○永野茂門君
冷戦構造が
崩壊し、そして
世界的なといいますか地球的な
対立、戦争というものは起こり得ないであろうし、それは解消した。
世界的に
軍縮の傾向にある。全般的に言いますと、それはそのとおりだと思うんですね。しかし、
対立がなくなったというのは何の
対立がなくなったか。
米ソの
対立がなくなった、イデオロギーの
対立がなくなった。具体的に言えば、ワルシャワ条約機構とNATOとの
対立がなくなった。それだけであります。そのほかの
対立はそのまま存在している。特に、
アジアにおいては
冷戦構造が必ずしも完全には
崩壊していませんね。社会主義国は残存し、そして自由陣営諸国と必ずしも、南
北朝鮮の
関係を見ても必ずしも十分に
協調の
時代に入ったとは言えないと思うんですね。
その証拠として、
北朝鮮はああいうような核疑惑を持たせるような行動をとっておりますし、
中国におきましても核実験を盛んにやりながら核兵器の改善を進めています。ミサイルをどんどん開発しています。南沙群島、西沙群島の方で不穏な動きといいますか、勢力圏の確立行動をとっております。一、二年前までは東シナ海、南シナ海の方で
日本の漁船その他船舶が、どこの国の艦艇かわかりませんけれ
ども、臨検行動をとられてかなり圧迫されました。非常に
心配しました。
しかも、ヨーロッパでは確かにCSCEその他、
紛争が起こらないようにするための調停機構、あるいは小
国連に近いものになりつつありますけれ
ども、そういうものがしっかりとできて
話し合いが進んでおります。いろいろと
紛争の要因を
話し合いによって解決するシステムが、十分とは言いませんけれ
どもできております。
アジア地域あるいは
太平洋地域はいかがでしょうか。これはまさに
話し合いが始まったばかりでありまして、二国間の間の
話し合いも始まったばかりであって、相互の不信感あるいは不安感を取り除き得るような
状況にはなっておりません。
したがって、ヨーロッパがそういうような
状況にあるから、
世界全体を
米ソの大きな枠組みの
時代の考え方でとらえて、
アジアも同じような
状況にあると、こういうように思うのは仮想でありまして、そういうように持っていかなきゃいけません。
アジアにおいてもしっかりした
安全保障システムといいますか、あるいは
紛争防止システムといいますか、そういうものをつくっていかなきゃいけません。しかし現在ないわけです。したがって、依然として
中国も
軍拡、
近代化を進めておりますし、
北朝鮮もそうでありますし、そして東南
アジア諸国も決して警戒を怠ることなく、みずからの国の経済力の上昇に合わせて必要な
軍事力を整備しております。こういう
状況は、私は決していい傾向ではないと思います。
したがって、
日本もそういう
状況をにらみながら
軍縮あるいは平和のための主導役を務める、リーダーシップを発揮する、
国連において常任理事国となってそういうことをしっかりやるということ等を含めまして、非常に大事なことでありますけれ
ども、やはり現実の
状況に合わせた
防衛力というものは整備し維持しておかなければならない。いわんや今のようにミサイルも核兵器も、まさにこれは本当に
世界じゅうに拡散してしまっております。
先ほど、
日本に対してどういうような脅威があるのかというようなことを中心に
お話がありました。確かに一番大きいのはミサイルの攻撃です。ミサイルの攻撃に対していかにして守るかというようなシステムなんというのは、
世界じゅうに十分なものはないわけでありますけれ
ども、
日本は全く持っていないんです。これに対してどうするかということも極めて重要な問題として残っているわけでありますけれ
ども、いろんなそういうことを考えた場合に、
世界の
流れがこうである、ヨーロッパがこういうようにうまくいっている、だから
アジアにおいて
日本もそのような考え方で先導していく、それでいいんだということは私は言えないと思います。
したがって、私は
軍拡をやれとか、あるいは今までのとおりに維持しろとか、そういうことを言っているわけではないわけでありますけれ
ども、必要な戦力はやはりちゃんと分析をして維持していく必要がある。
瀬谷先生の話に触れましてちょっとだけ申し上げますが、陸上
自衛隊の今のような編成装備というのは多過ぎるんじゃないか、こういう話でありますが、それは十分
検討しなきゃいけない問題を含んでいることは間違いありません。しかし、そしてまた私も申し上げましたように、空からの脅威、特にミサイルの脅威が一番大事でありまして、それから海上の脅威というのがある。これに
対応するような能力を優先するということはそのとおりであります。しかし、今はそれを完璧にするものはないわけです。
したがって、陸上の
防衛力も抑止力として必要なものは持っておる必要がある。その分析をよくやって必要なものにしていくということは重要でありますけれ
ども、そういうことであって、陸上の戦車が今ゼロにできるとか火砲がゼロにできるとか、火砲も海上の戦闘に参加するわけでありまして、なるべく
日本に近寄らない間に
相手を阻止できればいい、あるいはそういう
体制をとっておることによってそういうことをあきらめさせればいいわけです。
それが一番大事なんであって、もっと言えばそういうような悪巧みをしないような環境づくりといいますか外交的努力、あるいはもっと政治的、経済的な努力とかいろいろな努力がありますが、そういう環境づくり、それが一番ベースであることは間違いありませんけれ
ども、
軍事力というのはそういうことが難しくなった場合に最後のよりどころとしてあるのであって、その最後のよりどころとしてあるがゆえに
相手はいろんなことができないということになるということでありまして、そういう
意味の所要戦力を持つ必要があるということをぜひお考えいただきたい、こういうように思います。
この点につきましては以上で終わらせていただきます。
次に、
総理は参議院の予算
委員会で日米安保条約の問題で、今や
軍事力の価値は低くなっておる、そういうように特に御発言なさっておりますが、私はこれは言い過ぎではないのかと、こう思うわけでありまして、これについて現在なおそういうようにお考えでしょうか、伺いたいと思います。日米安保条約における
軍事力の地位。