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小林正君 私は、新緑風会を代表いたしまして、
平成四
年度決算審議に当たり、
村山政権の
成立経過及び
政治姿勢を中心に
村山総理に御
質問を申し上げます。
六月政変によって誕生した村山連立政権は、五五年体制の
崩壊の象徴、ハト派、リベラル政権と喧伝される一方、五五年体制を演出してきた影の主役が表にあらわれた国対政権であるとの
指摘もあります。
昨年八月以降、野党に転じた自民党は、連立政権の最大の政治課題であった政治
改革を中心に据え、連立与党の離間を画策し、政権奪還の攻勢を強めました。
この中で、本年一月二十一日、一本院において政治
改革四法案が否決されましたが、これは小選挙区つぶしか共通の利益だった自民党と社会党左派の綿密な連携の結果であったことは言うまでもありません。以後、社会党の一部は、一方において連立政権にかかわりながら、他方自民党との新たな関係を模索し、羽田政権誕生の
経過において改新問題を奇貨として連立離脱を図ったのであります。
以後、少数与党となった羽田連立政権の社会党の政権復帰への協議は難航を余儀なくされましたが、この
過程で、一方において自・社・さ間で村山首班へのシナリオが国対的な手法で進められて、六月末政変となったのであります。
前
国会において、社会党
委員長である
村山総理は、日米安保条約堅持、自衛隊合憲を表明し、非武装中立論について歴史的役割を終えたと述べました。これらはいずれも旧連立における政権協議を困難ならしめてきた課題ですが、この大転換の理由を、情勢の
変化、
国民世論の
動向に沿うものとしています。しかし、旧連立政権の社会党の閣僚は引き続き自衛隊違憲の立場に立っていたことを思えば、この政策転換は、表の自・社・さ政権協議とは別に村山首班と
基本政策の大転換がセットになっていたと見なければならず、これこそまさに密室での国対的手法と言わなければなりません。
こうした社会党の政策転換について、ある論者は、倫理的、知的退廃以外の何物も感ずることができないと述べています。また、別の論者は、野党のときに掲げた政策は政権をとったときにいよいよ
実現のチャンスがめぐってくるのであって、政権をとったら政策を変えてしまうというのは
国民への欺晴、政党政治の否定であると述べています。
本院における村山首相のこれら一連の
発言に対して、してやったりと言わんばかりの自民党席からの
拍手と、これとは対照的な社会党席の異様な沈黙は、何を物語っていたのでありましょうか。
権力欲のみによって野合した自・社・さ国対政権の成立について、一部マスコミをも動員しての強権的○○ラインよりはましな選択との言説が流布されました。そして、それがあたかもみずからの正当性の根拠のようにも言われましたが、今
指摘した自・社・さ連立政権成立と
基本政策大転換の
経過こそは、まさに議会制民主主義破壊の密室的、強権的手法と言わざるを得ないのであります。
旺盛な批判的精神をお持ちの社会党の皆さんが、政権掌握とともに重要政策について沈黙を余儀なくされ、思考停止、判断中止の
状況に追い込まれているのではないかと懸念するものであります。
村山総理、以上私が述べた疑問や批判は、この連立政権に対して
国民が抱いているものであります。
これは十一月十三日付の新聞の投書欄「五五年体制」の「体制の
崩壊で消えた民主制」と題して、前段、五五年体制における社会党の果たした一定の役割を評価しながら、
しかし社会党はその貴重な財産を自民党等との野合政治によって捨て去った。自衛隊の違憲論を放棄し、日の丸、君が代を容認した。その容認の仕方は組織の末端から
国民の声を吸いあげて十分議論せず、トップダウンのごり押しであった。また
消費税の決め方でも、初めに数字ありきではなく、
行政改革による節税効果を検討した上で税率を決めるべきだと主張しながら、政権党になるや否や初めに数字ありきを、組織の議論の積み上げもなく容認してしまった。ここに民主的手続きはなかった。と述べているのであります。
さきの臨時党大会に出された「当面する政局に臨む我が党の
基本政策」や「
基本政策転換QアンドA」が
