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1995-04-13 第132回国会 衆議院 地方分権に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月十三日(木曜日)     午前九時三十三分開議  出席委員    委員長 笹川  堯君    理事 中馬 弘毅君 理事 野田 聖子君    理事 蓮実  進君 理事 山崎広太郎君    理事 山本  拓君 理事 吉田  治君    理事 畠山健治郎君 理事 田中  甲君       甘利  明君    遠藤 利明君       西田  司君    浜田 靖一君       平林 鴻三君    山口 俊一君       若林 正俊君    青木 宏之君       今井  宏君    岩浅 嘉仁君       佐藤 茂樹君    富田 茂之君       冬柴 鐵三君    赤松 広隆君       網岡  雄君    緒方 克陽君       穀田 恵二君  出席国務大臣         自 治 大 臣 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 山口 鶴男君  出席政府委員         総務庁行政管理         局長      陶山  晧君         自治大臣官房総         務審議官    二橋 正弘君         自治省行政局長 吉田 弘正君         自治省財政局長 遠藤 安彦君  委員外出席者         議     員 冬柴 鐵三君         議     員 増田 敏男君         議     員 今井  宏君         議     員 山崎広太郎君         参  考  人         (地方制度調査         会会長)    宇野  收君         参  考  人         政治改革推進         協議会民間         政治臨調)地         方分権推進委         員会委員長   川島 廣守君         参  考  人         (横浜国立大学         名誉教授)   成田 頼明君         参  考  人         (東京都立大学         法学部教授)  兼子  仁君         地方分権に関す         る特別委員会調         査室長     前川 尚美君     ————————————— 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   富田 茂之君     冬柴 鐵三君   古堅 実吉君     穀田 恵二君 同日  辞任         補欠選任   冬柴 鐵三君     富田 茂之君     ————————————— 四月十一日  地方分権推進に関する法律制定に関する請願(田中秀征君紹介)(第五七四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方分権推進法案内閣提出第六一号)  地方分権推進に関する法律案冬柴鐵三君外三名提出衆法第二号)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 笹川堯

    笹川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方分権推進法案及び冬柴鐵三君外三名提出地方分権推進に関する法律案の両案を一括して議題といたします。  この際、両案審査のため福島県及び滋賀県に委員を派遣いたしましたので、派遣委員からそれぞれ報告を求めます。  第一班、福島県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、野田聖子君、山崎広太郎君、畠山健治郎君、田中甲君、それに私の五名でありましたが、現地参加議員として、穂積良行君及び木幡弘道君が参加されました。  会議は、ウエディング・エルティにおいて開催し、現地地方公共団体の長の方々から、現在本委員会審査中の地方分権推進法案及び地方分権推進に関する法律案の両案について意見を聴取し、これに対して熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、福島県知事佐藤栄佐久君、福島市長吉田修一君、東和町長服部健一君の三名でありました。  簡単にその要旨を御報告申し上げますと、地方分権基本理念に関して、真の豊かさが実感できる国民生活実現のため、中央集権的システムから地域みずからの創意と主体性が最大限に発揮できる分権型社会システム転換する必要があること、地方受け皿能力に関して、地方分権受け皿として十分な実績と能力を有しているものであること、行政役割分担に関して、個性豊かな魅力ある地域社会をつくるため、多様化した住民ニーズを的確に把握し得る行政主体である市町村住民に身近な行政を処理することが必要であること、機関委任事務に関して、これを原則的に廃止し、その権限財源とともに速やかに国から地方に移譲すべきであること、地方分権推進に伴う財源の保障と財源配分あり方に関して、事務に見合う必要十分な財源を措置することが不可欠であり、税源の移譲など基礎的自治体である市町村税源充実強化を図るとともに、国庫補助負担制度の抜本的な見直しに伴い廃止した補助金等相当額一般財源に振りかえる等の措置が必要であること、地方分権推進するための法律案に関して、その早期制定が望まれるものであること等の意見が述べられました。  次いで、各委員から陳述者に対し、両案の相違点に関する見解機関委任事務原則廃止についての見解地方分権が進んだ際の地方議会あり方市町村合併についての見解等多岐にわたる質疑が行われ、滞りなく全部の議事を終了した次第であります。  以上が会議概要でありますが、議事内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、現地開催につきましては、地元関係者を初め多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告といたします。  次に、第二班、中馬弘毅君。
  3. 中馬弘毅

    中馬委員 滋賀県に派遣された委員を代表いたしまして、私からその概要を御報告申し上げます。  派遣委員は、蓮実進君、吉田治君、網岡雄君、古堅実吉君、それに私の五名でありましたが、現地参加議員として川端達夫君が参加されました。  会議は、ロイヤルオークホテルにおいて開催し、現地地方公共団体の長の方々から、現在本委員会審査中の地方分権推進法案及び地方分権推進に関する法律案の両案について意見を聴取し、これに対して熱心な質疑が行われました。  意見陳述者は、滋賀県知事稲葉稔君、大津市長山田豊三郎君、山東町長山本博一君の三名でありました。  簡単にその要旨を御報告申し上げますと、地方分権必要性に関して、今日、一元的、完結的なコーディネートのもとでの総合的な行政施策が必要とされており、自治体権限財源を充実し、主体的に政策を実行する仕組みとしての地方分権推進が求められていること、機関委任事務に関して、その概念を含めて抜本的に見直しを行い、新たな仕組みを構築するなど整理合理化を行うことが必要であること、地方税財源充実確保に関して、個性豊かな町づくりを自立的に進めていくためには、国と地方役割分担に応じて、現行の税源配分見直し自主財源確保のための新たな税体系を構築することが必要であること、地方行政体制の整備に関して、地方時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立するため、自治体もみずからの変革を積極的に進めるとともに、今後の行政改革等の継続した取り組みを進めていくことが必要であること、地方分権推進委員会に関して、その権限内容評価し得るものであるが、委員会の構成には、地方意見を十分反映できるよう一定数の地方関係者を加えるべきであること、地方分権推進するための法律案に関して、五年程度の一つの目安を設けておくことは重要な意義があること、また、法律案早期制定が望まれること等の意見が述べられました。  次いで、各委員から陳述者に対し、地方分権時代に備えての人材の確保能力向上の方策についての考え方機関委任事務廃止についての見解琵琶湖条例制定上の問題点と、それを解決する過程における教訓、市町村合併についての考え方法律を五年間の時限立法とすることの是非等多岐にわたる質疑が行われ、滞りなく全部の議事を終了いたした次第であります。  以上が会議概要でありますが、議事内容速記により記録いたしましたので、詳細はそれによって御承知願いたいと存じます。  なお、現地会議開催につきましては、地元関係者を初め、多数の方々の御協力をいただきました。ここに深く感謝の意を表し、報告といたします。
  4. 笹川堯

    笹川委員長 以上で派遣委員からの報告は終わりました。  お諮りいたします。  ただいま報告のありました第一班及び第二班の現地における会議の記録が後ほどでき次第、本日の会議録に参照掲載することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 笹川堯

    笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は本号(その二)に掲載〕     —————————————
  6. 笹川堯

    笹川委員長 ただいま議題となっております両案審査のため、参考人方々から御意見を聴取いたします。  本日、御出席願っております参考人は、地方制度調査会会長宇野收君、政治改革推進協議会民間政治臨調地方分権推進委員会委員長川島廣守君、横浜国立大学名誉教授成田頼明君及び東京都立大学法学部教授兼子仁君であります。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事順序でございますが、まず、各参考人からそれぞれ十五分程度意見をお述べいただきたいと思います。次に、各委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、宇野参考人お願いをいたします。
  7. 宇野收

    宇野参考人 おはようございます。宇野でございます。  私は、地方制度調査会会長をいたしておりますが、本日はお招きをいただきましたので、若干意見を述べさせていただきます。  まず最初に、今回それぞれの法律案をおまとめいただきました政府・与党の皆様、また新進党皆様方には深く敬意を表したいと思います。  私は、地方制度調査会会長になる前に第三次行革審会長代理を務めておったわけでございますが、一九九三年の十月に出しました最終答申で、地方分権推進に関する基本的な法律制定を目指すべきであるということで、地方分権推進方法を示したわけでございますが、このときには大変な抵抗がございました。答申原案を決定する会議の直前までもめたことがございます。  いずれにいたしましても、その答申が出されまして、これから先は政府部内での合意の形成がなければ進まないとの総務庁の判断から、まず大綱方針をつくるのに一年程度かけて、それがまとまりましたらば法律制定にかかるという手順ができたわけでございますが、こういうことは大変順序としていい方針を立てていただいたと思っております。  そこで、この間に独立しました地方分権推進委員会設置法律案早期提出という重要ポイントについて、総理がリーダーシップを発揮をしていただいたということについても、私ども答申提出した立場で高く評価をいたしておる次第でございます。このたび、そうした意味大綱方針より一歩踏み込んだ法案政府から提出されたということと、また、この法案に対して対案も出されてこのような形で審議されるということは、大変私にとりましては感慨無量でございます。  そこで、私はただいまから、基本的な考え方と、それからその考え方に基づきまして、法案の中の問題点ということについて私の考え方陳述させていただきたいと思います。  まず、基本的な考え方でございますが、政府案新進党案については、いずれもこれは私は高く評価をいたしております。つまり、強力な権限のある委員会を新たに設置して、その委員会が行う具体的な指針の勧告に基づいて政府推進計画を作成、実行していくという地方分権推進方法がどちらも同じであるということでございます。地方分権基本理念基本方針等についても方向が一致しておるわけでございます。この点につきましては地方制度調査会の方の答申ポイントにいたしておりましたので、そうした考え方を御採用いただいたものというふうに私ども感謝をいたしておる次第でございます。  そこで、現在最も重要な問題は、地方分権推進のための筋道をきちっとつけることであるというふうに考えます。したがって、そういう意味から、一刻も早く法案成立させて、地方分権推進委員会を今国会中に発足させていただきたい、これがまた一番大事なことであるというふうに考えます。したがいまして、多少乱暴な言い方でございますけれども政府案であっても、新進党案であっても、どちらでも通していただければ結構であるというような考え方もあろうかと思います。最も悪いことは、二つの案が共倒れになって通らないということでございますので、その点しかとお願い申し上げたいと思います。  そこで、基本的な考え方はそのようなことでございますが、あと、個別の問題について私ども意識の中にある問題を多少触れさせていただきたいと思いますが、第一の問題は、先生方が御審議いただいております国の役割限定の問題でございます。  国の役割地方役割分担については、法文上はどう規定するかという点については、法技術的なこともあり意見を申し上げるのは大変難しいと思いますけれども、第三次行革審答申地方制度調査会答申にも示されております基本的な線に沿って、国の役割限定すべきであるというふうに私は考えます。  なお、地方制度調査会答申では、国の役割を考える場合には、全国的な統一性や規模、視点が過度に強調されることは適当でないということを述べております。この辺については、今後の地方分権推進委員会での検討、またはそれを受けた各分野での法律改正時に当たってぜひ御考慮をいただきたいというふうに考える次第でございます。  以上が国の役割の制限の問題についての考え方でございます。  第二点目の問題は、機関委任事務制度についてでございますが、地方制度調査会答申したとおり、機関委任という概念は改めるべきであるというふうに考えます。しかしながら、国の事務と考えられているものであっても地方公共団体が執行することが適当な事務がございますが、こういうものについて、機関委任という概念にかわる新しい仕組みをどうするかということについて、地方制度調査会でも十分論議できなかったわけでございます。  したがって、機関委任事務制度については地方分権推進委員会で大いに議論をしていただきたいというふうに考えます。その際は当然、機関委任という概念廃止、あるいは国政選挙などごくわずかな事務限定するという実質的な廃止方向論議されることになるだろうというふうに私は予測をいたしております。  次の第三番目の問題は、時限法の問題でございます。  この五年間で地方分権の具体的な成果を上げるということは、私が地方制度調査会で強く主張いたしました。地方分権推進に当たっては、一定の期限を設定して計画的かつ集中的に取り組むことが必要でございまして、来るべき二十一世紀までの五年間に地方分権をなし遂げるという決意で臨むことが必要であるというふうに考えます。したがって、今回の法律時限立法がよいかというふうに私は思うわけでありますが、あるいは、五年後にすべての改革が終わらないで、引き続き何らかの推進法的なものが必要となるかもしれません。  しかし、万一そういうふうになった場合には、その段階までの改革を踏まえて、より強力で、かつ地方自治を拡大した法律なり制度なりができるものと私は考えておりますので、やはり五年間の時限というものを大切にしたい、大変卑俗な言葉でございますが、試験の前の一夜漬けではありませんけれども、この五年間が非常に大事だという意味で五年を主張いたしましたので、その点も御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。  以上、問題点として意識を持っております三点、国の役割限定機関委任事務制度あり方時限法考え方ということを申し上げたところでございます。  最後に、地方分権法制定という方針は、一昨年の六月の衆参両院における満場一致の決議から出発をしていることを思い起こしていただきまして、今は法律を通すことが最も重要であるということを重ねてお願い申し上げたいと思います。  さらに、今後、地方分権が大きな成果を上げるためには、できれば今回も与野党がこぞって賛成いただける形で成立を図っていただきたいというふうに念願をいたしまして、私の陳述を終わります。  ありがとうございました。
  8. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  次に、川島参考人お願いをいたします。
  9. 川島廣守

    川島参考人 川島でございます。  本日は、地方分権に関する特別委員会にお招きをいただきまして所見を述べる機会を与えていただきまして、心から厚く感謝を申し上げている次第でございます。  さらに、本委員会のこれまでの審議内容につきまして議事録を通読させていただきました。諸先生方の党派を超えての連帯感による大変に御熱心な御討議内容をつぶさに承知することができまして、この御努力に対してまず最初に心から敬意を申し上げたいと存ずる次第でございます。  御承知のとおり、私ども政治改革推進協議会は、俗に民間政治臨調と申しておるわけでございますけれども平成四年の四月に発足いたしまして丸三年間、政治行政改革推進に向けまして精力的な国民運動を展開して今日に至っておるものでございます。殊に地方分権推進に関しましては、発足の当初から、選挙制度あるいは国会制度と並んで改革の最重要課題と位置づけまして検討を続けてまいったわけであります。  その最初に、平成四年の十二月に、これまた諸先生案内のとおりでございますけれども地方分権に関します緊急提言を世に問うたわけであります。「今なぜ分権革命が必要であるか」という表題でございますが、大きな反響を呼びましたことはこれまた御案内のとおりでございます。次いで本年二月、地方分権基本法制定に関します緊急提言を世に問うたわけでございます。  そこで、本日は限られた時間ではございますけれども国会におきます地方分権推進法審議に関しまして、これまで私ども提言をしてまいりました内容を土台といたしまして、三点について意見を申し述べさせていただきたいと思うわけであります。  まずその第一は、今なぜ地方分権が必要なのかというその根本理由についてでございます。その第二は、さきに成立を見ました小選挙比例代表並立制選挙制度選挙法改正との関連についてであります。そしてその第三に、今回御審議をいただいております推進法内容についての所見を申し述べて話を終わらせていただく、かような順序で申し上げたいと思うわけであります。  まず、その第一でございますが、今地方分権が求められておるこの根本理由は、私どもは、あくまでも国の存亡にかかわる問題である、かような認識を持っておるわけであります。  強調するまでもございませんが、現在日本の国力は世界のGNPの一五%にも及ぶ経済大国になり、いわゆる国の近代化あるいは社会成熟化はおおむね達成されたわけでございます。その根本になりましたのは、これまでの明治以来の集権構造中央集権的な構造政治行政体制がそれを可能にならしめたわけでございますけれども、成熟したこの近代化が達せられた今日では、その集権構造そのものが大きな桎梏になって立ちあらわれておる。大きな歴史の転換期に立ち至っております今日、この集権構造に大胆にメスを入れて新しい地方分権構造転換を図らなければ、国際社会に対する対応能力というものは高まってこない、かように考えるわけであります。  したがって、今御審議いただいておりますこの地方分権こそ、まさに国の国際社会に対する対応能力を高める唯一の手段である、かように認識をいたしておるのでございます。その意味で、私どもは、明治維新、新憲法体制に次いで、第三の開国、第三の維新である、かような認識のもとに問題の検討を進めてまいっておる次第でございます。  大変生意気な表現になってお許しをいただきますが、私は、言葉を変えて申し上げさせていただきますならば、今まさに国民国家としての尊厳と、国際社会における名誉ある地位を保持し得るかどうかの重大な岐路に日本の国は立っておるのではないだろうかと考えるわけであります。  政治を見ましても、経済を見ましても、社会の現状を見ましても、まさに時代閉塞状況にある。これを打破する唯一の道がまさに地方分権への構造転換である、かように認識をするわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、あくまでも、与えられるというものではなくて、地方自治体そのものがみずからの力と情熱を持って闘い取るべき筋合いのものである、かように考えるものでございます。  一昨年の国会における、衆参両院における地方分権に関する決議、これまた憲政史上初のものであり、今回御審議をいただいておりますこの推進法案もまた我が憲政史上初めての内容であろう、かように高く評価をし、これまた深く敬意を表する次第でございます。  ただ、ここで思いますことに、先生方の大変御熱心な御討議とはいささか乖離がございますのは、地方自治体側におけるその熱意の低さに、あるいは意識の低さを気遣うものであります。  昨年十二月、地方自治経営学会が行われました地方分権のアンケートによりますれば、現在、地方自治体日常業務の中で地方分権必要性を感ずるというものは、ほとんどが感じないわけでございまして、決して必要なものとは考えていないというのが、残念ながら六二・五パーセントという数字になっておるわけであります。このことをだれよりも案ずるわけでございまして、少なくともこの分権成果を生みますためには、地方自治体並びに地方住民地方分権に対する飽くことなき渇望あるいは情熱、そういうものがなければどうにもならないのではないかということを心から案ずる次第でございます。  次に、第二に申し上げます小選挙比例代表並立制との関係でございますが、この新しい選挙制度政策本位政党本位政治実現という本来の目的を果たし得るためには、地方分権推進をして、これまでの国の関与、いわゆる規制行政というものの根を断ち切ることが何より必要である、かように考えるわけであります。過去のこの国会におきます政治改革論議におきましても再三指摘されたところでございまするし、私どももかねて主張してきたところでございます。  今の国と地方との関係が、このままの関係が定着したままでありますならば、中央地方との橋渡し役を一人の国会議員がすべてこれを背負わなければならない、かようなことになるわけでございまして、選挙制度改革論議には、その当初から、地方分権推進ということを初めから射程の中に入れて論議をしてまいったことは、先生方篤と御案内のとおりでございまして、政治改革を進めてまいります者の責務として何よりも肝要なことであろう、かように考えるわけであります。  次に、第三番目の、目下審議されております地方分権推進法案内容についてでございますが、今回の法律は、今後の分権推進をしてまいりますかなめとなる基本法でございますだけに、これが単なる宣言法あるいは推進委員会設置法に終わるということがあってはなるまいと思うのであります。したがいまして、いろいろ御審議の中で、篤と拝聴をいたしておりまするけれども改革方向を明確かつ具体的に打ち出していただくことを強く期待をするものであります。  以下、簡潔に幾つかの点について申し上げさせていただきます。  まず、私どもは、国から地方への権限移譲の基本的な方針につきましては、いわゆる機関委任事務、補助金、地方事務制度、国の関与、必置規制等につきましては、これを原則として廃止をする。さらにまた、国と地方の税財源の再配分につきましても、国と地方の責任の所在と経費の負担を一致させることが原則と考えまするので、この際、国と地方税源配分見直して、地方の自主財源を充実させることを明記していただきたいと思います。  また、計画期間を五カ年とする問題についてでございますが、これは、ただ単に五カ年の計画だけではなくて、各年次ごとの具体的な計画の策定についてもお触れいただければありがたいと存ずるものでございます。  さらにもう一つ、この推進計画の作成と実施につきまして、これを単に推進委員会及び政府に任せるというのではなくて、国会としてどのような役割を果たすことができるか、あるいは果たすべきかを、その仕組みについて十分なる御審議お願いいたしたいと存じます。  さらに、地方分権推進委員会あり方についてでございますが、政府案新進党案ともに、大変に御苦労なされました、御苦心なされた内容と考えるわけでございますが、私どもといたしましては、この推進委員会に期待されておる役割を全ういたしますためには、推進計画に伴います諸法令の改正ないしは新しい立法の場合に、この委員会審査権をあわせてお考え願いたい、かように思うのであります。  そして、この法案検討してまいりますと、この法律の意図するところのすべては、この推進委員会の活動の成否にかかっておるわけでございます。したがって、第十条にあります総理大臣に勧告する具体的指針をつくること、これこそまさにこの委員会の、この先生方の、本委員会におかれましても先生方が大変に熱心に御討議をいただきました経緯を拝聴しておりまするけれども推進委員会が骨太な指針をつくりますためにこれからどれほどの難儀に遭わなければならないか。言いかえますれば、まさに歴史的な大事業をこの委員会が背負うわけでございます。  したがって、この法案成立しました後、国会先生方におかれましては、相当な決意でこの推進委員会を支援をするという重大なるお覚悟をお願いを申し上げたいのであります。  さらにまた、国民各界の絶大な御支援、中でも地方自治体側が極めて具体的でかつ何物にも恐れない勇気と情熱を持ってこの問題に取り組むというような姿勢と気慨がなければ、この推進委員会の活動の成否はかなわないであろう、かように思うのであります。  私は個人的には、少なくとも、地方自治体側としては、みずからの創意、町の伝統と文化を踏まえた上で創意ある町づくり、そういうことを何より考えるわけでございまして、都市計画、建築規制あるいは農地等の土地利用等につきましての国の関与を廃止しまして、極めて独自の町づくりができまするよう、下水道あるいは公園その他公共施設については地方自治体の意思に基づいてできまするよう、そのような情熱を持ってこの問題に対処していただきたい、かように考えるものでございます。  最後になりましたけれども、この法律を五カ年間で失効させることについてでございますが、この委員会で、先生方の御議論の中で、山口総務庁長官は五年の前半でまことなる、確実なる成果を上げるというふうに確信を申し述べておられましたので、そのことにぜひ期待をいたすものでございますが、我々といたしましては、国民の中にも、五年で果たしてこの歴史的な大事業ができるであろうかということについて相当懸念の声がありますことにつきましても十分御審議をいただきたい、かように考えるわけであります。  最後になりましたが、本委員会については、冒頭述べましたように、与野党の党派を超えて、大変に見事な連帯意識を持って立派な法律をつくるべく御審議をいただいております先生方のお姿と御努力について心から深い敬意を表して、私の意見の開陳を終わらせていただきます。  大変ありがとうございました。
  10. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  次に、成田参考人お願いをいたします。
  11. 成田頼明

    成田参考人 ただいま御紹介を賜りました成田でございます。  本日は、当特別委員会参考人としてお招きいただき、地方分権推進法案及び地方分権推進に関する法律案につきまして意見を申し述べる機会を与えてくださいましたことを大変うれしく存じます。かつまた、光栄に存ずる次第でございます。  第三次行革審最終答申以来、先ほどの宇野会長とともにいろいろ検討してまいりました。特に、地方六団体での検討、それから第二十四次地方制度調査会での検討、さらにその後、全国市長会及び町村会、東京都等におきまして、昨年六月以来現在に至るまで私がかかわってまいりました地方分権推進大綱が今こういう形で法案にまとめられ、審議をいただく段階にまで参りましたことを大変感慨無量に存ずる次第でございます。ぜひこれは可決いただきまして、できるだけ早期にこれを実施していただきたいということを切に望んでいる次第でございます。  今回のこの二法案は、全体としては、法文の表現方法等につきましてはいろいろ違った御意見もあろうかというふうに存じますが、大筋では私どもがこれまで検討してまいりましたフレームに大体沿ったものであるということでありまして、特にとりたてて異論を差し挟む余地はないというふうに考えております。  戦後五十年以上主張されながらもこれまで実現されなかった数々の宿命的な課題につきまして、こういった難問の解決に大きな方向が国の基本政策として示されるということは、まことに結構なことであろうかというふうに存じております。私は、この法案は歴史的で画期的な意義を持つものであるということでは評価申し上げたいというふうに思っておる次第でございます。これは一昨年六月の、日本憲政史上初めてと言われます衆参両院の全会一致による分権決議というものが今日その大きな原動力になっているということであったかと思われます。  本日は、この二つの法案相違点を中心としてお話をしたいということでかねがね考えてまいったわけでございますけれども、昨日新聞で、この法案が一本化された、そういう調整ができたという記事がございましたので、もう申し上げることはないというのでいささかがっかりして本日出てまいったわけでありますけれども、それにいたしましても、論点を以下五点に絞ってお話を申し上げたいというふうに思います。  第一に、地方分権意味内容というものでございますけれども、これまで地方分権の大合唱というのが沸き起こってまいりました。これでもう数年になるかと存じます。ただ、具体的な内容が余りはっきりしないままにいろいろと次元の違った話がかなり一緒くたになって議論されてきたのではないかというふうに存じます。  私は、地方分権意味内容については三つの異なった考え方といいますか局面があるのではないかというふうに整理をいたしております。  地方分権の第一の意味は、地方公共団体の自主性、自立性というものを確立するために、国からの権限の移譲あるいは財源の移譲、あるいは地方事務制度廃止、出先機関の廃止、補助金の合理化、こういったことを求めると同時に、いまだ根強く残っております国からの監督、介入というものを断ち切るという問題でございます。これは、地方自治体が団体として自立をするということからの分権であります。  それから第二には、現在の地方公共団体の区域、規模というものが現実の生活圏や経済圏の広がりから非常に遊離している、そこで、市町村も都道府県も抜本的に再編整理すべきである、そういう観点からの受け皿分権論というものがあるわけでございます。一時はこの受け皿分権論が非常に盛んであったわけでありますけれども、この議論はさらに発展いたしまして、地方分権というレベルを超えて、連邦制、道州制等々国家構成そのものの再編成にまで議論が発展をしていっている、こういうふうな感じがいたします。  それから第三は、これは生活者重視あるいは住民重視という立場から、また地域における草の根の民主主義というものを拡大するという立場から、住民本位の地方政治やあるいは地方政策というものを確立すべきである、こういう立場の地方分権であります。  私は、今回の分権推進は、今申しました第一の視点に重点が置かれるべきであるというふうに思っております。これを通して、これを実現する過程で、今申しました住民本位の第三の分権というものを実現していくということが肝要であるというふうに思っているわけでございます。  第二の視点、受け皿として地方公共団体を再編成するという問題は、現在の時点では率直に申しまして非常に実現が難しい。私見では、それによって得られるメリットよりも、むしろかかるコストやデメリットの方が大きいのではないかというふうに思いますので、当分は現状の姿を前提にして権限財源の移譲あるいは国の関与、監督の是正というものをする方が現実的であろうというふうに思っております。  住民自治や地域民主主義の発展というものは、その改革が進む中で地方自治体住民というものがそれぞれに自主的に考えていくべき問題であって、国が法律でそれを押しつけるというふうな問題ではなかろうというふうに思っております。  それから、第二の大きな問題といたしましては、機関委任事務の存廃や国の出先機関の統合、廃止ということでございますけれども、これにつきましては今までお二方から御意見ございましたけれども、私も究極的には、前から機関委任事務制度あるいは概念というものは廃止した方がよろしいというふうに考え、そういう主張をしてまいりました。  しかし、これを廃止した場合に、それでは国が出先機関を設けてそこに仕事を吸い上げるということがあっても困りますし、それからまた、旅券の発給のように国が数少ない出先で処理するということになりますと、住民の生活から見てかえって不便になるというふうなこともあるだろうと思われます。  それからさらに、国の事務でありましても地方公共団体が担当して処理した方が妥当であると思われるものもございますので、やはり機関委任事務廃止する場合には、これにかわる方式、処理方式をどうするかということを考えていかなければなりません。これについては時間がございませんので、後に御質問があればまたお答えしたいと存じますけれども、私は私なりにこういった問題を考えてはおります。したがいまして、この問題は、国と地方の間の事務運営に関する制度的な検討というものをもう一段深めて議論をしなければならない、そういう中で解決すべきものであるというふうに考えております。  それから、国の地方出先機関につきましても、やはり残さなければならないものと廃止、統合すべきものとを振り分けるという必要があると思います。この議論にはまだ入っておりません。それから、残るものにつきましては、管轄区域の統一化というふうな問題等の検討もやはりする必要があるというふうに思われます。  それから、地方事務制度につきまして、私はこれは前からやめるべきだと思っておるわけでして、労働基準につきましても年金事務等につきましても、国が準則さえ示してくれれば地方公共団体が十分に執行できるという体制にあるのではないかというふうに考えます。  それから第三に、移譲されるべき権限の中身につきましては、これはまさにこれからつくられる予定であります地方分権推進計画で処理される問題であるかというふうに思いますけれども、先ほど川島参考人からも御意見ございましたように、土地利用、町づくり、それから福祉、特に福祉のサービス、そういうところに重点を置くべきものであるというふうに思われます。  地方公共団体がこれから独自の地域政策というものを行うということは必要になってまいりますけれども、そのためには、特に大都市周辺等につきましてはやはり運輸、通信、情報、こういう関係権限の移譲も必要であるというふうに思うわけでして、今までの議論では運輸省、郵政省の権限についてはほとんど触れられておりませんけれども、これは私は、やはり重点的に考えていくべき必要があるのではないかというふうに思っております。  それから、教育につきましても、中央からの強い指示はやめて、地方の総合行政の一環として教育、文化というものを位置づけるというふうな方向で物を考えていくべきではないかというふうに思います。  ただ、権限の移譲に伴って非常に大きな問題は、人材の確保をどうするかという問題でございまして、現に福祉の問題等でもかなり人材の確保には苦労しております。これについては、都道府県などが人材の派遣等について考慮をするとか、あるいは国が若干てこ入れをする、訓練をするというふうな対応が必要であろうかというふうに思われます。  それから、第四としましては、都道府県と市町村関係でございますけれども、これにつきましては、同じ地方公共団体としてお互いに協調し、協力し合って分権推進し、分権の主体になるべきであるというふうに思っておりますが、ただ今日、市町村と一口に申しましても、内容を見ますと非常に多様化しております。  例えば、市を例にとりましても、横浜市のような三百数十万の市もございますし、既に人口一万を切っている市もあるわけでございます。町村に至っては人口三百というふうなものもありますし、あるいは村でも人口二万を超える東海村のようなところもあるわけでございます。非常に多様化しております。しかも、行政内容住民のニーズも、やはり地域によってさまざまでございます。  そこで、私は、府県と市町村の問題というのは未検討の問題でございますけれども、やはり意欲と力のある市には思い切ってその要望に応じた仕事を県から移譲していく、もちろん国からということも含まれますけれども、仕事を移譲する。それから、それにたえない弱小町村につきましては、むしろ都道府県や中心都市が肩がわりをする。事務的に仕事を押しつけるということではなくて、逆に府県の方に仕事を吸い上げるというふうなことも考えてもいいんではないか。つまり、一律の事務配分ではなくて、傾斜的な事務配分というものを行うような仕組みを考えていくべきであろうというふうに思っております。  そういった意味でも、都道府県にまず優先的に事務を移譲する、その後で、各市町村の要望に応じて、意欲のあるところにはなるべく多くの仕事を与えていくというふうにすべきだろうと思うんですけれども、都道府県と市町村とは対等の協力し合う関係であるといいましても、実際、市町村の立場から見ますと、都道府県の市町村に対する関係というのは、国が地方自治体に対する関係と全く同じであるというふうに見ている面がございますので、そういった意識はやはりなるべく払拭をして、本当に対等の立場で分権の担い手となるべきであろうというふうに思うわけであります。  それから第五に、地方税財源充実確保というのは、非常にこれは大事なことでありまして、権限だけ来ても財源が来ないということであれば、これは絵にかいたもちになるわけであります。これを充実確保するにはどうしたらいいかということでありますけれども、これは国の税財政制度との調整の問題がございまして、これは事務権限の移譲以上に難しい問題ではないかというふうに思われます。  これにつきましては、今までいろいろな答申、提案、今度の法案等拝見いたしましても、具体策が余り書き込まれておりません。これはやむを得ないと思うんですけれども、これにつきましては、やはり一つの考えとしましては、常設的な「政府自治体調整会議」というふうなものを設けまして、そこで知事や市町村長の代表と国の大臣とが協議をしながら、地方交付税制度あり方を考えるとか、あるいは中長期的な財政計画をつくるとかいう中で、やはり話し合いをして解決していくべきではないかというふうに思うわけであります。  この分権推進法は、やはり分権化の第一の幕あけであり、本当の分権化というのはこれから始まるということになりますけれども、何分ここに含まれている課題というのは非常に膨大でございまして、これは五年間という短期にやっていかなきゃならないということでございますけれども、非常にこれは、ある意味ではマッカーサーの時代に戦前の地方制度根本的に改めたと同じ程度の仕事の量が必要なのではないか。ですから、引き続き、これは分権推進法を補う意味でのいろいろな法律をこれからどんどん立法府としてこなしていただきたいというふうに思っております。  さらに、分権推進の問題は、やはり住民の目から見ますと、役所同士の中、コップの中の権限の争いであるというふうに見る向きがございます。下手をするとこれは自分らの負担だけがふえるんじゃないか、税金が高くなるんじゃないか、こういう危惧があるわけですので、やはり住民の立場に立って、どういう形の権限なり財源なりのおろし方をすれば一番住民にわかりやすく、住民生活に役立つか、こういうことをもう少し住民の立場から詰めて、これは地方公共団体が考えるべき問題かと思うんですけれども、やはり住民の理解と支援というものを求めなければ本当の意味分権というのは進まないんじゃないかというふうに思うのであります。こういう制度づくりとは別に、そういう住民意識の涵養あるいは住民の理解というものを高めるために、もう少し多方面の努力をすべきではないかというふうに思っております。  時間が参りましたので、非常に雑駁な意見でございますけれども、これをもちまして私の陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  12. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  次に、兼子参考人お願いをいたします。
  13. 兼子仁

    兼子参考人 東京都立大学法学部の兼子でございます。  東京都も一自治体でございまして、その設置する公立大学の法学部で行政法を専攻しておりますので、地方自治法制をとりわけ重視して研究してまいりました。そこで、本日この地方分権に関する特別委員会にお招きくださいまして、大変感謝を申し上げております。  まず、結論から最初に申しますと、今回の両法案に共通の内容につきまして大賛成でございます。こうした分権推進法が今回確実に成立することが肝要であると考えております。  以下、大別しまして三点申し上げます。  第一に、分権推進法というものの法的意義でございますが、本来、自治省が地方自治確保推進する国の役所のはずでございますが、分権推進法は、自治省所管の地方自治法などとも異なりまして、実質上内閣の直属的法律として全省庁を実効的に規律していける一般法律であるという点に特別な意義があると存じます。元来、地方分権の抜本的で実効ある推進につきましては、自治省対他の十一省という中での取り組みでは至難であると見られまして、この際、国会をバックに、内閣直接の取り組みが不可欠であると考えられるのであります。今回の五年時限立法ないし五年めどの定めということも、今の世紀中に集中的に分権の実を上げる方策として適当でありましょう。  第二に、地方分権推進委員会の法的評価でございまして、これも私は両法案に賛成でございます。  地方六団体が求められておりますような独立の行政委員会ではなく、総理府内の審議会の一種と法案では予定されておりますが、総理大臣の直下で分権推進計画づくりやその実施状況の調査、監視を行い、その勧告が総理大臣により尊重されるという第三者的な参与機関でございますから、問題は、その推進委員会の活動として、推進計画がつくられていくその内容及びその実施方にかかっていると存じます。なお、委員会事務局の人的編成も、当然重要と考えられます。  さて、第三は、地方分権推進計画の内容についてでございます。こうした計画は、実効ある分権推進のために不可欠の制度と存じます。  若干、計画内容関連の課題を五つ申し上げます。  まずその一は、先ほど来お話が出ておりました、国の機関委任事務廃止かあるいは抜本的縮小かという点でございますが、確かに国の機関委任事務というものは、憲法で言う地方自治の本旨に本質的には沿いがたい制度でございます。そこで、今回の議員提出法案地方制度調査会答申機関委任事務廃止が唱えられているようでございます。  しかしながら、機関委任事務を一般に認めております地方自治法の規定の廃止だけでは立ち行かないのでございまして、各省庁所管法律上の機関委任事務規定を全部改正しない限り全廃にはならない道理でございます。つまり、機関委任事務はそれぞれ個別に法律の根拠を持っておりますから。そうなりますと、推進法の上で廃止と書きましても、それは立法方針、計画方針意味合いにほかなりません。肝要なのは、推進計画の実施上で関係法律上の機関委任事務を本当に、実際にどれだけなくせるのかにかかっていると存じます。  政府法案の方の五条で権限委譲の推進と定められておりますが、これも、国の事務を自治事務にするという面でどれだけの実効性を発揮できるのかが問題でございましょう。これまでの機関委任事務整理法のレベルでは足りないのは当然でございます。  二つ目、国と地方自治体との役割分担事務配分原則の定めについてでございますが、本来国が果たすべき役割住民に身近な行政自治体処理という原則規定は、これは有意義でございましょう。ただし、政府法案の四条に見えております全国的な視点に立つ施策、事業、これを国の事務とするという場合には、国家事務と自治事務の中間領域の取り扱いが大いに問題になりましょう。そこで、その大幅な自治事務化の実を上げ得るようでなくてはならないと存じます。  福祉行政は既に大いに自治事務化が進んでまいりましたが、先ほど来もお話がありましたように、そして地方六団体が強く求めておられるような都市計画決定の府県事務化あるいは建築確認の市町村事務化といった大きな問題にどれだけの実績が上がるかも、私は注目させていただいております。  三つ目、地方自治体の税財政自主権の確立の問題でございますが、両法案とも地方税財源充実確保と国庫補助金等の整理を挙げております。税源再配分の税制改革、これは本来税制調査会の方の所管であろうかと思いますが、この問題にどれだけ切り込めるかが問題の根幹でありましょう。私は、その至難さにかんがみまして、先般地方消費税が創設されまして、これは地方税であるけれども国の役所が徴収するというこの方式もこの際評価しながら、税制改革にお取り組みいただきたいと考えます。  それから、自治体の自主一般財源の充実がもとより肝要でございますが、当面は、地方自治をサポートするため法律上の義務であるはずの国庫負担金制度につきましては、補助金とは区別する考え方が重要であるように存じます。つまり、これまで国庫負担金は法律に基づく国の負担義務の制度であるわけですが、その義務履行の手続が、御存じのとおり、補助金等適正化法によりまして奨励的補助金と同じ交付手続になってしまっているわけでございますね。そうではなく、義務的な国庫負担制度はそれとして、国の負担義務履行の法制にしていっていただくということがむしろ当面は重要なのではないかと考える次第でございます。  四つ目、地方分権受け皿としての地方自治体制度あり方でございますが、これは両法案には定めがございませんけれども推進計画関連の事柄として先ほど成田参考人も話されたところでございます。そして昨年の地方自治改正によります広域連合や中核市の制度、これらの役割もさりながらでございますが、私はやはり、現行の都道府県、市区町村は、特にこの二十年ほどの間に、各地域でその需要にこたえる責任行政主体として成長してきていると見られますので、個別合併の余地はもちろんございますけれども、現行のこの二層制の地方自治体への分権が実効的に行われることが望ましい、それこそが戦後日本地方自治、ほぼ五十年の歴史の上に立つ実のある地方分権推進になるのではなかろうかということでございます。  最後に五つ目、分権に伴う住民自治の強化策の必要でございまして、これは両法案たまたま七条で、地方公共団体行政体制として住民参加の拡充が書かれております。確かに地方分権は、住民自治につながってこそ真の地方自治の本旨の実現になるはずであります。  ここでちなみに私は、特に現行地方自治法の都道府県の直接請求の中で、リコール等の場合に法定署名数が有権者住民の三分の一以上となっておりまして、これが現実離れしてしまっているようでございます。六分の一ぐらいに、この際地方自治法の改正をお考えいただく必要があるのではないか。  それから、これが終わりでございますが、先般二月二十八日の最高裁判決によりまして、定住外国人の地方参政権、自治体選挙権の立法的付与の可能性が判示されたところでございますが、これもこの際、住民自治的な地方分権推進にかかわる課題であるというふうに存じます。  ありがとうございました。
  14. 笹川堯

    笹川委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  15. 笹川堯

    笹川委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田聖子君。
  16. 野田聖子

    野田(聖)委員 おはようございます。自由民主党の野田聖子でございます。  本日は、参考人皆様、お忙しいところお出かけいただきまして、また、大変有意義なお話を賜りまして、まことにありがとうございます。私、二点ばかりお尋ねというか御意見をお聞かせいただきたくお願い申し上げます。  まず第一点ですが、衆法、閣法ともども意見が一致している点は、地方分権推進委員会設置、また、この推進委員会というのはかなり権限のあるもので、これが軸となって、核となってこの五年のうちに具体的な成果を上げるというかなり権限が大きいもので、これに関しましては、各参考人皆様方のお話の中にも、宇野参考人権限なり委員会設置は喜ばしい、また川島参考人委員会あり方がこの活動精神にかかっている、兼子参考人からも同様の御意見を承りました。  私自身、この政府案の方の第四章「地方分権推進委員会」、ここに出ているわけなんですけれども、これは法律案だからこういう書き方が適当なのかなと思うのですけれども、非常に具体性を欠くなという表現の中に、第十三条、「委員は、優れた識見を有する者のうちから、」ということがございます。  今お話の中に、具体的にいろいろやってほしいと、この法律の中に具体的にその方向性を示してほしいというのですが、機関委任事務の問題にしても地方事務制度の問題にしても、今後の取り扱いを託すその委員の条件というか要件に関しては、非常にあいまいもこというか、まあ、なるほどなというのですけれども、私がここでお尋ねしたいのは、これは衆法も閣法も同じような表現の仕方をしております。ただ、これではいま一つわかりづらいし、私の県の岐阜県の知事さんからは、要望として、この委員にはそういう地方団体、地方の代表者を必ず入れてほしいという、明記のリクエストがございました。  そこで各参考人にお尋ねしたいのは、皆様方の頭の中で、具体的にどういう人がこの委員会に入っていればこの推進委員会が活発に、そして、五年の時限立法のうちに具体的な成果を上げられることができるかどうかというアドバイスをいただきたい。これはまた、総理が聞いていただければ、いい人材がそろって、なおかつ有効な推進計画ができ上がってくるのではないかと思うので、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 宇野收

    宇野参考人 ただいま野田先生からお話ございました。全く私、同意見でございます。  それで、特にこの地方分権委員会ということになりますと、委員の中に地方在住者にも入っていただくというのが絶対条件だと私は考えております。大体いいまして、こうした委員会制度ができますときは、いわゆる学界あるいは経済界ということも出ますけれども、官界のOBの方が出られるという構成になっております。今回、またそういう構成はある程度やむを得ないと思いますけれども、その場合の経済界あるいは学界という場合に、地方の在住者というものをぜひ加えていただきたいというふうに私は考えております。  具体的には、私案がありますけれども、これはきょう申すわけではございませんが、これはぜひ今先生御指摘のとおり私はお願いを申し上げたいというふうに考えます。
  18. 川島廣守

    川島参考人 ただいま野田先生のお尋ねでございますが、私の体験を踏まえてお答えをさせていただきますけれども、七名という限られた人員の委員先生方でございますから、いずれにいたしましても、この委員会で、率直に申して、地方中央とのいわば綱引きがそこで行われるわけでございますね、具体的指針を作成するわけですから。今まで五十年間にわたって地方は、ただ、先ほど申しましたように地方が熱意がないということははっきり申し上げていいのだろうと思うのですけれども、いずれにしましてもこの委員会で勝負が決まるわけですから、これは大変な、この委員会は歴史的な大事業を背負い込むわけでございますので、今のお尋ねに率直に申し上げますれば、ともかく地方自治に深い体験と御見識を持たれる方がまず何より第一に必要でありますことは、もう申すまでもございません。  ただ、しかし、地方分権推進派の方々だけでこの委員会が構成されますれば、在来のいろいろな審議会の実績等を見ましても、なかなか成果は上げ得ないのではないか。これは、事務局の方も強力な事務局でございませんと当然できないわけでございますので、その辺は、いわゆる国会の同意人事でございますから、先生方の御判断が適正な御判断で、七名という限られた委員の選考でございますから、これは重ねて申しますけれども、この人選こそがまさにこの委員会の生死を決めるのだろう、こう思います。
  19. 成田頼明

