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1995-03-07 第132回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年三月七日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  三月六日     辞任         補欠選任      石井 道子君     大塚清次郎君      野村 五男君     鈴木 栄治君      宮崎 秀樹君     野間  赳君      本岡 昭次君     篠崎 年子君      西山登紀子君     高崎 裕子君      翫  正敏君     西野 康雄君  三月七日     辞任         補欠選任      渡辺 四郎君     菅野  壽君      高崎 裕子君     西山登紀子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 伊江 朝雄君                 片山虎之助君                 成瀬 守重君                 山崎 正昭君                 穐山  篤君                 山本 正和君                 藁科 滿治君                 猪熊 重二君                 井上 哲夫君     委 員                 遠藤  要君                 大塚清次郎君                 加藤 紀文君                 木宮 和彦君                 沓掛 哲男君                 河本 三郎君                 斎藤 文夫君                 下稲葉耕吉君                 鈴木 栄治君                 楢崎 泰昌君                 野間  赳君                 服部三男雄君                 吉村剛太郎君                 大渕 絹子君                 大脇 雅子君                 菅野  壽君                 北村 哲男君                日下部禧代子君                 篠崎 年子君                 瀬谷 英行君                 竹村 泰子君                 堀  利和君                 峰崎 直樹君                 渡辺 四郎君                 荒木 清寛君                 北澤 俊美君                 都築  譲君                 寺澤 芳男君                 中村 鋭一君                 和田 教美君                 磯村  修君                 武田邦太郎君                 有働 正治君                 西山登紀子君                 西野 康雄君                 下村  泰君    国務大臣        内閣総理大臣   村山 富市君        外 務 大 臣  河野 洋平君        法 務 大 臣  前田 勲男君        大 蔵 大 臣  武村 正義君        文 部 大 臣  与謝野 馨君        厚 生 大 臣  井出 正一君        農林水産大臣  大河原太一郎君        通商産業大臣   橋本龍太郎君        運 輸 大 臣  亀井 静香君        郵 政 大 臣  大出  俊君        労 働 大 臣  浜本 万三君        建 設 大 臣  野坂 浩賢君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)    野中 広務君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 五十嵐広三君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  山口 鶴男君        国 務 大 臣        (北海道開発庁        長官)        (沖縄開発庁長        官)        (国土庁長官)  小澤  潔君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  玉沢徳一郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       高村 正彦君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       田中眞紀子君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  宮下 創平君        国 務 大 臣  小里 貞利君    政府委員        内閣官房内閣内        政審議室長        兼内閣総理大臣        官房内政審議室        長        藤井  威君        内閣法制局長官  大出 峻郎君        内閣法制局第一        部長       津野  修君        内閣総理大臣官        房審議官     平野 治生君        総務庁長官官房        審議官        兼内閣審議官   菊池 光興君        防衛庁教育訓練        局長       佐藤  謙君        防衛庁装備局長  荒井 寿光君        防衛施設庁労務        部長       涌田作次郎君        経済企画庁調整        局長       吉川  淳君        経済企画庁国民        生活局長     坂本 導聰君        経済企画庁調査        局長       大来 洋一君        科学技術庁科学        技術政策局長   落合 俊雄君        科学技術庁研究        開発局長     沖村 憲樹君        国土庁防災局長  村瀬 興一君        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部長     高野幸二郎君        外務省アジア局        長        川島  裕君        外務省経済協力        局長       平林  博君        外務省条約局長  折田 正樹君        大蔵大臣官房総        務審議官     竹島 一彦君        大蔵省主計局長  篠沢 恭助君        大蔵省主税局長  小川  是君        大蔵省証券局長  日高 壮平君        大蔵省銀行局長  西村 吉正君        文部大臣官房長  佐藤 禎一君        文部省初等中等        教育局長     井上 孝美君        文部省高等教育        局長       吉田  茂君        文部省学術国際        局長       岡村  豊君        文部省体育局長  小林 敬治君        厚生大臣官房総        務審議官     太田 義武君        厚生大臣官房審        議官       和田  勝君        厚生省保健医療        局長       松村 明仁君        厚生省社会・援        護局長      佐野 利昭君        厚生省老人保健        福祉局長     阿部 正俊君        農林水産大臣官        房長       高橋 政行君        農林水産省経済        局長       東  久雄君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        大宮  正君        運輸省鉄道局長  戸矢 博道君        郵政大臣官房審        議官       品川 萬里君        郵政省放送行政        局長       江川 晃正君        労働大臣官房長  伊藤 庄平君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業安定        局高齢障害者        対策部長     野寺 康幸君        建設大臣官房長  伴   襄哲        建設省都市局長  近藤 茂夫君        建設省住宅局長  梅野捷一郎君        自治大臣官房総        務審議官     二橋 正弘君        自治大臣官房審        議官       嶋津  昭君        自治省行政局長  吉田 弘正君        自治省行政局公        務員部長     鈴木 正明君        自治省行政局選        挙部長      谷合 靖夫君        自治省財政局長  遠藤 安彦君        自治省税務局長  佐野 徹治君    事務局側        常任委員会専門        員        宮本 武夫君    参考人        日本銀行総裁   松下 康雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○平成七年度一般会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成七年度特別会計予算内閣提出、衆議院送  付) ○平成七年度政府関係機関予算内閣提出、衆議  院送付)     —————————————
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから予算委員会を協会いたします。  まず、参考人出席要求に関する作についてお諮りいたします。  平成七年度総予算三案の審査のため、本日の委員会日本銀行総裁松下康雄君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 平成七年度一般会計予算平成七年度特別会計予算平成七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き、総括質疑を行います。服部三男雄君。
  5. 服部三男雄

    服部三男雄君 今回の東京共同銀行の問題を私なりに分析いたしますと、金融システムの安全という観点の問題と、もう一つはいわゆる金融機関不良債権問題という二つの問題があるだろうと思います。  そこで、まず最初不良債権問題から入りたいと思うんですが、大蔵省にお尋ねしますが、株式市況長期にわたって、四年にわたって低迷しっ放してあります。一九八九年十二月のダウ約三万九千から一九九二年八月の一万四千まで率にして何と六三%、これは昭和金融恐慌時の六七%、それから一九二九年のニューヨークの株式暴落による八九%と並ぶ三大クライシスだと言われておるんですが、その後一時反騰しましたが、現在また低迷を繰り返している。  この原因について、長期にわたる構造的と言ってもいい、あるいは経済実態がそんなに、日本経済が三割も四割も落ちたわけでもないのにダウだけが実に五割以下に今も低迷しているという原因についてお尋ねしたいと思います。
  6. 日高壮平

    政府委員日高壮平君) 委員指摘のように、平成元年本ピークから現在に至るまで株式市場低迷が続いているわけでございますけれども、株価というものはさまざまな要因によって動き得るということで、どれによって、どういう原因によって上がったか下がったかということを一律に規定するのはなかなか難しいということは御理解を賜りたいと思いますが、基本的に平成元年末以降市場低落傾向にあった要因として市場関係者の中で言われていることは、大体、例えば一つ景気低迷している、あるいは景気回復がおくれている、あるいは円高というのが一つ要因だろうと思います。  もう一つは、金融機関不良債権問題、これがなかなか不透明であるといったような問題が指摘されていることは事実でございます。また、いわゆるバブル崩壊によって多額のキャピタルロスをこうむった個人投資家あるいは機関投資家株式投資に引き続き慎重になっている、そういったことも低迷原因ではないかということで言われているわけでございます。
  7. 服部三男雄

    服部三男雄君 御指摘の点はみんなが一致するところだろうと思うんですが、一つその中に申し上げたいのは、占領期にいわゆるドッジが来てやった政策の中にデフレ政策があったわけでありますが、その後ずっと日本経済が順調に来た。それは国民の勤勉さとか政権が安定したとか経済政策がよかった、いろんな理由があるんでしょうけれども経済現象として見ますと、適正なインフレぎみ政策をとったことによる経済成長が持続したことだろうと思うんです。  今回、バブル崩壊後、不動産半値八掛け、株も半値以下になるという一種の資産デフレだということは言えるだろうと思うんです。そうすることによって、今、局長もちょっとバブル崩壊による投資の停滞とおっしゃったわけですが、経済活動とかその他の投資活動金融活動、すべての問題、特にマネーサプライの一%台まで落ちるという現象を見ますと、消費意欲が極度に収縮し切っているんじゃないかいわゆるデフレになっているんじゃないか。経済構造デフレになっているし、国民投資家事業家、みんながそういう縮み志向に入っているんではないかということが言えると思うんですが、その点については御見解どうですか、資産デフレについて。
  8. 大来洋一

    政府委員(大来洋一君) 今、委員指摘の点は、多分不況の大きな原因資産デフレがなっているのではないかという御趣旨だと理解いたしますが、今回の景気後退につきましては、家計それから企業におきまして、家計においては耐久消費財の過去の旺盛な購買によりまして耐久消費財ストックが積み上がる、それから企業におきましては設備投資によりましてストックが積み上がる、そうしたストックが過度に積み上がったことに対する調整、いわゆるストック調整が大きな原因であったというふうに考えております。  バブル期の過度の投資消費に対する反動、それから企業金融機関のバランスシートの悪化、バブル崩壊による心理面の冷却といったようなものに加えまして、今御指摘資産デフレ、つまりバブル崩壊影響といったものがある、あるいは今申し上げたようなもろもろのものが資産デフレ影響であるというふうに総括することもできるというふうには思っております。  ただ、九三年になりますと、これに円高というものが加わりまして、さらに不況が深刻化したもの、そういうふうに考えているところであります。
  9. 服部三男雄

    服部三男雄君 不良債権問題は後ほど触れることにしまして、日銀にお尋ねしたいんですが、一九八九年から公定歩合引き上げがされまして、一年半ほどの間に二・五から六%まで上がって、その後また急降下しまして一九九三年九月二十一日に一・七五、これは史上最低でありますけれども、こういうふうに急激に上げ急激に下がった例というのは第二次石油ショック時があったように思いますけれども、第二次石油ショックのときは石油急騰という問題があって、消費者物価卸売物価が激動したという状況があったんですが、この一九九〇年に入ってからの公定歩合引き上げのときは、どっちかというとインフレは全くなかった、一%台であったわけでありまして、どうしてこんなに日銀は急に上げたんでしょうか。
  10. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 八〇年代の末期からいわゆるバブル経済現象と言われる現象によりまして資産価格上昇等が非常に顕著になったわけでございますけれども一般経済情勢におきましては、その間も卸売物個あるいは小売物価上昇というのは必ずしも初めの期間は顕著な上昇ではなかったと思います。  ただ、ある時期以後、これらのバブル的な現象というものが急激に物価水準上昇につながってまいりまして、この間の物価上昇率と申しますものは戦後でやはり類例が少ないような急激なものであったと思うのでございます。  そこで、日本銀行といたしましても、物価注目をいたしながら金融政策全体の運営を行っているわけでございますけれども、このような非常に急激にあらわれてまいりました物価上昇経済の過熱といったようなものに適切に対応いたしますために、短期間に引き続いて数回にわたる金利引き上げをいたしましたことは御指摘のとおりでございます。  ただ、この状態はそれほど長く続いたものではございませんで、日本銀行金融緩和に踏み切りましたのは一九九一年七月でございますけれども経済企画庁におかれて後に判定をされました景気ピークといいますものは一九九一年四月ということでございましたから、このピーク後わずか二カ月目ぐらいにはもう既に金融緩和の方に踏み切るというような、かなりこれは弾力的、機動的な運営を行ったものだとは考えております。
  11. 服部三男雄

    服部三男雄君 今、総裁から、バブル締済現象資産価格急騰というのをおっしゃった。それが小売卸売物価を引っ張り出した傾向があったとおっしゃいますが、普通の経済を勉強している人たちは、三重野総裁当時のこの急激な公定歩合引き上げバブル退治のためだ、不動産及び株の実勢より乖離したこの乖離率が大き過ぎるための政策だったというふうに評価しておるんですが、その点についてはどうでしょうか。
  12. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 金融政策の運用の目的は、あくまでも経済全体としましてこれがインフレなき安定的な成長を確保できるようにということが主眼でございまして、全体の経済状況影響を及ぼします限り、いろいろの現象、例えばバブルでありますとか円高でありますとか、そういう現象にも注目をしてまいりますけれども一般的に申し上げまして、バブルならバブルそのもの自体金融政策運営対象とするというふうには考えてまいっていないところでございます。
  13. 服部三男雄

    服部三男雄君 確かに日銀基本政策というのは、金融政策基本物価の安定だろうと思います。そういう意味で、特定の資産インフレだからといってそれをねらい撃ちするというのは、確かにおっしゃるとおりだと思います。  ただし、バブル時代にかなり長期に低金利時代が続いて、これは国際的な問題があって続いたわけですが、その後これだけ急激に上げれば、膨張していた資産インフレというものが破裂するという、こういう危険性を僕は十分認識すべきだったと思うんですが、日銀はもちろんのこと、経済企画庁年次報告を見ましてもこういった危機意識は全くない。むしろ安定的持続成長のための金融引き締めだとかあるいはこれによって資産デフレが起こることはないとか不良債権問題もある程度は銀行経営を圧迫するけれどもそう大きな問題ではないとか不良債権回収処理には今後数年間程度で済むんではないかと、非常に楽観的な検討がなされている。  ところが実態は、その後の平成五年度の企画庁の経済白書の中にも出ていますが、一番最初頭書きのところに、これは国民経済的な大問題である、我々はバブル経済的コストがいかに大きかったかということを学びましたと書いてある。  三年たって初めてこういうことが出てくる。これはやはり日銀及び大蔵経済企画庁経済見通し、特に冒頭言いました資産デフレの怖さというものを全く検討してなかったんではないかと非難されるべきだと思いますが、日銀及び経済企画庁はどういうふうに回答しますか。
  14. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 当時のいわゆるバブル経済崩壊の過程が非常に早くて、しかも非常にそれが大きかったという点は御指摘のとおりであると思います。  ただ、その原因が、私ども金融政策がその主たる原因というふうには考えていないわけでございまして、それはすなわち前の段階でのバブルの進みぐあいが非常に大きくて、かつまたそれが相当期間継続したことの反動として、その後の落ち込みというものがまた大きなものになったというようなことではなかったろうかと思うのでございます。  それからバブルそのものに対して、つまり資産インフレそのものに対しましては、もとより金融政策金融全般引き締めもその解消に役立つわけでございますけれども、これはこれで当時の政策目的といたしましていわゆる各種の総合的な地価対策というようなものも強力に採用をされましたし、それら全体が一緒になりましてバブル崩壊原因になったと考えております。
  15. 服部三男雄

    服部三男雄君 日銀総裁がおっしゃるとおり、公定歩合引き上げたけでなくて、九〇年三月に大蔵省不動産融資総量規制というのをかけました。確かにそれは決定的に効いたんですが、ここで私はもう二度大蔵省並び日銀に質問したいんですけれども日本土地神話というのがあるわけです、土地神話土地資産として持っている限り永久に上がり続ける。それはそうです。面積が小さいところに人口が多いんですから、しかも山が多くて平地部分が少ないんですから、土地神話というのは確かに構造的には考えられるわけです。  土地神話というのは土地を手放さないということです。土地を手放さないというのは、持っていれば上がるわけですからだれも手放しません。では、手放させるにはどうするかというと、その人が手放さざるを得ないように追い込むしかないわけです。追い込むというのはどういうことかというと、倒産に近いことにすれば吐き出さざるを得ないんです。これが土地神話を崩す理由だろうと思うんです。  そこで、金融政策並びに日銀だけじゃなくて大蔵省総量規制を使うことによって一番金利に敏感な部分不動産業界を直撃するということはわかっていたと思うんです、金融政策をとる以上。不動産業界というのは、株もそうですけれども金利に極めて過敏に反応する業界であり業種でありますから、そこへ短期に急激に金利を上げる、しかも総量規制をかける、こういうことをやればインフレぎみ資産が一発で破裂するということはおのずからわかったのではないか。  当時よく業界人たちが言ったのには、四十度の熱だ、肝硬変まで起こしているようなものだと、アルコールを飲み過ぎて。日本の当時のバブル体質人間個人の体に例えてみれば、四十度の高熱で肝硬変を起こしているようなものを急激に解熱剤をかけて三十二度まで落とせば心筋梗塞になるのは決まっているじゃないかというようなことを言った経済評論家がいましたが、そういうふうなことを今考えて。反省すべきじゃありませんか。
  16. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) まず総量規制の問題についてお答え申し上げたいと存じます。  いわゆる総量規制と申しますのは、平成二年の三月に、地価上昇の地方への波及傾向が一段と強まる状況の中で、不動産業向け貸し出し増勢を総貸し出し増勢以下に抑制することを目途として、各金融機関においてその調整を図るよう要請したものでございます。  これは当時大きな問題と有っておりました地価問題に金融面から対応するための措置でございまして、前年すなわち平成元年の十二月に施行されました土地基本法におきまして、「土地は、投機的取引対象とされてはならない。」あるいは「政府は、土地に関する施策を実施するため必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講じなければならない。」とされた趣旨にも沿ったものでございまして、当時としては必要な措置であったと考えておる次第でございます。
  17. 松下康雄

    参考人松下康雄君) 私どもといたしましては、やはりこれだけの大きなバブルの行き過ぎが起こりました後、その調整に相当の時間をかけて現在まで経済運営が行われてきたということを考えますと、辛いにして経済全体は今、緩やかな回復過程に入っているところでございますけれども、やはり私どももこうしたバブル期の経験というものは今後の教訓として受け取りまして、今後とも金融政策運営に当たってよく参照をしてまいりたいと思っております。
  18. 服部三男雄

    服部三男雄君 日銀の方は私の質問に対して、今後それを参考資料として重要な教訓にするとおっしゃっているが、銀行局の方は、当時の土地基本法に基づくものであって必要なものだったと。私の質問は、バブルをはじけさせるためにそういう手段を講じたことの適否、よかったかということを聞いているのであって、ただ必要だったというのは回答にならないんじゃないですか、銀行局長
  19. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 当時の措置としては、不動産取引に関する総量規制は妥当な措置であったと考えております。  なお、その後、事情の変化に応じまして総長規制については弾力的に対応してきたところでございまして、平成三年末には総量規制を廃止し、あわせて地価高騰のおそれが生じた場合における総量規制の効果的発動のための仕組みといたしましていわゆるトリガー方式としたところでございますが、その後さらに平成六年二月にはこのトリガー方式についても当分の間その適用を停止したところでございます。
  20. 服部三男雄

    服部三男雄君 総長規制をやった適否ももちろんですが、たとえ総長規制しようとも、大蔵日銀対象とする都銀、長銀と違ってノンバンクというところから迂回で当時どんどん金が不動産業界に流れていったということを考えますと、総量規制というものは一体何だったのかということを銀行局としてはもっと真剣に考えてもらいたいなと思うわけであります。それは要望であります。  次に、現在の不況というものは徐々に回復過程に入ったというふうに経企庁も日銀もおっしゃっていますが、株価を見ると、株価というのは景気の先見性がありますから、大体六カ月から一年先を先見するというんですが、どうも違うんじゃないか。実物経済の方は何となくふわふわと動き出したなど。それは四十兆円もの不況対策をやったわけでありますから、下支えしますからある程度動くだろうと思うんですが、もう一つ金融面の問題においては国民の多くはまだ不安感を持っている。それが今回大きく出てきたわけでありまして、この不良債権問題と金融システムの安定化は別としまして、不良債権問題というものについて大蔵省、銀行局長にお尋ねしたいわけであります。  一九九二年の四月九日から二週間足らずの間に銀行株、都銀から含めて銀行株がたった二、三週間の間に三割から四割急激に下がりました。そういうことがありましたね。そして、いよいよ一九九二年の八月十八日にダウは二万四千円までとうとう下げる。これはBIS規制の関係から考えまして、ダウが一万四千円になるということは銀行が持っている株の含み益がほとんど飛んでしまうという事態でありますから、いよいよ危機ということで、当時、金融行政に対する指針というのが出されたと思うんですが、そのころ、八月十八日の指針を出したときに、日経新聞を読みますと、こんな小手先の方法じゃだめなんだ、びほう策じゃないか、傷をばんそうこうで覆っているようなものだという批判がかなり日経新聞にも経済学者によって言われた。  そして、いよいよ二年たって、今回のように日銀法二十五条で公的資金をその対策に使う。これはシステムの安定化の問題につながってきたからやったわけですけれども不良債権問題がその根っこにある以上、なぜあのときにこういう今回みたいな公的資金というのを、当時みんな金融業界は要望しておったはずなんだが、どうしてそのときとらなかったんですか。
  21. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 御指摘のように、バブル崩壊期におきまして、金融機関不良債権の問題というものが日本経済全体に非常に大きな課題になっておるという点については私どもも真剣に受けとめておるところでございます。  ところで、今御指摘のその解消策、解決策の一つといたしまして、いわゆる公的資金の導入ということをなぜ行わないのかという点でございますけれども、私どもといたしましては、金融機関の個別の不良債権の処理につきましては金融機関自身の経営努力を前提として考えるということがまず必要であると考えておりまして、当局としてはこれまで直接的な公的資金の導入という手法によることではなくて、まず金融機関の経営努力を前提とし、我々はその環境整備に努めるという手法をとってきたところでございます。
  22. 服部三男雄

    服部三男雄君 お役所言葉で答えられると何となくわかったようなわからないような気持ちになるんですけれども、その問題はまた後ほど触れることにしましてちょっと先に戻るんですが、これは大蔵省の主計になるのかな、お聞きしたいと思うんです。  一・七五まで公定歩合を下げた。普通、公定歩合をそれだけ下げれば景気はぐっとよくなるのが過去の例だった。ところが、資産の膨張、金融政策をつぶして資産デフレに入ったために一・七五の公定歩合金利政策がきかなくなってきたというふうに考えますと、金融政策がだめなら、これはもう常識として財政政策になるわけです。ということで、過去四回でしたか、四回で大体合計四十兆円の嫌気対策をとった。小出しじゃないかという批判も多い。何だ、四百兆の経済規模でたった一年半かけて四十兆円なら、一割程度じゃきかないじゃないかましてや真水が少ないじゃないかという議論もあるだろうと思うんです。  震災復興の問題もありますけれども、これだけ景気がまだ停滞し、今アメリカの景気がいいからいいですけれども、ドイツの景気が悪くなっていますから、東ドイツをのんだことによって。基幹国家としてアメリカと日本が世界の経済の発展のためにもっと景気をよくしようという考え方に立つならば、景気対策を今後追加するお考えはあるんですか。
  23. 篠沢恭助

    政府委員(篠沢恭助君) 累次の経済対策が何とか経済の回復、緩やかな回復過程ではございますが、この緩やかな回復過程におきまして下支えの効果を持ち、そして緩やかな上昇の起動力をつけてきたというふうに考えられるわけでございますが、一方、このような累次の経済対策の積み重ねによりまして、御承知のとおり、公債の累増は非常に顕著になってまいりました。そのことが結果として国債費の増嵩等に非常にいろいろ大きな影響を持っていることも御承知のとおりでございます。  財政全体が非常に苦しい状態にございます。かなり異常に悪いというように国際的に比較しましても言えるような状況になっておりますので、経済の動向を慎重に見定めながらこれから考えていかなければならない問題であろうと思います。当面は、全体の予算編成の中におきましては公共投資等に依然としてアクセントを置いた予算編成になっておりますし、今とりたてて大きな経済対策をどうするこうするというようなことが議論になっているとは承知しておりません。
  24. 服部三男雄

    服部三男雄君 大蔵省主計局は財政の健全化というのが原則でありますからそうおっしゃるだろうと思いましたが、財政というのが出動するときに、出動する前に大蔵省が、いや赤字国債が多いんだから、国債が累増しているからと、そういうことはかり言うとせっかくのディマンドが冷えちゃうんじゃないかというふうに思いますので、その点も今後検討してもらいたいなと思います。  時間がないので次に移りますが、これはどこになるんですかマネーサプライの問題を聞きたいんですが。  公定歩合を一・七五まで下げますと、通常はマネーサプライはざっとふえるはずなんです。ところがふえない。なぜかというと、経済学者に言わすと、それは流動性のわなだというんですな。なるほどなと思うんですけれども、マネーサプライと経済成長率というのは大体パラレルに、期間は半年か一年マネーサプライが先に先行してその後継済成長がずっと動くようですが、マネーサプライは去年なんかは一%を割っておるんです。ことしも一%から二%になるのかなぐらいまでで、過去の日本のマネーサプライの流れというのは平均しますと、成長率が四%、五%で大体同じ四、五%。バブルのときはもう十何%いきました。  こういう現象について、金利政策で効かないならばどういうふうなことを講じたらいいかということを、やっぱりこれは担当は大蔵でしょうからひとつ検討してもらいたいと思いますが、どうですか。
  25. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) マネーサプライにつきましては確かに低迷をしておりましたが、このところは対前年同月比で三%ぐらいの水準になっております。  御指摘のとおり、マクロ経済とマネーサプライというのは当然関係があるわけでございますが、このところ過去に比べて伸び率が低いということにつきましては、やはり物価が大変安定しているということと大いに関係があろうかと存じますし、中身といたしましては銀行貸し出しが余りふえていない、むしろ微減である。よってもって、銀行が資金調達において使いますCDというのがございますけれども、CDの発行がなされていない。これがマネーサプライのかなりのウエートを占めておりますので、そういったことで三%ぐらいということでございますけれども、このところは若干ながらでございますけれども微増傾向にございます。物価との関係からいってマネーサプライの水準が特に問題だというふうには思っておりません。
  26. 服部三男雄

