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1995-02-09 第132回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年二月九日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 佐藤 観樹君    理事 衛藤征士郎君 理事 桜井  新君    理事 野呂田芳成君 理事 深谷 隆司君    理事 伊藤 英成君 理事 加藤 六月君  理事 三野 優美君 理事 五十嵐ふみひこ君       伊藤 公介君    浦野 烋興君       江藤 隆美君    越智 伊平君       菊池福治郎君    近藤 鉄雄君       高鳥  修君    中山 太郎君       村山 達雄君    伊藤 達也君       石田 勝之君    石田 美栄君       川島  實君    左藤  恵君       笹木 竜三君    実川 幸夫君       月原 茂皓君    野田  毅君       藤村  修君    冬柴 鐵三君       松沢 成文君    松田 岩夫君       山口那津男君    山田  宏君       池端 清一君    佐々木秀典君       坂上 富男君    濱田 健一君       細川 律夫君    山崎  泉君       横光 克彦君    前原 誠司君       松本 善明君    矢島 恒夫君       海江田万里君  出席公述人         株式会社東京海         上研究所理事長 下河辺 淳君         慶応義塾大学総         合政策学部教授 深谷 昌弘君         日本国際救援行         動委員会理事長 佐々 淳行君         神戸大学法学部         教授      阿部 泰隆君         日本労働組合総         連合会事務局長 鷲尾 悦也君         茨城大学理学部         教授      藤井陽一郎君  出席政府委員         総務政務次官  宮路 和明君         防衛政務次官  渡瀬 憲明君         経済企画政務次         官       細田 博之君         外務政務次官  柳沢 伯夫君         大蔵政務次官  萩山 教嚴君         大蔵省主計局次         長         兼内閣審議官  武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       中島 義雄君         大蔵省主計局次         長       伏屋 和彦君         文部政務次官  岡崎トミ子君         厚生政務次官  狩野  勝君         農林水産政務次         官       谷津 義男君         運輸政務次官  細谷 治通君         労働政務次官  森  英介君         自治政務次官  小林  守君  委員外出席者         予算委員会調査         室長      堀口 一郎君     ————————————— 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   東家 嘉幸君     菊池福治郎君   工藤堅太郎君     石田 美栄君   山田  宏君     藤村  修君   今村  修君     山崎  泉君   穀田 恵二君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   石田 美栄君     松沢 成文君   藤村  修君     山田  宏君   山崎  泉君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   松沢 成文君     実川 幸夫君   濱田 健一君     横光 克彦君 同日  辞任         補欠選任   実川 幸夫君     工藤堅太郎君   横光 克彦君     今村  修岩     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成七年度一般会計予算  平成七年度特別会計予算  平成七年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  平成七年度一般会計予算平成七年度特別会計予算平成七年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず下河辺公述人、次に深谷公述人、続いて佐々公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、下河辺公述人にお願いいたします。
  3. 下河辺淳

    下河辺公述人 下河辺と申します。  きょうは、大規模災害に関しまして私のささやかな意見を申し上げたいと存じます。  しかし、私はまだ今回発生しました阪神大震災につきましては現場を拝見しておりませんで、あさって知事の要請で現場を拝見させていただきますので、阪神に関する具体的な提案はいろいろ自分なりに用意しておりますが、きょうは時間の関係もあり、現地を見てからの方がよろしいと思いますので、むしろ、一般的に大規模災害が発生しますことに関して、政府がどういう対応をしておくことが必要であろうかということについて若干の意見提案をさせていただきたいと思います。  関係省庁、あるいは県、市町村におきまして、災害については、災害国日本でありますからかなりいろいろな対応が整っており、私としては、それぞれの担当者がそれぞれの立場で十分な対応をしているという前提に立って考えようとしております。  まず最初に、官邸の問題でありますが、現在の官邸建物は極めて危険な状態にあり、災害対応するのにも極めて不十分であるというふうに思っておりまして、既に官邸の建てかえは仕事が進んできていると伺っておりますけれども、この際、一段と官邸建物自体防災的であり、かつ情報化にたえ得るものに計画することを考えていただきたいということであります。  しかも、官邸だけではなくて、サテライトセンターをつくっていただきたいと思います。既に始まっているのは立川防災基地でありますが、このほか市ヶ谷の拠点が必要になりますし、臨海部拠点が必要であるということで、三つのサテライトセンターを持った官邸ということで強化していただきたいと思いますが、さらに第三のセンターを建設することを急ぐべきではないかと思っております。  国会あるいは政府の持っている膨大な情報データというものが確実に管理されなければなりませんから、第三のセンターというリダンダンシーをぜひ早急につくっていただきたいと思います。これは少なくとも六十キロ以上東京から離れた適地を探して建設する必要がありますが、私の個人的意見では、この第三センターが将来は新首都になっていくというようなことも頭に入れながら、第三センターをつくるということは重要なことではないかということでございます。  さらにもう一つ思いますことは、大規模災害に関します情報首相のもとに届くプロセスがいろいろと論争されているように伺っておりますが、私も担当者として戦後の幾つかの災害総理にお手伝いを申し上げたときの経験から申し上げたいのですけれども、政府のところへ、首相のところへ情報が集まりにくいということを私は余り苦にはしませんでした。私が国土庁の次官として関係省庁地方公共団体、消防、警察に問い合わせすれば直ちに入ってくる状態であったわけで、それを可能な限り総理に伝えるということはやれないことはないわけです。  しかし、担当していて一番困りましたのは、日本行政というものが、現場確認をして、正確さの上に上に上げようという形をとっております関係で、現地で詳細な確実なデータがまとまるということは非常に困難な状態にありまして、亡くなった方々にしましても死亡確認はなかなか急ぐことはできませんし、火災の発見件数にしても建物の崩壊にしても、現場確認情報ということは時間がかかることが避けられないということを毎回嘆いたわけで、その時の総理テレビを見ながら判断をするというような状況は今回も同じであったのではないかと思ったりしています。  したがって、いち早く情報総理に入るということを今以上に改善すること自体は大切なことですからやっていただきたいのですけれども、私のきょうの提案は、情報のとり方の技術を変えたらどうかと思っています。現地確認型のミクロ情報というものは大切ですからやっていただかなければなりませんが、いまだに死者の数の確定もできないというぐらいに、現場ミクロ情報というのは厳密をきわめて時間がかかっていきますのに対して、私は、新しい技術によってマクロ的な被害というものを想定できないかということを思っております。  地震が起きて被害が出たとなると、恐らく自衛隊にやっていただくのが一番機動的ではないかと思いますが、空中査察から被害マクロ環境コンピューターが解析してくれるというような技術については既にアメリカ等では開発が進んでおりますから、多少の誤差率があったにしても、空中からのマクロ査察によるコンピューターの解析の結果をもって総理行政判断ができるという形をとるならば、かなり速い速度で災害をつかむことができるのではないかと思います。  現在は、マスメディアの方であるとかいろいろな方がヘリコプターで上空から目で観察して報告を下さるわけですけれども、それは一事ということで、一事万事に通ずるかどうかという判断官邸では相当困難でありますので、万事型に対するマクロ調査技術というものを新たに開発して機動部隊をつくり、いかなる災害でも飛んでいって空中からデータが処理されて、コンピューター災害規模を推計してくれるということをやってはどうかということであります。  このことは、今日本技術では、考えればそう面倒なことではないと思っておりますけれども、ただ、常日ごろ平時におきます。その地域の情報がつかまれていないと、災害後だけの情報では診断できないわけで、人間の体でもふだんから健康診断でレントゲンがあるということは病気発生後にとても役に立つことは常識でしょうから、そのようなことをすることで官邸動きが断然違ってくるだろうということを申し上げたいわけであります。  さらに、災害が起きました後の対応の仕方の仕組みについて申し上げたいのでありますが、総理が陣頭に立って全体をコントロールすることは極めて重要であります。しかし、総理災害だけのお仕事ではないわけで、これだけ国際化した日本総理役割は非常に多岐にわたるものでありますから、災害にだけ専念するということは難しいということもございます。しかも、現地性というものを総理に期待することはなかなか現実の問題として無理だということから、私は、罹災地知事が何事にも中心になるということを考える必要があるのではないかというふうに思っております。  そのときの知事というのは、四十七都道府県の地方公共団体の首長ではないというふうに思うわけで、防災担当司令官としてきちんと総理の代理として任命されなければ十分機能しないのではないかということを思うわけで、災害が起きて緊急対策から応急対策、そして復興対策へと移行する間、一貫して、総理を代理する知事がその司令官であるという制度をつくることが重要ではないかというふうに私は思っております。  その総理にかわるべき知事というものは、縦割り官庁から公社公団に至るまである一つ指揮権を持つ必要がある、あるいは市町村に対しても指揮権を持つ必要があるということで考えなければならないと思ったりしております。復興計画を立てるにつきましても、すべての専門家を招集して直ちに復興計画をつくるというようなプロジェクトチームも、総理にかわる知事のもとに至急につくって対応するというようなことができないものかと思います。  そして、復興段階になりましたときに、復興という名の事業というものを特定する必要があって、復興という名のついたいろいろな縦割り事業というものを復興事業という名のもとに一貫して調整する仕組みをつくる必要があります。特に、都市災害になりますと、国直轄のものから補助事業から単独事業まで、事業の主体も異なるということは避けられませんから、それらを復興なり防災という視点から統一して指揮できるものが必要であることは言うまでもありません。  そのようにして、復興事業というものを縦割り事業にレッテルを張ることで、その復興事業と名のついたものの統一性ということを指揮したいわけでありますが、そのために、その復興事業については総理にかわる知事予算要求権を持つということまで考えてよいのではないかと思っておりまして、予算要求をする権限があって総理に対して予算要求してくるのを大蔵省がきちんと査定して、国会予算委員会の議を経て決まっていくというようなことを考え、もしできれば、復興事業というのは予算的には一括計上がいいのではないかと思っておりますし、個別事業財政的優遇措置も、縦割り施設別考えることではなくて、復興事業のトータルの負担に対して財政的措置がある方が合理的ではないだろうかということを思うわけでございまして、地震であれ大洪水であれ大規模災害が起こった場合に、緊急にそういう行政組織ができるということを立法化して、常日ごろ用意しておけば対応ができるのではないかということを思っています。  もう一つ提案させていただきたいのは、道路の問題であります。  道路は、戦後五十年、交通ということを、そしてしかも自動車ということを中心に、道路というのは自動車動きをよくするための施設であるということで私どもやってまいりました。そして、道路というものがせっかくあるのだから、特別に認める場合には、道路附属施設なりあるいは関連施設として認めることができるという体系になっています。私がここで提案したいと思いますのは、今や道路というのは自動車交通だけのものかどうかという問いであります。  私の考え方としては、道路自動車に使う機能はもちろんありますけれども、道路機能の一部でしかないという見方をして、それでは何かというときに、ライフラインルートを持つものという見方が必要ではないだろうかと思うわけで、電気、ガス、水道、下水から電話からコンピューターシステムに至るまで、ライフラインというものが都市防災にとってこれほど重要なことはありません。そして、そのライフラインの根幹となるべきルート幹線道路に埋設されて、いかなる災害でも被害が少なく、かつ、もし被害を受けても直ちに修理可能という構造をとるべきだと思います。  今、近代化した都市人間というのは、ライフラインなしには一刻も生きていくことができません。病院でいえば生命維持装置みたいなもので、生命維持装置を外されれば病人は死んでしまうのと同じ状態にありますので、幹線的なライフライン道路で完全に確保するということを考えなければいけませんから、道路というもののコンセプトを全く変えて、交通、通信にも役に立つけれども、ライフライン幹線であるという認識から道路法を見直し、道路整備というものをやり直したらどうかということを思います。  このときに、防災的な観点から幹線道路考えますときには、現在は国道であったり県道であったり市道であったり、道路の所管が違いますが、これはそれでやむを得ないと思いますけれども、ライフライン道路ということが指定されれば、それは国道でも県道でも市道でも、いずれもそれに強制されるということを考えるべきではないだろうかということを思うわけでございます。  時間が限られているので、今思いついていることだけ申し上げたわけでございますけれども、一つ最後に抽象的なことを申し上げたいと思いますのは、大規模自然災害というものは、政府技術信頼を寄せてよりよくしていただくことは当然ですけれども、政府役割技術信頼性は一〇〇%保証することはまず絶対ないという前提からいろいろな災害対策考えませんと、ただむなしい期待だけが空回りして、何回災害を受けても同じということを繰り返しかねないということを恐れますので、私は、壊れないというよりは、壊れにくくて修復が簡単であるというような技術システム考えるということが重要ではないかと思います。  以上、自分個人的見解を発表させていただきましたが、どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 佐藤観樹

    佐藤委員長 ありがとうございました。  次に、深谷公述人にお願いをいたします。
  5. 深谷昌弘

    深谷公述人 皆さんおはようございます。  慶応大学深谷と申します。何となく目の前に深谷隆司さんがいらっしゃって落ちつかない気分が多少はするのですけれども、多分、江戸時代あたりまでさかのぼると何らかのつながりはあると思いますが、目下無関係でございます。多分、御先祖が三河の方からいらっしゃったのじゃないかと。余計なことを申し上げました。  私は、社会保障関係について日ごろ考えておりますことを申し上げたいと思います。  来年度予算の個々の細かい施策について議論をするということも大事でございますけれども、これからそうした施策の積み重ねが実は二十一世紀高齢化社会をどうつくっていくかということに関係しできますので、私はその点について自分日ごろ考えを申し上げたいと思います。  私自身は、大学では、研究課題としては財政社会保障、それから合意形成に関する研究をやっております。きょうは何か大学クラス授業ハンドアウトみたいな形で、皆さんにお手元にメモを三枚ほどお渡ししておると思いますが、一枚、ぺらの方の「二十一世紀高齢化社会のヴィジョンと政策」と題しておりますメモ中心に皆様にお話しする予定です。  私は、実は医療保険審議会の方で健康保険等々のこともやっておりまして、いわば一種の政府側の話かもしれませんし、そうした立場も一方では持っているようなところもあります。それから、きょうは新進党さんから推薦いただいている、政府を批判しなければいけないという立場も、両方持っておりまして、また裂き状態でありますけれども、それよりも、そうした議論の中で、今後もっと皆さん議論を深めていただきたいな、日ごろそうした審議会等々あるいは個別の場ではなかなか取り扱えないような事柄について、焦点を絞ってお話ししたいと思います。  まず最初に、やはりこうした社会保障の今後のあり方考えるときに、はっきりと皆さんで、どんな高齢化社会のビジョンを持つのか、この点について活発に議論をしていただきたい。特に、私は現在五十一歳でございますけれども、今後の高齢化社会がどうなるのかは我がことでございまして、自分が後半生を託すに足る社会とはどういう社会なんだろうか、それに向けて自分たちはやはり皆さんと一緒になってそうした社会をつくる努力をしなければいけないのじゃなかろうか、このように考えております。この点について、まず議論を深めてほしいということであります。  これは社会保障だけを論じていてはいけないという部分がございます。まず、活力ある福祉社会というのは一体可能なんだろうか、こういう問題について私がどう考えておるか、私自身も、皆さん考えの手がかりになるかもしれないという考えを言ってみたいと思います。  まず、高齢化社会、大変だ、大変だという議論があるのですが、その論拠のかなりの部分を占めているのは、将来二人で一人のお年寄りを支えていかなければならない、だから大変ですよ、現在は五人に一人だけれども、こういう議論があります。確かにそのような面はあるのですが、実は考えようによっては、五人で一人を支えるということと同じ社会が私は可能だと考えております。  これは、例えば数日前のテレビで、瀬戸内海の東和町のある小島人口三百人の小島の話が取り上げられました。そこでは、六十歳あるいは六十五歳になって企業を退職した方が島へ戻ってくる、そして実は漁師をそこから始める、こういうことをやっておられます。あるいは、おばあさんは畑で野菜をつくっている。こうした活動はどんな意義があるのだろうか。自分のおかずを得るために魚をとる、しかし余計にとれたものは社会に差し出す。それから、自分の畑で野菜をつくる、余計なものは今度は広島にいる子供たちに送る。これは自分の楽しみのためにも活動しておるし、それから何らかの形で社会や人のために活動している、こういうことをやっておるわけです。非常に皆さん生き生きとなさっており、八十歳、九十歳でばりばり元気に生きがいを持って生活しておられるわけですね。  こうした方々のいわば付加価値創出行動というものを考えてみますと、これが例えば、生産年齢人口にある、企業ビジネスとして働いている方たちの、仮に生産性が〇・五人分だといたしましょう。そうすると、二人で一人といっていた一人は、専らおんぶされる人という勘定になっているから重たいのですけれども、実は〇・五人分だとすると、一人というのは〇・五人に変わってしまいます。それから、二人で担ぐといっているんだけれども、付加価値を出す人が〇・五人ふえてくれるわけですから、実は二・五分の〇・五ですから、五分の一になります。  ですから、論理的には、工夫さえすれば十分、こうした五人で一人、現状と同じくらい、あるいは場合によってはいろいろな豊富な社会への貢献の仕方、その中で自分生きがいを見出すやり方がつくれるわけですから、そうした社会システムを工夫すれば、今よりも生きがいがある社会になるかもしれない、その可能性があるということです。可能性があるとしたら、我々はそれを目指して、そうした社会システムを現実化していく政策考えるべきではなかろうかと考えております。  ただし、これは雇用政策という狭い範囲で考えていたのではぐあいが悪い。大部分方々は、やはり六十五を過ぎて、三十代、四十代の管理職から、きのう言いつけた仕事はまだできぬのかなんて管理をされたり、満員電車で揺られて苦痛の中で一時間、一時間半かけて通勤をするというような生活は恐らく不向きでしょうから、そうしたビジネスにおける雇用も大事でしょうけれども、いろいろ多様な形での付加価値のつくり方を工夫することが大事だと思います。  近年、NGOとかNPOとかあるいはボランティアとか、そういうことが盛んになってきた背景には確かにこれがあるのだろうと思う。そうしたものが芽生えてきたのはこうした背景がある。つまり、自分なりに、お金のためにとは必ずしも言えない形で、生きがいを求めて社会付加価値を出したいという欲求が人々の中にあるという、それが背景になってこうした現象が出てきているのですから、それをうまくやれば、私は十分可能性があるものだと思っております。  ただし、これは縦割り行政の突破が必要だということが条件になります。というのは、こうした例えばボランティアの問題というのは、統括する役所はどこでしょうか。福祉ボランティアだったら厚生省かもしれませんけれども、ボランティアというのは福祉とは限りません。いろいろな形で自分が進んで貢献するという問題ですから、実は厚生省だけとは限りません。労働としてとらえるなら労働省です。それから、企業ビジネスあり方での調整を考えますとこれは通産省かもしれません。そうした縦割りの中では必ずしもうまく解決できない。ぜひ、総括的に物事を考えるこうした場で、皆さん考えていただきたい、これが第一点です。  それから、将来これは、やはり後半生を託する社会とすると、尊厳ある豊かな社会生活が営めるようなものでなければならないと思います。社会への一方的な依存という形で生きていくというのは、決して我々、私五十歳ですけれども、それ以後でも、ずっと一方的に六十五過ぎたら依存するなんて、そういう生活は御免であります。多くの人がそう考えているに違いないと私は思います。自立して知恵を出しながら、自分なりに社会や人々に貢献できる、そういう生活あり方こそが私は望みでありますし、多くの人はきっとそう思っていると思います。  ただし、そうした生活の中で、公共的な支援も必要だろうと思います。限度を超えた個人的な努力、責任を要求したら、人はめげてしまいます。これは、例えば子供の教育を考えましても、子供の能力を超えたことを要求した。そして、できないじゃないか、だめじゃないか、無責任だななんて言われ続けると子供はいじけてしまいます。これは大人だって同じであって、あなた、稼ぎ少ないわね、もっと稼げるはずよ、やりなさいなんて無理強いされますと私もめげてしまいますけれども、そこそこやっているんだから、あとの方は私も助けるわよなんて女房に言われたら勇気りんりんになってしまいますね。これは同じだと思います。それを公共部門を通じて支援することも必要だと思います。公共的な支援のあり方、これが社会保障考える場合に非常に大事な論点だろうと思います。  そして第三点として、こうした問題を考える場合に、社会保障の費用負担に公共的連帯とでも言いましょうか、そうした原理原則というのはどういうものなのか、これを確立していく必要があります。活力ある福祉社会という高齢化社会のビジョンに向けてこれから模索が続くと思います。そのときに、個々の政策対応する余り、その場その場で施策を重ねていきますと、行き着いた先はとんでもない先である、こういうことが起こりかねません。したがって、その過程の中で原理原則を打ち立てていく、これが大事ではなかろうかと思います。  それで、後の方でお話しする予定ですが、実は社会保障という政策は私的生活に対するサポートであるという側面がありますから、これは伝統的な公共サービスとは著しく性質が違っております。伝統的な公共サービスは、国防とか外交とか国内の治安、秩序の維持とか、そうした社会全体であって、個々の人々のいわば個別の利益等々をどうのこうのというようなサービスではないわけですね。ですから、人が、自分がどれだけ公共サービスから便益を受けているか、はっきり確定しがたいような性質のサービスが伝統的な公共サービスであります。  それに対して、社会保障が行っている公共サービスは何かと申しますと、これははっきりと個人的な生活に対する支援であります。それについて自分の努力等々、貢献等々、そういうのと無関係な形で社会保障を拡大していくとすると、必ずこれは問題が起きてまいります。労働観とか個人の責任感とか、そうした問題に対して非常に深刻なフリクションを発生させる可能性すらはらんでいるわけです。  しかし、個人だけではいかんともしがたい、公共部門を通じて何とかお互いが責任を分担して連帯し合わないとうまくいかない部分がたくさんございます。それについて、いわば公共的な連帯のあり方、これを原理原則として確立していく必要があるかと思います。具体的な姿については、後ほど年金等々を例にとって、できたらお話ししたいと思います。このような場合に、したがって社会保障施策内容と財源とをあわせて議論する必要があるということを指摘しておきたいと思います。  消費税の税率アップと社会保障との関連については、皆さんも関連性については言及されておりますけれども、どのような内容の社会保障施策についてどのような財源構成をとるべきか、こういう議論がやや希薄であったなという感じがいたします。消費税の税率をやがて五%ないし七%に上げるということをやっておいて、そのときに、例えば公的介護をどういう財源の仕組みでやるのか、連動して議論が尽くされたとは私にはどうも思えません。税と社会保障拠出と利用者負担、これをどのように組み合わせることが尊厳ある豊かな社会生活を可能にするシステムにつながっていくのか、こういう視点が必要だろうと思うのです。  ここに「税・社会保障拠出」と私が書いてありますのは、普通は社会保障負担と呼ばれているもので、以後は社会保障負担という言い方をすると思いますけれども、実はソーシャル・セキュリティー・コントリビューションという言葉が使われております。ですからこれは、負担というとバードンでございますね。バードンとコントリビューションではえらい意味合いが違う。どのように言葉を使って議論を展開するかによって、これはその後の議論の行方が、無意識のうちに使っている言葉によって変わってしまうことがございます。私は、言葉を適切な言葉に、しかも二十一世紀に向かっての適切な言葉に変えて議論をしていただきたいなと思っております。  これは、例えば医療保険の方で入院時の食事の経費、これについての話でも実はありまして、これまでは給食費と言っていたんですね。私は、それはやめてくれ、一人前の人間自分の食事について給るというような表現はやめてください、そうしないといつまでたっても入院時の食事の問題はよくなりませんよ、こういうことを言って、文言もたしか入院時に係る食事について、こう変えていただいた経緯がございますけれども、こうした言葉の問題は非常に重要だということを一方で、余計なことかもしれませんけれども、話してみたくなりました。  それからもう一つ、公正、公平な費用負担のためには、やはり何らかの個人の経済状態の把握をきちっとするということが大前提であります。税金という言葉のタクサーレというのは、もともと評価するというラテン語の意味があるんだそうでございます。きちっとした評価がないと、実はタクセーションというのはできない。これは、ソーシャル・セキュリティー・コントリビューションの方も同じだと思います。  そうしますと、背番号制の問題が出てきます。社会保障番号、納税者番号、これは大変不評でございますけれども、しかし、国民所得の五〇%近くがそうした税や社会保障の拠出で占められる時代になって、いつまでも個人のそれぞれの経済状態の把捉をきちっとするということをおろそかにして、公正で公平な負担というのが求められるで しょうか。だれが考えても当たり前なことなんですね。それをプライバシーの侵害の一言で反対ということでは、議論は進まないと思います。問題は、プライバシーを守りながら、つまり、情報管理をどのようにしながら公平、公正な課税のための条件を整えるのか、こういう形で前向きに議論していただけると大変ありがたいと思います。  それから、特に社会保障についてですが、安易な租税への財源の傾斜というのは、私は問題があると考えております。と申しますのは、先ほども申しましたように、個人の私的な生活をサポートする。それは、個人の努力との対応関係を何らかの形でつけておかないと、つまり、努力をしようがしまいが給付が入ってくるというような形ではまずいのでありまして、特に一般市民を対象とする社会保障サービスというのが今後の中心になってくるわけです。  公的扶助の場合は税でやるほかないわけです。しかし、尊厳を持って生きたいと思う一般市民を対象とする社会保障サービスの場合は、安易にそうした個人の努力と無関係な形で費用負担を求めるというのは問題がある。その方が今後中心になるわけです。ですから、むしろ原則として、これは税にむやみに依存しないというふうに立てる方が、今後の社会保障の発展にとって私は望ましいことではないかと考えております。  こうした事柄は、基本的には公共的なことはどうあるべきかということにつながってくるわけで、それも、新しく生じてきた私的生活に対する公共的サポート、公共的な支援、それについては公共性をどう考えるかという問題であるかと思います。  それについて、歴史的にはいろいろな展開がありますけれども、古代アテネのギリシャ的公共性というのが西欧における公共性という考え方の原点でありますが、そこでは実はポリスという公的空間で、人々がアゴラという広場に集まり議論をし、パフォーマンスをし、よりよいものとは何かをお互いに鍛え上げ練り上げていった、それが公的な空間ポリスである、アゴラである、こう考えられておりましたけれども、現代の民主主義ではそれをどうやって再現していくのか、これが大きな課題ではあります。それについて、皆さんが濶達にまず議論をなさるということが極めて重要なことであろうと私は考えております。  こうした私の議論の裏づけになるような簡単な事項をこの二枚つづりの方の資料に出してあります。  市民が政府というものを、公共部門を獲得する過程、これはいわば財政民主主義の確立過程でございますが、予算委員の先生方にこれを改めて思い返してくださいと言うのは僭越ではございますけれども、実は最初は君主に対して、勝手に税金を取るなという形で市民的公共性の概念が出てきた。しかしそのときは、政府は何をすべきかというのは、依然として統治する側の君主にあったわけですね。やがてそれが、文字どおり一般歳出の内容に関してまで議会が審議するようになるのが一八三〇年ですから、たった百六十年前の話です。  さらに、そうした市民が政府を獲得してから、いわば我々自身生活、ウエルフェアの改善にまで政府を使うようになったのは、実はケインズの一般理論は一九三六年ですし、社会保障は一九四三年のことです。そして、そこで内容としている公共サービスというのは随分中身も変わってきた。これは我々が議論し、社会の中で模索する中でつくり上げていったのです。今後もそうした努力をしなければいけない。  今行われている社会的諸サービス、社会保障で行われている公共サービスというのが、伝統的な公共サービスといかに性質が違うかというのが二ページの下の方の左の図にあります。それから、政府の拡大というのが、十九世紀末からどのようなテンポで起こってきたかの図が右側にございます。  そして、一九四五年以後、第二次大戦以後の政府規模の拡大の主要部分は実は社会保障であり、社会保障の重点というのは、一ページにも書かれましたように重点が移動してきている。一般市民のウエルフェアを対象にして、それを公共的に支えて、尊厳ある生活ができる社会システムに向けて動いているのだということを最後につけ加えさせていただいて、一応私のお話といたします。  どうも失礼いたしました。(拍手)
  6. 佐藤観樹

