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1994-10-06 第131回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十月六日(木曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成六年十月六日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  第二 国務大臣報告に関する件(外務大臣の   帰国報告)(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      ―――――・―――――
  2. 原文兵衛

    ○議長(原文兵衛君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  日程第二 国務大臣報告に関する件(外務大臣帰国報告)(第二日)  以上両件を一括して議題といたします。  去る九月三十日の国務大臣演説及び去る四日の国務大臣報告に対し、これより順次質疑を許します。石井一二君。    〔石井一二君登壇、拍手〕
  3. 石井一二

    石井一二君 私は、新緑風会を代表して、さきに行われた村山総理所信表明演説に関連し、当面の諸問題について総理並びに関係閣僚に若干の質問をいたします。  この夏、我々日本国民は暑い暑い長い長い夏を経験いたしましたが、その長い夏の中で一つの熱い熱い戦いが交わされたのでございます。それは、申すまでもない、皆様方よく御存じの愛知県における参議院再選挙でございました。  皆さん、その結果はいかがでございましたでしょうか。数の上では優勢が予想された自由民主党日本社会党連合軍が三十八万票余りの大差で惨敗し、きょう我々は、この場に新進気鋭参議院議員都築譲君を我が新緑風会の代表としてお迎えしているのであります。  皆さん、このことは一体何を物語るのでありましょうか。最近の政治情勢を見つつ国民の多くは、日本社会党豹変ぶりと政権にすがりつきたさのなりふり構わぬ自由民主党野合ぶりにあいた口がふさがらない方も多いのではないでしょうか。そして、その証拠がこの参議院愛知選挙区の再選挙の結果であります。  以下、当面の諸問題について順次質問をいたします。  まず最初は、村山内閣基本的政治姿勢についてであります。  そもそも村山内閣の基盤となっている日本社会党の唱えてきた主義主張は、かつて十五代、三十八年の長きに及んだ自由民主党の政治に対して、何でも反対社会党といった態度で臨んできたのであります。  古くは講和条約反対を皮切りに、日米安保条約反対在日米軍基地反対自衛隊達意、そして円の丸・君が代及び原子力発電反対と続き、さらに消費税も反対、PKO活動に至っては、三十二時間余りの本院における牛歩戦術に加えて、村山絵理、あなた御自身を含む百四十一名の衆議院議昌が辞職願まで出しての反対と、その掲げてきた基本政策が国内的にも国際的にも非現実的で、時代錯誤も甚だしいものであったのであります。  しかし、今般、政権が棚からぼたもち的に転がり込んできた途端、党内論議もそこそこに、全国の党員はおろか国民に対しても何らの釈明も謝罪の言葉もないまま、これまでの主義主張をかなぐり捨て、カメレオン的に何でも賛成社会党へと衣がえされたのであります。  政治評論家藤原弘達氏が世界でも珍しい政策分裂政党だという趣旨の指摘をしているゆえんもここにあるのであります。  総理、なぜ基本政策を転換されたのですか。非現実的な社会党の政策では通用しないことが明白になったからでしょうか。それとも、政権の座に着くための単なる方便であったのでしょうか。もし総理がそうでないと断言されるなら、今までの基本政策がすべて間違いであったことを率直に認め、この場をかりて国民に釈明し謝罪することが国民に対してなすべき必要最小限の責務と考えますが、いかがでしょうか。総理の御本心を伺いたいのであります。  勝負は時の違とも言わね、村山内閣もいず桐また我が国憲政史上にその名を連ねた幾つもの内閣と同じように姿を消していくでしょう。新・新党結成が間近に迫り、その足音が聞こえそうな気さえする昨今、恐らくその日の来るのはそう遠くないはずであります。  この機に及んで、私は村山総理にもう一つ伺っておきたいと存じます。  それは、一夜にして豹変された日本社会党ですから、再び下野された暁には、またその翌日からでも、先ほど例示、列挙いたしました諸問題に対して再び何でも反対社会党に舞い戻るおつもりでございましょうか。もしその答えがイエスであったならば、それに振り回された国民こそ大迷惑というものでありましょう。そして、その答えがノーであったならば、これまで長年の日本社会党主義主張は一体何だったのでしょうか。御答弁をいただきたいのであります。  次に、村山内閣外交路線及び防衛問題について質問をいたします。  外交問題のまず最初は、国連安全保障理事会常任理事国入りについてであります。  河野外相は、去る九月二十七日、国連総会において演説し、我が国常任理事国として責任を果たす用意があることを表明されました。この問題については、さきの国会で羽田内閣に対し、当時野党あるいは閣外協力の立場をとっていた現在の村山総理武村蔵相代表質問に立ち、常任理事国入りについては慎重であるべきだと主張されたのであります。特に武村蔵相に至っては、国民投票に値するとまで述べられたのであります。なぜ急に積極姿勢に転じられたのか、お二方から理由をお聞きいたしたいのであります。また、村山総理は、就任後初めての代表質問の答弁で、常任理事国入りについては十分論議を尽くすと答弁されておられます。村山内閣発足後、本格的論議の場である今国会で十分な論議を尽くす間もないまま、なぜ河野外相が早々と国連総会で演説されたのか、これこそ国会無視強権的手法ではございませんか。総理の答弁を求めます。  将来もし、幸いにして不幸にして、常任理事国入りが実現した場合、世界各国に対して日本は非軍事貢献しかできないことに対する理解をあらかじめ得ておくことが必要であり、また、国内的にはPKO分担金増額等今まで以上の負担を国民に強いることにならざるを得ませんが、諸外国及び国民に理解をしてもらえる自信と覚悟はおありなのでしょうか。総理の御所見を承ります。  次いで、PKO国連平和維持活動について質問をいたします。  政府は、ルワンダ難民救済のため、ザイール・ゴマに自衛隊を派遣いたしました。この派遣に先立ち、政府は二次にわたり調査団を送り、また与党も調査団が現地に赴き、それらの報告に基つぎ派遣の実施や携行装備を決めたとのことであります。  そこでお伺いしたいことは、事前調査は万全であったかということであります。  現地の共同通信の報道によりますと、玉沢防衛庁長官、あなたの視察は、車からおりて道路から十メートルほど離れた難民キャンプの中のテントの一つに入ったものの、だれもおらず、説明を受けただけで制五分間で視察を終えた、一人の難民とも話もせず、難民の生の生活を見ることのない視察に援助関係者外国人ジャーナリストの間から失笑が漏れていたとの報道となっております。あなたは国民の貴重な血税を使って一体何を見てこられたのですか、お伺いをいたします。報道によりますと、タンザニア側ヌガラ難民キャンプでは、旧政府勢力の急進派による虐殺等武力行使がなされているとのことではないですか。また、与党謝査団に至っては、そのサファリツアーについておもしろおかしく報道がなされているではありませんか。朝日新聞社発行のアエラをして言わしめれば、与党調査団報告書派遣期限を十二月末までと区切った以外は外務省の第一次及び第二次ミッションの報告書をなぞっただけと表現されております。  また、アメリカ側防衛庁に、運搬のための米軍機使用拒否通告実施計画閣議決定前日の九月十二日に通告してきたにもかかわらず、防衛庁はこの事実をひた隠しにし内閣に報告していなかったとの朝日新聞はかの報道もあるではありませんか。  総理及び防衛庁長官は、新聞報道が間違っているとでもおっしゃるのでしょうか。その数二万とも言われる前政府軍兵士は、与党現地調査団の報告と違い、実際は武装解除されていないと報じられております。しかも、ルワンダでは既にフランス軍が引き揚げ、米軍やイスラエル軍も九月中に全面撤収し、日本の自衛隊が配置についた十月からは日本とザイールが中心となって難民支援活動を行わなければならない状態であるということをどう認識されているのでしょうか。  御承知のごとく、日本はカンボジアに初めて組織的PKO隊員を派遣し、一応の成功をおさめました。このとき派遣された隊員は、UNTACの指揮下で活動し、フランス軍に護衛され、比較的身の危険を感じずに本来の業務に従事することができたのであります。しかし、このたびの派遣は自己完結型で、他国の軍隊による護衛はなく、独自の判断と能力ですべての救援業務及び自衛も行わなければならないのであります。村山総理、あなたは我が国陸海空自衛隊最高指揮官であります。自衛隊達意論から転換して合意論を言い出した途端に、直ちにはるか海外のかなたへの出動命令をお出しになったのです。  そこで、総理にはっきりとお伺いしておきたいことが三つございます。  一つは、万一危険な状態に陥ったらためらわずに部隊を撤収する勇気と覚悟はおありかということであります。  二つは、これだけずさんな矛盾をはらんだ事前調査にもかかわらず自衛隊の派遣を決断されたのですから、派遣隊員の生命に万一のことがあった場合あなたはどのような政治的責任をとるおつもりなのか。内閣総辞職は当然のことと思いますが、この場ではっきりと明言しておいていただきたいのであります。  本題に関する質問の三つは、政府は何が何でも常任理事国入り実績づくりにこの派遣に踏み切ったのではないかということであります。総理及び外務大臣の所見を求めます。  次に、防衛問題について伺います。  まず最初は、憲法の解釈についてであります。  戦後最も激変したものの一つに、憲法九条をめぐる解釈があるとも言われております。憲法解釈論議の中で、かつては想像さえしなかった自衛隊海外派遣が今や国際貢献の名目のもとに日常業粉化されんといたしております。  このことは、かつて敗戦の翌年、一九四六年、国会答弁に立った当時の吉田茂首相が、憲法第九条第二項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争もまた交戦橘も放棄したものであります、と述べておられることを思い起こすとき、まさにその感深さを感じるものであります。そして、良識ある国民の間には、憲法解釈を限りなく拡大解釈していくと憲法そのものが解釈上空洞化してしまうのではないかと懸念する向きがございます。  これまでの日本社会党自衛隊に対する憲法解釈上の見解は、違憲であるが合法的存在であるという極めてわかりにくいものであります。そして、文民統制、専守防衛、徴兵制の不採用、自衛隊海外派兵の禁止、集団自衛権の不行便、非核三原則の遵守、核・化学・生物兵器等大量破壊兵器の不保持、武器輸出の禁止などの諸原則を確立しながら必要最小限度自衛力の存在を容認するという極めて耳ざわりのよいものでありましたが、今風の日本社会党政治的見解の豹変を目の当たりにして、多くの国民は、ただいま述べたこれらの路線についてもなし崩し的な解釈変更に踏み切るのではないかとの懸念もあるのであります。  そこで、私は、国連指揮下に属さず日本の司令官の独自の判断で交戦の命令を下し、その行動が国権の発動ととられやすい今回のルワンダPKOの実施に関して、現時点における憲法拡大解釈の限界を確認する意味で防衛庁長官にひとつお聞きしておきたいと存じます。  例えば、日本の派遣隊員ザイール軍隊または民間グループであるNGOの人々や現地住民武力行使に遭遇している場面に出くわした場合の交戦は、どのようなケースにどこまで合法と解釈してよいのか、御見解を確認しておきたいのであります。特に、交戦が隊員一個人の場合と隊としての交戦の場合に分けて示していただきたいのであります。  さて、防衛庁は来年度予算の概算要求で対前年度比二・八%増の一千三百億円の増額を要求いたしましたが、〇・九%増、五百億円の増額にとどまり、その差は八百億円となっておりますが、この数字をどう評価しておられるのか、防衛庁長官の見解を伺いたいのであります。  そもそも我が国必要最小限度自衛力の実力とは、昭和五十一年に閣議決定された防衛大綱に明記された別表及び平成四年に見直し中期防衛力整備計画に基づくレベルのものであり、そこに示されている数値は、考えられる脅威、それらに対処するケースを一々想定しつつ陸海空部隊ごとに積算、算出されてきたものであります。したがって、今回のカットされた数字の穴埋めのため既定防衛予算のどの部分をカットするのか、それでも必要最小限度の実力の維持は可能なのか、伺いたいのであります。  次に、税制・財政問題についてお伺いをいたします。  先月二十二日、難産の来ようやく政府税制政章大綱が決定されました。その中で最も注目すべき点は、何といっても消費税の五%への値上げが含まれていることであります。  かつて本院において、忘れもしない昭和六十三年十二月、消費税関連法案審議のため延べ二十時間余りの世界に恥をさらした牛歩戦術を使ってその成立に反対した日本社会党を首班とする内閣のもとでの大綱の発表であり、その中身については衆目の注視するところであります。特に、税制のあり方国民生活に大きく影響を与える問題であり、責任野党として我々はその中身を厳しく検証する責務があると信ずるものであります。  そこで、総理にお伺いいたしますが、かつてのみずからの信念を放棄し消費税、増税を容認せざるを得なくなったことに対して、どのような感慨をお持ちか、まずみずからの御心境を御披瀝いただきたいのであります。  ここで私は、消費税を含む税制改正に対する我々の立場について一言申し述べておきたいと思います。  すなわち、現在の野党各党は、細川、羽田両政権での与党時代から税制改革を唱えてまいりました。そして、我々の政治哲学の基本は、いつ政権に復帰しても変わらない政策を主張し続ける健全野党の立場であります。したがって、消費税率引き上げ全面的反対のみを唱えるものではありません。我々の考える論じていくべき税制改革の中身は、どのくらいの財源がなぜ必要かの観点より福祉ビジョン経費節減のための行政改革の中身を徹底的に正していくということであります。  さて、大綱に盛られた来年の減税は、制度改正による恒久減税定率減税を組み合わせた二階建て減税と言われますが、なぜ二階建てですか。なぜ制度改正分が三兆五千億円で、定率減税分が二兆円ですか。その理由を説明願いたいのであります。  次に、税制改正の中身が決定したことで、来年度予算をどのように編成するかがこれからの大きな問題であります。総理は、一体、来年度予算の編成にどのような方針で臨もうとしておられるのでしょうか。  