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1994-11-30 第131回国会 参議院 世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月三十日(水曜日)    午前十時三分開会     —————————————    委員異動  十一月二十四日     辞任         補欠選任      大渕 絹子君     村沢  牧君  十一月二十五日     辞任         補欠選任      志苫  裕君     堂本 暁子君      下村  泰君     青島 幸男君  十一月二十九日     辞任         補欠選任      谷本  巍君     大渕 絹子君      青島 幸男君     喜屋武眞榮君  十一月三十日     辞任         補欠選任      西野 康雄君     翫  正敏君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         矢田部 理君     理 事                 上杉 光弘君                 須藤良太郎君                 野間  赳君                 稲村 稔夫君                 梶原 敬義君                 北澤 俊美君                 山下 栄一君                 立木  洋君     委 員                 井上 吉夫君                 大木  浩君                 大塚清次郎君                 笠原 潤一君                 木宮 和彦君                 北  修二君                 沓掛 哲男君                 清水 達雄君                 野沢 太三君                 森山 眞弓君                 吉川 芳男君                 吉村剛太郎君                 会田 長栄君                 大渕 絹子君                 上山 和人君                 清水 澄子君                 菅野 久光君                 堂本 暁子君                 三上 隆雄君                 村沢  牧君                 井上 哲夫君                 河本 英典君                 小島 慶三君                 都築  譲君                 星川 保松君                 刈田 貞子君                 浜四津敏子君                 和田 教美君                 林  紀子君                 喜屋武眞榮君                 翫  正敏君    事務局側        常任委員会専門        員        大島 弘輔君    参考人        長野県米を考え        る会会長     宮澤 敏文君        南山大学ヨー        ロッパ研究セン        ター長      渡邊 頼純君        東京農工大学教        授        石原  邦君        全国農業協同組        合中央会常務理        事        高野  博君        日本生活協同組        合連合会理事   日和佐信子君        いのちをはぐく        む学校給食全国        研究会代表    雨宮 正子君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結  について承認を求めるの件(内閣送付予備審  査) ○著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作  権法特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣送付予備審査) ○加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を  改正する法律案内閣送付予備審査) ○繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団  法の一部を改正する法律案内閣送付予備審  査) ○農産物価格安定法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○特許法等の一部を改正する法律案内閣送付、  予備審査) ○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣送  付、予備審査) ○主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案  (内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ただいまから世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、大渕絹子君が委員辞任され、その補欠として村沢牧君が選任されました。  去る二十五日、下村泰君及び志苫裕君が委員辞任され、その補欠として青島幸男君及び堂本暁子君が選任されました。  昨二十九日、谷本巍君及び青島幸男君が委員辞任され、その補欠として大渕絹子君及び喜屋武眞榮君が選任されました。  また、本日、西野康雄君が委員辞任され、その補欠として翫正敏君が選任されました。     —————————————
  3. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件、著作権法及び万国著作権条約実施に伴う著作権法特例に関する法律の一部を改正する法律案加工原料乳生産者補給金等暫定措置法の一部を改正する法律案繭糸価格安定法及び蚕糸砂糖類価格安定事業団法の一部を改正する法律案農産物価格安定法の一部を改正する法律案特許法等の一部を改正する法律案関税定率法等の一部を改正する法律案主要食糧需給及び価格の安定に関する法律案、以上八案件を一括して議題といたします。     —————————————
  4. 矢田部理

    委員長矢田部理君) この際、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております八案件審査のため、本日の委員会参考人として長野県米を考える会会長官澤敏文君、南山大学ヨーロッパ研究センター長渡邊頼純君、東京農工大学教授石原邦君、全国農業協同組合中央会常務理事高野博君、日本生活協同組合連合会理事日和佐信子君、いのちをはぐくむ学校給食全国研究会代表雨宮正子君の出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 矢田部理

    委員長矢田部理君) それでは、ただいまから世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件外法律案審査のため、参考人方々から御意見を承ることといたします。  まず、午前中は、長野県米を考える会会長官澤敏父君及び南山大学ヨーロッパ研究センター長渡邊頼純君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  参考人には、御多忙のところ当委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。議題となっております各案件につき忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  なお、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、宮澤参考人からお願いいたします。宮澤参考人
  7. 宮澤敏文

    参考人宮澤敏文君) 私は、きょうこのような部屋は初めてでございまして、日本国内現状先生方に見きわめていただいた中でしっかりとした施策を講じていただきたい、また私のつたない経験の中で幾多の気づいたことがございますので、そこら辺のところを御指摘させていただきながら、きょうの参考人の任を果たさせていただきたい、こんなふうに思うわけでございます。  私は、お米の消費拡大ということをずっと考えてきた人間でございます。その中で、ことしは特にタイ米がたくさん余りまして、私の地元長野県でも善光寺のハトのえさにくれられているというような現況に大変深い憤りを感じまして、全国からタイ米を私のところにお寄せくださいというような運動をし、その後、思った以上に集まってしまいましたので、特にことしは戦線に苦しむルワンダ人たちに送ろうというような運動全国の有志と展開してきた人間でございます。  また、米の消費拡大につきましては、昭和五十五年から、衆議院、参議院の多くの先生方の御参加のもとに米消費拡大・純米酒推進議員連盟というのが開設されまして幾多の御成果を上げてこられました。その中でも私は事務局という立場を担当させていただきまして、多くの先生方の御薫陶をいただいてきた経過がございます。そのようなことで、米問題につきましては本当にしんから考えてきた人間でございまして、そんなような立場から、現場の声をお話しさせていただくとともに、どの程度あれになるかわかりませんが、お話しさせていただきたいというところでございます。  まず、私の住みます長野県の安曇野、今、委員先生方の中にも村沢先生北澤先生おいででございますが、長野県は水の潤む里でございます。減反は、御承知のとおり、三分の一なされているわけでございます。その成果として、水田がつくられていないためかと思いますが、昨年、一昨年、そしてまたその前の年、夕立というものがほとんど安曇野から姿を消しました。要するに、夕方、夕立がさっと降って、そしてその後もう一仕事、また縁台将棋をするというような、そういう風情が水の里安曇野でもなくなってきたわけでございます。それはひとえに水田から上がります水蒸気による入道雲安曇野でさえも育ち切っていないということによる環境への影響というようなものが非常に危惧されるわけでございます。  御承知のとおり、朝、天気予報を見ますと、夏の場合は、大きな台風とかそういう雲の動きのほかに降水量が記録されているところはほとんど多くのところで入道雲がわいて雨が降っているところでございますが、夕方一時きっと降る入道雲があの安曇野でさえも、長野県の安曇野でさえも、ここ三年間、年に一日しか記録されていない、各年一回しか記録されていない現状をもう一度御認識いただきたいというふうに思うわけでございます。  そういう中で私どもは、水田必要性、とにかくお米づくり水管理でございます。ですから、このくらいのお水を常に水田に蓄える、それがずっと水蒸気として上がる。建設省の都市計画局でございますか、景観という立場に立って水田を残すための助成金をつくろうではないかというような動きが現在あるということも私ども聞いております。そういう中で、私どもとしましては、どうしても地元に住む人間として水田というものを何とか残したい、そういう考え方がまず冒頭にあるわけでございます。  その中でウルグアイ・ラウンドによるミニマムアクセス、これが決定されました。世界の中で日本は生きていかなければならないわけでございますが、これを受け入れるのは当然のことというふうに思うわけでございますが、そうするとこれに応ずるための何らかの施策を講じなければならないというのが現状ではないかというふうに思うわけでございます。  平成十一年には八十万トンが入ってくるというふうに言われております。八十万トンと申しますと、今、国内で流通しているのは先生方承知のとおり一千万トンでございます。ことしは、今まで七十キロ近くあった一人の消費量が六十三・五キロに減っているというのが現況でございます。八十万トンと申しますと、大体日本酒を、元米、掛け米四十万トンございますが、それを全部純水酒でつくったらちょうど八十万トンになる消費量でございまして、大変な数量が入ってくるわけでございます。こういう中で何かしら消費拡大を講じていきませんと、食糧庁も米消費対策室をおつくりになられまして毎年二百五十億近い予算を講じておられるということも聞いておりますが、そういう中で減る一方でございます。こういう中で抜本的な考え方はないだろうかということをつくづく思うわけでございます。  そういう中で、一つの御提案でございますが、ことしの農政審議会の答申の中にもございましたですが、今まで主食用加工用というこの二つの用途しかなかったわけでございますが、そこに新たに援助用というお米を創設されたらどうだろうかというようなことを強く感ずるわけでございます。  私は、ことしはタイ米というところからスタートいたしまして、タイの農家の人たちもやっぱり一生懸命つくった米、その米を日本の方で買ったおかげでタイの中の米も二倍、三倍に上がっているということも聞いております。ところが、二百五十万トン近く輸入したお米が現にこれだけ余っているという、こういうような大変世界的に批判されるような現実がここにあるわけでございます。  私がわずか数人で呼びかけた運動に対しまして、九十トンというお米が集まりました。このお米をアフリカに送ろうということで、十一月十七日に横浜港を船出しまして、十二月十五日にWFPに引き渡すということで船出をしたわけでございますが、民間の力でここまでやり上げるには大変な労苦がございました。そういう中で私がつくづく思いましたことは、もう少し行政的にバックアップすることができないんだろうかというような施策の問題もつくづく思ったわけでございます。  日本は本当に米に適した国でございます。天皇は剣を持たずに稲穂をもって統治した国、これは日本だけであるというふうに私どもは古事記の中から学はさせていただきました。そういう中で、天皇行事一つにいたしましてもすべてお米の行事でございます。そのくらい日本の文化と関係の深い米、この水田技術を、私は逆に世界が砂漠化している中で世界的に広める必要すらあるんではないか。例えば、北限と言われるロシアあたりまでも水田技術を推し進めてやっていくべきじゃないか。中国は飢えからの脱出としてF1を含めた米で満州を水田に変えてまいられました。そういうことで、水田による地球を、水の何といいますか地球といいますか、そういうものにするべきではないだろうかというようなことを含めて、水田重要性というものをもう一回見直すときが来ているのではないかというふうに思うわけでございます。  そういうような中で私は、水田という問題の事の重要性、それに関する米の問題を含めた中で、食糧政策の確立をずっと思ったわけでございますが、世界は二〇一〇年には飢えるというふうに言われる学者さんもおいででございます。百年前を思い浮かべますと、一八九四年、日清戦争が始まった年でございます。わずかこの百年の中で日本はこれだけ高度に成長したわけでございますが、そういう中であと十五年で世界は飢える。世界が飢えるということの施策をやっぱり今から講じていかないと、日本水田がつくれる状況にあるわけでございますから、先ほどの援助米等の創設によって日本食糧を援助するんだ、米を援助するんだ、そして日本の国は水田を中心とした水の里、水の国にキープさせていただければどんなに日本という国はいいだろうか。  よく日本の国の例えに、悪いことは水に流すというような大変丸い言葉がございます。この水に流すということは日本でなくてはない言葉でございますが、こんな水に流すというような言葉がなくならないように日本という国を水の国にする必要があるのではないか。そのためには、ぜひとも私は援助米世界のつくれないところに送っていくというような日本施策が必要ではないかなというふうに思うわけでございます。  最後に、今回私は、銀座のデパートの前に立ったりいろいろな形で、ボランティアという形で募金活動もいたしました。本当に半日立って二万円まで満たないというようなそんなような結果でございました。ボランティアというのはボランティアをする人たち満足感で終わらないようにやっぱり国が考えていかなければならないんじゃないかなというふうに思うわけでございます。  例えばルワンダも、昨年のソマリアも政変で起こったわけでございます。勃発的に起こったわけでございますが、そのときに各省庁がもしそういうようなお金を持っていてお出しできるような、そういう施策は講じられないものか。私も今回、至るところに足を運ばせていただきました。その中で唯一郵政省ボランティア貯金だけがその枠の中でもってありました。そういうような施策を、例えば厚生省ならば薬価が認められる間にあれだけ時間がかかります。この間に、どうかその薬価を認めるために、こちらの瓶のところにはボランティア商品だ、これにはボランティアのために厚生省の中でもって何%ストックできる、そういう施設ができていたらば、厚生省のそういうボランティア基金みたいなものをつくっていけば、そういうようなところへ緊急のときに各省庁としても対応ができるのではないだろうかというようなことを強く思ったりもしたわけでございます。  私の水田、国土、米を思う気持ちに任せましてつたない経験お話しさせていただきました御無礼をお許しいただきたいと思いますが、そんなようなことで先生方のいろいろな御質問がございましたら、また後でよろしくお願いしたいと思います。  時間が少し早いようでございますが、これで終わらさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  8. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、渡邊参考人にお願いいたします。渡邊参考人
  9. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 南山大学渡邊頼純でございます。きょうは、ガットウルグアイ・ラウンド並びWTOの問題につきまして参考人としてこの高い席にお呼びくださいまして、皆様に心からお礼を申し上げます。  私は一九八五年から九〇年までジュネーブのガット事務局におりまして、最初の三年間は外務省の専門調査員といたしまして日本政府代表部の側からガットウルグアイ・ラウンドを見てまいりました。そして一九八八年から九〇年の二年間は、今度はガット事務局の中に籍を置きましてウルグアイ・ラウンドを見てまいりました。そういう意味では、日本へ帰ってまいりましてもう四年余りがたちましたが、今でもこのウルグアイ・ラウンドを推進していくという観点からいろいろ勉強、研究、そして新聞等マスコミ等へのアプローチをしております。そういうことから本日は、まさにこのWTOの法案が検討されております特別委員会において私ども意見を述べさせていただくということは、私にとってまことに名誉なことであり、大変誇りに感じている次第でございます。  先生方もうよく御存じのことだとは思いますが、あえていま一度ウルグアイ・ラウンドがどうして必要とされたのかということから少し考えをはせてみたいと思っております。  ウルグアイ・ラウンドはなぜ必要とされたのでございましょうか。三点ばかりあると思います。  第一点は、米国議会におきます保護主義の台頭でございます。  アメリカは戦後の国際経済秩序、そこにはIMF、世界銀行といった通貨金融のシステム、これを確立するということがございました。もう一方では国際貿易についてのルール、秩序を確立するということがございました。ところが、七〇年代以降、明らかにアメリカ経済が相対的に弱体化してまいります。そんな中でアメリカは比較優位を失う産業が多くなり、その比較優位を失った産業構造調整に大変手間取るようになります。その構造調整のコスト、これを担い切れないアメリカの企業がアメリカ政府を揺り動かしまして、どんどん保護主義的な傾向が出てまいります。それが、一九七四年に通商法ができた際には不公正貿易をやっている国に対しては制裁をすることもあり得るという三〇一条がその中に入ってきた、そういう背景になっております。  さらにはその後、累次の通商法ないしは通商競争法といったような中でこれが強化される。八〇年代後半になりますと、このウルグアイ・ラウンドの授権をする通商法の中では、ついにスーパー三〇一条という大変強力な、アメリカ内の法律的な手続にのっとった保護主義のメカニズムが議会の中から出てきたわけでございます。そういった中で、このアメリカ議会で台頭しつつありました保護主義の勢力、これをどのように防圧していくか、どのように抑制していくかということが、日本を初めその他の先進国、そして途上国、特に勃興著しいいわゆるNIESと呼ばれる新興工業国の中で問題とされるようになったわけでございます。  このアメリカ議会保護主義というものをいかにして防圧するかということに頭を悩ませましたのは、何も日本ヨーロッパ共同体ないしは欧州連合だけではございません。アメリカ行政府でさえこのアメリカ議会におきます保護主義をどういうふうに抑えようかということが課題になったわけでございます。そういう意味では、このウルグアイ・ラウンドと申しますのは、アメリカ議会における保護主義アメリカ行政府と一緒になりましてどうやってこれを抑え込んでいくかということがあった。ある意味世界全体が三〇一条、スーパー三〇一条といったような一方的なやり方、ユニラテラリズム、これをどういうふうに抑えていくかということに最大の関心があったと言っても決して過言ではない、このように思うわけでございます。  では、どうしてそんなにアメリカに気を使わなきゃいけないんだと、こう先生方は思われるかもしれません。しかし、やはりアメリカはこの八〇年代、九〇年代に至りましても最も開かれたマーケットでございます。その証拠に途上国からの産品、物品を一千七百億ドル以上も買っている開かれた市場アメリカ以外にないわけでございます。  現在、世界経済が少し上向いてきておりますが、これにつきましてもアメリカ経済牽引役を果たしているという事実は否めないわけでございます。そのようなわけで、このアメリカマーケットがオープンであるか、開放されたままの状態にとどまるかどうか、これはアメリカだけの問題ではなくて世界経済全体の問題であるという認識が必要であろうかと思うわけでございます。そのようなわけで、アメリカ経済の動向、アメリカマーケットがオープンであるということ、これを確保していくということは、日本にとりましても世界経済にとりましてもとても重要である、このような認識のもとに日本政府を初め各国政府はウルグァイ・ラウンドを推進してきたわけでございます。  第二のウルグアイ・ラウンド背景、これは地域経済統合動きが活発化したということでございます。  一九八六年の九月にウルグアイ・ラウンドはスタートしております。このころのことを少し先生方に思い出していただきたいわけでございますが、一九八五年に登場いたしましたEC委員会ドロール委員長のもとで非常に活発にEC統合が進んでいくという経緯がございます。その中には、特に目玉商品といたしましては、一九九二年の年末までにEC市場統合を完成していわゆる単一市場シングルマーケットをつくるということがございました。そしてECはそれを曲がりなりにもやり遂げております。さらには、御存じのように、マーストリヒト条約というものが昨年の十一月一日には発効をいたしまして、現在ではECと言わずにEU欧州連合と呼ぶようになっております。これもEC統合EU統合が一歩前進したことを示しております。  他方、大西洋を挟みまして、アメリカにおきましては既に一九八九年の一月一日よりアメリカとカナダの間で自由貿易協定がスタートをしております。そして、先生方よく御存じのように、九四年の一月一日からはメキシコを入れましたNAFTA、米加にさらにメキシコを入れまして北米自由貿易協定というものがスタートしております。  このように先進国を見ますと、現在はメキシコを入れて二十五カ国のOECD加盟国がございますが、この先進国クラブとも言われますOECDの中で全く地域経済統合を何らの形においてもやっておらない、参画しておらないのは我が国日本だけでございます。そういうわけで、先進国の中でも非常に地域主義というものが台頭してきておる。そのような中で、我が国は何としてもマルチラテラル、つまり多国間主義というものにのっとったガットないしはその後を請け負うこのWTO世界貿易機関、これに基づいた多国間主義、最恵国待遇原則といったようなものをやはり確保していく必要があるわけでございます。そのようなことで、地域経済統合に対する一つのチェック機能というふうなこともございましてこのウルグアイ・ラウンドのような多国間のラウンドが必要とされたわけでございます。  さらには、三つ目のポイントといたしましては、貿易構造の転換、貿易構造の変化、これに対応するということがございます。  現在では、世界全体で見まして輸出全体に占めますサービス貿易の比率が約五〇%ぐらいまで上がってきております。この事実をもってしても、サービス貿易というものがガットないしはWTOの枠組みの中に入ってくることの正当化ということが十分なされ得るかと思います。また、近年では先進国経済は国境を越えて、いわゆるボーダーレスの世界に入ってきております。そういうわけで国境を越えての直接投資、そしてその投資からの収入、直接投資からの収入の国境を越えた送金といったようなこと、さらにはいわゆる知的財産権、その中には特許、著作権等々がございますけれども、そういった知的財産権からの所得といったようなものの国際的な移転も非常に重要な要素になってきております。  そこで、このサービス、それから投資、そして知的財産権の保護、この三つをいわばセットにいたしまして新分野と呼ばれる貿易構造の新しい問題、これに対応しなくちゃいけないということが出てきたわけでございます。ウルグァイ・アラウンドがもし成功していなかったとすれば、このサービス、知的財産権、投資につきましてはとうとう何のルールもできないという状況の中で国際貿易が展開をしていくということになります。  残念ながら、国際貿易といいますのは、世界的な権威が存在しない中で、超国家的な権威が存在しない中でほうっておきますと、世界貿易というのはやはり経済ナショナリズムとか保護主義とか、そういったものが出てまいりまして、振り子は大きくそういう保護主義経済ナショナリズムの方へ振れてしまいます。この新分野におきましてももし国際的に合意を見たルールがなかったとしたら、恐らくこの分野において各国は好き勝手なことをし、そして意にそぐわないときには他国に対していわば保護主義的な手段をとる、ないしは制裁措置を一方的にとるといったようなことが十分に予想されたわけでございます。そういった中で、今回このルールがとりあえずできましたことは、これは大きく評価されてしかるべきことではないかというふうに思うわけでございます。  そういった三つの背景のもとに、つまり第一にアメリカ議会を中心としました保護主義の防圧、次に地域経済統合に対する一定のチェック機能といったようなこと、そして第三に貿易構造の転換に対する対応が必要であったということ、この三点がウルグアイ・ラウンドが一九八六年の九月に閣僚たちによって決定され交渉開始をされたという背景になっていると思います。  この三つのポイントに照らしまして実際にウルグアイ・ラウンドが達成したこと、これは今、先生方がまさに大変お忙しい中で御検討くださっているテーマでございますが、これはすべてある程度の満足のいく結果を見たと言っていいかと思います。もちろんこれは完全なものではございません。農業をとりましても、あるいは知的財産権のような新分野をとりましても、市場アクセスの改善をとりましても、すべてこれは不完全ではあります。しかし大事なことは、ちょうどペダルをこぎ続けることによって自転車が前に進みますように、ほうっておいたら保護主義経済ナショナリズムの方へ振り子が大きく振れてしまう世界貿易、一生懸命自由貿易という名のペダルをこぎ続けることによりまして自由貿易を前へ前へと進めていく。  近年は、各国経済経済成長率よりも貿易の成長率の方が高いという傾向が出ております。つまり、世界貿易というものが少なくとも自由で開放的で無差別である、そういう原則の中で営まれているということが各業界のビジネスを活発にさせる。投資をしたときにその見返りがある程度あるんだと。どの程度の見返り、投資収益が期待できるのかということがある程度予想がされる。これを予見可能性、プレディクタビリティーなどと呼んでおりますが、このプレディクタビリティーがある程度保証されるということがビジネスにとってはとても重要なわけでございます。そういう意味では確かに不完全な部分はたくさんございます。しかし、今度WTOの中にできます新たな委員会でありますとか作業部会の中でこれを検討しながら一つ一つ直していく。  重要なことは、ガットにいたしましてもWTOにいたしましてもマルチラテラリズム、多国間主義でやっていくんだということでございます。これは、アメリカスーパー三〇一条、三〇一条に代表されるような一方的なやり方ではなくて、みんなで一緒に席に着いて、各国のそれぞれの事情をみんなで出し合って、そして各国の知恵をみんなで出し合い、問題点をみんなで透明性のあるプロセスの中で議論をする。そういたしますと、一たん一つのルールができましたときに、いや、おれは知らない、私は知らないといったようなことにはならない。ある程度まで関心のある各国はそのプロセスに参加をしているわけでございます。各国が広い範囲で参加をして議論をしていく、これがとても重要なことでございます。いわば、国際的なレベルでもデモクラティックな、民主主義的な手続においてルールをつくっていく。そういう中で非常に発展段階に幅のあります途上国にも幅広く参加をさせていく。これは今回のウルグアイ・ラウンドの最大の特徴の一つであろうかと存じます。つまり、非常に途上国が活発に参加をしたわけでございます。  その途上国は、今、日本のこのWTO法案をじっと見守っております。けさのニュースによりますと、アメリカでは既に下院でこの実施法案が通過をしたといったような報告もされております。どうか先生方、こういった非常に二十一世紀をある意味で先取りをする、二十一世紀へ向けての多国間の貿易取り決めとしてのこのWTO協定、どうか無事に通過をさせていただきますようにお願いを申し上げまして、私の参考人意見陳述を終わらせていただきます。  御清聴まことにありがとうございました。(拍手)
  10. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 自民党の笠原潤一であります。  きょうは、宮澤参考人渡邊参考人、大変御多忙のところこうやっておいでいただいて、いろいろと御意見を陳述いただきまして心から感謝申し上げます。ありがとうございました。  そこで、私はちょっと両参考人にお尋ねいたしますが、今、渡邊参考人が言われたように、けさの大体午前二時ごろだと思いますが、米国下院において二百八十八対百四十六、こういうことで、一応は大差ということでWTOに来年から参画する、ガットウルグアイ・ラウンドWTOに変更する、こういうことについて下院は通ったわけです。しかし、二百八十八票は確かに賛成でありますが、百四十六というのは反対であったわけです。  私は特に渡邊参考人にお尋ねいたしますが、今あなたは、もともとはアメリカ議会の中では保護主義的な動きがあると。それは確かにそうでしょう。しかし、それ以上にアメリカ行政府議会との関係というのはアメリカの民主主義にかかわる根幹の問題ですから、議会がいろんな意味アメリカ政府の行動、それからやはりアメリカというのはアメリカ国民が守るべきであって、そういう点では非常にナショナルユニットが働く国ですから、そういう点でいろいろと論議が尽くされたことも事実です。  残念ながら、下院は非常に時間を短くして四時間しか審議をしなかったわけです。これは御案内のとおりです。しかし、一日には上院でこれから行われるわけですが、これは二十時間の審議が確保されておりまして、今、御承知のように上院の中では約六十名が過半数でありますけれども、それに対して必ずしもそれが得られていないという状況です。  ドールさんは、今、クリントンと話し合って、一生懸命ロビイストに対しても活動をやっておりまして、その成否がこれからあらわれてくると思いますが、もともと、下院の方は大体通るだろうということは前々から予測されておりましたから、それは当然であります。  今、アメリカの中で、今おっしゃったように保護主義的な動きと、もう一つ渡邊参考人にお尋ねしたいんですが、この問題は世界的な貿易、お互いに自由競争、自由、公正な貿易で、いわゆる開発途上国もお互いに貿易を拡大してその国の利益といいますかメリットを発揮する。なかんずくアメリカは一番最大の輸入国ですから、そういう点でアメリカ向けにどんどん低開発国、かっては日本もそうだったんですけれどもアメリカ市場へ参入していって非常に大きなメリットも得たし、今日、日本がこのような経済大国になった大半の理由はアメリカにある。アメリカへの貿易、もちろんそれは東南アジアその他もありましょうけれども、一番主たる原因はアメリカにあったわけですから、アメリカ日本のいろんな産品を閉鎖してしまいますと、これは大変なことになることは事実です。  しかし一面、どうしてアメリカがそういう国になったかということは、渡邊参考人御存じだろうと思いますが、一九五〇年代というのはアメリカは一番世界で豊かな国だったんです。いわゆるゴールドジェネレーションといいますか、アメリカの五〇年代というのはすごく豊かだったわけです。そのときになぜ豊かだったかということは、御承知のように第二次世界大戦があって、日本を初めヨーロッパも全部、戦敗国は第二次世界大戦で焦土と化しておったわけです。  特にアメリカは非常に機械産品がすごく製造業が盛んであると同時に、農業も非常に盛んだったんです。それはなぜかといえば、ヨーロッパは戦場ですからもう食糧はありませんから、アメリカとか中南米から、特にアルゼンチン、ブラジルからどんどん、アメリカもそうですが、ヨーロッパへ食糧を輸出したんです。それはそうでしょう、そのころはヨーロッパの各地は戦場ですから、いわゆる主要穀物がとれませんからね。その輸出のおかげでアメリカは史上空前の好況を呈しておったんです。しかし、ヨーロッパが復興してくる、日本も復興してきますから、アメリカの穀物メジャーはマーケットがだんだん狭められてくる。ソ連も当時は何だかんだといっても食糧は豊富でした、最近少し変わっておりますけれども。そういう結果、アメリカの農業というのはどんどん衰微していったんです。  一九五〇年代には何が行われたかというと、新農法がつくられて、アメリカの余剰農産物をどうするんだという問題が一番大きかったんです。たまたま私はそのころアメリカにおったものですからよくわかって、小農が淘汰されて大農がどんどんふえていったんです。しかし、その大農といえども今、アメリカは大変なんです。最近ようやくまた新しい農業法が制定されて、いろんな補助金をやって、今、アメリカの農業の自立を促していますから大分変わってきたんだけれどもアメリカの農業というのはそういう点では大変な、六〇年代、七〇年代というのは本当に苦しい農業の時代だった。それは大農法にしたために、大きな農場にしたために機械は買わなきゃならぬ、肥料はたくさん要る、人件費が上がる、いろんなものが上がってきますからコストが膨らんでしまって、みんな大変な借金に苦しんだことは御承知のとおりでしょう。  ですから、私がここで一つ申し上げたいのは、機械産品等の自由貿易はいいと思うけれども、農業はやはり別だと思っているんですよ。これはアメリカだって今大変なんですから。まして日本の国は、これは変な話ですけれども、細川さんが昨年の十一月に行きまして、いわゆるAPECで、シアトルで一体クリントン大統領とどんな話をしたんですか。一体何が行われたかということが一番肝心なんです。ここに今度の問題の日本の一番大きな、国会の両院で三回、計六回も国会決議した、それがあえなく破られてしまってこういうことになってきたんですが、クリントンさんと細川さんは一体どんな話をあの中でしたんだろう。これが大きな私は問題の一つだと思うんです。  御承知のように、米は日本は短粒種ですね、日本独特の。それから、先ほど宮澤参考人が言われたような長粒種、中粒種ありますが、アメリカで一番いい米ができるのはどこかといえばカリフォルニアです。カリフォルニアというのは、日本の国府田敬三郎さんが渡米して、豊国米というのを持っていって、そしてあのサリナスからずっとベーカーズフィールド一帯につくったんです。それはすごいものでした。私も何回も一九五〇年代に行きました。米はすごくとれますし、すばらしいいいものができたんです。しかし、それをだんだんアメリカ人がまねてきて、それはもちろん中国人も多いんですけれども日本人に限らずたくさん米を食う皆さんがおりますから、それがどんどん南部へ広がっていった、ルイジアナ、アーカンソーと。  今、アメリカで一番たくさん米がとれるところはどこか御存じですか、渡邊参考人
  12. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) アーカンソー州ではないでしょうか。クリントンさんの出身州でございますね。
  13. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 渡邊参考人に私が言いたかったのは、だれでも米といえばカリフォルニアと思うんですよ。ところが、アーカンソーはカリフォルニアの三倍もつくっているんです。その次が御承知だと思いますがルイジアナです。それから、今、私が時々アメリカの上を飛んでいきますと、しょっちゅう行くんですが、フロリダヘ行く途中で、ルイジアナからアトランタの南のずっと、ジョージアからフロリダの周辺にかけてすごく開田していますよ。ここに米をつくったら大変なことですよ。  ですから、そういう点でクリントンさんは、渡邊参考人承知のように、アメリカの政治家というのは地元向けを物すごくやるんですよ。これは大統領といえども例外ではない。ウィルソンとかそういう人は別だったんだけれども、大概の大統領も政治家もみんな選挙区向けなんですよ。だから、クリントンさんは、たまたまあのころアーカンソーでホワイトウオーターやいろいろなものがあったのかよくわからぬけれども、アーカンソーの州民向けに随分、いや、米はおれが行ってうまく話をつけるよと言ったかどうかわからぬけれども、どうもそんな可能性がある。あれからジュネーブヘ行って、あなたもジュネーブにいらっしゃった、今お聞きいたしましたらガット事務局にお務めだったということですが、日本から塩飽審議官も行って話をとうとうまとめてきてしまった。さあ、日本はそれから大騒動になったんですよ、実際の話。  ですから、私はどうも、それは農業というものは、本当に国際競争に勝てるのは、アメリカだって勝てないんです。というのは、東京ラウンドで御承知のように、あの附属書四で、ここにありますけれども、あの附属書四は渡邊参考人よく御存じでしょう。航空機とか酪農製品とか乳製品、それから牛肉、それから政府サービス、この四つが東京ラウンドで合意されていますから、アメリカは今度議会でやったってそんなに痛痒を起こさないんです。もう既にこれでアメリカの一番最大な航空機産業世界で宇宙・航空機産業アメリカですから、それが東京ラウンドで合意されていますからね。食糧の方は多少いろんな問題ありますけれども、東京ラウンドでまたこれも牛肉、アメリカは今、牛肉も輸入国ですからね、はっきり言って。日本は何のためにこの前あれだけ大騒ぎして牛肉とオレンジの交渉をやったかということが、本当にうそのような話ですよ。  そういう点で、渡邊参考人はどう思っていらっしゃるか、ちょっとお聞きしたいと思います。
  14. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) どうも先生ありがとうございました。  実は私ども、昨年五月にアメリカ政府から招待を受けまして、一カ月間アメリカを見て回るチャンスに恵まれたわけでございますが、どうしても行ってこいという州がございまして、それがアーカンソー州でございました。何とアーカンソー州リトルロックへはワシントンからも直行便が飛んでないというふうなところでございます。大変な田舎、田舎と申し上げると失礼でございますが、私もアーカンソー州立大学の農業試験場といったようなところを見せていただきました。  そこで驚きましたのは、アーカンソー州というのは、先生もよく御案内のように、カリフォルニァと違いまして、どちらかというと長粒種、インディカ米をつくっているんですね。実は、何とか小町とか、名前は余り申し上げられませんが、もう既に日本から農協の関係者とか米生産者のグループとかが随分アーカンソー、つまりワシントンから直行便のないアーカンソーまでわざわざ行って、さらに郡部にあるシュタットガルトというドイツ的な名前のあるところでございますが、そのアーカンソー州立大学まで行って、皆様もう既に去年の五月の時点でいろいろ研究をしていらっしゃるんですね。ですから、恐らくそういったことが、そういう努力が日本の農業を強くしていくということにもつながるんではないかというふうに思っております。  そしてもう一つ、最初にお触れになられました、アメリカの下院は通過したけれども上院はどうかという点に関しましては、やはり去年の五月にアメリカの政府ないしは議会のメンバーと意見交換をいたしました折には、実はクリントン政権ないしは民主党としましては、既にウルグアイ・ラウンドの後のラウンド、そこでは貿易と環境でございますとか、貿易と労働条件でございますとか、貿易と競争政策といったような新しい問題についてもう取り上げなきゃいけないということを言っておりまして、今度のウルグアイ・ラウンドというのはいわばレーガン・ラウンド、ブッシュ・ラウンドであって、とにかく早く流してしまいたい、早くクリントン・ラウンドとでも呼べるような、民主党のイニシアチブによる新たなラウンドをつくっていきたいんだというふうなことを言っておりました。こういうことからいいますと、恐らく下院を通過した票差から察しまして、上院でも楽観的な結果を期待していいんではないかというふうに私は考えております。  それから、アメリカをどうとらえるかということについて一点歴史的な事実を指摘させていただければと思います。  日本ガットに加盟いたしましたのは一九五五年でございますが、これは大変苦労して加盟をいたしました。五三年に加盟申請したのに、加盟は二年間待たなきゃいけなかったんです。しかも、五五年に日本ガットに加盟しましたが、実際にイギリスやフランスとガット上の関係をフルに享受できるようになるのは、一九六二年池田勇人首相の訪英、訪米、この中での日英、日仏の友好通商条約を結ぶ中でございます。  そんな中でアメリカがやったことは、日本ガットに入れるためにイギリスやフランスにかなり説得工作をしているんです。特に一九五五年に日本ガットに入れるときにアメリカがしました説得工作は、実際にアメリカの関税を下げてあげる。それは日本に対してではなくて、日本ガットに入れるのが嫌だと言っている国に対して、その国が関心を持っている品目についてアメリカの関税を下げてやる、それによってそういった欧米の国々が、カナダなんかもそうだったんですが、日本ガットに入るのを反対しないようにというふうな手を打ってくれています。  これは、トライアングル・タリフ・コンセッションと言いまして、要するにアメリカ日本を入れるために第三国に対して関税譲許をたくさん行ったということで、割と有名なケースなんです。ですから、そういう意味では、実は日本ガットガットの権利を享受することができるようになったのは、そういったアメリカのいわば身銭を切ったといいましょうか血を流した結果でありまして、そういった努力というものをある意味で三十年、四十年たった今、日本はしてやらなきゃいけないかもしれない、そういうふうな感じを私は持っております。
  15. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 今、ガットの加盟に対するアメリカの努力は私も非常に多としておりますし、それがために今日の日本の繁栄を築いていったと思うんです。なぜ日本が参入するのに各国がこだわったかといいますと、御承知のように、かつては、日本製品というのは安かろう悪かろうでむちゃくちゃな輸出ドライブをかけてくる、こういうのは各国の恐怖の的であったわけです。しかし、アメリカは当時戦勝国であったし、非常に自由主義で世界で一番民主的な国だと自負しておりましたからね。そういう点からいって、戦敗国であった日本に対して大きな包容力を示してやってくれたと思うんです。したがって、当時は日本はおかげさまでフルブライトで随分学生の皆さんも行かれたし、生産性本部でもアメリカヘ行っていろいろ学んで今日の日本になってきたんです。それは私は多とするんです。  しかし同時に、これは、アメリカの一九五〇年から約二十年くらいの間の推移が今や日本に襲ってきているんじゃないかと私は思っているんです。日本は、これは大変いいことだけれども、果たしてこれから順調に経済が推移していくかというと非常に疑問だと私は思うんです。  それは、渡邊参考人御存じのように、アメリカはイコールオポチュニティーという制度ができたんです。これは非常に人権的な問題でありまして、クリントンさんの足元のアーカンソーで一九五七年に州兵が出て白人と黒人の共学を初めてやったでしょう。あれは大変な騒ぎだったんです。最高裁が初めて黒人の入学を許可したんです。だって、かつては南部では公園には黒人と犬は入るべからずと書いてあったんですから。私が当時五七年にアメリカにおったときには、バスに乗りましたら何と延々とバスのデポーで待っているんです、黒人の皆さんが北部へ行こうとして。なかなか乗れない、二日も三日も待ってなきゃならぬ。なぜかといったら、長距離バスの中は、前のいす四十席は白人、後ろ二十席は黒人、白人の席はがらがらです。KKKもおったし、あんな大変な時代に最高裁が初めて判決として黒人と白人の共学を認めた。大変な騒ぎで州兵まで出たんです。  そのときに私は南部へ行って、南部というのはそれはひどい人種差別をやっておるなと思ったんですが、今日はもうそういうことは全然ないし、むしろそういうことに対していろいろなことを言えば政治家生命を失います。もしもアフロアメリカンのことを言ったら、これはクリントンさんといえども、共和党のだれであっても、そういうことを言ったら大変なことになりますことはもう御承知のとおりです。それくらいアメリカは変わってきたんですよ。特にキング牧師が一九六三年にあのワシントン大行進をやって以来随分変わってきて、キング牧師もああいうことで亡くなりましたけれども、その足跡が、この前、天皇陛下はそこまでおいでになった、そして花束をささげられたけれども。それ以来ずっとアメリカは変わってきたんです、実際の話が。ですけれども、この南部というのはやっぱりある程度民主党の地盤でもあるし、非常に独特の考えを持っておるわけです。  これはまた別といたしまして、そのときにアメリカが、それ以来何が行われたかというと、いわゆるどんな企業でも必ず三割は黒人を雇いなさい、そしてそのうちの三割は必ず管理職につけなさいと。これは軍隊といえども同じであったんですが、したがってアメリカというのはだんだん、そう言っちゃ失礼だけれども日本の閣僚の皆さんがそのことについていろいろなことをおっしゃったために随分アメリカで不信を買って新聞にもたたかれたことがあるんですが、それが現実だったんです。  そのころ、アメリカの企業は多国籍企業に変身していってコングロマリットになった。同時に、日本のトヨタが何でこんな、あるいは日本の自動車産業がなぜアメリカで伸びたかといえば、これはロボットなんですよ。ロボットというのはアメリカで発明したんです。あれはたしかコネティカット州の何とかという小さな企業が、それが日本へ持っていって、日本がロボットを有用化してトヨタがそれを採用する、まあいろいろな方法もあったけれども。そういうことをアメリカの企業は、技術移転の名のもとに、一番労働力が、いわゆるクオリティーが高くて安全でということなら日本だということで日本へどんどん来たんですよ。それで、日本の企業はどんどんもうアメリカヘ輸出しておる。  そのうちアメリカは、これはおかしいなということになって、レーガン政権、ブッシュ政権になってようやくアメリカは、やっぱり製造業がしっかりしていかなきゃということで、十年以上かかって今ようやくアメリカの製造業はよくなってきたでしょう、渡邊参考人御存じのように。今、アメリカは空前の好況なんですよ。失業率はどんどん減ってくる。かつて一〇%近くあったのが今は四、五%に減ってきた。ですからそういうことで、その原因は何かといえば日本企業です。トヨタさんも日産さんも住友さんも皆どんどんアメリカに、千数百の企業がどんどん、アイオワを初め中西部、カリフォルニアまでずっと日本の企業が行ったものですから、今エンプロイメントが物すごいいいわけでしょう。反面、日本はどうですか、これ。どんどん出るばかりで、韓国からも中国からもどこからも、東南アジアからも日本へ企業の移転が行われていませんね。  そういう点で、私も余り時間がありませんから私の自説を述べますけれども、ないんですよ、今。これは大変なことになってくる。こういうことになってくると、日本というのは、これは確かにいいことなんだ、この事態は。しかし、やや十年か十五年テンポが日本はおくれているんじゃないか。決してこれに反対ということじゃないけれども、もう少しそれを考えないとこれは大変なことになる、私はそう思っているんです。これはもろ刃の剣じゃないか、WTOというのは。  ですから、アメリカでも今、いや反対している皆さんは何かといえば、電機産業、それから繊維とかも、そういうかつてアメリカが切り捨てていった不況産業の皆さんがロビイストを通じて物すごくやっていることは御存じでしょう。ですから、アメリカだってそういうものをやっぱり再興しないとアメリカの雇用ができないんだ、こういうことになるんですよ。そこで、いろんな問題が起きたけれども、クリントンさんは御承知のようにうまくNAFTAのときと同じように乗り込んでいって、今、下院はようやく説得したんです。上院はまだわかりませんけれども、上院もかなり今よくなって、恐らく可決されるだろうという見通しであることは私も否定いたしません。しかし、その奥にはそういうものがあるということを私は渡邊参考人御存じだろうと思っていますが、その点どうですか。
  16. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 先生ありがとうございます。大変勉強になりました。  ちょっと簡単な数字を挙げさせていただきたいと思うんですが、農業をサポートするために国民一人当たり、赤ちゃんまで含めてどれぐらい払っているかというOECDの調査がございます。これはアメリカは大体三百六十ドルという数字が挙がっております。保護主義的な農業ということでかなりアメリカにやっつけられておりますヨーロッパ連合、これが大体四百五十ドルでございます。日本は六百ドルなんです。日本より多いのは、スイスでありますとか、あるいはきのう欧州連合に参加しないことがはっきりいたしましたノルウェーといったような国だけなんです。ですから、ある意味日本世界で三番目に高い一人当たりの農業保護のためのコストというのを払っている、農業サポートのためのコストを払っているということがあります。オーストラリアに至っては八十九ドルなんです。  こういったことは恐らく消費者のサイドにはかなり影響があるだろう。例えば私どもドイツのミルク、あのレベルの高い、所得水準のあるドイツでさえ一リットルのミルクは八十円ぐらいでございますね。八十円しないかもしれません、今のレートで言いますと。例えば、ヨーロッパの中でも最も生活水準の高いスイス、そのスイスの中でも最も物価指数の高いジュネーブにおきまして一番高いお米は日本円換算で一キロ大体五百円相当のバサマティ米、これはインドのお米でございます。そして一番安いのはシンプロン米とかいいましてイタリアとスイスとの国境でできる米でございます。これを我々はイタヒカリなんて呼んでおりまして、このイタヒカリに至っては何とキロ百円から百二十円でございます。  これはどういうことかといいますと、やはり日本では食糧といったような最も生活に必要なものが高過ぎるということがあろうかと思いますね。そういったことがただでさえ高くない所得を圧迫しまして、結局それが将来の先行き不安というようなことで、投資じゃなくて貯蓄をする、貯蓄が行き過ぎて過剰貯蓄になる。過少消費、過少投資ということで、これが経常収支の恒常的な黒字につながっていくという悪循環になっているわけですね。ですから、この農業面での改革というのは、実は農業だけにとどまらず、日本経済全体にとって非常に大きなインパクトがあるということであろうかと思います。  また、スイスの例を申しましたのは、これは消費者に選択の余地がたくさんあるということなんですね。バサマティ米、これはインド料理をするときにスイス人は使うわけでございます。そしてタイ米も入っております。中華料理をするときにはタイ米を買う。そして日本料理をするときにはカリフォルニア米を買う。そして、もっと簡単に……
  17. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 渡邊参考人、済みません。もう少し意見を言わせていただきたいので、ちょっと。いや、御専門ということはわかっていますがね。
  18. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) そんなわけで、さまざまなお米を店頭に並べて、スイスといったような高福祉高物価の国でもかなり安い価格で並んでいるという事実を御紹介させていただきたいと思います。
  19. 笠原潤一

