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石黒参考人 石黒と申します。
私は、長い間税関で勤務しておりまして、
輸入食品の検査あるいは分析、こういうような
仕事を担当してまいりまして、また今、
国民の食糧と安全を守る、こういう
立場でいろいろかかわっておりますので、そういう角度からお話を申し上げたいと思います。
食品衛生法の今回の
改正につきましては基本的には反対という
立場から、御
意見を申し上げたいと思います。
今回の
食品衛生法の
改正のねらいと申しますのは、私が見たところ、WTOを具体的に実施するということと
規制緩和をする、こういうことで貫かれているんではないかというふうに考えるわけです。結局、輸入を促進する、
輸入食品をたくさん入れよう、それには障害となる
規制を少なくしよう、こういうことから問題が提起されているように思うわけでございます。
本来の
食品衛生法の
改正でありますれば、当然健康と安全を守る、こういうのをまず第一にしまして、さらに
食品の中の例えば
農薬の
残留は減らそうとか、あるいは
添加物は減らそうとか、具体的に安全を高めるようなそういう
内容であるべきではないかと私は考えるのですが、そういう点が見出せないのが大変残念でございます。
この
内容を見てみますと、安全
基準を悪くする、例えば
添加物をふやそうとか、あるいは抗菌性物質のゼロ
基準をやめようとか、そういうような
内容が見られるわけでございまして、そういう点については、こういうことが進みますと
国民の健康と安全というのが一層ひどくなるのではないか、そういう点を心配するものでございます。
安全
基準の改悪というのは
日本の民族にとりまして本当に大被害をもたらすような問題でございますので、絶対反対だということをまず申し上げたいと思うわけであります。
私
たち日本国民にとっては、収穫後に
農薬を振りかけたもの、こういう
食品は要らないというのが
国民の声だと思うのであります。
日本では今使用
基準もありまして、ポストハーベストされたものというのは一切販売されておりません。こういうことをやっていないわけですね。収穫後の
農薬を今までは認めない、こういう態度でございました。例えばかんきつ類に対しまして、OPPですとかTBZとかイマザリル、こういうものを
添加物として認めているわけですね。こうしたことというのは、これは、要するに収穫後の処理というのは
添加物だ、こういう
考え方だと思うのです。
ところが厚生省は、この間のいろいろなお話を伺っていますと、どうもポストハーベストをしても
農薬の
基準値以下であれば認めよう、こういうふうに厚生省は考えを変えたのではないかと思うのですね。一体いつの間にこのようにポストハーベストを公認するようになっていったのか。外国でやっているから仕方がない、こういうことでは済まないと思うわけですね。私は、やはり
日本がきちんとして、収穫後処理しないのですから収穫後処理したものは輸入しないということをこの際明確にしておくことが、今後の
国民の健康と安全を守る上で重要ではないかというふうに考えるわけです。
あまつさえ農水省のある方は、国内でもポストハーベストされてもこれは仕方がないんだ、
基準以下なら認めるというような
発言もあったようでございますけれ
ども、こういうようなことは、
国民の
食生活を考えますと絶対に認めてはならないことではないかというふうに考えているわけです。
むしろ今私
たちは、そういうことをできるだけ、使用
基準を持って、農民はむしろ低
農薬にして、本当に少ない
農薬にしよう、こういうふうにしているわけですね。ですから、こういうことを今後とも
推進する上でも、ポストハーベストをやられるということはやめたいというふうに思うわけであります。
それから、国際
基準への統一という問題がございます。今まで百三
農薬が決まっておりますが、さらに二百
農薬今進めております。この
基準の設定におきまして、どうしてもいわゆるコーデックスの国際
基準に統一しよう、こういうような動きでありますが、コーデックスの
基準というのは、一般的には輸出者に都合がいいように設定されておりますし、我々から見ますと非常に悪い
基準で設定されている、こういうふうに考えるわけですね。
したがって、私
どもとしては、こういうような
基準への統一、何倍にもなってしまう、こういうようなことをなくしていく必要があるのじゃないかというふうに思うわけです。むしろ現在の百三の
農薬につきましても、例えば発がん性のある
農薬、こういうものについてはゼロ
基準にするということが必要だと思いますし、また登録保留
基準以下でなければいかぬというふうに、できるだけ
農薬を制限する、こういうふうにしていくべきではないかというふうに思うわけでございます。
また、抗生物質やホルモンの
残留の問題というのもございます。EC諸国は、ホルモンにつきましては、アメリカの牛肉について使用したものは輸入しない、こういう方針をとっています。やっぱりホルモンが有害であるからでございます。
日本も、ホルモンは使ってはいかぬ、こういうことでやっておるわけでありますから、ホルモンの入った肉類あるいは魚類というようなことについては、こういうことはないようにしていくべきではないかというふうに考えるわけであります。
また、最近の
規制緩和の
内容を見ますと、抗菌性物質を含有したもの、肉とか魚でございますが、これについて今まではゼロ
基準であった、これを解除して一定の含有をしても認めよう、こういうような方針のようでございますが、これは大変
国民の健康にとって重要な問題でございまして、絶対に動物医薬品の見直しというようなことで抗菌性物質などが入らないように、ゼロ
基準を守っていただきたいというふうに思うわけでございます。
添加物の問題でございますが、確かに
天然添加物、このものを安全
基準をはっきりしないままに認める、これも問題であります。しかしまた、国際
基準に合わせるということになりますと百二十一品目が予定される、こういうふうに聞いておりますが、このようにだんだんふやされる、外国のために、貿易を進めるためにわざわざ必要もないのに
添加物がふやされる、あるいは
基準が緩和される、こういうことは避けるべきではないかというふうに考えるわけであります。むしろ発がん性のあるもの、あるいはアレルギーの心配のある現在の
