運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1995-09-27 第133回国会 参議院 決算委員会 閉会後第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年九月二十七日(水曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  九月二十日     辞任         補欠選任      河本 三郎君     笠原 潤一君  九月二十六日     辞任         補欠選任      広中和歌子君     山本  保君      山口 哲夫君     萱野  茂君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり     委員長         浦田  勝君     理 事                 大木  浩君                 佐藤 泰三君                 清水 達雄君                 山崎 順子君                 筆坂 秀世君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 景山俊太郎君                 笠原 潤一君                 清水嘉与子君                 陣内 孝雄君                 中島 眞人君                 長峯  基君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 牛嶋  正君                 武田 節子君                 続  訓弘君                 寺澤 芳男君                 畑   恵君                 山本  保君                 朝日 俊弘君                 伊藤 基隆君                 今井  澄君                 萱野  茂君                 国井 正幸君                 水野 誠一君    国務大臣        文 部 大 臣  島村 宜伸君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       浦野 烋興君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        科学技術庁原子        力局長      岡崎 俊雄君        法務大臣官房審        議官       山崎  潮君        法務省人権擁護        局人権擁護管理        官        竹田盛之輔君        公安調査庁総務        部審理課長    小林 正一君        外務大臣官房審        議官       山崎隆一郎君        外務大臣官房文        化交流部文化第        一課長      小野 安昭君        外務省総合外交        政策局国際社会        課長       川田  司君        外務省経済協力        局国際機構課長  石田 仁宏君        大蔵省主税局総        務課主税企画官  藤岡  博君        文部省初等中等        教育局長     井上 孝美君        文部省教育助成        局長       遠山 耕平君        文部省高等教育        局長       吉田  茂君        文部省学術国際        局長       林田 英樹君        文化庁次長    小野 元之君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電課長   知久多喜真君        会計検査院事務        総局第四局長   五十嵐清人君        会計検査院事務        総局第五局長   平岡 哲也君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件平成四年度一般会計歳入歳出決算平成四年度  特別会計歳入歳出決算平成四年度国税収納金  整理資金受払計算書平成四年度政府関係機関  決算書(第百二十九回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成四年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成四年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成五年度一般会計歳入歳出決算平成五年度  特別会計歳入歳出決算平成五年度国税収納金  整理資金受払計算書平成五年度政府関係機関  決算書(第百三十二回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成五年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百三十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成五年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百三十二回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  この際、島村文部大臣及び浦野科学技術庁長官から発言を求められておりますので、順次これを許します。島村文部大臣
  3. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 去る八月に文部大臣を拝命いたしました島村宜伸でございます。  今日、我が国が創造的で活力のある文化の薫り高い国家として発展し、国際社会で積極的な役割を果たしていくためには、教育学術文化、スポーツの果たす役割がますます重要となっております。  私は、新しい時代の要請にこたえる文教行政を推進し、国民一人一人が多様な個性と創造性を発揮できる社会を築いていくため全力を尽くしてまいる所存であります。  委員長初め委員の皆様の御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。ありがとうございました。(拍手
  4. 浦田勝

  5. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) おはようございます。同じくこのたび科学技術庁長官を拝命いたしました浦野でございます。  私は、天然資源に乏しいこの我が国にとりまして唯一の資源、これは人間の頭脳である、ここに思いをいたしながら、科学技術振興をすることが二十一世紀の我が国の成り立ちにおいて最も肝要なものであろうと心がけておるところでございます。そうした点におきまして、科学技術庁に課せられた重大な使命に思いをいたしながら全力を尽くす所存でございます。  決算委員会におかれます委員長初め先生方におかれましても、どうぞひとつよろしく御指導、御鞭撻を賜りますようお願い申し上げまして、ごあいさつといたします。(拍手)     ―――――――――――――
  6. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 委員異動について御報告いたします。  去る二十日、河本三郎君が委員辞任され、その補欠として笠原潤一君が選任されました。  また、昨日、広中和歌子君及び山口哲夫君が委員辞任され、その補欠として山本保君及び萱野茂君が選任されました。     ―――――――――――――
  7. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 平成四年度決算外二件及び平成五年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  8. 浦田勝

    委員長浦田勝君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明の聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  10. 浦田勝

    委員長浦田勝君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 おはようございます。自民党清水嘉与子でございます。  島村浦野大臣におかれましては、このたびの御就任、本当におめでとうございます。参議院では初めて言葉をいただく機会だと思いますけれども、どうぞよろしくお願い申し上げます。  初めに、文部大臣にお伺いしたいと思います。  ちょうどことしは戦後五十年、今日我が国は本当に世界一の長寿国になりまして非常に経済的にも豊かな生活ができるようになりました。これはもう一に日本人教育熱心ということがあったことは間違いないというふうに思います。  民主主義、あるいは男女平等、あるいは言論の自由、あるいは個人の尊重、本当に歓迎すべき改善国民生活の中に定着してきたというふうな意味では非常に大きな成果があったわけでございますけれども、また一方におきまして、物質文明と言われるような経済優先競争社会をつくってきた。そしてまた、学歴社会をつくり出して受験戦争が過熱化している。そしてまた、いじめ問題あるいは果てはオウム事件に見られますように、最高教育を受けた人たちがこうした反社会運動、反社会的な問題を起こしているというようなことで、教育の問題につきましてもいろいろなゆがみが出てきているんじゃないかというようなことが言われているところでございます。  ちょうどこの戦後五十年という記念すべき年に、教育行政を担当される最高のポジションにおつきになりました島村大臣に戦後の教育行政の総括、あわせてこれからの御抱負などをお伺いしたいと思います。
  12. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) お答え申し上げます。  我が国教育はこれまで普及の面においても質的レベルの面においても着実な発展を遂げ、我が国経済国民生活文化向上に大きく寄与しており、全体としては評価されるべきものと認識いたしております。  しかしながら、ただいまも御指摘ございましたように、我が国教育につきましては、都市化情報化等社会の変容、少子化核家族化等家庭環境変化などを背景に過度の受験競争、いじめや登校拒否の問題などさまざまな問題点指摘され、今日我が国社会変化を踏まえた新しい時代教育あり方が強く求められていると受けとめております。  私といたしましては、就任早々から戦後五十年の節目に立って教育をもう一度謙虚に大胆に見直そうではないかこういう呼びかけをいたしまして、まさに教育国づくりの基本であるとの認識のもと、今後我が国教育のいい面を伸ばすと同時に、知育に偏重しからな傾向を改め、一人一人の子供のよさを大切にしつつ、知育、徳育、体育のバランスのとれた人材育成を目指して、全力を挙げて教育改革に取り組んでまいりたいと考えているところであります。
  13. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 ありがとうございます。ぜひ長く教育行政に携わっていただきまして改革をよろしくお願いしたいと存じます。  次に、これは明星大学というところの高橋さんという教授なんですけれども、将来教師を目指す学生に問いかけをしたそうでございます。湾岸戦争の最中に、もし日本がクウエートのように外国から不当な侵略を受けたらあなたは戦いますかという質問に対しまして、三百人の学生に質問したそうでございますが、戦うと答えたのはわずか一人、二百九十九名は戦わないで日本じゅうを逃げ回る、こう答えたそうでございます。また、学生二百名を対象に国歌・君が代の歌詞をできるだけ漢字で書くように注文して書かせましたところ、漢字で正確に書けた者は一人もいなかった。漢字の一部を仮名書きにして一応正しく歌詞が書けた者が一六%、誤字がひどい者が四三%、ほとんど書けていない者が一三%、全く書けていなかった者が二八%もあった、こういう話でございます。  大臣、この結果、どんな御感想をお持ちでございましょうか。
  14. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 今、清水先生の御指摘のありました点、私も全く同感でございまして、自分さえよければいい、今日が楽しければいいという余りにせつな的な最近の日本人の風潮というものは私たちも含めて厳しく反省あってしかるべきだ、こう受けとめているところであります。そして同時に、学校の成績さえよければ人間が一人前であってよりすぐれているというような錯覚も同じことでございまして、私は、今先生がおっしゃったことは全く私の考えていることを言っていただいたような感じすらいたして受けとめました。ありがとうございました。
  15. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 高橋教授はこの結果を見まして、この責任学生個人に求めることはできないんだということをおっしゃっておられます。今の若者に愛国心がなくなった、あるいはモラトリアム人間と呼ばれ、自己を超えた存在としての歴史や国家や民族との一体感やこれらに対する責任感が欠落しているのは、これを否定してきた戦後教育の必然的な帰結にほかならないということをおっしゃっているわけでございます。  これはいろんな理由があろうかと思いますけれども、やはり戦後の教育行政を総括しますときに、事ごと文部省と対峙してまいりました日教組存在というのはやっぱり忘れてはいけないのではないかというふうに思うんですね。教え子を戦争に送るなという合い言葉、これは戦争を体験した日本人すべて共通に支持する問題でございますけれども、その言葉が長いこと政争の具にされてきたということはまことに不幸なことであったというふうに思うわけです。  ただ、その日教組が今月の初めにこれまでの対立姿勢を大きく変える運動方針を採択されました。対立が緩む時代を迎えたことを本当に心から私は歓迎したいというふうに思っております。もっとも、国歌とか国旗についてはこの運動方針には何も触れられていないんですけれども、恐らく文部省方針を拒否することはできないんじゃないだろうかというふうに思うわけです。また、中央で幾らこの運動方針が採択されたにいたしましても、これが本当に地域まで定着していきますまでにはまだ少し時間はかかると思いますけれども、昨年の暮れには既に前与謝野文部大臣日教組幹部方々教育問題について胸襟を開いて意見を交わす機会を持たれたというふうに伺っておりますし、また自民党文教部会におきましても定期的にお話をするような時代を迎えました。  こうして、やっと戦後五十年にして行政側と現場の教師の集団の方々対決姿勢を崩してくるという時代を迎えたなということをつくづく思うわけでございますが、もう島村大臣日教組幹部方々とお話し合い機会を持たれたんでしょうか。また、文部省は今後この日教組とどのような関係改善を図っていかれるのか、あるいは日教組にどのような役割を期待していらっしゃるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  16. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 御高承のとおり、日教組は先般の定期大会におきまして、今年度の運動方針を決定したところであります。今回の方針は、これまで議論のあったいろいろな事項、すなわち学習指導要領国旗国歌初任者研修制度官製研修職員会議主任制等を大幅に見直したものでありまして、日教組内部努力のあらわれと私個人としても高く評価をしているところであります。  教育行政を預かる者といたしましては、これに示されましたように、教育界対立を解こうとする姿勢を心から歓迎する次第でありますが、ただ教育理場がこれを受けてどのようになっていくかは、今後、各県段階運動方針がどのように変わっていくかということもかかわっているわけでございまして、今後の成り行きを注意深く見守っていきたいと思います。  ただ、新聞等にも報道されましたように、先方が前向きな話し合いをしようというのなら私は喜んでいつでもお受けする、こう申しているところでありますが、ただ教育関係団体日教組だけではございません。あらゆる団体に積極的にそういう機会を持つ私の方の姿勢を持っていることを申し上げたいと思います。
  17. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 どうぞまたよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、私学助成あり方について少しお伺いしたいのですけれども、今日、我が国教育制度はほぼ高等学校までが準義務教育化されているわけですけれども高校の約三〇%、また大学では七三%、短大は九二%、これは私学運営していらっしゃるわけでございます。そういう意味では、今日、国民に広く教育機会をもたらしてくれているという意味でも非常に私学の果たしている役割は大きいわけでございますし、また非常に建学精神に燃えた特徴のあるこういった私学教育が行われるということは大変すばらしいことだというふうに思っております。  しかし、やっぱり私学におきましては学校運営経費確保という点では公立に比べて大変難しい点がございまして、そのためいろんな部分で、例えば家計負担も大きくなっているわけでございまして、文部省の資料を見てみましても、例えば高等学校学校教育費などでは私立公立の二・二倍、授業料では二・六倍、学校納付金では六・七倍というようなデータもちょうだいいたしました。これでもう複数の生徒を抱えていたら本当に教育経費負担というのは大きいというふうに思うわけでございます。  そこで、国も私学助成をしているわけでございますが、一つの問題としまして平成六年度予算で私立高校以下の経常経費国庫補助が二五%、二百十二億円カットされるという事態が起きました。これによって私学関係者大変ショックを受けたわけでございまして、これに関しまして文部省が発行しておられます「我が国文教施策」の平成六年度版を見ますと、大変厳しい状況の中でやむを得ない措置だったというふうに表現をしておられます。そして、そのかわりに地方交付税措置をして、それを増額したおかげで補助金地方交付税を合わせた全体としては前年よりも拡大したんだというふうな表現なのですが、そこに一言、しかし「このことは、国庫補助金一般財源化意味するものではない。」ということが書かれているわけでございます。  こういう表現を見ますと、一般財源化に対して文部省は否定的な立場をとっていらっしゃるというふうにうかがえるわけですが、一般財源化をすることによっての問題点といいましょうかその辺をちょっと御説明いただきたいと思います。
  18. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 私立学校につきましては、私どもも長い間いろいろ関係の皆さんともお話し合いの場をたくさん持たせていただいておりまして、経営が年々厳しくなっているという実情もよく承知をいたしているつもりでございます。ただ、今先生が御指摘になりましたように、私立学校建学精神にのっとりまして大変特色のある教育研究を推進しておりますし、我が国学校教育におきましても、その普及や水準の維持向上の両面にわたりまして極めて大きな役割を果たしてくださっていると高く評価いたしておるところであります。  このような私学役割重要性にかんがみまして、国は、私立学校振興助成法の趣旨に沿って、教育研究条件維持向上、修学上の経済的負担軽減等に資するため、経常費補助を中心とした助成事業、長期・低利の融資事業、税制上の優遇措置などの施策を通じて私学振興の推進に努めてきているところであります。  文部省といたしましては、私学の健全な発展のため、厳しい国の財政事情もとではございますが、今後とも私学助成充実私学の自主的な努力に対する支援策など、私学振興施策充実に努めてまいりたい、こう考えております。
  19. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 今、かなり前向きな御答弁をちょうだいしたわけでございますけれども、例えば二五%、二百十二億円カットされたものにつきまして、これは本当に臨時的な措置なんだと、だから状況がよくなればこれはお返ししますよという条件がついているわけではないと思うんです。やっぱりそのときはそのときでもう決着しているというふうに思うんです。このときは残念ながら私たち自民党は野党の立場にいたわけでございまして、昨年はこれを何とか少しでも戻したいということで努力をしてまいったわけでございます。しかし、これを戻すのには相当長い時間がかかるんじゃないかというふうに思うわけなんです。  また、私大におきましても、法的には経常経費の二分の一以内、助成ができるというふうになっているわけですけれども、実際にはその補助金はどんどん目減りしていって今一二%ちょっとしかないというような状況でございます。もとより過大な公費を投入することによって建学精神が発揮できないというようなほど規制を受けることは決していいとは思いませんけれども、やっぱり将来、例えば高等学校なんかではどんどん学生が減ってくるというようなこともありまして、本当にまじめに一生懸命やっている私学運営がおかしくなってしまわないように、ぜひこの辺についてよろしくお願いをしたいというふうに思うわけでございます。  国費が相当投入されるのはいいと思いますけれども高校以下については本当は都道府県が助成をするという立場になっているわけでございますので、地方財源も含めた公費助成ルールづくりをやはりしていく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  また、助成金だけでなくて、私学がもっと民間からも教育財源を集めやすいような仕組みをつくるとか、あるいは学校側でなくて非常に教育経費負担の重い学生側助成するなんということも必要なことじゃないかというようなことも考えまして、ぜひ私学に関しては、これはお願いでございますが、全般的にあり方について御検討いただけたらというふうに思うわけでございます。当然そのときには本当に今現状に合っていないような憲法八十九条の問題も出てくるのではないかというふうに思いますので、これは御答弁をちょうだいしませんが、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、教職員の質的、量的な確保の問題に移らせていただきたいと思います。  教育問題をずっと勉強していきますと、結局は私は教員の資質の問題が一番大きいんじゃないかというふうに思えてならないわけでございます。本当に教育者としてやる気のある適任者をどうやって確保するかという問題に一番大きな問題があるんじゃないかというふうに思うわけです。  まず量的には、今、義務教育は第六次の教職員配置改善計画をしておられますし、それから高等学校におきましては第五次の計画を進めておられるわけでございます。これが五年から始まって十年までということでもう中間点を過ぎたわけでございますが、これの進捗状況をまずお伺いしたいと思います。
  20. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) お答え申し上げます。  現在進捗中の義務教育教職員定数改善進捗状況でございますが、平成七年度までの改善数が一万五千八百二人で、進捗率としましては五二・○%でございます。  それから高校定数改善でございますが、これは平成七年度までの改善数が二万四千七十九人でございまして、進捗率としましては五九・四%でございます。
  21. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 今、実際の数を伺いましたけれども、これで三年を過ぎて五〇%を過ぎているわけですので、ほぼ達成するだろう、こういう見通しというふうに考えてよろしいでしょうか。
  22. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 現在、国の財政状況は大変厳しい状況でございますが、私どもとしましては、平成五年から十年までの六年間の計画でございますので、ぜひこの計画どおり達成したいということで頑張っているところでございます。
  23. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 そこでお伺いしたいんですけれども義務教育教員につきましては国が負担をしていらっしゃるわけですね。平成四年度、平成五年度決算におきまして、会計検査院からこの問題につきまして、義務教育国庫負担金経理が不当ではないかというようなことで続けて指摘がございます。これはどういう内容でございましょうか。そして、これはどうして二年も続けて同じような指摘をされているのか、その辺をお伺いしたいと思います。
  24. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 義務教育費国庫負担金経理につきまして会計検査院から、学校栄養職員定数算定誤り、それから退職手当算定誤りなどの指摘を受ける事態が生じましたことはまことに遺憾でございます。  指摘を受けました事項につきましては、国庫負担金の返還措置など必要な措置を講じますとともに、今後このようなことのないよう、事業主体でございます都道府県に対し主管課長会議を通じ、あるいは文書を出しまして指導をより一層徹底したところでございます。  なお、義務教育費国庫負担金等の適正な執行については、遺憾なきよう今後とも努力をしてまいりたいと思います。  その理由と申しますと、現在義務教育費国庫負担金の金額が二兆九千億ほどございますし、それからその定数の算定につきましても、毎月の実数と定数を比較するという大変難しい作業等もございますし、給与等につきましてはまた国の規定と県の規定を比較する、そして適正に算定をする、こういうことでその必要となる基礎的な資料も甚だ膨大なものとなりまして、確認調査も大変な時間と労力を要しているところでございます。  したがいまして、都道府県の担当者の中にもやはりいろんな法令等に必ずしも通じていないというような方も見受けられるわけでございますので、それで結果的に義務教育費国庫負担金等につきまして過大交付が生ずる、こういうことが出ているわけでございますが、金額としてもなるべく少なくするように私ども努力をし、県の方にも指導をしているところでございますので、今後ともその指導を一層徹底しまして、その適正な執行が図られるよう努力してまいりたいと思っているところでございます。
  25. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 非常に細かい作業で、作業量が膨大だということでございますけれども、情報社会でございますから、ぜひその辺につきましては的確によろしくお願いをしたいと思います。  それから教員の採用選考の問題なんですけれども、採用選考試験の受験者が何かだんだん減少しているというふうに伺ったんですけれども、今のようにこんな景気の悪いときでもやっぱり減少しているのでしょうか。また、そういうことでありますれば人材確保対策というのを何かやっていらっしゃると思うんですが、その辺についてはどうやっていらっしゃるか。さらに、採用の選考につきまして何か大変な改善をしていらっしゃるというふうに伺っておりますけれども、その辺についても事情をお話しいただきたいと思います。
  26. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) お答え申し上げます。  公立学校教員のうち、平成五年度末に退職した者の総数が二万六千百七十六人となっておりまして、一方、六年度当初に採用された者の数は二万一千三百六十六人となっております。  退職した人の数でございますが、採用されて定年になる人が主として退職をする人の主流でございますので、その退職者は、定年退職の数が減っているものですから、最近退職者も若干減少の傾向にございます。  したがいまして、教員の採用もその後補充と、それから定数改善と、児童生徒数の自然増減の差をまた埋める、こういう形になるわけでございますが、現在、児童生徒数が年々減少をしております。現在のところ、小学校平成十三年が底というぐあいに予測をされております。小中学校合わせると大体平成十五年ぐらいが底になるのではないかということで、まだまだ減っていく予測がされているわけでございます。したがいまして、教員の採用数も年々減ってきているわけでございます。したがいまして、応募者もそれに応じてやはり減少の傾向にあるということでございます。  公立学校の任命権者でございます各都道府県、指定都市の教育委員会におきましては、教員の退職状況、それから先ほど申し上げましたように児童生徒の減少による定数減、それから教職員の配置改善計画による定数増、こういうようないろんな条件を勘案しまして、中長期的な観点に立って、全体の年齢構成にも配慮をしまして教員の採用を行っているものと承知しているところでございます。
  27. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 次に、採用された教員の研修制度の問題でございます。  初任者研修をなかなか進められなかった実態があるわけでございますが、今どんなふうになっているのかあるいはその後の研修制度、やっぱりここが一番大事だと思うんですけれども、その辺についても教えていただきたいと思います。
  28. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 学校教育の成果は、その担い手でございます教員の資質に負うところが極めて大きく、御指摘のとおり教員については養成、採用、研修の各段階を通じてその向上を図るための施策を積極的に講じていく必要があるわけでございます。  それで教員の研修でございますが、現職研修の前に、まず採用してから一年間は初任者研修という制度をとっておりまして、採用されてから一年間は週に二日は校内で指導教員もとに研修を受ける、それから週に一日は校外で教育センター等で研修を受ける、こういう制度をとっているわけでございまして、この制度も平成四年度から全校種で実施しているわけでございますが、大体定着をして各学校でそれぞれ研修の成果を上げているというぐあいに聞いているところでございます。
  29. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 初任者研修がもうほとんどすべての学校で行われるようになったということで大変うれしいわけでございますけれども、今お話伺いますと、一年間校内で先生としての先輩に教育を受けるというようなことでございます。それも非常に大事なことでございますけれども、やっぱり何といいますか社会人としての教育訓練、そういったものがもう少し必要じゃないかと思うんですね。  先ほどちょっと申し上げましたように、今の方々の中でそんなに難しいことを教えていただくことはないと思うんです。まず、人に迷惑をかけない、弱い者をいたわる、あるいはちゃんとあいさつができる、そんなことでもいいと思うんです。それがなかなかできない先生方がいらっしゃるように思うんです。そういう意味ではもう少し研修の中に、例えば社会福祉施設でありますとか、あるいはどこか海外協力でも結構でございますし、あるいは消防、警察など公務でも結構でございます、あるいは企業でもいいと思いますが、そういった一般の教育の場以外のところでの研修というのも入れられるようなことはできないでしょうか。
  30. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 先生おっしゃるとおり、教員につきましては、いろんな教科なりあるいは生徒指導指導力を向上させるための研修も大事でございますけれども、現在の社会変化に対応した学校教育を展開し、またいじめ問題などの現下の教育課題を解決する上で視野の広い教員が求められているところでございます。そこで、教員学校外の業種に派遣をしまして、それらの業種における発想だとかあるいは業務の処理方法、人間関係を体験させることによって、教員にとってその視野を広げ、社会性を養う上で大きな意義があるものと考えられるわけでございます。  このようなことから、文部省ではことしの六月に教員の長期派遣研修に関する調査研究を開始しまして、企業等における教員の長期間の体験研修の充実方策について検討しているところでございます。さらに、来年度においてはこの研究を拡充しまして、教員を実際に企業等に長期間派遣する体験研修に関する内容の調査研究を行うこととしまして、概算要求に所要の経費を計上しているところでございます。
  31. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 そのお話を伺いまして、大変心強く存じました。来年度予算要求をぜひよろしくお願いしたいと思います。  それから次に、大学の教員の問題に移らせていただきたいと思うんですが、先般、大学審議会の組織運営部会で大学教員の任期制の導入ということについておまとめになって発表されました。  この問題、なかなか難しいと思いますけれども教育研究の活性化の問題あるいは硬直化した大学の人事の流動というためには非常に有効かなという気もするんですが、そのねらいですとかあるいはこれから、まだ中間報告だというふうに伺っておりますので、これを実現に向けてどのような手順を踏んでいかれるのか教えていただきたいと思います。
  32. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 御指摘の大学教員に任期制を導入する件でございますが、ねらいにつきましては、一つは大学におきます人事の流動化、これによりまして教育研究の活性化を図るということが一つであります。さらに、多様な経験を若手の研究者、教育者にやっていただきまして、そうしたことによって若手教育・研究者の育成に資するというような点を大きなねらいといたしておるわけでございます。こうした観点から、現在、大学審議会においては組織運営部会において任期制の導入について審議が行われているところでございまして、今般、同部会における現在までの審議の概要、いわば中間報告的なものが公表されたという点は御指摘のとおりでございます。  今後、大学審議会におきましては、この審議の概要に対する大学、関係団体等広く各界の意見を聴取するとともに、来期の大学審議会におきまして答申に向けてさらに御審議を詰めていただきたい、このように考えております。私どもといたしましては、今後、こういった来期の大学審議会におきます審議の状況を踏まえつつ、任期制導入に伴う所要の法的措置等につきまして並行して検討を進めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  33. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 これは今初めて出てきた問題ではないと思いますが、しかし、こうした具体的な形で報告書に出てきたことは画期的なことじゃないかなというふうに思いますので、ぜひうまく実現できますようによろしく御検討願いたいというふうに思います。  次に、大学教員の問題に絡んでいるのですけれども、やっぱり優秀な人材を大学等に引きつけるためには、大学等におきます学術研究が進めやすいような環境を整えるということも非常に大事だと思うんですが、今国立大学なんかを見ましても教育環境は決していいと言える状況じゃございません。そして、研究費も非常に不足しているというようなことで、非常に優秀な人材が海外へ頭脳流出してしまうというような実態もあるわけでございます。  そこで、人材引きとめ策というだけじゃないんですが、やっぱり資源の乏しい我が国におきまして、先ほど大臣もおっしゃいましたような、これから知的資産形成のための研究開発を進めていかなきゃいけないんじゃないかという観点から、今後の科学技術学術振興のための大学におきます研究費の充実、こういった面につきましてお考えをお伺いしたいと思います。
  34. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 学術研究は、真理の探求を目指して行われる普遍的な知的創造活動であり、人類の知的共有財産として科学技術社会発展の重要な基盤を形成するものと心得ております。我が国は、今後さらに発展しまた国際社会において必要な役割を果たしていくためには、学術研究を未来への先行投資と位置づけ、大学を中心とする学術研究の振興を図っていくことが極めて重要と考えております。  ただいま先生の御指摘がございましたように、私は就任以来まだわずかな期間でございますが、努めて時間を割いて現地を拝見に上がっているところでございますが、例えば伺うほど大変に恵まれない環境で皆さんが創意工夫を凝らしている実態に触れまして反省をし、またこれからのいろいろな課題として受けとめているところでございます。  そこで、文部省といたしましては、このような学術研究の重要性にかんがみまして、これまでも科学研究費補助金の拡充を初めといたしまして、日本学術振興会による若手研究者の養成、確保など研究費の充実に努めているところでございます。今後とも、学術審議会答申等を踏まえまして、我が国学術研究基盤の計画的、重点的整備と、世界に開かれた学術研究体制の整備を目指しまして、研究費の充実など学術振興のための総合的な施策の推進に努めてまいる所存でございます。どうかこの上とものお力添えを心からお願い申し上げる次第です。
  35. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 ぜひよろしくお願いしたいと思います。  次に、職業教育の問題を少しお伺いしたいと思うんです。  文教行政におきます職業教育につきましては、例えば医師とか歯科医師とかあるいは薬剤師のようにすべてがいわゆる一条校の中で教育されて、そして厚生大臣の定める国家試験を受けて専門家になっていくというようなコースもあるわけでございますが、しかしそれは一部の職種だけでございまして、多くは専門学校あるいは各種学校といった体系の中で教育を行っているわけでございます。  まず、いわゆる一条校と職業教育の関係といいましょうか、そういうものについて文部省はどんなふうな御見解を持っていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  36. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 御指摘のとおり、職業教育我が国の産業経済発展国民生活向上の基礎を担うものであるとともに、人々の職業生活に必要な基礎的な知識・技術の習得やしっかりとした勤労観、職業観の涵養に資するものであり、重要な意義を有しているわけであります。したがいまして、時代に即応した魅力ある職業教育を展開し、一層の活性化を図っていくことが重要であると考えております。  文部省といたしましては、職業教育はすべての人にとって不可欠な基礎的、基本的な教育であり、各学校段階の子供の発達段階に応じ、その意義を学ばせ、職業生活に必要な基礎的な知識・技術の習得を図るとともに、職業教育を生涯を通じて適時に行われる教育・学習としてとらえ直し、一層の充実を図るという観点から、昨年四月、有馬理化学研究所理事長を座長といたします職業教育の活性化方策に関する調査研究会議を発足させ、本年三月、「スペシャリストヘの道」と題する最終報告により職業教育の活性化方策についてさまざまな御提言をいただいたところであります。  文部省といたしましては、これらの貴重な御報告を受けとめ、職業教育の一層の充実発展のために積極的に取り組んでまいる所存でございます。
  37. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 今大臣から御指摘ございました「スペシャリストへの道」という報告書を私も読ませていただきました。これは高校のレベルの話だと思いますが、今職業高校で学んでいる学生が百二十万ほどおられますね。つまり、高校生の四人に一人は専門学科の生徒だというふうになると思います。そこに有馬先生委員会をつくられた意味があるんだろうと思いますけれども、どちらかといいますと、例えば職業科の生徒の中途退学率なんというのも普通校に比べると倍はあるわけでございまして、中学卒業のレベルで職業を選択することがちょっとやっぱり早いんじゃないかというような指摘もありましたし、また本当は職業校じゃなくて普通校へ行きたかったんだけれども、こちらへ来てしまったというようなことで、満足していないような生徒も入っているというふうに伺っております。  そしてまた、職業高校を出ますと一般の大学に入りにくいというような問題もあったりして、なかなか職業高校の問題は何か難しい点があったと思うんですが、この「スペシャリストへの道」という報告によりまして、職業高校にどんな明るい兆しか見えてくるのでしょうか、その辺。
  38. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  先生ただいま御指摘のとおり、平成五年度の中退者は高等学校の専門学科で約三万一千人で、中退率は二・五%となっておりまして普通科の一・三%に比べまして高い比率となっておりますが、平成元年度の中退率二・八%と比べますとやや減少の傾向を示しているところでございます。  従来の業者テストの偏差値等に依存した中学校の進路指導高等学校における中途退学等学校不適応の一因となっていることを考慮いたしまして、文部省では、平成五年度以降、本来の進路指導に立ち返り、生徒の能力、適性、興味、関心、将来の進路希望等を踏まえまして、また進学しようとする上級学校の特色や状況を生徒が十分把握した上で進路指導が行われるよう、その改善充実に努めているところでございます。  また、高等学校教育におきましては、生徒の多様な興味、関心等に適切に対応した教育を展開するため、その個性化、多様化を推進しているところでございます。特に専門高校におきましては、本年三月の職業教育の活性化方策に関する調査研究会議の最終報告、「スペシャリストヘの道」を踏まえまして、個性に応じた柔軟な教育の実施、社会変化に対応した施設設備の整備、卒業後の多様な進路の確保等、魅力ある学校づくりに積極的に取り組んでいるところでございます。
  39. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 ぜひみんながこの道に進んで希望を持って勉強を続けられるようによろしくお願いしたいと思うんです。  そこで、その中の一つなんですが、看護科というのがございます。この看護科というのは、従来准看護婦の養成を養成所で行ってきたものに対してぜひ一条校で行ってほしいといったくさんの方々の要望にこたえて三十九年につくられたコースでございます。これまでにもたくさんの看護高校の卒業生が准看護婦として、そして医療界に働いて非常に貢献してくださっておられるわけでございます。  ところが、現在の状況を見ますと、その卒業生は、卒業しますと同時にほとんどもうそのまま就業しないでまた看護婦になる適へ進んでしまうわけなんです。八割が看護学校に行ってしまう、そして二割が働くわけでございます。ですから、そこで完成教育になっていないわけでございますね。ほとんど通過コースになっちゃっている、こういう実態がございます。  そしてまた、医療の現場でございましても、看護婦と准看護婦というレベルがあるわけですが、准看護婦のレベルではやっぱり医療の場ではもう問に合わなくなっているというふうな意識が高くなりまして、現実問題として採用がもう今してもらえにくくなっちゃっている。病院の方々に聞いても、必要なのは看護婦で准看護婦じゃないということで採用しない、こういう実態が出てきているわけなんですね。  そこで、こういう社会の動きに対しまして看護界ではもう准看制度そのものを廃止というような声も出ているわけですけれども、しかしこの看護高校の卒業生が、育ってみれば看護婦になるには最短距離ではあるわけですけれども、やっぱり看護婦になるための道を拡大するなりなんなりしてあげないと、このままでは大変かわいそうなことになると思うんです。そのことについて御意見があったらお伺いしたいと思います。
  40. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございましたとおり、高等学校の衛生看護科は昭和二十九年度に設置されまして、それ以降、中学校卒業段階で看護への志望動機を持つ者を対象といたしまして、高等学校の普通教育と同時に、准看護婦資格の取得のための専門教育を行う機関として重要な役割を果たしてきているところでございます。生徒のほぼ一〇〇%が卒業時に准看護婦資格を取得しておりまして、卒業後の進路状況につきましては、最近のデータによりますと、卒業生の約一五%が医療機関に准看護婦として就職をし、また約八五%が看護婦資格を取得するために短期大学、高等学校専攻科、看護婦養成所等に進学をしているという状況でございます。  平成六年十二月に出されました厚生省の「少子・高齢社会看護問題検討会報告書」におきましても、「高等学校衛生看護科の生徒の約八割は、看護婦・士を目指して短期大学、専攻科、養成所等に進学していることから、衛生看護科は看護婦・士の養成に寄与しており、今後とも専攻科の充実や大学、短期大学への進学機会の拡大を図る必要がある。」と報告されているところでございます。  したがいまして、文部省といたしましては、高等学校の衛生看護科につきましては大きな意義を有していると考えているところでありますが、衛生看護科における看護教育の一層の充実改善を図るため、学識経験者等から成る高等学校における看護教育充実振興に関する調査研究会議を設けまして、高等学校における看護教育の意義や今後のあり方及び卒業後の継続教育あり方について検討をしていただいているところでございます。  今後とも、高等学校における衛生看護科の充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  41. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 局長、今の御検討ですが、いつごろ結論が出るような感じでございましょうか。
  42. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) 私どもとしては、調査研究会議に検討をお願いしたばかりでございまして、今後の検討の推移等を見ながら、できるだけ早くその報告をちょうだいしたいというふうに考えているところでございます。
  43. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 ぜひいい結論を出していただきたいというふうに思うわけです。せっかく希望を持って学校に参りましても、卒業してみたら働くところがない、そしてまた准看護婦ではだめだなんて言われているようなことではやっぱり気の毒だと思うんですね。ですので、明るい展望が開けるようなコースをぜひお考えいただきたいというふうに思います。  もう一点、大学と専門学校の連携の問題をお伺いしたいわけですけれども、私、関心を持っております医療関係者、特に看護婦等、OT、PT、診療放射線技師、いろんな方々がいるわけですが、この方々教育というのが外国ではかなり大学制度になってまいりまして、もう自分たちも大学制度での教育を受けたいということを盛んに言ってきているわけです。  かつては医療機関が、今でも多いわけですけれども、医療機関が自衛的に職員を確保するために学校をつくり、そして医療費を投入してというようなことをやっていたわけです。ですので、割合に安い教育投資で、経済的に恵まれない優秀な人たちが集まってきて資格を取っているというようなことがあったわけですが、その時代はもう終わりなんですね。今、大学をつくればたくさん希望者が殺到している、そういう時代でございますのですので、この辺につきましてもぜひ認識を新たにしなければいけないというふうに思うわけでございます。  そこで問題は、例えば養成所でありましても、大学でありましても、短大でありましても、とにかく看護婦あるいはそういう医療関係者の国家試験の受験資格は、厚生省、文部省両方が持っている省令で定められているわけです。同じカリキュラムをやらなきゃいけないと決められている。  ところが、例えば短大を卒業いたしますと、今度できました学位授与機構の審査を経て、また学位を取る道へ進むことができるというようなメリットが出てまいりました。そしてまた、あるいは大学に編入することもできる、短大を卒業していれば大学に編入できるということが出ております。  ところが、同じカリキュラムで教育を受けた専門学校の卒業生には、学位授与機構に入って大学で単位を取ってくる道も全然開かれておりませんし、また大学に編入する道も開かれておりません。ここにつきまして、かねてより何とかできないだろうかということをお願いしていたわけでございまして、文部省でも前向きに検討しているというようなお話をずっとしていただいておりました。ずっと国会答弁をしていただいておりました。  これも、先般出ました大学審議会の大学教育部会の中間報告、これで拝見いたしますと、どうもちょっとこの書きぶりがはっきりしないわけでございまして、進めるのか進めないのかどうもはっきりしない書きぶりになっておりまして、「検討する」と書いてあるわけでございますが、これは一体どういうことになりましょうかちょっと教えていただきたいと思います。
  44. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) お答え申し上げます。  御指摘の看護関係を中心といたしました専門学校修了者の大学編入学の問題でございます。このことにつきましては、専門学校修了者の大学編入学ということで、大学における学習機会の多様化を図る方策の一つといたしまして、生涯学習及び高等教育の活性化の観点からも重要な検討課題であると認識をしておりまして、大学審議会において現在詰めた御議論をいただいておるところでございます。  ただ、この問題につきましては、高等学校、大学、それから専門学校、こういった目的や教育にかかわる基本理念が異なる学校問の接続という教育制度の基本にかかわる問題から生じます克服すべき諸課題があることでございますので、去る九月十八日の大学審議会総会に中間的な報告をされた審議の概要につきましては、先生指摘のとおり、これらの課題について引き続き検討するということでございます。  主な検討課題といたしましては、今申し上げましたような基本問題のほかに、編入学を認める際の基準をどう設定すべきであるか、あるいは編入学後の大学における修業年限をどう考えたらいいのか極めて難しい問題があるわけでございますが、来期の審議会におきまして鋭意御議論をいただきまして、文部省といたしましては結諭が出た場合には速やかな所要の措置を講じたいというふうに考えておるわけでございまして、まだ中間報告の段階でございますが、来期の大学審議会での審議の深まりというものを待って対応してまいりたい、かように考えております。
  45. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 同じ看護婦の免許で働くには大学卒業であれ専門学校卒業であれどうってことはないんですね。しかし、実際には大学で学びたい、単科の養成所というよりも、大学というもっと広い視野で勉強したいという人が、看護婦がたくさんおりまして、今恐らく大学の二部というところには相当看護婦が入学して勉強している。御存じでいらっしゃると思います。  また、実際に今、日本でも大学が大分ふえてまいりまして、大学院の修士コースあるいは博士コースが出てきた、あるいは外国でもそういうコースがいっぱい出てきている。そうしますと、そこで勉強しようと思う。そうすると、専門学校はどうしてもその上に進める道がないわけなんですね。ですので、やっぱりそういう一条校の階段を踏みながら、さらに勉強したいという人のためには何とか門戸を開かなきゃいけないというふうに思っているわけです。  もう一つあえて言えば、例えば海外協力などで専門家として看護婦が出かけていく。そうすると、途上国の方々はもうほとんどみんなどこか先進国で勉強してこられていますから、学位はみんな持っているわけなんですね。何とかドクターとかなんとか持っている。そうすると、日本から来た看護婦さんは、もう技術は非常によくできるんだけれども、これは専門学校の卒業生、何にも学位がない、こういうような話になりまして、これはやっぱりいろんな点で問題がございますということもありますので、ぜひその道を開いていただきたいというふうに思っているわけでございます。  確かに専門学校全部というといろんな問題があろうとは思いますけれども、先ほど私が申し上げましたように、同じカリキュラム、同じ指定規則で教育を受けている者に対して、何かある条件をつけてでもそういう逆が開かれないだろうかということを期し上げているわけでございます。看護学校の方にも単位制にするとかいろんな工夫がなきゃいけないと思いますけれども、ぜひそれを御検討いただきたいというふうに思っているわけでございます。  大学への志望という意味では、どんどん今大学が文部省指導もあって進んでいるということもありがたいことでございますし、一番ネックになっておりました厚生省の看護学校も四年制の看護大学校をつくろうというような機運が出てきている、こんな時期でございますので、ぜひその辺についても御協力をちょうだいしたいというふうに思っているわけでございます。  さらに言えば、今非常に不景気な状態にありますものですから、大学の卒業生がこのままじゃとても就職がないというようなことで看護婦学校にあるいは准看護婦学校にもたくさん入ってきている、こういう実態がございます。それを考えますと、その人たちにも養成所の一年生から入らなきゃいけないということをやっているわけでございまして、お互いに垣根を低くして、それだけ教育を受けた人たちがお互いに学びやすいようなことをやっぱり考えるべきじゃないかと私思っておりますので、この辺についてもぜひよろしく厚生省とも御協議いただきたいというふうに思っているわけでございます。  いろいろ考えれば、例えば放送大学と養成所の連携だとかあるいは特定の大学と連携をしながら両方の資格を取る、いろんなことが考えられるんじゃないかと思いますので、ぜひ知恵をおかしいただきたいというふうに思います。  例えば、看護婦の場合なんかもほとんどが需給計画というのは専ら厚生省が所管してやってきたことでございます。しかし、ほとんどを厚生省が所管していたという時代と今どんどん変わってきておりまして、一条校にどんどん流れてきている。しかも、一条校になりたいという学校がいっぱい出てきておりますので、この養成計画につきましてぜひ厚生省とも御協議をいただくというような方向にしていただきたいというふうに思うんですが、これいかがでございましょうか。
  46. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 御指摘のように、看護婦養成にかかわります大学の設置が最近大変進んでおります。また、ただいま御指摘のございました専門学校との接続の問題、大きな問題を私ども看護婦養成に関しましては抱えておるわけでございます。  そういう意味では、厚生省との連携というのは非常に大事なことであると思いますので、御指摘のとおり、厚生省との連携、連絡をよくとりながら施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  47. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、ユネスコ活動への支援という問題についてお尋ねしたいと思います。  島村大臣から、先日、ユネスコ国内委員委員という辞令をちょうだいしたんです。私も改めてユネスコの活動について勉強したわけでございますけれども、本当に広い活動をしておられる。その中で、特に私が関心を持ちましたのは、開発途上国に対します識字教育の推進事業なんです。  昨年、カイロで国連人口開発会議というのがあったわけでございますが、その中でも、人間に投資をする、人間の健康とか人間教育に投資することがやっぱり開発の基礎であり、そして、特に女性が男性と平等になるためにもまず女性の教育、特に識字率の向上ということが非常に大事だということが指摘されて、これは当然のことだと思います。現在は世界に九億とも十億とも言われる非識字者がいるそうでございますが、そのうちの三分の二は女性だと言われております。ユネスコは二〇〇〇年までにその非識字者をなくそうという目標を考えておられるそうですが、これは今なかなか難しい情勢にあるというふうに伺っております。  そこで、まず外務省にお伺いしたいんですけれども、政府は、従来の大規模な経済インフラプロジェクトだけでなくて、教育等の人づくりの分村の援助にも大変力を注いできているというふうに承知しておりますけれども、その概要についてまずお伺いしたいと思います。
  48. 石田仁宏

