○楢崎
泰昌君 この前の
通産省に対する質問のときに申し上げたんですけれども、
産業の
空洞化というものから目を背けるわけにいかない、それは特に
雇用問題に直結するからだと思います。
産業の
空洞化というのはある程度
経済原則に従って行われていくものですから、その
経済原則を曲げて、海外に進出しちゃいかぬと、
先ほど立木
先生がちょっと制限したらどうだという
お話をなさいましたけれども、私はそういうものじゃないんじゃないかと。
経済原則は貫徹するものなら貫徹させなければいかぬというぐあいに考えているんです。
まあ、そのときいろいろ議論をしましたが、結局は二百万人ぐらいの
雇用の
空洞化ができるという
お話でございました。なかなか容易ならざることである。
私どもこの
調査会で議論した一番当初は、むしろ
雇用がタイトになるということを基調にしていろいろな議論を一年目はしていったと思うんです。しかし、
牛嶋先生がおっしゃるように、
経済成長率は現在の
生活大国五カ年
計画の五%、実質三・五%の世界でなくて、どこまで下がるのかよくわかりませんが、去年、ことし
あたりを見ているとほとんどゼロに近いというような
経済成長率しかないわけです。税収の方を見ているとかえって下がっているという状態ですから、大変なところにかかっていることは間違いない。その上に
産業の
空洞化が来ている。こういう状態の中で、それじゃどういうぐあいにすればいいんだろうか。
通産省は、この前その処方せんとして三つを挙げました。すなわち、
一つは公共事業である、
一つは
規制緩和である、
一つは新
産業の振興である、こういうぐあいに分類して
通産省は述べられた。カテゴリー化ですから細かいところは別として、
方向としてはその三つなのかなと思いますが、それぞれに非常に問題点が多過ぎるんです。
公共事業については、違う
会派でありながら私は
牛嶋説の方でございましてね。現在の公債発行残高、少なくとも税収のところから見てみると、六百三十兆円というような大きな
公共投資は非常にできがたいんです。その財源については別途考慮しなければいかぬという注書きが単についていて、全部公債で発行するなんというのはとんでもないよということが書いてあるわけです。しかし、税制改正が今行われている
状況を見てみますと、とてもじゃないけれどもこの近辺に増収が行われるという可能性はない
状況である。そういうことになると公共事業というのは大変だと、もしこれをそのままやるとすれば全部公債でひっかぶらなければいかぬということになるんです。
この前の大蔵
委員会で私申し上げましたけれども、今の国債利払いというのは年間に十三兆円になっているんですね。それで、公債の元本が三兆円ぐらいですから、公債費というものが年間大体十六兆円になっているわけです。そうすると、今五十三兆の税収の中で二割を占めているんです。営々と働いて二割借金を払っている、こんなばかなことがさらに拡大するということになるんです。
景気が非常に大事だということももちろん理解できるわけですけれども、同時に
牛嶋先生がおっしゃったように、
日本のこれからの
経済、財政というものがどういうぐあいになるかという絵をもう少しきちんと描いて、その上で
公共投資を公債でやろうか、税収でやろうか、その可能性があるのかねえと。大蔵省が承認したというぐあいに言いますけれども、大蔵省は強姦されたんでね、何も喜んでこんなものやろうとしているわけじゃない。だから、そういう意味からいうと公共事業も非常に難しいと。
それから、
規制緩和についてはしばしば議論されていますけれども、これは立木
先生の方と
意見が同じなんで、摩擦をどういうぐあいに考えるかという問題がどうしても常に存在するんで、
規制緩和をすれば
経済がすぐ復活するというものでは恐らくないでしょう。もちろん、必要な
規制緩和は随分あると思います。あると思いますが、その
規制緩和をやることによって、例えばガソリンスタンドを自動化すれば一万数千人の職業が失われてしまうとか、
規制緩和には常に
雇用減を伴っている側面があるわけです。価格はもちろん減っていきます。だけどそれはなかなか難しい問題で、やらなきゃいかぬことはやらなきゃいかぬかもしれぬけど、これもなかなか難しい。
そうすると、
最後のところの新しい
産業を起こしていくというのは、
一つの我々の夢であるわけです。
実は、先々月ベトナムに行ってまいりました。ベトナムは今や建国の意気あふれて、我々が昭和三十年代に経験したような、追いつき追い越せ、やるぞやれるぞというような気概に燃えてあの社会は合成立をしている。ところが、
日本国では暗いイメージ、
規制を緩和して何とかとか、アメリカに何とか怒られないようにとか、実に意気上がらない感じがするんですね。その上、
高齢化社会が来るんで、お前たち負担が大変だぞと言われて脅かされていると。
こういうような形で意気上がらないんですけれども、その中でやっぱりベンチャービジネスというものが育っていかなければいかぬ、そうでなければ我々の未来がないということであるように思うんです。
通産省の例ばっかり引いて恐縮ですけれども、
通産省はベンチャービジネスを何とかして育てていきたいと考えているんだと思いますけれども、
一つはその育て方なんですね。要するに
