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上杉光弘君 私は、自由民主党を代表して、
WTO協定及び
関連国内対策について、
総理大臣及び
関係大臣に若干の質問をいたします。
昨年の十二月十四日は、
米自由化反対を三回も決議した国会に何の相談もなく
日本農業の命運を大きく変える
ウルグアイ・ラウンド農業合意を受け入れた日として、全国の農家はもちろんのこと、我々にとっても衝撃を受けた忘れることのできない日であります。
あれから一年近くたちますが、
細川内閣において
農業合意の受け入れを初めとして内外の重要問題が権力の二重構造によって取り進められ
日本の
政治が混迷の一途をたどったことは、記憶に新しいところであります。
村山連立政権が誕生してから半年になりますが、
民主的手続を重視した
政策調整のもと、
政治主導により
税制改革、
日米包括協議等の焦眉の
重要課題に決断を下し着実な前進が図られたことは、各位御案内のとおりであります。
WTO協定の
取り扱いは、旧
連立政権の
懸案事項として残された最
重要課題であります。
細川内閣の単なる後始末ということではなく、我々は責任ある
政治を行うため、
農業関係を初め、国民各層の幅広い意見を求めつつ真剣に検討してまいりました。
ウルグアイ・ラウンド交渉の
経過、
協定の
内容については幾つかの指摘された問題がありますが、当時の
内閣の責任といえども、
世界に向かって一たん受け入れを表明した以上、
主要国日本がこれを覆すことは、国際信頼をなくし国益を大きく損なうことになるのであります。事は百二十五カ国も参加した多角的
貿易協定であり、しかも、つまみ食いが許されない一括受諾方式に同意していることであります。
村山
内閣の所信表明における「外交は継続、内政は改革」の方針のもと、新しい
貿易秩序の中で
日本農業の再建にも万全を期していかなければなりません。そのために、
協定受け入れによる国内への影響がないように
農業、農山村の対策を確実に取り組むためには、従来の施策の発想とその枠にとらわれることなく、抜本的な対策の方向づけについて我が党を初め与党三党は全力を挙げてこれに取り組んできた次第であります。
WTO協定への対応は、人類の生命線をいかに守っていくかという重大事であり、当面の政策
課題に対応することはもちろん、国を挙げて長期展望に立った受け入れ体制の
整備が必要であります。
農業を初め影響を大きくこうむる
分野に
政府が責任を持って万全な施策を講ぜられるかどうか、それが今まさに問われているところであり、このことにつき、まず総理の決意を伺いたいと存じます。
次に、
WTO協定全般に関し質問いたします。
WTO協定について関係国、議会の審議の状況を見ると、議会の
承認を得て批准している国はいまだ一部にすぎません。特に米国の動向が大きな影響を及ぼすことは、過去のITO、国際賀易機関がとんざした経緯を見ても明らかであります。
米国は中間
選挙に伴い議会勢力が大きく変化し、上院の有力議員に採択を来年まで延期する動きが見られ、果たして十二月初めまでに上下両院の
承認の見通しがあるのかどうか。欧州連合でも、いまだ
協定自体は審議中であります。主な関係各国の状況がどのようになっているのか、外務大臣に伺いたいと存じます。
いずれにしろ、
我が国が
協定の批准を行う場合は米欧等
主要国の議会での
承認状況を十分見きわめて対応すべきであると考えますが、あわせて答弁をお願いします。
去る十五日、ジャカルタで開かれましたAPEC、アジア・太平洋経済協力
会議では、共通決意宣言を採択し、先進国は二〇一〇年までに、途上国は遅くとも二〇二〇年までに域内の
貿易・投資の自由化を実現する目標年限が宣言に盛り込まれました。しかし、ボゴール宣言の
内容は、
貿易の自由化目標に向かっていかなる方法、手順で進むのか具体的
内容は先送りされており、すべて今後の取り組みいかんにかかっております。
来年
日本で開催されるAPECの
議長国である
日本政府としては、WTOとの関係も踏まえてどのように指導力を発揮されるつもりか、わかりやすく総理の見解をお聞かせ願いたい。
次に、
ウルグアイ・ラウンド関連国内対策について質問いたします。
過去の自由化について反省しますと、例えば木材の自由化のときには、国内対策に万全を欠き、
我が国の林業と木材業は努力と工夫ではどうにもならない打撃を受け、立ち直ることのできない状況にあります。牛肉の自由化においても、自由化するかしないか、和牛の国内対策をどうするかが論議の中心となって、国内の養豚業、ブロイラー経営にどのような影響が出てくるのかしっかりした見通しと対策が十分でないまま自由化に踏み切った結果、豚肉よりも安い牛肉が国内にあふれ、牛肉、豚肉、ブロイラーの
