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1995-04-13 第132回国会 衆議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月十三日(木曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 川崎 二郎君    理事 塩谷  立君 理事 中馬 弘毅君    理事 穂積 良行君 理事 粟屋 敏信君    理事 山名 靖英君 理事 米田 建三君    理事 北沢 清功君 理事 田中  甲君       石橋 一弥君    粟原 裕康君      田野瀬良太郎君    谷  洋一君       西田  司君    蓮実  進君       平林 鴻三君    山本 公一君       愛野興一郎君    上田  勇君       岡島 正之君    富田 茂之君       永井 英慈君    吹田  愰君       山崎広太郎君    吉田 公一君       加藤 万吉君    畠山健治郎君       山下八洲夫君    穀田 恵二君       川端 達夫君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)   野中 広務君  出席政府委員         警察庁生活安全         局長      中田 恒夫君         警察庁刑事局長 垣見  隆君         自治大臣官房総         務審議官    二橋 正弘君  委員外出席者         内閣官房内閣内         政審議室内閣審         議官      高橋 泰博君         法務省刑事局公         安課長     津田 賛平君         厚生省社会・援         護局保護課長  松尾 武昌君         通商産業省機械         情報産業局航空         機武器課長   平井 敏文君         海上保安庁警備         救難部管理課長 菊地  繁君         地方行政委員会         調査室長    前川 尚美君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十二日  辞任         補欠選任   上田  勇君     大口 善徳君 同日  辞任         補欠選任   大口 善徳君     上田  勇君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第九五号)      ――――◇―――――
  2. 川崎二郎

    川崎委員長 これより会議を開きます。  内閣提出銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山名靖英君。
  3. 山名靖英

    山名委員 新進党の山名でございます。  今回提出されておりますいわゆる銃刀法改正案につきまして、質問をさせていただきます。  近年、銃による凶悪事件が頻発をしていることは、もう御承知のとおりでございます。特に、昨年七月、東京におきましては、パチンコ店支配人が何者かによってけん銃で撃たれて死亡しております。九月には名古屋住友銀行名古屋支店長自宅前でけん銃頭部を撃たれて死亡、十月二十五日には通勤途上都立病院医師が恨みを持った元患者にけん銃で撃たれてこれまた死亡、十一月には千葉県においてファミリーレストランのアルバイト女子学生けん銃を持った犯人に頭部を撃たれて死亡、また本年に入りましては、さきに、三月三十日、警察庁長官自宅マンション前でけん銃で狙撃をされ、大けがをする、こういった事態多発をしておりまして、これはまさに社会、また警察に対する挑戦そのものであろうかと思います。  ところで、このようなけん銃によります殺傷事件というのは、警察庁発表によりますと、昨年中で二百四十九回、そのうち暴力団対立抗争、本来この対立抗争による発砲事件が多かったわけですが、これが二百四十九件のうち二百十件、暴力団関係者以外の発砲が三十九回、これはかってない暴力団関係者以外、すなわち民間への広がりを見せているということでありまして、死者が三十八人、これはこの五年間で最高の数字を示しているわけでございます。最近のこういった事犯、これは一般市民を巻き込み、報道関係者やあるいは企業政治家あるいは公務員、こういった人たち被害者という深刻な事態を招いておりまして、一つ傾向ではないかと思っております。  我が国は、いわゆる世界に誇る治安のいい国ということで国際社会の中でも安全面での確固たる地位というものを占めてきております。しかし、最近のサリンの事件を含め、このような安全、安心な日本という国際的な信用度あるいは信頼度、これが大きく今崩壊をしようとしておりまして、今後の対策対応というものが重要な課題となっておるわけでございます。  本来、我が国治安のよさというのは戦後以来の厳しい銃規制にあったわけでございまして、そういう意味では、この銃の規制という点のあり方見直しはやはり大事なポイントであろうかと私は思っております。アメリカ銃社会、このように言いますが、二億数千万丁という銃があるようでございまして、そのアメリカとは我が国は比較すべくもありませんけれども、我が国においてもやはり相当数けん銃及び銃が存在をしていることは確かであろうと思います。  そこで、質問に入りますが、最近のこういったけん銃に係る情勢といいますか実態警察庁としてはどのように今把握をされているのか、その特徴あるいは傾向性というものをどのように分析をされているのか、まずお伺いをしたいと思います。
  4. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  平成六年中の銃器発砲回数でございますが、先ほど委員指摘のとおりでございます。また、御指摘されましたような事件を含めまして一百四十九回の多きに上っておりまして、平成四年以降二年連続して増加をしておるわけでございます。  発砲回数のこれまでの推移を見ますと、かつては暴力団対立抗争の増減に連動をしておりまして、したがいまして、対立抗争多発をいたしました昭和六十年前後をピークといたしまして、その後は対立抗争減少に伴って全体的には減少傾向にあったわけであります。しかしながら、最近は、対立抗争事件減少傾向の中で対立抗争に伴うものではない発砲事件というものの回数がふえておりまして、これが全体の数を押し上げているわけでございます。  ただ、これは数的なものだけでございまして、数的な傾向もさることながら、最近注目すべきは発砲事件内容、御指摘のとおりでございまして、銃口が市民生活でありますとか、企業活動でありますとか、あるいは言論、政治活動等に直接向けられる事件増加しておりまして、多くの国民に重大な不安と脅威を与えているところであります。  また、けん銃押収状況を見ましても、ここ数年暴力団以外の者からの押収丁数増加をしております。昨年は全体の約三〇%に達しておるわけでございまして、暴力団以外の者にもけん銃不法所持が広がっているということがうかがわれるわけであります。こうしたことの背景には、一方で最近の厳しい暴力団取り締まりに伴いまして暴力団関係者によるけん銃の処分が増加しているように見られること、あるいは国民海外渡航機会増大などによりまして暴力団以外の者がけん銃を入手する機会がふえたことがあるものというふうに考えておるところでございます。  このように、これまで暴力団社会内部のものでありました銃器所持あるいは発砲というものが一般社会にまで広まりつつあるということは、適切なガンコントロールがなされるということが我が国の良好な治安の基盤であったと考えますだけに、今後我が国の安全で平穏な社会の根底を揺さぶりかねない事態ではないかと認識をしておるところでございます。
  5. 山名靖英

    山名委員 暴力団対立抗争が暴対法以来減少をした、そういう点でのけん銃等民間に流出をしているという、まさに特徴的な傾向かと思います。  ところで、この我が国銃砲刀剣類所持等取締法というものが一九五八年に制定されまして、今回の改正に至るまで過去九回の見直し改正を行ってきておるところでございます。現行法で十分対応し切れない、不備とは申しませんけれども、まさにそういった点での見直しが過去九回も行われ、なおかつ、今回新たな内容を含めた改正をしようというわけでございますが、先ほど特徴あるいは傾向性を踏まえて、今回特に力を入れて改正をしようとしたポイントについてお伺いをいたします。
  6. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  累次の改正を重ねてまいりましたが、最近の改正平成五年の改正でございます。その改正によりまして、けん銃回収等には相当の効果を上げつつあるところでございます。  しかしながら、その後、けん銃等を使用した凶悪犯罪が続発をいたしておりますし、また、暴力団以外の者へけん銃等が拡散する状況が進んでおりますほか、けん銃などの密輸入等巧妙化するなど、けん銃情勢は極めて憂慮すべき事態になっております。  そこで、今回の改正では三つほどの観点に立って改正をお願いしておるわけでございまして、一つは、多発化するけん銃発砲発射防止対策という観点でございまして、これには二つございます。発射罪を新設していただきたい、けん銃実包所持罪を新設していただきたいというようなものでございます。  二点目が、巧妙化しておりますけん銃等密輸入対策として、新しい捜査手法、すなわちクリーン・コントロールド・デリバリーの実効を上げるための処罰規定を盛り込んでいただきたいというものでございます。  三点目が、困難化するけん銃犯罪捜査推進対策として、警察官等によるけん銃の譲り受けを認めるというような規定を設けていただきたい、このような諸規定の整備を中心としたものでございます。
  7. 山名靖英

    山名委員 そこで、さらにちょっと具体的な質問に入りたいと思いますが、先ほど密輸入巧妙化ということもお述べになりました。そこで、この密輸入の問題について若干の質問をさせていただきたいと思います。  やはり、押収けん銃実態から見まして、不法所持されているけん銃の大部分が外国製であるという、すなわち、国外から日本に持ち込まれた、密輸入されたものであるというふうに言えるわけでございます。国外から我が国に持ち込まれるけん銃について、やはり水際での対応というのが重要になるわけでありますが、最近の水際での検挙状況、これはどうなっているのか、また、どこの国からどのような方法ルート密輸をされているのか、その実態についてお教えをいただきたいと思います。
  8. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、昨年押収しましたけん銃千七百四十七丁について見てまいりますと、このうちの千五百十三丁、構成比にいたしまして八六・六%でございますが、これは真正けん銃でございまして、そのほとんどが外国から密輸入されたものでございます。  平成六年中におきますけん銃等輸入罪による検挙でございますけれども、六件六人でございまして、押収丁数は六十四丁でございます。  また、押収したけん銃製造国別に見てまいりますと、アメリカ製のものが一番多いわけでございまして、全体の約三分の一を占めております。次いで中国製、というのはトカレフなどでございますが二一%、フィリピン製が九%、イタリア製が五%、ブラジル製が五%というような順序になっております。  密輸入方法でございますけれども、船便もございますし、航空機を利用したものもございますし、国際郵便を用いるものなど、多様でございます。  それからまた、密輸ルートでございますが、これは十分解明されておるわけではございませんけれども、近年はけん銃密輸ルートにつきましても多様化傾向がうかがわれるところでございまして、従来からありましたのは米国フィリピンタイ等からの密輸入ルートでございますけれども、ロシアルートでございますとか南アフリカルートというようなものも指摘されておるわけでございまして、このようなルートから密輸入された事件摘発されておるということでございます。
  9. 山名靖英

    山名委員 今お答えをいただきましたように、平成六年度で六件六人、六十四丁。この数字は、極めて低調ではないか。平成二年等から比べますと、平成二年は十六丁だったようですが、六十四丁ということはかなりふえているということでもありますけれども、これが押収する全体の三・七%という。水際での対策が緊急の課題で、極めて重要な問題点にもかかわらず、この摘発が極めて、三・七%という数字は低過ぎるんではないか。どこにどういう問題があってこういった数字が低調なのか、その問題点原因についてお考えをお述べをいただきたいと思います。
  10. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 一概には言えないわけでございますけれども、けん銃密輸入摘発が困難となっております原因として私ども考えておりますことを四点ほど申し上げますと、例えば、国際的な物流の増大出入国者増加ということがあろうかと思います。こういうことによりまして、いろいろな水際での検査等が困難化しておるということでございまして、特に、海港を利用して、海の港でございますけれども、輸入されますカーゴでございますが、このチェックが極めて困難でございます。  それからまた、二点目に、けん銃隠匿方法でございますけれども、家具をくりぬく、自動車のタイヤの中に隠す、いろいろな手段、方法を講ずるわけでございますけれども、密輸方法巧妙化しておるというようなこと。  それから、先ほどちょっと触れましたが、密輸ルートの問題でございまして、従来からありました米国フィリピンタイ等からの密輸入に加えまして、近年ではロシアだとか南アフリカ等からの密輸入摘発されたケースもあります。いわゆる密輸ルート多様化傾向というのが三つ目に挙げられようかと思います。  四つ日には、我が国の長大な海岸線を利用して、小回りのきく漁船等を利用したけん銃密輸入というものが指摘されておるわけでございまして、大量に出入国する、それも開港だけとは限りませんで、不開港でもどこでも入れるわけでございますし、また、港さえも要らないということを考えますと、こういうような大豆里に出入国する、あるいは接岸する船舶をチェックすることはかなり困難であるというようなこと等が考えられようかと思います。
  11. 山名靖英

    山名委員 今何点かの問題点原因をお述べになったわけでございますが、確かに密輸等巧妙化してきている、それに対応する人員の問題あるいは体制問題等も含めて、不十分さを伴っているということもあろうかと思います。  そういう点で、密輸入水際等を含めたいろいろな問題点課題について、その対策をやはりきちっととっていく必要があろうかと思いますし、従来からもいろいろな形で取り組みはされているかと思います。  昨年十二月でしたか、関係省庁連絡会議を開催をされまして、いわゆる対策強化という申し合わせをされたようにお聞きをしております。どのような申し合わせをされて、どのような密輸入対策実施をされているのか、そしてそれが今どのような効果を生もうとしているのか、この辺についてお伺いをいたします。
  12. 高橋泰博

