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1994-11-10 第131回国会 参議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月十日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員異動  十一月九日     辞任         補欠選任      吉田 之久君     都築  譲君      聴濤  弘君     立木  洋君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         岡野  裕君     理 事                 板垣  正君                 狩野  安君                 瀬谷 英行君                 寺澤 芳男君     委 員                 井上  孝君                 岩崎 純三君                 岡部 三郎君                 村上 正邦君                 萱野  茂君                 久保田真苗君                 栗原 君子君                 中尾 則幸君                 都築  譲君                 中村 鋭一君                 永野 茂門君                 猪熊 重二君                 立木  洋君    国務大臣        内閣総理大臣   村山 富市君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 五十嵐広三君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  玉沢徳一郎君    政府委員        内閣法制局第一        部長       津野  修君        内閣法制局第二        部長       秋山  收君        国際平和協力本        部事務局長    鈴木 勝也君        防衛庁長官官房        長        三井 康有君        防衛庁防衛局長  村田 直昭君        外務省アジア局        長        川島  裕君        外務省北米局長  時野谷 敦君        外務省経済局長  原口 幸市君        外務省条約局長  折田 正樹君    事務局側        常任委員会専門        員        菅野  清君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○自衛隊法の一部を改正する法律案(第百二十八  回国会内閣提出、第百三十一回国会衆議院送  付)     —————————————
  2. 岡野裕

    委員長岡野裕君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨九日、吉田之久君及び聴濤弘君が委員を辞任され、その補欠として都築譲君及び立木洋君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 自衛隊法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 板垣正

    板垣正君 私は、まず初めに総理に。  去る十月三十日、朝霞におきまして自衛隊観閲式がございました。総理としては初めて臨まれたわけでございます。私も列席をいたしまして、総理統括ぶりを篤と拝見いたしておったわけでございます。  いろいろな意味注目をされました。特に、昨年の観閲式においては、元総理は平服で行って、しかも原稿抜きのその場のスピーチというふうな形で大変ふさわしくない姿、しかも自衛隊士気にかかわるような印象を私ども率直に受けたわけでございます。今回、総理出処進退、私は拝見をいたしておりまして大分板についてきたな、こういう感じを持ったわけでございますけれども総理の率直な御感想を承りたいと思います。
  5. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、委員指摘がございましたように、十月三十日の自衛隊観閲式に私は観閲官として初めて出席をさせていただいたわけです。  私は、あいさつの中でも申し上げましたけれども平和憲法を前提にしたもとで、まことに日ごろの訓練成果がよくあらわれておりまして、整然と行われておる観閲状態を拝見いたしまして大変心強く思いましたし、本当に参加をしてよかったという気持ち、率直な気持ちでございます。これはやっぱり観閲式という一つ式事行事でありますから、その式事に合った態度で臨む必要があるという心がけで私は出席をさせていただきました。今申し上げましたように、初めての出席でありましたけれども行ってよかった、これが私の率直な気持ちでございます。
  6. 板垣正

    板垣正君 観閲式自衛隊にとりましては大変重要な行事だと思います。三自衛隊、その訓練成果あるいは士気状態、こうしたものが集約されて大事な行事として展開をされる。この行事最高指揮官である、自衛隊最高指揮官としての立場内閣総理大臣の式辞あるいはその御行動に対しては、これがもう一つ一つ自衛隊そのもの士気にかかわってくる。  同時に、特に申し上げたいのは、訓示の中にもございましたけれども、いわゆる東西冷戦が終わったけれどもいろいろな不安定要因がある。地域紛争が現に各地で起こっておる。こういう中で、この国の防衛体制というもののあり方ポスト冷戦における防衛体制あり方、こういうものについては十分検討していかなければならないし、またそれに対応できるものでなければならない。  もちろん一つ流れとして軍縮という流れがございますけれども、これはただ一国のみが、我が国のみが予算を削ってこれが軍縮でございますというふうな安易なものではないはずであります。やはりこれは列国、それぞれの国々、特に近隣諸国状況、そういう流れの中でいかにして協調体制を築き上げていくか。こういう意味合いにおいては、これまたいろいろな角度から検討しなければならない問題であろうと思う。  こういう意味合いにおいて、御訓示の中にもございましたけれども、これからの防衛あり方の基本的な方向、こういうことについて総理の御見解を承りたいと思います。
  7. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今お話もございましたように、これまで米ソを超大国とした対立の中で、これはある意味では軍拡競争が行われていた、こういう状況でございましたけれども、それが全体の状況の中でその冷戦構造というものが崩壊をいたしまして、軍拡から対立という時代から、むしろ軍縮から協調時代というふうに私は大きくやっぱり変わってきているんではないかと。そういう状況の中で、もうどのような観点から考えてみましても、地球規模で大きな戦いが行われる、戦争が起こるといったような事態は避け得たんではないか。  しかし、今御指摘もございましたように、民族とか宗教とか、あるいは国境とか、そういう意味における地域紛争というのはあちらこちらで起こっているわけでありますけれども、ようやく国連冷戦構造崩壊とともに安全保障理事会等を中心にして機能し得る条件が生まれてきたというので、紛争を未然に防止するとか、あるいは紛争を平和的に解決するとか、そういう意味国連役割というものが、相当大きく物が言えるような状況になってきておる。  こういう状況の中で、私は、日本としては平和憲法を持っている唯一の国でありますから、可能な限り軍縮を推進しながら、紛争は事前に話し合いで解決できるような努力をしていくことが何よりも大事ではないかと。したがって、国際的には流れとして軍縮方向に向かいつつあるということが言えるんではないかと、私はそういうふうに理解をいたしております。
  8. 板垣正

    板垣正君 広い意味における、特に米ソ冷戦がまさに膨大な軍事力で対決をしておりましたヨーロッパ情勢、これは相当大きく変わってきたということは言えると思う。  ただ、アジア情勢は御案内のとおりに非常に不透明であります。ロシアといえども決して軍事力はおろそかにはしておらない。ああいう姿でございますけれども軍事力近代化あるいは兵力の維持、こういうことについては当然その体制はやはりとり続けておるし、また今後の動向というものも果たしてどうなっていくかという情勢一つございます。また北朝鮮の問題も、米朝のああした成り行きがございましたけれども、依然として核の問題をめぐる不安定な状態前途予断を許さない情勢がある。さらに言うならば、中国動向というものは非常に注目に値します。これは海外軍事専門家、そうした者の分析等を通じましても、やはり二十一世紀における中国軍事力の姿というものが場合によってはアジアにおける大きな不安定要因、こういうものにつながっていくのではないのか、こういう見方すらもあるわけでございます。  こうしたことを含めまして、我が国もまさに冷戦後の防衛あり方、国の平和と安全を守ることがもちろん基本でございますとともに、いかにしてアジアにおける日本の安定、アジア安定のための役割、国の安全保障、これを築き上げていくか、こういう課題が今提起されて、防衛庁においても次期防、防衛計画大綱、こうした検討も行われつつある。こういうことでございますので、この問題については、過般、防衛問題懇談会の答申も出されております、巷間これをただつまみ食いされるんじゃないかというふうな懸念論議も実はあるわけでございますが、その辺も踏まえてぜひ慎重なる御検討をお願いしたい。これは要望であります。  次に、自衛隊法の問題でございます。  自衛隊法改正案、これは御承知のとおり随分長い経緯を経て、二年半ぶりにようやく決着と申しますか最終段階を迎える。一年以上前になりますけれども、本委員会におきましても約十時間審議を重ね、もう成立寸前において内閣不信任案衆議院解散、こういう形で成立の機を逸してしまった。それからさらに一年余を経まして、ようやく日の目を見る。  これがなぜこんなにおくれたか、なぜこんなに論議を重ねてきたかという根底には、やはり自衛隊機海外に出すことは海外派兵につながるんではないか、あるいは海外派兵突破口になるんじゃないか、こういうことについての懸念論議というものが多くあったことは御承知のとおりであります。総理御自身、昨年は社会党の委員長のお立場において、この法案海外派兵突破口になるんじゃないか、重大な問題であるということを鮮明にされておったことは御記憶のとおりだと思う。今、この法案が幸い、共産党を除く各党がこれならという形で、一部修正はございましたけれども、私は本質は変わっていないと思います。  こういうことで、この法案は決してそういうものでなくして、文字どおり海外における邦人救出目的として安全かつ迅速にこれに対応できるシステム、これを自衛隊にそれだけの権限任務を与える、こういう意味合いにおいて極めて意義のあるものと私は思いますけれども、その辺についての現在の総理の御信念を承りたいと思います。
  9. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、委員からお話がございましたように、随分長い時間かけて議論をされてきた経過があると私も思います。  当初私どもは、これは参議院では自衛隊海外に出動させないという決議もございましたし、いろいろな経過もあるわけでありますけれども、これは邦人救出の名目で自衛隊海外に出動できる一つのきっかけになるのではないか、こういう疑念というのは私どもも持っておりましたし、同時に、国民の中にも相当根強くやっぱり反対の運動というものが展開されてきておったわけです。したがって、そういう国民疑念と不安にどうこたえていくかという意味で、私ども十分議論をさせていただきました。  これは旧連立政権のときに連立政権与党の中でそういう議論をしてまいりましたけれども、しかし全体の動向というものを判断した場合に、可能な限り国民のそうした意味における疑念を払拭して、そして目的が達成されるような道筋はないのかということで私どもも真剣な議論を繰り返してまいりましたけれども、幸いに政府専用機自衛隊の所管になって、自衛隊の方で管理をされるという状況になってまいりましたから、その政府専用機救出派遣する専用機として使っていただくということについては、ある程度そういう疑念も払拭できるのではないかという意味で、連立与党の中での話し合いの中で今日御審議をいただいておりますような法案の中身に変わってきておるわけでありますから、私どもはこの法案をいいものとしてぜひ成立をさせていただきたい。そのことによって邦人救出の本来の目的が達成されるのではないか、こう考えておりますから、ぜひひとつ御審議をいただいて、一日も早い御成立をお願い申し上げたい、こういう気持ちでございます。
  10. 板垣正

    板垣正君 重ねてお伺いしますが、この法律は当初の我が党自民党案、それから今お話の昨年十一月段階における修正、現在の法案修正されているわけでございますが、しかし基本的には海外邦人救出に際して、もちろん定期便もあります、チャーター機もあります、さらに政府専用機。そしてそれがいろいろ、状況がそれに適合しない、そういう場合には自衛隊輸送機も出すと、こういうことが基本的に織り込まれているわけでございます。そうした点について今まで、まさにこれは海外派兵突破口になるんじゃないかと。私どもは、当初から海外派兵とは全く関係のないことと、またそういう意味における国民に疑惑を与えるような海外派兵を考えておる者は私はおらないと思うんですね。  いずれにしましても、そういう意味において、改めて総理としてはこの法案について言われるような海外派兵というような心配は一切ない。この法案は、海外で御苦労いただいている方々国家責任において、いざとなった場合には国家責任でその生命、財産を守る、人命を救出するために政府飛行機派遣するんだと。私は、海外におられる方々の心理的な意味合いからいっても、国の当然の務めでもあるし、また法案意義もここにあろうかと思いますが、そういう意味合いにおいてまさに海外派兵心配はないと、この法案において。重ねてお伺いいたします。
  11. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今申し上げましたように、国民の中に相当大きなそういう意味における不安と疑念がございましたから、私はこれまでの議論経過の中でそういう意味における国民の不安と疑念というのはある程度払拭はできたんではないか、こう考えておりまするし、同時に、これは武力行使目的派遣するわけじゃありませんから、その目的も明確にした上で大方の御理解と御了解をいただけるのではないか、こういう確信を持っておりますから、この法案についてはぜひひとつ成立のために皆さん方の御協力もいただきたい、こう申し上げているわけでございます。
  12. 板垣正

