納得のできない、やめてもらいたいというものがございまして、それなりに理由がございますから、そこらを申し上げたいと思っておるのです。  冒頭に一つだけ、時間がございませんから言いっ放しになる気がするのでありますが、ナイ・イニシアチブなどと言われるもの、けさの新聞でナイさんがしゃべっているのを見ますと、これは彼がいろいろなところで言っていますし、二月二十七日の東アジア安全保障戦略あるいは三月一日の日米安全保障関係レポートなどでも出てくるわけであります。  要するに北朝鮮という国は、これはナイさんはまるっきり仮想敵以上の敵にしていますけれども、百十万という軍隊があって、これの三分の二は三十八度線というところに集まってしまっているのだ、いつ電撃的に入ってくるかわからないというわけですよ。これは、片っ方で一生懸命交渉をやっていて、アメリカはぶち割れない交渉なんだ。しかし片っ方で、これは矛盾ですけれども、そういうふうに言って、そのときには沖縄からいきなり飛んでいかなければ間に合わない、だから四万七千の在日米軍というものは確保しておく、動かさない、こう言うわけです。今、四万七千いませんけれども、四万五千ちょっと欠けていますけれども、本人はそう言っているわけでございます。本人も実数を知らないのだと思いますが、つまりこの考え方。  ところが、アメリカの中でも、専門的な方がほとんど読むのですが、ここにアメリカのディフェンス・ニュースの最新号等がございまして、アメリカ国務省の方々なども物を言っているわけであります。東アジア地域で、経済的に各国みんなよくなってきている、だからそこで軍事的なものが増強されていく、だがしかしそれは、国がまともなことになったから何とかしようということになっているのと、古い兵器ばかりだから更新しようというのとであって、侵略の意図などというものは一かけらもないというふうに見ているという国務省の見方が載っている。  そして、同じ有名な、これはシンクタンクでございますが、アメリカアジア安全保障政策に関するCATO研究所の提言というのがございます。これは、例のナイさんが手がけたという二月二十七日のレポートなり戦略なりというものに真っ向から対立している考え方でありまして、そこだけ申し上げておきます。  今のところ、北朝鮮との問題では、三万七千のアメリカの軍隊を南に維持する必要は全くない、撤退すべきである。韓国は、人口で北の二倍、国内総生産で北の十六倍、平壌に対して技術面でも圧倒的に優位。韓国は、軍事支出でもここ数年北を上回る。米軍の撤退後、北がどういう出方をするかという問題があるけれども、実は三万七千の米軍が韓国にいるということが、北朝鮮が核爆弾を何とか保有しなければならぬということになる意識を強める、その意味では人質として作用をしている。だから、そうじゃなくて、引き揚げるものは引き揚げて、冷戦が終わったのだから引き揚げて、アメリカ政府を中心に、中国、日本、ロシア、韓国が一緒になって北に、国際社会に出てきなさい、やめなさい、経済的な援助は全力を挙げてやるからということにすべきである。つまり真っ向から、今の旧態依然たる力の政策ということは間違いだと言っている有力なシンクタンクもある。  これは、一つ例を挙げておきますが、防衛庁皆さんにかかわりのある方も同じことを、私の考えとそう変わらぬことを実は言っておいでになるわけであります。御存じの方もあるのだと思うのでありますが、岩島久夫さんですか、この方の論文を読んでみますと、やはりCATO研究所報告なるものに相当理解を示す。  ここのところを長官に承りたいのだけれどもアメリカ国内は一つじゃないのです。前に、九〇年、九一年にも出ている。チェイニー、アスピン。このときのアスピンのボトムアップ・レビューにも書いてありますが、思い切って減らそうとした。このときの、沖縄の海兵隊をまず五千人減らそうというところから始まっている当時のいろいろな記事や記録もここにございますけれども、わずかの間に何でこんなに変わるのだろうかということですね、問題が。  今の例のジョセフ・ナイという人も、横滑りでぼんと来て次官補になった。この人に近いところにいる、アメリカの国防大学ですか、あそこの上級研究員その他をやっているパトリック・クローニンさんだとかあるいはマイケル・グリーンさんだとかの論文を読んでいますが、この二人がつくったのは何かというと、米日同盟の再定義です。中身を読んでみると、ナイさんが言っていることと同じことですよ。  ですから、そういう変わり方をしているんだから、一本調子にだけ物を考える必要はないのです。  今私が二つ提起していますが、沖縄問題というのが一つある。そこを一体どういうふうに長官はお考えになるのか。つまり、北というものは、ナイさんに言わせればまさにいつ電撃的に入ってくるかわからない、だから飛び出すんだ、だから沖縄に確保を、こうなるわけですかね。そこのところをどうお考えですか。そこだけ聞いておきたい。
  168. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 米国にはシンクタンクのCATO研究所のような御意見もあり、またナイ・イニシアチブに見られるような御意見もあると、十分私も承知をしております。この二つを、立場を踏まえて、我が国周辺諸国、とりわけ朝鮮半島情勢をしっかり見きわめなきゃならぬ、こういう御指摘でありますが、私もそのように思っております。  私は先般、九月に訪韓いたしまして、李洪九国務総理、また李養鎬国防長官とこういう問題につきましてもいろいろと意見を交換をいたしました。また、私自身三十八度線に参りまして、対峙しておる東西の延長線上のようなこの厳しい対峙、緊張状況、そういうものも実感としてとらえてまいりました。私は、昭和四十年にも三十八度線を訪ねまして、またそのときにも在韓米軍のキャンプにも行ってまいりました。あのときの情勢と全く変わっていないな、こういう感じさえ持って帰ってまいったのであります。  また、御案内のとおり、KEDOを通じてのいわゆる原子炉の供用問題につきましても、米朝のこの一つのアクションプログラムがなかなかスムーズに進まないような状況等々を見まして、さらに三十八度線、この北の周辺に北朝鮮の総軍事力の三分の二が張りついておる状況等々、あるいは三十八度線で対峙して実際に銃撃戦が行われたりするそういう状況、いろいろな問題を考えますと、私は、やはりナイ・イニシアチブに示されたそういう立場を踏まえてこれからの我が国安全保障というものを考えていくべきだ、このように考えておるところであります。
  169. 大出俊

    ○大出委員 東西冷戦が終息の方向に向かったブッシュの時代、チェイニー国防長官の時代、これを継いだアスピンさんの時代、それぞれ機会があってアメリカにも何遍か行っておりますけれども、ここで急激にまた古い形に戻ってきた、こういうことになるのでありますが、その方向を私はとらない、安保条約云々という問題と離れて、とらない立場でございます。  そこで、時間がなくなるので具体的な問題に入らせていただきますが、今の点は、時間があれば後からもう少し申し上げたいこともございます。  FSX、これはどことの提携でつくってこられたのか、相当年数だっておりますけれども。わかってはおりますがしゃべっておいていただきたいのは、最初の飛行機は一体幾らなのか、そして百四十一機つくらなきゃならぬというふうに言っておりますけれども、一体これは平均単価幾らになるのか、そしてこれはいつごろまでに、これだけ簡単に答えてください。
  170. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 八年度の要求で出しておりますFSXの価格は、一機百二十三億円で要求しているところでございます。ただ、機体本体でいいますと百九億円ということでございまして、この百二十二億円と百九億円の差は、初度部品を除くか除かないかの違いでございます。  それから、百四十一機の量産計画を一応お願いしておりまして、全体の平均価格をこの航空機本体、つまり初度部品を除いたところで計算いたしますと、平均価格は我々の見積もりでは八十億円、したがいまして最終の航空機の単価はたしか六十億円台だったと記憶いたしますけれども、そういう状況でございます。
  171. 大出俊