    服部三男雄君 そのマネーサプライが伸びない理由として、銀行貸し出しですから、なぜ貸し出しがふえないかというのはそれはニーズがないからという考え方もあるだろうと思います。ところが、そうじゃなくて、バーゼル合意以後にできたBIS規制というものがかかっていて、銀行の自己資本そのものがふえない。株式が低迷しているから増資もできない。そうでしょう。そこへ不良資産の償却、去年なんというのは四兆円もやっているわけです。当然準備金に繰り入れできないわけです。こういったシステムからくるマネーサプライの停滞というものが考えられるんじゃないか。  そういったことになると、結局、不良貨巌問題、株式の低迷というのは非常に大きな問題になってくるんではないかというふうに思うんですが、どうですか。
  27. 竹島一彦

    政府委員(竹島一彦君) 御指摘の中で、いわゆる金融機関の貸し渋り的な側面に立った御質問がと思いますけれども、マネーサプライと銀行貸し出しの関係、銀行貸し出しが余り振るわないというのは、まさに大きな理由は資金需要が盛り上がってないということの方が大きいというふうに判断をいたしております。  確かに個別の融資案件等では、銀行でございますから不良債権的なものの積み増しというようなことになるような貸し付けについては慎重であるというのは当然でございますけれども、そういう意味で、貸し渋りということでマネーサプライが低迷しているのではなくて、要するにバブル崩壊以降、企業におきましても個人におきましても、どちらかというと借金は返そうということで今までビヘービァがとられておるわけでございまして、資金需要がないというのが一番大きな理由であろうかと思います。BIS規制等々の問題ではむしろないというふうに思っております。
  28. 服部三男雄

    服部三男雄君 経企庁の出している雑誌、「ESP」という本があって、ここで前の経企庁の調整局長だったと思うんですが吉冨さんが、景気が回復するときに一番最初に動き出すのは中小企業向けの融資で、それは銀行がリスクテークしてあげればどんどんふえていくんだと。ところが今、銀行はそれだけ余力がないし萎縮しているから危険回避型の融資をしているというような趣旨のことを、これは吉冨さんに限らず多くの経済学者が言っているんですが、こういった問題も結局不良債権がネックになっていて銀行の体力の問題ではないかというふうに思うんですが、どうでしょうか。
  29. 吉川淳

    政府委員(吉川淳君) 今回の級やかな景気回復過程の中で設備投資の回復というのが一つのポイントになっておりますが、私ども、今回の設備投資の回復過程にかかわる要因として、特に中小企業の関係では、中小企業の一部にそういうリスクテーキングという観点からする金融機関の問題が全く関係していないというふうにはもちろん思っておりませんが、総体としての設備投資の今回の回復過程のポイントといたしましては、やはりバブル崩壊の過程で大変拡大いたしましたいわゆる過剰設備投資、これの調整が進んでいるかどうかという観点、それから企業の収益が回復してきているかという観点、それからさらにはやや大きな問題として全体の景気の回復の見通し、こういうようなものがむしろ中心になって設備投資を決めていくというふうなことを考えまして、設備投資は緩やかな回復を遂げるであろう、こういうふうな見通しを持っているところでございます。
  30. 服部三男雄

    服部三男雄君 どうも議論がかみ合わないんですが、国会審議だからやむを得ないと思いますけれども。  そこで、この不良債権問題の処理に対する先ほど銀行局長の話があったんですが、日銀にお尋ねしたいんですが、三重野前総裁が九四年十月三十一日、金融研究会で講演しておられて、退陣の講演だろうと思うんですけれども、この中に、不良債権処理のプロセスを改めて振り返ってみると、結果として私どもはよくも悪くも日本的な解決の仕方を選んできたことになりますと。例えばディスクローシャーの問題、赤字決算の回避、償却・引き当でペースの調整、比較的ソフトなリストラ等をやってきたものでございますと。この結果、金融機関のバランスシートの改善がおくれることに伴うシステム全体の脆弱性が一つあります、もう一つは今後マクロ経済に及ぼす悪影響等もあります、こういうことをおっしゃっているんです。  これを見ますと、私どもの推測ですけれども、三重野さんはどうももっとトラスチックに、アメリカがあるいはスウェーデンがやったように公的資金あるいは一般財源まで投入してずばっとやった方がよかったんじゃないかなと、金利引き上げ過ぎて資産インフレをオーバーキルしたという後悔の念があるんじゃないかなというふうに思いますが、現総裁はどう思われますか。
  31. 松下康雄

    参考人松下康雄君) ただいま御指摘の前総裁の講演でございますけれども、ここでポイントとなっておりますのは、御指摘がございましたように、我が国の場合、これまで不良資産処理のやり方につきましては、慎重な情報開示でありますとか、あるいは赤字決算回避でありますとか、また穏健なリストラを行いますとか、時間をかけながらの漸進的な対応をする手法がとられてきたのではないかということを指摘しておりまして、そして、そうした手法は結果的に見て金融システムの混乱を抑え、また経済活動へのショックをできるだけ小さくするという面で効果があったと考えられるが、反面、早期に抜本的な解決を図るという意味では全く問題がなかったわけではないというようなものと私は理解をいたしております。  したがいまして、非常に早期の抜本的な解決を図るということは好ましいことではありますけれども、他方で、そのシステム全体に対します影響でありますとか国民経済に対しますコストとかというものもあわせ考えて、どちらをとっていくかということを個別に決めていくべきものであろうと思いますので、これまでの段階では主としてこの漸進的な方法がとられてきたと。ただ、今後のやり方につきましては、ただいまのようないろいろな面での利審得失を考えて、どの方法をとっていくかということをそれぞれのケースによって考えていくべきものであろうと思っております。
  32. 服部三男雄

    服部三男雄君 松下総裁から、この不良債権処理について今後いろんな方法を考えなきゃいかぬと、今までとちょっとスタンスが変わったような、まあそれは当然二十五条を発動されたんですからスタンスは変わってきているわけでありますが。  大蔵省の銀行局に聞くんですけれども、先ほどもちょっと尋ねましたが、一九九二年八月、当時の宮澤首相は公的資金の導入を検討すると、これは新聞にもはっきり出ました。うわさですけれども、総理大臣だけじゃなくて当時の三重野総裁もほぼ同調されたというようなお話も聞いております。ところが、大蔵省がとった方法はいわゆる例の指針だけてあります。どうしてそこに、当時の内閣の総責任者と行政機関の担当者との間にそごがあったのかそれを聞きたいと思います。
  33. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 先ほども申し上げましたように、私どもといたしましては、この金融機関不良債権の処理という問題、これは非常に重要な問題と受けとめておりますけれども、その処理に当たりましては、まず第一に金融機関自身がみずからの経営の努力の中で解決していく、行政としてはそのような努力をできるだけバックアップし環境整備をしていくということが第一に必要なことであろうし、また当時もそのような論調も多かったように受けとめております。  今まで、個別金融機関の破綻が発生しました場合には、それがどのような影響金融システムに与えるかというようなことをも考えましていろいろな手法がとられております。例えば同一業態内の相互援助だとか合併だとか、あるいは預金保険による資金援助などさまざまな方法により、そのケースごとに関係者が最善の努力を図るということを中心に考えてまいったところでございまして、もしその公的資金ということが税金ということを意味するとするならば、そういう前の段階でまだいろいろと努力をする必要があるのではないかと考えておるところでございます。
  34. 服部三男雄

    服部三男雄君 今、銀行局長のおっしゃっていること、それから九二年八月から銀行局が指導して不良債権問題に当たってきたやり方というのは、都銀とか体力のある銀行、それから経済的合理性の通ずるところには確かにきくだろうと思います。むしろ銀行局はよくやられたと思います。当時、国会、政府を含めて政治改革一辺倒で、経済政策なんていうどころじゃなかった政治情勢のもとにおいては、当時の銀行局は僕はよくやられたと思いますよ。  だけれども、今回のこの東京共同銀行を見てもわかるとおり、これは合理性の通じないところなんです、信組というところは。しかも、大蔵省の直接の管轄に入ってないところ。余り触れない方がいいんですけれども、住専の問題もそうです。大蔵省の規制のよくきくところにはそれは通じますよ。ところが、今出てきている、実際これ二十五条を使ったというのは、公的資金を導入したことになるんだから、二年たって。こういうところに対してきかないような問題は、当時から十分考えられたんじゃないか。  そうすると、やっぱりもともとの根っこにある不良債権というものを、アメリカのRTCみたいに、あるいはスウェーデンがやったように、どんと一遍に解決しておいた方がよかったんではないか。今、松下総裁はやや前向きにおっしゃったけれども、今後も一般財源の投入だって考えるべき時期が来ないとは限らないわけです。ないことを望みますよ、ないことを望むけれども、そういう意味でもうちょっと銀行局としては前向きに考えられた方がいいんじゃないかと思うんです。
  35. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 確かにただいま御指摘のように、信用組合という金融機関の監督指導の体制というものについてはいろいろな問題が指摘されておることは事実でございますし、従来この信用組合の経営破綻の問題に際しては、それぞれの地域においていろいろな工夫を都道府県が中心になって講じられてきたというのが今までの経緯でございます。  私どもは、今回の問題がなかなかそういう地域の問題としてだけでは解決が難しいということを痛感いたしまして、その地域の行政の責任をとっておられます東京都と、全国的な金融システムの安定に責任を負っております中央銀行や大蔵省が協力いたしまして今回の対応策を考えたところでございますけれども一般論として幅広くこのような手法をとっていくことがいいのかどうかということにつきましては、私どもは今回の事態は緊急的な対応策だと考えておるところでございまして、そこまで踏み込むということについてはいささからゅうちょを覚えておるところでございます。
  36. 服部三男雄

    服部三男雄君 西村局長がきのうのどこかの記者会見で、不良債権処理は峠を越えた、五割、六割はもう進んでいるんだというふうなことをおっしゃっている。その趣旨をよく尋ねたいんです。  私が思いますには、不良債権の処理というのは銀行のバランスシートの問題と、その裏にある、この不良資産というのはほとんど不動産保ですから、不動産の処理が進まないと幾ら銀行のバランスシートで簿価下げやっても根っこの部分は残っているわけです。根っこの部分は残っているということは、一・七五の公定歩合だから二・五パーぐらいでしょうか、銀行の調達金利が平均して。二・五パーはいつまでも不稼働債権として焦げついてくるわけですよ。これは実に国民経済に悪影響を及ぼす問題であります。  あなたのおっしゃっているのは担保不動産の売却を含めたものの段階まで、要するにバランスシートの改善と担保不動産の売却と、この二つの段階の全部を入れて五割進んでいるとおっしゃっているんですか。
  37. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私どもの認識はいわゆる公表不良債権、今、十三兆三千億と言われております公表されておる不良債権と申しますのは、マネーセンターバンク二十一、二十一の大きな銀行の、またその破綻先及び六カ月以上延滞しておるという、そういう定義のもとにおける不良債権のことを言っておるわけでございます。そういう意味での不良債権については、平成五年九月末をピークにいたしまして少しずつ減少しておる。さらに債特勘定繰り入れの累積額というような手当て、どのような手当てをされておるかという対応策をも含めて考えるとかなり進んでおる、峠を越えたと言ってもよろしいかと存じますが。  私、きのう申し上げましたのは、そういう核になる部分不良債権の処理というものはある程度進んだと認めてばいいものの、しかしながらまだそのほかにその周辺にいろいろな不良債権の問題が残っておる。一つは公表されていない部分不良債権の問題というのがあるし、それからこれは二十一行マネーセンターバンクの問題であるけれども、そのほかの地方銀行とか共同組織金融機関とか、そういう中小金融機関を含んだ不良債権の問題という意味においては、また別の問題として我々は真剣に対応していかなければいけないんではないか、こういう趣旨のことを申し上げた次第でございます。
  38. 服部三男雄

    服部三男雄君 今おっしゃっているとおり、体力のある銀行の償却の山を越したことは、それもあくまでも第一ステップのバランスシートの改善、償却の問題だけですよ。ところが担保不動産の売却は、これは共国債権買取機構の過去の例を見ても、たった一千四百億しか不動産は売れていないんですよ。七兆円ぐらい共国債権買取機構で引き受けようとしたんでしょう。そのうちの一千四百億しか不動産は動いていない。  要するに、この問題の第一の点は、大蔵省銀行局の言っている不良債権という十三兆円、十四兆円というのが、国民の実感、要するに金融関係業者とかから見るともっとあるなと。というのは、金利減免債権を含んでいないですから四十兆円ぐらいあるんじゃないかと、あるいはもっとあるのかなと思っているときに、十三兆円のその半分ぐらい進みましたと言われたら、これはますます何かおかしいなと。それが私は金融不安の一番原因じゃないかなと今、思っているんです。  不安ですよ、あくまで。危機というようなことは全然言っておりません。今の日本経済の体力を持っていてこんなものを解消することはそんなに難しくない、時間さえかければできるとは思っています。また、経済がよくなってきて不動産の流動化が進めばこんなものは一挙に解決するなど。  そういう意味で何にも問題はないと思いますが、ある意味では国会でわざわざ取り上げる問題ではないかもしれないけれども、しかしおっしゃっているような銀行局の対応の仕方がどうも実感とずれるからみんな不安不安と言う。それが株式にも悪影響を及ぼしているんじゃないかと思うので、ディスクロージャーの問題になりますから、時間がないのでやめますけれども、今後もそういうものを含めて前向きに、去年でしたか、一遍、金利減免債を公表しようという話もあったようですけれども、前向きに指導していただきたいと要望しておきます。  次に、この不良債権問題の処理で、今、銀行局長は償却償却とおっしゃっていましたね。これは無税償却がほとんどですね。過去二年半の間に無税償却を認めたのは合計額で八兆円近くなっていますね、七兆円ぐらいですかな。ということは、それだけ銀行の法人税が減っているということになりますね。無税償却七兆円とすれば三・五兆円の税収減になるんじゃありませんか。主税局長、どうですか。
  39. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私の方からお答えさせていただきたいと存じます。  ただいま御指摘のように、今回のバブル崩壊後の不良債権の処理に際しましては、税の問題についてもいろいろと工夫をしておることは事実でございますけれども、それは不良債権の償却をいっの時点で税制上手当てをするかという時点の問題ということはございましょうけれども、税負担そのものを軽減するというような性格のものではないんではないか。不良債権をできるだけ早期に償却していくために早い時点で償却経費に算入するというような措置を講じたものであって、税負担そのものを軽減しているというものではないと理解をしております。
  40. 服部三男雄

    服部三男雄君 今の銀行局長の見解は納得できないんですけれども、時間がないんで、また別途、機会譲ります。今の銀行局長の答弁は多分間違いだと思いますよ。まあそれはいいです。  それで、国税庁に尋ねたいんですが、資料がないという返事だったんですけれども、この不良債権問題についてデービッド・アトキンソンという人の書いた本の中に、大体この金額合っているかと思うんですが、銀行の償却によって都銀の法人税が、例えば都銀全部の法人税が八九年三月期には一兆三千四百十一億円であったのが、九一年、二年には七千七、八百億円台、九三年三月には五千七百億円台、九四年三月には何と二千四百億円まで落ちている。不良債権処理によって法人税の税収がこれだけ落ちでいると言っているわけです。これは現実に納めている法人税ですよ。  そうしますと、結局、不良債権処理のために大蔵省が指導していることは、銀行局長の見解と違って、無税償却を認めたんだから、それは繰り延べになるのかどうか知りませんよ、しかし当期の法人税は明らかにその分減っているはずなんです。それから現実の法人税もこうして一兆三千億から何と五年足らずで二千億台までおっこちているわけです。  ということは、不良債権償却をすることは結局入るべき税収を取っていないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、どうですか。
  41. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 私の御説明が余り上手でなかったゆえにあるいは誤解を与えたかもしれませんが、私も同じ趣旨のことを申し上げたつもりでございまして、要するに今行われております税制上の取り扱いは、不良債権を早期に処理するためにその処理をした段階において損金に算入するということを認めている。これは御指摘のようにその時点においては税収の減少につながりますが、それが将来におきまして、全体を通じまして申し上げますならば、必ずしも税負担の軽減ということにはなっておらないという意味で申し上げたわけでございまして、その点では先生御指摘のことと私の申し上げたこととそれほど大きな違いはないと存じます。
  42. 服部三男雄

    服部三男雄君 慎重な大蔵官僚が認めてくれたんですから結構と思いますが、結論として不良債権償却によって入るべき税収ががた落ちになっているわけですよ。何兆円と減っているわけだ。であれば、私はなぜこんなことを言うかというと、その分を先に不良債権償却としてアメリカやスウェーデンがやったようにどんと放り込めばいいじゃないか。償却させるのならば、税金、結局は不良債権というのは国民経済全部に、国民生活全部にかかっているわけです。銀行の不稼働債権抱えによって経済が停滞する、マネーサプライが停滞する、あるいは例えば評価がトリプルAからレビュテーションがBまで下がったとしますね。聞いているところによると、ワンランク落ちるたびにユーロ市場からの調達が〇・二パー上がるんですよ、金利が、〇・二から〇・二パー上がるんですよ。そうでしょう、銀行局長。  そうすると、それは大体十年サイクルでしょう、ユーロ市場の債券というのは。すごい金額になるんですよ、銀行の今後の運営について。だから、こんなことをぐずぐずやっているならば、九二年八月に経済学者も新聞もみんなが言ったように、あるいは我が方の宮澤総理も言ったように、公的資金導入を単くした方が、結果においては税金を先に使うか後からじっくりやって取り損なうかの違いだけじゃないのかということを考えますと、先ほどあなたは一般財源の投入には非常に慎重にせにゃいかぬと言うのはよくわかりますよ。だれだって慎重にせにゃいかぬのだけれども、同じことじゃないかと思うんですが、どうですか。
  43. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 税制上いつ租税を納入するかという時点の問題ということは、それはその銀行がいつ税を納めるかという問題であるわけですが、一般的な公的資金の導入というのは、みんなが納めた税金をどのように使うのかという点においては少し違った意味合いを持つのではないかと存じます。したがって、損金算入の時期の問題をどう考えるかということと公的資金導入一般論とは少し違った色彩があるのではないかと考えておるところでございます。
  44. 服部三男雄

    服部三男雄君 日銀法二十五条と国会との関係とか、ペイオフ、モラルハザード、あるいは管理体制、特に信組とか、いわゆる協同組合型といいまして、日銀大蔵がなかなか検査しにくいところの問題がありますから、日銀大蔵によるモラルハザード防止のための統一的な検査機構というものを今後つくってもらいたいというふうに要望しておきます。時間がないものですから、その部分はカットします。  そこで、大蔵大臣に退屈されても困りますから尋ねますが、今言いましたように、この不良債権問題というのは非常に経済に悪影響を及ぼしている。税収も減っている。国民生活に隅々まで影響してくる。そして、金融システムというのは、システムリスクといって小さな問題でもぱぱっと瞬時に大きな問題になりかねない。これは今度の共同銀行の問題だったんですけれども、そういう大きな問題だということは一九九二年当時から宮澤首相も言っていたし、みんなも思っていた。  ところが、さきがけ代表として細川内閣を含めてこの二年半、政治改革の旗手として大蔵大臣は頑張られた。ところが今大蔵大臣になられてこれは大問題だということをわかられた。経済にとっても大事な問題だということをわかられた。そして今度、東京都議会で三百億、公明党が反対して否決された。こういうことで公的資金という問題がぐらついているように思うんです。私は、政治改革によって、細川内閣のとき官房長官であられた、予算もおくれるというようなことで経済対策というのは物すごく貧弱だった、この二年半の我が国の政府運営は。だから、そういう意味で、そのときに本来大蔵省がこういう公的資金にしようと思っても恐らく当時の政府じゃ対応できなかったんじゃないかなと思うんです、何しろ政治改革一色だったんですから、二年半。  そこで今後、いよいよそういった問題も済みましたから徹底的に日本経済をよくしていかにゃならぬ。その最大のがんが不良債権問題だと思うんですけれども、公的資金の導入について政治決断をもってひるむことなく的確に対処してもらいたい、そういう決意を大蔵大臣にお聞きしたいんです。
  45. 武村正義

    ○国務大臣(武村正義君) バブルという経済、改めて今の質疑を伺っておりながら感じておりましたが、確かに経済国民もやや異常な心理状況になりましたし、また経済行為もみんながそういうことを大なり小なり自覚しながらバブルの渦に巻き込まれたというふうに思うわけであります。それが終わって心理的に、おっしゃるように、国民も経営者も我々政治や行政の関係者もさまざまな反省に立って今日に至っているわけでありますが、問題はまだかなりその後遺症を残していると。御指摘のように、土地を中心にしたいわゆる銀行で言えば不良債権というふうなとらえ方がわかりやすいわけでありますが、かなりの傷を金融機関も負っているわけであります。日本経済全体としても負っているというふうにも言えようかと思います。  そこで、御指摘は、これに早く公的な資金を導入して、本当は宮澤内閣のあの時期に共同買い取り機構等の議論があったときに公的資金を導入すべきであったという御意見も含まれているわけでありますが、今はこれが金融機関の経営破綻とか経営不安というふうな状況を迎えていて、これには大なり小なり土地にかかわるバブルの時代の不良債権、あるいは回収不能な債権というものが絡まっているわけでありますだけに、今後、もう遅いかもしれないが改めて公的資金を導入する決意を示せという御指摘でございますが、何といいましてもこれは国民の税金の話であります。財政の歳出の問題であります。  今回の二億組のこの問題は、本当に幅広くというか国民全体の関心を呼んでいるわけであります。私どもそれだけにまた責任の重さを感じておりますが、しかし同時にこのことが非常に国民の皆さんにも、今、大変難しい専門的な会話をしていただきましたが、そういうことを改めて御理解をいただく教材になっている、教訓になっているというふうにも思います。そういう教訓を得ながら、私どもも次にどういう対応をしていったらいいのかぜひきょうの御意見も踏まえて真剣に勉強もし、努力もしていきたいと思っております。
  46. 服部三男雄