特に来年度は、景気の回復の兆しか見えているものの、税収が大きく好転する可能性は少なく、財源のやりくりに苦労することは不可避と考えられますが、よもや減税財源としてのつなぎ国債とは別に赤字国債の発行を考えておられるのではないでしょうか、お伺いをいたします。  また、来年度予算の目玉として一体どんな政策を考えておられるのですか。来年度予算編成基本方針を御披瀝願いたいのであります。  事行政改革に関して、私たちは、細川・羽田政権下の平成六年度の予算では国家公務員定数削減を懸命に図ってまいりました。例えば、これまで年々約千人の定数削減が行われてきたが、六年度にはそれを倍増させ二千人を上回る純減を実現させたのであります。  総理は、先日の所信表明で、行政改革の断行こそ内閣が全力で取り組まなければならない課題としながら、特殊法人の改革を挙げたものの、その実施時期や規模はもとより、具体的な歳出削減軌果についてはまだ述べておられないのであります。財政ニーズを補うための増税について論ずるに際して我々が常に同時に考慮すべきことは、可能な歳出削減策についてであり、これは次の二つの観点より分析されなければならないと考えます。すなわち、行政改革による歳出削減効果既定経費見直しによる歳出削減対策についてであります。総理、歳出削減策についてのお考えを具体的にお示しいただきたいのであります。  次に、消費税五%アップの増税について数点伺っておきたいと存じます。  率直に申しまして、消費税所得税住民税をかみ合わせての増減税一体処理を評価させていただきたいと存じますが、大蔵大臣、増税の三年ずれについてはどのような理論的説明をされますか。また、七%ではなしに五%にとどめたことについても同様の説明を求めます。  五%で将来の福祉財源分が十分賄えると断言できるのでございましょうか。あみいは、福祉レベルを下げて国民に犠牲を強いるおつもりなのでしょうか。議論の俎上に上がっていた公的年金国庫負担率引き上げは可能なのですか。厚生省がさきにまとめた二十一世紀福祉ビジョンや新ゴールドプランにも言及しつつ御所見を賜りたいのであります。  また、村山内閣事前アピールでは、減税に関しては中堅所得者層を中心に個人所得税住民税累進性の緩和や課税最低限引き上げとなっておりました。ところが、大蔵省の標準世帯税負担所得階層別試算では、現在、年収が六百万円以下の世帯では、負担が九八年以降制度減税を上回り実質増税であると言われております。しかも、今回の大綱では、実施することになっている消費税引き上げまでの定率減税の九六年度分については景気が特に好転した場合には改めて検討するものとされており、さらに五%の税率についても見直し条項を設けており、一たん五%とした消費税を二年後にさらに引き上げるとか、あるいは景気の好転を理由に定率減税そのものを取りやめる口実をここに求める可能性がありますが、いかがでございましょうか。このことに関し、武村大蔵大臣の所見をお伺いしたいのであります。  消費税に関するもう一つの指摘は、かねてから言われてまいりました現行消費税への欠陥是正が不十分ではないかということであります。  具体的には、業態別にみなし税率を設定した簡易課税制度について、消費者が払った税金が事業者の手元に残るいわゆる益税の改正が不十分のみならず、加えて消費税が三%から五%に引き上げられればこの益税の幅も拡大するのではないですか。事業者が納税を免れる免税点も高過ぎるのではないですか。さらに、納税までに一時的に運用益を稼いでいる事業者納税回数の是正やいわゆる逆進性負担も、まだ改善の余地があるのではないでしょうか。  実際に税を負担し公平な仕組みを求める一般納税者に対し、このような不完全で中途半端な手直しとなった今回の税制改革大綱をどう評価されているのか、総理の見解を賜りたいのであります。  次に、現在の景気動向について尋ねます。  経済人のみならず国民の多くが今最も切望していることは、長い長い景気の低迷からの脱却であります。「待ては海路の日和あり」とか「冬来たりなば春遠からじ」などという言葉がございますが、ほっておいて自然に景気が回復するはずはないのであります。  政府は、九月の月例報告において、景気は緩やかながら回復の方向に向かっていると事実上の回復宣言をされているが、政府は現在の景気の状況をどう分析、認識し、当面のインフレなき景気浮揚策としてどのような施策を提言されようとしておられるのか、総理の所見を伺いたいのであります。  政治改革の完遂は、かねてより国民の強い念願でありました。政治に対する国民の不信を払拭し政治が国民の信頼を取り戻すためには、政治改革関連法早期施行を図ることが何より重要であると考えます。このたびの政治改革においては、いわゆる区割り法が施行されなければ、公職選挙法の改正はもちろんのこと、政治資金規正法の改正、政党助成法のいずれも施行されないこととされており、いわゆる区割り法早期成立こそが最大のポイントであります。政治改革早期完結に対する総理の決意のほどを承りたいのでございます。  次いで、円高、産業の空洞化及び少子社会について質問をいたします。  我が国景気回復が今なお不透明な状況にある最大の要因の一つは、バブル経済の崩壊の後遺症に加え、一ドル百円を割り込むほどの急激かつ異常な円高にあることは明白であります。この円高のあらしの中で、我が国企業リストラに次ぐリストラを迫られ、過剰設備の廃棄や事業規模の縮小による人員整理と生き残りをかけた必死の対応に迫られておりますが、この波状攻撃のように襲ってくる円高に対する政府の認識と今後の為替対策について、先進国蔵相会議より帰国されたばかりの武村大蔵大臣より御答弁願いたいのであります。  このような円高進行とともに、我が国企業は今や東南アジアや中国などアジア諸国に活路を求めて猛烈な勢いで進出しておりますが、こうした我が国企業海外進出ラッシュを政府はどう認識し、どのような対応を考えておられるのか、お答えを願いたいのであります。  その一方で、我が国社会成熟段階を迎え、今後は少子化による人口減少過程に入ってい岩つつあり、少子化空洞化という二重苦の中で果たして我が国の社会が活力を維持できるかどうかは極めて重大な局面を迎えております。同時に、このことは将来の我が国福祉社会を支えていくことの難しさを物語るものでもあります。  政府は、今後、女性の皆さんに、いや、若人の皆さんにもっと子供を産んでいただき、現在の生涯出生率一・四六を大きく上回ることを可能ならしめる社会的環境を創造していくための具体策を早急に検討すべきであります。いずれにしろ、現実の問題として、少子化による若年労働力の不足を補い、産業構造高度化を促進するための技術革新が不可欠と考えますが、政府にその見通しと腹案はおありなのでしょうか。  加えて、これまで産業界の秩序維持保護育成のために必要とされてきたさまざまな規制を思い切って見直す規制緩和が必須の条件であることは明白であります。我々旧連立内閣が時代を先取りして手がけつつあった二百七十九項目に及ぶ規制緩和策実施計画がこの十一月に策定されると報じられておりますが、村山内閣としてこれらのほかにどのような独自の緩和策を用意しておられるのか、具体的事例をもってお示しいただきたいのであります。  さらに、産業の空洞化に対応していくためには、今日企業が進出しているアジア諸国との間で分業体制を初め経済のさまざまな面でどう共生を図っていくかが極めて重要と考えますが、今後のアジア諸国との共生のあり方について政府はいかがお考えでしょうか、述べていただきたいのであります。  また、この際、アジアのリーダーとして、今後の対中国、対台湾外交基本的考え方外務大臣にお尋ねいたします。  次に、公共料金の扱いについてお尋ねをいたします。  民間企業が円高とともに進行する価格破壊の中で厳しいリストラを余儀なくされている状況を前にして、公共料金の安易な値上げは許されないとの考えのもとに、我々旧連立内閣公共料金年内凍結を決断いたしましたが、村山内閣になった途端、早々と公共料金値上げを認める動きが表面化していることに、一般国民はもとより経済界などから異論が噴出していることは御存じのとおりでございます。  公共料金は、単に値上げの幅を圧縮すれば済む問題ではございません。公共企業等コスト意識をどう高めコスト削減をどう進めるかが重要でありますが、今回の値上げを認めた高速道路料金について、具体的にどのようなコスト削減を指示し、あるいは実施するのか、お答えください。また、今後予想される公共料金値上げ問題にどのような姿勢で対応するお考えか、総理にそのお答えを承りたいのであります。  総理は、特にこのたび特殊法人年度内見直し所信表明で公言されましたが、「言うは易し、行うほかたし」ということを、総理、あなたはどの程度理解しておられるのでしょうか。恐らくこのことに反対するであろう自民党の族議員を説得、抑えるだけの実力と自信をあなたはお持ちなのでしょうか。その決意のほどと失敗した場合の責任のとり方について言及していただきたいのであります。  さて、良好な日米関係の維持は、我が国の二国間外交の関係の中でも最も重要なものであります。戦後約五十年、安全保障問題は言うに及ばず、我が国の今日の経済的発展は米国に負うところ極めて大であります。  ここに二、三の事実関係を提示いたしましょう。  例えば、米国は日本にとって最大の輸出市場であり、我が国の総輸出のおよそ三分の一を占め、米国の基幹産業である自動車市場における我が国の市場占拠率は、輸出及び現地生産合わせて約三割になんなんといたします。一方、米国貿易赤字に占める日本のシェアは四五%にも及び、日本の直接投資に占める米国の割合は約四割にも達しております。  このような事実関係を背景に、日米経済摩擦も長い長い歴史を積み重ねてまいりました。その対象が今や、一業種、一業界にとどまらず、政府の政策決定の中身やプロセス、また広く社会制度、社会慣行にまで及んでまいりました。そしてその背景には、何といっても膨大な対日貿易赤字が存在するという厳然たる事実があるのであります。  さて、日米包括経済協議に関して私がここで政府に対してただしておきたいことの一つは、米国政府が刺激の強い通商法スーパー三〇一条ではなく通商法三〇一条を補修用自動車部品だけに適用しましたが、このことを通商交渉戦略上どう評価、分析しておるのかということであります。  質問の二つ目は、客観基準づくりについての日米間の見解の違いについてであります。すなわち、協議終了後、カンター米通商代表は日本政府がシェアの継続的な進展を約束したとし、一方河野外相は数値目標ではないと発表されていますが、このニュアンスの違いをどう説明されるのでしょうか。  そして質問の最後、三つ目は、今後の残された分野の交渉の予定と見通しについてはいかがでございましょうか。  続いて、農業政策について質問をいたします。  我々人間にとって食糧は生きていく上で必要不可欠な物質であります。腹が減っては戦はできぬと申しますが、食糧の安定供給のためには健全で活力に満ちた国内農業が存在することが基本的な前提となるものであります。このような状況下で、細川・羽田内閣の農業政策の基本は、昨年十二月の細川内閣の閣議了承にもあるごとく、農業者の不安を払拭し安んじて営農にいそしむことができるようにするというものでありました。  そこで、私は、以下数点にわたりお伺いいたします。  一つは、食糧の自給率についてであります。  我が国の平成四年度の食糧自給率は四六%と主要先進国の中では最も低く、これ以上の低下は決して望ましいことと思いませんが、その維持向上策について農林水産大臣の所見を伺いたいと存じます。  次に、来年度から導入される米のミニマムアクセスとして一定量の米の輸入が義務づけられておりますが、そのことについての考え方、特にその運用方針を伺っておきたいと存じます。  三つ目は、食管制度の改善についてでありますが、本制度については検討をすべき課題も多いわけでありますが、今後の食管制度改革の基本方向、特に生産調整参加者からの買い入れ制限、買い入れ価格決定の方法と、その理論的根拠、米の備蓄政策等について農水大臣の答弁を求めます。  二十一世紀に向けての我が国のあるべき農業政策の基本は、規模拡大、農地の集約・流動化、生産基盤の積極的整備による大規模化・効率化、専業的担い手を中心とする新しい農業・農村構造の実現等々であるべきでしょうが、今後の農業政策の基本理念について総理の見識ある御所見を向いたいと存じます。  ウルグアイ・ラウンドの結果まとめられた世界貿易機構設立協定の批准承認について、政府は近く七本の関連法案を国会に提出されるとのことですが、批准承認について国会の同意を得る自信を総理はお持ちなのでしょうか。  自由民主党は、いち早く本年六月二十三日、日比谷野外音楽堂で約三千人の全国代表が集まって催された農業者・JA代表者集会で、党を代表して総合農政調査会長が批准反対・阻止を約束されましたが、閣内の意見統一の自信を総理はお持ちですか。御所見を伺います。  もし、自民党も賛成だから心配ないとおっしゃるなら、あのときの自民党の発言はうそだったと理解していいのでしょうか、農水大臣の所見を伺いたいのであります。  私の質問の最後の最後に、国家補償に基づく原爆被害者援護法について、他の戦争関係被害者との公平性の確保という観点も含めて、総理の御所見を伺っておきたいと存じます。  村山総理、あなたの率いる日本社会党は、直近の平成五年七月の衆議院議員総選挙で百三十四議席から一挙に七十議席に転落、大敗を喫しました。この選挙では、最も目減り率の高い政党であったと言えましょう。そのあなたが、今、政利政略、党利党略に利用され、我が国の国権の最高権者の座に堂々と座っておられるのであります。座り心地はいかがですか。失礼な表現ながら、御自慢のまゆが長過ぎて見通しが悪く日本の未来が見えていないのではないかなどと、ユーモアを入れた陰口も聞かれる昨今でございます。  総理、今あなたが一番なすべきことは何か、あなた自身がよく御存じのはずであります。それは、言わずもがな、区画法案の成立て政治改革に一応の区切りがついた後できるだけ早い機会に衆議院を解散して、国民に対して村山内閣に対する信を問うことではないでしょうか。  選挙に際し我々は公約を掲げ選挙戦を戦う、そして選挙後は勝った党も負けた党も選挙公約に基づきその実行に最善を尽くしていく、それが真の民主主義の原則でなければならないのであります。総理、そうではございませんか。  かかる観点から、私は過ぐる総選挙の際の日本社会党の選挙公報を見るにつけ、その文言を絶句なしには眺められないのであります。そこには、墨痕鮮やかとでも言いたくなるような大文字見出しで「自民党の金権政治にサヨナラ」と書かれているではありませんか。総理、あなたの横に副総理として座っておられる方は一体どこのどなたでございましょうか。  総理の英断を期待しつつ、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
  4. 村山富市