    説明員(石田仁宏君) お答えいたします。  御指摘のとおり、途上国における教育充実を初めとする人材の養成は、これは国づくりの基礎をなすものとして私どもとしては極めて重視しております。したがいまして、政府開発援助大綱の中におきましても人づくり分野における協力を極めて重点的なものとして位置づけ、積極的に援助を行ってきております。中でも教育の分野につきましては、専門家の派遣、あるいは開発途上国からの研修員の受け入れ等を通じた技術協力を通じて教員の養成を行いますとともに、円借款あるいは無償資金協力において学校の建設あるいは関連機材の供与といった援助を行ってきております。  特に、今先生より御指摘のございました初等教育、特に識字教育につきましては、これはまさに開発の基礎となる基礎教育でございますので重視しておりまして、例えば識字教育につきましては、特に草の根無償資金協力を通じまして、例えば平成六年度におきましては、インドにおける貧困な農村地域の婦人の識字率を向上するための学校建設でありますとか、あるいはアフリカの象牙海岸でございますけれども、末就学者のための裁縫あるいは識字教育を行うための学校の建設を支援するといったように、草の根レベルで非常に地についた援助を行っております。  私どもとしては、このような人材の育成というのは極めて開発の基礎となるものでございますので、今後とも積極的に援助を行っていきたいというふうに考えております。
  49. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 この九月の初めに北京で世界女性会議が開かれました。そのときに政府代表演説で野坂官房長官が来られて、日本のODAも今後女性の識字教育などそういったものを充実するというような意味でWIDイニシアチブのことをおっしゃったのですけれども、これはここでお約束されたわけですので当然進められることであろうと思いますが、この成果を踏まえましてどんなふうにこれから取り組んでいらっしゃるのか、ちょっとそのこともあわせてお伺いいたしたいと思います。
  50. 石田仁宏

    説明員(石田仁宏君) お答えいたします。  御指摘のとおり、開発途上国の均衡のとれた持続的な開発を達成するためには、やはり人口の半分を占める女性が裨益するような援助、あるいは女性が参加するような開発が必要であるという観点から、私どもとしては女性に対する援助を極めて重視してきております。先ほどおっしゃられましたように、世界女性会議におきましては開発途上国の女性支援イニシアチブというものを発表しまして、特に開発途上国の女性の教育、それから健康、それから社会経済生活への参加という三つの分野を中心に今後援助を行っていくということを表明いたしました。  教育を通じた人づくりと申しますのは、もちろんこれは開発にとっての基礎的なものでございますので、私どもとしてはこのイニシアチブの中で、例えば二〇〇五年までに男性と女性、特に六歳から十一歳までの教育の男女間の格差をなくす、あるいは二〇一〇年までに女子もすべてが初等教育を受けられるようにするというような、国際的な努力を目指して援助を行っていこうというふうに考えております。具体的には教員の養成でございますとか、あるいは女子が利用できる教育訓練のための施設等の整備、あるいは成人女性の識字教育の促進を図っていくということにしております。  この女性に対する支援の分野につきましては、今後とも先ほど申しました三つの分野、教育、それから健康、それから社会経済生活への参加支援ということを重点的に援助の拡充に努めてまいりたいと考えております。
  51. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 その世界女性会議のときに、日女性議員の会があったんですね。そのときにも日本が名指しで、日本の援助というのは橋とか道路とか建物だとかそういうものばかりに偏っていで、女性に対するそういうものが非常に少ないというようなことを指摘されまして、大変残念に思ったわけです。私もそのことについてはWIDイニシアチブのことなどを一応説明いたしましたけれども、やはり今までの日本のODAのイメージというのはそういうふうにもうかたくつくられてしまっておりますものですから、ぜひこれを変えていく、そういうところにもしているということをぜひ目に見えるようにしていかなきゃいけないんじゃないかと思うわけです。  こういうふうにして外務省も大変頑張っていらっしゃるわけですが、ユネスコを通じてこの分野でいろいろ協力を進めていらっしゃると思うわけでございまして、この辺につきまして、まず文部省から実態をお伺いさせていただきたいと思います。
  52. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) お答え申し上げます。  識字教育充実はあらゆる社会経済開発の基礎として、ユネスコを初めとする国連諸機関と各国が協力して取り組むべき重要な課題であると考えております。  御高承のとおり、ユネスコにおきましては、一九九〇年の国際識字年を契機といたしまして、種々の国際的な協力事業を実施しているところでありますが、同年の統計によると、世界の成人人口のうち約九億五千万人が非識字者であり、その四分の三をアジア・太平洋地域で占めているため、アジアを中心とする非識字問題は極めて深刻な状況にあると認識をいたしております。  このような中で、文部省といたしましては、識字教育の国際協力を我が国のユネスコ活動の重点事項として位置づけまして、平成二年度以来毎年五十万ドルの信託金をユネスコに拠出し、各国の指導者の研修や識字教材の開発などの協力を推進してきているところであります。さらに平成六年度からは、財団法人ユネスコ・アジア文化センターにおきまして、女性のための識字教育モデルセンター設置の事業を実施しているところであります。今後とも、アジア地域を中心とした開発途上国における識字教育普及充実のため、ユネスコを通じた国際協力を推進してまいりたいと存じます。  なお、今毎年五十万ドルと申し上げたようですが、これ七十万ドルが正確でございますので、訂正させていただきます。  なお、清水先生、私、実は先般ユネスコのマコール事務局長がお見えになって、二度にわたって話し合い機会を持ちました。その際、世界の人口爆発の話が出まして、ある権威ある数字によると、一九五〇年には二十五億人の世界人口が二〇五〇年、百年後には四倍の百億人になると。食糧もエネルギーも資源有限であるだけに先行きが心配だという話になりまして、その際にマヨールさんが、実は教育を推進することがこの問題を解決する一番のかぎになるということを最近確信を持ったという話が出まして、いろいろな発展途上国その他に対しては積極的に教育を推進することがいろいろな理解を生み、そしてそのことがいわばこの問題を抑えるということで、その百億の数字は大きく下回るはずであると、かなり確信に畑ちた話を聞いたところであります。その一番の基礎になるその一つが識字率と心得ておりますので、私も先生と同じようにこの問題を重要していきたいと考えております。  以上であります。
  53. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 大臣から大変強いお話をちょうだいしましてありがとうございました。  私も今、人口懇の事務局長をしておりますけれども、大変このことを重要なことと思っておりますので、今後ともよろしく御指導をいただきたいと思います。ありがとうございました。  それでは、文部省ありがとうございました。  次に、大臣本当にお待たせ申上げまして申しわけありません。お伺いしたいと思いますが、浦野大臣には、先週IAEAの総会に御出席されたそうで御苦労さまでございました。そして、そのときに、フランスの核実験再開の問題につきまして即時停止を求める演説をされたというふうに伺っております。さらに、フランスの原子力庁長官にもお会いになってその問題について御要請されたというふうに伺っているわけでございますけれども、手ごたえはいかがであったでございましょうか。
  54. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) お答えをいたします。  今先生お尋ねのIAEAの総会に、先般政府代表として出席をいたしました。幸いに参加国のトップを切って代表演説をする機会我が国は恵まれたわけでございます。  その演説の中で、私は核不拡散条約の無期限延長等、これを踏まえまして核不拡散に重点を置いた主張をしてまいりました。特に、その中で核実験の実施につきましては、その停止を求める国際世論に反するものだということから、極めて遺憾であるとの、停止を求める演説をいたしたところでございます。  また、その演説の後にフランスのデスカタ原子力庁長官と会談いたしまして、同じく核実験の停止を強く求めた次第でございます。  この総会のさなかでございますけれども、核実験の停止を求める決議の動きがございまして、我が国といたしまして、唯一の被爆国という立場からも、この共同提案国として参加をすることに決しました。最近この総会におきましては、これが無投票で採択をされたということに相なっておりまして、この点につきまして国際世論を高める一助となったものと理解をいたしておるところでございます。  我が国といたしましては、当然のことながらこれからもあらゆる機会をとらえまして核実験の停止に向け粘り強く各国に働きかけてまいりたいと思っておるところでございます。  以上でございます。
  55. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 きょうは国連総会で外務大臣もこの問題について演説されたというふうに伺っております。こうした国際的な核実験反対の機運の盛り上がりにもかかわりませず、フランス、中国が核実験をやめようとしないのは本当に残念なことでございます。今大臣指摘のように、私たちはこれからもこの運動をずっと主張し続ける必要があるというふうに思っております。  核実験はその領域住民への直接な被害ということももちろんでございますけれども、やっぱり環境への影響も非常に懸念されるところでございます。環境への影響調査などにつきましてもIAEAの場で検討されているというふうに聞いてはおりますけれども我が国といたしましても、核実験によります環境への放射能影響調査あるいは監視するために国際的に貢献すべきじゃないかというふうに思っておりますけれども、この辺についてはいかがでございましょうか。
  56. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) この件につきましては、実はさきのIAEA総会においてブリックス事務局長とも会談をいたしました。その際、ブリックス事務局長からも私に対しまして、フランスからこの環境影響調査についての要請、依頼があるというお話が出てまいりました。これに対しまして、我が国としていかに考えるかということでございますけれども、現在IAEAはこのフランスの要請に対しまして慎重に検討しておる、このように私は受けとめておるところなんです。  我が国としては、先ほども申し上げましたけれども、核軍縮の観点から、あらゆる機会を通じて核実験の停止というものは求めていく強い決意を持っておるわけでありまして、IAEAに対しましてフランスから核実験の環境調査という要請があるということでありますけれども、私どもといたしましては、その核実験の継続を正当化するものではない、この前提、これがしっかりしておれば、我が国の技術力をもってその環境調査に参加してもいいのではないか、現段階ではこうした姿勢を持っておるところでございます。
  57. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 よく了解いたしました。  次に、少し話題は変わりますが、新刑七転換炉、ATRの実証炉の見直しの問題についてお伺いしたいと思います。  資源のない我が国が原子力エネルギーに頼るのは、もうこれは仕方がないことでございますが、将来的にも安定したエネルギー確保のために核燃料をリサイクルして利用する新型転換炉や、あるいは高速増殖炉の開発が進められてきたというふうに伺っております。先月は高速増殖炉原型炉というのでしょうか「もんじゅ」というのが日本で初めてプルトニウムによる発電に成功したということが報じられて、大変先進国からも関心を持たれているというふうに伺っております。  しかし、その一方におきまして、一九七九年から運転を始めておりました新型転換炉の実証炉の建設計画が中止される、それが原子力委員会で決められたという報道を伺ったわけでございますが、何かこの原手力政策がちぐはぐじゃないかなという感じもしたわけでございます。  そこで、まず一つの問題は、このATR実証炉の建設計画の見直しについて原子力委員会が決定した具体的内容、そしてまた中止によりましてこの核燃料リサイクル政策へどんな影響があるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  58. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) お答えを申し上げます。  先生指摘のとおり、我が国は今原手力発電の主流を占めております軽水炉をさらに一歩進めました新しい原子炉として高速増殖炉と新型転換炉の開発を進めております。  その新型転換炉につきましては、今までの開発成果をもとに実証炉というものを電源開発株式会社が建設する計画を進めてまいりました。この実証炉の討画につきましては、十年来の懸案でございました漁業補償等の地元問題が昨年の春に解決をいたしました。その解決を受けまして、最終的な建設費の見直しを行いましたところ、当初の計画よりも相当大幅に増加をするということが残念ながら判明をいたしました。これを受けまして、本年の七月に電気事業連合会からこの経済性の理由を中心としてこの計画の見直しを原子力委員会等に対して求められたわけでございます。これを受けまして、原子力委員会は関係者の意見を聴取しつつ、もちろん経済性の問題も大事でございますが、それに加えまして、原子力政策全体、特に核燃料リサイクル政策であるとか、あるいは研究開発政策全般にわたりまして見直しを行いました結果、本年八月にその結論を得たわけでございます。  その内容は、一つは実証炉の建設計画は残念ながら中止することが妥当である、ただしその代替計画といたしまして、全炉心にプルトニウム燃料利用を目指す改良型の軽水炉、これを進めるということが適切であろうという結論を得たわけでございます。  ただし、この見直しにつきましても、核燃料リサイクルという政策の基本に影響を与えるものではございません。したがいまして、今後とも官民の総力を挙げまして高速増殖炉等の開発を進めてまいりたいと存じております。
  59. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 国の原子力政策は当然のことながら長期的な見通しのもと計画的に推進されるべきものと心得ております。このATR開発には原型炉「ふげん」の建設や運転、またその研究開発にたくさんのお金を国費として投入されてきたはずだというふうに思います。これで見ますと、新型転換炉の研究開発に既に国が約二千五十億円、あるいは電力業界が約七百四十億円投じてきた、こういうふうに書いてありますが、そういう中でこのたび中止が決定された。これまで国が努力してこられた問題、そしてATRの研究開発への取り組みがすべてむだになってしまうんじゃないかというふうに思いますが、これはいかがでしょうか。
  60. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) 先生指摘のとおり、新型転換炉の開発につきましては、これまで約三十年間の大変長い期間、もちろん多くの経費、多くの関係者の努力というものが注がれてきておるわけでございます。したがいまして、今回の実証炉の建設計画の中止の判断に至りましたことは大変重く受けとめるべき問題であろうかと存じております。  ただし、これまで新型転換炉開発を通じて蓄積されました多くの基盤的な技術というのは、我が国の原子力発電の安全性であるとかあるいは信頼性の向上に大変大きな貢献をしてきたということが一点。それからもう一点は、この中心でございました原型炉「ふげん」というものが今運転中でございますけれども、この「ふげん」におきましては、我が国で初めてプルトニウム燃料のリサイクルを完成したということも含めまして、国内外のプルトニウムリサイクルに対する理解の増進に大変大きく貢献をしたものと認識をしております。  したがいまして、この新型転換炉の研究の成果というものが、核燃料リサイクル政策の我が国の今後の開発に大変大きな期待を寄せられるところもございます。したがいまして、今後ともこういった知見というものを原子力開発利用の進展に有効に活用していくということがこれまでの投資を生かしていくことに十分つながっていくものと認識をいたしております。
  61. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 どうしてもこういった先端的研究開発を進めるに当たりましては、必要に応じて見直しをしなきゃならないという事態も来ることは仕方ないというふうに思います。このたびはこういうことで大変残念だったわけでございますけれども、これを今後の原子力政策にぜひ反映させていただきたいというふうに思うわけでございます。  最後に、大臣にATR実証炉建設計画の見直しと今後の核燃料リサイクル政策への取り組みについて御所見を伺いたいと思います。
  62. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 先ほど先生から御質問がございました今回の転換炉の問題につきましては、私ども極めて重く受けとめておりまして、これを一つの大きな経験といたしまして今後に資してまいりたいと思っています。  そうした観点から、この見直しに当たりましては、今も原手力局長から御答弁を申し上げたところでございますけれども、核燃料リサイクル政策の基本は、これはしっかりと堅持させていただく。今後のこうした大型の技術開発の実用化を進める上では、研究開発主体と建設並びに運転する主体とが一体となって研究開発を実施する体制をさらに整備していくことが肝要だと心得ております。また、進捗状況に応じまして計画を評価し、所要の措置を適時的確に講じていくためのこれまた体制を構築していかなければならぬ、このように思っております。  今後、この見直しを通じて得られた教訓、これ今申し上げたところでございますけれども、このことを重ねて原子力開発の進展のために資して生かさせていただくことを申し添える次第でございます。  以上でございます。
  63. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 次に、ちょっと変わった話題なんですが、宇宙開発の問題でございます。  昨年の七月に宇宙開発委員会がまとめました「新世紀の宇宙時代の創造に向けて」という報告書を大変楽しく読ませていただきました。未知なる宇宙の探索というのは人類の夢でもございます。  アメリカがアポロ十一号を月面に送ったのが一九六九年、もう三十年も前のことになります。今、担当の方に伺いますと、日本も無人だったら月面を探査する技術はあるんだそうでございますけれども、有人はとてもまだまだということでございまして、やっぱり三十年以上の差があるのかなというふうに思っているところでございます。  もう米ソの宇宙開発戦争時代も終わりました。将来に向けた先端技術の開発、あるいは宇宙空間からの地球観測による災害のモニタリング、あるいは地球環境問題への対応など、宇宙開発の意義も非常に高まってきているというふうに思うわけでございますが、子供たちに月への夢を与えるといったようなこんな夢のある計画も今後進められないだろうかということで、今後の我が国の宇宙開発への取り組みということでお伺いしたいと思います。
  64. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 実は、最近の調査によりますと、子供たちまた若者たち科学技術離れが進んでおるという結果が出ておりまして、このことに関しまして私ども科学技術庁としては極めて憂慮いたしておるわけでございます。これは資源のない我が国、これが生存していくためには、やはり日本人の持っている知力に頼るしかないと思うからでございます。  こうした観点から、この宇宙という分野は、日本の子供たちに極めて大きな夢、ロマンというものを与える一つの大きな材料であろうと思うわけでありまして、この宇宙開発につきまして当庁といたしましてしっかりと取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。  また、この宇宙開発につきましては、当然目的として質の高い豊かな生活の実現、これは気象衛星の問題であり、最近ではカーナビゲーション、御経験のある方もおられると思いますけれども、あるいは放送の分野、こうした点で目的を果たすわけでございますし、あるいは各種の実験をすることによりまして新技術あるいは新産業の創出、こうしたものにもこの宇宙開発における実験等がつながっていくだろうと。こうした点での重要性を感じておるところでございます。  また、この宇宙開発については、先ほど先生もなかなか有人までは難しいだろうというお話がございましたけれども、この研究ももとより進めておりますが、国際協力ということも、これはこれまでの冷戦構造が終わりまして民生用にこれが移行しておるという今の状況からいたしまして、大いにこれを促進すべきと思っておる中であり、我が国としてもこうした点につきましてのさらなる参加と協力というものをしてまいりたいと思っておるところでございます。
  65. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 先ほど来何度も出てまいりますけれども我が国がこれから生き延びていくためにどうしても科学技術の問題、これを発展させなきゃいけないという御指摘でございます。今、科学技術創造立国というような言葉が最近の合い言葉になっているようなことでございまして、先ほど文部大臣にも学術研究の充実の問題について御決意をちょうだいしたところでございますが、科学技術振興、これ責任者でございます科学技術庁長官のお考えを最後に伺いまして私の質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。
  66. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 何度も申し上げてきたことでありますけれども天然資源に乏しい我が国、すなわち目に見える石油であるとか鉄であるとかこうしたものは存在しないわけでありまして、目に見えない資源、すなわち日本人の知力というものをさらに高めることによって二十一世紀というものが我が国として成り立っていくんだろう、私はそう受けとめておるわけでございます。こうした中で、今先生科学技術創造立国というお言葉を出していただきましたけれども、まさにその目標を持って当庁といたしては頑張っておるところでございます。  平成四年に科学技術政策大綱、これが決定をされておるんですけれども、この中では、地球と調和した人類の共存、知的ストックの拡大、そして三点目でありますけれども、安心して暮らせる社会の構築、こうした三つの柱を掲げておるわけでありまして、こうしたことを基盤として当庁としての科学技術政策を推進してまいりたいと思っておるところでございます。  具体的になりますと、四つほど簡単に挙げさせていただきますと、新たな産業創出につながる技術開発のための独創的な基礎研究をやっていかなければならぬ。それから、生活に密着した分野でございますけれども地震の防災、こうした点での研究であり、実は当庁といたしましても、がん撲滅のための研究にも放射線の分野での研究を続けておるところでありまして、こうした点も進めてまいりたいと思っておるところであります。それから、先ほどの宇宙あるいは海洋の人類のフロンティアを開拓するところの先端的な分野の研究にも取り組んでまいらなければならぬと思っております。また、地球環境、エネルギーなど人類共通の問題解決のための研究開発、これにも力点を置いていきたいと思います。  以上、私どもといたしましては、具体的にはほぼ四つの点につきまして力を入れながら科学技術政策を推進してまいりたいと思っておるところでございます。
  67. 清水嘉与子

