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1995-05-11 第132回国会 衆議院 労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年五月十一日(木曜日)     午前九時三十五分開議  出席委員    委員長 笹山 登生君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 長勢 甚遠君 理事 河上 覃雄君    理事 北橋 健治君 理事 柳田  稔君    理事 岩田 順介君 理事 佐藤謙一郎君       加藤 卓二君    粕谷  茂君       額賀福志郎君    藤尾 正行君       二田 孝治君    持永 和見君       上田  勇君    初村謙一郎君       桝屋 敬悟君    松岡滿壽男君       池田 隆一君    田邊  誠君       永井 孝信君    寺前  巖君  委員外出席者         参  考  人         (全国中小企業         団体中央会常務         理事)     山本  貢君         参  考  人         (東京家政大学         教授)         (高齢社会をよ         くする女性の会         代表)     樋口 惠子君         参  考  人         (日本労働組合         総連合会事務         局長)     松本 惟子君         参  考  人         (全国労働組合         総連合婦人部         長)      中嶋 晴代君         労働委員会調査         室長      松原 重順君     ――――――――――――― 五月九日  過労死労働者災害補償等に関する陳情書外一件(第二二一号)  介護休業法の制定に関する陳情書外五件(第二二二号)  緊急雇用対策継続実施に関する陳情書(第二二三号)  総合的な雇用対策の推進に関する陳情書外一件(第二二四号)  女子学生中心とした新規学校卒業者採用枠の拡大に関する陳情書(第二二五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二八号)  介護休業等に関する法律案松岡滿壽男君外四名提出衆法第三号)  派遣委員からの報告聴取      ――――◇―――――
  2. 笹山登生

    笹山委員長 これより会議を開きます。  内閣提出育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案及び松岡滿壽男君外四名提出介護休業等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  本日は、両案審査のため、参考人として全国中小企業団体中央会常務理事山本貢君、東京家政大学教授高齢社会をよくする女性会代表樋口惠子君、日本労働組合連合会事務局長松本惟子君全国労働組合連合婦人部長中嶋晴代君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  御意見は、山本参考人樋口参考人松本参考人中嶋参考人順序で、お一人十五分程度お述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  念のため申し上げますが、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできませんので、あらかじめ御了承願いたいと存じます。  それでは、山本参考人からお願いいたします。
  3. 山本貢

    山本参考人 全国中小企業団体中央会山本でございます。よろしくお願いいたします。  これより、本委員会に付託されております政府提案育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案並び新進党提出によります介護休業等に関する法律案につきまして、中小企業立場から意見を申し述べさせていただきます。  結論を最初に申し上げますと、以下に述べますように多くの問題点はありますが、今回の法律案につきましては、政府案に大筋において賛成するものであります。  介護問題は、急速に進展する高齢化少子化社会の中で、我が国社会が一丸となって取り組まなければならない国民的課題であることは、私どもといたしましても十分に認識しておるところであります。そのためには、介護対策の全体像が策定され、国、自治体、家族個人企業といったそれぞれの役割が明確になり、負担についての社会的コンセンサスが確立されることが何よりも必要であると考えております。  そうした中で、企業におきます介護休業制度導入の問題は、従業員が遭遇する家族介護問題を解決していくための従業員福祉の観点から、関係労使がその置かれた環境状況に応じて自主的に判断し、その内容を決めていくことが基本であると考えるものであります。  さて、現下の中小企業の動向でありますが、景気は緩やかながらも回復基調にあると言われておりますものの、ここに来まして足踏み状態にあり、中小企業経営の現場におきましては、回復というにはほど遠いというのが実感であります。  特に、年明け早々勃発いたしました阪神淡路大震災は、兵庫県南部を中心に未曾有の被害を与えましたが、その影響は、当該地域中小企業のみならず、サンダルや製靴部品など当該地域から製品を仕入れていた業界や納入先親企業被災地に持つ下請企業交通網の途絶によって取引の中断を余儀なくされた物流関係業者を初め、旅館、ホテル等観光関連業者、震災を機に買い控え傾向による売り上げ減少になっている地域商店街等多くの中小企業に予期せぬ影響を及ぼしているのであります。  しかし、何と申しましても、最も大きなダメージは昨今のすさまじい円高であります。日がわりで史上最高値がつくほど、全く異常な状態が続いているわけであります。このため、輸出関連中小企業はもとより、輸入品増大による価格競争の一層の激化により、ニット、アパレル等競合製品を取り扱う中小製造業者並びに卸、小売といった流通分野におきましては、採算割れぎりぎりの経営を余儀なくされておるところであります。  さらに加えまして、労働面での課題があります。その最大のものは、申し上げるまでもなく、雇用確保であります。あの阪神淡路大震災による失業者増大が物語りますとおり、一時的にしろ中小企業が消滅し、衰退することは、いかに大きな影響社会に与えるかを示していると思います。  次に、待ったなしの課題として労働時間の短縮問題があります。あと残されました期間は二年弱でありますが、平成九年四月以降、十人未満の商業、サービス業等特例対象事業所を除き、すべて週四十時間労働制に移行しなければならない方向が示されております。  さらに、この四月より育児休業制度事業所規模関係なく全面適用となり、これに対する社内対策も早急に講じなければならない状況にあります。  このように、中小企業の置かれております環境がかつてないほど厳しい状況の中で、このたびの介護休業法制化が打ち出されたわけであります。  確かにこの問題は、昨年七月より労働省婦人少年問題審議会におきまして本格的な議論が開始されました。当初は、今なぜ介護休業なのか、雇用の維持も時短も育児対応しなければならないときに、加えて介護もやりなさいとは、中小企業の実情を一体どのように考えているのだろうか、理解に苦しむという声が噴出したのであります。  介護問題につきましては、冒頭申し上げましたとおり、高齢化少子化が進展している今日、避けて通れない問題であることは承知しておりますが、諸外国の例を見ましても、法律により介護休業企業義務づけているという例はほとんど見当たりません。特に、イギリス、フランスにおいてもいまだ法制化されておらず、ドイツにおきましても、十二歳未満病児について年間十日間の休業が認められているにすぎません。こうした状況は、まだまだ介護問題における介護休業の位置づけが十分になされていないということではないでしょうか。  したがいまして、私どもといたしましては、介護対策についての全体像が見えてこないうちに介護休業だけが先行することは納得いたしかねる、その前に、まず労働省が策定いたしました介護休業に関するガイドライン等により介護休業普及を図り、国民的合意形成に努めることが何よりも肝要であると訴えてまいりました。  また、労働省が行いました女子雇用管理調査の結果を見ましても、介護休業制度普及率は全体で一六・三%でありまして、うち五百人以上の大企業におきましては五一・九%の導入が行われておりますものの、三十人から九十九人未満中小企業におきましてはいまだ一四・二%という状況にあり、中小企業の大半を占めております三十人未満小規模事業所におきましては恐らく限りなくゼロに近い数値にあることが推測され、残念ながら、このような状況のもとにおきます介護休業法律による強制的義務づけはいまだ時期尚早であると主張してまいりました。  しかしながら、種々の状況を勘案いたしまして、使用者側意見意見として、審議会意見の取りまとめには同意したわけであります。したがいまして、婦人少年問題審議会におきます建議内容は、私どもといたしましてはやむを得ないぎりぎりの線であったということを十分に御理解いただきたいと存ずるのであります。  こうした背景、経過を踏まえまして、今回御提案法律案につきまして意見を申し上げたいと存じます。  まず政府案に対してでありますが、政府案で言う介護休業制度事業主義務という企業にとっては最も厳しい内容となっております。従業員から休業の申し出があれば、休業開始予定日を若干ずらす余地はあるにせよ、事業主は拒否できない仕組みになっております。何か、従業員との話し合いが不要となり、今まで築いてきた従業員企業との信頼関係がぎくしゃくする感じが否めません。このため、私どもは、百歩譲って法制化を認めるにしても、こうした形成権を付与するような仕組みではなく、当面努力義務規定基本とすべきであると申し上げてきましたが、受け入れられなかったことに十分御留意いただきたいと存じます。  次に、介護休業期間の問題であります。  法案は、連続する三カ月を最低限度としております。なぜ三カ月かという根拠につきましては、昨年七月に労働省より発表されました介護休業制度に関する専門家会合報告書の中におきまして、脳血管疾患典型例として取り上げ、発病した場合、三カ月程度介護休業期間介護を通じて施設への入所が適当か、引き続き家族による介護が適当かについて冷静に判断し、その対応を考えることができること、また、労働省が行いました女子雇用管理基本調査によりましても、介護休業導入企業において実際に取得されました介護休業の八割近く、七七・七%が三カ月未満となっている実態があることによるものと考えますが、これにつきましては、連続してという取得形態はよしとしても、義務化を前提とする最低基準としては一カ月程度とするのが妥当であり、これであれば、中小企業事業所におきましても要員管理上も何とか対応が可能と考えられ、休業する人もそれほど気兼ねなしに取得できることにもなり、現状では三カ月を最低基準とすることは、特に中小企業立場からは、代替要員確保困難性を考えますと、残念ながらもろ手を挙げて賛成いたしかねるのであります。  三つ目は、介護休業回数及び要介護者範囲についてであります。  休業回数の問題は、介護される家族すなわち要介護者範囲と切り離して考えるわけにはまいりません。私どもは、配偶者父母及び子並びに配偶者父母に限定し、一人につき一回を主張してまいりましたが、これについては、政府案におきましても対象家族一人につき一回という回数になっており、妥当と考えます。しかし、要介護者範囲につきましては、これらの者に準ずる者を含むということで、さらに対象が拡大されることになりました。介護休業制度の運用に当たりましては、制度の趣旨に沿って利用されるべく十分留意する必要があると考えております。  四つ目は、施行期日の問題であります。  先ほども申し上げましたように、介護休業制度導入実態から考えまして、これを法律で強制するというためには必要最小限度準備期間が必要であります。我々といたしましても、今後の高齢化社会の中での介護必要性企業の担うべき役割という点での啓蒙啓発に精いっぱいの努力を傾注する覚悟でありますが、やはり本制度実効性確保ということを考えますと、相当の準備期間の設置が不可欠であります。また、施行までの間に新ゴールドプランの実現や思い切った導入奨励策、さらには有効な代替要員確保策を講じ、中小企業が円滑に本制度導入できるような環境整備が十分図られるべきだと考えております。  最後に、介護休業制度導入に当たっての問題点についてでありますが、言いかえますと、何がネックで今すぐ介護休業制度導入できないのかということでありますが、これはやはり中小企業にとりまして代替要員確保と新たに要員を補充した場合のコスト負担最大の問題であります。  代替要員の問題を考えます場合、仕事の繁閑、事業所従業員規模休業取得者職種等により対応が異なるものと考えます。率直に申し上げまして、従業員が百人とか二百人以上の企業であれば、代替要員につきましては他のセクションの人を回すとかして社内対応が可能である場合が多いと考えますが、これが十人以下の小規模企業になりますと話は別でありまして、人員の余剰はありませんし、代替要員をすぐに手当てすることは困難であり、こうした規模の層が全事業所の八〇%を占めていることに十分配慮がなされるべきであると考えます。  しかも、介護休業取得者管理職でありましたり、熟練技能者であった場合には、これをパートやアルバイトで補充するというわけにはまいりません。恐らく、そうした場合、現実的には、人により違いはあるにせよ、こうした事業所で働く従業員の多くは、休業でなく勤務時間の短縮等によって対応するか、または休業それ自体に入ることができなくなるということではないかと思います。  これに対する施策といたしましては、今回本改正案におきまして委託募集特例という措置がとられることになっておりますが、私どもは、別途、介護のためには、すべての業務で派遣が可能となるような派遣制度の見直しを要請しているところであります。ぜひ、これにつきましても早急な実現方をお願いする次第であります。  以上、幾つか申し上げましたが、今回の法律案は私どもの考えとはなお隔たりがありますが、三年半という準備期間が置かれておりますので、この間何とか導入準備を急ぎ、対応しなければならないと考えております。そのためには、繰り返し述べるようでありますが、最低基準であるハードルはできるだけ低くしてもらわなければならず、政府案内容は依然ハードルが高く、妥当なものとは思いませんが、痛みをこらえてやむなく、ぎりぎりのところで受けざるを得ないと判断した次第であります。  したがいまして、私どもといたしましては、国の事業主等に対する支援措置について中小企業者に特別な配慮を求めていただいております箇所を除きまして、企業に対しましてはさらに大きな負担を課すこととなります新進党提出法律案につきましては、残念ながら賛同することはできません。専門家会合報告を踏まえ、公労使におきましてぎりぎりの調整を行った結果である婦人少年問題審議会建議に沿った内容でまとめられている政府案が私どもの考えられる最大限のものだと思う次第であります。  最後になりましたが、本法律が制定せられるに当たりましては、ただいま申し上げました代替要員確保の有効な方策をぜひ講じていただきたいこと、また、介護休業導入を促進するための思い切った施策を講じていただきたいこと、さらに、休業しても介護ができるよう介護労働力確保を初めとする在宅福祉サービスを充実すること、さらに最も基本的なことでありますが、家族個人介護が困難な場合にも安心して老後を過ごせるような公的介護体制の一日も早い確立を要望いたしまして、私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  4. 笹山登生

    笹山委員長 ありがとうございました。  次に、樋口参考人にお願いいたします。
  5. 樋口惠子

    樋口参考人 ILO百五十六号条約、いわゆる家族的責任条約の批准を目前にいたしましたときに、このような介護休業法案審議の席に加わらせていただきまして、まことに光栄に存じます。  私は、自己紹介をさせていただきますと、恐らく最近はやりの無党派層の一人だろうと思っております。しかし、この法案に関する限り、私は、政府提案よりもはるかに新進党提案の方がよろしいと思ってここに参りました。  私が代表をいたしております高齢社会をよくする女性の会は、一九八二年、昭和五十七年に、進行する高齢社会において女性の側から発言し政策提言しようという目的を持ってつくられた会でございます。その第一回の会は、本来は単なる一回限りの会のつもりでおりましたが、そこにおいて、女性のみに一方的に偏っている介護男女ともどもに分かち合っていかない限り本当に豊かな高齢社会はできないという確認のもとに、会を設立し、現在に至っております。現在、会員数は超党派で各市町村の議会の議員なども含めまして千五百名、そして各地にグループが百以上ございます。  介護休業法に関する私どもの会とのかかわりは、この第一回の会のときにアンケートをとりましたときに、集まった人の二分の一の約三百名からアンケートが寄せられましたが、その中の九七%が女性就労継続のための何らかの社会的条件整備を叫んでおりました。  日本女性就労継続を妨げる大きな原因として、労働省調査などを見ましても、まず育児がございます。それから、夫の転勤などがございます。そして、このごろふえてきておりますのが老人、病人の介護による退職でございます。  育児の方は、御承知のとおり育児休業法ができて、大分問題の見通しはできてまいりました。育児峠を越えて、これからいよいよ職業的な正念場と思い、時には一たん育児で退職した人が再就職機会を得て働き始めたときに、第二番目にぶつかるのが老親介護でございます。  私どもの会のシンポジウムにおきましても、せっかく再就職を果たし、この人は研究者として一たん育児のために仕事中断した人でございましたが、子供の手が離れたころから、家族の協力を得まして営々辛苦アメリカへ留学しておりました。そのときに、おしゅうとめさんが病気で倒れ入院なさり、そしておしゅうとさんの身辺の世話もしなければならないという理由で留学先から国際電話で呼び帰されるということで、また二度目の中断をしなければならなかったわけであります。  育児というのは先の見えることでありまして、そしてまた育児峠は越えていくことができます。介護の方は峠と言うより介護谷と言った方がよいのでございまして、谷底に落ちてそのまま二度と就労機会を得られないということを私たちは多々目にしてまいりました。  そして、この女性のライフサイクルの上で二度も起こる就労中断というのは、単に女性にとって職業上の自己実現経済的自立がそのときできないというだけでなく、老いの女性貧困、つまり良好な安定的、継続的な雇用機会に恵まれなかったがために、資産も乏しく年金もごくわずかであるという高齢者女性貧困に直結しているわけであります。というわけで、私どもは、介護休業法というのはもう緊急につくらなければならないといつも提言してまいりました。  そこで、今回具体的にこうした法案の形が見えてきたのは喜ばしいことと存じますけれども、まず第一に申し上げたいことは、この期間の点でございます。  三カ月、もちろんないよりましでございます、すべて。しかし、この三カ月というのは、高齢者病院施設などの受け皿から見まして、これは今医療のさまざまな制度が変わって、三カ月たちますと、特に慢性的な症状で固定しているような場合には退院を迫られているということはよく御存じのとおりでございます。しかも、今病院におきましては付き添い廃止方向が進んでおりまして、これも私は方向としては望ましいこととは存じますけれども家族に対する負担が大変多くなっていることもこれまた明らかな事実でございます。  三カ月というのは、仮に症状が固定したとしても、あるいは家に辛うじて連れて帰ることができる方はいいのですけれども、そうでないと、三カ月というのがめどで病院から病院へという転送がよく起こっていることは御案内のとおりでございます。三カ月というのはまさにその節目の時期でございまして、私は、この三カ月というのは余りにも短過ぎると思います。  そして、仮に自宅へ帰れたといたしましても、高齢者の病態というものは一症状で固定するものではございません。私どもが具体的に調査いたしました中でも、七つぐらいの病名を持っているお年寄りはざらでございました。ごく一般的な場合でも、例えば、がんその他の手術で入院なさる、三カ月程度で一応退院できて家に帰り、リハビリもしたし、どうやら動けるようになっているときに、日本住宅事情は決して障害を持ちあるいは虚弱になった人に住みやすくできておりませんから、敷居などにつまずいて、今度は複雑骨折で、退院わずか一、二カ月でまた病院へ舞い戻らなければならないなどということは、ごくざらに見る症例でございます。  このような場合に、果たして三カ月ということで対応できるでしょうか。長ければいいというものではないという御意見もわかります。しかし、ある程度の方は一年間の中で亡くなる方もありますし、そのときにはもう介護休業をとって親なり家族なりの最期を見送れて本当によかったというふうに言っていらっしゃる方もあります。  少なくともこの一年間という期間をもって、そして願わくは、それを症状に応じて、高齢者症状というものは、介護を要する方の症状というのはまことに個性的なものでございます。どうかすると、高齢者というものは、一つのあり方、例えば寝たきりなら寝たきりになってそのままというような政策が多いのでございますが、実は高齢者は、起き上がることができるようになってみたり、そして今度骨折したり、あるいはまた別な症状が出たり、すごろくじゃございませんけれども、上がりかと思ったらまた振り出しに戻ったり、そしてまた行きつ戻りつしながら、しかし人間としてどうしても避けられない死に向かうのでありますが、その期間をどれだけ人間らしく、自分らしく過ごせるように支えるかということにこそ政治は動いていただきたいと思っております。  これが、期間の問題と、一症状につきというふうに言われた案の方がよいと思う点でございます。  それから、短時間勤務ということ、これは私は、育児休業以上に介護休業には大事なことではないかと思っております。  もちろん、在宅介護を支えていくということは大事でございますが、少なくとも今までの状況では、フルタイムの仕事を持つ夫婦あるいは労働者が、完全に施設に頼らないで在宅だけでということはなかなか難しいものがございます。症状が固定して、ある一定の待ち時間を経て、これも残念なことに、例えば特別養護老人ホームに入りますには、都市におきましては必ずまずは一年から時には三年近い待ち時間を要します。そうした施設あるいは比較的恵まれた病院に入ることができましても、なるべくその施設は近いところにあり、たびたび家族が見舞うということが心情的にも大事であると同時に、現在ではシステムの上で家族の助力を必要といたしております。私どもは、こうしたシステムとして家族が来なければいけないというようなことは、つまり付き添い廃止のツケが家族に回ってくるというようなことは避けてほしいと思っておりますが、家族が心情として毎日のように見舞いたいということは大切にしていかなければならないことだと思っております。  さて、親族の範囲でございますが、これもまた兄弟、祖父母介護しなければならない場合も意外にございます。特に女性の兄弟同士一緒に住んでいる場合というのは比率にしてもかなりあるものでございますし、親が倒れてしまったり何かの事情で祖父母を見ている二十代、三十代の介護体験記なども私はよく見る機会がございます。こういうときには、必ずしも同居でなくても祖父母、兄弟まで入れてほしいと思っています。  最も強調したいことの一つは、施行期日でございます。もうきょうにも介護休業制度は本当に発足していただきたい。年間八万人の労働者介護を理由に退職し、その大半が女性であるということは御案内のとおりでございます。ということは、先ほど申し上げましたように、今その人たちが退職せざるを得ないというだけではなく、大半が女性であるその人たちの老後の貧困を手をこまねいて再生産しているわけでございまして、施行がもし五年後になるとするならば、これはその五倍と言いたいところですけれども、あるいはもっと多いと思います。なぜならば、日本高齢化はこれまた御案内のとおり世界一の超スピードで進んでおりますから、今八万人が要介護のために退職しているとすれば、来年はもっと多く、再来年はもっと多く要介護状況が出てくるに違いありません。だとすれば、この高齢者介護休業制度を一年おくらせることは、それだけ未来の女性たち、特に女性労働者たちの貧困を約束することになってしまうのであります。  以上が、私が新進党提案の方がよりよいと思った理由でございますが、もちろんこのためにはちゃんと受け皿があることが大事でございます。介護休業制度について、これはむしろ家族介護を固定するものであって、しかも大半を担っている女性介護を押しつけるものであるから、緊急避難として認めるにしても短い方がいいという御意見もあります。私の周辺にもそういう意見の持ち主もおります。理論的には私もそのことを納得いたします。しかし、現に高齢者を抱える人々に聞きましたときには、この三カ月でいいと言う人はだれもいませんでした。  今、日本人の不安の中で最大の不安が老後の介護の問題でございます。これだけ行く先が不透明な日本社会におきまして、これほど確実に見えていることは急激な高齢化でありまして、特に介護を要する後期高齢者がふえていっているということでございます。それに追いつく福祉サービスが十分でない中で、私たちはさまざまな選択肢を、さまざまなものをとにかくたくさんにつくっていくということが今や国民的課題であって、そして中小企業の御困難な様子というのはよくわかりますけれども、そこはもう国を守る気概を持って、政府が何らかの形で支えることを通して企業も国民も家族も政府も行政も高齢社会を支える責任を分かち合う、痛みを分かち合いながら支えていくということを、新しい日本の国の一つの品格ある目標としていかなければならないと思っております。  最後に、きょうは傍聴席には大変女性も多くていらっしゃるのですけれども、この労働委員会は全員男性と承っております。今、女性の先生もいらっしゃって心強うございますが、特に男性の先生が多いからこそ、私も今までは介護休業制度女性就労継続及び女性の地位の問題として申してまいりましたけれども、実はこれは男性の問題でございます。  育児休業制度が発足いたしましたけれども、今までに報告されている調査で見ますと、男子の取得は〇・二%と聞いております。これに対しまして、現在介護休業制度を持っているところでございますけれども、そこで見ますと、これは労働省調査の一つでございますが、男子が介護休業を取得いたしましたのが二三・一%と言っております。これは男性がとらなければならないのはもはや必然的でございます。  昨年私は、カイロの人口開発会議に政府間代表の中に加えていただいて、たまたまピラミッドも見てまいりまして、そこに立ちまして本当に感無量でございました。日本の人口構成は、ピラミッド型だったのが、今やコカ・コーラ・ボトラーズのそのボトルの形にその姿が崩れております。つまり、親は二人に子は五人で三世代やってきたのが、今は親は二人に子は二人になり、その方々が今四十の声を聞こうといたしております。今までの日本労働者は、いつも上りの片道切符を持って働きに出てまいりました。そしてそれは、親の介護や村への責任からある意味で解放された労働力を使って日本は来ていたのだと思います。しかし、今や一億総長男長女社会ということは、これは男も女もなく、介護から逃れられない人がふえてくるということでございます。  しかも、考えようによっては、介護は男性の適職であります。労働委員会の先生方は百も御承知のとおり、男女雇用機会均等法とともに改正された労働基準法において、女子に対する危険有害業務はほとんどなくなりました。残っておりますのは重量物制限でございます。断続的作業三十キログラム、連続的作業二十キログラム以上の重量物は女子は雇用労働者においては扱ってはいけないことになっております。それが家族におきまして介護はほとんど女性に今のところ任せられ、例えば私を二人がかりでおふろに入れるとしたら、これはもし雇用労働者であったら明らかに労働基準法違反なのでございます。そういう意味からいいますと、私は、現状でもう既に男性の介護休業取得が育児休業を上回っているのは非常にむべなるかなと思っております。  昔の新しい男、与謝野鉄幹は、今の与謝野文部大臣のおじい様でありますが、「妻をめとらば才たけてみめ麗しく」と言いました。今これからの新しい男は、どうぞ妻が倒れたり親が倒れたりしたときは「妻をみとらば飯炊けて、みめはともかく力ある男」、これこそ二十一世紀を担うすばらしい男性であり、そして、そうした介護、ケアをシェアし合うシェアリングソサエティー、ケアリングソサエティーはシェアリングソサエティーと存じます。その介護を国民的に分かち合っていくことこそ、男女共同参画の、しかも老いを決して見捨てない品格ある社会であると申し上げて、終わりたいと思います。(拍手)
  6. 笹山登生

    笹山委員長 ありがとうございました。  次に、松本参考人にお願いいたします。
  7. 松本惟子

    松本参考人 御紹介をいただきました連合の松本でございます。  意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。  私は、今国会は、長い間女性の就業継続のための条件整備を求めてまいりました私たちにとりまして大変意義あるものになるのではないかというふうに思っております。と申しますのは、介護休業法案審議に先立って、八一年の第六十七回ILO総会におきまして日本政府も賛同して採択をされました家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇の均等に関する条約、いわゆる百五十六号条約の批准が四月十四日の参議院本会議をもって全員一致で承認されたからでございます。  言うまでもなく、この条約の意義は、家族的責任を有する男女労働者が「職業上の責任と家族的責任との間に抵触が生ずることなく職業に従事する権利を行使することができるようにすることを国の政策の目的とする。」というふうに言ってあることでございます。政府は、この条約の採択以降、条約の目的に沿ってより一層国内法の整備に努め、働く女性環境づくりを進めてまいりましたし、今後も一層進めていただくことが大変重要であるというふうに考えております。  八五年には女子差別撤廃条約を批准、そして八六年には男女雇用機会均等法、そして九二年、男女労働者対象とした育児休業法、さらに九三年には短時間勤務労働者雇用管理改善に関する法律施行されました。また、本年四月からは育児休業中の所得保障として、当面ではありますが、雇用保険から二五%が支給され、あわせて公務員労働者にもこれが支給されることになりました。  このような動きがあったということを考えますときに、この運動に取り組んでまいりました労働団体の責任者として労働委員会関係者の皆様の御努力に改めて敬意を表させていただきたいというふうに思っております。そしてまた、この一環として、今回の介護休業法問題につきまして熱心に取り組んでこられました日本社会党、旧公明党、旧民社党の皆さんが政権に入られまして御努力をいただきましたことにつきましても、心から敬意を表させていただきたいと思います。  女性が長く働き続ける場合の困難や障害の事由について述べさせていただきますと、八九年の総理府の統計調査がございます。その障害の第一が「育児」で約六割、そして次が「老人や病人の世話」で約五割、「子供の教育」が約三割、二五%、それから続いて「家事」というふうな順になっておりまして、育児老親介護が最も多いという現実が浮き上がっております。  さらにまた、九二年の総務庁による調査を見ましても、女性の離職者の理由の多くが、女性の離職者総数が百七十七万三千人おりまして、そのうち「育児のため」が二十三万九千人ですね、これが離職者の一三・五%、「家族介護・看護のため」というのが、もう耳にたこができるほど聞いていらっしゃるかと思いますが、この時点での調査でも八万八千人というふうになっておりまして、大多数が女性でございます。「家族就職・転職・転勤」というのも六万五千人、三・七%を占めております。こういった理由からの離職者は何と三十九万二千人にも上っているという現実がございます。  この二つの調査を見ましても、家族的責任が女性に大きくのしかかっている現実が浮かび上がってまいります。したがって、百五十六号条約の締結の承認を受けまして、家族に対する責任を男女がともに分かち合いながら、職業生活と家庭生活の両立を図っていくための支援策の一層の充実が必要であるということを初めに強調させていただきたいと存じます。  さて、両立支援策の当面の重要課題でございますけれども、言うまでもなく、今国会で審議をされています介護休業制度法制化の問題でございます。  介護休業制度法制化につきまして与野党から法案提出をされております。政府提案に対して新進党が対案として提出をされているということでございます。このことにつきまして、法案の目的、理念は一致しているというふうに考えております。両案の違いは、一々申しませんけれども内容の問題であるというふうに思います。したがって、このことにつきまして与野党でどうぞしっかり審議をしていただき、育児休業法の制定の過程でもございましたように、委員各位の英知を結集していただきまして、一致点をさらに拡大をして今国会で成立させていただくようにお願いする次第でございます。  それでは、まず政府の案について述べさせていただきたいと思います。  介護休業制度法制化につきましての審議ですが、婦人少年問題審議会が九四年の十二月に、法的整備を速やかに行うように建議をいたしまして、この建議を受けて九五年の一月に法案要綱の諮問がございました。そして「おおむね妥当」であるというふうな答申をしたわけでございます。労使の意見をつけてでございます。  この審議の過程におきまして、先ほど山本参考人が述べられておりましたけれども介護休業介護問題が重要であるということについては共通認識となっております。しかしながら、法制化につきましては、社会福祉の政策がこれを補うべきであること、そして、その将来像がまだ見えない中で企業への義務化はすべきでないということが第一点。第二点目は、景気が思わしくない中で中小企業負担が重い。第三点目が、介護休業は、育児休業と違って会社の基幹労働者休業をとることも考えられるので、代替要員確保が大変困難であるというような理由を述べられていたというふうに記憶をしております。したがって、法制化には強く反対をされました。  これらのことを思い返しますと、生い立ちが大きく異なる連立与党におきまして合意を取りまとめ、そして、家庭生活と職業生活の両立を図ることを目的にして、使用者に介護休業義務づけられたこと、つまり介護休業労働者の権利とする法律を国会に提出をされたことにつきましては評価をするものでございます。この上に立って私は、次に政府案への意見を述べさせていただきたいと思います。  政府案の第一条には「子の養育又は家族介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずること等により、子の養育又は家族介護を行う労働者等の雇用継続及び再就職の促進を図る」、法律の言葉は大変舌をかむようでございますけれども、このように述べております。この法律の目的としてこのことを規定をしているわけでございます。さきに述べましたように、女性労働者育児介護のはざまで離職を余儀なくされているという実態からしますと、この目的は当然のことであるというふうに思います。  今求められておりますのは、これに対する実効の確保というふうに考えます。せっかくつくる法律でございます。もっと実効あるものにしていただきたい、これが多くの労働者が期待をしているところでございます。  この立場から、まず第一に介護休業期間について述べさせていただきます。  政府案は、介護休業期間が三カ月となっております。この根拠について、九四年七月の労働省専門家会合報告では幾つかのことが述べられております。時間が限られておりますので、ここで一々申し述べません。  先ほど樋口先生の方からも御意見が述べられておりましたけれども、私ども連合が行いました調査によりましても、介護休業・短時間勤務制度の取得者の実態調査では、制度上一年ですけれども実際の取得が三カ月という人が多いわけでございます。三カ月以内というのが全体の三四%、六カ月が二八%というふうになっております。まあそれ以上もそれ以下もあるわけでございますが。これに対する労働者の評価、実際に使った人の評価は、不十分というのが六割、足りなかったという人が三四・九%というふうになっておりまして、充足感が非常にまだ薄いということでございます。  さらに、四月十日に連合が行いました集会におきまして、「介護休業法案について各党にきく」という東京での集会におきまして、福祉関係労働者から、政府案は、休業が終わったらこれは緊急避難であるから三カ月目以降は施設への入所というふうにおっしゃっているけれども、特養ホームの施設では女性が二年、男性が四年待たなければ入れませんというふうに言われました。こういった実態が、地方に行きましては、病院で寝たきり老人を大量に生産しているというような、つまり、施設介護施策の福祉が立ちおくれているために、病院に入って、病院の余力のあるところは治療をしながら病人としてそこに置くと、それで、施設がいっぱいのところは三カ月たったら追い出されるというふうな実態が述べられております。  私は、介護のすべてを家族が担うべきとは考えておりません。おりませんけれども、新ゴールドプランの進展状況や、それから病院実態、そして現実に介護を担っている労働者の要望を見たときに、やはり一年くらいは必要であるというふうに思います。一年でいいというふうには考えておりませんけれども、どこかで区切りをつけるとするならば、一年くらいで区切りをつける、上限規制をするということが必要であるというふうに考えております。休業期間一年の方が、休業をとる期間の選択の幅がふえるというふうに思います。職業生活と家庭生活の両立を図る法の目的が生かされますし、法の目的に沿うことではないでしょうか。そのことをまず申し上げさせていただきます。  さらに、事業主への措置につきましてもう一つ義務づけられております勤務時間短縮等措置がございます。  これにつきましても、審議会の中でも、公益の先生を含めまして心情的にかなり賛同をいただいたというふうに私は思っておりますけれども、要介護者症状に合わせ、例えば午前中に勤務して午後に家族介護というふうにするとかいった勤務時間短縮の制度につきまして、労働者にとっては仕事と家庭の両立ができる上、収入も入るし、会社にとっても代替要員確保の問題などを考えましたときに、労使双方有効な制度ではないでしょうか。育児の場合には一年でございます。介護の場合には政府原案は三カ月であります。私は、ぜひこの短時間勤務制度を、特に四十代から五十代の男子を含む取得者の立場に立って考えましたときに、申し上げましたようなことを考えております。労働者からの期待もこの点について大変大きゅうございます。そこで、この制度期間、三カ月を延長していただくことや、さらに全日休業制度との組み合わせによる期間の延長などにつきましても、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思います。  第二点目の意見は、取得の回数についてでございます。  政府案は、代替要員の問題等から、これは家族一人につき最低でも一回を確保、こういうふうになっております。人は、だれでも一生のうちに避けられない病気にかかることがございます。そのうち何度か要介護状態になって、そのときにたった一回しか介護休業することができないとするならば、いつ休業を申し出るべきか労働者は迷う場合が少なからずございます。  したがって、休業回数は、育児と異なる介護の特徴を十分に考えていただき、無原則とは申しませんけれども、断続的に取得ができるようにするような工夫をぜひお願いをしたいと思います。これについて、症状の認定のことや労使間の紛争が多発をするという意見もございますけれども、医師等の証明によって解決する方法があるというふうに考えます。  第三点目でございます。施行期日につきましてです。  九九年の四月からというふうに政府案はなってございます。九二年の労働省調査による結果から、介護休業制度普及が大企業の場合は過半数を超えているけれども中小企業がまだだからということが理由に挙げられているわけでございます。法の施行期日については、介護の問題が緊急かつ重要であることから、私はできるだけ早く施行していただきたいということを切望いたします。九六年の四月からでも施行していただきたいということを申し上げさせていただきたいと思います。この場合に、中小企業には、負担を軽減するために、費用の助成など支援策を行うことも必要というふうに考えております。  四点目、所得保障についてでございます。  介護は、費用がかさむ上に、賃金が無給であるならば、休業がありましても絵にかいたもちになってしまいます。制度を生かすためには、何としても、施行と同時に、最低でも当面、育児休業と同様の所得保障を講ずべきと考えております。婦人少年問題審議会建議におきましても、この点について、施行時期までつまり九九年までに検討すべきであるというふうに書かれてあります。ぜひ今国会で保障措置をすることを明らかにしていただきたいと思います。  最後に、これまでの当労働委員会審議をお伺いしておりますと、三者構成の婦人少年問題審議会の答申を大切にされていることに、審議委員の末席にいた私としては感謝をいたす次第でございます。しかし、この審議会の答申には、先ほども述べましたように、労使の意見が付されております。この意見は、労使の意見が真っ向から対立したところでございまして、審議会では残念ながら意見の一致を見ることができなかった点でございます。私がさきに述べました意見は、答申に際して労働者代表委員の付しました意見を踏まえて政府案に対して申し上げさせていただいたわけでございます。この点についてどうぞ真摯に御検討いただき、国民によって選出をされました国会議員の皆様が、介護実態労働者家族実態をよく見ていただいた上で、立法府としての国会で与野党協議の上政府案を共同して修正し、立派な結論を得ることを強く期待をするものでございます。  最後に、本当に最後でございますが、家庭生活と職業生活の両立支援策として、今後の課題について一言述べておきたいと思います。  労働者本人の病気休暇がないのに、子供の病気や家族の病気かという意見もあちこちで出されました。この点について課題が残されております。  さらに、子供の病気の場合には、長期の休暇よりもむしろ断続的な短期の休暇、つまり看護の休暇の整備が早急に求められると思います。この点についても審議会で意見を述べましたけれども、幅が広過ぎる、そういうのは年次有給休暇で充当したらどうですかというふうな御意見もございまして、中に入れていただくことができませんでした。よろしくお願いをしておきたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 笹山登生

