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1995-03-24 第132回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年三月二十四日(金曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 白川 勝彦君    理事 甘利  明君 理事 額賀福志郎君    理事 河合 正智君 理事 古賀 正浩君    理事 増子 輝彦君 理事 大畠 章宏君    理事 鳩山由紀夫君       小川  元君    小此木八郎君       奥田 幹生君    梶山 静六君       金田 英行君    熊代 昭彦君       田原  隆君    谷川 和穗君       中島洋次郎君    野田 聖子君       青山  丘君    武山百合子君       土田 龍司君    豊田潤多郎君       西川太一郎君    星野 行男君       吉田  治君    後藤  茂君       佐藤 泰介君    前島 秀行君       松本  龍君    和田 貞夫君       吉井 英勝君    牧野 聖修君  出席政府委員         通商産業大臣官         房審議官    河野 博文君         中小企業庁小規         模企業部長   小川 忠夫君  委員外出席者         参  考  人         (全国商工会連         合会会長)   近藤英一郎君         参  考  人         (経済団体連合         会副会長)         (日本電気株式         会社会長)   関本 忠弘君         参  考  人         (日本商工会議         所政策委員会委         員)      三田公一郎君         参  考  人         (株式会社電通         総研代表取締役         社長)     福川 伸次君         商工委員会調査         室長      石黒 正大君     ————————————— 委員の異動 三月二十三日  辞任         補欠選任   上田  勇君     山口 敏夫君 同月二十四日  辞任         補欠選任   笹川  堯君     山本 幸三君 同日  辞任         補欠選任   山本 幸三君     笹川  堯君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件及び中小企業に  関する件(円高問題)      ————◇—————
  2. 白川勝彦

    白川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件及び中小企業に関する件、特に円高問題について調査を進めます。  本日は、参考人として全国商工会連合会会長近藤英一郎君、経済団体連合会会長日本電気株式会社会長関本忠弘君、日本商工会議所政策委員会委員三田公一郎君、株式会社電通総研代表取締役社長福川伸次君の御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、円高問題について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、参考人の皆様からそれぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。御発言は着席のままで結構でございます。  それでは、近藤参考人お願いいたします。
  3. 近藤英一郎

    近藤参考人 私は全国商工会連合会会長近藤英一郎でございます。  先生方におかれては、日ごろから商工業、特にとりわけ中小企業振興発展について御支援、御協力を賜っておりまして厚くお礼を申し上げます。本日は円高問題に関して、私にこのような機会をお与えをいただきましたことに対しまして厚くお礼を申し上げます。  私ども商工会は、主として町村において事業を営む商工業者会員とする地域総合経済団体でございます。全国二千八百二十四市町村商工会都道府県ごとに集まり連合会結成をし、四十その県連合会が集まって全国商工会連合会結成をしております。商工会会員全国で今大体百十二万でございますが、小規模事業者従業員が御承知のように、製造業者で二十人以下、商業、サービス業が五人以下になっておりますが、その会員に対する比率は九二%となっております。したがって、中小企業のうちでもいわば小規模企業の集まりであることをまず御理解をいただければ幸いと存じます。  全国商工会連合会といたしましては、毎月、全国三百一カ所の経営指導員対象とした小規模企業景気動向調査を五十七年から実施をしております。また四半期ごと全国八千の企業対象とした中小企業景況調査、これは五十五年からやっておるのですけれども実施をしております。  その結果に基づきまして、商工会地区における景気動向に関しまして付言させていただきますと、政府景気対策猛暑効果かさ上げ分も加わって、一昨年の十一月を底として昨年の八月ぐらいまではやや回復基調にあったと存じます。しかしながら、昨年の九月以降はそうしたかさ上げ分もなくなった上に、円高価格破壊影響等によって回復基調そのもの変化しているのではと懸念してきたところであります。もっとも昨年末までは、景気悪化に残暑が厳しく秋物衣料が不振だとか、暖冬で冬物の出足が悪いといった天候の要因もございましたが、水準自体水面下ではありながら比較的高水準にとどまっておったと思っておりました。  ところが、ことしの一月末に実施した調査では、景況が大幅に悪化をいたしまして昨年春の水準まで逆戻りし、憂慮すべき状況にあることが明確になったところであります。同時に、各地からホテル、旅館のキャンセル等、旅行の自粛等影響いたしまして、それに加えて阪神大震災影響についても声が出始めております。ごく近い二月末の調査では、景況は一段と悪化し、また小売サービス製造業で西日本での悪化が目立つ一方、建設業では近畿地区で多少プラスになる面もあるようでありますが、その阪神大震災影響が具体的にいろいろの面であらわれてきているところでございます。  そこで、日本経済は緩やかな回復基調にあると言われておりますけれども、小規模企業関係事業者にとってはその実感がわいてこないわけでございます。本年の三月に入ってからは一ドル九十円を超えるというかつてない急激な円高、また株安がさらに追い打ちをかける状況となっており、先行きが一層懸念される極めて憂慮すべき事態であると思います。けさのテレビでは八十七円台になっておるというニュースも入っておるだけに今後どうなるかという心配が多々あるわけでございます。とりわけ、昨年の六月以来一ドル百円を超える円高進行を受けて、事業規模を縮小するとか従業員解雇等リストラによる自助努力で懸命に生き残りを図ろうとしている輸出関連中小企業地場産業にとって今回の円高企業適応力をはるかに超えた死活問題になっておる状態であろうと私は思います。  例えば、これは一つの例でありますが、島根県の工業用ミシンを製造しておるある中堅一般機械器具製造業では、この円高により競争が激化して内外需とも受注が大きくダウンし、あらゆる手だてをしているけれども、コスト削減ももう限界に来ていると言われておる状況であります。また、海外への生産拠点の移行とか海外からの部品の調達、国内販売強化等が考えられますけれども、このままでは機械製造業存続もできなくなる可能性が大きいとされて心配をされております。  また、広島県のデニムを製造している、これも中堅繊維製造業では、この円高で、海外得意先ではこの企業製品を買いたいと言っておるけれども、限度を超えた高値になりつつあるという状況にあるようであります。円が現状で推移した場合、付加価値の向上、経費の削減等を考えなくてはならないが、並の合理化では競争ができなくなるとしております。  また、岐阜県のモザイクタイルを製造しておる地場産業中小企業の窯業、土石製造業では、円高による影響で注文が大きく減少しており、今後の受注も見込めない状況があるようであります。このままでは中国産品に取ってかわられる可能性があり、危機感を大きく募らせておることも事実のようであります。  私は群馬県の出身でございますが、私の群馬県では、今回の円高関連をいたしまして県で円高緊急調査を今月実施したところであります。県内の輸出割合の高い電機、自動車、精密機器製造業等百四十八社の聞き取り調査でありますが、この結果は、影響として、中小企業では納入単価引き下げ要求の増大が多く約四〇%、大企業では為替差損を掲げております。またその対応としては、中小企業では雇用調整を含む合理化リストラ実施、大企業では労働集約的部門海外生産が最も多く掲げられております。さらに行政への期待では、中小企業では低金利長期金融支援お願いしたいという線が非常に強いようであります。大企業では経済実態に即した為替レート確立お願いしたい、こういう調査の結果が出ております。  このように輸出関連企業、とりわけ中小企業の置かれた現況は今後の存続そのものが危ぶまれる環境にあり、地域においては、単に製造業だけの問題にとどまらず小売業サービス業等地域産業全体の空洞化をもたらし、特に流通産業にも依存できない町村部地域においては雇用不安、地域社会の衰退にもつながる重大な問題になるものであります。  そこで我々中小企業者としては、政府への要望といたしまして、全国商工会連合会においても小規模事業者経営相談指導体制確立を図るなど自助努力に万全を期してはおりますけれども、政府におかれては、中小企業等地域産業の救済のため、次のような事項について従来の発想を超えた思い切った施策を機動的に講じられることを要望申し上げたいと存じます。  まず第一には、為替レートの速やかな安定及び内需拡大についてであります。先進七カ国による強力な協調介入、公定歩合の引き下げを初め総合的な金融政策により円高進行に歯どめをかけ適正な水準に回復させるとともに、その安定を図っていただきたいことであります。また大事なことは、内需拡大のために早期に大型の補正予算検討お願いいたしたいと思います。  第二には、中小企業に対する金融措置強化拡充であります。中小企業に対するつなぎ資金などの円滑な資金供給を図るため、昨年二月の総合経済対策で講じられた措置を上回る思い切った対策を講じていただきたいと思います。  第三には、国際化構造変化への中小企業対応への全面支援であります。我が国経済の急激な国際化構造変化地域経済活性化に対する中小企業経営革新支援するため、現行の中小企業新分野進出等円滑化法及び中小企業集積活性化法の積極的な運用を図るとともに、おかげさまで三月十七日に成立していただいた中小企業創造活動促進法早期施行を図っていただきたいと思います。  以上、中小企業関係団体としての意見を申し上げてまいりましたが、我が国経済の大宗を占める中小企業はこれまで経済社会の健全な発展に大きく貢献を果たしてきたと我々は思っております。それだけに、今一番苦しい時期でありますので、現在置かれておる現状をひとつ十分御理解を賜りまして特段の御高配を賜りますようお願いをいたします。  けさある新聞を見ておりましたら、三月十四日の円高調査、商工中金の発表でありますけれども、中小企業の採算というのは百五円三十銭が妥当な線だ、今九十円を割っておりますから十五円以上上がってきておるわけであります。これは、輸出企業九十九社を対象としていろいろ徴した結果、円高による悪影響が出ると答えた企業が九八%あったと報道されております。  なお、毎日いろいろと新聞報道がされております。例えば大企業海外生産対応とかあるいは円高株安の重みで消費の浮揚力にも限界が来ておるとか、そういう記事が連日載っておるわけであります。そういう点から、今中小企業の置かれている立場はまことに容易でない現況でありますことを御理解を賜りまして一層の御支援をいただきたい、こう思う次第でございます。  以上申し上げまして私としての発言にかえるわけでありますが、どうかよろしくお願いをいたします。
  4. 白川勝彦

