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1995-04-14 第132回国会 衆議院 外務委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成七年四月十四日(金曜日)     午後一時四十八分開議 出席委員   委員長 三原 朝彦君    理事 小杉  隆君 理事 田中 直紀君    理事 福田 康夫君 理事 東  祥三君    理事 松沢 成文君 理事 松田 岩夫君    理事 秋葉 忠利君       安倍 晋三君    石原慎太郎君       柿澤 弘治君    斎藤 文昭君       坂本三十次君    櫻内 義雄君       鈴木 宗男君    二階堂 進君       原田昇左右君    赤羽 一嘉君       石田 美栄君    岡田 克也君       鹿野 道彦君   柴野たいぞう君       西川太一郎君    羽田  孜君       吉田 公一君    若松 謙維君       伊藤  茂君    上原 康助君       松前  仰君    古堅 実吉君       牧野 聖修君  出席国務大臣         外 務 大 臣 河野 洋平君  出席政府委員         外務大臣官房外         務参事官    谷内正太郎君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 林   暘君         外務省アジア局         長       川島  裕君         外務省北米局長 時野谷 敦君         外務省中近東ア         フリカ局長   法眼 健作君         外務省経済局長 原口 幸市君         外務省経済協力         局長      平林  博君         外務省条約局長 折田 正樹君  委員外出席者         運輸省海上交通         局海事産業課長 寺前 秀一君         外務委員会調査         室長      野村 忠清君     ————————————— 委員の異動 四月十四日  辞任         補欠選任   岡田 克也君     西川太一郎君   高市 早苗君     石田 美栄君   羽田  孜君     吉田 公一君   大矢 卓史君     牧野 聖修君 同日  辞任         補欠選任   石田 美栄君     高市 早苗君   西川太一郎君     岡田 克也君   吉田 公一君     羽田  孜君   牧野 聖修君     大矢 卓史君     ————————————— 本日の会議に付した案件  千九百九十四年の国際熱帯木材協定締結につ  いて承認を求めるの件(条約第九号)(参議院  送付)  千九百九十年の油による汚染に係る準備対応  及び協力に関する国際条約締結について承認  を求めるの件(条約第一〇号)      ————◇—————
  2. 三原朝彦

    三原委員長 これより会議を開きます。  千九百九十四年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件及び千九百九十年の油による汚染に係る準備対応及び協力に関する国際条約締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福田康夫君。
  3. 福田康夫

    福田委員 本日議題となっております国際熱帯木材協定油汚染に関する国際条約は、ともに環境保全内容としております。  環境問題については、一九九二年六月にブラジルのリオデジャネイロで開催されました地球サミットで採択された環境開発に関するリオ宣言アジェンダ21を柱とする世界規模での環境問題に対する取り組みの中で、同年、我が国環境基本法を制定し、より具体的に環境問題に対処する枠組みができつつあります。  熱帯木材協定もそのような流れの中で生まれたものでありますけれども、この協定については、特に我が国は、世界熱帯木材貿易量のおよそ四割を輸入する世界最大熱帯木材輸入国でありまして、熱帯木材輸入を主に東南アジアの国、それも特定した国々に依存している、そういうふうな事情から、特に重視をしなければいけない、このように思っております。過去においては、日本の大量の熱帯木材輸入及び消費東南アジア熱帯雨林の破壊の原因の一つにも挙げられ、国の内外からの批判もあったので、我が国としては、この協定締結しまして、積極的にこの協定趣旨に沿った国際協力実施することが望ましいというふうに考えております。特に、国際熱帯木材機関ITTO本部横浜にあるというふうなこともございまして、日本の本協定へ果たすべき責任は極めて大きいものがある、このように考えております。また、加盟各国からの期待もそれなりに大きいものであるというふうに考えております。  そこで、本協定の主たる目的でございます、熱帯木材輸出を専ら持続可能なように経営されている供給源からのものについて行うことを二〇〇〇年までに達成するという、いわゆる二〇〇〇年目標を達成するための国際熱帯木材機関としての具体的な活動は一体どのようなものであるか。それからもう一つ、二〇〇〇年目標活動のための資金としてバリパートナーシップ基金設立される、こういうふうになっておりますけれども、同基金の財源はどの程度規模であるか。そしてまた、この協定趣旨並びに我が国熱帯木材依存の大きさから考えて、我が国相当額負担をすべきではないかというふうに私は考えておりますけれども、この二点についてまずお尋ねいたします。
  4. 原口幸市

    原口政府委員 お答え申し上げます。  まず第一の御質問についてでございますけれども、ITTOは、生産国消費国協力いたしまして熱帯木材国際貿易を発展させることを目的として一九八五年に設立された国際機関でございます。同機関は、熱帯木材国際貿易拡大、それから熱帯林保全利用を両立させる森林経営促進、さらに木材利用効率改善のための研究開発促進、あるいは木材に関する市場情報改善生産国輸出収入増加のための熱帯木材加工度向上促進等目的としたさまざまな活動を行ってきております。  主な活動につきましてもう少し具体的に述べさせていただきますと、例えば一九九〇年の第八回の理事会におきまして今先生指摘のいわゆる二〇〇〇年目標が採択されましたけれども、この二〇〇〇年目標の採択を初め、持続可能な熱帯林経営のための基準やガイドラインづくりを行っておりまして、加盟国による国内施策促進を支援していることが挙げられます。また、八九年から九〇年にかけましてはサラワク調査団を派遣いたしまして、その調査団の勧告に基づきまして、サラワク政府は九二年、九三年の同州から伐採される熱帯林の量を毎年百五十万立方メートルずつ削減して、それ以前の年間伐採量が平均しますと約千九百五十万立方メートルでございましたけれども、九三年末にはこれが千六百七十万立方メートル程度に減少させることに成功しておりまして、その後もこの水準を維持しているというふうに承知しております。その他、人材養成のための事業あるいは熱帯木材利用促進付加価値向上のための事業及び持続可能な森林経営造林促進するための事業実施しており、現在までに約二百件程度実施済みまたは実施中というふうに承知しております。  それから、二番目の御質問でございますけれども、バリパートナーシップ基金が具体的にいかなる資金規模であるかという問題につきましては、実は交渉の過程で議論されておりません。そこで、御質問基金規模につきましては、この協定の発効後の国際熱帯木材機関理事会の場で検討されることになると考えております。なお、今までITTO年間事業予算が大体二十億円でございまして、その八割を熱帯林保全に直接かかわりのある造林あるいは森林経営分野に使ってきておりますので、このような実績は今後のバリパートナーシップ基金規模についての検討においても当然考慮されていく重要なエレメントだろうと思っております。  我が国は、先生指摘のとおり世界最大熱帯木材輸入国でございますし、また、熱帯林保全という地球規模環境問題を重視するという立場などからいたしまして、またさらには、先ほども御指摘ございましたように、この機関本部横浜にあるということも踏まえまして、これまでもITTO事業実施のために積極的に貢献してきたところでございますが、バリパートナーシップ基金につきましても同様の理由から積極的に対応することといたしておりまして、平成七年度予算において十一億二千七百万円の拠出金を計上して国会の御承認をいただいたところでございます。
  5. 福田康夫

    福田委員 この協定を通じて、しっかりとその趣旨を生かしてやっていただきたいと思うのでありますけれども、我が国輸入している熱帯木材供給国マレーシアインドネシア東南アジアがほとんどでありまして、このうち、日本の全輸入量の半分近くをマレーシア供給しているわけであります。  そのマレーシア環境状態は一体どうなっているだろうかということを見てみますと、マレーシアの新経済政策によりまして工業化路線を突っ走ってきたわけでありますけれども、その結果、酸性雨が増加し拡大をしまして、政府環境保護局の資料によりますと、クアラルンプールのケラン谷というところがございまして、特に大気汚染がひどくて、欧米の大都市と比較しても二、三倍の汚染が進行している、こういうふうなことであります。熱帯雨林の存続を意図しながらそういうふうな環境保護をするのでありますけれども、他方、こういう森林を破壊する酸性雨が増大しているというふうな矛盾した事態も起こっておりますので、その辺を踏まえて総合的な把握をしていくということが日本にとっても必要なのではないか、こういうふうに思っております。  それで、こういうことを含めまして環境問題全般に対しての我が国取り組み姿勢というふうなことを若干考えてみたのでありますけれども、我が国国際社会において環境問題を重視していく姿勢、これは首相も外相もあらゆる機会に表明しておる、こういうことであります。我が国は、環境への資金面とかそれから技術面での貢献、これはかなりやっておりまして、国際的な評価もそれなりに受けているわけでありますけれども、しかし明確な環境政策というものを持っているのかいないのか、こういうことについていかがお思いでしょうか。  実は、首相の私的な諮問機関でございます二十一世紀地球環境懇話会というのがございまして、これは本年の一月に報告書を提出しております。その中で、幅広い英知を結集して政策研究機関設立をしたいというふうなことも提案しているのであります。  そこで、我が国環境問題に関する存在感を国際的に認識させるというふうなことのために、一つの例として申し上げますけれども、東京の青山にございます国連大学、そこに高等研究所というのがございますけれども、そこの研究所利用させていただくという方法があるのではないかなというふうに私なりに考えておるのであります。この高等研究所というのは研究テーマが三本ありまして、環境問題、大都市問題、そして国際社会管理、こういうふうなことでありまして、たまたま環境が含まれているということになっております。そこに着目をいたしまして、とりあえずそこの研究者に国際的な環境研究者に来てもらうというふうなことをする。その研究実績が上がって内容が充実していけば、行く行くは別個に独立した環境研究所を設ける。これを世界に誇れるような環境研究のメッカにしたい、こういうふうに思うのでありますけれども、どうですか、そんなふうな構想というものを実現、推進するというお気持ちはおありでしょうか。ぜひお願いをしたい、こう思っております。
  6. 河野洋平

