○立木洋君 私は、
日本共産党を代表して、首相の
施政方針並びに
地震災害の
報告に対し質問をいたします。
最初に、
兵庫県
南部地震についてであります。
私は、
兵庫県
南部地震で亡くなられた方に深く哀悼の意をささげ、御遺族の
方々にお悔やみ申し上げるとともに、負傷された方や
被災者の
皆さんに心からお
見舞いを申し上げます。
また、多くの困難を乗り越え奮闘されている
被災者の方とともに、各地で義援募金をなされ、さらに
救援・
救助活動に取り組んでおられる
皆さんに敬意を表し、速やかな
救援・
復旧活動の前進のために
日本共産党もともに
全力を挙げて奮闘するものであります。
今回の
地震は、亡くなられた方は五千名にも上り、二万数千人に上る負傷された方、
被災者百万人にも及ぶという戦後最大の大惨事になりました。何よりも、行方不明の方の捜索と最後の一人まで救出することを初め、人命
救助を最優先にすべきであります。
地震発生以来既に九日目を迎えた今日、多くの
国民の
皆さんの
救援の手が差し伸べられているとはいえ、さらに一層の
救援活動が求められています。倒壊した家屋から脱出され
避難所に入られた方など、さまざまなところに
避難されておられる
被災者の方が必要とされる食料・水・医療品。衣類の提供はもとより、
救援活動について国の
対策本部は人員の動員、交通の整理・案内の徹底、さまざまな物資
輸送力の確保、衛生管理・医療の徹底、とりわけ重傷者、妊産婦、乳幼児、寝たきりのお年寄りや障害者の方への行き届いた
対応などに万全を期すよう改めて強く求めるものであります。
特に緊急に求められている住居について、公共
住宅の活用や仮設
住宅の建設はもちろんですが、現状の三万六百戸の
計画では全く不十分であります。
政府は、それにとどまらず、すべての
被災者を対象に国有地の提供なども含め、
住宅を大量に提供できるよう速やかにあらゆる
手段を講ずべきであることを強く要求します。
さらに、
被災者の多くの方は、
生活の拠点だった
住宅を初めすべての財産を失い、文字どおり途方に暮れています。この際、国の責任で
被害を受けた土地、家屋、家財に対する補償制度の創設を真剣に検討すべきではありませんか。ところが、そうした検討もないまま、厚生省からは当面のいわゆる
生活資金として
被災者に一世帯二十万円を低利で融資する制度をつくると伝えられています。なぜ金利までかけるのでしょうか。
被災者の方への万全の
救援対策というのなら、
生活資金についてこそ真に心のある
対策をとるべきではありませんか。
言うまでもなく
地震は天災であります。しかし、
地震に対する適切な
対応が進められていたならば、人命、財産への甚大な
被害を食いとめ、
被害を最小限に抑えることは不可能ではありません。
現在、我が国はすぐれた
科学技術の水準と経済力を持っています。今回見られたような、壊れた家屋の下敷きになった人に救出の手が届かなかったというような作業のおくれ、火災の広がりに対して効果的な消火活動ができないような事態、さらに
被災者が一日じゅう食事もできず医療品の不足や医療の不行き届きなどの耐えがたい苦痛な事態は、適切な
対応によって避けることができたはずであります。それが
政治の責任です。
政府は初動のおくれを認めましたが、これは人命にかかわる極めて重要なことであり、今後の教訓とするためにも、その
原因をあいまいにせずに明確にすることを求めます。
日本列島は、地球の
地震エネルギーの大半が集中する環
太平洋地帯にあって、
世界でも最も
地震の多く
発生する
地震列島であります。このことは戦後死傷者を出した
マグニチュード六・七以上の大型
地震が十六回にも及んでいることを見ても明白です。この
地震の
発生への
対策は
日本の一部特定
地域にとどまらず、
日本刑鳥全体がその対象とされなければなりません。そのために何よりも
地震に強い国土・
都市づくりの事業を国の事業として明確に位置づけ、
財政措置を含めて
計画的、系統的に
推進すべきです。さらに、
災害の予防事業を柱として
防災対策上の不十分な
体制を速やかに改めるべきです。
例えば
被災地兵庫県では、一九八〇年から十年間に
避難の指定地が千五百三十五カ所から千三百九十六カ所に減っています。また、
東京都ではこれまでの十五年間に一層必要とされる化学消防車は一台もふやされず、ポンプ車は逆に減っているのであります。このような逆行する
状況はあってはならないことではありませんか。あわせて明確な
答弁を求めるものです。
次に、
地震の
予知、予報に関してです。
今、全国で十カ所の観測
地域が指定されており、大阪、
兵庫も含まれていますが、強化
地域は南関東と東海
地方のみであります。首相は