    板垣正君 次に、八日の日にこの委員会でも終日熱心な論議が行われ、防衛庁長官あるいは外務大臣、いろいろ御答弁もあったわけでございますけれども、そこで一つの焦点になりましたのが、派遣に際しては外務大臣の要請により防衛庁長官外務大臣協議をして安全を確認してこれを決定する、必要な場合は閣議にかけると。昨年十一月五日の七項目のいわゆる閣議決定、この内閣にも引き続いて確認されている七つの項目、これは大変詳細なものがございます。  その中にもうたわれていることでございますが、外務大臣答弁は、衆議院におきましてもまた本院で私の質問に対する答弁も第一義的にはやはり外務大臣防衛庁長官協議をして決定する、こういう意味合いで、つまり必ず閣議にかけるという意味合いよりは、必要な場合には閣議にかける場合があるとしても、むしろ第一義的にはやはり両省外務大臣防衛庁長官、こういうことでございますが、当委員会における官房長官の御答弁、御見解、これがその次の日の新聞報道各紙報道でもまさにそういう角度で取り上げているように原則としてやはり閣議にかけるんだと。これは重要な問題であるから閣内統一を図る必要がある、だから必要に応じてと書かれておるけれども原則的には閣議にかけることにウエートを置いたそういう政府見解がいささか転換したんじゃないかというふうな受け取り方が各紙共通に報道された。  そこで、やはり最高責任者である総理に御確認をお願いしたいわけでございますが、一つの問題はもちろん安全を確認しなきゃならない、もう一つの問題はやはり迅速に対応しなければならない。こういう意味合いで、私は、日ごろから情報に接し、またその任務を持ち、またいつでも対応できる体制になければならないそういう外務省立場、またそれに対応して場合によっては政府専用機あるいは自衛隊輸送機派遣しなければならない、こういう任務権限を持った当事者であるところの防衛庁外務省、この両省協議をされて、それから派遣をすると決定される重みというものは、この迅速性からいっても、これは安全性を決して無視するものではないはずでありますから、そういう意味合いにおいてはやはり第一義的にはこの両省決定によって迅速、的確にこれに対応すると。ずれればずれるほどむしろ危険性は増してしまうと。  これを閣内統一で重要なことであるから閣議にかけるということになってまいりますと、閣僚の中には日ごろ余りそういう情報に接していない、あるいはそういう面における専門的な知識も余りない、ただ何となくといってはあれですけれどもそういうふうな形で、そういうことはないと思いますけれども、またぞろ閣議で延々時間をかけてああだこうだという論議を行って、そして機を失してしまう、こういうことがあってはこれは本来の目的に合致しない。もちろん必要に応じていろんな情勢があり得るわけでありますから、必要に応じて閣内統一を図って閣議決定を行うということはあり得ると思う。あり得ると思うけれども、やはり第一義的には今、申し上げたような立場閣議決定も行われていると思いますし、前回官房長官の御見解も必ずしもそれを認めないものではないんじゃないのか、こう思いますので、その辺、総理の御見解を承ります。
  13. 村山富市

    国務大臣村山富市君) この自衛隊法改正案が相当時間をかけて審議をされてきたという経緯から考えてまいりましても、やはり自衛隊の航空機を派遣するというような場合には、そうしたもろもろの情勢を考えた上で慎重な扱いをする必要があるということがございましたのでいろんな角度からの御審議がされてきたんだと、私はそういうふうに受けとめております。  具体的に緊急事態というのがどういう状況で発生して、どういうケースが想定されるのかという、そのケースケースによってやっぱり私は判断が違うと思いますからね。したがって、そのケースケースに応じた形でもって十分目的が達成されるような対応をしていく必要があるということは、もう当然のことだと私は思います。しかし、これはやっぱり内閣全体が責任を持つという性格のものでありますから、したがって必要に応じて、やっぱり閣議決定が求められるということも当然あっていいんではないかというふうに思います。  しかし、今申し上げましたように、緊急事態でそんないとまもないというようなこともそれはあり得るかもしれませんから、ケースバイケースでもって判断をしていかなきゃならぬと思いまするけれども、そういうやっぱり慎重な配慮をした上でやるということが内閣としては当然でありますから、したがってこれからはそうした事態を十分踏まえた上で、ケースバイケースでもって対応できるような運用というものを考えていく必要があるというふうに思っておりますから、必要に応じて閣議決定もあるし、またそうでない場合もあり得るかもしれないということも想定しながら、しかしいずれにいたしましても、全体としては内閣責任を持つという立場でもって対応していきたいというふうに考えておるところでございます。
  14. 板垣正

    板垣正君 今の御見解で大体閣議決定趣旨というもの、また事柄が外務大臣防衛庁長官決定のもとに出してもやはりこれは政府飛行機を出すわけでありますから、これはもう当然内閣責任にかかわることにはなるわけでございますけれどもケースバイケースで必要な場合には閣議にかけるというあの決定趣旨、そしてまた河野外務大臣答弁をされたように、やはり第一義的には的確、機敏に対応できる方向でこの決定を下す、こういうふうに受けとめさせていただきます。  次に、この法案の問題を外れまして、総理は近々インドネシアに行かれる、APEC会議が開かれる、こういうことでございます。これはアジアが二十一世紀はまさにアジア太平洋時代であると言われるほど活力を持ちつつある、それだけにまたいろいろ困難な問題もある。そしてまた、総理も先般東南アジアを図られて、アジアの人々が、アジアリーダーたち日本に求めていることは、過去は過去として、二十一世紀に向けて新しいアジアにおけるこの日本がどういう政策のもとに、どういう理念のもとに、そしてどういう積極的な姿勢でアジアとまさにともに栄えていく、ともに発展をしていく、これが一番アジアの期待にこたえる道ではなかろうか。こういう意味合いにおいて、今回重要ないろいろな首脳の会談もございましょう、あるいは全体の首脳会議もございましょうが、このAPECに臨む総理の基本的な御見解を承ります。
  15. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、委員指摘になられましたように、アジア太平洋地域というのは、最近の経済成長率動向貿易の量、あるいはまた国民総生産等々の観点から見ましても、どこの世界地域よりも目覚ましい経済発展を遂げつつあるところであるということはもう世界の認めるところとなっております。  そういう状況の中でAPECは開かれるわけでありますけれども、そうした発展段階多様性を踏まえた中で日本としてどういう役割が果たせるのか。これはやっぱり日本は、もちろん日米関係というのは大事でありますし、日中関係というものも大事でありますけれども、何といってもアジア一員であることについてはこれは変わりはないわけであります。そのアジア全体が発展をしていく状況の中で、例えば技術の移転とかあるいは人材の育成とか、そういう部面では日本でなければやっぱり果たし得ない役割というものもあるわけでありますから、そういうことも十分踏まえた上で、アジア全体を発展させる、そのための役割日本はどう担っていくべきか、あくまでもアジア一員としての立場を堅持しながらお互いに協力し合えるような体制をどうつくっていくかということが何よりも大事ではないかというふうに考えておりますから、そういう意味で忌憚のない議論をし合いながら、全体として多角的な貿易自由化によってそれぞれの国が発展できるようなそういう基盤をつくるために議論をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  16. 板垣正

    板垣正君 ぜひ頑張っていただきたいと思います。  最後に、日朝関係の問題でございます。  これまた非常な経緯の中で米朝関係の一応協議といいますか話し合いができた、こういうことで、これがいずれ韓国と北朝鮮関係なり、特に我が国北朝鮮関係、これが正常化されるということが長年の懸案であることは間違いないと思いますが、端的に言って相手相手でありますから、これは我が国としてもよほど腰を据えて、しかもきちっとした対応戦略を整えて、展望を持って、禍根を残さない方向で取り組んでいかなければならない問題であろうと思います。  核の問題も、過去の核については不透明なままであります。五年後にこれが査察を受けるといいますが、今の時点で五年後というものをどういうふうに予測できるでしょうか。そういう意味合いで、実はある意味ではそのままの不安定な様相、不透明な状態、それだけが続くという、こういう含みともなるわけでございまして、そういう問題を含め我が国としてはいろいろの、過去の関係というものもございますけれども、同時に、我が国としてやはり明らかにしなければならない、核の問題が第一にございましょうけれども、いわゆる人権の問題があります。  日本におられた朝鮮、北朝鮮系の方あるいはその家族が約九万何千名か昭和五十九年から北鮮に帰られた。日本人の妻の方々が三千名ないし五千名と言われておりまするけれども、そういう方々を含めて、特に日本人妻の問題というものがこの関係家族にとっては大変な心配懸念をもたらしておる。消息がわからない、また非常に厳しい生活環境にやられている。こういう人権問題というようなものは無視のできない問題であろうと思うんです。こういうことも踏まえて、しかも対話と協調の中でこの道は開いていかなければならないと思う。  そういう意味合いから、これは政府立場ではございませんが、与党三党の代表を北鮮に派遣しようというふうな話、こういう論議のあることは御存じでございましょう。  率直に言って、私はこの問題はよほど慎重に扱うべきではないか。国交のない国でありますから、やはり外交の責任を持つべき政府立場においてきちっとした計画的な対応を示すべきであると思う。決して議員外交が悪いというわけじゃございませんけれども、過去の例から見てもいろいろな問題がかえって派生する懸念を持たざるを得ない。こういう意味合いにおいて、今申し上げました問題を含めてこの北鮮の外交に臨む総理の御見解を承って、私の質問を終わりたいと思います。
  17. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 日朝国交正常化の交渉がこれからどういうふうに展開していくかという問題について、いろいろ御心配をされ、御配慮されているお気持ちは十分理解ができるところであります。  私は、率直に申し上げたいと思うんですけれども、先般ナポリでサミットがあったときにクリントン大統領と個別の会談をやりました。その際に、クリントン大統領から冒頭に北朝鮮の問題についていろいろ質問なり意見があったわけです。私も核の問題やらいろんな角度から問題点は申し上げましたけれども、その中の一つに、朝鮮半島に対するアメリカ国民の受けとめ方と日本国民理解とは大分違いがあります、それはなぜかと申し上げますと、これは歴史が違いますから、今のように朝鮮が北と南に分割をされてこういう不幸な状態に置かれていることに対する日本国民のやっぱり責任というものは国民は感じています、したがってどのようなことがあっても話し合いでもって解決する。その努力は、今粘り強くやられている米朝交渉というものに対しても私は高く評価いたしておりまするけれども、ぜひひとつその努力を続けて話し合いで解決ができるようにしてほしい、そのために我々も全面的な御協力を申し上げますと、こういうことを申し上げたわけであります。  私は、そういう意味で、もう戦後五十年近くもなってまだこういう不正常な関係にあるということは決していいことではない、ですから可能な限り話ができるような条件というものを見出していく必要がある、その努力をする必要があるというふうに思いますし、同時にそのことはまた朝鮮半島全体の平和と安定につながることでもありまするし、アジア全体の平和と安定にとってもやっぱり大変大きな役割を果たすんではないかというふうに考えております。  ただ、これまではやっぱり日韓との関係もありますし、同時に日中等々との関係もあるわけでありますから、そういう関係国とは緊密な連携をとった上で、この日朝の話し合いというものをどう進めていくかということについてはそういう慎重な配慮もしながら全体的な状況というものも踏まえた上でこれから対応していく必要があるのではないかというふうに考えております。  今、与党三党の中で話し合いもされているようでありますから、その話の推移も十分見きわめながら、これから慎重な対応を考えていきたいというふうに思っておるところでございます。
  18. 板垣正

    板垣正君 終わります。
  19. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 質問の順序を若干変えまして、官房長官は記者会見等の都合があるということでございますので、官房長官に一問だけお伺いしたいと思います。  先般八日の委員会官房長官にいろいろ御質問がございました。それはこの閣議決定の問題です。必要によって閣議決定をやる、やるかやらないかという多少の幅が持たされているのでありますが、八日の委員会における質疑の中では、原則としてやはり閣議決定をしてもらうのが本当じゃないのか、事は重大だから、こういう意味の質問が多々ありました。それに対して官房長官からお答えがございましたが、そのお答えに対して板垣さんからまた再度御質問がございまして、総理からの答弁がございました。  総理からの答弁は、ケースケースでもって考えなきゃいかぬ、場合によってはこれは閣議決定を経なくともいいかもしれないけれども、やはり原則的には政府として責任を持たなきゃならぬから、そういう意味で原則的には政府全体の責任として閣議決定ということも考えられる、こういう意味だったというふうに私は記憶しておりますが、そのとおりに理解をしてよろしゅうございますか。
  20. 五十嵐広三

