○今井澄君 確かに一義的には都道府県を主体として
医療サービスが行われる、あるいはその責任が果たされるということですが、国の責任も今言われた
意味で幾つか挙げられたこと、私はそのとおりだと思いますので、引き続き僻地
医療ですとか救急
医療ですとかあるいは一部の高度先進
医療等について国が支援をすべきであるし、マンパワーの確保に責任を果たしていただき、また三点目として公的
保険制度の安定のために頑張っていただきたいと思うわけであります。
しかし、今お聞きしました中で、国立
病院・療養所の行う政策的な
医療ということについてちょっと私自身納得できない点があるわけであります。私は、自分自身が自治体
病院で二十年ぐらい働いてそこを見てきた中で、国立
病院は大変お気の毒だなと、国立
病院は地域の
医療や一般
医療をできる条件がないなということをつくづく感じてまいりました。
そのまず第一は、国家公務員の総定員法がある。もちろん、その中でも
病院の職員等については非常に弾力的な措置がされていることは承知はしておりますが、しかしこの枠は非常に大きいものであります。
そうしますと、例えば私
どもは訪問看護をやろうということになりますと、一名ないし二名、ごく少数でいいわけですが看護婦の増員をするわけです。忙しい
医療の中で、その現員の中でいきなりやるわけにはいきませんので、増員をする。自治体
病院の場合はすぐ身近に議会がありますし、市町村長おりますので相談をして、議会を開いていただいて定数条例を
改正するということをやれるわけですが、国立
病院ではそれができないということがあって、率直に申し上げまして、私の見聞きしているところでは例えば国立
病院が率先して地域
医療の中の大事なことである訪問看護をやったということはほとんど見ていないわけであります。その定員の問題です。
〔理事菅野壽君退席、
委員長着席〕
それからもう
一つは、日進月歩の
医療の
技術革新の中で、例えばある
医療機械がこの地域の
医療のために必要だというふうになったときに、これは
民間病院ですともちろん経営を考慮して買おうと思えばすぐ買えるわけですし、自治体
病院でも補正予算を組んですぐ買えるわけですが、国立
病院の場合にはなかなかそうはいかないんですね。国家予算ですし、全国に二百幾つある中での順番になるということで、買ったときにはもう近隣の
民間病院なり公的
病院が備えていて、今さら国立
病院にこの
機械を入れなくてもいいなどという時代おくれのことが間々起こるわけであります。
それから三番目の問題としては、国立
病院は地域の住民の
医療ニーズを的確に反映させる
システムがない。公立
病院ですと、議会だとか市町村長を通じてすぐ意見が反映される。例えばこれは職員の何か態度
一つについても、いい悪いは別としてフィードバックがかかってきて
病院の
医療の姿勢が変えられるわけです。例えば公的
病院でも、よく地域の皆さんを入れて運営協議会などができております。私の隣のさる公的
病院も、
医師会であるとか
保健所長だとかあるいは婦人会の代表を入れて三カ月に一度とか運営の
会議を開く。ところが、国立
病院の運営については地元住民の意見を反映させる
システムがないということがあります。したがって、非常に硬直的な運営がされている。
それから四番目に、これは運営、経営ともに大事なわけですけれ
ども、この根幹に座っているのは実は
病院では院長と事務長、このペアなんですね。ところが事務長さんは、国立
病院の場合は大体二年か三年に一遍どこかから回ってくる。その地域には全然
関係のない方だということで、
病院の経営や運営に熱が入らないんですね。二、三年無事に過ごして次のところへ移ればいいということになるわけであります。
ところが、やっぱり地域の
病院になりますと、地域出身の事務長さんは本当に熱心に
病院の運営にも経営にも取り組むわけであります。私が勤めておりました
病院の事務長も、かつて大赤字が続いてつぶしてしまえと言われた時代には、子供にもお父さんの勤めている
病院の名前を言うのが恥ずかしかったという中で本当に頑張りまして、最近は誇りを持って
病院に勤めていることを言えるというふうにも変わってきたわけで、そういう地域の人が参加するということは非常に大事だと思うんですね。
