○石井道子君 私は、自由民主党を代表いたしまして、
平成七年度
補正予算案につきまして、
総理並びに
関係閣僚に
質問をいたしたいと存じます。
本
補正予算は、
財政演説にもありますように、喫緊の
課題である
大震災や円の高騰等に
対応したものであり、厳しい
財政事情にもかかわらず
国民の要望にこたえるべく早急に
総額二兆七千三百億円に上る
対応をされましたことについて、まず敬意を表したいと存じます。
本年一月、
阪神・淡路
地域において多くの
犠牲者を出す痛ましい
大震災が起こり、高速道路等の高架橋が倒れ、新幹線などの交通も遮断されました。さらに、東京では
警察庁長官の狙撃
事件が起こり、三月二十日の早朝には地下鉄の満員通勤電車において猛毒神経ガス、
サリンによる殺傷
事件が起こりました。
世界の中で、
日本は治安もよく住みよい安全な国として高く評価をされてまいりましたけれども、今まで信じて疑わなかった
安全神話が崩壊し、多くの
国民の皆様方があすは我が身かと大きな不安におとしめられています。
国民の生命、財産を守ることは国家の最大の使命であります。
村山総理は、安心できる
政治を大きな旗印にされておりますが、
国民生活の安全を守るため、防災、治安等の危機管理及び再発
防止にどのように取り組まれようとしているか、まず伺いたいと存じます。
国際的に見ても
日本は容易ならざる局面に立たされており、
日本経済の体力から大きくかけ離れた円相場の高騰が起こり、先般、
日米包括協議が
決裂し、
経済の視界が不透明になってきております。
アメリカは、先日、
日本の
市場の閉鎖性について
WTOに提訴通告を行い、さらに通商法三〇一条に基づき対日制裁リストを公表する
方針を固めたと聞いております。
日本政府は、それが公表されたら直ちに
WTOに提訴し、
アメリカの
管理貿易につながる
要求や一方的制裁
措置が
WTOの自由貿易のルールに反することを堂々と主張すべきと
考えますが、外務大臣の確固たる
方針を確認いたします。
総理が今月初め中国を訪問され、中国
政府の
首脳等と
世界やアジアの平和、
経済問題等について意見交換されたと存じますが、
総理のアジア
外交の
方針から見てどのような具体的な成果が上がったのか、
総理に伺いたいと存じます。
ことしの秋には北京で第四回
世界女性
会議が開催されますが、特にアジアの近隣諸国に対し、女性の地位
向上、
福祉についてどのような貢献をされようとしているのか、あわせてお聞かせ願いたいと存じます。
次に、
阪神・
淡路大震災及び防災について伺います。
本年一月十七日未明五千人を超える死者を出した未曾有の大
災害から、四カ月が過ぎようとしております。この間、人生最大の試練に遭遇されてもくじけずに苦難を克服され、みずからり再興に立ち向かわれていらっしゃる被災者の皆様に、どうか頑張ってくださいと、この場をおかりして心よりお慰めと励ましの声援を送らせていただきます。
今回の
補正予算では
復旧関係で一兆四千三百億円が計上されておりますが、「人にやさしい
政治」を実行する
村山内閣として、果たしてハード中心の予算をつけただけでよろしいのでしょうか。
応急の仮設
住宅は三万四千戸が建設され、公営
住宅等の空き家への入居あっせんもされたと聞いておりますが、今なお三万七千人の方々が避難所暮らしを余儀なくされていらっしゃるのはどういうことなのでしょうか。中でも、ひとり暮らしや介護が必要なお年寄りは住みなれた地元をなかなか離れられないというお気持ちがあると思うのでございます。
総理、今回のような大
災害で一番被害を受けるのは高齢者や障害者、子供
たち等の弱者なのでございます。この
人たちに目を向けた介護、メンタルケア、遺児の救済等きめ細かい
対策を行うことが真に「人にやさしい
政治」ではないでしょうか。この問題にどのように
対応されますか、
総理及び
大蔵大臣のお
考えをお伺いいたします。
