○今井澄君 私は、慎重に審議したと言うけれ
ども、それは疑わしいと
思いますね。だって、さっきATRの建設費が高くなるというのは慎重に審議していれば去年の長計のときにわかっているはずなのに、漁業交渉が終わってから慌ててやって、ことしになってということで、いかに慎重審議していないかというふうに思うんです。
七月十一日に電事連が中止を申し入れてから八月二十五日に原子力
委員会で決定するまでの一カ月半の間、先ほど夏休み返上でという長官のお話もありましたが、どんなにやったって慎重審議というふうには余り思えないんですよ。これは結局地元対策といいますか、最近原発の立地が非常に難しくなりましたね。最近五年間ぐらいで新しい立地がほとんど見つからないというときに、せっかく大問町がうまくいったから、もうとにかく中止だけでは片がつかないから次にはこれをやるんだということで、私は慌てて出したと思うんですよ。
それで、技術的には大丈夫だというふうに確かに皆さん方も書いていますよ。全炉心にMOX燃料を装荷する場合、硼酸水注入システム、逃がし安全弁の設計変更、燃料検査装置の導入等の対応が考えられるがこれは大したことない、基本仕様は変更の必要ないというふうに書いてあるんですけれ
ども、私はそんなものかなと思うんですね。原発の場合に一番問題になるのは、原子力の安全性ですよ。
実は私、ことしの五月にチェルノブイリに行ってまいりました。石棺と言われるあの直前にも立って
科学技術庁からある人が借りていったものではかったりなんかして、すごいなと思ってきたんですが、一番やっぱりつくづく感じたのは、そばに四万七千の人口のプリペチという町がつくられたわけですが、それが廃墟になったわけですね。それで九年後の今も廃城なんですよ。人が住んでないんです。阪神・淡路大地震であれだけの大勢の人が被災しても、あそこに人が住んで今復興しているんですよ。原子力の一番の問題はそこなんです。いざ事故が起こった場合、これはもうとにかく、それこそ場合によってはずっと永遠に人が住めなくなるかもしれない、そういうことを考えたら安全性こそ大事なんですね。
三分の一までは混合燃料、MOX燃料を入れて大丈夫だということがわかったから全量大丈夫だなんということは、簡単に決められる問題じゃないと思うんですね。私は、慎重に審議したということはとても信じられないというふうに
思います。信じられません。これについてはどうせ水かけ論になるでしょうから、次の質問に移ります。
それで、核燃サイクルはやめないということについて、私は前、
科学技術特別
委員会にいたときも、高速増殖炉についてこれはもう
経済的に引き合わないからやめるべきだということを言ったことがあります。別にイデオロギー的にとかそういうことは全然わきに置いておいても、要するに高速増殖炉の問題は、例えばナトリウムを使うということ、これで非常にもう危険だということで、フランスが一番一生懸命やっているわけですけれ
ども、それでもフランスではもう九〇年からずっと停止したままで、今度再開をするというときも、もう危険だからこれは原子炉として発電用に使うんじゃなくて、要するにプルトニウムが余っちゃうと困るからこれを燃すためだけに使うんだというふうな政府の、首相の発言もあって、やっとそういう再開にこぎつけているような経過もあると思うんです。
問題は、やはり高速増殖炉は非常に高くつくというふうに思うんで、私は核燃サイクルは見直した方がいいんじゃないかというふうに思っています。
世界の各国でも大体この高速増殖炉は断念をしているわけですよ。今、一生懸命やろうとしているのはフランスですけれ
ども、フランスだってそういうような
状況。ロシアもカザフスタンもまだあきらめてはいないようですけれ
ども、アメリカとかドイツとかイギリスはもう撤退をしているという
状況なんで、これは
経済的にあるいは技術的にえらい手間暇、金がかかって引き合わないということで、私は、お金のむだ遣いになる、今度のATRのことを教訓にして再検討をすべきだというふうに
思います。
そのことに関して、やっぱり今回のATRのことである原発関係の専門誌の記者がこういうことを書いているんで、私、事実そうだと思うんですね。今回のような事例が、つまりATRの中止ですね、今日急がれている六ケ所村再処理工場の建設初め、MOX燃料の国産化、高速増殖炉の実用化、高レベル放射性廃棄物の深地層処分技術開発などの分野で起こったら、
日本が昭和三十一年から原子力開発に着手したことが
国民や大衆から問われることになろうということを言っています。
そして、この前の九月二十二日の朝七時のNHKニュースでも、これはちょっと古い事実だったようですけれ
ども、五人の元原子力
委員会
委員が、高レベル放射性廃棄物の処分技術開発についてはどうもうまくいかないんじゃないかということで、危倶の意見を原子力
委員会に申し入れたという報道もされています。
つまり、原子力というのは、それは確かに魅力的かもしれないけれ
ども、非常に危険であるがゆえに、その安全性を
確保するために人手や技術やお金がかかるんだということ。このことを考えたら、この巨大な
国家プロジェクトというのは常に常に見直していかなければならないんだと思うんです。このATRの中止が物すごく大きないい教訓だと
思います。
ついでに、この原子力の問題について言えば、私も
科学技術と政策の会という会に入っているんですが、そこで先日、その会長である中山太郎
先生がこういうことを言っておられるんですね。原子力船のことですけれ
ども、当時、
科学技術庁は原子力船研究開発にこだわって、原子力船「むつ」の予算
確保は、青森県の漁業組合の限りなき補償の増額要求もあり、妥協に次ぐ妥協を重ねていた。しかし、当時世界では、米国が原子力船サバンナ号の商船化は無効との結論に達して廃船処理しており、西ドイツでは同様に原子力船オット・ハーン号を廃船していた。この世界の現状とは全く異なり、
日本の
科学技術庁は予算要求を続け約一千六百億円の経費を浪費する結果となった。これに対して
自民党の
科学技術部会は、廃船
計画の提示をすることを決意したということを、つい九月七日に言っておられるんですね。
もう一方で、例えばダムの問題があります。全国各地でダムが今目的を失って、多目的ダムという名前でつくられている。つい最近も、ある
委員会の視察で某地に行ってきたところ、そこは炭鉱の閉山で人口が四分の一以下になっている。その村の再建を七百億円のダム工事にかけているんですね。そうすると、それが十年間続けば、七百億円、十年間地元に落ちるということ。そのダムの目的はもうどこかに行っちゃっているんです。このダムもそうだと
思いますし、巨大
国家プロジェクト、これはもうこれから高度成長の
時代と違って、本当に我々
国民の血税を大事に使わなきゃならない段階に来ているというふうに
思います。
そういう
意味で、最後に
科学技術庁長官に、こういう巨大プロジェクトについて真剣に見直すべきではないか、特に高速増殖炉についても、世界の動向を踏まえて
日本も真剣に見直す時期に来ているんではないかと
思いますけれ
ども、いかがでしょうか。