    成田参考人 一般的に申しまして、こういった委員会の適格者がだれかということについての規定は大体一定の書き方がありまして、大体今の法律の書き方になるのではないかと思うのです。今の御意見にございましたように、全体七人でございまして、どういう割り振りをするかということは非常に問題がありますけれども、いわゆる二人か三人程度地方の代表がぜひ入るということにならなければいかぬだろうと思います。  なお、この問題、かなり役所の抵抗が大きいと思いますので、やはり政府、各省庁を抑えられる、にらみのきく方がやはりそのキャップになられる必要があるだろうというふうに思います。  さらに具体的な問題については、現実の地方に関する知識と制度に関する知識、それと専門的な知識を持つ人も必要であるというふうに思いますし、最近、細川内閣以来でございますが、女性の委員の方が参加されておりますので、女性の委員の方も必要なのじゃないかというふうに思うわけでして、七人というのはそういう形になるとたちまちいっぱいになってしまいますけれども、この人選は非常に重要でございますので、政党で取り合うというようなことがないように、国民が納得いくような人を選んでいただきたいというふうに思います。
  20. 兼子仁

    兼子参考人 私は、かねてフランスに留学生として行っていたことがありますが、フランスでは、大方の政府審議会、合議制機関は法令上利益代表制が保障されている。これでいきますと、今回の場合、地方六団体の推薦代表の方が当然法令上その委員たることを保障されるというようなことになりましょうが、日本の場合はそういう利益代表制審議会という方式ではなく、広い意味の学識経験者方式が一般なのでございますね。ですから、今回の推進委員会について新たに、やや利益代表的な構成をお考えになるのかどうかというのは、これは日本政治の選択の問題にもかかわるぐらいだと思います。  ただ、地方六団体の場合、都道府県と市町村は別の利害もあるということもありましょうし、この地方六団体の代表委員と国、各省庁とが、地方分権の場合には、そういう意味では当事者的であるということもございますね。ですから、今申しましたように、地方六団体の方がこの委員会に入られるべきかどうかは日本政治の選択の問題でございまして、しかし入らないということになった場合には、最たる当事者として地方六団体に対するそれなりの推進計画策定手続上の位置づけがあってしかるべきではないか、地方自治法上の意見申し出権も既に法定されていることでもございますから、というふうに申し上げます。
  21. 野田聖子

    野田(聖)委員 私はかねてから、この推進法案の一番の魂は、推進委員会がどのような権限を持ち、そしてどういう人材によって、今お話があったような、それが一番重要ではないか、それでやって初めて、今問題になっている機関委任事務の問題、地方事務制度の問題がきちんと議論されるのではないかと感じておりました。大変有意義な御回答をいただきまして、ありがとうございました。どうか、総理大臣がきちんと皆様方のリクエストにこたえられるような委員を任命されるよう、働きかけをよろしくお願いします。  もう一点は、先ほども少し懸念の声の中で、地方分権をするに当たって、やはりその受けとめる側である地方自治住民自治の成熟というのは非常に重要である。ただ、ややもすると、まだそこまで至っていないところがあるのではないかという御心配の声もございました。  実は、新聞の記事に出ておりましたのですが、これは読売新聞なんですが、地方分権に明確に反対している地方自治体もある。これは茨城県の調査で、県内の八十七市町村中、七市町村分権反対と言っているそうなんです。また、コメントの中には、「農地転用などは国にやらせた方がいい。うまくいかない場合に国のせいにできる」、これは茨城県幹部、という責任逃れがあったり、「水産行政の実権を市に下ろすと「市役所なら何とかなる」という漁民のエゴに抗しきれるかどうか。職員と市民との人間関係が濃いから、よほど身を律しないと腐敗の温床になる」、そういう後ろ向きな、これは北海道根室市の行政マンが言っているわけですけれども、そういう意見があることも事実でございます。  また同様に、地方分権が進むということは、まず一番明確なのは、首長さんの権限が非常に大きくなる。そしてまた、その首長さんの動向をきちんと監視する地方議会役割がますます重要になってくる。ところが、この地方分権の議論の真っ最中にある統一地方選挙が、前半戦が終わりましたけれども、どうもそういう争点になっていなかったのじゃないか。一番問題なのは、やはり無投票で選ばれる人が多い。これは首長さん、地方議員さんかかわらず、非常に多くなっている。  また知事さんの場合ですと、青島さんやノックさんの報道の陰で隠されていたのですけれども、相変わらずやはり官僚出身、中央省庁からの天下り的知事さんが四十七都道府県の半数を超えている。むしろその中央集権の中の担い手が地方のトップになるということに懸念をする声はあるわけですけれども、実態としてはまだそういう状況がいまだ続いている。そういう現実の中で、今後の住民自治の成熟とか、意見の発表の場というのは、やはり今選挙でしかあらわすことができないと思うのです、現実。  その中で、こういう状況をかんがみて、どういう方策をもってすれば地方分権を投げかけた地方自治住民自治が選挙活動、運動を有効に利用して、両輪相まってという活動ができるかどうか。私個人的な意見とすると、やはり無投票というのはなくすべきではないか、一人しか出なかった場合は信任投票という形で必ず住民の意向を確認する手だてが必要ではないかということを感じていますが、それについてコメントをいただければありがたいと思います。宇野参考人川島参考人、ぜひお願いします。
  22. 宇野收

    宇野参考人 ただいまの地方自治に関する基本的な問題を指摘されたと思います。そういう意味で、地方の本当の自治というのが日本の場合には成熟しているかというと、これは残念ながら私は成熟をまだしていないと思います。  したがって、今回議論が随分出てまいります過程で私どもが非常に悩んだことは、やはり中央から見れば地方に対する不信、それから地方の方もこれだけ議論があるのに、本当に自治をくれという地方からの強い声がそう強く出ないというところが悩みでございましたが、しかし、これをいつまでも、だから地方分権できないというふうにほっておいていいのかという一方の非常に大きな悩みもございました。そんな意味で、今当面の、無投票で何となく出るなんということは甚だこれは残念なことでございますから、今お話ありましたように、無投票が出る場合には信任もするかねというふうな方法もとるべきかと思います。  それからもう一つは、地方の今の不信の問題について、私は地方不信の問題が言われますときに、いつもある種の反論をしておるわけでありますが、なるほど中央から見れば地方の自治意識は低いではないか、あるいはもっと言うと、地方の今の能力財源権限をもらって、果たして本当の自治ができるかねという問題もございましたけれども、それはやはり権限財源を本当に渡して地方でやったら恐らく何遍か失敗するでしょう。しかし、失敗するごとに地方は勉強して成長いたしますよ。  例えて言えば、大変具体的な例で申しわけないのですが、先般、宮城県あるいは茨城県で起こりましたような問題が出ましたときは、そのときの責任者の首長さんはおやめになっておられます。こういうことはその都度その都度地方選挙民が大変自治を学び、責任をどうとるかということができるわけでありますから、私はあえて現状にこだわらないで、地方分権の流れの中に乗っていくべきだというふうに思うわけでございます。
  23. 川島廣守

    川島参考人 先ほどの野田先生のお尋ねに対するお答えでございますが、先ほど私が申しました、市町村の側では地方分権を日常の業務の中でそう必要性を感じないというのが六二・五%あるということを申し上げたのでございますけれども、それから今先生がお示しにありましたように、市町村の段階では恐らくそういうふうなところがかなりあるのだろうと思うのですね。  これは実は受け皿論になるわけでございますけれども、実際に、申し上げましたように、自分の町を自分の手でつくるという、国の干渉がない、そういう規制がない、外れたというので、自分で自分の、自由に道路もつくり、下水道もつくり、公園もできるというふうになりますれば、次第に住民意識は変わってくるに違いない。それから、現に、また現在の大きな流れといたしましては、地方分権に対してかなり住民の間でも関心が高まっていることはもう間違いがございません。  したがいまして、そのような意味から申しますと、私は将来やはりこれは一つの国民運動と申しましょうか、先生方お一人お一人の地方に対するいろいろな意味の御説得と申しましょうか、教育指導と申しましょうか、そういうものと相まって、我々のような団体も含めて、地方六団体も熱心にやっておられるわけでございまするし、関係方々がそれぞれ力を合わせて、今こそまさに地方分権だという、この現在の地方分権の持つ意味をわかりやすく住民方々に説明をして、そして取り組んでいく、こういう方法が適切ではないかと思います。  それから最後の、今先生がおっしゃいました候補者が一人しかいない、無投票というのは、私はやはり信任投票ということはぜひとも必要であろう。これは一つの民主主義の訓練の意味から申しましても、あるいは地方住民意識改革がまず何よりも前提でございますから、いろいろな手だてがそういう意味合いで工夫されるべきであろう、かように考える次第でございます。
  24. 野田聖子

    野田(聖)委員 どうもありがとうございました。  地方分権推進というのは必ずしも地方のためではなくて、私たち国会議員の一つの解放運動だと思います。小選挙区になりますと選挙区範囲が小さくなります。そうしますと、ややもすると、選挙区のエージェントに成り下がってしまう可能性が非常に大きい中で、やはり今のお話を承って、私たち自身も今後、国内政治家はたくさんいても国際政治家がいない日本の中で、やはり将来に向けて地方と切り離して仕事ができていくような土壌をこの法律案ができることによって促進していきたいと思っていますので、御指導のほどよろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  25. 笹川堯

  26. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 新進党の山崎でございます。  きょうはどうも先生方ありがとうございました。  川島会長が非常に御心配されておられます地方からの熱意あるいは自覚が足りない、私どももきのう地方公聴会に参りましてそういうことを感じました。やはり、この法律案成立した後、自治体に非常に大きな責任が生まれるのだという御自覚、あるいはその地域に住んでいる方々の自覚を強く求めていかなければならないと思っております。ただ、こんなに早く法律が提案され、あるいは成立する運びになるというふうに地方の方はほとんど考えておられなかった。だから、今非常に戸惑いがあるということも非常に強く感じました。  私はきのうも申し上げたのですが、ちょうど地方議会改選期ですから、各地方議会地方分権推進特別委員会をつくるべきだ、そしてそこでやはり分権地方での受け皿議論というか、それをやってもらうべきだということも言っておるわけですけれども、ぜひそういう方向で提案していきたい、このように思っておるわけでございます。  まず、今回のこの推進法政府からも提案に至りましたのは、やはり一昨年の細川政権の成立によるということを新進党としては指摘しておきたい、このように思います。  それと、政府案にしても、我が新進党案にいたしましても、中身的には、昨年あたりから、一昨年になるのですか、行革審最終答申、あるいは民間政治臨調地方六団体の意見もございましたけれども地方制度調査会、そういうところが非常に時代認識をされまして、非常に思い切ったといいますか、画期的な提案、提言をされた、それが、やはり今度の政府案、あるいは私ども新進党案もその線に沿って提案させていただいたということを申し上げさせていただきまして、まず皆様方の御見識に対しまして心から敬意を表させていただきたいと思うわけでございます。  我が党が対案を提出いたしましたのは、いたずらに政争、政局に何か影響を及ぼそうとかそういう考えじゃございませんで、我が国では立法権は唯一国会にしかないわけでございますから、政府案は私どももそれなりに評価はしておるわけでございますけれども、しかし、よりこの分権が実効上がらしめるように、やはり国会でやらなきゃいけないことをやるべきだ、そのような考えで法案を提案をさせていただいたわけでございます。  おかげさまで、今日まで二つの法案に対する論議をやってまいりましたし、また、きょう参考人先生方の御意見もいただいておるわけでございまして、こういうことが必ず今後の分権の作業、政府推進委員会の作業に役に立つと思うし、また立ててもらわなきゃいけない、忘れてもらっちゃ困るということを強く指摘をさせていただきたい、このように思うわけでございます。  私は、二点についてだけお尋ねをさせていただきたいと思うわけでございますが、一つは機関委任事務制度廃止についてでございます。  私どもが特に重視いたしましたのは、地方制度調査会が、宇野会長のところが、これまではずっと機関委任事務については整理合理化、そういうことを答申にうたってこられたわけでございますが、第二十一次の調査会答申を経まして、今回、明確に概念廃止、私はすばらしいと思うのですが、機関委任事務制度という概念そのものを廃止すべきだということをうたわれた点でございます。  これまで、整理合理化という視点からの改革は、既に御承知のとおり再三行われてきたわけでございますが、その成果は、関係省庁の合意の範囲にとどまる状況でございまして、極めて不十分なものであったと思うわけでございます。  したがいまして、もはや整理合理化という手法ではこの制度の抜本的改革はなし得ないと私どもは考える、非常に心配だというふうに我々は考えるわけでございまして、まさに、むしろ制度廃止する、まずそういう立場に立つ必要があるんじゃないか。  だから、制度そのものを、機関委任事務制度そのものをどうするか、残すかやめるか、そういう議論をすべきであって、機関委任事務の個々の事務、これは必要だ、これは廃止するというような作業では限界がある。だから私は、政府案整理合理化という表現では、これは一つ一つの事務を一つ一つ検討するという意味合いでしか受けとめられないと思うわけでございます。  そこで、宇野会長にお尋ねいたしますが、地方制度調査会が今回あえてその概念廃止をうたわれた背景といいますか、そこのところをずばっとお聞かせいただいて、今後の役に立たせていただきたい、このように思うわけでございます。  それと、民間政治臨調川島会長の方はこれまた機関委任事務制度廃止を明確に示されておられる、この辺についてのお考えをお尋ねをさせていただきたいと思います。  それから成田先生、先ほどちょっとお触れになりましたけれども、東京都の地方分権検討委員会答申機関委任事務制度廃止をうたわれて、それにかわる新たな制度ということを、簡単で結構ですから、どういうお考えかをお示しいただきたい、このように思います。
  27. 宇野收

    宇野参考人 ただいま山崎先生から御指摘のありました点は、私もいろいろ考えたわけでございますが、地方制度調査会がこういうふうな機関委任概念をやめるという手前のところで、その少し前で第三次行革審の、私は会長代理の中で地方分権問題を担当いたしましたが、そのときの答申は、機関委任事務廃止ということを答申の中に書いておったと私は思います。  その心はどういうことかと申しますと、やはりこの機関委任事務制度そのものはこの際廃止をする、だけれども、そのときの議論は、廃止はいたしますけれども、今先生がまさしくおっしゃったように、これは残るよというのは幾つかあるという意識がございました。  そういうものを受けまして、地方制度調査会では、機関委任事務概念というものはやめろ、しかしながら残るものはあるね、これを全部ずっと詰めていくというのを一つ一つやるほどの時間は私たちは持ってないよということがございまして、したがって、今度の法律によってできます推進委員会でこの中身を洗ってもらいたいというのが、私どもの、地方制度調査会考え方でございました。  ですからこれは、新進党の方のお考えの、原則なし、例外残すという考え方については、私は個人的には大変よくわかるわけでございます。  しかしながら、一方、現実をお考えいただきますと、先ほど兼子参考人からお話ありましたように、自治省を中心にした地方自治法によって言われているところの機関委任事務以外の事務が非常にふえておる現状がございます。これを洗っていくということを考えますと、やはり整理合理化という問題を考えて、そしてやめるものはやめる、しかし、残るものは機関委任事務制度という形では残らない、別の形で残すということを考えるという意味で、今回の提案が一つできておるんだというふうな理解をいたしております。
  28. 川島廣守

    川島参考人 山崎先生のお尋ねでございますが、私ども民間政治臨調といたしましては、新進党の案を高く評価をいたすわけでございます。したがって、原則的に機関委任事務廃止をする、こういう基本的なスタンスをとっておるわけでございます。  しかしながら、当然のことでございますけれども、現在多数ある機関委任事務の全部をやはり選別いたさなければならない時期が必ず来るであろう。これは一応、これからの推進委員会の中でそのことが行われなければならないというふうに考えざるを得ないのではないかと思うのでございますね。  したがって、これは先生方の御所論の中にもあったように拝聴いたしておりますけれども、これこそまさに大変な難事業でございまして、ただ単に廃止をしろといった言いっ放しで問題は済まないわけでございますから、実際の現実論といたしましては、やはり国の事務地方事務というふうに仕分けをするということは、どうしてもこれは避けられないことだろうと思うわけでございます。  したがって、我々も、ただ単に廃止をして、このままでいいわけはないのでございますから、その点は、まさに国会先生方のお立場でこのことにいろいろ御審議をいたされました結果、なかなかこれは難しいということで、結局、結論は地方分権推進委員会の仕事にこれは差し送りといいますか、お渡しになった格好になっているわけでございますから、これは大変な仕事を推進委員会はしていくことになる、実はかように案じて、それで先ほど来申しましたように、これは先生方の御支援がなければとにかく処理できない課題である、かように考える次第でございます。  答弁にならない答弁でございますが……。大変恐縮でございます。
  29. 成田頼明

    成田参考人 機関委任事務廃止した場合の代替措置をどうするかという御質問でございますけれども、これは一般的に申しましていろいろなやり方があると思います。  一つは、非常に限られた形で機関委任事務を存置するという考え方もあるかと思われます。それから第二に、国が地方公共団体に委託をするというやり方もあり得ると思います。それから第三は、事務そのものを新しい分類をし直す、こういう三つの視点があるかと存じますけれども、東京都では、一応いろいろ検討いたしまして、事務そのものを新しく分類すべきではないかという立場をとっております。現在地方公共団体が国から任されている仕事は、機関委任事務と団体委任事務とがあるわけでございますけれども、これは新しく再編成をいたします。  その機関委任事務の中には国が直接に実施するのが好ましい事務もあるのではないか、それはむしろ国にやってもらうという前提に立ちながら、事務の種類を特定事務、必要事務、随意事務というこの三つに分けてはどうかということでありまして、特定事務というのは、現在の機関委任事務にかわるものでありまして、国政の選挙に関する事務とか旅券発給事務というものでありまして、性質上国の事務、しかもそれはどうしてもやらなければいけない、しかも中身についてもある程度これは国がコントロールするというふうな非常に限定された形で、特定事務という形で取り出して執行してもらう。しかし、これは機関委任事務とは考えないということであります。  それから必要事務といいますのは、地方自治体が行う事務のうちでも、全国的な標準や最低基準に基づいて必ず行わなければならないという仕事があるわけであります。これは、現在機関委任事務と団体委任事務と両方重なって存在しているわけでありますけれども、これにつきましては、これを新しく必要事務という形で整理をして、やるかどうかについては、これはやらないという選択はないわけです。やり方については国である程度そのルールなりなんなりを決めるという形でありますけれども、国で法律を定めるにいたしましても、細かい点は条例に任せていいじゃないかという種類のものを一応必要事務というふうに考えております。  それからもう一つは随意事務というもので、これは仮称でありますけれども、内政に属する事務のうちで国が直接実施する事務、特定事務、必要事務に属さないそれ以外のすべての事務、これを完全に随意事務という形にしておくということでして、これは、できれば財源措置それから国の監督措置、そういうものとも完全に結びつけた形ですっきりした体系をつくるべきじゃないかということで考えたわけですけれども、まだ細部は詰まっていない点もございます。  以上でございます。
  30. 兼子仁

    兼子参考人 私も一言させていただきます。  確かに、分権推進法機関委任事務廃止ということが定められました場合には、御質問のような制度そのものを存続させるべきかどうかの検討推進委員会の第一課題になるでございましょう。しかし、政府法案の場合でも、既に地方制度調査会答申廃止が提起されておりますし、この環境からしますと、どなたかお一人でも委員の方が提起されればその問題が議題になり得る情勢ではないでしょうか。  その場合に、私が考えますのに、それに対しまして、いや、こういうこれまでの機関委任事務はその制度の存続に必要性があるのではないかというような反論が出て、必ずや重立った従来の機関委任事務の事例に応じた検討のような論議が展開されるのではないか。それで、廃止論も結局それをクリアしなければならないということになろうと考えますので、私は、そのような論議の展開がいずれの法案を可決された場合でも推進委員会であり得るであろうというむしろ予想を持っております。  例えば外国人登録ですね。これは今現在市区町村の窓口で行われている国の事務でございますが、これは国の事務だけれども、同時に、先ほどの定住外国人の処遇などもかかわり、地域性、自治体の自治行政とも深いつながりを持つ国の事務である、こういうふうに、従来の機関委任事務の中には国家的性格と地域的性格が入りまじっているものもかなりあるように思われるのですね。この場合に、国が余り関与、統制をせずに、それ相当に地域的裁量にゆだねていくという機関委任事務の今の両面性に応じた運用も既にあり得たわけでございまして、こういうような事例をどう考えていくか。  先ほどの成田参考人のお話しになった新方式への切りかえももちろん一策でありましょうけれども機関委任事務をこの際全廃することが本当にできるかどうかということは、そうした事務事例の最終的な詰めも含まれているというふうに思われるわけでございまして、機関委任事務を仮に全廃してそれを全部自治事務に移しかえたとしますと、逆に、自治事務に対する法令の基準とか、あるいは運用上の国の関与というのが出てくる可能性があります。そうしますと、その国の関与を極小にするというもう一つの問題との関係も考えなければならないというふうに思われるからでございます。
  31. 宇野收

    宇野参考人 大変申しわけございません。ただいま私発言いたしましたことで訂正がございます。  それは、今の機関委任事務廃止の問題で、第三次行革審答申の中には機関委任事務廃止ということで答申をいたしましたというふうに申し上げましたが、これは私が廃止を主張いたしましたわけでありますが、最終答申には大幅な整理合理化という答申をしたということを、今訂正をさせていただきます。したがって、このことがそのまま地方制度調査会の方の線につながってくるということでございます。訂正いたします。
  32. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 もう時間がございませんので、時限立法、五年先のことを今から心配するのはあれでございますけれども、そのことだけちょっと触れさせていただきたいと思います。  政府案は五年の時限立法を、我々は時限立法をとらなかったわけでございます。確かに、時限立法化するということは非常に促進的な意味合いを持つと思うわけでございますが、ただ、地方制度調査会では時限立法を確かにうたってはおるけれども、その前提にいろいろの事項があったわけです。それが、政府案ではその辺はかなりすっぽかして時限立法だけうたっておる。これはかなりつまみ食いではないか。果たして五年先、どれだけの成果が上がるか、これまた非常に不安である。その辺の押さえを今から考えておかなければいけないのではないかというふうに思うわけです。  最後に、宇野会長、先ほども、五年でその成果が上がらない場合はあるいは新たな法律あるいは新たな強力な制度も考えていいではないかということをおっしゃっておられたと思うわけでございますが、五年の失効期限を前にして成果がまだ不十分だということになった場合のやり方を、もう一度お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  33. 宇野收

    宇野参考人 飛行機に乗るときに落ちたらどうしようかというくらいのつもりで五年過ぎた場合の対策を考えたらいいかなというふうに思っておりますが、ともあれ、先ほど申し上げましたように、この五年間というのが日本にとって非常に大きな変革期である、このときに何としても地方分権の実を上げなければいけないという思いがございまして、この五年間で足りるかなという不安はございますけれども、精力を集中して五年間に実を上げてしまおうというふうなことをまず考えております。  したがって、その五年間にできない場合にどうするかということにつきましては、先ほども申し上げましたように、積み残した問題をもう一遍構築するのにはどうするかということを考えたらいいのではないかなという程度のことでございまして、初めから二段構えの問題を細かく考えたというところまでは至っておりません。その五年間にすべてをかけるというつもりで五年といたしました。
  34. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 わかりました。
  35. 笹川堯

  36. 畠山健治郎

    ○畠山委員 社会党の畠山でございます。  本日は、本委員会に御出席をいただきまして、貴重な御意見を承りまして、まことにありがとうございました。時間がございませんので、どんぴしゃり質問させていただくことの失礼をお許しをいただきたいと思います。  まず、宇野参考人にお伺いをいたしたいと思いますが、政府案並びに地方制度調査会答申は、地方分権の課題について、国、地方の行財政問題のみならず、自治体行政あり方についても重要な課題としており、これらは設置される地方分権推進委員会の調査審議課題に当然含まれるものと考えます。法律施行後五年間設置されますところの地方分権推進委員会地方制度調査会との関係は今後どのような関係になられるのか、その点をひとつお伺いをいたしたいと思います。  第二点は、地方制度調査会答申の末尾に、「国と地方公共団体関係を調整する新たな制度あり方について、今後、検討する必要がある」、このように述べられておるわけでありますが、具体的にここの部分はどんなことでいらっしゃるのか、お承りをいたしたいと思います。
  37. 宇野收

    宇野参考人 ただいま畠山先生から御質問がございましたが、最初の、推進委員会地方制度調査会との関係でございますが、推進委員会は、文字どおり幾つかの課題を抱えて推進をするという機関でございますから、ある意味では非常に過大な仕事をやりおおせなければいけないということかと思います。  地方制度調査会の方は、実は今回は、第二十四次地方制度調査会として、地方分権市町村の合併問題の諮問を受けたわけであります。それぞれもう答申を果たしました。果たしましたが、地方制度調査会としてはまだ来年の春まで期間が残っておりますので、先般この委員会でも諮りましたのですが、今、国会でこういう審議をされておられますので、この法案成立に向かって私どもは外部から促進方をするということが私どもの仕事であるな、もし法案法律になりました場合には推進委員会を外から援助するというふうなことが仕事ではないかなと思いますが、この辺はもう一遍、関係官庁を含め私ども委員の間で御相談をして決めてまいりたいというふうに考える次第でございます。  それからもう一つは、地方公共団体政府とおっしゃいましたですか、御質問……(畠山委員「国と地方公共団体関係を調整する新たな制度を考える」と呼ぶ)これは、国と地方公共団体との関係はそう簡単にすべての問題が整理できるというふうに思われません、これは百年続いた地方制度中央行政制度ということでありますから。したがって、幾つかの問題が出ますけれども、そういう問題をこの行政委員会だけでできますかねということがございますから、こういう問題全体を整理するあるいは調整するというような機関がこの際必要であればこれは考えるべきではないかという一つの提案でございますから、この点についてもよく御検討をいただきたいということでございます。
  38. 畠山健治郎

    ○畠山委員 次に、川島参考人にお伺いをいたしたいと思います。  くどいようですが、今までも機関委任事務の問題をいろいろ議論してまいったわけでありますが、民間臨調の法案骨子の中では「機関委任事務廃止する。」としております。廃止後の問題として「地方自治体事務処理を委託することができる。」というふうになっております。  この場合の委託ということの概念でありますが、委任をするという形に、言ってみれば契約という格好で委託をするというような格好になろうか。そういう意味だとすれば、受託側は、これは自由なわけですから、委託をしないというようなときは一体どうなさるのか、それにかわる何かの方策が、お考えがあるのか、その辺のところをお伺いしたい。
  39. 川島廣守

    川島参考人 今、畠山先生のお尋ねは、先ほど成田参考人からも御答弁がございましたけれども、私どもといたしましては、原則廃止ということでございますので。しかしながら、現在五百幾つかある機関委任事務内容を精査をいたしますれば、これは国の事務として残さなければならぬ、そういうような種類のものも当然残ってくるのであろう。その場合に、改めて国の出先機関をつくるというふうなことは、これはいかにも行政改革の趣旨に反するものでございますから、その場合には地方公共団体との間に、委託をするといいますか、契約をするといいますか、そういうような方法が別途講ぜられていいのではないか。  したがって、先ほど来もちょっと申しましたけれども、団体委任という方法でありますとか固有事務に切りかえるとか、いろいろな方法が考えられるだろうと思いますが、今先生のお尋ねの点に関して申しますれば、私はやはり国と地方公共団体との間において契約をするといいますか、そういうふうな方途によって問題を処理する、こういうふうに考えておるわけでございます。
  40. 畠山健治郎

    ○畠山委員 次に、成田参考人にお伺いをいたしたいと思います。  地方分権推進いたしますほどに自治体政策立案と執行能力の向上、行政責任の強化が求められると考えます。その場合、これら能力や責任を自治体が単独で果たしていくことはもちろんでございますが、自治体間の協力関係も強化が大変大事なことだろうというふうに思っております。  そこでお伺いをいたしますが、広域連合に関する地方制度調査会答申は、ECをモデルとする成田私案が基本と承っております。しかし、私案と昨年の地方自治改正制度化された広域連合とは少し乖離があるのではないだろうかというふうな気がいたします。  と申しますのは、ECモデルの核心は、域内共通政策の策定と実施にあると思いますし、これが法改正では計画連合体になってございます。今後、地方分権を進めていく場合の自治体政策展開との関係で、参考人はどのようにお考えなさっていらっしゃるのでしょうか。  第二の点は、ECに見る共通政策の策定と実施は統合のためのステップであり、この視点から広域連合制度の発展を考えた場合、府県レベルの境界変更あるいは合併または道州制というような問題が出てくるのではないかというふうな点もあろうかと思います。その点についての御見解を承りたいと存じます。
  41. 成田頼明

    成田参考人 広域連合につきましては、議論の過程でECモデルを中心にした一つの私案を出したわけでございます。それでいろいろ議論が進んでまいりましたけれども、最終的にでき上がりました法案は、政府各省とのいろいろなすり合わせ等もございましてただいま御指摘のようなものになったわけでございまして、これは正直申しまして、私個人としては若干不満を持っておりますけれども、しかし、制度ができました以上はやはりこれを有効に活用されるということを望んでいる次第でございます。  私は共通政策というのが非常に大事だと思うわけですけれども、これは連合の仕組みを使わなくても、例えば、現在東京三十キロ圏の中で七つの都県市で東京サミットと言われる会議も開いておりますけれども、そこでも、例えば環境問題なら環境問題について東京湾を対象にした共通の一つの基準を示している。モデル条例のようなものをつくって、みんながそれを受けてやったらどうかというような提案も出ておりまして、そういったやり方もあると思うのです。ですから、計画は計画といたしまして、そういう形で共通政策を実施する余地というものは考えられるのじゃないかと思われます。  それから、ECは御存じのようにEUの方に統合されまして、外交とか防衛とかいう問題についても、あるいは通貨についても共同の政策をとるという方向に行ったわけでございますけれども、ただこれは、本当にEC全体が統合されて一つの欧州合衆国みたいなものにすぐなるかどうかといいますと、これは実際にいろいろ話を聞いてまいりますと、EUの力と個々の国が持っております主権、これが至るところでぶつかっております。通貨統合などもそういう問題に直面しているようでありますし、そのほか環境保全問題とかいろいろな問題で国家主権とEUの強い力との対抗関係というのが非常にぎくしゃくしているわけであります。そういう中で、やはり将来は、いつかの時点では欧州合衆国になるのかもしれませんけれども、そう簡単にはいかないということであります。  日本の場合にも、そのモデルで連合をつくるというか、連合をいずれ発展させていくということも考えられるわけでありますけれども、どうも道州制ということになりますと、道州制の問題というのはいろいろな弊害が予想されます。しかも、どういう道州制をとるかによっては、場合によっては地方自治の本旨に反するような結果になりかねないと思うのですね。  かつて提案された道州制はそういった性格のものであります。最近の道州制は、幾つかの府県が合併して北海道のような広い地域をつくるべきだというような道州制もあるわけでありますけれども、これは逆にまた、北海道の場合にはもう少し分権をしておいた方がよかったのではないかというふうな意見も地元ではあるというふうに伺っております。  いずれにいたしましても、府県の区域を変更するということは大変なエネルギーそれからコストが必要であります。いずれはそういうことを考える時代が来るかもしれませんけれども、それは私が生きている間にはそういうことはないのではないか。そこで、やはりそういう不合理な問題は協調あるいは連合というふうな形で当面は切り抜けていくということが一番現実的ではないかというふうに思っている次第でございます。
  42. 畠山健治郎

    ○畠山委員 最後に、兼子参考人にお尋ねを申し上げたいと存じます。  地方分権を進める場合、現行の国、地方自治体関係において、特に法制度において多くの法改正が必要となることは既に御案内のとおりだと思っております。その場合、個々の法改正もさることながら、最も重要なのは地方自治法の問題だと考えます。  地方分権の全体的枠組みをどうするのか、地方分権推進委員会の調査審議を待たなければなりませんが、少なくとも国、自治体の新たな役割分担の明確化とそれに伴う事務の移譲に関係する規定、例えば、事務を定める第二条、それから条例制定を定める第十四条、それから国の事務の指揮監督等を規定する第百五十条以下の幾つかの条文、それから第十一章に定める国と普通地方公共団体との関係に関する諸条文は、地方分権下ではたえられないのではないかと考えます。この点についてのお考えをお承りいたしたいと思います。
  43. 兼子仁

    兼子参考人 分権推進法が施行されていく過程での地方自治法の改正必要性というお尋ねであろうと存じますが、まず、確かに地方自治法二条で自治事務の規定がございますが、これは「例示」と既になっておりまして、この例示が住民に身近な行政についてはふえていくということになりましょうけれども地方自治法はこの点では今申したように例示でございまして、むしろ分権推進計画成果がおのずから自治法改正につながるということであろうかと思います。むしろその検討の過程で、先ほど私が申しましたように、従来の国の機関委任事務がどれほど自治事務化され得るのかということが重要問題と存じます。  それから、自治法十四条で、法令に違反しない限り自治体が自治事務について条例を制定できる。これは、今の自治事務が拡大しますと条例制定権の範囲が広がりますが、依然として「法令に違反しない限り」という条件は、これは憲法九十四条で法律の範囲内で条例を制定できるということのあらわれでございますので、むしろ解釈の問題として残っていく。その場合に、従来、国の機関委任事務自治体条例で上乗せ、横出しなどができるのかという問題、これも最高裁の判例で既に事項とその法令の趣旨次第であるということになってございますが、条例制定権の範囲を地方分権的に拡充できるような法解釈が国、各省庁との間でも調整上詰められていく。ですから、これも自治法改正で済む問題ではないというふうに存じます。  ほかの点も御質問がございましたが、応用問題と申しますか、分権推進の過程で国と自治体との間の組織法的な関連の問題も検討がなされるべきでありますから、その成果地方自治法に改正反映されていくべきであるというふうに考えます。
  44. 畠山健治郎

    ○畠山委員 終わります。ありがとうございました。
  45. 笹川堯

  46. 田中甲

    田中(甲)委員 さきがけの田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  実は、地方行政常任委員会の方で銃刀法、サリンの問題で急ぎ上げる法案質疑を今行ってまいりました。皆様方意見陳述をすべて聞いていないというのが正直なところでありまして、御無礼のほどをお許しいただきまして、私の質問の観点は少し長期的なスパンで、今法案が云々ということではなくて、ぜひ皆さん方の御所見をいただきたい。今後の流れ、トレンドというものを示唆していただければありがたいと思っております。  投票率、大変に低い。統一地方選挙においても投票率が低下してくるという、こんな現状の中で、投票率と自治意識というものはある程度比例している。これは当然そのように考えを持たせていただくわけでありますが、この地方分権と自治意識並びに投票率のかかわりということをどのようにお受けとめになられているか、川島先生の方からぜひお聞かせいただければありがたいのですが。
  47. 川島廣守

    川島参考人 私は、先ほど申し上げた経緯がございますけれども、やはり地方分権ができるかできないかというものは、かかって国、中央地方意識改革が何よりの前提だと思うわけであります。  在来のことは今先生のお尋ねの中にも入っておりますけれども地方分権というのは中央から地方権限を移譲するのだ、こういう流れでとらえておるわけでございますけれども、そうではなくて、本来、地域があって、都市があって、国があるわけでございますから、国というものは委任に基づいて生まれたものでございまして、本来の権限地方にあるべきものだ。したがって、地方自治体と国というものは常に対等の関係にあるわけでございます。  今回の焦点でございます機関委任事務一つをとりましても、これはあくまでも上下の関係において問題をとらえられておるというのが一般の国民の共通した理解ではないか、こう思うわけであります。したがいまして、先生のお尋ねのお答えになるかどうかわかりませんけれども、何よりも今大事なのは、国民全体の中にそういう自治意識というものを盛り上げるためにどうすればいいのか。  実は、先生方の御熱心な討議の中身が新聞の中に報道されておらないのが多いのでございます。あれだけ熱気のこもった先生方討議の中身が一般の国民には全然映ってないと私は思います。したがって、国会改革の中でテレビの問題とかいろいろな問題が今方法論として議論されておるようでございますけれども、そういうふうな小さな努力の積み重ね以外には特段これが妙手だというようなものはなかなか考えにくいのではないか。やはり、ただいま御審議願っておりまするようなこういうような積み重ねを一つ一つ積み重ねていく。それから、地方に帰って先生方がそれぞれ国政報告をやられる。  あるいはまた、地方の首長の方々あるいは議会の方々、先ほども話がございましたけれども、特に地方議会の候補者になり手がないでありますとか、一・一倍しかないでありますとか、これは大変に寒心にたえない現状だと思うのでございます。これは、やはり一つは政治に対する失望感といいますか、見るものは見果てたといいますか、そういう何となく虚無的な絶望感に似たようなものが漂っているのではないか、そんな感じが大変心配でございます。  何よりも、先生方を初め我々いろいろ公民運動をする立場におります者が一生懸命力を合わせて努力をする、これ以外にはないのではないか、大変生意気でございますが、そのように考えております。
  48. 田中甲

    田中(甲)委員 関連で宇野会長に御質問させていただきます。  受け皿論がかなり審議されました。地方分権を進めていく、いや地方主権という形をつくり出していくにふさわしい地方自治体が今つくられているのかということであります。また、地方議会の問題もそこには含まれて審議がされました。これと関連して、分権あるいは地方から見て主権ということが進められることによって、自治意識の高揚、あるいは地方選挙において投票率が現在よりも上昇してくるという現象が出てくるだろうかということをちょっと考えておるのですが、御意見をいただければありがたいと思います。
  49. 宇野收

    宇野参考人 田中先生のお話、私も本当を言うとわかりません。わかりませんが、地方分権をいたしまして、その結果地方の自治意識が高まってくるという期待を持っております。そうしなければ、我々何のためにこれをやったかということでございます。  先ほど冒頭にお話がありましたように、少し次元を二十一世紀の方に目を移して考えるというお話でございましたが、二十一世紀の日本というのは、先ほど川島参考人がおっしゃったように、自治というのは原点は全く主権在民でございまして、その中で私たちの生活を律していく、それができないものはその上の団体がやる、その上の団体ができないものは国がやるというようなことが発想の原点であろうと思います。そういう意味で、二十一世紀に入るこの五年の間にそうした大きな変革をやりおおせませんと、先ほどおっしゃったように、地方へ行っても、投票率上がるかねというような疑問を投げかけながら選挙をしなければいかぬような状態が続くと思います。  ですからこれは、だからほっておけというのじゃなくて、制度を変えればそういう方向へ行きますよという、両方の問題に期待をかけてやる以外には方法はないのではないかというふうに思いますし、私は悲観はいたしませんで、これはその方向に向かっていけるのだという期待を込めて、地方分権法の成立をぜひお願いをいたしたいというふうに思います。
  50. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  兼子先生にお伺いをしたいと思います。  先ほど、陳述の中で地方消費税のことに触れられておりました。財源の基盤づくりという意味では非常に重要な位置づけということを私たちも認識をしながら進めてきたわけでありますが、地方消費税の交付基準その他、地方消費税を地方に交付をしていく基準というものにまだまだあいまいな点があろうかと私ども、いや私個人かもしれませんが考えておりまして、もし財源確保という観点で、特に地方消費税に関しまして御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。
  51. 兼子仁

    兼子参考人 私が先ほど地方消費税を申し上げましたのは一つの類型としてでございまして、地方税でありながら専ら国が徴収してそれを自治体間で配分するという、そういう地方税の制度も組み入れて税源配分を御検討になったらいかがかと申したまででございます。  地方消費税につきましては、今御指摘のように交付基準と申しますか、今の私の言葉ですと配分の基準ですが、これは御指摘のような問題があろうかと思います。地方税が都道府県の税目である以上は、都道府県間で適正に配分されるということが当然制度の本旨であろうと考えます。でありまして、これまでの地方譲与税、つまりあくまで国税として徴収したものを地方に配付するというのとはおのずから意味合いが違っているはずでございます。  現行の地方消費税、この制度が新しいものですから、それの各都道府県への配付の手続が十分適正であるかどうかという点は、これは私は税制が専門でないものでございまして詰めた回答はできませんのですが、今のような方式の場合はそこが制度の重要問題であるということは、お話のとおり意識できると存じます。
  52. 田中甲

    田中(甲)委員 よくわかりました。  再度質問をさせていただきたい点は、今の発言の中の、大蔵省が徴収して、そして自治省、各地方団体に交付をしていく、配分をしていくというこのシステムを、大蔵省がいつまでも徴収をしていないで、地方にその徴収権、自治省の方にも徴収権を移していくべきだ、それが本来地方消費税の姿であろうということの意味も含まれまして御発言されたと受けとめてよろしいでしょうか。
  53. 兼子仁

    兼子参考人 そのようにできれば、これはまさしく地方税そのものの税目をふやすということになりましょうが、地方消費税のパターンというものは、地方税でありながらあくまで国が専ら徴収するという仕組みでございますね、これを各自治体の徴収する地方税の仕組みにまでしてしまうということの経過的なパターンとして考慮に入れていただいてはどうかと私は申し上げた次第でございます。
  54. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございました。  それでは、成田先生に御所見を賜りたいと思いますが、地方分権地方主権、国と地方役割とその分担、そういう中で、このたび一月に発生しました阪神・淡路大震災、あのような大震災が起きた際、都市防災と地方主権という観点から何か御所見がございましたらぜひ賜りたいと思います。
  55. 成田頼明

    成田参考人 今、阪神・淡路の大震災、これは全く思いがけない大災害だったわけでございますけれども、この問題にどう対処するかということで、実は、これはやはり中央集権主義でなければだめなのだというふうな意見があの直後にあったわけでございます。これは、東京都で分権の問題の審議をしているときにもそういう意見が出たことがございますけれども、あれは何十年間に一度という非常に異常な事態でありまして、異常な事態の場合にはやはりこれは平常の事態と違って独自のやり方があるだろう。ですから、ああいう事態が起こったから平常の事態においても中央集権でなければならないというのは非常に短絡した議論であるというふうに私は思っております。  これは、戦前ですと、戒厳令の制度とか緊急命令の制度、独立命令の制度、あるいは緊急財政処分権、あるいは組織をつくるのも天皇の官制大権で自由にできたということで、中央主導で何でもやれたのでしょうけれども、戦後、やはり復興に当たる主体というものが、行政主体が非常に多様化してきております。国もありますし、国の出先機関もありますし、特殊法人もありますし、地方公共団体もある。しかも地方公共団体は自治という問題を保障されているわけであります。  やはり第一義的な問題は住民の生命なり財産なり安全なりの確保ですから、第一義的にはこれは地方公共団体の仕事であるというふうに思っていますけれども、何分これは膨大なお金もかかりますし、国の法令等の適切な緩和措置なども臨時応急的に必要なわけですね。  ですから、あの事態のもとでは、やはりどちらかがイニシアチブをとるということではなくて、違った主体が一つの共通の目標のもとに協力をしていくというのがいいのではないかと思います。そういうマニュアルをこれからいろいろ用意をして、それでそれをトレーニングしながらいざという場合に活用するという方法が一番いいと思うわけでして、今度の阪神・淡路大震災が中央集権の口実になるというのは、私はそれは話が違うのではないかというふうに考えております。
  56. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。私も同意見でありまして、心強く感じる次第であります。  重複してもう既に質問が出されているかもしれないという危惧はございますが、市町村の合併、その特例の一部改正ということも同時進行でここで出されてきたわけでありますけれども地方主権と地方自治の適正規模、それに伴う市町村の合併ということの促進等、御意見を賜れれば、どなたということではありませんが、もし御所見があれば聞かせていただきたいと思います。
  57. 宇野收

    宇野参考人 ほかの参考人の方もお話がございますかもしれませんが、私、二十四次地方制度調査会会長として諮問を受けました問題が、本日御審議いただいております地方分権の問題のほかに市町村の合併問題でございました。  もう先生御承知のとおり、地方分権をやります場合の一番基本の問題は基礎的自治体であるところの市町村であるということが焦点になっておりますから、今の市町村がその受け皿としての条件をそろえておるかといいますと、やはり全国三千三百ある市町村の中には、非常に巨大なる市があるが、一方で非常に小さな町もあるということでございます。  したがって、ある種の適正な規模というのが想定されるわけでありますけれども、それはあくまで自分たちの自主的な立場で合併をしていただきたい、上から押しつけて合併を指導するということはしないという姿勢でありますから、これは時間がかかるだろうと思います。しかしながら、やはりこれはあくまで自主的にやってもらう。ただ、そういう合併をされた場合には税制その他の面でインセンティブはつけるということで、多少時間をかけて待たなければならないというのが現状かと思います。  そういうことでお答えといたします。
  58. 田中甲

