○寺前
委員 これは、最近の
動向を私、この間ちょっと調べてきたのですよ。例えばシャープ、恐らくこれも
海外へどっと移転していくところだろうと思って調べてみたら、一九八五年に国内生産高は二百四十万台だった。今、七十万台に減っている。
海外生産は六十万台から三百七十五万台にふえている。だから、国内の生産比卒というのは一六%になってきている。
そうすると、そこでどういうことが行われてくるかというと、重点化部門強化といって、八尾工場の電子レンジ部門から天理市にある液晶部門への配置転換が行われる。
労働者にとっては配置転換はかなわぬかもしらないけれ
ども、会社全体がそうなっているんだからということで、老人介護をしなければならない者や子供の受験を控えた連中、そういう方々も配置転換は応じざるを得ないという問題になっている。そういう問題が大手
企業の中でも起こるわけです。
ところが、
海外へ移転されていくということになると、問題になってくるのは
下請ですよ、
下請がついていくわけにはいかないから。そこには
労働者もついているわけです、その
下請の
労働者が。そこをどうするのかということになってくると、結局仕事はなくなっていく
方向だ。しかも、この間松下で同じようなことを聞いてみたら、今度は
下請に出していた仕事を本社がとるようになってくる。だから、
下請に出す仕事を本社がとってしまって、
海外へ本拠地は移していく。そこの松下の
労働者にとっては仕事はなくなるということにならないかもしらないけれ
ども、配置転換で済むかもしらないけれ
ども、
下請の
企業や
労働者の方は本当にとられてしまう。これが実際に現地の置かれている状態からすると一番頭の痛い問題になってしまう。
だからそうなってくると、大手
企業が、
下請さん、おまえさんのところなあ、もう仕事を私のところ、本社の方でやらぬと、私のところの
労働者自身の問題があるからうまいこといかぬのや、おまえさんのところ独自で新しいものを研究しな、
労働者については、研修に行かせてもらえるし、
賃金も保障してもらえるんだから、こういう制度ができたんだから喜んでやれるやろ、私らそこまで心配してこの
法律をつくる一役を買うているんだ、こういう話になっている。そうすると
労働大臣、
労働移動についてもうどうにもなりません、お手上げですわという姿勢を直すことが、私は今日
労働省にとって必要になっているんじゃないだろうかというのをつくづく感ずるのです。
ところが、去年の十二月に出された
労働省の職業安定局の本を読んでおると、こういうことが書いてある。
製造業の「
海外シフトについての基本的
考え方」として、こう書いてあるんです。そもそも
企業が
経済の
グローバル化の中で国際競争力を維持するために
海外進出したり、
海外からの部品調達などを拡大していくことは、
市場メカニズムに基づいた行動であり、これを政策的に押しとどめることはできない。断定しちゃっているんです。もうしようないんやでと、あきらめの宣言を、この
労働省の職安局が出しておられる本というのか報告というのか知りませんが、その中に書いてある。あきらめてしまったら、もう
政府の役割はなくなってしまうのじゃないだろうか。
私は去年も臨時
国会で
大臣に申し上げましたけれ
ども、大
企業の
海外への生産の移転や国内の事業の縮小などの場合に事前に国や自治体に計画を提出させて、そして何しろ、あなた、大手
企業の今内部留保が国家
予算の三倍からに匹敵する内部留保を持っているわけでしょう。その資金を持って
海外へ出ていくわけでしょう。
海外へ行ったら労働
賃金はうんと安いからたくさんの人が雇えるんだというやり方でいくんだ。だから、そこをとめる役割を
考えるということを内閣として
考えなかったら、私は、基本的に
日本の
労働者の今日の事態を救うことにならないのではないか。
自由化の時代になかなか議員の御
質問にお答えするのは難しいとこの前おっしゃっていたけれ
ども、
労働省の担当部門はみんな、先ほど言ったように、押しとどめることはできない宣言をやっているんです。そんなときに内閣まで一緒になって、私
どもは大
企業のおやりになることはもうどうにもできませんとおっしゃったら、だれが
日本の中小
企業や
労働者を救うんだということになると思うので、これはぜひ研究してほしい、この点を私は所信に対する
質問として
大臣に改めてお聞きしたいと思うんです。