    佐藤委員長 ありがとうございました。  次に、佐々公述人にお願いをいたします。
  7. 佐々淳行

    ○佐々公述人 佐々淳行であります。  本日は、当予算委員会公述人としてお招きをいただき、意見を申し上げる機会を与えていただいたことを心から御礼申し上げます。  先般の阪神大震災、これで私、非常に痛感をいたしましたのは、日本国民は本当に一等国民になったのだなということであります。それは、忘れもいたしません。五十年前、終戦の年に、マッカーサー司令官から、日本人は十二歳である、そして三等国、いや四等国と言ったような気もするのですが、四等国であると言われた。あの惨たんたる状況から五十年、日本人は見事に精神的に復興をして、そしてあれだけの惨害があったのにかかわらず、秩序を守り、そして遵法精神に富み、暴動も起こさないし、コンビニエンスストアに整然と並んでお金を払っている。  また、コンビニエンスストアも安売りをし、あるいはセブンイレブンとかダイエーさんとかはもう昼夜兼行でもって低価格維持、国民に対するサービスをした。立派なものだと思います。これで日本は一等国民に戻ったのだなという深い喜び、国際的にも高い評価を受けましたが、その反面、我が国の政治と行政が危機管理という問題については何という情けない状態であるのかということ、この落差、非常に私は悲しく思いました。  彼らが整然と待っていたのは、日本国は必ず、自衛隊、警察、消防、海上保安庁、総力を挙げて助けに来てくれる。ですから、生き埋めになった、下敷きの中でも一生懸命我慢して待っていた。それは行かなかった我々が悪いです。これは実に悲しむべきことでありまして、政治と行政は総ざんげすべきであって、お互いに批判し合っているときではないのではないか。  私、厳しい批判をさせていただきましたが、今やお互いに、責任がだれにあるかということではなくて、今後起こった場合、二度とこういう惨害を起こさないように、方法論的な、実務的な討議をすべきときであろうと思います。本日は、その意味におきまして、非常に実務的な、若干法律の問題なんかに触れて厄介な議論をするかもしれませんが、お聞きをいただきたいと思います。  まず、基本的な、発想の問題から申し上げますと、これを天災地変である、不可抗力なのだ、だから現行の制度では最善の措置を講じたと思う、こういうようなことをおっしゃってはいけません。為政者というのは謙虚に反省をして、人災部分があったのではないか、助けられたのではないかと常に反省をすべきであると思います。  私、先ほど下河辺公述人のおっしゃったことに賛成でございまして、今まで大きな災害があったとき、大きな事故があったとき、実は時の総理がそういう感覚をお持ちでございますと、直ちに自衛隊を偵察に使うという御指示を、公式には権限ございませんけれども、示唆をなさいました。中曽根康弘さんであります。  中曽根康弘総理は、日航機御巣鷹山墜落事件、八月十二日、夏休みなのに官邸にいらっしゃいました。私、防衛庁におりましたが、御指示が参りまして、ヘリコプターを飛ばせ、飛行機を飛ば、せ、上から見ろということをおっしゃいました。ヘリはもう暗くて飛べませんでしたが、RFファントム偵察機という高性能の偵察機が百里から飛びまして写真を撮りました。それによって墜落地点が、長野なのか群馬なのかわからなかったのですけれども、これを特定して直ちに、みんな間違って長野に行っていたのですけれども、群馬に切りかえたということがございます。  そして、昭和六十一年の十一月、大島三原山噴火のときも、これもまた中曽根総理でございますけれども、いろいろ御指示がございまして、私は内閣安全保障室長を相務めておりましたが、後藤田正晴官房長官がやはりこれについてイニシアチブをおとりになった。後で、その方法論的なことを申し上げます。  こういう空から見るという発想、これはいわば私ども、先ほどのお言葉をかりますと、ミクロマクロとおっしゃいましたけれども、私は鳥の目、虫の目と申しております。虫の目の一番いい情報をとったのは今度は警察でございます。なぜ警察が生きていたかというと、警電という、NTTと独立した通信回線を持っていて、かつ無線を持っていたからなのですね。ですから、この有線情報通信というものについての大きな反省をしなければいけないということであろうかと思いますが、この虫の目の情報は正確でございますけれども、遅いのです。全部正確を期してやりますので、どうしても遅くなる。その意味で、今後は立体的な災害対策、空から見るということ、これはもう必ずおやりいただくべきではないだろうか。  次に、天災地変が起こりましたとき、災害対策という物の考え方がやや、今までは余り大きな災害がなかったために、その認識を誤っていたのではないか。  私、実際やってみますと、二段階ございます。第一の段階、フェーズ1と申しましょうか、これはまさに危機管理でございまして、人命救助、消火、避難誘導、緊急物資の輸送、緊急医療、手当て、これがフェーズ1でございます。フェーズ2は、今災害対策基本法に盛られている国土庁中心のやり方でよろしいと思います。国土庁というのは本質的に経済官庁でございます。そして、平時の官庁であり、災害復興官庁なのですね。  一番最初の初動措置、二十四時間、七十二時間、九十六時間といたしましょうか、この時点における実動部隊、人命救助をしたり、消火をしたりする実動部隊というのは自衛隊であり、消防であり、警察であり、そして海上保安庁であって、全部指揮系統が違うのでございまして、国土庁には第一次情報はもちろん入りませんし、国土庁長官が指揮するということは事実上無理でございます。非常災害対策本部をつくったといたしましても、これは連絡調整機関でございまして、それでは国土庁長官に自衛隊の指揮権があるかというと、ございません。そういう第一次措置を指揮運用できない国土庁に災害対策の任務付与をしておったという、一番最初の昭和三十六年のときから間違っていたのではないかな。  もう一つの間違いは、地方自治尊重でございます。これも、三十六年でございますから地方自治の主張が非常に激しい強い時代でございました。革新行政が地方において行われて、国に対する反感が強かった。  自衛隊が二十九年にできまして、八十三条というのができまして、災害出動がございますけれども、これは補助的な任務でございます。そして、要請主義でございます。都道府県知事の要請があって初めて出動することができるのでありまして、今日言われている二項でもって、やむを得ないときということで、自主的に判断して出動すべきであったという議論が一部に出ておりますけれども、私は反対であります。武装集団が自分判断で出てきていいものではございません。要請があるか命令があって初めて出るのでありまして、この点、残念ながら地方と国の災害対策における任務分担が間違っていたのではないか。  災害地の神戸にこの間も私行ってまいりましたけれども、本当に市役所の対策本部の人たちというのは疲労こんぱい、不眠不休、へとへとでございます。自身が被災者である人たち災害の第一次対処責任を負わせるというシステム、これはやはり変えなければいけないのではないか。  その意味におきまして、災害対策基本法の緊急災害対策本部という総理指揮のものがございます。これにつきましては、戒厳令の印象を与えるとか、暴動は起こっていないんだから要らないとか、いろいろな議論がございましたけれども、まさに国民の生命、身体、財産の保護が政治の第一の任務であるという認識に立ては、総理が指揮をおとりになるべきではなかったのか。戦後、まだこの制度は一度も適用されておりませんけれども、今回こそこれを適用なさるべきだったんじゃないかと私は思います。  万が一、それにどうしても反対だということでありますれば、自治大臣を特命なさってもよかったのではないかと思います。災害対策基本法には、国務大臣をもって非常災害対策本部長に充てると書いてございまして、国土庁長官と書いてございません。後に小里さんが担当大臣におなりになるように、総理の任命権で、あるいは都道府県知事を、市町村長を指揮下に持っており、かつ警察と消防を持っている自治大臣というのが適任だったのではないかなと思います。  これについては、制度改革、法改正、なかなか大変でございます。これから一年議論している間にどこかでまた次の災害が起こるかもしれない。我々はこれに直ちに備えていなければいけないというのが危機管理の基本でございまして、そうなりますと、直ちに実行可能な制度を御提案申し上げますと、昭和五十二年十月四日、閣議決定をいたしましたハイジャック等非人道的暴力防止対策本部設置に関する閣議決定でございます。  ハイジャックが多発いたしましたのは御存じのとおり。このときには、だれがハイジャックを担当するのか決まっておりませんで、その都度大混乱がございました。そこで、官邸に、官房長官を頂点とする、官房副長官を座長とするところのいわば危機管理委員会、さっき申し上げましたハイジャック対策委員会というのを閣議決定でつくりまして、発生と同時に官職指定で各省庁の実力局長が集まりました。すなわち、実動部隊を持っている警察庁警備局長とか防衛局長、運輸省の航空局長とか、それが集まりまして、そこでアドホックの危機管理委員会をつくり、最初の四十八時間あるいは一週間、これを担当いたしました。  これはもうすぐ隣に総理がいらっしゃいます。必要があれば御出席をいただきます。それじゃ、官房長官の権限は何だ。これが実は内閣法十二条の調整権ということでやらせていただいておりまして、六十一年七月一日、これは安全保障会議設置法によりまして解消をし、このアドホックの委員会は現在の内閣安全保障室となったわけでございます。こういうアドホック委員会が今日実現可能であり、予算もかかりませんし、すぐあしたから間に合うのではないかと、これを提案させていただきます。  もう一つ、根本的にお考えをいただきたいのは、災害対策における自衛隊の位置づけでございます。  これはそもそも、反自衛隊、憲法違反であるということから、自衛隊が出動してくると戒厳令になる、治安出動だ、こういうようなことから今まで、要請がないと出ない。出るとしても、第三項で「近傍」、近傍というのはその駐屯地のある自治体の範囲内なんですね。こういう範囲内で出動しておったわけでございますけれども、この第二項については根本的に考え直さなければいけないんじゃないかな。  今になっていきなり、やむを得ないと判断して自主的に出動しろというようなことではなくて、自衛隊法につきましては、大体任務から直していかなければいけないんではないかな。PKO派遣というのを国連協力に関することということで新たに任務を付与すべきである、三条を変えるべきであるという意見は既にございました。これと同時に、災害対策に関することというのを明記したらどうだろうか。  そして、この第八十三条二項につきましては一定の条件を付します、時間を切ります。最初の九十六時間に限り、都道府県知事から要請がない場合、これは人命にかかわると判断して、緊急事態であるというときは総理大臣が出動を命令することができるという、八十三条に命令出動というのを明確に加えてはどうだろうか。政令や何かできちんと縛ります、乱用しないように縛りましてやるというのはいかがであろうか。それでないと、現地判断で動けとか防衛庁長官の判断で動けといったって、シビリアンコントロールの大原則がございますから、これはできません。また、やらせてはいけません。そういうことで、法改正ということも考えなければいけないのではないかと思います。  もう一つ、ちょうど一年前の一九九四年一月十七日、アメリカのロサンゼルス地震との大違いは、アメリカの場合はボランティアが組織的に動きましたが、日本の場合、国際的、国内的ボランティアの扱いが初めてでうまくいかなかったということ、これは何とかせぬといかぬなと思います。  私、実は本日、日本国際救援動委員会理事長という資格でお招きをいただいておりますのは、湾岸戦争以来、私は、シベリアの老人ホーム、孤児院の支援だとかカンボジアの難民支援とか、もう約十回ぐらい海外に、けなげなる学生、延べでもう四百人ぐらいになりますけれども、それを連れてやってまいりました。一月八日にカンボジアから帰ってきたばかりだったのです。まさか二週間後に日本人を助けに行こうとは我々思いませんでしたけれども、直ちに関西に参りました。そして、アメリケアというアメリカのボランティア団体から百トン、救援物資、医薬品等が関西空港に参りました。これをどうやって運ぶんだと。もう神戸市はとても無理でございました。それで我々ボランティアで運びました。  そして、亀井静香運輸大臣、玉沢徳一郎防衛庁長官、河野洋平外務大臣、この特別の御配慮で緊急輸入をお認めいただきまして、それを海上保安庁の巡視船あるいは自衛隊のトラックで緊急輸送をしていただいたのでございますけれども、そのときに痛感をいたしましたのは、窓口がないことであります。  外務省にも、外へ行ってやるものはボランティア対策室というのが経済協力局にあるのですけれども、向こうから来るのは地域局にもあります。私は、だから北米一課に回されました。それから犬の問題は、あれは西欧一課に回っちゃうんですね。ロシアが何かやるぞというとロシア課に行く。これは何か窓口をつくる必要があるんじゃないか。そして、さっき申し上げました災害対策危機管理委員会というのを設置いたしましたら、そこに必ず外務省の方のボランティア対策部というのが必要でございます。  なぜならば、その対策が全部地方自治体の判断にゆだねられておりますので、外国から援助しようかと言ってくる、そうすると外務省はそれを現地へおろします。そうすると現地の神戸の対策本部が考えて、それは要らないとかなんとか返事しますと、またそれがストレートに外国に返っていく。これがどうも今回、傲慢であるとか日本人は何考えているんだという、官僚主義だという批判を招いたのだと思います。やはり少なくとも本省の局長以上の知識と経験と外交感覚、特にことしは日米終戦五十年の記念の年でございますので、簡単にノーと言うべきではなかったのではないかな。こういうボランティア対策が必要でございます。  それから、私二十三日に行きましたら、全国から何千人とけなげな若者、主婦が来ているのですね。これがうろうろ歩いています、交通禁止だし立入禁止だし。これを今後は、対策本部が地方自治体にできましたら、直ちにボランティア受付部というのをつくって、そこでこのボランティアたちを積極的に使うという配慮、これが望ましいのではないかと思います。  官邸の建てかえの問題もございます。これは下河辺公述人のおっしゃったとおりでございます。私、実はそれの設計をやった当時の内閣安全保障室長でございますが、もう六年たってもまだできていない。指揮中枢が官邸にございません。これが今後の課題であろうと思います。  最後に、ハードウエアのことを少し言わせていただきます。  お手元に飛行艇の写真をお配りしてございますけれども、これはやはり立体消防、これから消防の問題を考えなければいけないということであります。  昭和五十年代に実は海上自衛隊は、そこにございます鼻の黒い飛行艇がPS1と申します、これは対潜哨戒機で二十一機持っておりました。これはもう時代おくれになりまして今日では使えないということで、下にあるオレンジ色の方、これがUS1と申します。七機持っております。岩国にございます。これが海上における遭難者の救助だとかあるいは離島の患者の輸送というようなことで今役に立っておるわけでございますが、東海地震が問題になったときに、空から消火するカナダとアメリカの飛行艇のまねをしようやということになりまして、これを一機改造いたしました。滑走しながら十五トン吸い込んで、そして海水を投下をする。物すごい消火効果があるわけです。大変安定性があって、低速で低高度で長距離飛べますので、十回繰り返せる、百五十トン落とせるのですよね。  私、火災が始まったときにこれを思い出しました。あの飛行艇どうなったんだ、こう言いましたら、これは残念ながら用途廃止になっておる。もう要らないということですね。四億円かけて改造をして、十二億円かけてもとへ戻しているというばかなことをやっているのです。これは海上自衛隊の責任じゃございません、防衛庁の責任じゃございません。防災当局というか、政府判断ミスでございまして、これをもう一度私はつくっていただきたい、こういうことを申し上げているわけであります。  それから、水の問題。これは汚水浄化装置というのが三千万円であるのですよ、ジェネレーターがくっついたもの。これを自衛隊の施設団や何がへ全部持たせました。そして、地方自治体にもお勧めをしておる。これから避難場所に全部この三千万のを用意してもらいたい。あの立派な箱物の文化ホールなんというのをやめていただいて、やはりこういう市民、県民の安全にかかわるものにお金をかけていただきたいと思います。  それから、三自衛隊の波がばらばらであるというのも困ります。これも統一電波を統幕か何かにどうしても持たせていただきたい。  それから、まだまだございますけれども、ヘリにもやはり伝送可能な撮影機材を積んでいただきたい。今、自衛隊のヘリも夜間飛行可能なのはほとんどございません。これをやはり暗視飛行ができるように改造をしていただくとか、あるいは航空機から投下するなるべく人体に害のない化学消火剤等の開発、これを急いでいただきたい。今度、破壊消防も私有財産の侵害になるといってちゅうちょをいたしましたね。これはもう世界の常識なのです、破壊消防というのは。  それから、消火弾の投下につきまして、世界じゅうから、なぜ投下しないのだ、ヘリコプターを持っていないのかとまで言われました。これはやはり、研究開発をして自衛隊に保有をさせて、百機なら百機のヘリで、さっき申し上げましたRFファントムで見て、恐らく午前八時に写真を撮っていればまだ点でございますよ、火災は。そこに集中的に初期の消火弾の投下、これをやっていれば私はとまったのじゃないか。そうすると、数多くの生き埋めになっていた人が助かったのじゃないか。その意味におきましては、これは不可抗力の死だ。五千二百名の死をむだにしてはいけません。これは半分は人災なのだ。政治と行政の責任なのだ。  特に、官僚主義、反省しなきゃいけませんけれども、官僚というのは、私もやっておりましたけれども、大体受け身なのですよ。ですから、要請主義でしょう。予算は査定主義でしょう。そして情報は待ち情報でございますよね。そして、決断しないで決裁しているわけです、下から時間かけて上がってきたものを。  政治の皆様は決断しなきゃいかぬですね。指揮命令なさらなきゃいけない。官邸でもって、さっき申し上げました危機管理委員会をつくっていただいて、政と官、これのジョイントをしっかりつくっていただいて、政治家が責任を持って指揮していただく。いざといえば腹切る覚悟で消火弾を落としてください。そうすればもっと助かったと思います。  大変激しいことを申しましたが、お許しください。(拍手)
  8. 佐藤観樹

    佐藤委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野呂田芳成君
  10. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 きょうは、公述人の皆様、御多用のところをいろいろ貴重な御教示を賜りまして、まことにありがとうございました。心から御礼を申し上げます。  まず、下河辺公述人にお伺いしたいのでありますが、大正十二年の九月一日に関東大震災が起こりまして、後藤新平さんは、山本権兵衛内閣におきまして、復興院総裁として災害復旧の衝に当たられました。あのとき彼は、帝都復興構想として、四十億構想というのを出したのは有名でございます。ところが、当時、きょうも大蔵省の高官が来ておりますけれども、大蔵大臣井上準之助らにさんざんたたかれまして、結果的には四十億円構想が七億二百万の構想に圧縮されたという経過がございます。そのために、昭和通りも雄渾な計画が半減しまして、現在のように五十メーター道路になってしまった、こういう経緯があります。私は、後藤新平の構想が生きていて、今ごろ昭和通りが八十メーターとか百メーター道路になっていたならば、東京災害ももし起これは随分違うだろうと思うのでありますが、残念であったと思います。  それでも、この当時の、大正十二年の国家予算というのは十三億八千九百三十五万円であります。これに対して、この帝都復興計画というのは、圧縮されても七億二百万円でありますから、当時の国家予算の五〇・五%に相当するという大変意欲的な計画であります。仮に、後藤新平の四十億円構想というのが認められるとすれば、当時の国家予算十三億の約三倍でありますから、そうしますと、この平成七年の、今審議している予算案、七十兆九千八百七十一億円でありますから、その三倍ということになれば二百十兆円に相当するという大変雄渾な構想であった。そして、それが圧縮されても、この当時の国家予算の五〇・五%である。とすれば、今審議している予算に直しますと、三十五兆八千四百八十四億円に相当するというものになります。  こういうふうに見できますと、さっき下河辺公述人も言われました。これから道路というものは、単に自動車を通す機能ではない、ライフラインとして整備しなければいけない。ライフラインでありますから、電気もガスも水道も電話も通信施設も、いろいろなものを組み入れたライフラインとして、この際道路機能を換骨奪胎させてやっていこう、こういうことになってまいります。  また、後ほど述べますけれども、高速道路でも新幹線でも地下鉄でも、とにかく大丈夫だと言われてきたものが全部壊れてしまって、その大幅な補強とか、あるいは耐震基準を抜本的に見直さないとこれからやっていけないという状況であります。  だから、このたびのこの大震災も、これは単なる復旧じゃなくて、復興ということに立つ以上、私は、この関東大震災のような意欲的な計画を持って臨むべきだと思うのでありますが、その点に関する下河辺公述人の御所見をちょっと伺いたいと思います。
  11. 下河辺淳

    下河辺公述人 後藤新平が関東の大震災でやられたことは、御指摘のとおりです。しかし、正確に言いますと、後藤新平は大正九年から東京都の改造計画を練っていた人物で、アメリカのプランナーの知恵もかりてつくっていたところに地震が起きたので、自分の持っているものを復興計画という名に変えて出したというので、非常に早く出たというのが評判になっておるわけです。  そのことを今ここで考えますと、実は、後藤新平と同じように、兵庫も神戸も既に未来構想を持って陳情しておられます。したがって、そのプランを政府がどのように認めるかという作業が必要であると思っていまして、後藤新平に負けない構想が県市から出ると私は思っておって、それの手伝いはしたいと思っています。  資金については、お話のとおりでありますが、関東大震災のときには、日本経済が昭和不況に入るということ、あるいは軍が軍事費を多額に必要としているという中で、一つ都市東京だけに投資を集中することに国会としても非常に苦労したのではないかというふうに思っています。後藤新平の言った中に、遷都を否定するということを非常に強く言っておりますのは、陸軍が遷都論者であったために、陸軍と対抗することを明確にして、東京にお金をかけるということを言ったようなことからああなったので、これから果たして兵庫、神戸の新しいビジョンに向かってどれだけの投資をするかは、社会資本計画の中でもかなりはっきりした位置づけをして実施する必要があると思っております。
  12. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 私も申したとおり、後藤新平さんは四十億円構想ですから、これは国家予算の三倍の規模ですから、それはかなり破天荒な計画であったと思うんですが、それでも大蔵大臣との折衝の結果、当時の国家予算の五〇・五%の規模で復旧をやった。それはやはり大変なことであると私は評価するし、さっき公述人が申されたようなことをやるとすれば、やはりそのくらいの意欲を示すべきである、私はそう思います。  そこで、その際に、後藤新平を初めいろいろ要路の人の口に上ったことは、これだけの大震災を復興するとすれば私権の制限が大変問題だ。そこで、今政府でも特別立法を考えておりますが、当時も、私権の制限が話題になったときに、明治を代表する憲法学者の伊東巳代治が、憲法二十七条の「日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サル・コトナシ」ということを理由に、私権制限に猛烈に反対してだめになったという経過があると聞いております。  私は、この私権制限というものが今度の震災を見ても一番大事であると思いますから、今回のように大規模で急施を必要とするような、緊急の回復を必要とするようなものについては、私権と公共福祉の調整ということで、もう少し私権の制限が許されるべきである、そうしないといろいろ立派な計画をつくっても実現不可能になってくると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
  13. 下河辺淳

    下河辺公述人 おっしゃるように、立派な都市をつくろうとするときに、民主主義のもとで強制力が働くということは絶対に必要だと思っておりますので、私権の制限をどのようにするかは国会の立法の中で重要視していただきたいと思います。  しかし、少し問題なのは、兵庫、神戸の経済は地震を受ける前から少し空洞化の傾向にありまして、産業構造上いかなるビジョンを持つかで迷っているところへ地震が来ましたので、多くの方々がここで脱出しようという動きも出てくるわけでありまして、制限というものがそれを促進する材料になると少し困ったことになるということも十分配慮をして、いたずらにという言葉は不謹慎ですけれども、いたずらに未来のために私権制限をするだけでは済まないということも総合的に考えていただきたいと思います。
  14. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 御指摘のような側面はありますけれども、同時に、やはり現地に立つ人から見れば、私権を制限しないと都市計画を成功する上で隆路になるという指摘もあります。私があえて、公共の福祉のために私権を制限することについて真剣な調整が必要だろうと言ったのは、そういう意味でございます。  そこで、ちょっと都市計画の専門家である公述人に伺いたいのでありますけれども、私どもがいろいろ調べてみますと、神戸市で、長田区でも東灘区でも灘区でも、倒壊してほとんど灰じんに帰したというところは、ほとんど都市計画事業をなさってない。やっていても旧耕地整理法時代にやったもので、三メーターから四メーターの道路しか確保できない。戦後都市計画をやったところは余り倒壊しないし、延焼も防がれているという報告がいろいろあります。  どうも、こういうことを言ってはあれですが、神戸市は、六甲山を削って海岸を埋め立てて、六甲アイランドとかポートアイランドをつくって、神戸商法として大変有名で、私たちもそのたくさんのレポートを読ませていただきましたが、旧市街地については余り都市計画は徹底されないで被害を大きくした。先ほど公述人が立派なマスタープランができているとおっしゃいましたが、それとの関連でどういうふうに理解すべきでしょうか。
  15. 下河辺淳

    下河辺公述人 神戸の町について熟知しているわけではございませんけれども、神戸地域に関します土地とか地上権とか営業権の権利に関するしっかりした把握ができていないということが、都市計画を実施する上での困難さになっております。これは私どもが戦災復興でも経験した点で、戦災復興で、都市計画の図面はかなりきちんとかいたつもりですけれども、諸権利の上からそれは実施不能に陥って今日になったということがあった。  神戸におきましても、明治政府の国際港湾都市としての立派な計画で実施されたということから、神戸はとてもいい町だと評価されていますけれども、二百万人に人口が増加する神戸に対する都市計画が、絵はあっても十分機能しなかったという点は反省しなければなりませんが、それの最大の理由は、諸権利がふくそうしていて処理できない。したがって、今回も、区画整理事業を必要としていながらも、区画整理事業計画を確定するということは諸権利調整を済ませなくてはいけないとすると、なかなか容易なことではないと思っておりまして、都市計画の仕事をする人間にとっては、御指摘の点が一番頭の痛いポイントだろうと思います。
  16. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 今公述人がおっしゃいましたとおり、神戸等に早くから立派な計画があった、しかし、諸権利がふくそうしておってなかなかうまくいかないで今日に至っている。そういう実態でありますから、私があえて、こういう緊急を要する大規模災害のときは私権制限が必要だと言うのはそこから来ているわけでありまして、この点については私どももう少し国会で掘り下げていかなきゃいかぬ、こういうふうに理解しております。  ちょっと話を変えますが、六四年の新潟地震で昭和大橋が落ちてしまった。このときに、日本の橋梁技術たちは耐震設計に工夫を加えまして、もうこれからの橋梁はどんな地震でも落ちない、こういうふうに胸を張っておりました。サンフランシスコのロマプリータ地震で二重式の高速道路がつぶれたときも、現地調査をした日本の調査団は、日本の耐震設計基準はアメリカよりも厳しく、高速道路の陥没や落橋はあり得ない、こう断言しております。また、ロサンゼルスのノースリッジ地震でも、我が国の橋梁などの耐震設計に反映させる点は認められなかった、こう言って胸を張っております。  要は、世界に冠たる日本の耐震技術地震工学にとっては、アメリカの地震災害は教訓にならず、学ぶべき点はない、こう誇っておったのでありますが、阪神高速神戸線三十九・七キロのうち兵庫県内だけで三十二・七キロでありますが、その橋脚千百七十五本のうち半数を超える六百十一本が損傷を受けるという深刻な事態になったのであります。  新幹線も、私たち関係者から、関東大震災クラスの地震に耐えられるから心配ないと聞いてきましたけれども、高架部分の鉄筋コンクリート支柱がたくさん圧壊して、破壊された。特に、新幹線でも、東海道新幹線は各新幹線の中でも建設年代が最も古いし、耐震技術も古い、あるいは老朽度が激しい、そして地震に一番弱い盛り土区間が一番多い新幹線であります。  また、今度の地震で、地下鉄の被害も開削工法部分被害が集中しております。ある調査によれば、国内の地下鉄三十三路線、五百七十四キロのうち、六五%の三百七十六キロが開削工法である。しかも、これらの設計はほとんど直下型地震の想定外の設計になっております。こうなってくると、早急に大幅な補強工事あるいは耐震基準やトンネル標準示方書の見直しが急がれなきゃいかぬと思いますが、この点についてはいかがなものでございましょう。
  17. 下河辺淳