    白川委員長 近藤参考人、どうもありがとうございました。  次に、関本参考人お願いいたします。
  5. 関本忠弘

    関本参考人 きょう私が出てまいりました立場は、経団連の副会長ということと日本電気会長ということでございます。ここにおられる先生方には大変お世話になっておりますことをこの機会をかり冒頭厚くお礼を申し上げたいと思います。  ということと、私が今から申し上げることは、例えば経団連では意見が必ずしも一致しているとは言いがたい問題であります。それだけ円高要因であるとか対策であるとか、それぞれの企業がそれぞれの立場でいろいろ検討をし、一生懸命頑張っている、この姿があるわけでありまして、いろいろな角度からの検討を進めておるということを申し上げ、きょうの私の発表はその中の一つである、こういうふうに御理解賜りたいと思います。  まず冒頭に、昨年七月のナポリ・サミットにおける蔵相会議におきまして特別声明口頭発表されました。その内容は御高承のとおりでありますが、次のとおりであります。  各国は最近の急激なドル安を懸念している、市場投機的な思惑を否定し、各国ファンダメンタルズを反映した相場となるよう協調介入中心各国が緊密に連携して措置をとるべきであることということが蔵相会議の中での口頭での発表であります。  しかし、その後の為替ファンダメンタルズを残念ながら無視した動きをしております。特に今月に入ってからの円レート動きは異常でありまして、一週間のうちに七円強の円高となっております。これは資料一をごらんになれば明らかでございます。本当にあっという間にこの三月の三日あたりからだあっと落ちまして、落ちたというか円が高くなったわけであります。しかも、東京外国為替市場では一日でほぼ二百億ドル売買が動いているわけであります。この問題については後でちょっと触れたいと思います。  最近の過度の円高は、主なる要因としては、何といっても日本に大幅な貿易黒字があるから円高は必至である、あるいは円高によって黒字は縮小されるはずであるのでその結果が出るまでは円高が進むというようなことで円が買い進められておるということでもあります。もちろん一面、メキシコ経済の問題というようなこともドル安の中には含まれていることはあるわけでありますが、日本における基本的なそういう円の買い進めは今言った理由が主としてあるわけであります。  しかし、この十年余りを見た場合にこの説には私は疑問を抱かざるを得ない。それは資料二を見ていただきたいと思います。アメリカ貿易赤字というのは、この絵にありますように、これは米国の商務省の統計でありますが、全体の赤字は八五年九月のG5プラザ合意以後縮小しまして、九一年には六百六十七億まで縮小しました。しかし、その後再び拡大いたしまして、八八年の千百八十五、九四年の千五百十一、こういうふうに、ドルが安くなったにかかわらずふえております。しかし、対日ということについて言うならば八五年以来ほとんど変化がなかった。しかも最近においては、九一年以後は急激な円高、ここにある百二十七円の平均値、それが百十一円になり、百二円になっております。それに対して四百九十六億ドル赤字が五百九十四億ドル赤字になり、六百五十七億ドル赤字、こういうふうに反対の相関になっておるわけです。  この原因は、私は前からこういうことを申しておりまして、「G5から一年」という題で、八六年の九月二十三日、朝日新聞で目下公人さんと大場財務官座談会をしました。そのときに明確に指摘したわけであります。円高の成果は出ないのではないか、それは弱くなる一方のドルで表示することも原因であるけれども、日本アメリカの文化が違う、文明が違うところに問題があるような気がする、アメリカソフトウエア社会であり、日本は完熟した工業社会なんだ、為替調整貿易は均衡しにくい、約十年前に私はそう予言したわけであります。  基本日米協力し合っているんだ、補完し合っているんだ、助け合っているんだ、これがポイントであります。これは、例えば資料の三をごらんになれば、ここに日本輸出構造が、九三年でありますが、輸出総額が千五十四億ドルのうち、米国でほとんど生産していない製品VTR、ファクス、ビデオカメラなどが百四十二億ドルあります。それから資本財、これが、ICとか工作機械でありますが六百二十三億ドル、約六〇%がいわゆる資本財なのであります。ここのところが基本的なポイントであります。  これは少し古い話でありますが、VTRなどにつきましては、一九八三年から五年間に百六十九億ドルVTRがハードとして日本からアメリカ輸出されました。一方では、アメリカで百八十二億ドルVTRソフト市場が生まれました。だから、百六十九億ドル輸出しておりますが、アメリカの中ではソフトとしては百八十二億ドル市場が生まれたというようなこともこの面から言えるわけであります。すなわち、これをマクロで見ますと、今私が申しましたように資料三がそのことの一端を示しておるわけであります。  それから次に、今度は資料四、五というのを参照していただきたいと思います。今私が言いましたようなアメリカでほとんど生産していない製品、ファクシミリとかVTRとかビデオカメラとかというものは、円表示をいたしますと九〇年ぐらいをピークにして多少落ちてきております。この問題は、ある意味においては実はNIES諸国、特に韓国との競争力の問題であります。アメリカではつくっておらないのです、しかし韓国はだんだんと高級品をつくり始めてきておる、これが我々にこういう影響を与えております。しかしドル表示、弱いドルで表示する限りは百三十八が百四十二になり百四十三、ほぼ横ばいであります。量は減っております。しかし弱いドルで表示しているのですからこれだけ、余り減らないということであります。  それが、資料の五をごらんになっていただきたいと思います。資料の五は今度は対米の資本財であります。ICだとか精密機械だとかロボットとか等々、それはこういうふうに九二年、九三年、六・八兆円というようなところで横ばいになっておるわけであります。やはりあちらは必要なわけです。それだけの数量は要るわけであります。円表示においてはほぼ横ばい、しかしドル表示になりますとまことに百億ドル近い赤字がふえるという、ここに問題の本質があるわけであります。こういう点からいきまして、日米貿易インバランスという数字は、決して日本が不合理なことをしているんじゃない、押しつけ等をしているんではない、これはむしろアメリカ社会に、産業界にあるいは個人の生活、それに貢献をしているんだ、こういう自信を持って私は基本的には対応すべきであるというのが私の意見であります。  しかし、じゃ五百億ドルを超える黒字があるならばそれをどうするのかという問題であります。私は、これは貿易外というところにおいて、すなわち観光等々の数字が今上がっております。経常収支ベースで議論すべきである、これが一つであります。二番目は、やはり経常収支でも現在黒字になっております。それをいかに世界に還元するかということが私は大変重要なポイントだろうと思います。  現在でもODAは九二年で百十一億ドルという、これは絶対値としては世界一の数字になっております。絶対値としては世界一であります。ただ、GNP比が〇・三%でありまして、国連などで言われておる〇・七%を目指そうやというその数字からいえばなお半分であります。だから、これは我々の許された範囲の中で逐次この数字を上げていくべきだ、これが一つてあります。  それと二番目に、やはり先進国との国際協力の問題であります。例えば日米欧、あるいはロシア、カナダとかまで含めたそういう先進国との国際協力問題、これは例えば宇宙基地問題であるとか、これは二、三年前に衆議院で全員が賛成されました熱核融合実験炉の開発の問題とか、そういうようなところにやはりもっとお金を私は出していくべきではないか、そのための予算措置ということをやるべきじゃないか。そういう形の中で黒字還元というようなことをはっきりと打ち出して、世界に我々は輸出でもって貢献しているのみならず、そこで出た黒字をもって貢献するんだ、こういう態度を私は明確に出していくべきではないかというのが基本的な問題であります。  そもそも、それでは為替レートは何で決まるのかという問題であります。これは幾つかの要因があるんです。これはそのときそのとき違います。私もこの十年間、為替レート変化をずっと見てまいりました。そのときそのとき違うんです。  貿易収支が大して問題にならないときと大変問題になるときがあります。一方では政治不安であります。いわゆる中近東で問題が起こったというようなときは強いアメリカということの中でドルが買い進められるわけであります。あるいはもちろん内外金利差米国金利高日本金利安のような形の中でドル高あるいは円安要因になるようなときもありました。また反対のときもありました。確かに内外金利差一つ要因であります。とともに、今言いました貿易インバランス日本黒字が大きいんだよということを原因にした、そういう思い込みの中で為替売買が行われるというときもあります。今まさにそれが中心になっていると思います。とともに、もちろんファンダメンタルズ経済基盤的条件経済成長、インフレ、金利あるいは貿易インバランス等々のそういうファンダメンタルズということが注目されるときもあるのです。したがいまして、要因というのは今言った四つ、五つあるわけでありますが、必ずしもファンダメンタルズだけで動いているんじゃないというところに問題があるわけであります。  そこで、資料の六をごらんになっていただきたいと思います。資料の六というのは、これは一九九三年の東京外国為替市場出来高ということであります。四兆二百億ドルでありましたが、貿易取引は、この下にも書いてありますように、輸出が三千五百十三、輸入が二千九十八、両方合わせて約五千五百億ドルであります。あるいは貿易外収支あるいは長期資本収支、この辺を合わせますと一兆五百五億ドルなんです。ということは、二六%の値はこういう実需ですね、実際の取引お金をかえよう、輸入したあるいは輸出した、お金をかえようというようなところで起こっておるわけですが、残りの七四%はまさに投機とか介入というようなことで行われているというのがこのデータであります。しかもこのデータは、いわゆる出来高ブローカー経由取引しか含まれておりませんで、銀行間の直接の取引等々を含めるとこの数字は大変大きくなるということであります。  私は、第一図で、この三月の初めの一週間に平均二百億ドルずつの取引がありましたと申し上げました。大体ワーキング日を二百日といたしますと、二百倍すると約四兆ですね。だから大体これに合うわけなんですね。約四兆というものが確かに年に動いております。しかし、そのうちの約三兆は実は投機介入であります。  それが何を目的に、何をトレンドとしてやるか。現在は貿易黒字がある、それが減らないというような形の中で今行われている。テレビに絵が出ますディーラー、若いディーラーがこう指を出したり、コンピューターを扱っております。あのディーラーが本当に何のためにあのオペレーションをやっているか。日本円高によって日本貿易インバランスをというようなことでやっているわけじゃありません。もうけるか損するかです。もうけるためにどうすればいいか。売る方がいいのか買う方がいいのか。要するに、変化があるところに利益が出るわけです。そのかわり損をしている人もいるのです。だから、ゼロ・サム・ゲームであります。しかし、一生懸命それをやっておる。  これによって一番問題なのは、そこで決定された為替レートで我々のような製造業、今近藤さんからもお話がありました中小企業、これが努力の積み重ねをして得た外貨があっという間に減ってしまうことであります。例えば、わかりやすく言えば、一億ドルというものを当社が商売したといたします。百円ならば百億円です。それが九十円になりました。九十億円なんですね。十億円というものがあっという間になくなるのですね。この厳しさということは、本当に我々製造業、殊に輸出業にとって大変な問題だということを御理解賜りたいわけであります。  そういうことの中で、今もお話がありましたが、回復に向かっている国内景気に実は冷や水を浴びせかけているというような問題もあります。さらに、この円高を放置すればさらに空洞化が進んでいくという問題もあります。まさに雇用問題であります。私は、政の基本は雇用問題だと日ごろから言っております。幾ら経済的な数字がよくても、雇用がどんどんどんどん悪くなることは決していい社会ではない。政の基本は雇用問題の解決だという点からいえば、まさにこの円高問題の解決というものが大変重要な問題だと指摘したいと思います。  特に、日本製造業を支えてきたのは中小企業であります。中小企業とともに我々もまた大きくなってきまして、中小企業の持っているすぐれた技術というものが日本の国の製造業発展に大きく寄与したということは間違いもない事実であります。大企業ならば海外に進出していく、これも可能でありますが、中小企業立場に立ったら仕事がなくなるということであります。この辺のところを私は指摘して、今近藤さんがおっしゃったような意味での対策を本当に打っていただきたい。  基本的には、我々が望むのはファンダメンタルズを反映した適正な為替水準に安定することを望むわけでありますのでは、そのためにはどうあるべきか。これは最後のプレゼンテーションになるわけでありますが、まずG7がリーダーシップを発揮して新たな為替制度の確立に向けて努力をしていくべきではないか、こういうことであります。  戦後の通貨制度の枠組みの中で、ブレトンウッズ体制というのが昨年七月で五十年たったわけです。その前半の二十六年間は固定相場制、残りの二十五年が変動相場制でありましたが、現在はファンダメンタルズをあらわさない相場にあります。ある意味では、この変動相場制が成功したとは言いがたいわけであります。  昨年のブレトンウッズ改革委員会がまとめた報告書では、緩やかな変動幅を持った相場圏の創設や為替監視機構の設置によって通貨安定を図る構想がブレトンウッズ改革委員会からも出たわけであります。  昨年の七月のナポリ・サミットの経済宣言では、  五十年前、ブレトン・ウッズにおいて、理想あふれる指導者たちは、我々の国に二世代にわたり自由と繁栄をもたらした諸機関の設立を開始した。彼らの努力は二つの偉大な、そして普遍的な原則−民主主義と開かれた市場−に立脚するものであった。二十一世紀に近づきつつある現在、我々は、これらの機関を再生し再活性化するとともに、世界じゅうに新たに登場しつつある市場経済を指向する民主主義国家の統合という課題に取り組む責任を自覚している。という宣言がありまして、それを果たすために、  我々の国を含む世界の諸国民の繁栄と福利の増進のために、二十一世紀の世界経済がよい職と経済成長貿易拡大をもたらすことをいかにして確保できるか。  二十一世紀におけるこれらの課題に対処するためにどのような機関の枠組みが必要であるのか。我々は人々の将来の繁栄と安全を確保するため、いかにして既存の機関を適応させ、新たな機関をつくることができるのか。「既存の機関を適応させ、新たな機関をつくることができるのか。」とまで書かれております。しかし、残念ながら、ここで為替の安定を目指すということの明言はなかったわけであります。その中の一部には入っていると思います。  こういうような意味で、緩やかな変動相場圏構想の実現にはもちろん多くの問題があると思います。値をどうすべきかとか変化をどうすべきか、これも一つあります。  二番目に、欧州においては一九七九年に、各国通貨はいわゆるERM、為替調整メカニズムによって一定の中でとどまっておりました。中心レートからの乖離率がプラス・マイナス二・二五%。イギリスとスペインが六・五でありました。ところが、七九年から続いたその制度が九二年七月のドイツの公定歩合で崩壊したというか、その幅が大きくなって一五%になりました。しかし、ある期間においては、それはある意味において有効に働きました。  三番目に申し上げたいのは、マーストリヒト条約というのがあって、これで一九九八年、これはもうギブアップだとこの間も言っております。大体一九九九年をターゲットにして欧州の通貨統合に努力しようと言っておる時代であります。そうなってくると、当然EUの通貨が二〇〇〇年のいつかには統合されるわけであります。その方向に行きつつあるわけであります。したがって、ドルとあるいはまた円が何かの形でそういうことに対しての準備をすることは私はあっていいのではないかな。  とともに、例えば小国ではありますがアルゼンチンが、九一年四月に一ペソが一ドルの固定相場にいたしました。兌換法を実施いたしました。それによって、九〇年の二二四四%のインフレが九一年には六四%になり、九二年には一七・五%になり、九三年には七・三%と一応減って、大変いい状況になっています。また別の意味で海外の準備金が減ってきているという問題はあります。  ともかく私は、この機会に変動相場制というのが至上、最善の選択ではないということを認識して、この際、これらの今までの経験を生かして、ある意味での目標相場圏への模索、これは模索であります。私は今ここでどうあるべきかと言うだけの知識はありません。模索すべきではないか。これが一つ。  それから、円の国際化への努力あるいは円建て契約の推進、それからドルからマルクヘのシフト、外貨準備などもドルからマルクヘ多少はシフトしていくというようなこと。  最後に、今やまさに一ドルが百円という時代になっておるわけでありますから、二、三年前に景気回復のために私が申し上げましたいわゆるデノミ問題であります。一ドルが新しい一円という形へ持っていったときに、〇・九新円ということはあるいは起こらなかったかもしれない。これは私の二年前の一つの予測であります。  以上であります。どうもありがとうございました。
  6. 白川勝彦