    田中(甲)委員 もしほかに御意見をいただければよろしくお願いします。
  59. 川島廣守

    川島参考人 今先生のお尋ねの趣旨は、恐らく現在三千三百ございます市町村の、自治体行政それから議会運営が極めて画一的になっておるわけでございますね。そうでございますから、私は現在の画一的な、例えば議会一つとりましても、委員会は、市町村、どの規模でも全部同じなのでございまして、このようなことは大変に非能率であるばかりでなくて、議会そのものがもう空洞化していると申し上げていいのではないか。  したがって、自治体としては、一定規模の人口なり面積なりそういうものがございませんと実際に一貫した地方自治行政の実は上がっていかないのではないか。そういう意味合いで、さきに問題のあります市町村の合併なんというものは、現在地方分権がこれからいよいよ具体的な日程に上っていくその過程の中で当然に行われていかなければならないものであろう、さように考えておるわけでございます。  したがって、さらにまた、議会だけではなくて、首長の問題にいたしましても、実際に町村長という選挙の仕方で選ばなければならぬものかどうか、そうではなくて、あるいは住民の側で別途の選び方だってあってもいいのではないか、さように考えておる次第でございます。
  60. 田中甲

    田中(甲)委員 若干時間が余りますが、私の質問は以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
  61. 笹川堯

  62. 穀田恵二

    穀田委員 日本共産党の穀田でございます。私も地方行政委員会と兼ねておりまして、失礼をいたしております。  参考人の皆さんには本当に御苦労さまでございました。ありがとうございます。  私は、今度、ちょうど今一斉地方選挙が後半戦を迎えようとしておりまして、住民に身近な行政である地方自治体が、住民の要求にこたえて、憲法や地方自治法に定められている住民福祉の増進という本来の自治体役割、責務を果たすために何ができるのか、そしてそのために何が必要なのかということが問われていると感じています。そうした意味で、地方分権とは憲法や地方自治法で想定されたあるべき地方自治体を求める声であり、運動だと私は思っています。したがいまして、国のあるべき姿が先にあって、その反射物としての地方分権ではないと私は考えております。こういう立場から参考人に伺いたいと思います。  最初は、機関委任事務制度の問題です。  これは既に皆さん方も、それぞれ若干のニュアンスの違いはございましたと私は感じたのですが、御存じのように法律上の建前は、国と地方自治体は対等、平等ということになっています。しかし、この制度があるために地方は国家行政組織法上の国の下部機関となって国の指揮監督を受けることになっているわけです。私は、皆さんもお話があったように、究極的にとかいろいろございましたが、廃止すべきという話は大体共通ではないかと感じました。  そこで、皆さんにお聞きしたいのですが、廃止するためには法案にしっかり明記すべきではないかと私は考えているところです。といいますのは、かつて整理合理化一括法案で二年間に一割という機関委任事務を減らしましたけれども、その後またふえ続けたという事実があります。したがって、廃止法律に明記するということが必要だと思います。それについて、兼子先生は別な角度からお話が既にございましたので、兼子先生を除くお三方に御意見をお聞かせ願えればと思います。
  63. 宇野收

    宇野参考人 今穀田先生のお話は、先ほどから大分いろいろ議論もいたしたわけでありますが、要は、原則廃止、例外残すというお考えだと思います。思いますが、しかし、例外がいかにも複雑にわたっておって、容易にその整理がつかないという現状があることも事実でございます。  したがって、整理合理化という意味合いの中には廃止は当然入っておりますが、しかし、残ってくるものをどうするかということの検討が実は非常に大きな問題でありまして、いわゆる機関委任事務という形で残すのではなくて、どういう制度にして残すかということも含めてやらなければいかぬという現状を踏まえまして申しておるわけでありますから、甚だ徹底を欠くではないかという仰せはございますでしょうが、そういう方向で着実に進んでいくという方向をとりましたというふうに、私ども答申はそうなっております。今の法案の御検討もそういう点を御検討になっておられるかと思います。
  64. 川島廣守

    川島参考人 ただいまお尋ねの問題でございますが、今も宇野参考人からお話がございましたように、私ども民間政治臨調といたしましては原則廃止ということを申し上げたわけであります。したがって、今回の法案で申しますれば、整理合理化その他所要の措置をとる、こうなっておりますので、その中に当然廃止というものが含まれておる、かように理解をしておるわけであります。
  65. 成田頼明

    成田参考人 この問題につきましては、いわゆる廃止をした後どうするかというような問題を考えなければ、方向づけとしても誤った約束を国民にするということになると思います。実際にこれを本当に廃止するためには、単に機関委任事務に関する自治法の規定を削るというだけでは足りないわけでして、やはり五百何十に及ぶ法律を全部総まくりで変えなければならない。その場合には、廃止した後、それではどういう仕組みにするかということを当然検討しなければならないわけでありまして、これは大変な作業になるというふうに思うのですね。  そういった意味で、私は、究極的には廃止に反対でございますけれども、これからの分権推進委員会なり、あるいは分権推進計画の中で、その点はいろいろな角度から検討されるべき問題であろうというふうに思っております。
  66. 穀田恵二

    穀田委員 ありがとうございました。  続いて、じゃ、二つ目に成田参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど参考人から御意見ございましたように、地方分権については多くの方々がそれぞれの立場から持論を展開している。ただし、そういう場合に、地方分権という場合、欠かせない条件というものがあるのじゃないか。その点はどういうふうにお考えなのか。やはり地方分権の中心は地方自治の拡大というところになければならないと私は考えているのですが、その辺のところをお聞かせ願えればと思っています。  そして、先ほどお話しありましたように、意味合い、内容におきまして、三つの傾向についてお話がございました。特に、二番目にお話がありました受け皿分権論ということで言及がございましたが、私もそういう点について、拝聴いたしまして、本当に大切な御意見だなと思いました。つまり、地方への権限移譲の前提として、先ほどお話があったように、その権限を活用できるだけの行政能力だとか財政能力を持ったあるべき自治体を想定して、そういう自治体をつくるために現行市町村の合併などを求める意見だと私も思うのですが、それはちょっとデメリットが大きいというお話がございました。  私もそう思うのです。ですから、二つ目に、そのデメリットのあたりについてもう少し詳しくお話しいただければと思います。
  67. 成田頼明

    成田参考人 私は、地方分権というのはやはり国から見た立場というふうな発想だという批判もあるわけです。そういう観点から、先ほどお触れになったように地方主権とか、逆に富山県の知事は地方集権というような言葉を使われているわけですね。  私は、やはり地方分権というのは、究極は団体自治と住民自治という意味で、地方自治を確立するということとイコールだというふうに実は考えておりまして、分権の方策というものもそういう方向に向けてやはり考えなければならないというふうに思っている次第であります。ですから、分権というのは、どうもいろいろな意味で、意味を混交されて使われているというのは、かえって問題を誤ることになるのではないかというふうな気がするわけです。  それから、受け皿分権論で、先ほど市町村の合併とか府県合併とか道州制という話が出ましたけれども受け皿論というのは、これは実はシャウプ勧告のころからやられているわけです。シャウプ勧告というのは、昭和二十五年でありますけれども市町村優先で事務を自己完結的に配分をする、三段階にそれぞれ固まった事務をそれぞれ配分して行政責任なり能率なりを発揮させようということだったと思うのですね。  ついては、それでは現在の市町村は小さ過ぎるからやはりもっと大きくならなければならないというので、昭和二十八年から三十一年にかけて、いわゆる昭和の大合併が行われたわけであります。ところが、肝心の事務の移譲の方は実現しなくて市町村の合併だけが行われてしまったということでして、当時渋々合併した地方自治体から見ますと、裏切られたということになるのじゃないかと思うのですね。  それで、受け皿分権論というのは、そういう過去の経験から見ましても、やはり第二次的な議論でありまして、まず権限をおろす。それでは、その権限をうまく使って住民のためになる行政をするためにはどうすればいいかというところで初めて第二次的に受け皿論というものが出てくるというふうに考えられるのじゃないかと思うのです。  私は、先ほどの御質問にもございましたけれども市町村合併についていろいろ研究会、地方制度調査会でもかかわってまいりまして、幸いこの法案を通していただいたわけでありますけれども、やはりここでもバランス判断が非常に必要だというふうに思うわけでして、確かに日常生活圏と行政区域とは一致しておりません。しかし、同時に他方では、住民の共同意識それから地域の連帯意識、これはアイデンティティーという言葉で表現できると思いますけれども、これがやはり地域民主主義の基本だと思うのですね。それを下手に水膨れの自治体をつくるということになりますと、そういう共同意識さえも壊れてしまうということになりますから、地方自治という立場からいいますと、それは非常に大きな問題じゃないかというふうに私は思っているわけです。  そこで、本当に住民が、今度は一緒に直接請求制度を入れましたけれども市町村長や議員は望んでいなくても住民が望んでいるという場合には、やはり住民の意向によって、合併したいところは合併していくという方が一番いいのではないかということで、いわゆる平成の大合併というものを国が音頭をとってすることはすべきじゃないというふうに考えて、先ほど宇野会長からもお話がございましたけれども、そういう立場で今度の市町村合併答申をした次第でございます。
  68. 穀田恵二

    穀田委員 引き続いて、もう一点だけ質問をさせていただきます。  今お話がありましたように、まず権限をおろす、それを活用するということでございましたが、私はその場合に、結局のところ、財源の問題というのは、権限財源ということで、極めて大事だと思います。大体これまでにも機関委任事務を団体委任事務にするという国から地方への権限移譲があったことはあったのですね。ところが、それに伴う財源については必ずしも明確ではありませんでして、財源手当てをした場合でも地方交付税で財源措置をするというのが従来の方法でした。今後もこの方法が踏襲される可能性は強いと私は見ております。こういう交付税で措置するという財源手当てについて、どう思われるのか。  また、本来、基本的には地方の歳出に見合った国から地方への税源自身の移譲が必要だと私は思っています。その点は、参考人としての御意見をお聞かせ願いたいし、どのような税が適当であるかという具体的な考えがございましたら付言していただければと思います。
  69. 成田頼明

    成田参考人 私は財政の専門家ではございませんけれども、やはり地方公共団体に自主的な財源を付与するという意味で、地方税を拡充していくということは非常に大事だと思うんです。ただ、これは、御承知のように、日本全土の中の格差が非常に大きいわけでして、大都市は、それはそれなりにそういう自主財源を与えられることによって、地方消費税を与えられることによって潤うということになると思いますけれども、現在、千九百もあると言われます地方の過疎市町村の場合には、そういう措置ではとてもこれは切り抜けられないわけですね。  そこで、どうしてもやはり交付税というものが大きな財源にならざるを得ないというふうに思うんですけれども、ただ、これは、交付税につきましても、現在非常に細かい算定基準で、補正をしたりしてやっていますが、やはり町村にとっては人口よりもむしろ面積というものを重視してくれないか。日本の国土の八割は山であるわけです。町村の面積というものは都市の面積よりはるかに広いわけですね。そういう面積要件というものは余りカウントされていない。そういう点を直してくれないかというふうな要望もあるわけでございます。  ですから、これは地方税源の充実と交付税、両者相まって一歩ずつ財源確保するということにしていかなければならないわけですけれども、実際は、先ほどお話ございましたように、地方分権が迷惑だと言っているのは、やはり国庫補助金を整理されると困るということだと思うんですね。  私は、国庫補助金は、機関委任事務より以上にいろいろな形で国が監督するそのよりどころになっているというふうに見ているわけでして、これを一般財源化するということは、ぜひ大事なことだというふうに思っております。そのためには、交付税の比率なども国の税制全体の中で上げていかなければならないというふうに思うんですね。  ただ、これに対しては各省庁が、交付税に入れるのはいいけれども、交付税に入れられると、自主的に地方自治団体で決められるので、自分らの行政分野がどれだけ充実するということの保障はない、こういうふうな反対もあるわけでありまして、もう少し地方交付税制度そのものもやはり見直していくということが必要だろうというふうに思っております。
  70. 穀田恵二

    穀田委員 では、最後に兼子参考人にお伺いしたいと思います。  先ほど御意見の際に役割分担のところでお触れになりましたし、また、上乗せ、横出しという問題が先ほどのところでございました。私もその点について若干質問したいと思うんです。  今の国の実際の地方自治体に対する関与といいますか、それは、例えば開発指導要綱の例などのように、何度もこれは通達文書を出しまして、それで地方自治体が乱開発を防ぐためにいろいろつくっているという開発要綱は、大体全国で四十数%あるんじゃないかと思うんです。それぐらいたくさんつくられています。そして、自治体が自主的に条例や要綱などを定めており、そして環境保全のために努力しているわけですが、それが国が気に入らないということで、自治省と建設省が一緒になって通達を出すとか、九三年にもまた建設省が通達を出してやめろとか、こういうふうなことが間々あります。  ですから、こういう現実をそのままにしておいて幾ら地方権限移譲しても、その権限自治体で有効に活用される保障が全くないことになるんじゃないだろうかと思うんです。したがいまして、活用しても、国の、先ほどあった許容の範囲内だけということになりかねない。  私は、そういう意味からいって、この国からの関与なり介入というものを規制する意味で、委員会でも提起したのですが、一つの方法として、国から出される通達については、何を根拠とする通達なのか、それぞれの通達に明記することが必要じゃないかなということを一度提起したことがございます。そういう意味で、国から地方への介入や干渉について規制する具体的な考えがありましたら、お聞かせ願いたいということが一つです。  それから二つ目に、先生は情報公開の問題をずっと、著作もおありですから、私は、例えば分権推進委員会をつくった場合の議事の公開といいますか、そういったものも本来必要じゃないだろうか。例えば、そういう文言は今度の法案の中には書かれていませんし、しかも、委員会のところでいいますと、推進委員会意見を聴取することができることになっていますけれども、積極的に住民の方から、住民自治の主体者の側から発言をしていくという制度的保障というのは、どうも見えないんですね。  ですから、私は、情報公開との関係で、そういったことなんかも実際に、本来そういった情報は国民のものだということからしますと、オープンにするということと、それから、住民の側からの意見を入れる、そういう特別な体制を保障していく、担保していくということが、できれば必要じゃないかなというふうに思うんですが、その辺の御意見をお聞かせ願えればと思っています。
  71. 兼子仁

    兼子参考人 まず第一点の方でございますが、国の自治体に対する関与を縮小していくべきであるという、これは分権推進法にも書かれることになっており、推進委員会推進計画の中で、これまでの各行政分野における国の関与のあり方を調査、監視されていくということが重要であろうと存じます。  ただ、この点は、法的には、先ほどの機関委任事務がこれまで大変多かったことのあらわれでもありますから、その機関委任事務問題が当然かかわっていくでありましょう。  自治事務につきまして、団体事務とも言われますが、法律自治体事務であるものについて、国の法令の、特に解釈、運用の面での通達等による国の関与ですね、これは既に地方自治法二百四十五条の行政指導、国、各省から自治体に対する行政指導の権限行使としての通達でありましても、いわゆる指導通達でございますから、法的拘束力は本来ない。  関連して、自治体の側に関係法令の新しい解釈の権限というものも、本来あるはずなんでございますね。ですから、これの運用実態についての調査、監視というふうなテーマになってこようかというふうに考えております。  それから、この機会にちょっと申し上げさせていただきたいことがございます。それは、国、各省はもとより霞が関がセンターですけれども、全国各地方地方支分部局、いわゆる地方出先がありますが、この各地方支分部局は、近時相当に地元の府県やあるいは市町村と連携して行政をやっていくという実態も目立ってきたように思われるわけですね。でありまして、国、各省がそうした国の関与といったようなことを再検討される場合に、地方支分部局の職員の人たちの実感を霞が関にもっと寄せてもらうようにするといったことも重要ではなかろうかと思います。  実は、一九六五年に地方行政連絡会議法という法律がつくられていまして、各地方ブロックにその会議が置かれているはずなんですが、これは余り開かれていないかのように聞いております。ですから、そういうものも大いに今後活用されていくべきでしょうし、先ごろの自治法改正で、広域連合の中の協議会に国の地方行政機関の代表が各地域代表とともに入るという定めもございますから、私はそういう関連もただいまの論点に関連するのではないかと存じております。  それから、推進委員会の公開の件でございますが、もちろん、推進委員会会議の公開も問題の余地はあろうかと思いますが、議事録の公開性が情報公開としては当然のテーマでございましょう。それも私は重要と存じますけれども、やはり地方分権は、先ほどの地方六団体あるいは各地域の生活者、住民考え方を反映していただくという必要も大きいですから、地方公聴会などが開かれたりする、その内容の公開という方がより第一次的には重要ではないかと考えております。
  72. 穀田恵二

    穀田委員 ありがとうございました。
  73. 笹川堯

    笹川委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、御多用中のところ御出席の上、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後六時開議
  74. 笹川堯

    笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  ただいま議題となっております両案について質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。今井宏君。
  75. 今井宏

    今井委員 質疑をさせていただきますが、一般質疑の最終バッター、こういうことでございます。  私も、自分のテーマとして、地方分権が今こそ必要なときであり、実践をしていかなければならないとしみじみ感じているわけであります。日本近代化のスタートとした明治維新が中央集権のスタートである、そのときであるという認識をするならば、まさにこの平成のときの大維新は分権システムへ変えるときだろう、こういうふうに思っているのです。  余談になるのでございますけれども分権がなぜ必要かと考えたときに、日本を代表する文化というのは何かな、歌舞伎であり能であり、お花であり茶道であり、これが実は全部明治維新以前なんですね。  中央集権、西欧諸国に追いつけ追い越せ、経済オンリーに来たその反動として、残念ながら明治維新以降日本を代表する文化が育たなかったということを僕が言いましたら、いや、今井君、そうは言うけれども、カラオケがあるよと言うのです。カラオケだ、カラオケしかない、こういう指摘を受けた方があるのですが、これは、やはり分権のときに、各地域でこれまた日本を代表する文化のみならず産業まで起きているわけですから、それ以降の集権システムというのはやはり功罪半ばするわけでして、ここで思い切ってダイナミックに決意を固めて分権型にしていかなければならないとしみじみ思うのです。  第二点としては、やはり行政改革が叫ばれておるわけでございますが、地方分権こそ最大の行政改革である。中央省庁の統廃合のみならず、最大の行革は分権にある。  さらに第三点としては、最大の政治改革になる。利益誘導型の批判を受ける今の政治のありようというものを分権型にすることによって、政治改革、信頼の置ける政治の確立になる、そして行政の確立ができる、そういう三点から改めて分権必要性を感じているところでございます。  それでは、御質問をさせていただきたいと思うのですが、先日、野田聖子理事の方からありましたね、陳情、県会議員のときに何遍も来て、これは分権すればそんなことしないで済むよと。当然だと思うのですね。私も首長やっておりまして、いろいろなことを感じているのですが、一つだけ申し上げたいと思うのです。国からの関与の問題でございますが、ケースワーカーの問題をちょっと取り上げてみたいと思うのであります。  御案内のように、社会福祉主事がケースワーカーと呼ばれて仕事を行っているわけであります。これは地方公務員がやるわけですが、その職務としては全国的に国の事務を行う仕組みに実はなっておるわけでございます。そして、身分だとか学歴要件がありますから、試験に合格しないとその仕事には従事できないということで、地方側の人事配置上、大変不都合も生じておるわけでありますし、十分なサービスが行えない、こういうところもあるわけでございますが、とりわけ障害者福祉対策をちょっと例に挙げてみたいと思うのであります。  高齢になりますと、疾病やけがなどが原因となりまして体にさまざまな障害が起こってくることが多いわけです。高齢者社会への対応は障害者の多い社会への対応でも当然のことながらあるわけでございます。  例えば、中でも、障害のある部分の身体機能を補ったり、あるいは日常生活を容易に送るための制度として、身体障害者福祉法に基づく基幹的なサービスとして補装具交付制度があるわけなんでございますが、この交付を受けるわけです。例えば、補聴器だとか義肢だとか車いす、これらは各障害の程度によって厚生大臣の定めた種目、型式、価格によって交付されるわけでございますが、障害の特殊性などによってこの厚生省の告示による基準では合わない場合があるわけです。  そうしますと、これは厚生大臣と協議をして、承認を得て交付することになっていますから、そのために大体六カ月程度かかっているのですね。こんなもの、なぜ厚生省の承認、協議が必要なのか。地元の、地域のわかっている、その障害の身近な職員が、そこの首長が判断すればいいわけでございまして、事ほどさようで、この種の問題というのはたくさんあるわけでございます。あえてその事例を申し上げたわけでございます。  さて、機関委任事務を含めてでございますが、先ほど午前中、参考人皆様は全員そろってこの機関委任事務については廃止方向で御意見陳述がございました。例えば宇野会長は、概念は改めるべきであると。それから川島参考人は、原則として廃止だと。成田先生は、究極的にはこの制度概念廃止するべきであると。それから兼子先生は、地方自治の本旨に沿いがたい制度であり、廃止するべきだと。参考人の皆さんがそれぞれこの機関委任事務制度廃止、こういう方向で御意見陳述があったのは、長官あるいは大臣ももう既に御報告があったかと思うわけであります。  そこで、御質問させていただきます。この委員会でもう何度も議論されてきているところでありますが、改めて、閣法で言うところの地方公共団体の執行機関が国の機関として行う事務の整理及び合理化の意味するところをぜひいま一歩踏み込んで、参考人意見も踏まえて、そして過日三月二十四日、私とのやりとりで、議論の結果、機関委任事務制度というものを廃止することの結論も場合によってはあり得る、こういうふうに長官は私に答弁しているわけでありますが、さらに踏み込んだ答弁を期待して御質問にさせていただく次第であります。
  76. 山口鶴男

    山口国務大臣 お答えいたします。  御質問にお答えする前に、たまたま群馬県が地方分権に熱心で、機関委任事務の整理に関して考え方を出したら、中央省庁から呼びつけられていろいろ文句を言われたというような御指摘がございまして、そういうことを承知しているかと。それでは知事に聞いておきましょう、こうお答えしておきました。知事に早速その旨を確かめました。  そうしましたら、県の係官が中央省庁に呼ばれて、一体どういう意図かということを尋ねられたということはあると言っておりました。しかし知事は、私は群馬県の県民の皆さんに選ばれた知事であって、あくまでも群馬県民のために私としては仕事をするつもりであるので、決して中央からそういうお尋ねがあっても私は意に介しておりません、このようなお話があったことをこの際御披露申し上げておきたいと存じます。それが私は民選知事としては当然の姿であろうというふうにも思っている次第であります。  さて、機関委任事務制度をめぐります議論につきましていろいろお尋ねがございました。この問題が極めて重要なテーマであるということはよく認識をいたしております。  機関委任事務につきましては、個々の事務について見直しを行い、整理合理化推進することにいたしておりまして、その結果、廃止すべき事務があれば廃止することは、これは当然であるというふうに思っております。そういう意味も含めまして、議論の結果、機関委任事務制度そのものについてこれは廃止すべきだという結論が出まするならば、それはそれにかわる制度というものを考えるということは当然であろうというふうに認識をいたしている次第であります。  ただ、一口に機関委任事務と言いましても、例えば、何回もお答えしておりますが、国政選挙の執行でありますとか旅券の発給事務でありますとか、あるいは戸籍の事務など、国の事務として残らざるを得ないものもこれはやはりあるわけでございまして、この制度あり方について一体どうするのかという議論も、これはどうしても必要なものであるというふうに考えております。
  77. 今井宏

    今井委員 時間が限られておりますので、大臣、大変恐縮でございますが、結論をちょうだいしたい、こういうふうに思っています。  それでもまだ、この廃止に私はこだわらざるを得ないわけであります。とにかく、地方に主権があるんだ、こういう認識をまず持つ必要があると思います。そして中央には、今まで以上にもっと大きな責任があるし、対外的にも国際的にももっともっと責任を果たして大切な仕事をしてもらうためにも身軽になる必要があるんだ、こういうふうに考えているのですね。  地方に主権があるんだ、そのために、国内問題については、権限財源も、場合によっては人間も移譲するんだ、こう基本的に考えたときに、法案の中に廃止の文言を入れて、その地方自治の本旨に基づく基本姿勢を明確にする、それがとても実は大切ではないかと考えているのです。  廃止の視点から一たんスクラップして、それから今大臣のおっしゃる必要なものをビルドしていく、これと、いわゆる整理合理化する、もうスタートが違うのですね。だから、その視点というのが大事なもので、ぜひこの法案にそういった修正なり文言を入れるということはとても大切だと思いますが、いかがですか。
  78. 山口鶴男

    山口国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、五百六十二ございます機関委任事務、それぞれ精査をしていけば、これは国の事務としてやる必要はないというものも当然出てくるでありましょう。また、この事務自治体事務としてやったらいいじゃないかという結論の出るものもあるだろうと思います。しかし、これは国の事務として残すべきだというものもあると思います。  その場合、国の出先機関を全国各地につくるなどということは行革の精神に反することでございますので、それでは、その制度を一体どうするかという議論は当然あってしかるべきだというふうに思う次第でございます。  私どもとしては、機関委任事務を残そうと思ってこの法案を出しているわけではありません。思い切った整理合理化をやるべきであるという気持ちで、皆さんと同じ気持ちでこの法案を提案しているということで御理解をいただきたいと存じます。
  79. 今井宏

    今井委員 私が恐れておりますのは、今までがそうでしたから余計心配しているわけでありますが、分権計画ができました、作成できましたよ、だけれども、結果的には中途半端なものができました、そして、それが固定してしまう。この大転換期に日本行政政治転換できあぐねた、それが中途半端で、どっちにとってもよくない。国にとっても地方にとってもよくない。国際的にもよくない。それが固定してしまうのを大変恐れているわけだからこそ、あえて申し上げるわけです。  次に、第四条について御質問させていただきますが、国と地方公共団体役割分担でございます。六団体は当然十六に限定しなさい、地制調でも限りなく限定的に、こう言っているわけですけれども、この四条の読み方であります。私ども衆法では、かなり不可欠、あるいは最小限の役割を明確にするということで、縛りをたくさんかけているわけであります。そういう理解でよろしいのか。  あるいは、先ほど、先日うちの同志の議員が言っておりますように、全国的な規模もしくは視点に立って行われると何から何までできてしまうじゃないかと、その心配の質問をしているわけでありますけれども、それにつきましては、大臣、どうなんでしょうか。限定的にはかけないけれども縛り込んだ、私ども衆法の趣旨というものを生かしてこれは読んでいいんだ、こういうふうに理解してよろしいか、確認させていただきます。
  80. 山口鶴男

    山口国務大臣 第四条に三つ列挙してございます。限定という言葉は使っておりませんけれども、当然国が行うべき事務、それから地方公共団体が行うべき事務というものを分けまして、とにかく、地域住民にかかわり深い事務につきましては地方公共団体が自主的に決定できるような、そういう仕組みをつくっていくことが望ましいという趣旨は、この条文で明確にしているというふうに認識をいたしております。
  81. 今井宏

    今井委員 そうしますと、まさに地方分権推進法でございますし、今までのように中央集権で、何から何まで国がかかわってしまうんだよということではない、こういうふうに理解してよろしいですね。もし違ったら違うように言ってください。  次に参ります。  その事務体制でございますけれども、先日の私とのやりとりの中で長官は、五年間のうち、少なくとも前半の早いうちに地方分権推進計画を策定していくんだ、こういう御答弁をちょうだいしたわけでございます。まあ機関委任事務、あの書いてあるだけでも五百六十二、それ以外にもたくさんあるんだそうでございますが、これらの機関委任事務すべてについて法的整合性を精査して問題点を解決している、こういう認識でよろしいでしょうか。
  82. 山口鶴男

    山口国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、五百六十二ある機関委任事務、当然、推進委員会において十分御議論をいただいて、そして勧告をなさる場合もあろうかと思います。計画作成の前には推進委員会から勧告をいただくことになっております。その後におきましても、意見を内閣総理大臣にお出しになる、あるいはその状況について監視をするということでございますので、私どもとしては、地方分権推進委員会の御意向というものを十分尊重して対処するということについては、従来お答え申し上げているとおりでございます。
  83. 今井宏

    今井委員 そうしますと、前半のうちに推進計画を策定するときには、その機関委任事務すべてについて法的な整合性あるいは問題点が解決している、こういうことですから、事務量は大変なボリュームがあると思うのであります。  ところで、その事務体制でございますが、しかも独立性を持った事務体制をどのようにお考えになっていらっしゃるのか。これまた前回、大変な仕事ですよ、だから五人、十人、三十人でできる仕事ではありませんよ、こういうふうに申し上げているわけですが、前回の質問よりもう一歩踏み込んで、法案を出す以上、こういう体制でこういうふうにやっていくんだよ、こういう計画なんだよということを当然お持ちの上で法案を出していると思いますので、誠意のある御答弁をお願い申し上げたい、かように思います。
  84. 山口鶴男

    山口国務大臣 たびたびお答えいたしておりますように、地方分権推進委員会は極めて重要な役割を持つものでございます。したがいまして、その事務局も当然それにふさわしい事務局を構成するということは当然のことであろうと思います。  法案成立後、委員会の発足に向けまして具体的には検討することになると思いますが、国会における御議論というものを十分踏まえまして、もちろん簡素化というものを旨としなければならぬことは当然ではありますけれども委員会の任務を補佐する上で最も適切な人材を配置する、委員会の業務に支障のない体制を確立するということについては、当然なさなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  85. 今井宏

    今井委員 簡素化を旨とする、まあ当然なんでございますが、これだけのものをやって、前回申し上げました初期投資は経費がかかるのです。それが結果的に、分権が進めばこれは行革になるわけですし、最小の経費で、税金で最大の効果を上げていくわけですから。それを、行革の時代だからといって初めからちびることによって、中途半端になったら元も子もないのですね。それなら全然やらぬ方がいい。結果としてよくなることというのは幾らでも事例がございますものですから、ぜひ取り組んでいただきたい、こういうふうに思います。  そこで、本来ならばその用意がされていると思いますけれども事務体制の全体のイメージの指針が大臣からされないというのは大変残念なんです。大変長いキャリアを持っている大臣、ここで、どうなんでしょうか、どの程度のイメージなんですか。数百人のイメージなんですか、それとも数十人のイメージなんですか。そのぐらいのことはちょっと、もうやらなければならない仕事の内容というのはわかっていますし、どのぐらいだというのは、事務量はもう専門家がついているからわかっているはずなんですね。どういうふうに私たち理解したらよろしいのでしょう。
  86. 山口鶴男

    山口国務大臣 第二次臨調におきましても、また行革審におきましても、聞きますと、発足いたしましたときの事務局というものはそんなに大勢の体制ではなかったそうであります。しかし、具体的にこの審議を進めていきますと、調査もしなければならぬ、あるいは各地区のあるいは各階層の意見も聞かなければならぬということで、次第にスタッフの数をふやして、そして活動が最も盛んな時期には相当な大世帯の事務局ということになる。しかし、最終段階ではまた、今度はこの答申の取りまとめという段階になればおのずから事務体制というものは簡素なものになるというような経過をたどったそうであります。  いずれにいたしましても、歴史的な地方分権推進するための事務局でありますから、私はその任務にふさわしい事務局というものを構成することは当然であるというふうに思います。  ただ、私も事務方のことには詳しくありませんので、臨調のとき何人ぐらいであったかとか行革審はどれぐらいであったとかいうことは存じませんので、必要とあらばそれらの問題については事務当局からお答えをさせて結構でございます。
  87. 陶山晧

    ○陶山政府委員 ただいま大臣から申されたことを補足して申し上げたいと存じますが、まず法案国会成立をさせていただきました後、私どもとしてはできるだけ早くその準備態勢をつくりたいと考えております。ただいま自治省とも御相談をしながらその検討を始めたところでございます。  なお、今井先生からどの程度の規模かというお尋ねでございますが、これはあくまでも委員会審議の状況に応じた、それを補佐するために必要な体制ということでいわば規模が決まっていくというふうな性格のものであろうと思います。  臨時行政調査会の例を大臣お挙げになりましたが、臨時行政調査会、随分前の話ではございますけれども、いわゆる一般の公務員、国家公務員、地方公務員あるいは民間会社からの派遣された職員等々すべてを含めまして、最大のピーク時で百名を超す人数が事務局に籍を置いていたと承知をいたしております。しかし、それは最大時でございまして、業務の状況に応じて事務局の体制、規模は変化をしていたというふうに承知をいたしております。
  88. 今井宏

    今井委員 機関委任事務は言われているだけでも五百六十二ですから、これは一本一本ヒアリングをするだけでも大変な時間だと思いますね。それから、二十省庁一人ずつ受け持ってみたって、何百本の法律をやるわけですからそう簡単なものじゃないということで、審議の状況に応じというのは大変不安を感じるんですよね。結果として、再三申し上げておりますように、徹底した分権になりはぐってしまったのではとんでもないことになる、こう考えておりますので、あえて申し上げているわけでございます。  それから、次に時限立法について、時間がありませんのでちょっとお聞かせいただきますが、当然監視の結果に基づきまして内閣総理大臣への意見提出委員会からあるかと思うのです。その場合に、監視の結果、地方分権が指針どおり進んでいない、時間の延長が必要である、このような期限に対する意見もある、このように理解してよろしいでしょうか。
  89. 山口鶴男

    山口国務大臣 これは地方分権推進委員会で作業をされまして進めることだと思いますが、私どもとしては、五年間という時限立法の間に全力を挙げて努力をいたしまして、歴史的な地方分権を達成していきたいということでこの法案を提案いたしておる次第でございます。  したがいまして、その後地方分権推進委員会がどのような御議論をし、どのような意見をお出しになるかということにつきまして、今私がこうなるであろうというようなことを予測してお話を申し上げるということはやはり控えさせていただきたいというふうに思います。私どもとしては、五年間の間に成果を上げる、そのために全力を尽くすという決意でありますことを御理解をいただきたいと存じます。
  90. 今井宏

    今井委員 そうあってほしいと思うのですが、実質四年半です。実質四年半で明治以来のシステムを変えるときに果たして大丈夫なのかなと大変不安を持っているのです。あと四年半後にどうなっているかということを私は注目を持って、その経過も含めて結論を注視していきたい、こういうふうに思っているのですが、当然、集中的にやるわけですから、計画的にやっていかなければできる話じゃありません。当然のことながら、年次計画、五カ年計画というものを策定して作業をしていくのでしょうか。
  91. 山口鶴男

    山口国務大臣 これも以前にお答えいたしましたが、五カ年間のうちの前半のうちに推進計画は策定をする、そしてそのためには地方分権推進委員会で十分なその前に議論をいただいて、計画の策定について勧告もいただくということであろうと思います。
  92. 今井宏

    今井委員 それでは、次の御質問をさせていただきますが、実はこれもどういう形の姿になるのかちょっとお聞きしたいのでありますけれども、いろいろな専門書を読みますと、分権をやると数百本、六百本とも七百本ともいう法律改正が必要だという御指摘もあるわけでございます。  そこで、地方自治法が今言うなれば地方自治体の運営その他の基本法的なものになっておるのですが、これを廃止して分権基本法みたいなものを制定しようというふうに考えていらっしゃるのですか。それとも、従前のように、機関委任事務でいえば一括整理法案整理合理化をするんですよ、これは全部今まで失敗してきているわけですが、そんなような形で一括して法律をぽんと出してしまうのか。それはどちらなんですか。  大事なことでございまして、地方自治法を改正程度にしてしまうのか、それを抜本的に改めて、仮称ですが地方分権基本法みたいなものをこしらえてやっていくのか。それに基づく数百本の法律まで改正していこうとしているのか、ただ単なる一括法でぽんとやってしまおうとしているのか、それをちょっとお聞きしたいのです。
  93. 山口鶴男

    山口国務大臣 今のお尋ねの問題こそは、地方分権推進委員会が十分な御議論をいただいて、そして内閣総理大臣に勧告もいただく、それを私どもは十分尊重をして地方分権推進計画を策定する、その際に、お尋ねの問題はどういう形になるのか、それが明らかになることだというふうに思います。  今そういった手続なしに、私の方でそれについてこうなるであろうというようなことを申し上げることは控えさせていただきたいと存じます。
  94. 今井宏

    今井委員 私も首長をやっていまして、その辺が先日の総理の御答弁も長官の答弁も、大変失礼なんですが、ちょっといま一歩、大原則ですから、方針ですから、時の政府がやはり方針を明確にして、そして委員会にゆだねていかなくてはいけないことだと思っているのですよ。すべて委員会にゆだねるのですよ。白紙とは言いませんけれども、白紙委任みたいな形であとは委員会ですよ。  では、委員会は何なんでしょうか。ここには国会というのがありまして、我々は国会で、ここでしか法律ができないわけでございますし、そしてそれに基づく推進法をこしらえているわけですから、ここで政府としてはこれこれこういう方針分権法を成立させてこういう事務局でこれを推進委員会にかけるのですよ、それで推進委員会で十分議論してもらうのですよというならわかるのですが、その前段がないのが非常に残念なんです。  時間の関係で、続けて御答弁の前に質問させていただくわけでございますが、間違えますと今までを本当に踏襲するだけになってしまうという心配をしているわけですよね。何のための推進法かという形にならないようにしてもらいたい、こういう意味で申し上げているわけであります。  地制調でも、今お話しの委員会の中では「地方行政に係る立法に対して意見提出することができる」、法律がどんどんできてくるわけですから、それに対して、これは分権にかなっているかかなっていないのか、そういうものを意見提出することができる。それから、民間政治臨調では「新たな立法に関して、この法律の定める地方分権基本理念にもとづき、審査する」、こういうことを提言しているわけであります。とりわけ地制調では、政府の、総理の諮問機関からの答申であります。  そういった新たなチェック機関がありませんと、規制緩和と同じで、今までと同じように機関委任事務も、一括整理法をやったってどんどんふえていくばかりなんですね。会議が多くなるばかりなんですね。それでは推進法ではなくなってしまうわけでございますので、その辺を心配しています。  新たな立法に対して、この委員会にどういう権限とどういう仕事をさせるのか、それをお聞きしたいと思います。
  95. 山口鶴男

    山口国務大臣 お答えいたします。  これはもう前段の御質問についても、法律で明記しているわけでございまして、第八条に「地方分権推進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、」と。  ですから、あくまでも地方分権推進する、そのために、「地方分権推進に関する基本方針に即し、講ずべき必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を定めた地方分権推進計画を作成しなければならない。」これが政府の責任だということを明確にしているわけでございますし、その地方分権推進計画作成のための具体的な指針を地方分権委員会は内閣総理大臣に勧告するというわけでございますから、あくまでも地方分権推進する、そして前にもお答え申しましたが、衆参両院における地方分権推進国会決議、これがまさに国権の最高機関たる国会の、最高の意思なのですから、それに沿って政府が事柄を進めるということはもう当然のことであるというふうに認識をいたしている次第でございます。
  96. 今井宏

    今井委員 時間が来ましたので終わりにいたしますけれども、いずれにいたしましても、そういう方針政府の方でまだはっきりしていない。それから、五百本の法律といっても、五年で、一年間百本ずつ法律改正していくわけになりますからね。今、年間かなりの勢いでこの国会法律ができるわけですから、それもチェックしていかなければならぬ。大変なことなのでございます。  ただ、私が言いたいのは、冒頭申し上げましたように、集権で、日本を代表する文化すら育たないような社会、これを大転換していかなければ二十一世紀は日本は危ない、こういうふうに思っております。そういう意味では、大きな決意をお互いに持ちながら、この問題、大変重要で難しい問題だと思いますけれども、お取り組みを心からお願いさせていただく次第でございます。  失礼なことを申し上げましたけれども、どうもありがとうございました。
  97. 笹川堯

  98. 畠山健治郎

    ○畠山委員 議題となっております地方分権推進法並びに地方分権推進に関する法律案につきまして、これまで本委員会で慎重に審議をしてまいりましたし、昨日は地方公聴会、本日は参考人意見陳述をいたしまして、審議も終盤になりました。  こういう観点から、論点となりました幾つかの問題につきまして、与党を代表いたしまして、両大臣のお考えを確認するという観点から御質問させていただきたいというふうに思っております。  地方分権推進するに当たりましては、国と自治体との新たな役割分担の明確化は必須条件とも言うべきことだと思っております。これに関する法第四条の規定は地方分権推進委員会によってさらに具体化するものと考えますが、政府においては、今後の政府提出案の作成に当たりましては、本法案第四条の規定の意味を積極的にとらえ、国の活動を自己規制することが必要だと思います。特に自治省においては、設置法の規定からいたしましても、本法律の意義が十分生かされるよう、他の省庁に配慮を求めていくことが重要と考えますが、自治大臣の御所見を承りたいと存じます。
  99. 野中広務

    ○野中国務大臣 御審議をいただいております今回の法案では、国と地方公共団体役割分担につきまして、国は、国際社会における国家としての存立にかかわる事務等、国が本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体は、地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担っていくこととされておるものであります。  このような基本的な考え方に沿いまして具体的に権限の移譲等を推進していくわけでございますが、国と地方公共団体分担すべき役割がおのずから明確になってくるものと考えております。  したがいまして、自治省といたしましても、地方自治に影響を及ぼす法令案や地方公共団体の負担を伴う法令案につきましては、適宜的確に関係行政機関に対しまして意見を申し出ること等に努めてまいっておるところでございますが、今後とも、地方分権推進法の意義が十分生かされますように他の省庁に配慮を求めていくことが重要な課題であると考えておるところでございます。  地方分権推進に最大限努力をしてまいりたいと考えております。
  100. 畠山健治郎

    ○畠山委員 次に、地方分権推進するに当たりまして、国と地方自治体の新たな役割分担の明確化は必須の条件とも言うべきものであろうかと思います。これに関する法第四条の規定は、地方分権推進委員会によってさらに——重複いたしました。失礼いたしました。  今国会政府提出法案のうち、機関委任事務に関しては、緊急失業対策法を廃止する法律によって一つは減ることになったと思います。ところが、電線共同溝の整備等に関する特別措置法あるいは被災市街地復興特別措置法では、逆に二つふえるということになったのではないだろうかというふうに思います。  このように、機関委任事務に関する問題は、そう簡単には片づけられない問題を含んでおるというふうに言ってよろしいかと思いますが、これをなくするというような観点からすると、まだまだ難しい問題が山積しておるのではないだろうかというふうに理解をいたしております。  そこで、お伺いいたしますが、本法第五条に規定する「その他所要の措置」には、機関委任事務制度廃止と、廃止する場合の具体的な措置の検討が当然含まれるものと理解したいというふうに思いますが、明確にお答えをいただきたいと存じます。
  101. 山口鶴男

    山口国務大臣 法案の第五条におきますところの「その他所要の措置」云々という内容につきましては、御指摘のとおり、政府における検討の結果、機関委任事務制度廃止について具体的結論が得られる場合には、これを廃止することを含むものであるというふうに考えております。
  102. 畠山健治郎

    ○畠山委員 法律の期間を五年と規定したことは、この期間内に政府地方分権の実効ある推進を国民に積極的に約束したものとして私は高く評価をいたしたいというふうに思っております。それだけに、政府は限られた時間の中で本法律案を速やかに執行し、実のある成果を上げなければならないと存じます。  そこで、お伺いいたしますが、政府は、今国会中の法案成立はもちろんのことでありますが、地方分権推進委員会の早期の発足を図るべく、委員国会承認もやれるよう努力し、また、発足後は、積極的な調査審議による指針勧告をお願いするとともに、指針勧告が示されたならば、期間の前半を目途に国民に推進計画を示すことができるように政府は格段の努力を払うべきだと考えます。決意のほどをお伺いいたしたいと存じます。
  103. 山口鶴男