    ○大出委員 これ、納得できないですよ。なぜかといいますと、これは少し専門的過ぎるかもしれませんけれども我慢してお聞きをいただきたいのだが、本来のF16、これを中心にしてひとつ飛行機をつくろう、こういうことになってきた。当時、F16でございましたのはブロック40でございます。これを改装をしてFSXができる、こうなるわけでありまして、そして百二十二億、平均単価で八十億、こうなるわけでございます。     〔委員長退席、赤松(正)委員長代理着席〕  ところが、これは昨年末に新しい型がデビューをいたしました。これはF16ブロック50と言われている。ところが、F16ブロック50、非常に近代的になっておりますけれども、これは一体幾らなのか。  ここに、航空機専門のオール・ザ・ワールス・エアクラフト、これは一九九五年から九六年の、一番最近出た一番新しいジェーン年鑑、ジェーンズがございます。これを開くと、見開きにいきなり出てくる、これ、F16の50というのがぽんと。買ってくれというのですよ、要するに。これはトゥエンティーミリオン、つまり二千万ドル、トゥエンティーミリオンダラー。これはファーム・ブライアウェー・プライスですから、工場渡しといいますかね、これ。それで二千万。だから、これを日本円に計算をしますと二十億なんですね、二十億。  しかも、この後を読んでみますと、おもしろいんです、これはなかなか。エンジンはチョイス、つまり選んでくれというのですね。P&WあるいはGEのどちらかを選んでくれと、買う方が。それで、レーダーをつけますと。そして、ア・フル・タンク・オブ・ガスだから、つまりタンクは満タンにして、そして二十億円ですと、こうなっている。  このF16というのは非常にいい飛行機でございまして、いろいろなところで使われている飛行機でございます。二十億。ところがどうも、FSXに持っていった、F16から行ったんですけれども、これ八十億、平均単価としてみても。四倍ですよ、これ。一番新しいF16ブロック50が去年の暮れにできて、そして今はこれを世界じゅうに買ってくれと言う。二十億円ですよ、日本円にして。  そこで、二千万ドル、二十億なんだが、F16の最大の利点といいますかポイントは何だったか、御記憶がございますか、どなたか。湾岸戦争を思い起こしていただければいいんですが。——時間がないから私が言いましょう。  テレビできれいにきらきら映ったピンポイント爆撃というのがございますが、あれが16なんです。ピンポイント爆撃はどうやってやったかというと、LANTIRNポッドというのが空気の取り入れ口の横についている。そして、このLANTIRNポッドの装置は、簡単に言えば赤外線カメラと小型レーダーとレーザーの照射と組み合わせた形。つまり、カメラの照射の方向に向かって誘導爆弾が飛んでいく。三つ組み合わせておいて、カメラがそっちへ向いたらそこに爆弾が飛んでいく。見事に当たるシステムですよ、きらきらきらきらと。これは、F16ブロック40の一つの主役の装置ですよ。  ところが、不思議なことに、岩上陸作戦をやろうという皆さんのお出しになっている計画がある。岩上陸作戦というのは、一番役に立つところは、水際に入ってくるのを抑えようというわけです。夜間ですよ、ピンポイント爆撃は夜やっている。今まで、F1にしてもファントムにしてもそうですけれども、真下が見えない、波があるともう見えない。だからパルス、ドップラー・レーダーというのを、これは16もつけたのですけれども、これを持ってきて改装しているわけですよ。F1というのは懸架装置をくっつけて、爆弾をぶら下げて落とすという仕事をしていたんだから。だから、このF16を使うんだったら、このポイントは専門的に言って外せないのですよ。ところが、これがつかない。  時間がないから申し上げておきますが、皆さんが出しているこの中にないのです。どうしてっかないのかと、つかない理由を調べてみた。そうしたら、こういうことです。空気の取り入れ口の、つまりLANTIRNポッドをづけるところに別なものをつけている。電子戦装置、ジャミング関係です、これは。レーダー警戒装置のアンテナ、レーダーを警戒してジャミングする装置のアンテナ、これをつけてしまっている。ですから、づけようがない。これがなければつけられるのですが、づけようがない。だから、LANTIRNポッドを使えない。これが一つ。  もう一つ、御参考までに申し上げておきたいのですが、韓国パージョンというのがあるのです、韓国の仕様。これは、F16の52なんです。50と52の違いというのは、エンジンが違うだけなんです。ほとんど同じものです。この韓国パージョン、この特徴は何かというと、AMRAAMが使える。しからば、AMRAAMとは何だ。レーダー誘導ミサイルなんですが、ミサイルの中にレーダーがくっついておる。飛行機じゃない、ミサイルに。だから、普通なら、レーダー光線を出してはね返ってくるものをミサイルは追いかけて相手の飛行機に当たるわけですけれども、そうじゃなくて、ミサイルを発射すると、その中にレーダーが入っていて、組み込まれていて、光線が出て自力で当たる。だから、飛行機の方は、本当ならば当たるまで相手の機体に機首を合わせておかなければいけないわけですけれども、発射したらいきなりほかの、こっちをねらってもいいし旋回してもいいわけです、ミサイルがひとりで行くから。これが今日ただいま有名な空中戦の革命と言われているものなんですね。  これは、なぜこうなったかというと、湾岸戦争にこのシステムは間に合わなかった。その直後にできて、イラクの上空でミグ25とこのF16がぶつかった。ミグ25というのはマッハ三あるんですよ、音の早さの三倍。F15イーグルというのはおおむね二・五マッハですよ。F16というのは昔から言われるように遅くて、おおむねニマッハなんですが、AMRAAMを使ってついにミグ25を落としたんです。それで、世の中が国際的に、これは大変なものだというようになった。空中戦革命と言われる出来事。これも、16に使おうとするのなら使えるのだが、このシステムも全くない。  もう一つ、HARMというシステムがある。これはレーダーをつぶすことが専門のミサイルでありまして、レーダー波をつかまえて、あわせて追っかけて、レーダー波を追っていって発射した相手をつぶすというミサイルであります。これも有名なHARM。  だから、本当ならしANTIRNポッドを使って、夜間であってもピンポイントの爆撃が正確にできる。それから、AMRAAMを使って、やはりAMRAAMを持っているとなると相当強力な、相手に与える影響が大きいわけです。ぼうっと撃っておいて横に行ってしまうのだから、次のもう一機をねらえるわけですから、そういう意味では、軍事的には非常に大きな問題なんですね。ところが、これもない。韓国パージョン、つまりF16の52というのは、今のAMRAAMもLANTIRNポッドもHARMもみんなくっつけている。日本のは何にもないですよ。  そこで、ひとつ参考までに申し上げておきますと、韓国パージョン、これは一体幾らぐらいかといいますと、このジェーンの航空年鑑の真ん申ぐらい、ここにある。五・二ビリオンダラーです。ですから、これは日本円で計算すると五十億をちょっと欠ける。これだけ機体をいじって、これだけつけて、本来16の持っている性能ですけれども、それで五十億を欠けるのですね。  最近、これまた非常に評判になっているのがもう一つあります。航空機の分野なんですけれども、先の方がこういうふうになっているので見ればすぐわかるのですが、F18ホーネットという飛行機があるのです、よくお聞きになると思うのですが。このホーネット、これは本来艦載機なんですけれども、これを改装してFA18E型、FA18F型、E型が単座でF型が複座なんです。これも非常に優秀な飛行機で、ASM、エア・ツー・サーフィスミサイルを最大六発積んでいるのです。  そうすると、防衛庁皆さんの説明を見ると、F16ブロック40を改装して、翼を大きくして、機体を少し大きくして、F16ブロック40が二発しか持てないASM、エア・ツー・サーフィスミサイルを倍の四発にしたんだというふうになっているんですね。それは空対空の機関砲はありますけれども、ほかのものはない。そういう理屈をつけた形になっている。  そんなことを言うのだったら、今私が申し上げたホーネットの改装型を買ってくれば、これは三十七億なんです。これはASM四発じゃない、六発使えるのですから。ですから、じゃ、そのFA18ホーネットの改装型の、つまり支援戦闘機は一体幾らかといったら、三十六・四ミリオンダラーですから、日本円にすると三十七億円。二十億であり、五十億を切れる価格であり、三十七億、みんな今そうなんです。しかも、それなりの大きなポイントになるものを積んでいる。このFSXには何にもない、ここにございますけれども。  そうすると、何で一体こんなに高くなるのか。ここにございますこれが、皆さんがお出しになった主要性能、装備諸元です。この中にも、申し上げた三つ、何もない。ASM及び誘導爆弾など。ASMというのはエアー・ツー・サーフィスミサイルですね。それからMRM及びSRM、二十ミリ機関砲。空対空ですから機関砲があるのは当たり前なんです。中射程のミサイル、それから短射程のミサイル、これは普通どこにでもあるわけでありまして、不思議なことはない。そうすると、一体これ、どこからどういうふうにひねくって考えても、この価格は出てこないのですよ、出てこない。何でこういうべらぼうな価格になるのか。     〔赤松(正)委員長代理退席、委員長着席〕  私は、例の、最初のこの計画に入る見積もりを見て、五十四億になっていた。ところが、これ八十億でしょう。これを国民皆さんに何の——私ども専門的にある程度のことはわかっている人間だって、皆さんから聞いたことはないのですよ、こんなものを見たって何にも書いてないのですから。そうでしょう。それでいきなりここで、一機で百二十三億でございますよ、百四十一機つくらなければ単価は落ちませんよ、八十億になりませんよ、だから百四十一機ですと。  そういう手はないと私は思うので、だから私はこれは納得いたしかねるので、与党だけれどもこれだけは認めがたい、そういうことで質問しておきたいと思うのです。  委員長、ひとつこっちから答えてもらってください。
  172. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 たくさんの質問がございました。多分私よりもずっとよく御存じの大出先生の御質問なので、十分答えられるかどうかわかりませんが、順を追って簡単に答えさせていただきたいと思います。  最初に、F16二十億円ということでございますが、これは、報道にそういうことがあることは我々も承知しておりますけれども防衛庁として、このロッキード・フォートワース社が出しました雑誌広告、それがどういう価格の積算に基づいているのか、我々としてはよくわかりません。  実はそのほかに、今、大出先生の方から、FA18ですとか、そういう各国のFSXと比較すべきような機種のお話がございましたので、我々もなるべく客観的なデータでその比較をしたいと思いまして、実は「ミリタリー・エアクラフト・フォアキャスト」という資料に基づいて見ましたところ、F16ブロック50というのは、我々の調べでは三十一・七ミリオン、百万ドルということで、約三十億円という数字を我々としては確認をしております。それにしても、二十億と三十億の違いということであれば、そういうことであろうかと思います。  それから、LANTIRNポッドあるいはAMRAAMあるいはHARMについて、F16をベースにしてFSXを開発したのであれば、そういういいウエポンといいますか、装備をなぜ引き継がなかったのか、こういう御指摘かと思います。  私、申しわけありませんが、すべてについて承知をしているわけではございませんけれども、実は今度のFSXの開発のときに一つ我々大きく考えましたのは、少ない支援戦闘機で岩上陸侵攻に対応するために、特に日本の縦に細長い地理的状況を考えますと、長距離飛んで、しかもその数が少ない支援戦闘機でございますから、一回の攻撃で四発のASMを運びたいといったようなことを考えておったわけでございます。このLANTIRNポッドそのものの性能とこの四発のASMを持っていくということについての関係につきましては、もう一度よく検討をいたしまして別途お答えをしていきたいと思いますけれども、FSXを開発するに当たっては、そういう四発のASMを運んで長距離間活動をしたいということで開発をしたという点について申し述べておきたいと思います。  それから、韓国パージョンのAMRAAMという点につきまして、これはAAMだと思いますが、実はこの性能については我々も十分承知しているところでございまして、別途、現在技術研究本部の方で空対空ミサイルの、撃ったらすぐその撃った戦闘機が回避できるといったような、そういうミサイルを開発中でございまして、そのミサイルが開発されればかなりの性能の高いミサイルになろうかというふうに考えているところでございます。  それから、HARMについての御指摘がございましたが、これはレーダーサイトの破壊のためのミサイルであろうかと思いますけれども、我々考えております支援戦闘機の役目といたしましては、我が国における岩上陸侵攻に対する攻撃ということでございますので、レーダーサイトに対するミサイルを搭載するといったような主目的の支援戦闘機を開発したわけではございません。  それから、FA18について付言がございました。FA18については、これは正直に、私の方で調べた「ミリタリー・エアクラフト・フォアキャスト」によりますと、単価は三千百万ドルで、約三十億円といったような計算になるところでございますが、我々の防衛所要から見ますと、特にこのFA18につきましては、速度性能あるいは離着陸性能それから行動半径、かなり我々の望む防衛所要を満たさないということで、この開発の母体にはしなかったというところでございます。
  173. 大出俊

