○
不破哲三君 私は、
日本共産党を代表して、
震災問題を
中心に
総理及び
河野外相に
質問いたします。
関西地方を襲った大
地震の
被害は、ついに死者五千人を超え、
避難所への
避難者も三十万を超えました。
被災者の全体はもっと大きな数になると思います。
犠牲となられた
方々への深い
哀悼の
気持ちとともに、
被災の中で頑張っておられる多くの皆さんにお
見舞いを申し上げるものであります。
救援対策では、今なお生死不明とされる
方々の
人命確保が最優先の
課題であることは言うまでもありません。同時に、
被災者が生活していくための
最低条件を確保することが急務であります。この点では、
対策を、敏速に、しかも
被害の大きさに応じ得もだけの
規模で計画的に進めていくことが重要であります。住宅、食料い医療、
ライフライン再建などの
救援と復旧について、どれだけの
規模の
対策をいつごろまでに講じていく計画なのか、具体的に伺いたいと思います。
今回の
災害について、テレビなどで
実情を目の当たりにした
国民の間から、共通して
二つの声が上げられました。なぜこんな
事態がということと、自分の
地方でこの
地震が起こったらどうなるかであります。
「思いもかけない大
地震」という
言葉がよく聞かれますが、これを弁明の
言葉とすることは
政治家に許されることではありません。一九七〇年に、
日本の
地震学者、
専門家の
組織である
地震予知連絡会が、
地震の危険の大きい
地域を
特定観測地域に指定しました。神戸、
大阪の一帯はそのときから
危険地域に数えられていました。
直下型地震が
都市を襲った場合の大
被害についても、多くの警告が発せられていました。それに備えるかどうかは
政治の問題であります。国として必要な備えがなかった
責任をどう考えるかをまず伺いたいのであります。(
拍手)
私は、十四年前に、
首都圏の
地震に備える問題について、当時の
専門家の
研究や
提言を踏まえて、
国会で
政府への
問題提起を行いました。そのとき、
一つ、
地震に強い
都市・
国土づくり、
二つ、
消防消火力の
強化を
中心にした
即応体制、
三つ、
観測と
予知の
体制整備、この
三つの
角度から
提言しました。この
三つは、今でも
震災対策の
基本として重要な
角度だと考えておりますが、
対策をなおざりにしてきた
歴代政府のもとで、
事態はこの十数年間に一層重大化していることを指摘せざるを得ません。
第一に、
地震に強い
都市・
国土づくりという面では、
事態はまさに逆行の状態であります。この十数年の間に、
日本の全体が巨大な
建設物、
構造物で覆われてきました。臨海部を埋め立てての巨大開発も広がりました。
アメリカの大
地震のとき、
日本では道路は壊れないと
政府や業界が太鼓判を押したことが今問題になっていますが、
日本の土木
技術を過信しての安全神話がこの傾向に拍車をかけました。国が、一方で東海大
地震への備えとして特別の立法
体制までとりながら、他方ではその予想される震源
中心部に近い浜岡で原子力発電所の相次ぐ増設を進めてきたのも、その典型の
一つであります。
しかし、今回の
震災では、一番
基本をなす高速道路、新幹線でさえ従来のやり方では
直下型地震に耐え得ないことが実証されました。事は極めて深刻であります。
政府は、
日本の主要な
建設物、
構造物について、また、現在建設中、計画中の大型
プロジェクトについて、
地震に対する安全性の
角度からの総点検を緊急に
実施すべきであります。
その際、活断層の破壊が地表に近い場合には、震度その激震が現に起こることを前提にして耐震基準を見直すこと、その新しい基準を今後の建設の指針とするだけでなく、既存の
建設物、
構造物の耐震性をそれによって点検することが不可欠であります。阪神高速道路が大
規模に破壊されましたが、それは、強度が古い基準のままであったのに補強策が講じられず、今回の倒壊を招いたものでした。その教訓を生かすべきであります。
また、液状化現象が広範囲に起こったことを重視して、開発中の大型
プロジェクトを含め地盤を総点検することが重要であります。埋立地など液状化必至とされる地帯での大型開発が今各地で進行しあるいは計画されておりますが、これには厳重な警戒が必要であります。
原子力発電所の問題は、浜岡だけではありません。現在運転中の四十九基のうち、二十五基までが
地震の危険度の高い
特定観測地域などに設置されています。これもゆるがせにできないことであります。
首相は、施政方針
