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1995-04-13 第132回国会 参議院 外務委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月十三日(木曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         田村 秀昭君     理 事                 大木  浩君                 野間  赳君                 矢田部 理君                 猪木 寛至君     委 員                 笠原 潤一君                 成瀬 守重君                 野沢 太三君                 宮澤  弘君                 矢野 哲朗君                 大渕 絹子君                 大脇 雅子君                 清水 澄子君                 松前 達郎君                 石井 一二君                 黒柳  明君                 武田邦太郎君                 立木  洋君                 椎名 素夫君    国務大臣        外 務 大 臣  河野 洋平君    政府委員        外務大臣官房外        務参事官     谷内正太郎君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  林   暘君        外務省アジア局        長        川島  裕君        外務省北米局長  時野谷 敦君        外務省条約局長  折田 正樹君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課防災環境        対策室長     植木  勉君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課原子力安        全調査室長    片山正一郎君        科学技術庁原子        力安全局原子炉        規制課長     大森 勝良君        国土庁防災局防        災企画課長    平川 勇夫君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全企        画審査課長    藤冨 正晴君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全管        理課長      三代 真彰君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府フランス共和  国政府との間の条約締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○原子力の安全に関する条約締結について承認  を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件、原子力の安全に関する条約締結について承認を求めるの件、以上二件を便宜一括して議題とし、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 清水澄子

    清水澄子君 まず、原子力の安全に関する条約について質問いたします。  日本原子力発電所は、運転中のもの五十一基、総発電容量も四千万キロワット近くになっております。そして、全発電量の三一%を占める水準になっております。その一方において、原子力発電所周辺住民を初め多くの人々は、その安全性に強い危倶を抱いております。一九七九年のアメリカで起きましたスリーマイル島原発事故、また一九八六年四月のチェルノブイリ原発事故を初めとして、多くの原発事故が取り返しのつかない被害を与えておりまして、原子力発電所安全性には大変国際的にも強い関心が持たれております。そういう状況の中で、このたび原子力安全条約が批准されるということは、非常に私はその意味においては適切なものだと考えております。  まず初めに、大臣にこの条約締結の意義についてお聞きしたいと思います。同時に、本条約発効見通しについてお尋ねいたします。
  4. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) この条約は、委員今御指摘になりましたように、原子力の安全ということにかんがみまして原子力の安全に関する初めての国際約束としてつくられたものでございます。原子力の高い水準の安全を世界的に達成し、そしてそれを維持することなどを目的として、原子力施設の安全を規律する法令上の枠組みを定めることを締約国義務づけるということなどについて定めているわけでございます。したがいまして、我が国がこの条約締結することは、原子力の安全な開発及び利用における国際協力強化に積極的に貢献するという見地から、まことに有意義なものであるというふうに考えているわけでございます。  今もう一点お尋ねの本条約の今後の見通し等につきましては、政府委員から答弁申し上げます。
  5. 林暘

    政府委員林暘君) この条約発効見通してございますが、この条約発効につきましては条約の三十一条に効力発生のための規定がございまして、原子力施設を有する十七カ国を含みます二十二カ国の受諾といいますか批准が必要になっております。今までのところ既に条約締結いたしました国は、原子力施設を保有する国が一つ、これはスロバキアでございますが、それと保有をしていない国が二つ、ノルウェーとトルコ、この三カ国に今のところとどまっております。  見通してございますけれども、IAEA事務局その他の関係者は、早ければ明年の初め、遅くとも明年中には発効するのではないかというふうな見通しを示しております。我々としましても、国会の御承認がいただければ早期にこの条約締結し、さらに各国早期締結を慫慂していきたいというふうに考えております。
  6. 清水澄子

    清水澄子君 では、ちょっと各条文ごとお尋ねしたいと思います。  第二条の原子力施設定義ですけれども、これを民生用原子力発電所に限定している理由はなぜなのか。なぜ再処理施設とか原子力廃棄物貯蔵施設とか廃棄物運搬船または陸上輸送体制対象にしなかったのか。そして同時に、原子力潜水艦などの軍事用施設はなぜ含まれないのか。それらについてお尋ねしたいと思います。
  7. 林暘

    政府委員林暘君) 御指摘のとおり、今の条約適用範囲は、ここに書いてございますように、陸上設置された民生用原子力発電所に限られております。条約作成過程におきましては、これ以外の原子力施設についても条約適用範囲に含めるべきであるという議論もなされたことは事実でございます。  ただ、いろいろな議論の末、条約を早く作成することが重要であるという観点から、とりあえず多くの国が合意ができ、かつ世界の原子力活動のうちの主要な部分を占めておりますいわゆる陸上設置された民生用原子力発電所ということに限って本条約適用対象とすることにしたという経緯がございます。  言いかえますと、御案内のとおり、この条約はどちらかというと旧ソ連ないしは中・東欧原子力発電所安全性向上させるということに主眼があったわけでございますので、そういう意味早期にこの条約をつくらなくちゃいけないということからこういうことになったというのが作成過程での経緯でございます。
  8. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、日本政府はやはり民生用のみならずその他にも拡大する必要があるとお考えでしょうか。
  9. 林暘

    政府委員林暘君) 現在も例えば放射性廃棄物管理につきましては国際条約をつくろうという動きがございまして、これは前文の方にもその旨記載をされているわけでございますし、現にことしの二月からIAEAにおいて放射性廃棄物管理の安全に関する条約を作成するための専門家会合が開始されているという状況にございます。  御案内のとおり、原子力を使う施設安全性確保するということは当然非常に重要なことでございますが、他方、条約という形で規制をしていくという限りにおいてはそれぞれの国が入らなくては意味がないわけでございます。そういう意味合意のできるものということで、国際条約という形で規制していく限りにおいては各国合意ができるもの、特に規制対象とするものを有する国が入ってその規制に服することができるような条約でないと意味がないわけでございますので、そういう観点から今後とも努力をしなくちゃいけないというふうには思っております。
  10. 清水澄子

    清水澄子君 では、この条約対象とされる我が国原子力施設は何カ所あるんでしょうか。それから逆に、この条約では対象とならない原子力施設は何と何なんですか。
  11. 林暘

    政府委員林暘君) 私の方からこの条約対象となる原子力施設について御説明させていただきます。  先ほども御説明しましたように、対象となりますのは陸上設置された民生用原子力発電所でございまして、我が国におきましては現在電力会社が保有いたします四十九の原子力発電所、それに加えまして動力炉・核燃料開発事業団が保有いたしております「ふげん」と「もんじゅ」、この二つを加えまして五十一の原子力発電所条約に言います原子力施設に当たっております。
  12. 片山正一郎

    説明員片山正一郎君) 本条約対象以外の原子力施設状況について御説明を申し上げます。  我が国におきまして本条約対象以外の原子力施設といたしましては、研究用原子炉施設成形加工ウラン濃縮などの加工施設、東海村あるいは六ケ所村の再処理施設廃棄物管理施設などがあるところでございます。
  13. 清水澄子

    清水澄子君 ですから、同じ原子力施設でも安全性を強調しながら対象になるものとならないものとがある。これは非常にやはり問題があると思いますが、これらは今、条約上はそういうふうになっておりますけれども、これはいずれ拡大されていくべきものというふうに考えてよろしいでしょうか。
  14. 林暘

    政府委員林暘君) 先ほども御説明申し上げましたように、原子力関連施設安全性向上するということは、我が国のみならず世界的に要請をされていることでございまして、そういう意味からできれば国際的な条約ないしはそういう形で安全性向上確保されることは重要なことだろうと我々も考えております。  ただ、現在できております条約に加えましてどういうものが将来拡大されるかどうかということにつきましては、日本だけの意向では当然のことながら決まらないわけでございますし、各国どういう意見を持つかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、例えば廃棄物管理については国際条約をつくろうという動きが現実に出てきておりますので、そういう動きは今後も拡大するであろうと我々としては考えております。
  15. 清水澄子

    清水澄子君 日本はそれを主張されていく必要があると思いますが、今後そういうことを、やはり日本は非常に原発も多いわけですし、それから核不拡散という関係からももっとそういうことを主張されることを私は要望しておきます。  次に、この条約で言う規制機関です。規制機関というのは我が国ではどのような関係機関となるわけですか。
  16. 林暘

    政府委員林暘君) 規制機関でございますけれども、これは第二条に定義がございまして、「各締約国について、許可を付与し及び原子力施設の立地、設計建設試運転運転又は廃止措置規制する法的権限当該締約国によって与えられた機関をいう。」というふうに定義をされております。  我が国におきましては、規制機関には科学技術庁原子力安全局、それと通商産業省資源エネルギー庁原子力発電安全企画審査課及び原子力発電安全管理課がこれに該当いたします。
  17. 清水澄子