    国務大臣(村山富市君) 石井議員の質問お答えしたいと思います。  まず、社会党基本政策の転換についてのお尋ねでありますが、時代の変化の中で今求められておりますのは、イデオロギー論争ではなく、現実に即した潤達な政策論議が展開され、国民の多様な意見が反映される政治であります。  社会党は、このような認識に立って、時代の変化に対応して不断に開かれた政策論議を重ね、自己変革に努めてきております。御指摘のような政策の転換とされる点につきましては、これまでの党の政策や運動が全面的に誤っていたからというのではなく、党の理念やその政策、運動の歴史的役割を大切に遺産として継承しながら時代の変化の中で発展させていくという方向で示してきたものでございます。誤解のないようにお願いいたします。  私は、今後、政権にあるか否かにかかわらず、国民にとって何が最適の政策選択かを基本に置いて誠心誠意改革の道を遇進してまいる考えであり、必ずや国民の信頼と支持を得るものと確信をいたしております。  次に、我が国の安全保障理事会常任理事国入りの問題についてお尋ねがありました。  この問題につきましては、就任以来、外交政策の継続という基本方針を踏まえて検討してまいりました。また、先般の東南アジア訪問を含め、各国首脳との会談を通じまして、我が国が安保理常任理事国となって責任を果たすことに対する各国の期待の大きいことも実感として承知をしてまいりました。  いずれにいたしましても、安保理改組の問題は今後も国連において議論されていく問題でありますので、引き続き国会における論議を初めとする幅広い国民論議を通じ、国民の御理解を踏まえて取り組んでまいる所存でございます。  また、我が国が国際の平和と安全のための諸活動に対し憲法の範囲内で協力していくということにつきましては、国際的にも十分理解されているものと考えております。  いずれにいたしましても、政府といたしましては、御指摘PKO分担金の増加の点を含め、引き続き国民の御理解を得るよう努めてまいる所存でございます。  次に、ルワンダ難民救援活動について事前調査が万全であったかとのお尋ねでありますが、ルワンダ難民の置かれている極めて悲惨な状況にかんがみまして、我が国としても、現地の情報を必ずしも十分に得られない地域ではありましたけれども、現地状況難民救援の具体的な必要性などを子細に把握するため、二度にわたり政府調査団現地派遣するとともに、関係在外公館による情報の収集を行い、また与党調査団報告も受けるなど、人的支援を適切に行うことができるよう政府としてできる限りの準備を進めてまいったつもりでございます。  さらに、ルワンダ難民救援に関する米国機の使用についてのお尋ねがございましたが、防衛庁では、派遣部隊用の主要機材の空輸手段として米軍輸送機C5とアントノフの二つを念頭に置いて検討してまいったところでございます。  このうちC5につきましては、実施計画閣議決定が行われた九月十三日の夕刻に、米国務省から、ザイールのゴマ空港はC5の運航に適しないとの連絡があったことから、十三日夜にこれを利用しない旨決定したと承知をいたしておりまして、官邸では翌十四日にその旨の連絡を受けた次第でございます。  さらに、危険な状況に陥ったら撤収する勇気と覚悟があるかとのお尋ねでありますが、現地状況が著しく悪化した場合において、種々の要素を総合的に踏まえても要員の安全を確保するとの観点から国際平和協力業務を継続して実施することが困難であるというふうに判断された場合には、撤収することもあると考えております。これは、救援活動に行くわけでありますから、救援活動の実施ができないような状況になったときに、これは撤収することはある意味では当然だというふうに思います。  隊員の生命に万一のことがあった場合についてのお尋ねでありますが、人道的な国際救援活動についても要員の安全確保が第一であることは言うまでもございません。こめため、政府といたしましては、派遣先国政府に対する隊員の安全確保要請、現地関係機関との情報交換を通じた治安情勢の把握、護身用の武器を含む安全確保のための装備品の携行等の措置を既にとっているところでございまして、このほかにも、派遣後に著しく治安状況が悪化するような場合には柔軟な対応の余地を残すなど、隊員に万が一のことがないよう引き続き派遣要員の安全確保には万全を期してまいる考えでございます。  さらに、ルワンダ難民支援のための自衛隊派遣と安保理常任理事国入りとの関係についてのお尋ねでありますが、今回の自衛隊部隊等の派遣は、国連難民高等弁務官事務所の強い要請に基づき、ルワンダ難民に対する人道的な国際救援活動を行うために実施されたものであります。安保常任理事国入り実績づくりのために人道的な支援活動が使われるとか、そのために自衛隊派遣されるなどということは断じてあってはならないことであります。このことは、誤解があっても困りますので、明確に申し上げておきます。  また、消費税についての心境についてお尋ねがございました。  消費税も導入から五年余りが経過し、国民の間に定着しておると判断されます。これからの少子・高齢社会税制全体のバランスを考えますと、消費税についても正面から取り組まなければならず、論議論議を重ね、慎重な検討の結果到達したのが今回の結論であります。今後とも、消費税の仕組みやあり方については、よりよいものを目指して絶えず検討を重ねてまいりたいと考えているところでございます。  さらに、二階建て減税についてのお尋ねがございました。  今回の恒久的な制度減税は、働き盛りの中堅所得者層中心税率構造の累進性を大幅に緩和することを柱としたものであり、その規模は、必要な税率見直し課税最低限引き上げを行った結果三・五兆円となります。また、当面の景気に配慮して、今年度と同規模の五・五兆円の減税実施するため二兆円規模の特別減税を上乗せしたところでございます。  このように、今回のいわゆる二階建て減税は、一つはあるべき所得課税制度の構築、二つ目には当面の景気への対策という二つの要請を満たすべく総合的に検討した結果でありまして、当面必要な最善の対策であると確信をいたしております。  次に、今後の健全な財政運営及び来年度予算についての御質問でございますが、我が国財政は、公債残高がついに二百兆円を超える見込みであるなど、一段と深刻さを増すに至っております。このような状況のもと、今後の高齢化や国際社会における我が国責任の増大などに対応していくためには、公債発行の問題も含め、健全な財政運営の基本を堅持していかなければならないしとは申し上げるまでもございません。  さらに、平成七年度予算編成に当たりましては、このような考え方のもとで、現下の厳しい状況を乗り越えていくため、歳出歳入両面においてあらゆる努力を傾けてまいります。特に歳出面においては、生活者重祖の視点に立って、あらゆる経費について制度の根本にまでさかのぼった見直しや施策の優先順位の厳しい選択を行うなど、徹底した洗い直しに取り組んでまいる所存でございます。  次に、歳出削減についてのお尋ねでございますが、先ほども申し上げましたように、歳出歳入両面においてあらゆる努力を傾注してまいりますが、御承知のとおり、予算編成スケジュールから見て、具体的な削減対象や金額については、今後、従来以上に徹底した歳出の見直しに努めてまいらなければならないと決意いたしておるところでございます。  次に、消費税制度の改革についてのお尋ねでありますが、今回の税制改革におきましては、いわゆる益税問題など消費税制度をめぐる種々の指摘を踏まえ、公平性・中立性と簡素との間のバランスを図る観点から抜本的な改革を行ったところでありまして、国民理解を得るに足る消費税制度の改革案を示したものと考えております。  次に、景気の現状と景気浮揚策についてのお尋ねがございました。  我が国経済の足元の動きを見ると、住宅投資や政府投資が総じて堅調に推移する中で、個人消費には持ち直しの動きが広がりつつあります。設備投資は一部産業で増加の動きが見られるものの、総じて減少が続いており、雇用情勢には厳しさが見られます。  このように、景気全体の動向は、企業設備等の調整過程にあるものの、このところ明るさが広がってきており、緩やかながら回復の方向に向かっておると考えられます。しかし、他方、急激な円高など懸念すべき要因も見られます。  政府といたしましては、我が国経済を本格的な景気回復軌道に乗せ、今後の新たな発展の基礎を築くため、引き続き適切かつ機動的な経済運営に努めてまいる所存でございます。また、税制改革の年内の実現に努力するほか、中長期的な観点に立って経済構造改革を強力に実施してまいりたいと考えているところでございます。  次に、政治改革早期完結についてのお尋ねがございましたが、御指摘のとおり、区割り法案が成立することによりまして衆議院の選挙制度の改革政治資金制度の改革及び政党助成制度などが初めて施行されることになりますので、法案の早期成立に向けて最善の努力を尽くす決意でありますが、皆様方の御理解と御協力をお願い申し上げておきたいと存じます。  次に、我が国企業の海外進出についてのお尋ねがございました。  急激な円高などを背景に、製造業を中心とする行き過ぎた海外進出が進展する場合、国内製造業の空洞化、ひいては雇用への悪影響が生じかねない懸念があることは十分認識をいたしておるところでございます。  このような事態に陥らないようにするためにも、新規産業の創出等を通じて経済のフロンティアを拡大することにより産業の活力を維持するとともに、こうした経済産業政策と密接な連携のもとにきめ細かな雇用政策を推進することによりまして、雇用の安定的な確保を図ってまいりたいと考えているところでございます。  次に、少子化についてのお尋ねがございました。  近年の急速な少子化の進行につきましては、将来の経済社会全般への影響が懸念され、今のうちからこの厳しい現実に対応した政策展開を図ることが急務であります。今後、財源の確保に配慮しつつ、エンゼルプランの内容についてできるだけ早く対策の確立に努めてまいる所存でございます。  次に、産業構造高度化のための技術革新への対応についてのお尋ねでございますが、産業空洞化への懸念に対応するためには、新規事業分野を開拓し、創造性豊かな産業へと脱皮することで産業構造高度化を図っていくことが重要であると考えております。このような観点から、未来への発展のための基盤整備として、研究開発や技術協力の推進に取り組んでまいらなければならぬと考えているところでございます。  次に、規制緩和への取り組み方針についてのお尋ねがございました。  国民生活の向上はもとより、経済の活性化や国際的調和の観点に立って規制緩和を断行することが不可欠であることは、申し上げるまでもございません。このため、政府は、今後さらに積極的かつ計画的に規制緩和を推進をするため、本年度内に五年を期間とする規制緩和推進計画を取りまとめることといたしております。  この計画の内容につきましては、これまでに決定されている規制緩和方策の早期具体化を図るとともに、内外からの規制緩和要望を把握しつつ、閣僚レベルで積極的な取り組みをいたしてもらうぺく私からも指示をいたしておるところでございます。御理解をいただきたいと存じます。  次に、アジア諸国との分業についてのお尋ねがございました。  近年、我が国アジア向け直接投資が増加しており、こうした中で我が国アジア諸国が安定的に発展していくために、我が国としてはアジア諸国との間において適切かつ円滑な分業関係の構築を図っていくことが必要であると考えているところでございます。  先般、私は東南アジア諸国を訪問をし、未来を展望した新たな協力のあり方について率直な意見交換を行ってまいりました。今後、この地域の人々との共生という考え方に立ちまして、APEC等の場を通じ、貿易・投資の自由化、部品・素材産業など、経済・技術協力などを推進をし、アジア地域の発展のために今後とも積極的な役割を果たしてまいる所存でございます。  次に、高速道路料金改定についてのお尋ねがございました。  今回の認可に際しましては、建設費や管理費の節減等経営の合理化に最大限の努力を払うとともに、事業計画に厳しい見直しを行い、実施時期を明年四月に先送りをし、改定率を圧縮するなど、極力調整したところでございます。今後ともさらに一層の経営の合理化に努めてまいるべく指導いたしておるところでございます。  今後の公共料金の取り扱いについての御質問がございましたが、公共料金の改定につきましては、これまでも、物価問題に関する関係閣僚会議において取りまとめた基本方針などに基づきまして、先般行った公共料金に係る事業の総点検の結果などを踏まえ、個別案件ごとに厳正な検討を加え適切に対処するとともに、情報の一層の公開に努めてまいる所存でございます。  特殊法人改革の実行の決意についてお尋ねがございました。  行財政改章の推進は、この内閣が全力を傾けて取り組まなければならおい課題であると認識をいたしております。今後、各省庁におきましては、平成六年度内にすべての特殊法人見直しを行うなど、責任を持って具体的に実行してまいる決意でございます。  次に、今後の農業政策基本理念についてのお尋ねがありましたが、今後の農政の展開に当たりましては、政策推進の指針として示された農政審議会報告の趣旨を踏まえ、我が国農業、農村が二十一世紀に向けて自立を遂げ持続的に発展していくことができるよう、幅広い観点に立った食料・農業・農村政策に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。  特に、ウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う国内対策につきましては、緊急農業農村対策本部において去る四日に了承されました大綱骨子を基本方向として、速やかに総合的かつ的確な施策を講じてまいる決意で臨むつもりでございます。  次に、WTO設立協定の締結承認についてのお尋ねがありましたが、政府といたしましては、いわゆるマラケシュ協定の締結は多角的自由貿易体制の維持強化にとって極めて重要であると考えておりまして、同協定の来年一月一日の発効に向け、早急に協定及び関連法案を国会に提出し年内の成立を図る所存でありますが、皆さんの御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。  次に、衆議院の解散についてのお尋ねがありました。  御案内のように、現在、国内的には区割り法案の早期成立や腐敗防止の徹底など幅広い政治改革の実現を図るとともに、規制緩和や地方分権問題を含む行政・経済改革も推進しなければなりません。高齢化社会をにらんだ税制改革の課題もあります。また、対外的には日米包括協議や北朝鮮の核問題などさまざまな課題を抱えており、今やいっときたりとも政治の停滞は許されない状況にございます。このため、私は総理大臣としてこうした内外に山積する課題に対応するため全力を注いでまいる所存でありまして、現在のところ解散・総選挙については考えておりません。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)    〔国務大臣武村正義君登壇、拍手〕
  5. 武村正義