    白川委員長 関本参考人、どうもありがとうございました。  次に、三田参考人お願いいたします。
  7. 三田公一郎

    ○三田参考人 三田でございます。  私は、日本商工会議所の政策委員ということでちょうど七年前から仰せつかっておりまして、七年前に足利の商工会議所の会頭に選任されまして、二年前に会頭職を辞任いたしまして、ただいま特別顧問という状況にございます。  そういう意味で、今回私に御指名がありましたのは、恐らく全国中小企業平均的な都市であるということで、全国的に同じような悩みがあるのではないかということで御指名をいただいたのではないかというふうに考えております。  今、日本商工会議所は五百十幾つかの会議所が全国にありまして、全部の会員数が二百万人という状況にあります。足利市はその中で六千五百人という会員事業所を持っておりまして、日本商工会議所の中でも組織率では常に一番に近い形で推移いたしております。  今回の問題につきましては、足利市と足利商工会議所が一月、二月にとりました種々のアンケートの冊子を用意いたしておりまして、既に事務局の方にお送りいたしておりますが、時間の関係でレジュメで御説明をさせていただきたいと存じますので、「中小企業に関する件(円高問題)」というレジュメをごらんいただきたいと存じます。  足利市の産業につきましては、明治七、八年のときに日本の繊維産業の中ではトップにありまして、戦前の方は御存じだと思うのですが、足利銘仙ということで一世を風靡したわけであります。戦争が終わりましてから、服飾の変化に伴いまして織物産業がだんだん衰退をいたしまして、その後新しい洋装の中で、日本経編工業とかあるいは丸編み、よこ編みというようなメリヤス産業が勃興いたしまして、これが三十年代著しい成長を遂げまして、日本でも三分の一を占める生産工業地になったわけであります。  ところが、昭和四十七、八年のころ、日米の繊維交渉で、沖縄返還に伴います繊維のアメリカに対します輸出制限というような問題が起きてまいりました。それを契機に設備制限をするというような形になりまして、発展途上国からは怒濤のごとく輸入品が増加してまいりまして、特に昭和四十年代に入りましてから韓国、香港、台湾などからの輸入品が非常に安い価格で入ってきたわけであります。先ほど申し上げた四十六年の日米繊維協定などにより繊維産業には著しい陰りが出てまいったわけであります。  足利は昭和四十年のときにはGNPで八〇%が繊維産業でありましたが、それから約十三年経過いたしまして、昭和五十三年のときには構成比率が八〇%が三〇%に減るということで、絶対額では減少いたしておりませんが、産業構造変化といいますか、機械金属、特に輸送機械あるいは家電というようなものの下請産業が勃興してきたわけであります。そんな関係で、昭和五十三年から繊維の町が機械金属の町に変わるというような変貌を遂げてきたわけであります。  特に繊維の場合はいわゆる労働集約産業ということで、低賃金をもとに世界じゅうを席巻するというような形で大変悪名高かったわけでありますが、戦後非常に賃金も上昇いたしてまいりまして、日本がかつて言われたイギリスのランカシャーを追ったと同じようなことが、現在の日本の繊維産業の姿に変わりつつあるわけであります。  最近の調査結果をごらんいただきたいと思います。抜粋でございますので非常に簡単に書いてありますが、経済・経営見通しのアンケート、ことしの一月十四日から三十一日まで実施いたしまして、対象事業所が百十社でございますが、回答が八十社、回収率七二%で回答を得たわけであります。  経済見通しについてどうかということで、規制緩和と円高対策に期待というような意味でとりましたところ、景気動向につきましては、緩やかな上昇と答えたのが三三・八%、底ばい状態と答えたのが四五%。ほかに数字がございますが、省略いたします。  それから、景気回復の時期はいつごろになるかというアンケートにつきましては、来年以降と答えた方が四二・五%、ことしの十月以降と答えた企業が二二・五%であります。これから見ましても、六五%以上の事業所がこの秋以降になるだろうというような回答をいたしております。  それから、今後の景気動向に対します懸念は何かというようなことで複数回答を求めましたところ、価格競争の激化が六五%、産業空洞化が六三・八%、個人消費の低迷が五〇%、設備投資の低迷が四五%、円高進行に対する懸念が三六・三%というような回答になっております。  今後の景気対策として望むものは何かという答えの中で、規制緩和を五一・三%の企業が望んでおります。それから所得減税、これには書いてありませんが、法人税を含めて四七・六%の事業所が、それから円高対策につきましては四二・五%の事業所が要望いたしております。  円の適正相場は幾らぐらいかというようなことで事業所にアンケートしましたところ、一番多い数字は百六円から百十円が三五%、百十六円から百二十円が一七・五%、百十一円から百十五円が一五%という数字になっております。先ほど申し上げました繊維産業につきましては、もう百三十円の時点で競争力なしということで輸出をやめる業者が続出いたしまして、今輸出している企業は私どもの関与している組合で二社しかございませんし、ほとんどもうないに等しいという数字でございます。  それから、企業経営につきまして、不況対策実施しているかというアンケートにつきまして、九〇%の事業所が実施をしているという答えてあります。  それから、具体的な対策については、新規受注の開拓四八・八%、経費の節約を進めたいというのが四七・五%、人件費の抑制が四二・五%あります。その他の項目もありますが、円高問題も含めまして、海外にシフトしたいというのが三・八%、それから輸入に頼りたいというのが三・八%の事業所になっております。  それから、今後の対策強化につきましては、今申し上げたような新規受注の開拓が六二・五、経費節約が四三・〇、人件費の抑制四一・三ということで、海外シフトが六・三%になっております。海外シフトの相手先としては中国、ベトナム、台湾、タイ、インドネシア、マレーシア等になっております。  設備投資の重点について今後どうかという点では、合理化と省力化について六七・五%の事業所、それから生産能力、販売増強については四三・八%の事業所が望んでおります。  それから、将来、二十一世紀への課題としては何かというようなアンケートにつきまして、企業リストラを進めるというのが四二・五%、経営者のリーダーシップをもっと発揮しなければというのが四二・五%、労働力の高齢化が心配であるというのが三七・五%、賃金のアップが二八・八%ということで、これらが二十一世紀の課題になっております。  それから、足利市が実施いたしました地域経済動向の中で、経営上の課題につきましてとりましたところ、これは複数回答でありますが、受注の減少が五四・〇、取引条件が悪化してきたというのが五四%、収益率の悪化が四七・一%、競争の激化が三四・五%であります。  それから、製品輸出状況について、輸出製品を製造しているという答えが三九・一%、製造していないが五四・〇%。  それから、取引先の海外進出を実施しているかどうかという問いに対しまして、しているが四四・八%、していないというのが四六・〇%であります。  取引先の海外進出計画についてしているという事業所で、国内はそのままにしながら今後海外進出を計画しているというのが九三・三%、国内の生産は縮小して海外に依存したいというのが六・七%であります。  それから、リストラにつきましての実態調査をいたしましたところ、実施をしている企業が七五・六%、実施をしていない企業が二四・四。  それから、リストラの内容につきましては、人員整理が五四・八、配置転換が五四・八、経費の節約が五四・八、合理化が四八・四という数字になっております。  それから、円高の聞き取り調査を一昨日いたしましたところ、アルミの製品につきましては、売り上げの一割が輸出であるが、値下げの要請が厳しい。自動車部品につきましては、親企業の指導で対策検討中である、相当のコストダウンの要求が出ている。プラスチックにつきましては、どのような方法でコストダウンに持っていくか今検討中であるという答えが返ってきております。機械につきましては、外国企業との競合、外国企業の方が有利で、中長期的には影響が非常に大きい。電機部品につきましては、コストダウンの要求があり、予想を上回る円高に不安を抱いている。化学会社では、海外商品との価格競争、予想を上回る円高で先行きが非常に不安であるというような答えが返ってきております。  それから、中小企業対策について。  以上が当地における中小企業実施状況でありますが、急激な円高対応として、三月十四日の中小企業三団体の緊急要請に対して速やかに所要の施策を講じていただきたいというお願いでございます。  為替レートの安定、特にG7による協調介入、総合的な金融政策、公定歩合の引き下げ等を含めた大胆な政策が欲しいという要望であります。  それから、中小企業に対する金融措置、これにつきましては、今回も低利での特別融資の制度がございますが、今中小企業で一番困っておりますのは既往の借入金の金利が非常に高いわけであります。長期固定で借りておりますので、特に高い金利で借りているところは今でも七%台の金を使っているというようなことで非常に競争力を失っている。  それから、国際化構造変化への中小企業対応に対して全面的な支援お願いしたい。  それから二番目の、円高によります産業空洞化への対策として、このまま円高が進むことによって中小企業の分野が壊滅的な打撃をこうむる。  新しい産業を創出してもっと発展策を図る。  それから、後継者対策。これは、高学歴社会になりまして、特に三Kあるいは五Kと言われるような産業にはもう後継ぎもいないというようなことでこれからの将来が非常に心配である。  それから、規制緩和につきましては、メリットはあるわけでありますが、この円高のメリットがなかなか反映されてこない。原材料の価格の引き下げとかあるいは電力、燃料等のこれに伴います引き下げがあってしかるべきだ。  それから三番目に、抜本的な中小企業対策といたしまして、今申し上げた中小企業における過去の利息の軽減。これができない場合には一部利子補給等によりまして負担の軽減を図っていただきたい。  それから、下請、孫請等への弾力的な金融支援も必要であり、これらの設備改善とかあるいは省力化を進めていかなければならない。  それから、効果的な景気対策実施としては、所得税の軽減が望ましいというふうに考えております。  ここ一、二年、東南アジアの諸国も回ってまいりまして、三日ほど前に私どもの組合員三十五社が台湾の工業視察をしてまいりました。各国が非常に税金が安くなっておりまして、御案内だと思いますが、香港では今法人税一七%で、消費税もございませんし、シンガポールでも今二〇%の法人税であるということで、日本の場合は事業税あるいは固定資産税、都市計画税等々五〇%を超える租税負担になっているわけであります。そういう負担が私ども中小企業にとりましては大変な負担でありまして、中小零細企業が国際的な競争力を完全に喪失しつつある。特に円高によりまして輸出採算が悪化しておりますことはもう諸先生のお話のとおりでありますし、この円高に伴いまして輸入品が、特に繊維製品が中国を初めとして各国から大量に輸入されつつありまして、一昨年は日本が繊維の輸出国でありましたが、現在は完全な輸入国に転換いたしております。  一昨年タイヘ参りまして視察しましたが、タイの繊維製品輸出の中で五番目を占めておりましてお米の輸出が一番でしたが、一昨年はもう既に繊維製品がタイの中で一番の輸出産業に変わっております。それから昨年の四月に中国、香港を見てまいりましたが、賃金もほとんど一万円。タイもそうでありますが、中国は山間地に入りますと三千円から五千円という賃金でございますので、日本の今の賃金から見ますと二十分の一からあるいは五十分の一というような非常に安い賃金で働いているわけであります。なおかつ、かつては機械化もされておりませんし、非常に品質が悪いということで、発展途上国からの輸入は製品が悪いことで値段が安くても通らなかったのですが、最近は技術移転といいますか技術指導によりまして製品の品質も非常によくなってまいりまして、日本の今の品物ではもうとても太刀打ちができないような価格になっております。  御案内のとおりヤオハンという百貨店が本店を香港に移しましたのも、法人税がわずか一七%ということで、社内留保ができるというようなことが大きな理由だというふうに聞いております。なお、中国にこれから大型店の進出を図るわけでありますが、これらにつきましても、中国等は国の状況が一変する場合もございますので、それをヘッジするために新しい法人をつくって進出いたしております。まさかのときにはその法人がかぶるという形で危険をヘッジしているというような話も聞いてまいりました。  それから、既に中国では十二億を超えるような豊富な労働力がございます。山村を見てまいりますと、今鉄筋の三階建ての住居が非常に多くなっておりまして、この所得は何なんだと聞きましたら、中国は御存じのとおり国営でございますので私有権を認めておりません。耕作権の売買で、それを売って金を得て、それで国の南の方の発展している深センとかあるいは大連とかこの辺に、どんどん工業の発展のしているところへ移動しているという状況でございます。  それから、内外価格差が非常に多いことが我々国際競争力を失っている大きな問題でもありますし、特に最近、日本商工会議所で一番心配いたしておりますのは新しい開業率、開業される方が減っておりまして、年々事業所が減りつつあるというような問題が大きな問題だというように考えております。  時間も経過しましたので、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  8. 白川勝彦