    ○笠原潤一君 いや、渡邊参考人のおっしゃるとおりでありまして、それは確かにそうであります。  日本の場合は特に環境の問題でよく問題になるんですが、先般リオデジャネイロで実は世界環境サミットが開かれた、残念ながら日本は参加できなかったんですが。  今、アメリカで一番反対しているのはだれかといえばラルフ・ネーダーさんなんです、実際このガットウルグアイ・ラウンドに。これはなぜかといえば、環境を悪くする、消費者のためによくならないということです。日本が非常にコストがかかるとおっしゃっても、実際は日本水田とか森林というのはそういう点では非常に環境を大事にするために必要なことなんです。  かつて私は、自分は当時県会議員であったけれども、別に政府から頼まれたわけでもないけれども、よくUSTRへ行ったんですよ。当時はダンフォースさんがなかなか厳しいことを言ったものですから、当時のスーザン・シュワーブとか、今、日本に来ているグレン・フクシマさんとか、ヤイターさんには会えなかったけれども、スミスさんとかいろいろ会って話をして、米は別なんだよと、実際は。なぜかといったら、伝統的なものだということも言いたい、文化的なものだと言いたいけれども、それ以上に、私は当時、もう十年ぐらい前でしたかね、十二、三年前だったか、いや日本というのは保水能力があるんだ、それで環境を維持しているんですよと。日本国は台風に絶えず見舞われている、実際の話が。サイパンかどこかの沖で、マリアナで水蒸気が上がってくると必ず台風が日本列島を直撃しますからね。伊勢湾台風とかに私どもは随分悩まされたんです。それを何が保全するかといえば、やっぱり水田、森林なんですよ。河川というのは御承知のようにもうそれは許容量が決まっていますから。  ですから、そういう点でいって、日本というのはアメリカのカリフォルニアのように一年に何遍か雨が降らないような国と違うんだよ、圧本はもう常時そういうことに見舞われているから、災害を防除するためには水田の果たす機能というのは大変なんだ。  かって、長良川もそうだったけれども、ついに破堤してしまったんです、建設省は絶対直轄河川は切れないと言って豪語しておったんだけれども。それはなぜかといえば、水田に水をためて、そして本堤を破壊、破堤させない。本堤が破堤したら大変なことになりますからね、大都市が全滅しますから。ですから水田を水受けにしておったんですよ。そういう意味水田必要性というものはそういうものなんですよ。  だから、そういう点で日本人の知恵というものはそこにあるんだということを何度も言ったら、ああ、そういうものかと。ですからアメリカと我々とは違うんだ。ヨーロッパとも違うんですよ。山のいわゆる土壌からあるいは山脈のあれも全部違うんですよ。そういうことで、お互いにそれだけはやっぱり理解し合おうじゃないかということを私は随分言ったんです。向こうも、いや、なるほどそれはわかると言うんだけれども、それは郷に入っては郷に従えで、あそこにおったらわからぬわけですよ、実際の話が。アメリカにおってはわからぬ。  例えば、あの川のはんらんを見て、洪水を見て、川の周辺の人がみんなびっくりするけれども、一たん水が引いてしまうとみんなあっという間に忘れてしまう。ですから、アメリカ人にそれを求めようと思っても無理なんです。しかし、日本に来た人はわかるわけです。そういう意味で、私はこの水田というものは、下手なことをやって日本の農業がだめになったら本当に日本国はだめになるし、そして日本経済もだめになる。そして同時に私は、一次産業、一次産業、三次産業、必ずこれは連動していると思っているんですよ。アメリカだって一次産業が悪かったころは二次産業も悪かったんです。三次産業も思わしくなくなってきた。ようやくアメリカも最近、一次産業、農業もよくなってきた、二次産業もよくなってきた、三次産業もよくなってきたということでありますから、これは必ず相関連している。  だから、WTOというものは、私のところにも来ていますけれども、あんな膨大な、本当に何万というページで、もうだれも読めないですよ。恐らく読んだ人はいないと思う。そんなことよりも、実質的に何かということをお互いに首脳同士で話し合わなきゃならぬ。  米の消費拡大は、宮澤参考人、先ほどいい話を聞きましたが、米をどうして食べるかということは、これはやっぱり日本人は御飯とみそ汁ですよ。私ども小学校のときはそれがあったんです。ですけれども、それがなくなってしまって、アメリカが戦後来てタッパーウエアかなんかつくってやったものだから、あれから農業改良普及員といって牛乳とかそういうものを飲ませることを教えた。いいことではあったんですよ。だから、日本人の背丈は高くなったけれども、そういう点が一つは大きな問題だったんです。  ですから、これから米の消費拡大はいろいろとお互いに研究し合ってやっていくことが大事だし、アメリカ日本世界がこの貿易機関をつくってやることもいいけれども、そういう弱者が困るようなことが行われないことが一番大事だと思います。  私はそういう点を力説しながら、余り私ばかりしゃべって申しわけなかったんですけれども、きょうは両参考人に来ていただきましてありがとうございました。一言御礼申し上げて私の質問を終わります。
  20. 清水澄子

    清水澄子君 まず宮澤参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほど宮澤さんは米の消費拡大について、援助用をもっと設定すべきだとか、農業と環境との関係について発言がありました。WTOの中の農業協定では、日本の強い主張によりまして六年間の関税化を猶予する特例措置が盛り込まれましたね。しかし、農業協定では国内における農業保護政策を撤廃する方向にあると思います。  そこでお尋ねしたいのは、この農業協定を受け入れた場合に、日本の農業の将来像について宮澤参考人はどのように描かれておられるか、その点をお伺いしたいと思います。
  21. 宮澤敏文

    参考人宮澤敏文君) 清水先生の御質問でございますが、私なりに私の意見を言わせていただきますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  まず水田でございますが、今、消費がどんどん減っております。日本消費は、先ほど申しましたように一千万トンというふうに言われておりましたのですが、これが九百万トンに減り、現状では都市部の消費は米の消費だけとりましても四十キロを切るような状況に参っております。私ども、田舎を後にするときには親は米を持たせたものでございますが、今はそういうことがほとんどございません。そういう経過の中でどんどん減っていくというような状況も考えられるわけでございます。  ですので、私は、ウルグアイ・ラウンド平成十一年八十万トンということでこのままがずっと維持できたということに仮にいたしたとしましても、八十万トン海外からお米が入ってくるということになってまいりますと、国内の、特に米作に対する影響は大変なものがあるのではないかなというふうに思います。  私は、その中で、先ほど二つの考え方をしてまいりました。一つは新しい消費拡大でございますが、先生御存じかと思いますが、これはお米でつくったパンでございます。これは特に羽田前内閣総理大臣が大変熱心に米の消費をやっておられた中で、何とか粒のままで食えないかというような御発想の中でできたというふうに私も承っておるわけでございますが、こういうように新しい分野のところへ消費拡大するような大胆な施策をとっていかないと、日本水田はなかなか維持できないというふうに私は思うわけでございます。  それとやはりお米づくりも、日本の米は高い、これは事実でございますのですけれども、こういうような加工品にするもの、これは俗に言います米選機下と申しますか、要するにできのよくない多収穫の米でもいいわけでございますから、そういうようなものをつくり分けることによりまして安い米をつくる、そういう中でもって食糧援助に持っていくという、この二つのやり方が私なりに考えた大きな施策でございます。これ以外はちょっと米の消費拡大するための施策はないんじゃないか。そうしますと、八十万トン入ってきて日本国内が、先生御存じでございますが、アルミニウムを思い出していただければと思います。アルミニウムは日本の主力の軍事産業であるから七十万トン体制を何とか堅持しようということで、通産省が七十万トン体制を国内生産の中で堅持しようとしておりましたが、現状、今はゼロでございます。アルミニウムは今、日本の中で生産されていないわけでございますので、そういうような現状の中で、本当に早目に施策を講じていかなければなかなか難しいということであろうかと思います。  文化論につきましては先ほど申しましたので、現実の問題の消費の問題を申し上げましたのですが、そのような大変厳しい状況にあるというふうに思っております。
  22. 清水澄子