    山口国務大臣 今精力的に御審議をいただいておりまして、感謝をいたしております。  政府といたしましては、なるべく速やかにこの国会の御審議をいただきまして、この法案を今国会成立を期することは当然でありますし、さらに、成立いたしましたならば、内閣総理大臣が最も適切な方はどなたであるかということを十分検討の上で、衆参両院の御同意を得まして地方分権推進委員会を発足させる、今国会において御同意を得て発足させる、こういう手順でぜひお願いを申し上げたい、そのような決意でおりますことをまず申し上げたいと思います。  次いで、五年間に集中的な取り組みを行うことによりまして成果を上げようということを期待をいたしております。委員会におきましても、その点を十分踏まえまして適当な時期までに勧告をいただけるものというふうに考えております。  政府といたしましては、法案の考えに沿いまして、五年間の期間の前半に地方分権推進計画を策定いたしまして、委員会からの督励をいただき着実にこれを実施してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  104. 畠山健治郎

    ○畠山委員 地方分権推進内容をどれほど実のあるものにするかは、一に政府の努力も必要であるわけでありますが、さらには推進委員会委員の人選のあり方にも大きく影響されることは当然であろうかと思います。その場合、自治体意見を積極的に取り入れることが大切であろうかと思います。そのためには、これに十分配慮した委員の任命が必要と考えます。委員の任命に当たっての政府のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  105. 山口鶴男

    山口国務大臣 歴史的なこの地方分権推進するための地方分権推進委員会でございます。したがいまして、委員の人選につきましては、同委員会がその広範な任務を的確に果たしていくため、国、地方行政について高い見識を有する方をバランスよく配置する必要があるというふうに考えておる次第でございます。  本法案成立後、国会における御議論を十分参考にいたしまして、任命権者でございます内閣総理大臣が衆参両院の御同意を得られるような適切な人選が行われるであろう、内閣総理大臣は国権の最高機関たる国会の御同意をいただけるにふさわしい立派な人選をやっていただけるものというふうに考えておる次第でございます。
  106. 畠山健治郎

    ○畠山委員 推進委員会が十分な調査審議を行うためには、推進委員会事務局の体制整備が重要だと考えます。事柄の性格から十分な規模の人員配置と予算措置が重要だと考えますが、政府の御見解を承りたいと存じます。
  107. 山口鶴男

    山口国務大臣 御指摘のとおり、委員会事務局を置きまして、事務局長のほか必要な職員を配置をすることにいたしております。  事務局の具体的な規模、構成等につきましては、法案成立後、委員会の発足に向けて検討をしていくということになると思いますが、国会における御議論というものを十分踏まえまして、簡素を旨といたしますけれども委員会の任務を補佐するという重要な役割のある事務局でございますので、最も適切な人材を配置するなど、委員会の業務に支障のない体制を確立をするという立場で対処をいたすつもりでございます。
  108. 畠山健治郎

    ○畠山委員 論点の最後でございますが、推進委員会の調査審議に当たりましては、法第十五条の規定が積極的に生かされるよう、政府は配慮すべきであろうかと思います。仮にも、かつての行革審の調査に見られた各省庁の非協力的な態度は断じて許されないと思います。推進委員会に対する政府協力について決意のほどをお伺いさせていただきたいと思います。
  109. 山口鶴男

    山口国務大臣 委員が御指摘されましたように、かつて行革審が特殊法人の整理合理化について審議をする、そのために各省庁からのヒアリングを予定をした、ところが当時は各省庁において十分な協力が得られなかったという残念な事態があったということを私もお伺いをいたしております。  村山内閣におきましては、行政改革が最も重要な課題である、そしてまた、先ほど今井委員からも御指摘をいただきましたが、この行政改革政治改革の中で地方分権が最も重要なテーマであるということは、村山総理もしばしば強調しておられるところでございます。  したがいまして、御指摘のように、この法十五条によるところの協力委員会が各省庁に求めました場合、政府といたしましてはこれに積極的に協力をする。委員会からの説明の聴取や資料要求等が行われました場合には、政府としてこれに対して万全な態勢で協力を申し上げるということをいたしたい、かように決意をしている次第でございます。
  110. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ありがとうございました。  終わります。
  111. 笹川堯

  112. 冬柴鐵三

    冬柴委員 新進党冬柴鐵三でございます。閣法に対する締めくくり総括質疑の機会を与えていただきましたので、順次お尋ねをしてまいります。  まず、自治大臣にお尋ねをいたします。  国と地方役割分担について、地方六団体の意見の申し出や各地方公共団体の議会の意見書について重く受けとめるべきだと考えておりますが、所信を伺いたいと思います。
  113. 野中広務

    ○野中国務大臣 地方分権推進につきましては、昨年の九月に全国知事会を初め地方六団体から地方分権推進に関する意見の申し出がなされ、また、各地方公共団体の議会からは地方分権推進法早期制定を求める意見書が多数寄せられております。これらの貴重な御意見の中には、地方公共団体の自主性、自立性の強化を図る観点から、国と地方役割分担について言及されているものも見られるところであります。  自治省といたしましては、これらが地方自治法の規定に基づき行われたものでありますし、また、地方分権の担い手であり住民に直接接する立場にある地方公共団体側からの、現実の地方行政の経験に基づき提出されたものであることに思いをいたし、できる限り尊重すべきものであると重く受けとめております。  私といたしましても、今後とも地方分権を進めていく上で地方公共団体意見を十分踏まえ、地方分権実現に努力してまいる所存であります。
  114. 冬柴鐵三

    冬柴委員 総務庁長官にお尋ねをいたします。  第二十四次地方制度調査会の「地方分権推進に関する答申」を十分尊重すべきと考えておりますが、所信を伺います。
  115. 山口鶴男

    山口国務大臣 地方制度調査会におきまして地方分権推進に関しまして精力的な審議を重ね、昨年十一月に答申提出されたところであり、政府としてもこれを重く受けとめていかなければならぬと考えております。  このため、政府といたしましては、行政改革推進本部地方分権部会において、地方制度調査会地方六団体等の意見をも十分に聴取をいたしました。幅広い議論を行いました上で、地方分権大綱を策定したところでございます。このたびの地方分権推進法案はこの地方分権大綱に沿って立案したものでございまして、今後とも各方面の御意見を十分踏まえつつ、地方分権推進に積極的に取り組む決意でございます。
  116. 冬柴鐵三

    冬柴委員 自治大臣にお伺いいたします。  地方六団体の提言は国の役割として十六項目を列挙し、また、地方制度調査会答申は国の役割限定的なものにしていくべきだとしております。地方分権推進委員会の指針及び政府が策定する地方分権推進計画においても当然国の役割を明確にすべきと考えますが、見解を伺います。  また、その結果として地方が広く役割を担うべきと考えますが、あわせて御見解を伺います。
  117. 野中広務

    ○野中国務大臣 国と地方公共団体役割分担あり方につきましては、地方分権推進する上での基本となるものであると考えております。  お尋ねの地方分権推進委員会の作成する指針の内容につきましては、委員会の自主的な判断にゆだねられるべきものでありますが、御指摘の地方六団体の意見地方制度調査会答申、さらには本委員会を初めとする国会での御論議等を十分踏まえたものとなるように、私といたしましても期待をするところであります。  また、地方分権推進計画は、あくまでも地方分権推進委員会が勧告したこのような指針を尊重いたしまして、かつ地方分権推進法案の第二章に規定する基本方針に則して政府で作成しなければならないものであります。  ところで、国の役割の明確化につきましては、昨年十二月に閣議決定しました大綱方針の中で「国が本来果たすべき役割を重点的に分担することとし、その役割を明確なものにしていくものとする。」と明記しているところであり、本法案に規定されました基本方針もこの大綱方針を踏まえたものであります。したがいまして、地方分権推進委員会の指針や地方分権推進計画を通して、国が分担すべき役割が明確になっていくものと考えております。  また、国の役割の明確化とあわせまして、地方公共団体につきましては、地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うことを旨として、具体的な権限移譲等が推進されるものと考えております。
  118. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ちょっと間があき過ぎましたけれども、ただいまの同じ質問につきまして、総務庁長官見解を伺いたいと思います。
  119. 山口鶴男

    山口国務大臣 国と地方役割分担につきましては、国としては、内政に関する役割は思い切って地方自治体にゆだねまして、国が本来果たすべき役割を重点的、効果的に担うとともに、地方公共団体地域における行政を自主的、総合的に担うよう行政システムの変革が求められているものと認識をいたしております。  このため、昨年十二月の地方分権大綱におきましては、「国が本来果たすべき役割を重点的に分担することとし、その役割を明確なものにしていくものとする。」と明記しているところでございまして、本法案に規定された基本方針も、この大綱を踏まえたものであります。  地方分権推進委員会におきましては、本法案の基本方針に沿って十分審議を尽くされ、充実した内容の具体的指針を勧告していただけるものと期待をいたしております。政府といたしましては、委員会の勧告を最大限に尊重いたしまして、推進計画を作成する所存でございます。こうした地方分権推進委員会の指針や地方分権推進計画を通じて、国が分担すべき役割が明確になっていくものと考えております。  また、国の役割の明確化とあわせて、地方公共団体地域における行政を広く担い、企画、立案、調整、実施などを一貫して処理していくべきものと考えております。
  120. 冬柴鐵三

    冬柴委員 重ねて総務庁長官にお伺いをいたします。  地方自治の確立を図る観点から見れば、機関委任事務制度及び地方事務制度地方の自主性、自立性を阻害していると考えております。機関委任事務につきましては、五年後までにはすべてなくしてしまい、その結果として、地方自治法第百五十条、国家行政組織法第十五条を改正をし、その制度そのものをなくしていくべきだと私は考えておりますが、重ねて長官の見解をお尋ねをいたします。  また、地方事務制度につきましても、同様になくしていくべきであると私はかたく信ずるわけでありますが、長官の答弁をいただきたいと思います。
  121. 山口鶴男

    山口国務大臣 機関委任事務につきましては、政府として積極的に整理合理化推進することにいたしております。  事務自体の必要性を吟味いたしまして、不要と認められるものにつきましては事務そのものを廃止をする、また、事務自体の必要性の認められるものであって地方公共団体事務とすることが適当なものにつきましては、積極的に団体事務化を図ることにより機関委任事務としては廃止をしていくということになると存じます。また、最終的に国の事務として残らざるを得ないものもあると考えておりますので、機関委任事務制度そのもののあり方についても検討してまいりたいと考えます。  もとより、その検討に当たりましては、国会における御論議や各方面の御検討を十分踏まえて対処することは当然であります。検討の結果、制度廃止ということになれば、所要の措置を講ずることになる、第五条の「その他所要の措置」はこうした場合も想定した規定でありますので、御理解をいただきたいと存じます。  地方事務制度につきましては、臨調以来の経過や、これを廃止すべきとする地方制度調査会答申等、種々の御論議があることは承知をいたしております。同制度は、機関委任事務あり方とも関連する事柄でありまして、私としては、国と地方役割分担に応じて、当該事務の帰属あるいは職員の身分問題等、さらに具体的な検討を深めまして、その結果に基づきまして所要の措置を講ずべきものと考えておる次第であります。
  122. 冬柴鐵三

    冬柴委員 重ねて総務庁長官にお尋ねをいたします。  地方自治の確立を図る観点から、国の関与、必置規制の整理合理化をどのように進めていくのか、政府方針をお示しをいただきたいと思います。
  123. 山口鶴男

    山口国務大臣 地方分権推進いたしまして、地方公共団体の自主性、自立性を高めていきますためには、地方公共団体への権限移譲はもとより、国の関与、必置規制の整理合理化に積極的に取り組む必要があると認識をいたしております。  政府といたしましては、昨年末に閣議決定されました地方分権大綱に基づきまして、御指摘の国の関与及び必置規制につきましては必要最小限のものに整理合理化を図りますとともに、存置する場合におきましても、国の関与については、事前関与から事後関与にしていく、権力的関与から非権力的関与へ移行する等、これらの問題を対処しなければならぬと考えておる次第であります。必置規制につきましても、基準の弾力化をそれぞれの基本として、その整理合理化推進してまいりたいと考えております。
  124. 冬柴鐵三

    冬柴委員 では、次には自治大臣にお尋ねをいたします。  地方自治の確立という観点から、補助金等の整理合理化をどう進めていくのか、政府方針を示していただきたいと思います。
  125. 野中広務

    ○野中国務大臣 御指摘のように、地方分権推進地方自治の確立を図ります観点から、国と地方団体との役割分担を明確にしつつ、地方団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かな活力に満ちた地域社会実現を図るため、地方団体への補助金等の整理合理化を進めることが必要であります。  その整理合理化方針につきましては、地方制度調査会答申地方六団体の御意見をも踏まえ、今回の法案に先立って閣議決定いたしました地方分権推進に関する大綱方針で定めているところでありますが、具体的には人件費補助に係る補助金、交付金等の一般財源化等、さらに奨励的補助金等の基本的な縮減、また経常的国庫負担金等の対象分野の限定、また公共事業等に対する国庫負担金等の対象の限定と投資の重点化等を進め、真に必要なものに限定していくこととしております。
  126. 冬柴鐵三

    冬柴委員 最後に、総務庁長官にお尋ねいたします。  地方分権推進委員会の勧告につきましては、国会報告する必要があると我々は考えているわけでございますが、その点について御所見を伺いたいと思います。
  127. 山口鶴男

    山口国務大臣 審議会等の答申や御意見は、従来から、国会はもとより、広く一般に公表されてまいったところでございます。地方分権推進委員会の勧告の取り扱いにつきましても、国会における御論議の結果を十分尊重いたしまして対処いたしたいと存じます。
  128. 冬柴鐵三

    冬柴委員 法案につきましては、お尋ねすべきことは網羅的にお尋ねさせていただきました。  地方分権というのは、我が国が明治維新後、先進西欧諸国に追いつけ追い越せという観点から、戦前は富国強兵という一つの大きな、強大な国家目的のもとに、一つの、合理的と申しますか、働きをしてきたことは事実でありましょう。国は富んだと思います、強くなったと思いますが、その結果は、昭和二十年の敗戦ということで、その利益というものは国民に均てんされなかった、国民の幸せにつながらなかったということがはっきりしているわけでございます。  戦後、新憲法は、「地方自治の本旨」ということで、そういうことであってはならないという法体系を整備したものの、灰じんの中からこの日本を立て直し、そして経済の発展を一日も早く進めるという一つの国家目的のために、ある面からいえば戦前以上の一極集中、国家への権力の過度の集中がなされたように思われてなりません。  なるほど、五十年、いろいろな問題を抱えましたけれども日本の国は、世界の百八十カ国からに及ぶ国の中で、国民一人当たりのGNPは第一位、また世界のGNPの一六%を占めるという経済大国にはなりましたけれども、思い返せば、この国の繁栄が国民の豊かさの実感、潤い、温かさ、そういうものにはつながっていなかったように思うわけでございます。  最近の、豊かさの陰に潜む精神の荒廃というものは憂うべきものでありまして、二十一世紀の我々の子供たちにそういうものを譲り渡してはならないと思うわけでありまして、まさにこれにこたえる改革がこの地方分権であろうと思います。  所管される大臣の決意のほどを一言ずつ簡潔に伺いまして、私の質疑を終わりたいと思います。
  129. 山口鶴男

    山口国務大臣 明治維新後におきましては富国強兵、そして戦後におきましては富国ということをスローガンにして、確かに、財源権限も過度の中央集中という形で来たことは御指摘のとおりだと思っております。それが、今や時代の推移とともに大きな転換期を迎えているという認識も私、同様であります。だからこそ、衆参両院における地方分権推進国会決議もなされたというふうに認識をいたしております。  私どもは、この国会決議を基本にいたしまして、御指摘のとおり、時代に沿った改革地方分権を徹底して推進してまいりたいという決意でございます。
  130. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま総務庁長官からもお話があったわけでございますけれども、新しい戦後の地方自治法が制定されまして、やがて半世紀を迎えようとするこの節目に当たりまして、今回、地方分権推進の大きなうねりが出てまいりましたことを、私どもはその節目にあった者として感慨深く存じておるところでございます。  お互いに、この法案制定をされ、そして成立をし、さらに実り多い成果が得られますように一層努力をしてまいりたい決意であります。
  131. 冬柴鐵三

    冬柴委員 ありがとうございました。  終わります。
  132. 笹川堯

  133. 穀田恵二

    穀田委員 私は、この間、この法案の中身に対して、特に地方自治の確立という立場からいろいろ質問してまいりました。「地方自治の本旨」ということについて、とりわけ強調してきたところです。  今回は最終ですが、具体的な、そういう今起こっている国と地方自治体のかかわり合いの中で、そういったものが、先ほどありましたように、国の関与を縮小させる、また地方公共団体における自主性、自立性を高めるということになるんだろうかということについて、きょうは質問させていただきたいと思っています。  特に、前々回の質問で、私は、地方の自主性を尊重していく上で直ちに実行できる点として、通達行政の改善を提起しました。  毎年、かなりの数の通達が国から地方自治体に対して出されています。この通達のそれぞれについて、例えば、この通達は地方自治法二百四十五条を根拠とするものとか、どれを根拠にして出しているのか、明確に記載してはどうかと私は提起しました。ところが、答弁は、行政局長が行ったわけですが、一般論に終始をして、根拠を示すべきではないかということに対して、通達を出す根拠があるみたいな話であって、一般論に終始して、要領を得なかったわけです。  したがって、改めてそこから答弁を求めたいと思っています。
  134. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 地方公共団体に対する通達の話でございます。  これは先般も御質問がございましてお答えいたしましたが、そもそも、主務大臣が担任する事務の運営その他の事項について、地方団体に適切と認める技術的な助言とか勧告等を行うことができることが、これは地方自治法の第二百四十五条に規定されているところでございます。一般的には、国から各地方公共団体への通達は、この規定を根拠に行われているものと考えている次第でございます。また、特別に、個別法の規定においても助言、勧告等に関して規定しているものがございます。  そういう中で、通達についてどうするかということになるわけでございますが、一つの通達の中でも、個別法に根拠を置く事項と地方自治法第二百四十五条に基づくものというものが両方含まれるケースもあるわけでございます。どこまで具体的にこれが峻別できるかという問題が実はあるわけでございます。  いずれにいたしましても、そういうような中で、地方公共団体に対する通達につきましては、地方公共団体の自主性、自立性を尊重するという観点が十分配慮されなければならないというふうに考えておりまして、私どももこれまで努力してまいりましたが、これからもそういうことで努力をしてまいりたいと思っております。
  135. 穀田恵二

    穀田委員 ですから、今お話がありましたように、複数のものを根拠にしている場合というのはあり得ると思うのですね。それは私、認めるのですよ。  だから、例えば、今、二百四十五条というお話が出ましたが、きょうもその話、参考人から御意見が出まして、やはり二百四十五条というのは、「適切と認める技術的な助言又は勧告」とありまして、当然これは法律的拘束力はないわけですから、そういうものだということをはっきり出すことが必要だと私は言っているのですね。つまり、関与していく場合に、どうしてもそれをやらなくちゃだめよという感じになっちゃうと。  だから、今お話があったように、自主性を尊重するということになりますと、峻別できるものは峻別して出したらいいわけであって、どこまで峻別できるかというのは、今お話がありましたように複数の場合があり得る、複数だったら複数書いたらいいんじゃないかと私は言っているわけなんですね。だから、問題は、根拠を明確にしてきちんと指導なり通達なりというのを出すべきじゃないか。  ですから、それぞれの省庁からいろいろなものが出るわけですから、この際に、自治大臣の方から各省庁に、根拠が明らかにできるものは根拠を明らかにしてやってほしいというふうに要請してはいかがでしょうか。
  136. 吉田弘正

    吉田(弘)政府委員 二百四十五条で、地方公共団体に技術的な助言、指導ができるという規定があるわけでございますし、それから、個別法でも同様に、団体事務について勧告等に関して規定をしているケースもあるわけでございます。  いずれにしても、そういう技術的助言、指導について、この二百四十五条なりあるいは個別法に基づいて団体事務については通知が出されているわけでございますので、あえて区別をしなければならないというのもなかなか、それによってどういう面が出てくるのか、そしてまた、先ほど申し上げたように、きちっと区別できるかどうかという問題もあるわけです。  ただ、機関委任事務についてはまた別の体系がございますから、そちらの方での指揮監督ということがなされているわけでございます。  いずれにいたしましても、一般的な団体事務については、二百四十五条なりあるいは個別法の規定に基づいてやっているということになるわけでございます。
  137. 穀田恵二

    穀田委員 私がしつこく言っていますのは、どうも法的拘束力があるかのように事実上とられる可能性があって、実際はそういうものが下では起こっているから言っているわけですよ。それは皆さん御承知のとおりですよね。だから、私は、例えば省庁が所管している個別法を根拠にしています、あわせて、地方自治法上の二百四十五条を根拠にしていますというふうに書いたらどうだというふうに言っているわけなんですよ。極めて具体的に言っているわけなんですよ、僕は。そういうことだということなんです。  では、具体的に聞きますけれども、例えば行政指導の中身と関連して、地方自治体では、例えば宅地の乱開発を防ぐために宅地開発指導要綱をつくってきていますよね。今ではその数は、全市区町村の四三・三%、千四百五十自治体に上っています。ところが、建設省、自治省は、事あるごとに自治体の独自規制に対していろいろ、撤廃だとか骨抜きだとかということを迫ってきています。八二年には、自治省、建設省両省が通達を出して、要綱の行き過ぎ是正を指示しました。さらに、きょうは建設省を呼んでいませんからあれですけれども、最近では九三年の建設省の建設経済局長による「要綱の適切な見直しの徹底について」と題する文書も送りつけているわけなんですね。  きょうも参考人の御意見がありましたように、福祉の問題、町づくりの問題というのは本来それぞれの地方自治体独自でやるべきだということが随分出ました。そうだと思うのですね。ところが、その町づくりに関する基本問題、乱開発にかかわる問題について宅地開発要綱なんかを定めると、それについて、要綱の行き過ぎを是正しろとか、それから要綱の適切な見直しを徹底すべきだとか、こういうのがしょっちゅう出ているわけなんですね。これは、まさに地方自治体の自主性を尊重する姿勢ということにならないのじゃないか。  こういうふうな通達文書を出すというのは、まず第一に、何か法律違反があったのかということと、二つ目に、これは八二年の場合もそうですけれども、どうしてこれに自治省がかかわっているわけなんですか。だから、本来、自治省はそういうものを尊重して地方自治を統括して援助する、そういう所管の官庁なんだから、それは頑張りなさいとかいうのが筋であって、そういうものに対して一々文句を言うみたいなやり方というのはおかしいのじゃないか、そう思うのですね。だから私は聞いているのですね。大臣、どうでしょう。
  138. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 宅地開発指導要綱についてでございますが、この宅地開発指導要綱は、今お話もございましたように、乱開発の防止あるいは良好な都市環境の整備を目的として、地方公共団体がそれぞれの地域の実情を勘案しながら自主的な判断のもとに定めている行政指導の指針でございます。これは、各種の法令の補完をして、良好な都市環境の整備を図る上で一定の役割を果たしていると私ども認識いたしております。  しかしながら、その一方で一部の地方団体における宅地開発指導要綱につきまして行き過ぎが指摘されているところでもございまして、昨年七月の閣議決定、今後の規制緩和の推進についてというものにおきまして、自治省と建設省で共同でこの実態調査をする、それに基づいて、その結果を公表するとともに、共同の通知を発しまして地方団体に対して行き過ぎの是正を要請したところでございます。  これはあくまでも地方団体に対しまして行き過ぎた宅地開発指導要綱についての是正を要請しているものでございまして、今後とも地方団体の自主性を尊重しつつ、今回規制緩和の推進計画をつくりましたけれども、これ等も踏まえながら対応してまいりたいというふうに考えております。
  139. 穀田恵二

    穀田委員 自治大臣、どうですか。行き過ぎがあるというようなことを言って、結局は二回も三回も通達文書を出していく。しかも、今度の場合は規制緩和ということがありましたね。そういう形でそれはだめなんだというふうに言うのだったら、本当に地方自治体の自主性を尊重することにならないのじゃないですか。どうお考えですかしら。
  140. 野中広務

    ○野中国務大臣 今御指摘の指導要綱につきましては、あのバブルの全盛期にそれぞれ地方公共団体がよき環境を守りますために建設省及び自治省が一定の役割を果たす通達をしましたことは、私は、あの当時としてそれなりの役割を果たしたと思うわけでございます。  ただ、地方公共団体の中には、随分これに便乗して、そして非常に過度にわたったところもあるわけでございますし、今日的な状況から考えますれば、昨年の七月に閣議決定をいたしましたように、そのあり方についてそれぞれ地方公共団体がより見直しをされるべきであるという通達をしたことも適切な通達であったと考えているわけでございます。
  141. 穀田恵二

    穀田委員 どうも最初の方がまずわかりませんね。つまり、バブルの時代に起こってきている通達文書というのは、八二年に出しているのは、要綱の行き過ぎを是正しろと言っているのですよ。つまり、住環境を守るために要綱をつくって頑張りなさいという要請じゃないんですよ、通達じゃないんですよ。乱開発なんかを実際にとどめるために、住環境を守るために、安全を守るために、そういったことについて地方自治体がつくった内容に対して、それは行き過ぎだといって指導したからおかしいのじゃないかと私は言っているんですよ。  だから、私は、バブルの時代に適切な指導をしたのじゃなくて、バブルの時代にそういうふうな形で進行するものに対して地方自治体が、自分のところの町づくり関係があるのやさかいに、せめてこうしよう、そして住環境を守るために、安全を守るために頑張ろうと言っておった内容についてまで、それは行き過ぎがありますよというような話はまずいんじゃないかと言っているんですよ。
  142. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 行き過ぎというのはどういうことをとらえて申し上げているかということを若干説明させていただきたいと思います。  確かに、宅地開発指導要綱を設けます目的は、先ほど申しましたように、乱開発を防止するとか良好な都市環境を保持するということで設けておるわけでございます。  例えて申しますと、具体的に設けた要綱の中で、これだけの公園面積を宅地開発に伴って用意してほしいということを開発事業者に求める。その場合に、都市計画法あるいはそれに基づく開発基準によりますと、開発区域の面積の三%程度の公園面積を設けるというのが開発の基準でございますが、地方団体が設けた指導要綱によっては、その倍の六%以上で、かつ一人当たり三平米以上の公園面積を求めるというふうな要綱をつくる場合がございます。  こういたしますと、それに伴いまして当然宅地の価格が上昇してくるわけでございまして、やはり、都市計画法あるいはそれに基づく技術基準に基づいて一定の基準を、水準を示したようなものについて、それの倍を上回るような過度な負担を求めるというものについては行き過ぎというふうにして是正をお願いする。  あるいは、開発に伴って負担金を地方団体にいただいておりますけれども、それを今度は関連公共施設の整備に必ずしも充てるということがはっきりしていない、一般財源的な扱いになっているというものもございまして、これもやはり財政運営上は好ましくないだろうということで是正をお願いしているといったようなものを、私どもは一部の行き過ぎということで是正方をお願いしているということでございます。
  143. 穀田恵二

    穀田委員 それは、私も当時そういうことをやっていましたから知っていますよ。だけれども、明らかにそんなものにつきまして、跳びはねて極端に悪いというようなことを言っているわけではなくて、当たり前のことを、たまたまそういう基準を少し上乗せしているという程度の話ですから、それで土地の価格が三倍にもなったなんという例を実証しろというのは実際それは不可能なことなんですから、そんなことを言っているのじゃないのですよ。ただ、大臣がおっしゃったのは、バブルの時期にはそういうふうな是正内容が、つまり、そういう形で地方自治体がやったことに対してよかったと言っているのですか、どっちなんです。
  144. 野中広務

    ○野中国務大臣 それぞれ乱開発をやられていく上で、いわゆる一定の負担を求めていくようなあり方も、そのときの役割としてはそれぞれ役割を果たしたと私は申し上げた。  けれども、それに、便乗という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、特に一部の地方公共団体におきましては、のべつ幕なしに、また、先ほど総務審議官が申し上げましたように、基準を超えて負担を求めたり、あるいは面積をふやしたりしたところがあるわけでございまして、こういうものが長く続いて、結果的には、それがそれぞれ分譲価格や、あるいは一般の住宅でなく社会福祉施設等にも影響を及ぼすようになってまいったわけでございまして、それは当然、私はこの時期において是正されるのは正しいやり方であると考えておるのでございます。
  145. 穀田恵二

    穀田委員 それらも含めてきちんとそれは地域住民が判断するものであって、やはりそういうことについて一々、大きな極端な例の場合についてはいろいろと出されますけれども、上乗せ、横出しというのは少しでもやる努力を一々やるというのが実際なんですよね。そういうのは私はどうかと思うということを言ったのですね。  最後に、時間もありませんから、一つきょうの議論の中で、どちらかといえばこの推進法というのはある意味推進委員会設置法だという意見が随分出ました。私もそういう嫌いがこの法律自身は率直に言ってあるなと思うのですね。  そこで、この法案によりますと、地方分権推進委員会が指針を示す、それに基づいて総理が地方分権推進計画の案を作成し、閣議の決定を求める、それを国会報告するという構図なんですね、全体のあれは。  そうしますと、先ほどありましたように、私どもこの委員会の議論を通じて一つはっきりしているのは、この委員会の中に、学識経験者、識見、見識豊かな人物という一般論ではなくて、どちらかといえば、地方自治に精通する方々ないしは地方自治のそういう経験者というのを入れるべきじゃないのかというのが大体ここの中での共通した意見だったと思うのですね。しかももう一つは、地方六団体並びに地制調の意見も大体そういう内容として書かれておるわけですね。したがいまして、これはある意味では全体の考え方になっているのじゃないかなと思うわけです。  ですから、したがって、地方自治だとか地方財政の専門家やないしは地方自治の代表が選任されてしかるべきだと思うのです。そういうことを含めた委員会意見を尊重するというのはどうかというのが一つです。  もう一つは、最後になりますが、第十五条の中では、推進委員会の側から地方自治体に対して資料の提出意見の開陳等の協力を求めるという権限は付与されています。きょうも議論になったのですが、参考人のところでも、こういう住民参加というのは第七条に書かれてある、法律上は。したがって、これが大事だという意見も出ました。その中で、とりわけ住民意見をどう入れていくのかということがやはり大事なんじゃないかという御意見も出されて、例えば公聴会だとか含めていろいろなことが出ました。  ですから、その公開性の保障と、意見をどう幅広く、住民自治を保障するそれ自身の角度でやっていくのかということについては極めて大事な問題だと思うのですね。それは私、この間主張してきました地方自治の本旨に基づいてということを言いたかった。結論的に言えば、今度の推進委員会設置法ともいうべきものの中身の中で、その二つがどう保障されるかということについてだけお聞きしたい。総務庁長官お願いしたいと思います。
  146. 山口鶴男

    山口国務大臣 地方分権という言葉を使った法律は二つだと。その最初国会等移転に関する法律で、これは私が提案者で成立をさせていただいた法律でございます。  その際の御議論にもあったのですが、この場合は調査会をつくるということだったわけですが、この調査会は、やはり国会等の移転という大きな歴史的な事業でありますから、当然国民の皆さん方の理解と協力が必要だ。そして、調査会において国民の皆さん方の御意見を承る、例えば公聴会等の機会を設けることは当然だろうし、また、審議内容についてはどうするかということは調査会自体がお決めになる事柄であることは、もう委員もよく御理解いただけると思います。  しかし、これだけ重要な問題であるし、国民の理解と協力が必要であるならば、この調査会の審議内容について国民の皆さん方に知っていただくように調査会が配慮することは当然ではないだろうかということも当時の御論議の際にお答え申し上げました。  したがいまして、この地方分権推進委員会におきましても、御指摘の点は、これは推進委員会委員会の規則としてお決めになることだと思いますけれども国会でそういう御議論があったということも念頭に置かれて、そして、この論議の中身を国民の皆さん方に知っていただくような手だては当然講じていただけるだろうと思いますし、また、委員会自体が国民の皆さん方の声を聞く機会を設けるということも、これまた委員会自体の問題ではありますが、委員会として御配慮いただける問題であろうというふうに考えておる次第であります。  人選につきましては、これは国、地方行政、財政というものに識見をお持ちの方々をバランスよく任命するということは当然であろうと思います。そういう角度から、任命権者であります内閣総理大臣が十分人選を行い、しかも、地方分権推進国会決議をいたしました衆参両院の御同意を得て任命するということでございますから、当然、委員の御指摘のような点は十分勘案されて委員が任命されるものであろうというふうに私は思います。
  147. 穀田恵二

    穀田委員 終わります。
  148. 笹川堯

    笹川委員長 次回は、明十四日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時二十八分散会      ————◇—————   〔本号(その一)参照〕     —————————————    派遣委員福島県における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成七年四月十二日(水) 二、場所    ウェディング エルティ 三、意見を聴取した問題    地方分権推進法案内閣提出)及び地方分    権の推進に関する法律案冬柴鐵三君外三    名提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 笹川  堯君       野田 聖子君    山崎広太郎君       畠山健治郎君    田中  甲君  (2) 現地参加議員       穂積 良行君    木幡 弘道君  (3) 政府出席者         総務庁行政管理         局管理官    福井 良次君         自治大臣官房審         議官      中川 浩明君  (4) 意見陳述者         福島県知事   佐藤栄佐久君         福島県市長会会         長         福 島 市 長 吉田 修一君         福島県町村会会         長         東 和 町 長 服部 健一君      ————◇—————     午後一時開議
  149. 笹川堯

    笹川座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院地方分権に関する特別委員長笹川堯でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いを申し上げます。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、内閣提出地方分権推進法案及び冬柴鐵三君外三名提出地方分権推進に関する法律案の両案につきまして審査を行っているところでございます。  当委員会といたしましては、両法案審査に当たり、地方自治に携わる皆様から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議を催しているところでございます。  御意見をお述べいただく方々には、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いをいたします。  まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきましては、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  次に、議事順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者方々から御意見をそれぞれ二十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うことになっておりますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、本日御出席方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党・自由連合の野田聖子君、新進党山崎広太郎君、日本社会党・護憲民主連合の畠山健治郎君、新党さきがけの田中甲君、以上でございます。  なお、現地参加議員として、穂積良行君、木幡弘道君が出席をされております。  次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  福島県知事佐藤栄佐久君、福島県市長会会長福島市長吉田修一君、福島県町村会会長東和町長服部健一君、以上の方々でございます。  それでは、佐藤栄佐久君から御意見お願いいたします。
  150. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 まず初めに、本日、衆議院地方分権特別委員会地方公聴会がここ福島県で開催され、意見陳述の機会を与えていただきましたことに対しまして、厚く御礼を申し上げます。また、今通常国会における法案審議など、地方分権推進に向けた国会関係各位の御尽力に深く敬意を表する次第であります。  さて、地方分権推進は、時代の大きな要請となっておりまして、昨年十二月の「地方分権推進に関する大綱方針」の閣議決定や法案国会提出など、最近の地方分権をめぐる動向を見てみますと、戦後五十年を経て、まさに地方分権推進元年と呼ぶにふさわしい地方自治の大きな転換期を迎えようとしている感を深くいたしております。と同時に、これまで臨時行革審地方制度調査会からの答申など、地方分権必要性について幾度となく叫ばれながら具体的な進展がなかった経緯を思いますと、今この時期にこそ、今後の地方分権推進のための確かな足がかりを築いていく必要があるものと考えております。  本日の公聴会において、地方行政に携わる者の生の声をお酌み取りいただき、今後の法案審議に少しでも参考にしていただけることを御期待申し上げる次第であります。  それでは、地方分権に関する基本的視点につきまして、私の所見を述べさせていただきたいと思います。  明治以来百数十年にわたり、我が国は、中央集権的システムのもとに発展し、先進国へのキャッチアップや高度経済成長を実現することができました。しかし、社会成熟化し、人々の価値観の多様化も進む中で、住民一人一人の暮らしや生きがいといった視点に立って、これまでの効率性重視の画一的な施策展開を見直す必要があろうと考えております。つまり、真の豊かさが実感できる国民生活実現するために、これまでの中央集権的なシステムを改め、地域みずからの創意と主体性が最大限に発揮できる分権型の社会システムへ転換する必要があろうということであります。  また、中央集権化により諸機能の東京一極集中が進み、結果として地方圏の活力低下を招いているところでありますが、地方分権推進が、東京一極集中の諸問題、すなわち人口過密問題、住宅問題、環境問題などの東京プロブレムを地方に拡散させるものではなく、国民一人一人が真の豊かさを実感できる生活を実現するものでなくてはならないと思います。  このような考えのもとに、真の地方分権実現に向けては、その担い手である地方がビジョンを提唱し、先導していくことが必要であるとの認識に立ちまして、昨年七月に取りまとめたものが、お手元にお配りしております「地方分権・うつくしま、ふくしま。宣言」と題した福島県の地方分権推進ビジョンでございます。この「地方分権・うつくしま、ふくしま。宣言」では、「住民を基本とした”新市町村主義”」と「新たなパートナーシップの構築」という二つの基本的視点と、福島県みずからが地方分権推進役となるべく四項目の宣言、さらに具体的な七項目の分権推進方策を掲げております。  それでは、この二つの基本的視点を中心にお話をさせていただきたいと思います。  初めに、「住民を基本とした”新市町村主義”」とは、住民の視点に立って、住民を基本として国と地方を通じる役割分担見直してみよう、そして、住民にとって必要な行政サービスは住民にとって最も望ましい行政主体が提供すべきであるとの基本に立ちまして、地方分権の担い手は地方であることを明確にすることであります。またその上で、行政役割分担は、住民に最も身近な、住民の意向が反映されやすい市町村を中心に整理されるべきであり、このような視点のもとに権限財源等の再配分がなされるべきであるということであります。  特に、住民の視点に立ってということに関連して参考までに申し上げますと、福島県では、先般、地方分権につきまして一般県民を対象にアンケート調査を行いました。その結果、地方分権推進について全般的に高い関心度が示され、地方分権を進めるべきだと思うかとの設問に対しましては、九四%もの人が地方分権を進めるべきであると答えております。つまり、九四%、言いかえればほとんどすべての住民分権推進派であるということであります。  また、分権推進すべき理由としては、これは複数回答でございますが、「地方の特性を活かして、地方の活性化を図る必要があるため」七八%とする答えが最も多く、次いで、「行政サービスは地域の実情に沿って提供されるのが望ましいため」六六%、また、「住民意見が反映されやすい行政運営が望ましいため」六一%との答えが続いております。  地方分権を論じる一部の声として、分権を唱えているのは住民ではなく地方行政に携わる人だけではないのか、今の住民意識地方分権を進める土台になっていないのではないか、分権中央の官と地方の官との綱引きにすぎないのではないかとの意見も聞かれるところでありますが、ここで改めて、地方分権推進を求める強くかつ確かな住民要望があることを申し述べておきたいと思います。  福島県の地方分権推進ビジョン「地方分権・うつくしま、ふくしま。宣言」が、分権推進のための基本的視点として、まず、「住民を基本とした”新市町村主義”」を掲げ、地方自治の真の担い手は住民一人一人であり、住民の視点に立って分権を考えるべきであるとしているゆえんもここにあるわけであります。  次に、分権推進のための基本的視点の二つ目であります「新たなパートナーシップの構築」とは、「住民を基本とした”新市町村主義”」をベースとしまして、国、都道府県、市町村役割分担を明確にし、上下関係ではなく、パートナーとしての関係を確立し、それぞれが自立的な行政主体として主体的な意思を持ちながら協調していこうとするものであります。  特に、国と地方役割分担については、国は、国際社会において我が国に求められている役割、責任が高まっている状況を踏まえまして、外交、国際経済、国際貢献等の対外政策に関する分野、全国的視点、規模で行われることが必要不可欠な施策や全国的な統一が望ましい基本ルールの制定等の分野などを、より重点的、限定的に担うべきであると考えております。  一方、地方は、国が担う役割以外の内政分野を担うことを基本として、市町村は、住民に最も身近な行政主体として、保健、福祉、教育、文化などの住民生活に密着した分野、個性的で魅力ある地域づくりのための地場産業振興、住宅、都市計画など地域の特性を生かせる分野など、多様な分野で自主的、自立的な施策を展開していくべきであると考えております。  また、都道府県は、地方における総合的、広域的行政主体として、広域道路、河川整備などの広域的行政分野、高度な技術的、専門的な行政分野、県土の総合開発等地域政策立案機能の分野など、広域的な地方行政需要への対応や、市町村の補完、支援、調整機能を担うべきであると考えております。  特に、都道府県と市町村との関係について申し述べれば、都道府県と市町村のそれぞれの役割、機能が有機的に作用し合うことによって、例えば、規模の小さな町村に対しましては、県による人材派遣や事務の受託などの支援体制をとることなどによって、現在の地方の二層制はよりその効果を発揮することになるでありましょうし、また、当面、現在の二層制を前提として地方分権推進していくことが望ましいと考えております。  また、このような国と地方の新たな役割分担に基づき、これまでの軽微で個別的なものではなく、大幅で分野包括的な権限移譲と、その裏づけとなる地方税財源充実強化を望んでいるところであります。  次に、地方分権を論じる際に何かと論点になる地方受け皿能力について申し述べたいと思います。  これまで、地方分権に対する慎重論としまして、市町村の規模の格差など、地方受け皿能力の不足を指摘する声がありました。また、道州制や連合制などの制度論議も、受け皿能力をカバーする観点からなされてきた面もあったと思います。しかし、私は、地方分権受け皿として十分な実績も能力も有しているものと見ておりますし、制度論議受け皿能力云々ということにばかりとらわれていては、地方分権の新たな段階を切り開いていくことはできないものと思われます。  そこで、この「住民を基本とした”新市町村主義”」及び「新たなパートナーシップの構築」という新たな視点が必要であり、このような考え方のもとに地方分権推進されることを強く望みたいと思います。  幸いに、昨年暮れの「地方分権推進に関する大綱方針」や、今回審議の対象となっております二つの法案にも、私どもの「住民を基本とした”新市町村主義”」及び「新たなパートナーシップの構築」という基本的な視点や、独立性を持った地方分権推進機関の設置などの提言趣旨は、表現の違いこそあれ、おおむね盛り込まれているものと受けとめておりますが、このような分権推進に関する地方の立場からの考えに改めて耳を傾けていただきたいと思うところであります。  ちなみに、地方受け皿能力ということで、ややPRじみた話をさせていただきますと、一昨年福島県では、本格的なコンピューターサイエンスの教育、研究を目的とした会津大学を開学させました。会津大学は、コンピューター理工学という最先端の専門分野に取り組む我が国初の大学であり、教授陣も十四カ国から第一線の研究者を招き、外国人教員が約六割を占めるという、まさに世界に開かれた大学でございます。  会津大学には、地域特性を生かした教育、研究、地域の産業、文化への貢献といった点で各方面から大きな期待が寄せられておりますが、私は、地方だからこそこのような特色ある、地域の産業、文化に貢献が期待できる大学をつくれたものと自負しております。  もっとも、これまで、網の目のように張りめぐらされてきた中央集権的システムのもとで、地方中央に依存し、みずからの自立と責任を回避してきた面も否定はできないと思います。したがいまして、地方分権推進を阻む中央への依存体質を地方みずからの手で断ち切る必要があり、分権の担い手としての地方の当事者能力をさらに高めていかなければならないと考えております。  このような考えのもとに、昨年度福島県では、自立した施策展開を図るため、政策形成機能や総合調整機能の強化を大きな目的の一つとして、大規模な行政機構改革を実施したところであります。  また平成四年には、県と市町村の共同研修施設でありますふくしま自治研修センターをオープンさせました。このセンターでは、恵まれた環境のもとに、県と市町村の職員が一体となった研修が行われておりまして、その密度の濃い研修カリキュラムは高い評価をいただいているところですが、時代の潮流変化に即応した企画能力や創造的能力を有する人材を育成するため、研修体系の充実を図りながら、さらに県内自治体職員の能力開発を推進してまいりたいと考えております。  さらに今年度は、分権時代にふさわしい簡素で効率的な行財政運営の確立を図るため、新たな行財政改革大綱を策定し、行財政全般にわたる見直し、改善を行っていくことといたしております。  このように福島県では、分権の担い手としての当事者能力の向上に努めているところでありますが、福島県のみならず地方全体としても、地方分権受け皿体制の整備を図るため、さまざまな形で積極的に取り組んでいる実績、姿勢にぜひとも御理解をいただきたいと思っているところであります。  次に、機関委任事務について申し述べたいと思います。  機関委任事務については、一説には都道府県の事務の約八割を占めると言われる中で、地方の自主性、主体性を阻害し、行政責任をあいまいにしていることや、国と地方との経費負担区分が不明確であるために結果的に地方に財政負担を強いていること、さらには、議会の関与に一定の制約があることなど、地方の自立的な行政運営の弊害になっているところであります。  このような機関委任事務に関する問題点はこれまでも再三にわたり指摘されているところであり、特に、昭和六十一年に第二十次地方制度調査会により、機関委任事務整理合理化を一層推進すべき必要があるとの答申がなされ、これを受け、同年、機関委任事務整理合理化法が制定されたところですが、具体的な改善は一向に進んでいないのが実態であります。  このため、本県が提唱しております「地方分権・うつくしま、ふくしま。宣言」においても、分権推進のための具体的な方策の一つとして、機関委任事務を原則的に廃止し、その権限財源とともに速やかに地方に移管すべきであると主張しているところであり、機関委任事務の抜本的整理合理化に向けて、具体的かつ効果的な方策が講じられる必要があると考えております。  さて、これまで地方分権についていろいろと申し述べてまいりましたが、この席で一番強調させていただきたいことは、冒頭に申し上げましたように、本年を名実ともに地方分権推進元年と呼べるような年にしなければならないということであります。このために、地方分権基本理念分権推進方策の基本事項を定めた法律が、今通常国会において速やかに成立することが強く望まれるということであります。  戦後、シャウプ勧告において行政事務配分の三原則が示されて以来、これまで地方分権についてさまざまな議論や提言が数多くなされてまいりました。そして、今地方分権を求める声は時代の大きな潮流となっております。今こそ、地方分権に関する議論の長い積み重ねの成果を生かすときであると考えております。どうか、国会の強いリーダーシップと賢明な政治的判断によって、地方分権基本理念分権推進方策の基本事項を定めた法律が一日も早く制定され、実効性ある分権推進方策が効果的に展開されることを強く望みたいと思います。  最後に、福島県としても、分権の担い手としてのさらなる能力向上に努め、真の地方分権実現に向けて積極的に取り組んでいくことを改めて申し上げて、私からの意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。
  151. 笹川堯