    国務大臣(武村正義君) まず、安全保障理事会の問題でありますが、我が国常任理事国入り問題は、我が国にとりましても、また世界や国連にとりましても、極めて重大な問題であります。したがって、最終的な判断に至るまではあらゆる角度から慎重な検討が積み重ねられるべきであるのは当然でありまして、私の姿勢は変わりはありません。さき外務大臣の国連演説において表明された重要な諸課題がクリアされることが有よりも必要でありますし、国民論議も深めないで先に安保常任理事国入りありきという姿勢は私はとりません。  我が国はまだ問題提起をした段階であります。この我が国の問題提起に対して国連及びその加盟国がいかなる言動をとろうとするのか、それをよく見きわめ、国民的な合意を得て最終的な判断をすべきだと考えます。  国連においては安保理改組問題に続いて引き続き論議が行われることになると思いますが、我が国としては、安保理改組だけではなく、国連総会の活性化、経済社会理事会の機能強化など幅広い風連改革に積極的に取り組んでいくことがひとしく重要であると考えております。  いずれにしましても、河野外務大臣演説は、内外の論議並びに国民的合意形成の出発点として重要な第一歩をしるしたものと認識をいたしております。  次に、税制問題でありますが、まず三年の根拠でありますが、率直に申し上げて、当面の経済状況を配慮して三年と決定をさせていただいたというふうにお答えをいたします。  最近の経済状況は、御承知のように明るさが広がってきております。緩やかながらも回復の方向に向かい始めたというふうに認識をいたしているところでございます。その結果、我が国経済状況は、政府の目標としましても、六年度中には本格的な回復軌道に移行し、その後も成長が持続していくものと予想をいたしているところでございます。  しかし、今回の景気調整局面の長さや深さを考えてまいりますと、今後の回復は緩やかなものとなる可能性があることを考慮し、いわば余裕を見ながら、九年四月に消費税率引き上げるという政治判断をさせていただいた次第であります。  次に、七%ではなく五%にとめた根拠でありますが、消費税率につきましては、税制改革全体の姿の中で減税等と相互に関連をして決定いたしたものであります。  個人所得税の累進税率のゆがみをなくすとともに、課税最低限引き上げることによる三・五兆円規模制度減税実施と、さらに、当面緊急に整備すべき老人分謹対策等に要する財源などを考慮して、国民にお願いする消費税負担をできる限りぎりぎりのものにとめるという観点から、五%とした次第であります。  福祉財源につきましてでありますが、所要の減税額を確保した上、税制改革により財政をさらに悪化させないとの趣旨で消費税率五%のフレームをつくった場合、○・五兆円の福祉に充当し得る財源を確保することができました。  一方、急激に進行する少子・高齢社会対応するために、現行ゴールドプランに上乗せをして、当面緊急に整備すべきホームヘルパー、特別養護老人ホーム及び必要最小限行うべき少子対策に取り組む必要があります。そのために○・四兆円の財源を充当してまいりたいと考えます。  今回の税制改革におきましては、年金、医療、介護など社会保障等に要する費用を踏まえ、必要があると認めるときには二年後を目標に消費税率について所要の措置を講ずる旨の、いわゆる見直し規定を置くことにいたしております。この規定のもとにおける検討の過程において、今後、新ゴールドプラン、エンゼルプラン等の検討や年金、医療等の自然増等の推計が行われ、将来の社会保障の具体的な姿について検討が進められることが必要であると考えております。  いずれにしましても、国民福祉税に比べれば、今回は三党が民主的でオープンに真剣に論議を進めて最終的な結論を出すことができましたし、また、決して腰だめではなく、制度改革減税をきちっと精査をして五・五兆円から三・五兆円に絞ったわけでありますし、そのほか、景気対策や国民負担消費税そのものの改革や、あるいは地方消費税制度の創設や、あるいは見直し条項の設置など、多面的な配慮をしてまとめたバランスのとれた税制政章案であると考えております。一次に、公的年金の問題でありますが、基礎年金の国庫負担引き上げには、御承知のように莫大な財源が必要であります。仮に国庫負担率を二分の一に引き上げるといたしますと、高齢化がピークに達する二〇二五年、三十年後には約八兆円もの新たな国庫負担増が予想されるわけであります。それだけに、率直に申し上げて、今後の議論にまちたいとは思いますが、財源を確保することは容易でないという認識を持っております。  次に、六百万円以下の世帯実質増税等の御意見でございますが、今回の税制改革におきましては、働き盛りの中堅所得者層にとって収入の伸びに応じて追加的な手取り金額が滑らかにふえていくように、累進構造を大幅に緩和することにいたしております。  なお、少額納税者への配慮としましては、課税最低限引き上げを行いますとともに、真に手を差し伸べるべき方々にしわ寄せがなされることがないようきめ細かな福祉の配慮を行ってまいる所存でございます。  御指摘定率減税は、景気対策のために実施をする時限的な特例措置であります。個人所得課税制度のあり方の問題とは異なるものであると考えます。  さらに、消費税率につきましては、御指摘見直し条項のもと、今後慎重に検討を行ってまいる事柄であると御理解をいただきたいと存じます。  さらに、現行消費税欠陥是正の御指摘がございました。  まず、いわゆる益税運用益といった点についての御指摘をいただきましたが、今回の税制改革におきましては、このような現行の消費税制度をめぐるさまざまな指摘を踏まえ、公平性・中立性と簡素性の間のバランスを図る観点から検討を行っていただきました。  をの結果、中小特例につきましては、限界控除制度の廃止、簡易課税制度の適用上限の大幅な引き下げなど現行制度を抜本的に改革することにいたしておるわけでございまして、いわゆる益税も相当程度解消するものと考えております。また、消費税導入時から懸案事項でございました仕入れ税額控除方式につきましても、いわゆるインボイス方式、日本型インボイス方式を採用することにいたしております。  免税点の水準につきましては、現行の免税事業者の平均従業員数が二、三人と極めて零細であり、転嫁も十分に行われていないという状況を踏まえますと、今後とも検討を行ってまいりますが、当面、現行水準を維持することといたしたいと考えます。ただ、税率引き上げの機会をとらえ、免税事業者の適正な転嫁のあり方につきましては適切な指導を徹底していきたいと考えます。  なお、少額納税者層に対する消費税率引き上げに伴う負担増への配慮の観点から、個人所得課税において課税最低限引き上げるとともに、先ほども申し上げましたように、真に手を差し伸べるべき人々に対しましては社会保障制度等を通じきめ細かな配慮を行うことが必要であります。  このように、今回の税制改革において国民理解を得るに足る消費税制度の抜本的な改革案をお示してきたものと考えておりまして、決して中途半端なものではありません。  最後に為替の問題でありますが、本年に入りましてから為替相場は円高が進み、このところも百円をやや割り込んだ相場になっております。  こうした状況に対し、先週のG7の会議におきましても私は特に発言をし、今後の景気の持続的な回復にとっても為替相場の安定が極めて重要である、そのためには為替市場においてお互いに緊密に協力をしていくことが必要であるということを強く強調いたしました。そうした議論を踏まえて、マドリードの会議におきましても、累次のG7の為替問題に関する緊密な協調へのコミットメントが再確認をされたところであります。  我が国としましては、為替相場が思惑等により短期間のうちに大きく変動することや不安定な動きを示すことは好ましくないと考えておりますし、相場の動向を注視しながら粘り強く為替相場の安定に今後とも努力をしてまいりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣玉沢徳一郎君登壇、拍手〕
  6. 玉沢徳一郎

    国務大臣(玉沢徳一郎君) 石井議員の御質問お答えをいたします。  まず、ルワンダ難民キャンプ視察についての御質問でございました。  まず、既にこの難民キャンプは二次にわたる政府調査団視察、また与党調査団が訪れておりますので、その報告をもとにいたしまして、私の防衛庁長官としての最大の関心は、ゴマのムグンガ・キャンプにルワンダの反政府軍がこぞっておる、したがいまして、この反政府軍の動向はいかなるものであるかということを視察の対象といたしたわけでございます。  現地ではザイールのマブア国防大臣、ブトウル在ゴマ国連難民高等弁務官事務所の代表が御案内をしていただきました。モブツ大統領から急速会見したいと。しかも、それは一時間四十分も離れたところにおられますので、視察の時間は非常に短くなったわけでございますけれども、反政府軍の様子は、完全とは言いませんけれども、武装解除されておる、こういう認識を持ちました。  ただ、治安の面におきましては、大量の難民が一時期に流入したことによりまして大きな混乱が生じまして、中には武装強盗化した者もいると言われており、厳しい状況にあるとは考えますが、現状において自衛隊が活動を行うのに支障を来すほどではないと、このように判断をいたした次第であります。  さらに、フランス軍が撤収した後の活動についてのお尋ねがありました。  これは、あくまでも国際連合難民高等弁務官事務所の要請によります人道上の難民救援でございまして、各国が交代をしながら実施するもの、こういうように理解してよろしいと思うわけでございます。ザイールにおきまして活動する以上におきましては、主権国家であるザイール国の了解と協力なしには活動は行い得ないわけでございまして、米軍、イスラエル、フランス軍も、ともにザイール軍の協力を得ながら任務を行ってきているわけであります。  私はモブツ大統領にお会いをいたしまして、我が方の目的その他を十分御説明いたしまして、今後三カ月にわたりまして全面支援の約束と協力を取りつけたところでございます。依然としましてゴマには八十万人の難民がおりまして、医療、病気の予防、給水、輸送についてはまだまだ多くの仕事をしなければならない、こういうように感じてまいった次第でございます。  さらに、米国機の使用についてのお尋ねがございましたが、これは総理の御答弁がございましたので、私からは繰り返しいたしません。  次に、ザイール軍やNGOの方々が武力行使に遭遇している場面についてのお尋ねがありましたが、自衛隊の活動はあくまで人道的救援活動でありまして、難民と戦うとかこれに襲われるということを前提にしたものではございません。しかし、万が一のことを考えてあえて申し述べれば、国際平和協力法は隊員の生命等の防衛のための武器の使用について規定しておりまして、御指摘のような方々の生命等は防衛の対象には含まれておりません。  しかしながら、人類万人の道徳律でもあります「義を見てせざるは勇なきなり」、これは、日本人であると外国人であるとを問わず、急迫不正の事態に遭遇した場合、他人の生命を守るために武器を使用したことが正当防衛または緊急避難に該当する場合に違法性が阻却されることまで否定したものではありません。  なお、これらの武器使用は、当然のことでありますが、個々の自衛官によるものであって部隊として行うものではございません。  次に、防衛関係費の概算要求の評価についてのお尋ねでありますが、平成七年度の概算要求の伸び率については、財政当局との間にぎりぎりの折衝を行ってきたところでありますが、厳しい財政事情等諸般の情勢も踏まえ、極力防衛関係費全体を抑制するとの見地から○・九%増との結論を得たものであります。人件・糧食費や在日米軍駐留経費等の多額の増額要因がある中で、この数字は極めて厳しいものであると認識しておりますが、これを受けてあらゆる経費を対象として削減、圧縮を図り概算要求を行ったところであります。  次に、概算要求の内容等についてのお尋ねでありますが、平成七年度概算要求の伸び率は○・九%増と極めて厳しいものであるため、あらゆる経費を対象として経費の削減、圧縮を図ったところであります。我が国の防衛体制に万遺漏なきよう最大限努力してまいる所存であります。(拍手)    〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
  7. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) ルワンダ難民支援のために自衛隊派遣したのは常任理事国入り実績づくりのためではないか、こういう御質問でございます。  これはもう先ほど総理から御答弁がございましたので私からつけ加えることはございませんが、まことに悲惨な状況にある難民の支援のために自衛隊派遣するということが実績づくりではないかというお尋ねは、極めて残念なお尋ねでございます。私は、いつも、経験のない自然環境など厳しい条件の中で仕事に当たられる方々に敬意と感謝をいたしこそすれ、そのようなことを考えたことは一度もございません。安定した日中関係の発展はアジア・太平洋、ひいては世界の平和と安定にとって極めて重要な要素でございます。我が国として日中関係を引き続き重視していく考えでございます。  具体的に申し上げれば、第一に、日中両国は一層成熟した未来志向の二国関係をはぐくんでいく必要があると思います。第二に、国際社会が直面する諸問題について、ともに積極的に貢献をしていく心構えが必要だと思います。第三に、中国改革・開放政策政治経済両面にわたって着実に進展していくよう引き続き協力を行っていくことを基本方針として、日中関係を二十一世紀に向けてさらに発展させてまいりたいと考えております。  一方、日台関係につきましては、一九七二年の日中共同声明に基づきまして非政府間の関係として維持されてきたものでございまして、この基本的枠組みを遵守することが安定的な日台関係を今後とも維持する上で不可欠と考えております。  スーパー三〇一条についてのお尋ねがございました。  御指摘のとおり、今般、アメリカ政府は、いわゆるスーパー三〇一条ではなくて、一九七四年通商法の三〇一条に基づいて我が国の補修用自動車部品の分野について不公正貿易慣行の特定を行いました。どちらで特定されたにいたしましても、通商法上、特定後の手続及び効果においては変わりはないと理解をいたしております。  いずれにせよ、今般、アメリカがかかる一方的な手続を開始することとしたことは、日米両国政府が追求してまいりました多角的貿易体制の維持強化という目的と相入れないものでございまして、アメリカの良識ある対応を期待したいと思います。  包括協議についてお尋ねがさらにございました。  日米包括経済協議において、双方のとる措置を政府による対応が可能で責任の及ぶ範囲の事項に限定すをこと、将来の結果をあらかじめ約束することはできないこと、また、客観的基準が数値目標を構成するものではないことなどの原則について、既に日米間で意見の一致を見ております。これは、今回の文章の中にも明確にそう書かれております。今般の協議妥結に至る話し合いにおいても、これらの点は何回もカンター代表との間で確認をいたしております。  したがいまして、客観的基準については、中立的な基準により評価を行うというものであって、何ら将来の結果を約束するものでないことは確保されており、この点についてカンター代表を初め米側との間で理解の差異があるとは考えておりません。  今後に残された分野の日米交渉についてお尋ねがございました。  今回の妥結が包括経済協議のその他の分野にもよい影響をもたらすとともに、日米関係全般に好影響を及ぼしてほしいと心から期待をいたしております。  なお、自動車分野につきましては、今回の三〇一条による特定を踏まえてどのような対応をするかは、当面冷却期間を置くことを含め、今後検討をしていくということになっておりますが、その他の分野につきましては、今般の協議の大きな成果を基礎としつつ、引き続きその妥結に向けて努力をすることといたしたいと存じます。(拍手)    〔国務大臣大河原太一郎君登壇、拍手〕
  8. 大河原太一郎

