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横尾和伸君 私は、
平成会を代表して、ただいま
議題となりました
災害対策基本法の一部を改正する
法律案について、
総理並びに
関係大臣に
質問いたします。
あの悪夢のような
阪神・
淡路大震災から約五カ月が経過しました。
震災対策の
推進については、これまで私
たち平成会は、与党の対応のまずさを厳しく叱責しつつも
責任野党を自任し、建設的な姿勢を堅持しながら可能な限り
協力をしてまいりました。
このような
状況の中で、
政府は今回の貴重な経験を踏まえて
災害対策基本法の
抜本的見直しを行っていると聞き、私は一日千秋の思いで
改正案の
国会提出を待っておりました。本日、
国会の
会期ぎりぎりになって
提出された
法案は、迅速に行うべきであった
緊急対策のほんの一部分であり、
抜本的見直しとはほど遠いものになっております。まことに残念でなりません。
村山
総理は、被災直後から、盛んに現行の制度のもとでは最善の策、最善の
体制で対応したと強調されておりましたが、五千五百人もの犠牲者を出しながら最善の策、最善の
体制を強調されるのは、現行制度に問題があると言わんばかりの主張であります。私は、現行制度の根幹である
災害対策基本法がどのように見直されるのか、村山内閣の資質を問うつもりで待っておりましたが、これでは
災害対策についての
政府の
基本姿勢を疑わざるを得ないのであります。
基本姿勢について言えば、
平成七年度本予算には今回の
災害対策は一切盛り込まれず、補正予算における
災害対策も何と経済
対策の一部と位置づけているのであります。このことは、補正予算の
趣旨説明においても、緊急円高・経済
対策の一環として、
阪神・
淡路大震災等に対応する経費を計上すると大蔵大臣は明言しているのであります。
経済
対策の一部分ではなく、人命、財産を守るはずの本来の
災害対策はどこに行ってしまったのでしょうか。被災者の皆さんは怒っています。
国民は怒っております。村山
総理はどこまで本気なのか、
災害対策の
基本姿勢そのものを疑わざるを得ないのですが、この点について
総理及び国土庁長官の明快な答弁を求めます。
今回の
阪神・
淡路大震災について、初動対応が大幅におくれ、被害を大きくした最大の原因は最高
責任者である村山
総理御自身の危機管理
意識とリーダーシップの決定的な欠如にあったことは、多くのマスコミを初め衆目の一致するところとされております。
このことについて、被災から五カ月たった今、冷静な頭で、
総理及び国土庁長官はどのように受けとめているのか、率直な感想を伺います。
また、法制度等の欠陥を強調されるのであれば、その
内容を簡潔かつ具体的に
お答えいただきたい。
次に、
災害対策基本法第十一条第三項に規定されている「防災の
基本方針」について伺います。
消防庁の解説書によれば、「防災の
基本方針」とは防災
基本計画の
基本となるべきもので
我が国防災
行政の最高方針であるとのことであります。しかし、この最高方針は実は影も形もないというのが実態であります。このようなことでよいのでしょうか。私は、ぜひとも早急に
策定すべきものと考えますけれども、
総理のお考えを伺います。
また、本
基本法の骨格とも言うべき防災
基本計画については、昭和三十八年に決定されたもので、毎年見直すべきと規定されているにもかかわらず、ほとんど三十八年版そのままになっております。
またさらに、この
基本計画については、
平成四年に総務庁の
行政監察において、現状を踏まえていない面があると
指摘され、都市化の著しい進展等の変化を踏まえた検討を行うべきであるとの勧告がなされているのであります。本
基本計画の見直しに関し、その進捗
状況及び見通しについて
総理の御
見解を伺います。
今回の大震災では未曾有の被害を生じ、一家の大黒柱を失った家族、住宅ローンを抱えたまま住宅を失った人、工場・店舗などを失い大きな負債を抱えた人など、将来の生活再建の希望を失った
住民を多く出しております。被災
住民の再建は自力救済を
基本とし、
政府、自治体は金融支援や税の一時的軽減などを中心に支援しておりますが、これでは不十分であることは言うまでもありません。
四月から六千億円の
阪神・
淡路大震災復興基金が設立されましたが、このような基金は
災害発生の都度に基金規模や設立自体をめぐって問題になっているのが実情であります。このような心配がないように、
災害対策基本法を改正して大規模
災害や長期
災害に備える恒久的基金を設立し、その活用方法も被災者救済をより濃くするなどして被災者の自立復興を
効果的に支援する必要があると考えるものでありますが、このような国による恒久的基金の設立についての
総理のお考えを伺いたいと思います。
次に、国際的な相互の支援
体制について伺います。
国際的な支援
体制の整備は今後もますます強化することが重要になっていくと考えますが、今回の大震災においては、海外からのレスキュー犬の入国手続に手間取るなど、支援の受け入れについて不適切な対応が目立ちました。その主な要因はどのようなものであったのでしょうか。また、今回の経験を踏まえて、これらに関連する
規制緩和等の制度改正を行う必要があると思いますが、
総理及び総務庁長官のお考えを伺います。
市民の自発的な救援活動、いわゆるボランティアは今回改めて注目されたところであります。しかし、法的にはその位置づけがなく、被災地の各自治体も受け入れ