    ○大出委員 今の御説明を聞いて不思議なことがあるわけでありまして、それだけの理由で、つまりLANTIRNポッドであるとかあるいはAMRAAMであるとかいうふうなものをつけなかった、数が少ないから、だからASM二発より四発の方がいいと。だから、ASM四発、二発のものを四発にしただけなんですよ。あとは何もないのだから。そうすると、では一体、それだけで何で八十億にもなるのかということですな。これは理由はどこからも出てこない。  そこで、沖縄の基地を聞きたいので時間がないから申し上げるが、私が調べてみた限り、こういう感じがする。それは何かというと、これから先、つまりどういうレーダーを軍用機であれ民間機であれ使っていくのだろうかというときに、これはタイコンデロガ、アーレイバークなどのイージス艦がありますね、イルミネーターを十八ぐらい並べたりしてレーダーくっつけてやるのですけれども、トンボの目みたいなこういうもの、そういうトンボの目のような小さいレーダーをたくさん並べて、これをアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー、PHASEDなんですが、これはひょっとすると、将来は軍用機であれ民間機であれ、全部アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーになっていくんじゃないのか。そうすると、つくっているのは軍用機なんですよ、日本の国を守る。ともあれ、おくれている技術はここでということになると、そこでのめり込む。  もう一つ日本の航空産業の最大のおくれは何かということです。二十一世紀に日本の航空産業というのは絶滅をするのではないか。そこで、フライトコントロールシステムがおくれている、フライトコントロールシステム。これは計器飛行を指すのではないのですよ。大韓機〇〇七そのときも私は大変長い質問をいたしましたが、つまりあれは、計器飛行であるか手動であるかのポイントで、防衛庁から資料を私はお出しいただいたんだけれども、つまりそれじゃないのですよ。  つまりどういうことかというと、人間がこっちへ飛びたいといったらコンピューターがさっとそっちに動く、人間がこっちに行きたいといったらこっちにすっと動く。ここに極めて優秀なパイロットがいる、このパイロットの言動、動き、すべてをコンピューターに打ち込む。そうすると、世の中じゅうの最高峰にいるパイロットの動きをコンピューターがやってくれる。これをアメリカなりそれらの国はいろいろな研究をして進めてきているわけですね。ここの部分、フライトソースコードというのですが、ここのところが一番おくれている。  これを何とかしようとすると、相当高いものにつくのみならず、相当の機数をやらないといけないのですよ。今、新戦闘機七十機ですよ、F1というのは。そうでしょう。倍以上。あなたは少ないと言うけれども、理由にならない。少なくないのですよ、倍つくるのだから。七十機を百四十一機にするのでしょう、そうでしょう。  それでもう一つ、F4ファントムというのは、改装していないファントムが二十七機あるのですよ。取得年次がおそいから、そんなに傷んでいないのですよ。今のファントム二十七機というのは改装していない。ファントム改が八十五、六機ありますよ、その後おっこったのがあるかどうか知らぬけれども。そうすると、ファントムの改というのは逐次落ちていくんだけれども、これは当然支援戦闘機に回していいんですよ、今の世の中は、ソビエトの動きがこんなになっているんだから。  そうなると、支援戦闘機というものは、F4ファントム故を持ってきたら、戦闘機そのものはF15オンリーでいいんだから、来年五機またとる、何とかしようというのでしょう。そうすると、つまり支援戦闘機——まあF1の後継機というのは、F4ファントムで相当代替ができるし……。  今世の中は、秋山さん、考えてごらんなさいよ、卒業生、大学出だってこんなに就職がない。女性だって四割ぐらい就職がない。そこへもってきて、次から次から会社はこうなっていくわけですから。じゃ、一体やめた人はどうするかといえば、〇・五%の公定歩合だから、金利というのは限りなくゼロに近い。ゼロに近いにもかかわらず、二〇%税金を取っているのですからね。そうでしょう。  こういう世の中に、国民の税金を使って、ある意味でいえば、こういう言い方はよくないかもしらぬが、非生産的な部門である対地支援戦闘機というようなものの後継機を考えるとすれば、こういう姿が表に出てくるということは、私は耐えられぬ気がするのです。こんなべらぼうな——まあ一遍そこで聞いておきましょう。何かあればおっしゃってください、なければいいですから。
  174. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 まず、先ほどの質問の中で一つ答えを忘れましたので、それから申し上げたいと思います。  六十二年の十月に防衛庁としてFSXの開発を決定した際の平均量産価格は、御指摘のとおり五十四億円でございました。  先ほど答弁いたしましたように、現時点での平均量産単価は八十億円でございまして、その差に二十六億円ございますけれども、その差が出た理由について、一言申し述べたいと思います。——よろしゅうございますか。それなら、資料にあるとおりでございますので、御理解いただけると思います。  それでは次に、支援戦闘機七十機と言ったけれども百四十機じゃないかという御指摘でございますが、我々の見積もりは、支援戦闘機としては七十機を考えておりますけれども、それ以外に、いろいろな部隊に対する、教導教育部隊ですとかその他の部隊に対するFSXの配備、あるいは予備機、在場予備機といったようなものを全部積み上げまして百四十一機でございまして、正確に申し上げますと、一応支援戦闘機として現場に配備するのは六十機ということを考えでございます。現在七十数機です。  それから、F4の話がございました。現時点は御指摘のとおりでございまして、実は平成八年度から、F1の支援戦闘機の部隊を一つF4の戦闘機に、これは暫定的にかえる予定でございます。しかし、F4の残りも、御指摘の二十数機からどんどん落ちまして、十二、三年度ごろには、FSXで別のF1の部隊をかえませんと、F1自体が減勢してまいりますので、そこで八年度からFSXの量産をお願いしたいという計算をしているところでございます。
  175. 大出俊

    ○大出委員 またの機会に、少し突っ込んだ議論をもう一遍この問題でしょうと思います、生産過程にもいろいろな問題があるので。きょうは時間がないので。  ただ、これだけ申し上げておきますが、平均単価が一機八十億ですと、十機で八百億でしょう。百機で八千億でしょう。百四十一機というと、一兆一千二百八十億でしょう。支援戦闘機でこれだけのお金を使う。ほかのを、今の性能より優秀なものを調達しようと思えば、幾らでもあるわけですよ、先ほど幾つか申し上げたのだけれども。これは幾ら何と言われても、国民皆さんに——それで、しかも書いてあることが気に食わない。腹が立ってきますよ。  いいですか 一番最後の方に「一、FSXを八年度から量産化せず、量産開始時期をおくらせれば、技術者の離散の回避及び生産体制の維持のために相当な経費を要することとなり、FSXの単価が現行見積もりをかなり上回ることが予想される」、おどかされているみたいですよ。「結果として、量産化を断念せざるを得なくなるおそれが大きい」、ずらしたらですね。私は、ずらせというぺーパーを書いてさしあげたのだけれども。つまりやめてもらいたいのですよ、こんなのは。  二番目、「上記の場合、あるいは量産化を行わないと決定する場合には、既にFSXの開発に投じた総経費約三千二百七十四億円がむだになると考えられる」、むだになるから国民の税金を勝手に使ってとにかく何でも買える、それは筋は通らぬでしょう。また、「関連企業において、大企業だけでなく、」わざわざここに「大企業だけでなく、部品の製造等に携わる多数の中小下請企業にも深刻な影響が出ることが懸念される」、おどかされているようですね。  それから三番目、「他方、FSXの八年度からの量産化は、既に米国関係者に当然のことと受けとめられており、本件は日米間の喫緊の課題である」、アメリカの言うことは黙って聞けと言うのだな、これ。  こういうことまで書いて出されたのでは、うんなんて言えませんよ、これ。私は、もうとことんまでこれは反対だ、何と言われても。こういうやり方は。アメリカまで引っ張り出して、こんな手はないですよ。  それじゃ、この過程に、一体一遍どこで説明したのですか、皆さんは。安全保障会議か何かに話したということはあったにしても、私が大臣やる前は私はずっと安全保障ですよ、ただの一遍も聞いたことがなければ、資料をもらったこともないのです。それをいきなりここに来て、こんなものをぽんと出された、しかも最後に。これ、ひどいじゃないですか。  ここでおくらせたら、技術者を引きとめておいたりいろいろするのに金がかかるから単価がこんなに上がってしまうのだ、三千二百七十四億円むだになるということです。大企業だけじゃなくて中小下請企業がいっぱいあるのだ。そんなのは、理屈はとにかくよくわからぬけれども、何で八十億になるかわからないけれども国民の税金を使って、下請の皆さんや大企業のもうかるようにしてやれと言うの。そんなことはできないじゃないですか。そうでしょう。  それで、アメリカはもう当然これが受け入れられると思っているという。当然の課題だと受け取っていると。だから「日米間の喫緊の」、さすがにここでとめているけれども。つまり、こういうのは私はここで大臣に一つも聞かなかったから、衛藤さん、これ、議論聞いていてどうお思いになりますかね。感想でもいいですから、答えてください。
  176. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 国防というものは、当然国民の納得をいただかなきゃなりませんし、納税者の観点に立たねばならぬ、それも当然でございます。また、安全保障は国の根幹にかかわる問題でありますから、そういう面もしっかり踏まえてこれをとらえていかなければならぬ、このように思っております。  なお、そのような単価についての説明が不足だということでありますが、防衛庁の方からも、大出先生のところに向かわせまして、しっかり説明をさせますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  177. 大出俊

    ○大出委員 今私が述べていることを、いいですね、長官、検討してみてください。これはとにかく納得してもらわなければ困るのだから、国民が。いいですね、検討してくれますね。
  178. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ただいま大出議員指摘された点については、検討事項でありますから十分、指摘されたことについても、私どもしっかり踏まえて検討してみます。
  179. 大出俊

    ○大出委員 少し時間を予定より使い過ぎたのですが、ちょっと一言だけ聞いておきますが、AWACSはいつ入ってくるのですか、AWACSの方は。
  180. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 九年度以降に入ってまいります。
  181. 大出俊