    服部三男雄君 最後ですから総理に二責お尋ねせにゃいかぬと思うんですけれども、結局、先ほど言っていますように、バブルというものを何か罪悪視し過ぎたんじゃないか。あのときにユーロ市場、国際金融市場日本の銀行はオーバープレゼンスだとまで言われたんです。そのくらい力があった。それが今回こういう形になって萎縮してしまったわけですけれども、あの絶好の日本の力、国力があったときに、例えば今、円高が問題になっています、九二年のときより。これをドイツ並みに円建てにしておけばいいわけですよ。できたと思うんです、当時の日本経済力ほど力があったら。政治にリーダーシップさえあれば。円建てにしておけば、日本の円をドル、マルクと同等の基軸通貨並みにするだけの政治的努力をしていれば、こんなことは余り心配しなくてもよかったわけです。円建てにしておけば、円高になろうが何の関係ないわけですから。  そういった意味も含めまして、これからいよいよ不良債権処理には不動産の流動化ということをやらにゃいかぬわけです。あるいはそれを証券化するんだとか、いろいろ大蔵省は言っているようですけれども、そうするとこれは単に大蔵省の銀行局だけでは済まない問題でありまして、内閣全部の問題になる。ましてや、こんなこと絶対ないと信頼していますけれども金融危機というものがもしあったらこれはえらいことになりますから、それを未然に防止するためには、不動産の流動化となるとこれは建設省の問題になるわけです。通産省も絡んでくるかもしれない。  そういったもので内閣がこの問題について震災復興と同様のウエートを置いてやっていただくように総理のリーダーシップを期待しまして、私の質問、要望とさせていただきます。  終わります。
  47. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で服部三男雄君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  48. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 次に、日下部禧代子君の質疑を行います。日下部禧代子君。
  49. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 日下部禧代子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  まず最初に、デンマークのコペンハーゲンで三月六日から十二日まで開催される世界社会開発サミットについてお尋ねいたします。  このサミットには既に百三十カ国の首脳が参加をされるということでございます。村山総理も御参加の予定というふうにお聞きしております。  国連創設五十周年記念行事の一環であり、重要な会議だと国連で位置づけられておりましたにもかかわらず、残念ながら我が国では、一九九四年の国際人口・開発会議や本年九月に北京で開催される第四回世界女性会議に比べますと、国内の関心がいま一つ欠けていたように思われてならないわけでございます。  そこで、昨年の七月に早稲田大学の教授でいらっしゃる西川潤さんらとともに世界社会開発サミットNGOフォーラム日本準備会というものを私、発足させました。そして、民間報告書の作成、セミナーの開催、関係省庁との対話集会などを行って準備を進めてまいりました。そしてまた、本年二月十四日には社会開発サミットを成功させる国会議員の会も結成されております。  阪神大震災の復興対策と予算委員会の厳しい御日程の中で、総理がサミットの出席に御決意をされましたことに深い敬意と感謝を申し上げさせていただきたいというふうに思います。  ところで、サミットの主要目標は、人間を開発の中心に据えるということでございます。村山内閣の掲げる「人にやさしい政治」、その理念及び目的というものはサミットの目標と同じではないかというふうに思うわけでございます。  さて、このサミットの開催は一九九二年の第四十七回国連総会で決定されているわけでございますが、政府は今日に至るまでどのような取り組みをなさっていらっしゃいましたのか、まず外務大臣にお尋ねしたいと思います。
  50. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 社会開発サミットは、国際的な社会的公正を実現することを目的とした国連の経済社会分野における極めて重要な行事と認識をいたしておりまして、我が国は準備段階より、この社会開発サミットで採択予定の宣言及び行動計画が首脳レベルで採択されるにふさわしい充実した内容のものとなるように、これらの文書の起草作業に積極的にかかわってまいりました。  具体的に申しますと、社会開発サミットの目指すべき指導理念として社会的公正の実現ということを強調してまいりまして、これが各国に受け入れられることになっております。我が国としては、我が国の貢献につき各国が一定の評価をしてくださったというふうに理解をしているわけでございます。  先ほどからお話がございますが、この問題につきましてはNGOとの連携あるいは関係省庁連絡会議を設置するなどして体制を整えつつあることもあわせて御報告申し上げます。
  51. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今回のサミットは、貧困の撲滅、雇用の拡大、社会的統合をどのように進めるかという三つのテーマがございます。  この三つのテーマは、発展途上国ばかりではなく、日本を含む先進国、先進工業国自身の課題でもあるというふうに私は思うわけでございます。例えば貧困ということをとらえましても、豊かさの中の貧困ということがございます。先進工業国が必ずしも豊かであるという言葉で統一はできないというふうに思うわけでございます。それぞれの問題解決には極めて広範な省庁の協力と参加が欠かせないというふうに思うわけでございます。政府が一体とならなければならないということだというふうに思うわけでございます。  政府はこのテーマに対しまして、政府というよりも総理にお尋ねしたいと思うのでございますが、この三つのテーマ、かなり広範なテーマとは思いますが、どのようにこの三つのテーマを御理解なさっていらっしゃるんでしょうか。まず最初に総理にお尋ねしたいというふうに存じます。
  52. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今、外務大臣からも御答弁ございましたけれども、この社会開発サミットは、国際的な社会的公正を実現することを目的とした極めて幅広い分野を扱う重要な国際会議である、こういう認識をいたしております。  この会議で扱う主要な課題というのは、今お話もございましたように、貧困の撲滅、雇用の拡大、社会的統合、言うならば社会的弱者の社会参加促進といったものが主要な課題となっているわけでございますが、人類全体として取り組むべき深刻な問題のことについては、これはもう先進国、発展途上国、変わりはないと私は思うんです。  とりわけ途上国の貧困の撲滅は、先進国としてもいわば自分の問題として経済協力等を通じ積極的に協力し、解決に努力すべき問題であると私は認識をいたします。  また、雇用の拡大や社会的に不利な人たちの社会参加促進を目指す社会的統合につきましては、先進国、途上国の双方が国内的に抱える共通の課題であるという御認識は委員御意見のとおりだと私も思います。これは一つの省だけの問題ではなくて、各省がやっぱり連携し合って達成しなきゃならぬ課題であるというふうに思いますから、内閣全体として取り組んでいかなきゃならぬと私は思います。  私が所信表明でも申し上げました「人にやさしい政治」というのは、まさに人間を中心とした社会開発を重視した政治でございまして、国内的にも生活の質の向上、高齢化対策、女性の社会参加促進など新たな社会問題に対して積極的に取り組んでいく、これがまた国内問題を解決する道でもあるし、また国際的にそういう役割を果たす日本の貢献にふさわしい課題ではないかというふうに受けとめておりますから、全力を挙げて内閣一体となって取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。
  53. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 世界的な行動計画が採択されるはずでございますが、それを各国ごとに実施する国別の行動計画も設定しなければならないわけであります。  今、総理もおっしゃいましたように、内閣一体となって、政府が一体となって取り組むべき課題がこのサミットで討論されるということでございますが、一体どのような省庁がどのように対応なさるのかそしてそのフォローアップ体制を取りまとめる調整役の省庁はどこなのかということが問題になろうかというふうに思います。  私どもNGOのフォーラム準備委員会に対応してくださっていた省庁というのは、これまで外務省の総令外交政策局の人権難民課でございました。二回にわたるNGOとの対話集会に各省庁を取りまとめてくださったわけでございます。一体そのときに幾つぐらいの省庁が対話集会に臨んでいただいたのか、そのことも含めてお聞きしながら、今後そのフォローアップ体制はどのようになさるおつもりなのか外務大臣にお聞きしたいと存じます。
  54. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) お尋ねの二回に及びますNGOフォーラムとの意見交換会に出席をいたしました役所は、第一回目が十一省庁、第二回目は十三省庁でございました。ちなみに十三省庁を申し上げますと、総理府、大蔵省、文部省、厚生省、農水省、通産省、労働省、建設省、防衛庁、経企庁、環境庁、沖縄開発庁に、私ども外務省でございます。  まだ宣言、行動計画は採択をされたわけではございませんので、その採択を待って、その内容を確認して次の作業に臨まなければなりません。その内容が確定した段階で、今申し上げましたような省庁、あるいはさらにもっと幅が広がるかもわかりませんが、関係省庁と協議をいたしまして適切な体制をとって着実に進める、こういうふうに考えているところでございます。
  55. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 確かにNGOフォーラムの対話集会には本当に難民課のお骨折りによりまして十三省庁もの方々が出ていただいたわけでございますが、やはりこれを続けていく、フォローアップするということは非常に重要なことだと思いますし、そしてサミットに総理が御出席なさるということ、これも大変に重要なことでございますが、その後どうするかということがさらにさらに重要な課題だと思います。  そしてまた、この課題というのは非常に広範囲でございますので、これだけの省庁が、今、外務大臣がお答えくださいましたぐらいたくさんの省庁に関係することでございます。それをいかにして採択されるであろう行動計画に沿って我が国が対応していくかということは、またこれは大きな課題だというふうに受けとめておりますので、ぜひとも早くこの体制を整えていただきたいということを強く要望いたします。  さて、国連はこのサミットを通しまして、国際紛争の解決に対するこれまでの安全保障理事会のやり方、すなわちPKOを使って力で平和をから取るという方法を見直して、経済社会理事会の重要性を改めて認識しようとしているというふうに思われます。  このことは、力による安全保障からヒューマンセキュリティー、人間の安全保障というふうに大きく方向転換をしようとしていることを示すというふうに思うわけでございます。例えばソマリアからの最近のPKOの撤退ということがそれを如実に示しているというふうに私は思います。  サミットで採択されるはずの世界社会憲章におきましては、人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーというのは、武器ではなく開発を通じて、対決ではなく協力を通じて、戦争ではなく平和を通じて、確実なものにするというふうに述べられております。このように、国連活動の新たな方向性を示す画期的なサミットであるというふうに世界ではとらえられている。私もそう思っております。  ところで、総理はこのサミットに対する意義をどのようにお考えになり、そしてこのサミットに何を期待していらっしゃるのか、お伺いしたいと存じます。
  56. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 先ほど来、それぞれ御質問の中でも意見がございますし答弁の中でも申し上げましたように、国連は従来より安全保障分野と並んで、いやむしろこれからは経済社会分野を重視することの方がウエートを高めていかれるのではないか、また、いく必要があるのではないかと、私はそのように思っております。特に近年は、リオの地球サミット、それからウィーンの世界人権会議、カイロの人口・開発会議、そして本年九月に開催されまする北京の世界女性会議など、地球規模の社会問題の解決に向けて一連の大きな国際会議が開催されてまいりました。  このことは、やっぱり国連全体がこれから今お話のございましたような社会経済開発に、人間を中心として人間の安全というものを重視した方向にウエートが高まっていく、そういう方向にもっと力を入れるべきではないか、こういう国際的な声というものが大変強く反映されているものだと、私はそのように思っております。  この社会開発サミットは、これらの一連の会議の一環をなすものでございまして、各国の首脳が集まり、最も広範な経済社会問題を扱う会議でございます。我が国としても、今後の国連の経済付会分野の活動を方向づけるものとして極めて重視をいたしておりますが、これにより人間を重視した付会開発が一層促進されるような国内的、国際的状況をつくり上げていくために極めて意義のあるものであると思いまするし、そういうものにしなければならないと、こういう決意で私も保取り組んでいきたいというふうに思っております。
  57. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 貧困、失業、社会的統合、この三つの課題を解決するために一九九四年の人間開発報告書は六つの指標を掲げております。  一つは、先ほど述べました世界社会憲章の提案でございます。二つ目は二〇−二〇、いわゆる人間開発協定でございます。三番目が平和への配当の有効利用、これは軍縮でございます。それから四番目が人間の安全保障、ヒューマンセキュリティーに関する国際基金の設立てございます。五番目が人間開発のための国連開発システムの強化、そして六番目に国連経済安全保障理事会の創設という、この六つの指標を掲げているわけでございます。  これを全部についての政府のお考えをお聞きするには大変に時間もかかってしまいますので、中から幾つかを選んで御見解を伺いたいと思うんですが、一つはODAの問題がございます。  我が国のODAのあり方というのは、これまでその大半がインフラ整備に吸収されて、本当にその国の人々がお一人お一人の望むところに手が届かないような、そういう批判もなされていたのも否めないというふうに思うわけでございますが、今回のサミットを契機といたしまして、日本のODAのあり方、その配分というふうなことも見直しが迫られるのではないかなというふうに思います。  それからまた、途上国の開発において特に女性の役割ということが非常に重要になるというふうに思いますが、そのODAの問題も含めまして、これからの女性の問題、特に途上国の開発における女性の役割をどのようにお考えになり、そしてそれをどのように支持し協力していらっしゃるのか、その点について外務大臣の御見解をお尋ねいたします。
  58. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) ことしはコペンハーゲンの会議もございますし、その後、北京で女性会議もございます。女性に関する議論が広がり深化しつつあることは、我々にとっても大変ありがたいことであると思っているわけです。  政府といたしましては、今、議員からもお話がございましたように、途上国の女性を支援するということに着目をいたしまして、ODAの中でも特に積極的にこの問題には当たっていきたいと思っております。  これは先般の日米蔵脳会談の席上、コモンアジェンダ、つまり日米が協力して地球規模の問題に臨もうと、こういう話し合いの中でも、WID、ウィメン・イン・ディベロプメントということを考えているわけでございますが、このWIDの重視も、まさに今、議員御指摘のポイントだろうと思います。  この途上国の女性をどうやって支援するかということにつきましては、先般も当委員会で申し上げましたが、重ねて申し上げれば、例えば途上国の女性の労働の中で水をくんでくるということが非常に大きな過酷な労働になっているではないかという御指摘から、水の供給改善を行ったらどうか。あるいは出産にかかわるような保健衛生の水準を向上させる、そういうことも必要ではないか。さらには女性の教育やあるいは職業訓練の機会を多くするということも必要ではないかなどと考えているわけでありまして、こうした点に視点を置きながら、さらに途上国の女性支援を進めてまいりたい、こう考えているわけでございます。
  59. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 特にサミットの行動計画案では、女性の問題に大きなページを割いております。そして、完全な男女平等の達成ということを明記しているわけでございます。ぜひとも、先進工業国の一つである日本といたしましてもその点に力を入れていただきたいというふうに思います。  ところで、先ほど申し上げましたように、この女性の問題あるいは高齢者、障害者というふうな問題は、社会開発においてどのように位置づけていくのかそういったことは日本の中での課題でもあるというふうに思います。例えば今回の景気低迷の中で女性の雇用調整とか就職難というふうなことは、何か不況というふうになりますと女性にみんなしわ寄せされる、そしてあるいはまた高齢者や障害者にしわ寄せされるという、そういう日本の現状もこれは否定できないことだというふうに思うわけでございます。  我が国の女性あるいは高齢者、障害者、そういった観点からどのようにサミットのテーマに取り組まれていこうとなさるのかお尋ねをしたいというふうに思います。女性の問題は、これは官房長官でしょうか、あるいは厚生大臣、労働大臣というふうにお尋ねいたします。
  60. 五十嵐広三

    ○国務大臣(五十嵐広三君) 大変、今度の社会開発サミットにつきましても、諸準備等につきまして日下部委員などの御協力をいただきましてお礼を申し上げたいと思います。  今お話しのように、社会開発の主要課題である社会的公正の実現という意味からは、高齢者や障害者が社会の構成員としていわば人間としての尊厳というものを失うことなく積極的に社会参加できる方策をとっていく、またお話しのように、女性が男性と対等なパートナーとして責任も再びもともに分かち合うということで社会開発の担い手となるような社会システムを実現することが大変大事なことであろうというふうに思います。  御承知のように、そのためには政府としてもそれぞれの分野の施策を総合的に推進するための体制を整備して、長寿社会対策の推進あるいはノーマライゼーションの理念に沿った障害者の自立と社会参加の促進、さらに男女共同参画社会の実現を目指す新国内行動計画の推進などを内政の重要な柱として力を挙げて取り組んでいるところであります。  今回のコペンハーゲンにおけるサミット、さらに九月に行われる北京の世界女性会議等を通じながら、我が国国内のこれらの問題も一層力を注いでいかなければならない、このように思っている次第であります。
  61. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) お答えをいたします。  官房長竹の御答弁と若干重複するところがあるかとも思いますが、お許しをいただきたいと思います。  付会開発の主要課題であります社会的公正の実現のためには、高齢者や障害者が社会の構成員として安心して充実した生活を送ることができ、また社会全体の支え合いの中で活力ある豊かな福祉社会を築いていくことが必要であると認識しておるところでございます。  高齢者の位置づけでございますが、高齢者自身が元気である限りできるだけ自立した生活を送り、さまざまな場面で活躍するとともに、自立が困難になったような場合にはこれを社会全体で温かく支援し、高齢者も安心してその支援を受けられるようなシステムをつくり上げていくことが重要であると考えております。  また、障害者についてでございますが、障害者が障害を持たない者と同等に生活し活動する社会を目指すいわゆるノーマライゼーションの理念を踏まえて、地域における障害者の生活を支え、その自立と社会参加を促進していくことが重要であり、雇用あるいは教育などの各種施策との連携のもとに全員参加の社会づくりを目指していくことが重要であると考えておるところであります。
  62. 浜本万三