    笹山委員長 ありがとうございました。  次に、中嶋参考人にお願いいたします。
  9. 中嶋晴代

    中嶋参考人 全国労働組合連合婦人部長の中嶋と申します。  家族的責任を持つ労働者にとって、働き続ける上で介護にかかわる要求は切実です。私たちは、この間、福祉の公的拡充と実効ある介護休業実現を求めて取り組んできました。今国会で育児休業法を改正して介護休業制度化されることになったことを喜んでいますが、その内容は極めて不十分で実効性に乏しいと言わざるを得ません。  今国会で、家族的責任を持つ男女労働者機会均等及び均等待遇に関するILO第百五十六号条約が承認されました。これを心から歓迎し、この条約及び第百六十五号勧告の理念と内容を踏まえて、労働者仕事家族的責任を両立させて就業する権利を行使することができる政策を国が積極的に推進されることを強く期待するものです。  その一環として、介護休業労働者の権利として制定されるべきですが、政府案介護休業は、本条約の理念と内容に照らしても問題があると考えます。  まず第一に、介護休業期間回数労働時間短縮等に関する措置に関して意見を述べます。  政府案では、連続する三月の期間を限度として一人について一回としていますが、これは介護を必要とする家族を抱えた労働者実態と要求にほど遠いものです。介護対象者、病状等は大変さまざまであり、大人か子供か、在宅か入院中か、回復のめどの立つ場合と重症で長期に及ぶ場合、また介護をする者の状況によっても介護休業に対する要求は異なり、実に多様です。  高齢者介護は、今日最も深刻です。高齢者の生活は本来社会的にケアされるべきですけれども、我が国では、安心して老後を過ごすことができる社会的条件が極めて不十分です。現在、多くの地域ではホームヘルパーは週に二、三日、数時間のケアにすぎませんし、特別養護老人ホーム、ショートステイなども絶対数が足りず、入所までに何年も待たされているのが実態です。こうした状況のもとで、介護家族とりわけ女性の肩に重くのしかかっています。  介護休業期間は、三カ月程度の取得が多いとはいえ、高齢者やがん、脳疾患等の場合を考えれば、少なくとも一年間は必要です。労働省調査でも、制度がある事業所では、一年以上が六一・二%であり、三カ月未満は一〇・四%にすぎません。回数も一回限りでは、入院や手術時、最期のみとりなど、いつとればよいか判断に困り、結局必要なときにとれない結果になりがちで、複数回数の取得が求められています。  ホームヘルパーや複数の親族と交代で介護に当たる場合とか、治療やリハビリのため週一、二回程度定期的に長期間の通院が必要な場合などには、断続でとることができる制度が切望されています。また、入院中はずっとつきっきりでなくとも済む場合もありますし、在宅でも、ヘルパーさんなどがいない朝や夕の時間帯だけ介護したいので時間単位で介護休業をとりたいという声が強く上がっています。  断続や時間単位での取得は繁雑で職場が困るという懸念もあるやにも聞きますが、むしろ私は、職場にとってもよい制度だと思います。労働者は、できれば休まずに自分の仕事を責任を持ってやりたいと思っておりますし、管理職などで他の人に仕事をかわってもらえず、連続では休めないという場合もあります。仕事も大事、さりとて病人もほってはおけないというとき、週の一定の日だけまたは時間単位で介護休業をとるというのは、本人が仕事介護を両立させるだけではなく、職場や使用者にとっても損失がより少なく、よい方法だと確信しています。  小さな子供を持っている場合にも、介護休業は切実です。はしかや水ぼうそうなどの伝染性疾患にかかることが子供は多いわけですが、複数の子が相次いでこうした病気にかかると、年休では足りないことが多くあります。また、不登校や登校拒否なども少なくなく、親が一定期間ついていてあげることが必要なこともあります。こうした場合にもとれる制度であることが望まれています。子供の介護には、比較的短期間介護休業を複数回数取得できることが求められています。  時間の関係で詳しく御報告することができませんが、各組合の資料には、さまざまな事例と切実な要求がたくさん掲載されています。  介護は、このようにさまざまなケースがあり、一人に一回のみ、三カ月では対応が困難です。本法案最低基準と言われていますが、複数回数の取得、断続や日・時間単位の取得などは最低基準として必要だと思います。  新進党の対案は、介護を必要とする一の継続する状態ごとに一回、連続する一年を限度としており、私たちの要求により近いものですが、連続または断続で日及び時間単位で取得ができるようにしてほしいものです。  各法案勤務時間の短縮等措置が規定されていますが、育児休業と同じく時間外労働の免除等も含む幾つかの施策の中から使用者が一つを選択すればよいとする措置にとどめず、希望する者には権利として介護のために時間単位で休めるようにするべきです。  樋口さんも御指摘のように、介護休業は男性にとっても強い要求であり、実際に多くの男性が取得しております。  私どもは、介護家族が見ることがもっともよいとか、期間は長いほどよいという立場はとりませんけれども、全労連は、こうした多様な介護状況対応し、仕事介護を両立をさせて働き続けることができる制度とするために、一人一回に限定せず、同一病人の継続する同一疾病に対し通算で三百六十五日まで、連続でも断続でも日・時間単位で取得ができ、急病や短期の場合にも取得できる手続とすることを強く要求するものです。  第二に、家族のありようが大きく変化し、核家族や単身者もふえ、家族形態も多様になっています。要介護対象者には、同居、別居ともに、配偶者、二親等までの血族、姻族、またこれに準じ特別の事情のある者を含むようにしていただきたいと思います。  さらに、期間の定めのある雇用の形をとって、実際は雇用継続しているのに育児介護休業などの権利を適用除外にしている場合がありますけれども、有期雇用を繰り返し、定めのない雇用となっている場合には、適用すべきです。  第三に、政府案は、介護休業の申し出や介護休業をしたことを理由とした解雇の禁止を定めているのみで、休業中の所得保障、代替要員の配置、原職復帰、不利益取り扱いの禁止などを定めておらず、実効性が乏しいものとなっています。職場が多忙な中で、代替要員がなければ、同僚への迷惑を考えるとなかなかとれません。長期の介護休業に対しては、代替要員の配置が必要です。  また、無給のために生活上とれないという事例も多くあります。休めないままに、昼間は病人に我慢をさせて後ろ髪を引かれる思いで仕事をし、夜は病院に泊まり込んで看病して、翌朝病院から出勤するという毎日を送り、そして本人が過労で倒れ亡くなってしまったという痛ましい例さえ起こっています。  病人を抱えると、大変お金がかかります。老人保健法や医療法、健康保険法等が改悪をされ、医療費の自己負担はますますふえています。多額の差額ベッド代を負担しなければならない場合も多く、しかも看護婦不足のために、家族が付き添わなければ病人は日常生活に支障を来す状況が改善されていません。介護の場合には、自分一人が生活を支えており、かつ自分しか介護に当たれる者がいないという場合もあり、所得保障の要求は切実です。  制度のある事業所の半数近くは何らかの金銭支払いをし、期間が三カ月未満の場合は七割以上の事業所が現在賃金支払いをしています。地方公務員の多くの共済組合では、現在、介護のための欠勤に対して休業手当金として賃金の六〇%が支給されています。介護休業中の所得保障については、政府は今後検討するとし、新進党案では、介護休業給付金の支給と休業中の社会保険料の労働者負担分の免除が規定されていますが、今年度から育児休業給付等が実施されたことを考えるならば、介護休業に対しても所得保障を行うのは当然です。全労連は、基本的に、国と雇用主の負担社会保険料労働者負担分を含め賃金の六〇%相当の所得保障を要求しています。当面、雇用保険から出す場合は、育児休業給付ともども、保険料が使用者負担雇用保険三事業からの給付を求めるものです。  制度はできたけれども絵にかいたもちとしないために、休業中の国及び雇用主による所得保障、代替要員の配置、原職復帰、不利益取り扱いの禁止などを明記すべきですし、さらに実効性を担保するために、違反した事業主に対する罰則規定も必要です。  第四に、政府案は、介護休業にかかわる部分は一九九九年四月一日からと施行を四年も先送りにしています。これは使用者の意向のみに沿ったものであり、公的福祉が貧困なもとで介護のために泣く泣く退職を余儀なくされる労働者が年に八万人余り、一日平均二百二十人もあるという実態を無視したものです。実施は急を要しており、ILO第百五十六号条約に照らしても、四年も先送りすることは絶対に許せません。  先送りする理由として、中小零細企業介護休業の実施が困難だということが強調されています。中小零細企業の大変な実態はよくわかりますが、働く者としては、すべての事業所で働く労働者に権利は平等に保障されなければならないと考えます。そのためには、小零細企業に対する国の特別助成制度や、労働者派遣法の拡大などではなく代替措置をスムーズに行うことができる仕組みをつくることが必要です。既に国家公務員に対しては、勤務時間、休暇等に関する法律の中に介護休暇が規定されて、昨年九月から施行されており、平等の原則から見ても、小零細企業への国の特別助成制度を設けることを前提に、直ちにすべての労働者に実施すべきだと思います。  政府案、対案ともに、給付金の支給や仕事と家庭の両立促進等に必要な援助、再就職の援助など対象労働者に対する支援措置の全部または一部を指定する公益法人に委託できるとしておりますが、全労連は、本来労働省が果たすべき役割を投げ捨て民間委託することには賛成できません。  終わりに、男女労働者介護を必要とする家族を犠牲にせず、いたわりと優しさを持って仕事家族も大切にして働くために、ILO第百五十六号条約を踏まえ、実効ある介護休業実現とともに、労働時間の短縮、ホームヘルパー制度高齢者福祉施設、訪問看護など福祉の公的充実を図ることを重ねて強く要望いたします。  私どもの考え方についてお手元にパンフレットもお配りしておりますので、後ほどごらんいただければ幸いでございます。(拍手)
  10. 笹山登生

    笹山委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 笹山登生

    笹山委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。
  12. 赤城徳彦

    ○赤城委員 自由民主党の赤城徳彦でございます。  ただいまはそれぞれの参考人の皆様から大変貴重なお話をいただきましたし、また特に実例に沿ったお話、私どもも、せっかくの新しい、また大きなこの労働施策としての前進でありますから、皆様からいただいたお話をしっかり受けとめながら、みんなに喜ばれる、実のあるそういう仕組みに、制度にしなければいけないなと思いながら拝聴いたしました。本当にありがとうございました。  まず、基本的な話を何点かお伺いしたいと思います。  一つは、これからこういう介護休業制度を含めいろいろな労働施策を考えていく上で基本的なスタンスをどう持っていくのかということなのでありますが、まず基本的には、これから労働施策を考えていく上で二つのことを念頭に置かなければいけないのじゃないか。一つは経済的な状況の変化、一つは社会的な変化。  経済的な変化といいますのは、山本参考人からもお話がありましたように、これまでの経済、日本が高度成長を経てバブルの崩壊から今非常に困難な時期に来ておる。これは単に不景気だという以上に構造的な転換期にある。それにさらに今の円高あるいは産業の空洞化という問題が追い打ちをかけるように、待ったなしの課題で、いかに新しい産業を起こしていくか、その中で労働移動をどうやってスムーズにしていくのか、そういったさまざまな課題が出ているわけであります。  もう一つは、社会的な構造の変化でありますけれども、これはもう言うまでもなく、少子・高齢化社会が到来しているという中で、育児介護、さまざまな問題があるわけですけれども、どうやって社会的な活力を維持し、みんなでこの社会を支えていくのかというようなテーマであります。  この二つのテーマがそれぞれ別々の課題ではなくて両者混然一体となって、究極のところ、これからの日本が経済的、社会的に大きな困難に直面する中でどうやって活力を維持し、豊かな社会をつくり上げていくのか、そういうテーマであろうかと思います。  そういう意味では、これまでいろいろな施策、今回のもそうですけれども審議会の中で労使公それぞれの立場で、特に労働側は要求をし、使用者側はそれを拒否する、その中で両者の妥協の産物として施策が実行されるというふうな考え方ではもういかぬのではないか。労使あるいは行政、政治も含めて全体が一体として取り組むべき課題なんだというふうに思うわけであります。  山本参考人にそういう基本的なところをお伺いしたいのですけれども中小企業団体の代表という立場でのお話をいただきました。今の経済情勢を考えるとなかなか難しいな、介護休業という仕組み企業にとっての大きな負担を伴うことにもなりかねないという御懸念、まさにもっともだと思います。  しかし、今申し上げましたように、今の経済構造、社会構造の変化は労使双方がともに取り組まなければならない課題でありますし、労働者にとって、従業員にとって介護というのは本当に切実な問題であるという、ただいまもいろいろこもごもに御披瀝されましたとおりであります。企業立場にとっても、従業員がそういう切実な問題を抱えているというのは、みずからの問題としてとらえなければならないでありましょう。  また、これからの労働力が少子化の中で非常に貴重になってくる、だから高齢者女性にもっと社会的に活躍をしていただかなければいけない、そういう時代を迎えるわけでありますから、使用する側にとっても、介護のために職場を去らなければならないというふうな損失、これはもう企業の側にとっても大きな損失であろうと思いますから、できるだけ雇用継続し、会社にも社会にもさらに貢献をしていただけるような仕組みというのは、これはもう使用者の立場にとっても不可欠なものではないかと思うわけであります。  今申し上げましたような労使の基本的なあり方、さらに、この介護問題についても使用者側としてしっかり受けとめるべきではないかというふうな考え方について、山本参考人のお考えを伺いたいと思います。
  13. 山本貢

    山本参考人 ただいま赤城先生からのいろいろな御指摘はごもっともだと思います。  まず、経済的状況の変化あるいは社会状況の変化に対応してすべからく世の中のいろいろな仕組みは変わっていく、これはもちろん、日々我々は豊かな生活を目指していろいろな活動をしているわけですから、そういった方向で一生懸命努力しなければいけない、こういうふうに思っておるわけでございます。  先ほど先生も御指摘されましたように、現在のこの構造的な転換期に当たりまして、我々中小企業にとって何が一番大きな課題になっているかと申しますと、やはり国際化の波が押し寄せているということではないかと思います。  それはどういうことかと申しますと、一つには、最近の円高等を見ますと、それを契機といたしまして大手企業、親企業等はどんどん海外の方へ出ていく、そして海外で製品をつくって、さらに逆輸入をする。そうしますと、それがまたさらに国内の業者にはね返って、競争力のないものは倒れていかざるを得ない、こういうふうな状況にあります。  また、一方におきまして、これは円高のみならずいろいろな状況があろうと思いますけれども、賃金一つとりましても、なかなか日本の賃金というのが既に名目上はもうアメリカよりも高いのではないか、こういうふうに言われております。この間も日経のコラムなどに書いてありましたけれども日本の大学の先生がアメリカに招かれても、向こうへ行けば給料が下がるので行きたくない、こんなことを話しているというふうなことがコラムに書かれておりましたけれども、そういうふうな国際的に見て高賃金の状況になっておるわけでございます。  しかるに、一方、中小企業と大手企業とのいろいろな状況を比べてみますと、依然として生産性格差というのはぬぐいがたく大きくあるわけでございまして、大企業を一〇〇といたしますと、生産性は中小におきましては依然として五〇%台ということでございます。しかしながら、そういうことばかりを述べておりましても、いい人材を確保するということでは欠けるわけでございまして、やはり中小におきましては、よりよい人材を確保するために我々といたしましても一生懸命努力しなければいかぬ、これはもう前提でございます。  したがいまして、私どもといたしましても、この介護休業の問題につきましては、少子・高齢化社会に向けて国が全体として一つのビジョンを描きながら、その中で企業がどういう役割を果たすべきかというふうなことをじっくりと考えて対応していかなければいけないのではなかろうか。  先ほど私の意見の中でも述べましたように、諸外国を見ましても必ずしもまだ法制化による企業への強制ということにはなっておらないように伺っております。しかしながら、こういうふうな状況を踏まえまして、我が国におきましてはとにもかくにもこの制度を発足させようというふうなことでございますので、私どもといたしましても、中長期的課題といたしましては望む方向としても、目的がよければすべてよいかといいますと、あくまでも法律でございますので、いい目的のために、しかし現実も踏まえながら、その間におきまして円滑なこの法の実効性確保ということを考えますと、やはり私どもとしては実態を踏まえた訴え方をせざるを得ない。  現在、中小企業におきましてもいろいろなリストラが進んでおります。そういう中で、代替要員確保というものはなかなか言うべくして難しい問題であります。例えば、本当に小さいところをとった場合に、重要なセールスに当たっている営業マンでしたら営業マン、営業担当の方、その方がお休みになる、それだけで売り上げが減少する、こういうことになるわけでございまして、その有能な営業担当の方のかわりに新しい営業担当の方をすぐ手当てできるかというと、そんなことはなかなかできないわけでございます。  しかしながら、とにもかくにもこの介護休業制度化され、そして既に大手におきましては五割以上のものが導入されているということでございますから、中小におきましても何とかしてこれに対応していかなければいけないということでございますので、やはりスタート時点におきましては、現実妥当性のある、円滑に導入できるような、そういう内容にしていただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  以上でございます。
  14. 赤城徳彦

    ○赤城委員 同様の趣旨で松本参考人にお尋ねしたいと思うのでありますけれども、働く側にとっても介護の問題は非常に切実な問題である。したがって、この介護休業制度に限らず、あらゆる施策を投入して、労働者雇用継続しながら介護問題に取り組んでいけるような制度をつくっていかなきゃいけない、これはもう当然のことだと思います。  同時に、今私申し上げましたように、働く側も企業の側も、実は労使双方同じ船に乗っているのじゃないか。その船が今経済構造や社会の変化の大きな波にさらされている。先ほど山本参考人から言われましたように、もう日本で生産活動ができない、海外へ逃げ出していくというような大きな動きまである。そういう問題は、これは労働者の側も同じく考えなければいけない、我が事として考えなければいけないのではないかと思うわけであります。今話にありましたような、企業、特に中小の企業にとって、これはどっちが使用者でどっちが労働者であるというふうなことはないのではないか。もう家族のような関係であって、雇用する側も労働者のことを考え、働く側もその企業全体のことを考える、そういうのが実は実態ではないか。  今回の制度で、今それでなくても大変な経済の状況にある中で企業の大きな負担になる、導入について少し時間が欲しいというふうなお話もありましたけれども、そういう問題について松本参考人の御意見を伺いたいと思います。
  15. 松本惟子

    松本参考人 経済の変化それから社会の変化という点について基本的な考え方をまず述べさせていただきますが、これまでの日本の経済というのは、もう何度も何度も繰り返されていますように、経済を強くするために、いわばゆとり、豊かさに欠ける社会をつくってきたと思います。私は、だれのための、何のための経済なのか、何のための企業なのかというようなことをもう一度胸に手を当てて考え直していかなければいけないのではないか。  構造転換というときに、産業の構造転換ももちろんあります。この産業の構造転換の中で、これまでなかった新しいいわゆる仕事を起こしていくということは非常に大事なことだと思います。受け身ではなくて、やはり私たち労働組合も、新しい企業仕事、例えば福祉社会を建設していくということを一つ例にとりましても、福祉にかかわる労働力の確保だとか、福祉にかかわる器材だとか、福祉にかかわるいわゆる商品だとか、さまざまな開発ができていくのではないか。その他、まだまだ日本社会というのは経済優先で来たために、振り落としてきたというか、見落としてきたものがあると思います。そこを再度見直して、質的な転換、社会や家庭や人間の生き方の質的な転換をしていかなければならないと思います。  外向き経済優先で来たがために円高を引き起こし、外向き経済優先で来たがために仕事か家庭か、つまり社会システムが長い間家族とか家庭というものに目を向けずに、つまり男性型役割分業、男女の固定的な役割分業、男は仕事、女は家庭というふうな伝統的なそういった仕組みの中でつくられた社会システムに乗っかってきたと思います。私は、外圧もありますけれども、やはり中でもっと私たちがしなければならないこと、そして内需の拡大を図り、そこにいわゆる新しい雇用の場を求めていかなければならないということもあるのではないか。そういう意味では、構造転換については労働組合も今、使用者とともに一生懸命知恵を絞っているところでございます。  それから例えば、労働条件をいろいろとくっつけていきますとコストが高くなるから、国際競争力、とりわけアジアの開発途上国との関係のことがあろうかと思いますが、競争力が落ちるのではないかというようなことも言われるわけですが、私は、働く人が家庭と仕事を無理なくやっていけるようなそういった条件のもとに国際的協調あるいは競争をしていくのがこれからの日本のあり方、先進国としての責務だというふうに考えております。確かに労使が一体でさまざまなことを考えていかなければならないわけですけれども、使用者は使用者同士競争していると思うんですね、それなりに。それが国内の使用者同士でもあり、国外に向けても、今度は国際的に使用者の大変厳しい競争があると思います。その競争に打ちかっていくためにも、私は、やらなければいけない労働条件を後回しにしていくやり方というのはもう古いし、構造転換をしなければいけない時期からすると時代錯誤かと思います。  ですから、中小企業の苦しさにつきましては、例えば中小企業でも、私思うんですけれども、出産休暇をとりながら代替要員を何とか手当てをしてきた、それから育児休業も何とか手当てをしていただいた、それから労働者が一定の病気をなさったときにも乗り切ってこられたと思います。これからこの上に介護もかかわるから大変だという重圧感がおありになるようですけれども基本的には日本の使用者というのはすばらしいと思いますので、そういう意味では知恵をいろいろ出してこれまで乗り切ってこられたかと思います。どうしてもというところにつきましては、特に中小企業への助成金について、大企業中小企業の格差、こんなことを申し上げていいのかどうかわかりませんが、私の私見としてお聞きいただきたいと思います、格差をつけても構わないのではないだろうかというふうに思います。企業に対する助成金のことです。労働者個人に対することを言っているわけではありません。  それから、代替要員確保につきましても、一定の知恵を出していこうというようなことが審議会の中でも意見交換をされております。派遣労働者の問題は別ですけれども、そうでなくても、今の法律を変えなくても、多少の知恵を出せば今よりもう少しいい方向代替要員確保ができるのではないのかというようなことなんかも話し合われました。  それから、代替要員の問題について言えば、介護に限らず年次有給休暇の取得率を上げていかなければいけないと思うんですね、千八百時間に向けて。これも国のいわゆる年次計画がきちんとあるわけであります。年休をきちんと消化をしていくためには少しゆとりのある人の配置というものも必要かと思います。ですから、企業競争だけでもって物を考えていきますと、ますます職場は厳しくなって、家庭か仕事かの二者択一あるいは仕事に生きがいがあるから結婚しない、子供を産まないというような状況の厳しさの中で女性が選択をせざるを得ないというふうになります。したがって、経済の問題、経済政策と同時に、社会政策の充実をさらに検討していただきたいということを申し上げます。  それから、女性が働き続けていくということは、福祉社会の今後の建設にとって、税金を納める人をたくさんつくっていくことになるわけですから、これは決してマイナスにはならないと思います。そういう意味で、公的な負担をふやしていく、そしてそこに働く労働者をふやしていくという意味一つとりましても、福祉の充実、介護休業制度そのものがそれほど大きく現在の企業を圧迫するというふうには考えられないと思います。
  16. 赤城徳彦

    ○赤城委員 私は、今のおよそあらゆる政策の究極の目的というのは、人間がいかに人間らしく豊かに暮らせるかという、そういうところにあると思います。ですから、経済的な施策労働者にとってのいろいろな施策も、究極のところはそういうそれぞれの人にとって長いライフサイクルの中で、豊かに心身ともに充実した人生を送れるような、そういう究極の目的のためにあらゆる施策がある。とすれば、今までいろいろな議論がありましたけれども、それらの議論というのは、決して一方が要求をし、一方がそれをちょっと待ったと、こういうふうに言うようなものではなくて、全体が、みんなが我が事として考えなければいけない問題ではないかな、そういうふうに思うわけであります。  そこで、次の点をちょっと伺いたいんですが、樋口参考人にお伺いしますが、育児介護、これはILO条約の中でも出ていますように家族的責任を有する労働者にとって共通する問題で、どちらも雇用継続にとって障害になるという面では共通をしております。しかし基本的に、育児介護では、それをする側にとって非常に精神的な意味で大きな違いがある。育児は子供が育っていくという楽しみがある、介護はどうしても身近な人であればあるほど逆に負担感がある、精神的な負担を伴うというのが実態ではないかなと思いますし、また今もそれぞれの参考人からも話がありましたように、介護というのは男性の問題でもある。しかも、その男性はどういう男性かというと、親が年老いてということであれば、その子供はかなり社会的にも中堅の立場にある人が介護休業をとらなければならないというふうな実態、これも育児とはちょっと違うなというふうに思います。また、介護というのは、いろいろな症状があったり多種多様であるというふうなことも、これは育児との違いである。  私は、育児介護はいずれにしても雇用継続の障害になるという面では共通した問題でありますし、両者は一体として一つの法律でとらえるというのがいいのではないか。それをとらえた上で、それぞれの違いに応じた制度仕組み方というのは出てくるんだろうなと思うんでありますけれども、ちょっと総括的に育児介護というのはどのように違うのか、そして私が申し上げたような、育児介護は違うわけですから、育児の方がこういう制度だからそれと同じように介護もこうだというふうには言えない面もあると思いますが、そこら辺もあわせてお答えいただければと思います。
  17. 樋口惠子