    下河辺公述人 おっしゃるように、耐震構造の見直しが必要であることは言うまでもないと思います。しかし、この地震の経験から少し議論をしたらいいと思っておりますのは、新聞など拝見していますと、技術を過信してその神話が崩壊したと書いてあります翌日から、次の神話を求める意見がいっぱい出てくるわけでありまして、技術というものは絶対に限界があって、大自然の災害に十分ということはあり得ないということを確認する必要があると私は思っています。  そのために、一般の方に耐震構造は大丈夫だという話をすることをやめて、ここまでしか責任が持てないという責任の限界を明らかにしてはどうかと思うのです。これは、実は市民の方に相当な恐怖心を与えることにもなります。これはがんの告知の問題と全く同じではないかと思っておりまして、神話と言われた技術論は、ここで耐震性についてもっと深い議論をしていただかなければいけないだろうと思います。  特に、耐震性の中で、プレート型の大地震についての勉強は相当出ていますけれども、活断層の直下型地震ということについては必ずしも今まで十分な議論はしていないと言えますけれども、逆に言うと、勝てそうもないということもあったということも御承知おきいただきたいという上で、耐震構造の見直しを急いでいただきたいと思います。
  18. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 改めて私が指摘しておきたいと思いますことは、内外の幾多の地震で、日本技術陣が、日本は大丈夫だということを、高速道路でも地下鉄でも新幹線でも繰り返し過ぎてきた。今公述人の言われるように、絶対に壊れないものなんというのはないわけでありますから、私どもはこれを教訓にして、もう少し謙虚にそういう問題についてお互いに研さんしなきゃいかぬと、私は腹の中からそう思います。  さっき公述人が、壊れにくくて補修しやすい構造に変えていくべきだということは大変示唆に富んだ指摘でありましたから、私どもも考えさせられる問題であると思います。技術に対する絶対の過信というのは、これを契機に私たちは、技術屋や学者の方にも少し考えていただかなければいけない反省材料を生んだというふうに思います。  次に、佐々公述人にお伺いいたしますけれども、この地震で国民の間から、自衛隊の対応が遅い、こういう声が大変激しく起こりました。これを受けて、文化人の中には、このような非常時には軍隊が出動するのが世界の常識である、だから自衛隊がやるべきである。ふだん自衛隊に反対している人ほどこういうことを言ったという事実があります。  また、残念でありますけれども、固有名詞はやめますが、政府のその衝にある最高の責任者の一人が、自衛隊は出動要請を待たずこちらからオファーすべきであったと、平然どこう述べております。  また、貝原兵庫県知事は、非常の場合には要請がなくてもどんどんやるべきである、自衛隊派遣に知事の要請が必要だと言っているのは霞が関の一部の高級官僚だけである、こう言っておりますが、こういう指摘を公述人はいかにお考えでしょうか。
  19. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  そういう御指摘があったということは事実でございますが、私もいろいろ事情を調査をいたしました。防衛庁の場合には、非常に早い段階で防衛庁長官まで災害の報告が入っておる。六時には玉沢徳一郎長官が準備の命令をいたしておりまして、九時の時点では各部隊の第三種待機というのがかかっております。  特に、伊丹の中部方面総監部がございます三六連隊でございますか、これは非常招集を六時三十分にいたしまして、さっき申し上げました八十三条の三項、あの三項でいきますと、解釈上伊丹市の管轄区域しか行けないわけです。それで、伊丹駅まで約二百名ぐらい出しておる。護衛艦「とから」とか「ゆら」とかいう四隻、これが呉港を九時ごろにはもうもやいを解いておる。ヘリも偵察に飛んでおる。こういうことで初動措置の、第三項、近傍出動というのは既にやっておった。これはもう皆様御承知のとおりでございます。  問題は二項なんですね。その二項がどうして制定されたかと申しますと、やはり地方自治の尊重で、原則として要請があったら出ていきなさいと。一般禁止、ある一定の条件のとき特定解除というのが八十三条でございます。  いみじくも、神戸の助役さんでございましたか、テレビに出まして、こんな大きな災害で自衛隊が出動するようなことが必要になるとは思わなかったものだから今まで訓練しませんでしたと、こういうことを言っておられます。実は、昨年の五月に中部方面総監部が「大震災地誌」、こんな厚いのをつくりまして、これにはいろいろ……(野呂田委員「時間がないものですから」と呼ぶ)はい。そういう対応をやっておったのですが、共同訓練はやっておりませんでした。  そこで、さっき申し上げましたように、自衛隊が二項でもって独自の判断で出るということに私は反対であります。これはシビリアンコントロール違反であります。あくまでやはり政治が責任を持って出動命令をすべき、そういう合法的な出動が知事の要請がなくてもできるような体制をつくるべきであろう、これが私の意見でございます。
  20. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 今お話がありましたが、公述人は、自衛隊が自主出動するような体制は余り好ましくないという意味の発言がありました。  そこで、このたびも厳密に言えば、兵庫県知事からの正式出動の要請がないままに出動を開始したというのが実態のようで、今もお話がありましたが、一月十七日午前九時過ぎに防衛庁の山崎運用課長は、この地震の報告を受けると、陸上幕僚監部を通じ、姫路駐屯地に兵庫県に対し出動要請を促すよう指示しております。しかし、同駐屯地にさらに同課長が確かめたところ、同駐屯地からの答えは、県へ派遣要請を出すよう言っているが、向こうからは全然返事をもらえない、こういうふうに答えております。  そしてまた、そういう状態の中で、伊丹市の陸上自衛隊中部方面総監部は、地震発生から一時間もたたない午前六時半に非常呼集を発令して、伊丹駐屯地では、七時五十八分に四十八人が今御指摘のとおり阪急伊丹駅、八時二十分には二百六人が西宮市民病院裏に緊急出動したのであります。  また、姫路駐屯地では、地震発生後、出動準備に入るとともに、九時十五分、兵庫県庁に電話で派遣要請を出すよう連絡したけれども、返事はもらえなかった。その後、午前十時になって、県職員から自衛隊が出動できますかという電話をいただいて、この部隊としては、これは知事からの要請と受けとめたということで出動した、こういうことになっております。  こうなってくると、自衛隊の出動が遅いというよりは、現行法の中で八十三条の二項ただし書きでは、要請を待ついとまがないと認められる場合は、自衛隊が出動できると書いてあるのですから、結果は、自衛隊がこの二項ただし書きで自主出動したと判断するのが私は正しいと思うのであります。この間の経緯を見ますと、自衛隊が責められる、あるいは政府が責められることよりも、公共団体に対して再三再四出動要請をしているのに、この出動要請を公共団体はしなかったというところに大きな問題が私はあるように思います。  ついでに申し上げますと、神戸市等では防水訓練とかコンビナートの火災訓練はやっておりますけれども、自衛隊と一緒に震災訓練をやったというのはほとんどないということでありますけれども、こういう問題はやはり私は国民にもう少しわからせておかないといかぬと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  21. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答え申し上げます。  もうまさに御指摘のとおりでございまして、自衛隊はできる限りのことをいたしておりました。やりたかったのだけれども、やらせてもらえなかったというのが真相だと思います。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、自衛隊法七十八条というのがありまして、これは治安出動は要請出動と命令出動と明記してございます。これで大変問題になったわけでございますが、災害はどういうわけか要請、そして命令による出動というのは極めて限られた条件になっていた。  それには長い間——やはり世界の常識として、自衛隊は訓練を受けており、経験を積んでおり、重装備を持っておりますし、機動力を持っております。先ほど第二項で出動したかったと申し上げましたのは、八百カ所で人が埋まって助けを求めているときに、一カ所一個分隊としたって八千八百でしょう、だれが考えてもこれはやはり自主出動をする範囲、小規模をはるかに超えております。したがいまして、そういうシステムをつくっていただきたい。  自衛隊をそういう形で批判をするよりは、長い間国民の間にございました自衛隊アレルギーをこれを機会に考え直していただいて、自衛隊をやはり災害出動、災害救助の基幹部隊としてお認めをいただく、こういうことであろうかと思います。
  22. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 よくシビリアンコントロールの問題が問題にされます。  シビリアンコントロールとは、私は内局や政治家の指示、命令がなくては主体的な行動をとってはならないということだというふうに理解しますけれども、こういうことをやはり今まで繰り返し自衛隊は言われてきた。  そういう中で、二項ただし書きをちゃんとわきまえて自主判断で出動をしている、こういう事実から見れば、今自衛隊法等を改正して対処すべきだという声が大変強いのでありますけれども、要は、こういう大災害に備えた訓練に自衛隊の参加を要請してない公共団体の実態、そしてまた、このたびの大地震に再三再四自衛隊側が出動票講をしているのにその要請に返事がない実態、そしてやむを得ず自衛隊が二項ただし書きで自主出動したという実態、そういうことから見れば、これは法律の不備よりも、訓練の不足というか運用の不備でありまして、まずそのことをきちっとやった方が私は実効が上がるのじゃないか。  一月二十日の朝刊の「産経抄」によれば、ちょっと読ましてもらいますが、「緊急災害時に自衛隊が出動する即応態勢のため、確かに地方自治体との連携や法律の整備は必要だろう」「しかし本当の原因は法や条例の欠陥ばかりではない」「本当の原因は、日ごろは自衛隊の活動に手かせ足かせをかけることに躍起である世論の風潮のせいである。」「必要なのは自衛隊に対する信頼と感謝と敬意ではないか。」、こういうふうに産経新聞は立派な所見を述べておりますが、これは私は本当に大事なことである、こう思います。  そこで、佐々公述人にお伺いしますが、公述人は、いつも申せられておる中に、アメリカの海軍がやっております情報のバイパス手術のことを書かれております。アメリカ海軍では、指揮系統を上にまたは下に一人以上飛び越えるようにして、情報が早く責任者に伝わるように、そういう訓練を日ごろすべきだ、これをバイパス手術ということでよく述べられておりますが、今度の震災でこのバイパスの手術は、公述人意見を当てはめるとすれば、どのあたりにこれが必要でございましょうか。
  23. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  まず、バイパスの問題でございますけれども、正規のルートで申しますと、それぞれの、自衛隊は防衛庁云々と、警察は警察庁、入りますね。それで、第二次情報が国土庁へ行きまして、国土庁がまとめまして、これは官房副長官も官房長官も、災害対策に関する限り指揮系統に入っておらぬのです。ですから、総理に直接御報告をする。これが普通のルートでございますが、今回、実際に総理にお耳に入れましたのは、警察庁から派遣されている秘書官でございました。この秘書官は、お父様がお亡くなりになりまして、福岡に行っていたものが、現地でもって情報を収集して、長距離で総理に御報告している。これはバイパスをやっておるのです、警察は。  したがいまして、今度国土庁あるいは情報調査室を使ってやるといういろいろなお話がございますけれども、私は、現行の内閣五室制、せっかく六十一年の七月一日に、こういうときのためにおつくりになった補佐官制でございます。もうまさにFEMAをつくるといったって、これはそう簡単にできませんし、一年もかかって、予算がかかって、しかもまだ官僚ができちゃうわけですから。ですから、その意味では運用でやるべきだ。そこで、さっき申し上げました危機管理委員会をつくって、内閣五室を使いなさい。そうすると、警察からの情報、必ず入ります。防衛庁の情報、必ず入ります。運用でできる、まだ十分できると考えております。
  24. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 ありがとうございました。  最後に、深谷公述人にお伺いしますが、今度病院とか診療所とかが大変倒壊いたしまして、通常ならば、病院については建築資金十四億、診療所十億を上限にして四・七五%の金利で、これは年でありますが、貸し付けております。今度、激甚災の指定になりますと、一千万円を限度にして年三%の特利で三年間貸す、こういうことになっております。  医療体制の再建というのは、これはだれが見ても急務でありますから、これに今度は、今検討しておるところであるそうでありますが、特別利率として二ないし二・五%の金を貸そう、こういうことでありますけれども、今ごろ一千万を限度にして特利をやってどういう効果があるか。だから、金利を下げてくれるのはいいけれども、一千万なら個人の家を建てるのでも大変なことでありますから、それとまた民間医療機関にもこういう最恵待遇で貸し付ける必要があると思いますけれども、この点についてちょっと御所見を伺って質問を終わります。
  25. 深谷昌弘

    深谷公述人 医療機関の震災による再建、コストをどう考えるかという、緊急的な問題について、利子補給あるいは上限の問題ですね。これは、住宅の再建の問題についても既に上限をできるだけ設けるべきではないとか、あるいは金利を下げるべきである、そういう対策がとられつつあると聞いております。当然これは、その考え方が病院の方にもしかるべく適用されていかなければならないと思っております。  ただ、もう一つ問題なのは、建物を含めての医療機関の設備投資をどうやって捻出するかというのは、実は災害だけじゃなくて大変な問題で、現在の医療保険の点数制度のもとでは、実は建物を更新していくということについて大変問題があります。  具体的に申し上げますと、例えば、入院の個室料、今あれは幾ら払わなきゃいけないかというと、大抵、個室にしますと二万、三万取られます。どうしてホテルの一泊の料金よりそんなに高いのでしょうか、こういう問題であります。私もこれからそうした問題については研究したいと思っております。  災害の方については、基本的には住宅の復興等々あるいは公共施設復興等々に準じて考えるべきである、私もそのように考えております。
  26. 野呂田芳成

    ○野呂田委員 ありがとうございました。  終わります。
  27. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これにて野呂田君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤英成君。
  28. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 新進党の伊藤英成でございます。  きょうは、公述人の各先生の皆様方には、お忙しいところ本当にありがとうございました。そしてまた、今は大変貴重な御意見もいただきまして、ありがとうございました。  それぞれの公述人皆さん方に御質問させていただきたいと思うのですが、まず最初深谷公述人に、先ほど説明をしていただきました資料の三ページ目のところに社会保障の費用負担の話がちょっと出ておりますが、先ほどは考え方等についていろいろお話をいただきましたけれども、実は今最も私が関心を持っているのは、これからいわゆる高齢化社会、二十一世紀高齢社会と言った方がいいかもしれませんが、そういう高齢社会に対してどういうふうに対処をしていくんだろうか。  その中で、例えば年金問題の部分をとってみますと、税と保険の部分をどういうふうに考えていくべきなんだろうか。例えば基礎年金の部分についても、三分の一国庫負担を二分の一にだとか、あるいは極論いたしますと、基礎年金の部分については全額税でもいいではないかという議論もありますね。私自身はそういう意見を案外持つわけでありますが、いずれにしても、税と保険の部分をどういうふうに考えるのか。  そしてまた同時に、積立方式でいくのか賦課方式で考えるのかというようなことが、非常にこれからの問題で重要な視点だと私は思っているわけでありますが、その辺のことも含めて、この社会保障の費用負担の問題について、先生の御所見をお伺いしたいと思います。
  29. 深谷昌弘

    深谷公述人 お答えいたします。  社会保障の費用負担を具体的にどう考えたらいいのか、年金を例にとって考えてみたらどういうことになるだろうか、こういう御質問かと思います。私も実は年金を例にとって話したかったんですが、先ほど時間の制約がありまして話せませんでしたので、ありがたく補充説明をさせていただきます。  まずその前に、ちょっと議論が足りなかったところがございまして、年金の費用負担の問題と関係があるんですが、「視点を転換することで合意形成は可能である」と、「二十一世紀高齢化社会のヴィジョンと政策」のところで仏そのように書いております。  このときに、通常、高齢化社会の問題を考えるときに、六十五歳以上人口比率がどうなるかということが注目を浴びている。これはそのとおり、問題点をえぐり出すのに重要な視点なんですが、ただ、六十五歳以上人口比率だけにこだわっておりますと、実は大変問題がある。六十五歳以上の人たちが受給者であり、そしてそれ以下の生産年齢人口にある人が負担者である、私受け取る人、あなた払う人、こういう形で利害の対立構造のまま議論が展開する可能性があるわけですね。私は、それも大事だけれども、やはり四十歳以上人口比率に注目してほしいという提案をしております。  なぜこんな提案をするかといいますと、四十歳という年齢はちょうど人生の折り返し点です、男女差はありますけれども。これまで生きた年数と、これから生きるであろう余今、これがちょうど等しくなるのが大体四十歳です。これは、実は不思議なことに、明治以来余り動いてないんです。三十六、七歳から四十一、二歳の間ぐらいしか振れないんでありまして、極めて安定的なんです。  四十歳をちょうど人生の折り返し点と考えますと、その人生の折り返し点以後を生きている人たちがどのくらいの比率を占めるのか、こういうことが出てまいります。そうすると、平成八年、来年です、来年日本は五〇%超えます。これは、世界で一番早くその比率を超えます。つまり、人生の折り返し点を生きる人たち日本人の人口の半分以上を占める。その人たちにとっての最大の関心というのは、やはり自分の後半生を託せる社会というのはどんなものだろう、こういうことだと思うんです。そのためには、自分たちも努力するし、公共部門でも一緒になって努力してくれよ、こういういわば公共的な連帯、ビジョンを実現していく連帯の基盤をなすのはこの視点だろうと思います。  これは代表の皆さん、こういう視点をぜひ訴えていただきたいと思うのです。というのは、そうすれば、実は六十五歳以上代表とかあるいは若者代表とか、そういう形で限定して当選してくる必要はないんでありまして、みんな一緒になって後半生を考える。若者だって、有権者は二十歳以上ですから、そうすると後半生になるまでが二十年、それから後半生を生きるのが、約八十歳とすると四十年でありますから、彼らだって実は大変な関心があるはずです。  そういう中から、実はどういう社会システム考えたらいいのか、そして、例えば年金はどうしたらいいのか、こういう発想に立ってこれから考えていくことが重要ではないかと思うんです。  それから、年金を例にとって、公共的な連帯の原則で費用負担を考えるとどうなるだろうか、こういう問題ですが、税と保険料の関係ですね。これは、保険料というのは、民間保険の価格と同じものだと考えるべきではないというのが私の考え方です。民間保険の保険料は、確率計算のもとで、見込みとなる受け取りとそれから見込みとなる支払いがちょうどバランスするように、マクロでバランスするように取られているのですね。ですから、それが自分にとって得か損か考えて加入を決める。しかし、例えば年金は、その原理でいくと大変都合が悪い。インフレや経済成長が起こった場合に、実はとんでもないことになる可能性を秘めている。  例えばオイルショックのときに、第一次オイルショックですが、消費者物価二五%上がりました。じゃ、それに合わせて利率上がったのか、上がっておりません。簡単に言えば、今まで営々として老後のためにためた貯金が二五%価値が下がってしまうんです。そのときに、退職後それを充てようとして、二五%、四分の一価値が下がったんだから生きる期間を四分の一削るのか、あるいは生きる生活水準を四分の一削るのか。そんなことできません。それに対応するためには、そうした経済成長やインフレに耐え得る年金システムでなければならない。  これは実は、民間の保険システムではなかなかうまくいきません。だからこそ、実は欧米の先進国の年金システムは積立方式じゃなくて賦課方式をとっている。そして、これは現在、世代間の仕送りのいわば公共版である、こういう説明がされていますけれども、大変的確な説明であります。自分が払い、そしてお年寄りを支える。そして、自分が年をとったときにまた若い人たちが順送りにやる。これは仕送りのシステムを公的にやっているものだと。  そうなりますと、要するに、まずどういう給付水準がふさわしいかという問題ですが、自分が過去にこれだけ払ったからこれこれよこせというのは非常に理不尽な議論になります。例えば子供が親に送るときに、あるいは親が子供に送ってほしいというときに何と言うか。おれは過去にお前にこれだけ投資したんだから、それに見合うだけよこせ、こういう言い方はしないはずであります。むしろ、連帯の精神に立つならば、おまえたちがこれくらいなら私はこれくらいのことができればいいんだよ、こういうふうに言うはずであります。親も決して、子供の生活が食うや食わずで仕送りしろなんて言わないはずであります。  ですから、それは支払った者と受け取る者が正確に保険計算上等しくなければならないという原理には立たないはずであります。ただし、公的な仕送りですから、これは親子のようないわばしっとりとした、そうした形の思いやりとはまた違った、少しぴしっとした原理原則に立った思いやりが必要である、そういうことになります。  これについてはドイツの年金給付の決め方が参考になります。過去にたくさん払った人は相対的にたくさん受け取ることができます。しかし、全体の平均水準は、これは現役の人たちとそれから退職した人たちのいわば税引き後、社会保障負担を引いた後の可処分所得でバランスを考えて平均的なものを決める、これで実に見事にやっておるわけですね。ですから、私は、先ほどの積立方式と賦課方式の問題は、まず社会保障、公的年金の本来の性質からいえば賦課方式になることが正解である、このように考えております。  それから、税と保険料の関係ですが、税というのは、自分が払ったから、だから何がもらえるということを個別に対応させないというのが税でありまして、そうすると、自分生活自分で責任を持ってできるだけ努力するという動機の形成と、実は抵触する部分があります。ですから、国防、外交等々はいいのですが、年金に関して言えば、むやみに税の投入比率を拡大することは、伊藤さんにはせっかくですが、私は逆の立場であります。ただし、理由がきちっとしているもの、例えば何らかの事情で払えなかった人たちについて何か手当てをしなければならない等々の問題について、あるいは年金システムを維持するために補助しなければならない、こうしたものについては私は税金を投入することは結構なことだと思いますが、それにむやみに頼ることはよくない。  イギリスの労働党の年金の要求のとき、我々は費用負担をしても構わないから、我々の老後の生活にふさわしい年金を実現してくださいと言って、実は所得比例年金へと移行していったわけです。イギリスは、最初は最低生活だけの公的年金でした。しかし、それでは年金が十分機能しない、そういう欠陥を持っておりました。労働党はそれに対して、費用負担しても構わないからそれにふさわしい年金をつくってくれと。そのときの費用負担というのは、税でという話ではありません。税でやれば、何に使っていいか決まっていないものを取って、その後それの分捕り合戦になりますから、やはりそれは余り好ましいことではない、そのように考えております。
  30. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 深谷先生にもう一つお伺いしたいのですが、これは社会保障問題云々ということじゃないのですが、今、財政投融資、財投のあり方についていろいろ議論もされたりしているわけですね。そして、一方で郵貯ですね。これは行革という問題も含めて、郵便貯金の肥大化、そしてそれがいわば民業の圧迫という話が、きのうも実はこの公聴会の席でも出たりいたしましたけれども、そういう意味でも、財投のこれからのあり方の問題につきまして御意見があればお伺いしたいと思うのです。
  31. 深谷昌弘

    深谷公述人 財投は、いわば日本の民間の金利水準を人為的に引き下げることによって経済成長を促進してきた。それから、経済成長のための基盤整備に貢献してきた。こういう使命がこれまでの財投の主たる役割であったかと思います。  それで、そうした使命が今日も続いているのだろうかということについては、私も疑問を感ぜざるを得ないところがあります。ですから、新しい財投のあり方考える、あるいは場合によってはそれを解体する、そうしたことも含めて、この社会の組みかえの時代においては、大胆にまず議論を闘わせることが必要ではないかなと私自身考えております。  それで、この財投を人為的に低金利に抑えたための一つ被害者は、実は年金なんです。積立資金を、例えば民間で回るような資金運用利回りでやっていたら、もうちょっと現在の年金財政というのは余裕があったはずなんですね。ただ、成長したおかげで我々自身の給料も上がったわけですから、一方的に財投がいかぬというわけではありませんけれども、しかし、年金の方はそれで割を食ったのは事実であります。  今後、そういうことは問題があるだろうと思いますから、自主運用は行われていますが、自主運用ということをもう少し考えていくべきだろう。ただそのときに、自主運用すると、株に投資していて、株が落ちてしまって減価したのをどうしてくれるんだなんという問題がありますけれども、私が研究した結果では、長期に満遍なく株を持っていれば、これはそんなに問題が生ずるはずはないわけでありまして、そういう長期的な運用を可能にするような自主運用のシステムを工夫する。そういうことで、年金財政の方にも被害がいかないような運用の仕方というのはあり得ると私は考えております。  以上でございます。
  32. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 後ほど時間がありましたらまた深谷先生にお伺いしたいと思いますが、その前に、今回の阪神大震災に関連をしてでありますが、私は、今回の阪神大震災は、本当にいろいろなことを十分に私たちが反省をして、そして今後に対処しなければならぬ、こういうことを本当に思うのですね。公述人皆さん方からもそういうお話もいただきましたけれども、そういう気がいたします。  そういう意味で、まず最初に、佐々公述人にお伺いしたいわけでありますが、今危機管理云々ということでいろいろ議論するわけですね。これは昨年、佐々公述人の述べられた新聞記事でありますが、「正論」ということで述べられていらっしゃいまして、要するに指導者の問題について述べられておられます。  この中に、ガルブレイスの「不確実性の時代」の中でということで、まずは「偉大な指導者には、皆一つの共通の特色がある。すなわちその時代の国民の主要な不安に対し、真正面から対決する気構えにほかならない。これが、そしてこれこそが指導力の本質なのだ」というガルブレイスの言葉を紹介をされて、要するに指導者というのはこういうふうにやらなければいけないんだよという形で書いていらっしゃいますね。そういう意味で、彼はこのように言っているわけでありますが、佐々公述人はこの言葉も述べられていらっしゃるわけですが、公述人御本人として、指導者は本当にどうあらねばならぬのかということについてどういうふうに思われるでしょうか。
  33. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  危機管理の基本原則は、最悪に備えよでございます。そして、悲観的に準備し、楽観的に対処せよというのが本質でございますが、今回の場合には、残念ながら危機の予測もなかったし、備えあれば憂いなしの全く逆、憂いなければ備えなしであったのではないか、全くしょうがない状態だったと思います。  地震は予知できないというのは常識でありますので、最初の一撃で、震度があれだけの大きいのがあればこれだけの犠牲が出るのはやむを得ません。最初の犠牲者はやむを得ないといたしまして、その後の被害者、生き埋めになっている人を一人でも早く助け出す、一軒でも延焼を食いとめる、これが危機管理でございます。被害局限措置。その意味においては、指導者として、大変失礼でございますけれども、お初めての経験でいらっしゃいますけれども、余りに十七、十八日の動きが鈍いです。  私どもが補佐官でついておりましたら、まず第一に、二日目には少なくとも、スーパーピューマというヘリがあるのでございますから、それで鳥の目で見てください、御自分で。報告が入ってこない、入ってこないと、待ち情報でなくて、ごらんになれたはずです。それから、重大な事態であるということがわかった時点で、なぜ官邸でもって合同記者会見をやってテレビで国民に訴えなかったのか。これは、ほかの国の大統領、首相はみんなやっておるのですね。  その意味におきましては、時代の不安に正面から対決するという姿勢が、残念ながらトップリーダーに欠けていた。これは御反省をいただかなければいかぬと思います。  そして、今の国民の不安は何かというと、またどこかで起こるんじゃないかであります。活断層というのは幾らでもあるわけですから、これに備えて、次はどこで起こるかわからないものに対して、できるだけ早く実現可能性のある危機管理体制をつくること。  そして、私が一番心配しているのは、東京だとか大阪であった場合、タワーリング・インフェルノ、超高層ビルの火災が始まったら今の手段では消せないのですよ。これに対する対応策を至急に、外国のヘリコプターを輸入したって対応すべきである、こういうことを考えております。今の時代の不安というのは、いつどこでまた震災があるか、特に東京はどうなるんだということだと思います。
  34. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今のお話に尽きると思うのですね。  そこでさらに、佐々公述人は今日まで、先ほどもちょっと御紹介もありましたけれども、御自分がそれぞれいろいろな危機に際して対処されてこられたりしていますね。そういう意味でもうちょっと具体的に、こういうときにこういうふうに実行されたんだというようなことについて、御紹介していただけるとありがたいのですが。
  35. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  一番いい例が、昭和六十一年十一月の三原山噴火であったと思います。あれも通常の災害対策のやり方で、東京知事を対策本部長にするか国土庁にするかというようなことをやっておりまして、午後十一時四十五分まで会議が続いておりました。そして、官邸においてリーダーシップをとられたのは中曽根総理であり、後藤田官房長官でございました。このやり方は、さっき申し上げました内閣法十二条で、直ちにその重要な局長、消防総監であるとか、それを全部緊急にお集めになりまして、これに対して調整権の強力な発動でもっておやりになりました。  先ほど貝原知事の例が出ておりましたけれども、鈴木都知事というのは、これまた大変こういう事件があったときに血沸き肉躍る、旧内務官僚の護民官でございまして、横田副知事もそう、大体中曽根さん以下そういう護民官ぞろいに相なりまして、そうなると、若干法手続において、後でやればいいというようなことはスキップしましておやりになった。もう二時間で三十七隻、海上自衛隊と海上保安庁と東海汽船の船を動員なさいまして、午前三時には一万三千の島民を全部避難させた。  これは実は溶岩が元町の直前でとまっちゃったものですから、死者なしでよかったのでありますけれども、その後でもって猛烈な批判が出ました。なぜならば、そういう手続を無視して、官邸がトップダウンで中曽根リード型でやった、これは内務省のやり方だ、そしてまた、派手にやって何もなかったじゃないかと。私は反論をいたしました、ホームラン王というのは三振上でございますよと。災害対策でも何でもそうでございますが、危機管理で一番恥ずべきことは見逃しの三振なんです。不作為ということ、何にもしないのが一番恥で、大空振りでいいじゃないですか、一人も死ななかったのだから、こういう反論をしたことがございます。  かつて我々を批判していらっしゃった方々が、今そのことをなぜやらなかったとおっしゃっているので、私はまた反論をさせていただきます。その当時言っていた方に、私全部記録を持っておりますから、議事録もありますので、もう一度御質問をいただければいつでも反論をさせていただきます。
  36. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は佐々公述人のお話、非常に重要な話だろうという気がするのですね。今三原山の例も引かれました。  最近やや気になりますのは、なかなかできなかったのは法律が不備だったんだよとか、いわばそういうような感じの話が多いという気がするのですね。もちろん不備なものもあるかもしれない。その部分についてはこれからそれを直していくということが必要なのですが、実は現在ある法律でも、それの運用でかなりのことはできるかもしれない。あるいは、それはそれぞれを動かすリーダーの人たちの、あるいは私たちもそうかもしれませんが、そういう人たちの意識の問題でいろんなことができるということだと私は思うのですね。そういう意味で、いわゆる法律不備論に責任をいわば転嫁するというような感じになり過ぎていやしないかなということを私は非常に心配するんですね。  そういう意味で、今日までいろんなものを積んで、いろんな事態に対して考え、対処されてきた公述人ということで、先ほどもお伺いしたのですけれども、今の、何となく法律不備論に傾斜し過ぎていないかどうかというあたりについての御見解をお伺いしたいと思うのです。
  37. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  FEMAをつくればいいんではないかとか危機管理庁をつくろうとか、復興庁だとか、あるいは法律の手直しをしよう、この議論は一年がかりでございまして、さっき申し上げましたように、国民の不安にこたえるものではないと思います。いつどこでまた起こるかわからないというのに備えなければいけない。その意味におきましては、運用でいろいろできると思います。  なぜあの段階で、法律で許されている、まだ戦後一度もやらなかったという理由で緊急災害対策本部を設置なさらなかったのか、私はいまだにわかりません。新聞を拝見いたしますと、その責任ある官邸の方が、暴動が起こらなかったから、戒厳令みたいだからやらなかったとおっしゃっている。(「私権制限があるからやらない」と呼ぶ者あり)私権制限があるからやらない、あるいは大げさに、派手にやればいいもんじゃないという御発言もございました。今の法律では国土庁が所管官庁となっているんだから、自治省だとかなんとかと言うのはおかしい、これだからこそ五千二百人死んだわけでしょう。  それに対して、さっき申し上げました、天災地変で、不可抗力でもって、これはしょうがないんだ、最善の措置であったと言うのは、恐らく、総理もまさかあんなことをお考えになっていませんよ。総理は役人の書いたのを本会議で読んじゃっただけでしょう。だから、ああいう答弁を用意して持っていった人というのはいるわけですね、最善の措置であったと。あれは私は、それでは具体的に、最善の措置というのはこれとこれとこれをなさいましたかとお尋ねしたくなるわけでありますけれども、運用でできます。  さっき申し上げました内閣法十二条による非常対策委員会、こんなものは、閣議で決めればいいんですから。それで集めれば、実力部隊を持っている局長がからゃっと集まっちゃうんですから、総理の下で。国土庁長官あるいは自治大臣だと言うともめますから。で、今の小里さん、特別の担当大臣つくったって、こんなもの何の役にも立たぬのです、大臣つくったって。やはり実力持っている、指揮権持っているやつを集めなきゃだめです。ですから、運用でできると思います。
  38. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 今緊急災害対策本部の話について、なぜつくらなかったのか理解に苦しむというお話でございます。それは私ども全く同感で、本予算委員会でもそのことを私は申し上げたり、しかも、その理由といいましょうか、そういうようなことについても述べてきたつもりであります。  下河辺公述人に、本件について、いわば防災の問題についてもずっとその責任者としてやってこられたわけでありますが、この緊急災害対策本部を今回設置しなかったことについてどのように思われるでしょうか。  私は、先ほどの佐々公述人と同じように、なぜやらなかったのか。それこそ今日まで、例えば南関東大震災の対策のためのマニュアルでも全部そういうふうにつくるようになってまいりました。そして、それについてのそれなりの訓練といいましょうか、そういうようなことについても考えてこられたわけですね。今回は、緊急災害対策本部を設置しないよりは、設置してその上で何をやるかということが、私たちずっとずっとマッチベターだと思うんですね。まあ私はそういうふうに思うんですが、プロとしてといいましょうか、御所見をお願いします。
  39. 下河辺淳