    ○国務大臣(浜本万三君) 雇用の面からお答えをいたします。  社会開発サミットの準備会の場で指摘をされておりますとおり、高齢者、障害者、女性の方々が働くことを通じて社会に参加をいたしましてその能力を発揮できるようにすることは、非常に重要な課題だと思っております。  そのために、高齢者につきましては、希望すれば六十五歳まで現役として働ける社会の実現のため六十五歳までの継続雇用の推進等の施策を講じますとともに、障害者の皆さんにつきましては、雇用率制度の厳正な運用、地域レベルでのきめ細かなリハビリテーションの実施等の施策を講じております。  また、女性につきましては、職場において女性が男性と均等な機会と待遇を確保されるための施策を推進いたしますとともに、育児休業制度や介護休業制度等、男女労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援するための施策も推進すること、またパートで働く女性の雇用管理の改善のための施策等を推進しておるところでございます。  今後とも社会開発サミットの議論の動向を踏まえながら、これらの施策の充実を図ってまいりたいと思います。
  63. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ところで、職業と家庭生活というものをいかに両立させるかというふうなことは、働く女性、いやこれは男性にとっても非常に重要な避けては通れない課題だというふうに思うわけでございます。それを可能とするために、今、労働大臣もお触れになりましたように、育児休業法が制定されました。また、今国会には介護休業法制化のための育児休業法改正案が提出されております。  そこで、家族的な責任を有する労働者の職業上の責任とそれから家族上の責任というものを両立させることを目的としたILOの百五十六号条約というのは、これはもうかなり以前から我々は批准すべきであるということで、研究会などもっくったりいたしまして政府に要請をしていたわけでございますが、もう待ったなしのときだというふうに思うわけでございます。もうこれ以上待てないなという気持ちでございますが、それは批准はいつごろの予定だというふうにとらえてよろしいのでございましょうか。  国際舞台に総理がいらっしゃるわけでございますから、これを批准していないということは余り褒めたことではない、やはり恥ずかしいことではないかというふうに思いますので、この辺で具体的な予定を聞かせていただきたいと存じます。外務大臣いかがでしょうか。
  64. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) この条約につきましては、今お話しのように、育児休業等に関する法律などがもう制定をされてきておりまして、我が国においても締結に向けての環境は整いつつあるというふうに思っているところでございます。  今御指摘のとおり、今国会中に何としても御承認を求めたい、こう考えておりまして、私どもとしては提出に向けて関係省庁と現在、鋭意調整中でございます。そう遠からず国会に御承認をお願いすることになると思います。その節はどうぞよろしくお願いを申し上げます。
  65. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 今国会中というふうにしかと受けとめております。どうぞよろしくお願いいたします。  ところで、今回の世界社会開発サミットというものの目指すところは、先ほども申し上げたように、村山内閣の「人にやさしい政治」と同じスタンスと心を持つものだというふうに私は思っております。我が国の「人にやさしい政治」の姿を世界に向かって具体的に示す絶好のチャンスではないかというふうにも思います。ただし、この「人にやさしい政治」というのを外国語に直すというのは、リテラリートランスレーションだとちょっと難しいというふうに思いますが、これはぜひ御工夫をしていただきたいというふうに思います。  そこで、今まで御答弁いただきましたように、日本の果たすべき役割というものも極めて大きいということもわかりました。総理はこのサミットで世界に何を訴え、何をお約束なさろうとしていらっしゃるのかサミットに臨む御決意と、それからスピーチの概要をちょっとお聞かせいただければというふうに存じます。
  66. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今、委員からお話もございましたように、私が政治信条といたしておりますのは、世の中には力の強い者もあれば弱い者もある、それから健常者もおれば障害者もおられる、あるいは高齢者の皆さんがだんだんふえていく、こういう複雑な社会構成になってまいりますけれども、どういう条件と立場におられる方々もこれは人間としては変わりないわけでありますから、社会的公正をいかに確保していくか平等に生きられるか、こういう条件をつくっていくことがやっぱり政治の大きな一つ目的ではないかと、こういう理念を持って政治を今推し進めておるつもりでありますが、これは今お話がございましたように、今回の開発サミットとは軌を一にするものだというふうに私は自信を深めております。  わずか七分間の演説ですから、平素から委員からも指摘をされておりますような幾つかの問題を盛りだくさんに言うわけにもまいりませんので、これは絞らざるを得ないというふうに思っておりますが、具体的には、我が国が重点を置くべき政策視点として社会分野により多くの財政的支援を配分すること。これは二〇−二〇という取り決めが今準備されておりますけれども、各国の予算を組む場合に二〇%はそういう意味の開発に使っていただくと。ODAで援助する場合にもその中の二〇%ぐらいはそういう意味の社会開発、人間の解放、女性の解放といった部面に使っていただくというようなことが言われておるわけでありますが、そういう意味における人間優先の社会開発を促すということが一つであります。  それから、教育、人づくりの重視、男女共同参画社会の実現といったような問題を中心に訴えていきたいと考えておるところです。  これらの分野における我が国の取り組みにつきましては、途上国における女性支援などの経済協力を通じて積極的に進めていかなきゃならぬということは先ほど外務大臣からも答弁があったとおりでありますけれども、そういう問題にもできれば触れておきたいというふうに思いますし、何よりもやっぱり貧困や飢餓を追放して、軍縮に向けて積極的に協力を行う必要があるというようなことについても若干触れられれば触れて、日本の国がこれから国際的に果たす役割と貢献度、貢献の内容というものについて積極的な意見開陳をして、むしろ国連の機構改革の中ではそういう部面にもっと重点を置いた活動というものが期待されるということを強調してまいりたいというふうに思っておるところであります。
  67. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 ありがとうございました。  慌ただしい御滞在でございます。そしてまた、スピーチの時間というものも非常に限られていらっしゃると思いますが、総理の御出席が国際社会の中における日本の新しい姿、経済大国というだけではない日本の姿というものを強く世界に印象づけるものであるということを心から期待しております。  次に、ただいまの緊急課題でございます阪神・淡路大震災についてお伺いいたしたいと思います。  まず、大震災で亡くなられた方にお悔やみを申し上げたいと思いますし、また、今なお避難生活を続けていらっしゃる皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。そして、被災者の方々はもとより、救援と復興に向かっての活動に一生懸命になっていらっしゃる広範なボランティアあるいはまた民間の事業者、自治体の職員並びに関係機関の方々に深い感謝を申し上げさせていただきたいと思います。  さて、今回の震災では高齢者に、お年寄りに余りに多くの犠牲者が出てしまったというふうに思うわけでございます。神戸市の長田区では、その一部では人口の高齢化率が一九%に達しているというところもあったというふうに聞いております。そういうことも関連したかもわからないというふうに思いますが、今なお多くのお年寄りが避難所で不自由な生活を余儀なくされていらっしゃいます。また、震災後の避難生活の中で亡くなられたお年寄りも多数おられたというふうに聞いております。  まず厚生省にお伺いいたしたいと思いますが、高齢者につきまして、その犠牲者の数あるいは全体に占める割合、あるいは避難所で生活を余儀なくされているお年寄りの数、あるいはいわゆる死亡者と言われている避難生活後のお年寄りの死亡者の数をお知らせいただきたいと存じます。
  68. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今回の震災における年齢別データでございますが、きのうの毎日新聞にも毎日新聞の調査が載っておりますが、公式なものといたしましては二月十日現在の兵庫県警がまとめたものがございます。  実は、それ以後また調査中だとお聞きしておりますが、この二月十日現在の兵庫県警がまとめたものによりますと、この時点で死亡者数は五千二百八十一人でございましたが、このとき七十歳以上の方が千七百七十五人亡くなっていらっしゃって、三三・六%でございます。試みに県警のあれは五十歳から六十九歳という分類で、これが三四・四%、それから三十歳から四十九歳が二二・二%、十歳から二十九歳が十四・三%、十歳未満が四・五%という割合になっております。  なお、昨年の三月三十一日現在、自治省がまとめられた住民基本台帳で、この死者の出られた神戸市以下の各市町の人口割合でございますが、参考までに申し上げますと、七十歳以上は八・○%、五十から六十九歳が二四・二%、三十から四十九歳が二八・五%、十歳から二十九歳が二八・九%、十歳未満が一〇・三%ですから、今回、高齢者の方の犠牲がいかに多かったかということはもうこの数字からも歴然としているわけでございます。  それから今、避難所生活をしている方の中での高齢者の数でございますが、今、各市町におきましてそれぞれの個票をもとに全員についての生活状況を把握するための調査を実施しているところでございますが、まだまとまったものはございません。  なお、緊急に保護を必要とする高齢者等につきましては、先生既に御案内だと思いますが、パトロール隊が毎日全避難所を巡回する等により随時把握をいたしまして、必要に応じて医療施設への入院あるいは福祉施設への緊急入所等の措置をとってきているところでございます。三月五日現在、施設への緊急入所は二千二西九十二人という報告を受けております。また、高齢者、障害者向け仮設住宅の建設や優先的に入居できる措置なともあわせて講じているところでございます。  さらに避難所生活をしていて亡くなった方の数でございますが、これも兵庫県監察医務室の調査でございますが、一月十八日から二月二十八日までの間に避難所で死亡された方及び避難所から救急車等で搬送されてその途中で亡くなった方の合計は十三人であると報告を受けております。  この数字は、今申し上げましたように、兵庫県監察医務室が検案した死亡者数であって、避難所から病院に入院した後に亡くなられた方々については把握ができておりません。  それから亡くなった方の実態といいましょうか死因でございますが、一月二十四日以降避難所救護センターや巡回診療で治療を受けた方は、先ほど申し上げました三月一日現在で延べ一万九千七百七十一人いらっしゃいます。このうち風邪を引かれていた方が九千五百七十三人、肺炎になられた方が二十五人などとなっておりまして、入院治療が必要と判断された方については病院へ移送されているとの報告を受けておりますし、中でいわゆるインフルエンザのワクチンを受けられた方は二千六百二十七人、二月十八日までにいらっしゃるという報告も受けております。  なお、先ほども申し上げました十三人亡くなられた方の死因でございますが、心筋梗塞等の循環器疾患が六人、肺炎五人、泌尿器系疾患が一人、胃潰瘍の方が一人という報告が来ております。  以上でございます。
  69. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 総理にお尋ねいたしますけれども、ただいまの厚生大臣の御答弁からもおわかりになりますように、今回の震災におきまして本当に被害を受けられた方々の相当数が高齢者である、それで今なお避難所で御不自由な生活を送っていらっしゃるということを、私、想像しただけでも胸が痛くなる思いでございますが、この厳粛な事実につきまして総理はどのようなお考えをお持ちでいらっしゃいましょうか、御意見をいただきたいと思います。
  70. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今、厚生大臣からも答弁がございましたけれども、今回の地震発生以来五千四百名を超すとうとい命が亡くなられたと、まことに心の痛む思いでございます。特にその中でも高齢者やあるいは障害者や乳幼児といった比較的弱い方々の犠牲が大変多いということは、もうこれはどなたもお認めになっておられることだと私は思うんです。  五日の日に私は現地に参りまして避難所にも行きましたけれども、若い人は働きに出ているとかあるいは片づけに行っているとかいうので、残っている方はほとんどお年寄りの方が多かったんですけれども、聞いてみますと、やっぱり早く仮設住宅に入りたい、落ちついた生活に戻りたい、こういう希望が大変多うございました。  私は、今回のこの大地震の経験から学ぶものは、やっぱりこうした一番犠牲を受けやすいような立場にある高齢者や障害者の方々に対して、防災計画の中でどういう位置づけをしてどのような扱い方をすることが一番犠牲を少なくしていく道になるのかというようなことについては、十分検討しなきゃならぬ課題であるというふうに思っておりますが、一昨々日ですか、お話もございましたように、やっぱり地域のコミュニケーションといいますか、何かあったときにあそこには体の不自由な方がおられるとか、あそこにはお年寄りが一人おられるとかいうようなことがわかれば、いち早くみんなで手を差し伸べて救援、救出をする、こういうようなこともできるのではないかというふうに思います。そういうきめ細かなところまで含めた防災計画というものをやっぱりしっかり見直していく必要があるというふうに考えますので、そういう点は重要な問題としてこれからも一隅検討させていただきたいというふうに思っております。
  71. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 それでは、今、総理もおっしゃいましたけれども、本当にきめの細かい対策というものが必要なわけでございますが、それはもうわかっておりますけれども、実際に今現在どのような救援対策が特にお年寄り、そういったいわゆる災害弱者と言われる方々のために行われているのか、その現状をお知らせいただきたいと思います。厚生大臣、それから地震対策大臣にお尋ねいたします。
  72. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 被災したお年寄りなど災害に対して弱い立場にある方々については、その状況を把握の上、適切な援助が必要であることは申すまでもございません。このため、避難所の高齢者につきましては、兵庫県の職員も加わったパトロール隊が毎日避難所を巡回する中で要保護者の発見に努め、必要に応じ医療施設への収容を行うとともに、福祉関係機関への連絡を行い、特別養護老人ホーム等への緊急入所も進めているところでございます。  また、避難所の生活環境の改善についても、避難所救護センターの設置等による医療体制の確保、あるいは畳、暖房器具等の配備あるいは適切な食事の確保など、できる限りの対策を講じておるところでございます。  さらに、避難されている方々が一日も早く避難所を出て平常の生活を取り戻せるように応急仮設住宅の整備を急ぎ、高齢者や障害者には優先的に入所していただくとともに、新たに神戸あるいは芦屋市等におきまして、身体的精神的に虚弱な状態にある高齢者、障害者向けの地域型仮設住宅の整備も進めているところでございます。  なお、応急仮設住宅には、とにかく一遍に大量な建設をしなくちゃならぬものですから、例えば身障者の皆さん用の手すりとかあるいは段差なんかがついておりません。それにつきましては、入居したところでそういう方がいらっしゃった場合には至急そういう対応をするように、実は一昨日も私、現地であちらの知事さんともお話をしてきたところでございますが、そんな対策も考えておるところであります。  今後とも介護サービスが必要な高齢者等にはホームヘルパーの派遣やあるいはデイサービス事業の実施など地域における福祉サービスの提供にも努めて、その生活の安全に万全を期していかなくちゃならぬと、こう考えておるところでございます。
  73. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) ただいま医療、福祉あるいは厚生等につきましては厚生大臣からお話しございましたので、重複を避けまして、喫緊の緊急課題として最も大事な住宅対策について若干御説明申し上げたいと思いますが、御案内のとおり、仮設住宅以外にざっと申し上げまして四万戸前後準備をいたしまして、これが利用方について督励を一生懸命図っておるところでございます。  さて、その中の中心である仮設住宅四万戸のことでございますが、御案内のとおり、大変緊急なことでございましたので、しかも地震が発生をいたしましたその現在時におきまして二千戸前後だけしか国内になかった、そういう事情もございました。しかしながら、緊急にこれが体制を整えなければならないことはもちろんでございまして、国内外に向かいましてこれが調達、そして建設を督励してまいりましたこと、御承知いただいておるところでございます。  それにいたしましても、何とその在庫最の二十倍前後を調達しなければならぬ、そういう物理的な大変な事情もありまして今日これが建設がおくれておりますこと、大変遺憾に存じております。目標といたしましては、今月中に三万戸、そしてあとの二万戸を四月中、そういう計画で鋭意関係方面を督励いたしておるところでございます。御承知のとおり、県が設置いたしまして市町がこれを補完する形ではございますが、私ども政府といたしましても、言うなればその責任者の主体になったような気持ちでいろいろな方面で督励をいたしております。  去る一日のごときにおきましては、このプレハブ建設につきまして契約をいたしておりまする業者あるいはメーカー、業界の皆様方も東京に一挙にお集まりをいただきまして、どうしてもこれは大事な問題だから約束どおり三月中に三万戸を完成してくれと、いろんな角度から建設省あるいは厚生省と協力をいたしまして強い激励、督励もいたしておるところであり、さらにまた政府といたしましてもこの仮設住宅担当責任者を決定をいたしました。そして、毎日督励等をいたしておる昨今でございます。
  74. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 一生懸命に御努力なさっていることは非常にわかります。しかし、実際に避難所生活を続けていらっしゃる方、もう二カ月近くにもなるわけでございます。本当に一生懸命なさっていることはわかりますけれども、避難所生活をなさっている方にとってはまだ遅い遅いというお気持ちだろうというふうに思います。ですから、ぜひ避難所にいらっしゃる方の目線でお進めいただきたいというふうにお願い申し上げておきます。  ところで、今回の震災でお年寄り中心にいわゆる社会的弱者と言われる方々に非常に大きな犠牲が出てしまったということを考えますと、ここで地域における広範なネットワーク、システムのネットワークというふうなものがこれからどうしても必要なんじゃないかなということを私は強く感じるわけでございます。これからの都市政策、都市計画というものを考えますときに、ともすれば今までのようなハード中心、物流優先というふうな、そういうふうな考え方を改めまして、人というものが町づくりの主役になる。子供、高齢者、障害者を中心に人の生活と健康を守るという、そのための医療と福祉、あるいは施設サービスと在宅サービス、あるいは病院と病院、民間の病院とそれから公的な病院とのネットワーク、あるいは施設と施設のネットワークという、そういうふうな有機的な総合的なネットワークの確立というものが急務ではないかというふうに思うわけでございます。  さらにそのシステムには、医療、福祉関係だけではなくて、少なくとも短期的な食料とか飲料水、そういった緊急に不可欠な物資の備蓄と供給ということも配慮した重層的なネットワークというものができなければならないんじゃないかなというふうに強く感じたわけでございます。  もし、そういうシステムが存在して確立されていたならば、緊急の保護を必要とする方々の問題ももう少し解決が早かったのではないか、あるいはまた臨機応変に対応できたのではないか。この辺に古くから言われている縦割り行政のさまざまな弊害というものも今回新たに出てきたのではないかなというふうに思います。  現在もその縦割り行政の弊害、制約というものを超えて各省庁間が一生保懸命に協力なさっていらっしゃるということもよくわかります。しかし、この際やはりこういった縦割り行政というものを復興対策では克服しなきゃならないだろうというふうに思いますが、その点に関しまして、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  75. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 福祉と保健、医療などの各分野の施策についてはかねてより十分な連携を図ることが重要だと考えておりまして、例えば各自治体において老人福祉計画と老人保健計画を一体的に作成し、高齢者の生活の総合的な支援を図るなど施策の有機的連携には努めてきたところであります。  今回の震災におきましても、行政では、在宅や避難所の高齢者等の生活状況の把握に努め、医療施設や福祉施設への入所、避難所生活における健康や生活全般における配慮、あるいは仮設住宅の整備等の住宅確保など高齢者の生活の支援に全力を挙げてきたところであります。  また、地域においても、医療関係者と福祉関係者がネットワークを構築して被災者の支援に当たられたり、あるいは福祉施設を拠点として地域を巡回して介護等の生活相談を行ってくださった、主としてボランティアの皆さんでございますが、などの取り組みも見られたところでございます。  このような経験から、高齢者等の生活を支えていくためには、医療、福祉、さらには住宅対策など幅広い施策の総合的な展開や、施設、在宅サービスの一体的実施などが必要であることを改めて認識したところであります。  この経験を十分に生かして、市町村を中心にふだんから地域の中で高齢者等の実態やニーズの把握を進め、医療機関、民間の福祉事業者、地域住民やボランティアなどが緊密に連携をとりながら地域の高齢者等を文援していく体制の整備を進めていく必要があると考えます。
  76. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 建設大臣、いかがでございましまうか。
  77. 野坂浩賢

    ○国務大臣(野坂浩賢君) お答えいたします。  先生が御指摘になりましたように、重層的な感覚でネットワークをつくっていかなきゃならぬということは同感であります。  御案内のように、あの大震災を見てどういう特徴があるかと申し上げますと、区画整理事業、都市再開発事業をやったところは比較的被害はありません。ただ、長田区というところに見られるように、たくさんの住宅が道も狭くして建っておるところは大きな災害を受けておるというのが特徴的にあらわれております。  したがいまして、今後、都市づくりというのはどのようにしていくかということでありますが、一つは快適性であり利便性であり安全性であると、この三つを結論として安全性を第一義的に考えていかなきゃならぬ。そのためには道路をどういうふうにするか公園をどこに置くかこういうことで基幹道路なりあるいは公園というものを配置いたしまして、その上で商店街なり工場なり住宅というものをいわゆる減歩をするわけでありますから、私権の制限はできるだけ抑えて納得のできる、例えば具体的に申し上げますと、平家が一軒二十坪というのが三軒並んでおれば二坪ずつとられても五十四坪になりますから、それでは三階で耐火性のあるものをつくるということになれば利便性なり快適性なり安全性というものは確保できる。そして、歩道その他については押し車が交互に行き交うことができるような、村山政権で言うならば人にやさしい政治、人にやさしい町づくり、こういうものを考えていかなければならぬ。  お示しのように、備蓄その他についての重層的なネットワークは当然考えていかなきゃならぬ、こういうふうに考えております。
  78. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 総理、いかがでございましょうか。こういう地域における、そしてまた国内におけるネットワークはもちろん必要だと思います。そしてまた、さらに今回は世界の国々から温かい御支援もいただきました。この震災に関しましてお見舞いもいただきました。でも、国際的な協力のネットワークというふうなことも考えられるのではないかなというふうに思いますが、その点も含めて、総理、いかがでございましょう。
  79. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 先ほど委員から、今の日本の行政の仕組みについて、縦割りについて触れられたお話もあったわけでありますけれども、こういうふうに多面的にいろんな要求が一緒になって出てくるようなときに、あれはあそこです、これはここですというふうに被災者の皆さんが戸惑うような、そういうことはやっぱりすべきではないというので、各省の担当者を一堂に集めた対策本部を現地につくる、そして相談に来たらそこで即座に相談に応じられるような、そういう体制にしようではないかと。それから内閣の方も、私が本部長になって閣僚が一体となった本部をつくって、そして対応していく。  できるだけそういう縦割りの弊害というものを除去して、一体となって取り組めるようなことにしようではないかというので取り組んできたところでございますが、しかし具体的な個々の仕事になればそれぞれ専門分野でやっぱり相談をしなきゃならぬというようなこともあったかと思います。  それから今御指摘のございましたように、そういう意味の総合的な重層的なネットワークというのは私は極めて大事なことだと思います。地域的には、先ほども言いましたように、隣組といったような形でコミュニケーションを持っていくことも大事ですね。それからこれほど広い範囲で二度に震災が起こるというようなことの場合には、それを包む周辺のネットワークがつくられて、そして医療班は医療班で直ちに派遣されるとかそれぞれの必要に応じてそれぞれの専門家が十分現地に派遣をされて協力がし合えるような、そういう広域的なネットワークというものも必要だと思いますね。  そのためには、やっぱり防災の日等のふだんの訓練からそういう取り組みをしておく必要があるのではないかということを痛感いたしましたので、恐らくこれから検討される防災計画の見直しの中では、今御指摘のあったような点も重視をして、慎重に検討して遺漏のないような体制をしっかりつくっていく必要があるというふうに考えております。
  80. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 国際的な面ではいかがでございましょうか。
  81. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) コペンハーゲンで国連社会開発サミットがありますから、そこでは、国際的にいただきました今回の御支援、御協力に対しまして、日本政府国民を代表してお礼を申し上げたいと思いまするし、とりわけ、これはどこの国で何が起こるかわからぬわけですから、したがってそういう場合に情報の連携やらそれから支援の取り組みやら等々について何らかのやっぱり国際的な枠組みというものも考えていく必要があるのではないかというふうに思いますから、そういうことについても提言をしてまいりたいというふうに思っています。  とりわけアジアならアジアを中心にお互いにそういうことができ得るかどうかというようなことについても、何らかのフォーラムの場を設けてそういうことを提言していきたいというふうに考えています。
  82. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 次に、地方分権についてお伺いしたいと思います。  政府は、昨年末、地方分権大綱方針というものを閣議決定して、二月二十八日に地方分権推進法案を国会に提出しております用地方の時代が叫ばれてから久しいのでございますが、国がようやく地方分権を目指して第一歩を踏み出したということは画期的なことだというふうにとらえます。しかし、地方分権を実現するには課題が山積しております。とりわけ税源配分のあり方というのは地方分権の根本問題でございます。    〔委員長退席、理事伊江朝雄若着席〕  地方分権推進法案の第六条、「国は、地方公共団体が事務及び事業を自主的かつ自立的に執行できるよう、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図るものとする。」ということがございますけれども、ここで掲げる「自主的かつ自立的に執行できる」というふうなことは、現状で、地方と国の税財源のあり方というものが現在どのようにあるのかという、何を意味するかということも含めまして総理に御認識をお伺いしたいと思います。
  83. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今、国会に提案をしてこれから御審議をいただきます地方分権推進法の第六条についてお尋ねでありますが、この第六条には、自主的かつ自立的に事務及び事業の執行を行うという言葉が使われておるわけであります。具体的には、地方は、その実情に沿った個性あふれる行政を積極的に展開できるように国と地方の分担する仕事の分野を明確にしながら、地域に関する行政を地方自治体が主体的に担って、企画立案、調整、実施などを一貫して処理できるような財政的あるいは行政的権限が確立されていくということによって自立的に自主的にこの仕事ができるようになっていくのではないかというふうに考えておりますから、そういう趣旨で条文に入れてあるところでございます。  これは地方六団体からも強い要請がございましたし、同時に行革委員会の方からもそういう提言もありますし、それからこれはある意味では日本の政治改革の大きなやっぱり一つの柱だというふうに私どもは受けとめておりますから、ぜひこの地方分権推進法については慎重な御審議をいただいて成立をさせていただきますように御協力をお願い申し上げておきたいと思います。
  84. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 そこにございますそれを担保する税財源の充実ということでございますが、それはどのようなことを意味するでしょうか。大蔵大臣、自治大臣にお願いいたします。
  85. 武村正義

    ○国務大臣(武村正義君) 仕事が移りますから、当然財源も移らなければなりませんし、人も動くものだと思っております。
  86. 野中広務

    ○国務大臣(野中広務君) 委員指摘のように、今後の少子・高齢化の進展に伴いまして、地域の福祉の充実や生活関連資本の計画的な整備というのは重要な課題でございますだけに、これに伴います地方税財源の充実強化を図るというのは最大の私どもの課題であると認識をしておるわけでございまして、先般の税制改革におきましても、地方分権を推進するために、御承知のように、地方消費税を導入をいただきました。また、これに伴います交付税率の引き上げも行われたところでございます。  今後、地方分権推進法の今おっしゃいました第六条の趣旨に沿いまして、なお地方税の充実と地方交付税の所要額の確保等、地方一般税財源の充実強化を図るようにさらに努力をしてまいりたいと考えております。
  87. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 国に依存している現行の税制を改めること、それは補助金制度あるいは交付税に依存する自治体の財政構造からの脱却だというふうに言われているわけでございますが、いわゆる三割自治と言われているこの現状を自立的な自治体の税体系、税制に変えていくことだというふうに思うわけでございますが、この点に関しまして、自治大臣、いかがでございましょうか。
  88. 野中広務

    ○国務大臣(野中広務君) お話しのとおりに、現在の地方自治は三割自治と言われておるわけでございます。そのため住民の受益と負担の間の不一致が生じておるところでございます。これを今後、先ほど来申し上げております高齢化に伴う地域福祉の充実あるいは社会資本の整備等を考えますときに、総理からも申し上げましたように、自主的、生体的な行財政運営が可能となるように歳出と税収の割合のギャップを埋めるべく地方税を拡充独化していかなくてはならないと考えておるところでございます。
  89. 日下部禧代子

    日下部禧代子君 いろいろと補助金の問題、それからあるいはまた地方交付税と言われているものも、いわゆる当初の目的、例えば補助金の場合には特定事業の奨励効果とか政策誘導効果といった目的が次第に薄れでいっている。そして中央コントロールあるいは陳情政治の助長というふうなことに結果的になっているというふうな問題もあるわけでございます。  そういうことを含めましてこれから本当の意味での地方分権ということが目指されていくわけでございますが、地方分権というのは、いわゆる今までの集権型の財政から分権型への租税配分の変更であり、またそれは財政だけではなくて行政のあり方あるいは政治のあり方というものに深くかかわるものだというふうに思うわけでございます。本当の地方分権が進まなければ、豊かさが実感できる福祉社会の実現ということは難しいのだというふうに私は思います。福祉というのは、まさに地方分権があって初めて福祉社会ができ上がるというふうに思います。地方分権はこれからが正念場だと思います。  政府国民の期待を裏切ることなく果敢にこの問題に取り組んでいただきたいということをお願いして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  90. 伊江朝雄

    ○理事(伊江朝雄君) 以上で旦下部禧代子君の質疑は終了いたしました。(拍手)  午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  91. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから予算委員会を再開いたします。  平成七年度一般会計予算平成七年度特別会計予算平成七年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。堀利和君。
  92. 堀利和

    ○堀利和君 急激な円高金融、そして経済政策、もちろん阪神・淡路大震災という国にとっては大変大きな重たい課題、政策があるわけですけれども、そういう中で障害者の問題を私は取り上げさせていただきたいと思います。  阪神・淡路大震災では大変多くの方が亡くなられ、また被災されております。心から哀悼の意、お見舞いを申し上げたいと思います。  私もニュースで地震のことを知りましてから、よもやあのような大災害になるとは思っておりませんでした。私は実は委員派遣で茨城の方に視察に行っておりまして、午前中バスでの移動もあってその辺の情報が入っておりませんので、ますますそういう意味では当日そのようなことを全く予想もしていなかったわけです。一日たっても、私のいろいろな知人友人関係に電話しても電話がつながらないわけです。非常にやはり心配しながら、二日目になって現地から私の会館の部屋にファクスが届いて少し様子がわかってきたわけですけれども、本当に無力感といいますか、何をどういうようにしたらいいかわからぬというのが率直な私のそのときの状態であったわけです。  マスコミ、新聞、テレビなどの報道からも、私の問題意識ですと、障害者は一体どうなっているんだろうかというのが強くあるんですね。ところが、マスコミでも障害者の問題というのはもちろん出てこないわけです。考えてみたら、あのときはもうみんなが障害者になってしまったような状態なんですね。もう動くことも思うように、寝るところ、住むところ、食べることも十分できないというまさにハンディキャップの人たちの状態だという、恐らくそんなふうなことだったんだろうと思います。  しばらくたってから、マスコミで、障害者、高齢者、子供たちの関係、どんなふうに取り上げられるんだろうと思って後で調べてみましたら、四日目ぐらいから少し障害者の問題が出てきましたけれども、まさにみんなが障害者のような状態にたたき込まれてしまったんだろうなというふうに思います。とは言いましても、やはり被災された方々の中では、障害者いわゆる災害弱者という方々にとっては非常にその辺の厳しい状況が歴然としてあるだろうと思うんです。  ファクスをいただきながら、しかしこれも部分的なことですから全体がわかりませんけれども、とにかく得た情報、そして今こうしてほしいというような中身については、厚生省の方に相談といいますかお話をしながら具体的にはいろいろやっていただいておりますので、ここでは具体的なことについては取り上げることを差し控えさせていただきますが、とにかく障害者の場合には、命が助かっても介護、ヘルプがないと十分避難所での生活もできない、トイレも困る、いろいろな問題が出てきたわけです。  私も早く現地には行きたいと思いましても、現地、現場の方の手を煩わしたのでは、むしろその手が一人でも多くの方を手助けした方がいいわけですので、自力でといいますか行けるようになってから、ある程度、現場、現地がそれなりに落ちつきを取り戻してからということで、やっと行ったのが二月十二日で、車で行ったわけです。  私はよく見えないから幸いというのかわかりませんけれども、一緒に行った者が、テレビでは見ていたけれども、まさに走っている道路の陥没とか壊れている家を目の当たりにしてショックだということも言っていましたけれども、まさにそういうような状態でした。  午前中にも旦下部委員から、私が今、総理にお尋ねしたいことが出ておりましたけれども、私はこの経験の中でいろいろ感じたわけなんです。現地に行っても、多くのいろいろなことを経験させてもらったわけですけれども、避難所に行って座りながら話しても非常に寒いんですね。お年寄りの方に寒くないですかと言うと、いや布団の中にずっといるから大丈夫ですというようなことで、中には、大蔵大臣、まさに個人補償で何とかやってほしい、どうしてくれるんだということで言われると、その場では言いようもないものですから下を向いているしかないわけですけれども、そういうような状況でもありました。  ただ、非常に私にとって心強いといいますかうれしく思いましたのは、地域で頑張って生きている障害者たちがネットワークを通して力強くあの状況の中でも生き抜いていたということなんですね。しかも、グループホームという数人で集まって暮らしている方、あるいは作業所という形で集まって一日を過ごしている方、そういうところで西宮に行きましたら炊き出しをやっているんですね。つまり自分たちのところに来たボランティアと一緒になって、障害者たちは自分たちのことだけじゃなくて、被災された避難所にいる多くの方々に、千人分と言ってましたけれども、炊き出しをやるというようなことをやっているんです。  私もそのときに、ちょうど行ったときに雨でしたけれども、被災された方ですけれども、避難所で中心になってやっていた方とじっくりお話もさせていただきながら、本当のことを言っていいかというので、どうぞどうぞ何でも言ってくださいと言いましたら、今まで私は障害者を見ても本当にかわいそうで自分たちと関係ないと、そんなふうにいわば見下していたように見ていたんだと。しかし、そういう炊き出しのときに知的障害者と言われる方が、そういうものを運んだり、車いすで野菜を切ったり、そういう姿を見たらもう私は本当に今までのことが間違っていたと、まさに目からうろこが落ちた思いがするということを私に話していただいて、本当に私はうれしいといいますか、心強く思ったわけなんですね。  しかし、帰ってきてからふと思ったのは、今まで障害者に対して、自分たちと違う、気の毒だと思っていた障害者にそういう気持ちを持つほどどん底に追い詰められた気持ちだったんだなということをまた改めて考えさせられたわけです。  私の多くの仲間も申し上げたような地域で頑張って生きてきた、そういうネットワークを通してこういう厳しい状況の中で頑張っているわけです。小さな穴から世の中を見るような青い方になりますけれども、私は、震災に強い町づくりとか防災都市というのは、単に震災に対する何といいましょうか、建物とか鉄道とかそういうハード面だけではなくて、まさに地域社会の中であるいは地域社会を越えて、一人一人があるいは人間関係がどうつくられていくのかというまさにフォーマル、インフォーマルな形でのネットワーク、広い意味では力強い福祉社会といいますか、生き抜く力といいますか、そういうようなものがやはり一つの大きな要素にもなるんだろうと思うんですね。そういう意味で、こういった災害に強い社会、強い町というのは私は、村山政権が言うように、人にやさしい政治、人にやさしい社会をつくることであろうと思うんですね。  障害者年でも、障害者を排除する社会は弱くもろい社会であるというふうに言われております。まさに障害者もいろいろな人も含めて生き生きと一人一人が生活できる地域社会、そういう社会をつくることこそが強い社会であるというふうに思います。  そういう意味で、日ごろもそういう社会を望むし、こういう場合にもそういうことが十分私たちに勇気を与える社会像だと思いますけれども、その辺の御見解を総理にお伺いしたいと思います。
  93. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 通常、何でもないふだん生活をしている社会構造の中でそういう健常者と障害者が、あるいは高齢者も含めて公正に同じような社会的生活が営める、そういう社会の構造に変えていこう、こういう試みが今、全国的にも行われていることはいっかの機会にも申し上げたとおりであります。  とりわけ、こういう災害があったときにその対策をどうするかということについて、今、堀委員からも、単にハードな面だけではなくてもっとソフトな面を重視して検討をする必要があるんではないかというお話がございました。まことに貴重な御意見で、そういう部面がやっぱりなおざりにされてきた嫌いがあるんではないかということを率直に私も言わざるを得ないと思うんです。  しかし、今度の災害を受けた現場に行ってまいりまして、あるいはまたいろんなお話も承ってまいりまして私はつくづく感じましたけれども、本当に避難生活をしておる皆さん方がお互いに力を出し合って協力し合って助け合うというような姿があちらこちらで見られたと。そういう姿を見て高校生やら中学生やら小学生までが、これは私は作文をいただいたわけですけれども、私たちで何かできることはないんだろうか何かできることがあるのならみんなで力を合わせてやろうじゃないかこういう話し合いを中学生や小学生がし合って、そして避難生活の中で働いてきた、こういう記録を見まして感動させられたわけであります。  そういう意味では教えられる画が私はたくさんあったと思いますし、それだけにまた、そうした障害者の方々やあるいは高齢者の皆さん方が普通の人よりももっとお困りになるし御不自由をされるわけでありますから、私は閣議においても、そういう方々に対しては重点的に配慮して、そして少なくとも普通の人と同じような暮らしができるような条件を早く整えるということが大事ではないかと。したがって、仮設住宅に入るにいたしましても、その優先順位を配慮してほしいというようなこともお願いしてきたところでありますけれども、そういう部面における考え方というものはもっと重視されていいのではないかというように思いますから、これから防災対策全体の見直しの中ではむしろそういう部面を重視していきたいと思うんです。  先ほども申し上げましたように、地域で、地域でといいますか、小さな隣組程度の地域の中でお互いにコミュニケーションを交わしてふだんから知り合っておく、そしてお互いに協力し合うような社会的条件をつくっておくということも大事ですし、同時に広域的に、あれだけ広い範囲で中心都市がやられたということになりますと何もかも手がつかないというような状況になっていくわけですから、したがってそうでない地域からそれぞれの応援の部隊がはせ参じて来てそして協力してもらえるような、そういう広域的なネットワークというものも、ソフト面も重視をした立場でやっぱり検討していく必要があるのではないかというふうに思います。  今、委員からお述べになったような問題点というのは、これから防災対策を確立する上で重視をしていかなきゃならぬ問題点だなということを強く認識させられたところでございます。
  94. 堀利和