企業心というんでしょうか、さっきのマインドの話です。これからいけるぞという我々の夢ですね、そういうものが
一つなければいかぬ。
通産省は十数項目挙げていますけれども、それはないことはないんです。ただ、そこに
規制が邪魔したりなんかいろんなことがあるでしょうけれども、それを育てていかなければいかぬということ。
それから第二は、
技術の
開発がベンチャービジネスにはなければいかぬわけです。ところが、今までの数字を見てみますと、民間
企業における研究
開発に対する
投資が〇%なんですね。国の
技術開発の予算も実はそんなに
伸びていないという状態です。だから、これをやっぱり伸ばしていかなければいかぬという視点がどうしても必要であろう。
それから、三番目に必要なのが資本なんです。これは先般の
委員会で資本の話を若干申し上げましたけれども、現在の
日本の中では金は余っているにもかかわらず、国内の
企業に振り向けられていないという事実があるわけです。これは恐らくバブルに懲りてしまった金融機関が、ほとんど民間に対する融資を拡大していないという問題だと思います。これも
経済原則なんで、危ない
企業には貸さないぞと言われればそれっきりなんです。
アメリカの場合を見てみると、
ベンチャー企業に対してあれは何というんだったか、何とか市場というのが別にありまして、(「NASDAQ」と呼ぶ者あり)そうNASDAQ、それがございまして、そこで
投資保護と
関係なく資本調達をしているんです。そういう市場をやるべきであるというのが産構審の中でも提案をされていますけれども、そのような資本市場の調達というものがぜひとも必要だというぐあいに思っているんです。
現在の株式市場は、大変恐縮な話ですけれども、どんどん市場が小さくなっていっているんで、大きくなっているという傾向はございませんね。店頭売買をしている株式市場だけが少しずつ膨らんでいるという状態で、株式市場から多くの資金を現在の状態では期待し得ないという感じがしているわけです。ですから、ベンチャービジネスに対して資金提供する方法、それを産構審の言うような方法をとるのか、どういう方法をとるのか知りませんけれども。これは大
企業は分社ですね、あるいはこの間ちょっと申し上げましたけれども、株式のホールディングカンパニー、こういうものをもう一遍独禁法を見直してやるとか、相当自由にしないとこの
分野は
伸びていく可能性がないんじゃないかという感じがするんです。
ちょっと恐縮ですけれども、今
委員長に御了解をいただきまして資料をお配りしたいと思いますけれども、(資料配付)この資料は、国内の
生産コストがいかに諸外国に対して劣っているかということを示す
通産省でつくられた資料だと思いますが、土地、建築コスト、人件費、それから陸上運賃、乙仲、賃借倉庫、電力料金等々のどれを見ても、国内の
産業資源で諸外国に接近するような資料というものはないんです。きょうは軽くしか触れませんが、人件費コストというのは非常にやっぱり問題だと思います。この前、
牛嶋先生は私より大胆なんで、タイムシェアリングという
お話をいみじくもなさいましたけれども、そのようなことをしないとなかなか対抗できないということを示しているんです。これならば
産業が
空洞化するのは当たり前、海外に
投資を向けない方がおかしいということになっちゃう数字なんです。
そういうことを考えますと、やっぱりこういうものに抵抗するんではなくて、むしろ新しい
分野を一体いかに開拓していくかということを考え、それからさらに言えば、
労働力をどういうぐあいにこれから考えていくんだと。
実は私は、一年目は当選したばかりでもございましたので大変つつましく
皆さんの言うことばかり聞いていましたけれども、だんだん考えできますと、労働問題は、あのときに議論していた緊迫して不足するという論点もさることでありますけれども、それからさらにいろんな
労働者の立場ということを議論することもさることでございますけれども、やっぱり
労働力が、
雇用が減っていくんだという観点を議論しておかなければならない。いや、減っていくことはいいことだということは決して申し上げるつもりはありません。いかにして
雇用を確保すみかということ。この二十一
世紀を展望した
産業構造ということを考える上では、やっぱり一言か二言ぐらいは議論していないと何ともならぬのじゃないかというぐあいに考えております。
それからもう
一つフィランソロピー、これは
星野さんが一生懸命議論をされておりまして大変敬服をいたしておるんですけれども、これは
阻害要因は所得税法であることは間違いないわけです。
私は大蔵省の出身ですからあえて申し上げますけれども、実は公共法人というのが非常にいいかげんであるということなんです、基本は。だから公共法人、財団法人でも何でもそういう法人が、現在では一族に占拠されたり、いろんな売買をされていたりおかしなことになっているわけです。そういうことについての監視というんでしょうか、
規制がいいかどうか知りませんが、何かしらないとやっぱり税法上の問題が解決されていかないという問題がございます。ぜひそこのところも御議論を願いまして、この税金の控除ということも可能になるように私も
努力したいというように考えております。
意見を終わります。