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1995-09-06 第133回国会 参議院 決算委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年九月六日(水曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    委員異動  九月五日     辞任         補欠選任      寺澤 芳男君     魚住裕一郎君      広中和歌子君     海野 義孝君      梶原 敬義君     三重野栄子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         浦田  勝君     理 事                 大木  浩君                 清水 達雄君                 山下 栄一君                 筆坂 秀世君     委 員                 岩井 國臣君                 海老原義彦君                 景山俊太郎君                 笠原 潤一君                 陣内 孝雄君                 長峯  基君                 松村 龍二君                 守住 有信君                 魚住裕一郎君                 牛嶋  正君                 海野 義孝君                 武田 節子君                 続  訓弘君                 畑   恵君                 朝日 俊弘君                 伊藤 基隆君                 今井  澄君                 国井 正幸君                 水野 誠一君    国務大臣        通商産業大臣   橋本龍太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        貝田 泰雄君    説明員        通商産業省貿易        局長       広瀬 勝貞君        通商産業省産業        政策局長     牧野  力君        通商産業省環境        立地局長     鈴木 孝男君        通商産業省機械        情報産業局次長  一柳 良雄君        資源エネルギー        庁長官      江崎  格君        中小企業庁長官  新  欣樹君        自治大臣官房審        議官       井戸 敏三君        会計検査院事務        総局次長     中島 孝夫君        会計検査院事務        総長官房総務審        議官       深田 烝治君        会計検査院事務        総局第五局長   平岡 哲也君    参考人        中小企業金融公        庫総裁      角谷 正彦君        中小企業信用保        険公庫総裁    大永 勇作君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書(第百二十九回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百二十九回国会内閣提出)(継続案件) ○平成年度一般会計歳入歳出決算平成年度  特別会計歳入歳出決算平成年度国税収納金  整理資金受払計算書平成年度政府関係機関  決算書(第百三十二回国会内閣提出)(継続案  件) ○平成年度国有財産増減及び現在額総計算書  (第百三十二回国会内閣提出)(継続案件) ○平成年度国有財産無償貸付状況計算書(第  百三十二回国会内閣提出)(継続案件)     ―――――――――――――
  2. 浦田勝

    委員長浦田勝君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、寺澤芳男君、広中和歌子君及び梶原敬義君が委員を辞任され、その補欠として魚住裕一郎君、海野義孝君及び三重野栄子君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 次に、平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件の審査の今日までの経過につきまして簡単に御説明申し上げます。  平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件につきましては、第百三十二回国会におきまして、その概要説明聴取及び全般的質疑を終了しております。  従来の慣例に従いますと、通常選挙後の国会におきましても、既に審査の終了いたしました点につきましては再び繰り返さないことになっておりますので、先例に従いまして、本日は直ちに平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件の各省庁別審査に入りたいと存じますので、御了承願いたいと思います。     ―――――――――――――
  4. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 平成年度決算外二件及び平成年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、通商産業省中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算について審査を行います。     ―――――――――――――
  5. 浦田勝

    委員長浦田勝君) この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明聴取は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  7. 浦田勝

    委員長浦田勝君) それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 守住有信

    守住有信君 自民党の守住でございます。  今、委員長から大前提としてお話がありましたとおり、大分前、平成四年、五年両年度につきましての総括といいますか一般といいますか、これは終わっておりまして、地方選挙とか参議院選挙とか、もちろんその前には予算編成、いろいろ法案ございましたので、そちらを優先にするということで、ずっとしばらく決算委員会は開かなかったわけでございますが、きょうから省庁別ということで、私が冒頭、しかも省庁別の真っ先に通産省ということで御質問をさせていただきます。  大きなテーマはもろもろございますが、経済構造改革とかいろいろな変化の中で、しかし、それは予算委員会とか商工委員会等の場でやるのが適当ではないか。やはり決算委員会決算委員会らしい視点ということで、どちらかというと現実的な細かい問題を、いろいろ御意見なり御質疑をいたしたいと思っております。  通産大臣、いろいろお忙しいと思いますけれども、冒頭だけお聞きしておいていただきまして、そしてあとは専ら政府委員あるいは会計検査院に御質問をいたしますので、どうぞ御自由で結構でございます。冒頭申し上げておきます。  さて、決算委員会でございますから、会計検査院そのものについて冒頭質問申し上げたいと思います。  実は八月一日の朝日新聞、――朝日新聞記者は来ておりませんかな。八月一日の朝日新聞投書欄冒頭に、今、官官接待というやつが問題になっておりますが、その中で、検査院について投書欄のトップに「会計検査でも盛大な接待が」というふうな見出しで、川越市の会社員、以前は公務員であったと投書の中に書いてございましたが、六十二歳の人の投書が載っておりました。  これを見ますと、「かつて私が公務員として在職していた時に会計検査院検査が三日間行われた。」として、そのときの経験談が載っております。しかし、それはいつのころなのか。「かつて」ということですけれども、最近なのか五、六年前なのか十年前なのか二十年近く前なのか全く明らかにしておりません。これを読んだ国民は、その官官接待の中で、一番政府と離れた立場にある決算検査、現地の検査、これの検査院接待を受けておるんだというふうな官官接待イメージの中で、専ら自治体の方からでございますけれども、何か意図的なものを私は感じた。  ところが、さらに八月三十一日、同じ朝日新聞投書欄についてのまとめのところで、これを冒頭に掲げておるわけでございますが、私は調べてみました。大分昔そういえばと、役人時代でございますけれども。そうしましたら昭和五十二、三年ごろ、もう十八年か二十年ぐらい前、たしかこの委員会で、名前を挙げても結構ですが、社会党の野田、矢田部両議員から、専ら出先の建設省、運輸省、防衛庁の防衛施設庁、これが三つの代表例で長い間論議があっておりました。その会議録も読みました。はるか昔の、それを「かつて」という言葉で今でもあっておるというふうなことだと、これは決算委員そのもの会計検査院そのものの国の行政に対するチェック機能会計検査院行政監察だと私は見ておりますけれども、その権威というものを国民に向かって誤った印象を与えていく。これは事重大ではないか。  こういう思いで、私は検査院の方ももっとこれに公の席で反論すべきではないか、こういう考え、気持ちを持っております。ここは公の席でございますから、ひとつ明確な長い間の検査院の厳正な処置というものを、かつて十八年か二十年ぐらい前のことですけれども、そのぐらいやってこられたと見ております。それを明確にされて、大いに記者会見でもなさって、朝日新聞、これに対して抗議するぐらいの、まことに心外な、我々にとっても決算委員会にとっても心外な報道でございますから、そういう姿勢で。  どういうふうにとらえておられるのか、冒頭その決意のほど、あるいは今後の対応、行動、これをお尋ねする次第でございます。
  9. 中島孝夫

    説明員中島孝夫君) 会計検査院職務遂行に当たりましては、厳正な姿勢で臨むことが要請されておりまして、会計実地検査の際に検査を受ける側から接待を受けることはあってはならないものであると考えております。  このことにつきましては、昭和五十二年十一月に文書でその旨職員徹底すると同時に、検査を受ける側に対しても趣旨徹底を要請しているところでありますし、その後機会あるごとに職員に注意を喚起するなど、厳正な服務規律保持に努めてきております。したがいまして、本院では接待問題というようなものは生じていないと認識しておりまして、旧態依然たる接待をいまだに受けているという疑念が生ずるとすれば、まことに心外でございます。  いずれにしましても、本院としては国民の疑惑を招くことのないよう、今後とも一層厳格な規律保持に努めていく所存でございます。
  10. 守住有信

    守住有信君 まとめた、どちらかというと抽象的なあれでございましたけれども、私がそこへ座っておるならば、心外という言葉はあったけれども、もっと具体的な行動でやらぬと。特に、衆議院は予算委員会参議院決算委員会と言われ、今も言われておる参議院の中でも特殊性を持った重要な委員会でございます。各委員皆さん方もそのような御認識でおられると思いますけれども、そのいわば中核である、執行部隊である検査院のことで、しかも八月三十一日のまとめのところでも大きな見出しで「官官接待」、  退職した元公務員から、在職中に見聞した会計検査院検査官らに対する接待の実情を書いた投書が寄せられたので、一日付で掲載した。官官癒着ぶりが、的確に表現されていた。その後も何通か同様の趣旨投書が寄せられたが、一方では「昔はさておき、今は誠実に検査しているはず」という擁護の投書も数通あった。 云々と、これは三十一日のまとめの方でございます。  こういうふうな地方自治体官官接待、これはこれなりの理由があると。これはまた別の場であれしなきゃいかぬと思いますけれども。国家公務員の各省庁、時間は限られておる。地域の振興のいろんなプロジェクトについて説明に行かれ、時間がない。たった三分か五分だ。それならば十分時間をかけてやろう。そうすると、五時から、退庁した後でしか時間がない。その接待の仕方とか場所とか程度は私は大いに議論がある、問題があると思っておりますけれども、やはり各省庁に向かって、地方の問題、いろいろ県知事以下、大きな市も当然ですけれども、そういう場を設けて、十分プロジェクトの内容、考え方、やり方、進め方、これを中央政府に、予算権限、その他関連がありますから、どうしてもそれは説明せにゃいかぬ。  ただ、やり方程度場所とか、これは問題があると思っておりますけれども、これはおくとしましても、検査院というのは全く別で、予算権限がないんですからね。こういうのを官官接待と絡ませて、一部の投書を殊さらに取り上げて、十八年も昔のことを取り上げてやるというマスコミ、特に朝日新聞、名指しでいきますよ。言論の自由の中だからね、お互いに。これを大いに踏まえて逆利用してもらいたい。逆に、攻撃を受けたら、橋本通産大臣、剣道の極意も、私は宮本武蔵の方で二天一流は二刀流、大刀で防いで小刀でこういくという、そういう姿勢検査院、そうでないと。本当に唯一の検査院ですよ。各省庁をチェックするその機関官官接待を受けておるというふうな一連のイメージ冒頭扱われて、八月の投書欄の締めくくりまで検査院接待を受けておると。  これはもう非常に、私も同じ検査院で十年ばかりやってきて、私自身のプライドも大いに、皆さん方プライドも、千二百人おる検査院職員、それとこのあり方、この効果というか、非常に憤激しておるものですから、ついついどら声を張り上げまして大いに叱咤激励しておる意味でございますからね。もっと何か手法を考えて、きょう終わったら記者会見して、朝日を真ん前に置いて堂々とおっしゃっていただきたい。院長にもそういう報告をしておかぬと。非常に何か世の中がふわふわこうなって、言論責任を持たぬ。ましてマスコミですから、天下の朝日新聞と言われながら、その言論責任を持たぬことにはだめだから、あなたの方がまずやるべきだ。  そして、おれもやるつもりでございます。これはまた、決算委員会としても、与野党通じてこれは本当に踏まえておかぬと、うわさ話、昔の話でこれこれこうやと。これはもう国会権威にもかかわってくる。私はそう受けとめますので、単なる通り一遍のきょうの答弁だけでなくて、今後に向かっての行動を私も考えますので、そこのところをしっかり能動的に具体的にやっていかれることを私は特に要請をいたす次第でございます。よろしゅうございますか。
  11. 中島孝夫

    説明員中島孝夫君) 私ども、先ほど申しましたとおり、職務遂行に当たりましては、従来から厳正な姿勢で臨んできておりますが、今後とも一層厳格な規律保持に努めていくということで対処してまいりたいと考えております。
  12. 守住有信