    国務大臣五十嵐広三君) これまでの国会におきます審議やあるいは提出時の政府・与党内部における意見の調整におきまして、自衛隊の航空機を派遣する場合にはこれを慎重に行う必要がある旨の論議が行われてきたところであります。  このような論議を踏まえて派遣手続について慎重に検討いたしました結果、自衛隊の航空機による在外邦人等の輸送を実施する場合に、具体的な緊急事態状況、それから輸送の態様等によりましては当該輸送に政府全体で取り組む必要があることから、必要に応じ閣議決定を行うこととしたものであります。  なお、どのような場合に閣議決定を行うのかということにつきましては、個々具体的な事案ごとに緊急事態状況、輸送の態様等を勘案いたしまして、総理お話がございましたようにケースバイケース判断すべきものと考えておりまして、一概に申し上げることはなかなか困難でありますが、例えば災害等の緊急事態の規模、派遣機数等により判断されるものであろう、こういうふうに考えられているわけであります。  いずれにいたしましても、我が国国民の生命にかかわる邦人救出という重大な問題であることにかんがみまして、自衛隊機派遣することにつきましては内閣としての意思統一を図る必要が多々あろうというふうに思われますので、私としてはそのような方向で基本的には運営してまいりたい、このように考えている次第であります。
  21. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 次に、防衛庁長官にお伺いいたします。  先般、自衛隊観閲式がございました。それから、その前に富士のすそ野で自衛隊の実弾演習がございました。いずれも私は見せていただきましたが、この自衛隊役割でありますけれども日本防衛、いわゆる防衛白書というのがありますけれども、端的に申し上げると自衛隊役割そのものをいろいろと考えてみる必要があるんじゃないか。いろいろ懇談会やら何やらで意見が出ておるようでありますが、端的に言うとかなりもうずれているんじゃないかという感じがしたのであります。  なぜかというと、この間の観閲式で見ましたいろいろな部隊でありますが、百五十五ミリりゅう弾砲であるとかあるいは二百三ミリ自走りゅう弾砲であるとか九〇式戦車であるとか、ああいうものが出てまいりました。それは見る人によっては大変心強いという気持ちを持ったかもしれませんけれども、ああいうものはどこで何をするのかという問題にまで踏み込んで考える人がそうたくさんはないような気がしたんです。  富士のすそ野の演習を見ましても、旧軍隊の演習と同じように陣地攻撃なんですね、あるいは要塞攻撃なんです。戦前の日本の陸軍のやっておりましたことは、専ら当時のソ満国境、現在の中国とロシアの国境、あの近辺に関東軍が布陣をして、日本の主力部隊があそこに集結をするという格好で訓練をやったわけです。我々も戦中派で、軍隊経験のある者も、我々の任務は対ソ戦法である、こう言われたんですよ、目標はソビエト軍だ、場所はソ満国境であると。何をやるかというと、向こうに準備されているソビエト軍の陣地に対して攻撃を行う、大砲も戦車もすべてそういうことに集中する、こういうことになっていたんです口  しかし、自衛隊が専守防衛ということになりますと、日本を守るということが主眼ですからね。日本を守るということが主眼になると、ではそういう大きな大砲、我々が昔は余り見たことのない大きな大砲や大きな戦車というものがどこに出番があるのかということを考えなきゃいかぬです。あの種の道具は、観閲式のときは行進をするだけでありますけれども、演習をする場所としては富士のすそ野か北海道あたりしかないんでしょう、実際問題として。  そうすると、専守防衛といったって、相手が、もし敵があらわれてきて日本を攻撃するという場合に、では、どこで戦うんだと。どこから上がってくるかわからないですからね。そうすると、戦車とかあるいはこういう大きな大砲とかいうものは、これは泳いでくるわけにいかないんだから。そうすると、輸送船に積んで持ってこなきゃならないでしょう。いざとなったら日本でもそれに対応するような兵器はやたらなところでは使えない、または動けない。だから、では敵さんに対して、うちの方は土地が狭いんだから、場所がないんだから富士のすそ野か北海道へ来てくれと、こういうわけにいかないでしょう。  そうすると、何のためにこういう重戦車やらあるいは二百三ミリりゅう弾砲やらというものを備えるかということになるんです。相手がゲリラだったら、こんな大きな大砲でもって追っかけ回すということはできませんよ、向こうの方が速いから。重戦車でもってゲリラを捜していたんでは、これは動きがとれないですね。この考え方自体がもうかなりずれちゃっている。昔のソビエトを仮想敵国とした時代と余り変わっていない。だから、その点はやはり考え直す必要があるんじゃないか。これはやはり専門専門の知恵を絞って、日本防衛はどうあるべきかということを根本的に考え直す必要があるんじゃないかということを私は感じましたから、その点、防衛庁長官にお伺いしたいと思うんです。
  22. 玉沢徳一郎

    国務大臣玉沢徳一郎君) 委員指摘のように、自衛隊は何のためにあるか。それは御承知のとおりだと思いますけれども、専守防衛に徹して我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対して我が国防衛することを主たる任務とするものである、その実力組織であると、こう考えるわけであります。さてそこで、東西冷戦構造崩壊をする、国際情勢が大きく変化をしておる。しかしながら、世界大の戦争というものはなかなかこれは起こり得ないだろうとは思うわけでありますけれども、しかし依然としまして世界におきましては地域紛争あるいは民族、宗教上の対立による紛争というものは行われておる。  委員が今御指摘をされましたように、ソ連の潜在的な脅威といいますか懸念といいますものは、ソ連の崩壊によりまして確かにこれは北の方からの脅威というものは薄らいだと、こう思いますが、しかしロシアとなりましても依然として極東においては膨大な軍事力を有しておる、日本を侵略するだけの能力はあると、こう考える。仮に能力はあっても意図がなければ侵略はないわけでありますけれども、例えば意図が何らかの形で変わった場合には、一般的に申し上げましてやはり将来日本に対する脅威というものは存在する可能性があるということも考えておかなきゃいかぬだろうと思うんです。  それからまた、周辺諸国におきましても、決して日本に対して敵対する国ばかりとは思いませんけれども、しかし軍事力をもちまして政治的な目的を達成しようと、こういう国が世界の中に存在している以上は、やはりあくまでも専守防衛ということに徹していろんな形での侵略に対応するという実力組織を有していることが日本の平和を守るために極めて重要ではないか。  そういう点におきまして、領海、領空、領土を守ると、こういう観点から言いますならば、確かに日本に岩上陸をするという国があるとすれば海と空から攻撃をしてくるであろう。そして、岩上陸をいたしまして、まあ富士のすそ野で戦争が行われるという限定的なことであればそれで事足りるかもしれませんが、第三国が日本を攻撃する場合におきましては、場所を選ばず、いかなる地域においても攻撃の対象になるということになるわけでありますから、それを想定して、やはり我が方におきましても専守防衛に徹してあらゆる事態対応するということは、常日ごろから訓練し、それに対応するということは必要ではないかと思うんですね。  各国の軍備の状況を見れば、日本が持っておるような通常兵器、それを上回るようなものを大量に用意しておるわけでありますから、日本が持っているものだけが特別に時代に合わないものであるというような考え方はとらないわけであります。世界各国がもし過剰なる軍備だ、あるいは核においてももう必要ないんだ、こういうようなお互いの認識で、相互信頼で対話を通じましてそういう懸念がなくなってくるならば、お互いに軍縮をしながら平和を守っていこう、こういう努力はあわせて行っていかなきゃならぬと思うわけでございますが、委員の御指摘のように今日の世界情勢というものを考えた場合におきましては、はいそうですと、すべて日本自衛隊の用意している武器は必要ないものだと、こういう認識には到底立てないということだけを申し上げておきたいと思います。
  23. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 今の大臣の答弁の中で、それはやはりそれ相応の武器を、兵器を備えておかなきゃならぬと言うけれども、向こうがそんな戦車で、あるいは立派な大砲を持って上がってくるということを心配するなら、日本国じゅうどこにもかしこにも全部そういうものを備えておかなきゃ問に合わないですよ。これはそんなことはできるかというんです。観閲式のときだからああやって持ってこられる。日本国じゅう沖縄から北海道に至るまで沿岸全部にああいうものをそろえていくなんてことは実際問題としてできませんよ。  それからまた、こういう兵器は古くなったら取りかえるでしょう。取りかえたときにどうするか。役に立たないですね。自動車ならば中古自動車でもソビエトがもうどんどん買っていく。中古戦車なんていうのは、では古道具屋へ売るわけにいかないし、どこか内乱の起きそうな国に売りつけるというわけにもいかないし、そういうことはできないでしょう。一番もったいないんですよ、これは。  長官が言われた中で一つだけ私も同感したことがある。海と空だというんですよ。海と空ということは、これは陸上自衛隊が、あるいは戦車が主役になるんじゃないんですよ。飛行機と軍艦なんですよ。そうでしょう。だから、海と空で制海権と制空権さえ持っておればどこの国だって日本に上がってこられないんです。しかも大砲をぶっ放すというのは、この間の富士のすそ野の演習でどのくらい金がかかったかということを調べてもらったら、二億六千万だというんですね、大砲から小火器に至るまで。半日で二億六千万ですよ。本物の戦争になったら、お昼になったから弁当にしましょうとか、日が暮れたからやめましょうとか、雨が降ったからあしたにしようとか、そういうわけにいかないでしょう。それを考えただけで、どのくらい莫大な金がかかるかわからない。日本の経済力にはるかに及ばない国々が日本に対して戦争を仕掛けようと思ったら、それだけの金をかけることをまず考えなきゃいかぬ。それもまた恐らく経済的に不可能だろうと思うんですよね。  そうすると、自衛隊の考えることも、私はむしろ海から入ってこられないように、空から侵入できないような方策を第一義的に考えるべきじゃないか。陸上自衛隊にしてみれば同じように、あるいは余計装備を整えておきたいという気持ちはあるかもしれないけれども、これはやっぱり子供がおひな様を欲しかるように同じようなものをくれという気持ちはあるかもしれないけれども、本当のことを考えるとそれはむだなんですよね。  だから、むしろ今後の日本防衛ということを考えたならば、けん銃であるとか麻薬であるとか、こういうものの密輸をさせない、それからこっそり入ってこようとする密入国も取り締まる、そういうようなこともやらなければならない。それから、国内の問題とすれば、地震があった、津波があった、山火事があった、雲仙・普賢岳で爆発をして溶岩が流れて多くの家が災害をこうむった、こういうもろもろの問題に対して自衛隊はいち早く援助ができるように、対応ができるようにするということの方が現実的じゃないかと思う。地震があったって、津波があったからって、北海道で津波があった、あのときに九〇式戦車なんか役に立ちませんわね。下手に多かれるというとかえって道路がぶっ壊されちゃう。  だから、そういうことを考えると、現実的に私は、今後の防衛政策も自衛隊あり方役割も考え直すときに来ているんじゃないかな、こういう気がいたしますが、ここで総理見解を……
  24. 玉沢徳一郎

