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1994-11-09 第131回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成六年十一月九日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 金子原二郎君    理事 斉藤斗志二君 理事 志賀  節君    理事 島村 宜伸君 理事 中島洋次郎君    理事 長浜 博行君 理事 冬柴 鐵三君    理事 山田 正彦君 理事 小森 龍邦君       奥野 誠亮君    梶山 静六君       大口 善徳君    柿澤 弘治君       左藤  恵君    笹川  堯君       富田 茂之君    中井  洽君       山岡 賢次君    佐々木秀典君       坂上 富男君    枝野 幸男君       錦織  淳君    正森 成二君       徳田 虎雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 前田 勲男君  出席政府委員         法務大臣官房長 原田 明夫君         法務大臣官房司         法法制調査部長 永井 紀昭君         法務省民事局長 濱崎 恭生君         法務省刑事局長 則定  衛君         法務省矯正局長 松田  昇君         法務省保護局長 杉原 弘泰君         法務省入国管理         局長      塚田 千裕君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    高野幸二郎君         外務省アジア局         長       川島  裕君  委員外出席者         警察庁生活安全         局銃器対策課長 小野 次郎君         警察庁生活安全         局薬物対策課長 山崎 裕人君         警察庁刑事局捜         査第一課長   南雲 明久君         防衛庁防衛局防         衛政策課長   守屋 武昌君         国税局調査査察         部調査課長   若泉 征也君         最高裁判所事務         総局総務局長  涌井 紀夫君         最高裁判所事務         総局民事局長         兼最高裁判所事         務総局行政局長 今井  功君         最高裁判所事務         総局刑事局長  高橋 省吾君         法務委員会調査         室長      河田 勝夫君     ――――――――――――― 十月二十八日  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願藤田スミ紹介)(第一四八号) 十一月九日  非嫡出子差別を撤廃する民法等改正に関する  請願玄葉光一郎紹介)(第一五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  裁判所司法行政法務行政及び検察行政、国  内治安人権擁護に関する件      ――――◇―――――
  2. 金子原二郎

    金子委員長 これより会議を開きます。  お諮りいたします。  本日、最高裁判所涌井総務局長今井民事局長行政局長高橋刑事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 金子原二郎

    金子委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  4. 金子原二郎

    金子委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑申し出がありますので、これを許します。志賀節君。
  5. 志賀節

    志賀委員 志賀節でございます。  私は、今まで法務委員会に籍を置いたことがございませんでしたが、このたび法務委員会に参りまして、かつ、理事も仰せつかったわけでございます。しかし、私は、今回初めてとはいいながら、従来法務行政に対しては並み並みならぬ関心を有しておりましたし、また自民党の枠内のことでございますが、自民党政務調査会法務部会にもしばしば顔を出しまして、いろいろと御意見を承り、かつ御質問をさせていただいたことを御存じの方は少なからずおられるかと存じます。  それもこれも、私は、民主国家あるいは議会政治の中におきまして、法の権威を高めること、いやしくも法の権威を損なうようなことがあってはならない、これが私の基本的な考え方でございまして、特に、法は主権者国民によって任され、しかもつくられていくものである、さればこそこの法律を尊重し、権威を高めなければいけないとの思いで今日まで来ておるわけでございます。  そのような観点から、私は、これから暫時の間お時間をちょうだいいたしまして、質問をさせていただきたいと思うのでございますが、特に今回、私が問題意識として質問をさせていただきたいと思っておりますことは、違憲訴訟についてでございます。  口があれば、栄養分も毒も何でも食べてしまっていいというようなものだとは私は思いません。違憲訴訟というものは、何でもかんでも違憲訴訟になるのだ、憲法に違反しているのではないかと思いつけば、それで違憲訴訟対象になるのだと考えること自体、少しく無理があるのではなかろうか、おかしいのではないだろうか、このように考えているものでございます。要するに、違憲訴訟主題になじむものとなじまないものとがあるのではなかろうか、このように私は考えておる次第でございます。  現に、俗に言うところの苫米地裁判、これは衆議院の解散をめぐって、無効であるという観点から提起された争訟でございます。もう一つは、安保条約にかかわる違憲訴訟がございまして、この違憲訴訟に関しましては、正確には日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反被告事件、こうなってございます。この二つの問題に関しては、二つをくくって申し上げるならば、多少語弊があるかもしれませんが、最高裁判所の手に余るもの、あるいはその管轄ではないものというような観点から、これが取り扱われないことになっておることは、御存じの向きも少なくないと思います。具体的に言えば、このように主題として違憲訴訟になじまないものが現存するわけでございます。  こういうことを考えてまいりますならば、私は、当然のことながら、違憲訴訟になじむものとなじまないものとを何らかの方法で選択をしていかなければいけないのではないだろうか。そのためには、何かのオーガニゼーションという意味での機構あるいは機関を設けるか、あるいは同じ最高裁判所がこれを取り扱うにしても、この期間は、時間的な意味での期間でございますが、その期間を設けてこれをしなければならないのではないかとか、そういう考え方に立つ必要かあつのではなかろうか。こういうようなことを考えておるのでございますけれども日本法務当局ではそういうことについてのお考えが現在まであるのかないのか、もしあるとすれば、どういうことをお考えになっておられるのか、これをまず承ってみたいと思うのであります。
  6. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  違憲訴訟になじむものとなじまないものということでございますが、今御指摘ございましたように、最高裁判所判例によりますと、今御指摘のございました苫米地訴訟判決、それから、いわゆる砂川訴訟判決でございますが、ここにおきましてはこのようなことを言っております。我が憲法三権分立制度のもとにおいても、司法権の行使について、おのずからある程度の制約は免れないのであって、あらゆる国家行為が無制限に司法審査対象となるものと即断すべきではない、と言いまして、非常に高度の政治性のある問題につきましては、たとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断法律上可能である場合であっても、かかる国家行為裁判所審査権の外にある、その判断は、主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府国会等政治部門判断に任され、最終的には国民政治判断にゆだねられているものと解すべきである、このようなことを言っておりまして、いわゆるこれは統治行為論でございますけれども、認めておるわけでございます。  一般的に、それではその限界はどうかということでございますけれども、これは御承知のように、日本裁判所は、具体的な事件が起きまして、その中でその事件を解決するについて必要な限度で憲法判断を行うということでございますので、一般的なといいますか、基準というのは特にないわけでございます。それぞれの事件に応じまして、裁判所判断できるものかどうかということを判断しておるというのが現状でございます。
  7. 志賀節

    志賀委員 大変身近な問題として取り上げてみたいと思いますことは、一票の格差是正問題でございます。  これは、従来、しばしば選挙無効請求事件というようなことで、今日まで取り上げられてきていることは御存じのとおりでありますけれども、一票の格差を是正することが憲法違反を免れる道であるというような感覚を、最高裁は持っておられるような気がいたします。何よりその証拠には、従来出されている判決文がそれを示しておるわけでございますけれども、この判決どおりに事を運ぶならば、既に指摘をされておるところでございますが、過密には過密、過疎には過疎の拍車がかかるだけである、これはもう明白でございます。  例えば、私の選挙区は、小選挙区になる前段階お話をすれば、岩手二区と申しますが、この岩手二区は、従来定数四名でございましたが、昨年の七月執行の総選挙以降、定数は一名減の三名になっておるわけでございます。この三名が、それならば今後何かの拍子に四名に戻ることがあるだろうかと考えると、可能性と申しますか、蓋然性としてはむしろ二名に減る方向にあるのではないだろうか。今の趨勢からすれば、そう断定せざるを得ない。  要するに、民主主義は数の論理と言われておりますが、その地域有権者がふえれば代表者をふやす、その地域有権者が減ればそれだけ代表者も減らす、こういうことでまいりますと、わかりやすい言葉で言えば、松葉づえを必要としている人から松葉づえを取り上げて、到底松葉づえなんか必要なくやっていける人にその松葉づえをあてがうというような形になるのではなかろうか。例えば、東京その他の大都会は、黙っていても人口がふえていく、それなりにやっていける。そういうようなところがどうしても代表者はふえざるを得ない、このことに私は大きな疑問を持つ次第でございます。  代表者がふえれば、当然それだけ財政的にも政治的にも有利な条件が整うわけでありまして、それが減ればその逆でありますのでありますから、私の地域は、代表者の頭数が四名から三名に減れば、四名に戻るよりはさらに一名減る、二名減る方向に動くのではないかと考えるのが自然のことわりでありまして、こういうこと自体が既におかしい。もっと憲法に則して申し上げるならば、文化的な最低生活を保障している憲法、あるいは職業の選択の自由を保障している憲法の上から見て、事実上過密を生んだり過疎を生んだりしていく方向づけの最高裁判決そのもの自体憲法違反になっていないだろうか、私はこういう疑義を抱くわけでございます。  それだけではございません。既に法務委員会で何回か前の質疑の中にもあったようでありますが、三権分立近代国家の建前になっております以上は、これをやはり厳守すべきでありますが、今、日本立法府構成にかかわる問題、要するに国会議員構成をどういうふうにしていくかについての問題で、最高裁判所くちばしを入れるということは、これは明らかに裁判所立法府くちばしを入れていることでありまして、三権分立を侵していることになりはしないか、こういう点でも憲法違反につながっているのではないだろうか。  こういうことを考えますと、私は、今直ちに最高裁にこの問題をめぐって違憲訴訟を起こすつもりもなければ、準備もございませんが、しかし、このこと自体を取り上げてみても、一票の格差是正というのは、果たして違憲訴訟になじむ主題なのか主題でないのか、これを疑わざるを得ないのでありますが、こういう点に関して、当局はどういうお考えを持っておられるかをこの機会に承っておきたい。
  8. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 国会議員定数について、最高裁判所がどういう判決をしておるかということでございますが、これは今御紹介がございましたように、何回かの最高裁判所の大法廷判決におきましてこれについての判断、これを公職選挙法二百四条の規定に基づく訴訟として許されるという判断をしておるわけであります。  その考え方でございますけれども、代表的な判決、これは昭和五十一年四月十四日の最高裁判所の大法廷判決でございますが、昭和四十七年の十二月十日に行われました衆議院の総選挙で、千葉一区の選挙が無効である、こういう訴訟でございます。これにつきまして、この大法廷判決を読みますと、国会議員選挙制度の具体的な仕組みの決定は、原則として国会裁量にゆだねられていること、選挙権内容としての各選挙人の投票の価値の平等は憲法上の要請である、こういうことを前提といたしまして、議員一人当たりの選挙人数格差選挙当時一対五という不平等に達していたということは、国会政策的裁量の余地を考慮しても、なおこれを正当に維持すべき理由はない、ということで違憲であるという判断をしたわけでございます。  ただし、この判決は、御承知のようにいわゆる事情判決ということでございまして、選挙自体の、選挙は違法であるけれども、その選挙は無効としない、こういう判決をしたわけでございます。その後の最高裁判所の大法廷判決は幾つかございますが、いずれも基本的な考え方は、この五十一年四月十四日の最高裁判所判決を基礎といたしまして、それぞれの事案につきまして、その当時の格差等を考慮して合憲なり違憲という判断をしておるわけでございます。  それでは、最高裁判所がそのような判決をすることがそもそも違憲ではないか、こういう御質問でございますけれども、これにつきましては、先ほど議員も仰せられましたように、これは立法司法との接点にかかわります非常に大きな、制度上の根幹にかかわる問題だというふうに考えておるわけでございまして、私ども意見を申し上げるというのは相当ではないというふうに考えておりますので、恐縮でございますが、答弁は差し控えさせていただきたいと考えておるわけでございます。
  9. 志賀節

    志賀委員 ただいまの判決文は私も読ませていただいております。  なお、その後、昭和五十八年四月二十七日に出ました選挙無効請求事件判決の、中といいますか外といいますか、裁判官藤崎萬里氏の反対意見があるわけでございます。何事によらず、憲法の各条文、条項には、賛否両論あるいは解釈のいろいろな論があるのは当然でありまして、私は、さればこそこれも取り上げなければいけないと思うのでありますが、ここにその少数意見藤崎説の一部を読み上げたいと思います。   憲法一四条一項前段にはすべての国民が法の下に平等である旨の原則がうたわれているが、同条にもその他の憲法の条章にも、国会両議院の議員定数選挙区別選挙人の数に比例して配分すべきことを積極的に命ずる規定は存在しない。このような憲法規定ぶりからすれば、私は、右のような議員定数の配分の仕方をすることは、法の下における平等という憲法原則からいって望ましいことであるが、それは望ましいというにとどまると解すべきものと考える。どのようにあることが憲法原則上望ましいということは、それが政治努力目標とされるべきことを意味し、法の下における平等というような憲法原則規定にあっては、このような綱領的側面のもつ意義を軽視してはならないと思う。しかしながら、他面、これを法律的な観点からみると、単にそうすることが望ましいというだけのことであれば、たとえそれが憲法基本原則に由来することであっても、そこから違憲の問題を生ずることはないものといわなければならない。こういうことが現にうたわれておるのでありまして、私自身がこの最高裁判決をむしろ違憲ではないかと取り上げるゆえんもまた、荒唐無稽ではないんだということをこの機会に御理解をいただきたい。  そういうことを今ここで取り上げるのも、実は、このような私ども政治家にとっても身近な問題が、違憲訴訟の名のもとに、軽々にと言っては申し過ぎかもしれませんが、取り上げられていることにもうちょっと慎重な配慮が必要ではないのではなかろうか、こういう考え方を持つのでありまして、最近読売新聞が、読売なりの憲法を、憲法試案を発表したわけでございますが、その中に憲法裁判所というものがあらわれてまいります。私は、この憲法裁判所が、ひとり読売試案に初めて出てきたものではなくて、既存のものであることは十分承知をいたしております。  この憲法裁判所というようなものについて、これからちょっと質問したいと思うのでありますが、憲法裁判所というものを当局はどういうふうにお考えになっておられるかをこの機会に承っておきたい。
  10. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 憲法裁判所ということでございますが、これは各国においていろいろ、それぞれ事情が異なるのではないかというふうに思うわけでございます。  先日読売新聞で発表されました憲法裁判所、私も拝見いたしましたが、あれを見ますと、何といいますか、抽象的に違憲立法審査権を持つというような考え方のようでございまして、法律自体憲法に違反するかどうか、具体的な事件とはかかわりなく法律自体憲法に違反するかどうかということを審査する裁判所であるということのようであります。  それから、読売新聞によりますと、これは、一般の司法裁判所でございますけれども、具体的な民事刑事事件を審理する司法裁判所とは別の組織だということで、憲法問題は専らそこで扱う、もし具体的な事件の中で憲法問題が問題になった場合には、その事件を扱っている司法裁判所憲法裁判所の方に、それが違憲かどうかということを判断してほしい、こういうことで憲法裁判所にそのような申し出をしまして、憲法裁判所の方でそのような判断をすればそれに従って司法裁判所判断する、このような制度のようでございます。  我が国の現在の裁判所でございますが、これは、御承知のように現在の最高裁判所が唯一の司法権を有する裁判所でございまして、憲法八十一条でございましたか、最高裁判所違憲立法審査権を持っておる、こういうことでございます。その違憲立法審査権というのは、これまでの最高裁判所判例によりますと、具体的な事件が生起した場合に、その事件の中で必要であるという場合に限って憲法判断を行うというシステムになっておりまして、これは、先ほどの抽象的な違憲立法審査権と対照をしますと、付随的違憲立法審査権と申しましょうか、アメリカの制度に倣ったものだということのようでございます。  一方、抽象的憲法裁判所ということになりますと、これは、諸外国で見ますと、フランスとかあるいはドイツというようなところはどうもそういうような制度をとっておるというふうに承知をしておるわけでございます。
  11. 志賀節

    志賀委員 重ねて伺いますけれども、現在の違憲立法調査権ですか、審査権ですか、それだけでもう十分とお考えか、それともやはり憲法問題、違憲訴訟問題を専ら取り扱う憲法裁判所のようなものをこれからは設けた方がいいとお考えか。私は、今のままではいかがかなと思っている一人であるから伺うのでありますが、その点、当局はどういうふうにお考えになっておられるか。
  12. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 今の点は非常に難しい問題でございまして、司法権立法権との限界領域はどこかというような制度根幹、まさに憲法にかかわる非常に重要な問題でございます。  したがいまして、具体的な事件を担当してその処理に当たっております裁判所の立場といたしましては、それについてどちらがどうだというような御意見はちょっと申し上げにくいというふうに考えておるわけでございます。これは、広く国民の間で議論をされて、その結果がどうなるかということを見守るべき問題ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。
  13. 志賀節

    志賀委員 そうであればあるだけに、ただいまわずかな例として申し上げたにしても相当深いところにかかわっておることでございますから、私のただいまの質問内容等も十分銘記しておかれたい、これは私からの希望でございます。  なお、ただいま御説明のありました欧米における、欧米というよりも欧州における憲法裁判所についてでありますが、私の承知している限りでは、民主主義国家、あるいは民主主義国家としてのメカニズムの中で、なおナチス・ドイツのようなものが政権掌握をしてしまったという反省に基づいて憲法裁判所というものは生まれたのだというふうに、私は少なくともそういうふうに学んできたわけでございます。要するに、いかに民主主義国家の容貌を備えていようとも、一歩間違えると何がその国家の中で起こるかわからないのだという、いわば謙虚な反省、あるいは慎重な姿勢が必要だと思うのでございまして、そういうところにドイツ憲法裁判所の設定が起因しておる、こういうふうに私は聞いておるわけでございます。  そこで、私は、日本の場合も、今お話がございました、当局としては確たるこの哲学にかかわるような問題は打ち出せないのだというお話でありましたから、それはそれでいいとして、十分に心にとめておいていただきたいというのはそういうことである。現に、我が田に水を引くようで恐縮でございますけれども、小選挙制度というものはいずれ導入されると思いますが、私は決していいものだと思っておらない。これはよりナチズムのようなものを生みやすい土壌をつくると理解している一人でございまして、少なくともこういうことが直接の原因ではなくても、最高裁判所の一票の格差是正のようなものが遠因か一因になったとするならば、これはゆゆしき問題ではないかと私自身考えておるのでありまして、この憲法裁判所というようなものについては、これからぜひ深く御討究をいただきたい。これは、私からの切なる希望でございます。  さて、ここで教えていただきたいと思いますことは、もう一つ憲法にかかわることでありますが、今までいわば連邦国家を形成しておりましたソ連邦が、ベルリンの壁の崩壊以降これまた崩壊いたしまして、てんでんばらばらの共和国家になってまいりました。それとは全く裏腹に、西欧十二カ国がEUという名のもとに、欧州国家運邦と申してもいいようなものを形成しつつあります。これは行く行く、EMSと呼ばれております、EMSという頭文字であらわされる共通通貨もつくられよう、こういうことが言われている中で、やはり憲法というのは国の基本法でありますから、EU基本法が将来できないはずはない。もしこれが連邦国家になれば当然そういうものができてしかるべしであろうと考えておるのでございますけれども、そのEU憲法というようなものは、現段階ではどういう方向にあるのか、御存じであれば教えていただきたい。  例えば、それぞれの国が持っている、国というのはドイツとかフランスとかイタリーとかですが、それとは全然別に憲法全部を、全部の国々の基本法となるべき憲法を別途考え、これをつくろうとしているのか。それとも、従来ある各国憲法共通項を取り上げて、いわば小異は一応捨てるというよりもさておいて、大同は認め合って憲法にしていく方向とでもいうものを考えているのか。そういうようなことはどういうことになっているのか。今後の日本の場合も、あるいは法律というものを考える上においても大事なことだと思いますので、教えていただきたい。これが当局に対する私のこの問題に関する質問であります。
  14. 永井紀昭

    永井(紀)政府委員 EUはECを引き継ぎまして、一九九三年、昨年の十一月に発効したわけでございますが、この欧州連合条約には、一般的にその十二カ国を統合していくようなさまざまな段階の枠組みをつくり上げることを目的とするというふうにされておりまして、具体的には、ECを引き継いておりますので、石炭鉄鋼の共同体、あるいは経済共同体、あるいは原子力共同体というものが根幹にあるわけですが、さらに、外交、安全保障政策の共通化とか、あるいはただいま御指摘ありましたように単一通貨を基礎とした通貨統合の達成とか、あるいはEU市民権の導入とか、あるいは司法、警察分野での協力の強化、こういったことが目的にうたわれておるわけでありまして、そういった観点で法的な側面での調整ということは行われつつあります。  ただ、この欧州連合条約を見ましても、憲法を統合するといった形での直接的な目的は規定されていないようでございます。そういった意味では直接憲法を、各国憲法の統合ということが直接的には示されていないということは私ども理解しているのですが、それ以上さらにその共通項を統一的なものとするかどうかということについては、私ども十分な資料を持ち合わせておりませんので、十分にお答えできないというのが現状でございます。
  15. 志賀節

    志賀委員 私は、今の世界の状況を見ておりますと、大変大きな基軸になるものは人権ではないかという考え方をしている一人でございます。そうしますと、この人権については、旧ソ連のような、アメリカあたりの人権派から大変疑惑ないし非難の目で見られるところとは違って、西欧十二カ国はやはり人権を尊重する国々でございますから、人権を軸にして容易に憲法のようなものは共通項を多く持ちやすいのではなかろうか。もとより宗教的、民族的、歴史的、文化的、いろいろな背景の相違から、一概に何もかにも一緒というわけにいかない点があるかもしれません。しかし、それ以上に多くの点で共通項を持ち得るのではないかというのが私などの考え方でございます。  今まで日本人がしばしば犯してきた過ちだと思いますのは、国民相互間あるいは民族相互間を見る上において、その共通性よりも差異の方に目を向けやすかった。違いに目を向けておりますと、ちょうど私ども、戦時中に鬼畜米英などと言いまして、アメリカ人、イギリス人は人類の範囲の外にある動物である、こういう発想になっていく。これは、とりもなおさず人種主義に基づいたナチズムもまさにそうであったし、さればこそ、あの人道に反する人間の大量殺りくなどということを平気でやり得たのは、そこにあったのではないかと思うのであります。  私は、そういう観点に立つならば、やはり人間はお互い共通項が多いんだ、共通の点がかくも多いのだということの方に目を向けるべきであって、それが世の中を平和に導く一つの大きな基盤ではないだろうか。もとよりお互い人間である以上、同じ日本人同士でも相違があり、性格にも大きな違いがあるわけでございますから、これは私もわかる。しかし、それよりも大事なものは、共通項というものにより目を向ける姿勢が大事なのではないかと考えるのでございます。さすれば、私どもは、この世界の法律考える上においても、その差よりは、例えば人権というようなことに力点を置いて、あるいはこれを軸として共通項法律をつくり上げていく、あるいは認め合っていく、これが大事ではなかろうかと考えるのであります。  そこで、私はさらに踏み込んで承っておきたいと思いますことは、憲法はさておくとして、その他の六法、あるいは五法というべきでしょうか、刑法とか民法などにおいては、EUのようなところではお互いに認め合うようなものが、それぞれの条文、条項に出てきているのかどうか、こういう点はいかがなものであるかを教えていただければと存ずる次第であります。
  16. 永井紀昭

    永井(紀)政府委員 民事関係の法律についてちょっと調べてみたわけでございますが、一般的に民事関係につきましては統合する動きはあるとは聞いておりません。  ただ、EC当時、製造物責任法などにつきましては、一九八五年、昭和六十年ですが、ECの閣僚理事会指令、いわゆるディレクティブというものによりまして、加盟国がそれぞれ製造物責任法をつくりなさいという、そういう指示がありまして、現在多くのヨーロッパ諸国におきましては、若干の差異はありますが、ほぼ共通した、同じような製造物責任法がつくられているという、例えばこれは一例でございますが、そういったことで、各国においてそれぞれに割合共通した法律をつくるという動きがあるということは一部聞いております。  民事法関係だけについて説明いたしました。
  17. 則定衛

    ○則定政府委員 刑事法の分野について調べてみたわけでございますが、何分外国のことですので詳細は承知しておりませんが、私どもの把握しておる範囲内におきましては、EC内において刑法を統合するという具体的な動きはないと承知しております。  ちなみにECに属する国のうちでも、御案内のとおり、イギリスは成文法刑法典を持っておりませんが、フランスは刑法典を持っている。また、最近改正フランスにおいてなされたところでありまして、個々の国でそういう動きがあるということでございます。このように各国とも独自の刑法を持っているところでありまして、特にこれらが統合する動きがあるとは私どもは思っていないわけでございます。  なぜそういうふうなことにあるのだろうかと考えてみますと、やはり刑事法、特に刑法の実体法、いかなる行為についてそれを犯罪とし、どのような刑罰を盛るのかという問題につきましては、それぞれの国がその社会の基本的秩序を維持確保する観点から、これを害すると認める行為をその社会、経済、あるいは政治の実情や文化的、歴史的背景を踏まえながら規制するための基本法でありますから、いわばそれぞれの国情に応じた法文化というものがその背景にあるわけでございまして、ヨーロッパ諸国におきましても、刑法の、例えば確定した刑罰権の実現を図るために、それぞれの文化的基盤がいわばキリスト教国である、あるいは私どもが見てヨーロッパの生活スタイルが一応共通化しているという点から、ある国で確定した懲役刑を他の国で執行する、そういった面での協力関係は徐々に整備されているように思いますけれども、その実体法の問題についてEC内を統一するという動きは、やはり困難なことが原因になっているのではないだろうかというふうに理解しているわけでございます。
  18. 志賀節

    志賀委員 そういう問題を今後詰めていく上においても、国際的な会議がしばしば持たれることを私は希望いたしますし、それから、これは名目的と言っては言葉が過ぎますけれども、大臣とかその他トップのクラスの方たちのやるのは比較的権威を持たせるというか、そういう会議でございましょうが、あと、実動部隊がやるような会議とか、こういうようなものを織りまぜて、相当数やりながら、新しい世界をつくる上において頑張ってやっていただきたいものだというのが私の基本的な考え方でございます。ぜひそういう方向を見出していただきたい。  特に日本の場合は、戦後に至る間、人権無視の大変おくれた野蛮的な国であるというような印象を持たれていただけに、今日ここまで人権問題にも大きく目覚め、かつ乗り出している国柄でございますから、日本は名実ともに人権の上でやれる国なんだということを示す上からも、人権を軸に置いた国際会議のようなものをむしろ日本のイニシアチブのもとにリードしていただきたい、これが私の希望するところでございます。もちろん、そういうことをやっている間に、外に向かってそういうことであれば、内に向かっても、万が一にも人権無視などということで揚げ足をとられるようなことはやれなくなるはずでありますから、そういう両々相まったプラスの面を見出すことができるのではなかろうか、このように私は思うのでありまして、どうかこういう面でぜひ頑張っていただきたいと思います。  私が今まで承知している限りでは、EUの中でもルクセンブルクではEU憲法裁判所のごとき、あるいはストラスブールでは人権裁判所のごときものが置かれているように聞いております。既にEUの中ではそういう方向に動いているのですから、だから私が今申し上げた共通の基本法である憲法とか六法のようなものができていくのはもう時間の問題でありまして、それがどういうプロセスでできていくかを私どもはしっかりと見、かつ、学ぶ必要がある。そのことが私どもの人権問題と言わず、あるいは法治国家と言わず、こういうものに対する大きな栄養、滋養分になるに違いない、こう思うから、私はこのことを特にお願いをしたいのでございます。  さて、そこで申し上げたいと思いますことは、刑法も共通項をたくさん持つべきではないかということを私は強く主張をするのでございますが、既に新聞等で報道せられましたが、日本で殺人事件を犯した、イラン人と聞いておりますが、これが国外に逃亡いたしまして、現在スウェーデンにおって、この犯人の身柄引き渡しを日本が求めているにもかかわらず、日本には死刑制度が存置せられているがゆえに、これは犯人の身柄を引き渡すわけにはいかない、こういうことで今日に及んでいると聞き及んでおります。これの詳細について、私はただいま大ざっぱなところを申し上げたつもりでありますが、細部にわたって過ちがあってはいけませんので、御存じ向きの方にはこの点、お教えをいただきたいと存じます。
  19. 則定衛

    ○則定政府委員 お尋ねのケースは、外国人が日本のスチュワーデスを東京都内で殺害して国外に逃亡した、現在スウェーデンに居留しているというケースにつきまして、日本当局から犯罪人引渡法に基づいて引き渡し要請を行ったケースでありますが、御指摘のとおり、スウェーデン政府としては当該被疑者を日本国に引き渡すことについては応じかねるというふうになっているわけでございます。  その理由は、スウェーデンの犯罪人引渡法上、引き渡し犯罪者が請求国で死刑に処せられないことの法的拘束力のある保障が必要である。本件につきましては、その保障が満たされていないとスウェーデン政府判断したことによるわけでございまして、個別のケースについて、そういう死刑に処せられないことの保障を法的にやってほしい、こういうことでございますが、日本国政府としては、三権分立等々の関係もございますので、法的な保障はいたしかねるということがありましたために、日本国の要請に応じてもらえないということでございます。  敷衍いたしますと、逆に日本が死刑制度を存置しているから引き渡すことができないという一般的なことではない、この点だけは敷衍させていただきたいと思います。
  20. 志賀節

    志賀委員 表現はそのとおりかもしれませんが、法律家はよく実体とおっしゃいますけれども、実体的には、これは死刑制度が存置されているから引き渡せないというふうに理解して何の不自然も無理もないように存ぜられます。  そのことよりも、さらに一歩踏み込んで私が承りたいと思いますことは、国際上の慣行といわず取り決めといわず、こういうものはほぼ相互主義に基づいておると理解をして差し支えない。そうすると、全く逆のケースでありますけれども、仮にスウェーデンで何か殺人事件が起きた、そして日本でその犯人を逮捕し、とめ置いておるが、スウェーデン政府からこの犯人の引き渡しを求められた場合に、この犯人に死刑になるかもしれない判決が下るならばともかく、絶対に死刑というものは下さないんだという前提でこの犯人の引き渡しに応ずるわけにいかない、こういうようなことが起きても不思議はないことになるのではないか。これは、相互主義からすればそういうことになるのではないでしょうか。  日本は、恐らく引き渡しを求められたとき、そういうことまでは言わないだろうと思うのでありますが。そうすると、国際的な慣行というものは、その点だけでも平仄を欠くのではないか、むちゃくちゃなことになっていくのではないか。こんなことに対して当局はお考えになったことがあるのかないのか、あるとすればどういうふうにお考えになるか、これは承っておきたい。
  21. 則定衛