    白川委員長 三田参考人、どうもありがとうございました。  それでは、最後に福川参考人お願いいたします。
  9. 福川伸次

    福川参考人 電通総研の福川でございます。  円高問題について私見を申し述べさせていただきます。私の申しますことがこの円高問題の御審議に多少なりとも御参考になれば大変光栄でございます。  まず、この円高の背景でございますが、この円急騰のきっかけとなりましたのは、昨年の末、メキシコの通貨危機、政情不安、これに端を発しまして、そしてNAFTAという形でメキシコを抱えますドルに不安要素が出てきて、市場ムードの中に逃避通貨としてドル安、そしてマルク選好ということが引き金になったのだというふうに思っております。そして、マルクが買われておりますときに、今度はそれにつれまして円も買われるということになって、いわゆる避難通貨として黒字の多い円というものについての関心が高まったというふうに思っております。  そうしておりますうちに、日本企業が決算期を控えて海外からの利益あるいは配当送金を受けるということで円買いが発生するといううわさが市場に流れました。また、日本輸出企業が期近物のドル売りの決済をするというような動きが出てまいりまして、そして円高が進んでいったというふうに思っております。  また、アメリカのいわゆるファンド筋が、昨年の秋はドル高を見越してドルを買い持ちポジションにしておったわけでありますが、最近このメキシコに端を発しました新しい流れによって急にドルを売り始めたということであろうと思います。したがって私は、この本質はドル安に端を発しているというふうに思っております。  その結果、各国とも、例えば三月三日に日米欧十七カ国で協調介入をいたしました。しかし、ドル売りの投機的な動きを阻止するには至りませんでした。その後ヨーロッパなどで、スペインのペセタあるいはポルトガルのエスタードなどの切り下げが行われましたり、またフランス、ベルギーあるいはデンマークなどの金利の引き上げ等がございましたが、しかし今のところその欧州の通貨も非常にマルクを買うという動きが依然として強く残っております。  日米経済を見ますと、アメリカ経済の方は株式市場も好調でありますし、債券市場も好調であります。また企業業績も非常にいいということで、ファンダメンタルズからいえば、短期的には私はドルを売られる情勢にはないと思います。また日本でも、わずかではありますが、経常収支黒字が縮小傾向になっておりまして、九三年は経常収支黒字が千三百十四億ドルでございましたが、九四年には千二百九十三億ドルと若干の減少でございます。景気は回復過程にありますが、アメリカに比べればまだ回復は極めて緩やかということで、円が非常に買われるような要素は短期的にはないと思っております。  しかし、長期構造的な問題として見ますと、やはりどうしてもアメリカ経済に対しての将来の不安というのが市場に残っていて、例えばアメリカ経常収支赤字は千五百五十七億ドルに昨年達しておりますし、それからまた財政赤字は九四年に二千三十五億ドルでございました。議会予算局によりますと、二〇〇〇年以降になるとそれが倍増するかもしれないという予測が出ております。また、ドルの累積債務が昨年末で五千五百五十七億ドルという大変大きな数字になっておりまして、そして一方、日本黒字が引き続き高い水準を維持しているというような構造的な要因からドルが売られ円が買われた、こういうふうになっているように思います。  円高影響でございますが、今までもお話がございましたように、一つは景気の下押し効果、引き下げ効果が生じてまいります。いろいろな試算が既になされておりますが、九十円前後で推移をすると成長率を〇・五ないし〇・六%ぐらい押し下げるだろうというふうに見ている機関が多いように思います。そうなると、今もお話がございましたように特に中小企業あるいは輸出関連産業というものについては大変大きな不安要因になる、大きな影響が出ると懸念をされます。  また、今回の円高の傾向の中でかなり価格転嫁をする動きが早く出てきておりまして、したがって、ドルベースで表示をいたしますとこの黒字がかなり急速にふえるおそれがございます。これがまた円高要因になるわけでございますので、実はこの辺がこれから内需拡大等々、後に申します対策で非常に重要になってまいります。  また、企業業績はこの三月期の決算でかなり回復するであろう。経常黒字は、いろいろな調査がございますが、二〇ないし三〇%程度前年度の決算期よりも改善するというふうな見通しが多うございましたが、これがまた一つ収益の悪化要因になります。証券、債券、株式市場は御承知のとおり大変今低調をきわめておるわけで、この業績悪化がまた株式市場の弱さに影響をするというふうになってまいりますと、今度はまた金融に影響をするという不安が出てまいります。  それから、先ほどもお話がございましたが、海外展開、海外シフトが非常に急速に加速するようになってまいると思います。また、国内が不況になればこれから非常に重要であります技術開発、特に研究開発についてもある程度削減をしなければならない、こういうことになってまいりますので、これが将来の成長力を減殺をするおそれがございます。また、雇用の問題に不安が出てくることも先ほど他の参考人からの御発言にもあったとおりでございます。したがって、この円高のもたらす影響は極めて深刻なものがあると懸念をされるわけでございます。  今後為替がどう動くかということでありますが、これは市場が決めることですのでどう動くかというのは予測が非常に難しいわけでありますけれども、どういうような要因を注目をしておかなければならないかという問題でございます。  当面一つ日本側の要素で考えていますのは、輸出業者がどのくらい為替の予約をしてくるかということでございますが、今のところこれだけ急速な円高になったためにかなり輸出為替予約がおくれているという見方がなされております。したがって、これからの為替動きいかんにもよりますが、輸出業者の為替動きがどのようになってくるかということであります。  それからまた、外貨建ての資産を処分して日本に送金しようとする動きがあるということも注目点でございます。特に企業業績がかなり懸念されるということになりますれば、外貨建ての資産を円にかえて日本に送金するという動きがどの程度出てくるかということが問題になります。  それからまた、アメリカのファンド筋の動きがどのようになっていくかという点も注目する要素であります。  それからまた、中長期的な要素でありますが、一つには欧州の通貨情勢がどうなるかということが懸念をされます。スペイン、ポルトガルあるいはイタリーはかなり弱い通貨でありますし、またフランスも四月下旬から五月にかけて大統領選挙がございまして、この点についての要素が政治的な不安定要素に仮につながるということになるとフランもまた他の弱いヨーロッパ通貨と同様に影響を受けるということになってまいります。  それからアメリカでございますが、今アメリカは先ほど申しましたようにかなり好調であります。しかし、これからドル安になってアメリカのインフレがどう進行をしていくのかということであります。アメリカはメキシコあるいはカナダとの貿易量が約三割でありますし、アジアからの輸入は、アジアの国々がドルリンクをしておりますからそれほど影響はございませんが、円あるいはマルクで買っておりますものの影響が恐らくじわじわと出てくるのだろうと思います。  日本からのアメリカヘの輸出というのは資本財あるいは部品が中心でありますから、当面すぐ生活者、消費生活に響くということではありませんが、じわじわとインフレがきいていく、そうなったときには金利を上げざるを得ない、こういうことになっていくわけで、そのときに中長期アメリカがどういうふうな形でインフレになっていくか、それに金融がどう動いていくかという点が注目をされる点であります。  それからまた、もう一つは政策対応、国際協調ということがどういうふうになっていくかという問題も注目をいたしておく必要があると思います。  今までのところ為替市場筋では、各国の協調体制が進まないということでもっと円高ドル安に向かうということで動いてきておりますが、ここで為替の安定にどういうふうに政策当局が協調していくかということが重要になります。  対応策につきましては、既にお三人の参考人の方々からいろいろお話がございました。私もそれぞれにすべてそれが重要だということであろうと思います。  私はやはり一つ欧米諸国と連携をした確固たる対応策をとるということが非常に重要であろうと思います。協調介入あるいは金利政策等で為替を安定をさせるということの必要性を欧米の政策当局に十分認識をさせる説得外交が必要だというふうに思います。  内需拡大策が必要なことは当然でございます。これもこれからの補正予算等で内需拡大策が十分なる内容になることを期待をいたしておりますし、また金利の低目誘導ということも重要になっているように思います。  今のこの円高ドル安というのは、どうしても日米の政策のねじれ現象ということを市場が受けとめているわけで、アメリカの方は御承知のとおりにかなり貿易赤字、財政赤字がありながら、どうも財政赤字をふやす方向に動いている。貯蓄が不足して、貯蓄・投資のバランスが崩れていて貯蓄をふやすべきときにもかかわらず、必ずしもそういう方面で動かない。一方、日本は貯蓄超過状態を続けているというこのねじれ現象が為替円高ドル安に導いているわけで、この点についての政策の協調、政策のすれ違いの回避ということを十分に考えてみる必要があろうと思います。  それからまた、今政府及び国会で御議論になっておられます規制緩和でありますが、これも経済活性化のためにこの規制緩和をぜひ実のあるものにしていただきたいというふうに期待をいたしております。これは内外価格差の是正にもつながりますし、実質所得の増加にもつながります。また、新規事業事業機会の増大ということにもなるわけで、これが一つの大きな問題、課題になろうかと思います。  もう一つは、これもお話がございました円の国際化あるいは円建て取引の推進ということでございます。既に御承知のとおりドイツではほとんどマルク建ての取引中心でございますが、日本の場合にはもっと円建て取引を推進をしていくということが重要になろうかと思います。円の国際化、円を使いやすくするということで、円が取引通貨として十分機能するように市場条件の整備ということが重要であろうと思います。  とりあえず以上で意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 白川勝彦

    白川委員長 福川参考人、どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 白川勝彦

    白川委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  この際、委員各位に申し上げます。  本日の質疑につきましては自由討議方式で行います。理事会協議により、一回の発言時間は五分以内とすることになっておりますので、委員各位の御協力お願い申し上げます。  なお、質疑のある委員の方は、挙手の上、委員長の指名により発言されますようお願いいたします。また、発言の際は、着席のままで結構ですが、所属会派及び氏名並びに質疑をする参考人の氏名をお告げいただきたいと存じます。  それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。
  12. 甘利明

    ○甘利委員 自民党の甘利明でございます。四人の参考人の先生にはお忙しいところありがとうございました。  きょうお話を伺いまして、実は関本参考人福川参考人に伺いたかったのでありますが、通貨体制が固定相場から変動相場に移ったというのは、各国の実体経済をよりリアルタイムで反映できるようにということを当然期待してだと思うのですね。ところが、お話にありましたように、昨今ではまくら言葉にファンダメンタルズを反映していないという言葉が使われる。当初期待した効果が全然あらわれてない。それもそのはず、一日に取引される通貨総量のそれこそ数分の一が実体経済で、それ以外の、つまり大部分が投機筋によるものである。しかも投機筋も、週刊誌をにぎわしておりますごく一部の投機筋がかき回している。各国の実体経済がそういう一部のいわゆる通貨マフィアに振り回されて、各国通貨当局が翻弄されているというのが今ですね。  そこで私は、きょうは新しい通貨体制についてのいい知恵はないかということを伺いたかったのですが、もう関本会長は、必要だけれどもなかなか今のところ考えていないというお話でありました。  現状では基軸通貨たるドルの役割を減じていくことが効果的だとは思いますけれども、しかし、それも実体経済の範囲内でのことですから、数分の一の効果しかない。基軸通貨国のアメリカが基軸通貨たるドルに責任を持ってくれないというのが一番の悩みの種でありますから、それは対症療法としては対応していくべきだと思うのですが、基本は大宗を占めている投機筋の暴れ方を抑える手というのが全然ないわけですね。各国協調介入しても、それこそ取引通貨総量の百分の一ぐらいでしょう。方向性としては、毅然たる姿勢を見せればそういうふうに思惑が働くという効果はありますけれども、このままでは今の通貨体制ではどうにもならぬなというのが私の昨今の思いなのですね。  関本会長からはまだちょっと今考えてないというお話がありましたけれども、福川参考人は、新しい知恵、固定相場に戻せとは言いませんが、中間的な何かいい知恵はないものかということについてどうお考えですか。
  13. 福川伸次

    福川参考人 甘利先生のおっしゃるとおりに、今確かに通貨の投機的な取引で非常に変動を増幅しているという点は大変大きな問題でございます。  今通貨改革をどのようにしたらいいかということについて、ブレトンウッズ体制ができて五十年ということでいろいろな識者の方が御議論になりました。関本参考人もちょっと触れられましたけれども、例えば、あるバンドの中におさめるようにするという仕組みをつくれないかということとか、あるいは基軸通貨を、ドルと円とマルクをバスケットに入れて、そのバスケットの平均値を基軸通貨にしようという意見があったり、あるいはもっとSDRを中心にしようという意見があったりいたしますが、なかなか現実の中で、それじゃどういう形なら一番現実的かということがいろいろ議論になります。いろいろそういう通貨改革の案はそれぞれ出てきておりますが、それぞれになかなか難点があって、今のところ実現が難しいというのが今の議論ではなかろうかというふうに思っております。  私は、ある程度通貨の変動の幅をあるバンドの中におさめるように各国経済の運営の規律を求めるということが非常に重要な方向ではないかというふうに思っておりますが、しかし、各国の間でインフレ率に差がある、あるいは財政政策に差があるというようなことで、しからば、ではアメリカはある一定の変動幅におさめるというようなことがアメリカの国内的にできるかということになると、そこがまたなかなか難しいというところに、現実に実現に向かわないという点が問題だというふうに思います。  したがって、私はある変動の幅の中に通貨を安定させるように各国が協調するというのが一つの今考えられる理想だと思いますが、それに向かってどうやって説得をしていくかということであろうと思っております。しかし、なかなかそれも現実に難しいとすれば、今甘利先生のおっしゃったようにドルの役割をある程度減じていくということだろうというふうに思います。ヨーロッパではかなりマルクが使われるようになっております。またアジアでも、今田は輸出で四割、輸入で二割というのが大体取引通貨として使われている状況でございますが、やはりもう少し円の役割を高めていくということが非常に重要だというふうに思っております。そうすることによって日本経済への影響を、変動をある程度縮小するということも重要になります。  ただ、この場合に円圏というところまではなかなかすぐにはいかないと私は思いますし、むしろ日本の金融市場あるいは証券市場の条件整備をしながら円を使いやすい形にしていって、そしてアジアでも円に対しての関心が高まっていくということが重要だというふうに思います。既に中国などでも言い出しておりますけれども、円借を供与しておりますが、これだけ円高になると発展途上国もその返済に非常に苦慮するというようなことにもなっておりますから、私はもう少し円の取引をとりあえず高めていくということに努力をしてみてはいかがかというふうに思っております。
  14. 関本忠弘