    国務大臣玉沢徳一郎君) ちょっと待ってください。  防衛に関しての費用の問題その他で今お話がありましたが、確かに防衛に徹するということは、これはなかなか大変なことだと思うんですね。つまり、どこを攻撃されるかわからないということに対応するためには、絶対的な防衛というものはなかなか構築することはできないですよ。沿岸に全部防衛体制を整えたら莫大な資金がかかるということは、委員も御承知のとおりだと思うんですよ。専守防衛に徹しながらも、できるだけ効率的な国民理解を得られるような費用を用いて、そして日本の平和と独立を守るということが一番大事なことでありまして、絶対防衛というようなことを我々は何も言っていないわけですね。  全部の国を守る、そのためには、例えばこの非常に長い海岸線、そういうようなものを守るためにはこれは大変な費用がかかりますけれども、しかしまず日本を攻撃すると思われるような場合におきましては、情報をきちっととりまして、そしてそれに対応して、例えば一カ所攻撃された場合にはできるだけそれに効率的に集中的に対応するということが大事だと思うんですね。  そういう観点で今やっておるわけでございまして、委員がおっしゃるように空と海で絶対攻撃されないような体制をとれ、こう言ったところで、口ではそう簡単には言いますけれども、じゃどういう手段があるんですか、こういうことを尋ねていけば何もないということなんですね。だから、費用と効率的な防衛体制をやるということは、これはやはりよく論議をしてやっていかなきゃならぬ、こういうことでございまして、国民の皆さんの税金を使って国を守るということであれば、できるだけ費用対効果で最も適切なものを構築していく必要がある、こういうふうな観点から、今もこれから新しい情勢対応しながら防衛力のあり方について検討しておる。    〔委員長退席、理事板垣正君着席〕    それから同時に、災害だけをやれという話でございますが、これは防衛目的を達すると同時に、しかし国民の生命、財産を守るという観点から、災害出動につきましても自衛隊は今まで何千回も出動しましてその任務を達成してまいってきておるわけであります。そういう点もよく御理解を賜りたいと思います。
  25. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、災害だけやれと言っているんじゃないんですよ。災害にも山火事にも、あるいは噴火した溶岩の流出等による損害に対しても、民生安定のために素早く対応できるような日常的な訓練をやっておいた方がいいんじゃないのか。幾ら自衛隊だって、山火事のときに消してくれと言われたらちょっと困るだろうと思うんですよね、やりなれないことだから、消防団と違うんだから。だから、自衛隊はやはりその点命令一下、行動する組織的訓練ができているんですから、組織的訓練ができているという自衛隊を活用するためには、そういういろいろな多目的に行動できるようにすべきである、こう言うんです。  それから、ヨーロッパでもこういう装備を整えている、こう言うけれども、あのヨーロッパなんかの場合は隣り合っている国はどっこいどっこいの国ばかりなんですよね。だから、隣の国が持っているようなものは自分の国でも欲しいということになるのは、子供のおもちゃを欲しかる心理とよく似ていると私は思うんですけれどもね。(「怒れ怒れ、防衛庁そんなことを言われて」と呼ぶ者あり)いや、怒れないよ。  こういう問題は、もっと具体的に考えるべきです。日本防衛を考える場合に、海と空だと言ったでしょう。海と空が大事だというときに重戦車が何ができるかということなんですよね。では終戦の末期に、九州とあるいは関東に米軍は上陸計画を立てた。今は九州にそういう事態が起きたという場合に、こういう二百三ミリりゅう弾砲だとかあるいは九〇式戦車だとかいうものをどうやって向こうまで運べますか。新幹線に載っけてくれというわけにいかないですからね。間に合いっこないんですよ。  だから、そういう道具を幾らそろえてみたところでそれだけの話なんです。もっと現実的に考えてみるならば、例えば日本の沿岸を守るというために考えられることは、だんだん海上自衛隊だって大きい船が欲しくなるだろう、あるいは航空母艦も欲しくなるだろうということになるかもしれないけれども、そんなものは実際には役に立たない。密入国を阻止するといったようなことになると、むしろ小さな艦艇を多数配備した方が取り締まりのためには私はいいと思う。海上保安庁がやるような仕事だって、あるいは海上自衛隊が一緒になってやっていいと私は思うんですよ。そこでもって縄張り根性を出しちゃいけないと思うんです。  そこで、総理にもお伺いしたいと思うんですけれども自衛隊の組織力あるいは労働力というようなものは生かして使う必要があるんですよ。訓練だけじゃ意味はないんです。訓練なんというのはすぐできるんですよ。組織的な行動力というものがあれば、あるいは機関銃や大砲の操作なんというのは一週間もあれば覚えられるようになっているんです。だから、むしろ自衛隊のこの労働力というものを生かして使う、そして自衛隊の諸君にも生きがいを感じくせる、こういう方法を工夫すべきだと思うんですよ。  今までのやり方、それをそのまま踏襲していくということは間違いだと思う。それは旧当時代のやり方というものを多分に踏襲している。考え方がやっぱり古いんです。発想の転換をしないと新しい状態対応できないと思うんです。新しい時代対応するためには、やはり新しい考え方でもって対応策を考えるべきである、それが自衛隊のためにも私はいいと思うのでありますけれども総理見解をお伺いしたいと思うんです。    〔理事板垣正君退席、委員長着席〕
  26. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今いろいろ御議論がございましたけれども日本自衛隊というのは戦争、武力行使をするためにつくられているものではなくて、あくまでも専守防衛に徹するということを前提にしてつくられておる。したがって、何よりも大事なことは、やっぱりそういう事態が起こらないように未然にあらゆる角度から努力をしていくということが前提でありまして、まあしかし想定される範囲の必要最小限の実力組織を維持しよう、こういう意味で私は設けられていると思うんです。  今お話もございましたように、天変地異とか不測の災害といったようなものの事態に対して、これは自衛隊法の第八十三条でざっと規定もされておりまするけれども、そういう場合に自衛隊が出動して、そして国民の生命と財産を守っていく、こういう役割というものもちゃんと明記されておるわけでありますから、そういう対応が十分できるような訓練は日常からされておるものだ、私はそのように理解をし、そうした国民に対する役割というものも十分これからも果たしてもらわなきゃならぬというふうに考えておるところでございます。
  27. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 時間が参りましたから締めくくりたいと思いますけれども、私も自衛隊観閲式に際しての総理大臣の訓示というものに子細に目を通してみましたが、やはり軍縮の動きが進んでいるという事実の確認と、専守防衛に徹するということと、他国に対する脅威を与える軍事大国とならないという基本理念と、それから非核三原則を守りながら文民統制を確保する、これは一番考え方の中心にならなきゃいけないと思うんです。  それで、この自衛隊機の問題についてもいろいろな憶測があります。心配があります。しかし、そういう心配に対して大丈夫だ、シビリアンコントロールをあくまでも堅持するんだ、文民統制というものを確保するんだと、こういう考え方があれば暴走したり脱線したりするということはないと思う。それがかつての東条内閣のように軍の圧力にそのまま屈服してしまうということになるとどこへ行くかわからない、その心配国民にあるわけです。もう五十年前の出来事ではあるけれども日本国民にとっては苦い経験なんですから、あの五十年前の敗戦は。その苦い経験をしないためにはどうしてもこれは総理大臣がしっかりと、先ごろ総理が言われたようなこのような原則を堅持してもらう、そして憲法の範囲の中で国連に対しても注文をつける。国連自身がやっぱりいいかげんでは徳川幕府みたいな、日本をまるで田舎大名とみなすような、こういうおごり高ぶった気持ちがあってはいかぬと思うんです。  特に、先般明石国連代表が、これは問題なんだけれども、諸国民と一緒に汗を流し時によっては血を流す、こういう覚悟も必要だというんですね。これは少し出過ぎな言葉だと思うんです。血を流すといったって自分の血を流すんじゃないんだから、自衛隊がその対象にされたんじゃたまったものじゃない。自衛隊はそういう一部の人たちのおもちゃじゃないんだから、勝手に将棋のこまのようにあっちへ出します、こっちへ出しますというようなことを安受け合いさせないように、その点もしっかりと総理として目を光らせていただきたいという気がいたします。その明石代表の発言とも関連をして、文民統制、シビリアンコントロールについての総理見解を承りまして私の質問を終わります。
  28. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、委員から御指摘がございましたように、シビリアンコントロールを前提としてすべてが管理、運営されておるということはもう申し上げるまでもないことでございます。  したがいまして、そういう懸念がないように内閣としては責任を持って対処していきたいというふうに思っておりまするし、同時に国際平和協力問題につきましても、これはPKO法で五原則というものが確認されておるのでありますから、その五原則を逸脱して行動できるものではない、またすべきものではないというふうに考えておりますから、その枠というものはしっかり堅持をして守っていく決意には変わりはないということだけは申し上げておきたいと思います。
  29. 永野茂門

    ○永野茂門君 総理、大変御苦労さまでございます。本日は、村山内閣安全保障政策について若干お伺いしたいと思います。  総理は就任されますと、直ちに自衛隊合憲、日米安保維持、そしてさらにこれを堅持ということ、そしてまた国際貢献の積極化、慎重ながら安保理常任理事国入りの容認等それまで社会党の政策の基本とも言うべき、社会党のアイデンティティーがここにあるんだというようなところの基本政策を全く逆転させたわけであります。私は、この変更については大英断であり大賛成であり、今後この転換の真の意味における実現を心からお願いするものであります。  それは確かに目をみはるすばらしい変更であったと思います。しかし同時にこれは極めて突如とした感じを受けるものであって、有権者でありますとか支持者でありますとかそういう人に対する事前の説明あるいは説得等がほとんど行われてない、あるいは全く行われてないと言っていいかもしれません。ある意味で全く裏切ったというように言われてもいたし方ないような内容を含んでおる、こういうように思います。  そこで、このような大変更、大転換を行ったのにはよほどいろんなものの変化について大変な認識があったんだと思うわけでありますけれども、この大転換、大変更を行った理由、そしてその理念、こういうものについてどうであったのかということをまずお伺いしたいと思います。
  30. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 自衛隊を容認するとか、あるいは安保条約に対する理解、解釈等々につきましては、いかにも唐突に変わったような印象を与えていることは私も極めて残念に思うんですけれども、しかしこれは党内ではもう五、六年前からずっと一貫して議論されてきている過程があるわけです。経過があるわけです。  これはなぜかと申しますと、一つはやっぱり先ほどもお話し申し上げましたけれども世界全体が米ソを頂点として軍拡競争が盛んに行われて、そして冷戦構造の中にあった。こういう状況の中に日本の国も組み込まれた形でもって軍拡が徐々に行われていく。こういう全体の動向の中で、これではやっぱり平和憲法の理念に反するんじゃないかという立場を堅持して、できるだけ軍拡を阻止するという立場から、私ども自衛隊は認めないという態度をとって抵抗運動をやってきたわけです。  しかし、冷戦構造崩壊をして、そうした軍拡競争というものも一応鳴りを静めて、そして先ほども申し上げましたけれども、今や世界全体としては軍縮協調時代に変わりつつある。こういう状況も背景に踏まえて、私どもは先ほども申しましたように、一貫をしてずっと長く党内では議論しておりましたけれども、この連立政権に参加をするという状況の中で、旧連立政権の当時にもそうした意味における議論というものはやってまいりましたし、とりわけ今度自民党、社会党、さきがけといった三党の連立政権ができるという状況を転機にいたしまして、ここらで決断をしようという決意で私が決断して本会議答弁をする、それを受けて党内では議論していただく、そして九月三日の全国大会でも一応御了解いただいた、こういう経過があるわけであります。  これは、順序が逆で、党内で十分議論をして、国民にも理解を得た上で私が本会議答弁をするというようなことができれば一番よかったんではないかと思いまするけれども、そうした状況の変化によって逆になったようなことは極めて残念でありますけれども、私はそういう経過についてもお話を申し上げれば皆様方にも御理解をいただけるのではないか、こう考えておるところでございます。
  31. 永野茂門

    ○永野茂門君 最初に、自民党が軍拡政策をやってきた、こういうようにおっしゃいましたけれども、これは見解が全く違っておる。軍拡をやったのではなくて、節度ある自衛力を整備してきたのであって、決して軍拡はやっていなかったということをまず申し上げておきたいと思います。  そこで、情勢が極めて大きく変化したということを踏まえて、党内で非常に長くやってきたということをおっしゃいましたけれども、それは私はそのとおりだったと思います。しかし、やっぱり一番大事なのは、国民に、有権者あるいは支持者に対して理解を求めそして説得していくという過程が民主主義においては一番大事なことであって、そういう意味において、やはり国民を大事にするという意味において今若干の反省を総理は申し述べられましたけれども、こういう重要なことは近い将来、今直ちにとは申し上げませんけれども、近い将来やはり社会党の政策の変更について国民の信を問うということが改めて必要である、こういうように私は思います。  これについて総理はどういうふうにお考えでございましょうか。
  32. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 戦後一貫をしてずっと社会党はそういう運動を続けてまいりましただけに、これは極めて残念でありますけれども、いまだ党内でも完全に了解が取りつけられておらないという節があるぐらいですから、国民皆さん方の中にはいろんな意見があることは私は当然だと思います。したがって、できるだけ理解がしていただけるようにこれからもあらゆる分野で努力をしていかなきゃならぬというふうに思っておりますが、これはいずれ、今お話もございましたように来年は参議院選挙もございますし、そういう選挙の期間を通じて社会党のやってきたことがよかったのか悪かったのか主権者の判断をいただけるものだというふうに考えておりますから、それなりに御理解が賜れるようにこれからも精いっぱい努力をしていかなきゃならぬものだというふうに私は理解をいたしております。
  33. 永野茂門