    清水澄子君 結局、規制機関というものも通産省とそれから科学技術庁と両方に分かれているわけですね、規制機関というものは。
  18. 林暘

    政府委員林暘君) さようでございます。
  19. 清水澄子

    清水澄子君 次に六条ですけれども、六条は既存原子力施設の安全について触れているわけですが、それによりますと可能な限り速やかに検討し適当な措置をとるとしているわけですけれども、この規定に従って我が国がとるべき適当な措置というのは特段にあるのでしょうか。
  20. 林暘

    政府委員林暘君) この条約の第六条の規定はいわゆる経過規定として設けられたものでございまして、先ほどもちょっと申し上げましたように、安全性に関して懸念がされております原子力施設を有する国、具体的に申し上げますと旧ソ連国々ないしは中・東欧諸国を念頭に置いて、こういう国々がこの条約早期に加盟できるようにということで六条の規定が置かれたわけでございます。  言いかえますと、この条約に定める要件に合致しないような原子力施設が存在する場合に、これらの施設の安全について可能な限り速やかに検討が行われて、必要な場合には改善のための措置緊急にとられること、これを確保すればこの条約上の義務を履行したことにするという規定が六条の規定でございまして、お尋ね日本の場合ということであれば、日本については安全についての措置はきちんととられておりますのでこれに該当するようなものはないというふうに我々としては考えております。
  21. 清水澄子

    清水澄子君 同じく六条の規定で、既存施設安全性向上できない場合は、使用停止計画を立て、実行されるべきとしておりますね。この趣旨説明してください。
  22. 林暘

    政府委員林暘君) これも今御説明申し上げましたような考え方のもとに置かれている規定でございまして、安全性向上させる措置がどうしても無理だというような施設がございます場合には停止をせざるを得ないわけでございまして、そのための計画が実行可能な限り速やかに実施されるべきであるということで規定されているわけでございます。  すなわち、国によりますけれども、直ちに閉めろ、使用停止しろと言われても、電力事情その他の関係でなかなかできないという国もあるわけでございますし、そういう意味でできる限り速やかにそういう措置をとるようにという形で、ある種、先ほど申し上げましたような国々が入りやすくするためにこういう規定を置いているということと理解をいたしております。
  23. 清水澄子

    清水澄子君 そうしますと、この六条というのは旧ソ連とか東欧原子力施設を指しているのであって、我が国は一切これらについて該当するものはないという認識ですか。
  24. 林暘

    政府委員林暘君) 我が国にこれに該当するような施設があるというふうには我々は考えておりません。
  25. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、この条約を踏まえて、我が国原子力発電安全性をさらに確保するためにもっとそういう安全性に向けての点検をやりたいという意思もありませんか。
  26. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) お答え申し上げます。  我が国においては、既存法令によりまして本条約に基づきます義務を担保することが可能でありますので、本条約締結に伴いまして新たな立法措置は必要ないと考えておりますが、本条約原子力の安全の確保に関する初めての国際約束であり、本条約上の義務履行状況を各締約国が報告し、その報告を定期的に開催される締約国会合において検討することにより世界的な原子力の安全の向上に資するものと考えております。  したがいまして、通産省としましては、締約国会合に積極的に参加し、原子力安全水準を世界的に高めるために協力をしていく所存でございます。
  27. 清水澄子

    清水澄子君 この条約の十条ですけれども、「安全の優先」となっているわけです。  原子力施設に関する組織が「原子力の安全に妥当な優先順位を与える方針を確立することを確保するため、適当な措置をとる。」とあるわけですけれども、ここで言う「原子力の安全に妥当な優先順位」の「妥当」というのは、一体具体的にはどのようなことを意味しているのでしょうか。
  28. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) お答えします。  我が国において、原子力研究開発及び利用につきましては、原子力基本法の第二条の「基本方針」で安全の確保を旨として行うこととされております。また、原子炉利用につきましては、核原料物質核燃料物質及び原子炉規制に関する法律、いわゆる原子炉等規制法第一条の「目的」に「災害防止し、及び核燃料物質を防護して、公共の安全を図る」こととなっております。原子力の安全に妥当な優先順位がこのことで与えられると思っております。  具体的には、原子炉等規制法及び電気事業法に基づきまして、設計建設運転の各段階においてこのような趣旨が生かされるように厳重な安全規制実施してまいる所存でございます。
  29. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、我が国の場合はこの規定については万全の方法がとられていると。具体的には何が一番万全になりますか。
  30. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) 具体的には原子炉等規制法に基づきまして原子力基本設計安全審査を厳重に行っております。その過程で、一次審査通産省実施しました後に原子力安全委員会の二次審査ダブルチェックを受けております。その後、電気事業法に基づきまして、詳細設計認可、それから建設中の使用検査運転開始後の約一年に一度の定期検査、こういうものを通じて安全性確保しております。さらに、通産省職員を全国の原子力発電所サイト四十九基に置いておりまして、三十九名の運転管理専門官を派遣しておりまして、電気事業者に対する日々の厳しい指導監督を行っております。
  31. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、条約の第十二条は「人的な要因」ですね。人間行動に係る能力及び限界考慮することを求めておりますが、この「人間行動に係る能力及び限界」とは具体的にどのような人間行動を指しているのでしょうか。そして我が国の場合には、原子力施設でこの1人間行動」というところはどのような措置が具体的になされているんですか。
  32. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) 本条約の第十二条におきまして「人間行動に係る能力及び限界原子力施設供用期間考慮されることを確保するため、適当な措置をとる。」というふうに求められております。  これは私どもでは、具体的には原子力発電所設置基準として「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」、細かくなりますが、そこに運転員、操作に関する設計上の考慮であるとか制御室設計についてとか制御室居住性に関する設計上の考慮などが配慮を求めることとなっておりますし、供用期間中、つまり運転中におきましては人的要因への十分な安全を確保するために原子炉等規制法第三十七条の「保安規定」というものがございまして、この中で運転及び管理を行う者に対する保安教育をしっかり行うことが取り決められております。  具体的には、実用発電用原子炉運転を行います場合に、それぞれの直の運転責任者は所要の資格認定を受けた者が行うことになっておりまして、そういうことから安全運転確保しているわけでございます。
  33. 清水澄子

    清水澄子君 では、十三条です。十三条は原子力施設品質保証について触れておるわけですが、ここで言う品質保証とはどのような趣旨によるものなんでしょうか。そして同時に、我が国原発品質保証というのは具体的にはどのようなことがなされておりますか。
  34. 三代真彰

    説明員(三代真彰君) 原子力発電開発利用を推進するためには徹底した安全性確保大前提でございます。このため、従来から原子炉等規制法及び電気事業法に基づきまして原子力発電所設計建設運転、各段階において厳重な安全規制実施しているところでございます。これらの各段階におきまして、要求される仕様にちゃんと合っているかどうかという原子力発電所品質保証につきましては、その重要性にかんがみ、従来から電気事業者が行う品質保証活動強化について厳重な指導を行ってきているところでございます。特に、平成三年の二月に起きました関西電力の美浜発電所二号機の蒸気発生器伝熱管損傷事象再発防止対策、これの一環といたしまして、電気事業者に対して品質保証体制強化のため原子力担当とは独立した社長直属組織である原子力監査プロジェクトチーム設置について指導をしております。このように原子力発電所品質保証について指導監督強化しているところでございます。  今後とも原子力発電安全確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  35. 清水澄子

    清水澄子君 次に、第十四条は安全評価にかかわる問題です。  原子力施設建設前それから試運転期間供用期間を通して包括的に体系的な安全評価をするための我が国機関というのはどこが当たるのでしょうか。これは通産省、これは科学技術庁というのじゃなくて、包括的に安全評価をするために体系的な安全性評価基準というものは設けられているんでしょうか。
  36. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) お答え申し上げます。  包括的な我が国実用炉につきます機関としましては、通産省が一元的に行っております。具体的には、原子力発電所設計建設運転に当たりましては、安全性確保大前提という認識のもとに、原子炉等規制法に基づく基本設計安全審査電気事業法に基づく詳細設計認可使用検査実施運転開始後の定期検査実施などの厳密で体系的な安全規制実施されております。このような安全規制に加えて、先ほど申し上げました各サイトに国の職員運転管理専門官として三十九名派遣しております。保安規定遵守状況の確認や施設巡視点検など、電気事業者を厳しく指導監督しているところでございます。  さらに、原子力発電所安全性を高めるため、最新の技術的知見及び運転経験既設プラントへの反映状況を評価するための定期安全レビュー、また安全裕度の向上のためのアクシデントマネジメントなどの総合予防保全対策にも取り組んでいるところでございます。  今後とも、安全対策の一層の充実を図るとともに、電気事業者に対して安全管理の一層の徹底を指導するなど、原子力発電所安全確保に万全を期してまいりたいと思っております。
  37. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、この条約の第十六条は「緊急事態のための準備」というふうに規定されています。ここで言う原子力施設緊急事態とはどの程度原子力事故を想定しておるのでしょうか。
  38. 平川勇夫