    高橋説明員 御説明申し上げます。  政府といたしましても、先ほど警察庁から説明のあったような状況、これを踏まえ、関係省庁全力を挙げてけん銃対策に万全を期す必要があるという判断で、昨年十二月末に、けん銃取締り対策に関する関係省庁連絡会議、これを開催いたしました。そこで「けん銃摘発強化への取組について」の申し合わせを行い、現在その推進を図っているところでございます。  ちなみに、この申し合わせにおきましては、大きくは四点、重点的に推進する、取り組むべき事項として挙げておるわけであります。  一つ取り締まり徹底関係省庁連携強化二つ水際対策強化密輸防止対策でございます。それから、三点目が国際協力推進、四点目といたしまして国民理解協力の確保、この四点を重点的に取り組むべき事項として申し合わせを行いました。  そのうち、特に水際対策強化でございますが、一つには、取り締まり関係機関共同による摘発班編成、また、不開港におきますところの水際監視体制強化、それから沖合、洋上での積みかえ等に対する監視警戒徹底、それからまた、航空機あるいは船舶の旅客に対する対策、また一般商業貨物に対する対策国際郵便物対策といったようなことについて推進をするということにいたしております。  また、中央で、関係省庁の間で、連携、協調、共同協力を行っているところでございますけれども、地方機関におきましても、それぞれ、警察税関海上保安庁、また入国管理局等関係職員から成りますところの連絡協議会といったようなものを設置をいたしまして、頻繁な、密接な情報交換、その他協議等を行い、密輸事件検挙等推進に臨んでおるところでございます。  以上でございます。
  13. 山名靖英

    山名委員 全国レベル共同摘発班というのを編成をして、今後そういった、警察海上保安庁、あるいは税関連係プレーを図っていこう、こういうことで昨年の十二月にそういった連絡会議等を持たれたようでございますが、ぜひともこれが実を結んで、対策に十分な効果が出るように、ひとつ今後とも御努力をいただきたいと思います。  ところで、先ほどからもありましたように、水際対策として、国内的な対策は当然のこととして、当然やはりフィリピンあるいはアメリカ等との関係諸国との連携、あるいは情報交換、こういったものが重要であろうかと思います。銃器をめぐる国際情勢といいますか、我が国ほど銃規制実施をしていない国もあるわけで、中には護身用の銃を認めている国もあるわけであります。  先ほどもありましたように、最近は海外ツアー射撃訓練とかいう、射撃ツアーですか、そういったたぐいのものもあるように、国民銃器に触れる機会というものが非常にふえてきている。この銃に対するいわゆる罪悪感というか、嫌悪感というか、こういったものが極めて希薄化しているのではないか、こういうふうに思います。  これはもう当然これからの検討の中でもそういうあり方についてもしっかりと目を光らせていく必要もあるのではないかと私は思いますし、なおかつ、国際協力的に各国と話し合って、そしてこういった銃に対する規制の問題を理解を深めていただき、また、お互いの国がそういった被害増大しないような手をやはり打っていく必要があるのではないか、こういうふうに思います。  一たん我が国に入った銃はまた我が国から海外に出るということはほぼないわけでありまして、そういう意味では、しっかりと水際での阻止作戦といいますか、これは力を入れていかなきゃいけないと思います。今後、そういった国際協力という面でどのような取り組みをお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  14. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 けん銃取り締まりを進めていく上で、確かに薬物ほどにはけん銃というものはまだ国際的に共通理解でありますとか、あるいは認識世界各国共通にあるというわけではございません。あるいはまた共同取り組みが必ずしも十分ではないということはございます。そういう意味で、外国あるいは国際機関との協力等が極めて重要であるということは、御指摘のとおりだと思います。  そういうようなことで、二、三、私どものやっておりますことを挙げますと、例えばICPOというのがございますが、こういうものなどを通じまして積極的な情報交換を行っておりますほかに、担当の職員アメリカを初めといたします関係諸国銃器取り締まり機関等に派遣いたしまして、けん銃密輸情報の入手あるいは連絡等に当たらせておるところでございます。  また、平成五年からは毎年でございますけれども、米国でございますとかフィリピン等製造国でありますとか、あるいはけん銃仕出し国捜査員等を招きまして、我が国銃器対策国際会議を開催いたしております。そして、我が国銃器管理に向けた取り組みを紹介をいたしますとともに、これらの国々との相互理解に基づく協力関係強化を図っているということもやっております。  さらにまた、本年からは、アジアの七カ国を予定しておるわけでございますが、この国々をお招きして銃器管理セミナーというものを開始しようかと思っております。関係諸国とのさらなる緊密化を図ってけん銃密輸阻止に努めていくということを考えておるところでございます。
  15. 山名靖英

    山名委員 港での対応、小さな港等についてはその対応というのは非常に難しいわけでございますが、海上保安庁、お見えになっておりますので、その点について、今までの取り組みとまた今後の取り組みの方途についてお聞かせをいただきたいと思います。
  16. 菊地繁

    菊地説明員 海上保安庁から御説明申し上げます。  海上保安庁におきましては、国内の関係取り締まり機関連携いたしまして、全国集中一斉取り締まり実施いたしますとともに、全国十一の管区海上保安本部におきますけん銃取締り対策本部設置及び情報収集要員による情報収集活動強化をしております。  また、けん銃等が流出してまいりますおそれのある国から我が国の港に入港しております船舶に対する徹底した立入検査を実施しております。洋上積みかえの行われる可能性の高い海域におきます巡視船艇航空機によります監視警戒強化、それから海外取り締まり機関との積極的な情報交換実施海事関係団体あるいは水産関係団体への不審情報通報等協力の要請などなど実施しておりまして、昨年の関係省庁連絡会議申し合わせの趣旨に沿って、全力を挙げてけん銃水際での摘発努力を続けておるところでございます。  なお、昨日も第七管区海上保安本部門司海上保安部が地元の税関あるいは警察等と合同でロシア船籍貨物船を立入検査しまして、銃らしきものの発見、押収をしておりますし、被疑者検挙をいたしまして、現在捜査中であります。  以上であります。
  17. 山名靖英

    山名委員 今後ともぜひひとつ全力でお取り組みをお願いします。  じゃ今回の、さて法案の内容について若干お伺いをいたします。  今回の法改正案に、密輸入対策としていわゆるクリーン・コントロールド・デリバリークリーンCDといいますか、これを導入をしようというわけでございまして、これは中身を抜き取ってそれ以外のものに置きかえるといいますか、すりかえる、こういうことで、後捜査を続行しながら摘発をしようということらしいのですが、このいわゆるコントロールド・デリバリーというのはライブクリーン、この二つがあるようでございまして、今回このクリーンの方を選択をしたという背景は何なのか。従来いわゆる麻薬等についてはこういった方策をとっているようでございますが、このクリーンCDに至ったその背景についてお教えをいただきたいと思います。
  18. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  けん銃密輸入事犯でございますが、受取人を特定しなければなかなかその捜査が、突き上げ捜査が不可能なわけなんでございますけれども、受取人を特定することがこのような密輸入事犯では非常に難しいわけでございます。また、それをやらないと背後にある密輸組織の解明ができない、壊滅ができないということでございます。  そこでコントロールド・デリバリーといいますか、監視つき移転といいますか、こういう手法を採用させていただきたいと考えておるわけでございますが、薬物につきましては、御案内のとおり麻薬特例法といいましょうか、略称でございますが、これによりましてクリーンCDだけじゃなくてライブCDについても実施しておるところでございます。禁制品を抜き取るか、そのままで運んでいくかの差でございますが。  けん銃につきましては、実はいろいろ考えたわけでございますし、関係機関とも寄り寄り協議をさせていただいたわけでございますが、これを実施中に万一、けん銃の場合、これが散逸した場合の危険性というのは大変高いんじゃないか、薬物に比べまして。それからまた、運搬途中あるいは受け取り後に、カーゴといいますか貨物の中に、荷物の中に隠匿されていたけん銃等がひょっとして使用されるおそれというものがないとは言えない。そうした危険を回避する方法につきまして、現段階でまだこれが最高だ、最上だといいますか、そういう実は手段といいますか、それが実は結論が得られなかったわけでございます。  そういうことで、今回の改正ではライブは実は見送りをさせていただきまして、まずクリーンから、危険性の少ないクリーンから始めようということにしたものでございます。
  19. 山名靖英

    山名委員 そうしますと、この中身をかえるわけでございますが、何とかえるのですか、どんなものとかえるのですか、取りかえるというのは。
  20. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  刑訴の手続で中身を抜いてしまうわけでございますから、抜いた後そのままに、もう空にしておく場合もございますし、あとは同じぐらいの重量なり形状を持った模造の銃器まがいのものを忍ばせておくというような方法ですが、いずれにしても本物は抜いてしまう、そして受取人に疑われないような方法で送るというような方法考えております。
  21. 山名靖英

    山名委員 それなりに効果がより高まるような方途を考えなければいけないとは思いますが、このクリーン・コントロールド・デリバリーという、これを導入することによってどのような効果というのが期待され、所期の目的といいますか、こういったものが果たして果たせるのか。ほかに、クリーンCDにまつわる問題点等は存在しないのか。この辺についてはいかがでしょうか。
  22. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  クリーン・コントロールド・デリバリーを含めましてコントロールド・デリバリーは、先ほど申し上げましたように薬物犯罪捜査については既に導入されておりまして、既に三十件前後の実例もございます。薬物犯罪につきまして組織的な事犯を解明するということで大変役に立っている手法でございます。  けん銃犯罪捜査におきましても密輸薬物と同様に、密輸入事犯におきます真の受取人を特定する、そしてこれを検挙する、そしてそれを通じまして、突き上げ捜査というようなことを言っておりますが、けん銃の不正取引に関与している著を一網打尽にして密売組織の壊滅に有効な捜査手法として活用できるのではないかというふうに考えております。今後この捜査手法を積極的に活用して所期の目的を達成することができるように最大限の努力をしてまいりたいと考えるところでございます。  それからまた、問題はないかという、この手法クリーン・コントロールド・デリバリーを採用して問題はないのかということでございます。クリーンCDでございますけれども、これは、行うための手法というものは現行の刑事訴訟法その他の関係法令の許容する範囲内で、現行法の範囲内で実は行えるわけでございまして、今回の改正警察官に新たな権限を付与するというようなものではございません。  それからまた、このやり方でございますが、もう既に御案内のとおりでございまして、通関手続等の際にけん銃が発見されました際に、捜査機関ないし税関当局が法令に基づきましてけん銃等の抜き取りを行うわけでございます。これは裁判官の発する令状によって行うわけでございまして、その後捜査機関の監視のもとに、抜き取られた貨物の、けん銃等抜き取られた後の貨物の運搬を追跡する、その不正取引に関与する人物を特定するということになるわけでございますが、そのような捜査方法自体は既に現在の刑事訴訟法が認める任意捜査の一環として行えるものでございますので、そういう点で法令上の問題は何も起こらないというふうに考えておるところでございます。
  23. 山名靖英

    山名委員 このクリーン・コントロールド・デリバリーというのは、いわゆるおとり捜査、こういったものを許すといいますか認知するためのものではないかと率直に思うわけです。おとり捜査そのものの合法性なり賛否については別でありますけれども、それを、クリーンCDを導入することによって本来のおとり捜査というものを明確に認知をさせる、こういったたぐいのものではないかと思いますが、先ほど刑事訴訟法等に照らして問題はない、こういうことでありますが、刑事訴訟法にはいわゆる「基本的人権の保障とを合う」するということが明記されておりまして、ここでの問題点として、やはりこれが誤捜査、いわゆる誤ったものに結びつき、なおかつ、これが人権問題に発展すること、このことが憂慮されることではないか、こう思います。  そういう点で再度、そういった基本的人権上の問題として、やはりこういったものが重要なこれは問題ですから、これがばんばんやられていって人権問題にぶつかっていくんではないかという危惧を持つわけですけれども、おとり捜査を許すという点とあわせて御見解をお伺いしたいと思います。
  24. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 先ほどの御質問の際におとり捜査との関連は実は何も触れなかったわけでございますけれども、それは、おとり捜査とは、結論から申し上げまして、このクリーン・コントロールド・デリバリーというのは性格的に違うものだと考えておるわけでございます。  これも御案内のところでございますが、おとり捜査というのは、一般に捜査員などが身分を秘匿いたしまして被疑者に接触をする、そして、いろいろな禁制品の売買等の犯罪行為の一方の相手方となるというようなことをして被疑者検挙する捜査手法でございます。これにつきましては、判例等によって一定の限度で許されるというふうな理解に立っておるものと承知しております。  このクリーン・コントロールド・デリバリーでございますけれども、これは、税関検査等けん銃等が隠匿されている貨物が発見された場合に、捜査機関が直ちに犯人を検挙することなくその貨物の移動を監視する、中身が抜き取られておるか、そのまま入っておるかは別といたしまして。そして、犯罪関与者を特定して検挙する手法でございまして、その過程で捜査機関というものは、一定の密輸等の犯罪の意思を持った者が犯行を行っておるわけでございますけれども、その犯罪意思に何らの関与もいたさないわけでございます。そういう意味から、コントロールド・デリバリー、そのうちのクリーン・コントロールド・デリバリーはもとよりでございますけれども、いわゆるおとり捜査とは異なるものであるというふうに考えております。  ただ、しかしながら、今回法改正によりましてこのような新たな捜査手法をとるということになりましたら、新しいものでありますだけに、その手続に誤りのないよう、関係者の人権尊重に配慮することは当然でございますので、適正な捜査が行われますように十分指導してまいりたいというふうに考えております。
  25. 山名靖英