    笹川座長 ありがとうございました。  なお、着席のまま発言していただいて結構ですということを事務方からお知らせしてありますので、どうぞ御起立をいただかなくて結構でございます。  次に、吉田修一君にお願いいたします。
  152. 吉田修一

    吉田修一君 吉田修一です。  それでは、座長のお言葉に甘えて、座らせていただいて発言をさせていただきます。  まず感謝申し上げますが、私は、市長という職を拝命いたしまして足かけ十年になるわけでございますが、きょうのように国会議員の諸先生方が、地方分権の問題について、この一番末端で行政を預かっている我々の声を地方に出向いて直接聞こう、こういう催しで本県、特に福島市においでになったというのは、全く感動でございます。厚く御礼を申し上げます。  今知事さんから地方分権の大綱についての力強いいわばアピールがあったわけでございますので、私は、むしろ具体的な問題の中から地方分権必要性について意見の開陳を申し上げたいと思います。  まず、福島の農業でございますけれども、農林水産省におきましては新農政プラン、穂積先生、専門でございますのでいろいろ御指導いただいているわけでありますが、私は、実際に農業生産者といろいろお会いしまして、日本列島、ひょろ長い列島でございますが、農業形態においては明らかに東北型農業と近畿型農業、いわば全く構造の違う農業があるのではないか。  したがいまして、穂積先生特に言っておられるわけでございますが、福島のような山林原野が多い、また田畑があっても非常に急斜面の坂の多いところに分布しているようなところで、新農政プランにうたわれている農地の集約化による大規模農業、非常にいい発想なのでありますが、どうも福島のような地域においては、大規模農業というのは若干そぐわないのではないだろうかというのが一つでございます。  したがいまして、福島は、幸いに春のサクランボ、あるいは桃、ナシ、ブドウ、リンゴ、そして非常に品種改良している米、非常に多品種展開の農業でありますから、せっかくおつくりになった新農政プランではありますけれども、東北型の立地特性というものをもう一度十分検討されまして、小さな圃場であっても、付加価値の高いそれぞれの圃場に対して、もう少し地方の声を率直に国会の中に反映させて、新しい東北型の農政、新しい多品種展開型の農政というものを強力に推し進めていただいたらどうだろうか。これが農業面の第一点でございます。  また、第二点は、これまた農業と観光の連携になるわけでございますが、福島は、昨年のような天気であるならば、本当は一年間の米の生産量というのは、年間五十五億程度までに恐らく生産額は上がったのではないかと思います。  にもかかわらず、たび重なる減反、米価の引き下げ、いろいろな開放されている国際経済の中におけるところの米の問題でありますから、きょうはその問題には余り触れませんが、いずれにしても、少ししょんぼりしている農業生産者に活力を与えよう、また、何となくマンネリ化している観光に新しい発想の転換をやろうということで、中学校時代社会科で習いましたマニュファクチャー、農村マニュファクチャー、手づくりでございますので、大規模の機械化の導入というのは無理なのでありますけれども、四季折々に生産される果物というものを主原料にして、しょんぼりしている農業生産者にもう一回、桃のジュースのフレッシュなものを、搾りたてのジュースをみんなに飲ませる、もぎたての完熟した水蜜桃、この皮をむいてがぶっとかぶれるような、そういう新鮮な桃の提供、あるいはリンゴのスライス、こういったもので今手づくりの農業のマニュファクチャー村をつくっております。  しかし、残念ながら、農業のそういう新しい試みと観光の新しい試み、つまり農林水産省のものと通産省のものはなじまないということで、これは決して補助金をちょうだいしたい、補助記載の新たなマニュアルをつくっていただきたいというのではなくて、地方にせっかく芽生えている新しい分野で、幾つかの省庁にまたがる分野であっても、国においてそれを統括して、地方の活性につながるものであるならばあえて垣根を越えて、その地方の声を聞いて国みずからが温かい手を伸べる、こういうことがますます地方にとっては必要になってくるのではないだろうかということが、第二点でございます。  第三点は、非常に小さなことで恐縮なのでありますが、それぞれの市には計量検査という大事な業務がございまして、特に奥さん方にとっては、あの高い牛肉を皿ばかりの上に載っけて、自分が三百グラムと言ったのが本当に三百グラムきちっと計量されているかどうか。  その計量のベースになる基準器というのがあるのでありますが、これはどういうことなのか、長い歴史の中で、基準器というのはつくば市にしかございません。したがって、全国の計量行政にかかわるところの職員というのは、自分の計量器を、地方の一つの尺度でありますから、それを担いでつくばまで行って、そして自分のそれぞれの民間関係の指導をしている基準器に間違いがないかどうかというものをはかってもらうのであります。  北は北海道から南は九州、沖縄まで、はかりを担いだ全国の行政官がつくばにずっと集まるさまというのは、恐らく絵にかいたら大変百鬼夜行のような姿になろうと思いますので、これはぜひ私どもの知事さんに、この基準器は、知事さんのところに行くと基準器があるから、福島県は佐藤栄佐久知事さんのところに行って、よろしい、これでオーケーだという太鼓判をもらえばそれぞれの消費者行政とかなんかはできるよと、これは早速やっていただきたい。地方分権という大なたを振るわなくてもすぐできることでございますから、その辺からひとつ地方に、知事さんに権限を与えていただきたい、こんなふうに考えているわけでございます。  また、働く人々のために、そこでいろいろな芝居を見たり、自分自身が演劇をやったり、古典落語のまねをしたり、あるいは二階、三階ではいろいろな研修ルームがあったり、体力の増強のための、一生懸命ペダルをこいでも前に進まない自転車とか、いろいろあるのでありまして、それは地方では非常に喜ばれているのでありますが、問題は、中央でお考えになっている、地方の一般市民あるいは働く人々の福祉増進のためにせっかくつくっていただく立派な建物のわきに、何でかんでマニュアルとしては駐車場をつくらなくてはならない、二百台の駐車場というのは必須義務だ。  まあ私どもも背に腹はかえられませんから、その指定を受けるときには、大変恐縮なんでありますが、結構でございます、そのようにいたしますと言ったのでありますが、建物がどんどん出てまいりますと、役所の方の側がそういうアクションを起こすと、民間方々というのは非常にシャープでございまして、今までのクローズしていた店を取っ払ってしまって、月極駐車場、つまり月決めの駐車場あるいは一時間幾らの営業用の駐車場を、私どものお役所の指定によってつくった福祉施設の周辺に個人の、いわば民間の営業が始まるわけなのであります。  民間がそういう遠路集まってくるいろいろな利用者のために御自分の駐車場を開放して、もちろん百円なり百五十円なりみんな市民は払いますから、何もあえてそういう民間業者を圧迫して、高いお金で財政投資してお約束どおりの二百台の駐車場をつくらなくてもよさそうなものではないか。大体一般的に考えますと、そういうことは我々の時代地方においては常識なんでありますが、中央においては、一回きちっとつくったマニュアルというものの枠をなかなか崩したがらない。  したがって、そういう点についても、これもまた地方分権という名前にしては余り小さいのでありますが、地方分権というのはそれほど大きなところから崩していくのではなくて、みずから、身近なところからなし崩し的にずっと崩していって、やはり地方の実情に合ったものを指導していく。そして、国は、うたわれているように、外交問題であるとか、今度の阪神・淡路大震災のような、ああいうでっかいことについては中央政府はばっちりやるから心配するな、みずから、身近なことはあなたたちでやってくれ。私なりに解釈をいたしますと、どうもこれが地方分権の真髄の一番身近なところなのではないだろうかな、こんなふうに考えております。  大体十分しゃべりましたので、余りしゃべってしまうと今度服部さんの番がなくなりますし、恐らく知事さん、後でまた補足的にもっと身近なことをおっしゃりたいと思いますので、あえて五分ずつ知事さんと服部さんにお分けしまして、地方の実情を申し上げて、私は十分間で終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  153. 笹川堯

    笹川座長 ありがとうございました。  次に、服部健一君にお願いをいたします。
  154. 服部健一

    ○服部健一君 私は、福島県町村会長でございまして、安達郡東和町町長の服部健一であります。よろしくお願いいたします。  では、座らせていただきます。  これから地方分権の問題について意見の発表をさせていただきます。お二方の御意見と大分ダブるところがあろうと思いますが、御了承いただきたいと思います。  我が国は、戦後半世紀にわたり、経済の発展と国民生活の安定を最大の課題として行政運営が行われてまいりました。その結果、所得水準も向上し、経済面では一定の評価を受ける成果を上げましたが、その反面、多くの国民は真の豊かさを実感できず、また、首都圏への一極集中や地域経済の空洞化、環境破壊等の諸問題が顕在化しております。  我々町村長は、かかる現状を打開するとともに、住民の多様な価値観に対応して地域の特性を反映した町づくりや、住民の声が迅速かつ的確に反映できる行政を行えるような、抜本的に権限財源が移譲される地方分権実現することが、二十一世紀に向かっての国民の目標であると確信をいたしております。このために、我々地方団体関係者は、長年にわたり地方分権推進について要望をしてまいりましたが、本年二月二十八日の閣議で地方分権推進法案を決定して、今国会提出される運びとなりましたことは、地方分権推進が具体化に向けて大きく前進したものであり、まことに喜ばしいことであります。  地方分権の主役は、地方自治体であります。国から地方への大幅な権限移譲を進める一方で、国と地方を通ずる行財政構造住民意識、行財政需要の実態にまで踏み込んだ受け入れ準備を整えることが急務であると考えます。そして、これと並行して、中央地方にまたがる政治改革を積極的に実施し、地方自治の根幹にかかわる制度改革には幅広い観点からの論議が必要であることはもちろんのことであり、一歩一歩着実に実現させることが大切なことではないかと思います。  我々町村長といたしましては、地方分権実現は、内閣や国会などの手にゆだねるということではなく、みずからの至上のテーマとして、人材確保事務能力の向上など、名実ともに独立する自治体としての新しい町村のあり方を打ち出していかなければならないものと存じております。  地方六団体で組織しております地方分権推進委員会がまとめました報告書でも、地方自治の責務を果たすためには、「より足腰を強めて「自立する」ことが肝要である。」とみずからに向かって強調しております。そして、「「自立的な地方行財政システム」の確立」とともに、「国に依存しつつ地方は責任を回避するというような「甘え」の姿勢を自らが正し、まず、地方が率先して、「地方分権」の推進について具体的な提言を行う必要がある」とも指摘いたしております。  このようなことから、これから地方分権推進の理念及びその方策等について、若干の御要望を申し上げたいと存じます。  地方分権基本理念は、地域の特性に応じた個性ある地域づくり及び住民福祉のより一層の質的な増進を図るため、住民自治を強化し、地方公共団体の自主性及び自立性を最大限尊重した行財政システムを構築することであると考えます。  以上のような理念に基づき、まず、市町村と国、県との関係に関する基本的な考え方は、個性豊かな魅力ある地域社会をつくるためには、多様化した住民ニーズを的確に把握できる立場にある、最も身近な行政主体である市町村住民に身近な行政を処理することが必要であります。このため、市町村が、町づくり住民生活に関する総合的かつ多様性を有する行政を、住民の意思を反映しながら自主的、自立的に、しかも自己完結的に行う主体となり得るようにすべきであります。  一方、国、県は、市町村では処理できない広域的な行政需要への対応や、時代の変化に即応した市町村行政の補完、支援等の機能を発揮すべきであると考えます。  次に、市町村と国、県の機能分担あり方については、市町村及び国、県が適切な機能分担を行う観点からそれぞれの事務配分を定める場合、事務の処理に統一性が求められるか、その規模が大きいかどうかなどがその判断の要素となると考えられます。この場合、住民に密接な事務については、明らかに市町村事務とすることが不適当なものでない限り市町村事務とするという考え方を、事務配分の基準として徹底すべきであります。  また、市町村行政に対する国、県等の関与については、地方分権の理念に反することとならないよう、その是正を徹底すべきであると考えます。また、市町村と国、県の機能分担をより望ましいものにするためには、市町村優先の原則を踏まえて、関係法律等を全般にわたって改正することが必要であります。しかし、現行法のもとにおいても、可能な限り市町村への事務移譲等により事務配分の適正化に努めることが望まれます。  また、国、県から市町村への事務移譲に当たっては、法律改正を行う場合及び現行法のもとで行う場合のいずれの場合にあっても、次の考え方を基本とする必要があると思います。  一つには、当該事務そのものが地域住民のために行政を執行する上において真に必要なものか否かについて、行政の簡素化、規制緩和の推進の観点から十分検討すること、二つには、おのおのの行政分野ごとに関係事務の持つ意味を明確にして、秩序ある考え方のもとに当該事務を一括して体系的、計画的に移譲すること、三つには、移譲された事務市町村が実施するために必要な人員や財源確保について十分配慮すること、四つには、事務の移譲後において、当該事務が円滑に実施されるよう、市町村担当職員研修の実施や事務処理マニュアルの策定等、必要な支援策を講じること、以上の四点であります。  次に、町村の事務執行能力に対する議論についてであります。  事務移譲に関連して、しばしば町村における事務執行能力が十分であるか否かの論議がなされますが、国、県から町村へ事務が移譲された場合には、新しい事務に対して職員がふなれである等のため、従来に比べ若干の時間は要するとしても、一般的には、住民にとって支障のない事務の執行体制が形成されるものと考えます。  また、専門的知識や高度の技術を必要とする事務については、町村では職員数が少ないため専門の職員を配置することが困難な場合もありますが、このような場合でも、広域圏組合の活用、施設の共同設置等による事務の共同処理、近隣の市等を含め他の地方公共団体への事務委任、あるいは県等からの人材派遣などにより対応することができ、さらに、事情によっては、県が当該事務について代行をする仕組みをつくる方法も考えられ、現状を固定的にとらえて事務移譲が困難であるとするのではなく、住民に身近な行政に係る事務はあらゆる手法を用いて町村に移譲するよう努めるという姿勢に徹すべきであると思います。  また、町村における事務執行体制の整備については、もとより我々町村自身の課題として、職員の意識改革の促進、町村の行政改革の遂行と行政の透明性の確保、そして、行政への住民参加の推進等について積極的に取り組まなければならないものと考えております。  最後に、地方分権推進に伴う財源の保障と財源配分あり方についてであります。  地方分権の理念を現実のものとするためには、町村が行う事務に見合う必要かつ十分な財源を措置されることが不可欠であります。この場合、町村は一般に人口に比し広い面積を有し、食糧の供給、水資源の涵養、自然環境の保全のため重要な役割を果たしていることに十分配慮されるべきであると思います。  また、一般に町村においては財源に乏しい現状にありますが、これは主として今までの我が国全体の経済社会情勢の変化に起因するものであり、したがって、その結果として生じた財源的ハンディキャップについては国全体の責任として是正し、町村が自主的、自立的に行政を執行することができるよう町村の財政基盤を確立することが必要であります。  また、事務の移譲に伴って、当該事務が円滑に執行できるよう、税源の移譲など、基礎的自治体である町村の税源充実強化を図るとともに、国庫補助負担制度の抜本的な見直しに伴い廃止しました補助金等相当額一般財源に振りかえる等の措置が必要であると思います。そして、国庫補助負担制度が存続する間においても、補助負担金は可能な限り包括的に交付するようにすべきであり、また、国庫補助負担金の交付申請に係る事務負担を大幅に削減し、最小限度必要なものに限るようにすべきであると考えます。  また、国庫補助負担金に係る超過負担は、本来あってはならないものであるのみならず、特に、財政力の乏しい町村にあっては行政運営にゆがみを与えるものとなるので、その解消を徹底すべきであると常々考えておるところであります。  以上、地方分権推進についてこのような発言の機会を与えていただきましたことに深く感謝を申し上げ、私の意見発表を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  155. 笹川堯

    笹川座長 ありがとうございました。  予定では二十分ずつということになっておりますので、若干時間がありますが、もしお三方、補足的に御発言がありましたら、どうぞ。
  156. 吉田修一

    吉田修一君 さっき言い落としたのが二つございまして、一つは、長い間の中央集権のもとでいわば育ってきた地方都市でございますので、職員そのものが、やはりお国の示すことについては間違いないという一つの魔術にかかっているような、長い慣習の中で、そんなことは絶対だめなんだ、こういう一つの魔術のような、あるいは何というか、まじないみたいなものにかかっている嫌いがあるのではないか。  一つは、市営住宅でございます。もういつ大風が吹いてきて屋根が吹っ飛んで倒壊しても不思議でないような市営住宅、もちろん雨戸はたてたまま、だれも入居していない、屋根にはペンペン草が生えていて、周辺には本当にもう一メーター以上の雑草が生えている。管理が悪いのも市役所の責任なんでありますが、これ、きれいに雑草を草刈りをしまして、そのうちをもう壊せないのかい、こう聞いたら、いや、とんでもないんだ、それはそういう定めで市営住宅というのがなっているのであるから、それはやはり年限が来るまで待たなくちゃならない。あと何年待たなくちゃならないんだと言ったら、三年だ。  よし、それじゃ直接話してみようということで、県を通しそれぞれの本庁に行きますと、市長さん、それはそういうことではあるかもしれないけれども、実情に沿って私どもも対応の仕方はあるのであって、恐らく市長が考えているのは、それを壊して住環境のいい新しい施設をおつくりになるようなお考え方で、今までの古いペンペン草の生えているような施設を壊したいんでしょう。こういうことで、やはり直接話をすると話がわかってもらえる。  だから、何も地方分権というのは、今まで骨格がきちっとできたものを、それを何でもかんでもよこせというのじゃなくて、私は、やはり理の通るものはアピールすると通るのじゃないか。一回通ったら、それを制度化するのが地方分権なんじゃないだろうか。これが一つでございます。  もう一つは、実は地方分権になりますと、私ども長い間全国市長会でお世話になった畠山先生とか、全国市議会議長会でお世話になった山崎先生、もう十分地方の実情は御存じであろうと思うのですが、実は地方には泣きどころがございまして、国の省庁で所管されていたものを、いいことだろうと一遍にどんと来られて、しかも、じゃ財源もこれもそっくりあなたにやるよと言われたときに、それをこなすだけのいわばうちの方の受け皿、あえて人材とは申しませんが、受け皿がいろいろあるわけでございますから、地方分権のいわば下におろし方を、段階的におろすような方法というものが非常に大事なのではないか。  しかも、財源の問題についても、町長さんがお話しされましたけれども、例えば地方交付税の国税三税の三二%を一挙に五〇%にしろなんといったって、これは荒唐無稽な話なのでありますから、要するに、地方権限を落とすからには、地方にも財源をそれなりの充当はするけれども、じゃ、こんなことではどうだという、言うなればこれからの具体的な財源配分の問題であるとか、その財源を使って行政を進めるところの市町村職員の資質の向上につながる研修であるとか、これが裏腹の関係で進みませんと、地方分権ということでかなりの権限地方におりたけれども、何かこなれない、ごろごろしたものが胃袋にたまってしまって消化不良を起こしてしまう。  これは大変なことだと思いますので、地方分権はどうしても進めてもらわなければならない、しかし、進め方を温かく、地方の実情をよく知っていて、本当はくれたくないのだけれどもしようがないからくれてやるじゃなくて、これはおろすけれども、この受け皿とか財源はこんな形で地方はそれぞれの持ち味を発揮しろよということが、これからの、権限をよこせ、しかし指導はしてくれろ、大変これは虫のいい話なのでありますが、虫のいい話をきょうの公聴会ではっきりやはり自治体を預かる者としては申し上げた方が、座長としても先生方としてもよりよく御理解いただけるのではないかと思って、あえて非礼を省みず実情を申し上げた次第です。
  157. 笹川堯

    笹川座長 ありがとうございました。  それでは、知事さんも町村会長さんもよろしゅうございますか。  以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  158. 笹川堯

    笹川座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。野田聖子君。
  159. 野田聖子

    野田(聖)委員 私は、自由民主党、野田聖子でございます。岐阜県岐阜市の出身議員でございます。  本日は、佐藤知事、そして吉田市長さん、服部町長さん、お忙しい中、この地方公聴会への御出席、まことにありがとうございました。私たち委員会委員は、党派を超えて、地方分権推進は、皆様方、御意見書が全国津々浦々からたくさん届いておりまして、一日も早く成立させようということで、本日の地方公聴会に臨んでいる次第でございます。  今お三方からお話をいただきまして、非常に前向きであるということに感銘を受けましたし、私自身、福島県に来る前に若干の懸念とか疑問とかございましたのを、大方、知事さんや皆様方のお話で解決させていただいたわけですけれども、改めて、重複する質問になるかもしれませんけれども、お許しいただきまして、御答弁を賜りたいと思います。  まず初めに、私がここに来るに当たっていろいろ地方分権に対する新聞の記事を見ておりまして、非常にショックを受けた記事がありました。それは、読売新聞平成七年四月九日付の記事に、「東北地方のある県の副知事は「今は中央省庁と自治体権限配分の話ばかり。住民が何を望んでおり、そのためには国と地方のどちらに権限をゆだねればいいかという議論が欠けている」」という指摘がございました。  確かにこの地方分権の話というのは、細川総理、そして羽田総理、村山総理、三代にわたって続いておりますけれども、残念ながら政府は国民に対しての世論調査はしておりません。ただ、本日知事さんから、県民に対しての分権の調査をされたということで、この「ある県」というのは福島県ではないのだなということがはっきりわかった次第でございます。  そこで、まず最初の質問は、地方分権、今回私たち閣法と衆法と二本立てで提出しております。それぞれお手元に行っていると思います。それぞれごらんになっていただき、読んでいただいて、若干の違いとか、いろいろな相違点を発見されたと思うのですけれども、それについて、それぞれのコメントを聞かしていただければありがたいと思います。
  160. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 政府の案と新進、衆議院の案と二つ出ておりますけれども、まず最初に申し上げたいのは、私、意見陳述でも申し上げましたように、昨年の今ごろ、あるいは半年前でございますが、こういう両方の法律が、大綱ができ、法律まで提案されるということは考えてもおりませんでした。そういう意味では、ここまで先生方のお力添えで進んだということに本当に感謝を申し上げているわけでございます。  それだけに、我々の受けとめ方、地方受け皿としての我々の責任というのを、これは半年前と全然違う責任で、私も実は先ほど自治研修センターのお話を申し上げましたが、この研修センターでの研修のカリキュラム等についても、受け皿としてのカリキュラムを徹底して進めていこうというようなことをいろいろ打ち合わせをしているところでございます。それぞれの考え方の違いが出ておりますが、基本的には、そういう意味感謝を申し上げているところでございます。  それから、それぞれの考え方につきましては、例えば一つだけ申し上げますと、時限立法にすべきかあるいはそうでない方がいいかということを一つとりましても、時限立法というのは、五年間で進めようという政府の非常に強い姿勢があらわれておるというふうに考えております。ですから、時限立法で五年間で完結しようというところまで行くかどうかは別にして、もし行かない場合には新たな法律が、また推進法が出てくるのであろうというふうな期待、そういう決意として受けとめております。  また、時限立法でない考え方に対しては、より継続的にずっと進めていこうという意思のあらわれというふうにも考えておりまして、私はそういう意味では、どちらにも考え方としては感謝を申し上げておる、その姿勢は同じだろうというふうに考えておるところでございます。
  161. 吉田修一

    吉田修一君 どうも後ろの方からいっぱい資料が来るものですから、何をしゃべっていいかわからなくなってしまうのですけれども、情報過多ということになるとなかなか困るのでありますが、私なりの考え方を率直に申しますと、違いはないと思います。  でありますから、一日も早くこの法律を議決していただいて、ああやっぱり国は地方の実情、地方の痛みというのをよくわかっているんだな、こういうことで頑張っていただきたいと思いますし、時限立法とかなんかの問題、今知事さんも触れられましたけれども時限立法ならその中で、もうこれ以上論議することはない、これ以上上積みすることはないという、あらゆるものを五年以内にきちっと積んで、そして本当の地方の自治のための権限がそれぞれの地方の隅々までずっと行き渡るような、それこそ血の通ったいわば行政というものに、具現化のために頑張っていただきたい。  顧みますと、日本が当時の外圧の包囲の中で、アメリカであるとかイギリスであるとかフランスであるとか、あるいは北からはロシアであるとか、ああいう外圧の中で統一国家をつくるためには、随分大きな痛みをして、結局中央集権という強力な政府をつくらないことには列強に肩を並べた日本はできないんだという、そこまではわかるのでありますし、それまではいいのでありますけれども、その後がずっと中央集権がどんどん強くなってしまって、本当に地方時代と言われて久しいのでありますから、どうぞひとつ座長さんが、またそれぞれの先生方が一生懸命汗をかいておられる時期に、これが地方自治の花が本当に開いて我々が実をいただけるような頑張り方をお願いしたいと思います。  基本的に差はないと思っています。
  162. 野田聖子

    野田(聖)委員 いかがですか。
  163. 服部健一

    ○服部健一君 特にありません。
  164. 野田聖子

    野田(聖)委員 ありがとうございました。  実は私たち委員会では、この閣法と衆法の議論の中で一番数多く出てきた言葉が、機関委任事務でございます。御承知のように、閣法は機関委任事務廃止を明確にうたっていませんし、逆に衆法ではそれをまず前提ということで、そこが対立軸といえば対立軸になったことは事実でございます。  そこで、私は、今回地方分権推進するに当たって大切なことというのは、住民意識、要するに地方にいろいろな権利と責任を受け持とうという意識、それともう一つは、やはり地方行政意識だと思うのですね。地方行政は、あくまでも住民に対するサービス事業ですから、権利を持つことに執着するのじゃなくて、住民に対してよかれと思うことをしてさしあげたいという気持ちが機関委任事務廃止につながるとするならば、では、例えば当事者として具体的にこういうことで機関委任事務を、知事さんも原則廃止とうたっているけれども廃止というのは何を意味することで、廃止することによって住民のサービスが向上することになるのかどうか。  つまり、機関委任事務というのはたくさんの種類があるわけですね。まさに住民にとっては、機関委任事務であろうとなかろうと、ありがたいと思って受けている行政サービスもあるわけです。このアンケートを見てもわかるとおり、県民に対しては機関委任事務ということは一言も触れておられない。つまり、そこでこの言葉の取り扱いが非常に難しいと思うのです、これからの先々にわたって。それについて、ぜひ当事者としてこの原則廃止ということをうたった具体的な御提案というのを教えていただきたい。
  165. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 この「うつくしま、ふくしま。宣言」でも申し上げておりますように、それぞれの役割をはっきりさせる、そういう中で考えますと、機関委任事務というのは、もちろん廃止しない方がいいような問題、先生も御承知のようにパスポートとか国政選挙の問題とか、いろいろあろうかと思いますけれども、基本的には住民のサイドに立って企画立案した方がいいことが、生活に関連するような問題も含めて、非常に機関委任事務の中に多いわけでございますので、基本的には、そういうものについては分野包括的に、あるいはもう都道府県と市町村に分けないで、都道府県と市町村二層ではありますけれども地方というこの部分に権限を移譲するということを前提に考えていくということで考えますと、ここの「うつくしま、ふくしま。宣言」で申し上げておるように、原則は廃止して進める、このことが住民にとっても必ずプラスになるよというふうに考えておるところでございます。  そして、例えば問題として、中山間地の人口が減少している町村でそういうことが可能かどうかというような問題は、これは住民からの委託で、あるいは村からの委託で県が受け持ってもいいわけですから、その部分はそう心配しないで、都道府県、市町村にもう任せるよということの方がいいのではないか。  これは質問と直接は関係ないかもしれませんが、私は、今度の政治改革、小選挙区になり、政策的にこれからはっきりしてくるのでしょうが、はっきり二つに別れて、小選挙区になってきた。福島県の場合ですと、衆議院議員は十二人から五人になったわけでございますので、地方の問題を考えるというよりか国政の問題を考えようということで、そういう政治改革が一つ進んでいるんだと思うのです。  地方分権への方向というのはこれと裏腹をなしていると思いますので、そういう意味では、国政の問題、国際的な問題を初め先ほど申し上げたような問題については、これは国の方でやっていただく、それ以外の問題については、もう地方に任せる。地方というのは、先ほど申し上げたような都道府県、市町村も含めた一体的に考えていただいて進めるのが、その中で考えますから、そう思います。
  166. 吉田修一

    吉田修一君 野田先生の御質問にお答えしたいのですが、結論から言うと、私は今の知事さんのお考えと同感であって、これは県だよ、これは福島市だよ、これは服部さんの方の町だよ、こんなふうに細分化されたのではかえってややこしくなってしまうのであって、やはり知事さんのところに行って相談すれば、知事さんの権限の中でそれなりの許認可であるとか事業の進捗というのがすぐ身近で達成できる、これが本当の地方自治でありますから、やはりどんと県の単位でいわば機関委任事務であるとか国で従来やっておられたところの権限地方に移される、そういうことで十二分に達成されるのじゃないだろうか。後は、私が毎日知事さんのところへ行って、お願いしますよと言えばいいのですからね、知事。
  167. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 その件は決して、県に全部よこせという趣旨でとられると困る。私ども考え方は、あくまでも市町村におろせよ、新市町村主義、そういう考え方でございます。  市町村におろすというのは、あくまで住民に近いところ、あるいは住民自治といいますか、住民考え方を大切にした市町村におろすというふうに御理解いただければと思います。それで、これは今できませんよ、あるいはちょっと待ってくださいというものについては一緒に考えましょう。あくまで委託なり委任があって初めて我々は動き出しますけれども、そういう考え方でございます。
  168. 野田聖子

    野田(聖)委員 ありがとうございました。  今まさに国に集中している力の配分を県に、そしてひいては市町村の皆さんに委託するというか、お渡しするということなのですけれども、実は、先週統一地方選挙がございまして、全国で新しい知事さんが決まり、かつ、地方議会の県議会または政令指定都市の市会議員さんたちが決まったわけです。私もせっかく福島に来ることになりましたので、福島の新聞を取り寄せまして、福島県の選挙状況というのを調べてまいりました。  つまり、何が申し上げたいかというと、地方分権法律が通るということは、まさにこれはもう文字どおり権力が移行されるわけでございまして、首長さんの責任は重くなる反面、その責任に伴う権利、権力も増大するということは間違いないことなのです。しかし、それをやはり監視するのが住民の代表である地方議会である。地方議員の役割というのがますます重要になってくる。  しかし、最近ややもすると地方議会に対する住民意識が低くて、選挙に対する関心も低いという退潮ムードがある中で、今度の選挙はどうだったかというと、福島民友という新聞と福島民報という新聞を取り寄せましたところ、ことしの県議選の投票率は七〇・五二%で、戦後、過去最低であった。そして、非常に特徴的なのは、福島市長さんお見えですけれども、県都福島市の選挙がなかった。そこで、福島民報の論説を読むと、無投票当選者の中には「何人かの新人も含まれ、」別に新人が悪いということじゃないのですけれども、「県政に実績のない候補者が”信任”されるのは、どうも納得がいかないというマチの」つまり住民の「声も聞かれた。」という記事が書いてありました。  つまり、問題は、今までは国が監督していたから、地方議会にそういうふうな無投票で何もわからない人が出てきたとしてもある程度任せられたけれども、結局こうなってしまうと若干気がかりだなという感じがするわけですね。  そういう選挙の結果をとらえてみてどういう御判断というか、要は、この新聞に書いてあったことは、中央政界の政局の構図がそのまま地方に来た。つまり、県政についての争点がなかった。まあ、はっきり申し上げて、自民党がいいか、それ以外がいいかみたいな選挙が多かったというような報道がされているのですけれども、それでは幾ら地方分権と言ったところで、肝心かなめの地方議会がそういうような流れでは困るのじゃないかなという感じはするのですが、そういうことについてどうお考えでしょうか。
  169. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 今度の選挙についてはいろいろ見方もあろうかと思います。私は、一つは、今までの中央集権のそういう体制の結果がこういう選挙にあらわれてきているのではないかと思いますね。それが一つですね。それから、中央との関係でいいますと、政党間の、新しい過渡期でいろいろあるのでしょうが、その辺の論点が非常に希薄であった。そういう点が大きな理由ではなかったか。  例えば、ふるさと創生一億円事業、あれは評価がいろいろあるのですが、一億円ずつ何にもひもつきでない金を、ひもつきでないと言うと語弊がありますが、それぞれの村に一億円ずつ意味もなくやったような見方がされていますが、現実には、一億円の財源をどう使うかということで、まさに住民の皆さんの意見を聞きながら各町村で考えまして、非常にそのことによっての活性化が出てきたのですね。  これは、河川の改修、あるいは市営住宅の問題もお話が出ましたが、一つ一つが立ち入ることができないような形で進められている中での住民の動きとか町村の動きというのは、これは非常に活性化がなくなるわけでございまして、そういう結果がこの中央集権の今の体制の結果ではないか。その辺を改革していくのに、やはり地方分権というのは非常に大きな意味を持つ。  それから、地方分権は、先生もう進められたようなお話でございますが、推進委員会がこれからどの程度本当にやってくれるのかというのは、あくまでこれから委員会でまた先生方のお力添えで進めることでありますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  170. 野田聖子

    野田(聖)委員 時間がなくなりましたので、どうもありがとうございました。今後とも御活躍をお祈り申し上げます。  ありがとうございました。
  171. 笹川堯

    笹川座長 山崎広太郎君。
  172. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 新進党山崎広太郎でございます。  私ども新進党は、衆法というか議員立法を出していまして、いわゆる政府提案の法律、閣法と我々が提出した衆法というのがございまして、それなりの違いはあるわけです。ただ、我々は、政府案もよくできている、いわゆる中央官庁を説得し、あそこまでよくつくり上げたというふうに思っていますけれども地方分権をより実効上がらしめるために心配な点を衆法で添えたというか、加えたという感じでございます。  例えば、五年の時限立法時限立法は私はそれなりに効果はあると思います、五年という期間を区切るということは。ただ、一方で、果たして五年でできるのかな、今中央が持っている機関委任事務にしろ、その中のやれる部分を五年間で地方に渡すというだけじゃないぞという気持ちが私どもありまして、本来的に、中央地方とのこれからの根本的な役割というのをはっきりしていこうじゃないかというのが、今後の地方分権の基本的なことだというふうに私どもは思います。五年間だと、平成三年に成立しました地方自治法の一部改正、あれだって五年かかっているのですよ、大した内容でもないのに。そういう心配があるので、むしろ時限立法になじまないのじゃないかという疑問を一つは呈したわけでございます。  知事もおっしゃったように、これは非常に急テンポで進んだものですから、地方の皆さん方も戸惑いがおありになろうと思います。今おっしゃったように、細川政権が地方分権ということを重点で取り上げて一年数カ月ですから、そして今や法律が提案されて、今二つの法案がありますけれども、間違いなくこれは歩み寄って、必ず今国会成立するだろう。五年の時限立法になっていますから、五年間でそれなりの成果を上げるということになると思います。だから、非常に急テンポで進んでいるということを地方の皆さん方も御理解をいただきたいと思います。永田町発地方分権、今まだそういう感じがするわけで、したがって、地方からの盛り上がりというのが私どもはまだないなという感じがいたします。  ただ、私は、この地方分権というのは、本当に地方自治体に対して、地方自治体にとっては大変な責任というか、むしろ非常に重い、自分で判断して決めていかなければいけない、今まではもう中央政府におんぶにだっこで、ただ要求しておれば済んでおったということから本当に根本的に質が違ってくるということを、やはり自治体の皆さん方に御認識をいただかなければいけないし、それと、行政体もそうですけれども、やはり県民、市町村民の意識啓発も必要だというふうに思うわけでございます。  戦後五十年もたって、もう各地方もいろいろな整備もできて、まあ、子供でいえば年も三十になる。ところが、国の親は今もってまだ子供だ、子供だと言って、細かいところまで口を入れて、お金も小遣い銭程度しか渡さないという状態で、子供の方も何か親がかりで、まだおんぶにだっこで、それの方が楽なものですから、自分で判断せぬで自立しようとしないというか、そういう状況で来たと思うのです。  ただ、今の日本がそうであるように、親はいつまでも元気じゃないわけですから、やはりそろそろ親のためにも、国のためにも地方は自立する段階に来ているだろうということで、この地方分権はもう避けられないことだというふうに私は思っておるわけでございます。  そこで、知事さん、私はここへ来て初めて知ったわけですが、もう既に新市町村主義なんかを福島県は取り上げておられるということで、本当にびっくりしたわけでございますが、その辺の最終的なねらい、今はまだ県、市町村行政体の覚悟の問題というか、考え方をきちっと整理していこうやというのがございますけれども、私は、最初言ったように、住民、県民、市町村民に対して自覚をどうこれから訴えていくか、本当の自治意識を持たなければだめなんですよということをどう訴えていくかということもあるのじゃないかということが一つ。  それと、議会は何をしているのだろうか。私は議会出身なものですから、四年前から、議会に特別委員会でもつくってこの地方分権に対応しなければいけないと言い続けてきたのです。今度改選期ですから、地方議会特別委員会でもつくって、対応を本当に議会としても考えなければいけないと思うのですけれども、その辺のところをどうお考えでございましょうか、議会と住民サイドでの自治意識というか。
  173. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 お話ありましたように、もう四十年、五十年たって、これはある意味で明治以来の中央集権がこれだけの経済をつくり上げるのに役に立ってきたように、中央集権で戦後やってきたということは、厳しいいろいろな状況の中で、大体、シビルミニマムといいますか、村も町も一定の基準のもとにある程度のレベルに達するという意味では、それなりの役割を果たしてきたというふうに私は考えておりまして、そういう意味では、決して戦後のそれを否定するものではないのです。  しかし、一応のレベルをある程度達成してきた、ここで考えるのは、それでは新しい時代に向けてどうなのか。あるいはいろいろな不満もまたその中で出てきておりますので、そういう多様性なり多元的な価値観なりを皆さんが持っておる中で、やはりいろいろ問題があるなということでの地方分権だろうと思うのです。  現実には、私自身も例えば昨年九月の知事会で、とにかく今しかないよという発言を最初にさせていただいたので、その後五、六人の知事さんも発言したのですが、私自身も、ここまで進む、あるいは監視機構、勧告等も含めてこういう法律ができ上がるだろうというところまで考えておりませんでした。ですから、当然のことながら、住民も、今でも皆さんの意識は、例えば一億円ふるさとのときはまたそういう種はいろいろ残りましたけれども、自分たちで何かやろうという種は残りましたが、現実にはまだまだ口をあけて親鳥からいただくのを待っているという態勢だと思いますので、そういう意味では、おっしゃるような住民、市民の皆さんへのアピールは非常に大切なことだ。  ただ、そこで一つ私自身考えていますのは、住民自治なり市民というものの参加というのがある場合には、当然行政としての、福島県は情報公開もやりましたが、情報の公開の問題とか、どういうふうに住民行政に参加するか、そういうことに関しての民主化も、これから進めるに当たって非常に重要な課題である、そういうふうに考えております。  それから、議会の問題は、議会がどういうふうに考えるのかは私の口からはちょっとあれできないですが、やはり今までの体制の中での今の議会の皆さんの考え方だと思いますので、これは地方分権が来たら、あるいは推進委員会でのいろいろな動きの中でがらっと柔軟に変わっていくと思いますので、期待しています。
  174. 吉田修一

    吉田修一君 山崎先生、今の問題なのですが、地方分権のいわば波というのは、あるいは芽生えというのはいろいろな過程から芽生えてきていると思うので、竹下内閣のときのふるさと創生資金、市も町も村も一律一億である。それで、それぞれのふるさとの人々が、その一億円については国のマニュアルはないから自分たちの頭で考えなさい。あれがやはり地方分権に小さな灯をともした一つの端緒ではあるなと思うのです。  福島市でも、あの一億を使って一体何をしよう。まさか金の延べ棒一億円のをつくったのではどうもあれですからね。ちょうどいいあんばいに、私どもは、「栄冠は君に輝く」であるとか「君の名は」であるとか、つまり小関裕而先生のふるさとなのでございます。したがって、ふるさと創生資金の一億というものを一つのパン種にして、一般財源もこれに加えて、小関裕而記念館というのをつくりまして、バスで来るほどの人数ではないのですが、自分の母校あるいは会社の社歌、そういったものをたくさんつくっておりますので、本当に定年退職した方々が三人、五人集まって、自分の母校の歌を聞きに我々のふるさとの小関裕而音楽堂に来ている。  そうしますと、福島市もあれを端緒にみんなで考えて小関裕而記念館をつくった、みんなで考えれば何かいいものができそうだぞ。国からは国のいろいろな地方振興のマニュアルは来るのですが、それはそれとして尊重しながらも、余り金がかからない、しかしみんなが知恵を働かすとこんなものができそうだぞということで、実は知事さんにもまだお使いいただいていないのですけれども、新幹線の駅前に公衆便所がございまして、これはJRの公衆便所なのでありますが、どういう風の吹き回しか、夜になると今はやりの方々が、冬は段ボール二、三枚持ってそこに入ってしまって、中から戸にかぎをかけて暖かいところですやすやお休みになる。それで夏は夏で、また涼しいから公衆便所の中でお休みになる。これでは一般のトイレを使う人が使えませんから、みんな駅前の私どもの交番にトイレを借りに来ておるわけです。それでお巡りさんが悲鳴を上げてしまいまして、何とかしていただけないだろうかということで、これも駅前に公衆便所をつくろう。  しかし、公衆便所をつくるのだったら、先ほどの話なんですが、役所だけでつくったのでは余りおもしろくないから、みんなで委員会みたいなものをつくって、体の不自由な人、赤ちゃんをお持ちのお母さん、あるいは足腰の不自由な車いすの方、それから我々の役所、議会、そんなものも含めてあれやこれややっていて、本当の胸算用は三千万で駅前の公衆トイレをつくろうということだったのですが、いろいろな知恵を出し合ってきたら、確かにいい知恵なのでそのとおりにやったら、六千六百万かかってしまったのです。  やはり地方時代といいますか、申しわけありませんが、国のマニュアルにはないけれども住民がその不自由さを克服して何かつくらなければならない。何かつくるのも、用足しさえすればいいのじゃなくて、シンボル的なものをつくろうということで集まるとそういうものができるという時代に変わってきておりますから、ひとつ委員長先生方お願いしたいのは、全国で地方の中にふつふつと沸き起こっている、おらげの村、おらげの町にはこういうアイデアがあって、こういうことをやりたいんだ、それを支援してくれるような形の中で、地方分権というものの大綱というものが徐々に育っていくような一つの国の施策をやっていただけば、本当に我が日本の国政というのは善政だと思いますね。  以上です。
  175. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 おっしゃるとおりだと思います。地方分権考え方の背景には、そういうことが非常に大きな背景としてあると思うのですね。  それで、私が言いたいのは、地方分権が、地方のためにするのだという、それももちろんありますけれども中央の国政が補助金の原則的廃止ということまでうたっているように、私は補助金制度の限界も今見えてきた。今後考えられる高齢化社会、これは二〇一〇年かそこらは全国で三千万人以上の六十五歳以上のお年寄りを抱えるようになる、こういうことをいろいろ考えた場合に、国自体がもう分権化せざるを得ないところに来ている。  やはり各自治体のやる気とか、そこに住む人たちの立ち上がり、そういうものがないと、この国はだんだん元気がなくなっていくよということだと思うのですよ。やはり地方が本当に活力を、みずから考えて自立していくような、そういう活力を地方が生み出していかないと、この国はうまくいかない。だから国のためでもあるということを、私は前提として言いたいわけでございます。  それで、今度の地方六団体の意見書では、機関委任事務制度廃止あるいは地方事務制度廃止までうたっておられる。それから、福島県の「地方分権・うつくしま、ふくしま。宣言」でも、原則廃止ということをうたっておられるわけですね。明確にうたっておられる、これは福島県も、あるいは地方六団体も。  なかなか国の方は廃止までいかぬのですよ。廃止という文字をまだ非常に嫌っている段階なんですけれども廃止して何ら支障がないんだぞという地方の気概がここへ出ていると思うのですけれども、この辺の現場からの実態とそういう廃止をうたっておられる根拠について、知事さん、お考え、お感じをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  176. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 これは野田先生の御質問にもお答えしたとおりでございまして、やはり推進法の中で方向をはっきりさせる必要がある。  その方向というのが、先ほど言いましたように、国と地方役割、国と都道府県と市町村と三つに分けての役割分担を申し上げましたが、決して国の役割限定しろということではなくて、機関委任事務等に関しては、県の事務の八割がそうでございますが、そのほとんどが地方に関する住民の生活とか教育とか、住民のそういう生活と関連するものでございますので、そういうものに関しては原則廃止ということの方向をはっきりした方がいいのではないかということをうたったわけでございまして、その中で、原則廃止ですから、後どうしても……(山崎(広)委員「引き受けて、やれるということですね」と呼ぶ)はい。これはもちろん条件はいろいろございますが、事務配分によっての財源の問題等々ございますが、そういうことでございます。
  177. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 時間になりましたので、それでは最後にもう一つだけいいですか。
  178. 笹川堯