    説明員平川勇夫君) 国土庁におきましては、災害対策基本法を所管しております関係で、原子力災害におきます災害対策基本法上の災害緊急事態、これにつきましては、災害対策基本法上この災害緊急事態の布告を行いますのは「災害が国の経済及び公共の福祉に重大な影響を及ぼすべき異常かつ激甚なものである場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるとき」ということで定められております。したがいまして、原子力災害の場合も災害対策基本法上の災害緊急事態につきましてはこの規定に基づいて判断することとなります。
  39. 清水澄子

    清水澄子君 今私がお尋ねしたのは、どの程度原子力事故緊急事態となるのかということをお伺いしました。例えばチェルノブイリ原発事故程度のものまでを対象としているのか、どういうことがここでは想定されますかということをお伺いしております。
  40. 林暘

    政府委員林暘君) この十六条に書かれております「放射線緊急事態」ということについての具体的な定義というのは、この条約に置かれておりません。  一般的に解釈をいたしますと、原因のいかんを問わず、人体、環境等に対する放射線影響広域に及んでおり、または及ぶようなおそれがある、そういう状態というものを一般的にここでは指しているというふうに我々は解しております。
  41. 清水澄子

    清水澄子君 そういうことで緊急事態計画というのが立つんでしょうか。どういう事態が起きたときという、いろいろ段階的に想定されているのじゃないのかなと思ったんですが、広域というだけではちょっと、そういうことで本当に具体的なプランニングは立たないんじゃないかと私は思いますね。  第十六条で言う緊急事態計画の準備について、我が国原発についての緊急事態計画の作成状況を具体的に説明してください。そしてその場合に、どういう緊急事態というのが想定されて、それに基づいて原子力施設周辺住民の避難計画とか緊急医療計画とか住民への訓練とか、そういう実施状況というのはどうなっているのかということを御説明ください。
  42. 植木勉

    説明員(植木勉君) まず、防災ということにつきまして、基本的には事業所の敷地の外で一般の住民が避難とか退避とかそういう行動が必要になるような状態というふうに考えております。原子力安全委員会で定めておりますいわゆる防災指針といいますもの、「原子力発電所等周辺の防災対策について」におきましては、周辺のモニタリングポストと申しまして放射線を計測しておる装置がございますが、などで実測されました空間の放射線量率で一時間当たり十マイクログレイ以上、あるいは予測いたします被曝の線量当量で五ミリシーベルト以上の値で各県などにおきまして災害対策本部を設置するというふうなことになっております。ちょっと技術的な説明でわかりにくかったと思いますが、そういうふうなものが目安でございます。  条約の第十六条に申します緊急事態計画でございますが、これは災害対策基本法に基づきまして国において防災業務計画をつくっております。また、各地方公共団体におきまして地域防災計画を策定いたしております。このようなものがこの条約に申します緊急事態計画に当たるものと考えております。その中で、実際原子力災害に当たる事象が起こった場合、緊急時の連絡とか避難誘導、それから場合によっては医療体制、そういうものを含めまして、すべてこういう地域の防災計画の中で定めておるところでございます。  また、防災訓練でございますが、これは各地域の防災計画に基づきまして、先ほど申しました原子力安全委員会が定めましたいわゆる防災指針を踏まえまして、地域の実情に応じまして毎年あるいは二年置きに各地で防災訓練を実施しているところでございます。  以上でございます。
  43. 清水澄子

    清水澄子君 では、今、国土庁の方が先に答えられたんですけれども、この十六条の今言われたいわゆる原子力防災については、災害対策基本法の主務官庁として国土庁原子力防災に当たられるわけですね。これは大丈夫ですか。総理府はこの間の阪神大震災でもほとんど機能しなかったんですが、原子力防災ては直ちに機能できる体制はできているんでしょうか。
  44. 平川勇夫

    説明員平川勇夫君) 国土庁としましては、各省庁の行政を防災関係で調整する立場にございます。一たん発災の場合には、各省庁の防災業務計画あるいは指定公共機関の防災業務計画、さらに各地方公共団体の地域防災計画に基づきまして対処を行っていくということになりますが、特に申し上げますと、中央防災会議で昭和五十四年に決定いたしました「原子力発電所等に係る防災対策上当面とるべき措置について」という決定がございます。これによりまして原子力発電所等と国の機関及び地方公共団体とを結ぶ緊急連絡体制の整備、あるいは事故影響が周辺地域に及ぶおそれがある場合には国務大臣を本部長とします事故対策本部の設置、こういったことを定めておりますので、これらに従いまして適切に対処してまいりたいと考えております。    〔委員長退席、理事猪木寛至君着席〕
  45. 清水澄子

    清水澄子君 周辺地域というのは、何キロぐらいのことが想定されていますか。そして、今いろいろ御説明されているのを聞いていても、そういう計画はあってもどれだけ実効性があるという確信は持てるんでしょうか。  私がなぜこれを聞いているかというのは、例えばさっきから包括的にと言うのは、これはみんな縦割りの行政になっていますから本当にそれがうまく機能するかなというおそれを感じます。  アメリカでは連邦緊急事態管理庁という全体を包括的に管理しているところがありますけれども、日本の場合は、これは科学技術庁、これは通産省、これは関係省庁、これは国土庁、こういう形の中でばらばらの体制で本当にこの緊急事態計画というものに対処できるのだろうかという疑問があって私はお尋ねをしているわけですが、どの辺までの周辺の災害を指すのかということとあわせて、本当に確信があるならば絶対それは確信が持てるという点でお答えください。
  46. 植木勉

    説明員(植木勉君) まず範囲の点でございますけれども、先ほどから申しております原子力安全委員会が定めましたいわゆる防災指針でございますが、その中で範囲の点についても検討いたしております。技術的見地を中心に検討いたしたわけでございますが、発電所から八キロないし十キロの範囲、この範囲を特に防災を重点的に充実すべき範囲といたしております。その範囲を充実しておけば技術的観点からは十分だと考えております。  また、実際に事故が起こった場合ちゃんと対応できるかということでございますが、先ほど国土庁の方からもお答えございましたように、昭和五十四年につくりました中央防災会議の決定でありますとか、その後、原子力安全委員会先ほどから申しております防災指針、いろんなものをつくってまいりました。それで、国土庁通産省科学技術庁、さらには地元の県、市町村、これが一体になって対応できる体制をつくっております。  また、原子力の特殊性ということもございますから、原子力安全委員会緊急技術助言組織という専門家のすぐに集められる集団を組織しておりまして、このような専門家のアドバイスも得つつ、的確に対応していきたいと思っております。  以上でございます。
  47. 清水澄子

    清水澄子君 八キロとか十キロで安全を確保できますかね。非常にまだ原子力開発の初期の段階でも、イギリスなどでも大体五百キロにわたって放射性沃素による牛乳の汚染が起きたわけですし、それからアメリカでも二十六キロと言っていますよね。では、そういう中で日本は八キロで安全はすべて確保できますか。
  48. 植木勉

    説明員(植木勉君) 八キロないし十キロという範囲は、技術的な観点から主として決めたものでございます。  先生おっしゃいますように、アメリカでは十マイルでございますから十六キロでございます。ヨーロッパでは、国によって違いますが、五キロのところもあれば十キロぐらいのところもあります。大体日本と同じぐらいのところでございます。そういう原子力災害が起こったときにどれだけ放射線を浴びるかということを想定するわけでございますが、いろいろな状況を想定してもまず八キロ、十キロの範囲で十分であると。ただし、もちろん何が起こるかわからないといいますか想定を超えることもあり得ましょうけれども、それでも八キロ、十キロの範囲を充実しておけば、その運用で十分対処できるという判断でございます。
  49. 清水澄子

    清水澄子君 そして、十六条の二項で「自国の住民及び原子力施設の近隣にある国の権限」、こうなっているんですけれども、この場合、日本は国境を接したものがないから近隣はないという判断に立っておられるようですけれども、これから韓国や北朝鮮やアジア各国原子力開発に大変な意欲を見せていますし、二〇〇〇年の初頭には日本を含めてアジアの原発は百二十基に至る、そういう想定さえされているときに、国境を接していないのは近隣国ではないという認識で今後通用するでしょうか。
  50. 林暘

    政府委員林暘君) この条約、今御指摘の十六条の二項で「原子力施設の近隣にある国」というふうに書かれておりますのは、まさに御指摘のとおり国境を地続きで接している欧州のような状況、すなわち非常に国境近くに原子力施設があってそれが直ちにすぐ隣接しておる国に影響が及ぶということを想定して書かれた規定でございまして、そういう意味で御指摘のとおり我が国の場合には「近隣にある国しというここに書かれているような状況のものはないであろうというふうに解しております。  ただ、御指摘のようにアジアで原子力開発が今後進むであろうということは事実でございますし、それの安全性をどうするかという問題は、条約のこの部分でどうこうという話ではなくて、むしろアジアにおける各国が今後開発いたします原子力発電所その他についての安全性をいかに高めていくかという努力は日本としてもそれなりにしていかなくちゃいけないというふうに思っておりますけれども、ここに書かれておりますのは今御説明しましたようなことで書かれているということでございます。
  51. 清水澄子