添加物でも減らしていく、こういうような方針をとるべきではないかというふうに考えるわけであります。
そういう外国からの
要求に対して、どうも政府が弱腰なのが私は気にかかるのでありまして、この際、自動車交渉ではありませんが、安全を守る
立場から、これらの安全
基準についても、もっと
国民の安全を守る、こういう
立場から厳しくしていくべきだろうというふうに考えるわけです。
検査体制の問題でございますが、厚生省の現在の行っています検査体制というのは非常に不十分であります。国が責任を持って
輸入食品を全部本当はチェックするというのが、建前だけではなくてやらなければ
国民の安全は守れないと思うわけであります。それで、
国民はそれをやっているものとみんな思っているわけです。ところが実際、例えば非常に関心のあります
残留農薬の検査にしましても、ほとんどやられていない、これが実態であります。
といいますのは、
行政検査というのは五・二%やっておりますが、そのうちさらに化学分析に回される、こういうものはおよそ一万件程度でありまして、その一万件程度のうちからさらに高度の分析というのは神戸と横浜の検査センターでやるのでございますが、さらに減ってしまうわけですね。もう微々たる数しかやっていない、これが実態であります。
ほとんどのそういう
残留農薬ですとか、あるいは抗菌性物質とか、こういう問題は、商社が金を払って指定検査機関に頼む、こういう指定検査機関というのである程度やられている、こういうことでありまして、ここに頼り過ぎる。こういうようなやり方では本来のチェックができないというのが実情ではないかというふうに思うわけであります。
商社が自分で金を払って全部やらなければいかぬという
状態でありますと、これはどうしても、商社に都合のいいようなサンプルの問題ですとか、
データの問題ですとか、いろいろな問題が起きてくるわけでありまして、そういう民間での検査結果につきましてもきちんと国がチェックする、こういうことがどうしても必要なんですね。税関でも、よく検査の分析なんかいろいろやりまして、会社で分析をやらせた結果については検査をする、こういうようなことをダブルチェックします。こういうことをしないと本当の結果がわからないわけでありまして、そういう点を私は強調しておきたいと思うわけであります。
また、必要と認めたときに命ずることができる、こういうふうに今度は書いてありますが、本来は全部検査すべきだというふうに思うわけです。
そして、今も包括輸入とか事前確認制というのがありまして、事前確認制というのは、まだ船の上に荷物があるうちにもう書類を出しまして
許可をしてしまう、こういう考えですから確かに早いですね。早いのだけれ
ども、品物の具体的なチェック、安全検査というのは、ただ出された書類だけで検査、チェックする、こういうことになってしまうわけでありまして、こういうやり方をどんどんやっていますと、非常に問題が起きてくるということが言えると思うのですね。
基本はやはり検査する
食品衛生監視員の数が、ことし四月から四人ふえて二百九人だと思いますが、少ないのですよ、圧倒的に。これで八十五万件の処理をやるということでございますから、一人頭にしますと大体五千件ぐらいなんですね、検査センターに行っている人が四十人ぐらいおりますから。これでそれだけの書類を全部検査をやろうなんて、できっこないです。こういう体制でいるということ自体が、厚生省は本当に
国民の安全と健康に責任を持って検査をする、こういう体制が乏しいというふうに私は考えているわけです。
電算化処理というのがあります。電算化して、インターフェースして書類が速く進むというのは、これはこれとしていいとは思いますが、こういうのには落とし穴というものがありますので、十分チェックをして現物を見る、こういうことをしていかないとまずいと思うわけですね。
この間も、横浜で大理石の粉というのがありまして、これはコンテナに入ってきたのですが、手前は確かに大理石の粉だったのですが、後ろ側は全部中国産のお米なんですよ、これは。これがコンテナでずっと入ってきた。これは電算処理して、検査しないでずっとやってきたのですね。そのために、密輸なんですけれ
ども、どんどん通っていたわけですね。
だから、電算化して、もうこれは大丈夫だということで繰り返してちゃんとチェックしないとこういう落とし穴もありますので、やはり現物の検査をするような人間というか
衛生監視員の数をふやして、あるいは検査センターももっとふやさないとなかなか分析できません。そういうふうにして確実にやっていくということが必要ではないかと思うわけです。検査を省略して早く港から引き取れるようにしなさい、こういうようなことは日米構造協議以来いろいろ言われておりますが、
国民から見ますと、ただ早く通すということではなくて、やはり安全は全部きちんとチェックしていただきたい、これが
国民の願いではないかと思うのです。
今、
輸入食品が非常に増加しておりまして、農民は
生産を制限したり、価格が非常に下がったり、大変です。一方
消費者の方は、
農薬が振りかかったものとか、
添加物がふえたものとか、こういうものが入ってくるわけですね、外米ですとかあるいはたくさんの
輸入食品をみんな食べなければいかぬ。こういうときだからこそ、もっと検査体制も強化しなければいかぬし、食糧の自給の問題についてももっと考えていかなければいけないのではないかというふうに私は考えるわけです。
いろいろな
データがありますが、二十一世紀には大変だ、食糧が不足するだろう、今現にもう八億人の人が飢餓で飢えている、こういうような
状態でございますので、食糧を自給する、安全な食糧をできるだけ国内で自給するというような体制をつくるということもここで本当に真剣に考えないといけないのではないかというふうに思うわけです。
農水省のアンケート調査によりますと、九割以上の人が
輸入食品について非常に不安だというふうに答えております。
国民は、今本当にそういう不安を持っているわけですね。これに対してやはり政治が具体的に、政府がこたえていくということをぜひ皆さん方にも
お願いして、これからも安全体制を確立するように厚生省にもぜひ努力されるよう希望して、私の
意見を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。(拍手)