    樋口参考人 お答え申し上げます。  育児介護とは、今赤城先生がおっしゃいましたように、幾つもの違いがございます。育児というのは基本的に、やはり一年たてばどのぐらいになるという目安がつきますが、もちろんそれは障害を持ったお子さんなどもあり、一概には言えませんが、大体の標準が見えてまいります。介護の場合には、これは本当に、長期にわたっては二十年、三十年と介護をしていらっしゃる方もございますし、意外と短いということもありますし、あるいは一時的に、集中的に介護をすればまたよくなってくださるということもございます。  精神的負担につきまして、育児のような喜びが得られないという御指摘がございましたが、これはまことにそのとおりでございますけれども、しかし、私などもこのごろ年をとってまいりましたせいか、しみじみ思いますことは、やはり親を自分の手でできるだけ親しく介護したいというのは、これはもし周りの条件が非常によく整って自分の志を達成することがそのことによって妨げられないという状況、仕方なく介護するという状況がなくなれば、私は、親子の情としてある一定の介護をしたいと思う人の方がこれまた多いということもかなり確信するようになってまいりました。  それから、今、山本参考人の方から、外国において介護休業というようなことはないという御指摘がございました。その点につきまして、赤城先生からの御質問とあわせてちょっと申し上げたいと思います。  日本介護と外国の介護とどこが違うか。在宅介護の場合を見ますと、これはどちらも女性が圧倒的多数を担っているという点は本当に共通しております。しかし、非常に違いますのが、その続き柄におきまして、これはこのごろパーセントを、これはぜひ国会の先生方にお願い申し上げておきますが、高齢者介護について主たる介護者が続き柄、続柄(ぞくがら)とこのごろ言うようですけれども、続柄がどうであるかということがこのごろの厚生省や総務庁の調査でぱっと読めなくなりました。子とか子の配偶者とか配偶者となってしまって、そこから男女別を割り出すのが少なくとも私ども政府外部の人間からはほとんど不可能に近いぐらいに、嫁とか——嫁でなくていいのです、息子の妻とか娘の夫とか息子とか娘とか、こういう性別がなぜか明らかでないような統計のとり方になってしまっております。  ですから、非常にこのごろ見にくいのですけれども、そこから類推いたしますと、日本では主たる介護者の中で嫁、つまり息子の妻という人が今なお三割を占め、妻とほぼタイ記録でございます。こうした高齢社会におきまして、いわゆる嫁が主たる介護者にこのように高い比率を占めておりますのは日本のみでございます。今度、介護保険制度導入などでちょっとモデルにされておりますドイツが、大変家族的な国でございますけれども、にもかかわらず嫁というのは九%でございまして、これはヨーロッパでは高い方だと思います。でも一割以下でございます。  日本女性介護育児と同じように必ずしもなれないというのは、人間というものはいろいろ記憶がございまして、やはり親に慈しんで育てられた恩愛の情などというのはそれなりに持っている人は多いのですけれども、どうもしゅうと、しゅうとめとなりますと何かいびられた記憶しかない、少なくとも快く迎えられなかったという状況の中でも仕方なく女性介護を担わなければならない。これはもちろんそんな悪い例ばかりじゃなくていい例もございますけれども、自分の親ならばまだ仕事が続けたいと言えるのに、地方へ参りますと、嫁なのにまだ仕事を続けているとか、嫁なのにやめもしないであるいはやめないでホームヘルパーを雇っているなどということがまだまだ世間から白い目で見られる日本の草の根封建主義ともいうべき状況があるということです。  そして、このことは、つい最近、ここ二年ほど学者、研究者たちの努力で明るみに出てまいりましたけれども、それはもちろん政府がゴールドプランを進めてくださったために介護支援センターができて、そこを通して出てきたことでございますけれども日本には少ないと言われた老親虐待、それも殴る、けるというような暴力的、これも一種の暴力なのですが、直接暴力的なものではなくて介護放棄、無視というような虐待がかなりあるということがわかりまして、セクシャルハラスメントに倣ってシルバーハラスメント、これは英語じゃないのですけれども、シルハラなどという言葉がこのごろ通用するようになってしまいました。  だから、在宅必ずしもよい状況ではございません。それも結局、原因はというと、介護負担個人に集積しているということ、介護疲れでストレスがたまって、つい弱い立場の者がより弱い立場に当たるという、まことに非人間的な状況になっております。  それから、ドイツにおきまして確かに介護休業のような制度はございません。でも、日本は今申し上げましたとおり儒教的な家制度の名残の中で嫁が介護しなければならない。その嫁はもうこれからいなくなるのです。つまり、言ってみれば、今までは兄弟が大勢いて、そして自分の家から、男でいえば次三男と同じようなものです、自分の家の親の介護から免責された女の子たちが大勢おりました。しかし、これからは一億総長男長女社会でございまして、自分の親も見なければならない、そこへ義理の立場のしゅうと、しゅうとめも見なければならないとなったら、やむを得ずであって、心からの介護になかなかならないということも考えられると思います。  ドイツへ行きましたときに、この介護休業の話をドイツの女性たちに話しました。そうしたらこういうことを言われました。ドイツは確かに育児休業はできているし、それから、先ほど私は申し忘れましたけれども松本さんが述べてくださいましたが、はしかになったときとかちょっと小さい病気で看護のために休める制度は、ドイツではよくできている、しかし介護休業のようなものは論議されていない、日本は何というすばらしい国であろう、我々の国は生まれ育っていく者にだけ目を向けている、これから労働力になる者にだけ目を向けている、日本にもし介護休業というものができるとするならば、年老いてそしてやがて死を迎える人々を大事にみとろうということを国を挙げて法律制度にするとは何とすばらしい国であろうと言われ、私は、社会福祉サービスがドイツにまだまだ及ばないのを承知しておりますので、首をすくめて帰ってまいりました。  以上でございます。
  18. 赤城徳彦

    ○赤城委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今樋口参考人がいみじくも言われましたように、さまざまな条件が整えば、むしろ家族介護するというのは、そんなつらいことや嫌なことではなくて、喜ばしいことなのだという、そのいろいろな条件を、公的介護、新ゴールドプランを含めてそういったものを整備することによって、労働者に過度に介護負担を負わせることのないようにするというのが私どもの務めではないかなと思いました。  さまざまな貴重な御意見、本当にありがとうございました。終わります。
  19. 笹山登生

    笹山委員長 次に、柳田稔君。
  20. 柳田稔

    ○柳田委員 きょうは四人の参考人の皆様、お忙しい時間ここにおいでいただきまして、貴重な御意見を賜りましたことを心から感謝を申し上げます。  四人の参考人のお話を聞いておりまして、それぞれの立場に立った御意見を伺えたものだ、そういうふうに思うのでありますが、若干最初に、松本さんに、我々の考えなりを少し理解していただきたいためにちょっと我々の考えを申し上げますと、我々、新進党を結成いたしまして、その綱領に生活者重視という文言が入っております、当然生産者のことも入っておるわけでありますが。その立場に立ったときに、この介護の問題はどうしても生活者重視でやらなきゃならない。先ほど松本さんも樋口さんもおっしゃっていただいたように、今は大変な状況なんだ、介護問題一つとってみても大変多くの人が悲惨な目に遭っている。そのことも考え合わせれば、何としてもこの法案をもっと生活者の立場に立って実効あるものにしようということで我々は新進党案を提出した、そのことを十分理解をしていただきたいのであります。  何か御意見がありますでしょうか。
  21. 松本惟子

    松本参考人 新進党法案を出していただきましたことにつきましては、ありがたく思っております。  これは、さかのぼって連合が、一九九二年でございますが、私ども、まず法律をつくるにはみずから労働組合が労使協議の場において制度を促進をしていく、つくっていくということが大前提である、これは育児休業法制化の運動からも強く学びました。そこで、指針をつくり、当時の野党の方々にお願いをしてまいった経過がございますので、柳田議員がおっしゃられましたことにつきましては、新進党から、私ども連合が修正を求めております内容にほぼ同じものが出されておるということについて、ありがたく思っております。
  22. 柳田稔

    ○柳田委員 我々は修正案を出したつもりはありません。我々新進党は、生活者重視という立場に立ってこの介護の問題を考えたときに、これが今現状でベストの法案だ、そういうふうに思って出しましたので、修正案ではなくて我々の考えを出したということでございますので、御理解を願いたいと思います。  それで、まず山本参考人にお尋ねをしたいのでありますが、今、樋口さん、また松本さん、中嶋さん、女性の三名の参考人の方がいろいろな立場でお話をされましたけれども山本さん、職業のこの中小企業団体中央会常務理事という肩書をちょっと置いてもらいまして、個人として、多分周りには介護で大変苦労されている方も多いかと思うし、もしかしたら御本人がそういう家族をお持ちかもわかりませんが、個人として、三参考人のお話を聞いてどういうふうにお感じになりましたでしょうか。
  23. 山本貢

    山本参考人 ただいま柳田先生のお話でございますけれども、私どもといたしましても、先ほど来申し上げておりますように、少子・高齢化社会の中で、要介護者が出た場合に、これをほうっておくことはできない、これはもう当然のことであります。その前提に立ちました上で、しかしながら、そういった目的を達成するためにはどうしたらいいのかというふうなことでの、手段をどうすればいいのかということでいろいろな議論をしているわけでございますけれども、そうしますと、やはり企業には企業負担というふうなものを現実に即して考えていただきたいというのが、これは私の肩書の方のお願いということになるわけです。  実はきょうは個人的にこの場に来ているわけではございませんので、どうしても肩書づきで述べるにとどめさせていただきたい、このように思います。
  24. 柳田稔

    ○柳田委員 多分お友達のこととか親戚のことを考えると、やはりもっともだなと、何としてもやらにゃいかぬなというお気持ちは大分できたのではなかろうか、そう推測するのでありますが、現実的に中小企業は、この介護の問題、この法律がどうのこうのと言うのではありませんが、介護の問題ですね。先ほどの御説明の中で、三十人から百人規模のところとかそれ以下の規模のところとか、いろいろなところを多分調査されておるかと思うのですが、現実的にこの介護の問題について企業はどういうふうな対応をされておるのでありましょうか。
  25. 山本貢

    山本参考人 現在の状況と申しますのは、残念ながら、労働省がお調べになりました調査にもございますように、中小企業等におきましては極めて低率な介護休業導入状況ということでございまして、三十人以上におきましても一四・二%ということでございまして、それ以下の小零細におきましては、介護休業というふうなものについての導入実態というのはまだ甚だ不明確な状況にあるわけでございます。  そういう中で、やはり私ども考えますのは、中小零細になりますと、これはかなりパートとか非常用者を雇っているわけでございまして、そういうふうな意味では介護休業ということにならない場合も多々あろうかと思います。したがいまして、問題になるのは、十人あるいは二十人、三十人というふうな、中堅とは言わないまでも、ある程度従業員を雇っているところがなかなか難しい、こういうふうなことではないかと思います。  しかし、介護と申しますのは、育児等と違いまして、先ほど樋口先生からもありましたように、これまでの日本の土壌、環境の中では、やはりそれぞれの家族で何とかこれをしのいでいこう、家族で何とかやっていこうというふうなことでございますので、必ずしも、今までのところ、中小零細企業におきまして、この介護の問題が企業の中に持ち込まれて、そして具体的に対応を迫られてきたというふうな状況というのは、そうたくさん出ておる状況ではないと思います。
  26. 柳田稔

    ○柳田委員 先ほど赤城先生の方からもあったのでありますが、まあ小さい企業にいくに従って家族的な雰囲気が出てきていますというお話もありました。私も同感であります。  そういう企業におきまして、例えば従業員の方から、親が倒れたんだ、うちの家内ももうへとへとだ、下手すると入院しないといけない、そういう状況に追い込まれているんです、願わくば、今仕事もそう多くないので介護をさせてもらえぬだろうかという申し出というのは、多分小企業も、中小零細もあるかと思うのですね。そういう場合に、今の実態として、会社の方はだめと、行ってはならないということを本当におっしゃっているのかな。いろいろなところで聞きますと、そういう場合は、いいよ、ただし午前中ちょっと忙しいから午前中は出てくれや、午後は帰っていいですよ、あしたはどうにかなるから一日休んでいいよ、ただし、あさっては出てきてよということで、小さい方にいくに従って大分柔軟になされておるのではないのかなと私は思うのでありますが、山本参考人、どう考えておられますか。
  27. 山本貢

    山本参考人 先生のおっしゃるとおりではないかと思います。  やはり現在のところ中小零細におきましては、自主的対応ということで、これは当然のことながら、中小企業の場合に、雇っている方も雇われている方々も近くにおって、家庭の状況等は熟知しておるわけですから、そういう状況を踏まえて、まあ申請がなくてもそういう状況をつかみ得る環境にはあろうかと思います。そういうふうな場合には、経営者の自発的な意思として、労働者との話し合いの上でそういうふうな申し出を受け入れるということは多々あろうかと思います。
  28. 柳田稔

    ○柳田委員 その実態と、我々新進党案と政府案がありますが、比べたときに、実を言うと我々の法案はちょっと寂しいかなと思うのですね。今の実態に合わせた法案にしようとしたら、もっと突っ込んだ法案であってもいいのかなというふうな気が実はしておるのであります。ただ、それが本当にできないのかどうかということも我々考えなければならないのでありますが、繰り返しになるかもわかりませんけれども、小さい企業にいくに従って、多分柔軟に、もっともっと従業員のことを、そして従業員家族のことを思い、いろいろな処置をされておる、そう思っております。先ほど、労使協約はわかりませんが、一四・二%しか介護制度がないというふうにお答えがありましたけれども、私は実態は一〇〇%じゃなかろうかなというふうな気がいたしております。  先ほども参考人の方からもお話が出ましたけれども、これはいろいろな企業を含めてでありますが、現実に八万人という方が職を離れておるのですね。それで、離れていない人も多いわけですが、要介護者を一人抱えたら、多分その家族というのはほぼパニックに近いだろう。ですから、朝から夕方まで仕事をしてうちに帰った、しかし、奥さんは昼間介護をして疲れておるから、今度はお父さんが、樋口先生、男も少しやっていますので御理解賜りたいと思うのでありますが、そうすると、帰ってから今度は介護を手伝う。おふろに入れたりするのは奥さんではだめですから、今度はお父さんの力で入れてあげる、そうなりますね。そしてまた朝起きて会社で仕事をするのです。その働く人の立場に立ちますと、まず肉体的には、正直言って、うちで疲労は回復していませんですね。疲れたまま会社に出てくる。そして精神的にも、先の見通しが立たないわけですから大変不安でならない。  そういうふうに考えますと、逆にもうこの際きっぱりと、よし休め、賃金もある程度国の方で保障してくれるだろうから頑張って介護しろ、そして元気になって出てきて仕事をばりばりやってくれと言った方が、企業の生産性も上がるだろうし、もっと大事な安全面、安全性も高まるのではないかと私は思うのですが、その辺の考えについては、山本参考人、どう思われますでしょうか。
  29. 山本貢

    山本参考人 理論的にはそういうふうなことではないかと思うのですけれども、これも労働省調査でございますけれども、一週間未満の取得者が一四・三%、これは介護休業がある場合ですね。それから、一—二週間未満が一六・七%、二週間から一カ月未満の取得者が二三・一%、合わせまして五四・一%の方々が一カ月未満の取得というふうなことになっております。  したがいまして、確かに介護、いろいろあろうかと思います。そういう中で、私どもといたしましては今般の政府案につきましておおむね賛同というふうなことを申し上げましたのは、やはりこの三カ月というふうなかなり高い数値が出されておりますけれども、我々としては、先ほど一カ月くらいが妥当ではないか、こう申し上げたわけでございますが、やはりとられる方も、全くとってはいけないというふうなことではなしに、漸進的に進む場合に最初のハードル、法的強制による最低基準というのはその程度にしていただきたいということでございまして、先ほど来申し上げましたように、企業によりましていろいろな実態があろうかと思います。したがいまして、それぞれの経営者のセンスあるいはそれぞれの雇用人との関係、いろいろあろうかと思いますけれども、最低限、法律で課した場合にはこの程度にとどめさせていただきたい、こう申し上げておるわけでございまして、中小におきましても、この問題につきまして積極的に取り組む意欲を持っている経営者は多数あるということを申し上げたいと思います。
  30. 柳田稔

    ○柳田委員 今山本参考人の方から法律の方に触れられましたが、私は法律に入る前に、そういう基本的な今の現状どうなのかな。ですから、私が言いたいのは、大企業よりも中小零細の方がもっときめ細かな介護に対する支援をやっていらっしゃるのではなかろうかな、そういうふうに思うのですね。  ただ、今回法律ということでこうしてまいりますと、そういうできない状況にある企業もそれなりにあるだろう、そのことも十分考慮しなければならないとして、我々新進党は、中小企業に対する支援というのも法案に明記をさせてもらったわけでございますね。私は、そういうスタンスでこの介護という問題を見た方がいいのではなかろうか。  先ほど経済の問題が出ましたけれども、よく福祉を充実させると経済は衰退するとかいうお話も聞きますが、ただ、それはスウェーデンの国を見ていますと、逆に福祉を充実して国の経済は栄えたということもありますので、私は、その辺に日本の経済の分岐点というのですか、既にもう曲がり角に来てどこかへ行かなければならないわけでありますが、そういう道も探るべき時期に来ておるのではなかろうかな、そう思っておるのであります。  できますれば、我々は施行時期を含めいろいろなことを生活者の立場に立って強く主張しておるのでありますが、これは先ほども山本参考人もいろいろお答えの中にあったように、実態は相当進んでいる面もありますので、相当前向きにもっとやっていただくということが多分私は企業のためにも、従業員の命を守るためにも、そして家族を守るためにも、会社の発展をするためにもプラスになるのではなかろうか、そう思うのでありますが、どうでございましょうか。
  31. 山本貢

    山本参考人 介護に関する法的な措置をするというふうなことで、画一的にある最低基準を設けて、そしてそれぞれが努力してその方向を目指していく、そういう方向での基準設定ということは、やはり企業の活力を維持する上からも、これは大いに役立つことであろうと私どもも思っております。
  32. 柳田稔

    ○柳田委員 育児休業法を成立させるときに会社の社長さんが言っていましたけれども、うちは入れたいのだけれども、隣が入れないのでうちも入れないのだ、できれば横並びでみんなやってくれるとやりやすいのだがというのがよく言われましたので、このこともある面でいうと関連するのかなと思いますので、ぜひとも我々の案を山本参考人にも理解をしていただきたい、そう思っております。  それから、次の話題に移りますけれども樋口先生の方から、介護をしている人の介護の大変さのお話はあったのでありますが、その中でも特に金銭面のことについて若干お触れ願いたいのであります。我々は法律の中に所得保障を明記しております。さらに、社会保険料の免除ということもうたっているのでありますが、この金銭面的な問題についてはどのようにお考えでございましょうか。
  33. 樋口惠子

    樋口参考人 大変失礼いたしました。先ほど項目として入れていたのでございますけれども、所得保障の部分をすっ飛ばしてしまいました。後でお二人の女性参考人が述べてくださいましたので、私も全く賛成でございます。  先ほど来、私は男性が取得することあるいは取得の必要を繰り返し述べておりますが、これは本当に大事なので、男の方が離婚されないためにも大事でございます。このごろ結婚二十年以降の離婚率がふえていることは人口動態調査のたびに御承知のとおりと思いますが、それらのバックグラウンドにほとんど老親介護問題のこじれ、つまり妻の介護に対して介護を任せきりにして協力しないということが直接ではなくても間接的にあるということを、近ごろ離婚問題を扱う友人の弁護士たちが口をそろえて申しております。私自身もそれを強く感じております。  というわけで、男の人に大いにとっていただきたいと思いますと、所得保障がなかったら、これはやはり男女の所得格差がございます以上、とても無理なことでございまして、当面育児休業程度というのは、実は本当はこれでは足りないのでございますけれども、何かむしろ男性が取得できるような、これはどういう仕掛けでどう工夫したらいいか、私もちょっと考えつかないのでございますが、男性の取得を容易にさせるような方法を含めて、もう最低限のところで育児休業並みの所得保障とそれから社会保険料の免除、とにかく今育児休業が到達しております線だけは最低線であろうと思っております。  在宅介護というのは、実は施設に入ればまた別なかかり方がありますけれども、本当におむつ代一つとりましても、それから介護器具というのが随分貸与されるようになったとは申しますものの、大変お高いものでございまして、私どもの間では、このごろ介護貧乏とか見る者貧乏という言葉が出てきております。  また、お年寄りの中にも、年金を本当はもっと使えば、さっき経済のお話が出てまいりましたけれども、私は素人でございますが、活力ある経済というのは、活力というのは一体だれのための活力かと思いますけれども、経済が生き生き動くか動かないかということは結局循環の問題でございまして、金は天下の回りもので動けばよろしいのだと思います。そのお年寄りが得た年金が本当に寝込んだときのためになどと言ってためなければいられないような状況こそ問題でございまして、私は、やはり所得保障をつけて、ぜひ一日も早く老親、老親とは限りませんが、介護休業制度を発足させてほしいと思います。
  34. 柳田稔

    ○柳田委員 介護をしますと絶対に要る費用というのが、社会保険料もあるのですね。これがまた安くないのですね。この問題については、どうでしょうか、樋口先生、社会保険料。
  35. 樋口惠子

    樋口参考人 社会保険料ですね。これは育児休業制度でもそうであるように、社会保険料の免除ということはやはりぜひお願いしたいことだと思っております。育児休業並みと申し上げましたのは、そのことプラス地方個人税の、これは免除ではなくて延期でございますね。それらも少なくとも最低限度と思っております。
  36. 柳田稔

    ○柳田委員 どうもありがとうございました。  次は松本参考人にお伺いをしたいのでありますが、公務員さんに非現業部門には既に介護休業制度がありますね。その公務員さんと今回の政府案がありますが、それなりの違いが出ていまして、また不明な点もあるのでありますが、その公務員の今ある介護休業制度から見た場合に、この政府案、我々新進党案、こうすべきだというものがあったらばお教え願いたいと思うのでありますが。
  37. 松本惟子

    松本参考人 お答えをする前に一言だけ申し上げさせていただきます。  先ほど修正の件で、あれは連合が修正案を、修正の項目を出しているという意味で、言葉足らずでございましたので、どうぞ誤解のないようによろしくお願いしたいと思います。  今の件につきまして、私どもは焦点を絞っていまして、回数のところですね。回数は、政府原案ですと、連続する一回こっきり、こうなっています。ところが、公務員の場合には一症状ごとにというふうになっていますから、より弾力的に、より血の通った制度ではないか。そういう点では、新進党案はそのことを明記をされているというふうに理解をしております。
  38. 柳田稔

    ○柳田委員 松本参考人にお伺いしますが、公務員さんと民間で働く人、その差があるということ、その差があっていいものかどうなのか、ほかにもいろいろ面がありますけれども、できれば今つくる法案については絶対にあるべきではないというふうに僕らは思うのでありますが、その辺はどう思われますか、ほかの問題も含めてでも結構であります。
  39. 松本惟子

    松本参考人 言われますのは、承認制度であるのか、要するに申し出を拒否できない権利であるのかという違いがあります、こういうふうに言われます。しかしながら、法律そのものを純粋に見ると確かに法律の性格はそうなのかもしれませんけれども、民間の職場におきましても、例えば罰則がついていないとか、それから職場の中の雇用管理の実態を見るとそんなにスムーズにとれていない場合もありますので、実態から見れば、余りこのことを声高に言うべきではないのではないかというふうに私自身は理解しております。  それから、官民の差でありますけれども、私どもが中小の格差があってはならない、こう申し上げているのと同じように、働いている者は官であろうと民であろうと同じでありますので、これは格差があってはならない。それから、今回の政府法案の中には最低基準ということで地方公務員の関係が入っております。これにつきましては国家公務員に準ずるということで、回数の問題も弾力的な運用がなされるというふうに理解をしたりしております。  以上です。
  40. 柳田稔

    ○柳田委員 樋口先生は、働く、仕事を持っていらっしゃる女性立場なので、これでちょっとお尋ねしたいのでありますが、我々の案は実は介護休業をとったときに不利益な処置をしてはならないということが言明してあるのですけれども政府案の方は解雇してはならないという程度のことでありますが、働く女性立場で、女性ばかりではないのでありますが、今は大多数が女性だということで質問させていただくのでありますが、この不利益取り扱いの処置はどの程度か、我々新進党案はそれを出していますが、もっとやれというべきか、おまえたち言い過ぎだというふうにお考えなのか、その辺はいかがでございましょうか。
  41. 樋口惠子

    樋口参考人 簡単に申し上げます。  解雇されないということは最低の条件でございまして、しかし、それが職場が異動されたり、あるいはもう本当に、言ってみれば窓際族に押しやられたりということがあってはならないと思っております。ですから、「不利益」という言葉に進めていただいたことは結構なことと思っておりますし、ただ、その不利益ということをもう少し、本当は私などは具体的に、今言ったような原職復帰ぐらいのことを言ってほしいと思いますけれども、まあ現状としてそのぐらいで仕方がないかな、まけておくかなというところでございます。
  42. 柳田稔

    ○柳田委員 きょうはいろいろな意見を伺いまして、きのう地方公聴会を行いまして、きょうこうして参考人のお話を伺いました。新聞には何か、あした決まるのではなかろうかという記事も載っておりましたけれども、我々は決してそうは思っておりませんで、きょうの皆さん、四方のお話を聞いて、そして自分たちの主張も考えながらこの法案をどうすべきか考えていきたいと思っております。  ただ、基本的には介護休業制度というのはぜひとも要るという立場があるということで、また、いろいろと我々にこういうことも考えるべきだということがありましたらばお知恵を拝借いたしたいと思います。  本当にきょうはどうもありがとうございました。
  43. 笹山登生

    笹山委員長 次に、池田隆一君。
  44. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 きょうは、大変貴重な御意見をそれぞれの参考人の方からいただきまして、まことにありがとうございます。  私は社会党に所属していますけれども社会党としては、この介護の問題については、基本的には緊急避難的な意味合いで考えていかなければならぬ。日本社会保障制度のあり方、戦後五十年たっているわけですけれども、自分のことは自分で見ろという形が戦前からずっと続いてきている。それが社会的なサービスの中で社会保障というものを考えていこう、こういう流れになってきて、やっと五十年たってこの介護の問題も一つの法案として提出されるという時期になってきたという意味については、感慨深いものがございます。  しかし、先ほど若干論議されましたけれども、先進諸国、特にヨーロッパでは介護休暇というような法律がない。また、今回の国会でILOの百五十六号条約が批准された。これは職業生活と家庭生活を両立できるようにという形なわけですけれども、これの条約を見て、また百六十五号の勧告を見ても、介護の問題については言及されていません。あくまでも家族の病気等でございます。  例えば、配偶者の病気や近親者の死、子の結婚、子または子を世話する者の病気、これはECの親休暇及び家族休暇に関する改正指令案でございますけれども、ヨーロッパとしては、基本的に介護というものは社会の中で進めていくというものが制度的に確立をしている。しかし、情的なものについてはきちっと親子の関係は保っていく。つまり家族というものは親子二代、そしてその子供は成長していって独立をしていく、その中での社会保障のあり方というものが確立をして、そのことが追求されてきたのではないかなという感じがするわけです。  そういう意味におきまして、まず山本参考人樋口参考人にお聞きしたいと思うのですけれども日本のこれからの老親介護のあり方をどう考えていけばいいのか。私たちは、いわゆる公助、共助、自助という言葉がございますけれども、公助を基軸にしながら共助、自助を重複的に進めていくべきだという考え方を持っています。そういう意味において、この老親介護の将来的な展望というものをどういうふうにとらえておられるのか、その辺をお二人の方にまずお聞きをしたいと思います。
  45. 山本貢

    山本参考人 ただいまの池田先生のお話でございますけれども、やはり国民一人一人の状況を考えますと、極めて多様で、置かれた状況というのは千差万別だと思います。そういう中で、公的サービスを充実して整備していく、これがどうしても不可欠ではないかと思います。それが基本の上に立って、共助あるいは自助。しかしながら、最近新聞等でも拝見しますけれども、やはり自己責任というものもこれからは相当出てくるのではないか。現に保険とかなんかに入って、みんなそれぞれもう既に老後の備えをしておる方々も多いわけですけれども、そういうことをより推進するような方策も必要になってくるんじゃないか、こんなふうに思います。
  46. 樋口惠子

    樋口参考人 最初のときにも申し上げたかと存じますが、介護休業制度介護をすべて解決する魔法のつえでも何でもないと思います。  本当に今の日本高齢化の特徴は、スリーSと言われますけれども、スピード、スケール、シニア、スピードがとにかく世界未曾有に速い、そして高齢化のスケールが大きい、しかも平均寿命は既に世界一の国でございまして、これからふえていく高齢者は前期高齢者よりも要介護の比率が高い後期高齢者でございます。  このような特徴を抱えた高齢化の仕方をしている国は日本が初めてでございます。ですから、日本はある意味で世界の中の最も壮大な実験室の中にいて、この中で世界一の長寿を保った、二十一世紀初頭には世界一の高齢社会になる日本が、安らかに人々が人生を全うできる、その人らしく全うできる社会をつくることは、これは憲法論議はいろいろございますけれども、こういう状況をつくることこそが世界に対する一つのモデルの提出であり、貢献であろうと私は思っております。  この介護休業制度はある意味で家族介護ということを考えておりますが、私は実は、新進党さんの案以上に、本当は介護をする人は親族のみならず、友人とか近隣の人とかそういうところにも広げてよろしいのではないだろうか。家族というのが今まで血縁中心でおりましたけれども日本は今、特に高齢期の家族関係というのは、歴史が古い日本でございますが、子供が六十で親が九十だなんということに変化するのは実は非常に新しい、今初めての問題でございますから、ここをどういうふうにするかということは非常に模索していかなければいけないことだと思います。  既に、生き残る側の女性の中からは、気の合った女性同士で住んでいこうとか、あるいは、別に女性でなくてもよろしいと思うのですけれども、従来の家族のイメージを離れた動きなども出てきております。志で結び合った人間関係家族と新たに認めていくなどということも含めながら、だけれども、それだけでいいかといいますと、やはり昔ながらの家族というのもあり得ますでしょうし。しかし、そのとき介護というものから責任としては家族が解放されていくということが、本当は私は目指すべき点としては、そうだと思います。ただ、申し上げましたように、情として親は見たい、親しい者のそばにいたい。しかし、七十過ぎて今度は親を見るなんというときになりますと、これは介護休業法もないかわり、介護休業の必要もないぐらい仕事は離れておりますでしょうけれども、しかし今度は体力がなくなっている。こういうときに公的な社会福祉サービスがなかったら、親子の情も夫婦の関係も全うできません。  ですから、介護休業法というのは主たる介護者に当たる人々が労働年齢にあるときの一つの柱でありまして、先ほどから先生方もおっしゃっていますように、高齢社会というのは日本が初めて出会う本当に未曾有の初体験の社会でございますから、総合的に取り組まなければならない。その総合的に取り組んでいくテーマが人間が人間らしく一生を全うするというまさに二十一世紀の新しい価値観でございますので、そういう労働年齢のうちにそういう必要があった人に対して介護休業法をつくるのは企業のまた社会的責任であり、どうしてもできない企業があれば国が支えるべきだと申し上げているわけで、もちろん公的福祉サービスが充実することがその大前提でございます。  先ほど来先進国で例がないというお話が出ておりますけれども、よいことならば、一番初めに始めて何で悪いのでございましょう。平和憲法も世界でないないと言われながら、これがすばらしいのだと言い続けて、何となくそれが今認められてきている点もあるのではないでしょうか。
  47. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 今樋口先生の方から、大変よい法律なので日本を発信地として世界的にどんどん広めていくべきではないかというお考えがあるようでございますけれども日本は極めて介護を、家族が世話をすることが当然だ。先ほど若干お話がありましたけれども、戦前からの家族制度、家というものの中で、いわゆる道徳教育なんかでも子は親の面倒を見るのが当然だというようなこと。これは親子の関係の情愛というものはもう基本的に永久に不滅なものだろうというふうに思います。情愛の形をどう示していくのか、これは家族としてはそれぞれのあるべき姿があるだろうと思うのです。しかし、直接的に世話をするのが本当に今の社会の中で求められていく、追求すべきことなのかといえば、それはさまざまな形態もあるでしょうけれども基本的には、育児と違って、老親介護については社会介護の中で進めていくべき問題であろう。  それはいろいろな研究会でも報告されていますけれども、先生も御参加の高齢者介護・自立支援システム研究会が平成六年十二月に出しておりますけれども、「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」という中でもそのことがうたわれています。例えば、「今日の高齢者介護は、家族が全てを担えるような水準を超えており、高齢者の「生活の質」の改善の点でも、家族のみの介護には限界がある。また、社会全体から見ると、家族による介護は、専門職が行う介護に比較して効率的とは言えない面がある。」というような指摘もございます。  そういう意味で、ではヨーロッパ等では家族の情愛等はどうなのかといいますと、これはびっくりしたのですけれども、デンマークあたりでは社会介護は相当進んでいます。その中で親子の接触性、あなたが最後に子供と会ったのはいつですかというようなことを七十歳以上のお年寄りの方にお聞きした調査が一九八八年のものがあるわけですけれども、きょうまたはきのう会ったというのが二八%あるのです。一週間以内というのが三二%です。一カ月以内が一一%。一年以内が六%。接触なしが一%という形です。そして子供なしというのが一九%ありますし、子供と同居が三%ありますから、仮に社会施設の中で介護をされているという状況の中で接触があるとすれば、七〇%以上の方がこういうような家族の情愛の中で進めている。しかし、日本の場合は、何か施設に送り込んでしまうとそれっきりという形の中で、介護されているお年寄りが家に戻りたいとか寂しいとかというお気持ちにもなってくる。そこのところをどう進めていくのかということが今後の課題だろうというふうに思っています。しかし、決して世話をするということではないのではないかというふうに考えています。  そういう意味で、家族介護がある一方で強く求められている背景というのは、こういうような日本家族制度のあり方、家制度のあり方があるのではないかと思うのですけれども、そのあたりのところを樋口先生はどのようにお考えでしょうか。
  48. 樋口惠子