    ○則定政府委員 今の、スウェーデンと日本を逆の立場に置いた場合ということでございますけれども、これは、当該行為が相互に処罰されるかどうかという意味での審査はいたしますけれども、同じ法定刑、死刑の法定刑でなければいかぬという前提でのチェックはいたしておらないわけでございまして、我が国から当該犯罪人をスウェーデン政府に殺人を犯したという嫌疑のもとで引き渡すということは可能でございます。  付言いたしますと、現実に、最近ハワイ州で日本人が日本人を殺害した事件につきまして、委員御案内のとおり、ハワイは死刑廃止州でございますけれども、その被疑者を引き渡したという事実もあるわけでございます。
  22. 志賀節

    志賀委員 必ずしも私の満足する御答弁をいただいたとは思っておりません。要するに、国際的には相互主義だということが一方に現存しているのに、それが貫き得ない状況が出てくるということは、既にここに矛盾があるし、破綻が出てきておるというふうにこれを理解して差し支えないと私は断ずるゆえんでございます。  既に御承知のとおり、法務大臣の中には、法の権威を全うするために現に存在している条項に基づいて死刑の執行をするのだということを言われて、しかも、その結果死刑の執行が行われたことが最近あったわけであります。  そうすると、条項があるにもかかわらず、スウェーデンからは日本の国内で殺人事件を犯した人間を引き取ることすら死刑存置の条項ゆえにできないんだということになれば、これは明らかに法の権威を損なっていることにもなるわけでありまして、これは十分に配慮しなければならない。もっと別の言葉で言えば、国際的な刑法の流れの中で我々は共通項を持たなければならない時点に差しかかっているんだ、こういう自覚を持つ必要があると思うのでありますけれども、この点についてはいかがお考えか、大臣にお聞きします。
  23. 前田勲男

    ○前田国務大臣 志賀先生から世界的な視野で、特にEU中心にお話がございまして、世界が司法分野でも動いている中で、我が国もその動きをよく注視をして適切に対処してまいれ、こういう御指摘をまず最初にいただいて大変感謝をいたしておりますし、私も大事なことであろうと思っておりますし、かつまた、冷戦後の世界はある意味では人権の世界だ、こういうふうに言われている学者を初め有識者の方も多くおられまして、我が国もそうした観点に立って、この人権というものに内外ともに誇り得るべき国として取り組んでいかなければならぬ、こう思っておるわけでございます。  ただいまスウェーデンの例のお話がございまして、相互主義のもとに考えたときに、我が国の法秩序そのものが矛盾から崩壊するのではないかというような御指摘になってくると思っております。相互主義も、私の考えを申し上げれば、厳密に言えば、それでは世界じゅう同じ法律でなければならぬ、刑罰でなければならぬ、あるいは似たようなことになってくる、ということになってくると思いますが、それぞれの国に主権があり、それぞれの主権のもとにやはり判断をされておる、こう解釈をいたしております。  素人でございますので、若干私の考えておりますことを事例を挙げて申し上げたいと思います。  例えばAという国で犯罪を犯してB国へ逃亡ないしは出た、こうした場合に、当然A国からB国に対して引き渡し要求があるわけでございますが、これはやはりB国の主権による判断をされる。これは世界で最も多くあるケースであろうと思っております。このB国における判断というものは、これはB国の、法治国家として当然のことでありまして、A国は法治国家法律維持の能力がなくなってしまうというものではない、かように考えております。  そうした観点から、その国、A国の法治権そのものが侵害をされ、混乱をされ、そのものが否定をされるというような現実の場にはない、かように考えておるところでございます。  また、もう一点、EUを例にとられまして、その地域、例えばEUでございますと、ヨーロッパ全体の文化、伝統、宗教等から一つの、刑罰等に対しても同じ意識を持つような動きがあるのではないか、こういうお話がございましたが、その分アジアという国に当てはめてまいりますと、先ほど来死刑というお話が出ておりますが、死刑そのものをアジア全体で廃止をしている国は例がほとんどございません。存置をしておる国ばかりであろう、かように思っております。
  24. 志賀節

    志賀委員 大臣と議論する気はないのでございますけれども、今大臣のお話しになられた中で、二つ私から指摘しなければならない点がございます。  その一つは、私が先ほど相互主義で具体例を取り上げましたことは、スウェーデンは天下に向かって自分の国の死刑廃止が正しいんだというふうに主張しているように見えるが、日本がもしそれに対抗したような形で相互的な主張をしないならば、日本は死刑存置に対しては至って腰を引いた姿勢だな、こういうふうに見られてもしょうがないのではないか、こういう感覚を私は持つのであります。  要するに、スウェーデンは、日本に死刑が存置されている以上は死刑にされる可能性があるから犯人は引き渡さない、車ほどさように死刑というものを我々はもう拒否しているのだ、こういう姿勢に見えます。一方、日本が、スウェーデンから逃げ込んできた犯人を、お前の国は死刑も含めてそれだけの自由裁量がなされなければ、これは我々の感覚にはとても拒否反応が出てしょうがないから、だから引き渡すわけにいかないのだと言えば、これは日本が死刑というものに対してそれだけの姿勢がきちっとしているんだということに私はなると思うのでありますけれども、そういう限りにおいて、私は、日本の方がこの点腰が引けているんじゃないか、こういうことを今言っているわけです。いいですか、これが一つ。  それから、もう一つ申し上げたいことは、私はヨーロッパ全体の国々が死刑に対して云々などということは一言も申しておりませんから、私はスウェーデンのことだけを今例にとっただけでありまして、この点は、それを大臣が、アジア諸国は死刑廃止国がないし、日本もその一カ国だというようなところにこの話を持っていかれたから、これはちょっとその話は違いますよ。  私は、あえてこれを色分けをさせていただくならば、私が何も改めて言う必要もなく、死刑廃止国は、日本とアメリカを別とすれば先進諸国はほとんど漏れなく廃止国である。アメリカとても、州によっては廃止をしておる。道州制がないがゆえとはいいながら、北は北海道から南は沖縄に至るまで死刑制度手つかずのままであるのは先進国では日本だけだ、こういう話になるのでありまして、こういう点では私は何も色分けの仕方は、全然ヨーロッパのことを例に、引き合いに出してないのだということは、ひとつこの点訂正をさせていただかなければいけない。  以上のような点で、私はこれ以上大臣とは議論をするつもりはございませが、車ほどさように、日本の相互主義という面からいけばこの問題についても私はいたく考えさせられますよ、こういうことを申したいのでございます。  今大臣がお手をお挙げになりましたので、どうぞ御答弁をいただきたいと思います。
  25. 前田勲男

    ○前田国務大臣 あえて御議論を申し上げるというわけではございませんが、スウェーデンから見てということでございましょうか、日本は死刑について腰が引けておるという印象を与えるのではないか、こういう御指摘がございましたのであえて手を挙げさしていただいたわけでございますが、我が国、決して腰が引けているということではございませんで、ただ、積極的にそれを申し上げているかどうかということは別にいたしまして、我が国が今日法律、法を維持したその中で死刑が厳然として存置をしておるということを申し上げておきたかっただけでございます。  あと、アジアにおける死刑云々につきましては、あえて蛇足で申し上げましたことをお許しを賜りたいと存じます。
  26. 志賀節

    志賀委員 死刑のことに関しましては、条項があるからというだけでは何の説得力も私はないと思っております。現に、諸外国においては執行を停止していることで、条項があっても、していることによって事実上死刑がない、あるいはそういう慣習をもとにして死刑制度をなくしていくというプロセスを踏んでいる国もあるわけでありまして、私は、条項そのこと自体は一向にその問題とは別である。むしろ一つ一つの事例で、対外的に、今お話ししたようなことで腰が引けているというようなふうに判断されてもやむを得ないような事例も出てきますよ、こういうことを私は指摘をしておるわけでございます。  さてそこで、私は、実は昨日のことなので、この質問についてはまだ申し上げてないので恐縮なんでありますが、韓国人の私の友人が私のところに連絡がございまして、李奉昌、御存じかと思いますが、リはスモモの李であります、ホウは奉る、ショウは日二つ重ねた李奉昌、この人が何か、天皇、戦前のことでありますが、昭和七年に天皇狙撃か暗殺かを試みた事件があったかと思いますが、この事件の全容を知りたいと思って、秦野章元法務大臣の御紹介のもとに法務省の資料室であるか、にお願いをして、その事件の全容を勉強したいと思って申し出たのであります。これが十分に御協力を得られなかった。何か全部で八冊あるんだそうでありますが、一冊から四冊までは見せてもらえないで、第五冊から第八冊までを見せてもらえた。  彼のいわく、彼のいわくでありますが、CIAですら二十五年もたてはそういうものは出して見せてもらえるはずなのに、昭和七年のものを今なお出して見せてもらえないというのは一体何事なんだ、しかしもう見せてくれなくてもいいですよ、私は実は外交史料館に行ったらば、同じ政府の関係なのに、そっちでは見せてもらえました、一体法務省のこの古い体質は何なんでしょう、私はいささか親日家のつもりであったけれども、こういうことではやはりおかしくならざるを得ませんというような憤りの言葉を私はぶつけられたわけでございます。  私は、果たしてCIAが二十五年であるかどうか、そんなことも存じません。それから、果たして日本人が韓国に行って、戦前のそういう不祥事等について向こうの政府の保有している史料の閲覧を求めた場合に果たして応じてもらえるのか、それほど素直なのかは、これもやってみないとわからないのでありますから、このことは一方的な話になるわけでございますけれども、少なくとも昨日私はそういう苦情というか憤りをぶつけられたことだけは事実なのであります。  私は、このことに関して言うならば、情報の公開という言葉であらわされると思うのでありますが、この情報の公開が、実はこのこと以外にも疑われるだけのものが法務省の中にはある。それは、死刑の執行についてであります。死刑の執行は極めて極めて隠密裏、密行主義で行われる。私はよくわからないのは、死刑というものは見せしめ効果がある、そしてそのことによって凶悪犯罪の再発を防ぐ効果を持つもの、こういう説明が世の中にあるわけでございますけれども、もし見せしめというものが本当に効果があるとするならば、これだけのテレビ時代なんですから、公開したっていいじゃないかという乱暴な議論もできなくはないのでありまして、いわんやこの執行したかしないかも、秘密の中にベールの中にとどめおくなどということはもってのほかである。  しかも、もってのほかであると私が言うのは、そういう密行し、秘密にしておいて、死刑制度などというものは我々一般人間のほとんど関係のないことなんだ、悪いやつはぶっ殺してしまえばいいんだというような一般通念を助長する中で、いかに法務省が、あるいは総務庁が世論調査をやっても、これはインチキな世論調査と言わざるを得ないのであります。やはり、きちっと出すものは出しておいて、無知とか未知をなくしたところで初めて世論調査というものがフェアに行われるんだ、こういうふうに私は考えるのであります。  ですから、法務省の情報公開というものに対するお考えについて、いろいろな面から御説明をいただけるかと思いますが、ひとつ御説明をあとう限りしていただけるとありがたい、このように思います。
  27. 則定衛

    ○則定政府委員 法務行政全般の問題はさておきまして、死刑の執行の問題についての情報公開という点について、所管の私からお答えさしていただきますけれども、今委員、日本国民の多くが死刑制度の存置についてこれを是とする理由の大きな一つとして、いわば凶悪犯人については、そうした犯人が死刑になる、そういう意味での見せしめ効果があるというふうに思っているんではないか、そうなれば死刑、その執行自体をいわば極端に言いますとオープンにすべきではないか、こういう前提でのお尋ねでございますけれども、私どもの言ういわゆる犯罪抑止効果と言っておりますのは、ある具体的な行為をし、殺人その他の凶悪重大事犯をし、それが裁判手続で有罪として認定された場合に死刑の判決を受ける、しかもそれが執行されるということ自体が、今申します抑止効果としての客観事実というふうに考えておるわけでございまして、まさか委員も、いわば処刑自体を世間に公表すること、公開することによる俗も言葉で言う見せしめということによって、いわば恐怖心その他の心理的抑制力を与えるというふうには理解されていないんだろうと思うわけでございます。  日本の場合、公開の法廷で、事実を証拠に基づいて認定した上で裁判所が法定刑の中で選択し、場合によっては死刑の判決を宣告する、またそれが最高裁まで行って確定する、こういったそれぞれの状況につきましては、広く報道機関等を通じて、また傍聴することも可能でございますし、一般によく知られているわけでございます。また、そういって確定した死刑判決を受けた者については、執行されるということも法律上明定されているわけでございまして、それをまた執行すべき責任を国が負っておるわけでございます。ですから、個々の死刑囚についての執行自体をオープンにすることと、死刑というものが法律上存置されていることについていわゆる抑止的効果があるということとは、必ずしも直接的につながる問題ではないというふうに思っているわけでございます。  私どもは、その具体的な死刑囚についての執行という問題につきましては、これもかねがね御説明申し上げておりますけれども、従来から、その執行された遺族の感情であるとか、あるいは他に拘禁されております確定死刑囚の心情の安定とか、こういったことをおもんばかりますと、それぞれの時点で個々を公に、そのことを発表するというのは差し控えるべきだという考え方で今対処をしておるわけでございますが、統計的には、各年度、どのような数の執行があったかどうか、これらにつきましてはきちんと公表させていただいているわけでございます。
  28. 前田勲男

    ○前田国務大臣 委員御指摘の、法務省の特に情報公開に対する古い体質云々とございましたが、情報公開はともかくといたしまして、決して新しい、極めて新しい体質だと私も思っておりません。これは法務大臣に就任して以来、そんな感覚は持っておることは事実でございます。ただ、新しく先頭を切るのがいいのかどうかというのは、法務省の性格等もございますので、これはまた考えなければならぬことだと思っております。  そこで、この死刑の密行主義というお言葉でございましたし、また過去、委員会等においても一、二そういうお言葉があったと思いますが、密行主義という言葉がどうかということについては、私もいろいろ御論議あるところだと思います。ただ、この死刑の事実の公表につきましては、やはり死刑を執行された残された御遺族の感情というもの、あるいはまた他の死刑確定者の心情の安定、こうしたものも十二分に配慮して、という観点から差し控えておる、こういうことでございます。  それから、密行主義というのは全く表に出ないということでございますが、結果論としては統計上公表されるというようなことになっておりまして、全く密行されておるということでないと理解をいたしておるところでございます。  あとづけ加えますと、死刑に関する世論調査、大変厳しい、インチキではないかというお話ございましたが、これは法務省がやった世論調査というよりも、総理府がおやりいただいた世論調査でございますし、私どもは、総理府が厳正な立場に立って正確に国民の世論というものを調査されておるというふうに理解をいたしておりまして、総理府から本来御答弁があればよろしいわけでございますが、私はそう世論調査に対して理解をしておりますし、また、総理府の世論調査のみならず、マスコミの世論調査等も公表されておるところでございまして、これらの数値等もかなり似た数値が出ておるというふうに理解をいたしておるところでございます。
  29. 志賀節

    志賀委員 私は、きょうは余り死刑問題については触れるつもりではなかったんでございますが、御答弁の方が御答弁の方でございますので、私、そういうことになると、ちょっとまた承らなければいけないことになってくる。  私は、はっきり密行主義だと思っているんであります。余りにも秘密主義である。したが、って、年末であるか年度末であるかの収容確定者数の昨年比によってある程度頭数がわかるとかどうとかということは私も聞いておるわけでございますけれども、いつ幾日こういうことが行われたということはないんであります。わずかにマスコミの人たちが、やはり人間社会のやっていることでありますから、どこからかリークされる、それをもとにして書いて報道する、こういうふうに私は理解しておりますけれども、私は依然としてこれは密行主義だと思っているのでございます。  なるほど処刑される人、その遺族あるいは受刑者の精神的な問題等々を配慮するということも、私もそれなりにわかります。しかし、そのことをおっしゃるならば、同時に、無知、未知の状態に一般の人たちを置いておいて行われる世論調査の是非というものとのバランスを考えてみて、どっちの方に重きを置いたらいいのか。極端なことを言えば、悪いことをやった人の方をそれだけ配慮して、一般の人たちの死刑問題に対する判断というものを狂わしていいのか、そういうバランス問題があると思うのですね。ですから、そういうことも念頭に置いておかなければ法務行政というものはしっかりしたものにならない。  それから、なるほど総務庁がやっていることには間違いありませんが、あれは法務省の委託か委嘱か相談かによるんじゃなかったでしょうか。そういうようなこともございますから、そうすれば当然世論調査の項目というものは、いわば一種のつくり方によっては誘導尋問もできるのです、多少のテクニックは使えるのです。そういうことを考えれば、こういった点でも非常に厳正なものが必要になってきて、それを大義名分として、だから死刑制度は存置すべきなんだということにつなげていいのかどうか、この説得力にもかかわってくると私は考えるのでございます。  私は、まだまだこういう問題についてお話しすればしたいことは山ほどありますけれども、時間がだんだん迫っておりますので、このことはこのことといたしまして、もう一つ教えていただきたい、一緒に考えてまいりたいと思うことがございます。  それは、この刑法の一番大事な問題に罪刑法定主義というのがございますね。罪刑法定主義というのは事後法の反対でございますね、荒っぽい表現を使えば。要するに、その条項によらずして罪に問われることはないということももう一つ言われるわけでございます。この罪刑法定主義、言えばそれこそ時間が幾らあっても足らない。この題目で、私も読んだ単行本もございますから、それだけの多くのものを蔵していることは私も承知しておりますが、今日の文明社会ではこの罪刑法定主義によらなくては裁判は、少なくとも刑事裁判は行われてはいかぬ、これは罪刑法定主義によらなくてはならないのですということになっておると私は理解をしておりますが、それでようございますでしょうか。
  30. 則定衛

    ○則定政府委員 いわゆる近代刑法の原則として、そういう考え方が定着していると理解しております。
  31. 志賀節

    志賀委員 来年で第二次世界大戦が終結を迎えて半世紀目を迎えます。この間大きな私ども忘れることのできない裁判事件としては、俗にニュルンベルク裁判、東京裁判というものがとり行われました。この二つの裁判によって若干の戦争犯罪人という名で指定された人たちが裁判を受け、処刑をされ、処罰をされた。しかも文明の名においてこれはなされました。  私が承知している限りでは、今までお話をしてきたとおり、EUですら共通の刑法がないのであります。いわんや世界全体を覆っておる刑法は全くない。そういう中で、文明の名において生命刑をも科すことをやった二つのこの裁判というものは、果たして法律の上においても一体法務当局はてれをどういうふうに位置づけて、どういうふうにお考えになっておられるかを私は承っておきたいと思うのであります。
  32. 永井紀昭

    永井(紀)政府委員 いわゆる極東軍事裁判とニュルンベルク裁判があったわけですが、極東軍事裁判についてのみ申し上げますと、この極東軍事裁判は一九四六年に連合国の最高司令官が発しました極東国際軍事裁判所条例に基づいて行われたものでございまして、この条例では、被告、起訴された者二十八名につきまして、個人責任として通常の戦争犯罪だけでなく新たに平和に対する罪及び人道に対する罪を挙げて起訴をしているわけでございます。  この人道に対する罪と申しますのは、一般市民に対する殺りく、絶滅、奴隷的虐待、追放その他の非人道的行為または政治的、人種的、宗教的な理由による迫害をいう、こういう規定をしたわけでございます。それから平和に対する罪といいますのは、侵略または国際法違反の戦争の計画、準備、開始もしくは実行、またはこれらの行為のいずれかを達成するための共通の計画や共同謀議への参加をいう、こういうような新たな犯罪概念を導入したわけでございます。  これに対しまして、当時の弁護側からは、このような新たな犯罪概念を導入し、一律に国際軍事裁判所の管轄に属するものとして、直接に国際法に準拠して個人の刑事責任を追及できるかどうかということにつきまして、これは今までこのような犯罪概念が国際法上の犯罪として確立していたとは言えないし、このような犯罪概念に基づき個人責任を問うことは、罪刑法定主義に反した事後法による裁判である、こういう反論が行われた経緯がございます。  しかし、この主張は結果的には入れられませんで、現に死刑七名を含む無期懲役十六名等の判決がなされた、こういう客観的な事実のみ一応お答え申し上げます。
  33. 志賀節

    志賀委員 法務当局としてはそれ以上の意見とか判断を申し述べることは、国際的な関係もございますから、事をややこしくするのみでございましょうから、それはそれで十分私も理解ができます。  ただ、私は今たまたまニュルンベルク裁判と東京裁判を取り上げただけであって、このすそ野にはBC級戦争裁判というのも非常にたくさんございます。こういうようなことが文明の名のもとにおいて事後法で裁かれたということに、私は非常な驚きあるいは恐るべきものを感じておるのでございまして、これをいずれの機会にかはっきりと理非曲直をただしておかなければいけないのではないだろうか。これは何も日本人だからではなくて、人類の一構成員である者としてそれを考えるのであります。  現に、今日新聞等でも報道せられておるわけでございますけれども、ユーゴスラビアの内戦をめぐって戦争裁判が行われ始めだということを私は知るのでございますが、あの裁判については、あれは事後法だと私は思っておりますが、どういう裁判なのか、わかっておられる方があられれば教えていただきたいと思うのであります。
  34. 永井紀昭

    永井(紀)政府委員 私どもも、新聞報道を見る以上の詳細なことは承知しておりません。  これは新聞報道でございますので、オランダのハーグの旧ユーゴスラビア戦争犯罪国際法廷において、これのゴールドストーンという検察官が、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争でイスラム教徒捕虜八名を虐殺したという容疑で、セルビア人勢力の強制収容所司令官を本人不在のままでこの法廷に起訴したということでございます。これは、私ども新聞報道の限りでございますので必ずしもわかりませんが、人道に対する罪ということで、新聞報道で為東京裁判等以来のことではないか、こういう報道を知っている限りでございます。
  35. 志賀節

    志賀委員 私は、先ほども国際的な共通、共用の刑法をつくる必要があるのではないかということを言っていたその伏線は、まさにこういうところにもあるわけでございます。そうでないと、事後法によって、いわばそのときの力の強いやつがほしいままのことをやる。かつて罪刑法定主義がつくられたときの我々人類の苦い経験は、独裁者とか力のあるもののほしいままな刑罰を押しつけられることをただただ黙視しあるいは甘受しなければならない、こういうことに対する反省からこれが生まれたやに私は教わっておるわけであります。  それと同じことが国際的場裏において行われてきているんだということを考えるならば、国際的な刑法の創設といいますか練り上げというものはどうしても必要なものではないかと考えるのでありまして、少なくとも可能な条項からこういうものをお互い人類がつくり上げていく、そういう努力をしていただかないといかぬのではないだろうか。このニュルンベルク裁判とか東京裁判とかただいまのユーゴスラビアの裁判とかの戦争犯罪人裁判、こういうものは人類の汚点であります。はっきり言えば人類の汚点であります。この人類の汚点であるという単なる形式上の問題だけではなくて、こういうことがひいては再び人類をあしき方向に逆戻りさせるおそれがある、可能性がある、そういう歴史の教訓から私どもは多くのものを学ばなければいけないと考えるのであります。  今、日本の国内におきましても、東京裁判史観というものを見直すべき時期に来ているのではないか、東京裁判で、ああいうよこしまな裁判で一方的にやられたことは、あるいはそういう判断を下されたことは全部誤っていたのではないか、こういう極端な議論がございます。私は、極東裁判の判決には、これは聞くべきもの、見るべきものはなるほど部分的にないわけではない、全部を否定してはかえって危険だ。しかし、その危険なものを導き出しているのが、実は事後法でやった裁判だから、あんなものは一顧だにすべきでない、否定すべきだ、こういうことにつながるのでありまして、そういう思いがけない副産物が次から次へとこういうよこしまな裁判からは生まれるのだということを考えるならば、いかに裁判というものが大事であるか、これを私は強調しても強調しても強調し足りないのであります。  さてそこで、国内の裁判の問題に今度はなってくるわけでありますが、そして、まだ時間が多少あるかもしれませんので、少し長い御答弁でも結構でありますから承らせていただきたいのは、日本の現行裁判制度を、時々意見がございますが、陪審制度に切りかえるということを真剣に考えている人、そういうことを私に聞かせてくれる方がいるわけでありますが、当局は、この陪審制度についてはどういうお考えを持っておられるのか。これはやはり、裁判に対する民主化といいますか、参加といいますか、そういうものがこれの軸になるわけでありますけれども、この陪審制度についてはどういうお考えであるか、姿勢であるか、当局のお考えを承らせていただきたいと思います。
  36. 永井紀昭

    永井(紀)政府委員 突然のお尋ねでございますので、法務省から制度的な面でお答え申し上げたいと思いますが、法務省自体では陪審ないし参審ということについての直接的な研究等は進めておりません。ただ、私どもお聞きしているところでは、最高裁判所によっては、かねてより陪審制度ないしヨーロッパでよく行われております参審制度、こういった制度につきまして研究を開始され、現在もその研究が進行中であるというふうに承っております。  この陪審制と申しますのは、もう委員御承知だと思いますが、事実認定につきまして、一般的に市民からそれを選びまして、その判断に基づいて、刑事でありますと、有罪、無罪を決定する、あるいは民事でございますと、例えばよく行われておりますのが、損害賠償請求などで過失があったかないかというようなことの認定を行う、こういう制度でございます。  それから一方、参審制度と申しますのは、裁判官がキャリアの、キャリアといいますか、本職の裁判官がいるほかに一般の方々から参加をいただいて、いわば本職の裁判官と一般の市民とがあわせて合議体を組む、こういうような趣旨で行われている制度でございます。  これらの制度の長短というものはいろいろ言われているのでございますが、陪審制度の場合ですと、やはり裁判官がその進行につきましては指示をしたり、それから法律的な問題点についてはいろいろ説示を、教えて、それで一般の人に判断をお願いするのですが、これがどうしても非常に一般受けをするような法廷活動になるという若干の欠点があるのではないか。  それから、結果論として見ると、これは私ども十分調査したわけではございませんが、英米で行われている陪審につきましてそれをフォローした学者がいるのですが、フォローして、これを本職の裁判官が判断したら、果たしてこれは合っていたか間違っていたかというような研究もあるのだそうでございますが、すると、相当誤っているのではないかと疑われるようなものがある。こういういわば批判的な目で見る、そういう考え方もあるわけでございます。そういう意味で、陪審というのはやはりちょっと危ないなということを英米の方々もおっしゃる方もいるわけです。  ただ、英米におきましては、陪審というものはやはり昔からの伝統的な、まさに市民と結びついたものとして非常に根強くあって、まさに裁判は陪審でなければならないという非常に大きな、何といいますか、意識としては一般市民、国民に根づいたものになっている。こういう面で、国民参加の司法という面では非常に長所もあるのではないかということも言われております。  まあいろいろ陪審制にも長短あり、また参審制についてもそれぞれの長短があると言われておりまして、本省では独自な調査研究は行っておりませんが、最高裁判所の方でいろいろ研究を行っていらっしゃるということを関心を持っていろいろ見守っている、こういう状況でございます。
  37. 志賀節

    志賀委員 きょうは私自身も大変勉強になる機会をお与えいただいたことを心から感謝を申し上げます。  ただいまの、陪審制度と言わず参審制度と言わず、いずれもお説のごとく一長一短、現行ももとよりあるわけでございまして、これは私どもの言葉で言えば選挙制度もまさにそのとおりでございまして、その点、土俵というものは常に一長一短があるものだということを教えてくれるのでありますが、しかし、いずれにしても、冒頭に申し上げたとおり、私は法の権威を極めて尊重するものでありますし、また、これを守っていかなければいけないという考え方に立っている人間の一人でございます。しかも、その法というものは、私ども国民に負託を受けてそうしてつくっている、これは国民のものなんだ。さればこそ、国民を尊重する同じ気持ちで法を尊重していく、こういうことでございますから、どうか、法と言わず裁判と言わず、法務省の管轄の問題について今後万全の御努力を期していただきたい、このことをお願いをして、私からの質問を閉じさせていただきます。  ありがとうございました。
  38. 金子原二郎

    金子委員長 午後零時四十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時四十一分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十分開議
  39. 金子原二郎