    ○堀利和君 ありがとうございます。  そこで、小里大臣にお願い、お伺いしたいわけですけれども、さまざまな経験を今なおされている被災者の方々の思いやらそのときの経験、当然、発生時から時間を追って日を追っていろいろなものが発生してくるわけですけれども、そういうものを私は、県や市と連絡をとりながら聞き取り調査を含めた実態調査をして、しかるべき段階でその全体像を明らかにできるような記録といいますか、報告書をぜひつくっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  95. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 大変被害が甚大、広範でございましただけに、先ほどから先生、具体的にいろいろ御指摘そしてまた御提起をいただいておりまして、本当にいろいろな思いを込めながら聞かせていただいたところでございます。  殊に、五十日間、一筋にこの応急対策あるいは緊急対策等々皆様方と一緒に走り続けてまいったという気持ちでございますが、その間におきまする、ただいまお話しの罹災者の皆様方を中心にいたしまして広く市民の皆様方がどのような厳しい経験をなさったか、あるいはまた私ども、地元県、市一体となりまして政府も応急、緊急対策こもごもいたしてまいったわけでございますけれども、それらに対するまた厳しい御意見などもたくさんあるわけでございます。  それらをひっくるめましてこの機会に、ただいまお話しのように、聞き取り調査と申し上げますか総体的な調査を、特に明るい面ではなくて厳しい側面、また私どもが他日教訓といたさなければならないような、一つの問題点を得られるような視点からぜひやらなけりゃならない、さように考えております。もう既にそのようなことも考慮に入れながら事務もとり行っているところでございますが、この機会に、御指摘のような趣旨に沿うよう聞き取り総体調査を行う予定でございます。
  96. 堀利和

    ○堀利和君 よろしくお願いいたします。  同様に、いわゆる障害者、高齢者、子供といった災害弱者といわれる方々に対しても、調査、そして報告書というものをまとめていただきたいと思いますが、井出大臣、いかがでしょうか。
  97. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 今回の震災において高齢者や障害者などの方々については、地元の自治体のみならず他の自治体からの応援や、さらにボランティアの多くの皆様方の活動によって、パトロール隊の巡回等を通じた避難所や在宅における安否の確認を含めた実態の把握、あるいはその結果を踏まえて必要な方については適切な医療施設や福祉施設への受け入れ、避難所生活における健康の確保や、暖房、食事の改善等生活環境への配慮、優先的な住宅の提供、さらにまたホームヘルプやデイサービス等の福祉サービスの提供など、さまざまな取り組みが行われてまいりました。  この経験は今後の震災対策のあり方や平時からの備えについての示唆に大変富むものでございまして、震災発生時やその後の対応状況については十分把握、分析し、高齢者や障害者などの方々に配慮した災害時の体制づくりに活用していかなくちゃならぬと、こう考えております。  今回、障害者の関係の団体の皆さんにも行政の手の届かないところで大変御活躍してくださいました。そういった団体の皆さんからも十分御意見を拝聴してまいりたいと考えております。
  98. 堀利和

    ○堀利和君 避難所を離れるときに、どうせあなた方はすぐ忘れてしまうんでしょうね、我々のことを忘れるんだろうねと言われましたけれども、決して忘れてはならない問題だろうと思いますし、もちろん万全な対策を政府にお願いしたいと思います。  次に、障害者の施策についてお伺いしたいと思います。  障害者保健福祉施策推進本部が設置されたわけですけれども、この目的あるいは保健、福祉の基本的な考え方、そして検討の進捗状況、さらにはいつごろまでにその方向性をまとめ上げるのか、その辺についてお伺いしたいと思います。
  99. 佐野利昭

    政府委員佐野利昭君) ただいま先生からお話がございました障害者保健福祉施策推進本部でございますが、厚生省の中に設置をさせていただいております。  一昨年の十二月に先生方のお力によりまして障害者基本法が成立を見たわけでございまして、これを受けて、これからの障害者施策を一層推進していくために厚生省もやはり省を挙げて障害者問題に取り組んでいく必要があるのではないかということで、事務次官を本部長といたしましたそういう本部を設置しておるところでございます。  この本部におきましては、障害者種別やそれからライフステージを通じた総合的な障害者施策のあり方でありますとか効果的な施策展開のための推進体制のあり方、あるいは既に障害者基本法で求められております地方の障害者計画の策定の推進方策、あるいは障害者施策における医療と福祉の連携等の問題などにつきまして鋭意検討を進めているところでございますが、特に今度、このたびの震災を契機といたしまして、従来そこから漏れておりました災害時における障害者の対策マニュアルといいますか、そういう問題につきましてもこれから大いに検討を進めてまいりたいと、こう考えておるところでございます。  なかなか難しい問題もございまして、特に障害者の種別あるいは個別施策の推進方策がどこまで可能かというような点につきましては検討する分村も多いものでございますから、なかなか結論を得るまでには時間がかかっておりますが、できるだけ検討を急いで、中間的な報告は、できればこの夏ぐらいに中間的なものは取りまとめをしたいと、こう考えておるところでございます。
  100. 堀利和

    ○堀利和君 今の御説明でも、やはり保健と福祉の、あるいは総合的なそういった施策、それで厚生省では身体障害、精神薄弱、精神障害と三局三課に分かれて、いわゆる縦割りになっているんですね。福祉はもう市町村レベルになってきておりますけれども、どうもこれがうまくいかないというふうに私は思いますので、これはやはりそういう総合的な障害者施策を推進するためにもぜひ、この三局三課に分かれている不便さといいますか、また総合性にはいきさか不十分がなと思う点から考えても、私は障害者保健福祉局という局として格上げしたものに一本化すべきだろうと思いますけれども、厚生大臣、いかがでしょうか。
  101. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 先生御指摘のとおり、厚生省の社会・援護局、そしてまた児童家庭局、さらには保健医療局、三局にまたがっておるわけでございまして、今、先生御提言のような障害者保健福祉局はどうだということでございますが、先ほど局長が御説明申し上げました障害者保健福祉施策推進本部の実は主要な検討項目でございます。  障害種別や年齢を超えた総合的な障害者施策の展開やそのための推進体制の整備を検討項目として挙げているところでございまして、効果的な施策推進が可能となるような体制のあり方について、目下、鋭意検討を進めておるところでございます。結論を取りまとめ次第、具体的な方策を考えていきたい、こう思っております。
  102. 堀利和

    ○堀利和君 一日も早くそういう実現をお願いしたいと思います。  それで、ことしの夏ぐらいまでにおおよそ中間報告をまとめるという先ほどのお話もありましたけれども、私は障害者の保健福祉プランということでは厚生省がまとめるということになろうかと思いますけれども、五十嵐官房長官、今、新ゴールドプランとエンゼルプランがございます。  エンゼルプランの場合には、保育対策緊急五カ年計画というのが中心中核になりまして、厚生省を超えて、さらには文部省なり労働省なり建設省と四省が一緒になっていわゆるエンゼルプラン構想というのがあるわけですけれども、私は障害者の場合にも、保健、福祉のプランを基本としながら、建設省なり運輸省なり郵政省、もちろん労働省、文部省含めて、私なりに言えばノーマライゼーションプランというものを、社会参加のための総合的なプランをぜひ策定していただきたいということで、障害者対策推進本部が総理府にございます、そういう点で官房長官にぜひ御尽力をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  103. 五十嵐広三

    ○国務大臣(五十嵐広三君) 国連障害者の十年以降の長期的な障害者施策の推進を図ろうということで、障害者対策推進本部で平成五年三月に障害者対策に関する新長期計画を策定したのは御承知のとおりでございます。現在、この新長期計画に盛り込まれた各施策の具体的方策に沿って関係省庁は施策推進に取り組んで、その状況年次報告として国会報告をさせていただいているところでございます。  やはり各般にわたる問題でありますから、それを横断的に把握して、そしてしっかりしたポリシーのもとに施策を推進していけというこの御意見はまことにごもっともなことだというふうに思いますので、私どもも鋭意そのような努力をしてまいりたい、こういうぐあいに思います。  しかし、いわゆる横断的な分野で数値目標的なものを個々に持ってということになってまいりますと、なかなかどの程度との分野で可能かという検討すべき課題も確かに多いというふうに思いますが、しかしその面でも関係省庁とよく協議し、検討、研究をしてみたい、こういうぐあいに思います。
  104. 堀利和

    ○堀利和君 おっしゃるとおり、横断的になりますと具体的数値、どういう形でつくるかというのは大変難しいと思いますけれども、ぜひノーマライゼーションプランということで日の目を見させていただきたいということをお願いしたいと思います。もちろん、建設省なり運輸省なり郵政省含めていろいろこれやっていただいていると確信しております。  それで、亀井大臣、お願いなんですが、私の車いすの生活をしている仲間でも、これわかっていることですので、東京駅から車いすで来る、あるいは電話をあらかじめして地下鉄の駅で駅員に持ち上げてもらうというんですが、初めて国会の会館に来られる車いすの方々が驚くのは、何で国会の近くの駅に、地下鉄の駅にエレベーターがないんだと、永田町の駅にエレベーターないんですかと、払いつも怒られて謝っているんですね。大臣のかわりに私が謝っているんですけれども、いいかげん嫌になってきましたので、有楽町線の永田町駅にエレベーターはぜひつけていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  105. 亀井静香

    ○国務大臣(亀井静香君) 私ども、総理からの「人にやさしい政治」、特に障害者の方々にということで努力をしているところでありますが、一応私どもとしては、すべての駅にというわけにはいきませんので、当面、重点を決めまして、五メートルの段差、それと一日の乗降客が五千名、ここをまず重点的に整備をするということで、エレベーターを設置しておりますのは現在一七%ございます、その基準の中に入るものが。  もちろん委員指摘の永田町の駅はこれに該当をしておるわけでございますが、ただこれにつきましては、いろいろと経過を調べますと、用地の取得その他等、新設じゃございませんものですから、そういう点で非常に難しい点がございますけれども、できるだけそういう条件を克服していきたい、このように考えております。
  106. 堀利和

    ○堀利和君 国民の一人として、車いすの方が国会に来る場合に、そこにエレベーターがないのかということはやはり私は大きな問題ではないかなというふうに感じますので、ぜひ亀井大臣、よろしくお願いしたいと思います。  次に、精神障害者の保健福祉施策についてお伺いしたいと思います。  今国会で、厚生委員会の方では精神保健法の改正が提案されております。その中では、法律の題名も精神保健法から精神保健及び精神障害者福祉に関する法律ということで、まさに精神障害者福祉が明確に法律の題名にあるように進められるわけですけれども、これまでやはりおくれがちな福祉、どんどん進めなきゃいけないわけですが、市町村レベルではこれはまさにゼロに等しいわけですね。都道府県レベルが保健所という形で精神保健施策をやってきた関係から、市町村にはそういう窓口すらない。こういうことから、今後の精神障害者の福祉の展開を市町村レベルでどのように展開されるか、お伺いしたいと思います。
  107. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 精神保健施策につきましては、先生おっしゃるとおり、これまでは医療の面にウエートがあったためでしょうか主として都道府県を中心に取り組んできたところでございまして、市町村の位置づけについては特段の規定が設けられていなかったわけでございます。  ただ、平成五年十二月に成立いたしました障害者基本法において、精神障害者基本法の対象である障害者として明確に位置づけられ、国や都道府県のみならず、身近な市町村においても精神障害者の福祉の増進の役割が明確化されたところであります。  また、昨年成立いたしました地域保健法に基づく基本指針においても、専門的、技術的な役割は都道府県の保健所が担う一方、精神障害者の社会復帰施策等のうちで身近な利用頻度の高いサービスは市町村保健センター等において実施することが望ましいとされたわけであります。  また、今般の精神保健法の改正案におきましても、正しい知識の普及や相談指導など、地域における精神保健福祉施策の推進を図ることとしておりますが、市町村はこれらの事業の推進に努めるよう努力義務でございますが規定しているところであります。  精神保健福祉施策につきましては、一部の市町村においては既に積極的な取り組みを行っているところもございますが、まだ一般的なものとはなっておりません。このため、今回の市町村の役割の位置づけとあわせて、厚生省におきましては来年度の予算案の中で、モデル事業として全国で百カ所の市町村に対し、地域の創意工夫を生かした精神保健福祉施策の事業に関する補助を行うこととしております。  今後、こうした予算を活用しつつ、市町村においても体制整備を進め、精神保健福祉施策に積極的に取り組んでいただけるよう努力してまいりたいと考えております。
  108. 堀利和

    ○堀利和君 私は視覚障害者でありますけれども、身体障害者の場合、最近は偏見といいますか、そういうことがかなり解消されてきているんですね。しかし、精神障害者に対してはやはり非常に厳しい偏見といいますか差別もありますので、ぜひその辺は慎重にやらなきゃいけないし、しかし大胆にこの禍祉、社会復帰施策を進めていただきたいと思います。  次に、障害者の介護についてお伺いしたいと思います。  十二月に「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」という研究会報告が出ましたけれども、これを読みまして大変中身のすばらしいものだなと感心もいたしました。そういう点では、ノーマライゼーションの理念を含めて、これまで障害者にかかわるさまざまな理念とか考え方がむしろ高齢者のああいった福祉の介護の問題の中にもかなり入り込んできたなということでうれしくも思っているわけです。  私は、介護というのは非常にこれからの大きな課題だと思いますけれども、簡単に言ってしまえば、介護を必要とするすべての人にとって必要な基礎的介護という、そういう概念といいますか基本的な認識というのがやっぱり必要であるし、またあるんだろうと思うんですね。  そういう点で、要介護者すべてに共通する基礎的介護、こういう基本認識についていかがお考えがお伺いしたいと思います。
  109. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 高齢者を対象とした新介護システムでございますが、昨年十二月に学識経験者による研究会の報告書が取りまとめられたところでございます。今、先生大変高く評価していただいたわけでございますが、またそのほかに新たに策定されました新ゴールドプランにおきましてもその検討を進めることとなっております。  研究会の報告書では、高齢者の自立支援を介護の基本理念として、高齢者自身による選択、介護サービスの一元化、ケアマネジメントの確立、社会保険方式の導入等を柱とする新たな介護システムの創設が提言されているわけであります。このような高齢者介護に関する考え方は、障害者介護を考える上でも、介護を障害者の自立支援を基本とすることなど共通する部分があるものと認識しております。  ただ、報告書でも指摘しておりますように、障害者については障害者基本法の趣旨にのっとって、障害の態様に応じた教育、授産、就労、更生援助、住宅などの施策を総合的に推進していく必要がございます。したがいまして、障害者介護のあり方につきましてはこうした観点も念頭に置いて検討を進めていく必要があるのではないか、こう考えておるところでございます。
  110. 堀利和

    ○堀利和君 今、大臣がおっしゃった文章といいますか読んだところ、確かにそういう側面があります。ただ、何か障害者の問題、介護が後回しになってしまうんじゃないかという非常に私、懸念を持っていますね。別途考えるということがどうもそうなってしまうんじゃないかと思いますけれども、この辺は私は、基礎的な介護という考え方から見ても、高齢者だけの介護システムを先行させるんじゃなくて同時に障害者の介護についても検討していくという確認をさせていただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  111. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 後回しになってはならないと私も考えております。  今後の障害者施策につきましては、ノーマライゼーションの理念を踏まえて地域における障害者の生活を支援する施策が重要でございます。その中で障害者に対する介護サービスの充実は極めて大きな課題であり、現在、省内にございます障害者保健福祉施策推進本部、先ほど申し上げましたが、ここにおいて総合的な検討を行っているところであります。  今後、この推進本部とも十分な連携をとりながら、しかも高齢者介護対策本部とも十分な連携をとりながら、障害者の介護体制のあり方について幅広く検討を行ってまいりたいと思っております。
  112. 堀利和

    ○堀利和君 先ほど私、基礎的介護というような基本認識を申し上げたわけですけれども、同時にあの研究報告の中にも、高齢者を一つのグループとして見てはいかぬと。一人一人のニーズ、一人一人の生きてきた経歴、そして生活というものに着目して介護システムというものをつくっていかなきゃならぬと、私はそう思うんですね。基礎的な介護というものを基本認識としながら、しかし同時に一人一人のニーズ、生活、環境が違うわけですので、それに根差した介護があるかと思うんです。特に高齢者の場合でも、寝たきりの身体上の場合もあるし痴呆性のお年寄りの方もいるわけですね。これは当然介護の質あるいは量も違ってくるわけで、障害者の場合にもかなりそういった側面があります。そういう点で、某礎的な介護システムとして構築しながら、同時にその辺の運用を弾力的にやり、またそういうふうな介護という認識が必要だと思いますけれども、この辺についてあわせてお伺いしたいと思います。
  113. 井出正一

    ○国務大臣(井出正一君) 御指摘のとおり、新介護システムの検討に当たりましては、個々の高齢者の心身の状態やあるいは生活実態等に配慮したニーズに応じてきめ細かな介護サービスが提供されるようにすることが重要なポイントだと思います。こうした観点から、介護に関する専門家によるチームが、介護を必要とする高齢者やその家族のニーズを十分把握した上で介護計画を作成し、各種のサービスを総合的に提供するいわゆるケアマネジメントの仕組みを確立することが必要であると思います。  本年二月から開始をしていただいておるのでございますが、老人保健福祉審議会において高齢者介護問題に関する審議が開始されたところでありますから、御指摘の点も踏まえて新たな介護システムの構築に向けて鋭意検討を進めてまいりたいと思いますし、与党福祉プロジェクトでも今これを取り上げていただいておるようでございますから、それらの先生方の御意見も十分聞いてまいりたい、こう考えております。
  114. 堀利和

    ○堀利和君 よろしくお願いします。  次に、障害者の雇用対策についてお伺いしたいと思います。  円高、そして金融経済、さまざまな非常に難しい難題があるわけですけれども、最近特に産業の空洞化、金融、さらには観光の空洞化なんということさえ言われているわけですけれども、こういう中で、特に障害者の雇用の分野というのは製造業が結構雇用率の高いところだと認識しているわけです。  そういう点で、製造業が空洞化するという事態になったら大変でございますけれども、この辺の見通しも含めてどのようにお考えかということと、昨年改正されました雇用促進法を私は高く評価しているわけです。いわゆる雇用と福祉の間を埋めるものとしての施策が進められている。予算措置では、例えば住宅の問題や、通勤用のリフトバスとかを運行させるということがあったり、法律に基づいては、各地に障害者雇用支援センターを設置して、職業リハビリテーションなどを中心にしながら地域に根差したきめ細かな施策があるわけで、こういうことから、障害者の今後の雇用についての安心感もお考えいただきながら、浜本大臣の御決意をお伺いしたいと思います。
  115. 浜本万三

    ○国務大臣(浜本万三君) お答えをいたします。  まず生陸拠点が海外に移転する等によりまして空洞化するのではないかという御心配があるようでございます。今後、中期的には、お説のように、製造業などの雇用需要が減少いたしますが、一方では、サービス業や情報通信分村などでは雇用が増大するということが見込まれておるわけでございます。  一方、現在の障害者の法定雇用率を見ますと一・六%ということになっておりますが、実際の雇用率は、お説のように、製造業で一・七〇というふうに高くなっております。一方、サービス業等の第三次産業では一・二五というように若干低い状態になっております。  このため、産業構造の空洞化が言われる事態の中で、障害者の雇用を確保するために障害者の配置転換に伴う施設の整備等に対する助成等の活用を行いまして、障害者の雇用の継続について事業主への働きかけを行っておるところでございます。また、サービス業等における職域拡大に向けた取り組みや障害者雇用に関する各種援護措置を積極的に活用いたしまして、新たな雇用の場を確保してまいりたいと思っております。  第二の御質問でございますが、昨年の障害煮雇用促進法の改正におきましては、地域レベルにおける職業リハビリテーションの充実や障害者を取り巻く職業生活環境の整備の観点から、障害者雇用支援センターの設置や、通勤、住宅面での助成制度の拡充を行ったところでございます。今後は、改正法の趣旨にのっとりまして、地域の実情等を勘案しながら障害者の雇用支援センターの設置を積極的に進めてまいりたいと思います。  具体的に申しますと、平成六年度に三カ所、平成七年度は同様三カ所予定をいたしておるところでございます。また、通勤、住宅対策として、事業主や事業主の固体が重度障害者の利用に配慮した住宅や通勤用リフトバスを購入する場合に助成金を支給させていただくことにいたしております。  このような措置を行いまして、引き続き積極的な障害者の雇用対策に努めてまいりたいと思います。
  116. 堀利和

    ○堀利和君 よろしくお願いします。  次に、障害者の教育についてお伺いしたいと思います。  一月に特殊教育課から就学指導資料というのが、十四年ぶりですか、改定されましたけれども、これの何が変わったか、御説明をお願いしたいと思います。
  117. 井上孝美

    政府委員井上孝美君) お答え申し上げます。  文部省におきましては、市町村及び都道府県教育委員会におきまして、障害児に対しまして適切な就学指導が行われますように、教育委員会担当者の手引として就学指導資料を作成、配付をいたしているところでございますが、特殊教育をめぐる諸状況の変化等を踏まえまして、学識経験者等の協力を得まして、先生からただいまお話がございましたように、本年一月に就学指導資料の改定を行ったところでございます。  新たに改定いたしました就学指導資料におきましては、個々の障害の特性に応じた就学指導のあり方について詳細に述べますとともに、就学指導に当たりましては就学前の教育相談を十分に行うことが大切であるとともに、就学指導の手続におきましても障害者の不安や悩みにこたえる就学指導が重要であることを強調しているところでございます。
  118. 堀利和

