○横尾和伸君 私は、公明党・
国民会議を代表して、
国民年金法等の一部を
改正する
法律案に関し、
総理大臣、
厚生大臣及び関係大臣に質問をいたします。
旧連立与党の私たちは、昨年の夏、非自民の旗を掲げて四十年間の自民党一党支配体制を打倒し、新しい政治の流れをスタートさせました。そして、政治改革とともに取り組んだのがこの
年金改革でありました。
痛みを伴うことは避けたい、しかし人気取りのために
国民の未来を切り売りすることこそあってはならない、やむにやまれぬこのような思いで、悪戦苦闘を重ねた結果、昨年年末に旧連立与党の私たちは
年金改正法案をまとめ上げ、その後
国会に提案をしたのであります。多くの困難な問題を抱えているため、もとより百点満点などと言うつもりはありませんが、これが今回の
法案の生い立ちなのであります。まず、この点を思い出し、肝に銘じ直していただきたいのであります。
そもそも、超
高齢化社会に向かって確実に走り出している現在、このような大幅な
年金改正の断行をしなければならないほど
年金制度を切迫させた原因はどこにあったのでしょうか。
我が国の
年金制度のスタートは、
掛金と
支給額がバランスする完全積立
方式でありました。これがインフレを契機に
昭和二十九年にいわゆる賦課
方式に改められるなど、多くの変遷を経て今日に至っておりますが、特に
昭和四十八年の
制度改正による
年金支給額の倍増を皮切りに、頻繁に
支給額の増額が図られてまいりました。しかも、これらの増額は、
保険料をほぼ据え置いて行ったため、
保険料に見合った
支給額というバランスとはほど遠いものになってしまいました。
年金の
支給額さえ上げれば人気はとれる、その結果生ずる
財源の不足は将来の
世代に
保険料として
負担させるという
考えてあります。しかも、将来の
世代が支え切れないほどの重荷になることが明白であります。
まさに
国民の未来を切り売りして人気をとる、これがこれまでの政治の流れであり、中でもその骨格をなしてきたものこそ、痛みを避けて人気取りに終始してきた五五年体制だったのではないでしょうか。
このたびの
年金法の
改正は、苦しみながらも未来のためにやるべきことはやるという意志を貫くことによって、私たち旧連立与党が作成した原案がほぼそのままの形で合成立しようとしているのであります。
私たちは、法
改正後の
年金の
支給を早くしたい、おくらせたくないとの思いでいっぱいであります。
国民の大多数は、この
年金の将来にさまざまな不安を抱いております。
高齢社会に向け、この
年金法を
改正し
国民の不安を解消することが急務であるにもかかわらず、今回の
改正をここまでおくらせたのは、その大きな原因の一つは、現在の
政府・与党、自民党の態度にあったのではないでしょうか。
本年六月の
衆議院における提案理由説明後の
審議入りを強く阻んだことを、よもや忘れはしないでしょう。そのために、前内閣での
法案成立が実現しなかったのであります。また、今
国会の開会も大きくおくれました。まさにそれは
政府・与党の責任であることを忘れないでいただきたい。
とはいえ、私たちは早期成立を願う
国民の声を第一義に
考え、相応の
審議時間の
確保を
前提に
審議促進に全力を挙げることを表明するものであります。
まず、
国民年金の
空洞化について伺います。
平成四年度の
社会保険庁の事業年報によれば、
保険料を
免除されている者は一四・七%、未納者一四・三%で、
加入者の約三割の者が
保険料を払っていないことが明らかとなり、本年八月に発表された
平成四年度
公的年金加入状況等調査では、都市部の二十歳代を中心に百九十三万人の
制度未
加入者がいることが明らかとなっております。さらに、第三号被
保険者の未
届け者も四十三万人に上ります。このままでは、本格的な
高齢社会が訪れたときにかなりの無
年金者または低い
年金額しか受給できない者が生じることは確実であります。
現在、
高齢者収入の五〇%以上は
公的年金によって支えられております。将来にわたって
