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国務大臣(
野中広務君)
委員、お説のように、
地域福祉を
推進していく場合に国と
地方との役割分担というのは基本的に整理をしておかなくてはならないと思うわけでございます。
地域福祉の
推進というのは、やっぱり
住民に一番身近な
地方団体が担うべき責任でございますし、また国は全国的な
制度の企画、立案、そういう
原則に立って、国が担うべき役割というものをやはり前提として国、
地方が一体となって
福祉そのものを支えていかなくてはならないと思うわけでございます。
ただ、実は私も老人
福祉施設、さらに重度の障害者の施設の理事長を二十数年やりながら、今、重度障害者は収容、授産施設を含めまして二百人、三施設に入っております。
こういうものを見てまいりますと、この間も私、
福祉に三十年ほどかかわりながら情けないなと思ったのでございますけれ
ども、あるお年寄りがお亡くなりになりました。平素訪ねてこない家族が亡くなったという報を聞いたらざっと寄ってきまして、そしてこの人は相当高給を取っておられた、年金も相当高い方でございましたので亡くなられたときに四千万ほどの金を持っていらっしゃいました。そうしましたら、調べてみたらこの家族とは世帯分離がされておるわけです。だから老人施設に入っても自己
負担がないわけであります。そうしてしかも、残ったこの四千万に、親が亡くなったのを嘆き悲しむのじゃなしに、群がるようにけんかしているんですね。これを見て、我々一体
福祉の仕事は何しているのかな、こう思いました。
私
どもの重度障害者の施設などは順番をお待ちいただいておる人が非常に多うございます。何とかして入れてほしい入れてほしいと言われるんですけれ
ども、一たん入りましたら、二月、三月はお訪ねになりますけれ
ども、後はもうほとんど訪ねてこられることはないわけでございます。そして、約一年か二年たちましたら、西川
委員もそこそこ歩いていらっしゃるのでおわかりでございましょうけれ
ども、悲しいかな、この子供たちがもらっておる障害手当を取りに来る親がおるんです。これを見まして、私は、これから本当に少子
社会が出てきて高齢化が進んでいく中で、本当に与えるばっかりの
福祉がいいのかなと。
やっぱり自分たちがどういうように支えていくのかということ、そしてそういう中で我が国の家族
制度やあるいは相続
制度やそういうものをすべて考えて、そしてこれからの深刻な時代を考えなければ、物価は安く税金は安く、そして給料は高く医療はただでと、こんな世の中はなかなかあらわれないわけでございまして、やっぱりみんなで私
どもはこの深刻な時代をお互いにどう支えていくかということを考えなければ、私が現実に直面している問題だけでも、世の中崩壊しちゃうんじゃないかというような、本当に身につまされる思いを今日しておるわけでございます。
そういう点を考えますときに、やはり国、
地方を通じて国の役割、
地方の役割を明示しながらきめ細やかな
福祉施策というものを私
どもは個別に、そして先ほどお話をいたしましたように、ばらまきにならない中で心のこもった
福祉というものをやっていき、お互いにみんながそれを担っていくという気持ちにならなくてはならないし、そして
福祉年金というもの、老齢年金というもの、共済年金というものも施設に入って
措置費をもらっておる人も同じ額、健常者で一生懸命老後であろうと働き、かつ
社会活動をしておる人も同じ額、こういうことが本当に世の中を支えていく上で許されることなのかな、ここまで私はこのごろ真剣に個々の
経営に当たってみて考える次第でございまして、どうぞそういう点ではまだまだ私
どもも御教示をいただかなくてはならないと思うわけでございますが、今おっしゃいましたように、
地方公共団体としては
住民にきめ細やかな心遣いをしていくべき立場にあろうと存じておる次第であります。