    国務大臣(大河原太一郎君) お答え申し上げます。  まず、食糧自給率の維持向上策についてでございますが、食糧は最も基礎的な物資でありまして、その安定的な供給をしていくことは国の基本的な役割であると存じます。しかしながら、最近においては食生活の多様化なりあるいは国際化の進展によりまして低下傾向にあることは、御指摘のとおりでございます。  このため、今般のウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策におきましても、農業を誇りを持って携わることができる魅力ある産業として確立する一方、国土資源の有効利用により可能な限り国内生産を維持拡大し、自給率の低下傾向に歯どめをかけることを基本として政策展開に努めてまいりたいと考えております。  次に、ミニマムアクセスの運用についてのお尋ねでございますが、ミニマムアクセスによって輸入される米につきましては、国内需要の動向に基づいて主食用や加工用の用途に充て、一部を備蓄に充てていくことになるものと考えております。  いずれにいたしましても、国産米と輸入米を一体とした全体需給バランスの維持が図られるよう備蓄の運営などを含めて検討してまいりたい、さように存じておるところでございます。  次に、食糧管理制度の改正についてのお尋ねでございますが、去る四日開催された緊急農業農村対策本部におきまして、現行の食管制度を廃止し新たな法制度のもとで米管理システムを構築するとの考えが取りまとめられたところでございます。この中で、全体需給の調整のために生産調整や備蓄運営を計画的に推進すること、また、民間流通による自主流通米を主体とする制度とするとともに、政府米は備蓄運営といった政策的機能を有するものとすることの基本的仕組みとするものとされたものでございます。  私といたしましては、このような新たなシステムが円滑に運営されるよう、政府は生産調整実施者から備蓄運営のため政府米の買い入れを行うものとするとか、その場合の買い入れ価格については自主流通米の価格を基本として生産コストを勘案して設定する、また、備蓄については百五十万トンを基本とし、豊作等による需給変動に機動的に対応し得るよう一定の幅を持って運用すること等が必要であると考えております。  いずれにいたしましても、米の需給及び価格の安定を図ることを主眼として検討を行い、速やかに成案を得て今国会に提出いたしたいと考えておるところでございます。  最後に、WTOの協定の批准等についてのお尋ねがございましたが、現在与党内においても農業・農村対策の確立との関連等を踏まえつつ議論が行われていることは承知しているところでございます。  我が国政府として昨年十二月にラウンド農業合意の受け入れを決定したことは、外交の継続性確保の観点及び国際社会責任ある一員としての我が国立場考えた場合、重く受けとめなければならないと考えております。  同協定の締結に当たりましては、この協定が農業分野のみならず広範な分野にわたっているものでございまして、今後我が国が貿易立国として多角的自由貿易体制の中で繁栄していくため重要なものであると考えておるわけでございますが、本国会では十分な御審議を賜りたいと考えております。  私、農林大臣といたしましては、先日、緊急農業農村対策本部でまとめられましたラウンド農業合意関連対策の大綱骨子の方向に沿いまして、財政的裏づけを含む施策の確立に万全を期してまいることが何よりも肝要であると考えておるわけでございます。(拍手)
  9. 原文兵衛

    ○議長(原文兵衛君) 先ほどの石井君の発言につきましては、速記録を調査の上、議長において適切な措置をとります。     ―――――――――――――
  10. 原文兵衛