    清水澄子君 最近、有機農業が注目されて発展していると思います。これは、食の安全と環境の保全の意味から生産者と消費者の両方から歓迎されているわけです。今回のWTO農業協定の実施によりますと、農業全体が競争力の弱い産業ですけれども、ましてや有機農業はさらに競争力には弱いと思うんですが、そういうことについて、その発展の芽を摘み取られかねないと思うわけですけれども参考人はそれをどのようにお考えになりますか。
  23. 宮澤敏文

    参考人宮澤敏文君) 今、先生がお話しになられたとおりの考え方、危機意識を持っております。ただ、生産者または生産団体でも幾多施策を考えております。  例えば、先生御存じかと思うわけでございますが、エノキダケとかホンシメジというああいうキノコの類は、今、多くは木びきの、木を切ることによって環境問題もいろいろあるわけでございますが、そういう木びきでつくられているのが現状でございます。そういう中で新たな試みといたしまして、中国で生産されておりますトウモロコシのしんを床にいたしまして、それによって木を切らないで、そういう中国のトウモロコシのしん、これをベースにして、床にしてキノコの生産を図ろうというような研究もなされているというふうに私ども聞かされております。  そういうようなことで、多少先生と同じ危惧を持っておりますが、生産者団体それからまた生産者もそういうような新たな試みをしているということは、大変将来に向かって明るい材料じゃないかなというふうに思っております。
  24. 清水澄子

    清水澄子君 それではもう一つ。果実生産とか酪農生産、牛肉等の生産が特定な地域に集中しているもの、そういうものに対してどのような対応策をとったらいいとお考えでしょうか。WTOの農業協定の実施によって特産地の振興のための農業政策というのは可能になるかどうか、その点どうお考えになりますか。
  25. 宮澤敏文

    参考人宮澤敏文君) 今、先生が申し上げられたところは、私ども生産者の人の声を聞きますと、非常に危機意識を持っているところでございます。ただ、今までの日本の農業の歴史を私なりに考えさせていただきますと、大変英知を絞って消費者との密着を非常に持ってまいったわけでございます。  一番心配しますのは、果樹の問題でも加工品の部分でございます。加工品が農家の生産の中の一つの、特に兼業農家の皆さんの収入の多くのところになっているという部分もありまして、そういうような部分での皆さんの生活に対する圧迫というものは当然想定されると思います。そこら辺のところの問題について、農家は非常に困るというふうにただ一言で話があるわけでございますが、そこら辺はもっともっと生産者も生産団体も知恵を出していくべきだというふうには考えております。
  26. 清水澄子

    清水澄子君 ありがとうございました。  それでは、渡邊参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほど、このWTO協定によって、アメリカで台頭してきた保護主義を抑制できるというメリットといいますか、そういうお話がありましたけれどもWTO日本経済に与えるデメリット、そしてメリットについてどのような見解をお持ちですか。
  27. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 清水先生の御質問にお答えを申し上げます。  まず、ガット事務局の試算によりますと、日本経済という前に世界貿易全体でございますが、世界貿易に与えますラウンドの効果、もしラウンドがまとまっていなかった、つまりラウンドが失敗した時点と比較いたしますと、それよりは大体年ベースで一二%ぐらいの貿易増というものを見込むことができるというふうに言っております。  ラウンドによる自由化の効果といたしましてはマーケットアクセス、関税の引き下げとか非関税障壁の撤廃とか、そういった市場アクセスの改善の部分だけでも世界の所得レベルを二〇〇五年までに年間二千三百億ドルずつ上げていくといったような数字がガット事務局の方から出ております。このような数字は、OECDとかその他の国際機関ないしは世界銀行といったようなところもかなり似た数字を挙げております。ですから、このようなことはそのまま日本経済にとってもプラスになるというふうに考えることができると思います。  また、市場アクセスにつきましては関税の引き下げ、これを大体先進国は軒並み少なくとも三三%いたしましょうということを約束しておりまして、これは日本経済にとりましても大きな意味を持ってくると思われます。  それからあとは、これはまだ試算のできない部分でございますが、先ほど申し上げましたように投資関連の措置。例えば、現地調達比率に関する規制、投資を受け入れている国からの規制、これがガット違反ということになります、WTO協定違反ということになりますので、そういったことから投資の促進といったようなことがこれから見込まれる。その投資の促進、さらにはその投資がどれだけの収益を生むかということについてのある程度の予見性、プレディクタビリティーということが見えてくることから、これはもう少し、何といいましょうか、今挙がっている数字よりはもっと大きな効果になるであろう、プラスの効果になるであろうということが予想されております。
  28. 清水澄子

    清水澄子君 そこで、次にこのWTO協定の紛争処理機関についてですけれども、これには効率性と実効性のある紛争処理が期待されているわけです。しかし、この紛争処理機関には紛争当事国のNGO等の消費者といいますか、市民からの意見を提出する権利とか情報公開などが確保されていないと思います。この点についてもアメリカを初め日本でもNGOからの非常に強い不満が出ておるわけですけれども渡邊さんはこのWTO協定の紛争処理機関のあり方について今後一つ一つ改善されていくものであるとおっしゃいましたけれども、何が必要であるとお思いになりますか。
  29. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) まず、ガットの紛争処理の一般的な性格について述べさせていただきたいと思います。  実はガットの紛争処理といいますのは、もう既に百五十件余りいろいろな案件が取り上げられてきた経緯がございます。計算の仕方にもよりますが、大体その八割が裁定が出て、その裁定が実施をされている。我が国に関しましては、酒・アルコールのパネルとか半導体のパネルとかいろいろな形で、先生方御案内のとおりでございます。  ですから、日本におきましても、日本のとっている当該貿易措置がガット違反ということになった場合には、これを是正するということが行われてきておりますし、日本が逆に提訴しましたケース、これは例えばECのアンチダンピングに対する迂回措置、この迂回措置につきまして日本が提訴しましたところ、日本が勝訴しております。それ以来ECは、欧州連合は、日本企業を含めまして東アジアの企業に対する迂回防止措置というものを一応手控えております。  このようなわけで、各国の貿易政策、貿易措置でガット違反、WTO協定違反というものが出てきたときには、これをいわば専門委員から成るパネルで判断を下すということになっているわけでございます。それはある意味で完全な裁判所というよりは貿易交渉、外交交渉の一環としてこのような紛争処理が行われるというふうに理解した方がいいかと思います。やはり外交交渉、貿易交渉でございますので、秘密というものはある程度守られないと各国は約束をなかなかできないということがあるかと思います。ですから、確かに情報の公開ということはありますが、それがまさに交渉が進展中で、何らかのよりよい結果が生まれることを情報を公開してしまうことによって全くその芽を摘んでしまうということではいけないのではないかということがございます。  ガット事務局に対するコントラクティングパーティーズですね、締約国からの信頼というのは、ガット事務局というのは各国のそういうシークレットをある程度ちゃんと保持する、秘密の保持ということについてガット事務局は非常に責任を持ってやるということがガット事務局一つの信頼を高める背景にもなっております。そういうことで、紛争処理におきます秘密の保持というのはある程度重要ではないかというふうに考えております。  他方、NGO、非政府機関の参加というふうなことについては、パネルの審議の中で専門家の意見を聞くということで実現される可能性は残されていると思います。これは必ずしもNGOには相当いたしませんが、タイランドですね、タイがたばこの輸入を規制したケースがございます。それでアメリカが訴えたんですが、その際にWHO、世界保健機関がこのたばこにつきまして健康上の害といったようなことで専門家の意見を陳述しております。ですから、オブザーバーといったような形である程度アドホック的になりますが、ケース・バイ・ケースでNGOが呼ばれ得る可能性、特にこれは環境が絡む問題の場合にこれから予想されることでございます。
  30. 清水澄子

    清水澄子君 WTO協定ではネガティブコンセンサス方式を採用して、全会一致で反対がない限り当事国がその自分の主張というのですか、決定を覆すことは難しいと言われているわけですが、そうなりますとその国の経済主権が侵される可能性が生まれると思いますけれどもWTO協定とそのそれぞれの国の経済主権の関係はどのようにとらえていらっしゃいますか。
  31. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ただいまの経済主権の観点でございますが、まずこのネガティブコンセンサス方式の意味でございますが、これは今までのパネルのケースにおきまして、先ほど八〇%ぐらいがうまくいったケースというふうに申し上げましたが、あとの二割はいろんな段階で、さまざまな段階でせっかく提訴したのにもかかわらずパネルが設置されないと。それは被提訴国がブロックをするからでございます。それからパネルが今度は報告書を出しましたのに報告書が採択されない。それもその被提訴国がブロックをするというようなケースがあるわけですね、採択をブロックする。  ですから、そういった被提訴国によります審議の妨害といったようなものが余り出てまいりますと、これはガットの紛争処理機能そのものに対する大きな疑義が出てくることになるわけでございます。ですから、ガットの紛争処理機能というものについての信頼性を確保するためにある程度時間の制限を設けるということが、今回のこのWTOにおける紛争処理の改良点と申し上げることができるかと思います。今までむしろそういう被提訴国によるブロックということがあったために、これを防止するという観点からネガティブコンセンサスが導入されたということを指摘させていただきたいと思います。  他方、このネガティブコンセンサス方式によりまして被提訴国はやはり不利な立場に置かれます。そういう意味では、先生がおっしゃられたように、経済主権がある程度侵害されるかもしれません。ですから、いわばそのバランスをとるために、その対価といたしましてWTOにおきましては、現在のガットの中では存在しておりません上訴組織、上級審とでもいいましょうか、いわば控訴することができるということがあるわけでございます。ですから、審査に当たったパネルが行いました法的な解釈とか判断の部分につきまして、常設の上訴組織、こちらが検討をするという形で少しでも関係国の経済主権というものが制限されないようにしようとしているわけでございます。
  32. 清水澄子

    清水澄子君 WTO協定では、国内における食品の衛生基準や規格はコーデックス委員会の基準を優先させることになっていると思うんです。
  33. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 済みません、もう一度おっしゃってください。
  34. 清水澄子

    清水澄子君 国内における食品の衛生基準や規格はコーデックス委員会の基準を優先させることになっていると思います。消費者団体では、これでは国内の食品の衛生基準や規格による食品の安全性が守られないんではないかという大変な危惧があるわけですけれども参考人の御意見をお聞かせください。
  35. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) まず一般論からお話をさせていただきます。  一般論から申しますと、これはいろんな研究所とか、特にイギリスの「エコノミスト」といったような雑誌が特集を組んで報じておりますが、補助金が出ていれば出ているほど汚染が進んでいるということがあります。つまり英語で申しますと、モア・サブシダイズド・モア・ポリューテッド、補助金がたくさん出ていれば出ているほどそれだけ公害が進んでいるということがございます。これはまさに日本のケースに当てはまることでありまして、日本の場合、残留農薬のレベルなどはかなり高い水準に来ておることは先生方御存じのとおりでございます。そういう意味では、食品衛生とか公害の問題は非常に重要であります。  これにつきましても、先ほど冒頭の陳述で述べさせていただきましたように、とりあえず各国で交渉のテーブルに着いて、どのレベルにするかということを議論し合うということがとても重要だろうと思います。その議論の場所として、例えばWHOとか、FAO、食糧農業機関ですね、こういったものがあるわけで、そこでの専門家の意見を反映させた国際的な合意であればこれはある程度受け入れていかざるを得ない、そういう性質のものではないかというふうに考えるわけでございます。  消費者団体の方々は農業ゼロといったようなところからスタートされますが、実際にキャベツでも何でもいいですが、全く農業を使わないで生産をするともう虫がいっぱいついていてなかなが食べられない。ましてや商品にはならないといったようなことがあると思います。つまり、我々は確かに農業ゼロが一番いいに決まっているわけですけれども、生産物としての食品を購入していく中であるいはつくっていく中で、ある程度国際的に合意されたレベルの農業の使用といったようなことは、これは議論をする中でその水準をどこにするかということを決めていかなければならない、こういうふうに考えております。
  36. 清水澄子

    清水澄子君 終わります。
  37. 小島慶三

    ○小島慶三君 宮澤さん、渡邊さん、きょうは本当に御多用中おいでいただきましてありがとうございます。  私ごとになりますけれども、私も全国に二十ばかり小島塾というのを持っておりまして、その一つ安曇野小島塾というのがあるわけでございます。ですから、宮澤さんのやっておられる運動やなんかも私よく承知をしております。どうぞその面でどんどん御活躍をお願いしたいと思います。  また、渡邊さんは長くジュネーブにおられて、このガットウルグアイ・ラウンド問題等についても熟知されておるとのことでございますので、ひとつきょうはよろしくお願いをいたします。  これは初めに、古い話になりますけれども、一八四六年にイギリスが小麦の関税を撤廃したわけで、十年ぐらい議論をしたそうでありますが、結局イギリスは世界の工場といったような立場で、工業力でいつでも外国から物は買える、農産物は買えると、またほかの国は農業生産に特化すればそれなりの収入が得られるということで、いわゆる国際分業論を展開したのがリカードであります。それに対してマルサスの方は、そういってもイギリスの工業力というものがいつまで世界を制覇し得るか非常に疑問であると。それから、世界食糧需給が逼迫してくれば、イギリスが農産物を買いたいといっても買えない。彼の議論の根拠にはやはり人口論というものがあったと思うんです。人口の成長とそれから食糧供給の成長といったようなものがバランスがとれないということがあったと思うんですけれども、それで結局イギリスは十年議論をして関税を撤廃したわけです。  その後どうなったかといいますと、イギリスの工業の繁栄が続いたのは二十五年、たった二十五年だったんです。その後、アメリカが成長し、ドイツが追いつき、日本が追いつきというようなことで、イギリスが世界制覇をしたのは二十五年であったわけです。その間、イギリスの農業生産というのはこれはもうほとんど壊滅状態に、殊に小麦生産というのは壊滅状態になって一〇%の供給も得られないという形になって、イギリスの食糧自給力はほとんど最低のレベルにまで落ち込んだという非常に苦い経験があった。  イギリスはその後、そういうふうな状態では困るというので、戦争で食糧が買えないという問題もあったと思うんですけれども、必死になって食糧増産をやったわけです。そういう結果、品種の改良とか肥料の改良とかいろいろなことをやって、さんざん惨たんたる努力をして、そして食糧の自給率を回復したわけです。その間百年かかったんです。だから、私はこういうふうなことを考えますと、日本も大分それに近いような状態にあるいはなりはしまいかということが心配されるんです。  それで、両参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、今の状態で、日本の中長期の成長率というのは、これはイギリスがかつて一%まで落ちたんですけれども、一%にもたえ得ないというケインズの話がありますが、そういう状態になってくると。だから、今、世界の中で工業は繁栄しておりますけれども、果たしてこれが何年もつのかという危惧の感を私は持っております。  ですから、そういう点を考え、また一方では世界の人口というのはどんどんふえていくわけでありますから、近いうちに百億になるというレベルになりますと、一人当たりの食糧増加ということだけでは間に合わないのでありまして、食生活の高度化というのがございますから、そうしますと一・五倍ぐらいの食糧供給をしていかなきゃならぬだろう。そういう場合に、果たして日本は十分な食糧世界から買えるのかということになりますと、これは大変疑問だと思うのであります。  そういう点で、日本はどうしても先ほど来お話がありましたような水田を中心とした米というもの、これを自給力の基礎にして持っていくということが大変肝要になるのではないかと思うんです。  今、上程されておりますマラケシュ協定に基づくWTOの機構というものの中で、さっき質問された清水さんもおっしゃっておりましたけれども、これはかなり主権の制限という問題が起こってきはしまいかと。そうすると、食と環境と社会といったような三つの面で主権制限されるという動きが、今後これは国の主権だけでなくて地方の自治体とか民間団体までWTOのもとでは一種のハーモナイゼーションが要求されるわけでありますから、そうなってきますと、果して日本食糧といったようなものは世界食糧需給の面から見ても、それからもう一つ今のWTOのもとの規制という質の問題におきましても大変危険な状態になりはしまいかというふうに思うわけでございますが、この辺ひとつお二人から御意見を承りたいというふうに思います。
  38. 宮澤敏文

    参考人宮澤敏文君) 今の小島先生のお話でございますが、私も同じ危惧を持つわけでございます。先ほど清水先生からのお話もございましたが、実は、食、環境そして社会、特に私が先ほど清水先生の大丈夫かというお話の中で感じましたことは、地域社会が崩れてくるのではないかということの心配でございます。  当然私の考え方、田舎の代表として安曇野を例にするのは大変狭小な例で申しわけないわけでございますが、現にやはり水田による、今、若い人たちのよりどころというのはやはり春夏の収穫のお祭りになっておりますし、そういうのが地域にいる人たちのまとまりになっているわけでございます。それが今、現状の中で非常に崩れてきておりまして、隣に住む人たちの一挙一動がわからないというようなこととか、例えば隣近所のお葬式の出し方一つにつきましても、ここら辺の日本独特のよさが失われていくということを非常に危惧するわけでございます。  地域の中にも、やはり生産者の中でも国際分業論という考え方に対しての大変危惧がございます。果たしてアメリカ日本食糧がなくなったときに、今、州が接していても食糧を隣でもって融通してくれない国が、最も人種も違う日本に対してそれを送ってくれるだろうかというような考え方が生産者の中にも出ていることも事実でございます。  そういうような中でもって、当然すぱっとなかなか割り切れないところでございますが、有史以来つくってきました地域文化がここのところで大きく揺らいできているということは、この水田というもの、農業というものをつくった一つの地域文化が崩れてきているなということをやっぱり先生方も肌で感じていらっしゃっていただいていると思いますけれども、私どもも実は感じているわけでございます。  特に、先生が今言われました食、環境、この問題はまた知恵の出し方がございますが、地域社会が崩れた場合はこれを取り返すには大変な時間がかかるわけでございます。ここへの一つの考えをぜひとも添えさせていただきまして意見とさせていただきます。ありがとうございました。
  39. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 小島先生の御質問にお答えをいたします。  一八四六年のこれは穀物条令の廃止でございますが、その後一八四九年に航海条令の廃止ということをしております。私も今の日本の特に米との関連で新聞に寄稿したりするときにはよく使う話でございます。ただ、先生とはちょっとニュアンスの違う使い方をいたしております。  私どもはパクス・ブリタニカ、つまりイギリスの平和ないしはイギリスの覇権のもとでの国際の平和というもの、そしてイギリス自身の繁栄というものは、むしろこういう穀物条令の廃止、航海条令の撤廃という自由貿易的な政策をとる中でイギリスの繁栄がもたらされたんだということを私は説明しております。  特に、単にイギリスがそれによって繁栄をしたというだけではなくて、イギリスが当時盛んになっておりました綿花、綿製品を輸入する先といたしまして、大陸ヨーロッパのイギリスより発展レベルのより低い国がイギリスが綿花を買ってくれることで栄える、ないしはイギリスに食糧をフランスとかドイツが輸出をするという形で栄える、より豊かになる。遠くはアルゼンチンといったような南米の国までがイギリスにアルゼンチンの有名なアルゼンチンビーフを輸出する中でより豊かになっていくということで、いわばイギリスが自由貿易主義に転換をしたことによりまして、イギリスが原材料を輸入し食糧を輸入しておりました大陸ヨーロッパの諸国、さらには南米の諸国といったようなものが少しずつ豊かになってきたわけでございます。そういう中でイギリスも豊かになりながらその周辺国も豊かになる、そういう構造をつくってきた。これがパクス・ブリタニカと言われるゆえんではないかと思います。  パクス・ブリタニカが続きました年月でございますが、先生は二十五年と言われましたが、私どもいろいろアメリカの学者と議論したりしておりまして、一八一五年のウィーン会議をとるのはちょっと早過ぎにしましても、穀物条例撤廃の一年前、一八四五年ぐらいから第一次世界大戦の勃発ないしは第一次世界大戦の終了まで、一九一四年から一八年というふうな感じで、大体七十五年ぐらいをとるというのが一般的ではないかなと思っております。ですから、イギリスの繁栄は決して二十五年で終わったわけではなく、約一世紀にも及ぶ繁栄はイギリスの自由貿易主義への転換というのが契機になっているということを一つ指摘させていただきたいと思うわけでございます。  他方、第二次世界大戦が起こる一つ背景といたしまして、当時の第二次世界大戦が起こる前の段階で、戦間期の経済世界経済の、世界の産出量の約半分、五〇%をアメリカが生産していたのにもかかわらずアメリカがかつてのイギリスのようないわば中心国としての責任を果たさなかった、アメリカが大国であるということの自覚がなかったことのゆえにその経済が地域経済としてブロック化していくといったような形で戦争に至ったというふうなことも指摘されております。
  40. 小島慶三

    ○小島慶三君 済みません、時間が。
  41. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) ですから、そういうことから申しますと、今の日本に期待されておりますのは、やはり二十一世紀へ向けて、かつてのイギリスが図ったような保護主義から自由貿易主義への転換ということが今必要なのではないかというふうに思っているわけでございます。
  42. 小島慶三

    ○小島慶三君 どうもありがとうございました。  ちょっとこれ以上この問題を突き詰めていきますと論戦になりますし大変時間もかかりますので、後日、先生とまたやらせていただきたいというふうに思います。  それから、もう私の時間は余りございませんが、一つだけ農業というものの見方、先ほど笠原さんもおっしゃったので余りくどくどと申しませんけれども、やっぱり私は自由貿易をねらったマラケシュ協定というものとそれから国内のいろんな法律制度、その調整、この間にかなりのギャップを感じております。だからその点もひとつお伺いしたかったんですけれども、もう時間がございませんから私の意見だけ申し上げておきます。  農業と工業とを一緒に律するということにもともと間違いがあったのではないかということでございます。工業は、私もいろんな国に工場をつくりましたけれども、どこへ持っていっても資本があり、労働力があり、そして技術があれば同じものができます。しかし、農業は絶対そんなことはない。例えばアメリカのような農業、ヨーロッパのように氷河を削った土地、それから日本のように、日本の国土の高さというのは海底からはかりますと八千メートルないし一万メートル、ヒマラヤと同じだという地理学者の話がありますけれども、そういうところで世界の二倍半の雨がそこに降るわけでありますから、そのままにしておけばもう国土は完全に崩壊するばかりになるわけであります。それを支えているのは森林であり水田であるということで、ここでやっぱり国土の保全ができ水のサイクルができ、それから生態系の保持ができるということで、これとかかわり合っている農業というのは単に一般の工場で商品をつくるという、そういった見方で見てはいけないんではないかと思っておるわけであります。  要するに、農業にはそういうコストが入っている、殊に日本のようなところはそうである。ヨーロッパやアメリカとは全く違うわけでありますから、同じ条件で同じ土俵の上で競争しろといっても無理な話なのであります。ですから、そういうふうな点をできれば渡邊さんもガットにおられたときに、もっとやっぱり世界日本の特殊性といいますかそういうものを強調していただきたかったというふうに思うわけであります。この点も後でまたお話しさせていただきます。  終わります。
  43. 山下栄一

    ○山下栄一君 公明党の山下でございます。  きょうは遠いところ、宮澤参考人また渡邊参考人、平日でございましたのにお越しいただきまして、またさまざまな形で大事な今回の国際的な自由化促進のための国際機関の設立に関する条約批准の問題、またそれに伴う国内法関連の審議が衆議院、参議院それぞれ行われておるわけでございますが、それぞれの見地から高い見識をお教えいただきまして本当にありがとうございます。  まず、渡邊参考人にお聞きしたいと思うわけでございますが、時間が十分しかございませんので、まず二点お聞かせ願いたいと思うわけでございます。  今回のマラケシュ協定の合意の意義につきましては、冒頭に陳述の中でわかりやすくお教えいただいたわけでございますけれどもガットと比べますと暫定的な適用という状況から、今回の常設機関の設置と、二国間交渉だけではなくてそういう国際的な話し合いの場が常にあるという状況をつくったこと、また紛争処理体制も非常に改善強化されたこと、大変大きな意義があるということをおっしゃったわけでございます。  ただ、超国家的な権威というのが非常に今の国際社会は弱いわけでございまして、国家主権を制限するようなものにつきましては非常に厳しい反発があるというそういう状況があったわけでございます。一九四八年二月一日から暫定的適用という形になってしまったガットと同じ運命をたどることはないとは思いますけれども、あのときもITO、国際貿易機関ですか、一応用意されておって、結局設立できなかったという状況があるわけでございまして、今回もたとえ発効いたしましても実際骨抜きになってしまうというふうなことも心配されるわけでございます。  特に、過日のアメリカ議会がクリントン大統領に注文をつけたと申しますか、WTOの紛争処理によってアメリカの主権の侵害を監視するための紛争処理チェック委員会ですか、これを設置する、これを国内法で来年つくりなさいと。WTOからの侵害が五年間に三回に達した場合は米議会は大統領にWTOからの脱退を勧告できるという、そのような国内法を制定しようという約束を取りつけたという話が載っておるわけでございます。今回のWTOの設立の問題につきましては、アメリカがかぎを握っておる状況を考えましたら、アメリカの今回の大統領と議会との合意、米議会に勧告権を与えるというそういう内容につきまして、非常に骨抜きになる可能性という面で心配されるわけでございますが、この点につきましての参考人の御見解をお伺いしたいということ。  それから、この紛争処理手続、紛争処理体制の強化改善という、ガットと比べて今回はそういうさまざまな面で、手続の迅速化とかそれから統一的な運用という、そういうふうに非常に強化されておる、改善されておるということでございますが、拘束力という観点から、私は、ほかの例えば国際司法裁判所、ICJの拘束力と比べると格段の実効力のある今回の内容になっておるということがわかるわけでございますが、主権との関係で内容的には非常に画期的な実効性のある裁定ができるという体制になっておるわけでございます。  そういう意味で申しますと、人間の社会といいますか国を越えた国際社会を形成していく、つくっていくという意味におきまして、国家を越えた国際的な拘束力の強化ということで今回の条約の内容は非常に意義があると、このように思うわけでございますが、そういう国際社会における国家に対する拘束力の実効性確保という意味から今回の条約内容の意義につきまして少し教えていただきたいと、このように思います。
  44. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 山下先生から大変、ある意味でテクニカルで非常に難しい御質問をちょうだいいたしました。  まず、アメリカ実施法案との関係でございますが、アメリカ実施法案の中にも、三〇一条ないしはスーパー三〇一条の適用を受けるようなケースにおきましても、それが何らかの貿易協定の中に含まれている場合には、その貿易協定の方でまず紛争処理をしなさいということが書いてあります。この場合、例えばWTOもそういう意味では当該貿易協定の中に入ってくるということがありまして、アメリカといたしましてもまずWTOの中で、相手国がWTOのメンバーであればWTOの紛争処理の中で問題を解決するという義務はやはり負っているというふうに考えることができると思うわけでございます。  それから、今度クリントン政権下で復活せられましたスーパー三〇一条をよく見てみますと、実際に不公正貿易国であるという指定、そして調査、インベスティゲーションから実際の制裁発動まで大体十二カ月とか十八カ月という非常に長いタイムスパンをとっているわけでございます。他方では、ウルグアイ・ラウンドの中で紛争処理に要する期間、これはパネルの設置からパネル報告の採択まで通常であれば九カ月、もし上層組織の方へ訴えるとすれば十二カ月ということで、かなり短縮を図ったわけでございます。  ですから、先ほどの、当該国が何らかの貿易協定に入っていればということで、WTO協定の中でまず取り上げなければいけないような貿易紛争につきましては、WTOの中の紛争処理の中で迅速に問題処理をすれば、わざわざ三〇一条、スーパー三〇一条の対象にならなくても済む可能性が非常に高まった。そういう意味では、単に一方的主義はいけませんと言っているだけではなくて、実効的にアメリカの一方的なユニラテラリズムによる措置というものを回避できる可能性が以前より高まった、その点がやっぱり最大のポイントではないかと思うわけでございます。  それから、拘束力いかんということでございますが、拘束力については以前もあったわけですね。それはある程度、もしパネルの勧告に対して、被提訴国がちゃんとした違反措置と認定されたものをガット整合的なものに変えないときにはリタリエーションといいまして、報復措置の対象になったりするという形でそこが担保されていたわけでございます。ですから、そういう意味では拘束力自体はそれほど変わっていない。むしろ、先ほど申しましたように、全体のプロセスを時間を短くしたりすることによりまして紛争処理のメカニズム自体の信頼性というものを大きくするということがあったかと思います。  他方では、先ほども問題になりました経済主権の制限というのが入ってくるのではないかということでございますが、それにつきましては、被提訴国の主権の制限というものをある意味でバランスをとるために、上訴組織、アップレートボディーと言いましていわば控訴審を設けてあるという形である程度の担保がされているかと思います。  それから、一般論として申し上げますと、これだけ経済の相互依存が進んでまいりまして世界市場といったようなものがある意味で国境を越えて資本も人も物もサービスも動く、こういった中におきましてはある程度の主権の制限ということもこれからはやむを得ない。要はどうやって主権の制限をやっていくか。それを一方的なユニラテラリズムでやるか、ないしはこれをガットとかウルグアイ・ラウンドとか、ないしはWTOといったような多国間のマルチラテラルなフレームワークの中でその制限をお互いにある程度合意をしながらやっていくか、そこがまさに重要なポイントであろうかと思います。
  45. 山下栄一