予知・予報能力のための
体制の強化や研究開発の促進について言及されましたが、それは実質が伴わなければなりません。例えば、
地震予知関係の
予算は八省庁合わせてわずか百六億八千九百万円という貧弱な状態ですし、さらに
地震観測の中心である気象肝の
地震対策の
推進費はわずか二億六百万円で、前年比一六・九%の大幅減というありさまであります。これは当然根本的に改めるべきではありませんか。
次に、
高速道路、
鉄道施設の
耐震性の再検討の問題です。
八九年のサンフランシスコ
地震及び昨年のノースリッジ
地震での
高速道路の崩壊について、
日本の
高速道路の
耐震性の
見直しを求める
意見が出されていました。
日本共産党の上田耕一郎参議院議員はこの
見直しを
予算委員会で強く求めたのに対し、
建設省道路局長は、
マグニチュード八クラスの極めてまれな大
地震に対しても橋梁の破壊などの
被害は生じないよう処置していると答え、さらに、昨年二月の訪米
調査後も、当局は、得るべき教訓はなく
日本の構造物は安全と断定したのでした。
しかし、この神話は完全に崩れました。現に、山陽新幹線は九カ所の橋げたの落下を初め少なくない
被害を受け、
高速道路も橋脚は倒壊し橋げたも落下するという無残な状態です。この
輸送施設等の崩壊を見ても設定値の甘さは免れません。通勤時間帯にこの
地震が起こっていたならばと身のものよだつ思いがいたします。
何よりも、これまでの関東大
震災の枠内にとどまった
対策ではなく、今回の
地震によって
輸送施設等の崩壊という事実の率直な反省から出発すべきではありませんか。
耐震性の基準の抜本的な
見直しについて
答弁を求めます。
兵庫県
南部地震で示された事態は、まさしくこれまでの
政治の
あり方が真に
国民の安全と安定を第一義のものとして
国民に責任を負う立場を貫くものであったかを厳しく問うものとなっています。
首相が
復旧復興対策を、資金の面でも遅延させることなく万全の財政金融措置を講じるというの朴真実であるならば、ゼネコンや大企業中心の公共事業ではなく、自主的な立場に立って六百三十兆円の公共投資基本
計画を大幅に
見直し、
国民にとっての不要不急な大規模な公共事業を直ちに延期、中止の措置をとり、
地震に強い国土。
都市づくりの方向に振りかえることにこそ力を入れるべきであります。
私は、この見地に立って、真に
国民の立場に立った
行政改革を進め、浪費とむだに根本的にメスを入れる道こそが大
震災の速やかな
復旧復興の遺につながるものとして、次の
政治姿勢の転換を提起するものであります。
第一に、
国民生活に対する
政治の責任についてであります。
戦後五十年を経た
日本経済は、
世界第二位の経済力を持つに至りました。しかし、
国民の
生活け経済大国にふさわしく豊かになったでしょうか。
例えば、EC主要国の国内総生産に対する
社会保障給付費の割合を見ると、フランスは二八・三%、西ドイツは二八・一%、オランダは三〇・七%であるのに、
日本はその半分にも満たない一一・二%という貧弱さであります。
政府は、
高齢化社会危機論を振りまきながら、
社会保障総費用に占める国庫負担を、一九八〇年二八・一%から一九九一年二〇・一%へと激減させています。「やさしい
政治」というのならば、民生の安定を第一とする方向にこそ施策を根本的に転換すべきであります。
この根本的な施策実現の
課題を税収不足など財源の問題にすりかえることは、決して許されません。
国民本位の立場でむだや浪費にメスを入れるならば、その実現は不可能ではないからであります。
まず第一に、
政府は大企業優遇政策を根本的に改めることです。
政府は、バブルの
時代に大もうけをした大銀行の膨大な不良債権を買い取る機構を設けて、そこに持ち込んだ銀行には事実上減税措置を受けられる仕組みをつくりました。このことによって、九三年三月から九四年十一月までの間に銀行から買い取った不動産担保つき不良債権は六兆七千四百億円余、その実際の買い取り価格は三兆一千六百億円余りで、銀行の減税額は銀行の売却損の三兆五千八百億円の半分、一兆八千億円にも上るのであります。
一兆八千億円といえば、九五年度
予算の
生活保護費の一・七倍、中小企業
対策費の九・七倍にも上る膨大な金額であります。これほど巨額の大銀行の税金をまけてやって、バブル崩壊の後始末を
国民に押しつけることは断じて容認できません。このような大企業優遇措置をとりながら、何が税収不足というのでしょうか。明確に答えていただきたい。
しかも、円高を利用した大企業のリストラ、海外進出や製品の逆輸入の増大で
産業空洞化の進行によって、中小企業や雇用問題はもちろんのこと、
国民生活への重圧は極めて深刻になっています。