    笹川座長 どうぞ。
  179. 山崎広太郎

    ○山崎(広)委員 ところが、中央の各省は、機関委任事務に関しては、昨年の調査に対する回答では、ほとんどできないという、各機関委任事務の項目ごとにできない理由を挙げているのです。すべて、ほとんど一〇〇%と言っていいと思います。その回答の内容はもうおわかりだと思いますけれども、全国的に統一的に一定基準を設けて一定水準を保たなければならないから、機関委任事務廃止することはできないということを、ほとんど各省はそういうふうに今もって言っているという状況があるわけです。  私ども新進党のいわゆる衆法では——こういう今の状況の中で、確かに今の内閣は地方分権に対してやる気と熱意を示しておりますけれども法律でうたわれているのは、機関委任事務その他のことに関する整理合理化なんですね、整理合理化をうたっている。それでは私ども非常におぼつかないのではないか。この機関委任事務はどうかと言ったら、各省は、いや、これは残さなければいけない、こういう理由があるというようなことで多分やってくるでしょうし、それを一つ一つやっていて、果たしてどのくらいの実効が上がるだろうかという心配があると思うのですよ。  だから、私どもは、六団体やら地方制度調査会でも廃止をうたっているし、法律でまず原則廃止ということをうたったらどうか。そして、何を残さなければいけないのか。そういうアプローチの仕方を変えようじゃないか。こっちから一つずついくのではなくて、原則廃止から残すべきものをむしろ役所側から挙げてもらう、残す理由を挙げてもらうということの方が実効が上がるのじゃないかというところが、この衆法と閣法との大きな違いだと私どもは思っておるわけです。  その辺は与党側もかなり理解をしておられまして、かなり歩み寄れる部分があるわけでございますけれども、その辺のところが、今までずっと自治体を預かってこられて、中央官庁といろいろ接触してこられた皆様方、どうでございましょうか、今の法律で実効が上がると思っておられますでしょうか。
  180. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 考え方だと思うのですね。ここに河川審議会の委員さんもいらっしゃいますが、例えば阿武隈川というのは福島県を流れておるのですが、この川はどういうふうに整備してどういうふうに考えてどう使うか、またどういう位置づけにあるかというのは、我が県にとって大切なものなんですね。それを、福島県と宮城県を流れているから、国で一元的にどうするというふうにすべきものか、あるいは福島県で、これこれ広域的にいろいろルールなりなんなりをつくっていくのはいいでしょうが、どこで一元的に管理をすべきかという考え方の問題だと思いますので、その辺は推進委員会に期待をしたいと思います。  そういう意味では、お話のように、原則廃止で進めていただいて整理していくということが非常に重要なことではないか、私はそう考えております。
  181. 吉田修一

    吉田修一君 今知事さんが言われたのは非常に大事なことで、特に我々接触している中で、きょう国のお役人さんもたくさんおられるのでありますが、中央の省庁におられるときはさほどそういう実感はなかったのかもしれないけれども、署長であるとかそういう形で、つまり地方に出てきて少なくとも一年半なり二年おられると、なるほど今までの国の進め方というのはやはり間違っている、あるいは不合理だ、みんなの言うとおりにやった方が何となくふるさとらしいにおいとか味とか風景が出てくるわいということを、知事が言われる、分権分権と言っている本当の意味というのも、地方に二年くらいおられるとやはりわかるのです。  おわかりになって、いわば幕閣に入ってしまって大老になってしまうと、また忘れられてしまっては困るのですが、時々幕閣の方々地方の代官においでになって、なるべく地方滞在時間を長くしていただくと、いわば地方の領民の心というのはよくわかっていただけるのではないかと思うのです。  我々は、暮れになりますと、野田先生のところも山崎先生のところも笹川先生のところもそうなんだけれども、畠山先生のところはなおそうなんだけれども、かなりでっかいもちをつきますね。大きいもちをついて、のしもちにするのでありますから、のしもちは国の一般的な権限財源というふうにお考えになっていいと思うのですが、それを大切りにしていただいて、その大切りはうちの知事さんに、これをあなたの方にやるから、後それを小切りにして、ノリもちにするのもいいし納豆もちでもいいし、まあ適当に味つけしなんしょ。これが、私は、言うところの地方分権の本当の姿なのではないかなと思いますね。  以上です。
  182. 笹川堯

    笹川座長 ありがとうございました。  それでは、畠山健治郎君。
  183. 畠山健治郎

    ○畠山委員 きょうは大変お忙しいところ御出席をいただきまして、ありがとうございます。  三月地方議会で、地方分権推進法を早く成立してほしいというような要請が私のところへ、私のところへもそうですが、恐らく皆さんそうだと思いますが、二百通を超えるほど来ておりまして、いっときはそんなに地方自治体に熱意がないのかなというような心配もしたことがありましたが、そうではないのだなというようなことを嫌というほど感じさせていただきました。  そこで、私ども委員会でも順調に審議は進んでおりますが、何としても課せられたことは今をおいてほかに成立をさせる時期がないだろうというふうなことで、成立に向けて今全力を挙げておるところでございます。ぜひひとつ今国会では上げたいというふうに思っておりますが、それには、だれよりもまず地方自治体の知事さんや市町村長さんの御意見を聞かせていただいて、でき得れば市民の声も聞かせてほしいというふうに思いましたが、そういう時間がなかなかとれなくて残念だというふうに思っております。  きょういろいろとお話をお伺いさせていただきたいことは、法律が二つ出ているわけでありますから、この二つの法律の違いについての御意見を聞かせていただきたいということも一つの大きなねらいでございましたが、お二方の前の質問でほとんど違いの部分についての御意見はお伺いさせていただいたところでございますので、主として私から承りたいことは、この法律成立をして、推進委員会推進計画の中にどんなものを織り込むのかというようなことについてお聞かせをいただきたいと思っています。それ以上はダブってしまうわけでありますから、それをさせていただきたいと思っております。  まず、地方分権分権とおっしゃるわけでありますが、中身からすると、団体自治と住民自治ということになりますね。特に力点を置きたいのは、やはり住民自治ということに力点を置きたい。そして、福島推進ビジョンについても、そのことがかなり強調されていらっしゃるようであります。私も、その部分が非常に大事だというふうに思っております。  ところで、その観点からしますと、さっき野田先生からもちょっと触れられておったようですが、今度の選挙で目立つのは、無競争という部分がかなり出てきている。それから、最近、選挙の都度に投票率がだんだん落ちてきておる。分権をしよう、特に住民自治というようなことに力点を置きたいというようなときに、逆の方向に進んでいるのではないのかという危惧が率直に言ってあるわけであります。  この原因は、こうだ、ああだと理屈を言えばいろいろあると思いますけれども、きちっととらえるところはとらえて、でき得れば、その原因を除去するような中身を今度の推進計画の中にやはりきっちり盛っていかなければいけないというふうに思うのですね。そういう観点から、もし御意見がございましたらお聞かせいただきたいというふうに思っております。
  184. 吉田修一

    吉田修一君 知事さんは、県議会のことですのでなかなかこれはおっしゃりづらいと思うので、福島市の出来事でございますので、無競争ということは。  八名の議員さんがおられまして、全部お会いしたわけではございませんが、まず自民党の議員さんが四名、これは従来の長い間議員さんをやっていた方が全部出られて、そのまま当選。社会党の議員さんというのは、実は市議会から行った新人でございまして、お二人。それから公明党、これも市議会から県議会の方にかわっていかれた方。あと、共産党は従来の方。  一番最初に、新人になられた、市議会にいた二人の方と公明党の三人にお会いしたのですが、非常に危機感を持っています。それは、初めての県議会の選挙なので、自分が果たして公明党なら公明党という立場で戦って、基礎票というのが自分は自分なりにこれくらいはとれるだろう、これを確認したかったというのが一つと、それから社会党の方々も、市議会のときに自分の得票したそれぞれの固有の票とは比べ物にならない票をとらないと当然当選できないのでありますが、その確認ができなかったということで、特に新人さんには、これから県議会に初登庁をされるのでありますが、そういう点では何か非常に切迫した危機感を持っております。  また、従来の自民党の四人の先生方も、これは本当に長老の方々なのでありますが、今回の無競争当選を契機にして、自分の議会人としての議会活動というのは今までと違った、もう少し足で稼いで、もっと隅々まで入って市民、県民のそれぞれの要望というものをさらに吸い上げるような、かなり労働もきつくなるなというようなことを異口同音に言っておられます。  それで、福島市というのは県庁所在地で、従来非常に政争の激しい場所でございますので、定数八に対して恐らく九名か、少なくともそれくらいは出て、必ず激しい選挙戦になるのではないかと実は我々も思ったのでありますが、考えてみますと、非常に楽な形で八人が無投票になったのではなくて、その水面下で実はかなり激しい、いわば自薦他薦がありまして、しかし大体において、この定数八に対して、おれが出ても、これほどベテランの方の中に入って、あるいは新人が三人出ているけれども、その中に割って自分が着に入るということはおぼつかないのじゃないだろうかというそろばんをはじかれたということを聞いております。  したがって、県庁所在地定数八、みんな仲よくやりましょうね、万歳というようなものでは決してなくて、先生方は、今までの多選の方々は多選なりに、初当選の方は初当選なりに、やはり一つの危機感と議会における使命感というものを従来以上にお考えになっているのではないだろうか、こんなふうに思います。  知事さんは、御自分の六十名の議員さんでございますので、知事さん御自身はなかなか言いづらいのでありますが、今度は私のことであって、間もなく市議会は、定数四十に対して、報道関係の方から今のところわかっている情報をとりますと四十一なので、これは私も人ごとではないのでありますので、地方分権も叫ばれている中に、選良と言われる方々は激しい戦いをしながら、それを勝ち抜いて選良になられるわけでありますから、やはり無投票というのは、知事さん、おっかないね、そんなふうに思います。
  185. 畠山健治郎

    ○畠山委員 何か御意見ございましたら。
  186. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 私は学者でないのでその分析はしていないのですが、政治改革の過渡期であるというのが、我が県の状況なんかを見ますと、そういうことも言えるのでないかと思います。  私は、これは先生方がもう十分な議論をして、こういう方向で、もう国のことは国でやるよ、地方のことは地方にということで方向づけをして進んでいるのでしょうからあれなんですが、政治の活性化という面からいったら、前の一区、今一、二区になったのですが、この一区だけで十二、三人の国会議員が必ず立候補、これはマイノリティーの例えば商工団体、農業団体、いろいろな形のあれが十二、三人は出ていたのですね。今度は、多分二、三人じゃないかと思うのですよ、一つの選挙区。  ですから、その過渡期ですね。その中で、ちょっと判断がつかないというか、非常に迷っているという部分が出てきたのではないか。十二、三人のお方が出るのと、二、三人で、それも政策もどちらの政党も余り変わりないという形だと、これはなかなかけんかにならないという部分があるのかなと、余計なことまで申し上げましたが、そういう政治の活性化との関係の過渡期にあると思っております。
  187. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ありがとうございました。  次の問題は、行政改革をやらなきゃいけない、合理化をしなきゃいけないということのあらわれの一つかもしれませんが、最近の地方議会、法定定数と条例定数あるわけですが、法定定数をだんだん減り込んで、条例定数、どんどんと定数を下げていますね、傾向として。ところが、今地方分権がどんと具体的に進みますと、莫大な議会の仕事がふえてくるということはこれは間違いないと思います、それぞれ条例をつくっていかなきゃいけないということになるわけでありますから。  分権時代に定数がどんどん減っていくというようなことの実態を見て、私ども、果たしてこれでいいのかなというような心配をしないでもないわけでありますが、その点に関して、これから先の推進計画の中で、その辺との関連の中で何か御要望があるとすればお聞かせをいただきたいと思います。
  188. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 私は、地方分権が進めば地方議会も、人数が何人というのは別問題としまして、活性化が、少なくとも自分の意思が政策決定にかかわれるという部分が非常に出てくると思いますので、そういう意味では活性化がしてくるのではないかというふうに、非常に希望的な観測かもしれませんが、そのように考えております。  これは一億円の問題のときに非常にそういうことを、一億円のときも、実は県のある者と話したときに、これはどういうひもつきで、どういう規制をかけてこの一億円をやりましょうかという話が、県自体でもそういう考えになるわけでして、それは全然何にもひもつきなしでやるのが意味がある、それで九十市町村で一つでも活性化すればいいのではないかという話をした覚えがありますが、実際は非常に活性化したのですね。  一億円の財源でそれだけ活性化するのですから、自分の自主財源を何に使ったらいいか判断しろと言われたら、これは議会も含めて非常に活性化する。もちろんその反面、裏腹に大変な責任と問題も出てくるでしょうが、そういうふうに感じますね。
  189. 吉田修一

    吉田修一君 畠山先生、前に市長さんをやっておられて全国市長会の中で御活躍ですから、もう本当に先生、私がお答えしなくても十二分におわかりだと思うのですが、私は、福島市の行政、今二千四百名職員がおりますが、この職員の問題と議会の問題で、今まではいわばお国の方から、例えば地方財政計画、あるいはそれぞれ福祉関係についてはゴールドプランであるとか、こういったお手本が、手引書が地方に来て、それに従って地方財政計画であるとか執行計画というものをつくっていれば、まあ大体合格点近い点数をとっていたわけです。  いよいよ地方分権になりますと、これは新しい時代に入りますから、権限をちょうだいする、それに対応する職員の資質の向上、そして今度議会におきましても、今までいろいろな質問をされても、いや、これは建設省では、建設省の河川局ではこういう指導なので、その指導方向に沿ってこういう予算を組んでこういう河川の事業を進めるのだから御了承願います。これがにしきの御旗でありますから、この紋どころが目に入らぬか、ははあで議会はおさまったのでありますが、さあ、いよいよ今度権限が知事さんあるいは市長に来ますと、市長の、やはりこの人の固有の河川なら河川に対する考え方というものを明快に示していかなければならない。  市長は議会に対して、今まで国のいわばマニュアルどおりに市はやっていたのだからしようがないなではなくて、今度は市長の河川行政に対する、道路行政に対する質問でありますから、むしろ議会というのは、執行部と議会とのやりとりというのは、もっと我々のこれからの考えられる限りの中においてはかなり熾烈なやりとり、それで住民にとっては、執行部と議会が熾烈なやりとりをやることによってむしろ行政の中身というのはもう少し詰まってきて、いわばうまい料理ができるのではないだろうか。  これは、市長にとってはつらいのですよ、あるいは市長を支える執行部の職員にとってはつらいのですけれども、いよいよそういう権限地方におりることになって、地方時代というと名前は格好いいのですが、これは汗をかきますね。しかし、やらざるを得ないと思うのです。
  190. 畠山健治郎

    ○畠山委員 もう時間がなくなってしまいましたが、それでは最後に、服部町長さんのお話の中に財源確保の問題に触れられておりましたが、特に財源確保では川上的な感覚で財政措置をしてくれ、川上的な要素というのは水であり、空気でありあるいは森林であり、いい空気をつくっているというような言葉が、やはり自然環境等々の問題だとお受けをいたしたわけでありますが、そういう観点でやはり財源をもっと厳しく見て、手当てをきっちりしてということだと思うのですが、何かその辺でもっと具体的に、推進計画の中にこんなことを織り込んでほしいというような御要望があるとすれば承りたいと思います。
  191. 服部健一

    ○服部健一君 いろいろ我々首長としての考え方等については福島市長さん余すところなく言っていただきましたので、そういう意味ではないのですが、先ほどもちょっと話が出たのですけれども、一億円ふるさと創生事業も、あれは初めはソフト事業でないとだめだと言っておったのですね。そのうちまあハードでもよかろうというようなことになってきたようでありますし、その後交付されたものも、そういうことで対応してきております。  これは大変によかったと思っているのですが、さらには、以前は国で示したメニューによって何でもかんでも補助事業を取り込んでやってきたというのが実情でありますが、近ごろは、地域が意欲があってやろうとするものは国で支援する、こういうふうに考え方が変わってきておるようでありまして、これらについては大変ありがたいことだと思っております。  それだけにまた、自主的に自分たちがやろうとする、この勉強もしなくてはならないわけでありまして、今回の地方分権の問題につきましては、特に農振地域整備計画の変更とか、農地の転用とかの問題、これは国から県、それから県から町村へ可能な限り移譲していただきたいというふうに思いますし、先ほど来福島市長さんからお話ありましたように、やはり知事さんに相当部分の国の権限を移譲してもらって、そうすれば当然、県と町村との間柄ですから、その実情はよくわかるわけであります。  そういう意味では、今後ともひとつ地方の事業を支援するということ、それから、特に私ども農村地帯なものですから、農業関係の農地転用あるいは農振地域の変更等についての権限は可能な限り移譲していただきたい、こういうふうにお願いいたします。
  192. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ほかにございましたら、特に。  それでは、もう一問よろしいですか。
  193. 笹川堯

    笹川座長 どうぞ。
  194. 畠山健治郎

    ○畠山委員 先ほどのお話の中では、知事さんと市長さんの間でちょっと受け方が違うような気がいたしました。言ってみれば分権の二層制の問題でありますが、あえてある人と言いますけれども、名前は出しませんけれども、県というのは果たして地方自治体なのかというふうな議論も極端に言えばあるわけですね。  私ども、今原案の中では二層制で進めていこう、こういうふうにしておりますけれども、逆に市町村から見れば、県はあれは国の出先機関でしてねというような意見も率直に言ってあるのです。もしその辺のところで率直な御意見が市長さん、町長さん、ございましたら出していただきたいと思います。
  195. 吉田修一

    吉田修一君 私は、今県内市長会の会長を務めておりますし、知事さんのところの地元の福島市でございますので、そういう違和感といいますか、私は割とざっくばらんに知事にお願いすることをお願いして、大体陳情しても、予算関係についてはエレベーターもエスカレーターも随分ちょうだいしたし、そういう点では、本県の県内十市の少なくとも市長、あるいは町村長さんと今のうちの栄佐久知事との変な、何というか違和感というか、別に選挙が近いから知事にごますっているわけじゃありませんけれども、それはないですね。  知事も率直にだめはだめ、あるいは考えさせてくれ、いやそれはすぐやろうと、このすぐやろうと、考えさせてくれと、だめ、これは割と明快に知事はおっしゃいますので、そういう点については、何か県が中二階みたいな気は私はないですね。
  196. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 一言だけ。  基本的に、私はパートナーという言葉を使いましたが、イコールパートナーである、対等。だから、国にもそういう姿勢で接触していますが、イコールパートナーであるという考え方で進めております。ただ、お話のように、国の悪い部分は県でも持っておりまして、体質的に。そういう部分はないとは言えない。職員にはよくイコールパートナーだよということは言っておりますが、その言葉が非常にフレッシュに感じるように、実はそういう体質的なものはありますので、それはこれからの課題であろうと思っておりまして、その辺はどうにでもなっていく問題であろうと考えております。
  197. 畠山健治郎

    ○畠山委員 ありがとうございました。
  198. 笹川堯

    笹川座長 田中甲君。
  199. 田中甲

    田中(甲)委員 さきがけでございます。実は私、地方分権推進特別委員会に配属になる前、税制改革特別委員会に所属をしておりまして、福島県の方にやはり委員派遣をさせていただきました。大変にお世話になっております。そのときも私がちょうどこの場所に座らせていただきまして、何か大変に御縁の深さを感じておるところであります。  大変に親心で、ほとんどの質問を前段の質問者がしてくださいまして、さきがけの方に質問する内容が余り残っておりません。そんな中でありますが、きょうは大変に楽しみにしておりまして、現場の声をぜひとも聞かせていただきたい、そういう気持ちで参りましたので、何点かお話を聞かせていただきたいと思っております。  衆法と閣法のよい面を認め合って、より地方分権推進に実り多い法案をつくろうという姿勢で、今、笹川委員長を中心に進めております。  まず最初に地元の現場の声を聞かせていただきたいと思う点は、地方分権推進法から若干外れますが、関連の、この国会審議がされました市町村合併法の一部を改正する法律案、これは知事さんにも市長さんにも町長さんにも、今九十の市町村をお持ちである、その中で市町村合併について、地方分権を進めていく流れの中でどのようにお受けとめになられているか、意見をお聞かせいただきたいと思います。
  200. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 今回の法律によりまして、住民発議とか市町村建設計画あるいは議員が二年任期とか、いろいろ合併しやすい制度になったということに関しては非常にすばらしいことだと思いますが、基本的には、やはり市町村合併というのは関係自治体の自主的判断によって進められるべきであるというふうに考えておりまして、そういう意味では、地方分権推進していく上で、福島県の場合は広域的ないろいろな別の、これは日本のモデルの県土づくりをやろうということで、決して集中的な県土づくりでなく、まさに多極分散型の県土づくりを今一生懸命やっておるわけで、この考え方については、いろいろ震災とかそういうことを含めまして、私は理論的にこれは成り立つのかなということでいろいろ考えていたのですが、結果としてはよかったと思っております。  ただ、分散した中で、ある意味で広域的な生活圏づくりということで、生活圏と行政体圏というのを別に分けて考えても十分成り立つというふうに考えておりますので、この合併論は、もう時代が違うから合併すべきだというような単純な進め方ではなくて、やはり住民あるいはその村なりその町の意思というのを大切に考えるべきであるというふうに考えております。
  201. 吉田修一

    吉田修一君 田中さんの御質問、本当にありがたい御質問で、実は知事さんの御配慮によって、県北、つまり福島市、二本松市、安達郡、伊達郡、ちょうど五十一万都市なのでありますが、拠点都市の指定を受けました。  したがって、この拠点都市の中でそれぞれ、二本松藩は二本松藩ならではの歴史あるいは文化、風土を持っておりますし、伊達郡、安達郡、福島、それぞれ町の成り立ちの中で特性を持っておりますから、それぞれの町の持っている特性というものを開花させながら五十一万の一つの圏域をつくっていこう。  単に町村合併で服部さんと私が一緒になってしまっては、ではおれの方は名前はどうでもいいから何かにするか、こうではなくて、せっかく指定を受けた五十一万都市で、十年以内にそれぞれの拠点をつくろうということですから、福島市、つまり我々の福島の拠点都市の五十一万都市、そしてそれぞれの首長さんは今のところ、心の片隅にあるいは何かちょっと持っておられる方もあるかもしれませんが、今のところは合併の機運というのはございません。むしろ、指定を受けた拠点の中身をいかにスピーディーにいわば達成していくか、これが最大の課題でございますので、今のところ県北についてはその機運はない。  しかし、最近県北が非常に変わりましたのは、工業が今まで考えられなかったほど、一兆数千億、多分一兆四千億くらいだと思うのですが、平成三年十二月三十一日現在ですが、今ちょっと落ちていますけれども、今まで県北がこれほど工業がぐんと伸びたということはございません。それと同時に、先ほど申しました県北一円の、果物を中心とした、あるいはそれに花も加わったところの農業が非常に伸びて、農業が馬力がついております。  したがって、工業に従事している従業員のかなりの部分が実は農村出身の子供さんであったりお孫さんであったりしていますので、農家の持っている勤勉、節約あるいは丁寧、そういったことが巧まずして、工業分野に就職することによって工業の生産力の活力に、生産の上昇に、非常に大きい農業のエネルギーが工業の中で生きているというのは、県北ならではの特性であろうと思います。  特に知事が、本県の広い生活圏の中でそれぞれ七つの生活圏ということになりますと、県北もその七つの生活圏の中に入るわけでありますが、県北については拠点を重点にして充実していく。特に農業と工業がそういう意味で人的に非常にうまく関連しながら、それぞれの多品種展開の農業と工業がこんなふうに伸びたのです、今は少し失速していますが。そんなことで、県北の持ち味というのはそれぞれの持ち味がありますから、合併で全部ホモ牛乳みたいに一緒にしないで、それぞれの持ち味でやっていこう、こんな気持ちでおります。
  202. 服部健一

    ○服部健一君 ちょっとまとめたものがありますので、意見を述べさせていただきます。  地方分権論議の中ではしばしば町村の規模が小さいことが指摘されておりまして、自主財源の不足あるいは人材確保の困難等、そういうことがあるために地方分権受け皿として十分でないとの理由から、町村の合併論が話題となっているようでありますが、この件につきましては、さきの陳述で町村の事務執行能力に対する論議の中で申し上げたとおりでございますが、現在の町村でも、権限とそれに伴う財源が付与されれば、十分効率的な事務処理が行えるものと思っております。  したがいまして、権限移譲の受け皿の整備等の見地からのみ市町村の合併論議が行われることは適切を欠くものである。それで、農山漁村の地域社会を踏まえないで、単なる経済効率性の見地のみから合併を進めようとすることは、地域社会の崩壊につながるものである。  もちろん、地域の一体的な整備、あるいは市町村の行財政基盤の強化、高齢化社会に備えた社会福祉等、住民に身近な行政サービスの充実等を図るための合併の必要性については、これを否定するものではありません。地域の実情により、住民の自主的な発意に基づく、いわゆる自主合併が行われることはまことに望ましい。  幸い、今国会提出されました市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律では、提案理由で、「自主的な市町村の合併を推進し、あわせて合併市町村の建設に資するため、」とされておりますので、我々市町村意見を十分に取り入れられた法律となりましたことはまことに喜ばしい限りでありまして、今後も現在の町村行政の実態と実績を深く認識され、町村行政についても十分に御理解をいただいた上で合併等の議論が行われるよう御配慮をいただければ幸いであります。  ちなみに、私のところでございますが、安達地方一市六町村で広域圏を形成しております。広域消防、ごみ処理問題、それからし尿処理、これらを組合の事務としてやっておりますが、年々負担が増嵩してまいりまして、将来は各市町村財源も大体負担金が大半になってしまうのではないかというような心配もございます。そういうことになりますと、これはいずれ合併という問題が出てくるのかなというふうにも考えますが、現在はまだ合併という機運もありませんし、そういう話題は出ておりません。
  203. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  近隣の町村と公共施設の重複、そういうこともたまに国政の場でも問題になるのですけれども、そういうことではなしに、阪神・淡路大震災の災害ということを多くの国会議員現地の調査に入りまして見てきた中で、個人的にという前置きをつけた中でありますが、自治大臣も、二十万から三十万ぐらいの都市というものを整備していくことが、災害ということを考えた観点からも今後は重要なことになってくるのではないかという発言がございました。  そういう意味では、一市六町村で今広域行政をやられているというお話ですが、町長さんの方で、災害に対する備えというのですか、そういう面から見た今の町村単位、町長さんの町における不安点ですとか問題点とか、もしございましたらお聞かせをいただきたいと思うのです。
  204. 服部健一

    ○服部健一君 大変恐縮でございますが、私の町のことを申し上げますと、人口は九千二百名で大変これは減っておりますが、面積は七十二平方キロ。というのは、福島県には八十町村ございますが、その中では最も平均的な人口、面積の規模であります。しかしながら、大変山間地でございまして、非常に起伏が激しい、そういうところにおるものですから、先ほどちょっと申し上げたのですが、所得水準もまことに低いという状況にあります。そういうことで、何とか過疎脱却ということを一番の悲願にしておるわけであります。  そういう中で、合併ということは考えてはおりませんが、今までの考え方からいうと、人口規模一万ぐらいはあるいは一番やりやすいのかなというような感じはいたしておりました。しかし、だんだん世の中が変わってまいりますので、そういうことばかり言っていられるのかどうか。先ほど申し上げましたように、財政負担の問題も出てまいりますと、お山の大将で威張っているわけにはいかない、こんな気もいたします。
  205. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございました。  知事さん、市長さんにもお聞きしたいのですけれども、災害と都市づくりという点もどのようにお考えになられているか、ぜひこの機会にお聞かせをいただきたいと思うのです、漠然とした質問で恐縮ですが。
  206. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 先ほどちらっと申し上げましたが、福島県は幸い一極集中していない県なのです。福島、郡山、会津、それからいわき、大体三十万ぐらいの都市が分散している。高速体系が縦横三本ぐらいずつ、ここ十年、あるいは今後十年、二十年で整備される。それぞれが三本ずつですね。そうすると、七つの生活圏、都市と周りの町村、農村、漁村で七つの生活圏になるのですね。  これはもう余り人口は、どうせ日本全体がふえないのですから、人口をふやして活性化しようなんということは考えずに、せいぜい三十万から大きくても五十万、コンサルに頼みますと百万都市を一つつくってなんというお話が出てくるのですが、二十一世紀はもうそういう時代ではないのではないか。別に新宿みたいなわい雑な町がなくても、今の若い方々は遊ぶところを非常に知っていますし、家庭も大事にしますし、どうも我々の時代と違ってライフスタイルが変わってくるだろう。  そういう中で、残念ながら、国なんかの多極分散を聞いていますと、仙台と札幌に中枢都市をつくってなんということで、多極分散というのは、東京プロブレムをどう地方に分散するかという感覚しかないのですね。そうではなくて、例えば仙台との関係でいうなら、仙台はいい町なのですから、これは仙台の方が決めることですが、福島と山形と三十分ずつで行けるのですから、南東北中枢都市圏というのをここに考えて、それぞれ機能分担したらいいのではないか。それと同じような考え方を県内の七つの生活圏で考えて県土づくりをしていくということで来たのですが、理論的にこれは成り立つのかどうかということで、非常に心配しておりました。  しかし、もっと安全とかいろいろな、二十一世紀を見据えた場合には、こういう考え方で県土づくりをするのが最もいいことではないか。そうすると、三十分でスキーにも行けますし、三十分で海水浴にも行けるという県土に幸いなってきつつありますので、生活圏としては、福島県全域を月間の生活圏として考えて、あとは一つ一つの日常生活圏は七つのそれぞれの生活圏で進めていけば、会津の方の町村も過疎化しないで済む。そういう県土づくりを進めていこうということで考えております。
  207. 田中甲

    田中(甲)委員 そうしますと、災害に関しては、うまくバランスのとれた、それにも対応できる県土に今なっているというふうに受けとめてよろしいですね。
  208. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 はい。もちろん具体的には、いろいろ今度の震災を参考にして防災計画の見直し等は進めておりますけれども、県土全体としての物の考え方はこの方向でいこう、後はそれぞれの都市のお考えで。
  209. 吉田修一

    吉田修一君 田中先生の御質問でございますけれども、これは各地にあると思うのですが、福島市にも防災会議というのがありまして、今までは一年に一回ライフラインと言われる電気、ガス、水道、電話、こういった関係方々、それに気象台であるとか陸運局であるとか食糧事務所であるとか、大体三十名近くの方々が一堂に集まって防災会議をやっていたのですが、このたびの大震災を契機にして、形ばかりの防災会議をやってもしようがないから、もう少し実のあるものにしよう。  したがって、三十名で構成されているこの防災会議の中で、今のライフラインと言われるようなものについてはそれなりの専門部会を開いて、そして、このたびのような災害が発生した場合にそのグループはどういう動きをするか、食糧関係はどうするか、こういうふうにこれから幾つかの、せいぜい三つか四つ考えられる専門部会でそれぞれ検討して、検討した結果をもう一回テーブルに持ち寄って全体会議で煮詰めていくということで、この防災会議を実のあるものにしていこう。  その中で出てきたのは、どういう経過なのか、いろいろ経過はございましたけれども、自衛隊が入っていないわけでありますから、自衛隊が入っていない防災会議というのは、やはりこれは一たん緩急あったときまるで違いますから、だからうちの方も次回の防災会議からは自衛隊も入っていただこうというのが一つ。  それから、先ほど知事さんも町長さんも言われたように、福島市だけの防災会議が何ぼ立派なことをやっていてもしようがないので、お隣の方々と、いわきであるとか喜多方であるとか離れたところとなかなか連携がとりづらいのでありますから、すぐ隣の二本松さんであるとか郡山さんであるとか、あるいは、うちの方には先ほど申しました拠点がありますから、拠点のグループとの中で防災会議をもう一回見直していこう、これが一つでございます。  それからもう一つは、これは本当に頭が痛いのでありますけれども福島市の三十年代の旧市内の人口というのは約六万だったのでありますが、今は三万であります。これは何も福島市だけの問題ではなくて、大体地方都市の二十万から三十万くらいの都市の中心部というのは、いわばいい部分がだんだん外に出てしまって真ん中が空洞化しているわけであります。  市政を預かって五年目あたりから、二十四時間都市構想という妙な都市構想、マニュアルも何もなかったのでありますが、二十四時間生き生きとした、人の息遣いの感じられるような町をひとつつくっていこうということで、夜中に人が住まない町というのは、防犯上からいっても、防火対策上からいっても非常に危険な町でありますから、外に出ていった人口をもう一回、共同店舗であるとかその上に公営の住宅であるとか、民間投資も含めて上に住宅をためて、そこに人の戻ってくるような政策展開をやりたい。  しかし、福島市だけで、あるいは知事さんの指導をいただいて本県だけでやっていてもしようがないのであって、二つ申しましたけれども、防犯の問題については、近隣の仲間と隣組の組織をつくっていく。それから、真夜中に人が住まない町というのはどこにもあるのでありますが、これは非常に危険な町でありますから、この空洞化をいわば阻止して、人が戻ってくるために、どういう国と地方の連携というか機能分担があるだろうか。これが防災の面から考えました今一番頭の痛い問題であります。
  210. 田中甲

    田中(甲)委員 防災と都市づくり、この観点の中には必ず自治意識ということが出てくると思うのですね。地方分権を進める中でも、なかなか自治意識が持たれにくいという中において、防災というのは、国や県、市町村役割をどのように持っていくか、自治意識をそこにどのように絡めていくかという観点で、非常に重要な、またわかりやすい切り口ではないかと私は思っておりまして、質問をさせていただきました。  持ち時間にもう限りがあるようでありますが、私どもの政党で今厚生大臣が出ておりまして、もし新ゴールドプランや福祉の面に関しまして特別御意見がありましたら、最後にお聞かせをいただいて、質問を終了したいと思います。
  211. 吉田修一

    吉田修一君 幸いに、田中さんのところの大臣が厚生大臣ということでございますので、一つ、私どもの水道は全部の延長が一千百キロメーターの、太いパイプも細いパイプもあるのでありますが、その中に二百キロの石綿管のいわば送水管があります。昔、先生も市政担当のときおわかりだと思うのですが、しかも割と安直に、安くて水が通るというので石綿セメント管を随分使ったものでありますが、簡単に言いますと、全体の二〇%が石綿セメント管でありますから、これは非常に地震、衝撃に弱いわけでありますから、これらのいわばグレードアップに、お帰りになったら所管の大臣に、温かい御配慮をひとつ賜りたい。  以上でございます。
  212. 佐藤栄佐久

    佐藤栄佐久君 最後に。  厚生省関係のゴールドプラン等につきましては、計画を市町村でつくって積み上げていくという、本当に地方分権の実験を今しておるわけです。財政面で、財源等の問題で非常に苦労しておりますけれども、そういう意欲に対して敬意を表して、お答えにしたいと思います。
  213. 田中甲

    田中(甲)委員 ありがとうございます。  終わります。
  214. 笹川堯

    笹川座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  意見陳述方々におかれましては、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。お三方に心から厚く御礼申し上げます。  拝聴いたしました御意見は、両法案審査に資するところ極めて大なるものがございます。改めて御礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しましても、深甚なる謝意を表する次第であります。  これにて散会いたします。     午後三時十九分散会      ————◇—————    派遣委員滋賀県における意見聴取に    関する記録 一、期日    平成七年四月十二日(水) 二、場所    ロイヤルオークホテル 三、意見を聴取した問題    地方分権推進法案内閣提出)及び地方分    権の推進に関する法律案冬柴鐵三君外三    名提出)について 四、出席者  (1) 派遣委員    座長 中馬 弘毅君       蓮実  進君    吉田  治君       網岡  雄君    古堅 実吉君  (2) 現地参加議員       川端 達夫君  (3) 政府出席者         総務庁長官官房         審議官     土屋  勲君         自治省行政局行         政課長     川村 仁弘君  (4) 意見陳述者         滋賀県知事   稲葉  稔君         滋賀県市長会会         長         大 津 市 長 山田豊三郎君         滋賀県町村会会         長         山 東 町 長 山本 博一君      ————◇—————     午後一時三十分開議
  215. 中馬弘毅

