○小池百合子君 あの忌まわしい
阪神・
淡路大震災の
発生から三十七日がたちました。
阪神・
淡路大震災に対処するための特別の
財政援助及び助成に関する
法律案の
審議に際し、私は、
新進党を代表するとともに、一向に心休まることのない毎日を送り続けます被災地の声を代弁して、五つのポイントにわたって
質問させていただきます。
まず、今回の震災は関東
大震災以来の大規模都市直下型
地震であることへの
総理の基本的な御
認識を
伺います。
愛する家族を失う、またマイホームを失うということは、都市であれ、農村漁村であれ、
被災者にとっては同じ悲しみであります。同じ損失であります。しかし、今回の
阪神大震災は、死者五千四百余名、全壊した個人住宅戸数は十万を超え、また一部損壊に至りましてはその十倍にも及ぶなど、
被害は
余りにも大きいのです。つまり、従来の
復旧・
復興対策では十分カバーし切れないということになります。駅やビルの倒・半壊のすさまじさ、高速道路の倒壊。私は、
我が国の人口の八割を超します人々が住む都市のもろさ、脆弱さを強烈に痛感いたしました。
最大の衝撃は、都市に住む住民に対して、こうした大災害に向けた備えが国として十分にできていたかどうかという疑問であります。
政府は、今回、
新進党の強い要請もありまして、
被害を受けた
地域を激甚災害
地域に指定し、激甚法を適用なさいました。しかし、激甚災害に対処するための激甚法は、今日の
我が国の全体像には既にそぐわなくなっているのです。だからこそ、本日のこの本法案が必要になってくることは
理解できます。
激甚法が対象としておりますのは、一部
中小企業者
対策が含まれるにいたしましても、基本的に
公共事業、公共施設でありまた農林水産といった第一次産業に対する助成が中心となっております。
一方、今日の
我が国は、災害基本法が制定されました昭和三十六年あるいは激甚法が制定された昭和三十七年から、大きく産業構造を転換させています。第一次産業人口は、昭和三十年に四一%であったものが、現在はわずか七%となっております。要約すれば、
我が国は世界にも数少ない都市集合国家として成熟した大衆社会を実現しつつあると言うことができます。
ところが、
我が国の社会・産業構造の変化にもかかわらず、
政治経済のシステムは、いまだ三十年、四十年前のままなんです。戦後の日本型システムが今日限界を迎え、その結果として、従来のシステムでは満足しない無党派層が増大していると言っても過言ではないと思います。
現在の日本の基盤を支えているのは、都市を中心としたサイレントマジョリティーです。
税金の捕捉率はほぼ一〇〇%、しかも、こういった人たちによる納税行為によって、日本という国は北から南まで支え合ってきたのでありますのであればこそ、
災害対策基本法、激甚法等、
国民の生命財産を守るための災害
対策に関する法律そのものを、都市住民にも配慮したものにしなければならないのではないでしょうか。もしこうしたサイレントマジョリティーに対する
対応を間違えますと、今後、
我が国勤労者の納税意欲までも減少させてしまうことになりかねないことを、
総理は
認識しておられますでしょうか。
私は、被災地において、エモーショナルになることを避け、冷静さを保ちつつも納税者として
政府の
対応に
怒りを覚えている
方々のことを思うと、やりきれない気持ちになるのであります。
阪神大震災のような都市型災害には十分適応できない激甚法や災害基本法の
見直しについてのお
考えを伺わせていただきます。
ちなみに、
災害対策基本法については、過日、災害
対策特別
委員会に珍しく出席なさった国土庁長官が、基本法を見直すと御
答弁を朗読なさいました。長官は、自衛隊のより積極的な活用についても触れておられます。政策を一夜にして百八十度転換された社会党の委員長として、
閣僚の一人であります国土庁長官の御
意見をお認めになるのかどうか、
伺いたいと思います。
また、この本法案は、すべてが賄える完全なものであるとは到底思えません。この法案を第一次として、第二次、第三次の法案が必要になるのではないかと