    ○議長(原文兵衛君) 井上吉夫君。    〔井上吉夫君登壇、拍手〕
  11. 井上吉夫

    ○井上吉夫君 私は、自由民主党代表して、さき村山総理大臣の所信表明演説について総理並びに関係大臣に質問をいたします。  本題に入る前に、去る四日夜発生した北海道東方沖地震によって被災、負傷された方々に心からお見舞い申し上げますとともに、災害復旧に万全な対策を講じられるよう強く要望をいたします。  村山政権がスタートしてからはや三カ月が経過しました。この内閣の誕生ほど内外の大きな反響、さまざまな論議を呼んだ例は今まで余りなかったわけでありますが、今、冷静に時代の流れ、内外の政情を反すうしますと、これは歴史がもたらした必然であるとの感をますます強くするのであります。  すなわち、ベルリンの壁の崩壊から五年、ソ連邦の壊滅から三年、この間日本政治も変動の大波に洗われております。五五年体制も一年以上前に終止符が打たれ、自社両党は、おのおの野党与党と所を変え、逆の経験をする中で、いわゆる学習、自己改革に努めてまいりました。    〔議長退席、副議長着席〕  他方、非自民を旗印にした旧連立政権は、強権的な政治運営や疑惑問題により行き詰まり、我々はその混迷、難局を乗り切るために、議院内閣制の正道に立ち戻り、今までの反省を生かし、政局の安定により国益を守るべく村山政権に参加いたしました。  しかも、村山総理は、就任間もなく、社会党の長年の党是でありました自衛隊を初めとする基本政策問題をみずから敢然と政策転換されたわけであります。これは、東西冷戦、イデオロギー論争の終結の流れを的確にとらえ、一国を預かる総理責任を十分自覚された歴史に残る英断として敬意を表するとともに、共通の土俵の中で新しい日本を築く取り組みができますこと、まことに喜ばしいことであります。  また、最大の懸案として注目されました税制改革において、世論の動向、与党三党の政策調整を十分踏まえ、福祉の面にもできるだけ配慮しつっ、増減税一体処理を行われましたことは、村山連立政権責任ある政治の大きな第一歩になると確信しております。  七月以来、ナポリ・サミット出席、アジア諸国歴訪と精力的な外交を展開され、内政では税制改革問題などに取り組まれ、内外政の経験に乏しかった村山さんにとっては大変な心労の連続であったと推察しておりますが、総理自身は政権担当のこの三カ月間をどのように受けとめ、その経験を目指すべき政治理念、政策推進にどう生かされようとしているか、まず伺いたいと存じます。  村山内閣の支持率調査では、当初、支持しない方が多かったのでありますが、最近は逆転し、支持がかなり上回っております。村山内閣の信義を守る政治姿勢、現実に即した基本政策、透明度の高い政治運営等が徐々に国民皆さん理解されつつあるものと受けとめております。  問題は、これから世界平和への貢献、経済の活性化、行政の大改革にどう対処するかで真価が問われていくことは言うまでもありません。  村山さんは、社会党の委員長になって以来、人の話をよく聞きつつも、重大な局面において大局的に決断し、指導力を発揮されてきましたが、昨今の政情をおもんぱかりますと、油断はまことに禁物であります。  「至誠天に通ず」、「思う一念岩をも通す」という言葉があります。今日の政局に当てはめますと、「天」は言うまでもなく民意であり、「岩」は政治的混乱を好機と策動する強権的な一部政治勢力、さらには改革の前に立ちはだかる硬直的な官僚等ではなかろうかと思われます。  新党づくりが大変活発でありますが、政党の政策的な相違が小さくなった今日一番大切なことは、わかりやすく国民の心情に響く政治運営をいかに行うかということであります。  総理のお人柄を生かした誠実な政治姿勢によって、民意の集約、機運醸成に努め、大局的にリーダーシップを発揮して、行財政の改革政治主導により断行すべきだと考えますが、総理方針を承りたいと存じます。  次に、政治改革について伺います。  これまで、衆議院議員の選挙制度に小選挙区比例代表制の導入、政治資金の規制強化、政治腐敗の防止及び政党への公費助成などが制定されましたが、これら政治改革の実行には何よりも小選挙区制の具体的な区割り法案の成立を急がねばなりません。  総理は、所信表明演説において、審議会勧告の区割り案を全面的に尊重し、去る四日、法案を提出されました。どうか内政改革の最優先課題として取り組まれるよう改めて御決意のほどを披瀝願いたい。  新制度の告知期間は一カ月間とされましたが、その周知徹底とあわせて、有権者の政治に対する意識の変革についても同時に十分理解をいただくことが必須の要件と思います。  もとより、これらの改革政治改革の第一歩であります。新しい選挙制度が政党を中心に明るく公明正大に行われるには、政党による選挙犯罪をも未然に防止し、その責任の所在を明白にしておく必要があると思います。  すなわち、これまで連座制により候補者に失格などの制裁が及ぶ者は、総括主宰者、出納責任者及び一定の親族などに限定されております。これをさらに広げて、政党役員などを含む選挙運動の立案、調整、指揮監督する管理権限者をも対象とすべきものと思います。また、ボランティアによる選挙運動の支出規定は現在極めてあいまいでありますので、これの明確化を図る必要があります。いかがでありましょうか。  関連して、政党法の制定について、私は、政党への公費助成の導入に伴い、政党に法人格を付与し権利義務関係を明確にすべきと考えるものでありますが、一方、これについては、憲法における結社の自由との関係や公権力の介入を招く疑念から否定的な見解もあることを承知いたしております。  我々は、政治改革のさらなる徹底した推進のためには、この際、選挙における腐敗防止に関する制裁措置の強化や政党の法的位置づけは必須の課題であると受けとめております。総理の御所見はいかがでございましょうか、お伺いをいたします。  次に、外交問題について伺います。  最近のルワンダ難民やハイチ進攻問題などに見られるように国際社会は依然不安定な状況にあり、世界経済も明るい面が出てはいますが、なお厳しさが続き、特に開発途上国における貧困、賢境、人口、エイズ、難民などの地球規模の問題はむしろ深刻になっているようであります。  こうした中、国際社会我が国に寄せる期待はますます高まっております。総理は、我が国としてPKOを初め国際社会にどう貢献し、その役割を果たしていくのか、まず御決意を承りたいのであります。  さて、焦眉の課題は、我が国の安保理常任理事国入りの問題であります。  五十年ぶりにその改革問題が提起されるに当たっては、この機会に、国際情勢の推移に応じ一層の機能強化を図るべきと存じます。私は、世界の中の日本として世界の平和と安定のためには、日本は進んでその持てる能力、経験を積極的に世界のために尽くすべきと考えます。もちろん、その際、平和憲法を持つ我が国としては、あくまでも、憲法の範囲内においての行動であり貢献でなければなりません。いやしくも武力を伴う戦闘的役割、責任は一切負うべきではありません。  河野外務大臣は、三党合意を踏まえ、こうした趣旨を去る九月二十七日の国連総会演説されました。全く同感いたすものであります。しかし、国民の間には、何が軍事に当たり何が非軍事であるのか、そこらおたりがグレーゾーンとなって、いまひとつ明白でありません。  そこで、憲法の範囲内の国際貢献とは具体的に何を指すのか、また海外における武力行使とは一体何か、その基準をはっきりお示しいただきたいのであります。  なお、日本軍事貢献しない、いわゆる条件つき立候補について、一方に一国平和主義を克服できず弱腰で無責任ではないかという意見があります。政府としてこういう姿勢で国際社会における理解と協力が得られるのか、認識をお伺いいたします。  冷戦の終結により、ようやく安保理本来の機能が発揮できるようになり、日本も昨年の一月以来非常任理事国として積極的な役割を果たしてきているところであります。今回の安保理改組に当たって、我が国として望ましい安保理のあり方に、ついてどう考えているのか、外務大臣にお伺いいたします。  今回の外務大臣の国連における演説により、常任理事国入りについて政府方針が決定されたからには、今後、国際政治の修羅場で現実に日本対応が迫られ、責任を問われることになります。就任当初慎重な姿勢をとっていた総理として、どう国民合意を形成し、常任理事国として責任を果たしていく決意であるか、この際御所見を承りたいのであります。  我が国は、世界一の援助大国として、これまで経済的に社会的に恵まれない途上国の人々に対し支援を行ってまいり、それなりに国際責任を果たし、高い評価を受けているところであります。  しかしながら、これまで量的な面の拡充にとかく目を奪われ、我が国経済協力が真に現地の国や人々に役立ち評価されているかということになりますと、その後のフォローが十分でなかった面があると考えます。経済協力に当たっては、十分な事前調査はもちろんのこと、事後の評価、会計検査をしっかり行い、国民の血税としての経済協力にいささかも疑念が生じないよう厳正な運用を求めるものであります。政府の御見解伺いたい。  日米包括協議につきましては、ナポリにおける日米首脳会談以後、政府調達、自動車及び同部品、保険の三分野に加えて、板ガラスも含めて、ワシントンで協議が継続されていたところであります。  特に、九月三十日の米通商法の制裁期限を控えて、河野外務大臣及び橋本通産大臣には、昼夜を徹しての粘り強い協議、国益を踏まえての一歩も引かぬ堂々の交渉には深く敬意を表します。  結果として、自動車・同補修部品については合意されず、補修部品は米通商法三〇一条の対象となり、極めて遺憾ではありますが、大筋合意は今後の日米関係にとってもやむを得ぬ措置と存じます。  我が国としては、今後とも内需主導型経済による景気回復の着実な進展を図るため、さらなる市場開放、規制緩和及び公共投資の増額などを積極的に行うべきと考えます。  そこで、総理より今回の交渉の経緯と我が国経済への影響を承りたいのであります。  また、政府は数値目標拒否の姿勢を貫かれたと聞いておりますが、米国と受けとめ方のずれが見受けられますので、外務大臣よりお答えをいただきます。  さらに、自動車補修部品が三〇一条の対象となりました原因と今後の打開の方策について、通産大臣より答弁をお願いいたします。  次に、安全保障について伺います。  我々はこれまで、日米安保体制を堅持し、適切な規模の防衛力で専守防衛に徹し、侵略を未然に防止することを防衛政策基本としてまいりました。四十七年ぶりに誕生した社会党党首の村山総理は、これまで社会党が掲げてきた自衛隊違憲・非武装中立論を大胆にも修正、自衛のための必要最小限実力組織である自衛隊憲法の認めるものと認識する、また、日米安保体制の堅持は従来の政府の外交政策の継続を標榜する政権として当然であると答弁されたことは、現実に政権を担う責任において思い切った意識改革に改めて敬意を表するものであります。  こうした安全保障政策を初めとする従来の基本政策の転換については、当然のことながら、九月三日の社会党大会において激論が飛び交わされ、採決により態度決定が行われたようでありますが、改めて安全保障に対する基本姿勢について村山総理の決意をお伺いいたしたいのであります。  去る八月十二日、防衛問題懇談会はその検討結果を総理報告されました。総理は、この報告で取り上げられている防衛計画大綱見直しなど、これをどう受けとめ、自衛隊の再編など今後の新しい防衛政策に反映させるのでありましょうか、お伺いいたします。  次に、ウルグアイ・ラウンド協定と関連農業対策の問題について伺います。  我が国経済、特に農業に大きな影響を及ぼすウルグアイ・ラウンド協定は、WTOの設立予定を来年一月一日に控え、今国会で協定の審議が最大の課題となっております。  今後の食糧の需給動向を見ますと、先般カイロで開催された国際人口・開発会議において、世界の人口急増や環境の問題が大きく取り上げられ、今後の世界の食糧の需給の逼迫が心配されるところであります。日本の食糧自給率は四六%と先進諸国の中で際立って低く、食糧の安全保障、農業の健全な発展が国益上ますます重要な課題となってまいりますしかるに、日本の農業、農村は、昨年の未曾有の冷害に加え、細川内閣によるウルグアイ・ラウンドの農業合意受け入れにより大きな衝撃を受けております。  稲作は、二千年来営々と築き上げた日本の伝統文化の源泉、さらには国土保全のかなめであり、いわば国の基となる民族共有の財産として大切に後世に引き継がなければなりません。それにもかかわらず、直前まで米の自給方針を言明し続けてきた政府が三回にわたる米の自由化阻止の国会決議を無視して突如として部分自由化受け入れを発表したとき、農家は余りのことに驚きと怒りで言うべき言葉を失いました。農政に対する不信は極限に達したと言っても過言ではありません。  そのとき細川総理は、記者会見において、日本がガットの自由貿易体制の枠組みから享受した利益と恩恵ははかり知れないものがあり、将来にわたる国益を考えての苦渋の選択であると述べ、部分的とは言いながら米の輸入に道を開くことは断腸の思いの決断だったと説明するとともに、この選択がもたらす悪影響を最小限に食いとめ、意欲を持って農業に取り組めるよう日本農業の将来展望を切り開いてまいりたい、そのために必要な国内対策に責任を持って取り組むことを約束されたのであります。  この約束の誠実な履行なくしては失われた政治への不信は回復できませんし、条約の批准など到底考えられないことを銘記しなければなりません。  隣の韓国は、米のミニマムアクセスで我が国よりはるかに有利な交渉結果を獲得しましたが、農業、農村の発展のため、今までの農業予算の半額近くに当たる特別予算を十年間毎年上積みすると聞いております。  政府は、十月四日、緊急農業農村対策本部を開き、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱骨子を決定いたしましたが、問題は、これを特別な財政的な裏づけのもとでいかに具体化できるかどうかにかかっております。  対策本部長でもある総理に、必要な予算の措置を確約いただきたい。あわせて、農林水産大臣の決意を承ります。  米の過剰が懸念され、農産物の輸入が拡大するなど厳しさが増す中、安心して営農にいそしめるよう、画期的な農業・農村振興ビジョンの早急な策定、時代に合った新たな米管理システムの整備などが強く要請されていますが、これに関し農林水産大臣の答弁をお願いをいたします。  特に協定の受け入れにより最も大きな影響を受ける中山間地域の活性化は、従来の農政の手法では到底達成できません。この際、思い切った発想の転換を図り、農山村の生活環境や生活基盤の整備推進のための法体制や制度の見直しか絶対必要であります。国際社会に生き残る日本農業のため、実力農林水産大臣として大河原さんへの期待は特に大きなものがあります。  さて、農業基本法が制定された一九六一年とでは社会経済情勢も農業環境も大きく変わりました。今こそ新たな状況のもとで、農業・農村のあり方、食糧自給の安全保障と日本農業の持続的発展を図らなければなりません。農政の目標の見直しと諸政策を総合的に展開するため、食料・農業・農村に関する新たな基本法を制定する必要があります。このことについての農林水産大臣の所見伺います。  次に、経済の問題に移ります。  戦後最長最大と言われてきた今次不況もようやく先月政府の事実上の景気回復宣言により収束に何かいっっあることは、ともども愁眉を開くものでありますが、必ずしも手放しで喜べる状況にはないようであります。  雇用はいまだ悪化が懸念されつつある中で、個人消費の好調がこの秋口から停滞するおそれもあり、円相場がまた高騰するようなことになると景気は一進一退を繰り返すことも心配されますが、政府として今後の景気動向をどう見ているのか、伺いたいと存じます。  企業の輸出採算ベースは円相場百十円前後と言われ、企業は生き残りをかけて懸命にリストラに取り組んでおります。その中で、海外拠点での生産シェアが過半にも及ぶ産業企業も目立つなど、産業空洞化が進展し雇用面への悪影響も心配されております。  このように依然として厳しい状況に対処するため、新規分野の開拓、技術の開発が叫ばれておりますが、長い不況に疲弊した産業、特に中小企業は、過大な負債を抱え、前向きな経営対応が困難で、人員整理等を余儀なくされている企業が数多く見られます。苦境に立つ中小企業を救済し、創造的な経営活動、投資ができるように抜本的な振興対策を講ずべきと思いますが、いかがでありましょうか。  このような重大な事態に対処するため、参議院において中小企業対策特別委員会が我が党の主導により設置されることになり、我々も懸命に対策に取り組んでいく決意であります。雇用については、完全失業率が七年ぶりに三%に達し、有効求人倍率も○・六三倍と停滞し続け、来春の採用見通しも深刻で、就職浪人は今春の十五万人を大幅に上回ると言われておりますしわ寄せを食うのは高齢者や女性労働者であります。「人にやさしい政治」を進めるために、当面のきめ細かな就業促進、中長期的な雇用システムの改善を総合的に進めることがぜひとも必要であり、どのような取り組みをされているのか、具体的に答弁願いたいと思います。今まで数次にわたり景気対策が実施されてまいりましたが、それにしても本年度の経済成長目標二・四%は当初から過大との見方が多く、最近、民間調査機関は上向き修正しているものの、一%則後にとどまっております。その原因は、かつてのような民間設備投資主導の景気回復パターンが期待できないことにあります。今後、景気をさらに上昇軌道に乗せていくためには、円相場への機動的な対応とともに、公共投資基本計画の量質両面にわたる拡充見直し、土地流動化・有効利用促進対策の早期策定が望まれます。特に、公共投資基本計画については総理の国際公約とも言えるものであり、このような内需拡大策の具体的な推進方策をお聞かせ願いたいのであります。次に、規制緩和行政改革について質問いたします。  「追いつけ、追い越せ」を国是として、保護や規制を背景に形成されてきた日本型システムは経済発展に大きな役割を果たしてきましたが、それにもかかわらず、国民は豊かさを十分実感することなく、貿易面で膨大な黒字、円相場の高騰をもたらしているのが現状であります。八〇年代から世界的な規制緩和が始まり、冷戦の終結により今や国際的大競争時代が幕をあけようとしているとき、我が国は海外との競争的共存により一層発展していくため、各種規制を大幅に緩和し、円高メリットの国民への還元、競争条件の整備、新規事業の創出を急ぐべきであります。  経済規制は、原則自由とする方針で検討されておるようでありますが、既得権益を守るため、安全性の確保であるとか環境保全と関連しているという理屈をつけて例外扱いを主張、抵抗する者が多く出てくることが懸念をされます。社会規制必要最小限方針を堅持し、全体を厳正に見直し、五カ年計画を策定、実効性を確保すべきと考えますが、総理方針伺います。  行政改革は、税制改革、公共投資など重要政策推進の前提とも言うべき位置づけにあり、まさに村山内閣の強力な指導力が問われる正念場であります。  先月、税制改革と並行して「行政改革を進めるに当たっての基本方針」が閣議了解され、所信表明においても行革の断行を強調されています。国民への負担を強いるからには、政府みずからも、民間のリストラの実態を十分踏まえ、効率的な小さな政府を目指して行政組織の縮小合理化、公務員の人員削減など、行革により経費を節減することが強く求められております。これなくして増税となる税制改革国民理解が得られるはずもありません。  行革の中でも当面の最重要テーマとなっている特殊法人の問題については、平成六年度内に前倒し見直しするとの積極方針が打ち出されておりますが、思い切った統廃合や民営化などの目標を設定し、国民の目に見える形でいかに具体的に実行できるかであります。改めて総理の決意のほどを承りたいのであります。  地方分権の積極的推進は本院で、昨年、国会決議され、権限委譲の断行、地方の受け皿体制整備が急がれ、政府はその第一歩として地方消費税の創設に着手されましたが、具体策はこれからであり、年内の大綱づくりにどのように取り組んでいかれるか、お聞かせを願いたいのであります。  次に、税制改革の問題に移りたいと存じます。  二十一世紀を目前に控えて今後の高齢化社会を展望するとき、社会保障関係の歳出規模が急速にふえ、現行のシステムがこのまま推移すれば租税と社会保障負担が大幅に上昇すること必至と思われます。  問題は、受益と負担のバランスをどうするか。高福祉低負担で後世代に大きなツケを先送りすることは許されません。減税論議に入る前に財政運営における健全性、節度について総理基本的認識を伺っておきたいと存じます。  税制改革については、自・社・さきがけ三党による与党税制改革プロジェクトチームによる論議を踏まえ、減税規模はことしの五・五兆円を継続することとし、来年度以降は恒久減税定率減税との組み合わせによるいわゆる二階建て方式とすること、また消費税税率平成九年四月より五%とする増減税一体処理となっております。  今日の税制改革の課題は、税負担感の強い中堅所得層の所得税負担を軽減し、これにあわせて、高齢化に向かって揺るぎない福祉を構築するため、課税ベースの広い消費税にその負担を求め、直間比率の見直しを図ることにあると思います。あるべき姿としては、減税財源は行革と自然増収によって賄い、消費税の増収分はあくまでも将来の福祉に回すべきものと思います。  政府は、今回の税制改革の意義、必要性をどう認識しておられるのか、総理及び大蔵大臣より説明を求めるものであります。  少子・高齢社会へ向かって国民が不安を持つことは、今後我が国の福祉政策の内容がどうなるか、またそれを支える財政需要にどう対処していくかということであります。二十一世紀の高齢化に対応して、現在、新ゴールドプランやエンゼルプランが策定中でありますが、政府が描く社会保障像をこの際示されたいのであります。  なお、今回の改革で触れられなかった納税者番号制の導入、利子配当収入の総合課税の問題、税務執行の適正化などの問題は、不公平税制是正の見地から避けられないものと受けとめておりますが、政府として今後どう対処するのか、伺いたいのであります。  税制改革国民負担を強いることはなるべくならやりたくありません。しかしながら、超スピードでやってくる日本の少子・高齢社会を思うとき、我々政治家の使命は、単に選挙におもねることなく、現状の問題点を正しく国民に伝え、未来の展望を開くために、つらくとも、政治が今決断しなければならないことを国民へ率直に誠意を持って語りかけ、御協力いただく努力が必要かと存じます。さきに合意した連立三党の改革案もこうした視点に立ってのものであることを理解願いたいのであります。  以上の点について、総理及び大蔵大臣の御答弁を求めるものであります。  最後に、一言、政局の展望について触れたいと存じます。  我が国の政局の動向が、経済国民生活を直接左右するだけでなく、国際的にも大きな影響を与え、政治の安定が内外から強く望まれておりますこと、御案内のとおりであります。一年間に三回も政権が交代するような不安定な政局では、先を見通した政治どころか、当面の政策の実行性さえも確保できず、国際的に日本の信頼が失われ、我が国政治経済も混迷に陥ったことは当然であり、二度と繰り返してはならぬことであります。  第一党の我が党と第二党の社会党が、さきがけとともに、民主的な手続を大切にし現実に即した知恵を出し合い協調していくこと自体が政治政童の確固たる歩みであります。  小選挙区の区割り法の周知期間が終わったら直ちに解散すべきであるとの意見もありますが、このような選択を行った場合、幾多の政治課題に取り組んでいるさなかにまた政治的に混乱をもたらすことになり、国益を大きく損なうこと必定であります。それよりも、重要政策実施について一応めどのついた段階で国民の信を問うのが責任ある政治のとるべき道であると確信いたしております。総理、総選挙の時期についてどのように考えておられるのか、しかと御見解を承りたいと思います。  今後の政局を展望しますと、日本の将来を左右する諸改革を自・社・さきがけの三党が、先般の税制改革政策調整の経験を生かしつつ不退転の決意で一層切磋琢磨し、協調、打開することによって、信義を重んじ透明度の高い政治を担う中核的な政治勢力が広がりを見せ、望ましい政治情勢が展開していくでありましょう。  そのためには、長期・本格的な連立政権を目指して我が国発展の新しい路線づくりに懸命に取り組むべきだと考えますが、総理の決意のほどをお聞かせいただき、質問を終わりたいと存じます。〔拍手)    〔国務大臣村山富市君登壇、拍手〕
  12. 村山富市