それから五番目ですけれ
ども、そう言っては失礼ですけれ
ども、国立
病院の職員の士気は低い。そう言ってはなんですけれ
ども、特にお
医者さんの士気はまことに低いということを言わざるを得ない。これもやっぱり国立てあるということによって来るゆえんというのは私はかなりあると思うんですね。
そういった点から、国立
病院が地域の
医療や一般
医療をやるのは極めて不適切である、できるだけ地元にお任せいただければいいと思うわけですが、しかし一方で、国立
病院が担わなければならない
医療もあるということで、先ほどの政策
医療の
お話が出てまいりました。
政策
医療について、先ほどの
お話は広域的な高度
医療ですとかマンパワーの育成だとか研究ということがありましたが、それも大事かもしれませんが、そういうことは既に
大学病院、県立
病院あるいは民間の
病院ですらやっていることなんですね。何も国立
病院がやらなくてもいいことだろうと思います。
厚生省の資料で、これは昭和六十年に「国立
病院・療養所の再編成・合理化の
基本指針」が出たときの政策
医療として掲げられているものを見てみまして、今
局長さんのお答えにはなかったわけですが、それを見ますと五つほどに分かれているわけであります。
一つが、がん、循環器病、神経・精神疾患等の高度先駆的
医療と書いてあるんですね。私は、がんとか循環器病、それから精神疾患についてもそうですが、
国民的疾病と言われるものについての高度先駆的
医療というのは、今も言いましたように
大学病院でももう一県一医科
大学ですし、地域の県立
病院でも、
民間病院ですらやっている。だから、こんなことを一般的にやる必要はないと思うんですね。ただ、例えば国立がんセンターとか循環器病センターみたいなものは国じゃなきゃできない。これは何も一個と言わず、二個三個全国にあってもいいと思うんですね。でも、各県に
一つとかブロックごとに
一つみたいな
病院は、何も国立
病院でやらなくてもどこか地元へ移管していただいても私はいいんじゃないだろうかというふうに、むしろ地域のためを
考えて思います。
それから次、二番目に書いてあるのが結核、重心、筋ジス、ハンセン病等、社会的に要請されている
医療。これは確かにそうだと思うんですね。重心、筋ジス、ハンセン等は、率直に言って今国立
病院以外にはやっておりません。ですから、国立
病院から手を引かれる、療養所から手を引かれると困るという
意味で、将来のことはともかく、
福祉的要素を含めて頑張っていただきたいんです。
この中に結核というのが入っているんですが、結核が入るのは私はもうおかしいと思うんですね。結核はもう一般の感染症とほとんど変わらないということですね。もちろん、全国に一、二カ所、結核というのもまだ大事な病気ですから、がんセンターみたいな形でセンター
病院をつくっていただくというのはいいと思うんですが、各県に結核の療養所を国立て持っているという必要はもはやない。これは公立なり公的なりあるいは民間でもやってくださるところがあればやってもらえばいい。
それから、三番目に難病。これも国立が先頭に立っていずれ地域でできるようにしていただきたい。
四番目には、老人性痴呆に対する
医療のモデル的実施とあるんですが、モデル的実施は確かに国立てやっていただいて早く地域の各
病院で一般的にできるようにしていただく、これはいいと思います。
それから、五番目に国際
医療協力。これも国立だけがやることではないでしょうが、率先してやっていただくことは大変いいことだと思います。
この時代にはなかったんですが、エイズですね、これも国立てやっていただきたいと思うんです。
そういう
意味でいいますと、今の
厚生省の国立
病院の統廃合計画を見ますと、当時二百三十九ある国立
病院・療養所のうちの七十四を統合するなり移譲するなりして整理して、残り百六十五にするというんですけれ
ども、私は、極端な話、一割残ればいい、二、三十あれば国立
病院としての政策
医療はやっていただけると。あとは地元の各種の公的あるいは公立あるいは民間に移管をしていただく、あるいは
福祉施設に転用する、まあ老人
病院みたいになっているところもありますから、そういうふうに
考えているわけです。
政策
医療の
内容について意見を申し上げましたが、いかがでしょうか。