    河野国務大臣 議員からいろいろお尋ねをいただいたように思いますが、まず最初に、地球規模環境問題に対して我が国あるいは現政権がどういう姿勢をとっているか、あるいはどういう認識を持っておるかという意味お尋ねがあったように思います。  地球環境問題につきましては、この問題が人類の生存基盤に深刻な影響を与える緊急かつ重要な問題だ、そしてそれは我が国にとって最も重要な課題の一つである、こういう認識でございます。高度な経済活動を営み、地球環境に大きなかかわりを持つと同時に、環境保全分野で多くの経験とすぐれた技術力を有している我が国として、地球環境保全に積極的な役割を果たしていくことが肝心だと、この問題に対する認識をいたしているわけでございます。  そこで、そういう認識であるとすれば、国際的にどういう貢献をするか、あるいはどういうイニシアチブをとるか、あるいはどういう役割を果たしているかということについて申し上げる必要があると思いますが、ちなみに、地球環境問題に対します我が国取り組み幾つかございますけれども、その中の柱となるようなものを少し御披露しておきたいと思います。  地球環境問題は、御承知のとおり国連環境開発会議、いわゆるUNCEDにおきまして二十一世紀に向けた行動計画たるアジェンダ21というものを決めているわけです。そこで、UNCEDのこの考え方に沿って、我が国としては、まず第一に、環境保全のための国際的な法的枠組み強化ということに積極的な協力をする。この中には、生物多様性条約あるいは気候変動枠組み条約あるいは砂漠化防止条約、こういったものがあるわりです。  次に、環境ODA強化ということがございます。このUNCEDにおいて、九二年度から五年間環境分野ODAを九千億から一兆円ということを公約をいたしまして、既に、御案内のとおり二年間でその目標の半分以上を達成しているわけでございます。  さらにその他、地球環境ファシリティー、いわゆるGEFへの拠出、あるいは環境関連技術途上国への移転、国民のライフスタイルの転換、こういったようなことが我が国として地球環境問題に対応する具体的な実行をしたものでございます。  そこで、今最後にお尋ねの、何か我が国に象徴的なといいますか、この問題に我が国がしっかり取り組んでいるということを国際的にもアピールをするという意味でも研究機関をつくってはどうか、こういう御提案、しかも、そのためには国連大学などとタイアップするといいますか、あるいは国連大学などにそうした考え方を持ってもらってそれを積極的にバックアップする、それが、国連大学でございますから世界的なネットワークもあるし適当ではないか、こういう御提案で、私も大変いい御提案だというふうに思っております。  これから独立して何か研究機関をつくるということになりますと、これはなかなか難しい問題がございます。例えて申しますと、我が国には既に幾つかの研究機関がございまして、その研究機関との間の連携をどうするかとかいう問題もございます。さらには、UNEP国際環境技術センターというものを大阪及び滋賀に設立をしている、こういういきさつもございまして、さらにそこにまた別にということは非常に難しいというふうに思いますが、国連大学がその研究の項目に環境というものを重視してこれに力を入れていくということであれば、それを我々がバックアップをするということは大変いいことではないかと思います。  ただし、この問題は、やはり国連大学が自発的、自主的にこうした問題に取り組んでくださるということが必要であって、これらについては、我々としてもそうしたお考えがあるかどうかというようなことをお伺いをするといったようなことはできるのではないかというふうに思います。
  7. 福田康夫

    福田委員 日本環境問題に対する取り組み姿勢ということで、一つの例として申し上げたわけでありますけれども、日本環境問題については相当の努力をしているということは認めてもいいと思うのです。しかし、ドイツなんかで環境問題への取り組み、これはかなり真剣なものがあるわけであります。  例えば、こういうことが最近ありました。ドイツ自動車工業連盟というのがありまして、その連盟ドイツ政府は二〇〇五年までに国産乗用車の燃費を平均二五%向上させる方針合意をした、こういうことなんですね。その合意に至る経過は、もしこの合意自動車メーカー工業連盟の方がのまなければ、その場合には政府は業界に対して特別課税をする、こういうふうに申し渡したわけです。その結果メーカーの方も折れて、そして政府方針をのんだ、こういうことなんでありますけれども、これは政府環境問題に対するかなり強いリーダーシップというものがそういうところに見られるわけであります。私はそういうことを見ておりまして、ドイツ政府はやはり本気でやっているな、こういうものを感じるわけであります。  実は今月ベルリンで温暖化防止のための気候変動枠組み条約、こういうものがございまして、CO2の排出削減方向を打ち出そう、こういうふうなことが大きなテーマだったのでありますけれども、この会議において、EUはそういう排出削減方向を強く主張した。しかし日本の場合には、米国とかオーストラリアといったような国々の意向を尊重しまして、実現不可能な目標を掲げても無意味であるというふうなことでもってEUには同調しなかったというふうなことがあったわけであります。  ちょっと、比較対照意味でそういう例を持ち出しましたけれども、日本環境問題についても、本当に腹の据わった方針というか、実施の意欲を持つべきだろうというふうに私は思っています。  次に、一九九〇年の油による汚染に係る国際条約のことについてお尋ねをいたします。  これはいわゆるタンカー事故による海洋汚染、沿岸の汚染といったようなものの被害を極力とどめようというふうなことでもって国際的な枠組みをつくろうということで、大変結構なことでございます。石油そのものは、世界の一次エネルギーの四割を占めるというふうなことで、原子力とかほかのエネルギーが増加しているにもかかわらず、その地位がなかなか変わらないというふうなことであります。この石油を輸送する大宗がタンカー輸送というふうなことでありまして、このタンカー大型化ということとも相まって、一たび事故を起こしますと大きな損害を与える、こういうことになるわけであります。古くは一九六七年のトリー・キャニオン号というのが大変有名でございますけれども、最近ではスコットランドのシェトランド諸島付近で起こったフレアー号、また、その直後にインドネシアスマトラ沖マースク・ナビゲーター号衝突事故を起こした、こういうことであります。  このフレアー号座礁事故でもって九万五千キロリッターの原油が流出をいたしました。これは、ちょうど九二年に地球サミットが行われたというふうなことで、世界環境に対する意識が非常に高まったときでありまして、そういう事故のために欧州各国大変衝撃を受けまして、早速いろいろなことをやったのですけれども、しかし、そういう防止策をいろいろ提案してみたものの、それが実行に移されるというふうなところまでどうも行っていないような感じがするのです。なかなか難しい問題のようでございます。幸いにして最近はこの二年ほど大きな事故がないというふうなこともあって実施規則等がつくられていないのだというふうにも思いますけれども、そんなふうなことで、例えばダブルハル、二重船体ですね、これを早期導入しようとか、タンカーの古いものは使わない、そういうふうなことをその際いろいろ提議をして、そしてこのことはIMOでもいろいろ検討したというふうに言われておるわけであります。  IMOはそのときから今に至るまでどういうふうなことをしてきたのか、今現在IMOで決定した安全対策、これがございますか、もしありますれば、答弁してください。
  8. 寺前秀一

    寺前説明員 お答えさせていただきます。  先生御紹介いただきましたように、IMOタンカーにつきまして、それまでは一重構造タンカーがほとんどでございましたけれども、事故等ございまして、二重構造の、二重船底のタンカーを導入すべきではないかという声が持ち上がりました。  したがいまして、IMOの方で海洋汚染防止条約MARPOL条約と私ども通称しておりますが、この条約が発効しております。既に、これから新しくつくる船につきましては、平成五年七月から、もうタブルハルでなくてはいけないということになっておりまして、我が国でも二隻導入されております。しかしながら、現在保有しておりますタンカーもございまして、これにつきましては、平成七年、ことしからでございますが、ことしの七月から、船齢二十五年までは持てる、したがいまして、二十五年までの間にダブルハルに切りかえる、こういう条約国内法ができ上がっております。  以上でございます。
  9. 福田康夫