首相はこれを抑制するどころか、我が国企業の海外進出はあくまで民間企業の自主的な判断と責任において行われていると弁護し、その上、海外に進出する大企業の
法人税を減免する外国税額控除による不当なみなし控除まで温存しています。さらに、外国に類例を見ない残高二十五兆円にも上る膨大な引当金という税金逃れと事実上の利益隠しを容認していることなど、だれが見ても大企業優遇の最たるものではありませんか。この目に余る大企業優遇についても当然見直すべきであります。
産業空洞化の規制とあわせて
答弁を求めます。
次に、軍事費の大幅
削減を実施することであります。
九五年度の
防衛予算は五兆円に近づく巨額なもので、中曽根軍拡路線と言われた当時の
予算に比較して一・五倍にも上るものになっています。しかも
正面装備では、これまでソ連のバックファイア爆撃機に対抗する洋上防空の口実でアメリカ側から要求されてきたF15戦闘機や最新鋭ミサイル護衛艦の導入なとをあわせて計上しています。ソ連が崩壊した後にも、この対ソ戦略型として
計画してきた新規
正面装備、これに契約額で八千二百億円もかけるというのはだれが見ても膨大なむだ遣いではありませんか。
また、アメリカと共同で開発するミサイル攻撃をミサイルで
防衛するという戦域ミサイル
防衛構想の
調査研究費を計上しましたが、この
計画は関連の経費込みで二兆円にも達すると言われる巨額のものであります。
アメリカの国防
報告によれば、この構想は第一義的にはアメリカ軍隊の前方展開部隊及び同盟国の
防衛にあることが明確にされています。この米軍部隊や同盟国への攻撃に対して
日本が共同対処することは、憲法上許されない集団的自衛権の行使ではありませんか。直ちに中止すべきものであります。
村山内閣は軍事費を抑制したと言いますが、多額の後年度負担で支出する
正面装備にあわせて、アメリカに米国よりも安くつくと喜ばれている六千億円に上る米軍駐留経費の負担や、七千億円を大きく上回る
自衛隊の訓練費を計上して、結局、九五年度
予算は実質的にも四百億円増の軍拡の継続になっているのであります。条約上全く義務のない米軍に対する思いやり
予算は十八年間で二兆円を超え、今年度
予算は二千七百十四億円であります。さきに挙げた
地震予知関係の
予算はこの思いやり
予算のわずか四%にしかすぎません。
行政改革を最
重要課題と言うならば、むだと浪費をなくす真の
行政改革として、大企業優遇施策や軍事費に厳格にメスを入れ、
国民の安全と安定のための
政治こそ真にこれを最優先とし、今日の大
震災に
全力を尽くすべきことを重ねて強く求めるものであります。明確な
答弁を求めます。
第二に、
政治改革の問題についてです。
それは、あの大騒ぎをした
政治改革なかんずく小
選挙区制とは一体何だったのかということであります。ここにも
国民本位とした
政治の根本から逸脱した姿勢を取り上げざるを得ません。
本来、政党は綱領、政策を掲げ、
国民に結びついた
組織を持ち、公約を実現するために活動するものであります。ところが、今多くの政党は
消費税、米輸入自由化などでは公約違反を繰り返し、綱領や政策を示すことさえできず、
組織をみずから崩すような解体現象が起こっています。
その上、財政は党費や
国民からの献金、機関紙収入に基づくのではなく、その大半を企業や団体自由を侵害する政党助成金を少しでも多く受け取ろうとして、さらに企業に献金を依頼しています。しかも、党の離合集散も、助成金を多く受け取ることを基準にして行われているというありさまです。これは、
政治改革どころか、
国民のための
政治とは全く無縁であります。公的助成といううまい汁を吸いながら企業への
政治献金要請とは手前勝手で、
国民を愚弄するものとの厳しい批判が
国民からほうはいと起こってくるのは当然であります。しかも、
被災者の中から、各政党は
国民の税金である助成金を全額
救援金に回せという声が出ているのも当然ではありませんか。
日本共産党は憲法違反の助成金を受け取らないということを改めて表明いたします。首相はこの
政治改悪の助成制度をあくまで続けるつもりですか。明確に答えていただきたい。
今や業界の政党に対する献金が相次いで公然と復活してきています。その上、
企業献金を再開した日経連はことしの春闘に対して賃上げゼロの方針を定め、日経連会長は賃金を大幅に上げたいのなら企業はどんどん海外に出ていくだけだと威圧的な言辞さえ吐いていますが、このような横暴な態度に出られるのも、それを正すべき
政治が
企業献金によってゆがめられているからにほかなりません。
河野外相、企業・団体献金はいかに
政治資金収支
報告書に記載され透明度が強調されても、その献金は、財界の首脳陣が公然と