    ○永野茂門君 改めて国民の信を問うという御決意であるということを確認したと思います。  次に、ひたすらなる軍縮の推進ということについて承りたいと思います。  総理は、憲法理念の一つは非武装である、社会党はこれを追求してきたと。従来は非武装中立ということを言っていたわけでありますけれども、中立は現在の情勢に合わない、国民のコンセンサスもこれを排除しておるということで、この追求はやめるけれども、しかし非武装は追求すべきだとおっしゃっております。私は、非武装を現実のものとして追求するような状況にまだ至っていない、こう思いますけれども、それは別といたしまして、軍縮を専一に追求する政策をとっている、こういうように思われるわけでありますけれども、これはなぜそういうようなことを行っていらっしゃるのかお伺いしたい。  例えば、七年度概算要求の歳出予算のシーリングを〇・九%といきなりお決めになりましたけれども、六年度成立予算において〇・九二%であったわけでありますが、シーリングは〇・九%というのはこれは大変に低い率であります。したがって、先日も防衛庁長官とやりとりをしたわけでありますけれども、いろんな訓練を削減したり、あるいは装備の更新卒を落としたり、したがってまた可動卒はどんどん落ちるというような状態になりますし、さらに駐留軍経費についても、これは救済の措置が講ぜられるようでありますけれども、要求の段階においては削減する、来年度一〇〇%ということは達成できないというような一時的な現象でありましたけれども、そういうような削減をやらなきゃいけないと。  自衛隊においては訓練だとか装備を維持していくということ、練度を維持していくということ、こういうことは災害派遣においても国際貢献活動においても基本的な問題であって、装備そのものをどういうように調達していくかというよりももっと基本的な問題でありますが、それさえ削減していくような状態に入っておる。これはまさに考え方を変えて軍縮一点張りでいけよということを指示しているのと全く同様に受け取られるわけでありますけれども、そういうような御決定をなぐった背景はどういうことであったのか、承りたいと思います。
  34. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 私は、日本防衛力というのは世界全体の動向というものを背景にして当然考えなきゃならぬことがやっぱり一つはあると思いますね。これは、先ほど来申し上げておりますように冷戦の終結によって世界的規模における戦争の可能性というものは減少してきた、これはもうどなたもお認めになると思います。ただ、民族間の争いとか、あるいは宗教上の問題とか国境問題とか、地域紛争危険性というのはまだ完全になくなっておるわけじゃありませんから、そういうものはまだあり得る。アジアだってこれは全然ないとは言い切れないものがある。しかし、できるだけそういう軍縮、平和の維持という方向に全体が実現しなきゃならぬという動きがずっと出てきていることは、私はこれは否定し得ない事実だと思うんです。  私は先般ASEANの国を回ってまいりましたけれども、厭戦気分といいますかね、もう戦争を二度としちゃいかぬ、こういう気持ちというのは大変強いものがあって、お互いに平和と友好を深めていって、そして物事は話し合いで解決できるような、そういう努力をお互いにしていこうじゃないか、こういう気持ちは大変強くあらわれておりますね。  これは国際的にも、例えば戦略兵器削減条約とか、あるいは欧州通常戦力条約とか、こういう軍備管理や軍縮の動きというものはいろんな面で出てきているわけですから、そういう潮流というものを一方では歓迎して、そしてできるだけ防衛力なんかが拡大する必要のないような、そういう環境というものをつくっていく努力はこれからもしなきゃならぬ。  同時に、我が国防衛力をどうするかという問題につきましては、今申し上げましたように周辺諸国との信頼関係をずっと構築していって、そういう危険性はもうなくなるんだという努力はこれからも一層していかなきゃならぬ。  同時に、我が国の人的な資源の制約の増大とか、あるいは科学技術の進歩とか、そうしたものも含め一段と厳しくを増しておる日本の財政事情というものもありますから、そういう点も勘案をして、私は、この日本の節度ある最小限度の防衛力を維持するためにはどういう角度から検討する必要があるのかという意味で今慎重な検討をしていただいておるのでありまして、これから予算編成に入りますけれども、とことこという聖域を設けずに、この厳しい財政事情の中で可能な限り合理化もやって、そして有効に金が使われるようなそういう配分というものをしっかり考えていく必要があるという立場から総体的に検討していただいておるというのが現状であるということを御理解賜りたいというふうに思います。
  35. 永野茂門

    ○永野茂門君 冷戦構造崩壊し、そして世界的なといいますか地球的な対立、戦争というものは起こり得ないであろうし、それは解消した。世界的に軍縮の傾向にある。全般的に言いますと、それはそのとおりだと思うんですね。しかし、対立がなくなったというのは何の対立がなくなったか。米ソ対立がなくなった、イデオロギーの対立がなくなった。具体的に言えば、ワルシャワ条約機構とNATOとの対立がなくなった。それだけであります。そのほかの対立はそのまま存在している。特に、アジアにおいては冷戦構造が必ずしも完全には崩壊していませんね。社会主義国は残存し、そして自由陣営諸国と必ずしも、南北朝鮮関係を見ても必ずしも十分に協調時代に入ったとは言えないと思うんですね。  その証拠として、北朝鮮はああいうような核疑惑を持たせるような行動をとっておりますし、中国におきましても核実験を盛んにやりながら核兵器の改善を進めています。ミサイルをどんどん開発しています。南沙群島、西沙群島の方で不穏な動きといいますか、勢力圏の確立行動をとっております。一、二年前までは東シナ海、南シナ海の方で日本の漁船その他船舶が、どこの国の艦艇かわかりませんけれども、臨検行動をとられてかなり圧迫されました。非常に心配しました。  しかも、ヨーロッパでは確かにCSCEその他、紛争が起こらないようにするための調停機構、あるいは小国連に近いものになりつつありますけれども、そういうものがしっかりとできて話し合いが進んでおります。いろいろと紛争の要因を話し合いによって解決するシステムが、十分とは言いませんけれどもできております。  アジア地域あるいは太平洋地域はいかがでしょうか。これはまさに話し合いが始まったばかりでありまして、二国間の間の話し合いも始まったばかりであって、相互の不信感あるいは不安感を取り除き得るような状況にはなっておりません。  したがって、ヨーロッパがそういうような状況にあるから、世界全体を米ソの大きな枠組みの時代の考え方でとらえて、アジアも同じような状況にあると、こういうように思うのは仮想でありまして、そういうように持っていかなきゃいけません。アジアにおいてもしっかりした安全保障システムといいますか、あるいは紛争防止システムといいますか、そういうものをつくっていかなきゃいけません。しかし現在ないわけです。したがって、依然として中国軍拡近代化を進めておりますし、北朝鮮もそうでありますし、そして東南アジア諸国も決して警戒を怠ることなく、みずからの国の経済力の上昇に合わせて必要な軍事力を整備しております。こういう状況は、私は決していい傾向ではないと思います。  したがって、日本もそういう状況をにらみながら軍縮あるいは平和のための主導役を務める、リーダーシップを発揮する、国連において常任理事国となってそういうことをしっかりやるということ等を含めまして、非常に大事なことでありますけれども、やはり現実の状況に合わせた防衛力というものは整備し維持しておかなければならない。いわんや今のようにミサイルも核兵器も、まさにこれは本当に世界じゅうに拡散してしまっております。  先ほど、日本に対してどういうような脅威があるのかというようなことを中心にお話がありました。確かに一番大きいのはミサイルの攻撃です。ミサイルの攻撃に対していかにして守るかというようなシステムなんというのは、世界じゅうに十分なものはないわけでありますけれども日本は全く持っていないんです。これに対してどうするかということも極めて重要な問題として残っているわけでありますけれども、いろんなそういうことを考えた場合に、世界流れがこうである、ヨーロッパがこういうようにうまくいっている、だからアジアにおいて日本もそのような考え方で先導していく、それでいいんだということは私は言えないと思います。  したがって、私は軍拡をやれとか、あるいは今までのとおりに維持しろとか、そういうことを言っているわけではないわけでありますけれども、必要な戦力はやはりちゃんと分析をして維持していく必要がある。  瀬谷先生の話に触れましてちょっとだけ申し上げますが、陸上自衛隊の今のような編成装備というのは多過ぎるんじゃないか、こういう話でありますが、それは十分検討しなきゃいけない問題を含んでいることは間違いありません。しかし、そしてまた私も申し上げましたように、空からの脅威、特にミサイルの脅威が一番大事でありまして、それから海上の脅威というのがある。これに対応するような能力を優先するということはそのとおりであります。しかし、今はそれを完璧にするものはないわけです。  したがって、陸上の防衛力も抑止力として必要なものは持っておる必要がある。その分析をよくやって必要なものにしていくということは重要でありますけれども、そういうことであって、陸上の戦車が今ゼロにできるとか火砲がゼロにできるとか、火砲も海上の戦闘に参加するわけでありまして、なるべく日本に近寄らない間に相手を阻止できればいい、あるいはそういう体制をとっておることによってそういうことをあきらめさせればいいわけです。  それが一番大事なんであって、もっと言えばそういうような悪巧みをしないような環境づくりといいますか外交的努力、あるいはもっと政治的、経済的な努力とかいろいろな努力がありますが、そういう環境づくり、それが一番ベースであることは間違いありませんけれども軍事力というのはそういうことが難しくなった場合に最後のよりどころとしてあるのであって、その最後のよりどころとしてあるがゆえに相手はいろんなことができないということになるということでありまして、そういう意味の所要戦力を持つ必要があるということをぜひお考えいただきたい、こういうように思います。  この点につきましては以上で終わらせていただきます。  次に、総理は参議院の予算委員会で日米安保条約の問題で、今や軍事力の価値は低くなっておる、そういうように特に御発言なさっておりますが、私はこれは言い過ぎではないのかと、こう思うわけでありまして、これについて現在なおそういうようにお考えでしょうか、伺いたいと思います。日米安保条約における軍事力の地位。
  36. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 先ほど来お話を申し上げておりますように、米ソ超大国が対立しておる、そしてお互いに抑止力を発揮するという意味軍拡競争をずっと続けておる、こういう危険な状況というものが解消されたということだけでも軍事的な意味というのは大変変わってきたのではないかというふうに私は思っています。  そういう意味で、日米関係というのは単にそうした意味における安全保障といった立場からだけではなくて、先ほど来申し上げておりますようにAPECの中において日米がこうして協定しているということがどれくらいアジアの国々の皆様方に安心感を与え、あるいは平和と安全のために大きな役割を果たしているかというようなことは、私はやっぱりそれなりのものがあるというふうに認識をいたしております。  したがいまして、単に軍事的な面だけを強調するのではなくて、文化、経済、政治、あらゆる分野においてアジアの平和と安全のために日米が中心になって果たしている役割というものは大きいものがある、そういう評価というものはきちっと位置づけてこれから対応していく必要があるのではないかというような意味で私は申し上げたつもりでございます。
  37. 永野茂門

    ○永野茂門君 日米安保体制において、あるいは広い意味日米関係において、軍事的な関係だけではなくて経済的なあるいは政治的なあるいは技術的なその他の面が極めて重要である、これはもうだれが考えてもそのとおりでありまして、ただしかし軍事力を軽視するわけにはいかない。  と申しますのは、米軍事力が極東周辺、特に日本を中心にしてプレゼンスしておるということは、例えば北鮮と韓国、この間がおかしなことにならないようににらむ。あるいは南沙群島、西沙群島周辺でいろんなことがあるけれども、これがおかしくならないようににらむ。台湾と中国との関係においても、台湾の力はどんどん高くなる、軍事力も上げつつある、中国は大変に台湾の独立を心配しつつある、あるいは台湾の別な地位の向上を心配しつつある。これに対して状況によっては武力を、まずないと思うけれども武力を使うかもしれない。そういうことをどうやって抑えていくか。そういうような世界にとって極めて不都合な不安定な状況を起こさないようにするために、依然として軍事力が有効に作用せざるを得ない。  軍事力ではなくて単に平和的に話し合いだけで総理のおっしゃるような環境づくり、そういうものですべてがうまくいけばそのとおりで非常に楽しい世界でありますけれども、またそういうように持っていかなきゃいけないのでありますけれども、現在のところはそういうことではないのでどうしても軍事力をこの付近に展開しておるという必要があるのであって、そういう意味において軍事力を軽視するということは極めてこれは危険な考え方であると私は思うわけであります。  いかがでございましょうか。
  38. 村山富市