    福田委員 事故を起こさないことが一番いいのでありますけれども、事故を起こしやすい、またその可能性のあるタンカー、こういうものはなるべく使用しないということにこしたことはないわけであります。ですから、船齢の古いタンカーとか信用の置けない船主が持っているタンカー、こういうものは使用しない、そういうことを用船者の方も心がける義務があるのじゃないかな、こう私は思っています。  いずれにしても、原油の価格がトン当たり百ドルとしましても、輸送コストは恐らく三%程度じゃないかな、仮に金のかかるダブルハル用船をしても大したはね返りはないだろうというふうに思いますし、そういうふうな全般的なこと、安全確保ということを考えますと、事故の際の用船者責任というものもこれからは考えていかなければいけないのじゃないかな、こんなふうに思っております。  そこで、ちょっとこれは汚染問題直接のことではありませんけれども、オイルタンカーの問題が出たので、これに関連する問題を一、二お聞きしたいと思います。  タンカーで運びます石油の問題なんでありますけれども、我が国は一次エネルギー供給のうち五五%を石油に依存しておるわけであります。この石油の七割は中東産であるということでありま して、ということは、結局一次エネルギーの四割が中東石油、こういうふうなことになるわけであります。この四〇%という依存度は、これはヨーロッパなんかの国々に比較しましても倍以上という依存度でありますし、米国と比較しますと、米国は四・五%ぐらいになりますから、十倍近い依存度を持っている、こういうことでありまして、いかに日本中東に依存しているか、非常に重要な資源を中東に依存しているというふうなことが浮き彫りになるわけであります。我が国も、随分中東依存を減らしまして、第一次石油危機、一九七三年、これは六〇%でありました。第二次石油危機のときが五四%、それから、四年前の湾岸戦争、これが四二%というふうに、大幅に減ってきていることは減ってきているのですけれども、しかし、最近景気が回復してきましたらば、中東石油でその増分を補うというふうなことで、逆に増加傾向が出てきた、こういうふうなことであります。  そういうふうに日本エネルギー中東依存という体質、これはもう世界的に見れば特殊な、特に先進国の中では特殊な状況にあるということでありますので、このことを我が国が一体どういうふうに考えていくべきか、こういうことになるわけであります。  例えば、第一次石油ショックのときに油ごい外交という有名な言葉がございました。それから湾岸戦争のときには百十億ドル国際貢献という名の支援をいたしましたけれども、このとき米国が主張したのは、石油に依存しているのは日本ドイツである、だから負担をしなさい、こういう論理であったわけでありますが、もし同様のことが将来起こるということがあった場合には、それは米国は今はもう四・五%しか依存してない、日本は四〇%であるというふうなことになれば、当然のことながら日本に対する要求というのは厳しいものがあるかと思います。  私は、そういうふうな事態であるならば、先般のときもそうでありましたが、国民の間にそういうことの理解が足りないということで、そういうお金を出すことについていろいろ議論があったわけでありますけれども、次回そういうことがもしあった場合には、そういうことは常々国民にもよく知らしめておくということが必要なのじゃないかなというふうに思います。  もしそういうことが、日本の安全保障とかそういう問題から何とかしなければいかぬというのであれば、中東依存を減らすしかないわけであります。でなければ、中東に対する外交を、それを補完する形でどういうふうに進めていくべきか、こういうふうに思うのでありますけれども、我が国中東外交政策というものは一体今どういう形になっているのか、まずこれを説明してください。時間がございませんので、大臣から概括的にお答えください。
  10. 河野洋平

    河野国務大臣 議員お尋ねのように、我が国が第一次エネルギーの多くを石油に依存しているということから、その石油の八割近くを中東諸国に依存をしている、こういう状況で、言ってみれば、エネルギー供給構造、極めて脆弱というふうに言われても仕方がないような状況でございます。  そこで、このエネルギー安全保障ということの観点から、産油国との関係の強化原油供給元の多角化、国際エネルギー機関を通じる国際協調体制により、石油の安定供給確保のための努力、こういったようなことをする、さらには石油代替エネルギー利用拡大、省エネルギーの推進、備蓄の整備、こういったようなことをやっているわけでございますが、しかし、今議員がお尋ねのように、基本的には中東政策というものをどういうふうにしていくかということをまず考える必要があるのだろうと思います。  御指摘のように、中近東地域は、エネルギー資源の長期安定供給確保という観点から極めて重要な地域でございます。しかしながら、この地域は、冷戦終了後も地域紛争などの不安定要因を抱えておりまして、我が国としては同地域の平和と安定の確保について重大な関心を払う必要がございます。こうした観点から、湾岸地域の安定化に向けて、GCC各国との関係強化に努めるとともに、中東和平プロセスの一層の促進を図るために、多国間協議への参加、和平プロセス関係者との対話、イスラエル周辺国支援などを通じた積極的貢献を行っているわけでございまして、つい昨今もエジプトのムバラク大統領を御招待申し上げて首脳会談を行うなど、積極的に首脳間の対話を行っているという状況でございます。
  11. 福田康夫

    福田委員 外務大臣もいろいろ御配慮をされていらっしゃると思います。なるべく何もないときにできるだけ親密な関係をつくるというのが、中東外交政策の中では大事なことでないかというふうに思っておりますので、ぜひその点御配慮をさらにお願いいたしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  12. 三原朝彦

    三原委員長 東祥三君。
  13. 東祥三

    ○東(祥)委員 新進党の東祥三でございます。  季節は今まさしく春でございます。澄み切った青空を背景にして桜の花を下から見上げるような心境を心の底から味わってみたいな、このような思いでいっぱいでございます。しかし、そのような春であるにもかかわらず、本日の曇天のようにすっきりしません。暗いニュースでいっぱいでございます。外務大臣、本日の答弁においてはどうか私をすかっとさせていただきたい。どうぞよろしくお願いいたします。  いわゆる国際熱帯木材協定条約第九号、そしてまた油汚染国際条約条約第一〇号、この二件について質問させていただきますが、その前に、一つは朝鮮民主主義人民共和国への与党三党による訪朝、そしてもう一つは、もうじき大臣が出席されます、極めて重要なNPTの無期限延長問題、この点について質問させていただきたいと思います。  先月二十八日から三十日までの三日間にわたりまして、与党三党の各代表が北朝鮮を訪問いたしました。朝鮮民主主義人民共和国、以後、北朝鮮というふうに言わせていただきますが、この点について幾つかの素朴な疑問を持っています。ぶしつけな質問になるかわかりません。非礼があればどうかお許しをいただきたいと思います。  まず、外務大臣として、この訪朝の結果についてどのような評価をされておられるのか、この点からお伺いいたします。
  14. 河野洋平

    河野国務大臣 かねてから、北朝鮮と国交正常化についての話し合いを行いたい、こう考えておったわけでございまして、与党三党がこのたび訪朝されて国交正常化交渉のための道筋をつけてこられたという御報告に接して、これを大変評価をいたしているところでございます。
  15. 東祥三

    ○東(祥)委員 この訪朝の目的はどこにあったと思われますか。
  16. 河野洋平

    河野国務大臣 ただいま申し上げましたように、不正常な関係にございます日本と北朝鮮との間に国交正常化のための話し合いの場をつくるということ、政党が環境を整備するというところにあったというふうに考えております。
  17. 東祥三

    ○東(祥)委員 どのようにしてこの訪朝は可能になったのでしょうか。訪朝が実現されるにはそれなり準備が必要であったと思います。一説によりますと、加藤政調会長と金労働党書記とが会われた。どのように連絡をとられたのでしょう。
  18. 河野洋平

    河野国務大臣 これはまさに政党と政党との話し合いでございまして、そこに政府が介在をしていたわけではございませんのでつまびらかではございませんが、いずれにせよ、政党間に何らかの接触が、予備的な接触がといいますか、あったというふうに考えるのが普通だと思います。
  19. 東祥三

    ○東(祥)委員 どのような形で連絡をとり合ったか。また、その訪朝前の過程については外務大臣は一切御存じなかった、こういうことですか。
  20. 河野洋平

    河野国務大臣 党と党、もっと言えば接触をされた方々の信義の問題もございます。信義が守られなければなかなか話が続いていかないということがございますので、我々は、事実としてでき上がった報告は聞いておりますけれども、その間にどういう接触があったかということを一つ一つ聞いているわけではございません。
  21. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、だれがいつごろからどのように北朝鮮のだれと連絡をとったのか、この点については外務大臣は御存じなかった、こういうことですか。
  22. 河野洋平

    河野国務大臣 そのとおりでございます。
  23. 東祥三

    ○東(祥)委員 極めて重要なことを外務大臣はおっしゃっていると思いますが、つまり訪朝団が行かれる前、外務大臣としては事前の報告を受けていなかったわけですから、アドバイス等について外務大臣としての見解は何ら表明されなかった、こういうことですか。
  24. 河野洋平

    河野国務大臣 先ほど申し上げましたように、接触をなさった方々は、その方々の信義の問題がありますから、どこで会ったかとかどういう話をしたかということは、例えば仮の話ですけれども、二人っきりの話にしようじゃないかというようなことがあったとすれば、それは私どもが聞く由もないわけでございます。ただ、事実としてでき上がってきた事実は私は報告を聞いたということをさっき申し上げました。
  25. 東祥三

    ○東(祥)委員 イニシアチブはどちらにあったかもおわかりではないのですか。北朝鮮側からですか、それとも自民党側からですか。
  26. 河野洋平

    河野国務大臣 まあちょうどかしわ手を打って手が鳴るようなもので、右手が鳴ったか左手が鳴ったか、どっちがイニシアチブかということではないんだろう。と思います。両方がぴしゃっと合わなきゃ音はしないということじゃないだろうかと思っております。
  27. 東祥三