    清水嘉与子君 よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  68. 中島眞人

    ○中島眞人君 自由民主党の中島眞人でございます。  七月の選挙で当選したばかりでございますけれども、にもかかわらず、質問の機会をお与えをいただきました先輩の先生方、また同僚の先生方に心から感謝を申し上げたいと思います。  実は私は、常日ごろから島村文部大臣の生き方、政治主張には大変敬意を表しておりました。とかく政治家はいろいろな問題に処したときにはどちらにもとれるような発言をなさるんですけれども、憂国の情の中、常に是は是、非は非の立場の中で主張なさってきた政治経歴に対して、私は強い敬意と、また私どももそんな政治家になりたいと常日ごろ思っておったわけであります。  そんな中で、実は私は昨日、山梨県出身ということもございまして、七月当選をいたしました自由民主党の仲間十数名と上九一色と富士宮を見てまいりました。地元でいながらなかなか見ることができなかったわけでありますけれども、そしてまた、地元の知事や地元の村長さんやあるいは住民代表の方ともお会いをしてまいりました。  その中で、ともかく一時鎮静化をしたオウムの、それぞれ上九、富士宮においては、信者の活動は言うなればもとへ返るような活動が展開をされている。この目で実は見てまいりました。そして、これから寒くなるのに上九には約百名の警察符が簡易のいわゆる待機車、あるいは常十宮におきましても五十人の警察官が日夜これに当たっている。こういう実態の中で、この問題、国会の中で論議が起きるであろうということ以前の問題として、私は文部大臣にあるいはまた法務省当局にその血の叫びのような地元の声をお伝えをしながら御所見をお聞きしていきたい、こんなふうに思うんです。  さて、オウム真理教というのは宗教法人として東京都知事から認証を受けました。そして、御存じのように、オウム真理教は東京都のみならず山梨県やあるいは熊本や全国各地でこのような問題を起こしたわけであります。そして、この事件が発生をする以前からも山梨県知事はいろいろな法律で、知事自身に何ら監督権限ないものですから、例えば建築基準法であるとか大気に関する法律とか水質汚濁防止法とか公園法とか景観条例とかというあらゆるさまざまな法律、条例をもっていろいろ立ち入りをしようとしたんでありますけれども、宗教的行事にかかわるものであるということで一切立ち入りを認められなかった。まさにあらゆる知恵を駆使しての地元の町村、知事のまさに壮絶なる戦いだったと私は思います。  そこで、率直に即して大臣、現行の宗教法人が例えば認証地以外のところでこのような事実、ましてや山梨県知事は事件が起きてから文部大臣と東京都知事に何とかしてくださいと陳情するんです。法治国日本の中で少なくともいわゆる行政を担当している知事が何ら権限がないというこんな実態のあり方について、大臣はどのようにお考えになっているか、まずお聞きしたいと思います。
  69. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 中島先生のおっしゃることは、私も政治家の一人として、本当に地域のためにお言葉にはあらわし切れない大変なものを胸に秘めておられるとお察ししつつ承ったところでございます。  ただ、御高承のとおり、現行の宗教法人法第五条では、宗教法人の所轄庁は原則としてその主たる事務所の所在地を管轄する都逆府県知事とされております。このことは、当該宗教法人の宗教活動が他の都道府県に及ぶ場合であっても同様であり、したがって、現在時点におけるオウム真理教の所轄庁は東京都知事となっているわけであります。宗教法人法が制定されて既に四十数年が経過しておりますが、時代の進歩とともに広域的に活動する宗教法人も増加いたしましたし、現在の制度のままでいいのかという議論は国会を初め各方面で行われておるところであります。このため、現在宗教法人審議会で宗教法人の所轄庁のあり方につきましても検討いただいているところでありまして、この結論を私たちはお待ちをいたしている、こういうところでございます。  なお、オウム真理教問題に対する対応につきましては、従来からオウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議が設けられまして、関係省庁においてさまざまな対応等が講じられてきているところでございますが、文部省としても今後とも必要な対応について積極的に努力してまいりたいと存じますし、いやしくも本来的には人心を安んじ、いわば社会国家の安泰を確保しなきゃならないという期待を持たれる宗教法人からこういう事態が生まれたということはまことに遺憾でありまして、これに対してこれから責任ある対応をしなきゃならない、私はそう受けとめております。
  70. 中島眞人

    ○中島眞人君 今、大臣の御答弁を聞きまして、私は率直にこの問題、昭和二十六年に制定をされて、そして信教の自由というものを守りながら宗教団体の良識、そういう問題に任せてきた。これはある面ではすばらしい日本の心を守ってきた歴史だろうと、こんなふうに思うんです。そのことを否定するものではございません。  しかし、現にあってはならない、あろうとは思えなかった問題が起こってきた。ましてやこの約六年にわたって山梨県に約四万八千百八十四平米、そして上九一色村だけで三十四棟の建物がつくられている。そして建物をきのうも行って見たんでありますけれども、普通一般の市民がつくる建物であればあんなに窓が小さくてあんなにパイプが出ていて、これはもう少なくとも建築確認、建築基準法に違反をしているんではないのかあるいは大量な土砂が建物の中から出されるんで、設計変更がなされて基準法に違反しているんじゃないのかこういうことを少なくとも地域の方々はみんな思っておったというんですね。村長さん以下、区長さんも農協の組合長さんもみんな思っておった。  だから、県にもお願いして、村からも行って、少なくとも見させてくれ、いやまだ建築途中であります、これは宗教的行事ですから一切拒否しますと言われればだめだというんですね。そして、今大臣がお答えになりましたように、幾県に及んだにしてもその認証した県以外についてはそれは手が及ばないんだと。  これは率直に言うと、私は宗教法人法を改正するとかしないとかという以前の問題として、やっぱりそこに問題点があったんではないのか。もっと端的に言えば、指導官庁として現行の中でも山梨県知事が少なくともそれを監督したりそういうことに指導ができた、そういうものがあったとすればもっと事前に、この問題はここまで来なくてよかったんではないのかと素朴に思うんですけれども、ひとつ大臣、素朴にお答えをいただきたいと思います。
  71. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 素朴にお答え申し上げます。  私も先生と全く同じ受けとめ方をいたしております。先ほども指摘がありましたように、法治国家としてこういう事態を招来した、このことを今までいかに法律の定めがあるとはいっても余りそれを厳しく検討をしなかったということは、やはり我々としても反省のあるところであります。  ただ、御高承のことと思いますが、昭和二十年代に入りまして既に宗教法人法のあり方については一時検討がなされようとしたことがございます。ただ、そのときには多分に何か感情的な偏りというんですかおかしな先入観等も含まれたようでございまして、何か性質がゆがんだような感じのままに改正にまでは至らなかった、そのように私は一政治家としてかって聞いたことがございます。  先生と同じように、この問題が起きて以来、私は別に文部大臣としてでなくて非常に深い関心を持っておりましただけに、今お話しになったことは私も全く同感と受けとめているところであります。
  72. 中島眞人

    ○中島眞人君 そこで、私は実は新聞紙上の中でもオウム真理教に対する解散の問題というのは国民一致した意見だろうと思います。このような一つの組織がもうあっては困るんだという認識は日本国民ひとしく大体共通した考え方であろう。  ただ、この真理教というものの法人格をやっぱり取らなきゃいかぬ、この問題でさまざまな論議があるやに私どもも聞いております。その一つの方法としては、宗教法人法をもって解散をさせよう、あるいは破壊活動防止法でやるべきだという意見がございます。私は、ともかく率直に言ってどちらでもいいんです。一日も早く地域の住民が、あるいはあのサリン事件に見られたような、あるいは坂木事件に見られたようなそういう問題が現在の日本の中で起きないようにしてもらうということは国民の願いなんです。  しかし、私は昨日山梨県知事とも、私ども同僚の参議院議員十数名の前で知事が一言、破防法でもいいんですと。いいんですけれども、一番困るのは上九一色に三十四棟、四万八千百八十四平米の土地がございます。これはかってあの地域の方々が五十年前、戦後入植をして血と汗でつくり上げた開拓地なんです。これをいろいろなダミーを通じていったんです。あの麻原がいたサティアンのところは村のスポーツ広場だったんです。  そこで、私は法務省にお開きをしたいんですけれども、破防法を適用していった場合、私が調べた範囲、山梨県知事の理解もそうですけれども、財産の整理は団体の自主清算ということになっています。解散にはなる、しかし一番困るのは、地域の方々の願いはオウムが来ない以前のあの上九に返ってほしいんだ、しかし、もしあの財産が少なくとも自主清算という形で村へ返ってこないようなことになったら、少なくとも宗教法人の場合には、この解散をしていった場合にはその財産というのは地方公共団体並びに国に帰属するんだと。しかし、破防法は早いかもしれないけれども、どちらが早いかわからないけれども、いわゆる破防法の団体解散の財産処理はその団体の自主清算だというふうに私も認識をしておりますし、山梨県知事もそういう認識をしておるんですが、その辺については法務省、どういう見解ですか。
  73. 小林正一

    説明員(小林正一君) お答えいたします。  今の先生の御質問についてでありますが、オウム真理教に対して破防法が適用された場合という仮定の御質問でありまして大変お答えしにくいところでございますけれども、一般論として申し上げますれば、解散指定の処分が訴訟手続によって取り消しを求めることができないことが確定した場合には、破壊活動防止法第十条の規定によりまして当該団体は速やかにその財産を整理しなければならないということになっております。  この財産を整理するといいますのは、債権債務を整理し、残余財産を処分するということでありまして、当該団体の財産と認められるものであればすべて整理の対象となるということであります。また、当該団体が財産整理を終了した場合には、破壊活動防止法第十条三項の規定によりまして、そのてんまつを公安調査庁長官に届け出なければならないというふうに規定されております。
  74. 中島眞人

    ○中島眞人君 よくわからないんですけれども、端的に言っていただければいいんですよ。諸手続は全部省略します。宗教法人の解散の場合には、その財産というのは地方公共団体、国に帰属する、そうですね。ところが、いわゆる破防法の場合においては、私も山梨県知事の認識も地元の認識も、財産の整理は団体の自主清算であると。原則についてお聞きしているんで、その辺について端的にお答えいただきたい。
  75. 小林正一

    説明員(小林正一君) 先ほども申し上げましたように、オウム真理教に対して破防法が適用された場合という仮定の御質問がまずあるものですから、それについて具体的な事例についてお答えするのは大変難しいところだろうと思います。  ただ、あくまでも一般論ということで御理解いただきたいと思いますが、先ほども申しましたように、破防法の適用の対象となる団体が法人等の場合は、その法人の準拠法に基づいて財産の整理が行われるというふうに破防法上はなっております。したがいまして、解散指定の処分が確定しますと、当該法人は先ほど申しましたように破防法十条一項によって自動的に解散して、清算法人となって清算手続に入ります。  その際、破防法十条の二、項、三項の適用を見ることになりますが、その場合の清算手続はそれぞれの法人の準拠法令によるということになりますので、先ほど仮定の御質問であるということでお答えしたわけでありますが、オウム真理教の場合でありますと、これは宗教法人ということでありますので準拠法は宗教法人法ということになりますので、宗教法人法によってその後の手続は進められるということになります。
  76. 中島眞人

    ○中島眞人君 そうすると、じゃ危惧している問題はないと。少なくとも仮定の論議ですから大変慎重で、あたかも破防法が適用になったような論議の農閑であってはいけません。あくまでも仮定論議という格好でいきますと、仮定でやっぱり破防法が適用になった場合でも、これは団体の所属するところへ帰属がいける、それは間違いございませんね。
  77. 小林正一

    説明員(小林正一君) 先ほども申しましたように、その準拠する法令に従ってということでございますので、宗教法人法で定めるやり方で整理されることになるということになろうかと思います。
  78. 中島眞人

    ○中島眞人君 地元の認識と随分違いますので、これについては地元の方々にとってみると大変この辺が、一日も早く解散してほしい。ただし、この土地が昔の上九に返ってくるような、もっと端的に、言えば、この土地の中には、サティアン等が含まれている中には宗教法人オウムでない所有地、株式会社オウム九百九十一平米、そして「ぶれーめん」という、これはダミーのあれですけれども、一万二千七百平米があるんです。これらのものもどうなるのかという問題があるんです。  ですから、いわゆる文部並びに法務省においては、これらの問題についてひとつ十分地元住民の不安を解消していくために適切な御指導を賜りたい、このように思います。  さて、私は新人でございますから、性善説の立場で実は延長した御質問を申し上げたいと思いますけれども、オウム真理教の教祖並びに関係者が今逮捕されております。刑の確定はしておりません。しかし、熊本の波野村で村長が、千五百人くらいの村ですから、九億円という立ち退きのいわゆる和解金というのは、村財政の一般会計の少なくとも三分の二くらいを占めている金を払ってまでも立ち退いてもらいたいという、そういう立ち退き料というのを契約し、三億円払い、過般七千万円支払ったという、一つの善なる契約ですよね。  ところが、オウム真理教の教祖初め幹部が逮捕されている。まだ刑は確定をしていないけれども、この刑が確定をしたということになると、これは善意の者同士の契約ではないという形に私はなると思うんです。泥棒に追い銭みたいな、言うなれば泥棒、殺人者と結んだ契約であってもそれは正しいんだというのは、私はやっぱり善なる、あるいは地域の方々の気持ちを踏みにじるものではないのかと思えば、現在ではまだ審理中であり容疑者段階でありますけれども、これが犯罪者、殺人者、殺人教団というようなもので確定をしたとすれば、波野村とオウムで結んだあの立ち退き九億円問題というのは、これはやっぱり訴えによって無効になるんではないか、私は一市民の立場で法務当局にお聞きをしたいと思うんですが、いかがですか。
  79. 山崎潮

    説明員山崎潮君) お答え即し上げます。  ただいまの和解の性につきましては、内容は十分には承知しておりませんので一般論で申し上げたいというふうに思いますが、和解契約は一たん締結をされますと当事者がその内容に拘束されるというのが通常の原則でございますので、それを解消するということは大変難しい問題がございます。ただ、和解契約の内容におきまして詐欺だとか強迫、あるいは錯誤があったと、そういう事由がございますと取り消したり、あるいは無効にするということができます。  しかしながら、この今回の問題につきましては、私的に和解契約をしたというよりも裁判所を通じての和解でございますので、その辺のところがどのように取り上げられるかという個別の事案の問題になるだろうというふうに考えておりますが、一般論としては難しいということはございます。
  80. 中島眞人

    ○中島眞人君 確かに、契約というのは当事者がそれに合意をしてやることなんです。これは一般市民の一つの契約だろうと思うんです。しかし、相手が殺人者であり、相手が言うなれば破壊活動防止法を適用してもいいとまで、これはマスコミ、の論調ですから、いいとまで公安調査庁が認め、法務大臣も何か理解を示した云々というような、そういう団体と結んだ契約というものが守られていったとしたら、これは大変な法の欠陥だろうというふうに私思うんですよ。  この辺については、私はやっぱりあの波野村が九億円、先ほども申し上げましたけれども、少なくとも年間予算の一般会計の三分の二ぐらいを占めている金額だろうと思いますよ、九億円といったら。それを払ってまでこの村から立ち退いてもらいたいというあの願い、今度はこの団体は村民にとってみれば殺人者だと、いわゆる破防法まで適用される、宗教法人まで解散される団体と結んだものがまた生きているのかこんな法律があるのかという願い、これはやっぱり我々政治家もそれを正していかなきゃいかぬし、そしてその問題について問題があるなら守ってやらなきゃいかぬ。やはり私はその問題を書い続けていきたい、オウムの上九の問題も含めて言い続けていきたいと思うんですけれども、その問題についてなお検討をしていただくことに用意がございますか。
  81. 山崎潮

    説明員山崎潮君) 一般論として申し上げますと、それを法制上どうにかするということはただいま考えておりません。ただし、事案の内容により個別に内容が公序良俗に違反するとかそういう問題がございましたら、最終的には裁判所におきます和解でございますので、和解無効とか、そういうような手段を通じて解決をしていただければというふうに考えております。
  82. 中島眞人

    ○中島眞人君 わかりました。私、これでやっぱり正しい者が勝つんだというひとつ勇気を波野村の皆さん方にお与えをいただく一つの発言、小さな発言ですけれども、これが大きく私は広がっていくことを期待します。  さてそこで、昨日、上九一色村や山梨県を訪れましたところが、ともかく残留信者を帰してくださいと。私も笑い話言ったんです。山梨県知事さんは山梨県から出ていってもらえばいいんですけれども、我々は国政レベルで考えれば、静岡や神奈川へ行ったんじゃ今度は静岡や神奈川や東京の方は怒りますよと。  ということになりますと、これは私は文部大臣にも、法務当局にもお願い、あるいは自治省にもお願いをしなきゃならぬですけれども、宗教法人を監督していく文部大臣にぜひお願いをしたいのは、例えば残留信者をどういうふうにするか。しかし、残留信者はちんとしていないんですよ。より一層活発化しているんですね、今。あれ、帰りっこありませんよ。  しかし、殺人教団、破防法適用までしょうじゃないかという教団、いわゆる信者は善だという解釈をしておったところが、昨日は幹部じゃなくて信者も同じようなことをやる可能性があると言っているんですね、出家信者が。ということになると、その信者を、そのオウム教の教義に基づいてマインドコントロールされている方々をどうしていくかという形になったら、現行の法律の中では私はやっていく諸法令というのはないんじゃないかと。同時に、矯正施設をやるという問題だってないだろうと。同時に、上九が、あるいは富沢町が、あるいは富士宮がやっている問題、現在の各省庁が抱えている問題の中でいろいろやろうとしても、一つ一つをやっていくだけで私は大変この問題についての解決は延びてしまうだろうと。  地域住民の要望にこたえて私はこの際特別立法をやっぱり考え、全国各地で起こっているこれらの問題を特別対策事業として取り上げていくべきだと思いますが、突然の御質問で大変恐縮でございますけれども、所管庁の大臣として御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  83. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) オウム真理教の信者にもいろいろおられると思います。ただ、私ども新聞報道その他しか知り得ないわけでありますけれども、信者の中には今でも確信犯的な方もおられて、今先生指摘のように、また同じようなことをやりかねないという危惧の念を抱かせる人もおられると思います。またその一方では、まじめな人間に立ち返って、いわば社会復帰しよう、こういう考えに立つ人もおられると思います。  問題は、後者につきましては、我々関係省庁それぞれの立場でこれに対応しようということから、先ほど御報告申し上げたように、オウム真理教問題関連対策関係省庁連絡会議でいろいろ検討いたしているところでございますが、問題はその確信犯的な人で、しかも何か社会的にこれからも一般の方に心配をもたらすような行為が予測されるような場合、いろいろあろうかと思いますが、この分野につきましてはむしろ法務当局のお立場ではございますけれども、我々としても一応責任省庁といたしましては、こういうことについて先生と私は考えが同じでございますから、一般の方々が不安を持つようなことを放置してはならない、これは当然のことでございますから、そういう面につきましては私も責任者の一人としてそういう御意思に沿った動きをしていきたい、こんなふうに思っております。
  84. 中島眞人

    ○中島眞人君 もう時間が参りました。  今、文部大臣からこれらの問題を包括した、各関係省庁と関係を持ちながら、特別立法になりますかあるいは閣議了解事項になりますかその辺はともかく、どちらでもいいんですけれども、重点的に山梨、静岡あるいは熊本、全国各地で行われておったこのオウムで地域の住民が悩み、苦しみ、そしてこの回復には大変な時間とお金がかかる。こういう問題について特別対策事業をぜひひとつ主管庁としておまとめいただき、そして地域住民の不安を解消していくためにぜひひとつお願いをいたしたいことを御要望し、さらに大臣から御意見が、やるよという意見がございますならお答えをいただいて、私は終わりたいと思います。
  85. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 大変ごもっともなお話でございますので、関係省庁にはこの旨をお伝えして、前向きに取り組んで御納得のいただけるような結論に導くような努力をしたい、こう思います。
  86. 中島眞人

    ○中島眞人君 ありがとうございました。
  87. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午後零時一分休憩      ――――◇―――――    午後一時開会
  88. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、平成四年度決算外二件及び平成五年度決算外二件を一括して議題とし、文部省及び科学技術庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  89. 畑恵

    ○畑恵君 平成会の畑でございます。このたびは新人にもかかわりませず早速に質疑機会をいただきまして本当にありがとう存じます。諸先生初め関係省庁の方、そしてめでたく御就任なさいました大臣、どうぞ御答弁の方よろしくお願い申し上げます。  さて、本日限られた時間でございますので、私は特に文部省方々文化行政及び文化政策について伺ってまいりたいと思います。  文化行政、文化政策ということなんですが、私も昨年の暮れまで二年半ほどヨーロッパの方に暮らしまして、どうも欧米に限らず諸外国と日本との間でその認識ですとか重要竹の特に認識の度合い、これに開きがあるように思われてなりません。やはり文化行政と申しますのは、ただ音楽をより多く聞くとか絵を多く見るとか、あるいは多目的ホールという名の無目的ホールをどんどん建てるということではなく、やはり日本の顔である文化をどのように守り、育て、そして普及していくかということに尽きると思います。  そうした中で、特に今、国内ではオウムの問題、諸先生方がいろいろお話をなさいましたけれども、心のよりどころがどうも失われつつあるのではないか。そういう内憂を抱え、また外患としましては、経済摩擦だけではなくて安全保障その他の問題でやはり日本の位置というのは国際的に孤立しかねないという、そういう危機もはらんだ状況、これからより国際化していく社会の中で日本立場を考えなければいけない。こうした中で、その顔をつくる文化行政、文化政策というのは大変重要な位置をますます占めていくと存じます。  そうした中で、巌もその部分を所轄なさいます文部大臣としましては、文化政策について今後どのように取り組まれるおつもりなのかまず御所見から伺いたいと存じます。
  90. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 本年は戦後五十年の節目の年に当たります。当然、私たちはこの節目というのを非常に大事に思わなきゃいけないと思いますし、この点に立って戦後五十年を顧みていろいろ反省すべきを反省し、新しい出発のスタート台にしなきゃならないと思うんです。  そういう意味では、大戦に敗れてまさに瓦れきの中から立ち上がる過程では、もともとおくれていた社会資本の充実も考えなきゃいけませんでしたし、当然のことに経済の復興、発展ということもございました。そして同時に、我が国は何といっても国土は狭いですし、資源は全くない。そうなれば教育に力点が簡かれるのは当然でございますし、科学技術は大変に大きく前進、発展を遂げたという意味においては成果を上げたわけでございますが、文化の面においてどうであったかこう言われますと、全く今先生指摘のとおり、認識はほぼ同じでございまして、これから我が国がいろいろ伸びていくためには当然のことに文化的ないろいろな面からの検討、充実というものが必要だと、そんなふうに考えているところです。  同時に、今御指摘ありましたように、物の豊かさから心の豊かさへと、こういう御指摘は当然でありまして、これはやっぱり人間が幸せであることを実感するための基盤といいましょうかその一番の根源であると言っても言い過ぎでないと思うわけであります。そして、潤いのある人生といいましょうか社会生活を送るとなれば、当然その背景には文化がなければいけないわけでありまして、私はそういう意味で、創造力豊かな個性や美的な感性が尊重される文化時代というものを、これはもう党派を超えてお互いの英知を絞り、協力し合って築いていく必要がある、こんなふうに思います。  また、具体的には我が国の古来の伝統文化を継承しながら、すぐれた芸術文化の創造、発展を図る、文化を重視した国づくり文化を通じて国際貢献を行うこと等が我が国の課題である、こう受けとめておるところでございます。このため、芸術文化振興文化財の保存・活用、文化の国際交流・協力など、文化政策推進のための各種施策を一層積極的に推進する必要があると考えるところであります。  また、文化庁に置かれております文化政策推進会議で本年七月二十六日まとめられた報告「新しい文化立国をめざして」におきましても、「今世紀中に文化基盤を抜本的に整備することが緊急の課題」と指摘されているところであります。そういう意味で、文化振興のための当面の重点施策について提言された点を我々は重視いたしまして、私も責任者として大いに文化の推進に努力をしていきたい、こう考えているところですし、文化振興のための諸施策の一層の推進を図るために最大限の努力をしていく、こんな考えでおるところでございます。  以上でございます。
  91. 畑恵

    ○畑恵君 大変励まされるお言葉ですし、緊急課題、最重点課題と、ぜひそのお言葉のとおりに今後施策が行われますことを願ってやみません。  せっかく前向きのお話をいただいたのに後ろに引き戻すようで恐縮でございますが、ではどれだけ今まで日本文化政策に真剣に取り組まれておられるかちょっとこれを振り返らせていただきたいと思います。  何も予算の規模だけがどれだけ文化政策に真剣にというこの度合いにぴったり沿うかということは問題もあるかもしれませんけれども、とりあえずの指標として文化予算、この規模をほとんど経済レベルで比肩し得る先進国と日本と比べてみたいと思います。  これは文部省平成五年度版「我が国文教施策文化発信社会」に向けて」という資料から数値はとらせていただきました。これによりますと、文化予算ということそのものが各国それぞれ当然行政枠が違いますので試算するのが難しいんですが、あくまでもこちらの資料に基づいてということでお含みおきいただきたいんですけれども、こちらでは日本文化予算というのはイコール文化庁予算ということで挙げられております。九四年度、およそ五百九十六億円でございます。これは同年度の国の一般会計の〇・〇八%であります。文部省予算全体でも一・一%にすぎません。  では諸外国はどうか。イギリスは国民文化財省というのがこちらの文化庁に当たる動きをしておりますけれども、九三年度で九億八千百万ポンド、円換算で千九百億円であります。かわりましてフランスですが、九二年度、文化・コミュニケーション省の、これは現在は文化教育省と変わっておりますけれども文化・コミュニケーション省の予算ということで百二十九億フラン、日本円にして二千九百六十五億円でございます。これは国家予算の〇・九八%に当たります。およそ一%でございます。かわってドイツですが、ドイツの場合には非常に地方自治が徹底した国でございますので、国家予算という形ではなくて連邦、州、そして市町村の合計という形で示させていただきますけれども、九一年度が日本円にしまして一千五十四億円、これもやはり国家予算で考えますと〇・九二%、およそ一%ということでございます。アメリカ、これをぜひとも比べたいんですけれども、こちらの方は民間、個人ですとか団体によって大勢が賄われておる、それを国の方が大幅に税制を優遇するということで間接的にサポートするということですので、なかなか横並びで比べることは難しいですけれども、御参考までということでどれぐらいの規模かと申しますと、公的支出は日本円にして九百六億円にすぎませんけれども、民間による援助資金というのは日本円にして六千二百億円ございます。  このような非常にラフな比較ではございますけれども、フランス、ドイツ等々、国家予算の一%、それに引き比べて日本はその十分の一にも満たないと、こういう結果が出ております。少なくともこの不況下で、これは当然さらにふやしていただきたいとこちらは要望するんですが、先ほどの前向きなお言葉の中で、この文化予算を恐らくふやされる傾向にあるんだと思いますけれども、どのような措置でふやされるのか伺いたいと思います。
  92. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 文化庁予算、例えば平成七年度は六百六十八億でございまして、前年度比一二・一%増、八年度、来年度要求につきましては七百八十九億円の要求をいたしておりまして、これは一八・二%増。今、先生指摘になりましたように、なるほど諸外国の文化予算と比較しますと、ちょっと比較するのがつらいなと思うのは率直な感想でございます。  今御指摘ありましたのと多少これは数字が違うかもしれませんが、回答の正確を期するために直近の数字を調べてもらいましたが、ここでわかる範囲では、日本の場合は六百六十八億、イギリスが千九百二十三億、フランスが二千九百六十五億、ドイツが千五十四億と、こういうことでございまして、ちょっと我が国文化予算というのは国際比較はしにくいのが現状でございます。  そういう意味で先ほど来申し上げましたように、今までは力点の置かれた分野あるいは置かざるを得なかった分野がいろいろございましたし、折から不況でもございますからなかなか思うようにいかないことは事実でございますけれども、それはそれとして、来年度は思い切った増額要求をいたしているところでございますのでぜひまたお力添えを願えればと、こう思うところでございます。
  93. 畑恵