基礎的な保障をする
制度の根幹が揺らぐことのないよう、未加入や未届け出のない真の
国民皆
年金制度の実現が期待されております。
総理、この問題にどのように対応するお
考えか、御所見を伺います。
次に、
国民に対する情報提供について伺います。
国民に対する情報提供は、特に
国民年金にとって重要な問題であります。二十一
世紀を
目前にして、ほとんどの
国民が
国民年金の行き先が見えず大きな不安を抱えているのが実情であります。
国民年金に未加入の人、
保険料を払いたくない人、拒否する人が少なからずいるのは、将来の
年金制度に不安を持ったり、
保険料の
負担感が大き過ぎると感じているからではないでしょうか。
国民が
年金制度に関する理解を深め
年金制度を信頼できるようにするためには、十分な情報提供が必要であります。この点についての
総理大臣及び
厚生大臣の
見解を求めます。
さらに、
年金を含め
社会保障
制度に関する理解を深めるため、小学校、中学校、高等学校、大学における
社会保障
制度に関する教育の充実が必要であります。福祉教育を体系的に
実施し、知識のみならず、実際に福祉活動に参画するなど体験学習を行うことも大切であります。また、大学教育においては、
社会保障講座の重視、
社会保障研究の充実に努める必要があると
考えますが、この点について
総理大臣、
厚生大臣及び文部大臣の
見解を伺います。
今回の
改正で残された大きな
課題として、
基礎年金の
国庫負担率の問題があります。
率の
引き上げの明示等について、これまで与野党の厳しい攻防があり意見の
調整ができなかったと聞いておりますが、その結果、与党の主張として附則第二条が追加
修正されたわけであります。しかし、附則第二条は極めて難解な表現であり、何を言っているのかよくわかりません。
そこで具体的に伺いますが、附則第二条は、
国庫負担率を
引き上げないという結末になる可能性はあるのでしょうか、ないのでしょうか、
総理の明快な答弁を求めるものであります。
基礎年金の
国庫負担率については、自民党は本年六月の
年金改革
検討小委員会の中間
報告で、段階的な
引き上げを明確に提案をしております。また、
社会党も本年五月の
高齢社会福祉プログラムの中間
報告において
国庫負担率を三分の一から二分の一へ
引き上げると明示しているのでありますが、これに対し、与党提案として
修正された附則第二条ではこのことが全く示されていないのであります。なぜ従前どおり
国庫負担率の
引き上げが示されないのか、大変不思議に思うわけであります。
附則第二条で
引き上げを明示できないのはなぜだったのか。立場が変わると政策も変わるのでしょうか。
社会党の代表でもある
総理、及び自民党を代表する河野副
総理、並びに大蔵大臣及び
厚生大臣に、その理由を明らかにしていただきたい。
国民のだれもがわかる明快な答弁を求めるものであります。
昨今の
社会情勢として、サラリーマン等の実収入が
横ばいまたは減少していることが明白になっております。先行きの不安が募る一方で、さらに今後、
消費税率の
引き上げや
公共料金の
引き上げ凍結解除を村山政権が打ち出すなど、
国民の側の
負担の増加ばかりを担保しようとする政策がメジロ押しの
状況であります。今回の
改正による
年金の
掛金の
引き上げも例外ではありません。
このような
状況において、私は、
国民の立場から、
年金の将来像を明確に示す必要があるとの
認識に立ち、
財源問題を踏まえた上で国庫
負担の
割合を二分の一を
めどに段階的に
引き上げること、このこと自体を
法案の中に明示することが最も賢明で責任ある方策であると申し上げたいのであります。
この点に関し、村山
総理の所見を明確にお答えいただきたい。
国民の側の
負担ばかりを担保することが村山政権であるということであれば、私はそれは誤りであると断言して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣村山富市君
登壇、
拍手〕