    ○山下栄一君 時間になりましたので、宮澤参考人、大変申しわけありませんけれども、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
  46. 立木洋

    ○立木洋君 早速ですが、渡邊参考人にお尋ねしたいと思います。  今、地球上で大きな問題の一つ途上国という問題があるんですね、南北問題。御承知のように、この途上国の問題というのは貧富の問題、つまり先進国との経済格差という問題で、これを解消しなければならないということで、例えばUNCTADなんかでの努力がされてきました。しかし、それでも貧富の格差というのは依然として経済格差というのは大きくなっているんです。商品協定なんかについても、一次産品に対する商品協定等もいろいろ考えられてきたけれども、なかなかそれも進展しないという問題もあります。  さて、それでこのWTOの諸協定の内容を見てみますと、やっぱり今度新しくサービス貿易だとかあるいは知的所有権の問題が導入されたわけですけれども、例えば知的所有権の問題でも途上国というのは高い特許料を払わなければならないなんというような問題が起こってきます。ですから一部の国々なんかでは、つまり国民の命を守るために医薬品の特許なんかの問題についてはそれを外してほしいだとか、あるいは制限するだとかいうふうなこと等があったわけです。  また、それだけではなくて、五十年にわたる長期のコンピューターソフトなんかの問題についても異議を唱えるというふうなことがあったんだけれども、それも今後だめになる。サービス貿易等の問題についても、いろいろ情報通信、調査開発、金融サービス等々も途上国は結局一方的な輸入国なんですね。  この間の国連の総会でタンザニアの大統領が、アフリカはガットから何も得るものがない、むしろ失うものばかりであるというふうに述べて、タンザニアが批准したのはほかに選択の余地がないからだ、早急な保障措置がとられない限りこの合意は我々にとって貧困の増長を意味すると、大変嘆かわしい発言をされているわけです。  つまり、今度の協定というのは一括批准方式になっていますし、これまであった祖父条項というのが事実上削除されるということになると、ますますやはり大変な状態になるだろう。そうすると、本当にこういう状況が、私は途上国の問題だけを取り上げましたけれども、本当に公正、公平な国際貿易秩序の進展になり得るんだろうかというのが私の大変な懸念なんです。  農業の問題については、先輩あるいは同僚議員等からも御指摘がありましたから、一定の問題については保護という措置もやっぱり考えられるべきである。それは、本当にその国の主権等々経済的な主権を考えるならば、そういう措置があってもいいんではないか。だから、そういう意味で今度のWTO協定というのは大変な懸念を持っているわけですが、その点について渡邊参考人、どういうふうにお考えなのか。
  47. 渡邊頼純

    参考人渡邊頼純君) 先生、どうも御質問ありがとうございました。  私どもガット事務局におりまして毎日の仕事といいますのはほとんど途上国の方へのいろんなテクニカルなアドバイスでございます。そういう意味では、先生の言われた御懸念、御心配はまことにそのとおりでございまして、先生の見識の高さに大変感服するものでございます。  他方では、ガットとかOECDは先進国のものだからあんなのには参加しないでいいというふうなことを言ったり、あるいはある穂先進国に従属をして成長していくということはあり得ないから先進国市場とのリンクを切ってしまえというふうなことが一時期、一九七〇年代の新国際経済秩序論の中で出てまいりました。従属理論とか、いろいろ南米の方から出てまいりました。  そういうときに、実際に先進国市場ないしは世界市場とのリンクを完全に切るか、ないしは極力それを減らすということをした国々が、例えば北朝鮮、キューバ、そして先生がお挙げになられたタンザニア、現在ミャンマーと言われているビルマ等々でございます。それが七〇年代で、二十年たった現在、それぞれの国の窮状は今もう説明する必要がないぐらい知られているところでございます。ですから、途上国にとりましても、世界市場とフルにつながって、そしてその中で自国をある程度開放し、そして競争にある程度さらしていくということが、途上国の中でも非常に伸びた国と伸びない国との分岐点になっているということが言えようかと思います。  ですから、今回のウルグアイ・ラウンドにおきましては、途上国の参加というものも非常にこれまでのラウンドとは違う、東京ラウンドないしはケネディ・ラウンドとはかなり違う面として出てきたわけでございます。そういった中で、特に穏健派途上国などと私どもは呼んでおりましたが、割と貿易ということに対して積極的で世界市場とのリンクというものを大事にしている国は、やはりかなり現実的なアプローチでそのルールメーキング、ルールづくりに参加をしてきたという経緯がございます。ウルグアイ・ラウンドという、ウルグアイという国の名前がラウンドにつき、またマラケシュというところで最後の調印が行われたということは、単に場所の名前だけではなくて、非常にシンボリックな、つまり途上国がかなり巻き込まれたラウンドであった、途上国がインボルブされたラウンドであったということが言えようかと思います。  他方では、先生の御懸念に対応するために、ガットないしはWTOではさまざまな特別措置、スペシャル・アンド・ディファレンシエーテッドトリートメントといいまして、我々頭文字をとってSアンドDと呼んでおりますが、特別にしてある程度先進国とは区別された待遇というものを約束しております。  その中では、特に後発の発展途上国、いわゆるLLDCと呼ばれます国に対しては猶予期間をさらにぐっと延ばしたりしまして、そういう形で途上国にとっても入りやすい枠組みになるようにという工夫は随所にされているところでございます。
  48. 立木洋

    ○立木洋君 宮澤参考人に環境保全の問題でお尋ねしようと思ったんですけれども、もう時間が来てしまいました。  どうもありがとうございました。
  49. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上で午前の参考人に対する質疑は終わりました。  参考人には、貴重な御意見をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時三分開会
  50. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ただいまから世界貿易機関設立協定等に関する特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定締結について承認を求めるの件外法律案議題とし、参考人の御意見を承ります。  午後は、東京農工大学教授石原邦君、全国農業協同組合中央会常務理事高野博君、日本生活協同組合連合会理事日和佐信子君及びいのちをはぐくむ学校給食全国研究会代表雨宮正手君に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  議題となっております各案件につき忌憚のない御意見を拝聴いたしまして、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  なお、会議の進め方について申し上げます。  まず、お一人十五分で順次御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、石原参考人からお願いをいたします。石原参考人
  51. 石原邦

    参考人石原邦君) ただいま御紹介にあずかりました東京農工大学の石原でございます。このような席で意見を述べさせていただくことを大変光栄に思っております。  ガットウルグアイ・ラウンドの政府間の農業合意という新たな国際環境に対応して、今後、我が国の農業は一層の体質強化、充実が必要になると考えられます。現在、内外とも環境に対する関心が高まっておりまして、その中で今後の農業において環境保全に配慮した農業の展開が必要であると考えますので、本日はこの環境保全型農業を中心として、私の専門であります作物学「作物栽培論の立場から参考人としての意見を述べさせていただきたいと存じます。  農業は、太陽エネルギー、土地などの自然を活用し、地球上における人間の営みのうちで環境と最も調和し、持続性の高い産業と考えられてまいりました。しかし一方、人間は農業を行うことによって環境を破壊し、不もの土地をつくり出したり、あるいは一度悪くした環境を修復しつつ農業を持続し、また発展もさせてまいりました。これから先もこのような状態を人間が再び起こすという可能性を否定することはできないと考えております。  さて、作物栽培の基本は、耕地の地方、土壌肥沃度の維持向上を図りながら、その地域の気象、環境に合った作物あるいは品種を選択し、雑草や病害虫の被害をできるだけ少なくし、目的とする収穫物を多く、しかも品質のよいものを生産することにあります。これを実現するために、農業技術の余り発達していない段階では非常に大きな努力が払われてまいりました。  例えば、病害虫が一度発生すると防ぐことができないために、収量や品質を犠牲にしても栽培時期や栽培方法は病害虫の被害を防ぐことを第一に決定し、また土壌肥沃度を維持するためにどんな作物を作付するか、その順序をどうするかが決められておりました。  ところが、化学肥料、農業などが開発され、機械が発達し大型化するに従って生産性の向上が第一の目的とされて、耕地の大規模化、作物の単作化が進められました。このようにして構築された栽培技術は、多量のエネルギーと肥料や農業などの使用を通じて生産性の大幅な向上を実現しましたが、一方で、生産された食糧の安全性などの問題が生じました。それだけでなく、環境にもマイナスの影響を及ぼしてまいりました。  その影響は、我が国では水田農業を営み雨が多いということとも関連しましてアメリカやヨーロッパに比べれば小さいんですけれども、畑作地帯での地下水の硝酸態窒素濃度が高くなるなどの問題を生じており、農業環境の保全は重要な課題となり、農業環境への影響を軽減するのみならず、積極的に人間の生存環境を保全する機能を維持増進する農業、すなわち環境保全型農業の発展が求められるようになりました。  我が国における環境保全型農業を推進する際の諸問題を概括的に列挙してみますと、例えば耕地の物質循環を基本とした輪作を中心とした作付体系の確立、水田の高度利用、環境保全機能の活用、耕種と畜産との総合による物質循環を中心とした地域農業システムの確立、あるいは総合的病害虫防除の確立と発生予察、情報伝達の整備、施肥法、肥料利用効率の向上、耐病虫害抵抗性などの新しい品種の育成や新しい生物機能の開発などがあります。  また、少し違いますが、環境汚染の実態の把握も重要であります。あるいは社会経済的な条件としては、農業の役割の認知と社会的な保障、あるいは生産者と消費者の有機的連携などを挙げることができるかと思います。  以上のように、環境保全型農業を推進するに当たっては今述べた以外にも多くの問題に対応していかなければなりません。どの問題をとってもその対応あるいは技術の確立は決して容易ではありません。このことについて輪作に例をとって少し説明したいと思います。  輪作は、同一の耕地に異なる種類の作物を一定の順序で繰り返し栽培する作付様式です。輪作は、化学肥料を減らしつつ物質循環を通じて土壌肥沃度を維持し、耕地の生態系を複雑にすることによって病害虫、雑草の発生を抑制するという点から環境保全型農業に不可欠な作付様式です。  輪作は農業の基本としてヨーロッパで発達したのですけれども日本ではもともと水田農業中心であったということもあって、この作付様式は必ずしも確立されませんで、畑においても必要に応じて作物を栽培するという、自由式と言われますが、それが行われてきました。この理由は、輪作といった複雑な作付様式をとらなくても、山林が多く耕地が狭いため地方維持は里山と結びつくことによって可能であり、雑草なども人力によって除去するということができたからであります。  このような背景がありますので、化学肥料、農業が発達し機械化が進むことによって、作付は完全に市場の要求、経済性の追求、言ってみれば商工業と同じ論理によって決定されることになりました。したがって、我が国では過去には確立された科学的輪作体系は存在しないと言えます。  実際には全く存在しなかったわけではなくて、耕地の利用度を高め、農家の自給自足を中心とした例えば大豆、小麦、陸稲、サツマイモ、大根などを組み合わせた作付様式は存在しておりました。しかし、食生活の変化とともに増加してきましたトマト、キュウリなどの果菜類や、キャベツ、レタスといった葉菜類を組み入れた輪作体系を確立する問題は、全く新しい課題として、研究として取り組んでいかなければなりません。  我が国の輪作ではまた、水田の活用を考えることも重要であります。水田は耕地として極めて安定した生態系であると同時に、畑とは全く異なった生態系であります。すなわち、水田と畑では土壌の理化学的性質は全く異なり、土壌中の微生物層、雑草の種類は違いますし、水稲と畑作物では発生する病害虫も異なっております。したがって、水田を二、三年畑として利用し、再び水田として水稲を栽培することを繰り返す、田畑輪換といいますが、この田畑輪換は地方維持活用、病害虫・雑草防除、さらに水稲、畑作物の収量から見ても環境保全型農業にとって最も望ましい輪作体系の一つで、他の先進国にはない特徴があります。  田畑輪換を行うためには、排水し地下水を下げれば畑になり、かんがいすれば水田になるという耕地基盤がなければなりません。このためには大型機械による大規模経営を可能にする土地基盤整備よりもさらに高度な基盤整備が必要であり、これを実現することは我が国の稲作を含めた農業にとって最も重要な課題の一つと考えます。  さらに、輪作に組み合わせるのは作物だけではありません。病害虫や雑草の発生を抑制する拮抗植物、例えばネコブセンチュウを抑制するマリーゴールド、耕地に残っている肥料などを吸収させるクリーンあるいはキャッチプラントなども輪作の中に加える必要があります。これらの植物の目的とする機能の高いもの、あるいは新しい機能を持った植物の育成が必要であり、そのためにはバイオテクノロジーなどの最近の発達した科学技術の利用が考えられます。  今まで述べてきたことからおわかりのように、輪作だけを取り上げてみましても問題は非常に多岐にわたり、全く新しい課題を含んでおり、研究すべき問題が非常にたくさんあります。  輪作体系についての研究は、農学も含めた近代科学の常法である解析的な研究ももちろんありますが、その大部分はいろいろな学問分野の研究者が相互に密接な連携をとりつつ総合化を目指して行うもので、しかも研究の組み合わせは多く、長い年数を要するものであり、当然のこととして地域、土壌などによって問題は異なってまいります。したがって、従来の解析を中心とした研究に比べて環境保全型農業にかかわる研究は規模が著しく大きくなり、研究者、研究費も多く必要となります。また、田畑輪換のところで述べましたように、条件整備にももちろん多額の資金を要することになります。こういったことはアメリカのナショナル・リサーチ・カウンシルの農業委員会も指摘しているところであります。  輪作体系は一つの耕地、経営の問題ですが、畜産農家などでは経営内で物質循環を完結させ、環境を保全することはできず、こういう場合には地域全体として、ある場合には市町村、県、さらに県を超えての取り組み、合理的物質循環の構築が必要となってまいります。物質循環の規模が大きくなればなるほど問題はさらに複雑多様になり、解決すべき事柄も多く、そのためには生産者、農協、自治体の連携協力が非常に必要となってまいります。  これまでは生産面について述べてまいりましたけれども、環境保全型農業は流通、消費とも密接に関係を持っております。この点を害虫防除を例に御説明したいと思います。  農業が発達して以来、害虫が発生したらあるいは発生することが予想されたら農業を散布するというのが防除方法であります。しかし防除手段は、農業を用いる化学的防除以外に、天敵を利用する生物的防除、害虫の発生の少ない時期に栽培時期を変える生態的防除などいろいろあり、環境保全型農業ではこれらを組み合わせた総合防除が基本となります。  総合防除はFAOによって、「いろいろな防除手段を相互に矛盾しないように有機的に調和させながら併用することによって被害が経済的許容水準以下に維持されるように害虫の発生を統御する防除体系」というふうに一九六五年に定義されました。  ここで経済的許容水準が問題となります。想像ですけれども、この定義をしたときには恐らく収量の問題であって、害虫を全部殺すのではなく、収量が許容範囲以上に低下しないレベルに害虫を防除するという意味であったと思います。  現在の我が国では、その経済的被害がどの程度かは生産物の品質、これは味ではなくてむしろ主として外観によって決まります。外観が悪ければ価格が著しく安くなります。流通業者、消費者に満足してもらえるような外観を維持するためには、害虫の密度を非常に低いレベル、ある場合にはゼロに抑えなければならないということも生じます。こういった場合にはもう農業に頼るしかなくて、このことは環境保全型農業の実施を著しく困難にしております。  先ほど述べました生態的防除として害虫の発生時期を考慮した栽培となりますと、いつでも食べたいものが食べられるというわけにはいかなくなり、食べ物にはしゅんがあるというような考え方が必要になりますし、さらに言えば、その国、その地域で生産された農産物がいろいろ加工されて食料となり、それから食文化が生まれたという農業と食料の根源的な関係を思い起こすことも環境保全型農業を考える上で重要なことと思います。  ここで特に強調しておきたいことは、環境保全型農業は生産者だけの問題ではなく、流通、消費の問題とも密接に関係しているということであります。  最後に、環境保全型農業から見た世界食糧需給の将来を考えてみたいと思います。  農林水産省の新政策、「新しい食料・農業・農村政策の方向」の中で、中長期的には急激な人口の増加や地球の温暖化、熱帯林の消失、砂漠化の進行などの地球環境問題を考慮した場合には、食糧需給が逼迫する可能性があるというふうにしております。  また、国際的な食糧、環境、人口問題の研究所、ワールドウォッチ・インスティチュートの報告では、最近、穀物生産量の増加が停滞し始めており人口増加は続いているので、一人当たりの穀物供給量は一九八四年の三百四十キロを最大として減少し始め、一九九三年では一一%減少し、二〇三〇年には一九五〇年代の水準の二百四十八キロまで減少するという予測が出されております。また、米の需要は二〇二五年には現在の七〇%増が予測されております。世界の耕地面積、水田ともに一九七〇年以降はほとんど増加しておりませんし、今後増加する可能性はほとんどないと言われております。したがって、不足分を補うにしても需要の増加に対しても単位面積当たりの収量増で対応しなければなりません。  既に述べましたように、農業生産にとって環境保全型農業の重要性はますます大きくなっております。この重要性は我が国だけではなく、アメリカ、ヨーロッパにおいても同様です。経済的生産性を追求した大型機械化、化学化、単作化した生産様式によって、アメリカでは土壌が大型機械で踏み固められることによる硬盤の形成、土壌侵食、地下水の枯渇などが問題となり、ヨーロッパでは肥料、農業による土壌・地下水汚染、硬盤の形成などが問題となっております。こういった問題に対しては、研究、普及を通じて、あるいは補償制度を設けて、環境保全に配慮した農業を進めようとしております。  このような先進国の実態を見てみますと、この三、四十年の間に高度に発達した近代的農業技術によって環境と調和しつつ安全な食糧を持続的に生産できるという保証があるとは言いがたいように思われます。  一方、既に述べましたように、人口増加に伴う食糧需要に対応するためには単位面積当たり収量増が求められており、そのためには品種改良など他の手段を用いるとしても、特に発展途上国では一層の機械化、化学化を避けて通ることはできません。このように考えますと、農業あるいは農業技術世界的に見ましても現在大きな壁に直面しつつある、あるいは既に直面している状態にあると言っても過言ではないように思います。  このような状況のもとでは、我が国の農業基盤の強化充実を図っていかなければなりませんし、国際化の中では、先進国の農業はもちろん、発展途上国における農業生産量の動向だけではなくて、農業生産の基盤となっている農業技術の実態、その変化、動向に注目しつつ、中長期的な見通しを持って我が国の農業、食糧問題に対応していくことが極めて重要であると考えております。  以上で発表を終わらせていただきます。
  52. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、高野参考人にお願いいたします。高野参考人
  53. 高野博

