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参考人(信田邦雄君) WTO
特別委員会に所属する諸先生方、大変御苦労さまでございます。御紹介をいただきました
北海道農民連盟書記長を仰せつかっております信田でございます。
私は、北見で、家内とそして息子夫婦とともに、孫が二人おりますけれども、働く方は四人でございますけれども、三十六ヘクタールの耕地を耕作しております現役の専業農家であります。私は、みずからを
農業というよりも百姓ということで、その百姓という言葉を愛している一人でありまして、
農業をしておりますと、百姓という、いわゆる自然と一緒にいることによって何か
農業をやっているということが実感としてあるということで、百姓という言葉を大事にして、みずからは米を十一ヘクタール、畑作物、野菜、施設園芸等々を二十五ヘクタールで合計三十六ヘクタールをつくって、一年間大体粗収入三千五百万円ぐらいを上げております。しかし、厳しいオホーツク海の環境でございますから、所得率は大体二〇から二五%ぐらいで、特に野菜など入っていますので所得率は年々大きく揺れ動くという
状況の中で
農業を、いわゆる百姓を行っているわけであります。
私は、百姓のほかに、
北海道農民連盟という組織の
書記長と、北見における七千ぐらいの盟友を抱えました北見地区農民連盟の
委員長も兼ねて仰せっかっておるところでございます。
実は、若干、
北海道農民連盟について御紹介申し上げますけれども、
北海道農民連盟は、
北海道九万農民のうちの七万を私ども組織いたしまして、みずから負担金を納める自主財源を
基本といたしまして、自由意思を結集して農民のあらゆるニーズにこたえる運動を現在五十年にわたる歴史を持って行っているものであります。今日の
北海道農業があるのも私ども農民の意思による運動の結集の結果ではないか、こういうふうに思っています。
私はきょう、ガット・
ウルグアイ・ラウンドの
農業部門についてあるいはそれにかかわる問題につきまして意見を述べさせていただきますけれども、こういう機会を与えていただきました関係者の皆さんに敬意を申し上げたいと思います。ということは、私ども特に農民の現場の声を聞いていただいてあらゆる対策をされることが
基本であろうと思い、大変ありがたく思っておるわけであります。
北海道農民連盟というか道の農民全体、道民を挙げて私ども
ウルグアイ・ラウンド関係に関する運動を七年間、特にこれは私どものためにならないということで阻止運動を行ってきたわけでありまして、それは日本
農業を守るという
国民的な闘いであったという位置づけを私はしておりますし、信じております。もちろん私もジュネーブの方へ行ってガット本部に強く阻止行動を行ってきました。
しかしながら
政府は、三回の国会決議をほごにして昨年十二月十五日に
農業部門も含めた
ウルグアイ・ラウンドを受け入れたわけであります。本年四月には正式調印をしたという
状況にございます。そのことにより全面的な
農産物の自由化時代に突入したと私ども思っていますし、
農業と
農政は大きく転換を迫られる時代に入った、こういうふうに認識をしています。
私たちは、大変不満といら立ちの中で、そしてまた批准阻止の声が高まる中で、
北海道農民連盟といたしましては万全の事後対策を期すことの方がいいのではないか、そういうことで批准阻止もあり得るという立場の中で事後対策行動の運動をこれまで強力に進めてきたところでございます。すなわち、そのことは
農政の大改革を強く求める運動であったわけであります。
そんな中で
政府は、緊急
農業農村対策本部といたしまして
ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱を示しました。御案内のとおりであります。あわせて、合計七兆二千百億に及ぶ
農業関連対策の別枠予算を示したわけであります。このことにつきましては、一部の
国民やマスコミから強い批判がありました。しかし、当時の細川総理が深夜に
国民に向けて、
農業者の皆さんに不安を与えない万全の対策ということを
国民に訴えてこの合意案の受け入れについて理解を求めたことを考えるときに、私は、マスコミ、一部の
国民の皆さんから批判を受ける
理由は全くない、こういうふうに信じているところであります。
しかし、もしこの
政府が示しました対策大綱や対策費が真に
農業のためにあるいは地域のためにならないとするならば、これは