価格を暴落させて壊滅的状況に追い込もうとしております。国政は、その責任において、少なくともこのようなことを繰り返してはならないのであります。
米の
ミニマムアクセス導入、乳製品等の
関税化による悪影響のみならず、国内の果物・野菜類等に
関税率の引き下げが悪影響を及ぼさないよう、その対策に万全を期すべきと思うが、
農林水産大臣の答弁を求めます。
今回、
政府は与党三党との
政治折衝の結果、先月二十五日、緊急
農業農村対策本部において、
平成七年度から六年間、総額七兆二千百億円に上る
農業合意関連対策を決定いたしました。
問題は、これらの対策が予算としてどのような形でどの程度
確保されるかであります。すなわち、
我が国の予算編成は単年度主義であり、
ミニマムアクセス中六年間の投資規模と単年度予算との整合性をどう図るのか、総理にお尋ねをいたします。
さらに、総事業費六兆百億円のうち本年度の補正予算や来年度の予算において従来の農林関係予算にどの程度国費として上積みされるのか、いわゆる真水分が十分
確保されないと見せかけの対策という批判を招くことになります。真水分の十分な
確保につき総理の方針を確認いたします。
また、二十一世紀へ向けて、
農産物の
需給ビジョンや地域の特性を生かした
農業、農山村の
振興整備計画の策定を早急に推進し、農家が安心して営農にいそしめるようにするとともに、新しい対策をばらまきと言われないように効果的に推進していただくことが重要であると考えますが、
農林水産大臣の見解を伺います。
次に、米問題について質問いたします。
米過剰が大変心配される中、
主要食糧の
需給及び
価格の安定に関する
法律案において、米の
価格の暴落に対する予防、歯どめが大丈夫かどうかということであります。新しい
生産調整システムを初め
備蓄や
調整保管等、いろいろな工夫がなされているようでありますが、米の
需給全体については国が責任を持ちつつ関係者を誘導していくことが大切であります。
特に、国があらかじめ定める
生産調整の指針に沿って
生産調整が行われるかどうか、それによって
需給や
流通に大きな影響が出てくることから、
政府買い入れ価格や
生産調整助成金について十分意を用いることがポイントでありますので、あわせて答弁を願います。
米の
ミニマムアクセス導入により意欲をなくした農家の耕作の放棄は、特に中山間地域の場合を含め、自然災害発生の要因となりかねません。同時に、自然の
機能としての水の浄化と保水力、貯水力の
機能を損ないかねないのであります。このことは自己完結できない都市
機能に悪い影響が必ず出てくると判断されますが、
農林水産大臣はどのようにとらえておられますか。
国土の保全、
管理にも耕作放棄は重大な影響を及ぼすと思うが、いかに認識されておられるか、あわせて答弁を願います。
協定の受け入れにより最も大きな影響を受ける中山間地域は、このままでは高齢化が加速的に進み、後継者がいないため、数多くの集落が消滅する可能性が出ております。全国十四万集落の実情に応じた定住化や集落
整備を図っていくには、従来の農政の手法にとらわれず、各省庁が垣根を越えて、発想の転換を図り、農山村の生活
環境、生活基盤の
整備等を
計画的かつ総合的に推進するための法体制の
見直しか緊要であります。
ヨーロッパのデカップリング的思想を取り入れ、定住化を確実なものとし、集落
機能を高め、国家存立の基盤である国土、
環境を守るために農山村
計画法とも言うべきものがぜひとも必要と思いますが、
総理大臣の見解を伺います。
農山村対策、農林業対策は、すなわち都市対策でもあります。国家百年の大計に立って、国民的なコンセンサスを得つつ、国家社会の中に農林業や農山村を明確に位置づける必要があります。
今こそ、
我が国の
農業を守るための発想の転換によるダイナミックな政策的方向づけの絶好の機会であります。
我が国は、二千年の歴史の上に
日本民族の英知と努力によって瑞穂の国を築き上げてきました。どんなに時代が変わろうとも、国土を取り巻く自然
環境が変わらない以上、いささかなりともこの国づくりを損なうようなことがあってはならないと確信をするものであります。
このことをあすの
日本国と
日本民族のために肝に銘じて取り組んでいただくことを強く強く求めて、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