    ○大出委員 最初の二機が九年度、あとの二機が十年度なのですよ。九年度の終わりなのですよ、AWACSの最初の二機は。  そこで、これ、当時私がさんざん申し上げたことなのだが、だんだん私の言ったとおりになってしまっているのです。アメリカは、AWACSは三十三機、計算によると三十四機あるのかもしれませんが、飛行隊で七つです。しかし、これ飛んでいないのですよ、ほとんどもう。ここに数字も何もみんなありますけれども。  この間、私が前に質問したときに、畠山さんがまだ元気なころですが、質問した、飛行中止じゃないかと。哨戒飛行を中止している。一九九〇年七月三十一日中止。  そこで、麻薬の、つまり小型機が入ってくるのを監視するなんてことをやっているじゃないかと言ったら、アメリカに聞いてみたがそんなことはない、そんなことはないと皆さんは。ところが、これは情報公開法に基づいて書いた人がいる、私の知り合いだけれども。これを見ると、麻薬なんですよ、これは。  冷戦後のAWACS機の用途はさま変わりして  おり、この部隊の沖縄における必要性は全く疑  問である。例えば、一九九一年の前半には嘉手  納からカリブ海における麻薬封鎖作戦(統合任  務部隊四・二)に参加した。はっきり書いてある。私の言うとおりなんだ。  本来のハイテクを駆使する航空線からはほど遠  い小型機による麻薬密輸の監視に使われている  のである。このように沖縄のAWACS部隊は  日本はおろかアジア・太平洋とも何の関係もな  い。つまり日米安保条約に何の根拠もない用途  に使われているわけである。にもかかわらず、  日本政府の厚い保護を受けている。一九九一年  六月二十七日、日本の思いやり予算九億円をか  けて専用格納庫が建てられ、第九六一空中警戒  管制中隊に引き渡された。第九六一空中警戒管  制中隊の兵力は二百三十七人、そのうち五十人  余りが士官である。これは私があのころ言ったとおりでしょう、今になってみると。  あなた方は、困るのは、何かあるとすぐにアメリカに聞いてみる、聞いてみて違うと言った、こうだ。それじゃだめなんで、やはり自主性を持って調べてくれなければいけない。  そこでまず一つ、ずっと並べます、時間の関係がありますから。  ミリタリーバランスによって在日米軍を調べてみた。韓国も調べてみた。ドイツも調べてみた。欧州のトータルも調べてみた。  どういうことになったかといいますと、欧州全体で、ことしまで、九〇年から九五年、欧州全体で三十二万いた、これは十六万に減った。半分になっている、五〇%減っている。  ドイツ、ドイツだけに限りますと、陸軍、空軍だけですよ。海兵はもちろんありません、海軍もありません。アメリカの軍隊がドイツに駐留している、陸軍と空軍。二十四万四千、これが九〇年。九五年十万三千、六〇%減っている。  韓国、九〇年四万四千、現在三万六千、八千人減っている。  日本、五万一千。九〇年に五万一千人、九五年今日、四万五千をちょっと欠けます。四万五千ちょっと欠けます。つまり、一生懸命ジョセフ・ナイさんたちは四万七千、四万七千と言うけれども、四万七千いない。  つまり、こういう今の状態をやはりきちっととらえていただきたい。そして沖縄の、今もう大きな問題になっている普天間、普天間の飛行場、どういう飛行機がどういるんですか。それから嘉手納、どういう飛行機がどのくらい、どういるんですか。  この間私が行きまして、現地の基地の司令官、参謀長等がキャンプ・コートニーから、ハンセンからみんな集めてありましたが、私が飛行機の数をぽんぽんと言ったんだけれども皆さんはみんな反対しなかった。我々調べてわかっているからです。  皆さん、ちょっとここで答えておいてほしいんですよ。嘉手納と普天間、今普天間はいろいろ問題になっておりますが、普天間、嘉手納、どんな飛行機がいるのかおわかりになりますか、何機ぐらい。
  182. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 お答えします。  ただいま、平成七年十月現在で、普天間飛行場には、ヘリコプターのCH46、CH53、それから輸送機のC12、給油機のKC130等が駐在しております。それで、嘉手納飛行場につきましては、現在戦闘機F15、それから空中早期警戒機E3、輸送機KC135,MC130,C141等でございます。ヘリコプター若干、あと対潜哨戒機P3Cが駐在しております。  機数につきましては確実な資料がございませんので、ちょっと後ほど御説明いたします。
  183. 大出俊

    ○大出委員 これは長年私も調べてきた、一人で何遍も行っているものですから。  普天間。TC130、これは練習機ですよ。C130を動かすための練習機です。C130、御存じの輸送機でございます、動かすための練習機。これは十三機。C12、これはビーチクラフトですよ、日本自衛隊の。ビーチクラフト。これは連絡機です、単なる。これが二機。T39一機、これも練習機です。すると、この普天間にいるTC130、C12、T30が、一本の長い滑走路でみんなやっているんだけれども、何も普天間に置いておく必要はないんだ、これは。練習機なんてどこでもいいんだ、これは。  じゃ、普天間じゃ何が残るかといったら、ヘリコプター。CH46、自衛隊は47だけれども、普天間、CH46、これが十二機。ヘリボーン作戦等に使ったりする機です。それからCH53、これは小型なんですね、小型ヘリ、小さい。これが二十。それからAH1八機。これは例のコブラです、これは。日本自衛隊もお持ちになっている、対戦車ミサイルがある。UH1八機。攻撃型多用途。日本自衛隊も持っている、たくさん持っています、百機ぐらいありますね。これはヘリコプターなんですよ。大変な滑走路は要らないんですよ、この普天間のこれは。年じゅう落っこっているけれども。  これは、練習機をのけてしまったら、CH46十二機と、CH53、これは小さいんですから、二十機と、AH1八機とUH1、これだけなんです。だから、地元だって、普天間何とかしろという意見が起こるのは当たり前ですよ。  私はこの間嘉手納に行ったら、方々からいろんな飛行機が入ってきている。いささか僕もあっけにとられている、こんなにあるはずはないじゃないかといって。  なぜかというと、嘉手納はF15が五十四機。これは情報公開法に基づく公開資料、三カ月ぐらい山さしてありますから、それによるとF15の機体番号まで全部載って出てきているわけですよ、アメリカの政府から。みんなわかっているわけです。それで、七十二機のものを十八機減らして今五十四機になる、五十四機。この間私がそう言ったら、認めてましたよ、米軍の側も。  KC135、これが十五機、これは大変にガロン数が多い、石油を積んでいますけれども。それからRC135、これは電子偵察情報収集飛行機、三機。そしてE3B、E3BというのはAWACSですよ。三種類ありますけれどもね、AWACSは。それで、HC130,MC130というのは、これはもうどこかに持っていってもらわなきゃ困る。  なぜならば、真っ黒く塗ってありまして、夜しか飛ばないと豪語している機種でございまして、HC130,MC130、五機、四機。まあMC130は五機というふうに見てもいいんですけれども。これは何をやっているかというと、猫、コウモリというあだ名がついているぐらいで、夜しか飛ばない。特殊作戦をやる特殊部隊。しかも、これはフィリピンのクラークから入ってきている。ごく一時だけここに駐留しますと、ちゃんと新聞記者にまで基地は話して、了解を得た。あれは九一年、九二年ですから、あれから今まで何年になりますか。みんなこんな居座っちゃって。  だから、あと申し上げれば、HC130、MC130、P3C、こうなっているわけです。ヘリコプターがHH3、C21、C12とこうあるんですけれども、整理をして、本来嘉手納にいるものでないものが入ってきているものは明確にする。その上で嘉手納にある飛行機を全部整理していくと、みんな減ってきているわけですから。P3Cなんかみんな三沢にやっちゃったんだから。ほとんどないんだから。たまに一機入ってくるだけなんだから。格納庫だけ思いやり予算でつくってあげただけなんだから。アメリカ本土のP3Cの基地は片っ端から閉鎖しているんだから。そうなると、これは嘉手納でヘリコプターのこのぐらいのものは引き受けられないはずはない。  そこで、一つだけ申し上げておきます。  このグアムの米軍基地、これが今、そこらじゅう引き揚げてしまって、もう本当に空き家だらけになっている。  ここにございますこれに、  空軍は、一九八九年の爆撃航空団の解体以来、  他の基地から飛来する航空機の休憩、燃料補給  地点でしかない。二千四百人の空軍兵士は全  員、通信など非戦闘部門で働かされている。こ  のため、基地敷地の大半が未使用状態。マイケ  ル・ブルックス空軍大尉(広報担当)は、今年  末までに全基地全体の一五%に当たるこのあい  ているところをグアム政府に返還しなければな  らぬというようなことを言った。と書いてあるのですね。  ここまでグアムの基地があいてしまっていて、フィリピン、これはピナツボ火山の噴火があったからじゃないのですよ、あの前からなのですから。だから、アメリカで考えて、空軍基地があってあいているのだから、グアムならグアムにやはり引き取るものは引き取ってもらって、そうすると嘉手納の整理ができますよ。何でこんなにあるのだと機種を端から挙げていったら、何と答えたかというと、横田の航空路を閉鎖しているためにみんな来ているのだというわけです。だったら、これは横田に返せばいい。  だから、そういうところを、アメリカの言うことを聞いているだけじゃなしに、やはりきちっとこちら側で把握するところは把握して言うべきことは言わなければ、問題の解決にはならぬと私は思っている。これを一つ申し上げておきます。  それから、あと何分もありませんが、これは本当にもうひどいことになっているのですね。いいですか、在日駐留米軍日本の負担額、九五年度で総額六千二百五十七億円、いわゆる思いやり予算がこの中の二千七百十四億円。ドル換算で六十四億ドル。米国の同盟国が駐留米軍に行っている支援、韓国が十九億ドル、日本は六十四億ドルですよ。ドイツが十四億ドル。人員はドイツの方が多い。日本は六十四億ドル、ずば抜けている。米側が、日本駐留はコスト的な効果が極めてよいと。これは国防省が出した三月一日の日米安保報告ですよ。  のみならず、一九九一年以来いろいろなことがありますが、ここで一つだけ例を挙げますと、チェイニー米国長官が、アメリカの西海岸で空母艦隊を維持するよりも日本に、横須賀に配備した方が安上がりだ、経費面で日本以上に貢献している国はない。それだけ貢献していて言うことを言えないというのはどういうわけだと言いたいわけでございまして、やはり積もり積もって沖縄皆さんが深刻に考えるというのは、みんな日本に持ってきてしまうからそうなるのであって、そこのところは皆さんがやはり考えていただきたい。  そこで、最後に一つだけ申し上げておきますが、嘉手納の米軍皆さんと私はあのときにいろいろ話し合って、約束がある。  それは、バイス准将、司令官がお見えになって、私が、兵隊さんが起こしたたくさんの事故、窃盗、強盗から始まって、殺人から強姦からいっぱいあるのを全部件数を挙げて、表に出ただけでこうだというところから、嘉手納飛行場に行ってみて、これだけ飛行機がいたんじゃどうしようもないじゃないか、長らく知っているけれども、最近何でこんなに入れるのだという話をして、爆音規制のための協定をなぜつくらぬか、日本国内の基地はみんなできているじゃないか、騒音防止のための規制措置をなぜ協定しないのかと詰めた。そしたら、何と言ったかというと、私は海兵隊だから軍隊という意味での部門が違う、違いますけれども、おっしゃることはよくわかる、わかるから、私が直接在日米軍司令官に話して、基地としては騒音防止協定をつくる余裕はあると思うからその旨私が直接話します、こう言うわけですよ。バイス准将です。  そうしたら、その隣におられた基地の参謀長、ヒース・スタイバーとおっしゃる方、大佐です。この方が、今、現場の事情という意味で二週間ごとに日米合同委員会に出かけてきてくれと言われておると、来週私が行ったら私が直接今の件は提起します、こういうお話ですよ。みんな聞いていたのだから。中山太郎先生以下みんなおられたのだから。  だから、これは長官、ぜひひとつ考えてみてあげていただきたいのですよ。嘉手納にしてもあるいは普天間にしても、出しておられるのを見ますと、それが一つのメーンになっていますから。そういう約束をなさったのだから、これはぜひお願いをしたい。いかがですか。
  184. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ただいまの爆音規制問題でありますが、近々に日米間に設置されます新しい協議機関、スペシャル・アクション・コミッティー、この場にその問題を提起いたしまして十分議論をして、今御指摘をいただきました点につきまして対処するように努力したいと思います。
  185. 大出俊