演説で「
日本列島全体の
災害対策を見直し、再構築する」と言明しました。これを空文句にすることなく、今挙げた点を含めて総点検し、それに基づく必要な施策を
実施する決意があるかどうか、
国民の生命と安全にかかわる問題として、真剣な答弁を求めるものであります。(
拍手)
第二は、消防消火
体制の問題であります。
これは、
震災の現場での即応措置で最も重要な点ですが、今回の
震災では、
被災者の皆さんはもちろん、
国民のすべてが、いざというときの消防力の不足と、それがどんなに重大な結果をもたらすかを嫌というほど痛感させられました。さらに、耐震貯水槽が整備されていなかったことは決定的な問題となりました。他県の消防力を動員しても、肝心の水がなかったのであります。
消防力の整備は各自治体の任務とされていますが、問題は、
政府がどんな基準で指導に当たり、また、その充実法についてどのような
援助をしてきたかであります。特に、この十数年来、行政改革の名のもとに歴代
内閣がこの分野までを補助金カットの対象とし、各自治体の消防力
強化にブレーキをかけてきた
責任は重大であります。今後の方針を含め、この問題についての首相の見解を伺います。
第三は、
観測と
予知の
体制についてです。
関西地方は、
観測網の設置という点で空白に近い面がありました。現在、
特定観測地域などが全国に土
地域指定されていますが、その中で多少とも本格的と言える
体制がとられつつあるのは、東海と南関東だけです。例えば、
直下型地震の危険が予想される
都市部では、
都市特有の雑音や振動のために地表近くでは
観測困難であり、
地震計は三千メートルもの地下に設置する深井戸式が必要でありますが、これは現在、
首都圏に設置されているだけです。
危険地域の指定自体は、北海道から九州まで
日本全土に及んでいます。また、一昨年大きな
地震に襲われた奥尻島は指定
地域の外でした。ですから、
基本的には
日本全土にかなりの密度で
観測網をめぐらす必要があります。もちろん、
観測があらゆる
地震に対して直ちに
予知に結びつくというわけではありません。しかし、
地震学と
予知技術の
発展によって
予知の可能性が理論的に広がっても、
観測記録の蓄積がなければ
予知を具体化することはできません。
日本国民は、この列島に幾世代、幾十あるいは幾百世代にわたって住み続けるわけで、私たちは、そういう将来への
責任からいっても、今日、この面でも最善の
努力を尽くす必要があると考えます。首相の見解をただすものです。
今述べた点は、
震災対策のためのごく
基本的なことですが、
歴代政府はこれへの取り組みをなおざりにしてきました。それは、
震災対策や
地震予知の問題が
国家予算の上でどう扱われてきたかを見れば明白であります。
地震が起きると、
政府は
予知の重大性を強調し始めますが、この十年間、
地震予知関係の予算は、少ないときは五十億円台、最近でも百億円そこそこと、極めて低い水準に抑え込まれてきました。首相、
政府が本気で
震災対策に真剣に取り組むというのなら、予算面でも
震災対策が十分な財政の裏づけをもって進められるよう、編成方針の根本的な転換を図る必要があるのではありませんか。
日本は
世界でも有名な
地震国です。列島の全体が
地震帯に丸ごと含まれている国はほかにありません。その
地震列島で
国民の
安全保障といえば、
国民の生命と財産を
震災から守る仕事以上に大きな任務はないではありませんか。この
対策を最優先の
課題の
一つにする取り組みをしてこそ、今回の大
震災からの教訓を生かしたと言えます。
首相は行政改革を強調しましたが、本来の
出発点を忘れた
国民不在の構想となっていることを指摘せざるを得ません。
国民の
立場に立ては、行政改革とは、
国民には無用の浪費的な部分を大胆に切り捨てて、
日本の
国民と
社会が真に必要としている
課題に行政と財政の力を効率的に集中する、こういう
体制をとるところにあるはずであります。本格的な
震災対策に取り組むためにも、従来からの枠組みに縛られることなく、国政上の浪費的な部分の克服に真剣かつ大胆に取り組むことが肝要であります。
私は、この
立場から、公共事業と安保条約
関係の
二つの問題を検討したいと思います。
第一に公共事業ですが、その
規模は年間四十兆円にも上っており、
政府の対米約束でこれが一層無軌道とも言える拡大傾向にあることを注意しなければなりません。
重要な問題は、この莫大な国費が本当に
日本の
社会が必要としている