    国務大臣村山富市君) いや、私は別に軍事力を軽視しているとか、そういう意味で申し上げているのではなくて、そういう国際情勢の大きな変化というものは、もうこれはどこの国の意見を聞いていてもやっぱり軍縮協調という時代流れになっておるということは否定できませんし、そういう流れを促進する必要があるというための努力はいろんな国もやっぱりそれなりにやっておるわけですから。  したがって、あなたは防衛関係の専門家だから、専門家の立場に立ては私どもが及びもつかないような面もお考えになっておるかもしれません。しかし、私はそうではなくて、とりわけ日本の国はやっぱり平和憲法を持っている国ですから、そういう率先した役割を先導的に果たしていくということは必要なことだと思いまするし、ASEANの国に参りましても、そういう意味における日本役割というものは大変期待され歓迎されておるということについては私もまた確信を深めてまいりましたけれども、そういう意味で申し上げているのでありまして、何も一切軍備は要らないんだというようなことを申し上げているわけではございませんので、誤解のないように御理解をいただきたいと思います。
  39. 永野茂門

    ○永野茂門君 日米安保体制下においても軍事力の有する意義は決して軽いものではない、こういうように了解されておると解釈いたします。  最後に、北朝鮮の核疑惑問題について御所見を承りたいと思いますが、今回の米朝合意は北鮮の核疑惑解消についていろいろ問題を残していると見る有識者ないしは専門家が世界にたくさんおるわけでありますが、例えばキッシンジャーでありますとかボールビーバーでありますとか、あるいは日本で言えば岡崎元駐タイ大使でありますとか、いろんな人が大変に心配を述べております。  いろんな委員会質疑が行われておりますけれども、核の特別査察が大分先まで時間を猶予されておるという問題でありますとか、あるいは軍事施設と称する二つの施設、IAEAの方はぜひそれを視察したいと言っておりましたけれども、現在までのところそれを査察することはできないという状況で、これも恐らく続くわけでありましよ一つ。  さらに残念ながら、北鮮がかつて、ごく最近でありますけれども、韓国との間に締結されたような、結論が出ていないようなことにつきましても、これを実行しなかったというような先例もあるわけでありまして、そういうことについていろいろ心配を持っておるということは、私も持っておりますし、持つ人が発言していることはやむを得ない、こう思うわけでありますけれども、この核疑惑が解消されあるいはまた核問題が解決するということ、そういう表現にした方がいいかもしれませんが、それは日本の安全にとって極めて重要なことであります。
  40. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 永野君、時間が五分近く超過しております。
  41. 永野茂門

    ○永野茂門君 そうですか、それではすぐ終わります。  総理がいろいろと米国等とも十分お話し合いをなさっておりますし、韓国ともお話しなさっておるわけでありますので、その付近についてどういうように確信を持っておられるか。そして、もしできれば今後それに対してどういうように対応していくお考えかということについて所信をお伺いしたいと思います。
  42. 村山富市

    国務大臣村山富市君) いろいろ御心配される点もあろうかと思いますけれども米朝会談が先ほども申し上げましたように粘り強く交渉が続けられて、一時はこれはもう決裂するんではないかといったようなことが言われたこともありましたけれども曲がりなりにも一応合意が得られた。これはある意味では入り口に入ったという状況ではないかと私は思います。  したがって、これからまた話が進められる具体的なことについて、お互いに合意したことは実行していただくということが大事でありますし、これからもそういう意味ではこれを注意深く見守っていかなければならぬと思いますが、とりわけこれは日朝関係だけの問題ではなくて韓国との関係中国との関係やアメリカとの関係といったようなものもありますし、これからまたその軽水炉の問題等を含めてそうした機関でもってお互いに北朝鮮に対してどうやっていくかというようなことについても相談があると私は思っておりますが、そうしたものを通じてすべての疑惑が解明されて、そしてお互いに安心できるような条件をつくっていくということが大事ではないかというふうに思っておりますから、そういう立場日本政府としても対応していきたいというふうに考えています。
  43. 永野茂門

    ○永野茂門君 ありがとうございました。終わります。
  44. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今回の自衛隊法の改正は、自衛隊に対して自衛隊機による在外邦人の輸送の業務を新しく認めようと、こういう法案であります。  自衛隊は、また新しい一つの仕事を改正法によって負担させられることになるわけです。PKOの問題を含め、自衛隊は従前の自衛隊法に基づく各種の義務のほかにまた新しい義務を付加される。仕事だけこのように押しつけられる自衛隊に対して、自衛隊は憲法上違憲であるというふうな意見が今までにもあったし今でもある。村山総理もつい数カ月前までは自衛隊は違憲であると、こうおっしゃっておられる。現在は自衛隊は合憲であると、こうおっしゃっておられる。今回の改正法を含め、PKO法の場合にしても、海外派遣され、場合によって生命の危険にさらされる自衛隊員が、あなたは違憲だとかあなたは合憲だとかそんなようなことを言われている自衛隊員の立場からしてみたら、一体おれは何なんだと声を上げたくなるだろうと私は思うんです。  総理が、従前の自衛隊違憲論をこの四カ月ほど前に自衛隊合憲と変えられたんだけれども、その理由が総理の説明を随分伺ってもはっきりしない。そこで私は総理に、憲法九条一項についてお伺いしたい。  御承知のとおり、憲法第九条一項には、我が国が「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というふうに規定しています。  端的に総理にお伺いしたい。この憲法第九条一項の規定は、我が国が武力による自衛権を保持することを、換言すれば自衛戦争のための武力集団の存在を認めているのか、それともこの一項の規定はこのような武力集団の存在を否定していると考えるのか、いずれであるか簡潔にお答えいただきたい。
  45. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、委員が読み上げられましたように、憲法第九条第一項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」と規定されているわけであります。これはあくまでも国際紛争を解決する手段として武力行使はしないということが規定されているわけですね。したがって、我が国が主権国として持つ固有の自衛権まで否定したものではないというふうに私は解釈しております。
  46. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今、総理がおっしゃった固有の自衛権というものが、要するに一つの組織体としての国が自衛の権利を持つのは当然だというような意味におけるだけの自衛権の問題なのか、それとも先ほど私が申し上げましたように自衛のための戦争のためであるならば武力集団を認めてもいいという意味における自衛権を認めているということなのか、どちらであるかはっきりさせてください。
  47. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 一概にこれは申し上げられないと思いますのは、これまでの歴史的に起こってきている戦争というものを振り返ってまいりましても、やっぱり自衛のための戦争だといってやってきているケースもたくさんあるわけですね。したがって、私はそういうものまで含めて考えていいのかどうかというようなことも考えていかなきゃならぬと思いますけれども、これは憲法で決められておるこの言葉というものを葉直に解釈して、国権を発動しての戦争というものあるいはその武力による威嚇または武力の行使は国際紛争を解決する手段としてこれを使わないと、永久に放棄すると、こういう意味ですからね。  したがって、例えば相手の国が十時に日本の国に攻め込んできたという場合に、もうやられっ放しで、これはやられても仕方がないわと言ってそのまま腕をこまねいて見ているというのではなくて、そのときにはやっぱり国民の生命・財産を守るという意味の自衛のための権利というものは当然あるのではないかという意味で私は申し上げているわけです。
  48. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 そうすると、いわゆる総理の今のお答えは憲法解釈学においておおよそ通説というほどでもないけれども、要するに憲法九条一項で放棄している戦争はいわゆる国際紛争を解決する手段としての戦争すなわち侵略戦争を意味するのであって、自衛のための戦争あるいは自衛戦争のための武力集団はこの一項によっても否定されているものではない。一項によって否定されているのは今申し上げたような戦争のための武力集団であって、今申し上げたというのは侵略戦争を遂行するような武力集団であって、自衛戦争のための武力集団の存在は憲法九条一項によっては放棄されていない、認められていると、こういうお考えだというふうに伺いますが、間違いありませんか。
  49. 村山富市

    国務大臣村山富市君) ですから、いろんなケースケースが考えられますから具体的な議論をしてまいりますと、例えば日米安保条約が結ばれておると、アメリカがどこかの国から攻撃されておると、こういう場合に安保条約を結んでいるから日本の国もお互いに助け合わなきゃならぬというのでそれに参加するというようなことは、これは憲法に違反するというようなことが言われていますね。言うならば、集団的自衛権は憲法に反するということが言われているわけです。  したがって、個々のケースケースでやっぱり私は判断をしなきゃならぬと思いますけれども、私はもうこの憲法に書いてある言葉をそのまま素直に受けとめて、そしていわゆる国際紛争を解決する手段としては武力は行使できないんだと、永久に放棄するんだということをそのまま素直に受けとめて、しかし自衛するための権利というものは当然否定されておらないというふうに受けとめておるというふうに御理解を賜りたいと思うんです。
  50. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 今のような総理見解が、もし従前からも総理がそのようにお考えだとしたら、憲法が昭和二十二年五月三日に施行されてから今日まで憲法九条一項は全然変わっていない。だとすれば、自衛権の行使のための武力集団すなわち自衛隊法に基づく自衛隊は憲法に違反しないということは明らかなんです。ところが今までは憲法に違反すると言っておられた。今の総理の解釈からいえば自衛隊は憲法に違反しません。自衛隊法は憲法に違反せず、この自衛隊法に基づく自衛隊というのは憲法に適合する存在なんです。この憲法は昭和二十二年からできている。今までそれじゃ自衛隊が違憲だというのは、憲法のいかなる条項に基づいて違憲だったんですか。
  51. 村山富市