    守住有信君 じゃ、大前提検査院はそれくらいにしまして、実は通産省関連では、不当事項に毎年エンドレス中小企業近代化資金の問題、無利子貸し付けが毎回会計検査院に何件か指摘されるわけでございます。もちろん指摘事項ももう十数年前からあると思います。私が決算委員を長いことやっておってからも毎年で、毎年通産省警告決議と。件数は十何件から四件とか三件とか、だんだん少なくはなってきましたけれども、毎年出る。  これはなぜだろうか。それは、通産省がみずから自己完結的に、あるいは中小企業金融公庫等を通じてではなくて、県が窓口なんだな。通産省補助と県の資金とで無利子融資中小企業近代化、この目的は立派です、効果も上がっております。何千件という中小企業に対して非常に効果が上がっておる、無利子という形で。しかし、必ず何件か出てくるんですよ。それはなぜだろうか。  会計検査院も全部これは悉皆調査をしておられるわけじゃない、後で御報告いただきますけれども。悉皆調査をしておられるわけじゃないけれども、毎年何件か出てくる。しかも、公共団体の方が、例えばこの十年間ずっと見てみたら、六回以上出てきているのが、東京都、長野県、滋賀県なんだな。その他もばらばらばらばら出てきておる。これはなぜだろう。中小企業金融公庫でもない、通産省が直接やるわけでもない、県を通じておやりになる、半分半分ですからね。この県というものの、地方自治体というものの、商工部だと思いますが、その窓口を通じておやりになるときに、なぜここに毎年出てくるのか、ばらばらばらばら。  私は非常にそういうとらえ方をしておるわけです。毎年の警告決議ですからね。この間も、平成年度のときもやっぱりこれでした。二年度もそうでしたね。だから、検査院として、これはなぜ出てくるんだろうか。直接通産省オンリーではない、都道府県と組んだ近代化資金利子融資貸付制度。そうすると、こっち側の県側の方に何かあるんじゃなかろうか。  ここのところを、検査院あるいは中小企業庁、両方からで結構ですから、そちらの両面から、何で毎年毎年、浜の真砂じゃないけれども、それで毎回検査院に言われるんだな、通産省が。どんどん通産省時代変化経済変化の中で立派ないろんな法律、制度政策をつくって予算化してやっておられるけれども、後で民活法その他も言いますけれども、これがいつも出てくるということで、せっかくの通産省の、特に非常に重大な中小企業対策、こういう認識を持っておりますので、これはなぜそうなのか、検査院及び通産省の方から、実務に即してそこのところを御説明いただきたいと思う次第でございます。
  13. 平岡哲也

    説明員平岡哲也君) 御指摘近代化資金でございますけれども、この資金は、都道府県が国の補助金自己資金等を合わせて資金を造成いたしまして、設備近代化に必要な資金の調達が困難な中小企業者に対しまして、設備設置に必要と認めた資金の額の二分の一以内の額を原則として五年以内の償還期間で無利子貸し付けるものであります。  御質問近代化資金会計検査院による指摘が続いていてなくならない理由ということでございますけれども、基本的には、先ほど申し上げましたように、本件貸し付け所要資金の二分の一の額を限度としますものの、無利子という借り主にとって非常に有利な制度でありますために、貸し付け条件に違反していることを知りながら、借入者の方で意図的に例えば設備申請額より低額で設置をするなどいたしまして不当に貸し付けを受ける、そういう借り主が後を絶たないということにあると思います。  また、貸し付けを行っております都道府県におきまして、貸し付け時点での審査あるいは貸し付け後の完了検査におきまして、結果といたしまして不十分な点があることも一因となっていると考えております。  いずれにいたしましても、中小企業庁都道府県におかれましては、事態の再発を防止するために、本制度周知徹底貸し付け時の審査あるいは完了検査の充実などの努力を続けておられるわけでありますけれども、私ども会計検査院におきましても、検査等を通じまして貸し付け適正化にさらに努力をしてまいりたいと思っておる次第であります。
  14. 新欣樹

    説明員(新欣樹君) 守住先生には日ごろから設備近代化貸し付けにつきまして御指導を賜り、厚く御礼を申し上げます。  中小企業設備近代化資金貸し付けに当たりましては、都道府県窓口になって貸付対象企業に対しまして経営診断を実施し、設備の導入の必要性等について十分検討を行うとともに、厳正な貸付審査に努めているところでございます。また、貸し付けに際しましては、当該貸付対象設備設置等の確認、これを完了検査と申しますけれども、この完了検査を行い、さらには事後指導による貸し付け後の実態把握を行うなど、きめ細かな指導及びチェック体制のもとに制度の適正な運用に努めてきたところでございます。  しかしながら、決算検査報告において、御指摘のように、連続して一部不当事項指摘されていることはまことに遺憾と存じております。  当省といたしましては、このような状況にかんがみまして、昭和六十三年及び平成三年におきまして各都道府県知事に対し通達を発し、完了検査徹底など不当貸し付け防止体制を整備し、一層の運用適正化を図るよう指導監督を強化いたしますとともに、会計検査院の御協力を得まして、貸付担当者に対する研修を充実強化しているところでございます。  その結果、毎年おおむね四、五千件に上る貸付件数のうち指摘を受ける件数は、この数年大体四件程度で推移するなど、相当程度減少をしてきておるところでございます。  今後とも、さらに各都道府県における不当貸し付け防止体制が整備され、不当貸し付け再発防止が図られるよう指導努力するつもりでございます。
  15. 守住有信

    守住有信君 この近代化資金に限らず、例のAパターンBパターンCパターンCダッシュ、さらには無利子Aというふうな仕組みを、これから産業構造、特にその中の中小企業、これに重点を置いてやっていかなきゃいかぬと思っておりますけれども、片や大分前から既にでき上がっておるこの一つの仕組み、どうも都道府県窓口になっておるからね、これが通産省自体なら、ばちっとやってとっくに消えておるはずだと思う。  もう一つ質問がありますけれども、四、五千件と言うけれども、会計検査院検査は、これは全部悉皆調査ができるはずではない。各県の場合もみんなやっておると思いますけれども、全県毎年度会計検査ができておるのか、あるいはまた四、五千件の中でどのくらいマクロ的に実地検査ができているのか。そこのところも入れると、件数は今三、四件に減った、昔は十何件。それは私は氷山一角じゃないかと。ちょっとそこのところをマクロ的に御説明いただきたいと思います。
  16. 平岡哲也

    説明員平岡哲也君) 抽出調査状況でございますけれども、昨年の検査について申し上げますと、四十七都道府県における平成二、三、四、三カ年度貸し付け、合計一万四千四百四十件のうち二十五都道府県対象といたしまして六百七件の貸し付けを抽出して実地検査を実施いたしました。検査実施率全国貸し付け案件のうち四・二%、検査対象とした二十五都道府県貸し付け案件のうち七・八%ということになっております。このうち、不当事項として検査報告に掲記したものが四件ということであります。  なお、毎年このように過去三カ年分の貸し付け案件対象として検査を行っております結果、最終的には各年度全国貸し付け案件のうち約一二%程度につきまして実地検査を実施している、そういう状況になっております。
  17. 守住有信

    守住有信君 通産省の方も今お聞きになったとおりだ。件数が落ちたからといったって氷山一角なんだな、統計的に見れば。これはよく踏まえていただきたい。  中小企業庁も各県の関係者を自主的に集めて研修というかやってもおられるようだし、もう一つ検査院がせっかく安中研修所宿泊方式で各省庁検査担当内部監査、これを大いに教育訓練しておる。これは大分前から私はこの場で主張して、立派なできだと。しかも日帰りじゃありません、宿泊方式で、プロ養成ですね、これを努力しておられる。その中にも、各県あるいは主要都市政令都市以下、全部はできないから町村までは、そういう大きなところを通産省検査院と一緒になって、通産省独自にはやっておられるんですね、これは先ほど御説明あったが。もう一つ、せっかくある安中研修所、国費を投じた、そこの場で、あれは宿泊方式なんだから、この一つテーマで、あるいは関連するものもいろいろ出てくると思いますけれども、安中研修所検査院通産省、そしてそれに私は自治省だと思うんです。  地方分権分権と。自治省来ていますね。分権論も、おれは大いに分権は賛成なんだが、一方でそれをチェックできる体制整備と能力の向上、これがないと。権限と財源を委任しますと、中央政府から。その場合、問題は後の部分、これをいろいろ私は感じておるわけでございます。具体例を挙げますと、まず我が足元の県からいきますと、熊本県、この近代化資金と同じような趣旨で県が条例をつくりまして、県の予算でやはり似たようなことをやっておるんですね。これは立派なことですよ。  ところが、去年かな、商店街、上通り、下通りとか熊本市に大きな名門の商店街がありますが、この会長連中から私にこういう話があったんです。長い間県が、平成三年ぐらいからかな、独自でプラスしてやっておるけれども、地元に金融機関の本店のあるものに限る、こういう限定をしておる。熊本県に本店のある金融機関しか使えない。我が熊本を見たまえ。福岡から西日本銀行もあれば鹿児島から南日本銀行もあれば、その他みんなミックスで金融界は入っておるんです。そこに中小企業、零細企業は平常の金融取引をやっておる。ところが、県の場合は熊本県に本店のあるものに限るとなっておるわけだ。私は指定金融機関という制度までふっと頭にひらめいたんですけれどもね。  それで、当時、熊本県の県知事から商工観光労働部長まで、一体何なんだ、金融機関が優先なのか零細企業が優先なのかと。零細企業が日ごろ取引しておるところも金融機関が代行ができるようにしなければ、何か本店のある金融機関のため、はっきり言ったら肥後銀行、ファミリー銀行等々だな、そういうためにいわばやっておるんじゃないのか、大蔵省じゃないはずじゃないかと。こういうふうなことを言って、条例改正を県庁の商工部で今取り組んでおる最中でございますが、本当の地元の商店街と接触してみますとそういう話まで出る。何遍も県に陳情しました、しかしさっぱりだと。こういう問題もやっぱり中小企業対策、そして自治体、自治省。  私が、あのころ初めて知りまして、中小企業庁のあるセクションをお呼びしたら、とんでもないと言われましたよ。やっぱり私と同じ思想だと。商店街が、零細企業が優先であって金融機関が優先ではないということでございますので、そこらあたりも、私はそういういろんなケース、今回もあれだけれども、見ておって、考えておって、自治省と通産省ともっと緊密な連携のもとに地方自治体に対して、地方自治だから何でも任せ切りじゃないはずだ、やっぱりそういう正しい行政指導というものを下からの研修から始めて、もっと強力に自治省としても通産省と連携して中小企業対策ということで徹底を図っていただかぬと、今は平成四年、五年、三年もやりましたけれども、やっぱり出てきた。また六年、七年、八年と。そうすると、私は通産省プライドのためにも、県の方のわがままというやつでこれが絶えず検査院から通産省不当事項として指摘される。  それは、検査院プライドと言いましたけれども、今度は通産省プライドのためにも非常にまずいんじゃないか。やっぱり自治省ですよ。自治省は行政局だ。ここが連携して、県を通じ、あるいは重立った市を通じて、行政改革と言われながらやっぱりレベルが低いんだ、はっきり言いますと。国家公務員の方とどうも地方公務員といろいろ議論してみると。人事異動はちょこちょこあるし、市長とか県知事の方ばかり見ておる、市会議員の方ばかり見ておる。こういうのが、熊本市の例もあります、もうきょうはやめておきますけれども。  この間、熊本市の例を自治大臣に申し上げて、橋本通産大臣は横で聞いておられたと思いますけれども、地方分権という方向は絶対正しいんだが、それをチェックする制度運用、これがないと、私なんか地方分権に無条件に賛成はできない。やっぱりそれをチェックする制度、国の場合は検査院がある、あるいは行政監察がある、決算委員会がある。こうして閉会中もみんなやっておられる。  県の場合、市の場合、監査委員会がありますな。ところが、監査委員は四名おりますよ、四名おるけれども、OBが一人、議員が二人、あと一人がやっとのことで弁護士がおりますと言うたから、調べたら民事弁護士でございまして、行政事案の弁護士さんではない。これは行政事件ですから、公認会計士とかそういう方でも入っておるならまだ安心できる。そして、膨大な実務があるものだから、法律、制度、いろいろあるからなかなか理解しないで、出納長や収入役や会計課の言うたとおり。こういう傾向が地方自治のところに、あえて町村の問題は言いませんけれども、県と大きな市、そこにそういうあれがあって、この問題も実はそういうあれで、何かイメージ的につながっておるような、あえて意図的とは言わぬけれども、チェックの不十分さ。地元の連中とあれですからね、県は地元でしょう。通産省の福岡通産局だ、福岡。地元じゃないんだ、離れているよね。  こういうのを感じておりますので、言葉が十分じゃないけれども、自治省行政局・官房と、通産省中小企業庁等と一緒になった県の指導。そうでないと毎年、これは自治省には警告決議は出ないんだよ、不当事項というのは自治省には出ないんだ、みんな通産省で。五割五割だけれども、みんな通産省へ行くんだ。その最後の決定という形は通産だからね。しかし、窓口は県なんだ。窓口は県でございますな。そこのところはもっと緊密に、実務的にもいろいろ、ただ一片の通達だけじゃなくてこれをやってもらいたい。  両方から今後の取り組みを御答弁いただきたいと思います。
  18. 井戸敏三