    清水澄子君 第十七条は原発の立地について規定をしておりますけれども、第一項に原発の安全に影響を及ぼすおそれのある立地に関するすべての関連要因が評価されることとあります。御承知のように日本は地震国でありまして、地震を引き起こす活断層の上に原発が立地されていると言っても過言ではないと思うわけです。  そこで、日本原発の立地条件についての全般的な安全性評価はどういうことなのでしょうか。    〔理事猪木寛至君退席、委員長着席〕
  52. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) お答えします。  原子力発電の立地に当たりましては、徹底した安全の確保大前提という認識のもとに、原子炉等規制法に基づきます基本設計安全審査の際に、原子力安全委員会の定めます原子炉立地審査指針などにより、その立地の適否を審査しております。  具体的には、原子炉の立地条件として、大きな事故の誘因となるような事象が過去においてなかったことはもちろんであるが将来においてもあるとは考えられないこと、また災害を拡大するような事象が少ないこと、また原子炉はその安全防護施設等の関連において十分に公衆から離れていることなどが必要であると、このような原子炉の立地審査指針に基づいて厳正な審査をしております。
  53. 清水澄子

    清水澄子君 皆さんのお答えを聞いていると、何にも心配しなくていい、これからも何の点検もする必要がないような御意見ばかりで非常に心配なんですけれども、福井県の敦賀地方は世界最大の原発集中地域ですね。中でも敦賀半島には敦賀原発、「もんじゅ」、美浜原発があります。敦賀原発は浦底断層のほぼ上にありますし、「もんじゅ」、美浜原発には白木-丹生断層があります。これらの活断層がそれぞれの原発の立地の上から見てとの程度の安全上の影響があるものとして評価していらっしゃるでしょうか。
  54. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) 敦賀、美浜原子力発電所についてでございますが、その前に原子力発電所の立地設計におきましては、地点選定に当たって活動可能性のある活断層を避けるとともに、すべての重要な建物、構築物を岩盤に直接固定して、加えて敷地周辺の活断層や過去の地震などの詳細な調査に基づき、想定される最大の地震動にも耐えられるように設計されております。また、基準地震動の建築基準法の三倍の地震力にも耐えられるようにするなど、十分な安全裕度を持った耐震設計を行っております。  御質問の敦賀発電所、美浜発電所におきましても、一九四八年の福井地震であるとか一八九一年の濃尾地震などの過去の地震や周辺の活動可能性のある活断層を考慮して耐震設計がされております。具体的には敦賀一号、美浜一号、二号、三号につきましては、敷地周辺に影響を与えた先ほどの地震などを考慮した設計地震動に対してさらに活断層などを考慮し、それの一カ三分の一倍から一・五倍の安全余裕検討地震動を設定して耐震設計がなされております。
  55. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) ただいま先生から敦賀半島におきます具体的な断層名を挙げられて御質問いただきましたので、それに関しまして御説明したいと思います。  まず、「もんじゅ」及び美浜発電所の間にあるというふうに言われました白木-丹生断層というものでございますが、これにつきましては白木-丹生リニアメントという名前でこういう活断層等についてまとめました文献であります「新編日本の活断層」に書かれておるものでございます。これにつきましては、その文献では白木-丹生リニアメントは活断層の疑いのあるリニアメント、かつ確実度Ⅲとされているものでございます。これにつきまして、「もんじゅ」の設置許可に伴います安全審査におきまして検討がなされております。  この設置許可でございますが、昭和五十五年に申請がなされ、許可は五十八年に下されたわけでございます。動燃事業団は、敷地周辺の文献調査、それから空中写真判読、地表調査等を実施いたしまして、同地には小規模な粘土化帯は認められるものの、断層はなく、第四紀層にも変位は認められないとして、このリニアメントにつきましては活断層ではないというふうに評価してございます。これにつきまして審査したわけでございますが、科学技術庁及び原子力安全委員会ダブルチェック安全審査におきましても、それぞれこのリニアメントの現地調査を行っております。そうした慎重な検討を行った結果、動燃事業団の評価は妥当なものというふうに判断しております。  結局、白木-丹生リニアメント、断層と一部言われている方もおりますが、この白木-丹生リニアメントにつきましては、こうした調査によりまして活断層ではないことが明らかになっておりまして、活断層として評価する必要がないものというふうに考えております。  それから、浦底断層というものについて御指摘があったわけでございますが、この滴底断層についてでございますけれども、昭和五十七年に日本原電敦賀二号炉が増設される際の安全審査におきまして審査、評価されておるものでございます。これにつきましては、試掘坑の調査、トレンチ調査等の結果から、この断層の活動した年代は六万年か八万年より前までであるということで、最近の活動性はないとする日本原電の評価は妥当であるという判断が安全審査でなされておりまして、審査の指針であります耐震設計審査指針に基づく考慮すべき活断層ではないということが明らかになっております。  その際、念のため当該断層並びにその東南の方にあります海底に伏在するかもしれない推定断層、これを連続したものとしてあわせ想定する地震動の影響を評価しておりますが、安全上支障がないということの確認を行っております。  「ふげん」につきましても、その点についての検討を行い、安全上支障がないことの確認が動燃事業団によってなされております。
  56. 清水澄子

    清水澄子君 福井県の人はほとんど信用しておりません。皆さんだけがそういう説明をされているんですけれども、本当に安全ならば、県民があんなに不安を感ずるという今の状況ですね、やはりそこでもっと対話なり何かなさる必要があるんじゃないかと思うほど福井県民はもうほとんど信用していない状況があります。  次に、日本原電の推定によれば、阪神大震災級の地震では運転中の原発五十一基中四十八基が設計値を超すとされております。つまり、日本の九四%の原発が阪神大震災級に耐えられず危険だということになると思います。  そこで、政府は阪神大震災級の地震に対して既存原発の安全の確認を行っているのかどうか。そしてまた、原発の地震対策の見直しを今後、さっき念のためにと言われましたけれども、もう一度やはり検討する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  57. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) まず、先生御指摘されましたのは三月十五日の毎日新聞の記事だと思いますが、毎日新聞の記事の中で、今、先生も御指摘になりましたように、日本原子力発電が今回の阪神大震災で岩盤の揺れを推定したところ、日本のそれぞれのサイトについて推定したように報道されておりますが、日本原電が全国の発電所のそれぞれのサイトの岩盤の揺れについて試算した事実はございません。まして、他の電力の原子力発電所安全性について推定した事実はございません。  今御指摘にありました今回の阪神大震災を受けてどうであるかという御質問ですが、これは御指摘のように日本には多くの活断層があります。繰り返しませんが、日本原子力発電所の立地設計において活断層を前提に地点選定を行っているとかいろいろな、最大の地震を想定した設計をしております。  しかしながら、現在の安全に慢心することなく、常に安全を確保し最大限努力することが必要だと私どもも思っておりまして、通産省としましても、各方面で今回の地震に係る調査などが進められていること、また原子力安全委員会が今回の地震を踏まえた検討会を設置されて、耐震設計に関する指針の妥当性について確認することとしていることを踏まえまして、こうした調査検討を注視しますとともに、通産省みずからに設置されております原子力発電技術顧問の専門的な意見も聴取しながら、今回の地震により得られる知見から原子力発電所安全性につき参考とすべき点が存在しないか確認を行うなど、引き続き原子力発電所安全確保に万全を期してまいる所存でございます。
  58. 清水澄子

    清水澄子君 次に十八条ですが、十八条の原発設計及び建設について、原発の輸出に際してはどのような適用を受けるのでしょうか。
  59. 林暘

    政府委員林暘君) この条約におきましては、前文にもありますとおり「原子力の安全に関する責任は原子力施設について管轄権を有する国が負う」というふうに、そういう基本的な考え方で立てられておりまして、したがいまして条約中にいわゆる機器の輸出入というものについての規定は置かれておりません。言いかえますと、その機器を輸入したか輸出したかは別にして、施設を有する国が安全については責任を負うということになっております。
  60. 清水澄子

    清水澄子君 例えば、KEDOの場合には輸出する側はこの条約による義務を負うわけですか。
  61. 林暘

    政府委員林暘君) KEDOというお尋ねでございますが、外国の発電所に機器を輸出する国がこの条約に基づきます何かの義務があるかというと、それはございません。
  62. 清水澄子

    清水澄子君 それでは、十八条に事故の未然防止事故の発生の場合の影響の緩和のために多重の段階の防護と深層防護を講じるというふうになっているわけですけれども、ここで言う深層防護とは具体的にどのようなものを指すのですか。
  63. 林暘