    下河辺公述人 佐々公述人の御意見を伺っていてそのとおりだと思いますけれども、実務担当者としてちょっと申し上げたいと思うのは、大災害であるということを確認することをどうしていいかはいまだに私にはわかりません。  佐々公述人の御意見だと、秘書官がおっしゃったというのがあります。テレビでは、一人の代議士が言ったというのも報道されました。それから、一新聞社のヘリコプターからのコメントもいただきました。それで災害緊急時だと認定する根拠になるかどうかは、事務方は悩みです。したがって、知事が自衛隊を要請するといっても、要請手続はなかなか大変なものです。知事の個人意見で電話して自衛隊がすぐ飛び出しちゃうなんということでいいかどうか。  そうすると、国土庁にしても知事にしても、申請なり総理への要請手続に必要な情報をどの程度までそろえるかで混乱しているわけで、私の認識では、知事はいまだに正式の要請はしていないと思っています。感じの上ではしていますから、実際に発動しましたけれども、要請手続を議論すると大変なことになる。これは村山総理自身が悩んでおられましたですね、いつの時点でよいのか。二十人死んだというのを聞いてやるのか、五千人を待つのかなんてなると、事務としては手続上の処理を、もうちょっとマニュアルをはっきりしないと私は同じことを繰り返すと思います。
  40. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 私は今の問題についてはこういうことだろうと思うのですが、あのときにまずはということで非常災害対策本部をつくりました。本部長に国土庁長官がつかれました。そして、ああこれは大変だということで、法律上決められていない緊急対策本部というのを総理が本部長となってつくったわけですね。  あの切りかえるときになぜ、要するに、これは大変な震災だということであの緊急対策本部をつくったのですが、ああいうふうに大変だと思ったなら、緊急対策本部じゃなくて、法律上決められている緊急災害対策本部という形でつくり上げて、必要とあらばひょっとしたら物価統制等もやるかもしれませんよというくらいの気構えで取り組むことが必要ではなかったのだろうかという意味なんですけれどもね。  さらに御意見があればお伺いします。
  41. 下河辺淳

    下河辺公述人 そのとおりでありまして、いち早くやらなくちゃいけないということについては官邸でも国土庁でも県でも同じじゃないかと思うのです。ただ、担当していますとそんなに簡単ではないということは、もし時間があれば十分御説明しないと納得していただけないと思うのです。  あるべき姿だけが先走りしていまして、実務がついていっていないというところは、何か改善しないと同じことを繰り返すので、あるべき姿論では緊急時は済まないということであると思います。
  42. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 先ほど佐々公述人が、自衛隊の皆さん方が非常によくやってくださった話をされました。私も本当に一生懸命やってくださったと思うのですね。やってくださったんだと思うのですが、その関係者の皆さん方もやはりちょっと私は考えていただいた方がいいのじゃないか、こう思いますのは、細かくは申し上げませんが、五時四十六分にあの地震が発生してから、それぞれいろいろなこともやったりしております。  先ほど言われましたけれども、六時に防衛庁長官は状況報告を受けていたと言われましたですね。総理が状況を知ろうと思って、指示をして、知ったのは七時半過ぎということであります。私は、防衛庁長官が知って、ああこれは大変だと思うなら、防衛庁長官が直接総理に言っていいと思うのですよね。だけれども、どうもそういう行動ではなかったようです。  だから、私は、自衛隊のそれぞれの関係者、途中といいましょうか、それぞれの責任者もいろいろ今回のことについては反省をし、いろいろなことをやるべきだろうというふうに思いますけれども、防衛庁長官みずからも国務大臣として、あの重大な状況が起こっているときに、すぐ総理にも話をしてというふうにアクションはとるべきだろう、それが本当に日本を守る、外敵から守らなきゃならぬ、国内でもいろいろな問題が起こったときに国民の生活を守らなきゃならないというふうに思ったら、と私は思うのですが、いかがでしょうか。
  43. 佐々淳行

    ○佐々公述人 お答えいたします。  後藤田五訓というのがございまして、昭和六十一年七月一日、私ども内閣安全保障室長、内閣外政審議室長、内政審議室長、五人の補佐官が導入されました。そのとき、後藤田さんが五つの訓示をなさいました。  第一、省益を忘れて国益を思え。本当に嫌な悪い話は早く報告しろ。三番目は、勇気を持って意見具申をしろ。こういうことが起こった、どういたしましょうなんて言うな、私が総理ならこうしますと言え。四番目、私の仕事じゃないと言うな。五番目、決定が下ったら従え、命令は実行せよ。これを国務大臣が皆さんおやりになっておれば……。  第一報をお受けになった大臣もいらっしゃるようですから、自分仕事じゃないと思ったということ。恐らく、ほかの報告を受けた人も、正規のルートで国土庁を通じて行くであろう、また自分がそこでもってバイパスしてはいけないという平時の感覚で御報告なさらなかったのだと思います。
  44. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 下河辺公述人にお伺いしたいのですが、きょうも、いわゆる大震災対策ということを考えたときに、地方自治体がそもそも中心になってという話がされました。私は、全くそのとおりだし、そのときに必要になってくる話は、例えば一市町村だとかあるいは現在の一都道府県だけで独立して考えてはいけない話だと思うのですね。  例えばここでもそうですが、もしも霞が関が大震災のために全部崩壊してしまったときにはどうやってやるんだという話だって起こってくるわけでありますが、そのときに広域圏での対策をとらなきゃならぬ。そのときに、例えば道州制だとか、あるいは今度の衆議院の比例区の各ブロックがありますが、あのくらいも一つ考え方かもしれませんが、そういうブロック制というような形でこれからの地方自治を考えて、そしてその中でこの防災問題についても取り組んでいくということについて、先生はどういうふうに考えられるでしょうか。
  45. 下河辺淳

    下河辺公述人 私はすぐに道州制には賛成いたしかねます。しかし、防災上の問題として広域的な司令部をつくるとすると、現在のブロック型のシステムというのは重要であろうとは思っております。  しかし、その司令部をつくることは、新しい組織になるとすると、それが十分機能するのには何年かかかるということも承知おきいただきたい。できるとすぐ翌日から動くことにはならないので、現実には知事中心とするしか緊急にはたえられないのじゃないかと思っております。
  46. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 阪神大震災の問題が起こり、そしてこれからの防災対策ということでいろいろなことを議論しているわけです。いろいろな問題が起こっているさなかにこれからの対策を考えるときは、よほど注意をしてやらないと、そのときのフィーリングといいましょうか、そういうことでだあっと流れる可能性もありますね。そういう意味で、今例えば行政改革ということについて最も重大なテーマとして私たちも取り組んでいたりするわけでありますが、この防災問題についてもひょっとして過剰な組織をつくり上げてしまいやしないか、これは組織的なことで。  それからもう一つは、先ほどちょっと触れたと私は思うのですが、例えば耐震設計、耐震基準なるものをつくるときに、どの程度のものをつくると本当に適正な国家運営といいましょうか、そういうようなものについて妥当なんだろうかというようなことは、これから非常に重要なことになっていくんだろうという気がするのですが、その辺のことについて御意見があれば伺いたいと思います。
  47. 下河辺淳

    下河辺公述人 災害対策につきまして、いろいろな問題が起きておりますから、すべてをおもんぱかるということから始まると、きっと何もしないということに終わりそうだと私は経験的に思っていまして、要するに小さいやれることをやることでありまして、小さいやれることを選ぶことはいたさなければいけませんけれども、その小さいやれることはその専門の部局が専門的にやることがよいので、復興院というような新設の役所で復興対策はできないと思っております。
  48. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 最後に、下河辺公述人にお伺いしたいのですが、ここにもある建築家の方が、これは全部彼の記事なんですが、今回の地震に際して、実は兵庫県の辺の建築物等について関与してこられたのは、あるいは自分が設計されてきたという意味だと思いますが、多々あるようであります。そんなことを見ながら、要するに、今日町づくりとかあるいは建築物をつくる、あるいは公共の空間をどうするかというようなことについて、考えてみれば効率性といいましょうか、そういうことを重視して町をつくってきた。やはり、さっき道路の問題についてお話もありましたけれども、これから日本の町づくり等につきまして、あるいは建築物のつくり方あるいは公共性の問題等について本当に考え直さないといけないというようなことを、切々としてそうした文章で書いていらっしゃる。言うはやすくしてなかなか難しい話かもしれませんが、本当にそうだなという感じを受けるのですが、最後にその御所見をお伺いして質問を終わります。
  49. 下河辺淳

    下河辺公述人 その論説のとおりだと思いますが、効率主義に中心があって、採算性で構造を無視したとすればそれは許されないことというのは当然だと思うのです。しかし、今日問題なのは、地震があったらすぐ壊れてよいから、すぐ直せるという構造の方が、いかなる事態でも壊れないといってお金をかけるよりもいいかどうかの論争だと思っています。  大昔ですけれども、イタリア政府日本政府で住宅の標準設計のシンポジウムを開いたことがありまして、日本の公営住宅は耐震ということを非常に考慮に入れて予算を組んでおりまして、そのころイタリアの公営住宅は地震対策を要素には積極的に入れないという方針を決めています。その結果どうなったかというと、日本の公営住宅の二倍の面積がイタリアの公営住宅は確保できた。何百年に一度よりはことし二倍の面積を供給したいということをイタリアはあえて選ぶという発言があって、私どもは耐震性というのは常識だと思ったので非常に驚いたことがありますが、これは今ここでもう一度議論があってよいのではないか。超高層も佐々公述人が言ったように決して安心ではないですから、そのあたりは哲学的な論争にもなるかもしれません。
  50. 伊藤英成

    伊藤(英)委員 本日はどうもありがとうございました。
  51. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これにて伊藤君の質疑は終了いたしました。  次に、矢島恒夫君。
  52. 矢島恒夫

    矢島委員 公述人皆さん、御苦労さまでございます。日本共産党の矢島恒夫でございます。  私も、まず最初は、今度の阪神大震災に関連することで下河辺さんにお聞きしたいのですが、先ほどの御意見の中で、大規模災害のような状態、今度の大地震のような状態は、一〇〇%安全を保証するということはできないんだ、よりよくすることが政府一つの責任である、壊れにくくするとかそういうことが一つやらなければならないことだ、こういう御意見をお伺いしたのですけれども、この十数年間、日本列島全体がまさに巨大な建物や構造物で覆われるというのがどんどん進んでまいりました。とりわけ、臨海部の埋め立てという中で巨大開発も広がっていきました。  今度の場合には、四百四十ヘクタール、二万人が住むというあのポートアイランドの問題。国際展示場があったりあるいは業務ビルなどもあります。こういう人工的な島の中で、全域が液状化ということが起こりました。地表は全く泥水で覆われるというようなことだとか、あるいはポートライナーは橋脚部が崩壊した、こういうような事態が起こった。  私は、現在建設中のいろいろな大型プロジェクト、あるいは計画中のものもあります、こういうものに対して、地震に対するより安全性を高めるという意味から、総点検を緊急にすべきではないだろうかと思うわけなのですが、御意見をお伺いしたいと思います。
  53. 下河辺淳

    下河辺公述人 日本の国土を改めて考えてみました場合に、ただでも可住地面積が少なくて、一億二千万を超えた人口が安全に暮らすことは、諸外国に比べて非常に過酷な条件にあります。しかもそのうち、可住地と我々が考えていたところでの大規模災害が非常に危険であるということがわかってきましただけに、これからの国土計画が防災的にどこを開発したらいいかは大検討を必要としていると思います。これまでのところは大都市近傍の埋立地に焦点が当たっていたことだけは確かでありますけれども、このあたりも全国土の角度から検討してみる必要があると思っております。
  54. 矢島恒夫

    矢島委員 そういう検討を要する状況の中で、特に活断層の破壊が地表に近い、こういう場合に、震度七という激震、これを前提にして、一つには耐震基準を見直すことが必要じゃないかと思いますし、また、液状化現象、これが今度の場合には広範囲に起こったわけですね。こういう場面を考えますと、やはり地盤というものについて、これも点検を要するのじゃないか、こう思うのですが、御意見を。
  55. 下河辺淳

    下河辺公述人 軟弱地盤というものを調査して、いかなる地域が軟弱地盤で構造物にとっては困るかどうかということも、私ども戦後少し調査したことがありますが、今改めてまた調査すべきではないかと思います。しかし、先ほどお答えしましたように、わかってもそこを使わざるを得ない日本の宿命というようなものを感じておりまして、軟弱地盤での技術開発というものはもっと国家的に急ぐ必要があるのじゃないかと思います。
  56. 矢島恒夫

    矢島委員 それから、先ほど下河辺さんは、復興に関しては予算的には一括計上、これが望ましいというお話がございました。被害総額が十兆円を超すかもしれない、こういう状況ですから、本当に完全に復興するにはその二倍、三倍とかかるかもしれない。そういう状況にいかに対応するかというのは、今日政治に問われている大きな課題だと思うのです。  とりわけ今提案されている予算の問題ですけれども、こんな大災害を想定してつくったものではありません。新たな事態がここに発生しているわけです。緊急を要する部分と、それから二年、三年とかけてやっていかなきゃならない予算措置というのもあると思います。しかし、今日の時点で盛んに言われているのが赤字国債の発行、建設国債の発行、あるいは復興国債という言葉も出てまいりました。あるいは消費税の税率引き上げの前倒したとか、こういうことなどが論議されているわけです。  しかし、いずれの形にしようとも、今度の本予算について、これを抜本的に組み替える必要があるのじゃないかという、これは二日から三日、四日にかけては各新聞社とも社説で取り上げているわけですが、一括計上のお考えと今度のこの提案されている予算とのかかわり合いで御意見がございましたら、お聞かせいただきたい。
  57. 下河辺淳

    下河辺公述人 ただいま御承知のように、日本経済はただならぬ状態であると私は思っております関係で、予算はなるべく早く通していただいて、日本のいろいろな問題に対応していただかなきゃいけないと思っておりますので、地震ということから本予算を見直すという時間はないのではないかと私は思います。ただし、復興に必要な制度、財源については、思い切った立法をお願いしたいと思っております。
  58. 矢島恒夫

    矢島委員 私どもは、こういう事態の中で、不要不急のものだとか、あるいはできるだけ、むだと言うとあれがありますが、今やらなくてもいいようなもの、むだを省くというようなことを今要求しているわけですが、私の持ち時間は非常に短いので、最後に深谷さんにお聞きしたいのです。  先ほど御意見をお伺いいたしました。その中で、活力ある福祉社会は可能だというので、私どももこの問題はいろいろ取り上げてはいるんです。二人で一人の高齢者というのは、実は二・五分の〇・五ということで五分の一だ、こういう御調をお伺いしたわけなんですが、私たちが総務庁やあるいは労働省などの推計を使いまして、いわゆる総人口に対する就業者人口、こういう観点でこの問題を考えてみましても、やはり先生の言われた数値というものと同じような数値が出てくるわけなんです。  ですから、やはり働く意欲がある方、あるいは働くことができる高齢者の方々考えると、やはり一つには、雇用政策というものも一つの形として、付加価値創出形態というお言葉で先生申されましたが、それも一つだろうと私は思うんです。そういう意味から、個人の尊厳を尊重する社会をつくっていくという、こういう方向についても、やはり二人で一人だということで、いろいろと税負担を増大させるということには問題があるというふうに私たち指摘しているわけです。先生のこの中にも、税に財源傾斜することは問題だというのもございます。  そこで、時間があと残りわずかなので申しわけございませんが、消費税の導入時にもやはり高齢化社会に備えるというので、二〇一〇年、二〇二〇年の論議がされたわけであります。今度は税率アップもあります。そういうような状況の中で、消費税に対してどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、先生のお考えを。
  59. 深谷昌弘

    深谷公述人 消費税の問題ですが、今の仕組みのままいきますと、私は、消費税はかえって大きな政府を招く。つまり、生活費はその分上がりますから、上がった分は必ず補てんじて、何か給付をしないといけないという、こういう形になりますから、そこでダブルできいてくるわけですね。  ですから、やはり消費税の仕組みを早急に工夫しなきゃいけないというのが私の考え方で、できるだけ自分で稼いだもので生き得る状態をまず準備するのが大事なんで、それを消費税で物価をむやみに上げちゃうと邪魔をするという形になります。ですから、複数税率、ゼロ税率等々ちゃんとできて、そういう邪魔が、支障ができるだけないように消費税を早急に工夫していく、これが将来の方向であろうと私は考えております。
  60. 矢島恒夫

    矢島委員 深谷公述人に、もし御意見があったらお聞きしたいんですが、先ほど下河辺さんに御質問したように、今提案されている補正予算と、それからこれの組み替え問題等について。
  61. 深谷昌弘

    深谷公述人 私も下河辺さんがおっしゃったように、補正予算を早急に組み替えてといっても時間的な余裕がないわけですから、できるだけ早く本予算を通すべきであるとこれは考えます。  それからもう一つは、これを機会に、やはり都市というものは計画的に整備するものだという観念が日本に行き渡ることだろうと思います。それがないとうまくいかない。そのために、復興予算を一括して国民に見えるようにする。そうすると、こういうふうに計画的に復興ができるんだなということが国民に見えてまいりますね。ですから私は、そうした一括で見えるような形に工夫するというのが一つのやり方かなと、話を今聞いていて考えました。  それから、もう一つ大事なことは、都市というのは公共空間ですから、都市そのものが。私用の神戸とか、あなた用の神戸というのはないわけで、我々の神戸はどうすべきか。先ほど公共性の概念の変遷を強調したのは実はそのためでして、法治主義というのは極めて大事ですけれども、法律というのは、その当時の社会が何を公共的と判断するかのマニュアルでございます。  しかし同時に、マニュアルだけでは公共性というのは達成できない。あるいは常にリニューアルしていかなければならない面があるわけですね、具体的に何が公共的であるか。それを責任持って考えるということが重要なのであって、何よりも政治家の皆さんはリーダーシップを発揮して、特に緊急時なんかは、公共性とは何かということを自分自身考え判断するということが極めて大事だろうと思います。  一方、官僚の方たちは、できるだけ今度は規則にのっとってやる。そのせめぎ合いですね。それで、官僚の方たちも、恐らくトップの方に立つ方、審議官、局長等々の方はある程度公共性とは何かを主体的に考える、そういう姿勢を常日ごろ持っておかないと、政治家の方はまさにそれが要求されるわけですから、今回のような対応のいろんな問題が出てくるんじゃないかと思います。  公共性というのは、我々が民主主義で政府を獲得した途端に、私たちにとって、私のじゃなくて、私たちにとっては何が公共的なんだということを自分たちで決めなきゃならなくなった。それが民主主義だと思いますので、そうした考えをぜひ皆さんお持ちになっていただきたいと思っております。
  62. 矢島恒夫

    矢島委員 残念ながら時間が来ました。まだ一問ありますが、質問を終わります。
  63. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分より公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十七分休憩      ————◇—————     午後一時三十二分開議
  64. 佐藤観樹