    ○東(祥)委員 過去の経緯についてはよくわからない、また信義の問題もあると。よく理解できないのですけれども。ただ、与党の三党の代表団が訪朝された、そしてその前に自民党総裁としての河野大臣、社会党委員長としての村山総理、そしてまたさきがけ代表としての武村代表の、まさに党首による政治的決断があって初めて訪朝が可能になったんではないのですか。この点についてはいかがですか。
  28. 河野洋平

    河野国務大臣 接触が行われて、双方が会談を行うにふさわしい状況ができた、そこで先方から招待状が来れば行くべき状況になったということから私は報告を聞いておりまして、そういう状況になれば訪朝なさることはいいのではないかということは申し上げております。その後、今議員御指摘のように、先方から三党の代表のところに招待状が届いた、直接は私に届いたわけではなくて、党の幹事長、書記長だろうと思いますが、そのところに届いたということでございます。
  29. 東祥三

    ○東(祥)委員 それをいわゆる政治的決断というふうに言ってよろしいのかどうかわかりませんが、与党代表団として三党の代表を送られる、このような合意がなされた。それはいつだったのですか。
  30. 川島裕

    ○川島政府委員 ちょっと正確な日取りは今手元にございませんですけれども、三月中旬ごろだったと記憶しております。
  31. 東祥三

    ○東(祥)委員 この訪朝に関して外務大臣は当初から直接参画されていなかった、そういう御答弁でございますが、相談を受けたときに、タイミングに関しての問題があるとは思いませんでしたか。
  32. 河野洋平

    河野国務大臣 少なくとも日本と不正常な関係にある国との間の正常化交渉、しかもそれはかって行われていたこともある間でございます。そして、我が方からも正常化交渉をやろうではないかということを、折に触れて私も申し述べていたところでございますから、そういう状況ができて、もちろん政府間にではなくて政党間にできて、話し合ってみよう、話し合うべき場ができそうだということになれば、それは行って話し合ってほしいというふうに私は思った次第でございます。
  33. 東祥三

    ○東(祥)委員 訪朝前、訪朝団の代表の方々に外務大臣としてアドバイスされましたか。交渉に関して何らかの条件を付されましたか。
  34. 河野洋平

    河野国務大臣 繰り返してで恐縮でございますが、これは党と党の作業でございます。私は自民党の総裁として、自民党の代表団の団長を渡辺美智雄先生にお願いをしてはどうかということを執行部で相談をしたことがございまして、私から渡辺先生に団長をお引き受け願いたいということを申し上げたことがございます。そのときに、これはもうどなたも御存じのとおり、渡辺先生は私の先輩外務大臣でございますから、外務大臣として、もう少し言えば日朝の国交交渉が途絶えたときの外務大臣でございますから、この間について非常によく御存じでございまして、団長をお引き受け願いたいということを申し上げたときに、渡辺さんからは自分もその間の事情はよく知っておるというお話があって、若干の最近の状況などについてはお話をしたことはございますが、私がアドバイスをするとかという、そんな雰囲気でお話をしたわけではございません。
  35. 東祥三

    ○東(祥)委員 条件は一切付されなかったということです。  そうであるとすれば、核心に入りますけれども、今回の三党代表によるこの訪朝によって合意されたと言われるいわゆる四党合意というのは、日本政府を縛るのですか、日本政府の今後の日朝国交正常化に関して拘束力を持つのですか。いかがですか。
  36. 河野洋平

    河野国務大臣 四党合意というのは公表されておりまして、その公表された四党合意をごらんいただけばおわかりだと思いますが、「この合意書に基づいて、四党は、日朝両国政府が国交正常化のために、あらためて第九回会談を速やかに行うことを勧告することにした。こう書いてございまして、拘束するということはどこにも書いてございません。
  37. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、四党合意に基づく、ここには四つの項目で、二つが努力目標、そして二つが確認事項というふうになっているわけですけれども、これが政府に対して拘束力を持たない、こういうふうに理解してよろしいですか。再度お聞きいたしておきますが。
  38. 河野洋平

    河野国務大臣 四つの項目がございますが、一番最後の締めくくりは、こういうことで国交正常化交渉をやるように政府に勧告をする、こういうことでございまして、これはあくまで政党保と政党とのやりとりであって、政府を拘束するものだとは考えておりません。
  39. 東祥三

    ○東(祥)委員 訪朝後、小渕副総裁がこの訪朝に関して韓国を訪問されましたが、事前の根回しというものは当然やっていたのだろうと推察いたしますけれども、この点についてはいかがですか。
  40. 河野洋平

    河野国務大臣 事前の根回しというのはちょっと意味がよくわかりませんが、韓国に対してという、そういう意味でございますか。
  41. 東祥三

    ○東(祥)委員 はい。
  42. 河野洋平

    河野国務大臣 韓国に対しても、この件についてはあらかじめお話がしてございます。
  43. 東祥三

    ○東(祥)委員 それはどなたからですか。
  44. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  東京におられます韓国大使が直接、渡辺元外務大臣等々、この訪朝にかかわり合いを持たれたいろいろな方と折に触れて接触していたというふうに承知しております。
  45. 東祥三

    ○東(祥)委員 米国に対してはいかがですか。
  46. 河野洋平

    河野国務大臣 アメリカに対しても伝えでございます。
  47. 東祥三

    ○東(祥)委員 九〇年の三党宣言に基づいて日朝交渉が始まった、そして第八回目の交渉時において決裂してしまった。その最大の原因は、日本側からは李恩恵問題、そしてまた北朝鮮側からは戦後補償の問題、そしてまた日朝国交正常化の最大の問題は核疑惑の問題であった、このように私は理解しておりますが、この理解で間違いありませんか。
  48. 川島裕

    ○川島政府委員 八回の交渉で、正確に申しますと、北朝鮮側が一方的に席を立って戻ってこなかったということでございます。その席を立ったきっかけは李恩恵の問題の取り扱いをめぐってでございます。  ただ、それまでの間に、日朝正常化交渉で一番対立と申しますか意見が異なってずっと続いておりましたのは北による核開発の問題でございまして、日本側は、この北朝鮮による核開発の問題が解決なき限り日朝正常化交渉はあり得ないという立場をとっていたのに対して、北の方は、これは日本にとっては関係のない問題であるというところで、ずっと対立が続いて八回に至ったということがございます。これが一番、八回を通じての最大の対立点だったという印象を持っております。
  49. 東祥三

    ○東(祥)委員 核疑惑の問題はまだ解決されていないわけですね。核疑惑の問題を時間をかけて解決するという米朝合意が成立した、しかし本当にそれが解決されるかどうかはまだだれもわからない。このような状況下において、なぜ日朝国交正常化を急ぐ必要があるのでしょうか。
  50. 河野洋平

    河野国務大臣 なぜ急くかというのも私にはよく理解できませんが、それではやらなくていいかというと、そうではないのではないか。やはり、我が国の近い国、その国との間の関係を不正常なままにしておいてよろしいということにはならないのではないかというふうに思います。  ただ、この正常化については、双方がその気にならなければこういう交渉もできないわけでございまして、双方がそういう気持ちになるということであれば、それは交渉はやることは、私はやってよろしいのではないかというふうに思います。  特に、三党の訪朝団は、国交正常化交渉に行ったわけではなくて、正常化交渉をやるためのいわば環境づくりといいますか、そういうことで行っていただいたわけで、私ども、私は実は非常に答弁がしにくくて、政府側の立場で申し上げているわけでございますが、政府側とすれば、今回の三党訪朝団が先方とどういうやりとりをなさったかということを、私はそこにいたわけではないので逐一知る曲もございませんけれども、帰国された方々の御報告を伺う限り、先方もまた今交渉をやることについて前向きの姿勢を示しておられる、こういうふうに伺っているわけでございます。
  51. 東祥三

    ○東(祥)委員 私が申したい点は、少なくとも日朝国交正常化の一つの障害が核疑惑だった、そして、この核疑惑はまだ晴れていない、いつ晴れるかもわからない、そういう状況において、日朝国交正常化を別に急がせなくてもいいのじゃないですかと。ただ、先ほど外務大臣から明快な答弁がありまして、四党合意、これは日本政府を縛るものではない、拘束するものではない。その意味においては、これから政府が北朝鮮との国交正常化交渉をいつやるかということについては、まだこちらも承っておりませんので、それはすぐなのか、また核疑惑が晴れてからなのか、その辺の問題というのはあると思うのですが、ただその一点で今別にやることはないんじゃないですか、このように私は申し上げたのですが、この点について、いかがですか。
  52. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  急ぐ急がないの話ということについて申しますれば、正常化のために日本として重要だと考えているいろいろな条件があるわけでございます。核開発の問題の解決もその一つでございます。そういういろいろなことについて、それはいいかげんでいいんだ、何が何でも急ぐんだという意味で急ぐということでは決してなくて、そういういろいろな大変重要だと思っている条件が、話が調えばということが大前提だと思います。具体的に申せば、核開発の問題も一つでございます。今までは、八回の中断に至る交渉までの間は一切核開発の問題は関係ないという姿勢だったわけですけれども、米朝合意がその後できだということは、核開発の問題をめぐってより前進が見られたと言えないこともないんだろうと思います。  国交正常化に臨む基本姿勢といたしましては、一方において不正常な関係を解消しなければならないと思うわけですが、他方、半島の平和と安定に資する形で正常化を仕上げるという大前提というか、命題のもとにやっているわけでございますし、事実上それはそう簡単な交渉ではないだろうと思っております。ただ、難しい交渉ではございましょうけれども、交渉を再開することによって、核開発の問題、米朝合意の問題等いろいろ状況が変化し動いている中で、少なくとも対話を行うということは積極的に認めるべきであろうと私どもは考えております。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  53. 東祥三

