○滝井義高君 ただいま御紹介いただきました田川市長の滝井義高でございます。
税制改革特別
委員会の諸先生方におかれましては、遠路わざわざ
福岡までおいでいただきまして、税制
改正に関する我々の
意見を聞いていただく機会を設けていただきましたことを心からお礼を申し上げます。本当にありがとうございます。
今回の
税制改革というのは、二十一世紀の
高齢化社会の到来を控えまして、
所得と
消費と
資産等の間の
バランスのとれた
税体系を構築するということ、同時に、
高齢化社会を支える費用を社会全体で
負担しようとする仕組みを構築をしていくということを主眼として行われております。同時にまた、中堅
所得者の
税負担が大変重いということで、そういうところを
中心に
減税対策を行おう、こういう大きな二つの
趣旨があると思っております。
その意味で、個人住民税も含めて、個人
所得税の
減税を行う一方において、
消費税の税率を
引き上げるという、そういう選択肢はまさに時代の要請に合ったものだとして、
地方自治体の首長として賛意を表したいと思います。
今回、
税制改革の特筆すべきことは、
地方税制の充実に目が向けられたということです。
従来、
税制改革をやる場合には、国税というものがいつも前面に出て、
地方税というのは国税の陰に隠れて、議論をされることが非常に薄うございました。しかし、今回は、
高齢化社会の到来で、この
高齢化社会に対応するのは地域の住民である、同時に、地域住民が
高齢化社会に対応するとすれば、
地方自治体がその役割分担を担うべきであるという、こういう物の考え方が出ております。
平成二年に
福祉八法が
改正されまして、
福祉の
措置権というのが我々
地方自治体、市
町村にその権限が来たわけでございますけれども、実際にそれに対応する
財源が伴っておりませんでした。今回の
消費税の見直しの中で
地方消費税が
創設をされたということは、これらの
地方団体の役割の分担の重大性を極めて中央の
政府が認めていただきまして、それに対応する税源の充実を図っていただいた、こういう政治の強い意思のあらわれだ、こういうように大きく評価をいたしております。
今回、こういう三%から五%に税を上げるにつきまして、四%は国税で、一%が我々
地方に回ることになりました。しかし、本当は、我々がその一%をみずから汗をして徴収するということが本来の姿でなければなりませんけれども、今回は過渡的な
措置として、一応課税の徴収権というのは都道府県にあるんだけれども、しかし業務が煩雑になるということで、当分の間は徴収を国に委託する、税務署に委託をする、こういう形になりました。こういうことは、当面やむを得ない状態ではないかと思っております。
それから、今甲能先生からもお述べになったように、益税につきましてもある程度の
検討が行われております。ある程度益税の縮小が行われた。これは中小企業等の
関係で、当面は、激変緩和ということでやむを得ない
措置ではないかと思っております。
いずれにいたしましても、我々としては、今回の
税制改革というのは、昨年の六月に衆議院と参議院とが全会一致で分権の決議をしていただきました。その分権決議の
趣旨を貫くためにこういう体制をとっていただいた。すなわち、
地方の
財源を強化していただいたという点については
感謝しておるところでございます。
これは
地方税制にとって本格的な間接税の
導入の道を開いたと思っております。これは昭和二十四年のシャウプ勧告以来の日本における大きな税制の
改革の突破口ができた、こういうように私は評価をいたしております。しかし、今回の
税制改革というのは、最終の目標ではなくて、今後
地方分権の流れに沿って
地方税制の見直し、
地方税源のさらなる充実強化に向けて、
国会の先生方でぜひ議論を進めていただきたいと期待をいたしております。
他方、個人住民税が
減税をされました。現在
日本経済が二%の成長で、そして同時に円高で、九十六円、七円という円高。そして最近は、御存じのように企業の
空洞化が国内では行われております。したがって、我々
地方自治体の税収というのは、明るい展望はございません。そういう中で、住民税の
減税というのは
地方財政を運営する者にとって必ずしもありがたいことではありませんけれども、しかし、国家の
景気回復や大局的な
税制改革という見地から見ますと、そういうこともやむを得ないかなと思っておりますので、この個人住民税の
減税に対する対応の
措置を
地方財政措置としてとっていただきたいと思います。今回は一応そういう
措置はとっていただきました。
それから、もう一つこの
税制改革で問題になるのは、この
改革によって各