課題に投じられているかどうかという問題です。特に、八〇年代以降に各地で巨大とか超大型とか言われる
プロジェクトが財界主導で進められてきました。その
一つである東京湾臨海部の副都心開発計画は、バブルの崩壊とともに収支計画が破綻し、このまま推移すれば巨大な負債が東京都民の肩にかかるという深刻な状態に直面しています。同じような危険は、
大阪湾のベイエリア計画でも表面化しつつあります。
大体、バブルが崩壊したら計画の基盤が失われたということは、それが
社会と
地域の真の要求にこたえたものではなく、ゼネコン本位の計画だったことの何よりの証拠ではありませんか。しかも、これらの計画の多くは臨海部の埋立地帯に計画されており、
震災対策の面からも再検討の必要があります。
首相、
国民を忘れた、事業のための事業という色彩の濃い一連の開発計画を再検討し、不急不要の計画は中止、
凍結の方向に指導すべきではありませんか。そして、公共事業の重点を、
被災地の復旧はもちろんのこと、
国民の生活基盤の確立と防災
都市づくりとに思い切って移すよう、全体の流れを切りかえるべきではありませんか。答弁を求めるものです。
浪費という点でもう
一つ重要なことは、事業価格が全体としてゼネコンの手のひらの上での割高価格になっていることです。
この二年来、ゼネコンのわいろによる大
規模な金権
政治が追及されてきましたが、摘発されたのは氷山の一角で、わいろの全体が途方もない巨額に上ることは容易に推定されることです。そして、重大なことは、このわいろの財源は公共事業費、つまり
国民の税金だということです。これは、巨額のわいろを提供してもまだゼネコンに大もうけが保証されるほど発注価格が割高になっているということでした。しかし、この問題で
政府がとってきた
対策はごく表面的で、
事態の根本的な
解決は回避され、公共事業の割高価格は従来どおりそのまま続いています。
日米比較で
日本の方が三割高だとか、そのことを警告する事例は多数あります。例えば、昨年、群馬県の太田市で市庁舎の建設工事の入札が行われました。八十億円から九十億円台で入札した大手の会社五社が、安過ぎるということで失格しました。当局が事業価格を百四十億円から百五十億円程度に試算していた結果であります。失格した大手の会社がそろって損失覚悟の入札をするとは考えられません。むしろ、行政側の計画自体が、長年のゼネコン流の方式にならされて、いかに割高になっていたかのあらわれと見るべきでしょう。
これは、中央
地方を問わず、全国的に広く指摘されている問題です。ここに根本的なメスを入れれば、少なくとも数兆円という
規模での浪費克服への道か開けるのであります。それこそ
政府の
責任ではありませんか。これを
解決しないまま公共事業の総枠の拡大のみにきゅうきゅうとするのは、
国民にとって無
責任のきわみであります。首相の見解を問うものです。
この状態のもとで、建設業界を初めとする企業献金が続々と再開されました。与党の自民党もその対象となっています。首相はこれをどう考えますか。
次に、自民党の総裁である
河野外相に伺いたい。
あなたは、建設業界の企業献金再開をよいことだと考えますか。また、自民党自身はこれを受けるつもりですか。明確な答弁を求めます。
第二の問題は、安保条約にかかわる浪費であります。
歴代政府は、安保条約とその負担について、ソ連の脅威から
国民の安全を守るという
議論で説明してきました。しかし、ソ連の解体でこの
議論はもう通用し得なくなりました。首相が委員長を務める
社会党の大会では、「共通の敵に対して防衛するという安保条約の任務はその
役割を終えつつある」という認識を決定しました。それなら、安保条約で残るのは、米軍が他国での軍事
行動のために
日本の基地を利用するという極東条項だけということになります。
国民は、今米軍基地の存在のために多大の
被害をこうむっています。米軍は、戦闘爆撃機の離発着訓練を
都市部で強行するとか、
日本各地での超低空飛行の訓練とか、本国では住民への配慮からやらない異常な訓練まで
日本では平気でやっています。あなた方が共通の敵から
日本を防衛する任務は終わりつつあると認識しているのなら、米軍基地の撤去のために
行動するのが
政府の任務ではありませんか。
しかも、この米軍基地には、条約上の義務はないのに、施設建設費から光熱費、従業員の給料まで
日本が払うという
世界に全く例のない思いやり予算を提供しています。ことしの思いやり予算は二千七百十四億円、
地震予知の予算百六億円余りの実に二十五倍であります。