    ○畑恵君 確かに、御答弁賜りましたように、文化庁予算というのは飛躍的な伸びを、そして突出した伸びを示していらっしゃいますので、その部分での御努力というのはこれはもちろん評価させていただくところでございます。ただ、各国横並びがそうでございますので、御認識をまた改めていただければということです。    〔委員長退席、理事大木浩君着席〕  ただ、今のお言葉にもありましたように、やはり突出した伸び率を示していらっしゃるというのはもともとのパイが小さいというところもありまして、ただそうは申しましても、財政も逼迫の折でございます。そうしますと、これ以上一気に諸外国と同じような文化庁予算にしてくださいという、そういうお願いはできないというのは私も理解できます。  ならば、どうするかといいますと、やはりここで民間資金の積極的な活用ということ、これ以外にほかに方法はないのではないかと思います。そうなりますと、まず一つとしては、先ほどちょっと早口で恐縮だったんですけれども、アメリカの文化予算の例を出させていただきました。税制の優遇という形で国が間接的にサポートをしますと、もちろんボランティアに対する国民の感情ですとか慣習の違いというのはございますけれども、やはりそれなりの成果はあり得ると日本でも期待できると思います。  ですから、民間の芸術文化振興支出に対します税制の優遇措置、既にいろいろな準備がございますけれども、より拡充することが望まれるというか必要だと思うんですけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  94. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 全く同感でございまして、国が十分なことができないというのはやむを得ざる事情であるとすれば、そういう逆を積極的に開くということが必要であると、私は文部大臣としても当然でありますが、政治家個人としてもそう思います。  そういう意味で、今お話がありましたように我々もこれからこれらに前向きに取り組んでもまいりますが、現在時点でお答えできることは、芸術文化振興を図るために公的支援とともに企業や個人などの民間支援の充実が重要である、文部省もこのことを深く認識しているところであります。そのために、芸術分野の特定公益増進法人制度等の充実に努めてきておるところであります。  また、平成六年に社用法人企業メセナ協議会、メセナは先生御存じのとおりでございますが、特定公益増進法人に認定されまして、同協議会の選考委員会が認定した芸術文化活動につきましては、同協議会を通じて寄附を行うことにより税制上の優遇措置がされることとなり制度の大幅な拡充が図られたところであります。  今後もこれら制度の積極的な活用や一層の充実を図ることによりまして民間による芸術文化支援の促進に努めてまいりたい、こう考えております。
  95. 畑恵

    ○畑恵君 この問題につきましては、きょうは大蔵待の方にもおいでいただいていますので、大筋のところは承ったところと大きく変わらないとは思うんですけれども、それ以外に動きがございましたり、また何か補完なさることがありましたら御答弁いただきたいと思います。
  96. 藤岡博

    説明員(藤岡博君) 民間からの芸術文化振興のための支出に関しまして税制上の優遇措置を講ずべきではないか、拡充すべきではないかというお尋ねでございます。  ただいま文部大臣の方から御答弁ございましたとおりでございますが、公益法人等に対する寄附金に関しましては、一定の支出に対しまして、指定寄附金制度でございますとか特定公益増進法人制度といったような特別の配慮を行う制度が講じられているところでございます。  例えば文化に対しましては、現行制度におきましても、日本芸術文化振興会あるいは芸術の普及向上に関する業務を行う法人等を特定公益増進法人としているところでございますし、また民間企業の一般の寄附に対しましても控除枠があるわけでございます。  税の減免というのは、他方で、その減った分を他の一般の国民の方がまた負担するということでもございます。そういったこともございますが、いずれにいたしても、現在ございます特定公益増進法人制度等の一層円滑な運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  97. 畑恵

    ○畑恵君 ただいま御答弁いただきましたように、公益性の高い寄附金につきましては税制の優遇ということで幾つかの措置が確かに行われております。  指定寄附金ということでしたらば支出額の全額を損金に算入する、またいわゆる特増でございますね、特定公益増進法人、これに対する寄附金というのも確かに税制の優遇というのは認められているんですけれども、じゃ実際にそれがどれぐらい活用されているか、この活用が足りているか足りていないか、また各国との比較で要するに法人として認められるか認められないかという問題ですね、こうした問題につきましては、私は、やはり諸外国と比べた場合に、日本の税制優遇を受けられる法人格を有するまでの過程というのは非常に厳しくてハードルが高い。例えば、財団法人一つつくるにしましても、数億円の基金がなければできないという形になりますと、通常の篤志ということではとても足りない。  という意味では、確かに枠としては御用意なさっているんですけれども、それがどれだけ実際面で、実践面で活用できる状態にあるかというと、私は、さらなる円滑な活用というお言葉がありましたので、そのためにはもうちょっと御考慮いただかなければいけない部分があるんではないかと思います。  済みません、時間がちょっと足りませんものでこのまま続けて話させていただきます。ということで、税制優遇の問題というのは、その法人格がどのように認められるかということとこれは表裏といいましょうか同質の、全く同じ問題だと理解できます。  という中で、この法人格の取得をもっと容易にさせてはどうかと、非営利団体ですね、NPO、これをもうちょっと推進するためにということで、我田引水で恐縮ですけれども、新進党の方からNPO法案というのを議員立法で今度の臨時国会の方に提出する予定でございます。当然御存じのこととは思いますけれども、このNPO法案、主たる部分というのは先般の阪神大震災を受けてのボランティア活動、やはり福祉というところが中心になるんですけれども、当然この枠の中には文化振興という部分も入りますので、NPO法案について、また法人格の取得がより容易にとれる形の推進について大臣はどのようにお考えになるか伺わせていただきたいと思います。
  98. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) いわゆる非営利民間組織、すなわちNPOの制度化につきましては、現行の公益法人制度等との整合性の問題も実はございます。したがいまして、政府全体として検討すべき課題でもございますので、現在経済企画庁を中心に関係省庁の会議の場で検討が行われておるところであります。  いずれにいたしましても、先生指摘のように、文化振興のために民間資金を活用することは重要なことでございまして、文化庁といたしましても税制上の優遇措置の活用に加え、メセナに関する普及啓発やメセナ財団の育成等の施策を講じているところであり、今後ともこれらの施策充実に積極的に取り組んでまいりたいと、こう考えているところでございます。
  99. 畑恵

    ○畑恵君 御答弁にもございましたように、確かに総企庁の方々を御中心に十八省庁でこのNPO法案について、非営利団体の法人格の取得に関する勉強会等を数度開かれていらっしゃるというのは伺いました。ただ、私の方といたしましては、先ほど緊急課題だと大臣にもお言葉をいただきまして、最重要課題だというお言葉の中では、NPO法案というのは、今回はこれは文部省とのお話でございますけれども、各省庁にまたがりまして非常にこれから注目される問題だと思います。  そうした中で、この話がございました当初から今までの進み方を拝見していますと、ヒアリングを一回なさって、あと関係省庁がお集まりになってという形で、実際にこれから法案という形でもし考えていらっしゃるのであれば、大分これは先が長いなという感が否めないところがありますので、もし本気でお考えになっていただけるようでしたらば、ヒアリングにとどまらずぜひもう少しその骨子などをまとめていただいて、こちらの議員側の方も法案をまとめておりますので、そうしたものとのすり合わせ等もさせていただいて、より現実的に進めていただければ幸いだと思います。  では、変わりまして、今度は国際文化交流の問題について伺ってまいりたいと思います。  先ほども申し上げましたように、国際化時代に向けてこの国際文化交流、国際交流という分野はより重要性を増している、また増していく問題だと思います。ただ、やはり海外に暮らして非常に率直な、これは肌身で感じたものなんでございますけれども日本の国際文化交流の規模というのはどれぐらいのものなのかと、あちらで暮らして疑問に思うことが多々ございました。  時間がございませんので細かいディテールについては割愛させていただきますけれども、一つだけ申させていただければ、私が暮らしておりましたのはパリという町でございました。こちらの学生街に、敷地はフランス側が用意をしましてそこに各国がドミトリーを、学生寮を建てる。その中に日本が、これはもう大正時代でしょうか建てたものでメゾン・デュ・ジャポンという日本館というものがございまして、これが私があちらにおりました間は非常に各国の学生さんから評判が芳しくなかった。  恐らく御表情から判断しますとよく御存じでいらっしゃると思うんですけれども、決して日本人学生だけが使用するものではありませんで、日本人は二割ぐらいでしょうか、あとは各国の学生が住まって、反対に日本学生も各国のドミトリーに住まわせてもらっている。当然それは比較になりますので、そうすると日本のメゾン・デュ・ジャポンには部屋に電話もないとかおふろがすぐとまってしまうとか諸々の問題がございまして、非常に世帯じみた話でございますけれども、そういうことで大変評判が憩うございました。  それだけではございませんで、瑣末なことですけれども、そういうようなことが多々ございます中で必ず在外公館の方を含めてそのときに出るのは、日本はやはり国際交流の予算規模が小さいから仕方がないんだということで話が済んでしまうというか、ややあきらめに似た感がございました。  このメゾン・デュ・ジャポンは、念のために申し上げておきますと、もう既にその不評をこちらでちゃんと聞いていただいて、年に一億円ぐらいの予算規模がついて前面修復に当たっているということでございますので、こちらについてはきょう取り上げるつもりはないんですけれども、事ほどさようになかなか進んでいないことがございます。  ところが、私もこんなに少ないではないかということで実はきょう質問をさせていただくつもりでちょっと調べさせていただきましたらば、国際交流の予算でございますね、これがやはり文部省学術国際局国際企画課による一九九四年の六月に出されました「国際交流」という資料、こちらを拝見しましたところ、総額でおよそ千三百十五億円おありだと、そのうちの九百四十億円を文部省がお持ちでいらっしゃるということがわかりました。  ところが、国内にいてもそうですが、特に国外におりまして、どうしても国際交流の予算といいますと国際交流基金、外務省から予算を割り当てられます国際交流基金の予算というふうに、イコールと思ってしまうところがあります。ちなみに同じ九四年度を調べましたところ、国際交流基金の予算は二百八十一億五百万円でございまして、これをもって日本の国際交流予算だとどうも思ってしまうところがある。ところが実際は千三百億円だと、しかも文部省が九百四十億円お持ちと。この実感が、この予算規模と実際に国際交流等々に関係している人間たちとの肌での感触とどうも折り合わないところがあったように思われます。  また、これも内輪の話で恐縮なんですけれども、このことをある外務省の方とお話をしておりましたところ、ほう、九百四十億円も文部省がお持ちですかというお言葉がございまして、その中で、日本の国際交流予算であるにもかかわらず、しかも千二百億円という規模にもかかわらず、横の連携はどのようになっていらっしゃるのかなと。果たして日本の外交ビジョンなり国際交流ビジョンということをお持ちの上でこの千三百億円という予算が配分されて活用されているのかという、ちょっとそういう疑問が生まれました。  恐縮でございますけれども、外務省との連携も含めて、通産省もかなりの予算を持っておりますので、この国際交流予算についてきちんと連携がとれていらっしゃるのかどうか伺いたいと思います。
  100. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 詳しいことは今勉強中の身ですから専門の局長から御説明いたしますが、今おっしゃるとおり、私も実は思ったより大きいんだなと、こんなふうに感じました。  先ほど先生指摘になった日本館の件はかってフランス大使館で大使から二度、一回目は先方から、一回目はこちらから質問をして伺って、たまたま先般どこの周だったですかテレビで拝見いたしまして、そのまま放置されることは非常に恥ずかしいと思いました。やはり日本の国に対しての正しい理解というのが国際的に得られないところにはこういった問題が大きいのかなと、こんなふうに思ったところです。  そんな意味で私はかつて、自分の全く専門外であったんですけれども、大使館あるいは公邸が大変お粗末である、金持ちのくせに外国へ来てもウサギ小屋に住んでいる、こんな批判がありますという話を聞いて、私はそういうものを、たまたま貿易黒字その他で批判のあるときだからそういうことに活用したらどうでしょうかというので、中曽根内閣のときだと思うんですが、大幅に各国の公館を大分いいものに置きかえたような記憶があります。日本節もある意味では日本文化を国際的に紹介する一つのよすがになろうかと思いますから、こういうものをいつまでも放置しておいてはいけないと思いますから、どこまでできるかわかりませんが、私なりに一生懸命この改善努力したいと、こんなふうに思います。  詳しくは局長の方から御答弁いたします。
  101. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 大臣の御答弁を補足させていただきたいと思います。  国際文化交流予算はいろいろたくさんあるわけでございますけれども、御指摘文部省関係の国際交流関係の予算の主要事項を簡単に申し上げますと、大きな部分は、教育関係では留学生の交流の予算を大変大きく使わせていただいております。それから学術の関係でも、研究者の交流でございますとか国際共同研究というふうな形での予算が大きな役割を占めておるわけでございます。  なお、国際交流基金のほかにも、私の方で学術の国際交流をいたしますための日本学術振興会というような同体もございまして、いろいろ活躍しておるわけでございます。  御指摘は、これらが十分政府の統一した意思のもとで推進できているかどうかというお尋ねであったわけでございます。この点につきましては、御承知かと心いますけれども、内閣総理大臣もとで国際文化交流に関する懇談会が開かれまして、平成六年の六月に報告書が取りまとめられておりまして、これを踏まえて文部省における国際交流事業を推進しておるというのが実情でございます。特に、文化の国際交流、協力につきまして、諸外国との相互理解を増進するだけではなくて、我が国文化発展にも極めて重要であるという考え方でございます。また、近年、世界の人々の日本に対する関心が大変高まってきておりまして、文化を通じた国際貢献が求められているというような理解で推進をいたしておるわけでございます。  現在、それぞれの省がこの計画に基づきまして事業を立案いたしまして、なおそれをまた各省で、国際文化交流推進会議というものが内閣官房副長官を議長にいたしましてできておりますので、そういうところでも情報連絡をいたしながら、できるだけ連携のとれた形で仕勢を進めるように努力しておるところでございます。
  102. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  ただいまのお話の中にありました国際文化交流に関する懇談会が出された冊子というのはこちらなんですけれども、確かにおっしゃられたとおりに、一つのビジョンというのはある意味で非常に詳細にこちらの方に明記されております。おっしゃられたことは確かなんですけれども、このとおりに実際にこれが施行されれば非常にすばらしいと思うんですけれども、そこにちょっと隔たりがあるのではないかという感がいたしております。  せっかくですのでちょっと時間をいただきますと、この六ページのところに「国際文化交流予算の大幅な拡充」という非常にすばらしいタイトルで文章がございます。ところが、読んでまいりますと一番最初のところに「二十一世紀初頭、には、その事業規模が倍増されこという言葉がございます。これ、そのとおりですばらしいんですけれども、「二十一世紀初頭」というのは非常にゆとりのある言葉でございます。それから、予算とおっしゃらずに「事業規模」というふうにおっしゃる。これも非常に含みを持たせていらっしゃいます。それから、倍額にすると言わないで「倍増され」という、こういうところも含みがありますので、できればおつくりになるときに明確な指標になるような数ですとかお言葉を賜りますと、また答弁もやりやすいのではないかと思いますので、これは恐らく大蔵省の方にお願いする問題だと思いますけれども、よろしくお願い申し上げます。  あと、同じ国際交流基金の予算でちょっとお尋ねしたいことがございまして、これは先生方皆様方のところにも資料をお配りした「海外の主な文化交流機関との比較」という、国際交流基金と並ぶような政府系の国際交流に関する団体のそれぞれの予算と人員配備、事務所数、これを比べたものなんですけれども、こちらを見ますと、先ほど申し上げたような総予算で国際交流基金の予算が出ております。  ドイツにありますゲーテ・インスティテュートという同じような国際交流機関、こちらがほぼ同じと言っていい二百八十三億六千百万円、日本とそれほど変わりがない。それから、イギリスのブリティッシュ・カウンシルという団体、こちらの方はかなり開きがございますけれども、八百四十七億七千八百万円という数が出ております。  ところが、例えば日本とドイツだけを見ました場合に、総予算に関しましては国際交流基金とゲーテ・インスティテュートは大きな違いがございませんのにもかかわらず、職員数では、下にもちょっと注意書きでありますけれども、語学教師の方の人数を除きましても十倍ほどの開きがある。事務所数にしましてもやはりそれぐらいの開きがあるということで、ほとんど同じような予算にもかかわらず、このように事業規模に開きがあるというのが非常に不思議に思われました。  同じような形で日本と英国を比べました場合にも、予算規模の開きとは比較にならぬぐらいの固さが職員数と事務所数にあるということで、これは外務省の方にもきょうおいでいただいていますので、説明をお願い申し上げます。
  103. 小野安昭

    説明員小野安昭君) 時間が余りないので簡単に御説明させていただきますけれども、ただいま畑先生から御指摘がありましたように、確かにこの比較表を見ますと、特にドイツのゲーテ・インスティテュートと国際交流基金の場合、予算規模は同じなんですけれども、あえて二点御説明させていただきますと、一点目は、ゲーテ・インスティテュートにつきましては、その事柴の内容がドイツ評の海外における普及活動、それから一部人物交流でございます。それからあと、いろいろな展示事業や何かの実施ということになっております。他方、国際交流基金の場合には、これだけの予算で極端な言い方をしますとあらゆる国際文化交流をやっていかざるを得ないというのが現実でございます。  その理由の一つは、ゲーテ・インスティテュートについては一九三二年に設立されている、国際交流基金は一九七二年に設立されているということで、歴史的に人的あるいは知的等の蓄積の違いというものがやはり背景にあるんじゃないかというふうに考えております。  したがいまして、ゲーテ・インスティテュートについては、職員数、この中の主要な部分というのはドイツ語の先生なのでございます。他方、国際交流基金の場合には、海外における職員それから本部の職員というものが中心になっておりまして、学校先生日本語を教える先生については、これは委託という形でやっておるということでこういう差が出ておるんじゃないかというふうに考えております。  それから、事務所数につきましてもまさに同じでございまして、これまでドイツというのは長年の歴史がございまして、その中でかなり多くの事務所を海外に展開してきている。他方、基金は七二年からほぼ毎年と言っていいぐらい事務所をつくって対応してきているけれども、まだ十分ではないというのが現実だと思います。  そういう状況がありますので、私どもとしてはできるだけ現在の国際社会における日本の顔というものを、先生も御指摘がございましたように、きちっと示して理解を深めていってもらうという観点から、今後とも予算の増大については努力していきたいというふうに考えております。
  104. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  時間もなくなってしまいましたけれども、今の御答弁にもありましたように、要するにやはり後発の日本としましては、たとえ同じ総予算をとりましてもストックの違いというのがありまして、そのままではキャッチアップできない。ですから、キャッチアップするためにはより多くの予算または民間資金の導入が必要だと思います。  ということで、本当はさらに文化省の創設に対する大臣の御所見も伺いたかったんですけれども、ちなみに今度自民党の総裁になられました橋本龍太郎大臣も、文化省構想というのを今回の「自信回復宣言」の中にも著かれていらっしゃいますので、そういう意味では党派を超えて日本文化政策のより一層の拡充に努めていただければと思います。  本日はどうもありがとうございました。終わります。
  105. 山崎順子

    山崎順子君 平成会の山崎順子です。  ちょっと質疑の順番を変えさせていただきますけれども、まず最初に、今月六日の故福田元首相の葬儀で、小学校、中学校等に児童に黙祷させるように文部省が全国の教育委員会に通知を出していた件についてお伺いしたいと思います。  これは政府と自民党との合同葬儀なんですが、児童への黙祷をさせる通知はこれまでにも岸さんのときとか大平さんのときに出されているんですけれども、ほかにどういう方の葬儀でこういう通知を出されたのかまたその基準はどういうものか、手短にお答え願います。
  106. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 御指摘のような通知につきましては、ただいま先生から御指摘がありました昭和五十五年の故大平元総理、昭和六十二年の故岸元総理の葬儀がありまして、その際も同様に通知を発しております。基準といたしましては、このことが閣議で了解されるというケースにおいて通知を発しておるわけでございます。
  107. 山崎順子

    山崎順子君 今回の福田さんの葬儀のときの通知を受けた現場の方の声をちょっといろいろ取材させていただいたんですけれども、かなりの現場の校長先生たちが疑問を感じて、なぜこういうことを子供たちに黙祷させなきゃいけないのかということで、黙祷もそれから半旗掲揚も行わなかったところが多いようですけれども、中には、突然九月六日の二時十分に黙祷するようにというアナウンスがあって、子供たちが何か黙祷したけれども、きょうのあれは何だったんだろうということで家に帰って親に話したというようなこととか、そういったことが随分あったようです。  多くの教育現場で疑問に思うようなこういった通知をなぜ出されるのか、そういう出される文部省の真意というものはどこにあるのか、ちょっと大臣にお伺いいたしたいんですが、どうでしょうか。
  108. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 今までの慣例に従ったと私は受けとめております。
  109. 山崎順子

    山崎順子君 まず、この弔意表明というものは、生前のその人の人柄とか人格とかそういうものに対して国民の間から萌発として沸き上がるものならいざ知らず、福田氏の人となりも、ましてや名前も知らない子供たちになぜ弔意の表明として動機づけもなく黙祷させるのか。こういう行為は全く形ばかりを重視して心の入らないものであって、私は教育の基本精神に欠けている、教育もとる行為だと思うんですね。大臣、そういうふうにお思いにならないのか。  それからまた、これは私は何も福田さんのことを弔意を表してはいけないというふうに育っているわけではありませんで、逆にこういった行為は生前偉大であった人物をおとしめる話ではないかと思うんですね。多分、福田さんもこういったことはお望みにはなっていなかったんじゃないか。彼はかつて天の声にもおかしな声があるということをおっしゃった方ですけれども、きっと今ごろは天国で役所の声にもおかしな声があるなとお笑いになっているのではないかと思うんです。  文部省に聞きましたら、もちろん省庁にもこういう通知があって二時十分に黙祷するようにということがあったようなんですが、スタッフの方たちに仕事を中断して黙祷なさったんですかと聞いてみましたら、いや、やっていませんとおっしゃるわけですね。そういう大人の方は、文部省の方は多分福田さんに随分会っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃるし、もちろんどういう方か御存じです。それを知らない子供たちにまでこういう通知をして黙祷しろと言うことは幾ら慣例だとおっしゃっても大変おかしい。さっき言いましたように、形ばかりを重視して心の入らないようなこんな教育は廃止なさる方がいいんじゃないかと思いますが、いかがですか大臣、よろしくお願いいたします。
  110. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) これは閣議了解がございまして、各省大臣に対して関係者への周知について通知があったことから発したものであります。我々はただ慣例があるので自動的にそういう行動をしたわけではないと。  それから、これはいろいろ人それぞれの御評価があろうかと思いますが、あの日の葬儀にも私参加をいたしましたけれども、党派を超えてそれぞれを代表する方々が非常な心からの弔意を表されたとこう受けとめておりますが、立派なことをなさった日本の総理としてのいわば葬儀でございますから、私はそう不自然には受けとめなかったわけであります。
  111. 山崎順子

    山崎順子君 省庁に対してはいいと思うんですが、じゃ子供たちに対してまでやはりこのまま通知して黙祷するようにというふうになさるおつもりなんですね。見直すつもりはない、慣例を廃止するつもりはないというふうにおっしゃるわけでしょうか。
  112. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 今までこのような扱いについてそう問題があったというふうには聞いておりません。  それからまた、なるほど子供さんがそういうことを知らなかったという面はあろうかと思いますが、例えば現職の総理についても大人の方でも知らないということもあり得るわけでございますけれども、いわば国家的な見地に立ってその方の功績が認められたということでこういう形がとられたと、こう考えております。
  113. 山崎順子

    山崎順子君 廃止するつもりがあるのかどうかをお聞きしたんですが、なかなかそういう御答弁をいただけないようです。このことはまたにいたしまして、次の質問にしたいと思います。  次に、九月四日、皆さんも御存じの沖縄で起きました許しがたい女子小学生のレイプ事件についてでありますけれども、これは二十二歳、二十一歳、二十歳のアメリカ兵による小学生のレイプですね。暴行なんて書いておりますが、あの書き方も大変おかしいんですけれども、確実にレイプされたというこの忌まわしい事件に対して文部大臣は何か抗議行動を起こされましたでしょうか。
  114. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 合同の事件は、児童や家族にはかり知れない大変な精神的苦痛を与えたということについては断じて許しがたい行為であるというふうに受けとめております。  同時に、文教行政を預かる者としては二度とこういうことが起きないようにこの趣旨を徹底するように申したところでございますが、いち早く県教育委員会が関係各機関の協力を得まして、学校、家庭、地域社会における児童生徒の安全の確保について指導の徹底に努めているという報告を実は受けております。
  115. 山崎順子

    山崎順子君 御存じのとおり、これはもちろん日米地位協定の見直しのことが大変重要な問題になっておりまして、外務省が中心にやっておられると思いますけれども、外務省の管轄だけじゃなくて、女性、特に少女の人権侵害という重要な問題をはらんでおります。  女性への性暴力というものは沖縄だけじゃなくて私たちの周りに今も多発しておりまして、強姦に泣き自殺する女性たちも多いのが今の現状なんです。私にも十三歳の娘がおりますけれども、親として残念なのは痴漢やそういう強姦に遣わないかどうかいつも気をつけていなきゃいけないような現状がございまして、例えば女性をお金で買う売買春ですけれども、こういう状況ですとか、女性を物として商品として見るような社会、人権侵害が当たり前のような社会というものが残念ながらまだ存在しているのが今の日本ですし、世界の状況だと言えます。  例えば、ちょうどこの沖縄でのレイプ事件が起きたときは折しも北京で世界女性会議が開かれておりました。私も出席いたしましたが、このときの宣言の採択で、女性への暴力、特に性暴力の廃絶の論議が大変深められて、女性と少女の人権がかけがえのないものであり、世界にその保障を求める宣言の採択をこの北京の女性会議でしたわけでございますけれども文部大臣としては先ほどの徹底だけではなくて、ぜひとも外務省にも働きかけてこの日米地位協定の見放しを強力に推し進めていただきたいと思うんですが、その作についてはいかがでしょうか。
  116. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 実はこの問題はただ傍観したりあるいは受け身に立っておったわけではございませんで、閣議の後、御存じのとおり閣僚懇談会がございますが、この席で私は発言を実は用意いたしておりました。ただ、いち早く外務大臣から、アメリカのモンデール大使を初めとして極めて迅速な対応とこれに対する謝罪と今後に対するいわば前向きにこれらのことが起きないための努力ということの姿勢が例えたということと、それからまた自治大臣国家公安委員長からも、今回の捜査その他については情報を非常に素早くどんどんこちらに伝えてくるなど今までに見られない非常に積極的な姿勢にあるというような報告もありましたので、それにつきましては私はそれ以上の発言をする必要はないなと、いわば発言を取りやめたところであります。  また、地位協定の問題でございますが、これは内閣全体の問題としてこれからいろいろ検討しなきゃいけない問題とは受けとめておりますが、私自身がこれを深くコメントする立場にはないと、こういうふうに受けとめていただきたいと思います。
  117. 山崎順子

    山崎順子君 沖縄の事件でたまたま日米地位協定の問題がございますけれども、国内でもしこういう問題が起きたときに、強姦罪というのがあるのは大臣も御存じだと思いますけれども、強姦罪と強盗罪とどちらが重いか御存じでしょうか。突然の質問でございますので、別にゲームではありませんけれども、御存じかどうかだけで結構でございます。
  118. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 詳しく正確には存じません。
  119. 山崎順子

    山崎順子君 結構でございます。  実は強姦罪よりも強盗罪の方が日本では重い規定になっておりまして、大体どんなあれでも強姦罪は二年以上ということになっていますが、強盗罪の方は五年以上なんですね。そうしますと、私など法務委員会にも属していて女性のためのいろいろな刑法や民法を変えたいと思っているものでございますけれども、この女性への性暴力とか性犯罪が、たとえ犯人が捕まっても、物をとられたよりも自分自身の存在にかかわるような、そういう強姦を受けた場合の方が犯人の罪が軽いというのは、いかにも私たち女性から見ると納得のできないことで、大臣の所轄とは違うかもしれませんけれども、今回の北京の世界女性会議での宣言採択を受けて、国内法の整備やまた女性のそういった問題に対する教育など、さまざまな分野で文部省の関連のあるところがたくさんございますので、そういう法律改正などに向けてもぜひ大臣のお力もおかりしたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それで、次に、大臣就任直後の記者会見でお話しなさったことについて、ちょっと二、三質問させていただきたいんです。  なかなかマスメディアの活字等になると真意が伝わらないというふうにもおっしゃっていますので、今私がお話しすることに間違いがないかどうかをまずお聞きして、それからちょっと御意見も聞かなきゃいけないかと思いますが、その中にこういうふうにおっしゃっているんですね。今は現に戦後っ子だけで三分の二ですね、戦争を全く知らないような時代になってきているのに、相も変わらず昔を蒸し返して、それを一々謝罪していくというやり方は果たしていかがなものかと思いますねとおっしゃっているんですが、これは間違いございませんか。
  120. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 間違いございません。
  121. 山崎順子

