○橋本国務
大臣 大変大事な御
質問をいただきましたので、多少長くなることをお許しいただきたいと思っております。
これはまず事実認識として改めて申し上げたいことでありますが、自動車
産業は、
円高に
対応いたしまして海外展開を図る、同時に、部品の共通化でありますとか工程の見直しなどの抜本的なコスト削減策を一方で進めております。同時に、合理化で吸収できない部分につきましては、価格の引き上げを行ってまいりました。これは、もし行わなければダンピング規制にかかってしまうわけでありますから、当然のことながらそれは、多少のタイムラグはありましてもきちんと引き上げは行われてきているわけであります。
その結果として、九二年には五百六十七万台でありました輸出台数は九四年で四百四十六万台に減少をいたしました。また、輸出金額は七兆六千億円でありましたものが五兆八千億円に減少を着実にたどっております。
今回、この三月から現在に至っております
円高というものは、これは極めて短期間に進展しておりまして、これは各
企業の経営の
努力によるスピードの限界を超えております。そして、この
状況がもし続きました場合には、体力がぎりぎりに弱っております
企業におきましては、国内に見切りをつけて海外に展開を加速させる、また、海外展開もままならないという
企業は、みずから生産を縮小する、あるいは下請を縮小するといった
対応をとらざるを得なくなる、こうしたことを私は心配をいたしております。
例えば、自動車メーカー、例に挙げて恐縮でありますけれども、例えばマツダの場合には、当面の緊急避難
措置として、四、五月の対米輸出を従来の計画から半減させておりまして、
為替予約の範囲内にとどめております。そして、これによって工場の一部ラインが停止をされている
状況であります。
こうした
状況になりますと、これは輸出の減少に伴って国内生産が縮小するわけでありまして、その結果としては、
経済サイクルは悪循環に入っていく、そうした危険性があるわけでありまして、これは逆に対外収支の改善を阻害する可能性すら出てまいります。
私どもといたしましては、今やはり講じなければならないことは、国内
経済の
拡大、また構造改革の加速化である、そう考えておりまして、
経済の
拡大を図りながら黒字を減らすという国としての
決意と実行が必要かつ不可欠、そのような思いを持っているところであります。
そこで、今お触れをいただきました包括協議における自動車の論議及び部品分野の問題でありますけれども、これは十二日から十九日にかけまして次官級協議並びに課長級協議を行ってまいりましたが、双方の立場にはなお隔たりがございます。殊に補修部品につきましては、運輸省の関係者に大変な
努力をいただき、
アメリカ側も一部評価をいたしながらも、その隔たりが埋め切れていないという
状況であります。
我々としては早期の解決に向けて最大限の
努力を行っておりますが、
アメリカ側は昨年の九月の段階におきましても、また十二月の末に行われました次官級の打ち合わせの中でも、包括協議の再開についての打ち合わせの中でも、いわゆるボランタリープランというものは包括協議の外であるということを合意をいたしました。しかし同時に、ボランタリープランがなければこの協議の合意はないという大変矛盾した立場を述べておられます。そしてまた、包括協議のこれは基本原則であります双方向性という議論を無視しておられました。
アメリカ側の
産業の
日本市場への参入
努力不足というものは棚に上げた議論をしておられる
状況であります。
これは、一例を申し上げますならば、ビッグスリーの中に右ハンドルの革は現在においても二車種しか発売をされていない。また、圧倒的に
日本の消費者が購入している二千cc以下の車、これは八〇%余りのはずでありますけれども、ここには一車種も投入をしていない。ヨーロッパ車が着実に伸びておりますところを考えていただけば、我々が
アメリカに主張していることに矛盾はないと思うのでありますけれども、こうした
状況の中で、この交渉につきましては、欧州あるいはアジア諸国も非常に注目をしており、筋を通さない妥協というものほかえって国際的にマイナスを来す、そのような心配を私はいたしております。
我々としては、
政府の責任の範囲内で、市場原理、国際競争のルールというものを基本にしながら最大限の
対応をしてまいりたい、そう考えております。
そして、ここで一点私は申し上げたいと思うのでありますけれども、
世界の外国
為替取引の中で貿易取引の占める比率というのはわずかに約三十分の一であります。さらにそのうち、
日本の貿易に係る部分というのは十分の一以下であります。そして自動車・自動車部品の占める割合はさらにその六分の一以下であります。そして、この日米包括協議の中における自動車協議というものは、昨年の九月末に協議が不調になりまして中断をいたしましてから、前進こそあれ、急に最近になって決裂をしたわけではございません。
私は、市場が短期的に円買いの材料あるいはドル売りの材料に何を使うかという問題はこれは別といたしまして、本質的には今回の
円高と自動車協議の
動向とは無関係だと考えております。市場が何を使われるか、これは別であります。