    ○堀利和君 障害を持った子供がやはり地域の学校で、地域社会で育つということは私は非常に重要なことだと思っています。  そこで、大臣に、これはもう昨年の決算委員会でしたかでも審議させてもらいましたけれども、なかなかここら辺が非常にきつい、厳しいんですね。機械的な振り分けとか、障害の程度が同じといいますか、障害の程度を見てすぐどこの特殊学校へというのじゃなくて、子供をめぐる家族や地域社会の環境、学校の状況を含めて私はいろいろ千差万別だろうと思うんです。ハンディというのは機械的にわかるものじゃないというふうに思いますので、その辺の弾力的な行き先、就学先を考えるべきだというように一歩踏み込んだ指導を行っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  119. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 就学指導における障害の種類、程度に応じた教育措置基準については、学校教育法施行令第二十二条の三において規定されているところでございます。  障害のある児童生徒の能力を最大限に伸ばし、可能な限り積極的に社会に参加する人間に育てるよう教育を行うためには、この教育措置基準に基づく就学指導が適切に行われることが必要でございますが、このような就学指導を行うに当たっては、教育委員会において一方的に教育措置を行うのではなく、保護者等の不安や悩みにこたえ、理解と協力を得る教育相談や就学相談が十分に行われることが大切であると考えております。
  120. 堀利和

    ○堀利和君 その辺はもっともっと踏み込んで、ぜひお願いしたいと思います。  次に、視覚障害者の入試問題について伺いたいと思います。  私が大学へ行ったころは、試験問題もその場で試験監督が読んで、それを私、自分自身が点字で試験問題を書いて、自分でもちろん答案を点字で書いて、今度それを口頭で話して書きとめてもらうというような、試験場で自分で試験問題を書くなんというのはほとんどいなかったのじゃないかと思います。そういうような状況から、今日では点字の出題が出されるというふうに大分改善されました。  この辺の視覚障害者の大学入試の現状について、まずお伺いしたいと思います。
  121. 吉田茂

    政府委員吉田茂君) 平成六年度の入学試験におきまして点字による出題を行った大学は、国公私立大学合わせまして三十四大学でございまして、受験者数は計九十六人と相なっております。一方、視覚障害者平成六年度に大学に入学した者は、やはり国公私立大学合わせまして二百二十三人という状況でございます。
  122. 堀利和

    ○堀利和君 点訳する際、全国高等学校長協会の中に入試点訳事業部というのがございまして、いわば高等学校の側に点訳をする事業部をつくっているというのは私は本来の姿からいうと非常におかしいと思うんですけれども、やはり私は、安心して安定的に責任を持って公的に点訳入試できる姿というのがあるべきだと思うんですけれども、この辺の本来のあるべき姿、将来像というものについて文部大臣はどのようにお考えでしょうか。
  123. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 大学入試問題の点訳は、現在、全国高等学校長協会入試点訳事業部などの協力を得まして実施されているところでございます。  お尋ねの点訳体制のあるべき姿、将来像についてでございますが、点訳を行う組織には、入試問題という性格上秘密の保持に万全を期することができること、正確な点訳技術を有するだけでなく入試問題としての趣旨を生かしながら点字問題を作成する能力を有すること、第三には盲学校教育について正しい理解と認識を有することなどが求められているところでございます。このような点を考慮して全国高等学校長協会入試点訳事業部が設立され、点訳について御苦労いただいていることを承知しておりますが、組織のあり方については今後検討を要すべき課題もあると考えております。  いずれにいたしましても、文部省としては、入試問題の点訳体制のあり方について、今後関係者の御意見を聞きながら研究してまいりたいと考えております。
  124. 堀利和

    ○堀利和君 現在、私立大学の点訳入試の費用についてはどうなっていますでしょうか。
  125. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 文部省では、私立大学等における障害者受け入れ体制の整備を促進するため、従来から私立大学等経常費補助の特別補助において障害を持つ学生の受け入れの状況に応じて補助金の増額措置を講じており、特に視覚障害を持つ学生を受け入れる場合にはさらに補助金の増額を図っているところでございます。平成五年度においては、障害者を受け入れている私立大学等三百校に対し約六億五千万円の増額措置を講じたところでございます。  文部省としては、今後とも、厳しい財政事情のもとではございますが、私立学校等における障害者の受け入れ体制の整備が一層図られるよう適切に対処してまいりたいと考えております。
  126. 堀利和

    ○堀利和君 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、国公立の点訳費用はまずまずというふうに聞いています。しかし、私立大学の場合には国公立に比べて点訳費用の単価が低いようなんですね。そういう点では、私学振興財団の方から障害者学生在学中には補助金が今出ているという大臣のお話でしたが、ぜひ入試点訳の費用について別枠でそういった形で補助金を出すようにしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  127. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 障害者受け入れにかかわる私立大学等総常費補助金の特別補助については、私立大学等における障害者対象にして講ぜられる入試上の配慮や入学の補充指導の経費などを補助対象とするものであり、各私立学校においては、この補助金の趣旨を十分踏まえ、障害者の受け入れ体制の整備を図っているものと理解をしております。  文部待としても、今後とも各私立大学等における障害者受け入れ体制の整備が一層図られるよう適切に対処してまいりたいと考えております。
  128. 堀利和

    ○堀利和君 ぜひ御検討をお願いします。  ありがとうございました。
  129. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で堀利和君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  130. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 次に、鈴木栄治君の質疑を行います。鈴木栄治君。
  131. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 私は、何分、役者上がりなものですから、大変失礼な言い方をするかと思いますが、ひとつお許しくださいませ。  大震災におきまして、日本国民が全部と言っていいくらい支援物資を送ったり義援金を送ったりボランティアをしたり、ああやっぱり日本人の互助の精神が生きているなと私、つくづく思いました。そしてまた、政府も頑張っている。いま一つでございますから、なお一層復興に向けて踏ん張っていただきたいと私は強く思うのでございます。  ただ、この大震災、大きな揺れでございますが、これがいまだに大きく揺れるところがあるのでございます。それは教育現場でございます。総理、学校なんですよ、いじめなんですよ。  私も子供を持っているんです。今度はもう幼稚園だ小学校だ中学校だと、私、心配てしょうがないんですよ。やっぱりまた、万が一にも自分の子供がいじめられて殺されてもしたら大変でございますよ。私は物すごく心配で、私だけじゃなくて、子供を持っている多くの方々が心配だと思うんですね。  それで、去年の十二月でございますか、報道機関、ニュース、ワイドショーの報道がピークに達したころ、文部省も大変にしっかりおやりになって、文部省は昨年十二月九日、いじめ対策緊急会議を催し、緊急アピールを行った。その中で、就学すべき学校の指定の変更や区域外就学を認める措置を講じていく必要があると、それをおやりになっている。これは私、大変朗報だと思うんですよ。いじめっ子がいるわけですから、どこかに行かしてもらえると大変いいことだと、乱そう思ったんでございます。  でも、ふっと私、考えた、これはおかしいと。いじめられる、要するに被害者の子が出ていくわけでしょう、いじめっ子は残っているわけですよ。いじめられたやつが出ていって、また今度はそのいじめっ子というのは新しいやつをいじめますよ。そうすると、またそいつが出ていく。次から次から出ていったら学校にはいじめっ子しか残らないじゃないですか。これ私、本末転倒だと思うんですね。悪いのはこの加害者、いじめっ子なんですから、こいつをひっ捕まえて、こいつを徹底的に教育しなきゃいけないんですよ。私、この被害者と加害者の関係というのはこれはちょっと考えていかなきゃいけない。  これは一般社会においても、例えば犯罪においても、何かいい例ないですかね。  総理、もう十数年前になるんですが、こういうドラマがございました。  ある大手会社でエリート社員が二人いるんですよ。Aという社員、Bという社員。Aという社員はこれは悪いやつです。Bという社員はこれはいい人です。ここですから、悪い方は森田という名前にしましょう。いい方は村山にいたしましょう。村山さんでございます。この村山さん一家は非常に夫婦仲がよくて、そしてお子さんにも恵まれ、自分のマイホームをつくり、もうそれこそ平和を絵にかいたような家だった。でも、Aの悪い森田がやっぱりちょっと嫉妬を持って、そして自分の出世欲のためにこの村山さんを殺してしまうんですよ。いや、これはドラマですからね。  そうしたら、今度はその村山さんの本当に平和ですてきな一家がもう奈落に落ちちゃうわけです。今までの平和がごろんとひっくり返っちゃうわけですね。そして奥様は、もう自宅のローンはあるわ、生活はあるわ、子供があるわというので働きに行って一生懸命、心労の余りストレスで倒れて病に伏しちゃった。  それで、悪い私、森田でございます。殺した森田は刑務所に行って、たしか十五年だったと思います。十五年間の刑期を終えて、それで出てくるんですね。刑務所の前で、雪の降るシーンでしたね、あれ。雪が降っているんです。その前にその奥様がいるんですよ。初めその男はそれが村山さんの奥様だとわからないんです。余りにも変貌した姿、要するに頭はくしゃくしゃになって、もう本当に生活に疲れた顔をしていた。そしてその奥様が、その犯人、出てきたやつに、言うんですよ、男に、おめでとうございますと。私はあなたに夫を奪われてめちゃめちゃになりました、動けば動くほど、もがけばもがくほどアリ地獄のように、私は本当に地獄を見た思いでございます、世間は冷たいですと、それに比べてあなたは幸せですねと言うんです。  裁判では、弁護士の方が一生懸命あなたの罪を軽くしようと思ってやってくれている。刑務所ではあなたが更生できるように、社会復帰していくように一生懸命やってくれる。あなたが出たときはきっと、出所おめでとう、頑張りなさいよと言われたでしょう。悪いことをしたのはあなたじゃないですか、うちの主人が何を悪いことをしたんですか、私が何を悪いことをしたんですか、うちはめちゃめちゃです、世間は私に冷たいですよ、神様はいないと言う。そしてその女性は、その男のところにぐうっと行って号泣する、泣くんでございます。  私、そのドラマの言いたいところは、要するに私たちが本当に考えなきゃいけないのは、加害者じゃなくて、その前に優先すべき被害者のことをまず私たちは考えなきゃいけないんじゃないかなということを述べていると思うのでございます。  それで、いじめの方に戻りますけれども、この間、いじめについて新聞に出ておりました。度を越すいじめに対して出席停止命令、学校教育法を活用すべきだと、文部省いじめ対策緊急会議の最終報告書に盛り込まれることになったと。今までいじめはいっぱいあったわけです。毎年もう二万件以上あるそうですよ。でも、何でそういうことを発想しなかったんだろうか。  そうしたら、「文部省によると、こうした出席停止命令のケースは八五年度には全国で百三十七作あった。しかし、登校を禁じられる側の学習権を制限することになるため、その後は減る一方。」であると。要するに、「登校を禁じられる側の学習権」、いや、いじめですよ、いじめっ子ですよ、悪いやつなんだ、いじめる側の学習権を制限される。じゃ、いじめられる側の学習権はどうなるんですか、被害者の学習権はどうなるんですかと、私はこの辺が少しおかしいと思うんです。  この表現もおかしい。「登校を禁じられる側の学習権」、これはいじめっ子と書きゃいいんです、こんなものは。私はその辺を、私たちはまず被害者の人権、被害者の学習権を優先し、そしてその後に加害者じゃないでしょうか。  私は、いじめ、そして被害者と加害者の関係、その総理のお考えをぜひともお聞きしたいと思います。
  132. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 今までとかくいじめがございますと、いじめた子のことを考えないで、そういう事件が起きたのは社会が悪い、学校が悪い、世の中が悪いということで責任が拡散をする。また、そのような方向で議論が進んでいるケースが非常に多かったわけでございます。  しかしながら、先生が御指摘になられましたように、やはりいじめという、いじめっ子、いじめられっ子というのは我々小さいころにも実はあったわけでございます。また、そういう中で子供たちが鍛えられてきた部分もあるわけでございますが、許される範囲を超えるそういうことに関しては、やはり学校も社会も厳しく対処を私はしなければならないと思っております。  先生が御指摘のように、いじめられた方の子供が学校から転校したいと言ったときは転校ができるような措置をとるということも当然でございますけれども、いじめられた方だけが学校から出ていくというシステムというのはいかにもおかしいというのは先生の御指摘のとおりだと私は思います。  そこで、今回の文部省あるいはいじめ対策会議で貫かれている一つの気持ちと申しますか精神というのは、いじめられた子よりもいじめた子供たちの責任を問おう、こういう精神でございまして、大人が社会で許されないことは子供は学校でも許されない、やはり子供にもその年齢に応じた責任がある、そういうことを子供に教えるということもまた学校教育の一環であろう、こういうことでございます。  したがいまして、先般のいじめの果てに子供が自殺するというようなケースは、これは大人であれば恐喝等の刑法犯でございまして、当然刑事事件になるべきものでありました。そういうものをいたずらに見逃すということではなくて、いかなる年齢であろうがやはり刑法に照らして処断すべきものは処断する、こういう厳しい態度で臨むということもまた必要なことであるというふうに考え方が変わってきております。  また、そのいじめ報告はまだ世の中に公表されていないものでございますけれども、私立学校の場合ですと、不品行の子供というのは学校からほうり出されてしまうわけでございますが、公立学校の場合はあくまでも義務教育という大事な使命を負っておりますのでなかなかそういうことはできません。しかし、法律ではそういうように学校に来ていただいては困るという措置ができるわけですから、そういう措置の発動も従来よりは適正に行っていく必要があると考えております。
  133. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 それは大臣のおっしゃるとおりですね。私、思うんですよ。ある時期、私たちなんかがちょうど思春期のころ、世の大人は私たちが悪いことをすると、いやいやいいんだよ、君が悪いんじゃないんだよ、世の中が悪いんだよ、そういうことをさせた生活環境、社会が悪いんだよと言うんです。だから私たちは調子に乗りますよ。そうなんだよ、おれが悪いんじゃないんだ、だれだれが悪いんだ、これが悪いんだと言うんですよ。大人も子供も関係ないんです。それは大臣おっしゃるとおり、悪いものは悪いと指導者がぴちっと言う、そういう範を示していただきたいと私は思います。  それから私はこれは基本的な姿勢で、それから現実問題として、例えば学校に来るなと言うと、それで面倒を見るのは担任の教師でございますね。担任の教師が行って、おまえどうだった、作文善いたか何書いたかと。私、もし自分が学校の先生になったら果たしてそこまでできるかなと思うんです。  ここで私は提案があるんです。私は、これは専門の先生を置かなきゃいかぬですよ。心の悩みの相談、要するにカウンセリングの先生ですね。私、以前に台湾へ行ったことがあるんです、台湾の高校を視察したことがあるんです。それで今、日本ではいじめの問題が大変問題になっている、こちらはどうですかと私は聞いたんです。そうしたら、そういう心の悩みの相談の先生が、まず朝、校門に立って見ているというんです。それから絶えず生徒を見ていてちょっと調子が悪そうだなと思うと、おいおいと呼んで話をする、コミュニケーションをする。ですから、そうやって事前にどんどん防いでいっているからほとんどありませんと青うんです。  私はそこだと思うんですよ、総理。がんも早期発見です。ですから、それは担任の先生といったって一から十までできないんですから、そういうカウンセリングの先生、心の悩みの相談の先生を少なくとも一学年に男と女二人は置く、そのくらいの金はやっぱり出さなきゃだめだと思うんです。  私はそういう専門の先生を置くべきじゃないかなと思うんですが、文部大臣、どのようにお考えでしょうか。
  134. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 子供がいじめに遭った場合、あるいはいじめられている子供の親にとりましては、どこか相談に行く場所が必要であるわけでございます。学校内では、担任の先生が十分余裕があってその相談に乗れればそれにこしたことはございませんが、子供が相談にいく場合、養護教諭あるいは教頭先生、校長先生等、学校内にも相談相手はいるわけでございますけれども、先生の御提案のように、心理学、児童心理学等に大変詳しいやはり専門家のカウンセラーも必要でございます。  平成七年度の予算においては、全校とはいきません、ある特定の指定される学校にカウンセラーを配置して子供たちの相談に乗る、特に心の悩みの相談に乗る、そういうことを試みるという予算平成七年度についております。そのほかに子供や親御さんが相談にいく場所としては、もちろん警察の少年係もありますし、教育委員会の相談所もありますし、また法務省の人権擁護局もございますし、いろいろな窓口があいておりますので、そういう自分たちだけでは解決できない問題についてどこに相談にいけばいいかということは広くお知らせする予定になっております。
  135. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 私、自分の学生時代を思ってもそうなんですが、それは確かにいろんな窓口はあるんですけれども、急に私が例えば大臣のところに今まで会っていないのに行って、済みません、私はこんなことがあったんでございますがと言っても、私も親近感を持たないですし、大臣だって一生懸命にならないですよ、これは正直な話。  ですから私は、その学校においてふだんからもやっぱり接しているということが大事だと思うんです。ですから、公的機関にこういうものがある、ああいうものがあるというんじゃなくて、ぜひとも私はそういうカウンセリングの先生を置いていただきたいと心から思う次第でございます。ひとつよろしくお願いをいたします。  次に参ります。  実は私の友人が、日系人なんでございますが、アメリカにいてガイドをやっていたんでございますが、あるスポーツイベントでいろんな国の子も来ていたらしいんですが、アメリカの国旗が上がった、国歌が鳴った、全員が立って敬意を表したと。ところが、日本人の若者はみんなどうしたらいいんだろうというのでうろうろしてはっきりしなかった。そこで、その日系人のガイドの方が、さあ皆さん立ってください、ここはアメリカなんです、国旗に敬意を表してください、国歌に敬意を表してくださいと言ったそうでございます。これは総理、総理がそこにいたらどうしますかね。何と声をかけましょうか。皆さん立ちなさいと言うでしょう、やっぱり。総理、お答えをお願いします。
  136. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 先ほど来、教育の、いじめの話を承っておりまして、これは全くもう例え話でありますけれども、私が善人で村山ということで指名されまして、身につまされる思いで今聞いておりまして、平和なマイホームのところまではなるほどなと思ったけれども、後はない方がいいですから。これは冗談ですけれども。  私は、いじめがあったときに思ったんですけれども、これは決して天災でなくて人災である、これは防げる問題である、努力すれば。何としてもこれは防がなきゃいかぬと。そのためには、やっぱり現場を考えてみますと、今お話がございましたように、いじめられた子供の行き場がないんですね。友達にも言えないし、先生保にも言えないし、家庭に帰っても言えないというので思い詰めて、とうとい命を絶ってしまう。痛ましい事件ですから、これはもう何としても防がなきゃいかぬというので、これは関係閣僚会議も開いて真剣な議論をいたしておりますけれども、やっぱり本音で本気で相談に乗ってもらえるというようなところがあっていいんじゃないかと思いますから、そういう点はこれからもうんと検討してもらわなきゃいかぬと思います。  それから何かアメリカあたりの学校を聞いてみますと、上級生がグループをつくって、そしてそういう事件を発見したら、そのいじめている子を呼び出して、そして上級生がやっぱり諭して教育をするというような生徒自体の中の仕組みもできているというようなことを聞きましたけれども、いろいろな方法があると思いますけれども、これは努力をすれば防げる話ですから、何としてもなくさなきゃいかぬ、こういう気持ちでいっぱいであります。  それから今、国旗・国歌の話が出ました。私は、総理になって何度か外国に参りましたけれども、それぞれの国でそれぞれの国の国旗を掲揚する場合に、皆、起立をして、そして国歌が歌われる場合にはそれぞれ起立をして聞いている、こういう場面に出くわしましたし、私が行けば、日本の日の丸の旗を掲げてそして科が代を奏でてくれるわけですね。私も敬けんな気持ちでぱっと答礼をしておりますけれども、私はやっぱりそういう気持ちが大事だというふうに考えています。
  137. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 いや本当に私は村山総理がますます好きになりました。  実を言いますと、私、ちょっとこれから国旗・国歌のこともいろいろ質問するんですが、同僚議員からちょっとそれはまずいんじゃないかとか言われたことがあるんです。でも違うと思うんです。私は村山総理が好きなんですよ。ですから、より一層長期政権をやってもらいたいと思うからこそ、やっぱり国民が疑問を持っているようなことは、総理、もうここまで踏み込んだんですから、びしっと私は育っていただきたいなと、そういうふうに思っているわけでございます。  総理、やっぱり国旗・国歌というのは、例えば自分が家を建てて表札をつくるようなものでございますよ、これは。お前つけろと言わなくても表札は黙ってつけるじゃないですか。これは独制でも何でもないですよ。表札をつけるということは当然なんでございます。そのように私は理解しております。  それで今、アメリカの例がございました。私は思うんです。やっぱり今までの教育が、国旗・国歌に対して敬いを持とうという教育が私は薄れていたんじゃないかと思います。それは私たちの年代でもそうでございました。自分の親を大切にできない者がなぜゆえに他人の親をやさしくしよう、大切にしようと思うことができるでありましょうか。私は、自国の国旗・国歌を愛せない人間がなぜゆえに他国の国旗・国歌を愛せるか、そのような考えでございます。  戦後五十周年でございます。謝罪問題とか不戦問題、いろいろあるでございましょう。でも、総理、私は思うんです。やっぱりこの国旗問題、国歌問題というのはそういう戦争がいろいろ絡んでいるじゃないですか。日の丸は戦争をイメージするだとかいろいろあったでございましょう。私はそれこそ、これから新たな新生日本だと、もう国旗問題、国歌問題もここでぴしっとする、改めてそれこそ国会で決議しようじゃないか、そのぐらいは僕はあってもいいんじゃないかなと。ねえ皆さん、どうですか。というふうに思ったんでございますが、それは今ここでがたがた言うとまた面働くさいことがあるでしょうから。  でも総理、私、思うんでございます。文部大臣、私、思うんでございますよ。やっぱりこれからは、これからの若い者が外国へ行って国旗・国歌の前でぴしっと立てないような、そんな人間は育てちゃまずいですよ。ひとつよろしくお願いいたします。
  138. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) 総理も私も国会での答弁で、国旗は日の丸、国歌は君が代ということは国民の間に定着をしているということを申し上げてきております。これは国旗・国歌が慣習法上成立しているということを皆様方に申し上げたわけでございます。  先生御指摘のように、学校教育の中では、日本の国旗・国歌を尊重すると同時に、やはり国際社会の中で生きていくためには、他国の国旗・国歌に対しても尊敬の念を持つということが今後国際社会の中で生きていく日本人として必要である、そういう観点に立って学校教育は構成されております。
  139. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 ひとつよろしくお願いいたします。  話題は変わりまして、今度は震災の方にちょっと戻りますが、ボランティア、私は森田塾という青春塾を持っているんですが、若いやつがいっぱいいるんですよ。それで、私のところに、塾長、おれもボランティアやりたいんだけれどもどこへ行ったらいいんだと。いや待ってくれよ、おれもな、どうかな、とりあえず兵庫県へ電話してみろよと私、言ったんでございます。  だから、ボランティアってみんなわかっている、互助の精神というのは本当に日本人というのはいっぱい持っていると思うんですよ。その窓口がわからなかったんじゃないかなと思うんですが、その窓口と、そしてそのボランティアの人間を指揮するその指揮系統、その辺をひとつ、これ小里大臣ですか、よろしくお願いします。
  140. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) 今次の災害におきましてボランティア活動が大変すばらしい役割を、大変な貢献、顕著でありました。  今のお尋ねは、そのせっかくの皆さんの善意をどのように現場で有効に活用申し上げるか、あるいはまた奉仕をしていただけるか、その受け入れの窓口あるいは有効な組織体制というものが果たしてどうだったのか、そういうお話だろうと思うのでございます。  まさに今度の災害は大変甚大でございまして、かような混乱も見ました。しかしながら、幸いにいたしましてボランティア活動の皆さんの自主的な計画そして行動によりまして、県により、県というよりも、市によりましてはあるいは町によりましては、いわゆる社会福祉協議会等がその被害者の具体的な状況等を把握しながら、そしてボランティア活動の皆様方に仕事をごあっせん、振り配っていきましたり、いろいろやってきたところでございます。しかしながら、振り返ってみますと、なるほどこのボランティア活動というものがもっと有効に組織的に活動していただける方途をこの機会に十分検討しなけりゃならぬ、さように思っております。
  141. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 それと同時に、ボランティアの方が事故だとかそういう補償問題もいろいろ新聞等によりますと政府は検討なさっていると聞いておるんでございますが、小里大臣、その辺ちょっとお聞かせ願います。
  142. 小里貞利