    金子委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。富田茂之君。
  40. 富田茂之

    ○富田委員 改革の富田茂之でございます。よろしくお願いいたします。  十月二十五日の当委員会におきまして、何名かの委員の先生方より検察官の不祥事、暴行事件に関する質疑がなされまして、法務当局より再発防止のために真剣な努力をしているんだという御回答がされておりました。  私も一生懸命やっていただきたいなというふうに感じておるところでございますが、それからまだ二週間ぐらいしかたっていないのですが、残念ながら、また、東京入国管理局係官による中国人女性に対する暴行事件が起きたというような報道がなされておりました。また、埼玉県の川口簡易裁判所民事係事務官が裁判官印を偽造しまして裁判書類を作成するといった、信じられないような事件も発生しております。  本日は、まずこの二点についてお尋ねしたいと思います。法務当局並びに司法当局に対しまして、この二つ事件の事実関係並びに事件への対応等についてお尋ねしてまいりたいと思います。  まず最初に、法務省にお伺いいたします。  十一月四日付の毎日新聞によりますと、東京入国管理局の係官が、不法在留で取り調べていた中国人女性に対して暴行を加え、顔にけがを負わせていたことが三日明らかになったというふうに報道されております。  事実関係についてちょっと述べさせていただきますと、この女性は就学ビザで一九九二年に入国、昨年十月にビザが切れて不法滞在になったようであります。その後、新宿・歌舞伎町にあるクラブに勤めておったようであります。それが先月の三十一日、出入国管理法違反容疑で検挙されて、一日の未明に東京都北区西が丘の入管第二庁舎に収容された。  収容後、この女性は、一日の正午ごろ、一緒に収容されました他の者たちと一緒に同庁舎の中で取り調べを受けていた。取り調べの際にこの当該女性は、他人名義の外国人登録済み証明書を見せて何とかその取り調べをごまかそうとした。ところが、係官から女性が所持していたパスポートを発見されて、パスポートとこの外国人登録済み証明書がどうも違うようだというようなことになったようであります。この女性は、とっさにパスポートに添付されていた写真を飲み込もうとした。この写真を隠せば何とかなるというふうに思ったんでしょう。  そういう事態になりまして、取り調べに当たっていた係官四、五人がこの女性を取り押さえ、そのうちの一人の係官がこの女性の顔に殴るけるの暴行を加えた。周りで一緒に取り調べを受けていた外国人たちがとめようとしたけれども、それがとめることができず、また、この暴行を働いた係官は、ほかの外国人たちにとめられるのを防ぐかのようにこの女性を別室に連行して、今度はこの女性に対して後ろ手錠をかけた上さらに暴行を加えた、このように報道されております。  事実関係はこのとおりで間違いないのでしょうか。ちょっとお尋ねいたします。
  41. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 現在までの調査で判明した事実についてお答え申し上げます。  十月三十一日から十一月一日の未明にかけまして、新宿・歌舞伎町の飲食店で、当局と新宿警察署が合同で不法残留等の入管法違反者三十七人を摘発し、このうち二十六人を東京入国管理局第二庁舎に任意連行の上、調査を行いました。その際、容疑者が別人の名を名のるなど供述に矛盾点が見られたため、職員が当該容疑者の所持品検査を実施した結果、容疑者名義の旅券や顔写真が発見されました。さらに事実関係を追及しましたところ、容疑者が突然立ち上がって写真を口の中に入れて飲み込もうとしたので、調査に当たっていた職員がこれをやめさせ写真を取り出そうとしましたけれども、暴れ出して職員につかみかかった上、指をかみ、足や腹をけったので取り押さえたわけでございます。  一たんは静かになったのでございますが、再び職員につばを吐きかけ、職員の腹などをけったりいたしましたので、職員が容疑者をこの間数回殴打したという事実がございます。その後、容疑者が床に頭を数回打ちつけるなどの自傷行為、自分からそういう行為をとるに及んだものでございますから、これを防止するため別室に連行せざるを得なかったわけでございます。なおも職員に対し罵声を浴びせ、足や腹部をけるなどしたため、容疑者を再び数回殴打してしまった。  御質問の新聞記事では、顔を「殴るける」とございまして、委員もそこのところも言及なさいましたが、顔をけったというような事実はございません。また、後ろ手錠というようなお話がございましたが、これは容疑者が床に頭を数回打ちつけるなどの自傷行為に及んだことから、それを防ぐための手錠の使用に及んだものでございます。  とりあえずは以上でございます。
  42. 富田茂之

    ○富田委員 ただいまの回答ですと、この中国人女性の行為自体も到底許されるものではないというのはよくわかりますけれども、幾ら暴れたから、あるいは取り調べ官に対して暴力を振るおうとしたからといって、取り調べる側が暴力を振るっていいということにはならないと思うのですね。新聞報道がそのまま事実ではないというふうにただいまの答弁ではうかがえるようですけれども、殴ったのは間違いないということですね。
  43. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 先ほど申し上げました一連の事実の中で、殴ったのは間違いございません。  なお、二言つけ加えますが、これらの行為により、職員の方も全治七日間の傷害を左鼠腰部あるいは両大腿、両足でございますが、傷害を負っております。
  44. 富田茂之

    ○富田委員 現場には、この暴行を加えた係官以外に何人かの係官がいらっしゃったようですけれども、その方たちが取り押さえれば、当該係官が暴行を振るわないでもこの女性を押さえつけるということはできたのではないでしょうか。そのあたりはどういうふうに調査されておりますか。
  45. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 私どもでは、法違反者の取り調べに当たりましては、常日ごろから人権に配慮した処理に心がけるよう指導しております。また、幹部が状況に応じて指揮監督する体制もとっておるわけでございますけれども、当日は、先ほど申し上げましたように、非常に多数の違反者が摘発され、多数の人員もそれぞれの事務処理に忙殺されていた、容疑者が証拠隠滅をはかるという意図のために先ほどのような一連の行動があったものでございますから、このような要因が重なって事件が起きてしまったというのが実情でございます。
  46. 富田茂之

    ○富田委員 別室へはだれが連れていったのでしょうか。この暴行を働いた係官だけが別室へ連れていったのですか。そうだとしたら、自傷行為を防ぐために後ろ手錠というのは、ちょっと御説明としては納得できないのですが、その点とうなんでしょう。
  47. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 私が報告を受けている限りでは、四、五名の者が取り調べに当たっておったわけでございますけれども、先ほど御説明申し上げましたような一連の事実がございましたので、数名の者が別室へ連れていった、そこで取り調べをさらに行ったということでございます。(富田委員「済みません、ちょっと聞こえなかったので、数名の者がと言ったのですか、その者がと言ったのですか」と呼ぶ)四、五名の者がそのまま別室で取り調べを続行したということでございます。
  48. 富田茂之

    ○富田委員 四、五名で当該女性を別室で調べたとすれば、何もわざわざ後ろ手錠にしたり、幾ら自傷行為を防ぐからといっても、ちょっと後ろ手錠で取り調べるというのは余りにも不自然ですし、後ろ手錠をかけた上でまた暴力に係官が及んだというのは、ちょっと普通の取り調べ状況からすると考えられないのですが、そのあたりは先ほどの答弁のままお伺いしてよろしいのですか。
  49. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 前夜来の非常にエキサイトした状況の中でございまして一連のこういう出来事があったものでございますから、風俗、習慣の違いもございまして、自傷行為というようななかなか私どもが理解しがたい、自分で自分の頭を床にぶつけるというような行為に及んだことがあって、とっさの判断でこれは何としてでもとめなければいけないということでそういう挙に及んだものと私は理解しております。
  50. 富田茂之

    ○富田委員 この暴行を振るったとされる係官が別室に行ってまで暴行に及んだ際、一緒におられた他の係官がどのような行動をされたのか。また、この取り調べに当たって当然監督者がいらっしゃると思うのですが、この監督関係の中で、一たんいろいろな方が調べられている中で暴行を振るったのを見ているわけですから、別室に連行した上でそういうことがないように何か具体的な注意がなされたのか、そのあたりはどのような調査をされておりますか。
  51. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 先ほどのような一連の事実がございまして、これは別室でやらなければいけないというとっさの判断でございましたので別室で行ったわけでございますが、これは長時間にわたって別室で暴行を続けたというようなことではございません。先ほども申し上げましたとおり、まず女性の容疑者の方が非常に暴れたり取り調べに対して柔順に従わないということで暴力行為があったものでございますから、半ば自衛的にとっさに数回殴るとかいうことでございまして、別室に行ってからも全く同じでございまして、ごく短時間の間に起きた事実でございます。したがいまして、長い間にわたって暴行を続けたというようなことでは毛頭ございません。  それと、幹部がどうしていたかということでございますが、これも先ほど御説明申し上げたとおりでございますが、非常に多数の違反者が摘発されて手分けをして前の晩からやっていたものでございますから、事務処理に忙殺されて、とっさの間、ごく短時間でございますけれども、このような出来事があったときに十分な目が行き届かなかったということはあろうかと思います。
  52. 富田茂之

    ○富田委員 ただいまの回答の中で、自衛のためにとっさにやったんだというような趣旨の御発言がございましたけれども、取り調べの状況が大変だったというのは今の話の中でよくわかりますが、だからといって女性の顔面を、男性の係官だと思いますけれども、殴っていいということにはならないと思うのですね。そのあたり、ふだんから相当な教育なり訓練をしておいていただかないと、今の答弁にもありましたけれども、慣習また風俗も違う、考え方も全然違う方たちを入管当局は相手にされるわけですから、感情的になって取り調べる側が暴力を振るうというようなことではこれは国際問題にも発展しかねませんので、その点は本当に重々注意していただきたいと思います。  事実関係は何とかわかりましたけれども、ただ、報道によりますと、暴行を振るってこの被害者の女性もけがをした。ところが、この被害者の治療をしたのが一日以上たってから。しかも面会に来た知人たちに要求されて、やっと入管当局の方で病院に連れていったというふうな報道もあわせてなされております。これが事実だとしたら、本当に情けない。なぜすぐ治療しなかったのか。そのあたりはどういうふうに調査されておりますか。
  53. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 報道は正確ではございません。  私どもは、容疑者を収容する際には、容疑者本人から健康状態について確実に聞き取り調査をするほか、収容中も随時容疑者を観察いたしまして健康管理に努める、これが基本原則でございます。  今回のケースでございますけれども事件当日は容疑者が痛みを訴えるというようなこともなかったのでございますが、翌朝鏡で自分の顔を見て驚いて診療を申し出た、また当局側も、はれぐあいなどからこれは病院での診療が必要であると判断して病院に連れていったというのが事実でございます。面会に来た知人たちから要求されて連れていったというような事実はございません。
  54. 富田茂之

    ○富田委員 面会に来た方たちからの要求ではなかったということですけれども、顔を鏡で見て自分がびっくりするぐらいけがされていたわけでしょう。これは収容している側の方で当然それは見ればわかをわけで、本人は朝鏡を見なければわからなかったのでしょうけれども、暴行を働いた方あるいは収容してきちんと収容者の管理をしている側の立場から見ればすぐわかったと思うのですが、そのあたりの収容者に対する保護監督体制というか安全管理体制というのは、この第二庁舎というのですか、そこではどういうふうになっていたのですか。
  55. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 当人が翌朝鏡で自分の顔を見て診療を申し出たというのと相前後して、担当の警備課長の方でも、やはりこれは医者に診てもらった方がいいと判断して病院の手配をしたというのが事実でございます。  日ごろの収容者の保護体制、安全管理体制はどうなっておるのかというお尋ねでございますけれども、先ほどもちょっと触れさせていただきましたが、私どもこの種の容疑者を収容する際には、容疑者当人から健康状態について確実に聞き取り調査をまずいたします。収容中も随時容疑者を観察して健康管理に落ち度のないよう、抜かりのないように努めております。
  56. 富田茂之

    ○富田委員 病院に連れていった結果、この女性の負傷の程度というようなものがわかったと思うのですが、それはおわかりですか。
  57. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 実は、何回か病院に連れていっているのでございますけれども、一番最初、十一月の二日でございますか、午前中、これはクリニックで診まして、ここでは診断書は書けなかったのでございますけれども、十一月二日の午後、板。橋総合中央病院の診断書によれば、病名として頭部外傷で、その後頭痛、吐き気が出現して、十一月二日に初診、諸検査にて特に異状はないが、吐き気を訴えるため投薬した、約十日間の経過観察を要するという診断が出ております。さらに、目の周りがはれたということがございますので、四日、眼科の専門のクリニックに連れてまいりました。そこでの診断書によれば、傷病名は眼球打撲、結膜下出血、眼底異状なしという診断を得ております。
  58. 富田茂之

    ○富田委員 これだけのけがを負ったということで、この女性の方から損害賠償を求める訴訟が東京地裁の方に提起されたというふうに報道されておりましたが、それは事実ですか。
  59. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 先般来問題となっております事件につきましては、その女性が原告となりまして、国を被告とする損害賠償訴訟、これが十一月四日に東京地方裁判所へ提起されております。
  60. 富田茂之

    ○富田委員 この女性に対する出入国管理及び難民認定法違反容疑の捜査状況はどういうふうになっているのでしょうか。具体的な中身は言えないということだと思いますが、身柄関係についてどういうふうになっているのか、教えていただければと思います。
  61. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 本人に対しては、不法残留により法令に従って退去強制手続を進めるということになります。  現在、身柄は東京の二庁の庁舎にございます。
  62. 富田茂之

    ○富田委員 損害賠償の裁判を起こして、強制退去ということになって中国に帰られる。弁護士さんがつかれていれば裁判はそのままできるでしょうけれども、自分の民事の裁判を受ける権利が侵されることのないよう、そのあたりはきちんとした配慮をしてあげていただきたいと思います。  加害者の立場になってしまったこの係官に対しては、現在どのような処分あるいは措置がなされているのでしょうか。
  63. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 現在、先ほど来お話し申し上げたような一連の事実調査を行っておりますが、さらに調査を尽くし、その結果を待って検討いたしたいと存じております。
  64. 富田茂之

    ○富田委員 風土、慣習の違い等から自傷行為まで行ってしまったというこの女性の立場、どのような考えでそうなったのかよくわかりませんけれども、少なくとも、日本の国の公務員から暴行を振るわれたんだという傷は負っているんだと思うのですね。  私も、司法研修所時代に実務修習中の検察教官から、人を殴るという行為が一体どういう意味を持っているのかということを教えていただいたことがあります。身体に傷をつけるだけじゃない、その人の人格を否定するんだ、しかも顔面を殴るということは、その人の名誉を本当に根底から覆す行為なんだということを言われた検察教官がいらっしゃいました。私も本当にそのとおりだと思います。この女性の方にもいろいろ落ち度はあったと思いますけれども、取り調べに当たる担当者はそういうところを心していかなければならないのじゃないかなというふうに思っております。  そこで、大臣に一つお伺いしたいのですが、こういう取り調べの現場にいらっしゃる方たちが、今回は被害者になった方からも暴行を振るわれたということですけれども、そういう際にもきちんと取り調べに当たって、みずからが逆に加害者にならないように、そういう体制をとるためにはどういうふうにしていけばいいのか、法務当局として今後どういうふうに対応されるのか、御所見をお伺いしたいと思います。
  65. 前田勲男

    ○前田国務大臣 入管業務につきましては、昨今、国際化の中で業務も大変ふえておりまして、その中で重い責任を入管の職員は果たしておるわけでございます。  そこで、十月三十一日から十一月一日にかけて先生御指摘事件があったわけでございます。今入国管理局長から現場の状況等御説明を申し上げたわけでございますが、その中国の当該女性も大変興奮され、かなりまた暴れられたということも事実でございますし、その結果職員がけがをしておるというのもこれまた事実でございます。  いずれにいたしましても、この件につきましては実は告訴もあったわけでございます。告訴あるなしにかかわらず、調査はこれからも適正に、十二分にして判断をしていかなければならないと思っておりますが、先生御指摘のとおり、入管の職員はまさにこうした関連のプロであると私は思っておりますし、また、日ごろそのように訓練、研修を積んでおる立場の者でございまして、入管の職員が手を出す、暴力を振るうということは絶対にあってはならないことだ、かように考えておるところでございまして、今後十二分に注意をして、再発がないように努力をしてまいりたいと思います。その意味におきまして、入国管理屈挙げて対策に取り組んでいくつもりでございます。
  66. 富田茂之

    ○富田委員 どうか二度と同じような事件が繰り返されないように希望しております。  次に、裁判所事務官によります支払い命令等の偽造事件について若干お尋ねいたします。  これも十一月一日付の読売新聞がかなり詳しく報道しております。ちょっとこの新聞によって事実関係を確認させていただきたいのですが、埼玉県の川口簡易裁判所民事係事務官が起こした事件であります。  この事件の容疑者は、有印公文書偽造、同行使の疑いで現在逮捕されているようであります。この事務官は、川口簡易裁判所民事係事務官として勤務しておった昨年十月からことし六月までの間に、住民基本台帳法違反などの罪で過料の処分というのがありますが、裁判官二人の印鑑を偽造して、過料の決定書類を約四百二十五件、偽造印鑑を押して勝手に送付していた。さらに、一昨年の四月から十月までにかけまして、裁判官の審査を経ないで、債務者に督促を通知する仮執行宣言つき支払い命令書というのがありますが、これを約千百件、偽造した印鑑を用いて書類を偽造していたというふうに報道されております。  これが事実だとしましたら、私も弁護士ですので、ちょっと信じられない。裁判所の中では一体どんなふうに書類がつくられているのだ。事務官の方とか書記官の方が勝手に裁判官の判こを押して正規の書類ができて、それが外に流通してしまう、それでは裁判官は何のためにいるのだ。この書類を受け取った方たちは、裁判官が出した書類だというふうに当然思っていると思うのです。ちょっと信じられないような事件であります。  今、読売新聞の記事から事実関係を抜粋させていただきましたが、事実の経過ということは、このとおりで間違いないのでしょうか。
  67. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 まず、私ども裁判所の職員が御指摘のような大変な事件を起こしまして、関係者の方に重大な御迷惑をおかけすることになりましたこと、本当に申しわけなく思っております。この場をおかりしまして、心からおわびさせていただきたいと思います。  事件内容は、ただいま御紹介のありました新聞記事の内容、ほぼその通りでございます。細かい点になりますと、過料の決定が四百二十五件当事者に送られたというふうな記事になっておりますが、正確に申しますと、偽造いたしました過料関係の決定は四百二十五件ございますが、そのうちには処罰しないというものが百件余りございましたし、また書類はつくってありましたけれどもまだ当事者の方には送らないというものも百件余りございましたので、現実に当事者の方に送付されまして直接御迷惑をおかけする形になったものが二百件余りということでございます。  ただ、いずれにしましても過料の関係の決定が四百二十五件、さらに仮執行宣言つきの支払い命令関係の書類が千百件も偽造された、こういう事件であることは御指摘のとおりでございます。
  68. 富田茂之

    ○富田委員 この報道によりますと、川口簡易裁判所では、一年間に債権者の督促申し立て事件を約二千八百件、また過料の決定を九百件扱っていると報道されています。この事務官は、仕事が遅いと言われるのが嫌でやってしまったというような供述をしているようですが、この川口簡易裁判所事件受理数というのは他の簡易裁判所と比べて特段多かったとか、そういうような事情はあるのでしょうか。
  69. 涌井紀夫

    涌井最高裁判所長官代理者 川口簡易裁判所での督促事件の申し立て、あるいは過料の事件の件数はほぼ御指摘どおりの件数でございます。  これは、なかなかほかの簡易裁判所の件数と比べるというのは難しいわけでございまして、管内の人口にもよりますし、過料の事件の場合、実はこれは地元の市町村から過料の決定をしてほしいという申し立てが出てくるわけでございますが、その申し立ての仕方自体、自治体によってかなりばらつきがございまして、非常に厳しく制裁をお求めになってくる市町村もあれば、そうでないところもございますが、そういう事情を考慮して考えましても、浦和地裁管内の他の簡易裁判所、例えば支部に併置されております簡裁ですと川越とか熊谷といった比較的大きな簡裁がございますし、またいわゆる独立簡裁では所沢あたりの簡裁がございますが、そういう簡裁の事件数と比較しますとほぼ同程度の事件数、そういう庁であるという実情がと思います。
  70. 富田茂之

    ○富田委員 仮執行宣言つき支払い命令書というのは、通常、債権者が一般の訴訟によらないで簡易な手続を利用したいというときに支払い命令の申し立てというのをされますね。裁判所の方で支払い命令書を発行して、受け取った債務者が二週間以内に異義を言わなければ、再度、今度債権者の方が仮執行宣言つきの支払い命令を出してくれというふうに申し立てして裁判所が発行するようになると思うのですけれども、この仮執行宣言つきの支払い命令書を事務官が勝手に偽造していた。  この事務官の行為は許されることではありませんけれども、なぜ裁判官が気がつかなかったのかな。御自分で支払い命令を一たんその事件については出していると思うのですね。二週間たって債務者から何も言ってこなかった、債権者から再度仮執行宣言つき支払い命令を出してくれという申し立てがある。そのあたりの事件の管理を裁判官がきちんとされていれば、もう起こりようのない事件だというふうに弁護士の目から見ると思うのですが、この川口簡易裁判所では、裁判官による督促事件事件管理というのはどのようになっていたんでしょうか。
  71. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 結論としましては、この裁判官は、まことに残念なことではございますが、そういうことに長い間気づかなかったということでございます。  その理由ということでございますけれども、今回の不祥事、これは先ほどもお話ございましたように、裁判所の職員が裁判書を偽造するという、裁判所に職を奉ずる者としては考えられないような、信じがたいような出来事であったというのが一つございます。  それからもう一つは、この偽造の対象となったのは、先ほどお話ございましたように、仮執行宣言つき支払い命令の事件と過料の事件でございますが、先ほどこれもお話にありましたように、年間に四千件弱という件数でございます。偽造が行われた期間を通算しますと一万件弱に及ぶ、こういうことでございます。  その中で、これは全部偽造されたというのではございませんで、そのうちの一部だということもございまして、一定の期間全くそういう書類が上がってこないとかそういうことではなくて、受理した件数のうち、相当数のものは裁判官が目を通してやっておるわけでございますが、そのうちの一部について偽造されたというようなことでございます。  今回問題となりましたこの支払い命令の事件あるいは過料の事件の処理の手続でございますけれども、これはもう委員御案内のとおりでございますが、その性質上、一回限りの裁判ということでございます。通常の訴訟ですと、何回か期日を重ねましてようやく結論が出るということでございますので、裁判官としては手控えをつくる等のことでいろいろ事件の管理といいましょうか、をやっておるわけでございますけれども、この支払い命令、過料は今申し上げましたように一回限りということでございまして、各事件について手控えまでつくってこの事件の管理を行うというようなことはないのが事実でございます。  これを補助いたします書記官、事務官におきまして、事件が申し立てをされますと、その都度その記録を裁判官に上げて、裁判官が審査をして結論を出す、こういうことでございます。結論を出しますと、直ちにこれを書記官なり事務官におろしまして、その後、書記官なり事務官が所要の手続をとる、こういう事務処理でございまして、一々全部手控えをつくって、これがどうなったかというところまでは追跡しておらないというのが実情でございます。  このように、結論としまして、長い間裁判官が気づかなかったというのはまことに残念なことではございますけれども、こういう事件の性質から、そういう不審を感じることができなかった。また、書記官及び事務官の事務処理というものについて、まさかこういうことはしないだろうと信頼をしていたというようなことがございまして、まことにこれは残念なことではございますけれども、結果としてはこういう不祥事に気づくことができなかったということでございます。
  72. 富田茂之

    ○富田委員 一回限りの裁判で手控えなどをつくらないというのは、それは事情としてわかるのですけれども、今、でも答弁に、書記官の方とか事務官の方の方で裁判官の指示に従って事務手続をきちんとしている。  事件の受理簿とかそういうものが当然裁判所ですからあると思うのですけれども、そのあたりの管理の最終責任者というのは当該裁判を担当した裁判官ではないんですか、私はそう思うのですけれども。それを書記官、事務官に仮に任せっ放しにしていたとしたら、この事務官だけの責任ではなくて、この担当の裁判官もかなりの部分責任があるのではないかと思うのですけれども、そのあたり、事件の管理体制というか、こういうものについてこの川口簡易裁判所でどうなっていたのか、あるいは、こういうふうに直せばここはきちんとやっていけるんだというようなところがありましたら教えていただきたいと思います。
  73. 今井功

    今井最高裁判所長官代理者 確かに御指摘のとおり、裁判所では、事件が参りますと事件簿というのをつくりまして、いつ幾日こういう事件があった、これについていつ幾日裁判があって当事者にその裁判を送ったとか、通知したとか、こういう帳簿がございます。ですから、確かに、おっしゃるように、その帳簿を丹念に見ておりましたらこういうことは防げたのではなかったかと言われますと、それはそのとおりだろうと思います。  ただ、先ほどちょっと弁解じみたことを申し上げましたけれども事件の数だとかいろいろなことで実情としてはそういうことがされなかったということで、まことに残念であり、また申しわけないことだというふうに思っております。  それで、今後こういう事件が起きないようにはどうしたらいいかということでございますが、先ほど委員からもお話がございましたように、やはりこれはこういう事件を担当する者すべての者がこういう事件の管理についてもっと関心を払うべきであろう。それは裁判官もそうでございますし、それから担当する書記官あるいはその書記官の指導監督に当たります主任書記官というようなあたりにおいて、もっと事件の進行について関心を払うべきであるということでございます。  具体的にどうするかということでございますが、これは今回、残念ながらこのような事件が起きたわけでございます。このような事件を契機といたしまして、私どもの方で早速各裁判所に対しまして、改めて、この種事件、特に支払い命令の事件のような一回限りの事件につきまして各地でどういうふうな事務処理をしておるのか、もう一回よく点検をしていただいて、二度とこういうことが起こらないように体制を立てていただきたい、こういうことをお願いしたところでございます。
  74. 富田茂之

    ○富田委員 今の説明でよくわかりましたけれども、ちょっと新聞報道で気になる部分がございました。浦和地裁の所長さんの談話という形で載っておるのですが、「簡易な手続きではあるが、裁判所職員が書類を偽造した極めて深刻な事態だ。裁判所への信頼が損なわれ非常に残念だ。どこに問題点があったか究明し、事務処理態勢を見直して、二度とこのようなことが起きないようにしたい」という談話が掲載されております。それとともに、浦和の裁判所の方で関係者におわびとお知らせを発送をした、ほとんどの審査をやり直すことにしているというような報道もされております。  この所長さんの談話というのは、「裁判所への信頼が損なわれ非常に残念だ。」それはわかるのですけれども、本来は支払い命令等を受けた方に対しておわびするのが最初だと思うのですね。そこの部分が抜け落ちているのかもしれませんが、こういう談話の発表一つとっても、細やかな配慮をしていただきたいなというふうに思いました。先ほど答弁の最初に、この席をかりておわびをしたいというような御答弁をいただきましたので、その点は追及いたしませんが、そういう姿勢を持っていないと、お上の仕事だというふうにどうしても意識がいってしまうんじゃないか。支払い命令を受けた当事者というのは、本当に判決と同じ効力があるわけですから、なかなか争っていけないような人たちが受けることが多いんだ、そのあたりの事情もきちんと裁判所にもわかっていただきたいなと思います。二度とこういう事件が起きないように、今回の事件が警鐘となればと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  続きまして、けん銃事犯の取り締まりということについて何点がお尋ねしたいと思います。  先月、十月の二十五日ですか、東京都品川区にあります京浜急行青物横丁駅で通勤途中のお医者さんが背後から射殺された事件がありました。凶器として使用された短銃を容疑者が暴力団員から購入していたということが判明しまして、一般社会への銃の拡散が本格化している、こういうことを端的に示したものではないかと注目されている事件であります。テレビや新聞等で事件直後の現場の状況が報道され、駅通路に残された被害者の血痕が事件の残酷さを物語るとともに、元患者さんが自分の手術を担当したお医者さんを逆恨みして犯行に及んだのではないかということで、非常にショッキングな事件でした。  容疑者が逮捕されて、その自供に基づいて十月三十一日に犯行に使用したけん銃が発見されました。この十月三十一日の夕方、私はテレビを、ニュースを見ておりましたら、ヘリコプターから撮った思われる映像で、大きな公園を映しておりました。どこかで見たことがある風景だなと思って、テレビを見ておりました。ずっと、カメラが上空からけん銃を捜索している現場に近づいて、おりていくような感じで映っておったのですが、あれっと思った瞬間、アナウンサーの口から私の自宅の隣にある公園の名前が呼ばれまして、ちょっと、本当にびっくりしました。こんなところで事件が起きるんだな。  私も弁護士をやっておりましたので、けん銃にかかわる事件の弁護とかいろいろやっておりましたが、それがまさか自分のすぐ自宅のそばにけん銃が放置されている、そういうようなことは本当に初めての経験であります。この公園は、子供たちの間ではタコ公園、オクトバスですね、タコ公園と呼ばれています。ピンクの色をした大きなタコの滑り台がありまして、本当に小さな子から中学生ぐらいまでが遊びに来る、広い広い公園であります。遊具もたくさんありますし、野球場もついていますし、芝生も広くてサッカーをやるにも本当に適切な、そういうところにこの容疑者はけん銃を無造作に捨てていったわけであります。本当にびっくりしました。  その十月三十一日深夜、最寄りの私鉄の駅から自宅までこの公園の中を通って帰っていったのですが、けん銃が発見された場所には何のロープも張っておりませんし、だれもいませんでした。もう全部これで事件は終わったんだなと思いながら自宅に帰りまして、妻にテレビで映っていたぞという話をしましたら、本人は見ていなかったようでまたびっくりしておったのですが、ところが、これでもう終わったと思っておりましたら、十一月四日の新聞各紙朝刊に、また同じ場所で実弾二発が発見されたというような報道がされておりました。一体どういうことなのかな、最初記事を読んでも合点がいきませんでした。この公園の近所では、この実弾が発見されたという方がかなりショックを呼んでおりました。  私には五歳の長男がおるのですが、この五歳の長男の本当に仲よしの子がおります。この子のお母さんが十一月四日の新聞を見て、もうけん銃も実弾も発見されてしまっているのに、まだ何かあるんじゃないかということで、新聞を見た途端外に飛び出しまして、公園で遊んでいる御自分のお子さんと私の長男と呼びに行ったそうであります、何かあったら大変だ。一般の市民は本当にそういう感覚です。全部終わったといっても実弾が転がっていた、それはとんでもないことなんだ、それがもう一般市民の感覚だと思います。  この経過から見まして、今回の医師射殺事件における警察のけん銃あるいは実弾に関する捜査というのは、報道経過を見る限りちょっと問題があったのじゃないかなというふうに思えるのですが、その点についてちょっと確認をさせていただきたいと思います。  事件の中身は報道でしかわかりませんが、容疑者は、逮捕された後、実弾七発とけん銃を暴力団員から購入した、一発を試し撃ちしたんだ、一発で被害者であるお医者さんを背後から撃ち殺した、そうすると、あと五発残っているわけですね。十月三十一日に発見されたけん銃には実弾は三発しか装てんされてなかった。なぜそれで警察のけん銃、実弾に対する捜索が終わってしまったのか。実弾が三発しか装てんされてなかったら、ほかの二発はどこに行ったんだろうということでもう少し付近をきちんと捜索してみるとか、あるいは夜遅くなってもし見つからないということであれば、付近を立入禁止にする等してもう一回翌日捜すとか、そういうことができたんではないかなというふうに思うのですが、そのあたりはどうだったんでしょうか。  また、十一月二日の日に実弾二発を発見されたそうですが、これが報道されたのは十一月四日の朝になってからです。私の子供も二日、三日、四日どこの公園で遊んでおりました。自分のことを言うようで恐縮でございますが、やはり危ない。子供たちは実弾を見ても、それが本物がおもちゃかわかりません。爆発するということはないでしょうけれども、まだあるんだ、そういうことであればそういう報道もきちんとしてほしいし、発見されたのなら発見されたで、もう安全ですよということをその付近の住民にきちんと知らせる手だてがあってもよかったのではないか、そういうふうに思うのですが、この点は警察庁の方はいかがに考えていらっしゃるのでしょうか、お教えいただきたいと思います。
  75. 南雲明久