    関本参考人 今の甘利先生のお話に対して私は次のようにお答えしたいと思います。  今福川参考人もおっしゃったように、私自身もプレゼンテーションの中で申しましたが、いわゆる緩やかな変動相場圏の構想、これは私は何らかの形で実現していくべきだろうというようにも思います。ただ私は、私の意見として一つに決めてないと先ほど申しました。これはいろいろのあれがありますよ、たくさんのアイデアが今あって、これが一番だということは決めかねるという意味において申したわけでありますが、その一つが今の相場圏構想であります。これはブレトンウッズ改革委員会の中でも一応議論もされた構想でありますから、かなり国際的において議論をされたものである、こういうことであります。  そのほかに、やはり我々はアルゼンチンのようなこと、一ドル一ペソというようなこと、これなども一つの参考にしていいのじゃないか。しかし、アルゼンチンと日本の置かれている立場はかなり違いますから、これもそれが一番いいと言うだけの、私はそういうことを言い切る自信はございません。参考にしていいのじゃないか。  それから、円の国際化への協力あるいは円建て契約の推進、これは私たち日本がある意味においてできることでありますから、我々としても、そういうことを各企業なりあるいは日本政府なりがかなり主体性を持ってやれるのじゃないかなと思います。例えばカーター・ボンドというのが一九七九年ごろですか議論されて、円建てのいわゆる円建て債というのを議論したことがありますが、そのとき実現はしなかったですが、ああいうものが仮に今度また出せれば、投資家のマインドからいえばそういう為替レート影響しない投資ができるということで、かなり安定な投資になってくる、これがまた今の為替レートに対してある程度影響を及ぼすのではないかなというようなこともあります。  最後に私が申し上げたいのは、やはりG7が、各国が協調して、何とか今言った投機的というか、マネーゲーム的なそれで決まる為替の値ということに対してはもっと真剣に議論をしようじゃないか。例えば、私が先ほども強調しましたが、新しいワーキンググループというものをひとつつくって、大げさに言えば人類にとっての大変な問題である、これは何も日本に限らず、アメリカも含め、ヨーロッパも含め、東南アジアも含めて大変な問題であるこの為替の変動という問題、これをもっとスタビライズするようにひとつ研究しようじゃないか。そして、ハリファックスならハリファックスのサミットまでに何か原案中の原案でもいいから出そうじゃないかとか、何かそこの姿勢を示すことが私は一番の解決策じゃないか。  今マネーゲームをやっておられる方々が、今のままだったら本当に八十七円が八十五円になり、ある人から言えば七十円に入るよなどと言っていて、黒字は逆に私が言うように、むしろ弱いドルであらわせばあらわすだけふえてしまうのですから、これは矛盾なんですね。黒字を減らすためにいわゆる円を高くするというような行為が実はそうでなくて、黒字ドルであらわす限りはふやしてしまう、この絶対的矛盾があるわけなんです。この矛盾ということの中で今どんどんといわゆる円高に進んでいるということに対して、私はやはりG7の各国政府が毅然とした態度をとる、スタディーをしようという態度をとる、答えはその中から出てくるだろう、これが私のお答え申し上げたいことです。
  15. 大畠章宏

    ○大畠委員 日本社会党の大畠章宏でございます。  きょうは四人の参考人の方に大変貴重な御意見を賜りました。実は私自身もかつて産業界で働いていた人間ですが、仲間の労働組合の方から次のような衝撃的な発言をいただきました。この急激な円高というものをなかなか政治家あるいは官僚の皆さんはわからないだろう。私は提言したいと思うのだけれども、官僚の皆さんの給料と政治家の給料は全部ドル建てで払え、そうすればいかに円高というものを痛烈な、痛切な痛みを伴って今産業界が深刻に受けとめているというのがわかってくれるだろうというような発言もいただきました。私自身、先ほどから四人の参考人の方のお話を伺って、中小企業初め産業界の方、あるいはまたそれぞれの経済界の方が大変この問題を深刻に受けとめていることを改めて実感してございます。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕  私もかつて一ドル二百円時代に仕事をしていた人間ですが、一体なぜ為替が変わってしまうのだろうか、私たちの働く価値というものをゲームをやっている方々に決められたのでは困るという、非常にそのころは一労働者でありましたからそういう感情を持ちました。しかし確かに、先ほど関本参考人からもお話があったように投機筋は全然困っていないのですね。円高になろうが円安になろうが結果的に為替の変動でもうかればいいというような感じがするので、ここに世界経済が翻弄されているというのは、どこかで私は歯どめをかけなければいかぬと思うのですね。そう思うのです。  一方で、日本国内の黒字というのもこれは大きな原因であることは確かであります。そして、この急激な円高のためにいろいろ内情を分析してどうしたらいいか、かなり私どもも深刻に検討を開始しておるのですが、当初日本国内の問題である、アメリカの方からは、日本の規制緩和等々をやってくれれば貿易の不均衡というのもなくなるんじゃないか、したがって、日本の規制緩和をすることが円高をおさめ、適正な為替水準になる一番のポイントじゃないかというお話がありました。  先ほど関本さんの方からお話がありましたように、アメリカの方でも、アメリカの方の国内の産業界基本的なものをなかなかアメリカ国内でつくらない、したがって、円高になろうが円安になろうが、とにかく外から物を買わなければアメリカ経済というものあるいはアメリカ産業界が成り立たないという仕組みに根本原因があるのではないかという非常に貴重な御意見を賜ったところでありますが、アメリカの国にもやはり私は、あなたの国でももうちょっと国内の産業界の問題点を洗い直して、どうしたら世界経済の混乱をおさめることができるか、そういう努力をしてほしいということはきちっと言うべきだろうし、日本国内でももちろん問題点があれば規制緩和を初めいろいろ対策をすることが必要だと思うのですね。  そこで、いずれにしても、いろいろな論議にしても、日本貿易黒字をどうやってなくしたらいいのか。日米不均衡が一番ですからアメリカの方から何か買わなければいかぬ。そうすると何があるのか。住宅問題も非常に大きな注目をされています。しかし、大きな家を持ってきたって、建坪が小さいわけですからなかなか合わない。したがって、日本に合うようなコンパクトな住宅を、坪三十万ぐらいでつくれるようなうちをあなた方もっくりなさい、そうすれば輸入しましょう、輸入して弊害があればそれを取り除くような規制緩和をしましょうという一つの提言もできるのです。  いずれにしても、きょう四人の参考人の方に貴重な御意見をいただいたのですが、それぞれの方からさらに的を絞って、今私ども政治家に対してあるいは国に対して、具体的にこれだけはやってほしいというポイント一つずつさらにお話をいただきたいと思うのです。特に近藤さんにおいては、国際化対応した中小企業支援策をという話がございましたけれども、これは具体的にどういうことを希望されているのか、これも含めてちょっとお伺いしたいと思います。
  16. 近藤英一郎

    近藤参考人 ちょっと今聞き漏らしたのですが。
  17. 大畠章宏

    ○大畠委員 先ほどいろいろ国際化対応した中小企業支援策を強化してほしいという御発言がございましたね。それをもうちょっと具体的にどういうことを御指摘されているのか、その点を特にお伺いしたいと思います。
  18. 近藤英一郎

    近藤参考人 近藤でございます。  今の御質問ですが、我々中小企業とすると円高影響を非常に受けておる。将来どうなるかということを考えると、会員の方々にお会いするたびに、これからどうなるのだろう、こういう声が非常に強いわけであります。  例えば、大店法が昨年の三月に規制が緩和されて、五月施行になって、そして大型店が一時間、時間延長をやった。この影響は非常に大きく出てきている。それじゃ中小企業小売業者も大型店と一緒になって時間を延長してやったらどうか、こういう意見もあるのですが、御承知のように小規模企業者は、夫婦二人でやっているような小売業者もあるわけであります。時間延長なんかとてもできない。そうかといって人を頼めば結局経費がかかる、営業できないことになるから、我々はじゃもう要らないのか、こういう極端な声も聞けるわけであります。  したがって、我々とすると、何といっても中小企業が今日までの経済社会を支えた大きな力であったことは認めていただいておるのですが、これを救うためには、先ほどいろいろ要望いたしました、例えば円高影響を受ける面から考えて、先進七カ国の強力な協調介入とか公定歩合の引き下げをやっていただきたい。総合的な経済政策、円高進行に歯どめをかけていただきたい。適正な水準に回復させるためには安定を図っていただくことがまず第一であろうと思います。それには内需拡大のための早期の大型補正予算を組んでいただきたい、こういう点を先ほど申し上げたわけであります。  今私、新聞を持っているのですが、経済企画庁は、要するに景気を上向きにさせるためには、上昇させるためには金融政策も大事だ、しかし、設備投資とか個人消費を増大していかなければ景気の上昇は望めないのだ、こういうことも言われて、その考え方は変わらないようであります。そのためにはどうするかというと、今の円高影響を受けまして中小企業も売り上げが減ってくる。そして例えば、下請は大型企業からの支払いについていろいろと圧力がかかってくる、仕事もなくなってくる、収入が減ってまいりますから勢い購買力は出ないわけであります。これを何とか歯どめをかけるためには、先ほど申し上げた補正予算も必要であろうし、今度通していただいた法律も早期に施行していただきたい。  あるいは金利の面においても、低金利政策は変わらないようでありますけれども、日銀の発言なんか、新聞を読んでおりますと、やはり公定歩合を引き下げることはいいことなのであるけれども、もう少し時期を見たいというような記事が載っておるのです。そんな悠長な事態ではないと私は思うので、もっと積極的に政府も日銀もそういう面については手を打っていただきたい、これが我々の要望であります。  こういう点で、国会の先生方には格別にいろいろとお世話になっておりますが、そういう面で、毎日毎日の為替が八十七円台なんということはもう到底考えられないことでありました。そこまでもう下がってきておる、円高になっておる。そうすると、先ほどずっと申し上げたように、勢い企業に与える影響というものは非常に甚大なものがありますと同時に将来に対する不安が増大してくるわけでありますから、この点について格別な御配慮を私はいただきたい、そういう点を考えております。
  19. 関本忠弘

    関本参考人 今先生おっしゃったとおり、まことにそのとおりでありまして、対策はというのが今の質問だろうと思います。先生方からも言っていただくということだと思います。  一つということではなくて、二つか三つ言うことを許してください。  まず一つ、これは先ほども言いましたが、G7に働きかけて何かワーキンググループをつくって、新しい為替システムをつくるべきである。その中には、例の目標相場圏構想というのもそのうちの一つであります、それ以外にもいろいろあるでしょう、これが一つでございます。ぜひG7が本当に人類の問題としてこの問題を取り上げる、これが一つです。  二番目は、やはり先ほど先生も黒字が大きな原因だとおっしゃいましたけれども、私が言いましたように、黒字はある意味では貢献もしているわけなのです。そういう意味からいきますと、予算の中に今ODA予算というのがございますけれども、先進国への協力をするというような予算費目、これをぜひ一つ置いて、しかもそれをODA予算プラス先進国国際協力、こういうようなことで、これだけ貢献しているのだよ、するのだよ、こういうことと今の黒字のこととを連関をとって世の中にアピールしていただく、これが二番目であります。  それから三番目は、まず規制緩和でありますが、おっしゃるとおり我々は規制緩和をどんどん進めていただきたい、これはもう疑うところがないわけであります。経済的な原則についてはできるだけ期限を決めて自由にしていく、特殊なものは除くということであります。ただ、一方は、日本人というのは実は舶来品が好きな国民なのです。私がしているのも、これはフランスのネクタイとかいろいろなもの、舶来品が好きなのですね。だから、大いに規制は緩和していくべきだけれども、量的にいいましてそこにおのずからまた限界もある。  そこで問題は、実は貿易黒字というのが、特に日米貿易黒字というのが中心になっていろいろと為替レートが動くのですが、貿易外収支まで含めたいわゆる経常収支レベルで議論をする、貿易収支では議論をしないということをぜひこの機会お願いしたいのです。  ということはどういうことかというと、日本の場合は工業的な国でありますから、工業品が行きますから通関統計に入るのですね。アメリカからは、例えばビル・ゲーツのやっているマイクロソフトの品物を我々は買っているのです、ソフトウエアですね。これなどはあの中に入らないのです。さらに、日本から千三百万人の観光客が世界に行っているのですね。アメリカに何万人行っているかは私は知りませんが、かなりの人が行っている。それで、二十万円というので一応無税で通関をしているのですね。二十万円掛ける千三百万、これは百円で計算しても二百六十億ドルなのです。これは今統計の外にあるのですね。だから、日本人というのは観光でホテルにも泊まり、あちらでも食事もしていますよ。並びに今言った品物も土産として買って帰っていますよ。もっと真剣になってこの数字をつかまえるということもあっていいのではないだろうか。  特に、対アメリカの場合は、今までは石油、石油と言っていましたけれども、石油はだめだということだったのですが、最近多少アラスカ石油を売ってもいいのではないかという雰囲気が出ていますね。例えば、具体的に言うと、アメリカとの貿易インバランスという問題ならば仮に五十億ドルでも百億ドルでも、近いのですから、しかも質もそんなに悪くないと聞いています。もともと日本の石油の関係は七〇%が中近東から来ていまして、ホルムズ海峡を通っているのが五〇%なのです。だから、そういうセキュリティーの問題からいっても、いろいろと買うところを分散していくという意味からいって、この点は今の日米貿易インバランスということの問題の改善にも役立ちますし、安全という、セキュリティーの問題からも役立つのですね。私が何を言いたいか、お願いしたいかというと、ぜひともこういった経常収支というレベルでひとつ議論をしていただきたいということであります。  それと、ちなみにもう一言言えば、最近、二年ほど前から変わりましたけれども、円で貿易収支あるいは経常収支をあらわすということであります。ただ、ドルと円と二つの数字が出ていましたら新聞はやはりドルでいろいろ上がった下がったとやるのですね。最近は円だけでということになったはずなのですけれども、なおやはり発表ドルと円とが両方になります。これはフランスもイギリスもドイツも全部自国通貨だけで貿易収支は出している、あるいは経常収支は出していますから、この点は細かい問題かもしれませんけれども、本質をつかむ、我々が努力して輸入をふやし輸出をある程度抑えていこうとしている、あるいは海外生産によって本国からの輸出を抑えようとしている、この努力の姿がやはり円という世界の中でぜひとも見えるようにしていただきたいというようなことをお願いしておきたいと思います。  以上です。
  20. 三田公一郎