    山名委員 わかりました。  ところで、今回の法改正の中で、けん銃密輸防止対策として営利目的密輸入罪、これについて罰金刑のみの引き上げになっているわけですね。量刑の部分の改正といいますか、罰金刑のみの引き上げにしたその理由はどこにあるのでしょうか。
  26. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  最近でございますけれども、けん銃等密輸入によりまして不法の利益を得ようとする者が暗躍ばっこしているわけでございます。そして、こういったことが暴力団以外の者へけん銃等を拡散させておるという要因の一つ考えられるわけでございます。  このような利益目的といいますか、営利目的の事犯に対しましては、懲役等の自由刑による刑罰の感銘力だけじゃなくて、その不法利益に着目して、この種事犯が経済的に引き合わないのだ、やればかえって損をするのだということを十分に感銘させることが重要になるわけでございます。  特に、最近のケースを見ますと、五百万円以下という現行法、これは懲役刑とあわせて罰金刑を科すことができる併科罰金でございますけれども、この五百万円以下という上限をかなり上回って一千万、二千万というような不法な利益を上げる者が現にあるわけでございます。そういうことで、現行法によって十分な感銘力が与えられないということで引き上げをお願いしておるわけでございます。  なお、自由刑の方はなぜ上げなかったのだということでございますが、例えば営利目的密輸入罪は上限無期、または五年以上の有期懲役ということでございまして、既に十分な重罰化がなされておるということから、今回は併科罰金刑の罰金の引き上げたけを行ったというものでございます。
  27. 山名靖英

    山名委員 それでは、密輸入の問題についてはそれぐらいにしておきまして、今度は国内におけるけん銃等取り締まりの問題についてお伺いしたいと思います。  国内におけるけん銃取り締まり状況というのは、昨年で百五十九件、前年度より二十九件はふえておるものの、平成二年度の二百件あるいは元年の二百二件と比べますと減少傾向にあると言えます。国内におけるけん銃の根絶という観点から、まだまだほど遠い状況ではないかと憂えるものでございます。  先ほどからも、いわゆる傾向性として暴力団から民間けん銃が流出しているとか、いろいろございました。やはり、政治の責任として、行政の責任として、国民に安心を与える、確保する、このためには抜本的な対策というものを講じる必要があるのではないか、ありとあらゆる方策を駆使して取り締まっていかなければならない、この銃の問題というのは極めて大事な問題だ、私はこういうふうに思っております。  その点について、単に全力を尽くして取り組むということではなくて、今後どういったお考え我が国けん銃の根絶を目指して立ち向かっていかれる決意なのか、これはぜひ大臣の方からお聞かせいただきたいと思います。
  28. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員指摘のように、国内におきますけん銃犯を根絶をいたしていきますためには、あらゆる手段方法を講じなくてはならないということは言をまたないことでございます。特に、その中におきましても供給源や、さらには密売ルート摘発することが何よりも必要であると考えるわけでございます。  これらの犯罪は通常組織的かつ秘密裏に行われるものでありますので、その摘発におきましては、従来の捜査手法に加えまして、組織の中枢部の摘発に資する新たな捜査手段に積極的に取り組んでいかなくてはならないと認識をしておるところでございます。  こうした認識に立ちまして、先ほど来御審議を賜っておりますように、クリーン・コントロールド・デリバリー等の捜査手法をより実効あらしめるための措置を主な内容といたしまして、このたび銃刀法改正案を今国会に提出をしておるわけでございます。御審議をいただき成立いたしました暁には、その適正妥当な運用に配慮をしながら、組織の全力を挙げましてけん銃摘発に取り組んでまいりたい決意でございます。
  29. 山名靖英

    山名委員 今回の改正案に、警察官等が何びとからもけん銃の譲り受けができるようにするための規定というのが設けられました。この規定を設けた理由あるいは背景、これについてお伺いいたします。
  30. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  けん銃犯罪、特に発射事犯増加する一方で、隠匿方法巧妙化するなど、けん銃不法所持犯などの検挙が困難になっております。また、暴力団以外の者までけん銃が拡散するということで、けん銃情勢は極めて厳しいわけでございまして、こういった情勢に的確に対応するとともに、確実な証拠を得まして、密売組織を解明する、そして壊滅に持っていくというためには、ケースによっては、警察官が密売人等に接触をいたしまして、不法に所持されているけん銃等を譲り受けることも考えざるを得なくなってきておるわけでございます。  ただ、一方で、現在の銃刀法ではけん銃等の譲り受けは一般的に禁止されております。犯罪捜査のためであれ、警察官等が譲り受けて所持するという場合は形式的には違法になるわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたような、捜査を円滑に実施していくために、警察官などがけん銃等に関する犯罪捜査のために行うといいますか、結果として譲り受けるということについては、譲り受け罪の適用を銃刀法から免除する、適用除外するという規定を置く必要があったということでございます。
  31. 山名靖英

    山名委員 今回、そういう譲り受けの免責ということでありますけれども、これは先ほどもちょっと触れましたおとり捜査の根拠規定そのものになるんじゃないか、こういうふうに思います。  私は、おとり捜査というのは、こういう国民生活あるいは生命財産を守るための事犯摘発のためには当然あっていいんじゃないかという認識は持っておりますけれども、おとり捜査というのは、一般的に許された捜査方法という認識なのかどうか、これについて再度お伺いしたいと思います。
  32. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  譲り受け規定でございますけれども、これは法の禁止する譲り受け行為などを都道府県公安委員会の許可を受けることにより認めることにしたにすぎないわけでございまして、何も警察官等にいわゆるおとり捜査の権限を与える、付与するものでは決してございません。  おとり捜査そのものにつきましては、刑事訴訟法その他の関係法規に照らして、おとり捜査というのは法令上の用語ではございませんけれども、刑訴法その他の法令の規定に照らして適法な範囲において行い得るというふうに考えております。  そして、このいわゆるおとり捜査でございますけれども、私ども考えておりますのは、組織的かつ秘密裏に敢行される薬物けん銃犯罪等の摘発のためには、捜査官が身分を秘してこのような捜査手法をとることが効果的かつ必要であるという場合もあると考えられておるわけでございまして、また、そのような捜査手法についてはその適法性を認める判例も多数集積されておるところだ、その許すところで、必要なものについてやってまいりたいということでございます。
  33. 山名靖英

    山名委員 これについては、警察官または海上保安官が、けん銃等けん銃部品、またはけん銃実包に関する犯罪の捜査に当たって、所管の公安委員会の許可を受ける、こういうことですね。どういった内容の許可になるんでしょう。  とともに、これは一度受けたらもうずっと有効なんでしょうか、それともその捜査ごとに許可制なのか。その辺の、これは事務的な話でしょうけれども、伺いたいと思います。
  34. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  都道府県公安委員会の立場でございますけれども、これは銃器所持、使用に関する規制を所管するといいますか、ガンコントロール行政でございますね、これを所管する行政庁としての公安委員会でございます。ですから、銃刀法で見ております危害予防上支障がないかどうかを審査するという立場に立つものでございまして、譲り受けが犯罪捜査のためになされているのかどうか、譲り受けに際し危害予防上の措置がとられるのかどうか、あるいは譲り受けた後のけん銃等の保管管理方法に問題がないかどうかというようなところをチェックするわけでございまして、捜査そのものを見ているものでも何でもございません。  また、この許可でございますけれども、それは譲り受け行為の単位ごとに行うものでございまして、一度受けたら未来永劫にというようなものではございません。
  35. 山名靖英

    山名委員 警察官がけん銃を譲り受けるという、こういう捜査については極めて危険を伴うおそれがあるんではないかと思います。そういった意味では、警察官の安全確保を含めて、今後都道府県警にどのように指導をされるお考えなのか、これについてお伺いをいたします。
  36. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  確かに委員指摘のような危険が十分予想されるところであります。  そういったことから、この捜査に当たりましては、譲り渡し人、相手方でございます、こういう者について綿密な調査もいたさなくちゃなりませんし、取引場所が安全かどうかというような場所の選定等についても考えなくてはいけません。いずれにいたしましても、組織的な事前検討が十分なされることが必要であります。また、それとともに、その譲り受けを受ける捜査官についても、事前の十分な教養というようなものも必要かと思います。  いずれにいたしましても、捜査官の安全の面につきましても十分配意して指導をやってまいりたいと思います。
  37. 山名靖英

    山名委員 ぜひとも、万全の配慮の上で御指導いただき、万全を期していただきたいと思います。  次に、これは自治大臣にぜひお伺いしたいと思いますが、こういった今回の銃刀法改正等に伴い、また今後こういった銃規制というものを推進する上に当たって、今のままの体制でいいのか。人員等含めて、あるいは今回の法改正に伴う装備の充実、水際作戦、あるいは国内でのけん銃捜査、こういったことを含めて、そういう装備にかかわる経費というのはやはり相当大事になってくるんじゃないかと私は思います。そういった意味での現場での体制強化、あるいはその装備の観点から予算措置についてどのようにお考えになっているのか、お伺いしたいと思います。
  38. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど来御審議いただいておりますように、けん銃情勢は極めて憂慮すべき状況にあるわけでございまして、今回の改正法に織り込まれましたクリーン・コントロールド・デリバリー等の捜査手法を有効に活用いたしますとともに、各種の罰則規定を厳正に運用し、かつ、これによってけん銃捜査の実を上げてまいりたいと考えておりますとともに、また、取り締まりのための、今御指摘ございました専従体制の確保、あるいは所要の装備資材等の配備につきまして力を入れてきたところでございますけれども、今後一層、必要な人員の確保、さらには装備資機材の十分な確保等に努めてまいりたいと考えておるところでございます。  予算の確保等につきましても、また国会の御理解、御支援をこの機会にお願いを申し上げる次第であります。
  39. 山名靖英

    山名委員 最後の質問になりますが、今回の銃刀法改正に関連をいたしまして、今回はけん銃等の、いわば真正けん銃といいますか、こういったものが対象でございまして、いわゆる武器の改造、密造、こういったものの罰則強化等の内容が含まれていないわけでございます。  ところが、実際我が国において、例えば昨年広島におきまして、モデルガンの銃身に鉄パイプで補強をいたしまして改造けん銃を密売をしていたという事犯がございましたし、最近では、オウム真理教の関係者の車から金属パイプやあるいは引き金などの部品、あるいは銃弾の遊底というんですかね、弾頭部分の金属、こういったものが発見をされております。また、きょうの朝刊を見ましても、信徒宅から改造銃五丁を押収した、こういった記事も出ておりますように、武器の密造、改造、こういったたぐいの事犯についてもやはりしっかり取り組み強化していかなきゃならない、私はこのように思います。  仮にそういったオウム真理教等の武器密造が事実であるならば、これはゆゆしい問題でありまして、毒ガス等の問題に匹敵する重大問題だと私は思っておりますが、この武器製造については通産省が所管をしておるようでございまして、今後、こういった事犯に照らして、罰則強化等、法律見直し等についてのお考えがあるのかないのか、お伺いをしたいと思います。
  40. 平井敏文