    ○南雲説明員 お答えいたします。  議員お話しのとおり、この事件の凶器でありますけん銃、これは十月三十一日千葉県習志野市内の公園の草むら、ここから発見されまして、中には実包三発が装てんされた状態でございました。また、十一月二日に同所近くから実包二発を発見、押収していることは事実でございます。  ただ、この被疑者の最初の、逮捕した後の凶器のいわゆる隠匿あるいは放棄場所についての供述は、荒川に放棄したという供述でございました。そういうふうに供述が転々と変わりまして、最終的に千葉県習志野市内の公園の草むら、こういう供述を引き出せまして、発見したわけでございます。  そういう意味合いで一気に供述が、これらのところに放棄しているという内容ではございません。そういった実情もございましてこのような経過になったことを、ぜひ御理解いただきたいと思います。     〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
  76. 富田茂之

    ○富田委員 供述が変遷して捜査当局が振り回された部分があったとは思うのですけれども、やはり発見されたなら発見されたで正確な情報を付近住民にきちんと知らせていただいた方が皆さん安心するんじゃないか、そういうふうに思いますので、そのあたりの配慮はまた格段お願いいたしたいと思います。  このお医者さんの射殺事件に象徴されるように、一般人を対象としたけん銃発砲事件が実に目立っております。先月から今月にかけましても、新聞、テレビ等で本当に毎日のようにけん銃発砲事件の報道於されております。今回の質問に当たりまして、ちょっと気になりまして、調査室あるいは国会図書館の方に資料をお願いしましたら、ちょっと持ってこられないぐらい、これだけ事件が載っておりますというふうに資料をいただきました。  なぜこんなふうになってきたのか。本当に一般市民が身近に恐怖を感じるようなけん銃発砲事件が、本当は平成四年にいわゆる暴力団対策法が施行されて、また昨年は銃刀法の改正が行われまして、取り締まりが強化されているはずなんですが、それにもかかわらずこういうふうな事件がふえてきているというのは、一体どこに原因があると警察庁の方はお考えでしょうか、ちょっと教えていただければと思います。
  77. 小野次郎

    ○小野説明員 まずもって、先ほど御案内の事件を含めまして、最近けん銃発砲事件が相次いで発生し、しかも、そのけん銃の銃口が市民生活、企業活動、言論活動等に直接向けられていることが市民生活に大きな不安を与えており、また、治安上も極めて重大な事態であると警察としては受けとめております。  お尋ねの一般人に向けられる発砲事件がなぜ多発しているかということでございますが、それにつきましてはさまざまな事情考えられますけれども、一番大きな関連性があると考えられておりますのは、その前提としてけん銃の不法所持、不法に所持する者の割合でございますが、これが平成三年までは九割以上が暴力団関係者であったという事実がございますが、その後、それ以外の者の不法所持、これはもちろん検挙された数でございますけれども、急増しておりまして、本年には全体の約三〇%に達している、そういうけん銃の拡散ということが背景の一因としてはあろうかというふうに考えております。
  78. 富田茂之

    ○富田委員 けん銃の拡散ということに対して、警察庁の方で何か具体的な防止策等を考えられて対応されていますでしょうか。
  79. 小野次郎

    ○小野説明員 まず、けん銃の拡散ということの背景でございますけれども、私どもさまざまな経験から考えられますこととして、一つは、暴力団に対する取り締まりを、一昨年の暴対法の施行もありますし、また昨年の銃刀法の改正もございますが、大変厳しく行っているということの中で、暴力団を離脱する者も増加しているように見られますし、また、そういった者の中から暴力団社会の外部にけん銃を処分するということがふえているのではないかと見られることがございます。  また、もう一つは、暴力団あるいは総会屋及び右翼といった者たちのボーダーレス化といいますか、境界が非常にあいまいになっているというようなこともございまして、そうした勢力が、一般社会への浸透、いろいろな形で社会活動へ浸透してきているということに伴いまして、暴力団の周辺にけん銃がにじみ出ているという状況も考えられるのではないかと思います。  さらには、海外渡航の機会の増加等によりまして、海外等で、暴力団に限らず一般の方々でもけん銃に接する機会が必然的に増加しているということがありまして、けん銃に手を触れるあるいは入手できる機会が広がるとともに、けん銃に対する規範意識等が低下しているのではないかということが懸念されるわけでございます。  そういった背景が考えられますが、こうしたけん銃の一般社会への拡散につきましては、今申し上げましたとおり、もちろん海外との交流拡大の中で直接海外から持ち込まれたけん銃という例もありますけれども、大部分は、先ほど申し上げましたとおり、暴力団の周辺から流出したものと思われるわけでございます。このため、警察としては、こうしたけん銃拡散の元凶であります暴力団等の武器庫の壊滅を最重点として、全国警察を挙げて摘発の強化を図っておるところでございます。  また、社会に潜在するけん銃を一丁でも多く回収するため、改正銃刀法の自首減免規定というのがございますが、これの周知に努めますとともに、けん銃の所持がいかに反社会的なものであるか、また危険なものであるか、あるいはけん銃に対する我々日本人がかつてから持っているはずの拒否感、抵抗感というものがいささかなりとも低下することがないよう、いわゆるノーモアガンキャンペーン等の広報、啓発活動も今後さらに一層強化してまいりたいと考えております。
  80. 富田茂之

    ○富田委員 今の対策に加えて、平成五年の警察白書に非常に興味ある記載があったのですが、平成五年の四月からけん銃情報管理システムを導入したというふうな記載がありました。これでけん銃情報を一元化して、機動的にけん銃捜査に当たっていくのだということだと思うのですが、これがどういうふうに機能しているのか。  それと、同じ部分に、水際作戦の一環だと思うのですが、「けん銃等の密輸入対策として情報交換及び事件捜査の国際協力を推進するため、五年中に関係国を招いて銃器対策国際会議を開催することとしている。」というふうに平成五年の警察白書にあるのですが、六年の警察白書を見ますと、どうもそのことがどこかにいってしまっています。この会議がなされたのかどうかについて、ちょっと教えていただければと思います。
  81. 小野次郎

    ○小野説明員 まず、お尋ねのけん銃情報システムの方でございますが、ちょっと手持ちに詳細なデータがございませんので、承知している範囲でお答えさせていただきます。  このシステムは、従来各都道府県警察が検挙、押収したけん銃、それに関する情報というのをそれぞれ保有しておりましたものを警察庁で一元的に管理しようとするものでございまして、このシステムのメリットといいますか、効能、機能と申しますのは、押収されたけん銃が、仮に例えば北海道と九州という離れたところで押収されていても、けん銃の番号が連番であるとかあるいは同一系統の暴力団組織から押収されたものであるとかということがこういうシステムを使って分析できるということで、従来、取り調べの中でそういった相互関係などを解明していく、あるいは裏づけで足で稼ぐ、あるいは取り調べでそういうものを解明していくという側面が強かったわけでございますが、そういったものをこういったシステムを使いまして側面から背景を浮き上がらせる、そういう捜査支援のシステムでございます。これにつきましては、昨年から入力及び活用を行っているところでございます。  続きまして、銃器対策国際会議の関係でございますが、昨年十月末に、アメリカ、中国、フィリピン、タイ、香港、それからICPO、国際刑事警察機構の代表等を含めまして、十数カ国を東京に招いて開催しております。ちなみに、本年に関しましても同様の銃器対策国際会議を今月二十九日から東京で開催いたしまして、これには、ロシア、中国、アメリカ、フィリピン、韓国等の諸国が参加する予定でございます。  とりあえずそういうことでございます。
  82. 富田茂之

    ○富田委員 けん銃の使用をさせない、一般人への拡散を防ぐ、また密輸入がないように、いろいろな対策があると思います。今御答弁いただいたような対策を強化していただくとともに、これは全く私見なんですが、裁判におけるけん銃事犯の刑が軽過ぎるのではないかな。弁護士時代にも随分感じたことなんですけれども、いわゆる暴力団の間では、けん銃一丁持っていても一年半か二年ぐらい行ってくればいいんだぐらいの、そういうような雰囲気がありまして、そういう状況ではやはりどんなに防御策を講じても、最終的にけん銃の所持とかけん銃の使用というところを軽く考えられてしまう、そういうような風潮が一部にあるんじゃないかなというふうに感じております。個々の裁判官が裁判することですから、ここでどうこうは言えませんが、そういう点まで含めて、けん銃の拡散化を防ぐという観点からいろいろな方たちが協力していかなければ解決できない問題だと思います。  次に、法律扶助制度に関しまして何点か御質問させていただきたいと思います。  一昨日、法律扶助制度研究会が発足したというふうに聞いております。これは、平成五年六月二日の当委員会理事会における法律扶助に関する申し合わせ、この趣旨にのっとりまして、平成六年度予算において二千三百万円の調査研究費が計上され、今回の研究会発足に至ったというふうに私は理解しております。  そこで、確認させていただきたいのですが、この研究会の目的、構成メンバー、研究会の今後の開催予定、これと、予算編成の際に海外出張費がつくかどうかでちょっともめたりしましたが、それも計上されておりますので、諸外国への調査予定等がもしこの段階でおわかりでしたらお教えいただきたいと思います。     〔斉藤(斗)委員長代理退席、中島(洋)委     員長代理着席〕
  83. 原田明夫

    ○原田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘のとおり、一昨日、十一月七日に法律扶助制度研究会の第一回が開催されました。まさに、ただいまも御指摘いただきましたように、当委員会初め各方面から長い間御支援もございまして、懸案となっておりました法律扶助制度の抜本的な研究体制を組んでいくということの第一歩ができたわけでございまして、これまでの御支援に深く感謝申し上げるとともに、この新しくできた組織を使いまして、最大の努力を関係者の皆さん方とともに進めていくという法務省全体の気持ちでございます。  御指摘のとおり、この研究会は、現在行われております法律扶助制度の充実発展を図るために、我が国の司法制度に適合した望ましい法律扶助のあり方などにつきまして今後調査研究を行ってまいることを目的としているものでございます。  研究会の構成員につきましては、我が国の民事訴訟法の権威でもございます竹下守夫一橋大学教授に座長をお務め願い、また同じく民事訴訟法に精通されておられます東京大学の伊藤眞教授に座長代行をお願い申し上げましたほか、最高裁判所からは事務総局民事局長を、また日本弁護士連合会及び財団法人法律扶助協会からは合わせて四名の弁護士の先生方を委員として御推薦いただき、これに当省の大臣官房総務審議官及び関係の部局長を加えました計十一名の委員により委員会構成いたしました。また、この研究会における資料の収集とか運営の準備、また研究結果の整理等を行うために、学者の先生方、それから日本弁護士連合会から御推薦いただきました弁護士の先生方、法律扶助協会、また当省関係者によります合計二十二名の幹事を置かせていただきまして、あわせて研究を進めてまいるということにいたしております。  今後の研究の予定でございますが、本年度中はまず我が国の法律扶助制度の概略や問題点等につきまして、これまで法務省、日弁連、法律扶助協会の間で行われてまいりました勉強会における研究成果を逐次御報告願い、次に、これを踏まえまして、我が国の法律扶助制度の現状と問題点及びそのあり方、法律扶助の需要、諸外国におきます法律扶助制度の実情及び法律扶助制度に関連いたします民事訴訟制度全般を初め、関係の諸制度の問題点等につきまして本格的に研究を行うこととしております。  これと並行いたしまして、先ほど御質問中にもお触れいただきましたように、海外の実情等につきましても調査実施をするということで、その準備作業を早急に行いまして、一部の外国については本年度中に出張調査を行う予定で、現在その細部を詰めているところでございます。諸外国は、それぞれの国の法律・裁判制度、経済状態、弁護士等の法律家の数、国民の裁判ないし弁護士の利用についての考え方など、さまざまな要因のもとでそれぞれの国に応じた法律扶助制度を有しているものと思われますけれども、諸外国の状況も今後十分に調査させていただきました上で、我が国にふさわしい法律扶助制度のあり方を探求してまいりたいと存じます。  引き続き御支援また御指導をいただければと存ずる次第でございます。     〔中島(洋)委員長代理退席、委員長着席〕
  84. 富田茂之

    ○富田委員 財団法人法律扶助協会が実施しました民事法律扶助の昨年度の利用者は七千四百人を超えまして、同協会からの支出額は十億円を超えているというような状況になっております。今年度予算において民事法律扶助の補助金としては二億一千八百万円が計上されておりますけれども、まだまだ十分でないというふうに考えます。  ちょっと古い資料でございますが、一九九一年度の資料で見ますと、法律扶助の国庫負担に関しまして、国民一人当たり、イギリスでは三千四百七十三円、ドイツでは五百七十円、フランスでは百七十七円、アメリカでは百六十四円、韓国では十五円という支出がなされているというような報告もあります。我が国は、今年度の予算で見ても国民一人当たり二円にも当たらないわけであります。法体系の違いとか、あるいは国選弁護の費用も全部法律扶助に含めて計算しているという国等もあって、単純に比較できないと思いますけれども、それにしても、余りにも差があり過ぎる。国民一人当たり二円ではあめ玉も買えないじゃないかというような批判もされておりまして、どうかこの法律扶助制度研究会におきましては、諸外国の制度調査も十分されて、本当に国民の裁判を受ける権利を実質的に保障できる制度の確立に向けて全力で取り組んでいっていただきたいというふうに思います。  また、法律扶助協会の財政事情についても十分ごしんしゃくいただきたいなというふうに思います。ことしの一月二十三日の新聞だったのですが、朝日新聞に「法律扶助協会、財政ピンチ」と大きな見出しで出ておりました。この記事によりますと、もう本当に財政が苦しくて、積立金まで取り崩し始めた。担当の事務局長さんによりますと、「残る積立金は五千五百万円。国庫補助の増額が早いか、支部の資金が底をつくのが早いか、という状況だ」というように訴えられております。このあたりの現状も法律扶助制度研究会の方で十分確認されて、御論議をいただければなというふうに思います。  この法律扶助に関しまして、前田法務大臣は「官界」という雑誌の十月号のインタビューに答えられて、次のようにコメントされておりました。たまたま読んでおりましたら大臣の笑顔が写っておりまして、この中にこのように大臣はおっしゃられております。「法律扶助制度についての大臣のお考えをお聞きしたいのですが。」というインタビュアーに答えまして、  これは、国民に等しく裁判を受ける権利を保障しなければならない、我が国の司法制度根幹に係わる大事な問題だと思っています。今までも皆さんに、代々ご努力をいただいており、昭和二十年代からやっていますが、三十三年にはようやく財団法人法律扶助協会に補助金として一千万、それからだんだん増えてまいりまして、平成六年では二億一千八百万円の国庫補助をするようになりました。増えてきているのは事実ですが、しかし諸外国と比べますとまだまだ不十分であるという感は否めないということでして、大変問題意識をもっているところです。このようにインタビューに答えられております。  大臣は、この法律扶助制度の充実ということに関してどのようにお考えなのか。このインタビューを踏まえてでも結構ですので、一言御所見をお伺いできればと思います。
  85. 前田勲男

    ○前田国務大臣 法律扶助協会制度、今先生雑誌のインタビューを御披露いただきましたが、全く私はそのとおり、今も変わらずそう思っております。  法務委員会の先生方初め皆様の大変な御尽力、お力添え、御支援をいただきまして、一昨日研究会を発足いたしまして、日本のこの法律扶助制度の中では私は大変記念すべき日だ、大変感激もいたしたわけでございます。申し上げるまでもございませんが、憲法三十二条にもございますとおり、国民の裁判を受ける権利を実質的に保障していかなければならない、そのための極めて重い意味を持った制度であろうと思っております。  この法律扶助制度でございますが、外国との比較が先ほども先生からも御指摘ございました。いろいろ比較するには、前提条件が違っておることも事実でございますけれども、いずれにいたしましても、諸外国と比べて立ちおくれているのではないかという御指摘が極めて多く、ほとんどそのような御指摘だと理解をいたしております。これらの点を十二分に留意して、法律扶助制度の充実発展を考えていく必要が強くあると認識をいたしておるところでございます。  法律扶助制度は、まさに我が国の司法制度の一環でございまして、もちろん弁護士さんの数、また人口比、また訴訟事件の数によってもいろいろ左右されるわけでございますけれども、我が国の司法制度にふさわしい法律扶助制度のあり方について研究会において十二分に御論議をいただき、かつまた、一昨日この発会式におきまして法律扶助協会の関係者の皆様方からも、十二分な審議とともに、先ほど先生もおっしゃったとおり財政事情も非常に困窮状態にあるので、できるだけ早い機会に結論をいただきたいのが扶助協会の立場だ、こんなお話も伺っております。早くいい結論を出していただけることを心から願っておりますし、出されました結論については十二分に尊重して、かつ、実現をしていく強い決意でおるところでございます。
  86. 富田茂之

    ○富田委員 時間もなくなってきましたので、最後に一点だけ意見を述べさせていただいて終わりたいと思います。  この法律扶助制度研究会には、残念ながら弁護士会が一生懸命取り組んでおります当番弁護士制度の方の議論がなされないというふうになったようであります。刑事の問題まで取り組んでいると、民事の方が決着がつかなくなってしまう、また、被疑者段階での弁護人をつけるかどうかという制度について、国庫補助がなされるのがいいのかどうかという点についてまだ国民的合意がなされていないというような観点から、とりあえずこれは別の場でというふうになったようでありますが、当番弁護士の制度は本当に大事な制度だと思います。  十一月八日の朝日新聞の社説の最後の部分だけちょっと紹介させていただきたいのですが、「起訴前弁護を定着させるには」ということで本当にいい記事が載っておりました。この点を具体的にいろいろお話ししたいなと思っておったのですが、ちょっと時間がございませんので、最後に「国からの補助も含め、この制度をわが国の司法の中にどう定着させていくか、法曹会だけでなく、国会も含めて真剣に考えるときである。」というふうに結論づけておりました。この社説が言うとおりであると思います。  当番弁護士の制度については、当番弁護士制度実務協議会というところで日弁連と法務省、最高検の方で協議されているようでありますので、どうかこちらの協議会の方で法律扶助制度研究会の方に上げることができるような活発な議論をしていただきたいなということを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  87. 金子原二郎

    金子委員長 山田正彦君。
  88. 山田正彦

    ○山田(正)委員 改革の新生党、山田正彦でございます。  私も、実は今週の十二日からルワンダにPKO、行ってこようと、旧与党の安全保障議員連盟事務局で、団長愛知和男先生で行ってまいりますが、きょうはルワンダの難民の問題も大変本当に世界的に緊張している問題でありますが、日本における難民問題というものは真っ正面から今度深刻に討議されていいのではないか。  実は先般、法務委員会でヨーロッパ旅行いたしまして、イタリアとかフランスドイツ斉藤斗志二先生もいらっしゃいますが、いろいろなところからお話を聞いたときに、やはり今ヨーロッパで各国は一番大きな政治課題として考えているのは難民の問題である。そこで、きょうはひとつ世界的な難民の状況、その点からお聞きしてみたいと思っております。  現在世界における難民というものは、一体どのような実態であるか、まず概括的に御報告いただければと思います。
  89. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 旧ユーゴスラビア、ルワンダ、キューバ等の世界各地で大量の難民が発生しておりますが、平成五年末の世界の難民、避難民の数につきましては、国連の難民高等弁務官事務所によれば、難民が約一千六百四十万人、避難民が約二千六百万人であり、合計約四千二百四十万人となっていると報告されております。
  90. 山田正彦

    ○山田(正)委員 かなりの数のこの難民、この難民については、難民の地位に関する条約というのがありますが、日本もそれを締結しておりますね。それについて、いつごろどのようなことで難民の地位に関する条約を締結されたか、そしてその具体的な中身の中において二つだけお聞きしたいと思いますが、まず難民、経済難民とかいわゆる難民の地位に関する条約に基づく難民、そしてもう一つは難民と認められた場合のいわば待遇でありますひそれについて、追放とか送還の禁止とか、内国民待遇とかいろいろあるようですが、それについてひとつ法的な中身についての説明をまず求めたいと思います。
  91. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 まず難民条約に対する我が国の加入でございますが、これは難民の地位に関する条約の加入書及び同議定書の批准書を、それぞれ一九八一年、昭和五十六年でございますが十月三日、及び一九八二年、昭和五十七年一月一日付をもちまして国連事務総長に寄託いたしております。ちなみに、この平成五年九月十五日現在でございますが、この難民の地位に関する条約及び同議定書の加盟国数は、百十八及び百十九と相なっております。  それからもう一つお尋ねの、この難民の定義でございますが、いわゆる政治難民あるいはいわゆる経済難民というものは、難民条約上は存在してございません。ちなみに、この難民条約上、その難民とは、人種、宗教、国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であることまたは政治意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖があるため、本国外にいる者であって本国の保護を受けることができない人またはこれを望まない人ということになっております。
  92. 山田正彦

    ○山田(正)委員 この難民条約によりますと、確かにおっしゃるように、その政治的あるいは宗教、国籍、人種等について迫害を受けるおそれがある、その十分な理由があるときとなっているようでありますが、例えば、我が国においてはインドシナ難民、ボートピープルですが、これについては最初のころ、それについての難民審査というのですか、難民であるかどうかの審査を実施しておったようですが、ことしの三月にこれを廃止した。従来そういう扱いをしながら、そのインドシナの、いわゆるベトナムのボートピープルに対してどうしてそういうことをやめて、いわば不法入国者として扱う、逮捕する、それをやったのか、その法的根拠を明確にしていただきたい、そう思っております。
  93. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 いわゆるインドシナのボートピープルというのは、ベトナム戦争が終わりました一九五〇年の五月以降発生したわけでございます。  当初は、日本政府としてもこれにどう対処するかという統一的な政策がなかったわけでございまして、事実上受け入れていたわけでございますけれども昭和五十二年以降、累次の閣議了解によりまして、インドシナからのボートピープルを政策的に難民として認めるという政策ができまして、本邦の定住を認めてきたわけでございます。  しかし、その後インドシナ諸国の情勢、ベトナムの情勢を中心に随分変わりまして、ボートピープルの性格が変わってきたということで、一九八九年、平成元年以降は日本のみならず、これは国際的な会議でそのような合意ができたわけでございますけれども、従来のボートピープルと性格が違ってきているということで、一応そのスクリーニング、難民であるかどうかの審査を受け入れ国はしようということを決めまして、迫害を逃れてきた者のみを受け入れるという制度をとってきたわけでございますが、その後さらにこの事情が変わってきたということで、もう一度その関係国が国際会議を開きまして、ことしの三月四日以降でございますけれども、もうスクリーニングを行った上で入れるということもやめて、個別に保護を求めない者は不法入国者として取り扱うということで、ボートピープルに対する特別な扱いというものは国際的になくなったわけでございます。  そういう国際的な合意に従いまして、私どももことしの三月四日以降は従来と扱いは変えまして、不法入国者として扱うという扱いに変更したわけでございます。
  94. 山田正彦

    ○山田(正)委員 いわば難民の地位に関する条約第一条の迫害を受けるおそれがない、国際的会議等においてそういう認定をしたということだととっていいのでありましょうか。  そうであるとすれば、今はそれなりに結構なんですが、現在もなおこのボートピープルと言わなくてもインドシナからの難民は来ていると思います。現在その扱い、いわゆる不法入国者として実際に、例えば海から上陸する場合とかどういうふうにして、最初に海上保安庁が調べるとか、あるいは陸に上がってきた場合には不法入国者を警察が最初に捜査するとか、どういう手続でどのようにしているか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  95. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ベトナムの内政事情が変わってきた、かつてのように一律にボートピープルとして扱うような状況ではないという認定といいますか認識は、国際社会で確立いたしまして、関係者による国際会議でそのように決まったわけでございます。私どもは、それに従って先ほど申し上げたとおりの措置を開始したわけでございます。  ベトナムからのボートピープルといいますか、集団で日本へ不法入国という形でやってくる数は、最近は極めて少なくなっております。いろいろな例があるわけでございますけれども、海上保安庁の船がこれに遭遇して救うこともございますし、あるいは不法入国しようとして住民の通報で警察に捕まるということもありますし、あるいは入国管理局当局が直接それに遭遇するということもございますが、いずれにしましても、必要な刑事手続を要するものは刑事手続をとり行いますけれども、最終的には入国管理局の方へ引き渡されまして、そこでもって事実の調査、それと入国関係の審査をやりまして、そのステータスを決めておるわけでございます。
  96. 山田正彦

    ○山田(正)委員 それでは、その不法入国者に対して、ことし現在どれくらいの入国者がこの日本に来ているのか、そしてどのような方法で来ているのか、またそれに対してどういう処理をしているか、この三つについてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  97. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 お答えいたします。  ことしに至るその数年前からの状況からちょっと御説明申し上げたいと思うのでございますけれども、実は平成元年五月から二年の四月にかけまして、少数の中国定住のインドシナ難民を含む中国公民、合計約二千八百名強の者がベトナム難民を偽装して、いわゆる偽装難民としてやってきたことがございました。偽装難民事件ということで当時報じられた事件でございます。  これらの者を送還いたしましたことによりまして、この事件は一応終息したのでございますが、就労目的で日本に不法入国しようとする動きは依然としてございまして、平成元年末ごろからは、貨物船だとかコンテナ船を利用して不法入国する手口に変わり、あるいはまた平成二年十月には、中国漁船を密航船に仕立てて、長崎の漁港に到着した中国人十八名が夜陰上陸を図るという集団不法入国事件もございましたし、以後、平成三年には四件、百十二人、同じく四年には十三件、三百七十七人、同じく五年には四件、三百二十六人、本年に入りましては十月末現在で合計六件、三百五十三人の集団不法入国事犯が発生しております。中国人以外にも、本年はこれまでにベトナム人による集団不法入国事犯五件、八十八人。それ以外は、タイ人によるもの同じく二件、四十三人、及びフィリピン人による二件、十三人というような事件が起きております。
  98. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今おっしゃいました不法入国者の扱い、同時に、さきにボートピープルについては難民としての扱いを、準難民としての扱いだと思いますが、いたしたわけです。大きく分けて難民条約上の難民、そしていわゆるインドシナ難民の扱いのボートピープルの扱い、これは準難民と言っていいのかな、今はもう不法入国者としての扱いをしているようですが。それともう一つ、避難民、いわゆる偽装難民というのですか、経済的に非常に困っているので難民に偽装してやってくるという偽装難民というのもあると思うのですが、大きくそういうふうに分けられるのじゃないか、こう思われます。  それについて、それぞれの対応をこれから我が国も考えなければいけないと思いますが、とりあえず外国の例、例えばドイツにおいては、九二年には四十三万八千人という難民が押し寄せてきた、九三年には三十二万三千人の難民が、ちょっと減っておりますが、来ております。米国においても、九二年は十万、九三年は十五万と、かなりの難民がやってきております。日本は、不法入国者としての扱いがわずかに六百人ぐらいでありますけれども、将来、日本にも万単位の難民が押し寄せてくる可能性がある。そういった場合に備えて、まずドイツの難民の扱いについて外務省からお聞きしたいと思います。
  99. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 突然のお尋ねでございますので、ちょっと具体的数字等は持ち合わせておりませんが……。(山田(正)委員「前もって御通知しておりましたが」と呼ぶ)  さようでございますか。それは申しわけございません。  私ども承知しておりますことは、今委員御指摘のとおり、昨今、特に旧東欧諸国からの難民の急激な増大ということに伴いまして、ドイツ国内においては最近新たな立法措置を講じまして、難民の受け入れ数の制限という措置等をとっておるというふうに私ども承知しております。
  100. 山田正彦

    ○山田(正)委員 ドイツでは基本法そのもので、いわゆるナチ・ドイツ反省意味からも、政治難民、そういったものに対する手厚い保護、難民の権利といったものはあったようでありますが、それで、各国、殊にルーマニアとかポーランドとか、そういうところからかなりの数の難民がドイツに押し寄せてきて、しかも難民の審査を求めてきた。そういういきさつもあり、ただ、大変大事なことは、ルーマニアから例えば難民がドイツに押し寄せてくる、そのときに、ドイツとしては当然、日本も、難民条約に基づいて審査するということになるのでしょうか、その審査する期間というのがかなりの間かかる。例えばルーマニアの難民は、ドイツに着きますと直ちに今までのパスポートを全部捨ててしまう。そうすると、一から始めるとすると、それこそ何カ月も、一年も二年もかかる。その間、ドイツとしてはその難民を食べさせていかなければいけない。そういった問題というのは日本にとっても将来大変考えなければいけないところがあるのじゃないか、そう思われます。  そういった難民の受け入れに対して国内の法規制、いわゆる憲法である基本法改正して、法規制をすることによって難民を流入規制した、そういうことでかなり成果を上げているようであります。しかしながら、私は先般ドイツのトルコ人街というところに行ってまいりましたが、その中で、バスに乗って一緒に視察に行ったのですけれども、危険ですからバスからおりないでください、そう言われておりました。  日本においても、私は先般、歌舞伎町の中華料理店で、八月十日に、中国人のマフィアというのですか、いわゆる上海系と北京系の争いで二人殺されたという事件が起こりまして、その隣の店に実は飲みに行ったわけであります。そのときのいきさつを店のあるじさんが、店長がよく見ておりまして、つぶさにお聞きいたしましたが、大変本当に厳しい。殺し屋という形の者が何人も押し寄せてきて、あっという間に殺してしまった。日本では考えられないような事案であったようですが、このようなことが歌舞伎町のところで頻繁に起こってくる。  そうすると、ドイツにおけるトルコ人街じゃありませんが、外国人のいわゆる難民並びに不法入国者、そういったものの治安という問題、それについて法務省の方でどう考えておられるか、ひとつドイツの例を参考にしながら、一つの対応策があればお答え願いたい、そう思っております。
  101. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ドイツにつきましては、今委員御指摘のとおり、以前は非常に寛容な制度ということで、大変な数が集まっていたわけでございますけれども基本法改正以降、その事情が変わって、申請者の数が減っております。これは、周辺のポーランドだとかチェコだとかスロバキア、あるいはスイス、オーストリア等、十分ドイツと同じくらい民主的な国もあるではないかということで、そういうところから経由してくる者はそういう国にとどまればいいとか、そちらへ送り返すというような特別な法制をとったということが功を奏したと聞いております。  日本につきましては、ヨーロッパ諸国と比べますと、難民の数は今のところ非常に少のうございます。歌舞伎町の事例も最近は確かに非常に耳目を集めているわけでございますが、すべての人たちがいわゆる難民ということで入ってきたわけではなくて、不法滞在者も随分おりますけれども、合法的に入ってきている人もあるということで、外国人問題ということでこれから私どもも気をつけていかなければいけない問題であろうかと考えておりまして、さまざまな角度からこれから検討を進めたい、そう思っております。
  102. 山田正彦