所得階層にアンバラが出るということでございます。これは、
減税効果の少なかった層からは不満が出、多かった層からは満足の意が表明されるかと思いますけれども、これも住友生命の総合研究所の調査等が新聞に出ておりました。
これをごらんいただきますと、今回の
所得税減税あるいは
消費税の
引き上げ等によりまして、中堅
所得層の中で
負担が明らかに軽減されるのは三十五歳から五十五歳までであると住友生命の総合研究所は言っております。それから同時に、
負担が増加するのはお年寄りと若い層、すなわち六十歳以上の世帯と三十歳未満の世帯は、これは増税になると言われております。また、年額
所得八百万円以上というのはこの
制度の恩典を受けるけれども、七百万円以下については
減税効果が非常に少ない、七百万円以下はむしろ
負担増である、こういうようなものが出ております。
しかし、税制というのはそれぞれの時代的な雰囲気を反映をいたしまして、こういうアンバラがある程度出ることはやむを得ないと思いますが、諸先生方におかれましては、こういうアンバラの出たものについてはそれ相応の対応をしていただいて、不満のない形をつくっていただければ非常にありがたいと思っております。将来あるべき税制はいかになければならぬかという広い見地から、そういうアンバラの是正はぜひしていただきたいと思います。
それから、その他の問題といたしまして、我々
特別地方消費税を持っております。その存廃の論議が、これを残すべきか廃止すべきかという論議が行われておるということを聞いております。
地方団体にとっては重要な税収であります。例えば、観光のある県あるいは市
町村で温泉を持っておるところ、そういうところは、サービスと税とはお互いに相関連をしておるものでございます。一挙に特別
消費税を廃止されてサービスをやらなければならぬということになりますと、
地方自治体は大変苦慮をいたすことになります。したがって、
地方消費税の
実施の時期は
平成九年でございますから、それまでの間に広い
観点から
特別地方消費税の
検討をぜひやっていただきたいと思います。
以上が基本的な考え方でございますが、この際、少しマクロの見地から、私の持っておる
意見を述べさせていただきたいと思います。
それは、先生方も御存じのように、国の国債残高は二百一兆円でございます。この二百一兆円の中で赤字国債は六十二兆円であると言われております。しかも、その二百一兆円の国債残高のほかに、国鉄清算事業団等の隠れ借金というのが五十兆あると言われております。こういうように膨大な借金というのを国家は持っておるわけです。我々
地方自治体は、同時に百兆円の
負担と申しますか、借金を持っております。そういう借金の中で、これから日本が国際的な社会に対応し、あるいは国内の
経済の活性化をやるために、いろいろの政策が要ります。
その政策のまず第一は、ガットのウルグアイ・ラウンドの合意でございます。このウルグアイ・ラウンドの合意によって、これから六カ年間に米が四%から八%、平均六十万トンの外米が入ってきますと、国内農業の改良強化をやる必要があります。そのために、
政府は六兆百億の金をつぎ込むと言われております。
それからもう一つは、対米公約として、公共投資は四百三十兆から六百三十兆円になる。これは、
平成七年が同時に公共投資の基本計画の初年度に当たります。こういう大きな
財源が必要です。
それから、まさに
高齢化社会、人口構造の変化によって、
高齢化と少子化の社会がやってくる。世界に例を見ない急速な
高齢化が進む。そして、一・五七ショックから一・四六と
平野先生が言われたように、急速に赤ちゃんが生まれなくなるという、こういう人口構造の変化に対応するために二十一世紀に対する
福祉ビジョンをつくったわけです。この
財源をどの程度にするかという、明確にはまだ示されておりませんが、これは両方合わせたらすぐに二十兆、三十兆という金が要ることになります。こういう
財源を、一体どう対応するか。
それから、今回
年金制度の
改革が行われまして、
国会の方で一九九九年までの間に今の
国庫負担の三分の一を二分の一にするという
方向が出てまいりました。そうなりますと、これも莫大な金が要ることになります。同時に医療保険は、だんだん
高齢化が進みまして、そして年間一兆円ずつの医療費の増加があるわけでございます。したがって、医療の一元化をやろうとしているけれども、名案が今必ずしも出ておりません。
それから、景気対策としての、今の景気というのは、循環的な景気はある程度よくなったが、構造要因の景気というのは
空洞化が進んで必ずしもよくなっていない。こういうものに対する
財源措置が必然的に必要になる。今ちょっと私が挙げただけでも膨大な歳出
