○吉川春子君 私は、
日本共産党を代表して、
政府予算三案に対し
反対の
討論を行います。
本国会における最大の
課題は、言うまでもなく
阪神・
淡路大震災の
救援、
復興です。同時に、
地震国日本で再びこのような痛ましい
被害を出さないため万全の
措置を講ずることであります。
ところが、
大震災前に組まれた本
予算案は、これらの対策に対し全く不十分なもので、消防庁
予算は軍事費のわずか〇・四%にしかすぎません。耐震貯水槽は、今回の
大震災でその不備が重大問題になったのに、一九八一
年度の二百六十四基が半分以下の百十九基に減らされているのです。また、日本に二千程度あると言われている活断層のうち、解明が進んでいるのはわずか数十にすぎないのに、本
予算案で
地震予知
関係予算は百七億円に満たない微々たるものです。さらに、防災機関の最前線である気象庁測候所の定員削減、夜間無人化も進められているのです。
予算は
政治の顔です。
政府が今日明らかになったこれまでの
防災対策の不十分さを真に教訓とするならば、直ちに抜本的に
予算の
組み替えを行うべきなのです。
我が党は、国が
責任を持って
救援、
復興の
財政措置をとること、防災優先の見地から
予算全体を見直すこと、
財源は浪費に徹底的にメスを入れるとの三つの柱から成る
予算の
組み替え案の提案を行いましたが、
政府はそれを拒否し、
地震発生前に組んだ旧来型の
予算に固執したのです。これは、一日も早い
救援と
復興、
震災に強い国づくりを求める
被災者や
国民の願いに対し、余りにも真剣さに欠ける態度と言わねばなりません。
さて、去る十三日、コペンハーゲンの国連世界社会開発サミットで、デンマークのラスムセン首相など主催者から、人間の安全保障というテーマが強調されました。この考えは
政治の根本的あり方を示す考え方として国際的にも確認され、そのための
経費は軍事費を削減して賄うことも共通の認識として宣言に盛り込まれたのです。
ところが、
村山内閣が実際にやっていることは何でしょうか。軍縮の看板を掲げながら、今
年度の
予算案では世界第二位の軍事費をさらにふやして四兆七千億とし、在
日米軍
経費は六千億を超え、そのうち思いやり
予算は前年比八・四%増の二千七百十四億円となっています。その結果、米軍をして本国にいるより日本にいる方が安くつくと言わしめているのです。
他方、年金に対する国庫負担を六千五百二十二億円、国保・老人保健への国庫負担を六百六十億円減らしています。特にお年寄りは、
生活、健康、時には生存まで脅かされようとしています。まさに
総理の言う軍縮や「人にやさしい
政治」とは名ばかりのものでしかないことを示す
予算案です。
ODAについても、日本の援助は貧困者に焦点を当てていないと国連の人間開発
報告書で指摘を受けていますが、初等教育、保健・医療、飲み水など、人間開発の項目はわずか三・四%にしかすぎません。一兆一千六十一億円という膨大なODA
予算のほとんどは、アメリカの世界戦略に呼応するとともに、大企業の海外進出のために使われているのが実情ではありませんか。我が党は、
国民の
期待のみならず、世界諸
国民の
期待に照らしても本
予算案には
賛成できないのです。
不況と急激で異常な
円高と産業空洞化のもと、失業率は二・九%の高率を示し、
国民生活は依然として厳しい
状況にあります。基軸通貨国の上にあぐらをかいてドル垂れ流しを続け、ドルへの信用を低下させてきたアメリカに厳しい
対応を迫らずに追随し、日本の大企業や多国籍企業が異常な競争力のもとで黒字体質を強め、それが
円高を引き起こすと一層の合理化やリストラでさらに黒字を拡大するという悪循環を繰り返してきた
政府の
責任は、重大です。
本
予算案もこうした悪循環を促す大企業へのリストラ支援策と対米追随の
経済政策が
メジロ押しです。今
年度中に決定される
規制緩和策しかり、事業革新
円滑化法に基づく増加試験研究費税額控除制度しかり、
特定不況業種法改正による出向支援策しかりです。しかも、一方で公共料金を軒並み引き上げるという、
消費税率引き上げとともに
国民に一層の犠牲を押しつける
予算と言わざるを得ないのです。
いわゆる
政治改革法が成立し、本
予算案に初めて政党助成金が三百九億円盛り込まれました。
政治をきれいにすると言って小選挙区制を導入し、企業献金をなくすために民主主義のコストとして
国民に負担をしてもらうという名目で導入された政党助成金ですが、企業献金をなくすどころか、自民党はこのたび
国民政治協会を通じて業界団体と企業に百二十億円もの献金を要請しました。割り当て限度いっぱいの助成金を受けるためには一・五倍の実績をつくる必要があると昨年末から財界も企業献金を再開し、
政治家や政党のパーティーも花盛りです。これが偽りの
政治改革の行き着く先です。こんなことが許されてよいはずがありません。
今問題になっている
東京協和、安全信組をめぐる疑惑も、
政治家、官僚との癒着、六千万円のパーティー券に見られる
政治献金、腐敗
政治の根源である企業献金を温存し、さらに助長する政党助成金を計上している本
予算案を認めることは、絶対にできません。
ことしは戦後五十周年の年です。第二次世界大戦で日本軍国主義は他民族への侵略によってアジア諸
国民二千万人以上、国内で三百十万人以上の人々のとうとい命を奪い、史上最大規模の惨禍をアジア・太平洋諸国にもたらしました。
戦後、新しい憲法は、侵略戦争と専制
政治、覇権主義に対する反省を内外に表明し、第二次世界大戦の歴史的教訓に立って、恒久平和、
国民主権、基本的人権、議会制民主主義、
地方自治など、平和と民主主義の諸原則を明記しました。戦後
政治の原点はまさしくここにあります。
ところが、歴代の自民党
政府は一貫して侵略戦争と軍国主義の歴史に無反省の態度をとり続け、村山首相も、我が党の上田議員の質問に対し、一般的に戦争の目的を
特定することは容易でないと述べて、侵略戦争と認めることを拒否しました。我が堂上田議員の発言を
予算委員長職権で一部削除することを我が党は断じて認めることはできません。削除に同意した各党のみならず、国会が国際的に
責任を厳しく問われることになるでしょう。
村山首相は、
予算案で、従軍慰安婦等に対する個人補償を棚上げにした
国民基金構想として盛り込んでいます。しかし、
政府の民間カンパ構想に対し、元従軍慰安婦の
皆さんが、自分たちが欲しいのはお情けではない、日本
政府の侵略戦争に対する反省と謝罪、その上に立った
政府による個人補償ですと、きっぱりと拒否しています。
政治家による侵略戦争を肯定する発言が相次ぎ、また、従軍慰安婦に代表される戦後補償問題にも決着がつけられない日本は、アジアや世界の国々から信頼はから取れないのです。
我が党は、憲法の平和主義、民主主義の原則は二十一世紀に継承されるべき人類にとっての普遍的価値を持つものとしてこれからも守り抜くことを強調し、
反対討論を終わります。(
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