    樋口参考人 家制度の中で、先ほどドイツと日本との違いで申し上げましたけれども、とにかく嫁が介護中心であるというふうに考えられていた日本の家制度に対しては、私たちは断固反対いたしております。しかし、親子の情愛としての、そばにいて話し相手になろうとかそういうことは、私は自然にわき上がってくるものなら大切にしたい、むしろそれを阻んでいるのがさまざまな福祉サービスの基盤の不足であるというふうに思っております。  ですから、池田先生がおっしゃいますように、これは私ども委員会高齢者介護・自立支援システム研究会でも公的介護保険に関して提案したわけでありますけれども基本の部分は社会が見る、しかしそのことは、見たいという家族を阻むものではないし、見る家族を大いに社会的に支援していかなかったら、今介護休業制度でございますけれども介護休業制度だって、本当に重介護の方がいたら、一人介護休業をとって一年やったからといってそれで済むものでは絶対にございません。最初のときに申し上げましたように、本当に重介護だったりするならば、やはり施設と併用しなかったらとてもできません。そこにめどがつき、落ちつくということ、そして施設を利用したり、あるいはショートステイとかそういうものを利用しながら頻繁に見舞ってあげるということで介護休業というのはほとんど費やされてしまうだろうと思います。ですから、新進党さんの案にも私はやや不足に思いますことは、短時間勤務とかフレックスタイム制は、一年をむしろもっと広げて、そして人生の中に分散できるように、ばらまけるように柔軟な対策を望みたいと思っております。  そして私は、公的な介護サービスを基本とするべきだということと介護休業制度を設けるべきだということとは何ら矛盾しないことだと思っております。今日本は急激な高齢化の中で、ヨーロッパと日本とどこが違うかといいますと、高齢化のスピードが物すごく違うから、さまざまな福祉サービスが非常に整っていないということ。例えばドイツなどでしたら、もう既に十二世紀から老人ホームができまして、親子が別居するという伝統がもう数世紀にわたってでき上がっております。それから、在宅在宅といいましても、高齢人口の五%前後がヨーロッパにおきましては施設にもう入ることができた上で在宅でございます。  ですから、日本はまだまだそういう福祉施設とかサービスをどんどん進めなければならないと同時に、この二十一世紀を目前にした状況でさえ、まだ嫁がやめて介護しないのはけしからぬと言われる。言ってみれば、急激に工業化、高度成長した国でございますから、意識の面でまだ封建時代が生き残っている社会でございます。  それらを払拭していくためには、とにかくあらゆるところが介護に参加するのだ。私は、企業社会的責任として、これは一種のフィランソロピーではないかとすら思うぐらいでございますけれども介護休業制度というようなものを通してこれから、また、あえて少し暴論かもしれませんけれども大まじめなのでありまして、あらゆる企業の方々あるいはあらゆる人間が人生のどこかに最低一年ぐらいの介護休業というか介護体験を、自分の親なり社会なりにどこかに組み込んでいくということが大事であります。公的介護を整えるということは、これはもちろん、税金を使い、あるいは保険によって社会的に連帯すると同時に、家族ないしあるいは他人に対して人生のどこかで介護をしていくという覚悟を、すべての人々が、男性を含めて持つことが大事でありまして、これを、私の申し上げる国を守る気概と同じような形で考えていただきたいと思っております。
  49. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 ありがとうございました。  それでは、時間もなくなってきましたので、争点になっている部分について松本参考人の方にお尋ねをしたいと思うのですけれども労働者実態として、年間八万人以上の方が介護のために、それを理由としておやめになっている、そのため何とかそれに歯どめをかけていきたいという視点がこの介護休業法の連合側の大きな要求としてありますよね、成立に向けての。  そういう意味で、施行期日それから取得期間について、もう来年からすぐにというのと一年間という形での要望もあるわけですけれども、政策を決定していくときに、雇用政策に関する条約、第百二十二号では、使用者の代表者及び労働者代表者の意見を十分考慮しながら政策を決定していかなければならぬというものが片っ方にはあると思うのですね。ですから、組合なんかでも、いろいろな勤務条件を決めるときにも労使対等の立場でいろいろ交渉していって、最終的に煮詰まったものを、それぞれのものを出し合って妥協点を見出して進めていくというのが実態だろうと思っております。  そういう意味で、私たちは、皆さん方の気持ちもよくわかる。しかし、これは強制として全労働者にかかわる法律だとすれば、最低のものを、実態的なものを把握して解決するために、猶予期間、さらには三カ月という形を与党案として出しているわけでございます。  そこで、こういう中小企業実態をどういうふうに押さえておられるのか。そこを無視せいとは言われていませんし、財政支援をしていくべきだという御意見もありますけれども、そういう実態を、連合側としては、大変中小企業の皆さんが難しいと言っている御意見をどのようにお考えになっているか、その辺をお伺いしたいと思います。
  50. 松本惟子

    松本参考人 施行期日の問題につきまして私どもが申し上げておりますのは、先ほど議員もおっしゃられましたし、それから樋口先生の方からのお答えもございましたけれども、現在あるいは早急にゴールドプランそのものが介護休業を必要とすることがない、あるいは三カ月程度でいいということであるならば、そんなに急いでとは言いません。これから新ゴールドプランが推進をされていき、財政的な援助の問題につきましても検討が深められていき、一九九七年あたりには今よりももう少し社会福祉の実情が進むのではないだろうか。  私どもが今求めたいのは、将来どうなるかというのはちょっとまだ予測はつかないのですけれども、今非常に基盤が貧弱、貧困な中にあって仕事を続けていくとするならば、今この制度が欲しいということなんですね。将来は、社会福祉が進んでいけば、例えば三カ月でいいというふうになるかもわかりません。しかし、それはまだわからないわけです。現在困っている人を救済するためには今このことが必要であるということです。  中小企業の問題につきましては、これがそんなに負担なのでしょうかということをもう一度私の方から伺いたいと思います。むしろ、ここにございます資料の中でも、三十人から九十九人以下のところが一四・二%の導入率である、百人から四百九十九人規模が二二・五%、五百人以上が五一%ちょっとというようになっているわけですね。ですから、本当に困るというのはやはり財政的な問題、人の手当ての問題なんだろうと思います。もう一つ別の面では、人材確保という意味で、日本企業というのは雇ったところでキャリアを積んで人を育てていくということになっていますから、一時期休んで、よい人材あるいはキャリアを積んだ人を確保していくというのは、そんなに負担なのかなということです。私は認識不足でしょうか。
  51. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 時間が来ましたので終わりたいと思いますけれども、特に一年間という視点について言えば、本当にそのことで女性を解放することになるんだろうか、家族介護という形で女性にそれを押しつけてしまう危険性があるのではないかということも危惧として持っています。三カ月の方が、より分担をしていける、いろいろな意味で広げていけるという要素があるのではないか、その方が女性にとってもいいのではないかという立場もあるだろうというふうにも考えていますことを申し添えて、終わりたいと思います。
  52. 笹山登生

    笹山委員長 次に、佐藤謙一郎君。
  53. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 新党さきがけの佐藤謙一郎です。きょうは参考人の皆様方ありがとうございました。  最初に山本さんにお聞きをしたいのですけれども中小企業の厳しい環境をるる御説明をいただきました。しかしさりとて、介護休業の持つ意味、そしてその権利というものをおわかりいただいて、しからばというところでありますけれども、私は、きのうの名古屋の地方公聴会で、ある方が、日本商工会議所の調査で、平成六年の三十人以下の事業所介護休業普及率が二・五%だという数字を聞いて、これは怒りというよりも、現実の持つ悲しさというものを感じ取りました。  今度のこの問題の非常につらいところは、松本さんからは、本当に企業というものはそんなに負担なんだろうか、そういうお話がありましたけれども、弱者が持っている当然の権利を今実現しようとしているときに、それによってもう一つの弱者が危うくなってしまうということを我々は大変深刻に恐れるわけでありまして、そうした意味では、一歩前に進めなければいけないと同時に、そうしたものに対する配慮というものを我々は真剣に考えなければいけないと思います。  先ほど山本さんが、法制化の前にガイドラインによって普及を図るべきだというような主張をされたわけですけれども、そうした誘導がありながら、なお三十人以下の人たちの事業所でこんなに低い普及率。これは多くは中小企業、さらには零細企業というのは、きのうも議論がありましたけれども、大企業になれない企業中小企業であり零細企業であるとは考えられないという一つの構造的な考え方もあると思うのですけれども、なぜ普及できていないのだろうか。そしてもしも、先ほど松本さんが財政的や人の手当てでそれは何とかなる、そういうお話がありましたけれども、政府が考えているいろいろな支援措置以外で、こういうものを提案するぞというものがあったらお示しいただきたいと思います。
  54. 山本貢

    山本参考人 ただいまの佐藤先生のお話で、ある調査によりますと三十人以下では二・五%というふうなことだということでございますけれども、先ほどお話にも出ておりましたけれども、中小におきまして、これはあくまでも制度として導入しているのは恐らくそういうパーセントということではないかと思います。したがいまして、実際に日々のいろいろな状況の中でそういう申し出があったときに、それぞれ個別対応しているというふうなことで恐らく対応をしているのではないかというふうなことではないかと思います。  そして、先生はさらに、弱者をさらに弱い立場に落としめるということにならないかというふうなお話があったわけでございますけれども、申し上げるまでもなく、中小におきまして現在の状況というのは厳しい。そういう厳しさの中で人を何とかして確保し、これを育成していくというふうなことは、中小の経営者にとって本当に毎日頭にこびりついていることなわけでございます。  しかしながら、当然のことながら中小企業におきましても大企業以上に、大企業はリストラ、リストラ、こう申しているわけでございますけれども、中小におきましても、それぞれの立場で相当コストダウン要請に応じて厳しい中を切り抜けていかなければいけない。  先ほど申し上げましたように、中小の生産性が、大を一〇〇とすると五〇%台という中での厳しい対応を迫られているということになりますと、中小の場合にはどうしても労働集約的な作業が多くなるわけでございますので、そこで、省力化機械とかなんかも入れながらも、しかしながら小零細になりますとやはり人手に頼らざるを得ない。しかしながら、現在かなり労働環境は緩和化されているといいますものの、それはあくまでも労働者にとって本当に望ましい職場についての緩和化でございまして、中小におきましては、人手が欲しいけれどもなかなか来てもらえないというふうな状況にあるわけでございます。  ですから中小としても、積極的には取り組みたいけれども、しかしながら法律によって強制された場合には、それに対応できない、脱落するものがたくさん出てくるのでは困るということで、最低限のハードルをお願いし、猶予期間をお願いしておるわけでございます。  したがいまして、私どもとしては、先ほど来助成金あるいは給付金というふうなことで、経済的な支援というふうなものはもちろんこれは基本となって施策として展開されることを望むわけでございますけれども、と同時に、やはり中小の場合には、代替要員確保というのがそれぞれの経営者にとって頭が痛い。特に中小の場合、例えば大きく一万人の従業員がいて、一人一年間休んでいても一万分の一で対応できる、こういうことですから、あるセクションからあるセクションへ人を配置転換できる、こういうことでございましょうけれども、十人、二十人、三十人となりますと、それぞれの一人一人がその企業の中では小さいなりにかなり重たい仕事をしている。そうしますと、そう簡単に人事配置もできない、転換もできない。  そういう中で、外からも人を入れたいというふうなことでございますので、現在労働者派遣事業につきましては、いろいろな専門的職についての限定があるわけでございます。現在十六業務についてしか認められていないというふうなことでございますので、ぜひこの点を改善していただいて、この介護休業等におきましてこれに対する手当てをするということで人手が欲しい場合には、こういった派遣業法に基づきます派遣者を速やかにそういうふうな対応をした中小企業派遣できるような基盤整備を行っていただきたい。それがかなり浸透してくれば、これに対して経営者も安んじてこの休業制度導入に踏み切っていけるのではないか、こんなふうに思っております。
  55. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 ありがとうございました。  大変難しい問題があるわけですが、そうはいっても、この介護休業という権利を着実に定着をさせていく、そうしたことでは今までのいろいろな議論で方向は一つになってきたんだろうと思います。それをどう実効あらしめるか、そういうところで方法論でいろいろな違いも出てきているわけです。  松本さんにお聞きをしたいと思うのですけれども、我々もこうした法制化に一生懸命努力をしてまいりましたけれども、先ほどの、育児休業の方で一年間ということであるわけですけれども、実際にとられている方が、三カ月未満が三四%ですか、六カ月以内が二八%というような数字であります。法律というものは法律としてありながら、しかし現実に、とりたくてもここまでで抑え込まれてしまっている。それは一体何が抑え込んでいるんだとお感じでしょうか。その辺の理由をお聞かせいただければと思います。
  56. 松本惟子

    松本参考人 私ども調査によりますと、一つは、やはり休むと即座にお金が入ってこなくなってしまうというのが一つあります。それから、人を雇ってもまたお金を出さなければいけないという、二重のパンチがある。それからあとは仕事ですね。職場の仕事が非常に切り詰められた人員の中でやっている、あるいは自分が休むとほかの人に迷惑がかかったりなんかする心苦しさみたいなもの。それからあと、現在職場が非常に変化が激しいですよね。そういうところで、原職復帰だとか元職場に帰れるかどうかという不安も持ちながら、やむなく休んでいるという実態かというふうに考えております。それから制度自体が、導入されましてまだそんなに期日がたっていないというようなこともあると思います。
  57. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 ありがとうございました。  私もおととし母を亡くしたときにいろいろと介護というものを経験しましたけれども、頭の中で一方で選挙のことを考えながら母親の背中をさするというのは大変つらいことで、仕事場がどうなっているだろうかということを感じつつ介護をやらせられる女性立場というのは、思うだにやはりつらいことなんだろうなというふうに思うわけであります。  ですから、私は終始一貫、意識ということを常に言ってまいりました。先ほど樋口さんが、嫁なのに仕事をしているという意識がまだ現実にある、そのとおりだろうと思いますけれども仕事を続けることはこの法制化確保できても、その意識を変えることはこの法律ではできないと思うのですね。私たちはその奥底にあるそういう意識というものまで変えていかないと、例えば零細企業も、悪意ではないけれども、みんなでやらなければ怖くないということにもなりかねないと思います。  また一方で、これから樋口さんにちょっとお尋ねしたいのですけれども、私どもが一番心配しているのは、やはり、家族介護というものを固定化して女性がそれを義務として押し込められていくという先ほどの一部の方々のお仲間の御意見に同調する部分が私強いわけでありますけれども、今大事なのはやはり樋口さんが先ほど言われた男女のシェアリングソサエティーの完成ということなんだろうと思いますが、その中で、この法律のキーワードは選択だと僕は思うのですね。いろいろな選択をできる場を女性に、特に女性に持っていただくということが非常に大事だと思うわけでありますけれども、いろいろな選択肢をつくっていくというふうに先ほどおっしゃられました。  しかし残念ながら、休んで介護していくというこの仕組み、それが一つの制度としてでき上がってしまいますと、これは択一で固定化してしまうおそれがある。我々が望むところというのは、やはり仕事と家庭の両立でありますから、そうした中でいろいろな選択肢をつくっていかなければいけない。本当のことならば企業を休まないで介護をできる仕組みというものをもっと早くつくらなければいけないというそういう流れもあるわけですけれども、その辺の選択肢というのですか、この制度制度として法律化します、そこから先にどういうものを樋口さんは考えておられますか。
  58. 樋口惠子

    樋口参考人 おっしゃるとおりでございまして、繰り返して申し上げておりますけれども介護休業だけが日本介護事業、それから豊かな安心して老いられる高齢社会の構築にそれだけで済むものではございませんで、あえて言えば、例えばスウェーデンでは、これはもう御案内の先生が多いと思いますけれども、最終の一カ月の介護休業、あえて言えば介護休業、みとり休暇などと訳されておりますけれども、そういうものがございます。これは言ってみればターミナルケアのための休業で、一九九〇年前後にできたと思いますけれども、まず要介護の人が介護者を親族の中から指名できます。そして今度は、指名された家族はそれを受けるかどうかを自分で決定できます。両者がオーケーとなったならば、一カ月を限度として確かにそこで休業できます。  しかもその間、私は、一カ月がターミナルケアで、一カ月以内に必ず死ぬというような診断をするというのは本当はとても難しいと思うのですけれども、ただそこで感激いたしましたのは、一カ月の中でも法定の休日をとることができる。つまりその間ホームヘルパーを使ったり、それから有給休暇、有給のそのまた有給をとることができる。一カ月間の親族ケア休暇というのはそもそも有給でございますが、その中でまた、普通の労働者、ヘルパーであったらとるような有給休暇をとることができるということを聞きまして、まるで別世界のようですけれども、感動したことがございます。  私はぜひ、仮に一年間あるいは三カ月であっても、この介護休業制度ができましたならば、家族が見ているからそれでいいと思わずに、その間、普通の労働者並みの休養ができるように、在宅介護、つまりホームヘルパーやショートステイなどの利用がますます促進できるようにしていただきたいし、これは絶対にもう、公的な福祉サービスの受け皿を広げていくということ、新ゴールドプランを新々ゴールドプランにして進めていくこととまた企業が担う責任であるということと両立していかなければいけないと思っております。  先ほど先生は、お母様を介護なさって選挙とのことで大変だった、女性の大変さをわかったとおっしゃってくださいましたけれども、あえて言えば、私は男の先生方にもそういう痛みを背負って国会に出てきていただきたいと思います。佐藤先生は大変いい経験をなさったのだと思っております。そうした人間の命に触れる営みというものを、私は、リーダーであればあるほど現実になさって、そして女性を含めて人々の痛みのわかる政治をしていただきたいと思っております。いろはがるたで、私は、「いい男介護仕事を両立し」というのを一番上に置きたいと思っております。
  59. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 どうもありがとうございました。  私が最後に申し上げたいのは、企業と家庭の関係論というのがなかなか今まで議論をされる時期がなかったんじゃないのかな。育児休業という問題から、初めて企業と家庭というものが本当に真剣に議論をされてきた。先ほど柳田さんが言われたように、生産者と生活者の話がありましたけれども、残念ながら生産者の対立概念として生活者というものが出てきてしまって、それが今一つにどうやって融和されて新しい未来をつくっていくかというその一番大事なときに一番大事なこの介護休業制度を議論できるということは大変幸せだと思いますので、実りあるひとつ結果をお互いに見つけ出していきたいものだと思っております。どうもありがとうございました。
  60. 笹山登生

    笹山委員長 次に、寺前巖君。
  61. 寺前巖

    ○寺前委員 お昼の時間にまことに恐縮なことでございますが、別に私がそういうふうにさせたわけでもございませんが、ひとつ御協力を、もう最後になりますが、よろしくお願いします。  それで、時間の都合もございますので、二つお聞きをしたいと思う。  一つは、せっかく働く者の権利として介護制度を法的に整備をしよう、国際的にもILOの百五十六号条約を批准し実行を進めていこう、こういう立場日本政府が立ったときでございますので、私は、そのこと自身は非常に大事なことだ。ところが、せっかくそういうものをつくっても、実効性がないじゃないかということになっては、これは一体何だったんだと後世に批判をされることになると思う。そこで実効性のあるものにするためにということを皆さん方がいろいろ問題提起をなさったと私は思うんです。  そこで、実効性のあるためにという提起をされた中嶋さんがせっかく資料をお配りになりましたから、その資料を先ほど少し見せていただいておりますと、東京都では今の法律と同じようなものがつくられておったのを、いろいろ改革をしてこられたということがここに書かれてあります。そこで私は、実効性あるものにするために東京都の経験をひとつ聞かしていただきたいということをまず最初にお願いしたいと思います。
  62. 中嶋晴代

    中嶋参考人 お手元に東京都の幾つかの声を載せさせていただきました。  これを取り上げましたのは、私ども、既にある制度の中で、多くのところは、今政府案で提示されているものよりもいい制度を持っております。残念ながら東京都は政府案に非常に近い形だということで、制度が違うと要求もまた非常に個別に別々になってまいりますので、東京の制度から見ます。  東京の中で要求されているもので一番強い要求、実効性のあるものにしてほしいという点では、一人一回というのをやめて複数回数とれるようにしてほしいということと、それから期間の延長です。これは既に東京ではそうした声に押されまして、当初は一人に一回、三カ月でしたけれども、一年間に三月を三回に分けてとれる、そして一年経過した後にはもう一度とれるというふうに既に改善されております。  そこにAさんというふうにいっておりますけれども、Bさんもそうですが、介護休暇ができてよかった、ぜひ利用したいというふうに思ったけれども、一度しか利用できないのでどの時期にとるのが一番いいかということで決断をしかねている、そうしたときに最期を迎えてしまって、結果的にとれなかった。Bさんも、母親ががんだというふうに言われて、そして実態としては、介護休業最後のみとりにとってあげたいというふうに思っていて、とったときには二週間後には亡くなってしまったということで、事実上とれないということが言われています。そして、Eさんというところに載せてありますが、この方は、お父さんが長期に介護が必要だということで、三カ月ではしょせんもう間に合わないということで、妹さんが退職をせざるを得なかった。制度がありながら使えない。小さなお子さん、一歳十一カ月のお子さんの手術なんかでお使いになったDさんなんかも、先は長いわけですから、今後とれないということでは後が不安で仕方がないというふうに言っています。  ですから、制度がありながら、一回ではとる時期を逸することも多いですし、それから三カ月では間尺に合わないからやめざるを得ない、そうした結果にもなりかねないということで、ぜひせめて一年まで、それから別の病気だとか再発の場合には複数回数使えるようにしていただきたいというふうに思います。  それから要求として非常に強うございますのが、長期に及ぶ介護の場合、それから複数の介護者で見ているとき、そういう場合が間々あるわけです。先ほどから樋口さんなどもお話しになっていますように、私どもは、介護を一人の人間がべたで見ていくというふうなことがよいというふうには考えておりません。要求としても、断続でとりたい、それから飛び飛びに日単位でとりたい、時間単位でとりたい、そうした要求が大変強くなっています。  家族総出、親族総出、ヘルパーも加えてローテーションを組んで辛うじてやっている、でも朝と夕方の介護は自分でやらなければいけないとか、出勤時に下の世話が入ってしまったとか、いろんな状況が今は福祉の制度が貧しい中であります。そうしたときに日単位でとれれば続けられる。それで、六年母親の介護を続けたというFさんという方も、時間や日でとれれば、やはりその時期が乗り越えられるというふうにも言っていますし、アトピーの子供を持つ親だとか、高齢者のリハビリのために定期的に長期に通院する、毎週月曜日だけとりたいとか、そうした要求も大変強いところです。  そうした点で、東京の制度の中でも、短期でも時間でもとれる、そうした制度にしてほしい。既に三回に分けて東京ではできましたので、不十分ではありますけれども、子供の心臓手術で検査入院のときにとり、そして手術をするということでとったけれども、体調不良で延期をした、そこにも介護休業をとった、そして手術のときにまたとったという形でやめずに済んだということも出ております。  所得保障と代替の要求も大変強く要求をされているところです。
  63. 寺前巖

    ○寺前委員 次に、これを実行さしていこうと思うと中小企業の問題というのが一つ直面する問題だということは、これは私は否定できないと思うのです。特に零細な諸君たちのところの家族労働挙げての日常的な運営を見ておりますと、そう単純ではないなということは当然だ。しかし、そこに甘えて、いわゆる日本の国は金持ち国家だ、こう国際的に言われながら、実際には過労死という言葉が天下御免で国際的にも使われるように、弱い者いじめのところに姿があらわれている。一番弱い者いじめされるのは労働者ですから、権利意識をそこに明確にさせることによって弱い者いじめを抵抗さしていくことになる。そうすると、次には弱い者いじめという姿は中小企業の運営にかかってくるであろう。  したがって、そういう意味からいうと、日本の大手企業が、先ほど山本さんがおっしゃったように、リストラをやって平気で海外へとっとことっとこ出ていって、安い労働賃金で物をつくらして逆輸入さしてくる、それによって一層また日本中小企業から労働者がしわ寄せを受けるというそういう社会条件になってくるし、大手企業労働者も、日本労働水準全部が低くなるんだから、したがって労働水準を低くさせられていく、こういう関係性で動いていっているだろうと思うのです。  そういうことから考えたら、労働者に権利として保障していくことの持っている役割は非常に高いものがある。それだけに、こういうものを執行していこうと思ったら、中小企業に対するところの特別な施策というのをやることが、あるいは大手企業に規制を加えるということが、これが私は政治の果たさなければならない役割であろうというふうに思っているところです。とするならば、そういう手だてが今同時に、この法律法律として提起をしながらも、若干の有効性を持つために手直しをするということにしても、どんな手を打とうにしても、やはりその対策というのは組まなければならないと思う。  そこで、せっかくの時間でございますので、樋口さんに、めったに御意見を聞く機会も私ございませんので、ひとつ気楽に、思い切って御見解を述べていただいたらありがたい。同時にまた、松本さん、中嶋さん、それぞれ、この法律と同時に、こういうふうに対応すべきだ、手を打つべきだという点の御見解を示されたらありがたい、こういうふうに思います。
  64. 樋口惠子

    樋口参考人 中小企業が実行するのに、その裏づけとなるにはどういう政策がよいかということは、私はむしろ中小企業の方々から提言していただきたいと思っております。ただ、私自身も中小企業が非常に困難な状況に置かれているということはおぼろげながらわかるような気がいたしますので、この辺にこそ私は、やはり政府の助成ということは、これは絶対に必要であろうと思っています。  ただ、先ほどからのお言葉でございますが、結局弱いところへしわ寄せがいくといって中小企業が発足するのをおくらせることを認めるような御意見参考人からも先生方の方からもございましたけれども、もし中小企業にしわ寄せされるからといってこのスタートをおくらせるとしたならば、では、家族の中で最も弱い者として担わされてきた女性の、弱い者を放置しておいた状況はそのままいくのかという問題がございます。  私は、少なくとも家族介護だけでやれと言っているのじゃないということはもう繰り返し申し上げますけれども、現実に日本家族で担われている部分が多い中で、そこで女性たちが仕事をやめたり、あるいは私はこれは男の問題だと繰り返し言っておりますのは、妻だけではやれなくなってしまうのです、四十、五十になってまいりますと。そうしますと、本当にさっき申し上げた離婚騒ぎも含めて、もうあなたやれませんという言葉が出てくる。  そこで、夫たちは愕然とし、幸いにして今四十代、五十代、働き盛りの男性たちはもう戦前型の亭主関白ではなく、ある程度妻の実態がわかるようになっておりますし、自分の老いも少しずつ実感できるものですから、ここで妻と悪い関係を持っておくと自分の老後に差し響くということが実感できるような年齢になっているということもあって、そしてそこで妻と対話が始まる。私は、この介護休業制度はそうした男性たちによってとられているからこそ、育児休業は〇・二%だというのに、介護休業をやっているところだけで、もはや男性の取得が二割を超えているということなのだと思っております。  ですから、この介護休業制度を、先ほど意識の面について佐藤先生からも御質問ございましたけれども、ぜひ男性がとる、弱い者にしわ寄せをしない。これは社会的に見れば大企業中小企業の問題であろうけれども、それを家族の中で個人的に見たときには、それは男性対女性、夫対妻の問題にもなるのであって、弱い者いじめをしない、弱いところにしわ寄せをしないというのは、ぜひあらゆる面で、ある組織と組織、企業企業、そういうことではなくて、人間対人間ですね。そして、最も弱い立場として女性介護を押しつけられていくと、まだ弱い立場が実はいるのでありまして、当の介護を受けるお年寄りでございます。  その虐げられ押しつけられた人間によって介護される状況は決していいものではありませんから、ぜひ私は、この中小企業を支えるということと同じ論理で、女性たちと介護を男性が支え合っていくこの制度を進めていただきたいと思っております。
  65. 中嶋晴代

    中嶋参考人 時間がございませんので、簡単に述べます。  まず中小企業に対しては、先ほども申し上げましたように、特別の助成が必要だというふうに考えています。中小企業の置かれている状況は大変深刻です。とりわけ私ども全労連で調査をしました中で、もう少し広い視野で見ますと、今大企業が非常に内部留保をこの不況の中でもふやしている。そうした中で、そのふやしている背景には、労働者に長時間労働をさせ、そして無権利にさせ、低賃金にさせ、そして中小零細企業に対しては、これを切り捨てていくという施策があろうかというふうに思うところです。  そうした点で、中小企業を切り捨てて海外進出をするというような大企業の横暴を規制していくということも非常に大事だというふうに思いますし、それから政府におかれましては、大企業優遇の施策や軍事費をさらに拡大をするというような方向ではなくて、防衛費を削り、福祉や教育やそして中小企業対策などに厚い予算を持っていくというようなことも、中小零細企業の中で介護休業をスムーズに実施をさせていくという上で重要ではないかというふうに思っております。
  66. 寺前巖

    ○寺前委員 それでは、時間が来ましたので、終わります。
  67. 笹山登生

    笹山委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会代表しまして厚く御礼を申し上げます。  それでは、参考人各位には、御退席いただきましてよろしいかと存じます。     —————————————
  68. 笹山登生