    中馬座長 これより会議を開きます。  私は、衆議院の地方分権に関する特別委員会派遣委員団の団長の中馬弘毅でございます。  私がこの会議の座長を務めますので、よろしくお願いいたします。  この際、派遣委員団を代表いたしまして一言ごあいさつを申し上げます。  皆様御承知のとおり、当委員会におきましては、内閣提出地方分権推進法案及び冬柴鐵三君外三名提出地方分権推進に関する法律案の両案につきまして審査を行っているところでございます。両法案は、三月十日我が委員会に付託になりまして、精力的に審議を進めてまいりました。  当委員会といたしましては、両法案審査に当たり、地方自治に携わる皆様方から御意見を聴取するため、御当地におきましてこのような会議、いわゆる地方公聴会を催しているところでございます。  御意見をお述べいただく方には、御多用中にもかかわりませず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いをいたします。  特に、この法案審議も相当進んでおりまして、賛否はともかくといたしまして、採決の段取りの方も整ってまいりました。この法案が、ただここでの法案に対するいろいろな御意見をちょうだいするだけではなくて、特に法案の中に盛られております地方分権推進委員会、ここが実質上権限の移譲その他のことをやってまいります。ですから、これに対する一つの皆様方の御要望、御意見もあわせてお述べいただけたらと思っている次第でございます。  まず、この会議の運営につきまして御説明を申し上げます。  会議議事は、すべて衆議院における委員会議事規則及び手続に準拠して行い、議事の整理、秩序の保持等は、座長であります私が行うことといたします。発言される方は、座長の許可を得て発言していただきたいと存じます。  なお、この会議におきまして、御意見をお述べいただく方々は、委員に対しての質疑はできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  次に、議事順序につきまして申し上げます。  最初に、意見陳述者方々から御意見をそれぞれ二十分程度お述べいただきました後、委員より質疑を行うこととなっておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、本日御出席方々を御紹介いたします。  出席委員は、自由民主党・自由連合の蓮実進君、新進党吉田治君、日本社会党・護憲民主連合の網岡雄君、日本共産党の古堅実吉君、以上でございます。  なお、現地参加議員として、川端達夫君が出席されております。  次に、御意見をお述べいただく方々を御紹介いたします。  滋賀県知事稲葉稔君、滋賀県市長会会長大津市長山田豊三郎君、滋賀県町村会会長山東町長山本博一君、以上の方々でございます。  それでは、稲葉稔君から御意見お願いいたします。
  216. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 滋賀県知事の稲葉でございます。  衆議院地方分権に関する特別委員会皆様方におかれましては、日ごろから地方行政の諸問題に関しまして格別の御理解と御高配を賜り、深く感謝を申し上げるところでございます。  本日は、本県におきまして、地方分権推進法案及び地方分権推進に関する法律案に関して意見を申し述べる機会を設けていただき、厚くお礼を申し上げます。  地方行政に携わっております立場から、地方分権をめぐって常日ごろ考えておりますことを御紹介させていただきたいと存じます。  地方分権推進につきましては、古くはシャウプ勧告で強力なる地方団体の必要がうたわれて以来、その後も各種の審議会の答申を初め、政党、民間団体、地方自治体など各界からの声がその必要性を訴えてきております。  しかしながら、これまで何度も大きな機運の盛り上がりがあったにもかかわらず、抜本的な改善がなされずに今日に至ったと思わざるを得ません。地方分権と一口に申しましても、その中には、国と地方を通じ、権限財源あるいは人材など多方面にわたってさまざまな問題を含んでおり、これらの細かいところから始めようとしますと議論が百出する状況でありましたし、受け皿に関する問題はまさに百家争鳴の観を呈し、総論では賛成でも、各論になるといつの間にかうやむやになってしまったというのが実態だったように感じております。  ところが、今このように地方分権推進に関する基本的な法案が初めてまとめられ、国会で御審議をいただくという段階にまで至っておりますことは、私どもの積年の念願、すなわち自治行政自治体に任せるという考えの確立と、その具体化に向かって一日も早く一歩を踏み出してほしいという願いがまさに成らんとしているものと、感慨を禁じ得ないものでございます。この上は、何としても法案早期制定を図っていただきたい、それによって地方分権の流れを確固たる軌道に乗せていただきたいと存じております。  地方分権必要性につきましては、両法案とも、地方意見を初めこれまでのさまざまな議論を踏まえ、これを集約する形で示していただいておりますので、改めて一から申し上げるまでもありませんが、住民のニーズやライフスタイルがますます多様化していく中で、今の体制のままでは十分な対応ができなくなるのではないかと地方では切実に考えております。  申すまでもなく、行政施策の対象は生身の人間であり、また生きた社会経済事象であります。それはさまざまな側面をあわせ持った存在であります。例えば、高齢者の方のニーズから考えますと、福祉、保健、医療の連携が不可欠でありますし、生涯学習も必要となります。住宅対策も含め、町づくり全体への配慮もしていかなければなりません。こうしたことへの対応を課題の一局面ごとに専門分野別の縦割り行政でやろうとしても、なかなかスムーズにいかない時代になってきております。一元的、完結的なコーディネートのもとでの総合的な施策が必要とされており、このために、自治体権限財源を充実し、主体的に政策を実行する仕組みとしての地方分権推進が求められているわけであります。  こうした観点は住民生活にかかわる行政の全体に求められることになりますが、特に自然環境の保全、地域の実情や開発との調整などを踏まえた多角的な視点からの対応を必要とする土地利用に関する権限などは、地方に移していくことの緊急性が高いと考えております。  私事にわたって恐縮でございますが、私は昭和二十一年に滋賀県庁に奉職をいたしました。自来、半世紀にわたって滋賀地域づくりに携わり、福祉や環境などの面での国に先駆けた施策も含め、県民とともに精いっぱいの工夫を重ねてまいりました。  そうした取り組みの中で私にとってとりわけ印象深いのは、やはり国民的財産ともいうべき琵琶湖を初めとする環境保全への取り組みであります。膨大な水量を持ち、誕生以来の長い間美しい姿を保っていた琵琶湖でありますが、高度経済成長期以降、急激な水質悪化に苦しむことになり、特に昭和五十二年五月、琵琶湖に初めて発生した大規模な赤潮は、県民の暮らしを映し出す鏡のような存在とも言える琵琶湖がみずから病状を訴えたものとして、県民に非常に深刻な衝撃を与えました。これを契機として、多少の不便はあっても琵琶湖を守るために粉石けんを使おう、富栄養化にストップをかけ、青い琵琶湖を取り戻そうという声が上がり、消費者グループを中心に全県的な組織がつくり上げられました。こうした県民運動の力を得て制定しましたのがいわゆる琵琶湖条例であります。それ以後も、県立琵琶湖研究所の設立、世界湖沼環境会議開催、国際湖沼環境委員会の創設、ヨシ群落保全条例などの取り組みを実施してまいりました。  しかしながら、この間、県民の意見も聞き、いろいろ知恵を絞った施策が、国との関係、かかわりにおいて思うように進まないことも一再ではありませんでした。琵琶湖条例あるいは風景条例の制定にいたしましても、その過程で、各省庁の方針というよりは、中央でクレームがつきまして、たびたび苦い思いをしたものであります。  琵琶湖の水環境の現状はと申しますと、水質的には、さまざまな対策を講じつつありますものの一向によくなっていない、おおむね横ばいと称しておりますが、一部の現象では悪化の傾向が見られるなど、依然として厳しい状況にあります。  本県は琵琶湖を中心とする盆地でありまして、すべての水が琵琶湖につながっておりまして、その意味では琵琶湖と運命をともにしていると申して過言ではないというふうに存じますし、これは県民一人一人の実感であります。琵琶湖を望ましい姿で守り、次の世代に引き継いでいくことはすべての県民の願いとして最優先の課題であり、今後ともこうした本県固有の事情に応じた取り組みを進めていく必要があります。  例えば、現在、環境基本条例を制定すべく準備を進めており、やはり琵琶湖の水質保全が大きな焦点となっております。水質汚濁の発生源にはさまざまなものがありますが、毎日家庭から出される雑排水も一つの要因であります。その適正な処理が緊急を要する課題となっております。都市下水道や農村下水道の制度に乗らない地域においても例外とは言えないのであります。生活雑排水が処理できない単独処理浄化槽の設置を規制し、高い性能を持った合併処理浄化槽の設置を義務づけ、建築確認における要件にも盛り込みたいと考えておりますが、現行の建築基準法のもとでは国の了解が得られません。しかし、本県の特殊事情においてはぜひとも必要なことでありまして、条例の制定のように、地域性を本質とする取り組みについては、これがスムーズにいくよう、分権の理念のもとで地方が自主性を発揮できるような体制に改めていただきたいと考えております。  もちろん、私権の制限にかかわることなど、もとより慎重に検討を行うべきものでありますが、基本的には地域のコンセンサスの問題であり、自治体がその権限と責任のもとで地域の実情に応じた施策を行えるようにする必要があると常々感じております。  以上、地方の立場からの分権必要性についての考えの一端を申し上げました。今日、広く世論は分権化を求めるに至っていると考えますが、中には分権慎重論の声も聞こえてくるところであります。  例えば、自治体の首長に権限が集中し、腐敗の温床になるのではないかという声がありますが、私には角を矯めて牛を殺す論のように思われます。自治体地域の総合的な整備を行おうとすればある程度権限が集中することになりますから、当然自治体分権にふさわしい形の改革をしていく必要がありますし、何らかのチェックの仕組みを強化する必要もありましょう。しかし、それよりも、今のように国の責任か地方の責任かわかりにくい状況にあるよりは、地方分権によって地方自治がより身近に感じられるものとなり、地方行政への関心が高まれば、住民による監視の目が厳しくなるなど、そうした内在的な統制と申しますか、選挙を初めとする民主政治の基本原則にのっとった形でのチェックが本来の役割を果たすことにもつながってくる、むしろ行政の透明性が高まることになると考えるべきであります。  大切なことは、分権化によって地域行政が、国の干渉でなく、地域住民のコントロールによって行われるようになることであります。地方分権の眼目はこのような仕組みを確立することであり、このような土壌の上にしっかりとした住民自治に支えられた真の地方自治が育っていくものであると考えております。  また、自治体行政能力あるいは行政への姿勢そのものに不安感や不信感があるようにも感じております。こうした意見も本末転倒でありまして、まずは、権限を移譲し、やらせてみることが大切であります。分権を実施すれば、各地域が、住民の英知を結集し、個性ある取り組みを競い合う中で、多くのことを学びながらその能力を高めていくのであり、国が自治体に思い切って任せることが自治体を変革し、確かな地方自治を確立するのであります。  これまでも、なかなか自主性を発揮できないような仕組みの中で、非常に苦労しながら創意工夫にあふれる仕事をしてきております。むしろ、地方の先進的な取り組みが国の仕組みとなって取り入れられ、全国的に広がっていった例も数多くあります。  次に、両法律案内容につきましては、これまでの各界での意見が集約されたものであり、特に、分権推進のかぎを握ると言われている地方分権推進委員会につきましては、両法律案を通じてかなり具体的に書き込もうと苦心をいただき、勧告・監視権限を与えるなど、世論にこたえる形にしていただいたと感じております。  ただ、地方自治の確立のためには、自治体がすべての事務において明確な責任を持っていく必要があると考えますが、その責任というのは、当然のことながら住民への責任であるべきであります。ところが、機関委任事務という行政執行のあり方は、地方自治体をして、ともすれば中央政府に対して責任を負うという体制にしてしまうことにつながっております。  そこで、私は、ぜひこの制度を改善して、自治体の責任の明確化を図るべきであると考えております。例えば、国政選挙事務や統計情報の整備、旅券の交付などは、国の事務として、国が基準を示し、地方に執行を委託する等の形が望ましいと考えるのであります。したがいまして、機関委任事務は、その概念を含めて抜本的に見直しを行い、新たな仕組みを構築するぐらいの整理合理化を行うという形が必要ではないかと考えております。  また、五年間の時限立法とするか、恒久法としつつ五年程度で具体的成果を上げることを目指すものとするかにつきましては、分権システムを確立するためには息の長い取り組みが必要でありますが、やはり五年ぐらいの間には一定の成果を上げていただくべきでありまして、その進みぐあいを検証する意味でも、あらかじめ一つの目安を設けておくことは重要な意義があると考えております。時限立法と申しましても、五年を経た時点で所期の目的が達成できない状況であれば、当然期限の延長等の措置について議論がなされるはずであります。  そのほか、幾つかの点にわたって両法律案の違いが見られるところでありますが、その基本的な理念に隔たりはなく、地方分権推進に向けての決意は相通じるものであると理解しているところでございます。  とにもかくにも、地方意見を十分に踏まえていただき、できるだけ早く地方分権推進計画を策定し、実のある形で分権化を進めていただきたいと考えておりますが、特に申し上げておきたいことは、権限移譲を含め、国と地方の具体的な役割分担あり方の議論には、必ずその地方役割に見合うだけの財源の保障を役割分担と表裏一体として明確にしていただきたいということであります。  このためには、税源の再配分や、課税自主権の強化を伴った地方税の充実、現行の地方交付税制度の抜本的見直し、国庫補助金の一般財源化など、分権の趣旨に沿った地方税財政制度を構築していただく必要があると考えております。  一方、地方分権成果を確固たるものにするためには、自治体自身の行政システム分権時代を担い得る形に改革していくことが大切であります。二十一世紀に向けて、高齢社会への対応、社会資本の整備など、行政需要の増加は目に見えております。このため、みずからの組織と事務執行を厳しく見直すリストラクチャリングにより、一層の効率的な行政を進めなければ、分権意味は大幅に減少することになります。  本県におきましては、こうした観点から、昨年六月に、各界の有識者から成る滋賀行政改革委員会設置し、分権化を初めとする新しい時代にふさわしい県行政あり方検討していただいており、去る二月二十一日に、中間報告という形での御報告をいただきました。  この報告の中では、行政改革の視点として、県、市町村、県民が責任と役割を自覚すること、その上で、市町村の意向や実情を踏まえつつ、必要な財源に配慮しながら、市町村への権限移譲を進めるべきであると提言いただいております。また、近隣市町村との合併も視野に入れた広域連合など市町村相互の連携のあり方や、地域の実態に合わせた事務処理組合の整理統合についての検討も行うべきこととされております。そのほか、時代に即応した県行政組織、県政推進の基盤をなす財政の健全性の確保、効果的な行政運営と職員の能力開発などについても提言をいただいております。  本県としては、この報告を真摯に受けとめ、引き続き検討お願いするとともに、実行可能なものについては速やかに具体化していくことにより、分権時代を先導する覚悟を新たにしている次第であります。  本県では、琵琶湖に代表される豊かな自然の中で、自然とともに生き、すぐれた気風を身につけた先人たちの「淡海文化—あわうみの文化—」とも呼ぶべき知恵や心を、現代の生活に生かすことにより、将来の世代にとっても価値のある、滋賀ならではの地域づくりを行っていこうという「新しい淡海文化の創造」を提唱、実践しております。  既に、市町村や事業者、県民などの広い共感を得ながら具体的な取り組みを進めているところでありますが、例えば、昨年度から淡海文化市町村推進事業というものを実施しておりますが、これは、基礎的な生活の場である市町村を舞台に、市町村それぞれの個性を生かした住民参加型の事業に対して県が支援を行うというものであります。いわば、国において実施されたふるさと創生事業の滋賀県版というようなものでありますが、お互いの顔が見える地域の中で、市町村住民が知恵を出し合い、力を合わせて主体的に地域づくりを競い合おうとするものであります。地方分権の道は、制度論はさておき、地方分権的な物の見方、考え方を確立する中でこそ開けてくるという意見があります。分権時代にはそれにふさわしい新しい文化が生まれてくるものと信じ、今後とも取り組みを進めていきたいと考えております。  本特別委員会委員各位におかれましては、このような理念は十分御承知いただいているところでございますが、地方においてもその思いは同じであり、地方分権の担い手としての腹をくくっている、既に分権時代を見据えた取り組みを進めているという御認識を新たにしていただきまして、ぜひとも法律案早期制定に向けて御努力いただきますようお願い申し上げまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  217. 中馬弘毅

    中馬座長 ありがとうございました。  次に、山田豊三郎君にお願いいたします。
  218. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 大津市長の山田でございます。  本日は、衆議院地方分権に関する特別委員会地方公聴会の場におきまして、私ども地方自治に直接携わらせていただいております市長の意見をお聞きいただけますことをまずもって感謝申し上げるとともに、まことに光栄に存ずる次第であります。  本日は、滋賀県内の七市を代表いたしまして意見を申し述べたいと存じます。七つの市と申しましても、私ども大津市のように人口二十七万五千人の市から四万人余りの市まで、自治体としての規模や地域の状況は異なりますが、いずれの市におきましても、それぞれ地域の実情に応じ、その特性を生かした町づくりを積極的に進めているところでございます。  そうした中、私は、大津市長として、また、滋賀県市長会の会長として、これまで微力ながら都市行政の進展に努めてまいったところでございますが、本日は、大津市の実情等に即して、地方分権必要性やその制度的なあり方についての考えの一端を申し述べさせていただきたいと存じます。  まず、地方分権必要性につきまして、今日、日本の置かれている社会経済情勢を改めて見渡しますと、高齢化、国際化、高度情報化の進展といった時代の潮流の中で、国内情勢はもとより国際社会との関係におきましても大きく揺れ動き、また、成熟した社会がもたらす価値観の多様化や、これまでの経済成長優先から生活重視への意識転換に伴い、今までにも増して、住民に最も身近な地方公共団体である市町村役割というものが高まってまいりました。そのような状況のもとで、市町村にありましては、特に、それぞれの歴史、文化、自然条件等を生かした町づくりを初め、高齢者福祉対策、文化行政推進など、総合的行政課題への的確な対応が強く求められることとなりました。  そのためには、市町村、とりわけ人口の八割が集中する都市自治体が主体的に諸施策を実施し、自立的な行政を確立することが必要であり、その意味からも、それらの住民生活に密着した行政に係る権限について、できるだけ市町村にゆだねられるべきであると考えております。また、地方分権は、地域の自主性、自立性に基づき個性豊かで魅力に富んだ社会を築き、住民福祉のより一層の充実を図っていく上におきまして欠かすことのできない要素であると考えております。  都市自治体の取り組みにつきまして、今まで、市町村とりわけ都市自治体は、市民に直結する自治体として、国や都道府県に先駆けた施策を積極的に展開してまいりました。これらの町づくりの実践の中で培ってまいりました行政能力は、今後国や県からさまざまな権限の移譲を受けた場合におきましても、それらを的確に遂行できる能力を十分備えているものと確信をいたしております。  全国六百六十余の都市自治体にありましては、時代に即応した都市政策あり方について、これまでからも全国市長会等の場におきまして議論を交わし、自主性、自立性に富んだ都市自治体実現を目指して種々取り組みを進めてまいりました。全国市長会では、現在、私が委員長を務めさせていただいております都市政策研究特別委員会におきまして、「権限移譲を中心とする地方分権あり方について」をテーマに調査研究を行っているところでございます。  昨年、地方自治法の一部改正によりまして中核市が制度化されたところでございますが、これも、平成元年に全国市長会で提唱いたしました第二政令指定都市構想が実を結んだものと存じております。中核市は、従来の政令指定都市に加えて、一定の要件を満たしている地域の中核的な都市に対しまして大都市特例を認め、権限財源の移譲を行おうとするものであり、限られた都市が対象ではありますが、これまでの都市が果たしてきた役割というものを認めていただいた結果であろうと、意を強くいたしている次第でございます。  大津市におきます取り組みにつきまして、私ども大津市は、県庁所在市として、これまで県下五十市町村の自主的な町づくりを先導する立場として、必要となるさまざまな事務権限を得る中で、着実に都市経営を行ってきました。  古くは昭和四十七年に建築主事を設置するとともに、開発許可に関する権限を初め多くの事務権限について知事から委任を受け、また、水質汚濁防止法や大気汚染防止法に基づく政令に指定する都市として事務権限を付与され、いずれも適正な処理を行い、これまで良好な住環境の整備を初めとする快適な町づくりに努めてまいったところでございます。また、総合保健センターを設置して市民の健康管理に係る大半の業務を実施するとともに、ごみ処理や下水道事業等についても積極的な施設整備を進めてまいりました。さらに、広域行政の面におきましては、本市は、三市四町で構成する広域市町村圏において中心的な役割を果たすとともに、現在、隣接する志賀町と一部事務組合を設け、共同処理によるごみ処理行政と火葬場の運営等に当たっております。  このように、大津市ではこれまでその権限に基づいて積極的な事業展開を図ってまいったところではございますが、現状を振り返って申し上げますと、市民生活に関連する行政は、広域的な観点で国や府県の調整を要するものを除いては、地域の実情を最も承知いたしております市にできる限り任せていただきたいということでございます。すなわち、事業実施に当たって必要となる判断の材料は市が最も多く有しているのであり、市民の要望に対して迅速的確に対応するためにも、改めて都市自治体への積極的な権限移譲をお願いする次第でございます。  機関委任事務につきまして、また、このたびの地方分権推進するための法律案でも、機関委任事務見直しが掲げられているところでありますが、私も、機関委任事務制度はいろいろな問題点を抱えていると考えます。機関委任事務と申しましても、その実質は地方自治体の固有の事務と基本的に変わることはないものと考えますが、それにもかかわらず、機関委任事務法律上は国の事務として位置づけられ、地方自治体の機関は、国の下部機関として事務の処理に当たるべきものとされております。したがって、機関委任事務という処理方式のもとでは、これらの事務が大幅に国の監督下に置かれるため、地方の自主性が圧迫され、地方の創造性が発揮しにくい状態になっております。地方自治体の自主性を発揮し、個性ある町づくり実現するためにも、この際、機関委任事務を洗い直し、原則としてこれを地方自治体に移管し、自主的な処理に任せるという方向性が確立されることが必要ではないかと存じます。  私ども大津市におきましては、職員の地方分権に対する意識や、本市における機関委任事務や国庫補助金に関する事務の状況を把握するため、先ごろ、独自にアンケート調査をいたしました。アンケートは、日常、機関委任事務や国庫補助金の事務に直接携わっている係長以下の職員九百名余りを対象にして行ったのでございますが、ここでも機関委任事務における問題点が浮き彫りになったように思われます。  アンケート結果によりますと、機関委任事務に携わっている者は全体の三割で、またその職員の年間仕事量の五割を占めており、改めて本市の事務においても機関委任事務が大きなウエートを占めているということを感じた次第でございます。また、回答では、機関委任事務に関する問題点として、半数以上の職員が国、県の指導、関与等が強いことや、調査、報告等の事務量が多いことを挙げており、その意味からも制度における問題点を指摘することができると思います。  さらに、国による地方へのかかわりにおける問題点の一つとして、国庫補助金の制度が挙げられると思います。国は、補助金を交付しようとする場合には、補助要綱を作成し、補助の対象、単価、補助率等を定めて行いますが、このため、どうしても画一的な基準にならざるを得ないこととなります。同時に、地方自治体が補助金の交付を受けるまでには、事前協議から、内示、申請、交付決定、請求、事業終了後の清算、報告に至るまで、煩雑な事務手続に多大の時間と労力を要します。また、いずれの自治体においても、所管の省庁に対して陳情といったことを繰り返しているのが現状ではないかと思います。  先ほど申し上げましたアンケートの結果によりますと、本市におきましても、国庫補助金に関する事務に携わっている者は全体の二割で、またその職員の年間仕事量の三割を占めていることが明らかになりました。同時に、国庫補助金の問題点として、七割以上の職員が申請、請求、会計検査に係る事務量が多いことを挙げており、これを見ましても、国庫補助金制度につきましては、事務を簡素化するなど改めるべき点が多いように思われます。住民の幸せと魅力ある豊かな町づくりに向けて、知恵を絞り、アイデアを発揮するべき自治体の職員が、現実にはそうした機関委任事務や国庫補助金に関する事務処理に多くの時間と労力を費やすことを余儀なくされているということは、地方自治の本旨から見ても、やはり問題であると言わざるを得ません。  同時に、地方自治体事務機関委任事務のように全国一律の基準によっていたのでは、地域の実情に応じたきめ細かな町づくりを進めることはできません。町づくりのような一定の区域に限定された行政分野は、本来的に地方自治体で行えるようなシステムでなければならないと考えています。また、社会福祉の分野のように、一人一人の高齢者や障害者が必要としている個別的なサービスを提供するためには、地域住民の声が迅速かつ的確に反映できる地方自治体権限財源を移譲し、住民に身近な行政はできる限り地方自治体において処理するという市町村優先の原則が貫かれるべきであると考えております。  財源保障等についてでございますが、ただ、ここで特に申し上げておきたいのは、幾ら権限市町村に移譲されても、その権限に伴う財源の裏打ちがなければ、自主的、自立的に事業が遂行できないということであります。移譲された事務を適切に執行するためには、その事務権限に応じた財政措置を講じていただくことが必要であると考えます。市町村が個性豊かな町づくりを自立的に進めていくためには、国と地方役割分担に応じて、現行の税源配分見直し自主財源確保のための新たな税体系を構築することが必要ではないかと考えます。  また、財政上の措置だけではなく、職員定数や組織のあり方についても、市の自主性、自立性が尊重されるよう、十分な配慮をお願いいたしたいと存じます。特に、今後の急激な高齢化社会の到来に向けて、老人保健福祉計画を着実に実施していくに当たっては、職員の確保が不可欠であります。市みずからが効率的、効果的な人員配置等に努めなければならないことはもちろんでありますが、その上で、それぞれの市の地域特性に応じ、実態に即した柔軟な対応を認めていただくよう、お願いをいたしたいと存じます。  行政体制の整備についてであります。  地方分権は、その推進を国にお願いするというだけでは決して実現するものではなく、よしんば実現したといたしましても、その受け皿となる市町村がこれまでのように府県や国に依存する体質のままであっては、本当の意味での分権改革にはつながらないと思います。  今こそ、我々市町村も、地方自治住民の権利と責任において主体的に形成されるべきであるという基本的観点に立って、その責務を果たすために、より足腰を強め自立することが肝要であります。みずからが考え、みずからが実施するという自立的な行政運営に向けての取り組みを進めていくに当たり、住民に直結する行政は我々が行うのだという強い決意を持ってこの分権改革に臨むことが何より大切であり、そのためには職員自身の意識改革ということがこれからの課題になるものと考えております。  正直に申しまして、これまで市町村の職員の意識や体質の中には、府県や国を頼りにし、言われただけの仕事をしておればいいという傾向があったことは否めない事実でございます。その意識や体質がある限り、本当の意味での地方分権はおぼつかないと言わざるを得ません。このためにも、今後は職員の意識改革とあわせて、権限市町村に移譲された場合においても、それを的確に処理し得る実力を備えるため、職員一人一人の資質の向上に努めることが肝要であり、その取り組みを積極的に進めてまいりたいと考えております。  そして、地方時代にふさわしい簡素で効率的な行政システムを確立するため、都市自治体もみずからの変革を積極的に進めるとともに、今後とも行政改革などの継続した取り組みを進めていくことが必要であると考えます。  一方、地方分権実現した暁には、まさに地域間、都市間の競争が新たに始まることと考えます。市民の要望に迅速的確にこたえ、他の自治体に先駆けたユニークで積極的な事業展開を図らなければ、たちまち市民の失望を招くことになりかねません。その意味で、地方分権は市の意欲と力量が試される場であり、各都市が互いに切磋琢磨し、市民の共感を得られる行政運営により一層努めることにより、それぞれの都市の個性をつくり出していくことになるものと痛感している次第でございます。  地方分権を進めるための法律につきまして、地方分権に関しまして、これまで長年にわたりまして論議が繰り返され、各界各層からさまざまな提言意見等がなされてまいりました。とりわけ、ここ数年の動きは目覚ましいものがございます。  このような状況のもとで、このたび、国会においては、地方分権推進法案地方分権推進に関する法律案の二法案がそれぞれ政府案及び議員提出案として提出され、審議が進められているところでありますが、両法案内容を拝見する限り、法の趣旨や目的等において、根本的に相違する部分はないように思います。  いずれにいたしましても、地方分権推進するための法律制定されることによりまして、分権改革は大きく一歩を踏み出すものと確信いたします。現在、衆議院の地方分権に関する特別委員会において、地方分権推進するための法律審議が精力的に行われておりますが、地方分権推進するには、まずもって法律制定が不可欠であります。この法律が一日も早く制定されるとともに、法律に基づいて地方分権推進委員会が速やかに設置され、分権の具体化に向けて早期に推進計画が策定されますよう、切に希望するものでございます。  最後になりましたが、本日御出席委員皆様には、法律早期制定に向けてさらに御尽力賜りますよう、心からお願い申し上げまして、私の意見陳述とさせていただきます。  ありがとうございました。
  219. 中馬弘毅

    中馬座長 どうもありがとうございました。  次に、山本博一君にお願いいたします。
  220. 山本博一

    山本博一君 それでは、陳述をさせていただきます。  私、滋賀県山東町長の山本と申します。  この機会に、滋賀県町村会を代表いたしまして意見を述べさせていただくことは、まことに光栄であり、心から感謝と御礼を申し上げます。  前お二人の陳述に重なる点もあろうかと思いますので、お許しを賜りたいと思います。  まず、私の町の紹介を少しさせていただきます。  滋賀県には、琵琶湖を囲んで四十三の町村がございます。地勢や気候風土が大きく異なりますことから、産業経済構造や人口動態もさまざまでございますが、私が町長を務めております山東町は、県の東北部に位置し、東海道新幹線あるいは名神高速道路において、冬の大雪の時期には必ずと言っていいほど交通機関に混乱を来していることで皆様にも御承知いただいております岐阜県関ケ原町に隣接し、町のおおよそ六割を山林が占め、農林業を産業経済の基盤とする、人口が一万三千人の文字どおり山間の自然に恵まれた小さな町でございます。  さて、今回、中央地方の新しい関係を目指す地方分権推進法案及び地方分権推進に関する法律案国会に上程されましたことは、明治以来の長きにわたる中央集権体制のもとでの我が国地方自治に新しい歴史が開かれ、地方に視点を置いた行政の枠組みを大きく前進させることとなり、長年地方自治に携わってきました者として、ひとしお感慨深く、本日御出席の議員の皆さん方を初め、関係者の方々に対しまして、深甚なる敬意を表するものでございます。  地方分権の基本は、今日までの諸情勢を背景に、住民に身近な課題については、地域の責任ある行政主体地域の実情に即して、自主的に政策を決定し、執行することのできる仕組みを確立することにあると考えております。そのためには、国と地方役割分担見直し、国から地方権限を移譲すること、そしてそれに要する税財源確保を通じて、地方自治体の自主性、自立性の強化を図り、二十一世紀に向けた、時代にふさわしい地方自治を確立することにあると存じます。  そのような基本理念実現に向けた法案の中で、我々地方自治体が重要視しておりますのは、調査、勧告の権限が付与された地方分権推進委員会でございます。  この委員会権限は、政府分権推進計画を作成する際に、具体的な指針を勧告すること、施策の実施状況を監視し、必要な意見を述べることとなっております。  当初、大綱で示された推進委員会権限は、推進計画の「具体的指針並びに同計画の策定及び推進について、意見提出を行うことができる」というものでございましたが、我々地方自治体等から、「地方自治本来の理念達成を求めて、歴史的な大改革を行なうという時に、意見提出しか認められない監視機関は存在意義がうすい。」という強い意見具申があった中で、委員会権限が強化されましたことは、大きな前進と評価いたしておるものでございます。  その中で、我々地方六団体からは、さらにこの委員会委員構成につきましても、一定数の委員については地方関係団体からの推薦者とするということを要望いたしているところでございます。地方意見が十分反映されるような委員会とならなければ、従来の中央集権の枠組みや仕組み転換していくことが期待できないようなことにもなりかねないという考え方でございます。委員にはぜひ一定数の地方関係者を加えていただき、地方意見を十分反映できる推進委員会となるよう期待しております。  次に、地方への権限移譲の方法についてでございます。  まず、一たん都道府県に権限を移譲し、その後市町村に移譲してはどうかという方法論議されていると伺っております。行政の最先端とも言える我々町村は、地域住民に最も身近なところであり、そのために、地域住民から期待されている役割がおのずとあるわけでございます。  そうしたことを踏まえまして、地方分権が目指しているところの住民が主役となって行政を構築していくためにも、国と地方、また地方の中でも都道府県と市町村役割というものを明確にした上で、我々町村に課せられた役割を計画的かつ着実に推し進めることができるような権限移譲の方法を確立していただきたいと考えております。この点に関しましても、推進委員会で十分議論をいただきますようにお願い申し上げます。  さて、貴重なこの機会に、我々地方自治体の実情をお聞き取り願いたいと存じます。  まず、国と地方役割分担に関してでございますが、福祉部門について申し上げますと、我々が地域の実情に即した福祉サービスを計画的、継続的に提供できるよう鋭意取り組んでいく中で、特に高齢者対策は、今後の高齢社会において、高齢者に身近に接することができる我々町村が最優先に取り組まなければならない課題であり、地域的に状況の違う高齢者福祉施策については、町村が住民のニーズを把握して、責任を持ってきめ細かい福祉サービスを提供することが必要であると考えております。しかしながら、押しなべて財政基盤が弱いと言われる町村が多い中では、個々の町村の財政事情により、福祉サービスの水準に格差を生ずることが懸念されるところでございます。  本県では、住民ができるだけ公平な福祉を受けられるよう、近隣市町村がお互いに十分話し合い、連携をとりながら事業を推進しているところでございますが、福祉サービスの水準を確保するためには十分な税財源確保が必要であると考えております。一例を申し上げますと、保育園の児童措置費、これの父兄負担は六五%でございます。同じ町村で幼稚園も設置いたしております。幼稚園の方はこれは一律でございます、同額でございます。そうしますと、父兄負担を軽減せざるを得ません。  また、国と地方自治体関係で長年課題となっております機関委任事務につきましても、住民に対する行政責任の明確化などの面から当然見直すべき制度であり、推進委員会で十分な議論を賜りますよう、これまたお願い申し上げたいと存じます。  次に、権限移譲についてでございますが、日ごろ我々の仲間が、会うたびに異口同音に申されておりますのは、農地転用の問題でございます。  現在二ヘクタールを超える農地を取得する際には農林水産大臣の転用許可を得ることとされており、許可を得るまでにはおおよそ六カ月から一年の長期間を要することから、その間、地権者の意向が変わったり用地費用が変動するといった問題が生じております。また二ヘクタール未満は、一平米に至るまで知事の許可でございます。県は、農業会議に諮問、答申を経て、許可というようなことになっております。  また、開発行為の許可につきましても、緊急を要する事業が長期にわたり停滞するといった事態を招いておりますので、地方自治体が実施する地域に密着した事業が迅速かつ効率的に実施できますよう、こうした許認可等に係る権限をできるだけ住民に身近な市町村に移譲されることを強くお願いするものでございます。  さらに、私ごとになりまして恐縮でございますが、昭和四十二年に町長に当選いたしまして、今日まで七期二十八年にわたり地方自治行政に携わらせてもらっております。  振り返ってみますと、昭和四十年代の高度経済成長期を経て今日に至るまで、工場誘致でございますとか農林事業や道路、河川事業などの基盤整備事業を中心に、国や県の指導を受けながら住民生活環境の整備を中心に推進してまいりました。そのためには、より有利な国の補助金を取り入れて事業を実施する必要があり、国の補助金獲得のために、要望や陳情活動も随分と行ってまいりましたが、今日では、公共下水道事業はおくれておりますが、社会教育施設の整備も含めて一定の行政水準の達成を図ることができました。  しかしながら、私どもの山東町におきましても、近年、社会の進展に応じて社会構造が大きく変わってきております。例えば、集落の中に農業者、サラリーマン、自営業者など職業が多様化しておりますし、家庭の中でもいわゆる共働きがふえております。さらに、豊かさに関しまして、価値観の変化と町政に対する要望も多様化いたしております。そうした中で、今後はますます住民が何を望んでいるかを見きわめ、地域がみずから考え、工夫して、地域の実情に合った事業を展開していくことが一層強く求められる時代になってくるものと感じております。  今日まで町村では、一つの事業を行うにも我々町村長が関係省庁に陳情を重ね、多大の時間と費用を費やして初めて事業を実施できるといった実情でございました。それだけに、地方分権推進により、こうした時間と費用のむだが少なくなれば、費用のことはさておきまして、町村がこうしたことに煩わされず地域の実情に応じた行政に専念できることになり、町村行政の一層の充実強化につながるものと大いに期待するものでございます。  ところで、権限を移譲される地方自治体についてでございます。  特に町村でございますが、自治体自体の中央に対する、あるいは県に対する依存体質についてもこの機会に大いに反省すべきであろうと考えております。また、政府地方自治体能力不足を理由に地方分権に対して前向きでなかったところがございますが、この際、地方自治体は職員の意識改革とより一層の資質向上を図り、もはやそうしたことを指摘されないよう、精いっぱいの努力をしていくべきであると考えております。  地方分権をより確実なものにするために、国と地方役割分担あり方財源の再配分、行政規模の適正化など基本的な課題が山積しており、我々町村においても、国や府県の動きを十分見きわめながら、また、適切な指導や援助を受ける中で、行政手続の公平性や透明性を確保し、事務事業を総点検し、組織、機構を合理化することなどにより、健全で効率的な行財政を確立するよう最善の努力をいたすべきであると決意を新たにしているところでございます。  滋賀県におきましては、稲葉知事が提唱されております「新しい淡海文化の創造」という理念に基づいて、本県の歴史と風土に根差した個性ある町づくり、これは市町村一律交付金三千百万という英断でございます、が進められております。県内各市町村では、住民参加によるシンポジウムや研修会の開催を通じて住民地域の個性や魅力を再発見してもらう中で、自分たちの町は自分たちの手でつくり上げていこうという機運が盛り上がっております。まさに、地方分権を先取りした住民参加型の行政を今進めているところでございます。  このたび地方分権に係る二法案提出されたことにより、地方分権が具体的な実施段階に入った現在、地方自治史上歴史的なこの機会に、ぜひとも早期に法案成立させていただきますようにお願い申し上げます。  我々町村も、地方分権の主役は地方であるという認識のもとに、各市町村が連携を深めながら分権地方みずからの課題としてしっかりと受けとめる体制を整えていくことに最善の努力を傾注いたす所存でございますので、法案の早期成立につきましては、重ねて何とぞよろしくお願い申し上げるものでございます。  以上をもちまして、まことに意を尽くせませんが、地方分権に関する私の意見陳述を終わらせていただきます。失礼しました。
  221. 中馬弘毅

    中馬座長 どうもありがとうございました。  以上で意見陳述者からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  222. 中馬弘毅

    中馬座長 これより委員からの質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。蓮実進君。
  223. 蓮実進

    蓮実委員 自由民主党・自由連合の蓮実進でございます。本日は、公聴会に稲葉知事さん、山田市長さん、山本町長さん、お忙しいところ御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。  地方分権を進めていくことは、民主主義と地方自治の原則から、どなたにも異存はないと思っております。国と地方がお互いにやるべき仕事、分野をきちんと決めて、国民のために精いっぱいのサービスをするために、今のような、国から県、あるいは県から市町村市町村から自治会などという中央集権的な考え方を改めて、できる権限地方自治体に任せて、必要な財源をきちっと確保していきたいと思っております。  本日は知事さん、市長さん、町長さんから率直な御意見をお聞かせいただきまして、大変に参考になりました。これからの法案審議成立後の施行にぜひとも生かしていけるように努力したいと思っております。  せっかくの機会ですので、本日は、日ごろ私がこの地方分権問題に絡んで考えていることを、多少重複するかもしれませんが、お尋ねをさせていただきたいと思います。  それは、地方分権問題でいつも持ち出される議論ですけれども、国が権限地方に渡しても、一体地方はやっていけるのかどうか、地方は毎日の窓口の業務あるいは住民サービスをやるのが精いっぱいで、これ以上のことをやる人もいなければ力もないのではないかと言われている問題であります。これは地方自治というか住民自治の基本に反する暴論と言ってもよいのでありますが、地方分権が具体化する過程の中で、国も自治体も真正面からぜひ一度論じていかなければならない問題だと私は考えております。お互いに日ごろ感じているものを出し合って、地方分権実現するためにはどうしたらよいのか、あるいは、優秀な人材を確保し、地域住民の期待にこたえて事務を行うには新しい工夫が要るのではないだろうか、この点について国がお手伝いをしてもいいのではないか、研修や交流などで新しい制度をつくってもよいのではないかと私は考えております。  私がこの点を重視しているのは、御承知のとおり、最近マスコミをにぎわわしている事件を見ると、どうも国にはこの人材という点で地方自治体への不信感があるのではないかと考えるからであります。  その一つは、言うまでもなく、今問題になっている東京協和、安全両信用組合の問題であります。本日はその中身について論じるつもりはありませんが、信用組合という地域や職場に密着した信用機関の監督をめぐる大蔵省と東京都のやりとりを見ていると、これで大丈夫なのかなという気がいたします。健全な運営、すなわち地域住民の利益を守るためにいかにあるべきなのか、十分な監督があったのか、お互いにいかに協力し合って間違いのないようにしているのか、どうも怪しい点があるような気がしてなりません。  そこで、私は、地方自治体の立場に立って、与えられた権限を本当に正しく円滑に運用をされるようにするためには、これからもっともっと真剣に取り組んでいかなければならない。分権されたけれども、渡された方がおたおたしたり、形式的なやりとりだけで、実態はこれまでの国・地方関係がそのまま温存されては何にもならないと思います。  皆さんに最初にお尋ねをいたしたいのは、地方分権時代に備えての人材の確保、人材の能力向上をいかに考えておられるのか、さきに申し上げたように、国からの一般的な不信感をはね返していくために具体的にいかなる準備をしておられるのか、さらに、各自治体における人材確保がどう行われているのか、研修などはどう進められているか、能力向上のための交流などの実態はどうなんだろうか、それらを含めて御意見を賜りたい。できれば今後に期待することもお話をいただければ大変幸いだと思っております。
  224. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 地方分権にとりまして、権限財源、人間の三ゲンが必要であるというふうに言われておりますけれども、人材の確保能力向上につきましても、地方分権実現にとって不可欠の問題であるというふうに考えております。  人材の確保という面では、県では公正な競争試験ということで、国と同じような試験を実施しておるわけであります。幸いに志望者もたくさんありまして、優秀な人材が採れておるというふうに思っております。  研修につきましては、いろいろな交流とかいうことも考えて実施をしております。古くから国の方との、人材を派遣してもらうというようなことを行ってまいりましたし、また逆に、県からも各省へたくさんの人を送って、そこで勉強してもらうというような形で、お互いに勉強をさせていただくというような仕組みをとっておりまして、現にずっと実施をいたしてきております。大変得るところが多いと思っております。  国の方から県にお越しになりまして、例えば環境行政なんか、環境庁からも県に来ておられますが、県で勉強したことを国に帰って政策化していくというようなこともしていただいておりますので、そういうようなことを我々も目の当たりにしながら、やはりそういう勉強もさせていただいておるというふうに思っております。  それから、他県との交流人事も盛んにやっております。具体的には、群馬県とかあるいは岐阜県とか、そういったところともやっております。それから、自治の最前線であります市町村との交流、これも積極的に行うようにいたしております。そのほか、視野の拡大でありますとか専門知識の習得のためには、海外派遣でありますとか大学院への派遣、民間企業や公的機関への派遣研修も行っておりまして、十分やれておるのではないかなというふうに考えております。  研修につきましては、既存の縦割り行政組織ではとらえ切れない横断的な政策課題につきまして共同研究をさせたり、政策形成能力涵養の特別な研修を、若い人たちから中堅クラスまで一緒になってグループに分かれて研修をする、こういうような方法もとっておりまして、かなり熱心にやっておるなという感じを受けております。そのほか、地方分権を直接のテーマとする研修を組み入れたり、それから、地方分権に関する講義とか小論文を書かすというような研修もやっておりまして、決して御心配いただくようなことはないと私ども思っております。  ただ、お話がありましたような信用組合、こういうような専門的な指導監督ということになりますと、やはりその分野の方々に来ていただいて、実地に指導していただくというようなことも大変大事なことだなというふうに感じております。
  225. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 今御質問いただきました問題点につきまして、大津市におきましても、職員の採用は、特別の技術職員以外は、そういう特殊な免許の必要な職員以外は全部公開試験による採用試験制度をずっととっておりますので、人材の確保についてはそう苦労を今現在もいたしておりませんし、公開試験による公平な採用によって得られた職員に対しまして職員研修を一定の期間置きまして窓口に配置するというふうな方法で進めております。  また、特に市町村の職員というのは、先生も御指摘がありましたが、とにかく現場の仕事、窓口の仕事に追われるという意味で、企画、立案、政策を立てるという仕事にどうしても能力を欠くというよりも、現場の日々の仕事に追われるというのが実態でございまして、私はよく申し上げるのですが、同じ大学を出て、同じように県庁と市役所に入った上級職の職員が、五年目で比較したら、企画、政策能力というのは県庁の人が抜群になっておるけれども事務を、現実の混乱した状態とかそういうものの現場の処理ということについては市役所の職員が一段上になっている。これは運動会とかああいうのをやらせてみれば非常によくわかるわけです。  ところが、政策能力とか企画能力が県庁の職員の人の方がつくだけ、仕事が企画、立案、指導ということに置かれておる。我々は毎日毎日、対市民のことに追われておる。そこに、よほど市役所の職員は努力しなければつい日々の惰性に追われてしまうことになってしまうということを避けるために、市の職員の研修というのに非常に重点を置いております。それは、大津市におきましては、新規採用の職員から吏員に任用されて三年、四年あるいは五年目、そして係長になってからすぐ、あるいは係長になって三年目というふうな研修をやり、そしてまた、自治大学とか市町村の研修所への派遣等につきましても積極的に参加をさせていく、希望者にはどしどし参加させていくというようなことで、職場に意欲的な職員が一人でも多くふえるようにというふうな体制で研修を進めております。昨年一年間の研修をとりましても、大体今二千八百人おります職員のうちで千二百十八人は何らかの研修を受けたというふうな形で進めておるのが現状でございます。  なお、さらに、人材とかあるいは企画能力を高めるために、市の方では、若い職員に対して企画委員会というような自主的な組織をつくらせまして、大学の教授と対々で一年間、それはもう時間外ですけれども、執務時間外に、選抜した十人ほどの若い職員と大学の先生等との対話の中で、地方自治あり方をどういうふうにするかとか、大津市の行政あり方をどうするかというようなことを検討さすというようなことで、研修する雰囲気をつくらせていくというふうなことも進めております。  また、職員の人事交流につきましては、私どもは建設省から助役の派遣を受けておりますが、そういうことで、物の考え方、国の考え方、また県からも指導を受けて、国、県のいわゆる政策立案に対する考え方に対して市の職員はどういうふうな点で勉強すべきかというようなことを常に研究し、またそれを実行していくために、市町村国際文化研修所とかあるいは滋賀県総合研修所等へ派遣をいたしまして、よく言います、よその飯を食うて勉強してこいというふうな方法で、そういうところで他の市町村の職員の人たちと意見を交わすことによって自分の視野をみずから広めていくということをやらせておるようなわけでございます。そのほか町村の合併等によりますいろいろな広域行政事務組合の職員の集まりの場とかいうふうなことで、お互いが切磋琢磨するようにやっていきたい。  そして、私、もう一つ職員に言っておるのですが、市町村の職員というのは、率直に言いますと、いろいろな御要請にこたえなければいかぬし、こたえることによっておのずから、わかっておっても間違ったことに引き込まれていくというふうなことが多い。それは、私はいつも職員に断る勇気を持てと言っているのです。これはだめです、これはできませんということを上手に断る能力を持てということをよく言うのです。その決断が、特に市町村の職員にはそれがなければ、うっかりしていると職員だけが責任を持たされて、やった責任は市長、職員にあって、言うてやらせた人は知らぬ顔してしまうぞと。強い信念でもって仕事をしなければいかぬというのは、結局正しいことを正しくするために無理な要求をはっきりと断り切れる勇気を持てということをいつも指導いたしております。  以上でございます。
  226. 山本博一

    山本博一君 先生御指摘いただきましたことは、県とか市よりも、一番弱小な町村はどうするんだ、そこに御心配をいただいているのではないかと思います。  確かに町村といたしましては、これはその規模がまちまちでございます。結構やっていけるところもございますし、また心配な規模の町村も多いわけでございます。したがいまして、この新事態にいかに対応していくかということは、本当に大変なことだ、これはもう率直な考え方でございます。  御指摘いただきましたように、二千六百から町村がございます。その中には不祥事を起こしたりいたしておりますから、分権をしたら何をするやらわからぬじゃないかというような御心配も、これは当然あると思います。  しかしながら、私どもは、分権推進されるということになれば、その方向に対応いたしまして真剣に取り組むということでございますが、私の町の実情は、一万三千人の小さな町でございます。行革もございまして、やはり経常経費の節減ということもございますから、人件費につきましてはできるだけ節減をいたしております。一万三千人といいますと、職員はどのくらいおるんだということでございますが、行政職を含めまして百三十人でございます。これは決して多い数ではないと思います。行政職を含めてでございます。  したがいまして、この分権の新事態になりましても、必要な人員は確保したいと思っております。できます。ただ、若い人の少ない時代でございますから、では優秀な人をすぐに採用するというわけにはまいりません。もちろんそういう方向もとりますけれども、やはり配置転換によりまして、それに向きました職員を張りつけるということで対応していきたいと思いますが、ではその穴埋めをどうするかということでございます。  私は、そこでひとつ地域に御理解をいただきたい。今若い人が少なくございますから、ではそれをどうするかということになりますと、もう年配者しかおりません。そうしますと、高齢者ということになりますと六十五歳以上ということになりますが、六十五歳というような、これは高齢者の物差しでもあるかもわかりませんけれども、個人差がございますから、まだ十年、十五年と使える人が多うございます。そういう人がたくさんおりますから、そういう者で補充していくという一つの方法があると思います。そういうようなことも考えながら、配置転換等でこの新事態に対応していきたい。  それからもう一つは、地域住民でございまするけれども分権を十分理解するような態勢にもう既に来ていると思います。と申しますのは、今の住民といいますのは、私どもよりもかえって時代認識が進んでいるのではないかというように思われます。  もう御承知のように、物から心、つまり自分たちの充実した生活をどうするかという方向に来ておりますから、そういうことを考えますと、地方分権なんてもっと早くやっておいたら、そんなこと当然じゃないか、中央の方だとか東京の方で企画されたことあるいはメニューによって地方行政をやるというようなことはおかしいじゃないか、自分たちの町は自分たちでやるんだというような意識は我々以上にあるのではないか、このくらいに思っておりますから、決して御心配は、ここはしていただかなくても対応していきたいと思っております。  今申しましたように、私どもは平素からそうした行革絡みで節減に努めておりますので、必要な人員の確保なり、あるいはまた近隣の広域なり、また私どもは合併というようなことにつきましても非常に関心を持っておりますし、やるならできる、またこの地方分権推進の機会にやらなければもう合併はできないんだというような認識も持っております。ですから、そういう点にも関心を持ちながら推進をしていきたい、こういうふうに思っております。  大変まとまらないことを申し上げましたけれども、御心配をかけないよう対応していきたい、そういう覚悟をいたしております。
  227. 蓮実進