国民的な合意を得られないばかりか将来の日本
農業を破滅の道に追いやることになろう、こういうふうに危惧している一人であります。
時あたかも
世界のガット
加盟国は今、一斉にWTO設立
協定法案の
審議に入っているわけでありますが、
我が国も衆参に
特別委員会が設立され、活発な議論が行われているさなかでありますし、当然ながらそういう中で
世界の
貿易がこれから完全自由化の方向に向かい、日本経済も今、前者がおっしゃられましたように、そういう中で
世界に重要な
役割を果たしていくわけであろうと思います。とりわけ新たに自由化の方向を強めたいわゆる
農産物貿易による日本
農業は、極めていろんな意味で大きな影響を受けるのではないか、こういうふうに私は思っております。
したがって、専業農家として、
農業を愛する農民の一人といたしまして、頑張っている
北海道の仲間や日本の仲間の皆さん、そして家へ帰れば息子夫婦の姿を見ていて、ぜひともきょうは農民の一立場で意見を述べてみたい、こういうふうに思っ一ております。
それで、私ども最も重要に思っている第一といたしまして、まず
世界の先進国のように
農業部門に対してもきちっと
国内で
法律をつくっていただくことが極めて重要であろう、こういうふうに考えている一人であります。したがいまして、その中で
農政審などで
審議されました新しい
農業基本法の早期制定が最も急がれるのではないか、こういうふうに考えております。
先般、
ウルグアイ・ラウンド農業合意関連対策大綱とそれに対する七兆二千百億に及ぶ総事業予算が農民に期待されて示されたわけでありますから、これが
国民の合意を得るために、あるいはまた確実な政策として地域に根差した実行がされるためにも、私たちといたしましては、対策大綱を特別暫定
措置法として時限立法化してこれを
国民に示し、理解をされることが本当であろう、ただ単につかみ金をばらまいたようにとられるようなやり方はこれからは正しくないのではないか、こういうふうに農民の一人としても本当にそう思っているところであります。立法府であります国会がその責任を持つことは当然の使命であろうと思いますし、そのことによってこそ
国民の本当の理解が得られるのではないか。ぜひそのように先生方のお力をおかりいたしたいと思うわけであります。
さらに、国だけでそうやっていただけではだめでありますので私ども地方でも活動しておりますけれども、
農業農村活性化特別
措置法をぜひつくっていただきまして、これは議員立法で結構でございますから「そういう中からさらに地域条例や地域の活性化条例を制定して各市町村が責任を持って、やはり国の出したものをまた地方できちっとさせて本当の意味で地域の独自性を生かして、農民に根差した地方の産業を
発展させていくことが極めて重要であると思うわけであります。
さらに、私は
北海道に住んでおりますから、
北海道の
役割はこれから大きいと思っています。日本の
食糧自給率が下がっていく中で、やはり
北海道専業地帯が担うのは私どもとしても責任を持たざるを得ない。だとすれば、やはりその責任を果たすためには国として地域立法を制定して、昔のマル寒法のようなものをつくって専業地帯をきちっと守っていくという、そのことが極めて重要であり、
国民的理解を私は得られるものと、こういうふうに考えているわけであります。
次に、ガットの合意によって関連して
農政審などで議論されました新
食糧法につきましては、私どもとして極めて関心があります。したがいまして、次の点について御検討いただきたいと思います。
主要食糧の定義につきましては、どうも中身が弱まってきておりますので、偽装的な調製品類がどんどん入ってきて実質的な
アクセス分すら侵されて、いわゆる
関税化でないと言っているうちにそれ以上の自由化にさせられる可能性がありますので、厳格な定義づけの
規制をしていただきたい。
二つ目には、
基本計画を定めるわけでありますが、この点につきましてはやはり
審議会に諮り、その中に農民、
生産者も入って決めていくということが極めて重要でありますので修正願いたい。
三つ目には、
政府米の
買い入れにつきましては全量
買い入れにしていただかないとやはりこれは中長期的な
価格が変動する中で不安なものになりますので、
買い入れ申込者に対しては全量
買い入れを行うようにしていただきたいし、
政府米の
価格につきましては再
生産を
確保するということになっていますけれども、やはり所得が
