○長谷川清君 私は、
平成会を代表して、ただいま提案のありました
化学兵器禁止
条約について
質問をいたします。
質問に先立ち、先月の二十日に発生いたしました地下鉄サリン事件により亡くなられた十一名の
方々と御遺族の皆さんに対し、本当に深く哀悼の意を表します。また、五千名を超えます被害に遭われました
方々に対し、心からお見舞いを申し上げます。
地下鉄サリン事件は、あのヒトラーですら使用をしなかった猛毒のサリン、これをこの日本で使用し多くの人々を無差別に殺傷するという、人類史上極めて悪質な犯行であります。民主主義社会に対するこのような卑劣な攻撃は、人道上断じて許すことができません。加えて、警察庁長官狙撃、こういう信じがたい事件が続いたことを
考え合わせますと、これまで世界に誇ってまいりました安全な社会という
我が国への信頼は根底から揺さぷられ、国際的な信用は既に失墜したのでございます。
総理はこのような事態をいかに受けとめておられるか、お伺いをいたします。
思えば、昨年の六月には、長野県松本市においてサリンと見られる物質によって七名の死者が出ております。五百九十三名の人々が被害に遭ったと言われております。その直後の七月には、山梨県上九一色村においてサリンの類似物が
関係したと見られる悪臭騒ぎというものが発生したと承知しております。
しかし、その後の捜査の
進展は、この
状況を見る限り、正直に申し上げて歯がゆいものを感じました。捜査当局は、サリンがわずかな量で何万人もの人を殺傷することができ、もし使用されれば重大な結果をもたらすことを十分に
認識をしていなかったとは申しませんけれども、私は、地下鉄サリン事件の発生をなぜ未然に
防止できなかったか、残念でなりません。
捜査当局はこの事態を重く受けとめ、これまで以上の危機意識を持って強力に捜査を進める必要があると
考えますが、
総理並びに国家公安委員長から捜査の現状と今後の方針についてお聞きをいたします。
私は、このようなテロを未然に
防止するため、国内体制の
整備はもとより、さらに国際的な協力体制を構築すべきであると
考えます。例えば、テロ集団による化学物質等の取得の早期発見、早期取り締まりのための各国の捜査当局による
情報交換、万一に備えての救助・医療体制の
整備等、これらが不可欠であると
考えますが、
総理並びに国家公安委員長の御所見を伺うものであります。
化学兵器は貧者の核兵器とも呼ばれておりますように、原材料が非常に簡単に手に入るということ、
製造も非常に容易であって、しかも残虐な大量の殺りくをもたらすという。その全面禁止は我々人類にとって長年の悲願であったと思います。
既に、毒ガス等の使用禁止
条約、一九二五年のジュネーブ議定書が存在をしておりますけれども、これは戦争における使用を禁止するだけでありました。このため、平時においても
化学兵器を全面的に禁止する取り決めが望まれたのでございます。その交渉は、東西冷戦の影響もあって、
進展ははかばかしくいきませんでしたけれども、ゴルバチョフ大統領による平和攻勢や、湾岸戦争を通じてのイラクによる
化学兵器使用の恐怖がクローズアップをされて、それ以降大きく
進展をしてまいりまして、一九九三年一月、
化学兵器の開発、
生産、使用等の禁止、保有
化学兵器、遺棄されました
化学兵器及び
化学兵器生産施設の廃棄などを
規定するこの
条約が
策定をされたのであります。
我が国がこの
条約を
締結する意義は極めて大きいと
考えますが、まず外務大臣にこの点についてお伺いをいたします。
この
条約は、
化学兵器の全面禁止を確実にするため、軍事面のみならず産業分野をも対象とする検証
措置、並びに、
条約違反の疑いのある場合には締約国の申し立てによりまして査察ができるといういわゆるチャレンジ査察という徹底的な検証
措置を
規定しており、過去に類例を見ないほどの画期的な軍縮
条約であると承知をいたしまして、私は大賛成であります。それだけに、査察といいますと、我々の脳裏にはすぐこの間ありました北朝鮮に対する核査察が思い浮かぶのであります。これに比較をいたしまして、果たしてこの
化学兵器禁止
条約は本当の意味でこの査察について実効性が上がるのでありましょうか。