    ○山田(正)委員 難民の問題で、イタリア及びアメリカの例について、わかっていることをひとつ御報告いただければと思います。
  103. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 最近、国連難民高等弁務官事務所、UNHCRの方で出しました資料によりますと、イタリアにつきましては、現在の難民受け入れ数は一万二千四百名というふうに承知しております。  それから、恐縮でございますが、もう一カ国、どちらの国でございますでしょうか。
  104. 山田正彦

    ○山田(正)委員 私は、前もって各国の難民の状況並びにその対応についてということを言っているし、また質問事項の中に入れておったと思うのですが、数は私の方で承知しておりますけれども一つはイタリアの場合にどういう難民に対応してきたか。アメリカの場合、今いろいろな問題がありますけれども、キューバの難民受け入れとか、そういった問題について御説明いただきたい。
  105. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 ちょっと、質問が出ているという認識がなかったものでございますから、準備はいたしておりません。
  106. 金子原二郎

    金子委員長 だって、質問通告しているでしょう。質問通告してあるのに用意してないんですか。何をしているんだ、外務省は。
  107. 高野幸二郎

    ○高野政府委員 法務省の方に行っているようでございます。
  108. 山田正彦

    ○山田(正)委員 いや、違います。きのう、外務省の担当の方と払お会いして、いわゆる各国の難民の受け入れ状況についてひとつ質問したいから、そういうふうにきちんと言っておきましたが……
  109. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 まずイタリアにつきまして、最近の事例に関して申し上げます。  一九九一年八月に、アルバニアから一万八千人に上る難民が押しかけたという事件がございましたが、最終的にはフェリーや軍用機によってアルバニアへ強制的に送還されたと承知しております。  それと、アメリカの例でございますけれども、最近の報道等によりますと、大量のキューバ難民、ハイチ難民が生じております。これに対応するため、例えばキューバの一角にあるグアンタナモ基地、米軍の基地に難民の収容施設をつくりまして、その中に約四万人を収容しているということを承知しております。
  110. 山田正彦

    ○山田(正)委員 イタリアのアルバニアからの難民の強制送還についてですが、これは難民の地位に関する条約からいくと、国際法的な条約の観点から問題があるんじゃないかと思うんですが、その点は、あるいは外務省でもあるいは法務省でも結構ですから、入国管理局でも結構ですが、どのようにお考えか、御意見をお聞きしたいと思っております。
  111. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 その点が難民条約上の精神と反するのではないかというような国際的な論議あるいは国内的論議というものがどういう形で尽くされたかば、私ども承知しておりません。恐らく事実上の解決の前にそういう議論は消えてしまったのではな、いかと思います。
  112. 山田正彦

    ○山田(正)委員 質問がもとに戻りますが、日本において難民として認められた、認定された者が過去どれくらいで、そして実際に今その人たちはどういうふうにしておられるのか、難民として認められた者ですね、例えばどこかで就職しているとか、どのような状況であるということ。また西欧諸国、これはいわゆる難民の地位に関する条約に基づいて難民として認められた者、認定された者はどれくらいなのか、そして実際に現状はどういうふうになっているかということ、これも質問の中にたしか入っておったと思うんですが、お答えできればと思います。
  113. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 日本の難民認定制度は、委員が御質問の中で指摘されましたとおり、まずベトナムのボートピープルが昭和五十年に入りまして、その後昭和五十六年、五十七年に国内的に出入国管理法の中に難民認定手続が取り入れられたという、そういう前後関係があるものでございますから、若干複雑になっております。委員がインドシナのボートピープルを準難民とおっしゃいましたが、まことにこれは適切な表現といいますか、カテゴリーだと思います。  そういうものとして御説明申し上げますと、まず、この昭和五十七年以降日本の難民認定制度が発足以来、その手続に従って本年の九月末日までに認められたといいますか、数字は次のとおりでございます。認定の申請は全部で一千百十人ございまして、このうち認定された者が二百六人、不認定が六百十八人、取り下げた者が百六十五人、現在審査中の者が百二十一人となっております。また、これとは別に、先ほど申し上げました準難民ともいうべきインドシナ難民、ボートピープルでございますが、これは現在まで、九月末現在でボートピープルの上陸者数が一万三千七百六十八人となっております。インドシナ難民定住許可、このうち日本への定住許可が下された者が九千五百七十二人となっております。  一方、西欧諸国における最近の難民の申請状況でございますけれども、一九八八年から九二年までの数字でございますが、ドイツでは約百十一万人、英国では約十二万人、フランスでは二十一万人、カナダ十七万人となっており、認定率でいいますと、ドイツが六%、英国が六〇%、フランスが二二%、カナダが六六%でございます。ちなみに、先ほどの我が国の認定率、これはインドシナ・ボートピープルの準難民は別でございますが、一九%となっております。
  114. 山田正彦

    ○山田(正)委員 ヨーロッパ各国は万単位で十二万とか二十一万、十七万、あるいはドイツの場合には九十二万だとお聞きしたように思うのですが、間違っていたら今聞き間違いかもしれません。それくらいの数で難民としての認定を受けている。  ところが日本においては、わずかに難民として認定を受けているのは二百六名と今お聞きいたしましたが、こういう数というのはヨーロッパ諸国に比べて非常に極端に差があるのじゃないか。我が国の難民認定制度そのものが問題なんじゃないか。なぜこのように我が国においては少ない認定しかしなかったのか、できなかったのか、その辺、少し納得いけるように説明いただければと思います。
  115. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 先ほど申し上げましたとおり、日本ではまずインドシナ・ボートピープルありきという事実があったわけでございます。これは当時として精いっぱいの努力をいたしまして、一万三千七百六十八人を受け入れて、そのうち定住許可数が九千五百七十二という数字がございます。これは別にいたしまして、昭和五十七年以降、初めて難民認定制度というものができたものでございますから、この制度にのっとって難民というステータスを申請した人の数は、先ほど申しましたとおり、確かにヨーロッパ諸国と比べますと大変小そうございます。ただ、認定率だけを申し上げますと、我が国の認定率は約二〇%、一九%何がしてございます。一方、ドイツは六%、英国は六〇%、フランスは二二%、カナダは六六%、いろいろばらつきがありますが、こんな数字になっております。  確かに欧米諸国の万という単位と十数万という単位、あるいは百万に近い数と比べると大変小さいわけでございますが、いろいろな理由があろうかと思います。陸続きでなくて島国であるとか、あるいは日本へ来ても最終的には第三国へ出国したいというような人もおられたということで、このような数字になっていると考える次第でございます。
  116. 山田正彦

    ○山田(正)委員 入国者はかなり不法入国も含めて、例えばボートピープルだけで一万三千七百六十八人と聞いておりますが、その中で正式に難民として認めて、この難民として認めるということになります点難民条約でいきますれば、労働法制とか社会保障、最低賃金の適用とか、あるいは内国民待遇というのですか、いろいろなものがあるようですけれども、そういった一つ日本国民に準じたような基本的人権、それに類するような形での保護、これがなされているので、それが認められるか認められないか、難民条約に基づく難民としての認定を受け入れるか受け入れないかというのは大変大事なことでありまして、そのことについて、今局長お話聞いていますと、なぜ日本が少ないかというのは、全体の量は島国だから少ないんじゃないかとかいろいろなことを言っているようですが、どうやら私も委員としてそれが納得できる理由とは思いませんが、これから先、難民という問題についてはひとつ厳しく入国管理局でも検討いただければ、そう思っております。  次の質問に行きたいと思っておりますが、難民を我が国においてはどこで収容し、難民じゃなくて最初のボートピープルでもあるいは不法入国者でもそうですが、今、日本においては、まず最初に先ほどの話では海上保安庁、あるいは陸に上がってきた者は警察、それによって第一次的な捜査をする。当然、捜査をした後不法入国者として入国管理法違反者としての送致、検察庁に送致されるんじゃないかと思いますが、送致された後どういう手続になっていくのか、また、いわゆる審査する、難民としての審査とか、あるいは不法入国者として逮捕した後の取り調べ、その間の収容体制、どこにどのようにして収容しているか、その対応についてひとつお聞かせ願いたいと思います。
  117. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 御指摘のとおり、海上保安庁あるいは警察のような第一次捜査機関と申しますか、そういうところで、これは大量に、集団の場合が多いわけでございますけれども、船舶ごと捕まったとか、そういうようなケース、これはそれぞれ取り調べを受けた上で検察庁の方へ送られる。そこでまた起訴だとか不起訴というような判断が示されるわけでございます。起訴の場合は、もちろん国内の手続に従いましてそちらに回るわけでございますけれども、不起訴になった場合は、入国管理局の方で引き取りまして、一連の手続に従いまして事実を調査し、審査し、退去強制手続に付するわけでございます。  この過程で、これらの人たちの身柄がどこにあるかという問題でございますが、警察あるいは海上保安庁、場合によっては検察、それぞれが所管の手続をやっておる場合はそれぞれのところにございますが、最終的に入国管理局に送られてきた場合は、全国八つの地方に分かれておるわけでございますが、それぞれの入国管理局が収容場というものを持っておりまして、そこにおいて入国管理局として必要な手続をとる間は身柄を短期的に置いておきます。この間に退去強制の手続が完成すれば、これはどのくらいの日数がかかるかにもよるのでございますが、多くの場合は、東日本の、現在入国管理センターと呼んでおりますけれども、牛久にございます、ここへ置いて、航空機、運搬手段が整うまではそこに置いておく。あるいは、集団の場合は、これは長崎の大村の入国管理センターがございますが、そちらへ収容しまして、運搬手段が整うまでそちらで置いておく、お。よそこんなふうになっております。
  118. 山田正彦

    ○山田(正)委員 実は、平成元年十月三十日の長崎新聞の記事でございますが、この中に「大村入国者収容所 中国“難民”騒ぎ機動隊出動」そういう記事が大きく載っております。これ、概略申し上げますと、中国の偽装難民を収容している大村入国者収容所で、簡易プレハブに収容していた男性一人を事情聴取のために隔離したことをめぐって、他の収容者が大声を上げたり金網のフェンスを破ったり激しく揺すったりしての騒ぎがあった。そこで県警は、警察官約五百人を投入して、騒ぎの中心となった四十八人を本館収容棟にいわゆる隔離したという事案であります。この大村収容所で問題なのは、実は当時千百八十四人が入所中、本来の定員は二百三十五人、そういうふうになっております。  また、同じく十一月四日の、これは毎日新聞の記事でありますが、「ベトナム難民また脱走 大村センター 二十七人全員を逮捕・保護」となっております。これは、やはり大村市の大村難民一時レセプションセンターで、十一月の三日の昼、収容中の男性二十七人が脱走した。同日夕方までに二十四人を出入国管理及び難民認定法違反の疑いで逮捕、こうなっておるわけであります。センターの塀を飛びおりた際に足の骨を折るなどのけがをした三人を保護した、こうなっておりますが、いわゆる容易に塀によじ登って、そしておりられるような施設、これは大変問題があるのではないか。この辺についてどうお考えになっておられるかということ。そうですね、じゃあ少しずつ聞いていきたいと思いますから、どうぞ。
  119. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ただいま委員の方から二つの騒擾事件について御指摘がございました。  これは、二つの施設がございまして、隣接する地域にあるわけでございますけれども、委員が御指摘になりました最初の方の大村入国管理センターの騒擾事件につきましては、これは平成元年十月に起きたのでございますけれども、逃走未遂の偽装難民、これを隔離したことに端を発して、他の偽装難民数百人が仮設プレハブ施設の一部を破壊して、入手した角材等を振り回しで暴れて、機動隊五百人の応援を求めて鎮静化させたという事例でございます。  二つ目の難民レセプションセンターの方の事件は、ほぼ一年前に起きたことでございますが、これも委員が御指摘のとおりの経過をたどりまして終息したわけでございます。その後、この種の事件は発生しておりません。  ちょっと申し上げますと、前者の大村入国管理センターというのは収容所ということで、退去強制手続に付された人たちが、帰りの便が整うまでの間、比較的長い期間収容されているところでございます。後者のレセプションセンター、これは難民が、いわゆるボートピープルという格好で来た人たちを一時的に入れるところでございまして、通常の収容施設とは異なりまして、非常に開放的なものになっております。これは、ボートピープルの特殊性ということで、厳しい収容になじまない、さまざまな意味で人権にも配慮しなければならないということもございまして、開放的な施設になっておりました。その結果、設備の不備をつかれてそういう事件が起きたということで、この二つの建物は、同じ敷地に隣接しておりますけれども、少し性格の違う施設でございます。ただ、いずれにしましても、両方ともやや設備に不十分なところがあったということは事実でございます。
  120. 山田正彦

    ○山田(正)委員 管理局長にもう一度お聞きしたいのですが、私が聞きたかったのは、定員二百三十五人のところに千百八十四名を収容しておった、ほかに収容できる施設も何にもなくて、やむを得ずそうしたのか。その辺、これは大変大きな問題だと思うのですが、その辺について明確にお答えいただきたい。
  121. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 大変失礼いたしました。  定員二百三十五のところへ千名強というのは冒頭のころ、御説明申し上げました中国からの偽装難民というものが非常にたくさん集まった時期でございまして、平成元年、二年あたりはでございます。そのために、まことにやむを得ざる措置としてプレハブの施設を本来の二百二十五のほかに敷地の中につくっておった、それで何とか収容をしておったという事実がございました。  その後、大分、集団不法入国の数も、送還等を行ったものでございますし、減ってきておるのでございますけれども、現在も実は、本来の施設は二百三十五なのでございますが、五百名強を収容しております。これは、ほかにやむを得ざる、施設がございませんので大村へ入れておかざるを得ないのでございますけれども、プレハブの施設を使って、本来的なきちんとした施設プラスプレハブ施設ということで対応しているのが実情でございます。
  122. 山田正彦

    ○山田(正)委員 同じく、そのときの記事の中に、センター内の実況見分をすると、手製のやりのようなものなど九十八点を押収した、そう言っております。  実は、私も大村にいつも行っておりますので、実際にその警備に当たった方からお聞きしたのですが、いわゆる窓のステンレスの枠、これを取り外して、それを磨いて刃渡り五十センチぐらいのまことに見事なやりに仕立てておったということを聞いておりますが、いかに開放的な施設とはいえ、大村の人たちにとっては、そういうものが平気でつくられておる、武器が、そういうことの恐ろしさと申しますか、そして私も、その空港からすぐ近いところにありますので、いつも難民一時収容所、レセプションセンターを通っておりますが、いわゆる塀囲いといっても、塀の上にいわば鉄線といいますか、そういったものを、覆い隠しているというところで、非常に不安な状況じゃないか。  ちなみに、この新聞記事によりますと、その塀から飛びおりるわけですが、「北側の塀の中央付近で、三人が肩車をして、フックを取り付けたロープを塀の上にかけ、次々によじ登って逃走した。」非常に簡単に逃げられた。今はそれはどうなっているのか。それをひとつお聞きしたいのと、いわゆる武器をつくられるということに対する監視というものが一体どのようになされておったのか。具体的にひとつ御答弁いただければ、そう思っております。     〔委員長退席、斉藤(斗)委員長代理着席〕
  123. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 肩車をして塀を乗り越えたという事件が起きましたのは、難民のレセプションセンターの方でございます。こちらは、冒頭申し上げましたとおり、インドシナ難民へ対する扱いというものが変わりましたので、いわゆるボートピープル印スクリーニングの上日本へ入れるということではなくて、不法入国扱いになっておりますので、現在は難民のレセプションセンターへの新たな入所ということはございません。そこにいた人たちもスクリーニングをどんどん早めまして、現在難民のレセプションセンターはほぼ閉鎖といいますか、終息の状態になっております。したがいまして、そこにいた人たちは、基本的には本来の大村入国管理センター、収容所の方に移されております。  いろいろな手製のやりだとか武器がつくられた、これはまことに御指摘のとおりでございまして、監視体制が薄かったと言われると、まことにそのとおりでございます。日本ではなかなか想像しにくいのでございますが、中国人あるいはベトナム人、いろいろお国の事情がございまして、地方色、出身地方でいろいろな徒党を組むとか、あるいはささいなことで争いが起きるというようなことで、想像もつかないようなことを契機に騒ぎが起きたりするというようなことがあった時期もございます。手製の武器その他凶器のたぐいが発見された後は、そういうことが起きないようにということで監視体制を非常に強めておりますので、その後はこの種の武器、手製のものが見つかったというようなことは起きておりません。
  124. 山田正彦

    ○山田(正)委員 これから先、日本においても北東アジアの不安定という要素からかなりの難民が予測されるわけですが、その中で、現在の難民とかいわゆる不法入国者あるいは集団難民、こういったものに対する管理体制というものです。  これは非常に日本においては不備なんじゃないか、施設面においても、予算面においても。これは我が国にとってゆゆしき問題ではないか、私はそう思っておるところでありますが、それについて私の質問の中に前もって調べていただきたいとあったと思うのですが、アメリカは、一体この不法入国者、難民に対してどの程度の人間とどれくらいの予算と、日本との比較の場合にはどういうふうになっているか。各国、例えばヨーロッパにおいてドイツとか、わかる範囲で結構でありますから、そういう体制と日本との比較、これを少し詳しく御説明いただければと思います。
  125. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 アメリカでございますが、入国及び在留管理は司法省の移民帰化局が担当しておりまして、職員数は一九九三年現在で約一万八千人、そのうち摘発業務従事者が約二千人、収容、送還業務従事者数が約二千人であると承知しております。  また、ヨーロッパの例では、例えばドイツでは、国境及び空港での審査等、外国人の入国管理は連邦内務省管轄下にございます国境警備隊が担当しております。在留管理は、連邦内務省の外国人局が担当しております。これ以外に、難民認定業務のために難民認定庁というものが設けられてございます。これらの数も、例えば国境警備隊は二万六千人、難民認定庁の職員は四千六百人という数になっております。  我が国の場合は、入国管理局関係の定員でございますけれども、本省が百六十名、そのほかに全国八部局がございますが、そちらは全部で二千百名という数字になっております。
  126. 山田正彦

    ○山田(正)委員 管理局長にお聞きしたいと思いますが、日本として今その体制で十分だと思うのか。非常に不足を来している。先ほどの大村の一時レセプションセンターでの話でもそうですが、非常に危惧を感じている。新たなそういう施設と人員の確保、これを早急に図らなければいけないのか。それとも、その必要はないのか。その点について明確にお答えいただければと。これは、もし大臣おられたら、大臣、ひとつお答えいただければと思います。
  127. 前田勲男

    ○前田国務大臣 ただいまの入管体制の人員の問題でございますが、今日の情勢からいたしまして、極めて不足をする状況下にあることはもう御承知のとおりでございます。  その中で、私ども、増員の努力をし続けて、また特に、ちょっとこの問題とは離れますが、先般関西国際空港の開港等もございまして、そちらにも二百数十名の人員を配置せねばならないという非常に、入管体制において幾らふやしていただいてもありがたいという、まさに猫の手をかりてもやりたい、こんな状況下にございまして、私どもも極力入管を中心に今日まで増員の努力をしてまいったところでございます。
  128. 山田正彦

    ○山田(正)委員 新しい施設として、大村がひとつこのような危険性がないようにということで、建てかえその他の検討をいたしているようにお聞きしておりますが、その内容、大村だけに限らず全国的にどういう形でやろうとしているか、大臣に、具体的な内容がありましたらお答えいただければと思います。
  129. 前田勲男

    ○前田国務大臣 ただいま先生から大村の入管センターを中心に御質問がございましたが、実は、九月二十一日に、先生初め委員長のお地元でございます長崎・大村へ私も現地を視察をさせていただきました。そんな関係がございますので、特に大村について御答弁を申し上げ、他のセンターについては入管当局から御説明を申し上げたいと存じます。  大村入国管理センターにおきましては、今日まで、先生先ほどの御指摘のとおり騒擾事件あるいは脱走事件等のある申に、地元周辺の皆様方の大変温かい御理解を賜りまして、県、大村市御住民、関係住民の皆さんの御理解に大変感謝を申し上げておることを最初に申し上げなければならないわけでございます。  そこで、現地へ参りまして、現場をつぶさに視察をさせていただいたわけでございますが、この施設そのもの、建築物も昭和四十六年に建築されたものでございまして、鉄筋とはいえ極めて老朽化の激しく、年々増加しております集団不法入国者を収容するには余りにも老朽化しておる、その感、極めて強く印象を持っております。  かつまた、収容者の増加に伴いまして、平成元年でございましたか、プレハブの施設をつくったわけでございます。これは応急でつくったわけでございますけれども、その元年につくった応急がまだ使われておるということでございまして、プレハブとは申せ、少し言葉は古くなりましたが、これはプレハブじゃなくてバラックじゃないか、そう私も関係者に申したところであります。  この大村の入国管理センターに収容されておられる被収容者のまさに人権問題にもかかわる深刻な問題であるし、また、被収容者の皆さんの健康、衛生面も、もちろん医師、看護婦等もおりますけれども、それらも踏まえて大変厳しい環境にあるということでございまして、特に地元の県、市並びに周辺の皆さんの、また先生方の御理解をいただいて、特に風光明媚、美しい町並みの中に違和感のない、まさに環境にマッチして、かつ、周辺住民の皆さんに今日までいささかございました保安上の御心配、こうしたものが全くない施設をつくらせていただかなければならない。こんな観点から、実は、平成七、八年度、来年度の予算要求の中で、公共投資重点化枠の中で、八百人収容する施設の建設というものを現在要望しておる最中でございまして、何とぞ御支援のほどをお願い申し上げたいと思います。  その他、大阪、千葉等に入国管理センターがございますので、詳細は事務当局からお答え申し上げます。
  130. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ただいまの大臣の御発言を補足的に、その他の施設について申し上げます。  収容所は、現在全国に入国者収容所と申すものが二つございまして、一つは東日本、これは茨城県の牛久にございます。こちらは三百人でございます。それともう一つが、今お話に出ました大村の入国管理センターで、正式の定員は二百二十五名でございます。これ以外に、地方の入国管理局等に設置されております収容場と称するものがございますが、これが全部で合計八百六十九でございまして、合計千四百四人の収容定員を持っております。  平成七年度に、関西に、茨木市でございますが、西日本入国管理センターというものを現在建設中でございまして、こちらの定員が二百五十でございます。これが完成いたしますと、収容定員、全国的な能力といたしましては千六百五十四名になるというわけでございます。
  131. 山田正彦

    ○山田(正)委員 今、一応平時における難民の問題を聞いたわけでありますが、実は私どもにとっては、先ほど少し触れましたけれども、いわゆる有事の際、北東アジアが大変不安定であります、そういった場合における難民というものに対する対応、これについてお聞きしたいと思います。  実は、北朝鮮の問題が一応のアメリカとの米朝合意ができたので、私どももほっといたしております。しかしながら、実はこの北朝鮮の問題も、金正日体制がいつまで続くのかどうか、それが本当に国内的な内乱、そういったことにならずに収束できるものかどうか、大変難しい、予測できないものを抱えているんじゃないか。それに対して我が国も当然対応しなければならない、そう思っておりますが、大体その難民というのが一体、もしも北朝鮮でそういう不安定な内乱ということに陥ったときにどれくらい出るのか。先ほどの国連難民高等弁務官事務所等々のいろいろな統計によりますと、紛争が起きた場合に人口の約一割が難民として出ていく、そう言われております。  そうしますと、北朝鮮の場合だけを限って言いますと、二千二百万の人口のうち二百二十万が難民だ、そう想定いたしますと、どうしても中国側に出ていくであろう。ところが、中国が今のような状況で、恐らく中国の方が難民をぴしっと閉ざす、そうなったときに、韓国の方に逆流するというのは難しいんじゃないか。そうなれば、当然海に出てくる。海に出てくるとすれば、日本の壱岐、対馬とかあるいは五島とか九州北部の島々、ここにはボートで、船で、容易に小型船舶で二時間か三時間でやってこれる。そういう非常に危険な、非常に厳しい状況の中で、果たしてどれくらい日本に難民がそういった場合押し寄せてくるか。恐らく、私どもの推測では二十万は少なくとも来るんじゃないか、そう思っております。  そのときに、例えば今みたいな形で、たとえ千人、二千人の収容施設をつくったところでとても間に合わない。今の入国管理局の人員とか、あるいは海上保安庁とか第七管区本部、また警察署、長崎の県警あたりではとても対応できる状況ではない、そう思っておりますが、それに対して、ちなみにどういうふうになすつもりなのか、それをお聞きしたいと思います。  同時にまた、北朝鮮の問題だけでなく、私どもが非常に危惧しなければいけないのは中国だ、こう思っております。中国の北京においても、既に三級警戒態勢下に入った、決して治安は安定していない、そう思われます。また、山東省の招遠金鉱山というのでしょうか、呼び方はよくわかりませんが、この二月三日に四千人の労働者が造反に立ち上がり、公安、正規軍と銃撃戦を展開した、そう言われております。  そのほかにも、農村では余剰労働力が毎年一千万人以上増加しておって、都市であれ農村であれ彼らを受け入れる余力はない。まるで巨大なマグマが成長しているようなものである。この問題がうまく解決しなければ社会に動乱が必ず発生する。そうしますと、数億の農民の巨大な洪水というのはどこへ行くのかということは、大変大きな問題として我が国が今ここで早急に対応しなければならない問題ではないか、そう思います。また、実は私どもが一番恐れているのは、中国は動乱の時代に入ったことは間違いないだろう、そう言われておりますが、それが噴出するのは鄧小平氏の死の前後がその直後じゃないか、その後じゃないか。  いずれにしても、あれだけの、年間一千万人という人が食べられなくなっている。これがどこに行くかというと、やはり日本に向かって経済難民、避難民としてやってくるであろう、こう考えますが、まず大臣にひとつそのあたりについての見解をお聞きし、それから関係者に対応をお聞きしたいと思います。
  132. 前田勲男

    ○前田国務大臣 先生お尋ねの御質問でございますが、現実として、今日の国際情勢の中で、経済難民あるいは避難民がある特定国から流入するか否か。これは、特定の国を指して仮定の話を申し上げる、あるいは特定の国を名指しするというのは、外交上の極めてデリケートな問題でございますので公的には差し控えさせていただかなければならない、こう思っておりますが、この大量難民、一般論として申し上げれば、大量難民の発生する可能性というものは私も否定できないものと思っております。  あくまでもこれは一般論で申し上げますが、もし我が国に大量難民が到着をする事態となった場合につきましては、政府がまさに一体となってこれに対処をしていかなければならないと思っておりますが、物理的にも予想を超える大変な作業があろうとは当然予測されることでございます。法務省といたしましても、これらの避難民を収容する施設の確保体制の整備をこれからもやっていかなければならない、かように考えております。
  133. 山田正彦

    ○山田(正)委員 もし有事における難民の発生といった場合においては、恐らく海上保安庁も警察も処理能力なし。それで、入国管理局も一生懸命頑張ったとしても不可能だ。そのような中で、自衛隊の出動しかないと思うのです。きょう防衛庁に来ていただいておりますが、防衛庁の方にお聞きしたいと思っております。  いざ有事の対応について、特に難民問題に対しての具体的な方法ですね。例えば二十万人の難民がいるとしますと、管理として一施設大体五百人ぐらいが限度だと思うのです。そうしますと、四百の施設が必要になると仮定いたします。そのときに、まず一施設には最低十人、三交代で三十人の警官が必要になりますし、それが四百カ所という施設が必要になるとしますと、一万二千人が必要だ、単純計算でこんなふうになってまいります。  その場所あるいは方法でありますが、それについて恐らく陸上自衛隊あるいはキャンプ地、そういったところで早急にその対応についてのシミュレーション、例えば移送の問題があります、移動の問題があります。そういった管理の問題を含めて、これは当然我が国にとっては、一つの我が国の国の守りとしても検討してもらわなければならない問題じゃないか、そう考えておりますが、それについて、できればひとつ具体的なお話をお聞かせ願いたい。  それともう一つ、実は五五年体制、冷戦構造が終わりまして、いわゆるソ連からの軍事的脅威はなくなった、そう思われますが、今依然として北東アジアが不安定である。北東アジアの不安定要因の中、陸上自衛隊を北海道から辺境の、いわゆる武装難民のおそれもあるような対馬とか壱岐、あの辺の島の人たちというのは今大変不安に思っている。それで、陸上自衛隊の駐屯地をふやし、部隊をふやし、ひとつ島の人たちが不安な状況にならないような配慮、これを早急に陸上自衛隊としても防衛庁としても検討いただきたい。  この二つ質問したいと思います。
  134. 守屋武昌