    ○平井説明員 御説明を申し上げます。  武器等製造法の罰則につきましては、平成五年の改正により、大幅な強化がなされております。法に違反して無許可で銃砲を製造した場合は三年以上の有期懲役、営利目的が加わりますと、無期もしくは五年以上の有期懲役、またはさらに五百万円以下の罰金の併科というふうになってございます。さらに未遂罪も罰することとなっております。  個々の規制内容につきましては、法目的、保護法益などきめ細かな評価を行い、その必要に応じて見直すべき点を法改正の形で反映させるべきであると考えておりますが、現時点におきましては、罰則強化の法改正を行うとの考えには至っておりません。
  41. 山名靖英

    山名委員 何か起きてから見直すのじゃ遅いと思いますし、ぜひこの辺の認識に立った上で今後ひとつ御検討いただきたいと思います。最後に自治大臣に締めをお願いしたいと思います。  こういった銃刀法問題等について、捜査上、やはり重要なのは、民間からの情報提供じゃないか、こういうふうに思っておりまして、今後こういった民間からの情報提供、国民協力を求める、またあるいは広報等に全力を挙げる、こういう意味から、ぜひとも国民に対しての協力の要請といいますか、また協力者に対する顕彰といいますか、こういったことを含めて取り組みのお考えをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  42. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員がただいま御指摘になりましたように、この銃犯罪は、お説のように、国民多数の皆さん方のどんな小さな情報でもお寄せいただくことが犯罪検挙の上に大きな効果をもたらすわけでございまして、私どもも手段、方法、あらゆる広報活動を通じて、これからも国民各位の御協力をお願いを申し上げていきたいと考えておるわけでございます。  また、今お説の、その情報提供者に対する顕彰等につきましても、従来からやっておるわけでございますけれども、これからもさらにその方法等を十分工夫を凝らしてやってまいりたいと存じておるところでございます。
  43. 山名靖英

    山名委員 終わります。ありがとうございました。
  44. 川崎二郎

    川崎委員長 田中甲君。
  45. 田中甲

    ○田中(甲)委員 さきがけの田中です。  他の委員会との兼ね合いがございまして、社会党さん、自民党さんに質問の順番で御配慮をいただきました。ありがとうございます。  かねてから銃犯罪に対しまして大変に憤りを感じておった一人でありますので、国家公安委員長でもあります野中自治大臣が所信表明で述べられている文章、その文面に対して二月二日に質問した経緯もございます。それ以前より実は警察庁の皆さん方は銃刀法強化ということにいろいろと準備を進められていた様子でありまして、その質問が終わりましてから早いタイミングで今回のような銃刀法の重罰化ということが進められてきたわけですが、それは大変にうれしく思っておりましたが、残念なことに銃犯罪ということが一向になくなる傾向はありませんでしたし、警察庁長官、國松長官が狙撃されるというような事態が起きるに当たりまして、ほぞをかむ思いと申しますか、悔しい思いでいっぱいであります。  今回、可及的速やかに銃刀法の一部改正ということが実際に行われ、成立が見られますように考えておる一人であります。もう十分に審議が、審議と申しますか、内部で話し合いが煮詰められている法案が出されてきたものと認識をしているところでありますが、十五分間持ち時間をいただきまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。  重要な部分は、発射罪を新設するということでありますが、まずその趣旨、そしてどの程度の効果を今お考えになられているか、その点からお聞かせをいただきたいと思います。
  46. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  けん銃情勢の悪化、委員指摘のとおりでございます。その中でのけん銃発砲事件多発というのは、見逃すことのできない大変な事態でございます。  これまで、けん銃等適合実包等とともに携帯、保管等している場合でございますが、こういうものにつきましてはけん銃使用への危険性、悪性を評価いたしまして、まず平成万年の銃刀法改正の際に不法所持の加重類型ということで、かなり飛躍的に罰則を重くするということをしたわけでございますが、発射行為そのものにつきましては、まだ法的評価がされてこなかったわけでございます。  しかしながら、最近の銃器情勢の悪化、特にけん銃発射によります国民の不安感の増大ということを考えましたならば、このような発射行為そのものについて正当な評価をする、そしてそれを禁止し、抑止を図るという必要があろうかと思いまして、発射罪を新設することを御提案申し上げておるわけでございます。  なお、その刑罰でございますけれども、上は無期までという大変な重罰でございます。ただ撃つだけで上は無期でございます。それによりまして相当な、これはなかなかはかりがたいものでございますけれども、相当な抑止効果が期待できるものというふうに考えております。
  47. 田中甲

    ○田中(甲)委員 今答弁の中で、撃つだけで無期ということもあり得る、そういうことをおっしゃいましたが、答弁の中にそのような言葉で伝えられたわけでありますが、それでは、禁止される場所について御質問をさせていただきたいのです。  不特定もしくは多数の者の用に供される場所や乗り物に向かって、または不特定もしくは多数の者の用に供される場所や乗り物における発射、非常に私はこの場所の設定が弱いということを感じます。これ以外の、例えば山の奥に入って銃を発射した場合はどうなりますか。あるいは海、浜辺で、人のいないような場所で銃を発射するということはどういう扱いになるのでしょうか。その辺をお聞きしたいと思います。
  48. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 新しく設けます発射罪でございますが、けん銃等発砲につきまして、殺人、傷害等の罪で評価される以外には、その場に居合わせたりあるいはその付近の住民ということで居住する方々等が受ける不安感あるいは恐怖感についてはこれまで何ら法的に保護されていないということから、この規定を設けることにしたわけでございます。  したがいまして、やはり発射罪の保護法益というものは、国民の平穏な生活あるいは公共の静穏の保持というところに求めざるを得ないわけでございまして、そういうことから、また、禁止されるのはいかなる場所であってもというわけにはまいらぬのだと思います。そのような保護法益との兼ね合いから、保護に値する場所というものをある程度限定せざるを得ないということでございます。  そういうことから今回の条文にございますような、不特定もしくは多数の者の用に供される場所、乗り物において、あるいは向かってというような限定を置いたわけでございまして、そういう場所等での発射に限って禁止をするということでございますので、状況によりますけれども、多分、委員今お挙げになりましたような、だれもいない山中で撃つ、あるいは浜辺で撃つという行為については、今回の発射罪では禁止の対象にあるいはならないのではないかというふうに考えます。
  49. 田中甲

    ○田中(甲)委員 これはいろいろ御検討された中で最終に決定されたことでありましょうから、くどくどとこの点を御質問するつもりはありませんが、しかし、山奥で銃を発射した場合には、それでは不法所持銃器不法所持並びに実弾を持ち合わせていたということで処罰されるということになるわけでしょうね。射撃場以外の場所すべてにおいて撃つ場所ではないというふうな明確な規定があってもいいのではないかという考えを持つ一人であります用意見として述べさせていただきました。  もう少し基本的なことにまた確認をとらせていただきたいと思うのですが、「けん銃等」とは何を指すのでしょうか。発射罪の対象をけん銃等に限定したのはなぜでありましょうか。その点をお聞きしたいと思います。
  50. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  けん銃等とは現行法どおりでございます。条文はずれておりますけれども、けん銃、小銃、機関銃または砲でございます。ですから、猟銃でございますとか建設用のびょう打ち銃等の産業用の銃砲は当然含みません。  それから、発射罪の対象をけん銃等になぜ限定したかというお尋ねでございました。これは二つの方向から考えたわけでございますが、今申し上げました猟銃とかその他の装薬銃砲、建設用のびょう打ち銃などでございます。それから空気銃も入りますが、これはそれなりの社会的有用性を持っております。許可のもとに比較的広くその所持が認められ、使われておるわけでございまして、それに比べますとけん銃等というものは禁制品でございます。一部の例外を除いてその所持が認められないだけでなくて、輸入、譲り渡し等も禁止されておるわけでございます。猟銃等とは、その規制の態様といいますか、物についての評価、考え方が基本的に違っておるということが一つでございます。  また現実を見ましても、現在の発射事件のほとんどはけん銃によるものでございます。ですから、けん銃等の発射が社会問題化しておるということであれば、それに限って今回は規制を行えばよろしいのではないかという配慮から、そのようなものに限ったわけでございます。
  51. 田中甲

    ○田中(甲)委員 現状では銃犯罪はけん銃である、こぶしの銃ですね、握って撃つ銃だけであると断定してよろしいのかどうかわかりませんが、しかし、猟銃を使っての犯罪ということも当然考えられるわけでありますし、人体に危害を及ぼす殺傷能力のあるものをやはりもっと幅広くとらえていく必要があろうかと思います。これを行っておきませんと、後追いでまた一部改正ということになるやもしれないということを今私は考えております。  これは銃刀法でありますからここには当然含まれてまいりませんが、ハトを弓で射るということが行われていますが、これも殺傷能力があると思います。ボーガンですね。それからパチンコも、ゴムで引っ張って的に向かって撃つわけでありますが、それを何を挟んで飛ばすかということによって、あるいはねらう場所によって殺傷能力がある。私たちが安全に安心して生活できるためには、こういうところも含んでこれからとらえていく必要があるのではないか。今回の銃刀法には少し外れてくる話かもしれませんが、後追いにならないように事前に事前に対策をとっていくという面で私の意見を述べさせていただきました。  次は、けん銃等により人を殺傷することを強制した場合、この強制した者についての罰というものが今回書かれていません。強制よりも少し弱い表現ですが、人を殺傷することを依頼した者に対しても今回の法案には含まれていません。高い金利の、そして背景暴力団がついている、そんな中で巨額な借金をした場合に、帳消しにしてやるから消してこいというようなことも、実際に今までの取り調べその他の中でも銃を使っての殺害の中にあったように私は聞いております。こういうことを今回の銃刀法の中に書き加えなかった理由をぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  52. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  必ずしも適切なお答えになるかどうかわかりませんが、先ほど発射罪の効用ということで、その効用のあるいは一つとしてこのようなことが言えるのではないかと思うわけでございます。  今お挙げになりましたような事案については、個人的な法益の殺人なり何なりの共同正犯でありますとか教唆犯ということはもちろんあるわけでございますが、威嚇のために企業の幹部の家に行って何をしてこいとか、あるいは対立する暴力団の事務所に行って、人を殺すわけではございませんが、威嚇の射撃をしてこいというような指示、強制というようなものがありました場合に、まさにこの発射罪が使えるわけでございます。  従前でございますと、発射罪がないと、大変不適切な評価になるのでございましょうが、事務所の家の一部をあれした、小さな穴があいたということでは建造物損壊ということにはなりませんで、窓ガラスが割れたような場合に器物投棄、親告罪、非常に軽い刑の器物毀棄のせいぜい共犯と言えるのかどうかというようなことでございましたが、今度の場合、例えば暴力団の幹部が部下に指示するといった場合につきましては、その指示した幹部については今回は大変重い発射罪の共犯、共同正犯ないし教唆犯ということで責任を問うことが可能になるわけでございます。そして、その危険性なり悪性に応じた厳正な処罰が発射罪を設けることによって可能になるものというふうに考えております。
  53. 田中甲

    ○田中(甲)委員 それでは、教唆犯として刑事事件として扱うことができる、それは強制した者に対しても適用できるということですか。
  54. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 そのとおりでございます。
  55. 田中甲

    ○田中(甲)委員 わかりました。  強化して銃犯罪を未然に防止をしていくということが目的でありますから、今回つくりましたこの銃刀法の一部改正国民に周知するということが非常に重要なことになってくると思います。この周知の方法をどのようにお考えになられているか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 けん銃対策推進上広報活動が大事なことは、御指摘のとおりでございます。今までも国民の規範意識の維持高揚を図る、あるいは捜査活動に対する国民協力を得るという観点から、いろいろポスターなり広報誌をつくってまいりました。あるいは新聞、テレビ等の各種のマスメディアに資料を提供する、あるいは私ども出演するということをやってまいったわけでございます。今回の法改正につきましてもまた幅広くそのような手法考えまして、国民への周知徹底を図ってまいりたいと考えております。
  57. 田中甲

    ○田中(甲)委員 関係する皆さん方の御努力に敬意を表し、質問を終わります。
  58. 川崎二郎

    川崎委員長 穀田恵二君。
  59. 穀田恵二

    ○穀田委員 私は、今回の改正に当たって、第二十七条の三、いわゆる譲り受け、いわゆるおとり捜査と言われる捜査手法が今回導入されることになっていますが、条文では「けん銃等けん銃部品又はけん銃実包に関する」云々となっています。条文どおり読みますと、けん銃等、これは先ほどありましたように、銃刀法ではけん銃、小銃、機関銃、泡となっているわけですけれども、そういう銃本体とけん銃の部品、けん銃の実包に関する捜査に限定されることになるわけですが、そういう理解でよろしいのかどうか、確認をしたいと思います。
  60. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  今回新設をお認めいただきたいと申しております二十七条の三のとおりでございまして、「警察官又は海上保安官は、けん銃等けん銃部品又はけん銃実包に関する犯罪の捜査に当たり、」云々と規定しております。この規定の適用がこれら三つのものに係る犯罪捜査に限定されますことは法文上明らかでございます。
  61. 穀田恵二

