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1995-02-21 第132回国会 衆議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年二月二十一日(火曜日)     午前十時開議  出席分科員    主 査 伊藤 公介君       越智 伊平君    後藤田正晴君       赤羽 一嘉君    北側 一雄君       高木 陽介君    冬柴 鐵三君       佐藤 観樹君    兼務 西村 眞悟君 兼務 秋葉 忠利君    兼務 永井 孝信君 兼務 荒井  聰君    兼務 岩佐 恵美君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 井出 正一君         労 働 大 臣 浜本 万三君  出席政府委員         厚生省健康政策         局長      谷  修一君         厚生省生活衛生         局水道環境部長 藤原 正弘君         厚生省薬務局長 田中 健次君         厚生省社会・援         護局長     佐野 利昭君         労働大臣官房長 伊藤 庄平君         労働省労働基準         局長      廣見 和夫君         労働省婦人局長 松原 亘子君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君  分科員外出席者         大蔵大臣官房企         画官      藤岡  博君         大倉省主計局主         計官      丹呉 泰健君         文部省高等教育         局学生課長   北村 幸久君         労働大臣官房会         計課長     戸苅 利和君         労働省職業安定         局雇用保険課長 吉免 光顯君         労働省職業安定         業務調整課長  井原 勝介君         厚生委員会調査         室長      市川  喬君         労働委員会調査         室長      松原 重順君         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 分科員の異動 二月二十一日  辞任         補欠選任   工藤堅太郎君     高木 陽介君   冬柴 鐵三君     北側 一雄君 同日  辞任         補欠選任   北側 一雄君     赤羽 一嘉君   高木 陽介君     工藤堅太郎君 同日  辞任         補欠選任   赤羽 一嘉君     冬柴 鐵三君 同日  第二分科員荒井聰君、第五分科員西村眞悟君、  永井孝信君、岩佐恵美君及び第六分科員秋葉忠  利君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成七年度一般会計予算  平成七年度特別会計予算  平成七年度政府関係機関予算  (厚生省及び労働省所管)      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤主査 これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  平成七年度一般会計予算平成七年度特別会計予算及び平成七年度政府関係機関予算厚生省所管について、前回に引き続き質疑を行います。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。高木陽介君。
  3. 高木陽介

    高木(陽)分科員 新進党の高木陽介でございます。  高齢化社会の問題のことについてちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、これは厚生省主管で、高齢化社会対応して福祉医療問題というのを積極的に取り組まれていることと思います。  そのような中で、現実問題として、福祉医療施設だとかまたそのサービスみたいな部分は各地方自治体が役割を大部分担っていくというのが現実だと思うのですね。そういった中で、やはり財政的な問題として、それぞれの地方自治体、裕福なところというのはほとんどないので、かなり負担となっているのが現状だということ、これはかなり認識はされていると思うのですけれども、そのことについてまずお伺いしていきたいと思います。  まず、厚生省としては、それぞれの個別のことはいっぱいあると思うのですけれども医療問題、福祉問題に対しての地方財政負担についての認識みたいな部分をちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  4. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 地域医療ということでお答えをさせていただきますが、地域医療充実あるいは確保を図るための体制整備ということについては、基本的には地方自治体において責任を持って実施をしていただくということだと思っております。  しかしながら、国といたしましても、いわゆる政策医療と申しますか例えば救急医療ですとか、あるいは僻地医療対策、そういうことを確保推進をするという観点から、こういったようなものに対する医療施設、こういう政策医療を担います医療施設に対しましては、施設整備あるいは設備整備、また必要によりまして運営費補助といったようなことを実施をいたしてきております。こういったようなことで、国・地方一体となって地域医療確保ということに推進をしていきたいというふうに考えております。  また、地域医療確保という全体のことに関しましては、医療法の中で地域医療計画というものを設定をいたしまして、それぞれの地方自治体において医療圏というものを設定をしていただいて、その医療圏ごと必要病床数あるいは現在の病床数、また将来の計画というようなものをつくっていただく、そういうことによって地域医療、それぞれの地域における医療施設機能分担あるいは連携というようなものを図ってまいっているところでございます。
  5. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 社会福祉関係の国と地方財政状況という関係で御質問があったかと思うのですが、いささか、先生の御質問とは私ども認識は多少ちょっと違った面があろうかと思います。  といいますのは、今のところ、たまたま今回のバブルがはじけた状態で、国も地方も通じて大変厳しい財政状況になっておりますが、ただ、トータルで見ますと、国と地方財政状況、どちらが、比較的、相対的にでございますけれどもいいかというと、実は地方の方にまだ多少ゆとりがあって、国の方がより厳しい状態にあったというのが実態ではなかろうか、こう思うわけでございます。  地方財源配分の方は、地方自主財源もございますが、地方交付税での国税からの裏打ちもございます。特に地方交付税につきましては、この配分割合がやはり国と地方での財政事情に応じた配分割合をいたしておるものですから、特に住民に最も身近な場所で事業を行っていただく地方自治体事業量に応じた地方財政措置ということもやっていただいておるところでございますので、そういう面からいきますと、確かに別にゆとりがあるわけではございませんけれども、今国でやっております医療保険なり年金なりの財源負担伸び率に比べますと、地方におきます財源負担の方が相対的に見るとまだ余裕があるという形がいわゆるマクロの現状ではなかろうかと思います。  ただ、そうは言いながらも、個別自治体におきましてはいろいろとまた問題があろうかとは思いますけれども、マクロ的にはそんな感じを持っております。
  6. 高木陽介

    高木(陽)分科員 今それぞれ御説明があったのですけれども、特に医療問題についてこれからちょっとお伺いしていきたいのです。  まず、全般的な充実はもちろんなんですけれども、特に今大きな問題となっているのは、救急医療救命救急医療というか、いろいろと、脳出血ですか、脳温血等々で、または心臓病等々で、すぐ搬送して、そこで一分一秒を争って、助かった、助からなかった、こういう問題がやはりどこの地域でもあると思うのです。  そこで、先ほどちょっとおっしゃられた医療圏の問題で、そのエリアというのが、これは私、地元東京多摩地域なんですけれども東京都の場合、南多摩医療圏というのが約百二十万人ぐらいで設定されているんですね。これは各自治体の問題でもあると思うのですけれども、百二十万人というとかなり大きいし、ただその百二十万人に救命救急センター二つ設置されている。二十三区内、都区部、これはかなりエリアは狭いのですけれども人口があるということで、そこでもってすぐに到達できる、こういった問題がございます。  これは、ほかの府県、いわゆる東北地方だとか、または山間部だとかになりますとかなり現実は厳しいのですけれども、ただ、東京首都圏の場合、人口が本当に肥大化していく中で、特に多摩地域というのがかなり人口がどんどん急増している。その中での、人口的には百二十万人の医療圏の中に二つ救命救急センターがあるのですけれども、行くまでに時間がかかるという、距離がありますから、そういった中で、医療法三十条ですかに、医療計画を立てて、また各自治体医療圏等々でやりますけれども、そこら辺の設置基準、特に救命救急センター設置基準についてお聞かせ願えればと思います。
  7. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 救急医療対策全般につきましては、私ども厚生省といたしましては、昭和五十二年から、いわゆる初期救急、それから二次救急、それで今先生お触れになりました三次救急、具体的には救命救急センター整備というようなことについて計画的な整備ということをやってきております。  この中で、救命救急センターというのは、初期救急並びに二次救急医療施設では対応できない重篤な患者を二十四時間体制医療を行っていこうというものでございますが、従来、この救命救急センター整備考え方としては、原則として都道府県一カ所以上、おおむね人口百万人に一カ所というようなことで整備をしてまいりました。  ただ、人口急増地域あるいはそのそれぞれの地域事情によって、それだけでは不十分なのではないかというようなことから、平成四年度から、おおむね人口三十万以上の二次医療圏、しかもそれが複数の二次医療圏人口三十万人以上の地域というものを含む、そういったような二次医療圏での設置ということにつきましても、それぞれの地域人口の分布ですとかあるいは今お触れになりましたような搬送の問題、距離問題等対象といたしまして、国庫補助対象にしていこうというようなことで整備を進めることにいたしております。  したがいまして、今後とも、それぞれの具体的な地域事情等を勘案して、そういったような考え方で、この三次の救命救急センター整備ということはやっていきたいと思っております。
  8. 高木陽介

    高木(陽)分科員 今おっしゃられたように、平成四年からちょっと見直しをし始めたということで、やはりどうしても、お役所的な感覚でいいますと、百万人だとかまたは三十万人だとか、一つの数字をぱっと当てはめると、またその自治体の方も、それを受けて、それをある意味でしゃくし定規にとらえるという感覚があると思うのですね。  そういった中で、やはり大切なのは、例えば三次救急、いわゆる救命救急センターに運ばなければいけない人が出たときに、いかに早く行くかということで、百万人がいいのか三十万人がいいのか、いろいろと統計的にも調べられているでしょうし、それ以上に大切なのは、そこからどれだけ早く行って、どれだけ手厚い、または適切な医療ができるかということで、今後も柔軟に考えていただきたいというふうにお願い申し上げたいと思います。  この問題はこれで結構なのですけれども、もう一つ、一番最初に申し上げた財政的な問題で、地方の方がまだ余裕があるというおっしゃられ方もちょっとありました。そんな中でも、現場を回ってみますと、なかなか病院がない、またはそういう大きな病院がない、いろいろな御指摘があります。また、それぞれの自治体の市長さんやそういう方々に聞いても、やはり財政的な無理があるというのが現実の声なのです。  そういった中で、例えば用地取得されていれば大学病院を誘致してくるだとかいろいろな角度があるのですけれども、特に首都圏大都市圏においては土地がやはり高いわけですね。各自治体で何か物をつくる、何かそういう施設充実させていくというときに一番ネックとなっているのが土地の問題で、土地用地買収だけでもかなり負担がかかって、それができないからその先の計画が立てられない、こういった問題があります。  私の今いる八王子は人口が五十万もあるのですね。ところが、総合病院というか救命救急センター一つしかないのです。山手線が入ってしまうというかなり広い市なので、なるべく地域的に分けてつくりたいと思っておりますが、用地買収でさえできない。今、計画としては五百ヘクタールの土地を何とかしたいのですけれども、買えるのはまだ〇・六ヘクタールしかない、こういう現実が実際問題としてあります。  そこで、これは今すぐにというのはなかなか無理かもしれませんけれども、例えば医療施設救命救急センターを初めとする本当に大きな施設をつくる上において、その土地取得まで、例えば厚生省または国というものがそれに援助財政的支援をするといったこと、これを何とかならないものかということでちょっとお伺いをしたいと思いますが、どうでしょう。
  9. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 先ほど冒頭に申し上げましたように、地域医療確保していくという観点から、基本的には自治体においていろいろやっていただいているわけでございます。一方、国として、政策医療を担う医療施設ということで、具体的には、救急医療施設あるいは僻地等医療施設に対する施設整備補助金設備整備、また運営費補助ということをやってきております。  こういったような政策医療に対する補助考え方でございますが、やはりそれぞれの医療機関が持っている特定の機能ということに着目して、そのために直接必要な部分に限って行われるということでございまして、その土地取得経費ということについては、私どもとしては、やはり国が補助するということはなかなかなじまないのではないかというふうに考えております。  ただ、今先生おっしゃいました具体的なといいますか地元でお考えになっている例、これが公立病院の場合ですと、それぞれの当該団体財政状況等を勘案して、起債の対象として自治省の方でお考えをいただいていると承知いたしております。
  10. 高木陽介

    高木(陽)分科員 これは、財政的な問題になってきますと、では厚生省お金を持っているのかというと持っていないわけですから、本当になかなか難しい問題なのです。  ただ、これから高齢化社会という問題、もう本当に直面している、実際問題として始まっていますから、きょうは医療だけのことでずっとお話し申し上げましたけれども福祉の問題、いわゆる老人の介護の問題等々も含めてやはり切実な問題だと思うのですね。  その中で、昨年、私どもが旧連立与党のときにも、国民福祉税だとか税制の問題でいろいろ話し合いをしていった。そしてまた、二十一世紀の福祉はどうあるのかをずっと話し合っているときに言ってきたことが、例えば老人ホーム一つ建てましょう、これは福祉施設ですね。でも、建てたとしても、そこに下水道がない、または水道が通っていない、電気が通っていない。ではそれを充実させなければいけない。それは福祉なのかどうなのか。こうなってくると、本当に難しい問題だなというのに直面しました。でも、そういうことを実際トータル考えていかなければいけない。また、それは厚生省リーダーシップをとってやっていただかないと、どうしても今までの傾向としてそういう施設だけあれば何とかなるみたいな発想もありますけれども、その施設さえできない。  土地の問題やら何やら含めて、トータル福祉、また周辺の整備、こういうことも、現実お金が今ないですから今すぐにというのはなかなか無理なのですけれども、例えばリーダーシップをとったり音頭をとったり、またそういう問題も含めて、では各省庁を含めて検討をしなければいけないのじゃないかというところでやっていただきたいなと思うのですけれども、その辺について、できれば大臣、何か御意見があれば。
  11. 井出正一

    井出国務大臣 医療機関につきましては、ただいま局長から御答弁申し上げたとおりであります。  高齢社会、まさに一四%になったわけですから、高齢化じゃなくて高齢社会だと思います。この四月からスタートさせていただく新ゴールドプランもまさにそれをにらんだものでございまして、先生方から大変なお力添えをちょうだいしたわけでございます。  ただ、これは厚生省だけじゃなくて、やはりほかの省庁とも連絡をとってやらなければならない分野もたくさんございます。そういった意味では、福祉町づくりといった面では、例えば建設省とか運輸省とも連絡連携をきちっととって進めていかなければならない課題だ、かように考えております。
  12. 高木陽介

    高木(陽)分科員 医療関係の問題はこれぐらいにして、次に震災関係でちょっとお話をお伺いしたいと思います。というのは、これは今まで予算委員会または厚生委員会一般質問等々でも出たかもしれませんが、再度確認をさせていただきたいので、質問したいと思います。  今回の阪神大震災のときに、世界各国からいろいろな緊急支援の申し入れというのがあったと思います。その対応について、この一カ月の間、いろいろな形でマスコミ等々で、政府、それぞれの役所の対応について批判も多々あったと思います。それは、それぞれ各省庁、また厚生省にとってもいろいろな言い分もあると思いますので、そこら辺も含めてお伺いしたいと思います。  その一つに、医薬品の問題。これはアメリケアーズですか、どんと薬を提供しましょう。ところが、それが日本では承認をしていない薬というのですか、そういった中でそれをどういうふうに扱って、そしてまたどのようになったのかということ、そこら辺のところについてちょっとお伺いできればというので、よろしくお願いいたします。
  13. 田中健次

    田中(健)政府委員 災害時におきます医薬品の問題でございます。  一つは、外国政府から医薬品援助申し出がございました。これにつきましては、私どももその御好意に非常に感謝をしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、災害発生の当初から、国内で必要な医薬品確保できる、こういう状況であると判断をいたしまして、外国政府からの援助につきましては、当面は海外からの援助は必要ではなく、今後必要となった場合に御協力をお願いするという旨を外務省を通じまして在外公館に伝達をして、諸外国政府対応していただいたということでございます。  今の先生お話は、そのほかに海外NGO等からの問題でございます。そうしたNGOからの援助につきましては、被災地自治体がみずからこれを受け入れたいというふうに決めた場合には、そうした物資につきましては、これは薬事法上はいろいろ問題はございますが、薬事法承認をされていない医薬品でございましても、緊急災害時の特例ということで直ちに受け入れを認めまして、現場医師判断によって使用できるというふうに取り扱ったところでございます。  実態といたしましては、我が国の国産医薬品もございますので、現場医師判断でどう使うかということでございましたけれども、やはり説明文書外国語であるとかいろいろ問題がございますから、使いなれた国産医薬品を中心に現場医師は使っていったという実態はあるわけでございますが、私どもとしてはスムーズに受け入れは行ったというふうに考えております。
  14. 高木陽介

    高木(陽)分科員 今御説明いただいたように、やはり現場対応していくという形になっていくと思うのですね。そんな中で、まず、外国の薬で使ったことがない薬だと、これはある医師の方にも聞いたのですけれども、やはり経験則からかなり薬の処方というのをしていくと思うのですけれども、そういった中で、急に来てこれは風邪薬だと言われながらも、またこれは解熱剤だと言われながらも、ではそれを、はい、そうですかと使えるかというと、なかなか使えないというのが現状だと思うのですね。こうなってくると、その震災のときに医師をどれだけうまい投入をするのか。  災害の場合は、まず第一義は自治体がやっていくわけなんですけれども、そういった中で、今回の震災は余りにも規模がでかくて、いまだに避難所でずっと生活をされている、またはその後の精神的な部分の病気になっていく方もいらっしゃる、こういった現状が今あると思うのです。特に、今回の震災を機に、各自治体、まあ東京も含めて、本当にこんなになったらどうなるんだろうということでいろいろな対応策準備を、防災対策をまた再検討していると思うのですね。そこで、やはり一番大切なのは、この医療の問題、災害医療、または薬の問題も含めて今回の震災でしっかり検証しないといけないと思うのです、ああ、これは必要なんだと。  今まで東海大地震が起きると言われて、また首都圏関東直下型が起きると言われて、関東近県、また静岡等々はいろいろな準備をしていたのでしょうけれども、やはりそれはあくまでも想定で、過去、七十二年前の関東大震災を意識しながらずっとやってきた。ところが、現代の都市化の中での直下型というのはもう想像以上のものがあったというのが今回の出来事だったと思うのですよ。  そんな中での医療、または医薬品等々の、こういうのが必要でこういうのが必要じゃない、必要じゃないというのはないと思うのですけれども、こういうのはなるべく備蓄しておいた方がいいだとか、またはこういうところに医療体制を確立させた方がいいだとかそういったのを、厚生省としての検証みたいなものを今やっておられるのかまた今後やっていくのか、そこら辺のところをお伺いできればと思います。
  15. 谷修一

    ○谷(修)政府委員 今回の地震発生に際しましては、基本的には、厚生省では、災害対策基本法に基づいて策定をされました厚生省防災業務計画に基づきまして、被災自治体との連携あるいは迅速な情報収集、また必要に応じて医師を初めとする医療スタッフの他の都道府県からの派遣、それから医薬品確保ということに努めたつもりでございます。ただ、被災県、具体的には兵庫県あるいは神戸市が壊滅的な被害を受けた、そのほかにも輸送、通信手段、またライフライン等が大きな打撃を受けたということで、当初迅速な情報収集を行うことが非常に困難であったという認識をしております。  今回の地震被害に際しまして、医療の問題につきましては、いかに迅速な情報収集を図るかそれから他の地方自治体を含めました医療関係者の応援の体制、それから医薬品確保あるいは小なり電気といったようなものの医療施設における確保といったようなことについて今後検討していかなければいけないと思っておりまして、具体的には、集団災害時におきます救急医療あるいは救急搬送体制のあり方といったような研究班において既に検討を始めておりまして、今回の事例、それから外国事例も参考にしながら、今回の災害を振り返って、専門的あるいは科学的な観点から検討してまいりたい。その検討結果につきましては、もちろん地元自治体の御意見も聞きながら各県に示していきたいと思っております。
  16. 高木陽介

    高木(陽)分科員 今検討されているということで、最後のお願いというか、本当は各自治体がしっかり防災計画を立ててやるべきなんですけれども、同じことを神戸に行って調べて四十七都道府県が行ったり来たり、それもばからしいですから、こういうのを厚生省がしっかりとリーダーシップをとってやっていただければありがたいなと思います。  時間も大分なくなってきて、これはちょっと震災関連からもう一つ労働省にだけ聞きたいと思うのです。  きのうの毎日新聞の朝刊に、ちょっと衝撃的な形でばんと、まず一面の方が「阪神大震災 失・休業五、六万人にも」これは言われていた部分かもしれないのですけれども、「中小零細震災失業者」  「職安で相手にされない」」だとか「雇用保険の給付求め集会 悲痛な叫び次々」、復興を大分いろいろな形でやっていく中で、これからはやはりこういう雇用の問題がかなり注目というか、大切な問題だと思うのです。  そんな中で、雇用保険加入者の失業給付期間の延長の取り組みについてちょっとお伺いできればと思います。
  17. 吉免光顯

    吉免説明員 雇用保険の失業給付についてでございますが、まず災害救助法の適用地域にある事業所で雇用された被保険者、こういう人たちにつきましては、離職前の事業主にまた再雇用される、そういう予約がありましても、失業給付の基本手当を支給することにいたしております。それから、激甚法の適用地域事業所に雇用されていた人たち、この人たちは休業によって賃金がもらえないという場合もございます。そういう場合は、離職していなくても離職とみなして基本手当を支給することにいたしております。  それからさらに、先生御指摘の雇用保険の手続をしていない人たちについてでございますが、この人たちにつきましても、御本人の請求によりまして、二年間さかのぼって雇用保険の資格確認をするということで考えております。そういったことで、確認されまして一定の要件がございますれば、失業給付の受給は可能にするということにいたしております。確認の際に、こういった時期でございますから、本来ですといろいろな書類をお願いするということになるわけでございますけれども被災に伴ってあるいは焼けてしまって書類が全くないというようなこともあるかと思います。そういう場合にも、何らかの形で確認をしながら弾力的に事務を行っていきたいと思っております。  いずれにしましても、昨日報道もございましたけれども事業主が雇用保険の手続を怠っていたという場合でも、安定所の方へ来ていただきましたら、十分に対応をさせていただきたいと考えております。
  18. 高木陽介