    ○東(祥)委員 日朝の政府間交渉のきっかけをこの三党の代表団の訪朝によってつくってくださった、このように外務大臣の最初の答弁であったのですけれども、政府としては、いつ政府間の交渉を再開されようと思っていますか。
  54. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  これはまさに党の合意でございますので、実際の交渉は向こうの外交当局と私ども政府の間でやるということですので、この四党合意でございますね、これをきっかけとして実際どういうふうにいつごろから交渉を開始すべきかということについては、目下北朝鮮側と在外におきましてやりとりをしておりますけれども、まだ具体的にいつごろとかどこでとかどうこうというところにまでは到底至っていないというのが現状でございます。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  55. 東祥三

    ○東(祥)委員 できることならば、この数カ月以内ですか、あるいは一年、ことし以内ですか。
  56. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  タイミングにつきましては、まだ具体的なやりとりに入っておりませんので何とも申しかねますが、四党合意ができた雰囲気を考えますと、一年ぐらいできないということではないんではないかという気もいたします。ただ、いずれにいたしましても、具体的な話を申し上げる段階には至っておりません。
  57. 東祥三

    ○東(祥)委員 政府間での交渉においては、何度も繰り返しますが、外務大臣の御答弁にありましたとおり、四党の合意に盛られている文言には拘束されないということなんですが、当然、政府間の交渉が再開されたときには核疑惑の問題についても議論がされていくわけですね。いかがですか。
  58. 河野洋平

    河野国務大臣 四党の合意については、先ほど申し上げましたように正常化交渉を始めるということの地ならしをした、そして「速やかに行うことを勧告する」、こう言っておられるわけで、その努力に敬意を表したいと思っております。  政党間の約束事で政府は拘束されないのだということを私申しましたけれども、そうは言うもののこの三党は与党でございます。この与党三党が先方に交渉に出かけていってやってきたということは、その意味というものはやはり我々は考えなきゃならぬというふうには思っております。現在の政府と全く関係のない人たちが行ってやってきた、それは何をやってきても政府の考えとは全く違うのだということではないわけでございまして、政府と与党との関係というものはそれなりに、考え方は同じ方向であるということは当然のことであろうと思います。ただし、そこで約束されたものがすべて政府を今後拘束するかといえば、そういうことではないということを申し上げたわけでございまして、さらに、この合意の中には、「いかなる前提条件もないことこというくだりもございまして、そうした考え方をもとにして交渉の地ならしをしてこられたわけですから、その地ならしをしてくださった状況の中で今後の交渉についての打ち合わせをする、こういうことになろうかと思います。
  59. 東祥三

    ○東(祥)委員 KEDOに関して質問させていただきますが、北朝鮮は、再三にわたりまして朝鮮半島エネルギー開発機構、KEDOに盛り込まれました韓国型の原子炉の提供を拒否して、韓国は、韓国型でなければびた一文も出さないとしております。また、昨年の米朝合意に基づくと、KEDOと北朝鮮との原子炉供給契約にかかる今月二十一日、いわゆるデッドラインと言われておりますが、この二十一日については、同日は努力目標であるとする日本、アメリカそして韓国三国に対して、最終期限であると主張しています。双方の主張は食い違いを見せているんじゃないのか。二十一日まであと数日しか残ってないわけですが、この食い違いの解消は容易でないように思うのですけれども、この点について、現在米朝協議ではどのように話し合われているのかについて御報告願いたいと思います。
  60. 川島裕

    ○川島政府委員 お答え申し上げます。  やりとり全般については実は心配しております。御指摘のとおり、四月二十一日が一つの期限ということでございます。ただ、それを意識して目下米朝間で軽水炉の供給取り決めについてやりとりが進んでいるわけでございますけれども、必ずしも楽観が許される状況ではございません。ポイントはまさにそこ、先生も言及されましたけれども、韓国炉の問題でございますが、これはもうちょっと言えば、名前が韓国炉かどうかということよりも、KEDOのプロセスで非常に重要なポイントは、韓国が財政的等々中心的な役割を果たして、そして韓国炉をつくるということにあるわけでございます。そこの実質的なところがきちんと確保された形での供給契約というものになるのかどうかということがまだ見えてこなくて、そこが米朝間で依然として相当乖離がある話し合いが進んでいるということでございます。  そこで、二十一日の取り扱いをめぐりまして、時間が限られてきております中で、二十一日に合意に至らないともうそこで全部終わり、KEDOの全体が壊れてしまうということにすべきではないという考えから、これはやはり努力目標であるという立場を米国にしても、日韓みんなとっているわけでございます。他方、二十一日が期限であるというのが、それを超えますと、例えば北朝鮮側が五メガワットの原子炉をまた動かし出すとか、そういう具体的な行動に出ますと、これはゆゆしい事態になり得るわけでございます。したがいまして、私どもとしては、二十一日までにそういう米朝間の話し合い、韓国炉の問題をめぐって話し合いがつくことを期待いたしますけれども、仮に合意に至らなくても引き続き継続協議という形で、二十一日の時点できっぱり切れてしまう、具体的には原子炉をまた動かし出すというような行動に北朝鮮が出ないことを強く期待しておる次第でございます。
  61. 東祥三

    ○東(祥)委員 まさにKEDOも今これからどういうふうになっていくかもわからない、また先ほどから議論しております核疑惑の問題に関しても、結局、米朝合意に基づいて特別査察が五年後に延期されている、その間、何がどうなるかということはだれもわからない、こういう状況下において日朝政府間交渉のきっかけが与党三党代表によってつくられた。それについて政府は、外務大臣から御答弁ありましたとおり、事前の過程に関しては直接タッチされていない。ただ、結果として一つのきっかけをつくってくれたので、それは是として受け入れよう。また、四党合意というのは基本的には政府そのものを練らない。ただ、その中身をずっと問うていけば、与党三党の代表が行ったわけですから、政府それ自体を完全に練らないとは言い切れない。  ただ、私がここで言いたいことは、村山政権を縛ってくれるのはいいわけですけれども、日本政府というふうに言った場合は私たちも含まれるわけですから、いつか私たち政権をとるわけですから、そういう意味においては明確なる区別をしておいていただきたい、このように思っておりますが、この点についてはいかがですか。
  62. 河野洋平

    河野国務大臣 外交というものは継続をしていくものであって、政権がかわったらぶつぶつとそこで切れては外交というものはできない、国際的な信頼関係というものを考えてみても、外交の継続性というものは極めて重要な問題だというふうに思っております。もちろん、現在は村山政権でございますから、村山政権として外交をお預かりしているわけでございますが、村山政権もそれ以前の政権を外交においては継続をするということを明言しておられました。たしか、細川政権も自民党の政策を継承されたというふうに考えておりまして、日本の外交というものはずっと継続をしているというのが現実であろうと思います。
  63. 東祥三

    ○東(祥)委員 外交の継続性という点については、私は全く外務大臣と同感でございます。  ただ、この点について申し上げさせていただければ、まさに与党三党の方々が訪朝されて、その内容については帰ってきてから外務大臣はお聞きになった。その過程についてはほとんどタッチされていない、どのような連絡をとったかもわからない、そういう状況下でありますから、外務大臣みずからが言われましたとおり、この四党合意に基づく合意書、これは日本政府を拘束するものではない。その意味において、当然私たちも拘束されるものではない。そこには、外交の継続性、不継続性という問題ではなくて、外務大臣のお言葉の中に、与党三党の代表が行かれて、そして一つの日朝国交正常化交渉のきっかけをつくってくれた、その意味においては何らかの影響があるかもわからないという趣旨で言われているんだろうと思います。  ただ、私たちは、与党三党の代表団が行かれたこともよく存じ上げませんし、どのような過程で交渉がされてきたのかもわかりませんし、準備段階においても全く知られていない。知られていないところで準備された。そして、日朝国交正常化がもし始まったとしても、そこには、先ほどから僕が申し上げているとおり、まだ種々の問題点というのがある。どのようにこれから展開されていくかもわからない。そういう意味においては極めてクエスチョンマークをつけておかなければならない、こういう意味で申し上げているわけでございます。この点についてはいかがですか。
  64. 河野洋平