    国務大臣(村山富市君) 最初に井上議員から、一昨日の北海道東方沖地震に対するお見舞いの言葉がございました。  この際、政府としても申し上げておきたいと思いますが、この地震災害により被災されました皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。  なお、その被害状況の的確な把握に努めることはもとよりでありますが、今後とも万全の対策を講じてまいる所存でございますから、この際申し上げておきたいと思います。  井上議員から、政権を担当した三カ月間の感想と目指すべき政治理念、政策についてのお尋ねがございましたが、この慌ただしく過ぎてまいりました三カ月間を振り返りながら感慨深く拝聴させていただきました。  この三カ月間、連立三党派は、それぞれに自己変革を進めながら透明で民主的な政策論議を重お、内政、外交にわたる懸案の重要課題について一つ一つ着実に改革の方向を見出すべく努力をしてまいりました。これは、このたびの連立政権が過去の行きがかりを乗り越えてよりよい政治の確立に向けて努力をしてきた成果であると考えています。このような経験を大事にしながら、今後私は、民主的で透明度の高い政権運営を行いつつ、人にやさしい政治国民から安心感を持って迎えられる政治の実現に向けて懸命の努力を続けてまいる決意でございます。  次に、行財政改革政治主導により断行すべきとのお尋ねがございましたが、御指摘のように、行財政改革の推進はこの内閣が全力を傾けて取り組まなければならない課題であると認識をいたしております。また、国民理解と御協力を得ながら税制改革を進めていくに当たりまして、同時に行財政改革について英断を持って実行していくことがぜひとも必要であると考えております。  このため、政府といたしましては、与党の「行政改革を進めるに当たっての基本方針」を踏まえて、行財政改革の推進に積極的に取り組んでいくこととしております。既に私からも各大臣に対して具体的方策を検討するよう指示しているところでございます。今後、規制緩和、地方分権を初め、行政情報公開、行政組織及び特殊法人など各般の改革課題について積極的に取り組み、必ず実現させるべく努力を払ってまいる決意だけは申し上げておきたいと思います。  次に、区割り法案についてのお尋ねでありますが、御指摘のとおり、この法案が成立することによって衆議院の選挙制度の改革政治資金制度の改革及び政党助成制度が初めて施行されることになりますので、法案の早期成立に向けて最善の努力を尽くす決意でありますが、皆さんの一層の御理解と御協力をお願い申し上げます。  新制度の周知徹底とあわせて有権者の政治に対する意識の変革が必要であるとのお尋ねでありますが、今回の政治改革を実効あるものとするためにも、今後とも関係者の協力を得ながら新制度の内容について有権者への周知徹底に努めることは当然でありますが、何よりも政治が主権者である国民にとって身近であるものでなければなりません。有権者自身がこの制度の基本となる考え方、趣旨を十分御認識をいただけるよう、今後とも一層努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  次に、連座制の強化等についてのお尋ねがありましたが、御指衛の組織的選挙運動管理者を連座制の対象とすることや選挙運動に関する支出の規定を明確化することにつきましては、御意見の趣旨を踏まえて、与党では、既に法案として取りまとめた上、国会に提出されていると承知をいたしております。いずれも選挙の腐敗防止に効果を上げるものと考えているところでございます。  次に、政治改革のさらなる推進に関してのお尋ねがございましたが、政党への法人格付与の問題につきましては、与野党間において、政党の政治活動の自由を制限しないよう配慮しつつ、御指摘のように、その交付対象となる政党を法的主体として明確に位置づけること等を内容とする法案を提出することについて、合意されたところと聞いております。連座制の強化等を内容とする法案とあわせ、政治改革のさらなる推進に資するものであると確信をいたしております。  国際貢献あり方についてのお尋ねでありますが、冷戦後の国際社会において、世界の平和と繁栄に向け従来以上に我が国の役割が求められています。このような中で、我が国としては、地域紛争の平和的解決、難民などの人道上の問題、環境・人口問題を初めとする地球規模の課題など、幅広い分野においてより積極的な役割を果たしていかなければならないと考えているところでございます。  次に、安保理常任理事国入りについてのお尋ねがございましたが、先般の外務大臣国連総会演説で述べられたとおり、我が国国際貢献についての基本的な考え方は、我が国の安保理常任理事国入りの条件というよりは、我が国世界のためにどのように貢献していくかについて示したものであると考えています。我が国が国際の平和と安全のための諸活動に対し憲法の範囲内で協力していくことにつきましては、国際的にも十分理解されているものと考えているところでございます。  また、安保理改組の問題につきましては、今後も国連において議論が行われていく問題でありますが、国会審議の機会等を通じまして、国民の皆様にも一層の御理解を得られるよう引色続き努めてまいる所存でございます。  次に、日米包括経済協議についてのお尋ねがございました。  今回の政府調達や保険などの妥結につきましては、現内閣による努力の大きな成果であるとともに、現内閣が米国との間によりよい信頼関係を築いているとの証左であるものと考えています。  他方、米国が、通商法三〇一条に基づき、我が国の補修用自動車部品の分野について不公正貿易慣行の特定を行ったことは極めて遺憾でありますが、米側の良識ある対応に期待したいと思います。  いずれにいたしましても、日米の国民企業間には既に緊密な経済関係があり、今般の協議の大きな成果を基礎としつつ、こうした経済関係が一層深まることを期待しているところでございます。  次に、日米安保体制についてのお尋ねがありました。  政府としては、新政権のもとにおきましても、我が国安全の確保などの上で重要性を有する日米安保体制を堅持しながら、その円滑かつ効果的な運用を確保していくという考えに変わりないことは申し上げておきたいと存じます。  さらに、防衛懇の報告をどう受けとめ新しい防衛政策に反映させるのかというお尋ねがございました。  我が国は、憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に基づきまして、日米安保体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ節度ある防衛力を自主的に整備してきたところでございます。このような我が国基本方針は今後とも引き続き堅持をしてまいる所存でございます。  他方、我が国としては、周辺諸国との信頼関係の構築を進めつつ、今後の我が国の防衛力のあり方について検討を行っておりますが、これにつきましては、冷戦後の国際情勢の変化、国際社会における軍備管理・軍縮に向けての努力、将来における人的資源の制約の増大、科学技術の進歩、一段と厳しさ、深刻さを増している財政事情等を踏まえながら、今後とも慎重に検討する必要があると考えているところでございます。その際には、防衛問題懇談会の報告一つの参考とさせていただきたいと考えています。  次に、現在の農業、農村の置かれている現状について詳細な御指摘がございましたが、拝聴させていただきました。特にウルグアイ・ラウンド農業関連対策大綱骨子に必要な予算の確保についてのお尋ねがございました。  これにつきましては、緊急農業農村対策本部においで去る四日に了承されました大綱骨子に基づき、対策の具体的な内容を詰めているところでございます。いずれにいたしましても、総合的かつ的確な施策を講じることができるよう、その裏づけとなる予算措置につきましても今後適切に対処する決意でございます。  次に、今後の景気動向についてのお尋ねがございましたが、景気全体の動向は、企業設備等の調整過程にあるものの、このところ個人消費などを中心に明るさが広がってきており、緩やかなが昌回復の方向に向かっております。他方、急激な円高など懸念すべき要因も見られます。  今後については、これまでの経済対策の効果等により住宅投資や政府投資が堅調に推移する中で、個人消費の回復が本格化し、それが民間部門のマインドの改善と設備投資の回復へとつながっていき、我が国経済は六年度中に本格的な回復軌道に乗るものと期待しているところでございます。  さらに、中小企業対策についてのお尋ねがございました。  累次にわたる経済対策や平成六年度予算における中小企業対策の中で、円高等の影響をこうむっている中小企業者に対し円滑に資金供給を行うことに加え、中小企業新分野進出等円滑化法を制定し、新たな事業部門への進出を支援するなどの対策を実施してきたところでございます。また、先般、閣議におきまして、産業・雇用構造の転換を円滑に進めるため、政府全体として総合的な政策を推進するよう指示したところでございます。今後、経済の諸情勢に注意を払いながら、このような方針に沿って中小企業の創造的な活力の向上に努めてまいる所存でございます。次に、雇用対策についてのお尋ねがございました。我が国経済は、先ほども申し上げましたように、このところ明るさが広がってきているにもかかわらず、雇用情勢につきましては依然として厳しい状況が続いております。このような厳しい状況対応するため、雇用支援トータルプログラムの実施等により、離職者の再就職の促進などの雇用対策を引き続き強力に推進してまいりたいと考えています。  また、我が国経済社会が大きな変化に直面する中で、今後、中長期的な観点に立って雇用の安定を図ることが重要な課題となっております。このため、産業・雇用構造の転換の円滑化のための対策を政府一体となって推進してまいるべく労働大臣を中心関係閣僚に御協力をお願い申し上げているところでございます。  次に、内需拡大策についてのお尋ねがございました。  政府としては、大規模な所得減税や土地有効利用の促進策を含む先般の総合経済対策を着実に実施するとともに、平成六年度予算の執行を進め、内需を中心とした持続的成長の確保に努めてまいる所存でございます。今後とも、こうした適切かつ機動的な経済運営に努めるとともに、税制改革の年内の実現に努力するほか、規制緩和を初め、公共投資基本計画の質量両面にわたる見直しや、産業・雇用構造の転換の円滑化の推進など、諸改革を強力に実施してまいる所存でございます。  次に、規制緩和への取り組み方針についてお尋ねがございました。  国民生活の向上はもとより、経済の活性化や国際的調和のためにも規制緩和を断行することが不可欠であることは、御指摘のとおりであると認識いたしておるところでございます。このため、政府は、経済規制については原則自由。例外堀制、社会規制については本来の政策目的に沿った必要最小限度のものとするとの基本的な考え方に基づきまして規制の妥当性を厳しく見直すこととしており、内外からの規制緩和要望も把握することといたしておるところでございます。これらを踏まえ、閣僚レベルで本年度内に五年を期間とする規制緩和推進計画を取りまとめ、実行していく決意であることを申し上げておきたい存じます。  次に、特殊法人改革の実行の決意についてお尋ねがございました。  行政改革の推進はこの内閣が全力を傾けて取り組まなければならない課題であると厳しく認識しておるところでございます。このため、今般、与党が取りまとめられました「行政改革を進めるに当たっての基本方針」を踏まえながら具体的方策を検討するように、私から各大臣に対し指示をいたしているところでございます。今後、各省庁におきましても、平成六年度内にすべての特殊法人見直しを行うなど、責任を持って改革案の具体化に努めてまいる決意であることを申し上げておきたいと存じます。  次に、地方分権の大綱策定に向けた考え方についてのお尋ねがございました。地方がその実情に沿った個性あふれる行政を積極的に展開できるよう、国と地方の役割分担を本格的に見直し、権限委譲や国の関与等の廃止、緩和、地方財源の充実強化を進め、地方公共団体の自主性、自立性を強化していくことが必要であることは申し上げるまでもございません。  現在、行政改革推進本部に設置された地方分権部会におきまして大綱方針の骨格の検討を行っているところでございますが、住民に身近な問題は身近な地方公共団体が担っていくことを基本としながら、二十一世紀に向けた時代にふさわしい地方自治を確立するため、私としても具体的な成果を上げるべく強い決意で地方分権問題に取り組んでいく決意であることを申し上げておきたいと存じます。  さらに、財政運営における健全性、節度についての御質問がございましたが、我が国財政は、公債残高が二百兆円を超える見込みであるなど、ますます厳しさを増しております。このような状況のもと、今後の本格的な高齢化を迎え、井上議員御指摘のように、財政運営の健全性と節度を堅持していくことが極めて重要であることは申し上げるまでもございません。このため、今後とも、歳出面において制度の根本にまでさかのはった見直しや施策の優先順位の厳しい選択を行うなど、財政改章を強力に推進していかなければならないと考えているところでございます。  次に、税制改革の意義についてのお尋ねがございましたが、今回の税制改革は、活力ある福祉社会の実現を目指す視点に立ちまして、個人所得課税について、働き盛りの中堅所得者層中心負担軽減を行い、社会の構成員が広く税負担を分かち合えるよう消費税について現行制度の抜本的改革を行い、税率引き上げることにより消費課税の充実を図るというものでございます。また、地方分権の推進、地方福祉の充実等の観点から地方税源の充実を図る必要があり、地方消費税を創設することを盛り込んだものでございます。  さらに、新ゴールドプラン、エンゼルプラン及び社会保障像についてのお尋ねがございましたが、今般の税制改革に当たりましては、与党における御論議の結果、少子・高齢社会に向けて当面緊急を要する施策について一定の福祉財源措置が講じられたところでございます。今後、新ゴールドプラン、エンゼルプラン等の内容につきできるだけ早く詰めを行うとともに、年金、医療等の自然増等の推計を行うなど、将来の社会保障の具体的な全体像を明らかにしていくべきものであると考えているところでございます。  次に、税制改革について国民に率直に語りかけるべきではないかとの御主張につきまして、私自身、議員と同様、税制政章の実現には何よりも納税者に納得していただくことが大事であると考えております。税制改革の趣旨、内容について国民の皆様の御理解を得るために、今後ともあらゆる機会を通じて一層努力してまいりたいと考えているところでございます。  次に、総選挙の時期についてお尋ねがございました。  現在、区割り法案の早期成立や腐敗防止の徹底など幅広い政治改革の実現を図るとともに、規制緩和や地方分権問題、税制改革の課題、日米包括協議や北朝鮮の核問題など、さまざまな課題を抱えており、今やいっときたりとも政治の停滞は許されない状況にあると考えております。このため、私は、総理大臣として、こうした内外に山積する課題に対応するために全力を注いでまいる所存であり、解散・総選挙につきましては今のところ考えておりません。  最後に、今後の政局の取り組みに対する私の決意についてのお尋ねがございました川  戦後、我が国の発展を支えてこられました経済社会システムが内外の変化に対応できなくなりつつある今日、二十一世紀を見据えて政治経済社会改革に大胆に取り組んでいかなければならない重要な課題を抱えておると認識をいたしております。このため、私は、連立与党相互間の信義と信頼関係を基本に民主的で開かれた政治を行い、幅広い国民皆さんの信頼と支持を得ながら実効ある政権運営に邁進してまいる所存でございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)    〔国務大臣河野洋平君登壇、拍手〕
  13. 河野洋平