    高木(陽)分科員 今遡及対象にもなっていくというようなお話もちょっとあったのですけれども、この問題、特に雇用全体の問題として、今回、復興対策の方として、法的な援助または法的な対策、これを計画、予定されているとちょっと聞いているのです。そこら辺の、今後の現地の被災者の雇用についてどのような対応策考えているのかちょっとそれをお伺いできればと思います。
  19. 井原勝介

    ○井原説明員 現地の雇用対策でございますが、今御説明申しましたように、既に失業給付の特例措置のほか雇用の維持を図ろうとする事業主の方々への雇用調整助成金の支給等の特例的な措置を講じて、現在雇用の安定を図っているところでございます。さらに、やむを得ず離職を余儀なくされた方々につきましては、地元における優先的な雇用機会の確保を図りながら、全国の公共職業安定機関のネットワークを活用しまして、広域的に職業紹介を実施する等の対策を講じているところでございます。  さらに、先生御指摘の今後の対策といたしまして、特に復興事業実施されることによりまして相当の雇用の機会が見込まれるわけでございまして、こういった公共事業に一定の割合で被災者を雇用していただくという仕組みについても現在検討しているところでございます。法的な措置も含めて早急に対策を講ずべく検討をしているところでございます。
  20. 高木陽介

    高木(陽)分科員 もう時間が参りましたので、本当に震災対応策、復興対策というのを、これは厚生省労働省も含めて、きめ細かくこれからもお願いを申し上げたい。それを申し上げて終了したいと思います。  ありがとうございました。
  21. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて高木陽介君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  22. 北側一雄

    北側分科員 新進党の北側一雄でございます。  厚生大臣におかれましては、連日分科会でございまして、お疲れと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。  私、きょうは国連障害者の十年記念施設の建設につきまして御質問をさしていただきたいというふうに思っております。  大臣も御存じのように、国連障害者の十年、これが国連におきまして、一九八三年から九二年、三年前まで十年という期間がございました。その二年前には、一九八一年でございますが、国際障害者年というのがございまして、我が国のこうした国連障害者の十年を受けまして、障害者福祉推進厚生省としてもさまざまな形で取り組んでこられました。そこで、この一環として国連障害者の十年記念事業というのをやろうということで、その中の重要な一つとして国連障害者の十年記念施設の建設という事業がございます。  それで、まずこの記念施設の建設につきまして、これまでの経過、どういう経過でこの記念施設を建設しょうとなったのかそれが現在どのような状況になっておるのか、まずその点の御答弁をお願いしたいと思います。
  23. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 この問題につきましては、もう先生も十分御承知いただいているところと思いますが、昭和六十年度に国連障害者の十年の事業を記念して、何とかその記念となるような施設をつくってもらえないかというような御要請が、各種障害者の団体の方々からの御要請がございました。  それで、それを受けまして、厚生省といたしましても、やはりこれほどの長期間をかけた事業でございますので、何らかの記念事業を行うべきではなかろうかということで検討に着手をいたしたわけでございますが、その前にも、早速、この事業を、では自分のところで取り組みたいということで、例えば兵庫県でありますとかあるいは愛知県などから自分のところへの誘致運動もございました。そういうような形を踏まえまして、厚生省といたしましては、すべての人が明るく暮らせる社会づくり懇談会というのをつくりまして、そこでこのような記念事業実施の可否などにつきまして検討をしたわけでございます。  平成二年度には基本構想を一応つくろうということで予算化をいたしまして、平成二年度に基本構想の検討費をつけていただきました。また、平成二年にはさらに具体的にいろいろな、全国といいましても、ほとんど近畿圏を中心としてでございますが、大体八府県市ぐらいから御要請があったわけでございますが、その中でも特に御熱心なお話でございました大阪府の方に重点を移しまして、大体大阪府内にでもつくれないかということで、平成二年度からさらに具体的な場所の選定等も含めまして検討を進めておりまして、平成三年度、四年度に基本計画の予算をつけて検討を進めてきた、こういう経緯がございます。  ただ、実際問題といたしまして、これを当初は、例えば補助事業でやるのか、あるいは国の事業でやるのか、こういうような意見もあったわけでございますけれども、大阪府の方の御要望としましては、やはり国の事業としてやっていただきたい、こういう御要請もあったものですから、国の事業としてやるに当たって、それが将来に運営面や何かに不安があっては問題があるというようなことで、その運営面や何かにつきましては検討を進めてきた、こういう状況でございまして、さらに平成七年度、来年度につきましては、そういう点についてさらに慎重に検討を進めたい、こう考えておるところでございます。
  24. 北側一雄

    北側分科員 今御答弁があったわけでございますが、今もお話がございました平成二年八月に、これは厚生大臣の私的諮問機関ですかすべての人が明るく暮らせる社会づくり懇談会が次のような報告を厚生大臣にしておるわけでございます。それで、その内容というのは、このようにその報告では言っております。  「全国のモデルとなる「まちづくり」を地方公共団体の協力を得て国連・障害者の十年の記念事業として大規模に展開する。このモデル的まちづくりの象徴として、また、国連・障害者の十年を記念する事業として、すべての人が明るく暮らせる社会のシンボル的な意味を持つ、記念施設を建設する。」というふうに、平成二年八月に報告がなされております。  さらに、平成三年七月に、これは中央心身障害者対策協議会が総理大臣意見具申をしておりまして、その内容は、これは平成三年七月三十一日でございますが、「「国連・障害者の十年」の最終年に当たって取り組むべき重点施策について」ということで、その重点政策の一つの重要な項目として、国連障害者の十年の終期に当たっての記念事業実施、記念施設についての計画推進とモデル的町づくり整備促進というふうに総理大臣の方に意見具申をしているわけでございます。  こうした経過を踏まえて、毎年毎年着実に進めてこられておるわけでしょうけれども、ここで一つ確認をさせていただきたいのですが、今私が言っております国連障害者の十年記念施設、この記念施設は大阪府堺市泉北ニュータウンの泉ケ丘地区に建設をするということで決定しているというふうに理解してよろしいわけでしょうか。
  25. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 はい、そのように理解をいたしております。
  26. 北側一雄

    北側分科員 それではもう一度、改めて厚生省に、この記念施設建設の意義、それから目的、これについて現在どのようにお考えになっておられるのか、もう一度確認をさせていただきたいと思います。
  27. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 国際障害者年あるいはそれに続きます国連障害者の十年のときの一番基本的な考え方、テーマといいますのは、「完全参加と平等」ということでございまして、障害者の方々が地域社会の中に一般の方々と同じような形で生活をしていけるようなこういうような社会づくりをするというのが、この国際障害者年あるいはそれに引き続く国連障害者の十年の一番のメーンテーマであったと思います。  そのような基本理念を実現するためのモデルとなるような施設づくりということで、基本的には、大きな、市ぐるみというのはなかなか難しいかもしれませんが、典型的なある地域地域社会を想定をいたしまして、そこの地域社会をそういうモデル地区、モデルゾーンとして整備をする、そしてその中の一番メーンとなるような施設としての基準施設を位置づける、こういう形で整備をしていきたいと考えておるところでございます。
  28. 北側一雄

    北側分科員 これは私の地元なんでございますが、今御答弁ございましたように、大臣、一泉北ニュータウンという日本で一番、最大のニュータウンがあるのです。その中の泉ケ丘というのが中心でございまして、この泉ケ丘、後でちょっと図面をお示ししますが、この泉ケ丘周辺の全体で四十五ヘクタール、その中に今問題にしております記念施設計画もあるわけなんですが、その四十五ヘクタールを全国のモデル的な福祉町づくりをしようということで、面的整備をしようということで、大阪府、堺市が非常に力を入れて、既にほかのところは実施もどんどんされておるという状況でございます。  この点はまた後でお話しさせていただきますが、ちょっと私の調べたところによりますと、これまで厚生省としては、毎年毎年の概算要求の際に、例えば平成四年度予算の際に、まず概算要求としては四億余りをこの記念事業にされておるわけですね、四億余りまず、その点ちょっといかがでしょうか。
  29. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 ちょっと手元に資料を持ってこなかったので、概算要求の方につきましては今はっきりは覚えてはおりませんけれども、たしかそのとおりだったと思います。
  30. 北側一雄

    北側分科員 じゃ、私の方から言いますけれども、こういうことなんです。  これは、平成三年にほぼ、大阪府でやろう、堺市のこの泉北ニュータウンの泉ケ丘でやろうということに決まったのです、平成三年に。平成四年度予算に早速厚生省は、設計費を含めた予算を概算要求したわけなんですね、四億余りのお金を。それが、見事に空振りといいますか、認められなかったわけでございます。これはいろいろ理由があると思うのです。理由があると思うのですが、五年、六年と、これは着実にやらないといけないということになったのでしょうか、概算要求も少し控えられまして、運営計画策定検討費とか、それから管理運営検討費とかそういう形で、むしろ着実にやっていこうという形でなされたわけですね。そして、準備を整えて、平成七年度予算の概算要求では、記念施設整備費、これは設計費が中心でございますけれども、これで約三億の概算要求をしたわけなんです。  というふうに、厚生省としては、これは何としてもやろうとされておられたと思います。部局としては、担当当局としてはそう考えておられたので、それで概算要求をなされた、平成七年度。この結果はいかがだったんでしょうか。
  31. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 まさしく、私どもといたしましては、やはり国際障害者年が終わりまして余りにも長い期間たってからつくるというのもちょっとピンぼけの嫌いもありますから、できるだけ早くつくっていきたい、こういう考え方も持っておりました。  ただ、そうは言いながらも、逆に今度は、できたものにつきまして本当に後の管理運営が十分できるかどうか、こちらの方の自信も実は余りない面もあったわけでございます、正直に言いまして。そういう点がありましたものですから、その点で、先ほどお話ございましたように、平成四年度の概算要求で設計費をお願い申し上げましたけれども、財政当局といろいろと後の管理運営の関係を詰めましたときに、その点でもう少し着実に、後顧に憂いのないような形で詰めていこうではないかということになりまして、基本計画策定、それから運営計画の策定というような形で、着実に事務を詰めてまいった経過がございます。  しかしながら、実を言いますと、先生も御承知のように、最初に構想を考えた段階では、やはりかなり日本経済が非常に右肩上がりのいわゆるバブルの時期でございまして、それから急激に経済の状態も変わってきておりまして、そういうような社会情勢の変動を踏まえて、当初計画と同じ形で果たしてこれからの運営が十分やっていけるのかどうか。特に今、御承知いただいておりますように、行政改革というような問題も片一方にあるわけでございますので、余り後々にいろいろな財政的なツケだけを残すような形になっては困るというようなこともございまして、そういうことで、これからはそういう面を十分踏まえた形で、着実な施設の建設計画をやっていきたい、こういう状況で、平成七年度はさらにもう一歩、本当に最後のため押しの検討を行いたい、こう考えておるところでございます。
  32. 北側一雄

    北側分科員 そういう自信のない御答弁をされると困るのですけれども、そもそもこれは、先ほど申し上げたように、九二年の段階で国連障害者の十年が終わるわけですね、九二年で。それを受けて、九二年の最終年に、平成四年ですが、厚生省としては大きく概算要求をやるぞといって四億余りの概算要求をなされた。それがだめだった。そして二年間、平成五年、六年とずっと下地をつくってこられたわけでしょう。  管理運営に自信がないとかおっしゃっていますけれども、そんなのは最初の計画時点からわかっている話でして、この二年、三年の余裕があったわけですから、そこでじっくり、どうするのかということは当然詰めてこられたはずのものでございまして、それを厚生省の担当の幹部の方が、そういう自信のない言い方ではなくて、もっと自信を持ってやっていただきたい。というのは、大阪府や堺市はこれは当然来るものだというふうに物すごい期待をしておるわけなんですね、よく御存じだと思いますけれども。  ちょっと大臣に、この現地の図面をちょっと見ていただきたいと思いますけれども、委員長、これを示してよろしいですか。
  33. 伊藤公介

    伊藤主査 どうぞ。
  34. 北側一雄

    北側分科員 これは一枚目が泉北ニュータウンの泉ケ丘駅周辺の略図でございまして、この「国連・障害者の十年」記念施設と、丸で囲んでございます。ここに、今問題になっております記念施設を建築する計画があるわけでございます、ここだけで約二万平米でしたか。  それから、この「大阪こどもの城」と隣に書いてございますでしょう。これは今(仮称)になっておりますけれども、こちらの方はどういう内容かといいますと、わかりやすく言いますと、子供が多彩な遊びだとか自然との豊かな触れ合いを通じて、子供の健全育成、また文化の活性化を図っていこうという施設なんです。こちらの方は、これは大阪府の計画ではございますけれども相当進んでおりまして、内容的には、おもちゃ体験館、おもちゃの博物館とかあそび体験館、それから冒険遊び場とか、子供が行きたくなるような、そういう施設をつくる。そのほか、さまざまなことをこのこどもの城の方は考えて、予定どおり進んでおるわけなんです。この平成七年度からは、既に設計も終わりまして、こちらの方はもう工事に着手をしておりまして、こちらの方もまた厚生省の、これは児童家庭局の方にいろいろお願いしなければいけないことがあるわけでございますが、このこどもの城の方は相当進んでいるわけなんですね。  また、この国連障害者の十年記念施設と大阪こどもの城を中心にして、この周辺全体、これが四十五ヘクタール、ここを福祉町づくりのモデル的な町にしていこうということで、さまざまな形で全面的整備を府や市がやっているわけでございます。  例えば泉ケ丘、これは駅があるわけでございます。細かな話でございますけれども、この駅の中の券売機を障害者の方も使いやすいように改造するとか改札口の幅を車いすの人が通りやすいような形にするとか、こういうこともやったのですね。そのほか、この周辺の道路については幅の広い歩道にしていこうだとかそれからさまざまな建築物がございますけれども、その建築物の出入り口の段差を解消してスロープをつくるとか、階段の安全確保を図っていくとかこういう本当に面的な整備をきめ細かく進めてきたし、これからも進めていこうということで、本当に福祉町づくりのモデル都市にしていこうというふうに、府も市も、お金と時間と労力をかけて今やっておるわけなのです。地元的には、その中のメーンがこの国連障害者の十年記念施設になっておりまして、非常に期待をしておるわけなのです。平成三年以来この四年間、いつ来るのかな、いつ来るのかなとずっと待ち望んでいるのが地元状況でございます。  ところが、今御答弁ございましたように、経済情勢が変化したということもあるでしょう。あるでしょうけれども、この国の施設の方がなかなか進まないというのが現実でございます。そして、今回の七年度予算の概算要求でも、地元大阪、堺は非常に期待をしておったのです。ところがだめだったということで、今皆さん、がっくりきておるのが実情でございます。  このこどもの城と併設しているというのも私は非常にいいなと思うのですね。障害者の方の記念施設を、何か障害者の方だけの施設というのではだめなわけですから、そういう意味では、健常者の方も一緒に交流できるような場、まさしくノーマライゼーションの理念を非常にシンボル的にあらわした計画だなと私は思うのですけれども、この国連障害者の十年の記念施設については何としても実現していただきたい。また、私自身も財政当局の方には強く求めてまいりたいと思っておるのですが、厚生省としても自信を持って取り組んでいただきたいと思うわけでございます。  もう一つちょっと言っておきますと、今お渡ししました一枚目のものですが、民間も協力しているのですね。例えばどういうことかといいますと、国連障害者の十年の記念施設の上に高島屋というのがございますでしょう。その横にパンジョというのがございますよね。高島屋とかパンジョはやはりそういうモデル地区に入っておりますので、建物自体を障害者の方にも利用しやすいようにしようということで増築工事だとか改築工事をしている。民間も協力してやっているわけなのです。例えば、パンジョの場合どういうことをしているかといいますと、車いす用トイレをつくるとか、段差なし通路にするとか、障害者用のエレベーターをつくるとか、これは建設省から低利融資をいただいて、さまざまな増築工事を今やっております。こういうふうに、単に府や市だけが盛り上がっているのではなくて、民間も協力してやっておるところでございます。  この施設につきましては、もう何としても実現していただきたい、建設をしていただきたい。残念ながら七年度予算では設計費について認められなかったわけでございますが、ぜひ、平成八年度予算といってもこれはことしの夏から始まるわけでございますので、ぜひここで大臣の強い決意をお伺いしたいと思います。
  35. 井出正一

    井出国務大臣 実は私は、昨年の九月の初めでしたが、大阪に行く機会がございまして、知事さんとお目にかかってこの話をお聞きしまして、概算要求をした直後だったものですから、知事さんからも大変喜ばれました。そして、このこどもの城の構想もそのときお聞きしまして、私も少し図に乗ったといいましょうか、こどもの城の方は、子供さん、最近もうはだしで歩かなくなってしまったから、ここは全部はだしで入ったり跳びはねたりするようにしたらいかがですかなどというお話も実はしてきたのでありますが、御案内のような予算編成になりまして、私も内心じくじたるものがあったのです。  ついこの週末、兵庫、大阪の被災地をお見舞いがてら視察をして、最終日に知事さんにお目にかかり、あるいはまた翌日は副知事さんに豊中市を御案内いただいたのであります。実は、何かしかられるかなと思って行ったのですが、地震の話が主だったものですから、知事さんは余りそれに触れられませんでした。翌日、副知事さんから、予算をつけていただいて、しかし今後ぜひまたよろしく、実はこんな御陳情もバスの中でいただいたわけであります。  経緯は今局長の方から申し上げたところでございますが、地元は大変宿望していらっしゃることも十分私もわかっております。また、それぞれ民間の皆さんまでこういう形で準備をしてくださる、あるいは関空も開港した、大変大事なすばらしい地区であることも事実でございます。しかも、この十年がもう終わって何年かになるわけですから、一日も早い設立に向けて今度の概算要求は頑張らなければならぬ、こう考えております。
  36. 北側一雄

    北側分科員 大臣の積極的な御発言を聞きまして、意を強くしておるところでございます。  いずれにいたしましても、この国連障害者の十年自体は三年前に既に終了しているわけでございまして、ぜひ早くこの建設が具体化されるように全力で取り組んでいただきますよう、心からお願いを申し上げる次第でございます。  最後に、ちょっと一般的な御質問をさせていただきたいのです。  この国連障害者の十年というのが一九九二年に終わりました。ただ、またアジア太平洋障害者の十年というのが九三年から二〇〇二年までということで、これは日本が積極的にイニシアチブを発揮いたしまして、ESCAPで決定されたというふうに聞いております。このポスト国連障害者の十年について、今後どのような基本的な思想、考え方で障害者の対策に取り組んでいくのか。その辺の御答弁を聞きまして、私の質問を終わりたいと思います。     〔主査退席、越智(伊)主査代理着席〕
  37. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 まさしく今先生から詳しく御説明いただきましたような形で物事が進んできておりまして、特に平成五年三月、国といたしましては障害者の新長期計画をつくっております。また、平成五年十二月には、まさしく先生方のお力添えによりまして議員立法で障害者基本法ができているというようなことで、新しい障害者施策の枠組みのようなものができてきたな、こういうふうに思っておるわけでございます。  こういうふうな状況を踏まえまして、厚生省といたしましても、従来の施策がどうしても縦割り行政になりがちであったのをもう少し総合的に、また障害の種別を超えた形での施策体系を進めていかなければならぬということで、実は大臣の命令によりまして、昨年九月に厚生省の中に障害者対策本部、障害者保健福祉施策推進本部ですか、そういうものをつくらせていただきました。これで、今まさしく先生から御指摘いただいたようなことを踏まえて、厚生省としてどう具体化するか。老人施策の方でゴールドプランというのを出しておりますが、そういうようなものにどの程度近づけるかという問題がありますけれども、ある意味でいえばそれに匹敵するようなものをこれからつくっていきたい、こういうことで対策本部の検討を今進めております。  これも、障害者の場合はなかなか多種多様でございますから、難しい点もございますけれども、この夏ぐらいには何とか中間的な見通しをつくって、具体的な問題は、ただいまの記念施設の問題も含めてですけれども平成八年度の予算要求に向けて検討を進めてまいりたい、こう考えておるところでございます。
  38. 井出正一