    笹山委員長 この際、昨十日、両案審査のため愛知県に委員派遣いたしましたので、派遣委員からの報告を便宜私からいたします。  派遣委員は、団長として私、笹山登生と、赤城徳彦君、大野功統君、長勢甚遠君、河上覃雄君、北橋健治君、岩田順介君、佐藤謙一郎君、桝屋敬悟君、池田隆一君、寺前巖君の十一名でありました。  現地における会議は、名古屋都ホテルにおいて開催し、まず私から、派遣委員及び意見陳述者の紹介並びに議事の順序等を含めてあいさつを行った後、意見陳述者より意見を聴取し、これに対し各委員より熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、愛知県経営者協会専務理事高島健二君、連合岐阜執行委員女性委員会事務局長中村征子君、名古屋商工会議所中堅・中小企業委員会委員長富田和夫君の三名でありました。  以下、その意見陳述内容につきまして、ごく簡単に申し上げます。  高島君からは、高齢化の進展に伴い、要介護者の大幅な増加が見込まれること、社会保障制度が充実されれば、当然、企業の福利厚生制度の充実といった観点からの介護休業制度化の必要性が生じること等により現実的な対応が必要であると考え、政府案は譲歩できるぎりぎりの線であると判断し、おおむね賛成である。また、施行期日に関しては、平成十一年の一斉適用ではなく、中小企業に対して時間的猶予の配慮が必要であり、委託募集については実効性について疑問があり、これと並行して労働者派遣法の拡大運用について引き続き検討を要望する等の意見が述べられました。  中村君からは、新進党案が望ましいという立場から、政府案に対して三つの修正と一つの補強が必要であるとの提言がなされました。まず、休業期間を三カ月から一年間に、休業回数については、家族一人につき一回を一継続する病状ごとに一回にすべきであり、取得方法も、連続取得だけでなくて断続的取得も認められるべきである。また、施行期日を一九九九年四月から一九九六年四月にするべきである。最後に、補強として、休業期間中の賃金保障が必要であるとの意見が述べられました。  富田君からは、雇用者、特に中小企業立場から、介護休業法制化に当たっては、中小企業における代替要員確保困難性介護休業制度実施に伴うさまざまなコスト負担増大、かつて経験したことがないほどの厳しい経営環境下における中小企業の抱える問題を十分踏まえた対応が必要である。政府案内容については、対象となる家族範囲実態に即して定めるべきであり、休業回数期間は、中小企業要員管理等の負担を勘案すれば、家族一人につき一回、連続して三カ月とすることが適当であり、施行までの準備期間等を含め、政府案で取りまとめるよう要望する旨の意見が述べられました。  なお、このほか、社会保障制度の全体像の策定、その中における介護問題の位置づけの明確化、国、個人企業等の役割とそれぞれの負担内容の明確化が必要であり、それらに対する国民的コンセンサスを確立していく必要がある等の意見が述べられました。  意見の陳述が行われた後、各委員から、介護休業育児休業の相違、労働者家族介護実態、公的介護システムの現状と介護休業制度最低基準としての介護休業期間対象となる家族範囲企業として介護休業制度導入した場合のメリット、中小企業に対する時間的猶予の配慮必要性施行期日までの企業努力及び必要とされる援助、経済社会構造の変化に対応する労使関係施策介護を行う権利意識の明確化の必要性、将来の社会保障のあり方等について熱心に質疑が行われました。  以上が会議の概要でありますが、議事の内容は速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、今回の会議の開催につきましては、地元の関係者を初め、多数の方々に多大の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告を終わります。  お諮りいたします。  ただいま報告をいたしました現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 笹山登生

    笹山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔会議の記録は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  70. 笹山登生

    笹山委員長 次回は、明十二日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十六分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員の愛知県における意見聴取に関す    る記録 一、期日    平成七年五月十日(水) 二、場所    名古屋都ホテル 三、意見を聴取した問題    育児休業等に関する法律の一部を改正する    法律案内閣提出)及び介護休業等に関す    る法律案(松岡満壽男君外四名提出)につ    いて 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 笹山 登生君       赤城 徳彦君    大野 功統君       長勢 甚遠君    河上 覃雄君       北橋 健治君    桝屋 敬悟君       池田 隆一君    岩田 順介君       佐藤謙一郎君    寺前  巖君  (2) 政府側出席者         労働省婦人局長 松原 亘子君         労働大臣官房審         議官      渡邊  信君         労働省婦人局婦         人福祉課長   北井久美子君  (3) 意見陳述者         愛知県経営者協         会専務理事   高島 健二君         連合岐阜執行委         員・女性委員会         事務局長    中村 征子君         名古屋商工会議         所中堅・中小企         業委員会委員長 富田 和夫君      ————◇—————     午後一時一分開議
  71. 笹山登生

    笹山座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院労働委員長笹山登生でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、内閣提出育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案及び松岡滿壽男君外四名提出介護休業等に関する法律案の両案につきまして審査を行っているところでございます。  当委員会といたしましては、両案の審査に当たり、国民各界各層の皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を開催いたしているところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いを申し上げます。  まず、この会議の運営につきまして御説明申し上げます。  会議の議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  次に、議事の順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者の皆様から御意見をそれぞれ十五分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いいたします。なお、御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、本日御出席の方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党・自由連合の大野功統君、長勢甚遠君、赤城徳彦君、新進党の河上覃雄君、北橋健治君、桝屋敬悟君、日本社会党・護憲民主連合の岩田順介君、池田隆一君、新党さきがけの佐藤謙一郎君、日本共産党の寺前巖君、以上でございます。  次に、各界を代表して御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  愛知県経営者協会専務理事高島健二君、連合岐阜執行委員女性委員会事務局長中村征子君、名古屋商工会議所中堅・中小企業委員会委員長富田和夫君、以上の方々でございます。  それでは、高島健二君から御意見をお願いいたします。
  72. 高島健二

    ○高島健二君 高島でございます。どうぞよろしくお願いします。  本日は、育児休業等に関する法律の一部を改正する法律案及び介護休業等に関する法律案の審査のために、衆議院労働委員会地方公聴会を当地で開催いただき、また、このように発言の機会を与えていただいたことにまず感謝をいたします。  私は、政府案におおむね賛成の立場でありますが、本日は、まず社会保障制度との関係において介護問題について日ごろ考えておりますことを申し上げ、次に政府案賛成に至った経緯を述べさせていただきまして、諸先生方の御参考に供したいと思っております。  まず、介護問題についてでありますが、介護はまさしく人道上の問題でありまして、本来、社会保障制度で包含されるべきものであると思います。したがいまして、政府といたしましても、ゴールドプランを一層充実し、新ゴールドプランを策定され、懸命のお取り組みをされておられるところであると理解をしております。  新ゴールドプランは、施設介護から在宅介護へのシフトを前提としているということはわかりますが、在宅介護を支える公的諸施策が不十分なまま在宅介護に依存する姿勢というのは残念に思います。もちろん、家族としての情愛による在宅介護を放棄するというような極端な考え方ではありませんで、社会保障に安心してお任せください、その上で家族による介護をという姿勢が本来の姿であり、現在のように、社会保障制度の足らざるところを個人負担にすることをあたかも前提とした物の考え方ではないかという印象を与えていることが残念であるということであります。  そこで、常々考え、日経連の諸会合や当地婦人少年室の会合あるいは愛知県労働部の産業労働懇話会等で主張しておりますことを申し上げます。  それは、冷戦構造の崩壊、五五年体制の解体、経済のソフト化、サービス化、グローバル化や、ポストバブル経済の中での右肩上がり意識からの脱却、さらには価値観・欲求の多様化、そして雇用形態の多様化等々、我々を取り巻く社会・経済・政治情勢が一変した今日、旧来の社会保障制度の延長線上で社会保障問題を論ずるのではなくて、情勢が一変した今日的な視点で社会保障制度そのものを抜本的に見直すべきではないか、そしてその中で、国と個人役割負担の方法、国と個人の間に存在する企業の側面的な立場での役割負担のあり方を検討し、その枠組みを明示して国民的コンセンサスを得ることが必要であるという点であります。  当然、本件介護問題もこの中に位置づけられるべきものであります。そうした論議なしに、また、社会保障制度の全体像が示されない中で介護休業問題が先行し、社会保障制度の不備を補う形で法的整備をしようとする姿は、経済大国日本社会保障制度貧困を物語っていると言えるのではないでしょうか。  社会保障制度は、自助、共助、公助が必要であり、それがお互いに関連し補完し合って全体の体系をなすものになると言われております。介護問題に限ってこの関係を図示したものが、配付をいただいた資料でございます。  この資料は、高齢者介護問題について本会事務局内部で討議しております段階で作成した内部検討資料の一部でありまして、なお検討中のものであります。未完成の資料をこうした場に持ち出すことは不謹慎とのおしかりを受けるかもしれませんが、自助、共助、公助の関係を口で説明しておりますと、わかりにくく、また時間もロスいたしますので、あえて資料をお示しいたしましたことを御理解いただき、お許しくださるようにお願いをいたします。  この資料で、介護休業問題は真ん中の自助の一部であります。  自助は文字どおり本人の努力でありますから、ふだんの健康に留意し、万一の場合に備えて保険に入るなど、もろもろの努力をすることは当然でありましょう。  自助の一部である企業役割は、そこにもありますように、家族による支援のための介護休業、短時間勤務制度導入といった労務管理面からのサポートが一つ考えられますし、二つ目には介護施設やホームヘルパー、介護機器等に関する情報の提供、それに基づくあっせん、場合によっては費用補助といった福利厚生施策によるサポート、三つ目には介護問題に対する意識高揚、介助法等の教育面からのサポート、第四に従業員及びOBを含めたボランティア活動を通じた地域社会との連帯など地域貢献面からのサポートといったことが考えられると思います。  共助、公助につきましては時間の関係で説明はいたしませんが、こうした本人や企業の自助に加え、共助、公助、さらには関連する部門、資料では円の交わる部分でありますが、それらの充実を図らなければ完備したものとはならないのであります。  それが、先ほど申しましたように休業制度、これは介護体系から見ればほんの一部なのでありますが、それだけが先行する形で今進められようとしているのであります。  この機会にぜひ、今申し上げてまいりましたような社会保障制度の全体像の策定、その中での介護問題の位置づけを明確にし、同時に、国と個人そして企業役割とそれぞれの負担内容について明らかにしていただき、それらに対する国民的コンセンサスを確立されるよう御努力願いたいものと考えております。  特に、当面の介護問題につきましては、介護施設の増強、介護サービスの充実、介護マンパワーの確保介護のための情報提供といった社会的基盤の整備について、社会保障制度の抜本的検討と並行してお取り組みいただくよう強く要望をいたしておきたいと思います。  次に、第二の論点であります、政府案賛成に至った経緯を申し上げます。  私は、当初、昨年の十月段階まででありますが、第一に、先ほど来申し上げてまいりましたように、介護は人道上の問題であるだけに、自助に頼らず公助というべき社会保障制度でカバーすべきであること、第二に、介護休業制度導入は、従業員福祉の観点から労働条件設定の一つとして自主的に制度化されるべきもので、御案内のように導入率は、大手ではやっと五〇%を上回っているものの平均では一六%にすぎないという現状であり、労使自治の原則からすれば、いまだオーソライズされた状況ではなく、いま少し時間をかけていわゆるガイドラインの普及を図るべきであること、第三に、育児休業制度における代替要員確保派遣法の拡大運用等についていまだ不十分である今日、さらに介護休業制度法制化されるということは中小企業にとってかなり負担になることといった原則論に立って、日経連の会合等で法制化反対の発言をし、婦少審審議に際してもそのような態度で臨むように注文をつけてまいりました。  しかし、婦少審の審議も大詰めを迎えた十一月段階に至りまして、こうした原則論による反対の態度に終始していたとしても、二〇二五年には六十五歳以上人口が三千二百四十四万人に達し、三・九人で一人の高齢者のお世話をしなければなりませんし、その時点での要介護者は二百七十万人と推計されていること、また、社会保障制度が充実されてくれば、当然企業の福利厚生制度の充実といった観点からも介護のための休日というものも制度化しなければならないことなど二十一世紀には世界一の高齢国となって高齢者介護がより深刻になるであろうと思われますので、現実的な対応をすべきであるという主張に変わりました。  その時点でも、法制化の条件は民間企業導入率八〇%程度が大方の目安とは思っておりましたので、このたび介護休業企業義務づける法律ができるということには、正直言って抵抗感を持たざるを得ません。  しかしながら、高齢化の進展に伴う要介護者の増加の実態からして、一つはノーワーク・ノーペイの原則が守られること、労使間の無用な争いが起こらないようにということから、二つ目には、一人に一回、三つ目には、対象家族を限定する、そして第四には、専門家会議報告に示されている症状安定期や介護者休業期間がおおむね三カ月以内であること、また、代替要員、本人の職場復帰の限度あるいは介護疲れ等々を勘案して休業期間は三カ月とすることなどが最低基準を示す法律としては望ましいのではないかと考えております。  したがいまして、今回示されました政府案が我々にとってぎりぎりの譲歩案であります。  あえて条件を二つつけさせていただくならば、第一に、平成十一年の一斉適用ではなく、中小への猶予措置といった配慮がいただければと思っております。今から三年間の時間があるではないかという理由のようでありますが、大手が先行して中小がその後でという長い間続いた甘えの構造というものもありますし、就業規則の改定、介護休業規程の整備といったものも、中小零細には労務課長や人事課長がいるわけではなくて、社長や社長夫人が何でも屋できりきり舞いしているといった実態を無視するわけにはいきませんので、この部分への周知徹底、教育、諸規則の整備には相当の時間が必要であろうと思います。  また、二つ目の条件は委託募集の件でございます。新しい考え方として賛成いたしますが、実効性については疑問もあります。これと並行して、派遣法の拡大運用ということについても引き続き御検討くださるようお願いをいたします。  以上、介護問題に対する考え方と政府案賛成に至った経緯を述べさせていただき、私の意見発表とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  73. 笹山登生

    笹山座長 ありがとうございました。  次に、中村征子君にお願いいたします。
  74. 中村征子

    ○中村征子君 私は、連合岐阜執行委員女性委員会事務局長という立場から発言をさせていただきます。  本日、介護休業制度法制化審議に当たりまして、当衆議院労働委員会地方公聴会に参考人として意見を述べさせていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私は、新進党の案が私ども働く女性に最も近いという立場で発言をさせていただきます。また、働く女性立場から、現状を踏まえながらの発言として受けとめていただきますようお願いを申し上げます。  一九八五年に女子差別撤廃条約の批准、一九八六年に男女雇用機会均等法が施行され、やっと男女がともに活躍できるようになりました。  私の生活する岐阜県におきましては、男女雇用機会均等法施行を記念し、均等法の定着のキャンペーン活動などを毎年四月一日に実施し、アンケート調査などを行っています。調査の結果といたしましては、女性の目覚ましい活躍も挙げられていますが、悲しいことに男女の賃金差別、不当配置や教育訓練の機会の不平等、さらには育児休業法施行後も、国を挙げて少子化対策を実施しながらも、事業主雇用管理の中で妊婦に対する目は冷たく、現状を発言させていただきますと、妊娠すれば退職するのが当然のごとくの言葉、また、子供を産めばパートに切りかえた方がいいのではないかというような現状が報告をされております。職場環境はまだまだ女性に対して厳しいものがあります。今後私たちは、キャンペーン活動を継続し、事業主への理解、協力をさらに呼びかけていきたいと思っております。  さて、各種の制度についてお話をします。  一九九二年には男女労働者対象とした育児休業法、一九九三年にはパート法が施行され、本年四月からは育児休業中の所得保障として二五%が支給されるようになり、大変私どもは喜ばしいことと思っております。景気の動向と女性労働条件改善が同時の進行となっております。  さらに、育児休業に続いて介護休業事業主義務づけ、男女労働者が職業生活を中断されることなく、職業生活と家庭生活の両立を図ることを目的とした介護休業制度法制化に踏み切ったことは大きく評価されます。とりわけ、介護のために離職率の高い女性労働者には大きな希望を与えるものと期待されております。  岐阜県におきましては、私たち労働組合の中でも、介護休業制度として今国会の提出案を上回る協約をかち取っている産別も多くあります。しかし、まだまだ未組織労働者の多い現状の中、多くの働く仲間は私たちの活動に大きな期待をかけております。  地方議会の今回の介護休業制度法制化に対する議会決議も、私たち連合岐阜の請願だけでなく、他の二十を超す女性団体と共同で請願を出すという実績もありました。これは、他の婦人団体の会員からの、この法律があったら私たちはやめなくても済んだという気持ちのあらわれでもあります。  私たちは介護休業法に向けてのさまざまな活動を展開し、街頭行動などにおいては多くの女性から激励が寄せられました。長い間法制化が期待をされている現状でもあります。せっかく身につけた職業生活、仕事に対して責任ある女性が多い現在、介護女性の多くにウエートがのしかかるだけに、介護休業制度法制化を多くの女性が望んでいることを重ねて発言をさせていただきます。  なお、今回出されております基本的な部分に大きな食い違いがあることを後ほど述べさせていただきます。  岐阜県内の施設においても、特別養護老人ホーム三十四施設、二千三百五十五人、養護老人ホーム二十一施設、千百九十人、終身老人ホーム二施設、百二十人など、全施設合わせても六十施設、三千五百人足らずで、施設に入ろうとすれば三年ないし四年待たねばならず、その間、病人は病院をたらい回しにされる現状です。今回の老人福祉計画の目標で、やっと二倍を打ち出しているにすぎません。  私たちの調査によれば、岐阜という古い土地柄、家族で病人が出た場合、ほとんどの女性が退職をしています。それは、公的な施設が少ないことと、民間施設に対する経済的な負担が多過ぎることです。  それらの問題を踏まえまして、今回出されております介護休業法について、私は三つの修正と一つの補強が必要だと考えます。  まず一つ、休業期間三カ月について一年間の修正を求めます。  連合が最近行いました「「要介護者を抱える家族」についての実態調査」では、介護場所の六〇%が在宅で、要介護者実態からも五年ないし九年が二五%と最も多く、一年未満は三%とわずかであります。  休業期間については余りにも短く、私が考えるには、高齢者さらには死を目前にした人を対象にしているのではないかとも思われます。なぜならば、介護には家庭での医療・療養上の世話、身の回りの世話、入退院のための手続、付き添いの手配、入院の付き添い、また情緒的不安定な人に対する心の支え、退院後の介助者探しなど、それぞれの仕事が大きくあることをお考えいただきたいと思います。  労働者家族介護を必要とする人が発生した場合、まず緊急避難的な病院、さらに入院、その後のリハビリなど、在宅サービス、介護支援においても家族の支援なしにはとても行うことができないのが現実であります。さらに、介護者本人の体力も含めまして、体力の限界ということがありまして、次の職業につく段階の回復を含めましても、最低でも一年間は必要だと考えます。  二つ目、休業回数家族一人につき一回については、一病状について断続的な回数を求めます。  人間、生きている以上、病に侵されます。ましてや、一つの病気が治ったからといって他の病気にかからないという保証はありません。家族一人につき一回という政府案は、そうした病状の変化が全く考慮されていません。病状が不安定な場合、いつ介護休業をとるべきか判断に悩むことでしょう。国家公務員の法律で定めているように、一継続する病状ごとに一回であれば、病状に応じて同じ要介護者で二回以上取得できるようになります。また取得方法も、連続した取得でなく、要介護者状態仕事のことを考慮しながら断続的な取得も認められるべきではないかと考えます。  三つ目、一九九九年四月の施行について。一刻も早く、一九九六年四月の施行を求めます。  男女雇用機会均等法が施行され、女性労働者も職場においては苦しく長い歴史がやっと平等に近づいてきましたが、現実的にはまだまだ女性の多くには家事、育児が大きくのしかかっております。徐々にではありますが、多くの努力と協力を得ながら一歩ずつ家庭、職場で共生社会が根づいている今日、育児から介護への道は決して速い足取りではありません。施行期日が今から四年後の一九九九年では余りにも遅過ぎます。現在要介護者を抱える者にとって、悠長なことは言っていられないのです。  長い準備期間をとっているのは、主に中小企業への配慮であるとするならば、施行期日をおくらせるのではなく、中小企業者に対する経済的支援を強力に講ずることによって一日も早く施行すべきです。岐阜県のように中小企業が多い労働者には最も必要な法律なのです。中小企業に働く者にとって、雇用継続するための最大の武器でもあります。  一九九九年は、政府のゴールドプランが達成される最終年ではないでしょうか。もし政府の計画どおりホームヘルパーの増員、デイサービス、特別老人ホームなどの増設があれば、家族介護のさまざまな負担は今より軽減されるはずです。この法律の目的からも、介護休業制度が求められるのは今なのです。  最後に、一つの補強で申し上げます。休業中の所得保障についてです。  育児休業がやっと四月から所得保障でさまざまな形の助成がされることによって、どれだけの多くの女性、また男性が救われるでしょう。以前は所得保障がなかったために、一年という育児休業期間があっても、現実的には三カ月、六カ月で職場に復帰せざるを得なかったのが現実です。今後は、本当の意味で安心して一年間子供に対してスキンシップ等ができ、新たな気持ちで職場へ戻ることができるでしょう。こんなことからも、せめて育児休業並みの所得保障が必要だと考えます。  介護には、医療費を初めさまざまな介護用品の購入やレンタル料など大きな費用がかかります。もし介護休業取得中、所得保障がなければ、生活そのものが大変厳しいものになっていきます。それは働く者にとっての切実な願いでもあります。  連合の各種の調査で明らかなように、経済的支援を求める声が多数を占めています。私は、これは当然の要求ではないかと思います。現在、介護休業制度導入されていながらも、賃金保障がないため取得を断念せざるを得ないケースも少なくありません。介護休業をせっかく制度化しても、要介護者を抱えた男女労働者が経済的な理由で取得できなかったのでは、制度をつくった価値が半減してしまいます。介護休業においても、せめて育児休業並みの水準の支給をされるべきだと考えます。  以上、三つの修正と一つの補強を意見として提言いたしました。これは連合のみの意見でなく、数多くの働く仲間の切実なる願いだと受けとめていただきたいと思います。したがって、ぜひこの国会で与野党が話し合って、私たちは国会議員に振り回されるのでなく、話し合いの結果でいい法案を出していただきますよう切に期待をいたします。  最後に、私たち女性労働者は、先輩を初め各界の皆様の英知により今日つくられた労働条件の中で働いております。私たち今働く者としては、次の世代のかけ橋となるべきではないでしょうか。均等法もやがて十年に入ろうとしております。均等法の精神を生かし切れるよう、さらにさらに女性の側も努力をしてまいります。  最後に、私ごとになりますが、仕事関係上、介護施設の要求などを作成し、その隣で母が私の仕事内容をそっと見ておって、私は病気になったら自分の家であなたに看病してほしいと寂しく一言言った母の言葉を思い浮かべながら発言をさせていただきました。  以上です。ありがとうございました。(拍手)
  75. 笹山登生

    笹山座長 ありがとうございました。  次に、富田和夫君にお願いいたします。
  76. 富田和夫

    ○富田和夫君 名古屋商工会議所の中堅・中小企業委員会委員長を務めております富田でございます。  私は、雇用主、特に中小企業立場から、今国会において審議されております介護に関する両法案について意見を申し述べたいと思います。  介護の問題は、諸外国において例を見ないほどのスピードで急速に進行する高齢化社会において、また少子化、核家族化など家族形態の変化が進む中にあって、社会全体で取り組むべき重要かつ緊急の課題であることは十分認識しております。  私ごとに至り恐縮ではございますが、私は昨年十一月、母を亡くしました。がんの後遺症に基づく病気に余病が発してのことでございました。この数年間、入院治療あるいは在宅介護等を繰り返しまして、最後の半年間は全く意識のない状態が続きました。また、母に続き、ここ三年間頼みにいたしました家内まで国から指定を受ける難病にかかりました。さらに、母を見てくれました老婦人が脳梗塞で看病中に倒れてしまいました。しかも、その御婦人は複雑な家庭事情のために介護する親族もなく、民生委員などのお世話になって、私がその方を老人ホームにまで送り届けるといった非常に苦しい経験もいたしました。そうした経験から、介護の問題の持つ厳しさは身にしみております。  私のつたない経験からいたしましても、介護の問題は、一個人、一企業努力によって解決できる問題ではなく、国の社会福祉制度全体の枠組みの中でとらえていくべき問題であると考えております。  介護休業制度について考える場合、政府はまず、あるべき介護対策の全体像を策定し、特に介護に対する政府、地方公共団体、家族個人等の役割分担やコスト分担について国民的コンセンサスを得るべきで、その中で介護休業制度のあり方について位置づけを明確にし、取り組むべきものと考えております。休業制度も、税制、医療体制、ホームヘルパー、介護施設の充実等の支援システム社会的インフラ整備があって初めて実効性を上げるものと思います。  また、介護休業制度は、介護問題の解決のために、従業員福祉の充実の観点から、労使が自主的な判断のもとで互いの立場を十分に尊重しつつ実施していくべきものと考えております。  以上の基本的な考え方に基づき、このたびの介護休業制度法制化について意見を申し上げます。  まず、介護休業制度導入の現状でありますが、近年、企業において介護休業制度必要性に対する認識は高まっており、また労働省においても、平成四年に介護休業制度等に関するガイドラインを策定し、普及啓発を進められた結果、普及率も徐々に上がってきておると聞いております。特に、五百人以上の事業所においては五〇%を超える普及率となっております。  しかしながら、中小企業における普及率は、三十人から九十九人の事業所においては一四・二%にとどまっており、また、日本商工会議所で平成六年に実施されました調査によりますと、三十人以下の零細事業所においては二・五%と極めて低いのが実情であります。  中小企業において普及率が低い原因として考えられますことについて、主として三つあると思いますので、それについて申し上げたいと思います。  一つは、中小企業における代替要員確保困難性の問題であります。  企業規模の比較的小さい企業では、介護休業対象となる方の年齢から見て、事業運営の中枢を担う管理的、技術的基幹従業員中心となることが予想されますが、こうした人々の代替者を見つけ出すことは極めて困難であり、かつ限られたぎりぎりの要員で事業を行っている中小企業といたしましては、自社内で短期間に人材を育成することも不可能に近いと言っても過言ではありません。したがって、こうした代替要員確保についての対策が講じられることなく法制化が進められるならば、中小企業にとっては経営の存続問題も起こりかねないと考える次第であります。  第二の問題は、コスト負担増大であります。  代替要員が仮に外部市場から確保できるといたしましても、その要員コストの負担を初め、社内の人事ローテーション対応による場合の残業増、職能訓練費用、社会保険料負担等のさまざまなコスト負担が生じることになります。  第三に、やや抽象的ではございますが、現在の経済情勢の中にあって中小企業の存続の可能性が甚だしく不透明である、こういう状態の中で新しい施策法制化として受け入れることが果たして中小企業の持つ力として許されるかどうかという点であります。  御高承のとおり、中小企業は、長期にわたる不況と急激な円高の進行の中にあって、まさに生死をかけて懸命の努力を続けているところであります。中小製造業者においては、親企業や主要取引先の海外進出、部品の内製化・海外調達化などによる需要の減少及び価格競争確保のための厳しい単価引き下げ等による採算面の悪化など、かつて経験したことがないほどの厳しい経営環境にあり、また中小の小売業者やサービス業者にとっても、郊外型大型店、ディスカウント店等との競争の激化で、やむなく自主廃業を選択せざるを得ない状況も少なくない現状であります。  こうした状況を裏づけるように、日本商工会議所で毎月実施しております景気観測調査によりましても、企業の景況感は依然停滞基調を続けております。このような状況にある中小企業者に対してこれ以上コスト負担を強いるならば、中小企業の再生意欲さえもなえさせてしまうことが危惧されるところであります。  かつて、日本経済には大企業中小企業の二重構造があると言われました。現在の経済情勢では、貿易関連産業と非貿易関連産業の二重構造が問題視されております。前者は、製造業に多く、高い生産性と優秀な生産技術により、戦後の日本経済発展の原動力となりました。後者は、いまだ規制等により守られ、国際的に見ては、低い競争力あるいは生産性のものもあります。  赫々たる成果をおさめてまいりました輸出関連産業、主として製造業も、今や東南アジアや中国を中心とした安い労働力と発達した生産設備等により安い生産コストの製品が世に出て、さらに急速な円高の結果もあって、著しく競争力を失いつつあり、国内需要の低迷とあわせて大きな打撃を受け、やむなく生産の海外移転を余儀なくされております。かくして、国内生産の空洞化等、我が国経済は大きく変革しようとしているのであります。  経済は新しい段階を迎えており、こうした変化のしわ寄せは、中小企業の存続と雇用の問題に集まり、やがて大きな問題となることが恐れられております。中小企業がこれまで果たしてきた役割が言うならば海外に移転され、個人の意欲と創意に裏づけられた、柔軟性に富む中小企業的機能が我が国から失われてしまうのが恐れられるのであります。雇用不安とあわせ、国難ともいうべき重大事と考えております。  こうした状態の中で介護休業法制化をするのでありますから、中小企業の抱える問題を十分踏まえた対応が必要であると考えます。  その意味におきまして、今国会に提出されている政府案は、介護に関する部分について施行期日平成十一年四月一日とされており、中小企業も含めすべての事業所介護休業制度を円滑に導入するための相当の準備期間を置くとともに、制度確立のための支援措置を初め、環境整備を図っていこうとされていることは評価したいと考えます。  次に、法制化内容について申し述べます。  まず、介護休業対象となる家族範囲でありますが、現在の介護休業制度利用者の実態は、利用者の配偶者、子供、父母及び配偶者父母が多数を占めていると言われます。法律で規定する場合には、実態に即して定めるべきではないかと考えます。  また、介護休業回数及び期間についても、中小企業要員管理等の負担を勘案すれば、介護休業を取得できる回数は、対象となる家族一人につき一回とし、介護休業を取得できる期間は、連続して三カ月とすることが適当であると考えます。三カ月の休業は緊急避難的措置で、これにより介護問題を抱える人の八割程度まで救えると言われます。  もとより介護については、介護の必要な人、必要な期間回数等さまざまなニーズや形態が考えられます。しかしながら、法律によって一般化するとともにすべての企業義務づける場合には、その内容最低限度必要な範囲にとどめるべきであり、それ以上については、個々の企業事業所において、個々の労働者の事情を踏まえて労使間で決めるべきと考えます。  今回提出されております政府案でも、正直に申し上げて、中小企業にとって大変厳しいものと言わざるを得ません。しかしながら、介護問題の重要性にかんがみれば、中小企業といえども一定の役割を果たすべきものとの判断からまとめられたぎりぎりの線であると理解しております。これ以上規制を強化されますと、中小企業対応を一層困難にさせるとともに、企業の存続にも影響が出てくると考えますので、政府案でお取りまとめ願いたいと存ずるのでございます。  最後に、政府案によりますと、施行まであと四年ございます。その間に中小企業においても介護休業が円滑に導入できるよう、代替要員確保を初めさまざまな支援措置を講じていただきますようお願いを申し上げて、私の意見陳述を終わります。  ありがとうございました。(拍手)
  77. 笹山登生

    笹山座長 ありがとうございました。  以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  78. 笹山登生