    国務大臣(河野洋平君) 我が国は、国際の平和と安定のため、これまでも憲法の範囲内で可能な国際貢献を行ってまいりました。このような我が国国際貢献は、軍縮・不拡散、国連平和維持活動、あるいは開発、環境、人権、難民、これらかなり幅広い分野にわたっております。我が国としては、今後ともこのような国際貢献を積極的に行いたいと考えているわけでございます。  お尋ねになりました海外における武力行使につきましては、例えば我が国が集団的自衛権を行使することが憲法上許されないことは御承知のとおりでございます。また、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵を行うことは、一般に自衛のための必要最少限度を超えるものであって、憲法上許されないということになっております。  安全保障理事会についてお尋ねがございました。  安全保障理事会は、国際の平和と安全に主要な責任を有する機関として、国連の中で特に重要な役割を担っておるという認識を持っております。  この安保理の正統性と信頼性を高めるということが今議論になっております。これは、国連加盟国の総意をよりよく反映するという必要があるという認識からでございます。  御承知のとおり、国連は、加盟国数が創設時五十一カ国であったわけですが、現在は既に百八十四カ国と、大変大きく加盟数が増加をいたしております。このため、安保理の拡大が必要などの意見が一般的多数意見となりつつございます。  同時に、安保理の実効的な機能が一層強化されるべきだということを我が国は主張いたしております。  現在、世界の平和と安定のために貢献する意思と相応の能力を有し、新たにグローバルな責任を担い得る国が安保理により積極的に参加することによってその機能を強化することが重要だと、こういう考え方でございます。  こうした観点から、我が国は、現在国連において行われている安保理改組に関する議論を重視しており、国民の一層の御理解を得つつ、この議論に参加してまいりたいと考えます。  国際貢献についてお尋ねがございました。  実は、きょう十月六日は国際協力の日でございます。ちょうど四十年前の本日、コロンボプランに我が国が加盟することによりまして援助を開始して、ちょうど四十年になるわけでございます。  政府開発援助は我が国国際貢献の重要な柱でございまして、質、量の両面一で引き続き充実させていくことが必要だと考えます。また、御指摘のように、税金などを原資としているODAは、国民に納得いただけるものであると同時に、相手国の国民にも喜ばれるものでなければならないと考えております。  御指摘のありましたODAの内容の充実及びその厳正な運営につきましては、これまでも相手国との緊密な政策対話の実施事前調査や事後評価、みずから厳しくこれらをチェックすることなどに努めておりますが、今後ともODA大綱を踏まえつつ最大限の努力を行っていく所存でございます。  包括協議についてお尋ねがございました。  先ほども御答弁を申し上げましたが、我が国といたしましては、日米包括経済協議が諸外国の高い関心を集めていることを強く認識し、日米両国の間におきます決着は、多角的自由貿易体制や市場経済原則を増進するものでなければならないという基本方針のもとで協議を進めてきたところでございます。また、双方のとる措置を政府による対応が可能で政府責任の及ぶ範囲の事項に限定すること、将来の結果をあらかじめ約束することはできないことなどの包括経済協議の原則につきまして、既に日米間で何度も確認をしてこの協議を進めてきたところでございます。  今般の協議妥結に至る日米間の話し合いにおきましても、我が国はこうした原則を堅持しつつ最大限の努力を払ったところでありまして、このような我が方の立場についてはアメリカに対しても明確にしてきたところでございます。  この結果、今般の妥結の内容に関し、数値目標を設定するものでないとの点については、米側との間で理解の差異があるとは考えておりません。  以上でございます。    〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕
  14. 橋本龍太郎

    国務大臣(橋本龍太郎君) 私からは、自動車補修部品の交渉について御報告を申し上げます。  この問題につきましては、運輸省の全面的な協力をいただきまして、我が国からは、安全面に配慮しながら可能な限り規制緩和を検討する用意がある、そうした姿勢で協議に臨みました。  専門家レベルにおける検討では、相当程度に合意のできる点あるいは理解の進む点があったことは事実であります。しかし、米国側としては制度の原則全廃を求めてまいりましたため、合意に至りませんでした。米国が、同国の一九七四年通商法三〇一条に基づいて我が国の補修用自動車部品の分野につき不公正貿易慣行の特定を行いましたことは、こうした経緯を考えましても、まことに残念であります。  現在のところは、調査の開始が決定されただけであることから具体的な影響は生じておりませんが、一方的措置が講ぜられました場合には、我が国はあらゆる措置をとる権利を留保している、その姿勢で臨むことといたしております。  なお、今後の三〇一条の特定に対する対応につきましては、当面冷却期間を置くことも含め、関係者で検討してまいることといたしております。(拍手)    〔国務大臣大河原太一郎君登壇、拍手〕
  15. 大河原太一郎

    国務大臣(大河原太一郎君) 井上議員にお答えいたします。  大綱骨子の具体化に必要な予算の確保という点の御質問でございますが、先ほど総理も、対策に必要な予算措置についての決意をお述べになったところでございます。現在、大綱骨子につきましては鋭意具体的内容を詰めておるところでございますが、いずれにいたしましても、総合的かつ的確な施策が講じられるよう、その裏づけとなります予算措置については、その確保について全力を尽くす決意であります。  次に、農業・農村振興ビジョンの決定なりあるいは新たな米管理システムについての井上議員の御質問でございますが、今後の農政の展開に当たりましては、政策推進の指針として示された農政審議会報告の趣旨を踏んまえまして、我が国農業、農村が二十一世紀に向けて自立を遂げ、持続的に発展していくことができるよう、幅広い観点に立った食料・農業・農村政策に取り組んでいかなければならないと考えております。  特に、先般了承されましたウルグアイ・ラウンド農業合意の実施に伴う国内対策の大綱骨子については、これを基本方向として御質問の農業・農村振興ビジョンを踏んまえ大綱を確定し、速やかに総合的かつ的確な施策を講じてまいる所存でございます。  なお、米管理につきましては、国内自給を基本とするとともに、農政審報告大綱骨子を踏んまえまして、需給及び価格の安定が図られる新たなる管理システムが構築されるよう現在検討中でございまして、成案を得て今国会に提出してまいりたいと考えております。  中山間地域等の農山村の活性化についての思い切った施策をなすべきとの御質問でございますが、中山間地域等の農山村地域の活性化につきましては、御案内のとおり、従来も特定農山村法等の運用を通じて各般の施策を総合的に講じてまいったところでございますが、特に今後は、多様な就業機会の確保、特色ある地域条件を生かした高収益農業の展開のための農業生産基盤の整備、排水処理施設等の生活環境基盤の整備等、各種施策を着実に推進していくことが必要であると考えております。  この点につきましては、去る四日に了承されました関連対策骨子においてもその施策が提示されておるところでございまして、今後「具体的な対策を取りまとめていく考えであります。  次に、食料・農業・農村に関する新たな基本法の制定の御提案でございます。  お話しのとおり、昭和三十六年に制定されました農業基本法につきましては、制定時に比べて社会経済情勢あるいは国際化の進展という状況の変化もございますので、その見直しについては多くの意見が寄せられているところでございます。また、先般の農政審議会の報告におきましても、その改正の要否を含めて検討すべきであり、速やかに検討体制を整備すべきであるという提言があるところでございます。  これを受けて、去る四日の大綱骨子におきましても、新たな基本法の制定に向けての検討に着手をするということが述べられておりますが、私どもといたしましては、今後、農業基本法にかわる新たな基本法の検討に着手したいと考えておるところでございます。(拍手)    〔国務大臣武村正義君登壇、拍手〕
  16. 武村正義

    国務大臣(武村正義君) 今回の税制改革の意義、必要性についてのお尋ねでございますが、総理から既に答弁がございました。  高齢化社会が急速に進展をしております。足元から沸き立つように高齢化が始まっているというふうに認識をいたしております。既に老齢人口比率は一四%を超えておりまして、何となく高齢化社会というのは近い将来の問題という認識がございましたが、今既にぐんぐん始まっているという認識を持たなければなりませんし、日本民族がかつて経験したことのない事態であります。  この状況政治や行政や税制や財政がどう対応していくか。我々はそういう時期に直面をしているわけでありまして、今次の税制改革もこの問題を基本に踏まえながら論議がなされてきたところでございます。  大きな目標としては、ぜひ高齢化時代というのは大変めでたいうれしい事態だというとらえ方をしながら、であるならば、日本民族、日本国民全体がみんなで支え合う日本をつくっていこう、年をとっても元気が出る日本をつくっていこうという目標のもとに、この新しい負担の問題についても結論を出していく必要があると思っております。  しかし、今回の税制改革がすべての課題にこたえているわけではありません。しかし、この改革によってかなり大胆な前進を遂げることも事実でございまして、三点に絞って申し上げますと、その一つは、三年間、この不況という事態を前提にいたしましてかつて取り組んだことのない大規模減税を推進するということであります。三年間大幅な減税基本的には継続するというこの決断が、まず税制改革基本にございます。  その結果として、五・五兆円の規模が先行して決まっておりましたために、いわゆる所得課税を見直す中で、我々は五・五兆円という昨年来の規模を精査して、課税最低限、累進税率緩和等々厳密に精査をして、三・五兆円に絞ることにいたしました。その結果として、二兆円のギャップが生じることになりました。これはことしと同じように特別減税定率減税でやらしていただこうという結論になったわけでありまして、むしろ単純に五・五兆円の制度減税で取り組むよりは今回の方が、より精査をして全体を見直しておりますだけに、私はベターだというふうに思っておるわけであります。  第二点は所得課税、所得税住民税でありますが、中望サラリーマン層に焦点を当てて思い切った累進税率の引き下げを決断いただいたことであります。このことによりまして、サラリーマンの九〇%を超える方々が生涯二〇%以下の所得税率で終えることができることになりました。このことは、ぜひ御認識をいただきたいと思うのであります。  そして最後に、所得税制度の改革でありますが、先ほどもお答えをいたしましたように、益税等の問題に対しても今回は一歩二歩改革を進めることができたと思っております。また、地方消費税という新しい地方自治財源を創設することもできました。その結果、全体としては二%充実をさせていただくという結論に達した次第でございます。ぜひ、税制改革全体についての御理解を繰り返しお願い申し上げる次第であります。  最後に、税負担の公平確保につきましては、今後とも制度、報行両面にわたって絶えず努力を続けてまいります。今回の税制改革におきましても、課税の公平性へ中立性の確保の観点から消費税の中小特例の抜本的な見直しを行っているところでございます。御指摘納税者番号制度につきましては、税務行政の機械化・効率化等の観点も念頭に置きながら、より具体的に検討を行ってまいりたいと存じますし、また、プライバシーの問題や経済取引への影響等についても論議を深めていかなければなりません。  利子・株式等譲渡益課税につきましては、納税者番号制度の検討と並行をいたしまして、経済取引への影響や執行コストなど総合課税に移行した場合に乗り越えなければならない課題等についての具体的な論議を、今後積み上げていきたいと存じます。  税務執行の適正化についても、当然のことながら、今後とも努力を行ってまいりたいと存じます。(拍手)
  17. 赤桐操

    ○副議長(赤桐操君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 赤桐操

    ○副議長(赤桐操君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十三分散会      ―――――・―――――