    政府委員林暘君) ここに書いてあります深層防護といいますのは、異常や事故が起きないように万全の対策を講じた上で、万一異常が発生した場合においても事故の発生に至らないというような対策を講じ、さらに、もし事故が発生した場合においても周辺公衆に影響を及ぼすことがないように放射能の閉じ込め対策等を講じる、そういった多重の安全対策ということをこの深層防護ということは言っております。
  64. 清水澄子

    清水澄子君 外務大臣お尋ねします。  この条約の批准が我が国原子力安全性の一層の向上に結びつくということを私は願っているわけですけれども、今までの外務省初め各関係省庁の皆さんは、この条約東欧とか旧ソ連のそういう原子力施設に対してへのどちらかといえばそれを取り込んでいくための条約であって、我が国というのはほとんどこれに該当しないんだと、非常に何か楽観的な説明を受けているわけですけれども、原子力施設の全くの安全ということは言い切れない、絶えず安全性というのは重視しなければならないと思うわけです。  ですから、私は大臣に今回の批准に当たって改めて国内法も含めて国内的な安全性措置を特段と重視するという姿勢で臨んでいただきたいと思いますけれども、そういう立場から、原子力安全性向上のための施策の充実についてぜひ大臣の所見を私はお伺いしたいと思います。
  65. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) この条約締結し批准するに当たって国内的な法制度に照らしてみれば、おおむね国内の既に行われている諸施策はこの条約で言おうとすることをクリアしていると、こういうことを政府委員は答弁申し上げていると思います。  しかし、規則だけで完全に安全が守れるかというと、それはそうではないと思うんです。どんなに安全な機械をつくり、どんなに安全を守るための規則をつくっても、結局人間が運用するわけで、そこで働く方々の、例えば緊張感といいますか集中力といいますか、あるいはマニュアルを確実に完全に守るという二重三重のチェックが、しかもきちっと行われるということが安全を確保するために極めて重要だと思います。  私は、今回のこの条約我が国が批准するに当たって、もう一度思いを新たにして安全のために一層緊張感を高めていくということが重要であろうというふうに思います。
  66. 清水澄子

    清水澄子君 今まで質疑をいたしました原子力の安全問題は、裏返せば核の脅威から人類がいかに逃れるかということであると思います。  昨年十二月の国連総会において、核兵器の使用と威嚇が国際法に違反するかどうかということで、国際司法裁判所に判断を求める決議がされております。これによって国際司法裁判所は日本政府に対してその見解を求めてきていると思うわけです。私は、この核兵器の使用と威嚇というのは、特に日本は被爆体験国でもあるわけですから、これは人道上すべての国際法に反するんだという表明をすべきだと私は思うわけですが、現在、日本政府はこの国際司法裁判所にどのような見解を用意しておられるんでしょうか。これを外務大臣お尋ねいたします。
  67. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 国際司法裁判所が本件に関する陳述書を提出することができる期限として指示してきたのは六月二十日までということになっております。この六月二十日までの間に我々はどういう報告書をつくるかということの慎重な検討が必要だというふうに思っております。  しかし、議員ももう既に先刻御承知のとおり、政府としては、WHOがICJに同様の諮問をした際に、政府の見解を通報しているわけでございまして、いずれにしてもこうした考え方が変わるわけではございません。こうした考え方がその基礎となるというふうに考えることが常識だろうと思います。しかし、いずれにしても今回のICJに対します通報については慎重に目下検討中でございます。
  68. 清水澄子

    清水澄子君 終わります。
  69. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 北朝鮮問題でちょっと質問をさせてもらいたいと思いますが、きょうは余り時間がないものですから。  八日から十一日の四日間の日程をもちまして、今月二十八、二十九、三十にピョンヤン平和・スポーツと文化の祭典という催し物を、前にも申し上げた、私が企画し、共同でやろうということで、それの合意書は交わしてあるんですが、最終確認ということで行ってまいりました。そして、金容淳委員長と約二時間ほど食事を兼ねて雑談を含めて話をさせてもらいましたが、先日の訪朝団の日本での発表と向こうでの会談の認識というものに大分ずれがあるんじゃないかなと。  その中で、これは金丸訪朝団の継続であるという主張と、日本側は棚上げという表現をされていますが、「外務次官語る」ということで、「「戦後の償い」は帳消しと言えぬ」ということが四月四日の朝日新聞に出ております。その辺が何かいろんな情報の中でまだ統一されていない、当然これから交渉が始まるわけですが。しかし、日本としてどういう姿勢でこの交渉に立ち向かったのか。それから、その後、都合よく解釈されてきて、我々国民にとって非常にわかりにくくなっているんですが、その点について説明があれば聞かせていただきたいと思います。
  70. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 今回の与党三党による訪朝団は、これはまさに政党が政府間の交渉のための道筋を開くといいますか、つけるといいますか、そういうことを目的としての政党レベルの訪朝団ということでございまして、これが政府を代表するというものではございませんでしたけれども、与党三党が代表団をつくって行ったという点は、政府とすればこれは極めて重要なものだというふうに考えるのは当然だと思います。  この三党の訪朝団の皆さんは、中断をいたしておりました日朝国交正常化交渉というものを新たに始めてはどうかということを話されて、交渉をされたというふうに報告を聞いております。これまでにはいろいろないきさつがあったことも事実でございますが、残念ながら二年前に中断のやむなきに至っておりまして、新たに交渉を行うという、合意書には「あらためて第九回会談を速やかに行う」という合意をしてこられたわけでございます。  その合意書を拝見いたしますと、幾つかのポイントがございますが、いかなる前提条件もないこと、そして徹底して関係改善のためのものであるべきというようなことが両国間の対話再開と国交正常化のための会談について書かれているわけでございます。  今回の訪問は、今申し上げましたように政党と政党との話し合いということでございまして、これによって開かれた道筋を今度は政府間で交渉を行うということになるというふうに思います。政府としては、この開かれた道筋をたどって政府間交渉を行うために準備を合していると、こういう状況でございます。
  71. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 これは四月六日のやはり朝日新聞なんですが、「日朝会談は「過去の継続」 金容淳書記」と書いてあるんですが、この最後のところの四番目に「合意書はそれぞれの政府を拘束する」という文言が入っているんですが、これはどういうふうに解釈したらいいんでしょうか。
  72. 川島裕

    政府委員(川島裕君) もちろん、今、大臣から御答弁ございましたとおり、政党のやりとりでございますけれども、与党の三党が行かれたということですから政府としても当然重要視はいたすわけですけれども、拘束か否かということになりますと、法的にはこれは政党の合意書が政府を拘束するということはないという立場でございます。
  73. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 その辺が今回いろいろ話している中で非常にあいまいであるというか、これは外交上、金丸訪朝団のいろいろ批判もあるようですが、当時副総裁だったですかね、そして海部総理もそのときにたしかメッセージも送られていると思うんですが、もう過去の人ですからこれは無効ですよという、聞き方によればそういう主張にちょっと聞こえるんですが、公平に見ていて向こうが言っている方が筋が通っているなという気がするんですがね。  そこで、今回の目的は、先ほど申し上げたように祭典と、それからせっかく平和という名前のもとにイベントをやるわけですから、それが何か南北の対話のきっかけにもなればというようなことを含めて、多少なり私が得ている情報をもとに、私の個人の提案ということで幾つか提案したことがあります。  南北問題というのは我々が立ち入る筋合いのものではないと、基本的に。しかし、現実には全くチャンネルが閉ざされて対話がないということから、一つは、今、北朝鮮から流される誹謗中傷的な放送、それからもう一方で、今度は南の方から軍事境界線、江原道というんでしょうかね、ここのところで今までは米軍とのチームスピリット、今回は韓国独自の軍事訓練ということでそれに大変ぴりぴりしている。なぜこの時期にそういうことをしなきゃならないんだということに対して大変私も気遣いながら、とにかく南ということが出ただけで非常に顔が引きつつてくるようなそういう関係にあるわけで、これは並大抵なことではないなと。  その中でお米の問題がありましたが、これは金泳三大統領が、あれはベルリンだったですかね、交渉のときに、村山総理に米の問題だけは出さないでくれということがあったと聞いておりますが、それはどういうことでそういう話があったんでしょうか。
  74. 川島裕

    政府委員(川島裕君) 金泳三大統領とのやりとりは非常に一般的な形で、北との関係について日本がいろいろする際には緊密に連絡をしてくれという趣旨のやりとりでございました。
  75. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 それともう一つは軽水炉に関する問題。とにかく、せっかく進んでいる話がとんざすることなく進展してほしいという願いも含めて、韓国型という冠はもうちょっと知恵がなかったのかなと。対立する国が相手方の韓国型ということを言われた場合に、やはりこれは受け入れがたいだろうと。その中で、韓国の野党の中にもそれに固執する必要はないじゃないかという意見が出ていると聞いておりますが、これはあくまでも基本的には朝米会談ということになるんでしょうが、最終的には日本も一千億以上のそういう支援もしなきゃならない。  それで、政府の見解としてはその点についてはどういうお考えでしょうか。
  76. 川島裕