    ○国務大臣(小里貞利君) ボランティア活動の皆さんの言うなれば傷害保険等々につきましては、御案内のとおり、原則を申し上げますと、奉仕活動をみずからの意思によって決してなさるわけでございますから、建前を申し上げますと、自主的なボランティア保険の加入を一応の建前といたしておるかと思うのでございます。  しかしながら、今次の活動のあの貴重な実績からいたしましても、また事実上今次の経験におきまして、市などにおきましてボランティア保険を御加入いただくようにその一部の助成をいたした、あるいはまた日本損害保険協会におきまして二月分全体をだったと記憶をいたしておりますが、これも御奉仕をいただきまして御負担をいただきまして、そしてその保険加入を促進したというようないきさつがございます。  なおまた、今次の経験からいたしまして、私ども政府といたしましては、もっと踏み込んだ活動をしゃすい一つの環境整備というものをする必要があるのではないかそういう反省にも立ちまして、経済企画庁等を中心にいたしまして関係機関集まりまして、これが公益性の担保をどういうふうになすべきか、それらの法的な枠組み、あるいはまた地元の市町、県あるいは国といたしましてどのような支援をなすべきか、基本的なところを検討しようということで、今その検討を始めたところでございます。
  143. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 ぜひ本当に、そういう意味ではボランティアの人たちがこんなに脚光を浴びたということは初めてじゃないかなと私は思うんです。  それで、これは蛇足かもしれませんが、やっぱりボランティアをする人もそれを受ける人も、はっきり言ってボランティア精神というのはよくわからない部分があるんですね。だから、この間もNHKのニュースを見ておりましたら、二十人ボランティアがいた、炊き出しもやっていろいろやっていた、学校があるからとぱっといなくなって八人しか残らなくなっちゃった。いなくなっては困っちゃうわけですよ。急にいなくなって、どうしたんだ。ボランティアは、それは私たちはボランティアなんだから別にいつ帰ろうと私の自由じゃないかと、こうなっちゃう。この辺を、だからボランティアをする側もされる側も、ボランティア精神というものをやっぱり勉強しなきゃいけないんじゃないかなと私は思うんでございます。  そこで、文部大臣、実は身体障害者の手が私の塾生の中にいて、初めは私、かわいそうだなという気持ちから手を差し伸べていたんですが、役たちは違うんですよね。そういう変な同情じゃなくて、おれたちも健常者と一緒にやれるよ、健常者と一組におれは頑張るんだという気持ちが強いんですね。それは私、そういう人たちとつき合って初めてわかったんです。  ですから私は、これはまずボランティア、要するに例えば体の不自由な人、お年寄りの人と、何でもボランティアしよう。その前に、その精神並びにその気持ちをちゃんと理解するためにも学校教育において、小学校から中学校から高校、一カ月で一日でもいいわけですよ、一カ月一日でも結構です、ボランティアの日、ボランティア教育の日というのをつくって、町内を掃除してもいいじゃないですか、そういうお年寄りと接する機会もあってもいいじゃないですか。そういうボランティアの日というのを月に一回学校教育の中に取り入れてはどうかなと思うんでございますが、文部大臣のお考えをお聞かせください。
  144. 与謝野馨

    ○国務大臣(与謝野馨君) ボランティアというのは、専ら自発的な音一思で、しかも無償で、しかも御本人がこれは付会的に有用性があるということを実は余り見せびらかさないでひそかにやる、仏教用論で言えば陰徳を積むというようなことだと私は思うわけです。ボランティアだボランティアだと言って騒ぎまくるのは恐らくボランティアではないと私は思っております。  しかしながら、やはり幼い時代から社会に無償で奉仕をするということの大切さを教えるということは大変でございまして、現に学校教育においてそういうこともお教えをしているわけでございますが、やはり紙の上で教えるだけではなくて、みずからそういう例えば町内会の掃除でもあるいは海辺の掃除でも何でも社会的に有用性のあることに地域の活動を通じて子供たちが参加して、それによって子供たちがボランティア活動の大切さを自覚する、またそういうものに触発されて将来のボランティア活動に参加をする、こういうことは大変大切なことだと思っております。
  145. 鈴木栄治

    鈴木栄治君 そうですね。だから、もちろんボランティアというのは人に見せびらかすものでも何でもないんでございますが、ただボランティアという言葉を使うとあれでございますが、でもやっぱり学校教育の中においてまず接するということ、また自分が実体験するということが私は大事だと思うんでございます。  総理、私も大変生意気なことを言わせていただきましたが、本当にひとつ、人にやさしい政治、これはいい人に対してやさしいんで、悪い人にとっては厳しい政治でやっていただきたいと、そう思います。  ありがとうございました。
  146. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で鈴木栄治君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  147. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 次に、中村鋭一君の質疑を行います。中村鋭一君。
  148. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 御苦労さまでございます。  私、過日の逓信委員会で、情報のこういった大震災等におきましての管理の仕方について、私なりのこれはたたき台でございますが、私案を郵政大臣にお聞きをいただきました。このことについては、本会議でも本委員会西野委員でありますとか、先日は逓信委員会において自由民主党の委員の方からもこのことを心配した提言、発言がございました。    〔委員長退席、理事伊江朝雄君着席〕  やはり今度の阪神大震災で寄せられました声の中には、例えば一つには、発生直後に救出作業をしているときにマスコミのヘリコプターが集中をいたしまして、そのために瓦れきの下に埋もれた方が助けを求める声が聞こえなくなった、何とかできないものかなと、こういう声が一つございました。  それからまた、各社の取材革、中継革等々が一斉に集中をしてきたものですから、救難活動をするための警察や消防やまた自衛隊の車等が交通渋滞に陥って救助活動が妨げられたのではないかと、こういう声もございました。  それからまた、あの大火災が発生をいたしました長田区等々において、取材をする側からいいますとどうしてもいわゆる絵になるものを求めるものですから、どこの局を見ても炎々たる火炎を上げております長田区の火災現場の中継が主でありまして、これについても、例えば西宮市や芦屋市の方からすれば、この時間どこを見ても火事の中継ばかりじゃないか、ほかにも全壊をしたところがたくさんあるんだから、そういったようなニュース報道をもっとやってもらいたいし、それから本当に役に立ついわゆる情報をラジオ、テレビを通じてやってもらいたいと、こういう声があったわけでございます。  ただ、この問題は、これは憲法に保障された報道の自由、あるいは放送法におきましても、テレビやラジオの番組編成、その内容については一切、行政でありますとか我々国会が介入すべきものではございません。だから、そこのところは私も承知の上で言っていることでございますが、ただ人の命は地球よりも重いと、こう言いますから、このような状況がこの次にまた起きたときには何とかその辺をうまく整合させることはできないかな、こう考えて私は先日も郵政大臣にお聞きをいただいた次第でございます。  簡単に言いますと、私が申し上げましたのは、例えば全国を十一ブロックに分けまして、近畿を例にとれば近畿二府四県でございます。この近畿二府四県にはたくさんテレビ局やラジオ局がございますが、例えばその一番大きな放送局であります。しかも公共的使命を持っておりますNHK大阪中央放送局、ここを近畿ブロックの情報の危機管理センターとでもいいますか、クライシスコントロールセンターですか、英語で言うとそういうことになります。そういうものを設けまして、各局がもし緊急時の場合はヘリコプターは何機飛ばす、取材記者は何人動員する、班の数は中継車何台、取材車何台、カメラは何台、ヘリの高度規制はここまで、そういうことをあらかじめ十分に議論しておきまして、そのために各局ともに人材を供出いたしまして、そういった場合のマニュアルをしっかりとつくっておきます。  例えばそのブロック内において、これは全くのたたき台でございますからそのように承知願いたいんですが、人口五十万以上の都市で震度五以上の地震が発生をした場合には自動的にそのような情報管理の体制が発動をいたしまして、今申し上げました一定の人が一定の取材車で、車で、ヘリで、取材をする。その取材をしたものは各局へそのまま素材として送られるわけでございますから、どの素材をどのように使うかはこれは各局の自主性に任されるわけでございます。  何よりもともかく初動において救難が大事でございますから、人命救助を第一のことにいたしましてそのような節度のある取材体制をしきまして、今回の例を見ましてもお亡くなりになった五千数百の方の恐らく九割以上は地震発生の午前中にお亡くなりになっている、このように伺っておりますから、例えばそのような取材体制で二十四時間を経過いたしまして、最初の救難体制が完了した時点でこの情報管理の体制は解除をいたしまして、二十四時間後は各局自由競争に任せたらどうか、概略このような私の意見を申し上げたわけでございます。  そのときに参考人の民放連の専務理事さんは、参考にすべき意見だと思うから、ひとつ民放の方でも検討を加えようということでございました。NHKの中村参考人は、そうはおっしゃってもやっぱり現場へ行く人間はだれよりも先にいい絵が撮りたいということがあるから、その取材記者の競争心理でありますとか、いい報道をしたいという気持ちとの兼ね合いがありますが、参考にはさせてもらいます、こういうことでございました。  そこで、その節、私、大出郵政大臣の御意見は伺っておりません。大臣はあの前も、たしかフジテレビにはなかなかいいマニュアルがあるというようなことをおっしゃっておりましたから、ここで改めて、今、私が申し上げましたような点につきまして、ということは二一日にして言えば節度のある情報管理体制をつくって一定の時間経過後は自由競争に任す、こういう体制でございます。これについてひとつ御意見なり、また省の方でそういった指導のためのマニュアルをもし御研究でございましたらお聞かせ願いたいと思います。
  149. 大出俊

    ○国務大臣(大出俊君) お答えをいたします。  これは参議院の本会議で、西野さんでいらっしゃいましたが、御質問がありましたときに、非常に心配して、実は取材をする側も一つ間違うと命にかかわるという非常に苦労して取材をしておられるというのも現実だから、けしからぬじゃないかと言うだけではまずいなと思って、マニュアルを調べてみた。かえってこれ答えていけなかったかもしれませんが、時間がかかって。しかし、マニュアルを見ると、関西テレビから始まりまして非常に立派なものがあるんですね。元気づけるような形の報道が必要であるとか、逆なでするような描写はいけないとか、実に細かくあるんですよ。  このとおり行われているとすれば非常にいい取材姿勢だなということになると思うんですけれども、実際にそうなっているかなっていないかというところに問題があるわけでございまして、しかし共同取材という言い方を、さっき冒頭に中村さんおっしゃった取材の自由もございますから、監督官庁の側から言うのはいかがなものかという気が放送行政局にございます。  そこで、まずひとつ皆さんで自主的にというような形で相談してもらおうじゃないかということになりまして、その意味で一つの検討の場をつくるということにいたしました。災害関係対策連絡会というのを省としてつくりまして、この中にお願いをして、日本放送協会、日本民間放送連盟、日本CATV連盟、CS放送協議会、この方々に入っていただいた形でひとつ検討していただく、マニュアルはあるんですけれども、こういう形が一つでございます。  それからもう一つ、実は幾つかに分けているんでありますけれども、これは氏家さんもおっしゃっておりましたが、二月二十四日、民放連が今後の代表取材の具体的なあり方ということで役割の分担、協力体制の可能性などについて検討を開始したわけでございます。  それから在京ラジオ社、東京放送、文化放送、ニッポン放送、NHKを含めまして、ここでも御趣旨のような形の検討をひとつしていただくということにいたしまして、御趣旨の報道は全国十一ブロックぐらいに分けて、今もお話がありましたから多くは申し上げませんけれども、クライシスコントロールというような形でひとつそれぞれの数も決めて、実際にもうせっぱ詰まったところで声が聞こえるか聞こえないかというようなことになるわけでございますから、そこまで踏み込んでやっぱり検討して、コントロールできる組織をつくったらどうかというようなことを含めた検討をとりあえずしようということでございます。
  150. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 大臣、これはよく話し合いをして、いやしくも放送局に郵政省が制肘したり介入したりするようなことがあってはこれは絶対にいけませんので、その点だけひとつよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、去る二月末でございました、画期的な最高裁判所の判決が出ました。私、ここに判決文を持ってきておりますが、その要点とするところをちょっと読ませていただきますが、「主文 本件上告を棄却する。」「理由」とありまして、「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものである。」、冒頭に判決はこのように言っております。  さらにその後の部分でございますが、憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義付会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもつて、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。私はこの点が本当に画期的だと、こう思います。  ただし、「しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。」と、このように判決は言っているのであります。  まずこの判決につきまして総理の御感想をお願い申し上げます。
  151. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今、委員から判決の主要な趣旨について御紹介がございました。これは在日外国人についての選挙人名簿の不登録処分に関する最高裁判所の判決が出されたわけであります。これは各選挙管理委員会の行った処分に違法な点はないとされた原審の判断が認められたものであります。この判決の中で、今御紹介のございましたように、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、」「法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」と、今言われたとおりですね。これが趣旨です。  そこで、この最高裁判所の判決というものはやっぱり私は尊重されなきゃならないものだというふうに受けとめております。ただ、この最高裁の判決で示された選挙権の付与が禁止されない外国人の範囲というものはどのような範囲にとらえたらいいのかという問題も一つはあると思います。ここで言われますように、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるもの」と、こういう言葉がありますから、これは一体どういう中身のどの範囲のものをいうのかということの判断がやっぱり求められるんではないかということが一つは私は問題としてあるというふうに思います。  それからこの問題は我が国の地方自治のあり方や国と地方公共団体との関係をどのように考えるかといった基本的な事柄にもかかわる問題でありますから、さまざまな角度から幅広く検討されなきゃならぬ問題であると私は思います。ただ、最高裁で出ている判決ですから、この判決は尊重して、できれば前向きの方向で私は国会でも各党で御検討いただき、同時に国民の声も十分反映をさせながら結論を出さなきゃならない問題だというふうに受けとめております。
  152. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 どうもありがとうございます。  野中自治大臣、今の最高裁の判決について御感想をお聞かせいただけますでしょうか。
  153. 野中広務

    ○国務大臣(野中広務君) ただいま総理から答弁があったとおりであります。
  154. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 ちょっと大臣、それはそっけないと思いますが。もう少し大臣自身の自治大臣としてのお考えといいますか感想を言っていただけませんか。どうぞ遠慮なくひとつ。
  155. 野中広務

    ○国務大臣(野中広務君) 私の考えている点をすべて総理に言い尽くしていただきましたので、そのとおり申し上げた次第でございます。
  156. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 では、お二人ともこの最高裁の判決は重く受けとめて、そうして積極的に国会とともにこれに当たりたいし、国民の声も聞きたいと、こういう御意見。野中さん、それでいいわけですね。  この地方参政権に関する意見書を採択しておる、意見得とか請願とかいろいろありますけれども、要望とかですね、これは自治省、今、全部で何件ぐらいに達しておりますか。それから今検討中でこれから議決をしようとしているような傾向といいますかその件数といいますかそれを教えていただけますか。
  157. 谷合靖夫

    政府委員(谷合靖夫君) 定住外国人の地方参政権を求め、あるいは検討を要請する意見書や要望書等で自治省に送付をされたものの件数でございますが、平成七年二月末現在で百四十二件となっております。  今後どのような団体が具体的な対応をするかという将来の数は把握をしておりませんが、ちなみに昨年の三月末では、このような意見書等が十七件寄せられておったわけでございます。
  158. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 これからこの傾向は強まりこそすれ弱まることはないと、こう思いますね。各地方自治体が、最高裁の判決が山たことでありますから、当然ながら定住外国人に対して参政権は与えるべきである、こういう趣旨の議決がどんどんふえてくるだろうと思います。  ここに私、資料を持っているんですけれども、定住外国人の参政権についてヨーロッパ各国の中で、例えばスウェーデン、これは選挙前三年間国内生活をしていること、年齢十八歳以上ですね。スウェーデンの場合は、選挙権もそうでありますが、被選挙権も規定をしております。三年以上住んでいれば選挙椎も被選挙権も与える。オランダは五年以上ですね。しかも、国内では国政レベルの選挙にも選挙権を与えるべしという意見が非常にオランダにおいては強まってきている、こういうことであります。デンマーク、三年以上の在留、十八歳以上、これは全外国人に対して適用する。ノルウェー、三年以上の在留、十八歳以上、これは自治体の選挙権を全外国人に与える。このように世界的にも定住外国人に対して選挙権を与える傾向が強まってきているわけでございます。  私、ここに在日韓国人の皆さんがお出しになりました要望書を持ってきております。その中を見ておりますと、当然ながら、在日韓国人、大韓民国居留民団の方です、これは四十五万人になんなとする方が日本に定住外国人としておられるわけでございます。このほとんどの皆さんは日本で生まれて日本で育たれた方々でございます。その方たちはきちんと税金を払っていらっしゃいます。これは所得税も法人税も市民税も払っていらっしゃるわけですね。  特に例えば今度の阪神大震災ではこれは同じように被害に遭って、日本人も朝鮮人も韓国人もみんな力を合わせて復興のために頑張ってきた、そのときに本当の意味での親善協調ということを実感したということをおっしゃっているわけでございます。ここには外国人とか日本人とかいう感覚は全くありません、今度の地震の場合にでも。ただ、お互い、住民だ市民だと、そういう意識があるわけです。  そういう意識があって、しかも税金はきちんと払い、例えば今度の政党助成法に基づく一人二百五十円でございますか、これも同じように負担をしていらっしゃるわけです。その人たちに地方参政権を与えないということは、これは政府と国会の怠慢である、こう音えると思います。  居留民団の方々がおっしゃる理由の中に、こういうことを言っておられるんです。国連で一九六六年に決議された国際人権規約に基づいて、その第二十五条に我々の要求の法的根拠を置いているのでありますと、こうあります。  河野外務大臣にお伺いいたしますが、この第二十五条、これは日本ももちろん批准をしている条約でございますが、第二十五条「選挙及び公務への参与」、「すべての市民は、第二条に規定するいかなる差別もなく、かつ、不合理な制限なしに、次のことを行う権利及び機会を有する。」「直接に、又は自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与すること。」、これは国連の国際人権規約二十五条に明確にこのように規定をしているわけです。  ですから、このことと、それから今回の最高裁の判決と、それから韓国政府もこのことについては非常に重大な関心を持って見守っていると思いますから、外務大臣としてのこの辺についての見解をお伺いしたいと思います。
  159. 河野洋平

    ○国務大臣(河野洋平君) 先ほど総理から御答弁ございましたように、最高裁の判決はまず重く受けとめるということが基本的な態度であろうかと思います。    〔理事伊江朝雄君退席、委員長着席〕  さらに地方自治体の選挙権の問題、とりわけ地方自治体の選挙権の問題でございますが、在日韓国・朝鮮人の方々が非常に高い関心をかねてから持っておられます。このことは平成三年一月、海部総理が訪韓した際に、日韓両国の外務大臣の間で結ばれた在日韓国人の法的地位及び待遇に関する覚書におきましても、韓国政府からその要望が特に表記されているところでございます。  繰り返しになりますが、いずれにしても、最高裁判所の判断というものは尊重されるべきものであると思います。  ただ、この問題につきましては、我が国の地方自治のあり方、それから国と地方公共団体との関係をどういうふうに考えるかといったような基本的な事項にかかわる問題でありますから、さまざまな角度からの検討は必要であろうというふうに思います。
  160. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 外務大臣も総理もおっしゃいました。この最高裁の判決を重く受けとめるとおっしゃった。やっぱり韓国との親善の上からも、このことはひとつ十分心にとどめておいていただければありがたいと思います。  最後に、この問題について野中大臣にいま二度お伺いさせていただきますが、これは大臣、三月一日、朝日新聞の「素粒子」という小さなコメント欄があります。その二項めに「定住外国人に地方選挙権ありと最高裁。だが自治省のへっぴり腰は何だ。官僚に志なしか。」と、こういうことを朝日の「素粒子」氏が書いておりますね。  私は、自治省がこんなことを言われることはない、自治省に忠なしかとは何だ、自治省のへっぴり腰は何だ、そんなことを何で言うんだ、我々はきちんとちゃんとやるんだこの問題は、というぐらいのむしろ志をひとつお示しいただきたい、こう思いますので、いま一度この問題についての自治省の積極的な取り組みを約束していただければ大変結構だと、こう思います。
  161. 野中広務

    ○国務大臣(野中広務君) 先ほど来、総理及び外務大臣からも答弁がございましたように、私どもは最高裁の判決を厳粛に尊重する立場でございます。  今後、先ほど申されましたように、地方自治と国とのかかわりの問題、あるいは永住権をどこに持っていくかの問題等、これはむしろ国会及び各党間でさまざまな議論をひとつ詰めていただきたいと思うわけでございます。私どももまたそのお手伝いを惜しむものではございません。
  162. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 どうもありがとうございました。  まさにこれは政府だけの問題、自治省の問題ではなくて、我々国会議員の問題でもあると思いますし、このことにつきましてはもうほとんど全党が積極的に、これは選挙法や自治法の改正も含んでまいりますので、ひとつ政府におかれてもよろしくお願いを申し上げておきたいと思います。  地震予知のことを少しお伺いさせていただこうと思いますが、田中科技庁長官は、先日の参議院の本会議で民主改革連合の堤川さんの質問に対して、こう言っておられるんですね。「いわゆる東海地震につきましては予知はほぼ可能であると申し上げられると思いますが、そのほかにつきましては、困難なところと、それから予知が可能かもしれないというところとに分かれておりますことは大変残念でございます。」と、こう答弁をされておいででございます。  そこで、長官が言っておられる東海地震について予知はほぼ可能であるというのは、具体的にどのような予知が可能であるのか。例えば六カ月前から向こう六カ月間の間に震度五以上が起こるというのかあした、あさって起こるというのか、何時ごろに起こるというのか、その震度はどれぐらいなのか、場所はどの程度特定できるのか。予知が可能とおっしゃるからには十分具体的な予知が可能であるとお考えでございましょうから、それをひとつお教え願えますか。
  163. 田中眞紀子

    ○国務大臣(田中眞紀子君) お答え申し上げます。  東海地震の予知のことでございますけれども、三つございまして、一つは、問題となる東海地域でございますけれども、問題となる断層の観測監視が行いやすいということが一つ目。二つ目は、地震発生前の変動が相当大きく十分に検知が可能である。三つ目、過去に前兆現象が報告されていることから予知可能と考えられているということでございまして、ほかに比して今のような理由で予知がしやすいということでございますが、実際に予知をしたという前例は残念ながらまだございません。
  164. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そうしますと、予知が可能といってもこれまでに予知をしたことがないから、どの程度、どこまで具体的な予知を申し上げられるかはまだそれはわからないと、こういう意味ですね。  きのうも木宮議員が、予知は不可能じゃないかと思うという意味のことをたしかおっしゃったと思うんですが、与謝野文部大臣はそれについていろいろお答えをしていらっしゃいましたが、これどうですか、ヨーロッパやアメリカでは、学問的な研究は別として、公的な機関での例えは日本の東海地震のようなネットワークで地震の予知網を張りめぐらすということについては比較的消極的なように聞いているんです。しかも、聞いたところによりますと、ここまで一千億円ぐらいですか、地震予知関連でお金を使っている。それは長官、間違いないですか。使っているわけですね。どうぞ答弁してください。
  165. 沖村憲樹

    政府委員(沖村憲樹君) 先生から今、これまで使いました地震関係の予算のお尋ねでございますが、昭和五十一年から平成七年度の今御審議いただいている予算まで含めまして大体千二百億円程度予算使わせていただいております。  特に平成七年度につきまして若干御説明させていただきますと、科学技術庁におきまして約四十六億円、文部省におきまして二十二億円、それから通産省におきまして七千九百万円、それから運輸省におきまして約二十億円、それから国土地理院におきまして約十七億円等、百七億円が平成七年度御審議いただいている予算でございます。
  166. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 これを、今の東海地震の予知観測体制を、長官、全日本に広げるとすると予算的にはどれぐらいかかるんでしょうか。
  167. 沖村憲樹