    山崎順子君 私たちは、だれもが先祖の恩恵を受けて今ここにあるということなんですけれども、プラスの遺産だけを享受するのではなくて、負の遺産も負わなければならない。そして、その私たちがこれからの生きていく上で価値観の物差しとなるものは歴史を知ることだと思うんです。これは私の考え方ですけれども、そういう意味できちんと人々に物差しを持ってもらうためには、歴史教育というのは大変大事で、そして負の遺産も負わなきゃいけない、それが負の教育の要請ではないかと思うんです。  戦争を知らない世代が多くなりまして、そういう時代になってはいますけれども、背のことを蒸し返してそれを一々謝罪していくやり方というのはおかしいというよりは、もっとむしろかつてのことをきちんと検索していく、掘り返していくということ、そういった作業が必要で、それこそ教育ではないかと思うんですが、いかがでございますか。
  122. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 全くおっしゃるとおりだと思います。  ただ、私のその九日の発言につきまして、真意が伝わらなくて誤解を受けたものについては撤回をしたわけでございますが、問題は、私は自分自身は戦争の直接の経験者ではないけれども、疎開児童として大変悲惨な、戦争の怖さ、あるいはひもじさ、つらさ、そういうことを経験して、戦争というのは非常に厳しいものだというのの体験者であるということと、いま一つは、結局戦争ともなると人を殺して自分の安全を図る、まことに人間として愚かではあるけれども、それが集団的な行動に走ると人間の理性も何もあったものでないということを申し上げたわけであります。  したがって、私は戦争というものを二度と起こしてはならないということが一つと、いま一つはみんなそれぞれに反省もある、過去に犯した過ちについては、前向きにこれを償っていくことの方が建設的ではないのかということを申し上げました。私は、昨年、土井議長のお供でマレーシアあるいはシンガポール、中国各地を回って、首脳ともお目にかかりました。その際、むしろ向こうの首脳からそういう点を強く指摘されたことを申し添えたわけであります。
  123. 山崎順子

    山崎順子君 さらに、侵略戦争じゃないかというのは考え方の問題ですからというふうにもおっしゃっているんですけれども、これに関して韓国の政府から憂慮の念が表明されたということがございました。これは当然だと思うんですね。  私たちは、どういうときでもそうですが、仲間うちのけんかであっても何であっても、夫と妻のいさかいであってもそうなんですが、殴った方というのは殴ったことを意外と忘れてしまうものなんですね。それから殴られた方というのはその痛みをいつまでも覚えている。つまり、加害者と被害者というのは、同じ事実を受けとめるのでも全く違うということで、私たちだって日本戦争に負けてアメリカ軍の占領を受けたときにやはり大変な屈辱感を持って、それをいまだにきちんと覚えていらっしゃる方も多いと思いますけれども、だれでもそうですが、日本はアジアの国々に対して軍靴でもって踏みにじってきたというそういった経験があって、そちらの国々の方たちというのは、やはりいつまでもその痛みや屈辱感を忘れない、そういったことを私たちはいつも常に思いやることというのはやはり大事なんじゃないかと思うんですね。  つまり、何というんですか、繊細な心遣いというものを常に持っていないと、幾ら反省したとかなんとかと言っても、やはりなかなか相手には伝わらないということがありまして、大臣は今なかなか真意が伝わらなくて、私の言い分はこうであったとおっしゃいましたけれども、先ほどの言葉の中に、昔を蒸し返して一々謝罪するのは云々という、その蒸し返して一々という、多分そういうおつもりでおっしゃったのじゃないかもしれませんが、そういう言葉というのはどうしても開さ直った感じを人々に与えてしまうんじゃないか。  ですから、やはり教育最高責任者である文部大臣としては、先ほどの福田元総理への弔意の押しつけの話のときにも言いましたけれども、常に心の伴う形で、形だけを優先するんじゃない教育行政を今後もぜひお願いしたいと思うんですけれども、もし何かありましたらどうぞ。
  124. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 自分の真意が伝わらなかったことはまことに残念ではありますが、今後そのように注意をしたい、こう思います。
  125. 山崎順子

    山崎順子君 次に、決算のことなんですが、平成四年度決算検査報告の中で、国立大学の附属病院におきまして、医薬品の未払いや滞納問題が随分起きておりまして、その件についてお伺いしたいと思います。  まず、会計検査院の方にお伺いしますけれども、この四年度決算検査報告で、医薬品の予算執行について文部省に対する是正改善の処置要求を出していらっしゃいますけれども、その概要はどういうものであったか、手短にお答え願えれば幸いです。
  126. 五十嵐清人

    説明員五十嵐清人君) 私ども指摘のあらましについて申し上げます。  平成五年に大学病院における医薬品の予算執行につきまして、二十八大学病院を対象に検査いたしましたところ、十四大学病院において当年度に購入した医薬品について年度内に支出負担行為等の会計処理が行われず、翌年度または端々年度に持ち越して処理されまた支払われていたという事態平成元年度から四年度までの購入分で合計八十一億七千九百十五万余円見受けられました。  このような事態は会計制度の基本原則に違反しておりまして、適正な会計事務処理とは認められない、そういうものでありますので、大学病院において会計事務処理や予算執行が適切に行われるよう、会計検査院法第三十四条の規定により、文部省に対して是正改善の処置を要求した、こういうものでございます。
  127. 山崎順子

    山崎順子君 国立大学附属病院というのは六十五あるんですけれども、そのうちの二十八大学病院をピックアップして、その医療費の滞納がないかどうかというようなことについて調べられたわけですね。そうしましたら、二十八のうちの十四の大学病院で、本来でしたらどんな会社でもその年に納入されたものは半年以内とかその年のうちに支払いがあるのが普通だと思うんですが、翌年度またはその翌々年度まで持ち越していたというようなのが何と八十一億七千九百十五万円もあったということなんですね。  ですから、多分検査してないほかの大学病院でも似たような状況があるのではないかと思いますけれども、これについてちょっと文部待に伺いたいんですが、こういった大学附属の病院で未払いとか滞納なんということはもう日常化しているものなんでしょうか。
  128. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 平成四年度の決算検査報告において指摘されたこういう事態につきましては、私ども大変遺憾なことであるということで、早急な事後措置を講じたわけでございます。  その時点ではこのような状況が起きたわけでございますが、その後の各種の措置を懸命に講じたわけでございまして、以後こういったことが生じているということはない、こういうふうに承知をいたしております。
  129. 山崎順子

    山崎順子君 会計検査院の検査が大変功を奏しているというふうに思われますけれども、今はもちろん改善されたということですが、その当時、検査院の検査がなければもう全く支払うあれがなくて、例えば京大の附属病院などでは十億円もの未払いが一つの病院だけであったということで、京都の業者七十三社が頭を抱えまして支払い請求をしようという動きまであったと聞いておりますけれども、景気がよくてどんどん右上がりに景気がよくなっていくときでしたら少しはさまざまな企業も辛抱ができるかもしれませんけれども、今のような冷え込みの状況の中で民間企業というのはほとんどの会社が資金繰りに苦しんでおります。  こういうときに平気で翌年度、翌々年度に支払いを延ばすなどということは民間いじめ、企業いじめも甚だしいのではないかと思うんですね。官尊民卑の究極の姿勢ではないかと思うんですけれども、こういう公務員の姿勢に関して、大臣、どう思われますでしょうか。
  130. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) ただいま御指摘になりました国立大学附属病院は、医学・医療の教育研究機関及び我が国の中核的医療機関としてそのような自覚に立った役割を果たすべきだと思いますし、いろいろな慣行も今までにはあったようではございますが、少なくもこういう御指摘を受けると全く説明の余地がない、こう思いますので、今後こういうことがないように指導をしていきたいと、こんなふうに思っているところであります。
  131. 山崎順子

    山崎順子君 こういう会計法令及び予算に違背するような予算執行が続いていた理由とか背景についてちょっとお伺いしたいと思います。
  132. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 年度を越えた代金支払いの事態が生じた原因につきましては、国立大学附属病院では患者診療が優先するといったような考え方の中で、医薬品の費用の増加がなかなか避けられない面がございます。  そういった面で予算執行を図る上での調整等に困難な事情があるわけでございますが、まず反省点の第一としては、年度途中における薬品あるいは材料の購入実績が適時適切に把握されないままに、大臣も申し上げましたような従来からの慣例に依存して診療科の購入要求に基づいた契約発注が行われてしまうといった、基本的な予算会計上の統制が図られていなかったこと、それから予算執行に当たりまして薬品や材料の毎年度の購入計画や予算執行残高、収入の状況、こういった大学病院の運営実態が事務部門等から第一線の診療科に十分周知されることなく診療科において薬品、材料の購入要求がなされていたこと、こういったことが、反省点としてあるわけでございます。    〔理事大木浩洲退席、委員長着席〕  その改善につきまして現在進めているところでございます。
  133. 山崎順子

    山崎順子君 今おっしゃったように、そういう問題があるということですが、国立大学の附属病院といえども、病院経営に事業部門だけではなくて診療部門も当たっているというコスト意識を持つことは本当に重要だと思うんです。一部に予算が少ないことにも原因があるというような見解もあるようですけれども、これについてはどう文部省は考えていらっしゃるのか。また、国立大学の附属病院当局からこれまで予算に関してそういう要望が寄せられているんでしょうか。
  134. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) 御指摘の点につきましては、国立大学附属病院では重症あるいは難症の患者が多いために医療費、医薬品費の増加が避けられないというような面につきまして先ほど申し上げたわけでございますが、一般的にこういった状況があるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましても医療費の配分につきましては最大限に努力をしておるわけでございますが、やはりそうした中で病院側のいろいろな努力、これと相まって健全な状況をつくっていかなければならないというような基本的な観点に立ちまして、医療費の問題とともにこのような努力を続ける、こういった形でこれからも対応してまいりたい、このように考えておるところでございます。
  135. 山崎順子

    山崎順子君 どうもいつも病院というのは今の滞納とか未払いの問題以外にもさまざまな問題が起きているようでして、これはきょうの毎日新聞なんですが、多分皆さんはごらんになっていないと思うのは、東京版じゃなくて大阪版の方のトップに出ているんですけれども、阪大病院の検査のデータの改ざんのことが載っておりまして、ちょっと読ませていただきますと、   未承認の尿検査試薬を使ったうえ保険診療報  酬を不正請求した疑いがもたれている大阪大学  医学部付属病院中央臨床検査部が、実態解明の  調査をしている監督官庁の大阪府に対し、承認  済みの別の試薬を使っていたように尿検査の  データを改ざんして報告していたことが二十六  日、毎日新聞の調べで分かった。疑惑を否定す。  るためとみられ、改ざんは検査部長の網野信行  教授が部下に指示して行った模様だ。大阪府と  厚生省は極めて悪質な隠ぺい工作とみて健康保  険法違反の疑いで監査に近く入る。こういうような記事が出ているんです。  実はこの阪大のことは六月ごろにもいろいろ問題が新聞で音われておりまして、総額数億円の医療機器を学内の正規手続を踏まずにノーチエックで購入していたというようなことがございまして、わざわざちゃんと選定のための委員会が開かれたように見せかける文書を握造していたりとかそれから数億円の医療機器は買ったものの未使用のまま放置されていたりとか、かなり問題があるんです。  この件について実は文部省とそれから会計検査院に問い合わせましたら、これについては検査をした、そして何も問題はなかったとおっしゃったんですね。そして、そのときに、でもこういう同検査部に機器を納入しているメーカー等はかなり医者の方に寄附金を納めているような実態もありますよと申しましたら、どの国立大学の附属病院でもこの程度の寄附はいつでもあるんです、ですから別に問題はありませんというようなお答えだったんですね。  それは百万、二百万、そういう金額なんですけれども、そういうものが積もり積もって多額の金額になるんじゃないかなと思いまして、こういうことは問題ありませんとおっしゃったその辺の考え方にちょっと唖然としたわけでございますけれども、どうもそれは文部省の方だけではなくて医者の方にもそういう常識があるようでして、リベートは常識ですとかそれから以前東大でも逮捕者が出たんですけれども、千葉大も出ましたし香川医科大学も出ましたし、いろいろ出ているんですが、逮捕された医者がどういうことを言っているかといいますと、業者からの現金攻勢にやっぱり無感覚になっているんです。慣例に従ったというふうにおっしゃっているんですね。  さっきからどうも慣例という言葉が随分出てきて、この慣例はよほど見直さなきゃいけないんじゃないかと思いますけれども、医者のモラルの低下だけに限りませんけれども、こういう問題をいろいろ見ておりますと、先ほども言いましたように、いろんなところで子供たちの話を聞いておりますと、何かオウムの方に入った人たちは頭脳明晰、そして科学技術に強くて、いい学校を出て、いてなんという、でもあの人たちはきっとマインドコントロールされていたからああいう問題を起こしたんじゃないかと。じゃ、マインドコントロールされていない普通のエリート官僚や医者は一体何なのかと子供たちは言っているわけでして、子供たちの中でおもしろいことを言った子がいましたね、きっとそのエリート官僚はリベートなんというのは常識だというマインドコントロールをされているんじゃないかと言っておりました。  こういう風潮がはびこりますと、一生懸命まじめに勉強してこつこつと働くのがばかみたいというふうになってくると、これは教育行政にとって大変な危機だと思うんですね。やはりこういうことにきちんと大人の側がけじめをつける必要があると思うんです。  例えば、大蔵省では中島義雄さんという方の問題なんというのが起きましたけれども、それに対しても全く大蔵省はけじめをつけなかった。そしてまたその最高責任者である武村さんは、疑惑の中心人物である中島さんの調査を怠り、簡単に退職金の出るような退職を許可したわけですけれども、こういう不祥事の調査をきちんとしなかったという調査不十分の責任をとって例えば武村さんが辞任するということがやっぱりきちんとしたけじめであり、子供たちの世界にもなるほどこういうことは大事なんだなと、ただただ甘い汁を吸う人たちだけがはびこるわけではないというようなことになるんじゃないかと思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  136. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) たくさんおられる官僚の中での不祥事、まことに残念に思います。  私も実はたくさんの官僚の人たちと友好関係がありますけれども、私の知る範囲では非常に使命感に燃えて、見かけの派手さとは違って生活実態その他大変地味で、これだけレベルの高い人がこの道を歩んだことが正しかったかどうかと私はいつもそう思っている同情者の一人でございます。今特定の方のお名前の指摘がありましたし、その件については私も首をかしげている一人ではありますが、全体にこれをはめて論ずるのはいかがなものかと私はそう思います。  ただ、一つ機器購入の点についてお触れになりましたが、この点は私もどういうことだったのか、たまたま記事を前に見ましたので興味を持って聞いてみたんですが、検査院が調べて問題はなかったというその理由は、通常機器のバックアップ用のものとして用意されていたということであったので問題がなかったと。言うなれば、私はどういうことかよくわかりませんが、例えば手術用の機器が手術中に停電に遭った、すぐ自動的に自家発電が動く、こういうことのバックアップ用の装置がなければこれは大変危険なことになるわけですね。そういうものではないかというふうに受けとめたところであります。
  137. 山崎順子

    山崎順子君 大臣がおっしゃるとおり、確かに官僚の方たちの多くは本当にまじめに国のことを考えて一生懸命お仕事をなさっていると私もわかっておりますけれども、一部のそういった人たちのことで全体が悪く言われるのは本当に情けないことだと思いますし、悔しいことだと思いますからこそ一層そういうけじめをつけることが必要なんじゃないかと私は思っております。  それで、今の阪大のことですけれども、これは今バックアップ機器だというふうにおっしゃった。確かにそういうふうに私も聞いたんですけれども、実はこの機器を使うためのソケットが違っていたりとか、いろいろ随分問題があるようなんですね。それで先ほど言いましたように、全く違うところからきょうのようなことも出てきて、大阪府、厚生省が極めて悪質な隠ぺい工作と見て健康保険法違反の疑いで監査に入るということですし、先ほどのバックアップ機器だということだというのは別の問題ではありますけれども、同じ阪大病院で起こっているということでどうも体質的にそういうものが起こるのがあるんじゃないかということがございまして、ぜひともこれはもう一度会計検査院もこのことについて調査なさった方がいいのではないかと思うんですね。  例えば、機器のことだけじゃなくて、先ほど私が言いましたように、委員会が全く開かれていませんのに開かれたような文書が捏造されているわけです。これは毎日新聞の方の暴走じゃないかというお話もありましたのできちんと取材者に問い合わせたんですけれども、膨大な資料を送ってくださいまして、そしてきちんと選定委員会のメンバーである教授たちにこの機器の購入に関してオーケーを出した委員会が開かれたのかということも取材なさっていて、出たことはないという証言もとっていらっしゃる。  そういうことがありますのでもう一度検査なさった方がいいんじゃないかと思いますが、会計検査院、いかがですか。
  138. 五十嵐清人

    説明員五十嵐清人君) 先生指摘の点につきましては、六月の実地検査で、これはたまたま最終日の前の日で、一週間やった中の木曜日ですが、こういった情報が入りました。それで早速二人ばかり張りつけてこの件の実態解明ということで、一日だけだったんですけれどもやりました。その後も引き続き電話あるいは大学当局に来ていただくというような形で調査を進め、資料の収集にも当たりました。  その結果、先ほど先生からもお話がありましたような形で、一応今のところ検査院として違法、不当として指摘するようなものはないだろうという結論に達しておるわけでございますが、きょうまた先ほど私も見せていただきましたけれども新聞報道があると。  あれはどちらかというと診療報酬請求が多過ぎるという指摘でございまして、実は私どもの検査はむしろ収支の改善のために診療報酬を余計とるべきだというような方向での検査が主体なのでございますが、とる方も払う方も適正でなきゃならぬということは当然でございますので、今後ともそのあたりも含めて検査してまいりたいというふうに思っております。
  139. 山崎順子

    山崎順子君 では、今後ともきちんと検査をして、その結果をまたお知らせ願いたいと思います。  これで質問を終わります。
  140. 山下栄一

    ○山下栄一君 平成会の山下でございます。  まず初めに、午前中の質疑に関連しましてちょっと二、三確認しておきたいことがございますので御質問させていただきたいと思います。  オウム問題処理と宗教法人法のあり方についてということで、山梨の中島委員の方から御質問がございました。その中で、ちょっと不正確ではないのかなと思ったことがございますので確認させていただきたいと思います。  一つは、建築基準法、大気汚染防止法その他の例も引かれまして、そういう法律にオウム教団の宗教施設は明らかな違反があるので担当部局が立ち入ろうとしたけれども宗教施設ということで入れなかったというふうなお話があったわけでございますが、これはちょっとおかしいのではないかなというふうに私は思うわけでございます。  宗教法人、また宗教施設ということで現行のさまざまな、今も警察を初めといたしまして関係行政が検証されておるわけでございますけれども、刑法、薬事法、銃刀法、建築基準法、児童福祉法、その他いろいろな現行諸法の適用に当たって、宗教施設だから、宗教法人だから何かやれない、ほかの法人であればやれるのにという、何となくそういうイメージがあるわけでございます。きょうも午前中そのような御質問であったと思うんですが、実際山梨県の場合もできなかったというお話がございました。これはちょっとおかしいのではないか、このように思いますけれども文部省の御見解をお願いしたいと思います。
  141. 小野元之

    説明員小野元之君) お答え申し上げます。  現行の宗教法人法におきましても、第八十六条の規定がございまして、「この法律のいかなる規定も、宗教団体が公共の福祉に反した行為をした場合において他の法令の規定が適用されることを妨げるものと解釈してはならない。」という規定があるわけでございます。  御指摘ございましたようにオウムがさまざまな、本当に刑法に触れるような、公共の福祉に反するようなことをした場合に、宗教法人だからそういう刑法その他の適用が緩やかになるということはもちろんあり得ないわけでございます。  御指摘のように、私どもといたしましても、オウム真理教問題の対策の関係省庁連絡会議があるわけでございますけれども、この規定があることはもう当然でございまして、こういったことがあることを当然のこととして今後きちっと対応をしていく、それぞれの法律に違反する行為があればその法律において適切な対応をしていくということが必要だろうと思うのでございます。  ただ、もちろん宗教法人でございますから、憲法で保障されております信教の自由、そういったものへの配慮というのは当然していかなければいけないと思いますけれども、しかし八十六条の規定がございますので、厳正に対応していくべきであるというふうに考えておるところでございます。
  142. 山下栄一

    ○山下栄一君 今、御担当の方から明快な話があったわけでございます。  先ほど申しましたように、さまざまな現行諸法、朝の話では建築基準法違反があるけれども何か立ち入りにくいというふうなことだったけれども、それはおかしいと。宗教法人法の八十六条に明記してある、明らかにそういうことはおかしいんだという、こういう御答弁であったわけでございますが、それを一点確認したいということでございます。  もう一点、朝の展開の中で認証地の問題があったわけでございます。これも何か誤解があるのではないかなというふうなことを感じたんですけれども、宗教法人の認証地、これが東京都であった、山梨県にはないと。だから、権限がなくてさまざまな法律が何か適用しにくかったという、そういうふうな話がきょうはあったわけでございますけれども、認証地とさまざまな現行諸法の適用とは関係ないと。法律違反があるならばたとえどこであろうと、熊本であろうと山梨であろうときちっと同じように適用されるべきである、もう当たり前のことだと思います。  宗教法人の認証地が山梨になかったから何か一般諸法も適用しにくかったというふうな、そういう誤解を与えるようなきょう展開がございましたのでちょっと確認をさせていただきたい。認証地と関係ないというふうに私は思うんですけれども、どうでしょうか。
  143. 小野元之

    説明員小野元之君) 宗教法人法八十六条の規定は、「宗教団体が公共の福祉に反した行為」ということをした場合でございますから、これはかなり本当に悪いことをしたということでございますが、東京都知事が認証をしておるわけでございますけれども、お尋ねの宗教法人が例えば山梨あるいは熊本等でいろんな行為を行った場合に、所轄庁でございます東京都知事としては、東京都の中のことであればまだしも、自分の所管外の都道府県で行われた行為についてはなかなかその実態は把握しにくい。現行の宗教法人法が所轄庁に与えております権限というものが非常に限定をされておりますので、実際問題として東京都知事としては、山梨県で行われたことあるいは熊本県等で行われたことにつきまして把握がしにくいということがあるのは事実でございます。
  144. 山下栄一

    ○山下栄一君 だから、さまざまな法令違反ですね、建築基準法違反、先ほど午前中もございましたですけれども、そういう法を適用する場合に認証地は全然関係ない。それが、何か認証地が東京都だったから手出ししにくかったんだというふうな意味のお話ございましたので、確認したい。  一般諸法の適用に当たり、そういう宗教法人の認証地が東京都だから山梨県の宗教施設について一般諸法が適用しにくかったということはおかしい、私はこういうことを確認したいということで御質問しているわけでございます。
  145. 小野元之

    説明員小野元之君) 認証した都道府県知事が東京都知事の場合でございますが、例えば所轄庁と宗教法人が活動している地域が同じ都道府県の中でございますと、例えば公共の福祉に反した重大なことがあったという場合に、他の法令の規定の適用が妨げられないというのが宗教法人法の趣旨でございますから、そういうことがございましたら、所轄庁といたしましてもほかの部局、建設部局でございますとか農林水産部局でございますとか、そういったところと、同じ東京都の中でございましたら連携が非常に図りやすいということはあろうかと思います。
  146. 山下栄一

    ○山下栄一君 ごく当たり前の話ですけれども、だから普通の法律を適用するのに認証地は関係がないです。どこで認証しようが、そんな法令違反があれば、宗教施設、熊本であろうとオウムの教団がどこであろうとそれはきちっと適用する、当たり前の話でしょうということを申し上げているわけです。そうでしょう。難しい話じゃない。
  147. 小野元之

    説明員小野元之君) 御指摘ございましたように、日本国内どこでございましても、法令違反等があればその法令違反については対応というものは同じであるということは御指摘のとおりでございます。
  148. 山下栄一

    ○山下栄一君 当たり前の話を確認している。何となく宗教施設だからやりにくいという、そういうことはおかしいのじゃないかということを確認させていただいている。  それと、今も少し次長も触れられたと思うんですけれども、午前の答弁でも大臣からお話がございました。午前の質問の中で、法人法改正以前にやはりいろんな問題点があったと思う、もっと事前に現行諸法で手を打てたのではないのかということを非常に思うという意味の質問があったわけでございますけれども、その中で、さまざまな今回のオウムの事件を通しまして、こういう事件が二度とあってはならないという観点から、今政府におかれましても各省庁連絡会議を設置して、しっかり検証する体制をとっておるという意味のお話があったわけでございます。  省庁連絡会議のことについてお聞きしたいんですけれども、いつごろ設置されて、今までどれぐらいの回数がやられて、どういうことを具体的に対応として考えておられるのかということをお聞きしたいというふうに思います。
  149. 小野元之

    説明員小野元之君) お答え申し上げます。  オウム真理教問題の関連対策につきましての関係省庁連絡会議でございますが、これは平成七年の六月十二日に設置をされております。実は、これは内閣官房の所管でございまして、内閣官房以外に警察庁、法務省、私ども文化庁、厚生省、労働省、建設省、自治省、それぞれの構成員がございまして、各省庁それぞれの立場で、オウム真理教のこれらの問題につきましてそれぞれの立場でさまざまな措置を検討していこうというものでございます。  現在までの開催状況でございますが、全体会がございまして、その下に幹事会があるわけでございます。具体的にはその幹事会で何回か審議がされておるというふうに私どもも聞いているわけでございますが、幹事会が現在まで三回開かれているということでございます。
  150. 山下栄一

    ○山下栄一君 ちょっと聞き逃したんですけれども、設置された年月日。済みません。
  151. 小野元之

    説明員小野元之君) 平成七年の六月十二日でございます。
  152. 山下栄一

    ○山下栄一君 私は、この取り組みは非常に大事であろうというふうに思うわけでございます。  きょうの午前中の該当県の実情におかれましても、大変住民の方が苦慮された、苦しんだと。また、非道きわまりないこのような許しがたい事件はもう二度とあってはならないと。  どういうことでこういう事件が起きたのかということをやはりさまざまな全法律的な観点から総括し検証していくために、各行政の対応に問題がなかったのかというそういうことからの多分設置ではないかなというふうに思うわけでございますけれども平成七年六月に設置されてもう三回検討されておると。余り多くないなというふうに思うわけでございます。  体制とか回数とかお聞きしたんですけれども、どういう中身で検討されておるのかということをもう少しお話し願えたらと思います。
  153. 小野元之

    説明員小野元之君) 私どもこの一員として知り得ているということでございますが、例えば法務省さんの方で人権関係で人権相談に応ずるというようなこともございます。それから、私ども文部省で未就学児童の学校への円滑な受け入れの問題、厚生省さんの方では児童相談所で今保護なさっているわけでございますけれども、そういった関係で例えば精神的なケアを行う問題でございますとか児童相談所での保護の問題、それから労働省さんといたしますれば、信者さん等でもしこれから立ち直って就職していこうというような場合の職業紹介の問題でございますとかそれから警察庁さんとしては警察庁さんのお立場での御検討等々、それぞれの省庁が所管しております事柄についての対応策を検討しておるというふうに伺っておるところでございます。
  154. 山下栄一

    ○山下栄一君 今、犯罪、事件その他等々報道されておりまして、オウム事件に対する捜査もどんどん進んでおるわけでございますけれども、ただ、このオウムの実態がわかるにつれましてこれは大変大きなさまざまな問題がある。例えば、武器を製造していたとかそれも国際的な広がりがある。また覚せい剤もつくっていたとかサリンがつくられ、またそれがもしかしたらどこかにまだあるかもわからぬというふうな状況もある等々、本当にこれは考えられないような広がりのあるといいますか大きな影響を与える。国の転覆も考えておったというふうなことも報道されておるわけでございます。  こういうことがなぜ何年も放置されておったのかという観点からの厳しい現行諸法の検証といいますかまた各行政部局の対応に問題はなかったのかということをやっぱりきちっと総括すべきである、こういう観点からこの各省庁連絡会議というのは大変重要であると思うと同時に、今お話を聞きましたらそういう中心的なことよりも、もちろん一つ一つが大事な問題でございますけれども、抜け落ちている部分もあるのではないかなと思いますし、これは大臣、各省庁連絡会議ということで幹事会ですか、どなたが出ておられるかちょっとわかりませんけれども、例えば閣僚レベルに引き上げて、このような事件を二度と起こさないための体制を強化すべきではないのかと、このように思うのでございますが、いかがでしょうか。
  155. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 国の政治に責任を持つ者の一人として、これは当然今先生の御指摘のとおりと考えます。少なくも今まで日本の国は最も治安のいい先進国、こういう評価があったように思いますが、オウムの事件以来すっかりその国際的な信用を失ったということを非常に残念に思います。  ただいま私は東京に住まいいたしておりますが、新宿にせよ横浜にせよ、どこへ行くにしても何か暗いうわさがつきまとったり、最近これは伺うところによると、地下街その他のお客様が減ったので不況のせいかと思っていたらさにあらず、やっぱり事件の影響は極めて大であるという暗い話も伺うわけでありまして、こういうことで人心に混乱を生ずるということは政治のあり方としてはいろいろ問題があるので、これからやはり責任ある対応をしなきゃいけない、そう考えております。
  156. 山下栄一

    ○山下栄一君 もう時間がなくなってしまいましたんですけれども文部省における対応を一言でも結構でございますのでお願いしたいと思います。  特に未就学児童の対応でございますが、厚生省の御報告に、きょう厚生省に来ていただいているのにちょっと時間がございませんので私が申し上げますけれども、教団施設から一時保護され、各児童相談所経由で保護者なりまた養護施設等できちっと今保護されている方々が約百名近くいらっしゃるわけですけれども、この中にはもちろん学齢児童もいらっしゃるわけでございます、この方々への対応でございますけれども、やはり場合によってはすぐに学校に戻れない、一応体制としては責任ある保護者なり養護施設で対応できたけれども、その先すぐに学校に復帰できないという状況に対して、文部省としてどういう具体的な方策があるか手を打っておられるのかということをお聞きして終わりたいと思います。
  157. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  オウム真理教関係施設等から児童相談所に一時保護されました百十二人の子供のうち義務教育年齢相当の者は八十七人おりますが、このうち既に七十二人が就学しているところでございます。これらの子供の就学は一人一人の状況を十分把握した上で行っておりまして、その学校への適応状況につきましては現在のところおおむね良好であるとの報告を当該教育委員会から受けているところでございます。  さらに、まだ就学していない十五人の子供につきましても、現在教育委員会や学校、児童相談所等が連携をとって円滑に社会復帰ができるよう、一人一人の状況に応じた細やかな配慮を行ってもらっているところでありまして、文部省といたしましては今後とも関係省庁と連携しながら指導を行ってまいりたいと考えております。
  158. 山下栄一