    笹山座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
  79. 大野功統

    ○大野(功)委員 自由民主党の大野功統でございます。  育児休業法の制定、育児休業給付金制度の策定に引き続きまして、今真剣に取り組んでおりますのが介護休業制度でございます。関係の皆様のお声を伺いながらよい制度をつくっていきたい、こういうふうに思っておりますので、きょうは大変貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。  私は、育児休業介護休業を並べてちょっと考えてみたいのでありますけれども、大変おもしろいことに、政府案の方は育児休業介護休業を一本の法律にしております。ただ、中身で見ますと、例を二つとりますけれども期間育児休業が一年であるのに対して三カ月、それから給付については、休業中の経済的援助につきましては施行までに検討する、こういうことであります。これに対しまして新進党案というのは、全く別建ての法律にしておりますけれども期間育児休業と全く同じ一年間、そして給付につきましても二五%の給付と、何だか育児休業法を下敷きにしたような法案になっているわけであります。  そこで、この意味合いを考えてみたいのでありますけれども、最も大きな物差しというのは、もちろん労働省の所管でありますから雇用継続であります。これはだれも疑いのないところであります。したがいまして、そういう意味では大変すばらしい法律だと思っておるのでありますけれども、ただ、一人一人の関係者あるいは国民経済全体に与える影響ということを考えますと、育児休業と今回の介護休業制度は若干違ってくるのじゃないか。  まず、育児休業で考えてみますと、今富田さんからも随分るる御説明がありました。今の中小企業が直面する問題、あるいは円高問題、産業の空洞化問題、いろいろな問題がありますけれども、非常に長期的に考えますと、私はやはり日本の長期的な課題というのは人口問題だと思っております。そういう意味で、育児休業法日本全体にとって大変大きな意味を持つものだ。それに対しまして介護の方は、高齢化社会の幸せをつくる制度システムづくり、あるいは高齢化社会において御苦労なさっているその御苦労を減らすような制度をつくることが目的になっているのじゃないか。  そしてまた育児の場合は、お父さんでもとれるわけですけれども、ほとんどそういうことはないでしょうから、お母さんが休みをおとりになる。そして、これはほとんど代替するシステムがございません。お母さんが休まなければいけない。そしてお母さんが子供を育てなければいけない。代替する制度がない。代替する制度があるかないか、ここも考えてもらわなければいけない。介護休業制度では、先ほど高島さんあるいは富田さんがお述べになっているように、全体の中で考えていくべきじゃないか、まさにそういう代替システムがあるというところが違うのじゃないか。  そしてまた、これは具体的な問題ですけれども、赤ちゃんが生まれた生まれないというのは本当に事実としてよくわかる話でありますが、要介護というのは、政令で任されていますけれども、なかなか判定が難しいところがあるのかな、私は素人ながらそんなふうに思うわけでございます。  そこで、中村さんに質問させていただきたいのでありますけれども、そういうことを考えてまいりますと、私は、この介護休業制度というのは画期的な、本当に誇るべき制度法律だと思っておりますけれども育児介護と、今の期間とか給付について全く同一に考えるべきじゃないのじゃないか。具体的に言いますと、一年あるいは給付という問題ですね。  そして介護というのは、高島さんや富田さんからお話がありましたように、やはりトータルな社会保障なりトータルな支援措置、この中で考えていく、この中で相補っていく制度として当分考えていくべきじゃないか。トータルなピクチャーができ上がって、そこで介護休業というのはいかなる役割を果たすのか、こういう面をちょっと考えていただきたいと思うのでありますが、その点のお答えをちょうだいできれば幸せでございます。
  80. 中村征子

    ○中村征子君 言葉じりをとらえるのではありませんが、私は、先ほどおっしゃいました、育児の場合はほとんどお母さんがとるという、そこら辺の発想から変えていただかないと、ちょっと問題が違うのではないかと思っております。  私は、すべてそういうふうにとるとするならば、介護育児は同じだというふうにとります。というのは、子供を産み育てるというのは、価値観としては男性が物を生産するのと同じことではないかと思います。だから、私どもは当初から、介護休業育児休業というのはセットにした法律になるとは思ってもおりませんでした。しかし、できてきた法律がたまたまセットになっていまして、私個人といたしましては、別々の法律ではないかということをずっと今でも思っています。  それから介護というのも、今のお話を聞いていますと、仕事の基幹的な部分に大変負担がかかるから介護社会的な部分でとおっしゃいますけれども、それには私は、もっと根底が今日まで築かれていなかっただけに、男性も女性も基幹的な労働に置いていたとするならばどちらがとってもいいのだけれども、しかし、現状では基幹的な部分に女性が進出できなかったことを今ここで浮き彫りにして、基幹的な部分に男性がいるから男性がそこでとるということは大変だろうからというような発想は、もともと私は違うのではないかと考えておりますが、いかがなものなのでしょうか。
  81. 大野功統

    ○大野(功)委員 質問の趣旨は、代替措置があるかないかということでございますが、質問時間が終わりましたので、これで終わります。
  82. 笹山登生

    笹山座長 次に、赤城徳彦君。
  83. 赤城徳彦

    ○赤城委員 自由民主党の赤城徳彦でございます。  意見陳述人の皆様には大変貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。  最初に高島陳述人にお伺いしたいのですが、ちょっと大きな話になるかもしれませんけれども介護に限らず、これからの労働政策を考える上で基本的なスタンスというような話をちょっとお伺いしたいと思うのです。それは、社会、経済を取り巻く情勢というのは今大きく変化しております。それが労働政策を考える上で、大きく分けて二つの要因を私たちは考えていかなければならないと思います。  一つは、先ほど陳述人からも言われましたように、今の日本の経済が右肩上がりではなくて、バブルの崩壊、あるいは円高、産業の空洞化、そういう中で大きく産業構造の変化に見舞われている。したがって、そういう中で労働行政のあり方、雇用のあり方が大きな転換期にあるということが一つ。それからもう一つは、少子・高齢化といいますか、人口構成の変化によって、こういう育児介護やその他の問題にとっても大きな変化が生じている。この二つの与件といいますか前提を踏まえた上で、これからの労働政策というのを考えなければいけないんじゃないか。  この二つは別々の問題ではなくて、相関連しているのではないかと私は思うのです。それはいずれにしても、日本が経済的な活力を保ち、豊かさをどうやって維持していくかという意味では、労使、行政含めて一つの大きな日本丸という船の上に乗っている、今そういう荒波にさらされているような状況にあるということではないかと思うのです。  先ほど陳述人からも冒頭触れられましたように、そういう経済、社会構造が大きく変化しているということを前提に、これからの労使のあり方というのも、今までのように成長の果実をただ分配をする、労働者側は要求する側で、経営者側はそれをどこまで譲歩するかという考えではなくて、まさに一体で取り組まなければいけないんだというふうな基本的なスタンスがなければいけないのではないかということ。  それから、特に経済の今の状況を踏まえれば、それが今回の介護休業のような問題にもやはり反映してくるのではないかな。一本調子で、これだけあればまあ理想だという量を確保するだけではなくて、やはり経済そのものの活力というのをどうやって維持していくかというのは、労働者側にとっても大事な問題であろうし、また経営者の側から見ても、企業経営さえうまくいっていればいいんだ、労働者のことは、とにかく働いてもらえればいいんだということではなくて、これから若年労働力が少なくなる中でいかにそれを大事に育てていくか、そして育児介護で職場を離れないでいかにその雇用継続していただくかということも、これは経営者側としてやはり考えなければならない問題だと思うのです。  そういうこれからの労使関係のあり方、それから経済、社会の変化を踏まえたこれからの労働政策のあり方、ちょっと基本的な話になるかもしれませんけれども、どういうふうに考えていったらいいのか、そこら辺のお考えを伺えればと思います。
  84. 高島健二

    ○高島健二君 大変大きな問題でありまして、予想もしなかった質問でありますが、基本的な認識は今先生おっしゃったとおりだと思います。  もうこれは今、大企業中小企業もなく大変大きな、超円高もありまして、産業構造転換に見舞われておるということは変わりないと思いますし、そういう中で必死の生き残りを図っていこうといってもがいておるわけでありますし、これは先生おっしゃるとおり、労使一体となってこの難局を乗り越えないと、本当にこの日本丸がいいのかなと、三年後、五年後の日本経済どうなるんだろうと。アメリカあたりは日本飛ばしで東南アジアに目がいっちゃったりして、もう日本経済振り返ってくれる人もなくなるんじゃないかなんという危機感もいっぱいあるわけでありますから。  そういう中で、労働行政施策のあり方はどうか、こういうことでありますが、結論的に言うと、やはりいろんな施策の選択と、それからもう一つ、それがその後どういう順番で進められるかという順序の問題じゃないかと思うのですね。ここで何が第一で何が第二番、第三番は何だという答えがすぐできませんが、そういう問題だろうと思うのですね。  いずれにしても、企業が活力を保ち、産業の発展、ひいては日本経済全体の発展というようなものがなければ労働施策もない、こういうことでありますから、やはり基本的には産業政策、あるいは今当面しておる産業構造の転換をどう乗り切っていけるのかといったことが、これは労使一体の問題でありますし、また関係省庁の御支援もいただいていかないといけない問題ではないかというふうに思います。  以上です。
  85. 赤城徳彦

    ○赤城委員 富田陳述人にお伺いしたいのですが、同じ問題なんですけれども、今最初に申し上げました二つの課題、経済の変化と社会構造の変化、経営者の側から見ても、労働者の福利厚生や育児介護の問題、これはもう無関心ではいられないでしょうし、同じように労働者の側も、経済構造の変化、円高や空洞化の問題に関して無関心ではいられない、同じ船の上に乗っている、労使一体だというふうに私は思うわけです。特に、先ほど富田さんから言われましたように、空洞化とか経済の今の不況の問題で一番直撃されているのが中小企業ではないかと思います。  先ほど高島陳述人からは、特に中小企業に対して時間的な猶予が必要ではないか、時間差が必要ではないかという話がありました。富田さんからは特にその辺は、平成十一年からということでいいのではないかということでございましたけれども、私どもこの中小企業にどういうふうに配慮するかというのを非常に苦慮するところでありまして、これまで労働時間の短縮とかほかのテーマのときには、大企業から先だというふうな導入の仕方がされていました。ただ今度の場合には、むしろすべての企業を一体として、一括で平成十一年からスタートした方がいいのではないかというふうに考えたわけなんです。  先ほどのこともあわせて、今の経済情勢厳しい中で、中小企業として、特に導入時期についてどう考えるのか、できれば一緒にやった方がいいのではないかと思いますけれども、お答えいただければと思います。
  86. 富田和夫

    ○富田和夫君 赤城先生の先ほどからのお話、全く同意見の点が多々ございます。  私は、あえてその時期の問題を、政府案が妥当であるということだけで終わりましたけれども中小企業の抱える三つの問題点、一つ一つが時期を必要とするということで申し上げたつもりであります。  したがいまして、代替要員確保とか、あるいはそれにかかわるコスト負担の問題とか、あるいは最後に赤城先生が特にいろいろおっしゃっている経済変化、もっと大きな意味の経済変化、その中における中小企業の存続問題というところからしても、ここ数年間どんな状態が起きてくるか非常に不透明だと思います。言うならば、日本の経済も発展しておるときには、日本的労使関係とか日本経営ということが言われましたけれども、近年の国際化、グローバル化という中で、そういう日本的ということで済まされない状態が出てきている。過去に経験した日本経営日本的労使関係では解釈できない問題が出てきている。そういった意味からも、第三番目の問題として時期が必要である。  したがって、この介護問題に関して、高齢化が進むということに対する焦りはありますけれども経営の安泰とかあるいは労働者の将来とかいうことを考えて、一定の時間を置いていただきたいというふうにお願いしたいわけであります。  したがって、政府案の方をぜひぎりぎりの線として選択をしたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
  87. 赤城徳彦

    ○赤城委員 ありがとうございました。  次に、中村陳述人にお伺いしたいと思いますが、この制度論、法律の文章からちょっと離れて、御自身のこととしてこういう場合どうかなということをお答えいただきたいのです。  企業に勤めていました、御家族が要介護状態になりました、先ほどのお話の中では介護期間が五年から九年だということでありましたけれども、そのうち実際に職場を離れて介護する期間ですが、私は余り長くてもこれは労働者にとって大変だと思うのです。だから、御自身のこととして、こんなぐらいだったらというイメージでお答えいただきたいのですが、大体何カ月ぐらい会社を休みまして介護をします、お世話をします、そろそろその症状が安定しました、そこからは公的な介護にバトンタッチをしようと。  まあなかなかその公的介護もまだ充実してないという御指摘もあるかもしれませんけれども、理想としてそこら辺は、私どもいろいろ調べてみましたところ、三カ月ぐらいで症状は安定するでしょうし、労働者の側の負担も、余り長く職場を離れていてもこれはかえって負担が大きいのではないか。足らざる部分は公的な介護を充実する、そのための新ゴールドプランでもありますし、それをさらに推進していかなきゃいけないなというふうに考えているわけなんですけれども、御自身がそういう立場になったときに、どういうのが一つのイメージとしていいかということをちょっとお答えいただければと思います。
  88. 中村征子

    ○中村征子君 私であるならば、雇用継続するということをまず前提に考えたときに、三年間も五年間も休むということはないと言い切れます。おっしゃいました三カ月が限度であるという部分を最長一年というような受けとめ方ができませんでしょうか。  といいますのは、三カ月で大体病人のめどがついたというふうに仮定しましても、三カ月たって、あるときは介護人に頼むかもしれないけれども、あとまた一カ月ぐらいはいろいろ私なりの手段をとって、やはりずっと一年間休みっ放しということは、恐らく雇用継続する女性にとってはそれは大変不安なことでもあろうと思いますし、現実に育児休業を一年間とっている女性の例を挙げますと、育児休業を一年とっているから一度も職場をのぞかないわというのはあり得ないことなんですね。だから、あるときは、お友達から今会社の状況はどうなのかとか、職場の状況はどうなのかとか、それは御主人と協力しながらいろんな話を続けて、話をする中で自分を磨いていくという機会は持っていると思います。  だから、それと同じように介護の場合も、三カ月は確かにびっちりその人について、例えば私の母なら母について、あとしばらく、一カ月間は夫がうまい形で協力してくれるとか、まただれか近くの人を頼むとかということで、最長一年というふうにお考えはいただけませんでしょうか。私はそれを申し上げます。
  89. 赤城徳彦

    ○赤城委員 三カ月か一年かという問題は、権利としての最高限を規定するのか、それとも義務としての最低限の三カ月というのを規定するのかという問題だと思うのです。労働者の側から見たら、そこそこのところというのがやはりイメージとしてはあるのではないかなと思うわけですけれども
  90. 中村征子

    ○中村征子君 失礼ですが、病人をお近くにお持ちになったことはございますか。といいますのは、私は先ほども述べましたように、老人の場合は、三カ月たったらもしかしたら亡くなるかもしれないし、元気になるかもしれないんですけれども、そうではない病状の方が最近は多いのではないでしょうか。そういう部分を踏まえますと、一年間というのをやはり最初にきちんと打ち出しておかないと、三カ月でどうしてもそれがだめなときに、同じことではないかというふうに私は考えます。
  91. 赤城徳彦

    ○赤城委員 先ほど富田さんからお話がありましたように、法文に書くときに、ここまでがおよそすべての企業に対して課すべき義務であるという最低限のものを書いて、そこからさらに上乗せの部分は、これは各企業、労使の自治にお任せするというふうな書き方も一つありますし、そういう実際の労働者にとってどれがいいのかなということと、法文上どう書くべきかということはちょっと分けて考えた方がいいのかなと、そういうふうに思うのですけれども、余り議論していると後がつかえてしまいますので、次に譲りたいと思います。
  92. 笹山登生

    笹山座長 次に、長勢甚遠君。
  93. 長勢甚遠

    ○長勢委員 貴重な御意見をいただきまして、どうもありがとうございました。  この介護休業制度法制化につきましてずっと議論してまいっておるわけでございますが、どこへ行っても大体論点ははっきりしておると思います。  一つは、介護の問題が大変深刻な問題で、とても個人だけでは対応できない、社会全体でやると同時に、企業においてもそれなりの御支援をするシステムでやっていかなきゃならぬということについて大方の御理解が得られておって、そのことが今回の法制化につながる基盤になっておると思っております。  ただ一点、特に与野党の法案の差ということで出ておる点でございますけれども、今、赤城先生がお話しになりましたように、権利として認める部分というものをどこで線を引くかということが最大の論点だろうと思います。  今、中小企業その他、特に中小企業等においても介護休業というものが制度化されている部分は大変少ないわけでございますが、そうはいっても、労働者あっての企業であり、企業あっての労働者ですから、大事な労働者の方々、働く方々が両親等で大変な目に遭われたときに何の対応もしないという企業はほとんどないはずで、まあ日本的と言っていいのかどうかわかりませんが、それなりに労使関係の中で、いろいろな形で弾力的に対応されておられるであろうと思いますし、そういうことをもっときちんとしていきたい、できればしたいという思いもたくさんお持ちだろうと私は思っております。  また、かたがた中村さんからお話がございましたように、介護のニーズは非常に多種多様でございますから、おっしゃったようないろいろな要望を十分満たせるような形で社会全体あるいは労使関係が運用されていくことが必要であるということについても、だれも異存はないことで、ぜひそうしたいな、こう思っておるのも事実だろうと思うのです。我々としても、公的整備も含めてそういう方向を目指していかなきゃならぬ、こう思っておるわけであります。  そうはいいますけれども、公的整備も、御指摘のありますように今のような状況であります。そういう中で、介護に当たられる方々の多様なニーズに十分こたえていくためにはどうやったらいいか。その一つとしてこの法制化を考えておるわけでございますが、法制化ということになれば、当然、形成権という形で、企業側にとっては義務になる、働く方々にとっては権利になるということでございますし、しかも、それが一般化をされ、一律に適用されるということでありますから、大変大きな問題であります。  今、赤城先生の御質問に中村さんからも、一年の中で一年ぴったりはとらないんだよというお話もございましたが、仮にそういうことであっても、やはり労務管理その他の企業負担というものは、それなりに考慮しなきゃならぬ部分もあるのだろうと私は思うのですね。  この企業負担ということについて、法制化をすれば大変大きな負担になるわけで、企業側のお話、高島先生、富田先生のお話ですと、これが限度だ、こういうお話でございますが、必要性という問題と、それからそれを実行できるかどうか、負担の可能性あるいは能力の問題、これについて中村さんはどのようにお考えでしょうか。企業負担がどうなってでもこれはもうやらなきゃならないんだというお考えもあるでしょうけれども、やはりこれは、最低限の法律の基準、権利義務として確定をするということであれば、そう乱暴なことだけを言っておるわけにもいかないのだろうなと私は思うのでございますが、どうお考えでしょうか。
  94. 中村征子

    ○中村征子君 最近の就職の問題一つ考えたときに、いつもいつも、中小企業だからこう、中小企業だからこうと言うのですが、今度の育児休業は、中小企業の場合ことしから義務づけられたのですけれども、私はやはりその辺の、いつもいつも、中小企業はこうだからこう、こうだからこうと言うと、やはり就職する側が、こういうことを言っては本当に申しわけないのですけれども、私の組織から見ていましても、大手ではいい人材が集まってくるのですよ。やはり親も、私も親ですから、大手の労働条件のいいところに子供を就職させたいんだというのはよくわかるのです。  最近、私、中小企業の方々とお話しする中で、あることを見つけました。中小企業の方々に今度の介護休業制度についてのお考えを伺いに行ったときに、今とてもいい人材が集まってくるのですということをおっしゃったときに、これだということに気づきました。といいますのは、いいことをしようとしたときに、こういうことはこうだから中小企業は少し先送りにしようということは、今まで間違っていたということを私自身も一人の労働者として気づきました。岐阜の場合、中小企業が特に多いだけに、そのことを先送りしたことが果たしていいのか悪いのかというのは、私どもとお話をするときに、経済的援助がどうなのか、企業がつぶれてしまうということを盛んにおっしゃるのですけれども、私は、もう少しやわらかく考えていただけないかなと思うのです。  といいますのは、要介護者を抱えた家族というのは、中小企業の、何人かいらっしゃる会社の中で一気に五人、十人は出ないと思うのですよ。たまたま中に一人出るか、二年先に一人出るかという状況を考えたときに、それは中小企業がどうだとかこうだとかいうこと以前の問題です。当初、労働組合が、そういういろいろな法制化をするときに、いろいろな部分で、企業だけにおんぶするのじゃなくて、みんなでお金を出し合ってやりましょうということを提案したことがあったじゃないですか。そういうことを踏まえまして、私は、中小企業経営者だけがつぶれてしまって大変だとかいう、そういう議論はできたら避けていただきたいと思います。
  95. 長勢甚遠

    ○長勢委員 特に人材確保の面で、この問題も含めて、中小企業の方々も御努力したいと思っておられると思うのですね。ただ、これはだれが悪いというわけでもないのでしょうけれども、産業構造、現実の問題の中で、やりたくてもできないというのも現状だろうと思うのです。やはりそういうことを踏まえて法律というのは考えていかないと社会的コンセンサスが得られない、これは基本論として私は思っております。  そういう意味で、おっしゃるような形になっていくことが一番いいのですけれども、まだ現時点でございますから、しかもその中で、やりたくてもできない、あるいは意識が低いというケースもあるかもしれませんが、それを踏まえて、法律で強制力を持ってやって、果たして我々が、あるいは中村さんも含めて、考えているような介護休業システムというのが定着をするのだろうかということも、私は非常に疑問には思っておるのです。  先ほど、施行期日に関して中村さんから、四年間も置くことはない、そんなことよりも、企業に対する支援体制というか援助を十分やればできるのではないか、若干誤解があるかもしれませんが、まあ大ざっぱに言えばそういうふうな御趣旨の陳述があったように私は聞きましたけれども、実際に経営に携わっておられる高島さんなり富田さんは、今の、中小企業といえども、そういう経済的支援なりなんなりを国がきちんとやれば、きちんとした、法律を守るようなことができるではないかという御意見については、現場の実情から見てどうお考えでございましょうか。
  96. 高島健二

    ○高島健二君 経済的支援があれば来年からでもいいではないかという意見に対しての意見を申し上げますが……
  97. 長勢甚遠

    ○長勢委員 ちょっと途中で失礼しますが、それでは無理だということであるのかないのかということですけれども、具体的にどういうことが問題になるのかということがあれば、教えていただきたいと思います。
  98. 高島健二

    ○高島健二君 先ほどの私の意見陳述の中で申し上げましたように、やはり周知徹底の期間だとか、それから実際に就業規則に一条起こして、それで、まあ別規程にするなら別規程でもいいですが、介護休業規程というものを整備しなきゃいかぬわけですね。そういったことに対する時間というのが相当かかるわけです。これはもう育児休業導入の際の経験からいっても相当かかります。ですから、来年施行などと言われても、ちょっとこれは大変だなというふうに思うのですね。  それから、冒頭に先生、大方の理解が得られてきつつあるというような御発言もありましたが、実際問題として、これについて理解しつつあるのは、ここへ出てきておる我々ぐらいの人間であります。私どもは千の会員がおります。そのうちの七割ぐらいが中小企業ですが、ここらあたりではまだ全然こういう理解をしておりませんから、国会でこういう法律をつくろうという議論があるのかという程度のことですから、もう我々としては、これから一生懸命、恐らく年内ぐらいかかって、いろいろな会合に出て、今こういうふうなことになっていますよということをPRしていかなきゃいかぬわけですね。ですから、そういったことも含めると、相当の時間が必要だというふうに私は思います。
  99. 富田和夫

    ○富田和夫君 経済的支援があれば中小企業でもできるかというお話にお答えしたいと思うのですが、経済的支援というのは一体どういうことか、私もはっきりわからない。経済的支援があれば介護休暇を与えられる、そして与えられた人がそれでうまくいくのでしょうか。  特に中小企業の場合には、今、中村さんから、そう何人もいないのではないかというお話がありましたけれども、例えば私の会社などは、介護を必要とするのは、先ほど言いましたように、私もありましたし、その前には副社長もありました。つい最近は、もう一人の副社長が長年母を見ておって、亡くなったばかりです。大抵五十代過ぎぐらいになりますと、たくさんおる。  しかも、中小企業の場合には、それぞれ熟練工に匹敵するような、そういった熟練した能力を持った人が必要であり、その人たちは、主として経験年数を踏む必要がありますから高齢者であり、主としてそういった高齢者介護を必要とする人を抱えている。こういう点から見て非常に難しい。単に経済的援助があればできるというものではない。  先ほど赤城先生もおっしゃったように、もう同じ船に乗っているわけですし、特に中小企業の場合には、労使などという形で、対立する形でとらえている経営者も労働者もいないと思います。だから、お互いの不幸をお互いの幸せに変えていこうという努力をするわけですから、そういった意味で、経済的援助があればできるというものではないというふうに思っています。
  100. 長勢甚遠

    ○長勢委員 金だけでなくて、人間関係あるいは労務管理というか、また、中小零細の場合は多種多様な形で一緒に働いておられる仲ですから、そういう形式的な形での対応だけで考えるのは若干現実と合わないのかなという思いは、実は私もしておるわけであります。そういうことも含めて、形成権として権利義務を決める範囲をどういうふうにするかということがポイントになっていくと思うのです。  やはり大事なことは、今、高島さんから、理解が十分得られていない方々もおられるという話もありましたが、今回、この法律をつくることによって、最小限の部分を決めて、こういう雰囲気というか風潮というか、理解を国全体に強力に推し進めていくということが一つの大きなポイントだろうと思うし、それを踏まえて、多種多様の弾力的な対応をこれによって推進をすることができるのではないか。そして、その定着の中で、一般的に権利義務として確定をする。だれもが守らなきゃならぬ、納得ができるという部分を将来的に広げていく努力の第一歩として考えることが現実的であり、合理的ではないのだろうか。目標として、あるいは将来の方向として、多様なニーズに全部こたえられるような法律をつくることが一番いいということについては私も異存はございませんが、現状の中では、より現実的で合理的な判断というのは、私はそういうふうに考えるべきではないかと思っておるのです。  中村さんとは大分意見が違うのかもしれませんが、最後に一言だけお伺いをさせていただきます。
  101. 中村征子

    ○中村征子君 例えば、自分の身内に病人が出るということは、経営者の方は、経営者だから時間的な部分が割けるということもあると思うのですが、労働者の場合は、それを選ぶということができないということを私は思うわけです。  これはあくまで私の意見として聞いてほしいのですが、経済的援助だけではどうしても即応しかねるということをおっしゃるとするならば、定年後の再雇用ということで、例えば経験豊かな退職後の人材をあるところで確保しておいて、そういうところから自然に派遣できるという方法だって、それぞれが考えればできることではないかと私は思います。  そういう意味で、私は、先ほどから言いますように四年は待てないというのは、現実の問題が直面している、特に女性の、私自身も女性ですから、介護する側の意見として、これから四年先じゃないとだめですよというのは、どうしても無理ではないかということを申し上げたいと思います。
  102. 長勢甚遠

    ○長勢委員 これはお答え要りませんが、私は、四年間介護休業制度は要らないよという法律ではなくて、権利義務としてつくられるのが四年後である、その前にどんどん介護休業制度は進めなきゃならぬという法律だと理解をしておりますので、私の趣旨が四年後まで要らないのだよというふうに誤解されたら困りますので、それだけ申し添えまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  103. 笹山登生

    笹山座長 次に、桝屋敬悟君。
  104. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 意見陳述人の方には大変御苦労さまでございます。新進党の桝屋敬悟でございます。  先ほどからこの介護休業の問題について、権利義務の観点からいろいろなお話が出ております。先ほど陳述もございましたが、高島専務理事さんの方からお話をいただいて、本当にそうだなと私も思ったのですが、今回のこの介護の問題は、二十一世紀の少子・高齢社会、我が国の社会保障の分野における最大課題でございますが、この問題が法制化ということで、二十一世紀へ向かって具体的に検討されている最初の入り口が労働省労働委員会であるということは、私は実は残念なことだと思っております。本当に専務理事のおっしゃったとおり、やはりあるべき将来の社会保障の姿というものがきちっと描かれていて、その上で議論がされるということが本来の姿かなと。そういう意味では、やはり私ども国会にいる者の責任だろうと思っておりますし、なかんずく政府は、社会保障の姿というものを一日も早く明確に示すべきだと私は思っております。  そういう観点から、まさにこの介護休業法は先行しているわけでございまして、その部分に対する経営者側の嫌悪感のようなものが実はあるのではないかという気が私はいたしております。そうはいいながら、やはりこの介護の問題、何も公的介護だけで全部やっていくという時代ではないだろうと私は思っておりますので、いろいろな分野が今スタートしなければいけないときが来ているのだろうと思います。  そういう意味でお尋ねをしてみるのですが、今後この問題をスタートとして検討するときに、さっき権利義務の話がありましたが、この問題はよく小さく産んで大きく育てる、こういうふうに言われているのですが、私は、大きくなるかなと。未熟児のままいってしまうと大変怖い。最低限としての権利がいつの間にか労働者の権利として最高の部分になって、今後、恐らく平成九年ぐらいに向かって公的介護保険等もいろいろ検討されてくると思うのですが、そういうものに全部影響を与える。そのときに、労働者介護に関する権利が、最低の部分でつくったものが最高の形として議論されていくことを私は大変危惧をするわけでございます。そういう意味では、しっかり議論をしたいと思っております。  それでお尋ねするのですが、将来の社会保障、先ほど第一義的にはやはり社会保障制度でというお話がございましたが、足らざるところをこの介護休業でというお話もございましたが、それでは将来へ向かって、これから大変な介護の問題を抱えている我が国が、公的な介護システムというものをどのぐらいまで積み上げていくのか。欧米のように高福祉高負担社会を目指すのか、あるいは我が国の特徴ある、我が国の風土になじむそういう制度を考えていくべきではないか。特に負担という部分ではそういうことはあるのだろうと私は思うのですが、現状のゴールドプラン等の評価、そして今後のあり方ということで、高島陳述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  105. 高島健二

    ○高島健二君 断片的になるかもしれませんが、一つ二つ申し上げたいと思います。  一つは、小さく産んで大きく育てると言うけれども未熟児になるのじゃないかというような御指摘もありましたが、法律ではいわば最低の基準をというのが原則だと思いますので、そういうことにしていただいて、それにどう上積みをしていくかということは労使自治の部分でありますし、これは今の労使関係の中でひとつお任せをいただきたいといいますか、我々も立場上これは未熟児にしないように、せっかくできる法律でありますから大事に育てていくということは思いは同じでありますので、その辺はひとつ労使関係にお任せをいただければいいのではないかと思います。  それから、社会保障をどの程度やっていくのか、高福祉高負担がどうかというのが質問の趣旨であろうと思うのですが、あくまでも税金と社会保険料を含めた国民負担率を五〇%以内に抑えていこうではないかという、これは恐らく国民的コンセンサスのでき上がった部分であろうと思いますので、この範囲の中で考えていくべきことであろうと思います。  その限度の中でどんなような社会保障が全体でできていくのかというような枠組みというものがどうもまだはっきりしていないわけですね。それを再三私も意見陳述の中で申し上げたつもりなんですが、その全体像がはっきりしない。そういう中で、国あるいは個人負担というものが今後どうなっていくのか、今の国民負担率の範囲内でおさまるものなのか、飛び出してしまうものなのかということもどうもはっきりしない。多分、国民負担率の範囲内でお考えいただいておるのだろうなぐらいの理解しかできないということでありますし、その枠の中でメニューの選択と実施の順序の問題ということになっていくのではないかと思います。
  106. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今のお話は、国民負担率五〇%ぐらいが前提にあって検討していってほしいというお気持ちもあるのかなというふうに理解をするのですが、実は昨年、私ども細川政権の時代に福祉ビジョンなるものも検討したわけです。そうしますと、今の新ゴールドプラン、平成十一年、一九九九年がゴールでございますが、これを達成をいたしたとしても、介護の問題は公的介護で全部賄えるという時代は恐らく来ないだろうと私は思います。公的介護ですべて介護の部分を何とかするということを考えますと、これは大変な福祉サービスといいますか、質量ともに拡充をしなければいけない。もちろんその方向を目指すことは私どもも同じなんですが、やはりおのずと我が国になじむ制度があるのではないか。  そういう意味では、高島さんが持ってこられたこの自助、共助、公助、まさにこの三つのバランスのとれたシステムを考えていくのだろうと思っております。恐らくそれは御理解をいただけているだろうと私は思うのです。公的サービスも限界があるということを今申し上げているわけですが、だからといって決してあきらめているわけではございません。  そういう意味で、この持ってきていただいた図の中で、自助、共助、公助というバランスを考えますときに、高島さんは、企業の支援というのは自助の中で整理をされていただいたのですが、私は、むしろ共助の中で、共助のファクターの強い世界として、今や地域社会というのは企業が一番大きな地域社会でございまして、そういう意味では企業の支援というものは共助というファクターをぜひ大事に考えていただいて、今後の介護休業制度を御検討いただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  107. 高島健二