    参考人高野博君) 全中の高野でございます。この特別委員会において意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございました。感謝を申し上げます。  最初に、ウルグアイ・ラウンド農業合意関係でございます。  農業は食糧生産を第一義としておりますが、それにとどまらず、環境や国土の保全を初めとして多面的な機能と役割を果たしております。食糧供給の経済的効率性だけで評価することには大きな誤りがあると思います。農業生産は自然や地理的条件に制約されております。世界各国におけるそれぞれの生産条件を無視し、農産物貿易ルールの原則を関税化としたウルグアイ・ラウンドにおける農業合意の内容については、日本の農業者の立場からすれば基本的に反対であります。  このような関税化は、生産条件の劣った国の農業を崩壊に導きかねません。経済的効率性が優先される工業製品の貿易のルールを農産物貿易のルールとしてよいのか、強い疑問を抱かざるを得ません。さらに、農産物の輸出国と輸入国の公正さが保たれていない不公正な内容であることも強く指摘しておかなければなりません。また、我が国農業の基幹作物であるとともに国民食糧である米について、関税化の例外を確保したとはいえ、その代償として国内需給動向に関係なくミニマムアクセスという膨大な義務輸入を課せられたことにつきましては、国内農業の縮小につながりかねないものと言わざるを得ません。  一方、地球規模で見た二十一世紀の食糧と人口、環境の関係につきましては、爆発的に増加する人口に食糧生産が追いつかないこと、これ以上特定の国、地域での集中的食糧生産を行うのは環境破壊を進行させることが懸念されております。世界各国がみずからの農業生産資源を最適に活用して持続可能な農業生産を行う、そして国内自給を基礎とした食糧供給の安全保障を確保していくことは、一国のエゴイズムというようなものではなくて世界全体の課題だと考えます。  この見地に立って、平等かつ公平な新たな農産物貿易ルールの確立に向け、早急に我が国政府として取り組むべきだと考えます。  次に、WTO国内対策関係でございます。  ガットウルグアイ・ラウンドの結果を踏まえたものが今回のWTO設立協定であり、しかも一部条項の受諾の諾否を選択できない、いわば一括受諾方式であると聞き及んでおります。したがいまして、国会における慎重な審議が行われ、国会においてWTO設立協定を批准するかしないか、もし批准するとなれば、農業合意の内容に種々の問題があることを踏まえて、それは恐らく高度な政治的な判断であると受けとめざるを得ないわけでございます。  政府は、昨年十二月十七日、「影響を最小限に食い止め、その不安を払拭し、安んじて営農にいそしむことができるようにする」、そのために万全の対策を講じるということを国民に約束したわけでございます。さらに、先月二十五日には緊急農業農村対策本部において、ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を施策として決定し、同時に地方単独施策を含めれば総事業費七兆二千百億円の財源措置を明らかにしました。また、今回の対策はウルグアイ・ラウンドに伴う新しい事業であり、従来の農林予算に支障を来さないよう配慮することが政府と与党の間で合意されておる旨聞き及んでおります。このことをこの合意に沿って確実に実施してくださるよう強く求めるものであります。  関連対策の事業には、我々が繰り返し今まで求めてまいりました農家の負債、農地流動化、新規就農、中山間地域等々の対策が盛り込まれております。今後の農業再建と農村活性化への足がかりになるものと考えております。したがいまして、この対策を実効ある施策として具体的に実施することが肝要であります。さらに、先進諸国の中で異常に低い食糧自給率の将来的な改善を目指して、国内生産の維持拡大を基礎とする国内農業の持続的発展と農村の活性化を図るため、こういうことを内容とした食糧、農業、農村に関する新たな基本法を広く国民全体で議論する中で制定していただきたいと存じます。  次に、主要食糧法関係でございます。  現行の食糧管理法につきましては、国民食糧の安定供給に関し重要な役割を担ってきましたが、自主流通米の著しい拡大、それから経済実態との乖離などの中で見直しの時期にあったと認識いたしております。そのような意味で、今回、食糧管理法を廃止し新たな法制度に移行することは必要であると考えておりますが、新制度でも国民の主食である米の需給価格の安定に国が責任を持つ制度の意義はいささかも失われていないと考えております。  そこで、第一に計画制度についてでございますが、今回の制度は、政府が計画制度を中心に需給価格の安定を図ることとしております。計画のもとで生産調整の円滑な推進や備蓄の機動的な運営、適正かつ円滑な流通の確保、輸出入の一元管理が行われることとなっております。したがいまして、国内産米の需給に影響を与えないミニマムアクセスの取り扱いとするとともに、このような基本計画の策定に際しましては、消費者と生産者の意向に十分配慮した運営がなされることを要請したいと考えます。  第二に、需給価格の安定に向けてとりわけ重要となるものが的確な生産調整の実施でございます。今回の制度で初めて生産調整が法律に位置づけられることになりました。これは評価できますが、具体的にその実効が確保されるかどうかについては今後の運用にゆだねられている部分が大きいと言えます。とりわけ、生産調整参加者が不利にならず必要な生産調整数量を確保できる助成金の体系や水準の確保、それから生産調整手法の多様化、さらには登録出荷業者の生産調整関連業務への従事の明確化等について、十分生産者団体の意向を踏まえていただきたいと考えております。  さらに、生産調整の推進につきましては、政府、自治体の行政側と生産者団体が一体となって取り組むことを基本とすべきだと考えます。  第三に、備蓄制度の運営についてであります。  稲作が自然条件に左右され豊凶変動を避けられないということから、一定の幅を持った弾力的運営を進めることを基本とし、その水準については百五十万トンから二百万トン程度が確保されるべきだと考えます。また、政府が備蓄の実施主体となることを原則といたしまして、これに必要な財政措置は国民生活の安定に欠くことのできないものとして確保することが必要だと思います。さらに、需給状況に応じ民間備蓄や調整保管を実施せざるを得ない場合には、これに対する助成措置と円滑な販売を可能とする運営方法を確立すべきだと考えます。  第四に、流通の基本となる計画流通米の確保対策についてであります。  米の需給価格の安定のためには、自主流通米と政府米から成る計画流通米が流通が大宗を占め、登録業者を通じた安定的な流通になることが必要であります。このため十分な助成措置を講じるべきだと考えます。また、生産者に対する計画出荷基準数量の配分手続や、登録出荷業者や自主流通法人の販売先等、計画流通米について政令以下で定める事項が多々残っておりますが、これにつきましては生産者団体との意見調整を十分行ってお決めいただくようお願いしたいと考えております。  第五に、米の価格形成のあり方についてでございます。  政府米の買い入れ価格については、自主流通米価格の動向、それから需給動向、さらに生産条件等を参酌しながら決めるということになっておりますが、生産調整参加者からしますと、政府買い入れ価格が米価全体の下支えとして機能するものと受けとめざるを得ないわけでございまして、再生産確保の視点を重視して算定方法や水準が設定されるべきだと考えます。  最後に、ミニマムアクセスによって外国産米が輸入される中では、消費者に対する的確な情報を提供するための表示制度の強化等が必要であると考えております。  次に、個別品目関係でございます。  輸入農産物と対抗するため、生産者は競争力強化に不断の取り組みが必要でございます。また行っておりますが、努力にも限界があると言わざるを得ません。今回、米以外の各品目については、既に自由化されている品目についてさらに関税が引き下げられるわけでございまして、乳製品、でん粉等に対する関税化の導入等、その存立条件は一層厳しいものとなっております。  個別品目の対策につきましても、各作目別の経営が確立するよう、価格の安定と需給調整対策の拡充強化、さらに加工・流通施設の集約合理化、技術の確立と普及等、作目の特性に応じた多様な対策が講じられるべきだと考えております。  最後に、農協みずからの事業と組織関係でございますが、農産物貿易の枠組みが新たなものとなる中で、国内農業の持続的な発展に向け政策的対応を確立するとともに、組合員の負託と期待にこたえてJAグループとしても最大限の努力をしていくことが必要になっておると考えております。  農協の事業並びに組織のあり方に関しましては種々の批判がございますが、中には誤解に基づく批判もありますし、また率直に耳を傾けなければならない批判もございます。JAグループといたしましては、ことしの九月に全国大会を開催いたしまして、「二十一世紀への農業再建とJAの改革」、これに取り組むことといたしております。その内容は、食糧の安全保障と国土環境保全を図る日本農業の再建と農村の活性化、さらには組合員との結びつき、消費者との連携を基礎とした協同活動の強化をうたっておるわけでございます。  こういう方針に基づきまして、組合員の期待と信頼にこたえるJA事業の改革、組織の改革、経営体質の構築を図ってまいりたいと考えております。このためにみずから努力いたす所存でございますが、先生方のさらなる御指導、御鞭撻をいただきたいと思います。  以上でございます。
  54. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、日和佐参考人にお願いいたします。日和佐参考人
  55. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 日本生活協同組合連合会の日和佐でございます。本日はこの場で陳述する機会をいただきまして、大変ありがとうございます。  今回のWTO協定は、経済の一層のグローバリゼーションが進展する中で、経済のブロック化、排他的保護貿易政策が危惧される中で、国際的な自由貿易体制を整える大変大切な内容を持っているものと考えております。しかしながら、これまでの陳述にもございましたように、農業分野合意ではほかの工業製品と同様の貿易ルールに農産物を当てはめようとする問題があります。中期的な人口や食糧問題の見通しの視点からも、将来に向けて日本が国際世論をリードしてその転換を図ることが必要だと考えております。  日本の米の部分開放は、ミニマムアクセスとあわせ日本農業のさらなる衰退に道を開くおそれがあります。本当に農業者への支援につながる万全の国内対策が必要であると考えております。これ以上の自給率低下を防ぎ、自給向上への明確な目標を持った抜本的農業政策の確立が必要です。  あわせて、今回の新食糧法案の検討に当たっては、本当の意味で意欲ある生産者の力強い農業経営の発展や米消費拡大・活性化につながるものとなることが非常に大切だと考えております。さらに加えて、安全性の検査や流通の公正さ、透明性の確保、表示制度の抜本改善などについてもぜひとも盛り込んでいただくことが必要だと思っております。  農業に関する協定に関連しましては、皆様、参考人方々が大変詳しくお話しになっていらっしゃいますので、私、本日はWTOを設立する協定及び附属書の協定の中で特に衛生植物検疫措置の適用に関する協定、SPS協定に関連して、そちらを中心に意見を述べさせていただきたいと思います。  SPS協定では、国際的に透明で恣意的な差別のない貿易ルールを確立するために、FAO・WHO合同食品規格委員会、コーデックス委員会の定める国際基準に各国の基準を合わせることを義務づけてございます。食品の安全基準は科学的な検証が公正で厳密に行われることが必要です。科学的な検証が適正になされ、我が国の食品の安全基準にとっても改善につながるものであってこそ本当の意味国際貿易の新しいルールづくりとなり得るのではないでしょうか。そうした意味で、この食品の安全基準の国際平準化の規定については、日本の食生活の実態を踏まえて科学的な検証を十分に行い、国民の合意を得ながら対応していくことが極めて非常に重要であることをまず指摘しておきたいと思います。  このSPS協定を含むWTO協定の国会批准の動き背景としながら、現在、厚生大臣の懇談会として「食と健康を考える懇談会」が設置され、検討が進められています。この懇談会は、食生活の多様化、食品流通の国際化、規制緩和等、食をめぐる環境変化に対して、食と健康をめぐる問題を検討し、新しい食品保健対策のあり方についての基本的方向を明らかにすることが目的です。そして、政府はこの懇談会の報告を踏まえて九五年通常国会に食品衛生法の改正案を提出する予定とされています。  今回の食品衛生法改正に向けたこの懇談会で検討されている事項は、従来消費者が要求してきた内容と関連するものを大変多く含んでいます。食品衛生法の改正においては、食品の安全基準の国際平準化という側面のみを問題にするのではなく、国民生活の立場に立った安全、安心の考え方を基本的な立脚点にした法改正をきちんと進めるべきだと考えております。  これらに関連して、二、三申し上げたいと存じます。  まず、食品衛生行政にかかわる情報を公開し、消費者の疑問や意見を十分反映できるシステムを整備していくことが重要と考えております。現在、例えば食品添加物の指定等を審議する食品衛生調査会について、指定の要請等の経過や安全性に関する検討等、審議内容がほとんど公開されていません。したがって、消費者として懸念していた事項について、どのように検討され結論づけられたのか十分な情報が得られないのが現状です。  アメリカでは、食品衛生行政上の決定に対する上告制度、公聴会の開催の請求制度などがありまして、FDAの調査委員会による申請データの独自の調査や、賛否双方の側の推薦する研究者に自由に討論させてその結果をFDAに報告させる審議会実施、官報での行政側の論点の明示ができるようになっています。また、研究者からのFDAへの質問、意見には丁寧な回答がなされており、行政の内部文書も情報公開法によってだれでも入手することができるようになっています。我が国においても食品衛生行政にかかわる情報を公開し、消費者の疑問や意見を十分反映できるシステムを整備していくことが急務と考えております。  次に、食品添加物行政の問題についてですが、これについては、まず新たに添加物の指定を検討する際には事前に安全性の資料を公開すること、指定された食品添加物については最新の研究に基づく安全性の評価を積極的に実施し、指定削除も含めて不断の見直しを行っていくこと、使用実績がなく必要性に乏しい食品添加物は直ちに指定削除することなどが重要な点だと考えております。  また、天然添加物についても指定制度を導入することが必要と考えます。これは今回の食品衛生法の改正の中でも厚生省がその方向で準備なされているとのことですが、指定制度の導入に当たっては、今後新たに指定される添加物だけではなく、現在使用されているものについても古来から食生活になじんできたもの以外すべて対象とすることが重要であると考えます。  残留農薬規制の強化も非常に重要な問題だと考えております。現在、世界全体では約七百、日本国内では約三百の農業が使用されています。国内で使用される約三百の農業については、平成六年十月現在八十六農業に残留基準が策定されていますが、残りの二百余りの農業については、残留基準が設定されていません。また、海外でのみ使用されている農業については、残留基準が策定されているものはたった十七農業にしかすぎないのが現状です。残留基準が設定されていないと実質的な規制は実施できません。国内で使用されている約三百種のすべての農業について早急に残留基準を策定すること、海外で使用されている農業についても使用実態を踏まえて残留基準の策定を進めること、基準の策定に当たっては目標を明確に定めて具体的な計画を立てて着実に進めていくことが重要だと考えます。  また、既に登録保留基準が策定されている農業について新規に残留農薬基準を策定する場合には、登録保留基準との整合性を確保することは言うまでもないことだと思います。  また、今後新しい農業が登録される場合には、同時に食品衛生法で残留基準が設定されるような仕組みにすることが必要だと考えております。現在、農業の登録は農水省、残留基準の策定は厚生省となっております。農産物の衛生規制として十分連動していないというのが現状です。情報が一元的に把握されて効果的に運用されるべきでありまして、今後は農業が登録されるのと同時に残留農薬基準が設定されるという連携を持った仕組みにすべきだと考えております。  これらの問題に関してはまだ指摘したい点がございますが、今回のSPS協定自体の中身の解釈で心配される点があるので、ここで述べておきたいと存じます。  この協定の十三条に、「加盟国は、白国の領域内の非政府機関及び自国の領域内の関連団体が構成員である地域機関がこの協定の関連規定に従うことを確保するため、利用し得る妥当な手段を講ずる。」と規定されています。ここでいう「非政府機関」の解釈が必ずしも明確にされているということにはなっておりません。  そもそも民間の団体、企業等が社会的規制の枠内で取り扱う商品の品質基準を自主的に定めて自由な商取引を行うことは自由主義経済の基本であると思います。SPS協定がそうした自由経済を否定するものとは考えませんが、万が一でも例えば生活協同組合など消費者の自主的組織も該当するなどということが起こらないように、政府においては明確にしておいていただきたいと考えます。  最後に、この場で陳述をさせていただく機会を与えてくださいましたことを再度感謝申し上げますとともに、WTO協定に関する情報が政府から国民に対して十分に公開されていないこと、かつ国会審議の状況が消費者サイドの危惧や素朴な疑問にこたえ得る国民的に開かれた論議になっているとは言いがたいことについては、大きな問題と認識していることをつけ加えたいと存じます。今後、国会での議論が国民に開かれた徹底した審議になることを期待したいと存じます。  以上でございます。
  56. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  次に、雨宮参考人にお願いいたします。雨宮参考人
  57. 雨宮正子

    参考人雨宮正子君) 本日のこの参考人として選んでいただいたことに感謝いたします。  私は、子供の健やかな発達を願って、そして今このWTO世界貿易機関ですか、この一括採択という方向で今国会で審議をされているということにつきまして、非常に危惧を抱いてここに立ちました。  私たちは、子供たちの健やかな発達を願う上で、長い間、三十年有余をかけて安全な食をということで研究調査を続けてまいりました。そして、子供たちには豊かな学校給食をということで進めてまいりましたが、今回のこれが一括採択という方向がとられますと、農業の問題、そして食品添加物の問題、私たちは、すべて今まで禁止されていたものまで、日本厚生省が禁止していたものまでが一括に許されていくということに非常に不安を抱きます。長い間かかってサッカリンの問題、リジンの問題等々についても厚生省が多くの国民の声を受けて禁止してきました。それがここで一括すべて通っていくということになりますと、どういう状態になってくるだろうか。  今回の中には、農業については、国際基準で急性毒性が非常に強い農業、残留農薬、例えばお米には2・4・5T、これはベトナムの枯れ葉作戦に使われたものである、その農業まで残留性が認められるという話。それから子供たちの好きなイチゴ、これにはBHCが日本の使用の十五倍、DDTが五倍、トマトにはキャプタン、殺虫剤ですね、三倍、マラチオンが六倍という形で非常な農業が入ってくる。  さらに食品添加物につきましても、現在使われている食品添加物は三百四十八ございますが、これも先ほどの方がおっしゃったんですけれども、食品衛生調査会で一九八三年に認可されるときには十一品目の認可が、外国の圧力で段ボールに三杯の試料があっという間に三時間で通されてしまった。この中にはBHTやBHA等安全性に疑問のある、あしたから使ってはならないというものまで入っていた。さらに一九九〇年には七品目、赤色四〇号等発がん性物質の着色料までがありました。それも外国の圧力で段ボール二杯の試料があっという間に認可されたという、そういう経過の三百四十八プラス今回は日本厚生省が禁止している添加物七十九種、この中には亜硝酸ナトリウムというような発色剤がございます。これは発がん性の物質だということで非常に危険なものであるということに危惧を抱くわけです。  さらにホルモン剤で、肉ですね、牛を早く大きくするということでホルモン剤で促進をしていく。そのホルモン剤についても、アメリカやオーストラリアの牛肉等には七種類も認可されている。日本の子供たちに、ホルモン剤の注射がされている牛肉が入ってきて学校給食にこれが通されていくということになったらどうなっていくであろうか。  昨年の米不足の折にも私たちは、かつて十年前に韓国から大量の臭素米が輸入され、それが学校給食に回されたということがありましたので、日本の子供には絶対そういうものは食べさせたくないということで、昨年の米不足のときにも多くの先生方やお母さんたちが運動をし、国産米をということを続けてまいりました。  しかし、ここで食管制度が堅持されなくなっていった場合どうなるんだろうか。たくさんの米が輸入されてきた場合どうなるんだろうか。その場合には一番犠牲になるのは学校給食ではないかということだとか、それからいまだに脱脂粉乳で保育園の子供たちが、全国三〇%ですが、アメリカの余剰農産物の脱脂粉乳で給食をさせられている。そういう話を聞かされると、これでいいんだろうか。  さらにさらに外国の余剰農産物がどっと入ってくる。そして、日本では使われていない農業が、日本では禁止されている食品添加物が使われている。残留性も、あっと言う間に、コクゾウムシが一週間で死んでしまうようなお米が入ってくる。そういう形を許しておいていいんだろうかということで、私は子供たちの健康を守るためにもどうしてもきょうは国会の皆さんに聞いていただきたい。子供たちのために、二十一世紀を担う子供たちのために、安全な食料を確保するのは国の責任ではないかという立場で立たせていただきました。  ホルモンの促成剤が発がん性の危険もあり、さらにこの食品添加物は日本では使われていないものが使われる。そして今、日本の子供たちは三人に一人がアレルギーの症状を呈している。さらに二〇〇〇年には二百万人の国民が骨粗鬆症になるであろうという警告が発せられている。それはなぜかといえば、一日に食品添加物が十グラムから十五グラム、その食品添加物の作用によって子供たちの体からカルシウムがどんどん失われ、そして骨組糧症になっていく、健康が非常にゆがめられていくということなんです。  淡路島の奇形猿の問題が、一九八七年に全国農村映画協会がつくりました「それでもあなたは食べますか」というところに登場しています。外国の残留農薬のたくさん含まれた穀物を食べてあのような奇形猿が出現しているということを見せられたときに、本当に外国の農業ずくめの穀物などは日本の子供には食べさせたくないという思いです。  最後に、日本の子供には日本の食べ物で日本の生産物でということで、私たちは三十年来、学校給食を守り発展させる運動を続けてきました。それがこのWTOの一括採択という形になりますと、本当にあっという間に、三十年間文部省も厚生省もそして農水省も一生懸命になって考えてきた日本の子供たちの健康のことが一挙に崩されてしまうんではないか、そういう危惧を抱きます。  秋田大学の島田彰夫先生が「身土不二を考える」という本をお書きになりました。その本の中には、二十年間の日本人の体の疫学調査の上に立って、日本人は日本の地に根づいた食べ物を食べることが最高の栄養である。先ほどから環境の問題、地域保全の問題、農業保全の問題が出されていますけれども人間の体にとってそこの国の食文化ほど最高の栄養はない。日本人の食べ物というのは米食です。外国に比べて米を食べる率は非常に多いわけです。その日本人が外国からの余剰の農産物、それをたくさん買わせられて、残留農薬のあるものを買わせられて食べるということではなくて、国内でできたもので日本人の健康を保っていく。身土不二、人間の体は二つない。そこの地域でとれたものを食べることが最高の栄養である。二十年間の調査の結果まとめられた本です。  私はこれを読んで、日本の子供には日本の生産物で、二十一世紀を担う子供たちには本当に豊かで安全な国内産の食べ物で学校給食を、そして日常の食を、そしてそれは日本人の健康を守る食文化である、日本の食文化であると思うんですね。食品衛生調査会、あらゆる機関の方々もその立場に立ってぜひ日本の食の安全ということを守っていただきたい。その立場から今回の一括承認ということは絶対に許せません。  私たちは消費者の立場でもあるし、子供の命を守る立場でもあります。それから私自身の健康の立場でもあります。日本人の健康を保持するために日本の生産物は最高なんだという立場に立って考えたときに、自然と食べ物というのはまさに一致している。  せんだって、十一月二十七日でしたか、朝のNHKのテレビでカキの養殖業者が、松島湾で養殖をするのに何が一番いいかということを言っていました。えさに一番いいのは山の木と海の水である。山の木から落ちてくる枯れ葉、それはカキの養殖にとって大切な養分であるということを言っていました。  この話を聞いたときに、私たちの日本の国土からとれるものをみすみす見逃してはならない。日本の生産物をもっと増大化させて、そしてガットのこのような農産物、食品添加物、農業、そのようなものが含まれた貿易絡みのこの協定、国民の健康より貿易優先の協定には絶対合意をしていただいては困るということを切にお願いして、私の陳述とさせていただきます。  よろしくお願いいたします。
  58. 矢田部理

    委員長矢田部理君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 ただいま四方の参考人からそれぞれ大変有益な陳述をちょうだいいたしました。とっさのことでございますが、ただいまからひとつそれぞれ参考人の皆さんに質問をいたしていきたいと思います。  まず石原先生、実は環境保全型農業について大変うんちくのある造詣の深いお話を聞いたわけでございます。これは国の農政の中でも言われて久しいわけでございますけれども、なかなか体系的にそして普遍的に実用化されていないという問題があるわけでございます。もちろん、農業そのものが国土保全、環境保全の役割を果たしておるということだけが強調されて、農業の中での環境保全型農業というものが少し置き去りにされておる気配があると私どもも思っております。  そういう意味で、先ほどお話がございましたいわゆる環境保全型の中で、日本の農業の実態に合わせた場合、狭い国土でございますから、特に輪作体系の中で環境保全型の農業を実現していく、これはまことにそうしなきゃならぬと思いますが、それについては、さっき申しましたように、やっぱりまだ体系的に普遍的になっていない。だからそのネックは何なのかということ。行政の対応、いわゆる国の試験研究開発それからシステムづくり、これが遅れているんじゃないかなと思うんですが、その辺のところのひとつ率直な石原さんのお考えを聞いておきたいと思います。
  60. 石原邦

    参考人石原邦君) 先ほど申しましたように、確かに環境保全型農業というのは現在の段階ではまだ点的でございまして、なかなか面にならないという面がございます。  輪作体系の問題につきましては、先ほど申しましたように、我が国では本来的に輪作体系というものが確立された経験を持っていないというふうに私は思っております。ヨーロッパの場合には、もう御存じと思いますけれども、いろいろ畜産と結びついた輪作体系というのができ上がっておりまして、現在でもその考え方は脈々と続いているというふうに思っております。  私はイタリアで少しその面を調査したことがございますけれども、イタリアの場合では、例えば多年生の雑草が出てくるというようなことになりますと、もう作付体系を変えて、夏、乾燥状態に置いて多年生の雑草の地下茎、根を乾かして殺してしまう、そして次の作物を植えるということをやりますし、イタリアでは稲をつくっておりますが、例えばいもち病が出てくれば、もうこれは稲を長くつくり過ぎたんだというので、すぐやめてまた別の作物をつくる、そしてまた稲に戻す、基本的にそういう輪作体系の中で生産をしていくという考え方がもう身についているというふうに思っております。日本の場合には、残念ながらそれがいまだにないというふうに私は思っております。  ですから、それは簡単なことのように思いますけれども、やっぱりその考え方が浸透していき、それは農家にも技術者にも、あるいは先ほどもちょっと申しましたが、消費者側にもそういったことの考えが根づいていくということが必要だというふうに私は思っております。したがって、余り簡単にどんどん進むというふうにはなかなかならないのではないか、かなりの努力をやっていかなければならないのではないかというふうに思っております。
  61. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 ありがとうございました。  もう一つ、これを阻んでおるものの一つに、経営規模、それから経営体の質の問題があると思うんです。ヨーロッパではおおむね二、三十ヘクタール、日本では非常に狭いその何十分の一という、それがかえって阻んでおる。ですから今、環境保全型の農業、輪作体系なんて取り上げたのは、ただ所得を確保するための手段、いわゆる米の生産調整のあいたところに輪作体系を組むといったようなことであろうと思いますが、やっぱり規模的な阻害要因が相当これはあるんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  62. 石原邦

    参考人石原邦君) 規模の問題は先ほどもちょっと触れましたが、日本農業というのは非常に規模が小さく来ました。したがって輪作体系の中で、例えば雑草を防除するというような考え方はなくて専ら手で取っていたということでございます。例えば除草剤についての考え方でも、日本の場合には手で取っていたものを薬にかえたというにすぎません。ところが、今おっしゃった三十ヘクタール、四十ヘクタールのアメリカ、ヨーロッパの農業では、除草剤というのは今までできなかったことができるというものである、そのくらいの違いがございます。  規模が大きくなればということでございますが、北海道はかなり規模が大きい農業でございますけれども、やはり豆の連作が続くとかそういったことで問題がありまして、輪作体系は必ずしもできておりませんでした。ただ最近、北海道などで野菜の生産では、三十ヘクタール持っていれば数ヘクタールで野菜生産は十分穀物生産に見合うということで、完全な土づくりのために全体を利用して、本当の作物といいますか、お金にする作物は三年とか五年に一回つくればよろしい、そういうことでの輪作体系は確立しつつあるように思っております。ですから規模の拡大ということも、もちろんそれが大前提ですけれども、やはり考え方の問題というのが非常に大きいというふうに私は思っております。
  63. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 次に、全中の高野常務は一番最後にお願いすることにして、生活協同組合の日和佐さん、先ほど安全性の問題を特に取り上げて御高説を伺いました。  問題は、一つはお話の中に国際的な安全性基準についての平準化の問題がございます。これは国際的に見てみるとまだ相当な等差があるわけですね。したがって、我が国が外に対して門戸を開放して、どんどん農産物が入ってくる、出ていくのは少ないわけですが、入ってくるという状態の中で、特に日本の安全性基準をきちっとしたものにし、そしてそれに合わせた平準化をやっていかないと、今のところ私は、この安全性のことについてはやっぱり日本より世界各国はおくれているのじゃないかと、実はそう思っておりますが、その点についてはどういうお考えですか。
  64. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 世界のレベルと日本のレベルがどうかというお話ですが、それは世界のレベルが劣っていて日本のレベルが非常に高い、そういうことは一概には言えないのではないかというふうに思います。  といいますのは、食生活というのはその国によって違ってくるわけですね。ですから、主にどういう物を食べているかということ、さまざまな食品がある中でどういう食品群を中心にして食生活が構成されているかという問題とかかわってくるわけですから、どうしてもその国によって食品添加物の規制というのはそこの国の食生活を中心にしていかざるを得ないということがありますので、日本アメリカと比べてアメリカの方が劣っていて日本の方が優れているというふうな単純な評価はできないというふうに思います。  ですから、部分的には日本が非常に先進的な部分もありますし、基準が厳しい分野もあります。けれども、逆にアメリカの方が基準がしっかりしているという分野もある、そういう状況だというふうに私は考えております。
  65. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 私はよく仕事で海外に行っております、今は余り行きませんけれども。外国から眺めて見ると、日本人ほど安全性に敏感な国民はないような実は気がします。それはだれが培ったかというと、やっぱり日和佐参考人の母体である生活協同組合だとか主婦連だとか、大体日本の家庭を預かる人々が消費運動の中でレベルを高めてこられた。それが基準につながり、基準をずっとレベルアップしていくのにつながってきたと私は思っております。しかし今、外から入ってくるのが多いわけですから、やっぱりそういう頭で私どもは対処しないと、残留農薬の問題にしても食品添加物の問題にしても、あるいはポストハーベストという、これが非常に大きな問題だと思います。それで、波打ち際で完全かというと、私は今の厚生省なり農水省の植物防疫なりあるいは検査体制ではなかなか容易じゃないと見ております。  したがいまして、そういう点で情報公開することによって消費者とそれからそういうチェック機関との間がだんだんきちっとしたものになっていくと思いますが、その点についてなお何か特にございますれば、ひとつお教えいただきたいと思います。
  66. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 先ほどもお話しいたしたように、本当にこの食品衛生調査会での審議状況というのが消費者のところ、消費者といいますか国民ですね、国民全体に情報公開されていない。なおかつ、ここのWTOに関しても同じだなと私は実は思ったのでございますが、昨日こんな厚い資料をいただきました。昨日いただきましたので、私も老眼がいささか進んでおりまして、一日でとてもこれだけの資料を読むということは不可能でございます。ですから、持ち得た情報の中の範囲できょうは意見を述べさせていただいたという状況でございます。  全く同じことが食品衛生にかかわる重大な問題を審議する食品衛生調査会のところでも行われているということです。それが十分な審議につながらないということと、情報の公開制につながっていないわけですから、例えばそこで正しい、間違ったことが行われているわけではないと仮にいたしましても、国民は情報を持っていないがゆえに余計違うのではないかというふうに思ってしまうわけです、消費者は。ですから、おやりになられる方もやり方が下手なのではないかと私は思っておりまして、むしろオープンにして議論をきちんとする、そういうことを積極的にやっていただくということで国民の合意は得られていく問題が結構あるのではないかなというふうに思っております。  それからもう一つ、国際機関にかかわっては、これだけの経済大国としてのある意味では力を持っているわけです。ですから、コーデックス委員会等に対してもしっかりと日本立場をきちんと主張できる委員の選出をして送っていって、しっかりとそこで日本のお立場を主張してきていただきたい、そういうふうに願っております。  以上です。
  67. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 まことにありがとうございました。日本立場をしっかり国際機関にも主張していかなきゃならぬ、私もそういう点では少し日本は弱いんじゃないかと思っております。  これは私の関係する植物防疫法の彼我の扱いなんかを考えてみますと、やっぱり非常に弱い。これはひとつ政府のしりをたたいて私どもがやらなきゃならぬことだ、こういうように思います。今後ともひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。  それから雨宮参考人、ちょっと角度は違いますが、大体同じようなことでございます。しかし、もっと強く言えば、実は学校給食という一番の揺籃形成期の児童を中心にしていろいろと安全の問題について、命を守ると、そういう立場から努力していただいております。質問がダブりますので割愛させていただくことをお許しいただきたいと思います。  次に、全中の高野常務さんでございます。いろいろ、今、陳述いただいたわけでございますが、一つ出たのは、東京ラウンドにしてもガットウルグアイ・ラウンドにしても、いわゆる経済効率性の追求がなされておる。多面的な機能と言われながら実際は協定文の中には前書きでちょっと触れてあるだけで、実は中身は何にもないということがあるわけでございます。  今、非常に人口問題、環境問題、それらが言われておる中に、やっぱり今のような鉱工業製品等の貿易ルールをそっくりそのまま当てはめていくということは、これは今後の貿易ルールをずっと延ばしていくについて何とか改めなきゃならぬ、制度のやり方そのものを変えなきゃならぬという、これは大変な私は問題を残しておると思うんですよ。  そうした場合、そういったようなことについて国際的な世論を形成しなきゃならぬ。これが足りないといえば足りないわけでございますが、幸いJAでは国際組織を生活協同組合も含めて持っておられますね、コープというのを。こういうところで家族経営を中心にしたコープの一つの力、特に私は第一にヨーロッパだと思いますけれども、そこから巻き起こしていくということを継続的にやらないといかぬ。  私ども、行政なり国会もこれは第一義的に責任はございますけれども、むしろ国際世論を巻き起こしていくということ、そういう意味ではWHO、人口会議その他いろいろありますね。こういうものに対する働きかけが、ただウルグアイ・ラウンドの交渉そのものにかまけるんじゃなくて、やっぱりそういう幅広い点からひとつ運動をやらなきゃならぬと我々も非常に反省しておりますが、客体でありますJAあるいは生活協同組合一体になって、いわゆるコープが一体になって、家族経営の客体が一体になって今後運動を巻き起こしていただきたい。  これは私からのむしろお願いでございますが、その点について高野参考人と日和佐参考人、一言ずつお考えを伺いたいと思います。
  68. 高野博