    説明員(井戸敏三君) 県におきます中小企業対策の実情につきまして、細部にわたりまして例を挙げて御指摘を賜ったわけでございますが、都道府県といたしましても、中小企業の振興ということは地域振興の基盤でありますので、そのような意味からも通産省の御援助なり御指導も受けながら中小企業対策に邁進させていただいていると信じているところでございます。  そのような中で、今御指摘のような設備近代化に伴います不当案件が、どのように評価するかはともかく、絶えないという御指摘でございます。私どもが直接御指導するという立場ではないかもしれませんけれども、通産省中小企業庁との方で具体的に御指導を賜っております都道府県貸し付け事務処理体制の改善等の中でも、貸し付けに係ります組織体制の見直しでございますとか、あるいは事前審査チェック体制を十分に行うとか、会計検査のマニュアル化等の御指導もいただいているところでございますので、この点等を十分踏まえて体制づくりに努めるとともに、もとよりきちっとこの処理をしていきますのも職員でございますので、職員の資質向上という観点からも研修等に努めさせていただいているところでございます。  今後とも、都道府県におきます中小企業振興のいわば一番零細事業者に対します施策の基本になっております制度でございますので、そのような意味で十分その実が上がりますように努力をしていただくように、私どもの方からも先生からの御指摘があった旨機会を見つけて指導をさせていただきたいと思いますし、さらに中小企業庁の方からの御指導、御協力もいただければありがたい、このように思っている次第でございます。  なお、あわせまして地方分権関連しまして、いわば監査とかの御指摘をいただきました。もとより、地方分権を推進するということは、一方では国の場合におきます権限の移譲ですとか、いろんな面での御努力をいただく必要があるわけですが、受け手といたしましての地方公共団体が新たな役割を担いますにふさわしい地方行財政体制の整備確立を図ることが重要でございます。そのような観点から、その自己チェックシステムの向上を図ってまいりますための監査機能の充実というのが非常に重要な要素であると考えております。  既に、従前でございますと機関委任事務につきまして監査委員の監査の対象にならないという規定でございましたのを、おかげさまで平成三年からは自治法の改正がございまして監査委員の監査対象になるというようなこととあわせまして、OBが直ちに監査委員になるというようなことにつきましての、監査の中立性をさらに確保するという意味での就任規制等をさせて制度改正を行ったところでございます。  したがいまして、監査委員の機能そのもののレベルアップを図っていくということも非常に重要なことでありますし、さらに地方分権の一環といたしまして、地方行政体制の充実強化という意味で外部監査機能というものを導入すべきではないかというような意見もございまして、現在の二十四次地方制度調査会でも御議論をいただくような予定にもなっているところでございます。国の方の権限移譲等にあわせまして受け手の側での努力も当然両立させながら進めるべき課題が地方分権であろう、このように考えておる次第でございます。  なお、この場合でも一番基本になりますのは、都道府県、市町村におきます職員がその役割を担うわけでもございますので、今後とも職員の資質向上、研修強化等につきましても努力をさせていただきたい、真剣に取り組ませていただきたい、このように考えている次第でございます。
  19. 新欣樹

    説明員(新欣樹君) 中小企業施策、これはこの設備近代化資金貸し付けに限らず都道府県との連携を密にして実施しておるものが多うございます。そういう意味で、私ども日ごろから自治省とはいろいろな角度での御相談なり意思疎通というものに努めておるわけでございます。  設備近代化資金貸し付けについての都道府県職員の資質の向上の観点からは、先ほど私、研修を充実すると申し上げましたけれども、会計検査院の御協力はもちろんこれから一層お願いをすると同時に、自治省のお知恵もおかりしながら研修のさらなる充実を図ってまいりたいと思っております。
  20. 守住有信

    守住有信君 大筋承りました。地方分権と必然的に絡むわけですからね。職員というよりも、むしろ私はまず幹部、出納長、収入役、あすは全国知事会でございますか、それは別として、知事さんよりも三役の人に、出納長、収入役、そこの部門、部下も含めてこれが非常に、いろいろ実践的に質問したりしてみると、ここはまあ言いませんけれども、そこがどうもと思うわけですな。  そしてまた、何か今お話しの中で、直接的に指導できないんだと。それは各省庁のあれとは違うことはわかっていますよ、地方自治だから。しかし、行政指導というものが論議されておる大きなテーマの流れに対しては、やはり自治省の行政指導力というか、直接即物的はともかくとしても、いや間接ならしようとかいろいろあるはずだ。これをもっと、もう時代が変わっておるわけで、まして地方分権に向かって進もうというときに、その前座行為として、権限を委任する側から後はお任せです、自由放任ですと。地方税も食ったわけだ、国税のあれも助成するのも補助するのもある。その地方自治体の会計経理監査に対して、これは自治省自身が今までの発想を変えていかにゃ、強力な指導力というものを持って進めないと私のような議論も別から出てきますから、このことは申し上げておきます。  時間がもうございませんので、せっかく未来志向型の民活をやれと訴えましたが、時間がないもので、ちょっと足元の具体的な、身近な商店街、駐車場対策。  自民党が駐車場議連をつくって、それまでは通産省と警察庁だけだった。さらに建設省を入れましたね、いわゆる道路局、道路の延長が駐車場ですから。それから、建設省は建築基準法を持っておる、都市計画法を持っておる。その中の商店街であって、駐車場と。もろもろの政策が大都会から始まっておりますが。  私のところは田舎、熊本市、田舎と言ったって人口六十四万ありますけれども、名門の商店街がある。どんどん郊外に大店舗ができて、規制緩和規制緩和で大駐車場ができて、旧商店街、名門の方はがらんとなって、シャッターばかりになっておるところは、新しい政策通産省はお立てになろうというのが日経にも載っておりました。これはいいことだけれども。  まずその前に、特別のうんと予算をかけた駐車場ではなくて、もう六年ぐらい前になりますけれども、熊本市の郵政局があって、こっちが市役所、ここがホテルかな。すぐ横が上通商店街。その郵政局の横に郵政会館というのがある。国有財産でございます。国有財産は民間に貸せません、直接は商店街に。しかも地代を取りますからね。一計を案じまして、熊本市の中小企業局、市に貸しまして、市が商店街に貸す。何を活用するかというと、土曜日曜祭日ですよ。きちっとした駐車場があって、土日は職員も来ないしお客も来ない。すぐ横が商店街なんだ。ここを市に貸して、市が商店街に貸す、転貸をする。そして、地代を大蔵省財務局だからちゃんと取りますからね、年間。私は、単車と自転車はただにしろと言った。車は有料ですよ。年間三百万ぐらい市の中小企業局から商店街振興費として予算を出してもらいまして、国有財産利用第一号と言われたんです。ところが第一号だけでございまして、第二号、第三号はどこもできておらぬ、これが事実でございます。  土日祭日、これは書き入れどき。特別の予算とか民間の金を出してやるのも結構です、大都会でね。そうでないところは、公有の国有、県有、市有、各省庁の出先、銀行あるいは損保、その他あります。土曜日曜は休んでおって、それで市があっせん役に入って、監視員が要りますからね、ちゃんとチェック機能が。市のシルバーセンターから六十五歳以上のお年寄りを市の負担で派遣する、土日祭日だけですな。こういうやり方を始め出したわけです。  これが一番進んでおるのが宇都宮市。建設省の都市局に聞いたら、駐車場調整室がありましてね、これは専門家です、これを呼んで聞いた。先生、宇都宮市ですねと。それで私は宇都宮市にすぐ電話した。そうしたら、四、五年前か、当時の新聞記事からマップからいろいろつけてあって、銀行とか損保とかいろいろ。それは十台とか二十台ですよ、多数やっている。最高例が宇都宮市。だから中小企業対策、商店街対策も、この横のところ、今は建設省との関係を申し上げましたけれども、こことの情報をとって、いい例を。これは最高が宇都宮市だと言われて、データをすぐよこしてくれたですよ、市役所は。これなんですが、新聞記事からマップから何かいっぱい入っておった。  それで、それを私は、熊本市の都市局の何とか部長以下、熊本の商工会議所の事務局長、これらを集めて、いいかと渡して、さらにやれ、宇都宮に負けてたまるかと。宇都宮よりも熊本市の方が人口は多かぞとかなんとか言ってやっておりますけれども、そういう今ある施設、公共的なものあるいは民間も銀行その他。肥後銀行の頭取にも言ったんだ、これをやってみろと。おまえ、預金が余計集まるぞと、商店街から。何も郵便局だけのことをおれは言っているんじゃないと言ってやっておりますけれども、まださっぱりだ。議論ばっかり、熊本はあほばっかり。浦田君もおるが、玉名郡だから玉名でもやれと。  そういうことでございまして、きめの細かい、下から積み上げていく。通産省自体は大きな、今後に向かって民活法の見直しから始まって、いろいろ新しい立法、政策、これは見事なものだと思っておりますが、私は地ごろの一人として下の底辺から見た商店街やそういうのを引っかけていく、かけていくんです。  それで、やっぱりその中に入るのは都市の場合は市なんです、あるいは市会議員なんです。これとの連携を大いに、具体的にヒントだけ申し上げましたけれども、もっと集めて、都市局の駐車場調整室だ、具体的には市があるんだ。自治省も、そういう世界があるんだよね。その実践例で、税金とか財源とかいろいろある。それはそいつで無理してでも行がにゃいかぬけれども、もう一つ地元での、せっかくあるいろんな施設の土曜日曜、この活用。商売人は上日が書き入れどきです。このときを連携させる。それをやっていきますと、国政ではなくてやっぱり自治行政なんですよ、中心になるのは。  だから自治省も、本当に通産省と比べて定員もまことに小さい、自治庁時代からあれだったものだから。そんなことをいろいろと思いながらも、しかしそこは会合したり電話をかけたりハッパをかけて、モデル地域その他いろんな手法があるわけだから。それを、一つの例、私は駐車場対策、商店街の中あるいは近所における駐車場対策、土日活用、これに実践的行動的にぶつかっていってハッパをかけていかれれば、大きな金を使わないで商店街は結局入るわけです。ある施設ですからね、ここを大いに。  小さい話だけれども、私はそういう小さい具体的な実践例の積み上げの上に大きくは通産省その他が新しい制度政策をつくり無利子化や助成化をおやりになる。それともう一つが地元のそういうもの。それで地元と言ったときは絶対自治体なんだよ。そういう意味で自治省さんも一緒にお呼びしておるわけでございますから、大いに通産省中小企業庁と組んで新しいこれからのノウハウもハッパをかけていただきたい。  時間もありませんのでこれを最後のお願いにいたしまして、私はきょうは終わります。どうかよろしくお願いします。
  21. 牛嶋正

    牛嶋正君 平成会の牛嶋でございます。よろしくお願いいたします。  六月の月例経済報告で、経済企画庁は、それまで緩やかながら景気回復の基調にあるという表現をとっておりましたけれども、それを景気回復は足踏み状態にあるというふうに変わっております。四月以降の多くの経済指標が芳しくない推移を示していたことから、七月に入りましてデフレ状態に陥るのではないかという懸念さえ生まれてきたわけです。  そのような状態の中で、円安へのシフトが八月に入ってあったわけです。このことから、我々も暗やみに光明の感さえ受けたわけでございますが、それにつられるような形で株価の方も一万八千円台に乗せるまでに上昇してまいりました。  景気回復の確かな足取りはまだ見えないわけですけれども、デフレ状態へ陥ることの懸念だけは私はぬぐわれたのではないかというふうに思っております。それだけに、このドル反転が継続するかどうかが我が国の今後の景気回復を見る上でも非常に重要な点ではないかと思います。  そこで、きょうはこの問題を取り上げ、プラザ合意以降の円ドル相場の推移をたどりながら、その間の産業政策との関係を中心に、大臣せっかく御出席でございますので、主に大臣にお尋ねをしてまいりたい、こんなふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。  そこで、もう一度、八月に入ってからのドル反転の経緯を振り返ってみたいと思いますけれども、八月二日に政府は海外投融資規制緩和措置をとられました。そして、翌日、直ちに日米の協調介入がなされたわけでございます。そこで反転に向かうわけでございますけれども、決定的な要因は、八月十五日、日米欧の協調介入が行われます。しかし、その八月十五日、もう一つ注目すべきことがございます。それは、七月の貿易統計が発表されているわけでございます。それを見ますと、黒字額が円表示でも前年同月に比べまして三三%の減少を示している、それからドル表示でも二三%の大幅な落ち込みを示しているわけであります。  今申し上げました経緯から、大方の見方は日米欧の協調介入が功を奏したというふうに言われておりますけれども、私はむしろ、今申しました貿易黒字の減少傾向の定着が見られる、それが七月の貿易統計によってある程度うかがうことができる、これがかなり重要なポイントになってきているのではないかと思うのでありますけれども、この点についてまず大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  22. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、委員から御指摘のありましたような諸点、私はそれぞれに同じような感じを持つ部分が多々ございます。  ただ、私自身の感じで物を申しますならば、私は、本年度の第一次補正予算の編成に際しまして赤字国債という財源を行使いたしましたものが、経常収支の黒字の意味のある縮小に日本政府が立ち上がったというメッセージを市場に送ったはずでありました。ところが、その時点におきましてはこの赤字国債の発行というものはむしろ財源不足によるものというとらえられ方で、必ずしも正確な伝わり方がしなかったように思っております。しかし、その後、例えば四月二十五日のG7の蔵相会合あるいは六月のハリファクス・サミットにおける論議等々の中で、日本政府の経常収支黒字に対する意味のある縮減に努めるという姿勢が少しずつ国際通貨筋にも理解をされ始めたのではなかろうか、そのような印象を持っておりました。  しかし、これが反転のきっかけを与えましたものは、やはり私は八月二日の大蔵省当局が発表されました海外投融資促進策、これが市場の予想しないタイミングに、しかも非常に積極的な規制緩和策として打ち出されましたこと、これに合わせての日米の介入というものがまず土台をこしらえたという役割は大きかったと思います。そして、その上で、委員が御指摘になりましたように、確かに、七月の貿易統計が発表されまして、黒字が大幅に縮減しつつあるというものが八月十五日に公表をされました。そして、私は、この機を非常にうまく通貨当局がとらえられ、日米独、これにスイスも加わったと聞いておりますが、協調介入が行われた、こうした中でドルが堅調さを取り戻してきているという感じを持っております。  ただ、それだけに、今後我が国が引き続いて経常収支の黒字の意味のある縮小に努力を続けるというメッセージがどのタイミングで市場に送り得るのか。これは九月二十日に総理から取りまとめを指示されております経済対策の中で当然のことながら私どもとして考えていかなければならないポイントでありますけれども、こうしたところにおいて引き続き経常収支黒字の意味のある縮小に日本が努めていくというメッセージを市場に送り得るかどうか、これが今後非常に大きな意味を持ってくると考えております。  この時点において、日本政府の決意というものが明らかに市場に対してメッセージとして送られました場合には、私は引き続き我々が望むような水準に為替レートというものがおさまっていく、その方向をたどることができると考えておりますし、その方向に我々として全力を挙げていかなければならない、通産省としてそのように考えております。
  23. 牛嶋正