    ○三田参考人 一問に限ってというような大畠先生のお話でございますので、先ほど申し上げました中で特に申し上げたいことは、私ども日本商工会議所の政策委員ということで八年ほどやっておりますが、過日、日銀総裁になられました松下総裁が日本商工会議所の政策委員長ということで、三年間いろいろお話し合いをさせていただいた経過がございます。そのときにも実は申し上げたのですが、例のバブルのときに公定歩合を二%にして、三年間金は余りに祭らせてやり放題の状況で今日のような状況を招いた。なぜそのときに軽いブレーキでも踏まなかったのですかということでいろいろ議論があったわけであります。  今回につきまして、公定歩合を一%に下げるということは前例がないというようなことで、今米国やそれからドイツの様子を見ているのだというのが大蔵大臣の考えだと思うのですが、なぜこの政策に微調整というのを取り入れないのだろうか。仮に一%にして悪ければすぐまた一・五に戻してもいいのではないかと思うのですが、このままの形で来月の十五日までG7、あるいはその話し合いを待っていたのではアメリカは少しも困らない。昨日財務長官が講演の中で、今非常にドル安になっているけれども、アメリカ一つも困ってない。先ほど福川さんからお話がありましたように、カナダとかあるいはメキシコから見ればドル高状況にあるわけでありまして、日本にとっては非常に円高で困っておりますけれども、世界じゅうを見渡したところ余り困る理由がないというようなことなので、この際やはり思い切った公定歩合の引き下げによって日本が先手を打ったのだ、何事も後手後手で追随しているという政策のあり方に問題があるのではないだろうかというふうに考えておりますので、この点ぜひ先生方によろしくお願いしたいと存じます。  以上です。
  21. 福川伸次

    福川参考人 確かに投機的な動きというのが非常に為替市場の中で大きな割合を占めてはいるのですが、私は、確かに短期的な変動の中には投機動きというのは大きく影響しますが、やはり長期ファンダメンタルズを反映するのだと思うのです。したがって、このファンダメンタルズをいかに改善をしていくかということについての強力なメッセージ、迅速かつ強力なメッセージを為替市場に送るということが非常に大事なところだと思います。もしそうすれば、ああいずれ黒字は減るなと思えば投機筋はそう円高に張ってくるということはないのだと思います。ただそのときに、やはり私も迅速性というのは非常に大事だというふうに思います。さてどういう政策をとるかわからないなということになれば、あくまでも投機筋はまだ大丈夫だといって張ってくるというふうに思います。  しからば、迅速でかつ強力なメッセージという、この強力なものは何であるかということで、これが空手形であるとすぐまた投機筋は逆に張ってきますから、その中が何であるかということだと思います。それは、そのときの情勢によって、今の三田参考人のように金利であると言う方もおられるでしょう、それからまた、ある時期ではもっと財政支出をふやすべきだということも言われることだと思います。もし仮に、先生おっしゃるようにただ一つということであれば、私はやはり強力な内需拡大策ということを打ち出すべきだというふうに思っております。  私も、もちろん財政再建が必要なことは十分わかっておりますが、今何が必要かということであれば、私は、貯蓄・投資のバランスが崩れているのならばやはり投資を拡大をする。しかも、投資の中でも何を一番すればいいかという点について既にいろいろ議論がなされておりますが、もちろん住宅あるいは社会資本、新しいタイプの社会資本があると思います。もちろん阪神の震災の復興ということもあると思います。そういうことについて、ここで財政を出動をして相当強力に内需拡大策をやるんだというメッセージは為替市場にきくことになるのではないかと私は思います。
  22. 古賀正浩

    ○古賀(正)委員 どうも貴重な御高見、いろいろありがとうございます。話が重複しないように整理して二つお伺いしたいのです。  一つは、これも今まで甘利先生などの御議論があったところでございますが、現在の急激な円高というのは簡単に言うとドルの病気みたいな一面がある、そういう流れに振り回されているということがあると思うのですね。ということになると、先ほど来関本参考人あるいは福川参考人からいろいろお話を伺ったような、変動相場圏制であるとかあるいは黒字還元の方針を鮮明にするとか、そのような国家として真剣に取り組まなきゃならぬことがたくさんあると思うのです。  それと、しかしその中に、これはまた関本参考人のお話にもありましたけれども、円建てですか、円建ての契約の推進というのはやはり産業界の御努力みたいな要素が非常にあるんじゃないかと思います。それについては市場の環境の整備とかいろいろなものがあると先ほど福川さんおっしゃいました。そういうことも、もちろん国も努力をしなくちゃいかぬと思いますが、そのあたり産業界としての御努力というのはどうなっているんだろうかなということ、それと今後、業界自体としての御努力をどうお考えになっているのかなということをもう少しお伺いしたい、これが一点であります。  もう一つは、中小企業の大変深刻な状態につきまして、近藤参考人、三田参考人からお伺いをいたしまして、ともに我々も非常に深刻に思っておるところでございます。  それで、総論的な、優等生の答弁をしますと、ともかく規制緩和等をやりながらやっていってみたいなお話になるわけでありますけれども、どっこい片や、例えば大店法の問題があったように中小商業者というのは大変なまた一面のあれも持っているわけですね。しかし、ともかく円高というのは日本経済に大変なインパクトになるけれども、片や利用できるメリットももっとあるんじゃないかな。例えば輸入品が下がるということは産業界にもプラスもある、いろいろな面もあるはずなんですね。その辺をうまく結びつける戦略みたいなものがうまくできていないというところに問題があるんじゃないかなという気がするわけであります。  その点に関して、これは近藤参考人にはぜひお願いしたいのですが、あとどなたかあれば一言御感想をおっしゃっていただきたい、こう思います。
  23. 甘利明

    ○甘利委員長代理 関本参考人から、最初の方の御質問に対して。
  24. 関本忠弘

    関本参考人 それじゃ最初の部分についてお答え申し上げます。  もちろん我々企業は、企業を自分の力で守らなきゃいけないというのが基本であります。これは企業の経営者として、また従業員と一緒になって、組合の方々の力をかりながら、モラールを上げて、ともかく企業を守って、それで株主、従業員あるいは社会貢献しようというのが基本でありますから、円高になってもへなへなと腰を落とすわけにはいかないということもありまして、幾つかのことをやっております。  先ほどおっしゃいました円建ての率を上げるということ、これは日本の場合、輸出でもって約四〇%が、世界への輸出の四〇%が今一応円建てになっています。輸入が二一%という数字があるわけです。これも時間をかけながらそこまでやってきたわけであります。これが一つ。  二番目に、といって、今ドル建てのものをすぐあしたから円建てにということもなかなかいかない。となると、効果的なやり方とすればドルが安くなってもドル建ての値段を上げるという問題です。これは先般も意見がありました。これは現にやっているのです。  例えば、私の方の例を具体的に言う方がわかりやすいかと思いますが、半導体のチップ、メモリーがあるのですね。それが例えば一個千二百円でありまして、百二十円のときには十ドルで売っておりました。百円になったら十二ドルで売ります。少なくともこういうことを、三カ月に一回ずつ契約を結ぶわけですから、そういう努力はもう二年も三年も前からやりました。その結果が、円が高くなったのにドル建てのそういう、今言ったアメリカヘの資本財輸出、これが逆に大変高くなっちゃっている、増加しているという原因なんですね。  だから、これは今先生おっしゃいましたように円建ての努力もやりました、それとともに、直ちに円建ての契約にならないものも、できるものについてはドルの価格を引き上げています。これが二つ目です。  とともに、やはり我々としては、海外進出の中でドル安を利用する、円高差益を還元していくやり方ですね。これは現に企業の中ではいろいろやっております。これは今の、ある意味においては空洞化ということに通じてくる問題になるわけです。雇用の問題になるわけですが、一企業という立場からいえば一番効率のいいところで、原価が安くできるところでつくればいい、この経済原則でそれなりのことをやっているんだ。  ただ一方では、我々は、日本の経営という点からいえば、アメリカの経営のごとくレイオフをして、人が余ったからレイオフしますよ、したがって日本の中での雇用を減らしてあちらへ出て、いいところでつくるという、そういう経営ではないのです、基本的には。私は、人間の和をもって、和をとうとしとすという経営を基本にしながら、そうはいってもやはり企業を壊しちゃってはいけないわけですから、したがって、それのバランスをとりながらいろいろなことをやる中で、内需拡大の問題が福川参考人から出ましたけれども、内需拡大の中で今言った雇用を何とかキープしていく。あるいは、ニュービジネス協議会の会長を私はやっておりましたけれども、ニュービジネスというものを生むことによって、海外へ出ていって余った雇用をそこに吸収する、こんな努力を一生懸命我々はやっておるということを今お答え申し上げたところでございます。
  25. 甘利明

    ○甘利委員長代理 それでは、二番目の質問に関して、近藤参考人
  26. 近藤英一郎

    近藤参考人 古賀先生からの御発言なんですが、規制緩和をやることによってまた報われる点があるじゃないか、こういう意味の発言もございました。それから、大店法の問題にもちょっと触れられてございます。  我々の中小企業、特に小規模企業、これは先ほども申し上げましたが、規制緩和によりまして大変な影響を受けて、将来、小売業者というのはどうなるのだという心配もあるわけであります。  そこで、きょうの新聞を見ますとこういう点が出ておりました。これは大店法、規制緩和を一応今は見送るけれども、期日を決めることで大体やむを得ないような意味の新聞が出ておりました。九九年に見直しをすることをはっきり明記したらどうだろうか、こういう意見も出ておりました。  先ほど申し上げたように、我々の全国商工会連合会会員の九二%は小規模企業でありますから、その権益を守って、そして社会的に貢献していくためにはこれ以上の規制緩和は、もちろんあるものによっては規制緩和することによって恩恵はありますけれども、大店法を廃止するとかあるいは見直しをすることを明記するという点については我々は反対だ、こういう点を強く堅持しておるわけであります。今月の十七日にも商工三団体で通産大臣に、大店法の見直し、また廃止、そういう点については反対だ、こういう意見を強く申し上げてきております。  したがって、今の中小企業現況を御承知いただければ、ぜひひとつ先生方の御理解と御支援を得て、規制緩和の効果はあるかもしらぬけれども、大店法についてはもう一切見直しをしないというような線で御協力をいただきたい、私はこう考えておりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  27. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井でございます。  きょうの四人の参考人の皆さんのお話を聞かせていただきまして、異常円高原因ということについて、伺ったお話も考え起こしながら、少し私なりにまとめて理解をさせていただくといたしますと、ドルを基軸通貨としてやってきた国際通貨制度の危機、その根本原因としては、やはり一つには、アメリカがこのドルの基軸通貨としての地位は維持しようとしているのだけれども、しかし、みずからの国際通貨制度安定のための努力というのを払っていない、責任を果たしていないという問題が、伺っておりましても、かなり大きな問題の一つだ、これは私もそういうふうに思っているわけです。  それはまた、八七年からアメリカ自身が純債務国に転落したり、あるいは九四年には戦後初めて投資収益収支までアメリカ赤字に転落する、そしてアメリカヘの信頼が揺らいできている、これがやはりドル安と言うべき事態を生み出している根底的要因の大きな一つだと思うのですね。  それから同時に、二つ目には、日本側の要因は何かということも、ここのところを後ほど少し伺いたいと思うのですが、日本貿易黒字の中身を見てみますと、輸出額上位十社で我が国の総輸出額の三四・七%を占めている。それから上位三十社で五二・八%。それは主なものは輸送機械、自動車とか電機などになるわけですが、一部の巨大企業、ビッグビジネスが、国際的に見て低い労働条件とか中小下請企業の単価の問題とか、そういうところに問題を抱えて、大量輸出によって生まれてきた巨額の貿易黒字経常収支黒字というものが続いてきたというのがやはり原因の二つ目に挙げられると思うのですね。  三つ目に、先ほど関本参考人からいただきました資料の六でも、投機介入二兆九千億ドル余りという、ディーラー投機ですね。これはマネーゲームと言ったらきれいな言葉で、人によってはこれは背広を着た博徒、背広を着たばくち打ちという表現をされる場合もありますが、変動相場制に移行して以降の、アメリカを先頭に進められてきた金融の自由化、国際化の流れの中で外国為替取引の実需原則が撤廃された、崩されてきた。日本は八四年以降になりますが、金融資本の国際的投機が自由自在になってしまっている。ですから、外為の相場が投機によって大きく左右されてしまってきているという問題ですね。  世界の外為市場での一日平均取引額が八千八百億ドルぐらい、これは平均ですが、大体一兆ドルお金投機資金として流れておる。一日平均貿易額は百四億ドルですから、貿易額の八十五倍もの言ってみればばくちの金が動いているという、こういう異常な事態が今日の円高の根底的な要因になっていると思うのですが、私は、せっかく関本参考人に来ていただいておりますから、そのうちの私が二つ目に挙げました問題について伺いたいと思うのです。  最近、野村総研の研究員の方などが、こうした問題について悪魔のサイクルという言葉を使っております。円高が来る、そうするとコストダウンでそれに対応する、その結果、競争力を回復してまた貿易黒字が大幅にたまってきて、これがまた円高へ来ている。だから、この悪魔のサイクルを断ち切らないことには今の日本のこうした問題を打開することはできないということの指摘もあります。  私は、産業空洞化とか雇用問題とか下請中小企業の経営問題とか地域経済の問題を考えたときに、この悪魔のサイクルを断ち切るということについて、ビッグビジネスのトップに立っていらっしゃる方としてのお考えをお聞きしておきたいなというふうに思うのです。  それから二つ目に、これはソニーの盛田さんが、「日本型経営が危い」ということで挙げられた中にも、コスト割れの価格でも売るという日本企業の姿勢は欧米のルールからすれば異常である、異質であると。日本企業は、労働時間の短縮とか豊かさを実感できる給与水準の実現とか、下請企業などの取引先に対する価格や納期に対して配慮する必要があるということを彼の論文の中で指摘もしておられますが、輸出価格が上がって一時的に国際競争力が落ちても、賃金や下請取引条件をせめて欧米並みに改善していくという方向をやはり今本格的に考えなければいけないところへ来ているのじゃないかと思うのですが、この点についても伺っておきたいと思うのです。  それから、先ほど少し触れられました京セラの稲盛さんの発言では、円レートを正常な水準に戻すためには各輸出企業は今回の円高対応して輸出価格を引き上げるべきである、そういう発言ですね。これは稲盛さんが読売に書かれたり日経などでも紹介されておりますが、それをやると日本製品の価格競争力は弱まって、輸出も、結果として貿易黒字も減って、円高傾向に歯どめを打つことができるようになるという指摘をされているわけですが、この辺について同じ経営のトップにある方としての御意見を伺っておきたいなというふうに思っているわけです。  なお、先ほどマネーゲームについて真剣に議論することがG7で必要である、アメリカは余りこの痛みを感じていないのじゃないかというお話もありましたが、この点についても稲盛さんなどは、アメリカ製造業日本からの部品や生産財の輸入によって成り立っているから、幾ら円高となっても日本企業製品ドル建ての価格をこれまでどおりにする、そうすると少しも痛みを感じないじゃないか、こういう指摘なんかもしておられますが、先ほどの御指摘とあわせて、以上の三点について関本参考人から伺いたいと思います。
  28. 関本忠弘

