○
武田邦太郎君 農政につきまして特に大事なこと、それからこれまで言い足りないと思うところを簡単に申し上げて、
総理大臣、農水
大臣、文部
大臣の御
所見を伺います。
第一は食糧の自給の問題です。
現在、平年作で二七、八%しか穀物は自給しておりませんし、おととしのような凶作の年には二二%しか自給できなかったという統計が出ております。その上に百六十万トン以上の肉類を輸入しておりまして、これらを通計すれば厳格に言って平年作でも二二%しか自給していない。高度成長期に田畑、果樹園が九十万ヘクタール減っちゃった、今でも毎年三万ヘク、四万ヘク減りつつある。これを考え合わせますと、これは身のものよだつような
状況であります。
しかし、これは裏作がほとんど遊んでおりますし、単収はまだまだ上がる
可能性あるいは実績があります。お米で五割ふえる。変ならば今三百五十キロですから二倍ぐらいになります。大豆は二百キロぐらいのものが三倍ぐらいになる
可能性がありますから、これは努力すれば七、八〇%の自給を確保して、いざとなったらゴルフ場とか牧草畑を麦畑、ジャガイモ畑にすれば一〇〇%自給できます。
これは三木
内閣の
国民食糧
会議のときに発言いたしまして、
総理は大いにやるというお気持ちであったようでありますけれども、選挙で負けておさらばになったわけでありますけれども、単なる研究問題ではないんですよ、もう政治問題としてずっと前から取り上げられている問題であります。ぜひこれを取り上げていただきたい。
それから第二の問題は関税化、自由化の問題でありまして、当面はミニマムアクセスの問題だということになるようでありますけれども、ミニマムアクセスの問題はこれは要するにお米の生産調整の問題だけでありまして、通年の基盤整備をどこまでやるかということで簡単に解決する問題であります。あくまでも問題の本質は関税化、自由化でございまして、関税化、自由化を延ばす条件としてミニマムアクセスが起こったわけでありますから、必ず来るものとして今後、今世紀の六年もむしろ
全力はこれに傾注すべきである。
これは完全にできるには恐らく十数年はかかるんですね。十五年では足りないくらいです。だから六年を必死にやってもまだ完成しない、そういう重大な問題でありますから、今世紀もこれに
全力を傾注して、そうすれば来世紀になって関税化、自由化が農産物輸出国からやかましく言われましてもある程度の確信を持って対応することが可能であります。それなしにはこれはもう大変なことになって大騒ぎになると思います。ぜひ今世紀中にこの問題と四つに取り組むことをお願いいたします。
その要点が三つあるわけでありますが、第一は規模拡大ですね。これは先ほど
猪熊委員からまことに適切な御指摘があったわけでありますけれども、小さな所有権を、その所有権を尊重しながら大規模に活用する。これはもう歴史的な土地変革でありまして、いいかげんなことではやれません。その一つの先駆的な例が千葉県の印旛沼土地改良区でありまして、これは私どもは満点とはもちろん思っておりません。しかし、国内で行われている、所有権を尊重しながら大きく使う、こういう土地変革のはしりとして最も進んだ形だと思っております。
農水
大臣は、農家が皆賛成ならば結構だ、こういうお話がありまして大変ありがたいのでありますけれども、国としても現代土地変革の最も進んだ形として満点ではないけれども十分に検討の価値あり、こういうふうに推奨していただくだけの価値がある、そういうふうに思います。
つまり規模拡大も現在の計画のような十ヘク、二十ヘクでは歯が立たないんですね。少なくとも三十ヘク、裏表で五十ヘク。北海道では五十ヘク、七十ヘクが最小限度であります。それにまた十ヘク、二十ヘクにするぐらいの手数をかければこれはもう五十ヘクであろうと七十ヘクであろうと手数は同じであります。ぜひそれをやっていただきたい。
それからその次は、水田ですと一区画を一ヘクタールにするという計画でありますけれども、これを少なくとも三ヘクにする必要があります。それで労働生産性は四、五倍になるんですから、四、五倍になれば一応自由化に対応はできる。しかも、一ヘクタールの田んぼにつくり直す、一ヘクタールにつくり直すのと三ヘクタールにつくり直すのでは三ヘクタールの方が金がかからないのです。この前申し上げたとおりです。
特に中山間地の問題があるようでありますけれども、中山間地は中山間地なるがゆえに平野部よりももうかる、そういうものがありますので、中山間地で水田をつくる必要はありません。平野部より二倍も三倍も余計金がかかって絶対に自由化では生き延びられないのですから。しかも、中山間地の水田が何かダムの役割をするなんとかいう話がありますけれども、それは算術計算でありまして、今、中山間地の水田がどんどんつぶれておりますけれども、そのゆえに山が崩れたり自然が破壊したりする例は一つも聞いたことがありません。観念論ですね。でありますから、中山間地の水田は断固としてやめていただきたい。
それから今度もう一つは、日本の稲のつくり方は苗をつくって代かきをして田植えをするやり方ですね。先進国ではそういうことをやっている国は一つもありません。全部直まきであります。そこで、先走りをする農家が直まきをやる。
大臣も御指摘あったように、失敗が多いんです。失敗が多いわけですよ、田植えするような田んぼで直まきをやるんですから。全然構造が違うんです。直まきできるような、水をためたり、さっと水をはがしたり、これが自由自在にできる田んぼでないと直まきはできないんです。それをやってもらいたい。
この規模拡大、それから区画を大きくする、それから稲づくりの場合には直まきできるような田んぼにつくり直す、この三つをやれば、これはお米に関する限り自由化対応は完成するわけであります。しかも、平野部に二百万ヘクの水田があるんですから、これは何とかして二百万ヘクの小冊をきちっとやれば一千万トン以上のお米は完全に自給できるわけです。お米に関しては完全自給はできますので、そういうことをお願いしたい。
それから文部省には、もうたびたび申し上げましたけれども、とにかく学校を出た有為な青年が農業に入らないということは農水省だけの責任とは言えないわけですね。文部省の責任が重大である。しかも、各地の大学を歩いてみますと有能な先生方がおるんです。しかるに、こういうことを研究しなさいという政治側からの注文が出ておりません。しかも、それに必要な
予算もできていない。そういう重大な研究をやるのに、農水省の
予算を分けてもらったり自治体の
予算をちょっともらったりするようでは、これはもう、ろくな研究はできるわけはありません。
有能な青年、先生たちは髀肉の嘆をかこっているわけでありますから、ぜひ文部省独自の
予算、少なくとも全国に二千戸の自由化に対応するモデル農家、パイロットファームをつくるだけの
予算、恐らく三千億ぐらいのものでしょう、文部省独自で要求していただきたい。
大体そういうことであります。どうかひとつ。