    牛嶋正君 今、大臣が指摘されましたように、これからの我が国の景気動向を見ていく上では為替相場について注目されるわけでありますけれども、このドル反転がいつまで続くのか、そしてまたドル反転の上限はどこなのかということだろうと思います。今仮に円ドル相場が一ドル百円前後まで戻しまして、それが例えば今おっしゃいました九月二十日に発表されます経済対策あるいは十月の臨時国会で上程されます第二次の補正予算、これが成立をするところまでこのドル反転が続くといたしますと、私は景気回復の足取りというのは緩やかながらではなくてもっと確かな足取りに変わっていくのではないか、こういうふうに思うわけです。  今、大臣にこれからのドル反転の継続の可能性についてお話をいただきましたけれども、この点についてはいろいろな見方がございます。悲観論、それから楽観論あるわけでございますけれども、私は今のところ悲観論の方がやや支配的ではないかと。私も若干悲観論を持っているわけでございます。  と申しますのは、やはり介入を中心としたドル反転政策というのは、今も御指摘になりましたけれども、貿易収支あるいは長期資本収支にあらわれる国際経済の実体に与える影響力は弱いのではないか。特に私が注目したいのは長期資本収支の方でございまして、このようにドル反転いたしますと海外投資のチャンスがふえるわけですけれども、ある程度リスクを考えて今の我が国の金融機関がそれだけの体力があるのかというふうなことを考えますと、やはり今の金融システム全体の不安定な状態、これが、せっかくドル高というふうな海外投資の環境がつくられていくわけですけれども、それに十分応じられないというふうな面があるのではないかというふうに思います。そうだといたしますと、少し悲観的な見方もやっぱり持たざるを得ないのではないかと思うんですけれども、重ねてこの点について大臣のお考えをお聞きいたします。
  24. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、事務方に確かめましたところ、十一時現在、九十九円ちょうどという数字が報告をされました。  私は基本的に、従来から日本の内外で門高に対して論ぜられてきた論点、すなわち日本の大幅な経常収支の黒字というものが一つの要因であったということは否定できないと思います。  そしてこれは、先ほど私は第一次補正予算における赤字国債というものがシグナルに十分なり得なかったということを申し上げましたが、要は基本的な経常収支の黒字の原因と申しますものが、貯蓄と投資のバランスの中におきまして国内投資が不足しているということになるわけであります。そして、私は必ずしも委員が為替水準の先行きについて悲観的と言われるものに同調はいたしません。むしろ、我々が悲観的になったのではいけないわけでありまして、何とかして安定させる努力に全力を傾けなければならないわけであり、その点においては私は悲観的という言葉は用いたくありません。  そして私は、基本的に今我々が払わなければならない最大の問題点、それは我が国の景気の先行き不透明感というものをいかに払いのけていくか、そしてこれに全力を傾けることが円ドル相場を秩序のある形で反転させていく、その上で一番大切なことだと考えておりますし、この前提条件には私はやはり緊密な各国の協調体制というものが堅持され、継続されるということが重要なポイントだと思っております。  そして、その意味において私は介入政策というものは今後ともに堅持していただきたいと考えておりますし、効果的なタイミングをとらえての介入というものは非常に市場にいいメッセージを与えることがある、今回の行動一つの証左が生まれたように思っております。ただし、それにはそれだけでとまるものでない、これは委員の御指摘のとおりであります。  ですから、やはり経常取引やあるいは資本取引などの為替需給に影響されるというポイントがあるわけでありますから、金融当局が適切な措置をおとりいただくことによりまして外貨建て資産に対する投資というものが拡大することを我々は一つは期待をいたしたいと思います。  同時に、縮小傾向に今ありますこの経常収支黒字というものを積極的に削減し得る、一層確固たる方向で削減し得るものにするために、内需主導型の我が国の景気回復そして輸入拡大という努力を継続して払っていく必要がある。これは我々として考えておくべきことであろう。介入だけでは足りないと言われる御指摘は、私もそのとおりに思います。
  25. 牛嶋正

    牛嶋正君 ここで、先ほど申しましたプラザ合意後の円ドル相場の推移をちょっと見ていきたいと思います。  一九八五年に合意が得られたわけですが、その直前の円ドル相場というのは一ドル二百四十円でございました。この四月にはそれが八十円まで上昇したわけであります。いわば、十年間で三分の一になりました、三分の一という言い方はまずいのかもしれませんけれども。三倍に上昇したと言ってもいいのかもしれません。  しかし、その間やっぱり何回かドルの反転がございました。調べてみますと、九〇年、九一年、九二年と毎年一回、それは第二・四半期であったり第三・四半期であったりしますけれども、反転をしているわけです。そして、その反転の後しばらくそれが続きますけれども、そこにまた急激な円高が始まる、こういう繰り返しであったわけです。  こういうことを考えますと、今回のドル反転に対しまして私ちょっと悲観的な考え方を紹介いたしましたけれども、恐らくこれまでのプラザ合意以降の相場の、今申しました反転を繰り返しながら全体トレンドとしては円高傾向をずっと続けてきた、こういうことがやっぱり背景にあるのではないかというふうに思うわけであります。  このように、プラザ合意後の円ドル相場の推移を振り返ってみますと、そこには貿易構造と申しますかあるいは経常収支と申しますか、その不均衡がやっぱりある。為替市場というのは、そういった貿易構造の不均衡を是正するように、その調整的な役割で円高になったりあるいは円安になったりするわけでございます。ですから、もちろん実際の円ドル相場というのはいろんな要因によって動きますけれども、トレンドとしてはあるいはベースとしては各国の貿易構造がやっぱりそこにあるということであります。  そういうことを考えながらこの一月以降の急激な円高ドル安の進行というものをもう一度振り返ってみますと、普通は円高ドル安が進みますと、輸出が抑えられ輸入が伸びてそして貿易黒字が縮小する、これが順当な動きを示すわけですけれども、しかし四月―六月の期間をとって見ますと、むしろ貿易黒字幅は拡大しているわけですね。それは、よく言われますようにJカーブ効果で一応説明がつく。企業の方もできるだけコストダウンを図りながら輸出量を維持しようとする。そしてその場合に、円ドル表示でいきますとむしろ輸出額は増大をするというふうなことで、いま申しました四月―六月期間をとって見ますとむしろ貿易黒字は拡大をしている。このことがさらに円高ドル安を加速させていったのではないか、こういうふうに思うわけであります。  そのときにこの七月の貿易黒字の減少があったわけで、ですからここが非常に注目される点ではないかと思うわけであります。四月-六月期がむしろ貿易黒字が拡大して、そして七月になって縮小に向かう、こういったシフトがなぜ起こったのか。このあたりの原因についてはどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  26. 広瀬勝貞

    説明員(広瀬勝貞君) 数字のお話でございますので、私からちょっと御説明をさせていただきます。  委員指摘のとおり、本年一月以降円高が急速に進展したわけでございまして、その結果、ドルベースの輸出額でございますけれども、阪神・淡路大震災がございました一月を除きますと、毎月対前年同期比で二けたぐらいの伸びを示しております。一-六月全体で、ドルベースでございますが、対前年同期比一七・六%の輸出の伸びということになっております。  この要因でございますけれども、一つは、御指摘のように急速な円高が進行し円建て部分のドル表示額が上昇したということによりまして、ドルベースの輸出価格が対前年の実績を大きく上回ってきたということがあると思います。一-六月の平均でございますけれども、一一・六%ぐらいの価格がドルベースで上昇しております。  ただ、それだけではございませんで、もう一つの要因といたしましては、我が国の産品の非価格競争力がまだまだ強いということ、それからアジア中心に外需が非常に強かったというようなことで輸出数量の伸びも無視できないものがあったわけでございます。輸出数量は一-六月で対前年同期化石・八%上昇しておりまして、これも一-六月のドル表示の輸出の二けたの伸びの要因の一つであっただろうというふうに考えております。必ずしも価格要因だけではなくて、非価格競争力とか外需の伸びということも我々考えなきゃいかぬのじゃないかというふうに思っております。  なお、御指摘のように、円高傾向が定着いたしました本年七月には、輸出数量が一月以降初めて対前年同期比マイナス〇・三%ということになっております。このドルベースの輸入額の増加とも相まって通関收支じりは二三%のマイナスということになっております。なお、けさ発表になりました七月の経常収支じりも二〇・五%のマイナスということになっております。
  27. 牛嶋正

    牛嶋正君 このように見てみますと、やっぱりトレンドとしては貿易構造というのは非常に重要な意味を持っているというふうに思うわけですね。そういうことから政府も、一九九二年、平成年度に貿易黒字が千億ドルを超えるわけですけれども、内需拡大策をとって黒字削減を図っていくんだという公約を出されるわけでありますけれども、その後をちょっと振り返ってみますと、私はむしろこの黒字削減をどう図っていくかの方が問題ではないか。  ですから、もう一度言いかえますと、黒字削減を図るんですけれども、どういう貿易構造に持っていくのか、このあたりがちょっとそのときにはっきりされなかったんではないかというふうな気がいたします。と申しますのは、例えば我が国全体で輸出入が今仮に均衡したとして、貿易黒字がゼロになったといたしましても、例えば対アメリカだけを取り上げた場合に依然として貿易黒字が存在するといたしますと、全体として貿易黒字をゼロにしても円高ドル安の圧力というのはやっぱり作用するのではないかというふうに考えるからであります。  そして、もう一つ私が注目したい点は、この貿易構造をどう変えていくかということは、貿易構造と産業構造が表裏一体のものであるということになりますと、それは言うならば産業政策あるいは我が国の産業構造をどういうふうに持っていくかということと非常に密接に関連するのではないかというふうに思うわけであります。  一九九二年以降三年経過いたしまして、貿易黒字削減の成果が十分にあらわれていなかったわけですね。そのことが円高ドル安の傾向をずっと持ち続けてきたというふうに思うわけであります。言うならば、今私が申しました貿易構造あるいは産業構造をどういうふうに持っていけばこういった貿易黒字の削減につながっていくのかという点についてこの間十分御議論されたのかどうか、この点について大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  28. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、委員が御指摘になりました時期において産業構造あるいは将来に対する産業政策というものがどの程度議論されたかということになりますと、私は十分その当時の論議を承知しておるわけではございません。ただ、例えば産構審の報告等を見ましたとき、将来を見据えた我が国の産業構造のあり方というものが相当程度議論されておったということは私は間違いないと思っております。  問題は、それに沿った方向に我が国の産業界が移行していたかどうかというところにあろうかと思いますが、私は、基本的に我が国の経常収支黒字というものが継続している要因というものは、やはり貯蓄と投資のバランスの中における国内投資の不足ということに大きな問題意識を持つ方が現時点において正しい、そういう気持ちは率直に持っております。  そして、今後我々が考えていかなければならないこととして、政府自身積極的な社会資本整備を進めていきながら公共投資の面から国内投資を増大させていくことが非常に必要であると思っております。しかも、その公共投資というのはいわゆる従来型の公共事業というものに限定されるものではございません。むしろ、積極的な研究開発投資等を含めまして私は国内投資を増大させていくことが必要だと考えております。  同時に、内需の拡大あるいは輸入の増加に資する新たな事業分野への民間投資が促進されるように、新規の事業支援あるいは研究開発推進、企業の事業革新の支援、こうした施策を着実に実行していくことが必要であると考えております。  そして、もっと言葉を飾らずに申し上げますならば、現在、廃業率が起業率を上回る状況の中で、どうすればベンチャービジネスと言われるようなものを含めまして新たな業を起こすという方向に国内経済を立て直していけるのか、我々としては重大な関心を持たざるを得ません。これは雇用面における問題も同様でありまして、私どもとしてはいかにして業を起こせしめ雇用を確保していくかという視点を忘れてはならないと考えております。  こうした取り組みをすることによって、むしろ私は、我が国において国内のニーズに対応した内需主導型の新たな産業構造というものが形成されていく、そしてそれは国際的に調和のとれた経済の発展が可能になる、そのように考えておる次第であります。
  29. 牛嶋正