体制はほとんど整っていないのが実情でありました。今後はこのようなボランティアも救援活動の中でより重要な
役割を果たすことが期待されますので、その位置づけを
明確化すべきと考えます。このことを踏まえて、現在、議員立法として準備が急速に進められているボランティア
基本法の制定に関し、
総理の
基本的
見解を伺います。
今回提案された法改正の主眼は、
災害時における
緊急通行車両の
通行を
確保するため、
警察官や
自衛官等の権限の強化を図ることと
理解しておりますが、強化される権限の悪用や乱用の防止策についても十分なものでなければなりません。この点に関し、
総理及び国家公安委員長のお考えと決意を伺います。
次に、新幹線の安全
対策について伺います。
今回の大震災によって新幹線は百数十本の橋脚が崩壊し、これを含めて合計七百本余の橋脚が損壊しました。列車の
通行がなかったことが幸いして、これによって人命が失われることはたまたまなかったとはいえ、
世界的に見ても史上最大級の大惨事を惹起する可能性を十二分に備えていたと考えるべきであります。一両に百人
程度の乗客を乗せた十六両の
車両が時速二百七十キロメートルのスピードで転覆すれば、近傍の住宅やビルも含めてどのようなことになったでありましょうか。約七百本の橋脚が損壊したこの事実、これを
総理及び所管の運輸大臣はどのように受けとめているのでしょうか。率直なお考えを伺います。
今回の大震災により都市高速
道路の大規模な崩壊がありましたのは周知のとおりであります。都市高速
道路については、今回の被災箇所のみにとどまらず、その教訓を生かして、全国の大都市圏の都市高速
道路の見直しと補強の方針を明確に打ち出し、
平成七年度補正予算においてもそれなりの予算を計上するなど具体的な
措置をとりつつあると
理解しておりますけれども、東海道・山陽新幹線については、被災箇所のみの修復を行っただけで、何もなかったかのごとく今や完全な通常運転に戻っております。約七百本もの橋脚が損壊したという事実は史上最大の大惨事を想起させるに十分なものでありますが、今回のこの教訓を踏まえて、現行の東海道・山陽新幹線の全線にわたる安全性の総点検とそれに伴う
対策を急ぐべきであると強く進言するものであります。
平成七年度の本予算にも補正予算にもその痕跡さえないのはどういうわけでありましょうか。この点に関する
総理及び運輸大臣の
見解を伺います。
次に、
災害対策基本法の柱の一つである激甚
災害について伺います。
災害対策基本法第九十七条を受けて制定されたいわゆる激甚法は、国の特別の財政援助や助成
措置を規定しているものであり、高い率の国庫補助が得られるなど、被災地の復旧・復興にとってかけがえのない
重要性がありますしかるに、この激甚法の
対象事業には甚だ現状に合わないアンバランスや不公平が顕在化してきており、各分野から見直しの声が上がっております。
例えば、公共
事業の分野では、
道路は
対象になっているが信号機や
道路標識は
対象外となっている、下水道
施設は
対象となっているが上水道
施設や
ごみ焼却場などの
廃棄物処理施設は
対象外となっているなど、全く
理解の及ばないものがあります。また、
理解の可否にとどまらず、現場ではこのための不安や心配、無用な手続など大きなロスが生じてしまっております。
今回の大震災に関して、このような矛盾やアンバランスを是正するために今回限りの特別立法を行って何とか対処しているのが実情であります。しかし、この
趣旨は今回限りとすべきではなく、一般化してこそ今回の教訓を全国に生かしたことになるのではないでしょうか。
私は、既にこの件について小里
国務大臣から、十分留意いたしていくべきことであるとの
お答えをいただいております。被災地の生活者にとってこんなに大切な問題はありません。激甚法の
対象事業のアンバランスを見直し、適正化を図るべきであると強く主張するものでありますが、この点に関し、
総理と国土庁長官の
基本的な考えと取り組みについて明快な答弁を求めます。
今回提案された法改正のほかに、以上の
質問を含む多くの問題や課題がありますが、そのほとんどは
総理が
設置された防災問題懇談会で検討中であるとの説明も伺っております。
この懇談会とはどのような位置づけなのでしょうか。懇談のサロンなのでしょうか。法的な位置づけもなく私的諮問機関でもないこの懇談会に、このような重要問題のほとんどを任せきりにして、それを胸を張って御答弁の中心に据える、これは主体性がなく、頼り過ぎていることにならないでしょうか。任せるのなら、問題の大きさに見合ったそれなりの位置づけを与えるべきと思いますが、この点について
総理の明快な答弁を求めます。
最後に、一言申し添えたいと思います。
国民がそれぞれ高い税金を払っているのは、安全と安心が得られるからだと素朴に信じているからではないでしょうか。安全と安心の柱の一つこそ
災害対策であることが今回の大震災によって明確に示されたのではないでしょうか。
国民の生命と財産を守る
災害対策にもっと真剣になっていただきたい。
村山政治の本質は、人にやさしい政治ではなく、自分にやさしく人にはやらしい政治なりとの批判も聞いておりますが、どうか真剣な態度で御答弁くださいますようお願い申し上げて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