政治を金の力で動かすためのものと述べているように、合法的に
政治を買収する資金であることは覆い隠すことはできません。このことをどう
考えているのでしょうか。
首相、主権在民の原則をゆがめるこの企業。団体献金を容認して、それでまともな
政治改革と言えるのでしょうか。こうした
政治のゆがみを正してこそ、
政治の基本を、財界の利益優先ではなく、
国民の立場を貫いて大
震災を
復旧復興し、真に
国民の安全のために寄与するものではありませんか。政官業の癒着、腐敗を生み出す根源にメスを入れずに、
国民の安全と安定にこたえ得る
政治となり得ないことは明白であります。明確な
答弁を求めるものです。
最後に、戦後五十年を迎えて、
世界平和に対し我が国の果たすべき役割について質問をいたします。
この半
世紀を特徴づける最も重大な問題の
一つは、核兵器という人類史上未経験の核エネルギー利用の残忍きわまりない大量殺りく兵器の沈めに、
世界平和が脅かされてきたことであります。広島、長崎の被爆を経験した
日本にとって、核兵器廃絶の全人類的
課題のために
政府が先頭に立って
努力することこそ、真の国際貢献の遺にほかなりません。
村山内閣は、さきの国連総会で初めて核兵器の究極的廃絶に向けた核
軍縮に関する決議を提案し採択されたことを自画自賛しています。しかし、今の国際
政治の舞台では、非同盟諸国が核兵器使用の禁止の要求とあわせて、期限を切った核兵器廃絶への誓約と全面廃絶の期日を再確認することを要求しているように、速やかな核兵器の廃絶が提起されているのであります。それをあえて究極のものとすることは、核兵器廃絶の
課題を遠いかなたに先送りし事実上棚上げするものではありませんか。
しかも、
政府は、アメリカなど既存の核保有国の核兵器独占がいつまでも続くことを保障する核拡散防止条約の無期限延長を支持するという核兵器の存続を認める態度に固執することが、どうして核兵器をなくすことになるのでしょうか。こまかしてはありませんか。首相は、期限を切って核兵器廃絶を実現させることを緊急
課題として追求するのか否か、明確に
答弁をしていただきたい。
国連のガリ事務総長は、かつて軍事力の行使を認めた平和執行部隊構想を示しましたが、その構想はソマリアにおいて明確に破綻し、旧ユーゴ紛争においても展望のない泥沼状態に陥ってみずから撤回せざるを得ませんでした。このことは、国際的な紛争は力によるのではなく、国連憲章の原点に立ち返って解決すべきことを示しています。
ましてや、憲法に極めて先進的な平和原則を持つ
日本政府が
自衛隊の海外派遣を行うことは、憲法上の根拠は全くなく、
日本国としてのあるべき国際貢献ではありません。
自衛隊派遣を積み重ね、さらにゴラン高原の
自衛隊派遣の準備
調査やPKF凍結解除を進めようとすることも、
日本政府が憲法の平和原則よりも対米追随による軍事的貢献を優先させるためではありませんか。
自衛隊のルワンダ難民問題への派遣について、AFP通信は、第二次
世界大戦以降初めてみずからの指揮下で海外活動を行う最初の
日本兵が到着、
国際社会で大きな役割を演じ、国連安保理で常任理事国の席を得たい
日本にとって部隊の到着は非常に象徴的なものであると指摘をしています。
自衛隊の海外出動を積み重ね派遣五原則さえ踏みにじってでも軍事的役割を一層強めているのは、
日本が常任理事国入りを果たすためのものであり、そして常任理事国に入ることによってアメリカの
世界戦略を国連の場でも一層補完する役割を担うことを目指しているのではありませんか。あわせて
答弁を求めるものであります。
日本の国連安保理の常任理事国入りは、明白に憲法に反するものであります。国連安保理の常任理事国は、国連憲章によって、国連軍事参謀
委員会に参加し、国連軍の戦略指導を行うことが規定されています。
政府もそのことを認めています。この軍事参謀
委員会で行われる
戦争準備にかかわる軍の配置や移動、使用する武器や作戦
計画、そして
戦争の発動から
終結に至るまですべての重要な軍事的な協議や決定に
自衛隊幹部が参加することが、
戦争そのものへの関与として国の意思の介在すら禁止している
日本国憲法にどうして違反しないというのでしょうか。
首相、憲法九十九条で憲法を尊重し擁護する義務が問われている責任において、明確な
答弁を求めます。
首相は、今回の日米首脳会談で日米安保
体制の堅持を重ねて表明し、それを
アジア・
太平洋地域さらに
世界全体における重要さを強調したことは、アメリカの
世界戦略への一層の危険な道を歩むものとして断じて容認できません。このことを厳しく指摘をして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