    ○山下栄一君 終わります。
  159. 萱野茂

    萱野茂君 社会党の萱野茂であります。アイヌ民族の人権についてということでお伺いしておきたいと思います。  アイヌ民族の人権にかかわって法務省、文部省に、アイヌ民族の文化伝承については文化庁に、さらに人種差別撤廃条約の批准については外務省に、順次尋ねをしていきたいと思います。  人権の尊重が一人一人の市民が平和のうちに生きていく条件であること、とりわけ種族や民族が持つ固有の権利の尊重が世界の平和の維持にとってかけがえのない条件であり、人間にとっての普遍的価値観であることは今人々の共通の認識として広がっていると思います。そして、この理念の具地化のために人々は長いこと努力を積み重ねてまいりました。  国連は人権に関するさまざまな国際年を定め、我が国でも毎年十二月には人権週間として人権の啓発に努めています。特に私たちアイヌ民族と深いかかわりを持つものとしては、一九九三年の世界の先住民の国際年、そして昨年十二月からは世界の先住民の国際十年が始まりました。また、ことしからは国連人権教育の十年が始まりました。  世界の先住民の国際十年で言いますと、国内にアイヌ民族を抱えながら、政府がこの国際年の直接の当事国ではないとしていることは極めて残念であります。ここでは強い不満と不快の意思を表明しておきます。  そこで、人権啓発資料に関して法務省にお伺いしておきたいと思います。  まず、法務省にお尋ねをいたしますが、法務省はこの人権擁護に関しては日本政府を代表する主務省と聞いておりますが、例年、人権啓発の一環として「アイヌの人々と人権」という啓発資料を発行しております。趣旨そのものはなかなか結構なものであると思いますが、その記述について残念な点がございますので、御指摘申し上げながら今後の訂正をお約束いただきたいのであります。  指摘の点は、この啓発資料の中で、アイヌの人口として、北海道に住むアイヌの人口は云々とあります。アイヌの地域別の人口分布を示す地図が添付されておりますが、これがなぜ問題なのかといいますと、どのように読み取ってもこの記述は、アイヌ民族は北海道にしか住んでいないとしか読み取れないことであります。もちろんアイヌが主として住んでいるのは北海道でありますが、同時に全国各地に住むことは明白な事実であります。平成元年の東京都の調査でも都内に住むアイヌ民族はおおよそ二千七百人という数字が出ております。人権擁護の主務待が国民に誤った認識を植えつけるかのような啓発をしているわけでありますから、このことは重大であり、ぜひ正しい記述に改めることをお約束いただきたいのであります。  この機会にパンフレットの発行について意見を申し上げておきますが、お聞きしますと、このパンフレットの北海道への配布数はわずかに四千二百四十九部だそうであります。その活用方法も余り明確ではない模様です。北海道には小学校、中学校高校だけでも二千七百六十一校ございます。人権擁護委員定数は一千百二十九名であります。ですから、せっかくの啓発資料でありますから、おざなりのこととしてではなくしっかりとしたものとして発行され活用されることを要望するとともに、改訂版を出され、多くの人々に配布されるお考えがおありでしょうかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  160. 竹田盛之輔

    説明員竹田盛之輔君) お答えいたします。  ただいま先生指摘のリーフレットは、アイヌの人々の人権問題に関する啓発活動の資料として法務省人権擁護局におきまして作成、配布いたしておるものでございます。  先生指摘の箇所は、「北海道に住むアイヌの人々の人口は、七千三百二十八世帯、二万三千八百三十人となっています。アイヌの人々は、道内の七十五市町村に住んでおりこという記述のところであろうかと思います。この記載は、北海道におきますところのアイヌの人々の実情について記載したものでございまして、先生指摘のような趣旨で記載したものではございませんが、しかしながら、御指摘のような誤解を生ずる余地も十分考えられますので、改訂の際におきましては先生の御指摘を踏まえ、かつまた関係各方面の御教示をいただきまして再検討いたしたいと思っております。  それから、このリーフレットは現在まで五万部作成いたしまして、北海道地区を初めとしまして全国民にこのアイヌの人権の問題に関して理解を深めていただきたいということで配布いたしておりまして、人権擁護機関の各地で行われます人権講演会ですとかあるいは街頭啓発活動等の際に活用いたしておりますが、今後ともさらにこれを積極的に活用を図っていく所存でございます。
  161. 萱野茂

    萱野茂君 私の手元にあるのはわずか七ページの、しかもその中にはたくさん回とか写真がいろいろ入っているんです。その中で「アイヌの人々」という言い方が二十二カ所あります。アイヌの人々と言うと、アイヌ社会でアイヌというのは人間という意味であります。村内で言うのには本当に行いのいいアイヌにはアイヌネノアンアイヌとアイヌを二つ三つ重ねて言うことが本当でありますが、この場合アイヌの人々という言い方は言い方を変えてアイヌ民族とかあるいはアイヌとだけ書いてもいいと思うんですが、その辺のお考えを伺っておきます。
  162. 竹田盛之輔

    説明員竹田盛之輔君) ただいま先生から御指摘いただいた点につきまして十分に検討させていただいて、このリーフレットの改訂に当たりましてそれぞれの関係の方々の御教示をいただいて改訂の方向で検討していきたいと思っております。
  163. 萱野茂

    萱野茂君 もう一つ文部省にお尋ねをしますが、私はアイヌ民族へのべっ視、差別がなかなかなくならない背景として残念ながら文部省も一役買っていることを指摘しておきます。  どうも文部省社会科や歴史の授業の中で余りアイヌのことは教えたくないのではないでしょうか。教科書を見ましても本当にアイヌのこと、アイヌの歴史の記述は少ないのです。そして、その少ない授業の中でも我々アイヌ民族と和人社会といいますか為政者といいますか、その歴史の関係を正しく教えたくない節があるのではないでしょうか。  かつてこのようなことがありました。高校の教科書検定で教科書の調査官が和人のアイヌヘの収奪について、その収奪という文字を支配と改めるようにとの指示がありました。そこには日本の歴史を和人の側、つまり支配者の側から見て、為政者にとって都合の悪い歴史は伝えないとの姿勢がありありであります。このことはアジア侵略などに対する政府のこれまでの歴史認識、歴史教育と同根のものがあるように思います。  最近の例で申し上げますと、平成六年に検定済みの高校教科書、大修館書店発行の現代国語に作家の五木寛之先生の「ヒゲを持ちあげて盃を」というエッセイが載っております。文脈そのものは別として、神とアイヌの仲介の役目をするドキパスイというアイヌにとっては大事な遊具をヒゲベラとしております。これは明らかにアイヌの文化、宗教観について誤った認識であり、文部省もまた誤った検定をしているのであります。  このようなアイヌの歴史、アイヌの文化、アイヌの先住民族性などを教科書の中で正しく教えていくことについて文部省はどのような役割を果たそうとしているのかお伺いしたいと思います。
  164. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  先生指摘のように、現在使用されております高等学校の国語Ⅱの教科書で取り上げられた題材におきまして、実際には祭事に用いられるドキパスイにつきましてヒゲベラと記述し、酒を飲むときに邪魔になるヒゲを持ち上げる日常の道具として説明が行われております。この題材につきましては、先生指摘のとおりでございまして、そういう意味で、現在教科書発行者から題材を差しかえる旨の訂正申請が提出されておりまして、文部省におきまして手続を進めているところでございます。  また、アイヌに関しましては、小中高等学校社会科や日本史などの教科審におきまして歴史や文化等について、それぞれの学校段階に応じて記述がされているところでございます。また近年、アイヌの歴史や文化、アイヌの人々への差別問題等について詳細に記述するものがふえているところでございます。私どもとしても、アイヌに関する教育充実につきまして十分先生指摘の点を踏まえて適切に対応していきたいと、このように考えておるところでございます。
  165. 萱野茂

    萱野茂君 ここに本物のパスィを一本持ってきてあります。これは杯の上に乗せて、右手で持ってお祈りをする。これはアイヌの国から神様へお願いするすべてのことを伝えてくれる道具として、裏側にパスィサンペ、これの心臓、あるいはパスィパルンペ、舌という小さなくぼみまでつけて、本当に大事にしている道具なのであります。わずか一千字足らずの文の中で、杯を左手に持つとかいろいろ間違った部分がたくさんあるわけであります。しかも、これは文部省がきちっと教育検定というか教科書の検定試験で合格した文章でありますので、ぜひいろんな意味でこれから注意をしてほしいと思います。  次に、教育の場におけるアイヌ差別について申し上げたいと思います。  今、学校教育の場において子供たちのいじめが大きな問題となっております。文部省はもちろん、多くの教育関係者が腐心をされているわけです。しかし、いじめはアイヌ社会においては今始まったことではないのであります。アイヌ社会といったら、アイヌだけのことではなくて、アイヌの児童が通っている学校でのことであります。特に、アイヌの子供たちにとって学校は地獄というか針のむしろの上と同じようなものであったわけであります。アイヌの子供であることを理由に、子供同士はもちろん、先生からまで不当な扱いを受けておりました。長いことそのようなことが当たり前のこととされて、全く社会の問題とされずに過ぎてきたのであります。  北海道が平成五年に行ったアイヌの実態調査で、アイヌ差別を受けたとした者のうち、「学校」と回答した者は実に四二%になっています。これは、私が先ほど指摘いたしました法務省の啓発資料にもこのことは引用されております。  また、平成元年の東京都の調査では、学校での差別経験について六七%の人が「ある」としております。このようにアイヌヘの差別が学齢期に集中し、アイヌの子供たちは幼いときに言い知れぬ屈辱を受け、アイヌであること自体を嫌がってきました。しかも、その屈辱はアイヌ民族を劣った民族とする民族差別なのであります。  文部省は、このような教育の場におけるアイヌの子供たちに対する差別をどのように把握しているのかまたその差別の根源がいかなるものと認識しておられますかお伺いしておきたいと思います。
  166. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  ただいま先生からお話がございました北海道の平成五年における調査あるいは東京都が平成元年に行いました調査結果につきましては、私どもも十分承知をしているところで、そういう点では、学校においてアイヌに対する差別が依然として行われているということについてはまことに遺憾なことであると認識をいたしております。  学校教育におきましては、社会科等の教科や特別活動、道徳の領域の中で基本的人権の尊重の精神の涵養に努めているところでございますが、アイヌに対する差別の背景に基本的人権尊重の意識の薄さや正しい歴史認識の不足というものがあるとすれば問題であり、今後さらに学校教育活動全体を通じて基本的人権尊重の精神の涵養に努めるように指導してまいりたいと考えております。  なお、北海道におきましては、教職員に対する研修や研究協議会などでアイヌの歴史、文化や基本的人権等に関する講座を設けるほか指導資料の作成、ウタリ教育相談員の配置などによりましてアイヌに関する教育充実に努めているところでございます。
  167. 萱野茂

    萱野茂君 今、教育の場における差別に対する。お答えがありましたが、さらに指摘をしておきます。  そもそも学校先生自身がアイヌにかかわる歴史を正しく学ぶ場がないのではないでしょうか。これは少し古い統計でありますが、札幌市の教育委員会が市内の七千人の先生を対象にアンケートをとりました。この中で、学校教育でアイヌについて学んだことがあるかという設問に対して、「ある」と同答したのは四八・二%、「ない」と回答したのは半数の四九・二%にも達しています。しかも、「ある」と回答した人たちもほとんどが小学校や中学校での知識でありました。高等教育になるにつれてほとんどアイヌの歴史やアイヌの存在について学んでいないのであります。  さらに、教員になってからアイヌについての知識はどこで得たかとの設問に、「教科書」としたのはわずか一〇・九%であります。生徒指導研修会の場などは「その他」の項目で、数値にあらわれていないのであります。これは東京の話ではなく、アイヌがたくさん住んでいる北海道札幌の先生たちの話なのであります。  私が指摘をしたいことは、学校先生となる人たちがほとんどアイヌ民族の歴史やアイヌの文化については学んだ経験を持っていないことであります。これでは生徒に正しい教育を施すことはできません。最初に申し上げましたように、ことしから国連人権教育の十年であります。文部省は、アイヌヘの差別、べっ視が今も教育の場に根強く存在していること、また、指摘したような教育現場の実態をしっかりと踏まえて、人権教育が行き渡るような行動計画を策定していただきたいと思いますが、どのようにお考えでしょうか、その点を。
  168. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  学校教育におきまして、基本的人権尊重の意識の向上のために、各教科等を通じ教職員の研修等が必要であり、このため文部省では、学習指導要領の趣旨の具体化を図るための指導資料の作成、配付、教師指導向上のための講習会、道徳教育推進校の指定、市町村ぐるみで一体的な道徳教育の推進を図るための市町村道徳教育推進事業など、さまざまな施策を通じて道徳教育充実に努めているところでございます。  北海道におきましては、教職員に対する研修や研究協議会などでアイヌの歴史、文化や基本的人権等に関する講座を設けておりますほか、指導資料の作成、ウタリ教育相談員の配置などによりましてアイヌに関する教育充実に努めていただいているところでございます。
  169. 萱野茂

    萱野茂君 次に、アイヌ文化の伝承について文化庁にお伺いしたいと思います。  これは、ことし二月発行の「法律文化」という雑誌であります。私も当選後の抱負を聞かれまして、載せさせていただいたものでありますが、私の次のページに遠山長官の文化行政への意気込みが載っていました。  また、九月四日の日経新聞では、長官の「文化立国へ人材育成」という御意見が載っておりました。さすが文化庁生え抜きの長官と感服したところでございます。  また、七月二十六日の文化政策推進会議の「新しい文化立国をめざして」の報告も出されてすぐに拝見いたしました。文化庁の予算が国の一般会計の〇・〇九%にすぎないことは相当がっかりしましたが、長官の意欲と報告を読みまして少し元気が出てきました。  報告は、どこを読みましてもアイヌ文化の伝承と深くかかわっております。しかし、現状の文化庁の実態はまさに〇・〇九%そのものでありまして、アイヌ語の伝承一つとりましても、文化庁の支援は総額で年間九百七十万円にすぎません。  言葉は民族の命あるいはあかしと申しましても、物と違いまして言葉は受け継がれなければ簡単に死語となって忘れられてしまうものであります。このままでは、人材の育成も、教室のレベルを向上させることも大変難しい状態にあります。  アイヌの伝統的な踊りにつきましても、文化財の指定の数はふやしていただきましたが、予算の増額はいただけないのが実態であります。  アイヌの古老たちのユーカラやウェペケレ、民話や叙事詩でありますが、これらの古い記録、採録したものを日本語に置きかえることも、予算が十分でないためになかなか進んでいないのが実態であります。  また、ぜひ留意してほしいのですが、アイヌ文化の伝承と一口に申しましても、最近の河川環境の破壊、森林生態の変化がアイヌの伝統的な織物の素材などを手に入れにくくしております。  文化の伝承は、その文化がはぐくまれてきた環境と密接な関係にあり、文化の伝承は良好な環境の上に初めて成り立つことを知っていただきたいのであります。  この際、文化庁は、文化立国を目指すとする文化振興施策に本気で取り組み、アイヌ文化に光を当ててほしいのであります。  この報告の各項目でも触れでありますが、現状のアイヌ文化施策をさらに充実させるとともに、アイヌ文化の研究についても国が責任を持って研究機関を設けていただきたい。  また、アイヌ文化専門の博物館あるいはアイヌ民族文化公園的な施設などをぜひ実現してほしいのです。大臣なら必ず、関係の方なら必ず私の切なる願い、アイヌ文化にかけるやるせない気持ちを理解していただけるものと思っております。  この際、お考えを伺っておきたいと思います。
  170. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) ただいま御指摘の点につきましては、文部省といたしましても、このたびの文化政策推進会議の提言を踏まえまして、アイヌを含め我が国の伝統文化の継承、発展のための施策を推進してまいる所存であります。
  171. 萱野茂

    萱野茂君 おしまいに、人種差別撤廃条約の批准についてお伺いします。  外務待には、人種差別撤廃条約の批准について端的にお伺いしておきます。  条件つきでありますが、アメリカ政府は批准をしました。日本政府は批准をするのかしないのかその点をお伺いしておきたいと思います。
  172. 川田司

    説明員(川田司君) お答えいたします。  人種差別撤廃条約につきましては、今その締結につきまして政府部内で鋭意準備作業中でございます。この所要の準備作業が終わりましたら、今度の臨時国会にお諮りしたい、このように考えております。
  173. 萱野茂

    萱野茂君 一九七一年に、当時の外務大臣愛知揆一さんが市川房枝さんの質問に答弁した中で、しばらく時間をおかしいただきたいというような答弁をしているわけであります。これは一九七一年、それから二十二年もたっています。時間とこれの関係というのは、しばらくの時間というのが二十三年だったら、今お答えありましたようにこの次の国会ということの返事でしたが、その辺は二十三年の時間ではありませんでしょうね。その辺ひとつお伺いしておきます。
  174. 川田司

    説明員(川田司君) お答えいたします。  二十三年も検討してまいりましたのは、この条約は、憲法の保障する表現の自由との関係とかいろいろ難しい問題がございまして検討させてきた次第です。今事務的にかなり煮詰まっておりまして、この準備作業が終わりましたならば本当に今度の臨時国会にお諮りしたい、このように考えております。
  175. 萱野茂

    萱野茂君 きょうの質問の時間は、山口先生がぜひ萱野君行ってやってくれということで時間をいただきました。いろいろ勝手なことを言わせてもらってありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。  終わります。
  176. 今井澄

    ○今井澄君 午前中、清水委員の方から御質問がありましたATR、新型転換炉の実証炉の建設中止の問題を中心に質問をさせていただきたいと思います。  私は、今回の中止の決断はよかったというふうに評価しているわけですが、まず最初に長官に、青森県大間町に実証炉の建設計画があったわけですが、今回それが中止されたことについて、その経緯と中止の理由を端的にお答えいただきたいと思います。
  177. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) ただいま先生のお尋ねでございますが、この問題は、私が長官に就任いたしましてすぐ直面した一つの大きな問題でございました。これにつきましては、新型転換炉、ATR実証炉につきましては、漁業補償問題の解決等、地元状況進捗に伴いまして建設費の見積もりというものをやったわけでございますけれども、当初と比べまして建設費が大幅にアップしたということが判明いたしまして、本年の七月十一日に電気事業連合会から、経済性の理由からこの建設計画の見直しの要望が出されたわけでございます。  これを受けまして、原子力委員会といたしましては、実は私がその委員長という立場に相なっておるわけでございますけれども、夏休みを返上していただきまして四委員を中心に各分野にわたって真剣な検討をいたしたわけでございます。その中身は、経済性、核燃料リサイクルの観点から、また今後の研究開発等、こうした点から精力的に審議をいたしたわけでありまして、その結果として八月二十五日に、実証炉建設計画は中止することが妥当であると、全炉心にプルトニウム燃料の装荷を目指す改良型沸騰水型軽水炉、ABWRがその代替計画として適切であると、こうした結論が出たわけでございます。  この実証炉計画の中止につきましては、中止はしたものの、この核燃料リサイクル政策の基本はあくまで堅持をしていく、今後とも官民を挙げて高速増殖炉開発等の核燃料リサイクルの着実な展開に真摯な気持ちで取り組んでまいる所存でございます。
  178. 今井澄

    ○今井澄君 そこで、今ATR、いわゆる新型転換炉が申上になったのは、実際にそれを建設し電気を売る側がこれは高過ぎて売れないというか、電事連ですね、それを買う側が高くてとても買えないということがあって経済的な理由から中止されたということなんですが、私がどうも不思議に思うのは、去年の五月に漁業補償の交渉ができた、それから計算をしてみたら大変高くなるということがわかったと、それで七月に申し入れがあってというんですけれども、私はどうもこの経過については納得がいかないんですよ。  それはどういうことかといいますと、一つの問題は、そもそも今長官は核燃サイクルはあきらめないんだ、いや積極的にやるんだ、これは変わらないんだということをおっしゃいましたが、その問題は後でちょっと議論しますが、そうであったとしても、そもそもこのATR、新型転換炉というのは、高速増殖炉ができてそこで本格的にプルトニウムを燃やすあるいはさらに増殖をさせるという、それまでの過渡的なものだと。要するに、軽水炉ではウランを燃やすわけですね。過渡的にこういうものが必要だということとかそのほかいろいろな経過があったと思うんです。カナダの原子炉を導入するとかしないとかということがあったり、電発が原子力発電に参入する問題、いろいろあったこともありますが、それはともかくとして、過渡的なものだということで実は開発が進められてきたんだと思うんです。  ところが、一方でもう既に世界的にはプルトニウムとウランを混合したいわゆるMOX燃料を軽水炉で燃やすプルサーマルというのが実用化してきているという現実がどんどんできてきているということがあったわけですから、既にATRにお金をかけて一生懸命開発して、過渡的なものにすぎないものを開発するのがいいかどうかというのはもうかなり問題になっていたはずなんです。今さら計算してみたら高かったからというだけの理由というのは、私はやっぱり特に原子力委員会の立場としてはおかしいんじゃないだろうかと思いますね。  それから、特に、もう既に電気事業法が改正されたり、電気料金の内外価格差が非常にあるので電気料金を下げろということで、来年一月には新方式が導入されて電気料金を見直すわけですね。これも、何も今さらことしになって出てきた問題ではない。そうすると、経済性があるのかないのがはもうとっくに計算はされていたはずだと思うんです。そういう意味では、ATRの開発問題は今ここで急に出てきたことではなくて予想されていたことではないのだろうか。  しかも、もう一つ問題なのは、去年の六月に原子力開発利用長期計画、いわゆる長計というのを改定しているわけです。その改定作業の中で既にこれは見直すべきであったというふうに思うんですけれども、その辺について科学技術庁及び通産省の方の今のことについての見解あるいは経過をお聞きしたいと思います。
  179. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) お答えを申し上げます。  先生指摘のとおり、昨年の六月に原子力委員会は新しい長期計画を策定いたしました。この長期計画の策定には百名を超える各界の専門家にお集まりをいただきまして大変精力的な御審議をいただいたわけでございますけれども、その中にはもちろん電源開発株式会社の方あるいは電気事業連合会等の関係者の方々にも専門委員としてこの御審議に参加をいただいたわけでございます。  この審議の過程におきまして、当然のことながら、この新型転換炉をめぐりますいろんな核燃料リサイクル関係の位置づけであるとかあるいは状況であるとかあるいは今後の実証炉の進め方あるいはその実証炉をさらに進めた後の実用化に至る問題等々について幅広く御審議をいただいたわけでございます。その結果といたしまして昨年六月には、この実証炉を進めさらに実用化に当たっていろんな検討をしなければならない、こういう御指摘をいただいたわけでございます。  ただし、残念ながらこの長期計画策定当時、すなわち先生も御指摘のとおり漁業補償の問題等が解決をいたしておりませんでした。ちょうど昨年の五月に漁業補償の問題が解決をし、地元問題の進展が見られたわけでございますけれども、こういった地元状況の進展を踏まえまして電源開発は建設の工程を確定し、その工程に沿った建設費の見直しを最終的に行ったわけでありますけれども、その結果、先ほど大臣の御答弁にもございましたとおり、残念ながら大変高いものについてしまったと、こういう状況でございまして、したがいましてこの長計の審議の過程におきましてこの実証炉の直接の経済性について具体的な議論を行えるような状況ではなかったということを御説明申上げざるを得ないわけでございます。
  180. 知久多喜真

    説明員知久多喜真君) 通産省、私どももそのように承知いたしております。
  181. 今井澄

    ○今井澄君 今、通産省から極めて短いけれども含蓄のある答弁があったと思いますが、やっぱり科学技術庁、物すごいお金を使うあれですから、原子力というのは、は大プロジェクトなんですよ、もっとちゃんと答えていただきたかったと思います。  現に、七月十一日に電事連の方から中止申し入れがあって検討をやおら始めたときに、当時の科学技術庁長官、田中眞紀子さんだったわけですが、七月十八日にこういうふうに言っているんですね。役人は現実の企業活動への配慮が欠落している、常に情報交換していないから唐突にこういうことになるんだ、原子力委員会は一体機能しているのかと。こういうことを科学技術庁長官、原子力委員会の委員長御みずから言っておられるわけです。  しかも、七月二十五日には、まあ科学技術庁の長竹は一応そう言ってはなんですけれどもキャップですけれども、実質的に取り仕切っておられるんでしょう、伊原義徳原子力委員委員長代理の方がこう言っておられるんですね、長期計画ァ硬直していたかもしれないと。前の年につくったばかりのですね。今後は開発を進める中で委員会がより柔軟な対応ができるようにしたいと。要するに、はっきり反省の色を込めておられるわけです。  しかも、これは某原子力委員委員とまず思われる方がこういうことを言っておられるんです。ATRは取り扱いが面倒だし値段が高いということで、電力業界はもともと余り歓迎していなかった。できればやめたいという希望があった。やるのかやらないのか早く決めるべきだと私は思っていて、去年の長期計画会議でもこの問題を真剣に議論しようじゃないかということを二度提案したが、どなたも発言しなかったと。電力関係の方もですね。そのころ地元で漁業補償問題がまとまりかけていたから、余計なことはしないでほしい、そっとしておこうという気持ちがあったのかもしれないと率直に述べておられます。  六十二年の、長計、というのは前向ですね、それを決めたときからやるのかやらないのかふらふらしていて、山へ登るのに途中まで登って様子を見てそこでまた考えようということでやってきたわけだが、時間がたつほど先行きの展望が薄くなってきたと。もう既に去年の長計をつくる段階ではATRはもう余り見込みがないという、さっきも言いましたプルサーマルも進んでいますしね。国の大きな技術開発のプロジェクトとしては哀れな結末を迎えるんじゃないかという気がしていたので、今回の決断はよかったと思うと、こういう証言もあるわけなんです。  私はそこでどうしてもお聞きしたいのは、これは大変なお金をかけていることなんです。それで、今回は平成四年度、五年度の決算になるわけですが、この平成四年、五年には一体このATR開発にどのぐらいお金がかかっていたのか。そのことはむだになったんじゃないのかどうか。そのことについて簡潔に科学技術庁、通産省ともにお答えいただきたいと思います。
  182. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) 新型転換炉開発につきましては、昭和四十二年から、平成六年度までの間、二十八年間にわたりまして原型炉であります「ふげん」発電所の建設費を含めまして、国からは二千五十億円が支出をされております。御指摘平成四年度及び五年度につきましては、新型炉開発費としてそれぞれ三十一億円、四十五億円が計上されておったわけでございます。  これまでこういった多年にわたるあるいは多額の経費を投じましたこの新型転換炉の開発につきましてはもちろん、残念ながら実証炉の建設にはつながらなかったわけでありますけれども、これまで動燃事業団を中心としまして蓄積、育成された技術につきましては、日本の原子力発電所の安全性であるとかあるいは信頼性の向上に役立っておると思っておりますし、さらに加えてプルトニウムの利用という観点から、今後とも軽水炉であるとかあるいは高速増殖炉におきますプルトニウム利用に当たって大変貴重なデータを提供してくれるものと、このように期待をいたしております。  いずれにしましても、今後ともこの新型転換炉開発を通じまして得られました知見というものを日本の核燃料リサイクルの具体化に当たりまして有効に活用していくことがこれまでの投資を生かしていくという大きな道であろうかと思っております。
  183. 知久多喜真

    説明員知久多喜真君) 今、原子力局長からお話ございましたとおり、私どもも、新型転換炉についての開発自体、その意義があるものと原子力委員会でも決定文で述べておりますし、それからこの経過で開発してきたいろんな技術は、代替案のフルMOXあるいはFBRとか今後の日本の原子力開発に非常に有効に役立っていくものと期待しております。
  184. 今井澄

    ○今井澄君 それは後からつけた言いわけだと思うんですよね。  要するに、だから一方では高速増殖炉の研究開発をやっているわけでしょう、一方ではプルサーマルの方をやっているわけでしょう。その中間でいろいろやる。それは学術的に広い意味でいえば、どんなことでもやってみればそれは価値があるのかもしれないけれども、お金がかかっているわけですよ、とうとい国民の税金が。それはもう科学技術庁からも通産省からも両方から出ているわけです。だから、「ふげん」を今後どうするかということを時間があったら後でお聞きしますけれども。  そして、そのほかにもいろんなお金がかかっているんですね。例えばこれはある週刊誌の記事ですけれども、電源開発のある課長さんが、例えば用地買収など地元の御理解を得るため、これまで三百人ぐらいの社員が大間町の地元に行き、漁を手伝ったり祭りで一緒に酔っぱらったりしてきたと。こういう人件費とかそのときの出費もある。これにはちゃんと国からも三〇%電源開発で出ているわけでしょう。それから、例えば立地のときには地元にいろんなお金が落ちるわけですよ。本当にこれはわけのわからないルートを通じて落ちる。  私も科学技術特別委員会のときに浜岡の原発を見せていただきに行きましたけれども、そのときは浜岡の町を通って遠くから浜岡町立病院の立派な病院を見ました。私は、委員長をやっているときから、浜岡町は自治体病院としてはすごい立派な病院ができた、物すごいお金がかけてある、あれは原発の町で金が来たからだと聞いているわけです。そうすると、何もこのATRに限りませんけれども、結局この「ふげん」の建設だけにかかったお金じゃなくて、ありとあらゆるいろんなところからお金が使われているわけですね、国民の血税が。ですから、そういうものは極めて効率を、効果を考えて使わないといけないわけですから、今のように、いや研究開発をやったのはいろんなことに生きているからいいというだけではこれは済まない、国民は納得しないということを申し上げておきたいんです。  さてそこで、ATRを中止するという後、即座に今度は出力百三十五万キロワット、実証炉の計画の約倍の改良型沸騰水型軽水炉、午前中もお答えがありましたが、フルMOX・ABWRというやつですね。これは、要するに軽水炉でもってプルトニウムとウランをまぜたMOX燃料を燃やすと。それは今世界的に進んでいて、日本は大分おくれているわけですが、プルサーマルというのは大体その混合燃料、MOX燃料というのを三分の一燃すわけですね。それを全部MOX燃料を燃すフルMOXの軽水炉にしようじゃないかということを即座に決めているわけです。私は、これについてもちょっと問題があるんではないかと思うんです。  それで、どういう問題かというと、まず原子炉を建設する場合には幾つかの許認可事項があると思うんです。原子炉そのものの安全性や何かを考えてそういう原子炉がいいということとかある業者がそこに建設することがいいとか、幾つかのそれこそ建築確認みたいな工程があると思うんですけれども、今まではそういうものを慎重に踏んで、いろんな実証炉にしろ原型炉にしろ実験炉にしろ、やってきていたわけです。今度いきなりここで原子力委員会がぽんとこんなことを決めていいのかどうかということを一つお聞きしたい。  もう一つは、せっかく漁業補償交渉もまとまったわけですが、出力が倍ということは冷却水の温度がそれだけ倍になるわけです。そうすると、漁業補償だってまた上乗せをしなきゃならないだろう。そういうこともあるだろうと思いますし、そもそもプルサーマル、三分の一MOX燃料を軽水炉で燃やすのは、これはもう技術的には相当確立されているだろう。世界では行われている。日本ではまだ本格的に行われていないわけですがね。そこへもってきて、今まで経験もしていないのにいきなり全部、三分の一じゃないんですよ、全量MOX燃料を燃やすものをいきなりつくるなんて、こんな乱暴なことをやっていいんですかね。  いろいろ資料を取り寄せてみると、コストは何か一割程度アップするだけだから大したことないとかなんとか書いてある。こんなことをしますとまた高いものについて、また撤退をするということもあるんじゃないだろうかと思うんですけれども、その辺、今回のATRとまた同じような、漁業交渉は長引くわ、そのうちにコストは上がるわ、労賃は上がるわ、いろいろなことが上がってまたまた同じ運命になるおそれがあるんじゃないかと思うんですが、この点についてはどうでしょうか。
  185. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) この七月から八月にかけて行われました原子力委員会におきます審議におきまして、今先生指摘のとおり、ATRの実証炉にかわるものとしてこの改良型軽水炉、特に全炉心プルトニウム燃料装荷を目指す、こういう炉が果たして本当に代替計画として適切かどうかという点について慎重に御審議をいただいたわけでございます。  もちろん幾つかの観点があるわけでございますけれども先生指摘のとおり、技術的あるいは安全性の観点において果たしてその見通しか十分あるかどうかという点についても御審議を賜ったわけでありますけれども、原子力委員会の決定の中にも述べられておりますとおり、改良型の軽水炉、ABWRというのは現在既にもう建設中のものもございます。このABWRの基本仕様の変更を伴うことなく実施可能との技術的な見通しかあるということ、さらにプルトニウム全炉心装荷の見通しについても十分技術的安全性の見通しかある、こういう点について原子力委員会での評価をいただいているわけでございます。  ただし、先生も御指摘のとおり、原子力安全委員会におきまして、軽水炉におきます三分の一炉心までのプルトニウム燃料装荷についての安全性についての確認はなされておるわけでございます。したがいまして、今後具体的な安全の許認可手続、あるいはそれに先立っての原子力安全委員会でのこの評価指針等については、今後当然のことながら整備をされていかなければならない、このように考えております。
  186. 今井澄