    参考人高野博君) 農業は各国によって大変状況が違うわけでございまして、極端な例を挙げますと、砂漠のオアシスの農業から日本みたいな山岳地帯の農業まで大変変化があると思います。それをアメリカとかヨーロッパみたいな広大な平野を持った国の農業で押しつぶしてしまうということは私は許されないと考えるわけでございまして、やはり各国の条件に合った農業の展開ができなくちゃならぬと思っております。  御指摘のとおり、そのためにはそういう世論の形成ということが不可欠でございまして、国際的な働きかけが重要だというのは十分そう思いますが、例えば六年後を考えますときに、結局、十五分野一括の中の一つの農業分野で再交渉しなければならぬ、これの改定を迫らなければいかぬということを考えますと、やはりそのほかの十四分野に関連ある人たちも含めた国民的な理解をどう得るかという、国内の対策が相当先行しないと実現性が乏しいということを考えざるを得ないと覚悟しております。  ということでございまして、私どもも御指摘のとおり不十分でございますので、まず国内で生活協同組合や労働組合、いろんな団体と提携を強めながら、そういうものを一つの足場にしながら国際的な連携を深めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  69. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 将来を考えますと、地球の人口というのは爆発的に増加するということが予想されておりまして、その人口を養うだけの地球規模での食糧の確保ということが問題としては大変大きな問題として将来横たわっていると思います。  そういう観点からいっても、それぞれの国が自国の食糧について自給率を上げていくということはそれぞれの国が基本的にやっていかなければいけない問題である。と同時に将来に向かっては、世界的な連帯をとって世界規模での食糧の再分配ということについても考えていかなければいけない事態を迎えるであろうというふうに考えております。  私たちも全世界的な機構として持っております世界の協同組合の人たちと一緒に、これは環境の保全の問題も大変大きな課題で同時にあるわけなんですが、一緒にそれを推進していきたい、連帯していきたいというふうに思いますが、今おっしゃられたように、やはり国内の自給率、それから農業の活性化をどう当面としては図っていくかということが非常に重要な問題ではあるというふうに思っておりまして、消費者と生産者、そこが本当に信頼し合える関係というものをいかに今後つくり上げていくかということが大変大きな課題だというふうに考えております。
  70. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 私がなぜそういうお願いをするかといいますと、やっぱり東京ラウンドにしても今度のウルグアイ・ラウンドにしても、こういう形で農業には非常に不利な扱いを受けた、これはもう紛れもないことだと私どもも思っております。  そういう意味では、それをずっと掘り下げていくと、企業的な経営、メジャーが支配する食糧輸出大国の、それから片方では家族経営の農業、これのせめぎ合いだったと私は思うんです。したがって我々は、家族経営に根差した生産者を背景にしておるJAや生活協同組合の組織いわゆるコープ組織が、特にこれは国民的な合意もさることながら、まず声を上げていくということ、腕より始めていくということが今、何よりも求められると思いますので、そういうことでひとつ今後とも御努力をいただきたい、このように思います。  それから高野常務にちょっと伺いますが、この今度の新食糧法、いわゆる備蓄が柱になっておる、そして自主流通米が主流になっているということでございます。そういうことからいたしますと、ここで備蓄というもの、ミニマムアクセスも含めての備蓄ということを考えた場合に、日本の米の需要は加工米を含めて年間一千五十万トン、これが大体スタンダードなものだと思いますが、その一千五十万トンという需要を確保するために備蓄をどうするか、どう運用するか、それから片方では生産調整、減反をどうするかということだと思いますね。  ですから、新食糧法の滑り出しかその中での枠組みをきちっとしていく一番いい機会ではないかと、そういうことについては高野参考人も先ほど言っておられます。そしてこれは、減反も今度のウルグアイ・ラウンドの協定の中で義務になっておるんですね。輸入も義務になっておるんですね。ですからこの際、そういうウルグアイ・ラウンドの合意の所産としてそこをきちっとやっていくと、枠組みを。それはどういう枠組みをやるかというと、例えて言えば、百五十万トン持っていくならば減反を、これは備蓄をずっと新しいものにかえて回転備蓄していくためには一千五十万トンなんですから、一千五十万トンは六十万ヘクタールの減反なのか、あるいは三年前やったように七十何万ヘクタールなのか、あるいは六十七万ヘクタールなのか。  そこで、去年不作だったから政府は六十万ヘクタールを二年続けると、こう言ったわけですね。ここに非常に問題があるわけでございます。それに拘束されておる。そしてそれを公表しておるものですから、農家、生産者の方々になかなか、高野参考人の全中でもここで強く言えないという問題が今、巻き起こっておると思うんです。だからこの際、そういうものをきちっとそのときどきじゃなくてシステム化していく必要があるんじゃないかと思います。  そうなった場合は、今は六十万ヘクタールはどういう場合でも減反しなきゃならぬ数字じゃないかと思いますが、そうした場合、今度は七十六万なのか七十五万なのか六十七万なのかということがある。だからその分は調整水田の考えが一つ今、農水省の中に出ておるということですから、六十万を基礎にして、年々の調整水田についてはそれこそ調整ですから、私は本当に今の生産調整奨励金ぐらいではいけないと思うんです。やっぱり米をつくったと同じようないわゆる耕起をし、そしてきちっと植えつけられる状態にして水を張っていく。水を張っていくとこれは水がめにもなるんです、国土保全にも。  だから、その分については今の減反奨励金の中で云々するということじゃなくして、そういうきちっとした仕分けをしていく必要があると思いますが、全中はそういうことについて今どうお考えになっていますか。
  71. 高野博

    参考人高野博君) 一つは、減反の強化、緩和を頻繁に変えるということは極めて難しいということはございますわけでして、そういうことをやった場合には農家の不信を買うということがございまして、そこはできるだけならさなくちゃいかぬというのはあると思います。そのためにはもちろん備蓄も弾力的にしていかなければならないということはございますが、作況の振れというのも一〇五のときもありますし九五のときもありますし、かなりの勢いで振れますので、備蓄だけでは吸収できないということはまたそれも考えておく方がよいと私自身も思います。  そういたしますと、先生の御指摘のように、米というものの形で需給変動を調整していくという考え方のほかに、水田を例えば水張りというような形で良好に保持しながら調整田という形で需給を吸収していくという考え方は、考え方として十分あり得ると思っております。ただ、農協組織の中には、何も植えないで水を張るというのはどうもしっくりこないと、やはり麦を植えたり大豆を植えた方が、少しでもやった方がいいという気持ちもございまして、多少そこら辺は議論を今後詰めなければならないというところがあろうかと思います。  ということは、まだ組織的に一致した整理はしてございませんが、私といたしますと、結局これからの新しいシステムでは、生産調整について生産者と地域の意向をできるだけ尊重してやっていくという仕組みに移り変わっていかなければならないということでございます。  そういたしますと、全国的に生産者、地域の意向を聞いて、例えば減反を強化する場合に、それを進めていきますけれども、どこかで調整し切れない時点が来るということを考えておかなきゃならぬと思います。いろいろ調整したんだけれども、つくりたいという人が多くて需給調整し切れない部分が何万ヘクタールか残ったときどうするのか。こういうことは今後、十分そのときはこういう仕組みでというのがなければならない。  これは今後にまだ検討が残っておりまして一つの不安材料になっておりますが、そのときの手法をまた考え合わせますと、先生の御指摘のように、調整田という形で優良に確保しながら、それはそれなりの今までと違うプラスアルファしたそのための補償措置をやっていくという仕組みは、先々そういう議論をしなきゃならぬということを考えましても一つの議論の選択肢として有効な対策としてあり得ると、あると私は考えておりますので、今後大いにそういう方向で議論を組織内でしてみたいと考えております。  以上でございます。
  72. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 それに関連してもう少し深く申し上げますけれども水田利用再編対策だとかあるいは活性化対策だとか、減反については名前がいろいろ変わって長い間これは継続しておるわけですね。当初は減反に対して、減反やむを得ないからやってくれと、これは非常に農家は所得を減らすから、それにはそれ相当の減反の奨励金をやるよということからスタートしたんじゃないですか。それが途中で変質しているんですよ、実は。金額ももう何分の一ですか、十分の一ぐらいに総金額がなってしまっておりますね。いつも削られて、もうそれこそ友一つという状態に減反奨励金の総枠はなっておる。  そこで、今度は自主減反ということ、ペナルティーはかけないけれども奨励金は少しばかりよということでは、それは全中とても私は生産者を納得させ得ないだろうと、こう思うんです。特に二年間は固定だなんて言っておるわけですから。  ですから、ここでそういう発想で、結局、減反奨励金だよと。これは構造政策の部分が入ったりいろいろしている、この減反奨励金に。最初は単純だったのが。十アール当たりの金額は減らしてそれにいろいろな要素、目的をつけておるというところで、何が何やらわからぬように今なっておるというところ、これをひとつ改めるということにならねばいかぬのと、今の調整水田はいずれにしても取り上げて、今度はいわゆるペナルティーはかけないというわけですから、それで奨励措置はかけるというわけですから、ここでひとつはっきりこれは農水省も対応すべきときに来ておるんじゃないか、こう思います。  ひとつそういうことで、私の考えはどうなのか、高野さんからもう一遍。
  73. 高野博

    参考人高野博君) 農政審の中でもいろいろ議論があったと承知しております。それを踏まえて今回の対策大綱は決まったわけでございますが、思想といたしまして、強制感の伴うものをできるだけ生産者、地域の意向を尊重してということが盛り込まれていると思うんです。そういたしますと、結局、生産者の意向をできるだけ尊重するという立場に立ちますと、減反に取り組んだ農家が取り組まなかった農家よりもいつも損するということではこれはもう制度が続くはずはないわけでございまして、きちっと生産調整、減反に協力した農家にはそれ相応のやはりそういう立場を選択したことが長期的に見ても自分の経営にとってもプラスだったという裏打ちがないと、この仕組み自体、三年、五年の間に崩れてしまうということははっきりしているわけでございます。  そういう観点から私も、先生と同じように、今までの転作奨励金を改めて、やはりきちっと新しい仕組みを担保し得るそういう奨励金という形で再構築していただくことを強く要請していきたいと考えるわけでございます。
  74. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 最後の質問になりますが、実は中山間地の問題、そういう点について、全中は価格政策だとかそういうものに非常に力点を置いてこの一番大事な点についてのJAとしての具体的な提案がないということを私どもは感じております。  いわゆる今の中山間地対策ではやっぱり農家が中山間地にとどまらぬ、どうかすると無人になってしまう。だから、なぜデカップリングに似たものが、日本型のものが、所得補償的なものができないか。国土保全、環境保全のいわゆる防人だという立場、これからひとつ国民的なコンセンサスを得てやっぱり日本型の所得補償に踏み切らなきゃならぬ。  政府は、今までの論議の中では、日本は非常に急峻な土地で土地条件がいろいろ多様である、それから土地の区画整理なりあるいは土地改良ができていないからその条件が合わないというのが一つ、それから国民的なコンセンサスがないということが一つということをずっと政府は強調してきておるわけですが、だからこそ私はやらなきゃならぬと思いますね。ヨーロッパのようなああいう丘のようななだらかなところができて、さらにやらなきゃならぬところの日本が、土地改良ができていないから、区画整理が済んでいないからやらないというのは私は逆じゃないかと思います。  我々もそれを主張しますけれども、中山間地対策は今度一兆二千億、それから六兆百億円の中に大体考えられておるのは、一つは土地改良に高率の補助をやる、新規作目をねらうときは無利子融資をしましょうと、いわゆる平場よりも補助率について、融資について優遇している。これが主になっておると思うんですが、それだけで下山しないという保証はないというくらいな格差が私はあると思います。  だから、今の国内対策費に重ねてそういったような社会政策的な視点で、いわゆる自然環境とそれから水と緑の防人の役割を果たしてもらうと。山林がこういうようになった以上、山林収入にもうおんぶするということができなくなってきた。だから、これが日本の国土の農業者の恐らく半分ぐらい占めているんじゃないかと思うんですが、これをやっぱりそのままにしてはやっていけないわけだから、その点については全中でもプロジェクトをされて、具体的にこれは生活協同組合、佐賀あたりではむしろ私の方に生活協同組合から連帯しましょうということを言っていただいておるようなわけでございますので、ぜひこれもひとつそういう点で取り上げていただきたいということです。いかがですか、高野さん。
  75. 高野博

    参考人高野博君) 先生方御存じのとおり、国内の農業生産の四割を中山間地帯が担っているわけでございまして、我が国の食糧自給率を例えば新しい基本法等をつくってきちっとガードしていくということを考えましても、結局、話は最後は中山間地帯の農業をどうするのか、歯どめはかけられるのか、切り捨てざるを得ないのか、その議論に行き着くと私も考えておりまして、この問題がこれからの食糧・農業政策の最後のどん詰まりの議論になってくるという気がいたしております。そういう観点から考えますと、中山間地帯の土地改良を負担率を高めてやるとか、今回出されましたような施策だけで果たしてうまくいくかどうかという点は、確かに大いに議論のある点だと思っております。  私ども、今回ラウンド関連国内対策を議論するに当たりまして全中自身が要求した中身といたしましては、中山間地の農業は、もちろん条件を限定しなきゃいけませんが、採算を考えて、中山間地で例えば稲作とかそういう農業を継続することはもはや不可能な地域がたくさんある、よってそういうところで営農を続けて、土地を荒らさない、耕作放棄しないということに着目して所得補償してほしいという要求を繰り返ししてきたわけでございますが、直接生活保護みたいな形の所得補償はどうも受け取る人も自尊心の問題等々あってなじまないという意見もあるものですから、今申し上げましたような形で何とか日本型のいわばデカップリングができないかということで繰り返し要請してきたわけでございます。  結果は、御存じのとおり、そういう形にはなりませんでして、合理化法人が耕作放棄のおそれのある農地を引き受けて、そこで山村の人を雇って耕作放棄にならないように維持するということに対して支援するという形で、かなり回り回った形で似たような似でないような対応策が具体化されるのかなと考えておりますが、そういう意味では非常に残念に思っております。  しかし、今回のラウンド対策は緊急対策でございまして、一般予算も十分あるわけでございますから、御指摘のとおり、引き続き私どももそういう施策の充実について努力をしていきたいと考えております。
  76. 大塚清次郎

    大塚清次郎君 終わります。どうもありがとうございました。
  77. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 私は、日本社会党・護憲民主連合を代表して、きょう四人の参考人の皆さんに質問をしてまいりたいと、こう思っております。  まず前段、大変お忙しい中こうして御出席を賜り、大変な御高見をいただき、そしてまた御示唆もいただいてありがとうございます。  先ほど来、それぞれの参考人からいろいろな観点から今回のWTOの批准について問題点を指摘されて、いわばこれには反対であるなどいう、私は結論的にそういう感触を得たわけであります。  先ほど来出ておりますけれども、今この地球上には五十七億人の人類が生息し、毎年約一億人ずつ人口が増加していくという状況、一方それを補うための食糧生産はどうなるかというと、現状が限界であるかという見方、これがむしろ正常な見方であるという情報もあるわけであります。だとすれば、現在の日本食糧政策、そしてまた今回のWTOの協定も含めた世界食糧生産と流通と消費のあり方、これでいいのかどうか、私は大変危惧する立場に立っております。実は、私は青森県選出でありまして、ここへ来るまでは、五年半前には生産の現場におった者として、実際稲作をし、野菜をつくり、リンゴをつくってきた立場として特にその点に危惧をしているわけであります。  そこで、座った順序からお尋ねしていきたいと思いますけれども、そういう人口と食糧と環境の条件の中で、石原先生、いわば自然栽培、それを通して安全食品、健康食品、それについては私は十分な関心はあるけれども、そういう食糧生産と人口と環境の中で人類の食糧が、石原先生が唱える、これは全部そうなるとは言わぬけれども、それが主流の生産体系になった場合にそれを補うことができるのか、その観点からひとつお答えをいただきたいと思います。
  78. 石原邦

    参考人石原邦君) 環境保全型農業というのは、今までも当然そうでありますけれども、環境と調和しつつ農業生産をやっていかなければならない、本来的にそういうものでありましたけれども、それが経済合理性を追求する余り、大型機械化、化学化あるいは単作化が進んでいろんな問題を生じた、それに対する反省としてあるんだというふうに思っております。したがって、よく言われる無農業、無化学肥料栽培とかそういったものとは本質的に違うものだと。本質的に違うとは言い過ぎかもしれませんが、違うものであるというふうに思っております。    〔委員長退席、理事稲村稔夫君着席〕  ですけれども、そういった現在の非常に近代化された技術というものを環境保全型農業という視点から見れば、やはりその技術にはいろいろな問題がある。したがって、現在先進国で非常に発達している高度な生産性を持った農業技術というものが、今後継続的に安定して持続的な生産を続けていけるのかどうかについては問題を持っているということをお話し申し上げました。  したがって、今後、人口が増加していく過程ではやはり食糧問題というのは非常に大きな問題になるであろうというふうに私自身は思っております。ですからそういう中でも、環境保全型といいますか、環境と調和しつつという点は失うことはできないわけでありまして、そう考えていきますと、やはり各国それぞれでの食糧の自給問題、自給率を上げていく問題というのはこれから非常に重要な問題であろう、ますますそれは重要になる方向に進むであろうというふうに思っております。それでお答えになるかどうか、ちょっとあれですが。
  79. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 その点に関しましては、私どもと全く一致する考え方であると思います。  日本の稲作農業というのは、私はカロリー生産の世界で最大の生産手段だと、こう思っているわけであります。何か今、稲作農業というものをその合理化農業の一面からいくといろいろ疑問視する向きがあるけれども、先生のそういう思想から行きますと、むしろ稲作農業というのはもっと重要視していかなければならぬということで一致点があるだろうと思っております。  そこで、全中の高野参考人にお尋ねをしたいと思います。  そういう環境の中で、日本は先進諸国中で食糧の自給率が最低と言われております。しかしながら、現状の農業後継者という、極めてこれから農業生産で重要である後継者が育ってない実態を見て、何が原因になっているか、全中、JAの立場、農村を指導する立場で端的に御発言いただければと思います。
  80. 高野博

    参考人高野博君) 御存じのとおり、後継者がいるいないというのは地域と作目によって差があるわけでございまして、一番厳しいのは地域でいえば中山間地域が一番厳しい、作目でいえば土地利用型の水田地帯が厳しい。その掛け算になっておりまして後継者が不足しているわけでございますが、結論は、何といいましても収入が得られないということでございまして、そのことが最大の理由でございまして、いろんな対策を講じるにいたしましても、やはり一定の収入を得てそこで生活できるという形がなければこの傾向はとまらないと私ども杞憂しているわけでございます。
  81. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 ただいま、くしくも、くしくもというよりも当然だと思います。  若者が自分の職業を選ぶのにまず今考えられることは、将来の経済的な保障があるかどうか。もう一つは、そこに住んでその住環境が他産業と比較してあるいは他地域と比較して同等の条件が得られるかということにあると思います。  農村に青年が定住しない、農業に就農しないという最たる原因は、そこにその欠陥があるから育たないとすれば、やはり経済的な保障はどうしたらいいのか、生活環境はどうしたらいいのか、そこに視点を置くならば、今、世界食糧が不足している、環境も守っていかなきゃならない、日本食糧の自給もこれ以上減らしてはならないとすれば、やはり先ほど来、四人の参考人の一致した発言がございましたが、国民合意の中でそこに定住するようなそういう条件を与えていかなきゃならないということがそれぞれの参考人からも言われておるわけでありますけれども、現実にそうなっていないところに問題があると思います。  そこで、高野参考人にお尋ねしたいわけでありますけれども、一%でも二%でも食糧の自給率を上げてそこに定着させるには、政治に対してあるいは国民に対して訴えたいことを申し上げていただきたいと思います。
  82. 高野博

    参考人高野博君) ここ五年間ぐらいの国内農産物の生産状況を見ますと、ほとんどのものが減少または大幅減でございます。生産がふえているというものはごくわずか、牛乳とか花、花木ですね、そういうごくごくわずかなものしかないわけでございまして、このまま行けばどうなってしまうかというのは、数字を延長すればもう目に見えているというぐあいに危機感を私ども感じております。  そこで、そういう中でどうやるかということになりますと、個々の農家の努力が大事だということはそれはわかりますが、国内の農業をどんなふうに位置づけていくのか、国内食糧の自給をどうしていくのかという基本的なところで、結局、国内日本農業をどうするのかという基本的なところで国民合意のもとにきっちりとした支えがなければ、個々の農家がどんなに頑張ってもどうにもならないというのが現状だと思います。もうそれの下限のとことんのところに来ていると私ども考えているわけでございます。  そこで、国内農業の果たしている食糧の安定供給の面あるいは環境保全の面、国土に対する保全の面、そういう我が国の農業、農村の多面的な役割をきちっと評価した食糧、農業、農村に関する基本法を私どもどうしてもこの際決めてもらわないと、国内の農業をどうするか、国民的な合意を単なる合意じゃなくて法律の形できちっと示してもらいたい、そのことを一つの全体の与件として個々の農家は努力する、そういうことでなければ我が国の農業も食糧の安定供給ももう続けられないぎりぎりの線に来ていると私どもは考えております。ぜひそういう施策を詰めていただきたいと思っております。
  83. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 そこで、今までの日本政府の農業政策として、私はこの点にも過ちがあるのかなと思うことは、農業の米を初めとして原料生産をすることには価値がないから、付加価値を高めるために加工や流通に参画しなさいという指導をしてきました。私は、安全な原料をつくることに最大の価値があると思います。もちろん消費者のニーズにこたえるため加工も流通のあり方も改善はしなきゃならぬけれども、生産と流通、加工、消費に行くまでで今までの政府の食糧政策というのは、生産をおろそかと言うと語弊があるにしても、生産を合理化してそちらの方の付加価値の高い部分に参入せいというのが今までの政府の方針だと思います。  その付加価値の高いという一つの大きな例として、今、花卉栽培をやらせております。そしてまたハウス園芸栽培もやらせております。付加価値の高い香辛料の栽培もまたやらせております。観賞用に重点を置いて果たしてこれで人類の、国民のカロリー生産が賄えるのかどうか、私はそこに大変な危惧を感じるわけでありますから、その点についての御感想を高野参考人からお願いしたいと思います。
  84. 高野博

    参考人高野博君) 今回の新政策もいわば地域を分けて対策を出しているわけでございまして、国内の農業をめぐる生産条件というのは非常に差が出てきておる。端的に言いますと、山間部から都市近郊では一緒に話をしてもなかなか話が合わないぐらい農業生産の実態と環境というものは差が出てきておるわけでございまして、そういう点を考慮いたしまして、例えば一ヘクタール強の整地ができる平たん部の農業と、あるいはそういうことが無理な中山間地の農業とやはり区分けして考えるということはあっていいと思っております。  先生は、態勢として付加価値だけを追いかける農業でいいのかという御質問だったかと思うわけでございますが、そこはもちろんそういうことではよろしくなかろうと思うわけでございますが、その場合、今申し上げましたように、やはり地域実態に差がございますので、そこは加味しながら大規模の水田農業の展開できるところはそういうことで取り組むし、中間地帯であるいは山間地帯で複合経営で付加価値の高いものをねらうところはそういう農業を組み立てるということで考えていったらどうかというのが私の考え方でございます。
  85. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 そこで、そのカロリー生産の手段として稲作農業がいいということで前段申し上げましたから、米の生産と生産調整の問題に若干触れたいと思います。  今回、新食糧法で、自主転作、そして転作に協力した者に対しては下支え的に価格を保障してやるという方針を出しました。私はこれは大変な危険な制度である、こう思うのであります。先ほど先輩委員からも質問が出ましたけれども、自由に耕作させた場合に恐らく過剰な状況がまた出てくる。そしてまた、ミニマムアクセスで四十万トンから八十万トンというそういう前提が今なされているわけでありますから、自由につくらせれば、自由につくるという人は自由に自分で販売するという覚悟でつくるわけでありますから、当然にして過剰な状況が出てくると思うわけであります。  ですから、当初政府でこの提案をしたときに私どもはそれに対しては抵抗をしてきたわけでありますけれども、これに対して下支え制度が将来ともできるのかどうか。例えば過剰になった場合は、現状の自主流通米の売り場ででも一般市場流通の価格を反映させるわけでありますから、当然にして価格が下がっていきます。その継続でいきますと当然にして政府米も市場流通の価格を反映させるというわけでありますから、現状よりも下がってくるわけでありますから、その点、今の制度は大変危険だと思いますけれども、それに対する御見解をいただきたいと思います。
  86. 高野博