    ○大出委員 それでは終わります。ありがとうございました。
  186. 神田厚

    神田委員長 菅直人君。
  187. 菅直人

    ○菅委員 きょうは衛藤防衛庁長官にこういう形で初めて質問をさせていただきます。  今、沖縄のああいう不幸な事件から、沖縄の基地の問題あるいは米軍の前方展開の問題、さらには日米安保条約のいわば再定義の問題、こういう問題の議論を私どももしておりまして、本来なら冷戦後もっと早くからきちんとした議論をしておかなければいけなかった問題が、ああいった事件を契機に一挙にすべてが土俵に乗ってきたのではないか、そんな感じを受けております。  また、その中で、新しい大綱をつくってこれからの日本防衛力についての基本的な枠組みを決めていく、ちょうどその時期とも重なったわけでありまして、各党いろいろな議論が出ておりますが、私どものさきがけも、再度この問題の本格的な議論をしようということで、今、基本政策調査会というところで議論を再スタートさせたところであります。そういう点で、議論の最中でありますので、そういういろいろな問題点を大臣にお伺いしながら、意見交換をさせていただきたいと思っております。  まず、日米安保条約について、従来から、この条約日本が守ってもらうだけで一方向じゃないか、片務的じゃないかという指摘があちこちであります。  しかし同時に、必ずしもそうではないのではないか。まさにアメリカアジアにおける存在、あるいはアメリカ軍のアジアにおける存在というのは、ただ単に日本防衛ということにとどまらず、もっと幅広いアジアの安全、さらにはある意味アメリカとしての利益にもつながっている問題にもなっているわけで、そういう点では、逆に日本アメリカを支えているという面も相当あるのではないか、こういう議論もあるわけであります。  そういった点で、まず大臣に、この日米安保条約の現在の性格といいましょうか、よく言われます片務性というふうに見るのか、双方性というふうに見るのか、その認識についてまずお伺いいたしたいと思います。
  188. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 日米安保条約は、両国の主体的な意思のもとに、また両国の主権のもとに、両国国会におきまして批准された条約でありまして、この日米安保体制は、日本にとりましては日本を支えていただき、また米国にとっても米国の利益をしっかりと担保しておる、そういう両面を持っておる、ですから一概に片務的な条約ではない、私はこのような認識を持っております。
  189. 菅直人

    ○菅委員 そういう点では、私も基本的には長官と同様な感じ方をいたしております。  先日も、ある国防長官と同行された関係者と話をしたときに同じ質問をしてみたのですが、いろいろな意見アメリカサイドにもあるかもしれませんが、少なくともその人は、日本アメリカ関係というか、この日米安保関係というのは、アメリカ軍事的に超大国であって、日本軍事的にいえば決して大きな国ではない、そういう性格の違いはあるけれども、ある意味での補完関係にあるのだ、そういう認識でいるのだということを言っておられました。  そういう点では単に、何といいましょうか、双方に対する攻守同盟になっていないから一方的だとか、双方的でないということにはならないという認識は、その方も共通でありましたので、先ほど来の議論の中で、安保条約が余りにも日本にとって、何といいましょうか、守ってもらっているだけなのだから、もっとこうしなければいけない、ああしなければいけないという、そういう感じ方は必ずしも必要ないのではないか。逆に言えば、共同の問題として何をすべきかということは考える必要があるけれども日本が何か負い目を感じて、だから何かをやらなければいけないという問題認識に立つ必要はないのではないか、そういうふうに思っております。  同時に、いわゆるナイ・イニシアチブと言われる国務次官補のいろいろな見解が出ておりますが、この認識について長官はどうお考えになっているのか。  つまり、冷戦後、ブッシュ政権から三次にわたる報告東アジア戦略構想についての報告を見ておりますと、アメリカサイドも若干揺れているような感じがするわけですね。当初はもうちょっと極東米軍は減らしてもいいという考え方もあったようですが、ある意味では北朝鮮の核疑惑の問題、あるいはフィリピンの両基地の撤収の後がえって沖縄中心とした在日米軍の基地を含む存在が、より重要性というか、そういうものが高まってきて、そういうものも含めてナイ・イニシアチブという形になっていったというふうにも受けとめられるわけですけれども、このナイ・イニシアチブについて、長官としてはどういう認識でおられるか、お聞きをしておきたいと思います。
  190. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ナイ・イニシアチブは非常に現実的なガイドラインを示しておる、まずこういう認識を持っておりますし、また、これから先、例えば五年、十年、こういうようなタームをもってこれから先の国際政治情勢並びに不安定な軍事情勢、そういうものをしっかり視野に入れたナイ報告である、私はこういう認識を持っております。  とりわけ、ブッシュ政権のときにおきまする在韓米軍の削減等々、そういうことも大きく報道され議論されたところでありますが、しかし、御案内のとおり、朝鮮半島の緊張が急に高まってくる、それが現実的なものとしての高まりを見せる、そういう中におきまして、今先生御指摘のような在日米軍、そういうものの重要性、そういうことが私はしっかりとナイ・イニシアチブに示されておる、このように理解をしております。
  191. 菅直人

    ○菅委員 そこで若干、今長官の言われた、その在日米軍なりあるいはアジアにおける前方展開の重要性ということを私も基本的には認めるわけです。  ただ、その場合に、先ほど来の他の委員からの質問の中にも、いわゆる日本での駐留というのが、日本のホスト・ネーション・サポートによって総体的に非常に経済的にアメリカにとって助かっているという問題は、ある意味では日本アメリカに対するサポートになっているという面と同時に、そのことが特に沖縄における基地のより強い固定化につながっているのではないかという、何といいましょうかある種のジレンマのようなものが率直に言って感じられるわけですね。  ですから、日米安保条約重要性、あるいはアジアにおけるアメリカ軍の存在というものを我々が肯定的にとらえて、その存在をある意味では積極的に支持するという前提に立ったとしても、そのことが逆に基地の、特に沖縄における基地の固定化につながる。そこを多分、今回も沖縄の知事を中心に非常に危機感を持たれて、いろいろな行動をされているのではないか。  そのあたりのこのジレンマをどういう道筋で解くことができるのか、これが今政府に課せられた、あるいは与党、野党を超えての課題だという感じもするわけでありますが、そのホスト・ネーション・サポートが持つそういう、何といいましょうか、ある種のジレンマのようなものについては、長官はどのようにお感じになっておりますか。
  192. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 まず、ホスト・ネーション・サポートの前提として日米安保条約の第五条、第六条、そういうものをしっかりと踏まえ、日米安保体制の有効的な活用を円滑にするためにもこのホスト・ネーション・サポートは大変大切なものである、このように思いますし、また、ホスト・ネーション・サポートこそ日米安保条約をある意味ではしっかり担保する大きな柱でもある、このように私は思っておるところでございます。  そして、このことを通じて、私は、当初申し上げましたとおりに、在日米軍存在を、日本にとってもまた米国にとっても共通の利益としてそれをしっかりとプレゼンスさせることになっておるのではないか、私はこういう認識に立っております。  なお、沖縄県の問題でありますが、沖縄の基地の問題につきましては、委員指摘のとおりでありまして、在日米軍のこの四万六千云々のプレゼンスをしっかり視野に入れまして、そして十万人のアジア・太平洋地域の前方展開のプレゼンスも視野に入れた中で、これからのいろいろと変わってくるであろう国際軍事情勢、国際政治環境、そういうものもしっかりとらえながら、私は、沖縄にある在日米軍の基地の七五%の基地そのものの整理統合、そして縮小というものは進められる、不可能ではない、このように思っております。  そういったことにつきましても、これからは2プラス2、あるいは2プラス2のすぐ下に位置づけられる新しい協議機関、スペシャル・アクション・コミッティー、そういうところにそういう問題も出し、そして、そのもとにおけるこれから設置される我が国政府と沖縄県との新しい協議機関におきましても、逐次そういう問題が取り上げられて、そして適切に処理されていく、このように思っておるわけでございます。  当然この問題につきましては、内閣を挙げて、単に防衛庁施設庁だけではなく、二十省庁から成るまさに政府、内閣を挙げてこの問題に取り組むべきである、こういう認識に立っておるところでございます。
  193. 菅直人

