○高桑栄松君 いや、差し控えたいとおっしゃったって、非常に抽象的な
言葉で抗議を申し入れても相手は抽象的な
言葉で返してくるだけでありますから、ここが悪いんだと言ったら、それに対して悪くないなら悪くないという反論があるだろうと私は思うんです。ですからその点で、きょうは本当は私の質問のほとんど全部がここなんですけれ
ども、
原爆二法、何とかいいものをつくってと思っているわけですが、
原爆というのはいかなるものか、さっき申し上げましたが、正当に怖がる必要があるということでありますので、ですからよく確かめてみる必要があると思うんです。
歴史的重大事件というのは、
原爆という
大量殺りく兵器を使ったからか、あるいは
最初に
日本に落としたからかというこの辺がなと思うんですが、大量殺りくというのは、
原爆でなくても大型爆弾を一千個一遍に落とせば同じような
被害は起きるわけだ。したがいまして、
大量殺りく兵器を使ったということの
意味は一発であったか千発であったかの違いなわけです。ですから、ほとんど
意味がないだろうと思うんです。
ただ
一つ、非常に高温であって、
爆心地から二百五十メーター離れたところの銀行の石段に腰かけていた人が一遍に蒸発をした、影だけが残った、これは人影の石として展示されています。こういう今まで見たこともないすごい兵器であると、これを使ったということなのか。そうしたら、歴史的重大な事件というのは何なんだと。人類に対する犯罪ではなかったのかと、私はそれを言おうと思ったんです。これだけじゃないんです。一発の威力で物を言っているんじゃないんです。後でお話をゆっくりいたしますから、遺伝的影響がどういうものかということを正当に怖がっていただきたい、こういうことであります。
ですから、我が国民の感情を傷つけたというような
言葉は何となくみんながそう思うでしょう、どこの感情なんだと。一遍に一発で十万人が死んだということかと。しかし、三月十日の東京大空襲でも同じように十万人死んでいるんですよ。何にも
広島だけが十万人だというのじゃないんだから。
長崎だけが十万人じゃないんです。そうすると、
日本人の国民感情というのは何だと。放射能による遺伝子
障害が
長崎、
広島の人及びそこにおられた
方々、例えばさっき
朝鮮の方が五万人もいると言われた。したがって、
日本国民だけではないはずです、これは。したがってそういう遺伝子が、少なくとも
日本人の中にたくさんの遺伝子異常が今受け継がれようとしているということを言わなきゃいけないわけだ。それが国民の感情だというんであれば、私は一〇〇%そうだと思います。
しかし、
大量殺りく兵器を使った、
日本で初めて落とした、それが国民感情というんなら戦争なんかできませんよ、戦争をやっているからには新しい兵器が使われるんだから。それごとに、これは新しい兵器だ、国民感情だと言っていたら戦争なんかできませんよ。昔のように、旗を掲げて行って、やあやあ遠からん者は音にも聞けと、そういうふうな試合をするんであれば話は違う。それはもう戦争なんですから。
ですから、そこで今問題にしているのは、
外務省の申し入れられた米側の
配慮を求めたとは何かと。私はもう結論を申し上げれば、
原爆攻撃は人類に対する犯罪だと告発をしなければいけないんじゃないかと。殊に米国が、「アトミックボムズヘイスンウオーズエンドオーガスト一九四五」、得意になっているのかと。これは放射線の
被害というものを本当に知って言っているんだろうか。大量殺りくのところだけが問題になっているのではないか。私はだからさっき言ったように、それは
原爆一発と旧来の大型爆弾一千発と同じであれば、ただ一遍でいったか一千発でいったかだけの話であるということであります。私は結論を先に申し上げてしまいましたが、
原爆攻撃というのは人類に対する重大な犯罪であるということなんです。これからお話しいたします。
一九八二年、W・L・ラッセルという人が数百万匹のマウスを使って十年余にわたった実験を行った。これが先ほど申し上げた近藤宗平さんの著書に詳しく書いてあるんです。
近藤宗平さんという人は、京都大学理学部を出て、国立遺伝研を通って、そして大阪大学の医学部に放射線基礎医学講座ができたときの教授であります。非常にすぐれた放射線基礎医学の学問の大家でございます。このお方は、国際環境変異原・がん原防護
委員会
委員、日米
原爆放射線線量再評価
委員会
委員というのを歴任しておられます。現在は阪大の名誉教授で、近畿大学原子力研究所教授である。このお方が、この本に繰り返し繰り返し引いておられる
言葉を申し上げたいと思うんです。
今申し上げましたように、数百万匹のマウスを十余年間使ったということは、三年で一代といたしますと、少なくとも三代以上にわたって実験をしてきた。なぜ三代か。遺伝子です。遺伝子を必要としなかったら三代も四代もやることはない。ですから、遺伝子
障害がどうなっていったのかということをこのラッセルという人は大実験をやっているわけです。数百万匹のマウス、十年以上と
言葉では言いますけれ
ども、大変なものですよ。ですから、この大実験を私
たちは拳々服膺しなければならないんじゃないか、こう思います。
ラッセルさんは、結論を引きますと、どんな微量の放射線であっても性細胞に被曝をいたしますと、子孫に突然変異が増加いたしまして人間に危険であるというこの結果は国際合意に達したことであります。同じ本の中にこの
言葉が何遍も出てくるんです、何遍出てきてもやっぱり読み直すわけだ。どんな微量の放射線でも性細胞に被曝をいたしますと、つまり性細胞に刻印をされると放射線によってDNAに
障害が起きます、それは子孫に突然変異を増加させることになる、これは人間にとって将来が極めて危険であることを示している、これは国際合意に達していたんですと何遍も出てきますから、二度くらい申し上げておいた方がいいと思って今申し上げたのであります。