    ○高島健二君 ありがとうございました。私の方の作業の内容についても御示唆をいただきまして本当にありがたく思うわけですが、これも途中で申し述べましたように、今まだ内部でも検討中の、本当に未完成の資料をきょう出してしまったので申しわけないと思うのですけれども、先生御指摘のような議論も内部であります。  それから、自助の中に「本人の備え」と「企業の支援」というのを一緒に入れたのですが、果たしてこれでいいのだろうか。これはあくまでも自助で、「本人の備え」をここへ置いて、むしろ「企業の支援」というのは丸の外へ出して、それで自助に対してもそういうことで援助をし、先生おっしゃるように共助に対してもボランティア活動その他で援助するような図がかければいいがなという議論もあります。  なお、これはそんなことで勉強して、これからもやっていきたいと思いますので、また御指導をお願いしたいと思います。
  108. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 ありがとうございます。  それで、先ほど富田さんの方からお話がございましたが、まさに御自分の大変な介護の経験を通されて、現状の社会保障、社会福祉サービスといいますか、医療、福祉、保健、いろいろなサービスの限界というものを多分お感じになったと思うのですが、これはさらに新ゴールドプランということで進めていくということは、私たちもその方向でございます。  三カ月というのはまさに緊急避難だ、こういう話が先ほどございました。私どもは、緊急避難というのは三カ月では足らないのじゃないかという思いを持っております。  というのは、病状からしますと、まさに医学の観点からすると三カ月ということは私も理解できるわけですが、実は家族介護という観点に立ちますと、先ほどお話もございましたように、特養に申し込んでも三年、四年という話がありまして、ちょっと長いのではないかと僕は驚いたわけですが、一年というのは結構あるだろうというふうにも思いますし、あるいはいろいろな施設を利用するにしても、すぐ入れるわけではない。  そういう状況を考えますと、私は、現状の社会福祉サービスはまだまだ大変に貧弱なものがあると思っているわけですが、三カ月という観点から、富田さんの介護の御経験も踏まえて、どのようにお感じになるのか、御意見を伺わせてください。
  109. 富田和夫

    ○富田和夫君 桝屋先生のお話も一々ごもっともに聞いております。  ただ、介護対象になる病気というのは、この場合非常に多種多様になりますので、それぞれの先生方あるいは立法機関のこの問題を取り上げられるときのイメージが違うと随分違ってくる。私は全般的に見て、どうも脳梗塞を感じておられるなという気がしたのですけれども、そういったものは非常に多いかもしれませんが、三カ月が一年になるならそれで十分か、あるいは公的機関ですべてやってくれるから十分か、あるいは個人ですべてやれるものか、私はこれはすべて否定的だと思うのです。  現状の公的サービスというものも、私は今度経験しまして、随分すばらしいものもあるなと思いました。これは一例でありますけれども、名古屋市に六カ月住んでいただけで、今まで国民健康保険も何も掛けていない人が、一カ月六百円だったと思いますが、それで治療を受けられる。こんなすばらしい国だったかと思って、我が日本というものを誇りに感じたというのも事実であります。  しかし、今度はまた、老人施設へ入れようとしますと、三万円以上持っていたら入れないとか、新聞にも伝えられましたが、クーラーがついているうちには民生委員がどうのこうのとか、公的サービスに対する枠組みが矛盾に富んでいる面が多々ある。だから非常にこなれていない面があるという点も見受けられたのであります。  余り長々としゃべっておってもいけないようですが、私は、今先生がおっしゃったように、公的機関に全部頼るとも言っていませんし、個人的なことで全部できるとも言っていない。個人のやれる範囲は限界がある。だから三カ月を超えてやってみても、これはもうできないことはできないので、そういう点で私は、本人の、勤労者の意欲とか全体を考えて、三カ月が最も妥当な範囲であると考えておるということであります。
  110. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 時間もありませんので終わりますが、確かに三カ月を超えてやるのは個人の限界ということもあると思うのですが、私どもも、三カ月を超えて労働者にすべて介護をおっかぶせようということでは決してないわけでございまして、同じく介護サービスをしっかり充実しなければいかぬというふうには思っております。  ただ、私ども非常に大事にしておりますのは、さっきいみじくもお話が出ましたが、あなたのお世話でこの家で生活をしたいという老親のニーズもあるわけでございまして、そういう方はそういう選択ができるという制度は考えていきたいと私は思っているわけでございます。  時間がないので、以上で終わります。ありがとうございます。
  111. 笹山登生

    笹山座長 次に、北橋健治君。
  112. 北橋健治

    ○北橋委員 新進党の北橋でございます。  陳述人の皆様方にはきょうは本当にどうもありがとうございます。  入れかわり立ちかわり私どもの方から一方的に質問をさせていただきまして、大変恐縮に存じておりますが、いよいよ今週がこの法案審議をめぐりまして山場になっておりまして、突っ込んでもし御意見がございますれば現場のお話を聞かせていただきたいと思っております。  まず第一に、中村さんは今まで介護休業法の制定のために日夜大変な御努力をされてこられましたので、介護のために苦しんでいる御婦人の方々の気持ちというのは大変お詳しいと思います。そこで、もし私どもに教えていただければさらに御意見を聞かせていただきたいのですけれども、今日本で大体八万人強の方が、仕事を続けたいけれども苦しみ抜いたあげくに離職を余儀なくされている方がいらっしゃる、そのうちのほとんどの方は女性だという、これは非常に深刻な問題だと私ども基本的に受けとめました。そして恐らく、数字には上がってきておりませんが、やめるか続けるか、もう本当に苦しみ抜いている離職前の御婦人の方も相当多いだろうと思うのです。そういう人たちの現実的な職場での御苦労の一端がわかりましたら、お聞かせを願いたいと思います。
  113. 中村征子

    ○中村征子君 今の職場の現状からお話ししますと、週休二日制になりまして、一週間の二日間がある意味では自分のリフレッシュ、また家族に対するいろんな介護のサービスもできるわけなんですが、現実に私の身近なところから申し上げますと、先ほど言いましたように、例えば私どもが地方でやることというのは、議会請願をとって早く法律をつくってくださいということで、岐阜の場合九十九の市町村がありまして、そういうところで議員さんを通じまして議会請願をとるわけなんですが、岐阜県の場合、保守王国ということもありまして、なかなかその請願がうまくとれないのが現実なのです。  それで、私どもが何が一番理解しやすいのかというのは、女性のネットワークなんですね。困った人は困った人同士でいつも手を結べるというネットワークがありまして、そのときに、先ほど申し上げましたように、私は仕方なくやめました、しかし私のような苦しみを味わわないでくださいというのが多くの女性、今いろんな女性が小さなグループ、大きなグループということで団体をつくって活動しているのですが、その人たちの切なる願いでもあります。  まずその辺から整理しまして、私の近くの職場の女性を見ていましても、本当に職場から病院病院から職場というようなぐあいで、並々ならぬ努力をしているのです。やはり今私たちが頑張らないと後に続かないという大きな荷物を背負っておりますので、みんな頑張っているのです。  しかし、やはり今こういう介護休業、私自身も労働組合の運動が長いものですから、この介護休業育児介護というのは、私が労働組合に入って物心がついた時点からずっとずっと要求してきた問題がやっと着実に表に出てきたということで、本当にある意味で、私たちが日曜日を返上して市民に対して、今度こういう法律をつくっていただきましょうよという運動を盛り上げたときに、組織以外の方たちが、私たちも応援しますというふうに出てきてくれたこととか、それは均等法の場合も一緒だったし、育児休業の場合も一緒でしたし、先ほど申し上げました介護の場合も、今本当にそれを願っているのは、悲しいことですけれども、男性は運動論的には介護休業法制化は必要ですということをおっしゃいますけれども、本当に悩んで悩んで涙を流しながら語れるというのは女性です。  それで、女性の側で何をしているのかということを申し上げますと、病院へまず連れていったときに、病気がそんなにもない、とにかくうちでは介護ができないような病人は、病名をつくっていただいて、とりあえず病院に入れなきゃならないという悲しい実例がいっぱいあります。というのは、本当を言えばそんなに病院に入れなくて自分が見れるという状況にもかかわらず、病名をつくって病院に入れてしまわなきゃならないというのが現実にあります。その辺をぜひ御理解いただければと思います。
  114. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございます。  もし仮にこの政府案がそのまま成立をするということになった場合に、どういうことになるであろうかという見通しを中村さんにお伺いしたいのです。  政府の方も、労働省は大蔵の主計局と激しく議論を切り結んで、四年間の間にガイドラインを普及させていくための予算をとるために相当頑張られました。ただ、それを見ておりますと、全国で百五十五万カ所中小事業所があるのですが、この介護休業導入する企業に対して奨励金を創設しているのですけれども、千八十九件とほんのわずか、その程度しかまだ予算がとれていない状況にあります。もちろん、私どもも今後こういった予算については一生懸命与野党を挙げて頑張るつもりではおりますけれども、それが現状でございます。  そして、四年先でございます。今八万人を超える方々が苦しみ抜いたあげく離職を余儀なくされているわけでございますが、政府案がそのまま成立した場合にどうなるんでしょうか。今のガイドラインの普及という措置によって四年間の間に多くの人が救われるのでしょうか。
  115. 中村征子

    ○中村征子君 一つ視点を変えて申し上げたいと思いますが、私は、そのお金がないということにすごく、国がお金がないから中小企業に対して援助ができないとかさっきもおっしゃいましたけれども、勤労女性というのは共働き家庭が多いのですが、年金のことを考えたときに、私たちが職場に出たときは、女性も年金権をつけましょうということで家庭婦人も年金を払ったときがありました。それからどういうわけか、選挙でいつも左右されるのは大嫌いだというのはそこなんですが、家庭婦人は年金を払わなくてもいいという時代がまた来ました。それからまた今度、逆に学生だけは払いましょうというときが来たときに、本当に女の人も男の人も経済的に自立する、また国が本当に予算を前向きに考えるとするならば、私は、家庭婦人も年金というお金を自分で払って、自分の老後という、そういう全体的人生、揺りかごから墓場までの自分のお金を自分で出すということを義務づけるべきではなかったかということを考えます。  それで、今のままこの法律がもし通ってしまうということは、本当に悲しいことです。考えたくないというのが現実です。ですから私は、先ほどから言いますように、よくよくお話をしていただいて、本当に今のままの一年、それから早く、本当に要求が多いとおっしゃるかもしれませんけれども、その方法でぜひ進めていただきたい。  それから、どうなるのかという質問は、酷なようですけれども、やはり私は、均等法施行後、一生懸命男の人並みに働こうという人たちが必ず直面するのがその問題ではないかということを考えますと、大変むなしい思いがします。  以上です。
  116. 北橋健治

    ○北橋委員 これは私の推測なんですけれども、八万人の方は実際にやめていらっしゃるけれども、やめるか仕事を何とか続けるか、苦しみ抜いている人たちは同じ数以上いらっしゃるのではないか。それが四年間、数十万人、その人たちが苦しむことになるのではないか、過酷な現実がそこにあるというふうに新進党は考えております。  そこで、富田さんはきょうは中小企業のお立場ということで、御自身非常に介護に御苦労されたということで、私どもは当初こちらに来る前は、労働省を通じまして、審議会では労使が激しく闘った、議論したというふうに聞いていたものですから、内心どういうお話になるのかと思っておりましたけれども、これはやはり話し合っていけばかなりお互いに歩み寄れるし、よりよいものにしていける余地があるのではないか、そのように私先ほど聞かせていただいた次第でございます。  実は、新進党の中にも中小企業総合調査会がございまして、地元の井上計参議院議員が会長でございます。私、その事務局を担当しておりまして、労働と二足のわらじを履いているのですが、この法案新進党提出するに当たりましては、単に連合の皆様方の御意見を拝聴しただけではなくて、今中小企業円高その他で大変苦しんでおります。そういう状況の中で、もう極力可能な限り、ありとあらゆる施策というものを念頭に置いてこの法案を立案した経緯がございます。  そういうことで、政府の方では奨励金で四億円程度の予算がついておりますが、私ども、まあどんぶり勘定と言われるかもしれませんが、二百四億円の予算は単年度に必要だ、それぐらい中小企業に対する全面的な、抜本的な支援措置を講じなければ、それほどに中小企業経営は今厳しいんだという認識を持っておりますことを、まずお話を聞かせていただく前に御理解賜ればと思っております。  そこで、私こういうお話を聞いたことがあります。七、五、三という言葉がありまして、これは零細事業所に働いている人から嘆きの言葉としてたまたま出たのですけれども、大企業と零細事業所で働く勤労者の中には、賃金で七割、一時金で五割、退職金で三割という、それぐらいの差があるんだと。実際はそこまでないかもしれませんけれども、大企業中小企業、物すごい格差がある。  私は、戦後五十年、日本を支えてきたのは、中小企業経営者も立派な方が多いと思いますが、そういう労働条件の中でも一生懸命、経営者と一心同体になって頑張ってこられた中小企業労働者の方々の志というのは本当に高い、それが日本を支えてきたと、私個人的に思っております。  そういう意味から見ますと、今回介護休業制度導入すると中小企業が苦しくなるというお話でございましたけれども、ここでまた大企業は五割以上普及している、これからも普及していくでしょう。中小企業は難しい。そういうことで、本当に中小企業の勤労条件というものがこのままでいいのだろうか。二十一世紀を前にして、これだけ日本は大企業中小企業に格差がある、その格差をそのままにしておいて、本当に中小企業立場に立って、中小企業経営者の立場から見ても、いい人材を集めてみんなが張り切って仕事をするようになっていくだろうか。現実にこの制度導入した場合に、要介護者は将来二百万人になると言われておりますが、一体それで介護休業制度導入されて倒産する会社が出てくるのでしょうか。  それを考えますと、先ほどの中村さんのお話では、もうたくさんの人たちが本当に苦しみ抜いたあげく離職を余儀なくされている、その過酷な現実と中小企業経営の現実を考えた場合に、本当に経営が行き詰まってしまう、そこまでに苦しむほどのものであるんだろうか、そういう気持ちがしてならないわけであります。  そういった意味で、今後実りある最終盤の審議を国会でするに当たりまして、富田さんの方から御教示を賜れば幸いでございます。
  117. 富田和夫

    ○富田和夫君 今の北橋先生のお話、一々もう敬意を表して伺っておりました。  私どもも、政府案を限度としてということで、現在の介護に関する休業法案に対して反対しているわけでもございませんし、中小企業がそれによってつぶれるということだけで反対しているわけではない、あくまで法制化という点にポイントを置いてお話をしていると思っております。  ここで中小企業の解釈でございますけれども、先ほどから中小企業がどうも大企業に比べてやや劣るという観点でお話があるようですけれども、私どもとしてはいささかそれは腑に落ちない。ということは、中小企業は大企業の小さなものとか、あるいは中小企業が大きくなれば大企業になるというものでもない。そういう種類のものでなくて、むしろ個性化とか個別化とか、あるいは柔軟性とか、そういう点が特色であろうと思う。  東南アジアの方でも大企業ばかり進出しないで中小企業に来てくれという話が以前はあったと思いますし、中国でも現在ありますけれども、そういったことが、もうある意味で東南アジアの方では逆にみずから消化しつつあって、日本中小企業的機能を、先ほどお話ししたように東南アジアでかわってやってしまう。日本の中では大企業的な製造が行われても、中小企業的な機能の生産というのは逆になくなってしまって、それが東南アジアあるいは中国で行われるようになる。  そういう点で、先生がお話しになりましたように、中小企業経営者も立派なら労働者も、我々、少なくとも私にとっては、中小企業にとって労働者は労使の間ではなくて本当に家族集団だと思っておりますし、そういう点からでないと一人一人の創意とか工夫とか柔軟性とかというのは出てこないと思うのであります。  今この制度にしても、先ほどちょっとお話ししましたように、私の体験からしても介護する病状というのは非常に異なります。だから、法制化して一律に一年とかあるいはすぐにとかという形でなくて、赤城先生が先ほど言われましたように、労使というものはもう企業の存続あってのことでございますから、働いてくれる人を大事にしなかったり、あるいは介護する人がおって見殺しにしたり、それでなければやめるよというのをほっておくようなことでは、今存続が問題になっている中小企業はなおさらだめになりますから、そういう中小企業はしたがって消えていくであろう。というのは、先ほど言いましたように、国際的競争の中にあって中小企業は存続が問われているわけですから、そんな生易しい話ではないと思っております。  ただ、私は、一律に法制化されるということとか、あるいは介護というものが非常に種々個別であるにもかかわらず、それを一定の期間で解釈するとかということにやや異議を持って、政府案を限界ぎりぎりとしてお願いをしたい。もうすべての話、北橋先生のおっしゃるとおりに私は思っておりますし、私の会社では少なくとも大企業に負けないような介護制度をつくろうというふうには思っております。だけれども全体を考えて言うときには、こういう政府案を限度とするのが妥当ではないかという点も信念として持っておるということでございます。
  118. 北橋健治

    ○北橋委員 ありがとうございます。  時間が参りましたので同僚委員に譲りますが、私どもも、どういう内容法律案施行されるにしても、中小企業に対する奨励制度、援助対策についてはもう党派はないと思っておりますので、一生懸命頑張ることをお誓い申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  119. 笹山登生

    笹山座長 次に、河上覃雄君。
  120. 河上覃雄

    ○河上委員 新進党の河上覃雄でございます。  お三方の陳述人におかれましては、まことに本日はありがとうございます。時間も十五分なので、技術的なところからお尋ねをいたしたいと思っております。  先ほど、介護休業制度導入困難性ということで御指摘がございました。特に富田さんにおかれましては、みずからの体験を踏まえられて介護実態というものを鋭くお述べいただいたことに対しましては敬意を表するわけでございますが、これは個人のお立場からの受けとめと私も理解いたしております。  そこで、企業がこれを導入することについての困難性の御指摘は先ほど申されたとおりですが、反対に、企業として介護休業制度導入した際のメリットは、皆さんはどうお考えになるのか、あるのかあるいは全くないのか、この点を、最初に高島さんと富田さんにそれぞれお伺いをしたいと思っています。
  121. 高島健二

    ○高島健二君 先ほど、介護休業制度導入すると採用にも有利になるのではないかというようなお話もありましたけれども、これは、我が社だけの制度であれば他社にないメリットとして人材確保にも有効だと思うのですが、今度法律ができて、隣の会社も向かいの会社も全部一律に制度導入されるということになると、そういうメリットは、我が社だけの特徴というのはなくなるわけでありますので、この制度ができたからといって人材が集まるかなという疑問はあります。  それから、介護休業制度ができることによって、会社をやめざるを得なかった方がとどまることができるということで、いわゆる職場生活と家庭生活の両立というようなことを実現しようというこの法律のねらいというのは、これはもう企業にとってもプラスになることでありますし、そういう意味で、いつまでも原則論で反対をしておってもいかぬのではないか、将来のことも考えて、やはり現実的な対応をすべきではないか、こういうふうに私ども判断をしたわけであります。  抽象的ではありますが、そういったことがもろもろメリットということで御理解をいただければいいのではないかというふうに思います。
  122. 河上覃雄

    ○河上委員 ありがとうございました。  次は富田さん、よろしくお願いいたします。
  123. 富田和夫

    ○富田和夫君 先ほどの北橋先生と同様、河上先生のお話、一々もっともにお伺いしておりました。  メリットというのは、そういう意味から、ごく当たり前のことだ。人道的な問題ですから、それを制度として経営者が取り上げることは、まあ労働者という言葉を使いたくないのですが、少なくとも会社の社員、従業員は、そういった思想を持っているトップの下で初めて、先ほど言いました、創意を発揮し、柔軟性を持って仕事に従事してくれるものと思いますから、そういうことに関しましては、この制度を採用するというのはメリット以外の何物でもありません。  ただし、何度も言っておりますけれども介護の種類が非常に複雑でもありますし、現在置かれた経営状態から見て、まず存続と雇用確保の方に重点を置いていきたい。そういう意味から、政府案の方に賛成させていただいているということでございます。
  124. 河上覃雄

    ○河上委員 これは富田さんにお尋ねしなくてはならないと思いますが、先ほど、一九九九年までまだ四年間ある、その準備期間があるので、さまざま施策を講じて私ども対応したい、むしろこの時間の猶予については大事だというお話があったように思います。  その際、原因として三点お挙げになりました。一つは、代替要員確保困難性を御指摘なさいました。二点目に、コスト負担のお話をなさいました。三点目に、現下に置かれております不況構造のお話、中小企業の存続それ自体の問題を御指摘になりました。もちろん、その中で三番目が最も大きなテーマでございますので、視点としては別なものになると私は理解しておりますけれども、具体的には、第一番目の代替要員、あるいは二点目のコスト負担の問題、これらが中心の問題になるのではないか、こう認識をいたしながら聞いておりました。  そこで、それでは一九九九年、この介護休業制度導入時まで、中小企業としては、この四年弱、どういうふうにこれらの問題について整備をしていかれようと思われるのか。もちろん、これはまだ法律施行されておりませんし、まだ議論の過程でございますので、極めてアバウトで結構でございますが、富田さん個人のお考えを、この三年間、今の二つの点に対して、どういうふうにやったらやれるかなということをもしお持ちならば、お聞かせ願いたいと思っています。
  125. 富田和夫

    ○富田和夫君 まさにその点は、この介護制度にかかわらず、今盛んに行われていますリストラとかリエンジニアリングとか、そういった言葉というものに相対する、企業効率を上げていく、あるいは特色を持っていく、それが存続を可能にするということにつながる話だと思います。  中小企業に対する物の考え方は、あるいは各経営者それぞれによって違うかもしれませんが、今、河上先生が個人的な意見とおっしゃっていただきましたので、あえて個人的な意見として申し上げますが、繰り返してお話しするように、中小企業の存続は、あくまで個性的な、そして創意に基づく柔軟性というものが必要なので、それを可能にする。  代替要員の場合、先ほども言いましたように、熟練工に匹敵するような熟練度を持った人が介護をする対象になる場合が多いので、その代替要員というのは金銭的な問題では解決がつかない。だから、それを可能にするようにする。自己の企業の特殊性だとか創意性というものを、大企業の持つ製品に比べて特色のある製品とか特色のあるコストダウンとか、あるいは逆に高付加価値とか、そういったものを完成するような努力をしていかなきゃいかぬ。これは単に介護だけでなくて、もしその人間が病気で倒れてももっと大きな問題になりますから、一人の熟練工に匹敵するような人間が倒れたときでも中小企業の存続を可能にする。  事実、我々の企業の中でも、この人間がおるからこの技術が生きているという分野があります。だから、その人間そのものであろうと、あるいは介護することが必要になろうと、代替要員ということを、これからこういった点をこの年限のうちに早く可能にする。今までは日本経営とか拡大経済の中で生きてきましたから、この数年間は少なくともそういった独自性を生かすようなことも努力はしていますが、さらに進めていく。  例えば、今の代替要員のかわりにホームワーカーというものを私は事実考えておりますけれども、パソコン通信的に自宅で仕事をさせる、こういった方向はこれからぜひ前向きのこととして考えていきたい。そういったことにも時間が必要だという点をお願いしたい。  ただ、思想としては、早く従業員の幸福のためによりよい処遇をするということは、どんな経営者でも、あるいは労働者各自の間でも考えていることだということは言うまでもないというふうに思っております。
  126. 河上覃雄

    ○河上委員 ありがとうございました。  もう一点お尋ねいたしたいのは、高島さんのお話の中に、平成十一年介護休業本体部分実施、ただし、できることならば大手先行、そして加えて、中小零細についてはさらなる猶予措置を、こういうお考えを二つの条件の一つとして御指摘になったと思います。  富田さんもほとんど同じ考えをお持ちだと思いますが、私個人の感想からいたしますと、勤労者が働く場所において条件が違ってくるというのは余り好ましくない。まあこの問題に限らず、現実、いろいろとそうした側面が今までの中で横たわっていることも事実でありますが、今後は、勤労者の立場から見ると、大手にお勤めになられる方と中小企業にお勤めになっている方の間にそうした差が出てしまうということはいかがなものかと私は強く思うわけでございます。  この点について、高島さん、そして富田さんのお考えをもう一度お聞きしておきたいと思います。
  127. 高島健二

    ○高島健二君 法のもとの平等ということは当然のことでありますから、できることなら一斉に、こういうことでしょうけれども、問題は、法制化ということと現実とをどういうふうに合わせていくかという問題だと思うのですね。これは、現実的にそごを来さなければ一律でもいいと思うのですけれども、なかなかそうはいかぬのではないかというので、先ほど、お願いの二つのうちの一つとして申し上げたわけでございます。  中小企業の悲鳴というのですか、このところの産業構造の転換を迫られている中での労働時間の問題、育児休業の問題、そこへ次いで今度この介護休業、こういうことになりますと、こういう席で言うことが穏当なのかどうかあれなんですけれども、会員中小企業からの悲鳴が聞こえてくるわけですね。もういいかげんにしておいてくれよ、おまえたちは労働省の前へ行って座り込みをやってこい、そのために給料をもらっているんじゃないかなどという激しい意見が現実に出るわけですね。  したがって、この介護休業法最後どういう形に落ちつくかわかりませんが、仮に政府案で落ちついたとしても、高島、おまえはそれを傍観しておったのか、それで専務理事の役職が果たせるのか、こういうことになる。まあそうおっしゃらずに、中小にはちょっと猶予措置をちょうだいしてまいりましたからぐらいのことで顔を立ててもらわないと、なかなかこの難しい現状であるということから、先ほどはそういう裏の話は申し上げませんで結論だけ申し上げましたが、そういう発言に至った裏は、台所事情はそういうことでございますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
  128. 河上覃雄

    ○河上委員 高島さんの御率直な意見はよくわかりました。  では、富田さん、よろしくお願い申し上げます。
  129. 富田和夫

    ○富田和夫君 高島さんの後でちょっとしゃべりにくいのですけれども、先ほど北橋先生のときにお話ししましたように、私は、中小企業のためにも、優劣の問題として中小企業を考えてほしくない、特異性だ。だから、大企業がすぐ五〇%適用できたというのは、大企業仕組みにある。例えば、生産設備で製造ができるというものと個別的な手法で製造するという違いだ。そのために、大企業は取り入れるのに時間が少なくて済むけれども中小企業は、劣っているからではなくて、その特異性から採用するのがおくれるというふうに考えていただきたい。  数日前に、NHKのBSだったと思いますけれども、スパゲッティのことで、イタリーのメーカーが世界の六〇%を占めている、あと二〇%ぐらいをフランスのイタリー系のメーカーがやっている、あと中小零細がやっている。それぞれの労働者意見も出して、あるいは食べている人も言っていたのですが、手の感触でつくるということに喜びを持つし、その感触でつくられた食品に喜びを持つということが言える。大企業の方はそれを何とかして生産設備の中で使う、だから大企業の方も、その設備の中の何人かの労働者は手でスパゲッティのめんにさわるようにしている、一日何回か見ているというようなことを言っていました。  そういうふうに、大企業の持つ生産手法と中小企業の持つ生産手法と違うという点で時間が欲しいというふうに河上先生には考えていただきたい。劣っているから、頼むからということは言いたくないということです。
  130. 河上覃雄

    ○河上委員 富田さんの中小企業代表するすばらしい御決意も今賜りました。ぜひともそのように頑張っていただきたいとは思いますが、私どもとしても、社会保障制度のあるべき姿、御指摘のとおり、これはもうきちっと頑張りたいと思っております。  現実的な中小企業実態という側面をいろいろと今お聞かせを願いましたけれども、私ども提出いたしました介護休業法案の中にも、中小企業への手厚い措置というものを念頭に置いて仕組んでございますこともぜひとも御理解を賜りたい、こう最後に申し上げさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  131. 笹山登生

    笹山座長 次に、池田隆一君。
  132. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 きょうは大変ありがとうございます。たくさんの御意見をるる聞かせていただきました。  社会党の質問の一番バッターでございますので、社会党の基本的な考え方として、この介護休業法案に対しては、緊急避難的だ、ヨーロッパを見ましても、介護という意味での休暇はない、家族の看護、要するに病気休暇、そういうものに対しての休暇はあるけれども介護という形での休暇はない、これは極めて日本的な制度だなというような認識をしています。  つまり、逆説的に見ると、こういう法案導入しなければならないということは、今までの社会保障の充実という観点が極めておくれていたということだろう。結果として、社会介護がおくれているために家族介護という観点でのこの介護休業法案といいますか、これが入ってきたのだろう。ですから、あくまでも私たちは、緊急避難的な意味合いとして、社会的コンセンサスを得た中でこれを進めていくべきだということで今の与党案を提出しているわけです。  そういう観点から、まず中村さんにお尋ねいたします。  施行期日の問題、政府案平成十一年の四月、新進党案は来年の四月、連合さんの方もそういうことなわけです。連合としても、中小企業には一定の配慮をして速やかに来年四月と、つまり財政的支援をしながらということなんですけれども、その前提はやはり大企業中小企業との差がある、困難性があるという認識には立っているのではないかという理解をしているわけですが、その辺のところはいかがでしょうか。
  133. 中村征子