    井出国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、関西国際空港も開港をいたしまして、大阪を中心にこれからいよいよアジア・太平洋諸国との交流がより進展をし、活発になるわけでございます。そういった意味で、先ほど来申し上げております懸案のあれがおくれてしまっていること、まことに申しわけなく思っておりますが、たまたま九三年から始まりましたアジア太平洋障害者の十年も続いてあるわけでございますから、できるだけ早い時期に完成をさせなければならぬと改めて思っているところでありますし、今省内で検討しております障害者の問題についてのいろいろな検討成果も、できたらこの施設の中で生かしていただけるような方向を見出せたらなと思っているところでございます。
  39. 北側一雄

    北側分科員 以上でございます。ありがとうございました。
  40. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて北側一雄君の質疑は終了いたしました。  次に、荒井聰君。
  41. 荒井聰

    荒井(聰)分科員 新党さきがけの荒井聰でございます。  このたびの阪神大震災で大変多くのボランティアの方が現地で大変活躍しておられます。きょうはそのボランティアの問題について少しく御議論を申し上げたいと思います。  私は、数集前からイギリスのグラウンドワークという運動に大変関心を持っておりまして、この研究をずっとしておりました。イギリスという国は資本主義の最初に発生した国でもあります。マーケットメカニズムを大変重要視する国であって、どちらかというと弱者がなかなか大変な国だ、弱肉強食的な社会なんだというような印象を持っておりました。ところが、ボランティア組織が大変発達していて、このボランティア組織が、社会のぎすぎすさといいますか、マーケットメカニズムから生まれてくる強者の論理を救っていく機能をイギリスの社会の中で果たしている。このボランティア組織の中でグラウンドワークという運動が発生したわけでございまして、このクラウンドワークという運動は、地域の住民のボランティア組織、ボランティアの活力を十分活用しながら、それに行政組織と民間企業の資全力とを組み合わせて地域のコミュニティーを再生していこう、あるいは地域の環境問題に積極的に参加していこうという運動でありまして、また地域の社会福祉的な活動にも積極的に参加していくという機能を果たしております。  私はこの運動を知りまして、イギリスというのは大変よく勉強している国だな、翻って、日本はどうなんだろうか。日本もかつては、特に田舎というか農村部ではそういうコミュニティーというのは存在しておりました。春になると水田のあぜ道や水路をみんなで集まって普請していく、あるいは村のコミュニティーを活性化するためにいろいろな工夫が行われていて共同体的な意識を持ち合わせていた、そういうものが農村部では生きていたと私は思うのですけれども、最近ではそのような意識も、農村部でさえも少なくなっている。しかし、今度の大震災などでも私が感じますのは、あの復興の際に最も重要なのは、地域のコミュニティーが生きていたところ、あるいは機能していたところというのは、復興がスムーズにいくし、早いんじゃないだろうか。  そういう経験は、私実際に、奥尻の震災のとき、津波で奥尻の町が壊滅状態に陥ったときに、あそこの復興で何が一番機能化されるんだろうかと見ておりましたら、やはりみんなが助け合っていくという共同体意識に根差したコミュニティーがどれだけ早く再生するかということであったわけで、結果的には自分たちの地域は自分たちでつくり上げるという意識がいつ芽生えてくるか、自立の意識がいつ芽生えてくるか、それを外からどうやって助けてやるのか。その助けるときに、ボランティアというものが大変効果的であったという印象を持っておりました。しかし、この数年間、私が見ていましたところ、日本の社会の中におけるそういうボランティア意識なり共同体意識というものは非常に低下してきたな、これは日本の国にとってある意味では大きな欠点になるのじゃないだろうかというふうに思っておりました。  しかし、私が外国に赴任をしておりましたときに、外国で青年協力隊の諸君が外国の国づくりのために一生懸命励んでいる姿を見て、また彼らと一緒に仕事をする機会にも恵まれました。彼らが本当に安い報酬費といいますか賃金というか本当のボランティアの経費だけで、低開発国の、首府ではなくて田舎の方、首府から何十キロ、場合によっては何百キロも離れたところの村や町に住んで、そこの地域づくりのために一生懸命働いている姿を見て、日本の若者にもこういう気持ちがまだまだ残っているんだ、こういう力を日本の国づくりあるいは地域、づくりに生かさない手はない、どうやったらそういうものをうまく生かすことができるんだろうか、これはまさしく政治と行政のテーマだろうなという思いを持って日本に帰ったことがございます。  これから日本の社会は高齢化を迎えます。高齢化を迎えて、すべて公的な負担高齢化をしのいでいこうということには限界があるんだろう。この高齢化社会で、福祉充実させながら社会の活力を失わせないようにするためには、社会の活力を維持するためには、ボランティア、若者のそういう意識を社会の中に取り入れていく、活用していく、そういう制度的な仕組みがどうしても大変重要なんだろうという思いを私は持っております。  イギリスの例や、あるいは日本の若者が外国に行ってあれだけ活躍している例を見て、日本もそういう制度的な仕組みというものはどうしても必要だろうなという思いを持っていたところ、今回の阪神の大震災で、まあ、およそ考えられないぐらいの若者があの神戸に出かけていって、一生懸命ボランティアをやっている。青年協力隊の場合には、恐らく訓練を受けてから海外に行っておりますから、大変効果的な活動をしているんですけれども、残念ながら、阪神、神戸の場合には、善意だけで出かけていっております。大学生の諸君ら、若い人たちにはボランティアの経験は初めてという人たちがたくさんいると思いますから、戸惑う点もたくさんあったと思うのです。しかし、いずれにしても、日本のこれからの将来を担う大学生を中心とする本当に若い人たちが、善意の気持ちを表に出して、あの神戸の町で寝袋を担いで一生懸命ボランティアの仕事をしているという姿を見て、これは日本の将来は本当に明るいぞ、彼らが日本の将来の国づくりの骨格になってくれるだろうなという思いを新たにしたところであります。  しかし、残念ながら、そういうきっかけが今回できただけであって、ボランティアに対する社会的な位置づけといいますか、あるいは参加しやすさの仕組みでありますとか、あるいはボランティアの組織化、あるいはボランティアのマネジャーとか、そういうボランティアが参加しやすい、参加の周辺の制度、そういうものが大変不十分だという気持ちを強くしてございます。  今回の神戸震災などでも、私はあの人たちに簡単な食費や交通費ぐらいは何とか政府や行政体の方で面倒を見るようなそういうことがあってもいいのではないかな、そしてこれをきっかけに社会の中でボランティアの仕組みというものをしっかり位置づけてやる、そういうことが必要なのじゃないかなというふうに思います。  この点に関しまして、大臣の御見解を承りたいなと思います。よろしくお願いします。
  42. 井出正一

    井出国務大臣 荒井委員お勉強のグラウンドワーク、大変おもしろそうな、私もきょうお聞きして興味を覚えているのですが、また後で教えていただきたいと思います。  実は、私、この間の週末も被災地へ行ってきました。これは西宮だったと思うのですが、あるテント村で避難されていた、たき火を囲んで、ある市会議員の方でしたが、案内してくれたり、いろいろな説明をしてくれました。かなり年配の方でした。もう息子さんもどこかの小学校のPTAの会長さんをされているし、そばにいらっしゃいました。おれは今まで、今どきの若い者はと、こう思っていたが、全く今回のこれによって考えが変わった、若い者でなければだめだというふうにすら思った、こんな話も聞いてきたわけでございまして、今回本当に大変な数のボランティアの、特に若い皆さんがあれだけの活躍をしてくれたというのは、私も感銘を覚えておるわけでございます。ただ、ボランティアと言ったとき、音あるいは田舎に残っていたあの共同体的なあれと今回のこのボランティアと同じものかなという感じは、実は私はいたします。  例えば、あの敗戦の直後、日本人はやっぱりボランティア精神が、よく言われるようになかったのかなと私も実は思っておったのですが、必ずしもそうじゃなかったのじゃないか。やっぱりある程度のゆとりといいましょうか、豊かさといいましょうか、そういうものがないと、したくてもできない部分もあるのじゃないかな。そんな意味では、日本もようやく戦後五十年にしてそういうときを迎えることができた。そしてやっぱり若い人たちの何かこうやりたいのだという気持ちが、たくさんいつの時代にもあるのじゃないかな。そういった意味で、そういう若い皆さんのやる気とかあるいは善意というのをうまく発揮していただくような条件整備は当然考えていかなくちゃならない、こんなふうにつくづく思っておるところであります。  しかし、ボランティア活動というのは、本来やはり自主性に基づいて行われるわけですから、余り行政が取り組んじゃったりしてもまたいけないと思うのでございます。したがいまして、直接このボランティアの皆さんに交通費とか食費を、例えば行政が差し上げていいのかなというふうにも私は思います。各都道府県や市町村において、各種の基金みたいなものからボランティアのそういった活動経費の助成、あるいはボランティア保険の加入の助成等が行われつつありますが、むしろそこらをもう少し充実していく必要があるのではないかな、こういうふうに思っております。  実は、厚生省といたしましても、いわゆる住民が気楽にボランティア活動に参加できるような条件づくりをかなり前から進めてきております。市区町村や県によるボランティア活動の推進事業の支援を行っております。ボランティア活動に関する相談や登録、あっせん等を行う市区町村ボランティアセンター活動事業に対して助成をしておりますし、またリーダーの育成等を行う都道府県のボランティアセンター事業に対しても助成をしておるところであります。しかし、決して十分だとは思いません。  また、これは厚生省だけじゃなくて、いろいろな省庁にもボランティアの問題は関係するわけでございまして、今回のこの災害を機に、ボランティアに対する国民の皆さんの関心が大変大きくなってきておりますから、積極的な参加がより見られるように、政府も実は経済企画庁を中心といたしまして、ボランティア問題に関する関係省庁連絡会議というのが過般設置されまして、ボランティア団体の法人格の問題や、あるいは税制面での支援の問題等のあり方も含めて、今支援策について検討が始められたところでございます。  厚生省といたしましても、今回の避難所等におけるボランティアの方々が、高齢者の皆さんに対する福祉医療等のサービスを支える上で大変重要な役割を担っていただいていることからも、今後は災害時におけるボランティア活動の支援体制整備という問題についてきちっとした検討をしていかなくちゃならぬ、そんな考えをしておるところであります。
  43. 荒井聰

    荒井(聰)分科員 ありがとうございます。  私、ここに、東京農工大の学生がボランティアとして現地に入りました、その現地レポートを持ってきているのですけれども、これを読みますと、本当に現地の状況が、彼らから見た、彼らの目を通したものが非常に生々しく出ております。  これは東京農工大の千賀君という助教授がグラウンドワークの運動に大変関心を持っていて、ずっと勉強してきた一人なのですけれども、彼が大学生にそのボランティアの話を常にやっていたときに、この阪神大震災の問題が出てきて、君たち、どうだ、行ってみないかという呼びかけを、余り期待しないでそういう呼びかけをしたら、関係の学生がどっと集まってきた。それで、行くのはばらばらで打っちゃだめだ、むしろきちっと組織立って行かないといけないということを彼が指導いたしたそうであります。  そんな情報が各大学にも波及したり、あるいは高校生の中にもそういうことが波及して、ある高校生が、自分もこのボランティアの組織に行きたいということを学校の先生に言ったら、高校生はボランティアをするのはまだ早い、学校の勉強が本分だといって怒られたという話も紹介されているのですけれども、このあたりは、私は日本のボランティア教育のまだ不十分さというものが、文部省なんかもう少し勉強してほしいなと思うのですけれども、そういうものが欠けているのかなと。今の若者は、むしろ呼びかければそういうものに敏感に反応する何か豊かな感性みたいなものを持っているなというふうに思うのです。  ちょっと皆さんにも知ってもらいたいので、彼らのレポートの中のおもしろいところを少し読ませてもらうのですけれども、   最初の仕事は、避難所となっている小学校のトイレの掃除。二週間の避難生活の間ほとんど掃除されていなかったトイレは、二十リットルタンクの水を何杯も流し、デッキブラシで磨いてもなかなかきれいにはならなかった。「ありがとう。トイレがきれいだと安心するわ。」避難当初のきたないトイレは、それだけで自分たちの心を暗くし地震の恐怖を思い出させる、といって感謝する初老の婦人の言葉は被災者達の心の傷の深さを象徴する。   トイレ用の水を、三階建ての小学校にある各階のトイレに運びあげることも隊員の仕事だ。二十リットルタンクにいっぱいに入った水を両手に持って運びあげる。千百人分のトイレ用の水は半端な量ではない。それを何度となく運び続ける女性隊員の仕事ぶりに、被災者達の心が動かされる。自分たちのことは自分たちで何とかしなければ、こういう心の動きが、ばらばらに今日を生き延びてきた被災者達を共回生活する者へと徐々に変化させるだろう。そして、その日の細かいレポートなんですけれども、二月十六日に、  今日の水くみでは大きな変化がありました。昨日は数名の被災者の方が手伝ってくれたのですが、今日は大勢の人が来てくれたため、私達はほとんどついているだけでよくなりました。トイレの掃除でも手伝ってくださる方が数名いました。今後を考えた上でも望ましい方向に動いていると思います。被災者の方々の自主的な行動をどうやったら自分たちがお手伝いできるのか、毎日考えています。 こういうレポートであります。  これは彼らと被災者が一緒に仕事することによって、ボランティアの人と一体感を増していき、その地域の復活の芽を少しずつ積み上げていっているという様子がよく出ているなどいう感じがいたします。  また、こういう文章もあります。  被災者のいらだち 「いったい何をしようというんだ。素性も何も知らないあんたらに、自分らの住所や状況なんて言えるか。」周辺地域生活する被災者の状況を調べ、ボランティア活動を円滑に進めるための調査をしようという隊員に被災者の不満は容赦なくふりかかる。聞けば彼らは、小学校に集まる物資の援助をほとんど受けていないという。援助物資は、小学校まで来ている。しかし、その情報が正確に伝わってこないために一方では食料が余り、他方では食料が極端に欠如する。行政に対する不信感、被災者同士の確執が浮き彫りになる。 これも彼らが体験した率直な気持ちだと思います。そして、彼らが得た結論は、「いま、ボランティアに求められているものは、系統的な支援と情報の媒体となるその足である。」と彼らが自分なりに結論を下しています。  このボランティアをやっている若者自身が少しずつ成長しでいっている状況が、よくこのレポートの中から読み取れるわけでございます。  そこで、私は、これだけ多くの善意の若い人たちが一生懸命やろうとしている、これをどうやって上手に活用するか。ボランティアの活用というのは、第一に、スムーズに受け入れる行政の対応の方が後手後手に回っていて、国民の中にある、ボランティアの中にある善意が十分に生かし切れないという状況がまだまだ続いているんじゃないか。これを解決するためには、ボランティアの情報を統括するボランティアマネージャーといったようなものを行政として位置づけて、そのための事務所の確保でありますとか、電話などのファシリティーの提供であるとか、あるいは場合によっては必要な資金の提供などもそこに行えないだろうか。そういう全体のボランティアの活動状況と末端のニーズを把握して、全体的に調整するのは行政の役割だという形を考えなければ、彼らの善意が十分生きてこないんではないかというふうに思うのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。
  44. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 まさしく先生のおっしゃるとおりだろうと思います。  私どもも、ボランティアの希望者はとにかく国民の中に非常に多いということは感じております。世論調査などでも国民の半数以上の方がボランティアをやりたいという希望、意思を表明をいたしております。ただ、実際にボランティアをやった経験のある方はせいぜい三%程度というような数字もございます。やはり、ここは何が一番ネックかといいますと、今先生がまさしくおっしゃった、ボランティアをやりたい人とボランティアを受けたい人とのこのちょうどコーディネートといいますか、マッチングがうまくいかないというところが一番問題であろう。  私ども、ボランティアすべてを統括するのはなかなか先ほど大臣が申し上げましたように、いろいろな種類がございますので難しいということで、やはり社会福祉の立場からのボランティアの問題ということを考えなければならないだろうということで、社会福祉のサイドにおきますボランティアにつきましては、まさしく先生が御指摘になりましたような形での、まずリーダーの養成、そしてボランティアセンターをつくっていく。そしてそのセンターで登録と、ボランティア活動を必要とする人とボランティアをやりたい人とのマッチングの仕事をやる、こういうスタイルをしていきたい。こういう形で、現在各都道府県にボランティアセンターをまず一つは置く、それから今度は都道府県の中の各市町村にも、できるだけ大きな市町村にはボランティアセンターを置くという形で、今助成策を講じているところでございます。  まだまだ不十分でございますし、活動の助成の経費もほんのわずかでございますが、ただ、やはり、基本的にはこういう事業もやはり地方自治体が中心となってやっていただくことが重要であろうということでございまして、そういうことから、自治省とも御相談をいたしまして、自治省の方で地方交付税の中に地域福祉基金というのがございます。その地域福祉基金を活用して、そのようなボランティア事業につきましても御支援をいただくようなことを自治省と一緒に支援させていただいております。  現在、こういう地域福祉基金を活用してボランティア関係で行われている事業も、私どもが把握しておるのでは、大体、延べでございますけれども、三千以上の事業が使われているというふうな報告も受けておるところでございますけれども、まだまだ不十分でございますので、こういうことをさらに徹底を図っていきたい、こう考えております。
  45. 荒井聰

    荒井(聰)分科員 ぜひお願いいたします。  ところで、また彼らのレポートの中からもうかがい知れるのですけれども、今度の避難所というのか被災者が集まっておられるところは大体小学校が多いんですね。これは必然的に、そういう施設しか残っていなかったということで、小学校にならざるを得なかったということもあるんでしょうけれども、ただ、小学校というのは大体その地域のコミュニティーの中心なんです、ある意味では象徴的なところ。そういうところを中心に復興の拠点をそこに据えだというのは、偶然ではあるかもしれませんけれども、ある効果的な事象がここから出てくるのではないだろうか。復興するためには拠点が絶対必要で、その拠点は小学校ぐらいの単位にして、そこで多くの被災者の方と話し合いをしながら復興の計画を立てていく、復興の、お互いに励まし合うような、そういうよりどころの場所として小学校を活用していくということが一番効果的なんだろうというふうに私は思います。  ただ、この学生たちのレポートの中にもやはり出てくるのですけれども、小学校周辺の被災者、避難所の中に入れなくて周りの半壊した家屋の中に住んでいる人たち、その人たちとのギャップ、コミュニケーションギャップがかなり生じていて、そのコミュニケーションギャップが情報のギャップだけで済んでいればまだいいのですけれども、どうも信頼感のギャップ、行政に対する不信感のギャップで、コミュニティーである小学校にいる人たちの方がずっと優遇されてしまっている。物資や何かも全部そこに集まってしまっていて、自分たちのところには全然こない、そういうような不満というのが非常に多く出ている。それを解消するために学生連中が一生懸命走り回っているという状況が随所に出てきております。このあたりは、これから行政の方で、ボランティアあるいは小学校にいる被災者の方の元気な方にそういうつなぎをしてもらうというようなことをぜひ御指導していただきたいなと思っております。  その中で、被災者の方々が一番心が和むというか、あるいは求めているものは何なのかというのが随所に出てくるのですけれども、それはやはり温かい食べ物なんですね。彼らから言わせると、小学校の給食施設がある、その給食施設をどうして十分に利用できないんだろうという疑問がこの中に出てきております。  これは文部省所管なので厚生省ではわからないということなのかもしれませんけれども、私は、ぜひそういう施設も十分に使って、小学校という施設がコミュニティーの中心であるという意識で、十分活用するようなそういう方策をぜひお考えいただきたいと思うのですけれども、当面、食事の質を上げていくということがとても大事なように思います。このあたり、どうお考えなのかお聞かせ願いたいと思います。
  46. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 小学校の給食施設を利用できなかったというのは、やはりライフラインが完全に途絶している、特に水とガスでございますね、これができなかったので、設備はあっても利用できなかったというのが恐らく実態であろうと思います。ですから、利用できる場所につきましては、随分御協力をいただきまして、炊き出しやなんかでも御活用いただいてやっていただいているケースも報告をいただいております。  ですから、できなかったのは恐らくそういうことであろうと思いますけれども、また、まさしくそういう温かいお食事を提供するというのは、特にこの寒空でございますので大変重要なことでございまして、そういう関係で、私どもの方も、何とかそれができないかということで、先般も大臣が兵庫県知事あるいは神戸市長さんとお会いになったときにも、大臣の方からも、特にそういう点での御配慮をいただけないかというふうに御要望申し上げたところでもございます。  その際に、例えばボランティアの方々にいろいろと御協力をいただく。そのときに、例えば原材料や何かにつきましていろいろと何とかしろということになれば、地元、県なり市なりに御相談いただければ、それは災害救助の関係で幾らでも対象になるわけでございますし、そういう点では、まさしく行政と一体となってそういう事業が進められるのではないか、こう思っておりますので、そういう点ではまた御指導いただければやらせていただきたいと思います。
  47. 荒井聰