    ○穀田委員 また、その後段に「都道府県公安委員会の許可を受けてことあります。ですから、これは第二十七条の三に書いているわけですが、都道府県公安委員会自身の厳正な、また違法な捜査方法をとらないという意味でのあり方の問題もまた鋭く問われると思うのですが、その辺はいかがですか。
  62. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 委員指摘のとおりでございまして、銃刀法の施行責任を持ちます公安委員会として、危害予防上問題がないかどうか厳重に、厳格に審査することになろうかと思います。
  63. 穀田恵二

    ○穀田委員 これは本当に厳格にやっていただかないとだめだということは、そういう意味ではお互いの重要な問題ですので、お聞きしたとおりです。  次に、クリーン・コントロールド・デリバリーについて伺いたいと思うのです。  これは通関段階でけん銃を抜き取って、けん銃がなくなった品物を受け取った人を犯人として逮捕する、そういうことを意図した捜査方法だと思うのですが、そうすると、罪のない、名前と住所を使われただけの人でも、これからはそういうふうに知らずに荷物を受け取ってしまうと逮捕されることになるのか。犯意のない者については逮捕されない、そういう保障についてはどうなるのですか。
  64. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  クリーンCDのやり方につきましては、先ほど来御答弁申し上げているとおりでございまして、クリーンCDというのは、捜査機関等が犯罪を犯す意思に何ら積極的に働きかけるわけではないわけであります。  このクリーンCDを実効あらしめるための規定でございます三十一条の十七は、ごらんいただくとおりでございまして、この罪というのは、法文上何々を犯す意思を持ってというふうに規定しております。これは敷衍いたしますれば、銃刀法上のけん銃等の各条の罪、輸入罪等でございますが、これを犯す意思を持ってという意味でございますから、そのような犯罪を犯す故意のない者が逮捕されるとか処罰されるというふうなことはあり得ないところでございまして、単なる中身について、密輸入の意思もなくて、名あて人にされただけでこの罪に問われることはあり得ないことでございます。
  65. 穀田恵二

    ○穀田委員 そこで、私が聞きたい中心は、わかりやすく言うとおとり捜査、こう育っては悪いのでしょうけれども、譲り渡しということ。それともう一つは、クリーン・コントロールド・デリバリー、こういう二つのことを今決めようとしているわけです。  今一番最初に質問したように、限定されるということは確かにわかるのですね。厳格にしなければならない。それから、許可についても厳格にやらなければならない。こういう縛りをかけるということはどうしても必要です。  同時に、今ありましたように、そういう捜査方法をやるということについていうならば、今までいわゆるおとり捜査という問題については、捜査当局が罪をつくり出すということに対して問題点が広く指摘されてきたことも事実です。ですから、なぜこういうふうな方法が今必要なのか。そしてまた、そうならない歯どめは何かということについてぜひお聞きしたい。つまり、通常の捜査方法では対応できないという点での今回の提起だと思うのですが、その辺の具体的理由について説明をいただきたいのです。
  66. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  我が国治安が良好なのは、けん銃等に対する厳正な規制によるところが大きいと思われるわけでございます。しかしながら、最近はけん銃を使用した凶悪な犯罪が続発しておる。銃口が市民生活とか言論、政治活動あるいは企業活動に向けられております。また、けん銃暴力団以外の者に拡散しておる、不法所持事犯増大するなどしておりまして、けん銃使用犯罪に質的な変化の兆しも見られるところであります。このまま放置すれば、社会の根幹を揺るがしかねない事態に立ち至ってきておるというふうに認識しております。  このような厳しいけん銃情勢背景といたしまして、けん銃犯罪の徹底的な取り締まりや諸対策推進を求める国民の声というものが、全国の各自治体の議会におきます決議、要請文、あるいはまた各種のマスコミ報道等により示されておるところでございます。  また、政府といたしましても、こういった国民の世論にこたえるべく、昨年の十一月以降、関係省庁が一体となって問題の解決方策について検討を重ねたわけでございまして、けん銃摘発強化への取り組みが申し合わされているところでございます。そして、譲り受けあるいはコントロールド・デリバリー絡みの新しい捜査方法手法についての御指摘がございましたが、こういった捜査方法を採用することは、政府関係省庁申し合わせの中にございます。その部分だけ抜き出しますと、けん銃事犯効果的な検挙摘発に資する諸制度の整備というくだりがございますが、この一環として行おうとするものでございまして、まさに国民の声にこたえた改正ではないかというふうに考えておるところでございます。
  67. 穀田恵二

    ○穀田委員 先ほどの話、本日の答弁の中でもいろいろあった模様ですけれども、隠匿などが非常に巧妙になっているという話もあった模様です。  今もありましたように、けん銃使用犯罪の質的転換、それから要因、つまり質的転換が銃犯罪で起こっている、それに対して国民の声があるからだ、わかりやすく言えばこういうことですね。そうすると、そういう点では全体で、各県警、閣僚会議ないしは省庁の事務レベルの会議申し合わせ事項というのはその結果であって、それはそれとして、具体的手順の問題からすれば、なぜということがよくわからないのです。なぜそういう捜査方法が今必要なのか。  つまり、私この前銃問題で質問した折に、どこからか広がってじわっと出てくるわけじゃないのだ、麻薬についても、銃についても。どこからか、確かに社会一般に向けられている。一般民間人の方が持っているということは確かだけれども、その根源はいつだって一定しているはずだ。常に暴力団だ。そういう問題が中心であって、どうもそのことが質的に変化したとは思えないのですが、その辺どうですか。
  68. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 あるいは認識の違いかもしれませんが、暴力団が大量の武器といいますか、けん銃等を集積し、事あるごとに使おうとしておる、そしてまたそこが一般人のけん銃事犯について供給源にもなっておるということから、暴力団対策というものが大事なことはもとよりであります。また、それが一般人にもにじみ出していって、押収丁数から言いますと、三割にも上るものが暴力団以外のものから押さえられておる。そういう人たちがまたこのような危ないものを振り回すということを考えまして、広い意味銃器対策考えていかなければならない。そういうことからは、単なる暴力団犯罪取り締まりをやっていたより捜査は非常に難しくなってきておる。そういうような背景があるということについても御理解を賜りたいと存じます。
  69. 穀田恵二

    ○穀田委員 捜査が難しくなっている。つまり、今お話があったように、第一次根源、つまり一番のもとは暴力団から出ているということは確かなのですね。そこから第二次的なところに行って、それがさらにいろいろなところに渡そうとしている傾向がある。それも事実だと思います。  だけれども、やはり大事なことは、こういう捜査方法が今の段階で必要な意味というのが、つまり、こういうコントロールド・デリバリー、それから譲り渡し、つまり、いわゆるおとり捜査という捜査手法が必要な意味というのをもう少しわかりやすく言ってもらえませんか。
  70. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 繰り返しになりますが、現在のけん銃、一種の禁制品でございますが、こういうものは薬物と同様に、これをめぐる捜査環境というのは非常に難しくなっておるということに尽きるかと思うわけでございます。
  71. 穀田恵二

    ○穀田委員 なぜ私がこういうことを言っているかといいますと、こういう手法というのは、例えばアメリカなど外国では割と早くからやられていますね。そうすると、外国の場合はそのころから難しくて、当時は、じゃ、日本は難しくなかったのか。  これは、ある意味ではイタチごっこであって、問題は、どこから出てきて、どこに根源があるのかということに対してどのような効果を上げているだろうか、それが今日、効果を上げ得るものとなるだろうかというあたりを少し言っていただかないと、捜査方法が難しくなっているという一般論だけでは、ちょっとそれは普通の国民でいうと理解できないと思うのですね。  一般的に言うと、こういう手法をとる場合に当たって、こうこうこういう理由ですよ、先ほど広報するという話もあったわけですから、なぜこんな手法がとられるのかについては、やはり国民にわかりやすく、捜査方法が難しくなったからだというような話じゃなくて、昔から外国では行われていた、日本の場合は行われていなかった、しかも今、新しい段階に来ている。したがって、こういうふうなことで必要だ、しかし、その場合に、権利は守る、それから人権はしっかり守らなくちゃならないという両側面について言っていただかないとちょっとあかんのじゃないかと私は思うのですが。
  72. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 けん銃捜査というようなものは、これまでもいろいろな努力を重ねて私どもやってまいったわけでございます。しかしながら、銃器犯罪、薬物事犯と同様に、非常に広域化し、特に国際化をしております。非常に性格は同じようなものを持っております。  そういうような中で、犯罪の形態なりなんなりがそういう性格を帯びてきておるということから、今やそのような手法を用いてでもこれを徹底して取り締まるべきだというのが、こういう銃器犯罪の徹底取り締まりを望むという声の中に、そういうような手法も取り入れて結果を出してくれというのが国民の声だと私どもは受けとめて、このようなことを御提案しておるものでございます。
  73. 穀田恵二

    ○穀田委員 何とかしてほしいという国民の声についてはわかっているのですが、捜査手法について私は言っているのですから、その辺をもう少し解明してほしいのですが。  時間もありませんから、一言だけ最後に。  これとの関係で、銃刀法は、実は一昨年改正されたばかりで、この際に、けん銃等を持っているということに対して三年以上の懲役、密輸入した者については三年以上の有期懲役に処せられることになりました。殺人罪でも三年の懲役を下限にしていることを考えて、処罰規定としてはかなり重いということは間違いないと思うのです。  今回、違反者には重罰を科せようとするのは、現行の刑罰規定を活用しても厳重な取り締まりはできないということなのかということについてだけ、最後に聞いておきたいと思います。
  74. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えを申し上げます。  現在、いろいろお認めいただいて現行の銃刀法の中に盛り込まれておるものは十分活用しておりまして、それなりの効果を上げておると思います。ただ、発射罪等、やはりすき間があることは間違いないわけでございまして、そのようなところについてさらに手当てをしていただきたいということでございまして、不十分であるとかなんとか考えているわけでは必ずしもございません。
  75. 穀田恵二

    ○穀田委員 わかりました。時間ですので……。
  76. 川崎二郎

    川崎委員長 北沢清功君。
  77. 北沢清功

    ○北沢委員 それでは、銃砲刀剣類所持等取締法、いわゆる銃刀法改正についてお尋ねをいたしたいと思います。  昨今の、けん銃による発砲傷害事件が極めて衝撃的で深刻であるということは、いつ何とき無差別に一般人が巻き込まれるかもしれないという、市民生活に大きな不安を与えていることでありまして、日本世界に誇ってきた安全性が揺らいでいると言ってもよいのではないかと思い、まことに残念であります。  特に、現代社会の安全性を根底から覆すおそれを、もっと厳重に規制を加える必要があるという意味では、今回の法改正は意義があるものと考えております。  しかし、先ほどから各委員の皆さんから私と同趣旨の質問も若干出るということは、いわゆるこの法案の持っている内容というものが、両刃の剣といいますか、そういう面も懸念されるわけでありまして、これらについてはやはり本委員会できちっとしておかなければならない問題だろうというふうに私は思いますので、あえて質問をいたしたいと思います。  そこで、まずお尋ねですが、銃を使用した犯罪は、決して最近でなく昔からそれなりに発生したと思われるのですが、同じけん銃を使用した犯罪の中でも、何か中身において最近特に目立ってきているというような傾向を含めて、けん銃についての見直しを迫られている背景についての御説明をいただきたいと思います。
  78. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  平成五年にも改正をいただいたところでございまして、それは、平成六年のけん銃押収丁数平成に入って最高の押収丁数を見たということからも、効果が上がっていることは事実でございます。  しかしながら、けん銃情勢についてどう違ったんだということでございますが、実は、その後もけん銃を使用した凶悪犯罪が続発をしておりまして、しかもその内容の点でございまして、一般市民でございますとか、企業や政党の幹部でございますとか、報道機関等を対象とした発砲が目立って、けん銃使用犯罪というのは質的変化の兆しを見せておるのではないかという点が指摘されるところでございます。  それからまた、けん銃押収数に占めます暴力団以外の者からのそれでございますけれども、このところ、毎年増加の一途をたどっておりまして、昨年は約三〇%にも上っておるということで、けん銃暴力団以外の者への拡散傾向が続いておるということでございます。  そのような点で、総じて、けん銃情勢が現在極めて憂慮すべき情勢になっておるのではないかという認識が今回の提案のもとになっておるわけでございます。
  79. 北沢清功