    国務大臣村山富市君) これは私は、今までもたびたび衆参両院の委員会で御質問いただいて答弁してきておりますけれども、憲法の前文に書かれている理念というのは、これはあくまでもやっぱり平和主義で貫かれているわけです。しかも、憲法第九条では国際紛争を解決する手段としては放棄すると明確にうたわれている。  こういう憲法の前文にうたわれているその理念をしっかり踏まえた場合に、冷戦構造というものを背景にして、そして日本自衛隊が、一九五〇年に朝鮮戦争で警察予備隊から保安隊に変わり自衛隊に変わっていくというような状況の中で、軍拡をやってないと、こういうふうに言われる方もありますけれども、しかしそれはアメリカとの関係もあっていろんな要請もあった。その要請を平和憲法があるからと、国民には強い反対する力があるからというようなことも含めて曲がりなりにも現状のような節度ある最小限の自衛力でもっておさまってきておるというようなことを考えた場合に、その理念を踏まえて社会党が自衛隊は違憲だと、軍拡反対だと、非武装だと、こう言ってやってきた歴史的な運動の成果というものはそれなりに評価していただいていいんじゃないかというふうに私は考えておりますが、そういう意味で私ども自衛隊は違憲だという立場をとり続けて反対闘争を展開してきたというふうに御理解をいただきたいと思うんです。  しかし、先ほど来申し上げておりますように、もうそういう国際的な背景もなくなって、これからまさに軍縮協調時代に変わりつつあるんだという状況の中で、社会党は憲法に対する解釈を変えたんではなくて自衛隊に対する政策の方針を変えたんだというふうに私は御理解いただきたいと思うんです。
  52. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 自衛隊が違憲であるということを言う場合に憲法という規範がある、この規範のもとに自衛隊法という法律があるんです。この自衛隊法に基づいて自衛隊というのは組織されているんです。自衛隊そのものが違憲だどうだという問題じゃないんです。自衛隊法が憲法に違反するかせぬかという問題が問題なんです。  この自衛隊法が憲法に違反すれば、憲法に違反する自衛隊法によって組織されている自衛隊は違憲の存在になる。だから、自衛隊法が合憲か違憲かというのが論議の中核なんです。しかも、この自衛隊法というのは昭和二十九年六月九日に制定されているんです。その間、いろいろ業務の付加とかそういうものはありますよ。しかし、基本は昭和二十九年にできている。この自衛隊法が憲法九条に違反すると、だから自衛隊は違憲なんだと今まで言ってこられたはずなんです。  ところが今の憲法解釈だと、今のというのはただいまの総理の憲法解釈だと、自衛のための戦力を保持することは憲法九条一項によって否定されていないというんだから、だとしたらこの憲法に自衛隊法は適合するんです。この適合する自衛隊法に基づいて設置されている、組織されている自衛隊は合憲なんです。合憲的存在なんです。ということになもはずなんです、何かいろいろおっしゃるけれども。  それから、先ほども永野委員の質問に対して総理は、冷戦構造の変化があったとかどうとかおっしゃるけれども冷戦構造なんていうのは、じゃいつから始まっていつ終わったんです。自衛隊法は昭和二十九年にできている。昭和二十九年というのは、まだ米ソ対立どころか第二次世界大戦後のいわゆる連合国がまあまあうまくやっているときで冷戦構造なんかありはしない。いつから冷戦構造になっていつから冷戦構造が終わったから、そんなことによって自衛隊法が合憲になったり違憲になったりなんてするようなものじゃないんです。憲法も自衛隊法も、憲法は昭和二十二年から、自衛隊法は昭和二十九年からずっとある。それにもかかわらず、自衛隊は違憲であると言うことによって、国民の世論がそうなっているからそう言ったのか、あるいは国民にそのような間違った感覚を与えたのか。  特に私は、一番自衛隊の人間にしてみたら総理立場というものに対して非常に心外だと思う。私が自衛隊員だったら、冗談言ってもらっちゃ困ると言いたい。今まで違憲だ違憲だと言ってまま子扱いして、今度はあんたら合憲だと。憲法も自衛隊法も変わらぬのに、そして冷戦構造がどうだとかこうだとか、そんな理由で違憲になったり合憲になったらたまらない。法治国家において違憲であるということはあっちゃならぬということなんです。あっちゃならぬものが今度はあっていいなんという、そんなことじゃ困るんです。  これ以上言っても、あと四分しかないから次の問題に移ります。  私は、自衛隊といった場合に二つの側面がある、要するに武力集団としての自衛隊と、そういう武力を捨ました意味での整備された人的組織としての自衛隊というものを考えなきゃならぬ。  例えば、国内における災害出動にしても、洪水だ、地震だというときに何も鉄砲を担いでいくわけじゃないんです。自衛隊は本当に土のうを粗いで一生懸命仕事をしている、これが災害出動なんです。このときには、鉄砲も何も関係ない自衛隊がここにあるんです。それから、もちろん万一の場合には、国土防衛というための武装集団にならなきゃならぬ。この武装集団である自衛隊と、そうでなくして国内における一つの人的な組織としての自衛隊というものを区分けして考えなきゃいけない。  ところが、PKO法のときに、当時の自民党なり我が党公明党も含めて、何も鉄砲を担いで外へ行くんじゃないんだ、道路を直しに行くんだと。そのときに、鉄砲を担いで出ていくのと同じような意味において反対した。今回の自衛隊機の輸送も同じなんです。自衛隊機の在外邦人の救出ということだって、鉄砲を担いでいくわけじゃないんです。整備された人的組織としての自衛隊が危難に窮している在外邦人を救う、こんなことはもう子供が考えたっていいことだとわかるはずです、私に言わせれば。  ところが、これを区分けしないで、武力集団としての自衛隊というものと単なる整備された人的組織としての自衛隊を混同して国民の世論を変な方に導いた。そして、PKO法のときにもああいう状況になった。この辺について、私はまず総理に、従前の問題について国民に謝罪すべきであると思うんです。自衛隊員に謝罪すべきであると思うんです。そうでないとしたら、自分でやったことの責任についてどう考えるか、この点について総理にお伺いしたい。  それから、防衛庁長官には、今私が申し上げたような自衛隊員というものをただ一つに見るんでなくて、今のように見ることが国民に対して自衛隊というものを真に理解してもらうことになるというふうな観点から今の点に関する見解もお伺いしたい。以上です。
  53. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 私は、やっぱり政党というのは政策を中心に運営されていると思いますから、したがって情勢が変わってくれば国民意識も変わってまいります。そうした全体の動きというものを的確に判断して、そして政策が変わっていくことはこれはまたあることだし当然のことだと思いますね。ですから、何も自衛隊の個々の隊員をそういう目で見てそういう形にするんではなくて、政策としてこういう背景と状況にあるときに我々はどういう態度で臨むべきかという意味で社会党は自衛隊にも反対をして違憲という立場をとってきた。  これは国民の中にも、社会党がこれだけの議席を維持しているということは、社会党の言い分を支持する国民の声というものも背景にあるわけですから、したがってこれは私は無視できないと思うんです。そういう国民の声がそれぞれ反映されて国会の中で議論されていって、そしてコンセンサスを求めながら国政というものは運営されている。こういう立場ですから、私はこれまでとってきた社会党の態度が誤っておったというふうには思っておりません。それなりの歴史的な役割を果たしてきた。しかし情勢も変わってきたんですね。変わった情勢の中で社会党も対応する必要があるというので政策の方針を変えたんだというふうに御理解を賜りたいというふうに思っております。
  54. 玉沢徳一郎

    国務大臣玉沢徳一郎君) 御指摘をいただきましたように、自衛隊我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国防衛することを主たる任務とする実力組織であります。自衛隊は、このような任務を達成するため、日夜厳しい訓練を通じて長年にわたってさまざまな技能、経験、組織的な機能を培ってまいったところであります。したがいまして、こうした能力を国際社会や国民のため、生命、財産を守るために適切な形で有効に活用していくということは極めて意義のあることであると考えております。  自衛隊が国際平和協力業務や国際緊急援助活動に参加することになったのも、かかる特性を活用することが最適であると認識されるようになったからであると考えるわけでありまして、今後ともこのような点について国民の皆様の一層の理解を得るべく努めてまいりたいと考えております。
  55. 猪熊重二

    ○猪熊重二君 総理がおっしゃったことに対して最後に一言だけ申し上げて終わります。  憲法解釈の問題と政策決定の問題とは全く無関係なことである。  以上です。
  56. 立木洋

    立木洋君 総理にお尋ねします。  海外における邦人の生命、財産、これの保証、保護については日本政府がその統治国、相手国とよく話し合いをして、交渉して、そしてその生命や財産が十分に保証できるように最大限の努力を要請するというのが本来政府としての責務のあり方だと思うんですね。国際法上考えてみれば、その邦人が在留する統治国が第一義的にはやっぱり日本人なら日本人の生命、財産の保護をしなければならない、これが第一義的な責務になっておる。  ところで、その相手国の政府に任せておいたのでは邦人の生命、財産が脅かされて危ないという事態だから、それを救出するために自衛隊機を必要とするなら飛ばすということになるわけですね。ところが、一方ではその安全が確保されていなければ自衛隊機は飛ばさないと言っているんです。だから、安全が脅かくれているから行くのか、安全が確保されているから自衛隊機を飛ばすのか、これは奇妙な話なんですね。  総理のお考えをちょっとお尋ねします。
  57. 村山富市

    国務大臣村山富市君) いろんなケースが想定されると思いますけれども、例えば今お話がございましたように紛争が激化して、そしてそこに在留している邦人が非常に危険な状態にさらされているという場合に、この邦人の生命を保護するために救出自衛隊飛行機派遣される。こうした場合に、自衛隊は他国の空を飛んで行くし、その国の空港を使うわけですから、したがってその限りにおいては、その運航に対する安全というものが保証されない限りは、行く途中から落とされるかもしれぬ、あるいはその空港は使えないかもしれぬといって飛ぶわけにはまいりませんからね。  したがって、危険にさらされておる邦人の生命を救出するために派遣される飛行機というのは、あくまでもその安全が保証されるということが前提でなければそれは行けないわけですから、そういう意味で申し上げているわけです。
  58. 立木洋

    立木洋君 私は今の総理答弁というのはちょっと奇妙だと思うんですね。  事実関係を見てみますと、あの湾岸戦争のとき、御承知のように、政府としては特例、政令をつくって、つまり自衛隊機のC130輸送機を出そうとしたんですよ、あのときは。ところが、実際には関係国はその着陸は受け入れられない、危ないからだめだ、中立が保たれないと言って拒否された。結局、避難民の輸送というのは民間機がやったわけなんです。自衛隊機が来てもらったら危険だから困ると言われて民間機が行って輸送したというのが湾岸戦争の事実なんです。  そうしますと、政府が言うように、安全が確保される、着陸がどうなるか、途中がどうなるかという問題がありながらも。そして、同時に安全が確保されて、相手国の同意が得られるならば民間機でやって十分にできるんではないか。なぜ自衛隊機が行かなければならないのか。  その点についてはいかがでしょうか、総理
  59. 村山富市

    国務大臣村山富市君) これはいろんな事例が私はあると思いますけれども一つの事例を紹介いたしますと、これは今まではずっと自衛隊法の改正がなかったですから、したがって民間機で救出に行ってもらうとか、あるいはチャーター便を契約して行ってもらうとかというふうなことをしておったわけです。  ところが、たまたまイラン・イラク紛争のとき、イランに在留している邦人の出国のため救援機の派遣等について準備を進めてきたけれども、結局話ができずに間に合わずに大多数の邦人はトルコ航空で出国してもらった、こういう事例があります。  したがって、その場合にやっぱり民間機との契約ができなければチャーター便も使えないわけですから、やっぱりこれまでの経験の中であったので、したがってそういう場合も想定して政府飛行機派遣するということに道を開いた方がいいというので自衛隊法の改正になったと私は思うんです。そういう場合も、これは相手の国が受け入れてくれなければこれは飛ばせないわけですから、したがってやっぱりそれはケースバイケースで、その場合には民間の飛行機をチャーターしてやっていただくというようなこともあり得るんではないかと思います。  要するに、そういう危険にさらされておる邦人の生命をどう保全をして救出するかという目的が達成されればいいわけですから、したがっていろんなケースが考えられるということは当然想定されると思いますから、その一つとしてこういう道をやっぱり講じておくことも国の責任ではないかというので自衛隊法の改正が提案されておるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  60. 立木洋

    立木洋君 その議論についてはもう昨年からいろいろ議論されてきたんですね。宮澤さんが総理のときも、民間のパイロットやクルーが危険な業務を拒否するから、だから自衛隊機が必要なんだという趣旨答弁をされておるし、あるいはまた中西元防衛庁長官も、完全に安全なときは民間機で飛ぶ、あるいはやや陰りのあるときはチャーター機で、それでもだめなときは政府専用機で飛んでいくというふうな趣旨のことを述べている。結局、自衛隊機を何としてでもやっぱり出す、そういう道をつくるということにこの問題があるだろうと思うんです。  今、総理が言われた、つまり相手国の同意が得られなければ自衛隊機は出さないと言われましたけれども、法文上も、相手国の同意を得なければならないというのは法律上ないんですよ。政府のこの間の閣議決定にも、相手国の了解を得なければ自衛隊機を飛ばさないなんというような閣議決定もないんですよ。結局、ケースバイケースでどんなことがあろうとも自衛隊機を飛ばす。だから、相手国の同意がなくても飛ばすということになるんではないですか。  結局、問題はどういうことかといいますと、相手国が混乱している状態にあるんですね、サイゴンなんかの場合もそうでした。そうすると、同意が得られないということだってあり得るわけですよ。その場合でも、結局法的な縛りがないんですから、相手国の同意を得なくたって飛ばすということが事実上起こり得るんじゃないですか。そういう場合はどういうふうにお考えでしょうか。
  61. 村山富市

    国務大臣村山富市君) それは、国内法で相手国の同意を得られなければ行けないとか行けるとかそんなことは決めるのではなくて、これは条約上、日本の航空機が他国の領空を侵害する場合あるいはその国の空港を使わせてもらう場合に、これは許可がなければ、了解がなければ使えないのは当然なんで、これは条約上そうなっておるわけですから、したがってそれはもう当然のこととして相手の国の了解がなければ行けないというのは当然のことだと思います。
  62. 立木洋

    立木洋君 あのPKOのとき、相手国の了解ということをあれほど問題にしたんですよ。PKOだって条約上そんな問題でなければ、相手国の了解を得なければならないということを条約上書く必要はなが一、たんじゃないですか、あの法文上。PKOの場合にあれほど問題になっているんですよ。相手国が混乱しているんです。安全が保証されない状態にあるからこそ飛ばさなければならない。だから、結局そうなると、相手国の同意を得ないで飛ばすということだってあり得るというふうに言わざるを得なくなる。そうじゃないですか。
  63. 村山富市

    国務大臣村山富市君) PKOで派遣される場合に五つの条件がつけられておりますけれども、それは例えば、やっぱり紛争をしておる当事者が日本のPKOで派遣されるものが受け入れられるということが同意されなければこれは役に立たないわけですから、それは当然の話です。  ただ、今度の場合は領空を飛ぶんですから、日本の空を了解なしに外国の飛行機が飛んできたというふうなことはこれは許されないんですよ、条約上。しかも、例えば日本の成田の空港をどこかの国が了解も許可もなしに入ってくるなんということはこれはあり得ないことですから、これは航空管制上も。これは国際的な条約できちっと決められておることですから、したがってそれは当然守らなければならぬと。当たり前の話だと思います。
  64. 立木洋