    荒井(聰)分科員 これで終わります。どうもありがとうございました。
  48. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて荒井聰君の質疑は終了いたしました。  次に、赤羽一嘉君。
  49. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 新進党の赤羽一嘉でございます。  本日は、限られた三十分という時間、阪神大震災にかかわることについて、神戸市の選出議員として率直な意見を申し上げたいと思います。また、今の閣僚の皆様は私は個人的にほとんどよく知らないのですけれども井出大臣には一度海外視察も御一緒させていただいておりますので、厚生省管轄にとどまらず、若干質問がぶれるところもあるかと思いますが、本当に忌悼のない御意見をお伺いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず、先日、たしか二月九日だと思いますが、村山総理の緊急記者会見というのが夕方されたわけであります。私も、ずっと予算委員会災害特別委員会等を通して質問に立たせていただきました。被災者の立場に立った意見を申し上げさせていただいて、即刻、大胆な決断、施策の実行というのを訴えてきたわけでありまして、ようやく一月近くたって総理も重い腰を上げていただいたかと思ってテレビに見入ったわけでございますけれども、率直に言って失望したのですね。  というのは、いろいろな御意見もあるかと思いますが、被災者の皆さんも多分同じだったと思うのですけれども、総理はあの中で、希望を持っていけばどんな困難も乗り越えていけるという御発言がありましたが、被災者の方々が希望を感じ、勇気を出して立ち上がっていけるような、元気が出るような具体的な施策を決断し、実行していくのが我々政治家の役目であると思いますので、あのときにいろいろな対策本部を設置することを決めだというような話は、もう率直に言って、何を今さらというような気で聞いていた方が多いと思うのですね。  総理はその後の本会議でも、あの日あの記者会見を通して率直な意見を語らせていただいたというふうなお話もありましたけれども、テレビを通して、はっきり言って現場感覚と少しずれのあるようなことを率直におっしゃられたと幾ら言われても、もう何にも要らない、政治の力というのは当てにしないというような思いに立たれている被災者の方が数多くいらっしゃると思うのです。私なども今毎週現場に、地元に帰っているわけでありますけれども、現地を回るのが正直に言ってつらい。何もしてくれないみたいを言われ方をして、本当につらい思いをしながら現地を回らせてもらいまして、きのうまた戻ってきたわけでございます。  その中で、実は先週の金曜日、災害特別委員会の席上で小里地震対策担当大臣が、避難所二十三カ所の調査をした結果、正確なのが、議事録ができておりませんので私のメモ書きなのですが、大体どの避難所もその生活レベルにおいては問題がないといった認識に立たれているという御発言が実はありました。私は、本当にこれは大問題だなと思うのです。  避難所生活、最初の何日間、一週間というのは大震災でありましたからやむを得ないと私は思いますが、もう一月以上もたっていながら、こういった最低限の人権も保障されないような生活がGDP世界一の日本で放置されているということに対して、そこの閣僚の皆さんが、まあまあの生活レベルを保障されているのではないかというような発言をされているのはどういう認識なのかなというのを八本当に非常に心配しているのですね。そういうような認識で今後のいろいろな措置を講じていただくのであれば、余り期待できないなというふうな思いがございます。毎日新聞で、猪口邦子さんの「生活の水準が人間の尊厳を保てる水準になっていない状態が続いている。文明国家として異常さを感じる。自国民を救援できない政府がどうやって遠い国の内戦被災民を救えるのか。」というような発言もありまして、全くそのとおりだなと私自身思うわけであります。  井出大臣避難所に対する違った御認識もあるかとも思うのですが、とりあえずこの二月二十日、きのうのある新聞の現場の避難者の声について幾つか御紹介いたしますので、聞いていただきたいと思います。  まず、これは神戸市立の会下山小学校、兵庫区の火事でほとんど丸焼けになったところの小学校の五十四歳の主婦の方です。「避難所生活がいつまで続くか分からないと不安になる。仮設住宅、恒久住宅の建設計画の見通しを一日も早く明確にしてほしいというのが家を焼け出され、学校の床に寝かされた者の気持ちです。」飛んで、「村山首相に言いたい。一度、冷たい避難所の床で寝てからものを言ってほしい。」という厳しい御意見がございます。  もう一つは、「二歳の娘と五十五歳の母と、ここにいますが、いま困っているのは食事のことです。子どもや年寄りには支給されるごはんが固すぎます。夜はフライ物が多いので、栄養が心配です。」という食事の問題を言って、これは厚生とはちょっとずれますけれども、「今はとにかく仮設住宅が当たるのを待っています。震災前に行っていたパートも十八日付けで解雇になりました。家も仕事も探さなければならず、大変です」。これは、芦屋市の大原集会所というところの方の話です。  また西宮の、小学校の男の手なのですが、「避難所には遊び道具が少ない。テレビも一台しか置いて」いません。「中学校の体育館に住んでいますが、暖房器具がなくて夜はすごーく寒いです。おふろに入ったのは、この一カ月で一週間に一回ぐらいかな。お母さんと電車を乗り継いで大阪市生野区の親せきの家に入りに行ったこともありました。遠かったなあ。今でもお母さんや、友たちのお母さんたちは、避難所の」比較的近いふろ屋に行きますが、「寒い中、長い時間を掛けて並ばなあかんので、途中であきらめて帰ってくることがよく」ありますという子供の意見があります。  もう一つ、やはり兵庫区の小学校で、六十七歳の高齢の御婦人の方ですね。「仮設住宅に早く入居したいのですが、入居できても家賃が無料というだけで、電気、ガス、水道の光熱費は入居者が負担しなければなりません。働ける人はいいのですが収入のない人は不安になります。また、罹災証明書を受け取るために区役所で列をつくり四時間も待ちました。寒い中で立っていたために、倒れてしまったおばあさんもいました。」またおふろの問題ですが、「自衛隊のおフロに入るにも二、三時間も待ちます。高齢者が寒空の下で何時間も立つことのないよう、行政はこまやかな配慮をしてもらいたい。」  これは代表的な、一番新しい発言だと思うのです。やはり現場を回りますと、とにかく今の避難所生活は厳しい。とにかく仮設住宅を早くつくってくれという、いろいろなところで、委員会でも質問が出ていると思います。  いろいろな中で出てくるのですが、まず仮設住宅の必要数というのはどのくらいというふうに認識しておられるのか。計画数は、三万とか、一万増加して四万にしたとかという話をしておりますが、では四万戸で足りるのかどうか、今計画しているのが必要数に充足されているのかどうかということが全く話に出てこないというのが不思議な感じがするのですが、その必要数についてお願いします。
  50. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 これは先生も御理解いただけると思うのですけれども、実際に地域地域でどれだけのものが必要かということは、やはりその地域地域、各市町村なりから上がってきたものを積み上げていかなければならないのだと思います。それを把握するのはやはり県の段階でございますので、今県が幾つ仮設住宅を必要とするかということでございます。それにつきまして、もしも国が、とてもそんなたくさんはつくれないよというような形で財政的に何かカットするようなことがあれば、それは非常に問題だと思いますが、私どもは、県の方で必要とするものについてはきちんとそれは補てんをいたします、したがいまして、きちんと県の方で計画を立ててくださいという形で申し上げておるところでございます。  現在の時点では、今兵庫県としては四万戸の仮設住宅で十分であるというふうに一応判断をされているということでございまして、私どもといたしましては、それにつきましては、すべて後できちんと財政的な補てんをさせていただくということでお話をいたしております。
  51. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 県で四万戸で一応十分という御認識がありましたが、例えば、お話しさせていただきたいと思いますが、二月の最初に募集がありました神戸市の、神戸市は今約十八万人避難しているという状況の中で、一回目の応募者、応募人数は六万件あったと思うのですね。実際募集したのは二千七百戸。現在、二月中旬完成見込みで千十三戸なんですね。それで神戸市が、神戸市の話を聞いてみますと、要するに市内に二万五千戸つくる予定だ、そのうち一万五千戸は三月下旬までに用地確保できて発注済みとなっておるというようなお話なんですが、二回目の募集が三月三日に発表になるらしいのですけれども、それが、募集数が六百六十九戸、一回目と二回目合わせても三千戸強なんですね。六万件、一回目に応募がありながら、三月の募集段階でまだ三千三百戸しかアレンジできていない。  この見通しというのが、答弁を聞いていると四万戸というような話も出てきますが、貝原知事から一応全員入れるようにしますという発表があった中で、そういった数が先行しているような感じがするのですけれども神戸市の市会の答弁なんかも聞いていますと、どうも本当にそこまで正確に積み上げられているのかな。六万件応募があるということは、それに近い需要があるから応募しているんだと思うのです。それに対して四万戸で足りるという見識、見解というのはどうなんでしょう。神戸市だけですよ、六万戸というのは。県下で四万戸でいいというのは、どういうことなんでしょう。
  52. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 私どもも新聞報道で聞いたところでは、確かに神戸市で六万戸、その他の市町村の要望状況も合わせますと九万戸ぐらいの御要請があったというお話は承知をいたしております。  ただ、先ほども申し上げましたように、事業を、実際にどこに何戸つくっていくか個々に発注していただくのは県知事さんでございまして、私どもが発注するわけではございませんので、そこはあくまでも、県の方でお考えいただいたことについて私どもは後をフォローするという形にならざるを得ないと思います。ですから、今申し上げたように、もしもそれで足りなければその後はまたきちんとフォローさせていただきます。  それからまたもう一つは、現実に、それでは今どこまで具体化されているかということは、これは、また県からの御報告をいただいているところでは、三万戸につきましては場所も確定して既に発注済み、追加の一万戸につきましてはまだ発注はできておりません、それを建設する用地について今具体的に詰めている最中、そのうちで約十五ヘクタールは用地確保ができた、こういうふうに聞いておりますが、十五ヘクタールといいますのは、戸数にしますと大体二千戸から、多く見積もって、物すごく詰めても三千戸ぐらいということでございますので、まだまだ追加の一万戸につきましての用地の手当て、どこに何戸つくるかという形の積み上げはまだできていないという状況にあろうかと思います。  ただ、これも今、国有地など利用可能なところにつきましては、県の方にリストを提供いたしておりまして、どこにどれだけの土地があるから御活用いただければ用立てをいたしますという態勢はとっておりますので、そこはまた県の段階で御判断いただけるものと考えております。
  53. 井出正一

    井出国務大臣 おっしゃるとおり大変な応募の数だということも、私も承知しておるものですから、実は先週末に兵庫の知事さんあるいは神戸の市長さんが上京なさったときにも申し上げましたし、この週末も、宝塚とかあるいは芦屋とか西宮の市長さんにもお目にかかってきましたが、国会の方のいろいろな委員会でも、四万で大丈夫なのかという御質問が大変出ているし、私どもも、果たしてこれで大丈夫かなという気が実はしているんだ、したがって、必要ならばすぐにでも上方修正は、私どもとしてはすぐそれに即応しますから、土地の手当てという難しい面もあるでしょうが、どうぞそういうのは早急に中央の方に言ってきてください、こういうお願いはついこの間もしたところであります。
  54. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 県のレベル、市のレベルでどうしてその数しか出てこないのかよくわからないのですけれども現場を回っていると、本当に先行きがわからない。さっきお話もありましたが、先行きがわからない不安ということで、今のような、床に寝て、寒いような思いをずっとしなければいけないということが続いているわけですね。  私、一つ思うのですが、今三万戸確保したとか神戸市内でも一万五千戸はもう発注済みで三月下旬予定できているという話もあります。これをとりあえず一遍に抽せんしたらどうなんですか。それで、一遍に抽せんして、四月の中旬ぐらいに入れますよ、そういうことであれば、それが担保できていれば、ではということで身寄りのところに行こう。高齢者に対して、私、一月二十六日の予算委員会とか二十七日に政府に申し入れまして、結局二月の頭に御決定いただいたのですが、八千戸国費で、いわゆる災害弱者と言われる方たちに対して、旅館のスペースとかケアのついたところを用意していただける。そしてそこが、八千戸用意したにもかかわらず、実は多分百戸ぐらいしかまだ使われていない。これは、いろいろな理由があると思うのです。そんなところに入ったらいつ抽せんがあるかわからないというような不安とか、また、よく聞くのですが、家財道具が家にある、それを家のそばにいてひっきりなしに見ておかなければ心配だというような話がありまして、なかなか離れられないんだ。  この前、先週の金曜日、運輸委員会でも質問させていただいて、家財道具は、応急仮設住宅に入る人に関しては、神戸港に倉庫のスペースが今あいていますし、あとコンテナなどのスペースもあいているので、ある程度そこに入れて、トランクルームみたいにして保管する。それで、家財道具は心配をなくしてあげて、二月後には必ず入れますよという担保でもあれば、避難所生活を好きでしている人なんというのはそんなに多いわけじゃないと思いますので、できると思うのです。物すごく並ぶのですよね。何でこうやって小出し小出しに、何時間も寒い中並んで、ふたをあけると結局二十倍とかというようなことを小まめにやるのか。その辺、どうなんでしょうか。何か技術的に問題があるのですか。
  55. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 これは私どもの立場として何とも申し上げようがないと思うのです。実際に仮設住宅をおつくりいただいて、それから提供されるのは、県なり市のお立場でございます。私どもの方でそういうことをしろというふうに指示なり指導をしたことは一度もございませんので、そういう点につきましては、ちょっとお尋ねをいただいてもお答えのしょうがないと思うのです。  ただ、先生からの御質問関係で、なぜ四万戸や何か、そういうふうに小出しをされるかという話は、一番問題なのは、住民の方々が、やはり間近に、自分たちの今まで住んでいたお近くに仮設住宅も欲しいという御希望が非常に強い。そういうような御希望に県なり市なりもできるだけおこたえしたいという形で、用地選定や何かも非常に慎重にされていらっしゃる。ですから、そうなりますと、災害を受けられて、その被災地の中につくっていくということでございますので、そういう面で極めて用地確保に苦労されているのではないか。ですから、本当はもっとつくりたくても、用地がないというのが恐らく最大のネックではないかと私どもは推測をいたしております。  また、もう一つは、確かに公営住宅あるいは公団住宅で全国からの御協力をいただきまして、これも私どもの方で今把握しておりますのは約三万戸程度の御提供がありました。ただし、これは北は北海道から南は沖縄までと、こういう御提供でございますが、こういうような形の御活用がなかなか難しいというのも、やはり住民の方々はなかなかそういうところへ行けない、後の保証もなかなかない、こういう点がやっぱりあろうかと思うので、そういう点につきましては、まさしく先生のおっしゃったような形で、後の保証をつけてやるという形が必要なのではないか、こう思っております。
  56. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 その他府県からの提供に関しても、もうちょっと頑張ってここにいればその神戸市内の仮設住宅が当たるのじゃないかという思いで耐えているのですね。  だから、先ほど話を伺いましたけれども、私が言っているのはそうじゃなくて、神戸市に言わせれば、もう既に一万五千戸発注済みだ、用地確保して場所も確定していると言っているのだったら、その一万五千戸の分については抽せんすればいいじゃないですかと僕は思うわけです。それをここで言ってもしょうがないと言われるんだったらそこまでにしますけれども、なぜそんな小出しにしていくのかなということで、もう二次災害的に御老人の方も五十名ぐらい亡くなられているわけですしね。これに対して何らかの処置を打てないというのは、どこの責任とは言わないけれども、政治の責任である、行政の責任であるというふうには思いますので、何とか県、市に、私たちも県会、市会で提案はしますけれども、その辺の行政指導をお願いしたいと思います。  それで、あと、いろいろな話の中で、冷たい床に寝るつらさというのが今避難所でクローズアップされてきている問題だと思うのですが、ほかに移せないんだったら、そこにとりあえずマットとか量とかを入れること。その学校で自力で入れている箇所も一部ある、私が行ったところも何カ所かありましたけれども、全般的にはまだまだされておらず、床の上で毛布にくるまって寝ている。風呂もほとんどありませんから、シャワーだけだと体も温まらないので、そういう生活が続いているということが多いと思うのですけれども、その辺についてどのようなお考えなのでしょうか。
  57. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 まさしく御指摘のとおりであろうと思います。  それで、現実問題といたしましても、約三分の一ぐらいには今の畳ですとかマットだとかも行き届いたというふうに報告は受けておりますけれども、まだ現実問題として三分の一程度ということでございまして、この点につきましても、先般小里大臣から兵庫県の知事さんの方に早急にそういう点についての配慮をしていただけるようにということで具体的にお願いを申し上げたところでございますし、また、つい先日、私ども大臣も、じかに知事さん、市長さんの方にそういう点を特に配慮してほしいということのお願いを申し上げたところでございますけれども、ただ、恐らく今までは当面の応急措置に追われて、実際にそこまで手が回らなかったのが実態であろうかと思います。  現在は、各避難所をパトロールをして、各避難所の御要望を承って、適宜迅速に処理をする体制をつくっておりますので、できるだけ早急にそういう御要望に応じて体制整備するように、さらに県の方に御指導させていただきたいと思います。
  58. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 それと、先ほどの御質問にもありましたけれども、食料なんですね。  食料は変な現象がありまして、ボランティアが入って炊き出しをしてくれているところでは温かいものが食べられる。それで、ボランティアの方たちもそんなずっと張りついているわけにはいかなくなってだんだん引き揚げる。自衛隊が面倒を見てやったところが二月の中旬で引き揚げた。それから市が発注したお弁当に切りかわる。これが実は今、朝牛乳と菓子パンの二個、夜はお弁当、これはお握り弁当というときもある。大体鮮度の問題があると思うのですが、フライものがほとんどだという話で、これは国の災害救助法によって食費が八百五十円に指定されている。この八百五十円、これも輸送費込みだというのですね。これはだから市に結局最終的に委託されて、業者に委託して、多分五社ぐらいでやっているらしいのですけれども、それで、だんだん期間が長くなって体力が弱くなっているにもかかわらず、一方、食料の充実度というのは反比例している。この辺というのは何とかならないのですか。
  59. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 この点につきましても再三御指摘をいただいているところでございますけれども、まず誤解があるようでございますが、八百五十円というのは、一般基準として厚生省と相談なくできる、市の段階で御自由にやっていただける、その一般の基準、全体を平均した基準でございます。したがいまして、いわゆる避難所で一般的にやる場合は、業者委託でそのでき上がったものを運ぶという形よりは、従来の考え方からいたしますと、現場での炊き出しみたいな形で、原材料だけ買ってきてやるというような形が昔は一般的であったと思うのですね。それが一応基準となってできているような形でございます。  ただ、これは時間がたつに従いまして必要な経費も変わってくるというような形がありますので、全体を通じた基準でやって、現実問題としましては、例えば災害当初につきましては、今回のケースにつきましても、例えば四百円とか、あるいは六百円とかいうような形で使っているケースもあるわけです。そういう点は全体を平均した形でまず使えるということが一つあります。  それからまた、それでは、時間がたつに従って、例えば業者委託や何かの関係で必要になってきた場合にはそれじゃ足りない場合も当然あると。足りない場合には足りない場合で、それは別途協議をして、さらに高い基準でやってもいいという形になっておりまして、これももう既に大臣からも再三お話し申し上げておりますけれども、もうその八百五十円にこだわる必要はないということは現地の方に伝えてあります。ですから、その状況に応じて現地で必要な食費の調達をしていただくという形をお願いをしているところでございます。
  60. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 ちょっと不思議な話なんですけれども、今も民生局に確認してこちらに向かってきて、八百五十円の経費の中でやりくりしているということは一応確認しましてね。じゃ、これはもう改善はすべて市がやれるということなんですか。——わかりました。  いろいろ用意していたのですけれども、あと一つ、見舞金の実施について大臣にお伺いしたいのです。  ちょっとこれは質問通告はしていなかったのですけれども、要するに、私のよく知り合いでも、実は娘婿が亡くなられ、娘さんが今集中治療室で、ある病院にずっとこれから約半年ぐらい入らざるを得ないような状況で、御主人が会社に勤めていたのですが、きのうから自宅待機を言い渡され、奥さんも看護婦をパートで勤めていたのですが、西市民病院がつぶれたために看護婦さんが回ってきて、自分も首切りになりそうだ。家賃が今十一万のマンションに、家は残っているので、黄色紙が張られているんだけれども入っている。ただ、その家賃すらも払うのが非常に困難になってくる。それで、失業保険とか雇用保険とか、その点については先週の労働委員会でもかなりお願いして実現化は図っていただいているのですけれども、これは県、市からも要望が出ていると思うのですが、直接の見舞金という形の助成というのはどうなんでしょう、見通しとして。
  61. 井出正一