    ○守屋説明員 朝鮮半島をめぐる情勢につきましては、防衛庁としまして、我が国の平和と安全を守るという観点から、大変な関心を有しているところでございます。  先生御質問の難民の問題につきましては、一義的には入管、警察機関により行われるものと承知しております。  具体的に防衛庁としてどんな対応が必要か、防衛庁としての対応が必要であるかどうかということにつきましては、事態の予想、難民がどのような規模で、どういう態様で発生するのかということがまずございます。それに対しまして、我が国、ただいま申し上げました関係省庁を含めまして、政府全体としてどのような方針で対応するかという問題がございまして、具体的に今ここで防衛庁の対応について一概に申し上げるということは大変困難でございます。防衛庁は、危機管理官庁でございますから、そういう我が国有事の際の必要な措置については、当然日ごろから検討しているということはございますのですが、先ほど大臣からもございましたように、この問題は大変センシティブなものでございますので、その具体的な内容を明らかにするということは差し控えさせていただきます。  それから二点目の、陸上自衛隊の配置の問題でございますが、これは、米ソ二極対立構造崩壊後の我が国の安全保障の考え方、あるいは防衛力をどうするかということにつきましては防衛庁におきましてただいま検討いたしておりまして、平成六年度じゅうにその考え方政府部内で得たいということで鋭意作業中でありますので、御了解いただきたいと思います。     〔斉藤(斗)委員長代理退席、委員長着席〕
  135. 山田正彦

    ○山田(正)委員 最後の質問でございますが、これは実は全く違う問題で、栗本慎一郎先生が大蔵委員会で聞いたパワフルコスモメイトの件で、一つだけ聞いておきたいと思いますが、実は、十一月一日の毎日新聞によりますと、検察当局は「脱税容疑で捜査へ」と大きく記事に載っております。  この問題は、私もいろいろなところで調べさせていただきましたが、今裁判に御承知のようになっておりまして、いわゆる国税の方で査察を二回ほどやられたのではないか、その中で実は国税の方がお話ししたこと、いわゆる雑誌社にしゃべったこと、守秘義務違反ということで今国を相手に裁判等々もなされております。すなわち、憲法上保障されている宗教の自由といった問題といわゆる国税の査察、そして検察庁がこの問題をどのように今扱っておるのか、それを検察庁と国税の方、両方にお答えをお願いいたします。
  136. 則定衛

    ○則定政府委員 今御指摘のような報道がなされているということは、私ども法務当局承知しておるわけでございますけれども、一般的に申しまして、報道されているような案件というものにつきまして検察がどう対応するのかということにつきまして、非常に微妙な問題をはらむことになるわけでございます。そういうことから、従来から、具体的に検察でどう対応しておるのか、こういったものについてはお答えしかねるわけでございます。  ただ、これまた一般的に申しまして、検察当局といたしましては刑事事件として取り上げるべきものがあれば適正に対応するもの、こう考えておるわけでございます。
  137. 若泉征也

    ○若泉説明員 ただいま御指摘の報道があったことは承知いたしておりますけれども、お尋ねの件につきましては、個別にわたる事柄でございますので、答弁することは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  なお、もう一点でございますが、訴訟が提起されているということでございます。このことにつきましても承知いたしておりますけれども、個別にわたる事柄でございますので、大変恐縮でございますが、事実関係について答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、一般論として申し上げれば、調査に対して損害賠償訴訟等が提起されました場合には、裁判の場におきまして当局の正当性等につきまして主張してまいりたい、このように考えております。  以上でございます。
  138. 山田正彦

    ○山田(正)委員 この辺については、時間もなく、いずれ改めて聞きたいと思いますが、きょうは質問を終わらせていただきます。
  139. 金子原二郎

  140. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 質問の御通知を差し上げております順序を、恐縮ですけれどもちょっと変えさせていただいて、三番目からいきたいのですけれども、答弁側よろしいですか。  それで、法務大臣、実は大変残念なことなんですけれども、昨年からことしにかけて、検察官、検事が取り調べ中に被疑者に暴力を振るったということの事件が三件続きましたね。これはいずれも国家賠償請求をされ、法務省、検察庁でもその事実を確かめて、それが事実であることを残念ながら認めて、それぞれに被害者の方におわびをし、そしてそれなりの賠償金を払って事を済ませたという不祥事件が相次いだわけですね。  これについては法務大臣も、大変遺憾なことだ、これからはそういうことのないようにということで部内でもしっかりと気を引き締めて事に当たる、あってはならないことだ、考えられないことだというお話があったわけですけれども、しかし、けさほど富田委員から、これまた、これは東京入管の警備官が中国の女性に調査の最中に暴力を振るった、これが新聞報道されたということでのお尋ねがあった。私も実はこれをお聞きしようと思っていたわけですけれども、これは富田委員からお尋ねがあって、相当詳しいお答えがありましたので、ここのところはなるべくダブらないようにしたいと思うのですけれども、確かにこれなども一つは、容疑者である中国人女性が暴れたりしてその警備官の方もけがをするような事態があったというような状況はあります。しかし、それにしてもこれも国家賠償請求が起こされているということで、やはり見過ごしにはできないことだろうと思うのですね。先ほど入管局長お話を聞いても、やはり行き過ぎがあったと思わざるを得ないような状況がありました。  もう一つ、これもまた十一月一日付の読売新聞の夕刊ですけれども、今度は、これは東京拘置所の中での刑務官による外国人に対する暴行事件というのがこれまた報道されているのですね。それで、これは恐喝罪で逮捕されて拘留をされて裁判中の人間ですけれども、一人はエジプト国籍の人、それからもう一人はナイジェリア国籍の男性、この二人が、これは別々だろうと思うのですけれども、拘留中の東京拘置所において刑務官から暴行を受けた、スペシャルルームと呼ばれる部屋に拘禁された、恐らくこれは保護房のことを言っているんじゃないかと思うのですけれども、それで右の耳が一人は聞こえなくなったなどという、これはエジプト人の方らしいですね、それからもう一人の男は刑務官数人から暴行されたと訴えているということで、これも一日の日に東京地方裁判所国家賠償請求、損害賠償請求を求めているのですね。  国家賠償請求というのは、いずれも国が被告ですけれども、そこには被告として法務大臣の名前が載るわけですからね、前田法務大臣の名前が載っているのですよね。これは大臣としても余りうれしいことじゃないし、喜ばしいことでもないと思われるのですけれども、部内でもこれは十分調査をなさっていることだろうと思われるわけです。まず、この拘置所内での暴行事件というものがどういう状況でどんなふうになっているのか、差し支えない範囲でまずお聞かせをいただきたいと思います。
  141. 松田昇

    ○松田政府委員 お答えいたします。  ただいま委員御指摘の新聞報道があったことは事実でございまして、それによりますと、東京拘置所の外国人の被収容者が刑務官に集団で暴行を受けたなどという報道でございました。現在損害賠償請求などを提起しているという報道がございました。  ただいまだに訴状が私どものところに届いておりませんので、その具体的な詳細な内容はまだ私ども承知しておりませんけれども、報道された範囲で、当局といたしまして現在まで調査いたしましたところによりますと、どうも報道されているような事実はないのではないかというような認識でおります。したがいまして、このまま訴状をまた見た上でさらに調査を続けることになると思いますけれども、現状ではそういう認識にしておりまして、今後民事訴訟の過程で手前どもの立場は明らかにしていくことになろう、このように考えております。
  142. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 報道が事実と異なるというような御答弁のようだけれども、しかし、やはり国家賠償まで起こすということは、私はそう全くないことをでっち上げてというようにも思われないのですよね、何らかのやはり事実というのはあるからこそだろうと思うのです。これは、もちろん裁判中だからということもあるかもしれないけれども、しかし、裁判の成り行きを見て、裁判の結果を見て対処しようというのでは、私はやはりまずいのではないかと思うのですよ。  例の検察官の暴行事件のときも、これは訴訟を起こされたけれども判決には至らないで、その前に解決を図った。それからまた庁内でも、庁内というか、この本人たちに対する処分もきちんとその都度早目になされたわけでしょう。だとすると、部内調査をやはりなさって、その事実があるのかないのかということを確かめた上で、あるとすればやはり厳しい処分をしなければならないだろうし、そして、言われているようなことが全くないのか、あるいは誤解に基づくというようなことなのか、その辺のところの調査というのはある程度もうなさっているのだろうと思うので、それを差し支えない限りはひとつお答えいただきたいと思うのです。  確かに、私も実は去年の八月から四月まで法務の政務次官をさせていただいて、矯正関係の方々の苦労だとかあるいは入管の関係者の苦労だとかつぶさに見てまいりましたし、いずれにしても、入管の関係もそれからこういう刑事事件についても、先ほど来お話がたくさん出ているように、外国人が非常に多くなりましたからね、それに伴う苦労というのは今までに考えられないようなものがたくさん出てきた。特に一番の苦労は、やはり言葉の問題あるいは習慣の違いの問題などなどなのですね。  この拘置所の事例も、新聞で見る限りは、例えばエジプト人に対するものは、他の収容者と立ち話をしようとしたことなどを理由に、これだけが理由というのはいかにもこれまた新聞の報道もずさんだろうと思うけれども、やはり言葉の行き違いだとか、何かそういうところから刑務官も感情を害してというように推測できないこともないのだけれども、しかし、やはりこの暴行を受けたなどということを言われているわけで、あったとすれば決して見過ごしにできない問題だろうと思うのです。ですから、御苦労はわかる。  それからまた入管関係者についても、人員の問題も、本当に少ないですよ。これは何とかしなければならない。施設もきちんとなっていない。こういうことについては、私どもとしても積極的に法務省も御援助して、予算の獲得その他人員の補充なども何とかやっていきたいと思っていますけれども、しかし、こういうようなことが実際にあるとすれば、そういうことにまた水を差すことにもなりかねないわけでありますし、入管にしてもそれから刑務官にしても、これは検察官同様に法務に携わる人たちなのですから、秩序やそれから法規を一番重んじなければならない、また人権も大事にしなければならない。そういう職にある者がそれにそごするような、それに反するようなことというのは全くゆゆしいことなので、これは一般の国民の皆さんからも大変信頼を損なうことになるという心配があるわけですから、ここのところは内部調査を早くしていただいて、きちんと対処していただきたいと思うのです。  今、矯正局長お話は、全くこういう事実がないというのか、あるいはそれに類することはあったけれどもその被害者と言われる人たちの誤解に基づくことだというのか、その辺はどうなんですか。もう少し何か御説明いただけないですか。
  143. 松田昇

    ○松田政府委員 お答えいたします。  委員の御質問に、あるいは言葉不足であったかもしれませんが、調査があくまでも現在までのところでございますのと、それから調査対象が報道で推測できる事項に限っておりますので、現在も調査は続けております。  御指摘のとおり、もし私どもの方に非違がございましたら、それはもちろん厳重に処分をせざるを得ませんし、ないとしても、そういう国情が違い、言葉が十分伝わらない被収容者を抱えているわけでございますので、今後の職員の教育その他については万全を期していきたい、かように考えております。  内容の具体的なところは今のところその程度のことでございまして、どうぞお許しをいただきたいと思います。
  144. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 これはまじめに一生懸命やっている人々の士気にもかかわることですから、早く内部調査をしていただいて、裁判の結果を待つなんということなく、仮にそういう事実があるとすれば、この入管の警備員の問題もそうですけれども、やはり厳正に処分をしていただかないと、全体の法務行政についての名誉の回復ということはできないと思います。これは、ぜひ法務大臣もそこのところはきちんと指揮をしていただいて、とにかく、ここのところどうも法務関係のこうした暴力ざたというのが相次ぐものですから、私どもとしても本当に心配をしております。どうか、その点をひとつきちんとやっていただきたい、これを御要望しておきたいと思います。  そこで、その次の御質問です。  刑法、これは明治四十一年にできて、古いわけですね。監獄法もこれは同じ明治四十一年、大変古い法律です。かねてから刑法の改正作業というのは大きな仕事として宿題になっておりますけれども、これがなかなか抜本的な法改正が難しいということで、口語化の作業が進められている。とにかく難しいのですね、刑法の言葉というのは。本文、片仮名で書かれていますし、難しい言葉がいっぱい使われているのですね。  例えば、百七十四条から百七十六条の猥褻罪、猥褻なんという字だって、これは難しくて書けないですよ。百八十五条の賭博罪、「偶然ノ輸贏ニ関シ」なんて、こんな言葉は見たってわからないし、まして書けなんて言われたら書けないでしょう。二百五十六条、贓物罪、牙保なんという言葉があるのですね。何だ、一体これはということになるわけで、これを口語化しなければ一般の人はわからないわけですよ。法律というのは、やはりわかるものでなければならない。  そこで、口語化の作業が法務省でずっと進められてきているということをお聞きしておるわけですけれども、この進捗状況がどうなのか、この辺をひとつお尋ねしたい。
  145. 則定衛

    ○則定政府委員 今御指摘のとおり、現行の刑法典というのが明治四十一年に施行されて以来基本的には変わっていないということでございまして、特にその用語について現在の国民の多くの方々が非常に読むのが難しい、これをできるだけ早く読みやすい文章にということが求められてきたと認識しているわけでございまして、また過去に当委員会でもそういう附帯決議があったことも一つの契機ではございます。内容についても全面的に改正するという作業も、御案内のとおり一時進めたわけでございますけれども、いろいろな意見の対立等々がございまして、これを政府提案の法律として一本化するということが困難な事情もこの間ございました。  しかしながら、それらの個々の時点において必要な刑法典の改正というのは、従来一部改正という形で国会の御審議を経て手当てをさせてきていただいたということもございますので、この際、内容については基本的にはさわらずに、いわば縦のものを横に平易化するということに徹した作業を進めておるわけでございます。いろいろな意見も伺いながら、法務省刑事局としての試案を取りまとめることができましたので、本年の六月二十日、法務大臣の諮問機関でございます法制審議会にこれを諮問させていただいて、現在その下部機関でございます刑事法部会で詳しく審議をいただいておる状況でございます。  私どもといたしましては、極力早い時期に答申をちょうだいいたしまして、できるだけ近い国会会期に提出させていただいて成立を図るよう努力してまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。
  146. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 そのできるだけ早い機会というのは、例えばこの次の通常国会には、こうお聞きしていいですか。その辺、どうです。
  147. 則定衛

    ○則定政府委員 いろいろな要素がございますし、またその法制審議会の内部の審議状況にもよるかと思いますけれども、私どもといたしましては、次の通常国会も含めてできるだけ近い国会にお願いできれば、こう考えておるわけでございます。
  148. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 それとも絡むのですけれども、実は刑法の一部をどうしても改正しなければならない必然性に迫られている問題として、尊属殺の規定改正の問題がありますね。これは大臣も御承知のように、刑法の百九十九条、これが殺人罪を定めた規定ですね。すぐ隣の二百条に尊属殺、つまり俗に言う親殺し、親殺しについて定めてあって、これは死刑と無期しかないのですね、処罰、刑罰の方が。これが憲法十四条の平等に違反するということでかねてから随分争われて、それで下級審の判例が積み重なった上で、昭和四十八年四月四日、今から二十一年前、最高裁判所はこの刑法二百条は憲法違反だ、無効だという判決を出されて、もう確定しているわけですね。これは言うまでもなく、憲法の八十一条で最高裁判所には違憲法審査権があるわけですけれども、これが適用されているというのは極めて希有で、これだけだと言ってもいいのだと思うのですね。大体刑法は明治四十一年にできた古い法律ですから、いろいろと時代と合わないことがある。  特に、戦争が終わって新しい憲法ができた段階で、裁判所判決を経ないで国会の方でこれは憲法の理念に合わないということで削除をした条項が幾つかある。これは、例えば皇室に対する罪、昔でいえば不敬罪ですね。この皇室に対する特別な罪というのは七十三条から七十六条まで削除をされて、ここのところが今抜けているわけです。それから、例えば刑法の百二十一条では、百二十条で住居侵入罪がありますけれども、それの特別罪として特に重い皇居侵入罪というのがあったけれども、これも削除されてなくなったわけですね。  ところが、最高裁判決を経てというのはこれだけなんですね。三権分立ですから、この司法府の判断、これが確定した場合には、立法府としてもこれを尊重して、これに従って法律改正しなければならないにもかかわらず、いまだに二百条はそのままに置かれている。実際には違憲、無効の判決が確定していますから、裁判所においてはこれが事実上使われないで、尊属殺の場合でも百九十九条が適用される、こういうことにはなっているんだろうと思うのですけれども、これの削除の作業というか改正の作業、これは今の刑法の口語化の問題と絡むのか、あるいは別に改正をお考えになるのか。何にしても二十年このまま放置しているというのは、立法府あるいは行政府の怠慢だと言われてもしょうがないのじゃないかと私は思うのですが、ここのところを簡単にひとつお答えいただきたいと思います。
  149. 則定衛

    ○則定政府委員 刑法二百条の尊属殺人の規定自体違憲であるということでございましたので、私ども法務省といたしましては、昭和四十八年から四十九年にかけまして実はその部分の改正をお願いしたいということも検討いたしたわけでございますが、いろいろな与党内部の意見の調整等の困難な点もございまして、当時としてはそれを出すに至らなかった。また、全面的な刑法の改正につきましても、先ほど申しましたような状況で今日までこのままになってきたわけでございますけれども、今回の平易化の作業に当たりましては、先ほど申しました基本的な考え方、つまり内容については極力そのままにして、こういうことでございますが、何分違憲判決を受けた規定でございますので、これはその例外として削除するという方向で現在審議をいただいておるわけでございます。  あわせて、これに関連いたしまして、その後の尊属加重規定の運用状況等々を見まして、一連の尊属加重規定についてもこの際一括して削除するのが相当じゃないか、こういう考え方のもとで原案を提出し、審議をいただいているところでございます。
  150. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 いずれにしても、判決が確定してからもう二十年たっているわけですから、これはやはり司法府に対する、ないがしろにするというそしりを免れない、そしてまた行政、立法府は何をやっているんだという、これもまた御批判を受けてもやむを得ないようなことになるのじゃないかと思うのです。そこで、早急にひとつお考えいただいて御提起いただければ、私どもとしてもしっかりこれを受けとめて改正作業をやらなければいかぬかなと思っておりますので、ひとつその段取りを進めていただきたいということを特にお願いしておきます。  時間がなくなりましたけれども、きのうの参議院の法務委員会で法務大臣は、いわゆる拘禁二法について質問があってお答えになっているようです。もう十二年来の懸案でございますけれども、三回同じ法律案が廃案になっておる。きのうは、実は日本弁護士連合会の弁護士の諸氏が全国から来られて集会を持ち、私どものところにも来られて要請がございました。  私ども、それをお聞きいたしましたけれども、だからそんなことを踏まえて、これは、監獄法の改正問題というのは、私どもとしてもどうしたってやらなければならないと思っておりますが、一番問題なのは、大臣も御承知のように、監獄法の改正というか、新しい監獄法にかわるものとしての刑事施設法、しかしこれに、いわゆる警察の留置場、代用監獄ですね、これは、今刑事訴訟法でも何でも特別に規定が置かれていないわけですけれども、これを半ば法的な存在として認めようというようなことが入っている。  これに対しては、弁護士会からも大変な批判があり、私どもとしても賛成しかねているところなんですね。そんな今までのいろいろな経過があるわけですけれども、しかし、弁護士会としても、ただ反対というのではなくて、対案も示しているわけですけれども、そういうことを踏まえて、法務省として、この法案について今後どういうようにしようとされているのか。弁護士会の方では、もう一回法制審議会に戻してやったらどうか、急がば回れではないか、こういう議論もあるのですけれども、これを含めてどんなふうに考えておられるか、大臣の方からお聞きしましょうか。
  151. 前田勲男

    ○前田国務大臣 監獄法改正の見通し、こういうことでございますが、先ほど先生から刑法の口語体化の御質問もございましたが、監獄法も極めて古い、明治四十年代にできた法律でございまして、これまた言葉その他も極めて古く、また死文化した条文もあるわけでございまして、一般にはもう理解しにくいものとなっております。また、中身といたしましても、監獄の規律を優先させるという厳しい監獄法でございまして、受刑者の改善、更正、社会復帰という現代の刑事理念にそぐわないというような問題もあるということから、全面改正は必要であろう、かように考えておるところでございます。私も、刑務所を何カ所か視察いたしましたが、監獄法という名前そのものすらもう時代にマッチしていないという感触を持っております。  そこで、現行監獄法を全面的に改正する刑事施設法案でございますが、御指摘のとおり、約五年に及ぶ法制審の慎重な審議を経まして、五十七年四月に国会に出されたわけでございますが、この間十年ほどの間に、廃案が三回、三度目の廃案となって今日を迎えておるというような経過をたどっておるわけでございます。  そこで、改正の必要性は今るる申し上げたところでございますが、少なくとも今までと同じ三回廃案になったといったようなことを繰り返してはならないし、何回もこれを繰り返すというわけにいかない。これが最後だとは申しませんが、そのつもりで我々も真剣に取り組んでいかなければならないということでございまして、今日まで国会でも御審議もいただいており、国会関係者の先生方からも御指摘を受けた点など、いろいろ側面からもよく検討いたしまして、工夫をして、その再提出に向けて今準備をいたしておるところでございまして、これから中身についてよく詰めてまいりたいということでございます。
  152. 佐々木秀典

    ○佐々木(秀)委員 終わりますけれども、何にしても、今までの経過を踏まえますと、今お手持ちになっているものをそのまま出してもこれは到底納得を得られるものではないと思いますので、十分にあらゆる角度から検討していただいて、さっき言いましたように、場合によると急がば回れということもあるかもしれない、そんなことも含めて、みんなが納得できるような形にしてからということにしていただきたいのですね。特に、日弁連とのパイプはしっかり持っていただいて、よく協議をしていただきたい、そのことをお願いいたしまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  153. 金子原二郎

    金子委員長 坂上富男君。
  154. 坂上富男

    ○坂上委員 私は、本日は佐川急便新潟ルート、三億円に係る事件について集中的な質問をさせていただきたいと思っておるわけでございます。  その前に、御答弁要りませんが、法務大臣に要望をいたします。  私たち新潟県におきましては、熊本に起きた水俣病、それに対しまして、同じ水俣病が新潟県阿賀野川で発生をいたしておるわけであります。熊本はもう四十年、新潟は第二の水俣病発生三十年と言われておるわけでございまして、いまだもって、この水俣病の解決がなされておりません。患者たちは、法廷でその救済を求めているわけでございます。私は、特に法務大臣に要請をいたしたいのでございますが、裁判とは別に、行政や政治が、たとえ裁判を起こしている皆様方であっても、被害者救済に政治的な努力をすべきだと私は思っておるわけであります。このことのために、新潟県におきましては百二十の市町村中ほとんどの首長あるいは議会から早期解決の要請書が出まして、これを環境庁に持参をいたしたり、あるいは本日五十嵐官房長官にも要請をいたしておりました。患者たちは、心ある御答弁をいただきまして大変感激をして、さっき新潟に帰られたわけでございます。  つきましては、閣議の中でもいろいろと議論も出ておるそうでございますが、法務大臣にもこの救済に御協力をいただいて、一刻も早くこの問題の解決をお願いいたしたいと思っておるわけであります。さっきお話しありました、確かに国を相手にする訴訟には法務大臣がその被告になっておることも事実でございますが、裁判と政治の解決、行政解決は別でございまして、裁判に頼らなくて解決することが政治だろうと思っておるわけでございますので、御答弁要りませんので、特に大臣には、また省議において、閣議において、ひとつ御努力をお願いしたい、こう実は思っておるわけでございますので、御要請を申し上げておきます。  さて、本題でございますが、十月二十五日、新潟地方裁判所におきまして金子前知事に対して政治資金規正法による判決がございました。  これについては、相当前の事件になりましたので少し事件の概要を申し上げますと、御存じのとおり佐川急便から、新潟県の知事選挙におきまして、前副知事の金子さん、そして当時参議院議員でありました、現参議院議員でもあります志苫さんが社会党から立候補いたしまして県知事選挙が争われたわけでございます。その結果、金子さんが小差でございまするが、当選をなさったわけでございます。しかし、その後、捜査の結果によりましたら、金子前知事は佐川急便から一億円の政治献金を受けておって、これに対して政治資金規正法による届け出が虚偽記載というようなことから捜査を受けまして、そしてこのことが裁判になりまして、十月二十五日に判決があったわけでございます。  この判決の反響について少し申し上げますと、これは地元の新潟日報の記事でございますが、このような社説が言われております。   有罪判決が出されたことで、一件落着とするわけにいかない。  佐川急便グループから知事選向けに三億円出されていることは検察が確認している。前知事が受け取ったのは一億円で、残り二億円の行方は分かっていない。カネの流れがすべて解明されなければ、事件の全容は見えてこない。  二億円については政党や市民団体から検察に告発状が提出されている。検察の「捜査継続中」が公判への影響を配慮してのことなら、判決の出たことでもあり、何らかの形で捜査経過を明らかにすべきだろう。こういう社説があります。  それから、今度は中央紙、朝日新聞さんでございますが、こういう表題でございます。「「知事のカネ」断罪 二億円なお未解明」、こう大きくあるわけでございます。これが国民、特に新潟県民の気持ちだろうと私は思うのであります。  この二億円の解明こそが、いわゆる政治と企業の構造的な癒着を断ずる一つの道だろうと私は思っております。このことが明らかにされなければ、間もなく小選挙区が通れば政治改革は完成すると言われておりますが、このことが不明のまま決着をするということになりますと、国民は決して政治に信頼をしないわけでございます。私たちは、国会、検察を通じまして、金の流れはすべて解明されるよう期待をいたしておるわけでございます。  この観点から御質問をさせていただきますが、この点、予告してありませんでしたが、法務大臣に御感想をひとつ賜りたいと思っております。
  155. 前田勲男

    ○前田国務大臣 一般論としてお答えすることをお許しを願いたいと存じます。  検察当局におきましては、法と証拠に基づいて適正に捜査をされたもの、かように理解をいたしております。
  156. 坂上富男

    ○坂上委員 一億円についてはまさにそのとおりでございますが、二億円のこれからの解明について、政治改革との関係においてどのような御所見をお持ちなのかをお聞きしたいわけでございます。
  157. 則定衛

    ○則定政府委員 その前に、一言事務当局からお答えいたします。  御指摘の二億円につきましては、政治資金規正法あるいは所得税法違反の被疑事実ということで、氏名不詳者に対しまして東京地検に告発がなされておるわけでございまして、その問題について、現在検察当局において捜査中であります。この点だけ、まず明確に申し上げておきたいと思います。
  158. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、大臣に終わりにまた御質問をさせてもらうことにいたしまして、少し質問事項が多岐にわたりますので、急がしていただきます。  まず、平成四年、九二年十一月三十日に法務省はこの問題について中間報告をいたしました。この中間報告の中にこういうふうに書いてあるわけであります。佐川事件の中間報告で、三億円の資金の受け手として金子陣営等という表現が使われております。三億円は金子陣営等に行った、こう書いてあるわけであります。この等、などという意味は、陣営の中の一員という意味なのか、金子側とは別の団体または個人を意味するのか、この点、ひとつ……。
  159. 則定衛

    ○則定政府委員 まさに等は等でございまして、その三億円の中の一億円につきましては、先ほど御指摘のとおり事実が確定して、元県知事の手元に流れた。その余の二億円について、現在捜査をしておりまして、いかなるところにどのような形で流れたのか、いわばこれが捜査の核心でございます。そういう意味で、この等が内部の者であるのか周辺の者であるのかを含めまして、現時点ではまだお答えできかねるというのが現状でございます。
  160. 坂上富男

    ○坂上委員 それは今はやむを得ないことと思います。  さらにまた、嫌疑ありとして訴追するに足る事実は確認できなかったという報告があります。三億の金が流れたということは報告の中で事実として確認をしているのにかかわらず、何ゆえに嫌疑ありとして訴追するに足る事実が確認できないのか、これはどうしても私はわかりません。金三億が出たなら、その一億は金子さんの方へ行った、あとの二億は、出たことは間違いないので、金子陣営等と書いてあるわけです。どなたかわからぬけれども受け取ったというわけです。捜査当局はわかっているわけでございます。出ていることはわかっているわけでございますから、何でこれが嫌疑ありとして訴追するに足る事実が確認できなかったのか、この段階で。どういう意味ですか、これは。
  161. 則定衛