    河野国務大臣 交渉するのは政府でございます。そこはお間違いのないようにしていただきたいと思います。  国と国との交渉をするのは政府が行うのであって、その政府が交渉を行うという状況が、国交がないものですから、国交がない状況の中で政府がその国交の正常化交渉の糸口を探す、もちろん政府としても呼びかけをするその他で糸口探しを当然しているわけでございますが、そういう状況の中で、与党もその糸口をつける努力をなさった、こういうことでございます。  以前にも申し上げたかと思いますが、日中の国交正常化のときにも、政党あるいは政治家が政治家個人の資格でそうした交渉の糸をつながれたこともございます。環境をつくるためにどんなにか先輩が努力されたこともあったということを私は記憶いたしておりますが、それらはいずれにせよ政治家個人のベースのやりとりであって、交渉をするのは、それは政府が交渉をするのであって、その政府の交渉は、それは国民を代表して政府政府が交渉をするということであることはぜひお間違いのないようにお願いをしたい。
  65. 東祥三

    ○東(祥)委員 その点については御心配なく、理解していると思っております。  ただ、本日の朝、報道されている新聞を読みましても、与党代表団の団長であられます渡辺美智雄元外務大臣が、日朝国交正常化交渉に関して、李恩恵問題について、これは取り上げる必要なし、そういう趣旨の発言をされておられます。こういうものに対して日本政府としては一切拘束されるものではない、そういうふうに理解してよろしいですか。
  66. 河野洋平

    河野国務大臣 きちんと公表をされております四党合意といいますか、与党三党が行ってしてこられたものの中には、何の前提条件もない、つまりどういう話をしてはいけないとか、どういう話だけをしようとか、そういうことではないのだ、いかなる前提条件もつけずに交渉をする、そういうことが書かれてございます。私どもも、交渉をするに当たっては、関心のある問題については話し合うのは当然であって、その中でどの話をする、どの話はしてはいけないということを、そうしたことを最初から拘束されて交渉するということではちゃんとした交渉はできないというふうに考えております。
  67. 東祥三

    ○東(祥)委員 補足説明がありましたら、どうぞ。
  68. 川島裕

    ○川島政府委員 ちょっと補足させていただきます。  まさに、訪朝されました渡辺元大臣御自身が非常に何度となく記者会見等の場で、外交は行政府の専権である、これについて一切容喙することはしない、そういう姿勢のもとで訪朝をし、北朝鮮と話し合いをしたつもりであるということを言っておられます。したがいまして、党の間の合意とかいうものが、いずれ、行く行く行政府同士でやるべき交渉の実態、内容について、ああせい、こうせいというものではないということは非常にきちんと確保されているというふうに私どもは受けとめております。
  69. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、NPTの問題に移らせていただきますが、その前に、北朝鮮との関連で質問させていただきます。  昨年の米朝合意では、北朝鮮はNPTにとどまり、同条約に基づく保障措置協定実施を認めるとしておりますが、これはあくまで米朝の合意であって、北朝鮮とNPTとのものではないのじゃないか。北朝鮮はNPT条約第十条に基づいて国連安保理に対して脱退の手続をしております。国際的には北朝鮮がNPTにとどまったことが定着しているということは承知しております。しかし、脱退の取り消しを確保するためには、条約上明文規定はないわけですけれども、国連安保理に対して脱退を取り下げさせるのが妥当なのではないのか、このように思えてなりません。  北朝鮮は国連安保理に対して何らかの手続を行ったのかどうなのか、また、米朝の合意によって北朝鮮がNPTにとどまったとすることで手続上の問題はないのかどうなのか。さらにまた、もしこの五年の間に、五年の間は特別査察できないわけですから、核疑惑があるかどうか、核があるのかないのか、この判定が非常に難しい、まさに玉虫色なわけですけれども、しかし、安全保障上の問題で、NPTの条約に規定されているとおり、もし北朝鮮がまた再び脱退を宣言したら、前回の例でいけば脱退発効一日前の段階で踏みとどまった、あと一日たてはひょっとして発効してしまうのではないのか、このような素朴な疑問がわいてきてなりません。この点について、いかがですか。
  70. 林暘

    ○林(暘)政府委員 今御指摘のとおり、北朝鮮はNPTの脱退を宣言をいたしまして、これは九三年の三月十二日でございますが、米朝間の話し合いを経て、同年の六月十一日に脱退の発効を中断するという旨の表明をいたしておるわけでございます。  北朝鮮自身としては、そういう意味で、その時点でNPT上特殊な地位にあるという主張を行っておったわけでございますけれども、昨年の米朝合意においてNPTの締約国にとどまるという意図を明らかにしているということで、我々といたしましては北朝鮮はNPTの締約国であるというふうに理解をしておりますし、NPT関連の諸会議には北朝鮮も他の締約国と同様に出席をしております。  今御指摘の、手続の問題として国連に脱退の宣言というものを撤回したような措置をとったかとらなかったかという御質問がございましたけれども、我々の承知をしておりますところ、特にそういう措置をとっているとは承知をいたしておりません。ただ、御承知のように、北朝鮮がやりましたこの措置というのは、協定に書かれているような規定にのっとった措置ではございませんで、非常に特殊なことであることは間違いがございません。  ただ、我々といたしましても、書かれている手続にのっとってないことをやっている、ないしは国連に対して改めて措置をとってないから、北朝鮮をNPTから脱退させようということを殊さらやる必要もないわけでございまして、北朝鮮がNPTにとどまっているということ、締約国であるということであれば、我々としてもその方がいいわけでございますし、そういうことで理解をいたしております。
  71. 東祥三

    ○東(祥)委員 脱退させようだとかそんなつもりは全くないのであって、脱退宣言撤回をさせる必要があるのではないのかということを僕は申し上げておるのです。  それで、審議官が言われる「我々」というのは、これはだれなんですか。
  72. 林暘

    ○林(暘)政府委員 「我々」と申し上げましたのは、日本を含めまして、アメリカとかそういうNPTに入っております同じような考えを持っている国という趣旨で申し上げたわけでございます。  北朝鮮に脱退通告の撤回をさせるべきではないかという御質問、筋からいうと恐らくそのとおりであろうと思います。脱退の宣言をいたしておりますので、それを撤回するということを北朝鮮がやることが一番すっきりすることですし、本来そうであることだろうと思っておりますけれども、ただ、米朝合意の中で、北朝鮮が明らかに、自分たちとしてはNPTにとどまるということを合意の中で申しておりますので、それは言いかえれば、脱退通告というものを撤回してNPTにとどまるという意図表明をしたものというふうに日本は受けとめております。
  73. 東祥三

    ○東(祥)委員 これは日本、韓国、アメリカを称して「我々」と。NPTに対して、北朝鮮は脱退宣言されたのではないですか。そうすると、この点についてはNPTの場で議論されなくてはいけない問題とは違うのですか。「我々」という、この三国で決められる問題なのですか。どこに脱退宣言を出したのですか。
  74. 林暘

    ○林(暘)政府委員 北朝鮮が脱退宣言をいたしましたのは、国連の安保理に対していたしました。  それから、先ほどもう一つ言い忘れましたけれども、その後、米朝合意を受けまして、国連の安保理事会は議長声明を出しているわけでございます。これは米朝合意の後でございますけれども、その中で、「国連の安保理事会は、北朝鮮がアメリカとの枠組み合意の中で、NPTの締約国にとどまる旨、決定したことに留意する。」ということを、これは安保理事会の議長声明で言っております。そういう意味におきまして、北朝鮮が脱退の宣言を出しました先であります国連の安保理事会が、米朝合意を受けて、北朝鮮はNPTにとどまるということであるというふうに理解をするということを国連の安保理が言っているということでございます。
  75. 東祥三

    ○東(祥)委員 安保理事会でそのような議長声明があった。そこで、北朝鮮はとどまっている。  僕の最後の質問ですけれども、そうすると、望むことではありませんけれども、もし脱退宣言を再びした場合、一日限りで発効するのですか。
  76. 林暘

    ○林(暘)政府委員 先ほど申し上げましたように、NPTにとどまるというふうに安保理としても理解をしておるわけでございますから、北朝鮮がもし万が一、再度脱退をしたいということになったとすれば、全く仮定の問題でございますけれども、その場合には改めて脱退宣言が必要で、その場合には三カ月を要するというふうに考えております。
  77. 東祥三

    ○東(祥)委員 十七日から二十日まで、外務大臣はNPT再検討・延長会議に御出席される。ぜひともNPT無期限延長で採決されるように祈っております。さらにまた、外務大臣がそのためにでき得る、すべての能力を傾注していただいて、この会議が成功裏に終わることを祈っております。  御決意のほどをまずお聞かせ願いたいと思うのですが。
  78. 河野洋平

