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武田邦太郎君
沖縄開発庁長官に、林業について所見を申し上げて、お考えを伺います。
三月十日の本委員会で、アメリカの
沖縄基地が返還された場合にこれをどう利用するかという問題で、熱帯、亜熱帯の発展途上国の留学生を受け入れる、世界の平和に貢献するようなそういう
研究、
教育の
施設をつくったらどうかということを申し上げたわけでありますけれども、現状では特にアメリカと中国が軍事的に対立しておる今日ではまずこれは夢のような話であります。
アジアの平和、世界の平和を考える場合、少しでも早く
沖縄の基地をアメリカが後顧の憂いなく返還するような
状況を
日本が主として国際的につくり上げていくということが大事だろう。特に、また一層夢のような話だけれども、できれば今後三十年の期限を持つくらいの、
日本、中国、アメリカの相互不可侵条約を結ぶぐらいのことは考えられないか。この条約が幸いにして実現すれば、中国、アメリカ、
日本の国の財政あるいは
国民経済にとって恐らく比べ物のない利益をもたらすだろう、こういうことも申し上げたわけであります。そういう考え方と並んで、中国とアメリカがそれはいいなと思うような返還後の利用の
計画を同時に用意することが、また返還を
推進する
一つの要因になるだろうということも申し上げたわけであります。
まず、
沖縄の製造業的なものの発展が非常に幼いために、一次産業あるいは観光以外の三次産業の発展がなかなかうまくいかない、こういうことは紛れもない事実でありますけれども、そういうことを含みに入れながら、まず一次産業を中心とした
研究教育機関を考えると。
先ほど来、水の問題が非常に論議されまして、私もかねて関心がありましたので深い感銘をもって伺っておりました。やはり、水の一番大きな問題は海水の淡水化じゃないかと思うんですね。そのためには、いかに安いエネルギーが
開発されるか。太陽エネルギーなり、あるいは海の波、波浪エネルギーの
開発は非常にコストが安くいくようでありますので、こういうことが
一つ。
それからもう
一つは、戦争中サツマイモなどを原料にする高級アルコール、ブタノールなどをつくって飛行機を飛ばすというようなことがございましたが、イモ類が今
全国十アール当たり一トン半ぐらいのものでありますけれども、
沖縄の自然条件の中で十トンから十数トンのサツマイモをとる。これは味は大してよくなくてもいいわけでありますから、アルコール原料として収量がうんと上がるという技術
開発であります。
そういういろんなエネルギーの考え方があるわけでありますが、やはり基地が返されて少なくともアメリカのハーバード大学クラスの
研究開発、留学生受け入れの体制がほしいと思いますけれども、その
一つは、安いエネルギーをいかに
確保するか。特に、海水を淡水化すれば海水の中にある貴重な資源が得られるという利益もありますので、ぜひその
開発を
研究教育の中に入れていただきたい、こう思います。
しかし、きょう申し上げるのはそういうことではなくて、一次産業についての問題でありますが、この前三月十日にはサトウキビが今の二倍以上どれる可能性があるということを申し上げました。そのほか、畜産の条件も非常にいいですね。特に
沖縄はヤギの肉を食べる。
沖縄料理といえばヤギ肉というふうに考えるわけでありますけれども、行って食べてみるとまずいですね。つまり、おっぱいを搾るヤギの肉を肉用として利用している面がありまして、これはもうニュージーランドあたりに行けば肉のおいしいヤギが幾らでもあるわけであります。しかも、あれは針葉樹の葉っぱ以外は草でも広葉樹の葉っぱでも何でも食べて、おっぱいも出せば肉もうまいのがあるし、毛も非常に高級な毛を生産するという貴重な動物でありますから、ぜひ
沖縄の畜産にはヤギをひとつ重要な問題として取り上げていただきたい。
それから