財源が必要となるわけでございます。
こういう膨大な国債残高と隠れ借金、そして歳出を考えると、一体日本の国家というのは、
福祉のために
国民負担率をどの程度に持っていくか。すなわち税と
保険料、医療や
年金の
保険料、いわゆる社会保障
負担、この二つを合わせたものを一体どの程度に持っていくか。今は三八か三九です。
ところが、我々がよく住民から聞き、学者の先生から聞くのは、すべてスウェーデンを挙げるわけです。スウェーデンがこうなっておるから日本もこうしなければならぬ。ところが、スウェーデンの
国民負担率は、これは一九八九年、
平成元年ですけれども、七五・八なんです。日本は、一九九一年で三九・二、今は三八か九ぐらいを超していると思います。土光臨調ではせいぜい四〇から四五と言います。四五ではとてもおさまらないわけです。
そうしますと、我々
地方自治体あるいは市民としては、これだけの膨大なものを、いろいろと歳出は決めるけれども、その歳入
財源は一体どういうようになるかという、そのプロセスとその未来像を示していただかないと、どんどん歳出は決めていく、借金はそのままである、こういう問題というのは大変我々は苦慮をするところでございます。こういう問題について、快刀乱麻の御指示をいただければ非常に幸せだと思うのですけれども、こういう問題が悩みであるということであります。
したがって、思い切った
財源措置をやるとすれば、やはり規制緩和や
地方分権の
推進や、あるいは特殊法人の整理、あるいは公務員、国家公務員、
地方公務員
制度の見直し、こういう
行政改革を本格的にやることが必要です。
幸い、御存じのように、今回、
行政改革委員会というのが、五人ぐらいの
委員をもって、事務局を置いて、二日か何かに多分
国会で成立しました。こういうもので、やはり第三者機関で抜本的にやらないと、日本の強い縦割りの官僚
行政を断ち切ることはできないと思うのです。そういう意味で、思い切った斧鉞を加える必要がある。
それから、
不公平税制を直すための、これは
税制改革大綱にもありましたけれども、総合課税
制度をとるかとらぬか、あるいは納税者番号をつくるかどうか。これはプライバシーの問題がありますから、相当腰を据えた議論をやりながら、漸次
不公平税制を直していく方策をとることが必要です。そういう上に立って、
資産と
消費と
所得との
バランスをとる。
今回の
消費税の
改革で、
直間比率は七七対二三から七二対二八と、少し
改正されました。しかし、本当に少しでございます。したがって、少なくとも社会保障の
財源の確保の状態や、
行政改革の進捗状態や、租税特別
措置や、
消費税課税の
適正化、それから
財政の状況、景気動向、こういうようなものを見て、
平成八年の九月の三十日には
消費税の見直しをやることになっております。こういうときには、今のようなことを根本的に示していただいて、
国民の納得のいく、
消費税を上げるか下げるかを決定していただきたい。
最後になりますけれども、公共事業というのは建設国債が自由に
発行されます。甚だしいときには、御存じのように十兆も十八兆も国債を出すわけです。それは、道路をつくったり橋をつくるのは、我々の未来の子供
たちのために、子孫のためにつくるわけです。ところが、我々が、未来のための、老後を支えるための
福祉のためには、増税をする以外にないわけです。
こういう昔からの、古い公共事業には建設国債を出すけれども、老後の
福祉を見る、あるいは教育と文化の研究をやるというようなものには全部増税しなければだめだという、こういう物の考え方は変えなきゃならぬときが来ておるのじゃないか。そして、道路や公共事業と対等に、高齢者社会に対する対応、研究開発に対する対応、こういうものを赤字国債だけで賄うということは考える時期が来ている、こう思うわけです。
以上、申し述べましたけれども、とにかく思い切った対策をやっていただきたいと思います。
結論になるのですけれども、私は、うちの市に美術館を建てまして、今この美術館にピカソがやってきております。ピカソと同時に川柳の展覧会をやっております。一昨日、そこに行って見ておりましたら、こういう二つの川柳があった。「
消費税総理の席で酔いました」これは、今まで
消費税に
反対しておった
社会党が、政権をとったら、総理をとったら、
消費税をやるようになった。だから皮肉ったわけですね。もう一つは、「いつの世も弱い庶民は税に泣く」こういう心の中に、庶民が川柳にうたっているという、そういうムードが
国民の中にあるということを与党の先生方も篤と腹におさめて、そして対応するように私はお願いをいたしたいと思います。
以上です。