    参考人高野博君) 時に過剰のときに新たな仕組みが大丈夫かと、そういう観点からの先生の御意見かと思うわけでございますが、転作実施者からは政府が買い入れるということが一つ打ち出されております。その場合に、買い入れる価格と量がどうなるかというのが眼目でございます。  価格についてはいろんな要素で決めるが、とにかく審議会をつくって決めると最後に結んでございますので、私どもイメージがはっきりしていないわけでございまして、私どもとすれば、生産原価を保障する価格で決めてもらいたいという主張を一貫して持っておりますので、今後具体的に決定せられる段階でその要求を強く出していきたい。そういう価格が実現すれば一つ下支えの価格が形成できると考えております。  そうしますと、その次には量でございます。量について私どもは、生産調整参加者の申し出がある場合には全量政府が決めた価格で、私ども立場ですれば生産原価を保障する下支え価格で全量買い入れてもらいたいということで一貫して要請してきたわけでございますが、御存じのとおり、そこは百五十万トンまでのところは買い入れますがそれを超える場合には民間の備蓄もやってくださいという中身になっておるわけでございます。でございますから、ここも今後の詰めになりますが、私どもは民間備蓄はやってよろしゅうございますが、その場合、差損が出た場合には生産者には少なくとも政府が買い入れる金額と同額の下支え価格が手取りとして保障されるような仕組みを何としても要求していきたいし、ぜひ先生方にもそういう観点で新たな仕組みを取りまとめていただきたいと考えております。
  87. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 今、農業後継者がなぜ就農しないかという一つの原因に、確かに経済的な問題もあるけれども、誇りを持って自分の職業を継ぎ得ない、そこに一番の問題があります。  午前中の参考人のどなたか発言がございましたけれども日本の農業の保護率がアメリカECに比べて極めて高いという御発言がありましたけれども、私どもは、今までずっと歴史的に日本の農業予算、そしていろんな農業投資額を見ても、少なくとも欧米に比べて相当な低いレベルで推移してきた、そう思っております。  自治省の最近の発表からいきますと、行政投資が地方と都市を比較して、もちろん農業だけではないけれども、それからいってもはるかに農村が人口の希薄な地帯であっても低いという、そういう統計が出ておりました。そしてまた、国家予算に比べても、国民一人当たりの国の財政投資額からいっても、農業がアメリカを初めヨーロッパに比べてはるかに低いという実態が出ているにもかかわらず、午前中のような参考人のああいう発言があるわけでありますから、そういう批判が出てくる。これほど農業者が安全な食糧を安定的に消費者に供給しようとして一生懸命努力していながらそういう評価をされるものだから、私はかいのないものだ、こう思っております。  今、東京に多くの方々が、農協の組合長を初め農業委員会のリーダー、町村長のリーダーが来ていますけれども、そういう人たちの子供は、若干語弊があるのかもしらぬけれども、ほとんどの人が後継者にしていないんです。そういう人たちは先見性があるから自分の子供は後継者にしないということなのであります。それで果たして日本の一億二千万の国民の食糧が維持できるか、世界食糧供給がそういう状況の中で果たしてそれを担えるかなんです。ですから私は、国民合意の中で温かい目で見てやって、当然にして中山間地に住む農業者については、そういう厳しい条件の中で自然を守り山を守り水を守り、そして悪条件の中で稲作、水田をやるとすれば、それが国策としてよしとするならば、当然の恵みとしてそういう措置を講じてしかるべきだ、こう思うんですが、最近の風潮がそうでないところに私は問題がある、こう思っております。  そこで、別な視点から日和佐参考人にお尋ねしたいと思います。  先ほど、今回のWTOの批准については総合批准でありますから、食品の基準も一緒にひっくるめた中での批准であるから問題がある、だからこそ反対ができないと。その問題だけで一つ一つ批准するのであれば、私は農業問題やそういう安全性の基準の問題等々については当然反対していいと思いますけれども、それができない現況の中で、すべてが国際ルールに安全基準まで同じにするということは問題だというわけでありますから、まだ言い足りない点がございましたら、強調してもう一度御発言いただければありがたいと思います。
  88. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 非常に難しい問題でございまして、ですからこの仕組みとその中身とが違うわけです。その中身については一部問題があるし、その仕組み、一条項でも反対であるならば締結できないという、そういう枠組みというものがどうなのだろうか、それは非常に問題なのではないかというふうに思っているわけなんです。  ただ、確かに今後も日本として意見が言っていける、強く意見が言っていける場が確保されているのかどうか、そのあたりについては私ども情報がありませんので判断いたしかねるのですが、日本立場としてきっちりと意見を申し述べる場があって改善されていくという可能性があるのかどうか、そこも一つの論点になるのではないかというふうに思っております。  それと、私が先ほど申し上げました農業問題、それから食の安全の問題、大部分の問題は主として、協定に一部問題のあるものももちろんありますけれども、どちらかといえば国内で我が国が我が国としてどうしていくかという、そこの問題をかなり強く含んでいると思うんです。ですから国内での国の政策、国民に対する国の政策がきっちりと行われるということの方が前提であって、国内問題の方が重要さとしては強いのではないかという感じもしております。ですから、全体としては慎重に審議した上でということになりますでしょうか。
  89. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 私も日和佐参考人と基本的に同じなんです。  私ども今まで実際生産現場におって、現在の消費者の求める品質を追求しようとすれば、私は過剰な品質を求めていると思うんです、消費者は。特に外観本位の求め方が今までの商品価値として、これは消費者が求めるのでなく流通の段階の人の求めなんです。それに生産者が踊らされて過剰な農業投資をしているという嫌いもあるけれども、最近安全に対するニーズが強くなりましたので、その点緩和されると思います。  こういうことを考えていただきたいと思うんです。農業というのは、基本的には毒性の強い農業ほど安いんです。効果が同じで毒性の少ないものほど高いんです、それだけ開発経費がかかっているわけでありますから。日本の農業というのはそういう高い農業が多いわけです。ですから必然的にそういう農業を、日本の農業使用基準というのは厳しいわけでありますから、そういう厳しい中でできた農業を使用してつくった生産費は高い。逆にアメリカを初め東南アジアも日本の農業よりもっと今では規制されてしまっている毒性の強い農業がまだ許可されて、それを現実に使っているわけでありますから、そういうものと同じ値段で競争されては日本の農家は太刀打ちできないわけです。  それから社会的条件も厳しいわけだし、それをあえて価格だけ競争させれば、今、果樹農家には外国と同じような農業を使わせてくれという言い方をする人さえあるんですよ。そうなったら消費者の皆さんは大変でしょう。そういう観点から食糧の安全性というものについては皆さん方も私どもももっと声を大きくして主張していってもいい、こう思っております。  それから情報の公開の問題、これも私ども農水委員会でいろいろ食品の安全性について追及しても、これは厚生省の問題、これは農水省の問題、そっちへ行ったりこっちへ行ったり、あるいは経済的な問題だからその守秘義務に当たってこれは公表できないとか、いろいろあるわけであります。どうぞひとつこの点については国民の世論を大きくして、むしろ国内の合意が必要だと、日和佐さん、先ほど言っているとおりだと思いますから、どうぞ今までの考え方、路線を変えることなくどんどん主張していただきたい。私ども一緒に行動したい、こう思っております。  そこで、雨宮さんにお願いしたいと思います。先ほど、命より経済優先の今回の貿易条約は許せないときっぱりと言われましたけれども、もっと言い足りない点がありましたらもう一度お願いしたいと思います。
  90. 雨宮正子

    参考人雨宮正子君) ありがとうございます。私は、きょう言いたいなと思ったことがたくさんあります。でも、今、三上先生からおっしゃっていただいて本当にうれしいと思っています。  私は、なぜ減反なのか、なぜ輸入なのか、なぜ後継者がいないのか、日本の農業をどうするかという論議を聞きながら、本当に実際に共同化、共同経営をしていく中で守っていこうと思えばできるんだということの一つの話をしたいと思っています。  というのは、千葉県に多古町というところがあります。そこでは減反政策と徴税攻勢で銚子の沖で四人の農民が投身自殺をしましたという報告が今から八年前、千葉県の食糧シンポジウムでありました。その話を聞いたときに私は、千葉県で六十五万人の子供たちがいるのに何で千葉県の子供に千葉県の生産物で学校給食をやらないで、農民だけが投身自殺をしてしまうのかということで発言しました。  翌日、私の研究所に多古町から四人の農民の方が見えて、実は私たちは、成田空港に毎日生鮮野菜が百二十種類も世界各国から入ってきて、それが臭化メチルと青酸ガスで薫蒸されて日本全国に段ボールに詰められて回っていく。それを見たときに、生産県の千葉の農民このままではいけないということで、東京に働きに行っている農民たちの子供たちみんな戻ってこいということをやりました。そして農協さんから千五百万のお金を借りて出荷倉庫をつくり、その年は二千万円の売り上げでしたと。  私のところに来たのは、学校給食に多古の朝市から届けてほしいということでした。届けようということで品川の教育委員会にお願いしました。品川の教育委員会は、あなたたちは自分たちがつくったものが売れればいいと思って来たのなら買わないよ、子供たちに安全なものを与えたいということだったら買いましょう、そういうふうにきっぱり言われて、多古の農民の人たちは地方を回復させる有機農法で安全な生産活動に励んだわけです。今、何と二十億の売り上げです。  そして若者たちは、ここから半分ぐらいの事務員さんがいるような活動になって産直活動が始まっています。それは品川にかかわらず、目黒でもどこでも産直で野菜物が学校給食に、そして消費者に宅配ですね、クール宅急便が届けられます。二十億の売り上げの後ろには、なぜ減反なのかということで、多古の農民の人たちは減反を返上しようと。去年、米があれだけなくなったということで消費者がすごく不安に思っている。ですから、私たちは家庭農園の持ち主になりました。みんな持ち主になって一年間の契約をして、田んぼに苗を植えて草取りをしてという活動をして、二万五千人がこの契約をしたわけです。  ですから、安全な食糧は千葉県の大地からということが見事に実って、せんだってこの産直活動については、韓国からぜひお話しに来てほしいということで多古の農民の方がお話しに行っています。  ということですから、近郊都市農業と山間地との違いがあるということをさっき農協さんの方がおっしゃいましたけれども、本当にそういう意味では共同経営、共同出荷を地域に確立していくことによって後継者も育つし、それから多古に嫁に来てこんなにうれしいことはないという農家の若い奥さんたちもたくさん生まれています。子供たちには私は、学校給食は教育だ……
  91. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 済みません。もう一点聞きたいことがあるから。
  92. 雨宮正子

    参考人雨宮正子君) ですから、生産を通して子供たちに教育をしていく、このことが一番重要だと思っています。  では、今の点はこれで。言わせていただいてありがとうございました。
  93. 三上隆雄

    ○三上隆雄君 最後に、高野参考人にもう一点お伺いして終わりたいと思います。  新しい宣言法的農業法の創設を願いたいという、そういうことを一度聞いたことがございますけれども、それについての御提言を最後におっしゃっていただきたいと、こう思います。
  94. 高野博

    参考人高野博君) 先ほどもちょっと触れましたが、新しい環境のもとで、我が国の農業の今までの傾向を見ますと、このままでは一言で言いますと総体的にどうにもならないという印象を強く持っているわけでございます。  個々の農家が努力するにしましても、全体として我が国の国内農業をどんな作目でどんなふうに現状を維持し自給率を伸ばしていけるんだと、そういう大枠の方向が示されないと、六年後にまた農業問題の交渉があってさらに後退するというようなことがないわけじゃございませんでして、安心して農業を続けられないという状況にありますから、さっきも申し上げましたけれども国内農業をどんな形で存立させていくんだ、食糧を安定的に安全なものを供給するために国内農業をどうやっていくんだ、農村を基本的にどうやっていくんだと。そういう大枠を決めた新たな食糧・農業・農村基本法を何としても早期に、できれば二年以内ぐらいに決めていただきたい。そういうものに従って個々の農家が創意工夫を凝らしていくということでなければ我が国の農業は本当に大変なことになってしまうと考えておりまして、そういうことをお願いしたいということでございます。
  95. 都築譲

    ○都築譲君 私は、新緑風会に所属しております都築譲と申します。きょうは参考人の四人の先生方、お忙しい中を貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。もう少しお聞きしたい点が幾つかございますので、よろしくお願いを申し上げます。  まず初めに、全中の高野常務にお伺いをしたいと思います。  WTO協定の批准に伴いまして日本の農業は非常に大きな影響を受けることになるわけでございますけれども、私自身、WTO協定については、これから日本世界全体の中で仲よく生きてやっていくためには必要なものだと、こういうふうに考えているわけでございますが、それにしても、日本人の食糧を安定的に確保するという観点と、それから日本の農業をさらに維持発展させていくという観点からはどういう対策を講じていく必要があるのかということは真剣に考えなければいけないことでございまして、そういった意味で、現在、その関連の法案などを一生懸命議論をしている最中でございます。  それで、活力ある日本の農業を維持発展させていくという観点から幾つか考える要素がございますけれども一つはやはり農業の後継者の議論、先ほどございましたけれども、今回のウルグアイ・ラウンド関連農業対策においても新規就農者対策ということで項目が掲げられてございます。具体的には、内容的には就農資金の貸し付けのような形で農業内外からの新規就農者を確保するということのようでございますけれども、果たしてこういった施策で十分なのかどうなのか。  私自身いろいろな方にお聞きしてみますと、やはり生産者が意欲を持って農業にいそしめる、そういう環境をつくる必要がある。意欲を持って働くということはどういうことかというと、やはり少なくとも人並みの生活ができるようなそういう農業にしてほしいということを聞くわけでございます。  先ほど高野常務も言っておられました。農業地域もいろいろございます。ただ、中山間地域では十分な収入がなかなか得られないような状況があるというふうなことでございますけれども、果たして今回の新規就農対策、こういったもので本当にどの程度の新規就農者が確保できるのか、これからの状況など展望をちょっとお聞かせいただければと、こういうふうに思います。
  96. 高野博

    参考人高野博君) 新規就農対策は、無利子の金をかなりの期間お貸しいただけるということでそれなりの対策だと思いますが、これは部分的な対策でございまして、本当に我が国の農業が後継者を確保していけるということになるためには、先ほども申し上げましたが、それなりの収入がなければならない。粗っぽく言いますと、一ヘクタールの田んぼで米をつくりまして純益百万でございます。ですから、高卒の初任給ぐらいを得るためには四ヘクタールぐらいなければもうどうにもならないというのは当たり前でございまして、それだけのものがなければ初任給程度の収入も得ていけないということでございまして、そこら辺をどんなふうに解決するかということがないと、どんなに後継者を確保しようとしてもできない。  国の施策は、結局、我が国の農地の過半数を主として利用権の移動によって限られた農家に集積して農家の規模を大きくして、その人たちが、今申し上げましたように、年間五百万とか一千万とかの収入を得られるような形にしていこうという方針だと思うのですが、その場合、特にそういうぐあいに利用権を集積して残る方はいいんですが、渡さなきゃならない方たちとどう調和して集落全体の中でみんなが共存共栄できる形でそういう地域農業をつくるかということの工夫がありませんと、何人かが残ってほかが排斥されるということでは、農村社会ではそういう政策は通用していかないと思うんです。  ですから一番肝心なのは、結論を申し上げますと、新規就農対策はございますが、これはもう極めて補助的な対策でございまして、一番大事なのは、今申し上げましたように、集落の中で専業的な人と兼業的な人がどううまく土地と労働力の利用調整をして共存共栄できる形をつくり上げるか、そこにかかっている。そこをうまく解決できなければ六年間の対策としては失敗する、そういうものじゃなかろうかと私どもは考えております。
  97. 都築譲

    ○都築譲君 今のお話の中で利用権の移動の制限のお話がございまして、やはり農業の後継者は農業に従事していた人でなきゃいけない、こんなたしかお話があるわけでございまして、それがただ一番根本的なところにあるのかなというふうな気がするわけです。  確かに戦後の農業を解放して民主的な農業基盤を整備していくということでそういう仕組みがとられたんでしょうけれども、今、幾つかの分野で相当な技術革新が行われる、経営の革新が行われる、こういう状況の中で、個別の農家に従来どおり限定をしていくような方向といったものは見直す必要があるのか、あるいは従来型の基本方針は踏襲すべきであるとお考えになるのか、そこら辺はいかがでございますか。
  98. 高野博

    参考人高野博君) 農地を持って農業できる人は農家じゃなきゃならぬというところがあるわけでございますが、それは確かにそういうものをがんじがらめにせずに弾力化していくということは当然考えられなくてはならぬと。    〔理事稲村稔夫君退席、委員長着席〕  ただ、失礼な言い方かもしれませんが、一たんそういうことで農地を取得して、宅地化して大変な別の方面で利益を上げようというような方がなきにしもあらずなものですから、そこに慎重な配慮がなされるんじゃないかと思うんですが、そうじゃなくて本当に農業をしたい人がいる場合には、そこは弾力化の道が開かれなくちゃいかぬということは御指摘のとおりだと思います。  ただ、そんな苦労をしなくても自分が継げばいい農家の子供たちがどんどん外に出ていっているわけでして、結局それは勤めに出たときの収入にお父さんの跡を継いでもとても追いつかないというところから脱落しているわけでございまして、そこをやはりさっき申し上げましたように、集落の中で専業、兼業がうまく生き残れる方向に新しい体制をつくっていけるのかどうなのか、それが一番肝心な点ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  99. 都築譲

    ○都築譲君 ありがとうございました。  それからもう一点は、人並みの収入を得て、しっかりと働いて、また働きがいを持って農業にいそしんでいくという観点から、いろんな方からお話をお伺いすると、今の生産者の人たちはどうも生産技術の向上だけに追いまくられているんじゃないかというふうな話も聞くわけでございます。  というのは、仕組みとしていろいろあるんでしょうけれども、例えば種とか菌とかあるいは肥料とか、こういったものの仕入れあるいはそういったものを仕入れてつくり上げた作物を売る販路、こういったところがいろんなところで商社とかそういったものに押さえられていて、生産性改善の余地というのが本当に生産技術の向上分野に限られてしまっている。  むしろ経営全体として農家が本当に取り組んでいったら、例えば作物を入れる段ボールにしたって一箱三百円で買えるところをあるルートから買うと五百円取られてしまう、しかしそれを通らないとまたいろんなところで肥料も十分安く買えないとか、そういった話も聞くわけでございますけれども、そういったお話。あるいは共選、共販というふうな形で取り組んでいるところもございますけれども、なかなかそんな仕組みの中で利益が上がらないとか、そういったところがやはり農家収入を、生産者の収入を非常に制約していることになるんじゃないか、こういうふうに聞くわけでございますけれども、そういった面で個別の生産者が独自に取り組んで収入を上げていく、それは工夫をすればやれるんですよというふうな話を聞くんですが、そういった点についてはいかがですか。
  100. 高野博

    参考人高野博君) 先生の御発言の内容は、作目によっても多少差があろうかと思います。  例えば米をつくった場合と青果物をつくった場合は必ずしも今のお話のような指摘が同じように当てはまるかどうかということはあろうかと思います。端的に言いますと、米の場合は今まで食糧管理法がございましたから、生産のところが農家が主に担う部分で、流通は農協なり業者が行うという仕組みになっていたわけでございまして、こういう品目では確かに生産者がそちらの方に十分今まで関心を持てなかったということはあろうかと思います。そこら辺は新しい食糧法のもとでいろいろと参入条件等々弾力化しできますので、そういう中での新たな対応の分野もできてくるんじゃなかろうかと思います。  自由商品につきましては、これは農家が自分が売りたい場合にはもちろん市場に持っていくこともできますし、業者に直接売ることもできるわけでございまして、そういう点は制約が一切ないわけでございます。今でもやっておられる方もたくさんおるわけでございますが、やはり個々の農家が小規模で頼みますとそれは高いものになりますので、農業協同組合を使って大量仕入れということで安く図るように努力しているわけでございますが、その点についてもなかなか、農協のものは余り安くないよという批判もあるわけでございます。そこら辺は大いに今後も、例えば農協の組織が今、三段階ございますが、全国連、県連、農協とございますが、今、これを二つにして流通マージンの圧縮を目指しておりますので、そういうことで努力していくことになろうかと考えております。
  101. 都築譲

    ○都築譲君 ありがとうございました。  それからもう一つ、今の観点もございますけれども、生産技術の改善というふうな観点からいきますと、例えば花卉栽培の関係で植物特許のようなものも相当もう普及をしておるというふうな状況でございます。ただ、そのことがどういうことをもたらしているかというと、例えばカーネーションの栽培でございますけれども、その苗を種苗会社から買い入れないといけない、これが物すごく実は割高になる、一本売っても粗利益が本当にわずかにしかならないと、こんなお話があるようでございます。  それから例えば畜産の関係でいきますと、ひところNHKのテレビでもやっておりましたけれども日本の和牛でございます。これは肉用牛として非常に高価なものでございますけれども、北米の方で和牛を一頭仕入れて、それをホルスタインか何かと交配させてどんどん本当に純度の高い和牛に仕立ててしまうというようなことをやっていて驚いたんです。  最近お話を聞きますと、和牛の精子も輸出が自由化されたようなお話を聞くわけでございまして、どうも日本というのは何か、お米の品種改良にしても随分いいお米をつくってきているんですけれども、外国からは特許で日本の農業は随分搾られているような感じがするわけです。日本が一生懸命改良してつくったものが特許として国際的に普及していかないような、そういう拘束力を持たないような状況で野放しになって、逆に日本への輸出圧力となって押しかけてきているような印象を持つわけでございます。  そういった農産物の特許の関係についてはどういうふうなお考えをお持ちでございましょうか。
  102. 高野博

    参考人高野博君) 特許の法律的な側面について私も詳しくございませんので、先生に御報告申し上げる知識を持ち合わせておりませんが、農産物の流通という面で考えてみますと、確かに我が国の技術が海外に出ていってブーメラン現象で国内に入ってくるということはもうたくさんあるわけでございまして、我々とすればまことにそこに、こういうことでどうなんだろうという疑問をもちろん我々自身も持っているわけでございます。  例えばリンゴのふじもアメリカで生産されて間もなく入ってきそうだということで、三上先生ともどもども大変今、心配しているわけでございますが、そういうことでございまして、そこに私どもは、先ほどから申し上げますように、何でもどの農産物でもとは申し上げませんが、やはり一つは、国内消費する基幹的な農産物と、それからトータルとして国内食糧をどのぐらい賄っていくのか、基幹的な食物についてどうするのか、これについてはある程度きちっとした目標を決めていただいて、それに沿って国内の振興策なり、輸入の関税化をする場合には関税率の決め方なり、そういうもので総合的に工夫して国内農業のあり方をきちっと固めていただきたい、基本枠を。そうじゃないと、次から次にそういうことで一つ一つ品目をとられて、牛肉もだめ、オレンジもだめ、米もだめ、一つ一つ品目を取り出されまして、これを輸入しないのはけしからぬ、これを輸入しないのはけしからぬで、もう本当にだめになっていくと考えております。  そういうことで、今申し上げましたような観点からやはり大枠となる基本法をぜひお取りまとめいただきたい、そういうぐあいに考えているわけでございます。
  103. 都築譲

    ○都築譲君 どうもありがとうございました。  それでは、次は石原参考人にお伺いをしたい、こう思います。  環境保全型農業ということで御説明をいただいたわけでございます。その中で、田畑輪換ということでおっしゃっておられました。これについて、その環境保全という観点で日本の今までの農業、水田と畑を転作していくというふうなことでございますが、大型機械による基盤整備というよりはもっと高度な基盤整備が必要になるというふうなことを先ほどおっしゃっておられた、こう思うわけでございますが、具体的にはそういったものはどういうふうな内容の基盤整備といったものになるのか。  それから今回のウルグアイ・ラウンド関連対策で三兆五千億円余の農業基盤整備という予算が組まれておるわけでございます。ただ、その内容についてはなかなかまだ明確になっていないところがございまして、この国会でもいろいろ質問がなされておるわけでございますけれども、六年間で三兆五千億円、こういうふうな予算的な規模でそういったものを当面賄うことができるようなものなのかどうか、そこら辺についてちょっとお教えいただければと思います。
  104. 石原邦

    参考人石原邦君) 田畑輪換の重要性というのは先ほど申しましたので、もうこれ以上つけ加えませんけれども、やはり日本水田というのは耕地としては最もよい条件のところに位置しているわけです。したがって今、減反等々で、ある場合には休耕しているところもありますけれども、やはりそれを高度に利用していくことは日本農業の活性化、それから生産力の増強という点では非常に重要だと思っております。  基盤整備の問題でございますけれども、大型機械の基盤整備と申しますのは、もちろん用排水を分離し等々ございますけれども、やはり重点は表面の排水問題というのが中心になっているんではないかというふうに思っております。一枚の耕地を必要なときには田んぼにし、必要なときには畑にするというような、基盤整備というのはそういったことでは対応できないのでありまして、やはり地下水まで含めて、例えば地下水を五十センチ、一メーターというようにある程度自由に制御できるというところまでの基盤整備が必要ではないかというふうに思っております。  ただ、一枚一枚の田んぼをそういう条件にしていくというのは非常に大変でございますので、やはり一つの地区を単位として畑、水田というような形でやっていくということになるかと思いますけれども、それにしても、先ほど申しました大型の表面排水を主としたものとはかなり違うだろうというふうに思っております。  それから第二番目の御質問の三兆数億でどうかという問題でございますが、私自身はそういった方の専門でございませんので実際の金額等の関係はよく答えることはできませんけれども、基盤整備の問題というのは田畑輪換ばかりではなくて、先ほどから出ておりますような山間地その他の問題もございますでしょうから、いろいろな面でどういうふうに使われていくのかというのはやはりこれからの十分な検討が必要ではないかというふうに思っております。  以上です。
  105. 都築譲

    ○都築譲君 ありがとうございました。  特にお聞きしたかったのは、今いみじくもおっしゃられたような中山間地域の対策としてそういう田畑輪換というのが、特に中山間地域ということであると非常に小規模な例えば水田耕作とか、そういうふうな形になってくるのかなと思うわけでございますけれども、そういったものが果たして可能なのか。それから中山間地域が国土保全の観点から果たす役割というのは非常に大きいわけでございまして、そういったものをこれからもますます維持して発展させていくというふうな観点からどういうふうな対策が考えられるのか。田畑輪換なんというものも考えられるのか、それとももっと別な観点からの対策が必要なのか、その点についてお聞かせいただければと思います。
  106. 石原邦