膨大な量に上る瓦れきはまだ数多く残されているようですが、これは恒久
住宅の建設を初め、新しい町づくりや環境面等からも早急に処理を進める必要があります。どのような体制で、いつごろまでに処理する見通しか、厚生大臣に伺います。
また、今回たくさんの医療や
福祉施設、教育機関等の施設が被災をし、その一日も早い
復旧が待たれるところでございます。公的機関には国庫補助のかさ上げ等が
実施されましたけれども、すべての住民にかかわる重大な問題として、公的、
民間、分け隔てなく、その
復旧に国として援助をしなければならないと
考えますが、どのような
措置をされますか、厚生大臣、文部大臣に伺います。
国際観光都市である神戸は、港とともに栄え、繁栄してまいりました。神戸港は
我が国貿易額の一一%を占め、国際海上輸送の拠点
機能を果たしておりましたが、その港も壊滅し、
我が国経済全体に深刻な影響を与えております。耐震性の強い港をつくるのはもぢろん、アジア
地域の拠点港として国際海運から見て魅力ある港づくりが求められますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
神戸市
復興計画検討委員会は六月に基本
計画を策定する予定とのことですが、二度と同じような惨事を繰り返さないように、
政府としても、今後
日本の防災
都市づくりの見本となるように神戸市や淡路島の
復興計画を支援し、この実現に
全力を傾けていくことを被災者並びに
国民に約束していただきたいと思います。
総理、いかがでしょうか。
補正予算には緊急の耐震補強の防災
対策も盛り込まれていますが、備えあれば憂いなしの例えのごとく、全国的な防災に万全を期すために、社会
経済情勢の変化に
対応し、
地域の特性を生かした防災基本
計画の抜本的な
見直しを行うべきと
考えますが、お
考えをお伺いしたいと存じます。
次に、
円高是正及び
景気対策について伺いたいと存じます。
円高は、
我が国の
経済の体力に見合ったものであれば本来国益になり、
円高差益を具体的に還元していけば
国民生活にメリットをもたらすはずのものであります。三月から始まった急激な円相場の上昇は、
我が国の産業界、
経済界に深刻な影響を与えております。このままでは、
景気、雇用面で
国民の暮らしに悪影響をもたらす心配が出ております。
円高の背景には
日本の大幅な貿易
黒字が指摘をされ、その削減方策が先月
政府が公表いたしました
緊急円高・
経済対策に盛り込まれておりますが、
補正予算で
円高是正
対策をしっかり肉づけしていけば円相場がもっと鎮静化する見込みがあるのかどうか、例えば輸入促進税は輸入をどの程度加速する効果が
期待できるのか、
我が国の今後の
対応について具体的に海外にもわかりやすく説明していく必要があります。
規制緩和についても、
政府としては、五カ年
計画を二年前倒ししたようですが、果たして輸入増大や
円高差益還元にどのような効果があるのか示す必要があります。例えば、
内外価格差の大きい
生活物資や公共料金についてどの程度価格の
引き下げ効果が
期待できるのか、
総理に御説明してほしいと存じます。
ゴールデンウイーク中に
与党議員団が訪米し、
アメリカ政府、議会
関係者等と会談をした際、
日本の今回の
対策が余り
理解されていないとの報告がありましたので、特にこの点を強調いたしておきます。
内需拡大を図り、
景気回復を確かなものにするために、
経済フロンティア拡大の
投資を
補正予算に盛り込み、研究開発や
情報通信等の無形の知的資産
形成に対し、赤字国債発行に踏み切って新しい
公共投資の道を開かれたことは画期的であります。
日本経済・産業の新しい
展望を切り開くとともに、医療や
福祉の面において研究や情報の開発が役立つよう十分
配慮すべきでありますが、
大蔵大臣、いかがでしょうか。
円高によって九割の
中小企業が「