    政府委員(沖村憲樹君) 東海地区につきましては、今、大臣から御説明申し上げましたように、地震戸知ができるという体制で気象庁にデータを集中いたしまして、関係省庁あるいは大学のデータを集中いたしまして常時観測できる体制になっております。  ほかの地域につきましてはまだ残念ながらそういう体制になっておりませんで、今、先生のお尋ねの東海地震並みに余国を整備したらどのぐらいかかるかということでございますが、申しわけありませんが、ちょっとそういう数字は今のところ試算しておりません。
  168. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 だから、私は何もそういう観測ネットをめぐらすことがだめだと言っているんじゃありません。それは投下する資本と得られる効果がおおむねバランスを保ては大いにやるべきだ、こう思います。  ただ私、ここで提案をいたしたいんですが、今回の地震で実は随分、生物、広い意味での。魚とか動物とか島とか、こういうものが特別な動きをしているわけですね。ここにありますだけでも、例えば神戸市の須磨の水族館で、平生はよくならしてありますからよく訓練された動きを示すイルカが全く変な動きをして、どうしても調教師の青うことを聞こうとしなかった。それから大阪の門真では、これは武士さんとおっしゃる方がいつもバードウォッチングをしている大阪の新十三大橋へ行ったんですが、いつも橋げたをねぐらにしておりますハクセキレイがざっと三千羽いるそうですが、前日は一羽もいなくなっていたと、このような報告がございます。それからカレイをとりに行った淡路島の沿岸で、カレイがその日は一匹もとれずにタイとシャコエビが大量に水揚げされたとか、そのような報告が千を超えてあるわけですね。  これについて東大名誉教授で前地震予知連絡会副会長の力武さんとおっしゃる方は、こういった前兆と言われているものはもう千を超えて集まっているんだと。その規則性を調べると、地震の百日から十日前にふえ始めて一日前にはピークに達することがわかっている。また、地震のマグニチュードが大きいほど震央から遠いところまで前兆が出るようだ。動物たちのこれらの現象にはある程度真実性があると思われると、このようなことをおっしゃっているわけですね。  人間の知恵というものと動物の霊妙な力は別だと思うんです。サケは最上流で産卵ふ化いたしまして河口へ出まして、三年間七つの海を泳ぎ回って、幅はわずか数メートルの生まれ故郷の川へ三年たったら必ず帰ってくるんですね。こんなことは我々人間の知恵ではわかるものではありません。  ですから、私はどうかこの際、そう大してお金がかかることじゃありませんから、センターをつくりまして、そこへ例えば漁業組合とか釣りクラブとかバードウォッチングの皆さんとか国民一般に、何か変なことがあったらここへ知らせてください、電話番号はこれこれこうこうですという情報収集センターをおつくりになりまして、そこに集まる情報がある一定の地域に集中して、そういった予兆というようなものが例えば五十なら五十の個体を超えればその地方に対して、動物がこういう動きをしておりますから警戒をするようにというアラームを提示されることは、これは別に結構なことだと思います。  最後に、これにつきましてひとつ科技庁長官に私の提案をお聞き願いまして、質問を終わりたいと思います。
  169. 田中眞紀子

    ○国務大臣(田中眞紀子君) 大変御示唆に富むお話をしていただきまして、そういう情報が中村先生のところに集まりましたら、ぜひ先生の持っていらっしゃる番組等で流していただければいいと思いますが、やはり私、先ほど御説明しましたようにコストが大変かかって、各省庁総力を挙げて予知に努めておりますにもかかわらず効果が上げられないということは本当に残念でございますが、これは実態でございます。  ですから、予知について一番大事なことは、正しく情報を世間に還元するということだと思います。それができなければ、いっどこでどの規模かということがわからなければ予知になりませんので、率直なところ、私が現在愚考いたしますところは、やはり防災とか避難訓練とかそういうことのためのシステムづくり、それから冷静な対応ができるようなみんなの心構えといいますか心組みといいますか、そういうものをこれを機会に奇貨として徹底するべきではないかというふうに考えます。
  170. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 終わります。
  171. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で中村鋭一君の質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  172. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 次に、吉村剛太郎君の質疑を行います。吉村剛太郎河。
  173. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 本年は終戦五十年目でございます。この終戦五十年一日が穏やかに明けるかなと、このように思っておりましたが、御存じのように、一月十七日、あの阪神の大震災でございます。五千四百人を超す方々がお亡くなりになった。本当に心からお悔やみを申し上げる次第でございます。  くしくも戦後五十年のこの年にこのような災害を受けた。ある意味では、我が日本国及び日本国民に大変大きないろいろ考えさせる示唆を与えたのではないかな、このように思う次第でございます。  その一つに、何回も言われておりますが、我が国の危機管理体制がどうなっておるかということも今までしばしば言われてきた次第でございます。今まで自衛隊に反対をしてこられた社会党の委員長である、総理が社会党の委員長であるというようなことを云々することも耳にしております。しかし私は、今回このような大震災の中で、だれがどうだ、責任がどこにあるかというようなことよりも、まさに今日まで日本の送ってきた五十年といいますものを謙虚に振り返っていかなければならないんではないかな、このように思う次第でございます。  確かに自衛隊の出動といいますもの、対応といいますものが果たして迅速であったかどうかというのは、私個人も大変疑問にも思うところでございます。  ちょうど一年前に、アメリカのロサンゼルスのあの大震災のときに、もう御存じのように、連邦危機管理庁、FEMAから大統領には震災発生後十五分後には震災の情報が入っておった。そして一時間後には震災地に救援隊が赴いておったというようなことでございます。彼我の対応の差といいますもの、これはそのとおりであろう、このように思いますし、ある意味では究極の危機管理というのは無事を基本にしておるんではないか、このような考え方も私は持っておる次第でございます。  今申し上げましたFEMAといいますものもカーター大統領時代に国防総省から独立した機関、組織でございまして、基本はやはり軍事、それも核攻撃に対応する組織としてスタートした組織だと、このように承っておるわけでございますから、まさに一分一秒を争う対応を常にトレーニングしておるわけでございます。  そういう中で、私は何も日本も軍事をどうしようということではございませんが、やはりこの戦後五十年、我が国はある意味では日米安保のもとに、国防というようなことは考えないわけではなかったが、若干国民全体が意識の中に欠落をさせてきた、そのツケかこうやって今回のあの五千四百人の犠牲を出したところに回ってきておるんではないかなと。あれが一時間、対応、救援が早ければ、いや十分間被災地に行くのが早ければ何百人という方が救われたんではないかな、こんな感じもするわけでございます。そして、このような震災に遭遇いたしまして、ちょうど戦後五十年間、やはり国のあるべき姿といいますものも私は考えさせられもした次第でございます。  すなわち、国土があってそこに人間が住む、国家といいますものを形成する。その国家という有機体といいますのは、やはりなすべき役割、国家というものが本来持つ本能、生理といいますものが私はあるんではないかな、こんな感じもするわけでございます。その本能、生理というのは何かといえば、やはりそこに住む国民のレベルを上げるための教育でもありましょうし、経済を円滑に運営させることでもありましょうし、治山治水でもありましょうし、食糧の自給でもありましょうし、環境の整備でもありましょうし、また自分の国をみずから守るという国防ということでもあるんではないかな、こんな感じがするわけでございまして、ある意味ではこれはナショナルミニマムであろう、こう思うんですね。  そういう中で、そのうちのどれ一つが突出してもまた欠落してもやはり国家としてのバランスを崩すんではないかな、こんな感じが私はする次第でございます。軍事が突出する、例えばイラクとか北朝鮮とか、こういう国の国民はやはり不幸せになる。福祉においてすら、これが突出しますと財政破綻、また国民の勤労意欲をそぐというようなことにもつながってくるときに、やはり国家としてそういうもののバランスをよくしていく、管理していくといいますかそういうことが必要じゃないか。  このように思うときに、この時期、五十年、そして激変のこの時代に総理に座られた総理のいわゆる国家観といいますもの、危機管理も含めまして国家観といいますものをまず冒頭にお聞きしたい、このように思います。
  174. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 今回の阪神・淡路地区の大地震に対して、初動の対応の仕方あるいは突然何か起こった場合の危機管理の体制等々について、いろんな御意見や御批判があることについてはもう十分承知もいたしておりますし、これは率直に現状のあるべき姿を見直して、改めるところはきちっとやっぱり改めておく必要があるということは痛切に感じているところであります。  今、委員からお話がございましたように、ちょうど戦後五十年を経過してきておるわけでありますけれども、この五十年の歩みというものをお互いに振り返りながら、それはこの長い期間の中にはこれだけの日本をつくり上げてきた非常にすばらしいいい面もあると思います。しかし、これだけ国際情勢も変わり、国内の経済社会のすべての状況も変わってきておるわけでありますから、ある意味では制度疲労をもたらしておるというような点もあるんではないかというようなことをやっぱり客観的に率直に点検をして、そして今は新しいこれからの五十年に向けて言うならば二十一世紀に向けて改革をしなきゃならない時期に来ている。  こういう意味で、例えば特殊法人の見直しや、あるいはまた規制緩和やら、あるいはまた地方分権やら情報の公開等々含めて、どう経済や付会の構造を新しい時代に対応できるように改めていくかというところが私は今課せられた大きな課題ではないかというふうに考えておるわけです。  特に今回の大地震を経験してみまして、やっぱり災害に強い町づくり、安心して暮らせるような社会的環境というものをどうつくっていくか。きょうもずっと午前中から議論がありますように、社会の中には力の強い者があれば弱い者もある、健常者もあれば身体障害者もある、そういうハンディを持っている方々も人間として公正に生きられるような社会的条件をどう整備していくか。世の中というのはお互いの支え合いの中で成り立っているわけでありますから、そういう意味でお互いの平等と公正というものを基本に国づくりをする必要がある、こういう視点に立ってこれからも努力をしていきたいというふうに思っております。
  175. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 私、総理の国家観というものをもう少し大きな意味でお聞きしたかったんですが、今お聞きしまして結構でございます。  そして、この時期、まさに村山総理は総理として国のかじをとっておられるわけでございます。今日、方々であるべき総理の姿、宰相論というのがあるわけでございますが、率直に申しまして、総理としてあるべき宰相論というのを私は実はお聞きしたい、このように思うんです。  実は、私は出身が福岡でございまして総理の隣でございますが、福岡の私の高校の大先輩でございます中野正剛という政治家がおりまして、その中野正剛が「戦時宰相論」というのを昭和十八年の元旦の朝日新聞に載せているわけですね。これは時の宰相東条さんの徹底した批判文でございまして、これを契機に中野正剛は口を封じられ、筆を折られ、最後はその年の十月に割腹自殺をするわけでございますが、まさに命がけの宰相論をこの年の元旦に述べておるわけなんです。  そう長いあれじゃございませんが、要約をしますと、「非常時宰相は絶対に強きを要する。されど個人の強さには限りがある。宰相として真に独からんがためには、国民の愛国的情熱と同化し、時にこれを鼓舞し、時にこれに激励さるることが必要である。」、このようなことを述べておるわけですね。そして、「国は経済によって滅びず、敗戦によってすら滅びず、指導者が自信を喪失し、国民が帰趨に迷ふことによって滅びるのである。」、こういうことを述べておるわけでございまして、戦時下の非常に逼迫したときの論文でございますから今日と比較にならないかと思いますが、大変示唆に富んだ宰相論である、私はこのように思う次第でございます。この中に諸葛孔明とかクレマンソーとか、我が国の桂公あたりを引き合いに出して論じているわけでございます。  そういう五十年目の節目の今日、ある意味では転換期、そしてこのような大震災が起きました非常時でもあるのではないかと思いますときに、総理はどういう宰相観を持って臨んでおられるか。これはある意味では国民は聞きたいと思いますよ、本当に言って。たった一人の我が国の指導者ですから、これは国民はみんな聞きたいと思います。お願いいたします。
  176. 村山富市

    ○国務大臣(村山富市君) 私は、こんなことをここで言っていいかどうかわかりませんけれども、本当に国会議員に当選をして、そしてずっと社会労働委員会という委員会におりまして、もうこれから日本の付会は高齢化社会になっていくんだから、年金や医療や福祉や高齢化社会にどう対応して老後は幸せに過ごせるような社会をつくっていくかということに議員として専念をしようと、その仕事を自分の議員としての一生の仕事にしようと、そういうつもりでずっとやってきたものですから、社会党の委員長になろうとか総理になろうなんということは、もう夢にも思ったこともないし考えたこともないんです。  それがたまたまこういうポストに座っだということは、私なりに考えてみますと、やっぱりこの五十年の節目、世の中が国際的にも国内的にもいろいろ変化がもたらされておる激変する時代ですね、その激変する時代に歴史的なある意味では何らかの役割が与えられたんではないかと。だから、私に対してこれはもう天命だからやらにゃいかぬよと、こう言ってくれた方もありますけれども、そういうものがやっぱりあるのかなということを自分で受けとめながらやらせてもらっているわけであります。  そういう意味から申し上げますと、この歴史的な転換期における彼制というのは一体何だろうかということをつくづく思うんです。それは私は、先ほど来申し上げておりますように、改革だと思います。これは国際的にも米ソが対立をする超大国の冷戦構造というものが崩壊して、そして今やもうソ連という国はなくなったんですから、そしであの東欧ブロックも解散をして自由と民主主義を求める歴史的な転換が遂げられつつあると。世の中はまさにもう対立てなくて協調の時代になった、話し合いの時代になったと。軍拡があれだけ進められておったにもかかわらず、もうこれは軍縮の時代に変わってきておる。これは私はやっぱり、歴史的な大きな変化だと思います。  そういう歴史的な転換点に立っておる今の日本の立場、役割というものを考えた場合に、国際的には、平和憲法を持っている日本の国として、今こそ日本の国が世界に向かって大きく平和憲法を掲げて貢献できる、活躍できる時代になってきたんではないかということをしっかり自覚をすることも大小ではないかというふうに思います。  同時に、国内の政治についても、きょう午前中にも議論がありましたけれども、余りにも物や経済や生産というものに重点が置かれ過ぎて、ソフトな面、いわゆる人間の心を大事にするとか人間同士のぬくもり、幸せを大事にするとかそういう部面が変わってきたんじゃないかということを感じます。ですから、これだけ経済成長を遂げて豊かになったと言われておる日本の国の社会の中で本当に姓がになっているという実感がないと、こういう方々が大変多いわけです。それはやっぱりどこかに間違いがあるんだということを考えさせられますね。そういう点も改めていく必要があると思います。  ですから、私は先ほど来申し上げておりますように、国内的には人間として尊重され大事にされる、どういう条件に置かれている方もどういう立場におられる方も、自由で公正でそして人間らしく生きられるような世の中というものをどうつくっていくかということが理念としては大事なことではないかというふうに思いまするし、その理念が国際的に普遍的な理念となって、どこの国に住んでおろうとどういう民族であろうと共生できるような世界というものをどうつくっていくかということにつながっていくんではないか、そういう考え方を持ってやっておるわけです。  私は、それぞれその時代に政権を担ってきた宰相の方々はそれなりに役割を果たしてこられた方々ばかりだと、学ぶ点はたくさんあるというふうに思っておりますから、とりたててどなたがどうだというのではなくて、そういう先人には大いに学んで、そして後世にいいものを残していこう、こういう気持ちで全力を挙げてこれからもやりたいというふうに思っておるところでございます。
  177. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ようございましょう。ただ、総理、遠慮されることはないと思います。たまたまなったんだというようなことではなくて、たまたまなっても過去はどうであっても、それまでどう思っておっても、もう紛れもなく総理は我が日本国の総理大臣でございますから、ぜひ力強いリーダーシップを発揮していただいて我々国民をリードしていただきたい。そして、我々は与党も野党もその総理大臣のもとに結集してこれからの五十年といいますものをまた百年といいますものをつくっていかなければならない、このように思う次第でございますから、頑張ってください。  続きまして、東京の二つの信用組合の件について、(発言する者あり)ちょっと次元が落ちましたか、いえいえ、これはまた大変大切なことですから。  処理方法として、東京共同銀行、それからもちろん債権回収機関というのがございますが、東京共同銀行につきましては一月十三日に法人登記がなされておりますね。それから一月十七日に銀行業の免許が与えられております。普通銀行としての資格を付与されておるわけでございます。そして三月二十日に営業開始だと、このように承っておりますが、そのスケジュールはこのとおりでございますか。
  178. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 東京共同銀行は、去る一月十三日に日本銀行及び民間金融機関の出資により設立をされました。十七日に銀行業の免許が付与されました。そして、二月十六日の株主総会において両組合からの現業の全部譲り受けが決定されたところでございます。当行については現在、三月二十日の営業開始を考えておりますが、両組合の監督官庁でございます東京都のお考えも伺った上、また新銀行の出資者である方々のお考えも伺ったし」対処してまいりたいと考えております。
  179. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 三月二十日営業開始は流動的だということですか。
  180. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) そういう予定で現在のスケジュールが進行しておるわけでございますが、私どももそういう考え方で進んでまいりたいと考えてはおりますけれども、最終的には古い組合の監督者である東京都のお考え、譲り渡す方のお考え、それから譲り受ける側の出資者の方々のお考え、そういうものを総合して検討する必要があろうかと考えております。
  181. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 二月十六日の株主総会で旧二倍組からの譲り受けについての実務的な業務は終わっておる、こう解釈していいんですかね。
  182. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 二月十六日の株主総会において、事業の全部譲り受けが決定されております。
  183. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 それでは、本店所在はどこになりますか、もしスタートすれば本店所在は。それから今まであった支店の統廃合か何かありますかそのままですか。ちょっとお聞きしたいと思います。
  184. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 本店は港区虎ノ門五丁目一の四、古い信用組合の事務所をそのまま使っておりますけれども、支店も今のところそのまま存続をしております。——失礼しました。支店は、今の段階では古い組合の支店として活動しておるわけでございます。
  185. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 支店の数は。
  186. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 十カ店でございます。
  187. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 組織としては全く同じ形で再スタートする、しかし不良債権については不良債権回収機関の方に、譲り渡す、大体私はそういうことを聞いております。そして、すっきりした形でスタートするわけでございますが、これはあくまでも銀行、普通銀行ですね。
  188. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この共同銀行は、両組合の、古い組合の整理、処理を円滑に行うという趣旨で設立されたものではございますが、組織としては、立派な名前でございますが、銀行という名前がついております。  業務の内容としては通常の銀行と同じことができるわけではございますが、その目的といたしましては、両組分の整理、処理を図るということが主たる目的だと考えております。
  189. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 信用組合といいますのは非常に地域性があって会員を募ってできたわけですが、普通銀行、一般銀行となるとまた性格は違いますね。今おっしゃいましたように、その処理を、二信組の後始末をするということではあるが、一方では一般銀行としての資格を十分持っておるわけですね。  それで、これから何年間がどうやっていくのかまたお尋ねいたしますが、三月二十日なら三月二十日にスタートする。そして、一般銀行ですから当然営業活動から健全な運用をしなければ、一般から預金を大いに募るということも当然できるわけだし、健全経営するためにはそういうこともしなければならない、私はこのように思うんですね。  今までの信組と性格は随分違いますね。ある意味じゃぽんと一般普通銀行がそこに発生したようなものですね。今までの金融機関と競合するようなことはないですか。
  190. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) もとの二つの信用組合に預金者及びお金を借りる方、両方の顧客が引き続きおられるわけでございますので、そういう方々の便性のために新しい銀行は従来どおりの業務を引き続き行っていくということでございますが、それでは新しい業務をどんどん手を広げて行っていくかということになりますと、この設立された銀行の性格上そういうことは必ずしも積極的に行っていくということを想定しておるものではございません。したがって、他の金融機関と仕事が競合してというような問題は私どもは起こらないものと考えております。
  191. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ただ、これは日銀出資ですよね、それから各民間金融機関とか。この援助体制というのは大変ないわゆる金融機関総力を挙げて設立した銀行ですね。この信用度というのは大変大きなものがあるんじゃないか。これは立派な銀行だからといって預金者がどんどん来たら断れないんじゃないですか。
  192. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 預金者が来られた場合にお断りするということはしないと思いますが、しかしどんどん新たな預金を勧誘して仕事を手広く行っていく、そういう考え方をとっていくとは考えておりません。
  193. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 ただ、これだけマスコミにも載り、これだけの総力で支援する金融機関ですから、これは株式会社銀行だけれども、公的な金融機関一般国民はとるんではないですかね。その場合に、私だったらここにもしお金があるなら預けますよ、こんなに信用度が高い金融機関というのはないんだから。その辺の兼ね合いはどうなりますか。
  194. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この銀行の目的が両組合の整理、処理を円滑に行うということでございますので、もちろん預金を新たに受け入れるという機能はございますけれども、勧誘を積極的に行うというところまでを考えておるとは思っておりません。
  195. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 郵便貯金も特定郵便局は営業はしますけれども、ここは営業もしない、PRもしないということだけれども、これだけPRされれば僕はかなり預金が集まるのではないかな、こんな感じもするわけでございますが、それ以上は私、申しません。  二億組の後始末をするということを主目的にしておると。では、この二億組の後始末をどれぐらいかけてやろうということですか。
  196. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) この債権債務関係の整理、処理というのはそう簡単なことではないと思いますので、できるだけ早く行われることを期待しておるわけでございますけれども、その目的を達成するのにどれぐらいの期間を要するかということについて今、確たる見通しはございませんが、できるだけ早く迅速に整理をしたいと考えております。
  197. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 当然これで正式にスタートすれば再建計画その他立てるんでしょうが、また背景となります経済情勢との絡みというのもあるんではないかと思いますが、その処理が終わった後、終わったらどうなるんですか、これ。
  198. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) こうした目的を達成いたしましたならば、例えば他の銀行と合併するとかあるいは営業譲渡を行うとか、そういうことによって整理されることになろうかと考えております。
  199. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 その折に、これは仕事が終わったというのは、例えば融資を受けて、その融資の返済も終わったときが終わったなんですか。どうなんですか。
  200. 西村吉正

    政府委員西村吉正君) 今まで主として世の中では預金者の扱いというものが議論の主たる対象になっておりますけれども、私ども、中小企業の方々を中心とする通常の融資を受けておられる方々、こういう方々の経済活動がスムーズに続けられるということもまた十分留意していかなければいけないことかと考えております。  そこで、この二つの信用組合と取引をしてこられた方々がこの新しい銀行が終息を遂げるときにどういうふうな取り扱いを受けるか、どういうふうに私どもも対応していかなければいけないのか、そこはいろいろとお手伝いをしなければいけない面もあろうかと思いますので、関係者と十分協力をしながらその点に遺憾のないように努力をしてまいりたいと考えております。
  201. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 いいでしょう。  いずれにしましても、法人登記もなされ、銀行業の免許も受け、三月二十日をめどに営業を開始しようと、ここまで進んできておりますから、もうこれはある意味では後ずさりはできないですよね。  この二信組の問題につきましては、平成五年の七月ですか八月ですか、都と大蔵省が合同で検査をしておりまして、そこで大きな問題がもうわかっているわけですが、その以前においても数度にわたり東京都もいろいろな指導もしてきたと、このように聞いております。その初期の段階であればまた対応の仕方もいろいろあったんではないかと思いますが、もう事ここに至ってはこのスキームを崩すことはできない。まさに金融秩序といいますのは、これを崩すとまた大変大きな不安に陥ってくるんではないかこのように思っております。  大蔵大臣も、衆議院また参議院のこの予算委員会で、東京都がああいう結論といいますか、先送りになりましたが、あれは否決したわけではないと私も見ておりますし、まだ夢を持っておるわけでございますが、数度にわたり大蔵大臣もこれが否決されるようなことは考えていないということをおっしゃっておりましたが、まさにここまでくれば、もう後に引けない、不退転の決意で進まなければこれは大変なことになるんではないかなと、このように思っております。  ただ、東京都は確かに議会の方で先送りにした。しかし、共同修正案も責任は都にもあるということを十分に明記をしておる。しかし、この三月二十日を迎える今日、なお東京都の結論は出ていないわけなんですね。先送りになっている。しかし、大蔵省大蔵大臣としてはこのスキームを守っていく、こうおっしゃっておりますが、現実はまだ結論が出ていないわけなんですね。だが、恐らく私は、東京都もまた議会の方も十分にこの金融のあり方といいますものを理解していただける、このように思っておりますが、現実に今、時差がある。この時差はやっぱり若干の金融不安といいますものを起こしているんではないかなと、このように思う次第でございまして、ここで大蔵大臣、もう一度今後のこの対応について断固たる決意を披瀝していただきたい、このように思います。
  202. 武村正義

    ○国務大臣(武村正義君) たびたびお答えをしてまいりましたように、今回の東京都の議会の御方針がございますが、三者で合意しましたこのスキームの基本を変えることは考えておりませんし、また先ほど来説明いたしましたような、もう既に進展をしているわけでございまして、当初からのスケジュールに沿ってこの対応、整理、処理の対応をしっかり進めさせていただきたいというふうに思っております。  なお、東京都におかれましても、議会の五会派の声明は御承知のとおりでございますし、また同じ趣旨鈴木都知事も記者会見でおっしゃっているわけでございまして、東京都の理事者、議会のこの問題に対する基本的な認識なり責任も変わりはないと私どもは思っております。  予算案の処理が当初の期待よりはややずれる、先送りをされたという認識を持っております。そのことによって当初からの全体のスキームが、しかも初期の活動において大きな支障を来すものではないと、やや時期がずれることはですね、そういう認識を持っておりますので、繰り返しになりますが、しっかり対応をさせていただきたいと存じます。
  203. 吉村剛太郎

    吉村剛太郎君 終わります。
  204. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 以上で吉村剛太郎君の質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時二十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十三分散会