    佐藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成七年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言あいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず阿部公述人、次に鷲尾公述人、続いて藤井公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、阿部公述人にお願いいたします。
  65. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 ただいま御紹介にあずかりました神戸大学の阿部でございます。  私ども、神戸あるいは阪神間、御承知のとおりの大変深刻な事態になっております。緊急の解決策は先生方も一生懸今もちろんやっておられまして、私、本日はそのことをとりあえず残念ですが捨象しまして、少し今後のこと、あるいは皆様方多少お気づきになられていない点があるかもしれないと思い、そういう点をちょっと拾ってみました。必ずしも体系的ではありませんが、少しでも生かしていただければありがたいと思っております。ここではごく簡単に基本的な物の見方というものだけ申し上げますので、その制度化についてはまたお知恵を絞っていただければありがたいと思います。  国政の重要な任務を果たしておられるこの予算委員会にお呼びいただきまして、まことにありがたく感謝しておる次第でございます。  ちょっと口幅ったい、大きなことを言いますが、私も日本改造論というのをちょっと唱えておりまして、といってもこれからなんですが、ここに書いておりますように、日本の法のシステムは必ずしも公平ではないし、効率的でもないし、必ずしも弱者に優しくはない、その他というので、こういうものを少しずつ、公平で、効率的で、弱者にも優しく、活力ある社会に変えていくのに法律の仕組みを見直していこうではないか、こういう提言をしています。もちろん、まだ具体的な制度設計まで至っておりません。全部わかったかと言われたらわかっておりません。しかし、あちらこちら提言しています。それで、だんだんこういう方向に行きたいと思っています。今回は、この方向で今回の震災対策を含めて少し改善していけないかというお話をさせていただきたいと思います。  前例のない事態が生じたのですから、前例にこだわらないで考えていただきたい。とにかく、今回の救援対策も前例にこだわった、日ごろの官僚組織にこだわったというのが大きな問題だったと認識していますので、前例にない解決策を考えていただきたい。それで、余計なことですが、我々、役所に何か新しい案を出すと、前例にないと言ってすぐたたかれてだめになるのですね。大変なんです。前例にない、だめだということを言う役人の首を飛ばしてほしいと思うぐらいです。ちょっと舌禍問題になるかもしれませんが、大ざっぱに言えば、そういう気持ちがあるということであります。  ここでは、この原稿をもとに口頭で要点をお話しします。あとは皆さん方お読みいただければ助かるし、後で質疑のときに少し御返事したいと思っています。  まず最初に、現場の感想です。  これは、本当に大変な悲惨な事態であるということは御承知のとおりですから、それは別にしまして、役所の人は盛んに今度は批判されているわけですが、逆に、それはそのとおりかもしれませんが、ひとつ現場の職員の立場のことも少しお考えいただきたい。  私の知っている方でも、自分が被災者になりながら役所に寝泊まりして頑張っているとか、被災者でなくたって、片道三、四時間かかって通って、役所の中で寝泊まりして公務員は一生懸命頑張っている。残業手当が出るかどうかもわからない。そうして頑張っている人が非常に多くて、僕は、日本の公務員は世間からたたかれていますけれども、全然そんなことはない、捨てたものじゃない。神戸大学法学部の事務職員の方、本当に立派な人ばかりだ。私は大学を代表しておりませんが、個人としては大変感心しております。そういう方には特別災害激務手当を遡及して支給するとか、工夫していただきたいぐらいであります。  それから、現場の方では、そうやって非常に苦労しているところにいろいろな調査とか慰問とか来て、ただでさえ忙しいのに大変だという話もあるので、何か統一するとか自粛するとか、現場の苦労を考えながらやっていただくという仕組みをどこかで考えていただけないかなと思いますが、それ以上具体的には申し上げません。  それから、義援金募集。これは小さい話ですが、何か義援金募集というのがいっぱい出ているんですが、あれは減税になるということがわかるようになっていないような気がします。わかっている人はわかっているかもしれませんが、兵庫県に聞いても、担当者はわかりませんでした。それで、どこだったら減税になり、どこはならないかというのをわかるようにして、かつ、寄附金控除は、これだと来年の三月でやることになりますが、地方税もことしまけるというのですから、こちらもことしまけるというふうにしたらいいのではないかと思っていますが、もう既にされているのでしょうか。  それから次に、大学の窮状ですが、若い大学生の場合でも阪神問に百十一人も死んだと報道されています。神戸大学だけで三十九人、法学部で六人、私のゼミ生からも一人。それで、災害弱者は高齢者と言われていますが、今回の地震の場合は若い学生もかなり犠牲者で、それは建物が一遍に崩壊したので、若くて元気があったからといって逃げられるわけじゃない。即死なんです。それは、問題は安アパートなんですね。それで、これからそういう人たち仕事がある、助かるというようなことを考えていただきたい。  大学も被災に遭って大変困っております。震災特例入試というのをやることになっていますが、私どもの方も大変困っていますものですから、多少御理解いただきたいという話があります。あと、修繕費などもできるだけ早くお願いします。  その次、非常時における予算の繰越特例というのを私、お願いしたいと思っています。もうあるのかもしれませんが、私どもが現場で聞いておるところによりますと、とにかく本年度の予算は三月末までには執行が全部終わっていなければいけない。四月からは、まあ予算の成立がおくれるとまたいつ来るかわからないというような調子でありますが、こういう不可抗力のときは法定期限を皆延長するということは法律の一般原則であります。三月の株主総会ではそういうような話が出ています。  我々の予算も延長したいのですが、今の法制度ですと、こちらから申請して認めてもらうかという話ですから、そんな手間暇のかかることはやっておれません。そうじゃなくて、大蔵大臣から、もう直ちに阪神間の国の機関、地方公共団体予算の執行を二カ月おくらせてもよろしいと一言言っていただくと大変助かるのです。そう言っていただかないと我々の方は大変なんです、書類をつくるだけで。こんなことじゃしょうがない、とにかくむだ遣いでもいいから使ってしまえというのが本当の心理です。そう言ったら言い過ぎかもしれませんが、そういう心理になるわけであります。  次に、災害対策組織、危機管理体制。これはもうさんざん議論されているところでありまして、私も余り知恵はありませんが、情報を的確に収集する手段を多重防護的に用意して、あとは災害対策本部に直接連絡するホットラインをつくって、そこでトップダウン式に決めるというような、まあ多少強力な体制が要りますが。  そのときに、これは不確実な事情の中での決定というリスク管理の問題であります。わからないときどうするかという問題であります。そのときは、わからないから出動を見合わせようというのじゃなくて、わからないんだったら、とりあえず出動して、行き過ぎたら引っ込むという仕組みが要るし、そういうような規定にしておく、そういう心構えをしておくということが大事だと思います。  その次、それは多分、首相直属機関で強力な組織だが、組織としては小さくて、現場の自衛隊から消防もある程度動かせる、こういう仕組みをつくっていくのがいいだろうと思っています。  次に、国家資金による救済の順序ということで、困っている方を救済したい。全くそのとおりなんですが、何が困っているかということについての順序議論してみたいと思います。  災害弔慰金法という法律で死者五百万、重い障害を負った方二百五十万、どちらも家計支持者ですが、ということになっています。もちろん亡くなられた方の遺族は大変お気の毒なんですが、重い障害を負われた方とその御家族も大変お気の毒なわけであります。私としては、やはり重い障害を負って生きていかれる方の方にもっと手厚くしてほしいと思います。あるいは、小さい子供が残った場合は子供加算というのも要るし、一家族で何人も被災に遭った場合は、それは単純に比例的に足していくんじゃなくて、もっときついですから、一家族複数被災の割り増し加算とか、何かいろいろ工夫して、本当に困っているところに出すということを考えていただきたいし、逆に、雷に一人当たった場合は助けないという制度になっていますが、家族から見れば一緒ですから、一人雷に当たっても助けるという仕組みにしてほしいと思っています。  この事件で、無年金障害者というのは恐らくたくさん出ていると思います。あれは保険に入らないんだから悪いんだとすぐ言われますが、障害者になる場合のことを考えて月に一万一千百円も払っている学生というのはほとんどおりません。障害年金だけのことを考えると、保険料は数百円で済むそうです。だから、あれは保険にするんじゃなくて、どうしても保険にしたがったら、授業料を数百円高くして全員強制的に保険に入ることにすればいいし、そうでなくても、社会福祉考えるか。とにかく今回、この無年金障害者はさかのぼって全部解決するというふうに考えていただきたいと思っています。  それから、ローンの免除。盛んに議論されますが、これは非常に難しいと思っています。理屈はここに書いていますが、ただそれでも、例えばマンションなんかだと、建物は壊れたが土地が残った。土地を売ればローンのある程度は返せるはずだから、土地を売れる仕組み、今、共有地は全員合意でないと売れませんが、多数決で売ってローンのある程度を解消するというように制度を改正してほしいと思っています。  それから、義援金などを工夫するというのは雲仙でもありましたから、その仕組みをここでも少し導入するとか、ある程度の解消策はあると思います。  それで、今度の復興で一番大事なのは、みんなが安心して住める町というもののつくり方であります。  今のやり方ですと、土地区画整理をして耐震ビルがいっぱい建ってということになります。それで健全な町になるようですが、これは強い人しか住めない町であります。お金がないと入れませんが、今まで月一万円の安アパートにいたような人たち、この人たちを入れるようなものはもうありません。しかし、そうすると三十万という被災者の行き場がないわけであります。人が住めない町をつくってもしようがありませんから、三十万の被災者が住める町、つまりは低家賃で入れる、あるいは今まで小さな店舗をやっていた、これも低家賃で店を経営できる、こういうふうにしなければ町は戻りません。  そのためにどういう工夫をするかということであります。法律的な工夫が要るわけであります。私権の制限、はてなというようなことがすぐ言われるようですが、アレルギーを持ってはいけません。後で御質問に答えようと思いますが、やはり建築自由の原則をある程度変えて、できるだけ計画をして計画どおりにつくらせるという仕組みにしていくというのがいい町をつくることでありますし、後で申し上げたいと思いますが、お金もかからないんです。今みたいなやり方でいくと、勝手につくらせて後で区画整理をやって、追いつかなくて金ばかりかかるんです。最初からきちんとした計画をやれば金がかからない。それでいい町ができます。  今度は低家賃住宅ですが、やはり僕は、一つの方法としては、阪神間の工場の遊休地を安く提供させていただきたいと思っています。  これは、工場をやり玉に上げるのかと言われますが、阪神間でも千二百ヘクタールとか六千ヘクタールの工場遊休地があって、使い方に困っている。それでベイエリア法というのができまして、先生がつくられたわけですが、何かしようと思っていますが、とてもじゃないけれどもあれだけのところに高い付加価値をつけて開発することはできないと思います。あれは開発しなければ二束三文の土地であります。工業専用地域になっていまして、インフラもありませんから、使い道がありません。もともとは安い海を埋め立てて安く譲渡を受けた土地ですから、ここは安く返してもらって一つもおかしくないのであります。  だから、それを安く返してもらって、それを種にすればかなり安く住宅も何もできる。なるべく金をかけない町づくりというのを工夫しなければいけない。もちろん国家の資金は出していただかなければいけませんが、とても足りないと思いますので、土地所有者も泣かなければいけない。全国民が泣かなければいけない仕組みということであります。  それから、家賃を安くする手段ですが、そういうふうにして安い土地に建物を建てた場合は家賃も安くする。あとは、再開発ビルにも国の補助をいっぱい出しますが、そのときにも家賃を安くするという条件をつける。それから、容積率がアップすると、それは土地所有者はその分得したというのが今の仕組みですが、そうじゃなくて、容積率がアップして同じ土地にたくさん建物を建てられるという許可を受けた場合は、その上の分は、ただで土地が手に入ったと一緒ですから、やはりこれは土地代を抜きにして建築費だけで貸すという制度をつくってほしい。そうしたら、また安いのがつくれる。今までの考え方をかなり変えなきゃいけませんので、大議論になって、またいろいろ反論もあると思いますが、ひとつここは大工夫をしないと安い住宅は結局つくれない。三十万人の人の行き場がなくなるという大事態であります。  それで、町づくりへの市民参加ですが、今まで市民参加と言いながら、実は呼びかけるのは土地所有者ばかり。土地所有者は、おれの土地はどうなる、なるべく削るなという話ばかりになりますが、町というのは土地所有者ばかりではありません。借家人も借地人も学生もみんないる。この人たちが共存できる町づくりというのですから、みんな少しずつ泣いていただく。土地所有者にも少しは泣いていただいて、みんなが住める町。また、みんなが住めないと、土地所有者も貸せる人がいませんから困るのですね。そういうことを考えていただきたいと思っています。  それで、早く復興の青写真をつくっていただきたいのですが、そこには、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、余り有名な偉い人に来ていただくというような委員会ではなくて、地元の被災者の中から専門家あるいは本当にわかる人を入れるというようなことも工夫していただきたいと思います。断っておきますが、私は被災者ではありませんので、私を売り込むつもりではありません。  それから、借地借家臨時処理法とかについては、ちょっとそのまま適用すると何か非常に難しい。共同アパートの借家人が借地人になってしまうとかいうこともあるし、借家人が借地人になってしまうにしても、ばらばら建っては困るとかいうこともありますので、これは大急ぎで見直した方がいいと思います。  先ほど申し上げましたが、建物区分所有法も、壊れた建物をどうするか。建てかえのときにもなかなかまとまらないし、まして更地にしてしまったら、後どうしていいか。今の民法では全員合意ですからまとまらない。これは、やはり特別法で多数決で売ってしまって、そのかわり反対派の権利も守れるように、それにはちゃんと時価で補償する。それで、その後できた建物にはもとの人たちがそこに優先的に住めるような条件をつけるというような仕組み考えていく必要があると思います。  次に、職場の確保ということですが、職場がなければ、治安も乱れて、都市は乱れるばかりで、社会保障ばかりかかります。だから、職場をつくる必要があるのです。阪神間の浜側は工場等制限法で工場の新増設は原則として制限されていますが、やはりこの機会には阪神間にも工場をつくるしかない、全部とは言いませんが。そこで、環境のよいというか工場にふさわしいようなつくり方をしたら、工場に来ていただいて、職場を用意するということはやはりやっていただかざるを得ないという気がしています。  それからあと、利子のことは詳しくはわからないのですが、大体、利子は少し取るというのが一般原則のようですが、僕が調べたところでは、NTT融資という中に無利子というのがあったと思います。なぜあの場合は無利子でこちらの場合少しでも利子を取るのか。無利子というのをもう少し工夫できないのかというのを教えていただければありがたいと思います。  そろそろ時間ですが、財源という話に飛びますが、皆さんがたくさん議論しておられますので、知恵はありませんが、まず復興資金というのはとにかく出してください。それは、地元だからということもありますが、とにかくお金を出さないと、阪神間というのは寂れてこれから社会保障費がかかるばかりです。かえって損じます。おどすような言い方で恐縮ですが。ここで助ければ、後で税収が上がって国家に恩返しができます。阪神間は金の卵を産む鶏だと思ってください。  しかし、そうはいっても、とりあえず金を出して後でその財源をどうするかということになります。これは一生懸命知恵を絞る必要がありますが、公平をキーワードにすればある程度出てくる。今まで議論はさんざんあったのでしょうが、まだ足りないと思います。  開発利益の吸収という話をよくします。例えばですが、住友金属の和歌山製鉄所が沖に移転すると埋め立てた。その土地をもう関西電力へ売る。八百億円だとかいう話を聞いていますが、あれは工場を移転するというので認めたので、もうけさせるために埋め立てをやらせたわけじゃないのです。だから、どうしようもない、移転しないというのなら、その土地は国家が原価で買い上げる。それで国家が関西電力に売るといったら、差額は国家のものになります。国と県と市と三分の一で割ってもいいと思います。そういう形でいろいろな工夫をしたらいい。  これは昔の話ですが、旧国鉄の新大阪とか西明石駅の周辺はべらぼうに土地が上がって、土地所有者だけがもうけました。あれが台湾だったら、周辺の土地は全部政府が買収して開発して、もとの所有者には損じないように返して、残りを国鉄のものにするという仕組み考えます。何で日本は台湾のような国よりもおくれるのか、それが理解できません。  それで、予算の組み替えもお考えいただきたい。できるだけ早くやっていただきたいと思います。  税収増加策と書きましたが、税制調査会で議論してもなかなかうまい知恵が出ないと言われますが、僕は非常に単純に、売り上げ記録義務づけ制度というのを提案しています。  今、税務職員は収入と経費を判定するのに大変苦労しています。それはわからないからですが、とにかく売り上げを記録させれば後は大体見当がつく。それも手間暇かからないように、例えばパチンコの売り上げは全部プリペイドカードでやらせる、弁護士がお金をもらえば全部記録しなければいけない、記録しなかったら重罰に処する、記録したらそのとおりでいい、こういうふうにすればかなり簡単です。普通の人はみんなそうやっているわけです。どの商売もみんなぽんぽんぽんと金銭登録機を押しているわけですから、不公平ではありません。これだけでもかなり税収は上がる、それで公平にやれる。  相続税は、僕は値上げすべきだと思っています、皆さん反対の人が多いと思いますが。土地と株は大体、個人のもうけじゃなくて、日本の平和の配当なのです。セルビアあたりへ行ったらこんなことはありません。何で資産がいっぱい残るかといったら日本が平和に発展したからですから、それは、生きているときは本人のものであっても、亡くなるときは生前御礼税として社会に返してから亡くなるのが筋です。ばか息子と言ったらまた言葉が過ぎますが、子供に相続させる必要はありません。ただ、一人当たり一億とか何千万とか適当に残す必要はあると思います。だから、庶民から巻き上げるとは言っておりません。  あとは、いろいろありますが、たばこ、酒の税金ぐらい上げてもいい。酒を飲みながら、気の毒だねと言って、少し余計税金を払うというのはあってもいいと思いますし、まあついでに、これは余計なことかもしれませんが、神戸に大カジノを開いたらどうなのだろうか。諸外国にカジノがあって、日本では何でないのだろうかと前から思っていますが、もうかるカジノをひとつやったらどうだろうか。これは余計なことです。  それから最後に、いつもこうして、震災があってからまた騒いで、しばらくたつと忘れたといって何もできないということになりますが、大変恐縮ですが、次に来るのは関東だと言われていますので、まず先に、地震が起きたときに直ちに適用される法律をつくっておいて、即日そのとおり動かす、後で大騒ぎしないというのをできるだけ早くつくっていただきたいと思っています。  では、後でもし御質問があればお答えします。  どうもありがとうございました。(拍手)
  66. 佐藤観樹

    佐藤委員長 ありがとうございました。  次に、鷲尾公述人にお願いいたします。
  67. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 連合の鷲尾でございます。  本日は、予算委員会にお招きいただきまして、発言の機会を得られましたことをお礼を申し上げたいと思います。  私は、平成七年度の予算案について審議する予算委員会でございますので、もちろん兵庫県南部地震対策についても予算の主要な問題でございますから発言はいたしますけれども、今までも集中審議がございましたし、公述人の先生方のお話を聞きましてもたくさんその点については公述されておりますので、私はごく簡単に、地震問題については一言だけ申し上げたいと思います。     〔委員長退席、三野委員長代理着席〕  まず、私ども連合を初めとする労働組合の活動についてもちょっと申し上げたいと思います。  今も阿部先生からお話がありましたように、連合組合員が復旧作業に、御自身も被災者でありながら毎日毎日、日夜を分かたず活動をしているということについてもぜひ御認識をいただきたい。例えば市役所の方々も教員の方々も組合員でございますし、また、ライフラインの復旧工事に携わっております電力、ガス、水道その他の皆さん方も大変今疲れ切っておりまして、これらの方々に対する我々としてのバックアップも必要ではないか、こういうふうに感じております。  また、連合といたしましても、被災者の皆さん方に対しましてボランティア活動を実施する。大体一日に二千人ぐらいのボランティアが各地方から連合ルートで入ってございまして、お役に立てていただいていると思います。  また、カンパ活動についても現在進めておるところでございまして、カンパ活動をし、救援物資も運び込みまして、例えば私どもにはトラックの労働者がおりますから、その手配師の方々は大変能率がようございまして、実は物資を送りましたのですけれども、一日のうちに手配が終わってしまってなくなってしまった、こういうようなこともございます。やはりプロはプロだな、こういうふうに思います。そうした技能のある方を神戸に集中いたしまして、私ども活動しているということを御紹介申し上げたいと思います。  この復興対策でございますが、私は、もちろん被災者の方々は大変御苦労をなさっているわけでございますが、何よりも前向きに、これからどのように復興させていくかということが大事なことではないか、こういうふうに思っています。  そのための予算編成のあり方並びに財源の問題が議論になっていると思いますが、これも予算委員会で御議論なさることではないかと思いますけれども、私どもは、これまでの日程どおりできるだけ速やかに第二次の補正予算を組んでいただきたい、これは一兆円規模ぐらいが必要なのではないかと思います。  また、全体では十兆円規模と言われております復興予算の問題については、もちろん一つ考え方として予算の組み替えというのもあるのかもわかりません。しかしながら、これはテクニックの問題で、皆さん方に御議論をしていただきたいと思いますが、私は、九五年度予算案については早期成立を図った上で、組み替えといいますか、九五年度予算の大幅な補正の編成に直ちにかかるということも一つの手だてではないか、このように考えているところでございます。  また、財源の問題でございますが、これもなかなか難しい問題ではありますけれども、私は、現在の日本経済自体が貯蓄超過になっているというような意味合いからいいましても、いわば国債の発行で当面賄うことが筋道ではないか、このように考えているところでございます。これが基本的な問題でございます。  また、都市復興計画の制定につきましては、私どもとしては、居住権の保障や住民参加を前提にした上でという条件づきでありますけれども、私的財産権の制約というのはこれはやむを得ないものとして、本格的な災害に強い町づくりをするということが大変重要な問題ではないかと思います。  そして次に、この復興計画考える場合には、やはり何といっても、前向きに被災者自体もこれからしっかりと生きていただくためには、まず第一には住宅の確保、それから第二番目には雇用の確保ということではないかと思います。その意味合いからいいますと、これまでも政府あるいはさまざまな省庁の検討によりまして、例えば雇用対策についても、失業保険の給付の問題や雇調金の延長などを含めまして緊急の雇用対策はできたと思いますが、もう一つ大事なことは、今後は、本格的な雇用労働を確保するためには何といっても産業復興が大事でございますから、雇用を確保するためのバックグラウンドであります産業復興をするための助成措置。  また、先ほど申し上げました私ども組合員が働いておりますライフラインの復旧に対して、当面は財源の手当てがないままに、例えば具体的に例を挙げますと、関西電力さんだとか大阪ガスさんだとか、そういうところはともかく緊急で、お金のことを考えないでやっておられるわけでありますから、私、別に個別の企業公述人になって応援するわけではございませんけれども、ぜひともそうしたライフライン復興に対する援助策についても積極的、前向きに御検討いただきたい、補正で御検討いただきたい、このように考えているところでございます。  また、租税の減免や保険料の減免等についても緊急にやっていただきました。その意味からいいますと、私はそれなりに今回の対策は評価をしているところでございますが、本格的な復興計画に向けて、本格的な対策ということからいいますとまだまだ不十分でございまして、例えば、先ほど言いました産業対策もそうでございますし、また雇用の問題についても、公共事業を進めなければいけないわけでありますから、被災者の方々に優先的に仕事についていただくようなシステムであるとか、あるいは住宅資金の問題については、無担保融資の拡大であるとかあるいは無利子融資の期間の延長であるとかというものも考えていただかなければいけない、このように考えているところでございます。  それから、政府は二月四日に「被災者の皆さまへ」という「今週の日本」を発行していただきました。私は、これはもうちょっと、あと一週間ぐらい前、対策があるものだけでもいいから流していただく。私も現地へ入りましたけれども、情報が不足しておりまして、散発的な情報は入ってまいりますけれども、このようなPR紙はぜひ機動的にやっていただくということも、今後のこともございますので、ぜひお願いを申し上げたいと思います。  それでは次に、本予算並びに租税の問題について触れたいと思います。  まず、今回の予算編成の基本的な物の考え方でございますが、私は、現在の日本経済というのが大きな構造転換期にある、そして日本の経済のあり方をどう進めていくかということの議論が、国民的な合意がされなければいけない、このように考えているわけであります。そうした経済構造の転換に対して、今回の予算がどのような機能を果たすかという観点で考えていく必要があると思います。その意味合いからいいますと、長期にわたる不況のもとで雇用条件もまだまだ、例えば有効求人倍率が〇・六前半であるとか、完全失業率もまだ二・八%という水準になってございます。したがって、短期の景気対策と構造転換を二つながらに進めるということに、今回の予算がどのように役に立つかというようなことが非常に大きな課題ではないか、このように考えております。  構造改革というふうに一口に申し上げましても、明治以来ずっと積み上げてまいりましたシステムでございますから、なかなか変わらない。また、戦後は大量生産・大量消費という前提のもとで大きく高度経済成長しただけに、企業あるいは国民、住民の皆様方もいわば成長神話というものにとらわれていて、構造改革に対して痛みを感ずるということがなかなか難しい。また、規制や政府役割がだんだん多くなってまいりまして、自由な市場、マーケットというものがつくれなくなってくるというようなことが言われているのではないかと思います。  その意味合いからいいますと、新しい内需を創出できるような経済体制をできるだけ早くつくり上げるというのが大事でありまして、例えば今話題になっております情報通信分野であるとか、あ るいはいわば生活中心社会基盤の創設であるとか、このようなところに産業をつくり、またその中に雇用をつけていくというのが非常に大事な課題なのではないか、このように考えているところでございます。そうした意味合いからいいまして、本年度の予算は、項目的には比較的こうした観点が盛り込まれている予算ではないか、このように考えているところでございます。  そうした意味合いでいいますと、生活関連社会資本の重点投資としての公共事業費の確保であるとか、あるいは防衛費の問題についても検討され抑制をしているとか、あるいは新ゴールドプランやエンゼルプランのスタートが切られたとか、新しい日本の創造というものに対してかなり積極的な項目が出ているという意味合いでは、評価できるというふうに思うわけであります。  しかしながら、まだまだ私どもの感覚では不十分なものが多々あるのではないか、このように思います。例えば、公共事業費の問題についても、なかなか難しいことはよく承知はしておりますけれども、事業別のシェアの変更についても積極的に対応されたとは思いますけれども、まだまだ不十分な比率でしかない。  したがって、トータルの伸び率が低いとすれば、削るところがあるのは、これは私どもでもそうでありますけれども、既得権益の侵害というのは労働組合の場合も大変頑張る方でございますから、この点については、国民的な合意をいかにつくるかということは大変重要でございますけれども、やはり国会の先生の皆様方が問題提起をされ、そして、ここの部分は痛みを味わっていただくけれども、ここの部分はちゃんと伸ばすんだということを積極的に提言していただくということが予算編成にとっては大変大事なことなのではないか、このように考えているところでございます。  しかしながら、その中においては、若干ではございますけれども、例えば下水道の整備であるとかあるいはさまざまな予算措置がされているところでございます。  ただ、私は若干問題提起をしたいと思うのですけれども、その中においても、農業対策の問題と整備新幹線の問題がやや突出しているような感があるというのは国民的な率直な感想ではないか、こういうふうに思うわけであります。これらについても理由は多々あると思いますし、例えば農業の問題からいいますと、後継者のいないような農業になってしまうということは大変問題がある、このように思います。しかしながら、それでは重点的な配分をする際に、現在すぐに必要であるかどうかというような問題を精査しなければいけない、このように考えているところでございます。  また、そうした対策を積み上げていったとしましても、私は、今回の予算措置が景気対策なりあるいは円高対策にどれだけ役に立つだろうかというふうに若干の懸念を持たざるを得ないわけであります。私どもは、今回政府が提起いたしました二・八%の達成ということでありますが、これが本当の意味で、内需主導の経済運営が果たされ、そのための経済成長が積み上がってできるかどうかということからいうと、大変疑問を持つわけであります。  もちろん、災害復興ということは、学者の調査によりますと、年末までには〇・五%ぐらいの経済成長を押し上げる力があるというふうなことも言われているわけでありますけれども、これはいかにも残念なことでございまして、これは当然ストックが減った分を戻しただけということでございますから、単年度比較のデルタxで私どもは考える癖がついておりまして、前の年より伸びたからいい、前の年より実体が伸びるだけならまだしも、前の年の伸び率より伸びたか伸びないかというような議論をしているということは、いかにも議論としてはちょっとお粗末ではないか、このように考えているところでございます。  そうした意味合いからいいますと、内需主導の経済ができるかどうか、そのための予算がつけられるかどうかという観点が大変重要なポイントになるのではないかと思います。  次に、大きなポイントとして福祉計画の問題でございます。  今回の予算におきまして新ゴールドプランがスタートをいたしましたが、現在はゴールドプランの五年目になりまして、五年目の進捗度を見てまいりますと、せっかくゴールドプランがございますけれども、例えば、五年間にわたっておおよそ二五%くらいにしか満たない在宅介護支援センターだとかケアハウス整備などがあるわけです。したがって、新ゴールドプランができ上がりましても絵にかいたもちにならないように、ぜひこれは確実な実効ある手当てが必要なのではないか、このように考えているわけであります。  もちろん、新プランに、今までのハード中心からソフト、例えばホームヘルパーであるとかショートステイであるとかデイサービスであるとかというようなことが重点的に盛り込まれていっているということについては私どもは評価するわけでありますけれども、これらについてもぜひフォローをしっかりとやっていただきたい、このように考えているところでございます。  次に、先ほども申し上げました景気対策に関係があるのでありますが、産業構造転換の問題と円高の問題についてもまた改めて、雇用の問題とかかわり合わせながら述べてみたいと思うわけであります。  産業構造転換対策については、例えば技術改善費の補助が三十三億円つくとか、ベンチャービジネスのための保証基金が創設されるとかあるいは特定事業者の事業革新円滑化補助金の創設だとか、産業構造転換に対しても意を注いだ予算になっておるわけであります。しかしながら、考えてみますと、三十三億とか三億というのは、私の家計で入ってくればそれは相当大きいですけれども、事業の転換に三億とか〇・五億があっていかほどの効果があるのだろうかというような疑問を感ぜざるを得ないわけでありまして、その意味合いからいいますと、財政が大変厳しい折ではございますけれども、大胆な削減どこうした予算手当てが必要なのではないかと思っております。  また、中小企業対策についても同様でございます。中小企業対策の項目がそれぞれのところで予算にはございますが、この問題も総花的であって、集中的に効果のある対策になっているかどうかということが大変問題として挙げられるわけでございます。  また、住宅の問題も言えるのではないかと思います。良質で低廉な住宅の供給ということで、住宅金融公庫関連では、九四年当初と同様の六十三万戸という過去最高の手当てをしているわけであります。あるいはまた、高齢者や障害者の同居住宅改良工事増設融資などについても金額の引き上げが図られたというようなことについては私どもは評価するところでございますけれども、それでは、これら住宅が従来以上に景気を引っ張っていくことになるのかどうかということになると、土地対策も含めまして非常に懸念を持たざるを得ないわけでございます。  さらには、新しい社会資本整備の関係で、新技術あるいは基礎科学の振興というものも大変重要なポイントではないかと思います。今回につきましては、基礎研究の充実ということで、教育関係予算についても、これまた項目としては入っておるわけでありますけれども、これも私どもの感覚からいうと大変ささやかなアップでしかない、このように考えているところでございます。文部大臣が東京大学へ行きましたら施設のぼろっちさにびっくりしたというようなお話も去年あたりございましたけれども、そういう意味合いからいいますと、別に国公立大学だけではなく、民間の研究所まで含めて、この技術革新に対する積極的な対応というものが必要になってくるのではないか、このように思っているわけでございます。  したがいまして、行ったり来たりで大変恐縮でございますが、今回の九五年度予算案につきましては、不満なところも多々ございますけれども、阪神大震災もございましたし、その復興に取り組 むというようなことで早期に成立をさせていただいて、補正予算を通じて問題点は解消していただくということが国民経済的には大切なのではないか、このように考えているところでございます。  さて、次にもう一つ、この予算案に含まっております税制の問題について若干触れたいと思います。  これは、今の予算案についての公述と同様な部分、ダブる部分がございますけれども、今回の税制改革のポイントは、いろいろな点がございます。私は、この税制についてはこれまたさまざまな議論をしておりますし、私も税調委員として審議に参加をしておりますから、内心じくじたるものがあるわけでありますけれども、総合課税という意味合いだとか不公平税制の是正という意味ではまだまだ不十分なものではないか。私ども連合は、従来から納税者番号の導入については積極的でございまして、この納審制度の導入などを含めた総合課税を徹底するということが大事なのではないかと思います。  また、租税特別措置についても、既得権益にメスを入れ大胆に転換をするということ自体は大事なことでありますし、今回も、労働者側、生活者側にとっては若干問題のあるような租税特別措置のメスの入れ方があったのですが、私どもは、積極的な賛成ではございませんけれども、やむを得ないというような見解まで労働組合ですら出しているわけでございますから、その意味からいいますと、積極的に切るものは切るということにしていただきたいと思います。  ただ、先ほど言いました産業構造転換のために新しい租税特別措置が必要であるということであれば、大胆に提起をしていただくということも大切なのではないかというふうに思います。  以上、大変雑駁で、しかもべらべらとしゃべりまして大変恐縮でありますけれども、時間でございますので、これで公述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  68. 三野優美