    ○則定政府委員 一般的に申しまして、金の出が明確であると、その出自体が犯罪行為を構成する場合は別でございますけれども、問題にされておりますのは、その行き先及び経路そしてその場合の趣旨等々が一般的に問題になるケースでございます。  その中間報告をさせていただきました時点におきましては、それらのいろいろな犯罪を構成するいただきたいと思っておるわけでございます。  その前に、御答弁要りませんが、法務大臣に要望をいたします。  私たち新潟県におきましては、熊本に起きた水俣病、それに対しまして、同じ水俣病が新潟県阿賀野川で発生をいたしておるわけであります。熊本はもう四十年、新潟は第二の水俣病発生三十年と言われておるわけでございまして、いまだもって、この水俣病の解決がなされておりません。患者たちは、法廷でその救済を求めているわけでございます。私は、特に法務大臣に要請をいたしたいのでございますが、裁判とは別に、行政や政治が、たとえ裁判を起こしている皆様方であっても、被害者救済に政治的な努力をすべきだと私は思っておるわけであります。このことのために、新潟県におきましては百二十の市町村中ほとんどの首長あるいは議会から早期解決の要請書が出まして、これを環境庁に持参をいたしたり、あるいは本日五十嵐官房長官にも要請をいたしておりました。患者たちは、心ある御答弁をいただきまして大変感激をして、さっき新潟に帰られたわけでございます。  つきましては、閣議の中でもいろいろと議論も出ておるそうでございますが、法務大臣にもこの救済に御協力をいただいて、一刻も早くこの問題の解決をお願いいたしたいと思っておるわけであります。さっきお話しありました、確かに国を相手にする訴訟には法務大臣がその被告になっておることも事実でございますが、裁判と政治の解決、行政解決は別でございまして、裁判に頼らなくて解決することが政治だろうと思っておるわけでございますので、御答弁要りませんので、特に大臣には、また省議において、閣議において、ひとつ御努力をお願いしたい、こう実は思っておるわけでございますので、御要請を申し上げておきます。  さて、本題でございますが、十月二十五日、新潟地方裁判所におきまして金子前知事に対して政治資金規正法による判決がございました。  これについては、相当前の事件になりましたので少し事件の概要を申し上げますと、御存じのとおり佐川急便から、新潟県の知事選挙におきまして、前副知事の金子さん、そして当時参議院議員でありました、現参議院議員でもあります志苫さんが社会党から立候補いたしまして県知事選挙が争われたわけでございます。その結果、金子さんが小差でございまするが、当選をなさったわけでございます。しかし、その後、捜査の結果によりましたら、金子前知事は佐川急便から一億円の政治献金を受けておって、これに対して政治資金規正法による届け出が虚偽記載というようなことから捜査を受けまして、そしてこのことが裁判になりまして、十月二十五日に判決があったわけでございます。  この判決の反響について少し申し上げますと、これは地元の新潟日報の記事でございますが、このような社説が言われております。   有罪判決が出されたことで、一件落着とするわけにいかない。   佐川急便グループから知事選向けに三億円出されていることは検察が確認している。前知事が受け取ったのは一億円で、残り二億円の行方は分かっていない。カネの流れがすべて解明されなければ、事件の全容は見えてこない。   二億円については政党や市民団体から検察に告発状が提出されている。検察の「捜査継続中」が公判への影響を配慮してのことなら、判決の出たことでもあり、何らかの形で捜査経過を明らかにすべきだろう。こういう社説があります。  それから、今度は中央紙、朝日新聞さんでございますが、こういう表題でございます。「「知事のカネ」断罪 二億円なお未解明」、こう大きくあるわけでございます。これが国民、特に新潟県民の気持ちだろうと私は思うのであります。  この二億円の解明こそが、いわゆる政治と企業の構造的な癒着を断ずる一つの道だろうと私は思っております。このことが明らかにされなければ、間もなく小選挙区が通れば政治改革は完成すると言われておりますが、このことが不明のまま決着をするということになりますと、国民は決して政治に信頼をしないわけでございます。私たちは、国会、検察を通じまして、金の流れはすべて解明されるよう期待をいたしておるわけでございます。  この観点から御質問をさせていただきますが、この点、予告してありませんでしたが、法務大臣に御感想をひとつ賜りたいと思っております。
  162. 前田勲男

    ○前田国務大臣 一般論としてお答えすることをお許しを願いたいと存じます。  検察当局におきましては、法と証拠に基づいて適正に捜査をされたもの、かように理解をいたしております。
  163. 坂上富男

    ○坂上委員 一億円についてはまさにそのとおりでございますが、二億円のこれからの解明について、政治改革との関係においてどのような御所見をお持ちなのかをお聞きしたいわけでございます。
  164. 則定衛

    ○則定政府委員 その前に、一言事務当局からお答えいたします。  御指摘の二億円につきましては、政治資金規正法あるいは所得税法違反の被疑事実ということで、氏名不詳者に対しまして東京地検に告発がなされておるわけでございまして、その問題について、現在検察当局において捜査中であります。この点だけ、まず明確に申し上げておきたいと思います。
  165. 坂上富男

    ○坂上委員 それでは、大臣に終わりにまた御質問をさせてもらうことにいたしまして、少し質問事項が多岐にわたりますので、急がしていただきます。  まず、平成四年、九二年十一月三十日に法務省はこの問題について中間報告をいたしました。この中間報告の中にこういうふうに書いてあるわけであります。佐川事件の中間報告で、三億円の資金の受け手として金子陣営等という表現が使われております。三億円は金子陣営等に行った、こう書いてあるわけであります。この等、などという意味は、陣営の中の一員という意味なのか、金子側とは別の団体または個人を意味するのか、この点、ひとつ……。
  166. 則定衛

    ○則定政府委員 まさに等は等でございまして、その三億円の中の一億円につきましては、先ほど御指摘のとおり事実が確定して、元県知事の手元に流れた。その余の二億円について、現在捜査をしておりまして、いかなるところにどのような形で流れたのか、いわばこれが捜査の核心でございます。そういう意味で、この等が内部の者であるのか周辺の者であるのかを含めまして、現時点ではまだお答えできかねるというのが現状でございます。
  167. 坂上富男

    ○坂上委員 それは今はやむを得ないことと思います。  さらにまた、嫌疑ありとして訴追するに足る事実は確認できなかったという報告があります。三億の金が流れたということは報告の中で事実として確認をしているのにかかわらず、何ゆえに嫌疑ありとして訴追するに足る事実が確認できないのか、これはどうしても私はわかりません。金三億が出たなら、その一億は金子さんの方へ行った、あとの二億は、出たことは間違いないので、金子陣営等と書いてあるわけです。どなたかわからぬけれども受け取ったというわけです。捜査当局はわかっているわけでございます。出ていることはわかっているわけでございますから、何でこれが嫌疑ありとして訴追するに足る事実が確認できなかったのか、この段階で。どういう意味ですか、これは。
  168. 則定衛

    ○則定政府委員 一般的に申しまして、金の出が明確であると、その出自体が犯罪行為を構成する場合は別でございますけれども、問題にされておりますのは、その行き先及び経路そしてその場合の趣旨等々が一般的に問題になるケースでございます。  その中間報告をさせていただきました時点におきましては、それらのいろいろな犯罪を構成すると確定する事実をいまだ証拠的に明確にするということができなかった、できていないといいましょうか、その辺を踏まえまして御指摘のような中間報告をさせていただいたわけでございまして、現在、先ほども申しました告発もございますし、いわゆる二億円ルートに関します罪の成否等々についてなお捜査を継続しているというところでございます。
  169. 坂上富男

    ○坂上委員 これは私から言うのもいささか恐縮でございますが、やはり検察の捜査、これはちょっとおかしいんじゃないかということで、私たちはその年の十二月五日に国会議員を初めといたしまして告発をいたしたわけであります。その罪名は、御存じのとおり政治資金規制法あるいは所得税法違反、数々のことがあるんじゃなかろうかということで、氏名不詳として告発をしたわけであります。それをもとにいたしまして今捜査がなされているんだろうと思いますが、この中間報告、何としても乗り越えていただかなきゃなりません。最初はもう検察はだめだ、こう言ってしまったんでございますが、だめであるはずはない、こう言って私たちは告発をしたわけでございますから、何としてもこの期待にこたえてもらわなければなりません。  そこで、再度お聞きをいたしますが、少なくとも検察庁は三億円のうち一億円は金子陣営に行った、これはよろしい、二億円も間違いなく出ている、これは確認しているわけでしょう、認識をしておられるわけでしょう、どうですか。
  170. 則定衛

    ○則定政府委員 その当時、佐川急便側から三億円出だということは確認しておるわけでございます。
  171. 坂上富男

    ○坂上委員 それではお聞きをいたします。  金子元知事に関する事件は、きのうで控訴期間が切れました。本日確定をいたしましたので、早速刑事訴訟法にのっとりまして私の事務所の地元の秘書が新潟地検に赴きまして、確定記録の閲覧を求めました。その確定記録のうち、渡邊廣康氏のダイアリーに関する部分の閲覧を求めました。特に、平成元年の五月八日から五月二十二日についての閲覧を求めたわけでございます。  そこで、私のところに報告がありましたので、まず確認をさせていただきたいと思います。私が直接見たわけでもありませんで、うちの秘書が見てファクスで送ったものでございますから、まずお聞きをいたすわけであります。  一九八九年五月八日の部分に十四時、国会議員と思われる方がこの日来ておると記載がありますが、この方はどういう名前で記載があるのか、お聞かせをいただきたいと思います。同じく五月九日、十四時半に、これまた国会議員と思われる名前の方の記載がありますが、記載があったとすれば、この方のお名前も明確にしていただきたい。それから、五月の十日の部分に十四時、大倉さんという名前があります。この方に括弧してありまして、TV新潟という記載があるようでございます。この三点について、私の事務所の方の報告が間違いであったら大変御迷惑でございますから、ひとつ法務省の方から確認をしたいと思います。
  172. 則定衛

    ○則定政府委員 お答えいたします。  まず第一の一九八九年五月八日の部分に、十四時、長谷川信との記載がなされていること、それから翌九日の部分に、十四時半、渡辺秀央との記載がなされていること、それから翌五月十日の部分に、十四時、大倉(TV新潟)との記載があることを承知しております。
  173. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、そこで重要なことは、金子判決を読みますとこう書いてあります。八日のその翌日、被告人金子は佐川急便の渡邊廣康に電話をかけ、例の件、いかがなものでしょうか、急なことで申しわけありませんが、佐川急便グループから御援助いただく三億円のうち、とりあえず一億円を先にいただきたいのです、いかがでしょうか、もしよければ私の使いの者を社長のところへ伺わせますのでよろしくお願いしますと言って資金の援助を依頼を申し出たところ、同人から即座に、あすでも結構ですよ、使いの者をよこしていただければお渡ししますよと言われた、こうあるわけでございまして、九日という日は渡辺秀央さんという名前の方が行かれたような記載のようでございますが、この日というのは、いわゆる金子さんが九日の日お伺いをします、こう言ってまた電話をかけた日でもありますが、これは判決、そうあるの。でございますが、事実ですか。
  174. 則定衛

    ○則定政府委員 今般新潟地裁で言い渡されました判決文の中の判示部分に、御指摘のような記載があることは事実でございます。
  175. 坂上富男

    ○坂上委員 さて問題は、今度はさらに、この十日の部分、大倉さんとあるわけでございますが、大倉さんについては、金子知事からは大倉さんがあす参りますからということは言ってないんですね。言ってないにもかかわらずダイアリーに大倉と、二時と、こう書かれているのです。ここにはだれかいるんじゃないですか、連絡したのが、金子さん以外に。こういう問題がありますが、この点の捜査はなさっておりましょうか。
  176. 則定衛

    ○則定政府委員 いろいろと御指摘があるわけでございますけれども、いろいろな観点から捜査を進めておるわけでございますが、具体的に今御指摘のことにいわばポイントを置いてやっているかどうかといったことにつきまして、まさに捜査の内容にわたることでございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  177. 坂上富男

    ○坂上委員 それから、これは拒否をされました、私の事務所が見せていただきたいということで。二十四日でございますが、この日は、二十四日の部分は、金が二億円渡ったと言われておる日でございます。しかも、調書の中にもそのようにあるようでございますが、この日には国会議員二人がともに行くようにこのダイアリーに書かれているわけでございます。この点はいかがですか。うちらの方は、これは見せていただけませんでした。お示しのとおりでございまして、拒否されましたが、どうですか。
  178. 則定衛

    ○則定政府委員 事実確認という点におきましては、まさに五月二十四日のダイアリーの写しの部分については、新潟地検の方でお断りしたと承知しております。それは、いわゆる刑事確定記録法に基づきます検察の事務に支障がある。これは、いわゆる関連する事件の捜査を含めてのことだと思いますが、そういったことで御要望に沿えなかったというふうに承知しております。
  179. 坂上富男

    ○坂上委員 もう一遍。二十四日という日は二億円の金が渡った日である、これは争いがないようですが、そういう重大な日に関することであるから、これについては閲覧は拒否をする、こう理解していいのですか。
  180. 則定衛

    ○則定政府委員 重ねてのお尋ねでございますけれども、捜査の実施を含みます、いわゆる検察事務の運営に支障が生ずるということでございますので、御理解賜れればと思います。
  181. 坂上富男

    ○坂上委員 結構です。  さて、その次、長谷川道郎さん、長谷川信さんの息子さんですが、上申書が出ておるわけでございますが、これは間違いないのでしょうか。この人の上申書によりますと、二十四日から二十七日まで国会にいたというのですね。しかもまだ、私も新聞やいろいろなことで調べてみますと、九日の日に二億円はジュラルミンに入れた、こう早乙女常務がどうも供述しているようです。  そういたしましたら、今度は渡邊廣康さんが、二十四日の日に紙袋に入れて自動車のところまで持っていった、こう言っているのですね。九日から二十四日まで、そのまま二億円が積まれていたことになる。しかもまだ、長谷川さんは、二十四日から二十七日まで国会にいて新潟の選挙に行っていない、新潟に行っていない、こう言っているわけです。この辺いろいろ問題があると私は思っているわけでございますが、この点はどうですか。捜査はやっているのですか。
  182. 則定衛

    ○則定政府委員 いろいろと具体的に指摘されておられるわけでございますけれども、まさに先ほど申しましたように、捜査中でございますので、個々の事実関係等について検察がどういうふうに把握しているかということについては、お答えいたしかねるわけでございます。
  183. 坂上富男

    ○坂上委員 二億円のお礼の電話が金子サイドから入った、こう言われております。金子サイドと言われているのですね、これは。なかなかわからない。これは、どうですか、確認していますか。
  184. 則定衛

    ○則定政府委員 今御指摘の点は、渡邊廣康の証人尋問調書中に今のようなやりとりがあると聞いておるわけでございますけれども、その電話がだれからかかってきたかにつきましては、先ほども申しまして恐縮なのでございますけれども、現在捜査中の事件とかかわる事項であるので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
  185. 坂上富男

    ○坂上委員 二億円が入ったと、金子さんでない別の人が、いわゆる金子サイドがお礼の電話をした、こういうわけなのです。これは、きちっとやはり捜査をすれば何か全貌が出てくるのではないですか。ぜひひとつ、厳重捜査を要請をいたしたいと思います。  さて今度は、もう時間はありませんから、金子元知事はこういうこともおっしゃっているのです。今は背景は言えないが、政治の怖さを感じている、献金は無心したように言われているが、そうじゃない、真相を言いたいけれども大きな問題になる、勘弁してください、こう言って新幹線の、知事辞職をした年の九月の九日、正式辞任後、上京中の新幹線で記者にこれも言っているのです。この点は捜査の視野に入っているのですか。真相を話すと騒ぎになる、どうですか。
  186. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のようなインタビュー記事が報道されたことは、もちろん私どもも知っておりますし、検察当局承知しているのだろうと思いますが、それらについてどういうふうに受けとめておるかという点につきましては、先ほど来申し上げていますように、捜査のかかわりがございますので差し控えたいと思います。
  187. 坂上富男

    ○坂上委員 もう金子さんには、事件が確定したのだから黙秘権や、起訴のおそれはないわけでございますから、私はやはり真相というのは、検察はこの点でひとつ追及をしていただかなければならぬと思います。  それから最後に、これはいつ事件が終わりますか。シロ、クロ、起訴、不起訴、こういうことはいつでございますか。そしてもう一つ、もう時間がありませんから、最終報告を国会でやりますか。きちっとやってもらいたい。そうでないと、県民や国民は納得しません。こうこうしかじかで検察はお手上げをしました、こうなるのか、堂々と起訴しました、こういう報告になるかわかりませんが、できますか。
  188. 則定衛

    ○則定政府委員 この国会報告の点でございますけれども、仮に国会から報告を行うようにという御要請があれば、その時点におきまして、法令に照らして御協力できる範囲や内容について十分検討することになるわけでございますけれども、いまだ東京地裁におきます捜査が行われている、こういうふうな状況も踏まえまして、適切に対応してまいりたいと思います。  それからもう一点の、いつごろかということでございますけれども、私ども承知しております告発事実の概要から申しますと、ちょっと定かではございませんが、たしか来年三月ころに時効の問題が生ずるということもあるやに承知しておりますので、そういったことも念頭に置きながら、検察当局は適正に対処するものと考えております。
  189. 坂上富男

    ○坂上委員 政治資金規正法はどうですか。いつごろ時効というふうに見ているのですか。
  190. 則定衛

    ○則定政府委員 政治資金規正法等につきまして、若干時効の期限が早まるものもあるやに承知しておりますので、いずれにいたしましても、そのようなことも念頭に置いて対応するものと考えております。
  191. 坂上富男

    ○坂上委員 どうも私の調べたところで、一番早い時効は来年の一月一日、というようなことになると、年内もうぎりぎりだと思うのですわ。どうですか、この点。
  192. 則定衛

    ○則定政府委員 御指摘のような点もございますので、年内というのが一つのめどであろうかと考えております。
  193. 坂上富男

    ○坂上委員 大臣、今言ったような経過でございまして、二億円の解明は県民の皆さんが特に明確にしてもらいたいと思っていることだろうと私は思っているのです。大臣、これらに対する政治改革との関連において、どのようなお考えをお持ちでございましょうか。
  194. 前田勲男

    ○前田国務大臣 御指摘事件、現在捜査中でございます。先生、先ほど時効のお話もございましたが、当然これらも頭の中にはあると思っております。証拠に基づき、法に基づいて厳正に対処してもらえるものと確信をいたしております。
  195. 坂上富男

    ○坂上委員 ありがとうございました。
  196. 金子原二郎

    金子委員長 枝野幸男君。
  197. 枝野幸男

    ○枝野委員 さきがけの枝野でございます。  まずきょうは、私が一般質問に立ちますときにはいつもお尋ねをしております夫婦別姓、夫婦選択別氏の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  この問題について、法務省サイドで最近いろいろと動きがあるようでございますので、それについてまず簡単に、最近の夫婦別氏をめぐる法務省サイドの動き、御説明をお願い申し上げます。
  198. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 婚姻、離婚制度をめぐります、この中にはもちろん御指摘の夫婦別姓問題を含みますが、法制審議会民法部会の審議の状況でございます。平成三年初めから審議を開始し、平成四年十二月に中間試案を公表し、それに対していただいた意見を踏まえて。いろいろな問題点について検討を進めてまいりましたが、本年の半ばごろに改正を要すると考えられる事項について一応の方向性を得るに至りました。  この問題につきましては、国民生活に密接な関連を有する問題でございまして、その方向性について改めて国民各層の意見を伺うことが必要であるということで、ことしの七月、民事局参事官室名で、これまでの審議結果を踏まえまして、「婚姻制度等に関する民法改正要綱試案」、これを作成して公表して、現在各界に意見を伺っている状況でございます。御意見は明年の一月二十日までに御提出いただきたいということで、意見照会をしている状況でございます。
  199. 枝野幸男

    ○枝野委員 今その意見照会をしているというお話でございますが、その意見照会はどのようなところにしているのか。具体名というよりも、どういったところということで結構でございますので、御答弁をお願い申し上げます。
  200. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 できるだけ各層からの意見を聞きたいということで、具体的には裁判所、弁護士会等の法律家関係の団体、それから各大学、これは法学部を持っている大学のほかに、女性問題に関する研究施設といったものを持っておられる大学も含めております。それから、各省庁または各種の婦人団体でございますとか労働団体、消費者団体あるいは戸籍事務関係団体、そういったこの問題に関心を寄せられると思われる団体に対しまして、約二百の団体に対して試案を送付して意見を聞いているところでございます。
  201. 枝野幸男

    ○枝野委員 前回この件について御質問申し上げたときにもお話をしたのですが、夫婦別氏の問題というのは、実は当事者としてかかわるのは若い世代、独身の世代が非常に現実の問題としてこの問題をシビアにとらえているという現実がございます。そうした意味では、今照会先として挙げていただいたところ、大変適切なところだとは思いますけれども、そういった若い世代ということになりますと、各種団体等の中で実は意見がなかなか吸い上げられていないという現実もございます。そうした側面を考えますと、例えば世論調査等について、法務省の方から総務庁等に依頼して云々ということについての動きというのはございませんでしょうか。
  202. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のようなこともございますので、総理府で毎年やっておられます世論調査の中で、私ども、この問題についての調査をお願いしているところでございます。私どもとしては、それはできるだけ早く実施し、その結果をいただきたいというふうに期待しているところでございます。
  203. 枝野幸男

    ○枝野委員 ぜひその世論調査を早急に、しかもこういった世論調査というのは質問の仕方、立て方によってかなり内容が変わっできますので、できるだけ中立公正的な立場から答えが引き出せるように、ぜひ進めていただきたいと思います。  その試案の中身に若干入りたいのですが、ここでは、夫婦別氏に関しまして三つの案を試案の中で例示をされているというふうに理解をしておりますが、それはそういう認識でよろしゅうございますね。
  204. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおり、夫婦別氏のあり方ということについては、ABC案三つの案を提示して御意見を伺っているところです。
  205. 枝野幸男

    ○枝野委員 ところが、この試案が出ましてから、この問題に関心のある議員意見交換、あるいはこういった問題に関心のある皆さん、弁護士その他との意見交換の中で、三つの例示は三つの例示としていいんだけれども、その中に出てくる例えば子供の問題、氏そのものの問題と子供の問題との組み合わせ、そういったことでもっといろいろな組み合わせがあるのではないか。本当にベターな方向性というのは、実は例示をしていただいた組み合わせ以外の組み合わせの方がいいのではないかというふうな意見も少なくございません。  そうした意味で、この三つの案の位置づけといいますか、今後具体化していく場合に、そうした組み合わせをいろいろと考えていくということがあり得るのか、あり得るとすればどのようなものがあり得るのか、お答えをいただければと思います。
  206. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 この夫婦別氏の問題は、御案内のとおり単に婚姻の際に夫婦が氏をどうするかというだけの問題にとどまりませんで、婚姻した後に夫婦が氏をまた変えるということをどうするか、あるいは子供の氏をどうするか、これは実子の場合、養子の場合を含めてどうするか、それから子供の氏のその後の変更というものをどの範囲で認めるのかといったような、関連する大きな問題を含む広がりのある問題でございます。  それぞれの問題点について、理論面あるいは政策的な観点からいろいろ意見があり得るところでございます。私どもとしては、そういったそれぞれの問題についてできるだけ幅広く適切な意見をいただきたいというふうに考えまして、その問題点を明確にするという観点から、一応代表的な三つの組み合わせ、三つの考え方に整理をして問題提起をして、意見を聞くということにしたわけでございます。したがいまして、あくまでいろいろな問題点について予想される意見を幅広く吸収するという目的から出たものでございまして、将来最終的な立法のあり方としてこの三つのタイプにコンクリートにしてしまうという趣旨ではございません。  したがいまして、これから寄せていただく意見も、それぞれの案の中で、例えばA案がいいけれどもこの点はこうすべきだというような御意見が恐らく寄せられる、そういうことも私ども期待しているわけでございますので、そういう御意見あるいは世論調査の結果が得られれば、そういう意見を踏まえまして、改めてどういう形がいいのかという最終判断をするための審議をお願いするということになろうと思います。  したがって、結果としては今のような組み合わせと異なった組み合わせが最終案となるということは十分あり得ることでございます。
  207. 枝野幸男

    ○枝野委員 何度もこの委員会で申し上げていることでございますが、夫婦別氏の問題はいろいろなとらえ方ができると思います。現実にそうされております。  確かに日本の社会制度、家族制度にかかわる問題だというふうなとらえ方からすれば、慎重にという意見も出てくるのかな。それはそれで理解はいたしておりますが、しかしながら当事者、私も未婚でございますのである意味では当事者の一人かなと思っておりますが、特に仕事を持っている同世代の女性の立場などを考えますときに、まさに現在別氏が選択的にも認められないという状況は、一種の人権問題という側面からとらえるべきではないか。それも、何でも男女同じにすればいいというふうな、そういった一種の抽象的な人権問題というよりも、まさに氏を変えなければならないということで生活上非常に不利益をこうむっているという意味での人権問題としてとらえるべきではないか。そうしましたときには、できるだけ早く、なおかつ、現実の不便を解消する方向での解決を図っていただきたいと、強く繰り返しお願いする次第でございます。  私の支持者の中にもそういった声が非常に強くて、法務省に任せておくと時間がかかるから議員立法か何かで進まないのかなとという声も、少なからず私のもとにも寄せられております。ぜひその点をお願いするのと同時に、今後法務省サイドとしてこの問題についての進め方、スケジュール等について、おおよその見通しといいますか、そういったものがありましたらお教えください。
  208. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 私どももできるだけ早くかつ適切な成案を得たいというふうに考えておりますし、法制審議会民法部会の先生方、委員の方々もそういう気組みで取り組んでいただいております。  ただ、この問題については非常に多様な事件、御意見がございまして、また戸籍事務の上でどう対応するかというようなことも検討しなければならないということでございますので、それは十分な審議を尽くした上で成案を得る必要があるだろうという問題もございます。そういうことで、十分に審議を尽くして、かつ、できるだけ早くということを考えております。  ただ、いつということを、今まだ御意見をいただいている最中でございますので、まだ今の段階でいつごろにはということをなかなか申し上げにくい状況でございます。できるだけ早くやりたいと思っております。
  209. 枝野幸男

    ○枝野委員 ぜひ前向きに、できるだけ早くお願いを申し上げます。  この問題だけやっていますと一時間でも二時間でも尋ねたいことがありますので、話題を変えさせていただきます。  実は、この夏、法務委員会の派遣でヨーロッパの視察に行かせていただきました。そうした中で、難民の問題というものに関して非常に強い印象を受けてまいりました。特に、ベルリンに参りまして、ドイツが大量の難民に苦しんだ、その対応に非常に苦慮したということにつきまして、現地にいる日本から派遣されている役所の皆さんなどを通じたり、あるいはその他もろもろのところで、これは大変なことだなというお話も聞いてまいりました。  また、たまたまローマでは、塩野さんという作家の方にお目にかかる機会を持つことができまして、まさに歴史作家という言い方でよろしいのでしょうか、過去の世界の歴史を見てくるときには、必ず難民が発生する、食えるところに行く、食べられるところに行く、食べられない人たちが食べられるところに動くというのがまさに難民というものであるというような話を聞いてまいりまして、そんなことが起こらなければ一番いいんだと思いますが、東アジアという地域を見ましたときに、日本がこれからいろいろ苦労をすること、大変なことというのはたくさんありますが、ここ当分の間は、この東アジア地域の中で一番経済的に豊かな地域であるという状況は変わらないだろうというふうに思います。そして、ベルリンの壁崩壊後、東西冷戦という形が崩れたことによって、逆に地域紛争というような形で、この地域の中で残念ながら大量の難民が発生する余地というのは、決して少なくはないのではないかというふうに考えております。  難民が発生しますと、当然、入国管理という側面で法務省も他人事ではないということになるわけでございますが、一カ月とか二カ月とかというそういったスパンではなくて、三年とか五年とかというスパンで見たときに、日本が、いわゆるボートピープルのような形で、万単位、十万単位というふうな大量の難民に対応せざるを得ない状況というものが発生する可能性というものについて、法務省サイドではどの程度の理解をされているのか、それについてお尋ねをしたいと思います。
  210. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 委員御指摘のとおり、現在の国際情勢の中で大量の難民が発生する可能性、これは否定できないと思います。しかし、さらに踏み込んで、それがどのような形で、具体的にどういう対応で、どんな数字でというような話にまで踏み込んで申し上げますことは、大変デリケートな側面を含みますので、その点は差し控えさせていただきたいと存じます。
  211. 枝野幸男

    ○枝野委員 行政サイドの側ではいろいろ問題があるのでお答えは結構ですけれども、私は、個人的な認識としては、残念ながら、東アジアの中には大量の難民が発生するような、例えば内戦のような状況が、近い将来、三年、五年あるいは少なくとも十年とかというスパンで見たときには出てきかねないところが日本のすぐそばに幾つかあるというのは、否定できない状況であるというふうに理解をいたしております。  さて、もし仮に、入管の人手不足というような問題は先ほど山田先生などもお触れになっておりましたが、仮に万単位、一年間に万単位あるいは十万単位というふうな難民が日本にやってくるというような状況になった場合に、今の日本の入国管理体制の中では、そのやってきた難民を審査するということは可能でありましょうか。その点について御答弁をお願いいたします。
  212. 前田勲男

    ○前田国務大臣 仮定のお話でございますから、何万、十万とかという数字でございますと、私は物理的に不可能であろうと思います。万が一そういうような事態に陥ったといたしたとすれば、これはもう政府全体として、国を挙げて対応をしていく以外にございません。  今日の入管体制、あるいは先ほどの御議論の中で、大村の入国管理センター、あるいは現在牛久、それから大阪の茨木入国管理センター等での収容能力をはるかに超える数でございますので、国を挙げた、別途根本的な対策が必要になってくる。少なくとも私どもは、そういう十万とか数万というオーダーももとより、まず現状の中においても、今後不法入国者がふえてくるということはもう明らかに予測されておることでございますので、そうした次元とも別に、入国管理の中の施設というものの整備をこれからも続けてまいりたい、かように思っております。
  213. 枝野幸男

    ○枝野委員 大臣からも御答弁いただきましたとおり、まさにこの問題は法務省限りで到底できる話ではございませんが、法務省も担当関係省庁として非常に大きなウェイトを持っているんじゃないかなというふうに思っております。そして、もちろん、難民のような形が大量発生しないような、そのための外交的な努力といいますか、国際貢献といいますか、それも十分大事だとは思いますが、そういった場合が生じた場合でも対応できるような準備というものは、これはしておかなければならない。  そういった意味で、関係各省庁をまたがって、政府一体となって、こういったものに対する準備といいますか、対応策の検討といいますか、これは人的、金銭的という側面もあるでしょうし、また法的な整備という面もあると思うのですが、こういった点について、現状ではどの程度まで調整、協議とかというものは行われているのか、もしお答えいただけるのでしたらばお願いを申し上げます。
  214. 塚田千裕

    ○塚田政府委員 ただいま大臣からも御答弁がございましたように、大量の難民が発生するような事態が生じた場合には、政府全体として対応する必要が当然ございますので、そのときは関係省庁とも十分に連絡調整を図っていかなければならないという想定でおります。  ただ、具体的にどのような緊急計画といいますか、具体的な計画を進めているかということにつきましては、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、大変デリケートな側面も含んでおりますので、まことに恐縮でございますけれども、答弁を差し控えさせていただけたらと存じます。
  215. 枝野幸男