国民の常識の批判にたえ得るものとお考えなのでしょうか。見解を承りたいと存じます。
次に、村山連立政権の発足に当たって私たちが最も懸念したことは、数の論理や国対的手法が復活するのではないかということでありました。また、社・さの政策協議を自民党が丸のみする形で成立した政権ゆえに、各党間において政策的に矛盾する諸問題があいまいにされ、政権維持のため先送りされるのではないかということでした。
税制改革における行革、福祉政策課題、WTO
農業政策など、この間の
経過はそれを裏づけるものとなっており、まさに先送り検討研究
内閣と言われるゆえんであります。
また、数の論理による手法についても枚挙にいとまがありません。
今臨時
国会の冒頭における会期幅をめぐる問題、各
委員会における野党への質疑時間の配分についての野党優先の先例の無視、さらに、十一月九日、衆議院
税制改革特別
委員会における強行
採決は、法案に盛り込まないまでも、今後の課題である物価、内外価格差、規制緩和、タックス・オン・タックスをめぐる諸問題について不可欠な附帯
決議もなされないという結果を招来したのであります。
連立政権の責任者の一人として、このような強権的な
国会運営についてどのようにお考えなのでしょうか、伺います。
さらに、次の場合は、何でも足して二で割る国対的手法のあしき例の最たるものであります。
「学校における国旗・国歌の
指導について」と題した
政府統一見解について伺います。
私は、前
国会における
村山総理の日の丸・君が代についての
答弁は、本問題を政治の場で責任を持って解決するという姿勢を示したものとして、その見識を評価するものであります。しかし、九月の社会党臨時大会において、文部省を徹底的に監視するという
方針が決められ、今
国会での論議の中から
政府統一見解が出されたものであります。
私は、日の丸・君が代が、立法
措置など政治の場での解決でなく、
指導要領を通して学校教育で始末させるといった従来の
対応が結果として学校現場を混乱させてきた経緯から、
総理の
答弁によって解決への条件が整ってきたと思っておりました。教育の条理に照らして、教育
指導上の課題として
指導を進めていくことが必要である事柄について、児童生徒の内心にまで立ち入らない
指導などというものが本来あってよいものかどうかということであります。教える側の教師の立場をも無視したものと言わざるを得ません。
私は、このような悪文が教育界に存在し続けることを恥とするものであり、この統一見解については撤回すべきであると思います。過去の
答弁を踏まえ、
総理の御見解を求めます。
昨年八月に誕生した細川連立政権は、非自民各会派が総選挙後の連立政権づくりで
基本合意に達し、
国民の信託を経て多数派を形成し成立した政権であります。これを引き継いだ羽田政権も、同じ枠組みによって生み出された政権であります。しかし、六月政変によって出現した
村山政権は、
国民の意思とは無縁な政権と言わざるを得ません。
直近の世論
調査の傾向では、政党支持なし層の増加が目立っています。これは、
国民の意思とは無関係に政権が力の論理だけで枠組みを変えることに嫌気した結果だと思います。この傾向が強まることは、政党を基盤とする議会制民主主義の危機と言わざるを得ません。
今、五五年体制を実質的に終わらせるための新しい政治の枠組みづくりが最終局面を迎えています。衆議院の統一会派
改革と連携する参議院の諸会派が一体となって、新進党に結集することになりました。また、新民連を中心に第三極を目指す動きも活発化しています。
こうした情勢を踏まえ、私は、政権の正当性なき
村山政権は、政治
改革の完結後速やかに
国民の信を問うべきだと思います。首相周辺からは、政治の空白は許されない、
予算編成優先など、政治課題を理由に、党利党略の立場から先に送ろうとする
発言が目立ちます。しかし、今、何にも増して最優先の政治課題は、
国民の政治不信を取り除き、政党政治を基盤とする議会制民主主義が信頼を取り戻すことではないでしょうか。
総理において、こうした立場を踏まえ、憲政の常道に立ち返って解散し
国民の信を問う御
決意がおありかどうかお伺いをし、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