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橋本国務大臣 私自身が率直に感じて帰ってまいりましたものは、大きく分けて、以下申し上げるような点になろうかと存じます。
一つは、今回の自動車並びに補修部品における日米交渉の経緯というものを
説明する中で、アメリカが三〇一条を発動すること、そして一方的に制裁候補リストを公表し、仮に六月二十八日までに
日本が妥協しない場合は五月二十日にさかのぼってこれを施行するとしたことに対しましては、すべての国が非常に厳しい批判を浴びせております。
同時に、本当にこれは実は具体的な話ではなく、漠然と
日本の市場の閉鎖性というものに焦点を当てましたアメリカの論議というものに、シンパシーという言葉を使われた国がありますが、シンパシーを感じるという空気は漠然とどの国にも共通をいたしておりました。
そして、
我が国の規制について一層の緩和を求めるという声はどこにも存在をいたしたと思います。ただ、その規制緩和として求められるものは、国によりましては金融サービスの分野でありましたり、あるいは
情報通信の世界における相互接続の問題でありましたり、あるいは、これは多分に誤解に基づいておりましたが、補修部品市場についての自動車に直接関連するものでありましたり、さまざまなものがございました。
こうした問題については、できるだけ精緻な
説明を申し上げると同時に、端的な幾つかの数字を引いて
説明することにより、理解を相当程度まで得ることはできたと思っております。
例えば、ちょっと恐縮でありますけれども、一、二の例を申しますならば、EUの皆さんは、
日本の市場が閉鎖的だというアメリカ側の主張に対して、やはりシンパシーを覚えると発言をされたグルーブであります。ところが、EUから
日本に対して輸出されている自動車、EUからアメリカに対して輸出されている自動車、この数字を比較いたしました場合、最近EUに加盟をいたしましたボルボまで計算に入れまして、アメリカの乗用車市場におけるEU車の占有率は三・六%であります。
日本の市場における占有卒は五・四%です。三・六%しかない市場が開かれた市場であり、五・四%のシェアを持っている国が閉ざされた市場と言えるのかというと、これはそう言われればそうだという感じになるのですが、それでもなかなかぬぐい切れません。
非常にわかりやすい例としてもう一つ私がよく引きましたのは、自国で全く自動車の生産をいたしておりませんシンガポールの数字であります。シンガポールにおきましては、
日本車のシェアは
六二・四%、ドイツ車を初めとする他国の車が三六・八%、アメリカ車のシェアは〇・八%であります。しかし、だれもシンガポールを閉ざされた市場とは申しません。
こういう数字を繰り返し
説明することにより、誤解はある程度まで解けたとは思います。しかし、完全に解けたというところまでは、残念ながらまいりませんでした。そして、引き続き規制緩和に対して積極的に取り組むという
日本の姿勢については、非常に歓迎をもって受けとめられたと思います。
そして、コミュニケの問題につきましては、実は我々は、非常に強いコミュニケ、すなわち一方的制裁はけしからぬといった文句を入れたコミュニケを書かせたいと思って、最後まで粘りました。ところが、OECDルールというのは、
委員がお話しになりましたように、一カ国でも反対がありますとその
部分全部がコミュニケから脱落してしまいます。それは我々としてどうにも割に合わない話でありまして、本当に事務当局あるいはEU、特にイギリス、ドイツ、フランスといった国々が、保護主義に対する非常に厳しい批判でありますとか、WTOの紛争
処理メカニズムを尊重して
事態の解決に当たるべきであるといった原則、こうしたものを貫くことに積極的な協力をしてくれまして、その結果としてある程度のものを私どもは得ることができた。少なくとも根幹として残したいものは完全に残すことができたと思っておりまして、こうした各国の協力を得られたことを非常に幸せに思っております。