    参考人石原邦君) 中山間地と申しましてもいろいろな地形地区がございますので、場合によっては可能なところもあるかと思いますし、困難なところもあるんではないかというふうに思っております。  中山間地の重要性というのは、先ほどから高野参考人もいろいろと言っていらっしゃいますように、日本の農業、環境保全にとっては非常に重要な役割をしているというふうに思っております。  環境保全型農業の実態を見てみますと、実際にかなり中山間地で環境保全型農業の中で農業あるいは化学肥料を抑えて安全性の高い食品をつくり、それを消費者と連携して販売するというような対応をしているところはかなりございますので、そればかりが山間地域の振興につながるというわけではございませんけれども、やはりそういう中山間地のある意味では隔離された地域を生かしての対応としては注目していいものがあるんではないかというふうに思っております。  以上です。
  107. 都築譲

    ○都築譲君 どうもありがとうございました。  それでは次に、日和佐参考人にお伺いをしたいと思うわけです。  先ほどの御説明の中でも、日本が今回ミニマムアクセスを受け入れるということで、これは日本の農業の衰退につながるんだ、こんなお話をされておられましたし、片や日本国際貿易体制の中でもやはりリード役になっていくべきではないかというふうなこともおっしゃっておられたのかな、こう思うわけですが、実は今回のWTOの批准に伴う観点で、やはり農業関連で一番重要なのは、日本国民の食糧の安定的な確保をこれからどうするのかということと、それからまた日本の農業をどういうふうに維持発展させるのか、こういう両方の要請があるように思うわけでございます。  それはどういうことかといえば、農業を維持発展させつつ国民にとっては安定した価格で安全な食糧を安定した量を継続的に確保するということだろう、こう思うわけでございますけれども、農業も既に貿易体制の中では例外でなくなっている。熱量換算で日本食糧自給率ももう四割とか五割とか、こういう状況になっているわけでございますから、そういった中でもっと日本が堂々と国際的な戦略を描いて、基幹的な食糧の部分あるいは野菜の部分とかいろんな分野に分けていくにしても、今回の食糧需給安定法の観点では生産と備蓄とそれから食糧援助といったものを結びつけていくような形になるわけでございますけれども世界の国々の中でどういうふうに日本との関係を位置づけて、日本に安定的に食糧を供給してくれるような国を確保していくという形になれば、しかも食糧自身が安全なものであるというふうな形になれば、それはそれで日本の国民にとっては十分なものになるのかなというふうな感じを持っわけでございます。  そういった農政の国際戦略についてどういうふうにお考えになるのか、これは日和佐参考人のお考えをぜひお聞かせいただきたいなと思いますし、あわせて高野参考人にも同じような観点から、国際戦略ということで日本食糧確保、それから日本の農業、こういったものを維持発展させる観点から国際戦略というのをどういうふうに描いていくべきだというふうにお考えになるのか、あわせて聞かせていただければと、こういうふうに思います。
  108. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 大変難しい御質問をいただきました。  先ほども申し上げましたけれども地球的な規模で考えれば、将来にわたって人口の増加と、それからそれを養うための全体的な食糧というもののバランスが非常に危機的な状況になってくるということは予想されているわけですね。ですから、食糧によっての戦略というふうにおっしゃられた意味が私にはちょっと理解しがたい部分があるのではありますけれども世界全体の人口をどう養っていくかという観点での国際協力がむしろ私は必要であるというふうに思っております。そういう国際協力の基本になる手前のところでは、やはり自国の食糧の自給率を上げる、それはそれぞれの国がそれぞれの国として努力していかなければいけない責任といいますか責務だというふうに思っています。  ただし、日本の場合を考えますと、一〇〇%現在の日本の人口の食糧日本国内で生産するだけの面積がもう既にない、そういう状況にもあるわけですね。ですから、食糧世界的な交易、貿易にかかわって、それは外国からの輸入を全くなしということでは日本人は生きていけない現実にも一方ではあるわけですから、世界レベルでの食糧確保と同時に安全性の確保、それからもう一つ食糧だけではなくて環境の問題もあわせてそれにはかかわってくるわけですから、そういう意味での国際協調が今後は必要になってくると思います。そこでの日本の役割としては、日本の国の事情をしっかりと述べて、なお世界的な調和が図れるような発言をしっかりとしていっていただきたいというふうに思っております。
  109. 高野博

    参考人高野博君) 食糧戦略でございますが、やはり最初に国内でどの程度の食糧をきちっと自給するのかということを合意する必要があると思います。  私の考えでございますが、数年前まではまだカロリーで五〇%、穀物で三〇%の自給力があったんですが、今、さらにそれを割ってずるずるっと後退してきておりますから、当面、最低そこら辺を目標に回復させて、さらにそれを引き上げていくという戦略、国内戦略を基本法の形で、そうしませんと、くるくる変わるとどうにもなりませんので、法律の形で国内の合意を形成してもらいたいし、そしてそれを国際的にアピールしていきたいと思うわけでございます。  裏返しますと、じゃ不足分はどうするのか、一〇〇いかないじゃないかと、おまえの案でも。そのとおりでございまして、不足分が安定的に供給されなくなる場合の最大の原因というのは紛争でございまして、戦争が起これば一発でだめになる。もちろんそれを買う経済余力がなきゃならぬということが前提でございますが、あったとしても紛争が起こればだめになるわけでございますから、やはりそこの部分を担保するためには、そういう紛争の発生を抑えて、しかも食糧については万一の場合にもある程度のものは供給していくという供給国の供給責任、それを新たなルールとして協定化していくという努力がなされなければならぬのじゃないかと、私見でございますが考えます。
  110. 都築譲

    ○都築譲君 どうもありがとうございました。時間がなくなりまして、雨宮参考人にお聞きする時間がなくなりまして大変恐縮でございました。  貴重な御意見ありがとうございました。
  111. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 公明党の刈田でございます。  参考人の皆様方には長時間にわたって大変恐縮に存じますが、いましばらくいろいろ御意見を伺わせていただきたいと思います。  まず石原参考人からお伺いをいたしますが、農業と環境に関するお話で、先ほど来、環境保全型農業というお話が出ておりましたけれども、この農業と環境とのかかわり合いの問題について、アルシュ・サミット以来、OECD等が指標化の問題に取り組んでおりまして、いろいろ論議が農業と環境の問題について高まってきておるところでございますけれども、そこで論じられている農業と環境の問題というのは、主として世界の傾向としては農業は環境に負荷的な存在であるという形のことが論じられております。  しかしながら、その中で我が国では、農業は環境に対して正の存在である、つまりプラスの存在としての農業を指標化すべきである、カウントすべきである、こういう主張を今しているはずなのでございますけれども、こういう点についてどんなお考えをお持ちなのか、一点お伺いしたいことと、もう一つは、こうした問題は欧米諸国でも早くから傾向として動きがありまして、ヨーロッパの国々、事例を挙げる暇はございませんので、国々では、環境保全型農業をすることによって経済性が落ちる、つまり所得が落ちていくというような部分に関して、一種のデカップリングだと思うんですけれども、補てんをしていく政策があるわけでございます。こうした問題について、つまり環境のコストというような問題についてどのようなお考えをお持ちか、まずお伺いいたします。
  112. 石原邦

    参考人石原邦君) 農業の持っている環境保全機能といいますのは、従来は専ら環境保全機能の方を強調してきたわけでございまして、それが農業技術の変化で負荷を与えるということが最近では問題になっているということでございます。  日本の場合に特に環境保全機能を主張しているというか重視するというのは、ある意味では水田というものを持っているということだろうというふうに思っております。水田は、よく言われますように、貯水池としての役割を持ち洪水を防ぐというような機能を持っておりますし、それから肥料にいたしましても土の浄化能力というのも非常に高い、そういったことのいろんな面での機能を持っている。もちろんもっと広い地域のことを考えれば、農業の中に山林も含めるというようなことになりますと、もっといろんなことが考えられるだろうというふうに思います。そういう意味で、ヨーロッパとかアメリカの現在の農業技術による環境汚染というものと比較しますと、日本の場合にはやはり保全機能をある程度評価してもいいんではないかというふうに思いますし、そちらの方向での評価があるのであろうというふうに思います。  それからヨーロッパの環境を保全する農業に対して補償を払っているという問題でございますけれども、これはヨーロッパの場合には日本に比べますとはるかに環境への負荷の影響というのが大きいわけでございます。この九月にヨーロッパでヨーロッパ農学会というのが開かれましたけれども、そこの学会での発表の半分以上がやはり環境汚染の問題でございまして、地下水の汚染をどうするか、あるいは土壌汚染をどうするか、一たん汚染したものをどうやって回復するかといったような問題が非常に多く論じられておりました。  本来、農業というのはそういう意味で環境を保全していくということでございますけれども、先ほどから中しておりますように、現在の高度に経済性を追う大型の機械化、化学化あるいは単作化した農業というもので価格その他が決まってきていて、それが環境を汚染しているということですので、やはりそういった転換をして環境保全的に向かっていく場合には補償をするということは、当然考えられていいことではないかなというふうに私は思っております。  日本の場合にも、今のところそういう大きな問題がございませんので問題にはなりませんけれども、将来には今のままいくと問題になることが起こるのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  113. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございました。  次に、高野参考人にお伺いいたしますが、AMSの問題で伺いたいと思います。  私は、日本の農業はいろいろ言われるけれども、やはり価格政策が非常に重要な位置を占めていたと思うし、いると思います。これによって生産者の所得補償をし、あわせて需給調整をしながら消費者への食糧の安定供給ということにもつながっていく政策でございますので、価格政策は、とやかく言われますけれども、私は日本の農政のやはりかなめにあるものだというふうに思っております。  しかしながら、今回のこのAMSによるいわゆる保護削減によりまして、これがいわゆる黄色の政策から緑の政策へと転換するわけでございます。そこで、いわゆる直接補償に結びつかない、いわゆる価格政策に結びつかないものへの助成というんでしょうか、そうしたものへと農業政策を転換していかなければならないことになろうかと思いますし、農業政策の選択肢が狭くなっていくのではないかという思いもございます。  したがいまして、このAMSに関する問題及び今後は基盤整備とか構造調整とかこういった間接的な政策へウエートをかけていく形になっていくわけでございますが、そうした政策の私は大転換になると思いますけれども、この辺のことについて、ややこしい聞き方ですけれども価格維持の政策をどんなふうに今後していけばいいのか、こんなことも含めて御意見をと思います。
  114. 高野博

    参考人高野博君) ウルグアイ・ラウンドの交渉結果で私どもが最も不満とする部分は、今御指摘のとおり、AMSというものを使いましてこれを削減するという内容でございます。でございますから、御存じのとおり、今回六兆百億の六年間の予算が示されたんですが、何とその六〇%は基盤整備なんですね。しかも、国が一部を負担し、基盤整備をやる農家も負担する総事業規模でございまして、そういうものがもう六割でございます。それから融資が一三%ございます。差し引きますと残りはかなり小さなものが六年間、ですから一年間にしますとかなり小さな国の対応ということになるわけでございまして、ラウンドの交渉結果によって我が国の農業については大変難しい局面に立たされておると考えております。  ただ、私ども幾つかの雑誌等でも読みましたし、そういうふうに聞いておりますが、既に我が国の場合はAMSについては六年後の削減目標を達成した数字に落ちてしまっているということなんですね。でございますから、私どもはやはり必要な価格対策はこの六年間はきちっとやってもらいたいと考えております。考えておりますし、先々繰り返し要求もし要請もしていきたいと一つは考えております。  それから今申し上げましたように、構造政策だけで果たしてうまくいくのかと私ども自身も考えております。あるマスコミの関係の方が私のところにお見えになりまして、宮城県の農村の青年のリーダーに、あなたウルグアイ・ラウンド対策をどうすると電話したら、六年後にまた米が外国から入ってきて、しかもその間は減反は選択制で、みんなつくる、米価はどんどん下がる、下がったときに借金だけ残して行き詰まるのは嫌だから何にもしないのが賢いんだよという返事をしていましたが、高野さんどうですかと、こういうお話です。これは私ももう全く参ったという考えでございまして、そういうぐあいに構造政策だけで果たしてうまくいくのかというのは皆さんが抱いておる危惧だと思います。そういうことがあってはならないわけでございます。  そういう点もございますので、やはりここら辺のAMS、為替相場が変動すれば農家の手が届かないところでどんどん削減対象が広がってくるということでございまして、お手上げでございますので、ここはもう何とか六年後にはやはり改正してもらいたいと私どもは強く考えております。
  115. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 どうもありがとうございました。  次に、日和佐参考人にお伺いいたしますが、先ほどSPS協定の十三条の話をなさっておられましたけれども、私もあれは大問題だというふうに思っております。  もう一、二カ所私は大変気になっているところがありますのでお伺いをしたいというふうに思いますが、SPS協定の中で有効な科学的根拠という点がございます。限りなく国際基準を優先して採用して、そしてそのことに不満がある場合には有効な科学的根拠をもってそれを証明しなさい、そうすればあなたの国の言い分は受け入れますよと、こういうことになるわけでございますけれども、この有効な科学的根拠というのは実は私ども問題にしておりまして、そして、このことについては結局はぐるっと回ってコーデックスの基準に戻っていっちゃうんじゃなかろうかなというふうに思っているんです。その辺のところはどうなのかというふうに思います。  それからもう一つは、いわゆる検疫衛生基準が貿易に与える悪影響は最小限のものとするということですよね。それが偽装の規制であってはならないという、つまり少々のことを言って勝手に非関税障壁をつくっちゃいけませんよと、こういう一項が入っているわけです。こういう問題もとても大きな課題なんです。  私はちょっと午前中調べてきましたら、平成二年の六月にこうしたコーデックスの問題なんかを農水委員会で取り上げてきちっと質疑しているんですけれども、その点についても十分やってくると、こういうことになっているんですが、どうやっていただいたのか。十五ある作業部会の中でもこの検疫衛生部会は早くクローズしてしまった。何が一体決まって閉まってしまったのか。その来たものがあなたのおっしゃるようにこういうものですから、しかも横文字でございますので、私どもなかなかこれがよく理解できぬうちにこういうものが出てきたと、こういうことになっていて、私どもの責任も大変感じているところですけれども、以上二点についてちょっと御意見をと思います。
  116. 日和佐信子

    参考人日和佐信子君) 私、先ほどの意見陳述のところでは省略いたしましたけれども、このことは私どもも大変大きな問題だというふうに思っております。  有効な科学的根拠、有効ながつかなくても科学的根拠となっただけでも、それは一体どういうところでの実証なのか。あるいは研究者によっては一つの添加物についての白黒が分かれる場合がありますね。それが多数決ならいいというふうなことも言えないと思うんです。黒の学者の方が二人いらして白がお一人ならばそれは黒と判定すると、そういう非科学的な問題でもない。  ですから、一体それは科学的な根拠をどこがどういう仕組みで判定するかということが一向に明確ではないわけですね。そのことは大変問題が大きいというふうに思っておりまして、そういう具体的な仕組みを明示していただきたいと、逆に。具体的にどうするのか、そういうことを私どもとしては要求していきたいというふうに思っております。  それから検疫の問題についても、非常に輸入農産物が、農産物のみならず食料品もふえていく中で、我が国の水際の検疫というのは非常に現状ではお寒い事態なわけです。それも過度にならない、要するに障壁にならないという程度が、SPSで言っている程度がどの程度のことを指して言っているのかということは、これまた明確ではないわけですね。  そういうふうに具体的にこれが適用される場合にはどういう仕組みで適用されていくのかというその具体性のところがまるで明らかにされていない、そのことが大変私どもにとっては問題だというふうに思っています。そのことを明確にしてほしいということを国に要求したい、そういうふうに思っておりまして、それが具体化されない、具体的な形で国民のところに提示されないということでこういうことが進行していくということに対して、大変大きな疑問を投げかけたいというふうな考え方でおります。
  117. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 まだたくさんお伺いしたいことがあるんですけれども、時間がございませんので、雨宮参考人にお伺いいたします。  先ほど学校給食に関する問題について御見解を述べられましたけれども、今、学校給食に関する考え方というのは非常にいろいろな視点からあると思うんですが、やっぱり一番大事な問題は、何を食べさせられているんだろうかという問題だろうというふうに思うんです。そして、そういう考え方が高じて、もう学校給食は要らない、私のうちでは弁当を持たせますから選択制にしてくださいと、こういうふうな動きや声や運動まで今出てきております。こうした動きに対してどんな御意見をお持ちでしょうか。
  118. 雨宮正子

    参考人雨宮正子君) 学校給食の選択制の問題ですけれども、冷凍加工食品やそれからセンター化とかそういう中ではおいしくない、だから添加物のあるものとかそういう問題があるから私はお弁当を持たせるというお母さんたちも出てきています。そして、自由選択、複数メニュー、弁当併用というところもちらほら出てきています。  でも、そういうところでいろいろお話を聞いてみますと、やはり子供たちの教育としての給食、ただ食べさせればいいだけではなくて学校給食は教育の一環だと、文部待が一九五四年に学校給食法を設立した意義はそこにあるんですね。教育の一環だと。教育というのはすべての子供に平等に保障される。それで、アトピーやそういうようないろんな状況のある子供たちについては除去食をしなさい、だから豊かで安全ですべての子供たちが食べられる給食を保障することは自治体の責任だという立場を私はとっています。  ですから、自由選択、複数メニューではなくて、すべての子供たちが教育として生産から労働から消費の科学、調理の科学、すべて一貫してわかって、食の自律が自分の体に身につくような食教育を学校の場で公教育として施してほしいということを思っています。  ですから、この自由選択、弁当併用、自分だけはそれを食べる、好きな物だけ食べるということではいけない、愛情弁当には限界がある。弁当はくって三十分もすればビタミンCはなくなっていく。温野菜を入れたところでビタミンCは五分もすればなくなっていく。緑黄色野菜を豊富にとって、そして茶色いお弁当などを持たせることなく、すべての子供につくりたてのおいしい温かい給食を提供することこそ自治体の責任じゃないかなと。  児童の権利条約はことし批准がされました。すべての子供たちに豊かで安全ですということを保障するのは自治体の責任なんだよ、子供たちはそれを受ける権利がある、こういう立場でいますので、我が子だけが弁当を持っていってそれでいいんだではなくて、すべての子供たちが温かくておいしい給食を食べられるように条件を整えていくのは自治体の責任じゃないかな、教育というのはみんなが心豊かな状態の中でこそ実現できていくんじゃないかなと思っています。
  119. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 どうもありがとうございました。終わります。
  120. 林紀子

    ○林紀子君 参考人の皆様、きょうはありがとうございます。日本共産党の林紀子でございます。私に与えられております時間が十分ですので、全員の皆様方に御質問できませんのであしからず御了承いただきたいと思います。  そこで、まず高野参考人にお伺いしたいのですが、ただいまの刈田委員の質問と重なる部分もあるかと思いますけれどもウルグアイ・ラウンド国内関連対策について七兆二千百億円というものが出てきたと。しかし、これを見てみますと、一番農家の方たちが願っていらっしゃる価格保障というところにはほとんどこのお金が使われないという、そういうことになるのではないかと思うわけです。  農業協定では、補助金などの国内支持を六年間で二〇%削減するということが義務づけられておりますので、価格保障に充てる予算というのはこの条項にひっかかってしまって価格保障ができなくなる。それからまた、新食糧法も市場原理で米価を決めるということが基本になっておりますので、ここでも価格保障ということがきちんと行われない。  そういうことでは、先ほど六年後の改正というのを強く御主張なさいましたけれども、私は輸入農産物を制限する国境措置にまさる国内対策はないというふうに思いますので、まず批准をやめて再交渉する、現在の立場でそういうことを私たちは主張しているわけですが、そのことについてJAの二十回大会でもはっきりおうたいになったわけですので、現在そういうことを御主張していくというお考えはないかということをまずお伺いしたいと思うんです。  続けて質問をさせていただきますが、日和佐参考人にはSPS十三条の問題をお伺いしたいと思いましたが、最初にお述べになってくださいましてお立場がよくわかりましたので、ありがとうございました。  時間の関係もありますので雨宮参考人にお伺いしたいんですけれども、輸入農産物、米を初め、もう牛肉はどっと入ってきておりますけれども、野菜もどんどん入ってくると。そういうことになりましたら学校給食の現場ではどういうことが起こるのかというのをもうちょっと詳しく御説明いただけたらと思うんです。  といいますのは、私はことしの九月に福島県の熱塩加納村というところに参りまして、小学校で一緒に給食を食べさせていただいたわけなんですが、そこでは有機米を子供たちが食べる。それから有機・低農業野菜を、子供たちのお父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんがつくったものを学校に提供してくれる。そして秋になったらイナゴとりに行ってそれをつくだ煮にして食べるとか、春になったら校庭の桜をとってそれを塩漬けにして行事のときには桜湯を飲むとか、食文化というものも立派にそこに生きておりましたし、子供たちはそういう給食を通して、親が添加物いっぱいのおやつを食べたらそれをたしなめるというようなところまでいっているということで、まさに雨宮参考人がおっしゃっていた給食というのは教育だというのがそのまま生かされているすばらしい取り組みだなと感心をしてまいりました。そういう取り組みというのは全国にいろいろあると思うんです。  ところが、輸入農産物がどっと入ってきたら、それと正反対の状況というのが多くのところで実現していってしまうというおそれがあるんじゃないかと思いますので、その辺をもう少し御説明いただけたらということをお願いしたいと思います。
  121. 高野博

    参考人高野博君) 価格対策のところは先ほど申し上げましたので省略いたしまして、批准の問題に関連してでございますが、私ども今回のウルグアイ・ラウンドの農業合意の内容には反対でございます。  その立場ははっきりしておりますが、その立場を踏まえて実際にどういう運動を展開するかというところにまたそれなりの考えをめぐらさざるを得ないということでございまして、一つは、先ほどから議論になっていますように、農業分野だけじゃない、一括して賛成か反対かと。したがいまして、農業分野を否定する場合は全体を批准しないということにつながる場合に、そこで運動を展開する場合どういうことを考えなきゃならぬのかという課題があろうかと思います。  そういう点と、もう一つは、批准阻止の運動に絞って全力を傾けた場合には、そういうことを前提とした国内対策をあわせて要求するというのは、いかにもちぐはぐといいますか、ぴったりこない内容になりまして、そこをどうするか。  そういう二つの面を十分組織内で検討いたしまして、私どもとしますと、やはりそれでなくとも大変苦しい国内農業について、国内対策の充実は何としても求めていかざるを得ない。それが我々農業団体の責務でもあるということから、農業合意の内容にはあくまで反対の立場を貫きながら、あわせて国内の農業対策も要求していくという立場を選択いたしましたので、そういうことで御理解いただきたいと考えるわけでございます。
  122. 雨宮正子

    参考人雨宮正子君) 学校給食について言わせていただいて、ありがとうございます。  学校給食の食材ですが、輸入がどんどん進んでくるとどうなるか。まず第一点にそのことは、主要四品目は、米、麦、肉、それから牛乳です。それは政府が管掌する、管轄をするというんでしょうか、政府管轄の主要四品目です。この四品目につきましては国が補助をしています。  輸入牛肉ですが、せんだっても抗菌剤ですか、さっきもホルモンの添加のことを話しましたけれども、「オージービーフ また薬剤汚染」ということで、十一月十一日に農業新聞に出ていました。薬の汚染が出ていて、こういうような肉が出回ってくるわけです。文部省は学校給食に使うのは見合わせるようにという通達を出しています。  ということがありますので、輸入がどんどん強化されてくると、米の場合、かつて十年前には黄変米が韓国から入ってきました。それは臭素がたくさんかかっていました。これが学校給食に回ったということがあります。ですから主要四品目、これは輸入がどんどん強化されてくると学校給食に回るのではないか。  現に、輸入牛肉は入ってきています。そして、ホルモン剤が添加されるということになると、日本の子供たちの健康にも非常に危惧される問題があるわけです。チーズ等もそうです。遺伝子組みかえという形での添加物第一号がこの条約が批准されますと入ってくるということで、遺伝子組みかえに使われた添加物が使われたチーズが入ってくるということはとても危険だということで、私たちは反対したいわけです。  では、実際にはさっきの熱塩加納村のような豊かで安全で教育としての給食が現場で行われているかということでありますけれども、実のところを言いますと、今、学校給食の実態は、合理化がどんどん進められ、センターが五〇%、そして臨時職員が二〇%から四〇%とだんだんふえてきています。ですから、人手が足りない中でどうしても冷凍加工食品が使われる。大手食品メーカーはこれを待っているわけですね。百十社、六百二十三品目。これはせんだっての学校給食百年展では八百品目、その中の一割以上の加工食品は輸入でした。はっきりと外国産のものでした。そういう形で外国産のものがどんどん入ってくるということで、これはどこのものかという調査をしている給食センターの所長さんもありますけれども、子供たちには地場産のものを食べさせたい。  三番目に、さっきの熱塩加納村のようなことで努力をしている多古町とか品川とか各地の産直もありますけれども、もう農業でやっていけなくなった岩手県の大東町、これが村の人たちの協力で村の生産物の八〇%がこの学校給食に入っている。だから農業が元気になっていったということがあります。  こういう山村もちらほらと聞かれるという状況がありますので、やっぱり地域おこしということで、教育としての給食は地域ぐるみでみんなやっていこうじゃないかというので、長野県では学校給食産直組合というのをつくって地域の生産物がどんどん学校に入る。それから新潟なんかもそうです。都会に段ボールで運ぶよりも、大根もすべてひっくるめておばあちゃんたちがしょっていく。最初はこのおばあちゃんたちが汚い格好をして学校に物を運んできたら嫌だなと言っていた子供たちが、先生がある日のこと、この大根はだれちゃんのおばあちゃんがつくってくれたんだよと放送したら、それからその子供は胸を張って帰ってきた。教育というのはこういうことじゃないかなと。  ですから、私は全国各地を歩いてみますけれども、どんどん合理化が進んでいって人手が減っていくとますます貧しい給食になりますので、人手を減らさないで豊かな給食条件をつくっていただいて、さっき公明党の方がおっしゃっていましたけれども、それじゃ私、お弁当を持っていくわなんということのないように、教育条件としての学校給食の豊かさを守ってほしい、そして輸入食品は学校給食には入れないように私たちも頑張りたいので、政治に携わる皆さんもこの批准は絶対に阻止していただいて、学校給食にはもう絶対に輸入食品は入れないでほしいと重ねてお願いいたします。
  123. 林紀子

    ○林紀子君 どうもありがとうございました。終わります。
  124. 矢田部理

    委員長矢田部理君) 以上で参考人方々に対する質疑は終わりました。  参考人方々には、貴重な御意見をいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十一分散会      —————・—————