    関本参考人 まず三番目のものについて先にお答えした方が明確だと思います。これはさっきも申しましたことでありまして、アメリカ資本財というものは大変多くの部門を日本に依存しております。したがって我々は、我々の円が高くなってドルが安くなればドル表示のものは上げていきますよということでやっているわけなのです。やった結果が、円高になっても黒字が減らない、こういう現象が起こっているのです。したがいまして、私はこの間も新聞などで記者会見したときに、稲盛さんおっしゃっていることは半分正しいが半分間違っているよ、こういう表現をしました。これは新聞ごらんになった方があろうかと思います。  半分正しいというのは、そうでないような、価格をすぐ上げられないような、直ちに上げられないものもあるのです。それをもうちょっと上げるように努力しましょうというところはある程度当たっているのですが、実際は今のICにしてもメモリーにしてもファクシミリにしてもVTRにしても、アメリカでつくっておられないものは、あるいはアメリカがそれを買うことによってやるものはどんどん値を上げているのです。これはもうおっしゃるまでもないことなのです。もう現にやっているのです。やっているのにやってないなんていうことを言われちゃ、余り御経験がないんじゃないかというようなことをあのときの席上言ったことがありますけれども、こう理解してください。  だから、この三番目の問題というのは、稲盛さんの発言に対しての問題に三番目及び四番目は絡む問題でありますが、そういうことを各企業ができる範囲の中でやっています。  そこで一番目の問題ですが、これは野村総研のどなたがおっしゃったか私は知りませんが、やはり悪魔のサイクルといいますか、この悪魔のサイクルの基本は何かというと、私が前から言っておりますように、黒字があるからしたがって円高になる、円高になると我々もいろんな意味で努力します、努力する中では原価低減の努力もいたします、しかし一方では値上げの努力もいたします。こういう形でやっていくと、これはおっしゃるようにまたドルであらわした貿易黒字というのがふえるのですよね、いずれにしましても。ふえるからまた円高だ、こうなるのです。  そして、また円高だとなってくるとまた我々もできる限りの努力はいたします。しかし、やはりそれだけじゃいけないから、我々は中小企業と一緒になっていますから、おのずから努力する限界が皆あるのですよ。限界まではやるけれども、それをやれないものは値上げをしていっているのです。現に値上げをしていっているのです。したがって黒字になるのですよ。  だから、きょう私がお示ししましたあれでも、アメリカでつくっていない品物というのはどんどん円のあれとしては落ちておりますね。それから、片っ方のアメリカで必要なものというのは、円のレベルではほとんど変わっていないですね。ということは、円としては落としていないのです。あるいは、ある意味からいえば数量はそれほど落ちてないのです。しかし、ドルであらわすからああなるのですね。  だから、今言った悪魔のサイクルというようなことを言われているのですが、これが基本的に私は間違いなんだということを口を酸っぱく言っているのです。だから問題は、黒字で我々は貢献しているのですよ。それなりの努力をしながら貢献しているのです。しかし、その貢献した黒字が残っているのはどうするんだという声もあるから、それはもっと国際還元という形で、還元の形で問題をもっと取り上げていくべきじゃないですかというのが私の説です。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕  それから二番目の問題であります。盛田さんがおっしゃったということに関連する問題でありますけれども、これは我々企業というものは、ある意味において、きょうの商売のみならずあしたの商売あるいは来年の商売、こういう常に先を見た形で行っているのですね。だから、我々はできる限り経営の努力をしながらコストを下げる、一方では経営のまた努力の中で値を上げるようにお得意様にお願いする、この二つのバランスの中で円高になって厳しくなっても何とか生きていこうとしているのです。  この値は、瞬間的にいえばあるときは赤字になっているかもわかりません。しかしそこで、じゃ赤字のもの全然だめといったらこれで市場が完全になくなるのです。どれだけ努力しても、努力してある程度また原価低減をして売れるような状況が仮にできても、もうそのときには市場がないのです。市場経済というものはある意味においては大変厳しい社会なんですよ。評論家的なことをおっしゃる方はいろいろあると思いますけれども、本当に先を見ながら、これは今赤字でも耐えなきゃいかぬという時期もあるし、これはもうやめるんだというものもあります。  でも、これは今の円高の問題じゃありませんが、新しいものを開発したときなんかまさにそうなんですよ。私のところは衛星通信の地上局を開発いたしました、昭和四十年の初めに。最初は五ミリオンドルでもらった。ところが、それは新しいものだけにいろいろ問題があるから一ミリオンドルぐらい赤を出した。初めから事志として一ミリオンドル赤を出すつもりでやったわけじゃないです。しかしそうなるんです。なったものを、じゃもうやめとなったら今日の我々の今の衛星通信地上局の商売はないんです。これは一つの研究開発……
  29. 白川勝彦

    白川委員長 関本参考人、時間もありませんので……。
  30. 関本忠弘

    関本参考人 はい、わかりました。  ということでありますので、私の言いたいのは、企業というのは長期的に物事を見ながら、しかも短期的にも問題を処しながら一生懸命やっているんです。中小企業の方々にも御協力を賜りながらまた我々の方もやっていて、海外に移転をする、海外進出というようなこともやっているんです。こう理解していただきたいと思います。  以上です。
  31. 白川勝彦

    白川委員長 それでは、時間も大分押し迫っておりますので、できるだけ簡単に、かつまた答弁の方もひとつ簡単にお願いいたします。
  32. 小川元

    小川委員 きょうは参考人の皆様方、大変御苦労さまです。貴重な御意見をちょうだいしましてありがとうございました。  御質問する前に、今近藤参考人並びに三田参考人から中小企業対策について切なる御要望がございました、特に補正予算を含めた中小企業経済対策というものをしっかりやるべきだ、至急やるべきだという私の意見というか要望を申し添えさせていただくとともに、少し細かい問題になりますが、三田参考人のお話の中にありました中小企業の資金の借りかえ問題、これは一昨年の秋にもその問題が大変問題になりましたが、結局実行されてない。委員会としては附帯決議までしたわけです。民間金融機関との兼ね合いもあるでしょうけれども、しかし実際にお金を貸してくれない。あるいはこのまま中小企業がなくなったら銀行も貸せなくなるわけですから、この際ぜひこれは実行させるべきだということを考えていることをまず申し上げておきます。  まず関本参考人にちょっとお伺いしたいのです。私も、長期的に見れば、為替のメカニズム、機構の変更等々がなければこの問題は解決しないと思うんですが、しかしアメリカは、インフレにならなきゃほかの通貨がどうなろうと余り関心ない、ヨーロッパは自国の、自国というかEU圏の通貨混乱がなければ日本の円がどうなろうと余り関心ないということで、それぞれ立場が違う中での新しい仕組みのつくり方というのは相当な時間がかかり、なおかつ難しい問題がある。そうこうしているうちに日本はますます、今までの円高の経緯を見ると結局同じ議論の繰り返しで要するに八〇年代までなっちゃった。もう十年以上も、下手すると二十年以上もこれは続いている問題であります。  したがいまして、そうした長期的な問題をやると同時に、現時点におきましては黒字の還元といいますか、これが急務ではないか。それで、いろいろなお話が今まであったわけでありますが、関本参考人には今、国でやるべきというお話を伺ったのですが、やはり民間でも考えていただくべきではないか。これは、この企業の厳しいときにというお話もあるでしょうけれども、しかし円高で損することを考えれば、まあ一つの大きな基金をつくって何らかの形で対外的なものをやっていただく、ドルの還元というものをやっていただくということをお考えいただけるんではないかな。  これが一つと、ちょっと黒字還流とは違うんですが、先ほど福川参考人からもお話ありましたが、円高のときになると急に慌てて為替の予約をする、これがまたさらに円高を助長するという傾向がたしか前回も私はあったと了解をしております。私も昔貿易会社におりまして、そのころ少なくとも営業部門では、輸出契約をしたときには全額為替予約をすること、こういう鉄則があったわけであります。昔の話ですので今どうなっているか知りませんが、やはりそういう現場の為替担当者から見れば、当然円安傾向になると読んだら少しは、少しはというかオープンにしておいた方がもうかるということもあるかと思いますが、これは経営理念の問題としてそういうことを考えていただくことによっていわゆる投機を助長するような企業為替予約というのはある程度とどまるんじゃないかなという考えがいたしますが、その点についてお伺いしたい。  それから、福川参考人にお伺いしたいんですが、今国に予算上としてのお金がない。特にODA等々、関本参考人からのお話にあった資金還流、還元というのは国内世論の問題もある。その場合に、乱暴な議論かもしれませんが、郵貯を中心に膨大な財政投融資資金、そういうものがあります。これによる国際貢献といいますか、そういうものは技術的に可能なのかあるいは考えられないものか、この点についてお伺いをさせていただきたいと思います。  以上です。
  33. 関本忠弘

    関本参考人 今の黒字還元の問題は、国の問題としてはいろいろ私が言ったことでやるべきだけれども、あと企業がやるべきだというお話でありますが、企業でやっておりますのは、現在投資という形でまずやっておるのですね。先ほどの図の六にも示しましたように、資本的な形では外へ持ち出しておるのです。これはやはり今言った意味の黒字還元になっておると思います。しかも、これはただ金額上の問題のみならず、ある意味においては、現地生産等々への投資を通じて、それによってマネジメント、ノウハウのトランスファーができるという意味での貢献ですね、これがやられているということ。これが一つ。  それから二番目に、メセナとかフィランソロピーとかいう概念がありまして、殊にバブルのときはそれがぐんと膨らみました。しかし、あのときに我々が勉強したというか感じたそういうものは今でもなお残っておりますし、金額は多少減りましたけれども、各会社ともいろいろな意味においてそういうことにお金をいろいろ出しています。例えば学術、アメリカのハーバード大学とかMITとかいうようなところにお金を出すとか、そのほか、いろいろそういうことはもう世界的な規模で今行われている、これは各会社会社の政策にもよるわけでありますけれども。これが一つであります。  それから、二番目の御質問でございました予約問題でございますね。きょうも新聞を見ておりますと、今の八十八円になったときに、年度末になって輸出産業が大いに金をかえるという表現がありました。私は、きょう私の方の経理部長にも尋ねました。私も前からそう思っていたのですが、輸出産業は今こんな八十八円というようなときに金は基本的にはかえないと私は思うのです。何もドルで持っていたっていいのですね。予約をするとかどうこうというのはヘッジのために我々輸出産業はやるのでありまして、こんなに異常とも言えるような今の円高のときに、これが反転する可能性もむしろかなりあるときに、そのときに今ここで持っている手持ちのドルを円にかえる必要はないのです。  ただ、年度末が来ますから、そこにおいて債券が、ドルで持っておるのが目減りする、円に換算していわゆる差損が出るということはやむを得ないのです。やむを得ないのですけれども、この月末とこの間の間隔だけで、八十八円になった、だから今のうちにやっておかなければいかぬというほど私は一ドルの重みということに関して軽く考えていないと思います。やはり百ドルなら百ドル稼いだものを、百円で換算して一万円のものを八千八百円ではかえたくない。  ただ、逆に金融の方は、今言った金融的に売買されておる産業としては、今買っておられたり、売ったり買ったりされておるのですから、これはやはり年度末においてある意味のバランスシートを出さなきゃいけないですから、そういう意味においてのいわゆる加速があるやもしれません。だから、輸出産業と書かれているのは間違いだと思います。だから、我々はあくまでも予約というのは、できるだけヘッジしようじゃないかというので、たまたま、比較的円が安いときにそのことで予約していこう、こういうことだと思います。
  34. 福川伸次

    福川参考人 財政投融資を国際貢献に使えないかという御提案でございます。大変重要な視点だと私も思っております。  ただ、財政投融資は郵貯とか、どちらかといえば有利子の金でございますから、そういう意味でどうしても国際貢献のときに制約がございますが、現に例えば輸出入銀行とかあるいは経済協力基金とかいうものを使って、これを例えば輸入促進に使うあるいはまた投資金融に使う、こういうことは今までもやってまいりましたし、これからもこれは大いに活用できる方法があると思います。有利子であるので制約はございますが、方法としては、これだけ大きな財政投融資が、特に郵貯のお金があるわけですからこれの活用というのを十分考えてみる必要があると思います。また、場合によっては、あるいは無利子の金というか利子のつかないお金とまぜるという方法もいずれ考えられるという意味で、いろいろ知恵の出しどころがあるような気がいたします。
  35. 後藤茂