    井出国務大臣 不幸にして亡くなられた方とかあるいは大変な障害、重傷を負われた方にはそれなりにあるのですが、それ以外、財産とか、あるいはそういった被害を受けたところへ何とかならないかという御要望は地元からもいただいております。また予算委員会なんかでも先生方からも何度がお尋ねをいただいている課題なんですが、大蔵大臣もお答えになっていらっしゃいましたが、今後のあり方としてそういうものまでやるんだというのも一つ考え方かもしれぬが、少なくとも従来の、現在のこの日本の体制からいきますと、やはり私有財産制度のもとでの社会の仕組みからいって、それは現在のこのシステムでいく限り、心情的には大変お気の毒だけれども、非常に困難だ、こういうことを申し上げざるを得ないと思います。
  62. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 家も失い、マンションについても、分譲マンションなんかですと、区分所有法のあれがあって、もう廃墟にならざるを得ない、首切り、解雇なんかもどんどん進んで、産業もなくなっていくといった場合に、本当に国としてどう手を差し伸べられるか、今の御発言が本当に精いっぱいのことなのかという意味で、もう一度よく御検討をお願いをしたいと思うんです。  あと一点なんですけれども、家賃補助制度の創設というのをお願いしたいのは、実は罹災都市借地借家臨時処理法が適用になって、いわゆる借家権とか借地権が守られた、しかし、実はこれは居住権が守られたということにはならないんですね。家を大家さんが建て直す、建て直したからには家賃がこれはやっぱり上がるということが十分考えられるわけですよ。今回亡くなられた方というのは高齢者の独居老人が多い。つぶされた家も、要するに南側で、そういう文化住宅と言われているところが圧倒的なわけなんです。そこで家を建て直す、家賃が上がる、結局入れない、出ざるを得ない、こういうケースが物すごく出てくると思うんですね。生活保護を受けようとすれば、家賃は三万四千円程度で抑えないと生活保護が受けられないというような現状もありますし、神戸市自体では、これまでも高齢者が多く居住していた木造の賃貸住宅の建てかえ時に家賃補助制度を行うのは実施されてきたんですけれども、これは市の会計だけではとても賄えないと思いますので、この家賃補助というのは恐らく厚生省の分野になると思うんですが、生活保護を受けるような人に対しての家賃補助ということは厚生省じゃないんですか。
  63. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 もしも生活保護の対象ということで考えれば、生活保護の体系の中に住宅扶助という制度がございますので、住宅扶助で必要な家賃は、一定の基準額はもちろんございますけれども、一定の基準額での家賃補助ができると思います。ただ、先生のおっしゃるのは、今普通の生活をされておる方々で生活保護に該当されない方に対して家賃補助ということであれば、ちょっとそれは私どもの方の行政の施策としては考えられないと思いますが。
  64. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 もう時間も来たんですが、要するにこういう問題を詰めていくと、省庁の壁になってしまうんですよね。ですから井出大臣も、厚生大臣ではありますけれども、何とか閣議のときに、こんな話が出たというようなことで——本当に私心配しているんです。この半年後、三年後に自己破産をする、大量の失業者が出る、連鎖倒産が出る。大変な手に負えないような状況になる可能性もあるので、それは国としてできる範囲というのはあるかとも思いますが、最大限精力を傾けていただいて、具体的な施策を即実行する、実行できなければ発表する、安心を与えるということが今一番神戸市民にとっては大事なことだと思います。神戸市民というか兵庫県の被災者の方にとっては大事なことだと思いますので、その点だけはよろしくお願いしたいと思います。
  65. 井出正一

    井出国務大臣 幾つが御指摘をいただきました。さっきの仮設住宅の申し込みのあり方、私ども直接タッチするわけじゃございませんが、なるほどちょびちょびやるよりは安心感を与えられるのではないかなというふうに私も思います。少し現地と相談もしてみたいなと思います。  それから、今最後の方でお触れになった点につきましては、私もあれば二回目に行ったときですか、東灘区の御影公会堂、その近くにテント村がございました。その近くで、もう皆さん、いろんな立場の方、地主さんもいたり、大家さんもいたり、たな子さんもいました。何か相談をしていまして、近く罹災都市借地借家法のあれがされるはずだ、そういうことはもう知っていらっしゃいまして、ただそれだって、おれたちの場合大家が建ててくれるかどうかわからないときに、それだけじゃ困るんだというような話もそこでもお聞きしまして、これまた報告もしておきましたが、確かにそういういろんなあれは、それぞれ聞いたり感じたことは、閣議も何回もあるわけですから、そういうところで御報告をしておかなくちゃならぬ、こう思っております。
  66. 赤羽一嘉

    赤羽分科員 ありがとうございました。
  67. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて赤羽一嘉君の質疑は終了いたしました。  次に、西村眞悟君。
  68. 西村眞悟

    西村分科員 私は、九段の遺族祈念館、それから大阪の国連障害者十年記念施設、この二点についてお伺いいたします。  まず九段の仮称・戦没者祈念館のことでございますけれども、これは十数年前に遺族会が要望して、国が建設という形になって平成七年に完成予定でありましたけれども、第一、名称がどうなるのか、デザイン、これは同じようなデザインがあるということでいろいろ行き詰まっておる。それからもう一つ、その中に旧軍関係、敷地は近衛師団ゆかりの地でございますし、その碑、銅像等をどうするのか、それから戦争史観、歴史観については、御存じのとおり我が国は極東軍事裁判という判決がありまして、これは勝った国が負けた国を裁いた裁判ですから、この裁判史観によることは潔しとしない、けしからぬというふうな人々もある。それを受けまして、私自身も昨年八月三十一日に、そのような遺族会の方々を中心とした意向を、私立ち会いの上で厚生省にお伝えしたのです。  今ざっと申し上げても、現在、このような四点についていろいろ錯綜した意見がある中で、平成七年度完成予定のこの施設が、この企画検討委員会の議論も含めてどのような状態になっておるのかということをちょっとお知らせいただきたいと思います。     〔越智(伊)主査代理退席、主査着席〕
  69. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 今先生からお話がございましたように、この建物につきましては、平成四年に戦没者遺児記念館基本計画検討委員会から提出されました基本構想・計画を踏まえまして、平成五年度予算においてその建設が認められて、現在その建設準備を行っておりますが、その建設に当たりまして、デザイン等に対します地元の住民の反対あるいはその展示事業の内容等に対するいろいろな御意見等がございまして、現在はまだ着工に至っていないところでございます。  このため、当初計画を踏まえながらも、いろいろな御意見に対してできるだけおこたえできるような形で何とか円満な事態の解決ができないかということで、現在有識者から成る、今お話ございました企画検討委員会というようなところで、どのような形で、当初構想と整合性をとれるものとしながらも少し修正のような形がとり得ないのかどうかというような形について、実は昨年来検討をいただいているところでございます。  この間、企画検討委員会でどのような御意見があったかというようなことの御質問がございましたが、企画検討委員会でも非常にフリーに御意見をいただいているところでございますが、まず本施設のデザイン等につきましては、地元住民よりの、建設予定地の周辺の歴史的な景観との調和の観点から、その見直しの要望が大変強いこともございますので、企画検討委員会では、設計者の立場というものも十分御配慮いただいた上で、設計条件のあり方等を含めて一部見直しの可能性がないかどうかということを具体的に建設省と詰めたらどうか、こういう御議論がございまして、この点につきましては、目下事務的に具体的な詰めをさせていただいておるところでございます。  また、展示内容につきましては、さきの大戦の歴史的な評価をめぐって、異なる立場からいろんな御意見が寄せられていることを受けまして、そういういろいろな議論がある問題につきましては、一方の方向に偏したそういう歴史的な評価を含む可能性があるものについての展示はちょっと無理ではなかろうか、こういう御議論が企画検討委員会の中で出ております。そのようなことを踏まえまして、これからの展示をどうしたらいいかということはさらにもう少し詰めていきたい、こういうふうに考えております。  またもう一点、お話のございました近衛師団の慰霊碑等の問題につきましては、これはできれば、もしもここに建設がうまく着手できますならば、その前に御丁重に移設をさせていただきたい。移設場所としましては、恐らく靖国神社の敷地内が適切なのではないか、こう思っておりますけれども、そういう形で移設が可能かどうかは、これはまた具体的な打ち合わせをさせていただいているところでございます。
  70. 西村眞悟

    西村分科員 内容について、いろいろな議論が企画検討委員会であって、詰めておられるというところですが、この内容がやはり極めて微妙である、御承知のとおりでございます。  私の立場は、我々日本人、また日本のマスコミは、冷戦終結後世界に興るナショナリズムについては、ある意味では、それがあるということを前提にして、よいか悪いかではなくて、それを評価するというふうな論調があるわけですけれども、翻って、我が国のナショナリズムというものに対しては、目を閉じれば世界がなくなるという方向で、余りにもそれを見詰めようとしないのではないか。これは、その場所がやはり皇居、靖国神社を結ぶ場所にあるということが一点。展示の内容について、やはり三百万以上の方々が亡くなっておって、その方々の親兄弟、子供さん方がまだおられる、そういうところで、非常に私も注目しておるし、この遺族記念館を建てていただきたいと望んだ方々も注目されておりますので、もう少し具体的にお聞かせいただけませんでしょうか。
  71. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 この建物がそもそも御要請をいただきましたのが、スタートといたしましては、やはり戦没者遺族、特に遺児の方々の慰藉施設としての位置づけを持って御要請をいただいたところでございます。その基本的な視点というのは、やはり私どもは忘れることはできないだろうということがまず第一点でございます。  それから次に、その施設厚生省の所管としてっくられることになったということでございまして、たまたま建設に当たりまして、戦没者追悼平和祈念館という大変立派な名前をいただきましたものですから、非常に大きなといいますか、実体を超えたような大きな形でイメージがあったのではなかろうかという感じがありますが、あくまでも厚生行政の範囲内でやらなければならない事業である、こういう位置づけがやはり必要なのではないかというふうに私ども判断をいたしております。  そのようなところから考えますと、厚生省の戦没者遺族の援護施策の一環として、例えば戦争に関する歴史的事実のうち、主に戦没者遺児を初めとする戦没者遺族の経験した戦中、戦後の国民生活上の労苦といったものにかかわる資料、情報を中心として、それをあるがままに収集、保存し、そして一般に提供する、そして後世の方々に戦中、戦後の国民生活上の労苦を知る機会を提供しよう、そういうようなものに位置づけたらどうかなというのが基本的な検討の方向でございます。  またこれは固まっているわけではございませんし、実際の内容といたしましては、これは建物ができた後に具体的にやることでもございますから、必ずしも建物ができることよりも前に確実に詰めなければならないかどうかというような点もございますので、その点につきましては、建物の建設計画とは少し切り離して慎重に詰めてまいりたい、こう考えております。
  72. 西村眞悟

    西村分科員 ケネディの就任演説の中に、アメリカ青年の墓標は世界じゅうに散らばっておるという、誇りを持った一節があるわけですけれども、遺族から見て、父また夫、どの戦域でどのようにして亡くなったのであろうか、それは西太平洋上に散らばっておるではないかこのような思いがいまだあることは御存じのとおり。  今お聞きしましたら、国民生活上の労苦、これのみを御説明されたわけですが、この郷里の、この地域から出た部隊はどこに転戦していったのであろうか、対戦した相手はだれであろうかそうして対戦した地域はどういう風土で、どういうところであったんだろうか、その地域は、日本が敗れてからいかなる運命をたどったんだろうか。このような、ある意味では、またイギリス、オランダ、フランス等が入ってきて、また独立していくという波の繰り返しがあるわけですけれども、その押し寄せる波の第一撃を与えたのが日本であることは確かでございます。そういうふうな、今私が申し上げたように、国民、内地の労苦と、そしてその労苦を背負って外地で戦った兵士、この部分についてのトレース、そこから仕入れるというふうな構想はおありですか。
  73. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 これは、今回のまさしく施設の基本的な発想の観点が、戦没者遺児あるいは遺族の慰藉施設という関係で、いわゆる基礎資料としての収集、整理をいたしまして情報提供ができるような形でそういうものに十分こたえていきたい、こう考えております。
  74. 西村眞悟

    西村分科員 名称、仮称でございますね。これが実質上、侵略戦争反省謝罪祈念館等々になるのを一番遺族会の方々も恐れておりますし、ある意味では、日本人であるということを、自国の歴史を誇りを持って語ることが何が悪いのかと思っておる多くの日本人もその懸念を持っておるわけです。  最後に確認いたしますけれども、やはり戦争の悲惨、戦争は悲惨でございますけれども、それを繰り返したのが人類の歴史であったわけでございます。ただ我がした戦争のみが悲惨であってという観点からの反省謝罪祈念館等にならないように、厚生省の立場で、十分今お聞かせいただいたことを貫き通していただきたい、このように思います。  具体的にこれ、平成七年に完成予定というのは、これからどうなるわけですか。
  75. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 いろいろな形で今まで工事が着手できなかったという事情があるわけでございますけれども、何とかできるだけ早く着手できるように方策を講じていきたいということがまず第一点でございますが、しかし、いかに急いで、例えば仮にあしたからやったといたしましても、これだけの規模のものを平成七年度中に完成することはちょっと無理な模様でございます。また、先ほども申し上げたように、内容的な問題につきましても、いろいろとさらに詰めて検討しなければならない、こういう点もございます。  そういうふうなことから平成七年度につきましては、もう一遍そういう点を振り返って、少し、十分詰める検討期間も設けたいということも含めまして、債務負担行為を平成七年度までであったのをさらに二年間延長して、平成九年まで債務負担行為を延ばすような形で今予算を御提案申し上げさせていただいております。
  76. 西村眞悟

    西村分科員 おっしゃるとおりお進みいただいて、それが妥当だと私は思っております。箱物をつくるのみが目的ではなくて、歴史的評価というものは、ロシア革命でも中国革命でも、スターリン時代の評価に関してもいろいろ変わってくるわけですから、歴史的評価が変わるという前提で、ただ、その客観的なもの、一人の日本人が兵士として亡くなっていったことは確かでございますから、それを伝える客観的なものをお残しいただく方向に進んでいただきたい、このように思います。  次に、大阪府に計画されております国連障害者の十年の記念施設についてお伺いいたします。  これは、昨年の八月に厚生大臣が、完成予定は平成十年である、このように発表されておりますのですが、この設計費等は三億円計上予定とお伺いしておりましたけれども、七年度当初予算では計上されていない。厚生省におかれては、平成十年完成を目指す、これは堅持されておりますのですか否か、一言お伺いいたします。
  77. 佐野利昭

    佐野(利)政府委員 それにお答えする前に、ちょっと先ほど間違いがございましたので、訂正をさせていただきたいと思います。  九段のあそこにあります碑の移転先でございますけれども、それぞれいろいろな碑がございますが、その碑のゆかりの地を探しましてそちらに移転する。ですから、神社仏閣ではなくて、ゆかりの地をそれぞれ探してそこに移させていただくという形で、今事務折衝をさせていただいているということでございます。  それから、今の点でございますが、私どもといたしましては、国際障害者年も随分はるか昔になってしまいましたものですから、できるだけ早くつくりたい、先生の御指摘のように、できれば平成十年という当初の構想のとおりにつくっていきたいということで、まだ希望を持っております。  ただ、御承知のように、ことし当初概算要求では設計費まで、もう実施設計までを概算要求をさせていただいたのでございますけれども、大変社会経済情勢が変わってまいりましたし、また、これからの施設の将来のあり方というところをよく見きわめなければならないという点もございまして、ちょっとそういう面では一年おくれみたいな形になりましたので、とにかく十年を一応視野に置きながらも、できるだけ早くやりたいということで御理解をいただければと思いますが。
  78. 井出正一

    井出国務大臣 先ほど北側議員から同様のことを質問いただきまして、そのときにもお答え申し上げたのでありますが、ちょっと繰り返しになりますけれども、実は、昨年の夏、概算要求で財政当局に要求いたしました。その直後に、ちょうど九月に私大阪に行く機会がございまして、知事さんとお目にかかったときに、大変喜ばれ、また期待もされまして、そのときにこどもの城ですか、同時に計画されている、その御説明も受けながら、少し私もいい気持ちになったせいかこどもの城の方は、最近の子供さんは余り素足で歩かなくなってしまったから、そんな機会もここでつくられたらいかがですかというようなお話をしたわけでございます。  今年度の予算編成に当たりまして、ただいま局長から申し上げましたように、ちょっと概算要求というわけにはいかなくなってしまいまして、私も実は内心じくじたるものがあるのですが、先週大阪をお訪ねして、知事さんや副知事さんともお目にかかる機会もございました。震災の視察でしたから、余りこれには深く触れられませんでしたが、知事さんから、今後ともよろしく、こんな御要請だけは受けました。  関西国際空港も開港して、いよいよあの地が格好の場所にもなるわけですし、また、この障害者十年、終わってもう何年かたってしまいますから、できるだけ早くつくらなくちゃならぬと思いまして、次なる年の概算要求には全力を尽くすつもりであることを申し上げておきたいと思います。
  79. 西村眞悟

    西村分科員 北側議員が同じ質問をされたというのはわかっていて、北側議員と同じ質問をお伝えするのもまた、大阪でいろいろの期待があるということをお伝えすることだということでさせていただいたのです。  私の兄が実は小児麻痺でございまして、空襲で母親が逃げたときに早産したわけでございます。神戸被災地等を見まして、私も五十キロばかり歩いて三回ほど入りましたけれども、自分の兄のような体の人が仮設の便所でどうしているのだろうかといつも思うわけでございます。  堺、私の選挙区でございますけれども、そこにこの施設が来るということで、非常に私も個人的に、議員になる前から期待をしておりました。今いろいろな御検討をされておることは御承知のとおりでございますけれども、これは大臣も申されたように、こどもの城というのがあります。また、駅舎等そこへ行くまでの町づくりをずっとモデル地区として進めるという構想を持ってございますから、施設の箱物だけじゃなくて、箱物と有機的につながるこの地域全体のいわゆるイメージが非常に重要だ、それがモデル地区なのだろうと思うのですね。  この意味で、歩調を合わせていただいて全体的にでき上がるということがどうしても必要でございますので、この平成十年に完成ということは、今いろいろ御事情があるのはわかりますけれども、厚生大臣として御努力を切にお願い申し上げる次第でございます。
  80. 井出正一