    政府委員(川島裕君) これは韓国が軽水炉プロジェクトにおいて中心的な役割を果たすということが大前提なわけでございます。そこのところをめぐってやりとりが続いているわけでございまして、その名前の問題というのは行く行くそれは何がしかの解決が図られるのかもしれませんけれども、その前にまず先決問題としてきちっと詰める必要があるのは韓国が中心的な役割を果たすということを北朝鮮としてもこれを認めるか否かというところでございまして、そこのところが明らかにならないと物事が動かないというのが現状でございます。
  77. 猪木寛至

    ○猪木寛至君 新聞でも毎日その件については報道されているので、そこで何とか知恵を絞って両方のメンツが立つというような方法論としては、例えば今回の朝鮮半島エネルギー機構、KEDOという、KEDO型とかそういうような発想だったら何かもうちょっと、今どんざしてどうしても進まない部分で話になるんではないかと。その点もちょっと提案はさせてもらいましたが、そういうことについて、今回、ほかからの提案でありましたら一切受け付けませんが、猪木さんのことですから我々はこれは肯定的に受けとめますということを聞いたので、行ったかいはあったなという気はするんです。  何はともあれ二十一日の期限から、従来型の原子炉をまた動かしたりするととんでもないまた逆戻りになってしまうので、ひとつ政府としても十分その辺を配慮しながら進めていっていただきたいと思います。  終わります。
  78. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 日米安保条約の前途について大臣のお考えを伺います。  キーカレンシーとしてのドルの権威が低下しているというふうに言われておりますが、これがアメリカの国力のトータルとしての低下につながっているというふうにも考えられないことはないわけでありますけれども、世界の安全とか平和に対するアメリカの威令もまずかつてのごとくではない。  こういう状況の中で、特に日本にとっては、ソ連の解体という状況がありまして、アメリカは日本における軍事基地を整理すると、こういうようなことが伝えられますが、こういう状況の中で日米安保条約の意義あるいは将来についてどういうふうに考えられますか。
  79. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 御指摘のとおり、冷戦が終わったと、ソ連の解体というこれまでになかった状況が生まれてきております。このことは、いわば地球規模の大戦争というものはなくなったのだろうと考えていいと思います。この可能性が大幅に減少をしてきたということを我々は感じ取っているわけですが、しかしそれでもなおかつ核保有国が核軍縮というものに真剣に取り組んでくれないことには、これは東西の大戦争でなくても核の使用ということはやはり地球上に大きなダメージを、決定的なダメージを与える可能性はまだあるということも考えなければならないと思います。  そういう状況の中で、我々はやはり新しい秩序というものをどうやってつくっていくかということを真剣に考えなければならないと思います。ヨーロッパではヨーロッパが新しい秩序を模索しておりますし、アジアにもまだまだほんの芽生えでありますけれどもARF、ASEAN地域フォーラムですか、ASEANの拡大外相会議のときに地域フォーラムというものがつくられて、そこで信頼醸成措置をどうやって育てていくかというような作業がございます。  しかし、いずれにしてもまだアジアには、アジアといいますか我が国の周辺には不安定要素もございます。今の猪木議員のお話にもありましたように、朝鮮半島の状況というものはまだまだ我々は相当神経をぴりぴりさせて見詰めなければならない状況でございますし、世界にはあちこちに、中東もそうでございますし、アフリカにもなかなか落ちつかない部分があったりしている。こういう状況の中で、一つは我が国の安全というものをどうやって確保するかということを考えれば、やはりここは周辺の不安定要因を考えても日米安保条約というものは引き続き重要なものというふうにまず思います。  それと同時に、アメリカの役割、アメリカが国際社会に果たす役割といいますか、国際社会における広範な日米協力、今、コモンアジェンダを初めとして日米は協力して世界の中でいろいろな仕事をしようとしているわけです。人道的な支援もそうですし、地球規模の問題もそうでございますが、こういう仕事をする、あるいはそれ以外にも日米の協力関係というものを国際社会に経済的にもあるいは人道的にも提供しようとしていくと、そのベースになる、政治的基盤になるというふうにも、この日米安保体制という日米間の信頼関係、そういうものは非常に意味のあるものではないかというふうに思っているわけです。  さらに、アジア・太平洋地域における安定要因としてのアメリカのプレゼンスといいますか、アメリカの存在を確保し、この地域の平和と繁栄を促進するために意味のあるものになってきているというふうに私は考えております。  そのためにも日米でさらに対話を積み重ねる必要があるだろうというふうに考えて、深化なんという言葉を使うのでございますけれども、もっと深く掘り下げてという意味でしょうか、深化させるということが重要だというふうに考えております。
  80. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 そこで、今おっしゃいました核兵器の問題ですが、今、恐らく我々の目に入る範囲内で核兵器の拡充に一番熱心な国は中国だと思うんですね。そういうことにあらわれているように、中国とアメリカとの関係日本にとって非常に警戒しなきゃならぬ険悪さを持っているじゃないか。  この委員会でも発言したかもしれませんが、沖縄における米軍基地に対して中国が以前以上に神経をとがらせている、ソ理解体以後における沖縄の米軍基地は一体どこを目標にしているのかということを向こうの要人から直接聞いたこともございます。そういうことになりますと、日米安保ということが逆に日本の安全に対して非常に脅威の条件が深刻になる側面があるんじゃないかと思いますね。  それで、こういうことについて日本として何か情勢についていくというのじゃなくて積極的に、例えば中国とアメリカ、日本、それから朝鮮半島の二つの国、さらにロシアの六カ国ぐらいの少なくとも二十年、できれば三十年くらいの相互不可侵条約を考える。これは非常にとっぴな話と受け取られるかもしれませんが、またこの短時間では具体的なお返事は期待しておりませんけれども、大臣のおなかの中に十分おさめていただいて、構想を熟成していただけると大変ありがたい。  これは兵器産業関係は反対するに決まっておりますけれども、各国の財政がこれによって豊かになることは間違いない。それによって平和産業を大いに高めていくということにすれば国民経済にとっても非常なプラスになるではないか。これはもう六つの国との国にとってもマイナス面が少なくてプラスの方がはるかに大きい、こういうふうに考えますが、即答は希望しませんけれども、十分おなかの中におさめておいていただけるとありがたいと、こう思います。
  81. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) とても即答するには大変な御提案でございますが、私の感じを申し上げますと、やはりアジア・太平洋地域の安定を考える上では、アメリカ、中国、日本を中心としたこうした国々が平和のためにしっかりと協力し合うということが重要であって、少なくともアメリカ、中国、日本がぎくしゃくしているようではなかなかアジア・太平洋地域の安定というものは難しいというふうに、少しおごっているかもわかりませんが、率直に申し上げればそんなふうに思っていることが一つ。  それから、私は北東アジアの平和と安定ということは我々が強く考えなければならないことだというふうに思っています。ともすれば東南アジアあるいは南アジアというふうに目が向きがちでございますけれども、私は北東アジアというものに対する我々の考え方というものはきちっとしておかなければいけないと思っています。  それがなかなかできなかったのは、やっぱりソ連の存在というものがあったということが一つあると思うんです。しかし、それがソ連の解体ということで新しい状況になりました。しかし、朝鮮半島の状況は信頼し合って何か仕事をするということには残念ながらまだ至っていない状況ではないかというふうにも思うわけでございます。  私は、この米朝合意が誠実に実施されて、北朝鮮が国際社会の中にもっと窓をあけて、門をあけて出てきて、相互依存関係というものがもっと出てくるようになると、北東アジアの安定のための話し合いということがやっと出てくるのではないかという感じを持っておりますし、そのことを念願しております。  それから、少なくとも現時点で日米関係、日中関係には全く政治的に問題がないというふうに私は思っておりまして、いろいろそれは心配をしてくださる方があって、そういう方の御意見も十分注意深くお話を伺っておりますが、現段階では沖縄の基地であるとか、日米安保条約が中国との関係で問題になっているというふうには思っておりません。
  82. 武田邦太郎

    武田邦太郎君 終わります。
  83. 立木洋

    ○立木洋君 私も原子力の安全に関する条約についてお尋ねします。  最初に、第二条の「原子力施設」の定義の問題ですが、先ほど同僚議員の質問に対して林さんの方で答弁があって、原子力の発電所というふうに限定したという意味については、できるだけ速やかに加盟国が多くなってこれから効力を発するようにというふうな趣旨のことを述べられたと思うんですね。  ただ、またちょっと疑問になるのは、原子力事故早期通報条約というのがあります。これは原子力の安全に関する条約の前文でもこの「条約に留意しこというふうに書かれているわけですが、この原子力事故早期通報に関する条約の第一条の適用範囲の中では「すべての原子炉」、それから二つ目に「すべての核燃料サイクル施設」、それから三番目に「すべての放射性廃棄物取扱施設」、それから四番目に「核燃料又は放射性廃棄物の輸送及び貯蔵」、これらのものが入っているんですね。それで、入っているのは既にもう日本も署名して賛成しているんだけれども、同じように事故の問題に関してはそういうふうな原子力施設が含まれているというふうになっているのに、何で原子力の安全に関する条約は含まれなかったのかというのは、どうしても先ほどの林さんの答弁ではやっぱり疑問が残るので、もうちょっとそこのところを説明してくれませんか。
  84. 林暘