    牛嶋正君 それで、今大臣は国内における設備投資をある程度刺激するということが貿易構造にも好ましい影響を与えるだろうというふうなお話でございました。私もそういう考えをある程度は持っておりますけれども、七月の貿易黒字が縮小したということをもう一度取り上げてみますと、先ほどの御説明にもありましたように、むしろ輸入の増加というのがあったと思います。そして、輸出の方はそれほど、むしろ横ばいぐらいだったというふうなことなんですけれども、この輸入の増大ということに関連いたしまして一つ注目しておかなければならないのは、いわゆる産業の空洞化と言われている生産基地の海外移転ではないかと思います。  どういうものを海外へ移転するかということは非常に重要ですけれども、今回の生産基地の海外移転の実態についてちょっとお聞きしたいと思うんですが、私の感じではかなり部品のメーカーが海外に生産を移転するというケースが多かったのではないかと思います。そうしますと、それは言うならば生産基地が海外に移転いたしますとそれに伴って今度は部品の輸入がふえるということでございますので、輸入の増大と非常に関連してくる問題であります。そういう意味で、私は生産基地の海外移転というのはこれからの貿易構造を考えていく上で非常に重要な意味を持っていたのではないかと思います。  ここで問題なのは、今こういうふうにドル反転をいたしますと、必ずしも海外へ生産基地を移転しなくてもいいというふうな状況が一時的にしろ生まれてくるわけです。そうしますと、これまで続いてきた生産基地の海外移転というのがここでまたとまってしまうのではないか。そして、むしろ企業は輸出攻撃をかけてくる、こういうことになりますと、またもとのもくあみというふうな感じを受けるわけでございます。  そういうことで、ことしに入ってからの生産基地の海外移転の状況について御説明を聞きながら、私が今懸念した点、ドル反転することによってそういった海外移転を促してきた状況が変わってしまうのではないかという点ですね、この点についてちょっとお聞きをしたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 実情につきましては後ほど事務当局から補足して御説明をすることをお許しいただきたいと存じます。  私は、しかし、今本当に私自身の言葉を飾らずに申し上げますならば、これ以上製造業が日本から離脱しないでほしい。殊に将来を考えたとき、比較優位を有する産業、製造業までが余り我が国から離脱しないためにどうすればいいかを実は本気で悩んでおります。そして、委員が御指摘になりましたような一時的な為替の水準というものでこの海外移転の流れというものにどこまで歯どめがかけられるだろうかということをむしろ私は今心配をいたしております。  私は、為替というものの性格上、ある程度の振れは仕方がないと思っております。しかし、低下も上昇も含めまして、急激な変動というものは決して好ましいものではございません。そして、なだらかな変化でありますならば、私は日本の産業界はこれを吸収する力は持っておると思っておりますけれども、昨今の動きというものは余りに異常でありました。そして、その異常な変動の中で海外に生産拠点を移すことを現に進行させあるいは計画しておられる産業が、我が国の経済の先行きの不透明感の中でその計画を変更するかといえば、私は必ずしもその状況ではないと思います。むしろ、どうすれば製造業がこれ以上に離脱しないで比較優位を持つ産業が国内にとどまれるのか、私はむしろ今その方に懸念を持ち始めております。  実態につきましては、事務方の方から御説明を申し上げます。
  31. 牧野力

    説明員(牧野力君) 今の大臣の御答弁で私は尽きると思いますけれども、今せっかくの委員の御質問でございますので。  最近の製造業の投資活動を見ておりますと、御案内のように国内投資はこの三年連続マイナスでございます。例えば、九二年度一九・一%、九三年度二一%、九四年度一〇%のマイナスでございます。それに反しまして海外投資、これは特にアジア中心でございますが、海外投資は極めて高いレベルで推移をいたしておりまして、例えば九三年度は一〇・七%、九四年度二三・八%といったような状況でございます。  そしてもう一つ、これはよく見過ごされておるわけですが、注意をしないといけませんのはいわゆる対内投資ですね、国内に入ってくる投資。これはアメリカ、ドイツ等を見ましても、海外投資は非常に伸びているわけですが、一方、対内投資も非常にふえておる。したがって、いわゆる国内の空洞化といいますか、それを随分補うような役割をしているわけですが、日本の場合はこの対内投資が極めて少ないというところにまた一つ問題があるんだろうと思います。  お尋ねの点でございますが、ごく最近の動きはちょっと掌握しておりませんけれども、部品等におきまして海外に投資をしそれをまた国内に逆輸入するといったような関係ができておりますが、これは基本的には、日本の経済が国際的に調和をしましてその中で水平分業をどんどんやっていくということで、私は好ましいことであろうというふうに思っております。  ただ、今大臣が申し上げましたように、日本の国内におきまして普通ならやっていけるものが外に行かざるを得ないというようなことになるのが問題でありまして、結局、そこはこの為替も含めまして国内における製造業の投資活動環境というものをいかに整えていくかということが問題であろうと思います。  それは単に為替の問題だけではなくて、為替につきましても、今円安に振れておりますけれども、私どもの調査によりますと、大企業におきましても恐らく百円を上回りませんとなかなかこれは難しいと言っておりますし、中小企業におきましては百十円とかそういうことを言っておりますし、為替の問題ももちろんありますけれども、それに加えまして、例えば労働コストの問題でございますとか、あるいは輸送その他のいろいろな高コスト構造の是正でございますとかそういったような問題、あるいは法人税を含めました企業を取り巻く、企業活動を取り巻くいろいろな制度をやはりよく変えていく、改善をしていくということによって国内で活動できるような産業は、製造業はそれなりに定着をしていく、そういう対策を講じていくことが大事であるというふうに思っております。
  32. 牛嶋正

    牛嶋正君 いずれにしましても、この問題の難しさというのは、先ほども申しましたように、貿易構造あるいは産業構造が為替相場に影響を与える。しかし、それだけじゃなくて為替相場が今度は逆に貿易構造あるいは産業構造に影響を与えてくる、こういう相互に影響を与え合うというところに問題があるのではないかと思います。そして、貿易構造が為替市場に影響を与えるのは比較的短期にその影響が及びます。しかし、今度は逆に為替相場の影響が貿易構造なり産業構造にはじわじわと影響が行くわけですね。ここのところの調整をどういうふうにしていくかが非常に問題ではないかというふうに思っているわけであります。  我々、経済を運営していくに当たりまして、我が国の立場で考えるならば、できるだけ円ドル相場が安定するということ、多少の変動はやむを得ないといたしましても、先ほど大臣が御指摘になりましたように、できるだけ安定するということが望ましいわけです。  私は、そのためには二つの条件を考えておかなければならないと思います。  一つは、できるだけ貿易黒字あるいは赤字を小さくするということであります。すなわち輸入輸出を均衡させるということですけれども、この均衡させる場合、先ほど申しましたように、我が国がもう一つ考えておかなければならないのは、国別の貿易構造も同時に考えておかなければならないということ、そして貿易黒字の縮小を図るに当たりましても、できれば輸入を伸ばすという形でそのギャップを埋めていく必要があるのではないかと思います。    〔委員長退席、理事情水達雄君着席〕  私は、もう一つ条件があるのではないかと思います。それは輸出入の中身でありまして、できれば完成品よりも資本財あるいは部品の割合を高めていく、そうすることによって為替相場のいずれの方向への変動に対しましても我が国の経済、特に輸入輸出に与える影響ができるだけ小さくなるのではないか。変動がやむを得ないとするならば、その変動の影響をできるだけ小さくする。その一つの条件として、できるだけ輸出輸入に関しまして完成品よりも資本財あるいは部品の割合を高めていく。  例えば、我が国が輸出いたします自動車の費用構成の中で輸入部品が仮に三〇%を占めるというふうなことになりますと、その部分については円高差益を我々は享受できるわけであります。そうしますと、円高差損をそれてカバーできるというふうになるわけでありまして、それだけ為替相場の変動を吸収できるのではないか、こういうふうに思っております。  今、私が申しました後の方の条件を満たしていくためには、これは水平的な国際分業を進めなければなりません。その進め方は、先ほど大臣は、やはり比較優位のある産業についてはとどめたいとおっしゃいました。私はそれは当然だと思います。しかし、同時に、アジアの経済のことを考えますと、やはりここで我々もアジアの全体的な技術水準のアップを図っていくためには、今申しましたような国際的な産業構造をつくっていく必要があるのではないか、そこに我が国の一つの大きな役割があるのではないか。  ですから、これから我が国がそういった役割を果たしていく上でも、我が国の経済のもう一度基盤を強化しなければなりませんけれども、同時に、それで終わるのではなくて、アジア全体の経済水準を高めていくためにどのように役割を果たしていくか、その二つの役割をこの為替レートの安定ということに力を入れながらやっていく必要があるのではないかというふうに思います。    〔理事情水達雄君退席、委員長着席〕  最後は少し、これからの我が国の経済政策の基本的な方向をお尋ねすることになるわけですけれども、最後にできましたら、これについてのもう一度橋本大臣のお考えをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  33. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 私は、委員の中長期に目指すべき方向としてアジア・太平洋地域における日本の役割というものを御指摘になった、その視点は全く我々と違っておらないと思います。  私自身、昨年、APECの中小企業大臣会合を初めて主宰をいたしまして、いわゆるすそ野産業というものの育成が、今後を考える場合、アジア・太平洋地域における望ましい国際的な水平分業というものを確立する上で大切だということを強調し、その方向で今日も議論が続いております。そして本年、日本はAPECの議長国として十一月に大阪会合を控えておるわけでありますし、当然ながらその時点において、今度はその中小企業大臣会合をオーストラリアが主宰されますが、その二回目の会議の中からまた将来に向けての論議というものは出てくるでありましょう。  しかし、その以前の問題として、先ほど申し上げましたように、現実の景気の回復という視点から見ましたとき、私は本当にこれ以上製造業が逃げ出さないでいていただきたい。そのために先行きの不透明感をどう払いのければいいのか、そして製造業というものが安定して日本で業を営んで企業として成立し得る条件をつくるための方向を、それはあらゆる手段を使いたい、本当にそういう思いでございます。  しかし、そういう視点から考えましても、実は我々がこれからやっていかなければならないことは規制緩和、言い古された言葉でありますけれども、なおその内容は極めて重みを持っております。あるいは民間における商慣習を含めまして、こうした部分の改革、制度改革、こうしたものを積み重ねることによって高コスト構造をどう是正していくか。あるいは廃業率が起業率を上回っておりますこの状況の中で、起業率を高めるために新規事業の支援策をどう組み立てていくか。  さらには、これはもっと基本的な部分になるわけでありますけれども、研究開発あるいは情報化の推進というものにどれだけのエネルギーを注いていけるか。さらに、新産業インフラの整備あるいは企業の事業革新をどう支援し今後の時代に合った企業の体質に切りかえていっていただくか。こうした努力を積み重ねながら、新規産業創出というものに努力をしていくことは私は不可欠だと思います。  そして、一方でそれだけの努力をし国内における雇用を確保しながら、同時に我々はやはり国際的な水平分業というものを考えましたとき、アジア・太平洋地域の諸国がそれぞれの国におきましてその特技を生かしながら、すそ野産業の育成を続けていかれるために努力される方向に向けて我々が支援できる仕組みを用意してまいりたい。  現在におきましても技術研修でありますとか、さまざまな角度での支援はいたしておるわけでありますけれども、国の立場から、政府の立場からもそうした努力を進めていくと同時に、逆になだらかな形で技術移転が行える状況を整備していく、これが我々の目指すべき方向ではなかろうか。  しかし、当面、そういう問題に落ちついて取り組めるだけの経済情勢をつくり出すことにまず私は全力を尽くしたい、そのような思いでおります。
  34. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 私は、社会党の伊藤でございます。  私は今、牛嶋委員通産大臣の間で交わされた産業の空洞化問題につきまして、労働者の雇用の面から深刻な問題意識を持っておりますので、雇用に重大な影響をもたらしている海外シフトについて少しお伺いしたいと思います。  実は、八月二十七日の朝日新聞に小さな記事でありましたが、山一証券経済研究所が発表した興味深い記事が載っておりました。御承知のように、総務庁発表によると七月の日本の失業率は三・二%ということでございましたが、この記事によると実質失業率は六・三%ということでありました。  その根拠でございますが、表面的な失業者二百二万人のほかに、統計では非労働力人口に分類されている主婦、学生等のいわゆる求職活動断念者などの潜在的失業者が三十三万、いわゆる企業内失業者と言われる人たちが製造業で七十四万、非製造業で百二万おるということでございます。これらを合計しますと、実質的失業者は四百十七万となりまして六・三%でございます。八月四日に労働省が発表した一九九四年の雇用動向調査速報によっても、職場に新たに就職した人の全体に占める割合を示す入職率、これが一二・九%で前年より一・四ポイント下がっておりまして、新聞に載っていました山一証券経済研究所の研究を裏づけておると思います。  雇用状況の深刻化は、もちろん海外シフトだけではなくて企業の本格的なリストラの進展等もかなり影響があるというふうには思いますが、大きな要因としてはやはり産業の空洞化、今議論のありましたところにあるんではないかと思います。  産業の空洞化につきましては、私も経済白書や通産省が出した海外投資統計総覧をちょっと見まして、先ほどの説明のとおりというふうに認識しておりますけれども、今産業の空洞化をめぐりまして牛嶋委員通産大臣の間に議論があって、牛嶋委員はアジア圏全体の経済についての肯定的な面を主張されました。通産大臣も、中長期的にはそのようなことは言い得るけれども、かなり切迫感のある状況の中でこれ以上の製造業の海外シフトについてはとめたいということを申されました。比較優位のある産業についてはとめていきたいということでございました。  私は、経済ということをアジア圏で考えることについては非常に有用がと思いますが、その前に今行政責任者である大臣から、これ以上の海外移転についてはとどめなければならない、そうでないと今後の経済政策産業構造の確立がならないというふうに答弁でお伺いいたしました。  そこで、質問を二つの部分に分けてお聞きいたします。  一つは、産業の空洞化について、今の議論である程度わかりますけれども、国内的な経済評価、また国際経済評価、この国内、国際の経済評価がもたらす国内経済に対する効果というものについて、冷静な分析といいましょうか、きちんとした分析をする必要があるのでお伺いしたいし、それに基づいて国内の考え方、産業界の考え方をある程度統一的にしないと今後の対応がとれないんじゃないかというふうに思いまして、規制緩和に逆行するようでありますが、その辺を通産省としてどのように指導していかれるのかということをお聞きしたいと思います。  さらに、空洞化の将来予測でございますが、破壊的な空洞化の影響は回避できるのかどうかということはぜひとも雇用との関連でお伺いしたいというふうに思いまして、そのことをお伺いしたいと思います。  さらに、若者が未来に希望を持てない社会ということを今言われております。常套語のように言われ始めました。大変ゆゆしきことだと思います。特にこの雇用問題が産業の空洞化から起こってきたときに、環境変化に対応できない下請中小企業、または地場産業的な地域、あるいは雇用機会が限られている地方中小都市というところには総体的にかなり厳しいダメージがあると思いますので、その辺を中心とした雇用問題に対する通産省の考え方をまずお聞かせいただきたいと思います。
  35. 牧野力