円高の影響がある」と回答している
調査があります。今までの血のにじむような
リストラ努力が水泡に帰さないように、
政府は
リストラ支援法の一部改正案提出を初めいろいろ
対策を打ち出していますが、緊急避難的な超低利のつなぎ資金の融資をもう一工夫されるよう要望いたします。
また、雇用情勢は
製造業を中心に依然厳しく、完全失業率は三月には三%となり、一番しわ寄せを受けるのは高齢者や女性、新卒者であります。さらに、多くの企業は来春も採用を手控える動きも出ておりまして、このままでは社会不安を招きかねません。
政府は、「失業なき労働移動」の実現を目指されておりますが、広範な業種を対象としたきめ細かな就業促進
対策等、新しい雇用アクションプログラムを用意されるかどうか、
総理の御
見解をお聞かせください。
次に、
オウム真理教の問題等について
質問いたしたいと存じます。
地下鉄
サリン発散殺傷
事件は、
警察当局も想像さえしなかった無差別テロ
事件であり、完全に治安
対策の盲点を突かれたものと申し上げなければなりません。
事件発生後、
警察関係者の日夜にわたる懸命の
捜査が行われ、ようやく本日、
オウム真理教の
麻原代表が殺人容疑等で逮捕されました。並々ならぬ御労苦に対し感謝を申し上げる次第でございますが、本
事件について一日も早く犯行の全容を解明し、速やかに社会不安を解消していただきたいと存じます。
また、このような大きな反社会的
事件を引き起こした
オウム真理教を生み出した治外法権的な聖域が公益性を持つべき宗教法人
制度にあったことは、大きな驚きであります。信教の自由は保障されなければなりませんが、これを隠れみのに悪用し公共の
福祉を害することは断じて許すことはできません。宗教法人法の第八十一条の解散命令の速やかな請求・審査を望みますとともに、宗教法人のあり方について十分審議を尽くし、二度とこのような反社会的な団体が生まれないように情報公開を初め必要な法改正を検討していただきたいのでありますが、文部大臣、いかがでございましょうか。
それにつけましても、幼げな子供
たちがヘッドギアをつけ、栄養不良になっている痛々しい姿をテレビで見るにっけましても、驚きを通り越して心底怒りが込み上げてまいります。この子供
たちをどのようにして養護し、教育し、心をいやしていくのか、心配でなりません。一連の
事件において、まさに道義地に落ちたという思いで、まことに残念至極でございます。本
事件の反省に立ち、人づくり教育のあり方について御所見をあわせてお聞かせ願いたいと存じます。
終わりに一言申し上げます。
村山
連立政権は、誕生以来やがて一年近くになります。
総理に対する
信頼感を中心として、責任と安定の
政治を目指しつつ、
与党三党の民主的手続を重視した政策協調によって、本年度予算の早期成立を初め、
選挙制度の改正、年金改正、
税制改革、
WTO加入のための国内
対策、
特殊法人の統廃合等、数多くの難しい
重要課題をなし遂げてまいりました。また、長年の
課題でありました
地方分権の
推進につきましては、昨日その法律が成立をしたところであります。
今回の
大震災や
サリン事件等はだれしも予見しがたい不幸な惨事であり、まさに国難とも言うべき状況にありますが、このようなときこそ、
国民の大切な今、暮らしをしっかり守るために
政治が懸命に取り組んでいるかどうかを
国民は真剣に注目しているのであります。
それにこたえるため、本
補正予算を早期成立させなければなりません。私ども
与党はもちろんですが、野党の皆様方も大局的見地に立って一致
協力し、
全力を挙げて国難を乗り切っていかなければならないと存じます。
総理は、強い信念を持って勇猛心を発揮され、この一年間培われた国の最高指導者としての力を存分に発揮していただきますよう切にお願いを申し上げまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