    政府委員林暘君) 今、立木先生からほかの条約のことについての御指摘がございました。確かにそういうこともあろうかと思いますが、ただこの条約、今御審議をいただいております安全条約締結する、作成する過程におきましては、先ほど説明申し上げましたように、なるべく早くなるべく多くの国が合意ができる形のものにしようということで、言いかえればそれによって大多数の原子力施設はカバーできるということももちろんあったわけでございますけれども、なるべく多くの国がなるべく早く合意ができるということでこういう範囲になったというふうに我々は承知をいたしております。  事故早期通報に関する条約の中でほかのものも対象になっているじゃないかということは、これはそのとおりであろうかと思いますけれども、状況はそういうことでございます。
  85. 立木洋

    ○立木洋君 そういうものを入れない方がいいという何か積極的な意見がどこかの国からか出されて、そしてやっぱりそれならばいろいろ難しいからというふうになったのか。どうも一般的な説明では、そうですか、わかりましたというふうにちょっとならないものですから、だからそういうものは入れない方がいいという何か強力な発言がどこかの国からか理由が提起されて出されたのかどうか。もしくは、今新たに答弁する内容がございませんでしたら後からでも結構ですから。
  86. 林暘

    政府委員林暘君) 一つつけ加えさせていただくとすれば、原子力事故早期通報に関する条約の場合には、当然のことながら事故早期に通報するという条約でございまして、それに基づいて各締約国が国内的にいろいろな国内法上の措置をとらなくちゃいけないということは入っておりません。  それに反しまして、この安全条約の方は、例えば我が国の場合には安全ということが従来から重視をされておりますし、そういう国内体制をつくっておりますけれども、これがある種目的としている国々の場合には必ずしもそこまで行っていない、言いかえれば国内法制を整備しなくちゃいけないという部分がございましたので、そういう意味で範囲が限定されたということであろうかと思います。
  87. 立木洋

    ○立木洋君 これは通報の問題については確かにそういうことがあり得ると思うんですね。ただ、通報条約の方については軍事の問題についても制限していないんですね。現にノルウェー沖で沈没した旧ソ連製の新しい原潜、マイク級の事故なんかについては直ちに通報されているという情報がありますから、そういう軍事の問題もこの通報条約では制約されていないということがあるので、念のために申し述べておきたいと思うんです。  次に、この第八条で「規制機関を設立し又は指定する」という点について、先ほど林さんは日本では三つのあれを挙げられたわけですね。それは説明書にも書いてありますからそういうことかなと思うんですが、しかしこの正文の英文で見ますと、「a regulatory body」というふうになっていて、一つの組織というふうにこの規制機関がなっているんですね。複数にはなっていないんです。  林さんがさっき挙げられたのは三つのと言って、日本では三つの機関規制機関になっているというふうに言われたんですが、この正文の英文では一つというふうに指定してあるんですけれども、そこらあたりの関係はどうなっていますか。
  88. 林暘

    政府委員林暘君) 規制機関につきましては二条にも定義がございまして、そこにつきましては、これは英語の方でございますけれども、「any body or bodies 」ということで複数になっております。すなわち、複数というものを排除していることではないというふうに我々としては考えております。
  89. 立木洋

    ○立木洋君 私がなぜその問題にこだわるかといいますと、第八条の規制機関の第二項のところに書いてある、つまり「規制機関の任務と原子力利用又はその促進に関することをつかさどるその他の機関又は組織の任務との間の効果的な分離を確保するため、適当な措置をとる。」、こういうふうになっているんですね。原発を促進する機関、つまりその利用を促進する機関と、それからそれに対して安全の保障、安全を確保するという機関、これの任務を明確に分離することがやっぱり重要だというふうに第二項で書かれているんです。  今まで私は外務委員会でも何回かごの原子力の問題について、安全の問題についてお尋ねしたり、あるいは産業・資源エネルギー調査会でも何点か質問したんですけれども、安全を守るという側のいわゆる通産省だとかあるいは科技庁の安全局だとか安全課だとかの方が来て答弁しても、その答弁の範囲がどうしても促進を妨げるような発言はないんですよ。促進を認め得る範囲内での答弁というのがいつも大体決まっているんですね。  だから、私はもっと厳密な意味で言うならば、いわゆるそういう促進するという組織と全く逢う組織がきちっとやっぱりあるべきだというのでいろいろ見てみますと、日本でも原子力安全委員会というのが設置されたんですね。原子力安全委員会では、これは原子力開発推進機構と安全規制機構の分離及び行政責任の明確化を図るとの観点から原子力委員会と別に新たに原子力安全委員会設置し、また原子炉に関する安全規制行政を一貫化することを主要な柱とするとして原子力安全委員会というのが設置されたわけですね。こういうふうな機構を強化するような方向で問題を考えられないのか。  もう一つ言っておきますと、先ほど来シビアアクシデントの問題について万全の対策をとっておられるというふうな話が同僚議員の質問に対して大分出ましたけれども、一九八八年に国際原子力諮問委員会で検討されたときに、シビアアクシデントの問題が必ず起こり得るというふうなことも前提にした安全対策をつくるべきだということが勧告されたんですよね。それについて私は外務委員会でも質問したし、それから産業・資源エネルギー調査会でも質問したんですけれども、日本ではそのようなことが起こるようなことはありません、シビアアクシデントが起こるようなことはありません、万全の安全対策をとっておりますという答弁なんですよ、全部。それで私は、おかしいんじゃないか、そんな絶対的というものがあるんですかと言ったら、それは絶対的とおっしゃればそれはそうかもしれませんけれども、しかし日本には十分に安全な施策をとっておりますと。  ところが、一九九二年五月になって原子力安全委員会から、シビアアクシデントを前提とした安全対策の問題について、電力会社もそれから関係省庁も十分に配慮するように望みたいという意見書が出されました。それは福島だとかその他の原発でいろいろな過酷事故に結びつく可能性がある事故が発生した後、そういうのが九二年五月、原子力安全委員会から提起されて、その問題で電力会社の方でもそれに対する十分な安全策をとるように、さらに万全を期すためにというふうな説明があったんですね。通産省資源エネルギー庁のシビアアクシデント対策というのも、これは去年になってつくられたというものですね。  だから、そんなシビアアクシデントなんか絶対起こることはありませんということまで言っておって、そして原子力安全委員会から勧告されて、そして初めてその問題が検討されたと。きょう話を聞いてみたら、前からシビアアクシデントの問題でも完全に対策が立てられていたかのような答弁なんです、先ほどの話から。僕は本当におかしいと思うんですよ。私が八八年から九〇年、九一年まで質問したときには、そういうことは起こり得ません、だから日本ではそういう対策を立てる必要はないんですと言っておって、それでそういう事態になった。だから、原子力安全委員会というのをここで言う規制機関とのかかわりではどういうふうに考えられるのかというのが一つ。  それから、シビアアクシデントの対策というのは、これは九二年の五月以降、原子力安全委員会から提起されて初めて検討がなされたものだと私は思うんだけれども、平成六年の三月と書いていますから。だから、それはいつから検討されてどういう段階まで来ているのか。その二つの点。先の方のあれは外務省の方に答えてもらった方がいいんじゃないかな、林さん。
  90. 林暘

    政府委員林暘君) 原子力委員会がこの規制機関との関係でどういう位置づけになるかということについては担当のところからお答えいただいた方が適当だと思いますけれども、規制委員会については今御指摘のとおり、その効果的な分離ということが八条には書かれております。  ただ、どういうふうに効果的な分離を図るかということについては、これは基本的に各国にゆだねられていることでございますので、日本の場合には、御指摘のとおりに、科学技術庁及び通産省の中に規制機関とそれから利用を促進する機関それぞれが置かれているかという御指摘がございますけれども、その中で我々としては効率的な分離が図られているというふうに考えております。
  91. 大森勝良