    説明員(牧野力君) それでは、御質問まとめてお答えをさせていただきます。  まず、産業の空洞化の現状の分析評価ということでございますが、現在、産業が空洞化しているかどうかということについてはいろいろ議論がございますけれども、私どもは、現状を放置しておきますと、先ほどお答え申し上げましたような日本の国内における製造業の設備投資の減少、それから海外投資が非常に急ピッチで伸びていること、あるいは国内に対する対内投資が非常に弱いということを考えますと、このまま事態を放置いたしますと特に雇用問題について非常に深刻な影響が出るんではないか。さらに、中小企業、あるいは今御指摘がございましたような地場産業、あるいはより長期的に見ますと日本の技術開発、研究開発の活動が衰えまして、将来的に非常に問題になる、我が国が衰退の道を歩んでいくんではないかということで、非常に深刻に考えております。  問題はこれに対する対応、特に雇用を中心とした対応でございますけれども、率直に申し上げまして、現下の状況の中で製造業が海外に進出をするということについては非常に私どもも困ると思っております。ただ、長い目で見た場合の世界経済の流れというものにさお差しまして、現在、海外に進出希望を持っている、あるいは進出意欲を持っております製造業を強制的に押しとどめるということはできもしませんし、あるいはすべきではないというふうに思います。  問題は、国内におきまして比較優位のあるものができるだけ定着をしていくようなそういう環境をとにかくつくっていく。そのためには先ほど来大臣がお答えを申し上げておりますように、高コスト構造の是正、これは一にかかって規制緩和あるいは取引慣行の是正が非常に大事であると思いますが、もう一つは、そうはいいましてもやはり時代の流れで、ある程度既存の製造業におきまして雇用問題が生じてくることは、これはそういう勢いがあろうかと思いますので、問題は新しい産業を興こし、新しい需要を喚起して、それに雇用を吸収していくということが非常に大事であろうというふうに思います。  それにつきましては、先ほど来お答え申し上げておりますように、新しい形の社会資本を整備いたしますとか、あるいは旧来型の社会資本におきましてもなるべく国内の需要の喚起、既存産業の需要喚起に結びつくようなそういったものを優先的にやっていただくとか、いろいろ対応がございます。  雇用面におきましては、私どもこれは前国会におきまして極めて迅速に成立をさせていただきました事業革新法という法律がございますが、これは企業が新しい分野、これは必ずしも新規産業ということじゃございませんけれども、既存の技術なりノウハウあるいは人材を活用して新しい分野に出る場合にはそれを積極的に支援しようと。その場合に、御承知かと思いますけれども、労働省とも緊密に、あるいは労働組合の意見も十分に伺いまして、雇用調整助成金の給付を従来の企業内から企業間を越えて活用するという制度もつくっておりますし、今後どういった分野に雇用が吸収できるか、そのためにはどういう職業訓練をやったらいいか、あるいはどういうような細かい政策をやったらいいかということについて、労働省とも十分に相談をして今やっているところでございます。  その一環といたしまして、これはまだ若干先走っておりますが、今次補正予算、第二次の補正予算で恐らくそれを検討中でございますけれども、これと軌を一に合わせまして、例えば非常に現在円高、景気不振で疲弊をしております地域をどうするか、あるいは新しい技術開発なり筒報分野なりのいわゆる新社会資本の建設を促進するために、今民活法という法律がございますが、これをどう変えていくか、あるいは新規産業を育成するための新規事業法という法律がございますけれども、これをどう変えるかということで、いわゆる構造改革のための関連法案をできれば秋の臨時国会にでも成立をさせていただきたいというようなことで、私どもできるものは急ピッチでできるだけ早く対応をいたしたいというふうに考えておるところでございます。  以上です。
  36. 伊藤基隆