    蓮実委員 よくわかりました。皆さんが自治体の責任者として努力されておられる実態はよくわかりました。これからは、これをいかに克服すべきか、私ども国会において真剣に取り組んでまいることをお約束いたしたいと思います。  ありがとうございました。
  228. 中馬弘毅

    中馬座長 続いて、吉田治君。
  229. 吉田治

    吉田(治)委員 新進党吉田治でございます。  本日は、大変お忙しい中、意見陳述お願いしまして、また質疑お願い申し上げまして、ありがとうございます。  こういう機会でございますので、数点、質問等をさせていただきたいと思います。  今意見陳述人のお話の中で、政府案と衆議院提出法案概念は一緒だ、基本的な部分は一緒だ、ですから早く通してほしいというふうなお話がありましたけれども、やはりそこをもう一度、認識というのですか、お聞かせいただきたいと同時に、私どもの主張を申し上げたいのは、やはり衆議院法の方では機関委任事務廃止というものをはっきり述べているということ、政府法案では廃止という言葉は一切述べられていない。知事さんが改善という言葉を言われましたけれども、やはり地方事務制度を含めて原則廃止というものは非常に重要じゃないかな、私どもはそういうふうに考えております。  それから、五年間の時限立法に関しては、知事さんの方からは、五年間でいいじゃないか、必要なら延長すればいいと。私は、そうではないと思うのです。五年という時間、区切られてしまいますと、五年たてばここへ集まって話をしている人間の何人が残っているのか。延長すればいいではないかという話ですけれども、そのときになって、では果たして延長ができるのかどうか、もう大体これで終わりよというのが普通のやり方ではないかなというふうに思っております。  この二点はこの法案において非常に大きな違いだと私は思うのですけれども、時間も限られております。それぞれ陳述人の方、一言で結構でございます、この件に関しまして御意見を賜りたいと思います。
  230. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 機関委任事務が本来地方自治考え方になじまないものである、ですから原則的には廃止すべきであるということは、私どもよくわかるわけで、ぜひそうしてほしいと思っておりますが、個々の事務について言いますと、いろいろ議論が出てくるだろうということを思うものであります。  地方分権推進計画の中で整理合理化がきちっとされるということであれば、条文の書きぶりにはそうこだわらなくていいのではないかなというのが現在の私の感じでございます。
  231. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 機関委任事務につきましては、私たちは、市長会なんかではやはりこういうふうに明確にした方がいいという意見もございますし、またそのような考え方でおりますが、現実の問題として、機関委任事務内容その他についていろいろと研究をしてみると、なかなか一挙にそこまではいくわけにはいかぬだろう。  だから、やはり法律としては、今回は推進委員会をつくっていただくことに重点を置いていただいて、その中でこの委員会の構成等あるいは運営を見てみますと、いろいろと意見を聴取していただく、そういう中で最終目的である機関委任事務の全廃に、廃止に持っていっていただければいいのではないか。だから、そのことをどうしても法案に書いていただかなければいかぬというところまではこだわることはないのではないかという考え方でおります。  それから、五年間の期限は、私は努力目標だとは思いませんけれども、この五年間にすべてが完成するのではなくして、できるところからやって五年間で目標を達成できるように、やはりできるところから、二段制ということの書かれておりますこと、いろいろ御意見がありますが、直接市町村権限を移譲していただきたいという、我々地方公共団体はそれを念願しておりますけれども、まず、できるだけの権限を県に移譲していただいて、県の段階でそれぞれの市町村の実態に即した権限移譲をしていただけるという二段階制がより現実的ではないかというふうに考えておるようなわけでございます。
  232. 山本博一

    山本博一君 機関委任事務につきましては、私どもといたしましては、それほど多くはございません。したがって、現在実施いたしております事務はもう支障はないと思っております。  それから、五年間の時限立法と、それではちょっと物足らぬのではないかというような御意見でございますが、私は、今も大津市長がおっしゃったように、火のついたときに定着すべきではないかというように思っております。これは、やりかけたならば皆その気になってやるのですから、やはりその成果をきちっとこの期間内に定着してみたい、そのくらいの気持ちを持っております。  なお、後段申されましたように、私どもの直接の機関委任事務というのははっきりしておりますから、今まで県から許可等をしていただいたというようなことにつきましては、その中でもう町村に移管してもらっていいものもあります。したがって、よく整理をしていただきまして、ひとつお願いしたい。例えば都市計画にいたしましても、ほとんどが町村の事務として推進いたしております。あとはもう追認していただく、承認していただくという程度になってまいりました。  また、農業振興地域の指定の問題、変更の問題にいたしましても、ほとんどが私たちの町で計画をし、しかもそれを承認してもらうんだというような程度になっております。したがって、そういうものはもう移管してもらってもいいということでございますし、転用の問題は、先刻も申し上げましたように、二ヘクタール以下につきましては、もっともっとひとつ弾力的にやってほしいというように思いますので、県と町村との関係をもう少し整理をしてほしい。国からの移譲ということについては、もう今もやっておりますというようなことでございます。  以上でございます。
  233. 吉田治

    吉田(治)委員 本当に今お話を聞かせていただいて、私ども衆法を作成した方といたしましては、同じ法律をつくるのであればできるだけ具体的に踏み込んで、最終的な方向性まで持っていきたいというふうに考えておるのです。  やはり現場サイドに立たれる皆さん方にとっては、私どもは、この政府法案分権推進法というのは、推進法というよりも分権推進委員会設置法ではないかというぐらいの気持ちを持っておるのですが、皆様方お三人のお話を聞かせていただくと、とにかく地方分権と名のつくものが早く上がってもらいたい、そして推進委員会の中でとにかく一つのものをつくってもらいたいという、ある意味で切実な、せっぱ詰まったものを感じると同時に、同じつくるのであれば、もっと深く、皆様方の今言われたように、機関委任事務廃止してもらいたいというふうなものまで含めてというものができればなということを非常に感じた次第でございます。  時間もございません。あと二点お聞かせいただきたいと思います。  今町長さん言われましたように、各県と町村というふうなお話をなさいましたけれども、やはり、地方分権されていきますと、地方同士、県と市、県と町村、市と町村、近隣の市町村という関係が出てくると思いますけれども、この辺の調整というのですか、権限をめぐってのいろいろな問題が出てくると思います。その辺についてはどういうふうにお考えなさっているでしょうか。一言ずつお願いしたいと思います。
  234. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 県から市町村への権限移譲ということにつきましては、もう既に前の回の行政改革をやりましたときにも取り上げておりまして、できるものは移そうということで実現したのでありますけれども、さて、実際に移そうとすると国に関係しまして、国の方からそれは市町村におろしてもらっては困るというような問題が出てくるわけであります。そういうものについては残念ながらできないということでありまして、残っているものもありますが、今回また行政改革に取り組んでおりまして、中間報告では県の権限もできるだけ市町村に移譲しなさいという報告が出ておりますので、そういう線に沿って進めたいと思っておりますが、これはやはり国との関係が出てくるなという感じがしております。
  235. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 私は、市町村、私の市でいえば権限の移譲ということは、県からの移譲は任せてもらえるものならいただきましょうということなのですが、これは、知事さんここにおられてなんですけれども、非常に難しいというか、むいた話は、嫌な仕事はだっとこっちにくれはるけれども、本当の味のある仕事はなかなかもらえぬというような、そういういろいろな権限のより好みを市町村もしてはいかぬのですが、そういうふうなことは確かにありますので、それは私は、そういうことを言わずして、県が移譲しようとおっしゃることは全部権限はもらえ、そしてやっていこうというのが私の考えでございます。  それからもう一つは、私は、隣接の志賀町と火葬場とかごみとかいろいろなことを共同で、いわゆる委託制、志賀町の委託を受けてやっている事業が消防関係、それから広域市町村圏でやっているのが火葬場とかごみ、下水道、こういうものはそういうような広域市町村圏の組織を利用してやっている。だから、今後は、やはりそういう点については、今度の自治法の改正によります連合といいますか、組織とかそういうものをもっと広域市町村圏でつくって、県からの移譲を受けるような努力を市町村自体がしなければいかぬのじゃないか、このように考えております。
  236. 山本博一

    山本博一君 知事の許可権限というもの、これは大事なものもあると思います。それは、広域的に高所から眺めてということだと思いますので、すべて町村に移管ということは難しい面もあろうと思います。  ただ、先刻も申し上げましたように、農業振興地域の整備ということにつきましては、もうほんの千平米の変更にいたしましても、やはり変更申請を出さなければならない。そこらあたりがちょっと私どもは、事務的な処理がおくれるとか、あるいはこんなことはもう任せてもらった方がいいのじゃないかというようなもの、個々にございます。  それから、いろいろ個々の法律というものがございまして、なかなか県におかれましてもそれを整理してということは難しい面もあろうと思います。例えば、河川法というのがございます。河川法におきますと、一級河川では、地域住民は堤防を農道に使っております。その農民の方から、通りにくいから砂利をのけてほしいというようなことがあっても、勝手にそれはできません。蛍がおるから、ちょうどそこで観賞したいからベンチを置くということも勝手にできません。そういう個々の法律というようなものがございまして、そういうものとの処理、関係をどうするかということは、県でもいろいろお考えだと思いますけれども、もう少し弾力的にやってほしい。それは個々の法律をひとつ直してもらわなければならないという点もあろうと思いますが、今後の課題として、私どもの現場といたしまして、そういう点もあるということをひとつ御理解賜りたいと思います。
  237. 吉田治

    吉田(治)委員 今市長さんのお話の中で、ごみ処理、焼却場ですとか、俗に言う迷惑施設等を結構奥へ持っていかなければいけないとなりますと、国有林の問題が出てきたり、そういうふうな、別の意味での国との関係権限じゃなくてそういう財産的なものとかも出てきていると思うのですけれども、そういうようなことについて一言ずつ御意見を賜われればと思うのですけれども
  238. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 ごみとか廃棄物の処理のことは市町村の責任で進めておるのですが、一番問題は場所の確保なのです。だから私たちは、国有林という広い地域があるのに、なぜ積極的に開放してもらえないのか。市町村長はもう本当に血の出るような、もう畳にでこちんをすりつけて、この場所でやらせてくださいということを、本当に涙流してお願いしてもなかなかできない。隣に広大な国有林があったら、あの中で何とかできないのかということ、これは市町村長すべての方の悩みだと思います。これからの経済の発展とかいろいろな意味において、私はかつて明治維新のときに室蘭製鉄所とか八幡製鉄所をつくられたように、ごみというものをもっと資源化する工場とかそういうものをそういうところにつくるんだ、国直営ではなくしても、少なくとも県に一カ所とか、近畿地方なら近畿地方で三カ所とか、そういう広大な、しかもそれは廃棄物の再資源化という形の中で物を考えていかなければ、これは大変なことになるということで、そういうことをお願いをいたしております。  廃棄物処理とかそういう面でもっと国の方も、国の各省の枠じゃなくして、国の国土の中で廃棄物はどういうふうにして処理するかということを府県、市町村の実情を把握していただきたいということをお願いしております。
  239. 吉田治

    吉田(治)委員 地方分権の中で本当に積極的に国も行うべきことがあるという御意見だと思いますが、最後に皆様方にお聞かせいただきたいのは、私どもの大阪出身、今度横山ノック氏が知事になりましたし、また、この地方分権の話の中では、中央の鉄のトライアングルというものが地方へ移動するのじゃないか。先ほど知事さんですか、腐敗が地方へはびこる、そういうふうな危惧は全くないというお話があったと思うのですが、やはり重要なのは、地方分権住民意識ではないか。町長さんが、相当意識が高まったというお話はあるかもしれませんが、規制緩和でしたら、幾ら値段が安くなる、物価が安くなるということですけれども、やはり地方分権となりますと、こう皆さんぴんとこられない。この間の統一地方選挙でも、私ども個人演説会へ行きまして、地方分権と言っても、みんな、何という感じをされていたというのが実情ではないかと思うのです。  そういう中におかれて、やはり住民意識の高まり、高めるということが重要だと思うのですけれども、特にそれぞれ知事なり市長さん、町長さんとして、これから地方分権、こういうふうなことがされていくことについて、五年先もしくはその先に推進計画とかが出てくる、それの間にいろいろ何かをしようということを今お考えになられているのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  240. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 地方分権、実際に動かしていくには、やはり住民意識の高揚が大事であるというふうに思っておりまして、いろいろな意味地方分権の啓発を進めていく必要があると思っております。既に県の広報紙なんかでも取り上げておるのですが、なかなか関心を持っていただけない。やはり、こういうふうになりますよということを具体的な例として言えるとわかりやすいと思うのですが、そうすると関心を持っていただけるのじゃないかな、そんな気がしております。シンポジウムなんかもこれからやっていきたいと考えております。
  241. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 私は、市民の方にやはりよく理解してもらうための市民会議というのを、年に五つほどの小学校区でやって、直接市政の現状、問題点というのを討論をしてもらうというふうな会議を開いて自治意識を高揚してもらうという方法をとっております。  それからもう一つは、何といいますか、非常に今問題点になっておるごみとか下水の処理場とか、そういうふうな問題は、今大津市は解決しましたけれども、その間において市民の直接関係の皆さんに実態を包み隠さず正直に話をするということですね、今の状態を。それが案外今までできていなかったので、だから私は隣の志賀町と共同でいろいろなことをやってきましたけれども、今日では和気あいあいになりましたが、十年前では大変なことだったのです。それは結局市の執行部の、市長の誠意といいますか、執行部の現場中心主義の行政について市民の方に本当に理解してもらう。これは、自分たちが自分たちの町は自分たちでいいことも悪いこともお互いが受け持ち合う中で仕事をしていく、それがふるさと都市意識であるということで、私はふるさと都市大津の町づくり運動ということを推進しているのですが、そういう意識を持ってもらうということ。  それからもう一つ、市の職員自体が意識改革をしなければいかぬというので、私は、非常にこれは難しいと言われたのですが、市の職員が、六十歳定年制になりますと、四十ぐらいの中堅の人、いわゆる元気はつらつたる人が、年功序列型ではまだ管理職につけないとかいろいろな問題があるわけですね。それで私は、去年初めて管理職登用試験制度というのをやりました。それで、庁内の非常にもやもやとか、あいつが先に行ったとか、あれがこうしてこうしたとか、そういうことじゃなくして、その一定の試験に合格しなければ管理職には登用しないよということでやりまして、私、ことし一年たって庁内が明るくなったなと思っております。それもやはり、市役所の職員が意欲を燃やすということについては非常に効果があったのじゃないか、このように思っています。
  242. 山本博一

    山本博一君 かつて、かつてと申しましてもこれは昭和六十三年でございますが、時の竹下総理大臣のふるさと創生一億円、あのときは私ども、一億円というような金を、もちろんこれは予算上はございますけれども、そうした一億円を何に使ってもいいんだというようなことはかつてなかったことでございます。そのときに私ども五十人からの町づくり委員会をつくりまして、これを何に使おうぞ、目の色が違いました。そういうきっかけと申しますか、町をよくするためにふるさと創生ということを言われましたが、自分たちの町をよくするためにという意識の高まり、それから使い道、本当に私はあのときのことが忘れられません。  そういうことから、自分たちの町は自分たちでよくするんだということで自主的な行政推進ということになりましたら、必ずみんなついてきてくれると思いますし、先刻も申しましたように、私ども以上に関心が高いと思っておりますので、その点はぜひ早く推進をしてほしい。また、私どももそういう方向で対応していきたいし、きっとお約束はできると思います。  なお、そうした中で、嫌なことも解決するんだということは当然でございます。ごみの問題、特に産業廃棄物なんかは今非常に大きな課題になってございますが、それらにいたしましても、やはり解決をできる、解決していかなければならぬ、こういう意識の高揚ができると思っておりますから、やはり分権は一日も早く進めていただきたい、こう思っております。
  243. 吉田治

    吉田(治)委員 もう時間でございますので、本当に熱心な御意見ありがとうございました。  ただ、一点だけ、これで権限、そして財源、そして人の部分という部分でやってまいります。先ほど人材育成のお話を聞かせていただきましたが、その中で、ぜひとも私ども民間におりました人間として忘れていただきたくないのは、一万円もうけることが非常に大切な、大変な民間のコスト意識というものをどこかで学ぶ機会、もうつくられていると思いますが、そういう機会をつくっていただくと同時に、やはり官と官の交流だけではなくて、官民の交流、また民から官への人材の登用というのですか、そういうふうなものもこれからは地方分権時代の中でよくお考えいただきたい。そういうようなことだけは申し上げまして、質疑を終了させていただきます。  ありがとうございました。
  244. 中馬弘毅

    中馬座長 次に、網岡雄君。
  245. 網岡雄

    網岡委員 本日は、どうも御苦労さんでございました。  まず、知事にお尋ねをいたしますが、知事は、県では琵琶湖の富栄養化防止条例というのを全国で初めて水質浄化のために制定をされて、全国的に有名な県として、公害に対する県の立場、地方自治の立場から公害に対する非常に積極的な役割を果たされたということで有名になっているわけでございますが、この公害防止条例を制定する際には、個別の水質のいろいろな規定というものを見た場合に、富栄養化防止条例というのは、ある意味では、水質の基準それから琵琶湖の全体の水質を浄化していくためのことをやっていきますと、その当時あった法律では対応できないという問題があったと私思うのでございます。  その意味では、当時の滋賀県というのは非常に勇気と英断を持って、もちろんこれは中央官庁とも十分、陳情もし、意見も述べ、話し合った形の中でまとめられたと思うのでございますが、いずれにいたしましても、これは公害行政のところで見ますと画期的な一つの出来事であったと思います。これを契機にして、全国的に公害の行政がどんどん伸びていったという一つの歴史的な経過を持っているわけでございます。  こういう状況の中で、一体滋賀県としてこの富栄養化防止条例を制定するに当たって、当時問題点がどういうところにあって、それをクリアしていった過程、その中で一体地方自治体がそういう壁を破っていく場合に必要なといいますか、一つの経験からきた一つの成果として、こういうことをやったことによって当時の国の公害行政に対して理解を求めることができたというような、実際に実践をされたわけですから、そういう御経験をお持ちになっておると思うのでございますが、その点について知事の方から御説明と問題点をひとつお聞かせをいただきたい。それが私ども地方分権法案審議していくに当たって非常に参考になり、教訓になると思っておりますので、ぜひその点は明らかにしていただきたいと思います。
  246. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 琵琶湖の富栄養化防止条例をつくった際に、それまで窒素とか燐が琵琶湖の富栄養化の引き金になっておるということは余り明確ではなかったのでありますが、やはりどうも窒素とか燐が富栄養化に関係しておるということがだんだんわかってまいりましたので、それならば、窒素や燐を含む合成洗剤、これを禁止しようじゃないかというふうに踏み切ったわけでありますが、ただ、これは国というよりむしろ企業の方と大変な戦争になったわけですね。企業としては、とんでもないことであるというようなことで、むしろそんなことをやるよりは下水道を整備した方がいいのではないかな、その方が早道だというような意見であったわけです。  ただ、これにつきましては、県民自体が、琵琶湖に赤潮が発生しておるという状況からして、我々は合成洗剤を使わないことによって大変な不便になる、不便になるけれども、自分たちもやはりそういうことで琵琶湖の富栄養化に関係しているんだから、ぜひこれは禁止していこうじゃないかという強い運動が起こったわけです。そういう住民の運動といいますか、力をバックにして推していったということでありまして、ただ、商品を禁止するということについては、これは憲法問題も出てまいりまして、いろいろ法制局やらの意見も聞いて、絶対もうやるんだということで推していったということでございます。
  247. 網岡雄

    網岡委員 非常に具体的な御説明をいただいて、私ども感動したところでございますが、今滋賀県で、ちょっとお聞きしたのですが、昨年、渇水の際に、水量調整の権限を建設省所管の水資源開発公団が持っているために、どういう行政的なチェックでなったのかわかりませんが、結果的には必要以上に、当時関係市町村が想定していたものを超える水位が下がったというようなことを私聞いたことがあるのです。  これは一体どういう原因であって、そういう問題がこの地方分権というものに関連をして、結局水量の点について、関係市町村なりいろいろなところに水を送らなければいかぬわけでございますが、そのことに対する全体的な配水計画というものは、やはり地域の企業なり、それから地域の町や、そういうようなところの実際の水の需要というものを一番よく知っているのは、全体の面として知っているというのは、私はやはり滋賀県だと思うのですね。そういうところが第一線の現場として水位調整の権限というものを持つことが、その県における産業あるいは地域住民のいわゆる日常生活にそういうことを考慮しながら最も適切に行われる位置にあると思うのでございます。  そういうことを含めて、どういう原因で水位というものが予定よりも下がって、そのことによってこれは相当被害があったのかどうか、その辺も含めまして御説明いただきたいと思いますし、問題は、そういうときに、一番的確に物事を判断しながら調整能力を持つというのがどこの自治体であるのかということについて知事はどういう御判断をお持ちになっているのか、それから、市として山田市長がどういう御判断をお持ちになっているのか、それから、琵琶湖を囲む町村の代表として山本町長がどういう御判断を持っておみえになるのか、その辺のところを聞かせていただけませんか。
  248. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 琵琶湖の水位調整、これは河川法によりまして、近畿地方建設局が行うということになっているわけです。ただ、琵琶湖につきましては、非常に影響が大きいものでありますから、一級河川の中でも、その管理については知事管理にするという特例が設けられている。これは河川法を改正されました際に、全部国の直轄になるところを滋賀県が頑張って、これは滋賀県の県民に非常に影響が大きいので、国の直轄という形にしないで県が管理をする、管理権を残してほしいということで主張をいたしまして、実現したものであります。したがいまして、水位調整そのものは、近畿地建が琵琶湖とそれから下流、淀川の関係も両にらみをしながら調整をしていくという形になっております。  昨年の渇水に当たりましては、マイナス百二十三センチまで下がったわけです。そういう状況になる前まで、私どもとしては、マイナス一メーター以上にならぬように流量の制限を加えて、できるだけ琵琶湖に残しておくようにした方がいいのではないかということを言ったわけでありますが、下流としてはどうしても水が要るのだから流してほしいという形になりまして、これは将来百五十になった場合には水が出なくなる、ですから、その見通しの上に立って流量調整されたと思うのですね。そのときに、天候の予測がかなり食い違ったということがありまして、どんどん下がっていった。幸いにして百二十三でとまりましたけれども、私どもとしては、そういう百五十センチまで下げられる工事ができておっても、その段階になる前から流量制限をしながら徐々に下げるという形をとった方がいいという主張はしたのでありますが、これは上下流が調整委員会というものをつくって、そして意見を述べながら地建が決定をする、こういう仕組みになっておりますので、それはそれで仕方がなかったというふうに思っております。  ただ、我々としては、下流ばかり節水を呼びかけたりあるいは取水制限をしたりするよりは、することも大事であるけれども、それと同時に、琵琶湖の周辺からの取水も控えようではないかということで、琵琶湖からは、水は上げてもまた戻ってきますのでそれほど心配はないのですけれども、やはり滋賀県としてもそういう下流と同じように水のないつらさというものを考えようではないかということで、下流の制限の半分を実施をした、こういうことでありまして、関係市町村もそれには協力をしていただいたというふうに思っております。
  249. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 琵琶湖の水位が大体プラス・マイナス・ゼロというのが海抜八十五メーター六十一センチというところなんですけれども、大阪城の天守閣と同じところがプラス・マイナス・ゼロなんですね。だから、それからマイナス百二十三センチにまでなって、どこもかも干上がるし、井戸も困るしということは確かにございましたけれども、これは琵琶湖総合開発で、今知事さんおっしゃったように、マイナス一メーター五十まではいろいろと下げられるということにもう決まっておりますので、このことは私はとやかくは申すこともないし、沿岸の者は、とにかく水位が下がったから、琵琶湖の水をこれ以上汚さぬようにやれ、ごみも捨てるな、湖岸をきれいにせいということで、皆さん節水を何とかして呼びかけていこうということで一生懸命にやりました。  それしか方法がないわけなんですが、ただ、琵琶湖の水位が下がった下がったばかりを言うていますと、今度ふえたときに、大阪の人に水を流したらいかぬと言われたらどないなるんやというのが、これもやはり私は、沿岸がプラス・マイナス・ゼロのときはよろしいけれども、これが上下プラス三十センチから以上になりますと、これは洪水の危険水位になりますし、マイナス三十、プラス三十ですか、一メーター五十ですか、最高一メーター五十になったら大危険なことになりますし、プラス一メーターというようなことになれば、湖岸全部、私らのところの田んぼまでが水につかるところもあるわけです。そういうときには早く洗い堰を切って、流してくれ、流してくれと、市長が知事のところに行って、早う流してくれと言っていかぬとならぬ。  しかし、そのときになると大阪の方の方々は、淀川の堤防がこれ以上危険水位になるから切ってはいかぬと言って、琵琶湖はもう少し蓄えよと言われる。そういうことは知事さんに任せて、近畿の知事さんで話してもらうのですが、我々は、市町村としては渇水のときには琵琶湖の水をとにかく節水することと汚さないことに全力を挙げるということ、洪水に対しては早く洪水の水が引いてもらえるようにしてもらう、それは下流の方とも話し合いをしてやっていただく。  ただ、そういう場合で、去年でも私は思ったのですが、もうちょっと渇水期に入る前の水を、もう二十センチぐらい多い目にためていたらどうですかということをよく私は建設省の人に言うたのですね、プラス三十センチとか五十センチで渇水期に入ると。ところが、台風が一回来るか来ないかで琵琶湖の水の十センチや二十センチは違うわけなんですよ。だから、台風のミス、見誤りといいますか、予測の範囲ということで変わるということですから、我々は、これはことしは危険水位までいったけれども、今プラス十五センチぐらい、十二センチぐらいになっていると思うのですね。そうすると、今度一番満水状態で、先生方がきょうごらんいただく瀬田川が満々として水をたたえておるということを言うてもいいぐらいの水位になっているので、やれやれとしております。
  250. 山本博一

    山本博一君 琵琶湖をきれいにする、守るということについては、知事さん、本当にこれは責任者ですから、随分と努力もしていただいております。それを受けて、私どもも合成洗剤を使わないように、富栄養化防止に協力いたしました。ところが、途中で無燐洗剤ということが出てきましたので、どうもちょっと腰が砕けたように思います。それから、石けんを使うんだということ、これも協力してまいりました。  私ども地域は水を送る地域でございますので、琵琶湖まで大体十五キロほど離れております。したがいまして、やはり知事さんのような意識はちょっと持てないというような、これはもう率直な話でございます。したがいまして、協力はいたしておりますものの、では徹底してというところまでいかなかった。このような意識高揚ということは、やるときにはやるのですけれども、長続きしないものでございます。これはやはり人間性にもよりますけれども、もっともっと継続してやらなければならぬということが欠けておったのではないかと思っております。  今でも協力はさせてもらっております。ただ、私どもが今反省をいたしまして、県とされては、知事さんを目の前にして申しわけないのですけれども、琵琶湖総合開発、つまり琵琶湖の周辺の整備、つまり渇水したときにはどれだけ水が下がるんだから、それの対策、それから景観も含めて周辺の整備ということに大きなお金を使われました。そうしますと、どうしても水を送る地帯、水源涵養地帯は、環境整備にいたしましても、なおざりになります。そういう嫌いは、これはやむを得ませんです。したがって、離れているということもありまして、水をきれいにするんだ、汚してはならぬのだという意識は、やはり周辺の方とは、殊に知事さんの考え方とは多少ずれが来るのではないかということはもう仕方がないと思っております。そういう点では反省もしなければならないということと、琵琶湖総合開発が余りにも大きな投資、そして琵琶湖の周辺に偏ったということも言えるのではないかと思っております。しかし、そのために琵琶湖はきちっと近畿の水がめとして整備されましたから、これはよろしいのですけれども、離れたところについては、水源涵養地帯としては多少不足な考え方もあったということは否めません。けれども協力してまいりましたし、今でもやはり水をきれいにいたすように努力をいたしております。  以上でございます。
  251. 網岡雄

    網岡委員 一点だけ、済みません。  高齢者福祉行政について少しお聞きしたいと思ったのですが、時間がなくなりました。  それで、端的に二つお尋ねをいたしますので、最も象徴的と申しましょうか、そういうようなことを一言でいいですが、こういうことがある、これが一番問題だということで御指摘をいただければありがたいと思うのです。  今高齢者のためのゴールドプランを新ゴールドプランに見直しまして、村山連立内閣としては新たなスタートを切っていくことを、平成七年度予算でもスタートを切っているわけでございますが、こういう高齢者の福祉行政をやっていく場合に、国からの権限移譲を望むものは、一体県は具体的に端的に言って何か、市は一体何か、町村の場合は一体何か。それから、やめてもらいたい国の関与というものは、端的に言って今までの県政、市政、町政の中で、こういうことがあった、これはぜひやめてもらいたいという象徴的な関与のものがあったら、お聞かせいただけませんか。
  252. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 高齢者対策でありますが、高齢者対策につきましては、現在はもう既に県から市町村の段階に移っているわけですね。県としては、市町村の高齢者対策の仕事についていろいろ調整をしていくという立場でありますというふうになっておりますので、それはそれでいいのではなかろうか、私はこう思っております。
  253. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 高齢者対策で、私は、六十五歳以上が高齢者だというふうに決めつけて、意欲のある人を、その意欲のある労働力を活用する施策になぜもっと熱心にならないのか。何か、私も高齢者の無料化の一人ですけれども、すぐ国が何やかやと大事にしていただける方向ばかりで、そうではなくて、元気な間はお互いに働きましょうといいますか、社会のために奉仕しましょうという施策にもっともっと国も力を入れて、厚生省の方もやってほしいなというのが私の考えです。  しかし、病気をした人については市町村は責任を持ってやります。やりますけれども、そういう健康なお年寄り対策をもう少し——それはなぜかというと、年金がとまるし、これがとまるし、もう余りこれ以上は仕事をしてはいかぬやからというような、いろいろなことがあるわけなんですね。そういうふうなことについて、健常な元気なお年寄りは元気を出して働く、社会のために尽くすよという意欲のある人をもっと励ます政策をしてほしいと私は思いますね、今の政策以外にですよ。
  254. 中馬弘毅

    中馬座長 では次に、古堅実吉君。
  255. 古堅実吉

    古堅委員 日本共産党の古堅でございます。  御三人の公述人の皆さん、本当に御苦労さんです。一斉地方選挙のさなかでありまして、地方自治体に対する住民、国民の関心も従来になく高まっている、このように思います。  同時に、住民に最も身近な行政である地方自治体住民のために何をやれるのか、何をしなければならぬのか、そういうことについて憲法や地方自治法に定められた住民福祉の増進というふうな立場から切実に求められているというふうにも思います。  私は、いわゆる論議されております地方分権、それは憲法の言う「地方自治の本旨」にのっとって、あるべき本来の地方自治体を求める声であり、主張であり、運動ではないか、このようにも考えています。  そこで、最初にお伺いしますのは、先ほども御質問もございましたけれども機関委任事務制度の問題についてであります。  御存じのように、この制度のもとに自治体の首長が国の下部機関に位置づけられて、膨大な仕事を負わされています。しかも、その機関委任事務については、首長に対し中央各省庁の強い指揮監督権が行使される仕組みになっております。また、議会の方は、その審議権、検査権、監査請求権も認められません。まさに地方自治権を侵害し、住民本位の行政実現を著しく妨げている制度だ、こう申さねばならないのであります。  日本共産党は、機関委任事務制度の原則的廃止事務権限の再配分、税源の移譲等に向けた抜本的な改革が必要だというふうに考えています。  皆さんが所属されます全国町村会が平成五年十二月一日付で国への要請を行っておりますが、「地方分権推進」というところの第二項で、「機関委任事務制度は原則として廃止し、地方公共団体行政になじむ事務はすべて地方公共団体事務とし、権限移譲等に伴い必要な財源措置を講ずること。」このように言っています。  昨年の九月二十六日、地方六団体が「地方分権推進要綱」、そういうものをつくりまして国や国会などにも要請しておりますが、その「地方公共団体及び国の事務の範囲等」というところの2で「現行の機関委任事務制度廃止し、地方公共団体事務とするものとする。ただし、上記1に掲げる事務」、すなわち国が所掌する事務「のうち、国政選挙、旅券等国の事務で、地方公共団体において執行することが国民の利便及び行政効率の面から望ましいものについては、国が地方公共団体に対して財源を付与した上、委任するものとする。」というふうに、極めて明確に機関委任事務についてのどうあるべきだという方針を持ってこれまで運動してこられたというふうに思います。  ところで、先ほど来の御意見に、その問題について明確な態度がおありなのかということでちょっと疑問に考えられるような節もあったように私自身は受けとめたんですが、そのことについて御三名それぞれの立場から、基本的な面についての御意見をお聞かせください。
  256. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 この問題について、原則的には廃止にすべきものであるというふうに考えておることは、先ほどお答えしたとおりでございます。  そう思っておりますが、その議論を始めますと、いろいろな問題が出てまいりまして、全部実施されないということになっては大変なので、やはりできるものは早くやってほしいという気持ちで言っているわけでありまして、あくまでも原則的には地方自治の考えに沿わない、なじまないという考え方を持っていることは間違いありません。
  257. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 今知事もおっしゃったことと同様なのですけれども、我々六団体もそのようにはっきりとこの権限はすべて、機関委任事務廃止して、市町村の固有事務といいますか、市町村で処理するようにしてもらうべきだという考え方には変わりがないのですが、しかし、現実にそれをやるということが我々としては、この法案の中でそれが区分されるまでこの法案を通してもらっては困るということではこれまた困る。だからこれは、委員会設置されることによって、その委員会審議の中でそれぞれいろいろと措置をされるように法案にもなっておりますから、その権限を活用してやってもらうということで、とりあえず委員会設置についての法案を通してもらうということを第一とする、優先するという考え方でおりますということでございます。
  258. 山本博一

    山本博一君 私ども、全国町村会に関係いたしておりますし、この運動につきましても積極的に推進をしてまいりました。しかしながら、町村といたしましての実情は、機関委任事務かどうかということも職員そのものが知らないというようなこともございます。例えば戸籍事務は、これは委任事務だ、こんなものもそうだったのかというようなことでございまして、確かにこれはもう縦割りと申しますか、国の中央集権そのものの姿なのでございますけれども、そういう意識もございまして、果たしてそういうことを気にいたしかけますと、これはやはり自治意識というものが揺らいでまいります。今そういうような感じを受けておるというのが全体的な町村の実情ではないかと思っております。  そういうような感じでございますので、ひとつ、自治意識の高揚のためにもやはりここらではっきりと機関委任事務見直してもらうんだ、町村がやるんだというなら、町村の事務にしてもらったらいいわけですから。ただ、交付税措置ができておるようでございますけれども、そういうようなことを盾にとって、これはもう町村がやるべきことだ、国にかわってやるべきことだということになってはおりますが、はっきり言いまして、そういうことを認識いたしますと、これはやはり自治意識の停滞になってしまうように思いますので、この際、ひとつ私どももこのことについてもっともっと関心を持って、そして機関委任事務はこの際改めてもらいたい、こういうように思っているのが実情でございます。
  259. 古堅実吉

    古堅委員 次に、国から地方への事務移譲の問題について伺いたいと思います。  この問題については、地方六団体からも全国町村会からも地方分権推進の立場から強く求められているものでもございます。そこで、地方への事務権限の移譲の問題では、最も強く移譲が求められる事務というものはどういうのがあるかを伺わせていただきたい。知事、市長、町長、それぞれ何か立場もそのことにかかわっては違う、そういう面もお持ちでありますけれども、それぞれの立場から、一番この問題、これだけはとかいうふうな形で強く今念頭におありのものを二、三件でも率直にお聞かせいただきたいというふうに思います。
  260. 稲葉稔

    ○稲葉稔君 たくさんございますので一遍に思い出すのはちょっと難しいのでありますが、私は、地域の土地利用に関する計画のようなものは、やはり一番身近な地域に任せた方がいいのではないかという考え方を持っております。
  261. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 私は、特に町づくりに必要な規制とかその権限を市の方に任せてもらうということで進めるべきじゃないか。現に、開発行政とかそういうものについては県から市の方に委任を受けています。それで非常に市民も便利をしているわけですが、さらに農地の転用の問題とか、それから福祉関係で、現実に市の方が手を下しておるような市民の健康管理の問題なんかについても、いわゆる保健所行政市町村行政、県と市との調整になりますが、こういうものを進める。これは、法律上のいろいろな規制もありますので、そういう点はやはり市に権限を移譲するとか、そういうようなことをはっきりしてもらうことによって二重行政がなくなるのではないかなというふうなことも思ったりいたします。
  262. 山本博一

    山本博一君 今後の委員会の御判断とかそういうことにまちたいと思いますが、地方分権の一番のメリットと申しますのは、やはり、町村の行政は町村がみずからやるんだ、もうこれが一番のメリットだと思っております。したがいまして、ほかにいい点は何だ、こうおっしゃられても、個々のそうした法律に基づく権限等が県から町村に、あるいは国から市町村にというようなこともございますけれども、一番のやはり分権のメリットは、地方のことは地方が知恵を出し合ってやっていくんだ、これだと思います。  以上、簡単でございますけれども
  263. 古堅実吉

    古堅委員 山田公述人と山本公述人、お二人に伺わせていただきますが、市町村基礎的自治体として、その基礎的自治体を中心にした権限移譲を行うべきだというふうな意見がございます。行革審どもそういう意見でありますけれども。ところが、この基礎的自治体は必ずしも現在の市町村を想定しているものではありませんで、いわば、あるべき基礎的自治体、あるべき市町村を想定しているというふうに申せます。そういう基礎的自治体になるように、具体的に言えば、ずばり申せば市町村合併を促進せよということになるのであります。  ところで、先ほども引用いたしました平成五年十二月一日付の全国町村会からの要請の「地方分権推進」の項目の第六項では、「いわゆる受け皿論にもとづいて、国の主導により市町村合併を促進することは、地方自治の本旨に反するのみならず、地域における行政の実態に即しないので行わないこと。」というふうにして明確にその方向についての意見を出し、運動を展開しております。それについてどうお考えであられるか、お二人から基本的な点を聞かせてください。
  264. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 私は、今の御意見、今お読みになりました部分については、この際、地方自治体の合併を促進するということは私は必要ないのではないかというふうに考えております。  といいますのは、この市町村合併というのは昭和二十八年の合併の法律制定によってできて、大体今各市町村では、四十周年ということをやっている市町村がたくさんあるわけですよ。それほど、四十年を経過してふるさと意識もでき、地域住民は、そこの町は我々の手でつくろう、盛り上げていこう、そういうふるさと意識が非常に出てきたのに、ただ権限移譲のためにもっと合併しなさい、合併しなさいということは、これは好ましくないというふうに私は思っておりまして、もしそれをやるのであれば、今まで進めてきた広域行政の中で、市町村の連合組織とか、あるいは特別地方公共団体のいわゆる組合、行政事務組合とか、そういうもので共通事項を共通に処理するという方法、あるいは今度自治法の改正による連合組織などを活用する方法でやるべきであって、合併というものはあくまで自主的にやるべきであって、強制的に、権限をやるからこれを合併しなければできないというふうな進め方はいけないのではないかというのが私の考えでございます。
  265. 山本博一

    山本博一君 全国町村会でやんわりと否定しているという点がございます。しかしながら、これは私は、地域の自主性に従って、この際できるところはやはり合併も必要ではないか、こう思っております。決して推進論者ではございませんけれども、こういう時期にやらなくては、やる時期はないと思っております。  しかし、それぞれの実情がございますから非常に難しいということは言えると思いますが、地域によりましては一歩踏み込んで進めてみる、進めてみるというよりも、お互いに話し合って、そしてこの方がいいのではないか、行革にももちろんつながりますし、分権にも受け皿として足腰も強くなるということがございますから、私はそう思っております。この際、やはりできることはやるべきじゃないかな、こういうふうに考えておる一人でございます。
  266. 古堅実吉

    古堅委員 次も山田、山本両公述人に伺いたいと思います。  権限の移譲とあわせて財源の移譲が不可欠であります、先ほど来も強調もしていただいたようにも思いますけれども。これまでにも機関委任事務を団体委任事務にするという国から地方への権限移譲がありました。ところが、それに伴う財源については必ずしも明確でなかったようにも思います。財源手当てをした場合でも、地方交付税で財源措置をするというのが従来の方法でありましたし、今後もこの方法が踏襲される可能性が強いわけで、こういう財源手当てについてどう考えておられるか、率直に御意見を聞かせてください。  私の党としては、具体的な国から地方への財源措置ということも当然のことながら、税源の明確な移譲、そういうものをもって必要な措置は万全を期すべきだというふうに考えております。御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  267. 山田豊三郎

    ○山田豊三郎君 私は、これは現在の税制を抜本的に改正をしてもらう、そのために、その制度と並行して今の地方分権という制度が行われなければいけないのではないかというふうに思っております。現在までのように、これは交付税措置でやるよとかなんとかということではなくして、やはり抜本的に、国の税制、県の税制、市町村の税制あわせて総合的な大改革をやって、今度地方分権により権限移譲を受けた市町村の財政がそれによって確保されるということの見通しを立てていただきたいし、また、その保障がなければこれはできないことではないか、このように思います。
  268. 山本博一

    山本博一君 失礼します。  この分権に伴う税財源等の再配分ということについては、私は、どのようにすべきだということが今言えません。大変難しいと思います。  これが、ではどのような物差しで分けるのかということがございます。つまり、抜本的に税制を見直して、ではそれぞれ規模の違う町村にどのようにその物差しで分けるのだということ、大変なことだと思います。今の交付税制度というものは、これは収入額と需要額との不足分を交付税で補うのだ、一応これはうまくいっています。では、この交付税制度をもう一つ分権に合わせて、そしてどのようにしていくんだということも、ちょっと私もこのようにしてほしいということも言えません。  ただ、もう一つある、国の補助金制度と関連いたします。補助金制度が残るのか残らないのか、そういうものと関連してまいります。すべてもう省庁の補助金というものをなくして、そしてそうした財源を配分するということになるとしますと、それも規模の違う市町村、物差しをどうするんだということがございます。したがいまして、これはもう委員会の大きな課題だと思っております。  したがいまして、今こうしてほしい、ああしてほしいということは言えません。ただ、先ほど来陳述を申しましたように、分権にふさわしい税財源を再配分してほしいというところまでは言えるのです。どうかひとつその点御理解いただいて、この問題が一番大事な点だと思います。  以上でございます。
  269. 古堅実吉

    古堅委員 時間です。終わります。
  270. 中馬弘毅

    中馬座長 これにて質疑は終了いたしました。  この際、一言お礼のごあいさつを申し上げます。  御意見陳述方々におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。  拝聴いたしました御意見は、両法案審査に資するところ極めて大なるものがありました。厚くお礼を申し上げます。  また、この会議開催のため格段の御協力をいただきました関係各位に対しまして深甚なる謝意を表する次第でございます。本当にありがとうございました。  では、これにて散会いたします。     午後四時二分散会