確保されないと農民は孫子の代までつないでやっていくことが不可能になりますので、再
生産と所得を守るというように修正を願いたい。
生産調整につきましては、水田
機能を残していつでも米をつくれることを条件にいたしまして、その助成金は所得が補てんされる額としていただきたい。特にこの点につきましては、水田
機能すなわちダムや多面的な
機能を持つ水田はそのまま残しながら、いつでもつくったり休んだりできる方向が極めて重要であろう、こういうふうに思います。その価値観に対する助成額とした方がいいんではないか、こういうふうに考えています。
また、
輸入米の安全性は
消費者の強い希望でございますから、この
規定については
国民の信頼を得るようなところできちっとした
規定を図っていくと同時に、検査規格等が最近うわさされているようでありますが、やはり国が責任を持った。買う方の立場でも信頼できる全国統一的な規格が極めて重要でありますので、そういうことがもしないがしろになれば
消費者と
生産者の双方の信頼を失いますので、検査につきましても極めて国が重要な
役割を果たす必要があろうと思っております。
次に、私どもが主産地であります麦も食管法に触れますので、今回ガットでマークアップとして認められている外米の
輸入差益につきましては、自給率がほとんどなくなりかけている国産麦につきまして、あるいは畑作振興にぜひ
目的的な財源として対応していただきたい、こういうふうに思っております。
それから次に、
農産物価格安定法が一部
改正されるわけでありますが、この点につきましては当然
改正しなければならぬと思って、それを反対するわけじゃありませんけれども、ガットの合意によって畑作地帯が最も影響を受けます。あるいは酪農地帯が最も影響を受けるわけでありまして、主要なものにつきまして私どもはぜひ振興を図っていただきたい。
特に芋
でん粉につきましては私ども輪作体系の
基本でありまして、国土を守る、土地を維持するために極めて重要でありますのでこの対策を強化していただきたいし、それに伴う
でん粉工場の
合理化が今求められておりますが、もちろん
合理化に反対はいたしませんけれども、
合理化に伴う請負担については国がこれを負担していただきたい、こういうふうに思います。
酪農関係では、
北海道の重要な
農業でございますので、
乳製品の
関税化により既に大きな不安を酪農民が抱いて酪農を投げようとしておりますので、ぜひ新たな
法体系などを
整備して
価格安定を図って、そして財源
措置を裏づけとしてつくっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。
次に、今回のWTOで極めて重要なのは
関税定率法であろうと、こういうふうに考えております。この
改正に伴いまして私どもは三点について大きな影響を受けるのではないかと思っております。
一つは、雑豆等の
関税化に伴う
アクセスの
数量を限定していただかないと、これ以上拡大されるともう
北海道には雑豆等などはなくなってしまう、こういう
状況になります。さらに
現行の
関税率を内外
価格差に相当する水準として維持するために、
関税割り当て
制度を導入すると同時に、円高による為替変動などの影響を受けない
措置をぜひ講じていただきたい。
これはアメリカなどは既に高い補助率の設定をした輸出補助金の策定でさらにダンピングが可能な
状況にありますし、国際市況が下落した場合、この
関税定率法は、実質的にもう自由競争になってしまう可能性が強く、国産
農業が壊滅的な打撃を受けることを想定するわけであります。
さらに、あらゆる
関税の中で調製品等々これまでに低
関税で入っておりましたものなどが
関税率体系の
見直しでさらに下がりまして、
国内の産業が国産を使っての操業ができなくなる。そういうわけでぜひ、
国内の産業が空洞化いたしますのでその産業を守るための、
農業だけでない、産業を守ることをきちっと早目にしていただかないと、逃げてしまった産業を取り返すことはできないんではないか。こういう意味で、ぜひ
関税定率法に基づく
国内対策を総合的に急いでいただきたい。
さらに、私どもといたしましては、関連対策に極めて重要なものを申し上げたいと思います。
特に
北海道農民連盟としては、今、
世界の潮流として、また今回のガットの
関税化の
農業合意が示す本来の
農産物の
状況を見ますと、
価格制度からこれは転換をしなければならないということを意味するものだと、ガットの