    ○菅委員 そうしますと、その前方展開十万あるいは日本における四万六千、そういうものをいわば前提としながら、しかし沖縄の基地については、沖縄皆さんの言い方で言えば目に見える形で縮小を実現をしてほしい。そうなりますと、もちろんいろんな合理化的なやり方である程度の縮小なり配置の転換による実質的な縮小は可能かもしれませんが、大幅な問題になれば、やはり国内における移転の問題とか、さらには日本だけではなくて、十万のアジアにおける前方展開という枠で考えれば、つまりはアジア・太平洋地域における再配置の問題ということも、少なくとも論理的には出てくる問題だと思うわけです。  そういった問題について、その日米の新しい話し合いの場に議論として出すというお考えをお持ちかどうか。私は、いろんな議論がありますけれども、率直に言ってやはりそういった問題も少なくとも議論の場には出しながら、しかし、すぐに何かができるということではないかもしれませんが、短期、中期、長期の中で議論をしていく必要があるのではないか。  先ほど他の委員の方からも、グアムの利用の問題とかハワイについてはこれはどう判断していいかわかりませんが、あるいは他の地域についてもいろいろな可能性があるといった問題も指摘があるわけですけれども、そういう国内再配置あるいは日本だけではない、アジアにおける再配置といったような問題についても、そういう協議の中で協議をされる用意があるのか。  また、その場合に、それを日本が支援をするということ、これもいろんな制約がありますから簡単ではありませんが、そういうことを含めて、つまり、国内におけるホスト・ネーション・サポートという考え方を若干拡大をして、国内の基地が若干減った場合に、それにかわる基地を提供してくれるような国があった場合には、若干そういうところについても支援をするということの考え方を含めて、そういう議論をされるようなおつもりがあるか、ちょっと考え方をお伺いしたいと思います。
  194. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 日米安全保障体制は、我が国の平和とか安定に貢献するのみでなく、アジア・太平洋地域の安定と平和、そして繁栄に大きく貢献しておりますし、また、これからもそういう分野がますます大きくなることを期待しているわけであります。当然、沖縄の基地の問題は、そういう意味沖縄県のローカルな問題であると同時に、東京というセントラルな問題でもありますし、当然、沖縄の基地の問題はグローバルな、そういうような問題も含んでおるわけでございますから、そういうような見地に立ちまして、在日米軍のこのプレゼンスの問題を私どもはしっかりととらえてまいりたい、このように考えております。
  195. 菅直人

    ○菅委員 それでは、少し問題を変えまして、この新しい大綱について幾つか御質問をさせていただきます。  今回、新たな防衛力の考え方という、何といいますか、案というんでしょうか、これをいろいろ説明をいただいて、大きな流れとして大筋こういうものかなという感じがすると同時に、やはり幾つかの点では、何といいましょうか、方向性がやや不鮮明な感じもしております。  例えば、ちょっと具体的な話になりますが、装備の問題で、陸上自衛隊の中で、たしか戦車約千二百両を二割程度削減、こう書いてありましたね。今、戦車の配置がどうなっているか細かく私も承知しておりませんが、一般的に言えば、北海道に相当部分が配置をされて、従来の対ソ戦略でいえば、北海道にいわばどこかの国が上陸をしてきたときに対抗するという想定のもとにそういう配置もとられてきたんだろうと思うわけです。しかし、ソ連の崩壊後の状況を見ますと、そういう配置を、二割程度の削減というのは大幅といえば大幅なんですが、場合によっては、そんなに残す必要があるのかな、あるいは北海道に配置されたものが例えば本土、本州の方で展開できる可能性というものも考えて残されるのか。  ですから、逆に言えば、めり張りをつける場合に、思い切って減らすものは減らしながら、場合によって若干強化といいますか若干充実させるものは充実するという、そういう中でのトータルな、まあトータルな中では若干の軍縮の方向に向かうべきかと思いますが、今の戦車の問題についてちょっと、具体的にはどういうお考えでこの程度の減ということを考えられているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  196. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 戦車を取り上げられて御質問がございましたので、戦車、現在、約千二百両あるわけでございますけれども、その二割程度を削減したいという考え方について申し述べたいと思います。  これは、やみくもに二割をカットするということではございませんで、まず、御指摘にもございましたその機動運用部隊たる一個機甲師団、これは北海道にあるわけでございますけれども、この機動運用部隊の一個機甲師団は、これは現状を維持したいという考えをまず持っているわけでございます。  それは逆に申しますと、平時、地域配備する部隊、これは現在全国に十二個の師団と二個の混成団があるわけでございますけれども、この十二個の師団と二個の混成団につきまして、周囲の戦略状況の変化あるいはその他いろいろ、今回防衛大綱を見直すに当たってのいろんな諸要因を考慮いたしまして、編成がえ及びその組織の縮小を考えているところでございます。  十二個の師団のうち、約四分の一から三分の一は旅団にしたい。師団の規模は、そもそも大体九千人、まあ七千人というのもございますが、そういう規模でございます。旅団は約その半分、そういう旅団化をするということと、かつ機動性を持った旅団ないし師団にしたいということで、新たに今部隊編成を考えております師団ないし旅団の中で、あるいは戦車連隊ないし戦車大隊がどういう形になるのかというものを全部積み上げた上での約二割の減、こういう考え方でございます。
  197. 菅直人

    ○菅委員 これは、大部分が北海道での作戦ということを想定しているわけですか、それ以外の地域の作戦ということも想定しているわけですか。
  198. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 北海道に配置しております、また、配置を引き続き予定しております一個の機甲師団を除きますと、他の師団あるいは旅団に配備する戦車連隊ないし戦車大隊あるいは戦車の数は、それぞれの地域に応じて配備しているところでございまして、北海道に集中ということではございません。
  199. 菅直人

    ○菅委員 この問題はきょうはこの程度にさせていただいておきますが、つまり、ごく常識的に考えて、確かにヨーロッパのような地形だとかであれば、間に海がないわけですから、当然それは陸上戦闘の場合に戦車というものが非常に大きな要素になるわけですが、日本は海に囲まれているわけで、従来から海を越えての攻撃のときに、そういうミサイルとかなんとかを除いて、陸上に上陸して戦うという可能性というのは、よほどのときでなければなかなか考えられないとも言われたわけです。特にソ連崩壊後、そういう想定というのは従来よりさらに低くなったと考えるのが常識的だと思うのですね。ですから、常識的だから若干減らしたということになるのかもしれませんが、果たして、各旅団、師団で説明されましたから、何がどこに配置されてどうなっているか、私もまたその細かい点を聞いておりませんのできょうの段階では問題の指摘にとどめておきますけれども、例えば、そういうものは思い切って削減をする。  もう一点加えますと、PKOに対する対応ですね。これについてもやや抽象的な表現ではいろいろ表現をされております。私も、実はカンボジアのPKO、モザンビークのPKOを見てまいりまして、またせんだっては、これは日本は行っておりませんが、マケドニアにPKOが配置されておりまして、それもちょっと見てきたわけです。  一つは、よく言われるのは、日本は独自では長距離の輸送体制がないとか、あるいは細かい点で言えば、多少改良されたかもしれませんが、テントなんかも国内の戦闘用だから比較的小さいテントでいる、そうすると、半年間ぐらい常駐するような装備には必ずしもなっていないとか、そういった意味で、PKOというのは従来の国内における専守防衛の想定とは基本的に違っていると思うのですね。  そういう点で、これはきょうは別組織論が是か非かというところまで議論を拡大するつもりはありませんけれども、少なくとも、PKOというものを想定した装備のあり方というようなものが、例えばこういう中にもうちょっと出てくるのかなと思ったら、必ずしもわかりやすい形では出てきていないように思うので、そのあたりの考え方についてちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  200. 秋山昌廣

    ○秋山(昌)政府委員 冷戦終結等による国際情勢の変化に対応するほか、大規模災害等への対応と同時に、今御指摘のございました国際平和協力業務の実施等、より安定した安全保障環境の構築への貢献という分野においても自衛隊役割に対する期待が高まっているという観点から、現在検討しております新しい防衛大綱の中で、まさに今議論をしている最中でございますけれども防衛役割といたしまして柱を三つ立てておりますが、我が国防衛のほかに、大規模災害等各種の事態の対応と並んで、より安定した安全保障環境の構築への貢献という項自立てをして、この防衛力役割として規定をしたいというふうに今我々は考えているところでございます。  これは、現在の防衛大綱と比較いたしますと非常に新しいところでございまして、そこの書きぶり、表現ぶり等につきましては、防衛大綱の性格上ある程度抽象的にならざるを得ないと思っておりますけれども、他の分野との比較において言えば、割合と詳しく書き込みたいというのが今の私たちの考えでございます。  なお、それに基づきまして、それでは装備品、例えば御指摘になりました大型の輸送機ですとかあるいはテントといった問題につきまして、実は、防衛大綱の性格上、主要な装備品として別表に出てくるその中に、PKO対応といったような装備品が具体的に出てこないのは事実でございますけれども、今後各五年間の防衛力整備計画の中で、あるいは毎年度の予算の整備の中でその辺は明らかにしてまいりたいと考えております。
  201. 菅直人

    ○菅委員 例えば、空中給油機なんかはぜひほしいんだというようなことはかなり具体的にしきりに言われるわけですよ、ここに書いてある書いてないは別としてですね。しかし、PKOというのは、大きな議論があって、現在実施になって、今後のあり方もいろいろ議論が必要なわけですが、少なくとも、現在のようなPKOへの参加だけを考えても、今のいわゆる専守防衛だけを前提としたものでは十分でないことがあることはもう明らかですね。  今、テントと輸送機だけ言いましたが、これはこの間法律も変わりましたけれども、通信施設とかそういう問題も、多分インマルサットなんかを使っていましたけれども、そういうものの重要性とか、あるいは装備ではないかもしれないけれども、訓練とか部隊編成の中にも旅団とか師団というような表現はありますけれども、例えば、PKO対応のそういうトレーニングを受けた部隊が、常にある程度トーレーニングされながら待機しているというようなこともあり得ると思います。  そういう点で、実は、きょうはもう時間がありませんので問題の考え方だけの指摘にとどめたいと思いますが、この間の議論で、武力行使がどうとかという議論がこれからPKFについてもあるわけですけれども、もう一つ全然別の次元として、つまりPKOというものが国際的な公務員としての仕事であればこれはまた考え方が違うのではないかとか、あるいは、これは将来のことになるかもしれませんが、アメリカ軍の存在も含めて国際的な、あるいは国連の警察軍的な性格を明確にすれば、逆に言えば、それは先ほど集団的自衛権といった議論も出ておりますけれども、それとはまた枠組みの違った形の議論になってくる感じもするわけです。  そういう点で、最後に一言だけ長官に、PKOに対する考え方を聞かせていただいて、質問を終わりたいと思います。
  202. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 私どもにとりましてPKOは国際平和協力業務の最たるものである、こう位置づけておりまして、新大綱におきましても新しい三本の柱の中の一本として打ち出しておるわけでありまして、このPKOを円滑にかつ効果的に進めるためのいろいろな環境整備、そういうことにつきましては、私どもといたしまして積極的に対応してまいりたい、このように考えております。
  203. 菅直人