    ○伊藤基隆君 時間がなくなりましたので、もう一つ質問いたしますが、手短にお聞きしたいと思います。  産業の空洞化になっているかどうかは別問題という認識が出されておりまして、生産の海外シフトということで私はいいと思うんですけれども、それでは新たな産業が日本においてどう創設されていくかということについて、今時にマルチメディア時代、ここに着目されておられるのが日本の中では一般的な認識だと思うんですけれども、このマルチメディアの関連分野でアメリカに大きく水をあげられているというふうに言われております。技術的にはかなり高い水準にあっても、産業システムがそうなっていないために水をあけられているというふうに思います。「二十一世紀の産業構造」という本を読ませていただきまして、産業政策局長がもはやキャッチアップの時代は終わったというふうに書かれておりますが、全体的にはそうかもしれませんけれども、特にマルチメディア時代においては再度キャッチアップをする必要があるのではないかというふうに思います。  もう一つお伺いします。  これは大臣にぜひ感想的にお答えいただくだけで結構なんですが、日本の製造業が戦後、技術革新、新製品の開発、品質管理、生産ラインの改革、この中で世界に冠たる地位を築いてまいりました。よりよいものをつくることが日本社会の精神構造にもかなり大きなよい影響を与えたというふうに思っていますが、バブルの発生と崩壊への経過がそういう日本人の認識をかなり後退させたというふうに思っています。金融システムの欠陥と政策の失敗と言えるでしょうか、そのものがバブルの発生と崩壊を引き起こしたというふうに私は思います。  通産大臣は大蔵大臣もなさっておったわけですけれども、そういう他分野、それも非常に大きなインパクトを与える金融システムというものの影響で、製造業、通産政策というものが後退をさせられ、それが日本の社会にも、精神構造にまで大きな影響も与えてきたということは大きな問題だというふうに思います。  そこで、今新しい技術のフロンティアの展開、次の時代を担う大型イノベーションや新しいリーディング産業の育成ということをかなり大きな政策目標として国民全体に認識させていくというか、日本社会全体がそのことに目標を求めて認識していくというようなことが重要になっているというふうに私は思いますが、通産大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  37. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、大変大事な問題の御指摘をいただいたわけでありますけれども、私は昨年の産業構造審議会において示されました二十一世紀へ向けての展望というこの青写真はまさにそうした問題についての一つの答えと思っております。  なぜなら、これから先の我が国の新規・成長分野というもので、御承知のように、情報・通信関連分野あるいは住宅関連分野、医療・福祉分野等十二分野を列記いたし、それぞれ想定し得る雇用量というものを試算いたしました。そしてまた、その市場規模というものが現在の約百三十兆円から二〇〇〇年に二百十兆円、二〇一〇年に三百五十兆円程度に拡大するという見通しも示されております。また、雇用面におきましても、現在の八百五十万人が二〇〇〇年に一千百万、二〇一〇年には一千四百万人という予測を出しているわけであります。私は、これはまさにこうした方向に我々がこれから努力をしていかなければなりませんが、将来に向けて達成可能な目標だと考えております。  敗戦後から高度経済成長時代を通り抜け、その間さまざまな産業がその時代におけるリーディング産業としての役割を果たしてまいりました。恐らくこの十二分野の中において二十一世紀初頭から我が国を牽引していく役割を担ってくださる産業が育ってくるであろう、その中において情報・通信という分野が非常に大きな期待をかけられているという点も委員の御指摘のとおりであります。  しかし、そのためには、まさに先刻来申し上げてまいりましたような競争の促進でありますとか、規制緩和でありますとか、あるいは税制など制度改革をしながら国内における高コスト構造を是正することから始め、先刻来御論議になりましたような諸点を我々が解決していかなければこの状態は生まれないわけでありまして、今後ともにそうした目標を見据えながら、まず当面足元に努力をし、今後に向けての努力をしていきたいと考えております。  また、先刻、委員から御指摘のありました雇用の問題にいたしましても、仮に例えば現在の人材派遣のルールが変更され、もっとそういう意味における自由な行動が可能になりますならば、例えば現在、本当に新しい分野に進出しようとする中小、殊に小規模企業は人材を求めております。現在、大企業がリストラを一方で進めている、その中において優秀な人材が放出されるということもあるわけでありますけれども、ここに雇用のミスマッチが起きていることも事実でありまして、こうした点も我々として今後考えていくべき方向と、そのように考えております。
  38. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 日本共産党の筆坂秀世です。どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、官官接待問題について会計検査院に伺いますけれども、会計検査院は、この食糧費問題が大きな問題になって以降、今通常の検査の枠内で大阪府など食糧費も追加して調査をする、あるいは通常の検査のサイクルの中で追加的に食糧費の調査を行うというふうに聞いておりますけれども、具体的にどの県のあるいはどの自治体の調査をやっているのか、まず御報告をしていただきたいと思います。
  39. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) お答え申し上げます。  事務費のうちの食糧費をめぐる問題につきましては、社会的関心も非常に高いということから、現在、定例的な検査の一環として食糧費を含めた事務費の調査を行っているところでございます。  具体的な県名につきましては、検査の途上でもございますので、この場で具体的な名前を申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
  40. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 通常の検査でしょう、これは。通常の検査で、一部はマスコミにだって出ているじゃないですか。  じゃ、私の方から言いますけれども、通常の検査の枠内で追加的に食糧費も調査をするというのが大阪、島根、秋田、この三県じゃないですか。そして、通常の検査は終わっているけれども追加的に食糧費について調査をする、これが沖縄、和歌山、茨城、宮城、この四県じゃないですか。間違っていたら間違いだと言ってください。
  41. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 具体的な県名につきましては、検査の途上であるということでございますので、従前から答弁を差し控えさせていただいている次第でございます。
  42. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 それじゃ聞きますけれども、今やっている調査、あなた方はどこの県がおっしゃらないけれども、この調査以降、他の都道府県調査を拡大する、こういうことはあり得ますか。
  43. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 今後の調査につきましては、現在の調査の結果を踏まえまして、さらに幾つかの県を調査していきたいと、そういうふうに考えております。
  44. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 この検査が終わって以降、新たに他の県も調査するということですね。  この問題というのは、例えば地方が中央の役人を接待する、これは一般的には既に指摘されてきたことですよ。ですから、私は食糧費問題、今まで食糧費について会計検査院が全く調査をやってこなかったというのは、率直に申し上げて会計検査院の怠慢だというふうに言わざるを得ないと思うんです。  私は、七県指摘しました。その後の調査をするということですけれども、それをやらないと、今マスコミ報道を見てもわかるように、食糧費についてこれだけ批判があるけれども、しかしとらえ方がばらばらでしょう。例えば、山形県なんかはどういう改善策を打ち出したかというと、コンパニオンの同席は部長以上なら結構だと。これは改善じゃなくて改悪ですよ。あるいは社会通念上許されるとか、必要だとか、開き直っているところがいっぱいありますよ。しかも、今や明らかになりつつある実態というのは本当にひどいものです。  例えば、宮城県だと空伝票による不正な操作をやっている。あるいは秋田県は、全く関係のない部局にその食糧費を転用している。しかも九三年度、九四年度の二年間で中央官僚を何と二千回接待しているというんですよ。日曜日を除けば大体一日四件ですよ。しかも、そのうちの千二百は伝票の書きかえをやっているというんです。これはもう、皆さん専門家ですからあれですけれども、会計法であるとかあるいは補助金適正化法であるとか、明らかに法律違反でしょう。あるいは公金横領、公文書偽造、まさに犯罪行為です、これは。あなた方の調査はそういうことをちゃんと念頭に置いて、犯罪にもなり得るという立場で調査しているのかどうか、これを伺いたいと思います。
  45. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) お答え申し上げます。  会計検査院といたしましては、国の補助を受けて実施されております事業につきましては、これまで本体の事業の検査を重点的に行ってきていました。こういうことでございまして、事務費につきましては十分に検査を行ってこなかったというのが実情でございます。
  46. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 実情じゃなくて怠慢だと言ったんだ。
  47. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) このようなことから、この事務費の中の食糧費をめぐる問題につきましては、社会的関心も非常に高いということもございまして、現在その食糧費の使用実態について調査を行っているところでございます。  したがいまして、食糧費の使途の実態を把握した上で、事務費が補助目的に沿って適正に使用されているかどうか、ただいまの先生の御指摘も念頭に置きながら検討いたしたいと、そのように考えている次第でございます。
  48. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 あなた方の権限というのは、ただ不適切な経理を発見するだけじゃないでしょう。これ、きのういただきましたよ、会計検査院のを。これを見ると、発見するだけじゃなくて、原因を究明してその是正改善を促すという積極的な権限を持っています、こういう機能を果たしますと、こう書いてありますよ。あるいは違うページには、場合によっては弁償責任の検定だってやるんだと、場合によっては懲戒処分の要求だってすると。これが会計検査院権限でしょう。そういう立場でやっているのかどうかということを聞いているんです。端的に答えてください。
  49. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) ただいま申し上げましたように、食糧費につきましては、その使用実態につきまして調査を行っているというところでございます。
  50. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だから、どういう立場で調査をやっているのかと聞いているんですよ。何度も言わすんじゃない、二回言ったんだよ。
  51. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 我々の県に対する立場といいますのは、あくまでも補助団体ということで検査をしているところでございます。
  52. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そんなこと聞いていないよ。聞いていることに答えなさい。だめだ、全然聞いていることに答えていない。二回も聞きゃわかるだろう。
  53. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 深田審議官に申し上げますが、もうちょっと明確に答弁してください。
  54. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) はい。  ただいま申し上げましたように、この事務費の中の食糧費をめぐる問題につきましては、その使用実態について調査をすると。その観点と……
  55. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 だから、公金横領とか公文書偽造だとか補助金適正化法に違反しているという疑いを持ってやっているのかどうかを聞いているんです。
  56. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) あくまでも県に対する検査と申しますのは補助団体に対する検査でございます。
  57. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 そんなことはわかっている。
  58. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) ですから、補助金につきましては、その基本的な法律は補助金適正化法でございます。したがいまして、我々の判断の基準もそういう法律が基準になるということでございます。
  59. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 要するに、補助金適正化法に違反している疑いがあるかもしれないということで調査をしているということですね。  この問題というのは、今言われているだけでも三百億円ぐらいこういう不正に使われていると言われているわけですよ。しかも、今言ったように会計検査院は、これをちゃんと改善する、あるいは懲戒処分を要求する、こういう権限まで持っているわけですね。ですから、こういう不正な使途を、使用の仕方をやめさせる権限だってあるわけですよ。調査の結果によってはそういう措置も当然あり得ると、一般論で結構ですけれども、どうですか。
  60. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) ただいま先生のおっしゃられました懲戒処分の要求とかいうことにつきましては、補助団体につきましては院法上その適用がございませんので、そういう要求は院法上できないということでございます。
  61. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 それだけじゃなくて、ほかにもあるじゃないですか。
  62. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 私どもといたしましては、院法に与えられた権限を行使して検査をするということでございます。
  63. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 ともかく権限を十分発揮するということだから、必要な改善命令も出るというふうに理解をいたします。  食糧費というのは、各県によっていろんな開き直りの仕方をしていますけれども、これは前の内閣官房副長官の石原さんが監修された改訂地方財政小辞典によると、こう解説してあります。「交際費と混同しからであるが、行政事務、事業の執行上内部的、直接的に費消される経費として外部折衝経費とは厳正に区別すべき」だと。だから、食糧費を使っての接待なんということはあり得ないということなんです。あくまでも内部的、直接的に使われるものだと。情報交換のために必要だとか補助金をとるために必要だとか、いろんなことを言っているけれども、そんなものは食糧費じゃないんだと。  会計検査院はこういう認識調査をやっていますか。
  64. 深田烝治

    説明員(深田烝治君) 繰り返しのお答えで恐縮なんでございますけれども、私どもといたしましては、食糧費の使用実態をまず把握するということが大前提でございまして、その使用実態を把握した上で、それがその補助目的に沿って適正に使用されているか、そういう観点から検討を進めているというところでございます。
  65. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 官官接待問題というのは通産省も実は例外ではありません。今明らかになっているだけでも、例えば東京都の東京フロンティア推進本部からの接待がある。あるいは和歌山県の東京事務所が情報公開で公開したところによると、九三年度だけでも十八回、通産省接待を受けています。各省庁の中で第六位ですよ。余り威張れる順位じゃないと思います。  そこで、大臣にお伺いしたいと思いますが、江藤総務庁長官は、官官接待というのは私はやってはならぬことだと思っています、不愉快だと。あるいは村山首相も、料亭で接待をするというようなことはおかしい、やめた方がいいというふうに述べておられます。  大臣のこの問題についての所見をお伺いしたいと思います。
  66. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 今、総理初め各閣僚の御発言が御紹介になりましたが、基本的に八月十五日の閣議の後の閣僚懇におきまして、官房長官から我々も改めて御指示を受けました。そして、通産省として改めて綱紀の粛正ということ、とりわけ地方公共団体との間における簡素で公正を旨とした節度のある対応を職員に指示するよう官房に対して指示を発したところであります、
  67. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 簡素で節度あるというふうにおっしゃいましたけれども、少なくとも食糧費を使っての接待というのは絶対やめるべきだというふうにお考えでしょうか。食糧費については先ほど私言いましたが。
  68. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 本来、ルールにある費目の中でいずれにしても対応されるべきものであろうと思います。
  69. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 時間がなくなりましたので問題を移しますけれども、電力料金問題についてお伺いをしたいと思います。  この間、円高差益の還元ということで暫定引き下げが行われてきましたけれども、一家庭当たりは月額約百二十一円ということでまさにスズメの涙。協調介入で若干円安になったとはいえ、依然として円高、そして不況が続くもとで電力料金だけがなぜ高いんだと。先ほど大臣も高コスト体質の是正ということをおっしゃいました。しかも電力会社は大もうけですよね。一昨日の申告所得の発表を見ましても、ついに東京電力は一位でしょう、トヨタを抜きました。あるいは経常利益で見てもベストテンに電力会社が三社、四社と入っている。引き下げ要求が出てくるのは私は当然だと思うんですね。  中でも問題なのが事業報酬率だと思うんです。本来、自己資本についての報酬率というのは一般企業の自己資本利益率、これを一応上限に設定する、そして下限は公社債利回りや定期預金金利、これを下限に設定する、そしてほぼその中間ぐらいをとる。あるいは他人資本については社債借入金の平均金利をとるというのが一応目安になっています。  言うまでもありませんけれども、この間低金利がずっと続いています。例えば、定期預金金利は前回事業報酬率が引き下げられた一九八八年に比べて約一%下がっている。公社債利回りも約一%下がっている。あるいは一般企業の自己資本の経常利益率、これを見てみますと、一九八八年には二一%の利益率を出していたけれども、この不況のもとで今では八%まで下がっている。  電気事業審議会の料金制度部会の中間報告でもこういう経済情勢あるいは金利等の低下、こういうものに合わせて事業報酬率を見直す必要があると。正確に言うと、「金利等の経済状況変化を適切に反映させる必要がある」。これも素直に読めば金利が下がっている、不況になっている、利益率が落ちているというわけですから事業報酬率を引き下げよう、そういう立場で通産省は検討しなさい、こういうことでしょう。こういう立場で検討されているかどうか、通産省にお伺いします。
  70. 江崎格

    説明員(江崎格君) 電気料金を改定いたします際の事業報酬の取り扱いの問題でございますけれども、今委員指摘のこの七月に出されました電気事業審議会の料金制度部会の中間報告というのがございまして、まさに御指摘のように、この事業報酬率につきましては「金利等の経済状況変化を適切に反映させる必要がある」という指摘が出ておりますが、ただ同時に、我が国の電気事業におきましては長期の借入金比率が非常に高いとか、あるいは我が国の現在の金利水準が歴史的に見てかなり低い水準にあるとか、あるいは自己資本比率が低い我が国の電気事業の財務体質の脆弱化を招かないことというようなことも総合的に勘案する必要があるという指摘が出ているわけでございます。  私ども、こうした中間報告趣旨を踏まえまして、次回の電気料金の改定時におきましては適切な事業報酬率を設定したい、このように考えております。
  71. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 時間が来ましたので最後になりますけれども、要するに事業報酬率の改定ということを前提に今検討しているわけでしょう。そうすれば当然引き下げるということで検討しているということじゃないですか。時間がないから手短に答えてください。
  72. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 簡潔に答えてください。
  73. 江崎格

    説明員(江崎格君) 先ほども申し上げましたいろいろな要素を総合的に勘案して現在検討している最中でございまして、その方向についてはこの段階で申し上げるのは差し控えたいと思います。
  74. 筆坂秀世