    ○今井澄君 私は、慎重に審議したと言うけれども、それは疑わしいと思いますね。だって、さっきATRの建設費が高くなるというのは慎重に審議していれば去年の長計のときにわかっているはずなのに、漁業交渉が終わってから慌ててやって、ことしになってということで、いかに慎重審議していないかというふうに思うんです。  七月十一日に電事連が中止を申し入れてから八月二十五日に原子力委員会で決定するまでの一カ月半の間、先ほど夏休み返上でという長官のお話もありましたが、どんなにやったって慎重審議というふうには余り思えないんですよ。これは結局地元対策といいますか、最近原発の立地が非常に難しくなりましたね。最近五年間ぐらいで新しい立地がほとんど見つからないというときに、せっかく大問町がうまくいったから、もうとにかく中止だけでは片がつかないから次にはこれをやるんだということで、私は慌てて出したと思うんですよ。  それで、技術的には大丈夫だというふうに確かに皆さん方も書いていますよ。全炉心にMOX燃料を装荷する場合、硼酸水注入システム、逃がし安全弁の設計変更、燃料検査装置の導入等の対応が考えられるがこれは大したことない、基本仕様は変更の必要ないというふうに書いてあるんですけれども、私はそんなものかなと思うんですね。原発の場合に一番問題になるのは、原子力の安全性ですよ。  実は私、ことしの五月にチェルノブイリに行ってまいりました。石棺と言われるあの直前にも立って科学技術庁からある人が借りていったものではかったりなんかして、すごいなと思ってきたんですが、一番やっぱりつくづく感じたのは、そばに四万七千の人口のプリペチという町がつくられたわけですが、それが廃墟になったわけですね。それで九年後の今も廃城なんですよ。人が住んでないんです。阪神・淡路大地震であれだけの大勢の人が被災しても、あそこに人が住んで今復興しているんですよ。原子力の一番の問題はそこなんです。いざ事故が起こった場合、これはもうとにかく、それこそ場合によってはずっと永遠に人が住めなくなるかもしれない、そういうことを考えたら安全性こそ大事なんですね。  三分の一までは混合燃料、MOX燃料を入れて大丈夫だということがわかったから全量大丈夫だなんということは、簡単に決められる問題じゃないと思うんですね。私は、慎重に審議したということはとても信じられないというふうに思います。信じられません。これについてはどうせ水かけ論になるでしょうから、次の質問に移ります。  それで、核燃サイクルはやめないということについて、私は前、科学技術特別委員会にいたときも、高速増殖炉についてこれはもう経済的に引き合わないからやめるべきだということを言ったことがあります。別にイデオロギー的にとかそういうことは全然わきに置いておいても、要するに高速増殖炉の問題は、例えばナトリウムを使うということ、これで非常にもう危険だということで、フランスが一番一生懸命やっているわけですけれども、それでもフランスではもう九〇年からずっと停止したままで、今度再開をするというときも、もう危険だからこれは原子炉として発電用に使うんじゃなくて、要するにプルトニウムが余っちゃうと困るからこれを燃すためだけに使うんだというふうな政府の、首相の発言もあって、やっとそういう再開にこぎつけているような経過もあると思うんです。  問題は、やはり高速増殖炉は非常に高くつくというふうに思うんで、私は核燃サイクルは見直した方がいいんじゃないかというふうに思っています。  世界の各国でも大体この高速増殖炉は断念をしているわけですよ。今、一生懸命やろうとしているのはフランスですけれども、フランスだってそういうような状況。ロシアもカザフスタンもまだあきらめてはいないようですけれども、アメリカとかドイツとかイギリスはもう撤退をしているという状況なんで、これは経済的にあるいは技術的にえらい手間暇、金がかかって引き合わないということで、私は、お金のむだ遣いになる、今度のATRのことを教訓にして再検討をすべきだというふうに思います。  そのことに関して、やっぱり今回のATRのことである原発関係の専門誌の記者がこういうことを書いているんで、私、事実そうだと思うんですね。今回のような事例が、つまりATRの中止ですね、今日急がれている六ケ所村再処理工場の建設初め、MOX燃料の国産化、高速増殖炉の実用化、高レベル放射性廃棄物の深地層処分技術開発などの分野で起こったら、日本が昭和三十一年から原子力開発に着手したことが国民や大衆から問われることになろうということを言っています。  そして、この前の九月二十二日の朝七時のNHKニュースでも、これはちょっと古い事実だったようですけれども、五人の元原子力委員委員が、高レベル放射性廃棄物の処分技術開発についてはどうもうまくいかないんじゃないかということで、危倶の意見を原子力委員会に申し入れたという報道もされています。  つまり、原子力というのは、それは確かに魅力的かもしれないけれども、非常に危険であるがゆえに、その安全性を確保するために人手や技術やお金がかかるんだということ。このことを考えたら、この巨大な国家プロジェクトというのは常に常に見直していかなければならないんだと思うんです。このATRの中止が物すごく大きないい教訓だと思います。  ついでに、この原子力の問題について言えば、私も科学技術と政策の会という会に入っているんですが、そこで先日、その会長である中山太郎先生がこういうことを言っておられるんですね。原子力船のことですけれども、当時、科学技術庁は原子力船研究開発にこだわって、原子力船「むつ」の予算確保は、青森県の漁業組合の限りなき補償の増額要求もあり、妥協に次ぐ妥協を重ねていた。しかし、当時世界では、米国が原子力船サバンナ号の商船化は無効との結論に達して廃船処理しており、西ドイツでは同様に原子力船オット・ハーン号を廃船していた。この世界の現状とは全く異なり、日本科学技術庁は予算要求を続け約一千六百億円の経費を浪費する結果となった。これに対して自民党科学技術部会は、廃船計画の提示をすることを決意したということを、つい九月七日に言っておられるんですね。  もう一方で、例えばダムの問題があります。全国各地でダムが今目的を失って、多目的ダムという名前でつくられている。つい最近も、ある委員会の視察で某地に行ってきたところ、そこは炭鉱の閉山で人口が四分の一以下になっている。その村の再建を七百億円のダム工事にかけているんですね。そうすると、それが十年間続けば、七百億円、十年間地元に落ちるということ。そのダムの目的はもうどこかに行っちゃっているんです。このダムもそうだと思いますし、巨大国家プロジェクト、これはもうこれから高度成長の時代と違って、本当に我々国民の血税を大事に使わなきゃならない段階に来ているというふうに思います。  そういう意味で、最後に科学技術庁長官に、こういう巨大プロジェクトについて真剣に見直すべきではないか、特に高速増殖炉についても、世界の動向を踏まえて日本も真剣に見直す時期に来ているんではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  187. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 先ほど来、先生から貴重な御意見をちょうだいいたしております。ATRの問題等につきまして、その結論を出すに当たりまして私どもも極めて重く受けとめているということも御理解をいただきたいと思います。  今後、大型プロジェクトの進め方でございますけれども、こうした原子力あるいは宇宙、これからその研究開発を進めていかなければならない。しかしながら、おっしゃるとおり、人材と資金の多くを必要とすることは間違いございません。こうしたところで効率よく、御指摘のとおりこの資金あるいは人材を活用していかなければならぬわけでありますけれども、このATRの実証炉の見直し、これを貴重な一つの教訓といたしまして、経済向上のための研究開発を含めまして、関連の開発活動を研究開発主体と実用化を担う主体とが一体となって実施する体制、情報交換等々、もっともっと緊密にしていくような体制をつくってまいらなければならぬと思っております。  またあわせて、その進捗状況に応じまして計画そのものを評価いたしまして、これに対してその所要、適切な処置を講じていく、そうした体制をもあわせ構築してまいりたいと思っておるところでございます。  以上です。
  188. 今井澄

    ○今井澄君 質問を終わります。
  189. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 私は、まず最初に、文部大臣の歴史認識についてお伺いしたいと思うんです。  先ほど山崎先生からもお話がありました就任直後の記者会見で、山崎先生がおっしゃった以外にも、例えば個人の殺し合いの拡大そのものが戦争だとかあるいはこれは先生おっしゃいましたが、侵略か侵略じゃないかは考え方の問題だ、事実の問題ではなくて考え方の問題だ等々の発言をされまして大問題になりました。これは当然のことで、読売新聞は粗雑過ぎる発言だという社説を掲げました。私は、単にこれは粗雑では済まされない。  大臣はその後、なかなか撤回されなかったようですが、誤解を招いたので撤回をするというコメントを出されております。しかし、私は、この発言というのは誤解を招く発言じゃない。明らかに歴史の事実を歪曲している、ねじ曲げている。歴史の事実と相反する、こういう発言だから撤回しますというのが、これは大臣の発言を見た場合に当然なんじゃないでしょうか。
  190. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 私の就任時の発言につきましては、戦争は悲惨なものであって、二度と繰り返してはならない、これが第一点。第二点は、将来の国際貢献に向かって努力していくことが大切だと思う。第三点は、さきの大戦に関して、我が国の侵略行為や植民地支配などが多くの人々に耐えがたい苦しみと悲しみをもたらしたことに対し深い反省の気持ちに立つことが大切であり、今後とも世界平和の創造に向かって力を尽くしていくとの我が国の決意を新たにすべきものと考えているという論旨を申したところであります。
  191. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 御答弁になってないんだけれども。  じゃ、具体的に聞きますけれども大臣は、侵略か侵略でないかは考え方の問題だと、侵略のやり合いが戦争だと、こういうふうにおっしゃっていますね。そうしますと、一九二二年九月、柳条湖事件に始まるいわゆる満州事変、そして一九三七年七月盧溝橋事件、これで中国との全面戦争に入る。そして一九四五年、終戦を迎えるわけですけれども、この間、ずっと中国と戦争状態です。大臣は、侵略のやり合いだと、侵略のやりっこが戦争だと、こうおっしゃっている。中国は日本にどういう侵略をやったんですか。
  192. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) さきのいわば大戦におきましては、対象となる国はたくさんございます。したがって、もう本当に一方的に迷惑をかけたということで、全く我々の深い反省だけのものもありますし、また国によっては日本戦争中の対応に対して評価する面もある、こう言ってくださる国もないではありません。それらについて私の発言が多少適当を欠いたのかなと、そういうふうに考えております。
  193. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 全然質問に答えていないじゃないですか。中国が日本にどういう侵略をしたんですか。侵略のやりっこが戦争だと言っているでしょう。
  194. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 私は中国が日本を侵略したというふうには即しておりません。
  195. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 じゃ、どこが日本を侵略したんですか。
  196. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) どこの国が日本を侵略したということも申しておりません。
  197. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だから聞いているんですよ、言っていないから。しかし、あなたは侵略のやりっこが戦争だと記者会見でおっしゃっているじゃないですか。それが事実じゃないというなら事実じゃないと認めればいいんですよ。
  198. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 言葉が粗雑であったと言われればそういう面も確かにありますが、結果において攻め込んだ側がいわば侵略という行為ということにつながると、こう申したところであります。
  199. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 全然お答えになっていないんですよ。  例えば大臣文部大臣だから申し上げますけれども、今高校三年生が使っている世界史や日本史の教科書があります。私これ三冊持ってきましたよ。もっといっぱいありますけれども。大体どの教科書も記述はそんなに変わりません。  どう述べているかといいますと、東京書籍発行の「世界史」、これ今高校三年生が使っているんです。こう言っています。まず、タイトルとして「日本の中国侵略」と。ちゃんと教科書に中国をどう侵略したかと侵略図までかいてあります。そして「一九三一年には柳条湖事件をおこして東北地方を占領し」云々と。当時、「日本政府は軍部の中国侵略を制御できずこ「軍国主義の体制が強まった。」と、こう書いています。これ認めるんでしょう、大臣は。この教科書の内容まで否定するんですか。  あるいはこれは日本史の方です。自由書房の新訂版で「要説日本の歴史」、「中国をはじめ諸外国の強い非難にもかかわらず、日本は満州を侵略して、その市場を独占したが、それでも国内矛盾は解決されなかった。いらだった軍部は、さらに華北への侵略をはかった。」、こう書いてあるんです。  だから、大臣まともにお答えにならないので、高校で今使っている教科書の記述についてはそのとおりだとお認めになるんですか。
  200. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 私の真意は先ほど来申し上げているとおりであります。
  201. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そんなものは全然答弁になっていないですよ。答弁になっていないです。真意なんか何にも伝わってこないですよ。聞いていることに一切、何一つ答えていない。  委員長、だめですよ、これ。速記をとめてください。時間だけたっちゃうから、時間短いのに。
  202. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  203. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 速記を起こしてください。
  204. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 教科書について、まだ個々に目を通しているわけではございませんが、検定を受けて出ているものという意味合いからいえばそれは認めてよいと思います。
  205. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 この教科書の記述で日本の中国侵略ということを認めてよいということを確認しましたので、次に行きたいと思うんです。  中国への戦争が侵略戦争だったというのは、これはもう明白で、例えば大臣と同じ党の自民党の後藤旧正晴さんだってこうおっしゃっているでしょう。これは朝日新聞で、「満洲事変以来、太平洋戦争に至る一連の経過をみた時に、侵略戦争でなかったという認識は通りませんよ。当時「満洲は日本の生命線だ」といわれていた。しかし、満洲は中国の領土であり、人民なんですよ。よその国の領土と国民が、日本の生命線だといって、その権益が侵されたと、満洲全土を占領する。これは文字通り侵略ですわな」と。これは当たり前の話だ、こんなこと。  ちなみに、元最高裁長官で国際法の大家だった横田喜三郎先生は、「戦争犯罪論」の中で、「かえりみれば、満洲事変からこのかた、一五年の長い間にわたって、日本は軍部と官僚に引きずられ、極端な侵略戦争を行ってきた。弱肉強食の帝国主義的侵略を重ねてきた。条約を無視し、正義に挑戦し、驚くべき暴虐を行った。」と。横田喜三郎さんですよ。当たり前の話なんだ。  もう一つ聞きますけれども、例えばよく対英米戦についてこういうことを言いますよね、ABCD包囲網があったからやむを得なかったと。こういう議論がされますけれども大臣はこの議論についてはどういうふうにお考えですか。
  206. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 戦争というのはいろんな環境や状況の中に起きるものでありまして、個人のけんかでもやっぱりただ足を踏まれたというだけで起きるものもありますし、またいろいろな角度から精神的な苦痛を与えられて耐えられなくなって起きるけんかもありますが、国家間の争いということになるともっと複雑な要素がかみ合いますから、一概にどうこうというのは言えないと思います。
  207. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 一概に言えないというのが私は大問題だと思うんです。大問題だと思う。ポツダム宣言を日本は受諾したんでしょう。大臣はポツダム宣言なんかもう否定しちゃおうと言うんですか。ポツダム宣言の第六項はどういうふうに書いていますか。
  208. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 今手元に資料がございませんので。
  209. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ポツダム宣言は第六項で、あの戦争は世界征服の戦争だったと、こう書いているんですよ。それを日本は受け入れたんです。あるいは国連憲章五十三条じゃ何て書いてあるか。日本やドイツ、イタリアのやったことは侵略政策だったと。侵略行為じゃないですよ、目的が侵略だったと、最初から。そして、この国連憲章を認めて日本だって国連に加盟したんでしょう。そしてこれが戦後政治の原点じゃないですか。一概に言えないというならポツダム宣言を受け入れたのがいいか悪いがわからないと。国連憲章五十三条がいいか悪いがわからないと。それじゃ戦後政治の原点ほどうなるんですか、一体。大臣の認識を聞きたい。
  210. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) ポツダム宣言を受諾したことはよく承知いたしておりますが、その時点のいわば国際的、あるいは国内のいろいろな状況に照らしてあの時点では受諾せざるを得なく、またそれを受諾したということは、認めたということになると思います。
  211. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そのとおりなんです。この問題について言えば、一九四〇年九月、当時近衛内閣が皇国の大東亜新秩序建設のための生存圏についてという決定を行ったんです。これは日満支、つまり日本、当時の満州そしてシナ、これはもう日本そのものだという前提の上で、今で言うベトナム、カンボジア、ラオス、ニューカレドニア、タヒチ、タイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド、これを日本の領土にしていく、もしくは勢力圏にしていくという決定を行っているんです。これABCD包囲網の一年以上前です。一九三一年の中国侵略に、いわゆる満州事変に始まって、そして全面戦争、そしていわゆるABCD包囲陣がしかれるその一年以上前にアジア・太平洋地域をみずからの領土あるいは勢力圏にしていこうという決定を行っている。  だから、ポツダム宣言は世界征服の戦争だったと、日本軍国主義は侵略政策を進めていたということを国連憲章でもうたったんです。このことをはっきりしないと、私、子供たちに平和のとうとさや、あるいは戦争の悲惨さや、あるいはその誤りを一体どうやって教えるんだと。まさにこれ戦後政治の原点でしょう。  こういうものを受けて憲法前文だって、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうに」「決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」と、政府の行為によって再び同じ過ちを繰り返してはならないということを憲法前文だってうたっているんじゃないですか。  この認識もなくて、大臣就任のときに、粗雑というか何といったらいいのか、事実を全くよく知らないで発言しているというのはもうとんでもないことだというふうに私は言わざるを得ないと思うんです。  大臣は何を聞いてもこれ以上余りお答えにならないようなのであれですけれども、ドイツのワイツゼッカー前大統領の言葉じゃありませんけれども、過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となるということを言いましたよ。歴史というのは、何も過去の古い、何年に何があったということを学ぶために我々は歴史を知るわけじゃないです。その歴史からいかに教訓を導き出して、それを現在と未来の羅針盤にしていくかということが我々問われているわけです。  そういう点でいえば、あの戦争についての大臣の認識、今ポツダム宣言についてもあるいは中国侵略についてもお認めになりましたけれども、こういう立場文教行政、文部行政をやっていく決意があるのかどうかお伺いしたいと思います。
  212. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 人間、例えば私一人の今までの人生を顧みても、たくさんの過ちもあり、また、反省もあるところでありますし、そこで学んだ知恵もまたあるところであります。  文教行政におきましても同様でありますし、戦後ちょうど五十年の節目に当たりますから、先ほど来申し上げておりますとおり、これからこの五十年の節目に立って、戦後なら戦後の教育、これからのあり方、そういうものを大臣に見直して新しい前進を図ろうと、こう言っているところであります。
  213. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 次に、いわゆる登校拒否、不登校問題について伺いたいと思うんですけれども文部省の調査でも、小中学校合わせて約七万七千人の不登校児がいると。これは三十日以上学校に来ていない子供たちです。ですから、三十日未満の子供を入れると恐らくこの数倍になるだろうと言われていますね。あるいは高等学校の中退者も約九万人を超えています。  これは、公教育、いわば公の教育、ここが大きな危機にさらされている、こういう深刻な問題だと思うんですけれども、この点についての認識をまず大臣にお伺いしたいと思います。
  214. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 登校拒否児童生徒は、年々増加する傾向にあることは御指摘のとおり。しかも、今数字を挙げられましたけれども、なるほど平成六年度の間に三十日以上欠席した児童生徒数は小中学校合わせて約七万七千人に上るなど、憂慮すべき事態と受けとめておるところであります。  この問題の解決のためには、学校もとよりでありますけれども、家庭あるいは地域社会が一体となって取り組む必要があると受けとめております。特に学校におきましては、児童生徒の深い理解に立って、一人一人の児童生徒が生き生きと充実した学校生活を送ることができるような指導に努めることが大切である。また、文部省といたしましても、一人一人を大切にし、個性を生かすという学習指導要領の趣旨を実現する教育を着実に進めていくとともに、教員の資質、能力の向上教育相談体制の整備、学校、家庭、地域社会の連携など、各種の施策を総合的に推進していくことが重要と考えているところであります。  今後とも関係施策の一層の充実に努めてまいる所存であります。
  215. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 どうしてこれほど多くの不登校児、登校拒否児が出るのかという点について、かつて文部省は、子供の神経症的行動であるとか病気や怠け、甘えあるいは家庭の問題、あるいは子供自身の問題というふうにとらえてきました。しかし、この数が非常にふえて深刻だというので、さすがに九二年三月には、登校拒否というのはどの子にも起こり得る、こういう問題としてやはりとらえていく必要があるという立場に立たれております。  私は思うんですけれども、不登校児の中には長期の不登校児もおれば短期の不登校児もおります。いずれにしろ、これはいわば学校教育の危機的状況というふうにも言えるわけですから、やはり学校側としては、こういう子供たちが再登校するという可能性というのはこれは全然ないわけじゃございませんので、その再登校に備えて、教師であるとかあるいは施設設備であるとかやはり万全の体制を整えておく、そして再登校を一人でも多くふやしていくという立場に立つのが当然だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  216. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  先生指摘登校拒否の子供たちに対する取り組みにつきましては、基本的にはただいま大臣から御答弁があったとおりでございますが、私どもとしては、そういう登校拒否の子供についてのいろいろな状況にかんがみまして、そういう一人一人の子供を的確に把握するよう学校において適切な対応をしていただくようにお願いをしているところでございます。  また、この問題については、やはり学校、家庭、地域社会が一体となった取り組みをしていくということから、従来からそのような取り組みをしておりますが、その中でも適応指導教室等も設け、また登校拒否児を受け入れる民間施設等についても、民間施設に通う子供たちについては校長等の判断で出席扱いにするなど、必要な措置を講じて子供たち教育が十分適切に行われるような対応というような取り組みを現在しているところでございます。
  217. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 余り聞いていることには答えていないんだけれども、ともかく学校側が、再登校する可能性の子供がいるわけですから、受け入れ体制をとっておくというのは、これは当然だと思うんですね。  ところが、一九八五年の十二月二十二日、文部省教育助成局長名で各都道府県の教育委員会に出した通知があります。これは「義務教育費国庫負担金の額の算定の基礎となる児童生徒数の適正な把握について」という国庫負担金の算定基礎になる児童数をどう把握するか、この通知ですよね。これを見ますと、その2の(2)で、「一年以上居所不明の児童生徒及び一年以上当該学校に通学していない児童生徒は、教職員定数の算定上は在籍者としない」と、こう書いてあるんですね。つまり、まあ長期と言えるのですかね、一年以上の不登校児は教職員定数の配分の算定基礎にしないと、こういうことですよ。  そうしますと、長期にわたる児童生徒の受け入れ体制というのは、教職員定数の点ではこれはもう最初から省かれている、最初から切り捨てられていると。居どころ不明の子供と同じ扱いですよ、登校拒否児は。こんなばかな話はないと思うんです。どうなんですか。
  218. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 時間がないから簡潔に答弁してください。
  219. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) はい。  その通知では、各年度の五月一日現在の児童生徒数に基づいて定数を算定するというのが基礎でございますので、そのときに一年以上登校していない者については算定の基礎から一応外すということでございますが、それが出てきた時点でまた再計算をいたすわけでございます。  一年以上登校しない児童生徒の中には登校拒否の児童生徒も含まれる可能性もございますが、そのほか病気等で登校できない生徒もございますので、そういう生徒についてはまだ登校した時点で判断をする、こういうことでございます。
  220. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 少なくとも、再登校の可能性というか再登校をさせる努力というのは総合的に進めるわけでしょう。そうであるなら算定基礎に最初から入れる。そうしなきゃ、最初からもう事実上再登校を放棄しているということになるんじゃないですか。もう一遍答えてください。
  221. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 先ほど申し上げましたように、一年以上登校していないという児童生徒については、その理由がいろんな理由等で登校していないことでございまして、必ずしも登校拒否の児童生徒だけではございませんので、登校拒否の児童生徒について登校する用意がございますればそのような措置をしたいと思います。
  222. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ともかく、再登校すれば直ちに措置はとるということですね。そのこともちゃんと教育委員会に通知してくださいよ。  私は、実はこれは逆だと思うんです。そういう不登校児を抱えているところではむしろ教職員の手がもっと要るんです。だから、むしろそういう学校であるとかクラスにこそ教職員定数の配分を手厚くしていく。そして、できるだけ早くそういう子供たち学校に来れるようにしていくというのを学校としてもできるようにしていくというのが私は文部省として必要なことだと思うんです。その点について検討してみてはどうですか。
  223. 遠山耕平

    説明員遠山耕平君) 登校拒否の児童生徒に対応するのは養護教諭の仕事の一つではございますが、登校拒否の児童生徒を登校させるについては、養護教諭だけではなくて先生方あるいはスクールカウンセラー等いろいろな方々の協力が必要でございます。そういう点で、登校拒否の児童生徒数が多いからといって養護教諭を直ちに増員するということは困難であろうというぐあいに考えます。
  224. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 終わります。
  225. 国井正幸

    ○国井正幸君 新緑風会の国井正幸でございます。  まず、文部省にお伺いをしたいというふうに思います。  先ほども議論があったところでございますが、最近一連のオウム真理教事件に見られるような大変凶悪な事件が多発化する傾向にあるわけでございますけれども、こうした事件の背景には多分に心の問題があるというふうに言われておるところでございます。  心豊かな人間を育てるというのが教育の最も重要な使命だろうというふうに思うところでございます。ところが、我が国教育の現場では幼稚園から大学に至るまで大変な受験競争が展開されておりまして、多くの国民はこうした現状を決してよしとはしていないんではないかというふうに思います。隣がやるからいわゆる対抗上やむを得ないということで塾通いなんかもやっている、こういうふうな状況にあるんではないかというふうに思うところでございます。人格を形成する大変重要な時期に、子供たちをもっとゆとりを持って、そして思いやりのある心豊かな人間に育てるということが今一番求められているんではないかと考えておるところでございます。  そうした中で、聞くところによりますと、宮崎県に初めて公立て中学校高校の一貫教育をする学校が設置されたというふうに聞いております。そういう意味で私は大変すばらしい試みではないかというふうに思っておるところでございます。ただ、この学校は大変人気があるようでございまして、この学校に入るためにこれまた大変な受験競争が一方ではある。さらには、言うなら中学一年生から高校三年生まで六年の開きがあるわけで、年齢幅の大きい集団が一つの学校に長い間いる、六年間いるということになるわけですから、いじめなんかがあった場合は非常にそれが長期化するんではないかこんな指摘もされているわけでございまして、長短いろいろあるんではないかというふうに思うんです。  ただ、我が国高校進学率がここまで大変高くなってきている。そういう中では、中学、高校の一貫教育制度というのはもう検討する時期に来ているだろうというふうに私は思うわけでございます。  そこで、これまで中高一貫教育制度についてどういうふうなことを検討されてきたのか今どういう状況にあるのか、この辺についてまずお伺いさせていただきたいというふうに思います。
  226. 井上孝美