    河野国務大臣 この二十五年間、NPTというものが国際社会の中で、核不拡散さらには核軍縮、そういったものの柱になってきたということを考えますれば、このNPTがこれから無期限に延長されて、きちっと核不拡散、そして核軍縮の方向性というものができてくるということが何より重要である、望ましい姿だというふうに考えております。  ただ、先ほど議員からもお話がございましたように、NPTというものはやめようと思えば宣言をしてやめられるということがあるわけで、多数決で、多数で決めて、否決された者は不承不承ついていくということは、実は余り決定的ではないという感じがするわけで、私の個人的な気持ちからいえば、これはコンセンサスで無期限延長になってほしいというふうに私は考えているわけでございます。  しかし、事実は目下のところなかなかそういう状況ではございません。無期限延長を主張する国もあれば、そうではなくて、やはり期限つきの延長を主張する国もあって、ここのところはなかなか厳しいしのぎ合いが行われているわけでございます。いよいよ会議が始まりますので、私どもとしては、何としてもこのNPTは無期限の延長ということで限りなくコンセンサスに近い状況をつくりたい、こう考えているわけでございます。  そうした我々の念願ではありますが、少なくとも現状はなかなかそういうコンセンサスという状況ではないのでございまして、現地で、アメリカを初め同憂の士、同憂の国々とよく相談をし、連絡をし、また、まだ態度を決めていない国々に対しての呼びかけをどうするかというようなことについても十分相談をしてみたいと思っております。
  79. 東祥三

    ○東(祥)委員 現在の見通し、NPT無期限延長が来る会議で採択されるかどうかという見通しについては、どのような御見解をお持ちですか。
  80. 林暘

    ○林(暘)政府委員 現在NPTの加盟国は百七十五カ国になっておりますので、過半数が八十八カ国という状況でございます。今の見通しを明確に申し上げるのは非常に難しいわけでございますが、日本政府が関係の国といろいろ情勢を分析して票の読み合わせをした状況によれば、現時点では、大体八十カ国程度が無期限延長を支持している状況がなという感じでおります。  いずれにいたしましても、実際の投票がどういうふうになるかということは、会議そのものの雰囲気その他にもよることが非常に多いので、成り行きはまだ予断を許さないというふうに考えております。
  81. 東祥三

    ○東(祥)委員 核兵器の拡散を防ぐためには、NPT無期限延長にすべての国が賛成することが必要条件になると思うのですが、十分条件ではない。最終的には、核実験全面禁止条約、さらにまた兵器用核物質の生産禁止、いわゆるカットオフ、大量破壊兵器と言われる生物兵器、その他の大量破壊兵器、こういうものをすべて禁止していかない限り、究極的に核兵器廃絶をなし遂げないことには無理なんだろう、このように思うわけでございます。  この点を踏まえた上で、先ほど外務大臣の方からも、NPTはそれ自体として拘束力がない、出たいと思えば基本的に出られる、安全保障上の理由ということで出ることが可能になってしまうと。そういう意味においては、NPT、そしてまたIAEAの保障措置、査察があるわけですけれども、ここには何ら拘束力がない。そうしますと、ある意味でIAEAの査察を強化していくという、そこに重点を置かなければいけないのじゃないのか、このように思えてならないわけです。  まず、NPTの構造的な欠陥といいますか、あるいは拘束力のなさ、こういう問題と、さらにまたIAEAの保障措置、これをさらに強化していくということについて、政府としてどのようにお考えになっているのか、聞かせていただきたいと思います。三十秒でお願いできますか。
  82. 林暘

    ○林(暘)政府委員 NPTがいわゆる拘束力を、強制力を持つ条約ではないではないかということは、そのとおりでございます。基本的にその担保をIAEAの保障措置によっておりまして、保障措置によって軍事転用が確認できない場合には、最終的には国連の安保理に判断をゆだねるという構造になっております。そういう構造の中で不拡散ということを確保していこうというのがNPTの体制でございます。  今御指摘の、査察を強化すべきでないかという点については、そのとおりでございまして、イラクの問題がございましたことに直接の端を発しまして、今IAEAの方では、保障措置の強化ということの必要性が叫ばれ、かつそれのための具体的な措置をとりつつございます。既にとっておるものもございますし、特別査察の実施のメカニズムについては、とった方の一つでございます。さらには現在、より強化するという形で、九三プラスニという、九三年から二年間にという意味でございますけれども、そういう形での強化措置を具体的にとる検討がなされております。
  83. 東祥三

    ○東(祥)委員 もう一点は、近年プルトニウムあるいはウランなどの核兵器物質の密輸が国際的に横行していると言われております。このことを念頭に置けば、テロ集団が同様のことを企てることに対する対策が懸案となってくるのではないのか。  現在、国際社会においては、個人の刑事責任を追及できるようなちゃんとした枠組みはないわけでございますが、国際連合においては、国際刑事裁判所云々という議論はなされております。ますますこの面における重要性が必要になってきているのではないのか。この点についてどうなのか。三十秒でお願いします。
  84. 折田正樹

    ○折田政府委員 委員今御指摘のように、現在の国際社会におきましては、犯罪一般について直接国際的に刑事責任を追及するというシステムにはなっておりませんで、各国がその管轄の及ぶ犯罪についてそれぞれ責任を持って捜査、訴追を行うことが基本となり、国際的な対応は、このような各国の捜査、訴追を補完するものとして位置づけられているわけでございます。  そしてまた、委員今御指摘のように、国連それから国際法委員会の場でございますけれども、国際的に非常に重大な関心のある犯罪で、各国の国内司法制度のみでは十分に対応することができないものについて、個人に対して直接管轄権を有する国際刑事裁判所をつくろう、設立しようという動きがかねてからございまして、ごく最近も、実は四月の三日からきのうまで専門家の会合が行われてきたところでございます。  現在の国際社会が主権国家から成り立っておりますので、これはいろいろまだ非常に難しい問題があろうかと思いますけれども、一つの動きとして我々は受けとめておりまして、日本政府としては、こういう動きにも積極的に参画して、建設的な貢献をしていきたいというふうに考えております。
  85. 東祥三

    ○東(祥)委員 最後になりましたが、熱帯木材協定油汚染国際条約について質問します。  熱帯木材協定に関して、この条約には熱帯木材貿易の観点から、熱帯林保全と持続可能な経営を図るために二〇〇〇年目標が盛り込まれております。  まず、熱帯林保全と持続可能な経営というのは何なのか、どういう状況をいうのか、そして、それが二〇〇〇年までに本当に達成されるという、そのようなFS、フィージビリティースタディーがちゃんと行われているのかどうなのか、これが第一点。  そして次に、油汚染国際条約に関連してですが、あの湾岸戦争が起こったときに、私も現場に行ってまいりましたけれども、ペルシャ湾岸が油にまみれていた。どれだけの年数が費やされるかということについては当時は全くわからなかった。現在、湾岸の原油汚染の状況、そしてまた、それがどのような影響を与えているのか、IMO、国際海事機関等でいかなる評価がなされているのかということをお聞きいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  86. 原口幸市

    原口政府委員 まず最初の方の御質問、私の主管でございますので、お答えさせていただきます。  ITTOの九二年第十二回の理事会で「持続可能な熱帯林経営の評価のための基準」というのが採択されておりまして、それによりますと、「持続可能な森林経営とは、森林の固有の価値及び将来の生産性を必要以上に損なうことなく、また、物理的・社会的環境に望ましくない影響を必要以上に与えることなく、林産物及びその他の便益の継続的生産に関し、ある一定の明確に定義された目的を果たすために、永久林地を経営するプロセスである。」というふうに規定されておりまして、一応この基準に基づいて我々は持続可能な熱帯林の経営というものを考えておるわけでございます。  そこで、二〇〇〇年目標でございますけれども、これは二〇〇〇年までに果たして達成できるのかということでございますが、そもそも二〇〇〇年目標というのは、本来の趣旨は、二〇〇〇年までに熱帯木材貿易の対象を専ら先ほど申しました持続可能な供給源からの木材に求めるということが本来の目的でございますが、それが、実は交渉の過程で、そのままいわば義務的に入れるか入れないかということが生産国消費国の間で大きな争点となりまして、熱帯林保全に熱心な消費国側は、これをぜひそのまま入れたい、こういうことを主張したのに対しまして、生産国の側は、もしその目標を義務として規定すると、目標が達成できなかった場合には何らかの制裁を科されることになるのではないか、こういうような懸念があったわけでございます。それで、非常に反発いたしまして、交渉は非常に難航した次第でございます。そこで、種々交渉の結果、最後の妥協としてでき上がってきたのが現在この協定の第一条に書いてあるような表現、すなわち、目標を達成する能力を高めるために支援をするということになっておりまして、ということは、言葉をかえますと、あくまでこの二〇〇〇年目標は努力目標でございます。  したがいまして、現時点で我々が言えることは、二〇〇〇年目標をできるだけ達成するように努力すべきだ、そして消費国の側では、それなりに技術的あるいは財政的な資力というものが乏しい国も多いものでございますから、ITTOとしてできるだけそれに協力するということにとどまっておりまして、必ず二〇〇〇年までにこの目標が達成されるということは保証されてはおりません。ただし、努力はするということでございます。
  87. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間を超過して申しわけありません。終わります。
  88. 三原朝彦