期待をしたいのでありますが、この点について外務大臣から御説明を賜りたいと思います。
また、
化学兵器を持たない
我が国におきましては、検証ということになりますと産業検証が中心になるというふうに思われます。企業にとりましては、査察を受けたというだけでサリンに
関係しているんじゃないかという風評がそこに生まれ、風評被害というものが発生することになります。
条約の実施に伴う産業の
保護につきましてどう
対処する
おつもりであるか、通産大臣にお伺いをするわけであります。
さらに、産業検証の過程において、国際査察官などの現地立入査察による企業秘密の詐取並びに漏えい等の損害が発生をした場合に、だれがその損害を補償し賠償することとなるのでありましょうか。アメリカにおきましては、
条約の国内実施
法案で、研究データや特許データは
条約の義務に適合する
範囲においては開示をしなくてもよいという
規定をしております。
我が国の場合にはそのような制約は見当たらないわけであります。
我が国の
対応を通産大臣並びに外務大臣に
お尋ねいたします。
次に、遺棄
化学兵器につきましてお伺いをいたします。
この
条約上、他の
締結国の領域内に
化学兵器を遺棄した国は、その遺棄した
化学兵器を廃棄し、そのためのすべての資金や技術的なあらゆる
提供をしなければならないのであります。
先ごろ、
政府は、中国に遺棄されております
化学兵器の一部が旧日本軍のものであるということを確認いたしております。つまり、
我が国は将来、中国に遺棄した
化学兵器の廃棄の義務を負うことになるのであります。これまでの国会論議を通して聞いておりますと、廃棄の計画や
方法についてはいまだ調査
検討中ということであります。
条約上、これらの義務の履行には期限が付されておりますだけに、そのことを
考えますと、少なくとも廃棄計画や廃棄
方法についてある
程度の見通しは立てておかなければならないのではないでしょうか。外務大臣にこの点をお伺いするものであります。
また、廃棄には膨大な資金と技術的なノウハウというものを要すると思われるのであります。どのような方針でこれらについて
考えているのか、あわせて伺うものであります。
今申しましたように、
化学兵器及びその
生産施設の廃棄は非常に大事な点であります。廃棄なくしては
条約の発効が出てまいりません。それはしかし、膨大な費用を要すると言われておるのであります。それだけに、現在、財政に苦しむロシアは、その保有する
化学兵器あるいは
生産設備を廃棄する負担に耐えられるのかどうか、場合によっては費用の負担を
理由にしてこの
条約を
締結しないというおそれはないのかどうか、心配でございます。
その意味においても、九〇年の六月に調印されております米ロ二国間の
化学兵器削減廃棄
協定の早期なる発効というものが望まれておると思いますが、その見通しはいかにという点について外務大臣に
お尋ねをいたします。
さらに、
化学兵器の保有が確実視されておりますリビアや北朝鮮、これらはこの
条約に署名すらしておりません。
条約の実効性をいかにこれらについて
確保するのか、この点について
政府の
対応をあわせてお聞きをいたします。
最後に、生物兵器についてお伺いをいたします。
化学兵器と同様におぞましい大量殺りく兵器でございます生物・毒素兵器につきましては、その開発、
生産、貯蔵等を禁止する
条約は既に一九七五年に発効しておりますけれども、これは検証
措置が存在しないためにその実効性に欠けるものという、そういう批判が起こっております。
そこで現在、生物兵器禁止
条約の強化が図られつつあると承知しておりますが、その
状況についてどうなっているかを外務大臣にお伺いいたします。
また、その
製造が比較的容易である一方、取り締まりが非常に難しいため、今回の地下鉄サリン事件のように生物剤がテロに使用されるのではないかという危惧が広がっております。こうしたテロや犯罪の未然
防止のためにいかなる
措置を講じておられるのか、国家公安委員長にお伺いをいたします。
この
条約が一日も早く効力を発効するように悲願をここに込めまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