    説明員(大森勝良君) 原子力安全委員会規制機関とのかかわり合いでございますが、規制機関の中に原子力安全委員会は含まれるものではないというふうに思います。  原子力安全委員会でございますけれども、これは規制機関でございますので科学技術庁それから資源エネルギー庁の各担当課でございますが、それとは独立いたしまして、原子力安全規制に関します事項を審議するという形で原子力安全委員会が諮問機関として設置されておりまして、原子炉等規制法規定に基づきまして、それが原子力発電所の新設等の場合にダブルチェック等でもって規制機関が行います任務の遂行を適切にチェックする、それでより一層安全に関する万全を期すという位置づけかというふうに思っております。  安全条約上の規制機関はあくまで規制権限を有する機関というふうに私ども考えているところでございます。
  92. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) 先生御指摘のシビアアクシデントについての検討状況説明せよということでお答え申し上げます。  我が国原子力発電所安全性は多重防護、十分な余裕を持った安全設計、きめ細かい品質管理運転管理及び国による厳格な安全規制などにより安全性は既に十分高いものとなっておりますので、炉心が重大な損傷に至るシビアアクシデントが現実に発生することは考えられないと思っております。原子力発電所安全性が既に十分高いものになっているという認識のもとで、その安全性をより高めるための不断の努力が有益との観点から、電気事業者が自主的に講じる念のための措置として、通産省は、先ほど先生御指摘になりました安全委員会の決定を受けまして、平成四年七月に電気事業者に対してシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネジメントの整備について検討、報告を要請いたしました。  その後、各電気事業者からは、平成六年三月三十一日に軽水型原子炉五十一基についてアクシデントマネジメントの検討報告書が提出されまして、通産省として検討したところ、技術的に妥当なものと認め、その旨を通産省の検討報告書として取りまとめまして、これを平成六年十月二十四日に原子力安全委員会に報告を行いました。現在、原子力安全委員会原子炉安全総合検討会というふうな検討会が持たれまして、そこでこの通産省の検討報告書について検討が進められるところでございます。  通産省としましては、原子力安全委員会における検討結果を踏まえて、アクシデントマネジメント策を電気事業者がおおむね二〇〇〇年を目途として順次整備することを要望しております。
  93. 立木洋

    ○立木洋君 原子力安全委員会というのが諮問機関として設置されたということは私も知っているわけです。だから、この原子力安全委員会が直ちに今、規制機関として行政コードを全部チェックしてやるというふうなそういう機構になっていないということも十分承知しているわけですが、こういう形で、つまり総理府に設置されて、いわゆる推進する機構とは全く別にこういう機関があるんだから、こういうものを活用する方が実際には十分に人材や予算をつけてそしてそういうふうに推進するのと同居した形で促進するというその妨げにならない範囲内での安全の問題ではなくて、やっぱり安全ということを徹底的にチェックできる立場を規制機関というのが持ってやれるようにした方がいいんじゃないか、そういう精神がこの条約の精神ではないんだろうかという考えが私にあるものですから。  だから、推進する枠内で安全の問題を議論するのではなくて、結局通産省や科技庁なんかとは別の形で総理府に原子力安全委員会というのが設置された意図は、先ほど私が読み上げたように、完全に分離することが重要だということでこれが設置されたことが述べられているわけですから、そういうふうなことが考えられるのじゃないかというのが一つです。これはここの課長さんにお聞きしてもちょっと無理だと思うので、そういうふうなことがあってもいいとお考えになるのか、いやそれはやっぱり無理だというふうにお考えになるのか、副総理兼外務大臣の御答弁をちょっと聞いておきたいと思います。これが一つです。  それからもう一つ、シビアアクシデントの問題についても、電力会社が過酷事故の対策を自主的に整備することを奨励するという趣旨の問題ですよね。それで、それを受け入れて電力会社でも検討するというようなことになってきたわけですけれども、例えばアメリカなんかの場合は、このシビアアクシデントの問題で考えられているのは、例えば常識的に言えば、一つは炉心損傷に至るまでのレベル一、それから二つ目が格納容器破壊に至るまでのレベル二、それから放射能の環境放出と住民の被曝に至るレベル三、この三つの問題が考えられてシビアアクシデントの対策が立てられて今検討されているわけです。  ところが日本の場合は、その問題で検討すると言われても、レベル二までの問題については考えられているけれども、このレベル三、放射能の環境放出、住民の被曝に至るまでの問題については全くなされていないですよ、この問題については。これは、先ほど来同僚議員も言われた有数の地震列島と言われる日本で、やっぱりレベル三の問題についても十分な対策を立てるというふうなことにしないと、そういう意味先ほど言ったような緊急時の計画、これ自身私は不十分だというふうに考えられるので、その問題についても十分な対策を、やはり地震が、この間阪神・淡路大震災のようなあれがあったわけですからレベル三に至るまでの、放射能が環境に放出されたときの問題まで想定した安全対策、万全な対策というところまで検討すべきじゃないか。  その二点ですが、これは専門家の意見よりも私は大臣のお考えをお聞きしたいと思うんですけれども、そういうふうにする必要があるというふうにお考えかどうか、ひとつよろしく。
  94. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) 我が国原子力行政というものは極めて注意深く行われているということは議員もお認めいただけると思います。もう大分長い歴史を積み重ねてまいりまして、その間にはいろいろな方からの御注意もありましたし、それから経験も積んできたということもあって、科学技術庁では原子力局と全く別に安全局をつくるというようなこともやってきたわけです。そして、これをいよいよ実際に使うということになれば、それはもう設計段階、立地の段階から相当慎重な、僕らが見ても随分慎重にやるものだなと思うほど慎重にやっている。それはもうそのこと自体がシビアアクシデント対策と言えば言えるのではないかというふうに私は思うんです。  今回のことについて言えば、法的権限を持つか持たないかという問題で、確かに諮問に答えるとか勧告するとかということと法的権限を持つということとの問題の御指摘なんだろうと思います。  現在の仕組みが少し弱過ぎるのではないかというふうに思っておられるのかもしれませんが、私は実は素人ではなくて科技庁長官もやったことがあるものですからその辺のところはわかっているつもりでおりますが、安全局の果たしている役割は非常に大きいです。これは原子力局が何と言おうと安全局がきちっととめるべきものはとめられる、それだけの力を持っております。そしてまたそれは持たなければならぬと私は思います。したがって、現在の時点でもそうした役割は果たしているというふうに思って、科学技術庁通産省それぞれの今の仕組み、それを私は信頼したいというふうに思います。
  95. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つの方も。
  96. 河野洋平

    国務大臣河野洋平君) もう一つは専門家の方から。
  97. 藤冨正晴

    説明員藤冨正晴君) 先生の御指摘の被曝関係の解析というのが全くなされていないのではないか、それでは不十分ではないかという御指摘でございますが、私どもは、炉心損傷をまず起こさない、それから仮に原子炉の容器から出ても格納容器を守るということで、一般の公衆の方それから働いている方の安全を守るということが原子炉等規制法目的でございますので、まずはこのレベル二のところまで、先ほど先生御指摘になりましたIAEA委員会の安全のレベルを十分クリアできるように努力したいと思っております。  それから、先ほどの御発言の中で、地震において原子力発電所が壊れるのではないかという御指摘をいただきましたが、そこは先ほども御説明させていただきましたが、最大限の想定される地震を想定して、それでも壊れないような動的、静的の解析をしておりますので、地震において一番重要な格納容器、圧力容器が壊れることのないように設計を厳しくやっているつもりでございます。
  98. 立木洋

    ○立木洋君 では、また後にします。きょうは終わります。
  99. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) 他に御発言もなければ、両件の質疑は終局したものと認め、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  100. 立木洋

    ○立木洋君 私は、日本共産党を代表して、日仏租税条約に反対の討論を行います。  第一に、この租税条約は、独占的大企業が二重課税回避ということで、大企業によるフランスへの進出をよりやりやすくするもので、海外に進出し世界的な規模で生産、販売、財務を行うことによって、国内だけで活動するより大きな利益を獲得する一環であります。  こうした大企業の多国籍的活動での利益を、租税条約によって進出先の子会社からの配当に対する税率をこれまでよりも五%引き下げ、利子、使用料に対する税率をこれまでよりさらに五%引き下げて国内の租税と同じくして課税の軽減を図るものであります。とりわけ、日本政府租税法は日本の独占大企業の優遇税制を体系化したものであり、この大企業優遇税制の確保を基本とした租税条約にほかなりません。  第二に、政府が多国籍的な大企業の民主的規制を税制上の手段によって実施しようとしても、一国の課税権という主権的な権利を制限されるという問題があります。  条約は、二重課税を排除することで独占的な大企業が国内投資と同じ条件で海外投資活動をすることを法的に保証するものであって、これは資本輸出国にとっては国内産業の空洞化、あるいは資本受入国では国内産業の破壊を生みやすく、これらの対策のため民主的規制の必要が生じた場合、この条約によって政府の主権的権利である課税権が制約されており、民主的規制が十分に実行できなくなるのであります。課税権も一国の排他的な主権の一つであって、その規制を困難にする条約には反対するものであります。  以上で反対討論を終わります。
  101. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府フランス共和国政府との間の条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  102. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、原子力の安全に関する条約締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  103. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 田村秀昭

    委員長田村秀昭君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十六分散会