    ○北沢委員 今回の改正は、およそ全体にかなり処罰規定が重くなっているという印象があります。銃刀法においては、既に平成三年、五年にも改正をされまして、けん銃等不法所持罪や密輸入、密造罪を三年以上の懲役刑に処することなど実現したばかりでありますが、再び短時Hの間にこのような改正を行うに至ったわけでありますが、本来、厳重な取り締まり処罰規定の際限のない拡大強化は別の問題とも思われます。  したがって、厳重な取り締まりは、本人が改俊するに足りる程度の刑罰規定捜査当局が十分用いることによって実現できることではないかと思われますので、他の犯罪に対する処罰規定との均衡においてどうなのかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  80. 津田賛平

    ○津田説明員 お答え申し上げます。  一般に、法定刑につきましては、当該犯罪行為の重大性、一般予防の必要性、さらには、委員指摘のように、関連罰則の法定刑との均衡などを勘案して決定されるものと承知しております。  今回の改正法案の罰則の内容につきましては、いずれも適正なものであるわけでございますが、お尋ねの、他の犯罪の法定刑との均衡という観点から今回の改正に係る罰則について見てまいりますと、例えば、まず、今回新設されました罪の中で発射罪があるわけでございます。  この発射罪につきましては、「無期又は三年以上の有期懲役」となっておるわけでございますが、まず、この上限の無期懲役について申し上げますと、この発射罪につきましては、混雑した駅でございますとかデパートなどでけん銃を乱射するような、著しく公共の静穏を害し、かつ、生命、身体に対する危険性の極めて高いケースも想定されておるところでございます。この発射罪と同様に公共危険罪とされております刑法の現住建造物放火の罪につきましては、死刑が規定されておるところでございます。また銃刀法上、既にけん銃の営利風的輸入・製造罪につきましては、無期懲役刑が置かれておるところでございます。  また下限につきましては、けん銃等不法所持者が当該けん銃等に適合いたします実包をともに携帯するなどした場合には重く処罰する、いわゆる加重所持罪がございますが、この法定刑の下限が三年でございまして、発射行為は、危険性におきまして一般的には加重所持罪よりも危険性が高いということにかんがみますと、やはり加重所持罪の下限を下回ることは相当でないと考えられるわけでございます。  また、法定刑の引き上げについて申し上げますと、例えば、営利目的のけん銃等輸入罪並びに譲り渡し・譲り受け罪につきましての罰金刑の引き上げは、麻薬及び向精神薬取締法、覚せい剤取締法における営利目的の輸入罪等の併科、罰金の額と均衡をとりまして、その罰金額に合わせて営利目的のけん銃等輸入罪につきましては一千万、営利目的のけん銃等譲り渡し罪につきましては五百万円、それぞれ引き上げようとするものであり、相当であろうと思われるものでございます。
  81. 北沢清功

    ○北沢委員 了解をできますが、このたびの改正で発射防止、けん銃等発射罪が新設されることになっているのですが、この発射罪が創設に至る趣旨といいますか、また、適用される場合の想定も含めて、ダブりますが、お尋ねをいたしたいと思います。
  82. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 発射罪についての必要性、それから適用する場面というものについて御説明申し上げます。  新設する必要性でございますけれども、繰り返しになりますが、昨今、けん銃の発射が国民生活の安全に大きな不安感をもたらしている。そうでありながら、これまでけん銃を適合実包とともに携帯などをしている場合については、平成五年の法改正不法所持罪の加重類型ということで評価をしたわけでございますが、発射行為そのものについては、なお法的評価は現在なされていない。しかし、現在の銃器情勢の悪化、特に、けん銃発射によります国民の不安感の増大ということにかんがみますと、このような発射行為そのものを禁止して、抑止する必要があるのではないかということが発射罪を新設する必要性のもとにある考え方でございます。  そこで、公共の静穏を脅かす罪としての発射罪を新設することとしたものでございまして、発射罪を新設することによって厳正な処罰が可能になる。例として先ほど暴力団の例を引きましたが、暴力団の団員が幹部の指示などによって対立する暴力団の事務所の建物などにけん銃を撃ち込みに行くというようなケースについて、従来は、その実行行為者はせいぜい、不法所持罪になることは別といたしまして、発射行為そのものについては一般的に器物毅棄の責めを負うにすぎないわけでございます。また、指示をした幹部についても、せいぜい器物毀棄の共犯あるいは教唆犯として問擬されるにすぎなかったわけでございます。  発射罪が設けられますれば、その実行行為者及びその共犯者等を発射罪に問うことができるわけでございまして、その危険性なり悪性に応じた厳正な処罰が可能になるのではないかと考えたものでございます。  それが適用される場面でございます。今申し上げましたように、発射罪というのは、だれもが危害を受けるかもしれないという危険性、だれもに不安感を感じさせるような行為というものを処罰する危険犯でございまして、発射行為によってそのような危険が生ずる場所等を類型化して一般化したのが、不特定または多数の者の用に供される場所または乗り物という概念でございます。  不特定の方でございますが、不特定と多数という両方の言葉を使っておりますので若干御説明いたしますと、不特定の者の用に供される場所あるいは乗り物というのは、道路、駅、乗り合い自動車等、だれでも自由に利用できることができる場所、乗り物をいうわけでございます。  ただ、これらの場所などでありましても、一般人の立ち入りが不可能な状態にある場所、あるいは、特定の者の用に供されている場所なんかにつきましては、このような発射罪の性格から、適用対象から除かれるということだろうと思います。例えば営業時間を過ぎました、そして従業員が帰宅して後、シャッターがおろされたパチンコ屋の中に入ってけん銃を撃ったり、ホテルの個室で人に銃口を突きつけるというようなものについては、この発射罪の対象から除かれようかと思います。  それから、多数の用に供される場所、乗り物の関係でございます。これは、先ほど説明いたしました不特定の者の用に供される場所等と同一視できる場所などをいうのだろうと思います。このような場所は、不特定の者が自由に利用できる状態にはないけれども、そこを利用する者が多数に及ぶということから、その多数の者のうちだれが危害に巻き込まれるかもしれない、だれもが不安を感ずるという点で、先ほどの不特定の者の用に供される場所等と同一視することができるわけでございます。したがいまして、結婚披露宴が行われているホテルの宴会場に侵入して発射するというような場合は、この発射罪が成立するのではないかというふうに考えているわけでございます。
  83. 北沢清功

    ○北沢委員 はい、わかりました。  それでは、今回新設をされたクリーン・コントロールド・デリバリーについて、これは重要なことでありますのでぜひお尋ねをしておきたいと思います。  既に麻薬二法には、それに限るという条件のもとで、尾行捜査のため、監視体制下の上陸を許可する入国手続の特例としまして、いわゆるコントロールド・デリバリーが認められておりますが、今回の改正によって新設されたクリーン・コントロールド・デリバリーとは、実施の場合はどのように考えておられるのか、お伺いをしておきたいと思います。
  84. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 今回、クリーン・コントロールド・デリバリーをどのような場面で取り入れていこうとしているのかというお尋ねかと思います。これにつきまして、税関検査の際にけん銃等が発見された場合を前提にしておるわけでございまして、その貨物のあて先が例えば会社名義となっている、あるいは、貨物の受取人が架空名義となっているときなど、貨物の真の受取人を特定することは困難だという場合、あるいは、仮に受取人が特定されておりましても、けん銃等の不正取引に密売組織の関与が推定される場合で、その受取人となっている者は単なる受け取りのためだけの末端の省であって、首謀者を検挙するためにはその組織全体を明らかにする必要があるというような場合に、クリーン・コントロールド・デリバリー実施したいというふうに考えておるものでございます。
  85. 北沢清功

    ○北沢委員 その場合、罪を犯す意思のある者を処罰することになっておるわけですが、例えば違法物がないのに、あったこととして処罰する場合など、すりかえが捜査手法の問題となるわけでありますが、こうした場合に捜査の行き過ぎといった懸念はないでしょうか。また、効果的であるというならば、そうであるだけに余計この点では留意していただく必要があると思われるのですが、このやり方の厳正な運用についてここで確認をさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  86. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  クリーン・コントロールド・デリバリーでございますが、これは通関手続の際にけん銃等が隠匿されました貨物が発見されました場合に、直ちに犯人を検挙せずに、その貨物に隠匿されましたけん銃等は刑事訴訟手続、特に刑事訴訟法でございますけれども、刑事訴訟法等の法令に基づいて裁判官の発する令状に基づいて抜き取るわけでございます。そして、抜き取った上、その後、捜査機関が貨物の移動を監視して不正取引に問うする人物を特定するという捜査手法でございまして、この御説明からもあるいは御理解いただけるかと思いますが、このような手法といいますのは、捜査機関におきまして、犯人等の犯罪を犯す意思にどの過程においても何ら働きかけをしないわけでございます。ですから、犯人側に罪を犯す意思を誘発させるという点は実はないのではないかと私ども理解しております。  ただ、いずれにいたしましても、けん銃等についてクリーン・コントロールド保デリバリーという手法を取り入れることといたしますのは今回最初のことになるわけでございますので、手続において誤りのないようしっかりと指導をしてまいりたいと考えております。
  87. 北沢清功

    ○北沢委員 そして、確認させていただきますが、この法体案の中で「物品」とはどのようなものを考えておられるか、一応定義をお聞かせいただきたいと思います。
  88. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  新しい改正法案の三十一条の十その「物品」というのはどんなものかというお尋ねでございますけれども、禁制品でありますけん銃等を抜き取りますが、その抜き取ったけん銃等と同じような形をしているあるいは同じような重量のある、そういった無害な物品に差しかえることを想定しているものでございます。
  89. 北沢清功

    ○北沢委員 以上のような定義については、改めてここで確認させていただきました。  次にお尋ねをしたいのは、いわゆるおとり捜査と言われるものの今回の新設についてでありますが、これは、捜査当局によって犯罪行為が誘発される危険が伴うもので、本来、基本的には認められていなかったものだと思います。今回の改正によってそうしたおそれについてかなり厳正な運用が必要だと思いますが、どのようにお考えでおられるか。
  90. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答えいたします。  いわゆるおとり捜査というのは、法律上の定義ではないものですから、いわゆるおとり捜査と申し上げますが、これは、捜査員などがその身分を秘して、自分の身分を秘匿して被疑者、犯人側に接触いたしまして、犯罪行為、いろいろな密売等の取引でございますが、そういう行為の一方の相手方となるというやり方をして犯人を検挙する捜査手法でございます。  このような捜査手法というのは、いろいろな判例なり学説なりで言われておりますように、秘密裏に売買等が行われて、通常の方法による捜査では証拠の取得でありますとか保全あるいは犯人の検挙が著しく困難になっておって、かつ、それが社会に甚大な害悪を及ぼす禁制品に関する捜査については、これを用いることが是認されていると理解しております。  ただ、もとよりこのような捜査手法あり方が無制限に許されているわけではございませんで、具体的な新案に応じて判例等の考え方を踏まえつつ判断されるものと理解しておりますけれども、いずれにしても、犯意のない者に、犯罪意思のない者に犯罪意思を生じさせるような意味でのおとり捜査は違法であります。このようなものは行ってはならないのは当然であります。改正法が成立した暁には、捜査官に対する十分な教養でございますとか個別事件に対する組織的な検討を行うことによって厳正な捜査運用が行われますように一層の指導を行う所存でございます。
  91. 北沢清功

    ○北沢委員 このようなことはあってはならないことでありますが、私ども、いろいろと外国捜査の問題を見て、そういう面で非常にそういうおそれがあってはならないと感じておりまして、あえて実はお聞きをしたわけでありますので、この点については、指導上といいますか、そういう問題を徹底をして、一件もないというくらいに御努力をいただきたいと思います。  それではここで、公安委員会の許可を受けた捜査を行うことのできる者として「警察官又は海上保安官」となっていますが、この場合、海上保安官がどういった立場になるわけですか。公安委員会の指揮下に入るということでしょうかどうかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  92. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 法案の二十七条の三の規定でございます。ここに出てまいります都道府県公安委員会はどういう立場かということでございますが、これは銃器所持、使用等に関する規制を所管する行政庁、俗っぽく言いますとガンコントロール所管庁という意味での都道府県公安委員会でございまして、また判断の立場も、危害予防の観点から銃刀法を施行する立場から許可を行うわけでございまして、譲り受け等必要があると認めて譲り受けの禁止を個別に解除するものでございます。ですから、海上保安官が捜査上の必要からけん銃等を譲り受けるという必要がある場合もあろうかと思います。こういう場合につきまして、捜査官たる警察官の場合と全く同じように、都道府県公安委員会の許可を受けていただくというものでございます。  ですから、この許可に際して都道府県公安委員会が審査すべき事項は、譲り受けが犯罪捜査のためになされるものかどうかとか、譲り受けに際し危害予防上の措置が十分とられるかどうかとか、あるいは譲り受けた後のけん銃等の保管、管理方法に問題がないかどうか等でございまして、都道府県公安委員会が海上保安官の捜査について指示をするというようなことは全くないものでございます。
  93. 北沢清功