    ○後藤委員 社会党の後藤茂でございます。  参考人の皆さん方には大変貴重な御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。  時間がございませんので、一点だけ福川さんにお伺いしてみたいのですけれども、今回の急激な円高に対して、エコノミストもあるいは政府の方も、ファンダメンタルズを反映していない思惑的な動きだ、こういうふうに言っておりましたし、事実その面が大変強いだろうと思うのです。しかし、オープンマーケットで為替ヘッジは、これは活動として当然とられていくべき経営行為でございます。しかも市場経済競争経済を進めていくわけですから、各国発展テンポが同じように進むということならばそこへの投機介入というのは大変難しいだろうと思うのですけれども、どうしてもそれぞれおくれたり進んだりしながらの不均等発展をしていくということになってまいりますと、これは投機的な性格をより強めていくだろうという気がするわけです。  先ほど福川さんが、いろいろな強力なしかも迅速なメッセージを送るための対策をとれ、そのことによってこの急激な円高というものも公正な方向に返るんだというように言われておりましたけれども、どうも週刊誌風的に取り上げるのは余り本意じゃございませんけれども、為替マフィアであるとかあるいはマネーゲームであるとかというような部分の投機資金というものが非常にふえてきているのではないか。したがって、いろいろな努力をそれぞれしていくわけですし、これからもまたG7等でやるといたしましても、そうした投機資金というものがファンダメンタルズを反映しない思惑的な動きの方にどんどん収れんされていく危険性というものが今の国際経済の中において大変強いのじゃないかなという心配をするわけでございます。  ですから、対策を立てなければならぬということはもちろんそのとおりでありますけれども、こういう為替ルールというものがこれからどのようになっていった方がいいのだろうか。何も固定相場に行くとか管理貿易に入るとかということはもちろんないわけでございますけれども、そういう点について一言、もし御意見、御見解があれば伺わせていただきたいなと思います。
  36. 福川伸次

    福川参考人 おっしゃるように経済が不均等発展でもありますし、またインフレ率も国によって非常に違います。国内の経済政策いかんあるいはまた貯蓄性向いかんでそこは非常に影響を受けることになってまいりますから、今のそういうファンダメンタルズの成長の差あるいはインフレの差というのが場合によって為替相場を増幅させる、オーバーシュートと言われるような形のことが起こり得ることは事実でございます。  そのために為替介入をしたりして大きな変動は防ぐということでございますが、しかし介入するにしても投機資金が余りにも大きいためになかなか十分効果を上げ得ないということであろうと思います。したがって、その場合にそれでも少しでも効果があるようにするというのは、各国の通貨当局が十分調整をした上で、どういうときに一番きくかということをよく見きわめて大きな変動を防ぐというやり方が必要だというふうに思います。  ただ、今の不均等発展等々がある中でその根っこにある問題をもう少し考えられないかというときに、ここでどう考えるかということだと思います。現にアメリカはほとんどこの円高に痛痒を感じないということを先ほども申しましたし、皆さんからも御意見がございました。これが、もっと円の取引が大きくなっていればあるいはややもっと率直にアメリカはインフレになるという形で感じてくるかもしれませんので、私はこの円取引をふやしていくというのは一つの方法だとは思います。  しかしアメリカ経済政策、先ほどからもお話がありましたように、アメリカ自身がどちらかといえば非常に貯蓄が不足していて、しかも双子の赤字を抱えておる、こういう問題で、そこをどう直すかというところを考えるときに、これは私は、なかなか現実的には難しいと思いますが、先ほどもちょっと申したある幅を持った目標相場圏のような形で経済政策の規律を求めるということが大事なような、一つの方法のような気がいたしております。  やはりアメリカがそういう経済政策の規律を緩めてしまったらアメリカが困るんだということがわかるようにならない限りは、なかなかアメリカも政策をとらないんだというふうに思います。したがって、今のところ成長もいい、物価も安定しているということですとなかなかその気にならないとは思いますが、方法としては私はそれが一つの考え方ではないかという気がいたします。
  37. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 新進党の豊田でございます。  特に質問ということではございません。私の自分なりの考え方などをちょっとお話しさせていただいて、それについて御意見なり御感想があれば逆にお聞かせ願いたいということなんです。  私自身、ちょっと個人的なことを申し上げて恐縮ですけれども、為替に、特に変動為替相場に大変深いかかわりがありまして、私、昭和四十七年の三月ということで、もうかれこれ二十三年前になりますが、大蔵省に入らせていただいたわけです。ちょうど入省する前年の四十六年の八月にいわゆるニクソン声明がありまして、金とドルの交換を停止するとか、そういうことが発表され、いよいよ本格的に昭和四十七年、ちょうど私が役所に入ったときに本格的な変動相場制移行の兆しが、為替相場をどうするかという話が国際的問題になったときであります。  私は、自分のことを言って恐縮ですが、入った所属が主計局という予算の関係のところで直接国際金融の問題ではなかったのですが、役所全体が大変なショックといいますか、これからの相場制、為替をどうしたらいいのかという、三百六十円の固定相場でずっと来ていた、もう三十年続いてきた制度でありましたから、それをどうするのかという大変な議論が省内でもありました。  そして、いっとき三百円ぐらいのところで固定制がしかれましたけれども、いわゆるワイダーバンド制を導入するとかいろいろな試みがなされて、その後昭和五十年代に入って完全変動相場制に移行したわけです。ちょうど私が昭和五十一年から昭和五十四年まで三年間、ニューヨークの総領事館に副領事という形で勤務をいたしまして、大蔵省の事務所もございまして、ちょうど当時、日銀の委託介入という、日本銀行が東京のマーケットで介入するだけでなく、日銀が連邦準備理事会、向こうのニューヨーク連銀ですけれどもそこに委託をして、ニューヨークのマーケットでも為替介入をする、市場介入をする、そういうことが始まったときでした。私は、当時ニューヨーク連銀のボルカー総裁、後ほど連邦準備制度理事会の理事長になられましたけれども、ボルカーさんに直接お会いに行っていろいろ情報を収集したりしたこともございました。  当時、これも余談ですけれども、総理大臣が福田元首相、福田さんが総理をやっておられまして、非常に為替に興味を持っておられるというか非常に重要に思っておられて、毎日のように、ニューヨークが五時にマーケットが引けますと、それから二時間ほどしてですか、九時から東京のマーケットがあくのですが、その間ちょうど二時間ほど、時差の関係でニューヨークがクローズしてから東京があくまで二時間ぐらい、日が変わりますけれども時間があるわけです。そうすると、ニューヨークでの為替の動向を全部、五時にマーケットが大体引けたころに情報を収集しまして、それを全部総理秘書官の方に連絡を入れて、東京マーケットはこういう状況になるかもしれませんから御配慮くださいというような形で対応していた。そういう経験をしてきたわけです。  本論に入りますけれども、私自身は、自分の経験からいって、幾ら人為的な為替介入を行っても、変動をなだらかにする、短期的に変動をなだらかにする機能はありますが、長期的に見て決して為替相場のトレンドを変えるようなものではない。これはもう基本的には、今為替円高をとめるということが至上命題であれば、まず日本黒字をいかにとめるか、そしてアメリカ赤字をいかに縮小するか、これを日本アメリカが同時に、両政府が同時に決意を表明する。日本であれば、いわゆる規制緩和の問題等もあると思いますし、内需拡大、または貯蓄のインバランスを国内の投資に向けるような形に持っていく、そういう政策を強力に打ち出す。まさに福川参考人おっしゃられたように決意を示すということが極めて大事だと思うのですね。それが空約束にならないようにする。  それと同時に、日本だけがやってもこれは単なる円高を阻止するだけにすぎませんので、ドル安を阻止するという意味においてはアメリカ政府日本と同様に、同じタイミングで日本以上の決意を示して、財政の垂れ流したとかあるいは海外の経常赤字の縮小を図るという、まさにそういう意味での各国の協調性がないと、単なる協調介入をやるとか為替市場に入って金融政策とかあるいは介入為替の安定を図るということでは、これはもう長期的に見ればまだまだ円高は進んでいくと思います、そういう対応だけであれば。したがって日米、特にヨーロッパも入れて、マルクの関係もありますから、国際協調という形でやるのであればまず政策をきちっと打ち出す。今後、円高防止それからドル安防止に向けての決意を示すということが一番大事なことではないかと思うわけです。  恐らくそれを打ち出しても一年や二年で効果は絶対あらわれません。実際の効果があらわれるのは五年、十年という中長期的な見通しになると思いますけれども、長期的に日米やヨーロッパの政府がそういう形で取り組むということが為替市場にわかれば、こういう投機筋の動きは将来円安に向かうとなれば円なんか買いませんから、マーケットで四分の三が投機介入とおっしゃいますけれども、そんなに損をしてまで投機介入は絶対にしません。円高になる、長期的にトレンドとして円高になると思うから円買いに走るわけですから、まさに円高にならないという見込みになれば逆に円売りに出てくるということになります。  ですから、これはまさに我々を含め、政府なり与野党なり、これは本当の決意を示す大事な我々自身の責任ではないかなということを痛感しているようなわけであります。それについて、特に福川さんは役所の大先輩というか、通産省ですが、大先輩でもおられますし、もし私の考え方についても何かコメント等ございましたら一言お聞かせいただければというふうに思います。
  38. 福川伸次

    福川参考人 今豊田先生のおっしゃったこと、私も賛成でございます。そのとおりだと思います。  もちろん短期的な介入で国際協調が行われて、これはある程度の、若干の変動を縮小するということがありますが、私はやはり基本構造政策について各国が協調していくということが非常に重要だと思います。今先生のおっしゃったとおりに双方で構造対策に十分取り組むべきだというふうに思います。  ただ、一つだけつけ加えますと、最近ヨーロッパでは失業の問題が実は非常に大きく心配されておりまして、そのために、最近むしろ失業をどうやって縮小するかということもあわせて考えに入れた構造対策が必要だという意見になってきています。そのために今技術開発、研究開発にもっと力を入れたいという機運が出ておりますので、ひとつその構造対策の中に技術力を高めるということも含めてぜひお考えいただければありがたいと思います。  以上です。
  39. 豊田潤多郎

    ○豊田委員 ありがとうございました。
  40. 白川勝彦

    白川委員長 ほかに御発言ございますか。時間が来ておりますので、ひとつ質問並びに御答弁、簡単にお願いいたします。
  41. 河合正智

    ○河合委員 新進党の河合正智でございます。  先ほど政権を担当されております自民党の甘利委員の方から、いわゆるファンダメンタルズを反映していないということがまくら言葉になっているという御指摘でございましたが、ちょうど五年前の九〇年のブラックマンデー、十月でございましたが、この四月九日の予算委員会で、トリプル安が懸念されているかという質問に対しまして、当時の大蔵大臣である橋本大蔵大臣が日本ファンダメンタルズに変動があるとは思えないという答弁をされました。たった五年のことでございますけれども、日本の国というのは為替に対しましてある意味でファンダメンタルズ神話のようなものができ上がっているのではないか。  それに対しまして関本参考人福川参考人にお伺いさせていただきたいのでございますが、両参考人共通のきょうの御意見としてG7、むしろ関本参考人に至りましては人類的な課題に対して取り組むという目的意識を持ってG7による協調を図るべきだということをおっしゃいました。例えばブラックマンデーのときに東京、ニューヨークはトリプル安でございましたが、フランクフルトはトリプル高でございました。したがいまして、いわゆる一国経済主義における中央銀行が介入してどうのこうのという問題ではなくなっているグローバルな現在におきまして、よほど一国にかわる世界という大きな枠組みがあって初めて中央銀行の介入というのは成り立ち得ると思います。  ただし、G7で現在のところどこまでできるのか、またG7というものを、もっと為替ということを考えますと、恒常的な機関、常設的な機関にして、むしろ金融自由化に対応するシステムをつくり上げていかなければいけないのではないかと思われますけれども、その辺についてもう一歩踏み込んだ具体的な御提言がございましたら、ぜひともお願いしたいと思います。
  42. 関本忠弘

    関本参考人 時間がないのでポイントだけ申し上げますが、私は今度、まず検討のためのワーキンググループをつくった方がいいだろうと申し上げました。いわゆる緩やかなる目標圏。  二番目に、今度はできたときにそれをやはりフォローしていかなければいけないわけですね。各国のインフレーションのレートも違うし、生産効率も違ってくる。したがって、その値を一度決めたとしてもそれは変わっていかなければいけない。そういう意味から、今先生のおっしゃるような意味のフォローアップのためのワーキンググループというか委員会をつくってやっていかない限りうまくいかないだろう。  ただ二言だけこの機会に皆さん方に、というのは、ピーター・ドラッカーが、ドル高こそが米国の対日貿易赤字を縮小する最良の方法である、シナリオであるということを昨年の十一月二十二日にウォールストリート・ジャーナルで書いております。今までの、黒字があるから円高だということと全く逆のことを書いていますので、ひとつ御参考にしてください。
  43. 福川伸次

    福川参考人 これをどういう仕組みで考えるかというのは非常に重要な問題だと思います。私はむしろ、いろいろ、為替だけでなくて経済の実態についても十分踏み込んだ議論が必要だと思いますので、ワイズマンと申しましょうか、そういうある専門のグループで、これはどれが一番合理的かということを十分議論する場が必要だと思います。しかし、実際にそれを効果あらしめていくのは政府首脳でありますから、やはり私はサミットとかいうような場で本格的にどういうことが重要か、それを政治的なポリティカルウイルとして明確にすることが大事だと思います。
  44. 白川勝彦

    白川委員長 それでは、質疑はこれで終わります。  参考人各位におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  45. 白川勝彦

    白川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  内閣提出、石油製品の安定的かつ効率的な供給の確保のための関係法律の整備等に関する法律案及び電気事業法の一部を改正する法律案の両案の審査のため、来る二十八日、参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 白川勝彦

    白川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。  次回は、来る二十八日火曜日午前九時四十分理事会、午前九時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十五分散会