協定は。そういうふうに思っております。もっと端的に言えば、
価格政策だけでは
国内農業を守っていくことは無理になってきているということをガットではもう既に約束したと言っていいのではないか、こういうふうに思っております。
したがって、
農業と
食糧の多面的な
機能と特殊性、または
消費者と
生産者が
価格で対立しているようなことはもうやめて、日本型のデカップリング政策を早急に確立しなければならない。そして農民には総合的な所得補償を講じて、国土、環境と地方、地域を守っていくことが将来二十一世紀に向けたものであろう、こういうふうに考えております。すなわち都市と農村、
生産者と
消費者、これが共生できるような新たな所得政策が
制度化されるべきである、もはや
価格政策だけでは
農業は守れないことをぜひ先生方に御認識をいただきたいと思います。
もう一つは、
国際化対応の
農業は必至であり、一定の規模拡大は私どもとしてもこれはしていかなければならない、そのことがこれからの
農業を守っていくことになろう、こういうふうに思っております。あくまでも一定ではありますが、土地は流動化します。売買しなければ規模拡大できませんから、そういう場合にぜひ譲渡所得に対する
現行行われております特別控除八百万円を特に
北海道的には三千万ぐらいにしていただかなければ規模拡大は無理だ、こういうことに現実なっておりますので、そういうふうに税制の
改正、さらに税率、得た所得に対する税制の軽減
措置、あるいはまた新
農政で求めておりますところのいわゆる組織
経営体を多く求めようとするならば、農地保有
合理化法人等にすべての農地を売った場合についても
特例措置の軽減税率をしていかなければ動かないし、新
農政は恐らく絵にかいたもちになってしまうのではないかと私ども現場では思っているところであります。
三点目は
現行の
消費税でありますけれども、
消費税については極めでいろいろな問題がありますけれども、私ども
政府管掌作物をつくっている
北海道の主産地といたしましては、今、内税になっておりますが、非常にこれが透明性がないということで農民に不信感を持たれております。したがいまして、ぜひこれを取り除くために外税にしていただきたいと思います。
次に、若干時間をオーバーして恐縮でございますけれども、ぜひお聞きをいただきたい負債対策がございます。
今回の大綱の中で、先生方の御努力でこの面につきましてもつけていただきましたことを感謝申し上げますけれども、
北海道は土地購入や規模拡大等々で多額の負債を持っています。大蔵省はこれに対して負債対策は後ろ向き政策だと言っていますけれども、
北海道においても負債がなければ
農業を続けることに希望を持てます。この負債対策をぜひきちっとやっていただきたいと思っています。
そんな中で、
最後に申し上げますけれども、特にこの新しい
農業政策、ガット後の
農業に最も求められるのは担い手対策であろうと私は思っています。特に
北海道においても担い手が非常に少なくなって、御案内のとおり、全国三千余りある市町村で一市町村○・五人であったり、専業地帯でも農協の新規採用職員より少ない、あるいはまたゼロの後継者、これはぜひ解消をしていただきたい。そういう意味で、担い手対策が日本の
農業を左右すると思いますので、特に大切なのは後継者に対する、いわゆる新規就農じゃなくて後継者に対する、私の息子も今やっていますけれども、そういう人たちがやめないようにしていくというそういう新しい
農業政策をきちっとしていただきたいし、あわせて新規就農者等後継者に対する抜本的な対策として、私は官民あわせたいわゆる返還しなくてもいいような奨学資金
制度、教育をしていって返さなくてもいいような方向を官民ともに求めていく必要がある。
さらに重要なのは、担い手が確実に定着するためにぜひ各ブロックごとに後継者の育成研修センター、情報を交換し合って意欲を持ってやっていけるようなそういう研修センターをぜひ御検討いただき、急いで建設をいただいて、各地区で意見交換をしながらやっていけるようにしていただきたいことを
最後に、私の農地からの声、そしてまた
北海道の地域性と専業
農業地帯の組織的な願いといたしまして、歴史的な転換を図る
農業、
農政に対しての希望を述べさせていただきまして、私の考え方を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。