    三原委員長 続いて、古堅実吉君。
  89. 古堅実吉

    ○古堅委員 最初に、熱帯木材協定について質問します。  熱帯林の保護のために不可欠なことは、伐採後の造林、増植であります。しかし、この条約は、日本など熱帯木材開発輸入する国に対して、伐採後の造林や劣化した林地の復旧を義務づけているわけではありません。しかし、熱帯木材の乱伐問題では、日本の商社などへの批判が相次いできた経過があるだけに、日本としては、乱伐を防止し、熱帯林の再生を目指すという条約趣旨を尊重して、開発輸入後の造林や復旧を自発的に実施すべきだと思います。  条約批准後は、具体的にどんな構想を持っておられるのか、大臣から基本的な施策について伺いたいと思います。
  90. 河野洋平

    河野国務大臣 議員、この協定に明示的な規定がないではないか、こういう御趣旨の御発言でございますが、まさに造林とか林地の復旧というものがこの協定目的一つでもございます。国際熱帯木材機関のこれまでの活動の中でも、造林、植林事業というものは重要なものの一つでございまして、こうしたことが行われてきたわけでございます。我が国も、こうした作業に積極的に、例えば資金的な協力を行うとか、あるいは専門家派遣というようなことを通じて支援、協力を行ってきているという実績がございます。  また、我が国は、環境分野協力政府開発援助の重点分野といたしておりまして、植林、造林を初めとする森林分野に対する二国間協力についてもこれまで実施をいたしております。ちなみに、九三年における実績は百六十九億円でございます。  今後とも、この分野に対します協力を積極的に行っていく所存でございます。
  91. 古堅実吉

    ○古堅委員 今ありましたように、この条約そのものが積極的にその方向を目指すものであるだけに、条約に明確に義務づけたというものではないのですけれども、我が国開発輸入にかかわるこれまでの非難がある、そういうときだけに、輸入後の造林、植林に責任を持って積極的に展開するということが強く求められているというふうに考えます。  次に、ODAに関して質問いたします。  さきに国連開発計画は人間開発報告書を公表しましたが、特徴的なことは、人間開発優先項目への支援の重要性が強調されたことであります。人間開発優先項目とは、初等教育、基本的な保健医療、安全な飲み水、十分な衛生設備、家族計画、栄養などのプログラムとされておりますが、報告書は、日本が行う人間開発優先項目に対するODAの低いことを指摘しています。  日本の二国間援助に占める割合と援助実施国の中での順位を説明していただきたいと思います。
  92. 平林博

    ○平林政府委員 お答え申し上げます。  今先生指摘のように、この国連開発計画が発表しました九四年版の人間開発報告書では、いわゆる人間開発の優先項目への援助の割合は日本は三・四%だ、こういうふうに記載されております。  ただ、これをよく調べました結果、一つは計算上の誤りがあります。技術協力を通じまして行ういろいろな援助の中でこの人間開発の優先項目が多いのですが、分母には技術協力が計算されているのですが、分子の中には入っていないということがわかりました。その結果、この数字が極めて低くなっているというのが第一点でございます。  それから第二点は、この優先項目なるものは、国際的に合意された定義がないために、計算上客観性に欠けるということがわかりまして、日本のみならず、スウェーデン、ドイツ、イギリス等からも指摘がございまして、UNDPは来年からこの基準は使わない、こういうことを各国に通報いたしました。  今、客観的に申し上げましてこれに一番近い数字で国際的に認められておりますのは、OECDの開発援助委員会、DAC、これの数字でございますが、社会インフラ分野という分類がございます。ここでは、日本の二国間ODAに占めるこの面の分野の割合は一七・五%ということになっております。また、DAC諸国全体の社会開発分野に占める日本の社会開発分野の割合、これは一九・五%で、援助国の中の五分の一を日本負担している、こういうことになっておりますので、決してこの分野日本が見劣りするということではないであろう、こういうふうに我々は考えております。
  93. 古堅実吉

    ○古堅委員 いろいろ数字の扱いが、計算違いがあったなどとかいったふうなこととの関連の説明はございましたが、仮に、そういう説明の限りにおいてそうであるというようなことであっても、問題がある点について指摘しなければいけないと思います。  日本の社会開発援助は、ODA白書によりますと、社会インフラ分野への実施割合が九三年は二二・六%という数字になっていますが、その内容が問題なのです。というのは、日本の場合、政府貸し付けの割合が高く、九三年は五〇・五%と半分以上になっています。申すまでもなく、人間開発報告書の人間優先項目というのは最貧国の救済というところに主眼があるわけで、ODA白書の社会インフラ分野というのが人間開発優先項目に相当するというのであれば、贈与を中心にすべきだと考えます。貧困な諸国の人間開発項目への援助が利子つきの政府貸し付けというのでは問題があるわけで、筋が通らないと思うのです。社会インフラ分野への援助は贈与を中心にしていくべきだと思いますが、大臣、その基本点について御意見を伺いたい。
  94. 平林博

    ○平林政府委員 大臣からの御答弁の前に、事実関係等を御説明申し上げたいと思います。  まことに今先生おっしゃいましたとおり、社会的なインフラとか人間開発は大変大事でございますので、絶対的にこれをふやすのみならず、贈与を中心にできるだけそういう方向で努力するということは、我々もそのとおりだと考えております。幸い、この分野での贈与実績は、年々と絶対額で増加いたしております。九一年は十一・三億ドル、九二年は十二・四億ドル、九三年は十七・一億ドル、こういうものが社会開発分野における贈与部分でございます。他方、借款部分もございますが、できるだけ借款につきましても、金利を一番低い、例えば一%だとか、償還期間は三十年だとか、相手が非常に貧しい国の場合にはそういうような配慮をいたしておりますので、これはこれなりにいろいろと役に立っているのではないかというふうに考えます。  いずれにしましても、大事な点でございますので、これからもおっしゃるような方向で努力をすることが必要だと事務当局としても考えております。
  95. 河野洋平

    河野国務大臣 援助国の中にいわゆる援助疲れあるいは援助離れといいますか、こういった傾向が見られるというふうに指摘をされるところでございますが、しかし、援助を受ける国、大変貧しい状況にある地域、国あるいは人々、そうした地域との間の格差というものは大変広がっているというふうにも伝えられております。こうした人々が減っているわけではないのでございまして、私どももまた援助のためにいろいろと努力をしなければならないと思っておりますが、議員御指摘のように、どの地域にどういうタイプの援助を行うことが最も適当であるかということについては、一つ一つケース・バイ・ケースで考えていく必要があるだろうというふうにも思うわけでございます。  十分注意深く調査をし、先方の希望にも耳を傾け、効果のある支援を行うということに徹したい、こう考えております。
  96. 古堅実吉

    ○古堅委員 指摘した方向に今後も努力するという御答弁は大変重要だというふうに思いますし、ぜひそういう面で積極的に進めてほしいと思います。  最後に、外務大臣は、クリントン大統領が広島、長崎への原爆投下を正当だと発言したことに対して、参議院外務委員会で抗議はしないというふうに述べられたようであります。  あの原爆投下はアメリカがソ連を抑え戦後の世界支配をにらんだものであったということは、当時のバーンズ国務長官発言を初め、文献的にも明らかになっていることであります。クリントン発言は、今もなお筆舌に尽くしがたい深刻な被害があることを承知での発言であり、これに抗議しないということは、唯一の被爆国の外相のとるべき態度かということが問われる重要問題です。  しかも、この原爆投下正当化発言は、クリントン政権がねらう核不拡散条約の無期限延長が核兵器使用政策を前提としたものであることを意味することが明らかで、それに抗議しないことを表明したことは、そうした核兵器使用への容認表明とも言える問題ではありませんか。  かかる重大問題で政府は抗議を一切しないつもりであるのか、改めてこの場をおかりして大臣に伺いたいと思います。
  97. 河野洋平

    河野国務大臣 戦争が終わって五十年たって、今もなお広島、長崎にはあのときの原爆被爆による原爆症で苦しんでいる人たちが数多くいるということを、私はこの目で見ております。そうしたこと、さらには日本人のこの問題に対する国民感情というものをアメリカには伝えたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  我々はこの五十年間、それぞれの立場があり、しかしその立場を超えて、協力し合ってここまでやってきたという状況も一方にはあるわけでございまして、先方に日本人の国民感情を伝えるということと同時に、両国の立場、考え方、今日までの歩み、そういったものもよく考えなければならないのではないかということを先般申し述べたところでございます。
  98. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りましたが、クリントン大統領の原爆投下正当化発言は、アメリカが今後も必要なときには核兵器の使用も辞さないという政策と密接に結びついたものであります。極めて重大と申さねばなりません。ですから、国民感情をお伝えするなどとかいう穏やかなものではあるまい、そう思います。明確に抗議を表明すべきだということを強く指摘して、終わります。
  99. 三原朝彦

    三原委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  100. 三原朝彦

    三原委員長 これより両件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、千九百九十四年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  101. 三原朝彦

    三原委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  次に、千九百九十年の油による汚染に係る準備対応及び協力に関する国際条約締結について承認を求めるの件について採決いたします。  本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  102. 三原朝彦

    三原委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両件に関する委員報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  103. 三原朝彦

    三原委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  104. 三原朝彦

    三原委員長 次回は、来る十九日水曜日午後一時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十八分散会