    ○菅委員 終わります。
  204. 神田厚

  205. 東中光雄

    東中委員 去る十一月一日の日米首脳会談についてお聞きしたいのですが、この共同発表の文書を読みますと、私は非常にわかりにくいと思うのです。この中に、例えば「両長官は、我が国周辺地域においてはこということで、軍事情勢を書いていますね。我が国周辺地域というのはどういう地域を言うのですか、どういう地域を想定して両長官は言っているのでしょう。
  206. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 この問題につきましては、日米安保条約の第六条に規定されるこの範囲をまず想定いたしまして、我が国周辺地域と、このように考えているところであります。
  207. 東中光雄

    東中委員 また、この共同声明の中には、「アジア太平洋地域」という言葉も使われていますね。この「アジア太平洋地域」と、それからあなたの言われる周辺地域とは一緒ですか、違うのですか。
  208. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 アジア・太平洋地域は、まさにアジア・太平洋地域でありまして、日米安保体制が、我が国の安定と平和に貢献するのみならず、このアジア・太平洋地域についても十分に新しい国際環境の構築に向けての貢献をしておる、そういう側面をも大いに議論をした、こういうことであります。
  209. 東中光雄

    東中委員 いや、どうもわからないのですが、アジア・太平洋地域というのは、アジア全体と太平洋全体の地域というように聞こえます。それから、周辺地域というのは六条に言う極東地域のことを言っているのですね。それは明らかに違うわけですね。その点、要するに、極東地域との関係長官の声明に書いてある言葉について聞いているのですから。
  210. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 六条に規定された極東地域を議論する場合も当然その周辺地域のことをよく議論をしなければならないのでありまして、それは言うまでもなくどちらもしっかりと私どもとしては視野に入れておる、そして議論もした、こういうことであります。
  211. 東中光雄

    東中委員 時間の浪費になりますからやめますが、この中で、「日米安保体制が、戦後五十年間、日本の安全を守り、この地域における平和と安定の礎となっており、二十一世紀に向けて日米両国がその絆を一層強固なものにすべきである」、こういう点で「意見の一致を見た。」「この地域における平和と安定の礎となっており、」二十一世紀に向けて一層、今までの状態じゃなくて、今までの状態からさらに一層強固にする、こう言っているのですから、「この地域」というのはどの地域ですか。  それから、現状よりも一層というのはどういう点をどう変えるというのですか。それを両長官意見の一致を見たのであります。防衛庁長官が言ってください。
  212. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ただいま申し上げましたとおり、「この地域」というのはまさに周辺地域のことを指しておるわけでございまして、二十一世紀に向けてさらに確かなお互いのきずなを強めていこう、こういうことも、十分にこれから先の国際政治環境あるいは軍事情勢、そういうものも視野に入れた上での私どもは一致を見た、こういうことでございます。
  213. 東中光雄

    東中委員 これは非常に重要なんですよ。私、これは八一年の五月のときの鈴木首相とレーガン大統領の共同声明、今持ってきたのです。ここでは、八項の場合にこの安保条約関係について言っているのです。  どう言っているかというと、「日米相互協力及び安全保障条約は、日本防衛並びに極東における平和及び安定の基礎であるとの信念を再確認した。」極東の平和と安定の基礎であるということを再確認した。「両者は、日本防衛並びに極東の平和及び安定を確保するに当たり、日米両国間において適切な役割の分担が望ましいことを認め」、そして鈴木さんは「一層の努力」をすると。ここで「一層」が出てくるのですよ。それで大変なあの同盟体制へ入っていったのですね。ここで言っている枠は極東の平和と安全なんです。その基礎になっているのだと。  ところが、今度ここで出ているのは、極東の平和と安全じゃなくて、あなたははっきり言いましたね、周辺地域、アジア・太平洋地域と。その基礎と。礎と書いてあるけれども、こっちは基礎だ。訳が違うだけで同じことでしょう。だから、極東の地域の平和と安定の基礎になっておったということで、それを再確認した。十五年前ですね。そして、一層の努力をすると言って役割分担がうんとふえていった。これは鈴木さん、大問題になったのですよ。  今度は、そんなものまるっきり違うんだ、枠がもうアジア・太平洋というごついものに広がってしまっておる。そして、「絆を一層」と。これはもう大変な拡大であるということ、鈴木さんのときさえあれだけ問題になったのですからね。もう鈴木さんが帰ってきたら国内でびっくりするほど問題になった。ところが、今こういう格好でいつの間にやら平和と安全と、アジア・太平洋といううんと広いやつですね、それで進んでおるということで、これはもう断じて許されない。  今までの一つ安保の体制の枠内で大変だと言っていたのが、今度はもうぐんと広げてしまったということを、しかもこういうなし崩しでやっていって、来るべき「十一月の日米首脳会談が、両国にとって日米同盟日本防衛アジア太平洋地域の平和と安定にとって」という、そこへ行く歴史的なことになるだろう、こう言っているのですからね。  私は、そういう点でいえば、これはもう大変な安保の実質改定、そして、それを共同宣言という首脳会議の前の防衛首脳会議でもう先取りをしてなし崩しにやっていくものだ、絶対に許されない、重大な問題だということだけ申し上げて、今度は内容に入っていきたいと思うのです。  この日米首脳会談で沖縄米軍基地の縮小が中心の問題になったと思うのですが、これでペリー国防長官が言った基本的な姿勢というのは、私は、これ共同声明よく検討させてもらいました。それから、ペリー長官の十一月一日の日本記者クラブでの会見なども見ました。  それで、結局ペリー国防長官が言っていることは、在日米軍は一兵も減らさない、縮小はしない。四万七千というあの数字も何で出てきたのかよくわかりませんけれども、しかし四万七千というのはこれは維持するのだということですね。そしてもう一つは、地位協定は改定しない、地位協定は改定しないで運用面のことをいろいろ協議はする、しかし改定はしない、この二つのことを言ってきたと思うのですよ。そうじゃなくて改定もあり得る、それから米軍縮小もあり得るということを言ったですか。  この二つがペリー長官のこの会談における向こう側の主張の骨子だったと思うのですが、それを日本防衛庁長官は了承したのですか、どういうことになっているのですか、お伺いをしたい。
  214. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 ポスト冷戦後、そして冷戦下の日米安保体制の持つ意味合いというものは随分変わっておると思います。冷戦下におきましては、むしろ力による抑止力軍事力による抑止力、そういう側面が前面に出た形だったと思いますが、ポスト冷戦におきましては、新しい平和の国際環境をつくり出す、そういう側面、それからもう一つは、軍事力だけではなく例えばAPECのような経済体制、あるいは御承知のとおりASEAN地域フォーラム、そういうような体制、そういった極めて総合的な安全保障の観点からの日米安保体制役割あるいはその貢献がうたわれておる、私はこのように思っておるわけでございます。  この沖縄の問題につきましても、そういうような立場を踏まえながら米国が十万人とかあるいは四万七千人とか、そういうことを明確に位置づけをして、そして日本の考え方を問うた、私はこのように思っております。  私は、当分の間、この米軍の十万の展開とそれから四万七千の在日米軍の展開、コミットメント、そういうものは我が国のより確かな安全、国の守りを担保するためにも私はそれは必要である、そういう認識に立ちまして私は同意をしたのでございます。
  215. 東中光雄

    東中委員 一兵たりとも減らさない。その目的とかなんとかというのは、それはそれぞれの国がそれぞれいろいろ言っていますから、私は今それは言いません。要するに、在日米軍は一兵も減らさないということについては了承をしたということですね。  そしてもう一つ、地位協定は変えない、記者会見ではこう言っていますね、「文書の手直しによる問題解決はしたくない」と。要するに地位協定の文書を変えるということはしたくないということをちゃんと言うたと。発表文を見たらそれをするとは書いていないから、それは認めたわけでしょう。どうなんですか。
  216. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 地位協定の改定、見直しの問題でありますが、それについては、まず十七条5の同につきまして速やかなる運用改善の成果を得た。  さらには、いろいろな問題につきましては、この実質的な運用改善によりましてそれぞれの問題を解決しよう。そのためには今までにはなかった日米間に新しい協議機関を設ける。それも2プラス2のすぐ下に設けまして、そして、今までとは違って、この会議にはペンタゴンあるいは国務省の局長クラス、高官をそのメンバーに組み込むことによって、そしてさらにその下にワーキンググループを置くことによって、このいろいろの地位協定にかかわるような問題につきましてもSACにのせまして、そこで協議をして、そしてどんどんと実効を上げていく、そういうことを事前にお互いに確認した上でのこの前の話し合いであったということを申し上げたいと思います。
  217. 東中光雄

    東中委員 ということは、要するに運用面でいろいろ話し合いをする。だから、地位協定の改定はしたくない。しないと言っていることを前提にして、そして運用をする。こういうことになっているわけです。  沖縄から出してきているのは、地位協定を改定してくれ、二条関係、三条関係と随分細かいものが出ていますね。そういう地位協定の改定にはアメリカは応じないと言うたので、そのことを日本側が要求することはしないで、そのままにしておいて、運用面についてこれからいろいろ新しい機関をつくって話し合いをするということにしかなってないのだ。だから、向こうの枠の中に入ってしまった。日本としては県民の側の要求は何も出しておらぬということになってしまうということだけ指摘しておきます。  それで、もう一つですが、十月三十一日に連立与党は「沖縄の基地問題等の打開に関する提言」というのを米側に説明したというふうに私は聞いているのですけれども、その整理統合ではなくて、兵力の縮小はもうしないということを認めているけれども、今度は基地の整理統合ではなくて、整理統合、縮小というものが入っているわけですね、今度は。ところが、今まで基地の整理統合、結果としての縮小と言ってこられましたね。それは結果としてというのはなくなったのですか、整理統合、縮小ということは。整理統合、結果としての縮小とこれはどう違うのですか。ただ表現の違いだけですか。そこをちょっとお伺いしたいのです。
  218. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 結果としての果実の評価をするのではなくして、一つの明確な目標を持って、そして、しっかりとしたアクションプログラムのもとに基地の整理統合、縮小をやろう、こういうことでございます。
  219. 東中光雄