    ○三野委員長代理 ありがとうございました。  次に、藤井公述人にお願いをいたします。
  69. 藤井陽一郎

    ○藤井公述人 茨城大学の藤井といいます。私は、専門は地球物理学で、日ごろ大学で地球物理学の研究、教育に携わっております。  きょうは、阪神大震災に関連した問題のうち、検討すべき問題は非常に多いんですが、主として自然科学のサイドからの問題点を三つほど集約して意見を述べたいと思います。  建物の倒壊とか高速道路の落下、新幹線あるいはまたJR、私鉄等々の交通機関の寸断、壊滅、そういうことについてそれぞれ現在その原因の探求が進められておりますし、また六甲アイランドやポートアイランドにおけるいわゆる砂地盤の流動化、こういう問題についても研究が進められていると思います。それぞれの、個々の問題についての研究が大切なことは、これは言うまでもないんですけれども、私、きょうぜひとも強調して、予算上もそういう措置がとられるべきだということを申し上げたいのは、総合的な研究が必要だということです。  地震災害というのは非常に複合的な災害というようなことが言われておりまして、ただ建物が倒れる、道路があれする、そういうことじゃなくて、火事も起きますし、それから、最近では避難所での人間心理の問題のことなんかも新聞にも取り上げておりますけれども、いろいろな領域にわたる非常に複合的な現象です。そういうものを総体として明らかにする、そういう計画と予算措置というものが今必要だ。  一九二三年の関東地震の際には、当時文部省に震災予防調査会というのがありまして、その調査会が非常に広範な調査研究をしました。有名な物理学者の寺田寅彦が、物理学者ですけれども火事の研究をした。この間亡くなった元気象庁長官の和達先生などもそういう調査に参加されたわけですね。その報告は「震災予防調査会報告」第百号、これはちょうど第百号になったんですね。それで、「地震編(甲)」「地震及び津波編(乙)」「建築物編(丙)」「建築物以外の工作物編(丁)」「火災編(戊)」と、そういう五部門に分かれて、机の上に積みますとこのぐらいの本になるんですけれども、非常に広い範囲にわたる調査研究がされて、これはある意味では今日でも地震学の宝庫、そういうことが言われているわけです。  現在、研究機関としては、もちろん文部省、大学研究機関はありますし、それぞれのところで研究が進められておる。各省庁の、建設省なら建設省、運輸省なら運輸省の研究所もございます。そういう個々の部門の研究報告というのはいずれ出てくるかと思いますけれども、残念ながら現在の日本で、大正のときにあった震災予防調査会のような、そういう総合的な地震についての調査研究をする機関が残念ながらないんですね。  それで、私、非常に心配なのは、個々の部門の立派な報告書は出るけれども、果たして阪神大震災の全貌となったときに、今のままでほっておくと、後世の人はいろいろなところから資料を集めて再構成しないとその全貌がわからないということになるんではなかろうか、そういうふうに思いますので、第一点として総合的な研究が必要だ。それは、いわゆる理学、工学、こういうものが絡んでくることは皆さんすぐ御理解がいただけると思うんですけれども、同時に、きょうも御意見の陳述がありましたけれども、社会科学だとか人文科学、そういう部門を含めた広範な研究であるべきだ。  ともすると、こういうことをやるとき、実は意外と変なところで障害が起こる。例えば、文部省が世話を焼いてこういうことをしようということを考えたときに、各省庁ごとに研究所は研究所でありますから、科学技術庁は科学技術庁でまた研究所を持っておりますから、そういったところを含めての取り組みというのは、今までそういうことをやった例がないんですね。例がないものを今回はやはりどうしてもやらなきゃいけない、そういう事態にあると思いますけれども、従来の思惑を超えて。  また、予算措置の上でも、文部省には科学研究費というものがありまして、突発災害のときのその研究費の使い方についても一定の取り決めがございます。それは現在当然支出されて、その金額に基づく調査はされていると思いますけれども、しかし、従来型のそれだけの予算措置ではやはり不十分であろう。最終的に何千ページの報告書になるか私わかりませんけれども、まあ徹底的な研究ということでいえば、すぐ始めて二年ないし三年かかるかと思いますけれども、そういうところまで含めたような研究の必要性、そういうことをまず第一に述べたいと思います。  それから、地震の観測と地震予知の研究の強化という問題です。  今回の阪神大震災被害状況を見て、大勢の人がそれぞれ自分の住んでいる土地になぞらえて、自分のところは大丈夫だろうか、そういうふうに心配していると思います。この点で、日本地震国ですから、従来も一般的に、どこでも地震に遭うことを覚悟しなきゃいけない、そういうことはある程度言われてきたと思いますけれども、しかしこれは、ちょうど我々はある意味では不幸にしてそういう時期にどうも直面しているような感じがしますけれども、日本列島全体が地震活動の活動期に入ってきた、そう思われる兆候がいろいろございます。  例えば、北海道の西から日本海の東側のへりを縫うノースアメリカン・プレートとユーラシア・プレートの境界というものがございますけれども、その境界沿いには、一九六四年に新潟地震が起きました。そこから今度は少し北に行きまして、一九八三年に日本海中部地震という、津波で百人の方が亡くなったそういう地震が生じたわけですね。それから十年置いて、まだ記憶に生々しい奥尻島の地震、北海道南西沖地震が起きたわけです。そういう活動の経過を見まして何人かの研究者は、どうもそのプレート境界に活動が活発化してきたのではないかということが当時指摘されておりました。  それから今度は、北海道は立て続けにいろいろな地震、パンチを食らったわけですけれども、釧路沖の地震というのがありましたし、それから、ちょっと択捉島の方に寄りますが、北海道東方沖の地震というものもありました。その後、三陸はるか沖の地震というふうに、今度は太平洋プレートと北米プレートの境界沿いですね。そういうところに立て続けに大きな地震が起きました。  これについても、ちょっと地震帯という言葉は古い言葉なんですけれども、今は専門の学者は使いませんが、わかりやすいために使うと、ある地震帯についての地震活動というのは、やはり活動期と静止期を繰り返しているような形跡があります。そういった点から考えると、一九五二年の十勝沖地震だとか六八年の十勝沖地震、七三年の根室半島沖地震というのがありましたけれども、その後少し静かだったのが今回また活動し出した、そういう形跡があるわけです。  今回の阪神大震災が起きたとき、神戸は活断層の上に位置している町で、気象庁の速報で神戸、洲本が震度六になった、それを聞いたときに私、大変なことになった、そういうふうに思いました。次に考えたことは、地震というのは、どうも一カ所で起きると次から次へと飛び火していく傾向があるわけです。これは、必ず飛び火するかどうか、その飛び火はどこでとまるのか、そういうことについての最終的な私どもの認識というのは必ずしも完成はしておりませんけれども、一つの経験的な法則といいますか、そういうものに照らしてみたときに、飛び火する傾向があるんですね。私も、この阪神の大地震が飛び火するようなそういう傾向を今後示さなければいいなと思いながら現在に至っているわけですけれども、何人かの研究者、それから地震予知連絡会、そういった部門でもほぼ類似の見解を打ち出している、そういうふうな状況です。  それから、先ほども阪神の後は関東じゃないかというお話がありましたけれども、関東地方については、今回のような地震が起こる前に、今では大変有名になりましたけれども、岩波新書に石橋君が「大地動乱の時代」、そういう本を書きました。  あそこで述べていることは、一言で言うと、一九二三年の関東地震前後の地震活動期というのがその後おさまって、おさまったその間に私たちは、いわゆる日本社会は高度経済成長を通過していったわけです。それで、大地震の試練に十分耐えることなしにいろいろなものをつくったわけです。臨海開発でつくられたものもそういうものの代表として挙げることができますけれども。  それで現在は、そろそろ関東地震の後の静止期というのは底をついて、次の活動期に入ってきたのではなかろうか、そう思われる兆候がいろいろ出てきました。そういう研究成果を踏まえて、二十一世紀の初め、ひょっとすると今世紀の終わりになるかもしれませんけれども、だんだんと活動期に入っていくであろうと。  それで、次の、大正十二年の関東地震のようなそういう地震がいつ起こるかということは今はなかなか断言できませんけれども、関東地震から既に七十年たち、関東地震の前には関東地方で都市直下型の地震が幾つか起きていますから、次の関東地震の起こる前に関東地方を幾つかの直下型地震が襲う、そういう時期を経ながら、一番大変な次の関東地震の到来、そういう時期を迎えるのではなかろうか、そういうことが書いてあります。  これはまあ、非常に大胆な物の見方ですが、石橋君はなかなか細かいところにも注意が行き届き、同時に物事の大局を見ることにもすぐれた地震学の研究者ですね。私は、大変重要な本が刊行された、そういうふうに思っています。  それで、私、今活動期の到来を幾つかの例で挙げたのですけれども、今それを全部まとめてみますと、これは日本列島の主なところ至るところ活動期に入った、そういうふうに言わざるを得なくなってきている現在だというふうに思います。  それで、それにどう備えるかということですが、もちろん防災国土づくり、都市づくり、そういうものが基本的な事業として必要なわけですけれども、私は地震学の研究者ですから、地震予知の問題について特に述べておきたいと思います。  現在の日本が進めております地震予知の計画の中で、一つ重要なのは大地の動きを監視する測量でございます。建設省の実施しております精密測地網というものがスタートしたとき、実は私国土地理院にいて、その計画の立案に当たった一人なんですが、三角点と三角点の間、平均的に八キロぐらいの網の目で日本列島全部を覆って、五年間で日本列島全部をカバーするように測量して、それを繰り返していけば地震予知に役立つ重要な情報が得られるであろう、そういうふうに考えておりました。  ところが、事業の途中で、これは専ら予算措置、人員確保の点での問題だと思いますけれども、八キロの網の目を飛ばして、二十キロの網の目にせざるを得なくなったわけですね。それで、阪神地域はちょうどそういうところにぶつかっておりまして、これは八キロの網の目でやっておればもっといろんなことがわかっただろうというふうに、今になってみると非常に残念ですけれども、そういう実情でございます。  それで、ぜひともこれは、根拠があって八キロではかるということを決めたわけなので、予算、定員の上でも最初の目標に即した措置がされなければならないだろう。時間の関係上、気象庁の中での測候所に人がいなくなるとか、そういう問題についても述べたいのですが、それはちょっと割愛したいと思います。  それで、定員削減の問題なんですけれども、今年度の予算編成の上でも第八次定員削減計画を実施するというふうになっておりますけれども、これはぜひ、日本列島全域が地震活動の危険期に入ろうかという時期で、観測を強化しなきゃいけないときに、一律にそういう防災関係の機関も含めて定員削減を実施するのは、後世に大変な悔いを残すことになるであろう。私はきょう、定員削減はぜひ凍結して、それで十分な要員、それから予算措置はもちろんですけれども、確保すべきでないか、それで来るべき事態に備えなければいけないんじゃないか、そういうことを述べたいと思います。  それから、時間がなくなったのですけれども、最後に、原子力発電所と地震の問題です。  今回の地震にかんがみて、建築物、高速道路、新幹線、いろんなところでの耐震規定の見直しが問題になっておりまして、これはもう見直しは必至であると思いますけれども、同時に多くの人が、いろんなものの安全神話が壊れた今日、原子力発電所は安全だと言ってきたんですが、それも本当に安全かどうか、安全神話が崩れるということがこの分野でもないだろうかということを心配していると思います。私は、ちょっと時間がないので結論的なことを言わざるを得ないんですが、原子力発電所についても安全神話が崩れる可能性は十分あるのではなかろうか、そういうふうに思います。  例えば、それは浜岡の原発に限らず、各地域にある原子力発電所全般的に耐震規定のもう一度の見直しがされるべきだというのはもちろんなんですけれども、特に浜岡の原子力発電所ですね。これは、御承知のとおり、その発生時期を予知することは今のところ、予測は何年の何月と、そういうふうに言うことはできませんけれども、いずれ起こることは間違いない。しかも、想定される地震の震源域の真上にあるわけです。真上にあるということはどういうことか。今、やれ水平加速度がどうとか縦揺れがどうかとか、そういうことが盛んに議論になっておりますけれども、浜岡は確かに一番厳しい地震力を想定していろんなことがされておりますけれども、自然力の怖さというのは人間の思惑を超えて作用することがあるんだということを我々は十分に考えるべきなんですね。  阪神地震の場合でも、重力の加速度に逆らって地震力が働いた、そう思われる証拠はいろいろあります。新聞を見ても、小石が飛んだという話がありますけれども、小石が飛ぶということは、 人間の体もそうですけれども、小石も重力で引っ張られているわけですね。九百八十ガルで引っ張られているわけです。それに逆らって小石が飛ぶように力が働いだということです。八百三十三ガルなんてものじゃないんです。千ガルだって場合によっては考えなきゃいけないんですよ。  それで、浜岡の原子力発電所にそういうものが作用したとき、例えば、ちょっとオーバーなことを言いますけれども、原子力発電所の建物、原子炉、それが全体として空中に持ち上げられて、次の瞬間にはどさんと落ちるというようなことが起こる可能性がゼロだということは言い切れないです。地震の起こり方も、必ずしも人間が今考えている思惑どおりに東海地震は起こってくれるとは限りませんから、非常に意地の悪い地震の起こり方をしたときに、今私が申し上げたようなことだって可能性がゼロではない、そういうことを言っておきたいというふうに思います。  それで、私は、それを考えるときに、浜岡の原発は、現代の時代を生きる我々の英知として、一号炉、二号炉、三号炉、四号炉、直ちに撤廃すべきだと思います。  以上です。(拍手)
  70. 三野優美

    ○三野委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  71. 三野優美

    ○三野委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  72. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 社会党の佐々木でございます。  公述人のお三方の先生方、きょうはお忙しい中をお越しいただきまして、貴重な御意見を聞かせていただきまして、大変参考になりました。ありがとうございました。お話がありました点に関連いたしまして、幾つかお尋ねをさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。  最初に、私のお尋ねしたいことを先に申し上げますので、その上で、お三方順にお話をいただければありがたいと思います。  阿部先生から、今度の震災に関連して、現実的な対応、それから、この後に恐らく来るべきさまざまな問題について非常に示唆に富んだ御提言をいただきまして、私ども大変参考になりました。先生のお話のほかに、御用意いただいたペーパーも読ませていただいたり、それからまた、先生がさきに、二月六日の朝日新聞でしょうか、「論壇」にお書きになっておられます御主張も拝見させていただきました。特に、これからこの被災地の新しい町づくり、震災に強い町を新たに構築しなければならないという御提言がございますけれども、「論壇」の方で、先生、被災地の合意の得やすい特別立法をこの際つくったらどうだという御提言がございます。  それからまた、先ほどのお話で、これは私どもも主張いたしまして、さきに政府が決断をしました罹災都市借地借家臨時処理法、この適用が決まったわけですけれども、これについてはきょうの先生のお話で疑問を呈しておられて、むしろこうした私権の制限を、これからの町づくりのためにも制限の方を考えるべきで、そういう意味ではこの処理法の適用には問題があるのではないか、こういうお話がございました。  これは、実は私、これが適用になります前の予算委員会での質問でも申し述べましたのは、この処理法の適用は将来にわたってずっとということではなくて、私権の制限ということはこれから町づくりの中で当然出てくるべきものだろう。しかし、これまで借地あるいは借家という権利を持って現に住まわれていた方が、この震災で建物をなくされ、住まうところをなくされて非常に混乱をしておる、これからどうなるんだという不安感に襲われている。  ついこの間も、神戸の弁護士が法律相談をしましたところ、そうした問題をめぐってたちどころに百人を超える方々が相談に来た。それを受けて法務省の方も日弁連と相談をし、あるいは近畿弁護士連合会とも相談をして青空相談活動をこれまた繰り広げて、何しろこの種の問題の御心配が非常に多いということがわかっておる。そういう中で、逆に今度は、そういうことがあってはならないのですけれども、利権屋などがそういうどさくさに紛れて横行するという心配がなきにしもあらず。そういうことを防止し、一般的に権利者であった方々の権利というものを一応確保できるんだということを皆さんにお知らせするということが、その混乱や利権屋の横行を防ぐことになるのではないかという思いで私はこの適用を主張したわけです。  一応皆さんに安心感を得ていただいて、しかしこれからの町づくりの上では、例えば建築基準法で二カ月間、今の最高は二カ月なんですけれども、建物の建築制限ができるというこの規定を生かしながら、さらに特別措置をとって、それから今度は、町づくりの中でそうした権利者との合意を得られるように努力しながら、私権の制限にも一応我慢をしていただくという受忍の手だてを講じたらどうか。こんなことを主張しているわけですが、こういうことの絡みで、これからその新しい町づくりのための具体的な進め方、そのための特別立法として必要なもの、罹災都市臨時処理法のこの効用などについて、もう一度阿部先生に補足をしていただければありがたいと思います。  それから、鷲尾公述人から、連合の皆さんが本当に、市役所や県庁の職員を初めとして、消防署の職員さんもそうでしょうし、もうライフライン関係に携わる方、本当に連合に入っている方はたくさんいらっしゃるわけですね。不眠不休でどんなにか御苦労だと思いますけれども、そういう御努力に加えて、連合自体として、先ほどカンパ活動もなすっているというお話でございました。この資金援助の活動など具体的にどんなことを考えておられるか。  例えば、聞くところによりますと、自治労などは組合員一人千円カンパというのを提唱している。大体自治労の傘下組合員は百万人ぐらいになると思いますから、千円というと十億くらいになるのじゃないかと思います。それに連合八百万ということになると、これは大変なことになると思うのですが、そんな手だてとか、あるいはきょうの毎日新聞に出ているのですけれども、中小企業の従業員の被災者の方やパート労働者、外国人労働者が何か被災者としての労働組合を結成して、労災の申請や保険の相談に当たるというような活動をしようというようなことが報じられておりますけれども、こういう特別な組合をつくる意味合いがあるのか。連合さんとしても、こんなことは、できることはたくさんあるはずで、既にやっておられるのではないかと思ったりいたしますので、そんなことの感想もあわせてお尋ねできればと思います。  それから、藤井先生、御専門家でございます。今、予知と観測のお話がございました。私どももお聞きをいたしますと、地震の予知というのは大変難しいのだそうですね。私は、それにしてもやはり予知だとか観測というのは必要だろうと思っておりまして、どうもこの関係予算というのは極めて少ないと思っております。今年度も大分ふえて、いろいろ各省庁にまたがっての防災の予知関係予算ですけれども、やっと百億を超えた。しかし、これも全体予算から比べると非常に少ないと私は思っております。  ただ一方、果たしてその地震の予知というのがどれだけ効果があるのか。これは火山噴火の予知に比べても、地震の予知というのは非常に確率が弱いとか、直下型の地震の場合には殊に効果がないとか言われたりして、余り効果のないものに金をかけてもしょうがないんだというような意見も一方であるやにも聞いている。  また、予知ということになると、人知よりもむしろ動物の知恵の方がいろいろ進んでいるのじゃなかろうか。今度も、震源地の淡路島では、何か二日くらい前からネズミが急に姿を見せなくなったということで、後になって思い当たったとか、よくそういう話を聞くわけです。それにしてもやはり私は研究の必要はあるとは思うのですけれども、しかし、この予知というのがどれだけ効果があるのか。いろいろお金だとか装備だとか、開発をしていけばその確率というのは追求できるのか。  それからまた、仮にそれが確実なものとなった場合、果たして予知の広報というのですか、知らせというか、かえって知らせることによってパニックが起きないかとか、いろいろな心配が懸念されるのですけれども、そんなことについてのお考えがございましたら、お聞かせをいただきたいと思います。  それでは、阿部先生から、済みません、順次お願いできればと思います。
  73. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 臨時処理法につきましては、正直なことを申しますと、私の専門とはずれまして、民法の方なので、正確に勉強しておりません。あらかじめそのことを御了解いただきたいのですが、ここで申し上げたかったのは、しかしこの法律の運用について大分問題がある、それで専門家の方で早急に改正してほしい、このまま運用したら問題だということであります。  それで、どこが問題かということについては、専門外ですので正確にはわかりませんが、例えば借家権が突然借地権になってしまうというすごい権利があるわけですね。それで、その借地権は十年となっているわけですね。そうすると、建てるとしたってバラックだと言ったら悪いですけれども、そんな立派なものでもない。それで、立派な町をつくるのにかえって障害になるのではないかという気もします。  これは念頭に置いているのは、一戸建てが焼けた、かわりに一戸建てをつくるという場合です。それで同じ規模の土地に同じものを建てるという場合を念頭に置いていますが、今度はもうちょっと区画整理をしてよい町をつくっていこうということになりますと、やはりいろいろな権利関係を複雑にしない方がやりやすいという気もします。  それから、アパートなんかだと、そのアパートの借家人が借地人になるというのはどういうことなのか。アパートの敷地何分の一ずつ、少しずつもらって少しずつ建てるのかということで非常にゃやこしくなり、よく勉強していませんが、これは厄介だな。  そういうことを含めまして、これは民法の専門家に早急に勉強していただいて、この法律が実際に動く前に、今までの借家人にもそれなりの権利はあるが、しかし今後スムーズによい町がつくれるように、この法律を至急改正するというふうにやっていただきたい。  しかし、そうする前にこの法律を適用してしまいますと、多少権利が出てきますので、またややこしくなるなと思って、本当ならこの法律を施行する前に大急ぎで改正する方がよかったのではないかという気がしたわけですが、そこはちょっと不安を解消するということの兼ね合いの問題ですので、そういう気もするということだけに控えさせていただきます。
  74. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 ただいま佐々木先生から御質問をいただきまして、お答えをしたいと思います。  私ども連合のこの震災に対する対策でございますが、まず、震災が起きました翌々日に現地とようやく連絡がとれまして、連合兵庫というのがございますが、この連合兵庫の事務所と相談をしながら、どのような対策をしたらいいかということを決めました。それで、連合兵庫は幸いにして事務所が健在でございましたので、電話、電気、最初は通じませんでしたけれども、連絡をとり合いながら、東京と連合兵庫に本部を置きました。また、近畿地方ブロックからの緊急のボランティアなり派遣をしなきゃいけないということがございましたので、近畿ブロックとして、連合大阪の事務所にも対策本部を設けました。連合本部といたしましては、十九日に中央執行委員会を開いて、そこでいろいろな対策を決めたわけでございます。  まず、兵庫の事務所が健在とはいえ機能いたしませんでしたので、西と東、尼崎と加古川に対策本部を設けまして、当面は、私たちの連合構成の組合員並びにその企業、従業員、家族の皆さん方に対しましていわば連絡窓口を開いて、被害の把握や、あるいは、各単産ともいわゆる被災における共済制度もそれぞれ持っていますから、そうしたものを速やかに交付できるような手続というものを、西と東の両方からやりました。そこに連合の全国各地の、先ほど二千数百名と申し上げましたけれども、二千数百名のボランティア方々に一たん連絡窓口になっていただきまして、その事務所に宿泊をしながら神戸の中心部に入っていくというボランティア活動をまず最初にやりました。  その際に、被災地で特に希望がございました女性用の下着などを含めました、それから赤ちゃんのおむつ等々の緊急のものを、まだ救援物資として送ってもらうことでは足りなかったものですから、これまた得意の分野がございまして、ゼンセン同盟さんだとかあるいは流通の皆さん方がおられますから、そういうところから三万着とか五万着とかいうものを、緊急の物資を被災地のニーズにこたえて送り込みまして、そこに、先ほど例を挙げましたトラックの組合が配置されまして、配って歩くということも緊急にやったわけであります。  それから、今御質問のございました被災者ユニオンでございますが、これは私どもの指導でできたものではないと思います。  しかしながら、問題は、私ども縦ラインの、連合なり連合の組合はそれなりに組織労働者でございますから、ある意味では大変、どちらかといえば相対的に恵まれている方でございまして、企業の側も組合の側も、今申し上げました連合兵庫という立場でもそうですし、あるいは、例えば私、鉄鋼労連出身ですが、鉄鋼労連ももちろんのこと、加古川を基地にいたしまして、それぞれが縦で救援活動をやりましたから、そういうところは手厚いわけですね。  しかしながら、私ども、課題は、被災者ユニオンが目的とされておりますような未組織労働者やあるいは一般の方々にも、労働組合の機能といいますかノウハウを使って救援活動をやることが大事だと思いましたので、先週から、東と西の事務所に電話相談窓口を設けまして、佐々木先生のような法律の専門家も含めまして配置をし、いろいろな手続、先ほど政府の広報もございましたけれども、こういうものも把握をした上で電話相談を受けられるような形にしたい、こういうふうに思っておりまして、先週から開設しているところでございます。  現在、実績までは把握しておりませんけれども、どんどん電話がかかっているようでございまして、知っていただくということも大事ですから、こういうところにかけたら何とか助けてもらえるということがないといけないので、PR活動を進めたいと思います。  また、カンパ活動の問題でございますが、先ほど御指摘のように、連合八百万、千円ずつ集める、大体単産ごとにお任せしておりますが、大体千円から五百円のカンパをやります。ただ、一義的にはどうしても自分たちの組合員の見舞金に回すという部分が多うございますから、どのくらいの比率でどのくらい連合を通じて義援金に回すかどうかということについては、現在集まった額を考えて検討中でございます。  私は、単産の役員には言っているのですけれども、自分たちの組合員にばかり回すのはだめだ、できるだけ平等にたくさんの被災者の方々に義援金になるようにカンパを回すから、どんどん連合に、と言うと何か連合が格好をつけているように聞こえるのですね。そうではなくて、やはり組織労働者はそれなりに恵まれておりますから、そうしたところにも広く行き渡るように措置をしたい、こういうふうに考えています。  以上でございます。
  75. 藤井陽一郎

