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秋葉委員 ありがとうございました。
さっきの関西の大震災と
きく六号の
失敗、共通の
教訓に入るのですけれ
ども、いろいろ私も考えたのですが、例えばマスコミにあらわれたいろいろな言葉を拾ってみると、
専門家の言うことは信用できないとか、
専門家というのは、私もある分野の
専門家ですから、私も含めて申し上げているのですが、そういうこともありましたし、それは極端にしても、さまざまな提言がありました。
その中で、余り取り上げられてはいませんけれ
ども、例えば先端科学、華々しく注目されている科学とか先端の分野とか、そういったものに比べて忘れられてしまった科学であるとか、あるいはもう常識の部類に入ってしまった科学
技術的な
成果とかいうものを、当たり前のことだけれ
ども大事にするというのが今回の
教訓の最大のものかなというような気もしています。
例えば、関西大震災の中で亡くなった方の非常に多くの方々は、木造の非常に古い家に住んでいた。これはもう科学
技術の分野ではなくて、地震の予知ができなくても、ちょっと大きい地震が来たら、ああいう家はつぶれるだろうというような家に住んでいた人が実際にかなり亡くなられた。これはもう常識をそのまま、私たち自身あるいはそういう家に住んでいる人、政治、科学者、そういったものもすべて含めて、社会全体として常識を大事にしていれば、かなりの
部分は救えたのじゃないかという気持ちが非常に多くしています。
今回の
きく六号でも、例えば
真空中で
摩擦が多くなる、これはやはり常識ですよね。それから、
ロケットの中でいろいろな
振動があるというのも、これも常識ですよね。しかも、その
振動が
影響を与える力というのは
振動の大きさだけではないということも、これまた常識ですよね。それから、いろいろな可動
部分について、
ばねが非常に不安定な工学的な要素であるというのも、これまた常識ですね。
ばねを固定化するためには大体通常溝を掘るというのも、これもまた常識ですね。それから、わからないことは事前に小さな
実験をやってみるというのも常識ですし、経済的には、大きな損失を伴うものについては保険を掛けておくというのも、これも常識ですね。そういう常識を何
一つやっていない。
というところで、予知できなかったという先ほどの
調査委員会の結論だというふうにおっしゃいますけれ
ども、これほどたくさんの常識が無視されてしまっていたということを、やはり重く考えなくてはいけないのではないか。そういう
意味で、じゃ、こういった常識をきちんと
システムの中に取り込んでいくにはどうしたらいいかということを考える上で、やはり責任という形で決着をつけることが将来への推進力になるのではないかということで、先ほどの私の責任についての提言を申し上げたわけです。
時間がありませんので、
最後に
一つだけ。
我々が見落としからなところで非常に重要なことが、実は地球の運命そのものも変えてしまうかもしれないというような例として、恐らく御存じの方が多いと思いますけれ
ども、
一つ最近アメリカで行われた
実験の結果について申し上げますけれ
ども、テキサスで、バイオスファイアという名前で呼ばれているのだと思いますが、
実験が行われました。
これは、かなり広いスペースをとって、完全に地球とは
分離した閉じた
システムをつくる。その中に水も植物も動物も、そして人間も入ってしまって、空気の流通もしない。太陽が外から来るというのだけは防げませんけれ
ども、ともかく完全に孤立化した中に人間が十人ぐらい入って、水の供給も受けない、エネルギーの供給も受けない、閉じた
システムとして隻ば一年間この中で暮らすという
実験をやりました。これは、箱庭みたいなものをつくったり、あるいは池などで閉じた
システムをつくるというのは非常に難しいことはよく知られているのですけれ
ども、何とかやろうということで
実験をしましたけれ
ども、これは
失敗いたしました。
失敗した理由は幾つかあるのですけれ
ども、その中の非常に象徴的なものを
一つ申し上げますと、なぜこの
実験がうまくいかなかったかというと、ミミズ、あの土の中を掘っているミミズの
研究者が、実際に働ける人が全
世界じゅうに六人しかいない。今度は閉じた生態系をつくるに当たって非常に大事なのは何かというと、土壌の中の細菌、土壌を更新して土壌の中に酸素を取り入れて、それを新しいものにしていかなくてはならない。その中でやはりミミズが非常に重要な役割を果たすのだけれ
ども、そのミミズの
専門家がいないために、結局土壌の更新が行われなかったということでこの
研究は
失敗した。
だから最先端の科学で、実は非常にばかにされていると言ったら語弊があるかもしれませんけれ
ども、ミミズのような学問というのは現在の生物学の中ではもうはやらない。分子生物学でないと生物学ではないと言う人さえいるような世の中ですけれ
ども、そういった風潮の中で、実はこの生態系のかぎを握っているのがミミズかもしれないというような例も往々ございます。
実は、そういった根本的な問題に対して、今回の
きく六号も関西大震災も私たちに警鐘を与えているのではないかという気がして、ちょっと時間が短いものですから、もっと
専門家の方に深い議論を伺った上でいろいろと議論させていただきたいと思いましたけれ
ども、とりあえずの問題提起だけさせていただきました。
どうもありがとうございました。