    立木洋君 私はもう一度、これは時間がありませんから、この問題で議論をしたら次の重要な問題が議論できないのでとどめますけれども、今の総理の言っているのは全く筋が通っていないということだけは私は指摘をしておきたいと思います。  それで、この問題に関連して、前の畠山防衛局長が昨年の六月十日に参議院の内閣委員会でこのように述べているんです。海外に行きました自衛隊機が、その国または国に準ずるものから組織的、計画的な武力攻撃を受けた場合に、憲法上の論理としては自衛権発動の対象になり得る、こういうふうに述べているんです。憲法上の論理としては自衛権発動の対象になり得ると。ところが、同じ委員会外務省の丹波前条約局長ですが、彼が述べたのにつきましては、外国の領域の中にある日本の船舶、航空機というものは一義的にはその滞在国の責任において保護されるべきものだと。保護すべきその国が保護の能力がなければ、一般国際法上相手国の同意のもとに自国の自衛権の発動の対象になるというふうには述べていますが、その後に、しかし誤解のないように述べておきたいのは、日本の憲法上はその他国の領土、領海において、たとえ自衛権であっても実力の行使はできないと、こう述べているんです。  畠山防衛局長が述べたのは、自衛権の発動の対象になり得ると、憲法上。丹波条約局長が述べたのは、他国の領土、領海においては、たとえ自衛権であっても実力行使はできない、憲法上許されないと述べているんですが、両者の、条約局長と防衛局長との答弁がまるっきり違っているんです。これをどのように総理はお考えですか。
  65. 村山富市

    国務大臣村山富市君) ちょっと専門家から一遍答えてもらって。
  66. 村田直昭

    政府委員(村田直昭君) この質問につきましては本委員会等でも再々お答えしているわけでございますけれども、先生御案内のとおり、自衛権の発動につきましては、第一に我が国に対する急迫不正の侵害がある、第二にこれを排除するために他に適当な手段がない、第三に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことという三つの要件を備えることが必要であるということでございます。  御指摘ケースにつきましては、現実の議論としておよそ想定できないものであるが、あえて純理論的な問題として申し上げればというような趣旨で当時の防衛局長が答弁をしているわけでございますが、外国の領域にある自衛隊が攻撃された場合、それは一般的に言って直ちに我が国に対する武力攻撃が発生した、この武力攻撃というのは組織的、計画的な武力攻撃ということになるわけでございますが、発生したとは見られないと。また、自衛隊の保護は当然、御指摘のように当該領域に対して施政権を持つ当該他国が当たるべきでありまして、第二の要件である他に適当な手段がないことに当たるとも言えないということから、こういうような状況のもとでは憲法上自衛権の発動というのは許されないものと考えているわけでございます。  ただ、御指摘防衛局長の答弁は、従来から政府答弁書で述べてきた、この答弁書と申しますのは昭和四十四年四月八日、衆議院松本善明議員からの質問主意書に答えた政府答弁書でございますけれども、「かりに、海外における武力行動で、自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではない」という純理論的な話を申し上げたにとどまるものでございまして、今回提出の法案のように、相手国の同意を得て自衛隊機海外派遣されているような場合には自衛権の発動といったことはおよそ考えられないということは言うまでもないことだろうと思います。  なお、丹波局長はその際に述べておりますが、「自衛隊法と憲法との関係につきましては防衛庁の当局の方から御答弁していただくのが一番適切だと思います。」というようなことも同時に言っておるところでございます。
  67. 立木洋

    立木洋君 昭和三十一年の二月二十九日にこの問題での政府の統一見解が出ているんです。そのときに今言った三要件、これは我が国に対して攻撃が行われた場合の三要件なんです。外国に行った場合じゃないんです。これをひとつはっきりさせておきたい。  それから、松本善明衆議院議員が質問主意善を出したのは海外派兵と自衛権とのかかわりを述べたんです。海外派兵と自衛権との関係についての質問なんです。ですからこれは外国にいる邦人や自衛隊機に対する攻撃というものに対する質問での答弁ではないんです。問題をそういうふうにすりかえてもらったら困る。  そのようにずっとありますけれども、この問題に関して言いますと、昭和四十八年九月十九日に当時の吉国内閣法制局長官が述べている点を言いますと、某国にある我が国国民の生命、身体、財産が危機に瀕しており、これが侵害されており、あるいは侵害される危険にさらされている場合においても、自衛権の発動は憲法上許されない。これは昭和四十八年ですね。それから昭和五十五年ですね、味村さん、同じく当時の内閣法制局第一部長ですが、「海外におきまして邦人が何かの難に遭うというような場合は自衛権の発動の要件はございません。」と言っているんです。憲法上自衛権の発動の要件はございませんと。  だから、今まで全部否定しているわけです。それが憲法上許されるかのような答弁をするということは極めて重大な問題なんですよ。憲法上ではそれはできるんだというふうな格好で、実際には武器の使用問題については、これは今度の場合でも、この自衛隊法九十五条にある航空機を防護するための武器の携行と使用も排除されていないということは村田防衛局長も一昨日答弁しているんですから。そうすると、事実上自衛隊機に対する攻撃をかけられたら、いわゆる自衛権の発動だといって武器を使うことだって許されるというふうな解釈がされておるとこれは重大な問題になるので、その点は明確にしておいていただきたい。  今のお話を聞かれたからおわかりでしょうから、総理としての、もう時間がないんですから最後ですから総理に聞かないとだめです。私は総理に質問しているんです、総理に。
  68. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今、局長から答弁がございましたけれども、自衛権の発動については前提条件というのはぴしゃっと決まっているわけですね。もう一遍繰り返しますと、第一に我が国に対する急迫不正の侵害があること、第二にこれを排除するために他に適当な手段がないこと、第三に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことという三つの要件が備えられてなければならないということはもうはっきりしているわけですね。  したがって、今言われるように、海外派遣されておる自衛隊なら自衛隊が何かの武力攻撃を受けたという場合に武力の発動ができるかという問題ですね、これは我が国に対して武力攻撃が発生したというふうには見られないわけですから、したがってそれはもう防衛するあれはないというふうに私は解釈しています。これは局長が答弁したとおりであります。
  69. 立木洋

    立木洋君 そうすると、憲法上もそれは認められ得るんだというふうな畠山防衛局長の答弁は間違っている、だからそれは訂正する、総理責任で。結構ですね。
  70. 村山富市

    国務大臣村山富市君) 今話がありましたように、御指摘の当時の防衛局長の答弁は、従来政府が、今私が申し上げました答弁で、仮に海外における武力行動で自衛権発動の三要件に該当するものがあるとすれば、憲法上の理論としてはそのような行動をとることは許されないわけではないということを前提にして申し上げているんであって、そんなことは現実にはもうあり得ないことだと私は思っていますけれども、純理論的にそういう前提、三要件が満たくれているような場合ということを想定して答弁しているんだと私は思いますから、その限りにおいては食い違いは別にないんではないかというふうに私は理解します。
  71. 立木洋

    立木洋君 これは重大な問題なんです。あいまいにしてもらっては困るんです。これは憲法上の問題で、今までそれは社会党だってその問題についてはこだわってきたわけですから、憲法上の問題というのはあいまいにできないんです。  ですから、私が言いたいのは、つまり憲法上可能なんだというふうな認識をどこかで認めているようなことを総理がおっしゃるということはこれは許せないので、それはだからそういうことではないんだと。あり得ないけれども純理論上だとかそういうふうな言い方じゃなくて、つまりそういうふうな憲法上許されるというような考え方は絶対にあってはならないことだと、海外に出た場合に。そういうことを明確にしておいていただきたい。
  72. 村山富市

    国務大臣村山富市君) その三つの前提条件が満たされない限りはあり得ないということは明確に申し上げておきます。
  73. 立木洋

    立木洋君 だめです、それじゃ。我が国に対してなんです、三要件というのは。我が国に対してなんです。だから、国に対してそういう攻撃が行われた場合には自衛権の発動がある。海外に出た場合違うんです。三要件は問題じゃないんです。海外に出た場合の自衛隊機に対する攻撃なんかで憲法上許されるんだというふうなことはやっぱりあってはならないということだけは総理、明確にしておいていただきたい。  だから、問題になっているんですよ、意見が異なっているから。その点をはっきりしておいてください。
  74. 村山富市

    国務大臣村山富市君) これは何度も言いますけれども我が国に対する武力攻撃が発生したと見られない場合にはどのような場合でもそれはできないということを申し上げているわけです。
  75. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 時間です。
  76. 立木洋

    立木洋君 済みません。  もう時間になりましたのでこれで終わらなければなりませんけれども、また機会を見つけてひとつやりたいと思います。
  77. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  78. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  79. 立木洋

    立木洋君 私は、日本共産党を代表して、自衛隊法の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。  本法案は、外国における災害や内乱、内戦、クーデター、国際間の武力紛争などの緊急事態に際し、邦人の救出目的自衛隊をその地域派遣し、邦人輸送の任に当たらせようとするものであります。これは自衛隊の輸送部隊を救出すべき人のいるすべての地域派遣できるようにするものであり、PKO法、国際援助隊法に続く憲法の平和原則をじゅうりんする海外派兵の法体制づくりの一環をなすものであります。  政府は安全が確保されなければ派遣しないと言っていますが、そもそも外国にいる邦人の生命、身体の安全をその国に任せることができない緊急事態が発生したからこそ邦人保護が必要になったのであり、危険があれば派遣しないというのは本案の根底において矛盾するものであり、成り立ち得ない説明であります。  また、派遣先国の同意を得て行うと申していますが、紛争の一方の当事国の攻撃を受けないという保証はありません。もともと自衛隊は国際法上軍隊であり、軍用機が紛争地域に赴くことはそれ自体攻撃を招く危険な行動であります。もし、政府の説明のように輸送の安全が保証され、相手国の許可が得られるのであれば、従来どおり民間機や民間のチャーター機派遣すればいいことであります。  さらに、本案には輸送任務につく自衛隊機や部隊規模に法律上の規定がないことです。当然のこととして、派遣された自衛隊機自衛隊の行動と運用は自衛隊法に基づいて行われるものであり、その際の八十七条は武器の保有を認めております。また、特に九十五条は航空機を防護するための武器の使用を認めています。したがって、派遣先で武器の使用に及ぶおそれがあります。政府は、戦闘機による護衛や武器の使用はしないと閣議で決めており、そのようなことは想定していないと言いますが、法律上何ら拘束するものではありません。他方で防衛局長が、憲法上の論理としながら、海外に行った自衛隊が武力攻撃を受けた場合に自衛権発動の対象になると述べていることを考え合わせますと、法の体系としてそのようなことがあり得るのであり、ここに法案の重大な問題があります。  在外邦人の生命、身体の安全の保護について政府が適切な時期に退去の判断を下すことが重要であり、また国際移住機構や国際赤十字等の国際機関への働きかけなど、外交努力を尽くすべきであります。邦人保護ということでかって行われた苦い歴史の教訓を改めて想起すべきであります。  なお、本案は、政府専用機を使用すると言いながら、それが困難な場合には自衛隊機を使用するとしており、自衛隊の輸送部隊の海外派遣という本質を変えるものではありません。  以上のことを指摘し、私の反対討論を終わります。
  80. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  自衛隊法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  82. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  瀬谷君から発言を求められておりますので、これを許します。瀬谷英行君。
  83. 瀬谷英行

    ○瀬谷英行君 私は、ただいま可決されました自衛隊法の一部を改正する法律案に対し、一昨日の審議において吐露されました各位の意見をも参酌いたしまして、自由民主党、日本社会党・護憲民主連合、新緑風会、公明党・国民会議の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     自衛隊法の一部を改正する法律案に対す     る附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たっては、次の事項  についてし十分配慮すべきである。  一 正確な情報の把握     最近多発する地域紛争は、日時、状況の    予測が困難であることを考慮し、緊急時に    随時正確な情報を得られるよう関係する情    報収集機能を一層強化すること。  一 安全の確保等     在外邦人等の輸送は極めて緊急かつ重大    な事態であることにかんがみ、安全対策に    万全を期し、慎重な判断のもとに迅速かつ    的確な対応を行うこと。   右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  84. 岡野裕

    委員長岡野裕君) ただいま瀬谷君から提出されました附帯決議案を議題として採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  85. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 多数と認めます。よって、瀬谷君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、玉沢防衛庁長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。玉沢防衛庁長官
  86. 玉沢徳一郎

    国務大臣玉沢徳一郎君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。
  87. 岡野裕

    委員長岡野裕君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 岡野裕

    委員長岡野裕君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会