首相、あなたは、米国
政府が「今や米軍の部隊や資材を
日本に置く方が本国に置くより安くつく」と議会に説明し、この手厚い
援助を
日本に居座り続ける最大の根拠の
一つとしていることを御存じでしょうか。米軍基地は
日本にいつまでもいてくれと莫大な予算まで出して
アメリカにお願いするというのが
政府の
立場なのでしょうか。
戦後半
世紀を通じて
日本が他国の軍隊の前線基地になってきたというのは、
歴史に前例のない異常な
事態であります。そのことに胸を痛めず、基地
体制の永久化をよしとする
政治家があるとすれば、それは国の独立・
主権の精神を失ったとの批判を免れることはできません。私は、戦後五十年を迎えた今日、
日本の
主権と平和の
立場から、思いやり予算の打ち切り、さらには米軍基地の撤去を目指す方向に大きく足を踏み出すことを強く主張するものであります。首相の見解を問います。
日本の軍事費は、九五年度四兆七千億円を超え、
アメリカに次いで
世界第二位を記録する紛れもない軍拡予算であります。しかも、その内容が重大です。今、
自衛隊と米軍の間では実戦型の共同演習が日常化しており、昨年は、海ではリムパック、陸と空ではキーンエッジという超大型の演習が行われました。共同の指揮
体制のもとで、
日米両軍が事実上一体となって作戦
行動をとる実戦訓練であります。「
日本を侵略から守る」という看板が失われた今、これは
海外での
日米共同作戦を予定した予行演習にほかならないではありませんか。首相は、
自衛隊の最高指揮官としてこれを当然のことと考えているのですか。
今日の軍拡は、
海外での共同作戦のこうした計画と結びついたものであります。これは、ただの浪費にはとどまりません。まさに
国民の安全を脅かす極めて危険で有害な浪費であります。大幅な軍縮への転換とともに、
日米共同演習の中止を強く求めるものであります。(
拍手)
以上、私は、国政のゆがみに関連した
二つの浪費、
二つの問題点を指摘しました。今回の大
震災は、
日本の
政治のゆがみへの冷厳な点検ともなっています。この
国民的な試練に直面して、それに正面から取り組む構えを確立てきないとしたら、
日本の
政治として失格であります。私は、財界。大企業優先、安保条約優先という
政治のゆがみを正し、
国民に
責任を負える
政治の
体制を確立するために全力を挙げる決意を、
日本共産党を代表して表明するものであります。(
拍手)
最後に、戦後五十年に関連して
質問します。
日本が第二次
世界大戦を引き起こした
三つの侵略
国家の
一つでありながら、その戦争が侵略戦争であったかどうかについて、
政府としての明確な認識も反省もない状態が続いていることは、国際的にも、また
日本自身の多くの戦争
犠牲者に対しても、恥ずべきことであります。首相は、昨年来、侵略的行為を認めているのだからそれでよいといった調子の答弁を繰り返してきましたが、問題は、戦争の性格、その認識と反省にかかわる問題であります。
具体的に伺いたい。
第三九三一年のいわゆる満州事変から一九四五年の戦争
終結まで、
日本は
中国に対して十五年にわたる戦争を行い、
犠牲者一千三百万人にも上る
被害を
中国人民に与えました。首相は、この戦争が
中国への侵略、領土と勢力圏の拡大を
目的とした戦争であったことを認めますか。
第二。
日本は一九四一年十二月に対米英戦争を開始しました。この戦争の
目的が、
中国に対する侵略の継続とともに、広大な南方諸国への侵略の拡大にあったことは、開戦に至る天皇制
政府と軍部の記録からも明らかなことであります。首相は、この戦争が
中国と南方諸国に対する侵略を
目的としていたことを認めますか。
もしこの
二つを認めるのなら、「侵略的行為」などのあいまいな
言葉で言い逃れるのでなく、侵略戦争であったことをきっぱり認めて、それにふさわしい反省の
立場を示すべきであります。
日本共産党は、満州事変の開始の最初のときからあらゆる迫害と
犠牲に抗し侵略戦争に反対してきた政党として、今日の
日本の
憲法の根幹に侵略戦争への反省が刻まれていることを何よりも重く受けとめるものです。
日本の
政府が戦後五十年を迎えてなおこの認識と反省を回避するというのならば、それは
日本が国際
政治で
行動する最低限の前提を失わせるものとなります。
このことを厳しく指摘して、
質問を終わるものであります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣村山富市君
登壇〕