考えますが、
総理のお
考えを明確にお聞かせください。
第二のポイントを
お尋ねいたします。
都市住民への助成として、例えば六甲山系に広がる造成地の問題が浮上しております。
神戸市、芦屋、
西宮、宝塚市など、六甲山系に広がる
地域では、山の斜面を切り開いて宅地を造成し、住宅地として今日の発展をなしてまいりました。今回の
地震は、こうした宅地造成地をもろに襲ったわけでございます。見かけはしっかりと家屋が残っているようでも、肝心の地盤に亀裂が走り、雨が降るたびに崩壊の危機にさらされている
地域もあります。海岸際の埋立地におきます液状化の問題も同様でございます。
現行法では、同じ造成地にある道路や学校の
復旧には
対応できても、こうした個人の造成宅地には何らの助成もございません。土地そのものの問題でいうならば、長期化する奥尻や雲仙の
対応も同じです。
倒壊した家屋やマンションなど上物の問題も大変深刻ではございますが、宅地全体の
復旧は個人の力を超えてしまうのです。それを個人の住居だからすべて個人で修理せよというのでは、気力だけでやれというようなもので、とても無理な話だというのが被災地の声でございます。また、地質調査や基盤調査については自治体の
予算措置さえままならないのです。
全国各地に広がるこうした造成地に対して、
政府は
一体どのように
財政的助成をなさるのか。山国である日本全国に点在す。こういった造成地の問題をどう法的に
対応されるお
考えなのか。または、
政府としての許容量を超える問題ととらえられるのか。明確にお答えいただきたいと思います。
第三の問題は、以上のような災害
対策にかかわる財源についての
お尋ねです。
政府は、
復興財源についてあらゆる財源の
可能性を求めると明言しておられますが、それは
一体どのような形をもって姿をあらわすのでしょうか。震災が
発生してから既に一カ月以上がたっております。しかし、いまだに
財政措置に関してはその骨格すら
政府は明確な形で述べていないではありませんか。財源の明確な方針なく場当たり的な
復興を進めるのは、災害
発生に対しての対処を後手後手にしてきた初期
対応の過ちを、
復興という第二段階に際しても、いま一度繰り返すようなものと断定せざるを得ません。
一体、
政府は
復興に際して
赤字国債を
発行するのでしょうか、しないのでしょうか。また、
発行するのであれば、それはいつ、どの程度とするおつもりなのでしょうか。一般会計でしょうか、特別会計でしょうか。本年度の所得税減税は停止するお
考えなのでしょうか、あるいは所得税の減税幅を圧縮するお
考えなのでしょうか。もし減税幅を圧縮するのであるならば、それは
一体どの程度と
考えておられるのでしょうか。
大蔵大臣は札幌での講演で、税負担としていただくしかないと
発言しておられますのでは、いつ、どのくらい、どのような形で増税を実施すると想定しておられるのでしょうか。以上の点、すべて明快にお答えいただきたいと思います。
既に
被害の大枠が見えてきた今、
復興に関する財源を現在のままずるずると明らかにしないままでは、
復興対策を
推進する
政府としては全く無
責任であり、財源の議論なしに
復興を
考えるのは無謀としか表現のしようがございません。
新進党は、震災
復興に対します
財政の
考え方として、九五年度
予算の
組み替えを要求しております。被災地の個人の家計が今回の震災で大幅に見直さざるを得ない、またライフスタイルさえ変えざるを得ないというのに、七十兆円を超えます国家
予算がそのままというのは信じがたいことでございます。この際、九五年度
予算は、不要不急の歳出を大幅にカットし、それを災害の第一次
復興に充てるべきではありませんでしょうか。
例えば、九五年度農林
予算に計上されているおよそ一兆円に上る関連
予算の
見直しについてのお
考えはどうでしょうか。ウルグアイ・ラウンド関連
対策費と銘打ってはいるものの、内容的には