しかも、人類の遺伝子プールに一遍入りますと簡単には排除できないということなんです。つまり、蓄積をする一方である。だから、私はチェルノブイリと
広島、
長崎は同じだと思うんです。あの大事故が起きて、チェルノブイリのときの放射能ちりは地球を駆け回ったわけだ。
日本にだって数週間後に来ているんです。あのころ、新聞紙がなんか頭につけて、雨が降るとこんなふうにして逃げているようなのが新聞にも出ていました。間違いなく来たんです。ですから、放射能ちりは世界を駆けめぐるわけだ。
広島も
長崎も同じだと思います。
したがって、
原爆攻撃をしたということは、
広島、
長崎を攻撃しただけではない、人類の遺伝子に影響を与えるような攻撃をしたんだということを私は改めて申し上げたいわけです。一遍遺伝子プールに入ると排除されないということです。その人が子孫をつくらないという決意をしなければずっと続いていく。それが一が二になり、二が四になりというふうに次々といくわけだ。疫学的
調査で出ていないではないかという
意見がございますが、これは統計を知らない人が言っていることですよ。そんなに目の前で三世に突然、間違いなく遺伝子
障害によって起きた奇形児であるなんというのが出るわけないんだから。それは、そういうのが蓄積をされて蓄積をされて、そして一万人に何人とかというふうに出るわけです。
しかも、この本の中に言われていることは、放射線による遺伝子
障害も自然に起きた遺伝子
障害というか奇形も、外見的にこれを区別することはできない。だから、もう起きてしまえば同じだということです。
しかし、おもしろいんですね。私も読んで何となく、にっこり笑うわけにはいきませんでしたが、なるほどと思ったんですが、生命のからくりというものは非常におもしろいんですね。マウスの雄の精子をつくる精原細胞、精子をつくる細胞にごく微量の放射線
障害が起きても、つまり精子をつくるもとの細胞に一遍傷がつきますと、精子は全部常にその鋳型をもらっていくわけだ。だから、雄の精子はその雄が絶滅しない限り子孫にどんどん遺伝子は受け継がれていくということであります。そこへ別な遺伝子が入ってくるとその危険率は高まっていくというわけであります。
ところが雌の方、これはまた不思議なんですね。卵母細胞、つまり卵子をつくる卵母細胞が微量な放射線
障害を受けてもこれは修復をしてしまう、修復能力がある。これは、ですから同じ性細胞の遺伝子
障害も、雄を通してはずっといくけれ
ども雌を通してはいかないんだね。やっぱり動物の世界でも雌は強い。人間ですぐ申し上げるわけにはいきませんが、雌は強い。だから、生命というものは不思議だなと。やっぱり子孫を残すために母性は長生きであるというのは、これは人間でございましたが、いや動物でもそういうのが多いですね。ですから、雌の方がやっぱり種族保存に非常に重要だからそういう能力があるんですね。
ただ、それじゃ雌は、今私が申し上げているのはマウスの実験でございますけれ
ども、雌は、レントゲンだとかそういう
医療用に使っているような強力なものを一挙に短時間に集中的にやるとやっぱり遺伝子
障害が起きる、これは起きる。だから、さっき申し上げた
原爆のようなあるいは原発事故のようなそういう放射能ちりが出ていったときに、ごく微量な放射線があったときにどうだと。一見だれも何もない。しかし雄の場合には、その微量放射線が性細胞を傷つけると、永遠に人類の遺伝子プールの中へ蓄積をされていって、やがて何年か後に人類には異常な奇形が生まれる確率が高くなるんですよと、こういうことです。
ですから、私が今申し上げているのは、新聞に出ておったのをあえてけちつけたわけじゃなくて、表現が余りにあいまいだから、私は大変あいまい過ぎると思うんです。だから、こういうのはサイエンスですからきっちりサイエンティフィックにあらわさなければいけない。
日本国民の感情とは何だ。遺伝子を傷害するということだというんであればわかります。大量殺りくならば、さっき申し上げた
理由になるのだろうか。そして、
原爆は戦争終結の手段として役に立ったではないかと。確かに役に立ったかもしれないですね。
今、ちょうど朝のドラマでやっていますね。新型爆弾が投下されたなんというのがちょうど今出ていますけれ
ども、新型爆弾というのは大量殺りくということがメーンでございまして、大体
原爆が落ちる前に
日本はもう何かポツダム宣言受諾の下交渉に入っていたという話でしたね、たしか。ですから、早めたのかどうか。しかし、早めたことの効果がもしあったとしても、そのもっと大きな
被害、つまり人類の遺伝子を傷害した、その傷害した遺伝子が永遠にプールに入っていくんですよということをアメリカは知らないのかと、これを私は言いたいと思うんです。
いっどこだったか忘れたんですが、
広島だったか東京だったか、放射能
被害のシンポジウムみたいなのがありまして、チェルノブイリの女性だったと思うんですが来ていて、こう言ったんです。二世、三世にすぐ出てこないではないかという話があったんですね。そうしたら、例えばチェルノブイリの女性と
広島の男性が結婚したら一挙にその確率が上がるんじゃありませんかと、こう言いました。国際化の中では当然の話でありますから、
日本国の国民だけに限られて、
日本国だけが戦争の
被害を国民ひとしく受忍せよというんであればこれはまた話は別でありますけれ
ども、第二次
世界大戦の終結を早めたという
考え方には、その裏の犯罪がどうなるんだと、これを私は告発すべきだと思っています。
ということで、マウスから出発をいたしましたが、ラッセルという人の実験でございます。
大臣、この辺でひとつ、
厚生省を代表なさらなくてもいいんです、
大臣個人のお
考えでも結構です、この話は初めてお聞きになったかもしれませんので、いかがお
考えでしょうか。