    ○藤井公述人 地震予知は現在では大変難しくて、例えば、国際的な地震学の学会で、我々は頭文字をとってIASPEIと言っているのですけれども、そういう委員会の中に地震予知の小委員 会が設けられている。アメリカのビスという教授委員長なんですけれども、その委員会で、前兆現象をつかまえたと述べている論文を審査委員会を設けて審査したことがあります。  実は私も応募したのですけれども、二十幾つほど集まりまして、通常、学術論文というのは、ある雑誌に掲載するその段階でもう既にチェックは受けているわけです。それで、これは学術論文として掲載するに値する、そう認められたものが印刷になっているわけですね。しかし、さらにその上にもう一遍チェックがある。ですから、途中で嫌になって、私の論文はもう取り下げる、そういう人もいたのですけれども、最終的に十八、九審査の対象になりまして、そのうち、大勢の学者が眺めて厳しいチェックをした結果、これは前兆が間違いなくつかまったであろう、そういうふうに判断された論文が三つでございます。それから、確実に前兆がつかまったとは言えないけれども、意味のない論文ということで捨ててしまうには惜しい、そういう論文が五つ、六つ残りまして、自分のことを申し上げるのはあれですが、私の論文もその中に入りました。  そういう状況なんですけれども、ある意味では、現在の我々持っている観測体制で、そういう厳しい審査を経ても三つぐらいの論文が合格するという、三つしか合格しない、そういう言い方もできますが、三つは合格する、そういう評価の仕方もあると思います。  それで、私、いろいろ研究していると、地震の中には一筋縄でいかないのがあって、比較的予知しやすい地震としにくい地震がどうもあるような気がします。それで、しにくい地震は相当将来に至ってももうどうにもならない、そういうふうにして残っていく可能性もあるかと思いますけれども、また、太平洋側で起こるような地震は私の考えでは割合予知しやすい方に入るのですが、そういうものの可能性はあるわけですから、それについての全面的な検討を進める、これはどうしても必要なことだと思います。  地震予知というのは、御質問になりましたようにその社会的効果、学問的な可能性含めていろいろ議論があるのですけれども、私、昨年、中国の地震関係機関に呼ばれまして集中講義みたいなことをやってきたのです。こういう議論があるんだ、あなたはどう思うか、もう率直に議論しようということであれしたのですけれども、その古いわく、我々はベストを尽くすのみ、そういう答えでした。ですから、可能性があれば、地震国である日本の国情を考えるとき、徹底的にそれを追求して防災に役立てる、そういうことはやはり大切なことだろうというふうに思います。  それで、効果ということなんですけれども、現在の日本地震予知連絡会がやっている仕事も、いわば地震予知の途中経過段階での研究成果を発表する、そういうものもございますし、これは前兆だというふうに発表したことは今まで一回もありません。  ですが、途中経過の発表に即して考えてみたときに、最終的に本当に地震が起こるかどうかわからないにしても、危険性がいろいろな点から考えられたとき、現在では地域指定、御承知のとおり観測強化地域と特定観測地域とがございますけれども、そういう指定をすることによって、地域の防災計画もそういうことを念頭に置きながら、最終的には現段階では地震は突然襲ってくるということを覚悟しなければいけないのですけれども、しかしあらかじめそういったことについて周知徹底もさせるし用意もする、防災計画を強める、そういう意味での効果は非常にあるだろうというふうに思います。  人間というのは、どうも全然何もないところではやはり何もしないのですね。それで、少しでも可能性があるとそれを指摘して強化する、そういうことは必要だろうと思います。  私、個人的な意見ですけれども、近畿地域は、現在の段階でいわゆる観測強化地域に地震予知連絡会はやはり指定すべきだと思っています。これは関東、東海が指定されているのですけれども、近畿も指定して、深井戸の地震観測は近畿地方には一本もありません。それはやはりそういうものを設ける必要があるかと思います。その他いろいろ観測を強化する必要があるかと思います。  それと、突然あす地震が起こると言われたときの処置あるいはパニックの問題なんですけれども、私、こういう問題についても、何も予備的な知識を広く国民の間に普及することなしに、準備なしに突然、あした地震が起こる、そう言った場合には私もパニックになると思います。しかし、地震の正体とはこういうものだと、これは公教育、生涯教育、あらゆる機会をとらえて。それから、観測強化地域に指定されているところはそれなりの、広い意味でのいろいろな啓蒙活動ですね。そして心理的にも用意する。そういう条件を整備することによって、パニック起こることなしに、といっても最終的に幾つかいろいろなごたごたが起こるかもしれませんけれども、起こることなしに比較的正しくその情報を生かす、そういうことは可能ではないか、そう思っています。
  76. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。  余り時間がございませんけれども、重ねて幾つかまたお尋ねをしたいと思います。  阿部先生は、これからの復興財源、これはなかなか大変だぞということに絡めて、その財源の取得の方法としていろいろ興味のある御提言をしていただいておりまして、例えば神戸にカジノをつくったらどうか、これはなかなかそう簡単にはいかないかなと思うんですが、ただ、公営競技関係の競輪だとか競艇だとか競馬だとかオート、モーターボートなど、いろいろあるわけですけれども、これは場合によりましたら、こういう震災の復興援助を目的にした特別レースの開催などというのは私はできることだろうと思うのです。これまでもたしかやった例があると思います。私も公営競技の党の委員をやっておりますので、この辺でこの御提言をいただいて、各方面にまた提言をしてみたいな、こんなふうにも思ったりしております。  先生、これからの町づくり、例えば神戸は、これまで町づくりとして一つの大きな構想を持って町をつくってきた。ところが今度の震災で、これでいいのかという見直しに迫られると思うんですね。お聞きをいたしますと、学者の先生方も新しい町づくりについて積極的に取り組んでいこうというようなお考えがあるようにも聞いております。  いずれにしても、これからの町づくり、これは単なる都市工学の先生方だけじゃなくて、これも縦割りじゃありませんけれども、あらゆる各種の先生方、法律問題も先ほどのお話のように絡みますから、法律問題から経済の問題から、それからもちろん工学関係、さまざまのお知恵を生かしながら、そしてまた自治体、それからまたそこに住んでいる、先生御提起のように学生さんまで含めた住民の方々、働く皆さん労働組合の皆さん、それこそあらゆる方々からエキスパートに出ていただいてというような、それがしかも早急な構想づくりが必要だと思われるんですけれども、阿部先生、これらについての学者先生方の取り組みなどを御紹介いただけますか。
  77. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 学者先生の取り組みということになりますと、正直申し上げて、私は存じておりません。  この震災の大変な中で、関西の学界ではまとまった活動というのは非常に難しいところでございます。それで、いち早く現場に飛んだのはもちろん耐震工学者とか都市計画学者ということでありますが、どうしても交通は非常に不便、連絡がとりにくい、それぞれ皆さん自分の関心で一生懸命やるということで、逆に調査公害だと言われるようなことになっておるわけであります。  ただ、私は、ちょっと宣伝になりますが、都市住宅学会というのに所属しておりまして、これは都市計画、経済学、あと若干法律も、その他社会学も入っておりまして、学際的に町づくり、住宅づくりを考えようという学会ですが、これが本日の昼、緊急提言をアピールいたしました。その原稿はここで紹介する余裕はありませんが、私の話にちょっといろいろつけ加えるところがございます。  私としては、これから皆さんと町づくりを一緒に考えていきたいと思いますが、とにかくこの問題は、行政縦割りだと批判されていると同時に、学問も縦割りであってはいけない、学問も総合的にみんなで知恵を絞ってよい町づくりをする、そういうことに力を合わせていかなければいけないのですが、それがやはり今までの仕組みの中で非常に難しくてなかなか楽ではないというので、努力はいたしますが、多少その点も御配慮いただければありがたいと思っています。
  78. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。  これもけさの毎日新聞ですけれども、建築家の安藤忠雄先生が、この震災後の都市の再開発に関しては、とにかく人間生活中心にした再開発を進めるべきではないか。これまでは何事も経済優先でやってきたという日本人の価値観、これが大きく変わらなければならないのではないか、都市づくりもですね。これまでどうも住民同士の親密な対話ができないというような都市社会の構造になってきたのじゃないか、こういうことも変えるべきじゃないか。それからまた、空き地を、空間ですね、都市空間を十分に確保しなければならない。それから、再開発に際して地権者の権利がそのまま建物の設計に反映するということになるとこれまでの繰り返しになるから、こういうことも変えていかなければならなかろう。総じて、法の枠組みを超えた措置を考えるべきだろうとおっしゃっておられます。  これは阿部先生が先ほどお述べになったことと相当共通する部分もあるように思われまして、私どもも十分にこうしたことを参考にしていく必要があるのではなかろうかな、こんなふうにも思っている次第でございます。  鷲尾公述人から、今年度の予算について、総花的には割合いい予算だという御評価をいただいたように今思っております。私ども社会党も初めて与党としてこの予算編成に取り組んだだけに、大変うれしい思いがいたします。もちろん、それに全部甘んじているわけではございませんで、御指摘がありましたようなさまざまの問題があることは十分にわかっております。  それで公述人、最後に御提示がありました税制の問題で、納税者番号制度の導入による総合課税の検討、特に租税特別措置の見直しにお触れになりました。これについては、これまでの措置と、それから、新たに考えなければならないこともあるかというような御提言だったかと思われますけれども、具体的にもう少しこの辺を御説明いただけるとありがたいと思います。
  79. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 租税特別措置の方についてのみずばり申し上げたいと思いますが、今回の租税特別措置で、企業に対する租税特別措置は根っこから再検討されたというふうに思います。従来は構造転換のための設備投資の減免であるとかというようなことであったわけでありますけれども、時代に合わなくなってきている、今までの大量生産型の産業構造を前提とした租税特別措置だったというふうに認識しています。  これから大事なのは、いかにして新しい産業を育成していくかということが問題でございます。確かに、大量生産型の日本的な企業、産業も残るとは思いますけれども、従来よりシェアが低くなる。そして新しい産業というのは、通産省のいろいろなプランニングでもおわかりのように、情報通信だとかあるいはリサイクルだとか、そうしたものを中心とした産業が新しく成り立っていく。そのためには、ベンチャービジネスを育成していかなければいけない。  そのベンチャービジネス育成のための租税措置などは積極的にやっていかないと、私どもは、雇用のことを考えた場合に、労働力の流動化というものも、新しい雇用が目の前にあって、そして陳腐化した産業から労働力が移動するのは、これは前向きだというふうに思うんです。しかしながら、新しい産業がまだ海のものとも山のものともわからないというときに労働力を移動しろ、そして労働条件が、現在の日本的な構造からいいますと、その場合下がりますので、とてもではないけれども新しい産業にチャレンジする気が起こらないということであります。  ですから、今一番やらなくちゃいけないことは、いかにして新しい産業を見つけ出して、そして、失敗はあるでしょうけれども、ある程度大胆に投資をしていくということが大事じゃないか、そのための税の措置というのは大事なんじゃないか、こういうふうに思っています。  ですから、個別の問題からいいますと、例えば構造転換用の予算も今国会でも提起される、法律も提起されるようでありますけれども、これをもっともっと税制面からもバックアップするということが大切なんじゃないか、こんなふうに思っております。
  80. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。  もう少し時間があるようですから、阿部先生にもう一度お伺いをしたいと思います。  先ほど鷲尾公述人にも労働組合としてのカンパ活動の取り組みなどをお聞きをいたしました。義援金が相当各方面から集まっておるように思われます。それで、阿部公述人もこの義援金の募集ということについてお触れになっておられますけれども、減税になるということの広報が足りないのではないか、広報を徹底すればもっと義援金も集まるのじゃなかろうか、こう言われております。  私は北海道ですけれども、例の奥尻の震災のときも全国から本当にたくさんの義援金をいただきまして、これが生活の回復資金といいますか、生活の再設計のためにも随分役立っておるわけです。  ただ、今度の場合には、被災に遭われた方、亡くなっておられる方、それから住居を失っておられる方、それからまた職場を失っておられる方、物すごく多い数になるものですから、これは奥尻のときとはなかなかにまた違った状況だとは思うのですけれども、この義援金の活用の方法というのですか、これをどういうところに役立てるのがよろしいかなど、それからまた、先生の言われるこれからつくっていく町ですね、これのイメージといいますか、この辺についてもう少しお話を例えればありがたいと思います。
  81. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 義援金の活用ですが、その前に、義援金の集め方で、寄附金控除があるということを何か気がついていない人が非常に多いし、担当者にもそういう人がどうもいたようですので、大いに宣伝してほしいと思います。そうすると大蔵省は損することになりますが、このシステム最初から、大蔵省は損して、しかしエビでタイを釣ってたくさん事業をやろうという仕組みですから、大蔵省は我慢して宣伝していただきたいと思っています。  それで、使い道ですが、やはりこれは公正にと言うのですが、公正にというのは何だかわかりませんが、私としては、困った順序というのは何かというのを議論して決める。それで、困った順序についてはもちろんいろいろ意見があります。死んだ人が気の毒だと言う人もあれば、家がなくなった人が気の毒だというのもあります。しかし、それをひとつ議論してみたい。何人かの委員方がそれぞれ自分の主観で決めるのはおかしい。  私自身は、こんなことをこの場で言うのもなにかもしれませんが、あの大東亜戦争で、おやじを戦争にとられて殺され、家、土地はなくなり、兄弟みんな小さくて、じいちゃん、ばあちゃんだけがいて、私のうちは非常に大変だったのですが、そんなこと言ってもしょうがないかもしれませんが、親が残った人はそれでも幸せだ、うらやましいと思ったのですね。  だから、こういうときは、家がなくたってまだましだ。まず家族が亡くなった人、病気になった人、それが優先だ。僕はよくわからないのですが、亡くなった人十万、家の全半壊十万というのは私の基準では合わない。もちろん意見は絶対違うと思いますが、私は亡くなった人が先だと思っています。  家の方は、体が丈夫なら何とかなる。家のローンだけで、土地があれば、損したのは家の方だけなので、家の方にはある程度公的資金を導入して、あと義援金を足して何とか小さい家でも建てられるか、それとも、その土地を売ってしまえばフロアになるとか、何か工夫する必要がある。  あと、借家人の方は、先ほどから申し上げているように、低家賃住宅をつくって優先的に借り受けられるようにするというような工夫をして何とか皆さんに入っていただける、こういうことをしていく。もちろん、そこに家賃補助のための義援金というのもありますが、その優先順位というのを皆さんにいろいろな角度から議論していただきたいと思っております。  それで、つくった町のイメージですが、大変立派な、耐震ビルの並んだ町というのがあるかと思いますが、さあ、そこまで徹底するかどうかというのは非常に難しいことで、やはり緊急にある程度家を建てる必要もありますし、ある程度普通の家なら建ててもよいし、今回も普通の家なら結構もっているという面もあります。その辺の兼ね合いを考えながら、ある程度防災用地をとったまあまあそれなりの町をつくるというぐらいで、それほど、防災で徹底して時間がかかるとかお金がかかってみんなが住めなくなるというようなことはないように、適当に妥協しながら進めていかざるを得ないと思っています。  あと、焼け野原でないところ、こちらの方が非常に難しくて、こちらを変えていくとすれば皆さんすぐ反対されますが、私権の制限というのは逆に皆さんの利益になるんだ、こう思わなきゃいけない、区画整理をやると金かかるし。  最初に土地利用計画をつくって、そのとおりやってくださいと言ったらこんな町にならなかった。それは、戦災のときに金がなかった、時間もなかったのですが、自由にやらせたらこんなことになったわけで、やはりこれは、計画をつくってそれに合わせていくというような町づくり。そうすると、後から区画整理やらないでいいからかえって金がかからない。今は、勝手に建てさせて、後で金をかけてなかなかよくならない、さいの河原の石積みシステムなんですね。そうならないように工夫すれば、公共事業費も安くなってまたこちらに金も出てくる。それが、先ほど申し上げたように、日本改造論の話の一節でございます。
  82. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 ありがとうございました。  持ち時間を終了いたしました。三人の先生方、本当にありがとうございました。
  83. 三野優美

    ○三野委員長代理 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、加藤六月君。
  84. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 新進党の加藤六月でございます。  公述人の皆様、公私ども大変お忙しいところきょう御出席賜りまして、貴重な御意見を御開陳賜りまして、まことにありがとうございます。時間の許す限りいろいろ御高見を承りたいと思うところでございます。  まず、阿部公述人にお伺いいたします。  きょうは、資料に基づいて御説明をいただいたといいますか、この分厚いものでいろいろおっしゃっていただきました。その中でまず、これは共通でございまして、鷲尾公述人にも共通してくると思うのでありますが、復興に要する財源という問題について、先ほどオートや競艇その他の増税というのと、神戸カジノという御提言まで阿部公述人にいただいておりますが、まだ最終的に幾ら要るかというのは確定いたしておりません。しかし、アバウト十兆円は要るだろう。その十兆円を何年間でつかむのかという問題等あると思いますが、お二人に、復興に要する財源、これをどう考え、どう調達したらよいかということが一つでございます。  それから、鷲尾公述人は、組み替えなくてもいいというお話がありましたが、阿部公述人の、いただいておるこの十三ページには、「予算の組み替え」「阪神間を優先するように組み替えてください。」こう書いてございます。これはいろいろな御意味があるだろうと思うのですが、さらにそれについての理由が約十四、五行書いてございます。  実は私たち、まあ政府考えておるのは、二次補正。我々新進党は野党でございますが、二次補正をとにかく早く出してくれ、阪神大震災のための二次補正を早く出してくれ。平成七年度予算には阪神大震災の対策のなには入っていない、それから、おとつい通過させました第一次補正にも阪神大震災は入っていないのだ。第二次補正を早く出してくれと。もう夜の目も寝ずにやってほしいということを、私たちは機会あるごとに与党の理事に叱咤激励いたしておるのであります。これがなかなか出てこないということで私どもいらいらしておるのであります、いろいろの事情がありますが。  それと、これは、あとは政府の答弁ですよ。平成七年度の予算が通った後、今度は組み替えはしたくない、大変時間がかかります、七年度の補正を出させてください、その補正は組み替えと同じようなものでございますから御容赦ください、こう言われておるのですが、阿部公述人の言われておる予算の組み替えというのはどちらを指しておられるのか、よろしかったらそこら辺の御意見を承りたい、こう思うわけでございます。  それから、藤井公述人、実は私は昭和五十七年から五十八年、国土庁長官をやりまして、秋田沖地震、それから三宅島火山大噴火、それから島根の集中豪雨、東北同時火災、日本にあるだろうと思われる主な災害全部に私は国土庁長官のときに遭遇し、さらに言いますと、九月一日の防災訓練の日にオホーツク海において大韓航空機がソ連機に撃墜された、未明ですね。一月十七日の五時四十六分、この間の地震よりちょっとまだ早い時間に撃墜された。その日は、防災訓練する日ですから。国土庁も、防衛庁も運輸省も建設省も、すべてを動員してやったのであります。  そのときのいろいろな経過等もあるのでございますが、その間で一つ困ったことは、富士山が大噴火するぞといって本を書いたり、いろいろ言う人がありまして、これをとめるのに困った。平常時ですよ、このときは。ただ、絶対ないと果たして言い切れるかどうかという問題等もあったのですが、今の皆さん方の学会では、もう簡単でいいですが、どの程度ですか。我々も、政府は万全の措置をして、今、東海のときには大きいものなら予知できるだろう、東京、関東直下型、これはもうちょっとやらにゃいけぬが、相当予知できるのじゃないかという。学者先生や多くの専門家皆さんがおっしゃるのに従って予算措置はしてきており、毎年、一〇〇%とは言えませんが、相当の予算措置はしてきておるのですが、学者先生のおっしゃるとおりやって本当に予知できるのか、できぬのか。素人でありますが、しかし、我々は政治家ですから、国民の生命と財産を守るためにはすべてに優先しなくちゃならない。  そこら辺の問題で、藤井公述人、いい意見を述べていただいたのですけれども、簡単で結構ですが、どの程度、どうならできるのかということがあったら、まず承りたいと思うわけでございます。  以上であります。
  85. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 専門家の先生方を前に素人が申し上げるのも大変恐縮で、素朴な感想ということで御理解いただきたいのですが、また、いろいろ世間でも議論されたところでありますが、本年度予算でできるか次かということはありますが、とにかく、予算の優先順位ということについてもう一度見直しいただけないか。  もともとはこのような地震対策を考えないでの平常時の予算でありましたから、緊急事態においては予算の優先順位が変わるのはどこの家庭だって同じである。海外旅行く行こうと思って貯金ためていたところが、家がつぶれたといったら、海外旅行は取りやめというのはどこの家庭でも当たり前でございます。だから神戸の方でも、何か海を埋め立て、大きな何とかレクリエーショシセンターかなんかをつくるとか、正確に覚えてませんが、あるいは日仏モニュメントをやるとか、あるいはあちこち余り人が来ない施設をつくるとか、いろいろありますが、やはりここはとりあえず予算を見直していただきたいと思うんです。  その場合に、そういうふうにしてやっていったら一番いいのですが、もしできなければ、例えば次の年度の予算について、まず最初に一律一割カットしてしまう。もちろん、絶対出さなきゃいけない給料とか契約済みとかは困りますから、そういうのを除いて、それ以外のはとりあえず一律一割カットで、一割を阪神間の事業に回す。そして一年間、十二カ月の間、十一カ月の予算というか一割弱減った予算でやってみて、それてどうしても足りないところは、そちらの方を補正予算でいく。  阪神間の補正予算というと、阪神に何で出せるんだということで難しいことになりますが、みんなに泣いていただいて、泣いたところで、どうしても足りなければそこに補正予算をやるかどうか、こういうことになりますと、そんなに緊急性がないところは出さなくてもいいということになります。それぞれの役所が十分の九の予算をもらったら、とりあえずそれで考えますから、残りの一割はぜひ必要だというのは立証しなさいと。立証責任は逆になります。その方があるいはうまく節約していただけるかもしれません。  大体今、率直なことを申し上げて、公共事業には大変なむだがあると世間で指摘されていますが、世間で指摘されていることのほかに、私の持論ですが、法システムを変えれば大分減額できるのがあります。  例えば、高速道路とか国道が来るときの補償費は、農地でも宅地見込み地として評価すると聞いております。ところが、村道が来ると農地として評価する。そうすると、同じ私の田舎の村の土地で、国道には坪三万で、農地なら坪五千円だとかいって、村道に当たると損だと言われております。冗談言って恐縮ですが。そういうものはおかしいので、農地なら農地として評価する。農民はかわいそうだと言われますが、それは、農地なんですから農地として評価するのはやむを得ない。それを宅地として評価するというようなことを同じところでよくやっているそうなんです。  それから、公共事業が来るとどんどん土地が上がります。あれもおかしいので、公共事業がつけた値打ちで公共事業が買収するというのは不合理なことですから、これは巻き上げたらよい。これは、土地収用と評価の仕組みを工夫すれば、全部変えることができる。それで、先ほど申し上げた、計画なければ開発なしというシステムであれば、土地が上がることを期待しての地価というのはあり得ませんから、それは公共のものになります。  あるいは、関西新空港をつくるときも、漁業補償費がぼんぼん上がったといいますが、あれも、漁民から見て言い分はあるんでしょうが、役所としてちゃんと計算したものなら、最初は百億と言ったが、すぐ協力したら百億に三十億足すことにし、しかし、一年以内に協力しなかったら三十億円は消えて百億でいきます、こういうふうにした方が早く済む。早く応じたら補償金はいっぱいもらえる、ごねると損だという、こね損システムというのを僕は提唱しています。これも大分反論があるかもしれませんが、今のままだとごね得システムになっています。こね得だけではなくて、理由もあれもありますから、いろいろ検討はしなきゃいけませんが、制度を見直せば、公共事業だって大分安くなっていっぱい金は出ますと申し上げておきます。     〔三野委員長代理退席、委員長着席〕
  86. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 まず、復興の財源の問題でございますけれども、一つ考えられるのは、今、国会でも議論いただいておりますように、増税論あるいは当面の減税継続をやめよう、こういう御議論があると思います。  私は、当面の減税の議論というのは、先ほども申し上げましたように、震災があるかないかにかかわらず、日本の景気を回復し、その景気を回復した財源をもって産業構造転換なり経済構造の転換を果たさなきゃいけないという目的で減税議論があったというふうに思います。その意味からいいますと、減税の効果というものが本当に日本の経済にまだ有効にきいてないときに増税をするということ自体は、景気回復の腰折れが起こる危険性がある。したがって、それはそれとしてやっていただくということでなきゃいけないと思います。  また、国債の発行には、確かに二百兆以上の赤字の残高が出ておるわけであります。しかしながら、これはいろいろ学説があるわけでありますけれども、日本の貿易黒字ということを考え、それから、日本のISバランスを見ますと、投資不足というようなことも考えてまいりますと、現在の貯蓄超過を吸収する手段として、国債発行というのはある程度なら、特に今回の場合には復興の際のいわば建設国債に近いたぐいの公債でございますから、これはやむを得ないこととして出していくということが必要なんじゃないか、こんなふうに思っております。  また、そうした意味合いからいいまして、国債を発行することによって金利の上昇というものがある危険性がございますけれども、これは金融政策をバランスをとって進めていただくことによって防止をしていかなきゃいけない、このように考えているところでございます。  それからもう一つは、組み替え問題でございます。  これは、組み替えという問題を本来の意味の予算の組み替えというふうに考えますと、これまでずっと編成作業を続けてまいりました予算案か根っこから変えるという議論になります。したがって、そうした意味合いからいいますと、従来でいいますと、どうも私、そつがある言い方で恐縮でありますけれども、場合によると、予算を修正するというようなことにとられ、これが政争の具といいますか、そうした問題になってしまうということについては、これは現在の国の事情や復興ということを考えた場合に大変問題があるの。じゃないか。復興を種にして何か与野党の激突の材料にするというのは、口幅ったい言い方でありますけれども、与党の皆さん方にも野党の皆さん方にも、国民に対して印象が甚だしく悪いのじゃないか、こういうふうに思っているわけであります。  したがって、しかしながら財源を何とか考えなきゃいかぬ。そして今の予算というものについては、先ほど阿部先生がおっしゃったように、もっと削るべきものがあるのではないかという点検はやはり国民合意の上でやらなくちゃいけないということになりますと、実質組み替えと同じような形で直ちに、もちろん加藤先生御提言のように第二次補正もできるだけ早目にやっていただくと同時に、直ちにというのは、予算編成の考え方からいったら、成立した途端に補正を組むということは果たしてどうかな、こういうようなこともございますし、同一国会の中で予算を通してすぐ補正を組むということも余り例のないことだというふうに認識しておりますけれども、このような緊急事態でありますから、中身は組み替えと同じような強力な平成七年度の補正予算を検討していただく。これを提示していただければ、これは国会の中で真剣に阪神間の問題について先生方がお考えいただいているという認識が強まるのじゃないか、このように思っております。  以上です。
  87. 藤井陽一郎