我が国農業を抜本的に改善するものとなっていないことは、農業
関係者自身がだれよりも知るところでございます。もっと腰を据えた形で、日本の農業の未来を確実なものにする必要があります。
次いで、
公共事業の
見直しがあります。九五年度
予算における
公共事業費は
総額十一兆円であり、このうち、港湾漁港
整備事業費七千億円、農業
整備事業費一兆円、治山治水
対策事業費一兆五千億円などとなっておりまして、私たちの試算によりますと、総計六兆円程度が今回の
復興財源の対象として
考えられます。
政府は、緊急に必要な
復興対策費は九四年度の
補正予算で処理すると言い、また、九五年度の
予算組み替えには時間がかかると述べておられます。
予算の
組み替えに時間がかかるといっても、既に
地震発生から一カ月がたっております。今
国会で二カ月程度の
補正予算を組み、その間に九五年度本
予算を
組み替えて、九五年度
予算を
復興予算とすべきではないのでしょうか。
家族、家、そして職を失った
被災者にはやる気のみで立ち直りを迫りながら、
政府に
予算の
組み替えのやる気がないのは
一体どういうことなんでしょうか。(
拍手)それは
官僚の抵抗ですか、
族議員の存在です。それは、
総理にとって
組み替えが初めてのことだからでしょうか。
第四点を申し上げます。これまた今回の法案で見落とされております私学、私立の学校の災害
復旧に対しての
お尋ねであります。
今回の
大震災で
被害を受けた
阪神問の私学の学校
法人は二十九
法人に上っております。学校によっては、校舎その他が甚大な
被害を受けたものもございます。
一体、文部省はこうした
被害の実態調査に乗り出しているのでしょうか。寡聞にも私は、私学が受けた今回の震災の
被害を文部省が調査したという話は聞いておりません。
ちなみに、
阪神間の私立学校が受けました
被害総額は、物的損害だけでも約四百億円に上ります。加えて、授業料の減免の負担までも強いられております。こうした
被害の助成について、
政府はどのように
考え、また、今回の特別
財政に関する
法律案ではどのようになさろうとしているのか、
お尋ねいたします。
最後に
総理に
お尋ねしたいのは、
総理の
責任についてでございます。
今回の長田区などで
発生した火事は、実に悲惨でした。つぶれた
瓦れきの下で、まだ息のある人たちが次々と火に包まれていきました。自分の親がそこに埋まっている、何とか助け出そうとしたが火がそこに迫ってくる。子供の危険を察知した
瓦れきの下の親御さんが、私はいい、おまえ早くお逃げと言って、子供さんは泣きながらそこを離れだというような胸の張り裂けるような話は、枚挙にいとまがないのです。なぜ
被害がこんなに拡大してしまったのか。
また、どんなに法を
整備し、システムを
整備しても、
国民の生命と安全をつかさどるリーダーとしての
認識と決断力が欠如していては
意味がありません。こうしたことについてのあなたの
責任、
総理の
責任を明確にしていただきたいと思います。何分にも初めてのこと、早朝の出来事、混乱したのは
現地であって自分のことではないといった言い逃れ、言いわけ、
責任転嫁は、一国のリーダーがすべきものではないと
考えております。(
拍手)
また、
国民の目から見て紛らわしい名称の
対策本部を幾つつくれば気がお済みになるのでしょうか。霞が関主導で強力な
復興本部もつくれない政権に、
行政改革ができるはずはない。
復興臨調も屋上屋を重ねるだけで、有識者の時間と気力をむだにすることは目に見えております。
一国の安全と
国民の生命を守るという
政治指導者として最も必要な条件を欠き、それがために
被害を拡大せしめたあなたの
責任は、今後どうおとりになるおつもりなのでしょうか。反省と
復興に
全力を尽くすといった
言葉以外の御
答弁をお
伺いしたいものでございます。
以上五点、御
質問させていただきまして、終わらせていただきます。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