    ○北沢委員 それでは、指揮監督は別だと理解をしていいのですね。  次に、この法律けん銃実包の所持について、適法とみなされるものとみなされないものの範囲があるのではないかと思いますが、その点についてお尋ねします。いわゆる適用除外に当たる範囲についての御判断の基準について教えていただきたいと思います。
  94. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 けん銃の発射防止の観点からは、発射を防止するという場合に、筒だけを規制しても足りないわけでございまして、弾も規制する必要があるわけでございます。そういうことで、けん銃に適合する実包があるわけでございますので、それに着目いたしまして、けん銃の発射による危害予防の観点から、けん銃実包の規制を火薬類取締法とは別に銃刀法の方にも設けたいということにしたものでございます。火薬類取締法の観点けん銃実包について一定の規制がございましたが、これは火薬類の一種として災害防止の観点からなされておったものでございます。今回の規制は、けん銃に係る危害予防という別の切り口から規制を行おうというものでございます。  それで、この禁止につきましては、非常に不必要な禁止をかける必要はないわけでございまして、禁止の除外を設けております。たくさん各号列記しておりますが、この考え方の基本に流れておるものは二つあるわけでございます。基本的には二つございます。  一つは、銃を適法に所持することができる者がそれに合う弾を持つというのは当たり前のことでございます。ですから、この場合は危害予防上の観点から特に規制の必要はないわけでございまして、適用除外としておるわけでございます。この規定は、実は、例えば猟銃を適法に持つことができる者が、たまたまその猟銃に適合するがけん銃にも使える実包というのは実はあるわけでございます、このようなものを持っている場合に規制にかかることになってはなりませんので、こういうものを適用除外にするという、適法に銃砲を持てる者がその銃砲に合う弾を持つ場合は除きましょうというのが基本的な考え一つでございます。  もう一つは、従来から火薬類取締法上、所持が適法とされている場合、実包の販売業者でありますとか、実包の研究機関などがございます。こういうところでございまして、これにつきましては、一定の社会的な有用性なり必要性があるわけでございまして、またその一方で、現在、災害予防の観点からの規制も十分行われておるわけでございます。火薬類取締法等で十分行われておるわけでございます。その結果、危害予防の観点からも規制する必要がないということで、銃刀法においても適用除外としたい、こういうジャンルのものと、この二つ考え方に立って整理をしておるものでございます。
  95. 北沢清功

    ○北沢委員 判断の規定といいますか、そういう面の解釈については理解をするところであります。  それで、最後になりますが、このたびのこの法案の改正は、クリーン・コントロールド・デリバリーの、いわゆる泳がせ捜査やおとり捜査が新設をされることになったわけでありますが、これはやはりやり方を間違うと新たな犯罪の誘発や冤罪に発展しかねないおそれもなきにしもあらずと思うわけでありまして、ぜひ慎重の上にも慎重の捜査をお願いをいたしたいと思います。  実は私の地元でございますが、松本市において昨年の六月に発生したサリン事件の第一報通報者の方が、入院中、連日の事情聴取や自宅の家宅捜索によってマスコミからも犯人扱いをされてしまいまして、現在、日弁連の人権救済の申し立てが行われている事実があるわけでございます。  今、警察の方々にさまざまな意味で期待が集まっているときでもありますし、また日夜頑張っていただいていることもよく存じておりますが、こうしたことで行き過ぎなどということになりますと、せっかくの御苦労も理解されないという残念なことにもなりかねません。本法案について、執行に当たって、くれぐれもこうした点を踏まえてやっていただきたい。  そして、今回の問題は、いわゆる最近の犯罪の、社会不満的な噴出という形の中で、国際的な要素、特にアメリカ銃社会に対する断固たる拒絶、日本における拒絶社会をつくっていくということや、また、各経済事情で非常な海外からの輸入を図っているものもあるわけでありまして、こういう問題も、やはり一つには国民のこのことに対するコンセンサスといいますか、漫画や映画や小説などにおいても、今まで格好のいいという形でそういう銃砲の問題が出てくるわけでありまして、そういう面から見てもやはりキャンペーンを、断固たる意思と同時に国民徹底をするというキャンペーンなども考えていかないと、ただ犯罪対策強化するということだけでは足らぬのではないか、私はそう思います。  どうか、本案についての執行に当たりまして、くれぐれもこうした点を踏まえて、御決意のほどを大臣から御答弁をいただきたいと思います。
  96. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま委員からも御指摘ございましたように、泳がせ捜査とかあるいはおとり捜査に限らず、どのような捜査におきましても、法令を遵守し人権を尊重するということは当然のことと認識をいたしております。  今後とも、警察部内におきます教養、捜査管理等を徹底をいたしまして、適正妥当な捜査が行われますよう十分配慮してまいりたいと存じております。
  97. 北沢清功

    ○北沢委員 ありがとうございました。終わります。
  98. 川崎二郎

    川崎委員長 穂積良行君。
  99. 穂積良行

    ○穂積委員 私たち日本の国は、世界で最も治安状態がよくて安全な国だということを私どもは意識し、誇りにもしてきたところでありますが、最近に至って、もう周知のとおりでありますが、幾つかの重大事件が続いて、こうした日本が今後本当に引き続き安全な国でいくのかどうかということが懸念されるような状況になってまいりました。  そのようなこれまでの安全な国というイメージを損なうようなことのないように、これは警察当局にも頑張っていただかなければならないし、また国民の自覚も必要だと私は思う次第であります。  そういう意味で、周知のことではありますが、昨年、松本市におけるサリン事件、それから年が明けてから公証役場前の拉致事件、それからその間にサリン関係の物質が例の富士山ろくのオウム真理教の近くで見つかったとか、そうしたことで警察当局が仮谷さん拉致事件について捜査に取り組んでいるさなかに地下鉄サリン大量殺人事件が発生した、まことに驚くべき事件が起こったわけであります。  私は、その後、一連の犯罪行為の発生に対する治安の回復、安全の回復ということから、規制すべきことはきちっと規制するのは当然だ、経済行為や何やについて規制緩和ということが言われておりますが、治安関係では規制すべきものは規制するということではないかということで、三月二十九日の夕刻に、警察庁当局から、今回の銃砲刀剣類所持等取締法改正についての考え方を聴取しておったところであります。その翌朝、警察庁長官國松さんが狙撃された、まことにショッキングな経過でありまして、そういう経過から、今回のこの法改正は、私は大変、時宜を得たというのもなんですけれども、これは当然とるべき措置ではないかと思う次第であります。  特に、先ほどから他の議員がいろいろ質疑の中で明らかにされてきております、けん銃等の発射を禁止すること、これを犯罪とすること、あるいはけん銃実包の所持規制することなどは、これはできるだけ早く法を成立させて、こうした法を裏打ちとして、銃砲刀剣等の取り締まりについて実効を上げるようにしていただきたいということであります。  細かい内容については、既に質疑されておりますので多くは申しませんが、この取り締まり対象となる集団として、いわゆる暴力団等が発砲事件等を重ねておるわけですから、これについての検挙はできるだけ実効を上げることが必要だと思うのですが、こうしたことについて、まず、いわゆる暴力団等についての取り締まりあるいは検挙実績について、どんな所感をお持ちか、当局にお伺いしたいと思います。
  100. 垣見隆

    ○垣見政府委員 お答えいたします。  けん銃事件というか、けん銃発砲事件等の犯罪は、御指摘のように暴力団関係者により敢行される場合が多いわけでございますけれども、それ以外の者が所持し、あるいは使用した場合であっても、そのけん銃自体をやはり暴力団から入手するというようなケースが多いわけでございまして、全般的に申し上げれば、けん銃事犯というのは何らかの形で暴力団がかかわっている場合がほとんどであるというふうに認識をしております。警察といたしましては、やはりけん銃対策の大きな柱として、暴力団に対する取り締まり徹底するということが大変大事であるというふうに考えて、最重点課題として取り組んでいるところでございます。
  101. 穂積良行

    ○穂積委員 とにかく暴力団けん銃などを持ってうろちょろすることのないように引き続き努力をいただきたいと思うのです。  それと、暴力団とは別の、いわゆる右翼という範疇に入るのでしょうか、そうしたやからの銃砲による犯罪ということも続いているわけですね。例えば、朝日新聞社の支局に対する襲撃事件とか、あるいは多少気が変になった人がお医者さんに恨みを持って、暴力団から銃を譲り受けて事件を起こした、そんなことも起こっているわけですね。こういう分野についても今後警察当局はせっかく努力をいただきたいわけでありますが、そのためにはこの銃砲刀剣類の取り締まりについては警察当局の取り締まり体制を整備強化する必要があると思います。  そういう意味では、例えば取り締まりに当たる捜査官にプロを養成するとか、あるいは捜査に必要な資材あるいは機材なども充実する必要があると思いますが、そうした専門捜査官の養成とか、あるいは資材、機材の充実とか、それから取り締まり体制強化というようなことについてはどのような考えでおられるか、明らかにしていただきたいと思います。
  102. 中田恒夫

    中田(恒)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおりでございまして、けん銃事犯捜査というものには、事犯自体が大変高度な潜在性なり国際性を有するものでありますことから、専門的な捜査官の育成が大事でございます。例えば、現在までに私どもがやっておりますことは、各県の警察学校等におきまして実践的な捜査技術習得のための教育訓練コースをつくってまいりました。今後さらに、税関その他いろいろな関係省庁がございますが、そういうところとの人事交流の拡充等の措置も講じてまいりたいと考えておりまして、それらのことによって高度な専門的な技術を有するプロの捜査官を育ててまいりたいというふうに考えております。  また、体制の問題でございますけれども、これまでけん銃摘発に関しましては、生活安全部門のほか刑事部門、警備部門等組織の総力といいますか総合力を有機的に結合して取り組んできたわけでございますが、昨年警察庁におきましては、生活安全局に銃器対策課が新設されました。また、本年に入りまして、全都道府県にけん銃対策を専門的に行う銃器対策課あるいは銃器対策室というものがこの四月ですべて設置され終わりました。  それで、専従捜査体制もそのようなことで整備されつつありますので、今後こういった組織を中心により一層警察組織の総合力を発揮して摘発推進をしてまいりたいと考えております。  それからまた、装備資機材等についての御指摘でございました。けん銃密輸手口とか、国内における隠匿場所というものを見てまいりますと、大変巧妙化しております。こういった中で密輸グループを解明してけん銃摘発していくためには、金属探知器でありますとかファイバースコープ等の機材でございますとか、秘匿して追尾をしていくための車両あるいは夜間監視ができるカメラ等の装備が必要でございます。  このため、警察では従来からこういった装備の整備に努めておりまして、本年度におきましても金属探知器あるいは銃器鑑定資機材等の整備を行うこととしております。今後とも厳しい銃器情勢でございますので、銃器捜査のより高度化を図るために、質量両面から装備資機材の充実に一層努めてまいりたいと考えております。
  103. 穂積良行

    ○穂積委員 とにかくこうした銃砲等を、危ないものを持ってはならない、使ってはならない、そういうことをすれば非常に厳しい罪状で処断されるよというようなことを、国民に対してもよくPRをする必要があると思います。これは特に内閣、総理府の方のPR等においても重点項目として取り上げていただくべきではないかと思います。これは要望しておきます。  さて、最近時の國松長官狙撃事件は、これは本当に二十数メーターから数発命中させるということからすれば随分とプロらしき者がやったのではないか。これは国内居住者であるか、あるいは外国からプロの殺し屋を雇って、それが入ってきてやったのかということもあると思うのです。この問題についての捜査について、現段階でどの辺まで来ているか、お話しできる限りにおいて刑事局長に御報告をいただきたいと思います。まことに気の毒な長官に対するお見舞いも込めて、ちょっと御説明をいただきたい。
  104. 垣見隆

