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牛嶋正君 それでは次に、
先ほど問題を残しました資源配分機能にかかわる国と
地方公共団体との
役割分担について少しお尋ねしてまいりたいと思いますが、今度は
総務庁長官にお願いをしたいと思います。
先ほども申しましたように、限られた資源を
活用して
国民福祉の増進を最大限図っていく、これは大変な問題なんですが、結局は個々の財サービスをどれだけ生産するかということでその資源を配分していくわけですけれども、その場合に効率的に資源を配分していくためには二つの条件がある。この場合も満たされなければならないと思っております。
これは国及び
地方公共団体が行政を通じて、
先ほど申しました公共財を供給する場合にも同じでありますが、その
一つの条件は私は需要側の条件と呼んでいるんですけれども、いたずらに物をつくっても売れなければ資源が有効に利用されたとは言えません。ですから、まず財サービスに対する需要者のニーズを正確にとらえなければなりません。そして、それにできるだけ合致するような供給水準を決めていく、あるいは供給量を決めていくということになろうかと思います。これは国及び
地方公共団体の行う行政の場合でも同じでありまして、
国民が
国民生活を続けていく上で行政に対してどういうニーズを持っているのかということを正確に把握しなければ、せっかく行政を行っても住民の方が向こうを向いていれば大変な資源のロスになるわけであります。
これは言うならば、
国民のそういうニーズあるいは
地域住民のニーズを正確に把握して行政サービスの適正な水準を決めるということだと思うんです。私はこの
事務を
計画事務と呼んでいるんです。これは余り皆さんは使っておられませんけれども、私は
計画事務と呼ばせていただいております。ちょっと覚えておいてください。
それからもう
一つは、供給側の条件ですね。それは今我々が利用し得る最高の技術水準を使ってできるだけ低コストで供給するということです。普通、行政の効率化と言われているのはこのことを言われていると思います。これは、まさに需要側の条件で決められたサービス水準に基づいて実際にサービスの供給を行うわけでございますので、これを実施
事務というふうに呼ぶわけです。
そうしますと、普通、行政はある行政サービスを供給する場合は二段階に分かれているわけですね。
計画事務とそれから実施
事務、こういうふうに分かれて供給されていくわけであります。ところが、
先ほど申しました市場メカニズムは、いわば価格がうまく資源配分の調整的
役割を果たして、価格が上がりますとそこには需要が集まっている、だからその生産をふやす、価格が下がる、こういうふうなことで価格がシグナルの
役割を果たしていくわけですけれども、行政の場合は価格がございませんので、結局は予算を編成してサービス水準を決め、そしてまたそのサービス水準のもとでサービスの供給を果たしていかなければならない、こういうふうに思います。
その場合、
計画事務とそれから実施
事務、これをどういうふうに国と
地方公共団体が
役割分担すれば、
先ほどから言っておりますように二つの条件が満たされてそして効率的な資源の利用ということになるのかということ、これは真剣に考えなければならないと思いますね。行政改革なども結局はこの問題に全部帰港するわけでございます。
ところが、今まではどちらかといいますと、供給側の条件だけでどうも決められてきたような気がいたします。例えば、
地方自治法の別表四に挙がっております戸籍に係る
事務、これは機関委任
事務ですけれども、これを考えてみますと、戸籍は言うたら窓口行政ですから、住民の一番身近なところに窓口を置くのが一番便利がいいわけですし、そしてコストも非常に安くつきます。ですから、結局は
市町村の機関委任
事務というふうに決められたんだと思うんですね。しかし、全国統一的に
一つの様式に従って戸籍を記載した方がこれは便利がいいですし、また全国統一にした方がいいと思いますね。ですから、戸籍法というのを設けて
先ほど申しました
計画事務を国が受け持つ、こういう形になっているわけです、ですから、戸籍
事務というのは機関委任
事務のいつも代表の
事務として取り上げられますけれども、
計画事務を国が、そして実施
事務を
市町村がと、こうなっている。これが機関委任
事務であります。
結局、今私が申しましたように、これまでの
事務配分というのは大体供給側の条件で考えられていた。余り需要側の条件が考慮されなかったんですが、それは理由があったわけですね。その
一つは、これまでの行政サービスというのは大体私
たちの生活に密着しているサービスが多かったわけですね。ですから、だれもが日常生活を行っていく場合に必要欠くべからざるサービスであった。それだけにそのサービスに対する人々の、
地域住民の選好というのはそんなにばらつきがなかった、大体同じ。例えば、ごみの場合ですと、一日の日常生活で排出するごみというのは大体九百グラムから一キログラムですね。これを収集し処理してくれればいいわけです。そうしますと、どれだけのごみ行政に対する需要があるかというと、人口掛ける一キロなら、一キロ掛ければその需要が出てくるわけですね。ですから、
地域住民のそういった選好を余り議論しなくてもよかったという点が
一つあると思います。
それからもう
一つは、そういう非常に日常生活にとって重要なサービスではありますけれども、
一定水準のサービスを
確保することが非常に難しい財政力の乏しい団体がかなりあったということですね。
ですから、そういうところに全部任せておりますと
地域住民が不自由をするというふうなことになってしまいますから、国が大体
一定のサービス水準を決めて、そしてそれが実現するように国が財政的にサポートする、こういうことであったと思うんです。ですから、多くの場合、
計画事務に大体国がかかわりを持ってきたわけですね。実施
事務を
市町村が受け持っている行政サービスについて
市町村あるいは
都道府県、
地方公共団体が
計画事務も行っているもの、これはあるわけです、そんなに数は多くありませんけれども。これは固有
事務ですね。
それからもう
一つは、
計画事務を行う場合に国と
地方が同時にそれに参加している、これは私はタイプ二と言っているんですが。タイプ一というのは、
先ほど申しました
計画事務も実施
事務も
地方公共団体が受け持っている場合、それから今申しましたタイプ二というのは、
計画事務は国と
地方がそこに参加する、しかし実施
事務は全部
地方公共団体が受け持つ、それからタイプ三というのは、
計画事務は完全に国が決めてそして実施
事務は全部
地方公共団体に任せる、この三つのタイプに分けることができる、こういうふうに思うわけです。
地方自治法の第二条で、
地方公共団体が行う
事務を四分類しておりますね。固有
事務、それから団体委任
事務、機関委任
事務、そして行政
事務と分けておりますが、今申しましたタイプ一が固有
事務、これはもう問題ないわけです、もう既に
計画事務を
地方公共団体が受け持っているわけですから。だから問題はタイプ二に含まれる団体委任
事務と行政
事務、そしてタイプ三の機関委任
事務ということになろうかと思いますけれども、こういう分類に対しまして
総務庁長官はどういうふうに、これをもとにしてこれからの議論が始まりますので、ちょっとコメントをいただきたいと思います。