    筆坂秀世君 終わります。
  75. 国井正幸

    ○国井正幸君 新緑風会の国井正幸でございます。  先ほど来議論があったところでございますが、今我が国は長引く景気の低迷に加えて、一時より戻したとはいえ円高基調のもとにあって、企業の海外投資が急速に進展している模様でございます。  したがいまして、失業者の増大など雇用不安とあわせて産業の空洞化が懸念をされておるところでございまして、特に製造業の対外直接投資と国内設備投資の動向などを見てみましても、政府関係資料からも明らかなように、九三年度以降海外投資が急増いたしまして、その分国内設備投資が大きく落ち込んでおるところでございます。海外生産比率も年々大幅に増加をいたしておるところでございます。  先ほど来、牛嶋委員あるいは伊藤委員からこの議論があったところでございまして、これらの現状については先ほど御説明をいただいたところでございますけれども、どのような政策対応をおとりになっているのか、もう少し具体的にお聞かせをいただきたいというふうに思うところでございます。
  76. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 先ほど来の論議で申し上げましたような認識、これは私ども共通した認識であろうと思います。そして、これにさまざまな要因が絡み合って今日の状況をつくっておるということも先ほど来申し上げてまいりました。そして、このような状態を放置いたしました場合に、雇用また中小企業あるいは地域経済への悪影響、これは間違いなしに国内産業の空洞化が懸念されるわけであります。  こうしたものを処理していきますための手法としては、先ほど来も申し上げたことでありますけれども、競争の促進、規制緩和、税制など制度改革そのものを実行しながら国内の高コスト構造というものを是正しなければなりません。また、研究開発基盤の整備を含めた社会資本の整備を進める必要があります。そして、新規事業分野の発展が可能となりますような基盤を整備していくこととともに、事業革新法によりまして企業が新分野の開拓を行う場合の支援策というものを我々としては組んでおります。  これは、それぞれの法律を既に用意いたしましたものもございますし、今後それらの法律そのものも、先ほど産政局長から御答弁を申し上げましたように、現在でき得れば臨時国会に改正法を提出し、あるいは新法を提出し、御審議をいただきたいと考えておりますものもございますが、我々としてはまさに地場の産業というものを含めた対策をきちんとしていかなければならない、そのような思いを持っております。
  77. 国井正幸

    ○国井正幸君 そこで、御質問でございますが、技術集積度の低いものについては、これはやはり海外転出はやむを得ないというふうに思うところでございますけれども、しかしやはり我が国が安定をした成長を遂げていくためには、新しい技術の開発を初めといたしまして技術集積度の高い産業というものを育成していかなければいけない、御調のとおりだというふうに思うところでございます。  そこで、昭和五十八年に高度技術工業集積地域開発促進法、いわゆるテクノポリス法が制定をされたわけでございまして、これまでに全国で二十六地域が指定をされたところでございますけれども、これら地域における企業立地の動向、あるいはこの地域とほかの地域とを比べてみて、このテクノポリス地域における企業の設備投資の動向などがどのようになっているのか、これらをいわゆるテクノポリス構想全体の評価とあわせてその辺をお聞かせいただきたいと思うところでございます。
  78. 鈴木孝男

    説明員(鈴木孝男君) 先生御指摘のように、昭和五十八年にいわゆるテクノポリス法を制定いたしまして、これまで二十六地域につきまして開発計画の承認を行ってきているところでございますが、これら二十六地域の工場立地の状況でございますけれども、テクノポリス承認後とテクノポリス承認前とを比較いたしますと、立地件数で見ますと年平均で約一・五四倍、あるいは立地面積で見ますと約二・〇四倍に増加しておりまして、ほとんどの地域でテクノポリスの開発計画を承認した後の立地件数が増加している状況でございます。  また、工業開発の状況を工業出荷額で見ましても、最近五年間で全国平均でございますと二七・三%の増でございますが、これがテクノポリス地域全体では三二%増加しておりますので、多少地域によるばらつきはございますけれども、全国水準を上回る伸びを示す地域が多いということで、おおむねテクノポリスの地域開発構想に合った形で進捗しているのではなかろうかと思っております。
  79. 国井正幸

    ○国井正幸君 時間もありませんので最後の質問になるかと思いますけれども、先ほど来大臣のお話にありましたとおり、地場産業の育成ということで大変御苦労をいただいておるわけでございますけれども、なかなか中小企業等の設備投資も今大変な状況にあるわけでございまして、ぜひこのテクノポリス地域における産学官の協調というものを一層強めていただきまして、そして特に先ほど来議論がありましたように、部品を製造することを含めてすそ野の産業の育成を一層推進していただきたい。そのために通産省といたしましても一層の御努力をお願いいたしたいと思うところでございます。
  80. 橋本龍太郎

    ○国務大臣(橋本龍太郎君) 非常に的確な御指摘をいただいたと、お礼を申し上げます。  これから先、私どもが、やはり何といいましても、これはテクノポリス地域だけではございませんけれども、地場の経済というものを考えました場合に、産学官の研究体制、これは共同交流あるいは交流事業、いろんな形があると思いますけれども、これが活発に行われるということは新製品のあるいは新技術の開発に非常に大きな役割を果たすものと考えております。これから先もそうした方向での努力を続けてまいりたいと考えておりまして、御支援をぜひ賜りたい、この場をかりてお願いを申し上げます。
  81. 水野誠一

    ○水野誠一君 新党さきがけの水野でございます。  産業空洞化対策にも関係のあるベンチャー産業の育成に関して御質問をしたいと思います。  先ほども大臣より御指摘がございましたが、我が国の新規開業率はここのところ低下をして廃業率を下回る状況になっているということでございます。  その原因の一つには資金の問題、すなわち開業必要資金がふえてくる、それに対して調達が難しいという事実があるようでございます。ある調査によりますと、企業家、すなわちアントレプレナーの七割の人が資金調達力の不足という問題を挙げているということでございます。  新規事業の育成におきましては、特にその立ち上がり段階あるいは創業段階に最も資金が必要なわけでありますが、御承知のように、アメリカでは「エンジェル」と呼ばれる個人投資家やあるいは年金基金などのベンチャーキャピタルがこうした役割を果たしているわけであります。つまり、直接金融中心で資金が調達されているわけであります。それがない我が国におきましては、公的金融機関の役割は極めて重要であるというふうに思います。例えば、財団法人ベンチャーエンタープライズセンター、通称VECの債務保証制度は、担保を持たないようなベンチャー企業の育成に非常に重要な役割をしているというふうに評価するところであります。  現在、第二店頭市場の設立など直接金融を促進するための策がとられつつあることは大変好ましいことであると思いますが、米国では企業設立から公開まで平均して約五年と言われております。これに対して、我が国では平均十七年というような事実もあるわけでございますが、発展期にあるベンチャー企業が株式公開をし資金を調達しやすくなることは非常に喜ばしいことであり、また重要なことであると思っております。  このために、直接金融に関する制度的な規制をさらに緩和していかなければなりませんし、また年金基金によるベンチャーキャピタル投資を認めること、あるいは株式、社債発行に関する規制を緩和すること、また株式公開によるキャピタルゲインに依存しないディベロプメントキャピタルの育成を図ることなどが必要ではないかと思います。  さて、我が国の将来の中心的産業が情報通信の分野になることは、先ほど伊藤委員からの御指摘にもありましたが、情報化社会の到来は、我が国の産業構造あるいは企業構造、生活行動というものを大きく変えていくことになると思います。このマルチメディア時代の中心となるソフ十分野のベンチャー企業、とりわけこれからはコンテンツ産業と呼ばれるものが重要な意味を持ってくると思います。これは情報の中身を供給するあるいは制作する産業を示すわけでありますが、我が国ではゲームやアニメに代表される世界に通用するコンテンツ産業が育ちつつある。また、コンピューターのソフト開発産業も海外との厳しい競争の中で少しずつその足場を固めつつあるということが言えると思います。  本日は決算委員会の場でございますので、通産省として平成年度以降の予算におきましてソフ十分野の産業、とりわけコンテンツ産業あるいはコンピューターのソフトウェア産業の育成をどのような方針で行われたのか、またどのような成果をお上げになってきたのかということについて伺いたいと思います。  また、この問題に関しては、とかく言われます縦割り行政の弊害、他の省庁との関係というようなところも含めて、他の省庁とのつながりあるいは調整が重要なわけでありますが、それがどのように行われているかということについてもあわせて伺いたいと思います。
  82. 一柳良雄

    説明員(一柳良雄君) 水野委員指摘のように、最近情報化が急速に進展しておりますが、御指摘のソフト産業というのは、経済構造の変革の中での新しい産業と同時に、また雇用吸収の場でもあるというふうに考えておりまして、極めてこれから有望な分野であると思っております。  私ども、かかる認識に基づきまして、情報処理振興事業協会というのが事業実施の法人としてあるわけですが、そこに例えば平成年度補正予算を七十四億五千万円いただきましたが、そのお金を使わせていただいて、一つはマルチメディアに向けた進展のためのマルチメディアの研究センター、人材育成センターというものを長野県に施設整備させていただきました。これは九月に運営開始されました。  もう一つは、コンピューターネットワークが非常に広がっておりますので、こういうふうなネットワークを利用したソフトの開発、技術開発ということで慶応の藤沢キャンパスに情報基盤センターというものを設置して、電子図書館、教育用ソフトの開発、あるいは新しい産業を興すのに非常に寄与するデータベースの整備というふうなことを実証実験する施設をつくっておりますが、今月それが竣工する予定でございます。  さらに、新しい産業の創出に寄与すると見込まれるような創造的なソフト開発の支援というふうなことも、これは平成年度でございますけれども、予算措置をして進めているところでございます。  とりわけ反響が大きいのは、特に独創的なアイデアと技術を具体化する、そういう創造的なソフトを公募方式で今般募集を開始したところでございます。これにつきましては平成年度の補正予算で百八十億円をつけていただいておりますが、公募開始一週間で千二百億以上に上る申請の額が上がってきておりまして、これがさらにふえていくと思いますが、こういうふうなソフトに独創的な意気込みを持っておられる方を応援することによって新しい商品なり役務、そういうものが創出することになってきますし、それによってまた新しい産業が出てくると期待をしておるわけでございます。  さらにそのほかに、ソフトウエア開発には非常にお金もかかる。お金のない人が事業をやらなきゃいかぬというふうなことで債務保証の事業、あるいは共通でプログラムを開発しようという人には融資も行っております。そういう施策を総合的に実施し、さらに充実を図りたいと思っております。  それから、簡単に触れますが、委員指摘の各省庁のそういう情報関係の取り組みにつきましては、昨年、内閣に高度情報通信社会推進本部というものが設置され、総理が本部長で、通産大臣、郵政大臣が副本部長でございますが、つい先週でございますが各省庁集まりまして、とりわけ公的分野、行政分野の情報化について、教育については文部省、医療については厚生省というふうなことで各省協力しながらそういう実施指針を内閣中心につくっております。そういうものをさらに連携を強化して進めていくことが我々は大切だと思っております。
  83. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のお話に加えまして、ソフト産業の中で特に重要な財産にもなります知的財産権の担保化及びそのための審査について伺いたいと思います。  最近、バンダイと住友グループの共同での知的財産権を担保化したベンチャー企業への融資と、あるいは日本開発銀行が同じような計画を発表しておりますが、一方でVECを中心とする官製ベンチャーキャピタルは新たなアイデアあるいは技術に対する審査能力に問題がある、不足しているんではないかという指摘があるようでございます。  確かに、著作権などの知的財産の評価基準というのは大変難しい問題であるということは十分に承知しておりますが、通産省としてはこの知的財産権の審査や評価ということに今後どのように取り組んでいらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。
  84. 牧野力

    説明員(牧野力君) 手短にお答え申し上げます。  まず、今委員指摘のとおり、審査というのは大変難しい問題でございますが、ただ、ベンチャーを育成するためにはここがやはり非常に大きな問題といいますか、これがかぎになるというふうに思います。  それで、まずいわゆるVECでございますけれども、いろいろ御批判もありますので、本年四月に審査体制の強化のために技術の専門委員を五人から十八人に増員するなどいたしまして、しかも幅広い分野からその委員を募りまして、できるだけいいものを拾っていけるようなそういう体制にいたしたいというふうに思います。  それから知的財産権、これを担保にするということ、これは非常に大事な問題でございます。今御指摘がありましたケースにおきまして民間金融機関等で一部これをやり始めたところがございますけれども、問題は、一つのひな形といいますか、どういったものをどういうふうにするんだということを、ある程度衆知を集めて一つのパターンをつくるということがこれを広げていく大きなかぎになると思います。  ということで、この知的財産権の担保化につきまして、現在、各界の方々にお集まりいただきまして通産省で研究会をつくっておりまして、早急に結論を出したいというふうに思っております。
  85. 浦田勝

    委員長浦田勝君) 他に御発言もないようですから、通商産業省中小企業金融公庫及び中小企業信用保険公庫決算審査はこの程度といたします。  次回の委員会は来る十二日午前十時に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会      ――――◇―――――