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国務大臣(
河野洋平君) 椎名
先生の御意見は非常に示唆に富む御意見だと思います。我々ももっともっと外に出ていろいろな仕事をする。それは何も
日本の国のためだけではなくて、
日本人の持つ知識、見識というものは国際社会のためにもなるということからして、
日本人をもっと国際機関あるいは国際的に活躍できる場に送り出す必要があると思います。
ただ、今、議員が
お話しになりましたように、我々にとってはやっぱり幾つかのネックがあると思います。まず
一つは、人をどうやって育てるかという仕組みが今ないということがあると思います。これは仕組みというよりは、例えば議員が今おっしゃったように大来さんのケースはその
一つだと思いますが、何か経験を積む、そういう場面というものがなかなかつくれていないということが
一つあると思います。
それからもう
一つは、例えば民間の方にそういう場を提供するといいますかそういう場を開放するというときに、民間で働いていらっしゃる、それはもうだれが
考えても非常に優秀な方をそういう場にお迎えをしようと思うには、今の場は待遇からいっても何からいってもなかなか十分な待遇ができるだろうかという問題があると思うんです。しかも、
日本の今の社会は、一度自分のいる場を離れて例えば
政府機関で働く、一定の期間でまた戻ろうとすると、もう戻れなくなってしまうというようなことから、思い切ってそういう場に出てきてくださるという方がなかなかないと思うんですね。
ですから、自分の職場をそのままにして審
議会の委員になるとか何になるとかというとそれはもう幾らでもあるんですけれ
ども、その職場を離れて専任になってほしいというとこれはもう探すのは大変なことで、なかなかそういう人が見つからない。ましてや外国に出ていってもらいたいというようなことになると、これはもうなかなか難しいというのが現状だと思うんです。
しかし、最近は、若い人たちの中に、教育も
日本で受けさらに欧米でも教育を受けている、そして国際的なディベートも十分経験を積んでいる、そういう下地のある人たちが今度はもう少し高いレベルの経験を積んで、国際的な会議に出て、そして人間
関係が非常にできてくるというような、そういう人がだんだんふえてきていると思うんですね。これは
経済界の中にもいらっしゃると思いますし、それから行政の中にもそういういわば名物男みたいな人が何人か出てきて、彼ならば
アメリカに出ていって友人知己がたくさんいる、ヨーロッパヘ行っても十分彼なら友人がいるというような人が何人か数えればいるようになりました。そういう人をやっぱり育てていく必要があると思いますね。
先ほど石井
先生からの御質問で、例えば外務省について言えば、外務省の人間が足らぬ、人数が足らないという御指摘から、最後は中身の問題だと御指摘がありましたけれ
ども、私それは全くそう思います。つまり、人数が足らないためにローテーションが速くなっちゃってぐるぐる回さないともうやりくりがつかないということから任地にいる時間が非常に短い、例えば二年間でもう次へ回ってしまうというようなことから、しっかりした人間
関係ができないというようなこともあるのだと思います。
もう少しゆとりを持って、しかもドイツ語の専門家はできるだけドイツ語圏に根を置いて、そして回るということであれば、もっともっとしっかりした人間
関係ができるんだと思いますが、行ってみると、ロシア語の専門家が
アメリカにいたり、英語の専門家がフランスヘ行ったりというようなことはもうしょっちゅうあるわけで、もちろん余り偏らなくていいんだといえばそういうこともあるかもしれませんが、人間をうまく育てるということはなかなか時間のかかることでありますし、そういうことを心得て、あるいは心がけていかなければならないということは、もうそのとおりだと思います。