    井出国務大臣 そのつもりでおります。
  81. 西村眞悟

    西村分科員 時間を余しておりますが、この二点の御要望、種類が違いますけれども、よろしくお願いする次第でございます。  これで終わります。
  82. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして厚生省所管についての質疑は終了いたしました。  午後二時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十六分休憩      ————◇—————     午後二時開議
  83. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  主査所用のため、その指名により私が主査の職務を行います。  労働省所管について、政府から説明を聴取いたします。浜本労働大臣
  84. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 平成七年度労働省所管一般会計及び特別会計予算について、その概要を御説明申し上げます。  労働省所管の一般会計は四千六百五十一億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと四十六億円の増額となっております。  なお、雇用保険国庫負担金について、三百億円を控除して労働保険特別会計雇用勘定に繰り入れる特例措置を実施することとしております。  次に、労働保険特別会計について、各勘定ごとに歳入歳出予算額を申し上げます。  労災勘定の歳入予算額は二兆千六十九億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと千九百四十四億円の減額となっております。  これは、保険料率の改定に伴う保険収入の減額などによるものであります。  また、歳出予算額は一兆四千三百三十一億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと九十億円の増額となっております。  雇用勘定につきましては、歳入予算額、歳出予算額とも三兆九百五十八億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと千十六億円の増額となっております。  徴収勘定につきましては、歳入予算額、歳出予算額とも三兆五千九百四十九億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと千百九十五億円の減額となっております。  石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計の石炭勘定のうち労働省所管分の歳出予算額は百六十一億円で、これを前年度予算額と比較いたしますと一億八千万円の増額となっております。  平成七年度の労働省関係予算につきましては、経済社会構造の変化等に対応した雇用対策の推進、職業生活と家庭生活との両立と女性の能力発揮を可能にする環境の整備、働きがいがあり安心して働ける勤労者生活の実現、障害者等に対する対策の推進、国際社会への積極的貢献など労働行政の重要課題に的確に対応していくための予算措置に十分配慮しつつ、財源の重点配分に努め、必要な予算を計上したところであります。  以下、その主要な内容について、概略を御説明申し上げるべきところでございますが、委員各位のお手元に資料を配付してございますので、お許しを得て、説明を省略させていただきたいと存じます。  何とぞ、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。
  85. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 この際、お諮りいたします。  労働省所管関係予算の重点項目については、その説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。         —————   〔浜本国務大臣説明を省略した部分〕  以下、その主要な内容について、概略を御説明申し上げます。  第一は、経済社会構造の変化等に対応した雇用対策の推進に必要な経費であります。  円高、国際化の進展等による産業構造の変化により、一部の業種においては、雇用量の減少を余儀なくされ、労働移動が避けられない状況にあります。このため、これらの業種における失業をできるだけ防止すべく出向、再就職のあっせんによる雇用機会の確保や労働移動の際の能力開発に対する支援対策を推進することとしております。  また、依然として厳しい雇用情勢に対処するため、平成六年度限りの措置である「雇用支援トータルプログラム」を雇用の動向を見つつ当面継続して実施することとしております。  さらに、大学等の新規学卒者を取り巻く就職環境は大変厳しい状況にあることから、未就職卒業者に対する職場体験プログラムの実施、合同選考会の開催や機動的な職業能力開発の実施といった就職支援対策の強化を図ることとしております。  そのほか、急速な高齢化の進展に対応すべく、六十歳定年を基盤とした六十五歳までの継続雇用推進、シルバー人材センターの増設等高齢者対策を総合的に展開するとともに、構造変化に対応した職業能力開発の推進や改正雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付及び育児休業給付の円滑かっ確実な実施などを図ることとしております。  これらに要する経費として二兆四千百八十二億円を計上いたしております。  第二は、職業生活と家庭生活との両立と女性の能力発揮を可能にする環境の整備に必要な経費であります。  少子化・高齢化が進む中で、育児や介護の問題は、労働者が働き続ける上で重大な問題となっております。このため、介護休業制度導入奨励金を創設するとともに、育児・介護費用助成金の創設、両立支援セミナーの実施など育児・介護等を行う労働者が働き続けやすい環境づくりを推進するほか、重度被災労働者に対する介護施策の充実を図ることとしております。  また、女子学生の均等な就職機会の確保を含め、男女の雇用機会均等の確保対策を推進することとしております。  さらに、少子化・高齢化が急速に進む二十一世紀に向けて働くことを中心に女性の社会参加や地位向上を支援するため「女性の歴史と未来館」(仮称)を設置することとしております。  そのほか、パートタイム労働者の雇用改善等のための援助事業やパートバンクの増設等による労働力需給調整機能の強化などを行うこととしております。  これらに要する経費として三百六十九億円を計上いたしております。  第三は、働きがいがあり安心して働ける勤労者生活の実現に必要な経費であります。  労働時間の短縮は、豊かでゆとりのある勤労者生活を実現するための重要な課題であります。このため、中小企業の週四十時間労働制実現に向けた支援措置の拡充、年次有給休暇の取得促進などを行うこととしております。  また、職場における安全と健康を確保するため、建設業における労働災害、交通労働災害をはじめとする労働災害防止対策の一層の推進を図るとともに、健康確保対策、快適な職場環境の形成などを推進することとしております。さらに、労災保険制度につきまして、経済社会の変化に対応した改善を図ることとしております。  そのほか、中小企業退職金共済制度の見直し、中小企業集団の安全衛生活動への支援等の中小企業の魅力づくり対策や勤労者福祉充実のための対策を推進することとしております。  これらに要する経費として一兆二千八百六十一億円を計上いたしております。  第四は、障害者等に対する対策の推進に必要な経費であります。  雇用率制度の厳正な運用を図るとともに、重度障害者雇用対策及び職業リハビリテーションの充実などを行うこととしております。  また、特別な配慮を必要とする人々に対する職業生活援助等対策についても、それぞれきめ細かな対策を推進することとしております。  これらに要する経費として千七億円を計上いたしております。  第五は、国際社会への積極的貢献に必要な経費であります。  国際情勢の変化に対応し、国際協力を積極的に展開するとともに、技能実習制度の円滑な実施、職業能力開発短期大学校への外国人留学生の受入れなどを行うほか、外国人労働者問題への適切な対応を図ることとしております。  これらに要する経費として百二十七億円を計上いたしております。  第六は、行政推進体制整備等に必要な経費であります。  我が国が内外の環境変化の中で今後とも発展していくためには、安定した労使関係を維持発展していくことが不可欠であり、産業労働懇話会の活用等により労使の相互理解と信頼を強化するための環境づくりを推進することとしております。  また、経済社会の変化に伴う行政需要に的確に対応していくため、行政体制等の一層の整備を図っていくこととしております。  以上、平成七年度労働省所管一般会計及び特別会計の予算について概略を御説明申し上げました。  何とぞ、格別の御協力を賜りますようお願い申し上げます。
  87. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 以上をもちまして労働省所管についての説明は終わりました。         —————
  88. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑時間はこれを厳守せられ、議事の進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局に申し上げますが、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。秋葉忠利君。
  89. 秋葉忠利

    秋葉分科員 社会党の秋葉でございます。  今回の分科会は、いろいろと審議疲れというところがあるんでしょうか質問の通告数も少ないようですし、出席も余り芳しくありませんけれども、それを補って余りある質の高い質疑をさせていただければと思っております。  きょうは、実は、女性の雇用の問題、社会的に、古くは男女同権というところから始まって、最近は女性が積極的に社会に参画する共同参画社会というようないろいろな言葉がありますけれども、その中で、やはり一番中心的になっている問題は、女性が職をどのように得るのか、女性に対して職場での賃金あるいは昇進その他の差別がある現状をどういうふうに変えていけばいいのか、そういったことだと思います。  非常に重要な問題ですけれども、難しい問題でもありますので、もちろん労働省としても、あるいは企業、その他労働組合も含めてさまざまな努力をしてきましたけれども、なかなか解決が難しいということで、幾つかの新しいアイデアをこの際真剣に検討してみてもいいのではないか。そういう意味で、問題提起をさせていただきたいと思います。  まず、冒頭に労働大臣に伺いたいわけですけれども、これまでの、ただ単に労働省というだけではなくて、いわば日本全体としても当然力を入れてきた分野ですけれども、女性の雇用を促進する、そして本当に男女平等社会をつくるという上で、これまでの労働省を初め政府、そして日本社会の取り組み方、そして今後、やはりこういった方向を一つの目的としてきちんとした対処をしていく、そういった方向性について、基本的な点、大臣はどうお考えになっているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  90. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 お答えいたします。  秋葉先生が日ごろから女性の社会参加を促進する立場に立って活躍されておることについて、心から敬意を表したいと思います。  お尋ねのことでございますが、二十一世紀に向けて、女性が働くことなどを通じまして社会に参画し、その能力を十分発揮していただくことは極めて重要なことであると思います。このため、雇用における男女の均等な機会と待遇の確保や労働者の職業生活と家庭生活との両立を支援するための施策の推進に懸命に取り組んでおる次第でございます。  特に、来年度におきましては、両立支援対策を総合的、体系的に実施することといたしておりまして、介護休業制度の法制化、育児や家族の介護を行う労働者に対する支援措置の実施などを内容といたします育児休業法の改正法案を今国会に提出しているところでございます。今後とも女性の社会参画を促進するための方策に全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。
  91. 秋葉忠利

    秋葉分科員 ありがとうございました。  そういった方向で、本当に大きな問題ですので、一つ一つ着実な進歩を遂げるよう労働省としても今後とも頑張っていただきたいと思いますし、私どももぜひ応援をさせていただきたいという気持ちでございます。  具体的な問題提起から始めたいと思うのですけれども、昨年、特に夏、話題になったことだと思いますけれども、女子学生、大学生それから短大それから専門学校といったところだと思いますが、女子学生の就職難が非常にマスコミ的なトピックとして大きな問題として取り上げられたわけですけれども、この点について具体的に、まずこれは文部省にデータを伺うべきだということでお願いいたしましたけれども、確かに、マスコミで報じられる限り、それから私の周囲でいろいろと話を聞く限り、女子学生の就職は難しい状況にありましたけれども、データとしてはどうなのか。それ以前の傾向に加えて、昨年の男女別の就職状況をどういうふうに把握しておられるのか、その点を伺いたいと思います。
  92. 北村幸久

    ○北村説明員 文部省でございます。  今先生質問の点でございますが、私ども、毎年学校基本調査で卒業後の動向の調査をいたしております。そして、この基本調査の数字は、まず最新データ、大変申しわけございませんが、先年の、九四年の春の卒業生の動向でございますが、大学生につきましては学部でございますが、その調査の中で、大学全体で卒業者に対します就職した者の割合、これを我々就職率と呼んでおりますが、それが大学の学部で全体で七〇・五%でございました。そして、男女別の内訳でございますが、男子は七一・八%の者が就職をした、女子はそれに比しまして六七・六%といった状況になっております。この経年の変化でございますが、一時は就職率が女子の方が上回る事態がございましたけれども、最近の経済情勢の動向によりまして、昨年の四月の段階では今申し上げたような率になっております。  なお、今春の三月卒業予定の学生の内定率調査を、私どもも昨年の十二月一日現在でさせていただいています。そのとき、昨年の十二月一日でございますが、大学の学部で申しますと、内定を見ている者が全体で八五・四%でございました。男子は八九・〇%でございます。それに比しまして女子は七七・八%、そのような状況になっております。
  93. 秋葉忠利

    秋葉分科員 その状況が昨年の夏以降、つまり今春の卒業生に関しては、男女のアンバランスが特に顕著になったというのが一般的な見方だと思いますけれども、そのアンバランスを解消するためにやはり一番効果があるのは、雇う側、会社側、企業側がより積極的な政策をとることだと思います。それから、消極的な意味では、学生に対する進路指導といったようなこともあると思いますけれども、こういった点について労働省それから文部省としては、雇う側、雇われる側に対してそれぞれどのような方針で、どのような施策をこれまで講じてきたのか、簡単にまとめて報告をしていただければと思います。
  94. 松原亘子

    松原政府委員 労働省におきましては、女子学生が男子学生に比べて不利な取り扱いを受けることのないよう、男女雇用機会均等法に基づく指針というのがあるのですが、これを昨年の三月に改正をいたしまして強化をいたしました。女子学生が不利に取り扱われるという中には、女性だから採用されないといったような、雇用機会均等法施行当初からそういったことは企業に改めてもらうようにということで指導してきたことも入っておりますけれども、中には、企業についての情報が女子学生にはなかなか来ないといったようなこともあったわけでございます。そういうことも踏まえまして、指針の改正をし、その周知徹底を図ってきたということが第一点でございます。  また、就職活動期の六月から十月に、全国の婦人少年室、私ども地方出先機関でございますが、婦人少年室に女子学生のための就職問題についての特別相談窓口というものを設置をいたしまして、女子学生からの相談に応じますとともに、女性だからということでいろいろ不利益に取り扱われるという企業があった場合につきましては、必要な指導も行ってきたわけでございます。また、就職活動の時期、七、八月だったと思いますけれども、この時期に大臣、政務次官が率先して事業主団体に、雇用機会均等法に反するような取り扱いがなされることのないようにということを要請を行ったというようなこともあったわけでございます。  今後でございますけれども、これまでやってきましたことをさらに来年度におきましてもやってまいりたいと思っております。  では、なぜ女子学生について就職の困難な状況が大きく出ているか、いろいろな理由があるわけでございますけれども一つは、企業が女性を本格的な労働力として見ていないという問題もございますが、もう一つは、女性自身の側にも職業選択において、やはり女性向けの仕事ですとか一般事務職を志向するといったようなことがございまして、これが企業側の需要とマッチしていないといったようなこともあるわけでございます。そういうことから、女子学生がこれまでの固定的な考え方にとらわれることなく、より広い視野を持って職業選択を行うようにということから、意識啓発のためのセミナーなども来年度新たにやってまいりたいと思っているところでございます。
  95. 北村幸久

    ○北村説明員 文部省でございますが、先ほどお話がございましたように、企業側あるいは経済団体に対しまして労働大臣初め要請活動をしていただいているわけでございますが、私どもも、学生を送り出す立場から、例えば昨年の夏、各種経済団体等企業側に対しまして、新規学卒者の採用の確保、特に女子学生の確保といった要請をいたしました。そして、私ども文部省、大学等と連携いたしまして、大学側の意向といたしまして、日経連等と話し合う場所もございますので、大学側のそういった就職の動向などを踏まえましてお話し合いをし、女子学生の採用の確保をお願いをしておる。  私ども文部省といたしましては、大学等に対してのことでございますが、学生に対します就職の指導、職業指導というものが大変重要な課題でございまして、各大学等におきまして、それぞれの就職のガイダンスあるいは講習会、個別の相談、そして就職関係の資料の作成、配付といったことで、それぞれの学生本人の能力、適性に応じました職業選択ができるように就職指導を行っているわけでございます。最近の女子学生の就職難ということを踏まえまして、特にそういった関係の指導の強化、そして相談体制の強化といったことを各大学に要望しておるという状況でございます。
  96. 秋葉忠利

    秋葉分科員 実はこの問題について、労働省、文部省でやっておられること、確かに難しい問題ではありますけれども、非常に不十分だと思われますし、それから問題の焦点の当て方が少々ずれているのではないかと思います。その点について議論を始めると時間がとてもかかりますので、きょうはその点について問題提起をするわけではありませんので割愛いたします。  ただ、一、二点申し上げておきたいと思いますけれども、例えば企業に指針を徹底させるとか、窓口をつくるとか要請を行うとか、そういったことも大事だと思いますし、今後も続けていただかなくてはならないことは当然ですけれども、しかしながら、女子学生の就職が難しいということ、これは一、二年起こったことではなくて、今まで非常に長期的な傾向として何十年と続いてきたことです。  その何十年と続いてきた中には、しかも、日本の社会における雇用の、建前の部分ではとてもとらえ切れない、例えばコネによって就職をする以外には入れない会社があるとか、そういったさまざまな日本社会特有の本音の部分での要素というのが非常に多くある、そんなことは御存じだろうと思います。しかしながら、こういった委員会では、建前の部分しかおっしゃらないのかもしれませんけれども、そういった本音の部分で実質的に動いているところが大きいこういった男女の差別の問題について、建前だけでやっていますから、そしてこれからもその建前を続けますというのでは、とてもとても長期的な大きな傾向をとどめることはできないということ、これはまた常識でおわかりのことだろうと思います。  それから、例えば進路指導にしても、この統計を見てはっきりと言えることは、例えばきちんとした、きちんとしたというのはおかしな話ですけれども、職業と非常に関係深い専攻を行っている、例えば理学、工学、農学あるいは保健の分野といったようなところでは女性の方が就職率が男性よりもいい分野がある。それから、教育においては男女ともそれほど差がない。差があるところはどこかというと、人文と社会科学であるといったところを考えれば、就職指導あるいはそれ以前の問題として進路指導の問題として、大学卒業後就職をする気があるのであれば、それは当然就職を考えた上での、一生の進路を考えるという形での大学の受験を、当然高校あるいはそれ以前の段階として、進路指導の一部として行うべきではないか。ところが、日本の社会では、大学受験というのは大学に入りやすいところが第一で、その先のことは全く考えないで大学を選ぶ、専攻を選ぶといったことに例えばなっている。そういうことを考えても、なすべきことは非常にたくさんあるように思いますけれども、ほとんど手がついていない。  そういったところに非常に不満が多いんですが、きょう私がここで提案を申し上げたいのは、そういった法律といいますか、建前の部分で、これが正しいことだからやりましょう、あるいはやりなさいといったことではなくて、自然に、私たちが経済的な要求に従って利益を上げるという企業の論理をそのまま当てはめて、一生懸命努力をすることが、そのまま例えば男女の雇用の比率を一対一に近づけることになるようなシステムを実は導入することができるのではないか、そういったアイデアを提案してみたいと思っております。そういったシステムによって、時間はかかるかもしれないけれども、ある程度経済的なインセンティブを与えるといったようなことが、実はこれからの非常に複雑化する社会の中で役に立つのではないかということです。  私がここで申し上げているのは、私のアイデアではありません。大学時代からの友人の北沢宏一という、もともとはこれは化学工学の権威ですけれども、今東大で教えておりますけれども、彼とそれから彼の奥さんと二人でこの問題についていろいろと長い間考えているうちに、こういうシステムがいいのではないかということを提案してくれたものです。  簡単に申し上げますと、課税のレベルで、各企業体において、男女の常勤雇用者数の比率が一対一に近づけば近づくほどその企業に対する課税率を低くする、つまり、男性一〇〇%の会社と、男女比が一対一になっている会社とでは、一対一の会社の方が税金が安い、そういった税制を事業体単位で採用してはどうか。そういったことを行うことによって、例えばどうしても男性だけでなくちゃ仕事ができないんだというところは、ある程度の、逆に言えばペナルティーが科せられるということですけれども、ペナルティーとは考えずに一対一に近づけることによって報奨金が与えられるというふうに考えれば、今までどおり仕事をしたいところはそのままでいいし、少しでも報奨金を得たいということで努力をしよう、そのためには企業の中で、会社の中で少し投資をしよう、その投資分に見合うぐらいの利益というものは、この税金の率が安くなることによって回収できるはずだ、そういうふうに考えてくる会社も出てくる。そういった経済効果を導入するやり方があるのではないか。これが、簡単に言うとそのアイデアです。  これをすぐあすから導入するといっても非常に問題があると思いますし、何もこのままの形ではなくてもいろいろな変種を考えて、こういった形での雇用促進策ということを考えることはできると思いますけれども、まず、例えばこういったシステムを導入するということについて、これから検討してみてもいいとか、あるいはそんな素人考えはだめだから最初から門前払いにするとか、とりあえず、例えばこういうアイデア、恐らくこれは私の友人の北沢氏が初めて考えたアイデアではないと思います。いろいろなところで出てきて、事によったらもう労働省の中でも十分検討を加えて、やはりこれこれこういう理由でそれはうまくいかないんだという意味があるかもしれない、あるいは検討中でこれから頑張って少し試験的にやってみようということをお考えになっているかもしれない、そのあたりをまずお聞かせいただければと思います。
  97. 松原亘子

    松原政府委員 私どもは、女性が雇用の場で能力を十分発揮できるようにするためには、雇用における各種の機会、採用される機会ですとか、昇進できる機会、教育訓練を受ける機会、そういった機会が男女を問わず等しく確保される状況、すなわち機会均等を確保するということが極めて重要だというふうに考えております。そして、その機会が均等確保されれば、あとは個々人の意欲と能力に応じた平等待遇を受けられるという、こういったことを実現することが極めて重要だというふうに考えているわけでございます。  男女雇用機会均等法という昭和六十年に成立いたした法律でございますが、この雇用機会均等法も、こうした考えに基づいて雇用における男女の機会の均等の促進を図るということを目的としているわけでございます。  また、女性の、じゃ、職業に関する意識はどういうものかということを一万見てまいりますと、約六割の女性が望ましい仕事の仕方というんですか、就業の仕方として選んでおります答えは、結婚や出産で一時期家庭に入り、育児が終わると再び職業を持つ方がいいという職業中断型といいますかそういった働き方がいいという人が約六割を占めているという状況でございます。  それから、今、先生常勤の雇用者比率というふうにおっしゃいましたけれども、女性の場合にはパートタイムで働いている方がたくさんおられます。そういうパートタイム労働で働いている方になぜパートを選択しているかということを聞きますと、多くの方が選んだ答えは、自分の都合のいい時間に働きたいとか、勤務時間や勤務日数を短くしたいといったような理由を挙げているわけでございます。  こういった、一方で機会の均等を確保するということと、また一方、女性の職業についての意識が今申し上げたようなことだということなどを考え合わせますと、あらかじめ常勤の男女の雇用比率といいますか、雇用者の男女比率を一対一、これは仮に一対一じゃなくても二対一でも同じことだと思いますが、そういったことをあらかじめ設定し、それを達成することを目的として政策を検討するということは、私どもは必ずしも適当とは言えないというふうに考えているところでございます。
  98. 秋葉忠利

    秋葉分科員 今私が申し上げたのは、まず施策として経済的なインセンティブを与えるようなシステムを考えるべきであるということをまず提案しているわけでございます。それだけでは具体性がありませんので、具体的に一つの値を設定して、傾斜的に企業の課税比率を変えていくというような方法もあるのではないかということを申し上げました。  それに対する反論として出てきたのは、非常にその中のテクニカルな部分で、一対一というところに的を合わせて、それでは適切ではないというふうにおっしゃいましたけれども、私がそもそも申し上げているのは、今のお答えにあったような、要するに建前論ではこれは動かないだろうというところでございます。  就職の機会が均等になるようにその機会を確保するというふうにおっしゃいましたけれども、これは何か株を売り買いするのと同じで、株でもうかる方法というのは、安いときに買って高いときに売ればいいんです。もうそれと同じで、男女の雇用の機会を平等にするためには、機会を確保すればいいんです。そのとおりです。問題ありません。だったらなぜそれができないんですか、そこが問題だということを申し上げているわけです。  あるいは、人間は水の上を歩くことができる、右足が水の下へ潜る前に左足を踏み出せばいいんだ、左足が水の下へ潜る前に右足を出せばいいんだということも、これは昔から言われていることですけれども、だったらなぜ人間は飛べないのか。それは、そういう言葉あるいは建前で言われていることと現実との間に乖離があるからです。  その現実を変えていくために、例えば経済的なインセンティブというのは有効であるということを申し上げているので、そこのところの議論を一足飛びにされてしまっては話にならない。経済的なインセンティブではだめだというのであればそれはそれなりの議論はできますし、試してみたけれどもこういう結果があるというんだったら話になりますけれども、まだそこまでも議論をされていないような気がいたします。  女性がパートを選ぶという話ですけれども、それだったらなぜ女子大生の就職難ということが起こるんですか。みんなパートを選んでいれば、別に女性がパートを選んでいるから、だから常勤のところはそれほど比重が多くないというような議論に聞こえますけれども、それも論理的には非常に大きな問題があります。  一つ一つ反論したいところですけれども、時間がありませんので、税金を例えばこういった政策目的のために使うということに、大蔵省としては、今まで私が議論をさせていただいた何人かの方は、それはやはり税の本来の目的から外れるからだめだという議論が非常に多かった。しかし、それは逆に言うと、現在の税制であっても、ステータス、現状を維持するという政策目的のために一般に役立ってもらうのがたくさんあるわけですし、より柔軟な、より大きな枠組みから、やはりこういった形の税制を部分的にでも採用するような方向で国全体として考えていくべきだと思いますけれども、大蔵省、大蔵としての頑迷固陋な考え方をお聞かせいただいても結構ですし、あるいは柔軟な、これからの二十一世紀の日本を新しくデザインし直すために大蔵省も柔軟に頑張っているというところを示していただければもっと結構だと思いますが、こういった考え方について、とりあえず大蔵の考え方をお聞かせください。
  99. 藤岡博