    ○中村征子君 連合がまず全国的に中小企業の方々とお話しすると、どの方も、今富田さんとか高島さんがおっしゃるとおりの御意見を皆さんがおっしゃって、全国的にみんな持ち寄って、それは何がネックだということになると、こんなことは言いたくありませんが、先ほども申し上げましたように、組織された労働者というのは、連合の加盟組合ではかなりの部分、毎年毎年の運動の積み重ねで今の政府案を上回る条件をかなりとっているところが多いのです。さらにそれの積み重ねをずっとやっているわけなんですが、連合というのは、特に組織された労働者だけの運動ではなくて、大きな連帯感の上に立って、私たち組織された労働者が先頭に立っていろいろな運動が起こせるという恵まれた立場にあるということをまず頭に置いて行動していることを御理解いただきたいと思います。  そういうことから考えますと、私は、今までの労働時間の短縮にしても育児休業にしてもすべて、中小企業に対してしばらく猶予措置ということがプラスであったかマイナスであったかということを今考える時期が来たのではないかと思います。  といいますのは、先ほど言いましたように、今は確かに就職難であって、いろいろなところにいい人が行くという現実はありますけれども、そういうものを踏まえますと、先ほどから何度も出るように、同じ人間に生まれて中小に就職したから——隣の方は大変すばらしい方だなと私が思うのは、中小企業に対するすごい誇りを持っていらっしゃいますので、そういう経営者ばかりならばいいのですけれども、特に私などは岐阜という田舎におりますので、そういう経営者ばかりじゃないのです。だから、先ほど高島さんがおっしゃったように、育児休業法制化されても産前産後の休暇と一緒に考えるような経営者も随分いらして、話をしていると随分違ってしまうような経営者の人がいっぱいいらっしゃるということをぜひ御理解いただきたい。  ここで浮き彫りになってくるのは、くどいようですけれども、協会に入っている人たち、私たちは連合で労働組合に入っているところを全部一緒に用意ドンでやっているように、すべてそれぞれの立場の人たちがそれぞれのところで今まで努力なされていない結果というのが今浮き彫りになってしまっていて、そういう部分で、中小企業に対する猶予期間というのは、期日を後に送るのではなくて、経済的援助と、それと私は経営者でありませんので詳しいことはわかりませんけれども、国会で御活躍なさっている人、また労働省とかいろいろの関係の方が、それぞれ人的配置などを考えれば、そんなに四年間も待つ必要はないのではないかと私は思います。
  134. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 そこの差があるわけですけれども、来年四月にしてもいわゆる財政的支援等をして一定の配慮をすべきだと。そうすると、財政的支援として具体的にどんなイメージを考えておられますか。
  135. 中村征子

    ○中村征子君 いろいろな今までの、例えば不況対策にしても、一時帰休の事業所に対してはそれぞれの補てんがありました。先ほど言いましたように、すべての中小企業、すべての職場に介護休業を必要とする人が一斉に出るということは恐らくないと思うのです。だから、一つの職場に二人出たときに、二人が休むことで企業が倒産するようなことになるとするならば、労働省関係で、一時帰休の事業所に対する補てんとかいろいろな手段がいっぱい今までに制度化されている部分を、それを活用なさったらいかがかと思います。
  136. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 私たちは平成十一年の四月、しかし導入に際してはできるところから早く導入していただきたいという願いを持っています。それは中小にしても、大企業は一応五〇%の実施率があるわけですけれども、それをより進めていくということになれば、企業側の努力というものは非常に必要だと考えています。  そこで、富田さんと高島さんにお尋ねしたいのですけれども、できるだけ努力をしていくという視点で、平成十一年の四月以前に期待をしているわけですけれども、それは可能なのかどうなのかを含めて御見解をお聞きしたいと思います。
  137. 高島健二

    ○高島健二君 法律ができるできないにかかわらず、厳然として今ガイドラインというのが示されておるわけでありますから、その中で今努力をしておる最中で、それに、導入率がぐっと上がってきたのも、グラフなんかを見せていただきますと、やはりガイドラインの効果というのがああいったところにもあらわれておるわけでありますから、その努力を引き続き続けていくということになるだろうと思うのです。  問題は、先ほどちょっと中小企業の悲鳴を申し上げましたように、我々が、ガイドラインがあるのだからひとつ前向きで検討をと言うと、あれもこれもあるのにまたそれかと、こういうのが非常に大きな抵抗としてあるということ。そういう中で我々は、いろいろ手をかえ品をかえ、表現をかえ資料をかえて会員にPRをし啓蒙をし、実行していただくようにお願いをしておるということでありますので、このガイドラインの普及ということをひとつ見守っていただきたい。我々もそういう中で大変努力もしておるということも、あわせてこの機会に御理解をいただきたいと思います。
  138. 富田和夫

    ○富田和夫君 何度も同じことを言うようになってしまいますけれども、大企業に比べて中小企業経営コストを安くして経営をしているのかということになってしまうので、そんなことではないと思っております。  私も悲鳴を上げておりますけれども、悲鳴を上げても天から降ってくるわけではないので、一番大事なのは存続を確保するということだと思うのです。だから、悲鳴を上げてもらえるものではなくて、認められるということですから、認められるための時間が要る、それに移動するだけの時間が要るというふうに本当に思っております。  だから、父ちゃん母ちゃんの店も、あるいは数名の人が旋盤一台でやっている店があっても、そういうのが存続するということ、存続を世の中が認めるなら、やはりその人たちが存続できるようにしてやってほしいということを申し上げたいということであります。
  139. 池田隆一

    ○池田(隆)委員 どうもありがとうございました。
  140. 笹山登生

    笹山座長 次に、岩田順介君。
  141. 岩田順介

    ○岩田委員 本日は、お三方につきましては御協力を賜りまして、大変ありがとうございます。それぞれのお立場での意見を十分拝聴させていただきました。感銘している部分もございます。  まず、お三方はそれぞれの立場において、失礼でありますが、きょう来るまでの、想像以上にこの問題に対して御努力といいますか、研究も含めてなさっていることに感銘をするわけであります。つまり、高齢化社会に向かうそれぞれのお立場で懸命な努力をされているということに深く敬意を表する次第です。中でも、富田さんの御発言にございましたが、これは人道上の問題である、中小、大小を問わずそれはやっていかなければならないという御決意には、感動すら覚える次第であります。  ただしかし、一企業努力でいかんともしがたい限界ははっきりしている、それから個人の問題としても限界ははっきりしている、これもやはり共通する御認識ではなかったかというふうに思います。この法律は、実行されますと、これは強制力を持つ法律でありますから、待ったなしになってくるわけでありまして、その辺がそれぞれのお立場では相違があることは当然だとも思います。  私、八番目の質問者で、ほぼ持ちごまがなくなっておりますが、多少失礼な質問になるかとも思いますけれども、まず中村さんにお尋ねをしたいと思います。  介護する、介護されるという問題でありますけれども、つまり休業する労働者の側からいけば、長い方がいい、選択幅があった方がいいという、これは当然望ましいことであろうというふうに思います。しかし、本音のところ、先ほどお母様のお話がございましたが、御自身が要介護者になった場合、あくまでも休業させる、休ませる、やめさせてまで家族による介護を望まれるのか。そうではなくて、いわゆる施設介護による介護を受けながら自立をしていくという道もあろうと思いますが、そういうことを選ばれるのか。ちょっと失礼な質問になるかと思いますが、個人の御見解をひとつお伺いをしたいと思います。
  142. 中村征子

    ○中村征子君 私の場合は子供が二人おりますので、私がこうして働き続けられたというのは、やはりかなり母が援助してくれた部分、それからまた友人、知人に見ていただいた部分、また保育所にかかわった部分とか、いろいろなことがありましたが、当然公的施設がどんどん充実してくることで、私たちは、正直言って今の職場の中で一年を私がずっと休んでしまうというのは大変だということが私自身にもよくわかりますので、母は母なりに自分の健康管理というのに十分気をつけて、それがある意味では子供に対する子孝行だし、私は、親が病気になってくれないことが私に対する孝行だというふうにとっておりますので、そういう部分を踏まえますと、先ほどから言いますように、一年間というのは最も必要な人がとる期間というふうに御理解をいただけないかと思います。  私自身も、一年間あることで、三カ月であったらもっともっと、例えば自分に対してもすごく焦りもあるであろうし、三カ月たったらどうしようどうしようというのがいつもいつもあると思うのですが、最長一年だということになれば、その最長一年に向けてお互いに努力を、もし私と母の立場個人的にお答えということになれば、私も努力をするであろうし、母も娘のために一年間で早くという部分をお互いが持つのではないかということで、最長一年というふうにぜひ御理解をいただければ幸いだと思います。
  143. 岩田順介

    ○岩田委員 一年か三カ月かという問題ですね。今の中村さんのお話では、やはり三カ月ではなくて一年ならばほぼ十分な介護ができるのではないかというふうに私は理解をするのですが、過日の衆議院の本会議新進党の石田美栄議員が代表質問をなさっています。その中で、介護状態になってからの年数が平均して五・八年という調査を示されております。そこで彼女の質問ですけれども政府案新進党案、三カ月と一年になっておりますが、一体こういう三カ月とか一年間で本当に十分であるかという御質問があるのですね。これは大変鋭いというか、本質的な質問ではないかというふうに私は聞きながら考えておったわけであります。  連合の調査もここにございますけれども、その調査を見ましても、実に深刻な実態報告をされております。「要介護者に対し、憎しみを感じることがあるか」というような、ほかに余りないような調査だと思いますが、これが「いつも感じている」というのが一・九%ございます。それから「ときどき感じている」というのが三二・七%もありますね。主たる介護者の十人中三人以上が憎しみを感じている。それから「要介護者に対する虐待をしたことがあるか」というような質問のアンケートがあるのですが、これに対しましては二人に一人が虐待の経験者だということが明らかになっていますね。  私も老親と一緒におりまして、深刻な事態を経験をしたことがございます。富田さんがおっしゃったように、脳梗塞だけではなくてさまざまなケースがあります。それから親子の関係でいけば、これはどこまでが要介護なのか、これは介護を要求する側とお世話する側との希望や情緒もありますから多様にわたるわけでありますが、このアンケートのようなこうした虐待の背景には、社会的な整備が進まない、未整備である、そういう状況の中で、いわゆる寝たきりや痴呆性の老人介護している家族の肉体的、精神的な苦痛は大変なものである、終わることのないこのつらさに耐えかねている、こういう背景があるのではないかと思いますが、これらについて一体どういうふうにお考えなのか、中村さんに伺いたい。
  144. 中村征子

    ○中村征子君 私はやはり、介護をする側がこういうことを言って申しわけないのですが、今男女、夫婦ともに介護に携わるならばそういう結果は生まれないのではなかろうかと思いますが、現状を見てみますと、介護は嫁とか娘とか、特に女の側にほとんどの人が比重がかかっている現象がそういう形で出てきているのではないかと思います。  といいますのは、やはり日本の男性というのは企業戦士でありますので、だから女の人が見ることが当然とされておりますし、それからもっと、先ほどおっしゃってくださったように、あるときは、社会的な整備がされていて三日ぐらいは自分が旅行に行っても安心して預けていけるとか、そういう介護者に対する——介護する側はそれが当然とされていますし、それから、そういう在宅介護に自殺者が出るというのは、現実私どもも聞いております。しかし、そこに至るまでの、もう少しそうではない状況というのを、やはり今までになされていない結果が出ているということに私は受けとめます。  だから、先ほど言いましたように、そういう言い方をしては申しわけないのですが、すべては女性がそういうところに進出してなかった結果が、男の人は、こういう施設をつくって当たり前だ、だから家庭に見る人がいればお嫁さんが見るのが当たり前とかいうような、どこの社会もそういうふうになっておりますから、介護休業法がもし法制化されたとしても、私はある意味では、特に地方自治体における啓発活動が同時進行しない限りは、法律があっても、例えばあそこの嫁は親も見ないとか、見ることは当然だとか、それは例えば、最長一年間あったとしても、三カ月間は私が見て、あとの三カ月は施設に預けるとか、そういういろいろな選択の幅広い方法を今講じるのが介護休業法の制定であると私は思います。
  145. 岩田順介

    ○岩田委員 さまざまな御意見を賜りました。それぞれ微妙な立場、各論においての違いがございますけれども、目的とするところは一緒だろうというふうに思います。与野党を問わず、これは何としてでも、結果的にどういう法案になるか知りませんが、完成させていきたいという決意だけお述べをして、質問を終わりたいと思います。
  146. 笹山登生

    笹山座長 次に、佐藤謙一郎君。
  147. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 新党さきがけの佐藤謙一郎でございます。  きょうは、陳述人のお三方、どうもありがとうございます。印象からいえば、もっと早くにこうした地方公聴会をやるべきだったなという率直な気持ちで聞かせていただきました。  先ほどから、高島さんあるいは富田さんから、人道上というお話が出てきておりましたけれども、実は、その辺が厄介なことなのだろうと思うのです。  というのも、育児休業法、私はこれは国会での委員会でもお話をしたのですけれども育児休業に対する権利意識というのは国民にかなり強く根差している。介護されるという権利、これも憲法で何となく納得ができる。しかし、介護する権利というのは、これは国民の意識の中で十分定着できているだろうか。まして、企業で働く人間が、企業を犠牲にするというのはちょっと偏った言い方ですけれども、働きながら、雇用継続して介護をするという権利が驚くほどにまだ国民に定着していない。それは先ほど高島さんの方からも、中小企業経営者を中心にこれから理解させるには大変なことだというお話がありました。  私は、こうした介護という問題が全体像が見えないままに雇用継続というところからスタートしてしまった、これは非常に残念なことだなというふうに思っているわけなのです。もっと大きなところから、全体像から我々はこれをもっともっと真剣に、早くに議論をしていくべきだったという反省があるわけです。  ここで中村さんにちょっと御質問させていただきますのは、余りにも労使だけでこの問題が語られている、これは雇用継続というのが一つの大きな柱でありますから当然ですけれども、その割には国民的な世論、先ほど来富田さんも言われていましたが、国民的なコンセンサスが十分得られているかどうかという点についてちょっとお答えをいただきたいと思います。お考えをお願いします。
  148. 中村征子

    ○中村征子君 例えば、今の均等法施行後、育児休業とセットになった法律になっておりますので、先に出てきた育児介護がセットになっておりますので、雇用継続と職業生活と家庭生活の両立というのが前面にうたわれていて、特にこの問題は働く女性の側だけが主張しているようにどうも思われるのですけれども、先ほど申し上げましたように、そのためにやめたいろいろな女性の声を聞きますと、これはもっと前から私たちが望んでいたことが今まで話題にならなかったという部分をぜひ理解していただきたいということです。  それから、男性の場合は、自分の老後というのを余り語らないのが実態ではないかと思うわけなのです。だけれども女性の場合は、特に女性の方が寿命が長いということもありますし、それから自分に経済的な不安があるということで、私は、こんなことを申し上げるのはおかしいのですけれども、男性以上に女性の方が、例えば少々のお金をけちっても公的年金を黙ってかけようとか、そういう人はかなりいるのではないかということを申し上げたいと思います。それから、女性が語るときに、特に老後という問題が男の人以上にずっと話題になっているという部分を御理解いただければ、これは今働いている人たちの問題だけではないというふうに私は受けとめます。  それと、もう一つ申し上げますが、子供の数が少なくなって、男の人も女の人も平等に教育を受けて、自分の子供はそれなりに自分の人生と違った人生、ずっと働き続けられるためにというようなことを、親が子供にそれなりの期待をかけているときに、この法律というのは、自分だけのものではなくて、例えば自分の娘とか自分の身内に対するものとして大きな期待がかけられていることも申し上げたいと思います。
  149. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 僕も中村さんの意見はよくわかりますし、かなりの部分で賛成なんです。ただ、国民的なコンセンサスが得られているかどうかをちょっとお聞きしたのです。  私がなぜそれを言うかといいますと、公的な介護システムですとか新ゴールドプランだとか支援体制だとか、我々がこれからまた議論をしていかなければいけない問題というのはたくさんあるのだろうと思いますけれども、やはりそれよりも意識の問題というのが非常に大きいことなのだろうと思うのですね。これが正当な権利なのだということが国民全体に行き渡って初めて本当に女性が解放されていくのだろう。  先ほどの、育児休業についての中村さんのお話の中で、均等法以降いろいろとそういう形で休みをとっても、一年とりたくても三カ月で出ていってしまうという現実が残念ながらあるわけですね。実は、ここに注目をしなければいけない。どんなに立派な法律をつくっても、意識の下で、そういうような時世だとかあるいは環境がまだそこまで意識として成熟していないときに、私はなかなか難しい問題をはらんでいるなというふうに考えるわけです。  先ほど、小さく産んで大きく育てるという話があって、大きく育てようと思っても未熟児で終わってしまうのではないかという議論がありましたけれども、それでは、大きく産んで大きく育つかというと、これまた、なかなかそこまでいくだろうか。結局、やみの中なんですね。  どちらが実効性を持ってこの介護休業という権利を、女性義務としてではなくて、今まで女性義務として介護が語られてきて、家庭に閉じ込めていこう、閉じ込めていこうという社会的なそういう風圧というものがあった、私はそれを助長してはいけないと思っております。だから、家庭に縛りつけないためにも、これを権利としてどう定着させていくかという実効性の問題で、実は我々与党も、それから新進党さんを初めとした、共産党さんも含めた野党も、私はベクトルはまさに同じ方向なのだろうと思っておりますし、問題は、小さく産むか大きく産むか、そして実効性がどっちによりしっかりと働いていくか、もう議論はそこだけなのだろうと思うのです。  そこで、お三方に一言ずつお聞きをしたいのですが、二つの法律案、いろいろと議論に議論を重ねて、本当に真剣な議論をしてきて、やっとここまでたどり着きました。それぞれのお立場でそれぞれのお考えを聞かせていただきましたけれども、もしも妥協することができるとしたら、どの部分だったら妥協できるか、その辺のところをお一人ずつお聞かせください。
  150. 高島健二

    ○高島健二君 私は、意見陳述の中でも申し上げましたように、今の御質問には極めてはっきりした立場でありまして、政府案がもうぎりぎりいっぱいの譲歩案だ、こういう表現で言ったつもりでありますし、さらにそこに、お願いできるならばと言って二つ条件をつけたわけでありますから、今の二つの案のどこに線を引くかと言われても、私には今申し上げた以外に答えはないわけであります。
  151. 中村征子

    ○中村征子君 私も、きょうまで運動をずっと継続してきまして、これはぎりぎりの線で、一歩も譲ることはできません。
  152. 富田和夫

    ○富田和夫君 私も同様なのですけれども、私はこういう場所は余り経験がないので、こういうことを聞くとあれですが、法文化するということは、先ほどから中村さんのお話を聞いていると、一年とするのは、一年が最長なのだけれども、もっと下を考えているよというお話がよく出ているのですが、その辺がもしやれるとしたら、新進党案のそういったことと私が支持したいという政府案との妥協線があるのかなと思ったのです。  私わからないのですが、こういう法律をつくるときには、中村さんが何度もおっしゃっているような、一年を最長にするのだよということで解釈していいのでしょうか。こういうことを質問してはいけないのでしょうけれども、どうなんですか、これは。
  153. 笹山登生

    笹山座長 答えを求められておりますが、いかがいたしましょうか。どなたかもし御発言があれば。——では、後ほど口頭でそれぞれ御意見をお示しするということにさせていただきます。
  154. 富田和夫

    ○富田和夫君 公的なところでこういうことを言ってはあれなんですが、わからなかったものですから、そういうことでお聞きしたわけであります。
  155. 笹山登生

    笹山座長 では、そのように取り計らわさせていただきます。
  156. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 それぞれのお立場でこうやって主張されたわけですから、無理を承知で御質問したわけでありますけれども、私は、とにかくここまで成熟をしてきた介護休業法あるいは育児休業法の一部改正、このままとにかく四つに組んでということは非常につらいことだろうと思います。  それで、私は、国民的なコンセンサスを得るためにということで、これが権利として定着する、企業義務という後ろ向きの議論ではなくて、国民の権利として定着する、そのためのお知恵がもしもあるとするならば、お一人ずつちょっとお聞きをしたいと思います。
  157. 高島健二

    ○高島健二君 これは先生冒頭におっしゃったように、介護に対する考え方というのがまだ定着していないのではないかというのは、率直に言って私もそのとおりだと思うのですね。  これは私も時々申し上げましたように、千会員の中の多くの中小企業の方々の御理解が得られていないということももちろんですが、あわせて、これはもう大小を問わずだと思いますが、従業員にこれからどうやって教育をしていくのだということもあると思うのですね。ですから、社内教育や何か、教育制度の中にそういうことも取り入れていかなきゃならぬと思います。  それから、当然これは社会保障制度全体の中で啓蒙というようなこともやっていかなきゃならぬと思いますので、関係のお役所はそれぞれパンフレットをつくるなり会合をやるなり、そういったことで幅広く啓蒙活動をやって、介護というものの必要性、重要性、あるいは小学校教育からぐらいでもいいですが、親の介護はもうあなたがするのだよという考え方を定着していかないと、一昔前にあったように、結婚する相手が三ないだとか何とかというあんな風潮であっては、とてもじゃないが介護休業制度をつくってもしようがないのではないかというようなことですから、もうそのあたりから積み上げていかないと本物になっていかないと思うのですね。
  158. 中村征子

    ○中村征子君 では私、最近感じたことを一つ申し上げたいと思います。  阪神のボランティアに行きましたが、そのときにあることを学びました。というのは、特に老人に対して仮設住宅を優先的に充てるということがなされておりましたが、私、老人と会話を交わすときに、その老人が何を望んでいたのかということがわかったのです。この阪神大震災で避難所におって大変楽しかったということをおっしゃるのですね。それが老人の本当の現実だという部分がわかったわけです。というのは、阪神大震災で、避難所で同じような人が同じように語れることができて本当によかった、仮設住宅は当たったのだけれども、あしたから行ってもいいのだけれども、行きたくないという老人の気持ちというのを大切にしたいと思いました。  やはり、どの人も娘に一年間見てもらおうというのは大変日本的な発想ではありますが、私ども、子供を産み育てるときに、ポストの数ほど保育所をという運動をやったことがあるのですが、今、それこそポストの数ほど老人が一緒に楽しくも語り、悲しくも語りというような施設地域に持つことと、それから、女性立場を強調して本当に恐縮なのですが、男の人も女の人も、嫁に見てもらうとか家内に見てもらうとか、そういう発想を捨てて、隣の方がおっしゃったように、真剣に揺りかごから墓場までをみんなが考えてこそ、これは先ほどだれかがおっしゃいましたように、今ここでこの議論をやるというのは本当に遅いのではないかということを申し上げたいと思います。  以上です。
  159. 富田和夫

    ○富田和夫君 だんだん終わりになって妙なことを言うようですけれども、中村さんの御意見を聞いていますと、やはり女性対象にお話しになっているし、私は、自分で反省してみると、どうも男性が休暇をとる方を主体に言っているようで、その辺はこの委員会でもきっと今までいろいろなケースでいろいろなお話し合いをなさっているので、そんなことを言うといけないのかもしれませんけれども、この法律をつくっていかれるときに、今後ともぜひそれをいろいろ練っていただきたいなというお願いをいたします。  何というか、女性の場合は派遣さえすれば代替要員ができる。だけれども私は、女性でもそうなんですが、女性でも非常に熟練工的な人は代替要員がきかない、そういう点で中小企業は困るということを言っているのです。佐藤先生のお話にちょっとイレギュラーしちゃったかもしれませんけれども、そんな感じがいたします。  それで、権利としてということは、どうなんですかね。高島さんは教育の問題から始まっているのですが、確かに今の若いのは親孝行なんて教えなければしないというようなことかもしれませんけれども、そんなことではないと思います。余り権利権利と主張しないで、当然必要に迫られることなのですし、千差万別なので、私は法律で定めるのは最低限にしたいということに尽きると思います。
  160. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 どうもありがとうございました。終わります。
  161. 笹山登生

    笹山座長 次に、寺前巖君。
  162. 寺前巖

    ○寺前委員 最後になりましたけれども、御協力ありがとうございます。  今、佐藤さんから権利の話が出ました。私は、これは非常に大事な問題だと思っています。というのは、戦後、労働基準法ができたり、いろいろな法律ができてきました。それまでの感覚と戦後の感覚の違いというのは、権利意識を明確にしてきたということが非常に大事だったと思うのです。  この介護の問題について言うと、国際的には一九八一年、ILOの百五十六号条約で、家族的責任を有する男女労働者機会及び待遇の均等に関する条約として出されているわけです。そして、一九八三年にはこれは発効しておるのです。ところが、それから今日まで十二年間、日本はそのときに承認をしておきながら、実際には現実の問題として検討し法律化されてきていないというのが国際的な日本の置かれている位置だと思うのです。それで一方では世界的には金持ち日本だ、そしてその一方で過労死日本だ、こういうふうに国際会議に行くとよく言われるわけです。  こういうことを考えてみたら、いろいろな分野の問題がありますけれども介護の問題を日本労働者の権利として保障するんだという立場をとるのかとらないのかというのは非常に大きな問題を持っている。私は、そういう意味では社会的に大きな役割を担っている日本の大手企業の諸君たちの果たしている役割は大きいと思うのです。  そこで私は、高島さんに聞きたいわけですが、最初のお話のときには、聞いておりますと、公的介護が何か悪いような、その責任で個人の面倒の話のように聞こえて仕方がなかったわけです。ですから使用者側の問題として反対だったんだ、しかし今ここまで来たんだから賛成するんだという話がありました。それで私は最初から気になっておったのです。  権利の問題というのは、時が来たからそうだという問題じゃなくして、働く人に対して育児とか介護というのは積極的に権利として保障していかなければならぬのだ。そういう立場からいうと、社会的にそういう自覚が欠けておるということで、我々も積極的に介護の保障をしていくんだという姿勢をとっていなかったのがまずかったんだという態度をおとりになるかどうかというのは、私は、これからのあり方の上にとって大事な姿勢になるだろうと思います。私の意見が間違いであったならば、間違いを御指摘いただいたらありがたい。お願いします。
  163. 高島健二

    ○高島健二君 社会保障制度の問題は、人によって立場によって割り切り方が大変違うだろうと思うのです。私は、先ほど申し上げたように、人道上の問題であるがゆえに社会保障制度全体の中に包含すべきではないかという立場でお話をし、そういう考えに立っておるわけでありますが、反対に、人道上の問題であるがゆえにこれはあくまでも個人というのか、家族中心にして社会保障に頼らずに自助でやっていくべきだという立場の方もあると思いますので、これは立場の違いとか解釈の違いとかそういったことですれ違ってもしようがないのじゃないかと思いますし、私は、本来、介護というのはそういう性格のものであろうということであります。  あわせて申し上げたのは、肉親の情愛からくる介護というものを放棄するものでは決してありませんということでありますし、また、自助、共助、公助というようなものがお互いに歯車ががっちり合って、しかもそのはざまにもいろいろな問題があるだろうと思いますので、そういうものが両々相まって全体の構成をなすということが必要ではないかということを申し上げてきましたので、その点をひとつ御理解をいただきたいと思います。
  164. 寺前巖

    ○寺前委員 政府の今度の提案説明の中にも「介護休業制度は、労働者介護のために雇用中断することなく家族の一員としての役割を円滑に果たすことのできる制度であり、労働者はもとより企業にとっても有意義な制度として普及・定着が図られるべきもの」であると考えるというふうに、この条約の承認を受けて権利として保障する立場から積極的に協力してほしいんだ、その立場でこの法律をつくるんだということをあえて提起しているということを、私は、むしろ御理解をいただきたいと思います。  次に、時間の都合もございますので、中村さんにお尋ねをしたいと思います。  先ほど、実際上の経験から、三つの点と何かもう一つおっしゃいました。私も賛成です。特に、三カ月を一年にすべきじゃないか、やるのも断続的にとれるようにすべきであるし、一疾病に限ってはだめじゃないか、現実的にはそうなんだという御提起がありました。  そこで、そのときに私聞き損ないしたのか知りませんが、対象の範疇の問題について御説明がなかったように思いますので、この際に、どういう対象を選ばれることが非常に大事かという問題を、経験から御説明をいただきたいと思います。
  165. 中村征子

    ○中村征子君 この部分は譲るか譲らないかという部分の一番、新進党さんが出していられる対象は大変多いのですが、私も組織人ですので、組織でいろいろ話をした結果は、今出ている対象でやむを得ないのではないかと私は受けとめております。  ここもお隣の方が男性と女性意見の違いだとおっしゃったのですが、当初、ガイドラインが出る前、私ども労働組合で制度化するときに、私の場合だと嫁なんですが、嫁ぎ先の親を対象にしていて実母が対象になっていなかったということに私は気づきまして、これではおかしいのではないかということで、盛んに労働組合の幹部に対しても、嫁にもらった方の親は対象であって嫁に出した方の親が対象でないのは男性的発想ではないかということでかんかんがくがくやって、やっとあの部分が認められたことで、私は個人的にはまだいろいろな意見がありますけれども新進党さんがおっしゃるとおりが本当はいいのですけれども、ここに至っては、今の原案でとりあえずは仕方がないのではないかと個人的には思っております。
  166. 寺前巖

    ○寺前委員 その次に、その先の説明では、実施時期をもっと早めたらどうだという問題の提起がありました。私も、権利の問題というのは早く実行されるようにした方がいいと思います。  そこで、それを進めようということになったら、中小企業や零細企業の問題に直面します。中小企業にもいろいろあると思います。先ほど富田さんがおっしゃったように、熟練した技術者の問題とか、いろいろあるだろうと思う。それも企業の度合いによって全部違うだろうと思います。そういうもの全体を含めて前進させていくということを考えたときに、単純でないとおっしゃることは私も当然にそう思います。それだけに、このおくれた事態を克服していくためにはそれなりの公的な措置をしてやらなかったら前進しないだろう、財源問題もその一つであろうと思うわけです。  そこで、せっかく新進党さんが来年から実施しようという問題提起をされる。もしもこれを実行しようと思ったら、ここをこういうふうに手を打ってくれなかったらそれは不可能だとか、あえて提起する問題があるのかないのかということを富田さんから聞きたいと思いますし、また、中村さんからも、それをやろうと思ったらこの程度ではだめなんじゃないかという問題提起があろうかと思いますが、そこを率直に聞かせてほしいと思うのです。
  167. 中村征子

    ○中村征子君 私は、お隣の二人の御意見を聞いていまして、私どもは、ここに来るまでに何度も何度も経営者協会の皆さんともお話をしましたし、中小企業同友会の皆様ともお話をしましたが、顔が変わっただけで言っておられることはほとんど一緒なんですね。ですから、私はそういう専門家ではありませんので、どういうことを経営者の人が望んでいらっしゃるのかということを逆に経営者の側から聞いていただいたらどうでしょうか。  私どもが何度もお話を伺いに行くと、そんなことをすると雇用の場がなくなるんですよということを盛んにおっしゃって、私も子を持つ親ですから、本当に雇用の場がなくなってしまって岐阜に失業者がいっぱい出てきたらどうしようかと本音の部分では悩んだ部分もありますので、お隣のお二人の方に、国がどういうことをなさったらこれが早まるのかというのを逆に聞いていただきますようお願いいたします。
  168. 富田和夫

    ○富田和夫君 先ほどの権利の問題ですが、何度もお話ししているように、私は、権利などと言わない方がいいと言って佐藤先生のときにお話ししましたが、権利以上のものだと思っておるということであります。自然発生的なものであろうということで、それをかなえることが当たり前なんだという感じでおります。そういう意味で、一日も早い実現ということや、より長いことがそれはいいに決まっておるのですけれども、一年と言ってみても、三カ月という段階が緊急避難として一番適当であるとか、あるいはすぐにやるためには、何度も言いますけれども中小企業は特殊性があるので、それを習得するまでには時間がかかるとか、ILOでおくれておるということで早めるのがいいというなら、奨励するとかアワードを出すとかそういった激励程度のことで、法文化するならば今の政府案以外に妥協したくない。だから、期限も今の政府案ですし、休業期間も三カ月というのを、かたくななようですけれども主張したいと思います。
  169. 寺前巖

    ○寺前委員 もう時間が来ましたので。
  170. 笹山登生

    笹山座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  意見陳述の方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、両案の審査に資するところ極めて大なるものがあり、厚く御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして、心より感謝を申し上げ、御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後四時散会