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国務大臣(
河野洋平君) アジアにおきます
アメリカの存在というものをどういうふうに見るかというのが
一つあると思うんです。
確かに、EAECというものはマレーシアなどが提唱をして、地域的にも
一つの固まりとして、何といいますか、手ごろなといいますか、固まりではないか、こういうことを提唱されたと思うんです。それに対して、
アメリカを初め非常にやかましく言っておりますのは、オーストラリアもそうでございますけれ
ども、
幾つかの国が、せっかくAPECという、アジア・太平洋という経済について語ろうという会をつくっている中で、その中でまたEAECといって
幾つかの国だけが組をつくるということは適当ではないんじゃないかという
議論があるというのが今の
状況だと思います。
私は、アジアにおきます
アメリカというものは、実は今割合どうまくいっているんだろうと思っているんです。といいますのは、
アメリカはアジアにやはり大変な関心を今持っております。その関心が、アジアに対する関心というと
日本を通り越しているとかなんとかという
議論はいろいろありますけれ
ども、いずれにせよ日米
関係はこれだけ大きな経済、貿易量でございますから、もちろん
アメリカは
日本を含めてアジアに対する大きな経済的関心を持っております。
また、アジアの国々は
アメリカに対して大きな関心を実は持っているわけです。それは何かというと、アジア・太平洋地域がこれだけの経済発展を遂げたのはやはりそれが非常に安定しているからだと。つまり、
安全保障の面でも非常に安定しておって、そこには大きなトラブルが起きないという
状況がある。これがアジア・太平洋をして経済の大変な成長センターに育てているわけです。それはヨーロッパから見てもどこから見ても、やはりアジア・太平洋地域の経済というものは安心してつき合える経済だというふうに思われる大きな要素なんです。
つまり、いろいろな
議論はありますけれ
ども、今、アジアには
幾つか面倒な場所があるわけです。南沙群島を初めとする地域とか
幾つか問題の地域はあるけれ
ども、そこにはやっぱり
アメリカのプレゼンスというものがあって大きなトラブルにならない、あるいは大きくなくても小さなトラブルも今のところ起きずにいる。このことは、やはりそこに
アメリカのプレゼンスというものが
一つの安心感になっているからだということを、意識すると無意識であるといろいろあると思いますけれ
ども、そういう理解があるんだと思うんです。ですからアジアの国々は、アジア・太平洋地域から
アメリカがいなくなった方がいいというふうに思っている国は概してないと言っていい今の
状況だろうと思います。
そしてまた、
アメリカはそこにプレゼンスを展開して、その結果アジア・太平洋地域の安定というものをそこにつくり出すと同時に、
アメリカはやっぱりアジア・太平洋に対して大きな関心を持って、経済的にもいろいろな仕事の
やりとり、貿易その他仕事の
やりとりを行っている。これは私は、
アメリカとアジア・太平洋との間は今は非常にバランスのとれた
状況になっているのではないかと思うんです。
したがって、その中で
アメリカを排除する動きというものがあって、それはEAECがそうだというふうに私は思いません。EAECの
方々も決して
アメリカを排除しようと思っているとは、そんな
説明を私は実は聞いていないのです。
EAECと言われる人たちは、コーカスというんですから集まって雑談をするというか忌憚のない意見
交換をしようというサークルなんであって、それは目くじら立てて
アメリカが排除されるというものではないのだという
説明はなさるんですけれ
ども、どうも
アメリカは若干そこが気になって、聞いてみるとどうも事務局もかたりしっかりした事務局があって、場合によれば定期的に集まるんではないか、どうではないかということになる、なぜ自分を排除するそういう仕組みができるのかと。いや、あの辺の地域で、APECといったって大変広いわけですから、全部が集まるというのはなかなか難しいから、とりあえず周辺だけでも集まることは悪いことではないじゃないかという話があると、EAECをまずつくろうとしている国々が
日本を誘い中国を誘い
韓国を誘いという話になる。どうも、見ているとだんだん自分が排除されていくのではないかという、そういう
感じを一時は持たれたと思うんですね。
我々も、どうしてそういうメンバーにたるのですか、その地域たら、例えばオーストラリア、ニュージーランドが入ったっておかしくないじゃありませんかと言うと、いや、どうもオーストラリア、ニュージーランドはまたちょっと違うんだというような話にたる。なかなかそこはちょっと微妙な
関係に今なっているという
状況だろうと思います。
話が長くなって申しわけありませんが、先生おんで東アジア経済圏というものはつくれないかという
お話は、私は
一つの構想だと思います。
少し長期的に考えれば、それはもうきっと地理的な、地政学的に言ってもそういうことはあるんだと思うんです。ただし、その東アジア経済圏の中に不確定要素がある、つまり朝鮮半島という。そして、その不確定要素は混乱要因になりかねない。私は、混乱要因になりかねないこの部分が、きちんとルールができて、
お互いに一緒に経済
関係を結んで平和裏に安定的にやろうじゃないかという話があれば、東アジア経済圏というのは、特に北海道の皆さんとか
日本海側の
幾つかの都市にとってみれば非常に
意味のあるもので、現に環
日本海構想なんというものがあるわけですから、十分そういう将来的な
可能性はあると思います。
しかし、やっぱりそこには安定感というものがなければいけない。その安定感はどうやってつくるんだと。
アメリカもかかわる、
ロシアもかかわる。しかし、その朝鮮半島が持つ、言ってみれば何となく不透明な、よく見えない、そしてそこから来る不安定になりそうな
感じというものが、やはり経済というものは安定した環境の中でないとやれないということの、つまり経済の足を押さえてしまっている部分というのがあるのではないか。
したがって、つまり政治が克服できる問題でありますから、政治はそういうものを克服する
努力というものをしなきゃいけない。しかし、この
努力は我々が一方的にするわけにはいかないんで、やはり朝鮮半島の人たちもそういう克服するための政治的
努力をしてもらわなければならない。そして、
お互いに本当に安心してつき合えるという
状況をやっぱり早くつくり上げるということが大事なのではないかというふうに思っております。