    ○藤井公述人 火山噴火予知の問題についての議論でございますけれども、現在、国の研究計画としてこれも進められております。しかし、地震予知と同じように実用化の段階に入っていない、残念ながらそういう段階でございます。  しかし、地震と火山とを比べてみると、地震は場所自体がそもそも特定できない場合が多いのですけれども、火山はどこにあるかということがはっきりしているわけですから、その点はやはり地震に比べると大分やりやすいであろう。  火山の噴火の場合にも、今までもいろんな前兆があります。大正三年、桜島の大噴火の前には、やれ地面が割れてそこから温泉みたいなものが噴き出すとか、地震もありましたし、物情騒然というような状態になって、それから大噴火したわけですね。そういう大噴火の前兆を、目撃するだけじゃなくて、ちゃんと科学的に観測する、そういうことによって実用化の段階に地震予知よりは一足先に行くのではなかろうか、私はそう思っています。  富士山の大爆発については、もと気象庁におられた方がああいうものを書くものですからなかなか大変だったですけれども、ただ、富士山も学問的には活火山です。かつて噴火したことがあることはもちろんですし、今後も噴火の可能性がある。観測を強化しますと、例えば富士山の真下で小さい地震が時々起こるということは、数年前はわからなかったのですけれども、現在ではそういうことはわかるようになってきています。  ですから、日ごろの火山のそれぞれの癖を日常的な観測を強化することによってつかんで予知に役立てる、そういったことが必要かと思います。
  88. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。  もう一つ、ちょっと地震関係。  先ほどこれは佐々木委員からも御質問があったのですが、鷲尾公述人においでをいただいておるのですが、本当に連合の関係皆さん、よくやっていただいておるのを、ここで感謝、御礼申し上げます。  各地から次々行かれて床にごろ寝しながらやっておられると、どの企業、どこの組合から何百人、どうやって行っておると、いろいろな話を承っておって、感謝いたしておりますし、また、その地域内の連合の皆さん方の獅子奮迅の活躍というのも深く敬意を表しておるところでございます。また、鷲尾公述人のところは、同業の一つの大きな会社のものについては皆さんが真剣に考えておられる。いろいろなことを聞いておりまして、ありがたいと、本当ならけ飛ばしてもいいと思っておる気持ちの逆に、必死で助けに行っておるということで、私は敬意を表しておるところでございます。  そこで、これは鷲尾公述人に、今これから税制上あるいは財政上、何やかんやの法律、予算等やるのですが、一つ、勤労者の間で幅広く我々のところに来ておる問題で、勤労者財産形成法に基づく、勤労者の皆さん方に何十年、何年と積んでもらっておる問題があります。いわゆる財形貯蓄でございますが、この積み立てをおろしてくれ、そしてまた今までいただいていた恩典はそのまま残してほしいと。これは海外に行く人もこの財形貯蓄問題では今まで議論があったのですが、今度は地震なんです。これは財界からも若干来ておりますが、連合もこの問題については何かすっきりした要請、要望というものをお立てになっておられますか。
  89. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 私は、加藤先生に今御指摘をいただきまして、実は、連合が住宅関係の要求をまとめて総理にも申し入れをしたのですが、財形の問題については頭に入れておりませんでした。住宅金融公庫の手当てであるとか、その他の諸手当てについては強い要請を出したわけでありますけれども、御指摘のように、財形問題については、財源があるわけですから、これをどのように工夫をして勤労者の住宅形成に役に立てるかということを我々としても考えなきゃいけない。  御指摘をいただきまして、私がまた公述人のくせにお礼を申し上げるのは大変おかしいのでありますけれども、検討をさせていただきたい、我々としても強力に取り組んでいかなきゃいけない、このように考えております。  以上でございます。
  90. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 財形貯蓄法は、私が国会図書館に協力していただき、ドイツの財形貯蓄法、一次、二次、三次法を日本語に翻訳して、今から二十何年前に取り組んで始めたという因縁もあるものでございますから、特に今申し上げておいたわけでございます。  そこで、今までの国会の総括で余り議論されていない問題で、阪神大震災と我が国の円高問題あるいは空洞化問題あるいは雇用の問題、賃金の問題等々に若干触れてみたい、こう思うわけでございます。  阪神大震災というものは、我が国の阪神地区をぶち壊したというか、大変なことをやり、国民の生命財産というものがぐじゃぐじゃになり、ある面では、営々辛苦築いてきておった皆さんのすべてを廃墟と化してしまった。そして、あの市街地の実態、写真というものが世界に大きくPRというか、報道、報告されたわけでございます。そして、そういう中で世界は、六十カ国余りが応援、援助にいろいろ申し込みをしていただきまして、私らは一昨日、国会で、これに対する感謝の決議まで実はいたしたわけでありますが、その反面、非常にいろいろな面で冷静、冷酷な目で日本の一連の問題を見ておると思っておかなくてはならないと私は思うわけであります。  そういう中で、今まで私たちは、産業の空洞化ということで苦しみ、悩んでおった。それに加えて今度は、政府の国民の生命財産を守る救助活動あるいはこれに対する危機管理、これはちょっとおかしいのじゃないか日本は、といった海外のいろいろな報道等が起こってきております。経済大国日本というのは、あれは架空のものであったのかといったような問題等も起こってきておるわけであります。  そういうときに私たちは、メキシコのペソの暴落という問題に遭遇し、先般、トロントG7があって、いろいろ議論をされたわけです。この場合も、NAFTAを結べばアメリカが得をするのかメキシコが得をするのか。アメリカが得をするならメキシコはためになるよ、メキシコが得をするならクリントン政権は逆に危機に陥るという一つの大きな前提というのは、我々はもう頭の中に入れてあれを見ておったわけですが、そこから先はいろいろ申し上げるのはどうかと思うのですが、逆にそれを通じてペソの危機というものが起こってきた。  これはよそごどのように見ておりますけれども、よそごとに見ておったら大騒動になる。いつアジアの国に、日本にこれと同じいたずらが発生するかわからぬという問題を、私たちは、今回のメキシコ・ペソ危機に関連する問題と我が国の産業空洞化に関係する問題で、冷静に国際金融の動きという問題等で実は見ておったわけでございます。  そういう中で鷲尾公述人は、我が国産業の空洞化に対して連合はどういう考え方を持っておいでであるかということをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  91. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 今加藤先生御指摘の問題は、日本国内全体が一緒に一生懸命考えなきゃいけない非常に大きな問題だというふうに認識をしているところでございます。これは震災と関係づけるつもりはございませんけれども、震災復興というものとあわせて日本の経済構造、社会構造の見直しのきっかけになれば、これは災いを転じて福となすことができるだろう、このように考えております。  そして、ただいま御指摘の空洞化の問題と円高対策の問題でございますが、私は、従来同様の産業構造で、加工組み立ての輸出型中心の産業が日本の経済を引っ張っていく方向で経済政策をやった場合には、明らかに、中進国を初めとする、我々の近所であればアジアが中心でございますが、アジアを中心とする日本を追っかけてくる国々の産業との国際競争力の関係からいいますと、当然のことでありますけれども、空洞化が起こるのは必然だというふうに思っております。  その対策としては、非常に中長期的な、原則論的な話ではございますけれども、私は、従来から平岩レポートやさまざまな研究会報告が出しておりますように、日本の産業構造自体を輸出中心ではない内需中心の、しかも高付加価値、ソフト的な、かつ資源の有限性、いわば日本の産業がこれ以上大量の物を消費をし、大量廃棄をし、ごみを出してしまうというようなことになりますと、もちろん石油資源を中心とするエネルギーの資源有限性も問題でございますけれども、環境資源のようなものが有限でございますから、これ以上日本の水と空気を汚して物をつくって我々が消費する生活というのはぐあいが悪い、こういうことであります。  明らかに、資源循環型の産業や高付加価値、ソフト型の産業というもので競争をしていかないと、空洞化が起こるといっても、いわば空洞化が起こる産業とそうでない産業をしっかりと区分をして、空洞化が起こらないで済むような高付加価値の産業構造に私どもが持っていくということが大事なのではないかと思う。  もちろん、そのためには技術革新投資が必要でありましょうし、先ほどの御質問にお答えいたしましたように、租税の対応をするなど新しい産業をつくるような施策も必要でしょう。また、私たち労働者の側では、新しい技能、技術にチャレンジするような、モラールを高めることも必要ですし、そのための教育投資も必要でしょう。ありとあらゆるところに新しい構造転換に向けての施策が必要なのではないか。これは国民的課題として、我々も参加し議論をしていかなければいけない。  そのためには、たまたま阪神大震災ということが起こりました。その際に、当然公共事業をどうするかという問題がございます。先ほどの財源の問題ではございませんけれども、既にアメリカとの約束で六百三十兆にわたる公共事業費の増を実現しなければいけない。その中に、どういうところに投資したらいいかということは、今回の阪神大震災のような実例を見まして、生活重視型の投資をしていく、あるいは新しい産業構造転換型の産業振興を図っていくために災害復興もできれば、これは一番望ましいことではないかな、こんなふうに思っております。  以上でございます。
  92. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。  実は、空洞化問題というのはいろいろあるわけで、これに対する解釈あるいは理解というのは人によって若干あるかと思うのですが、一つは賃金格差という問題もある。一つは地価の問題もあろう。あるいは規制という問題もあろう。あるいは日本の税制という問題もあるかもわからない。ある、はっきり言って。あるいは、さらに言うと、労使慣行があるとか、いろいろな問題等がいっぱいあっての空洞化である。  その原因は一つずつあるのですが、ところが今度の阪神大震災で、表に出ていない被害というのが起こってきた。それは、日本の二眼レフの阪神というところが被害に遭いますと、ジャスト・イン・タイム商法が成り立たなくなった、流通であるいは製造業においても、部品その他の部分でいろいろな問題が起こってきておる。私は、さきに申し上げた、外国が冷静、冷酷な目で見ておる分野があると申し上げたのは、実はそこら辺の問題もあるわけでございます。  そこで私たちは、阪神大震災復興を、国会協力して、国民一致結束して粛々と一日も早くやっていかないと、日本が諸外国からどんな目で見られておるか、大変な問題を残すよという気持ちで、我々新進党もその点についていろいろ提言もし、申し上げもし、やっていっておるわけであります。ここら辺で、私は冒頭申し上げたように、政府が早く平成六年度の二次補正予算を出しなさい、これは一月二十日の予算委員会理事会の一番最初のときに言っておるわけですね。夜の目も寝ずにつくってほしいというのは、単に国内のそういう問題、たくさんの死者が出、三十万の罹災者が出た、それもありますが、恐ろしいのは外国。ここからどんななにが来るかという点があったわけでございます、これは余り理屈が、私の哲学のようになるので申し上げませんが。  もう一つ鷲尾公述人に承っておきたいのは、今度は価格破壊と雇用と賃金の問題というのが起こってきます。平成七年度予算の中にもこれに対するいろいろな問題はあると思うわけでございますけれども、平成七年度の予算について連合の事務局長としていろいろおっしゃっていただいたわけでありますが、価格破壊というものは、物流の分野だけでなしに、製造の分野にも旅行の分野にも観光の分野にも、あらゆる分野に我が日本で今起こり出してきた。  これに対して我々が心配するのは、一つ雇用の問題です。一つは、この価格破壊というものが、生活者というか勤労者の賃金にどう反映、影響していくかという問題、これは真剣にある面では考えなければならない。そのための政策はいろいろ考えておりますが、まず連合として、この価格破壊と雇用、賃金、そしてそれが平成七年度予算にあるかないか、お願いします。
  93. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 私は、現在の日本で行われている価格破壊が、日本に多くある規制やあるいは自由なマーケットを阻害するような条件を排除して価格破壊を起こすのであれば、これは価格の適正化、購買力平価の適正化ということで大変正しいことだと思うのです。  ただ、価格破壊という名前をかりて、私どもの立場でいえば賃金を抑制にかかるようなことは、これは逆に消費を冷え込ませることになるということでありまして、犠牲を一方にしわ寄せをする価格破壊であってはいけない。その意味では、現在政府も主張され、野党の新進党の皆様方も強力に進めておられます規制緩和や行財政改革を積極的に進められるということが大変重要ではないか、このように考えております。  また、賃金と雇用の問題から考えますと、私は、国際競争力、空洞化の問題と価格破壊の問題で、日本の物価が確かに高いわけであります。もちろんそれは、規制緩和をすることによって物価を下げるということが大変重要なポイントであると同時に、その際に、私どもが着目をしていただきたいのは、現在日本労働者の中における大手、中小などの賃金格差でございます。  例えば、連合がことしの春季生活闘争をやる場合に、平均賃金は大体三十万円というふうに置いているのですが、日本の最低賃金レベルは十二万円から十五万円でございます。それを韓国のそれに比較いたしますと、韓国が現在、月収で平均が日本円に換算して大体十二万円になってございますから、もちろん平均と平均で比べれば圧倒的に日本が高いわけでございます。しかし、最低賃金のレベルと韓国の賃金が同じようになったということは、逆に言いますと、私どもの賃金体系の中でいかに中小企業の賃金が安いかということを如実にあらわしているわけでありまして、この点を解消しながら、いわば国際競争力ということを見据えて、価格というのはいかにあるべきかということを議論していかなければいけない、このように考えているところでございます。
  94. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 ありがとうございました。  それから、税制についても御意見を拝聴いたしたわけでございます。実は我々新進党は、昨年暮れ、平成七年度政府予算決定に対する中野政審会長談話というのを出して、いろいろはっきり申し上げ、あるいはまた、昨年の暮れに政府税制改正大綱に対する我々の談話というのを出して、ぴしゃっ、ぴしゃっと言っておるのですが、きょうはその問題はあえて申し上げるかどうか。  予算については、いろいろずっと行って、「われわれは、次期通常国会において、これら問題点を徹底的に追及するとともに、政府予算案の修正を含め、全力を挙げて闘います。」ということを表明し、それから税制についても、「われわれは、来る通常国会で、このような問題点について徹底的な論議を行い、豊かな国民生活を実現し、将来の活力ある日本を支える税制をつくるために努力する。」と言って、内外に宣明いたしておるわけでございます。  きょうはそのことよりか、公述人に、連合事務局長として、また政府税調委員も兼ねておいででございます。私も、政権政党時代には自民党の税調会長を三期やらせていただいたり、また小委員長等もやらせていただいたことがあるのですが、勤労者、連合の皆さんが重税感を感じておるか、不公平感を感じておる税制というものはどれとどれとどれ、どういうものに特にそういう点があるか、お教えいただきたい、こう思うわけです。
  95. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 私ども連合はかねてから、いわば総合課税というものを主張しております。最近日本に存在するのは、単なる収入の格差ではなく、資産の格差という部分が非常に大きくなっている。これはバブル経済期を経てなおさらその傾向が強い、こういうふうに思います。したがって、資産課税と消費課税、所得課税のバランスが崩れているということについて、連合の組合は非常な危機感といいますか、焦燥感、不満感を持っているということが一つでございます。  それから、不公平税制の是正でございますが、これは昨年の税制改革でもいろいろ議論をいただきました。もちろん中小企業皆さんや農業を営んでいる皆さん方にはそれぞれ言い分がおありであろうと思います。しかしながら、例えばみなし課税の問題だとかさまざまな特例措置というものをサラリーマンの立場から見ますと、この反論としては、そんな大した額でないとか財源にはならないというお話でございましたが、私は、財源の問題ではなくて、そうしたものがあるかないかということがサラリーマンにとっては大変重要でございまして、不公平税制というものからいいますと、みなしであるとかその他のさまざまな措置というものについてはできれば撤廃していただく、そのことが私どもにとっては一番大きな課題だというふうに申し上げておきたいと思います。  以上でございます。
  96. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 総合課税問題は、一度やって法律寸前まで持っていったのでありますが、思わぬところから反対や内ゲバが起こってきまして、朝霞に膨大な設備までつくったのですが、我々苦い経験もあるわけでございます。一連の問題を通じて、私は総合課税というのは世の流れだ、こう思っております。実は、おぎゃあと生まれた赤ん坊から番号をつけて、年金から課税から教育から医療から、あらゆるものをこの一本でやっていけば何兆円、何十兆円の節約になり、効率的になり、不平不満が解消せられるかという問題については、私たちも十二分に議論し、やっていっておるところでございます。  昨年、税制改正で国会においては特別委員会までつくって激しいやりとりをやってきたので、ここから先を公述人に御意見をお求めするというのはなんだと思いますので……。  あと一つだけお聞きしておきたいと思うのは、介護休業制度の法制化の要求が非常に強く、各界各方面からいろいろ議論が起こっておるのですね。そこで、政府も上程しましたが、この法案について、連合としてはどういうお考え、あるいは感想でも結構ですがお持ちか、お伺いしたいと思います。
  97. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 介護休業の問題は、労働省の審議会を通じて大変御努力をいただいております。したがいまして、現在進められています案については、それなりに一歩前進したというふうには認識をしているところでございます。  しかし、連合の要求は、例えば介護についても、介護の休業期間が三カ月間ということについてはまだまだ不十分だというふうに考えております。また、現在介護問題が非常に喫緊の課題になっている時点でございますから、これの施行期日についてももう少し早めていただけないかな、このように考えておるところでございまして、これは本国会で法案が出されるようでございますから、その法案の審議の行方を見守りたい、このように思っております。  以上でございます。
  98. 加藤六月

    ○加藤(六)委員 お三方の公述人、大変貴重な御意見をありがとうございました。  以上で私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  99. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これにて加藤君の質疑は終了いたしました。  次に、松本善明君。
  100. 松本善明

    ○松本(善)委員 三人の公述人、御苦労さまでございます。貴重な御意見をありがとうございました。特に、阿部公述人は震災の被災も受けられ、その経験を踏まえて御意見を賜って、心からお見舞いも申し上げたいと思います。  最初に、三人の公述人皆さんに私の質問の前提となることを申し上げたいと思いますが、それぞれお触れにもなりましたけれども、本年度の予算は震災の前に編成をしたものでありまして、大蔵大臣も組み替えに当たる補正をせざるを得ないということを言っておる。異常な事態になっておることはもう明白であります。組み替えを再三再四にわたって社説で主張する新聞もたくさんありますし、それから筋としては組み替えなければならないということを社説で述べるという新聞まで含めますと、ほとんどすべてがそうであります。そういうことでありますので、私どもも抜本的にこれを組み替えなければならぬというふうに思っております。  まず、阿部公述人に伺いたいのでありますが、先ほど、阪神の震災を優先して組み替えるというような主張がありました。これはこの国会でどの党も、阪神大震災の復旧、復興、これを最優先に考えなければならぬというふうに考えております。当然の御主張であろうと思いますが、もう一つ、特に伺いたいのは、この経験を踏まえて、災害に強い国土づくりという方向にやはり予算を組み替えなければならぬのではないかというふうに思います。その点について補足的に、まず阿部公述人から御意見を賜りたいと思います。
  101. 阿部泰隆

    ○阿部公述人 また専門家の前で素人が発言するようなもので恐縮なんですが、災害に強い国土づくりとしてたくさんお金を出すということになると思うのですが、ちょっと角度を変えまして、私は、同じ目的を達成するのにできるだけお金を使わないシステム、だから同じ金でたくさんの目的を達成できるシステム、そのシステム考えていただきたいと思います。六百三十兆円使っても、これをどぶに流すようなことであってはなりません。まあどぶに流れるだけではないでしょうが、できるだけ有効に使えるシステムというのを考えていただきたいと思います。  それで、災害に強い国土づくりとしてまた土木工事をたくさんやりますと、工事費は上がる、土地代は上がる、そうすると効果は薄いということになりますから、先ほどから再三申し上げておりますが、できるだけ土地の開発利益は巻き上げるという仕組み考えなければいけないのです。  ちょっと違う話で、こういうことを紹介させていただきたいのですが、行政改革では、特殊法人改革というのが盛んに話題になっていますが、まだまだシステムを見直す必要がございます。  最近は水が足りないと騒ぎましたが、今まで神戸あたりでは、工業用水は半分余って海に流していました。それでも上水道は足りないといって、琵琶湖の総合開発事業、二十五年、多分一兆五千億円かけていたと思います。まあ琵琶湖総合開発事業が全部要らないとは申しませんが、工業用水の半分を海に流してまでそれだけの開発をするのか、工業用水はできるだけ上水の方に売るという仕組みをつくらなければいけないのではないかと再三主張しておりました。工業用水の方はそちらの言い分はあるでしょうが、なぜそうならないかというと、工業用水は工業用水の補助金でやっていて、上水は上水、制度は別である。だから、工水の補助金でつくった水を人間にはびた一滴飲ませられないというかたいシステムのせいであります。  こういう補助金システムを変えて、むしろ補助金の目的外変更を積極的に認める、大蔵大臣が指示して認めるというような、だから、下の方からの申請を拒否するという仕組みが今のものですが、むしろ変更をどんどん進める。進めた方が余計予算をもらえるという仕組みにすれば、みんないろいろなところで変更を提案して、金がかからないのにどんどん事業ができます。余っている保育所も学校もどんどん変更するとか、いろいろあります。  同じ話で、六百三十兆円で下水道事業にいっぱい金をかけますが、今のやり方ですと、勝手に家を建てさせて勝手に生活排水を旅させて、川が汚れて、水道で金をかけて、後から下水道ということで、大変大変金がかかって後手後手になっているシステムですが、家を建てるときは最初から全部浄化槽をつけなければいけない、こういうふうにしていれば後から金はかかりません。それでこれからのことをやればどんどんよくなります。そういうふうにすれば、同じことをやるのでも早く国土がよくなります。  だから、災害に強いというよりも、金ばかりかけるのではなくて、それをなるべく安い金で、一遍になるべくたくさんの目的を達成する法の仕組み考えていただきたいとお願いしている次第でございます。  以上です。
  102. 松本善明

    ○松本(善)委員 予算を効率的にというのはもう当然のことでございます。  鷲尾公述人に伺いたいのでありますが、実質組み替えというお話でございました。ただ、予算案が一たん通ってしまいますと、これは減額補正ということもありますが、限度があります。先ほど来駕尾さんが言っておられた、例えば租税特別措置とか不公平税制というようなことになると、やはり組み替えをしないわけにはいかないのですね。  それから農業関係予算、これは若干意見も違います。私どもはWTO協定を改定すべきである、そうすれば農民も、必ずしも予算を求めるというよりも、お米の輸入自由化反対、価格を保証して農業を続けられるように、これが要望ですから節約もできるかと思いますが、こういうこととか、先ほど来述べられたことは、やはり組み替えないとできないものがある。  ただ、時間がかかるじゃないかというのが、組み替えでなくて補正でやるという意見中心であります。しかし、新年度に入るのにまだ五十日あります。社説で、暫定予算を一カ月組んでもしっかりと今の時点での予算の優先度を決めるべきではないかという社説を出しているものもあります。そういうことも踏まえながら、この組み替え問題、財源問題についてどうお考えか。  財源は、特に歳出を削減する組み替えをしませんと、やはり増税か国債発行。国債発行がどんどん進んでいきますと、かなりの大きな金額でありますので、やはり貨幣価値を下げるとかそういう別の問題も起こってきます。やはり、財政の国債依存度を下げなければならぬ。そういうことも含めて、そう時間がありませんので、簡明にお答えをいただきたいと思います。
  103. 鷲尾悦也

    ○鷲尾公述人 私は、最初の陳述のときにも申し上げましたように、いわば国政レベルにおける組み替えという物の考え方についてどうか、技術論でどうかということについては、私どもはプロではありませんから、国会の中で御議論いただきたい。  確かに、組み替えをするということは、減額をして、ある歳出をカットして新しいところへつけるということでございますが、今回の十兆円という予算規模を素人ながら考えてまいりますと、それだけではなかなかいかない。やはり、実質は何らかの財源措置をした上で歳出をふやさざるを得ないということが起こるのではないか、このような考え方でございます。  同時に、支出の方も、緊急に要るものと中長期に要るものときっちりと明確に区分けする必要がある。中長期にわたってかかるものについては、その後のさまざまな議論でもって歳出を考えていくということがあって構わないのではないか。したがいまして、私は、世論のアピール度からいいましても、できるだけ緊急の問題については措置をする、そして中長期の問題と区分けをした上で、実質組み替えであるかどうかということを国会の先生方が合意をされ、国民に訴えるということが大事なんじゃないか、このように考えております。  また、国債発行の問題でありますが、これは幾つか意見があると思います。私は、現在の日本経済のバランスからいいますと、明らかに投資不足という状況がございますから、バブル経済を引き起こしたもとになるような状況というのは、日本の場合にはまだまだ残っている、こういうふうに思います。そのためには、適正な形で吸収をし、今回の震災復興のような形で国債を発行するのは、このこと自体がコストプッシュインフレを起こすようなことにはならない、このように考えているところでございます。  以上でございます。
  104. 松本善明

    ○松本(善)委員 お話を伺いますと、やはり組み替えをしないと実際上今の主張は全部は実現できないのではないかというふうに思います。例えば租税特別措置とか、結論的にはそういうことですけれども、中身を考えるとそういうことになるのじゃないかなというふうに思います。  藤井公述人に伺いたいと思いますが、地震の予知の問題、これはなかなか現在の地震学の状況からすると難しい問題であろうかと思います。しかし、短期的に見ますと、今のお話のように、日本全体が活動期に入ったのではないか。この問題は非常に大事な、日本人の命を守るという上では本当に不可欠の問題だと思います。  予知の問題が必要だということについてはいろいろ述べられましたが、やはり観測ということとの関係ですね。長期的に見ますと、日本列島で起こった地震全体を長期的に観測をして、いろいろ地震学の基礎になっているのではないかと思います。そうすると、我々の生きている時代のみならず、将来の日本のことも考えますと、やはり観測体制を強化をして、その観測の数字をちゃんと保存をして、それが地震学の発展の基礎になるのではないか、そういう点での地震予知体制というのは非常に大事なのではないか。本委員会でも、運輸大臣も、地震の観測・予知体制の強化ということを答弁をしておられます。  そういう長期的、短期的を含めて、予知体制の問題について重ねてお述べをいただきたいと思います。
  105. 藤井陽一郎

    ○藤井公述人 日本地震予知計画では、例えば土地の測量をする、地震の起こり方を観測する、活断層を調べる、いろいろな項目がありますけれども、測量がなぜ基本的な方法として位置づけられているかというその理由の一つは、明治以来、地図をつくるために三角点、水準点というものを置いてきた。当時、実は地図をつくるのに最小限必要な精度以上の精度で、技術的に可能なものですから、三角点の位置その他を決めた。  それが非常に大切なことでありまして、地面の中の地震を起こすかもしれないエネルギーのたまり方というのは、数年程度の観測ではなかなか現在の精度では釈然としないことが多い。やはり数十年間の蓄積がある、そのことが非常に強みなわけでして、私たちは、明治の初めに、必ずしも地震予知を目的としていろいろなことが始められたわけではないのですけれども、国土の実態を科学的に把握する、そういう事業を正確に実行してくれた、そういう財産があるために、そういった点では、地殻の変動を調べるのは日本は世界第一の水準を保持しているというふうに言えると思います。  そのことは、ですから、確かに予知の直接的な効果とか、そういうふうなことで議論するとまた別の尺度の議論が出てくるということもあるのですけれども、基本的な観測の重要性というのはそういった点からも御理解いただけるのではないだろうか、そのように思います。  それから、専門の言葉ではサイスミシティーと言っているのですけれども、地震活動の度合い、これも気象庁の観測で正確な震源の決定ができるようになったのは関東地震の後、一九二五年ぐらいからです。ちょっと測量よりも、技術的な理由で遅いのですね。でも、過去数十年の蓄積がありますから、ある地域についてのある程度の認識を得ることは可能です。  同時に、機械的な観測のできないところは、これは歴史地震学なんという分野もありまして、古文書の史料をもとにしながら、古文書の史料でも、現在の地震学の目でそれを読み直すということによっていろいろな判断が可能です。そういう分野を含めて、やはり息の長い研究、観測というものが必要だ、そういうふうに思います。
  106. 松本善明

    ○松本(善)委員 時間がありませんので、一言だけ簡明に藤井公述人にお答えいただきたいのですが、先ほど時間がないということで答えられませんでしたが、気象庁などの測候関係の人員削減は、これはやはりやってはならぬということを言われました。その他、地震予知の観測のためにどうしても必要だ、ここは削減してはならぬ、むしろ強化をしなければならぬという点について、簡明に述べていただきたいと思います。
  107. 藤井陽一郎

    ○藤井公述人 今度の地震に関連しても、洲本の測候所でどうだったかというようなことがいろいろ問題になっておりますけれども、今回の地震に限らず、例えば日本海中部地震のときも、深浦という測候所は震源域のすぐ目の前にある重要な測候所なんですけれども、地震計がありませんでした。しょうがないので、職員は自分の体を地震計にして、いわゆる震度の観測をして、余震の観測をした、こういうふうな状態です。  それは、関東地方でもそういうふうな測候所は幾つかあるわけで、やはり人間の総合的な判断というのは、機械的な計測、それが教えてくれるものに比べて非常にすぐれた総合的な判断ができる、そういった点もあるので、機械を置くと同時に、観測員の配置を十分行う、そういうことが必要で、それなしに防災国土づくりといっても、基本的なデータがないというような状態になってしまっては絵にかいたもちになってしまう、そういうふうに思います。
  108. 松本善明

    ○松本(善)委員 終わります。
  109. 佐藤観樹

    佐藤委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明十日午前十時より委員会を開会し、一般質疑に入ります。本日は、これにて散会いたします。    午後四時散会