    ○藤岡説明員 税制面の立場から先生のお尋ねについてお答え申し上げたいと存じます。  先生御承知のとおり、現行の法人税は、基本的には商法、企業会計の取り扱いを前提に、収益から費用を差し引いた利益、税法上は所得でございますが、これに税率を適用して課税することとなっておるわけでございます。したがいまして、法人税は事業活動の結果の所得に対する課税で、この仕組みを動かすことは困難ではないかと考えておるわけでございます。  他方、税制の中には租税特別措置、政策税制といったものがあるわけでございます。政策税制の中で御指摘のような提案を措置してはどうかといったような御提案ではないかと存ずる次第でございますが、一般論で申しまして、これはむしろ、累次の税制調査会の答申その他でるる述べられているところでございますが、租税特別措置は、特定の政策目的を達成するための有効な政策手段ではあるけれども、税負担の公平中立といった税制の基本理念の例外として措置しているものでございまして、現在これは、基本的にその整理合理化を図っていくという方向でございます。したがいまして、税制で対応すべきかどうかといったことにつきましては、費用対効果がどうか、税制で対応すべき事柄かどうかといった種々の点を勘案する必要もございまして、政策税制での対応にはおのずと限界があることを御理解いただきたいと思います。  なかんずく、御指摘の点について申し上げますと、業種、業態によってこれは不公平な取り扱いになることが想定されます。やはり税負担の問題は公平中立といった点が非常に重要な要素でございますので、税制におきます対応といたしましては否定的にならざるを得ないのではないかと考える次第でございます。
  100. 秋葉忠利

    秋葉分科員 大体そういうふうにお答えになると考えておりましたけれども、現行の税制でも、例えば男女の雇用の機会を平等にしようという点から考えると、それとは逆方向に実はインセンティブを与えているような面がございます。  例えば、結婚している女性の場合、仕事がない女性の場合には当然控除があるわけですけれども、あるいはパートで働いている場合にも、幾らでしたか百万円かそこいらまでは税金がかからない、それ以上になると税金がかかるということで、だったらパートで適当に働いて無税の方がいいじゃないかというような形で、それは意図していないところだとは思いますけれども、結局、男女の雇用の平等性というところを、逆方向に力が働くような税制になってしまっている。  そういったところまで一つ一つ考えますと、今おっしゃった、中立公平というふうにおっしゃるけれども、意図としてはわかるけれども、結果としてはそうなっていない。ということであれば、それをより意図的に、より高い社会的目的のために整理し直して、そして社会システム全体としては、経済的なインセンティブによって自然に一定の方向に社会全体が動くようなシステムをやはり考えてもいいのではないかというふうに思います。  ですから、きょう私がそういうことを申し上げたからといってあすから大蔵省ががらりと変わるほど柔軟であっても困るわけですが、ぜひこの点についても今後とも一緒に議論をさせていただければというふうに思います。  それから、これに関連してもう一点申し上げますけれども、不公平云々というところがありましたけれども、例えば運用の仕方によって、男性だけの企業があったとして、あるいはもう一方にはどうしても女性だけでなくてはだめだという企業があったとして、例えば男子プロレスの会社と女子プロレスの会社があって、一対一の方が税金が安くなるというような場合があったとすると、両方ともこれは不平等になるわけですけれども、しかし税金を納める上では、例えばその二つが一緒になって、合体した形で連結して税金を納めるというようなことは考えられるわけですし、これは何も一つ一つの企業がすべて平等に男女を雇わなくてはいけないということではなくて、社会全体として平等に機会が与えられるということが大事なわけですから、片方に百社、男性ばかり雇っている会社があったら、片方にはもう百社、女性ばかり雇っているような会社があって、立派に収益も上げて、社会全体としてはしかも公平なシステムになるというようなことが考えられるわけですので、ぜひこのあたりをもお考えいただきたいと思います。  ちょっと時間がありませんので、最後に大臣に伺いたいと思いますが、今十分には説明できませんでしたけれども、こういうアイデアもある、少なくとも門前払いを食らわすのではなくて、こういったことも労働省としても、少なくとも省内のフリーディスカッションその他で考えてみよう、そういうことを言っていただければ、私の友人の北沢氏、あるいはそれ以外にもたくさん、こういったシステムがいいというふうに考えている人間はふえてきておりますので、参上して議論をさせていただきたいと思いますし、一言最後に前向きのコメントをお願いしたいと思います。
  101. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 雇用と税金の関係をもう少し考えたらどうかというお話なのでございますが、今なかなか、雇用と税金の関係を関連さして考えるというところまでまだ我々の議論も進んでおりません。  ただしかし、均等法ができまして既に五年程度時間がたっわけでございますが、最近の内定、採用に当たりましていろんな問題点も出ておりますので、今後婦人少年問題審議会というようなところで、せっかく先生から提起されました資料を皆さんにまたお配りをいたしまして、何かの機会に参考にしていただいて御検討を深めていただくということにいたしたいと思っております。
  102. 秋葉忠利

    秋葉分科員 ありがとうございます。これで終わります。
  103. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて秋葉忠利君の質疑は終了いたしました。  次に、岩佐恵美君。
  104. 岩佐恵美

    岩佐分科員 きょうはバス労働者の問題についてお伺いをしたいと思います。  バス労働者の労働実態は、長時間ただ働き残業がふえ、事実上休憩なしの連続勤務で、深夜勤務の後死亡者が出たり、乗務中に倒れる人が出るなど、非常に厳しい状態にあります。  そこで、具体的にお伺いしたいのですが、これは京王バスの場合ですけれども、賃金の支払い方法の仕方です。一カ月通算制と称する制度を導入しています。つまり、一カ月の冬日の時間外労働を含む労働時間を積算をします。総労働時間、例えば百七十九時間十分というような枠を設けて、それを超えた場合のみ基準外労働として残業手当を払っているわけです。  八時間以上働いた場合、当然時間外手当がつくはずだと思います。こういうやり方というのは労働基準法違反になる、そう思いますけれども、この点についてお伺いをしたいと思います。
  105. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 今先生お尋ねの具体的なケースについてでございますが、一定の期間を通算して労働時間を考えるというのは、私ども変形労働時間制と呼んでおりまして、今のケース、先生お話しの点はそういうものの利用に関することであろう、このように承ったところでございます。  ただ、この変形労働時間制につきましては、例えば一カ月以内の期間の変形労働時間制を採用いたしますときは、その期間が始まります前に、それぞれの労働者の労働日とかあるいは労働時間をあらかじめ特定していただく必要がございます。  したがいまして、例えば一カ月たった後で結果的に平均してみたら例えば法定労働時間を超えていないというような形になりましても、その場合変形労働時間制という形で考えることは難しい、一般的にはこんなような形に考えておるところでございます。詳細は、個別の事業所のより詳細な事情をお聞きいたしませんとわからない点がもちろんございますが、一般的には、あらかじめ特定しないと変形労働時間制の活用は難しい、このように思っております。
  106. 岩佐恵美

    岩佐分科員 今私が尋ねておりますのは変形労働制をとっていない場合のことです。  今言われたように、変形労働制をとったとしてもこういうケースというのは考えられないということでありましたけれども、変形労働制をとりますということでいって、それで労働者ときちっと事前に話し合うということがない、要するに就業規則の中でそういうことを定めていないで、それで事業者の方が一方的に一カ月プールして、今のような残業を支払わないということが行われている場合、これは当然八時間以上については残業手当が支払われるべきだと思いますし、労働基準法違反になるというふうに思うのですけれども、その場合をお伺いをしているわけです。
  107. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 変形労働時間制をとらずに今のようなお話ということで考えてみますと、労働基準法上の問題が出てくるのではなかろうかこのように考えられます。
  108. 岩佐恵美

    岩佐分科員 当然支払われるべき残業手当、これが不払いになっている、そういうケースについて、至急調査の上、不払い分をきちんと払わせるよう指導していただきたいと思います。この点についていかがでしょうか。
  109. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 私ども個別の事業所等につきまして、労働基準監督署が指導に赴くということをやっております。当然、そこで労働基準法上の問題があるというふうに監督官が判断いたしました場合には、その是正を指導申し上げるということをやっておるつもりでございます。
  110. 岩佐恵美

    岩佐分科員 バス労働者の場合、ダイヤによってそれぞれの日の勤務の長短があります。労働時間の長い日に休暇をとった場合、通算制というさっきの賃金精算方式をとりますと、一カ月の総労働時間に満たない場合が出てまいります。一カ月の総労働時間に満たない分を基本給または手当から差し引く、こういうことが行われているわけですけれども、年次有給休暇、これは法定要件を満たした場合、当然労働者にとる権利があると思います。有給休暇取得によって減給されるはずがないと思いますが、その点確認をしたいと思います。
  111. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 今のお尋ねの点は、労働時間と賃金との関係をどのように考えるかということがポイントではなかろうかと思います。  賃金につきましては、当然のことながら労使間の合意、労働契約に基づいて払われるわけでございますので、今のお話の範囲内だけで直ちに賃金の支払いに問題があるか否かということは判断ができないのではなかろうかと思います。もちろん、一定の年休につきましては、賃金の支払い方法は労働基準法でも定められているところでございまして、それにのっとった形で計算されればよろしいわけでございますが、今の仮定、お話だけでは直ちに違反であるか、問題があるかということを申し上げるのは難しいように思います。
  112. 岩佐恵美

    岩佐分科員 非常に長い労働時間の日にたまたま年次有給休暇をとってしまったということがあるわけですね。それは、たまたま短い日の場合もあるでしょう。長い日にとってしまった。これも、労働者の有給休暇をとりたいという、ちゃんと理由の立つそういうことでとるわけですね。そうした場合に、あなた、長い労働時間の日にとったからけしからぬ、その分働かなかったのだから、ほかの働いた日がいわゆる基準に満たないのだから、その日から差し引くよというようなことになると、有給休暇は一体労働者の固有の権利、休むという権利がどういうふうになってしまうのだろうかということになりかねないわけですね。私はそこのところをお伺いをしているわけです。
  113. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 少し複雑な点があるかと思いますが、有給休暇をおとりになった方が、そのとった日の所定労働時間が他の日の労働時間より長い場合どうなるのか、端的にその点について考えてみますと、有給休暇でございますから、法律の定めるところによりますと、その方には三通りの賃金の支払いがあるわけでございます。一つは、その有給休暇について平均賃金で払うか、あるいは二つ目は、所定労働時間労働した場合に支払われるであろう通常の賃金、これを払うか、あるいはまた労使協定がある場合には、健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う、こういう方法もございます。この三通りのいずれかで払えばいいわけでございます。  問題は、その労働者の方の賃金が日額で決まっているのか月額で決まっているのか、時間制で決まっているのかにもよりますが、一般的に、日額あるいは月額で決まっているという方を考えてみますと、もしも平均賃金で有給休暇の賃金をお支払いするということになりますと、たまたまその日が所定労働時間が長く定められているときであっても、平均された賃金で払うということも法律上は当然出てまいるわけでございます。
  114. 岩佐恵美

    岩佐分科員 次に、最低基準を決めた告示九十九号、自動車運転者の労働時間等の改善のための基準というのがありまして、そこでは運転時間が連続四時間を超えないこととされています。ところが、実際現場では、京王バスでもあるいは西鉄バスにしろ、連続四時間を超えている、そういう事例が日常的にあります。東京の労働基準監督局は、こういう事例が目に余るということで、一斉に指導をしているわけです。この点について全国的に調査をして、そして労働省として指導をしていくべきだというふうに思いますけれども、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  115. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 先生御指摘のように、私ども確かに自動車運転者の方の労働時間等の改善に関する基準というものを定めまして、これに基づいて指導を行っております。自動車運転者の連続運転時間につきましては、バス等の運転者の場合は、確かに四時間を超えないものとするという基準を設けているところでございます。この基準に基づきまして、労働基準監督機関といたしましては、いろいろな機会を通じまして関係事業場に対してこの基準を守っていただきたいというふうに指導をしておるところでございますし、これに反するというような状況が認められます場合には、できる限り早く改めていただきたいという指導を申し上げているところでございます。  具体的な事例で今お話もございましたが、東京局あるいは関係の労働基準監督署もそのような指導をやっているというふうに考えております。今後とも、そのような形で私ども取り組んでまいりたいと考えております。
  116. 岩佐恵美

    岩佐分科員 次に、休憩の問題です。  京王バスの労働協約では、休憩は一時間となっています。休憩時間は、労働者が権利として労働から解放されること、全く自由に労働者が使用できること、こういうことを保障しなければならないわけです。自動車の運転者に特例が適用されているわけですけれども、その場合でも、よく読んでみると、三十四条に定める基準に近いもので、労働者の健康及び福祉を害しないものとなっているわけです。ダイヤの都合で、折り待ち時間として一分、二分あるいは五分、十分程度のあきがつくられています。これは都心部にあるわけですけれども、つまり、それだけの幅をとっておかないと、混雑等に巻き込まれてなかなか時間どおり走れないというようなことがあるから、こういう折り待ち時間というのがそういうクッションの役割を果たしているのだと思います。  この空き時間を累算をして一日の休憩時間だというふうに考え、例えばそういう細かいものを足して、あなたはもう一時間のうちの十五分休んだのだから残りは四十五分しかないよ、こういうケースがあるわけですけれども、こういうことは許されないはずだというふうに思いますけれども、その点いかがでしょうか。
  117. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 確かに、路線バスの運転者の方などを想定いたしまして、折り返しの待ち時間がございます場合に、その待ち時間を合計いたしまして休憩時間に相当する時間になった場合には、一定の条件のもとに、その場合は休憩時間を与えなくとも労働基準法上問題はないという形の仕組みがございます。ただ、その趣旨は、当然のことながら、折り返しによる待ち合わせ時間等が実質上休憩時間に準ずるものとして考えられる場合ということがその趣旨であろうかと思います。  そういう意味で、一般的に申し上げれば、非常に短い待ち合わせ時間等を足し合わせて休憩時間に相当するというふうに判断することが妥当かどうかとなってまいりますと、問題を生ずる可能性がございます。しかし、これは個々具体的なケース、実態によりまして判断せざるを得ない問題ではなかろうか。制度としては、そういう待ち時間を足し合わせて、あるいはその待ち時間が実質的に休憩に準ずるものとしてこれを考えるという仕組みもございますので、個々具体的なケースによる判断が必要かと思われます。
  118. 岩佐恵美

    岩佐分科員 委員長、ちょっとお許しをいただいて、大臣にこの表をちょっと見ていただきたいのです。  このケースは、京王のバスダイヤでありますけれども、見ていただけますように、一番上の一八〇という表示があるところですが、ここに三分、一分、七分、三分、こういうふうに折り待ち時間があります。まさに実質上休憩の時間に準ずるものと言えない状態であるということがこれでよく御理解いただけると思います。まさに小刻みの休憩となっています。そして、この表から見た限りでもう一つ問題があります。勤務終了後休憩をさせているということなんですね。それを拘束として数えるということです。  それから、次の一一八というのを見ていただきたいのですが、これも二つの問題がございます。一つは、連続四時間以上の勤務時間表になっている。これは先ほど言われた基準違反になるわけですね。それからもう一つは、これも勤務終了後休憩ということになります。こういうことが現に行われている。  それから、一九三というのをちょっと見ていただきたいのですが、これは小刻みの休憩もさることながら、真ん中に昼食休憩というのがありますが、六十七分、一時間以上になるわけですね。それと小刻みの休憩を合わせまして、あなたは七十九分休んだよということで、一時間以上は十九分だというふうにして、その十九分の賃金は半分は払いましょうというようなことで、これは就業規則にないやり方で支払われている。  この三枚のダイヤからこうした問題点が浮かび上がってくるわけです。  それで、個別具体の例でございますけれども、小刻み休憩というのは到底私は実質上休憩時間に準ずるものとは言えないというふうに思いますし、それから勤務終了後のこういう拘束というのは許されるのかということでありますし、また、就業規則にない賃金の支払いというのがどういうふうになるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  119. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 今大臣と一緒に先生の資料を拝見させていただきました。確かに三分とか二分とか、大変短い待ち時間でございます。こういったような待ち合わせ時間の場合に、先ほど申し上げたような形でそれを合計いたしまして、休憩時間を与えなくともいいという形に読めるのかどうかこの短い時間の点、あるいはまた東京都内というような状況をもあわせ考えてみますと、難しい点があるのではなかろうかという気もいたします。  それともう一点先生お尋ねの、手持ち時間あるいは待ち合わせ時間についての賃金の払いの問題が御質問があったわけでございますが、これにつきましては、先ほど原則を申し上げましたように、賃金の支払い方は、どの労働時間にどのように対応させるかというのは労働契約の内容いかんにかかわってまいりますので、この個別具体的ケースによる労働契約あるいは就業規則、労働協約等がどのようになっているかを考えないで、あるいは見ないでとかくのことを申し上げることはできないのではなかろうかこのように考えております。  それからもう一つの休憩の問題でございますが、これは、休憩時間というのは労働基準法によりますと、労働時間の途中に与えなければならないということになってございますので、休憩時間についてはそのような形になると思います。ただ、終わってからの、一般的に申し上げれば、例えば作業の後片づけその他の拘束時間があるというケースもございますので、純粋の実労働だけではない時間が後で来ることもあろうかと思いますが、休憩時間に限って申し上げれば、原則今申し上げたようなことで労働基準法は定めております。
  120. 岩佐恵美

    岩佐分科員 大臣に後で一緒にちょっとお願いをしたいと思うのですが、こういう個別具体の例を、本当に労働者の皆さんは随分苦労されて何年も、もう六年くらい問題にしてきているのですけれども、なかなか是正されなかったという実態がありますので、ぜひ積極的に是正するようにお願いをしたいというふうに思います。  それで、先ほどありました変形労働時間の問題なんですが、変形労働時間制を導入する場合、変形期間における冬日、各週の労働時間、始業・終業時間を具体的に就業規則等に定める必要があって、使用者の業務の都合によって任意に労働時間を変更することはできないはずだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  121. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 御指摘のように、変形労働時間制をとりますときには、事前にそれぞれの労働者の方の労働日及び労働時間を特定しておく必要がございます。それに、就業規則で始業時間及び終業時間を定めなければならないということになってございます。そういうような形で労働時間が特定されるわけでございます。  ただ、個別具体的なケースに応じまして、もちろんそれはあらかじめの特定でございますが、事情の変更、変化によってそれ以外の労働態様が全く許されないということではない、それはやはり個々具体的なケースに応じて判断されるべき事柄ではなかろうかこのように考えております。
  122. 岩佐恵美

    岩佐分科員 別の表をまたちょっとお示しをさせていただきたいと思います。  これは、西鉄の勤務予定表並びに実際に働いた表でございます。これは、一九九四年、去年の六月の実績なんです。この表を見ていただきますと、Aは西鉄バスの谷さんの特定した勤務予定表、そしてBは実際の勤務。このA、Bを比較をしてみますと、始業時刻も終業時刻も拘束時間も実労働時間も全く違うのですね。西鉄バスは、一カ月変形労働時間制、これを導入をしているわけですけれども、この一カ月間見てみますと、予定どおりというのが本当に数例しかないという状況になっています。しかも、休日を特定していながら、実際に休めたのは九日のうち六日しかないということです。これだと年休権も阻害をされてしまいます。変形労働時間制というのは、労働時間を短縮をする、労働者のいろいろな希望に合ったそういう労働時間にしていくということで入れられているはずだと思うのですけれども、これでいくと、まさに拘束時間、労働時間は変わらない、だけれども賃金が下がる、賃金が下がることだけが変わるんだ、こういうやり方で残業代が値切られていくということにもなっているわけです。  先ほど、個々のケースによっていろいろ考え方あるでしょうというふうに言われるのですけれども、勤務予定表と実労働が乖離をするということが認められるのでしょうか。その点についてお伺いしたいと思います。
  123. 廣見和夫

    ○廣見政府委員 拝見いたしましたケースでは、確かにあらかじめ定められておりますものと結果とがかなり違ってきているようでございます。ただ、原則として申し上げれば、先ほど来申し上げておりますように、あらかじめ労働日と労働時間を特定する必要がある、これは原則でございますが、当然、それが何らかの事情によって、例えばある職場の同僚の方が年休をとられた、その代替勤務等が発生するというようなことによって、途中で変化が生ずる、変更が生ずることもあり得ることかと存じます。  ただ、先生お尋ねのような、その変更が余りに多くなってくるときにはどうなんだろうかということでございます。これは、一般論で申し上げれば、事業主の方で任意に労働時間をどんどん変更できるようなことが行われるというようなことでありますと、それは当然、変形労働時間制の趣旨にもとるということになってまいりますので、原則的にはそういう場合は変形労働時間制がなじまないというふうに考えざるを得ないと思います。  ただ、具体的なケースについて申し上げれば、いろいろな理由が重なったことによってたまたまそうなったということもあるかもしれませんし、それはやはり個別のケースのことでございましたら、よく事情判断、あるいはさらに実情を見ないと、ここで直ちにそれがどうこうという形を申し上げることは差し控えるべきではなかろうか、このように考えております。
  124. 岩佐恵美