施設園芸は、これはほとんど暖房設備が要らないわけで、台風の時期に
施設を取っ払って台風が済んだらまた構築するということをやって、現在でも二戸当たり一億以上の所得を上げている
施設園芸の農家がおりますので、これなどもぜひハイレベルのものを
一般化することが大事でありますが、一番興味がありますのは林業です。
林業は、御
承知のように全世界的に毎年数百万ヘクタールの森林が荒廃に帰して、地球上に炭酸ガスが非常にふえて温暖化が進んでいくこれが地球
環境悪化の最大の問題とされておりますけれども、それについてはやはり森林を極力拡大して炭酸ガスを効率的に生産に振り向ける体制と、これはもう林業以上のものはございません。林業が
日本でも余りもうからぬものですから
一般の農業よりももっと若い人が林業に入らないわけで、何とかして林業をうんともうかる産業にするということが、これは全人類的なまた
日本にとっても当面の重大問題であります。
これについてぜひ御留意いただきたいのは、今から七十年ほど前にアメリカのカリフォルニアで、現在のカリフォルニアの野菜とか果物はほとんどルーサー・バーバンクという育種の天才の
努力によってつくられたものでございますけれども、彼はエジソンそれから自動車のフォードと並んで近代アメリカの三大臣人と言われております。
彼は、ただ野菜、果物だけじゃなくて樹木の品種改良に大変な功績を残しております。一番有名なのはクルミの品種改良でありますけれども、在来種が三十年以上かかる太さの四倍の太さになるようなスピードを上げて成長する新品種をつくっております。樹木の年齢が在来種の半分で、そして樹木の太さが四倍になる。結局、八倍のスピードをもって大きくなるわけです。
それじゃ、速く大きくなるんだから年輪が非常に雑で、材木としてあるいは燃料として余り価値がないんじゃないかと普通は考えられるわけでありますけれども、バーバンクのつくった新品種はそのあべこべでありまして、在来種は三十年以上もかかる大きさの四倍の大きさになる樹木が、切ってみると年輪がきちっとかたくて、家具をつくれば堅牢で美しい、
建物を建てればなおさら立派で風格がある、そういう樹木をつくり上げた。ただ、彼は晩年にはキリスト教の教会から神の御技を撹乱するという名目で弾圧されるんです。いやおれは神のみわざに奉仕しているんだと必死になって抵抗するんでありますけれども、弾圧の結果、それとの闘いで健康を害して死んでしまうわけでありますけれども。
アメリカは御
承知のように林業が非常に盛んな国でありますけれども、自然成長量の方が伐採量より多いぐらいでありまして、残念なことにバーバンクのそういう業績を活用する必要を余り感じていないんです。これはカナダでもロシアでも同じでありますけれども、何とかして彼の後を引き継いで、それで普通の在来種の樹木の八倍も大きくなって木目がかたくて堅牢だと、こういう樹木の品種改良の可能性を
日本が受け継いで
沖縄のその
研究教育の機関で、先ほどのエネルギーの
開発も重要な問題ですが、同時に、樹木の
研究開発もぜひその中の
一つの大きな課題として取り上げていただけないかと。
これはこの間新任された林野庁の
長官にも申し上げてありますので、ぜひ
沖縄開発庁長官も御在任の間に、
沖縄には琉球大学、
沖縄大学ありますが、品種改良の大家もおります、それからエコロジカルシステム、廃棄物をうまく微生物で活用してうんと質のいい作物をスピードアップさせる、収穫させる、そういう双方の
研究家がおられますので、何とかこの人たちに林業の方へも
研究の目を向けていただくと。
沖縄県、
沖縄の両大学、それから林野庁、こういうところをうまく結びつけて何とか早く、まだカリフォルニアのサンタローザにバーバンク・ソサエティーというのがありまして、彼の
研究の後を恐らく細々ながらやっているわけですね。それを大いに活用して、アメリカの農務省にも注目を喚起しながら、ぜひ
日本でこれを活用するようにお力添えいただけるとありがたい。ぜひお願いします。