    ○枝野委員 政府一体ということと同時に、まさにこれは政府・与党、あるいは与党に限らず政府政治家とが一体となって考えていかなければならない、いざというときではもう遅い、対応がし切れない、遅い問題だろうと考えておりますので、私どもも政党のサイドとして勉強させていただきたいと思っております。ぜひ法務省も、関係省庁の中で恐らくある意味では一番動きやすいのかなと私は個人的には思っておりますので、各種関係省庁等の連絡を今後ますます密にして、対応をお願いしたいということを最後に申し上げて、この点については終わらせていただいて、次の、もう一点だけ質問をさせていただきたいと思います。  保護司という仕事がございます。まさに、犯罪を犯してしまった人たちが立ち直るために、いわゆる刑事収容施設から離れた場所でその立ち直りをバックアップしてくださる大変重要な仕事であるというふうに理解をいたしております。  ところで、この保護司さんに対する手当といいますか、報酬といいますか、こういったものは現状でどうなっておりますでしょうか。確認のためにお尋ねいたします。
  216. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 保護司につきましては、保護司法の第十一条第一項によりまして給与を支給しないこととなっておりますが、同条の第二項によりまして、保護司は、予算の範囲内において、その職務を行うために要する費用の全部または一部を支給することになっております。これを保護司に対する実費弁償金と呼んでおりますが、平成六年度の予算について申し上げますと、この保護司の実費弁償金の総額は約三十一億四千万円という金額になっておりまして、保護司一人当たりにいたしますと、年間約六万円という金額を実費弁償金として支給いたしております。
  217. 枝野幸男

    ○枝野委員 一人当たり六万円ということになりますと、これはむしろ保護司さんの方の持ち出しという現実があるのだろうなと、これはもうだれでも常識的にわかる数字だなと思います。そういった報酬ももらわず、むしろ持ち出しで、まあ本来政府がやるべき仕事の一端だと思いますが、やっていただいている保護司さんに対してそれ以外の部分でどのような形で報いているのか、それについてお尋ねをいたします。
  218. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 保護司は、申すまでもなく民間の篤志家として犯罪者の更生あるいは犯罪予防活動に携わっていただいている方々でございますが、その責任の重大性あるいは職務の困難性を考えまして、長年の御苦労に対する顕彰については、特に法務省といたしましても配慮をしているつもりでございます。この点につきましては、保護司法の第十三条に、「法務大臣は、職務上特に功労がある保護司を表彰し、その業績を一般に周知させることに意を用いなければならない。」という規定もあるわけでございます。  具体的な表彰につきましては、保護観察所長の表彰、地方更生保護委員会委員長の表彰、そして法務大臣の表彰、この三つが毎年行われておるわけでありますが、このほかに国家の栄典でございます藍綬褒章あるいは春と秋の叙勲なども行われております。その数は、例えば平成六年について申しますと、法務大臣表彰は平成六年につきましては七百五十人、春と秋の叙勲は百二十九人、藍綬褒章が九十八人という状況になっております。これらの表彰に当たりましては、その基準として従事年数及び取扱件数といった御功績を中心に選定いたしております。  いずれにいたしましても、今後とも保護司の方々の御労苦につきましては少しでも報いるべく顕彰の充実に努めてまいりたい、かように考えております。
  219. 枝野幸男

    ○枝野委員 まさに本当に手弁当で一生懸命やってくださっている方には、そういった形でその御努力というのを表彰させていただくというような形で報いるしかないだろう、大変大事なことじゃないかと思っております。  私どもの党は、厚生大臣が勲章制度について意見を持っておりまして、確かにそういったランクづけというのはどうかなと、私個人的にも思っておりますが、まさにこの大臣表彰とかという形はそういったものとは違って、筋がいいという言い方はいいのかどうかわかりませんが、まさに適切な表彰制度ではないかと思っております。  さて、そこででございますが、例えばこの大臣表彰を受ける方々の年齢というのがどれぐらいからになっているのか。過去の実績で結構ですので、例えば大体何歳以上の方であるとか、最低年齢はこれぐらいだけれども大体これくらいの層に多いとかということがおわかりになったら、お教えください。
  220. 杉原弘泰

    ○杉原政府委員 表彰を受けられる場合の年齢についての基準があるかどうかというお尋ねでございますが、年齢と申しますよりは、今お答え申しましたように、基準としては、この保護司として活動していただいております。その従事年数、そしてその間の、言ってみれば保護観察事件の取扱件数、そういった功績を中心といたしまして選考しているということで、そうしますとある程度の年限が必要になる。したがいまして、この表彰を受けられる対象となります方々の年齢もかなり高齢者ということにならざるを得ないわけでございますが、年齢で特に基準を設けているというようなことはいたしておりません。ただ、同じような対象者がおられる場合には、年齢の長短、高い、低いということも一つの考慮事項として考えさせていただいております。
  221. 枝野幸男

    ○枝野委員 実は、例えばいろんな省庁でいろんな御活躍をいただいた方に大臣表彰というシステムは、これは必ずしも保護司さんの世界だけではないということでございますが、ただ、そうした中で、保護司さんをやっていて、その功績によって法務大臣の表彰を受けるという年齢が、ほかの省庁の大臣表彰、ほかの分野の大臣表彰と比べたときに、実はどうしても若干高くなってしまっているのではないか。  これはある意味では必然性があるといえばある。というのは、社会の中で、この方は立派な方だ、まさに犯罪から立ち直る、更生を助けるのにふさわしい人だという方であるからこそ保護司さんをお願いするのでありますから、そもそも保護司さんになられる年齢が決して若い人間ではない。そこで、何年か実績を踏まれた、すばらしい功績を上げていただいたということに対して表彰する、当然その始まりが遅いということでどうしてもおくれぎみになってしまう。  早く受ければいい、早く表彰すればいいという筋のものでは必ずしもないというのは重々理解はいたしておりますが、あの別のところでこんな仕事をしているやつは、こんなおれより若いのに何とか大臣の表彰をもらっているわ、保護司の仕事を一生懸命やっているんだけれども、どうして法務大臣の表彰はいただけないのかなというふうなことがあっては、これまたおかしなことかなというふうに思っております。  これは一気に変えるとかという話ではないとは思っておりますが、保護司さんの世界の中で実はそういった声がないわけではないということを法務省の皆さん、特に大臣などに御理解をいただいて、まさに本当に手弁当でやっていただいている皆さんに、気持ちよく仕事をしていただいて、せっかく表彰させていただくのですから、気持ちよく受けていただけるというふうな状況づくりのために一層努力をしていただきたいと考えておりますのできれば大臣の所感をいただければと思います。
  222. 前田勲男

    ○前田国務大臣 大変奉仕の精神で地道に御尽力をいただいております保護司制度全般につきましても、先生からまさに日の光を当てていただいたという、私も今ありがたい気持ちで聞かせていただきました。  保護司さんの仕事は、まさに保護観察の対象となっている犯罪者あるいは非行少年の立ち直りを助けて、犯罪、非行のない明るい社会、地域づくりに貢献をしていただいているわけでございますが、具体的にもう少し申し上げれば、保護観察官と協力して現場で、近所で保護観察を行っていただく、また、矯正施設に収容されておった、帰住予定地、帰ってからどこに住まうか、また、家族、親戚その他の環境の調整でございますとか、もっと踏み込んで、友人関係等々で犯罪が再び起こらないかどうか、大変そこらまで立ち入って親切にお世話をいただき、かつ、給与がなく、先ほどのような実費給付で支給であるというようなことでございまして、私どもも保護司さんのなさっておられる役割を大変高く評価をしておりますし、今幾つかの業務を申し上げましたが、もう一つ、保護司さんとして、特に刑務所、少年院等を出ました、出所した人が、職業、住居もございますけれども、何よりも社会のいわば冷たい目と申しますか、こうした目に対して強く生きていかなきゃならない、そのときの心の支え、これはやはり保護司さんが大きな役割を果たしていただいておる、私はそういうふうに考えておるところでございます。  今日、社会の犯罪情勢は大変変化をしておりまして、保護監察あるいは犯罪予防も非常に難しさが出てきておるわけでございまして、まさに保護司さんには今日なお物心両面にわたって御負担がふえておる、そういう申しわけない気持ちでもおるわけでございますが、私どもとしても、今後、保護司さんに少しでもお報いできるように、最大の努力を続けてまいりたいと思っております。  なお、表彰の平均年齢が少し高過ぎるのではないかと、御指摘のとおりだと思います。ただ、保護司さんのこうした仕事の性格上、年配になられてからお務めいただく保護司さんも比較的多うございまして、今たしか平均年齢が六十二歳と伺っております。そんな関係があって、一般の方と比べて少し遅いのではないかという御指摘もあろうかと思いますが、それらも大変ありがたい御注意と受けとめて取り組んでまいりたいと思います。ありがとうございます。
  223. 枝野幸男

    ○枝野委員 ありがとうございました。
  224. 金子原二郎

    金子委員長 正森成二君。
  225. 正森成二

    ○正森委員 法務大臣、きょうは長時間御苦労さまでございます。  私は、きょうは法案でない一般質問でございますので、関心のある二、三のことについて質問させていただきたいと思います。  まず第一に、財団法人の民事法務協会に絡む処遇の問題について伺いたいと思いますが、まず最初に、法務大臣のご見解を承りたいと思います。  といいますのは――いや民事局長、心配しなくていいです。といいますのは、今から三年前に、ここにおられます左藤議員が法務大臣のときに、我が党の木島議員質問をしております。そのときに、まず最初に、昭和四十六年から、法務省の登記業務の繁忙解決のために、乙号業務、登記簿の謄抄本の交付について委託が開始されたということを指摘した上で、民事法務協会の乙号業務に携わる業務職員が何と千百五十五名にまでふえてきている、これは三年前の数字であります。今各地の法務局の登記業務を見ますと、もうこの民事法務協会の職員の皆さんを抜きに実際登記事件の処理ができないという大変大事な戦力になってきている、こういうことを指摘して、厳しい人手不足の中で国民の財産を守る登記業務を下から支えてきた民事法務協会職員の皆さんの労苦を高く評価すべきであると思いますが、法務大臣の御所見を伺いたい、こういう質問をしているのですね。  それに対して、当時の左藤国務大臣が、長くは言いません、一部だけですが、「本来法務局の職員がやらなければならない仕事ではございますけれども、そうしたことで、今事情もありましてやむを得ずこうしたことになっておりますがこつまり、正規の職員でなしに、民事法務協会の職員に実際上委託しているということを指しているのですが、「非常に重要な仕事でもあり、この人たちの大きな力によって今の登記行政がともかく何とかしのいでおると申し上げていいのではないかと思いますので、こうした重要性にかんがみてそれに対する対策を考えなければならないこという答弁をしておられるのですね。  つまり、非常に重要な業務であって、本来、法務省の職員がやらなきゃならないことをかわりにやってくれている、そのおかげで登記業務が持ちこたえているので、それにふさわしい処遇をしなきゃならぬ、少なくも左藤さんが法務大臣のときにはそう言っておられたのです。私は、前田法務大臣もその基本的な趣旨、精神は同じように考えておられると思いますが、その点だけ答えてください。ほかの技術的なことは、民事局長、心配しなくてもあなたに聞くから。
  226. 前田勲男

    ○前田国務大臣 民事法務協会の職員の皆さんは、先ほど先生からもお話、あるいは左藤恵元法務大臣からのお話のとおり、極めて大事なお仕事をなされ、円滑に業務を進めていただいておると理解をいたしておりまして、一般の公務員の給与とバランスを考慮して給与は支払われるべきであると考えております。
  227. 正森成二

    ○正森委員 基本的には、左藤法務大臣の時代と基本的認識は同じであると私は拝見しました。  ここからは多少技術的なことになりますので、事務当局で結構でございます。  そのときに、民事法務協会というのは、登記簿謄抄本一枚について幾らという委託料がありまして、その委託料によって民事法務協会の運営費と人件費が出されているという格好になっているのですが、その委託料が非常に低いのですね。それで、御承知のように、木島議員質問当時は一枚二十一円三十四銭という数字が出ておりますが、現在は幾らかというと二十五円十四銭ぐらいですね。非常に安いんです。  そのときに指摘されたのでは、一方、それじゃ国民からはどれだけの手数料を取っているかというのを質問の中で言っているのですが、それを見ますと、どんどん上がりまして、例えば平成元年には四百円だったものが、平成二年、三年には五百円、六百円というように非常に高く上がっておる。現在は幾らか。民事局長、たしか八百円ですね。うなずきましたけれども、残るように答えてください。
  228. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 御指摘のとおり、現在謄抄本の交付手数料は八百円でございます。
  229. 正森成二

    ○正森委員 ですから、八百円国民からは取っておって、それでその民事法務協会の実際仕事をしている人には非常に安い単価しか払っていないのです。  それで、民事局長、これは論戦するつもりじゃありませんから、あなたが答えることをあらかじめ申し上げますが、当時の清水民事局長は、これは決して民事法務協会の人を非常に安く使っているわけではないんだと。これは実は法務省がコンピューター化というのをやっておって、そのために昭和六十年には登記特別会計制度というものが導入されたんだ、そしてこの登記手数料を主要財源として登記事務のコンピューター化を進めるということになっているわけでございまして、誤解ではないと思いますけれども、誤解なさらぬようにというような答弁をしておるのですね。つまり、国民からは高くいただいて、その民事法務協会の従業員に払っている単価は安いんだけれども、その差額はコンピューター化のための財源に特別会計でやっているんだということを言っているのです。  そうしますと、どういうことになるかといえば、コンピューター化のためには、私、個人的に視察にも行ってきましたが、民間会社にも委託して開発してもらって、そして今コンピューター化をやっておりますが、その現場には開発を頼んだ民間の技術者が常時詰めておる、そういう費用も全部賄っているのですね。そういうのは、本来民間企業でいえば明らかな投資的経費ですね。それを、国民からは非常に高い手数料をもらって、実際の仕事をしている人は非常に安い単価、そこから賃金、人件費が払われているのですが、そういうことで賄ってきた。非常に俗も言い方をすれば、国民からは高い手数料、税金と同じですからね。従業員は、付加価値の上前をはねると言うたらいけませんが、これを経済学の用語では搾取すると言うのですね。そういうぐあいにしてコンピューター化を進めてきたということにほかならないのです。清水局長は三年前にそういう答弁をしているのです。ですから、今あなた、現在の民事局長、答えてもらわなくてもいいですけれども。  その上に、私がどうしても言わなければならないのは、コンピューター化をやったために、コンピューターでぱっと登記の証明書や何かが出てきますから、これまた単価が非常に安くなって、コンピューター化を進めれば大体七割ぐらいしか今までと違って委託料が払われないのです。したがって、私は資料で見ましたが、民事法務協会の枇杷田という会長がおります。これは法務省の職員でしたが、これとの交渉なんかを見ますと、このままでいくと、人件費を三割下げるか、あるいは人間を三割減らすか、あるいは法務省の単価を、コンピューター化ということはあるけれども、若干上げてもらうか以外に切り抜ける道はない、こう言っているのです。  そうしますと、これは関西の言葉ですが、民事法務協会の人はやらずぶったくりで、コンピューター化を進めるための設備投資は、自分らが安い単価で我慢してやった、導入されたら、今度は返す刀で自分が首を切られるか、あるいは三割単価を下げなければやれないという状況に追い込まれる、こういうことになっているのです。もちろん、一部は手伝っている法務省の正規の職員も関係があって被害をこうむりますけれども、これは余り酷ではないですか。  私がこう言うと、いやいや、それは民事法務協会との労使関係であって、法務省は関知しないことで、ただ委託費という名前の物件費を支出しているだけと言うかもしれませんが、文字どおり物件費以外には収入がないのですから、それによってそういう安い単価が決められ、正規の職員に比べて四号俸も五号俸も低くて、そして手当なども、女子の有給の産休も認められない、あるいはその他の手当も基本給に換算してボーナスに反映しないというようなことが起こっているわけです。  だから、私が聞きますと、法務局は非常に登記が繁忙で、しかもコンピューター化されないときは民事法務協会に人員をふやせ、人員をふやせと言ってふやしたらしいのです。それで今度はコンピューター化で、高い手数料を国民から取り、本人たちには安い単価で、どんどん設備投資が進むと、今度はコンピューター化が進んだから人員の整理か単価を下げるかというだけの委託費しか渡さない。これではちょっとあんまりだと思うのですね。ですから、やはりそれについてはしかるべき処遇をするように予算要求すべきじゃないですか。
  230. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 いろいろ御指摘を賜りましたけれども、まず、先般清水前民事局長が答弁しました趣旨につきまして若干補足させていただきたいと思います。  これは手数料を増額して、しかも片や委託単価は余り上がっていない、その間搾取しているのではないかという御指摘でございますが、決してそういうことではございません。コンピューター化のためには大変な経費がかかるわけでございますけれども、これは決してコンピューター化のために乙号委託をやっていただいているという関係には、直接乙号委託の関係ではないわけでございます。確かにコンピューター化のために大変経費がかかるということでございます。  それからもう一つは、手数料収入、登記特別会計におけるいわば自主財源、これがすべてコンピューター化経費にかかっているわけではございません。御案内のとおり、登記事務には、登記審査事務、いわゆる甲号事務と、登記情報に関する事務、乙号事務とございますけれども、基本的には乙号事務にかかわる経費は手数料収入で賄うといづことでございます。乙号事務に要する経費というのは、コンピューター化の経費だけではございませんで、そういったすべての経費をその手数料で賄っているという関係にあることを指摘させていただきます。  それから、直接の御質問についてでございますけれども、これは民事法務協会の職員の給与かどうあるべきかということについていろいろ御意見がございましょうけれども、私ども従前からお答えしておりますように、単価を設定するに際しては、毎年委託単価を設定するという協会とのお話し合いの中で、そういう点も協会から十分に御意見をお伺いして単価を設定している。そういうことで、先生の目から見れば微々たるものかもしれませんが、最近では毎年のように改定してきているわけでございます。そして、協会の職員の給与につきましても、一般の国家公務員の給与等とのバランスを考慮して、相当程度の待遇がされているものというふうに理解しております。  それから、最後の結論的な御質問でございますけれども、私どもとしては、御指摘のように必要な財源の確保、人の確保ということについては最大限の努力をしていかなければならぬというふうに考えておりますし、今後ともそうするつもりでございますが、国全体の定員事情あるいは予算事情は大変厳しいということも考慮しなければなりません。そういうことを考慮して、いろいろ工夫すべきことは工夫しなければならぬ。その両々相まって大切なことであるというふうに思っております。
  231. 正森成二

    ○正森委員 民事局長が懇切丁寧に説明していただくのはありがたいのですが、私の持ち時間が短いので、なるべく簡潔にお願いします。  それで、民事局が出している賃金職員というのは今現在何人ぐらいいるのですか。
  232. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 いわゆる賃金職員と申しますものは、時々によって変化がございますけれども、平均的に申しますと、全国で現在約二千五百名ぐらいの賃金職員が入っております。
  233. 正森成二

    ○正森委員 私は、全法務の職員が、法務局がやるべき仕事は本来法務局の正規の職員でやるべきであるという基本的な主張を持っていることは承知しております。けれども、財団法人の民事法務協会で千百名前後の職員がいる以上は、その職員の待遇というのはきちんとしなければならない、こういうことを言っているわけです。」  それに加えて、今賃金職員二千五百名というのが出ましたが、これは民事法務協会が本来の職員よりも五号俸も六号俸も低い賃金で、しかも私が調べたところでは、これは前歴換算がない、産休が無給であるというような、非常に、余りよろしくない給与のもとにあるのですけれども、それよりもまだ低いですね。私が行って実際に聞いてきましたが、極めて低い時間給の賃金職員というのを別に使って、それを二千五百名も入れているのです。ですから、下請、その下のまた孫請みたいなもので、そういう民間企業の土建業者と同じようなことを事もあろうに法務局がやって、それで金を浮かしてコンピューター化のいろいろな費用をはじき出している。それだけじゃありませんよ、今民事局長も言われましたが。そういうように言われても仕方がない。  どういうことになっているかといえば、ここに資料がありますけれども民事法務協会はそのために赤字になって、毎年毎年資産を取り崩しているのですね。例えば、一番盛りのときには十八億円余りあった資産が、平成五年、三年たってみると十二億で、五億から六億取り崩しておる。年間五億円近い赤字になっておるという関係なのです。  ですから、いろいろ言われるかもしれませんが、監督官庁で、単なる業務の受注関係で、それは民事法務協会の経営の責任だと言われるかもしれませんが、民事法務協会、枇杷田さんにしろだれにしろ、幹部は全部法務省のしかるべき職員だったのですね。だから、ふやすときは法務省は有無も言わさずふやせ、こう言ってきたという点から見ますと、法務省としては世間に通用するような待遇をなし得るような委託費というものをやはり考えるのが筋じゃないかというように私は思います。それについて二言答弁を伺いまして、次の問題に入りたいと思います。
  234. 濱崎恭生

    ○濱崎政府委員 予算の制約というものがございますので、御指摘観点からも、その予算の制約の範囲内ということでできるだけの努力をこれからもしていきたいというふうに思います。
  235. 正森成二

    ○正森委員 それでは、次の問題に入りたいと思います。  警察庁、来ておられますか――はい。  これは、皆様御承知と思いますが、ことし北海道の旭川方面で、旭川市内の暴力団に対する覚せい剤取り締まり捜査の際に、密売取引に使われたとされる一般加入電話の通話を配線盤室で傍受するということがございました。これは、当時新聞にも大きく報道されましたけれども、最終的には裁判所の検証許可令状、検証令状というのを得てやったということになっているわけです。  そこで、最高裁来ておられますか――はい。  じゃ、最高裁、御面倒でもお答えいただきたいと思いますが、私は、ここにそのときの地裁と、それから同じ暴力団関係らしいのですが、別件の高裁の判決も持ってきております。ですから、大体のことは知っておりますが、いやしくも憲法の、通信の秘密を侵してはならない、それから電気通信事業法にもあります、そういうのに対して、電話を事実上盗聴して、その当人のプライバシーだけでなしに、かけてくる他人のプライバシーも侵害するということは、これはよくよくのことでなければならないので、私は若干調べましたら、学説の中でも、通説はおおむね反対、しかし有力な、やむを得ないという、認める積極説もあるというように聞いておりますが、裁判所としては、少なくとも憲法や電気通信法の建前からして、万が一検証許可令状を出す場合は、安易に出すのではなしに、最大限の歯どめをかける必要があるというように思うのです。  私は、この事件は過去の事件ですけれども、多少裁判官の判断に関係しますから、どこまでが裁判所答えられるか、これはあなたの方で考えていただいたらいいのですが、この判決の中にも相当、四つか五つ、日時を特定するとか時間を特定するとか、あるいは相手方、犯罪の性質、それからその場合に立会人を置かせるとか、いろいろ歯どめをかけておられるようですが、裁判所としてはどう考えておられるのか、答えられる範囲で答えてください。
  236. 高橋省吾

    高橋最高裁判所長官代理者 今回の検証、電話傍受のための検証許可状の発行、その具体的な裁判の内容に関しては、私どもとしてはどう考えておるかどうか、そういった点については答弁を差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に申し上げますと、今回のように電話傍受のために令状を発行することにつきましては、多くの問題点が指摘されております。例えば、憲法の保障する通信の秘密あるいはプライバシー等の権利侵害のおそれがあるのではないか。それから、刑事訴訟法の百九十七条一項ただし書きの関係で、電話傍受のための令状については刑訴法上その発行の根拠がないのではないか。あるいは、電話の傍受というのは将来の犯罪捜査のために行われることが多いわけですが、そのような令状の発行が許されるのかどうか。あるいは、このような令状を発行できるとしても、その種類とかあるいは発行の要件等についてどのように考えるべきか。そういったいろいろな問題が指摘されております。  それについてはいろいろな議論があることは承知しているところでありまして、裁判例の中には、先ほど委員御指摘のとおり、東京高裁、平成四年十月十五日の判決、あるいは甲府地裁の平成三年九月三日の判決のように、例えば犯罪の重大性とか、ほかにそういった電話傍受以外には捜査の方法がないとか、代替手段がないとか、ほかの通話、他人のプライバシーを侵害しないようにと、いろいろ厳しい条件をつけた上でそういう電話傍受の適法性を認めた、そういった裁判例もございます。  いずれにしましても、裁判所としましては、このような令状の発行ということが非常に国民の基本的人権にかかわるということで、非常に重大な職務と考えております。そういったことから、この電話傍受につきましても、先ほど申し上げたとおりいろいろな問題があるということを認識した上で、個々の事案ごとに令状発付の必要性と相当性を慎重に検討して令状を発行すべきかどうかを判断しているものと考えておりますし、そうすべきものと考えております。
  237. 正森成二

    ○正森委員 私は、これまでも人身の誘拐があった場合、子供を誘拐した、それで身の代金を請求したというような場合に、その子供を連れていかれた親の同意を得て、その親のところへかかってくる、身の代金幾ら、どこへ持ってこいというのに対して、聞けるようにする、親の同意を得て。というのは、それは、そこへかかってくる人の中には犯人以外の者もおりますから若干問題はありますけれども、人命にかかわることであり、受信する方は、もう頼む、こう言っている場合ですし、これは許容される場合が非常に多いというように思いますから、全く許されないと思っているわけではありません。  しかし、本件の場合は、暴力団の麻薬とかいろいろなことはあったと思いますが、これが犯罪の捜査ならいいんだというようなことで広がれば、これは憲法規定はないに等しいということになりますので、最高裁はもちろん個々の裁判官に指示したりすることはできないということはよく承知しておりますが、そういう点は心しておいていただきたいと思うわけです。そこは一つ、令状発付するときの歯どめですね。  もう一つ、私が新聞記事を読んでいて、新聞記事ですからあるいは誤っているかもしれませんが、看過することができないと思ったのは、警察庁、ことしの七月の事件では、新聞報道が正しければ、北海「道警の捜査員は七月十三日に、「前例がある」とNTT旭川支店に傍受を申し込んだが、断られた。そこで七月二十日付で旭川簡裁から令状を取り、同月二十二、二十三の両日、令状で定められた午後五時から午後十一時までの間に、NTT旭川支店で旭川市消防本部の職員二人を立会人として、捜査員六人が、暴力団が契約していた二回線の傍受をした。」云々、こう書いてある。だから、この報道が正しいとすれば、北海道警はNTTの旭川支店に、任意捜査で、裁判所の権限のある検証許可令状も何も持たないで、前例があるというのでその北海道警の独自の判断だけで聞こうとした、それに協力しろというようにしたが断られて、やむなくというか、裁判所の許可令状をとる手続をして許可令状をとってやったと、こう報道されているんですね。これは十月十三日の朝日新聞であります。  警察庁、私は許可令状をとってどうこうするということについても一定の意見を持っておりますが、これは裁判所判断にも関係することですからここでは申しませんが、少なくとも裁判所の、最高裁刑事局長も認めたいろいろ学説といいますか、意見があるということを前提にして言われた、裁判所が検証許可令状を出すのにさえいろいろ意見があり、国民感情から見てもそう気安くやられては困るというものを、裁判所から離れて警察が勝手にNTTへ行って、前例があるということでやろうとするなんというのはもってのほかだと思うんですが、それについてここで説明してください。
  238. 山崎裕人

    ○山崎説明員 委員お尋ねの件でございますが、平成三年に委員御指摘のとおりの山梨県警で行った電話検証の例がございます。  この際に裁判所の発行いたしました検証許可状に、検証を実施するための条件といたしまして、「NTT職員二名(ただし、この協力が得られないときは消防署職員をもってこれに代える。)を立ち会わせた上、通話内容を分配器のスピーカーで拡声して聴取するとともに録音するが、その際対象外と思料される通話については、立会人をして直ちに分配器の電源スイッチを切断させること」などが記載されておりましたことから、北海道警におきましても、北海道旭川方面本部におきましても、山梨の例に従いまして、裁判所に令状を請求するのに先立ちまして、検証の際、立ち会いができるかどうか打診をいたしております。ただ、これはその検証許可状によらずに電話の通話内容を傍受しようとしたものではございません。
  239. 正森成二

    ○正森委員 今うまく答弁したんですけれども、警察庁の言うのは今度のことじゃなしに、三年前に既に山梨でそういう裁判所の許可令状が出ているんで、そのときと同じことならいいと思って事前にNTTのところへ言いに行った、こう言っているんですよ。ところが、報道によれば、NTTは事前に許可令状が出れば協力してくれるかというようなことではなくて、許可令状がなくても前例があるからやってくれということだというようにとって断ったというようにどの新聞でも報道をされているんです。  だから、そういう厳格な要件があれば盗聴できると別件では裁判所が言っても、本件がその要件に当たるかどうかということは、これは権限のある裁判官の判断を得なきゃならないじゃないですか。どこか別のところでこういう条件ならいいということがあれば、どれでもいいということで、勝手に自分で判断してそういうことをNTTに言っていくなんということは、もってのほかであるというように私は言わなきゃならないのですね。  警察庁、時間が来ましたから、私はほかにもう一つ聞こうと思ったのですが、やめますけれども、あなた方には前歴があるんですよ。我が党の国際部長を盗聴して、そのために検察から本来起訴されるところを起訴猶予になった。神奈川県警がやって、それでそのときに東京地検が起訴をしないという会見をした。このときの会見をした増井次席というのは、私と研修所で同期の人ですが、こう言っているのですね。県警本部長初め実質的責任者である警察庁警備局長らを退職、更迭させた、だから起訴猶予にしたという意味のことを言っているのですよ。あなた方は盗聴にとっては組織的な犯罪者集団だったこともあるんじゃないですか。そんなものが判例があるからできるんだなんてでかい顔をして、裁判所の許可令状もなしにやるなんてもってのほかだ。今後絶対にそんなことはしないということを言いなさい。
  240. 山崎裕人

    ○山崎説明員 事実関係につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございまして、北海道の旭川におきましては、平成三年の山梨県警の実例を踏まえまして今回の捜査を実施いたしたものでございます。
  241. 正森成二

    ○正森委員 ちょっとも反省してないな。そのうちにまた時間をとってやるから。そんな心がけじゃ、あんたもまたあれやな、退職せないかぬようになるかもしらぬな。これで終わる。
  242. 金子原二郎

    金子委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十五分散会