    岩佐分科員 この具体的な事例については本当に乖離をしているということはお認めいただけると思いますし、また、これがたまたまレアケースであるならば、私が別にこの委員会で取り上げる必要もなかったわけですね。要するに、こういうことで日常茶飯事、労働者の現場実態がこういう状態に置かれているというところに大きな問題があるわけですから、先ほどの件とあわせまして、大臣にこの際実態をきちんと調べていただいて、そして現場でこんなことが起こらないようにしていただきたい、適切な指導をしていただきたい、私はそのことをお願い申し上げたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
  125. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 御指摘のバスの労働者の勤務時間というのは、最近の交通事情から申しましてダイヤを組む場合に非常に複雑な条件があることは、私もよく承知をしております。したがいまして、労働条件全体について労使がよく話し合っていただきまして、例えばハンドル時間は何時間であるとか、待ち時間は何時間であるとか、休憩時間は何時間であるとかいうようにきちっと労使が協定をいたしまして、無理のないような方法でダイヤをお決めになることが一番よろしいんじゃないかというふうに思います。  御要望の点につきましては、検討させていただきたいと思います。
  126. 岩佐恵美

    岩佐分科員 現場は物すごく大変な事態で、労使で話し合って済まない面もありますから、やはり力関係というのもあるわけですから、ぜひ労働省として積極的に取り組んでいただきたい。今までいろいろと問題があるということをお認めいただいたわけですから、その点よろしくお願いしたいと思います。  終わります。
  127. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて岩佐恵美君の質疑は終了いたしました。  次に、永井孝信君。
  128. 永井孝信

    永井(孝)分科員 限られた時間でございますから、問題点を絞って端的にお聞きをしていきたいと思います。  先日の労働委員会でも災害関係については私の方から御質問申し上げまして、大変御努力をいただいて適切に処理されているということにつきましては感謝をいたしているところであります。  ところが、おとといのNHKあるいは民放の各テレビ、あるいは全国紙を初め地方紙を含めて、中小零細企業に働く震災失業者、その震災失業者の救済について、職業安定所に持ち込んでも相手にされないと悲痛な叫びが出てきている。したがって、それを解決するために被災地雇用保険給付要求者組合というものを結成するという。これは毎日新聞でございますが、ここに一つ持ってまいりました。これだけの大きな記事なんですね。こういうもので、私もテレビを見てびっくりしたのでありますが、労働省が一生懸命対応してくれておりましても、なかなか現地には労働省対応しようとしていることが完全に伝わっていっていないということも片方であろうかと思うのですね。  そこで、改めてこの問題についてお聞きをしておきたいと思うわけでありますが、震災被害を受けた神戸市、とりわけ零細企業の集中しておった長田区を中心に、雇用保険の手続を行っていなかった中小零細企業から離職した労働者の間で、公共職業安定所に相手にされない、こういう新聞記事が出るような、こういう問題について大変心配が広がっているわけですね。ですから、この問題について労働省としては実際どのように対応されているのかということをこの国会の場で明らかにしてもらいたい、こう思います。
  129. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま先生御指摘の点、大変重要な問題でございまして、実は私も新聞等でその記事を拝見し、びっくりし、かつ極めて残念な思いをいたしているわけでございます。  そこで、この雇用保険につきまして、これらの未手続事業所の労働者の方々につきましては、これは本人の請求により二年までさかのぼって雇用保険の被保険者資格の確認を行うことができる、こういうことになっておりまして、これによりまして被保険者であることが確認された者であって一定の要件を満たす者、これは例えば被保険者資格の期間が六カ月未満ということですと受給資格がないということでございますが、そういう一定の要件を満たしておる者につきましては、離職証明書の作成、交付その他所要の手続により失業給付の受給が可能でございまして、私ども、第一線の公共職業安定所の窓口におきましてはその辺の周知徹底を行っているところでございます。  なお、この確認に際しましての事業主の方との雇用関係の有無につきましては、これは賃金台帳あるいは労働者名簿等の書類によって確認を行うわけでございますが、被災に伴いましてこれらの書類が存在しない場合におきましても、例えば健康保険の被保険者証等、雇用関係の事実判断の資料となる書類等に基づきましてこれは弾力的に行うことというふうにいたしているところでございます。  いずれにいたしましても、事業主の方が仮に雇用保険の手続をしていなかった場合につきましても、公共職業安定所に対して御相談いただければ十分に対応してまいりたいと考えております。
  130. 永井孝信

    永井(孝)分科員 今言われたようなことで対応してもらっているわけですが、問題は、そのことが被災者に対してなかなか浸透していない。だから、新聞に書かれているように「職安で相手にされない」とかあるいは「悲痛な叫び」であるとかテレビを見ておると労働省は何もしていない、こういうことになってしまうのでありまして、そういうことが不安を助長し、デマを広げるということになってまいるわけでありますから、とにかくやっていることを、あるいはやれることで、今現にこのようにしていますよという手続の関係も含めて周知徹底を図るための方策というものを片方で考えていきませんと、幾らいいことを決めておったって、仏つくって魂入れずになりますから、そのことは特にお願いしておきたい。  なお、そのための要員の配置というものは、この前の委員会でも私は大臣に御要望申し上げましたけれども、私の聞いている限りではまだまだ要員は、応援体制も不十分ではないかなと思うのですね。だから、窓口の業務が円滑にできるような思い切った要員配置をこの際もう一度改めて御要望申し上げておきたいと思うわけであります。  もう一つは、未手続事業所の労働者が遡及して雇用保険の適用を行ってもらう場合に、被災によって保険料が納付できない場合はどのようにされるのですかこれも聞いておきたいと思います。
  131. 征矢紀臣

    ○征矢政府委員 ただいま御指摘のございました周知徹底につきましては、さらに検討いたしまして詰めたいと思います。  それから、要員配置の問題につきましては、本日、神戸職業安定所の旧庁舎に窓口を設けまして、失業給付の特例等の手続を集中的に実施するということで、県外からの応援三十名と県内十名、約四十人体制で対処することにいたしているところでございますが、さらに引き続きまして、今後の情勢を見まして、現地と相談しつつ、その要望等を踏まえて御指摘のような対処をしたいと思います。  なお、未手続事業所についての雇用保険の適用を行う際に保険料の納付ができない場合の対応いかんということでございますが、雇用保険制度におきましては、保険料は事業主の方が納付すべきものということで法律上定められておるところでございまして、被災により事業主が保険料を納付することができない状況に至った場合でありましても、労働者に対しましては、先ほど申し上げましたような手続をきちんととっていただければ失業給付は支給する取り扱いとしているところでございます。
  132. 永井孝信

    永井(孝)分科員 今の御答弁ではっきりしたと思うのでありますが、労働省のとられている対応策については、非常に深く感謝をしているわけでございます。これからも窓口業務をより積極的に進めてもらいたい、これは要望申し上げておきたいと思います。  ところで、次にいわゆる人権問題、とりわけ同和対策の問題について質問をしてみたいと思うわけであります。  これは大臣にお聞きをするわけでありますが、昭和四十年にいわゆる同対審の答申が出されまして、三十年が経過したわけであります。その間、いろいろなことがございましたけれども労働省としてどのようにこの答申を尊重し、対策を講じてこられたか、まとめて大臣の方でお答えいただきたい。
  133. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 お答えをいたします。  同和対策審議会答申において、同和問題については、職業選択の自由が同和関係住民に対して「完全に保障されていないことが特に重大である。」というふうに指摘をされたわけでございます。労働省といたしましては、この答申を踏まえまして、就業の機会均等を完全に保障することが同和問題の真の解決を図るための最重要な課題であると認識をいたしまして、同和関係住民に対する諸施策を講じてまいったところでございます。
  134. 永井孝信

    永井(孝)分科員 ところで労働省はそういうふうに大変御努力をいただいてきたわけでありますが、実は総務庁が先般全国の実態調査なるものを実施をいたしております。これは御承知だと思うのでありますが、この実態調査の結果を見まして、大変な御努力をいただいているにもかかわらず、問題の解決が思ったようになかなかできていないこのことはこの調査の内容からいってもそう指摘せざるを得ないと思うのであります。  ここに、中間報告がまとめられたものを持ってきているわけでありますが、その中の全部に触れるわけにいきませんので、特徴的な問題だけを触れてみますと、いわゆる同和関係の住民の皆さん、例えば職業別に見ますと、建設業の従事者が非常に多いのが特徴であります。御承知のように、建設関係では、バブルのときもそうでありましたけれども、労働力が現場の方が極端に不足いたしまして、外国人労働者が大量に、正規であろうとあるいは不法であろうと建設現場に、流れ込むという表現は余りよくないのですが、流れ込んできて、その外国人の労働力を頼りにして建設関係の仕事が進んでいるという実態があるわけですね。そういうところに同和関係の皆さんの就職の率が非常に高い。  これは、国会で発言する言葉としては非常に不適切ですが、昔の江戸時代の言葉を引用いたしますと、この言葉は適切な言葉じゃないのですけれども、それは堪忍してもらって、あえてわかりやすいように言うわけでありますが、江戸時代は、土方殺すにゃ刃物は要らぬ、雨の十日も降ればよいとうたわれたこともございました。建設業の現場の労働者であれ、どこの労働者であれ、働くことのとうとさということは何も変わりはないのですが、非常に労働条件が悪い。三Kの代表的なものと言われているような部分が非常に多い。しかも極めて不安定な状況にある。生活の基盤を安定させるという面で見ても非常に不安定な状況に置かれている、そういう建設関係に就職の割合が非常に高い。  また、年収で見ると、この調査で明らかでありますが、年収三百万円以下という者が全国平均に比べて極めて高いという実態が存在するわけであります。  労働大臣としてこの報告をどのように受けとめていらっしゃるか、お伺いいたしたいと思います。
  135. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 委員御指摘のように、平成五年度同和地区実態調査、この詳細につきましては本年度末の最終報告を待たなければなりませんが、今持っていらっしゃる中間報告によりますと、雇用の面での一定の改善は見られたものの、依然といたしまして同和地区と一般地区の格差が目立っております。  御指摘の就業分類によりましても、建設業が多いということは申されます。また、所得におきましても、一般の三百万円以下の方が三八・三%に対しまして、同和地区の方は五八・二%もいらっしゃるということで、まだ大変問題があることがよくわかっております。したがって、就業差別の解消と中高年層を中心とする不安定就労者の職業の安定を図ることが非常に重要なことだと思っておるわけでございます。  今後の施策の重点といたしましては、同和関係住民の就業の機会均等を確保するための啓発、指導になお一層取り組んでまいりますとともに、同和関係住民の就労についてより安定した就労ができますように、技能の習得等を推進することが大切であると思っております。この点で一生懸命取り組んでまいりたいと思います。
  136. 永井孝信

    永井(孝)分科員 ところで、今建設業を中心に具体例として統計資料を挙げたわけでありますが、一般的にまだまだこの差別事象というのは非常に多いわけですね。かつていろいろ問題になりました地名総鑑などというものも、残念なことでありますがまだまだ部分的には活用されているケースもございます。  新しいところでいきますと、一九九四年、昨年の一月十二日に、部落地名総鑑を持っている方はひとつ教えてくださいというふうなパソコン通信が出て、大変な問題になったこともございました。あるいは、労働省がかねがね統一的に決めております就職のための願書の用紙、統一用紙、これも統一用紙によらないで、社内でつくった願書の用紙を渡してそれに身元調査にかかわるようなことを書き込ませるとか、あるいは本籍地を記入させるとかいろいろなことがまだまだ続いているという実態があります。百年河清を待つがごとしと言ってもいいと思うのであります。  そんな中で、一つ具体的な例を挙げますと、株式会社のアオキインターナショナルというのがございますが、そこで身元調査をやり、統一応募用紙に関する違反の行為が出てまいりました。これを何とか正そうということで、地元の高校の皆さん、具体的に申し上げますと、アオキインターナショナル身元調査差別発言事件の事実解明を求める連絡会議というのが昨年の三月十五日に結成されまして、その参加している組織というのは、大阪府立高等学校同和教育研究会、あるいは大阪府立高等学校校長協会、大阪府高校進路指導研究会、あるいは大阪同和問題企業連絡会などの呼びかけでそういう連絡会議が持たれまして、労働省にもいろいろな要望がされてきたはずであります。  ところが、労働省のこの問題に対する指導が、聞くところによりますと、労働省の方からアオキインターナショナルの会社に対しまして社長あてに、具体的な中身を説明する、あるいは質問に答えるという形で学校あるいは行政当局に対して話し合いをするようにということで、再三再四内容証明つきで送付しているのでありますが、全くそれに対しても返事がないという実態だということを聞きました。  これでは、同和対策を推進するとか大臣の決意で雇用の機会均等を保障していくんだ、担保していくんだと幾ら言ってみたって、現実はそうなっていかないということでは、行政に対する不信感というものは大きくなってくる。したがって、本当に就職差別の解消に対してどのようにすればいいのか改めて大臣の決意を含めてお伺いしておきたいと思います。
  137. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 御指摘の件名を含めまして、就職差別の解消につきましては、事業主が同和問題に対する正しい理解と認識を深め、みずから進んで同和関係住民の就職の機会均等の確保を図っていくことが大切であると思います。このための事業主に対する啓発、指導が最も重要であるというふうに思っております。  そのためにどういうことをやっておるかということを申しますと、まず第一は企業の人事担当者等を選任する企業内同和問題研修推進員制度を活用するとかあるいは従業員の採用・選考に最も影響力を持っ企業トップクラスに対する同和問題研修会の開催をするとか、あるいは業界団体、企業グループ挙げての取り組みの要請をするとかあるいは就職差別事象を惹起いたしました事業主に対する個別行政指導をするとかいうようなもろもろの施策を通じまして、就職差別の解消に全力を挙げて取り組んでおるところでございます。
  138. 永井孝信

    永井(孝)分科員 言うまでもなく、労働省の任務の最大のものは、就職の差別をなくすること、そのための施策が具体的に実行でさるように対応していくこと、言葉で言いますと就職の機会均等の保障、こういうことになってくると思うのです。これは労働省の基本的な命題なのです。  だからこそ、この同和問題について差別の事象は許せないということで今特定の事例を挙げてお尋ねをしたわけでありますが、事業主に対しても積極的な啓蒙を図ってもらおう、トップクラスに対する研修会も開催するということまで踏み込んで今答弁をいただきました。  そういうことは高く評価いたしますが、そういうことを片方でやらせていくというか、実行させていくという責任を持つ労働行政そのものについて、では完全に差別をしないという立場で職員が全部そういう認識をきちっと持っているだろうか、これが一番問題なんです。  例えば、一昨年でございましたけれども、兵庫県の労働基準監督署の管内において差別事件が発生いたしました。私の地元でありますから私も首を突っ込んでいろいろやってきたのですが、最終的に、差別をなくするための運動を進めているいわゆる部落解放同盟兵庫県連合会と兵庫県の労働基準局長の間で話し合いがきちっとつきまして、研修を含めて、積極的に就職で差別をさせないための監督業務にふさわしい資質を職員に持ってもらうということで今取り組まれているわけです。  これは、兵庫県で起きた事象でありますが、少なくとも全国の労働省関係の機関の職員に対して、正しい同和問題のあり方というものをもっと積極的に研修させる必要性がある。それで初めて事業者の皆さんや当該の皆さんにそれを啓発、指導することができることになっていくわけでありますから、これは非常に大事なところでありますので、この問題について大臣の御答弁をいただいておきたいと思っております。
  139. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 永井先生御指摘の兵庫県労働基準局職員の差別発言につきましては、先生に大変お骨折りをいただきまして、労働省といたしましては感謝をしておる次第でございます。  労働省の基本的な考え方といたしましては、事業主を指導し、また同和関係住民の職業相談等に当たる労働省の職員は、まず職員みずからが同和問題の正しい理解と認識を持つことが大切であるというふうに思っております。そのために行政職員の研修が絶対に必要だ、こう思っております。  今行っておりますことは、労働研修所における中央研修を積極的に行う、それから各都道府県における地方研修も積極的に行う、それから地区の実態見学等に取り組む、それらによりまして今後とも同和問題の正しい理解と認識について徹底を図っていきたい、かように思っておる次第でございます。
  140. 永井孝信

    永井(孝)分科員 大臣が今御答弁をされましたように、ひとつ積極的な対応というものを労働省自体が取り組んでもらいたい。言えば国の行政、地方の行政の模範として評価されるような、そういうことの実を結ぶような取り組みを改めてお願いしておきたいと思うわけであります。  最後に、冒頭に申し上げましたように、同対審の答申が出てから三十年たちました。この間、同和対策事業特別措置法を初めとして、何回かごの特別措置法の法律名も中身も変わってきて、今地財特別措置法、こう言っているのでありますが、これがあと二年ほどでなくなっていくわけですね。  では、一運の話をずっと大臣にお聞きしてまいりましたけれども、同対審の答申が出されて三十年間の間、特別措置法で事業法的にやってきたのですが、片方で、きょうは議論はいたしませんけれども、その法律が適用される地域でない未指定地区というものも全国で一千カ所も残っていると言われている。これは放置されたまま残っているのですね。しかし、特別措置法で幾ら対応をしてみても、そのことが基本的な人権の保障になっていかないことも、法律の性格からいってこれはまた事実なんですね。  悪く言えば、人権を踏みにじって差別をした人は、明確に法律によって処罰されるべきだと私は思うのです。差別をすることは、私は犯罪だと思うのですね。人権を侵害して差別をすることは犯罪だと思うのです。ところが、今の日本の法律では、部落差別をした者に対して処罰をする法律が存在をしていない。そういう中で特措法でいろいろなことをやってきたのでありますが、おのずからこれは限界があると私自身は思っているのです。  したがって、大臣に最後にお聞きするのですが、この三十年間の経過を振り返ってみて、同和問題の解決が、特措法を中心にしてきた対応あるいは啓蒙啓発活動だけで、果たしてこの部落差別というものを根本的になくすることができるだろうか、なくすることの担保になるだろうかと思うので、これは大臣として、政治家として、ひとつ大臣の見解をお聞きしておきたいと思います。
  141. 浜本万三

    ○浜本国務大臣 同和問題は、憲法に保障されました基本的人権にかかわる重要な問題であるという認識のもとに、これまでの三度にわたる特別措置法に基づきまして、二十五年にわたって関係の諸施策を推進してきたところであり、その結果、地対協意見具申におきましても一定の評価をいただいておるところでございます。  政府といたしましては、現行の地対財特法及び今後の地域改善対策に関する政府大綱に基づきまして、同和問題の一日も早い解決に努めているところでございます。  同和問題の早期解決に向けた方策のあり方につきましては、さきの政府実施し、現在取りまとめ中であります同和地区実態把握調査の結果も踏まえまして、地対協総括部会において引き続き精力的に審議を進めていただくことにいたしております。  また、人権と差別問題に関するプロジェクトチームにおきましても与党各党間の話し合いも進められておりますので、その議論の動向にも十分留意しながら対処してまいりたいと思っております。  なお、閣議の中でも、この問題についての基本的な解決の問題等につきましていろいろ意見が出ておりまして、政府・与党一体になって問題の解決を図るように話し合っておるところでございます。
  142. 永井孝信

    永井(孝)分科員 これで終わりますが、世界人権条約と言われている民族差別撤廃条約もまだ日本は批准していないのですね。批准していない国連加盟国の数は、私の記憶しているところではわずか二十九カ国ぐらいしか残っていないのです。その条約は批准できないわ、国内では部落差別あり、あるいは適切であるかどうかわかりませんけれども、いわゆるアイヌ民族に対する問題もある。在日外国人の問題も、戦後五十年で内閣が積極的に取り組んでもらっておりますが、この問題の差別問題も、関西では特に朝鮮の人たちに対する、あそこの民族衣装を切り裂くような事件も相次いでいるという。まさにそういう面でいきますと、日本は経済大国であり近代国家だ、こう言うのでありますが、人権問題ではかなり世界にまだまだおくれをとっているのではないか。  だから、人権問題においても、世界からまさに尊敬されるような日本であってもらいたいし、また、そのための努力というものを政府も国会もあるいは司法の関係者も含めて、全部が力を合わせて人権大国ということになっていかなければいかぬ、こう思いますので、その面で労働大臣も、閣内においても特段の御努力をいただきますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  143. 越智伊平

    ○越智(伊)主査代理 これにて永井孝信君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして労働省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の御協力により、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午後三時三十六分散会