    東中委員 それで、縮小はしない。基地の整理統合が中心なのですが、ペリー氏は  部隊を一つの基地から他の基地へ移したり、兵  士を本土に移す作業は可能だが、その調整は全  体として四万七千人の在日米軍が必要との制約  の中で行うべきだ日本国内の調整、配置を進めるについては協議機関で話し合うべきだということ、だから日本側からどこへどう移すのかというようなことを出してこいと言っているようにも見えるのです。ところが、今度は協議機関をつくるということになっていますね。その新しい協議機関でそういうことを話し合うことになるのですか。  そうすると、まずその構成まで決まりましたけれども、その新しい協議機関というのは何か期限が一年間と決まっているというふうなことを総理の方から言われたというようなことが報道されたりしておりますけれども、新しい協議機関の期限はどうなのでしょうか。
  220. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 クリントン大統領訪日時、クリントン村山会談が行われまして、新しい協議機関についてのスキーム、これにつきましての発表もありますし、また、いつ第一回の新しい協議機関、SACの会合を行うか、こういうことも発表になるもの、このように思っております。  当然そのスキームとともに、そういった御指摘のような期限の問題もそのときに発表されるものと思っております。
  221. 東中光雄

    東中委員 そうしますと、一応内々の話は、この協議機関をずっと永遠につくる、長くつくっておくというのではなしに、一年なら一年と期限を切ってという格好の協議機関、協議機関の設置というふうに今度の文書で出ていますから、その設置の中身はクリントンとの本当の日米首脳会談の結果で発表する、こういうことですね。  それで、その運営の仕方ですけれども、これは「ペリー米国長官による村山総理表敬(概要)」について外務省が発表した文書によりますと、一番最後に、  一日に行われたペリー長官と河野大臣及び衛藤防衛庁長官との会談において合意された基地の整理統合に関する新たな協議の場の重要性について認識を同じくし、総理より貴長官のリーダーシップによりかかる場においての成果を期待する ということを総理は表明されたと書いてあるのです。だから、この会議で、この協議機関で「成果を期待する」のは「貴長官」ペリー長官の方のリーダーシップによってこの場で成果が上がることを期待する。日本の方からイニシアチブをとって、そこで言うことを聞いてくれよというのではなくて、この表敬訪問の最後にそう言うたということがわざわざ出ているのですよ。これは一体そういう性格のものですか。
  222. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 その報道記事だけを読みますと、そのようにとられるかもしれませんが、実は今、沖縄で動いておりますいわゆる三者協議機関というのがあります。当方の那覇防衛施設局長、沖縄県そして在沖米軍調整官、この三者協議におきまして、実は那覇防衛施設局あるいは沖縄県のそういう要望が壁にぶつかることが多いと、いわゆる在沖米軍の壁に。だから、そういうことではなくして、今度できるSAC、スペシャル・アクション・コミッティーではもう少しハイレベルの会合にするのだ。だから、そういう意味におきまして、いわゆる国務省はもちろんですが、国防省、ペンタゴンのリーダーシップをしっかりやってくださいよ、こういう意味でございますから、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  223. 東中光雄

    東中委員 この新たな協議機関で協議をする議題について  引き続き検討することとされている事案で検討  未着手のもの及びその他の事案の中から、新た  に検討する対象を取り上げると書かれています。これは結局十八事案のうちの十四事案ですね。いわゆる未解決十四事案をこの協議機関で協議するということですね。
  224. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 御案内のとおり、引き続き検討事案として残された十八事案がありますが、御指摘のとおりでありまして、それにつきましても新たにできる新協議機関で検討する、こういうことであります。
  225. 東中光雄

    東中委員 これについても検討すると今おっしゃいました。  そうしたら、そのほか全基地、在日米軍基地全体をその検討の対象、見直しの対象にするかしないのか、その中から何かを選んでやるのか、何かを選ぶとしたらどこを選ぶのか、そういう点ほどうなんでしょうか。全在日米軍の基地の態様全体を見直して、兵力は減らさないのですから、基地を縮小するんだったらですよ、何かそういうことを全部やるのかやらないのか、そこらはどうなんでしょう。
  226. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 まずは知事からの強い要望のありましたいわゆる三事案ですね、この三事案の解決。そして、引き続きましての検討事項がございますが、この検討事項を、やはり俎上にのっておるわけですからこれをまず解決する。そしてその後に、今御指摘のような新たな問題点につきましてもSACの方で協議をしていこうではないかこういう趣旨でございます。
  227. 東中光雄

    東中委員 年内に結論を得る十事案というのがありますね。これはもう改めて言うほどのこともないと思うのですが、どっちにしても、平成二年の六月の合同委の合意を得ている問題で、これはもう全部年内に解決つけたって、こんなものは決まっておることを決まっておるようにやるだけで、わずかに一・八%の四百二十六ヘクタールしか減らない。  だから、これはもう麗々しく言うほどのことじゃない。はっきりと沖縄の人は、例えば、基地の整理縮小と言うにはほど遠い、この内容では到底納得できない、北中城村の喜屋武村長ですか、こんなものは返還が既に確認されているものを蒸し返しただけに過ぎぬ、逆にそんな抗議の声が出ているぐらいですから。  あと問題は、三事案というものですね。この三事案が、私も現地に行って見てきて、那覇の軍港の撤去なんというような問題は、これはもう随分昔からの問題ですね。あそこの牧港の補給基地のところの防波堤を、私上ってみましたよ。今、海ですがな。那覇港湾の地域の中ですよ。そこを、那覇港港湾計画浦添埠頭地区、西海岸開発計画地区ということでこれから埋め立てをやるのでしょう。それで埠頭をつくるのでしょう。三十五・三ヘクタールですか。  そして、浦添補給基地の一番便利なところにつくって、それは那覇の仕事として、港湾整備としてつくって、でき上がったらそれを軍港にしますというのです。基地にしますというのでしょ、う。  だから、米軍の基地を便利なところへつくってやるために、港湾計画の中でこれからやるんだ。那覇軍港の返還と言っているけれども、返還実現のために新しいものをつくるんだというのですから。それで向こうが、今の那覇の埠頭から浦添までとっとことっとこ車で運ばなければいかぬものがすぐそばへ来て、これは便利になります、機能強化になります、これは返還じゃないですよ。それは返還どころか日本国民の血税で新たにつくってやるのですから。そして軍事基地、米軍の基地に新たに提供することになるのでしょう。  こんなもの、整理統合、縮小なんて言えますか。整理統合、基地機能強化ですよ。新たな基地の提供じゃないですか。だから、浦添は全部決議して反対しているのでしょう。こんなもの、三十四事案なんて言って、それはだめですよ。沖縄県民が承知しないのは当たり前ですよ。これは本当にひどいものだと私は思いました。  それから、県道百四号の射撃の問題です。  これはこの前のときに長官が、国内の、本土の方の九基地、射撃演習場へ複数で分散するということも検討している、作業を進めているという趣旨のことを言われたと思うのです。十月五日で特別作業班が設置されてということを、十月二十日のときにここで答弁されましたね。その九つの基地というのか、演習場といいますか、どことどこですか。
  228. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 現在、一〇四号線越えの射撃場移転につきましては作業部会を設けて検討中でございまして、現在米軍が撃っております射程距離が大体五キロ程度でございます。したがいまして、本土内で五キロ程度撃てる演習場がいずれ対象になろうかと思いますが、現在のところ、まだ具体的な演習場を特定して作業しておるわけではございません。
  229. 東中光雄

    東中委員 特定して作業しておるのじゃなくて、しかし、九カ所あるということは防衛庁長官言われたので、その可能性のある九カ所というのはどことどことどこですか。まあ、あなたの方も出しているんだから、言ったらどうですか。
  230. 諸冨増夫

    ○諸冨政府委員 ただいま申し上げましたように、具体的にはまだ——いろいろな運用形態が出てまいりますので、現在五キロ以上の射程のございます演習場という意味では、先生おっしゃったような感じの数字が出てまいりますが、運用の形態によりまして若干その付近の扱い方が違ってまいります。どういう砲を撃つかによっても違ってまいります。そういうことをいろいろ考えますと、今先生がおっしゃったような数字で必ずしも検討しておるわけではございませんし、これからそういうことを含めて検討してまいる、こういうことで御了解をいただきたいと思います。
  231. 東中光雄

    東中委員 そういうことを含めて、それはもうわかりました。しかし、九カ所あると言っているんだから、その九カ所というのは、それでは私の方から言っておきましょう。これは施設庁が出した文書にあるんだから、それは公式の場所にのせないというのはおかしいですよ。  現に、例えば饗庭なら饗庭の方へ行きますと、これはここに載っていますから、そうすると、饗庭の小さな村にこんなもの何で持ってこられるんだ、勝手にやられたんじゃ困ると言ってますよ。大分だってそうでしょう。そういうことがあるから、むしろ何か寝首をかくようなことを言わないで発表したら、ここでもう言っておいたらどうですか。  では、私の方から言います。  別海の矢田別大演習場、それから上富良野中演習場、北海道大演習場、それから大和王城寺原大演習場、郡山自河布引山中演習場、高田関山中演習揚、それから富士演習場、東富士と北富士ですね。今津饗庭野中演習場、それから湯布院日出生台大演習場、この九つですね。  それだけ確かめて、私、時間ですから、質問を終わります。
  232. 衛藤征士郎

    衛藤国務大臣 本土を含めまして、その射程五キロということにつきましては、今御指摘をいただいたようなところになろうと思いますが、いずれにいたしましても、十月の十二日から作業部会が動き出しました。そして、これから調査をする、そして報告が出る。報告が出たものにつきましては、最大限それを尊重して、関係の自治体に御理解をいただき、御協力をいただかなければならない。  沖縄の基地の移設あるいは分散、その一環が一〇四号の件でありますが、それを実現するためには、やはり私ども関係の各位の皆さんの御理解を得るためにあらゆる努力をする、そしてそれをしっかり実現させねばならない、このように思っておりますから、各党におかれましての何分の御協力をお願い申し上げたいと思います。
  233. 東中光雄

    東中委員 時間ですから、終わります。
  234. 神田厚

    神田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十一分散会