    ○垣見政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘の長官が狙撃された事案につきましては、現在南千住署に捜査本部を置きまして、警視庁公安部、刑事部等、総合的な体制捜査をいたしております。  目撃者の発見等、いろいろな手だてを尽くしておりますけれども、残念ながら現段階では特定の犯人あるいは犯人グループの割り出しには至っておらないという状況でございますが、いずれにしても大変重大な事案でございますことから、何としてでも早期に犯人を割り出し全容を解明したいということで関係努力をいたしているところでございますので、よろしくお願いをいたしたいと存じます。
  105. 穂積良行

    ○穂積委員 報道によれば、この事件外国製のピストルと外国製の特殊な銃弾によって行われたというような話でありますから、国際刑事機構か何かを通じまして、アメリカあるいはロシア等についても、ここらあたりのところはきちっと問題解決のために協力をしてもらう必要があるのではないかと思います。その辺は十分心得ておられると思いますが、念のため申し上げておきます。  それで大臣、こうした銃砲等問題について、こうした法改正をするということについて、今まで申し上げたことに対してしっかりとやるんだという姿勢をお伺いしたいと思います。私どもも必要な警察官の増員や何や政治の場でこれから協力すべきところは十分協力していきたいと思いますので、大臣の決意のほどを伺いたいと思います。
  106. 野中広務

    ○野中国務大臣 この法律の提案にも申し上げましたように、最近銃器犯罪が異常に増発をいたしますとともに、特に市民生活の中に銃器犯罪が入ってくるという悪質きわまりない状況が出てまいりました。それぞれこれを摘発するための法案を補うためにお願いをしたところでございます。  今御指摘ございましたように、治安のトップにあります國松警察庁長官が狙撃をされるという事件は、この捜査活動のトップにありましただけに、私どもとしてはまことに憂慮すべき、かつ、警察をある意味においてはあざけり笑うように、あるいは法秩序に対する挑戦でもあろうかと考えまして、重大な認識を持っておるわけでございます。  かかる凶悪きわまりない犯罪に対しまして、いわゆる国民の不安はさらに増幅をしておるわけでございますので、先般来起きておりますサリン事件等を踏まえまして、それぞれ犯罪の検挙に一層の努力を傾けてまいらなければならないと存じておるわけでございます。  このためには、お説のように専門的な捜査員の育成等、捜査上の質の向上はもちろんのこと、人員あるいは装備の面におきましても十分検討をいたし、さらに治安体制を的確に行えるような基盤整備を行わなくてはならないわけでございまして、また、国会におきましても十分御理解、御協力を賜りますことをお願い申し上げる次第であります。
  107. 穂積良行

    ○穂積委員 最近の一連の事件には狂信的な宗教集団のオウム真理教がどうも見え隠れするといいますか、関与をしている疑いの強い事件が続いたわけですね。そうしたこの一連の経過を踏まえて、とるべき措置は敏速にとっていくということが当然緊急に必要なことだと思います。  特に、サリンは実際に使われました。この物質は、全く自然界に存在しない人工的な化学合成物質というようなものであるということでして、ほかに、この人間社会で有用なものでは全くない。そうしたものを製造あるいは所持し、それを流通させ、危ない思いを国民にさせるというようなことは、これは絶対禁止すべきであると思います。そこで、そのために必要な措置は緊急にとるべきであると私も思います。  政府筋は、このサリンあるいはこれと同等の危険な物質等についての規制について立法を検討中とお聞きしますが、十八日閣議予定というようなことも報道されておりますが、これについて、当局のお考えをこの際明らかにしていただきたいと思います。
  108. 野中広務

    ○野中国務大臣 サリンは、委員が今御指摘になりましたように極めて殺傷能力が高こうございますし、またサリンは、その殺傷以外に何ら用途が考えられないという危険な物質でもございますので、サリンによります人命の被害の防止等、公共の安全の確保を図る観点から、一定の場合を除き、サリンの製造、輸入、所持等を禁止するため、現在警察庁において立法作業を急いでおるところでございます。  国家公安委員長といたしましても、この法案を速やかに国会に提出をいたしまして御審議を賜ることができるよう、ただいま万全を期して取り組んでおるところでございます。
  109. 穂積良行

    ○穂積委員 そのサリン関係の立法についてはまた追ってこの委員会でも論議されると思いますが、その際、まず当面のサリン規制の問題と、それから、今後起こり得るといいますか、規制考えなければならない分野が多少あるのではないかと思います。  例えば微生物も、最近は遺伝子工学や何やの発達で、まことに有毒なる、殺人力のあるような微生物の開発というようなこともあり得るかもしれない。そうしたことを許さないというようなことも今から考えておくべきではないかと私は思います。それは意見だけ申し上げておきます。  次の問題に移ります。  実は、この狂信的な宗教集団、これはもう明らかだと思いますが、オウム真理教に全財産を寄進して、お布施というんでしょうか、そしていわゆる出家をしたという人たちがこんな状況になって、オウム真理教自体も存続を社会的に許されないような組織ということになると思います。また、オウム真理教が壊滅する前にも、はっと性根が変わってといいますか、正気を取り戻してこの宗教集団を離脱するというような場合に、さて財産は全部お布施してしまった、文なしだ。信省によっては、戸連れでそういう状況になったというようなことですね。このオウム真理教を離脱した場合にその人たちは一体どうなるんだ、また、社会はどうするんだという問題を考えなければ、問題は本当の解決にならぬではないかということを私は憂えるものであります。  つまり、狂信集団に入って、そして文なしになって離脱したような人たちの受け口といいますか、これについて関係省庁は今すぐにでも検討し、対策を講ずるべきではないか。そうした受け口を準備した上で、こうした反社会的なとんでもない宗教集団というものをこの日本からなくしていくということが必要ではないかと私は思うのであります。  そこで、これは関係省庁は一体どこになるんだということなんですが、まず、これに私は連想する話なんですが、いわゆるホームレスという問題があります。御承知のとおり、具体的に挙げるのは失礼か、失礼ではないと思いますが、アメリカの公立の公園などにホームレスが随分甲羅干しをしたりしているというような話なども報道で聞くわけであります。ところが日本も、皆さんごらんになっているかどうか、上野博物館の前や上野公園の森の中などに、ベニヤ板や段ボールで小屋がけをして浮浪者がいる、ホームレスがいる。それから新宿のあの高層街の方に向かう地下道や何やに、随分そういう浮浪者やホームレスがたむろしている。とにかく、えも言われぬ異臭が漂っているというような状況があるわけですね。  こういうホームレスや何や、その辺で、公共の場あるいは他人の所有する地所内に小展がけして暦ついているというようなことを排除するといいますか、なくしていくということを、政策的にきちっとやるべきではないかと私は思うのであります。  その辺、一つはまず、現にこの東京にも存在している上野や新宿などのホームレスについて、自治省は、東京都に任せればいいというようなことで済むんだろうか。これは地方公共団体の固有事務ということで、ホームレスについては適宜始末しなよということを言っていて自治行政はいいんだろうかということが一つ。  それから、これは多少頭が弱い人や何やもいるんでしょう、収入もない。それで、その辺の残飯をあさって生きているというようなことについての問題ということを考えれば、これは厚生行政上どう考えるんだという問題があると思います。  収入がなければ、文化国家日本は最低生活保障ということで、金も税金から回してやるというような話がありますね、生活保護。それから、そうした人たちが不特定なところにうろうろしているということに対するきちんとした行政をやって、それこそクリーンで、国民が本当に環境もよい、そうしたうろうろする人もいなくなるというような社会をつくっていくということが必要ではないかと思うのですが、今ざっと申し上げた私の考え方、おわかりでしょうか。  一つは、こうした社会から落ちこぼれるようなホームレス対策、それとの関連において、そうならないように、要するに、オウム真理教から離脱したら適当にくたばってしまえというようなことで済む話じゃないと思うのです、これは。そういうことについて自治省及び厚生省の担当部局の考え方をこの際伺っておきたい。これはいずれ他の委員会等でも私はこの問題を取り上げていきたいと思いますが、きょうは今申し上げたことについての両省の考え方をまずお伺いしたいと思います。
  110. 松尾武昌

    ○松尾説明員 国民の最低限度の生活を保障しております生活保護制度における対応について御説明申し上げます。  まず、オウム真理教を離脱し、当面の生活に困窮する方々につきましては、まず福祉事務所で相談を受けることになります。これらの方々から相談があった場合には、稼働能力の活用状況等を調査しました上で生活保護の適用の可否について検討を行うことになります。またその際、各種の福祉対策等の他の施策の活用の可否につきましても、離脱者の置かれている状況を十分勘案しながら適切な措置を講ずることとしているところでございます。  次に、ホームレスについてのお尋ねでございますが、ホームレスに対します生活保護制度の対応につきましては同じでございまして、稼働能力その他あらゆるものを活用することを要件として行われることとなっております。したがいまして、資産の状況など保護の受給要件の確認が必要であるとともに、要保護者の生活状況等を把握いたしまして、自立に向けて指導、援助を行うことなどが必要であることから、施設に入所する等により安定した居住地を設定していただくという必要がございます。  上野、新宿等におられる浮浪者の方々につきましても、これらの要件を満たす場合には生活保護を適用している状況でございます。例えば入院が必要な方は入院措置、あるいは高齢者、障害者の方につきましては施設等への収容等を行っているところでございます。
  111. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 いわゆるホームレスの方々の生活再建につきましては、これまでも生活保護を初めとする各種の手段によりまして、地方公共団体の現場において対応されてきておるというふうに考えております。オウム真理教を離脱された結果ホームレスとなるようなケースにつきましても、これらの方々から市町村に対しまして今後の生活設計等に関して相談がある場合があろうと思います。そういう場合には、こうした制度を通じて適切に対応するように関係省庁とも連携をとりながら市町村等を指導してまいりたいと考えております。
  112. 穂積良行

    ○穂積委員 時間が参りましたので、最後にこれだけは申し上げておきます。  このオウム真理教のこれからの対策というのは、阪神・淡路大震災への対策で随分各省庁協力し合いながら進めているわけですが、この問題についても関係省庁がきちっと今から検討し対策を進めるべきではないか、これを要望しておきます。  それから、ホームレス問題については、先ほど申しましたけれども、これは実態をきちっと把握して関係省庁がきちっとこの問題の解決に取り組むことを要望して、私はきょうの質問を終わります。  ありがとうございました。
  113. 川崎二郎

    川崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  114. 川崎二郎

    川崎委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  115. 川崎二郎

    川崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  116. 川崎二郎

    川崎委員長 この際、ただいま議決いたしました法律案に対し、山名靖英君外四名から、五派共同提案に係る附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者より趣旨の説明を求めます。山名靖英君。
  117. 山名靖英

    山名委員 私は、この際、自由民主党・自由連合、新進党、日本社会党・護憲民主連合、新党さきがけ及び日本共産党の五会派を代表いたしまして、銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案に対しまして、次の附帯決議を付したいと思います。  案文の朗読により趣旨の説明にかえさせていただきます。     銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、一般市民をまきぞえにしたけん銃使用犯罪が続発し、市民生活に重大な不安を与えている現状にかんがみ、左記の諸点につき善処すべきである。  一 銃器による国民の生命・身体・財産の安全及び自由を脅かす行為は、今や放置することができない実情にあることから、銃器犯罪の防止のため総合的かつ有効な対策を確立するとともに、摘発、取締りを強化すること。  二 いわゆるクリーン・コントロールド・デリバリー及び捜査官によるけん銃等の譲り受けの実施に当たっては、国民の人権を侵害することのないよう慎重かつ適正に行うこと。  三 銃器犯罪の防止は、我が国のみならず、各国共通課題となっていることから、その解決に向け、諸外国、諸機関と連携し、国際的な取組みを強化するよう努めること。   右決議する。 以上であります。  何とぞ皆様方の御賛同をよろしくお願いいたします。
  118. 川崎二郎

    川崎委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  119. 川崎二郎

    川崎委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、野中国家公安委員会委員長から発言を求められておりますので、これを許します。野中国家公安委員会委員長
  120. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま銃砲刀剣類所持等取締法の一部を改正する法律案につきまして、慎重に御審議の結果、採決をいただきましてまことにありがとうございます。ただいまの附帯決議の御趣旨を十分尊重いたしまして、法律を運用してまいる所存でございます。     ―――――――――――――
  121. 川崎二郎

    川崎委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 川崎二郎

    川崎委員長 御異議ないものと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  123. 川崎二郎

    川崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十八分散会