    説明員(井上孝美君) お答え申し上げます。  中高一貫教育に関しましては、昭和四十六年六月の中央教育審議会においては先導的試行の提言をいただき、また、昭和四十六年六月の臨時教育審議会第一次答申におきます六年制中等学校の提言などが行われてきたところでございます。  文部省におきましては、これらを受けまして、中学校及び高等学校における教育の連携を深める教育課程の研究開発や有識者による協力者会議における調査研究などを行ってきたところでございます。このような提言や調査研究におきまして、中高一貫教育につきましては、高校入試の影響を受けずにゆとりある安定した学校生活が送れることのほか教育課程上の重複や切れ目がなくなり効率的、一貫的な教育を行うことができるなどの意義が考えられるとされております。  しかし一方で、入学者の選抜方法によっては受験競争の低年齢化を招くおそれがあることのほか、生徒の発達段階差が拡大し生徒間の序列化が進んだり、また人間関係の固定化が生じるおそれがある、また年齢差の大きい集団をまとめる困難が予想される、また六年間同一の学校で生徒の多様な能力、適性等に対応した教育内容を用意するとすれば施設設備の整備や教職員配置等が困難であるなども課題とされております。  また、御指摘の宮崎県立五ケ瀬中学校及び五ケ瀬高等学校につきましては、公立学校として全国初の中高六年間の一貫教育を行う全寮制の県立学校であり、中高一貫教育の利点と森林環境に恵まれた同校の特性を生かした教育課程の開発を行おうとしていることを踏まえまして、文部省としても研究開発学校に指定しているところでございます。なお、五ケ瀬中高等学校の入学者選抜につきましては、私ども宮崎県からお聞きしているところでは、中学校における調査書等を参考にし、小論文あるいは漫画等をかかせるというような、学力検査を一切せずに二倍までに候補者を絞り、その後で抽せんによって入学者を決めているというような独自の選抜方法を用いていると聞いているところでございます。  現在、文部省といたしましては、学校間の接続の問題に関しまして、現行学制の中で学校の各段階相互の教育内容の連携、大学、高等学校における入学者選抜や進路指導改善等につきまして中央教育審議会に御審議をお願いしているところでございます。中高一貫教育につきましてはこのこととの関連で御審議いただけると考えておりまして、中教審の審議を注意深く見守ってまいりたいと思います。  なお、先ほど臨教審答申の年次を昭和四十六年と申したそうでございますが、これは昭和六十年に御訂正をお願いしたいと思います。どうも失礼しました。
  227. 国井正幸

    ○国井正幸君 私は持ち時間が少ないので、できるだけ簡潔にひとつお願いをしたいというふうに思うんです。  今、審議会で検討中というふうなことなんですが、基本的にはどうなんですか。そういうものが出なくちゃ何とも言えないということなんでしょうか。方向性として評価する方向で進めようとしているのか、そうではないということなのか。その辺簡潔に、どうでしょうか。    〔委員長退席、理事大木浩君着席〕
  228. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 中教審で今御審議いただいていることは今申したとおりですが、大臣就任あいさつをいたしました際に、私は実は旧制の最後の中高一貫教育の経験者でございます。六年間一貫教育を受ける過程で、入学したときはまずまずであっても、途中から勉強を怠り親を悩ませたり自分自身も大分落ち込んだ時期がありましたけれども、六年間の間にやっぱり先生の親身の御指導をいただいて今日ある。六年あって、いつも受験受験にさらされずに、その間に運動部の活動もできたし、みんなと一緒にいろんな楽しい思い山もつくれた。  今のように常に受験の恐怖を脳裏に置いていたのでは、子供が健全に育ちにくいのではないか。最近の私立学校公立学校が大きくいわばいろんな成績で置いていかれているという実態もこれあり、もう一度中高一貫教育というものを見直してみる必要があるのではないだろうか。私見ではございますが、私の縦験に照らして申し上げると、こういうふうに言ったところでございます。  私が何かこうしてもらわなきゃ困るということを言う権限はありませんが、しかし審議会の先生方もそれらをよく踏まえてお考えの方もおられるのではないかなと、そう感じたところであります。
  229. 国井正幸

    ○国井正幸君 やはり非常に制度が硬直化していますから、そういうことを含めてもっと試験研究といいましょうか、その学校も一校だけにとどまらずもっと前に進める方向で、試験校等ももっと多くするようなことでぜひ取り組んでいただければと、こう思うところでございます。  話題を変えまして次でございますが、最近産業の空洞化あるいはリーディング産業の停滞などの問題が大変に顕在化してきておりまして、我が国の産業、そして社会の持続的な発展を図っていくためには新しい産業をぜひつくり出していくことが不可欠であるというふうに考えておるところでございます。そのためには何よりもまず独創的な、あるいは基礎的研究というのが活発に行われなければならないというふうに考えておるところでございまして、午前中の議論でも、我が国資源がないということになると、やはり残るは知識あるいはマンパワーだと、こういうふうな話もあったところでございます。  そこで、文部省あるいは科学技術庁、双方にお伺いをしたいというふうに思うんです。  まず科学技術庁にお伺いをしたいというふうに思いますが、民間の研究開発投資が大変今減少しつつあるわけです。大変これは企業の経営実態も厳しいわけでございまして、そういう中にあって独創的あるいは基礎的研究を活発に行うために、科学技術庁としてそういう環境であるがゆえにどういうふうな施策を講じようとしているのか、できるだけ簡潔にひとつお答えをいただければと思います。
  230. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 今の先生の御質問はそのとおりでございまして、今バブルがはじけまして民間の研究開発投資というのは減少いたしております。ゆえに国といたしまして、リスクの高いと言われる基礎研究、こうしたものに力点を置いていくというところから今日の予算の傾向を見ますときに、かなりその研究開発費というものはアップしておるということは我々としても喜んでおるところでございます。  そうした中で、独創的または基礎的研究の分野において科技庁としては何をしておるかというお尋ねでありますが、一、二御紹介をさせていただきます。  科学技術振興調整費、これを使いまして中核的研究拠点をつくろうではないかと。これは、我が国には世界的に有名というか名をはせた、そうした研究施設、研究拠点というものがいまだ見当たらないのではないか。ひとつ我が国の研究機関の中から世界的に貢献できるような、そうした分野を育成していこう。現時点はまだ限られたものでございますけれども、年間数億円、それを五年間国として出しまして、研究をしてもらうというような施策を講じておるところでもございます。  もう一つは、現在二十プロジェクトにわたって研究をしてもらっておるんですけれども、新技術事業団の創造科学技術推進制度というものでございます。これは我が国における極めてすぐれた学者、研究者をヘッドに、頭にいたしまして、これに若手の研究者を動員し、動員といっても実はグループとしては十人からほぼ二十人ぐらいというふうに聞いておるんですけれども、こうした人たちに年間四億、これも五年間にわたって資金を提供し研究を進めてもらうということ。  また、極めて基礎的な分野にわたっては、理化学研究所のフロンティア研究制度というのがございます。これは十五年間にわたるわけでございますけれども、例えば東北、仙台では光の研究をやっていただいておる、名古屋では生物のまさに一番の基礎になるといいますか生態研究というものをやっていただいておるわけであります。これまた金額としては現時点では年間二、三億というものでございますけれども、こうしたことを当庁としてはやっていただいておるところであります。  なお、八年度の概算要求の中で、私どものまさに目玉といたしておりますのが戦略的基礎研究推進事業というものでございます。これは大学あるいは国立研究機関におる若手の研究者、しかしながら十分研究の場を、機会を与えられていない方々を対象といたしたいと思っておるんですが、公募方式によって、自分はこういう研究をやりたいと、こういうことを新技術事業団の方で認めた場合、これに対しまして資金を年間数億提供し、これを五年間ほど続けていく。こういうようなことも今考え、予算要求をいたしておるところでございます。
  231. 国井正幸

    ○国井正幸君 それでは続いて、この問題に関連するわけですが、文部省にお伺いをしたいというふうに思います。  先ほど来、予算の使い方の問題ではいろいろ議論があったところでございますけれども我が国の大学における研究費の問題でございます。  我が国の大学における研究費は、ちょっと調べてみたところによりますと、対GNP比で〇・二八%ということで、アメリカやイギリス、さらにはフランス、ドイツなどの先進諸国が〇・二六%から〇・四四%の水準にあるというふうに聞いているわけでございますが、これらに比べると大変に低いんではないか、こういうふうに思うわけでございます。  また、公費負担の割合というのも、これらの四カ国なんかでは大体七二%から九三%ぐらいまで、幅は随分あるようでございますけれども、こういう水準にあるというふうに言われていますが、我が国は五四・五%、五割をちょっと超したところ、こういうふうなことのようでありまして、決して十分な水準ではないというふうに思うんですね。そういう中で、今国の予算も大変厳しい状況でございますけれども、やはりこれから予算の確保とあわせて研究体制をどのように確立していくのかというのが大変重要だというふうに思うんですね。  時間の関係もありますので、どういうふうにするかということとあわせて、今時にとかく我が国の大学というのは閉鎖的だという批判も一方ではあるんですね。ぜひ民間との連携というのも必要なのではないかというふうに思うところでございます。まさに産学連携による有機的あるいは一体的な研究というものが促進をされなければならないだろうというふうに思うんですが、その研究体制の確立とあわせて、この産学共同の研究体制のあり方等について、御所見があればお伺いをしたいというふうに思います。
  232. 林田英樹

    説明員(林田英樹君) 我が国の大学の研究費の対GNP比率でございますとか公費負担割合がアメリカ、イギリス、ドイツやフランスと比較した場合、低い水準にあるというのは先生指摘のとおりでございます。私どもといたしましても、このようなことも考えながら、学術研究の予算の拡充のために努力を続けておるところでございます。  特にまた、今御指摘のございました産学の連携による研究の支援というふうなことにつきましても意を用いておるつもりでございまして、昭和五十八年度には民間との共同研究制度が発足したというふうな経緯がございますけれども、その後、昭和六十二年度からは産業界との研究協力の推進の場でございます共同研究センターを順次国立大学に設置するというようなことも進めてまいっております。  大学におきまする取り組みの姿勢も大変高まってきているように思いますので、さらにこのような努力を続けまして、産学の連携によります研究に大学が十分取り組めるように予算的にも努力してまいりたいと思っております。
  233. 国井正幸

    ○国井正幸君 ぜひ、そういう意味では民間との連携というものも進めて、一層御努力お願いしたいというふうに思います。  次に、科学技術の基盤というものを整備していくということを考えますと、やはり忘れてならないのは、いかに優秀な研究者を確保するかということだと思うんですね。いわゆる属を厚くするかということだというふうに思うんですね。     〔理事大木浩君退席、委員長着席〕 そういう意味で、これからはやはり技術立国ということで考えていきますと、技術者あるいは科学者の需要増というのが見込まれるわけですね。そういう中にあって、いかにしてその担い手となるべき若い人材を育てるかというのは大変重要な課題だろうというふうに思うところでございます。  最近の統計等によれば、科学技術についてのニュースあるいは話題に関心のある人の割合というのは、若い年代にいくほどどうも何か下がっているというふうなことが言われているようでございます。若者の科学技術への関心は薄れているということにこういう統計から見るとなってしまうわけでございますけれども、そういう状況の中では研究そのものに幾ら金をかけていってもなかなか持続していくのが難しい、こういうふうなことでございます。  こういうふうな状況を打破するためには、初等あるいは中等教育において、創造的探究心というんでしょうかこういうものを養うということが必要だというふうに思いますし、さらに常日ごろから科学技術になれ親しむような環境というものを整備していくということが非常に重要であるというふうに考えているわけでございます。  科学技術庁に聞いた方がよろしいかというふうに思いますが、いかにして科学になれ親しむかという部分ですね、これらに対してどんなふうな施策を講じているのかこの辺をお聞かせいただきたいと思います。
  234. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 先生指摘のとおり、当庁といたしましても、子供たち科学技術離れ、このことを大変憂慮いたしておるわけでありまして、我が役所といたしましても知恵を絞っていろいろの対策を講じておるところでもございます。科学技術を身近に感じるための各種のイベントをやってもおるわけであります。  もっと具体的に申し上げますと、青少年が科学技術に深い関心を持ってもらうために、サイエンスキャンプ、科学者と研究者と子供たちが触れ合う、そうした機会も持っておるわけであります。  また、若手の研究者に頼んでおるんですけれども、暇を見つけてできるだけ自分の母校へ行ってくれないかそこで自分の研究成果というものをわかりやすく子供たちに話してほしいと。これは大変成功を見ておるわけでありまして、子供たちが目を輝かせて話に聞き入るということを耳にいたしておるわけでございます。これを俗に我々は出前レクチャーというような言葉を使っておるわけでございます。  また、科学館、これは自治体がほぼ三千三百ある中で三百ほどの科学館というものができ上がっておるんですけれども、その内容あるいは数というものをでき得ればいま少しく伸ばしていく中で子供たちの関心を呼び起こしていきたいと思っておるところでございます。
  235. 国井正幸

    ○国井正幸君 科学技術を身近にとらえ考えるための多様な機会というのをぜひ提供する、そして青少年を初めとする科学技術系人材を将来にわたって確保していく、このことは非常に重要だというふうに思っておるところでございます。また、やっぱり科学技術基盤の充実強化というのが日本の産業の空洞化を阻止し、将来に向かつて我が国経済社会を支えるかぎだというふうに思うところでございます。  政府におかれましても、ぜひそのための施策というものを真剣に御検討いただきまして、着実に実施をしていただきたい、このことを要望させていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
  236. 水野誠一

    ○水野誠一君 新党さきがけの水野でございます。  先ほど清水委員からも御質問がありましたフランスの核実験に関連して幾つか御質問をしたいと思います。  国際社会の強い反対にもかかわらず、フランスがムルロア環礁での核実験を再開したということは、広島・長崎への原爆投下五十年を迎え、世界で唯一の被爆国であります我が国としては非常に残念なことだと考えております。本年八月四日には、衆参本会議におきましても、「中国の核実験に抗議し、フランスの核実験に反対する決議」が採択されて、政府に対しまして、中国、フランス両国政府に直ちに適切な処置を講じるよう求めたわけであります。政府は、核実験後にはおくればせながら松永特使を派遣する、さらには本日の未明、国連におきましての河野外相の演説等でも強い遺憾の意を表したものの、国名の名指しを避けるなど、甚だ迫力に欠けるものであった。日本政府の対応が及び腰であると言わざるを得ない状況ではないかと思います。  フランスの核実験再開は、核拡散防止条約、NPT無期限延長の精神に反する重大なルール違反であり、NPT無期限延長に慎重でありました非核保有国が主張する不平等性を図らずも証明したことになり、NPT体制そのものに対する信頼感は大きく失われたのではないかというふうに考えます。  さて私は、今回、南太平洋環境大臣会合でオーストラリア政府が発表いたしましたムルロアでの核実験の影響に関する科学諮問グループの調査報告書を読まさせていただきました。この調査は、オーストラリアの環境大臣の要請で行われたものでありますが、放射能の漏れであるとか、それによる周辺環境の汚染の可能性について、現段階では十分なデータがないのではっきりとした危険性を指摘できていないわけであります。しかも、もし漏れが起これは周囲のエコシステム、そしてさらに広範な地域、環境に影響を与える可能性が大きいので、ムルロアにおきます長期的なモニタリングを実施する必要性があるというふうにこのレポートは訴えているわけでございます。  また、環礁の構造的健全性について明らかにし理解するとともに、放射能の漏れの時期や規模について推定するためにはもっと情報最が必要であるということも述べています。フランスは過去二十年以上、仏領ポリネシアでのさまざまな実験を通じた関連情報を蓄積しているわけでありまして、公開情報を早急に国際学会に提供して第三者による検討分析が行えるようにすべきだと、またこれも述べているわけであります。  フランスがIAEAに調査要請をしました。IAEAも限られた資料公開の中での、また限定された期間あるいは限定された条件の中での安全性調査には慎重にならざるを得ない状況であるというふうに承知をしております。しかし、このような視点から、今後我が国もオーストラリアやあるいはニュージーランドの国々とともにフランスに対してムルロア環礁に関する科学的データの公開を要求していくべきだと考えますし、また国際的なモニタリング活動にも積極的に参加すべきではないかというふうに考えますが、この件についての科学技術庁及び外務省の御見解を伺いたいと思います。
  237. 浦野烋興

    国務大臣浦野烋興君) 午前中の御質問に対しましても御答弁を申し上げてきたところでございますが、フランスの核実験の環境影響調査、このことにつきましてはフランスからIAEAのブリックス事務局長に対しまして要請、依頼がございました。これに対して、午前中の私の御答弁では、ブリックス事務局長は慎重にこれを検討しておるという発言があった等の御報告を申し上げたところでございますが、IAEAといたしましてはこの点については、慎重というと後退的な受けとめ方もされようかと思うんですけれども、今後その調査をするといたしましてその体制をどうするのかまたその調査内容、方式あるいは範囲、こういうようなものに対しまして慎重にひとつ検討をしていこう、こういうような姿勢であると私は受けとめておるところでございます。  我が国といたしましての姿勢は、私はIAEA総会で発言してきたところでございますけれども、この環境影響調査を実施するとしてもこれは核実験の継続そのものを正当化するようなものであっては決してならぬと、この大前提をもって私は意見を述べてきたところでもございました。  さて、この環境調査に対しまして我が国がいかなる対応をすべきかということでございますけれども、こうした評価、環境影響調査をするというその評価は、あくまで客観的な立場にあるといいますか、IAEAのような申立的な立場にある機関、これが関係国と密接な連携をとりながら、これは我が国もその一つでありますが、そうしたことによって行われるというのが妥当であると認識をいたしておるところであります。  したがいまして、先ほど申し上げました体制、内容、方式、範囲等々、現在IAEAで検討しておるということを承知しておりますので、そのIAEAの方向性を見きわめながら、諸条件が整った段階において我が国としての対応を考えたいと思っておるところでございます。
  238. 山崎隆一郎

    説明員山崎隆一郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生指摘のとおり、今回のフランスの核実験の実施というのは国際的な核軍縮努力に逆行するものでございます。したがいまして、環境への影響の有無にかかわらず極めて遺憾なことと考えておりまして、先ほども指摘ございましたが、昨夜の河野外務大臣の国連演説を初めあらゆる機会を通じましてこのような核実験の停止を強く求めてきておりますし、今後とも求めていく所存であるということをまず冒頭申し上げたいと存じます。  それからIAEAの調査保の絡みでございますが、ただいま科学技術庁からも御答弁ございましたように、フランス自身の要請に基づきまして現在IAEAにおいて調査の実施に関する検討が行われている、そういう状況でございます。この調査を行うことが決定され我が国にも協力を要請された場合には、このような調査への参加を我が国としても検討してまいりたい、そう考えております。  また、つい先日、二十二日のIAEA総会にて、我が国を含みます十九カ国の共同提案によりましてコンセンサスで採択された決議がございます。その決議は核実験の停止等に関する決議でございますが、その中には、核兵器国等に対して核実験による環境等への悪影響をIAEAに報告することを要請しております。  それから最後に、ただいまやはり御答弁ございましたが、我が国としましては客観性、効率性の観点から、まず中立的な国際機関たるIAEAにおいて行われる情報の収集、分析を関係国とも協力しながら支援していくということが適当ではないかと考えております。
  239. 水野誠一

    ○水野誠一君 ジュネーブで核実験全面禁止条約交渉、いわゆるCTBTと言われる交渉の中で、核実験探知のための世界的ネットワークをつくることが検討されているということでございます。そのネットワークづくりにはおよそ百億円以上の費用がかかるということですが、最近アメリカがこの金額を国連分担金に応じて各国が出資するべきではないかという提案をしておりまして、伺うところによりますと、我が国もこれに同調するというふうに伺っております。  我が国は一二・四五%、つまり世界第二位の拠出国ということになるわけでありますが、これは基本的に非常に重要な監視機構になっていくということから積極的に取り組むべきだというふうに私は思いますが、単にこれも金を出すだけではなく、被爆国として人的、またさらにいえば技術的な貢献を含めて核実験探知のネットワークづくりに協力すべきではないかと思います。この点について外務省の御見解を例えればと思います。
  240. 山崎隆一郎

    説明員山崎隆一郎君) 我が国外交の一つの柱でございます国際貢献というスローガンといいますか重大な目標がございますけれども、その中で今の先生の御質問にも関連する人的貢献というのは大変重要な位置を占めております。  今の御質問に関連しまして一言、冒頭経緯をちょっと申し上げたいと存じます。  全面核実験禁止条約、いわゆるCTBT、この交渉は昨年一月から開始されておるわけでございますが、いわゆるジュネーブにございます軍縮会議では、これに先立つ七六年以来、核実験の地震学的検証に関する専門家会合というものが設置され活動しております。我が国からはその第一回目の会合からこの分野の権威でございます末廣元気象庁長官等の専門家が参加しますと同時に、この会合のもとで進められております世界的地震データ交換実験という実験の一つの中核国として協力しております。  その後、本年の軍縮会議の第二会期というのがございまして、つい先日九月二十二日、先週終わりました。そこでは、地震波による核実験探知のステーション、今御質問にありましたステーションの設置場所について原則合意されたわけです。世界各所に、多分五十カ所ぐらいに散らばるものでございますが、その中には我が国の松代地震観測所も含まれてございます。したがいまして、CTBT条約発効後は国際的な監視ネットワークの一翼をそれが担うということになります。  それから、我が国はその国際的監視ネットワークの整備に資するため、インドネシア等途上国の地震専門家を育成する研修プログラムを本年度から始めるということを計画しております。  さらに、今後とも探知ネットワークを含みますCTBTの各種機構に対しては、資金的協力も加え、さまざまな技術的あるいは人的協力ないし貢献を行ってまいりたいと存じます。
  241. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほど今井委員から核燃料問題については非常にすばらしい御指摘がありましたので、その問題は重複を避けて省略をしたいと思うんですが、一つだけそれに関連して伺いたいのは、本年フランスにおいて再処理後の高レベル放射能廃棄物が日本に返還になった。そのときに青森県の六ケ所村で一時貯蔵されることになるまでに一騒動が、大きな騒動があったわけでありますが、これは皆さんの御記憶にも新しい。しかし、これはあくまでも一時的な措置であるということであり、今後最終処理地を決めていくことが最大の課題となっているわけでありますが、科学技術庁として安全性の実証あるいは啓蒙を含めてどのように取り組んでいかれるかその後どんな御検討をなさっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  242. 岡崎俊雄

    説明員(岡崎俊雄君) 先生指摘の高レベル廃棄物の処理、処分、特に処分の対策というものは原子力開発利用を進める上で避けて通れない大変重要な課題だと認識をしておりますし、まさに原子力発電によります便益を享受しております現在の我々の世代が責任のある対応をとっていくことが大変大事なことだと思っております。  この高レベル廃棄物の最終的な処分につきましては、放射能が長期の時間をかけて減衰をしていくということを十分念頭に置きながら、その処分の実施に当たっては世代を超えて、広く人間付会と自然環境への影響も十分考慮しながら、将来世代へ負担を残すことのないように安全かつ確実に処分を行っていくということが大変大事なことだと認識をしております。  このような認識の上に立って、現在、高レベル廃棄物につきましては、まず廃棄物をガラス固化という大変安定な形態にいたします。さらに、このガラス固化体につきましては三十年から五十年の間、すなわち数十年の長い期間をかけて冷却をし、最終的な処分に適するまでの間、地上の管理施設において貯蔵を行っていきたいと思っております。したがいまして、三十年から五十年後に地下の深い地層中に安全に処分をするということが基本的な考え方でございますし、これはまさに国際的な専門家の間でもこのような地層処分がやはり適切であろうという見解が取りまとめられているところだと思っております。  ただし、こういった高レベル廃棄物の処分に当たりましては、必要な研究開発を進めて安全であるということを十分確認していくと同時に、広くやはり国民的な議論を起こし、国民的な合意というものを求めていかなくてはならない大事な問題だろうと思っております。  このような観点から、つい先日原子力委員会は地層処分に関する新たな取り組みについての決定をいたしました。その決定に沿いまして、一つは広く付会的あるいは経済的側面を含めた国民的な議論をぜひ起こしていただくように懇談会というものを設置するというのが第一点。さらに、具体的な専門的な事項についてこれからどういった研究開発を行い、あるいはそういった研究開発をどのように評価していくかという技術的な問題についての専門部会というこの一つの組織をつくりまして、鋭意この問題に取り組んでいきたいと考えております。  既に、先日第一回目の専門部会が開かれたところでございますけれども、以上のような対策を講じまして、広く国民的な議論を通じて処分の事業というものが将来円滑に進むように全力を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。
  243. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。  次に、文部大臣に外国語教育について伺いたいと思います。  文部大臣は大変外国語教育について積極的なお考えをお持ちだというふうに聞いておりますが、学習指導要領の改正に伴いまして、中学、高校における英誌教育においてコミュニケーション能力を向上させる。すなわち聞くこと、話すことの能力アップということでオーラル・コミュニケーションという独立した領域の指導がなされるんだということは格段の進歩であるというふうに思っております。日本というのは十六年間の教育をしながら実はアジア諸国と比べても一番実用英語力が劣っている。このインターネットの時代に、それに参入できるかどうかというのは、インフラの問題以上に英語力のバリアがあるのではないかというふうに日ごろから感じております私としても、これは大変歓迎すべきことだというふうに思っております。  また一方、小学校の英語教育ということについても今実験段階が少しずつ進展しているというふうに聞いておりますし、また中央教育籍議会でもさまざまな議論がなされていくというふうにも聞いております。しかし、今、児童の英誌検定というものも始まってもう既に九万人が受検しているというような実数を聞く実態を見るにつけても、中教審の答申をまつまでもなく早い時期からの英語教育重要性というものはもう既に証明されているのではないかという感じもしております。  そういう中で、きょうお尋ねいたしたいのは、JET、つまりジャパン・エクスチェンジ・アンド・ティーテング・プログラム、今外国人、とりわけ英米人の青年が日本で語学指導助手として仕事をしている、これの増員計画もあるというふうに聞いておりますが、これが単に助手として採用していくだけではなく、意欲を持つ優秀な者に研修の機会を与えて正規の教員に登用していく、こんな逆も必要になっていくんじゃないか、開いていく必要があるんではないかなというような感じも持っているわけでございます。したがいまして、この辺についてのお考えもぜひお聞かせをいただきたい。  それから、今、多少の増員をいたしましても一万五千以上ある全国の中高校に外国人教員を配置するというのは大変難しいという状況の中で、例えばテレビ番組あるいはビデオ、マルチメディアなどを利用した詩学研修というシステムの開発、導入ということが必要になっていくんではないかなというふうに思います。その辺についても文部大臣のお考えをお聞きできればというふうに思います。
  244. 島村宜伸

    国務大臣島村宜伸君) 大変我が意を得たりと率直にそう思わしていただくわけでありますが、実は私は日本人教育の中における英語教育の時間あるいは教育にかけられたいろんな経費等はばかにならないものがあるとは思うんですが、ただいま御指摘あったように、十六年間教育を受けても外人と会うと全く下を向いたり横を向いてしまう、こういうことを放置していいのだろうか。  私は、文部大臣就任早々の予算の省議の際に、自分自身の体験に照らして、昔高校時代に優秀な先生が来て、すばらしい先生と尊敬していたけれども、美術館へ行ったときに外人に話しかけられたら何にもしゃべれずにおどおどしているのを見て愕然とした。ところが、最近におきまして聞いた話ですが、空港でサマセット・モームを読んでいる人に外国人がこれ幸いと話しかけたら、全くしゃべれないで筆談をしたとか、あるいは英語の先生が大挙して海外へ行くときに通訳を躍っていく、こういう笑えない事実もあるわけでございます。  文法とか講読とかそういう面に非常にレベルの高い教育もいいのでありますが、やはり小学校六年間ありますから、四年になったら高学年という自覚を持たせる、節目を持たせるためにもその辺から英会話教育をして、小学校卒業のときには、こんにちは、さようならぐらいがきちっと言える、いわば外国人コンプレックスというものを初めから排除するようなそういう積極的なものがあっていいのではないか、そういうことをお願いしまして、文部省も積極的に取り入れるということからとりあえず今御指摘のJETプログラムの実施はしてきておりますものの全く十分とは言えませんので、来年度から四十七都道府県でモデル校を設けてまずは実施すると。今、四千二百四十三名のいわばネイティブスピーカーがいろいろ直接指導してくださってはおりますが、この方たちも余裕があるときには他の学校も全部回っていただく、こういうことで私は日本人の英会話に対するいわゆる力の不足というものを取り払っていこう、こう思っております。  同時に、今御指摘がありましたとおり、まさにマルチメディアを活用してこれをあらゆる角度から、英会話というものが自然に目で見、耳に入って英語に対する恐怖心が消えるような、こんな環境をつくりたいと思っておるところであります。  なお、今御質問のありました中に、先生方の処遇もいわばオーソライズしたものにできないのかというお話でありますが、現状では国公立大学の教員につきましては外国人教員任用法によりましてその任用が可能であるわけですが、現行法では高校以下教員についてはそのような制度はございません。それらも含めてやっぱりこういう障害を取り除くことがまたさらに迎え入れやすい環境にもなろうかと思いますので、私は全く同じ考えでありますからぜひ進めていきたい、こう考えておるところであります。
  245. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう時間がなくなってまいりましたので、簡潔にお答えをいただきたいと思います。  現在非常に話題になっております、これは昨年、文部省大学課の係長が収賄の疑いで逮捕されるという事件がございました。それ以来、大学設置認可行政のあり方ということが話題になってきているわけであります。その後、設置認可書類の簡素化というようなことも図られ、また相談業務の改善ということも文部省としては取り組まれてきているというふうに聞いているわけでありますが、今なお窓口業務というものに頼らざるを得ない、あるいは窓口を担当している事務官僚に頼まざるを得ない状況というのは、大学設置に関する大学設置審議会や専門委員会での議論あるいはその決定理由がどうも公開されていないその不透明さに問題があるんではないかというふうに感じるわけであります。今、その議論がどの程度公開されているのか。  それから、もう一つそれに関連して伺いたいのは、文部省OBが私立大学に天下りをしているという事実、これが大変多いという報道もあるわけでございます。設立準備室とかあるいは準備財団等も含めて文部省OBが特定の学校の許可認可手続を行っている場合というものもあるようでございます。これは審査の公平さ、公明さという観点からいきますとやや問題があるんではないかなというふうにも思うのでありますが、その点についても簡潔にお答えをいただければと思います。
  246. 吉田茂

    説明員(吉田茂君) お答え申し上げます。  審査の公開の面につきましては、審査する委員等が審査に当たりまして公正、申立性が確保できるような配慮といった観点から審議内容を公表という形にはしておりませんが、しかし審査結果につきましては、例えば私立大学の新設の場合であれば、申請の基本的な構想の審査が終了した時点、あるいは教育課程等の審査が終了した時点で、それぞれ申請者に対しまして審議会の意見を事務局から説明して文書によって伝達をいたしております。  それから、文部省の職員が学校法人に就職するということにつきましては、私どもにつきましては長年の知識経験を買われてのことと理解をしておりまして、そのこと自体特段の問題はないと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、認可につきましては学校法人に文部省OBが在職するというようなことについて左右されるようなことはないというふうに申し添えて御理解を賜りたいと思います。
  247. 水野誠一

    ○水野誠一君 ありがとうございました。
  248. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 他に御発言もないようですから、文部省及び科学技術庁決算の審査はこの程度といたします。  次回の委員会は明二十八日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      ――――◇―――――